第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第5号
平成二十八年十一月十六日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 十一月十五日
    辞任         補欠選任
     古賀友一郎君     宮本 周司君
     滝波 宏文君     小川 克巳君
     舞立 昇治君     大沼みずほ君
     松川 るい君     自見はなこ君
     江崎  孝君     杉尾 秀哉君
     川合 孝典君     矢田わか子君
     高瀬 弘美君     宮崎  勝君
     谷合 正明君     河野 義博君
     福島みずほ君     木戸口英司君
 十一月十六日
    辞任         補欠選任
     小川 克巳君     滝波 宏文君
     大沼みずほ君     舞立 昇治君
     自見はなこ君     松川 るい君
     高野光二郎君     徳茂 雅之君
     宮本 周司君     古賀友一郎君
     矢田わか子君     真山 勇一君
     井上 哲士君     山添  拓君
     岩渕  友君     辰巳孝太郎君
     石井  章君     藤巻 健史君
   アントニオ猪木君     行田 邦子君
     中野 正志君     中山 恭子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         林  芳正君
    理 事
                石井 準一君
                二之湯武史君
                福岡 資麿君
                三宅 伸吾君
                山田 修路君
                小川 勝也君
                大野 元裕君
                浜田 昌良君
                紙  智子君
    委 員
                小川 克巳君
                大沼みずほ君
                古賀友一郎君
                佐藤  啓君
                佐藤 正久君
                自見はなこ君
                進藤金日子君
                高橋 克法君
                滝波 宏文君
                徳茂 雅之君
                中西  哲君
                中西 祐介君
                平野 達男君
                藤木 眞也君
                堀井  巌君
                舞立 昇治君
                松川 るい君
                宮本 周司君
                山田 俊男君
                吉川ゆうみ君
                渡邉 美樹君
                相原久美子君
                石上 俊雄君
                杉尾 秀哉君
                田名部匡代君
                徳永 エリ君
                浜口  誠君
                真山 勇一君
                矢田わか子君
                河野 義博君
                熊野 正士君
                平木 大作君
                宮崎  勝君
                井上 哲士君
                辰巳孝太郎君
                山添  拓君
                儀間 光男君
                藤巻 健史君
                木戸口英司君
                行田 邦子君
                中野 正志君
                中山 恭子君
   国務大臣
       財務大臣     麻生 太郎君
       外務大臣     岸田 文雄君
       文部科学大臣   松野 博一君
       厚生労働大臣   塩崎 恭久君
       農林水産大臣   山本 有二君
       経済産業大臣   世耕 弘成君
       国務大臣     石原 伸晃君
   大臣政務官
       経済産業大臣政
       務官       井原  巧君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        藤田 昌三君
       常任委員会専門
       員        宇佐美正行君
       常任委員会専門
       員        大川 昭隆君
   政府参考人
       内閣官房内閣審
       議官       澁谷 和久君
       内閣府知的財産
       戦略推進事務局
       長        井内 摂男君
       金融庁総務企画
       局審議官     白川 俊介君
       外務省経済局長  山野内勘二君
       財務省関税局長  梶川 幹夫君
       文化庁次長    中岡  司君
       農林水産大臣官
       房総括審議官   山口 英彰君
       農林水産省農村
       振興局長     佐藤 速水君
       経済産業省通商
       政策局通商機構
       部長       渡辺 哲也君
       経済産業省商務
       情報政策局長   安藤 久佳君
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  本日の会議に付した案件
○環太平洋パートナーシップ協定の締結について
 承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、
 第百九十二回国会衆議院送付)
○環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関
 係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会
 内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)
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○委員長(林芳正君) ただいまから環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、古賀友一郎君、滝波宏文君、舞立昇治君、松川るい君、谷合正明君、高瀬弘美君、江崎孝君、川合孝典君及び福島みずほ君が委員を辞任され、その補欠として宮本周司君、小川克巳君、大沼みずほ君、自見はなこ君、河野義博君、宮崎勝君、杉尾秀哉君、矢田わか子君及び木戸口英司君が選任されました。
 また、本日、アントニオ猪木君、岩渕友君、石井章君及び高野光二郎君が委員を辞任され、その補欠として行田邦子君、辰巳孝太郎君、藤巻健史君及び徳茂雅之君が選任されました。
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○委員長(林芳正君) 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○杉尾秀哉君 民進党・新緑風会の杉尾秀哉でございます。
 TPP、アメリカのトランプ新大統領の誕生が決まりまして、このままの発効は絶望的、これは総理もお認めになられているわけですけれども、そうした状況の中での国会審議にどういう意味があるのかと思いますが、ただ、安倍政権がこの国会においてあくまで協定発効を目指すということであれば、改めて詰めて聞いておかなければいけないテーマがたくさんあるというふうに思っております。そのうちの一つについて、知財条項について私の方から質問をさせていただきます。よろしくお願いします。
 まず、配られた資料一、御覧ください。知財分野で交渉のテーブルにのせられたテーマと合意した内容を一覧表にしたものでございます。ほとんどの項目で丸が付いておりますが、これはどれもアメリカが要求したものばかりというふうに聞いております。
 つまり、今回アメリカは、知財条項において、全て要求どおりというわけではもちろんございませんけれども、取りたいものはほぼ取った、全部取ったというふうに言っていいと思っております。一方、日本は、一部セーフガードを勝ち取ったものもありますけれども、著作権の分野ではほぼアメリカに譲ったという印象でございます。
 そこで、まず石原大臣に伺います。
 日本は、聖域五項目、農産物の問題もありまして、知財分野では日本が譲歩をして、逆にアメリカが勝利したと、こういう捉えられ方が多いんですけれども、大臣の御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 知財分野は、我が国にとってもこのTPPの枠内で大変重要な分野であると認識し、交渉が行われたと承知をしております。
 すなわち、東南アジアの国々の中には、我が国のクールジャパンの一つの大きな戦略でありますアニメやあるいはプロダクツについても模倣品を作るなど、目に余るようなものが顕在化しているわけでございます。そういうものの強化を図る、硬い言葉で言いますと、商標権や著作権を侵害する疑いのある物品の関税での職権による差止め、あるいは商標の不正使用や著作権の侵害に対する法的損害賠償といった救済措置について定められており、コンテンツの海外展開にメリットがある、こういうところは実はアメリカと日本の利益というものは合致していたんだと認識をしております。
○杉尾秀哉君 私が伺いましたのは、日本が譲歩してアメリカが勝利したと、こういう世間一般の評価に対してどういうふうに思われているかということでございます。
○国務大臣(石原伸晃君) 杉尾委員御指摘の、日本が譲歩しアメリカが勝ち得た、これはすなわち交渉経緯に当たるところでございますので、ただいま御答弁させていただきましたとおり、いわゆるTPP協定の、委員が御指摘されております知的財産章十八章に基づいてどのようなことが決まり、またどのようなことがなされているのかということを御説明させていただいたところでございます。
○杉尾秀哉君 今、石原大臣、余り日本が譲歩したと認めたくないということだと思いますけれども、では、そもそも論でございます。この知財分野で日本はどういう戦略で交渉に臨んだのか、これをお聞かせください。
○国務大臣(石原伸晃君) お答え申し上げます。
 知財分野というものは、アジア太平洋地域の経済の高付加価値化と成長の鍵であり、先ほどクールジャパン戦略の中でのアニメの話をさせていただきましたけれども、それ以外にも我が国の産業競争力の源泉であると。知的財産の権利化、更に利活用、これを促進する制度を実現することが日本の企業が海外に事業展開をする上で環境整備の観点からも極めて重要である、こういう認識に立っていたものと承知をしているところでございます。
 こうした認識を踏まえさせていただきまして、TPP交渉におけます知財分野においては権利保護、まあ権利保護と利用促進、このバランスをどう取るのかということが非常に重要だったわけでございますけれども、このバランスを取れたルールを実現すべく交渉に当たってまいりましたということを御報告させていただきたいと思います。
○杉尾秀哉君 私は、今回のTPP合意によってクールジャパン戦略にそんなに大きなプラスにならないと、こういう前提で今日は質問させていただこうと思っております。具体的なことはこの後、逐次伺いますが、この知財分野も含めてTPPに対する国民の理解が全く進んでいない、この国会の論戦が始まってからもそうであります。
 例えば、おととい、NHKが世論調査を行いました。その結果、TPPの今国会での承認に賛成が一八%、反対二四%、どちらとも言えない四八%ということでございます。先般の共同通信世論調査でもほぼ同じ傾向が出ております。
 そもそもこの知財分野というのは日本の歴史、伝統、文化に深く根差すもので、これ、日本社会を根底から変えかねない、にもかかわらず、こういうふうに国民の理解が進んでいない現状、この知財分野も含めて大臣は国民への説明不足をお認めになりますでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) このTPP協定につきましては、杉尾議員も御承知のとおり、さきの国会より衆議院、そして参議院に参りまして、今日は杉尾委員より知財の話が深掘りされて御議論をされておりますとおり、御説明はできる限り丁寧にさせていただいてきたところでございます。
 しかし、その一方で、三十章になりまして、知的財産といいましても、御関心のある方は大変関心のある分野でございますけれども、全く関心のない方々もいらっしゃる。そして、国民的に見ますと、通商交渉というのは自分の生活に関係する分野に限って言うならば非常に関心が高いわけでございますけれども、ある意味ではそれ以外の方々は大変遠い世界である。
 これまでも、四千ページにわたる資料、昨日も当委員会で、資料を出しただけじゃ駄目だ、分かりやすいものにしなければならないということで、QアンドAという形で分かりやすく、また、我が党の方でも愛知政審会長を中心に参議院の側で、この私どもの内閣府でまとめたものより更に分かりやすい資料等々を作らせていただいている。
 こういう努力を続けていって、委員が御指摘されたような状態から少しでも遠いもの、すなわち多くの、一人でも多くの国民の方々が自由貿易の重要性、そして保護主義に対する安倍内閣の政治姿勢というものに御理解がいただけるよう努力をしてまいりたい、こんなふうに考えております。
○杉尾秀哉君 それでは具体的に聞いてまいりますけれども、資料一の知財条項の@に著作権等の大幅延長という項目がございます。これについて具体的に伺います。
 資料二を御覧ください。我が国の著作権などの使用料についての国際収支のグラフでございます。
 著作権料、国際的な支払額、一貫して増加しておりまして、二〇一〇年の時点で、このグラフの一番右の端ですけれども、七千二百億円でございます。このグラフにはありませんが、二〇一五年にはこれが九千六百億円に増えております。このうち、対アメリカ分が半分以上を占めておりまして、二〇一〇年には四千六百億円の支払ということです。
 一方、収入の方です。緑の線、伸びが実はほとんどございませんで、二〇一〇年の時点でも一千六百億円にとどまっております。二〇一五年、二千四百億円に増えておりますが、支払額に比べるとまだまだ圧倒的に少ない、こういう状況です。
 その結果、著作権の国際収支、下の水色の棒グラフですけれども、二〇一〇年の時点では六千億円近いマイナスになっております。これが二〇一五年には七千二百億円に増加しております。つまり、大幅な入超ということなんですけれども、そこで世耕経産大臣に伺います。
 こうした著作権分野での日本の現状をどう御覧になりますでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) お答えをいたします。
 御指摘のとおり、いわゆる著作権の収支、コンテンツ分野の収支というのは、日本は大幅な貿易赤字ということになります。これはコンテンツごとに、分野によってちょっと微妙に濃淡があるんですが、アニメとかゲームは結構健闘していて黒字ということになっています。映画は赤字であります、これはもう当然想像できるように。ただ、一番大きいのはやはりコンピューターソフトウエアのライセンス料であります。これ、我々買っているパソコンは、ウィンドウズであれアップルであれ、OSから全部アメリカ製ということになりますから、そのコンピューターソフトウエアの大幅な赤字が非常に効いていまして、我々、二〇一四年ベース、これ財務省の統計でつかんでおりますが、約八千億円の赤字ということになっております。
 一方で、米国は逆に五兆円近い大幅な黒字ということでありまして、日本は今後、成長戦略上、やはりこのコンテンツ分野をしっかり育てて、著作権収入がしっかり上がるような経済にしていかなければいけないというふうに感じています。
○杉尾秀哉君 今まさに世耕大臣がおっしゃいましたように、アメリカはこの分野で大幅な出超になっているんですね。
 今度は資料三、御覧ください。アメリカのサービス収支のグラフでございます。
 これ、縦の軸のゼロのところが収支ゼロでございまして、このゼロより上の部分、つまりその黒字の部分が圧倒的に多くて、ゼロよりも下の支出の部分、これはごく僅かということでございます。この中で、折れ線グラフになっております太い黒線で示された黒字額なんですが、二〇〇〇年を過ぎて、今コンピューターというお話がありましたけれども、IT革命の後です、二〇〇〇年代に入って急速に伸びておりまして、二〇一一年には、そこに書きました、黒字額が一千八百五億ドル、当時のレートで約十四兆円のサービス収支の黒字ということでございます。
 その内訳でございますけれども、この黄色い棒グラフの部分ですね、これが著作権使用料とライセンス料です。コンテンツ産業、実は世界全体でおよそ百二十兆円市場というふうに言われているそうなんですけれども、うちアメリカが四十兆円ぐらいを占めております。その二〇%近くを輸出で稼いでいる。一説には、ディズニーのくまのプーさん、あれだけで六千億円ぐらい稼いでいると、こういう資料もあるそうでございます。
 つまり、今、世耕大臣がおっしゃいましたように、コンテンツ産業はアメリカのドル箱であり最大の輸出産業でもあると、こういうふうに言っていいんだと思います。それだけこの知財分野においてアメリカが力を入れていったというのは分かると思うんですけど、大臣の御認識、いかがでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) やはりコンテンツビジネスをしっかり伸ばして、そして著作権による収入を増やすというのは、これはアメリカの基本的国家戦略だろうというふうに思います。
 ただ、映画とかそういったところが目立つわけでありますけれども、やっぱり一番金額で大きいのはコンピューターソフトウエアのライセンス料、これが一番大きい。実はコンピューターの黒字と映画の黒字、これが大体三対一ぐらいです。これ二つ合わせると、ほぼアメリカの著作権に関する貿易黒字の大半を占めるという形になっております。やっぱりコンピューターソフトウエアが非常に大きいのではないかなというふうに思っています。
○杉尾秀哉君 今御説明にもありました、アメリカにとってはそれだけ、いわゆるライセンスを含めた、コンピューターももちろんそうでございますけれども、重要だと。そのアメリカ、知財大国のアメリカにとって著作権の保護期間というのは死活的に重要な問題ということなんですね。
 ちょっと歴史的なことになりますけど、資料四の方を御覧ください。アメリカにおける著作権の保護期間延長の歴史をグラフ化したものであります。横軸が年代、縦軸が保護期間ということです。
 アメリカで初めて著作権法ができたのが一七九〇年、このグラフの一番左端です。以来、一貫して保護期間が延びてきております。この著作権法に劇的な変化を与えたのがアメリカ文化のシンボルキャラクターとも言えますミッキーマウスということなんですね。ゆえに、著作権法はアメリカでミッキーマウス法とも呼ばれているそうでございます。
 一七九〇年、保護期間十四年でした。それが一八三一年に四十二年、一九〇九年には五十六年に延びております。その直後、一九二八年に初めてこのミッキーマウスが世に出ました。このミッキーマウスの最初の保護期間切れが一九八四年でした。ここで保護期間が切れちゃまずいということで、その前の一九七六年に今度は七十五年に延長しております。さらに、次のミッキーマウスの保護期間切れが参ります二〇〇三年です。その前、一九九八年に法律を作りまして、現在、二〇二三年までミッキーマウスの保護期間が延長しているということなんですね。
 これはアメリカの国内法ではありますけれども、今回のTPPでも、これはアメリカの主張に沿って著作物の保護期間が五十年から七十年に延びました。
 そこで、松野文科大臣に伺います。この保護期間延長について、アメリカ側はTPP交渉においてどういう狙いがあったと思われますでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) 米国における著作権法が初めて制定されたのは一七九〇年、委員から御指摘のとおりでありますが、当時の保護期間は原則的に発行後十四年とされていましたが、以来、度重なる法改正により保護期間の延長が行われてきたものと承知をしております。
 具体的には、一八三一年、一九〇九年、一九七六年、一九九八年に保護期間延長のための法改正が行われており、一九九八年の法改正によって、現在の保護期間である、著作権者の死後七十年間、職務著作物、無名、変名の著作物については発行後九十五年又は創作後百二十年が規定されたと承知をしております。
 個別具体の著作物の著作権と米国の法改正との関係や米国の狙いについては政府として把握する立場になく、お答えすることは困難であります。
○杉尾秀哉君 今御説明されたのは私が説明したことをただなぞっているだけなんですね。官僚がそういう答弁を書いてきたからそれを読まれているんだと思いますけれども、私は大臣の御認識が伺いたかったんです。いかがでしょう。
○国務大臣(松野博一君) 米国の意図はということでございますが、先ほどお答えをしたとおり、個別具体の著作物の著作権と米国の法改正との関係や米国の狙いについては政府として把握する立場になく、お答えすることは困難だと考えております。
○杉尾秀哉君 それ、物すごく大きな問題だと思いますよ。交渉するときって、相手方の意図を読み取りながら、どうやってそのカードを切りながら最善の自分たちの利益になるかということを考えて交渉するのが国際交渉、特にこういうTPPみたいな難しい交渉は当然なんじゃないですか。そういう認識でされているということ自体私は驚くんですけれども。
 ちょっと翻って考えてみますと、先ほどクールジャパンの話がありました。石原大臣から日本の得意なアニメ等輸出が増えるというふうなお話がございましたけれども、今なぜ私が著作権の歴史についてお話をしてきたかというと、アメリカはこういう長い歴史があるんです。実は、日本のクールジャパンと言われるソフトなんかは、例えばアニメ、漫画、キャラクター、ゲーム、これみんな歴史が浅いんですよ。著作権の保護期間が延びても日本にとっては得にならないんですよ。ほとんど引っかかっているものはないんですよ。
 そういう意味では、私が冒頭申し上げましたけれども、今回のTPPの合意、知財分野での保護期間の延長については、日本にとっては全く、全くと言っていいほど得しないものだったというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。松野大臣、お答えください。
○国務大臣(世耕弘成君) やっぱりアメリカは、やはり自分のところの戦略としてこの著作権に関しては非常に重視、国家戦略として、しているということは事実だと思います。
 今回、現行五十年から保護期間が二十年延びることで、これから日本にはプラスが生まれると思いますよ。例えばですね、例えば今TPP……(発言する者あり)いや、済みません、TPP加盟国じゃないですけれども、インドでは巨人の星のリメーク版が大ヒットしていますですよね、クリケットに移し替えられて。これ、私の子供の頃ですからそろそろ五十年ですよ。あるいは、アジアでは鉄腕アトムも大変注目を浴びています。これも私が子供の頃ですからそろそろ五十年ということになりますから、やはり五十年が二十年延びるということは、日本のコンテンツにとっても私はプラスになるというふうに思っています。
○杉尾秀哉君 松野大臣が衆議院の委員会のやり取りの中で、保護期間の延長により、我が国はコンテンツ、著作権料収入の増加が期待されると、こういうふうに松野大臣も答弁されているんですよ。これ、衆議院の委員会です。
 これ実は、保護期間延長の影響による著作権使用料の、じゃ、一体どれぐらい増えて、どれぐらいマイナスになるんだ、こういう試算というのはされているんでしょうか、どうなんでしょうか。松野大臣、お答えください。
○国務大臣(世耕弘成君) これ、コンテンツの売上げというのは、これはなかなか予想は難しいと思います。例えばポケモンみたいなものが出てくれば、これ一気に何千億という売上げが立つわけなんですよ。
 ですから、これはなかなか推計というのは簡単にはできませんが、ただ、一つ言えるのは、私もアジアの国々へ行きますと、やっぱり海賊版がすごく出回っています。これ、経産省の調査では、海賊版コンテンツによる被害額の推計というのは二千八百八十八億円、二〇一四年ベースで出ています。これは、TPP発効によってこういったものは、模倣品対策とか著作権が保護されることによってこういった損害はなくなっていく可能性はあるだろうと思います。
○杉尾秀哉君 今、海賊版の話されましたけど、海賊版を多く作っているのは中国ですよ。TPPに入っていないんですよ。
 そういうことも含めて、例えば今回のTPP発効でGDP十四兆円増えると、こういう政府の試算ありますが、この中にこういう知財分野というのは入っているんですか、入っていないんですか。
○政府参考人(澁谷和久君) 経済効果分析、二・六%のGDPの増ということでございますが、これはあくまでも、関税の削減ないし引下げ、それからルール面における物流コスト、貿易に係るコストの引下げというものを外生変数として行っておりますので、知財の関係のルールについて、それを外生的に投入したものではございません。
○杉尾秀哉君 つまり、こういう十四兆円という都合のいい数字を出しておいて、こういう分野については計算できないということで逃れようとしているんじゃないですか。余りにも私はこれ御都合主義の数字だと思いますよ。農業分野のマイナスもそうですけれども、さらに、この保護期間のデメリットというのはほかにもいっぱいあるんですね。
 これを、衆議院の中でも論戦になっておりましたけれども、例えば権利処理が今でも大変なんです。私もテレビ局におりました。本当に昔の作品は、出演者もそうです、脚本家もそうです、本当にこれ権利処理って大変なんですけど、期間が延長されたら、よりその権利処理が大変になるんですよ。アーカイブとかデジタル化のビジネス、これからますます進んでいくと思いますけれども、権利処理にお金ばかり掛かって、結局使えない作品がいっぱい出てくる。
 余りいい言葉じゃないですけれども、オーファンワークスという言葉があります。つまり孤児作品ですよね。こういう孤児作品の対策というのはどこまで今回のTPPに関連して講じられているのか、松野文科大臣に伺います。いかがでしょう。
○国務大臣(松野博一君) 現在、OECD加盟国三十四か国中、著作物の保護期間が著作者の死後七十年未満であるのは我が国とカナダ、ニュージーランドのみであるところ、TPP協定の締結により、これらの国も含め、全てのOECD加盟国において保護期間が著作者の死後七十年以上となり、国際的な制度調和が図られることになります。
 また、保護期間の延長により長期間にわたり得られる収益によって新たな創作活動や新たなアーティストの発掘、育成が可能となるなど、文化の発展に寄与するという意義があるものと考えられます。
 さらに、我が国の著作物が海外においてより長期間にわたり保護されることとなるため、特に我が国のコンテンツの国際的な競争力が高い漫画、アニメといった分野を中心に、長期にわたり人気コンテンツが利用されることで中長期的な著作権収入の増加が期待されます。
○杉尾秀哉君 私が聞いているのは、そうじゃなくて、保護期間の延長というのはデメリットの方が大きいんじゃないかと、それに対する対策はどうなっているのかということを聞いているんです。
○国務大臣(松野博一君) TPP協定による権利保護の強化に加えて、権利者不明著作物を含めた著作物等の利用円滑化を図ることは、我が国の文化の発展のため重要な課題であると認識をしております。
 権利者不明の著作物については、著作権法による裁定制度があり、権利者を捜索しても連絡が取れない場合には、文化庁長官の裁定を受けて補償金を供託することにより適法に著作物を利用することができます。
 これまで、この裁定制度については、より簡便に裁定を受けられるよう権利者捜索に係る要件を緩和するなどの改善を行ってまいりました。さらに、今年度は、権利者団体の協力を得て、権利者の捜索に係る負担を軽減する方策や補償金の供託義務の見直しについて検討を行っております。
 今後とも、裁定制度の改善を通じて、権利者不明著作物の円滑な利用の確保に努めてまいります。
○杉尾秀哉君 もう一つ伺いたいんですけれども、これ、実はアメリカでもこの著作権の期間というのが大変問題になっておりまして、これデジタル化権に逆行するということで、著作権の保護期間の短縮の議論も出ていると、こういうふうに伺っているんですね。
 実は日本でも二〇〇七年に著作権の保護期間延長の話がありまして大きな論争になりましたけれども、結局弊害が多いということで見送られているんですよ、国内的な議論の末。にもかかわらず、このTPPの合意でいきなり五十年から七十年というふうに大幅に延長する。逆行していませんか。
○国務大臣(松野博一君) 今回の改正は、TPP協定の実施に伴い、国際調和の観点から、著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪等の一部非親告罪化等の措置を講ずるものです。TPP協定の締結により締結国各国において著作物等の適切な保護が図られることは、我が国の著作物の流通の促進に資するものであり、大きな意義を有するものと考えます。
 一方、御指摘のとおり、TPP協定により権利保護が強化されることに伴い、我が国において著作物の利用円滑化を図っていくことも重要です。この点について、政府の知的財産戦略本部により策定された知的財産推進計画二〇一六においては、著作物の利用円滑化に対する社会的な要請を踏まえ、デジタルネットワーク化に対応した次世代知財システムの構築の観点から、関連する著作権制度の見直し等を提言しています。
 文部科学省としても、このような方針も踏まえつつ、著作物の利用円滑化方策の具体化に向け着実に取り組んでまいります。
○杉尾秀哉君 質問に対して全く正面から答えられていないんですけれども、ちょっと時間がありませんので、もう一つ大きなテーマがありまして、いわゆるコミケなんかの例の著作権の非親告罪化の問題なんですけれども、時間を短縮して、短くポイントだけ伺います。
 これ、資料の一のAのところになりますけれども、この保護期間の延長と並んで批判が強かったんですが、今回の交渉で二つセーフガードと言われるものが入っている。例えば、商業的規模の海賊版とか、原作の市場での収益性に大きな影響がある場合に限られると、こういうふうな二つの大きな限定が付いております。これ、一定の評価をする向きもありますけれども、この規定が曖昧だという危惧がございます。
 松野大臣は、この規定は曖昧じゃないか、じゃ、何をもって、この市場での収益性に大きな影響がある場合、これをどういうふうに認定されるんでしょうか。こういう曖昧だという批判にはどういうふうに答えられるんでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) TPP協定においては著作権等侵害罪を非親告罪とすることが求められていますが、その範囲については、市場における著作物等の利用のための権利者の能力に影響を与える場合に限定することができるとされています。これを踏まえ、改正案では、非親告罪とする著作権等侵害罪の範囲を限定するための要件を定めております。
 具体的には、侵害者が侵害行為の対価として財産上の利益を得る目的又は有償著作物等の販売等により権利者の得ることが見込まれる利益を害する目的を有していること、有償著作物等を原作のまま公衆譲渡若しくは公衆送信する侵害行為又はこれらの行為のために有償著作物等を複製する侵害行為であること、有償著作物等の提供又は提示により権利者の得ることが見込まれる権利が不当に害されることとなる場合であることの全てに該当する場合に限り、非親告罪としています。
 これにより、非親告罪の範囲は正規品の販売等と競合するような悪質な侵害行為に限定されており、これらの要件に該当しない著作物の利用行為については、いたずらに萎縮行為が生ずることはないものと考えております。
○杉尾秀哉君 書いてあるものを読むんだったら、もうちょっとちゃんと読んでもらえませんか。今みたいな読み方されて、国民分かると思いますか。だって、棒読みしているだけでしょう。自分で理解されていないんじゃないですか。
 私は、規定が曖昧だから、その辺をどういうふうに担保するのかということを聞いているんですけれども。
 もう一つ、ちょっと歴史的なことだけ聞かせてください。
 この資料の五枚目なんですけれども、実は日本というのはパロディー好きな国民性だということを言う人がいます。例えば、有名な風神雷神図なんですけれども、上が俵屋宗達のオリジナルで、下が尾形光琳のオリジナルのコピーですね。これ、本当そっくりです。こういうようなことが昔から行われている。
 それから三つ目ですけれども、これはおそ松くん、有名な赤塚不二夫さんのアニメですけれども、そのリメークで、おそ松くんが成長しておそ松さんというのになって、おそ松さんというテレビアニメがありました。第一作にこの巨大なチビ太が出てまいります。おでんを持っているかどうかは、これは見ても分かりませんけれども、この巨大なチビ太は実は進撃の巨人のパロディーだと、これ、見る人が見れば誰もがそう思うんですね。この後、DVD化されているんですけれども、恐らくここは著作権に引っかかるかもしれないということで、DVD化で外されているんですよ。
 こうして、私が配った資料のコピーもそうですけれども、こういうコピー文化とかそれからコミケなんかもそうなんですけれども、おおむね、やり過ぎは良くないけれども、お目こぼしでやってきたというのが日本の伝統だと思うんです。それを非親告罪化ということになりますと、誰もがウの目タカの目で、これが著作権に違反していないかということで調べ始める。例えば、あの有名な五輪のエンブレム問題もそうです。ネットで炎上するなんということが、今は本当にもうあっという間に起きちゃうんですよね。
 そういう中で、こういう非親告罪化が、今言ったような、大臣が説明されたようなセーフガードが入っても、やっぱり制作者に萎縮の効果を、心理的な萎縮の効果をもたらすんじゃないかと、こういうことを言う人が多いです。それからあと、ネットでの炎上で、やっぱりネットで炎上したら当局が捜査に動かざるを得ない、こういう事情もあるかもしれません。
 本当に著作物、線引きが難しいと思うんですけれども、本当にこの非親告罪化の影響、特に制作者に対する萎縮効果がないというふうに言い切れるのかどうなのか、松野大臣、お答えください。
○国務大臣(松野博一君) 委員御指摘のパロディーは、一般的には原作のまま著作物等を用いることではないこと、また、市場において著作物等の正規品の販売等と競合するものでなく、有償著作物等の提供又は提示により著作権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合との要件に該当しないと考えられることから、非親告罪にはならないと考えております。
 このことから、著作権等侵害罪の一部非親告罪化により、委員御指摘のいわゆる炎上現象が助長されることはないものと考えております。
○杉尾秀哉君 時間がありませんので、塩崎大臣にもお越しいただいておりますので、一問だけ伺います。
 この知財条項のBのデータ保護ですね、ジェネリック医薬品の規制なんですけれども、これ、バイオ医薬品のデータ保護期間、これはアメリカが主張していたのよりも期間は短縮されました、八年ということでございますけれども、こうしたものが新たに設けられる。これによって、例えばジェネリック医薬企業の参入等に対して新たな障壁になるんじゃないか、こういう見方もありますけれども、塩崎大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 結論的に申し上げれば、このジェネリック医薬品の承認に影響を今回のTPPが与えるということはないというふうに考えています。
 TPPの協定は、御案内のように、新しい有効成分を含む医薬品の承認後にジェネリック医薬品を承認できない期間であるデータ保護期間というのを、今おっしゃったように、生物製剤は八年ですけれども、その他は五年以上ということになっています。我が国は再審査期間というのがございまして、これはデータ保護期間と同様の効果を持つ。したがって、これが実は従来から八年間に設定をされていました。
 したがって、TPP協定で求められた仕組みを既に持っているということになりますので、現行の制度の変更をする必要はないということで、結論的には、ジェネリック医薬品の承認に影響を与えることはないというふうに考えております。
○杉尾秀哉君 全体に、あと二分ぐらいでございますので、二問だけ聞きたいと思います。主に石原大臣に伺います。
 冒頭にもお話ししましたけど、アメリカのトランプ大統領の誕生で、TPP発効は極めて厳しい状況になった、これは総理もこの委員会でお認めになっております。そもそもこの著作権法改正、TPPが発効しないと施行されないと、こういうことになっております。
 そこで、石原大臣に伺いますが、TPPの発効が絶望的であるならば、前倒しをして法改正する意味が本当にあるんですか。
○国務大臣(石原伸晃君) 御承知のとおり、国内関連の、この知財も含めまして十一本の法律案の御審議をいただいておりますけれども、全ての法律がこのTPPの発効となりまして実行するということでございます。そういうふうに御理解をいただきたい。ですから、著作権物のものだけを取り上げてどうこうするということではないということは是非御理解いただきたいと思います。
○杉尾秀哉君 一部報道もありますけれども、このままアメリカがTPP承認しないんだったらアメリカ抜きで発効しようと、こういう動きも一部にあるという報道もございます。そして、この委員会でも何度も話に出ておりますRCEP、それから日本とEUの間のEPA、そして日中韓のEPA、こういった交渉も進められている中で、冒頭に聞きました、日本がどういう知財戦略を持ってこれからのこういった国際交渉に当たっていくのか、私は、今回のTPPの合意は日本にとってメリットよりもデメリットの方が大きいというお話をさせていただきましたけれども、こうした状況の中で戦略もなくこのまま突き進むというようなことがあってはならない。
 前倒し立法をするというのは、本当にこのデジタルを含んだコンテンツの世界というのは日進月歩でございます。あと数年たったら状況がどういうふうに変わっているか分かりません。今ここでしている議論自体が全く意味を成さない、こういったこともあります。
 発効する可能性、そして他国の立法作業を見ながら動いても私は全く遅くないと思うんですけれども、石原大臣、どうお考えでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) これは、当委員会で昨日総理が再三御答弁をされておりましたとおり、今世界を眺めたときに、やはり保護主義あるいは自由貿易圏に対する懐疑的な声がたくさん出てきているということは事実だと思います。そんな中で、この戦後の発展を、日本の発展、世界全体の発展を考えたときに、この自由貿易の持つ意味ということを世界に知らしめていく、すなわちTPPを成就させていくという形をしっかりと日本国が示すということがまた重要である。
 同じくニュージーランドでも同じ状況で、キー首相に至りましては大変厳しいと御自身が言っている中で、第三読会でこのTPPの関連法案を取りまとめ、今月中には総督の認可を得て第一号になるのではないかということも報道されているということも是非御理解をいただきたいと思います。
○杉尾秀哉君 これ、総理もそうなんですけれども、一つ同じようなこういう問題が起きると、本当壊れたテープレコーダーみたいに同じことを何度も何度も繰り返し言うんですよね。ここはやっぱり状況の変化に応じて外交というのは変わっていかなきゃいけないし、余りにも硬直的過ぎる、今の政権の姿勢はということを申し上げまして、私からの質問を終わります。
 ありがとうございました。
    ─────────────
○委員長(林芳正君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、井上哲士君が委員を辞任され、その補欠として山添拓君が選任をされました。
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○矢田わか子君 民進党・新緑風会の矢田わか子です。
 TPPの論議、更に深めたいとの思いから、今回は、労働分野そして共済分野、併せて中小企業の海外進出の観点から質問をさせていただきたいと思います。
 まず、大前提として、杉尾議員からもありましたとおり、アメリカ大統領選挙の結果とTPP批准の動向について伺いたいと思います。
 さきのアメリカ大統領選挙の結果、本当にこのTPP協定の批准が今後どうなるのか、全く見通しが立たない状況です。一方、我が国では、衆議院で強行的な採決が行われ、そして参議院においても、今日現在、こうして論議を深めるということのための審議を行っております。
 しかしながら、例えば、九四年に発効しました国連海洋法条約という条約があります。これは領海や排他的経済水域、海洋環境の保全などを規定した国際的に非常に重要な条約でありますが、アメリカは、当初条約締結に主導的な役割を果たしてきたものの、最終的にはこの条約を批准しなかったという過去があります。
 アメリカが条約を批准しないという選択は十分にある、いえ、その可能性の方が高いとも言えます。この場合、日本政府として、このリスク管理の一環として、対外的な対策と国内的な対策、どのように講じられようとしているのか、まずはお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(石原伸晃君) 先ほど杉尾委員にも、安倍内閣の政治手法、またこのTPPに関する議論が画一的で状況の変化に対応できていないというお叱りを受けたんですけれども、やはり真実は私は一つだと思います。自由貿易そして保護主義に対峙していかなければならない、その意思を立法府も含めて日本国が示すことの重要性というのは、もちろん様々なお考えがございますから、そうでない方もいらっしゃいますけれども、私たちは絶えず持っておりますし、この信念に揺るぎないものだと、そのように御理解をいただきたいと思います。
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 それでは、なぜアメリカ国内でTPPの反対が大きな流れとなり、両大統領候補の公約となったのか、このことを我が国としても理解をしておく必要性があると思っております。
 アメリカのTPP反対運動の中核組織は労働組合でした。特に製造業の労働組合であります。彼らは、九四年にアメリカがカナダ、メキシコとの間に締結した北米自由貿易協定がその後の米国の雇用市場を縮小させ、賃金上昇も抑制したと考えているのであります。ドイツや日本や韓国の自動車メーカーがメキシコで自動車を生産し、アメリカへの輸出を拡大させてきたのは事実であって、アメリカの製造業の労働者にとっては自由貿易協定は何らのメリットをもたらさない、それどころか、自分たちは被害を被ったのだという意識が強いのだと思います。
 自由貿易協定、経済連携協定というものは、貿易自体を拡大させてはいきますが、一方で、比較劣位にある産業をより厳しい状況に追い込むわけでもあります。このことは日本にとっても他人事として見過ごすわけにはいかないと思っています。
 TPPが仮に発効すると、今後、韓国や台湾、タイ、フィリピン、そしてインドネシアなど、現在技術力を持って高めている国々、低コストで製品を作る能力を持つ国々がTPPに加盟してくることとなり、農業だけではなく、生産性の低い産業、業種は打撃を受けることになります。工業製品やサービス業が完全に自由化されている我が国において、この比較優位産業の維持発展を図り、さらに生産性の向上を上げていかないと、今日のアメリカと同様な運命をたどるのではないかと懸念されます。
 このTPP発効を契機に、将来にわたって我が国の産業と雇用を守るという基本姿勢を示すべきと考えますが、見解を伺えますでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) ただいま矢田委員が御指摘されました点は、これは安倍内閣も同じ気持ちでございます。国内の産業の空洞化、すなわち、東南アジアのエマージングカントリーの勃興によりまして、安い労働力を求めて日本の企業が海外に展開していった事実、それに伴いまして、各地の地場産業といったような、例えば繊維などもいい例だと思いますけれども、消失をしていった。また、矢田委員の御出身の電機、一九七〇年代、八〇年代を含めて、世界をほぼ一〇〇%と言っていいくらい、日本のパナソニック、ソニー、東芝、日立、こういう家電製品があっせんしていったわけですけれども、安い労働力で韓国が台頭してきたということは事実でございます。
 その一方で、私どもは立ち止まって考えなければなりませんのは、実は人口減少社会、生産性の向上を図らなきゃならないという矢田委員のお話の中にございましたとおり、働く者の人間が少なくなってくれば経済発展にはマイナスに機能いたします。もう人口が多いとき経済発展しているというのは、過去の歴史が新しく示している事実でございます。
 こういうことを考え合わせたときに、やはりフリートレード、そして共通のルールを日本が主導して作って、この権益、東太平洋のこの広い地域において、GDPでいいますと世界の四割でございます。また、人口も八億人いる。さらに、加盟をしたいという国々もある。こういうものを作っていく意味も重要であるということも是非御理解をいただきたいと思います。
○矢田わか子君 ありがとうございました。
 次に、TPP協定とILO達成の課題について触れたいというふうに思います。
 TPP協定において加盟国間の競争条件をより平準化し公正な交易体制をつくることは、我が国にとって大きな意義があると思っております。今回のTPPの合意の文書では、ILOが九八年に採択をした労働における基本的原則及び権利に関する宣言とそのフォローアップに述べられております諸権利、いわゆる中核的労働基準を自国の法令及び慣行において採用、維持するとしています。ILOは、とにかく各国ともこの中核的労働基準だけは早く国内法を整備しなさい、批准しなさいと主張し続けているわけであります。しかし、配付した資料、御覧いただいたら分かるとおり、TPP加盟予定の十二か国の批准状況、大変まちまちであります。
 昨年のTPP大筋合意の際に、フロマン米通商代表は記者会見で、このTPP合意はこれまでの貿易協定で最も厳しい労働基準を確立したと、そういうふうに自画自賛されていますが、何とそのアメリカ、御覧いただいたら分かるとおり、中核的労働基準の八本のうち六本の条約は批准していない、そんな状況にあります。また、日本も残念ながら二本については批准しておりません。
 この二条約の未批准問題については、昨日民進党川合委員からも質問されましたので、本日は触れません。問題は、TPP政府対策本部が出している分野別ファクトシートにおいて、我が国では既に本協定において求められている労働者の権利は基本的に確保されており、我が国の労働関係制度の変更は求められていないと言い切っていることであります。しかし、我が国は、公務員の労働基本権の制限のほかにも、長時間労働や自殺者が出るほどの過重な労務が強いられている実態、非正規労働者の拡大や労働面の格差拡大、続いているのであります。
 是非、一日も早く働き方改革を実現いただき、国内法の整備をして、中核的労働基準に関する条約を批准をしていただきたいと考えます。このことについては、今回は強く要望ということにとどめさせていただきたいと思います。
 一方で、続いて、相手国の労働条件の向上への支援の在り方をお伺いしていきたいと思います。TPP域内の労働基準、労働条件の引上げに関してです。
 米国は、今回のTPP交渉において、実は、一つ目には米国とベトナムの間での貿易と労働関係向上のための計画、二つ目には米国とマレーシアの間の労働整合性の計画、そして三つ目には米国とブルネイの間の労働整合性の計画という三つの二国間条約を締結しています。この合意に基づき、アメリカは、労働関係法の整備とその法令運用に関わる能力開発の政策、あるいは政策立案における透明性確保などについて協議、支援をしたり履行状況を評価する委員会の設置なども決めております。
 このようなアメリカの対外的な政策は、低賃金、低労働条件の国に工場や事業が移転して国内の労働力が流出してしまうことを防止したいという、そういう意図が背景にあると思いますが、それでもこうした相手国の労働条件の向上を支援する姿勢には一定の評価ができると思います。
 一方、日本政府は、総合的なTPP関連政策大綱において、海外展開先のビジネス環境整備として、制度構築や人材育成等、幅広い分野における協力及び能力開発を行うことで、TPP協定の実施及びTPP協定の利益の拡大を支援するとともに、日本からの投資や日本企業が進出しやすい環境整備を図るという対応のみにとどまっております。
 これまでも厚生労働省としてILOの任意拠出による国際協力やアジア開発途上国の人事・労務管理者育成事業などを行ってきましたが、今回のTPP協定に関連して更に具体的な政策があれば説明をしていただきたいと思います。特に、今後大きな経済成長が見込まれるマレーシアやベトナムに対して、労働基本権の確立から労働安全衛生面での規制強化に至るまで、労働条件の向上について積極的に支援をする、その予定があるのかどうか、政策を考えておられるのであれば、御見解をお願いします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 発展途上国、開発途上国において、高い経済成長が見られるにもかかわらず働く方の適切な保護が図られていないというそういう課題があるということで、日本がそういう形で協力をしっかりしていくべきだと、こういうお考えかと思います。
 こうした課題に対応していくために我が国としても、ILO等の国際機関への拠出を通じてアジア地域の発展途上国に専門家を派遣を既にしてきているところでございます。具体的には、安全衛生水準の向上に向けた自主的な取組を強化するためのベトナムあるいはカンボジアにおけるセミナーの実施、それから雇用保険などの社会保険制度の整備、これはベトナムで支援をしてきております。健全かつ協調的な労使関係を構築するためのワークショップ、これは主にASEAN諸国の中で取り組んできたところでございます。
 今お話がありましたベトナム、マレーシアなどのもう少し具体的なということでありますが、TPP協定の労働章においては、働く方の基本的な権利を採用、維持することに加えて、安全衛生等について各国が受入れ可能な労働条件を採用、維持することを規定をされています。このため、他の参加国においてこうした権利や労働条件が確保されることが必要だと考えておりまして、途上国における働く方の環境改善を支援するため、日本としても従来から、先ほど申し上げたとおり、TPP協定の参加国のうちで関係が深いベトナム、マレーシアなどにおいて安全衛生水準の向上に向けた自主的な取組を強化するためのセミナーを実施してきております。
 さらに、今年度からは新たにTPP加盟国における労働環境水準の向上事業といたしましてベトナムを対象に、ILOに集積をされた知識、経験に基づく労働法制整備などの支援を日本政府としても進めてまいりたいというふうに考えております。
 引き続きこうした事業を通じて、ベトナムあるいはマレーシア、その他のアジアの国々における働く方の環境の整備を構築するための貢献をしてまいりたいというふうに思います。
○矢田わか子君 ありがとうございました。
 引き続き実効性の上がるお取組をお願い申し上げたいと思います。
 続きまして、今後の域内の労働移動の在り方と外国人労働の活用問題について伺いたいというふうに思います。
 TPPが自由貿易圏の形成を理念としているからには、今後、アメリカで例えば不法入国の問題や、日本も厳しい入国管理を行っていますけれども、今後については人の行き交いの自由、特に労働の自由な移動についても論議を深めていかなければならないというふうに考えております。しかし、TPP協定では、ビジネス関係上の受入れの促進といった程度に今とどまっております。
 現在、日本においては、昨年十月時点で約九十一万人の外国人が就労しているとされています。そして、今日、技能実習生の受入れ拡大、これは介護の分野や、これからオリンピックに備えての建設分野ということに限定されておりますが、そういったことを始め、外国人労働者の活用の方向が徐々に明確になりつつあると受け止めております。いずれは、ただ、単純労働の分野での外国人労働の受入れについても本格的に議論がなされるのではないかと思っております。
 外国人労働者を受け入れるに当たっての課題は、どうしても低賃金相場を形成する懸念があるということ、あるいは外国人労働者が劣悪な労働を強いられたり人権がじゅうりんされるということも想定されます。いえ、実際にその問題はもう既に起こっているというふうに認識をしております。ひいては、これらが日本人労働者の労働の質をも低下させる、そんな要因にもなるのではないかという懸念であります。
 今後は、日中韓のFTA交渉を始め、様々な国とのFTA協定に向けた交渉が行われることになりますが、日本政府としても、今回のTPP協定の批准を機に、この外国人労働者の受入れ問題について明快に方向性を打ち出していかなければならないと考えますが、今後の方針や展望について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。ああ、済みません、厚生労働大臣、お願いします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 厚生労働大臣としてお答えを申し上げたいと思いますが。
 御案内のように、経済社会の活性化という観点から、これまでは専門的、技術的分野の外国人の働く方々の就業というものを積極的に進めるというのが基本方針でございました。この専門的、技術的分野とは評価されない分野についての受入れの問題について今御懸念を示されたというふうに思いますが、我が国の労働市場あるいは国民生活全体に与える影響というものも極めて大事であります。したがって、幅広い観点から今後議論をしていかなければならないというふうに思っておりまして、これは日本再興戦略二〇一六、二〇一六年、今年の成長戦略、この中で外国人材の受入れの在り方について書かれているわけでありまして、真に必要な分野に着目をしながら、今後は総合的かつ具体的な検討を進めていくこととしております。
 したがって、大事なのはやはり国民的なコンセンサス、これが大事だと思いますので、政府全体としてこの国民的コンセンサスを踏まえながら検討を深めていきたいというふうに思います。
○矢田わか子君 真に必要な分野というお答えがありましたので、そこについても国民的な論議をしながら必要な分野のあぶり出しをお願いしたいというふうに思っております。
 続きまして、少し視点を変えまして、TPP協定と金融問題、特に共済制度との関係についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
 今回のTPPにおいては、金融サービスは重要な項目として各国からも注目されております。各国間における金融サービスの相手国への進出に関して様々な障壁を取り除こうという協定内容でもあります。この金融サービスに関しては、以前よりアメリカは我が国の郵政事業について様々な要望を出してきました。そして、今回、かんぽ生命の事業に関し、TPPの枠外で日米の並行協議、交渉が行われ、かんぽ生命の日本国内における保険販売について、日本郵政の販売網を通じて外国の生命保険を含む民間の保険商品を取り扱うことができるなどの合意がなされました。
 既に日本郵政はアメリカの生命保険会社とがん保険の窓口販売を行っていますが、この日米並行協議の結果は、アメリカ側がかんぽ生命に対して競争条件の適正化を強く求める姿勢を貫いたもの、裏返せば日本が譲歩したとも受け止められていますが、政府としてこの結果についてどのように評価されるのか、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) TPP交渉と並行して行われました日米並行交渉につきましては、外務省が責任を負っておりますので、私の方からお答えをさせていただきます。
 日米並行交渉の結果、保険等の非関税措置に関する日米並行交渉に係る書簡、いわゆるサイドレターというものがまとめられたわけでありますが、このサイドレターの中身は、日米並行交渉におけるこの保険分野の交渉において、かんぽ生命による我が国での保険の販売に関しまして、我が国として既存の国内法令を適切に実施していくこと、これらが確認をされたものであります。
 要は、従来、我が国において国内法令上行われていること、そして行うことが決まっていること、これを改めて確認して文書に盛り込んで、それを日米双方で受入れ可能な形ということで合意をした、こういったものであります。よって、内容において、何か新しいものを約束したとか、新しい義務が生じた、これは全く含まれておりません。
 よって、この交渉結果によっても、我が国の御指摘の分野についても特段の影響がある、こうしたことはないと考えています。
○矢田わか子君 それでは、一方で、TPP協定では扱われなかったんですが、金融分野で気になっていることについて、共済の問題があります。
 在日米国商工会議所が貿易の障壁として毎年取り上げているのがこの共済の問題であります。アメリカはこれまで共済を民間保険会社と同等の規制を課すべきであると要求してきました。その主たる対象は、JA共済、全労済、生協共済など事業規模の大きいものを想定しています。
 既に我が国の共済については、二〇〇五年と二〇一〇年の保険業法の改正によって共済も保険業法上の規制が課せられました。この措置により、小規模の任意の共済事業の多くが廃業に追い込まれることもありました。契約者保護と市場における競争条件の適正化という政策目標の下で、共済事業は健全な経営体として発展してきたという経過があります。
 しかし、今後、WTOやTPPの枠外で、アメリカは更に共済への規制強化を主張してくることも考えられます。これは、米韓FTAにおいて実際に韓国の四大共済全てへの規制が強化されたという経過を見れば、現実味を持った話だとも言えます。
 我が国の共済は、米国の共済と同様に、共に助け合う協同組合の事業として発展してきたものであります。組合員総数、二〇一四年度現在で七千五百五十八万人を超えている、国民の七五%相当の方が関連しているというものでもあります。
 こうした共済事業、市民、労働者にとってとっても重要な生活インフラでもあるもの、この事業に対する政府の今後の対応方針についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(石原伸晃君) 矢田委員にお答えしたいと思います。
 委員が御指摘されましたとおり、共済は日本に根付いた大変重要な制度であるということには私ども政府も同意をさせていただいているからこそ、その制度がずっと続いているんだと思っております。
 そこで、TPP協定にこの共済という話があったのかということでございますが、金融サービスは十一章でございますけれども、十一章の一条で「「金融サービス」とは、金融の性質を有する全てのサービスをいう。」と、このところで共済ということを読み込んでいて、特に共済を芽出しして規定は存在しないわけでございます。
 そもそも、我が国の共済制度というのは、WTOのサービス貿易に関する一般協定やこれまで結んでおりますEPA、FTAとの整合性の中でも、どこからも文句が言わないで運用されてきております。
 したがいまして、共済特有の規定を持たないこのTPP協定によって、委員御懸念の全米、在日の商工会議所が言っているような共済制度の見直しが求められることはないと考えております。
○矢田わか子君 是非とも、この皆さんの、国民の生活に根付いている共済について、これから、懸念ないというふうなことでありますけれども、様々なリスク管理を含めて対応策を事前に御用意いただければというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。
 続きまして、最後の質問になります。TPPと中小企業の海外進出への支援についてお伺いをしていきたいというふうに思います。
 関税の撤廃、資本の移動の自由化、様々な規制の緩和、撤廃によって、より自由、公正に域内の貿易・投資を拡大させていくことがまさにTPPの最終的な目的であると思います。海外市場への展開は、人口減少による国内市場の制約を乗り越え、製造業や第三次産業の将来を大きく左右するものでもあり、特に我が国の中小企業、海外進出の展開には大きな期待が寄せられております。
 課題は、中小企業の海外進出に関しては、既に二〇〇〇年代に入って経済産業省による支援策も強化され、東南アジア諸国とのFTAの締結の下に、実際に、中小企業の輸出も海外への子会社の保有も増加し続けている現状にあります。TPP協定署名の十二か国のうち、既に日本は、オーストラリア、ニュージーランド、ペルー、チリ、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、この八か国と経済連携協定を締結しております。この間、様々な成功事例もあれば、撤退を余儀なくされた失敗事例も蓄積されていると思います。
 こうしたことを踏まえて、今回のTPPを契機に、これまでのFTAとは違い、どのような更なる支援策を講じていく御予定があるのか、世耕大臣よりお願いをします。
○国務大臣(世耕弘成君) 今委員御指摘のように、やっぱりこのTPPを契機にして日本の中小企業がしっかりと海外展開を更に加速化していくということが非常に重要だというふうに思っています。
 今までの各国とのEPAとは違って、今回のこのTPPというのは幾つか違う側面があると思っています。
 まず一つは、今までのEPAは各国とのバイの締結になりますけれども、今回はマルチの協定であるということで、域内のルールが統一される、これが非常に大きいと思っています。中小企業は、各国別の法律を理解したり、そのための弁護士をそれぞれ雇ったりとか現地の法律事務所と契約したり、なかなかそういう手間が掛けられないわけでありますが、今回このルールが統一されたことによって、中小企業が海外展開する上でのハードルがすごく低くなったと思います。
 ほかにも、このTPPは今までのEPAにはちょっと欠けていた部分が幾つか入っています。まず一つは、模倣品対策。これも、中小企業でも二割ぐらいが模倣品に困っているという調査結果もありますが、こういったことに対する対策がきっちりと明記をされたということ。それと、あと通関手続ですね。やっぱりこれ、国によって意地悪されるんじゃないかとか、ずっと港に留めておかれるんじゃないかと。これも中小企業にとってそんなことになったら大変な負担になるわけですけれども、今回のTPPでは通関をスムーズにやる、原則四十八時間というルールも入りました。これも中小企業にとってはプラスだろうというふうに思っています。
 しかし一方で、中小企業から見て、これから今まで海外でやったことない、ビジネスをやったことない人たちにどんどん行ってほしいんですが、やっぱりこれから初めて海外展開をこのTPPを契機でやるとなったときに、一体どういうパートナーと組めばいいのか、現地のこの会社は信用できるのか、こういうこと全然分かりません。あるいは、そもそも社内に英語をしゃべれる人材がいてない、あるいは英語で契約を結んだような経験も全然ない、これどうしたらいいのか。あるいは、現地の販売拠点を、どうやって不動産の賃貸の契約をしたらいいのかとか、これも全然分からない。そういう中小企業、こういう人たちにはやはりきめ細かい支援が絶対に必要だと思っています。
 経産省では、ジェトロですとか中小企業基盤整備機構などの機関と連携をして、今年二月に新輸出大国コンソーシアムを設立をいたしました。ここには海外ビジネスに精通した専門家が結集をして、中小企業の海外での事業計画の策定ですとか、あるいは現地での商談ですとか店舗の立ち上げなどのサポートを行わさせてもらっています。十一月十一日時点で二千百六十九社に対して支援を開始しているところであります。
 これからも、TPPを契機として、中堅・中小企業の海外展開をしっかりと応援してまいりたいと思います。
○矢田わか子君 ありがとうございました。
 多くの、二千百六十九社ということで、中小企業が既に加盟をしているということでもありますが、でも中には、まだこうしたこと、経済産業省がこれだけの支援をする体制を整えたということすら知らない中小企業もあるのではないかと思われます。その辺のPRというか情宣についてはどのような方策をお取りでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) なかなか、御指摘のとおりだと思います。役所の広報というのは、私もずっと問題意識持っていますけれども、チラシを作りました、ポスター貼りましたで終わりがちなんですが、そうならないように、全国の商工会議所とか商工会を通じてしつこく、こういう仕組みありますよということをしっかりお伝えをしていく努力をずっと続けていきたいと思います。
○矢田わか子君 日本はやはり中小企業がほとんどです。様々なすばらしい物づくりの力や技術を持っている会社はたくさんいます。海外に進出することによって、今ある景気の打開策、自分の事業を拡大するようなチャンス、是非とも皆さんに公平に与えていただけるような仕組みづくり、そして情宣の在り方を今後とも強化していただきますようお願いを申し上げます。
 そして、最後になります。
 関連して、TPPの今後を展望する際にFTAがもたらした成果というものを評価し、そして我が国が自由貿易体制を堅持していくという意思をより鮮明にすべきであると考えます。この際、最も懸念されるのが、北米経済連携協定を背景にしたメキシコやカナダへの投資効果が今後とも維持されるかどうかということであります。
 例えばNAFTA、本当に後退することはないんでしょうかということ。それから、昨日の報道で、トヨタという大きな企業がメキシコで大規模な工場を建設する起工式を行っているというニュースもありましたけれども、こうした大手メーカーもそうですけれども、中小企業も多くがメキシコへもう既に進出を行ってきており、今後のアメリカの対応によっては日本の産業が大きな打撃を受ける、その可能性もあります。
 やはり海外進出においては、様々なこうしたカントリーリスク、それも含めた対応を考えていかなければいけません。想定外の事態が起こり得るという前提に立って政府としては何かこの対応策を確立していかなければ、中小企業も安心して海外進出をするという決断ができないのではないかと思われます。このことに関し、世耕大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(世耕弘成君) 御指摘のNAFTAについては、私も大変心配しております。
 特にメキシコには、日本企業、九百五十七社が進出しています。特に自動車が、もうトヨタ、日産、マツダ、ホンダと、全部大型の投資を行っています。御出身の電機・電子産業は最近ちょっと中国へもう全部シフトをしておりまして、パナソニックさんもテレビ造っておられたんですが、最近は換気扇の生産拠点に変えられているということでありますけれども、いずれにしても、これは日本企業にとっては大変な、万が一アメリカがNAFTAから離脱ということになったら大打撃になると思います。
 ただ、一方で、これアメリカ企業もNAFTAで非常に裨益をしているわけです。そして、ひいてはアメリカ国民も裨益をしているわけでありまして、アメリカの企業、国民自体が非常にこれ脱退ということになったら大変なことになると思いますね。ですから、これから新政権の中で、あるいはアメリカ議会で、あるいはアメリカ国民の間でこのNAFTAの問題についてはしっかりとした議論が行われると思いますから、それはしっかりと見ていきたいというふうに思います。
 これ、ブレグジットもそうですけれども、最近、先進国と言われる国でもちょっとびっくりするようなことが起こるわけでありますけれども、中小企業を中心にジェトロ等を通じた情報提供とか相談体制の構築とか、こういったことをきめ細やかにやっていくことで我々としても支援をしたい。
 貿易保険は、これはさすがに革命が起こったとか急に全部法律変えられたとか、そういうことが前提になるのかなというふうには思っておりますけれども、いずれにしても、アメリカ、イギリスでも大きな変化が起こっている中で、日本企業がしっかりとビジネスが展開できるようにサポートしていきたいというふうに思っています。
○矢田わか子君 ありがとうございました。
 悲観的に考えて楽観的に行動せよというような言葉もあります。是非ともリスク管理ということを一つのキーワードにしていただき、これからも様々な視点から国民的な論議を深めていただきますようお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○河野義博君 公明党の河野義博です。
 TPP協定、世界のGDPの約四割、人口八億人という自由で公正な巨大市場をつくる議論でありました。日本は途中から参加したわけでありますが、にもかかわらず、議論を大きくリードする形で最終的には合意にこぎ着けたこと、これは非常に意義深いことであったと承知をしておりまして、関係者の御努力に感謝を申し上げる次第であります。
 交渉結果も、様々な議論はありますけれども、日本政府はよくやったというふうに私思っています。国際交渉でありますので日本だけがいい思いをするというのはあり得ませんし、マルチの交渉でございます。勝った負けたがある中で、バランスのいい落としどころに持っていっていただけたんじゃないかなというふうに感じております。攻めるところは攻める、守るところは守る、そして守り切れなかったところにはしっかり国内対策をやっていくというこの政府の方針も、これ以外道はないんだろうなというふうに思っております。
 個人的な見解になりますけれども、日本という国は、今までは決められたルールの中でこのルールを守ってうまくビジネスをやってきた、こういう能力にはたけていたんだろうと思うんですけれども、そもそも自国に有利なルールを作って楽な環境で仕事をするというところはなかなかうまくいっていなかった。しかしながら、このTPP協定、日本がリードする形でバランスよく収めることができた。本当に日本政府が果たした役割というのは非常に大きいと私は評価しております。
 人口減少社会でございますので、大幅な内需拡大はもちろん見込めません。当然、我が国の経済成長のためには、海外の経済成長を取り込んでいく、また、国内でイノベーションを起こし続けていくという以外にないわけであります。そのためにTPPをどう生かしていくのかという、そういう観点で今日は議論させていただきたいと思っておりまして、輸出拡大、事業者へのメリット、また万が一紛争が起こったときの手続、こういったところを中心に質問させていただきたいと思っております。
 まず、石原大臣に伺います。
 輸出拡大に資するTPP協定という観点でありますけれども、大臣は過去の御答弁で、TPP協定によって我が国の輸出額、総額拡大がおよそ三兆円と見込んでいるというふうに御答弁されています。具体的にTPP協定がどのように我が国の工業製品や農業製品の輸出拡大に資するのか、また三兆円の根拠と併せてお伺いします。
○国務大臣(石原伸晃君) 河野議員がこのTPP協定の結果について非常にニュートラルに適正に御判断をいただいたと思います。
 そんな中で重要なのは、自由貿易でございますので輸出が増えないことには、また輸入も当然増えますけれども、経済のパイが大きくなっていくということはなかなかあり得ない。その一つは、やはり関税撤廃に加えまして、先ほど世耕大臣の方から、中小企業が税関で物を留められてしまったら商売にならないという話があったように、通関手続の迅速化、もう四十八時間以内という原則でございますし、地理的表示の海外での保護、先ほど来議論になっております模倣品、海賊版ですね、これの対策の強化といったTPPによる新たな共通ルールは、やはり大企業だけではなくて、地方の農業者の方々や中小企業にとっても販路を拡大する大きなチャンスになってくるんだと認識をしております。
 また、これまで原産地規則では、海外に、部品ですか、こういうものを供給する企業にとっては、先ほどメキシコの話が大分出ておりましたけれども、メキシコで生産をしなければならないというようなケースもあったと思うんですね、親会社が行ってしまいますと。しかし、交渉の結果、このTPP締約国の十二か国のどこで生産しても実はメード・イン・TPPと、こういう形になりまして、関税引下げのメリットを受けることが可能になります。
 したがいまして、もちろん海外に出ていく方々、海外に輸出をされる方々もそうでありますけれども、その下に二次、三次、四次、また下請の方があって、そこに部品などを供給する企業にとりましても実は我が国にいながらしてTPPの恩恵というものは回ってくるんだと思っております。
 先ほど、世耕大臣が詳しくお話をいただきましたけれども、新輸出コンソーシアム、中小企業の方々だけではなくて、農業に関係する方々、農産品を加工している方々も海外にこの機会に出ていこうと多く問合せをしているということも伺いましたし、そんな中で、経済分析、これはダイナミックモデルと違いまして仮定を置かないで、こういう、こうであるならばこういうことが起こる、発生するであろうという経済モデルですけれども、これを使いまして、我が国が新たな成長経路に移行した時点で実質GDPの水準、これは二・六%、大体世銀も二・五%程度と言っておりますのでほぼ同じだと思いますけれども、そのうちの今委員御指摘の輸出拡大の寄与は〇・六%程度と見込んでおりますので、その年度のGDP、三兆円という数字を使わせていただきましたが、二〇一四年度のGDPにこの〇・六というものを掛けさせていただきまして、およそ三兆円と申し上げた次第でございます。
○河野義博君 関税を下げる、そしてフェアなルールを作ることによって輸出が拡大する、必然でありまして、しっかりと政府としても後押しを引き続きいただきたいと思っております。
 具体的な話に移ります。
 コンテンツ産業、具体的にはテレビや映画、音楽、アニメ、ゲーム、世界市場における日本由来のコンテンツ産業、これは海外展開を支援していかなければなりません。政府委託調査によりますと、コンテンツビジネスの海外市場規模は二〇一四年時点で約六十兆円、二〇二〇年までに約七十五兆円に拡大すると言われている大変重要な産業です。
 我が国のコンテンツは、世界各国で高い人気を博しており、今後より一層の海外展開が期待されています。その一方で、様々な侵害行為が後を絶たず、輸出が思うように伸びていないという状況も現実として存在しているわけであります。
 今回のTPP協定により模倣品、海賊品の取締りが強化され、我が国のコンテンツビジネスの輸出に貢献すると期待されていますけれども、その具体的な内容をお聞かせください。
○政府参考人(井内摂男君) お答え申し上げます。
 映画、アニメ、放送用コンテンツといいました我が国のコンテンツにつきましては、クールジャパンとして世界で注目されておりまして、我が国の経済成長を担う重要な産業の一つでございます。我が国のコンテンツビジネスの成長に当たりましては、海外市場からの収益の拡大が課題であると認識しております。
 一方で、委員御指摘のとおり模倣品、海賊版による被害は、経済活動のグローバル化に伴いまして地球規模での広がりを見せておるところでございます。このため、コンテンツの輸出に当たりましては、正規版の流通と一体となった模倣品・海賊版対策の推進が不可欠となっているところでございます。
 今般のTPP協定によりまして、手続や権利行使の共通ルール化でございますとか締約国におきます模倣品・海賊版対策の強化を通じまして、日本のコンテンツが知的財産侵害からより一層守られることとなります。これによりまして、我が国コンテンツが海外展開していく上での環境がより整備されまして、コンテンツの海外輸出の後押しとなることが期待されると考えているところでございます。
○河野義博君 発効後、本当にこれが実効力を持って各国で履行されているかという確認も不断に行っていく必要があるんだろうと思います。
 二〇一四年時点で、日本由来コンテンツの売上げは海外の、全世界の市場規模の僅か二・五%という推計でございました。項目別に見ていきますと、漫画、ゲームは割と取れていまして、漫画はシェア大体約三割、二七%、ゲームは一五%だそうです。一定のシェアが取れている。一方で、日本が強い強いと思われているアニメ、アニメでも僅かその市場規模は四%、市場シェアは四%しかありません。映画は一%、音楽〇・二%。プレゼンスがまだまだ発揮できていないというのが状況でありまして、良く言うと伸び代が非常に大きいという状況であります。
 政府としてどのような戦略を立てて、どういうふうにコンテンツ産業の海外輸出を推し進めていくおつもりでしょうか。
○政府参考人(井内摂男君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、政府の委託調査による推計によりますれば、海外の市場規模全体のうち我が国由来のコンテンツの売上げは約二・五%にとどまっておりまして、特に映画、アニメ、放送コンテンツといいます映像分野のコンテンツにつきましては更なる輸出拡大の余地があるというふうに認識をしているところでございます。
 政府といたしましては、我が国の経済成長にとりまして知的財産が重要であるとの考えの下で、総理大臣を本部長といたします知的財産戦略本部を設置いたしまして、毎年、知的財産推進計画を決定し、政府全体として知的財産戦略を推進しております。
 この中で、コンテンツの海外展開につきましても重要な柱の一つとして取り上げて、アニメや放送コンテンツのローカライズの支援でございますとか放送コンテンツの海外展開支援に継続して積極的に取り組んでいるところでございます。
 また、模倣品・海賊版対策を推進することとともに、コンテンツと非コンテンツ産業の一体的な海外展開の推進を図る場としてクールジャパン官民連携プラットフォームを創設するなど、我が国コンテンツの海外展開への総合的な支援を実施しているところでございます。
 今後も、知的財産戦略の推進を通じまして、政府一体となって我が国のコンテンツの海外展開を後押ししてまいります。
○河野義博君 知財戦略ということで、知財を、売り方がもっとうまく、日本の会社が知財をうまくビジネスにつなげられるような支援をしていただきたいなと思っております。
 また、さらっとありましたが、コンテンツのローカライズ支援という、聞くと難しいんですが、翻訳して字幕付けるということなんですけれども、これは非常に大事だと思っていまして、コンテンツ産業の担い手の多くは中小企業であります。大手の出版社、映画会社なんかはごく少数のプレーヤーでありまして、中小企業が多い中でこういう分かりやすい支援というのは引き続き続けていきたいと思っておりますし、是非お願いをいたします。
 輸出拡大というのが、視点が農家や企業などの視点で、生産者側の視点で語られることが多いわけですが、当然、我が国の輸出拡大を通じた経済成長が見込めるならば、我が国の消費者にとっても益するところも多いわけであります。
 経済学的には当たり前の話なんですが、改めて政府の試算、消費者側のメリットもこれは併せて聞いておこうと思います。お願いします。
○政府参考人(澁谷和久君) 昨年末の経済効果分析では、貿易・投資の自由化が経済成長を促すというメカニズムに加えまして、消費者ないし家計にもメリットをもたらせるメカニズムを明らかにしているところでございます。具体的には、関税あるいは非関税障壁が撤廃される、引き下げられることによりまして、小売価格が低下して家計の負担が減少、実質所得が増加いたします。また、経済活動が活性化し、生産性が向上することで、賃金なども上昇し、これによっても家計所得が増加いたします。
 こうしたことが期待されますので、TPPの効果で実質GDP水準が二・六%増加と見込んでいるわけでございますが、これはすなわち家計所得の増加でもあるわけでございます。家計所得が二・六%増加するということを分かりやすく数字でお示しをいたしますと、例えば二〇一四年度の勤労者世帯の勤労収入を用いて換算いたしますと、年間十四万円弱の家計収入増ということになります。もちろん、これ以外に、商品の選択肢が増えるということも含めて、金額には換算できないいわゆる効用の増加というものも見込まれるところでございます。
○河野義博君 家計所得に置き換えられる計算可能な価値だけでも、TPPで家計所得は年間十四万円の収入増につながるという御答弁でありまして、大企業だけが得するのかと言われると、そうじゃありませんよ、中小企業もちゃんともうかるし、家計も収入が十四万円つながるんですという御答弁だと承知をいたしました。
 次に、中小企業の成長に資するTPP協定という観点から質問いたします。
 昨年十月の大筋合意を受けまして、TPP総合対策本部は総合的なTPP関連政策大綱を決めました。その中で、TPPの効果は、これまで海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業にこそ幅広く及ぶというふうにされまして、TPP効果のメリットは大企業だけじゃないよということを政府としてもはっきり訴えているわけであります。
 中堅・中小企業、特に企業数の多い中小企業の海外展開、これは多くメリットがあるんだろうというふうに思いますので、しっかり議論をしていきたいと思いますが、公明党としても昨年十一月、中小企業に対するTPP制度、分かりやすい説明、また、市場開拓のための総合的な支援対策など、中小企業が海外で活躍できる環境整備を求める提言を政府に提出いたしました。
 TPP協定が中小企業の海外展開に資するということ、また、経済産業省を中心とした海外支援施策におきましてはこれまで何度も政府から説明が行われておりますけれども、それでもなお中小企業にとって本当にメリットがあるんだろうかというお声もたくさん聞くわけであります。これまで海外展開に二の足を踏んでいた中小企業にとってTPP協定がどのように資するのか、具体的に改めて政府の説明を求めます。
○大臣政務官(井原巧君) 河野委員にお答えを申し上げます。
 中小企業の海外展開は、もう河野委員おっしゃるとおり、大変重要と考えておりまして、私も九月にペルーで行われたAPECの中小企業大臣会合に参加をしてまいりまして、我が国の中小企業の海外展開について各国へプレゼンテーションをしてきたところでございます。
 その際に触れたことでありますが、経済のグローバル化が進んでいるものの、まだまだ我が国では現時点で、大変これは意外なんですけれども、海外展開は重要ではないと考えている中小企業の割合が八割に我が国では上るという意外な調査結果も出ております。欧米と比べて消極的な中小企業が多いように思うわけですが、その要因は、一つには地理的要因というのがあろうと思いますし、あるいは言葉の壁等があるためだと考えられますが、逆に言えば、それらを克服すれば海外展開できる中小企業の伸び代は大きくあり、期待できるとも言えると考えております。
 特に、二〇二〇年にかけて環太平洋地域の市場は極めて高い成長が見込まれておりますので、中小企業が海外展開を進めていくことは、我が国の経済のみならず中小企業自身にとっても大きな意義を有すると考えております。現に、輸出をまだ行っていない中小企業の約四割が今後の海外展開に意欲を示しているという調査結果もございます。TPPは、こうした輸出をしたことがない中小企業を含め、大きなメリットをもたらすものと考えております。
 TPPにより工業製品の九九・九%について関税が撤廃されることは、我が国の輸出拡大、競争力強化につながるということでありますが、中小企業にとっては、輸出に取り組む大企業等からの受注拡大が期待できるだけではなく、自ら直接海外に輸出をするチャンスも拡大すると考えられております。
 また、これまで議論もありましたが、関税以外の様々な分野でも、例えば、一つには新興国における投資、サービスの自由化や政府調達市場の開放、二つ目には通関手続の迅速化、三つ目には電子商取引の自由化やルール整備、四つ目には模倣品対策の強化など、我が国中小企業の海外展開に大きな意味を持つルールが盛り込まれております。こうしたTPPのメリットを見据えて既に動き出している地方の中小企業も多数ございます。
 経済産業省といたしましては、TPPのメリットを最大限に活用いたしまして海外展開しようとする中小企業をしっかり後押しをしてまいりたいと考えております。
○河野義博君 様々な御説明をいただきました。海外展開に資する数多くのルールが盛り込まれまして、関税撤廃、原産地規則、完全累積制度の採用、また、投資、サービスの自由化、関税手続円滑化、模倣品・海賊版対策、様々メリットがあるという御説明だったんですが、こういった規定が具体的にどのような形で中小企業にメリットをもたらし得るのかについて、具体的に教えてください。
○政府参考人(渡辺哲也君) お答え申し上げます。
 中小企業のメリットの具体的な事例ということでございますけれども、今政務官申し上げましたように、例えば関税でございますけれども、自動車部品の関税が撤廃されますと、当然部品メーカーの輸出が拡大いたします。自動車は完成車に三万点の部品を使っていると言われておりまして、部品メーカーだけでなくて、この部品メーカーの方に更に部素材を提供される裾野の中小企業の方が国内で受注の拡大するということも期待されます。それから、もちろん国内の企業だけでなくて、直接部品メーカーの方が海外に輸出をされるというチャンスも拡大するものだと思っております。
 それから、TPPにおきましては原産地規則、完全累積という規定が導入されておりまして、域内各国で付加価値とかいろんな工程を足し上げるわけですけれども、それを全部合算していいと、そういうルールになっております。したがいまして、TPP域内で自由で効率的なサプライチェーンを構築することができるということでございます。
 関税と原産地だけでございません。政務官御説明いたしましたように、サービス、投資、例えばベトナム、マレーシアではコンビニの出店規制が大幅に緩和をされます。日本の優れた食品ですとか各地の特産品などが、コンビニエンスストアと一緒になって新興国の消費者の方にお届けすることができるということでございます。
 それから、通関の円滑化。貨物の到着から四十八時間以内、それから急送便につきましては六時間以内に引き取りなさいということが原則でございます。物流コストの削減、納入の遅延のリスクの軽減、それから中小企業の方はオンライン通販等やられていますので、こういうのも大変メリットがあると思います。
 それから、電子商取引でございますけれども、進出先の国にサーバーを設置しなさい、こういうことを要求してはいけません、それからソースコードを開示しなさい、こういうことも要求してはいけませんと大変先進的なルールが盛り込まれまして、ITを活用して日本にいながらにして電子商取引をされる中小企業の方々のチャンスが広がるということでございます。
 模倣品につきましても同様でございます。中小企業の方々がこれから海外に出ていくに当たって、大きなチャンスが広がると考えております。
○河野義博君 通関手続については控えめな御答弁をいただいたんですが、六時間に短縮するというのは非常に大きな意義があると思います。工業製品のみならず農業製品に関しても、生鮮食料品輸出したいんだけど、実質的に通関手続を遅らされて輸出ができないという国もありますので、しっかりこういったメリットをアピールしていく必要があるんだろうなというふうに思っています。
 続けます。
 政府は、今年二月にジェトロや中小企業基盤機構などの支援機関を結集して新輸出大国コンソーシアムを設立して支援を開始しました。四千社目標のうち二千社を超える応募と聞いております。中堅・中小企業に対して海外事業計画の策定や現地での商談サポートをワンストップでやろうとしているわけであります。その具体的な内容を教えてください。
○大臣政務官(井原巧君) 河野委員にお答えを申し上げます。
 先ほど四千社目標ということをお話しいただきましたが、十一月十一日の時点で日本全国の中堅・中小企業、既に二千百六十九社に対し支援を開始しているということでございます。
 お話のありました新輸出大国コンソーシアムでございますが、TPPを一つの契機といたしまして、海外展開を図る中堅・中小企業に対しまして、製品開発から販路開拓、つまり川上から川下まで総合的な支援を提供するため、本年二月に設立したところでございます。
 新輸出大国コンソーシアムの下には、ジェトロ、NEDO等の政府系の機関に加えまして、商工会議所、地域金融機関等の民間企業が中小企業等を支援する機関として結集している。つまり、縦割り行政をとにかく排除して総合的にワンストップでやろうということでございまして、支援機関ごとの対応とならないように支援機関同士が緊密に連携することといたしております。このことが一番大切だろうというふうに考えております。
 また、具体的にというお話でございますが、新輸出大国コンソーシアムの下では、海外ビジネスに精通した専門家が支援対象企業のニーズに応じて、一つには海外展開計画の策定、あるいは市場調査、現地での商談、バイヤーの選定、海外店舗の立ち上げ、基準認証制度への対応など、海外展開のあらゆる段階において具体的な支援を行うことといたしております。
○河野義博君 ワンストップサービス、非常に重要だと思います。従来、ワンストップサービスをやりますというところがたくさんあってワンストップになっていなかったという側面があったんですが、今回、省庁縦割りを廃して、みんなで集まって真の意味でワンストップやりましょうと、大変喜ばしいことだと思います。是非農業分野も入っていただいて一緒にやれたらいいんじゃないかなというふうに思っております。
 話がちょっと変わりますけれども、共通のルールを作って公正に自由貿易を促進するTPP協定、一方で、そのルールに従わない国が出てきた場合の措置もしっかり規定をされております。投資受入れ国が投資協定義務違反によって投資家に実損を与えた場合、投資家と投資家受入れ国との紛争解決手段、いわゆるISDS手続が定められています。この手続も、しっかりと国会で国の主権を脅かすようなISDS手続は認めないと決めた上で、その姿勢を貫いていただいて、いい落としどころに持っていっていただいた、しっかり交渉して結論付けていただいたと私は評価しております。
 そもそも我が国が置かれた状況を振り返っておきたいんですが、二〇一五年末の我が国の、日本が海外に直接投資をやっている残高というのは百五十二兆円です。それに対して、海外から受け入れている直接投資の残高というのは二十四兆円です。圧倒的な投資超過国でありまして、六倍の投資をやっているわけですね。受入れに対して六倍投資をしています。海外にたくさんのリスクマネーを張っている国が我が国日本でありますというのが前提条件であります。
 ISDSの手続は、投資受入れ国がTPP協定に違反して投資家に損害を与えた場合、当然紛争になります。紛争を解決する手段として、投資受入れ国の司法手続によって解決するのか、若しくは第三者機関、国際仲裁に訴えるのか、これは選択することができるわけであります。企業対国家ですから、全然パワーバランスが違うと。その中で、投資した国の司直に委ねるのか、若しくは、それが不安だったならば国際機関に委ねることができますよということでありまして、日本企業からすればこれは必要な制度でありまして、我が国にとって、圧倒的なリスクマネーの張り手ですから、マネー出している方ですから、我が国にとって非常に有効な手段であるはずのISDSなんです。
 私は、前職時代、海外インフラへの投資を行ってまいりました。当然、事業自体のリスクも見ます。また、建設リスクも見ます。資金調達リスクも見ます。でも、一つ大きなリスクは、カントリーリスクもしっかり見るわけです。制度変更をころころやらないか、いきなり革命が起きて収容されたりはしないか、そういったリスクも見込んで、なおかつリターンがあるから当然投資するわけでありまして、その制度変更リスクも織り込み済みではいるんですけれども、もし万が一何か起こったらこの国際機関に委ねて係争することができるというのは投資家にとっては非常に有り難い制度なわけであります。
 実際に、日本がこれまで締結した数多くの経済連携協定、投資協定の中はほぼ全て入っていまして、フィリピンとオーストラリア以外の協定には全て含まれていたわけです。今回、新たにオーストラリア、TPP加盟国がこのISDS条項に合意したというのは、非常に価値のある、意味のある点でありまして、これも日本政府はよくやっていただいたんだろうと私は思っております。
 一方、国会の中では、世論もそうですが、外国の企業が我が国の制度や規制を理由にこの手続で訴えをどんどんやってくるんじゃないかというような懸念がまだまだあるわけであります、実際はそんなことないんですけれども。政府は、こうした不安も一つ一つ丁寧に説明していただいて、そういうことはないんですよ、ISDSは必要な制度なんですということを改めて確認をしておきたいんですけれども、岸田大臣、まずTPP協定にISDS手続が規定された意義、そして我が国のメリットに関して改めて御確認をいただければと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) TPP協定にISDS条項が盛り込まれた意義、これは、過去、我が国が締結した経済連携におけるISDS条項の意義に通ずるものがありますので、私の方からまとめてお答えさせていただきますが、委員の方から今既に御紹介がありましたISDS条項というのは、投資受入れ国が協定に反して、そのことによって、当該国によって事業を展開している企業等が不利益を被った際に訴えることができる制度です。よって、日本の企業もこの制度を利用することができるわけです。結果として、日本の企業も投資をする際に予見可能性とか法的安定性を高めることができる。よって、この制度は我が国の経済界も大変重視しているということです。
 結果として、我が国が過去結んだ投資関連協定、それから経済連携協定、投資協定で二十三本、経済連携協定で十本あったと思いますが、そのほとんど全てにおいてISDS条項が盛り込まれています。そして、今委員の方から御紹介がありました日フィリピンEPAと日豪EPA、この二つだけISDS条項がないわけですが、これ、この二つとて、中に追加的にこれ協議するという条項があって、今現在、オーストラリアとの間においてもフィリピンとの間においても、このEPAにISDS条項を追加する協議を行っているところであります。
 こういったメリットがまず一つあるのと、それから日本が投資を受け入れるということを考えましても、これ、多くの外国企業にとっても法的安定性とか予見可能性が高まるわけですから、日本に対する投資を促進する、こういった効果が期待されます。こうした日本への投資が促進されることによって日本の経済が活性化される、こういったメリットもISDS条項を考える際に考えておかなければならないのではないか、このように思います。
○河野義博君 投資を受け入れる際にもメリットがあるということでございます。もちろんそのとおりで、本当にそのとおりだと思います。
 外国の投資家がISDS手続を利用して、我が国の様々な制度、国民皆保険とか医療保険とか、これが何か変わってしまうかのような議論が行っておられますけど、そういうことは全くありませんで、そもそもTPPの適用の範囲外の話ですから訴えられようもないわけですが、そういう議論もある。
 また、環境、食の安全に関する制度、規制、これもISDSとは全く関係ない話なんですけれども、これも関係があるような議論が起こっておりますので、しっかり説明をしておく必要があろうかと思いますけれども、こういった我が国の様々な政策や制度について提訴したり、制度や規制の変更が求められたり、必要な規制を導入できなくなるんじゃないかという不安の声もあるわけですけれども、これを明確に御説明をいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(石原伸晃君) 先ほどもう既に外務大臣の方から、ISDS、他のEPA等々でも、投資協定等々でも入っているというお話をさせていただきました。
 TPP協定の第九章十六条に明記されておりますところを読みますと、委員御指摘のとおり、環境や健康などの正当な目的のために各国が必要かつ合理的な規制を差別的でない形で行うことを妨げるものではない、いわゆる内外無差別であるならば必要な規制はしっかりと取っていきなさいということだと思っております。
 そして、委員御指摘の、また当委員会でも衆議院、参議院で出るんですけれども、このISDSによって国民皆保険の制度を改めろという声が出るんじゃないかという、どこから出てくるのか私はなかなか分からないんですが、そういうお話もあるんですけれども、我が国が必要な例外規定や留保措置を将来留保も含めてとることによりまして国内法との整合を取っておりますので、仮にアメリカが、皆保険おかしいと、オバマ・ケアをやめるからそっちもやめろなんということは絶対あり得ないわけであります。
 さらに、過去の例を見ましても、これも昨日議論になったんですけれども、日本はWTOあるいはEPA、様々な投資協定で実績があるわけであります。その実績の中で、日本の国内法規が外国の企業にとっておかしいという形でこのISDSで訴えられたことはありませんし、当然これからも日本の国内の法律というものは様々な国会での御審議を経て形を成すものでございますので、これだけ熱心に議論をする国会の中で、そのような内外無差別がうたわれているようなときに、一つの特定企業を狙い撃ちするような規制をつくるなんということは一〇〇%私はないと思うんです。
 そういうことを考えますと、日本が訴えられてもISDSで敗訴するということは可能性としては考えられませんし、結果として規制の変更を余儀なくされることや必要な規制の改廃ができなくなるということは私はやっぱり考えられないんじゃないかと考えております。
○河野義博君 明確な、明快な御答弁をいただきました。
 内外無差別であれば、環境規定、健康に関する条項というのは日本は規制をしていいというふうに書かれているわけであります。例えば、海外の投資家が持っている日本の発電所があります、隣に我が国の企業が持っている発電所がありますと。同じ石炭火力発電所なんですけれども、ある日、環境基準厳しくしましたといったときに、じゃ、外国のオーナーの発電所にだけこの環境基準、厳しい基準適用させますなんということはおよそ考えられないわけでありまして、私、地元で説明するときには、TPPお化けはいませんでしたというふうな説明をさせていただくように努めております。
 一方で、ルールとして制定してあるわけでございますので、訴えられる可能性がゼロかというとゼロじゃない。そのための対策もしっかりこれ取られているわけであります。今まで訴えられたことがないから大丈夫だとも言い切れないと思いますのでしっかりした準備は必要なんですけれども、政府は外国の企業や投資家からの提訴に備えて海外の訴訟事例の研究を行っておられますでしょうか。また、その成果を何らかの形で公表する必要があると考えますけれども、政府の考えを聞かせてください。
○政府参考人(山野内勘二君) お答え申し上げます。
 外務省の経済局には国際経済紛争処理室というものがございまして、そこでISDSに関する先例の研究、さらには情報収集等を常日頃から行っているところでございます。さらに、この関連では、ISDSの実務に精通いたしました内外の専門家を招いて研修を開催することなどを通じて、先例に基づく訴訟対応の研究等も行っているところでございます。
 さらに、こういった先例を含むISDS関連の情報については外務省のホームページに掲載しておりまして、今後とも、国民の皆様のISDSに対する理解を深めていただくべく、丁寧な説明に心掛けていきたいと思っております。
○河野義博君 引き続きよろしくお願いします。
 政府は、我が国の国際訴訟に関する体制について、国際的な紛争を解決するための政府の体制も改善、強化していくことが重要であり、関係省庁において体制強化に努めると、こういう御説明を過去いただいているわけですが、現在どのような体制、人員でそういう対策、検討が実施されているのか、確認しておきます。
○政府参考人(山野内勘二君) お答え申し上げます。
 実は、外務省経済局には従来WTO紛争処理室というものがございましたけれども、本年の四月一日付けでこれを先ほど言及しました国際経済紛争処理室というものに改組いたしました。これで人員が従来八名だったものが十五名にまで増員されております。
 かつ、この国際経済紛争処理室におきましては、対外的な経済の紛争ということで三つございますけれども、一つはWTOにおける訴訟、もう一つが各EPA、FTAにおける、若しくは投資協定における国と国の間のやつ、三つ目がこのISDSによるものでございますが、こういう三つの形態を一つに統合いたしまして扱うということにしております。
 それで、さらに、先ほど申しましたような事例の研究、さらには研修等を続けておりまして、実際に我が国が関係する紛争が仮に生じた場合には万全の体制で臨めるように準備しているところでございます。
○河野義博君 政府としても、今年四月に国際紛争処理室を設置して万全の体制を整えているということでありました。
 最後に、大分時間も押してまいりましたが、原産地規則に関して時間が許す限り伺おうと思っております。
 原産地規則において、TPP参加国内で統一されたルール及び完全累積制度が採用されました。これによって、我が国の企業はその強みをほかのTPP参加国の企業と組み合わせて効率的な供給体制を構築することができるというふうな説明をされています。また、TPPが今後更に拡大すれば、アジア太平洋におけるサプライチェーンを支える枠組みとしても有効性も一層高まるものと思われます。
 そこで、このようなTPPにおける完全累積制度のメリットについて、具体例を交えつつ、分かりやすい説明をお願いいたします。
○政府参考人(渡辺哲也君) お答え申し上げます。
 先ほども御説明申し上げましたけれども、原産地につきましては、TPPにおきまして完全累積というルールが導入されております。域内各国で、それぞれ付加価値とか加工工程とかはいろいろな場所で付けていくわけですけれども、それをもう全部積み上げてよいと、その上でTPPの特恵税率を適用されるというルールでございます。言わばメード・イン・TPPというルールでございます。
 具体例で申し上げますと、先ほどお話ございましたNAFTAでは、これまではメキシコからアメリカに自動車を輸出する場合、その部品の多くをメキシコで調達しないとNAFTAの特恵税率というのは適用されなかったわけでございます。しかし、TPPでございますと、日本で生産された部品をメキシコに持っていってメキシコで組み立てて、そこから完成車としてアメリカに持っていくと、こういう場合もTPPの特恵税率が適用されるということでございまして、例えば自動車の部品のメーカーの方は、日本で部品を生産して直接輸出をする機会が増える、こういうメリットがあると考えております。
○河野義博君 本件によって短期的に製造業国内回帰になるというのはなかなか難しいんだろうと思いますが、長期的な視点に立てば、こういったサプライチェーンも十分構築し得るんだろうなというふうに理解をいたします。
 一方で、輸出品が相手国の税関で関税優遇の適用を受けるためには、その資格を満たしていることを証明しなければなりません。TPP協定においては、輸出者側が自ら原産地証明書を作成できる制度が採用されています。従来は、原産地証明といえば商工会議所に頼んで出してもらっていた、これが、事業者が、輸出者が自分たちの手で作ることになります。
 不慣れな事業者への対策、言語の問題もあるかと思いますが、どのようなサポート体制を考えておられるのか、教えてください。
○政府参考人(渡辺哲也君) お答え申し上げます。
 原産地証明制度には、日本商工会議所などの第三者機関が発給します第三者証明制度と個々の事業者が発給する自己証明の制度がございます。TPPでは自己証明制度が導入されたところでございます。
 これまで我が国が締結したEPAにおきましては、主として第三者証明制度が採用されてきたため、必ずしも自己証明に慣れていない方がいらっしゃいますので、制度を円滑に利用できるよう細かな支援を行っていきたいと思います。
 具体的には、ユーザーに分かりやすい制度、解説書の作成や、ウエブの上で原産地の証明書を作成する、を支援するツールの整備、それから事業者向けのセミナーとか、あるいは会計士等の専門家に対する研修の実施、それから、全国各地にジェトロの貿易情報センターございますので、ここに常設の窓口を設置いたしまして、御指摘の使用言語のことも含めて、英語での証明書の作成の御支援とかアドバイスとか、そういう丁寧な体制を整備しているところでございます。
○河野義博君 終わります。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 私からは、先ほども話題になりましたが、ISDS条項について伺います。
 ISDS条項はTPPの中核的規定の一つとされています。外国投資家が、投資協定に違反する投資先国の政府の行為について、その投資先国の政府に対して損害の賠償を求め、国際仲裁に付託できるようにするものだと。
 TPPにISDS条項を盛り込むことについては、オーストラリアの前の政権が強い反対を示し、あるいは環大西洋のTTIPでも、フランスやドイツの閣僚、EU議会の第二会派などからも反対の意思が示されてきました。アメリカやヨーロッパの市民団体からTPPやTTIPのISDS条項について相次いで懸念が表明されています。
 日本でも、日本政府が訴えられることはないのかと懸念する声があります。訴えが認められれば、国民の税金から多額の賠償金を払うことになり、賠償請求を避けるために現在の法規制を改めたり、あるいは新たな規制の強化をためらったり、国民の命と暮らしを守るルールを後退させることにつながりかねないからです。しかし、政府はこの間、TPPのISDS条項によって日本政府が訴えられることはないと説明してきました。
 大臣に伺いますが、その根拠は何か、訴えられても敗訴することはないというふうにもおっしゃっていますが、その根拠は何か、お答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 山添委員にお答え申し上げます。
 もう委員御承知のことではございますが、ISDSについては、海外からの投資に関して、先ほどもお話をさせていただいた内外無差別、正当な補償なしに収用をしないなど、TPP協定いわゆる第九章の投資章に規定されている義務に国が違反して投資家が損害を受けた場合に仲裁廷に損害賠償又は原状回復のみを求める訴えを提起できると記載されております。
 これらの義務は、TPP協定第九章第十六条に明記されているとおり、環境や健康などの正当な目的のために各国が必要かつ合理的な規制を差別的でない形で行うことを妨げるものではない、また、我が国が必要な例外規定や留保を置くことによりまして国内法との整合を図っているところでございます。
 既存の投資協定においても、これは外務大臣から御答弁させていただいておりますけれども、我が国は協定上の義務に違反するような措置は過去にとったことはなく、その結果、これまでISDS条項を使って訴えられたことはございません。これは事実でございます。
 TPP協定においても、協定上の義務違反となるような措置を我が国がとる、仮にですね、内外無差別ではなくて一社に対してですね、この一社を狙い撃ちにして規制を掛けるとか、あるいは投資して工場をつくったと、その工場で火事が起こったけれども消防車が行かない、そういうことをやるとは私は考えられないと思います。ですので、仮に訴えられたとしてもISDSで敗訴することは想定されていないと御答弁をさせていただいたわけでございます。
 以上によりまして、我が国がISDS条項によって結果として規制の変更を余儀なくされることや必要な規制の新設、改組ができなくなることは考えられないと話をさせていただいております。
 しかし、委員の御懸念にございましたとおり、万全の体制を外務省の方で整えているということにも代表されますように、先進国政府が実は敗訴しているケースがあることは事実でございます。しかし、その事例を詳細に見てみますと、表向きは公共目的のための内外無差別な体制を取っていても、実際には、先ほどお話をさせていただいた、特定の外国企業を差別する意図があったと立証された場合や、あるいは政府の手続が不透明、不適正な場合でございまして、このようなことは我が国では考えられない、日本政府が敗訴することは想定されないと答弁をさせていただいたところでございます。
○山添拓君 いろいろおっしゃいましたけれども、何点かに整理しますと、一つは、例外や留保規定があるから大丈夫だということをおっしゃった。これは留保事項に当たるかどうかというのは最終的にTPP委員会の解釈に委ねられるとされています。ところが、TPP委員会がいかなる組織であるのか、これは昨日、紙智子議員の質問でもほとんど何も決まっていないということが明らかになっています。かつ、TPP委員会は全会一致とされますので、そこで九十日以内に判断がされなければ最終的には仲裁人の判断になる、仲裁廷に戻って、結局仲裁人が留保事項に入るかどうかも判断するということになります。
 あるいは、資料の一にもありますけれども、政府は、日本が提訴されないということの根拠の一つに、これまでに我が国が提訴された事例はないということを言ってきました。しかし、韓国政府も米韓FTAの締結前には、今まで一度も韓国は訴えられていないんだと、先進国である韓国は米国からも他国からも訴えられることはないというふうに説明してきたんです。ところが、実際には締結から一年もたたないうちにアメリカ企業から五千五百億円もの損害賠償をされるに至っています。到底信用できないことだと言わなければなりません。
 資料の一、もう一度御覧いただきますが、政府は、濫訴防止、むやみにあるいは無法に訴えるのを防ぐ、こういう仕組みをつくってきたというふうに説明してきました。国会決議でも、濫訴防止策等を含まない、国の主権を奪うようなISD条項は合意しないとしています。
 TPP協定でいかなる濫訴防止策を盛り込んだのか、具体的な規定は何か、大臣、御説明ください。
○国務大臣(石原伸晃君) ただいま山添委員がお示しいただきました資料一、いわゆるISDS手続の濫訴防止についてでございますが、大まかに申しまして四つぐらいあるのではないかと思っております。投資章であります第九章の各条に設置をされております。法的根拠のない申立て等については迅速に却下することができる規定、これは第九章の第二十三条でございます。仲裁廷における全ての事案の判断過程、最終判断等を原則として公開することを義務付ける規定、第九章第二十四条でございます。申立て期間を一定の期間、三年六か月に制限する規定。第四、申立てに根拠がないと認められる場合、仲裁手続費用等を投資家に負担させることができる規定などが盛り込まれていると承知しております。
○山添拓君 資料には他に、懲罰的損害賠償を命じることはできないとする規定というものも書かれています。
 大臣、この中で、今資料一で示している中でTPPで初めて導入する規定というのはあるんでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 申し上げます。
 一番最初に申しました法的根拠のない申立て等については迅速に却下することができる規定、すなわち法的根拠がないのに訴えてもそれは駄目ですよということでございます。そして、仲裁廷における全ての事案の判断過程、最終判断等を原則として公開することを義務付ける規定、仲裁廷で議論されていることに対してオープン性を……(発言する者あり)今答えております。オープン性を担保する。そして三つ目が、申立てに根拠がないと認められる場合、仲裁手続費用等を投資家に負担させることができる規定、むやみな濫訴をした場合に、そういうことは投資家、訴えた側に費用を負担させますよ。この三つが考えられます。
○山添拓君 今の三つ目は資料の一の中には入っておりませんでして、外務省も濫訴防止のための規定だというふうには考えていないものですよ。それを御説明されるのはおかしいと思います。
 ちなみに、ここの資料一で挙げられている四つの規定というのは全部これまでの協定でも入っているんですね。目新しいものは一つもありません。最初に説明された先決問題だとか、あるいは申立て期間の制限、ここにあります懲罰的損害賠償禁止、いずれもNAFTA、アメリカ、カナダ、メキシコでつくる北米自由貿易協定には導入されています。手続の公開についても、規定ぶりは違いますが入っています。先決問題の却下というのは説明ありましたので省きますけれども、これは当然の規定なんですね。審理の公開については、提出書面を投資家が非公開とする権利も留保されています。
 申立て期間ですが、NAFTAではこれ何年にされていますか。
○国務大臣(石原伸晃君) NAFTAとの比較で私は先ほどお話をさせていただいたものでございますが、先決問題、迅速却下についてはNAFTAにはございません。全ての事案の公開ということもNAFTAにはございません。根拠のない申立て、手続費用等の投資家の負担、これは濫訴の防止にならないということをおっしゃりますけれども、やっぱりむやみに濫訴を、むやみに訴えて、そしてその費用を弁済させられるとなるとやっぱり抑止が働くものと私は考えております。
 そして、今の御質問でございますが、申立て期間の制限でございますけれども、NAFTAにおいては三年でございます。
○山添拓君 TPPでは三年六か月なんですね。むしろ長くなっているんですよ。
 懲罰的損害賠償について、これ外務省に、わざわざ書いてあるから聞いているんですけれども、ひどい違反をする者に対して制裁的に実際の損害額に上乗せして賠償させるというもので、日本ではそもそも認められていない理屈ですから当然だと思いますが、何が懲罰的であるかという定めはTPPの協定の中にはあるでしょうか。あるかないかお答えください。
○政府参考人(澁谷和久君) 投資章には特段の定義は置いてありません。
○山添拓君 懲罰的であることの基準がない以上は、最終的には仲裁廷が損害賠償額をどのように評価するかによって恣意的に判断され得ると考えます。逸失利益が何十年もわたるのだと認定されれば、賠償額は高額になります。そもそも、各国が多額の損害賠償を請求している実態を考えれば、この懲罰的損害賠償の問題は濫訴防止の実効性はないと言うべきだと思います。
 NAFTAで二〇一六年十月までのISDS提訴事例のうち、米国企業が提訴したのは何件か、また、係争中のものを除いて、米国企業の勝訴の件数と米国以外の企業が勝訴した数は何件か、それぞれお答えください。
○政府参考人(山野内勘二君) お答え申し上げます。
 NAFTA加盟国、すなわち米国、カナダ、メキシコ、それぞれの政府のホームページで公表されている本年十月一日時点での情報によりますと、NAFTAのISDS仲裁手続に基づいて米国投資家が提訴した件数は五十件ございます。そのうち米国投資家が勝ったものが八件というふうに承知しております。また、NAFTAのISDSの仲裁手続に基づいて米国以外の投資家が提訴した件数は十九件である、そのうち投資家が勝訴した事例はないというふうに承知しております。
○山添拓君 資料の二を御覧いただければ、そのことが書かれています。NAFTAでは全部で六十九件の提訴があったとされています。
 TPPと同様の濫訴防止規定が既にあるにもかかわらず、なぜNAFTAでこれほどの提訴件数に上っているのか、大臣、お答えいただけますか。
○国務大臣(石原伸晃君) ちょっと質問の趣旨が分からなかったんですが、仲裁付託案件がなぜ変わったかという御質問のように聞こえたもので、なぜかということには、そのなぜ訴訟を起こしたか分からない以上は分からないというふうに今そこでちょっと話しただけでございます。
○山添拓君 お答えになっていないと思いますが。
 アメリカ企業の提訴が圧倒的に多いんですよ。勝訴したのもアメリカ企業だけです。アメリカ企業にとって濫訴防止に役立っていないということにほかならないと思います。
 TPPによって、これまでISDS条項を含む投資協定のなかった日本と、アメリカやカナダあるいはオーストラリア、ニュージーランドとの間でもISDSが盛り込まれます。
 資料の三を御覧ください。日本に対する二〇一四年の直接投資額、アメリカが四七・七%、オーストラリアは四・六%、アメリカが圧倒的です。これまでに提訴されたことがないからといって、アメリカの企業が日本を訴えない保証などありません。政府はそれでも日本は提訴されないというふうに言うのでしょうか。大臣、お答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 先ほども御答弁させていただいたのでございますが、個々の案件について、投資家がどういう理由で米国を、あるいは米国の企業が他の国を提訴したかという理由が分からない以上は、なぜその数字が、アメリカ側の企業が八勝って反対の場合はゼロかということは誰も分からないんじゃないかと思っております。そういうことを御答弁させていただいたわけでございます。
○山添拓君 ちょっと答えていない。(発言する者あり)もう一度、じゃ聞きますけれども、それでも日本は提訴されないというふうになぜ言い切れるのか、これを聞いているんですよ。
○国務大臣(石原伸晃君) 何度も申しましたとおり、日本の規制が、仮にアメリカの企業が困るような、一社が困るようなことをすればもちろん提訴されると思いますけれども、これまでのように、日本の企業がそのようなことをやってきて、日本の国がそのような規制をつくってきたことはありませんし、これからも、新たな規制を設けるのであるならば国会で御審議をいただくわけでございますので、そんなものができる可能性は極めて低いのではないかと御答弁させていただいたところでございます。
○山添拓君 余りにも危機感がないと思いますね。
 先ほど、最初の質問に対する答弁の中で、公共の福祉を目的とするもの、環境や健康のための規制について、正当な目的というふうにおっしゃいましたが、そうした規制については守られるんだという政府の説明があります。これ、信用に値するものなのか、既に生じている事例から明らかにしたいと思います。
 カナダ政府に対してアメリカ製薬大手のイーライリリーが仲裁を通告した事件があります。どのような事件か御説明いただきたい。
○政府参考人(山野内勘二君) お答え申し上げます。
 米国の製薬企業イーライリリー社がカナダ政府を訴えた事例については、イーライリリー社の製品が取得していた特許について、その製品に有用性がないということを理由にカナダ連邦裁判所が無効とする判断を下したと、こういう事例がございまして、これを受けてイーライリリー社がNAFTAの規定に基づいてカナダ政府を相手取って二〇一三年に仲裁に付託したものというふうに承知しております。
○山添拓君 カナダの裁判所というのは、近年、特許を与えるための要件である医薬品の有用性、これについて厳しい判断を下すようになっています。リリーが提出したデータの臨床試験はデータ数が少なく期間も短い、したがって有用性の要件を満たさないと裁判上判断されました。要するに、国民の生命、身体の安全を確保できないと裁判所が判断したわけです。
 このリリーは、自らに対する判決だけでなく、カナダの特許法や判例法自体も含めて、薬の特許を無効とした措置が投資財産を収用するものだと主張して、五億カナダ・ドル、大体四百億円ですが、損害賠償を請求しています。今、収用と言いましたのは、直接的な収用、没収され国有化される場合だけでなく、間接的な収用、得られるはずの利益が得られなかったということも含まれます。
 カナダの裁判所が、国民の生命、身体の健康、安全のために特許法を解釈し、判例法理を築いて、またカナダの特許行政も判例法理を取り込んで充実させてきた、こういうルールについてアメリカの企業が不当だと指摘をしている。法整備が既になされているカナダのような国において制度そのものをターゲットにするような主張がされています。医薬品の有用性判断を厳しくするのは、国民の生命、健康のためです。こうした措置がISDSの対象となることはあり得ますし、現に起きているわけです。
 大臣にもう一度聞きますが、TPPにおいて、なぜ日本は公共の福祉を目的とする規定や措置について間接収用を理由に訴えられることはないと言えるのか、お答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) リリー社の案件につきまして、何をもって科学的に立証されたものであるかという知見を私は持ち合わせませんので、今の御質問の前提条件に沿って御答弁することはできませんけれども、TPPにおいて間接収用に関して訴えを提起されることがあるのかという一般論としてお答えさせていただくならば、例えばでございますけれども、適正な手続を経て工場を造ったと、間接的な形でその工場を追い出す、すなわち、土地改良を行うから、おまえ、出ていけというようなことをやったとするならば、補償することなく恣意的に狙い撃ちで規制を強化し、操業不能とさせるような国による行為というものだと私は思います。
 すなわち、公共事業における買収のような正式な手続を取らずに、直接的な収用と同等の効果を有する場合を私は間接収用に関する提訴の一つの例としてお答えさせていただきたいと思います。そして、適切な補償を伴わないような間接収用は、協定違反を構成いたしましてISDS手続の対象となる可能性があるということは事実であると思います。
○山添拓君 間接収用を理由に訴えられることはないと言えるのかどうか、このことに対して答弁いただけますか。
○国務大臣(石原伸晃君) 同じ御答弁になって恐縮でございますけれども、適切な補償を伴わないような間接収用、要するに、直接的に規制を作るわけじゃなくて、その規制の外で違うことをやって例えば追い出すようなことがあった場合に、補償を伴わない場合はISDS手続の対象となる可能性があるというふうに御答弁をさせていただきました。すなわち、ある行為が間接収用を構成するか否かについては事案ごとに事実に基づいて判断される、これは当然のことだと思います。
 TPP協定の附属書の九のBにおきまして、公共の福祉に係る正当な目的のために各締約国が行う差別的でない規制は極めて限られた場合を除くほかは間接収用を構成しない、その範囲を誰がどう決めるかというのはその各々の、個々のケースによって決まるというふうに理解をしているところでございます。
○山添拓君 最後に各々のケースによって変わるとおっしゃいました。つまり、正当な目的と言えるかどうかというのは仲裁廷が判断するわけです。判断基準も事案ごとです。事案ごとに選ばれる僅か三人の仲裁人が基準も結論もその時々に判断します。先例拘束性もありませんので、以前に同様の事例があったとしても同じ結論になるとは限りません。国民の代表である国会が関与するわけでもなく、憲法や判例との整合性をチェックする裁判所とも異なる場で、国内の法規制や行政処分、刑事処分、裁判所の判決までも、あらゆる措置が審査されるということです。
 この公共の福祉に係る正当な目的、今御紹介があった条項ですが、正当な目的と言えるかどうかというのは、では、誰が主張し立証する責任を負うのか、何をどのように立証するのか、これをお答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 専門的でございますので、ちょっと条文も読ませていただきたいと思います。
 挙証責任に関する規定ということがいわゆる第九章の二十三条七項に書かれております。「投資家は、この節の規定による請求(締約国が第九・六条(待遇に関する最低基準)の規定に違反した旨を主張する請求を含む。)を付託する場合には、国際的な仲裁について適用可能な国際法の一般原則に従い、自己の請求の全ての要素を立証する責任を負う。」、TPP協定第九章投資でございます。
 この先ほど御紹介をさせていただきました附属書九のB、収用の中で規定されております公共の福祉に係る正当な目的に当たるかどうかは、先ほども御答弁させていただいておりますが、具体的な事案に即して仲裁廷が個別に判断することになると認識をしております。その上で申し上げますと、例えばでございますが、正当な目的を装いながら実際には不当に外国人投資家の投資財産を収用することを目的とした措置は本条の違反と判断されると考えられるところでございます。
 なお、第九章二十三条七項、先ほど御説明をさせていただいた項目でございますが、投資家は、ISDS手続に請求を付託する場合には、国際的な仲裁について適用可能な国際法の一般原則に従い、自己の請求の全ての要素を立証する責任を負うこととされている、すなわち一義的には投資家が立証する責任を負うのではないかと考えております。
○山添拓君 附属書の九のBをお読みになっているんですけれども、これ、間接収用に当たるというところまでは投資家の側が主張立証責任を負うでしょう。しかし、その規制が公共の福祉のためのものだということ、つまり例外的に規制をしてもいいんだということの主張立証責任はどちらが負うべきものなのか、基本的にはどちらが負うべきものなのか、これをお答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 先ほどケースごとの話をさせていただきましたが、一義的には投資家サイドだと考えております。
○山添拓君 投資家サイドが正当な目的でないということまで立証責任を負うということですか、そういう理解でよろしいんでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 一般的には、投資家が一義的には立証責任を負うと考えております。
○山添拓君 それは私は違うと思いますね。通常であれば、投資家の側は、協定義務違反があったということと、損失についての立証責任を負うわけです。これに対して政府の側が、公共の福祉のためだ、健康や環境を保護するためのものだ、この立証責任を負うのが通常だと思います。訴えられた日本政府が証明しなければならないということになるだろうと、通常であればそうだと思います。
 あるケースを御紹介します。
 カナダ政府が人体に有害な神経性物質を石油製品に混ぜるのを禁止しました。アメリカの石油会社が多大な損害を被ったとしてカナダ政府を相手に訴えました。仲裁では、健康被害が科学的に証明されていないために、カナダの非関税障壁だと決まりそうになった。カナダ政府は一千万ドルの和解金を支払ったというふうにされています。つまり、カナダ政府の側で、この物質が人体に有害だ、健康被害があるということを証明しろというふうに仲裁の中で圧力が掛けられたわけです。
 こういう証明が必要だということになりますと、安全性が確認されていないものについて予防的に規制する、予防原則に基づく安全優先の措置はとれなくなると考えます。
 今の附属書の九のBについて続けて聞きますけれども、極めて限られた場合にはという条文もあるわけです。極めて限られた場合には、公共の福祉に係る正当な目的による規制であったとしても間接収用に当たる、こういう条文です。だから、極めて限られた場合にはこれが重要だと、原文ではイン・レア・サーカムスタンシーズとなっていまして、素直に読めばまれな状況です、もっと緩いわけです。
 衆議院では、参考人の岩月浩二弁護士が、議論を起こさせないための意図的な誤訳ではないかとも指摘しています。原文で言うまれな状況というのは何を意味するのか、どういう場合を想定しているのか、大臣、お答えいただけますか。
○国務大臣(石原伸晃君) その前に一点お話をさせていただきたいのは、先ほどの質問の中で、私は、込み入っておりますので、挙証責任に関する規定、すなわち第九章二十三条の七項をまず最初に朗読をさせていただきました。その最後のところだけを申させていただきますが、「自己の請求の全ての要素を立証する責任を負う。」、こういうふうに書かれておりますので、私は、一義的には投資家が立証する責任を負うとTPP協定では解しているというお話をさせていただきました。
 NAFTAが、先ほど、冒頭お話をさせていただきましたように、どういう規定になって、その個々のケースにおいてどうであるかということは、私、知識を持ち合わせませんのでお答えできないとお答えをさせていただいたところでございます。
 そして、二点目の御質問でございますが、いわゆる附属書九のB、これはいわゆる本協定に対しての補助説明でございますけれども、そこに、ただいま委員が御指摘になられましたように、これも先ほど来お話をさせていただいておりますTPP協定のいわゆる九章、投資の附属書九のBの収用において、公共の福祉に係る正当な目的を保護するために立案され、適用される差別的でない規制措置は、極めて限られた場合を除くほか、間接的な収用を構成しない旨定めている。
 そして、委員の今の御質問は、その御指摘の、極めて限られた場合。御質問があるというのでその英語のやつも持ってきたんでございますが、レア・サーカムスタンスと記載されております。これはどこかほかにもないのかなと探してみたんでございますが、日豪EPA投資章あるいは日中韓投資協定においても同様の文脈で用いられております、このアネックスの九のBに書いてありますレア・サーカムスタンシーズということを、訳語の方も確認してまいりましたけれども、極めて限られた場合と訳してきておりますので、多分外務省は同じように踏襲して、この言葉を使って何ら問題はないのではないかと思います。
○山添拓君 私の質問は、まれな状況、あるいは極めて限られた場合という言葉でもいいんですけど、それは何を意味するのかということを聞いているんですよ。聞かれたことに答えてください。
○政府参考人(山野内勘二君) この極めて限られた場合とは、規制措置の目的と効果が釣り合わず、恣意的に投資家に損害を与えるような措置など、文字どおり極めて例外的な場合を指すものというふうに解されております。
○山添拓君 そんなこと、しかし協定の中には書かれていないですね。
 米韓FTAの中では、その目的や効果に照らして極端に厳しいか不適切である場合など、こういうふうに書かれていますが、TPPではむしろ後退しています。まれな状況に当たれば、仮に公共の福祉に係る正当な目的による規制であったとしても間接収用に当たるというものですから、重大な抜け穴について曖昧な規定でしかないと考えます。
 実際に、その抜け穴を通るように規制が違法とされた事例もあります。カナダ政府に対してアメリカの産廃処理業者のSDマイヤーズが仲裁を通告した事件、どのような事件か説明をお願いします。
○政府参考人(山野内勘二君) お答え申し上げます。
 米国企業SDマイヤーズがカナダ政府を訴えた事例ですけれども、これは、このSDマイヤーがNAFTAに基づいてカナダ政府を相手取って一九九八年に仲裁に付託したものであると承知しておりますが、カナダ政府によれば、同社が従事しているPCB廃棄物の輸出禁止措置をめぐる紛争でありました。
 本事例は、二〇〇〇年に仲裁判断が下され、カナダ政府によるPCB廃棄物の輸出禁止措置は、環境政策に根拠を置く措置ではなく、カナダ企業を他国企業との競争から保護する意図を有したものと認定した上で、これが内国民待遇及び待遇に関する最低基準に違反するものと判断して、投資家の請求を一部認容したというふうに承知しております。
○山添拓君 内国民待遇義務違反だと、国内投資家と国外投資家とを差別しているといって賠償請求が認められたものです。カナダ政府はこの事件で、SDマイヤーズに対する規制を正当化する根拠として、今説明のあった環境や健康への危険を防止するという目的と国内産業を保護するという目的を主張していたと。国内産業を保護する目的の方が主たる目的ではないか、こういうことで結果的に外国の投資家を不当に不利に扱うものだ、協定義務違反だというふうにいったわけです。
 ですから、公共の福祉、環境だとか健康のための規制だといっても、だから単純に守られるのだ、こういうことではないということはこの事件からも明らかだと思います。大臣、どうですか。
○国務大臣(石原伸晃君) 先ほど来、議論の前提として委員がNAFTAでのケースを挙げられておりますけれども、個々の事例で、今はPCBをめぐる問題であるということは政府委員の説明を聞いていて分かりましたけれども、それとこのTPP協定の問題とをダイレクトに議論して、それがどういうふうに大臣考えられるかといっても、そのことの知識が、今政府委員の答弁程度しか私承知しておりませんので、何とも申すことはできません。
○山添拓君 先例についてきちんと検討しておくことは当然のことだと私は思います。
 規制の目的が正当だと言えるかどうか、結局仲裁廷の裁量によるわけです。公共の福祉目的の規制であれば安心ということは決してありません。先進国であるか途上国であるかを問わず、あらゆる事件が仲裁にかかっています。日本政府が訴えられることはないとしているのは根拠のない楽観論にすぎず、ISDSの実際の機能を直視しないものだと思います。
 それでは、このような仲裁を行う仲裁機関とはどんなものなのか、これを聞きたいと思います。
 ISDSで予定されている機関は、いずれも常設の委員会があるわけではありません。事件ごとに仲裁廷がつくられます。訴える投資家、訴えられた国の指定する仲裁人、両者の合意した第三の仲裁人の三人で構成されます。
 資料の四に書かれていますが、有力な十五人の仲裁人は、これまでに公開された投資仲裁の五五%に関与している、係争額四十億ドル以上の事件の七五%に関与していた、仲裁村と言われる多国籍企業をクライアントとする弁護士が仲裁人になっています。あるときは企業側に、あるときは政府側に、あるときは裁判長役にという具合です。
 アルゼンチンで水道事業の運営権協約の終了が争われた事件では、仲裁人の一人が水道事業会社に投資する銀行の取締役でした。しかし、そのことは明らかにしなかった。こういう事例も報告されています。
 仲裁人の独立性をどうやって保つんでしょうか。
○政府参考人(澁谷和久君) TPP協定のISDSにつきまして、この仲裁人の中立性につきまして二点申し上げます。
 まず、先生がもう既に御紹介されましたが、三人の仲裁人のうち紛争当事者がまず一名ずつ任命する、第三の仲裁人は原則として紛争当事者の合意で任命すると、このまさに仲裁人の選任プロセスにおける公平性、中立性が第一点でございます。
 第二点でございますが、TPP協定では、協定の発効までに、紛争解決章、パネルの構成員に対して行動規範を作ることになっておりますけれども、この行動規範を投資章のISDSの文脈に適合させる形で修正した指針、アプリケーション・オブ・ザ・コード・オブ・コンダクトと言っておりますけれども、これを定めることになっております。仲裁人は、仲裁規則に加えまして、こうした指針に従うということでございます。
○山添拓君 行動規範を作るということになっているんですが、この行動規範の策定に当たって、これから作るんですけど、国会での議論は経るんでしょうか。国民の意思が反映される仕組みはあるんでしょうか。お答えください。
○政府参考人(澁谷和久君) この指針は、国会で御承認いただいた上で締結する協定の範囲内で定められるものでございますので、国会において御審議いただくことは想定しておりません。
○山添拓君 どういう人が仲裁人になるか、その仲裁人がどのように行動すべきか、その定めについて国民が関与して決めるという仕組みにはなっていないわけです。
 こういう中で、日本政府が訴えられた場合、中立性が担保されるとは言い難い仲裁廷で多大な時間と費用も要します。ICSIDという仲裁機関では、掛かる時間は平均三・六年とされています。訴訟費用は数千万円から数億円だと。
 アメリカ法人のケムチュラという会社がカナダ政府を訴え、請求が認められなかった事件があります。仲裁廷の判断によれば、カナダ政府は弁護士費用を幾ら支払ったとされていますか。
○政府参考人(山野内勘二君) 議員御指摘の米国企業ケムチュラ社がカナダ政府を訴えた件でございますけれども、これは、カナダ政府によれば、同社が生産する農薬の登録の停止及び抹消をめぐる係争でありました。本事例は二〇一〇年に仲裁判断が下され、投資家が敗訴しております。仲裁費用の全額に加えて、カナダ政府が負担した経費の半額を投資家側が負担するように命じられました。その結果、カナダ政府は、二百八十九万カナダ・ドルの仲裁手続費用を負担したというふうに承知しています。
○山添拓君 大体二億円だと思います。ISDSで仮に勝ったとしても、政府はこれだけの額を払っている。負けた場合はより深刻です。NAFTAのISDS、カナダ政府は、和解した事案も合わせると、この間に合計二百億円と弁護士費用をアメリカ企業に支払うことが決まっているとされています。これに加えて、自らの国の弁護士費用も支払うわけです。全部税金です。
 ISDSは根本的に司法権との矛盾を含むものでもあります。先ほどイーライリリーとカナダ政府の事案でも見たように、TPPのISDSにおいても、国内裁判と仲裁廷とで判断が異なるケース、考えられます。TPPにおいては国内裁判と仲裁とを同時に使うことはできませんが、国内裁判を先にやれば、その後ISDSに行くことは可能です。外国企業が日本政府を相手に、投資協定に違反する措置によって損害を被ったとして日本の裁判所に国家賠償請求を行って、敗訴が確定し、その後にISDSで判決が不当だとして提訴する、仲裁廷では企業側が逆転勝訴するというケースもあり得るわけです。
 この場合にどちらの判断が優先することになるのか。政府は仲裁廷の判断に従って賠償金を払うことになるのかどうか、このことを、大臣、お答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 御質問にお答えする前に、先ほどの行動規範の指針でございますけれども、国会は関与いたしませんが、実は、その指針を作る、これは発効後の話ですけれども、今から話をしても始まらないんですけれども、我が国が認めない限りその指針というものはできませんので、そこが明らかになるということと、もちろん関係国があって、これは先の話ですから予断を持って話せないわけですけれども、御要望があれば、政府としては関係国と調整してその指針並びに行動規範というものを明らかにしていく形で委員の御懸念を払拭するということは十分に可能であると思っております。
 そして、今御質問のございましたのは、日本の裁判所と仲裁廷の判決が、判断が違う場合にどのように対応するのかというふうな質問でよろしいでしょうか。
 これは、今年の春、委員がまだ議員になる前でございますけれども、予算委員会でも議論になった点でございまして、政府の統一見解というものを出させていただいておりますので、それをちょっと読ませていただきたいと思います。
 仲裁廷と裁判所とそれぞれの判断が確定すれば、いずれも有効なものとして成立し、どちらかが優先しどちらかが劣後するというルールはない、どちらの判断が実行されるかについては、当事者が任意に一方を選択することで決まることもあれば、改めて民事執行手続を裁判所に申し立てることで当該裁判所の判断で決するものもある、こういうふうな政府見解を示させていただいております。
○山添拓君 国内裁判と仲裁廷と判断が異なる場合に執行の段階で決まるんだということになりますと、そこで日本の裁判所が最終的に決めるんだということならISDS条項なんて意味がないと思います。
 協定の中では、一方の紛争当事者は遅滞なく裁定に従うというふうになっています。支払を拒否するということは考えていないということだと思います。結局、ISDS条項を盛り込んで外国投資家に仲裁廷で争う機会を与えれば、国内裁判でいかなる判決が出ようとも政府は仲裁廷の判断に従い、敗訴すれば……
○委員長(林芳正君) 山添君、時間が参っておりますので、まとめてください。
○山添拓君 はい、まとめます。
 賠償金を支払うということにほかならないと思います。
 ISDS条項は、国内の裁判所の判断の上に仲裁廷の判断を置くものになる、さらには、実質的には国内の法制度に変更をももたらすものです。こうしたことが起こり得るTPP協定の承認は、国家主権を脅かし、国民の命と暮らしを守るルールを破壊するものであって、許されないことを述べて、発言を終わります。
    ─────────────
○委員長(林芳正君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、矢田わか子君、中野正志君、小川克巳君、大沼みずほ君、自見はなこ君及び宮本周司君が委員を辞任され、その補欠として真山勇一君、中山恭子君、滝波宏文君、舞立昇治君、松川るい君及び古賀友一郎君が選任されました。
    ─────────────
○藤巻健史君 日本維新の会の藤巻です。よろしくお願いいたします。
 日本維新の会はTPP推進派でございます。その前提の下で、まず原則論をお聞きしたいんですけれども、TPPのような協定を結ぶときは、日本全体としてプラスかマイナスかを考えて、プラスであれば積極的に協定を結ぶ、そして大きいダメージがある産業とか問題があればそれを直していくというのがあるべき姿であって、一つ二つの問題がある、また幾つか問題があるから、たとえ国力にとって、日本にとってプラスであってもその協定を結ばないというのは間違いだと思うんですね。
 その観点でお聞きしたいんですが、このTPPというのは日本にとって全体としてプラスであるのかマイナスであるのか、そしてどうしてプラスであると考えているのか、石原大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(石原伸晃君) 藤巻委員にお答え申し上げたいと思います。
 日本が置かれている現状というものをやはり政治家は客観的に見詰めていかなければならない。一九七〇年代、八〇年代の右肩上がりの経済が日本で発展したときの人口構造は、明らかに人口ボーナスが経済発展に資する形で効いておりました。その後、残念ながら、日本の経済はいわゆる団塊ジュニアの世代のこぶ、すなわち人口の増加の後、人口減少社会に転じたわけでございます。この中で我が国の経済発展、戦後の経済発展を支えてきたことは、間違いなく国民の英知とそして物づくり、勤勉性、こういうものが世界に伍して、この様々な製品、プロダクツを世界に売ることによって利益を得て、ここまでの繁栄を享受してきたんだと思います。
 そんなときに、今発展著しいこの東アジア、北東、環太平洋という言葉が正確かもしれませんけれども、アメリカを含むこの十二か国の経済圏というものは、GDPでいうならば世界の一番と三番がいるわけでございまして、この四割経済圏、そういうところに経済発展の道を我が国としても模索していく、さらにルールを共通に作っていく、そういう意味があると思います。
 その上でお話をさせていただくならば、その巨大な市場を活用することによりまして日本経済が活性化するとするならば、これは間違いなく全国民にとって私はプラスであると思います。また、物の値段が自由貿易によって安くなれば、消費者の方々のメリットが増えるということもあると思います。
   〔委員長退席、理事福岡資麿君着席〕
 そして一番重要なのは、後段で藤巻委員がお話しになりました、もしそうであるとするならばの下段のところが私も非常に重要であると思っております。それによって不安を感じられる、あるいは生活が脅かされる、また現実にそういう事態に直面するおそれが高い、そういう方々に対しては対策を講じていかなければならない、そういうところにこのデメリットというものがやはりあるんだと思っております。やはり総合的なTPP関連政策大綱、ここの中に個々の項目について、農業中心でございますけれども、しっかりと手当てをさせていただくことを書かせていただいております。
 そして、これは総理が、昨日ですか、お話をされていたとおり、自分も若い頃は座込みまでして米の一粒たりも輸入させないと頑張ったけれども、ガットのウルグアイ・ラウンドですかがあり、WTOがあり、自由貿易の流れが進んでいった中で農業が守り切れたのかといえば、必ずしも守り切れていない。守るものは守るが、しかし攻めるところは攻める、そういう意味でこのTPPが重要であると政府としては考えさせていただいているところでございます。
○藤巻健史君 まさに大臣がおっしゃったとおりだと私どもも思っております。
 米国が、ところが完全に撤退しますとTPPは成立しないわけですよね。そうすると、やっぱり心配なのは中国。これ、中国は今TPPに入っていないわけですけれども、中国は東アジアの経済圏で貿易ルール作りをしようと暗躍し始めるんじゃないかと思うんですよね。そうすると、日本とアメリカが主導してきた経済圏が少し日本にとっては弱くなって、国力に反する。すなわち、例えばADB、アジア開発銀行に対抗してAIIBが、中国がつくったように、中国がどうしても日本の権益というか日米の権益を取っていこうと、こういうふうになってしまうんではないかというふうに思いますので、やはり早くTPPを国会で成立させてアメリカにプレッシャーを掛けていくと、これが日本のあるべき姿だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) ただいまの点も非常に重要な点だと思っております。
 中国も、WTOに加盟をしてからあのような爆発的な経済成長、そして豊かさを享受する国になってまいりましたが、まだ私どものルールとは違うことがあるということは多くの経済人の方が御指摘をされているところでもございます。
 そんな形で、昨日このTPPに万が一というお話の中で総理もお話をされておりましたけれども、当然シフトはRCEPの方に動いていくと。そして、RCEPには残念ながらアメリカは入っておりませんので、中国主導のこの環太平洋、アメリカを除く貿易圏構想というものが浮上してくるというのは、地政学的に見ましても起こり得る事態ではないかと思っております。
 そういう意味で、委員が御指摘されましたとおり、TPPのルールというのはかなり高いものだと思います。例えば、アメリカと日本は世界第一の経済大国と三番目の経済大国ですけれども、この中には、ASEANの中で発展著しい、まだ政治体制も必ずしも安定していない国も入っておりますが、そしてまた国営企業等々もかなりのボリュームを占めている国々もありますが、かなり自由貿易構想としてはハイレベルの、知財の問題一つ取ってもしかり、電子商取引の問題取ってもしかり、こういうものに合意をしたこの枠組みというものはやっぱり大切にしていく。
 そういう意味で、これから総理も次期アメリカ大統領予定者でありますトランプ氏と、異例ではありますけれども、トランジットの関係で会談を持たれる。そこからまた新しい第一歩が始まるのではないか。
 その上でも、やはり国会でこの問題十分審議していただきまして、しっかり国民の方々に、やはりなぜ私たちが今このようにTPP交渉をアメリカの大統領が替わるという中でもやらなければならないのかということを、しっかりと今の委員の御質問に答える形でも説明をしていかなければならないのではないかと考えております。
○藤巻健史君 まさにそのとおりだと思っております。
 今大臣の方からRCEPの話が出てまいりましたんですが、そうではなくて、例えばアメリカを除いた十一か国で新TPPをつくった上で、そしてアメリカと中国にひょっとして入らないかというような提案をしまして、そうすると、アメリカって焦ると思うんですね、中国が入ってきて権益持っていっちゃうということで。まず、つくってからアメリカに入れと言うのも一つの戦略であるかなと私は思ったんですけどね。
 この質問通告をした後、今日の日経新聞三面に、メキシコなどの新興国から、やっぱりアメリカを除く十一か国で協定を発効させるため、TPPの条項見直しを求めるというような記事があったわけで、これ意外と、十一か国でまずはつくってしまう、修正TPPをつくっちゃうというのも一つのアイデアかなと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) ただいま藤巻委員が御指摘されました報道は私も存じておるんですけれども、メキシコは大統領が、やはり隣国でございますので、トランプ次期大統領と会談を持つなど、親密な関係であられるわけでございます。
 政府としては、やはり今、米政府はオバマ大統領率いる米政府でございます、米国に国内手続の早期完了を働きかけていくということがやはり一番肝要なのではないかと思っております。そのためにも今国会での協定承認と、先ほど委員がおっしゃられましたように、マイナスの部分、不安を持たれている方々への対策をしっかりと盛り込んだ整備法案を併せて成立をさせていただきたいというのが政府の立場でございます。米国を含みます十二か国による現在のTPP協定の早期発効を目指すという政府の方針は変わっておりません。
 総理もおっしゃられておりますように、APECの場で、TPP参加国の首脳会議の招待が、おとといですか、昨日ですか、来たということでございますので、首脳同士で、先ほど、今メキシコの例を出されましたけれども、各国の首脳が本当にこの事態を受けてどう考えているのか、しっかり話をしていただいて、私といたしましては、やはりTPP、かなりハイレベルな形で自由貿易圏をつくるというこの案を発効させようという意思を再確認をいただいて、さらに国内手続を互いに進めていこうという姿を見せることが重要ではないか、こんなふうに考えております。
○藤巻健史君 そういうふうに私も思いますけれども、政府は、対日農林水産品の関税非撤廃率、これが一七・七%で、ほかの十一か国の平均一・五%に比べてかなり高くて、農水産業者の国内産業とか水産業界を守ったと、こう自慢されているんですけれども、確かに生産者にとってはこれ守ってくれてうれしいんだと思うんですけれども、生産者よりもよっぽど多い消費者にとっては迷惑ですよね。その分だけ値段が高くなっちゃって、農産物むちゃくちゃに高くなるわけですから、これは非常に迷惑なんです。先ほど、大臣、TPPが成立すると物の値段が安くなるから消費者にとってもいいとおっしゃいましたけど、この関税分は高く残ったままなんですよね。
 重要五品目に対しては関税枠撤廃しないで守ったとおっしゃいますけど、この重要というのは誰にとって重要なのかと。まさに生産者にとっては重要だろうし農林水産省にとっても重要かもしれませんけれども、私どもの消費者にとっては迷惑ですよね。その辺についてはどう思いますですか。要するに、単に生産者だけを考えて消費者に高い値段を押し付けているというふうにも思うんですけど、十一か国の方はきちんと撤廃して安い値段を消費者に提供しているというふうにも考えられるんですが、いかがでしょうか。
   〔理事福岡資麿君退席、委員長着席〕
○国務大臣(石原伸晃君) ちょっと、非常に難しい御質問だと思いますが、私の個人的な話になってしまうんですけれども、私は自由貿易圏を拡大していくという大きな政策には賛成をしておりますけれども、日本で農産品のプロダクツをもう作らないで、シンガポールと同じように、まあシンガポールは元々自国で農産品等々は作っておりませんけれども、そういう国を目指すというのは、この二十一世紀の今後の国の在り方として私は間違っていると思います。私も、東京選出の議員ではございますけれども、都市農業に長く取り組んでまいりまして、これはもう与野党全会派の御賛同を得まして都市農業基本法を取りまとめていただきました。やはりそこに、コストは高いんですけれども、地産地消で、多くの消費者の方々が多少高かろうとも自分のうちのそばのものということで非常に愛着を感じられております。
 また、この重要五品目につきましても、我が国の農業、農村を支える基幹的な品目だと私は思います。輸入が急増いたしますと、当然国内の生産、農家経営に大きな影響を及ぼす、なるべくそういうことのないようにということで様々な政策、また当委員会でも昨日は田名部委員と農林大臣との間で、このやはり農林県であります青森県のお米あるいはリンゴ、様々な議論がございましたけど、そういうものがやっぱり日本全国にあるんだと思います。また、それがこの国の魅力だと思います。
 消費者の方々も、今委員が御指摘になりましたように、重要五品目の枠内の関税が維持されて米が高い。でも、やはり私は、日本人の方々は、当委員会でも議論になっておりますけれども、遺伝子組換えの表示をうまくすることになれば、そういうものを使っていないものを日本の消費者の多くの方々は当然御購入される性向が強いのじゃないかと思っております。
 そういう意味で、この日本の農業を守りつつ経済のパイを大きくしていくために自由貿易圏というものをしっかりと確立していく。そして、それにはやはり日米外交というものが日本の外交の中心でありますので、やはりアメリカを巻き込んだ形でこのTPPを成就させていく形で努力をしていくことが肝要ではないか、こんなふうに考えております。
○藤巻健史君 私は、ただ、消費者が農産物の価格で高い値段を払わされているということを申し上げて、だからといって農業が廃れていいというふうに申し上げるつもりはないんですよね。関税以外にもほかに農業を守る手段があるのではないかということは後で申し上げますけれども、それだけはちょっと最初に申し上げておきます。農業を守る手段は関税だけじゃなくて、ほかのものであるんだということだけ先に申し上げて、次の質問に移りますけれども。
 山本農林大臣にお聞きいたしますけれども、重要五品目の価格調整金、マークアップというのは現在総額でどのくらいあるのか。この分、消費者は高いお金を払わされているわけですけれども、どのくらいあるかをお教えください。
○国務大臣(山本有二君) 御指摘の調整金、マークアップでございます。二十六年度実績値で見ますと、まず、砂糖の調整金は五百三十三億円、麦のマークアップ収入は八百九十四億円、乳製品のマークアップ収入は百四十七億円でございまして、これらを機械的に足し上げますと、合計で千五百七十四億円になっております。
○藤巻健史君 このほかに関税と、それから、本来であれば全部安い外国品を買うところをマークアップで高くなっているから国内産を買っているわけで、その分も消費者が高く買っているに相当すると思うんですが、かなりの額を消費者は余計に払っているというふうに思います。
 次に、財務大臣にお聞きしたいんですけれども、関税見積り、平成二十八年度予算段階でいいますと、関税見積りは一兆一千億円です。明日また財政金融委員会で御質問させていただきますけれども、軽減税率は、食料品全体ということで、これまた一兆円分減税するということになっているわけですよね。
 そうすると、税収面、マークアップの方を除いて税収面だけでいうと、関税で一兆円分高くしておいてそれから軽減税率で一兆円戻すということでチャラなわけなんですけれども、そのほかに、今農林大臣が、山本大臣がおっしゃったように、マークアップ分があるということになるかと思います。
 そういうことを考えますと、政府として、TPPのときには生産者にいい顔を向けて、今度、軽減税率になっちゃうと何か消費者を守るような、いいとこ取りしているというか、御都合主義のようにも思えてしまうわけですよね。
 ですから、又は別の言い方をすると、軽減税率で消費者を守れというのであるならば、その分関税を低くしろと、わざわざ行って来いする必要ないんじゃないかというふうにも思うんですが、いかがでしょうか。麻生大臣、お願いします。
○国務大臣(麻生太郎君) 一つの政策手段で、これは藤巻先生、あらゆる政策課題を実現できるとか表現できるわけはないと、はなから私どもはそう思っております。したがいまして、様々な政策課題には様々な政策手段で対応せざるを得ないというのが現実だと思っております。
 したがいまして、消費税の軽減税率というものは、これは消費税の逆進性というものの緩和を図るというのが目的の第一です。そして、日々の生活の中でこれは痛税感を緩和というものが実感できるという利点があるという仕組みなのであって、与党の検討の中でもこの点が重要であると判断されて、消費税率の引上げに伴います低所得者層への配慮として、いわゆる酒類とか外食を除く飲食料品等を対象に実施するということにしたものであります。
 一方、今言われた関税の方ですけれども、これは、御存じのように、国内産業の保護の点からいわゆる輸入品に対して課せられているというのが一般的に言われているところです。これによってその産業における雇用というものが確保されますし、また関連産業の保護など、これは国民生活の安定につながるということを期待しているものでもあります。
 したがいまして、軽減税率と関税というものは、その目的は低所得者への配慮というものと国内産業の保護であり、対象というものであれば、これはもう酒類とか外食を除く飲食料品とこれは輸入品ということになりますので、対象が異なっておりますので、当然のこととして、軽減税率制度を実施したからといって関税を引き下げなければならないというようなことにはならないんだと、簡単に申し上げればそういうことになります。
○藤巻健史君 ただ、消費者の立場から見ると、関税分そしてマークアップ分高いお金を払わされて、軽減税率で戻ってくるというだけにすぎないんですよね。だから、そういうことを考えると、軽減税率なんかやめてしまって、関税もやめてしまって、そしてチャラでいいじゃないかと。生産者保護は、先ほど来申し上げていますけれども、関税以外で生産者を守ればいいんではないかと私は思っているわけですね。
 じゃ、どうやって関税以外で生産者を守るかという話に次行きたいんですけれども、まずその前に山本農林大臣にお聞きしたいんですが、沖縄におけるサトウキビ畑、昔行くと物すごいサトウキビ畑があったと思いますが、最近すごく減っている印象あったわけですね。実際データをいただくと、一九八五年に二万三千百ヘクタールあったものが、二〇一五年では一万三千二百ヘクタールということで半減しちゃっているわけですよ。この原因は何だと思われますか。大臣、お答えください。
○国務大臣(山本有二君) これはもう、自然条件、それから時代の進化等いろいろあるわけでございますが、沖縄の地形というのは沖縄本島以外にも離島が点在しております。
 その全体でサトウキビを作っておりまして、沖縄のサトウキビ畑が一万ヘクタール減りました主な原因は沖縄本島でございます。この沖縄本島が都市化が進んできた、また観光地化した、並びに、サトウキビのみならず、花卉や畜産等の農業経営の体制が変わったというようなことが主な原因だろうというように判断しております。特にその一つの論拠としましては、沖縄本島では作付けがかなり減りましたが、南大東島、これは先生がおっしゃる昭和六十年時代とまた現在とで作付面積がほぼ同じでございます。
 したがいまして、様々な要因はあろうと思いますけれども、この沖縄におけるサトウキビは、特に本島ではなくて島嶼部でかなり基幹産業として重要な位置付けがなされているというように思っております。
○藤巻健史君 山本大臣がおっしゃったように、確かにいろんな理由があると思うんですよ。
 ところが、私、大臣が触れていない問題がかなり大きいかなと思うんですが、大臣、何が触れなかったかというと、その一九八五年、サトウキビがたくさんあった頃というのは一ドル二百三十八円、約二百四十円だったんです。去年末は百四十円なんですよ。ドル・円が半分になっているということは、まさに外国産の砂糖の値段は半分になっているということです、円で。外国産安くなれば日本の国産砂糖の競争力なくなってしまうんだから、これは駄目になるのは当たり前の話であって、何を申し上げたいかというと、生産者保護には為替が極めて重要だという話なんですね。
 それで、お渡ししているチャートを見ていただきたいんですが、今これ、農水省の方からお聞きしたんですけれども、輸入価格が、左上ですね、四十円程度で、それに調整金四十円で、三十円から四十円足して八十円で売っている、国内販売価格はとおっしゃっているわけです。これ、一ドル百円のとき輸入価格が四十円程度ということは、きっとキログラム四十セント辺りだと思うんですが、一ドル百円のときには輸入価格に調整金四十円を足して八十円であって、国内産砂糖の八十円と競争できるわけです。でも、これ、一ドル二百円になっていれば調整金なんか要らなくて、四十セントというのは八十円になるわけですよね、円で。まさに、調整金がなくても一ドルが百円から二百円になれば、国内産の砂糖というのは輸入砂糖と競争できるわけです。
 ということで、要するに為替というのがいかに農業について重要か。為替というと皆さん輸出業のことばかり考えますけど、農業の死活問題というのは、私は為替だと思っているんですね。
 一九八五年のプラザ合意というのがあったんですけど、あれベーカー財務長官が主導して、ドル安なんですけど、あのときの理由の大きな一つはアメリカの農業を守るためですよ、アメリカの農業を守るため。そして、もう一つ申し上げちゃうと、今、トランプのときの選挙もそうでしょうけれども、アメリカの農業団体って何かがあるとドル安をと言っているわけですよ、自国通貨安を、農業を守るために。補助金をなんて言わないですよ、通貨安をと。そうすれば、彼らは競争力を回復できるというか、国際競争力は上がるわけですからね。ですから、彼らは自分たちの農業にとって為替が重要だということを認識しているわけです。
 ところが、今大臣からの発言もないし、農水省の方からはいつも聞いても為替の話出てこないし。やっぱり、農水省にとって日本の農業を守るためには円安を進めると。これをアメリカの農業団体みたいに、農水省、まさに山本大臣は、麻生大臣に対する圧力団体の一番の旗手として、円安をとプレッシャーを掛けるべきだと、まさに日本のベーカーになるべきかと思っているんですが、いかがでしょう。
○国務大臣(山本有二君) 為替は大変当該国にとりましては最重要な経済の要因でございます。その意味において、輸出入、特に輸出を促進したいというように思っている農林省としましては、為替のフォローの風というのは有り難いことではございます。
 まず、その前に、せっかくのこの資料でございますから、やや誤解を受けるといけませんので、国産砂糖の八十円というのは、調整金を交付金に変えて農家に渡した後の砂糖価格でございます。サトウキビの例えばオーストラリアと日本の国内価格を考えてみますと、七倍ございます。したがいまして、もしイコールにするならば為替を七倍にしなければならなくなるわけでございますので、その意味において少し、為替だけで何かをしていくということには若干無理があるように思っております。
 今、輸入をしている農産品は六兆五千でございますし、輸出をしているこの価格というのは七千四百億円でございますので、ただ、今たちまち円安になれば円高になればというところで言わば収支は出てこない。特に油、それから飼料、こういったものは輸入に頼るしかないものですから、畜産農家にとりましては死活問題にもなるわけでございますので、ひとつその点は御了解いただきたいと思います。
○藤巻健史君 飼料の方は売値に転嫁できますので余り私は重要ではない、重要ではあるんですが、より経済的にインパクトは少ないかなというふうに思っております。
 確かに、私の資料が間違っているとするなら申し訳ありませんでしたけれども、ただ、言えることは、円安になれば少なくとも調整金は減るんだということであって、調整金が減るということは消費者にとっても高いお金を払う必要がなくなるということなんで、これはやっぱり円安というのは日本の農業にとっても非常に重要かと思うんですが。
 財務大臣にお聞きしたいんですけれども、いかがですか、農業のためにも円安政策を進めるという気はありませんでしょうか、いかがでしょう。財務大臣、お願いします。
○国務大臣(麻生太郎君) 藤巻先生の問題意識というのは、円安になれば農産品の輸入価格が上がって、そして国内産業の保護のためには円安がよいと、大体そういう、単純化すればそういう話ですな、大体、確認しておきますけど。何か持って回ったような言い方ですけど、大体そういうことを言っておられるわけでしょう。
 しかし、為替政策について聞いておられるんだと思いますので、為替レートというのはまず基本的には市場において決定される。この業界におられましたからよくお分かりのことだと思いますので、あえてこれ以上申し上げる必要はないと思います。
 次に、通貨の競争的切下げは回避する、また、為替レートは目標にしない、これはG7、G20でもうずっと前から合意をされているところであります。したがって、こうしたことを踏まえれば、日本の農業を守るために円安にする等の為替を操作するということは全く考えておりません。
○藤巻健史君 為替については、あしたも財金があるので、ちょっとあした十分やらせていただきたいと思いますけど、私は動かせると思っていますし、まずG7の通貨安競争はしない、戦争はしないというのは、アグリーしたということは動かせるからアグリーしたわけで、動かせないんだったらこれ通貨、事後ですからね。競争、戦争というのは動かせるということだと思います。そして、私は、今、日本の円というのは国力に比べて強過ぎるんで、別に操作をしなくても動くというふうに思っております。
 時間が来ましたので、続きは、あした財金が、また大臣とありますので、そちらでやらせていただきたいと思っております。
 ありがとうございました。
○木戸口英司君 希望の会(自由・社民)、自由党の木戸口英司です。
 新農政とTPP対策についてお伺いをいたします。
 アメリカ・オバマ政権がTPP発効に向けた議会承認の年内獲得を事実上断念したことで、協定発効は極めて困難となったと言われる一方で、我が国では、構造改革、規制改革、攻めの農業という名の下に、安倍内閣の下で農業改革が推し進められています。政府のTPPによる農林水産物への影響試算によると、生産減少額として約千三百から二千百億円が見込まれるとしています。この試算は、総合的なTPP関連政策大綱に基づく体質強化対策や経営安定対策などの国内対策の実施が前提となっており、また、長期的な米の需要の減少など、TPP以外の要因は考慮されておりません。
 当政策大綱は、TPP参加を前提にグローバルな戦略の展開を成長の鍵と位置付ける日本再興戦略に沿ったもので、この戦略と農林水産業・地域の活力創造プラン、そして食料・農業・農村基本計画は軌を一にするものです。農業、農村の疲弊、所得の低迷は一層深刻です。安倍内閣の下での新たな農政が農業、農村の経営と所得に及ぼしている影響を検証することなしにTPP協定の影響を語ることはできないと考えております。
 現在の農政の下で農業、農村の所得が向上し活性化していると言えるのか、まず山本農林水産大臣に所見を伺います。
○国務大臣(山本有二君) 御指摘のとおり、我が国の農業には課題がたくさんございます。まず、農業従事者が高齢化しておったり、また、耕作放棄地の増大が継続されたりするわけでございます。しかし、安倍内閣におきましては、農業の活性化は待ったなしと、こう考えておりまして、攻めの農業を目指して農政改革を進めていきたいと思っております。
 具体的には、農地中間管理機構を創設いたしました。担い手への農地集積、集約化を加速いたしまして、土地利用型農業を中心として農業経営の規模拡大を図って効率化をしたいと、こう思っております。また、農業所得の向上が図れますように、農産物の高付加価値化や農業の六次産業化を目指しております。また、アジアを中心に拡大し続ける世界食市場を積極的に取り込むために輸出拡大も図っております。
 そういうような姿勢の結果ではないかとこっちは思っておりますが、農業所得、生産農業所得はおおむね横ばいで推移することができておりますし、また、農地集積率は、二十五年まで横ばいだったものが二十六年から上昇に転じております。四十歳以下の新規就農者も年間二万人を超えて、この九年間で最多となりました。また、二十七年の農林水産物、食品の輸出は過去最高でございまして、七千四百五十一億円でございます。
 こうした農業の転換、成長を求めて所得の向上を図ってまいりたいと思っておりますので、委員の御支援もよろしくお願いいたします。
○木戸口英司君 この当政策大綱が既に農業、農村の経営にいろいろと悪影響を及ぼしていると考えられます。TPP協定の是非は、農業、農村の厳しい現状を踏まえて考える必要があるのではないか、石原TPP担当大臣の御所見をお伺いいたします。
○国務大臣(石原伸晃君) この前の藤巻委員との議論の中で私の基本的な考え方は申し述べさせていただきましたけれども、やはり日本の農、食品というものをしっかりと根付かせていく、守っていくということは基本的な立場であると認識しております。その一方で、農業の従事者の方々の平均年齢が六十七、八でございますか、かなり高齢化してきている。そんな中で、農業の環境、取り巻く環境というものは、一年間に八万トンもお米を食べる量が減っていくということを一つ取ってみても厳しいのではないかと思っております。
 そんな中で、委員御指摘のとおり、対策というものを十分にしていかない限り不安を払拭することはできませんし、また、この不安払拭なくして強引にTPPを進める、そういう気持ちは私どもにないからこそ、補正予算等々でもかなりの金額で農業に対しての手厚い保護、そして努力をされる方々が報われる、所得が拡大していくような政策を取らせていただいているわけでございます。
 その一方で、今後のこの国の国富をどのようにつくり出していくのかということを考えたときに、やはり自由貿易によって恩恵を被り、ここまで戦後七十数年たって復興をしてきたこの日本、平和で豊かな日本を次代にしっかりとつないでいく上では、やはり貿易に依存する部分というものもかなり大きいものがある。
 こういうことを総合的に考えて、これからの自由貿易の在り方、経済政策の在り方、農業政策の在り方を深めていくことが肝要ではないか、こんなふうに考えております。
○木戸口英司君 それでは、この新しい農政について何点か聞かせていただきます。
 経営所得安定対策の影響についてであります。農業者が存続するためには、農産物価格が生産費を下回る場合に農家所得を補償する仕組みが必要であります。TPP協定が発効するしないにかかわらず、重要な課題であります。
 米の生産者の手取りは、一九九〇年代前半、玄米六十キロ当たり平均二万円を維持していましたが、その後、下落が進み、平成二十六年産では平均一万二千円となり、平均生産費を下回るようになっております。このような危機的な状況への対策として農業者戸別所得補償制度が創設されましたが、第二次安倍内閣による新農政の下で経営所得安定対策へと政策変更されました。米の所得補償交付金十アール当たり一万五千円が、平成二十六年産から半額の七千五百円となっています。予算を見ても、平成二十四年度、米の所得補償交付金千九百二十九億円が、平成二十六年度、米の直接支払交付金八百六億円に減額され、平成三十年には廃止されます。米価変動補填交付金、平成二十四年度、二百九十四億円は既に廃止されました。これら予算の減額が農家所得の減少を招いたと言えます。
 また、経営所得安定対策として、水田活用の直接支払交付金の予算増額は見られますけれども、畑作物の直接支払交付金は対象者が認定農業者等に限定されております。また、収入減少影響緩和対策交付金については、交付対象者が認定農業者等の担い手に限定されている上に、農産物の価格が下落傾向にあれば収入補填の基準となる標準的収入額も下がり、また、積立金に対する生産者の拠出も収入のマイナス要因です。
 この制度の欠点は、今後導入が検討されている収入保険制度においても同じことが言えます。戸別所得補償は全販売農家を対象とすることで所得経営の安定を図った制度ですが、面積に応じての交付は、むしろ大規模農家に恩恵が大きい制度と言えます。現行の制度で手取りの米価が生産費割れを来し、厳しい経営に直面しているのは、小規模農家のみならず大規模農家においても同様で、むしろ大規模農家の方が深刻です。
 平成三十年から米の生産調整が見直されます。経営所得安定対策への政策変更は、年々主食用米の需要が減少する現実の中で、政府の言う攻めの農業に付いてこられない農業者の撤退に期待しているようにも感じます。
 農林水産大臣に所見をお伺いいたします。
○国務大臣(山本有二君) 攻めの農業に付いてこられない農業者の撤退に期待しているかという御質問でございますが、それは決してございません。
 まず、米の直接支払交付金についてのお尋ねもございました。全ての販売農家を対象としておるために担い手への農地の集積が遅れるという面があることの課題、これがちょっと、我々にとりましてはどうしてもこれを変更せざるを得ない理由でございますので、米の直接支払は二十九年産までとさせていただきました。この間、強い農業の実現に向けまして、農地集積バンクによる担い手への農地集積など前向きな政策を強化しておりまして、大規模農家にもこうした効率化へのメリットがもっと高まるように考えておるところでございます。
 その上で、攻めの農業に付いてこれない農業者の撤退についてでございますが、農政は産業政策と地域政策の両面がございます。その点において、我々は決して地域政策をおろそかにするものではございません。
 産業政策の面におきましても効率的、安定的な農業経営ができますように、これを生産条件不利補正交付金あるいは収入減少影響緩和対策、ゲタとナラシというわけでございますが、この経営所得安定対策の対象要件について規模要件は課していないものの、全ての販売農家を一律に対象とする政策体系ではなくて、経営意欲と能力のある担い手を対象としたところに特徴がございます。
 こうした産業政策に加えまして、日本型直接支払制度、こういうものをしっかり位置付けることによりまして、地域のコミュニティー、農業、農村の有する多面的機能、地域政策を重視いたしまして、この産業政策、地域政策を車の両輪として、小規模農家も含めた全体としての農業の底上げを図っていきたいというように思っております。
○木戸口英司君 農業者は消費者でもあります。その所得の低迷が地域に与える影響は大きいということをまず指摘しておきます。
 今、農地集積というお話がありました。農地中間管理機構による農地集積、集約化についてお伺いをいたします。
 政府は平成三十五年度に、担い手農業者が耕作する農地のシェアを八割に高めるとし、毎年十四万ヘクタールの集積目標を立てました。ところが、農地中間管理事業は、二年目の昨年度、担い手への集積面積は八万ヘクタールと、目標達成率で六割にとどまっています。農地中間管理事業では、農地の個々の出し手や、まとまった農地を機構に貸し付けようとする地域に対して機構集積協力金を交付しています。しかし、当事業のインセンティブとなるこの機構集積協力金の交付のハードルが今年度から大幅に引き上げられ、地域から困惑の声が噴出しています。
 農家所得が低迷する中で、受け手の側にも規模拡大への意欲が高まらない状況にあると考えますが、当事業について農林水産大臣の所見を伺います。
○国務大臣(山本有二君) 意欲ある農家経営者が更に効率よく生産ができますように、平成二十六年から、担い手への農地集積、集約化を進める究極の手段としてリース方式というものを取り入れました。これによってかなりこの集積の速度が上がってきたということは御承知おきのとおりでございますが、去年八万ヘクタールで、この目標から六割だというところは反省して頑張りたいと思っております。
 特に、今後も集積の加速化をしたいと思っておりまして、機構の役職体制の整備、地域の農業者の徹底した話合い推進、こういったことをお願いするとともに、基盤整備事業と機構の連携を更に強化して担い手が耕作しやすい農地の貸付けの推進をする、さらに、中山間地域や果樹産地における関係機関と機構の連携強化をする、さらに、遊休農地の課税強化をしまして機構に貸し付けた農地の課税軽減をするというような施策を取っていきたいと思っております。
 御指摘の機構集積協力金でございます。これについても見直しをしてきたわけでございますが、具体的には、二十六年の実績を見ますと、機構への貸付けの拡大には貢献をしているという整理はありますけれども、担い手の新たな農地集積に対する貢献が弱かったと思っておりまして、二十八年度においては農地利用集積目標の達成に資するようちょっと見直しを、この集積の合目的性を観点に直したいと思っております。
 国から県に対する予算の配分方法につきましては、担い手への集積面積の拡大分に応じて配分するということでございまして、県から市町村への支援、これは今までどおりでございますが、県ごとに単価を調整していただけるようにいたしまして、県のリーダーシップに期待をしているところでございます。
 そして、頑張れば頑張るほどその県が総額が増える仕組みというものが確立されることによって、我々も、県ごとに濃淡があり、また、その取組においてしっかりやっていただきたいと、こう思っておりますから、県を重視した形になっております。
○木戸口英司君 頑張れ頑張れと言いますけれども、ハードルが上がっていることは間違いないと思います。その点を指摘させていただきます。
 農林水産省は、農地中間管理事業の加速化のため、既に区画整理されている農地の畦畔除去等による区画拡大や暗渠排水整備を農業者の自力施工も活用して推進する農地耕作条件改善整備事業を実施しています。しかし、地域からは、今年度の補正予算に係る事業から国の助成単価が大幅に削減されると聞いております。半分と聞いております。
 足腰の強い農業経営を実現するためには、野菜等の高収入作物の導入が重要な課題です。このため、水田の畑地化、汎用化等の基盤整備は必須条件ですが、こうした助成単価削減は農家経営の実情、とりわけ中山間地域の実情を無視した措置であり、今後、未整備農地が置き去りにされれば、農地の集積、集約化はおろか耕作放棄地が拡大し、条件不利地農業の崩壊につながる懸念もあります。中山間地域等の条件不利地域では引き続ききめ細やかな基盤整備が必要であり、農家負担を軽減すべく十分な予算を確保すべきと考えますが、農林水産大臣の所見を伺います。
○国務大臣(山本有二君) もう全国各地域からこの定額助成を見直したことの御不満をいただいております。それはもう十分承知しております。
 しかし、この定額助成見直しは、実は会計検査院の指摘がございました。この会計検査院の実地検査等と、こういうことにおける定額助成の助成単価が現場条件とか施工実態に応じたものではないという指摘でございました。それなるがゆえに、これを踏まえて助成単価を見直さざるを得なかったというところの御理解を頂戴したいと思っております。
 新たな助成単価につきましては、現場条件とか施工実態に見合ったものにしたつもりでございますが、単価が増えるところや減るところもあるわけでございます。加えて、せっかく改定するわけでございますから、工事の設計に要する費用などは新たな加算措置というものも導入させていただきました。農村現場への丁寧な説明をしつつ、御不満のないような、そして営農しやすいような形でこの事業を推進していきたいと思っております。
 また、その際、中山間地域の条件不利地域における問題でございますが、野菜等の高収益作物の導入というものによりまして地域農業の振興を図っていく必要がございます。地域のニーズに沿って水田の畑地化、汎用化等の農地整備を計画的に進めることができますように、必要な予算をしっかり獲得していきたいというように思っております。
○木戸口英司君 そういう予算の課題というのは大きくあると思います。同様に、日本型直接支払制度についてもお尋ねいたします。
 この問題は、やはり予算措置が十分ではなく、農業、農村の多面的機能の維持、発揮を図る事業に取り組もうとする地域の要望に応えられていないということです。十分な予算を確保することが必要と考えますが、いかがでしょうか。農林水産大臣にお伺いいたします。
 そして、もう一つ続けます。
 農林水産省では、TPP大筋合意を受け、国内対策の財源については、政策大綱に即し、既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程において確保していくことを表明しています。真に必要な予算が確保できるか、今申し述べたとおりでありまして、懸念しております。併せて農林水産大臣の所見をお伺いいたします。
○国務大臣(山本有二君) 先生御指摘の日本型直接支払における不安というものは、特に中山間の直接支払におきますいわゆる協定数の低減ではないかというように思います。特に、この面におきまして、高齢化小集落における、もし病気で、連携しておった広域の人たちとの提携がもし解消されるならば、全額遡って返さなきゃならぬというような不安感から、この直接支払制度が使い勝手が悪いというようなことを御指摘になる人もおります。
 こういうようなことに関しまして、三万三千ヘクタールの取組面積が減少したというようなことを反省しつつ、それを解消していく方向で今回予算をお願いしているところでございます。幸いにして、ほかの多面的機能支払あるいは環境保全型農業直接支払、こういったものは予算額を上回る要望がございますので、この中山間の直接支払について……
○委員長(林芳正君) 時間が来ておりますので、簡潔におまとめください。
○国務大臣(山本有二君) 委員の御指摘どおり、しっかりと改正していく所存でございます。
○木戸口英司君 今答弁ありませんでしたが、まあいいです。分かりました。
 じゃ、以上です。
○行田邦子君 無所属クラブ、行田邦子です。よろしくお願いいたします。
 一昨日の質疑におきましても少し触れましたけれども、アメリカの次期大統領のトランプ氏は、自分は自由貿易は大好きなんだ、けれどもTPPは駄目と、なぜならば多国間の交渉だから、貿易交渉は二国間でやるべきなんだということを言っています。また、一方で、TPPは、そもそも経済規模からして、これはもう実質的な日米FTAであるという意見もあります。TPPの締約国十二か国のGDPのうちで日米が占める割合が約八割でありますので、そのようなことが言われているということであります。
 それで、まず大臣に伺いたいと思うんですけれども、日本がアメリカとの二国間協定ではなくて多国間の協定を結ぶ意義、メリットは何なんでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 行田委員にお答えいたします。
 我が国の企業がどこで生産をしたり調達をしているかということを見ますと、やはり自分たちに、例えば人件費が安い、素材産業でいうならば、その素材産業の部品、部分のものが入ってくる、いわゆるそのバリューチェーンを間違いなくアジア太平洋地域で広範に展開しているのが現状だと思っております。TPP協定は、言うならば、その地域において二十一世紀型の新たなルールを構築して、自由、公正な巨大な一つのマーケットをつくり上げるものである、もう再三お話をさせていただいております。
 その上で、やはり自由、民主主義、基本的人権、法の支配といったような基本的な価値を有する国々がその地域の中で経済のきずなを強めるということは、今日の委員会でも、RCEPの議論等々で中国の存在についての御議論がございましたけれども、やはりその地域の中で連携を深めていく意味の戦略性の意義ということも忘れてはならないと思っております。
 また、ルールの面での具体的なメリットとして言わせていただきますと、例えばですけれども原産地規則。交渉の結果、TPP締約国十二か国であればどこでも、製造して組み立てていけば、部品を日本から持っていってメキシコでつくったとしてもメード・イン・TPPとして関税引下げのメリットをより広い地域で受けることが可能となります。企業サイドからいえば、TPP域内であればそれぞれの事情に応じて新たに自由なサプライチェーンというものを構築することが可能になった。
 こうした点に、委員が御指摘いただいておりますこの多国間協議の意義というものがあるのではないかと考えております。
○行田邦子君 今大臣がおっしゃられたように、確かに、例えば原産地規則などというものは、これは二国間を幾ら積み上げていってもなし得るものではないということであります。
 日本はこれまでTPPの締約国の中で八か国ともう既に二国間の協定を結んでいます。そういうことからすると、残っているのはアメリカ、ニュージーランド、カナダ、この三か国なんですけれども、であれば、二国間でいいんだったらば、この三か国と個々に結べばいいじゃないかという議論にもなるかもしれませんけれども、やはり二国間ではどうしてもより広域的な環太平洋、アジアの共通ルールは作り得ないということであると私も理解をしております。
 それで、続けて伺いたいんですけれども、それでは、二国間と多国間の違いということで、交渉という側面で伺いたいと思います。
 日本はこれまで、先ほども申し上げたように、日本はこれまで二国間のFTA、EPAを中心に締結をしてきました。十四か国との二国間のFTA、EPAを結んできたわけでありますけれども、この度のTPPというのは日本にとって初めてのハイレベルのマルチの協定の交渉であったというふうに理解をしております。
 そこで伺いたいんですけれども、日本が交渉を行う上で、多国間交渉は二国間交渉と比較をしてどのような利点があるのか、そしてまたどのような困難な点があったのかをお聞かせいただけますでしょうか。
○政府参考人(澁谷和久君) お答え申し上げます。
 私は、二〇一三年の七月、マレーシアのコタキナバルで初めてTPPの交渉会合に日本が参加してから、昨年十月、アトランタで大筋合意するまで、最初から最後までずっと交渉の現場にいたものでございますので、そういう立場から、ちょっと個人的な感想も含めて申し上げたいと思いますが、TPPは十二か国による交渉でございます。三十章にもわたる大変幅広い分野を扱うものでございます。それぞれの分野でハイスタンダード、高い水準を目指すという元々大変厳しい交渉だったわけでございます。
 バイの交渉との違いをあえて申し上げるとすると、例えば関税中心のバイの交渉の場合、相手方が関税を既にかなりの品目を開放している場合は、こちらが一方的に要望されるばかりということで非常に難しい交渉になるわけなんですけれども、TPPの場合は幅広い分野を全体をパッケージとして扱ったということでございます。率直に申し上げれば、ある分野である国と対立をしても別な分野ではその国と共闘できるという、しかも交渉の進捗に応じてその組合せも変わるという、そういうダイナミズムが特徴だというふうに申し上げられると思います。我が国はそうしたマルチの特徴を十分生かして交渉してきたつもりでございます。
 我が国が交渉に参加して以降、TPP、それまでのキャッチフレーズはハイスタンダード、高い水準ということだったんですが、それに加えまして、バランスの取れた協定というのがキャッチフレーズになってございます。バランスが取れたという趣旨は、例えば関税交渉だけではなくて非関税分野も含めてバランスの取れた結果を目指す、また、各国がどうしても譲れないセンシティビティー、これは国によって分野が違いますが、それらには最終的には配慮するという各国の利害のバランスに留意した合意結果となった、これはマルチの交渉だからこそできたことだというふうに考えております。
 マイナス面をあえて申し上げるとすると、これも一概には言えないのかもしれませんが、バイの交渉の場合は最終局面では一気に進むということが往々にしてあるわけですけれども、TPPの場合、やはり十二か国の交渉ということもございまして、大筋合意までやや時間が掛かったという、そういう嫌いがあるのではないかというふうに思います。
○行田邦子君 冒頭私が申し上げたトランプ氏の考え方なんですけれども、多国間ではなくて二国間でやるべきだと。トランプ氏はこうも言っています。なぜならば、アメリカが有利になるからということも言っています。だから二国間の方がいいんだということです。
 この例えが適切かどうか分かりませんけれども、今のお話を、御答弁を聞いていまして思ったんですけれども、私も大好きなドラえもんを思い出しました。ドラえもんの世界では、のび太は、ジャイアンに対して言いたいことがあるときは一対一で話はしないんですね。ドラえもんがいれば別なんですけれども、ドラえもんがいない場合は一対一で決して話はしないんです。どうするかというと、スネ夫とか静香ちゃんを連れていって、みんなで話しましょうよと。静香ちゃんやそれからスネ夫にも言いたいことを言わせて、そして自分も言うというような戦略をたしかのび太は取っていたなと思いますので、ちょっとこれが例えが適切かどうか分かりませんけれども、ちょっと今ドラえもんのことをふと思い出しました。
 それでは、次の質問に移りたいと思います。
 第二十三章、開発章について伺いたいと思うんですけれども、TPPの特徴の一つとして、分野横断的なチャプターが設けられているということが言われています。その一つが第二十三章、開発章なんですけれども、ただ、TPPの特徴だと言われている割には、衆議院の審議でも余り議論がなされていなかったようでありますし、いろんな有識者の出された論文などを、レポートを見ても余りここには触れられていないということだと思いますので、今日は少し何点か伺いたいと思います。
 まず、私の認識ですと、これまで日本が締結したEPA、そしてまた日本以外の他の国・地域同士のEPA、FTAなどにおいて開発について章立てされているものはなかったと、こういうふうに思っております。
 そこで伺いたいんですけれども、TPP協定に開発章が盛り込まれた経緯、背景についてお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 他国が締結いたしますEPAやFTAを網羅的に把握する立場じゃございませんけれども、少なくとも我が国が締結してきたEPA等々では開発章というものはございませんでして、まさに委員の御指摘のとおりだと思います。
 じゃ、何でこれがこの二十三章という形で入ってきたのかということでございますけれども、やはり、委員も先ほど意見を御開陳されていた中で、高いレベルの貿易・投資のルールを構築する、その一方で、TPPの加盟国の中にはいろいろな国、のび太もいればジャイアンもいるということだと思っております。その中で全ての加盟国が貿易や投資を通じまして恩恵を受ける必要があるんだと思います。
 そのために、いわゆる、ちょっと日本語としては難しい言葉ですけれども、包摂的な経済成長、いわゆるインクルーシブエコノミックグロースですか、を促進する観点から、やはり貧困は削減しなければいけないよね、午前中の議論でもこの雇用の話が矢田さんから出ておりましたけれども、その雇用の機会の創出、そしてそういうものをやるための開発を支援していくということが重要であるということが御議論になってこの章が設けられたと承知をしているところでございます。
○行田邦子君 続けて伺いたいんですけれども、この二十三章の内容を見ていますと、ちょっと何かにやや似ているなというか共通している部分があるなと思ったのが、国連のMDGs、ミレニアム開発目標、それからSDGs、持続可能な開発目標など、こうした国連の枠組みなんですけれども、一部重なるかなと思っております。
 国連の枠組みでこのような貧困の削減とかあるいは女性の地位向上、活躍ということに取り組んでいますけれども、あえてなぜこのTPPという経済連携協定、つまり経済連携協定ですから国益と国益がぶつかり合って、そして国益が合致することによって成立するこの経済連携協定の中であえてこのような開発ということを盛り込んだのか、その意図と意義についてお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、御指摘のSDGsですが、昨年九月、国連において採択されたMDGsの後継目標です。二〇三〇年までの国際目標ということで、経済にとどまらず、社会、環境、こうした三つの分野にわたって取り組んでいく、誰一人取り残されない持続可能な社会の実現を目指していく、こうした取組です。
 そして、一方、経済連携におけるこの開発の項目ですが、まず、この開発という章立てが行われているのはTPPが初めてですが、過去、我が国が締結した経済連携においても協力という章は数多くあります。この協力章において開発とか協力について規定をしてきたということですが、こうした経済連携における開発ですとか協力、これは内容を見ますと、人材育成ですとか技術支援によって協定を着実に実施していくための体制を強化し、そして経済成長を図り、そして開発も実現する、こういったことになっています。要は、協定の目的を実現するために経済の取組を進めていく、こういった内容になっています。
 よって、SDGs等の大きな、国連におけるこの目標は、経済のみならず社会ですとか環境、こういった幅広い分野に焦点を当てている、経済連携の方は、経済への取組を中心に協定の目標を、目的を実現する、こういったことになっています。TPPの場合は少しその範囲が広がっているというのは事実であります。
 このように、それぞれ特徴がありますので、経済への取組ということにおいては皆共通しています。ただ、一方で、それ以外の特徴がありますので、開発とか協力の取組においてそれぞれの特徴を生かしながら全体として開発を盛り上げていく、こういった取組を進めていくべきものであると考えています。
○行田邦子君 TPPは極めて高いレベルのルールだということで、TPPに関心を持っている国、既に何か国か名前が挙がっていますけれども、その中には必ずしも政府や民間部門の体制が十分に整備されていないという国もあろうかと思います。そうした国が今後TPPに入っていくときに、こうした二十三章が章立てされているということ、私はこれは一つ重要なことだと思っていますし、そして、そのときに先進国日本がどのような協力をしてくれるのか、そしてまたそういう用意があるのかということを示すことというのは、私は更にこのTPPが、これが参加国が増えて、そしてより広い地域のルールになっていくためにも役立つと思っています。
 そうした視点で伺いたいんですけれども、それでは、第二十三章、この開発章の内容を踏まえて、日本としては具体的にどのような取組を行っていくつもりなのか、できる限り具体的にお聞かせいただきたいと思います。そしてまた、このような取組を行うことでどのような効果が期待されますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国がこれまで締結してきたEPAにおける協力章と同様に、TPPにおきましては、協力及び能力開発章ですとか開発章、こうした御指摘の第二十三章を始めとする章立てが行われており、協力活動を実施すること、これが想定されているわけですが、対象分野、具体的に申し上げるならば、一つは農業、工業、サービス、二つ目として教育、文化、ジェンダー、三つ目として災害リスクの管理等という形で例示をされています。例示ですからこれに限るものではありませんが、こういったものがまず対象分野としては中心になります。そして、協力の在り方としては、セミナー、共同事業、技術支援、専門家交流等が想定されています。さらに、具体的には、これはTPPであれば、これは発効後更に検討されるということになるんだと思います。
 我が国としましては、こうした協定の規定を活用しながら、開発協力における豊富な経験を生かして積極的に関与していきたいと考えます。そして、そのことが、委員御指摘のように、各締約国が着実にTPP協定の高い水準を実施することにもなると思いますし、さらにはTPPへの関心国、地域の拡大にも寄与していく、こうした効果につなげていきたいと、このように考えます。
○行田邦子君 どうもこの開発の章で具体的にどういったことをするのか、いまいちイメージがしにくい、分かりにくいんですけれども、協力ならばイメージがしやすいんですけれども、開発というと、ちょっと今の御答弁聞いていても余り具体的にイメージが残念ながらできませんでしたが、例えばなんですけれども、TPPによって恩恵にあずかる企業があります。こうした民間企業に対しても、自主的な取組というものを促すというのも一つあるのかなというふうに思っております。
 例えば、パナソニックなどはソーラーランタン十万台プロジェクトというのを自主的に取り組んでいると、こういった例もありますので、これはあくまでも企業の自主的な取組ではありますけれども、そういったことも促すということもあるのかなと思っております。
 それで、最後の質問なんですけれども、この第二十三章の四条なんですけれども、ここには女性及び経済成長ということが規定をされています。ただ、大変残念ながら、我が国、先進国なんですけれども、この女性の言ってみれば活躍ということにおきましては、ほかのTPP参加国十一か国よりか随分と遅れてしまっています。ジェンダーギャップ指数、二〇一五年で見ますと、調べてみたんですけれども、TPP十二か国のうち、日本は百一位なんですけれども、十一位ということです。日本より下なのがマレーシアだけということで、ただ、マレーシアは企業の管理職に占める女性の割合は日本より高いという状況ですので、恐らく経済分野ではマレーシアの方が女性の参画が進んでいるのではないかなとも思っています。
 日本はむしろ、この分野におきましては他の国から協力を仰いだり、また支援をいただかなければいけないというような状況だと思っておりますけれども、この第二十三章の四条を踏まえて、日本としては国内における経済分野での女性の参画と活躍についてほかの国とどのような協力活動が考えられますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の第二十三章四条ですが、具体的には、女性の能力向上や市場へのアクセスを容易にすること、指導的地位にある女性のネットワークの発展、そして職場での女性の働き方に関するベストプラクティス等に関する情報交換を行うこと、こういった規定が盛り込まれています。
 そして、日本の取組、遅れているのではないかという御指摘をいただきました。しかし、我が国としましても今の内閣において、女性が輝く社会を実現する、こういったことを標榜し、努力を続けております。例えば、二〇一四年から国際女性会議WAW!を開催するなどの取組、さらには、今年、G7議長国として伊勢志摩サミットにおいても、女性を優先アジェンダに掲げるとともに、女性の主流化を分野横断的に後押しするための強いメッセージ、こういったものを発信するなど取組を続けております。
 是非、TPP協定の下においても、締約国と連携しながら、女性能力の向上、ネットワークの拡大、こうしたものにしっかり取り組んでいきたいと考えます。
○行田邦子君 せっかく章立てをしたわけですので、この二十三章がしっかりとワークするように日本としても取り組んでいただきますことをお願いをして、質問を終わります。
○中山恭子君 日本のこころの中山恭子でございます。今日の委員会の最後の質問者でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 安倍総理には、十七日にトランプ次期大統領と会談すると伺っております。米国ではレームダック議会も開かれないこととなったということでございますので、今回の会談でTPP問題について合意するなどということは誰も考えていないことでしょうと思っています。せいては事をし損ずるということわざもございます。まずは、安倍総理とトランプ次期大統領との間で強固な信頼関係を築くことが今一番大切なことだと考えております。
 私は、国と国との関係は人と人との関係に尽きると考えております。石原大臣も新しいアメリカの政権の方々と今後強固な関係を築いていただきたいと思っておりますが、その点についていかがでございましょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 中山委員は大使も御経験されて外交に精通をされているわけでございますが、やはり新しい政権ができたときには人間関係が非常に重要であるという御指摘は、もうまさに私もそのとおりだと思います。
 総理も同じお考えに立たれておりまして、お互いに関心事項について率直に十七日には意見交換を行いたい、信頼関係を構築していきたいというようなことはもう既に国会で述べられていることだと思います。あわせまして、自由貿易の大切さですね、こういうものについても総理のお考えを述べたいと答弁されておりますので。
 ただ、難しいのは、大統領じゃないんですね。次期大統領であるというところが非常に難しいところだと思いますが、中山委員が御指摘のとおり、やはり強固な、初めてお会いするわけですから、信頼関係を構築していただくことに御尽力をいただけるものと確信をしているところでございます。
○中山恭子君 TPPをテーマにしますと、石原大臣もアメリカの新しい政権の中で強い人的関係を築いていく必要が最も大事なことであろうと思っておりますので、是非そのように進めていただけたらと思います。
 TPP協定については、今いろいろな考え方が出てきております。米国を抜いて交渉を始めようとか、又は米国から再交渉の主張が出てくる可能性もあると考えております。しかも、国として、経済関係ではない分野、非常に重要な分野との取引、駆け引きということもあろうかと考えているところでございます。今政府は再交渉は絶対しないというようにおっしゃっていますけれども、交渉、この厳しい国際社会の中での交渉において、自ら自分たちの手足を縛るというようなことはしておかない方がいいのではないかと考えております。
 日本は、TPPに関してやるべきことはやったよ、責任はもう自分の方ではないよと。まあ安倍総理はそれでもアメリカに強い働きかけをするとおっしゃってはいますけれども、何とも言えず優等生的な外交が行われているように感じられるものですから、この交渉だけ、交渉に限らずですね、国際交渉においてはよりしたたかな交渉を進めていただきたいと思っております。
 今お答えいただけるということではないと思いますが、是非、もしお答えいただけるのでしたらよろしくお願いいたします。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、不透明な国際社会において外交を進めるに当たって、外交に対する基本的な取組、大変重要かと思います。
 大統領選、アメリカでの大統領選挙、話題になっておりますが、来年はお隣韓国においても大統領選挙が当然予定されます。そして、フランスにおいても大統領選挙が予定されています。ドイツにおいては総選挙が予定されています。中国においては五年に一度の中国共産党大会も予定されています。様々な動きが来年もあり得るのではないか、こんなことを考えますときに、外交に取り組む姿勢、大変重要だと思います。
 その際に、やはり我が国の国益というものをしっかり考えながら、そしてなおかつ、国際社会の平和や安定についてどう資することになるのか、こういった点をしっかり考えながら外交を進める姿勢、大変重要であると考えます。
○中山恭子君 是非したたかな交渉を進めていただきたいと思っております。
 ただ、今回、トランプ次期大統領の発言の中では、アメリカの言い方がおかしいんだというだけではなくて、日本として変わらなければならないような、そういった示唆に富む発言も多くあったと考えておりまして、日本自身がどのように対応していくのか、より真剣に考え、私どもも含めて考えていく必要があろうかと思っております。
 今日は、TPP協定の中で幾つかの項目について確認、もうほとんど確認でございますが、確認しておきたいと思っております。
 まず、通関手続につきまして、TPPでは円滑な貿易を促進するため、税関手続の透明性の確保や通関手続の簡素化等が図られることとなっております。例えば、輸出者、生産者又は輸入者自らが原産品申告書を作成する制度が導入されます。また、今回、四十八時間通関制度も導入されます。政府として、こういった事柄に対応できる、対応するための、税関の例えば職員の確保や職員の育成について十分考慮されているのでしょうか、政府にお伺いいたします。
○政府参考人(梶川幹夫君) 御指摘のとおり、TPP協定には税関手続に関する新たなルールが盛り込まれております。TPP協定の発効後には税関職員がこうしたルールを適切に運用できるように、職員研修の充実に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 また、税関の体制につきましては、近年、訪日外国人旅行者数の増加等に伴う業務量の増加に加えまして、今後、TPP協定が発効いたしますと、税関における輸入貨物のTPP原産性確認作業等が増加するということが見込まれるわけでございまして、こうしたことから、税関の業務量は将来的に増加するものというふうに考えております。
 こうした税関を取り巻く厳しい環境に適切に対応するために、今後とも、限られた定員事情の下で効率化を図りつつ、税関の体制整備を適切に図ってまいりたいというふうに考えております。
○中山恭子君 旅行者が急増していることも事実ですし、また、二〇二〇年にはオリンピック・パラリンピックが開催されます。是非、税関として、職員の確保そして育成、さらには効率化について真剣な対応をしていただきたいと思っております。
 金融サービスについて伺います。
 TPP締約国は、外国の金融機関に対し幅広く自国の金融サービス市場への参入を認める義務を負うと定められています。これにより、金融における主要サービス分野の外資制限、参入制限、過度な免許要件等が撤廃、緩和されますが、外資系金融機関が自由参入することとなると地域金融機関への影響も大きいのではないかと懸念されるものでございます。どのような影響が出てくるとお考えでしょうか、政府にお伺いいたします。
○政府参考人(白川俊介君) お答え申し上げます。
 まず、金融分野に係るTPP協定の内容について少し御説明申し上げます。
 日本は、TPP協定におきまして新たな法改正等を必要とする約束は行っておりません。したがいまして、外国の金融機関による日本への参入条件に変化はございません。一方で、他の締約国は、WTO協定やこれまでの経済連携協定よりも自由化を前進させる約束を行っておりまして、本邦金融機関の海外展開が容易になることが期待されております。
 それで、お尋ねの地方における金融機関の今後の状況でございますが、私どもは、こういうTPPも利用しながら海外展開の促進も行っていくべきだと考えておりまして、これまでも、これはTPP締約国を含む新興国に対しまして、法制度の整備や検査監督のノウハウの提供を通じて現地の基礎的な金融インフラを提供するですとか、現地金融当局との間の人材交流を通じて新興国における金融人材を育成するなどの取組を行ってまいりました。これによりまして、現地における本邦金融機関の円滑な事業展開に貢献してきたつもりでございます。
 金融庁といたしましては、今後もこうした取組を継続することで本邦金融機関の海外展開の促進に資するよう努めてまいりたいと思います。
○中山恭子君 法改正をする必要のない協定であるということでございますが、実際に地域金融機関に対して外資系の金融機関が自由参入することが増えてくるということもございますので、是非金融庁として注意深く地域金融について見ていただきたいと考えております。
 また、地銀を含めた我が国の金融機関の海外進出、こういった事柄につきましても、地銀等、まだ慣れていないというのが現状だと考えておりますので、その具体的な支援、政府としてできる限りの支援を進めていただきたいと考えているところでございます。
 もう一点、政府調達についてお伺いいたします。
 中央政府や地方政府等による物品、サービスの調達に関して、入札の手続等のルールについて定められることになっています。これにより海外市場におけるビジネスチャンスの拡大につながるとの声があります。また、反面、外資における日本の公共事業への参入が拡大するのではないか、地方の中小企業が不利になるのではないかとの危惧も指摘されています。この点について政府の対応をお伺いいたします。
○政府参考人(澁谷和久君) お答え申し上げます。
 TPP協定、政府調達章、第十五章でございますが、これはルールを決める、ほぼWTOと同じ内容になっておりますが、だけではなくて、各国がどの機関をどういう基準で開放するかという、その約束をしているわけでございます。交渉中から、都道府県等に対する説明会をするたびに皆さん大変御心配をされていた部分でございますが、結果は我が国がWTOの政府調達協定で約束している内容と全く同様でございます。したがって、現行の国内の調達制度の変更、あるいは新たな市町村など市場開放するといったことは全くございません。
 更に加えて申し上げますと、TPPのこの各国の約束表の中で、州政府など地方政府の調達を開放していない国がございます。アメリカ、メキシコ、マレーシア、ベトナム、ニュージーランドでございますが、これらの国に対しては、相互主義の観点から、我が国はTPP協定においては地方政府を開放していない、地方政府に関する調達を約束していないと、こういう形で相互主義を取らせていただいているところでございます。
○中山恭子君 法改正の必要もないということでございますが、ただ、これまで外資が日本の公共事業へ参入するということはそうたくさん事例があるわけではございません。今後こういった動きが非常に活発になることも考えられますので、是非、そういった動きに対して日本の中で混乱が生じないように、地方の中小企業が不利になるようなことのないように対応していただきたいと思っております。
 また、今お話がありましたように、ベトナムやマレーシア、ブルネイにおいては、日本企業の政府調達市場への参入機会が初めて国際約束として規定されたとのことでございます。我が国について大きなメリットが生ずるとも考えられますので、そういった事柄につきましても、政府として民間企業に情報を流す等、協力して動いていただきたいと思っております。
 TPP協定では、政府調達について協定の効力発生から三年以内に適用範囲の拡大を達成するための交渉を開始するとされておりますが、その際、国、地方の政府調達における外国企業の受注機会の更なる拡大を迫られることにはならないのでしょうか、政府のお考えをお聞きいたします。
○政府参考人(澁谷和久君) 御指摘のとおり、TPP協定の第十五章二十四条で、政府調達につきまして三年以内に適用範囲拡大に向けた、これ追加的な交渉という言い方をしておりますが、そういう規定があるわけでございます。
 先ほど御紹介しましたとおり、本来TPPは、WTOプラス、WTOより高い水準を目指しているものでございますが、アメリカ、メキシコ、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、地方政府をこのTPPでは一切開放していないわけでございます。アメリカはWTOの協定の中では幾つかの州について開放しておりますので、WTO未満、WTOマイナスになっているものでございます。こうした国々を主として念頭に置きまして、地方政府についてむしろこうした国々に対する市場開放を促すというのがその追加的な交渉の主眼でございます。我が国については既にWTOで政令市まで開放しておりますので、ほかの国が地方政府を開ければそこまでの水準まではという、そういうことでございますので、現行よりも水準を拡大することは念頭に置いていないということは申し上げたいと思います。
○中山恭子君 今大きく世界が変わろうとしていると見えます。そういった中で、日本として、自由貿易、法制、法による支配、こういったことを中心にしてリーダーとして活動できる、そういった形で政府に動いていただきたいと考えております。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○委員長(林芳正君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時五分散会