第189回国会 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第3号
平成二十七年四月十五日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月四日
    辞任         補欠選任
     難波 奨二君     江崎  孝君
     大門実紀史君     辰巳孝太郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         鴻池 祥肇君
    理 事
                大野 泰正君
                舞立 昇治君
                森 まさこ君
                尾立 源幸君
                平木 大作君
                藤巻 健史君
                辰巳孝太郎君
    委 員
                金子原二郎君
                関口 昌一君
                鶴保 庸介君
                西田 昌司君
                宮本 周司君
                山田 俊男君
                山本 順三君
                吉川ゆうみ君
                石上 俊雄君
                礒崎 哲史君
                江崎  孝君
                広田  一君
                安井美沙子君
                魚住裕一郎君
                中山 恭子君
                中西 健治君
                吉田 忠智君
   事務局側
       第二特別調査室
       長        山内 一宏君
   参考人
       慶應義塾大学経
       済学部教授    井手 英策君
       政策研究大学院
       大学教授     井堀 利宏君
       嘉悦大学ビジネ
       ス創造学部教授  高橋 洋一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関
 する調査
 (「デフレからの脱却と財政再建の在り方など
 経済状況について」のうち、経済の再生と財政
 再建の在り方(我が国の財政事情と財政再建へ
 の取組)について)
    ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る三月四日、大門実紀史君及び難波奨二君が委員を辞任され、その補欠として辰巳孝太郎君及び江崎孝君が選任されました。
    ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(鴻池祥肇君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に辰巳孝太郎君を指名いたします。
    ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。
 本日は、「デフレからの脱却と財政再建の在り方など経済状況について」のうち、「経済の再生と財政再建の在り方」に関し、我が国の財政事情と財政再建への取組について、参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学経済学部教授井手英策参考人、政策研究大学院大学教授井堀利宏参考人及び嘉悦大学ビジネス創造学部教授高橋洋一参考人でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 先生方には、御多忙の中、本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、皆様方からの忌憚のない御意見を頂戴をいたしまして、今後の調査の参考にしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、井手参考人、井堀参考人、高橋参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までをめどに質疑を行いますので、御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。
 なお、発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、井手参考人の御発言をお願い申し上げます。井手参考人。
○参考人(井手英策君) 慶應義塾大学の井手でございます。本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は財政再建の方向性についてお話をさせていただこうと思うのですが、結論と申しますか、私が一番今日申し上げたいことを先に申し上げますと、財政再建と申しましたときに、立ち所に、歳出を削減するという見解と、あとは歳入を増やす、つまり増税をするという見解とが鋭く対立するようになってまいります。しかしながら、今日申し上げたいと思っておりますのは、その歳出と歳入の関係を考えなければ本当の意味での財政再建は可能ではないのではないかということでございます。
 早速でございますが、中身に入らせていただきます。
 まず最初に、このスライドを御覧ください。(資料映写)これは、X軸の方に労働者の中で公務員が占める割合を示しております。Y軸の方が一般政府、つまり政府の歳出の規模を見たものでございます。一目見て御覧いただけるかと思うのですが、公務員の割合で見ても政府の規模で見ても、日本というのは実は非常に小さな政府であるということをまず御確認いただきたいと思います。
 これまで、財政の議論では必ず、何が無駄か、何を節約するかということを議論してきたわけでありますけれども、そもそも削る余地というのが非常に小さいということ、歳出削減だけで本当に財政再建ができるかということを考えなければならないということをここで指摘したいと思います。その上で、いわゆるワニの口と呼ばれる図で皆さん御存じのとおりだと思いますが、決定的に不足しているのは税収であるということ、したがいまして財政の規模を考えるのと同時に税収が小さいということを考えなければならない、こう思うわけであります。
 それと、日本の増税の歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。
 これは大変驚くべき事実なんでありますけれども、実は日本の増税というのは必ず減税とセットにして実施されてきました。つまり、減税を実施するためにはお金が必要で、そのお金を求めるために増税をするという組合せをやってきたのであります。言わば減税のために増税をするという非常に不思議な国でありまして、この始まりは七四年の二兆円減税なのですが、このときは法人税の増税とセットになっております。少し飛ばしまして八四年、この所得税の減税も法人税の増税とセットになっております。八九年、消費税の導入も所得税、法人税の減税とセットでありました。九七年の消費税増税がございましたが、これは九四年以降の所得税減税の代替財源でありました。
 したがいまして、基幹税、法人税、所得税、消費税の中のこの三つの税の純増税ですね、いわゆる増税を実施したのは八一年ということでありまして、実は今回の消費税の増税は三十数年ぶりの増税であったということであります。
 これほどまでに増税ができない国で財政が健全化するわけがそもそもないわけです。とするならば、私たちはそもそもの問いを変えなければいけないのではないかと思います。何が無駄か、何を節約するかということではなくて、なぜ日本ではこんなに増税が難しいのかということを考えなければならないと思うわけであります。
 増税のできない社会について、少し考えてみたいと思います。
 国民が増税を受け入れるとするならば、私は三つの条件が必要になるのではないかと思います。一つ目、他の納税者が自分と同様に納税義務をきちんと果たしているという信頼、つまりほかの人もちゃんと税金を払っているという信頼ですね。そして二つ目に、政府は責任を持ってきちんと税を集め、かつこれを適切に使用しているという政府への信頼。そして三つ目に、過去の人、例えば高齢者世代なんかがそうだと思いますけれども、過去の人たちはきちんと意味のある正しい借金をしてきたという信頼。このような信頼がなければ、人々は増税に対してノーと答えるのではないかと思います。
 したがいまして、租税抵抗が強い、税に対して反対する人が多い社会というのは、そもそも社会や政府に対する信頼感が弱いのではないのかということが予想されるわけであります。
 そういうことを頭に置きまして実際のデータを見てまいりますと、これはピュー・グローバル・アティチュード・サーベイというものから引っ張ってきたんですが、右側の、何色というんですかね、桃色というか、その色が付いている右側の色の方が人間は信頼できると答えた人の割合になります。
 実は、これ地域ごとに分かれていますが、アジアの中で最も社会に対する信頼度が低いのは日本であります。この四三という数字を御記憶いただきたいのですが、例えば他の先進国、カナダであれば七一、アメリカであれば五八、下に行きまして、ヨーロッパ、スウェーデンが七八ですかね、イギリスが六五、ドイツ五六、フランス四五、そして日本と同じ四三、スペインと来ます。そして、唯一日本より低いのがイタリアということであります。
 一つ面白いと思いますのは、この社会を信頼しない人々の多い三つの国、日本、スペイン、イタリアはいずれも財政赤字に苦しんでいる国だということであります。
 異なったデータを見てみましょう。次のスライドを御覧ください。
 これは別のデータからまた持ってきたものですが、社会の人々は信頼できますかという問いに対して、信頼できると答えた人の割合を示しておりますけれども、いわゆる先進国の中で日本は最も、信頼できると答えた人々の割合が少ない国であります。
 ここで、試みにX軸の方に信頼できると答えた人の割合を取ってみまして、Y軸の方に税収がGDPに占める割合を取ってみました。この図が意味しているのは、明らかな右上がりの関係があるということであります。すなわち、信頼度が高い国ではたくさんの税を集めることができ、信頼度の低い国では余り多くの税を集めることができないという関係があるということであります。
 それともう一つ、税を集められない国というのは、当然のように小さな政府になってまいります。財政の規模が小さくなってまいりますが、その小さな政府であるということは、すなわち格差の大きな社会であるということをこの図は示しております。X軸の方に不平等の改善度を取り、Y軸の方に政府の財政規模を取るわけですけれども、この中でこれまた右上がりの関係が出てくる。すなわち、政府が大きければ格差は当然ながら改善されると。
 ですので、予想されることは、信頼が低い社会というのは、税収が少なく、かつそのことによって政府規模が小さくなり、そして格差も大きくなるのではないのかということであります。
 これを念頭に、日本の財政がOECDの中でどういう位置にあるかというものを見てみたいと思います。
 左側、これは給付、支出を通じた格差の是正効果を見ております。右側は、税を通じた格差の是正効果を見ております。左側は、貧しい低所得層に対して給付をしていけば格差が小さくできるという財政の役割でありまして、右側は、富裕層に税を重たく掛けることによって格差を小さくしていくということを示すものであります。この左と右の二つの図を御覧いただいて分かることは、日本の財政というのは極めて再分配の効果が弱いということであります。
 私たちはなぜこんなに再分配の弱い財政をつくってしまったのか、このことについて考えなければいけないと思うのですが、そのことを考える上での大きなヒントが、先ほど申し上げた人間に対する信頼度であります。
 例えば、低所得層に対して手厚い給付を出したときに、その人たちが無駄遣いをする、あるいは本来の趣旨とは違う使い方をするという不信感を持っている社会であれば、当然のことながら低所得層に対して給付を行うことに反対するのではないでしょうか。あるいは、税も同じです。人々が脱税をする、人間は正しく税を納めないと考えるような社会であれば、あらゆる人々がフラットに税を払い、誰もが逃れることのできないような消費税のような税を求めるかもしれません。いずれにせよ、信頼が弱いということとこのような財政をつくったということの関係というのは、私たちは真面目に考えなければいけない問題だというふうに私は思っております。
 では、更に問いを先に進めていきたいと思います。
 なぜ、私たちの社会はこれほどまでに信頼度が低いのか。今日はたまたま社会に対する信頼度をお示ししましたが、政府に対する信頼度というのもあります。ちなみに、この政府に対する信頼度も先進国で最低なのが日本であります。
 このように人を疑うことが合理的な社会、それはどこからきているのか、私は三つあると思っています。
 一つは、皆さん御存じのような雇用の不安定化、所得の歴史的な低下によって中間層の平均所得が下がっていき、この中で低所得層に対する寛大さが失われていっている中で、なるべく低所得層に対する給付を減らしたいという人々の気持ちが低所得層に対する批判につながっているという側面があるのではないのかと思います。
 二つ目、これは後で具体的な数字をお示ししますが、財政が個別に利益が分断されておりまして、それぞれの既得権益が明確なため、自分の予算を削る前に人の予算を削れというようなプレッシャーが加わる。したがって、人を疑うことが合理的な財政になっているのではないのか。
 そして三つ目、財政ニーズが満たされておらず十分な受益感がないために、そのことによって人々を疑い、自分の取り分を増やそうとすることがあるのではないのかと。
 こういうふうな仮説のようなものを立てながらデータを見ていきたいと思います。
 所得水準の低下というのは、もう皆さん御存じのとおりです。ピーク時の九六年と比較しますと、世帯所得が約百十万円程度下落しております。平均的な世帯所得が百十万円落ちるだけではなく、加えて、専業主婦世帯と共稼ぎ世帯、共働き世帯の比率が逆転しておりますので、二人の人が働きに行くようになる中で所得が二割近く落ちてしまったというのがこれまでの経緯ではないかと思います。
 消費税の前回の増税の先送りをめぐっていろんな議論がありましたけれども、名目雇用者報酬が増えているか、いやいや、そうではなくて実質で見ると減っているではないかというような様々な議論がありましたが、数%所得が増えたということでは取り返しが付かないぐらい、二割に近い大きな所得の下落が、落ちているということを考えなければいけないと思います。
 この中で、中間層がそもそも低所得層に対して寛容ではいられない社会、まずは自分のことを考えなければいけないような社会が生み出されているということが一つあるのかと思います。
 二つ目、これは意外と言われないことでありますが、日本の財政ほど個別の誰かの利益になっている財政というのはございません。
 これ、意味がちょっと分かりにくいかもしれませんが、例えば公共事業といった瞬間に、地方や低所得層の利益だと人々は考えます。あるいは、障害者医療といえば当然障害者。中等・高等教育というふうに、高校、大学の教育といったときに、授業料が免除されるのは貧しい人だけだ。あるいは、育児、保育も、都市の共稼ぎ世帯の場合は入れてもらえるんだけれども、専業主婦だと保育所に入れてもらえない。生活保護や児童手当、障害児福祉手当など、これはもう当然低所得層の利益になっており、中小企業金融やあるいは農家に対する所得補償やという形で、日本の財政というのは全てが分断され、個別の誰かの利益になっております。
 例えば医療費がただであるといったときには、それはあらゆる国民にとって利益になるわけです。大学の授業料が無償化されるというときには、例えばあらゆる国民の利益になるわけです。しかし、そうではなく、日本の財政の場合は個別の誰かの利益になっておりますので、その中で財政赤字が大きくなる文脈の中では、誰が無駄遣いをしているのか、どの給付が不必要なのか、そのようなことを暴露し合うような、むしろ人間の不信を助長するような政治が主流になっていくということではないのかと思います。
 財政ニーズの問題ですが、近年、日本の社会保障は少しずつGDPに対する割合を上げてきております。しかしながら、この赤丸で囲まれている部分、すなわち高齢者のメリットとなるようなサービスと、青の丸、現役世代がメリットを受けるようなサービスの間に大きな差が出ております。この違いというのは極めて決定的な違いになっておりまして、今の日本の社会支出は、主な受益者たる高齢者とほとんど受益感のない現役世代の間で対立を深めるような形になっています。このことも社会の不信感につながっていくものと思います。
 やや難しい図なのですが、これは青と赤、この青と赤は国民の負担率を示しております。この国民の負担率から、私は試しに医療や教育、社会的保護というような、あらゆる人々が必要とするサービスの受益を引いてみました。負担から受益を引きますと、純粋な負担率というものが見えてくるかと思います。これを見て驚きますのは、日本と北欧諸国はほとんど純負担率が変わらないということです。すなわち、非常に大きな税負担にややもすれば苦しんでいると言われる北欧諸国でありますが、同時に、極めて受益感が大きいために、かつあらゆる人々が必要とするような受益感が大きいために、実質的な負担率は低くなっているということでございます。
 その結果、どうなるかといいますと、次のスライドを御覧ください。中間層の税負担をどう思いますかという質問に対して、日本よりもスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、いわゆる高福祉高負担の国々の方が税を軽いと思っている人々の割合が大きいということになってまいります。すなわち、日本人の強い租税抵抗の理由の一つというのは、受益感に乏しいこと。しかも、それは個別の利害ではなく、あらゆる人々が必要とするであろう利益が少ないということによって説明できるのではないかと思います。
 その典型が今回の消費税論議でありました。平成二十六年度の予算で約五兆円の財源が新しくあったというふうに言われましたけれども、その中で新しく社会保障が充実されたのは僅か〇・五兆円であります。〇・五兆円の社会保障のために五兆円を取られたということ、このことに対する国民の租税抵抗が今回の増税の先送りの理由の一つではないか、こういった議論がほとんどなされなかったことに対して私はやや違和感を覚えております。
 実は、格差を是正するというときに、大きく言って二つの方向があるということが意外と知られておりません。私たちが普通、格差を是正するといいますと、まず所得制限を付けて、そして貧しい人にお金をあげる。これをもって格差が是正できると私たちは考えがちなのではないでしょうか。しかし、実はもう一つ再分配の方法があります。それは何か。所得制限を付けずに、あらゆる人々に対して現物給付を与えるという方法であります。実はこういった再分配の方法があるということを日本の中では余り議論されません。
 その中で、しかし、これは二つとも再分配の効果を持つのですが、重要な違いがあります。前者は特定の人々を受益者とし、中間層以上を負担者としてしまうために所得階層間の強い対立を生み、中間層の租税抵抗を生むということであります。一方で、後者はあらゆる人々が受益者となりますので、中間層が低所得層や他の人々を批判する必要がなくなります。
 したがいまして、信頼が高い、人々を信頼する国というのは、この所得制限を伴わない現物給付の領域が広いということになります。言わば、やや象徴的に申し上げれば、誰かの利益ではなく、人々が必要とする人間の利益について考えていかなければならないということであります。
 これちょっと英語で申し訳ありません、口頭で申し上げますが、実は現物給付、これ、上の方のQ1、Q2というのは所得階層を示していまして、Q1、Q2の方が貧しい人々の層ということになります。現物給付をあまねく人々に提供しますと何が起きるか。一番上のエデュケーション、その下のヘルスケア、つまり、教育や医療を幅広く人々に提供していくと非常に大きな格差の是正効果があるということがこのデータによって分かります。それと、赤では囲っておりませんが、もう一つ、ECECという、これ就学前の教育、育児、保育ですね、ここをあまねく人々に提供していくことによって大きな格差是正効果を持つことも知られております。
 次のグラフは、X軸の右に行けば行くほど今申し上げた現物給付、人々に現物給付、サービスを提供する割合が大きくなることを示しております。そうすると、先ほどの表を証明するかのように、明確に所得格差は是正されてまいります。
 そしてもう一つ、現役世代と高齢者の間の受益のギャップが大きいということを申し上げましたが、X軸、これは現役世代向けの社会保障を示しておりますけれども、今の現役世代に対する社会保障が薄い国は貧困率が高いというデータも出ております。
 したがいまして、日本というのは、まさに、税が少なく人々をなかなか信頼できることのできない国であり、かつ給付面でも、高齢者に対して手厚く現役層に対して手薄い、その結果として、格差も大きくなり貧困率も大きくなっているという現状がおおよそ説明できるのではないかと思います。
 財政再建をどうすればよいのかということを考えるときに、歳出を削ればよい、あるいは歳入を増やせばよいというふうに議論するのではなく、歳出の中身を組み替えていくことによって中間層と低所得層の対立をなくし、現役世代と高齢者の対立をなくしていくことができます。そうすることによって、社会への信頼度を高めていく中で増税への合意形成を図るということが大事なのではないかと思います。
 最後に一点だけ、このように申し上げたときに必ず出てくるであろう反論が、政府の規模が大きくなれば財政赤字が大きくなるのではないのかという心配であります。それが最後の図でありまして、X軸に一般政府の歳出の規模を取り、つまり財政の大きさを取り、Y軸に借金の大きさを取っております。この双方には何の関係もないということが統計的な結果であります。
 したがいまして、政府を大きくすれば財政赤字が大きくなるということでは決してない。むしろ、その中で人々の信頼を育み、租税への合意を整えていく中で増税の可能性を強め、そして財政を再建していくというのがあるべき方向性ではないのかと私は考えております。
 以上でございます。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、井堀参考人にお願いいたします。井堀参考人。
○参考人(井堀利宏君) 政策研究大学院大学の井堀です。よろしくお願いします。
 それで、私のレジュメは財政健全化と世代間公平ということでして、主に世代間公平の話を中心にさせていただきます。(資料映写)
 それで、参議院は、やっぱり衆議院と違って中長期の視点で議論ができるところだと思いますので、解散もないし、任期も六年ですから。私の今日の話というのは、今の日本の財政健全化のシナリオというのは、二〇二〇年にプライマリーバランス、基礎的財政収支の黒字化、均衡化を目指しているわけですけれども、それを実現するのもなかなか大変だということなんですが、問題は、やはり二〇二〇年以降、二〇二〇年を超えたもう少し中長期の視点で日本の財政健全化なり世代間の公平の話を考えないと将来大変なことになるので、そういった問題は早めに手を打たないと、二〇二〇年を過ぎて非常にその状況が厳しくなってから慌てて対応するのでは間に合いませんので、今からきちんとした対応が必要なのではないかと、そういう視点で、少し中長期の話を中心にさせていただければと思います。
 それで、内閣府が出された、御存じのように、二月に出された試算では、二〇一五年の基礎的財政収支半減、それから二〇二〇年の均衡化自体も自然体でいくとなかなか大変だという議論は出ておりますし、その背景には、生産年齢人口の減少あるいは経済成長率がだんだんと低下しているということがあるわけですね。一方で社会保障需要が増えるということなんですけれども。
 それで、この図は、経済同友会が最近試算した図、試算ですけれども、このAというのが、二〇二〇年でプライマリーバランスの黒字化を達成するのにどの程度経済成長率が必要で、かつ社会保障の削減がどのくらい必要かという、そういうシナリオですね。Aが一番厳しくて、経済成長率が高くてそれから社会保障を抑制できれば何とかなるというのがAで、CとかDというのは、経済成長率がそれほど高くなくて社会保障の抑制が進まない場合はどうなるかという、そういうシナリオなんですが。
 この四つのシナリオ、どれを見ても基本的に、要するに経済成長率が相当高くてかつ社会保障を自然増に比べてかなり切り込んでいくと、やっとその二〇二〇年の段階でプライマリーバランスがまあ均衡する、あるいは対GDP比で見た公債残高は減少するという、そういう話なんですけれども。
 これは公債残高の増加の図ですが、これで一番下のところの減少しているのは、基本的にかなり厳しく財政を締めて、財政ということは社会保障です、社会保障を締めて、かつ経済成長率が高い、そうでない場合は発散するという、こういうシナリオなんですが。
 ただ、いずれにしても、これは、シナリオ自体はどのくらいの経済成長率を見込むか、それからどの程度歳出削減できるかということに関しては幾つかの想定を置けばこういう計算はできるんですが、問題は、こういった計算は基本的に二〇二〇年の政府の今の目標、二〇二〇年の段階で基礎的財政収支の要するに均衡を目指すのにどのくらい大変か、あるいはどの程度の経済成長率が必要かということを計算しているわけですね。常識的に考えると、経済成長率が三%ぐらいの高めの成長率でも、消費税が今のままで、八あるいは一〇のままだとなかなか大変だというグラフなんですけれども。
 問題は、やはり二〇二〇年以降の方がもっと厳しいんじゃないかと。何が重要かというと、やはり二〇二〇年というのは御存じの東京オリンピックが開催されますので、東京オリンピックが開催されるということは、それまでは何とか日本社会も頑張れるんじゃないかと思うんですよね。問題は、大きなイベントが起きるということは、それが起きた後その達成感が、終わった後はその反動が来ますので、そうすると、二〇二〇年、東京オリンピックが開催された後は、結構消費意欲とかいろいろなその経済活動の意欲も反動が来てマイナスになる可能性があると思うんですね。
 ギリシャが経済危機に直面したのは実はギリシャがオリンピックを開催した後なんですよね。大きなイベントの後というのはどうしても国民全体が疲れますから、そこでの反動が結構厳しいと。それから、それを差し引いても、経済成長率の中長期的なトレンドで考えますと、やはり生産年齢人口がこれから減少してきますので、日本の貯蓄率も下がりますから、日本の技術進歩が相当これから増えない限りは、自然体で計算すると、二〇二〇年代になると日本の経済成長率はマイナスになる可能性が高いと思います。
 これは、どのくらいそのイノベーションで、その日本の労働人口の減少あるいは資本蓄積の減少をイノベーションでどのくらいカバーできるかということなんですけれども、これは常識的に考えると、今のアメリカのアップルとかそういった先端的な企業がいろんなイノベーションを出していますけれども、そういったものを上回るようなイノベーションが日本で二〇二〇年代に出てくればまだ希望はあるんですけれども、客観的に見てこれは非常に厳しい状況ですよね。
 そう考えると、日本の経済成長率が中期的にマイナスになるとすれば、これは、現在の日本の政府の試算というのは、同友会もそうなんですけれども、プラスの経済成長率で伸ばしている試算しかやっていませんが、二〇二〇年まではそれで何とかなるかもしれませんけど、二〇二〇年を超えるとそこは結構厳しいんじゃないかと、そこの心配があります。
 それから、もう一つは社会保障需要ですけれども、今、団塊の世代が六十代後半ですから、七十代後半になるのが今から十年後なんですね。二〇二〇年代の中盤というのは、その団塊の世代が七十五歳を超えていわゆる後期高齢者になります。後期高齢者になると、御存じのように医療費が急増します。医療費の急増というのはこれからの日本の社会保障の需要では大きな問題で、医療は、これはその人の健康なり生命に懸かっていますし、これなかなか切るのが難しい、御存じのように。医療費の削減は年金の削減以上に困難ですけれども、これが二〇二〇年代の中盤には非常に大きな問題として掛かってきます。これをどうするか。
 それから、社会資本の維持更新も、これはもう御存じのように、東京オリンピックのときに整備した社会資本が五十年たってだんだんと更新の時期を迎えますので、社会資本ストック全てを更新する必要はないにしても、当然これは更新需要がこれから増えてこざるを得ないと。
 それから、最後の、エネルギー資源も、これは福島の例もありますが、いずれにしても、原子力をどのくらい利用するかということは一つの大きなイシューですけれども、日本のエネルギー資源、これから安定的に供給できるためにかなり厳しい状況がこれからあるわけですね。最近ですとCO2削減でいろんなキャップがこれから掛かりますけれども、これを日本が再生可能エネルギーだけで達成できるかどうか。これは非常にコストが掛かりますし、現在はたまたま原油価格が下がっていますからエネルギーのコスト面での制約は余り表面化していませんが、ずっと石油価格が低位で安定するとは限りませんから、いろんな中東情勢もありますし。その意味では、エネルギー資源の安定供給あるいはコスト面からの制約というのも非常に中期的には無視できない。
 そうすると、二〇二〇年以降どうするのかというのが大きな課題になります。これは、要するに財政再建を、あるいは財政健全化を進めるときの一つの価値判断として、現在の財政状況、あるいは現在の経済状況、あるいは現在の人々の生活環境と、二〇二〇年以降の将来の人の経済環境、あるいは生活環境、どちらが良くなるのかという価値判断だと思うんですね。
 今よりも将来の方が経済環境が良くなるんだったら、まあ今からそんなにぎりぎり財政再建する必要はないわけですね。要するに、将来の方が良くなるんだったら今はむしろ借金した方がいい。これは、昔も高度成長期に日本が借金をして、いろんな社会資本、有益な社会資本を整備して高度成長をしてきたということはあるわけですけれども。いずれにしても、将来の方が良くなるんだったら無理に財政再建する必要はないんですけれども、逆に今よりも将来の方が厳しくなるんだったら早めに財政再建をしないと将来の人が苦しくなるだけなんですね。
 だから、その財政再建をどのくらいやるかどうかというのは、現在と将来の経済環境のどちらがよりいいのか悪いのかという価値判断に懸かってきているので、ここの評価が重要だと思います。私は、もう現在よりも将来の方が、特に二〇二〇年代以降の方が厳しくなると思っていますので、その意味でも早めに財政再建に手を着けた方がいい。
 この問題は、将来が良くなるということは、常に政治の世界では将来に対して明るい展望を描かないとこれは政策できませんから明るい展望を描くんですけれども、それが楽観的過ぎると結果としてこれは失敗するわけですね。アベノミクスは楽観的過ぎる期待をより現実に合わせようとして今頑張っているわけですけれども、そうはいっても、これがうまくいくかどうかというのは中長期的視点ではなかなか分からないと。今、金融政策にちょっと偏り過ぎていますので、成長戦略がうまくいくかどうかというのは今後の課題だと思います。
 このときも、問題はやはり情報の非対称性で、幾ら政府、あるいは財務省、あるいは国会の皆さんの方で財政再建の必要性を言っても、国民の方がそれをなかなか信じてもらえなければ、先ほどの井手さんの話じゃないですけど、増税の国民の合意も出てこない。ただ、これは三党合意と政権交代を受けて、かなりの程度、財政状況の深刻さに関しては国民に共有できていると思います。ただ、まだ完全ではないと思いますけれども。
 問題は、そのときに、やはり受益と負担の乖離が起きて、特に将来への負担の転嫁というのが起きていますので、将来世代は政治的な決定に参加できないので、どうしても現実の政治の世界では政策決定の視野が短期化すると。特に、衆議院は二年で選挙やっていますからどうしても短期化するわけですが、参議院は六年ありますのでやはり中長期的な視点で議論できるのではないか。
 それから、消費税の話なんですけれども、消費税の増税自体はメリットとデメリットが当然あって、増税自体はその時点で負担増なんですね。問題は、消費税というのは駆け込み需要とその反動減があって、これが一番大きくて、特に耐久消費財の住宅とか車は消費税のコストが大きいわけですから、消費税が引き上げる前に駆け込み需要があって、それが終わると反動があるわけですね。こういった駆け込み需要と反動というのは経済に対する攪乱効果なので、これは非常にまずいので、なるべくそれを平準化する必要があるんですけれども。
 それを平準化したとして、消費税自体は現在の増税なんですが、消費税を増税するとすると、ほかの条件は一定であって消費税を増税すれば、その分だけ財政状況は良くなるわけです、消費税増税しない場合に比べると。ということは、将来の増税圧力を小さくするわけですね。だから、現在の消費税の増税というのは、将来世代から見るとプラスになるわけですね。逆に言うと、現在の消費税を増税しなくて、その分、仮に消費税を将来増税するとなると、消費税は将来の人にとって大きな負担となるので、要するに、現在の増税と将来の増税の負担のどちらがいいかという話で、これは現在と将来のマクロ環境のどちらが厳しいかという話なんですね。
 だから、現在の消費税を上げることが非常に大変だということであってそれを先送りするということであれば、むしろ将来消費税を上げることが、いずれにしても消費税を上げるのは負担ですから、将来の消費税を上げることに関して、これ非常にその負担が大きいということをどう配慮するか。要するに、現在と将来のマクロ環境がどっちが厳しいかに応じてどちらを重視するかというのが決まってくるんだろうと思います。
 もう一つは、二〇二〇年代に財政状況が厳しいと言ったんですけれども、財政状況は、仮に持続可能であって、つまり財政状況が、基礎的財政収支が二〇一〇年代以降になってある程度黒字化されたとしても、だからといって、実は社会保障制度の面での世代間の不公平は残ります。
 これは何かというと、賦課方式だからですね。賦課方式というのは現役世代が将来世代を支えるわけですけれども、そこでの収益率は人口成長率ですから、人口が減少している世界で賃金が上がらない世界では、財政が均衡しても若い世代ほど損をするわけですね。要するに、若い世代というのは、人口は減っていますから、一人当たりがたくさんの負担をして、自分が高齢になったときに若い世代が更に減っていますから、負担が増えないとすると自分が高齢になったときに給付が増えない。ということは、若い世代ほど財政が均衡化しても賦課方式というのは実は問題が大きくて、そこを何とかしないと日本の社会全体の安定感というのは維持できないと思います。
 これは、社会保障給付の既得権への対応で、いわゆる中高年世代の既得権を削減するしかない。これ早めに削減しないと意味がないんですけれども、問題は、特に年金がそうなんですけれども、受給は権利なので、権利であるとその削減は非常に困難なわけですね。要するに、高齢者は年金を払っていますから、若いときに。そうすると年金をもらう権利があるので、その年金の給付を削減するというのは御存じのように政治的には非常に難しい。そこを、ただ、克服しないと日本の財政の健全化は中長期的には無理です。
 どう克服するかなんですけれども、これは難しいんですが、理想の方法はやはり個人勘定の積立方式を早めに入れる必要があると思います。今、NISA等でいろいろ入っていますけれども、やはり若いときから自分の老後の年金を個人勘定できちんと積み立てて、それを老後の年金や自分の生活に充てると。ただ、八十を過ぎて生存のリスク、自分がどのくらい長生きするか分からないということに関してはきちんと賦課方式の公的年金でカバーすると。ただ、それまでの元気な六十代から八十代ぐらいの前期高齢者の方については、自分の自助努力でやる部分をこれから増やしていく、いきなり変えるのは難しいですけれども、その方向に踏み出していかないともたないだろうと思います。
 要するに、個人勘定の積立てを入れるというのは、医療の場合もそうなんですけれども、やはり若いときから積立ての資源を準備しておくということが必要だと思います。
 それから、これはある程度、ちょっと絵に描いた餅のような話なんですけれども、個人勘定の積立方式に移行するのが非常に難しいとすると、私が個人的に主張しているのは、賦課方式で個人勘定を入れると。これはどういうことかというと、年金でやると、報酬比例部分に関してもう個人勘定化して、要するに、勤労世代が払う保険料が直に自分の親に行くような、そういう形にするということです。これはどういうことかというと、親と子の間のトランスファーという形で世代間の再分配ができれば、親と子の関係に関しては、お互いに経済状況はよく分かっていますから世代間の対立が余りぎすぎすしないんですね。
 今の公的年金というものは、若い世代から政府を通して、それから高齢者に一律に配っていますから、もらう方は政府からもらうのでとにかくたくさん欲しいと、出す方は政府に出すのはもう嫌だといって、そこで世代間が対立するわけですけれども、基本的には若い世代が自分の親を支えているわけですから、自分の子供が自分の親をというミクロの関係でリンクしているような形にすると、お互いにぎすぎすしなくなって世代間も克服されると、これが個人勘定賦課方式です。
 そうすると、要するに、親から見ると、自分の子供がちゃんと稼がないと年金が入ってこないので、自分の子供をちゃんと育てるインセンティブがあると。これは、ある意味で子の虐待対策あるいは少子化対策にもつながるわけですよね。子供をきちんと育てて、ちゃんと子供が収益を上げれば親はそれを回収できると。
 今の世代間の大きな問題というのは、親が子供をちゃんと教育してもその対価を回収できないんですね、社会保障で全部やっていますから。その対価をある程度回収できるような、そういうミクロのリンクを付けるということで、結果として少子化対策にもと。これは医療にもある程度適用できて、医療の場合、例えば高齢者の医療費を一割から三割に上げるのは非常に抵抗あるわけですけれども、その上げる二割の分を、例えばそれを自分の子供の方に払う形に変えていくと、これは親子間でシェアする形で高齢者の負担が対応できるようになります。
 そのためには、やはり歳出効率化の環境整備が必要で、イデオロギー対立がなくなり、かつ社会保障が争点になる場合はなかなか難しいわけですね。特に、これから高齢者の方が、今もそうですけれども、政治の交渉力の中心、いわゆる中位投票者になりますから、そうするとますます高齢者の既得権を削減するような対策はできないので、若い人は投票しませんし、それからこの前の地方選挙でも若い人の投票率が下がっていますから、若い人がやはり投票に行く、あるいは若い人が政治に参加できる、そういう機会を増やすことによってより若い人の意見が反映されれば、より歳出効率化の環境整備ができます。
 それから、参政権が今度十八に下がりますけれども、これは非常に有益な話で、若い人の投票率を上げる、あるいはもっと選挙制度を抜本的に変えて、定数是正も含めて、やはり若い人の意向がより政治の世界に反映されるような政治になってくると歳出効率化への環境も整備されますし、あるいは若い世代とそれから中高年世代との政治的な対立もより緩和される方向に行くのではないかと思います。
 以上です。どうも御清聴ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、高橋参考人、お願いをいたします。高橋参考人。
○参考人(高橋洋一君) 嘉悦大学の高橋でございます。
 本日、こうした機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、デフレ脱却と財政再建ということで、今はインフレ目標二%、それと、あと量的緩和という効果が、就業者数の増加とかGDPの増加などで、消費増税の悪影響を除けばそれなりに効果が出ていると思いますので、それを前提としまして、主として財政再建の話について意見を述べたいと思います。
 私は元役人でして、小泉政権と第一次安倍政権のときに官邸などで経済運営を担当してきましたけど、今日の話というのはそのときの経験に基づくものが多いと思います。
 まず指摘したいのは、私がいたそのときの時代なんですけれど、増税なしでほぼ財政再建ができた、できていたという事実です。その成果を達成するためにどのような考え方があったのかを明らかにしたいと思いますが、ちょっと具体的に言いますと、二〇〇〇年のときに二〇一〇年のプライマリーバランスの回復という目標を立てました。一〇年ですけれど、実際は二〇〇八年に、これは政府で諮問会議に出した資料なんかを見ていただくと分かるんですが、私も作った記憶があるんですが、二〇〇八年に実は財政再建ができていたということです。ただ、その後、リーマン・ショックがあって、結果的にはできなかった。ですから、その意味で、私が言う増税なしでほぼ財政再建というのはこういう意味でございます。
 それでは、ちょっとこの資料に沿って話します。(資料映写)
 財政再建の方法で、二ページ、このページですけれど、簡単に書きました。一番目がデフレ脱却と、あと名目経済成長、二番目が不公正の是正、歳入庁、三番目は常識的な意味での歳出カット、それと四番目は資産売却とか埋蔵金の話です。五番目は増税と書いたんですけれど、これは一から四の後、まあなければないで別に構わないし、実はなしでやったというのは私の経験であります。
 ただ、正直に小泉政権と第一次安倍政権のときの話をしますと、一番目は、正直言って不完全でした。量的緩和はしたんですけどここまでいかない、余りうまくできなかったです。二番目は、実はこれはやろうと思っていたんですけど全くできなかったです。三番目は、これもかなり不完全、これはまあ不完全というか結構常識的な意味での歳出カットで、骨太二〇〇六なんか結構できたので、ここは結構そこそこにはできたかもしれません。四番目が、これは結構できましたね。二十兆以上たしか生み出していると思います。それで五番目は、さっき言いましたように基本的にはやりませんでした。これは、小泉さんが最初に増税なしと、消費税は自分のときは上げないと言い切っちゃったんですけれど、それの結果です。ただし、その結果でもほぼ財政再建はできております。
 結論的に言いますと、一番は、一のその名目経済成長率がもうちょっと高ければもっと簡単に、完璧にもっと前にできただろうと。先ほど二〇〇〇年で目標を立てて二〇一〇年と言いましたけれど、これ、もうちょっと名目成長率が高ければ多分二〇〇六年とかそこの辺りにできたような私の印象であります。
 次に、順次進めていきますけれど、最初に、まず日本の財政状況というのをちょっと把握しておこうと思います。私の把握の仕方はちょっとマーケットからなので違うので、ある意味で、財政当局が財政状況を悪いと言うのとは全く違う答えをちょっと用意しておりますけれど。正直申しますと、十年ぐらいのスパンで財政再建する必要性というのは私もいつも認めておりますけれど、それを急に行おうとするとかえって財政再建自体ができなくなるという話をしてみたいと思います。
 この数字は、これクレジット・デフォルト・スワップというんですけれど、これは先進各国で財政状況がどのようなものかということを実は表しておりますが、これの数字が一つの参考になります。これは、各国政府が発行している国債がありますよね。それが、それで政府が破綻したときに国債の損失をどのようにカバーするかというための保険料であります。ですから、その意味で、この保険料が高いところは危ない。これは危険度に応じて実はマーケットで取引されていますので、ある意味で危険度をよく表しています。格付なんかよりはるかにこちらの方が信用性があります。
 この数字をちょっと見ますと、ギリシャ、これは二七%です。私、二年ちょっと前にここに、ギリシャのときは、実際破綻しているときはこれは実は一〇〇%ぐらいになりました。これは、その意味では結構数字は正直であります。これ、それぞれマーケットの取引ですから、保険の受け手と出し手で両方でネゴしてやりますから、そんなにでたらめな数字はできません。ただし、数年間で大きく動くという可能性はあります。
 次見てみますと、G7の方であって、次にイタリア、これは一・〇、ちょっと落ち着いています。ちょっと前までは、一、二年前まではもう六%とかそのぐらいまで行っていましたけど、今は落ち着いておりますね。フランス、〇・三九、これもちょっと落ち着いています。ちょっと前は二%ぐらいまで行っていたんですかね。日本、これは〇・三五、これ実は結構ずっと落ち着いているんです。一時、大震災のときに高くなるんじゃないかと言われていたんですけど、ほんのちょっと高くなってすぐ戻っちゃう。すごく高くなっても一%を超えるというのは余りないですね。ドイツが〇・一七、イギリスが〇・二一、それとあとアメリカが〇・一八という感じになっています。
 ちなみに、ギリシャというのはよく破綻する国です。過去二百年間を見ると、百年間デフォルトだったという。ですから、そういう意味では破綻常習国です。ですから、その上で、これは、そういう意味ではよくもうそれを反映していると。過去のトラックレコードなんかを反映したりしてこの数字も決まってくるというところもあります。
 この数字を、ちょっと数字を言ってもイメージがしにくいと思うんですけど、これは本当は、正確に言うと、結構細かい話が出てくるんですけど、ちょっとアバウトなイメージであります。この数字を見ますと、先進国では多分百年から二百年で一回程度のデフォルトというレベルです。その意味では非常に確率は低いというところであります。
 この数字を見る限り、日本の財政状況というのは、日本経済の潜在成長率とか今までの破綻しなかったという歴史とか、それとあと、後で述べます政府資産の話とかそういうのがあるので、それほど深刻ではない。少なくとも先進国の中でまあ真ん中ぐらいです。悪い方ではないです。ですから、このレベルの話で、こういうふうなファクトというか、に基づいて財政再建を実は私は考えているというところであります。
 一番目のデフレと名目経済成長率の話をちょっとしたいんですけれど、財政再建というのは実は名目経済成長率が高くないと基本的にはうまくいきません。一九六〇年代からOECDの加盟国で、財政再建の成功事例というのはいろんなところで研究をしておりまして、失敗事例も研究しておりますけど、そのときに見ると、ほとんど例外なく名目経済成長率が高い方が圧倒的に成功します。小泉政権と第一次安倍政権のときには、実は経済成長によって、ほんのちょっと歳出削減しましたけど、プライマリー収支というのを大幅に改善しております。
 これがちょっとそれの表しているやつなんですけれども、これ、過去、一九八二年からずっと見ているんですけど、これ何を表しているかというと、右軸の方が実はこれは一年前の、一年前です、一年前の名目経済成長率、それで左の軸の方がこれはプライマリー収支のGDPの比です。これそっくり重なっていますね。これ何を意味しているかというと、一年前の名目経済成長率高めればプライマリー収支は何とかなるという話です。
 ですから、それをちょっと使っているだけなんですけれど、こうした事情というのは実は日本だけじゃないです。もちろん国によって、日本はかなり一年できれいにずれているんですけど、次の五ページ目、これはアメリカですね。アメリカの場合ですと、税収の入りとかそういうのがちょっと違って、ちょこっとずれちゃうときがあるんですけど。それと、次がイギリス、結構似ている感じがあります。いずれにしても、名目経済成長率が高くなれば、少なくともプライマリー収支は結構何とかなるという話です。
 それで、最初の日本にちょっと戻ってもらいますと、これ本当は、もうちょっと経済学者でしたらきちんとしたモデルでやるんですけれど、これはただ単に数字だけでぼんとやっているだけなんでちょっと不確かがあるんですけど、大体アバウトに言うと四、五%の名目経済成長率が出て、あと歳出削減は今までどおりぐらいですね、そのぐらいで実はプライマリーバランスというのは結構達成ができるという話になっております。
 今の現状は、実はアベノミクスの中でインフレ目標二%というのはきっちりしました。これ、もうちょっときっちりさせるためには日銀法改正か何かした方がいいんですけれど、今それ、取りあえずはきっちりしていますね。そこがきっちりしていれば、今の足下は、たまたま消費増税しちゃったんで、ちょっと需要が落ちちゃって物価上昇率は下がっているんですけれど、その話は後でしますけど、そういうのがなければ多分名目経済成長四%というのはそれほど難しくはないと思います。
 ただし、ここで一つ注意をしておかなきゃいけないのは、財政当局の方、中期財政試算というのがあるんですけど、その試算の中身にはちょっと問題があります。どういう問題があるかというと、実は、日本のCPI、消費者物価の上昇率とGDPデフレーターというのがありまして、二つ物価があるようなことなんですけど、実はその間には一%の差があると。要するに、インフレ目標の消費者物価の上昇率は二%だけど、デフレーターは一%だと、そういう前提でやっています。
 ですから、そういう意味で、それがあるので、インフレ目標二%でも、政府の方の中の文書をいろいろ見てみますと、実は実質経済成長率は二%、ただしデフレーターが一%で、名目三%でほとんど計算しています。最近は、この中期財政試算をちょこちょこ改訂しているときに、ちょこっとずつ上に、上方修正ちょっとしているんですけど、基本的な考え方としては名目三%というのをやっています。ですから、この中期財政試算の数字を見たりして政府から出てくる試算を見ると、なかなか財政再建はできないようになっています。
 ただし、あれは四%ちょっとでやるとかなりできちゃって、二〇二〇年ぐらいではかなりできちゃいます。そういう意味では、それはちょっと不都合な事実らしいので、四%という計算は絶対にしないです。これは、私が政府の中にいたときも、これずっとおかしいんじゃないかと言っているんですけど、絶対に直さなかったですね。ここの前提がかなり問題だと思います。
 ちなみに、ちょっと数字だけを言いますけれど、一九八一年から二〇一三年までのデータで、先進国で見ますと、消費者物価の上昇率とデフレーターの上昇率はほとんど同じです。その意味ではデフレーターは二%にしなきゃいけないと思います。
 これが財政再建が後から出てくるという話なんですけど、しばしば財政再建のためには増税が必要だという話があるんですが、これは多分間違っております。増収を狙うのが実は正しいです。増収を狙うためには、実は経済成長以外にもちょっとありまして、それが不公平の是正とか歳入庁の話であります。これは税制というよりかは執行の話なんで、法律改正とかそういうのが必要なくてできるんで結構簡単にできる話なんですけど、実は今やっていないということであります。
 七ページの方を見ますと、これで不公平の是正にもなるんですけど、実は余り取り扱っていないです。ただ、この点においては、ナンバー制の話が出ましたので、ここは私は期待をしております。ナンバー制はこのための一歩です。それにさらに歳入庁をやるとかなり良くなる。ただし、歳入庁の話になるとこれは非常に大変ですね。実は、私が第一次安倍政権のときにこれをやろうとしたら、もうはっきり言えば財務省から潰されました。
 それで、これやったら、番号と歳入庁やればどのぐらい増えるかというのは、簡単な推計ですけど、多分保険料で十兆円、それであとクロヨン関係で五兆円で、あと実は消費税のインボイスというのも重要なんですけれども、これをやると三兆円ぐらいで、これで結構な毎年税収が上がってくると思います。
 歳入庁の話は、これは世界で当たり前、八ページ、当たり前の話なんですけど、なかなか実は行われていません。これはちょっと大変でして、ほかの国ではほとんどやっています、こんなの。アメリカ、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーなんかと、これはもうアメリカのホームページ見てもらいますといろんなところでやっているとすぐ分かります。これは世界で、税と保険料が一体的に取り扱うという意味では、結構世界の潮流で東ヨーロッパなんかでもやっています。ただし、これはなかなかやらなくて、財務省が都合が悪いという話があります。
 国税庁というのは財務省の実は植民地になっていまして、その国税徴収権力というのを財務省が手放さないというのが一番大きな理由です。私が、さっきも言いました、第一次安倍政権のときにこれをやろうとしましたときには猛烈に反対を受けました。
 あとは、三番目の、特別というか、常識的な歳出カットの話、あと資産売却の話をちょっとやってみたいと思います。
 これは常識的な話なんでそんなに難しくないんですけど、意外に特別会計はできていないです。実は、これは特別会計の埋蔵金と指摘したのは私が役人のときだったのですけど、諮問会議の方に出しまして、そのとき法律、行革推進法というのを出してもらって、そのときにいろいろな特別会計の改革をやった人から見ると、まだ余りやっていないのかなという感じがあります。
 ちなみに、その行革推進法では、さっきちょっと言いましたけれども、二十兆円ぐらいのお金を出すとか、そういう話は実は書いてあります。そういう話はその後余り行われていないという感じでありまして、特に今、外為特会、これが円安になっていますので物すごくもうかっています。円安ですので、円安で日本で一番の利益の享受者は日本政府だと思います。だから、結構苦しんでいる人がいるのに、何で政府でため込んでいるのかと、そういう話であります。
 あともう一個、労働保険、これは実は失業率が下がっております。失業率が下がっているんですけれども保険料率は前と一緒なので、かなり割高になっています。これは、私は実は年金の数理の専門でもあるんですけど、それから見ても高いです。ですから、どんどんどんどんお金がたまっていく状況です。ここは放っておくと、もういろんな無駄遣いしています。かつて、前の政権のときも随分ここで無駄遣いをしていたというところがありました。ですから、こういう話はちゃんとやらないと、増税の話にはまず行き着かないんじゃないかなというふうに私は思います。
 私、小泉政権のとき、小泉総理の方から言われたのは、増税は国民から求められるくらいになったらやればいいと言われたんですね。ちょっと意味が分からなかったですね。意味が分からなかったんですけど、今考えてみますと、ほかのことをきちんとやれということですね。今、もうちょっと思いますと、これは勝手に私が思っているんですけど、景気が良くなり過ぎて増税の冷や水をくれと国民が求めるぐらいからやった方がいいと。だから、その意味で、さっきの名目経済成長率をきちんと高めるというのが多分正しいんじゃないかと今は勝手に思っております。
 ちなみに、日本の資産、これは突出して出ます。先ほど日本の政府はちっちゃいという話だったんですけれども、資産規模で見ると物すごくでかいです。ですから、とてつもなくでかいので、ここはほとんど金融資産で、実は特殊法人なんかの話なんですけど、民営化すればどんどんどんどん実は減らすことができるし、これはどんどんやった方がいいんじゃないかと思います。どこの国でも、財政再建が大変になるというときには、実は民営化とか政府資産の売却なんかは普通、当たり前です。当たり前ですけれども、実は世界から見ていると、日本はこういうのをやらないからまだ大丈夫でしょうと実は思われているような感じであります。
 最後に、消費税の話、ちょっと時間もなくなっちゃったんで簡単にいきますけれども、消費税の増税について本当に迷言が多かったと思います。実は消費税が軽微であるとか、国際公約に反するとか、消費増税しなかったら暴落するとか、財政再建のために必要だとか、国際的に二〇%、たくさん言われましたけれども、ほとんど当たっていませんね。
 それで、ここではちょっと二点だけ述べますけど、消費税が社会保障目的税ということになっていますけど、これは世界標準からかなりずれています。その前に、消費税の影響は甚大だったということを実はこれは表しているのはこの図です。いいところ行って、ほとんど需給ギャップがなくなるところまで行ったんですけど、消費増税でがたんとおっこってしまいまして、需給ギャップは今十三兆円ほど開いております。これで軽微なはずないです。
 それで、実はこの理由について反動減だという人もいましたけど、反動減と駆け込み需要は実は推測できます。大体GDPの〇・七%ぐらいですけど、今回これで二%ぐらいおっこっていますから全く違いますね。要するに、普通の経済理論ですとこのくらいの予測はできるんですけれど、なぜあれだけ予測が外れちゃったのかと、これは実は議会の方でもきちんと検証した方がいいと私は思うくらいであります。
 消費税の話。
 これは、一番最後に書いてありますけど、社会保障目的税にしている国なんて聞いたことないです。私はこれ経緯をちょっと知っていますけれど、実はこれ社会保障目的税にしようと思って、それは財務省の方で言って、これは最初に、一九九八年の自自公連立のときですけれど、そのときに予算総則に書いていまして、このときは実は小沢一郎さんに話しかけて書いたという経緯がありますけれど、実はそのときに、平成十二年の税制改正答申、これも私も多少関わっていましたけど、そこに書いた文言がこれで、諸外国において消費税を目的税としている国は見当たらないということです。
 実は、普通の理論で考えると、社会保障にするというのはあり得ないです。普通は社会保障は年金で賄うもの、お金の払えない人は実は年金保険料払えません、社会保障の保険料払えませんね。それですから、その人は実は高額所得者から所得税取って穴埋めると、それが原理です。ですから、その意味で消費税が出てくる余地はほとんどなくて、消費税が出てくるのは、安定財源ですから、大体地方の財源であると、地方若しくはそういうふうなところでよくやるというようなパターンが多いです。
 例えばオーストラリアとか、ほかの国なんかでもドイツ、オーストリアなんかで、国、地方というものが消費税を共同税としているとか、そういうのがあります。カナダなんかでは両方、国とその上に地方で消費税を上乗せしていると。アメリカなんかでは、実は国は消費税はなしで地方しかないと。
 そういうことなので、結構分権度が高い国はほとんどが実は消費税というのを地方の安定財源に回しているというところだと思いまして、それは実は、社会保障に回すという形になると国税化になるんですよね。これはもちろん国税化にしたいがゆえに社会保障目的税と言っているんですけど、それはちょっと財政、年金とか社会保障の理論からもちょっと逸脱した話だと思います。
 最後に、消費税の正しい理解を言いますけれど、実は影響は甚大でした。よく考えてくださいということです。
 このときに、これは影響が、私は実は、消費増税したら二〇一四年度の経済成長率はマイナスになるということはきちんと言っていますけど、それがどうして言えなかったのか。普通の経済モデルを使うと、この辺りは簡単に言えます。というか、それがなかったというのが非常におかしいというふうに思います。
 あと国際公約、これはもう安倍さんが答弁しましたけど、全く関係ありません。国債暴落も全然しません。それと、先ほどのCDSのレートでもほとんど上がっていません。実は何にも起こらなかったというのが現状です。
 それとあと、よく二〇%と言われるんですけど、環太平洋の国で見てもらったら、そんなに高い国は余りないです。ヨーロッパは特に高い。ヨーロッパが特に高いのは、いろんな事情があります。
 ということで、時間だと思いますのでこれで話を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
 まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず発言いただけるように整理をしていきたいと思います。
 質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようにお願いいたします。
 質疑及び答弁は着席のまま行い、質疑の際はその都度答弁者を明示していただきますようお願いをいたします。
 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会が得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるように御協力をお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手を願います。
 西田昌司君。
○西田昌司君 自民党の西田でございます。
 三人の先生方、ありがとうございました。
 それで、まず井手先生にお伺いしますが、お話しになったこと、ほぼ私も賛成でして、取って使えと、税と予算の所得再配分機能をもっとやるべきだと、そうすると全体の貧困もなくなるし、経済も安定してきて財政も良くなると、こういうことだと思うんですね。そのとおりだと思うんですが、そのときに、ですから、消費税を上げていくという話もあるんですけれども、私は、そういう再配分ということを考えると、もう少し累進の税率、所得の方ですよね、法人税も含めてやるべきだと思うんですけれども、先生の考えておられるその負担率を上げる場合は、どういう税の、どういう形で上げるべきと考えられているかということを教えていただきたい。
 それともう一点は、先ほど、一番初めのワニの口の絵があったんですけれども、この絵の中で書いていただきたかったのは、実はGDPがこの二十年ずっと上がっていませんよね、リーマンのときは物すごく落ちましたけれども。ですから、財政再建の一番の問題は、実は、その負担率が減ったと、上げなかったということもあるんですけど、もう片っ方、経済政策が間違っていたと。だからGDPが増えなかったと。その一つが、今の要するに給料がどんどん減ってきたということもあると思うんですけれども、その辺の経済政策の誤りを正していかないと、GDP上げないと財政再建もできないと思うんですけれども、過去二十年間のこのGDP上がらなかった理由は、どういう経済政策が間違っていたと考えておられるかということを教えていただきたいと思います。
 それと、高橋先生には、同じ質問なんですけど、まさに小泉政権のときにおられたんですけど、私はどちらかというとあの時代がまずかったと思っているんですね。つまり、GDPが伸びなかったと。実質GDPは伸びたとか言っているんですけれども、結局は名目は伸びなかったし、個人の国民所得自体は給料を中心に減りましたよね。大企業の方にどんどんお金がたまって、それが内部留保でお金が回らない、GDPが伸びなくて、しかも海外に投資を増やしたので雇用も減っちゃうという、いろんな理由があったと思うんですけれどもね。ですから、今考えると、やっぱりあそこの時代にもう少し経済政策として違うことをやるべきじゃなかったのかなというのがあるんですけれども、そこの辺りのことをお聞かせいただきたい。
 それともう一点は、消費税、地方税をおっしゃるんですけど、私はそれちょっと疑問でして、地方税やっちゃうと、要するに東京都にどんどんお金行くんですよね。過疎県には全然お金行かなくなるんですよ。だから、やっぱりそれはちょっと違って、国税で吸い上げて、目的税化するかどうかは別として、交付税の、地方に対する要するに所得再配分ですよね、そういうこともやるべきではないかと思いますが、その辺の御意見。
 それから、井堀先生にはこの個人勘定のやつですね、年金の。それは子供のいない人には年金与えられなくなっちゃうんではないんですかね。その辺のちょっとお考えをお聞かせいただきたい。
○参考人(井手英策君) どうもありがとうございます。
 御指摘のとおりで、税をどのように上げるかということを国税と地方税というふうに分けて考えないといけないと思うんですね。そのときに、国税というのは、つまり国の仕事のための税ですから、基本的には生存保障を行っていると思います。それは、困っている人や貧しい人を助ける、そういう視点からは累進性をどんどん強くしていく、国税の中でも累進性を強くしていって、困っている人を助けるという税でいいと思います。
 ただ、他方で、地方の方は生存の保障ではなく人間の生活を保障しているわけですね。であるとするならば、その生活はあらゆる人々にとって必要な生活を保障していくわけですから、累進的にやっていく合理性を失ってしまうわけですね。その意味で、あらゆる人々にフラットに、みんなが払えるような税をつくっていくのがよいと。ですから、ただ、今後は、恐らく人々の生活を豊かにするという領域の方が大きくなっていくと思いますので、ウエートとしては地方税の方が大きくなっていくというふうに私は考えております。
 それと、二つ目の御質問ですが、経済政策の失敗というのは、恐らく今の御質問とは違った意味で私は失敗だというふうに思っています。
 一つは、人々の社会へのニーズが変わっていく中で、財政もそれに合わせるように、例えば教育であれ医療であれ、育児、保育であれ養老、介護であれ、人々の必要に見合ったサービスを出していくべきだったと私は思っています。しかし、そのことが本来であれば実は雇用を生んだはずなのに、ここに十分に対応できなかったことがそういった意味での雇用を生み出せなかったと。そういう意味で問題があったと思うのが一つであります。
 それともう一つ、今教育のことを申し上げましたけれども、そもそも、最近、OECDやIMFのペーパーが明らかにしていることなんですが、成長させるために何が重要かというと、子供への教育投資なんですね。このことが将来の成長率を高めるという研究が次々に出ています。しかしながら、九〇年代以降、教育費というのはほぼ事実上横ばいで来ていると。たまに増えたと思うと、これ公共事業的な意味で増えるんですね。だから、そうではなくて、もっと積極的な教育投資をやって、特に子供に向けてですね、成長率を高めていくという施策が必要だったと思っています。
 ただ、究極的には、人々の生活を財政が保障するということの意味は、成長率が鈍化しても何とか人々が生きていける社会をつくるということであって、成長が停滞するとたちまち人々の生活が危機に陥るような財政になっているという、ここが本質的な問題じゃないかと私は思っています。
○参考人(高橋洋一君) 一つは、小泉政権のときの話ですけど、量的緩和がはっきり言えば不徹底でありました。二〇〇六年に、まだ物価が上がる前に解除もしてしまったくらいなんで、あれは痛恨の極みでありまして、あのときにもっと徹底してやればと。ただし、そのときに日本銀行と大分やったんですけど、初めてだったので全くできなかった。ですから、その後、全く前に戻っちゃった形になって、その政権以降はもっとひどい緊縮になったと思います。
 それで、結果的に為替は小泉政権のとき百二十円でしたから、その意味では国外に余り投資がしなくて国内の雇用は結構守れたとは思います。
 それからあと、二番目の消費税の話ですけど、私は、地方税にしてそれで共同税にするという話で、共同税の話をちょっと省いてしまったので変な話になってしまったんですけど、一応全部消費税は地方税にして、あと共同税にして配分したらいいと。東京なんかは実はそういう問題がありますので、基本的に配分なしということであります。
○参考人(井堀利宏君) 個人勘定賦課方式の話なんですが、要するに、基礎年金は全ての人をカバーするんですけれども、上乗せの報酬比例に関しては、それを個人勘定に移行すれば、おっしゃるように、子供がない親はその分での年金はなしという、こういう世界です。そういうことがあるので、ちゃんと子供を産んで育てましょうというインセンティブができると。中長期的にはそれがむしろ効くのじゃないかという、そういう話です。
○西田昌司君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、安井美沙子君。
○安井美沙子君 民主党・新緑風会の安井美沙子でございます。
 今日は参考人の先生方、どうもありがとうございました。
 財政再建のためには社会や政府への信頼感がやはり必要であること、今は中間層が低所得者に寛容でいられない社会になっていること、非常に勉強になりました。それから、北欧で痛税感が意外と低いということも驚きでありました。そういうことを伺った上で、現在、給付付き税額控除というものに対する検討が政府の方で滞っていることが気になっておりまして、このことについてお三人に伺いたいと思っています。
 たまたま、消費税一〇%増税時の低所得者対策として、軽減税率と給付付き税額控除というのを同時に検討すべきである、しなさいということが法定化されているにもかかわらず、低所得者対策として軽減税率を優先的に政府が今検討しているという現状がありまして、一方で、給付付き税額控除というのは、低所得者対策のみならず、先ほどの不公平感を解消するとか、そういった意味でも非常に意義があると思っておりまして、マイナンバー制度の来年の使用開始とともに、もっともっと有効活用しなくてはいけないと思っています。
 特に、先ほど個人勘定の賦課方式なんというものが出てきますと、ますます所得の捕捉とか全ての情報の透明化というものが必要になってきますし、世帯収入の合算ということも今行われておりませんで、例えば新児童手当なども、主に世帯収入を担っている人の収入だけで所得制限が掛かるなど、大変不公平感の多い制度がございます。
 こういったことに鑑みて、給付付き税額控除の検討が現在停滞していることに非常に問題意識を持っておりますが、お三人の意見をお聞かせいただければと思います。
○参考人(井手英策君) 今の御指摘は私も全く同意見でありますが、一点だけ注意しないといけないことがあると思っています。ただ、このことはちょっと後でお話しします。
 まず、軽減税率との関係で考えたときに、軽減税率の第一の目標は格差を是正することだと思うんですね。しかしながら、もう既にこれはいろんな指摘があるように、まずそもそも税収の漏れが大きくなり過ぎる。これはもう、ヨーロッパが今一番苦しんでいるのは本来入ってくる税収が入ってこないということですね、軽減税率を設けることによって。それともう一つ、本来であれば軽減税率によって格差を是正できるはずなのに、現実には、軽減税率は、中間層や富裕層も含めて、裕福な人々も含めてその人たちがメリットを享受してしまうという問題がある。ですので、これよく言われることですが、実は言われるほど格差の是正効果は大きくないんだと。
 その意味において、給付付き税額控除に進めていくという方向性は全く正しいと思いますし、軽減税率に偏った議論というのはもっと慎重であるべきだと私も思っています。
 ただ、一点だけ、税を通じて格差を是正するという議論も重要なんですが、ただ、税だけではなくて、税が例えば不平等なものであったとしても、給付を適切に行っていくことによって総合的に格差を是正することは可能ですね。したがって、出すべきものを出すという話と、取るべきものを取るという話を組み合わせた議論というのをもうちょっとしっかりやることが大事だと本質的には思っています。
 以上でございます。
○参考人(井堀利宏君) 消費税の逆進性対策として今軽減税率の話が出て、それへのもう一つの議論としての給付付き税額控除の話だと思うんですけれども、私も先ほどの井手さんと同じように、軽減税率で消費税の逆進性対策をするのはやはり限界があって、これ自体は、軽減税率を掛けると全ての人にメリットが及びますから必ずしも逆進性対策としてはそれほど効果がない、むしろ給付付き税額控除で対象を絞って弱者の人に集中的に給付をした方が逆進性対策は有効だと思います。
 ただ、これはある意味で原則論なんですけれども、そうはいっても、国民の間で軽減税率に対する評価が税額控除よりも高いのはなぜかと考えてみると、やはりこれは政府なり税務当局に対する信頼の問題だと思うんですよね、井手さんの今日の話じゃないですけど。やはり、政府が税金を取ってそれで給付するということで、ちゃんと弱者に給付が行くのかどうか、むしろそうじゃない人に行くかもしれないと。軽減税率だと全ての人がメリットを受けるので、弱者の人もメリットを受けると。
 だから、これはある意味で逆説的なんですけれども、政府がきちんと情報を管理できて、あるいは誰がどのくらい、所得なり資産の情報をきちんと、マイナンバー制度にしろ、きちんと情報を捕捉できれば、北欧諸国のように全てのプライバシーが政府にオープンになっていれば、これは税額控除の方がはるかに逆進性に対して有効なんですけれども。そうでない状況だと、逆進性対策で税額控除やっても、むしろそれが変な方向に使われるんじゃないかという危惧を国民が持っているとすれば、セカンドベストとして軽減税率でもしようがないのかなという具合に思ってしまうので、これはある意味で、税あるいは政府の予算の、取って使うことに関する信頼度、透明度の問題、あるいはプライバシーをどのくらい国民が政府のために開示すべきかという、その問題とのトレードオフの関係だろうと思います。
 それからもう一つ、軽減税率は本来、軽減税率をやるとすれば、逆進性対策じゃなくて、むしろ駆け込み需要とその反動への備えとして軽減税率は使われるべきで、要するに、逆進性対策だったら税額控除、駆け込み需要とその反動への対策だったら軽減税率、要するに耐久消費財ですね。要するに、住宅や車に対する消費税というのは非常に攪乱効果大きいので、そこに対して軽減税率というのはあり得ると思うんですけれども、軽減税率を逆進性対策として使うというのは本来は望ましくないんですが、問題は、どういう制約の下で議論するかでこれは変わってくると思います。
○参考人(高橋洋一君) 最初に、軽減税率は、井堀さんと井手さんと同じでして、これははっきり言ってえこひいきの塊ですから、米、みそ、しょうゆ、新聞なんて訳分かんない話になっていますけれど、こんなえこひいきな話するんだったら給付付き税額控除の方がはるかに望ましいというのはそのとおりです。
 ただし、その給付付き税額控除をやるための社会インフラというのをちょっと申し上げたいと思うんですけど、私思うところに実は三つほどありまして、一つは個人勘定、それとあと番号制、それとあと歳入庁だと思います。私は、実はこの個人勘定なんかは二〇〇一年のときから諮問会議の方でずっと提案していたんですけど、ずっと駄目だったんですよね。やっぱり最終的には歳入庁のところに全部行き着いちゃうんですけれど、そこで駄目になるから、そこに行き着く話はほとんど駄目になっていたというのが今までの経験だと思います。
 それで、社会保障の一体改革では歳入庁の話書いてあるんですから、それを多分やるのが一番手っ取り早くていい方向に行くんじゃないかなと思います。こういう形にしますと、あと個人勘定なんか入れると比較的みんなよく分かってくるんじゃないかなというふうに思いますので、何か手順としては、いきなり給付付き税額控除というんではなくて、実は歳入庁の話とか番号制の話、それとあと個人勘定の方からじわりじわりやっていけばおのずとそこに行き着くし、実はそういう制度がないと給付付き税額控除って言ったってなかなかできないですね、これは。
 言ってもなかなかできない制度というのは実はうまくいかないわけなんで、何かをやりたいときにはその周りのインフラというか必要条件というのを固めていくというのが先決じゃないかなと思います。特に、番号まで行ったんですから歳入庁まで、これは合意にある話なんで、そこを進めていって、その中で個人勘定の話なんかとかそういうのを整備していくと、その先に給付付き税額控除というのはおのずと自然の発想として出てくるいい政策だと思います。
 ですから、今の段階でその給付付き税額控除の話ししますと、いろいろ空理空論があるんですね。でも、これははっきり言えば、いろんなやっている国があるので、そのときに何が必要かと調べると、私さっき言ったような本物とそれに類するものが必要だってすぐ分かると思いますよ。
 ですから、それを、番号とか歳入庁とか個人勘定みたいな、これは制度とちょっと関係ない話なんですね、税制と関係ない話。そういうところできちんとやっていって、そういうのができて運用していくと政府の信頼度というのは実は高まると思いますから、そういうのをやってから最後の、最後というか、その次に給付付き税額控除みたいなのに進んだら一番ベストじゃないかなというふうに思います。
 やれることを先にやって、手順がちょっと違っているような感じが私にはすごくするんですけれど。こういうふうな、できることは何か、それで何からやるかというのは、そういう戦略的にちょっとやっていただけたらいいなと思っております。
○安井美沙子君 一分しか残っていませんので、井手参考人に一言お伺いします。
 不公平感の是正という中の一つで、配偶者控除の廃止というのを私は希望しているんですけれども、今まで専業主婦の内助の功に光を当てるというふうに言われていたんですが、兼業主婦も内助の功というのはあるんですね。ですから、これは完全に不公平だと思いますし、女性の中立的な働きを後押しするという意味でも、これは即刻廃止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(井手英策君) 私も同じ考えです。おっしゃるように、内助の功なのかどうかはちょっと分かりませんけれども、そもそも、もうその女性とか男性というような差別、差別というか区別をしていくことですね、そのことがそれぞれの対立を生んでいくということにもっと目を向けるべきだと思うんですね。だから、そうではなくて、やっぱり基本的な人間として扱っていく。だから、基礎控除ということであれば、それは人間として扱うわけですね。しかしながら、今のような話だと男性と女性を区別する。
 そういうものは可能な限りなくしていった方がいいと思うことと、あとは、自助、共助、公助というときのいわゆる自助の部分。これは、もう前提にされているのが専業主婦なんですね。しかしながら、もうこれが破綻していて自助が成り立たないような状況が現実にある。しかしながら、その自助が前提になっていたような税制が今あって、だから、この税の部分も社会の変化に応じて変えていくべきだと私も思っています。
○安井美沙子君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、平木大作君。
○平木大作君 今日は、三人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。公明党の平木大作でございます。
 時間も限られておりますので、早速質問に移りたいんですが、まず井堀先生にお伺いしたいと思います。
 私、今から十八年前、平成九年、一九九七年に先生の財政学の講義を受講しておりまして、いい成績を取った記憶はないんですけれども、そのときに、このままだとやはり財政的に本当に大変だという先生の壇上からのお訴えを覚えておりまして、大学時代のノートも探したら出てまいりました。
 見ましたら、ちょうど講義の初日、これは日本経済新聞の九七年四月八日付けの「経済教室」が出てきまして、そこで先生がおっしゃっていることをなぞってみますと、財政再建とは利益団体の既得権を消滅する試みなんだと。そこに合意を持っていくためのインセンティブをちゃんとつくらなきゃいけませんよと。その方途として、公債を含めた歳出全体にしっかりシーリングを設定しなけりゃいけない、あと既得権に関する情報を広く国民に開示して議論を進めていかなきゃいけない、三つ目に、財政再建計画にはあらかじめ拘束力のある枠組みをはめなければいけないと、こういう論調でありまして、今読んでもそのとおりだなというふうに改めて思った次第です。
 ちょっと、今日、まず、この論考から十八年たってみて、一方で財政の状況自体がもう大きく悪化してしまっているという中において、先ほども先生、少し消費税に言及されたんですけれども、スタンスとしては、やはりこの財政再建というのは、いわゆるどう支出、歳出をコントロールしていくのかということだというスタンスだとは思うんですけれども、一方で、増税、歳入について、今どういう優先度で、あるいはどういうスパンで、今御提言等もしあったらお聞きしたいというのが一点と。
 それから、いわゆる合意をつくっていく上で、やっぱり国民の皆様になるべく情報を開示した方がいいという中において、これまでのこの、それこそ十八年、二十年余りの取組をどう評価されているのか。もし、ここも、いわゆる負担と受益の在り方みたいなものを示せと言われてもなかなかちょっと難しいなというところもあるかと思うんですが、具体的にこういうものを示した方がより議論が進むんじゃないかというものがありましたら御提示いただきたいんですが、よろしくお願いいたします。
○参考人(井堀利宏君) どうもありがとうございます。十八年前の話、どうもありがとうございます。
 それで、今日の話というのは、確かに歳出削減と増税の、消費税の話を少しお話ししたんですけれども、今日の最初でちょっと触れたように、財政再建なり財政健全化をする場合にとってのスピード感をどうするかというのがやはり重要で、やはり十八年前と今との大きな違いというのは、いわゆる団塊の世代が十八年前はまだ働いて元気で、ちゃんと保険料なり税金を納めた時代でしたわけですね。それがもう既に引退して社会保障の受給世代になって、これからその受給額が、個人ベースでもそれからトータルとしてもどんどん拡大していく時代に二〇二〇年代に入っていくと。
 それから、昔と比べると日本の全体のやっぱり潜在的な成長率は落ちていると思うんですよね。だから、これから一〇%ぐらいの名目成長率が実現していけばこれはある意味で問題ないかもしれませんけれども、やはり二〇二〇年代以降を考えますと、これがかなり厳しくなってマイナスになるかもしれないと。そうなってくると、早めにやはり財政再建のめどを付けた方がいいと思うんですね。
 そのためには何が必要かというと、歳出削減なり増税にしても、やっぱり早めにしておくと。ただ、消費税を上げるのであれば、二〇%まで上げる必要はないと思うんですけれども、一〇で、私は一五ぐらいまではしようがないのかと思いますけれども、早めに一五に上げて、その後はもう上げないで、なるべく歳出削減の方で頑張ると。
 だから、その歳出削減の一つとして社会保障の歳出を、毎年の自然増をどこを削ってどうするかということをやっていくとどうしても微調整に終わってしまいますので、抜本的な社会保障制度の改革、医療、年金制度の改革、特に個人勘定を早めに医療にしても年金にしても入れることが重要で。
 例えば、今日の話では余り医療の話をしなかったんですけれども、医療も年金と同じように賦課方式でやっていますので、これから十年先は相当医療費の負担も増えますし、それを現役世代が今のように保険料なりそれから国庫負担という形でカバーするのはほぼ難しくなってきますので、それが分かっている以上は、早めに医療費の積立部分を入れておいて、要するに、将来、医療費が大変になるんだったら今からそれに備えて基金をつくっておく必要があると思うんですね。それを国の段階でまとめてつくるのか、個人ベースで、それぞれの個人が自分の老後に備えて早めに個人勘定の医療基金をつくっておいて、自分の老後の医療費のある部分はもう早めに自分で備えておくと。しかも、それをちゃんと老後の医療費に備えておいた人は何らかのインセンティブを与えて、例えば生活習慣病がこれから大きな医療となるわけですから、それに対する備えもインセンティブを付けるとか。
 あるいは、終末医療に関してもう少し、これはなかなか政治的にも国民感情としても難しいわけですけれども、終末医療に対する、安楽死とまではいきませんけれども、ある程度の割り切りを出しておかないとこれは非常に大変になりますから、その辺りの準備を早めにして、医療費がこれから増えていくときに、必要な医療費が増えるのは当然ですけれども、それに対する備えをそのときの若い世代に賦課方式で全部かぶせるんじゃなくて、年取っていく人がそれなりに負担もちゃんと準備しておくような制度に変えていくと。これは年金でも医療でも今からやらないと間に合わない、かなり今でも遅いんですけれども、早めにやっておかないと、本当にその後期高齢者の方が増えたときに、それへの備えがなくなってしまうのは大変だと思います。
 それから、情報の観点からいえば、やはり三党合意は非常に重要だったと思うんですね。要するに、与党と野党が一緒になって、増税という痛みを伴う、かつ社会保障の一体改革も含めて国民に打って出て、しかも選挙でそれが支持されたわけですから、そういう意味で、与党野党を問わず、社会保障あるいは財政健全化も含めて、議論に関しては痛みも含めて情報を開示していろいろと議論をして、そこで政治的な合意を経る努力というのは、特に今後、例えば年金改革とか医療制度改革では与野党合意が非常に重要になるので、この前の一体改革というのはその一つのいい教訓にはなったと思います。
○平木大作君 もう一問だけ、今度は井手参考人にお伺いしたいと思います。
 信頼なき社会だから増税が難しいと、大変説得力のある議論だなと思ってお伺いしていました。この誰かの利益、要はどこかの利益団体なり既得権益なりの利益ではなくて、人々の、人間の利益に変えていくんだというお話もとってもすとんと落ちたんですけれども、この全体の利益、人間の利益というところに持っていくときに、若干、ちょっと私、よく議論に付いていけなかったのがいわゆる世代間の格差の部分。
 例えば、医療費と聞くと我々の頭には高齢者かなと思い浮かぶ。大学の学費と聞くと高齢者の皆様には恐らく若い世代のと浮かぶと。この辺を、いわゆるどう全体の人間の利益というふうに捉えていくのかという点をちょっと詳しく教えていただけたらと思うんですが。
○参考人(井手英策君) 二つあると思うんですね。
 一つは、今日お話を申し上げたように、まず特定の誰かを受益者にしないようにしましょうと。ですから、出すときには所得制限を付けずにあらゆる人々に出していくという方向性をまず考える。これは恐らく世代内の対立を弱めていくと思うんですね。つまり、ある世代の中で、ある人は受益者である人は負担者になっていくということを弱めていくと思います。
 まずこれが大きな方向性としてありながら、もう一つが今おっしゃった世代間格差の問題で、この世代間格差の場合、先ほど井堀先生おっしゃっていた社会保障・税一体改革というのは非常にいいヒントを我々に与えてくれているわけですね。というのは、元々あのときの議論は社会保障三経費でやっていて、これで慌てて社会保障四経費に変わったと。つまり、元々は医療や年金や介護という高齢者向けのサービスがターゲットになっていたのに対して、ようやく四番目に滑り込むように子育てが入ってくると。
 実は、増税の議論をするときに受益が何かということを考えなければいけないわけですが、その受益について、これは高齢者の例えば利益、これは現役世代の利益ということをパッケージで出していかないといけないということですよね。それが社会保障・税改革の我々に対する示唆だったと思うんです。ただ、それをパッケージで出すだけでは不十分で、可能な限り所得制限を付けない形で世代内の対立も緩和しようじゃないかというのが今日申し上げた趣旨になります。
○平木大作君 ありがとうございます。
 終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、藤巻健史君。
○藤巻健史君 維新の党の藤巻です。どうもありがとうございました。
 皆さんにお聞きしたいんですが、時間がないので今日は高橋先生だけちょっと三問質問させていただきたいんですが、前も、昔から私、高橋先生とは財政に対する危機感が全く違うなと思って聞いていたんですが、今日聞いても全然違うなと思ったんですが。
 先生が今日御提示された三ページ、格付よりクレジット・デフォルト・スワップということで四月十日の数字を出されていますよね。ギリシャが二七・二二%で日本は〇・三五%だと、日本は全然危なくないんじゃないかなというふうに、これをもって日本は財政危機ではないよということをおっしゃったと思うんですが、すごく抵抗感がありまして、なぜかというと、このクレジット・デフォルト・スワップというのは国の破産の確率なわけで、要するに、国がお金がなくなっちゃって国債の元本も利息も払えないというような状況に陥ることを言っているんですが、確かにギリシャはそういう状況に、高いと思うんです。
 なぜかというと、ギリシャ中央銀行が政府を助けることができない。すなわち、今ユーロ圏にありますから、ユーロを刷れるというのはヨーロッパ中央銀行だけで、ギリシャ中央銀行、ギリシャ銀行はドラクマを刷れないわけです。ということは、政府がお金が足りなくなっても、ギリシャ銀行はお金を供給できないわけですね。ところが、日本の場合には、政府がお金足りない、我々の給料払えぬとなれば、国債を発行して日銀が引き受けて、その後、日銀が輪転機を回して政府に渡してそのほっかほっかの紙幣を我々にくれれば、お金が足りなくなるということはないわけです。ですから、私も、日本の国が財政破綻する確率というのは極めて低い。だからそれを表しているのがこのクレジット・デフォルト・スワップの数字だと思うんですが。
 ですから、日本は倒産はしないんです。でも、倒産はしませんけれども、例えば中近東から自衛隊の油を買う、そのたびに政府が日銀に国債を発行して日銀が輪転機回して紙幣を刷ってそのお金で原油を払っていれば、中近東なんというのはもう絶対日本に石油売ってくれないですよ。何言いたいかというと、お金の価値がべらぼうに下がっちゃう、要するにハイパーインフレが来るということですね。ハイパーインフレが来れば当然究極の財政再建が成るわけなんで絶対に国は潰れっこないんですけれども、でも、国が潰れなくてもハイパーインフレになりゃ国民は地獄ですから、まあ財政破綻とハイパーインフレは同じという意味で、そういうことを考えると、このクレジット・デフォルト・スワップのレートが低いから日本の財政大丈夫だというのは全く言えないんじゃないかなと思うんですがどうですかというのが一点目。
 二点目は、プライマリーバランス、井手先生もちょっとお話、二〇二〇年以降が問題だと、井手先生だったかな、おっしゃっていたと思うんですけれども、これ二〇二〇年、プライマリーバランス、これ達成するのはかなり苦しいと思いますけれども、達成した後、累積赤字は減るのかというのがちょっと質問なんですね。
 というのは、やっぱりプライマリーバランスを黒字化したいということは、やっぱりドーマーの定理にのっとっていると思うんですけれども、要するに名目成長率の方が名目金利よりも高いという条件が必要なわけですが、こんなに累積赤字が大きくてちょっとでも景気が良くなって金利が上がった場合に、名目金利は跳ね上がると思うんですね。要するに、名目金利というのは実質金利プラス期待インフレ率プラスクレジットリスクですから、要するに倒産確率ですから、こんなに累積赤字が大きいとクレジットリスクが跳ね上がる、すなわち名目金利跳ね上がっちゃいますから、ドーマーの定理である名目金利よりも名目成長率が高いなんてことは未来永劫に私はあり得ないと思うんですね。
 ということで、要するにプライマリーバランス、プライマリーバランス行ったから財政は大丈夫か、要するに累積赤字が膨れ上がっちゃう、それで金利が上がったらどうなっちゃうのという懸念があるんですが、それでもプライマリーバランスを達成すれば大丈夫だと先生は思っていらっしゃるのかが二点目。
 そして最後のあれが、量的緩和についてどう判断されるかということで、先生先ほど、二〇〇三年に量的緩和をやめたのが非常に悔しいとおっしゃっていらっしゃいましたけど、あのときの量的緩和というのは短期国債しか買っていなくて、今は長期国債を買っちゃったという、ルビコン川を渡っちゃったわけですね。
 今私が非常に心配しているのは、例えば消費者物価指数、黒田さんは二%と言っておりますけれども、どうも土地と株の値段が上がり始めてバブルの初期みたいな感じがある。要するに、あのときというのは消費者物価指数は非常に低かったけれども土地と株が急騰した、それで経済が狂乱した。それで、最終的には消費者物価が極めて低かったにもかかわらず金利を引き締めたんですけれども、もしこういう状況、今みたいに量的緩和をやっている状況で日銀が手を引いたらどうなっちゃうのと。
 要するに、今は、今年度の国債発行高は百五十三兆円で、日銀が百十兆円買っているわけですけれども、七〇%を買っている買手がいなくなったらどんなマーケットだってクラッシュしちゃいますよ、要するに長期金利暴騰するわけで。そのときに、国がじゃ七〇%の新しい国債発行できるか、できなくなれば、それは当然のことながら我々の給料もないわけですね、借りられないんだから。となると、日本は混沌としちゃうんじゃないかと思うんですが、量的緩和をしてもそういう事態は避けられるのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。
○参考人(高橋洋一君) 今三点ほどありましたので、最初のCDSの話は、これは話のやつに使っただけなので、もし債務残高で説明しろと言われたら、普通は債務残高じゃなくてネット債務残高を計算するんですけれど、それでGDP比で計算するとほぼアメリカと同じですから、確かにいい数字じゃないですけど、すごく悪い数字でもないと思います。
 ですから、その意味で財政の話。私が財政について楽観的だというんですけど、私も財務省入ってからずっと財政再建の話ばっかりやっているんですよ。それで、いつもオオカミ少年みたいでして、いつも大変だ大変だって二十五年間ぐらい私ずっと言い続けていたんですけど、全くそういうのはなかったですね。ですから、そういう意味では、結構大蔵省の話とか財務省の話ってバイアスが掛かっていると正直言って思います。世界から見ると、こんなに経済うまく回れば大したことないんじゃないのというのが普通だと思うんで、それを言っているだけであります。
 二番目のプライマリーバランスの話。これはちょっと、私が金利と成長率について一定の仮定を置いているようにお話しされたんですけれど、実は思っていません。先進国でずっと見ますと、金利と成長率の関係というのは、八〇年代はどっちかが高い、九〇年代は逆にどっちかが低いと。それと、あと二〇〇〇年代はほぼイーブンで、ここ三十年間ぐらい取ってみますとほぼ同じです。この金利というのは、ちょっと正確に言いますと国債金利の長期金利ですけど、それを見るとほとんど同じなんです。
 これは数学的な結論なんですけど、金利と成長率がほぼ一緒であったら、実はプライマリー収支だけ回復すれば少なくとも債務残高のGDP比は発散しないというところまで言えます。発散しなければ構わないです。別に低く続くこともないし、発散しなければ構わないので、そういう意味では、発散しない条件を実はプライマリー収支の話に事実上置き直しているだけなんで、それは金利と成長率、つまり国債金利と成長率がほぼ一緒だったら、これはプライマリー収支が回復すればいいというところで終わると思います。そうすれば一応財政再建は終わり。
 財政再建の定義をきちんというと、債務残高割るGDP比が数学的な意味での発散ですから、そこの発散に入らなければ構わないということだと思います。ですから、その意味では、ちょっと大げさに財政が危機だ危機だと言い過ぎているんじゃないかなと思います。先ほどもちょっと言いましたが、本当に財政危機でしたら資産をもっと売るはずですね。売らないです。これは、売らないということは十分楽だということではないのかなというふうに思います。
 それと、あと量的緩和のところ。これは、藤巻委員は何かインフレがハイパーになるとかずっとここ二十年間ぐらいおっしゃっていると思うんですけれど、実はそれがほとんど当たっていなくて、それで、今のインフレ目標の二%の話であれば、実はすごいハイパーインフレというのはまず起こり得ないようなオペレーションをするはずですね。ハイパーインフレというのは定義がありますけれど、講学的な定義、学問上の定義を言いますと、実はインフレ率一〇〇〇〇%です。これは起こり得ません。それで、あと国際会計基準か何かでインフレ率二〇%ぐらいを言うときもあるんですけど、ここもまず起こり得ませんね。要するに、インフレ目標が二%だからです。
 先ほどの二〇〇六年のときは、インフレ目標二%決めていないから、実は形上のインフレ率がゼロになったときに引き締めちゃったんですね。ゼロになって引き締めるというのは、上方バイアスというのがあるので、実はマイナス一%で引き締めているので、これは物すごい間違いであると思いまして、私そのときにすごく言ったんですが、実はこれは引き締めなきゃいけないんだと思い込んでいる人が結構多くて、それで、結果的には日銀がやってしまったというのは大失敗でした。ですから、これは本当にインフレ率が、そのときインフレ目標二%あったら、あのときに引締めなんか絶対起こり得ないです。
 それと、あとインフレ目標があるということは、実はハイパーインフレの話とか国債の金利が高まるとか、こういうのも実は予防します。それで、この話になって急になくなっちゃったらどうなんだというと、それは急になくなることはなくて、これは先にやっている例えばアメリカなんかの出口なんかをよく見ていればいいです。たまたまバーナンキは私のプリンストン大学の先生ですけれど、彼なんかは日本のあほさをよく見ているから、絶対そういう失敗はしないということを言っていますけれど、その意味では徐々に徐々にやっていくと。
 こういうのは結構予測可能な話なので、一気にやめる、一気にどんとやるとか、そういうことはないですね。ですから、全て徐々に徐々にゆっくりやっていくという答えになると思うので、一気になくなって急にインフレとか高金利になって大変だ、暴落するとかいう話があるんですけど、それは今まで全く起こっておりません。
 一回そういうのが起こりかけたことも、私が役所にいたときにちょっとオペレーション失敗したことはあったんですけど、それは、それでもせいぜい一か月ぐらいな話ですね。
 ですから、そんな意味で、長期にわたって国債の金利が暴騰する、あと国債が暴落するとか、そういうことは、実はこのインフレ目標二%というのをきちんと守る、それでそのためのオペレーションをきちんと予測立ててやっていますから、その限りではその可能性は極めて少ないんじゃないかなというふうに思います。
○藤巻健史君 もう時間ないので、二つだけちょっとコメントしたいんですけど。
 日銀のオペレーション、起こらないようにオペレーションをするとおっしゃいましたけれども、私はそれがゆえに、心配だがゆえに黒田日銀総裁に方法を聞いているんですけれども、時期尚早ということでちっとも教えてくださらないということが一点。
 それからもう一つは、やっぱり二十年間、確かに私も言ってきましたけど、オオカミ少年、先生もおっしゃっていましたけど、オオカミ少年に関しては、この前、吉川先生が、日経新聞に書いてありましたけれども、もう死にそうな人がまだ死んでいないから大丈夫と言っていいの、それは違うでしょうという話をコメントしておりましたから、その辺だけちょっと最後にコメントしておきます。
 どうもありがとうございました。
○参考人(高橋洋一君) いろいろと金利の予測とかインフレ率の予測というのは結構可能なので、合理的にやっていただく限りにおいてオオカミ少年であっても構いませんけれど、何かそのようなデータとか合理性抜きの話というのはちょっと私はやらないということだけ申し上げます。
○藤巻健史君 ありがとうございます。
○会長(鴻池祥肇君) 辰巳孝太郎君。
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
 まず、井手先生にお聞きしたいんですけれども、今日の資料も含めて、既に日本は小さい政府だということや再分配の機能が弱いということなんかも非常に感銘を受けて、私も非常に同感するところがほとんどでございました。
 そして、先生のおっしゃるのは、税金の取り方や使い方、また給付の仕方について信頼を得ることがまず大事だと、その後に税金の取り方ということだと思うんですが、その信頼についてなんですが、いわゆるほかの納税者が納税義務を果たしているかという信頼が一つあるということで、この点について少しお聞きをしたいんですけれども。
 先ほどOECDの話もありましたけれども、過去三十年で格差が過去最高になったという問題が一つあると。日本でもこの間、格差と貧困の問題というのが言われてきたということなんですが、私の問題意識としては、やはり今、高額所得者とあとは大企業ですね、主に法人税ということになると思うんですが、ここに対する課税というのが非常に弱いのではないかと、ゆえに信頼を損ねるということにはなりかねないかということでありまして、その点について、この間、大企業も大もうけを上げておりますし、また、アベノミクスということであれば、この二年間で、金融資産一億円以上持つ方がいわゆる富裕層ということになりますが、百万世帯を超えたと、この二年間で二四%ほど増加しているということですので、信頼を得るためにもここへの課税強化というのが必要ではないかと思うんですが、そのことについてどう思うかというのが一点と。
 もう一つは、これにも関連してくるんですが、いわゆる大企業に課税をという話をしますと、大企業が潤ってこそ中小企業にと、いわゆるトリクルダウンということがこの間言われてきたことでもありまして、実際、それは本当はないんじゃないかというふうに私は思うんですが、そのトリクルダウンについて先生の御見識をお伺いできたらと思います。この二点。
○参考人(井手英策君) ありがとうございます。
 先ほどもちょっとお答えしたんですけれども、税というのは基本的に国の税金と地方の税金というのを分けないといけないと思うんですね。そのときに、人間の生存を保障するような、困っている人や貧しい人を助けるような、そういう役割を担っている国の税金であれば累進性を設けるとか、あるいは大企業に税を掛けるとか、そういうことはやっていいんだと思います。
 その国税のレベルで今法人への課税が非常に弱くなっているということは事実で、実際、東京都のアンケートにもございましたけれども、税金を安くしたからといって本当に企業の流出が止まるのかとか、あるいは国内に回帰してくれるのかとか、あるいは従業員の賃金に使うのかということに対して、ほとんどの企業がネガティブな答えを示していますね。
 ですから、私も正直に言うと、企業自身が本当にどこまで法人税の減税の必要性を認識しているか分からない中で、九〇年代以降、非常に大胆に法人税を切り下げ過ぎたというふうに私も思っております。その問題が一方でありますね。ただ、あと同様に、所得税について富裕層にもっと掛けるべきだということも国税レベルではそうでしょう。今日お示ししたように、税を通じた再分配効果は非常に弱いですから、これをもうちょっと普通の国民国家並みにしていくということは大事だと僕は思いますね。
 その話と、一方で、今度は地方税の話を考えないといけないと思うんですね。その中で、企業に掛けるとか誰々に掛けるということを我々また考えがちなんですが、地方はあくまでも、繰り返しになりますが、人間が必要とするサービスを出しています。これは医療であれ教育であれ、養老、介護であれ育児、保育であれ、人々が必要とするものを出しているわけなので、限りなく全ての層の人々が税を負担するということが私は大事だと思います。だから、究極的に言うと、貧しい人も含めて税を払うということが実は地方税では大事になってきます。そして、そのことが、むしろ中間層や富裕層から見て貧しい人もそれなりに負担をしているじゃないかということで、増税に対する合意が整っていくと。
 しかし、これは、じゃ貧しい人に対してつらい税制なんではないかと批判するのは間違いで、それが、今日申し上げたようにあまねく人々に医療であれ教育であれ出していけば、それは税が逆進的であっても全体としては格差が是正されるわけですから、そういった意味で、どのように税を取るかということはもう少し細かい議論をしていく必要があるというふうに思っています。
 あと、二つ目のトリクルダウンの御質問ですけれども、財政学者として申し上げられることは、財政を媒介とせずにまずトリクルダウンが起きることはあり得ないと。つまり、大企業であれ富裕層であれ、お金をもうけた人たちが、何というか、ボランティアのような心を持っていて貧しい人に対してお金を寄附していくと、これは全くないわけじゃないでしょうけれども、それを一〇〇%前提にするのもおかしい。とするならば、財政というチャネルを通じて恐らくトリクルダウンは起きるんでしょう。
 しかしながら、今日お示ししたように、日本の財政というのは先進国の中で最も再分配機能の弱い財政ですね。ここを通じてなぜトリクルダウンが可能かということは慎重に議論をしないといけないと思いますし、私はそれは難しいというふうに思っています。
 以上です。
○辰巳孝太郎君 ありがとうございました。
 続けて、高橋先生にお聞きしたいんですが、先生は、消費税のことなんですが、消費税そのものは必要だという考えだと思うんですが、一方で、増税に関しては、時期のことも含めて、また消費税に関する誤解、またそれに関する吹聴といいますか、そういうことに関しては否定的な面もあったと思うんですが、では、二年後に一〇%という話はあるんですが、私たちは反対なんですね。日本の経済構造からして、経済成長をということであれば、GDPの六割を個人消費が占めるのが日本ですから、消費税を、一〇%でこれでとどまるかどうかというのはまだいろいろあると思うんですが、これを上げてしまうと、又はそれ以上やってしまうと、日本の経済そのものを冷え込まして、そしてそれは税収減になっていってしまうんじゃないかというふうに思うんですが、先生の消費税の増税に関する今後のことも含めて御見識をお聞かせいただければ。
○参考人(高橋洋一君) 確かに、増税してGDP減らして全体の税収が下がったら元も子もないというふうに思います。そして、それはだから経済状況に依存するんじゃないかなというふうに思いまして、これはそのちょっと経済理論からかなり予測は可能だと思うんですね。ですから、それを予測して全部納得していかないといけないというふうに思います。
 もう一つの可能性としては、すごく景気が良くなって、さっきもちょっと言いましたけど、すごく景気が良くなって実は増税の方が望ましいというときもあるかもしれませんね。だから、一番多分国民的に望ましいのは、すごく景気が良くなって増税が望ましい。更に言えば、すごく景気が良くなり過ぎちゃってもう増税は要らなくなってしまったというのが最高ですね。
 ですから、いろんなステージが考えられるし、それとあと、確かに税法で決まっているのは決まっているんです。決まっているのは決まっているんですけど、政治的なことを考えたら、実はこれは、あと二年後の四月ということですけど、その前の年の国政選挙でほとんど決まると思いますよ。ですから、その意味では、税法で決まっているということは何もなければそのままするというだけの意味でして、それを本当にするかしないかというのはその前の政治判断だと思うので、そのときに、ですからきちんと議論したらよろしいんじゃないでしょうかと思います。
 ただし、税法で決まっているのは事実ですから、何も議論しなければ、それは上がります。そこは間違いないです。ただし、その前に国政選挙があるので、恐らくその国政選挙のときに議論になると思いますね。議論になったときにどうなるかという話で、この間のときもそうですけど、解散をして国政選挙をすれば実は税法は覆るということもありますよね。ですから、いろんなパターンがあるというのは非常にいいことなんで、そのときの経済情勢を見ながら、これは是非その前の国政選挙で議論してもらいたいと思います。
○辰巳孝太郎君 以上で終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、中山恭子君。
○中山恭子君 ありがとうございます。
 今日は三人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見、お考えをお聞かせくださいまして、ありがとうございます。
 私からは、今日の問題、お三人ともやはり社会保障の問題が絡んでいると思っております。
 今回のテーマも、やはり社会保障をどのようにしていくかというのが大きなテーマになってくると考えておりまして、井手参考人には本当に普遍主義の良さというものをやはり考えさせられました。例えば、現金給付から現物給付へ力点を移していくといった場合、具体的に日本でその方向で進めるためにどのようなことを、何というんですか、順を追ってやっていく必要があるのか、もう一気に変えてしまうことができるのか、そういったことについてお教えいただけたらと思っております。
 それから、井堀先生には、一五%程度の消費税があれば長期的に安定した財政が行えるというようなお話を読んだことがありますが、その場合に、社会保障について、先ほど個人勘定の賦課方式とおっしゃったでしょうか、そういうことをお考えだとすると、先ほど西田先生からもお話がありましたが、子供がいない家庭、十人くらい子供がいる家庭、その差をどのようにして考えていったらいいのか。それは基礎年金などで埋めればよいということなのでしょうか。先ほどの一五%程度の消費税のありようといいましょうか、それの財政に及ぼす影響。
 もう一つは、一〇%程度の名目成長がないとやっていけないだろうというお話もあったかと思うんですが、その点について、社会保障との関係からお話しいただけたらと思います。
 高橋参考人には、今と絡みますけれども、四%程度の名目成長があれば財政再建は可能だというふうにおっしゃっていらして、私も、税金を上げるよりは、いろんなことがあっても、日本の、消費税率も含めて税金は安い国だねという方がいいと考えておりますんですけれども、その名目成長率四%がもし前提であれば、まあ二%から四、この名目成長率を高めるに当たってどのような方策をお考えなのか教えていただきたい。特に、社会保障について、歳入庁の問題ですとおっしゃいましたけれども、そのときに今の社会保障制度はこのままでいいとお考えなのか、大いに変えなければいけないとお考えなのか、そのことについて御質問いたします。
○参考人(井手英策君) 普遍主義を一気に実現できるのかという、あるいはそうではない漸進的な変化なのかという御質問でしたが、私はずっと日本の農山村回っておりまして、その中でしみじみ感じることなんですが、家族とか共同体とか、そういったものを大切にする日本人の価値というのは非常に強くて、そのような中でいきなりみんなが必要とする社会保障を例えばみんなで税金で払いましょうといったところで、なかなかそれが受け入れられないという現実が一方にあるような気がします。
 と同時に、勤労の思想と申しましょうか、人間は働かなければならないというか、働くことが価値があって尊いから働くというよりも、人間たるもの働かなければならないというような価値観も同様に日本人というのは強いように思いまして、そのような中で例えば税で社会保障を豊かにしていくというと、あたかもそれは何か働かずに福祉を受けるのかというような響きを持ってしまうところもあるような気がするんです。
 とはいいながら、そのような日本人の持つ伝統的な価値と同時に、現実に、例えば都市の高齢者が独居老人や老老介護の問題どうしたらいいのかということに苦しんだり、あるいは現役世代がもうあからさまに経済的な理由で子供をつくれないというような状況があったり、あるいは仕事が理由でなかなか子育てができないという問題があったり、そういう中で可能な限り社会保障を社会化していくといいましょうか、みんなで分かち合っていかなければいけないというものを痛切に感じているという現実があると思うんですね。そこのせめぎ合いで実際の政治というのは、あるいは現実というのは動いていくんだと思います。
 その意味で、例えば一つの例を挙げますと、私が注目しているのは地方で乳幼児医療費の助成金をどうするかということが非常にホットな話題になっていまして、その中で、ある地域ではやっぱりお金持ちの人には医療費を払ってもらおうという話になりますし、あるいはもう何歳か、小学校までしか面倒見ませんねというところもあったり、あるいは中学校まで面倒見ましょうねというところがあったり様々に。地域によってはもう中学卒業するまで無償化してあげましょうというような寛大なところもありますし、まさにそこが今一つの焦点になっているように思うんですね。
 そのときに、それぞれの地域の深刻さや危機意識によってまた変わってくるとは思うんですが、ただ、大切なことは、今少しずつ可能な限り子供の医療費を無償化に近づけていこうとする動きが起きているということですね。と同時に、そのときに所得制限を付けるか付けないかというのは僕たちが思っている以上に大きな違いであって、貧しい人たちだけがもらえるようにした瞬間に乳幼児の医療費助成を受けている人たちは何だか悪いというか、ずるい人になっちゃうわけですね、日本人の価値観だと。自分たちは税を払っている負担者だと。ところが、これを全部無償化したところというのはみんなが受益者になっているから、低所得層を悪く言う理由もない。みんなが自分の子供が病気で困っているときにはすぐに病院に行けるという社会をつくろうとしているわけですね。
 ですから、現実にそういう変化というのは起きつつあって、これは決して大胆な革命的な変化ではないと思います。少しずつ少しずつ変わっていくんだと思います。しかしながら、そのときに、所得制限を設けるという財政的な観点によって人々がいかに悲しい思いをしたりつらい思いをするか、つまりお互いを憎しみ合わなければいけない社会が生まれるということを少し考えておく必要があるのではないかと思っております。
○参考人(井堀利宏君) 消費税一五%の話ですけれども、やはり私は、消費税というのは非常に取りやすい税で、課税ベースは広いわけですし、一%で二・五兆という安定的に税収が期待できる税なので、その意味で、社会保障の今目的税化されていますと、やはり消費税が安易に増税されて、社会保障需要を支えるためにどんどん増えてしまうという、そういうある意味では大きな政府の弊害も心配なんですね。その意味で、消費税はある程度上限を掛けておいて、そこの範囲の内で社会保障の制度改革にプレッシャーを掛けるというのが一つのやり方かなと思います。
 そう考えますと、今の日本の財政状況を考えますと、八%なり一〇%で打ち止めにするには余りにも状況が厳しいので、一五%ぐらいまではしようがないと。ただし、一五%を超えてずるずる消費税が上がるような社会にしてしまいますと、社会保障のやはり無駄な給付が、あるいは世代間の不公平が増大しますので、ここは消費税一五%ぐらいで抑えておいて、その範囲の内で社会保障をやるのであれば、足らないところは保険料を増やすなりほかの税をやるなり、あるいは給付の削減という形で踏み込んでいく、そういうことをやる必要があるのかなと思います。
 その意味では、名目成長率次第ですけれども、いずれにしても一〇%の名目成長率は私は無理だと思っていますので、常識的な日本の経済成長を実現する限り、一五%の消費税では相当厳しい状況だと思います。その意味ではかなり、社会保障も含めて歳出に対して抜本的に切り込まないともたないと思いますので、それは結構厳しいので。
 その意味で、後半お話ししました個人勘定賦課方式の話はあくまでもそのうちの一つの例なので、これをやれば全て社会保障の問題が片付くということではないんですが、その世代間の対立の問題を解消する一つの手としては、やはりお互いに、高齢者の方も若い人もお互いの経済状況なりをより分かり合う形で、対立の争点を、解決する争点を見出さないと、お互いに欲しいあるいは出さないと言うだけでは財政赤字で将来に先送りされますので、そこのお互いが納得できる、何という、話合いの場を財政の場でつくるとすれば個人勘定化が一つの方式かなと、そういう形で提案をさせていただきました。
 以上です。
○参考人(高橋洋一君) 名目経済成長率四%の話ですけど、これは内閣府で出している中期試算でデフレーターが一%になっていますから、それを二とか三に上げてもらうと、それで達成できるということは確認できると思いますので、そういうのは政府の方に資料要求したらいいのかなと思います。それは、ある意味で、デフレーターが二とか三というのはインフレ目標二%というのと余り変わりませんから、インフレ目標二%を守れば実はこの名目四から五というのはかなり達成の可能性が高まると思いますので、その意味では結構簡単な話ではあります。
 あとは社会保障の話ですけど、そういう中で社会保障をどうしたらいいのかと。それで、実は社会保障では、これは保険料の取りっぱぐれがすごく多いんですね。ですから、私はそれを歳入庁とか番号できちんと取れというのが先決です。保険料をきちんと取って、あと所得税をきちんと取れば、実は社会保障は今後十年ぐらいは多分ほとんど問題がなくなると思います。ですから、それで歳入庁と番号で十五兆円ぐらいは推計で取れると思います。この推計が過大だという人がいるんですけど、これはやってみなければ分からないので、とにかくやらない手はないでしょうとしか言いようがないですね。
 ですから、そういうのをやってみて、取りっぱぐれのところをきちんと取ると。そういうふうにしますと実は保険料率を上げなくても保険料収入は増えますので、それはそれできちんとやった方がいいんだと思います。それはある意味で社会保障の不公平の是正にもなるんですよ。ですから、これは、税金の話のときに不公平は一番最初にやる話なのになぜこれをやらないのか、私にはちょっと理解できないですね。
 それをやって不公平感をなくさないと、なかなかな話はできないんですね。それなのにこれをちょっと放置しているというのはすごく不思議で、この歳入庁については先ほどの社会保障と税の一体改革の中にも書いてありますので、これを早くやって、やってそれで収入が上がるのであればそれでいいでしょうと、それで上がらなかったら、その次にまたそういう違う手をいろいろそのときに考えた方がいいというのが私のお答えであります。
○中山恭子君 日銀の資料では、名目成長率というのがほぼゼロ%しかないという資料があったものですから、済みません、そのことでちょっと引っかかりました。ありがとうございます。
○会長(鴻池祥肇君) 質問ですか、今のは。
○中山恭子君 何かもしお答えいただけるのであれば。
○参考人(高橋洋一君) もしそんなに潜在成長率が低いんでしたら、インフレ率すごく今高くなっているはずです。ですからそれは、潜在成長率というのはちょっと技術的な問題がありまして、それでちょっと低めに見積もっているだけでして、もし本当に潜在成長率というか潜在成長力をすごく今突破しているのであれば、物すごくインフレになります。ですから、それがなっていないということは実はその推計が間違っているということに思います。
○中山恭子君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 中西健治君。
○中西健治君 三人の先生方、今日はどうも本当にありがとうございました。
 皆さんに少しずつお伺いしたいと思うんですが、まず高橋参考人には、消費税の影響を政府は見誤ったと、これはもう議会でも追及すべきだというお話もありましたけれども、往々にしてというか、この近年を見てみますと、政府の経済見通しというのは常に下方修正、下方修正と、要するにいつも上に外しているということだと思います。それはなぜなのかということと。あと、その割に税収は上振れするんです、方向が逆なんですよね。経済は見通しを上に外しておきながら、税収は見通しよりも上、かなり上振れしてしまったりすると。それはなぜなのかということと。あと、税収弾性値について先ほど少しコメントありましたけれども、政府が二通りの試算で、財務省の方は一・一を使っていて、内閣府の方はモデル化して、結果として一・〇ということになっていますけれども、それは幾ら何だって低過ぎるんじゃないかとすれば、幾らぐらいを使えばいいのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
 質問だけ全部言っていきますと、あと井堀先生には、財政健全化目標、これPBの黒字化というのは二〇二〇年ということになっていますが、PBの黒字化がいいのか、それとももっと進んで財政収支を黒字化しなきゃいけないとお考えになられるか、それとも、先ほど高橋先生もおっしゃっていましたけれども、債務の対GDP比率が発散しなければいいと、そういうふうに考えられるのか、そこら辺についての御意見をいただきたいというふうに思います。
 それから井手先生には、国税と地方税、細かい議論が必要ですよと、こういうお話でした。国税については累進性を高めてもいいんじゃないか、けれども地方税については低所得層の方々も払っていただかなきゃいけないと、このようなお話でしたが、結果としてよく言われるのは直間比率、これはどういう姿になるのだろうかということについて、これは細かい議論をした上での結果ということになると思うんですが、その結果についてどうお考えになられるか、教えていただきたいと思います。
○参考人(高橋洋一君) 最初の、経済見通しが下振れで税収が上振れというのは全くそのとおりで、変ですねということです。普通の国ですと、マクロの話と税収はリンクしています。ですから、そのずれがないんですけど、中西委員おっしゃったように、マクロの方の話は内閣府がやって税収の方は財務省がやっている、結構ばらばらにやっている、こんな国はまずないですね。
 ですから、これはマクロできちんとやるというのが大前提です。マクロできちんとやるということですと、さっきの税収の弾性値の話にも行き着くんですけど、これはたしか井堀先生が内閣府で弾性値の話をずっと計算をされていて、いろんなモデルで取ってやりますけど、ここ最近、十数年取ると、実績ベースですけれども、これは弾性値は三ぐらいでありますね。
 これは、財務省の官僚でしたらこんなのみんな知っています。要するに、景気の回復局面は弾性値すごく大きくなります。これは簡単でして、法人企業が、赤字のやつが税金払わないのが急に払うようになる、それだけの話です。こんなの感覚的にも分かります。ただし、すごくノーマライズというか安定状態になったら一に近づくというのは分かっていますけれども、実際問題はそんな安定なんてほとんどないから、大体景気の上がり下がりということで弾性値は大きく取るのが普通です。ですから、先ほどの税収のぶれというのは、そこも分かっているので、そういう意味で全然ふだん言っているのと違うと。
 ただ、財務省はどうして、じゃ弾性値を低く見るのと。これは予算上のテクニックでして、要するに弾性値が低いから、見通しが高くても、ないよというだけの話です。これ単なる予算上のテクニックの話なので、そんなものを経済見通しとかそういうふうに使うというのはちょっとおかしいですね。ですから、これはちゃんとしたマクロ経済の話で、きちんとベースでやるべきだというふうに思います。
○参考人(井堀利宏君) 財政健全化目標というのは、やはり二つあって、一つは全体の財政が持続可能かどうかという点で、もう一つはその中身の話だと思うんですよね。
 全体の持続可能性からいえば、やはりプライマリーバランスの黒字化、二〇二〇年というのはあくまでも一つの中間目標だと思います。私は、最終的にはやはりGDP比の公債残高が安定化して、かつそれが下がっていくというのは、幾ら何でも二〇〇%を超えるGDP比で見て公債残高が続くというのは、これは異常な状況で、これを下げるのが必要ですね。
 そのためには、やはりプライマリーバランスの黒字化だけじゃなくて、黒字のレベルをある程度、数%の黒字をつくらないといけないと思います。しかも、経済成長率と金利の関係ですけれども、長期的にはやはり金利の方が経済成長率よりも高いというのが、これは高橋参考人とは意見が違いますけれども、経済成長率よりも金利が高いというのが、これが正常な通常の中長期的な状況だと思いますので、それを前提に考えると、やはりプライマリーバランスはかなりの黒字を最終的には実現しないといけないんですが、これは相当ハードルが高いので、差し当たって二〇年の均衡化ですけれども、それだけでは不十分だということをやはり考えておく必要があると思います。
 それからもう一つは、その意味で、量的に財政健全化ができたとして、つまりプライマリーバランスの黒字化あるいは公債残高のGDP比が安定的に下がっていったとしても、それだけではまだ不十分で、それはなぜ不十分かというと、先ほど申し上げたように、賦課方式で人口が減少している社会では、要するに財政なり社会保障を、マクロベースで収入と支出が均衡していても世代間での不公平は相変わらず残るわけですよね。
 そこの部分が残る限りにおいては、若い人にとってみると、やはり社会保障なり財政に対する不信感というのはどうしても拭い切れませんので、その点での改革が必要で、少子化、高齢化の、要するに人口が極端に日本がこれから変わるときに、それと両立可能な財政なり社会保障制度に変えていく必要があって、これはその財政健全化とは別のもう一つ厳しいハードルで、それも同時に達成しないと、やはり財政なり社会保障が中長期的に日本の国民にとって受け入れられるものにはならないと思いますので、二つの面、後半の面はかなり厳しくて、抜本的な社会保障制度改革をしないといけないんですけれども、これはなかなか大変ですけれども、そこまで見据えた改革が必要かなと思います。
○参考人(井手英策君) 直間比率のお話なんですけれども、そもそも、例えばフランスのように間接税の割合が非常に大きい、逆にアメリカのように直接税の割合が非常に大きいところもありますが、でも、例えば最近フランスの場合は直接税のウエートがどんどん大きくなっていったり、アメリカでは、出たり消えたりしますけれども、消費税を導入するしないという議論がずっと続いたりということで、結局望ましい直間比率の姿というのはそもそもないと思うんですね。
 この問題を考えるときに一つ重要なことは、八〇年代以降、世界的に地方分権の動きが起きたということですね。これは欧州地方自治憲章が八〇年代にできたり、あるいは九〇年代に世界自治憲章ができたこともそうですが、結局は社会の、世の中のリスクがもう変わっちゃったということですね。それまでは、男の人が仕事を失っちゃうと家族が全員困っちゃうというのが一番のリスクだったので、この男性の所得を支えるような社会保障がどんどん大きくなって、年金とか失業手当とか疾病給付というのが大きくなっていくわけですね。
 ところが、女性が働きに行くようになり、かつ高齢化が進むようになると、むしろ女性が今まで家の中で担ってきたようなサービス、子育てとかお年寄りの面倒を見るということをどうするかということが世界中で問題になっていきますから、その中で、結局は対人社会サービスを出している地方自治体の方にどんどんどんどん仕事や権限が下りていくという動きが世界的に起きているわけですね。
 そうすると、今後の、御質問の直間比率のことを考えるときに、地方税がどういう割合になっていくかということを考えないといけないように思います。そのときに、一つは住民税、これは、みんなが納税者になっていくという私の今日の考え方からいきますと、住民税の課税最低限を下げていって、みんなが住民税を払えるようにしていきましょうという方向が一つだと思います。もう一つは、そうではなくて、地方消費税を拡充することによって、消費税は誰もが払いますから、これは逆進性のことが問題になっていることで証明されるように、誰もが納税者になりますから、地方消費税のウエートを増やしていくというのがもう一つの方向性だと思います。
 これは、率直に申し上げますと、自治体関係者が住民税の増税を言い出すことはなかなか難しいという現状もあって、正直に申し上げれば、地方消費税のウエートの方が高くなっていくのかなという気はしますが、ただ、いずれにせよ、この住民税が増えるか地方消費税が増えるかによって全体の直間比率の構造というか割合は変わってくるということではないかと思います。
○中西健治君 一点だけ高橋先生に確認したいんですけれども、税収弾性値は景気の局面によって数値を変えていくべきだと、そういうことでよろしいでしょうか。
○参考人(高橋洋一君) そうです。
 それで、あと一つ、先ほど金利と成長率、これは実は、二〇〇六年頃、経済財政諮問会議で金利、成長率論争ってさんざん議論されていましたが、その議論だけちょっと紹介しておきます。
 井堀先生がおっしゃったように、金利の方が成長率高いというのは、この金利は民間の金利です。ある意味では資本収益率とかそういうのです。これはピケティの本なんかにも書いてありますけれども。ただ、今ここで問題にしているのは国債の金利です。国債の金利は民間の金利より低いので、その意味で実は成長率と国債の金利の間については上下関係はなかなか出ない。
 それで、そのときにそういう話を吉川先生にしたら、経済学者は金利が一本しかないんだからと、そういう答えをしておりました。実は、民間の金利と国債の金利は全く違います。
○中西健治君 終わります。どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、吉田忠智君。
○吉田忠智君 社会民主党の吉田忠智です。
 三人の先生方には、大変めったに聞けない貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 三人の先生に同じ質問を二問させていただきたいと思います。一問目が、主要先進国の中で、ドイツが今年収支均衡を達成をしたと言われていますけれども、この間のドイツの財政再建の取組をどのように見ておられるのか、日本が学ぶべきところはどういうところがあるのか、その点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 二点目が、もう先生方からるるお話が出たことで、総括的な質問になりますけれども、私は日本の税制というのは応能負担の原則からいって多くの問題点があると思っています。資産、所得、消費、いずれもバランスが悪いということもございますし、今後のあるべき税制改革の方向性について先生方のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。大変ざっくりした質問で、二番目は、申し訳ありません。お願いします。
○参考人(井手英策君) ドイツの健全財政の背景についての御質問だったと思うんですが、一つは、ドイツというのは、まず増税をするときに、増税のそれぞれ、先ほど、資産、所得等のバランスのことを、消費のバランスのことをおっしゃっていましたけれども、まさにそこを重視しているんですね。
 あるとき、消費税を大きく上げようとするんですが、国民から強い反発を受けます。その中で、じゃ、所得税の最高税率をこれぐらい、もっと上げることで消費税の上げ幅を落としていこうというような、その税と税の間のバランスをうまく取りながら国民に増税を丁寧に訴えていくということをやっています。このことで非常に大きな増税ができたということが一つ目。
 それともう一つは、ドイツは非常に歳出削減の努力をやったことは事実なんですね、非常に大きな努力をやりました。ただ、その努力というのは、削減一辺倒ではなくて、一つには現物給付を可能な限り増やそうとする、対人社会サービスを可能な限り増やそうとする努力。そうすると、全体が減っていく中でそこを増やすということは、当然現金給付が減っていくということになります。ですので、失業給付ですとか年金給付に関するドラスチックな改革をやっていくということをやります。
 つまり、全体的に減らすということに努力しつつも、その中身を変えて、人々が何を欲しているのか、どのようなものを必要としているのかを考えながら、そこに対応するような歳出構造の改革をやっていったということ。
 それと、見落としてはいけないと思うのが、大胆に法人税率を下げることで税収が大きく伸びたという議論とか経済が成長したという議論があるんですけれども、それはそう単純な問題ではなくて、やはりユーロを導入することによって以前のマルクに比べて事実上の為替の切下げが起きて輸出が伸びていったという問題や、あとはグローバルな生産体制を整えていくことでドイツの経済を成長に導いていったという側面もございます。
 そういうもの様々な成果があって、ドイツの経済が成長する中でまた税収も伸びていくというような好循環が生まれていったということではないかと思います。
 資産、所得、消費のバランスについて、あるべき姿ということで、これは本来、さっきの直間比率と同じで、そのあるべき姿というのはないと思うんですね。ただ、今の日本の状況というのは、もう議論が消費税一辺倒になっていて、恐らく消費の割合だけがこのまま行くとどんどんどんどん大きくなっていくんだろうというふうに思います。
 それは、やはり繰り返しになりますが、国税とまず地方税でちゃんと分けて議論をしてほしいということ。その国税の中では、再分配機能を持つような税、それは相続税であれ法人税であれ、あるいは所得税であれ、そういったものの、言わば所得に係るような部分というのをどんどん大きくしていくということも議論をすべきだと思いますし、一方で、地方のことを考えるときに、みんなが負担者となるような税制をどうつくっていくか。そのときには、ただ、所得を中心にやっていくか消費を中心にやっていくかはこれから決断のときだというのは先ほど申し上げたとおりで、そういった中で最終的にバランスは決まってくるものだと思いますが。
 ただ、国家の中央政府の役割や地方政府の役割、あるいは、ある人を負担者にしたりある人を受益者にしたりするような地方財政でよいのか悪いのか、そういうことを丁寧に考えていった結果、おのずからあるべき税制の姿というのは出てくると思いますし、その結果、ある程度所得が大きかったり消費が大きかったりするということは、それは結果のことですので、それはそれでいいのかなというふうに思っております。
○参考人(井堀利宏君) ドイツの例ですけれども、やはり一つドイツの特徴的なことというのは、リーマン・ショックの後、要するにマクロ経済環境が悪いときに、どこまで財政面から手当てするかに関して、ドイツは、先進国の中では一番ある意味では消極的といいますか、いわゆるケインズ的な、財政赤字を出して公共投資なり減税でマクロ経済を支えるという政策を相対的に取らなかった国だと思いますね。
 だから、ドイツというのは、どちらかというと、ケインズ的な、マクロ経済環境が悪いときに財政面から手当てをするという政策を余りやらなかったと。むしろ、マクロ経済に対する財政面からの調整よりは財政収支の均衡の方を相対的に重視したことの結果として、財政状況を重視していると。
 それはなぜかというと、やはりEUの中でドイツが中心的な役割なので、ドイツが財政面からある意味でルーズな対応を取ると、ほかの国に対するコミットメントの面で非常にまずいと。要するに、ギリシャとかスペインとかいろいろな国で、財政状況が悪くなっている国を結果としてドイツが支える状況になりますから、EU全体として財政規律がきちんとしてくれないと、最終的にドイツ国民がいろんな意味でギリシャに支援することに関する非常に反発が大きくなってしまいますから、そういう意味で、EU全体の財政規律を重視するという観点からいうと、ドイツ自体が財政規律をきちんとするということを示さざるを得ないと。ドイツの国民も財政規律に関しては非常に敏感になっていると。そのことの結果として、余り経済環境が、マクロ経済環境が悪いときにケインズ的な対応を取らなかったということが結果として財政収支の相対的な均衡に効いているのかなと思います。だから、これはある意味でドイツがEUの中心であると。
 もちろん、それから、先ほど井手さんが言われたように、ドイツがEUの中で相対的に経済状況がいいということも当然同時に寄与していて、余り財政面から手当てをする必要がなかったということもあるかと思います。
 それから、日本の税制のあるべき姿なんですが、これはもちろん地方税と国税では当然対応が違いますし、地方税では、井手さんがおっしゃられたように、やはり応益原則で、住民税なりあるいは固定資産税なり消費税で受益を持っている住民が広く薄く負担するというのは筋だと思いますので、その意味では、住民税をもう少し均等割を増やすとかいろんな形の対応は必要で、私は均等割は一桁、もう一桁増やしてもいいんじゃないかと、一人五万とか十万に上げてもいいんじゃないかと思うんですが。
 ただ同時に、国税レベルでのいわゆる応能原則ですよね、所得再分配を含めた機能をどう考えるかという、ここがもう一つの論点で、これに関しては、消費税は確かにそういった機能がないので、相続税なり所得税で累進的なところを効かせるというのは必要なんですけれども、ただ問題は、そのときに相続税の累進度を上げてしまいますと、相続税というのは所得税と違って納める時期が限られますから、要するに脱税、節税のインセンティブが働きやすいわけですね。しかも、その限界税率が高いと、所得の高い人ほど、資産が高い人ほど脱税、節税するインセンティブが高くなりますから、相続税はよほど徴税体制がしっかりできないといろんな面でなかなか難しい。
 その意味で、所得税の方が、フローの所得ベースの方が所得再分配機能としては効くと思うんですが、ただ問題は、日本の場合、アメリカの、ピケティの本、さっきちょっと出ましたけれども、要するに極端な所得を稼いでいる人というのは余りいないわけですね。要するに、課税ベースで見て、あるいは所得ベースで〇・一%の上の層がどんどん増えているのがアメリカですけれども、日本はそうじゃないという状況で、極端な累進的な税制を所得税で掛けることがどのくらい意味があるのか。むしろ、中間の所得階層が余り所得税を払っていないというのが日本の所得税の大きな問題で、日本は平均的なサラリーマンが余り所得税払っていないわけですよね。消費税も払っていないけれども所得税も払っていない、結果として租税負担率が先進国の中で低いという状況ですから、これはやはり、ある意味で所得再分配機能は確かに重要なんだけれども、同時に、普通の方がより、もう少し、消費税でなくても所得税も含めてきちんと払えるような、そういう税制にしていく必要があると思います。
 もう一つの法人税なんですが、これは私は法人税に関してはむしろ下げる方が望ましいと思っています。これは、法人というのは、まあ擬制説を取るかどうかという議論はあるんですけれども、法人自体は人じゃないので、選挙権もないし法人というのが何か御飯食べているわけじゃないので、その背後には人がいるわけですね。だから、基本的には法人が稼いだ所得というのは株主なり企業の経営者の所得の形をしていって、そこに累進的な所得税を掛けるのが筋で、法人ベースで掛けるというのは、あくまでも擬制的な段階で掛けるので、本来であれば法人税というのは、それもなるべくスリムな形で減らした方が国際的な競争力の面でも企業にとってはプラスになるんですね。
 問題は、その法人段階で掛けられなくて、掛けないとすると、個人ベースで株主とかあるいは経営者でかなりの所得を稼いでいる人にきちんと税金を掛けられるかどうか、そこの問題があると思うんですけれども、それは所得税の徴税体制の強化の話で、だから、法人税に関しては、所得税とは別の観点として、やはり下げる方向で議論するのが望ましいかなと思います。
 以上です。
○参考人(高橋洋一君) ドイツの話ですけど、これはまさしく財政再建というのは経済の後から付いてくるという典型例でして、要するに、先ほどの井堀先生とか井手先生なんかの話にも出ましたけれども、ユーロという一つの通貨になっていますね。これですと、圧倒的に実はドイツが独り勝ちになります。ですから、それで、逆に言うと、独り負けというかすごく負けている人というのは周辺国でして、実はこれがギリシャとかポルトガルとか、そういうところが負けるんです。これはもう最初から分かっているような話なんですけれども、経済の理論からいって、ああいうふうなちょっと大きなところで一つの通貨を入れると、中心国が勝って周辺国が負けるという話。
 ですから、その意味では、マクロ経済がいつも状態がいいと、それで、それの上に何かいろんなちょっと工夫するとあたかもそれで財政再建できたようになるという、それだけの話です。要するに、もしそのマクロ環境が良くなければ、いろんな努力をやってもほとんどうまくいかないということなので、その意味では、一番重要なのはマクロ環境が良くて経済成長しているからということに尽きると思います。もちろん、それ以外のいろんな施策について、マイナスにはなりません、マイナスにはならないんですけど、マクロ環境がなかったらほとんどうまくいかないです。
 それで、次に税制の話ですけれども、これは国と地方がどのような業務を担うかということなんですけれども、国の方というのは、実は所得再分配というのは国じゃなきゃできないので、そこを中心です。それとあと、地方というのはどちらかというと基礎的サービスの提供という形になります。
 そういう形になりますと、それに応じた税制というのが必要になってきて、所得再分配をやるためには、実はこれは応能税、能力に応じて払うという応能税になります。具体的に言うと、所得税とか資産税です。それで、基礎的サービスの方の地方は何になるかというと、これは基礎的サービス提供しますから応益税という形になります。私、先ほど、消費税が地方が望ましいというのはここから出てくる話です。要するに、国は応能、地方は応益という大原則があって、そこで実は税制を考えた方がいいです。そういうことを考えると、所得再分配をきちんとやるためにもうちょっと累進課税をやって、国ではきちんとやると。それで、一方で地方の方では基礎的サービスをやるために安定財源をやるというので、まあ基本は消費税だと思いますけど、そういうのでやった方がいいというふうに思います。
 それと、法人税の話。ここは、これは井堀先生もおっしゃっていましたけど、実は二重課税になっちゃいます。ですから、いろんな国で法人税を下げるというロジックは何かというと、これは二重課税排除です。二重課税はどうして排除できるかというと、番号とか歳入庁できちんと捕捉できるからです。きちんと捕捉できれば、実は生きているうちの所得税でほとんど片が付く、というか片が付けるというふうに思うんですね。
 それで、そういう形にしますと、実は相続税の方も余り払わなくていい、そういうふうな論理になります。ですから、生きているうちにきちんと応能税で払うものは払うと。そうしたら、あとはもう相続税の話、法人税の話はなるべく払わないというのが原則だろうと思います。
○吉田忠智君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 以上で各会派代表しての質疑は終了いたしました。
 他に質疑のある方は挙手をお願いいたします。
 石上俊雄君。
○石上俊雄君 三名の参考人の先生方、本当にいろいろな方面からの御提言、ありがとうございました。
 限られた時間ですので、まず高橋先生に御質問させていただきたいと思いますが、先月の下旬ですか、某テレビ局の「朝まで生テレビ!」というのを、朝まで起きていられなかったので録画で見させていただきました。
 その中で、三時間の番組だったんですが、ピケティの旋風と日本の格差という、そういうテーマだったと思うんですけど、ほんの二、三分の議論だったんですけど、私的にはちょっと刺激的だったというか、何か素人なのでよく分からなかったんですけど。田原総一朗さんが、一千兆円の借金、この出口は見付かるのかというふうな質問をされたときに、高橋先生が、そんなのは成長すれば大したことないんだという回答をされまして、その後、GDPの二倍もあるんだ、そんな国はあるのかと言ったら、いやいやいやいや、これは森永卓郎先生もそうだったんですけど、いやいや、日米同じぐらいなんだと、試算してみると。そうすると、高橋先生も試算したらそうだと、あとコロンビア大学のワインシュタイン先生も試算したらそうなんだという話をされていたんです。ああ、そうなのかなというふうなことで、大したことはないけれども、ほかの国と似たレベルだから大したことないんじゃないかというのが高橋先生のお話で、これが一部の方なのかなと思ったら、そこに出られた先生はほとんど同じ意見だと。唯一、一部違うと言っていたのが我が民主党の大塚耕平先生ですね、だったんですが。
 そのことについてちょっと質問なんですけど、日本財政関係資料の中で見ますと、財務省から出てくるやつですけど、何かそれには、やっぱり対GDP比、アメリカは一一〇%で日本が二三〇%、純債務残高の国際比較では、やはりアメリカは八五%で日本が一五〇%、確かに一緒じゃないんです。たしか一緒じゃないという感覚でずっと聞いていたので刺激的だったんですけど。それで、これは、やっぱり財務省として何か違う算出の仕方をしている、条件が違うのか、さらには国際の比較で何か条件が違うのか、その辺がもしかあったら教えていただきたいというのがまず一つ目の質問であります。
 二つ目の質問は、成長すれば大したことないんだということですね。ということは、成長しなければ大したことあるのかということなんです。どこまで成長したら大丈夫なレベルなのということですね。ですから、それが二つ目ですね。
 三つ目は、もしか、何か成長というのは、先ほど先生のお話の中にも、不公平を是正していくことが成長につながるのだというんだったか、お言葉、私がちょっと聞き違えているか分かりません、そういうコメントだったんですけど、成長の何かアイデア、何かありましたら教えていただきたいという、この三つ、ちょっとお願いしたいと思います。
○参考人(高橋洋一君) 最初の方はテクニカルな話で、私、実は財務省の中でそういう計算していたんで言えますけど、財務省が出しているときの数字って、純債務、純資産を出しているときには、実は金融資産しか引いていません。それで、各国比較するときに金融資産しか引かない方が簡単だからです。OECDからその数字があります。
 私が朝生で言ったのは、政府ではちゃんとバランスシートを出しているんですね。そのバランスシートを作ったのは私なんで、それで、当然作るときにいろんな国を全部比較しましたから。アメリカも似たようなバランスシートもあるし、ほかの国もあるんですが、そういうので比較して、アメリカが単純だったんで、本当の、金融資産だけじゃなくて全部の資産を引いたら実はほとんど同じと、そういう話をしました。
 ですから、もしかこれ、あれでしたら財務省に、この出している資料が、OECDのやつを原典をもらって、さらにアメリカと日本の本当のバランスシートをもらえばすぐ分かります。
 二番目は、成長しなくなると大変というのは、それはそうです。ですから、ここ二十年間ぐらい日本の経済成長率って、名目経済成長率ですけど、これ世界でほぼびりです。二百か国ぐらいでほぼびりですから、これすごく大変です。ですからワニのあれのようにふわあっと開いちゃったというところです。これは、まともに成長していたら、多分その財政問題というのはほとんど大した話じゃなくなります。だから、ここ二十年間ぐらい名目経済成長率がほぼびりですから、これは大変になります。ですから、名目経済成長率がほぼびりですから税収が全然伸びなくて、物すごく大変だったと思います。
 ですから、これはちょっと名目経済成長率が、先進国の普通、先進国の普通といっても、四%、五%でも先進国では下から数えた方が早いですけどね、そのくらいになれば実は全く違う景色が見えると言ったわけです。
 あと、三番目は、成長する秘訣というんですけど、実質経済成長率というのは、大体ここ長い間、一、二ぐらいは実は稼げるんですね。名目経済成長率が駄目って、これは何かというと、実はインフレ率が物すごく低いと。ここ二十年間ぐらいのインフレ率を見ると、世界でこれびりですね、やっぱり。ですから、これは非常にお金の量とすごい相関があって、七割ぐらいの相関があるんですけど、お金の出す量も世界でびりです。
 ですから、世界でびりを、二十年間お金出す量のびりを続けたら名目経済成長率がびりになっちゃったと、これだけの話なんで、その意味では、お金を普通に出せばそれは一つの解決策になると思っています。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
 時間に限りがあるので次の先生に質問をさせていただきたいと思いますが、井堀先生にちょっとお伺いしたいと思います。
 先ほどの回答の中で、早くやらないと手遅れになるというちょっとお言葉もあったと思うんですが、井堀先生が書かれている中で、団塊の世代が逃げ得しないよう既裁定年金を来年から三割カット、それくらいしないと若い人にとって意味のある改革は無理だというふうな形で書かれている、お考えがあるということですが、私どもの代表の岡田代表が、今年の二月の衆議院本会議で、厚生年金の比較的高額な年金受給者の基礎年金の税金投入部分をカットするという、こういうことを述べておりまして、この案に対してどういうお考えかというところをちょっとお聞きしたいと思います。
○参考人(井堀利宏君) 私のその話は、世代間の不公平をなくすと。要するに、それぞれの世代別の年金の負担と、その人が平均的に生きたときの年金からもらう給付との関係で収益率を世代別に計算すると、高齢者の人ほど今収益率高いんですけれども、それを大体各世代でほぼ均等化するようにするにはどのくらい今の高齢者の人の給付を下げて、下げた分だけその分若い人の保険料が下がりますから若い人にとってはプラスなんですけど、そういう単純計算をすると三割カット。だから、今から、あしたから高齢者の人の給付が一律三割カットすると、仮定の話ですよ、三割カットするとほぼ世代間の不均衡というのが大分解消されるという、そういう試算を前に計算したことがあります。
 ただ、その試算というのはかなり昔なので、それから高齢化更に進んでいますから、今はもっとそれよりも数字はちょっと悪いかもしれませんが、いずれにしても、ある程度、むしろ三割というのはかなり、一律三割ですから、高額の年金をもらう人だけじゃなくて全ての人の年金をあしたから一律に三割下げると、何とか世代間でほぼ収支はとんとんになる。
 逆に言うと、それをしないと収支の差は残ります。ただ、残るにしても、何にもやらないよりはいいので、要するに、今、年金もらっている人の年金の給付が下がるということは、その分保険料を下げるか、あるいは国庫からの補助金が下がるか、あるいは、年金の積立金がその分減らないわけですから、いずれにしても将来世代の人にとっては相対的には楽なので、そういう方向は、どういう形の改革であれ、あるいは年金の課税をもう少し強化するとか、いろんな形の改革であれ、そういう方向を出すというのは世代間の不公平の解消の観点から望ましいと思います。
 ただ問題は、それが、もちろん今、年金をもらう人は当然年金をもらうということを約束されたものが来るわけですから、約束違反という、そういう政治的なあれがあるので、そこをどう納得してもらうかというのは非常に難しい問題ですけれども。権利ですからね、年金というのは、さっき言ったように、生活保護と違って。そこを切るのは非常に難しいんですけれども、世代間の公平の観点から、なるべくいろんな仕掛けで高齢者の方の年金の給付をより効率化する方向は模索していくべきだと思います。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
 最後に井手先生なんですけど、井手先生は、高橋是清さんの財政史の研究ということで本を出されていますけど、ちょうどこの高橋是清さんが今の国債の日銀受入れというのもやって財政再建をやったというふうなことになっているんですけど、これ、今と似ているんですよね、と思っているんですけど、ちょっと環境は違いますが。
 それを前提に、何か一言で、もう少しこうならないといけないというのをちょっとコメントいただけると助かるのですが。
○参考人(井手英策君) 高橋財政がまず成功だったかというのは難しくて、一つは、経済成長という意味ではおっしゃったように成功だと思います。ただ、財政再建という意味でいうと、これ実は失敗しているんですね。
 経済成長をなぜしたかというときに、一つは戦争、満州事変を起こしていますので、ですので、大陸に対して言わば暴力的に輸出を増やしていったというのが一つですね。
 次に、おっしゃった日銀引受けの問題がありますが、それだけではなくて、金本位制度というものから管理通貨制度というものへ、つまり、もう通貨制度を大胆に変えちゃったんですね。異次元の緩和なんていう次元じゃなくて、もう通貨制度そのものを変えてしまったわけですね。ここに、さらに、その前の年に比べてもう一・五倍ぐらいに相当するぐらいの財政拡張をやるということの結果の経済成長ですので、恐らく今の状況でどれ一つとして実現することはできないんじゃないかというふうに僕は思っております。
○石上俊雄君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 他にありますか。
 舞立昇治君。
○舞立昇治君 済みません。自民党の舞立昇治でございます。よろしくお願いいたします。
 今日は、三人の先生方、ありがとうございました。本当にそれぞれ示唆に富んだ特色のある御意見で、三人を三で足して割ったら非常にいい政策ができるんじゃないかというふうに思った次第でございまして。
 井手先生につきましては、本当に今、日本は小さな政府で、歳出削減の余地はもう非常に小さいんだというようなことを言っていただきましたし、これにつきましても、将来的にも人間に着目した利益ということで、信頼感を醸成しながら増税に向けた環境なり合意形成を図っていくという部分では非常にためになりましたし、井堀先生につきましては、この三人の中では一番財政原理主義の方の部類かなとは思ったんですけれども、やっぱり二〇二〇年以降の、本当に二〇二五年問題とか、二〇四〇年とか五〇年、六〇年問題を見据えた、やっぱり先々が非常に厳しいという状況を持ちながらしっかりと財政健全化に取り組む必要があるといったようなことは私も改めて必要だなと思った次第ですし、高橋先生は、最後、高橋先生のみ質問させていただく予定でございますけれども、財務省出身で、非常にためになるというか、当時の話も聞かせていただきまして、消費増税なしでも財政再建できるという考えには、ちょっと井堀先生の、将来的なことを考えると私はやっぱり一〇%は最低限必要だなと思ったところでございますが、やっぱり今の外為特会の二十二兆の積立ての話ですとか雇用保険の五兆の話ですとか、はたまた日本は世界一とも言われるぐらい資産大国だといったような話、非常に示唆に富んだお話いただきました。
 そういう中で、今私が非常に関心といいますか、注意しておりますのが、この夏に要は二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化に向けた具体的な財政健全化計画を作るといったようなことを言って、昨年、衆議院で自民党、公明党、与党勝たせていただいたわけでございますが、その財政健全化計画を作るに当たって非常に注意していかないといけないなと思っていまして、安易にやっぱり歳出削減のみに頼るということでは、もう井手先生おっしゃったように今は本当にもう歳出削減の余地が非常に小さくなっているという中で、私は現実的じゃないと。
 とはいえ、やはり現実的に不断の歳出改革は必要だということで、歳出改革という側面は側面で重要なんですけれども、それはあくまでも一項目だと思っていまして、そのほか、やっぱり歳入面の改革にもっともっと目を向けるべきだと思っていまして、当然ながら、税制改革、法人税の引下げは一応基調路線なので、いかに課税ベースを拡大していくかとか、そういったような議論のほかに、やっぱり高橋先生がおっしゃられた非常に資産の部分ですとか特会の見直しですとか、その辺はしっかりとやっていく必要があると思っています。二十二兆を十五兆にするのか十兆にするのかとか、そういったような積立ての基準みたいな、いうようなものも必要だと思いますし。
 私も、過去、地方の役所で財政課長をやっていたときに資産の流動化というのに非常に取り組んだ経緯があるわけでございますが、理財局にいらっしゃった経験として、やっぱり今、有価証券、貸付金、国に約二百五十兆ございますけれども、実際に現実的に流動化、割り引いて現金化とか、それを例えば外為特会の二十二兆の一部とともに財政調整基金みたいなのに移して、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化の達成がいろんな現実的な改革をしても難しいときにはそれに充てていくみたいな、そういった計画を作れば私はいいと思うんですけれども、現実的に、理財局にいらっしゃった経験からして、この二百五十兆、どれくらい流動化が可能なのかなというようなちょっと相場観を、やっぱり内部にいらっしゃった高橋先生にちょっと教えていただきたいなと思います。
○参考人(高橋洋一君) ざくっと言うよりかは具体的に言った方が多分いいと思うので、最初の、外為でしたら、先進国でしたら必要水準は実はほとんどないです、介入しないという意味では。ですから、あれはほとんど取り崩してもほとんど大丈夫ですね。
 あとは、これは流動化がどのくらいできるかという、実はどのくらい民営化できるかという話に全部帰着するんですけど、非常に簡単なのは今でもやっている郵政の話ですよね。あれはすごく簡単だし、あれはもうちょっとちゃんとした完全民営化にしていたらすごく高く売れますね。でも、あんな今のように、不完全民営化ですからね、あれ、不完全民営化の金融機関なんてまず世界でないですから、あのままだったら余り売れないという話ですね。ですから、本当に小泉改革のときのように完全民営化してあの金融二社を売れば、それは多分二十兆ぐらいぽんと出ちゃうような話だと思いますよ。
 それで、ほかにやりやすいものということを言えば、更に言えば、URなんかは、バランスシートを見てもこれは完全民営化するのは難しくないですね。ですから、それで売ると多分十兆近くは出てくるという話だと思います。
 だから、こういうのを積み重ねていって、民営化できるもの、民営化できるかできないかって、実はそれぞれの実質的なバランスシートを見て、債務超過でなければできちゃいますよ。ですから、それは、実は政策コスト分析というので私が実は役人のときに導入したものがあるので、それできちんとしたバランスシートを一個一個の特殊法人で見れば、ちょっと見ただけで何個かできそうなのはあると思いますね。
 ですから、そういうのを具体的に積み重ねていって民営化計画みたいなのを作れば、それを五年間で、私、実は五年間で四十兆出したんですけどね、小泉政権のときに、そのくらいはできるでしょう。だから、そういうふうな話だと思います。
○舞立昇治君 済みません、これで終わろうと思ったんですけれども、もう一問だけですね。
 今、民営化の問題とバーターというようなお話がメーンだったと思うんですけれども、財政投融資の関係ですとか世界へのODAの関係ですとか、やはりちょっと今、日本厳しいので、少しこれまでと比べて我慢してくれといったようなことで、そういった貸付けを減らすということで、じゃ、貸付けと貸出しの関係でバーターで毎年やっていたものを、少し返ってくる方を多くすると、その受取債権を流動化するといったようなこととかも私は検討に値すると思うんですけれども、そういうところ、あんまり流動化の余地がないんでしょうか。
○参考人(高橋洋一君) 流動化というか、例えばODAでしたら返ってくるのがすごく今多いですね。ですから、それはある意味でODAの原資であるところの国債の償還に回せるはずなんですけど、それをまた還流させているというパターンですよね。ですから、それを還流させないでそのままODAの原資の償還をするというだけで、そうしますと国債残高が実は減りますから、そういうオペレーションをして、確かに今還流金が多くて、これは回収金というパターンなんですけど、それを見るとすごく多いですよね。それはだから一個一個見て、ちょっと見ると回収金が多いのは多いですから、それを回収金をまた出しちゃっていますから、残高維持ということで、あれはちょっとおかしいですね。
○舞立昇治君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 尾立君。
○尾立源幸君 民主党の尾立でございます。
 本当に三名の参考人の先生方、大変ありがとうございました。今日は本当に実りある議論ができたと思っております。ありがとうございます。
 その中で、まず井手参考人にお聞きしたいんですが、とりわけ、人間を信頼しない社会ということで、非常に日本が低いということで、これ国全体でなんですけれども、県ごとにやってもらうともっと面白いかなというのも会長とちょっと話しておったんですけれども、冗談はさておき、人間を信頼しない社会がひいては政府を信頼しない社会になっているということに非常に大きなやっぱり危機感を感じております。
 その中で、今回、社保・税一体改革やマイナンバー等々でインフラの整備をするということになってきて、マイナンバーは来年からようやく導入されるわけですけれども、先ほど高橋参考人がおっしゃった歳入庁の話ですね。税と保険料の一体徴収体制の構築と、こういうのは我々も強く前から言っておりまして、中西委員なども一緒になって、これはやはり政府への信頼と国民の利便性という両面で、これ、こういう時代だからもうやっていくべきだろうと、省庁の縦割りじゃなくてやっていくべきだろうという考えで今進めてきたんですけれども、その点について井手参考人の御見解を一点お聞かせいただきたいのが一つと。
 もう一つは高橋参考人に、日銀と政府がインフレ目標を共有していくということは、私もこの点は非常に大事だと思っております。そんな中で、日銀が今QQEをずっとやり続けて、出口がどうなのかというような話もこの調査会でもやっておるんですけれども、その中でちょっと高橋参考人にお聞きしたいのは、日銀の抱えるリスクという点で、テーパリング等をやっていった場合に、それでも国債残高は今以上に多分増えていくと思うんですけれども、そんな中で長期金利が一%、一・五%、二%上昇していった場合に、日銀の中に当然損失を抱えることになってくると思うんですけれども、そういったコストについてをしっかり我々も議論しておかないと、コストが、損失が顕在化したときに、こんだけ出ました、どうしましょうというのではやっぱり私遅いと思っておりまして、高橋参考人はこのQQEなど推進派であると思いますが、こういったことについての評価、リスク、コスト、損失評価、この点についてはどんなふうに捉えていらっしゃるのか、御見解をお聞かせください。
○参考人(井手英策君) 歳入庁についての御質問でしたけれども、歳入庁によって収入の合理化を図っていくということは非常に重要だと思うんですね。合理的に保険料へ税を調達していくということは非常に重要なことだと思います。
 もうこの点について反対する余地というのはほとんどないんですが、ただ、今日、高橋参考人の方からもありましたように、こういうものを採用している国は確かに多い。けれども、同時にそういう国々では、歳出面ですね、ここをきちんと、言わば特定の誰かの利益に特化するのではなく、可能な限りみんなが必要とするものを満たしていこうとする努力をセットでやっているということを考えないといけないと思うんですね。
 つまり、取り方を効率化するというのは一つの重要な方向性だと思います。しかしながら、その取り方が効率的か効率的ではないかというだけではなくて、そもそも取れないということが日本の問題ですよね、税を取れないということがですね。ですから、その取れないということをどう解決するかという、歳出面から人々の心理や負担感に働きかけていくということをもっと考えると、このことをセットで議論しなければいけないというのが一つ目です。
 それともう一つは、歳入庁や、あるいは場合によっては債務管理庁というような議論は当然あり得ると思いますが、もっと更にその先の問題があって、これは九八年に日本が財政構造改革法を凍結したときに、財政を黒字化した面白い国が二つあります。一つはアメリカであり、一つはスウェーデンです。この二つの国々が九〇年代に何に取り組んだかといいますと、予算制度改革ですね。それは日本で今最も議論が薄い領域だと僕は思っていまして、その歳入を合理化する、あるいは国債管理を適切に行うというだけではなくて、予算制度をきちんと改革して、人々のニーズをどのようにつかみ取るかということを、つまり民主主義の活性化を考えていかないといけないということですね。
 ですから、歳入庁それ自身に対して私は反対するところはないのですが、ただ、それと同時に歳出面で、単に量的な効率化だけではなく、質的な効率化と申しましょうか、人々のニーズをどう適切につかむかということを考えなければ増税はなかなか合意されないだろうと。その質的な効率化の中で個別の利害じゃなく全体の利害、そして制度面では予算をどう変えていくかということを考えていかないといけないと、こういうふうに思っております。
○参考人(高橋洋一君) 出口の話で、日銀、中央銀行の損失をどう考えるかという話ですけれど、これについては、バーナンキが日本に来日したときに全く同じ、その答えを出していますから、それを御紹介しますと、実は、中央銀行の損失は政府のプラスであって、連結で考えれば大したことないから、もし心配であるのであれば中央銀行と政府の間で損失補填契約を結べばいいだろうということをバーナンキが言っています。
 それについて、それで彼は何をやったか。実はこういう問題があるんですけど、これはうまくできるからわざわざ政府と損失補填契約を結ぶまでもないというくらいに、実はそれで今は行われて、ゆっくりやれば大きな問題にならないというのは、彼は自信があるんでしょうね。
 ですから、日本は後発ですから、この出口の話というのは、アメリカでも三回やって五年以上掛かったんですね。日本はまだ二回で二年ですから、要するにちょっと先の話なんで、その出口はすごく検証できるんですね。
 ほかの国、例えばイギリスなんかも多分出口が早いと思います。日本より先にやっている国は何個かありますから、スウェーデンなんかもそうだと思いますけれど、そういうところをよく見れば、恐らく損失補填契約なんかを結ばなくてもでき得るような状況になるんじゃないかと私は思っております。
○尾立源幸君 そうすると、最悪のことを考えた場合に、損失補填契約という話が出ました。そうすると、それは国民負担になるということでいいですよね。
○参考人(高橋洋一君) 連結ベースで考えれば実は損得の話なんで、実は国民負担はほとんど発生しないというふうに思っております。
○尾立源幸君 以前もそのようなお話をされた方がいらっしゃるんで、多分バーナンキさんのお知恵だと思うんですけれども、またその点については、様々な異論がありますので、また議論させていただければと思います。
 ありがとうございます。
○会長(鴻池祥肇君) いま少し予定より時間が残っておりますけれども、他に御意見もないようでございますので、これをもちまして参考人に対する質疑を終了いたしたいと存じます。
 お三方の参考人、先生方には、極めて長時間貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。おかげさまで有意義な調査を進めることができましたことを心から御礼を申し上げる次第でございます。ますますの御活躍を祈念申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。(拍手)
 これにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会