第189回国会 法務委員会 第9号
平成二十七年四月二十三日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     古賀友一郎君     有村 治子君
     堀井  巌君     猪口 邦子君
 四月二十三日
    辞任         補欠選任
     有村 治子君     大野 泰正君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                熊谷  大君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                真山 勇一君
    委 員
                猪口 邦子君
                大野 泰正君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                足立 信也君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                矢倉 克夫君
                仁比 聡平君
                田中  茂君
                谷  亮子君
   国務大臣
       法務大臣     上川 陽子君
   副大臣
       法務副大臣    葉梨 康弘君
       外務副大臣    城内  実君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  大塚  拓君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      久保田 治君
       金融庁総務企画
       局審議官     氷見野良三君
       法務省民事局長  深山 卓也君
       法務省矯正局長  小川 新二君
       外務大臣官房審
       議官       下川眞樹太君
       外務大臣官房参
       事官       水越 英明君
       水産庁漁政部長  水田 正和君
       国土交通大臣官
       房技術参事官   菊地身智雄君
       国土交通省水管
       理・国土保全局
       次長       加藤 久喜君
       国土交通省海事
       局次長      櫻井 俊樹君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一
 部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十一日、古賀友一郎君及び堀井巌君が委員を辞任され、その補欠として有村治子さん及び猪口邦子さんが選任されました。
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○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長深山卓也君外九名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(魚住裕一郎君) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○三宅伸吾君 おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきましてありがとうございます。
 船主責任制限法改正案の中身に入る前に、少し古い話をいたしたいと思います。
 百三年前でございます。一九一二年四月の深夜の出来事であります。英国からニューヨークに向けて処女航海中の巨大客船が公海上の北大西洋で氷山に衝突、約二時間四十分後に沈没いたしました。有名なタイタニック号の沈没事故であります。悲劇であります。この船の直接の所有者は英国の会社でありましたけれども、親会社は米国にございました。二千二百人余りの乗員乗客のうち、救助されたのはたった七百人余りという大惨事でございました。
 タイタニック号事故の研究者、高島健さんの調査によりますと、当然その後、巨額の損害賠償の請求が起きたわけでございます。請求総額は当時の米ドルで約一千六百万ドル。一九一二年当時の一千六百万ドル、今の日本円に換算するのはなかなか難しいんですけれども、一ドル四千円で計算いたしますと約六百四十億円になります。
 当時、英米両国とも海難事故に対しまして賠償責任の制限の法制度を持っていたそうであります。ただ、制度の中身が大きく異なっておりまして、アメリカはとても低く、イギリスは責任の上限額が高かったそうであります。当時のイギリスの制度によりますと、タイタニック号はトン数四万六千トンでありまして、また人身事故を伴ったため、一ポンド一万六千円で換算いたしますと約百十億円が上限になったということであります。それから米国でございますけれども、限度額の方式が大分イギリスと異なっておりまして、運賃などをベースに計算しておったようでございます。極めて低く、三億九千万円というのが当時のアメリカの責任限度額だったそうであります。
 当然ながら、イギリスとアメリカで裁判が起きました。いろいろ紆余曲折はありましたけれども、一九一五年、事故から三年八か月後に和解が成立しております。和解総額は六十六万ドル、約二十六億五千万円だったそうであります。これは最初の請求額の約四%、米国の責任制限額の約六倍でありましたけれども、イギリスの責任制限額と比べると約四分の一だったということで、和解で一応収まったそうでございます。
 これは百年以上前の事件の訴訟とそれから和解の結末でありますけれども、法務省にお聞きいたします。商船で海難事故が起きた場合、事故の状況、場所とか様々な要因によって責任の有無、裁判ができる国、それからどこの国の法律が適用されるか、いろいろ枝分かれすると思いますけれども、大まかな概要をお知らせください。
○政府参考人(深山卓也君) 今幾つかお尋ねがあった点について順次御説明いたしますが、まず、被害者がどの国の裁判所で損害賠償請求訴訟を提起することができるのかという国際裁判管轄に関しましては、諸外国の法制の内容は様々です。
 我が国においては、契約において定められた債務の履行地、あるいは差し押さえることができる被告の財産の所在地、不法行為があった地などの属する国の裁判所に損害賠償請求の訴えを提起できるというのが民事訴訟法の建前でございます。
 この考え方によりますと、日本の領海内で船舶が沈没したという場合であれば、被害者は我が国の裁判所に損害賠償請求等々の訴えを提起することができますが、公海上又は他の国の領海内で船舶が沈没した場合には、契約上の債務の履行地が我が国に属するといった特殊な事情がないと我が国の裁判所に損害賠償請求訴訟を提起することはできないということになります。
 また、どの国の法律に従って責任が認められるかという、いわゆる準拠法の問題ですが、準拠法を決める国際私法というのも各国それぞればらばらでございます。我が国の国際私法、これは、法律の名前は法の適用に関する通則法という法律ですが、これによりますと、運送契約に基づく損害賠償請求権の成立等の準拠法は、当事者が運送契約の当時に選択した地の法によるというルールになっておりまして、そういった選択がない場合にはその運送契約に最も密接な関連がある地の法によるということとされております。
 また、不法行為に基づく損害賠償請求権の成立等の準拠法ですけれども、基本的には加害行為の結果が発生した地の法律によると。最も、加害行為が行われた地や、密接な関係がある地の法によることもあり得るというルールになっております。
 この考え方によりますと、日本の領海内で船舶が沈没した場合には、船主に対する損害賠償請求について日本法が準拠法となります。また、公海上あるいは他の国の領海内で船舶が沈没した場合も、その船の船籍、あるいは当事者の住所、あるいは船舶の出港地や目的港その他の事情に照らして、その事故が我が国に密接に関係していると認められるときは日本法が準拠法になると思われます。そして、日本法が準拠法になる場合には、船主は、故意又は過失があれば損害賠償責任を負いますけれども、事故が想定外の天災などによる場合には過失が認められないということになって、損害賠償責任を負わないということになります。
 最後に、船主責任制限手続自体の国際裁判管轄に関しましては、国際条約は存在しておらず、我が国の法律にも明文の規定はございませんので、解釈論ということになっております。解釈上は、日本籍船が責任を制限する場合、あるいは日本の領海内で事故が起こった場合などに我が国の裁判所で責任制限手続を取ることができるという考え方が一般的に取られておりまして、我が国の実務もこうした考え方に基づいて行われております。
 この考え方によりますと、日本籍船が沈没した場合、これは場所を問いませんが、あるいは日本の領海内で船舶が沈没した場合、これは船籍を問いませんけれども、こういった場合には、我が国の裁判所で船主責任制限手続を取ることができるということになります。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。
 ちょっと質問の順番を変えまして、今の答弁の関連で、もし誰も想定できなかったような、例えば隕石が落ちてきて、商船にぶつかって沈没したと、その場合の賠償責任がどうなるかというのがまず一点。
 もう一点は、韓国でセウォル号という悲惨な事故がございましたけれども、もしあの船に日本人の高校生が乗っておって、そのセウォル号の船主の関連会社か子会社が日本にあって財産なんかを持っていた場合、日本人の遺族は、東京地方裁判所などで、国内で損害賠償請求訴訟は起こせるんでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) まず、隕石等の予見し難いような事情によって海難事故が起こったということを考えますと、これはもちろん損害賠償請求権が成立するかどうかは各国の不法行為法によりますので、我が国を前提とすれば、先ほど申し上げたとおり過失責任主義ですので、隕石の衝突したのは予見不可能ですから無過失ということになって、損害賠償責任を負わないということになると思います。
 また、セウォル号の事件、これはもちろん韓国国内の沈没事故ですけれども、ここに日本人の乗客がいた場合の損害賠償請求や責任制限がどうなるかということですが、まず、我が国の裁判所に損害賠償請求訴訟を起こせるかという問題については、先ほど申し上げたとおり、その被告に当たる船主の財産が我が国にあるという事例であれば、そのように言われたように思いますが、起こすことは可能だろうと思います。そういうものがない、何もないということになると、全て韓国の国内で完結していますので、起こすことができない場合もあると思います。その場合の準拠法がどうなるかというのも、先ほど申したように、原則は不法行為が起こった、沈没事故が起こった韓国私法によるというのが原則になると思います。
 それから、船主責任制限手続も、セウォル号は韓国籍の船ですし、領海も韓国の領海内で起こっていますので、一般的に韓国で責任制限手続が取られる。そのときの法律も、韓国の法律が適用されるということになると思います。
○三宅伸吾君 ありがとうございます。
 国土交通省と金融庁にそれぞれお聞きをします。
 海上輸送事故による賠償責任について、国交省所管の法律で何か特別の制度がありますでしょうか、これ国交省に。
 そして、金融庁にお聞きします。海上輸送事故対応としてどのような保険がよく使われているんでございましょうか。
○政府参考人(櫻井俊樹君) お答え申し上げます。
 国土交通省が所管をしております法律で船舶油濁損害賠償保障法というものがございます。この体系でございますけれども、原油、重油等を輸送するタンカーからの油濁事故につきましては、その被害額が大きいことから、本日御審議いただきます船主責任制限とは違うスキームで、具体的には千九百九十二年の油による汚染損害についての民事責任に関する条約、千九百九十二年の油による汚染損害の補償のための国際基金の条約、さらには二千三年の、油による汚染損害の補償のための国際基金の条約の議定書という国際条約及び議定書に基づきまして特別の国際制度が設けられています。
 そして、タンカーにおきましては、船主責任制限に基づく責任限度額よりも多い、高い額での船主責任限度額を設けるとともに、船主責任保険への加入を義務付けております。この責任限度額を超える汚染損害が発生した場合には、先ほど申し上げました条約に基づきまして、原油、重油の荷主からの拠出金を財源とする基金により三百四十二億円までの被害を補償する制度がございます。さらに、三百四十二億円を超えるような更に巨額の汚染事故が発生した場合のためには、また新たな追加基金議定書に基づきまして千二百四十五億円までの被害を補償する制度がございます。
○政府参考人(氷見野良三君) 旅客船及び貨物船につきましては、船主責任保険、いわゆるPI保険ですとか、あるいは衝突損害賠償特約の付された船舶保険が利用されているというふうに承知いたしております。
○三宅伸吾君 ありがとうございます。
 深山局長にちょっと確認でございますけれども、大型商船、旅客船で死亡事故が起きた場合は、今議題となっております改正法案によって責任限度額が抑えられることがあるのかどうかを念のために確認をしたいと思います。
 あともう一点、日本はずっと、つい最近までデフレが十五年前後続いているわけでございます。にもかかわらず、一・五一倍も上限額を引き上げるというのはどうしてなんでしょう。
○政府参考人(深山卓也君) まず最初の点です。旅客船で自分の船の旅客が死亡に至った場合に責任制限ができるかということですが、これは船主責任制限法では、自船、自分が責任制限を申し立てる自分の船の旅客についての損害については無限責任を負うと、責任制限はできないというふうになっております。
 次に、一・五一倍に決まった経緯ですけれども、これは国際海事機関での議論に基づいて一・五一倍になったことを受けて、この法律もそれに合わせるものですが、具体的には各締約国における、一九九六年、平成八年ですが、から二〇一二年、平成二十四年、この間の物価上昇率について、各締約国のGDPの割合を乗じて、つまり加重平均にして算出した数値が採用されたので、我が国だけで見れば確かに一・五一倍どころかデフレで少し物価は下がっているぐらいなんですけれども、加入している国全部のGDP比率に応じた物価上昇率を加重平均すると一・五一倍になったということでこの数字が採用されたものと聞いております。
○三宅伸吾君 最後に、金融庁にお聞きします。
 限度額が一・五一倍、五割も上がると、保険の料率も上がるんでしょうか。
○政府参考人(氷見野良三君) 責任限度額の引上げは保険料の引上げの一要素ではありますが、保険料の額は様々な要素を考慮して決定されるものでございます。
 私ども、複数の保険事業者に確認してみましたが、今回の改正に伴い直ちに保険料を引き上げることは予定していないと、そういう回答でございました。
○三宅伸吾君 これで質問を終わります。
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○委員長(魚住裕一郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、有村治子さんが委員を辞任され、その補欠として大野泰正君が選任されました。
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○小川敏夫君 民主党の小川敏夫でございます。
 まず、外務副大臣にお越しいただきました。憲法で、条約は国会の承認を受けなくてはならないということに決められております。これは、新たに条約を締結するという場合だけでなくて、条約を変更する場合であってもこれは同じ趣旨でありまして、要するに国際約束であれば国会の承認を経なくてはならないと。
 じゃ、どういう場合に国会の承認を経るのかということについては、大平三原則、当時の大平外務大臣が述べた大平三原則で、そのうちの一つで、いわゆる法律事項を含む国際約束、これは憲法で定められた国会の承認が要るんだと、こういうことになっております。
 それで、今回のこの法律でありますけれども、まさに条約が変更されて、そして法律事項だからこうして法律を提案されて、通していただきたいということになっておるわけであります。ですから、法律事項を含む条約の変更であるのに、しかし、法律は出てきているけれども、そもそもの条約の変更については国会の承認が求められていないということになっておりますが、これはどういうことなんでしょうか。
○副大臣(城内実君) お答えいたします。
 まず、この千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する千九百九十六年の議定書というのがございまして、そこの第八条において、実質的な通貨価値の変動等に迅速にかつ適切に対応し得るようにするため、一定の変動幅にとどまる責任限度額の改正について簡易な改正手続が採用されているところであります。
 すなわち、具体的には、そのような責任限度額の改正については、国際海事機構の法律委員会において当該改正案が採択された後、一定期間内の全締約国の四分の一以上が国際海事機構、IMOに対して当該改正を受諾しない旨の通知を行わない限り、当該改正は各締約国により受諾されたものとみなされ全ての締約国を拘束することと、そういう立て付けになっております。
 本議定書の締結に当たりましては、このような簡易な改正の方式を採用している条約であると、この第八条ですけれども、ことを含めて、平成十七年、一九九六年から九年掛かったわけですが、その締結につき国会の承認をいただいたところであります。
 その上で、今回の改正はそのような形で国会の御承認をいただいた本議定書第八条の規定の範囲内で行われたものでありまして、したがって、改めて国会にお諮りしなかったものであります。
 なお、このような簡易な改正手続が採用されている条約については、政府として、従来から本条約と同様の対応を取ってきたところであります。
 ちなみに、日本国憲法第七十三条三号、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」という規定がございますけれども、これは条約自体を国会承認を必要とするというのではなくて、条約を締結する行為について国会の承認を必要とするということでございまして、今回については、これは条約の締結行為ではございませんことを参考までに申し上げておきます。
○小川敏夫君 いろいろ網羅的にお話しされたんですけれども、じゃ、最後の点だけですけれども、締結行為じゃなければ要らないという議論はそれで通るんですかね。しかし、条約の変更は締結行為には当たらないということなんですか、そうすると条約の変更は全て要らないことになってしまいますよね。
○副大臣(城内実君) 憲法の通説といたしまして、今申し上げました第七十三条三号につきましては、条約自体ではなくて、繰り返しになりますけれども、条約の締結行為について国会の承認を必要とするということでございますので、今回はこれ第八条に基づく簡易な改正手続であって、これは条約締結行為ではございませんので、その範囲でなされておるものでありますから国会の承認は必要とされていないということでございますし、かつて、過去には、例えば最近の例としましては、千九百七十三年の船舶汚染防止国際条約の千九百七十八年の議定書附属書Yの改正に伴い平成二十四年に改正された海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の改正の事例、あるいは千九百七十三年の船舶汚染防止国際条約の千九百七十八年の議定書附属書T及び同附属書Yの改正に伴い平成二十二年に改正された海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の改正等、こういった事例がございます。
○小川敏夫君 ちょっと極端な例を挙げますけれども、そうすると、日米安全保障条約があると、今現在あるわけです。これを変更しようとして変更した場合は、これ条約の変更だから、締結行為じゃなくて変更だから国会の承認は要らないという議論になるんですか。そうはならないですよね。
○副大臣(城内実君) 条約の変更の意味にもよりますけれども、新たな条約を締結する場合は当然、これは憲法第七十三条三号の規定に基づきまして、そういった条約締結行為については国会の事前又は事後の承認が必要とされるところであります。
○小川敏夫君 いや、大臣の答弁で、締結行為が国会の承認が必要である、締結じゃなくて変更は必要じゃないというと、ですから、一つの例として、じゃ日米安全保障条約を変更しようと、実質的に大変な中身の変更だった場合に、変更だからそれは憲法が求めている国会の承認には入らないと、こういうことにはならないと思うんですけど、どうなんでしょう。
○副大臣(城内実君) 繰り返しになりますけれども、今回の場合はこの第八条にそういった簡易の改正手続がございまして、条約の中で授権規定がございまして、その授権規定を含めて既に平成十七年の国会の御承認をいただいておりますので、その授権の範囲内、すなわち第八条の範囲内で行政府限りで処理するということは、これはできるということでございます。
○小川敏夫君 つまり、条約の変更だからということじゃなくて、今回はこの船主の責任制限の条約の中に、そもそも自動的に一定の手続が生じれば変更になる、変更した条約の効果が生じると、そういう規定があって、そういう規定も含めて前に国会で承認されているから今回は要らないと、こんな趣旨ですか。
○副大臣(城内実君) そのとおりでございます。
○小川敏夫君 それで、私は素朴な疑問としては、条約にそういうふうに一定の範囲でなおかつ一定の要件が満たされれば自動的に条約が発効するという規定があるといっても、それは条約の中の規定ですよね。条約に規定があるからといっても、我が国の憲法の規定は憲法の規定であるわけですから、憲法上もしそれが求められているのであれば、条約の中にそういう自動発効の規定があったといったって、しかし、国会の承認を必要とするものは必要とするんじゃないか。国会の承認を必要とするものについては、大平三原則で法律事項を含むものは国会の承認が必要とするんだというふうになっているわけですから。
 大平原則でいえば、国会の承認が必要な法律事項を含む変更が条約の中で自動的に発効するということになっていても、自動的に発効した条約の変更を国会が承認するかどうか、やはりこれは求められているんじゃないでしょうか。
○副大臣(城内実君) お答えいたします。
 この第八条ですけれども、これにつきましては、こういった責任限度額の変更について、簡易な改正手続でやるということを含めて全体のパッケージで平成十七年に国会で承認が得られたわけでございますので、したがいまして、新たに国会承認が必要としないということでございます。
 ちなみに、やはり国内法、これはもう憲法も含めだと思いますが、国際法がやっぱり国内法の上位であるということもございますので、これを憲法第七十三条三号をもって国会承認することになるということには理論的にはならないというふうに理解しております。
○小川敏夫君 以前の国会でもう将来そういう改正が自動的にできるんだということをパッケージで承認したからいいんだといっても、しかし憲法で定めた義務は憲法で定めた義務なのであって、それを国会が包括的に将来にわたって承認するなんということはできるのかどうか。やはりその都度その都度承認は必要なんじゃないかと思うんですが、今回、条約が改正されたとなれば、条約を改正されたその時点の国会がやはり承認することが必要なんじゃないかと、こう思うんですが、どうでしょう。
○副大臣(城内実君) 繰り返しになりますけれども、憲法第七十三条三号は、条約を締結すること、これ条約自体ではなくて条約の締結でございますので、今回は新たな条約を締結したわけではございませんので、そしてまた、繰り返しになりますけれども、第八条におきまして簡易な手続をすると。なぜかといいますと、これは、一々再び各国が国会承認したり批准をしたりすると時間が掛かるわけでございますので、被害者の救済をするという観点から、こういった海事汚染とか海事事故のいろんな責任問題については迅速に対応するという観点から簡易な改正手続が一般的に行われているわけでございまして、それを含めて平成十七年に我が国の国会で国会承認がなされたわけでございますから、国会承認は必要としないというものであります。
○小川敏夫君 迅速な対応をする必要があると言うけれども、国内法の規定も含めて十八か月間の時間の猶予をいただいているわけですよね。ですから、この国内法の法律の成立もまさにその範囲の中でやっているわけでして、条約の承認だって別にそれやる暇がないということはないので、今のこの法律の提出とともに条約の承認も求めればそれで済むことで、余り時間的に余裕がないからということはないと思うんですよね。
 それで、じゃ一つ物事を整理してまた別の聞き方をしますけれども、もし第八条の自動変更というような規定がなかったら、そういうことが規定がなかったら、そもそも今回この責任限度額を引き上げるような、まさに法律事項になるような変更というものは本来的には国会の承認は必要なんですよね。
○副大臣(城内実君) 新たな条約の締結ということでありましたら、国会の承認が必要であります。
○小川敏夫君 いや、だから、そこのところでまた議論がかみ合わなくなっちゃうんだけど。国会の承認というのは、新たな条約の締結だけじゃなくて、条約を変更する場合でもやっぱり憲法上必要なんじゃないですか。だから、それで私は一つの例として日米安保条約を出しただけで、やっぱりあの条約を変更するということになれば、それが法律事項とか大平三原則に当たる内容を含む変更であれば、これは必要なんじゃないでしょうか。
○副大臣(城内実君) 一般論で申しますと、条約の修正、改正につきましては、改めて国会の御承認をいただくということは必要でありますが、繰り返しになりますけど、今回の例で申しますと、第八条の中に授権規定がございますので、平成十七年の国会承認におきまして、この八条を含む、その授権規定を含んで国会承認をいただきましたので、この場合は国会承認が必要としないという、そういうふうに理解しております。
○小川敏夫君 分かりました。
 ですから、条約の変更であるけれども、変更の内容が法律事項を含むから、本来的には国会の承認を必要とするものなんだと。ただ、今回はその条約の中で八条があって、一定の範囲の中で一定の要件が生ずれば自動的に条約が発効するということになっていると、そういうことも含めて既にさきの国会で承認しているからもうそれでいいんだというお話ですよね、だと思うんですけれども。それで私は聞いたわけです。
 じゃ、もし八条がなかったら、ですから本来的にはこれは国会の承認が必要な事項なんですよねということを聞いたわけです。
○副大臣(城内実君) 八条がなければそういうことになると思います。
○小川敏夫君 ここでやっと議論がかみ合ってきたんですが。
 それで、私としては、憲法では本来国会の承認を必要としていると、それを条約が要らないからと言ったからといって、条約には要らないとは直接書いていないと思うんですけれども、条約が自動的に発効するからという条約が結んだからといって、本来的に国会の承認が必要なものを国会の承認を経なくていいんだろうかというのが素朴な疑問なんです。
○副大臣(城内実君) この場合は、もう御理解いただいたと思いますけれども、第八条という授権規定がありますので国会の承認は必要とありませんが、一般的に申しますと、条約の修正、改正につきましては国会の承認というのが必要だというふうに理解しております。
○小川敏夫君 今回の条約のほかにも、こうして条約の中でいろんな改正というものが自動的に発効するような条約の例は多いと思うんです。ただ、中でも、今回のように法律事項に至らないで、ただ単に政府の政令とか行政的な措置だけで条約の変更が満たされる場合も多いと思うんです。
 ただ、先ほど副大臣もいろいろな、こういう例があるんだと、条約の変更で国会の承認を経なかった例があるんだということでしたけれども、その国会の承認を経なかった中でいわゆる法律事項の改正を含む案件に関して、まさに今回、今出ているこの船主の責任制限がそれですよね、法律事項を含む改正。本来的には、大平三原則に従えば国会の承認を経なくてはいけないという改正事項を含む条約の変更について、条約で自動発効だからという今回のこの法律の枠組みで国会の承認を経なかったという例はそう多くはないんじゃないでしょうか。
○副大臣(城内実君) 済みません、先ほど申し上げましたけれども、過去、先ほど私が申し上げましたが、最近の例としましては、千九百七十三年の船舶汚染防止国際条約の千九百七十八年の議定書附属書Yの改正に伴って平成二十四年に改正されました海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の改正ございますし、またもう一つは、千九百七十三年の船舶汚染防止国際条約の千九百七十八年の議定書附属書T及び同附属書Yの改正に伴いまして平成二十二年に改正されました海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の改正、そういった事例がございます。
○小川敏夫君 そういった事例を聞きましたけれども、でも年に一件あるかないかですよね。法律事項じゃないような、行政措置で対応できるものはもっと数がたくさんあると思うんですよ。でも、法律事項にわたる条約の変更について国会の承認を経ないという例は、今言ったように年一件あるかないか。
 であれば、私は、やはり条約で八条のような議定書があって、包括的に前に国会から承認されたんだからといって飛ばしちゃうよりも、やはり憲法の精神に丁寧に対応してきちんと国会の承認を経る必要があるんではないか、あるいは経るようにしなければならないんではないかと。これ、国会の承認を受けちゃいけないということはないんで、別に条約にそんなことは書いていないわけでして、国の、政府の方針として、一つの解釈で、要らないんだという解釈で求めていないと思うんですよね。ですから、私は、そこはやはり丁寧に、法律事項を含む変更については変更をしたときの国会の承認を受けるべきではないかと、そういうふうに思いますので、考え方が違う部分があると思いますけれども、意見を言わせていただきます。
 何か説明があれば答弁いただきますが。
○副大臣(城内実君) 繰り返しになりますけれども、今回の例でいいますと第八条という授権規定がございますので国会の承認が必要とありませんけれども、委員の御指摘も踏まえて、丁寧に対応するということは、それは一般論としてはそのとおりではないかなというふうに理解しております。
○小川敏夫君 法務大臣にお尋ねいたしますけれども、余り条約の中身云々じゃなくて、今回は事故が起きたら責任を制限すると。事故起こした側の責任を制限するということは、すなわち、被害者の側から見れば、被害の全額を補償を受けないでカットされてしまうということになるわけですよね。そうすると、私は、この法律というのはまさに船主側を保護するというけれども、被害者にとっては何のメリットもないような感じがするんですが、これはいかがなんでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) この船主責任制限法そのものの趣旨に鑑みれば、これにつきましては、海運業そのものが大変危険性が高い、中世以来、この海運という分野につきましては一旦海難事故が起きますと大変な惨事になるということがあって、そしてそういう中で船主の責任については制限をするということで、中世からのそうした制限法というルールの中で条約を作り、また、それに加盟するに当たって国内法で担保をするという中で進められてきたというふうに思っております。
 今回の改正についてはまさに一・五一倍ということになっているわけでありますが、これについては、むしろその被害者に対しての救済を図るということを大きな流れにした上で国際的な議論がなされて、最終的にはこの一・五一倍になったというふうに考えているところであります。
 その際の一・五一倍がどのような基準かということについては、責任を負うべき海運の船主、こうしたところとのバランスということについては恐らく国際会議の中でも議論はあったかと思いますけれども、全体の流れとしては被害者の保護という流れに沿ったものというふうに理解をしているところでございます。
○小川敏夫君 海運という国際経済の中の主要な部分をしっかりと守るというか、そういうふうな過去の歴史も踏まえてということなんでしょうけれども、ただ、要するに責任を制限するというのは、結局は被害者側が満足な被害の補償を受けられないということになるわけです。
 例えば、明石海峡で事故がございました。漁業者が大きな漁業の損失を被ったんですけれども、結局、漁業者がその損害の全部を補填されないまま終わってしまっているんじゃないかと思うんですが。加害者というか事故を起こした船の側の責任を制限するということは、結局、どこかで被害者側が被害の補償の全部を受けられないという事例が生ずるということを意味するわけですよね。
 ですから、私は、それは海運の維持も大事でしょうけれども、被害者の補償というものは、しかし、やはり全部できるようにという発想の方がよろしいんじゃないかとちょっと思ったものですから、そこら辺のところの大臣の所感をお伺いしたわけであります。
 時間もないので、私言いますと、どうももっと突き詰めて考えると、これ船主の保護じゃなくて保険会社の保護をしているんじゃないかと思うんですよね。つまり、船主は海運事業を営んでいるわけですから、万が一の事故のリスクに備えて保険に加入すればいいだけで。ただ、賠償額が青天井で天文学的数字になっちゃった場合にどうなるかというと、保険会社もそんなのは受けられないということなんでしょうけれども。しかし、責任の制限があれば責任の制限の範囲内で保険会社は保険を対応すればいいわけですから、青天井になってしまうというリスクが保険会社はないわけです。
 だから、この責任の制限に関する法律なり条約がなければ、しかし、私は、損害額がかなり高額になるというリスクも含めて、損害保険会社が再保険とか、様々な保険業界全体でこれを支えればいいと思うわけなんです。
 ですから、どうもこれは船舶の所有者の保護じゃなくて損害保険会社の都合でできているんじゃないかと私は少し思いを巡らしたんですけれども、そう考えますと、ますます被害が出た人の補償が全額補償されないということを率先して国や国際関係機関が全部認めてしまうというのは発想を変えた方がいいんじゃないかと私は思うんですが、こんな私の考えについて、大臣は所感はいかがでしょう。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の船主責任法自体は、その当時は、今御指摘ありましたとおり、保険制度、損害の責任保険というものもない時代の中で作られたということが、発祥してきたということでありまして、現代におきましては、先ほどおっしゃったように、再保険も含めましてこの賠償責任保険というのが発達をしてきているということ、このことについてはそのとおりだというふうに思います。
 それで、ただ同時に、船舶が非常に大型化をしているということ。また、海難事故が生じた場合にはその損害というのが巨額な損害になると。先ほどタイタニックというお話もありましたけれども、その百年前の事故、また最近の事故におきましても大変巨額になっているということ。そういう意味では、この船主責任制限制度の必要性はなおあるのではないかと、こういう指摘もあるところでございます。また、先生のように、むしろ損害保険という制度に依存するような形でこの条約そのものも時代的な意味が失われたのではないかと、こういう御指摘もあるというふうに思っております。
 ただ、それでは賠償責任保険という形で、賠償責任保険というともちろん保険会社ということ、それを構成しているのはやはり船主の皆さんが保険料金を払うわけでありますので、この保険料金についても今のトンの大きさによりましては大変な規模になってくると。
 今回の一・五一倍の折には、保険料については変更がないというような御意見がほとんどであるということでありますけれども、もし仮にそうなった場合には、保険料は多額な金額になってしまうということになりますと、やはり国際的に見ても、そうでないところと、そして日本のように、仮にそういうふうな状況になったときには、船主、船の国際的な競争力、さらには港湾というところで、海運を迎え入れる港におきましても、保険をどのくらい掛けているのか、責任限度についてどうなのかというような形での証明を取らないと入れないということでありますので、こういった面についても国際的な競争力の面でいろいろ課題が出てくるのではないかと、いろんな議論が多分あろうかというふうに思います。
 いろいろあろうということでありますが、今回はこの船主の責任制限法という国内法をしっかりと担保をしていただきまして、今あるフレームワーク、国際的なフレームワークの中で日本としては責任をしっかり果たしていくべく対応をしていくということであろうかというふうに思っております。
○小川敏夫君 明石の例などでは漁業者が損失を負担してしまったと。そういう負担を回避するためには漁業者側の方で共済なり保険に入れということなんでしょうけれども、それはそれでまた漁業者の方に負担を負わせるということになるわけでありますので、一方的に船主側の利便だけを考えても全ての物事とはいかないんじゃないかと思うわけでありますが、そうした意見を述べさせていただいて、私の質問を終わります。
○矢倉克夫君 おはようございます。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
 今日の法案、今議題になっている法案、これは日本も批准をしている海事債権責任制限条約、こちらが改正された、それに対応する改正という部分であります。その部分では基本賛成というふうに思っております。今日は、それをまた前提とした上で、このような海難事故、それに当たっての被害者救済というものはどうあるべきかというところを議論させていただきたいというふうに思っております。
 先ほども小川委員の方からも話のありました平成二十年の三月に起きました明石海峡船舶衝突事件における主に漁業被害、非常に多かったわけですけど、こちらの状況と、またどのような形で補償されたのか、その部分をちょっと簡単に御説明いただければと思います。
○政府参考人(水田正和君) お答えいたします。
 平成二十年の明石海峡での事故につきまして地元の漁業者団体から聞いたところによりますと、ノリの養殖業やイカナゴなどの漁船漁業などに約四十億円の漁業被害があったところでございます。しかしながら、船舶所有者の責任限度額を超えたということから、漁業者に支払われた賠償金は約四億円にとどまったというふうに承知しております。
 水産庁といたしまして、こういった事態は漁業者の生計に関わる重大なものであると認識しておりまして、明石海峡での事故の際には、漁業共済の共済金約五億円の支払などによりまして漁業被害者への支援を行ったところでございます。
 当時、この事故で被害を受けた兵庫県のノリ養殖業者の方々におかれましては、漁業共済への加入率が低く、また補償額の低い契約を選択されていた方が多かったということから十分に被害をカバーできなかったところでございますが、現在では、兵庫県のノリ養殖業者の共済加入率は九割を超えておりまして、補償額の高い契約が選択されていると承知しております。
○矢倉克夫君 現実的な対応として漁業共済の普及を更に進める、これは大事な部分であるので、引き続きしっかりやっていただきたいと思います。
 ただ、今お話もありました、漁業権が侵害されて生活基盤が非常に苦しくなっている住民の方というのがいらっしゃる。私は、今やはり気になっている部分は、船主の責任制限という、これ原則的なように言われている。これ自体は合理性はある部分ではあると思うんですが、所与のものとして強調され過ぎてしまうことで被害者の保護というのが軽視されてしまうという傾向はやはりよくないと思います。両方をしっかりと両立させるという部分がやはり大事であるかと思っております。
 今、とりわけこの船主の損害賠償の責任というのは、やはり注視すべきは過失責任であるわけですよね。無過失責任ではなくて、過失があって、それに相当因果関係がある損害について損害を賠償するという責務がある。これが民法の原則どおりの対応でありまして、この法律はやはりその民法の原則に対しての、いろんな政策上の理由もあると思うんですけど、特例を設けているという部分。そういう部分の中で、被害に遭っている被害者の方への救済という部分が、今メーンで御説明いただいたところは漁業共済になりますけど、これはやはり自己責任という部分になりますから、果たしてそれだけでいいのかというところはやはり議論はしていかなければいけないところであるかと思います。
 国交省さん、今日来ていただいております。やはり同じような、明石海峡の事件を受けて、平成二十三年二月に、対応をどのようにするのか中間取りまとめをされていらっしゃる。いろいろなオプション、どういう方策があるのかというのを考えられた上で、やはり最終的には一つ一つなかなか難しいというような結論になっていた中間取りまとめであるというふうに理解もしております。
 一つ一つ今検証するのはちょっと時間がないので幾つかだけですけど、まず、中間取りまとめの中で挙げられていた船主による国際基金の創設、これが現状難しいというふうに判断をされている理由を御説明いただきたいというふうに思います。
○政府参考人(櫻井俊樹君) お答え申し上げます。
 海運業の国際性に鑑みれば、責任限度額を超える被害について被害者を救済する制度を創設する場合には、国際的枠組みを前提として取り組むべきと考えております。そのような考え方から、二〇〇八年三月に発生しました明石海峡におきます船舶多重衝突事故を受けまして、関係省庁及び有識者から成ります船舶燃料油被害の補償制度に関する検討会を二〇〇九年十一月、国土交通省において立ち上げました。
 今、先生御指摘のとおり、この検討会におきましては、複数の救済の方策、船主責任制限条約の簡易改正手続による責任限度額引上げ、今回の改正の部分でございますけれども、そのオプションのほか、船主責任制限条約の全面改正、バンカー条約において燃料油被害に特化した責任限度額を設定する、そして基金制度創設を含む複数の救済の方策について検討いたしました。
 そして、御指摘の二〇一一年二月の中間取りまとめでは、国際的な船主の責任制度の枠組みがあることから、船主に対し更に拠出を求めて基金を創設することは船主責任制限制度が崩れることになると指摘されておりまして、国際的な枠組みの中で条約締約国の理解を得ることは相当に難しいと思われます。
 また、油タンカーの場合には、荷主である油の受取人を拠出とする国際油濁補償基金に基づく救済制度があることを踏まえまして、船舶燃料油被害に対する基金制度の創設について、油の受取人のような拠出を求め得る者を検討しましたが、負担を正当化できる者も見出し得ないとの結論に至った経緯がございます。
 今次、責任限度額の引上げ改正の採択以降、IMOに対しまして、責任限度額を超える事故の被害報告はございません。しかし、IMOにおきまして、引き続き、国際的な事故や条約締約国の制度改正の考え方について情報収集に努め、各国の動向を踏まえつつ、関係省庁とも連携して適切な対応をしてまいる所存でございます。
○矢倉克夫君 今、油タンカーにおける基金の話がありました。油タンカーは、同じような形で事故が、油漏れが起きたときの被害については、油タンカーというか、タンカー船、油漏れ、それについては基金があると。ただこれは、要は、荷主、石油会社等が元々基金の枠組みをつくっていて、それを国際条約に格上げしたという形であったと。私、事前に聞いた限りでは、今回のような明石のような事故、タンカー以外の事故の場合においては、そのような枠組みが現状ないからゼロからつくり上げなければいけないと、それは非常に大変だというようなお話でありました。
 ただ私は、中間報告なんかは、そういうような認識もありつつなんですけど、船主以外の人は誰も責任拠出するような人、妥当な人がいないからという理由だけで否定しておりますが、であれば、船主でしっかりとそのような基金を、枠組みをゼロからであってもつくっていくというような姿勢はやはり持っていかなければいけないんじゃないかと、その部分はまず御指摘をさせていただきたいというふうに思います。
 ただ、今お話もありました、では、基金では無理、じゃ今の現状の枠組みをどうやってつくり上げて改正していくのかというような観点からの中間取りまとめもあったわけですが、海事債権責任制限条約、この中間取りまとめの中で書かれていたものの一つに、今の条約に規定されている物的損害、これから環境損害という形のものを独立させてみて、それについては締約国が責任限度額を独自に設定する。要は、油漏れのような被害はまた別途の枠をつくって独自の責任制限額というのもつくっていくというような条約の改正の在り方もあるという話もありましたが、それについて簡単に、なぜこれが否定されたのか、御説明いただきたいというふうに思います。
○政府参考人(櫻井俊樹君) お答え申し上げます。
 中間取りまとめにおきましては、今御指摘の環境損害だけに限った限度額の設定引上げということに関しましては、船主の保険料の負担増などにより、独自の責任制限額を設定する締約国の海運、港湾の国際競争力への影響も懸念されるということ、一点。そして二点目に、さらに、その実現には、簡易改正手続によらない通常の海事債権責任制限条約の改正が必要となると。この二点を踏まえまして、同条約の締約国や海事関係などとの意見交換を通じ、理解を深めながら慎重に進めていくべき事項とされております。
○矢倉克夫君 慎重に進めるということは、これからまた進めるというところではありますが、やはり全体のトーンとしては、考えてもなかなか難しいというようなところで、入口のところで断念しているという部分がやはり多いかと思うんですよね。そこはしっかりまた進めていただきたいとは思います。
 であれば、じゃ責任制限のこの額を条約上上げていくというような話になるわけですけど、御案内のとおり、この一・五一となる前にはオーストラリアから二・三倍というような提案があった、それは否定された上で一・五一という形になったというところです。結局、オーストラリアのような、日本と同じように油の被害に遭ったところは、より補償の充実というところを考えて倍率を考えたわけですけど、最終的には今回のように、物価の上昇を調整するという部分、そこのみでの調整で一・五一になったと。これは議論も分かれると思いますけれども、被害者救済という観点からどれだけ考慮がされていたのかというところは、やはり議論すべき部分はあるかと思っております。
 時間がもうありませんので、ちょっと最後、大臣にまたお伺いしたいと思うんですが、この油の問題というのはやはり特殊性があって、要は責任制限というところで、通常やはり考えられる相手方というのは荷主と荷受人、このクローズな関係、契約関係にあったりとかする部分、そこら辺りの関係で責任制限というのがまず発生すると。この原則ができてきた時代もやはりそこを中心に考えていたんだと思うんですが、時代がどんどん変遷していって、あの油漏れのような、近隣住民のような第三者、関係していない第三者に対しての被害というのが発生してきていると。そういうような関係についてまで同じような原則原則というところだけでいってしまっていいのかというようなところは、やはり現実的にこれは考えていかなければいけない話であるかと思います。
 今回、条約の枠組みをどうするかという難しい議論があるので、その難しい議論、ここを変えるというところは国際的な合意の枠組みを変えるというところでもあるし、原則自体を変えて条約を変えるというようなこと、なかなかこれは難しいということは分かる。その部分はあると思うので。
 今日お伝えしたいのは、であれば、そこは変えるという選択肢とはまた別に、国内の問題として、この第三者に対しての被害救済という部分はやはりもっとしっかりと考えていくという姿勢。原則がこうだからというところで、あとは共済の保険、漁業共済でとか、そういう部分だけで終わってしまうような形じゃなくて、もう少し被害者救済というのを、とりわけ第三者との間の被害に対する救済というのをやはり考えていかなければいけないというふうに思っております。
 ちょっと一言、もう少ししゃべらせていただきますけど、法務省の管轄というのはやはりいろんな官庁と共管する部分が非常に多くて、とりわけ、今回もそうなんですけど、基本法を所管している立場から法務省が所管をされて、そこにまた政策的な観点からいろんな省庁が入ってくると。ただ、いろんな省庁、ほかの省庁からの観点というのは、どうしてもやはりマクロ的な分野の視点というのが非常に多くなってくる。それはそれで大事なんですけど、法務省の存在意義というのは、そこで拾い切れなかったミクロ的なところを個別に拾っていって政策実現をしていくというところがやはり大事かと思っています。
 法律の枠組みで今回のような被害者救済というのを変える変えないというような話は別にして、この法律は法律として、じゃそれ以外のところでこぼれた被害者の救済というのをやっぱり法務省が他省と連携をしてしっかりしていくべきでもあるし、法務省の役割であるというふうに私は思っておりますが、その辺りを、他省との連携も含めて法務大臣として御所見をいただければと、最後に一言、お願いいたしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の船主責任制限法の趣旨につきましての、今改正をお願いするということでございますが、基本的にはやはり被害者に対して救済を進めていくと、これは国際的にも全体的な潮流であるというふうに考えております。そういう意味で、今の枠組みの中では第三者の部分についても制限が課されるということでありますけれども、やはりIMOの機関におきましても、様々なテーマでの、新しいテーマでも議論が進められておりますので、そうした方向に向けての取組については関係省庁としっかりと連携をしながら進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 先ほど来の話で、燃料油等におきまして漁業者等の被害額が発生していると、それに対して責任限度額を超える部分についてはなお被害が救済できないということ、このことについては大変重要な課題であると。これは、日本の国内のみならず、恐らく他の国も同じように抱えているというふうに考えておりまして、先ほど国土交通省からも御指摘がありましたけれども、IMOの場におきましても、国際的な事故あるいは制度改正の考え方、様々に情報収集をしながら、そしてその動向を踏まえながら対応し、また、国内的にもそれにふさわしいものにしていくべく関係省庁と連携をしてまいりたいというふうに考えております。
○矢倉克夫君 国内のまた問題としても、さらに、被害者救済という観点を法務省がまた主導してしっかりと訴えていただくということを改めて要望させていただいて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございます。
○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。どうぞよろしくお願いします。
 もう大分被害者補償の観点からの話が出ておりますので、重複した部分もあるかもしれませんけれども、是非その辺はお許しをいただきたいというふうに思います。
 今回のこの船舶責任法改正案、責任限度額を一・五倍に引き上げるということなんですが、それでもやはりどうしてもそれから漏れてしまう、被害額が大きくなってしまうということはあるし、先ほどのお話の中でもいろいろ、船の大型化ですとか、それからそれに伴って積荷が増えれば当然被害額も大きくなるとか、それから特にオイル、油の場合はこれはもう本当に極端に突出して多くなってしまうというようなことも話がありました。そうしたことから、海運業というものを維持するためにもこうした制限というのは必要であるというような論議がされてきました。
 ただ、そういう論議を踏まえた上で私感じるのは、やはり保険というか補償の性格というものでいえば、起きた被害、先ほどもありましたように、天災、想定外、これは本当にやむを得ないとは思いますけれども、それ以外の事故というのは、やはりその責任というものを考えたら、発生した被害に対しての、全額というか、できるだけの補償をするということが、それが補償の考え方ではないかなというふうに思うんですけれども、まず、一般論ということになりますけれども、その辺の考え方、いかがでしょうか。法務大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の改正、一・五一ということでございますけれども、この引上げがなされたとしてもなお被害額が責任限度額を超える場合があるということで、この被害者の救済につきましてはなお重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。
 被害者救済のためには、更なる責任限度額の引上げや、また、先ほど来御指摘ありましたけれども、基金の創設などといった様々な対策あるいは考え方があるところでございますが、今日も国土交通省からございましたけれども、IMOの場におきまして、国際的な事故があるということ、また制度改正の考え方につきましても様々な情報を収集をしっかりいたしまして、各国の動向も踏まえながら対応していくということ。それについては法務省としても、こうした国際的な枠組み全体の中での検討ということにつきましては関係省庁と連携をしながらしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。
○真山勇一君 この法律は船主の側から立ったものということなので、やはり発生した被害に対する補償、万一に備えるということは、被害額が大きくても、やっぱり被害者の立場に立ったらそういう論議もこれからもやっていかなければならない。まさにこの法律のちょっと欠けてしまっている部分というような考え方もあると思うんですけれども、普通の一般常識的に考えたら、補償というのは被害が起きたら補償するんだという、そういうふうなことで、もちろんこれ国際条約ですのでその合意づくりというのは大変かと思いますけれども、やはりそういった観点から考えていくべきではないかなというふうに私は思っております。
 資料でちょっと配らせていただきました。これは船主組合が出したものを委員会の資料の中からいただいたものですが、過去十年間で責任限度額を超過した海難事故というのがここに出ております。少なくないですよね。やっぱりかなり限度額を超える事故というのがそれこそ一年一回ぐらいは何か起きているような感じもしますし、そして、これまでの責任限度額とそれから実際の損害額というのを見てみると、もうかなりやはり大きな開きがある。そして、改正後一・五倍にしたらこうなるよということだと思うんですが、これで見ても、下の方の川崎の事故については限度額でカバーできるというふうな状態になっていますけれども、やっぱりそれ以外は足りない、カバーし切れないという状況ですね。
 特に、今も話が出てきましたけれども、明石海峡の、これ貨物船だけれども、要するに燃料の油が流出したということなわけで、これで見ますと、やはり引き上げたところでまだまだ、もうとても足下にも及ばないみたいな、もちろん、だから、こういう事故が起きるから限度額がないと船主側は大変だということも言えると思うんですが。やはり被害者から見れば、これだけ大きな被害が出る、こうした、先ほども話が、議論が出ました、やはりオイル、油というものについては何か別な考え方をするべきではないかというふうに思うんですけれども、その辺りの論議というのは今後やる意思というか、そういう可能性というのはあるんでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 海難事故に伴う物的損害のうち、燃料油に起因する損害について、一般の船主責任制限の枠組みと別に、あるいはその中でも別扱いにして取り扱うべきでないかという議論は、国際海事機関、IMOでもこれまでもされておりまして、バンカー条約と俗に言われていますけれども、燃料油の責任制限についてだけの特別な条約、これもできているところです。
 ただ、現在のバンカー条約の責任限度額というのは、油濁損害賠償保障法と違いまして、船主責任制限法の責任限度額と同額になっているということで、別扱いにはなっているし、細かく見れば少し責任が厳格化しているところはあるんですけれども、責任限度額が別枠になっているわけではない。しかし、別に考えようという、そういう発想が国際機関であって、日本は承認していませんけれども、そういう条約が現に最近ですけどできているというようなこともあって、委員御指摘のような問題意識というのは、この種の議論をしているIMOにおいても、最近では一つの考え方として、検討課題として認識されているところだと思います。
○真山勇一君 確認なんですが、タンカーは、これは全くこの法律とは別枠になるということですね。
○政府参考人(深山卓也君) 正確に申し上げますと、タンカーの油漏れ、タンカーから油が漏れて、油濁損害といいますか、それに起因する損害が起きた場合、これについては、先ほど国交省さんからも説明がありましたように、別の特別法、船舶油濁損害賠償保障法というのが条約に基づいてできていまして、また、責任限度額を超えても基金が国際的に形成されているという形で一般の損害とは別扱いですが、タンカーでも、例えば油漏れ以外の海難事故で損害を与えた場合には、それは船主責任制限法の適用がございます。
○真山勇一君 それからもう一つ、この船の対象としては旅客船も当然含まれているということで、人命についてはどういうふうなことになっているんでしょうか。特に、やはり不幸にして多数の犠牲者などが出た場合は、これはもう本当に大変なことだと思うんですが、この辺りの仕組みというのはどういうふうにされているでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 船舶の海難事故で人身損害が出た場合、例えば衝突事故ですと、自分の船と相手方の船とどちらにも人身損害が生ずる可能性があります。しかも、人身損害というのは乗組員である場合と旅客の場合とがございます。
 現在の船主責任制限法の仕組みというのは、相手方、他船と言いますが、相手方の船舶の旅客、乗組員の人的損害については責任制限の対象になるということになっています。それに引き換え、自船、自分の船に乗っている乗組員や旅客については責任制限ができない、つまり無限責任を負うということになっています。
 これは、自分の船に乗る人の、乗組員やあるいは旅客というのは、数も分かりますし、あらかじめ保険を掛けてリスクを回避することは可能ですが、事故が起きた場合、相手方の船舶にどれだけの人が乗っているかというのは事故が起こってみなくちゃ分からないので、予測可能性がないというようなこともあって国際的にそういうルールに条約がなっている、しかもそれ以外のルールを決めることを条約が許していないので、相手方船舶についての人的損害については責任制限の対象になっていると、こういうことでございます。
○真山勇一君 そうすると、相手方は人数も分からないということなんで、自船じゃなくて相手の方は相手の方のまたその補償というふうなことが、国際的には取決めというふうになっているんでしょうか。その辺、ちょっと確認をさせてください。
○政府参考人(深山卓也君) これは、船舶の衝突事故の場合には、どちらに過失があるか、あるいは両方に過失がある場合もありますが、相手方の船舶としても、航行方法等に過失があった場合には、相手方の船主が自分の乗組員とか旅客に責任を負うということになります。それが日本船であれば、今申し上げたように、相手方船主の乗組員や旅客に対する損害賠償請求権は制限がない、相手方が責任制限手続を取っても制限されないということになります。
 もっとも、これは、今のは立て付けとしてそのようになっているんですけれども、最近、ここ十年ぐらいを見ますと、人身損害で責任制限額を超えるものが発生したというようなことは日本においてはございません。
○真山勇一君 分かりました。ありがとうございます。
 それで、また限度額のある方の責任に戻りたいんですけれども、やはりどうしても限度額を超えてしまった場合、特にやっぱり金額が大きい場合、こうしたとき、被害を受けても、それを賄うに足りるような資力がない、そうした者がそうした被害を受けたときに、国としては何らかの支援措置というようなものは考えておられるでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 加害者が不法行為に基づいて損害賠償責任を負う場合に、加害者がまず払うというのが大原則でございます。ですが、国として船舶の衝突事故に基づく損害賠償請求について一律何かその責任を負うというようなことは、ほかの不法行為とのバランスも考えますとなかなか難しいところがございますけれども、個別の事案について行政的ないろいろな援助をするというようなことは既に過去の大きな事故などでもしたことはありますけれども、一般論として、船舶事故に基づく損害賠償請求だけ、資力が乏しいあるいは限度額が小さい場合にはその差額を国が補填する、あるいは国が賠償するというのはなかなか理屈として難しいんではないかと思います。
○真山勇一君 それは確かに難しいとは思うんですけど、やはりこの辺りも今後いろいろ考えるべき課題であるかなというような気もしております。
 これ、多分外務省の方になるんではないかなというふうに思うんですが、やはり外国船が日本の沿岸で座礁するという事故も過去にあったわけで、そのとき、その外国船が撤去せずにそのまま放置されてしまって、沿岸の自治体ですとか住民が本当に非常に困ったというようなこともあるわけですけれども。こうしたときに、幾ら外国の船主あるいは保険会社に何とかしてほしい、補償してほしいという呼びかけ、交渉を行ってもそれに応じない場合、国として何か被害者を支援するということはあり得るんでしょうか。
○政府参考人(水越英明君) お答え申し上げます。
 当事者間の交渉などの手段を尽くしても事案の解決が見られない場合、外務省として、事案の個別具体的な状況を勘案し適当と考える場合には、必要な支援を行うということもございます。
○真山勇一君 やはり、そういう辺りがよりどころになってくるかなという気もしております。
 この法律、やはりそれぞれの委員の方が指摘されたように、まだ要するに課題もあるというふうに思いますが、やはり取りあえずこの限度額引き上げるということは必要だというふうに私も考えています。
 時間になりましたので、済みません、この後、内閣府をお呼びしてちょっとお聞きしたいことがあったんですが、これはまた次回に送らせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今回の責任制限額の引上げによって、日本国内で過去十年に責任限度額を超えた海難事故、P&I保険加入船舶の六件のうち二件は全額補償が可能な水準に結果としてなるというなど、全体として引上げになるので賛成はするんですけれども、今日も被害者保護は不十分ではないのかという角度からの議論が会派を超えて行われているとおり、私、今日は、引上げの幅、責任限度額の一・五一倍化というのが本当に合理的なのかということについて議論をしておきたいと思います。
 先ほど来出ております〇八年三月の明石海峡多重衝突事故による損害は責任限度額の三十三・五倍と、はるかに超えて、被害が補填をされませんでした。これは極めて重大な政治課題にもなってきたわけです。
 この法案の四月一日の衆議院における質疑で、国土交通省から、二〇〇九年の六月の我が党穀田衆議院議員の国土交通委員会の質問に対する御答弁、つまり、始まったばかりのIMOでの議論をリードして国際的な枠組みの構築に努めてまいりますという御答弁を紹介された上で経過を説明をされ、我が国は確実にこの簡易改正手続に基づく改正の動きがまとまり、責任限度額が引き上げられるように調整を進め、今次改正が実現したところでございますという御答弁をされているわけですが、つまり、この一・五一倍というのは日本がリードして行ったと、実現したと、そういうことですか。
○政府参考人(櫻井俊樹君) お答え申し上げます。
 二〇〇八年の明石海峡船舶多重衝突事故を受けまして、国土交通省としましては、まず、IMOに対しまして明石事故の被害を報告するとともに、船主責任限度額を超える燃料油の被害の実態について世界的な調査をして実態把握をするという提案を行いました。これがきっかけで議論が可能になったわけでございますけれども、明石事故に続きまして、同じように責任限度額を超える燃料油の流出となりましたオーストラリアからは、九六年議定書の簡易改正手続に従った責任限度額改正の提案、併せて、必要があれば条約改正の検討を行う旨の提案が出されました。
 我が国としましても、明石海峡船舶多重衝突事故を受けまして、船舶の燃料油による汚染損害への対応としまして、簡易改正手続に従った責任限度額の引上げだけでなく、幅広い多様な観点から検討が行われるべきとのスタンスで臨みました。
 しかしながら、IMOにおきましては、九六年議定書の簡易改正手続に従った責任限度額の引上げに限定して検討を進めるとの意見が大勢でございました。そして、この簡易改正手続に従った責任限度額の上限であります年六%、率で引上げ率を算出した提案というものがオーストラリアから出されたわけでございます。
 一方、この九六年議定書の簡易改正手続による引上げの場合には三つ要素がございまして、事故の経験、特にこれらの事故によって生じた損害の額、貨幣価値の変動、そして改正案が保険の費用に及ぼす影響を考慮するという規定になっておりまして、それを満たした上で、上限年六%複利で算出した引上げ率を超えないというような規定になってございました。
 オーストラリアの提案に対しましては、この条約改正手続に当たって要求されますこれらの要素を考慮したものではなく、またオーストラリアの提案について様々な意見があったため、このままでは責任限度額の引上げを実現することができないおそれがございました。
 そこで、我が国は、被害者保護の観点から、責任限度額の引上げを実現すべく、責任限度額の引上げに当たっての客観的な根拠の一つとしまして、九六年議定書の加盟国におけます一九九六年から二〇一〇年までのインフレ率を各国のGDPの全加盟国に占める割合について調整して算出した引上げ率を提案をいたしました。この結果、多数の国が我が国提案の算出方法に賛成をし、ただし、計算の対象期間を一九九六年から二〇一〇年まででなく、二〇一二年まで延ばした上で算出をするという形で一・五一倍という数値の引上げで合意が図られたものでございます。
○仁比聡平君 今お話のあったオーストラリアを始めとした提案について後でちょっと議論をしたいと思うんですけれども、つまり、一・五一倍というのが最初から国際機関での議論の土俵にあったんじゃなくて、商事法定利率六%を掛けた、つまり二・三倍という案が簡易改正手続の上限としてこれ行うべきじゃないかというのがオーストラリアの提案で、それは、二〇〇九年の三月にオーストラリアで起こった重大事故、これを踏まえた極めて切実な提案だったと思うんですよ。ノルウェーやカナダもこれに賛同した。その翌年には二十か国が簡易改正手続による共同提案を行ったということなんですね。
 ちょっとその経過についての態度は後で聞きますが、まず、そうした結果、一・五一倍というのをつまり今海事局がおっしゃるようにリードしたというんですけれども、一・五一倍では、そもそもの発端の明石海峡の事故のような事故がこれから先起こったら被害は全く補填されないじゃないですか。大臣、その到達点についてどう思っていらっしゃるんです。
○国務大臣(上川陽子君) 一・五一倍の引上げということで今回お願いしているわけでありますが、これにつきましては、一・五一倍という中において一定程度被害者の保護に資するものというふうに考えるわけでございますが、ただ、引上げ後も被害額が責任限度額を超える事故はあり得るというふうに考えておりまして、その意味で、被害者の救済という視点からなお重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。
○仁比聡平君 今後なお重大な課題であると、これを関係機関とも協議をしながら前進をさせていかなきゃいけないという趣旨の決意はこれまでも語られていて、それはそのとおりだと思うんですけれども、限度額があることを前提としても、一・五一倍か二・三倍かでは、これは被害者の救済される幅は変わりますよね。
 海事法研究会誌というこの分野の雑誌があります。二〇一四年の十一月号で、お名前はちょっと申し上げませんけれども、有名な我が国の保険会社の副部長さんがレポートをこの問題について書いておられるんですけれども、このオーストラリアの提案に対して日本はどういう態度を取ったかという点について、こんなくだりがあります。
 「当初のスタンスはそもそも簡易改正の必要性を認めないというものだった。」、ところが先ほどの私が紹介したような経過になる。「引上げゼロに固執することは結果としてオーストラリアの主張寄りの結果につながることが懸念された。そのような流れの中で、本邦も理論的に根拠があり、現実的に受け入れ可能な引上げを主張していくことに軌道修正することになった。」。
 つまり、二・三倍化、簡易改正ででも最大の引上げをやろうじゃないか、やるべきじゃないかという提案について日本は反対したんじゃないんですか。そうすると、重大な事故が起こったときに、現実に損害が補填されない部分が大きくなる、そのことについてどう考えてIMOでの協議に臨んできたんですか。
○政府参考人(櫻井俊樹君) お答え申し上げます。
 先ほど答弁させていただきましたように、私どものスタンスとしましては、まず、簡易改正手続に従った責任限度額の引上げでなく、幅広く多様な観点から検討を行うべきというスタンスでございました。先ほど御紹介いたしました国土交通省に設置しました検討会での議論も踏まえまして、幅広い観点から検討を行うべきという形のスタンスでございました。
○仁比聡平君 私、この日本政府の態度については、国際機関での協議の中身の話ですけれども、よく検証する必要があると思いますよ。
 今日ちょっと時間がありませんから次の機会にもう譲るとして、一方で、保険というのがどんな現状にあるのかというお話があります。
 先ほど、金融庁の方でしたか、保険料引上げの動きはないという御答弁がありましたから、私はあえてもう一度は確認はしませんが、民事局長にお尋ねしたいのは、事故発生率ですね。衆議院の御答弁でも、責任限度額を超えるような事故の発生が極めて割合的に少ないということもあって、この改正で直ちに保険料を引き上げることは予定していないという見込みを語られているんですが、この事故の発生率というのはどんな現状でしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 事故の発生率については幾つかの統計的な数値の捉え方がありますが、結論的に申し上げますと、最大で一%程度だろうと思っています。
 もう少し具体的に個々の数字を申し上げます。
 主要な保険事業者である日本船主責任相互保険組合、いわゆるJPIクラブにおける年間の保険金支払件数は、近年ではおおむね四千件から五千件で推移しておりますが、そのうち、損害額が責任限度額を超える事案の件数は年間〇・〇二%前後とされています。また、国際PIクラブからIMOに報告をされた五百九十五件の燃料油の流出事故のうち、責任限度額を超える損害が発生する海難事故は七件で、その割合は約一%でございます。さらに、平成二十五年の我が国の海難事故の件数は約千八百件で、この年の裁判所に対する船主責任制限手続の申立ては二件で、その割合は約〇・一%と。
 これらはどれか一つで事故の割合を極めて正確に表しているとはなかなか言い難いというのは承知しておるんですけれども、今言った三つぐらいの統計数値を見ると、おおむね最大でも一%程度と見積もることができるのではないかと思っております。
○仁比聡平君 そうした事故の発生率を考えてみたときに、保険としては十分まだ余力があるというのが専門家の中からも出ている観点なんですよね。
 そこで、ちょっと時間がなくなりましたから間を飛ばして、大臣に最後お尋ねしたいと思うんですけれども、私は更なる引上げを政府として取り組んでいくべきだと思うんです。そのときに、汚染者負担の原則というのをどう考えるのかということが問われていると思うんですね。つまり、加害者あるいは原因者が発生した被害の補填、補償を行うというのがこれは民事上は当然の大原則であるのに、例えば明石の事故のように三十三・五倍もの被害が責任を免れてしまうという、これ正義に反するじゃないかという、この問題についてどう考えるかなんですね。
 かつての帆船で大航海をしていた時代とは、もう船の巨大化あるいは鋼の船の登場で全く状況が変わっているし、荷主と船主の関係というのも大きく変わっているし、通信ができないなんていうような状況ももう全くないわけですよね。そうした下で環境への影響というのは極めて重大な事故が起こると、このときに汚染者負担原則を大原則にして引上げを取り組むべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(上川陽子君) ただいまの御質問、被害者の救済に関してということでございますけれども、国際的、国内的な救済措置等につきましても引き続き政府全体で検討していく必要があるというふうに考えておりますので、法務省といたしましても、関係省庁と連携をしながら必要な検討をしてまいりたいというふうに思っております。
 更なる責任限度額の引上げということで御指摘がございましたけれども、国際的な性格が非常に強い海運業ということでございますので、そういう意味での国際的な議論ということについては、御指摘になられた視点も含めまして、政府一丸となってIMOにおきましての国際的な議論に積極的に関与してまいりたいというふうに思うところでございます。
 また、汚染者負担ということでの原則ということでございます。こうしたことについて、大原則ということで損害全額の賠償を汚染者が背負うということでございます。
 この船主責任制限法につきましては、海運業の発展等の目的から船主について責任制限を認めているということでございますので、様々な視点から、そうした御指摘も含めて、国際的な舞台の中で、海運国としての日本、また被害者支援ということの中での大事な課題ということは残されているということでございますので、更に連携をしながら進めてまいりたいというふうに考えております。
○仁比聡平君 まだまだ不十分だと思いますが、終わります。
○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。よろしくお願いいたします。
 船主責任制限法の一部改正について質問させていただきますが、先ほど来皆さん同じような質問をしておりますので、一つ二つさせていただきたいと思います。
 今回の責任限度額の引上げの対象は、一九九六年のLLMC議定書の批准国で責任制限手続を行う場合のみということであります。中国、韓国はLLMC七六年条約を批准していないものの、基本的にはこれに沿った責任限度額を国内法で定めていると理解はしております。
 しかし、米国とアルゼンチンについては、こういったトン数を基準とする責任限度額を採用しておらず、基本的に航海終了時の船価を限度とする制度によっていると聞いております。そこで、米国では責任限度額は航海終了時の船価と未払運賃の合計額となって、この責任限度額が死傷損害の全額を支払えない場合には、最大一トン当たり四百二十米ドルとなっております。
 そこで、前回法務省の法案説明資料にあった例として、七万トンの船舶であった場合、物的損害については書いてあったんですが、六十三億円ですか、人的損害の責任限度額、私、計算してみると、これ百十五億円となるわけですね。そこで、米国に関して言えば最大一トン当たり四百二十米ドル。これ、一ドル百二十円と計算して僅か三十五億ぐらいにしかならないと。これは米国に限って言うわけですが、今回の改定により新しく適用される責任限度額とそれ以外で適用される責任限度額の差が広がるんではないかと、そういう懸念があります。
 そこで、先ほど三宅委員の方からもちょっと質問がありましたが、事故が起きた場合どこの国の法律に準拠して責任制限手続を行うかでの賠償の結果が変わるおそれがあるのではないかと、そういう懸念をするわけであります。
 そこで、米国船、これは締約国になってないわけでありますが、締約国でない米国船で、米国の領海内で例えば日本人が乗っていた、そういうふうになった場合に、日本の船主としてまた日本人に不利な結果にならないようにすべきではないかと、そう思っておるんですが、その点の見解をお聞かせいただけませんでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 今委員からも御指摘があったとおり、どこの国の裁判所で船主責任制限手続が取られるかというこの国際裁判管轄の問題がございまして、これは条約や法律に明文はありませんけど、一般的な解釈では、日本の船籍の船舶あるいは日本の領海内での事故については日本の裁判所が船主責任制限手続を取れる。しかし、今委員が例に挙げられたような米国の領海内の事故ということになりますと、アメリカの船主責任制限手続が取られて、それは、御紹介があったように、多くの場合、日本の現行の法律よりも相当責任限度額が低額になる。その意味で、被害者が日本人であった場合には酷なことになりはしないかという御指摘だと思います。
 これは、実際にアメリカで責任制限手続が取られた場合にはそういう傾向にあるというのは否めないところでございますが、我が国の責任制限制度とアメリカのそれとが異なっている、同じ条約にアメリカが入っていないということに起因する状況で、そのこと自体は、それぞれが国家主権をもって裁判制度を運営している以上、やむを得ない面があると思いますけれども。
 しかし、船主責任制度を所管する法務省としても、この制度が国際的に普遍的なものになる、つまりアメリカもこの条約を承認して締約国になっていくことによって日本と同じルールを取っていただくというようなこと、別にこれはアメリカに限りませんけれども、非締約国が同じルールを取っていただくということは非常に重要なことだと思っております。
 そこで、政府一体となってIMOの場などにおいて非締約国に対して国際条約の締結に向けた働きかけを行うべきものと考えておりますが、実際にも、今月の十四日から十六日までIMOの法律委員会が開催されましたけど、そこにおきましては、関係省庁が連携して作成した対処方針に基づいて、日本政府としてIMO事務局及び九六年議定書の非締約国に対して条約締結を促す提案を行ったところでございます。
○田中茂君 まさに条約なんで締約国がいるわけでありまして、なるべく締約国にそういう形で、どうすれば締約国になってくれるのか、それを推進するというのも日本の役割の一つではないかと思います。それはまさに外務省のマターではないかと思うんですが、その辺も含めて、是非とも力、その辺は入れていただきたいと、そう思っております。
 そこで、船主に関しての質問、これで終わりにしたいんですが、非常に恐縮なんですけど、流れが変わって誠に申し訳ないんですが、実は前回の委員会で論議された矯正医官の兼業及び勤務時間の特例に関する法律案、既に採択されたわけでありますが、その際の資料として配付された矯正施設の医療の在り方に関する報告書、これなかなか面白いなと私は思っておりまして、いろんな問題提起をさせていただいたと。
 そこで、この件について、高齢受刑者問題にも関わる件でもありますので、幾つか質問させていただきます。
 報告書で、矯正施設では、収容者の急激な高齢化、生活習慣病の増加、疾病の複雑化、多様化、一般社会における医療水準の高度化など医療需要が高まっていると書かれておりますが、どのような生活習慣病が増加しているのか、疾病の複雑化、多様化等を教えていただければと思います。
○政府参考人(小川新二君) お答え申し上げます。
 刑事施設では、被収容者の急激な高齢化、生活習慣病の増加、疾病の複雑化、多様化、さらに一般社会における医療水準の高度化などの諸事情が相まちまして、医療需要が増加していると認識しております。
 平成十九年以降の疾患の状況のうち、お尋ねの生活習慣病に関するものをまず申し上げますと、新生物のうちがんが三百人近く、また高血圧、脳血管疾患等の循環器系の疾患が九千人から一万人前後で、いずれも増加傾向を示しております。また、糖尿病患者が約二千人といった高い数字で推移しているといったことが挙げられるところでございます。
 次に、疾病の複雑化、高度化についてでありますが、これは、例えば医療の高度化、専門化が進み、疾病の構造や要因が詳細に分かるようになったということから、多様な症状等をより精密に細分化して把握することが可能となりまして、検査や治療がより複雑多様化したことを意味するものと理解しております。
 具体的に申し上げますと、高齢化の進行による疾病構造の変化によりまして高血圧や糖尿病などの生活習慣病の割合が増加したことから、様々な病態を示す合併症が多くなったことであるとか、あるいは、医療の高度化、専門化等によりましてこれまでは発見できなかった疾患も認知できるようになりまして、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳血管性認知症など、様々なケアが必要な疾患へのより丁寧な対応が求められるようになってきたことなどが挙げられると承知しております。
 以上でございます。
○田中茂君 高齢化ということでそういう病気が増えてきているというのは理解しますが、そこで、私、ここに配付しておりますが、ブルームバーグから出している記事、ちょうど四月の十六日に出た記事なんですけど、ここにも若干書いてありますが、認知症患者が現在、全国で考えた場合、大体予備軍八百万人以上と言われております。高齢収容者の増加と併せて、今後、被収容者における認知症発生者数も増加すると見込まれますが、一般的に発症から生存年数は六年ほどであると聞いたことがあります。そこで、法務省の特別矯正監の杉良太郎さん、ここのブルームバーグにも書いてありますが、認知症で夜中に徘回したりした人もいる、ひどいと排せつ物を投げたり、わざと布団に粗相をしたりする受刑者もいて、刑務官の負担が増加しているとも述べられております。
 現在の認知症の被収容者数と年齢構成を教えていただきたいと思います。そこでまた、被収容者が認知症であると判断された場合どういう対応をしているのか、お聞かせください。
○政府参考人(小川新二君) 平成二十四年末の刑事施設の受刑者の総数は五万八千七百二十六人おりますけれども、そのうち、脳血管性認知症あるいはアルツハイマー型認知症等の認知症又は認知症の疑いがあると診断された者につきましては百二十五名、内訳で申し上げますと、男が百十二人、女が十三人でございます。ただし、この数字につきましては、認知症の疑いや認知症の傾向があっても診断を受けていない者は含まれておりません。したがって、このような認知能力の低下がうかがわれる者の総数につきましては百二十五名より相当多くなると考えておりますが、現時点ではその実数については把握しておりませんで、現在、実態把握に努めているところでございます。
 次に、認知症に罹患している者や認知能力の低下がうかがわれる者への対応についてでございますけれども、少数の集団に編成をしまして作業時間を短縮した上で紙細工などの軽作業を実施させるなど、可能な限り集団処遇の機会を設けまして、認知症の進行や身体機能の低下を遅らせるなどの配慮を実施するほか、必要に応じて職員が食事、入浴等の日常生活の介助を行うなど、症状に応じまして一般の受刑者とは異なる個別の処遇を行っているところでございます。
 以上でございます。
○田中茂君 この高齢化というのはまさに深刻な問題になってきているんではないかと、矯正施設内においてですね。
 そこで、前回の委員会で大臣は、矯正施設として、被収容者に対し、その中にいる間、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし、適正な措置を講じることの必要性と、全ての被収容者が更生終了ができ、円滑に社会復帰ができる手助けになることが矯正施設と矯正医療の役割であるということも述べられましたが、私も全く同感であります。
 しかし、事高齢者においては、就労機会を確保することは現実的に困難であり、体力的にもう既に弱っている高齢者に矯正医療の意味を成さないんではないかと。要は、高齢受刑者にとっては、刑務所はもう実質的に矯正施設ではなく老齢者介護施設となっており、医療は矯正医療ではなく老人医療となってしまっているわけです。
 高齢出所者の多くが再犯として戻ってくること自体が、刑事施設は矯正としての機能を果たさず、これあくまで高齢者に対してです、七十歳以上ぐらいはそうでしょう、高齢者に対しては、矯正施設としても矯正医療としても矯正の役割がもはやなくなっているのではと私は思っておりますので。先週ですか、仁比先生もおっしゃった憲法第二十五条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、全くそのとおりであります。これにはもう私も異論はありません。しかし、憲法の第二十七条は勤労の義務、第三十条では納税の義務も定められております。すなわち、納税者であるやはり国民の理解を得られる政策を打ち出し、それを実現するために最大限の努力をすることではないかと、そう思っております。
 法務省の総合研究所研究報告三十七があるのは私も承知しております。内容は、高齢出所受刑者及び高齢仮釈放者の実態と意識の分析であります。これは平成十九年に公表され、今から八年も前のことであります。既にその段階で高齢受刑者についての問題意識が共有されていたと私は認識しておりますが、それに対する抜本的な対策が打っていないのではないかと。
 そこで、四月十六日、先ほど紹介しましたブルームバーグの記事、刑務所を出るのが怖かったという被収容者の例が取り上げられております。これは、社会福祉士の支援で養護老人ホームに入所した出所者や支援プログラムを頼りに更生しようとする出所者の話で、まだまだ数は少ないですが、こうした動きが少しでも広まれば高齢受刑者の再犯防止にも一助となるのではと、そう思っております。
 国民の理解と納得を得るためにも、社会福祉士の充実を含め、厚労省の地域生活定着支援センター、それらの関連機関との連携を更に強化して機能させないと意味がなくなってきているのではと。それを通じて、高齢者再犯防止のためのシステムの充実と積極的な運営を再度強調し、説明が長くなりましたが、時間となりましたので、私の質問とさせていただきます。
○谷亮子君 谷亮子です。
 本日の議題となっております船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、その趣旨につきまして、先日、上川法務大臣より御説明していただきまして、精査をさせていただきました。
 本改正案につきましては、国際条約の改正に合わせ船舶所有者の責任限度額を引き上げるものでございまして、このことによりまして被害者の保護と船舶所有者の保護との均衡が図られていくということを含めた上で、国際条約の枠組みの中で我が国の責任を果たすことにつながると考えられるため、賛成の立場で、以下、本日は質問をさせていただきたいと思います。
 本日は、現在、国内において大変深刻化している諸課題を中心に取り上げさせていただきたいというふうに思っております。まず初めに、国内における小型船舶、特にプレジャーボートの放置問題等への対策について伺いたいと思います。
 プレジャーボートを利用したレクリエーション活動が盛んになるにつれまして、各地の港湾、河川、漁港等で多数の放置艇が見受けられるようになりまして、船舶の航行障害、そして洪水、高潮時の放置艇の流出による被害、そしてさらには油の流出、景観の悪化といった多岐にわたる問題が顕在化いたしております。それに加えまして、東日本大震災を教訓として、今後想定されている南海トラフ巨大地震等の津波による住居への二次被害も心配されているところでございまして、このことへの対応策を講じる前提として、放置されたプレジャーボートの実態を把握するため、国土交通省及び水産庁では、一九九六年度から、港湾、河川、漁港等の三水域を対象といたしましてプレジャーボート全国実態調査を実施されていらっしゃいます。
 調べてみますと、二〇〇二年度、二〇〇六年度、二〇一〇年度と四年ごとにこの調査は行われておりまして、その推移を調べてみますと、一九九六年度はプレジャーボート二十一万一千隻のうち放置艇が十三万八千隻、二〇〇二年度には二十二万七千隻のうち放置艇が十三万四千隻、また、二〇〇六年度は二十一万七千隻のうち放置艇が十一万六千隻、そしてさらには、二〇一〇年度は十九万七千隻のうち放置艇が九万九千隻となっておりまして、その放置艇の割合は調査を追うごとに低下はしてきているんですけれども、二〇一〇年度では全体の約半数が放置艇という状態にありまして、この問題へのしっかりとした対応も求められているところでございます。
 そこで、二〇一四年度の調査結果がそろそろまとめられまして公表されるかと思いますけれども、いつ頃に公表されるのでしょうか。お示しいただけるようでありましたら本日伺いたいと思いますし、また、この実態調査が四年に一度ということで、実施頻度として間隔が空き過ぎているのではないかと思われますので、調査実施の間隔を短くするなど放置艇の実態把握の取組を積極的に行っていく必要があると考えますが、御所見を伺いたいと思います。
○政府参考人(菊地身智雄君) お答え申し上げます。
 国土交通省及び水産庁におきましては、今委員御指摘のとおり、平成八年、十四年、十八年、二十二年、そして二十六年と、過去五回プレジャーボートの全国実態調査を実施してきております。直近の平成二十六年に実施しました調査の結果でございますが、現在集計を行っているところでございまして、取りまとめができ次第、速やかに公表させていただきたいというふうに思っております。
 また、国土交通省及び水産庁におきましては、放置艇対策の目標といたしまして、平成二十五年の五月に策定いたしましたプレジャーボートの適正管理及び利用環境改善のための総合的対策に関する推進計画、これにおきまして、平成二十五年から十年間で放置艇の解消を図るという目標を設定してございます。
 今後とも、港湾管理者を始めといたしまして関係者が連携いたしまして、係留保管施設の整備とそして放置等禁止区域の設定等の規制措置、これを両輪といたしまして対策を進めてまいりたいと考えてございます。
 また、今委員御指摘いただきました調査の実施期間の間隔でございますけれども、こういった対策の効果を確認するという観点から、一定の間隔を空けて実施をすることが適当ではないかというふうに考えてございます。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 国土交通省におかれましては、ロードマップ等も拝見させていただきましたけれども、非常に良い取組がなされていますので、やはりそうしたことを実施していっていただきたいと。また、ロードマップのところには必要に応じて中間的に計画の見直し等もやるということが含まれておりましたので、是非そういったところも検討していっていただきたいなと思っております。
 次に、日本沿岸で座礁した外国船籍の船の放置問題への対処についても本日伺いたいと思います。
 我が国沿岸で座礁し、放置された状態になっている外国船籍の船については、二〇一四年度現在で十二隻あるとされておりまして、撤去すべき責任のある外国人船主が自治体などの要請に応じず、そのまま放置され、船舶の撤去等を行わないといった問題が深刻化していることを受けまして、政府におかれましては、二〇〇二年に大量の重油が流出した茨城県日立市沖における座礁事故を機に、二〇〇四年に船舶油濁損害賠償保障法を改正されまして、二〇〇五年から、日本に入港する総トン数百トン以上の船舶に対しまして、事故時の燃料油による油濁損害や船体の撤去費用を賄う船主責任保険の加入を義務付けられました。
 しかし、事故後に保険の契約をめぐって、やはり保険会社と船主との間でトラブルになり保険金が支払われないというケースもこれは非常に多くございまして、二〇一三年三月にカンボジア船籍の貨物船アンファン号が座礁した青森県深浦町では、町や県が船主の中国の方にこれまで十回以上国際郵便などで撤去を求めてまいりましたが、一切返信がない状態で、シンガポールに本社がある保険会社側も、船主が速やかに対応せずに被害が拡大した、現時点では保険金を支払うことはできないと拒否されたということでございました。
 その後、二〇一四年十二月二十二日、青森県は、海岸法の規定に基づきまして座礁船の撤去命令を三か月の期限を設けて所有者不明のまま命じましたけれども、貨物船の撤去期限であった本年三月二十三日までに所有者の中国人船主側からの撤去の意思が示されず、今後は事実上、県がそうした撤去をやらざるを得ないという状況になっていると伺っております。
 そこで、この青森県深浦町におけるケースにつきまして、これまで県は、海岸保全区域内で座礁したアンファン号の撤去命令を出せませんでしたけれども、県の要請を踏まえて、先ほど申し上げました、昨年六月に海岸法の改正を行いまして、船主、所有者が命令に従わない場合には海岸管理者が撤去の代執行をすることが可能になったところでございまして、国としては、代執行に要した費用の三分の一を補助するなど取組を推し進めるようにされていらっしゃいますが、こうした状況において、船主が責任を果たすことができるようにするためには、国としてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか、またどのような取組を図られていらっしゃいますでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 ただいま委員から御指摘のございましたカンボジア船籍の貨物船アンファン号に関しての事案でございますが、この案件につきましては、代執行に至る手続の前に、これが青森県深浦町の森山海岸で座礁したということでございまして、同船舶の船主が中国人であったということもございましたので、外務省といたしましては、青森県からの協力要請を受けて、中国政府とのやり取りを含めた必要な支援を行ったところでございます。
 当事者間の交渉など手段を尽くしても事案の解決が見られないような場合、特に船主が外国籍であるような場合、外務省といたしましては、事案の個別具体的な状況を勘案しまして適当と考える場合には、必要な支援を行うようにしているところでございます。
○谷亮子君 御説明ありがとうございました。
 外務省におかれましても、非常に重要な取組を進めていっていただいているというふうに思いますし、やはり外国船籍の船主が直接そうした責任が果たしていけるようなことを、しっかりと今後の課題としてもこれは一考していかなければいけないなというふうに思っております。
 そして、昨日、二〇一五年四月二十二日に、インドネシアのジャカルタで開かれておりますアジア・アフリカ会議におきまして、日本の安倍総理と中国の習近平国家主席が会談を行われたばかりでございますが、ここで安倍総理は、昨年の四つの原則に基づき、両国の各領域での交流と対話を推し進め、両国民の相互理解を深めることを望んでいると御発言されていらっしゃいます。
 四つの原則を確認されたと伺っておりますが、その中の一つには、海域において近年緊張状態が続いている、また生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理のメカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することでの意見の一致を見たということでございますので、あらゆるそうした船の問題、またさらには、中国のみならず、こうしたことが実際に機能していっていただくということを私も望んでまいりたいというふうに思っております。
 そして次に、一方で、二〇一〇年十月から宮崎市の堀切峠沖に座礁している中国のしゅんせつ船のケースでは、海岸保全区域内ではないために海岸法の適用も難しく、対策を取る法的根拠がないとして放置されている状態とのことです。
 このような問題を解決した事例としては、宮崎県で二〇〇三年四月に、宮崎市一ツ葉沖でホンジュラス船籍のタグボートが座礁した際に海岸法の適用地域を座礁位置まで拡大するという苦肉の策で県が行政代執行で撤去したとのことですが、このときなぜ海岸法の適用地域を座礁位置まで拡大することができたのでしょうか、また今後もこのようなことが想定されるのかについて、お伺いいたします。
○政府参考人(加藤久喜君) お答えいたします。
 海岸法では、国等が所有する公共の用に供されている海岸の土地及びこれと一体として管理する必要があるものとして知事が指定した水面を公共海岸として規定をしております。そして、海岸保全区域内の公共海岸に該当し、海岸保全上特に必要があると認めて指定した区域においては、船舶等の放置が禁じられております。さらに、海岸管理者は、禁止措置に違反した者に対し船舶の除却を命ずることができ、従わない場合は代執行することができるというふうになっております。
 本件では、宮崎県が所要の手続を経て代執行により船舶を撤去したと聞いております。
 委員御指摘の適用地域の拡大につきましては、一連の手続のうち、公共海岸としての水面の指定、船舶の放置禁止区域の指定を行ったことと解しておりますが、これらは、海岸法第二条第二項及び第八条の二第一項の規定に基づき、適正に指定が行われたものと考えております。
 更に申し上げますと、公共海岸については、特に指定を行わない場合は陸側のみが公共海岸となりますが、必要に応じて、干潮の際に水が引く部分、これについても指定をすれば公共海岸になるということでございまして、この指定が適正になされ、適用地域が拡大が図られたものと考えております。
 一方、先ほどもお話のございました海岸法の改正によりまして、海岸管理者は、公共海岸か否か、あるいは禁止区域内か否かにかかわらず、座礁した船舶についてその所有者に対し除却を命ずることができるようになりました。これによりまして、本件の事案に即していえば、先ほど申し上げた指定などを行わなくとも除却が可能となるなど、今後はより円滑に座礁した船舶の除却を代執行できるものというふうに考えております。
○谷亮子君 御丁寧にありがとうございました。
 最後、時間がございませんので、こうしたことを踏まえますと、様々な外国船籍の船舶の座礁につきまして、私は、やはり船主の責任保険がこれは機能していないのではないかとも思います。
 そこで、政府は、事故が発生したときに、船主に責任保険がきちんとこれ機能するかどうか、外国船の入港前に船主や保険会社に保険の契約をきちんと確認すべきであるとも思いますので、今回の法改正を踏まえまして、その御所見をお聞かせいただきたいと思います。
○委員長(魚住裕一郎君) 国土交通省櫻井海事局次長、時間ですので簡潔にお願いします。
○政府参考人(櫻井俊樹君) 船舶油濁損害賠償保障法に基づきまして、保険への加入を義務付けてございます。そして、同法に基づきまして、さらに入港前に保険の支払対象、保険金額等が法律に定める要件に合致しているかどうかを確認をしております。
 具体的には、座礁事故や燃料油の油濁事故が保険金の支払対象になっているのか、船主責任限度額を満たす十分な保険金になっているかどうかについて保険証書で確認をしております。さらに、当該保険会社の船主保険に係るこれまでの付保実績、過去における支払に関する問題の有無等もチェックをしてございます。
○谷亮子君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三分散会