第190回国会 法務委員会 第7号
平成二十八年四月十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                西田 昌司君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                矢倉 克夫君
    委 員
                猪口 邦子君
                田中  茂君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                加藤 敏幸君
                真山 勇一君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
   国務大臣
       法務大臣     岩城 光英君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    河野 太郎君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  田所 嘉徳君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       今崎 幸彦君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   平木 正洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       警察庁刑事局長  三浦 正充君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(第百八
 十九回国会内閣提出、衆議院送付)(継続案件
 )
○参考人の出席要求に関する件
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○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○三宅伸吾君 おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。
 本日は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして質問の機会をいただきまして本当にありがとうございました。
 司法制度改革審議会の意見書が出てから今年で十五年になります。その意見書で、民事そして刑事、様々な分野で日本の司法を改革しようということであったわけでございます。その司法制度改革審議会の意見書と今法案の位置付け、もうこれが一つの大きな区切りになるのかどうかということを含めまして、一番最後にお聞きをしたいと思っております。
 少し質問の順番を変えさせていただきまして、やはり日本の刑事司法において一番大きな課題と申しますか、問題点は、人質司法ということではないかと思っております。人質司法、ちょっと言葉がきついわけでございますけれども、この日本の刑事司法の病理と申しますか、全てがそうとは申しません、極めて例外的にある日本の刑事司法の病巣だったのかもしれませんけれども、この病巣を、二度と起こらないように、今度の改正案におきましては取調べの録音、録画をするということでございます。これを制度化をして義務付けるというわけでございます。
 日本では、被疑者又は被告人が被疑事実又は公訴事実を自白する場合に比べまして、否認をいたしますと、勾留による身柄拘束が長期化して釈放や保釈がされにくくなる傾向があるというふうに言われているわけでございます。身柄の長期拘束という不利益をてこに、人質に取って、自白や検察や警察の意に沿った供述を得ようとしているのではないかという司法の状況を批判的に指摘した言葉が人質司法というふうに言われていると思っております。
 日本の司法制度の研究者でございますD・T・ジョンソンという学者さんがいらっしゃいます。この方が二〇〇四年に「日本の検察制度 日米の比較考察」という名著を出されております。私、これ十年ほど前に何度も読ませていただきました。このジョンソン先生は、日本の検察官が自白に頼る背景を次のように五つのポイントを挙げて分析をされております。
 まず第一に、起訴まで二十三日間の時間的余裕などの法的環境の結果、自白を取ることが可能であるということをまず第一の理由に挙げておられます。
 そして第二に、自白を取ることが評価されるんだというふうに分析されております。多くの検事さんが自白を自慢されるそうでございます。例えば、かたくなに否認する相手の壁を打ち破ってついに自白させるほどわくわくするものはないねというような、彼の調査の際のインタビューの結果だと思いますけれども、このようなこともおっしゃっておられます。
 それから第三に、自白が時間の節約になるというふうに指摘をされております。
 それから第四に、日本の検察官が自白に頼る理由につきまして、矯正に役立つというふうに指摘をされております。覚醒剤犯罪の取調べに当たって、尿検査の結果だけで有罪にはできるわけでございますけれども、検事さんはあくまで自白を取ろうと頑張られるそうだというふうにジョンソンさんは分析をされております。
 そして最後、第五番目でございますけれども、裁判官は自白のない事件は疑わしいと考えるなど、刑事司法関係者全員が自白こそ証拠の王様と考えているからではないかというふうにジョンソンさんは分析をされておられます。
 結論から申し上げますと、こういう状況から、日本の刑事司法の一部におきましては、被疑者を脅し、恫喝し、疲れ果てさせ、誘導し、説得し、叱責し、どなり上げ、言いくるめ、そしてだますといったことがあるのではないかという指摘をアメリカの学者さんがされているわけでございます。
 録音、録画のない場面におきまして調書というのが取られるわけでございます。私も実は数年前に一方通行を逆走した車にはねられたことがございまして、ほとんどけがはしなかったわけでございますけれども、警察署に行って状況の調書みたいなやつを取られました。見事にまとめられておられまして、私、元新聞記者なんですけれども、僕より文章がうまいなと思ったことがございました。ただし、その私が取られた調書にはうそ偽りはございません。全体としては正しく私が受けた被害を記述されておられまして、感心をしたというわけでございます。
 ただ、被疑者の調書、これはやっぱり作文でございます。明らかでございますけれども、逐語記録ではないわけでございますので、これは作文でございます。また、特定の見方を裁判官に納得させるために書かれたという意味でも作文ではなかろうかと思います。
 最高検察庁が、大阪地検特捜部の捜査資料改ざん隠蔽事件、いわゆる郵便料金不正事件でございますけれども、これを受けまして、二〇一一年の二月、全検事のうち他省庁に出向中の者などを除く千四百四十四人を対象に無記名方式でアンケート調査を実施しております。それによりますと、実際の供述とは異なる特定の方向での調書作成を指示されたことがあるかとの問いに対しまして、六・五%が大変よく当てはまるというふうに検事さん自身が答えておられます。また、一九・六%の方がまあまあ当てはまるというふうに回答されたということがございます。
 私も一時期、法務省を担当したことがございまして、様々な事件、私、社会部ではございませんので現場は行っておりませんけれども、様々なことを考えさせられたことがございました。そのジョンソン先生がおっしゃるのが、私は全ての刑事司法に当てはまるとは到底思いませんけれども、ただ、例外的には様々な失態があるわけでございます。
 例えば、二〇〇七年の二月二十三日ですか、鹿児島地方裁判所、ここが、二〇〇三年の鹿児島県議選で公職選挙法違反、これ買収の罪に問われた志布志市の元県議ら計十二被告人の判決で、客観的証拠はなく買収資金の原資も解明されていないとして全員に無罪を言い渡したという有名な事件がございます。買収会合が開かれたと自白した六被告人の供述調書については、被告人らが長時間の取調べの末、捜査官の強圧的な誘導に迎合した結果、苦し紛れに供述したとうかがわせるというふうに結論付けております。この事件、民事裁判にもなりまして、鹿児島地裁は無罪判決に先立って、二〇〇七年一月十八日、県に六十万円の賠償を命じ、判決は確定いたしております。
 郵便不正事件の村木事件におきましても、平成二十二年十二月、最高検察庁が、いわゆる厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等にという報告書をまとめております。詳細は省きますけれども、供述人五名の検察官調書の特信性を肯定したものの、三人の供述人の検察官調書については特信性を否定しております。
 検事が立ち上がったり机をたたいたりして、うそをつくなと言い、検事が作った供述調書について、それは検事さんの作文でしょうと言ったが認められなかったというふうにこの報告書は述べております。それから、もう一人の供述調書につきましては、検察官から、Cさんの記憶があやふやであるなら関係者の意見を総合するのが一番合理的じゃないか、言わば多数決のようなものだから私に任せてくれと言われた旨の公判供述を否定することはできず、そのような方法で検事が基本的に想定していた内容の検察官調書を作成した疑いを排除できないと、このような記述を最高検察庁の報告書がしているわけでございます。
 このような様々な過去言われた問題点を、今後起きないようにしようということで自主的に導入しておりました可視化、取調べの録画、録音を今度はきっちりと制度化しよう、義務付けようというわけでございますけれども、法務省にお聞きいたします。本法案による可視化の対象犯罪は何でございましょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 本法案での録音、録画を義務付けている対象事件は、裁判員制度対象事件及び検察官の独自捜査事件でございます。
○三宅伸吾君 先ほど御紹介申し上げました郵便不正事件、村木事件とよく称されておられます。郵便不正事件は、これは検察の特捜案件でございましたので、今局長がおっしゃられたように、この可視化の対象になるわけでございます。ただ、今私が御紹介申し上げました志布志市の警察による選挙違反事件の取調べ、これは裁判員対象事件ではないわけでございますので、法律上、録画、録音は義務付けられないということになろうかと思っております。
 可視化の対象範囲を際限なく広げますと録音・録画設備のコストもかなり掛かりますし、また、そもそも不必要なところまで可視化の対象を広げることはどうかとは思いますけれども、いずれにいたしましても、裁判員対象事件の義務付け対象犯罪をどのように考えるのかということは今後も議論が残るかもしれないというふうに思った次第でございます。
 上川前法務大臣は、この可視化の件につきまして、第百八十九国会の衆議院法務委員会でこのように述べておられます。検察におきましては、被疑者取調べの録音、録画が必要と考えられる事件につきましては、罪名を限定しないで、積極的に録音、録画に取り組んでいるところでございますというように答弁されておられるんですけれども、このところを、現在どのような状況になっているのか、法務省、お聞かせください。
○政府参考人(林眞琴君) まず、検察当局におきましては、平成二十六年の十月から次の四つの類型については本格実施に移行させております。一つがその裁判員裁判対象事件、もう一つが知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件、もう一つが精神障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、それから、いわゆる独自捜査事件であって検察官が被疑者を逮捕した事件、この四類型につきましてはそれ以前から試行を行っていたわけでございますが、これを全部本格実施に移行させました。
 その上で、平成二十六年十月からは、対象事件、試行の対象を大きく拡大したと承知しております。それは、一つには、公判請求が見込まれる身柄事件であって事案の内容や証拠関係等に照らして被疑者の供述が立証上重要であるもの、こういったものなどにつきましては対象事件の罪名による限定を外して試行に取り組む、また、被疑者のみならず被害者、参考人につきましても、供述が立証の中核となることが見込まれるなどの事情で必要と思われるものについては録音、録画を行うと、こういった形で対象事件を拡大してきたものでございます。
 その結果、若干数字を申し上げますと、二十六年十月から本格実施に移行しました四類型につきましては、二十七年の四月から十二月、昨年の四月から十二月の九か月間で取りますと、裁判員裁判対象事件で二千三百三十三件実施しております。これは実施率で九九・七%であります。知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等に係る事件につきましては八百二十七件、これは実施率は一〇〇%でございます。精神障害等により責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件につきましては千九百三十三件、実施率が約九九・八%。そして、いわゆる独自捜査事件につきましては九十一件、これは実施率一〇〇%でございます。
 この上で、先ほど言及しました新しく試行を開始した事件、その四類型以外の事件につきましても、昨年の四月から十二月までの九か月間におきまして、被疑者の取調べの録音、録画の件数は三万五千七百五十二件、また被害者、参考人の取調べの録音、録画の実施件数は千四百九十六件に上っていると承知しております。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。
 前法務大臣がおっしゃられました罪名を限定しないでというのは、実は私はとても大事だと思います。現に、今の運用では知的障害の方々、コミュニケーション能力に課題のある方につきましてきっちりと録画、録音しておくことは、私はとても大事ではなかろうかと思います。
 続きまして、警察の方はどのような状況でございましょうか。
○政府参考人(三浦正充君) 今回の制度につきましては、先ほど法務省の御答弁にもありましたように、裁判員に分かりやすい立証が求められる裁判員裁判対象事件を対象としておりまして、警察においては現在、それらの対象事件に係る取調べにつきまして録音、録画の試行を行っているところでございます。そのうち、取調べの全過程を録音、録画をしているのは約五割にとどまっています。年々試行の数も拡大をしておりまして、また一事件当たりの時間数についても拡大をしておりますけれども、なお途上という状況でございまして、まずは現在の対象範囲の中で録音、録画をしっかりと行えるようにしてまいりたいというように考えております。
 もっとも、試行を進めていくにつれまして、現場レベルで具体的かつ実践的なノウハウが積み重ねられてくるものと考えておりまして、制度の対象外の事件につきましても、個別具体の事件ごとに事案の内容、証拠関係等を考慮いたしまして、供述の任意性等をめぐる争いが事後想定されるような場合には録音、録画を実施していくといった運用はあり得ると考えているところでございます。
○三宅伸吾君 一昨日の四月十二日に、法務委員会の皆様で都内の留置施設を視察をさせていただきました。恐らく私たちが訪問いたしました視察先は、最も録音・録画設備が整っている施設の一つではなかろうかと私は思ったわけでございます。
 そこで、法務省と警察庁にそれぞれお聞きしたいわけですけれども、現時点の全国での録音・録画設備の整備状況、それから、本法案が成立した場合、又は法律上義務付けられていないものの自主対応で可視化すべきと考え、そうしようと思っているものにきっちり対応しようとした場合に、どれぐらいのハードの設備が足りなくて、それを充足するためにはどの程度の予算が必要なのか。過去のもう既に整備した一台当たりの単価というのがあると思いますけれども、それより規模のスケールメリットが働くので安くなるのかもしれませんけれども、この刑事訴訟法を変えても、どんどん可視化しようといったところで、可視化する手段がないのでは国民の期待に応えられないということでございますので、そういう今後の導入の必要な規模と、それからそれを賄うための予算の程度について、分かる範囲で、まず法務省からお答えください。
○政府参考人(林眞琴君) まず、検察におきましては、平成二十七年度末の時点で全国に合計千七百六十五台の録音・録画機器を整備済みでございます。なお、この平成二十七年度に新しく整備した録音・録画機器は従来の仕様を見直しまして、各取調べ室に備え付けるほかに、搬出も比較的容易にできるように小型化した仕様としておりまして、その一台当たりの単価は約五十一万七千円となっております。
 その上で、この法案が成立した場合に必要な録音・録画機器に関する予算措置についてでございますが、検察におきましては、これまでも、今回の対象事件を含む運用における取調べの録音、録画を実施するために相当台数の録音・録画機器を整備してきましたので、今回の法案の対象事件については既にこれまでに運用として行ってきた機器で対応が可能であろうと考えております。もっとも、これを継続的に運用していくためには、関連する経費としましては、当然その記録媒体の費用でありますとか機器が故障した場合の修理費用、また、一定期間後に当然更新していかなくてはいけませんのでその更新の費用等が必要となります。
 その上で、本法案の対象事件に限らず、広く運用によって録音、録画を現在も検察においては実施しておるわけでございますが、そのために必要な予算措置となりますと、今後のまた運用の拡大の方向によりますものですから、実質的にその具体的な金額というものを申し上げることは困難でございますけれども、いずれにしても、積極的な録音、録画が実施できるような必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○政府参考人(三浦正充君) 警察におきましては、平成二十七年度末の時点で、全国において約千八百五十台の機材が整備をされたと承知をしております。
 この機器の整備は各都道府県警察において進めているところでありまして、都道府県ごとの調達価格の詳細は把握をしておらないわけでありますけれども、一台当たりの価格はおおむね百万円であると捉えておりまして、これを単純に計算をしますと、これまでに国費、県費含めまして約十八・五億円程度を要してきたという試算となります。
 しかしながら、取調べ室は、警察の場合、全国で一万室以上ございまして、全ての裁判員裁判対象事件について対応するには現在の台数ではなお不十分と言わざるを得ないことから、録音、録画の制度化に向けまして、国としても都道府県警察における整備の支援を含めまして、今後もしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。しっかりと国民の期待に応えられるよう、ハードの充実を国としては応援しなきゃいかぬと私は思うわけです。
 続いて、通信傍受のテーマに移りたいと思います。
 合法的な盗聴というと言葉として何かおかしいんですけれども、一般的に傍受と言ってもよく分からない方がいらっしゃいますので、合法的な括弧付きの盗聴というふうに申し上げれば国民の方は分かりやすいのではなかろうかと思います、通信傍受というのが正式な用語でございますけれども。
 対象事件でございますけれども、これまでは薬物犯罪、銃器犯罪等であったわけでございますけれども、この改正法案におきましては、誘拐、詐欺、児童ポルノなどにも拡大するというのがまず一点でございます。それからもう一つは、通信事業者が立ち会わなくても、一定の場合には通信傍受を捜査機関ができるということでございます。
 一昨日、こちらの通信傍受につきましても、都内の通信事業者の施設を皆様とともに視察をさせていただきました。とても参考というか勉強になったわけでございます。私、視察をいたしまして素朴な疑問が浮かんだものですから、是非どのように理解したらいいのか教えていただきたいわけでございます。
 改正法案では、立会いがない場合の通信傍受でございますけれども、実際の通話等のデータ、これは通信事業者が持っているわけですけれども、通信事業者から生の通信データが暗号化されて捜査機関に転送され、捜査機関において復号化され、そして傍受をする、その上で、また暗号を掛けて、そして裁判所の方に渡すということになっているわけでございます。
 通信傍受の一番の懸念は、二つあると思いますけれども、そもそも通信の秘密という問題がまず一つ。これはしっかり守らなきゃいけないから適正手続が必要だと、これが第一点。当然でございます。実はもう一つ国民の皆様が心配しているのは、通信事業者の生のデータをひょっとしたら、極めて例外的かもしれませんけれども、捜査機関側で改ざんされたらどうするんだろうという懸念を持つ人もいるかもしれません。
 じゃ、どうすれば改ざんされていないことを担保できるのかというふうに素人が考えますと、一番確実な方法は、令状を受けた通信事業者が生のデータをずっと保存をしておく、又は、通信事業者が、捜査機関に対しても通信データを暗号にして送るんだけれども生のデータを裁判所にも転送をしておく、改ざんの疑いが万が一浮上した場合に検証できるように裁判所の方でデータをきっちり保管しておく、こういう考え方も私あるんではないかと思うんでございます。
 最初の第一点目のオプションの、通信事業者の方でずっと持っておく、これは通信事業者も負担が多かろうと思いますし、万が一漏えいした場合大変なことになりますので、これはちょっと選択肢としては筋が悪いんではないかと思います。もう一個の選択肢、通信事業者が生のデータを捜査機関に送るのと同時に、裁判所の何らかのシステムの方にも転送して保存をしておく、万が一何か改ざんが疑われた場合には裁判所の方でそれをチェックをする、まあ弁護人の方がチェックするとかですね。こういうことが素人が考えますと浮かぶんでございます。
 ただ、今回の法案はそうなっておりませんで、令状を受けた通信事業者は指定された暗号処理に従って生データを捜査機関に送ると、こうなっているんでございます。この方法で改ざんされていないことがどうして担保されるのか、分かりやすくちょっと法務省の御担当者の方、御説明いただけないでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 今回新たに導入いたします特定電子計算機を用いる通信傍受、この手続におきましては、捜査官が傍受又は再生した通信というものが全てこの特定電子計算機の機能によりましてまず暗号化されて、その後の改変が不可能な形でこれが自動的に記録媒体に記録されて裁判官に提出されるわけでございます。そうしますと、この暗号化の技術によりまして、記録に改変等がないこと、これが担保されますので、これに加えまして、御指摘のような通信事業者の方からデータを直接裁判所に送るということについては必要はないものと考えられます。
 仮に、御指摘のように通信事業者から裁判所に直接通信を伝送させて記録化した場合にどういった問題が起きるかと申しますと、この通信事業者が伝送した記録というのは、捜査機関は法が許した範囲内でしか傍受ができないわけでございます。したがいまして、捜査機関が傍受を行わなかった、したがってその傍受の原記録にすら記録されないこととなる通信の内容までが裁判所に伝達されてそれで記録されることになりまして、これ自体は通信の秘密に対する不必要な制約が生じることとなりかねないと考えられます。
 そのために、御指摘のような取扱いをすることについては暗号技術の活用において必要がないわけでございますが、さらに、そういった措置を取り扱うことは通信の秘密に対する制約という観点から適当でもないと考えられるところでございます。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。
 先日視察をしたときに、今回の通信傍受の制度に限らず、多分現在の通信傍受制度もそうだと思いますけれども、音声だけでなくメールも対象だというふうに理解をしております。
 そこで質問なんでございますけれども、いわゆる通常のもしもしという音声の通話、それから電子メール、それに加えて、最近よく使われているのがインターネットを使った通話というのがございますけれども、インターネットを使った音声通信も傍受対象だという理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 現行の通信傍受法におきましても、傍受の対象となる通信の種類につきましてはこれを通信とのみ規定しておりますことから、御指摘のように、インターネットを介する方式における音声通信などにつきましても、この通信傍受法の規定する通信に当たる限りにおいては同法の規定による通信傍受を行うことができるものと考えております。
○三宅伸吾君 分かりました。
 ネット電話でございますけれども、ネット電話のサービスを提供している事業者、有名なところはほとんど、ほとんどかどうか分かりませんけれども、有名な外資系企業が提供するネット電話が多いわけでございます。外資系企業が提供するネット電話でございますので、少なくとも一部のサービスに関する一部の施設が海外でございます。少なくとも全体のシステムをコントロールしているメーンのサーバー等が海外にある可能性も極めて高いと思うんですけれども、海外に施設がございますと、我が国の主権は原則当然及びませんので通信傍受の対象外となって、ネット電話を使われるとちょっと困るんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) もとより、この通信傍受という強制処分を海外において実施することができるかどうかについては、それは主権の問題ということになりますが、他方で、国内における強制処分の執行という観点で申し上げれば、その一部が海外に関連施設がある場合であっても、少なくとも日本の国内にその一方当事者が当該通信を行っているような場合においては、日本国内においては法的には当該通信の傍受は可能であろうと考えております。
○三宅伸吾君 この通信傍受に関しましては、余りあってはいけないことでございますけれども、既に明らかになっているこれは盗聴行為があったわけであります。一九九七年でございますけれども、東京高裁は国と神奈川県に対し慰謝料二百万円を含む約二百二十九万円を盗聴された個人に支払うよう命じ、判決はそのまま確定しております。日本共産党の幹部宅盗聴損害賠償事件という民事事件でございます。
 この盗聴事件で、通信の秘密を侵す罪の未遂ということで、電気通信事業法違反で東京地方検察庁は二名について起訴猶予処分をしたことがございます。これについて、検察審査会において不起訴不当との議決が出まして、これを受けまして東京地検はまた動いたわけでございます。結論はやはり起訴猶予という処分だったわけでございます。どういう理由で起訴猶予にしたかと申しますと、被疑者両名とも懲戒処分を受け、既に相応の社会的制裁を受けている、それから、被疑者両名とも反省の意を表し、法に従い適正な公務の執行に当たることを誓約している、三つ目、警察の自浄作用により同種事犯の再犯防止が十分期待できることと、こういうことを理由といたしまして起訴猶予を最終的に東京地検はしております。
 ある学者の論文を読んでおりましたら、当時の検事総長が、警察と全面戦争をして勝てる自信がない、再発防止の確約を取ったからこれで済ませて起訴猶予にするとして世間を騒がせたという記述がございます。「法政理論」第四十六巻第二号百十二ページでございます。
 一連の司法制度改革の流れの中で強制起訴という制度が生まれたわけでございます。どのような場合に強制起訴となるのか、そしてまた、強制起訴の場合、検察官役は誰がするのか、ちょっと法務省、お答えいただけますか。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のいわゆる強制起訴でございますが、検察官の不起訴処分につきましてまず検察審査会が起訴を相当とする議決をした後に、検察官がその議決に係る事件について再度不起訴処分をした場合又は一定期間内に起訴しなかった場合において、当該検察審査会が更に起訴をすべき旨の議決、起訴議決と申しますが、この起訴議決をしたときにこの強制起訴がなされるものでございます。その場合には、裁判所から指定された弁護士がその議決に係る事件の公訴の提起及びその維持をするために検察官の職務を行うこととなります。
○三宅伸吾君 検察官役は弁護士がやるということでよろしいんですね。
 この強制起訴の場合、検察官役は検察官ではない弁護士がやるということでございますので、検察が警察と全面戦争する必要はないということでございますので、新しい制度の趣旨が何となく分かったような気がするわけでございます。
 本法案の成立後、警察には、新たな通信傍受制度を活用して国民の命と平和な暮らしを更に守っていただきたいと思います。その際、適正な手続に従うことが当然でありまして、国民も警察にこうした期待を寄せているわけであります。
 この点に関し、警察庁のお考えをお聞きいたします。
○政府参考人(三浦正充君) 今般の通信傍受法の見直しにつきましては、近年、特殊詐欺や暴力団による殺傷事犯等が国民にとって重大な脅威となっている中、そうした組織犯罪の脅威から国民の安全、安心を守るためのものでございます。
 警察においては、これまでも法令の手続にのっとって適正に通信傍受を行ってきたところでございますけれども、本法案が成立をしたならば、新たな制度においても、通信傍受は他の捜査手法では事案の解明が著しく困難な場合にのみ認められる特別な捜査手法であるという認識の下、引き続き、常に緊張感を持って厳格な要件、手続を遵守し適切な捜査が行われるよう、国家公安委員会の管理の下、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
○三宅伸吾君 是非よろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、協議・合意制度というものに移りたいと思います。
 一定の経済犯罪、組織的犯罪において、被疑者ないし被告人が、特定犯罪に関する他人の刑事事件の犯罪事実を明らかにするために供述や証拠の提供など一定の協力をすることと引換えに、見返りに、検察官の裁量の範囲内で不起訴、公訴の取消し、特定の求刑など恩典を与えることに合意することだと理解しております。
 この協議・合意制度でございますけれども、協議、合意の過程につきまして録画、録音を義務付けていないと思いますけれども、これはなぜでございましょうか。
○政府参考人(林眞琴君) まず、合意制度における協議でございますが、これは検察官と被疑者、被告人及び弁護人、この三者が合意に向けて言わば交渉を行う場でございます。仮にその場面の録音、録画を義務付けた場合には、この三者が自由に意見を交換しながらそれぞれ合意をするか否かというものを見極めるという協議の機能が大きく阻害されることとなろうかと思います。
 また、この協議の過程で被疑者、被告人からの供述を聴取することができるわけでございますが、この協議の場面での供述の聴取に関して申し上げますと、協議におきましては、被疑者、被告人は、弁護人が必要的に関与する中で、言わば交渉の相手方である検察官の対応、出方も踏まえながら、どの時点でどこまで具体的に供述するかを主体的に判断しながら供述していくことになります。そのために、供述の聴取に当たりまして、その自由を侵害するような不適正な方法が取られ得る場面ではございませんし、被疑者、被告人は、弁護人と十分に相談した上で、その時点でどこまで供述するかどうかを言わば戦略的に考えながら供述することから、協議においてどのような経緯で供述がなされるに至ったかということについては基本的にその後の供述の信用性とは関連しないものと考えられます。
 したがいまして、この協議の過程について録音、録画を義務付けることは適切でもなく、また必要性も乏しいと考えておるところでございます。
○三宅伸吾君 この協議・合意制度、様々な意見、議論があろうかと思いますけれども、批判をしている方の最大のポイントは、共犯者の供述には巻き込みの危険性とか、それから虚偽供述の危険性があるんじゃないかという懸念が聞かれるわけでございます。
 巻き込みとか虚偽供述を排除するためにどのような防止策を制度上、運用上取られようとしているのか、法務大臣、御答弁いただけますか。
○国務大臣(岩城光英君) 合意制度は、一定の財政経済犯罪等を対象として、首謀者の関与状況等を含めまして組織的な犯罪等の全容の解明に資する供述等を得ることを可能にするものであります。
 この制度につきましては、被疑者、被告人が虚偽の供述をして第三者を巻き込むおそれがあるとの指摘がございますが、そのようなことが生じないように、制度上、次のような手当てをしております。
 すなわち、協議の開始から合意の成立に至るまで常に弁護人が関与する仕組みとしております。また、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときは、合意内容が記載された書面が当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組みとしております。そのため、合意に基づく供述につきましては、裏付け証拠が十分に存在するなど積極的に信用性を認めるべき事情が十分にある場合でない限り、信用性は肯定されません。その結果、検察官としても、十分な裏付け証拠があるなど裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないこととなります。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には、新設の罰則による処罰の対象となります。
 したがいまして、合意制度は、虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっていると考えております。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。虚偽供述罪を新設することが、一つの巻き込み、それから虚偽供述の防止策、排除策ということでございます。
 私、昔、二十年ほど前、民事裁判に興味を持ったことがございまして、いろんな方にお話を伺うと、日本の民事裁判はうそつき放題だという指摘をする方も何人かいらっしゃいました、全員ではございませんけれども。
 偽証罪という犯罪はもう既に刑罰規定があるわけでございますし、今度、虚偽供述罪が新設をされるわけでございますけれども、問題は、私はその運用だと思っているわけでございます。偽証罪それから虚偽供述罪、これも、いずれにしましても起訴をする判断は検察がするわけでございますので、これ絵に描いた餅になっては防止策としては機能しないということになります。もう十年ぐらい前になりますけれども、裁判員裁判の始まるのを機にきっちりと偽証罪の運用をしなければいけませんよという話を検察の首脳の方から私聞いて、ああ、なるほどなと思ったわけでございます。
 この偽証罪につきまして、この二十年ぐらいの起訴の状況、それから現実に実刑判決等が出ているのかどうか、ちょっと統計を教えてもらえませんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 過去二十年間で見ますと、検察が偽証罪で起訴した人員は合計百五十人でございまして、第一審において偽証罪で実刑判決が下された人員は合計で、実刑判決の人員は合計四十六人でございます。
○三宅伸吾君 ありがとうございます。偽証罪、実刑判決も出ているということでございます。
 法務大臣は、検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができると定められておられます。今後、偽証罪、虚偽供述罪の運用につきまして、法務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 検察当局におきましては、偽証罪につきまして、司法の機能を妨害し、公判廷における真相の解明を妨げる重大な犯罪であり、厳正に対処する必要があるとの認識の下、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処しているものと承知をしております。
 この合意制度の下におきましても、これまでと同様、偽証罪や新設の虚偽供述罪の罪について適切に対処するものと考えております。すなわち、合意制度の下では、検察官は、合意をした被疑者、被告人の供述について、信用性を確認するため徹底した裏付け捜査を行うことになります。その裏付け捜査の結果に基づきまして被疑者、被告人の捜査機関に対する供述や他人の公判における証言が虚偽であると判明した場合には、検察官としては、その供述等をした被疑者、被告人に対し厳正に対処することになると考えられます。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。
 冒頭少し触れました二〇〇一年六月の司法制度改革審議会意見書でございます。これは約二年の時間を掛けまして、本当に各方面の有識者、様々な方から意見を聞いて日本の司法の在り方を考えた意見書でございます。多くの論点、指摘されているわけでございます。
 二〇〇一年から今日に至るまで、様々な刑事分野の改革、当然民事もロースクールの創設等なされたわけでございますけれども、今回の刑事訴訟法等の一部改正法案でございますけれども、この十五年間を振り返った場合の日本の刑事司法の大きな変革の流れの中で本法案をどのように位置付けられておられるのか、最後の質問でございます、法務大臣にお考えをお聞きしたいと思っております。
○国務大臣(岩城光英君) 本法律案は、誤判等が生じる要因とされます捜査、公判が取調べ及び供述調書に過度に依存した状況を改めるため、証拠収集手段の適正化、多様化と公判審理の充実化を図り、より適正で機能的な刑事司法制度を構築するものであり、その内容は司法制度改革審議会の意見書の指摘にもかなうものであります。
 本法律案に盛り込まれております証拠開示制度の拡充、被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大などは、この意見書を踏まえて既に法整備された事項についてそれをより充実させるものであります。
 また、本法律案に盛り込まれております取調べの録音・録画制度の導入、合意制度、刑事免責制度の導入などは、意見書において今後の検討課題として指摘された内容に応えるものであると、そのように考えております。
○三宅伸吾君 ありがとうございました。終わります。
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 今日は、通信傍受法の濫用防止ということの観点から質問をさせていただきたいと思います。
 まず、最も基本中の基本、憲法二十一条で保障された通信の秘密というものがございます。これを捜査という公共のために制限するということでありましょうけれども、やはり基本は、憲法で保障された通信の秘密はしっかり守らなくてはいけないという原則があると思うわけでありますが、この通信の秘密の保障というものに関して法務大臣はどのように考えているか、所感をお聞かせいただければと思います。
○国務大臣(岩城光英君) 憲法に示されております通信の秘密、これは当然のことながら尊重していかなければいけないと考えております。
○小川敏夫君 非常にシンプルな答弁でございましたが、尊重していただけるということでありますが、今回の改正案ですと、通信傍受を行う対象が大幅に拡大されました。
 そうした中で、やはり通信傍受という制度を用いた不正な盗聴とか、あるいはこの濫用に及ぶ傍受がされてはならないわけでありますが、こうした捜査官が通信の傍受を濫用するということについて防止するということは当然必要だということは御理解いただけると思うんですが、そもそもこの通信傍受の法律で定められた仕組みの中で濫用防止策というものはどういうふうに仕組まれているんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) まず、適正担保の仕組みでありますけれども、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状、これが必要であります。この傍受令状は、裁判官が、その罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど、通信傍受法が定める厳格な要件を満たしていると認めた場合に発付されます。その際、裁判官は、犯人により被疑事実に係る犯罪関連通信に用いられる疑いがある通信手段を電話番号等によって特定し、傍受令状を発付することとされております。
 また、通信傍受を実施する間においては、立会人が、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないか、許可された期間が守られているか、傍受した通信等について全て録音等の記録がなされているかといった外形的な事項についてチェックするとともに、傍受の中断又は終了の際におきましては立会人が記録媒体の封印を行うこととしております。
 そして、傍受した通信の記録が裁判官に提出されること、通信の当事者に対しては傍受記録を作成したことなどが通知され、当該通信に係る部分を聴取することができる手続が設けられていること、傍受をされた通信の当事者、傍受記録が証拠として用いられる事件の被告人及びその弁護人が、裁判官が保管する傍受の原記録のうち必要な部分を聴取することができる手続が設けられていること、通信傍受に関する裁判に不服がある者が裁判所に対してその取消し又は変更を請求する手続が設けられていることなどから、傍受が適正に行われたかどうかを事後的に検証できるようにされております。
 このように、現行の通信傍受法では、事前に裁判官による厳格な審査を受けるとともに、傍受の実施に際しては立会人によるチェックや封印の手続が必要とされ、さらに事後的にも適正担保の手続が設けられております。
○小川敏夫君 最初の質問の答弁とは打って変わって長い御説明でありましたけれども。
 では、一つ一つ確認してお尋ねしていきますけれども、例えば捜査官が傍受を始めた、すると、建前では、犯罪に関する通信は傍受してもいいけれども、犯罪に関係しない通信は、会話は傍受してはいけないと、こういうふうになっております。しかし、捜査官が犯罪に関係しない、すなわち法律では傍受していけないという通信なり会話を聞いちゃったらどうするんですか。これを防止する手だてはどうなっているんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 傍受の実施の際に行われます該当性判断のための傍受も、これも必要最小限度の範囲に限定されておりまして、犯罪とは無関係の通信が傍受される場合におきましても、その範囲は断片的なものにとどまります。その上、犯罪に関連する通信とは認められなかった通信の記録は傍受記録の作成の際に消去され、捜査官の手元には残されず、捜査官はその内容を使用してはならないこととされております。
 さらに、傍受が行われる通信の範囲の最小化が適切に行われることは、傍受をした通信が全て記録された記録媒体を裁判官が保管し、事後的に検証され得ることが確保されることにより、制度的にも確保されております。
 このように、傍受に伴う通信の秘密に対する制約を必要最小限のものとする仕組みが設けられてございます。
○小川敏夫君 ですから、そういう仕組みが設けられているという中で、スポット傍受して、犯罪に関係しなければ聞かない、聞いちゃいけないとなっているという仕組みは分かりました。しかし、捜査官がその仕組みを無視して聞いてしまったらどうなのかなと私はお尋ねしているわけです。
○国務大臣(岩城光英君) おただしのような違法な傍受を仮にしたとなれば、それは犯罪となります。
○小川敏夫君 聞いちゃいけないことを聞いちゃったら、それは通信の秘密を不正に聞いたということで犯罪になるんでしょうけれども、しかし、犯罪になるかどうかは別にして、そもそもそういう傍受してはいけないというものを傍受できない仕組みがあるのかないのかということについてお尋ねしただけです。
 例えば、覚醒剤の密売事件である大物の通信、電話を傍受した、傍受したら、そこに、犯罪に関係しないけれども、何か有名な女性タレントが、あら、お父さんとか言って電話してきた、何か大物の被疑者と芸能人が関係あるかのような会話があったとした、しかし犯罪には関係しないし、でも何かこれはちょっとどういうことなんだろうと思って、じゃ聞いてやろうと思って聞いちゃったと。
 私の質問は、もう少し分かりやすく言いますと、この傍受の現場というのは、要するに捜査官がヘッドホンを付けて聞いているわけです。通信事業者の立会人はいるけれども、立会人は犯罪の事実も何にも知らない。それから、捜査官はヘッドホンで聞いているから、立会人は捜査官が何を聞いているかも全然分からないと。だから、捜査官は自分の判断で聞くか聞かないかを決めるわけです。
 ですから、その捜査官の判断が、いけないこととは知りつつも、でも、ああ、聞いちゃおうといって聞いちゃったら、少なくともそれを止める、事前に止める手だてはこの法律ではないと思うんですが、どうでしょう。
○国務大臣(岩城光英君) 確かに、それを事前に止める手だて、これはございません。ただ、それは、そのことにつきまして、捜査に活用するとかそういったことはありませんので。
○小川敏夫君 それで、事前に止めることはできない、私はそう思います。では、そういう不正があったら必ずそれが露見するという仕組みを設けておかないと、やはり不正が横行してしまうと思うんですよ。
 じゃ、そういう不正な傍受が行われた場合に、それがきちんとチェックできる仕組みがあるのかなという観点からお尋ねさせていただきます。
 まず、先ほどの大臣の御説明ですと、傍受したと、その傍受したものはそっくりそのまま原記録として裁判所に保管されるということでした。そういうふうになっています。ただ、じゃ、その裁判所に保管された原記録を誰が見ることができるのかというふうに考えますと、今のこの法律の仕組みは、あなた傍受されたよという通知を受けた人しか分からないわけです。ですから、通知を受けない人は、そもそも傍受されたということは知らないし、傍受された記録が裁判所にあるということも知らない、だからチェックできないわけです。
 それで、お尋ねします。通知をする相手はどなたですか。
○国務大臣(岩城光英君) 通知の対象者ということでございますが、現行通信傍受法は、第二十三条第一項において、傍受記録に記録されている通信の当事者に対し、傍受記録を作成した旨等を書面で通知しなければならないと、このようにされております。
 他方、傍受をした通信であっても、傍受記録に記録されたもの以外のもの、すなわち、該当性判断のために必要最小限の範囲で一部傍受をしたが傍受すべき通信等に該当しなかった通信の当事者に対しては通知することはしておりません。
○小川敏夫君 つまり、この事後チェックに、ここに大きな落とし穴があるんですよ。
 すなわち、あなたは傍受されたよ、傍受した内容は全部裁判所にありますよということを通知する相手は傍受記録を作成した相手でしかないわけです。じゃ、傍受記録って何と聞いたら、傍受記録というのは、聞いた会話の中から犯罪に関係する部分だけを抽出した記録だということです。犯罪に関係しない部分については傍受記録に残さない。
 そうすると、犯罪に関係する部分があった人にしか通知しないんだから、じゃ、先ほどの例で言いましょうか。親分、通信傍受ずっと聞いちゃったんだけど、結局犯罪に関係するものはなかったと。犯罪に関係する部分はないんだから、延々と聞いちゃったんだけど、傍受記録は作成されないわけです。これはそういうことですよね。傍受記録というのは、犯罪に関係する会話があったらその部分だけ記録に残しなさいというだけですから、実際に実務においても、傍受したけれども犯罪に関係する会話がなければ全く記録部分がない傍受記録が残されるわけですよ。
 すなわち、さっきの例で言いましょう。犯罪に関係する会話がないけど不正に傍受されちゃったという人については、犯罪に関係する部分の会話がないから傍受記録に記録された相手方にはならない、したがって通知はされない。通知はされないと、聞かれちゃった人は自分が傍受されたことも知らない。したがって、自分が傍受されたことも知らないし、その記録されちゃったものが裁判所にあるということも知らない。すなわち、確認をするなんということはあり得ないし、考えられない。だから、傍受を受けちゃった人が自分が不正に傍受をされたということを知らないんだから、チェックしようがないですよね。
 ですから、何か傍受したもの全てが、傍受の内容が全部原記録に残されて裁判所に保管されているといっても、それは裁判所がただ単に一つの倉庫になっているだけで、実際にはチェックという機能は全く働かないと思うんですが、そういう観点から聞いているんです。
 ですから、通知というものの制度は、犯罪を犯した者に対しては通知する、しかし、捜査官が不正に傍受した、あるいは濫用して傍受したという部分についてはその相手方に通知されない、したがって濫用はチェックされないと、こういう仕組みだと思うんですが、どうでしょう。
○国務大臣(岩城光英君) 現行の通信傍受法は、傍受が適正に行われたか否かを事後的に検証することができるようにするため、捜査官が傍受をした通信は、当該通信が傍受すべき通信等に該当するかどうかを問わず全て記録媒体に記録をして、立会人に封印を求めた上で遅滞なく裁判官に提出すべきことを定めております。そのため、捜査官が違法な傍受を行えば、傍受の原記録に動かぬ証拠が記録され、裁判官の元で保管されることとなります。
 そして、傍受をされた通信の当事者は、通知を受けた者かどうかを問わず、裁判官に提出された傍受の原記録の聴取等をして、その内容をチェックすることができることとされております。また、通知を受けていない通信の当事者が傍受の原記録の聴取等をしなかったとしても、当該傍受令状による傍受の対象とされた通信手段の使用者は傍受をされた通信のほぼ全ての一方当事者であるのが通常であり、また傍受すべき通信等の当事者として通知を受けることとなるのが通常であって、傍受記録に記録されていない通信を含め、全ての通信の傍受がそのチェックの対象となり、違法な傍受はたちまち発覚することとなります。
 さらに、検察官が傍受記録の内容を公判手続において証拠として用いようとする際には、被告人やその弁護人も被告人の防御等のため傍受の原記録の聴取等をすることができ、その際、傍受記録に記録されていない通信を含め、不適正な傍受が行われていなかったかがチェックされ得ることとなります。その上、傍受をされた通信の当事者から不服申立てがあり、裁判所が傍受の処分を違法と判断して消去を命じたときは、捜査官は消去を命じられた部分を傍受記録から消去しなければならず、その内容を使用することはできなくなります。また、傍受の過程に重大な違法があった場合には、公判手続において傍受記録が違法収集証拠と判断され、証拠とすることができないこととなり得ます。
 このように捜査官が傍受をした通信が全て傍受の原記録に記録されることを確保し、これを裁判官に保管されることとした上で、通信当事者等による傍受の原記録の聴取等の手続や不服申立ての手続を設けることにより、捜査官が違法な傍受を行ったとしても発覚を逃れ得ないことを制度的に確保しており、これにより捜査官による違法な傍受を抑止をしております。
 したがいまして、傍受記録に記録されていない通信の当事者に対して通知が行われなければ違法な傍受を抑止できないとのこういった判断、御指摘ではないと、そのように思っております。
○小川敏夫君 いや、だって不服申立ての手段があるといったって、そもそも知らないんだ、分からないんだから。自分が不正に傍受された、いわゆる盗聴されたということを知らないんだから、その盗聴された会話の内容が裁判所に保管されているということを知らないんだから気が付きようがないでしょう。分かるとしたら、それは捜査官が、済みません、私、あなたの電話不正に聞きましたから、申し訳ありません、裁判所にありますから聞きに行ってくださいと捜査官が自ら自白して、申告しなきゃならないでしょう。しかし、そんなことは考えられないですよね。たちまち露見するじゃなくて、実は全く露見しない仕組みになっているんですよ。
 例えば、検察官がまたいろいろ検討すると言うけれども、検察官のところに行かないんですから。検察官のところには犯罪の捜査の部分しか行かないので、犯罪の証拠でも何でもない、不正に聞いちゃった、そんな資料は検察官のところにはそもそも行かないんだから、検察官が判断しようがないですよ。だから、私の質問に対して大臣の答弁は、ただ都合のいい仕組みをお話しされているだけで。ですから、分かりやすいように、さっきのお話しましょう。
 捜査官が傍受した人がいる、何か大物だと、それからそこに電話を掛けてきたまた第三者がいる、いずれも犯罪に関係しなかったと。だけど、捜査官がそれを聞いちゃった、聞いちゃったものは録音されている、録音されているその記録は裁判所にあります。だけど、傍受しましたよという通知がその大物にも何なりにも行かないんだから、知らないんですよ。知らない人がどうやってチェックできるのか。知らない人が知らないままなんだから、たちまち露見するということはないんで、全く露見しないまま終わっちゃうと思うんですがね。そういう意味で、私は、このまず不正な傍受を事前にやめさせるということはできない、捜査官が自分で判断するんだから。
 じゃ、事後的にチェックできるか。まさに大臣が言うように、不正な傍受をすればたちまち露見するという仕組みになっていれば私は事後的チェックがあると思いますよ。でも、大臣はたちまち露見すると言ったけど、そういうことはあり得ない。傍受された人は知らないんだから、露見しようがない。
 ですから、私は、濫用防止策は全く不十分じゃないか、むしろ構築できていないんじゃないかという観点からお尋ねしているわけですが、もう一度御答弁いただけませんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 傍受の実施をする時点では、捜査官には、裁判官が保管する傍受の原記録を閲覧する者が現れるかどうか、捜査官がした傍受の処分に対する不服申立てを行う者があるかどうかは予測ができるものではございません。そのため、捜査官としては、仮に不正な傍受を行えば、傍受をした通信の当事者のうちいずれかの者が傍受の原記録を閲覧したときに発覚を免れないということを前提に行動せざるを得ず、その結果、捜査官は不正行為を行うことはできなくなります。
 このように傍受の原記録が裁判官により保管され事後的な検証が担保されることにより、そうした捜査官の不正行為、これは十分に抑止されるものと考えております。
○小川敏夫君 つまり、大臣の今の御説明の組立ては、傍受をされてしまった者が裁判所にある録音記録を閲覧すれば立ち所に発覚するというわけで、裁判所にある記録を見れば立ち所に発覚しますよ。だけど、どうやって裁判所にその記録があることを知るんでしょうか。どうやって閲覧することができるんでしょうか。私は、それができないからお尋ねしているわけです。
 その不正に傍受を受けた人がどうやって裁判所の記録を、裁判所に記録があるということを知って閲覧の求めをするんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 先ほども申し上げましたとおり、そうした不服申立てを行う者があるかどうかは、これは予測ができないわけであります。そのため、こうした不正な傍受を行えばやはり発覚を免れないということを前提に行動せざるを得ず、その結果、不正行為を行うことはできないと、このように考えております。
○小川敏夫君 同じ議論をしてもしようがないけど、傍受されたことを知らない人が何か行動をするということは考えられないから、捜査官は腹くくっちゃって、どうせやったってばれやしないんだといってどんどんやっちゃう、そういうことを許すような仕組みになっているから、私はこの法案は問題じゃないかと思っているわけであります。
 また、裁判官から令状を受けるから大丈夫だというお話がありました。一番最初の話ですよね。どうでしょう、今日警察庁にお越しいただいていますけれども、これまで警察が調書等の証拠を捏造なりして不正に令状の発付を受けて不正な強制捜査を行ったというような事案が過去起きていると思うんですが、その発生状況等、いかがでしょうか。
○政府参考人(三浦正充君) お尋ねのような不正な捜査手続によって令状請求が行われた事案については網羅的には把握をしておりませんけれども、虚偽の内容を記載した捜査書類を用いて逮捕状請求を行ったという事案について、一つの事例を把握をしているところでございます。
 この事案につきましては、平成二十三年の六月、警視庁の高島平署の捜査員が、盗品が既に売却されていた事件の捜査におきまして、窃盗事件での逮捕状取得が困難でありましたことから盗品等有償処分あっせん罪で逮捕状を得ようとしたところ、確実にこれを得ようということで、被疑者一名が、実際には被疑者一名が質店に来店をしていたのであったわけですが、共犯者と二名で来店をしていたという旨の虚偽の内容の捜査報告書を作成の上、盗品等有償処分あっせん罪で逮捕状を裁判所に請求し、その発付を受けたという事例でございます。
 これが事後発覚をいたしまして、当該捜査報告書を作成をした捜査員は、その後、懲戒処分を受けているところでございます。
○小川敏夫君 私は警察がいつも不正をしているなんて思っていませんよ。もちろん、捜査に大変な御苦労をされて、社会の治安を守るために大変に貢献しているんで、そのことは私は重々分かっていて承知しているんですけれども、ただ、残念ながら、人間社会どこだって、裁判官だって悪いことをする人がいるわけで、警察だって何も犯罪集団じゃないんで、犯罪集団と戦うために日夜戦っているということはよく分かっている。だけど、よこしまな考えで不正な行為をする人がいるわけでありますし、あるいは仕事熱心な余り足を踏み外してやり過ぎてしまうというようなこともあるわけであります。
 ですから、令状があるから大丈夫かということは必ずしもそうじゃないんで、私がよく記憶している、私の記憶間違いないと思うんだけれども、平成六年、随分昔ですけど、警察官が虚偽の供述調書を作って、それでその供述調書を基に捜索、差押えを行ったと。ところが、行った現場でその捏造した供述調書を置き忘れて帰っちゃったんで後から発覚しちゃったなんていう、どじな事件がありましたけど。
 その事件で思ったのは、一人の警察官がそういう不正を働いたんじゃなくて、チームで働いているんですよね。これが一つの驚きだった。単独の警察官が何かちょっと間違った考えで犯すというんだったらそうかもしれないけど、チームでそういうことをやっていたというと、警察では捜査のためにはそのぐらいのことをしても構わないんだという、そんな風潮があるのかなと少し私は驚いたことがあったわけでありますけれども。
 裁判官の厳格な判断の下に基づく令状があるからそもそも通信傍受は全て正当だということにはならないと思うんですが、例えば、捜査官がそういう不正な証拠を捏造して、それで通信傍受令状の発付を受けてしまった、裁判官も通信傍受令状を発付してしまったと。これは想定の話ですよ、仮定の話ですから、実際に起きたということじゃありませんから。そんなことがあって、違法に、令状が来れば当然、通信事業者もその通信傍受に協力するでしょうから、ということで違法な通信傍受がある意味では実施されてしまったと。そして、違法な通信傍受をしてしまったとした場合に、それがまた発覚するんだろうか。
 結局また同じ議論になっちゃいますけど、違法に捜査官が通信傍受すれば、そんなことを自分から申告するはずがないんで、それからそのことで傍受記録も作成することはないでしょうし、それからそういう傍受をしたということを傍受の対象者に通知することもないでしょうから、結局闇に埋もれたまま終わってしまって、しかし捜査官の方は違法に情報収集してしまうというようなことも一つの想定の、想像の話としては起こり得る。
 すなわち、この法律はそうした単なる濫用にわたるだけじゃなくて、もっと積極的に不正に利用されたとしても、それをチェックする仕組み、それを防止する仕組みができていないと私は判断しておるわけであります。
 また同じ答弁になるかもしれませんが、濫用あるいは不正な傍受があればたちまち露見する、たちまち露見するから捜査官はそのようなリスクを冒さないだろうからという考えは、私は失礼ながら法務大臣の見解は間違っておると思います。不正、濫用に及ぶ傍受があっても傍受された人間は知らないんですから、気が付かないんですから、不服の申立てのしようがないわけです。
 一方で、そうした不正、濫用に及んだ傍受をしたという捜査官が自ら申告しない限りは、結局はそれは露見しない。裁判所にそうした傍受の記録が全部録音されて、裁判所に保管されているよといったって、その裁判所にある記録を見る人は誰もいないでしょう。
 結局、そうした点について濫用防止策ということが非常に不十分なまま、今度は通信傍受の対象というものを飛躍的に拡大する、私はそこで大きな危惧を抱いておるわけでありますけれども、どうでしょう、この濫用防止策について、もう少し具体的に実効性があるような濫用防止の仕組みを前向きに検討するというようなお考えはございませんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 傍受令状は傍受すべき通信が行われる蓋然性がある場合でなければ発付されませんので、捜査官としては、傍受すべき通信等が行われず、通知をする必要がある対象者の生じないことを見込んで該当性判断のための傍受を無制約に行うことはできず、また、傍受すべき通信等を傍受すれば、その動かぬ証拠が裁判官が保管する傍受の原記録に記録されるのでありますので、傍受記録に記録される通信がないことを見込んで無制限に傍受を行うこともできません。
 したがいまして、結果として傍受記録に記録されている通信がないときには誰にも通知が行われないとしても、不適正な傍受を行う余地があることを意味するものではない、このように考えております。
○小川敏夫君 同じ話に全くなってしまうんですけれども、そうすると、大臣のお考えでは、もう濫用防止の仕組みは今のこの法律の仕組みで十分だから、もうこれ以上検討する必要もないと、こういうことになるんでしょうか。
○国務大臣(岩城光英君) 先ほど来お話を申し上げておりますとおり、適正担保方策は十分に取っておるというふうに考えておりますので、現在のところ検討を要するものとは考えておりません。
○小川敏夫君 警察の方にお尋ねしますけれども、通信傍受の立会いのことはさっきちょっと触れましたけれども、傍受記録の作成の事務内容ですけれども、これ、傍受記録を作成する事務は、通信傍受を行った通信事業者のその現場で、通信事業者の職員がいるその現場で行うんでしょうか。それとも、そうではなくて、録音したものを署に持って帰って署で行うんでしょうか。あるいは、いずれの場合もあるんでしょうか。
○政府参考人(三浦正充君) 該当性判断をするわけでありますけれども、その切り分けが比較的容易にできるといったような場合であればその場で行って、その場に通信事業者の方がおられるといったケースもあると思いますけれども、そうしたどこが犯罪関連通信であるのかといったような見分けが難しいというケースもございますので、そういった場合には、事後的なチェックというか精査を経た上で犯罪と関連のない部分を削除していく、こういった作業をいたしますので、結論としては両方あり得るということだと思っています。
○小川敏夫君 今回、新しいシステムは、今度は通信事業者のその場ではなくて、警察施設でも傍受できるということになります。
 それで、いろいろ暗号化して復号化して云々、改ざんできないできないという議論も出ております。確かに、暗号化して復号化してキーがなければというふうなことで、傍受したその内容が改ざんされない、改変されないという仕組みは分かりました。
 でも、傍受した内容がそもそも改ざんされるかどうかじゃなくて、傍受しちゃいけないものを傍受しちゃったかどうかのチェックというものは、これは改ざんされるかどうかとは全く別な話ですから、何一つこれまでの仕組みとは変わっていないわけですよね。ですから、今回の暗号化、復号化とか録音の仕組みがいろいろ説明できていますけれども、通知する対象というものは全く変わっていないわけです。それから、傍受するときに傍受するかどうかを判断するという捜査官、この仕組みも全く変わっていないわけです。
 ですから、今回、署で行うという仕組みは、ただ単にその現場で通信事業者の立会いがなくなったというだけであって、全くその濫用防止の仕組みという面に関しては何一つプラスになるものはないと私は思うんですが、結局今回の新しい仕組みは、録音されたものが改ざん、改変されないということだけを強調しているけれども、それ以外のことについて、濫用の防止策が更に寄与したとか、そういったことは全く関わっていないと思うんですが、こんな私の意見はどうでしょう。
○政府参考人(三浦正充君) 今回の改正案におきましては、従前通信事業者等の立会いが必要とされていた事柄につきまして、これをある意味では合理化をするということで、警察施設においても傍受を行うことができる、そのためには特定電子計算機という法の定める機能を有する機械を使って行わなければいけないと、それによって、立会人がこれまで果たしてきた機能を言わば機械によって代替をするという、そういった考え方に基づいてこの法案が作られたものというように理解をしております。
 そうした意味では、これまでの立会人が果たしてきた機能、その適正の確保のために果たしてきた機能というものが機械によって確実に代替をされるということでありますので、これまで行ってきた通信傍受と同様の適正性が担保されるものというように考えているところでございます。
○小川敏夫君 だから、これまでは通信事業者の現場で傍受したものを録音した記録媒体に通信事業者の職員が封印をしたから改ざんされないよという仕組みになっていました。今回はその通信事業者の封印というものがない。しかし、暗号化したから改ざんされないよという仕組みができたと。だから、それは、通信事業者が要するに実際に傍受されたものの記録媒体に間違いありませんよという封印に代わって、ただ暗号化というもののシステムを導入しただけであって、それ以外にその濫用の防止をするということに関しては、全く改悪もないけれども改善もない、まさに関わっていない仕組みの変更だと思うんですが、これはどうでしょう。
○政府参考人(三浦正充君) 現行法における立会人の役割というものは、例えば傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないか、それから許可された期間が守られているか、また傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかといった外形的事項についてチェックをすることのほか、傍受の中断などの際に、裁判官に提出される原記録について改変を防止するための封印を行う、御質問にございましたその封印を行うといったようなことであると承知をいたしております。
 これに対しまして、その新たな方式による通信傍受におきましては、暗号技術を始めとする技術的な措置を用いまして、現行の立会人の機能に代えまして通信事業者自らが傍受対象の通信を捜査機関の施設に設置された正規の傍受装置に確実に暗号送信をするとともに、特定電子計算機の機能によって傍受結果の全てを機械的かつ確実に暗号記録されることによりまして裁判官に提出をされる原記録の改ざんが不可能となるということとなるわけでありまして、現行制度で立会人が果たしている役割は技術的措置により確実に代替をされるということでありますので、通信傍受の適正は十分に担保されるということでございます。
○小川敏夫君 改ざんされないという意味では適正さは担保されるかもしれないけれども、捜査官が濫用して聞いてしまったということに関しては改ざんという問題とは全く無関係ですから、結局、そうした濫用されてしまった場合に、そもそも濫用されて聞いたものはそういう傍受されたことを知らないんだから不服申立てのすべもないし、結局事後的にチェックするという機会はないということで、全く濫用防止策が不十分であると、大変な欠陥法案であるということ、そしてその欠陥を抱えたまま更にこの通信傍受の対象が大幅に拡大されるということは大変に大きな問題であるということを指摘して、私の質問を終わります。
○矢倉克夫君 こんにちは。
 刑事訴訟法審議入りということで、先日、可視化の状況とまた通信傍受の関係、視察へ行きまして、様々示唆をいただいたわけであります。今日は時間の関係もあり、通信傍受の方をお伺いしようと思っております。質問の通告、ちょっと順序を変えまして、まずは通信傍受の必要性、最後の方に予定していたところからお伺いをしようと思っています。
 質問に入る前に一言ですが、当然、刑事裁判の原則というのは、十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれと、十人真犯人が仮に逃れたとしても一人の無罪の人を罰してはいけないというのがこれ大原則だと思うんですが、悩ましいのは、私も刑事訴訟法を考える上で一つ考えているところは、やっぱり立法府にいる限りはそれだけではいけないのかなと。当然一人の無実の人も罰してはいけないわけなんですが、やはり国民に対しての安心、安全を守るという意味合いでは両方、人権保障と真実発見、これをやらなければいけないと。要するに、十人の真犯人を決して逃すこともなく一人の無罪の人も決して罰しないと、両方やらなきゃいけないというのはやはり悩ましい、難しいところであるなと。そういう制度設計をどうすればいいのかというところが課された課題であると思っています。
 今回の刑事訴訟法についてですが、まず無罪の方を、無実の方を罰しないということのためには何が課題だったかといえば、やはり供述調書の過度な依存、これが自白強要、先ほど人質司法といいますか、そういうお言葉もあったわけですが、そういうようなものを排除するために今回可視化をやった。ここが第一の起点であって、他方で、それをやることで、従来は首謀者の人とかを検挙するにはやはり取調べしかなかったという経緯があってそういう取調べの過酷さが出たわけですけれども、今回それを可視化することで、他方で、取調べに依存していた部分を今度は合意制度という形で対応もし、また様々な事情に応じた通信傍受の拡大というところもやり、真実発見というところもしっかりと担保もする。手続的な適正は弁護人が様々な国選弁護についても関与する対象を広げるという意味合いでは、全体として見れば、冒頭申し上げた真実発見と人権保障というところを両方しっかりやっていくという、パッケージとしては非常にバランスの取れた法制になっているのではないかなというふうに私は個人的には理解をしているところであります。
 以上申し上げた上で、冒頭申し上げたとおり、まず警察の方にお伺いをしたいんですが、今回の通信傍受、この必要性、とりわけ、従来対象犯罪は四種に、薬物、銃器、集団密航、組織的犯罪にこれ限定していたわけですけれども、今回これを拡大するというところになると思います。
 私も、この四個に限定をしていた経緯部分、当然様々いろんな御意見がある中で、その当時にやはりとりわけ必要性を感じられたものに限定をしていたという経緯はあるというふうに認識しています。集団密航などもまさにそうであったと思いますが、ただ他方で、そうであれば、時代の流れに応じてこの必要性というものが更に広がっていけば、それに応じた考えも広がっていくというところは理解もできるところである。
 それを前提にした上で、今回は特におれおれ詐欺、特殊詐欺を一つ、そして暴力団であったりあとテロ組織による組織犯罪を二つ目、最後、児童ポルノ、これが念頭にあるというふうに理解をしておりますが、それぞれについて拡大をした理由、その妥当性についてどのようにお考えか、警察庁、答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(三浦正充君) まず、組織的な犯罪一般ということで申し上げますと、組織的な犯罪におきましては、その準備及び実行が密行的に行われまして、犯行後にも証拠を隠滅したり実行犯を逃亡させたりするといった工作が組織的に行われることも少なくなく、それらを実行するための手段としてしばしば携帯電話等の通信手段が悪用されております。また、末端被疑者を検挙しても、組織による報復等を恐れて、組織実態や上位者の関与の状況について供述を得ることは容易ではなく、通常の捜査手法によっては犯行の全容解明や真に摘発すべき犯罪組織中枢の検挙が困難であるといった捜査の実情がございます。
 例えば、特殊詐欺につきましては、首魁や中核メンバーの下で掛け子、受け子等の複雑な構造の犯行グループにより組織的に敢行をされているわけでありますが、掛け子、受け子といった末端被疑者についてはある程度の数検挙できるわけでありますけれども、なかなかその上位の者、特に首魁、中核メンバーといったところの検挙がなかなか難しいというのが現状であり、それが、なかなか被害の拡大が収まらないという、そういう原因になっているというように認識をしております。
 また、殺傷犯関係で申しますと、取調べにおいて自己や組織の上位者の関与について否認をすることが多いということでありますし、また、児童ポルノにつきましては、海外のサーバーに販売サイトを持つ、頻繁にアドレスの変更を行うなど被疑者らの特定や追跡が困難であるという事情がございます。
 また、連続爆破テロのテロリストグループが更なる犯行を予告している場合や、テロに関連する爆発物原材料の組織窃盗を認知した場合等において通信傍受を捜査に活用することも想定をされるところでありますが、テロ組織につきましても、組織による報復のおそれ、あるいは組織的な隠蔽工作を行うために供述や情報を得にくいという実情がございます。
 こうした理由から、通常の捜査手法だけでは犯罪組織中枢の検挙が困難であるという捜査の現状がございまして、通信傍受の対象犯罪をこうした犯罪類型にも拡大をしてその全容解明に資する証拠の収集を可能とする必要があると、このように考えているところでございます。
○矢倉克夫君 高齢化とともにいろんな、振り込め、おれおれ詐欺で被害に遭われた方も増えている。テロの世界的な脅威というのもありますし、また通信技術高度化で児童ポルノの問題もある。それぞれ御説明があったと思います。
 今、一つ、上層部に対しての捜査というところがありました。他方で、携帯電話等を使うのは、まさに上層部の人が使うわけではなく、最末端でもないにしても、それよりもちょっと上ぐらいの人がというような部分もある。上層部に果たして検挙できるのかというようなところもあります。
 警察庁にお伺いしますが、今までの通信傍受でどのような形で上の方にまでしっかりと捜査が行ったのか、過去に例があればお伝えいただければと思います。
○政府参考人(三浦正充君) 通信傍受の施行から平成二十七年までの間に、通信傍受を実施した事件に関して逮捕した人員数は計六百四十人でございます。その中で、これは網羅的に把握をしているものではございませんけれども、平成二十五年から二十七年までに警察が通信傍受を実施した事件に関して二十六年及び二十七年中に逮捕した人員数は二百十八名であったところ、そのうち、暴力団の幹部に当たるとして都道府県警察から報告を受けた者は三十名でありまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げていると考えております。
 ちなみに、この逮捕人員数に占める暴力団幹部の割合は約一四%でありますが、刑法犯における暴力団員等被疑者検挙人員のうち幹部の占める割合の過去三年の平均が約八%でございますので、こうしたものと比べても、通信傍受によって幹部を比較的多く検挙できているという実績がございます。
 あと、若干の事案で申し上げますと、この通信傍受を行った事案については、公判や捜査への支障等もございますのでなかなか具体的に申し上げることは難しいのでありますけれども、少し概略的に申しますと、例えば暴力団による薬物密売事案におきまして、組織的に複数件にわたって薬物密売を繰り返している実態を解明をするなどし、組長を始め配下の構成員等計二十六名の逮捕に至ったものを始めとして、大掛かりな薬物密売事案におきまして、組長を始めとする多くの構成員を逮捕した事例などがあるところでございます。
○矢倉克夫君 今、データと一般的な例を挙げて御説明いただきました。
 他方で、もう既に議論もあるとおり、やはり通信傍受、一番の問題はプライバシーの問題、これ憲法上の問題でもあると思います。これについてはどのように担保をされていらっしゃるのか。無関係な会話等も混入しないような、不必要なところで通信傍受はしないようなというところでありますが、制度を設計されている法務省にお伺いもいたしますが、こちらについては、まず補充性という要件が一般的に課されております。これは従来もある要件ですけど、他の方法では著しく困難な場合でのみこのような手法が許されるというところですが、どのように認定をされるものであるのか、答弁いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 現行では、この補充性というものは、他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であると、こういった場合に限り傍受をすることができるとされておるものでございます。
   〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
 この場合の他の方法によってはという部分でございますけれども、これは、犯人を特定したり犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難という場合に、その傍受令状請求の時点までにこの事案に応じて可能な限り取調べあるいは捜索、差押え、各種の照会、こういった捜査手段を尽くしてその捜査を行ってきたけれども、なおこの犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにするに至っていないと、そして、今後も通信傍受以外の手段によってはこういった犯人を特定したりすることができない、またあるいはそれが著しく困難であると、こういった場合をいうことになります。
 この要件を満たすかについてどのように判断するかにつきましては、やはりそれまでにどのような捜査手法で具体的にどのような証拠が収集されどのような事実までが明らかになっているか、こういったことを踏まえまして、さらに、欠けている、それまで明らかになっていない部分というものを考えまして、それらを裁判所に対して具体的な事情に即して疎明資料で疎明をすることによって初めてこの補充性が満たされるかどうかが認定されるということになります。
○矢倉克夫君 今、どのように認定をするか、これまでどういうような証拠で認定をされたかとか、そういう情報の蓄積とか、そういう部分を前提にした上で、やはり内部でもしっかりこれは指導を徹底しなければいけない話であると思います。その辺りは今日は質問するわけではありませんが、別途、引き続きしっかりと体制を組んでいただきたいというふうに思います。
 もう一つ要件として今回新たに加えられたのが、これは組織性の要件であります。これについては、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体でなければいけないという要件にこれはなっている。これは法務省にまたお伺いしますが、なぜこれが必要であるのか、この認定はいかに図るのかを答弁いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) まず、この組織性の要件を改めて付け加えた部分につきましては、これはやはり通信傍受というものにつきまして、これが組織犯罪における対応をすると、そういった法の趣旨を全うするためにこのようなものを付け加えているわけでございます。
   〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
 その上で、当該罪に当たる行為があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものということの意義でございますけれども、まず一つには、その対象犯罪が人の結合体、すなわち二人以上の者が結合して形成された集団により行われるものであること、そして次に、人の結合体を構成する者が、犯罪の実行に限らず、その準備や証拠隠滅等の事後措置も含めまして犯罪の遂行に向けて必要となる役割を分担し、またそれに従って行動すること、さらには、その役割分担があらかじめ定められたものであること、こういった三つの要件が必要となるものと考えております。
○矢倉克夫君 今のに関連してもう一つだけ林局長にお伺いしますが、例えば、今回、暴力団、テロ、そちらについての組織犯罪も入ったわけですけど、特に最近のテロ組織とかは、昔アルカイダなどは中央の指令があってそこから組織的に指令をするという、そういう縦の組織というのがしっかりしていたわけなんですけど、この前のベルギーの件なども、よく巷間言われているところでは、テロが起きたわけですけど、やはり現地ですよね。最近のテロ組織というのも思想を媒体にした緩やかな連合体みたいな形になっていて、やはりもう、ホームグローンと言われているんですけど、現地でその思想の感化された組織が動かしたと。後で犯行声明があったわけですけど、後付けのような犯行声明だったというふうに言われている。要するに、中央からの指揮命令系統というのがしっかりしていない中での連合体のようなものがあるわけですけど、そういうようなものが今の組織体という要件の中ではどのように評価をされるのか、これ一般論で結構ですけど、御答弁をいただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど申し上げました組織性の要件の中で、まず一つ、通常、組織の場合の上下における指揮関係、指揮監督関係があるかどうか、こういったことについては今回のこの組織性の要件の中には含まれておりません。したがいまして、上下での指揮監督関係がなくても、先ほど申し上げた三つの要件の組織性の要件を満たせばこの要件に該当するということでございます。
 また、組織ということで、継続的な結合体であることまでは要しておりません。したがいまして、例えば構成員の一部の変更が集団の同一性に影響を及ぼさないという意味での継続性までは不要と考えております。そういった意味におきまして、臨時的に形成される結合体ということでも、この今回の組織性の要件は満たすということになります。
○矢倉克夫君 現実の部分もそうですし、あと、今言ったような形の解釈であると思います。他方で、広がり過ぎないような形で、これは傍受令状に対しての疎明の在り方とか、そういう部分でしっかり指導をしていくというところであると思いますので、是非よろしくお願いいたします。テロの問題に対処するという意味合いでの必要性はあるというふうに私も理解もしております。
 じゃ、次に、質問に移りたいと思います。これもまた法務省の方にお伺いもしたいと思うんですが、通信傍受手続の合理化についてになります。
 冒頭申し上げましたとおり、全体の中で人権保障と真実発見というのをこれは確保する上での位置付けとして、通信傍受というのはこれ非常に必要であると思います。時代の状況に応じて必要性の部分があるので、当然濫用を避けなければ、やらなければいけない話なんですが、今まで通信傍受が、じゃ、どれくらい行われていたかというと、これ平成二十五年では実施事件は十二件という、諸外国に比べればやはり少なかったということがあります。
 これはどういう背景かといえば、法制度上できなかったというよりは、法制でできた部分もあるけど、実際、現実なかなかできなかったというところがある。それは、なかなか立会人の方の負担であるとか、やはりそういうようなものもあったのではないかと、事実上の制約というところでありますね。そういう、現行が、今行っている通信傍受手続から生じた事実上の制約というものをどのように今回捉えられて、改正法によってどういうふうに対応されているのか、説明をいただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の現行法の運用上の問題点等につきましては、まず一つとしましては、現行法では通信傍受を実施する間は例外なく通信事業者が常時立ち会うということが必要とされておりまして、傍受の実施場所や立会人をする職員等の確保が一つには通信事業者の大きな負担となっている点がございます。また、傍受の実施場所や立会人の確保等のために、傍受を行う数週間前から捜査機関と通信事業者とで協議をする必要がございます。これが一つには通信傍受を迅速に行うことの上での障害ともなっている実情がございます。さらには、捜査員や立会人は、実際に立ち会いますと、実際に通話が行われるまでの著しく長い時間を多くは待機、電話が掛かってくる間の待機のために費やすと、こういった極めて非効率的な事情が生じているわけでございます。
 そこで、今回は通信傍受法施行後の通信暗号技術の発展を踏まえまして、この手続の点で合理化、効率化を図るということを考えたものでございまして、これが実際に、一つには一時的な保存を命じて行う通信傍受という一つの方式でございますし、さらには特定電子計算機を使う場合におきましては、通信事業者の施設ではなくて捜査機関の施設においても、これを一つにはリアルタイムで特定電子計算機を用いて行う通信傍受、あるいは同じく特定電子計算機を用いて一時的保存を行いつつ行う通信傍受、こういった形で、現行も合わせますと四つの手法で行うことができるようにすることにしまして、この手続合理化あるいは効率化を図ることとしているものでございます。
○矢倉克夫君 今四つのというふうにおっしゃいました。一つが現行で、残りは、一つは一時的保存方式、残り二つはいわゆる特定装置を用いるものでありますが、特定装置を用いるリアルタイムの方式と一時的保存方式であると思います。ただ、他方で、現行はリアルに、まさにずっと立会人が常駐をしているということがあった、今回それが外れたというのはやはり一つ大きな変わり方であると思います。
 また法務省、局長にお伺いもしたいんですが、この現行方式における適正化担保の手法の最たるものは、これは立会人であります。様々立会人が果たされた役割、これからも果たしていく役割はあると思うんですが、その役割について御説明いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 現行の通信傍受法におきまして、この立会人の役割でございますが、具体的に申し上げますと、一つは、傍受のための機器に接続する通信手段がこの傍受令状により許可されたものに間違いがないか、これを確認すること、二つ目には、許可されている期間、傍受令状で許可されている期間というものが実際に守られているのかどうか、三つ目には、該当性判断のための傍受が適正な方法で行われているかどうか、四つ目が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうか、こういった四つの事項につきましてチェックするということがまずございます。それから、さらには、傍受の中断又は終了の際に裁判官に提出されることになります傍受をした通信を記録した記録媒体につきまして、改変を防止するために封印を行うこと、これが役割とされております。
 以上の役割を果たすことによって、通信傍受の実施についてその適正を確保することとされております。
○矢倉克夫君 今、封印とともに、現場の傍受の適正化を立会人がまさに五感をもって図るというようなお話であったと思います。
 とりわけ、いわゆるスポット傍受と言われているものであります。これもまた局長にお伺いもしますが、この前視察に行って現場見させていただいた。捜査官がヘッドホンで聞かれるわけですけど、捜査官が聞かれているところで立会人が近くでこれを見ているわけですけど、やはり現状、距離が離れている中において、本当にスポットで傍受をしているのかというところは果たしてすぐに見えるのかどうかというところは一つ多くの方が思われるところだと思うんですが、このスポット傍受をそういう形で外形的にチェックをしているということですけど、これ実際、本当に何をしているのか分からないというような確認できないような状態で、どのようにその適正化担保の手法を立会人の方が果たされているのか、その辺りについて御説明いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 現行の通信傍受法の下で、立会人は外形的にいわゆるスポット傍受、これは具体的にはその機器のスイッチのオン、オフをしているかどうか、こういったことをチェックしているわけでございますけれども、御指摘のとおり、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことをこの立会人が認識してそのことを指摘することができるという場合があるにしましても、実際に必要最小限で該当性の判断をするという、そのいわゆるスポット傍受が適正に行われているのかどうかということにつきましては、最終的にはこれは通信の内容を踏まえなければ判断できないわけでございます。
 したがいまして、現行通信傍受法のやはりこの該当性判断のための傍受の適正というものは、基本的には傍受をした通信はこれは全て傍受の原記録に記録されて、それが裁判所にそのまま提出されて保管される、そのことを通じて事後検証が可能になるということによって初めて担保されているものと考えております。
○矢倉克夫君 まさに、その場ですぐに、例えば傍受の内容がどういうものかとか立会人も聞けるわけではありませんので、すぐになかなか判断できない、最終的には事後チェックだというような部分もあったかと思います。
 それも後ほど、その事後チェックの辺りはまた後ほどお伺いもするといたしまして、他方で、また、そのような形での事後チェックの運用というのはしっかりこれ確保しなければいけないんですが、もう一つ、立会人の方がいらっしゃることによる効果というものでよく言われるのは、やはりその場に人がいるということが現場の捜査官に心理上の抑止、事実上の抑止になると。法的にいろいろと事後的にチェックをするという部分での抑止もあるんですが、そこに人がいるということで捜査官の心理にも働きかけて適正な傍受をするという事実上の抑止があるというような話もありますが、これについて、これも含めまして、立会人の今回果たした役割というのはどのように代替されるとお考えであるのか、これ局長にお伺いをしたいと思います。
○政府参考人(林眞琴君) これまでの立会人の役割というものが、今回、特に特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続においてどのように代替されていくのかということでございますけれども、これにつきましては、まずは一つは、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続におきますと、通信事業者が傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、その令状で許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送するということとされております。これによりまして、先ほど申し上げました立会人の役割のうち、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないかどうか、あるいは許可された期間が守られているかどうか、こういった点の適正はこれによって担保されると考えております。
 また、現行通信傍受法におきまして、立会人が傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックして裁判官に提出する記録媒体の封印を行うという、この役割につきましては、特定電子計算機で、法律で定めた仕様によりまして、傍受をした通信の全てとその傍受の経過を含めて、これが自動的に、かつ改変できないように暗号化されて記録される、こういったことによって担保されると考えております。
 さらに、先ほど申し上げました、立会人は外形的な形で、実際にスポット傍受のための機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうかということを外形的にチェックしているわけでございますが、この点につきましては、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきまして、その該当性判断のために傍受したものも含めて、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録されて裁判官に提出される、それによって事後的に検証され得るということが確保されますので、立会人がいる場合と同様にその傍受の実施の適正が確保されるものと考えておりまして、こういった形で、立会人がいなくても通信傍受の適正を担保できる手当ては、この現行通信傍受法との比較におきまして手当てはなされていると考えております。
○矢倉克夫君 原記録のチェック、事後的チェックということですが、またこれ局長にお伺いしますけど、それを手続的に機会としてどのように確保されているのか、それも御答弁いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 裁判官が保管する原記録の事後的な検証でございますが、幾つかの場面がございます。
 まず一つは、職権による審査という場合がございます。通信傍受法におきましては、他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受が行われた場合、傍受の実施状況を記載した書面の提出を受けた裁判官は、職権で当該書面に記載された通信が現行通信傍受法の十四条に規定する通信に該当するかどうかの審査を行うこととしております。その際には、提出されております傍受の原記録などが用いられるということになります。
 続きまして、通信当事者等による審査の場合がございます。これは、傍受をされた通信の当事者は、裁判官に提出された傍受の原記録を聴取、閲覧し、あるいは複製を作成して、この原記録から捜査官が不適正な傍受を行っていないかどうかをチェックすることができるわけでございます。
 さらには、不服申立てに基づく審査がございます。検察官若しくは検察事務官又は司法警察職員がした通信の傍受に関する処分に不服がある場合、その者は裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができまして、その際、当該裁判所におきましては、提出された傍受の原記録を用いるなどして通信の傍受の適正か否かを審査することとなります。
 さらには、公判手続を通じた審査がございます。これは、検察官が傍受記録の内容を公判手続において証拠として用いようとする際には、その事件の被告人やその弁護人は傍受記録の正確性の確認などのために傍受の原記録の聴取等をすることができ、その際、不適正な傍受が行われていなかったかどうかがチェックされ得ることとなります。そして、公判手続におきましては、傍受の過程に重大な違法があった場合には、違法収集証拠と判断されて傍受記録を証拠とすることができないこととなり得るわけでございます。
 こういったことで、現行通信傍受法におきましては、各場面におきまして傍受が適正に行われたか否かを提供されている傍受の原記録を用いるなどして事後的に審査する手続を整備しているところでございます。
○矢倉克夫君 最終的には証拠の扱いとしてもチェックがあるということでありますが、一つ挙げていただいた不服申立ての件数です。これ最高裁にお伺いしたいと思うんですけれども、件数といいますか、不服申立てについてどのような件数があるのか、お答えいただければと思います。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) お答え申し上げます。
 平成二十四年一月一日から平成二十八年三月十五日までの期間における通信傍受法二十六条に基づく不服申立ての件数を調査しましたところ、平成二十四年がゼロ件、平成二十五年が二百五十六件、平成二十六年が三件、平成二十七年及び平成二十八年がいずれもゼロ件となっております。
○矢倉克夫君 今、ゼロであったり二百五十六であったりかなり変動が、二百五十六件ですね、ゼロであったり、かなり変動があるというところであります。
 いろんな要因があると思うんですが、今回、これも踏まえた上で衆議院の方でも修正があったかと思いますが、特に通信傍受に関しての当事者に通知すべき事項を加えたということであります。この趣旨をまた法務省の方から御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 現行通信傍受法及び今回の最初の政府案におきましては、この通信の当事者に対する通知の際に、傍受記録の閲覧、聴取等をすることができる旨を通知することとはしておりません。これに対しまして、今般の修正におきまして、通信当事者に対する通知を行う際には、傍受記録の聴取、閲覧等ができること、傍受の原記録の聴取、閲覧等もできること、また不服申立てができること、こういったことを併せて通知することとしたものと理解しております。
 この修正は、傍受の実施の適正を一層確保するという観点からのものであると理解しておりまして、捜査機関としては、当然のことながらこの規定に従いまして通信当事者に対する通知を適切に行うことになるものと承知しております。
○矢倉克夫君 事後チェックがやはり必要である、そのための手続、担保のための手続であるというふうに、妥当な修正であるというふうに思います。
 今回、特に通信傍受の手続の合理化でこれ一番変わるのは、従来であれば通信事業者の施設のみだったのが、これ捜査機関の方の施設でも行えるというところが変わりであると思います。四六時中、捜査員がほかの人がいない中で作業をするというところです。
 これを受けて、警察庁にお伺いしたいんですけれども、警察庁としても、通信傍受の開始前、実施期間中、そして終了の各段階における必要に応じた必要な指導を行うということを各種答弁でおっしゃっているんですけれども、それ具体的にまた改めて御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(三浦正充君) まず、前提として申し上げておきたいと思いますのは、警察施設で通信傍受を行う場合でありましても、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理をして記録するなどの特定電子計算機の有する機能によりまして現行法で立会人が果たす役割は漏れなく代替をされることから、傍受の適正性は確実に担保をされるというふうに考えております。
 もっとも、新たな方式による通信傍受におきましては技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する職員が必要な指導を行う体制を整えるということを検討をしております。体制や指導方法を含む具体的な運用の在り方につきましては今後検討をしてまいりたいと考えておりますけれども、例えば、警察本部の適正捜査の指導を担当する警察官等で通信傍受を実施する事件の捜査に従事していない者、その事件を直接担当していない者に、必要に応じて、傍受の実施の現場等において法令、手続面の指導や機器の設定、接続等技術面の指導を行わせることなどを想定をしているところでございます。
○矢倉克夫君 内部での監視監督体制徹底という部分もそうですし、また、いろんな第三者からもしっかりとチェックを受けるような体制というのもやはりちゃんと取っていただきたいと思います。
 その上で、次、特定電子計算機と言われているものに関連してちょっと御質問をしたいと思うんですが、先ほど通信傍受の手続の合理化で四種挙げていただいたうち、一つは現行、もう一つは一時的保存方式ですが、もう一つはその特定電子計算機、これ二つあります、それを利用したものであると。特徴としては、通信事業者の施設で傍受をされたものをこれ暗号化して、それを捜査機関の方に送るという形になります。
 通信データをこれ送信して捜査機関の施設で傍受できるわけですけれども、これは警察庁の方にお伺いをいたしますが、送信時に通信が漏れないようにするにはこれはどのように工夫されているのか、工夫される予定であるのか、御答弁いただければと思います。
○政府参考人(三浦正充君) 警察におきましては、個人情報を始め多くの機密情報を保有をしておりますけれども、それらを取り扱う業務に用いるネットワークはそもそもインターネットとは接続をしておりません。したがいまして、近時大きな問題となっている標的型メール等のセキュリティーリスクとは遮断をされております。
 新たな方式による通信傍受では、いわゆる閉域網というものを用いまして、ネットワークのインターネットからの分離等、これらの措置を講じることに加えまして、送受信される通信傍受に係る情報それ自体にも強固な暗号化を行うこととなっておりまして、セキュリティーについては万全を期しているところでございます。
 なお、こういった方式につきましては、その安全性について、先日御視察をいただきましたように、IT技術を専門とする民間コンサルティング会社であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社に調査研究を委託して確認を求めましたところ、情報漏えい対策の観点についても技術的に実現可能であり、これによる対策を漏れなく取ることによって通信傍受の適正性の担保が可能と結論付けられたものと承知をいたしております。
○矢倉克夫君 ありがとうございます。
 法務省にまたお伺いしたいと思うんですけれども、やはり現場でいろいろと改ざんされるおそれもある部分はある、人がやることでありますので。それをどう制度的に担保するかというところですが、今回それを特定電子計算機の機能の部分でいろいろ担保されているという制度設計であると思います。法務省として、改ざんの危険性に対して今回の機能がどのように適正化を図るとお考えであるのか、御答弁いただければと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど来申し上げましたように、傍受の適正を最終的に担保するものが、この原記録がそのまま、傍受した内容が全て原記録に記録されて、それが裁判官に提出される、そして保管されると、これが非常に最終的な担保でございますので、その間での原記録の改ざん防止というのは非常に重要な点でございます。
 この点につきましては、現行法では立会人が封印をするというような形でこれを担保しているわけでございますが、それに代わるものといたしまして、今回法律案の中に特定電子計算機が備えるべき機能というものを法律で定めることとした上で、これによりまして、傍受した通信の内容と傍受の経過、こういったものを併せて記録媒体に自動的に記録する、そしてそれが即時に裁判所の職員が作成する暗号によって暗号化されて、その後、捜査機関がその改変を不可能とする機能、こういったものを法律に定めまして、こういった法律の定める機能を持つ特定電子計算機によって傍受を実施することによりまして改ざん、改変というものを防止するということとしておるところでございます。
○矢倉克夫君 警察庁にお伺いしますが、先ほど三宅理事の質問の中で、事後チェックがやはり大事である、であれば直接に裁判所の方に原記録をというような質問であったと理解もしておりますが、それに対して法務省の方からの答弁が、やはり今とかぶる部分は、自動的に暗号化しているから大丈夫であると、要するに機械が改ざんを許さないような形で設計されているから必要はないというような答弁であったと思います。
 他方で、今回もう傍受が捜査機関の施設の中で行われている以上、理論的には、信頼性がある機械であってもそれを改造する可能性も当然ある、幾ら技術的、機能的に適正化を担保しても、その機械自体が改造されて機能を無力化するようなことが仮にあったとしたら問題であると思うんですけれども、それに対しては警察はどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(三浦正充君) 特定電子計算機の機能は通信傍受法改正法の第二十三条第二項に列挙されているわけでありまして、これは法定の要件ということでございます。
 したがいまして、実際に通信傍受に使用する特定電子計算機にはそれ自体にも強固なプログラムの改変防止措置が講じられるわけではございますが、このほか、裁判所も関与する暗号システムなどとも連動をするものでございまして、したがって、警察において装置の改変やすり替えを行うといった余地はないというように考えております。また、よしんばそうしたことが行われたとしても、通信事業者との正常な暗号の送受信等ができなくなるわけでありまして、通信の傍受自体を行うことができない仕組みとなっております。
 そうしたことで、そうした改ざん、機械の改変ということは物理的にも行われ得ないものというように考えております。
○矢倉克夫君 また警察にお伺いしますけれども、実際の機械が正常な機械であるかどうかというところ、これを裁判所が判断するには、警察としては裁判所の判断の前提としてどのようなことをされるのでしょうか。
○政府参考人(三浦正充君) 警察庁としましては、信頼できるメーカーにその機器の製造を発注をするとともに、仕様書どおりに当該機器が製造され、必要なセキュリティーシステムも導入をされていることなどについてメーカーから証明書を発行してもらうことを検討をしております。
 通信傍受を実施する場合には、捜査機関は裁判所に対し、通信傍受に使用する特定電子計算機等の技術的な事項を含め、裁判官が新たな傍受の方法を許可するのが相当であると判断するに足りる資料を提供することが求められているところ、メーカーから発行された証明書などを用いてこれを説明することを想定をしております。
 機器の適正性について、説明を受けた裁判官におきまして、当該機器の信用性、適正性について御判断をいただくこととなると考えております。
○矢倉克夫君 ちょっと最後の質問になりますけれども、通信事業者の負担についてであります。
 法務省にお伺いしますけれども、今回、対象事件が拡大することによって負担も当然増える一方で、常時立会いの必要がなくなるわけであります。その部分では負担は減少するわけですけど、総じて事業者の負担というのをどのようにお考えになっていらっしゃるか、答弁いただければ。
○政府参考人(林眞琴君) まず、今回の新方式の導入によりましては、特定電子計算機を用いる場合におきまして、現行法で必要とされている常時立会いというものが不要になりますので、その立会人となる職員の負担、あるいは立ち会わせる職員を確保する通信事業者の負担、あるいは傍受の実施場所を提供する通信事業者等の負担というものがなくなるものと考えております。
 また、一時的保存というものを命じて行う通信傍受の実施手続におきましては、立会いの時間というものが、その待機時間が省かれますので大幅に短縮されることになりまして、こういった面での人員面等での負担は大きく軽減されるものと思います。
 他方で、一方で、あわせて、対象事件が拡大するということに伴う負担がどのように増加するかということにつきましては、やはりこの点につきましては、対象事件の発生件数については様々な事情に左右されますので、それについて一概に確たることを申し上げることは困難であると承知しております。
○矢倉克夫君 最後、警察庁に。
 今、制度としての事業者に対しての負担をどう考えるかというところありましたが、例えば具体的には、今回、特定装置を用いた方式もある、そうすると送信装置などいろんな設備的な投資の部分も出てくるわけですけど、このような設備負担について警察庁としては事業者負担をどのようにお考えか、最後、答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(三浦正充君) 特定電子計算機を用いる通信傍受を実施するためには、裁判所が用いる鍵の作成装置でありますとか捜査機関が用いる特定電子計算機のほか、通信事業者が通信の暗号化や伝送に用いる機器や伝送のための回線等のシステム整備が必要になります。
 これらの整備すべきシステムの中には、これはもとより国で負担、整備をすべきものもございますし、また通信事業者に一定程度の負担をお願いせざるを得ないものもあると考えておりますけれども、通信事業者にお願いをする場合には、その負担が過度なものとならないように配慮をいたしまして、事業者との十分な協議、調整を行ってまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君 終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) 午後二時二十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十一分休憩
     ─────・─────
   午後二時二十分開会
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。よろしくお願いします。午後、少しイレギュラーな開始ですけれども、ひとつよろしくお願いいたします。
 今回のこの刑事訴訟法の改正案というのは、かなり大幅なやはり改正だというふうに私は捉えています。録音、録画、そして通信の傍受、そして司法取引、また証拠品の開示の問題といった様々な課題があるわけですけれども、こうした大きな今回の改正の、何というんですか、理念というか、なぜこういう改正をやるかということについてなんですけれども、新たな刑事司法制度をつくっていくということで、これまではどうしても取調べへの過度の依存ということがありました。これを改めて、証拠収集手段を適正化、多様化すること、そしてさらには供述調書への過度の依存を改めて活発で充実した公判審理を実現することであるというふうに書かれております。まさにそのとおりだと思うんですね。
 今、世の中に起きている事件というのも非常に複雑多様化しているわけで、それにどうやって捜査、取調べの方も対応していくかということが今迫られているというふうに思います。今回の改正は、そうした大きな今の世の中の刑事司法制度というものを、新たなシステムを構築しようということであるというふうに捉えています。
 私は、今日はこの時間は、録音、録画からまずちょっといろいろお伺いをしていきたいなというふうに思っております。
 今回のこの審議に先立ちまして、私たちは委員会として視察を行いました。録音、録画とそれから通信傍受の現場を見ました。これは本当に私にとっても大変参考になりました。というのは、いろいろな懸念とか不安とか心配というのはありました。その部分が拭われ、取り払われたところもあるんですが、逆にその現場を見たことによって、ああ、やっぱりこういう点はどうなんだろうか、この辺は非常にまだ不安が残る、むしろ変えることによっての懸念も増えるんじゃないかとか、そういういろいろなことも感じた次第です。それを録音、録画ということでお伺いをしていきたいというふうに思います。
 今申し上げた視察の問題、それからあと、やはりごく最近ありました宇都宮地裁での判決です。今市市、今は日光市といっておりますけれども、そこの小学一年生の女の子の殺害事件のあの判決、あれでも録音、録画、ビデオが大変大きな役割を果たしたというふうに伝えられています。
 それからあと、私は実はこの政治の世界に入る前はテレビで現場で記者ということをやっておりました。まさにいろいろな事件、事故の現場に行って映像、もちろんテレビ、新聞の大きな違いは、やっぱり新聞は活字ですけれどもテレビの場合は映像という、要するに目の前に起きている事実とかそういうものを撮影して、そしてニュースを作っていくという、そういう使命がありましたので、この録音、録画というのはやはりそういった面で私も非常に興味を持って見詰めてまいりました。そういうような視点から、何点かこれからお伺いをさせていただきたいなというふうに思っております。
 まず、これまでの可視化、ずっと試行をしてきたわけですけれども、この運用をやってきて、このいただいた資料によると、この数年で可視化対象になっている四類型についての録音、録画が非常に大幅に伸びてきています。もう最近はほとんど、九八%、九九%。例えば四類型の中で特にハンディキャップの知的障害によるコミュニケーション能力に問題がある被疑者に対するなんという場合は、これ表を見ますと、平成二十七年度一〇〇%ということでなっています。非常に録音、録画がどんどん普及しているということと、それからそれに従って当然収録をする時間も延びているわけですね。ですから、それだけ捜査現場のまた負担も非常に大変だというふうな感じは私も十分理解がこれからできるというふうに思います。
 まず最初にお伺いしたいのは、こうやって、これまでの運用では録音、録画が非常に急速にこのように実施されている、実施率が高くなっているということをどう評価されているのかということと、それから、僅かではありますが、録音、録画の対象から外れている、これは、例えば被疑者の方が拒否をしたとかそういうことがあるのかどうか。それで、もし拒否をしたとしたら、どういうことがこれまでの録音、録画の現場であったのか。その辺りからまずお伺いしたいというふうに思います。
○委員長(魚住裕一郎君) これはどなたに。
○真山勇一君 これは現場の話なので、警察、国家公安委員長にお伺いできればというふうに思いますけれども。
○国務大臣(河野太郎君) 警察では、平成二十一年四月から裁判員裁判対象事件に係る取調べの録音、録画の試行を全国で開始し、平成二十四年四月からは否認事件にも対象を拡大するなど、順次運用してきております。また、二十四年五月からは、知的障害を有する被疑者に係る事件についても試行の対象としてまいりました。平成二十七年度上半期の裁判員裁判対象事件に係る試行につきましては、一事件当たりの平均の録音、録画の実施時間が十九時間二十二分、これは前年度と比べて五時間二十二分増えるなど、積極的に取り組んでまいりました。
 現在、取調べの録音・録画制度の導入を内容とする刑事訴訟法等の改正案が国会に提出されているところでありますので、引き続き、捜査への支障等に留意しつつ、取調べ官の経験の蓄積、技能向上の観点から積極的に試行に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 ごく僅かでございますが、録音、録画を被疑者が拒否をして行われていない事案があるというふうに報告を受けております。
○真山勇一君 大変申し訳ありません、多分国家公安委員長の方に私の、それを国家公安委員長にお伺いするというのがちょっと伝わっていなかったんじゃないかと。大変失礼いたしました。
 やっぱり国家公安委員長にお答えをいただきたいと思いますので、その拒否をしたものがどういったものなのかという辺りを私はちょっと伺いたいというふうに思っております。
○政府参考人(三浦正充君) ちょっと捜査の現場の実務的なことでございますので、私の方からお答えをさせていただきます。
 拒否の内容ということでございますけれども、現在把握をしているものとしては、例えば供述状況が漏れなく記録されることに対する警戒や羞恥心等によるもの、また、供述状況が自らの所属する犯罪組織に露見することにより報復のおそれが生じることに対する恐怖心などが挙げられると考えております。
○真山勇一君 総体的には、試しに運用を始めているというふうにいっても、録音、録画はそれなりの効果をやっぱり上げてきているんではないかというふうには分かるんですけれども、やはりほんの僅かですが拒否があると。
 今お答えいただいたように、恐怖心からというのは分かりますけど、それ以外のもので、例えば撮られることの警戒とかそれから羞恥心とかという、やはりこの辺りというのは、録音、録画、つまり収録される側の不安、心配というのはまさにそういうのがあるんじゃないかというふうに思っております。現行そういうことで、非常に大きく見れば、やはりこれから本格的な実施に向けての十分な成果は私は出てきているというふうに思います。
 これからは、ちょっと新しいシステムの方でお伺いしていきたいと思うんですけれども、今ありましたように、取調べの録音、録画をするということによって被疑者に対する心理的ないろいろな圧迫というのがあるんですね。プレッシャーというものはあると思いますね。そういうものがあるということを考えますと、やっぱり被疑者側が録音、録画を拒否するという、そういうことも今後は必要じゃないかというふうに思うんですが、新しいシステムでは義務化をされていくということなのです。
 その辺りで、被疑者に拒否をすることができるのかどうか。それから、録音、録画するぞと、そのするとしないとではかなり被疑者の心構えというか、やはり心理的な影響というのは大きいと思うんですね。どんなときにするという、録音、録画をするからいいのかという話を告知をするのかどうか。それから、もし被疑者が拒否をしたい場合どういう理由なら認められることができるのかどうか。その辺りについてお伺いしたいというふうに思います。
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法案におきまして、取調べの録音、録画を取調べ側に対して義務付けているわけでございます。その場合に、一定の場合に例外事由というものがございまして、その例外事由の中に、被疑者が拒否するなど言動をして十分にその録音、録画の下では供述することができないと認められるような場合にはその義務がないという形で例外事由を求めているわけでございます。
 そして、この場合に、では被疑者が拒否した場合、これは捜査機関、取調べをする側の義務が解除されるだけでございまして、録音、録画自体が被疑者の拒否によって禁止されるわけでございません。そういうわけで、捜査機関はその場合に、取調べで録音、録画をしないことが例外事由に当たる場合は許されるわけでございますけれども、捜査機関の側の判断によりまして録音、録画を実施することはもとより可能でございます。
○真山勇一君 つまり、それを言い換えると、被疑者側が拒否しても録音、録画は捜査側に義務として義務付けられているからやりますよということになるんですか。
○政府参考人(林眞琴君) 被疑者側が拒否した場合、そのようなことが今回例外事由に掲げられておる例外事由に当たる場合には、捜査機関側としては録音、録画をする義務がございません。しかしながら、その場合には録音、録画は禁止されるわけではございませんので、捜査機関側の判断によりまして、むしろ録音、録画を実施する、それの方がよろしいというときには録音、録画を実施することはもとより可能でございます。
○真山勇一君 そうすると、今説明されたようなことを被疑者側へ説明するということになるんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 現在、実務において、取調べの冒頭におきまして被疑者、供述者に対しまして適宜の方法で、現在この取調べを録音、録画しているということは告知しております。その場合に、実際に拒否というものが今回の法律でどのように取り扱われるかということについては、それは、実際に取り調べる側がどの程度に説明するかということについては法律上は定まっておりません。
 今回新しい制度ができるわけでございますが、そうしますと、基本的に被疑者に国選弁護人を含む弁護人が付きますけれども、弁護人の方からも、実際の取調べにおける録音、録画がどの範囲で義務付けられていて、この対象事件が何であって、あなたの事件は録音、録画が義務付けられている事件であるかどうかとか、そういったことは弁護人の側からも知らされるものと思います。それを前提といたしまして、捜査機関において適切に対処していくこととなろうかと思います。
○真山勇一君 伺っていると、そうすると、やっぱりかなり現場の捜査担当の方の裁量というのに任されているのかなという気もしないではないんですけれども、やっぱり被疑者の意に反してということで録音、録画、確かに捜査側から見れば、それから客観的に見ても録音、録画があった方が捜査の上で大変役に立つということは分かるんですが、そういうことがあると。
 それで、これまでの録音、録画の中で拒否してきた部分が警戒とか羞恥心とかということがあったと思うんですが、やはり可視化って、目の前にやっぱりカメラがある。今回も視察で行って、取調べ室というのはそんなに広くないですよね。本当に狭い部屋で、そしてその部屋の前にカメラがあるということは大変威圧的な感じもしますし、その前で自分が自供するということになると、やっぱりかなりプレッシャーも感じるんじゃないか。
 そうなると、先ほども、捜査側の意思でやるということの場合は、やっぱり被疑者側が取調べをする側に対して、いわゆる言ってみれば信頼感というか、この人なら話しても大丈夫だろうとか、この人なら安心して話をすることができるという、そういう信頼感というのも大事なのかなというような気がするんです。
 その場合、可視化、つまり録音、録画をする取調べと、それから録音、録画を使わないで取調べをやるという場合のやっぱり取調べ室での室内での雰囲気というのが大分違うと思うんですが、例えば取り調べる側としては、実際に普通の取調べをするのと、可視化の対象になっている事件でカメラを実際に入れてやる場合と、捜査員の、何というんですか、やはり捜査上の何か違いというものはあるんでしょうか。
○政府参考人(三浦正充君) 警察におきましては、録音、録画の実施の有無にかかわらず、基本的には同様の取調べを行っているところであります。ただ、やはり録音、録画にまだ慣れていないという捜査員もいるわけでございまして、そうした捜査員が萎縮をすることなく従来どおりの取調べを行うことができるように、今研修等を通じて取調べ技術の更なる向上を図っているというところでございます。
 もっとも、録音、録画をする場合、これは事案によってはでございますけれども、取調べ官において、自己のプライバシーであるとか被害者その他の関係者への配慮などから自由率直なやり取りが幾分阻害をされまして、被疑者側の緊張感、警戒心などとも相まって、被疑者との信頼関係の構築が困難となるといったような事例はあるものと認識をしております。
 さらに、被疑者側が、録音、録画の下では、自己に不利益なものも含めて、供述内容や態度が直ちにかつ完全に記録をされてしまうということを警戒をして十分な供述を行わなくなる場合があるということもあるわけでありまして、したがいまして、これは事案によってはでありますけれども、録音、録画を行う場合と行わない場合とで取調べにおける被疑者の供述状況が異なってくるという場合もあるものと考えております。
○真山勇一君 やはり実際に録音、録画されているということは、される側にとっては大変大きなプレッシャーというか、そういうものというのはあるんじゃないかというふうに思います。
 今回の法案では、一つの事件のその全過程を可視化、つまり録音、録画していくというふうになっているんですけれども、例えば、ここで一つ栃木の先日の宇都宮地裁の事件をちょっと例に取りますと、今回のこの事件は、別件で最初小さな事件で逮捕された、その後、調べの中でこの女の子の殺害について自供をしたということで、結局、実際にはその自供したところのビデオというのがなくて、その自供した後の録音、録画から始まっているということがあるわけですね。
 まさにこの録音、録画の一つの問題点であるというふうに私は思うんですが、やっぱり全過程きちっと録音、録画をするという場合は、本来ならば、初めて被疑者が自供したその部分からのビデオがあるかないかということが大変大きなことのような私は気がしているんです。なぜかといいますと、やっぱりその後、一旦認めた後に録音、録画するということは、いわゆる、何というんですかね、撮り直しというほどのこともないかもしれませんが、つまり、言ったことをもう一回そこで言わせるというようなことも考えられるわけです。
 そういうことで、せっかく全過程可視化をするということならば、やはり何らかの形で被疑者が自分の例えばやった事件などについての初めての自供をする部分からのビデオがあるのが望ましいというふうに思うんですけれども、その辺り、今回の宇都宮地裁の事件を見ていますと結局それがなかったと言われているんですが、今後、新しいシステムになった場合、その辺りというのはどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 具体的な宇都宮地裁の事件ということを前提にはお話差し控えさせていただきますけれども、一般論といたしまして、今回の法案におきましては、対象事件については全過程、逮捕、勾留されている被疑者についてその対象事件について調べるときには全過程の録音、録画を義務付けております。したがいまして、これは最初の取調べから全てを録音、録画することを義務付けておるわけでございます。
 御指摘の点につきましては、逮捕、勾留されている事件でその全過程を録音、録画した場合でも、その余の、例えば余罪の事件で逮捕、勾留中に取り調べた場合に、じゃ、この録音・録画義務が掛かるのか掛からないのかと、こういった点にも関わってくると思いますけれども、今回の法案につきましては、およそ逮捕、勾留されている被疑者につきましてこの対象事件について取り調べる場合には、今回の録音・録画義務が掛かります。
 したがいまして、逮捕、勾留されている罪名が対象事件に当たらなくても、その逮捕、勾留されている被疑者について今回の対象事件について調べる場合、これは録音・録画義務が掛かることとなっております。
○真山勇一君 そうすると、例えばの話で、別件で逮捕されていても、今回のいわゆる本件での調べのときに限ってはもうテープが回っているということになれば、初めて被疑者が自分がやったというような犯行を自供したというところの部分は必ず録音されているというふうに考えてよろしいんですね。
○政府参考人(林眞琴君) 録音・録画義務を課するところは明確に法律で定めなくてはいけませんので、その場合の定め方といたしましては、少なくとも逮捕、勾留されている被疑者という制限が掛かります。したがいまして、逮捕、勾留されていない場合には、今回の録音、録画は義務としては掛かってまいりません。
 他方で、逮捕、勾留されている場合であれば、例えば死体遺棄という事件で逮捕、勾留されている場合であっても、殺人罪について、殺人の事実についてその被疑者を調べる場合には、殺人は今回の対象事件でございますので、そういう場合は録音・録画義務が掛かるということになります。
○真山勇一君 逮捕されていないと録音、録画はしないということですよね。そうすると、今回の録音、録画のやはり一つの導入の大きな課題が、冤罪をつくらないということが大きな課題としてあると思うんですね。
 私は、冤罪をつくるというのはどこの時点かということになると、やはりその自供する前の時点で、犯行について何らかの圧力、捜査側の圧力、つまり言葉ですとか、あるいは具体的に何か暴力を使った、あるいは脅迫をするというような、強制的に何かをするということで自白に導かれるということがやはり冤罪につながるということだというふうに思うんですね。
 そうなると、やはり罪で逮捕されてからということになると、その前に、例えば、何とか調べる方としては、事件、何とか取調べで被疑者の自供を得たいということがあると、その前は録音、録画ができないということになると、その前に自白を強制するようなことが実際に起きる心配もあるのではないかなというふうに思うんですね。その辺り、録音、録画がないその前段階でのそういうことが、自白のいわゆる強制というようなことがあるのかないのか、その辺りをなかったというふうに証明することというのはできるんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) まず、法律案での録音・録画制度で義務付けの範囲を画するためには、これは制度の対象となる取調べの範囲というものを厳密かつ明確に定める必要がございます。そういった観点からしますと、いずれは逮捕、勾留に進む前のまだ逮捕されていない任意での取調べ、こういった場合を録音、録画の義務の対象とするのかしないのかという問題が生じてきます。
 この点につきましては、やはり逮捕されている前の段階ではあくまでも任意の取調べでございまして、いつでもこの取調べから逃れることができますので、そういったことで、その時点におきまして、また一方で捜査する側からしましても、実際に逮捕することを想定して任意同行した上で行う取調べでございましても、その後実際に逮捕に至るかどうかというのは、捜査機関の側からしても、その後の取調べにおける供述でありますとか裏付け捜査を踏まえなければ取調べの時点では明らかでございません。したがいまして、そういったものを取調べの義務の対象とすることはなかなか困難であろうかと思います。
 他方で、一方で在宅の段階での取調べの状況というのは逮捕、勾留後の取調べに当然反映されますので、そこの段階での録音、録画ということにおきまして、実際に在宅の段階での取調べというものがどのようなものであったのかということはその後の勾留中の取調べに反映されるということで、録音、録画によってある程度明らかになってくるというふうに考えられます。
 もとより、では、その逮捕前の在宅段階を録音、録画をしてはいけないのかということではございませんので、やはり捜査機関としては、その後の供述の任意性とかそういったものを十分に立証する手段として録音、録画をしておいてそれを残しておくというような運用はもちろんあろうかと思います。
○真山勇一君 ありがとうございました。
 やっぱり私も、全過程の可視化ということではありますけれども、実際に犯罪を認めた後と認めた前の部分というのがその可視化の録音、録画の対象にやっぱりすべきか、あるいはどうかという話というのはかなり難しい部分なのかなという感じはしております。
 それはなぜ気にするというか心配するかというと、やっぱり映像で残っているということは非常にいろんな意味で、その後の例えば捜査ですとか、それから裁判の過程でやっぱり大きな影響が出てくるんじゃないかというふうに感じるんですね。それだけやはり映像で残るということは非常に大きな意味があるんじゃないか。今までの裁判といいますと、やっぱり自白、自供であり調書であり、それから物的な証拠であったわけですけれども、それにプラス、今回、録音、録画の映像ということが加わってくるということなわけですね。
 私がやっぱり録音、録画の部分の重要性というか、これは一方でまたちょっと懸念ということにもなるんですけれども、もう一回先日の宇都宮地裁のこと、これ伝えられたところからちょっと拾ってみますと、やはり映像の影響というのは非常に判決に大きく影響している、そういうことがはっきりと読み取れると私は思うんです。例えば、その判決の中で、録音、録画から恫喝、暴行がなかったものと認められるですとか、取調べ官による誘導を受けた形跡もないというふうに判決で述べているわけですね。この辺りは、形跡もない、それから、暴行はなかったと認められるといっても、これはあくまでもその録音、録画された映像を基にしての判断であって、本当にどうかというのはちょっと分からない部分もあるんではないかなという気がしております。
 それから、検察の方の伝えられている言葉によると、容疑認めてからは全て録音、録画されている、容疑を認めてからはということで、認める前はやっぱりない。そうすると、その辺りというのはどうなるのかなということも気になりますし、それから、もう一つやっぱり一番私が気になるのは、これは裁判員裁判が適用されるわけですね。そうすると、裁判員の方たちというのはどういうような映像に対して評価をするかというのは私は大変大事なことだというふうに思うんですね。
 この事件について伝えられるところによると、裁判員はこんなふうに言っております。映像には文面だけでは伝わらない情報がたくさんあった。自供ですとか調書ですとかそういうこととは違って、やっぱり私は映像の語る力の大きさ、そして一つインパクトの強さというものはあるというふうに思うんですね。
 それから、別な裁判員はこうも言っています。録音、録画がなければ今回の判断はなかったと言っているんですね。これは、求刑どおりの判決が出されているということなわけですけれども、やっぱりもしこの裁判員が言うように、録音、録画がなければ今回の判断はなかったということは、もしかするとこれよりも、求刑ですからこれよりも軽い判決になるということがあるんじゃないかと推測されるわけですね。
 そうすると、やっぱりこの録音、録画、映像を見たことによって、ああ、この被告は犯人に間違いないのだろうという印象を与えていると。それだけやはりいわゆる映像のインパクト、その迫力というのは違う。そうすると、こういうことで、その一方で、せっかくこれまで積み上げてきた例えば調書ですとか、それから今回の宇都宮の事件でいえば物証がないとか、そういうことがあると、この、じゃ、映像の印象で判決がほぼ決まってしまうという、逆に言うと、これではっきり決まる。はっきりは決まるけれども、逆に決まることの、映像で決まってしまうということの何か私は不安とか懸念も感じてならないんですけれども、この辺り、国家公安委員長はやっぱり映像の判決に与える影響というのをどんなふうに捉えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
○国務大臣(河野太郎君) 委員、映像の力というのは多分誰よりもよく御存じなんだろうと思います。
 文面では分からないその取調べの様子をきちんと録音、録画することによって任意性を担保しようというのが今回の法改正の趣旨でございますが、逆に、その映像の力というのはこれまでの文書よりもはるかに強いものになるんだろうと思いますので、そこはやはり取調べのときに映像を使うからということに溺れることなく、適正に取調べを行うというのがまず大事なんだろうというふうに思います。
 そして、取調べが適正に行われていることをきちんと担保するための映像でございますので、そこは取り調べる側としても今まで以上にきちんと適正に取調べが行われるということに気を付けてやっていかなければならないんだろうというふうに思っております。映像があるからといって、それで裁判に何か誘導するようなことがあってはならぬと思いますので、そこは現場の一線の取調べ官、きちんと指揮していけるように努力してまいりたいと思います。
○真山勇一君 私、やっぱり一つ心配なのは映像の使い方なんですね。映像というのは、やっぱり当然録音、録画始めれば、長時間の映像があるわけですね。それを全部見るのか、あるいは部分で判断するのかということも非常に大事になってくるというふうに思うんですね。
 というのは、映像というのは、やはり人間のしゃべる内容とか、それからそのしゃべっているときの、何というか、表情とかいろんなことを捉えているわけですね。そうすると、つまり証拠として出す場合、かなり意図的に使おうと思えば使える。
 私、実はテレビのニュースの仕事をしていると、やっぱりそのニュースが一番例えば視聴者にとって訴えやすい部分というのはどこかというのは、例えばたくさんある収録した映像の中で、ああ、ここを使えばこのニュースの本質が分かるとか、一番相手にインパクトを持って伝えられるとかと、そういうふうに判断するわけですね。
 また、これ具体的に出して恐縮なんですが、その宇都宮地裁の場合も七時間十三分のものを裁判員にお見せしたと。だけれども、数十時間やっぱり録画しているわけですね。その部分の多分、やはり気になるのは、切り取った七時間十三分が、つまり何か意図したもので切り取ればそれが可能なわけなんですね。
 だから、その辺りというのは、ですから私は大事なのは、やっぱり初めて、これまで例えば否認していた、あるいはこれまで黙秘していた、だけれども実はという話がやったところが本当は大事なんじゃないかな。やっぱりその部分がないと、その後いろんなものを撮ったとしても、全部を見ることが不可能ならば、どこかの一部分、ああ、一番これが分かりやすいだろうという判断をした部分、あるいは一番これが例えば有罪を裏付ける有力な映像になるだろうということになって例えばその七時間十三分が切り取られたとすると、やっぱりその辺の恣意性が入ってしまうということがあるわけなんですね。
 やっぱりどこを使うかというところを例えば弁護人なんかとも見て、それで例えばここを使おうとかという、そういうふうな、どこを証拠として採用するかという場合は客観的な担保をするような何かシステムというのはあるんでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) まず、本法案で取調べの録音、録画が義務付けられる対象事件の中におきましては、例えばその対象事件で被疑者が供述をし始めてから録音、録画をするとかそういうことは許されませんで、最初から、供述内容がどのような内容であろうが最初から録音、録画を義務付けられているわけでございます。
 そうしますと、実際に全体の事件におきましては、全ての録音、録画について録音、録画の記録媒体があるわけでございますが、これにつきましては、現在、公判に至る前の間に公判前整理手続というのがございまして、そこで証拠開示がなされます。この公判前整理手続におきましては、検察官又は弁護人、そして裁判所において、今後どのような争点についてどのような立証活動をしていくのかということを協議して定めることになっております。
 その前提といたしまして、この録音・録画記録媒体は基本的に証拠開示の対象となりますので、例えば弁護人としては全ての録音、録画の記録媒体を見ることができます。ですから、例えば検察官がそのうちのどこの部分で立証しようと考えた場合でも、弁護人の方としては別の場面での取調べの録音・録画記録媒体をかえって弁護人の側から立証として使うということも可能でございまして、そういった公判前の整理手続の結果の上で、実際の公判で全体の中のどの部分の録音、録画の記録媒体が証拠として採用されるかというふうにたどっていくことになりまして、そういった意味において、一方的に検察官側が切り取って都合の良い部分だけを録音、録画の記録媒体で立証するということはできないような担保がございます。
○真山勇一君 やはり映像の重要性というのがあるので、その辺がしっかりとやっぱり担保されなくてはいけないなというふうに思っております。
 特に、やっぱりいろんなことを言葉で、文章で見たり、それから読んだりするよりも、百聞は一見にしかずという言葉もあるくらいで、やっぱり目の前で実際に映像が再現されると大変大きな説得力になってくるんじゃないかというふうに思っております。それだけに、この可視化、録音、録画というのは、捜査にとっては非常に大きな意味のあるものになってくるというふうに私は思っております。
 ちょっとがらっと視点を変えますけれども、それほど大事な映像の録音、録画ということなんですが、今回の新しい法律でちょっと気になるのは、機器の物理的な事情で録画ができなくてもいい、仕方がないんだというようなことがあるというふうに伺っているんですけれども、それはちょっと私はやっぱり問題ではないか。片っ方は映像があるけれども前の部分は映像がないというようなことになると、やはり不平等、捜査の不平等みたいなもの、あるいは映像がなかったがゆえに例えば冤罪になるかもしれない、そういう一つの懸念というか危険性もあるわけですけれども、物理的な事情でやっぱりできないというのはちょっとこれはまずいんじゃないかと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法律案の三百一条の二第四項の第一号、この中の例外事由、事項の中に、記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により記録をすることができないとき、これについては録音・録画義務の解除がなされる、いわゆる例外事由に当たると、こういうふうにされております。これは、物理的に機器の故障等の外部的要因において取調べ時に録音、録画の実施ができないような場合にまでその義務付けをするということになりますと、捜査機関に不可能を強いるということになるからでございます。
 もとより、この例外に該当するためには記録ができないときであることが必要でありまして、例えば当該取調べ室に設置されている機器が故障しただけで直ちにこれに該当するわけではございませんで、直ちに機器の修理が可能な場合でありますとか、あるいは客観的に見て他の機器を用いてやれば今度から実施できる場合にはこの例外事由には当たらないわけでございます。
 その上で、仮に御指摘のような機器が故障するなどのやむを得ない事情があって録音、録画ができない場合に、一切その被疑者の録音、録画が実施できるようになるまでおよそ取調べが禁止されるということになってしまいますと、やはり限られた身柄拘束期間の中で捜査を行うという機動的な捜査に支障が生じ得るというふうなことから、今回これを例外事由としたわけでございます。
 他方で、一方で、この例外事由に該当する場合でありましても、これは録音・録画義務が解除されるにとどまります。検察官としましては、供述の任意性の立証責任を負っていることには変わりございませんので、この例外事由に当たるから録音、録画していない場合に、それで一方でその任意性が認められるわけではございませんので、あくまでもその場合でも供述の任意性は立証しなくちゃいけない立場にございます。そのことを考えますと、この立証責任を果たすという観点をも考慮して、例えば録音・録画機器が復旧して録音、録画が実施できるようになるのを待って、その上で録音、録画の下で取調べを行うという運用も十分にあり得ることだと考えております。
○真山勇一君 そういうふうに、何というんですか、運用していただければ、やっぱり被疑者の方も納得ができるんじゃないかとは思うんですが、ただ、故障しているかどうかというのは、故障しているよと言われちゃったらそれまでになってしまうということがあるんじゃないかというようなことが心配されるわけですね。ですから、やはり、たとえそうであっても次善の策をきちっと考えていくべきでありますし、ただやはり、法案の中で機器が故障していたらできないと言われちゃうと、故障したということは言うことは幾らでも可能なわけで、その辺り、やはり本当に全てを録音、録画を義務化しているにもかかわらずそういうふうなことがあるということが私にはちょっと不自然に感じて、逆に言うと、そういうことを何か悪意を持って使う可能性だってなきにしもあらずというようなちょっと疑いを持ってしまうわけです。
 ですから、やっぱりこの辺りも運用をどうするかというのは、今答弁でありましたように本当にやっていただければよろしいですけれども、そういうようなことも起き得るというやはり心配、懸念も私は指摘させていただきたいというふうに思います。
 時間になりましたので。私は、今回のこの録音、録画で申し上げたいのは、やはり可視化というのは新しい捜査の方法として大変大事だというふうに思うんですけれども、何か映像のある、私はもう仕事柄、映像がどれだけインパクトのあるものかということがよく分かっています。ニュースにするときにも、同じニュースでも、大きな大事なニュースでも、映像がなければニュースにしない、映像があったら、別に映像がなかったらこれはニュースにならないなというものでも、映像があれば逆にニュースになるという、つまりそういうことがあるんですよね。映像というのはいかに大事かということですね。だから、それが例えば裁判員の方に対する影響も大きいし、一般国民に対する影響も大きいというふうに思う。ですから、この可視化によってこれが余りにも大きく取り上げられてしまうと、やはり裁判のやり方に少しひずみが出るんじゃないか、そういうようなことも心配をしております。
 ですから、適正などういう運用をするか、やはり全面可視化というようなことは必要ですけれども、かなり慎重な部分も考えながらやはり全面可視化、私は進めていただきたいと。ただ、この可視化についての危険性というか懸念も私は今回感じたので、それも指摘をさせていただいて、私の取りあえず質問終わります。
 ありがとうございました。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日、私は、この法案によって自白や共犯者供述を始めとする調書と録音、録画がどのように利用され得ることになるのかということを尋ねていきたいと思うんです。
 まず、大臣に御答弁いただく前にちょっと聞いていただくと、まず問いたいのは、自白の怖さ、裁判を誤らせる危険性というものをどのように考えるのか、これ、大臣にも、そして私たちこの委員会がきちんと共有しないと審議の前提を欠くと思うわけですね。
 戦後の憲法とその憲法三十一条、適正手続の保障を始めとした刑事訴訟法の下でも、取調べ官、つまり警察や検察の取調べによって獲得された虚偽の自白、自白がうそだったということによって数々の冤罪が起こってきました。しかも、それらの自白は裁判所では強い信用力を持つ、高い信用力を持つと、そういうふうに認定をされてきたわけです。
 その典型の事例として、先ほど真山議員が取り上げられた栃木の今市事件という事件が起こっていますけれども、その同じ栃木県警が引き起こした足利事件について尋ねたいと思うんですね。これ皆さんも御存じのように、足利事件は、裁判所によって無期懲役の判決が確定をしたけれども、再審事件において、根拠とされた客観的証拠のDNA鑑定が誤っていたと、だから無罪ということが確定した事件です。
 そこで、最高裁にお尋ねといいますか確認をしますけれども、この足利事件の、その無期懲役を確定させた最高裁判決が菅家さんの自白を、元被告人菅家さんの自白をどのように認定したかといいますと、記録を精査しても、被告人が犯人であるとした原判決に事実誤認、法令違反があるとは認められないとしたわけです。
 この最高裁判所が間違いはないというふうに認めたのが東京高等裁判所の判決なわけですが、最高裁判所においでいただいています。この東京高等裁判所の無期懲役判決の、いただいている資料の二十ページ、つまり判決文の二十ページの上から十六行目、被告人の捜査官に対する自白にはというところからのくだりを御紹介いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 委員御指摘の箇所を読み上げます。
 被告人の捜査官に対する自白には、本件駐車場で被害者を見付けて誘い、手助けして自転車の後部荷台に乗せたときの状況、渡良瀬川堤防から河川敷の運動公園に下りる坂道でスピードが出たのでブレーキを掛けた状況、殺害した後で河原に遺体を横たえ、着衣を脱がし、愛撫したときの状況、遺体を運び草むらに置くとき、遺体がうつ伏せになったので、手前に転がしてあおむけにし、右手を身体の下から出してやった状況、遺体の上に周囲の草を折り曲げて掛けた状況など子細な状況の描写がなされているのであって、全体を通じ、実際に臨場し、体験した者の供述としての真実味が感じられる。
 このように記載してあります。
○仁比聡平君 そのような認定をした上で、被告人はそうではないと弁解をしているんですが、その被告人の弁解について、その四行下にその判決のくだりがありますが、そこを御紹介いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 読み上げます。
 被告人が当審で弁解するような、当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて、経験しない虚構の事実を捜査官などの気に入るように供述したなどという弁解は、到底受け入れ難い。
 このように記載されております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
 そのように、地方裁判所そして高等裁判所で徹底した審議の上で判決が下され、これが最高裁判所で無期懲役と確定したわけですよ。ところが、DNA鑑定は間違いであって、真犯人のものと被告人菅家さんのものは一致しない、つまり真犯人じゃなかったんですよ。高等裁判所が、実際に臨場し、体験した者の供述としての真実味が感じられるとした判断は全くの誤りだったんですね。ここをどう考えるかなんですよ。
 再審無罪の判決は、そのDNA鑑定という客観的な証拠と菅家さんの自白は矛盾している。なぜ自白したかというと、最大の要因は、捜査官から間違ったDNA鑑定の結果を告げられたということにある。当時の取調べの状況や強く言われるとなかなか反論できない被疑者菅家さんの性格などからすると、むしろ本件自白の内容は、当時の新聞記事の記憶などから想像を交えて捜査官の気に入るように供述したという菅家さんの供述にこそ信用性が認められるというふうなことを認定した上で、もう一度最高裁に御紹介いただきたいと思いますが、いただいている判決文の十五ページの下から六行目、その結論部分を述べていただけますか。
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 被告人の自白は、それ自体として信用性が皆無であり、虚偽であることが明らかであるというべきである。
 このように記載されております。
○仁比聡平君 少女を殺害して無期懲役という判決が最高裁判所で確定をして、ところがその根拠とされた自白は全くの虚偽であった、それ自体として信用性が皆無であった。
 これ、大臣、自白というのは怖いものだと思われませんか。
○国務大臣(岩城光英君) 虚偽の自白に係る冤罪、そういった例を引いてのお話でありますけれども、もちろん犯人でない人を処罰することはあってはならない、そのように基本的には認識をしております。
 そうした上で、自白に関わるおただしでありますけれども、極めて慎重に自白の内容についてはきっちりと検討をしなければいけないと思いますし、私といたしましても、慎重に自白については取り扱うべきものと、そのように考えております。
○仁比聡平君 それは慎重に取り扱わなければならないのは当たり前なんですね。起こっている、発生した犯罪、その被害が深刻であればあるほど、凄惨であればあるほど、真犯人への憎しみや怒りというのは、これは捜査官はもちろん、遺族の皆さんの悲しみはもちろん、社会としても沸騰するわけですね。だから、被告人である、あるいは共犯者であるのではないかというふうに名指しをされた人、つまり容疑者、被疑者がその容疑を認めたという報道、あるいはその自白、これは、やっぱりそうかというような危険性を持っているわけです。
 この足利事件の菅家元被告人のその自白だって、そのようにして扱われました。その危険性を持っている。であれば、大臣にお尋ねしたいのは、なぜうその自白がなされると考えるかということなんです。
 布川事件という冤罪事件がありますが、その被害者の桜井昌司さんは、お会いいただければ分かりますが、とても気丈で気の強い方ですよ。この人が何でうその自白なんかしたのかと、きっと皆さん思われると思うんですけれども、なぜかと。朝から晩まで、おまえが犯人だという決め付けを前提に責められ続ける、警察から。心が折れるまで圧力を掛ける。される側は、自分が、何があっても、どうあっても有罪にされると思い込まされ、それは本当に苦しいからうその自白をする。それでも、検察官に話せば、裁判官に話せば分かってくれるに違いないと。だって、本当はやっていないんだからと、そういう心理に陥ると。でも、実際には検察官も裁判所もうその自白を見抜こうともしない、それが現実だったと。
 こうしたうその自白というものが作られてしまう過程について、大臣はどんなふうに思われますか。
○国務大臣(岩城光英君) 一つには、そういった自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったということが挙げられると思いますけれども、いずれにしましても、一般的に言いまして、委員御指摘のとおり、自白に対する取扱い、検討は慎重にしていかなければいけないと、そのように改めて考えております。
○仁比聡平君 自白の吟味、検討を慎重にとおっしゃるけれども、それは具体的にその自白の調書なり録音、録画のビデオが出てきて、これが真実か、ここで犯人だと、先ほどの菅家さんのように、体験していなければ語り得ないなと思うような言動で語っているけれども、だけど、これがうそかもしれないというときに吟味、検討するというわけでしょう。それは、つまり重大な人権侵害と虚偽の自白が取られてしまった後のことなんです。
 この自白がどのようにしてなされるのか、これが繰り返されてはならないという問題意識の、強い問題意識の下に、私は、客観的に密室での取調べが検証できない、ここを変えるべきだというのが取調べ過程の全面的な可視化という議論の出発点だと思うんですね。密室で捜査官から迫られる、心理的に屈服をさせられて、その屈服をさせられて自白した。一旦自白をすれば、これはその後もうずっと持続するんですよ。一旦自白して、その後、いや、本当はやっていないんですと被疑者が答えたとしたら、どう大臣されますか。さっき言ったのはうそだったのかと言うでしょう。
 一旦自白をすれば、一旦認めた、それはうそだったのかという論理の下で屈服を持続させられる。そうしたプロセス全体を、密室ではなくてちゃんと事後的に検証できるものにする。事後的に検証されるとなれば、その場ではそういうことが行われないようになるだろう、抑止されるだろうと、それが全面可視化ということの出発点なんだと思うんですが、大臣の御認識はいかがですか。
○国務大臣(岩城光英君) 本法律案で導入することとしている取調べの録音・録画制度の趣旨、目的は、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取調べの適正な実施に資することを通じて、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現、これに資することにあると、そのように考えております。
○仁比聡平君 いや、結局私の問いにお答えにならないじゃないですか。つまり、この法案が、取調べ室への弁護人の立会い権も認めない、捜査官手持ちの全面的な証拠開示も行わない、そうした下で一部の取調べの可視化だけをする、録音、録画をするということが一体日本の刑事裁判をどのように変えてしまうのか、私たちはそこをちゃんと今考えなきゃいけないと思いますよ。
 ここで法務省にお尋ねをしておきますけれども、私が先ほど紹介をしたような足利事件のように、自白に任意性、信用性があるとして検察が起訴をし、有罪立証を尽くしながら結果として無罪になった、そういう事件は戦後幾つもあります。これ、何件あるのか。自白をどのように評価して立証したのか。有罪判決はその自白をどのように評価したのか。無罪あるいは再審無罪判決はどう評価したのか。これは私、この委員会に明らかにしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(林眞琴君) 法務当局におきまして、お尋ねのような観点からの統計等を取っておりません。網羅的に把握していないところでございます。
○仁比聡平君 網羅的に把握していないんですよ。どこに反省があるのかと。八海事件、吉展ちゃん事件、足利事件、布川事件、志布志事件、氷見事件、アリバイの事実さえあなた方が否定をして、自白を強要してうその自白をさせて、有罪で確定して刑務所まで送ったじゃないですか。ところが再審無罪でしょう。何の反省もないのかと。
 私は繰り返し、この戦後刑事事件の冤罪の第三者機関による検証を求めてきましたけれども、政府はずっと否定をしてきました。その下で申し上げて、大臣も否定できないでしょう、自白の危険性。という問題について何の検証もせずに、その録音、録画を裁判でどう使うのか、その法案の審議の前提を、私、欠いていると思うんですね。
 委員長、私が今法務省に求めた資料、これを是非提出をさせるように指揮を願いたいと思います。いかがでしょう。
○委員長(魚住裕一郎君) 後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 法制審のこの法案を議論した特別部会で、皆さんがよく御存じの映画監督の周防さんがおられて、衆議院の参考人質疑の中で、この法案につながった、議論の出発点である郵便不正事件、村木厚子さんの事件について、特に司法取引が導入された場合、共犯者とされる在宅被疑者の取調べはどうなるのかと。具体的に、皆さん思い起こしていただきますと、厚生労働省の職員、村木さんの部下が共犯者として参考人の取調べをされました。ところが、この法案では、そうした共犯者とされる参考人の在宅の取調べというのは可視化はされません。
 そうした下で、周防さん、こうおっしゃっているんですね。共犯者の初期供述から取調べの全過程が録音などで記録されるようになれば、検察官の見立てに沿って無理に供述を変更させるような取調べや取引を防止することができます。逆に言えば、取調べ全過程の録音などもない共犯者の供述に基づいて裁判が行われるようなことになれば、郵便不正事件と同じような冤罪は防ぐことができないのではないでしょうか。
 大臣、この批判にどう答えますか。
○国務大臣(岩城光英君) この法律案の録音・録画制度ですが、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取調べの適正な実施に資することを通じて、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することを目的とするものでありまして、真犯人の適正、迅速な処罰とともに誤判の防止にも、それにも資するものである、そのような仕組みになっていると、そのように考えております。
○仁比聡平君 もう繰り返し大臣、そういう御答弁を前上川大臣の頃からやっておられるんですけれども、適正な任意性の立証に供するというふうに。裁判になった後の扱いをこの後議論したいと思いますけれども、それで実際に虚偽の自白を強要するようなことしていいなんてならないでしょう。
 私は、先ほどお話のあった今市事件で法廷で再現をされたその取調べ室での様子、これDVDになっていると思います。足利事件でも、先ほどお話ししたような、最高裁から述べていただいたような自白の録音テープが法廷で再現をされました。先ほど御紹介した布川事件でも自白の録音テープというのが存在し、証拠になっているわけですね。
 これらの、これまで現に行われてきて有罪立証に供されてきた、あるいは任意性立証に供されてきた録音、録画がどのようなものか。私、これ、法務省、この委員会に提出をしていただいて、私たちがちゃんと見れるようにする、どんなものなのか確認できるようにする、していただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(林眞琴君) 御要望につきましては、例えば現在係属中あるいは既に確定した個別事件、こういったものについての録音・録画記録媒体の提出を求められているところでありますけれども、こういったことについて、刑事裁判以外の場で証拠の内容自体を明らかにすることとなりますので、やはりこれにつきましては、当該事件の関係者の名誉でありますとかプライバシーの保護の観点から問題がございますし、また、今後の捜査機関の活動等においても関係者の協力を得ることが困難になるなどの重大な支障を生ずるおそれがあると考えております。
○仁比聡平君 刑事裁判以外の場でとおっしゃるけれども、例えば今市事件であるならば、裁判員の皆さんがいらっしゃって、補充裁判員の皆さんももちろんいらっしゃって、しかも公開の法廷で、マスコミも入って、そこで再現をしておられるわけでしょう。そうした在り方を今後どういうふうに縛っていくのか、縛っていけるのか、この法案そのものを審議する私たちが全く知らないままで法案の審議ができますか。私はいささか取調べ室やあるいは面会室や刑事裁判の弁護の経験もありますから、そうした録音テープというものを自分自身が聞いたこともある。けれども、多くの国会議員の皆さん、それは御存じないでしょう。この法務委員会の議員の皆さんが、これまで現実に行われてきたそうしたうその自白というものがどれだけ怖いものか。だって、皆さんお聞きになれば、真犯人に違いないと思われる方多いと思いますよ。ところが違うんですから。そうした事実をちゃんと踏まえた上での審議を私は是非やるべきだと思います。
 委員長、このテープなどについても提出を引き続き求めていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
○委員長(魚住裕一郎君) 今の点につきましても、後刻理事会で協議いたします。
○仁比聡平君 そうした下で、この法案は、対象事件の全過程の録音、録画であると繰り返し法務省からも説明がされ、そして、例えば今朝の新聞などにもそんなふうに書かれているわけです。対象事件について、今日ももう既に確認がありましたが、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件、この事件については全ての取調べが録音、録画されると皆さんも説明を受けておられるし、多くの国民の皆さんはそう思っているわけですね。
 ところが、そうかということを、私はまず確認をしたいと思うんですね。お手元に「部分録画―「恣意的運用の余地は無い」のか」と題した、私が作った資料ですけれども、お配りをいたしました。
 重大な、例えば殺人事件、こうしたものを考えたときに、皆さんも、逮捕に至る前に任意同行というのが行われることが間々あるということは御存じだと思います。この任意同行というものは、今回の法案によっては、つまり任意同行の下で行われる取調べですね、これは、今回の法案によっては録音、録画の義務付けの対象にはならないという御答弁が先ほどもありました。
 二枚目に、なぜならないか、私が法案三百一条の二から法案の骨格を整理したものをお配りをしていますが、明文で逮捕又は勾留されている被疑者の取調べに限るとなっているからだと思いますが、局長、そういう理解でいいですか。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおりでございまして、逮捕、勾留されていない被疑者、例えば任意同行の段階については今回の義務の対象外でございます。
○仁比聡平君 じゃ、任意同行といって、本当にすぐ帰れるのかと、帰れないんですよ。現実に、任意同行という、身柄拘束期間の定めも制限もない、そうした状況の下でどれだけの違法捜査が行われ、そこで冤罪事件が引き起こされてきましたか。
 今朝、三宅理事が取り上げられた鹿児島県の志布志事件もそうでした。十数人の容疑者とされた市民が任意同行を次々とさせられて、その中で無罪判決は、ありもしなかった事実がさもあったかのように関係被疑者の供述が一致をさせられていく、そんなプロセスを断罪をした無罪判決だったわけですね。
 任意同行というのは、希望すれば取調べ室を出ていけるというような状況ではないんです。そうした下で、法制審の委員も務められた後藤昭教授が、今年、法律時報の一月号に、名目は任意同行であっても実質的に身柄拘束に当たる状況で取り調べた場合には録音・録画義務の潜脱という違法が生じると述べておられるわけですが、これ、林局長、この見解は、前提は、実質的に身柄拘束に当たる状況での取調べは、名目は任意同行、つまり逮捕状は出ていないという状況の下でも録音・録画義務の対象になるんだという理解を前提にしないと理解できないんですけれども、いかがですか。
○政府参考人(林眞琴君) この名目的には任意同行であっても実質的には身柄拘束に至っている場合というものが、これについてが定かではございませんが、もしそれがそのままの意味でございますれば、これ自体は違法な身柄拘束でございます。そういったことについての取調べ自体につきましては、やはりそれに対して違法の評価がなされるわけでございます。
 あくまでも今回は、適法な形での身柄拘束がなされる中での取調べについては、この対象事件に当たる限り録音、録画の義務の対象となるということでございます。
○仁比聡平君 つまり、法律の論理としてはそういう説明をするんでしょうが、皆さん、それが信じられますか。警察が違法な身柄拘束をしないと思われますか。現に幾らだってやっているじゃないですか。任意同行が違法な身柄拘束ではないかどうかというのが争われるのは、最終的に起訴されて、裁判の中でその取調べ室における自白調書が有罪立証の根拠として示されてからですよ。私たち弁護士がこの身柄拘束は違法だということを求めて争っても、皆さんはそれを認められないということがこれまでの刑事捜査の現実であります。
 そうした任意同行の中で別件逮捕が行われることがあります。その一枚目に、例えば今市事件でいいますと、偽ブランド商品などを所持していたということで商標法違反ということで捕まっているわけですが、私はこれは明らかな別件逮捕だと思うんですね。
 これが今市事件でいうと二〇一四年の一月二十九日のことですけれども、その後、逮捕の七十二時間、そして最初の勾留、勾留延長、二十三日間の期間を経て二月十八日に別件起訴をされます。商標法違反で別件起訴をされる。その二月の十八日、別件起訴をされた日の午前中に初めて犯行を認める自白をしたということになっているわけですね。ところが、その前、つまり別件逮捕に基づいて身柄を拘束されているその期間に、殺人あるいは死体遺棄、そういった本件での取調べが行われたのかということは定かではどうもありません。
 私は、法務省、検察庁にお尋ねをしたいと思うんですけれども、報道では録画されていた取調べというのは全部でおよそ八十時間だと言われています。そのうち七時間が再現をされたと言われています。これが事実なのかということ、それ以外にこの別件逮捕以降行われた取調べというのは警察と検察で合わせて何回であって、全体で幾らの時間になるのか、それらは、その八十時間以外は録画していないということなのか、ちょっと確認をしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) お尋ねの事項でございますけれども、まだ確定していない個別の事件に関します捜査の具体的内容、あるいは、検察あるいは裁判当事者の公判での主張立証内容に関わる事柄でございますので、ここでのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 警察は。
○政府参考人(三浦正充君) 警察庁といたしましても、お尋ねの件につきましては判決がいまだ確定をしていないことから、お答えは差し控えたいと存じます。
○仁比聡平君 いや、答えようとされないんだけれども、実際に重大な犯罪、しかも真犯人が見付からないということで長期化していたこの事件で、その被疑者と目した人物を身柄拘束をしながら何の調べもしていないというのは、私はあり得ない。
 先ほど来、初めて犯行を認めたという二月十八日午前中の自白について、これ、初めて認めたというふうにすっと皆さん語られますけれども、この二月十八日の録音、録画をされていない自白に至るプロセスというのが一体どんなことだったのか、そのことは極めて重大な問題なんですね。
 そこで、法案について確認しますが、別件逮捕の期間中に本件の取調べをした場合、これは録音、録画の対象となりますか。
○政府参考人(林眞琴君) 逮捕、勾留されている被疑者について取調べを行う場合に、その逮捕、勾留事実が今回の対象事件でない場合、これを想定した場合でお答えいたしますが、そういった場合に、実際、その逮捕、勾留期間において被疑者を今回の対象事件を事実として取り調べることはあり得ます。ただ、その場合に、そういう形で取り調べる場合には、対象事件について勾留されている被疑者を取り調べる以上、今回の録音、録画の義務の対象となります。
 したがいまして、こういったある身柄拘束中の被疑者をいわゆる余罪について取り調べる場合にあっても、この余罪自体が今回の対象事件であれば今回の取調べの録音・録画義務の対象となるわけでございます。
○仁比聡平君 今のように衆議院の頃からずっと説明をしてこられているんですけれども、そこでちょっとはっきりさせたいんですが、法案では今局長が御答弁になったことがどこに書かれているのかと。
 これ、何しろ裁判所の発付した令状は別件での令状しかないわけです。殺人罪とか死体遺棄罪では誰も審査をしていない、証拠確認はしていない、その下で身柄が拘束されている。けれども、殺人罪で取調べをするわけですよね。そのときには録音、録画をするんですと局長は言うんだけれども、これは法案ではどこに書かれているんですか。
○政府参考人(林眞琴君) 本法案の録音・録画義務が課される取調べについて、刑事訴訟法第三百一条の二第四項におきましては、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しております。この場合の逮捕若しくは勾留されているという被疑者に今回の対象事件という限定が付されておりません。そのことから、今回、身柄拘束中の被疑者について余罪について調べる場合に、その余罪が今回の対象事件である場合には録音・録画義務が掛かるわけでございます。
○仁比聡平君 そうした理解だとして、そうした四項の理解をした上で、一項は当該事件についての取調べというふうに書いてあるわけで、当該事件についてのというのは、つまり本件についての取調べという意味なんだと思うんです、これ違っているんだったら後で違うと言ってもらったらいいんですが。
 そういう当該事件についての取調べ、つまり殺人についての取調べを行うときには録音、録画をしなければならないんですと言うんだが、けれども、その録音、録画というのは、そこで取った調書を裁判所に証拠として出すときに求められるもの、弁護側が任意性を争ったときにしか求められないものですよね。そういうことでいいですか。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、公判で例えば調書を立証に用いないというときには、本法案での取調べの録音・録画記録を証拠調べ請求する義務はございません。しかしながら、捜査の過程で、取調べの時点においてその対象事件について調べる限りは、取調べの全過程を録音、録画することが義務付けられておりますので、そのようにその義務を履行することが必要となります。
○仁比聡平君 いや、ぎりぎりの話なんですよ。一般的に求められておりますというような話ではない。
 例えば今市事件であれば、別件で逮捕されてから犯行を認める自白を検察官の前でするまでどんなことがあったのかというのは、これは分からない。犯行を初めて認めた自白というのは、これ録音、録画はされていない。けれども、その日の夕方の取調べ、それ以降も全部が録画されているわけではないんだけれども、録画をされている部分が裁判所に証拠として出されたわけです。
 先ほど来、何だか今回の最初に犯行を検察官の前で認めた事件については録音、録画がされ、もし求められるなら裁判所に証拠として出されるかのような御答弁をされているけれども、法案ではそれは必要ないでしょう。つまり、録音、録画をなしに最初の自白の供述がされ、その夕刻以降の、その後の後続する自白、この録音、録画が提出をされれば後に続く自白の調書の任意性は立証できるという考えでしょう。
○政府参考人(林眞琴君) 当該取調べ請求している調書についての任意性を立証するためには、その調書が作成された取調べの開始から最後までの録音・録画記録媒体を証拠調べ請求する必要がございます。
 一方で、先ほど申し上げましたように、自白調書をこの立証に用いないといったときには証拠調べ請求する義務は負わないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、録音、録画の義務自体はございますので、これを履行しなければそれは違法行為でございます。もちろん懲戒の対象にもなります。
 また、実際に録音、録画の記録媒体があるかないかということは、証拠開示がなされますので、その時点でその義務を果たしているかどうかということは弁護人の方にも分かることになりますので、そういった形で、そのような証拠調べを請求しない場面での取調べの録音・録画記録媒体があるのかないのか、あるいは実際にその義務を履行しているかどうかということについては証拠開示等を通じて把握され得ることになろうと思います。
○仁比聡平君 証拠開示を全てしているかのようなお話は、これは心外ですよね。袴田事件の再審開始決定審についても、今になって出してきている、その中に録音テープがあるというみたいな事態をこの委員会でも追及してきたじゃないですか。明らかにしてまいりました。
 今の違法と確認をされ、違法だから懲戒対象にもなるというお話については、またこれから後、次の機会に聞いていきたいと思うんですけれども、証拠取調べ請求の義務がないということが録音、録画との関係でいうとどういうことか、ちょっと確認をしておきます。
 法案の私が骨格と示している上から五行目の最後ですが、最初から最後まで録画するんだと言っている対象というのは何かといえば、当該書面が作成された取調べ又は弁解の機会なんですよ。当然、自白調書、供述調書というのは一回の取調べごとに作られるわけです。
 これまでは、否認の調べは調書を作らないということも平気で行われてきました。だから、調書がない取調べというのも幾らだってあるんですよ。その下で、当該書面、つまりこの今市の事件でいうと、六月十一日の検察官に対する被告人の供述がこれは極めて詳細だというふうに報道されていますけれども、そういうところは絶対に作るんです。その調書の任意性というのを弁護側が争ったときに、その書面を証拠として扱ってよいかどうかが争われたときに、録音、録画が必要ですと。
 ですから、先行する自白があって、そこには録音、録画がなくても、この調書の録音、録画さえあれば証拠として出せるようになりますという、そういう規定でしょう。
○政府参考人(林眞琴君) 当該調書についての任意性が争われた場合に、その当該調書が作成された取調べの開始から終了までこの録音、録画の記録媒体がありませんと、その証拠調べ、調書の証拠調べ請求は却下されることになります。
 他方で、調書が取られていない取調べというのが当然ございます。その調書が取られなかった他の機会における取調べ、これについても本法案では録音、録画の義務を課しております。したがいまして、その義務は履行しなければなりません。
 他方で、もう少し申し上げますと、その回の調書が作成された取調べにおける録音・録画記録媒体を出せば証拠調べ請求は却下されないということになるわけでございますが、却下されないということがイコール任意性が認められるということではございません。したがいまして、その調書の任意性というものは更に検察官は立証をしなくてはいけないわけでございまして、そういった場合には、義務を履行している他の取調べにおける録音、録画の記録媒体などを使って立証することになろうかと思います。
○仁比聡平君 時間がなくなってきてしまって。
 私は、この法案をちゃんと理解するだけでも、皆さん、随分議論が必要だと思われませんか。
 今、懲戒の対象にはなるんだとしきりにおっしゃるんですけれども、例えば志布志事件で何人の警察官が懲戒を受けたか御存じですか。踏み字をさせた警察官とその指揮をした警察官の二人だけですよ。組織ぐるみで冤罪をつくり出しておいて、その捜査官というのは何も断罪されていないんですよ。だから、自白偏重の捜査を繰り返してきているんです。
 最後、確認をしておきますが、起訴後勾留というのがその後ありますね。つまり、二月十八日に別件で起訴をされて後、殺人罪で起訴をされたのは六月二十四日です。その間、別件逮捕からすれば百四十七日間あるんですが、ここには期間の制限もないかのような扱いをする。ここでも検察官もそして警察も取調べを行うし、その取調べはこの法案では可視化の対象になっていないでしょう。
○政府参考人(林眞琴君) 起訴後の勾留中の被告人に対しましても、起訴された事件以外の余罪につきまして取調べを行うことはできると考えられます。もっとも、この場合には、この被告人に取調べ受忍義務が課されない点でその法的性格は在宅の被疑者の取調べに近くて、被告人は取調べを受けること自体を拒否することができると考えられます。そのことから、本法案における録音・録画義務が課される取調べにつきましては、この刑事訴訟法三百一条の二第四項において逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しているところでございます。したがいまして、こういった起訴後の取調べについては録音・録画義務の対象とはなりません。
○仁比聡平君 このように、この法案では録音、録画の義務の対象にならないんですよ。その下でどんな取調べが行われているのか、その一端が今市事件で明らかになりつつあるわけです。例えば、その起訴後勾留の間に自白をし、そして否認に転ずるということになると、検察官から、今話さないでいつ話すんだ、遺族やいろんな人に恨まれ続けて生きていけばいいと迫られて、被告人は、もう無理、ああ嫌と、立ち上がって窓に突進して自殺を図ろうとしたというような様子が報道されているわけでしょう。それが今局長が言ったような任意の取調べですか。とんでもないと。
 そうしたものを可視化をせずに部分録画で、裁判員も含めた裁判に強い影響力を与え得る、自白というのはそういう恐ろしいものなんだということをちゃんと共有する委員会の審議が必要だと、今日はそこまで強く申し上げて、質問を終わります。
○谷亮子君 谷亮子です。
 本日は、継続審議となっております刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、岩城法務大臣、そして法務省の皆様、そして関係の皆様、よろしくお願いいたします。
 本改正案は、刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化並びに公判審理の充実化を図るために、取調べの録音・録画制度、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度、証人等の氏名等の情報を保護するための制度等を創設するとともに、犯罪捜査のための通信傍受の対象事件のこれは範囲の拡大、被疑者国選弁護制度の対象事件の範囲の拡大等を講じようとするなど、非常に多岐にわたる問題が、また内容が含まれております。
 また同時に、良好な治安を確保し、国民の生命、身体及び財産を守ることは国の基本的な責務でございまして、政府の最も優先すべき取組の一つであると思います。そして、「世界一安全な日本」創造戦略の施策の一つとして刑事訴訟法等改正内容が盛り込まれておりますけれども、刑事司法の目的は、現行の刑事訴訟法第一条に規定されているとおり、適正手続の保障を堅持しながら個々の事実、事案の真実、そして真相を明らかにして適切な処罰を実現することにございます。その過程におきまして、人権への保障につき十分に配慮されること、そして国民の理解、納得が得られるような刑事司法手続にしていくことが大切であると考えます。創造戦略における様々な施策を推進していくことはもちろんでございますけれども、今回の法改正により適正な刑事司法の確立を図っていくということが今後求められていくことではないかなと私は思っております。
 そこで、今回の法改正の目的とするものといたしまして、誤判を防止する改革が挙げられると思いますけれども、誤判を生みやすい任意性のない自白を防止するために、取調べへの弁護人の立会いや捜査段階での弁護側への証拠資料開示も必要との議論は、法制審議会、そして新時代の刑事司法制度特別部会の方でもこれは行われておりましたけれども、結局制度化は見送られている現状でございます。
 そこで、今回の法改正によりまして、この誤判を防止するということに関しましてはどこまで進展させていくことができるのか、できるとお考えなのか、法務大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(岩城光英君) 法制審議会における審議の出発点というべき検察の在り方検討会議の提言や法制審議会の諮問でも指摘されていますとおり、現在の捜査、公判は取調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあり、このような状況は取調べにおける手続の適正確保が不十分となったり、事実認定を誤らせるおそれがあると考えられます。
 本法律案は、そのような状況を改めるため、証拠の収集方法の適正化、多様化と公判審理の充実化を図り、より適正で機能的な刑事司法制度を構築しようとするものでありまして、誤判防止に十分に資するものと考えております。本法律案が成立した場合には、刑事司法はより適切な証拠によってより適正に事実認定がなされる方向、すなわち誤判を生まない方向に進んでいくことになると考えております。
 もとより、そのためには、刑事司法に関係する者に本法の改正の趣旨を踏まえた適正な運用を着実に行っていくことが求められますし、今後の社会情勢の変化や運用状況を踏まえつつ、更なる改善を行っていく必要もあるものと考えております。
○谷亮子君 岩城大臣、御丁寧にありがとうございました。そのとおりであるというふうに思います。今回の法改正によりまして公判審理の充実というものが図られまして、誤判が繰り返されることがないように求められるものであるというふうに考えます。
 二〇一一年三月三十一日に出されました検察の在り方検討会議の提言である「検察の再生に向けて」の中で、今後、国民の安全、安心を守りつつ、冤罪を生まない捜査、公判を行っていくためには、抜本的な、また構造的な改革として、追及的な取調べなどによらずに供述や客観的証拠を収集できる仕組みを早急に整備をし、取調べや供述調書に過度に依存した捜査、公判から脱却するよう、その在り方を改めていかなければならないものと考えるとの御指摘がされておりましたけれども、今後は適正な事実認定を追求していくということによりまして、今後の誤判防止に資するものになると私も考えております。
 次に、対象事件の範囲拡大についてお伺いしたいというふうに思います。
 本改正案では、施行後三年を経過した場合におきまして、取調べの録音、録画等の実施状況を勘案し、取調べの録音、録画等に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときには、その結果に基づく見直し規定が置かれているということからも、対象事件の範囲拡大ということは今後お考えでいらっしゃいますでしょうか、伺います。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、本法律案の附則の第九条におきまして、取調べの録音・録画制度について、施行後三年が経過した後に必要な見直しを行う旨のいわゆる検討条項を設けてあります。
 これの趣旨でございますが、法律案の録音・録画制度は、対象事件について捜査機関に対して原則として取調べの全過程の録音、録画を義務付けることを内容とする、これまでにない新しい制度でございまして、その効果でありますとか課題、これにつきましては実際に制度を運用してみなければ分からないという点も少なくないわけでございます。
 そこで、お尋ねの対象事件の範囲の在り方ということも含めまして、この見直しの規定がございますけれども、現段階でこの見直しの方向性についてまで定めることとしてはおりません。
 いずれにしても、捜査機関の運用によるものも含めまして、取調べの録音、録画の実施状況等を十分に勘案しつつ、録音・録画制度導入の趣旨を十分に踏まえて検討を行うことが重要であると考えておりまして、これまでの経緯等も踏まえますと、この取調べ録音、録画についての取組が後退するようなことはないものと考えております。
○谷亮子君 ありがとうございます。附則の第九条に明記されてあるとおりであるというふうに思います。
 実際にこれは運用してみて、運用しながらということで、いろいろな要素を考慮しながら考えていかなければならないと思いますけれども、本改正案が成立した場合は被疑者の取調べの全過程について録音、録画を義務付けるということになりますので、対象事件の範囲拡大につきましては、ただいま御答弁いただいたとおり、その取組が後退することがないよう検討を重ねておられると思いますので、適切な対応がこれからなされていくというふうに思っております。
 こうした現況を踏まえまして、取調べの録音・録画制度の創設について、その設置状況について本日は伺ってまいりたいというふうに思っています。
 先日、四月十二日に視察に行ってまいりましたけれども、まず初めに検察における録音・録画制度の機器配備状況についてでございますけれども、検察における昨年、平成二十七年度の四月から九月までの六か月間の裁判員裁判対象事件については、千五百五十五件のうち千四百二十六件、九二・一%の割合で全過程の取調べの録音、録画が実施されております。
 検察における取調べの録音、録画に対応した機器の平成二十六年、二十七年、二十八年、それぞれの一台当たりの価格、また平成二十六年、二十七年、二十八年、それぞれ何台ずつ購入し、現在何台ずつ設置されておられますでしょうか。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の平成二十六年度から申し上げますと、平成二十六年度においては百二十台でございます。この単価が約百七十五万七千円でございました。二十七年度には六百七十三台を購入しております。このときの単価はずっと下がりまして、約五十一万七千円となっております。
 なお、平成二十八年度予算で措置された録音・録画機器の台数及び単価は百三十台でございまして、単価でいきますと約八十四万六千円となっております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 続けて伺いたいと思いますが、機器の更新やまた新たな配備などのために関係予算の確保、充実が必要になると思われますけれども、検察での取調べの録音・録画機器配備に関する平成二十六年、平成二十七年の予算執行額、そして二十八年度の予算額についてはどのような推移になっているのか、法務省にお伺いします。
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の平成二十六年度以降について答弁しますと、平成二十六年度が執行額約二億一千百万円でございます。平成二十七年度は約三億四千八百万円でございます。
 なお、平成二十八年度の録音・録画機器の予算額は約一億四千百万円となっております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま執行額について、直近の平成二十六年、二十七年、二十八年度についてお伺いしましたけれども、検察の機器配備は平成二十一年度から始まったようでございまして、この八年間で台数、執行額共に充実している時期というのは平成二十四年から二十七年度でございまして、約二億円から約六億円の執行額でございました。また、平成二十二年度は執行額が一千四百万円で、年間配備台数は約十一台と少量でございました。
 そこで、検察における取調べの録音・録画機器の全国の検察組織における配備状況について教えていただきたいと思います。
○政府参考人(林眞琴君) 検察におきましては、もちろん取調べに従事する検察官の数というものがありますが、これについては日々事件の発生状況等によって変化しているものでありまして、具体的な数字としてはお答えすることは困難でございますが、現時点での平均的な体制で考えた場合には、おおむね既に一人につき一台の録音・録画機器を割り当てられるだけの台数は整備できております。
○谷亮子君 ありがとうございました。
 取調べを担当する検察官の方が全国に約千五百から千六百人いらっしゃるというようなことも伺っておりまして、年間配備台数につきましては、平成二十一年度から二十八年度までの八年間で、過去一番多かったのが平成二十七年の六百七十三台でありましたけれども、予算執行額は三億四千七百万円、そして平成二十四年度は約倍近くの六億一千九百万円の予算執行額でありましたが、年間配備台数は四百八十四台でございました。
 この取調べ担当の検察官一人につき、ただいま御答弁いただきました内容によりますと、検察官一人につき機器一台が配備されているということでございまして、今後の取組に向けまして必要な措置を講じていっていただきたいと思います。
 必要な措置という意味では、検察における取調べの録音、録画について、これは何らかの理由によって録音、録画ができていなかったというような場合にどのような対応をされますでしょうか、お伺いします。
○政府参考人(林眞琴君) 現在の制度下におきまして、例えば録音・録画機器の故障などの理由によって録音ができなかった場合、こういった場合があったとした場合にどのような対応をするかということでございますけれども、こういった場合につきましては、検察官としては一般的に、事案に応じまして、公判におきまして例えば被告人質問の実施を求めたり、あるいは逮捕、勾留中に行われた被疑者取調べの際に作成された供述調書等の証拠調べ請求、こういったものを求めるなどしていると考えられます。
 また、この証拠調べ請求した供述調書などにおいて公判で任意性が争われた場合、検察官としては、事案に応じて、やはり被告人質問の実施を求めたり、あるいは実際の取調べ官を証人尋問で請求したり、あるいは取調べが行われているところの取調べ状況報告書の証拠調べ請求、こういったものをすることによりまして、こういった録音、録画ができなかった場合の任意性の立証を行うこととなろうかと思います。
○谷亮子君 ただいまのお話では、やはりこれまでは録音、録画ができていなかった場合、供述調書で立証することとされていまして、供述調書を取っていなかった場合、被告人から法廷で回答してもらう被告人質問ですとか調査官の証人尋問を行ってそのときの取調べの様子を確認することとされているということでございましたけれども、また、今回の改正法が成立したとすると、これは例外事由に当たらない限り、取調べの録音、録画を行わなければならないということになりますので、録音、録画ができていなかった場合、まずその取調べを録音、録画しないとの例外事由に当たるかどうかを確認、そして立証されるということであるというふうに思います。そして、例外事由に当たる場合、捜査段階の供述の任意性等の立証判断などを確認する。そして、例外事由に当たらない場合、供述調書を使うことができないということで、調書の証拠調べ請求が却下されることになるということであるというふうに確認いたしました。
 これまでの対応内容と今回の改正法案が成立した場合の対応に分けて、ただいまお話しいただいたというふうに思っておりますけれども、現況、取調べを担当する検察官一人について、先ほどお話ありました、一台が配備されるということですが、録音、録画していると思っていても何らかの理由で録音、録画ができていなかった場合もこれも当然想定されていらっしゃると思いますし、今後はまた持ち運び可能な小型機器の導入もなされていくというふうに伺っておりますので、適切な対応が今後なされていくことを望んでまいりたいというふうに思っております。
 そして次に、警察における取調べの録音、録画への対応について伺ってまいりたいと思います。
 警察におかれましては、昨年、平成二十七年度は、四月から九月までの六か月間を見てみますと、裁判員制度対象事件のうち取調べの過程を録音、録画したのは千五百六十七件中千三百九十五件と、実に八九%の割合で警察におかれましても取調べ録音、録画が進められてきました。
 そこで、警察における取調べの録音、録画への対応でございますけれども、警察におかれましては、二〇〇九年四月から裁判員裁判対象事件についての取調べの録音、録画をされておりまして、全国の警察署や都道府県警本部などの施設に録音・録画機器が配備されておりますけれども、これにつきましては、原則として都道府県警察の予算で購入することとなっておりまして、国費から半額の補助金が支給されるものと伺っております。
 警察における取調べの録音、録画に対応した機器の平成二十六年、二十七年、二十八年、それぞれの一台当たりの価格、また、平成二十六年、二十七年、二十八年度、それぞれ何台ずつ購入し、何台現在設置されておりますでしょうか、警察庁にお伺いします。
○政府参考人(三浦正充君) 警察の場合には、御質問にもございましたように、取調べの録音、録画の機器の整備は各都道府県警察において進めておりまして、年度ごとの詳細な価格については、これは都道府県ごとに個別に調達を行っているものでありますから詳細な把握はしておりませんけれども、現行の機器の一台当たりの価格はおおむね百万円でございます。
 それから、機器の整備状況でございますけれども、取調べの録音・録画制度のための機器の整備状況は、都道府県警察からの報告によりますと、平成二十四年度末で約四百四十台、二十五年度末で約七百三十台、二十六年度末で約八百台、二十七年度末で約千八百五十台となっております。
 なお、先日警視庁の原宿警察署を御視察をいただきまして、委員にも機器を御覧いただいたかと存じますけれども、警察庁としても、新型機器、新しい型の機器の開発を進めているところであります。
 この新型機器の導入につきましては、狭い取調べ室でも支障が生じないよう小型化を図るとともに、録音、録画の実施の都度必要となっている設置作業の負担を軽減をするため固定式のシステムを導入するものでありまして、具体的には、新型機器は取調べ室の天井に埋め込まれたカメラ、マイクにより録画、録音をいたしまして、別室に設置された機器によって複数の記録媒体への記録を行うこととしております。今後、都道府県警察におきまして、当該仕様のものを中心として更に機器の整備が進められる見込みでございます。
 なお、先ほど補助金というお話がございましたけれども、この新型機器につきましては、財源は平成二十六年度の補正予算九・五億円で、国費によって措置をしておりまして、これによって八百五十台の新型カメラを導入をしたところでございます。この数は、先ほどの二十七年度末の千八百五十台に含まれているというものでございます。
○谷亮子君 御丁寧にありがとうございました。
 国費で、平成二十六年度には補正予算であったというふうに思いますけれども、九億五千万円の措置がなされたというふうに思います。そして、平成二十七年度に千八百五十台の設置が現況なされたというようなことであるというふうに伺いました。
 今後は、本法案が成立した場合、取調べの録音、録画は原則として三年以内に、裁判員制度対象事件については全過程で義務付けられていくということになります。
 先ほども申し述べましたけれども、警察におかれましては、平成二十七年度の四月から九月までの六か月間で、裁判員制度対象事件のうち取調べの過程を録音、録画したのは千五百六十七件中千三百九十五件と、八九%の割合で警察におかれましても取調べ録音、録画が進められておりますし、取調べの録音、録画の実施されている割合がこれは年々高くなっていっているという状況にあるということでございました。仮に警察の全施設において一台ずつ配備することができたといたしましても、本法案施行前の試行の状況を前提とした対応でございまして、法案が実際に施行されて取調べの全過程を録音、録画することとなった場合、対応し切れないということもあり得るのではないかというふうに感じました。
 先ほどの御答弁によりますと、警察におかれましても機器の整備というものは進んでいるようでございますが、全国で約千二百の警察署、そして取調べ室は約一万を超えると伺っておりますけれども、平成二十八年三月三十一日現在で、機器につきましては、先ほどお話がございましたように、千八百五十台の配備となっております。
 今後、取調べの全過程の録音、録画の義務化に対応するためにどのように配備を進めていかれるのか、また、今後どのような取組を進めていこうとお考えなのか、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(三浦正充君) 機器の整備につきましては、御質問にもございましたように、平成二十七年度末の時点で、全国において約千八百五十台ということでございます。ただ、取調べ室は、御指摘のとおり、全国で一万室以上ございまして、全ての裁判員裁判対象事件に対応していくためにはまだまだ不足でございまして、今後更に相当数の機材を整備する必要がございます。
 なお、先ほど御質問の中で、平成二十七年度上半期裁判員制度対象事件千五百六十七件中千三百九十五件と、率で申しますと八九%の実施率ということになるわけでありますけれども、これはあくまで一事件の中で最低一回の調べについて録音、録画を実施したというものの事件の比率でございまして、逆に全過程の録音、録画を実施をしたというものは最終の数字で大体五割程度にまだとどまっているところでありまして、これを施行後三年以内には原則一〇〇%、若干の例外はあるとしても一〇〇%に近づけていかなければならないということで、まだまだ、何といいますか、道半ばというように認識をしているところでございます。
 それに相当する機器の整備につきましても、今後引き続き都道府県警察において整備が進められていくということになるわけでありますけれども、国としてもこの録音、録画の制度化、これにきちんと対応できるように都道府県警察に対する必要な支援を継続してまいりたいと考えております。
○谷亮子君 ありがとうございました。現況も含めまして、御丁寧に御説明いただきました。
 国としましても、そうした都道府県の警察と協力していきながら、しっかりとした適切な運用ができるようにその取組を進めていっていただきたいとお願いさせていただきたいと思います。
 今回の改正案の一つの柱でございます取調べの録音・録画制度の創設は、捜査の透明性を高め、冤罪をなくす上で意義が大きいという御意見や、取調べを通じて作成した詳細な供述調書を過度に重視する状況を改め、証拠収集手段の適正化と公判審理の充実化を図ることができる、また、今回の改正により、他人を巻き込む冤罪が発生する可能性を低減することができるなど、前向きに評価する御意見もあります。
 一方、改正案の内容が多岐にわたるため、一括審議ではなく制度ごとに審議すべきであるとの御意見や、さらには、取調べの録音・録画制度の対象事件が殺人、放火などの裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件であり、全刑事事件の二、三%程度であるということから、対象事件が少ないという御意見もございました。また、司法取引制度については、虚偽の供述によって関係のない方を犯罪に巻き込んでしまう可能性がある、また、捜査機関による通信傍受の対象事件が拡大されるために、国民のこれは通信秘密やさらにはプライバシーが侵害される可能性があるなど、反対の意見も上がってきているという実情もございます。
 このように両方の御意見がありまして、非常に多岐にわたる問題、また内容が盛り込まれておりますので、今後も更なる審議、また質疑を求めまして、本日は質疑を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
 大臣、副大臣及び大臣政務官は御退席いただいて結構でございます。御苦労さまでした。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) この際、今崎最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。今崎最高裁判所事務総長。
○最高裁判所長官代理者(今崎幸彦君) 四月七日付けで最高裁判所事務総長を命ぜられました今崎幸彦でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 委員長始め法務委員会の委員の皆様方には、平素から私ども司法の立場につきまして深い御理解と格別の御配慮をいただきまして誠にありがとうございます。この場をお借りいたしまして、深く御礼申し上げます。
 裁判所の役割は、申し上げるまでもなく、一つ一つの個々の事件を適正、妥当に判断していく、解決していく、こういうことを通じまして国民の権利を保障し、また法の支配を実現、確保するということにございます。その役割を十分に果たし、国民の期待と信頼に応えていけますよう、様々な司法行政上の課題に取り組んでまいります。そのような所存でございます。
 昨今、民事の分野では、人々の経済活動が高度化し、また利害関係が複雑化しております。そうしたことから、判断の困難な事件が増えております。また、社会的な影響の大きな事件も増加しており、より説得力のある判断を求められるようになってきていると、このように感じております。
 裁判員制度につきましては、国民の皆様方の御理解、御協力をいただきましておおむね安定的に運営できているかとは考えておりますが、まだまだ法曹の側には検討すべき課題が多数あろうかと思っております。家族のありようの多様化あるいは少子高齢化といった情勢の進展もございまして、解決の困難な事件が司法の場に持ち込まれるという傾向は一層顕著になってきているという状況にもございます。
 このように課題は多々ございますけれども、裁判所といたしましては、国民の期待に応えられますよう、関係機関とも協力させていただきまして、より一層の適切な運用に努めてまいりたいと、このように考えている所存でございます。
 法務委員会の皆様方には、今後とも裁判所の運営の充実強化のために一層の御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、以上をもちまして就任の御挨拶とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十四分散会