第189回国会 法務委員会 第19号
平成二十七年八月六日(木曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 八月四日
    辞任         補欠選任
     山本 博司君     矢倉 克夫君
 八月五日
    辞任         補欠選任
     溝手 顕正君     豊田 俊郎君
     江田 五月君     礒崎 哲史君
 八月六日
    辞任         補欠選任
     豊田 俊郎君     石田 昌宏君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                熊谷  大君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                真山 勇一君
    委 員
                石田 昌宏君
                猪口 邦子君
                鶴保 庸介君
                豊田 俊郎君
                牧野たかお君
                柳本 卓治君
                足立 信也君
                礒崎 哲史君
                小川 敏夫君
                矢倉 克夫君
                仁比 聡平君
                田中  茂君
                谷  亮子君
       発議者      小川 敏夫君
       発議者      有田 芳生君
   委員以外の議員
       発議者      前川 清成君
   国務大臣
       法務大臣     上川 陽子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      塩川実喜夫君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省人権擁護
       局長       岡村 和美君
       外務大臣官房審
       議官       下川眞樹太君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の
 推進に関する法律案(小川敏夫君外六名発議)
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○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 議事に先立ち、一言申し上げます。
 本日は、広島原爆の日でございます。
 ここに、犠牲となられた方々に対し、深く哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。
 どうぞ御起立お願いいたします。黙祷。
   〔総員起立、黙祷〕
○委員長(魚住裕一郎君) 黙祷を終わります。御着席ください。
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○委員長(魚住裕一郎君) 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、山本博司君、溝手顕正君及び江田五月君が委員を辞任され、その補欠として矢倉克夫君、豊田俊郎君及び礒崎哲史君が選任されました。
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○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省人権擁護局長岡村和美さん外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(魚住裕一郎君) 人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○猪口邦子君 ありがとうございます。自民党、猪口邦子でございます。
 本委員会は、委員長の御指導の下、内閣提出の必要な法案の審査を精力的に行う一方で、現代社会におけます正義や人権など、法務委員会として鋭く認識すべき課題について誠実な議論を行ってまいりました。とりわけヘイトスピーチ問題については、本日議題となりました議員立法の発議者等、多くの議員によります非常に熱心な累次の質疑がありまして、この問題への会派を超えた認識形成に貢献し、政府側もこれを受けて迅速に対応を強化する場面もありました。立法府の質疑が政府による社会的啓発の強化に直結するなど、有意義な委員会プロセスがあったと私は感じております。
 その展開との関係で、この度、小川理事等から法案が提出発議されています。日本国憲法と人種差別撤廃条約の理念に基づきまして、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策を総合的かつ一体的に推進する、これを目的とする法案であると思いますが、まず、発議者によりますこの法案を提出されることにつきましての理由についてお伺いします。
○小川敏夫君 私が思いますのは、世界の人々、人類、人種とか民族とか、そうした違いを乗り越えて、全ての人が一人一人が尊重される世界でなくてはならないと。そして、尊重された一人一人が力を携えて共生する社会を構成するというのが、私はこの国際社会の普遍原理だと思っております。
 また、そうした原理に基づいて、人種差別撤廃条約が多くの国が参加して成立しておるわけでございまして、我が国も二十年前ですか、この条約に加盟いたしております。しかしながら、条約に加盟したまま、その条約の趣旨を生かす法律というものがいまだ制定されていないという状況にございます。
 一方、この社会におきまして、昨今ではいわゆるヘイトスピーチというもの、これは明らかに人種等の差別を理由としている問題とされるべき行動だと思うんですが、こうしたことが繰り返されて社会問題化していると。
 また、ヘイトスピーチにとどまらず、様々な人種等の差別というものが現在でも引き起こされているということがございます。例えば、サッカー場でジャパニーズオンリーというようなことが行われたり、あるいは外国人お断りといって外国人だけを利用させないというような、そうした施設があったりというようなことがございました。
 そうしたことの状況から、やはりそうしたことにつきまして、そういう人種的な差別行為は許されないんだということを法的にも明らかにする必要があると思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、人種差別撤廃条約を受けたその理念を生かす法律がない、また、そうしたヘイトスピーチやただいま挙げたような例の人種差別的行為を、人種差別を禁止するということを理由にした法的な対応がなされていないという現状に鑑みまして、やはりここは法律をもってしっかりと人種差別的行為は許されないんだというそうした理念を明らかにして、また条約の趣旨も受けたそうした法整備をする必要があるのではないかと、このように考えまして法律を提案させていただいた次第でございます。
○猪口邦子君 御趣旨、お考えには大いに共感いたします。根本的に啓発がまだまだ不足していて、抜本的な強化が必要であるということ、それに対して小川先生はこの法案を提出されているということと理解いたします。
 それで、この法案ですけれども、これは、いろいろな法律の形がありますが、基本法の形態として理解してよろしいんでしょうか。
○小川敏夫君 何をもって基本法かという定義のことは別にいたしまして、やはり人種差別撤廃条約というものの趣旨を生かしたそうした基本法というような性格を持った法案、法律であると、このように考えております。
○猪口邦子君 基本法を成功させるためには、まず、何といいますか、問題意識の主流化といいますか、人種差別はいけないという、こういう考え方の主流化、これをまず啓発等できちっと図っていく。それで、基本法としては、この法律にも示されていますとおり、基本原則とか基本方針、こういうものを定めますが、一般的に施策を推進する、そして特に啓発などを大胆に力強く推進するためにはやはり予算を投入しなければなりませんし、政府においては、基本計画などを策定して計画的に、その啓発活動を含め、進めなければならないと思うんですね。
 この法案を拝見しまして、その基本原則、基本方針の後に、この基本計画を政府においてあるいは地方公共団体において策定する義務及び努力義務、こういうのが普通続くのが基本法を書くときの形となるかと思うんですけれども。そうしますと、今度、特に国の、政府においては、その策定義務、例えば五年ごとにそういうのを策定しなさいと、そしてその項目立てをしていく中で、その項目ごとに実際には予算措置がやりやすくなるというような流れがあって、基本法が実際の現場の施策推進につながると思うんですね。地方公共団体の場合は、そこまで義務とするか努力義務とするか、地域の特殊事情を加味して義務とするか、いろんな書き方がありますけれども、そういう形を取ると思うんですけれども。
 必ずしもこの基本計画策定義務を政府に課していないというところはあるんですが、それについての何か、もちろん第二章のところで基本施策ですかね、が書いてございますけれども、この基本法の中にこういうふうに書いてしまって、今度政府の方の計画の策定というのはどうするのかということがあります。もちろん、六条のところで、施策を総合的に策定しという表現があるんですけれども、ちょっとその辺の構築の説明をいただきたいと思うんです。
○小川敏夫君 法案の御趣旨に御理解いただきまして、大変ありがとうございます。
 人種差別をなくすという分野の国の施策と考えますと、非常に幅広い分野に及んでおります。法務の分野が多いかと思いますが、教育であれば文科、あるいは雇用等であれば厚生労働省と様々な分野に及んでおりますので、この法案におきましては、国がそういう施策を行う面においてこの人種差別の趣旨を生かしたそうした施策を取りなさいということをうたいましたが、それより更にそれを具体化した計画というものが、この法案でというよりも、担当するそれぞれの省庁において、この法案の趣旨を生かした施策を具体的に計画立案して施行していただきたいと、このような趣旨で、委員が御指摘されたような明確な具体的な計画までは盛り込んでおらないところでございます。
○猪口邦子君 そのような質問をいたしました理由は、私、男女共同参画基本計画を一人の有識者として執筆に関わったことがあるんですけれども、これもやはり女性差別撤廃の考えを受けてなんですけれども、そのときの基本法の構築がまさに基本計画を政府に策定義務を課したというところがありまして、そうすると、基本法が通って翌年から策定義務が発生して、男女共同参画の場合は二〇〇〇年からの基本計画ですので今回で第四次の基本計画が策定されていくという、こういう流れがありますので、ちょっとそのことを覚えておりましたのでお伺いしたんです。
 趣旨は分かりました。今後、政府も、この第二章のところの特に項目を挙げていらっしゃいますので、そういうことを踏まえてという趣旨でよろしいんですよね。
 それで、もう一つ、この六条の書き方がちょっと私、おやっと思ったんですが、六条は、ですからまさに基本計画を政府に課すという、それの代替する一項が重要なところなんですね。人種等を理由とする差別の防止に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するということが書いてあるんですよ。ですから非常に重要な二行だと思うんですね。
 それで、今度二項に、ここに今度は、民間の団体その他の関係者相互の連携協力体制の整備に努めるものとするということが書いてあって、ここも重要なことなんですが、一般的にはこれは、ですから基本法の形だと基本計画の中に入れさせるか、あるいは先生のこの法案ですと第二章の方に入るべき内容と思うんですね。つまり、六条というのは、まず基本方針の前に六条が来ているんですよね。だから、そこはもうちょっと本当に責務について何か書く方がいいんじゃないかなと思うんですね。
 それで、二章を見ますと、十七条だったかな、同じようなことが書いてありまして、ここに民間団体の支援等が書いてあるので、六条二項と十七条は重複している感がちょっとあるんですけれども、また十七条の方に書くことが実は適切で、この六条のところは、例えば私だったら、国及び公共団体というか、まず国の責務を書いて、それで公共団体の責務を書いてというような構築にし、かつ基本法を受けての、先ほど申し上げたような基本計画策定義務を課すとか、六条というのはそういうふうに重くして、かつ基本方針の次に来るようにすると思うんですね。
 基本原則があって、基本方針があって、それで基本計画の策定義務を課すんだったら課す、そこで国と地方公共団体の責務がきちっと述べられるというふうに思うんですけれども、ちょっとお考えをお伺いしたいと思います。
○小川敏夫君 委員御指摘のところは全くごもっともでございますが、この法案におきましても、その形の上で御指摘いただきましたところ、誠に私どもそのとおりと思うところでございますが、法律の内容におきましては違いがないのではないかということで御理解いただければというふうに思います。
○猪口邦子君 法案としての書き方について私の考えもお認めいただけましたということと理解をさせていただきますが。
 それから次ですが、時間が限られていますので急ぎますけれども、この審議会の内閣府設置ということなんですよ。これ第三章のところでございまして、一般的にそういうことは思い付くんですけれども、御存じのとおり、内閣府は今審議会を整理する方向にも行っていて、ただし、非常に重要な課題で、かつ、小川先生おっしゃいましたような、文科にも係る、厚労にも係る、こういう省庁横断的なそういう内容を取り扱うのは内閣府が、あるいは内閣官房が非常に優れているというふうに思います。ですから、本当に重要なテーマとしてこれを扱い、内閣府に設置するという考えでいらっしゃるんでしょうけれども、一般的にこの審議会を内閣府に更に設置するということと、今そこをできるだけ整理して各省に下ろしていき、下ろしたからといって省庁横断的な協議ができないということではなく、共管を取ったりしながらやるそういう行政文化が、実は一府十二省体制が組まれて以来もう相当な時間がたちますので、そういう文化が醸成されたという信頼の下でいろいろな内閣府の審議会の機能が各省に下ろされているんですね。
 それについて、どうしても内閣府ということに、重点化したのかどうか、ちょっとこのお考えとの関係をお伺いします。
○委員以外の議員(前川清成君) おはようございます。
 まず、お答えをさせていただく前に、今日、本法案が委員長、そして与野党理事の賢明な御判断で審議入りできましたことを私からも感謝申し上げさせていただきたいと思います。猪口先生の先ほど問題意識の主流化というお言葉がございました。まさにそのためにも、今日活発な御議論ができればというふうに思っております。
 それで、内閣府に関するお答えをさせていただく前に、先ほどの六条二項と十七条との関係に関して補足の説明をさせていただいてもよろしいでしょうか。
 六条二項は、この文言を御覧いただきましたらお分かりのとおり、国、地方公共団体だけではなく、人種等の理由の差別の防止に関する活動を行う民間団体、国、地方公共団体、民間団体の連携協力体制の整備、これを国、地方公共団体の責務として定めておるものでございます。これに対して十七条は、それら民間団体に対する支援、これを行うようにと書いておりまして、ある意味中身は少し異なっておりますので、条文としては別にさせていただいたところでございます。
 それと、今、内閣府にというお尋ねでございます。
 猪口先生、内閣府の特命担当大臣もお務めいただきましたのでよく御案内のとおりかと思いますが、内閣府設置法に基づきまして、内閣府は長を内閣総理大臣といたしまして、内閣府設置法の三条二項で、政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行ということを任務といたしております。
 先ほど小川委員からもお話がございましたけれども、この人種差別等の問題につきましては、法務省だけではなく、厚生労働省であったりあるいは文部科学省であったり、様々な分野が関わってまいりますので、その意味で省庁横断的に内閣府に設置することが好ましいだろう、望ましいだろうと、このような判断をさせていただきました。
○猪口邦子君 ありがとうございます。
 そのことにつきまして、形態につきまして、私もちょっと考えがありますので、後で述べさせていただきたいんですけれども。
 もう一つ、じゃ審議会につきましては、審議会は諮問を受けて勧告を出すということが書いてございますが、一般的には審議会は諮問を受けて答申を出すというのが普通です。もちろん、勧告ということもなくはないんですけれども、非常に数は少ないと理解しております。あえて勧告という書きぶりにしたのは、事の重大性ということであるかとは思いますけれども、一般的な法の形態とはちょっと違うかしらというふうに思います、男女共同参画のときもそうなので。それについてお伺いします。
○小川敏夫君 まず、一般的に諮問と答申という構造であるという御指摘いただきました。この審議会も、第二十条の二項の二号ですか、諮問に応じてということがございますので、諮問を受けて答申するということも行うわけでございますが、ただ、諮問を受けた場合だけ意見を述べる答申をするということではなくて、諮問がなくても自主的に意見を述べるということの構造になっております。そして、意見を述べても、それが十分に、あるいは全くか、いずれにしても、政策の中で生かされない、意見が反映されないということがあった場合には、意見よりも、意見をしっかり実行するようにという勧告という表現を使わせていただきました。
 ただ、勧告をしましても、その勧告に特段強制力があるという内容にはなっておりませんので、言わば意見を聞いてくれないので更に強い意見として申し述べるという、その強い意見を勧告と表現したというような内容の置き方になっております。
○猪口邦子君 お考えは分かりました。ただ、勧告という表現は行政的には非常に強い内容を持つと思いますので、ちょっとどういう趣旨であえてということをお伺いいたしました。
 それから、禁止事項の曖昧さということがよく指摘されるんですね。差別的取扱い等の表現、これは解釈の幅があるので、そういう懸念、これは罰則規定がないとしても、場合によっては言論を萎縮させる危険性があるのではないかという指摘はよくされています。
 また、いろいろな要件が場面で並立してしまうこともあると思うんですね。ですから、政治的な主張を述べるときに、同時にそういう人種的な内容が併存してしまうというようなときに、その政治的な主張までもそれを抑制することになってしまうと、言論の自由との関係の懸念の意見というのもありますけれども、そういう言論等を萎縮させる可能性にどう対処をするべきかということも含めてお考えをお伺いしたいと思います。
○小川敏夫君 委員御指摘のとおり、表現の自由、言論の自由というものは、我が国の民主社会にとって欠かすことができない権利でございまして、まさに人権の基本中の基本であると思いますので、これを必要以上に制限する、制約することがあってはならないことだというふうに考えております。一方で、人種差別等というものも、やはり憲法で保障されました個人の尊厳あるいは法の下の平等の趣旨、そうした趣旨からしまして、やはり十分に尊重されなければならない権利の保障であるというふうに思っております。
 そうした観点から、表現の自由を必要以上に制約することがあってはならないとは思いますが、しかし一方、表現の自由があるから人種差別等にわたる表現が全て許されるというものではなくて、やはりそこはそれぞれの尊重されるべき権利の趣旨に適合した合理的な制約が表現の自由の中にもあるものというふうに思います。
 そうした点で表現の自由を侵害することがないようにということは十分に配慮したというつもりではございますが、委員の御指摘のとおり、差別的取扱い等の表現が解釈の幅が広いという御指摘をいただきました。この差別的行為、この規定の仕方がなかなか難しいところがございまして、差別の態様というものも具体的にはいろいろな形のケースがございます。これをそれぞれ列記しても列記し得ないものもございますので、そうした差別の類型というもの、あるいは差別的取扱いの表現につきましては、やはり具体性を少し欠いた中で、しかし社会的には十分に評価できるという抽象的な書き方の範囲で許されるのではないか、あるいはそういう工夫の中で表現したわけでございます。
 ただ、差別的取扱いの表現として、この法律におきましては三条の中で例示したわけでございますが、抽象的という御指摘もいただく点もあると思いますが、しかし、抽象的な言葉の中でもかなり差別という範囲の中で十分に合理性を有した表現ではないかというふうに思っておりますが、個々具体的な対応におきまして、表現の自由が衝突する場面、人種差別を理由とする差別を禁止する必要性の概念が衝突する場合もあると思いますが、これはやはり個々具体的な範囲で対応していくしかないのかなというふうに思っております。
○猪口邦子君 お考えを聞かせていただきましてありがとうございます。
 私は、やっぱりこの社会で人種差別は絶対にいけないという啓発のレベルがまだ足らないと思っております。
 私の専門は国際政治なんですけれども、例えば戦争につきまして、ユネスコ憲章の冒頭に、戦争は人の心に始まるものであるから、人の心に平和のとりでを築かなければならないという有名な言葉がございます。それと同じように、差別は人の心に始まるものであるから、人の心にこそ、差別をしない、それを克服するというとりでを築かなければならない。そのとりでを築くにはやっぱり啓発を抜本的に強化する必要もあると思って幾つかの提案をしたいと思いますが。
 その前に、差別的取扱い等、あるいは言論の自由等の曖昧さとの関係でも、ちょっと対政府質問として一つ、人種差別撤廃条約第四条(a)、(b)、日本も留保していますが、アメリカとスイスが留保していると承知していまして、それについて、どういう理由で留保しているかは分かっているんですけれども、政府としての何らかの分析、説明があれば手短にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 各国は、それぞれ固有の歴史的な体験を背景にして憲法を始めとする法制度、法体系などを有しておりまして、各々の社会的状況を踏まえてこの条約を実施するために必要な措置をとって対応しているものと承知しております。
 そういう前提の下で、米国について申し上げれば、同国の憲法及び法律は、言論、表現、結社についての個人の自由に関して広範な保護を含んでおり、したがって、米国はこれらの権利が米国の憲法及び法律によって保護される限度において、立法その他の措置によってこれらの権利を制限するこの条約に基づく義務、特に第四条及び第七条に基づく義務を受け入れないとの留保を付しているというふうに承知しております。
 また、スイスにつきましては、特に世界人権宣言で保障されている意見の自由及び結社の自由にしかるべき配慮を払い、第四条の実行のために必要な立法上の措置を講ずる権利を留保するというふうにしているというふうに理解しております。
○猪口邦子君 ありがとうございました。
 そこで、もう時間もなくなりますので、どうやってその啓発、これを主流化することができるか。これについての私の提案は、まず、内閣府の行政審議会というのも御提案いただいているんですが、私はかつて少子化大臣を十年前務めましたときに、それは非常に周辺的なテーマでありました。それを主流化するときに、省庁横断的な審議官及び局長級の内閣府特命大臣が招集するそのような会議体を設置してもらいました。それで、それをしかも内閣府で行うのではなく、例えば官房副長官などの配慮を得て官邸でそういう会議を行うという場面もありました。そうすると、やはり社会的認識が一気に、少子化のテーマというのは何だ何だという形で強まってまいります。また、メディアのアテンションも非常に高くなります。しかし、啓発というのは随分長く掛かりまして、少子化対策、男女共同参画、十年掛かってようやく今本当に主流化を遂げたと思っております。
 東京オリンピック・パラリンピックを考えれば、私たちにも本当に時間がないので、どうやって加速した主流化ということを人の認識の中でできるかということを先生方も本当に熱心に小川先生始め考えてくださり、私も今自分の経験から一つの提案をいたしまして、いずれにしても、政治的な指導力を持ってヘイトスピーチを含む人種差別の完全禁止の啓発活動、これを総合的に強化する必要があると、私、改めて今日の質疑を通じて確信いたしましたので、そのような立場でこれからも活動してまいりたいと思います。
 基本法としての構築等、技術的なことも含め、ちょっと整理するところは必要と感じておりますが、趣旨について、この質疑を通じて、また是非政治的な指導力も含め、ヘイトスピーチ含む人種差別禁止の啓発活動を我が国として強化すべきであると考えます。
 以上でございます。
○有田芳生君 おはようございます。民主党・新緑風会の有田芳生です。
 まず、本法案についてお聞きをする前に、法務大臣に、今起きている就職差別にもつながりかねない重大な問題について一問お答えいただきたいというふうに思います。
 今、安保法案をめぐって全国各地で様々な賛否両論の声が沸き起こっております。この国会正門前にも、毎週金曜日、夜七時半から九時半ぐらいまで、SEALDs、自由と民主主義のための学生緊急行動という、今非常に注目されている学生たちが安保法案反対の声を上げております。
 その彼らに対して、非常にゆゆしき問題が今特にネット上で広がっております。どういうことかといいますと、彼らの名前、年齢そして大学名、顔写真などがネットでずっとさらされており、ほとんど匿名ですけれども、同時に、経済評論家などがそれを拡大をしているという事実があります。これは、この一連の動きの中で、高校生も含め大学生たちが安保法案に反対した行動をしたときに、そんなことをやっていたら就職差別されるよというような、ずっと匿名の誹謗中傷、攻撃に近いものがあった。その延長上で、SEALDsの学生たちの名前から全てと言っていいぐらい暴露されている。
 これは、私の感覚では、今でも問題ですけれども、部落地名総鑑、被差別部落の人たちが住んでいるその住所などが表沙汰になって、結果的に就職差別、結婚差別というものが起きてまいりました。そういうものに通じるような事態というものが、今現在、この時間にもネット上を通じて行われているという非常にゆゆしき問題だと思いますけれども、まず、法務大臣、どのように思われますか。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員の方から御指摘をいただきましたSEALDsという団体についての御言及でございますけれども、事実関係につきまして正確に私把握をしているところではございませんで、その意味ではお答えをするのがなかなか難しいということではございますが、しかし、一般論として申し上げますと、デモ行進等の集団行動の自由ということにつきましては、表現の自由ということでこれは憲法上保障されているものでございます。それのみを理由として就職等の差別がされるというようなことがあるとすれば、それはあってはならないことだというふうに考えております。
○有田芳生君 就職差別があってはいけないということは当然なんですが、それを唆すような言論がネット上を通じて今でも行われている、それについてどう思うかとお尋ねしております。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員から御指摘がございましたそうした事態ということでございますが、私自身、詳細に把握をしているところではございませんので正確にお答えするというのはなかなか難しいと、先ほど申し上げたとおりでございます。
 しかし、いろんなことが、今の憲法上保障されている行動の中からそうした様々な事態が起こるとするならば、それはあってはならないことだというふうに思っております。
○有田芳生君 今からお尋ねするヘイトスピーチを始めとした差別の問題についても、匿名で卑劣にもインターネット上で今でも毎日繰り返し行われているということは、この委員会でも何度もお聞きをしたとおりです。そのときは法務大臣、もっとすっきりした答弁をしてくださっていたんですけれども、それはまた改めてお聞きをする機会があるかと思いますので、本法案についてお話を伺いたいというふうに思います。
 まず、外務省にお尋ねします。
 人種差別撤廃条約は、一九六五年、国連で採択されました。東京オリンピックの次の年です。そして、日本が加入したのはそれから何と三十年後の一九九五年、阪神・淡路大震災が起こり、オウム真理教事件が起きた年でした。何で三十年もこの条約に加入するのに掛かったんでしょうか。その理由をまずお答えください。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 政府といたしましては、本条約が定めますあらゆる形態の人種差別を撤廃するとの本条約の趣旨に鑑みて、できるだけ早期に本条約を締結することが重要であると考え、検討を行っていたわけでありますが、本条約第四条の(a)及び(b)に規定する処罰義務と表現の自由等憲法の保障する基本的人権との関係をいかに調整するかなどの困難な問題があったことから、長期にわたる検討を要したところでございます。
○有田芳生君 三十年ずっと検討をしてきた、そして、一九九五年に加入をして、それから二十年たってようやく本法律案というものが出てきた。政府が率先してこういう法律案を出してくれたわけではない。本来ならば、一九九五年に条約に加入したときに、基本法を政府の責任でもって制定するのが当たり前だというふうに思います。
 今、人種差別撤廃条約第四条(a)項、(b)項の留保のことをおっしゃいましたけれども、しかし、そこを留保していたとしても、人種差別撤廃条約の、例えば、外務省にお尋ねしますが、第二条(d)項、何と書いてありますか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 人種差別撤廃条約第二条一項(d)項は、「各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。」と規定されているところでございます。
○有田芳生君 そのとおり、第四条(a)項、(b)項を留保していたって、政府はその責任をもって、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させなければいけないんです。その義務を負っているんですよ。
 日本国憲法第九十八条、このように書かれております。「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」。
 これはどういう意味かというと、皆さん御承知でしょうけれども、憲法学の大家で、もうお亡くなりになりましたけれども、芦部信喜先生の「憲法」、そこにはこう書かれております。公布によって直ちに国内法としての効力が認められる。あるいは、条約は、国際法であるけれども、国内では国内法として通用する。
 だから、一九九五年、日本が加入した段階で基本法というものは必要だったんじゃないでしょうか。今の歴史的な経過を踏まえて、法務大臣、どのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 人種差別撤廃条約でございますけれども、締約国が人権及び基本的自由の平等な享有を確保するため、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策等を全ての適当な方法により遅滞なく取ることを主な内容としているということでございます。
 その意味で、本条約の締結でございますが、国際社会において人権の尊重の一層の普遍化に貢献する、こうした意味からも極めて有意義なものであるというふうに考えております。その意味で、一九九五年の十二月に我が国は本条約に加入したものであるという理解をしているところでございます。
 もっとも、本条約の義務についてでございますが、我が国の憲法、先ほど御指摘いただきました憲法を始めとする現行の具体法制で既に担保されているものというふうに理解をしているところでございます。
 法務省といたしましては、粘り強くかつ地道な啓発活動を通じて、社会全体の人権意識を高め、いわゆるヘイトスピーチを含みます差別的な言動が許されないということである、こうした認識を醸成することによりまして、偏見や差別の解消につなげていくということが重要であるというふうに考えております。その意味で、啓蒙活動に対しましても積極的に取り組んできたところでございます。
 今回、本法案を出していただいているということでございますが、議員立法として国会に提出されたということでございまして、法務大臣といたしましても、この国会におきましての御議論、これにつきまして推移を見守ってまいりたいというふうに考えております。
○有田芳生君 遅滞なく施策を行ってきていないから、今ようやくこういう問題が法律案として出てきたんだと私は考えておりますし、啓発活動、強めていただくのは非常に大事ですし、しかし、現行法でどうにもならないからヘイトスピーチがいまだ蔓延している。それは、京都朝鮮第一初級学校襲撃事件において、京都地裁判決、大阪高裁判決、そして最高裁の決定においてもそのことが認定されたとおりで、新しい法律がヘイトスピーチに対応するには必要だというのは、これはもう世間の常識になっている。
 そこで、まず警察庁にお伺いしたいと思います。
 ヘイトスピーチのデモについて、三年前が一番ピークだったと理解しておりますが、(発言する者あり)二年前ですか、二年前、そして去年、そして今年にヘイトスピーチのデモがどのような数で推移しているか、お答えください。
○政府参考人(塩川実喜夫君) お答えします。
 右派系市民グループによるデモにつきましては、平成二十五年中が約百二十件、平成二十六年中も約百二十件、本年は七月末現在で約三十件、これを把握しております。
 なお、七月末現在ということで比較いたしますと、平成二十五年が六十件、昨年、平成二十六年が八十件、それで本年が約三十件ということでございます。
○有田芳生君 警察がチェックされている数は二年前が百二十件ですが、現場でヘイトスピーチを事とする人たちと対峙をしているカウンター、抗議をしている人たちが数えたところ、二年前は三百六十あるんですよ。
 それはなぜかということ。今年の半ばまでの件数は三十件と今お話がありましたけれども、そう聞いてしまうと、いわゆるヘイトスピーチのデモというのは年々減っているんだという理解になってしまうんだけど、そうじゃない。なぜかというと、彼らは告知しないでゲリラ的に無届けで街宣活動を京都でも東京でも大阪でも始めているんですよ。ですから、警察の方々がサボっているとは言いません。だけど、ヘイトスピーチは減っていないということを前提に、次に移りたいというふうに思います。
 問題は、ヘイトスピーチだけではありません。外務省にお聞きをしますけれども、人種差別撤廃委員会が二〇〇一年、二〇一〇年、そしてさらに昨年、二〇一四年に日本政府に対して勧告を出しておりますが、それはもちろんヘイトスピーチの問題も取り上げられていますけれども、項目的に、端的にエッセンス、どういうことが問題だと人種差別撤廃委員会は指摘されていますでしょうか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 ただいま委員から御指摘ありましたように、人種差別撤廃委員会による我が国の政府報告審査に関する最終見解というのは、二〇〇一年、二〇一〇年、二〇一四年に公表されているところでございます。
 まず、二〇〇一年に公表された最終見解では、民族的又は種族的出身者に対する権利の保障、マイノリティーに対する差別的取扱いの撤廃、アイヌ民族の権利の促進、公務員等に対する人権差別に対処するための適切な訓練等、多岐にわたる事項に関する勧告が含まれております。
 また、二〇一〇年の最終見解では、アイヌ民族の権利強化、国内人権機構の創設の検討、帰化の際の氏名の取扱い、教育制度における問題等の勧告が含まれております。
 さらに、最新の二〇一四年の最終見解では、アイヌ政策、ヘイトスピーチ対策、国内人権機構の創設、人身取引対策等の勧告が含まれているところでございます。
○有田芳生君 今、意図的にお話しになったのかも分かりませんけれども、人種差別撤廃委員会の勧告の中には琉球、沖縄もあれば朝鮮学校の問題も含まれているということだけは指摘させていただきたいというふうに思います。
 そのように、今、日本で問題になっているのは、ヘイトスピーチが非常に先鋭化して問題になってきましたけれども、国際的に問われているのは人種差別全般に関わる課題なんですよね。
 そこで、法務大臣と人権擁護局長にこれからお聞きをしますけれども、何回か前の法務委員会で、川崎市が外国人の調査を行ったということを御紹介し、そしてその後、法務省として、じゃ、全国どのような地方自治体でどのような調査が行われているのか、その件数あるいは分析についてお答えくださいということを質問しましたところ、まだまだ途上にあるというお返事だったというふうに思います。
 それで、先に御紹介しますけれども、平成十二年に大阪府の教育委員会によって在日外国人生徒進路追跡調査報告書というものが出ております。それはデータ化されていない残念なところはありますけれども、生徒五千二百七十五人を対象にして二千二十四人から回答がありました。その中で、人間としての肉声として、どんな差別があるのかということについて、その声をお伝えします。
 例えば、これは老人福祉施設に働いている方ですけれども、高齢者は戦前の人が多いので、老人福祉施設では韓国人は採用できないと言われた。あるいは、金を扱う仕事なのでちゃんとした家庭の人を求めていると言われた。あるいは、帰化の意思を問われ、ないと答えると、面接が終わり不合格となった。こんなことはもうずっとこの戦後の日本社会で続いている残念なひどい事実なんですよ。
 さらに、もう一つ御紹介をしておきます。これは神奈川県の公的な図書館に勤めていらっしゃる女性のケースです。まず、市民の対応、どういうものがあるかということをお知らせいたします。職員の方はみんな名札を下げて仕事をされているんですけれども、その女性のネームを見て、図書館にやってきた市民が例えばこう言った。朝鮮人か、よく雇ってもらえたな。あるいは、何あんた、韓国・朝鮮。あるいは、この図書館は在日に牛耳られている。どなられたり威圧されている。これが今現在続いている日本の姿なんです。
 それに対して、職場の中でも、民族差別であるとかそういうヘイトスピーチ発言についての理解、認識というのはほぼなくて、個人情報というのは言わなくていいよとか、クレームには複数で対応しよう、そういう声がある。そのような人権感覚水準なんです、地方公共団体においても。
 あるいは、この女性の後輩で日本の公立学校で教員をしている方がいらっしゃいます。この在日の教員は、生徒から、殺すぞチョンコ、こう言われる。民族名、名のっているにもかかわらず、何回も学校の教師が日本語読みでわざと名前を呼ぶ、そういう人がいる。あるいは、上司は、あなたは在日で朝鮮学校出身、人権教育とかばっかりやっているとイメージが持たれるから、ほかの人よりもいろいろな仕事をして狭い視野の人でないということをアピールしなさいよというようなパワハラに加えて民族差別発言が行われている。これ、ごく一端なんですよ。これが日本の現実。ずっと続いてきたんですよ。だからこそ実態調査が必要なんです。
 例えば、平成十九年の京都市の外国籍市民意識・実態調査報告書があります。びっくりしました。今、京都市にいらっしゃる在日コリアンの方々、本名を名のっている方は二割なんですよ。この国で生まれ、この国で働き、税金も納めている在日コリアンの人たちが本名も名のれない、これが日本の現実なんですよ。
 そういう実態を、法務省、どのように各地方自治体が調べているのか。かなり、もう一か月以上たっていますから、調査なさったと思いますけれども、その実態についてお答えください。
○政府参考人(岡村和美君) 法務省においては、二十を超える地方公共団体が、外国人住民を対象として調査を行っておりますので、その実施状況を集約し、その目的、対象者の選定方法、調査方法を分析するとともに、実施した地方公共団体から更に情報収集をするなどして検討を進めているところでございます。
○有田芳生君 検討を進めているのはいいにしても、非常に遅いという思いが強いです。もう何か月も前ですよね、お聞きをしたのが。
 それで、ヘイトスピーチについても、法務省の方としては、今年度中に千人単位の無作為抽出の実態調査をするという声を聞いておりますけれども、そういう事実はありますでしょうか。法務大臣、お答えください。
○政府参考人(岡村和美君) まさに調査方法、調査の内容につきまして真剣、慎重に検討しているところでございます。
○有田芳生君 だから、調査、実態明らかにする、これは国連の人種差別撤廃委員会から何度も何度も実態調査をしなさいということを繰り返し勧告されているにもかかわらず、こういう遅れた現実が私たちが暮らしている日本であるということ、これを改めていかなければいけないというのが今回の法律案だろうというふうに私は思っております。
 もう一点、人権擁護局長にお聞きをしますけれども、昨年だけで構いません、この日本で人権侵犯事案というものは何件、どのような内容のものがあったでしょうか。
○政府参考人(岡村和美君) 昨年、平成二十六年中に新規に救済手続を開始いたしました外国人に対する差別待遇に関する人権侵犯事件数は七十三件でございます。
○有田芳生君 今後、法務省が積極的にヘイトスピーチなどについても電話相談なんかを強化していただけるというふうに思いますし、同時に、そこにおいて差別の専門家について養成していただきたいと強く願います。
 法務省が何にもやっていないということを申すつもりはありません。委員の方々、お手元に配付をさせていただいた左側の写真、これは今年の六月二十四日と二十五日から約一週間、東大阪市の近鉄布施駅前でヘイトスピーチも含む街宣活動が行われた。そこで、カウンター、抗議をする人たちが本当にそういう差別と闘ってまいりました。そのとき、この東大阪市の担当者が、法務省が作った「ヘイトスピーチ、許さない。」というそのポスターを駅前に貼ってくれたんですよ。そういう積極的なことも法務省のポスターを活用してやってくれている。同時に、カウンター、抗議をする人たちも、このポスターをその差別扇動を事とする人たちに掲げて、許されないんだということを、今全国各地でやっております。そういうことが効くんでしょう。だから、一日たてば、写真にあるように、そのポスター剥がされている。剥がしているんですよ、これは。
 だから、そういうことをやってくださっているということは分かりつつ、例えば、ヘイトスピーチについての電話相談についても、前も委員会でお尋ねをしましたけれども、本当に意を決して自分が悩んでいることを、ヘイトスピーチという、不安与えられる、命のおびえを感じている、恐怖を感じている、いつか殺されるんじゃないかと思っている人たちが現実にいるような状況の下で、電話相談をしても、現場では、自分が頑張ってやっていくしかないんだよみたいな返事をされると、電話なんかするんじゃなかった、そんな相談するんじゃなかったという、そういう現実があるというのもこれまた法務行政の一端なんですよね。だから、それを克服していかなければいけないんだというふうに思います。
 そういう声が全国各地から上がっていて、地方自治体では、ヘイトスピーチを含む法整備について、国がちゃんとやってほしいという意見書がもう百八十、私が確認したのは百六十八ぐらいまで確認したんですが、百八十を超えたという声も聞きますけれども、人権擁護局長、今東京都においては、全会一致、自民党の議員の方も公明党の議員の方も野党の議員も、全会一致でそういう法整備が国に必要なんだという意見書が上がりましたけど、今全国で何か所そういう声が上がっていますでしょうか。
○政府参考人(岡村和美君) 昨日八月五日までに、当局において東京都国立市議会を始めとする百九十の地方議会からのヘイトスピーチ及び人種差別に関する意見書を受領しております。
○有田芳生君 各地方自治体で毎週のように、いや、毎週土曜、日曜、ヘイトスピーチのデモが公に告知され、あるいはゲリラ的に今でも行われている。そういうことが続いているから、現場の地方自治体は、国がしっかりしてほしいんだ、法整備をやってくれと、そういう声がそれだけどんどんどんどん増えてきている状況です。
 もう時間が来てしまいますので、最後になってきますけれども、この法案の制定というのは国際的要請に基づいているものだという視点で幾つかの事実をお伝えしたいと思います。
 イギリス外務省のホームページ、皆さん御覧になってください。数年前から渡航者、つまりイギリス人で日本に行く旅行者に対して注意が喚起をされています。どういうことを書かれているかというと、日本はしっかりした民主主義のある国ですが、暴動や過激なデモ活動がまれにあります。その次です。時折、民族主義者による外国人に敵意を向けるデモが起こっており、身の安全を確保するための情報を入手して、デモに遭遇したらすぐにその場所を離れてください。イギリス政府、外務省は、今の日本の現状をそのように見ているんですよ。海外から見たら、日本はそういう存在なんです。
 それだけではありません。昨年もそうですけれども、今年も、アメリカの国務省の人権報告、そこには、日本における差別の実態というものが、先ほど外務省にもお示しいただきましたように、アイヌの問題含めて、あるいは様々な問題点が指摘をされておりますけれども、そこでは、例えば日本に住む中国人、韓国・朝鮮人、ブラジル人及びフィリピン人などについても詳しく書かれていて、NGOの指摘ですけれども、日本政府は差別の禁止に向け何の措置もとらないことを引き続き批判したと。NGOの指摘だけれども、アメリカ国務省の人権報告にそのように出ている。
 委員の皆さんにはお示しをしましたけれども、東京新聞七月二十三日の夕刊には、「在日ブラジル人の涙」というアンジェロ・イシさんの原稿をお示ししました。今や日本では、ヘイトスピーチが大きく問題になり、人種差別の問題も指摘をされておりますけれども、同時に、一九九七年には、愛知県の小牧市で十四歳の少年が殺されているんです。殺されている。ヘイトスピーチはヘイトクライム、犯罪につながっていくということをもう日本は経験している。だからこそ、このヘイトスピーチを含む人種差別の問題というのは大きく前進させなければならないんです。
 アメリカの人権報告では、ヘイトスピーチについても二〇一四年のこととして指摘がされ、あるいは、ネット上でもヘイトスピーチが増加していると、そういう危惧を示されております。
 日本は、御承知のように、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを迎えます。しかし、オリンピック憲章では、人権尊重と平和維持、それが必要なんだということが高らかに掲げられております。さらには、今後はオリンピックの開催都市契約に差別の禁止条項が追加されるんですよね。二〇二〇年の東京オリンピックの次に開催される開催都市の契約には、差別の禁止、それが基本となるんです。
 だから、もちろん東京オリンピックの先なんだけれども、そういう目で東京オリンピック・パラリンピックは世界から見詰められているという状況の下で、こうした法律案を具体化していくことが、人種差別撤廃条約に加入をして二十年たちましたけれども、ようやく実現していくことが、これは差別を受けている人たちだけではなくて、日本人にとってもこの社会の質を豊かなものにしていくために必須の課題だというふうに思います。
 最後に、法務大臣のこの法案に対する所感も含めて、日本の置かれた国際的地位、どのように考えていらっしゃるのか、それをお聞きして、終わりたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 特定の民族あるいは国籍の人々に対しまして、これを排除しようとする行動あるいは差別的な言動、こういうことにつきましては、これはあってはならないというふうに思っております。
 私も、法務大臣を就任して以来、この人権の問題については大変大事な大きなテーマであるという認識の下で、ヘイトスピーチに関しましても、様々な活動については、ポスターでありますとか、あるいは電話相談におきましても、寄り添ってしっかりと取り組むようにと。また、先ほど来御指摘がありましたけれども、地方自治体におきましてこの間様々な調査もしているということで御指摘をいただきましたので、川崎以外の自治体につきましても幅広く情報を収集しながら、また、単にその情報の調査のデータのみならず、その背後につきましても地方自治体の皆さんからヒアリングをさせていただきながらその問題の本質に迫っていこうと、こういうことで今鋭意取り組んでいるところでございます。
 こうしたことを通して実態をしっかりと把握をしながら、また、現在行っている、法務省を中心として人権擁護の施策を打ち出しているわけでありますが、啓蒙啓発につきましては、大変大事な施策を担っているということでございますので、このことにつきましても、新たな切り口がないか、取組をしていくべきではないか、こういうことも含めまして、しっかりとした考え方の下で計画的に進めてまいりたいと、こんなふうに思うところでございます。
 まさにオリンピックが二〇二〇年ということでございますので、そういう意味での、人権に大変意識のある国であると、こうしたことを明確に打ち出していく大変大事な時期であるということも併せて考えると、この五年間は大変重要な時期であると強く認識しているところでございます。
○有田芳生君 終わります。
○矢倉克夫君 こんにちは。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
 今日は人種差別撤廃法案審議でございます。
 まず、発議者の先生方、また関係者の皆様方、このような形での御努力、改めて敬意を表したいというふうに思っております。
 人種差別の撤廃、とりわけヘイトスピーチに関しまして、このヘイトスピーチというのは今回の法案を通じていかに重大なものであるのか、先ほど猪口委員もおっしゃっていましたが、今後の啓発活動というものもこれを契機にまたしっかり進めていく、その意味では非常に今日の審議も大変に意義のあるものであるというふうに改めて私も評価させていただきたいと思っております。
 私も、主に昨年よりなんですが、在日韓国・朝鮮人の特に若手の方々とよくお話をする機会を与えていただいています。三世、四世の方が多いかとは思ってはおりますが、皆様から今いただくお声というのは、先ほど有田委員からもお話もあった、本当に夜、外を一人で歩いたりとかするのも恐ろしいぐらいの気持ちになる、殺されるというふうに思っているような方がやっぱりいらっしゃる。その気持ち、心情というのはもう察して余りあるなというところもあります。また、やはり生まれながらに日本にいらっしゃる方が多い。なのに何でこんなことを言われなけりゃいけないのかというこの悔しさみたいなのも私に非常にぶつけていただきました。本当にそういう思いをしながら生きていらっしゃる。本当に申し訳ないなと思い、ヘイトスピーチというのは、これは断じて許してはいけない、私も改めて政治家の一人として決意をさせていただいたところであります。
 ヘイトスピーチの問題は人権の問題でも当然ございます。それとともに、やはり日本の在り方の問題でもあるというふうに私も思います。特に、マイノリティーの方々が何かおびえながら生きていかなければいけないというこの社会そのものがやはりおかしいと。日本がどういう社会の在り方を求められているのか、そういうような方々と共生できるような在り方、これがやはり日本の社会の在り方であるというふうにも思っておりますし、特にこのヘイトスピーチの在り方というのは、言論はやはり言論同士ぶつかり合うものなんですけど、大勢でわあっと非常に脅威を持たせるような発言をして示威行動をしていく、対抗言論というのは許さないような、民主主義の在り方そのものとやはり違う表現の在り方であるというふうに私も思うところであります。それを日本はどうやって考えていくのかという問題であります。
 冒頭、まずいろいろと御紹介したいところがあり、時間をちょっと取っていただいて大変恐縮なんですが、我々もこういうような観点、公明党としても、七月二日に官邸の方、提言を提出させていただきました。私もこの提言の前文に主に関わらせていただいたんですが、簡単にポイントをまず御紹介させていただきたいと思います。
 やはり、昨年八月、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対して勧告をしたと。我々の意見としては、このヘイトスピーチというのは、個人の基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ、社会の基盤をも揺るがすものであって、到底許されるものではなく、政府を挙げて直ちにその対策を講じなければならないと。
 そしてその上で、我々としては、ヘイトスピーチ問題は単なる表現規制の問題にとどまらず、我が国国民のマイノリティーに対する意識、そして今後の社会の在り方に関わる問題と捉えております。そして、仮にヘイトスピーチが日本社会の根底に存在する人種差別意識が先鋭的に表出したものであるとした場合、その背後にある構造的差別に対する総合的な対策を講ずる必要があり、これなくしてヘイトスピーチ問題の根本的な解決、被害者の真の救済とはならないと考えております。
 規制に当たっての課題を引き続き検討する一方、政府に対して、人種差別のない日本社会を築くためどうすればいいか、根本的な議論を開始することを強くお訴えをさせていただき、我が国が世界に冠たる人権国家となるためにもしっかりと政府に要望させていただいたところであります。
 具体的には、総理や法務大臣から断固たる姿勢を示すとともに、人権教育の強化や啓発活動を通じて社会全体の意識を向上させること。そして、直ちに社会生活全般における人種差別の実態調査を行う。また、当事者の意識や心情、プライバシー等に配慮した調査方法を研究するとともに、政治的中立性を担保する。その実態調査を踏まえた上で、人種差別の解消に向けた基本法の整備を含む実効性ある人種差別撤廃政策を策定すること。このような内容でございました。
 菅官房長官に申入れをしたときには、官房長官からも予備費にも言及されて、即座に実態調査というところもおっしゃってくださいまして、そのまますぐにマスコミの方にも話して、翌日の新聞に出るという形でありました。私も正直その場にいてびっくりして、一緒にいた遠山座長も大変にびっくりされていた。政府の改めての意気込みというものも私も感じさせていただいたところであります。
 もう少し続けさせていただきます。
 もとより、表現の自由との問題もあるわけですが、これをもって対策を取らないという理由にはならないというふうに改めて思っているところであります。特に、我々注視して、申入れの際にも政府に特にお伝えをして、官房長官もしっかりとメモを書いていらっしゃったのが、やはり京都朝鮮第一初級学校事件、この上告審、この内容がしっかりあるんだと。ここにおいて、ヘイトスピーチというものは、これは人種差別に当たって、表現の自由の範疇を超えると、法の保護に値しないという司法の断罪がなされていたということは、これは大変に大きなことであると思います。まさにヘイトスピーチに関しては、しっかりとした立法事実というのが司法の判断からもあるんだということがこれは明らかになったというふうに思っているところでございます。
 以上のようなことを前提にいたしまして、まず今回の法案について御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 法案、様々な点で大変に参考になる部分もあるかと思います。例えば、六条において国及び地方公共団体の責務、これを明記もされた上で、二項において他の関係者相互間の連携協力体制の整備、これも書かれていらっしゃる。八条においては財政上の措置というものもこれをしっかりと書かれている部分。また、十一条、こちらについては、やはり相互理解の促進が大事であると、多様な文化、生活習慣等に関する適切な情報の提供、相互の交流促進、これが必要であるということ、これも非常に重要な視点であると思います。また、十二条、我々の提言にも入れさせていただいた、また猪口委員も先ほどおっしゃっていた啓発活動の重要性、こちらをしっかりと盛り込んでいるところ、そして、十三条は人権教育、これもしっかりと盛り込まれているところ、このような点、非常に斬新な観点であると思います。
 そして、確認をやはりしなければいけないところは、既にもう御指摘もある表現の自由との関係であります。私も、提言の中では、やはり表現の自由、特にヘイトスピーチ等の規制に関しては、表現内容の規制である、当然ですが、憲法上の観点からは、明白かつ現在の危険という大変厳しい制約の中でのみ初めて規制が許されるというようなことになっております。表現行為というのが民主主義の前提であること、であるからこそ、しっかりした明確な規定でない限り、本来保護されるべき表現というものもこれは保護されないような状態になってしまうというところがあります。
 特に、今の点も重なるところもあるかもしれませんが、まず発議者にお伺いしたいのは、とりわけヘイトスピーチというものについて、不特定多数に対する差別的言論を規制する際に注意すべきことというのはどのような点であるのか、御意見をいただきたいというふうに思います。
○小川敏夫君 委員の御質問の中にもありました表現の自由を不当にあるいは必要以上に制限してはならないという点が、最も私どもこの法案を作成する中でも留意したところでございます。やはり言論の自由というものは民主主義社会の基本中の基本でもございますので、それを不当に制約することがあってはならないというのは基本的な前提でございます。
 ただ一方で、表現の自由があるから全てが認められる、他人の権利を侵害してもいい、別の法益を侵害してもいいということにはならないのでございまして、人種的差別を行ういわゆるヘイトスピーチ、これにつきましては、やはりこれをしてはならないというそうした要請もあるわけでございますので、そうしたヘイトスピーチ等人種的差別行為を禁止する、許さないという実効性を保ちつつ、しかし表現の自由を侵害することがないようにというところのこの調整が一番苦労したといいますか、注意したところでございます。
 そうした点に留意して、両方が成り立つような、そしてまた、京都の朝鮮学校事件で示された裁判所の判断というものも大変参考にしまして、このような立法の仕組みを築いたわけでございます。
○矢倉克夫君 とりわけヘイトスピーチというものを念頭に置いた場合、この法案の中では、不当な差別的取扱いと不当な差別的言動と両方、これを規制の対象にされております。
 ヘイトスピーチというものを念頭に置いた場合、この二つあるわけですけど、これは不当な差別的言動、こちらに、念頭に置かれているという、これはこの理解でよろしいでしょうか。
○小川敏夫君 質問の趣旨に直接答えるというところよりも少し遠回りになるかもしれませんが、基本的には、差別的取扱いあるいは差別言動というのは、これは許されないわけでございますが、不当なという言葉を設けましたのは、例えば国の施策等におきまして、差別を受けている人たちに対する助成を行うような施策を行うことがあり得るわけでございます。そうした場合について、これはやはり、言わば普通の人たちとの比較で、いい意味での差別なんでしょうけれども、そういう差別的な行為は含まないということで、あくまでもそうした合理的な差別、合理的な区別というものは除外して、それ以外の不当な差別的取扱いという意味で不当なという表現を盛り込まさせていただいた次第でございます。
 あと、ヘイトスピーチの定義は何かというと、これはなかなか微妙に、それを確定する、特定する表現は難しいかとも思いますが、私どものこの法案の中では、やはり不特定に対するという点がヘイトスピーチの特徴ではないかと。ただ、特定人に対する行為がヘイトスピーチに当たらないかというと、そういうこともないというふうに思いますが、特定の者に対する行為というものは、一つの不特定者に対する行為と類型が違うのかなということを考えまして、ヘイトスピーチというものにつきましては、第三条二項というものがヘイトスピーチを中心に考えた規定なのかなと、こんなふうな位置付けでございます。
 ヘイトスピーチの定義というものを、この法律がヘイトスピーチというものを特に取り出してこれがヘイトスピーチだというふうに定義付けているというものではございませんが、この第三条の一項、二項の法律の中でヘイトスピーチと言われるものの類型は全て禁止されるというような仕組みになっていると、このような構造の規定ぶりになっております。
○矢倉克夫君 やはり、表現の自由との関係、慎重に考える、いろんな要素を考えなければいけない難しい問題であると思います。マイノリティーを守るための法律が、実は規制する対象が広がることでマイノリティーが規制されてしまうようなものになってしまっては良くない。その部分でどういうふうにするのかというところ、改めての確認をさせていただきたい。
 合理的なものを入れ込んだ形で、そうでないものを不当という形でおっしゃるという、この不当というものが言論の関係でどういうふうに判断をされる、判断基準はどういうふうに考えていらっしゃるのかというところ。とりわけ、やはり政治的意図を持っている表現とどのように切り分けられるのか、これは非常に難しい話。逆にこれは政治的意図を話している少数者を侵害するようなことになってしまいかねないような、そこの区別ははっきりやはりさせなければいけないかと思うんですが、どのような判断基準を想定されているのかを確認をさせていただきたいと思います。
○小川敏夫君 まず、法律の書きぶりとしましては、やはり言論の自由、とりわけ政治的な発言の自由というものが制約されてはいけないという趣旨に鑑みまして、この法文の第三条二項におきまして、発言の目的が、政治的な理由ではなくて、いわゆる差別の属性を有する人たちに対して著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的というそういう目的がある行為が禁止されるものであって、そういう目的を有しないまさに政治的な表現に関わることは禁止される範囲には入らないというような形で、政治的な表現の言論の自由というものを侵害しないという仕組みになっております。
 また、どのような基準で規制するか、その規制をどうするかというところがございますが、まずこの法律の根本でございますが、この法律をもって、してはならないということで禁止している、あるいは広い意味では規制しているということになるんでしょうけれども、してはならないという差別的行為をしたということがあっても、この法律で直ちに刑罰を科すという構造にはなっておりません。また、刑罰を科さないというだけでなくて、この法律をもって直ちに何らかのそうした差別的行為が行われたことに対する行政的な措置がなされるという意味の規制があるという趣旨でもございません。
 ですから、具体的な処分行為がなされるというものではなくて、あくまでも、してはならないという基本の理念を定めて、そしてその理念に基づいて、これからの国の施策、あるいはこれからの立法や条例の制定等におきまして、様々なそうした行政の分野、立法の分野におきまして、この理念を生かした形で行ってほしいと、こういう意味での理念を定めた理念法でございます。
 ですから、具体的にこの法律によって規制をどうするのか、その規制が表現の自由あるいは守られている人たちの行動の制約をどうするということの具体的な作用というものはそこには及ばない、そうした内容の理念法という形にこの法律はなっております。
○矢倉克夫君 まず、目的という部分で切り分けていく、仮にこの目的、どこまで、併存という部分もひょっとしたらあるのかもしれないんですが、そこら辺りは、また認定であったり運用であったり、いろんな面は考えていかなければいけないところであるかと思います。
 今、処分等はお考えになっていないという、そこの関連かもしれませんが、では、最終的に不当か否かというのは、これは一体どこが判断をすることを想定されているのか、この点も御意見をいただきたいと思います。
○小川敏夫君 例えば、刑罰がありますと、それは起訴、不起訴の判断を検察がする、あるいは検挙する警察がする、最終的には裁判の判決で裁判官が判断するということになるのでありましょうが、この法案では刑罰は定めておりませんので、そうした判断の部分はないわけでございます。
 また、何らかのしてはいけない行為、差別的行為がなされたときに行政的な措置を行うということであれば、その行政的な措置を行う者が判断をして行政的な措置を行うということになるんでしょうけれども、この法律そのものは理念を定めたもので、何らかの具体的な行政措置を行うということを定めた法律でもございません。ですから、そうした面におきましても、判断する者があるということはないわけでございます。
 あくまでも、この法律の趣旨は、こうした人種差別をしてはならないという理念を定めまして、その理念に基づいて、これからの国の施策あるいは立法あるいは条例の制定などにおいて、その場面において、それらの行政を行う者、立法する者、条例を制定する議会などがこの理念を踏まえてそうした施策なり立法なりを行っていただきたいと、こういう趣旨でございますので、具体的に誰が判断するかという場面は取りあえずはないわけでございます。
○矢倉克夫君 今御説明いただいた部分、どのような形でしっかりとはっきりした形にしていくのかはまた更に研究も必要であるかとは思っております。
 今のような検討すべき課題、いろいろ御質問したいこともまだある部分はあるんですが、ちょっと時間の関係で、やはり表現の自由という部分、こういう問題の課題は様々ある部分ではありますが、公明党としては、ヘイトスピーチ、この防止に関して特化した、その部分での理念法というのはこれは必要であるというふうに考えているところであります。
 人種差別全般ということになると、またまさに実態調査等も必要である、その部分はやはりあると思います。先ほど来も有田委員からもこの調査の必要性というのを訴えていらっしゃったわけですが、今回の提言でも人種差別全体の実態調査という申入れはさせていただいて、その上でではありますが、ヘイトスピーチというものは司法の断罪というのもしっかりなされているところでありますので、そこを理念法という形で特化して、どのような形で作っていくのか、これは我が党でもまたしっかりこれからも協議をさせていただきたい、今日の質疑もまた参考にさせていただいて、協議をした上で、どのような形を作るのかはまた改めて発信もさせていただきたいというふうに改めて思っているところであります。
 上川法務大臣、今日はお越しいただきましてありがとうございます。官房長官に申入れをさせていただいた後に上川法務大臣の方にも申入れをさせていただきまして、大変、大臣の思いとしても、この問題しっかり対処しなければいけないんだというような思いも我々も聞かせていただいたところであります。
 まず、我が党の提案に対しての大臣の評価をいただきたい、思い、所見等も含めていただきたいというふうに改めて思っております。
○国務大臣(上川陽子君) 先月の、七月の二日でございますけれども、ヘイトスピーチ問題対策等に関する御要望書という形で、遠山先生を座長として、矢倉先生もいらっしゃっていただきました。大変貴重な御指摘をいただいたものというふうに思っております。
 何よりも、この要望書をまとめるに当たりまして様々な調査をしていただいた上で、さらに、先ほどその概要について御説明をいただきましたけれども、このヘイトスピーチという差別的言動が日本の社会の構造的な問題に背景があるということで、これが大変表出した事象ではないかと、こういう問題意識の下で具体的な提案ということをまとめていただいたということで、大変得難い御指摘をいただいたものというふうに考えているところでございます。
○矢倉克夫君 提案の中で実態調査というものを我々改めて申入れをさせていただきました。改めて大臣から、我が党の提案を受けて、今法務省としてどのような調査をされているのか、御報告をいただければと思います。
○国務大臣(上川陽子君) まず、このヘイトスピーチそのものが社会問題として大きな関心を集めているということでございます。その上でどのような調査をすべきかということにつきましては、御提案の趣旨も踏まえまして検討をしながら、しかしやるべきことについては具体的に取り組んでいこうと、こういう流れの中で今動いているところでございます。
 そして、目的としては何よりもこのヘイトスピーチを根絶させると。そして、そのための人権擁護に係る施策につきましても、これまで取り組んできたことで十分かどうか、さらにその上で更なる施策が必要であるかどうか、また総合的な対策としてどのようなものを考えていかなければいけないのかということも織り込みながらこの実態調査につきましても取り組んでいこうと、こんな問題を設定しているところでございます。
 まず、何よりもやはりヘイトスピーチの実態につきましてしっかりと把握をするということが大事であるというふうに思っております。そしてその上で、その原因あるいは背景につきましても解明をしていくということ、このことを通して施策についても明らかになってくるのではないかというふうに思っているところでございます。
 現在、地方公共団体が既に実施をしております様々な調査につきまして、現在既にやっているものそのものを収集をし、その分析をしているところでございますが、そこから更に地方自治体に対しましても追加のまたヒアリング、あるいはそれに関わる状況の中でどのような取組をしているかも含めまして、更なる情報収集を積み上げていこうということでスタートをしているところでございまして、その意味では、正確にこれまでの取組、自治体がやってくださった取組を参考にというか、しっかりとそれを踏まえた上で国としてもどのような方向で進めていくべきかと、こうしたことにおいても大変大事な情報となるのではないかと思っております。
 さらに、正確に実態を把握するための調査といたしまして、現場で行われているヘイトスピーチ、あるいはインターネット上に表れているものを対象といたしまして、ヘイトスピーチがどのように、またどの程度行われているのか、どのような問題があるのか、この現象面の調査ということにつきましても実施をする予定でございます。
 こうしたヘイトスピーチの現象面に関する実態調査に加えた形で、ヘイトスピーチに係る原因、背景を解明していくために専門家の方からのヒアリング、さらには中立的な立場での調査ということにつきまして、より良い調査方法をしっかりと検討をしながら全体像を明らかにしていくという方向の中でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○矢倉克夫君 ありがとうございます。
 引き続き、冒頭申し上げた、やはり被害に遭われている方の思いに立った調査というもの、そしてその背後に何があるのかという、ちゃんと追求していけるような調査というのをしっかりまた継続してやっていただきたいというふうに改めて御要望させていただきたいと思います。
 今回のこの審議をまた更に我々も研究して深めさせていただいて、ヘイトスピーチというものを特化した形での理念法のようなもの、与野党でしっかり合意できるようなものがまた更にできればという、そのためにも微力を尽くしてしっかりと審議継続していきたいというところを、公明党としても、また私としても申し上げまして、質問にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○真山勇一君 維新の党、真山勇一です。
 今回のこの人種差別撤廃法案ですけれども、人種、宗教、思想、職業、あるいは障害などに対する差別的表現、これがあふれているという感じです。これを何とかなくそうということで提案されたものというふうに私も理解しております。
 いわゆる今回言われておりますヘイトスピーチということなんですけれども、私も、このヘイトスピーチなるものはこういうものかということの理解をするような場面に町の中で何回か遭遇しているわけです。やはりこれはもう本当に聞くに堪えないし、公の場でこれだけ相手の人権というか名誉というか、そういうものを罵るという形、こういうものがあっていいのかという思いを強くしております。
 ですから、今回のこの法案の提案ですけれども、こうした規制もやはり今現状を見るとやむを得ないのかなと、むしろ、なければならないことかという思いを強くしております。
 ただ、その一方で、やはりヘイトスピーチというのは相手がそういうふうに感じるということもあって、言った方がどうなのかということもあると思います。その辺で、私はまず、こうした今回の理念法、基本法ということで、これは必要なものであるというふうには認めるんですが、ただし、やはりそのヘイトスピーチの実態、事実、あるいはその被害というものを実際にどう捉えていらっしゃるのか。やはりこうした理念、基本の法案ではあっても、ヘイトスピーチをなくそうということであれば、そのヘイトスピーチにこんな事実があるんだ、こんな被害が実際にあるんだということをやはり世間に訴えていくということも必要だと思うんですが、その辺りはどういうふうに捉えていらっしゃるでしょうか。
○小川敏夫君 まず、実態調査をするということは非常に重要なことだというふうに思っておりますが、ただ、私どもの考え方としましては、実態調査をしないとヘイトスピーチがいいか悪いか分からないということではなくて、やはりヘイトスピーチは許されないものだということの共通の理解はあると思います。であれば、やはり許されないものはやはり許されないということはきちんと決めた上で、しかし、調査というものは非常に大事ですから、この理念法を定めた後に、これをどういうふうに具体化していくかということと調査というものは、これは並行して進めていくという方が望ましいのではないかと。
 ですから、調査、実態の把握ということは大変に重要でありますが、しかし、現実に今社会の問題として、朝鮮学校の襲撃事件もございました。それから、裁判となっているかどうかは別としましても、連日のごとくヘイトスピーチの行動が行われているというような状況がございますので、そうしたことは許されないということをきちんと定めた理念法は、調査にまつまでもなく、やはり制定することが望ましいのではないか、あるいは必要ではないかと、このように考えております。
○真山勇一君 ヘイトスピーチは許されない、本当にそのとおりだというふうに思います。
 今お話の中で、ある程度、実態がどうであれそれは必要だということは理解できるんですが、やはり並行して事実ということを調べるということは非常に大事なことだと思うんですが、政府側の答弁伺っていると、実際にその調査しているのかということに対して、検討中と、検討中としかまだ答えていないわけですね。いろいろな社会的な状況がもはやヘイトスピーチは許されないのではないかというようなことで国民的な意識の共通認識はある、そういう中で、まだ少し法務省の対応というのが、これから検討しますみたいな、こういう答弁なんですが、これについてはどんなふうに感じていらっしゃいますか。
○小川敏夫君 法務省といいますか、あるいは法務省を超えた政府といいますか、そこで十分な対応をしていただければそれが一番望ましいのでありますが、まだまだ不十分でありますので、また動きも遅いもので、私どもとしてはそうした対策を一歩でも進めたいということで今回の法案提出に至ったわけでございますが、調査を行うに当たりましても、今回の法案の中でありますように、例えば審議会というような独立してかつ専門性を持った機関が調査を行うことが、やはり迅速であり公平であり適切な調査が行われるのではないかというふうに考えております。
 そうした意味で、私どもは、この法案の中で、ヘイトスピーチなど人種差別は許されないという理念をうたうと同時に、そうした調査をしっかり行うようにということもこれを定めておるわけでございます。調査の必要性というものは大変重要でございますが、そのためにも、まずこの許されないという理念を定めて、そして調査を行うこうした専門機関を設置するということも重要ではないかというふうに思っております。
 そういうふうに考えますと、法務省を含め政府の対応は緩慢なのではないかと、このような印象を持っております。
○真山勇一君 今回のこの法案の意味というのはその辺にもあるのかなと私は思います。やはりなかなか進まないということの、一つこれが、この基本法が出ることによって一歩進めていくその大きな原動力になるのかなという意味で、この法案のやっぱり意義は大変大きいというふうに私は認識をしております。
 ただ、その一方で、やはり私自身が感じるちょっと不安もあるので、その辺を発議者の方にお伺いしたいんですけれども、法案の第三条そして第四条、この辺りを見ていただけると、いわゆる不当な差別的な行為というものはどういうものかということを規定しているわけですけれども、これの書き方を見ると、先ほどからも出てきていますが、やはり少し具体性に欠ける、抽象的、そして、表現の自由ということから見ると、少し範囲が広げられてしまうおそれも感じられるんですね。この辺りの不当な差別的行為というものの決め方、これが少しちょっと不十分じゃないかという感じも受けるんで、その辺についてはどういうふうに思われますか。
○小川敏夫君 そもそも差別とは何かというところの定義の問題でございます。
 例えば、人種差別撤廃条約におきましても差別とは何かという定義もあるのでありますが、大変に分かりにくいところもございます。この法律では、差別とは何かということを分かりやすい表現の中で、このように三条で特定の者、不特定の者ということで区別して書かせていただいたわけであります。
 確かに、特に特定の者に対する差別的な行為については比較的分かりやすいところでありますが、不特定な者を相手にするこの差別的行為につきましては、対象が不特定ということもありまして、どのように規定していいかということの書きぶりがなかなか難しいところがございます。これを全く無限定にしますと、これは表現の自由の侵害になるわけでございますので、そこのところ。しかしまた、不特定に対する差別行為というものの類型がどのように行われるかというものも定型化しているわけではございません。様々な形でそうした差別的行為が行われるわけでございますが、これが漏れてはいけない、重要な部分が漏れてはいけないということも考えますと、ある程度一般的な表現でこれをくくらなければならないわけでございます。
 そうした中で、類型的に、やはりまず表現の自由を侵害することがないようにということで、目的というものを要件とし、あるいは公然とという要件も加えるなどして限定をしておるわけでございます。
 あと、抽象的という御批判は御指摘いただきましたが、確かに、しかし、ありとあらゆる形の差別的行為が考えられるものを一つの基準で禁止するという場合には、このような抽象的な表現にならざるを得ない部分があるというふうに思います。そうした制約の中で、しかし表現の自由を侵害しないという要件を踏まえまして言葉として定義するとこういう書きぶりになるのかなと、このような気持ちでございます。
○真山勇一君 なぜ私がこの点にちょっとこだわるかというと、私は、以前の仕事がマスコミで働いていたということで、やっぱり表現の自由ということは大変大事なことだというふうに思っています。
 ただ、だからといって全てが許されるとはやっぱり思っていない。表現の自由もある制限があった中で行われなければならない、それはあくまでもやはり自分たちの意識の問題としてそれはやっていかなくちゃいけない、そういう思いは持っております。
 おっしゃったように、確かにこれ、いろんな法案出てきますけれども、この書き方は分かりやすい、非常に頭の中に入ります、読んで。ただ、それだけにやっぱり余り具体的でなくて抽象的。そして、特に私が思うのは、第三条では特定、不特定、つまり本当に広く捉えているわけですね。
 やっぱりヘイトスピーチということ以外にも差別というのはいろいろあるわけですね。言葉があるのと、それと同時に行動というのがあるわけですね。実際にやる行為があるわけですね。そういうものが全て含まれているというような印象も受けるので、この辺り、もう一回確認という意味で、表現の自由とか言論の自由をどうやってこの定義で担保するのかという辺りをもう一回確認させていただきたいと思います。
○小川敏夫君 まず、この法律は、あくまでもこのヘイトスピーチなども含めまして人種差別等をしてはならないという理念を定めた法律でございますので、これを具体的に行政の措置あるいは立法、条例等の段階でこの理念を生かした具体的な定めをする場合には具体的な表現があるでありましょう、もう少し具体的な表現になっていくのかと思いますが、あくまでもこの法律は理念を定めたものでございます。
 例えば、してはならないという差別的行為をした場合の処罰を規定したものではございません。ですから、罪刑法定主義に反するような、構成要件が明確でないというような意味での厳格さは、そこまでは求められていないものだというふうに思っております。
 なおまた、一番の問題は、しかし表現の自由の保障という意味でこの書きぶりが抽象的ではないかという御指摘だというふうに思いますが、先ほども申し上げましたように、一方で差別の形が様々な類型の差別がある、それを網羅しなくてはいけない、しかし、一方で表現の自由は制約することがあってはならないという中で、このような書きぶりになったのかなと。
 あとは、個々的な判断。例えば、裁判所で示されたように、個々具体的な事件の中で、裁判所では社会的に許容し得る範囲を超えて他人の法的利益を侵害するというような場合には表現の自由としては認められないと、このように判示しておりますが、こうした基準も基にしてやはり個々具体的に判断していくしかないのかなと思っておりますが、何分にも抽象的な中で、表現の自由という抽象的な表現と、一方で差別というあらゆる形の類型がある中で、これをすっぱり線を引いて、ここからここまでは許される、ここからここまでは許されないというような明確な線を引くというのは、これは逆に困難でございますのでこの程度の抽象的な表現となっておりますが、しかし、一方、この要件の中で差別の目的などを要件とすることによって、政治的な表現その他の尊重されるべき表現の自由はここで侵害されることがないように担保されているのかなと、このように考えております。
○真山勇一君 やっぱり私が気になるのは、法律というものは一旦できてしまうと、基本法であれ理念法であれ、独り歩きし始めるところがあると、やはりその辺の厳密な部分というのはしっかりとしていかなければならないというふうな思いは持っております。
 ただ、今おっしゃったように、差別、ヘイトスピーチ、いろんな形があるわけで、それをどういうふうに表現していくか、この難しさというのは感じておりますので、この基本法、理念法、これに従って現実的にはどんなふうな対応していくかということを今後見守っていきたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。発議者の方には以上で質問を終わらせていただいて、次は政府の方にお伺いしたいと思うんですが。
 発議者に今伺ったことの中からも出てきているわけですけれども、今回のヘイトスピーチ、もうこの委員会で有田委員が本当に何度も何度も取り上げて質問されていると思うんですが、先ほどもちょっと出てきましたけれども、その調査がまだ、実際に地方自治体がやっているものについての分析とか情報収集、これについても検討している、それから調査方法とか内容についても検討している、検討している検討していると言うだけなんですけれども、やはりもうその時期は通り越しているんじゃないかと。もう少しやはり法務省としても積極的にこの問題に対して扱いをしてもいいのではないかという感じがするんですけれども、その辺りはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
○政府参考人(岡村和美君) まさに実態調査につきましては、慎重かつ真剣に方法、内容、いろいろ検討しておりますので、大変申し訳ないのですが、現段階で明確な形で御報告申し上げることが困難であります。ただ、本当に鋭意検討しております。
○真山勇一君 それじゃ、ヘイトスピーチというのがあるという認識はお持ちなのか。それから、もし認識をお持ちならば、ヘイトスピーチというものの定義というのは、これこの委員会でも何回か出ている話ですけれども、もう一回これを改めてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(岡村和美君) いわゆるヘイトスピーチについて、その概念は必ずしも確立されたものではないと思われますが、近時のデモなどにおいて、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動が行われているという事実があったことは認識いたしております。
 さらに、当局がヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動の対象として念頭に置いておりますものは、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動であります。
○真山勇一君 今、あったとおっしゃったんだけれども、やっぱりあったんじゃなくてあるんだと思うんですよね。今もそれはあると思うんです。
 やはり、調査はまだこれから検討中ということで、それからヘイトスピーチがあるかどうかの認識というのは、今述べていただいたんですが、持っておられる。私は持っていて当然だと思うんですよね。定義だってやっぱり多分持っていらっしゃると思うんですよ。
 なぜかというと、先ほど有田委員から示された、ちょっとこの資料を私も使わせていただきたいんですが、「ヘイトスピーチ、許さない。」、この黄色のポスター、これ法務省が作られているポスターですね。
 私は、やっぱりこういうことで、いわゆる国が呼びかけていくということ、これは大事なことだというふうに思っていますし、これを評価するんですけれども、こういうポスターを作っている以上は、やはりヘイトスピーチというものに対して、ヘイトスピーチは許さないと言っているんですから、ヘイトスピーチの認識と同時に、ヘイトスピーチというのはこうだというものが、しかるべきものがあっていいんじゃないか。それから、これだけのポスターでいわゆる啓発運動をやっているんですから、もっと積極的に例えば調査とか研究も始めてもいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょう。
○政府参考人(岡村和美君) 現在の法制度、そして私ども法務省の職責の下で許されている範囲の啓発活動につきましては、予算の事情などもありますが、精いっぱい啓発活動に努めさせていただいております。
○真山勇一君 私も、法務省、国の、政府の全体的な施策の中でいろんなことを進めておるという意味でいえば、このポスターを作ったことさえちょっとびっくりするぐらいですね。この委員会でヘイトスピーチ問題取り上げられて、大変何か尻込みをしているような感じがあるけれども、でも、少なくともこういうもので啓発活動に乗り出しているということは、やはりできる範囲でやろうと、私はこれ評価をいたします。
 ただ、この枚数、一万六千枚ぐらいというふうに言われていますし、本当に、本当にちっちゃなことしかまだ始まっていない。何とかここで逆な見方をすればお茶を濁そうかなとしているふうに思われかねないと思うんですよね。やはりここは覚悟を決めて、このヘイトスピーチ、そういう先ほどおっしゃったみたいな認識があるのなら、これは国際的な問題もありますし、是非進めていくべきことではないかというふうに私は思っています。
 その国際的な問題といいますと、先ほども出ましたけれども、人種差別撤廃条約にも入っておりますし、それから、もう本当にここのところ何度も何度も国連の人権委員会ですとか人種差別撤廃委員会から勧告、見解、受けているわけですね。そうした中で、まだやはりそういうところから見ると、去年、いよいよ最終見解というのが出されているにもかかわらず、まだ政府、法務省、対応が鈍い。いつも法律のこういう議論をするときには、これからのやはり時代にはスピード感が大事だということを本当に繰り返されていますね。その辺り、もう少しスピード感を持ってもいいと思うんですけれども、例えば人種差別撤廃委員会の最終見解などについて、法務省というのはどういうふうに思われているんでしょうか。
○政府参考人(岡村和美君) 人種差別撤廃委員会から公表された最終見解において、我が国政府に対し、ヘイトスピーチに対処する適切な措置をとるよう求める旨の勧告が盛り込まれたことを十分承知いたしております。
 私ども法務省の人権擁護機関では、特定の民族や国籍の人々を排除しようとする言動に対し、粘り強くかつ地道な啓発活動を通じて社会全体の人権意識を高め、こうした言動が許されないことであるという認識を醸成することにより、偏見や差別の解消につなげていくことが重要と考え、啓発活動に積極的に取り組んでいるところであります。
 具体的には、ヘイトスピーチを許さないといったメッセージをポスター等各種媒体において明確に示すとともに、ヘイトスピーチによる被害などの人権に関する問題の相談窓口を分かりやすく周知するなどしております。例えば、スポット映像をインターネット上の動画サイト、ユーチューブの法務省チャンネルで配信しておりますほか、東京、大阪を中心としたJRの主要駅構内におけるデジタルサイネージといった電子広告も実施いたしました。引き続き努力してまいります。
○真山勇一君 様々な形で少しずつ始まっているということは分かるんですけれども、やはり今回の議員立法でこのヘイトスピーチ法案が出されたというのは、こちらとしては多少、政府、法務省のこれまでのやり方、じりじりして、もう堪忍袋の緒が切れて、こちらから法案を、じゃ、出すんだというふうになっているわけですね。
 ですから、こういう法案が出されたやっぱり一つの大きなこれは転機だと思いますし、先ほどの話も出ましたけれども、オリンピックという大きなまた国際舞台も日本で用意されているわけですし、そのときに海外から日本がどういうふうに見られるのか、見られているのか、そういうところもしっかりと捉えながら、こうした法案、特に一般的にもうヘイトスピーチ、私はいろいろ伺いましたけれども、ヘイトスピーチというのは許されないとか、ヘイトスピーチというのはどういうものかという大枠の概念とかイメージというのは、みんな多分国民的には共有できている部分があるんじゃないかと思うんですね。
 ですから、こういう法案がやっとここで出されてくるというのは、やはり少し遅きに失しているのかなというような印象も受けております。これをきっかけに、少しでも進んでいくということを私は期待しているというふうに申し上げたいと思いますので、是非、法務省の方も今後も引き続きよろしくお願いをいたします。
 ここで、もう少しちょっと触れておきたい、伺っておきたい問題がもう一つあるので、これも伺っておきたいかなというふうに思っております。
 こっちは、今、国内のヘイトスピーチという問題でした。これと一方、これは外務省にお伺いした方がいいんでしょうか、海外にちょっと目をやっていただきたいと思うんですね。海外で例えば日の丸が燃やされたり、それから日本人が罵倒されたり悪口を言われたりという、そういうことも例えばテレビの映像なんかで伝えられてくるわけですね。そういうものについての、例えば海外でのこうしたものについての認識というか、そういうものは日本政府として持っておられるんでしょうか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 先ほど答弁ございましたように、我が国におきまして、いわゆるヘイトスピーチの概念、定義がいまだ確立しているわけではございませんが、御指摘のとおり、他の外国において日本国旗を燃やしたり、それ以外の在留邦人に対する嫌がらせの事案等が発生しているのは事実でございます。
 一例を挙げますれば、平成二十四年当時、我が国が尖閣諸島の所有権を私人から日本政府に移した際には、在外公館の前で日章旗を汚損、焼却するような事案が発生したわけでございます。
 また、例えば韓国におきまして、竹島に絡んで日本政府に対する抗議文を手交すべく我が方の大使館に向かってデモ行進していたデモ隊が、途中、機動隊に進路を塞がれた際に、その腹いせにと申しますか、そこで自作の日本国旗に火を付けたといったような事案も分かっているわけでございます。
 こういったような事案は在外公館周辺で起こっていることでございますので、我が方も直接把握することができます。他方で、市中でどういうスピーチが行われているか、ないしはどういう言論が流通しているか、我々、公開情報とか主要新聞とかなどにおいてはできるだけモニターするようにしているところでございます。
 それから、在留邦人に対する、特に子女に対する嫌がらせでございますが、こういったようなことにつきましてもいろいろと間接的にうわさとか話も聞こえてきているところでございまして、仮にそういうようなことがあれば極めてゆゆしき問題であり、到底看過できるものではございません。
 そういったような問題意識もございまして、特に近年、在留邦人の方々に対して、子女に対する嫌がらせ、いじめ等があった場合に、報告といいますか、相談していただけるような窓口を在外公館に設けて、情報提供をお願いしているところでございます。具体的な御自分の例えばお子様の名前を挙げての御相談というようなものは、今のところ在外公館、なかなか相談しにくいということもあるのかもしれませんけれども、報告、確認されておりませんけれども、これからも引き続きそういった面についてきっちり情報収集していきたいと考えております。
○真山勇一君 ありがとうございました。
 なぜ私、ちょっとこれお伺いしたかったかというと、やはり今お答えの中で、答弁の中で、そういうような日本人に対する海外でのいわゆるヘイトスピーチ的なものがあるとしたら、それはゆゆしき問題であって看過できないと言っていますね。やっぱりそういう問題だと思うんですね。自分がやられたらそういうふうに思うわけです。特に、自国の国民だからそういう思いがあると思います。
 つまり、人のふり見て我が身を直せみたいなところで、やはり今国内で行われているヘイトスピーチもそうだというふうに思うんですね。被害に遭っている方から見れば、やはりそれはゆゆしき問題であり看過できないという問題になってくるんじゃないかなというふうに思っております。
 ですから、日本という国が人権というものに対してどういうふうなスタンス、立ち位置でこの問題に対応していくのかということをやっぱり考えていかなくちゃいけない問題ではないかなというふうに思っています。ですから、なおさら国内のことについてはきちんとやるということが何よりも外から日本がどう見られるかということにもつながってくる、そんな思いをしております。
 まだ、これは本当に基本法、理念法なので、ここがスタートだというふうに思いますので、これからも私も、いろんな、本当にこれヘイトスピーチというのは、小川委員の発言もありましたように、広いし、そう簡単に決められないものなので、これからもやっぱり徹底的に議論をさせていただきたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   正午休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、豊田俊郎君が委員を辞任され、その補欠として石田昌宏君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 休憩前に引き続き、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日、ここまでの審議を通じても、この法案を国会で大いに議論するということがとても大事なことだと、改めて私思っているんですね。
 そこで、まず大臣に、人種差別撤廃条約の重みについてお尋ねをしたいと思うんです。
 御存じのとおり、昨年の八月二十九日に国連人種差別撤廃委員会の総括所見が示されたわけですね。そのことは、この間の我が国における深刻なヘイトスピーチの蔓延が国際人権基準に照らしても看過できない状況にあるということを示していると思うんです。差別と暴力をあおる民族排外主義をスローガンにして、特定の民族や人種、集団、とりわけ在日朝鮮人、韓国人の人々を罵って、暴力を扇動して排斥する、こうした言動は絶対に根絶をしなきゃいけない。ヘイトスピーチは断固として根絶をしなきゃいけない。これは共通認識にもはやなったと思うんですね。
 そこで、この条約の批准国として、政府はこの委員会勧告の諸点について改善に向けて努力をする義務を負う立場にある。その中心的な役割を担う法務大臣としての所感と決意をお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 昨年の八月に国連の人種差別撤廃委員会から公表されました最終見解におきまして、我が国に対しまして、ヘイトスピーチに対処する適切な措置をとるよう求める旨の勧告が盛り込まれたということでございます。特定の民族、そして国籍の人々を排除しようとする言動、これにつきましては、そうした人々の尊厳を大きく傷つけ、また、そうした人々に対する差別意識を生じさせることにつながりかねないと。大変残念であり、また、あってはならないことだというふうに思っているところでございます。
 このような言動に対しましては、現行法を適切に適用して対処すると同時に、粘り強くかつ地道な啓発活動を通じまして社会全体の人権意識をしっかりと高め、こうした言動が許されないということにつきましてその認識を醸成していくということが偏見や差別の解消につながる、まさに、おっしゃったヘイトスピーチの根絶につながるというふうに考えるところでございます。
 法務省といたしましても、一人一人の人としての尊厳が守られるような、豊かなそして安心できる成熟した社会を形成するためにも、啓蒙啓発活動につきましては積極的に取り組んでまいる所存でございます。
○仁比聡平君 大臣の今の御答弁を伺いましても、この委員会を始めとした国会の議論、そして国民的な取組が政府の認識も前進をさせてきた、あるいは明確にしてきた部分が私はあるんじゃないかというふうにも思うんですね。
 この人種差別撤廃条約の重みについてもう一つお伺いをしたいのは、外務省においでいただきましたけれども、なぜ、この人種差別が世界で禁じられているのか、国際人権基準の問題として、こうして許されないとされているのか。そこには、こうした排外主義的な言動が、個々の人権侵害はもとより、民族や人種、集団への暴力を激化させ、対立と紛争を引き起こす、ひいては、戦争にまで至る危険がある。そうしたことが、典型的にはナチス・ドイツ、また戦前の日本の歴史は教えていると言うべきだからだと私は思います。この人種等差別を禁止する理由や精神について、条約が触れているところはありませんか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 ただいま委員から御指摘のあった条約の中で触れられているところというお話でございますが、人種差別撤廃条約の序文の七パラに、人種、皮膚の色又は種族的出身を理由とする人間の差別が諸国間の友好かつ平和的な関係に対する障害となること並びに諸国民の間の平和及び安全並びに同一の国家内に共存している人々の調和をも害するおそれがあることを再確認し、と規定しているところでございます。
○仁比聡平君 第七パラグラフはそのとおりであり、その前の第六パラグラフには、人種的相違に基づく優越性のいかなる理論も科学的に誤りであり、道徳的に非難されるべきであり及び社会的に不正かつ危険であること並びに理論上又は実際上、いかなる場所においても、人種差別を正当化することはできないことを確信するというこの理念が人種差別撤廃条約の精神なんですね。
 これを踏みにじるヘイトスピーチを根絶することは、これは立法措置も含めて政治の重い責任であって、私はそうした立場からこの委員会でも議論をさせていただいてきました。
 そこで、法案について発議者にお尋ねをしたいと思うんですけれども、今日お尋ねをしておきたいと思うのは、第三条の関係、人種等を理由とする差別の禁止等の基本原則という条文に関してなんですけれども、先ほど来議論が続いている条文でもあると思います。
 この特定の者に対する不当な差別的取扱いあるいは不当な差別的言動と、それから不特定の者に対する不当な差別的言動、これ大きく二つにお分けになって、その特定の者に対する行為の定義といいますか、要件として、その者の人種等を理由とする侮辱、これは少し理解ができるんですけれども、嫌がらせその他の不当な差別的言動ということで、嫌がらせその他のという条文になっているわけですね。
 この嫌がらせという意義というのは、これいろんな中身をどう考えるのかにもよるのかもしれないんですけれども、現実に問題になっている我が国におけるヘイトスピーチ、ヘイトデモというのから考えると、嫌がらせというものとは異質なのではないか。
 その次の、不特定の者に対する許されない行為の用語としては、それらの者に著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的というのがあるんですけれども、この著しく不安というのはまだ分かるかもしれないが、迷惑という言葉で言いますと、鶴橋やあるいは大久保で現に行われてきたヘイトスピーチという焦点からはちょっとこう離れるというよりも、そこが明確ではないのではないかという思いもあるんですが、これらの条文案の意義というのはどういうことなんでしょうか。
○小川敏夫君 まず、特定の者に対しては侮辱、嫌がらせという用語を使っていると。不特定の者については不安、迷惑という用語を使っておりますが、特定の者が相手ですと、侮辱とか嫌がらせは特定の者に対する行為としてかなり限定、限定というか、まさにその対象が特定されているというような言葉の使い方だというふうに思います。
 不特定の者が相手ですと、侮辱という個別の行為の対象としてそぐわしいかどうか。むしろ、対象が不特定ですと、もう少しそれらに対する言葉も、侮辱という個別的な言葉よりは、やはり不安というもう少し幅広な用語の方がふさわしいのかなと、このような趣旨で不安あるいは迷惑という言葉を使っておるわけですが。
 基本的な趣旨としましては、やはり人種等を理由とする、そういう属性を持っている方たちに対して不快な感情を起こさせる、あるいは何らかの困難な状況を想起させる、そうしたことを相対的に表現する言葉であって、本質的な意味するところの違いはないというふうに考えております。
○仁比聡平君 今の御答弁の前提にあるのが、政府も今日も繰り返しておっしゃっているんですけれども、いわゆるヘイトスピーチ、その概念は明確ではないと政府がよく答弁をされますが、その前提に昨年の秋の時点でこうした案も御準備された提案者ももしかしたら立っておられるのか、先ほど小川発議者からも、午前中、一言そういう御答弁もあったんですけれども、私、そこを、私たち、この国会でもっと議論できるんじゃないかと思っているんですね。
 つまり、ヘイトスピーチという概念というのは、この間の取組、とりわけ現場でのヘイトスピーチやヘイトデモをやめさせるカウンターの皆さんの行動の現場や、あるいは全国各地の自治体が議会意見書として百九十ですよね、午前中紹介がありましたけれども。加えて、条例案を独自に議論をすると。そうした動きの中で、何が許されないのかという焦点は、私ははっきりしてきたんではないかと思うんです。
 その焦点といいますのは、例えば、ある条例策定の取組の中で紹介をされている、人種又は民族などの特定の属性を有する個人又は集団に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力を扇動するということを明らかに目的とし、それが権利、自由の制限をすることによって社会からの排除、法務省の使われる言葉で言いますと排斥ですね、これを目的とするものだと、こういう特徴付けというのは、私、そのとおりだなと思うんですよね。
 こうしたヘイトスピーチやヘイトデモというのが許されないのは、社会からその特定の方々を排除するということが、単なる言葉ではなくて、個人の尊厳や権利、自由の基礎にあるアイデンティティーそのものを否定してしまう、存在を否定し、この社会から排除する、ここに一番の焦点があるんじゃないかと思うんですね。
 この何が許されないのかということを明確にすることが、例えば法としてこれを定めるとなれば、法がこれを許さないとしているということを明確にすることが根絶への大きな力になると思うんですが、いかがでしょうか。
○小川敏夫君 委員が御指摘のとおり、社会から排除する、そうしたことが言わばこの人種差別の一番きついといいますか典型的といいますか、そうした例、あってはならないその度合いが強いものだというふうに思いますが、ただ、排除するという意思がなくてもやはりヘイトスピーチに当たるような事例もあるんではないかと。こういうふうに考えますと、要件を、排除するという要件で絞ることなく、もう少し幅広くヘイトスピーチ全体を禁止できるような要件の定め方をしていきますと、そうした検討をした結果、このような規定の仕方になったと、このような経過でございます。
○仁比聡平君 先ほど来御答弁もあっているように、政府も、この半年ほどといいますか、昨年の秋以来、認識を随分明確にされてきておられて、概念は明確でないとおっしゃりながら、先ほどの大臣の御答弁にもありましたけれども、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動、これは、人々に不安感や嫌悪感を与えるだけではなく、差別意識を生じさせることにつながりかねないから許されないという趣旨の立場を鮮明にしてこられているんですね。
 このヘイトスピーチを根絶するということが我々に課せられている今目の前の大きな課題、重要な課題だということを考えると、ここに的を当てた会派を超えた合意をしっかりつくるということが私は大事なのではないか。
 しかも、その焦点を当てることが、ここは次の問いなんですけれども、恣意的な解釈を広げて濫用されるというおそれをなくすためには、これはもう本当に大事なことなんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○小川敏夫君 委員の御指摘は誠にそのとおりであると認識しております。
 今回のこの法案の第三条の構成の仕方の少し苦労話も聞いていただきますと、差別というものも、特定の者に対してという行為ですと、言わば特定の者に対して侮辱とか何らかのその権利侵害になる発言をするわけですから、これは表現の自由を制限するということは余りないのかなと。特定の被害者がいて、違法と評価される行為を直接するわけですから。ですから、特定の者に対してはこのような端的な書き方ができるわけでありますけれども、不特定の者に対しての表現を禁止するとなりますと、対象が不特定ですから、そうすると、これを幅広く全部禁止しますと、まさに表現の自由を制限してしまうという方向になってしまう危険性が大きいわけであります。
 そうしますと、不特定の者が相手の場合には、やはり、ただ単に客観的な行為だけでそういう差別的な行為があったら全部いけないのだというふうに広げますと、表現の自由、特に政治的な意味合いを持った表現の自由というものが制約されてしまうと。それはあってはならないということで、制約していく、まさに表現の自由を侵害しない範囲でヘイトスピーチというものを規制していかなくてはならないと。
 そういう意味で、不特定の者に対する規制につきましては、特定の者に対する規制といいますか、してはいけないという表現の仕方が、やはり目的というものを加えて、そこで表現の自由の侵害にならないような工夫をしておるわけであります。
 そうした中で、表現の自由がいたずらに制約されるということがないよう、目的という要件を加えて、ヘイトスピーチを禁止するというその目的を達しながら、一方で、表現の自由を侵害する、不当に制約するという方向には行かないような足かせもしてということを考えました両方の要素が調和するようなこういう規定になったわけでございます。
 もう一つこの法案の書きぶりのまた苦労話をさせていただきますと、一項は典型的な差別の禁止の規定でございます。ただ、これだけですとヘイトスピーチが入らないわけであります。すなわち、不特定の者に対するヘイトスピーチというものが入らない。しかし、やはりヘイトスピーチも人種差別に当たるとして許されない行為なんだということを具体的に明示する必要があるんではないか、特に、現下のヘイトスピーチが問題となっている状況の中では明示する必要があるのではないかと。
 そして、では、ヘイトスピーチを許されないものだと表現する中で、じゃ、ヘイトスピーチは何かというと、今行われているヘイトスピーチを禁止するためにはどういうふうに要件を構成したらいいかなと考えていった結果、このような第三条二項のような書きぶりになったと、こんな苦労と検討の結果でございます。
○仁比聡平君 そうした御苦労があってこの法案がこの場で議論になっているわけですから、私、その苦労は多としながら、だからこそ、この国会で大いに議論して、この法案の原案を考えられた時点から、私、この一年近くの間に相当な認識の深まりがあると思うんですよ。国会の党派を超えた議論、それから国民の皆さんの御意見もよく伺いながら、この定義を明確にするということがこの審議の重要な課題の一つだなと思います。
 引き続き議論をさせていただきたいと思うんですけれども、今、小川先生からのお話にもありましたけれども、現行法ということについて、ちょっと時間が迫ってきつつあるんですが、警察庁においでいただいています。これまで現行法で、例えば暴行罪あるいは脅迫罪、名誉毀損罪やあるいは威力業務妨害罪、こうした条項というのはあるんですよね。ところが、現場のヘイトデモのカウンターをされておられる方々からは、逆に、このヘイトをやっている集団を警察が守っていると、おかしいじゃないかという声が次々上がるわけですね。国会でお尋ねをすると、法と証拠に基づいて厳格に対応しておりますというような趣旨の御答弁があるんですけど、私、そこにおっしゃっている法とは何なのかということの認識をちょっと聞きたいんですね。
 民事事件ですけれども、先ほど来紹介のあっている京都朝鮮初級学校の事件があります。例えば、この高等裁判所の判決の一部を御紹介すると、本件活動に伴う業務妨害と名誉毀損は、いずれも、在日朝鮮人に対する差別意識を世間的に訴える意図の下、在日朝鮮人に対する差別的発言を織り交ぜてされたものであり、在日朝鮮人という民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権及び基本的自由の享有を妨げる目的を有するものと言えるから、全体として人種差別撤廃条約一条一項所定の人種差別に該当するものと言うほかないという判示なんですね。
 これ、行為の私は違法性の実質を示していると思うんですよ。これまでどんな運用を皆さんが現場でされているのかというのはあるのかもしれないけれども、つまり、侵害されている法益、この重みということを考えたらおのずから対応変わるはずなんじゃないのか。
 例えば、ヘイトデモに対して抗議をするそうした市民に対して、そのデモやスピーチの現場の集団の中から躍り出てきて、襲いかかってきて、市民が倒れ込んでけがをしてしまうとか、あるいは、博物館だったり資料館だったり、そうしたところでヘイトスピーチをずっとまき散らしながら居座って、管理者が出ていけと言うのにこれ出ていかないとか、こういうのは現行法によってももちろん制止するべきものではありませんか。
○政府参考人(塩川実喜夫君) 今議員お尋ねの件につきましての、まず警察の方の基本的なスタンスを御説明させていただきますと、警察は、ヘイトスピーチを行っていると批判されている右派系市民グループによるデモについて、トラブルから生じる違法行為の未然防止の観点から必要な警備措置を講じております。
 また、これらのデモに際し違法行為を認知した場合には厳正に対処しているところでありまして、ヘイトスピーチと言われる言動につきましては、個別の事案にもよりますが、例えば刑法の脅迫罪、威力業務妨害罪などが成立する場合には、議員御指摘のとおり、法と証拠に基づき厳正に対処しているところでありますし、今議員御指摘の京都の事案につきましても、これ平成二十一年には京都朝鮮第一初級学校の授業を妨害するなどした事件が発生しておりますが、これにつきまして威力業務妨害罪、名誉毀損罪等で十一人を検挙しております。
 いずれにしましても、厳正公平な立場から、違法行為がある場合にはこれに対して厳しく対処しているというところでございます。
○仁比聡平君 今の御答弁が本当にそのとおり現場でされていたら批判はないんだと思うんですよ。京都の事件で、どれだけ被害者の方々がこの刑事事件においても民事事件においても苦労して闘ってこられているかと。そういうことをやらないと助けてくれないのか、違法だと言わないのかということでしょう。
 提案者に、今回の法案は処罰の条項を新設しようとするものではないわけで、そういう意味では理念法なんですけれども、理念法としてヘイトスピーチは許されないと宣言することが私は刑事上も民事上も意味のあることだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○小川敏夫君 確かに、刑事上、民事上の中で仮にヘイトスピーチという行動に対しての評価が争われる場合については、それが許されないんだということを明確に示した基本となるものということで意味があると思います。
 また、これは理念法でありますが、この法に基づきまして国が施策を講じる、あるいは立法、条例等を制定する際などで、あるいは地方自治体などで公共の建物の使用規則を定めるといったような場合等におきまして、やはりこうした人種等の差別の禁止理念が法としてあるということを踏まえたこの内容を盛り込んだ内容の施策、あるいは法律、条例、規則等が定められていくということで、十分にその意義はあるものと考えております。
○仁比聡平君 そうした私たちの国会、立法府の政治的責任を本当に果たすということがとても大事だというふうに思っております。
 啓発活動を強化すべきだということについても法務省にお尋ねしようと思っておりましたが、ちょっと時間がなくなりまして、先ほど来議論があっている実態調査、検討としか今日はおっしゃらないんだけれども、実際に自治体の取組の中で、どんなひどいものなのかということははっきりしてきていると思うんですよ、御答弁ができなくても。それに応えた、その実態にふさわしい啓発活動の規模を来年度予算案で必ず勝ち取ってもらいたいということは、これは要望しておきます。
 最後に、大臣に、こうした在日朝鮮人の方々に対するヘイトスピーチの論理に使われている在日朝鮮人の法的地位についての認識を改めて伺いたいと思います。
 在特会、排外主義的団体在特会が、あたかも隠された特権であるかのように特別永住資格を持ち出す。これは全くの誤りであると、私はさきの委員会でこれは明らかにいたしました。九五年の村山談話、あるいは九八年の日韓パートナーシップ宣言を始めとして、こうした一九一〇年の韓国併合以来の侵略と植民地支配に対する痛切なおわび、反省という上に立って、九八年の日韓パートナーシップ宣言では、在日韓国人が、日韓両国国民の相互交流、相互理解のための懸け橋としての役割を担い得るという認識に立って今後両国間の関係を発展させたいと宣言をしているわけですね。ここに対するヘイトスピーチというのは逆流にほかならない。
 ところが、一九六五年、法務省の入管局長が「在日韓国人の待遇問題について」という論文の中で、外国人に対しいかなる法律上の取扱いを与え、自国民に対するのといかに異なる処遇を行うかというような事項は、本来、我が国が自由に決定すべき事項であることは論をまたないなどの議論をされ、吉田首相がマッカーサー宛ての書簡の中で、在日朝鮮人はその半数は不法入国であり、日本経済の復興に全く貢献をしておらず、犯罪分子が大きな割合を占め、最も悪辣な種類の政治犯罪を犯す傾向が強いなどなど、敵視、蔑視するこうした政策を取ってきた。このことを私、一掃することがこれからの未来に向けての政治の責任ではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○委員長(魚住裕一郎君) 上川法務大臣、時間ですので、答弁は簡潔に願います。
○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員から、在日韓国・朝鮮人の皆さんに対しましての施策をめぐりまして、歴史的な経緯につきまして御指摘をいただいたものというふうに思っているところでございます。
 ヘイトスピーチを根絶すると、こういう目的の中で、こうしたヘイトスピーチの問題が発生する背景ということに思いを致すと、こうした様々な要因も含めまして、しっかりとそれにどう対応するかということも含めて対応していかなければいけないというふうに思っております。もとより特定の国籍、民族の人々を排斥をする差別的言動につきましては、その人々の尊厳を傷つけたり、あるいは差別意識を生じさせることにつながりかねない大変重大な問題があるわけでありまして、これはあってはならないことというふうに思っております。
 引き続き、法務省といたしましても、ヘイトスピーチが許されないものであると、そうした強い姿勢の下で、効果的な各種啓蒙啓発活動にしっかりと取り組んでまいる所存でございます。
○仁比聡平君 終わります。
○田中茂君 日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。
 今回、人種差別撤廃施策推進法案作成に当たり、小川先生、前川先生、また関与された議員の皆さん、大変御尽力いただき、心から感謝申し上げます。
 今回、この法案を提出されてかなり社会的反響を呼んでおりますが、先ほど猪口先生おっしゃったように、啓発活動、非常に大事だとは思っております。ある意味じゃ、これも啓発活動の一環になったのではないかと、私はそう評価はしております。
 そこで、まず第一の質問でありますが、今回の法案は平成二十四年に閣議決定された人権委員会設置法案及び人権救済機関設置法案に続くものであるのではと、そう拝察しますが、それとの関連も踏まえ、今回の法案提出に関する背景と意図について改めて説明をお伺いしたいと思います。
○委員以外の議員(前川清成君) 田中委員からは大変親切なお言葉を賜りまして、本当にありがとうございました。中曽根元総理の秘書として長らくの政治経験をお積みになって、是非、引き続き御指導賜りますようお願い申し上げたいと思います。
 今委員からお話がございましたように、お隣の小川委員は民主党政権で法務大臣をお務めになられました。その民主党政権で人権委員会設置法というのを閣議決定させていただきました。結局、衆議院の解散によって廃案となってしまいましたけれども、この人権委員会設置法と今回の法案と、広い意味では、差別があってはならない、その差別の元種を世の中からなくしていかなければならない、広い、底辺の意味においては共通しているかと思います。
 ただ、人権委員会設置法は、人権委員会というのを設けまして、個別具体的な人権侵害事案も射程に置きまして、その個別具体的な事件について調査をしたり、調査に基づいて告発をしたり、あるいは説示をしたり、様々な具体的な活動を伴ったものでございます。
 しかし、今回の法案は個別の事案に対する具体的な救済というのは射程に入れておりません。法文の中にもありますけれども、基本原則を定めるということにとどまっておりまして、先ほどからお話がありますように、基本法でありあるいは理念法でございます。その意味において、人権委員会設置法と今回の法案、これは背景も内容も大きく異なるのではないか、こんなふうに考えております。
○田中茂君 ありがとうございます。背景としてはよく理解するものであります。
 次の質問なんですが、先ほど来、私も最後の方になりましたのでかなり重なっておりますので、私の質問としては、このヘイトスピーチの定義、その辺をまずはお聞きして、ただ、私自身は、このヘイトスピーチの定義というのはなかなか難しいのではないかと。先ほど来、皆さんおっしゃっていましたが、どこからがヘイトスピーチなのか、その価値判断は人によって様々でもあるわけです。その境界線を明確にして法規制をすることは極めて難しい、私はそう思ってはおります。
 ただ、先ほども仁比先生、ちょっと触れられたんですが、著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的、この辺も具体的にはどのような状況を想定しているのか、その辺の線引き誰がするのか、不明確でもあるわけです。そういうことを考えるとなかなか難しいのではということで質問をしようと思ったんですが、先ほど先生がその苦労話をしていただきましたので、この辺の質問は割愛させていただきたいと思います。
 そこで、次の質問として、諸外国において、ヘイトスピーチを禁止するようなものは人種差別禁止法に当たるのかもしれませんが、それに関連して、現在世界の各国ではどのような規制が行われているのか。例えば、欧州、北米を含むOECD各国の法規制については、大まかで結構ですので、現況を教えていただけませんでしょうか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 OECD加盟各国のそれぞれの法体制につきましては、固有の歴史的な体験を背景にいたしましてそれぞれの法制度、法体系を有しておりますので、必ずしもその制度の詳細につき全て把握できているわけではございません。
 その前提で申し上げますれば、外務省において調査を行った範囲では、OECD全加盟国三十四か国のうち大多数の加盟国においては、人種等を理由に誹謗中傷する言動又は人種等を理由とする差別を扇動、助長する言動を規制する何らかの法令があり、うち三十か国において何らかの罰則を設けているものと承知しております。
 他方、韓国及び少なくとも連邦法レベルの米国におきましては、人種等を理由に誹謗中傷する言動又は人種等を理由とする差別を扇動、助長する言動を規制する法令は存在していないというふうに承知しております。
○田中茂君 ありがとうございます。
 次に質問させていただきますが、第三条一項二号に、特定の者について、その者の人種等を理由とする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動とありますが、この侮辱や嫌がらせについて、過去、ヘイトスピーチに関連して侮辱罪や名誉毀損罪などを含む刑事事件があったかどうか、あればそれは何であったかをお聞かせいただけませんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のような事案といたしましては、被告人四名が共謀の上、平成二十一年十二月、京都市の京都朝鮮第一初級学校付近及びその近くの公園におきまして、同校校長らに向かって怒声を張り上げ、拡声機を用いるなどして、北朝鮮のスパイ養成機関、朝鮮学校を日本からたたき出せ、そもそもこの学校の土地も不法占拠なんですよ、ろくでなしの朝鮮学校を日本からたたき出せなどと怒号して、同公園内に置かれていた物品を倒すなどして喧騒を生じさせたことにつきまして、威力業務妨害罪、侮辱罪等によりいずれも有罪判決を受けた、こういった事案があるものと承知しております。
○田中茂君 それ以前には、こういう刑事事件に絡む、ヘイトスピーチを含めての、関連しての刑事事件というものはなかったんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) これは一つの事例として挙げさせていただきましたが、それ以前について網羅的にこういったものがなかったかどうかについては把握をしておりません。
○田中茂君 次の質問に移らさせていただきます。
 先ほどの割愛した質問に関連しますが、不当な差別的言動という表現の中の不当、先ほど矢倉先生、同じような質問をされましたが、私は若干角度を変えて質問をさせていただきます。
 その不当という言葉ですが、誰がそれをどういう形で判断するかについては、先ほどおっしゃっていたようになかなか難しいとは思います。不当に関する定義もありません。どこからどこまでが不当でどこから先が不当ではないのか、その受け止め方にも個人差があると思います。また時代性もあるかもしれません。非常に主観的な要素が含まれると思うわけで、そういった内容に対して、法律によって主観的判断に対して線引きをすることには限界があるのではと、私はそう思っておりますが、誰がどのような形で不当であるという判断をするのか。
 また、主観的あるいはバイアスが掛かった価値判断が取り込まれた場合に、本法案の第二章、基本的施策の第十三条の人権教育の充実等の教育活動において洗脳的な刷り込みが行われるのではないかという危惧もありますが、それらの点を含めて、お考えをお聞かせください。
○小川敏夫君 幾つか順番に答弁させていただきます。まず、不当な差別的取扱いあるいは不当な差別的言動という点のこの不当ということでございますが、元々この差別的取扱いも差別的言動、いわゆる差別行為そのものが許されないのであります。それについて更に不当という言葉を設けたのは、不当でないような区別をすることがある。
 もう少し具体的に言いますと、行政などが、そうした差別を受けるような属性を持っている方が社会的に弱い立場にあるときに、そうした方たちに対して何らかの支援をするというような行政を行うことがあるわけでございます。そうした場合、それはほかの人と比べて異なった扱いをするわけですから差別扱いになるわけであります。ただ、この差別扱いは、決して違法、不当な差別扱いではなくて、むしろ行政の在り方として、合目的性を有する正当な区別であるわけでございます。
 ですから、そうした差別といいますか区別といいますか、そういう合理性を有した区別も言葉としてはありますので、そうした合理性を有する区別を除いた本来的な許されない差別という意味で、不当なという修飾語を付けたわけでございます。
 ですから、この不当なというのは、あるケースにおいて不当かどうかということよりも、そうした行政などで合理的な区別をする場合には、それはここの法律で言う禁止される行為ではないよということを示すために用いた言葉でございますので、誰かがこの不当をどういうふうに判断するかというところのものではないわけでございます。
 それから、しかし差別という行為の、差別、その違法性、すなわち許されない差別であるかどうかを誰が判断するのかという点の御指摘がございました。
 これは、例えばこの法律が刑罰法規でありますと、それは摘発する警察、起訴する検察、あるいは最終的にはそれを判決を下す裁判官が判断することになるわけでございますが、この法律では刑罰を置いておりませんので、その分野の判断というものは必要がないわけでございます。つまり、判断する場面が出てこないわけでございます。
 それから、行政的な面で、例えばこういう差別行為があったら行政庁がそれを規制すると。すぐその場でそれを規制して排除するとか、あるいはそれを行っている団体に対して何らかの処分をするとかいうような行政処分というものが伴いますと、その処分をする行政官が、これが許されるものか許されないものかといいますか、この法律に言うところの差別行為に当たるかどうかは判断するという場面があるわけでございます。ただ、この法律はそうした具体的な行政庁の処分というものも予定しておりません。ですから、そういう面での判断するという場面もないわけでございます。
 じゃ、一体何なんだということになりますけれども、これはあくまでも理念を定めた法律でございますので、この理念を生かして各省庁が何らかの行政的な施策を行う、あるいは国会が立法する、地方自治体が条例を作る、あるいは地方自治体が公の施設の使用規則を定めるという、そういうような場面場面におきまして、それぞれの、その施策を行うなら行政庁、立法なら国会が、あるいは条例であれば自治体が、そういう担当者が、そのレベルでこの理念を生かしてどのようなこの理念を盛り込んだ施策を講じていくか、規定をしていくかという、その場面においてその担当者が判断をしていくということになります。
 ただ、その場合には、個々具体的な事件を裁くという場面ではなくて、やはり総合的な施策の中で判断するべきことでありますので、そうすると、法律に適合するか適合しないかを誰かが具体的に判断する場面というのはこの法律においてはないのかなと、このように考えております。
 それから、教育の点でございますが、これも、教育と、あるいは啓発の在り方も、具体的にこういうことをしろとは書いておりません。差別がないようなという包括的な表現でございまして、それを実施するためにどういう教育をしろということは全く定めていないわけでありまして、これは、教育なら教育を行うその所掌の行政がこの理念を生かして、これを踏まえてその教育に関する方針をそこが公平に主体的に決めていくということでございますので、この法律が何かを、そうした行政の判断を、人種差別をしてはならないという理念を生かしたというところでは強制するのかもしれませんけれども、そこから先のそれを具体的にどのように教育に生かしていくかということにつきましては、それを実施する機関が公平にそして自主的に判断して行っていくことだというふうに思っております。そのような構成でございますので、この法律では、判断者が定まっていないからよく分からないという問題は生じないのかなと。
 それから、特に教育の場面で刷り込みとかいうことは、それは教育を行う場面でのその教育者の公平、自由な、自主的な判断に委ねておりますので、この法律がそうした偏った教育あるいは刷り込んだ教育ということにはならないのではないかと、このように考えております。
○田中茂君 ありがとうございます。
 大変御苦労をされているんだなという、お話聞いていまして、本当に法案を作るのは大変だなというのをしみじみ感じているわけであります。
 その部分でいえば、主観的な判断を求められる問題として、例えばパワハラとかセクハラ、マタニティーハラスメントとか、いろんなものが議論がされているとは思っております。ある人物によるある人物に対する言動がセーフかアウトかの判断というのは、人によって解釈や受け止め方も対応も違う、温度差があるもののケースがあると。一方、企業などは、組織の場合には、その中で例示列挙的な具体例を含めたガイドラインや第三者的な通報窓口が設けられることで対処されるというケースが多いと思っております。これは、あくまで被害者と加害者が、その利害関係がはっきりしているからそうなると思っておるんですね。この場合、その被害者と加害者がどうなるのか、その辺がかなり曖昧じゃないかな、その辺が非常に難しいのではないかということで、今そういう苦労をされているんじゃないかというのを拝察する次第であります。
 次の質問に移らさせていただきますが、今法案の第三条二項の著しく不安若しくは迷惑を覚えさせるや、不当な差別的言動をしてはならないことという、この著しく不安若しくは迷惑を覚えさせることの判断基準や境界どこに置くかが、その不当という基準をどこに置くか、あるいはどう取り扱うかが、これらがまさに課題になると思っておるわけであります。
 これに該当するような条項が諸外国にはどのような規定ぶりであるのか、お聞かせいただけませんでしょうか。
○政府参考人(下川眞樹太君) お答え申し上げます。
 各法制の詳細につき把握、全部できておるわけではないという前提で申し上げれば、例えばドイツでは、刑法の民族扇動罪に当たる行為として、公の平和を乱し得るような態様で、一つには、ある国籍、民族、宗教若しくは人種的起源によって特定される集団、国民の一部又は個人に対し、そのような特定の集団等に属していることを理由に憎悪をかき立て、又は暴力的若しくは恣意的な措置を求める、あるいは、特定の集団に属していることを理由に個人を冒涜し、悪意で侮辱し若しくは中傷することによりその人間の尊厳を害するといったようなことが挙げられております。
 また、フランスでは、出版の自由に関する法律の出自等を理由とする差別等の公然の扇動罪という罪に当たる行為としまして、一つには、公の場又は集会における演説、大声又は脅迫、また二つ目には、公の場又は集会において販売され又は展示される著作、印刷物、図画、この二つにより、その者の出自、特定の民族、国籍、人種、宗教への帰属、不帰属、性別等を理由とする差別、憎悪又は暴力の扇動といったようなことが挙げられているというふうに承知しております。
○田中茂君 ありがとうございます。
 各国でもいろんなことは考えていると、いろんな例があるということでありましょうが。
 ところで、最近インターネットで行われたヤフーの意識調査、ヘイトスピーチを法律で規制すべきかを見ると、規制すべきではないが五七・九%、規制すべきであるというのが三五・九%、そのほかが六・二%となっておりますが、これが民意とは全く思ってはおりませんが、現段階では、意識としては規制すべきではないという意見の方が大勢を占めていると思われます。この点に関してはどう思われておられますか。
○委員以外の議員(前川清成君) これまで何度も答えさせていただいておりますけれども、この法案は、一定の行為について刑罰を科したり、あるいは何らかのサンクションを与えたりという意味における規制を定めたものではございません。確かに、法案の三条に他人の権利利益を侵害してはならないとして書かせていただいておりますが、これは、国民の意識を高める、そして政府や地方自治体の施策がそれによって行われるというふうな基本原則を定めたものでございます。
 したがいまして、ヤフーの調査がどのように行われたのか委細は承知しておりませんけれども、ヘイトスピーチを規制すべきかという問いであったとすれば、その問い自体が正しくなかったのではないかと。この法案は規制するものではございませんので、そういう正しく法案の中身が世論調査に反映されていたらば、違う結果が得られたのではないかと思います。
 いずれにしても、国民の皆さん方にこの問題をもっと正しく、正確に伝える必要があろうかというふうに考えております。
○田中茂君 人種等を理由として侮辱する表現、人種等を理由とする不当な差別的扱いを撲滅するという趣旨、そのような理由で決して人を差別すべきではないという強い思いは共通していると思います。
 確かに、昨今問題となっているヘイトスピーチはその内容が極めて過激で、攻撃的で、人格をひどく傷つけるものであります。ただ、こういった差別や人権侵害について、解釈が、先ほど来言っているように、広範にわたり、その個々人の受け止め方や価値観、時代性によって常識も異なる分野だと感じています。
 例えば、意識調査のときに、その反対理由を見ますと、様々であります。憲法で保障されている表現、結社の自由を侵害するものであるという概念上の反対から、こういったものは法律で規制すべき問題ではなく、教育や人間性の範疇の問題であるという意見もあります。民主的な世論の力で克服すべき問題であると考える人もおります。また、言論の自由という面から見れば、法規制を掛けることは言論統制にもつながりかねないのではないかと。この点、私も若干危惧はするものでありますが。五十年前には特に問題視されていなかった表現も時代の経過とともに変化しているのも事実であります。そういった時代の流れも含め、今までの経過等捉えて総括する必要もあるのではないかと、そう考えております。
 だからこそ、規制ももちろん大事ですが、このヘイトスピーチの根本的原因に向き合い、それを根絶する努力も必要ではないかと、そう考えております。民族とか国籍を一くくりにして評価するような発言は許すべきではないという点は、私も完全に同意する次第であります。
 ただ、人権に対する捉え方や対応次第では逆差別にもつながりかねない危険もはらんでおります。法制度化したことによってむしろ本質的な問題の解決を遠くする可能性もあるかもしれません。これによってヘイトスピーチをなくすという問題の解決につながるのか、憲法で保障された表現の自由という権利を制約することにつながりはしないか、逆差別の懸念についてはどうか。また、表現の自由が保障されているといっても、先ほど来皆さんおっしゃっているように、表現の自由という権利には責任を伴うものもあります。公共の福祉に反しない限りはいいのではないか、規制もいいではないかという意見もあるかもしれません。
 この点について、法案作成に当たって留意された点、いろいろ検討されたと思いますが、その点についての率直な御意見をお聞かせいただけませんでしょうか。
○小川敏夫君 私も、こうしたヘイトスピーチ等を含めた人種的な差別行為というものが、それを許さないという社会全体の意識ができて、もう法律を作るまでもなく、そういうことは許されない、そして、そういう許されない行為は行われることがないというような社会が実現できれば、それが大変すばらしいことだというふうに思っております。
 ただ、残念ながら、ヘイトスピーチという行為が行われて、ほとんど多くの国民がこれはやはり許されない行為ではないかという評価をしていると思うのでありますけれども、実際には、法規制もできないし、またそれを明確に違法とするという法律もないという中で、なかなかこのヘイトスピーチがやまないという現実があるわけでございます。
 ですので、まず何よりも法で対応する前に国民の意識としてそうした差別がない社会というものを構成するということが最も大事だということは、もう委員御指摘のとおり、私も全く同感でございます。
 なお、この法律は、ヘイトスピーチということ、私どももヘイトスピーチを念頭に置いておりますので、ヘイトスピーチ規制法あるいは対策法という別の名称をいただいている部分もございますが、法律そのものはヘイトスピーチも含めた人種差別に対する基本法でございまして、そうした、そういう差別は許さない、ヘイトスピーチも許さないという社会を構成するための様々な施策、基本方針、こうしたことを国が取るように、あるいはそうした施策を検討する審議会を設けるなどの総合的な対策を講じた法律の内容になっております。
 したがいまして、こうしたヘイトスピーチを含めた人種的な差別的な行為、これは法律で規制するということも必要だけど、それよりも優先的にそうしたことがなされない社会を構築するということも、努力するための様々な施策もこの法案に盛り込まれているところでございます。
 何よりも、この法案ができる前に行政の方でそうした取組が完全な形でなされていれば私どもも立法するということには至らないんですけれども、残念ながら政府の方からはそうした対応がなされていないので、今回の立法に及んだという次第でございます。
 また、しばしば例となります京都朝鮮学校襲撃事件の判決で、判決は、表現の自由と、そして差別的な発言についての判断をしておりますが、ここで、この発言が表現の自由ということを排斥する理由として、憲法十三条、十四条一項や人種差別撤廃条約の趣旨に照らしということで、表現の自由として許されるものではないといってこのヘイトスピーチを違法だというふうに言っておるわけでありますけれども、法律がないから裁判所はいろいろ論理的に苦労して、憲法を持ち出して、人種差別撤廃条約を持ち出して、その趣旨に照らして違法だという判断をしておるわけです。
 ですから、こういう、そもそも端的に人種差別の言動あるいはヘイトスピーチは許されないんだという、こうした理念法があれば、裁判所ももっと端的にヘイトスピーチは違法だということが容易に判断できたのではないか。そうした意味では、なかなか苦労した判決も、こういう、そもそも人種差別の撤廃を定めた基本法がないことによって裁判所の判断も少し苦労している。しかし、こういった法律ができれば、司法の判断も、それから司法以外の様々な判断の場においてもしっかりと、差別は許されないという基本が、個々の判断の中で、施策の中で生かされていくのかなと、このように考えております。
○委員長(魚住裕一郎君) 田中君、時間です。
○田中茂君 ありがとうございます。
 人種等を理由とする差別は徹底的に撤廃し、社会的弱者の皆さんには配慮をするというのは、これは国際条約の理念でもありますので、それは私はもう同意する次第であります。
 ただ、その前提として、広い国民的な理解を得られるということが最も大事だと思っておりますので、その点を検討していただきながら今後も考えていただきたいと、そう思っております。よろしくお願いします。
 どうもありがとうございます。
○谷亮子君 谷亮子です。
 本日は、本年五月二十二日に、民主党及び社会民主党と無所属議員の皆様により本院に提出されました人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案につきまして、本法案の発議者の方々並びに、本日は大臣にも御出席いただいておりますが、政府の皆様に対しまして質疑を行わせていただきたいと思います。
 本法案は、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の理念に基づきまして、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策を総合的かつ一体的に推進するため、差別の禁止等の基本原則を定めるとともに、差別の防止に関し、国及び地方公共団体の責務、基本的施策その他の基本となる事項を定めるものであると承知いたしております。
 また、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、いわゆる人種差別撤廃条約へ我が国が一九九五年十二月に加入してから、本年で二十年が経過いたします。
 そこで、総論的に本法案の位置付けについて発議者の皆様にお伺いしたいと思います。
 人種差別撤廃条約へ我が国が加入してから二十年という、言わば一つの節目とも言える本年に、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案を提出するに至ったこれまでの経緯及び趣旨について、まず御説明をいただきたいと思います。
○小川敏夫君 やはり人種差別撤廃条約、これを承認しながら、二十年、それを受けた基本法がないということは、私としては政府が怠慢だったのではないかというふうに思います。
 まあ理想的な話として、法律を作るまでもなく、そうした差別がない社会がここに実現しているならそれはそれかもしれませんけれども、やはりヘイトスピーチもあり、そのヘイトスピーチを除いても、やはりいろんな人種差別に関する具体的な事件も起きておるわけでございますから、ですから、早急に政府として対応することが望ましかったのだと思いますが、現実にそうした対応がなされていないわけでございますので、これはやはり立法府の責任として、また良識ある参議院として、しっかりとこの条約の趣旨を受けた基本法を制定すべきではないかと。そして、現実に社会問題となっておりますヘイトスピーチなどの現に起きている行為に対してしっかりと対応できる、そうした法律を制定することが必要ではないかと、このような趣旨でございました。
○谷亮子君 御丁寧に御説明ありがとうございます。
 昨年八月に人種差別撤廃条約の遵守状況を監視する国連人種差別撤廃委員会から、人種差別を禁止する包括的な特別法の制定等を行うべきとの我が国への勧告がございました。そして、これまでも本委員会におきましては、人種差別等の質疑をこれまで拝聴させていただきましたけれども、現行法での対応には限界があるとの問題意識は、これは繰り返し指摘されてきたところでございました。
 こうした現状を踏まえた上で、本年五月二十二日に議員立法により本法案が提出されまして、その後の記者会見におきまして、発議者でいらっしゃいます小川先生におかれましては、本法案を人種差別撤廃条約を受けた基本法、また理念法という位置付けであるという御説明をされていらっしゃいます。
 その御説明は恐らく本法案の第一条や第五条に表れていると思いますが、そこで、人種差別撤廃条約を踏まえた内容が本法案の各規定に具体的にどのような形で示されているのか、また盛り込まれているのかについて御説明いただきたいと思います。
○小川敏夫君 なかなか答えにくい質問なんですけれども、基本的にはこの法律全部がその趣旨を生かした内容だというふうに思っておりますが。
 構成を概略説明させていただきますと、まず、基本原則としてそうした人種差別は許されない行為であるということを明確にする。そして次に、国や自治体の責務としてそうした差別がないような施策を講じるそうした責務を課す。このような構成になっております。
 また、審議会というものを、独立した審議会をつくって、そこで実態の調査、それから様々な取組に対しての意見を提言すると、そのような構成になっておりまして、そうした構造そのものが人種差別撤廃条約の趣旨を生かして、まさにそれを国内的に生かすための基本法的な位置付けにあるのだなと、このように考えております。
○谷亮子君 ただいま小川先生、発議者の方から御説明がございましたとおり、本法案は第二十条において人種等差別防止政策審議会を設置することとしておりますけれども、これは人種差別撤廃委員会が我が国に独立した国内人権機構の設置を勧告していることを受けて規定したものであるということでございますので、こうした規定に、本法案が人種差別撤廃条約を受けたこれは基本法であり、理念法であるという位置付けであるということが示されているというふうに考えます。
 また、本法案は人種差別という課題の解決のために必要な規定を置いた法案であるということが、ただいま発議者の小川先生からの御説明で理解することができたものであるというふうに思います。
 そして、続けて伺いたいと思いますが、人種差別撤廃条約を受けた基本法である、また理念法であるという位置付けとされるこの本法案が、今後更に審議が深まり、そして広がりを見せて成立をした場合、我が国から人種差別を根絶していくためにどのようなこれは役割を果たすとお考えになられますでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
○小川敏夫君 提案者といたしまして是非とも成立していただきたいと、成立を望んでおるところでございますけれども、基本的には理念法でございますので、具体的な処分あるいは具体的な手続というものを定めたものではございません。
 ですから、これからこの法が成立した後、国において差別をなくすための施策を講じる、あるいは国会において立法する、各自治体において条例を制定する。例えば、ヘイトスピーチ、デモ行進というような形でも行われておるわけでございますが、このデモ行進の許可等につきましては都道府県の条例で規定している場合が多いわけでございます。こうした条例の在り方についても、人種差別は許されないという精神盛り込んだ形で条例がまた制定されていくものだというふうに考えております。
 あるいは、公共的な建物の利用というものについては、その利用に関する規則というものを各自治体は定めておるわけでございます。その利用の規則を定めるに当たっても、このヘイトスピーチあるいは人種等の差別を許さないというこうした基本原則を盛り込んだ内容の規則が定められるという形において、人種差別を許さないというこの施策が次第次第に浸透していくということで具体的な効果を発揮していくものだと、このように考えております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 やはり、本法案は、第三条で人種等を理由とする不当な差別的行為などが禁止されておりまして、そうした差別が違法であるということを明らかにする本法案であるということを理解させていただきました。
 次に、人種差別における名誉毀損罪と侮辱罪関係について、これは発議者と政府の方にそれぞれお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 特定の個人、団体について不特定又は多数の認識できる状態で公然と事実を摘示することによって社会的評価を低下させた場合にはこれは名誉毀損罪が、また、公然と事実の摘示を伴わずに単に評価、判断を示すことによって社会的評価を低下させる場合には侮辱罪という、それぞれの犯罪の適用が成立し得ると言われております。
 こうした現状を踏まえた上で、本法案は理念法であり基本法であるということは十分承知いたしておりますが、この人種差別と、名誉毀損罪そして侮辱罪関係についてどのようにお考えになるのか、発議者と政府の方にお聞かせいただきたいと思います。
○小川敏夫君 私も国会で政府に対して、こうしたヘイトスピーチ等人種差別等につきましてどのような対応をするのかと質問したことがございます。それに対していただいている答弁は、決してヘイトスピーチ等は許されないという点ではいい回答をいただいたんでありますが、ではどのように対応するのかということになりますと、現行法を厳正に適用するということで対応したいという回答を政府からいただいております。
 ただ、様々にヘイトスピーチあるいは人種差別等が実際に起きておりましても、例えば京都の朝鮮学校襲撃事件のように、相手方が特定されておって、そして刑法の構成要件に該当する犯罪行為であれば、それは刑法で対応できる、刑事事件で対応できるということでありますが、しかし、今社会問題化しているこのヘイトスピーチの多くは、そうした刑法の犯罪には構成要件的には該当しないと。言わば、路上でそうした聞くに堪えないような差別的な言動を言いながら行進しているというような場合ですと、なかなか刑法では対応できないと。すなわち、別の言い方をすれば、現行法ではそれを処罰することも規制することもできないということでございます。
 そうしますと、政府の方で、ヘイトスピーチは許されないことなのだけれども、現行法で厳正に対応するといっても、現行法では対応できないから今こうした社会問題化しておるわけでございます。
 ですので、現行法では対応できないのはなぜかといいますと、やはり基本的にこうしたヘイトスピーチを含めた人種差別が法的に許されないことなんだ、違法なんだということを明確にした法律がないからということが非常に大きな原因でございますので、それを明確にしたこの法律を制定する必要を感じましたので今回提出させていただいたと、こういうような次第でございます。
○政府参考人(林眞琴君) こうした人種差別におきます現行法である刑法の侮辱罪、名誉毀損罪との関係については、一般論として申し上げれば、やはりその人種差別におけるある言動が特定の人種や国籍を有する方々に対する言動であって、それが特定の個人や団体について公然と事実を摘示してその名誉を毀損した場合には、刑法の名誉毀損罪、刑法二百三十条でございますが、これが成立し得るわけでございます。
 また、委員も御指摘ありましたが、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱したという場合においては、刑法の侮辱罪、刑法二百三十一条というものが成立し得ると考えております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま人種差別における名誉毀損罪そして侮辱罪との関係について発議者の方そして政府の方にそれぞれお考えをお示しいただきましたけれども、また、ただいま御答弁いただきました発議者である小川先生の方からは、やはり個別の事案によるとも思うんですね、そうした中で、やはり名誉毀損罪、侮辱罪に当たるような行為や発言があれば、それぞれの罪が適用される場合もあるということでございました。
 また、名誉毀損罪の場合は、他人の名誉を傷つけ損害を与えるということでございまして、これは民事上は、人の品性そして名声そして信用などについて社会的評価を違法に侵害することとされております。そしてまた、刑事上は、公然と不特定又は多数の人が知ることが可能な状態で、これは事実であれ、虚偽のうそ偽り、真実でないことを誤って故意に真実だとすることであれ、決め付けて、その人の品性又は能力などについて社会的評価を引き下げる、こうしたことは名誉毀損罪の対象とされるわけでございます。
 また、名誉毀損罪、侮辱罪共に、条文上、先ほど刑事局長からもお話ございましたけれども、公然とこれは行う、公然ととなっておりまして、公然と不特定又は多数の者が認識できる状態で成立するとなっておりますが、しかしながら、現在、日本国内におきましては、人種差別を禁止するための法的な規制はございませんし、また人種差別に対しまして法律で明文化されていないほか、また、罰則がないために、個々の事例における犯罪とされる適用をめぐる判断の際にこれは曖昧なものとされてしまうということが言われておりますし、そうした現状があるのではないかなというふうに考えております。
 また、安倍総理におかれましても、二〇一三年、そして二〇一四年、二〇一五年と、これは人種差別、ヘイトスピーチにつきまして、衆議院、参議院両方の本会議、またさらには委員会でもお考えを発言されてこられました。その中では、政府として、ヘイトスピーチや人種差別の根絶に向けて現行法を適切に運用して対処していくということを御答弁されていらっしゃいますが、まさにただいま小川先生の方、発議者の方からお話ございましたように、またその適切な対応というのが今浮いた状態にあるというような現状にあると思いますので、やはりそこは政府として適正な対応を今後御検討いただきたいということを申し上げたいというふうに思います。
 そこで、政府にお伺いしたいと思います。
 これまで政府は、ヘイトスピーチに関する法案について、各党における検討や国民的な議論の深まりを十分これは注視したいとの旨を答弁されていらっしゃいますが、今回提出されている法案につきまして、政府としての御所見をお伺いしたいと思います。
 また、今後、政府として人種差別撤廃条約への加入を受けての国内法整備を新たに行おうというお考えをお持ちでいらっしゃるのかということを最後にお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 本法案につきましては、議員立法という形で国会に提出されたものでございまして、法務大臣といたしましては、この立法府たる国会におきましての御議論の推移を見守ってまいりたいというふうに思っているところでございます。
 法務省といたしましては、これまでも、これからもということでございますけれども、外国人等に対する偏見や差別の解消に取り組んでいくということ、これは極めて重要なことであるというふうに考えておりまして、その意味で現行法の適切な適用、そして効果的な啓蒙啓発活動を通じて国民の皆さんの意識啓発にしっかりと取り組んでいく、そして、そうした行動をすることに対してしっかりと対応していかなければいけないというふうに思ってきたところでございます。
 ヘイトスピーチに関しまして国内法整備の必要性という御質問でございますが、これにつきましては、先ほど申し上げたとおり、法案がまさにこの国会で審議をされているということでございますので、その議論につきましてはその推移を見守ってまいりたいというふうに思っております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 やはり、本日、こうした形で議員立法によって本法案がこうして本委員会で審議されているということは、これは人種差別撤廃に対して大きな一歩であるというふうに、前進したというふうに考えておりますし、まさに、人種差別というのは社会的問題となっております。そうした状況で、やはり日本には人種差別があるということを認めることになるから人種差別の撤廃のための法律を作らないのか、それとも、日本には人種差別そのものはないと認識しているので人種差別の撤廃の法律は必要ないとお考えになっておられるのか、そうした声もあるわけでございます。
 そこで、やはり表現の自由との関係、またさらには罪刑法定主義との関係につきましては、いずれも日本国憲法との問題もありまして慎重な検討が必要であるということは十分私も理解いたしております。また、人種差別は現在進行しているという我が国における大きな課題の一つとなっている現状もございますので、政府におかれましても、今後、やはりこうした議員立法の法案の審議というものもこうして出てきておりますので、適正な対応をお願いして、私の質疑を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後二時二十二分散会