第193回国会 法務委員会 第9号
平成二十九年四月二十五日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十日
    辞任         補欠選任
     羽田雄一郎君     小川 敏夫君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
       厚生労働大臣政
       務官       堀内 詔子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       金融庁総務企画
       局参事官     栗田 照久君
       法務大臣官房司
       法法制部長    小山 太士君
       法務省民事局長  小川 秀樹君
       財務省理財局次
       長        中尾  睦君
       文部科学大臣官
       房審議官     白間竜一郎君
       国土交通省航空
       局次長      平垣内久隆君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民法の一部を改正する法律案(第百八十九回国
 会内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(第百八十九回国会
 内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
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○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十日、羽田雄一郎君が委員を辞任され、その補欠として小川敏夫君が選任されました。
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○委員長(秋野公造君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長小川秀樹君外五名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(秋野公造君) 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○元榮太一郎君 おはようございます。自由民主党の元榮太一郎です。
 今回は、民法改正という歴史に残る法改正の審議において参議院のトップバッターとして質問する機会をいただきましたこと、秋野委員長を始め理事、委員の皆様に心より感謝を申し上げます。また、金田大臣、盛山副大臣、井野政務官始め政府参考人の皆様、本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、日本の民法ですが、明治二十九年、一八九六年以来ほとんど変わっておらず、今日まで何と百二十年もの月日が流れました。今回の民法改正は制定以来初の債権法の抜本的改正ということですが、この間に社会や経済は大きく変化をしておりまして、これに対応するために、国民に分かりやすく、国民に寄り添った大改正が行われたことは非常にすばらしいことだと思っております。法案提出に向けて御尽力された法務省並びに関係者の皆様方にも心から敬意を表する次第であります。
 私は、この法務委員会において、司法の強化、そして国民により身近な司法というテーマを質問させていただいております。したがって、今回も、国民に分かりやすく、国民に寄り添った大改正ですから、国民への周知徹底が大変重要だと考えております。それは憲法二十一条が保障する国民の知る権利にもつながることだと考えておりますので、多岐にわたる改正ではありますが、とりわけ重要と考える部分について質問してまいりたいと思います。
 まず、今回の改正、先ほど申し上げたとおり、百二十年ぶりの抜本的な債権法の改正ということになりますが、これまで改正されず、今回のタイミングで改正されることとなった理由と趣旨をお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(金田勝年君) 元榮委員から御質問がございました。お答えをしたいと思います。
 民法は、条文自体がシンプルに書かれておりまして、その規定内容の抽象度が高いということから、社会経済情勢の変化に対しましては、その改正をしなくても、条文の解釈により一定程度対応することが可能であったものと考えられます。また、一定の分野における社会経済情勢の変化に対しましては、民法の特則を定めた法律を個別に制定すること等で対応をしてきたという面もあります。
 他方で、民法の債権関係の規定は取引社会を支える最も基本的な法的なインフラでありますことから、その規定内容の見直しは取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがあると。そのために、民法の見直し作業は、法律の専門家でない国民各層からも広く意見を聴取しながら慎重に進められる必要があるなど、個別に特則を制定することと比べまして、その改正に伴う社会的なコストというんでしょうか、この社会的なコストというものも極めて大きいものと考えられてきたわけであります。そのため、民法の債権関係の規定につきましては、本格的な改正に着手されないまま、御指摘ございましたが、約百二十年が経過したというふうに考えられるわけであります。
 もっとも、今般の改正法案におきましては、その目的とされましたように、社会経済の変化への対応を図るとともに、国民一般に分かりやすいものとするという観点からは、規定内容の全般的な見直しを行う必要は既に高まっていたものと考えられるわけであります。特に、消滅時効期間あるいは法定利率制度の見直し、あるいは定型約款に関する基本的な規律の創設といったものはまさに民法において行うことが必要とされるものでございまして、民法自体を見直さざるを得ない状況に直面しているものと認識をいたしておりました。
 以上のとおり、民法につきましては複数の要因が重なって約百二十年間改正をしてこなかったものでありますが、今般の改正は社会的な必要に基づいて妥当な時期に行うものであって、その内容としても、社会経済の変化への対応を図るとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとすること、寄り添ったものとまさにすることを趣旨とするものであろうと、適切なものと考えている次第であります。
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 私も司法試験で民法を学び、そして実務でも活用しておりまして、確かに解釈で対応できることもありました。一方で、消滅時効の期間等々を含めまして、変わらなければならないという中で慎重に慎重を重ねて今回の改正ということで、非常にすばらしい、生活に直結する基本法ですので、十分な審議の上で速やかに採決されることが当委員会でも必要であるというふうに私は考えております。
 続きまして、個別のテーマに入っていきますが、保証について伺います。
 今回の改正では、事業用融資の第三者保証について、原則として保証意思宣明公正証書の作成が必要とされることになりました。その例外として、公正証書作成が不要である場合が第四百六十五条の九で規定されていますが、この同条第一号では、「主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」と規定されています。この規定に言う「これらに準ずる者」とはどのような者を言うのか、お答えいただきたく思います。
 それと同時に、民間企業では最近執行役員という役職もありまして、従業員であるにもかかわらず役員のような肩書も一般的に普及しているところですので、この執行役員が「これらに準ずる者」に含まれるのか否かも併せてお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘のありました準ずる者でございますが、これは名称のいかんを問わず、理事、取締役などと同様に、法律上法人の重要な業務執行を決定する機関又はその構成員と位置付けられている者を指すところでございます。例えば、宗教法人における責任役員ですとか、持分会社において業務執行社員が定められた場合における業務執行社員などがこれに該当いたします。
 他方で、執行役員の件でございますが、委員御指摘のいわゆる執行役員につきましては、法律上はあくまで従業員であるのが通常でありまして、法人の重要な業務執行の決定に関与する機関の地位にはないものと考えられます。したがいまして、このような執行役員は理事等に準ずる者には該当せず、例外的に公正証書の作成を必要としない者には含まれないことになるものと考えております。
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 今回の改正案では、今度は個人事業主でありますが、この債務保証について、その事業に現に従事している配偶者は公正証書作成の適用除外ということにされています。しかし、その法人の債務保証については、取締役や総株主の議決権の過半数を有する者などに限定されていること、そしてまた、個人事業主の債務保証についても、配偶者以外の者は共同事業者に公正証書不要な作成の適用除外者は限定されていることのバランスを考えますと、この個人事業主の債務保証をする配偶者についても共同事業者と言えるような配偶者に限定するという考えもあろうかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案の検討の過程では、個人事業主の配偶者を公証人による意思確認の手続の例外とするのが適切かにつきまして様々な意見がございました。その中でも、中小企業団体や金融機関からは、主債務者が法人である場合の主債務者の代表者などの配偶者については、経営者との経済的一体性や経営の規律付けの観点からは保証人となることに合理性があり、現にこの配偶者が保証人となる事例は少なくないことを踏まえ、公証人による意思確認の手続の例外とすべきであるとの強い意見がございました。
 しかし、改正法案におきましては、公証人による意思確認の例外とすべき配偶者の範囲としては、法人である事業者の代表者等の配偶者を含めないこととし、あくまでも個人事業者の配偶者であって、かつ共同して事業を行う者又は事業に現に従事している者に限定して例外扱いをすることとしております。
 その理由でございますが、個人が事業を営んでいる場合には、その個人の財産がその事業に供され、かつその利益はその個人に帰属することとなりますが、その個人事業主が婚姻しているときには、事業に供した個人の財産及び個人が得た利益はその配偶者とともに形成した夫婦の共同財産であると評価され得るものであります。
 そして、夫婦の共同財産が事業に供されるだけでなく、その配偶者がその事業に現に従事しているのであれば、事業を共同で行う契約などが夫婦間に存在せず、共同事業者の関係にあるとまでは言い難い事例でありましても、財産や労務を事業に投下し、他方で利益の分配を受けているという点で、実質的には個人事業主と共同して事業を行っているのと類似する状態にあると評価することができるわけでございます。
 そういたしますと、個人事業主の事業に現に従事している配偶者は、その個人事業主の事業の成否に強い利害関係を有し、その状況を把握することができる立場にあると言えます。
 他方で、法人が事業を行っている場合における法人の代表者などの配偶者については、今申し上げましたような意思確認の手続の例外とすべき実質的な事情は存在いたしません。
 このように、改正法案におきましては、中小企業などの実情も踏まえた上で、保証のリスクを認識せずに保証人となるといった被害を防止するという公証人による意思確認手続創設の趣旨に鑑みまして、個人事業主の配偶者についてのみ、かつ、あくまでも共同して事業を行う配偶者又は事業に現に従事している配偶者に限定して意思確認の手続の例外としたものでありまして、合理性があるというふうに考えております。
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 御答弁も理解できるところはありますが、やはり共同して事業を行う配偶者と事業に従事しているのみの配偶者というのは、いろいろな事情の違いもあると思いますし、そもそも民法は夫婦別産制というような基本でございますので、この点についても今後の実情を照らしながら慎重に検討も含めて、いろいろ御検討いただきたいなというところであります。
 その第三者保証についてでありますが、金融庁では第三者保証はできるだけ取らないようにしようとすると、そのような施策を実施しているということですが、施策の内容についてまず具体的に教えていただければと思います。
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 金融庁におきましては、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立に向けまして、平成二十三年七月に監督指針を改正いたしました。この改正におきまして、実質的な経営権を有している者、事業に従事する配偶者、事業承継を予定している者といった経営者に準ずる者及び自署、押印された書面によって自発的な意思に基づく申出を行った者といった必要最低限の例外を除きまして、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めない旨を明記したところでございます。
 金融庁といたしましては、この監督指針に基づきまして金融機関による自主的な取組を促してまいりたいと考えてございます。
○元榮太一郎君 そうしますと、原則として経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないというこの金融庁の施策というのは、今回の法改正によっても変わらないというような理解でよろしいでしょうか。念のためお答えいただきたく思います。
○政府参考人(栗田照久君) 金融庁といたしましては、金融機関が担保、保証に必要以上に依存することなく、取引先企業の事業の内容とか成長可能性等を適切に評価し融資等を行うことが重要であると考えてございます。こうした観点から、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則といたします融資慣行を確立するという監督指針の考え方は引き続き重要であると考えておりまして、今回の法改正後におきましてもこうした考え方に変わるものはないと考えております。
○元榮太一郎君 保証について伺ってまいりましたが、保証というのは重大な責任を負うにもかかわらず、これまではよく考えずに保証人となって予想外の債務を負ってしまうと。テレビドラマや映画だけでなく本当に現実の世界もあったわけですが、このような人生が暗転するという悲劇が少なからず生じています。そのため、今回のこの公証人による保証意思の確認手続が導入されたということは非常に評価をしております。
 ただ、根本的な問題として、法律というものに対する国民全体の知識、認識が不足しているのではないかと考えております。社会のルールである法律、そして、今回民法はまさに生活に直結する基本法でありますので、中学校や高校といった、こういうような教育の場所で法教育のより一層の充実が必要であると思いますが、この点について法務省の取組をお伺いします。
○政府参考人(小山太士君) お答えいたします。
 法教育は、自由で公正な社会を支える担い手を育成するために不可欠なものとして重要なものであると認識をしております。
 法務省といたしましては、全国の中学校、高等学校に法務省職員等を講師として派遣して法教育授業を実施しているほか、文部科学省の学習指導要領に対応した小中学生向けの法教育教材を順次作成の上、全国の小中学校に配付をする等の取組を行っているところでございます。
 法教育教材について一例を挙げさせていただきますと、中学生向け教材におきましては、日常生活における身近な契約を例に取って、契約の原則や契約を解消できる場合などについて多角的に検討してもらい、契約締結は慎重になすべきことなどについても理解を深めてもらうこととしております。また、高校生向けの法教育教材につきましても、法教育推進協議会という協議会を設けまして、その下で、実際に学校現場で教鞭を執っている教職員あるいは法律関係者を構成員とする教材作成部会を設置いたしまして、その構成や内容等について検討を行っていただいているところでございます。
 法務省としましては、今後とも、文部科学省を始めとする関係機関、団体と連携しながら、法教育の普及推進を積極的に進めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○元榮太一郎君 現在、中学校や高校において法教育が行われているということは理解いたしました。
 ただ、現在、法務省が行っている法教育は、全ての中学校、高校で丁寧に行われているというものではないようにも思います。国民の法の理解の向上というものは、司法の強化につながり、そして司法が強化されると国力の向上に間違いなくつながっていくと、このように考えております。法律をもっと身近なものにするためには、中学、高校の一般科目の中で社会として生きていく上で必要な法律の実学的な基礎知識をもっと学べるようにするべきかなというふうに思っています。
 この点、学習指導要領では、中学校の社会科において契約の重要性について、高等学校の現代社会において経済活動を支える私法に対する基本的な考え方などについて学ぶことというふうにされております。
 今回の民法の大改正を契機に、もっと中学校及び高等学校において、以上のような観点から法律に関する教育を充実させるというお考えはありますでしょうか。
○政府参考人(白間竜一郎君) お答え申し上げます。
 今、先生御指摘の法教育でございますけれども、現在、中学校や高等学校の段階から社会生活における法や決まりの意義、こういったことを身に付けさせることは大変重要であるというふうに考えておりまして、学習指導要領に基づきまして社会科、家庭科、道徳等において法や決まりの意義ですとか、また日本国憲法を始めとする法制度、また契約などの指導が現在行われているところでございます。
 この学習指導要領につきましては、本年の三月に公示をいたしました新しい学習指導要領におきまして、例えば、これまで中学、高校で学習していた契約につきまして、小学校の家庭科で売買契約の基礎、また中学校の技術・家庭科でクレジットなどの三者間契約を学習することとするなど一層の充実を図っておるところでございます。
 また、高等学校の学習指導要領につきましては、本年度中の改訂を予定しているところでございますけれども、これにおきまして新たな必履修科目、公共というものを設ける予定でございますが、これにおきまして、法的な主体などの自立した主体として国家、社会の形成に参画し、他者と協働する力を育成する指導、これを充実することとしておりまして、引き続き、法務省と連携協力をしながら、法教育の充実に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
○元榮太一郎君 教育段階における実学的な法律知識というのは非常に重要だと思っておりまして、例えば、けんかをして相手をけがさせてしまったら傷害罪ということで法定刑も非常に重かったり、先日、私の千葉選挙区で行われました千葉医大生によるああいう暴行事件に関しても、本当に、ああいうような、お酒を飲ませてああいう行為に及ぶとこれはもう人生を棒に振ってしまうんだと、そういうようなことを教育段階で少しでも伝えることができれば、彼らは前途有望だったにもかかわらず、これから厳しい人生を歩んでいくことになるでしょう。そういうような若者を一人でも減らせることがこの教育の現場に求められていると思いますし、私自身は非常に重要だと思っておりますので、そういった意味でも、もっともっと充実させるということを御検討いただきたいなと思っております。
 そして、続きましては、今後の改正予定ということになりますが、債権法については、平成十六年に保証に関する部分的な見直しが行われたほかはこれまで全般的な見直しが行われたことなく、まさに今回百二十年ぶりの抜本的な改正ということになります。そして、総則については、平成十一年に禁治産、準禁治産制度を廃止する成年後見制度の改正、平成十八年に公益法人に関する改正が行われており、物権については平成十五年に担保物権についての改正が行われましたが、債権法のような抜本的な改正はまだ行われておりません。
 今回の法律案の提案理由であります社会経済情勢の変化というのは、まさにこの債権法分野に限られないことだ、民法全体に当てはまることだと思っておりますが、民法の債権法以外の分野の改正予定のうち重立ったものを教えていただければと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の改正対象以外の分野におきましても、民法を社会経済の変化に適切に対応させていくことは重要であると認識しておりまして、例えば、相続法制の分野につきましては、高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化などの社会情勢に鑑みまして、法制審議会民法(相続関係)部会におきまして、平成二十七年四月から調査審議が進められております。この部会におきましては、主として、配偶者の居住権を保護するための方策、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策のほか、遺産分割、遺言制度、遺留分制度などに関する見直しについて議論がされているものと承知しております。
 今後も、民法のうち債権法以外の各分野につきまして、具体的な改正の必要性を見極めながら、個別に見直しを検討してまいる所存でございます。
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 債権法の抜本的な改正ということで今まで質問をさせていただきましたが、今回の改正はこれに尽きるものではなく、これ以外にも大きな改正がたくさんあります。まさに、司法試験で覚えた民法ががらっと変わってしまうということで、実務家も大変ということになりますが、これは本当に国民の皆さんに直結する生活の基本法でありますから、冒頭にも申し上げましたが、周知の徹底というものが非常に重要であるというふうに考えております。
 どのような形で周知をすることを考えているのか、そしてまた、政府が国民に発したいメッセージがあれば併せてお答えいただきたく思います。
○政府参考人(小川秀樹君) まず、周知の必要性という点でございますが、改正法案は民法のうち債権関係の規定を全般的に見直すものでありまして、国民の日常生活や経済活動に広く影響を与え得るものでございますので、法律として成立した後は、その見直しの内容を国民に対して十分に周知する必要があるというふうに考えております。
 具体的な周知方法でございますが、国会における審議の結果や各種関係団体などを含めた国民からの意見も踏まえつつ、今後検討していくということになりますが、例えば、全国各地での説明会の開催ですとか、法務省ホームページのより一層の活用、分かりやすい解説の公表などを想定しております。
 法務省といたしましては、改正法が適切に施行されるよう、国民各層に対して効果的な周知活動を行う予定でございます。
 なお、保証に関する改正を始めといたしまして、消滅時効あるいは定型約款など一般の国民に対して影響が大きい個別のテーマについては、国民生活のうち具体的にどのような場面に影響があるかを踏まえつつ、各テーマ別に周知方法を工夫いたしまして、国民に対して届けるメッセージも異なるものとなるようにすることが、これは効果的な周知に当たっては肝要ではないかというふうに考えているところでございます。
 このような観点も含めまして、効果的な周知活動の在り方につきましては、関係諸機関とも協力しつつ検討してまいりたいというふうに考えております。
○元榮太一郎君 今消滅時効の話も出ましたが、消滅時効も十年だと思っていたらもう五年に変わっていたということなど、非常に意図せぬ形で生活の現場に影響を与えるということも考えられると思います。そういった意味では、不断の努力で、この民法に限らずでありますけれども、法律という、全ての生活の裏側そして傍らには必ず存在する日本社会共通のルールでありますので、そういったものの周知徹底については是非とも御尽力いただきたいなと思います。
 そしてまた、質問の中でもお話ししました法教育のより一層の充実というものに関しては、これから未来を担う若者たちが社会人としてのマナーというものを身に付けるこの教育の場で実学的な法律の知識を身に付けるということは、一人一人が活躍できる、そういうような社会人を育てていく上で大変大事なことだと思っておりますので、是非ともより一層の充実についても御検討いただきたい、強くお願いいたしまして、少し早いですが、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 今回の債権法改正の背景などは、今、元榮委員の方から詳しくお尋ねいただきまして答弁いただきました。私は、それを踏まえて、今度は個別の点について、今日一日では終わりませんけれども、順に質問させていただきたいと思っております。
 まず、時効の点について最初にお尋ねしますが、大臣、今回、様々な短期消滅時効、あるいは十年というものも全部まとめて五年というふうに消滅時効を統一したというような内容になっておりますが、この趣旨はいかがな点にあったんでしょうか。
○国務大臣(金田勝年君) 現行法の第百七十条から百七十四条までの規定でございますが、一定の債権について時効期間を三年、二年又は一年とする短期消滅時効の特例を設けております。その趣旨は、特例の対象とされた債権が制定当時、比較的低額で短期間で決済されることが通常であって、弁済の証拠を発行せずに、発行しても保存しない慣習があると考えられたことから、特に時効期間を短期間にしてその権利関係を早期に決着させることによって将来の紛争を防止することにあったという現状を申し上げた後で、この点についての問題の所在として、しかしながら、これらの細かな特例が存することによりまして、どの規定が適用されるのかを確認する手間が掛かると、適用の誤りや規定の見落としの危険も生ずる上に、現代社会においては取引が極めて複雑多様化していることから、特例の適用を受ける債権と言えるかどうかという判断が難しいものが生じてきている。さらに、制定後の社会状況の変化によりまして多様な職業が出現するなどしたために、特例の対象とされておりました債権に類似するのに特例が適用されないものも現れている、この両者の間で時効期間に大きな差が生ずることから、特例自体の合理性に疑義が生じていると。
 こういう、まあ二点申し上げましたが、こうした問題、こういうことで、改正法案におきましては、現行法第百七十条から第百七十四条までに定められた短期消滅時効の特例を廃止することとしておるところであります。
○小川敏夫君 現行法、例えば、飲み屋さんの飲食代金一年、あるいは民法上、雇用契約の使用人の賃金も一年ということでございますが、これが今度は五年ということになるということでございますけれども、例えば飲食店の方の一年を先にお話しさせていただきますと、そうすると、飲み屋さんの未払があった場合、あるいは払ったんだけど払っていないじゃないかというようなことがあった場合、これまでは一年間領収書を保存しておけばよかった。あるいは、一年間で時効になるんだけれども、五年となりますと、例えば飲みに行って、その後四年半以上たってから請求が来たという場合になるとどうなのか。そのことまで考えて領収書か何か取っておかなくちゃいけないのかということも考えると、例えば全部一律にということもなくて、やはりそれなりの合理性があったと思うんですけれどもね。どうでしょう、飲み屋の飲食代金、五年間も領収書を持っておかなくちゃいけないようなことになるのはちょっと逆に手間が掛かるかなという気がするんですが、大臣は御所見いかがですか。
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの小川委員の御指摘は法制審でも議論になったところであると承知しておるんですが、この点につきましては民事局長から答弁させていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、いろいろな考え方はございます。例えば少額の債権については特例を設けるべきではないかというような御指摘もございますが、例えば、じゃ、どのような類型を、先ほどもお話ありましたように、飲食店の代金だけを取り上げるのか、あるいはもうちょっと別の類型もそのまま残すのかなど、なかなか合理的な説明が難しいところがございます。
 また、少額の債権につきましては、実際上はそもそも債務の負担の原因となりました契約書自体が作成されないなどということも考えられますし、時効の債権であることを立証することも困難であるため、多くのケースでは即時払いがされて、それにより決済が終了するのが一般的であるというふうに考えられますので、そういった点も考慮いたしますと、今回の短期消滅時効の廃止というのは合理性があるのではないかというふうに考えております。
○小川敏夫君 世の中、善意の飲食店だけじゃなくて、ぼったくりとか、たちの悪いのもあるわけでありまして、酔っ払っていて何かよく分からないのが何年もたってから言われても困るようにも思うんですけれども、その点は指摘させていただきまして。
 今、もう一つは、民法上、雇用者の、使用人の賃金の時効は一年となっておる、これが五年になるわけですけれども、今日厚労政務官にお越しいただきました。労働基準法は賃金債権の時効が二年となっております。この賃金債権二年、これも本来ではこの民法の法改正に照らせば五年にすべきだと思うんですが、そこの点はいかがでございましょうか。
○大臣政務官(堀内詔子君) お尋ねの労働基準法第百十五条に定める賃金債権等の消滅時効の取扱いについては、法制審議会での検討が大詰めを迎えた段階で、労働政策審議会においても状況を報告し、審議を行ったところであります。
 その審議におきましては、本件の取扱いについて、専門家も含めた場において多面的に検証した上で更に議論を深めるべきとの結論に至ったことから、今般の民法改正の整備法案には、労働基準法第百十五条に定める賃金債権等の消滅時効の取扱いについては盛り込まれなかったところでございます。
 厚生労働省といたしましては、今回の国会における民法改正案の御議論を踏まえつつ、労使の意見もよく聞きながら、賃金債権等の消滅時効の在り方について検討してまいりたいと存じます。
○小川敏夫君 労働基準法というのは、私の理解では労働者の権利を守るということが主眼だと思うんですけれども、民法の雇用では一年というところを労働基準法ではその倍の二年ということにしたから、保護の趣旨はそれでも若干あるのかなと思うんですけれども、今度は、民法の原則が五年となったときに労働基準法の賃金債権の時効が二年ということですと、これは勤労者の立場を保護するというよりも、逆に勤労者の立場を不利益にするような、そういう現状になってしまうと思うんですね。
 賃金あるいは災害補償が二年の時効ということでありますけれども、これ、民法の改正の議論はもう相当前から進んであるわけでありまして、そうすると、何か今のお話ですと、大体あらあら法務省の方で考えがまとまってから意見を聞かれたけれども、まだ結論が出ていないような趣旨の答弁でありましたけれども、私は、その法の趣旨からいって、当然この賃金債権あるいは災害補償に基づく請求権、債権、これは五年にするべきだと思うんですが、どうでしょう、今の政府の姿勢として、そういう方向で検討するのか、それとも、もう民法は民法の世界で、労働基準法は今のままでいいんだというような姿勢でこれから臨むんでしょうか、どちらなんでしょうか。
○大臣政務官(堀内詔子君) 現時点で確定的なことは申し上げられないんですけれども、民法改正案の議論の動向やその施行時期を踏まえつつ、労使が参加する労働政策審議会等の場においてしっかりと検討してまいりたいと存じております。
○小川敏夫君 現実の問題として、賃金が払われなければ余り仕事しないだろうから、賃金本体の未払ということで二年、五年というのは、無視はできないけれども、そんなに現実の場ではないのかなと。払ってもらえなければ、これは何らかの手だてをするわけですから。
 現実にこの賃金の未払で大きく例があるのはやはり残業代なんですよね。残業代を払っていないと。それが結局、しかし残業代以外の賃金を払ってもらえるから、雇用関係にあるので、残業代を払ってもらえないままずっと働き続けていると。しかし、やはり残業代を払ってもらわなくちゃいけないということになったときに、今は遡るのが二年間だけなんですよね、二年で時効になっちゃいますから。だけど、考えてみれば、五年間残業代もらわないまま働いていたんなら、これ五年まで遡って当然だというふうに思うんです。
 私は、そう考えると、二年のままでいいやというのは、人を使う方、経営者側の方にとっては都合がいいかもしれないけれども、しかし、働く人の立場をしっかり守るんだという立場に立てば、民法の基本原則が五年になったんであるから、特例として二年にするというのはこれは非常におかしい話でありまして、少なくとも、民法の基本原則、債権の消滅時効が五年ということに基本原則になったんなら、これは労働基準法も最低それに合わせた五年にするべきだというふうに思っておりますので、もし御意見がありましたらお聞かせください。
○大臣政務官(堀内詔子君) 御指摘の残業代の面につきましても、厚生労働省といたしましては、民法改正案の御議論を踏まえつつ、また労使の方々から十分な御意見を伺いながら、しっかりと消滅時効の在り方について検討してまいりたいと存じております。
○小川敏夫君 しっかり前向きに検討していただきたいと思います。
 厚労政務官にはもう質問がございませんので、委員長、退席していただいて結構でございます。
○委員長(秋野公造君) では、堀内政務官は退席して結構でございます。
○小川敏夫君 それでは、法務大臣にお尋ねします。
 今回の売買の瑕疵担保のことについても、まず、瑕疵担保の条項そのものが削除されて新しい規定が入っておりますが、どういう状況の瑕疵担保の規定がどういうふうに変わったのか、相対的に御説明いただけますか。
○国務大臣(金田勝年君) 小川委員からただいま御質問ございました。お答えをいたします。
 まず、現行法の問題点といいますか、改正の理由として、引き渡された売買の目的物に不具合があった場合に買主がどのような救済を求めることができるのかといった基本的な法律関係については、取引社会の実情を踏まえて明快で合理的なルールを用意しておく必要があると考えます。しかしながら、現状は、買主にどのような救済手段があると解すべきかにつきましては、いわゆる法定責任説と契約責任説とで学説が激しく対立をし、判例の立場も必ずしも明瞭ではない状況にございます。
 改正の方向性として、まず、現代社会においては、売買の目的物というのは大量生産される、そして不具合があった場合には部品の交換あるいは代替物の給付といった履行の追完が可能であるものが多いと、そして実際の取引においてもそのような対応が一般化している。また、問題となった取引が特定物売買であるか不特定物売買であるかの判断は実際上必ずしも容易ではないということの中で、法定責任説のように特定物売買と不特定物売買を截然と区別をしてその取扱いを大きく異ならせるのは取引の実態に合致しておらず、またいたずらにルールを複雑化するものであって合理的ではないと、このように考えられます。
 以上の点を踏まえまして、改正法案におきましては、特定物であるか不特定物であるかを問わず、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合には、買主はその修補や代替物の引渡し等の履行の追完の請求を行えると、そして代金減額の請求、あるいは民法第四百十五条の規定によります損害賠償の請求、そして契約の解除といった、この申し上げました四点でございますが、これを買主はすることができるということにしておるところであります。
○小川敏夫君 学問的には、法定責任説と契約責任説、要するに今大臣が言われたように法定責任説ではなくて契約責任説にしてしまったということで、言わば論争をこの立法によって決着付けちゃったということだと思うんですが、もう少し具体的にお尋ねします、答弁は参考人でも結構ですけれども。
 現行法ですと、瑕疵担保、特定物について瑕疵があると、損害賠償請求ができるか、あるいは契約の目的を達しないということであれば解除ができるということしか書いていなくて、完全な形に戻せ、完全な形にしろということは明文上明らかじゃなかった。いわゆる瑕疵修補請求権とでもいうんですか、要するに、何らかの瑕疵があった場合に瑕疵がない形にしろという請求権は、これは、これまでの裁判所の判断では、例えば判例はそういう権利を認めていたんでしょうか、認めていなかったんでしょうか。参考人でいいです。
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの問いにつきましては、私の後、局長にも答弁していただきますが、売主が瑕疵担保責任を負う場合に、買主が修補等による追完請求をすることができるかという点については、判例が見当たりませんし、判例の立場が不明であると、このように承知をしているところであります。
 あとは局長に答弁させます。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありました修補の請求権、いわゆる完全履行請求権の一つですが、契約責任説の立場であればこれを認め、法定責任説の立場ではこれを認めないというのが典型的な区別かと思われます。
 ただ、判例はその点について明瞭ではございませんで、それが今回の改正の一つの理由にもなるわけで、要は明確化を図るという観点からでございまして、御指摘ございました判例の立場というものは残念ながら不明であるというふうに承知しております。
○小川敏夫君 今度の改正によって、代金減額請求ができる、あるいは追完請求、要するに完全な形にしろという請求ができると。あるいは、債権の一般原則に従って損害賠償請求もできるし、状況によっては契約の解除が請求ができるということでありますけれども。
 例えば、代金の減額請求、つまり瑕疵があるから、その分価値が減じたから代金の減額請求をする。あるいは、もらったものが完全じゃないから、損害があるので損害賠償を請求すると。それから、いや、そんなお金の問題じゃないんだから完全な形にしろということを求める追完請求権があると。これを買主は自分の判断で自由に選択して権利を行使できると、こういうことなんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 権利者側が何をするかは選ぶことが可能でございます。
○小川敏夫君 それで、一つのこういう例だったらどうなるのかなと思いまして、例えばそういう瑕疵が生じた、存在しているということに前提の上で、しかし、そういう瑕疵があったって損害賠償請求なら損害として大した金額じゃない、損害としては認められないようなゼロの金額だ、あるいは僅かな金額の損害しか認められないような瑕疵だと。あるいは、代金減額請求をするとしても、そもそもその瑕疵は金銭的価値に置き換えたらごくごく僅かなものだ、あるいは金銭的価値に換えたらもうゼロに等しい、しかし、完全なものを履行しろといった場合の、その完全な履行をするために掛かる費用がはるかに多額な費用だと。
 ですから、例えばの話、損害賠償請求や代金減額請求に置き換えたら、それはゼロかあるいはせいぜい五万円か十万円のものだと。だけど、その瑕疵を除去するために掛かる費用が一千万円も掛かるというような非常に不釣合いがあったような場合に、その場合でも権利者の選択によって追完請求権というものは認められるんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただいた場合というのが実際上どういう場面なのかなかなか想定しにくいところもあって、例えば、法定責任説であれば損害額は信頼利益という考え方が強いと思いますけれど、契約責任説の立場に立ちますと、基本的には履行利益だとしますと損害額が非常に僅かで瑕疵はあるというようなことはなかなか想定しづらいのかなというふうには思っておりますが。
 基本的には、売主が、追完に例えば極めて多額の費用を要する場合でも常に売主は現実に追完をしないといけないのかといいますと、例えば現行法の下で仮に売主が追完義務を負うという立場に立つとしましても、その追完に極めて多額の費用を要するケースでは履行不能として現実に追完をすることは要しないことがあり得ると考えられます。
 改正法案におきましても、引き渡された目的物に契約との不適合があり、売主が担保責任を負う場合には、買主はその修補や代替物の引渡しなどの履行の追完の請求をすることができることを今回明文で定めております。そして、改正法案では、債務が履行不能であるときは債権者はその債務の履行を請求することができないことも明文で定めておりまして、債務の履行に過大な費用を要する場合、御指摘ありました場合ですが、こういった場合はその債務は履行不能となり得るということは、これは一般に現行法の下でもそう考えられておりますし、改正法の下でも同様の立場に立つということだと思います。
○小川敏夫君 ちょっと私が期待した答弁とは違うんですけれどもね。
 私が言っているのは、非常に軽微だと、ですから、損害賠償請求した場合の損害金に置き換えた場合にはゼロかゼロに等しいような微々たる金額でしかないと。代金減額請求にした場合のその減額という金銭的価値に置き換えたら、それも軽微で、もうゼロか微々たるものしか評価できないものだと、これが私の質問の前提設定でございます。
 だから、そうすると、今参考人が答えられたように、それを除去することができないなら契約は解除、無効だということではなくて、私は、契約の本体的にはそれはもう九九%か一〇〇%は履行されていると、だけど瑕疵のあるものがあって、しかしその瑕疵のあるものは金銭的な評価に置き換えたら非常にゼロか微々たるものだと、しかしそれを除去するためには多額の費用が掛かるなんという、そういう特殊なケースを今想定しているんですけれども。私は、それは、そういう場合には基本的には追完請求権を認める必要がないんだと、例えばそういう答弁を期待したんですがね。
 ただ、当然、それは民法の一般原則なりなんなり適用して私は請求できないと思うんですが、そういう答弁を期待したんだけど、ちょっと違う逆の答弁が来たもので、もう一度確認したいんですけど。
○政府参考人(小川秀樹君) 失礼しました。
 過大な費用を要する、追完請求に過大な費用を要するとしますと、追完請求は基本的には債務不履行責任の追及、請求になるわけですので、それが結局履行不能に陥ってしまうということになりますので、そういう意味では追完はしなくてもいいということになると思います。
○小川敏夫君 そういう答弁を期待しておったんですけれども。
 なかなか参考人はそういう事例が見当たらないとおっしゃるんですけれども、いや、もう非常に今現在、具体的に大きな問題として存在しております。
 今日、森友学園の件で国交省と財務省に来ていただきましたけれども、要するに、土地は小学校を建設すると、ですから建物は建設できる、もちろん校庭も全部できる。つまり、設備的には全く何の支障もないけれども、でも、何か九メートルぐらいの奥深いところに廃材が入っていたと。こういうのが、廃材プラス何か生活ごみですか、これが埋設されていたというのがこれは今現実に森友学園の問題で起きている事例設定でございます。私は、そういう奥深いところにごみがあったとは思っていません。入っていなかったと思っていますけれども、一応事例設定としては入っているということなんで。
 そうすると、土地の中にそういう不要なものが入っているんだから、瑕疵だ瑕疵だと。瑕疵に当たるのかどうかということもありますけれども、でも、それを例えばこれまでの裁判例に照らしてみると、結局、建物の建設に支障がないんだということであればこんなのは損害賠償は認められない、ゼロだという裁判例が多くあります。仮にそれが、何か気分が悪いとか風評被害だとかいったって、そんなのは損害賠償請求に、金額に算定すればこれまでの算定例、裁判例からいえば大した金額にはならない。
 だけど、これを除去するためには膨大な費用が掛かるわけです。深さ九メートルのところにある廃材を、これを除去するといったら、それはもちろんゼロとはいかない、費用が掛かるし、そんな生半可な費用じゃないというので今大きな問題になっておるわけですけれども。先ほどの参考人は、要するに費用が過大な場合には追完請求権はないという御説明いただきましたので、その答弁変更されては困るので、もう答弁求めませんけれども。
 それで、財務省の方にお尋ねいたします。二月二十八日の予算委員会で森友学園のこの瑕疵担保の件について質疑させていただきましたけれども、その際に私は裁判例として、コンクリートの殻が地中にあることが発見された場合でも、しかし、建物の建築に何にも支障がなく建物が建っているんだからというような事例の場合には損害賠償請求権はない、損害賠償請求権を否定したという裁判例を披露させていただきました、これは平成二十六年の東京地裁の裁判例なんですけれども。
 その際に、佐川理財局長は、いや、違う裁判例もあるというような答弁をされました。佐川局長の答弁は、地中障害物に関する近年の判例として、購入した土地に、調査をしたところ、地中に廃材等の廃棄物が埋設していることが判明したため、売主に対して土地の瑕疵として瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を請求し、容認された事例などなどございますのでと、こういうふうに答弁されています。
 それで、ここで言っているこの容認された事例の裁判例がどの裁判例なのか、具体的に御説明いただきたいんですが。
○政府参考人(中尾睦君) お答えいたします。
 二月二十八日の予算委員会での小川委員と佐川理財局長とのやり取りについてのお尋ねでございます。
 当時、局長が裁判例として紹介させていただいたものでございますけれども、具体的に申し上げれば、平成十九年七月二十三日、東京地裁の判決でございますけれども、購入した土地の地中に廃材等が大量に埋設されていることが判明したため、売主に対し土地の瑕疵として瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求を容認した判決でございます。
○小川敏夫君 それ一つだけですか。答弁では、などなどということで、幾つもあるような答弁ぶりだったんですけど。
○政府参考人(中尾睦君) お答えいたします。
 予算委員会の際、私ども手元で調べた範囲内でございましたけれども、例えばでございますが、平成十年十月五日、東京地裁の判決でございますけれども、工場建設のため購入した土地からコンクリート等の隠れた瑕疵が発見され、損害賠償として、本来の建築工事とは別に必要となった費用及び利息の支払を認めた判例がございます。
 また、平成十七年四月二十二日、札幌地裁の判決でございますけれども、宅地売買においてガソリンスタンドの埋設基礎等が隠れた瑕疵とされた判例などがあるものと承知をしております。
○小川敏夫君 まず一つは、建築がそもそも支障が出たような例ですね、平成十年十月五日の裁判例というのは。
 そのほかの例ですけれども、損害の金額はどのぐらいの、全体から見てどういう数字だったのか、そして、その損害の金額の根拠がその除去費用なのかどうかについてはいかがですか。
○政府参考人(中尾睦君) お答えいたします。
 恐縮でございますが、詳しい数字を持ち合わせておりませんので、大変申し訳ございませんけれども、いずれにしましても、それぞれの判例は個別具体的な状況によって、判例ごとに、個々の事案ごとに判断されておるのではないかというふうに認識しておりまして、その旨を佐川理財局長から御答弁申し上げたところでございます。
○小川敏夫君 じゃ、個々的な事例が出ないのであればこれ以上議論してもしようがありませんから、また機会を改めてというふうに思いますけれども。
 ただ、基本的に、そういう何らかの地中埋設物があったという場合に、しかし、建物、土地利用の目的が達成される場合には請求は棄却されると、何らかの損害があればそれは損害として認められる例もあったというような御趣旨のことだと思いますが、しかし、その算定根拠において瑕疵を完全に除去するための多額の費用というものを認めた例はないというふうに思いますが、今日のところは、今いただいた判例、手元にないものですから、これを踏まえてまた改めてお尋ねしたいというふうに思います。
 それで、一つ参考人にお尋ねしますけれども、今回の法改正によって、損害賠償、代金減額請求、追完請求ということが認められて、買主、権利者は権利者の判断で請求できると。ただ、これは訴訟物としては同一ですよね。例えば、一つのこの例のように、地中物があるからといって損害賠償請求したと。地中物があるということで、それが瑕疵だといって、瑕疵に基づいて損害賠償請求したところ、瑕疵はないとして請求棄却されたと。そういう場合に、損害賠償請求は棄却されちゃったけど、しかし現実に損害がないといったって地中埋設物はあるんだから、じゃ、新たにその地中埋設物を除去しろという追完請求の訴訟は起こせるんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただいた点、民事訴訟法上の非常に難しい問題とされているところだと思いますが、伝統的な旧訴訟物理論でいきますと、一つ一つ請求権ごとに違うという理解もあり得ると思いますし、今言われましたような場合に、多分考え方は複数あり得るかなというふうに思っております。
○小川敏夫君 いや、だから、考え方が複数あるからというんじゃ、ちょっとこの法改正が不十分なんじゃないですか。要するに、これまでの瑕疵担保責任という、法律では多少いろいろ見解の相違があって、ですから、そういう見解の相違でばらばらじゃいけないから統一的にこれを整理しようというのが今回の改正の趣旨でしょう。
 そこで、今言ったように、損害賠償、代金減額請求、追完請求、契約の解除という四つのものがあって、四つのことについて権利者が選択して請求できるというけど、でも、四つのことが全部もらえるわけじゃないですよね、当然のことながら。当然どれか一つで、それで全部解決するわけだから。
 私が聞いているのは、訴訟物の話になるわけですけれども、損害賠償請求したら、こんな瑕疵はそもそも瑕疵に当たらない、損害はないといってゼロだという判決が出ちゃったときに、また、請求の理由が違うからといって、訴訟物が違うからといって追完請求することができるかと。
 ですから、これは私は当然できないと思うんですけれども、これは今回のこの法改正によっても解決できない問題、あるいは新たな問題としてまた議論が出てしまうんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、訴訟物の捉え方は実体法をどう見るかということに関わるわけですので、法改正の内容そのものと直接に関わるわけではないと思いますが、先ほど申し上げましたように、伝統的な旧訴訟物理論の立場からすれば請求権ごとにそれぞれ訴訟物が異なるというのが一般的な理解だろうというふうには思っておりますが、もちろん様々な学説はあり得るところかと理解しております。
○小川敏夫君 今回、条文を見ましたら、追完請求に関して一つの例が法律で明記されていますよね。すなわち、請求する買主側に不利益がない場合には売主が違う方法によってその追完できるという規定が入っていますよね。だから、その部分は丁寧な規定だと思うんだけども、じゃ、同じように、いろんな場合を想定して、例えば、追完請求といっても、売主に過度な費用がある場合には別とするとか、そういう規定があってもしかるべきだと思うので、ちょっと規定の仕方が足らないんじゃないかなと思うんですよね。
 少なくとも私が言った事例に関しては、直接的な規定はないですよね。すなわち、損害賠償なり代金減額請求に置き換えた場合にはゼロか非常に少額な金額でしかないものが、しかし、それを除去するためにははるかに膨大な金額が掛かる場合にはどうするんだと私がお尋ねしたときには、これは新しい法律にもそういう場合には追完請求ができないというような規定の趣旨はないし、その指針となるような規定もないから、結局、一般法理で解決するしかないと、こんなことになっちゃうんじゃないですか。
○政府参考人(小川秀樹君) 私が申し上げました追完しなくてもいいような場合というのは、それは履行不能からの説明でございますので、根拠条文はということであれば、四百十二条の二ですね、新設されました履行不能の条文、これに基づいて、先ほど申しましたように、過大な、極めて多額の費用を要するような場合は、言わば社会的に不能であると見て、履行不能の中に読み込むということだというふうに考えております。
○小川敏夫君 そうすると、履行不能の中に読み込むから履行しなくていいと、こういうことになるわけですね。
 で、私の前提事実からいえば、金銭的な損害に置き換えたらそれはゼロだということだと結局履行しないままでいいと、こういう結論に当然論理的に結び付くわけですよね。そこに至るわけですよね。
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、瑕疵担保責任は解除請求もございますので、解除して契約関係から離脱することも可能でございます。
○小川敏夫君 こういう細かいことを急に、司法試験の口頭試問やっているわけじゃないので、あるいは大事なことですから、また改めてゆっくりきちんと私も質問したいというふうに思いますけれども、逆にその機会には整理してまた、後々のこともありますから、答弁していただければというふうに思います。
 今回の改正の中で、大きな改正の一つで、約款、定型約款ですか、という規定が盛り込まれておりますけれども、そもそも定型約款とは何なのか。じゃ、議論の初めですから、そもそもこの定型約款って、法務大臣、どういうものをいうんでしょうか。
○国務大臣(金田勝年君) お答えをいたします。
 まず、定型約款の定義ということでございますが、改正法案においては、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを定型取引と定義をした上で、定型取引において契約の内容とすることを目的としてその特定の者により整備された条項の総体、これを定型約款と呼んでいるということでございます。
 この定型取引に該当します取引は、画一的な内容であることが合理的であると客観的にも評価することができるものであるため、取引の相手方である顧客は契約の細かな内容には関心を持つことはなく、その内容を認識しないままに契約を締結するのが通常であるものと想定されます。したがいまして、一般的に言えば、事業者が極めて多数の顧客を相手に契約を締結するような取引であって、かつ、取引を円滑に行う観点から、契約条項を事前に事業者が作成しておくような場合が定型約款による場合に該当するものと考えられます。具体的な例はよろしいですね。
 このような定型約款の例としては、まあ皆様もよく御承知ではございますが、運送取引における運送約款、宅配便契約における契約約款、パソコンのワープロソフトの購入契約に附帯します購入約款、それから電気供給契約における電気供給約款、あるいは保険取引における保険約款といったようなもののほか、インターネットを通じた物品売買における購入約款などが広く該当するものと考えているところであります。
○小川敏夫君 私の生活からすると、約款と言われて、例えば、保険を入るときに送ってくる何かえらい契約書、約款、あれが約款と言われると、それはそれで分かるんですけれどもね。だけど、約款といって、そうした典型的なケースだけがこの法律の適用を受けるわけじゃなくて、世の中には様々な契約様式あるいは取引様式がありますから、どこまでが約款なのか約款じゃないかという、その区別が私は突き詰めて考えてみるとなかなか難しい。
 例えば、大臣の今の御答弁の趣旨の中に、たくさんの取引ということが当然のこの約款の想定であるというふうにお伺いしたんですけれども、しかし、じゃ、多数の取引というのはどのくらいの人数をもって多数というのか、ここら辺の目安はどういったところにあるんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) この点につきましては、元々やはり画一的なものであるというのがこの取引あるいは定型約款の前提でございますので、不特定多数ということで、まさに多数の方に画一的に定めていくということが合理的なものだという理解でございますので、何人を超えたらという基準があるわけではございません。
○小川敏夫君 法律というのは、当然、立法趣旨に沿った正常な適用なり運用をするのが当然の考えなんだけれども、しかし、中には、立法趣旨にそぐわないような、悪用するというのも世の中にはよくあるわけでございます。
 私は、こうした典型的な大量取引における約款という趣旨は分かるわけでありますけれども、しかし、そちらにばかり目が行って、悪用するということについての対策が欠けていてはならないと思うわけであります。
 もっともっと時間を掛けて議論をしたいと思うんですけれども、じゃ、例えば画一的に大量にという、そうすると保険契約なら全て日本国民に対応しているのかなと。運送約款、宅配の約款ということもそういうふうに思うわけでありますけれども、だんだんだんだんいろいろ絞ってくる、じゃ、野球場に入る入場の契約の場合にはどうか。こうなると数万人ぐらいになってくるわけです。さらに、じゃ、大型キャバレーで三百人ぐらい入る、当然不特定多数を相手にしていると。人数が幾らというものじゃないということなら、じゃ、三百人だって多数だし、お客さんに付いて取りあえず画一的にみんなサービスするんじゃないかと。あるいは、椅子が十個しかないような居酒屋でもどうなのか。
 だんだんだんだんどこがどうなのか区別が付かなくなってくると、本来の法律が予定しているような趣旨とは全く違う、言わば消費者の方、お客さんの方をはめるといいますか、不利益を負わせるような内容の契約を押し付けるようなことがあっちゃいけないと思うんですけれども。
 どうでしょう、何万人入る野球場、数百人入る大型キャバレー、それから席が十個ぐらいしかないような居酒屋。いずれも不特定多数を相手にしているわけでありまして、基本は皆さんお客さんを同じように扱うかと思うんですけれども、こういうときに約款なるものを定めたら、これは約款なんでしょうか。定型約款になるんでしょうか。
○副大臣(盛山正仁君) その具体的内容次第ではないかなと思うんですね。例えば、今委員がおっしゃったような鉄道の運送約款であれあるいは保険であれ、そういった約款につきましてはこれまでもそれぞれ、鉄道事業法でありあるいは保険業法で、それぞれの個別法で重要なものについては約款というものが個別法で決められておったわけでございますね。
 今回、この民法で約款の根拠を置こうというのは、そういう個別にそれぞれ約款が定められているもの以外のもの、そういったものも含めて、定型的な取引、そういったものについて消費者を保護すべきではないのか、あるいは契約の安定性を図るべきではないか、こういう観点で今回この約款の規定を入れたわけでございます。
 例えば、最近多くなっているものとしてはインターネットの取引なんかがありますね。それで、インターネットのところ、同意する、同意しない、こういうことをクリックする、それがたまたま契約をした人が五人かもしれません。ただ、それは観念的には百人かも、一万人契約するかもしれないわけでありまして、そういうものをここで言う定型取引と考えるかどうか。
 そしてまた、委員が御指摘されたように、十人であれ百人であれ、飲食店その他の店でそこに何らかの規約といったようなものを定めて、それが約款に入るかどうか。こういったものは、今ちょっとお聞きする限りではそれは約款ではないんじゃないかなとは思うんでありますけれども、具体的な中身を見ながら、それが我々が今回の民法改正で想定している定型約款であるかどうか、そういったことも踏まえながら、いずれにせよ今回の民法の改正というのは、その約款というものによって契約をある程度簡易に利便的にする、それでありながら、契約の双方について、権利と義務というんでしょうか、特に利用者の側の保護をいかに図るかと、そういう点で入れたつもりでございます。
○小川敏夫君 今日は時間なのでこれ以上細かい議論しませんけれども、ただ、今副大臣がおっしゃられた消費者の保護あるいは利用者を守るためだというのは、そうかなと。そうではなくて、むしろ画一的な取引を行う事業者の利便のためにという方が強いんじゃないかなと私は思っております。
 それから、私が質問した中で、副大臣はいわゆる酒場、キャバレーなんかは入らないんじゃないかなというような御趣旨の話いただきましたけれども、じゃ、どうして入らないのか。すなわち、じゃ、約款というと、保険契約もらえばもう読むのも嫌になるような細かい字で百条ぐらいある。でも、約款って別に百条なくちゃいけないとは書いていませんよね。だから、極端な話、三条しかない、五条しかないと、こんなのだって約款と言えるのかどうか。もし条文が三つしかない、そんなものでも約款と言えるんだったら、キャバレーの横に貼ってあって、当店は全部均一料金ですとかいう、これこれ値段表があるのは分かるかもしれないけれども、そのほかに、大声出した方は罰金を払って退店していただきますとか、こんなことが五条ぐらい書いてあったら、それ、でも別に約款の条文の長さについて何の定義もないから、百条あるのも約款、決め事が三条か五条しかないのも約款だったら、そんなことがキャバレーの壁に貼ってあれば約款になるのかなと。もしそれが約款になるんだったら、それを約款だと言い張って、善良な消費者に、善良なお客さんに思わぬ不利益を負わせるんじゃないかなと。
 まあ少し極端な例をお話ししましたけど、でも保険会社のように典型的に約款であることが疑われないような完璧な事例もあるし、今私が言った、そんなの、酒場やキャバレーで壁に貼ったぐらいじゃ当たらないんじゃないかというような例もあるけど、だんだんだんだん境目が分からなくなってくるわけですよね。
 すると、境目が分からなくなってくると、そこでふらちなやつが約款なるもので消費者を引っかけて、消費者がよく理解していなくたって法律の効力があるんだとかなんとか言い出すんじゃないかということを私はお伺いしているので、だから約款がよく分からないという趣旨で今日は質問させていただいたわけです。
 時間が来ましたので、更にまた引き続いて質問させていただきたいと思います。終わります。
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 民法の債権関係の改正ということで、この民法の債権の部分については、これまで全般的な見直しというものは行われてきませんでした。したがって、制定当時からおおむねそのままの規定が多くあったわけでございます。それを今回大幅な改正を行うということとなりました。国民生活に非常に関わりの深い基本法でありますので、しっかりと議論をしていきたいと思っております。
 そこで、まず今回の民法の債権関係の改正の背景というところを確認をさせていただきたいのと、それから趣旨説明の中でも、大臣の方から、社会経済の変化への対応、また国民一般に分かりやすいものとするという観点が御説明がございましたけれども、この観点というのは具体的にどのように改正に反映をされているのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(金田勝年君) 佐々木さやか委員にお答えをいたします。
 まず、背景といたしまして、民法のうち債権関係の規定につきましては、御指摘のとおり、明治二十九年に制定されて以来約百二十年間、実質的な見直しがほとんど行われておらないわけでありまして、おおむね制定当時の規定内容のまま現在に至っておるわけであります。
 この間における我が国の社会経済情勢というのは、取引量が劇的に増大したということ、取引の内容が複雑化、高度化する一方で情報伝達の手段が飛躍的に発展したことといった様々な面において著しく変化が生じておると。また、裁判実務におきましても、多数の事件について民法を解釈適用する中で膨大な数の判例が蓄積されてきているということ、さらに、確立した学説上の考え方が実務で広く受け入れられて不文のルールとして解釈の前提となっているものも多いということ、しかし、それらの中には、条文からは必ずしも容易に読み取ることのできないものも少なくないために、法律の専門家でない国民一般にとっては民法が定める基本的なルールが分かりにくい状態となっているということ。そこで、この趣旨でございますが、改正法案を提出いたしました趣旨としては、民法のうち取引社会を支える最も基本的な法的インフラであります契約に関する規定を中心にいたしまして、社会経済の変化への対応を図るための見直しを行いますとともに、国民一般に分かりやすいものとする観点から全般的な見直しを行うことにしたところであるわけであります。
 具体的に、じゃ、どうかというお話でございますが、まず社会経済の変化への対応を図る観点からの改正項目といたしましては、職業別の短期消滅時効の特例を廃止すること等によります時効期間の統一化、それから年五%の法定利率の年三%への引下げ及び市中の金利動向に合わせた変動制の導入、また事業用融資の保証人になろうとする個人についての公証人によります保証意思確認手続の創設等を挙げることができるわけであります。
 また、国民一般に民法が分かりやすいものとする観点からの改正項目といたしましては、一つには、意思能力を有しなかった当事者がした法律行為が無効であることの明文化、それからまた、賃貸借の終了時における賃借人の敷金返還請求権や原状回復義務に関する基本的な規律の明文化等を挙げることができると、このように申し上げたいと思います。
○佐々木さやか君 今大臣からもございましたとおり、民法というのは条文を読んだだけではなかなか具体的なところまでは書いていなくて、それに関する判例というものを参照しないと具体的な解釈が分かりにくいと、一見しては分からないというような構造になっていたと。そういったところから、蓄積されてきた判例法理について明文化をしたり、また判例とは異なる内容であっても社会情勢の変化などから今回改正をしたという点もあるかと思います。
 今挙げていただいたような消滅時効、また法定利率、保証人に関する規定というのは非常に大きな改正でありまして、以下、今日は消滅時効について取り上げたいと思いますけれども、個別の各論についてお聞きをしていきたいと思います。
 この消滅時効、これまでは債権の消滅時効というのは十年でございました。これが五年になるということで、非常に大きな改正であります。また、消滅時効というのは権利が行使をしないうちに消滅をしてしまうという規定でありますので、国民の生活にも非常に関わりが深いということで、この改正について確認をしたいと思います。
 まず、債権の消滅時効、今申し上げたように十年から五年としたと、それはどうしてなのかということと、先ほども大臣から御説明いただきましたけれども、短期消滅時効、これを廃止をしたと。この短期消滅時効というのは、従来は、例えば医師ですとか弁護士といった職業別に規定がされていたりですとか、また旅館や飲食店の宿泊料、飲食代と、こういったものについて別個規定が設けられたりしておりましたけれども、これを一律廃止をするということで、この廃止をする理由についても改めてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行の民法百七十条から百七十四条まで、これがいわゆる短期消滅時効を定めるものでございます。それから、時効で申しますと、商法にも商事の消滅時効、これは五百二十二条ですが、で定められておりまして、これらの規定によりまして、五年、三年、二年又は一年といった短期の消滅時効の特例が定められております。
 しかし、これらの規定は、その適用の有無の判断が困難であったり、例えば先ほども申し上げました短期消滅時効、職種によって異なるわけですが、どの職種に当たるのか、あるいは新しい職種が出た場合どうするかといった問題もございます。また、社会経済情勢の変化に伴って合理性の説明が困難なものとなったりしているものもございます。そこで、これらの短期消滅時効の特例を廃止した上で、基本的な時効期間については統一化を図り、シンプルなものとすることが合理的であると考えられたわけでございます。
 もっとも、特例を単純に廃止するだけでは、例えば現在二年とされます生産者や卸売商人の売買代金債権の時効期間が十年に大きく延長されるということになるわけですが、これに対しましては、法制審議会における関係諸団体からのヒアリングにおきまして、領収書の保存費用など弁済の証拠保全のための費用が増加するおそれがあるといった懸念が示されました。さらに、現在五年で時効が完成します商行為債権でございますが、これにつきましても、商取引の実情として多数の取引債権に適用されておりまして、現在の規律を前提として安定した実務運用が行われておりますため改正の影響を極力抑える必要があるとの指摘が、これも強く寄せられたところでございます。
 以上の問題状況を踏まえ検討を進めました結果、現行法の「権利を行使することができる時から十年」という現行法の時効期間に加えまして、新たに「権利を行使することができることを知った時から五年」の時効期間を追加することとしたものでございます。
○佐々木さやか君 今、五年に変更することの理由を御説明をいただきましたけれども、質問をちょっと一つ飛ばして順番を変えさせていただきたいと思います。
 今説明をいただいたような理由に基づいて五年という改正案を提出いただいているわけですけれども、条文を見ますと、それとまた別に「権利を行使することができる時から十年」という形で、第二項だと思いますけれども、二重の期間という形で構造になっております。
 ですから、五年という形に短縮したと同時に、これまでどおりの十年という期間もそのまま残っているという構成になっているわけですが、これはどうしてなのか、この点についても御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきましたように、改正法案におきましては、債権の消滅時効に、まず、「権利を行使することができることを知った時から五年」という時効期間を追加した上で、現行法におけます「権利を行使することができる時から十年」の時効期間、これは維持することとしております。そういう意味で二重の時効期間ということになるわけでございます。
 仮に権利を行使することができるときから十年という原則的な時効期間を単純に短くして、商行為債権の消滅時効を参考にして五年とするということを考えますと、例えば過払い金返還請求権など不当利得に基づく債権ですとか安全配慮義務違反に基づく損害賠償債権など、権利行使が可能であることを容易に知ることができない債権の債権者が大きな不利益を被るという問題が生じまして、この点につきましては法制審議会においても強い懸念が示されたところでございます。
 この過払い金返還請求権の例で申しますと、債務が実際には存在していなかったことを知るのが弁済後相当期間を経過してからであったため、権利行使が可能であることを債権者が長期間知らなかったという事例も現に生じておりますため、その保護を図る必要性があり、十年という時効期間を維持する必要は大きいものと考えられるところでございます。
 このような考慮の結果、改正法案におきましては、原則的な時効期間を「権利を行使することができることを知った時から五年」とした上で、それとは別に「権利を行使することができる時から十年」の時効期間も維持することとしたものでありまして、このような制度を採用することには合理的な理由があるものと考えております。
○佐々木さやか君 そうなりますと、この新しい五年間の消滅時効の要件であります、起算点であります債権者が権利を行使することができることを知ったときと、このように言えるかどうかについて、五年になるか、十年間、それまでの間、猶予というか、完成をしないのかどうかということも変わってまいりますので、この新しい条文の定めてあります債権者が権利を行使することができることを知ったときというのはどういうことを指すのかというところを確認する必要があるかと思いますけれども、この点について、従来の権利を行使することができるときということとどう違うのかも含めて御説明をお願いします。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、債権は債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年間行使しないときには時効によって消滅するとしております。このように、権利を行使することができることを知ったときから時効期間が進行するということといたしましたのは、債権者が権利を行使することができることを知ったのであれば債権者がその権利を実際に行使すべきことを期待することができると、こういう趣旨に基づくものでございます。
 このような趣旨からいたしますと、債権者が権利を行使することができることを知ったというためには、権利行使を期待されてもやむを得ない程度に権利の発生原因などを認識していることが必要であると考えられます。具体的には、権利の発生原因についての認識のほか、権利行使の相手方である債務者を認識することが必要であると考えられます。
○佐々木さやか君 具体的な各事例についてどうであったのかということは、その事例によって最終的には裁判所等で確定をされることにはなりますけれども、今のような解釈がなされるということで理解をいたしました。
 それから、今お話にありましたとおり、原則五年であるけれども客観的起算点との関係では十年という形になるわけですが、生命、身体の侵害についての損害賠償請求権、この債権については客観的起算点に基づく消滅時効を二十年というふうにしております。十年から二十年という形で倍に延ばしているわけですが、これについてはどうしてそのように改正をするんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 生命や身体への侵害によります損害賠償請求権は債務不履行又は不法行為に基づいて生ずるわけですが、生命や身体に関する利益は一般に財産的な利益などの他の利益と比べまして保護すべき度合いが強いというふうに考えられますので、生命や身体への侵害による損害賠償請求権については、他の利益の侵害による損害賠償請求権よりも権利行使の機会を確保する必要が高いと考えられるわけでございます。
 また、生命、身体について深刻な被害が生じた後、被害者である債権者は通常の生活を送ることが困難な状況に陥るなど、時効完成の阻止に向けた措置を速やかに行うことを期待することができないことも少なくありません。
 したがいまして、生命や身体への侵害による損害賠償請求権については、他の利益の侵害による損害賠償請求権についてよりも長い時効期間を設定するのが合理的であると考えられるわけでございますが、現行法においてはこのような規律にはなっておりません。
 他方で、時効制度には長期間の経過に伴う証拠の散逸などによる反証が困難となった相手方を保護するという側面もございますので、被害者保護のために時効制度を廃止することや時効期間を著しく長いものとすることには弊害もございます。
 そこで、改正法案におきましては、生命、身体の侵害による損害賠償請求権について、時効期間を合理的な範囲で長くする観点から、これが債務不履行に基づく場合には、権利行使することができるときから十年間という時効期間を二十年間とすることとしたものでございます。
○佐々木さやか君 これまでは十年であったものが二十年になったということで、生命、身体を害された被害者の保護につながる改正であると思います。
 同時に、債務不履行によるのか不法行為によるのかという点についても統一がなされておりまして、不法行為と構成したとしても、併せて改正が行われているので、生命、身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償請求権の場合は短期が五年、そして、長期といいますか、客観的起算点からというんでしょうか、それについては不法行為があったときから二十年という形で、いずれの法的な構成を取っても同じ期間になったと、こういったところもきちんと整理をされることによって、国民にとって分かりやすい制度になっているのではないかと思っております。
 今申し上げた不法行為について、消滅時効を少し確認したいところがありますけれども、不法行為のあったときから二十年というこの時効、二十年の間損害賠償請求ができるという期間の性質についてですけれども、これまでは判例上も除斥期間ということで解されておりました。これがどのように性質が変わるのかということ、それが時効ということでいいのかどうか、時効であるとすればそのように改正をするのはどうしてなのかを確認をしたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありました現行法七百二十四条後段の長期の権利消滅期間でございますが、これにつきまして判例は除斥期間を定めたものであるとしております。除斥期間ということになりますと消滅時効期間とは異なりまして中断や停止の規定の適用がないため、これは期間の経過による権利の消滅を阻止することができないということになります。また、除斥期間の適用に対して、信義則違反や権利の濫用に当たると主張する余地がないということになると解されております。
 そのため、長期の権利消滅期間が除斥期間であるといたしますと、長期間にわたって加害者に対する損害賠償請求をしなかったことに真にやむを得ない事情があると認められる事案におきましても、被害者の救済を図ることができないおそれがあると考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、長期の権利消滅期間を除斥期間ではなく消滅時効の期間であるとすることとしております。これによりまして、中断、停止、これは改正法では更新、完成猶予と再構成されておりますが、これらの規定が適用されることになりますので、被害者において加害者に対する権利の時効による消滅を防ぐための措置、これをとることが可能になります。
 また、消滅時効期間の経過により権利が消滅したという主張が加害者側からされたといたしましても、裁判所は、個別の事案における具体的な事情に応じまして、加害者側からの時効の主張、これが信義則違反であるとか権利濫用になると判断することが可能になるものでありまして、不法行為の被害者の救済の可能性がこれによって広がるものと認識しております。
○佐々木さやか君 今御説明いただいたように、この二十年の期間の性質を時効という形で解することによって、より被害者側に、被害者の保護に資する制度になっているのではないかと思います。
 これまでも除斥期間の適用の制限ということを裁判所が個別の事案に即して判断をしてきたという面はありますけれども、これがこれまででいう中断、停止の対象にもなるということで、先ほども言ったように、債権の場合、債務不履行に基づく損害賠償請求などの法律構成の場合ともバランスが取れるようになったのではないかなと思います。
 今少し説明の中でありましたが、時効の中断、停止という制度がこれまで現行でございました。これを今回の改正では時効の更新、また時効の完成猶予ということで名前も変わりますし、新しい制度ということになると思うので内容も変わるのかなとも思っておりますが、この改正を行った趣旨とその内容について教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の時効の中断という制度は、例えばその代表的な事由であります裁判上の請求で見てみますと、時効が完成すべきときが到来しても時効の完成が猶予されるという、完成猶予と申しますが、この効果と、一旦振出しに戻って新たに時効を進行させるという更新の効果とを有するわけでありまして、現行法はこれらを中断と表現しておりますため、用語の意味内容が理解しにくいというのが現状でございます。
 また、例えば債務者が権利の存在を承認した場合には更新の効果のみが生ずるなど、多岐にわたる中断事由の中には時効の完成猶予の効果と更新の効果のいずれか一方が生ずるにとどまるものもありまして、その効果の発生時期も必ずしも明確ではございません。
 さらに、判例は、債権者による破産の申立ては、中断事由である裁判上の請求、これに当たるとした上で、破産の申立てが取り下げられた事案においては、更新の効果は生じないとしても、取下げから六か月間は時効の完成が猶予されるものと扱う、いわゆる裁判上の催告という解釈を採用しておりますが、このような規律も条文から読み取ることは困難でございます。
 他方、現行法では時効の停止という制度もございますが、これにつきましては、その効果は専ら時効の完成が猶予されることにありますが、停止という表現では、あたかも時効の進行自体が途中で止まり、停止事由が消滅した後に残存期間の進行が始まるかのような誤解を生みがちでありまして、用語の意味内容がこれも理解しにくいところでございます。
 そこで、改正法案では、時効の中断の制度を時効の完成猶予と更新という、その効果の内容を端的に表現する二つの概念で再構成することといたしまして、これによって、中断という一つの概念の下では理解することが困難でありましたその効果を理解しやすいものといたしますとともに、時効の停止についてもその効果の内容を端的に表現する完成猶予という概念と置き換えることで、同様に、より理解しやすいものとしております。さらに、先ほど触れました裁判上の催告に関する判例を含めて、時効の中断の効果の発生時期についてもより明確にすることとしております。
○佐々木さやか君 非常に複雑な現行の制度であったわけであります。恐らく大学に入学をして法学部などで民法を学ぶ上でも、非常にこの時効の中断とか停止というような概念からだんだんつまずいてきて、法律は難しいとか分かりにくいというような印象を受ける学生さんなんかも多いんじゃないかなと思いますけれども、こういったところも含めて、今回も国民に分かりやすい制度という観点から整理がなされたというふうに理解をしております。
 今幾つか完成猶予事由、更新事由についても挙げていただいたかと思いますけれども、一つ例としてお尋ねしますが、仮差押え、仮処分というものがあります。これは、従来は時効の中断事由というふうになっておりました。その上で、取り消された場合には中断の効果を生じないと、こういう制度だったわけでありますけれども、これが中断事由ではなくて、今回の改正では完成猶予事由という形に変わります。これはどういう理由によるのかということと、現行では取り消された場合の効果について規定がありましたけれども、この仮差押え、仮処分というものが仮に取り消された場合というのは、この完成猶予の効果というのはどのようになるのか、ちょっとこれは通告をしていなかったかもしれませんけれども、どのような制度になるのかということと関連をして教えていただければと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 仮差押え及び仮処分は、現行法上、差押えと並んで時効の中断事由とされております。そのため、仮差押えがあれば、消滅時効の期間はその事由が終了したときから新たに進行するものでございます。
 しかし、仮差押えや仮処分は、その手続の開始に当たって債務名義を取得する必要はなく、後に裁判上の請求によって権利関係が確定することが予定されているものであって、その権利の確定に至るまで債務者の財産等を保全する、これは暫定的なものにすぎないわけでございます。
 改正法案におきましては、中断の効力を、先ほど申し上げましたように、完成猶予と更新という新たな概念を用いて再整理を行うこととしておりますが、仮差押え及び仮処分に消滅時効の期間を更新する効力まで認めるのは適当ではなく、裁判上の請求を取る時間的余裕を確保するため、催告と同様に、その手続の終了から六か月の完成猶予を認めた上で、更新が生ずるか否かは別途裁判上の請求を行うか否かに委ねるのが相当であると考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、仮差押え及び仮処分については、それが終了したときから六か月を経過するまでの間は時効が完成しないという完成猶予の効力を認めることといたしますが、更新事由としての効力は認めないということとしております。
 それから、お尋ねのありました仮差押え、仮処分が取り消された場合の取扱いということでございますが、現行法の百五十四条は、仮差押えや仮処分が権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは時効の中断の効力を生じないとしております。これに対しまして改正法案は、完成の猶予の効力は仮差押えの終了原因を問わず生ずることとしておりますので、例えば、保全異議によって保全命令が取り消された場合や、本案の訴え不提起によって保全命令が取り消された場合にも完成猶予の効力が生ずることとなると考えられるところでございます。
○佐々木さやか君 御説明ありがとうございました。
 催告のみによっても完成猶予が生じるわけでありますので、そのバランスからいっても、取り消された場合にも効力が生じるという形に整理をされたのかなというふうに思います。
 それから、震災時に、何か災害、大規模な災害が起こったときにこの消滅時効というのはどうなるのかということに関しまして、現行法でも規定がございました。それは、震災、大規模災害が起こった場合に、二週間という期間、時効が成立をしないという形になっていたわけでありますけれども、これが今回の改正で三か月という形に延長をされております。
 なぜ延長したのか、またこの三か月という期間の根拠等について議論を教えていただければと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の百六十一条によりますと、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときには、その障害が消滅したときから二週間を経過するまでの間は時効は完成しないということとされております。このように、障害が消滅したときから二週間を経過するまでとされておりますのは、障害が消滅した以上は直ちに時効中断の措置をとるべきであり、そのための具体的な期間として二週間が相当であるという考え方に基づいているとされております。
 もっとも、都市機能を根本から破壊するような大規模災害などの発生も想定いたしますと、障害が消滅するまでの期間自体が極めて長期間にわたることもあり得るわけでございまして、その場合には二週間という期間では余りに短いという指摘がございました。
 他方で、現行法の他の停止事由におきましては、これは夫婦間の権利ですとか、あるいは法定代理人のいない未成年者といったものがその例になるわけですが、これらのものの場合のように、障害が消滅したときから六か月を経過するまでの間は時効は完成しないとされております。しかし、これらの事由は、婚姻が継続している期間や未成年者が成年に達するまでの期間のように、類型的に権利行使の障害が極めて長期間に及ぶものでありますので、障害の存続する期間とのバランス上、権利行使の障害が消滅してから時効が完成するまでの猶予期間も相当程度長くするのが合理的であると考えられます。
 これに対しまして、天災などの場合には、たとえ甚大な被害を生ずる大規模災害でありましても、権利行使の障害が存続する期間は、先ほど申し上げましたものよりは短いことが想定され、障害が消滅してから時効が完成するまでの猶予期間も六か月よりは短い期間とするのが合理的ではないかと考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案においては、障害が消滅したときから三か月間を経過するまでの間は時効が完成しないとすることといたしました。
○佐々木さやか君 この三か月でも足りないのではないかという考え方もあるかもしれませんけれども、この民法というのは基本法でありますので、これとまた異なる期間の特別法を作って、それぞれ本当に大規模な災害が起こったという場合にはこの時効の期間をまた検討していくということもできるかと思います。
 時間が参りましたので、残りの質問についてはまた次回にお尋ねしたいと思います。
 以上で終わります。
○委員長(秋野公造君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は、被害者救済と消滅時効の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 午前中も御答弁ありましたけれども、消滅時効というのは、時の経過を理由にして権利を奪う、言わば権利行使を阻むというものです。これまで債権の消滅時効期間は原則十年とされていましたが、改正案は、お手元に新旧対照表をお配りしましたけれども、改正百六十六条の一号で五年、二号で十年と、言わば原則五年というふうに法文上は読めるわけですね。これは、これまでの十年を一挙に半分の五年に短縮するものではないのか、そのことによって権利者、とりわけ社会的に弱い立場に立たされる被害者の権利実現を不当に阻むことになりませんか、局長。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 もちろん、原則五年の期間としておりますが、あわせて、権利行使をすることができなかった、知ることができなかった場合には十年の期間はなお残しております。それに加えまして、被害というお話がございましたが、生命、身体に関するものにつきましては、むしろ現状よりも、債務不履行については十年から二十年に延長し、不法行為についても短期を三年から五年に延ばすという手当てをしているところでございます。
○仁比聡平君 今の言わば時効制度そのものを大きく変えることによって被害者救済が不当に阻まれることにはならないという御趣旨なんだろうと思うんですけれども、それでいいかということと、併せて伺いますが、実際、私も弁護士活動の時代に、相談においでになる方々が、とりわけ社会的に弱い立場に置かれている方ほど時効の言わば中断、今度の改正案で言う完成猶予や更新という手順を踏むことは極めて困難と。ですから、相談に来られたときには時効完成ぎりぎりとか、あるいは一見過ぎてしまっているんではないかという事案の相談は、これはたくさんあるわけです。
 また、とりわけ複雑困難な事案、例えば医療過誤や学校事故あるいは過労死などの、大きく言って安全配慮義務違反と言われる類型の損害賠償請求事件というのは、これは極めて専門的ですし、あるいは証拠を収集するのもとても困難という中で、裁判の準備に時間が掛かることもあります。一方で、被害に苦しみ続けているという中で、経済的はもちろんのこと、精神的にも権利行使が容易にできないと、そうした状況に置かれている被害者の方々もたくさんあるわけですね。
 こうした被害者の救済のために、先ほど民事局長がおっしゃった、権利行使をすることができることを知ったときという五年の時効期間の要件、起算点ですね、あるいは生命、身体の侵害に対する十年を二十年に延ばすということ、あるいは不法行為の場合、これどんなふうに被害者の救済が図られるということなんですか。
○政府参考人(小川秀樹君) まず冒頭申しましたのは、五年の原則的な期間は採用する一方で、生命、身体に対する保護という観点から、むしろ時効期間については手厚い対策を取ったというところだと思っております。
 それから、例えば御指摘ありました説明義務違反などにつきましては、五年の消滅時効の起算点をどう考えるかという問題がありまして、債権者にどのような認識があれば、債権者が権利を行使することができることを知ったというのがこの五年の起算点でございますので、と言えるかが問題になるわけですが、説明義務違反の有無は当事者の属性や契約に至る経緯などを総合考慮し、安全配慮義務の有無などにつきましても当事者が従事した職務の内容や危険性などの事情を総合考慮して判断するものでありますため、単に損害を被ったことを認識したとしても、直ちに債権者において債務不履行に基づく損害賠償請求を行使することは期待することはできない、こういう理解でございます。
 そういう観点からは、不法行為に基づく損害賠償請求権の三年の消滅時効の起算点であります、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときの解釈において、判例は、一般人であれば当該加害行為が違法であると判断するに足りる事実を被害者が認識していることが必要であるとの立場に立っているというふうに解されておりますので、これを参考にいたしますと、先ほど申し上げました説明義務ですとかあるいは安全配慮義務に違反した場合につきましては、債務不履行が生じていると判断するに足りる事実を知っていたこと、これが起算点については必要であるというふうに考えられるところでございまして、こういった解釈論も含めて被害者の保護に資するものというふうに考えております。
○仁比聡平君 まず、生命、身体の侵害に対しては二十年にすることによって手厚い保護を図ったのだということと、それから、今起算点のお話がありました。
 現行法、この旧条文にあるように、これまでの債権の十年の消滅時効の起算点というのは、権利を行使することができるときから進行するというふうにありまして、これが改正案の二号に言わば移っているわけですね。これまでにはなかった、権利を行使することができることを知ったときからという起算点に基づく五年という時効が今度言わば新設されると、あるいは統一されるということになるということなんだと思うんですが、これまでも、この現行法の権利を行使することができるときというのをどう解釈するのか、これ、被害者救済のための判断が様々な裁判で積み重ねられてきたわけです。
 これ一々申し上げなくても局長よく御存じだと思うんですが、新設される「権利を行使できることを知った時から五年」というのは、つまり、端的に言えば、これまでよりも狭い、あるいは起算点が遅くなるということによって時効の完成というのは、これは被害者に有利に働くと、そういうような理解でいいんですか。
○政府参考人(小川秀樹君) ただいまの理解でよろしいかと思います。
○仁比聡平君 そこで、一つ前の局長の答弁で、権利を行使することができるときとは何かという御答弁の中で、一般的に義務違反があった、債務不履行があった、つまり、誰がどんな義務に違反したのか、そのことによって自分がどんな違法な仕打ちを受けているのかということを知っただけでは、これ直ちに権利行使が期待することができるわけじゃないんだと、そういう理解だと思うんですよ。期待することができるのか、つまり、一般人であれば違法であることの認識はあってもそれで権利行使ができるという、そういうことになるのかと。
 少し具体的に伺った方がいいかと思うんですが、昨年の五月の二十六日にもこの委員会で私取り上げた事件なんですが、北海道の釧路で性虐待、性暴力によってPTSDを発症したという女性が、その直接の加害行為からすれば二十年以上たって提訴をするという事件について、最高裁判所が除斥期間などの適用は認めずにこの被害者の権利を認めたという事件があります。少し紹介しますと、女子が三歳から八歳という幼少の時期に叔父から性的虐待を受け続けたと。中学生のときにその性的な意味に気付いて、けれども既に離人症あるいはPTSDを発症していた。高校生のときには摂食障害が始まって、けれど、その加害者であるところの叔父に対して訴えて出るということはずっとできなかったわけです。この方は三十代になってうつ病を発症する、こうした性的虐待の被害によってPTSD、解離性障害、うつ病などの重篤な精神的障害を受けながら、やっと訴えて出ることができたのは二十年以上を経過していたという事案なんですね。
 改正案によってはもちろん、現行法に基づいてもこうした事案が権利の行使が認められないというのはこれ絶対に許されないと思うんですが、これどう考えたらいいんですか、局長。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘がありましたPTSDのような場合、被害者の保護を図る必要の非常に高い事案だというふうに理解しております。
 現行法の下におきましても、そういったものを発症することによる損害は、その損害の性質上加害行為が終了してから相当期間が経過した後に発生したものであること、これが一般的だと思われますので、こういった点を理由に、現行法ですとこれ二十年間は除斥期間とされておりますが、除斥期間の起算点については、今お話がありましたような加害行為そのものの時点ではなく、その病気が発症した時点であるとする裁判例がございまして、その結論を最高裁も是認しているものと承知しております。
 そういった形で解釈論が行われるわけでございますが、改正法案の下でもこういった下級審の考え方が否定されるものではないというふうに考えております。
○仁比聡平君 今のような、つまり、被害、損害の実情やあるいは性質、ここをしっかり具体的に見てこれまでも起算点の判断ということが行われてきたと思うんですね。
 関連して、法制審の議論で、ちょっと局長、具体的に通告していないので私の方で読み上げますけれども、時効制度の設計に当たって、平成二十五年の十月二十九日付けなんですが、民法(債権関係)の改正に関する要綱案のたたき台(四)というのが出されておりまして、ここに、生命、身体等の侵害による損害賠償請求権についてこんなふうなくだりがあるんです。債権者(被害者)は、通常の生活を送ることが困難な状況に陥り、物理的にも経済的にも精神的にも平常時と同様の行動を取ることが期待できない状況になること、といった認識が共有されて、言わば、私流に言うと、被害実情を考慮に入れた議論というのがなされているわけですね。
 今度の改正案の趣旨に流れているのもこういう考え方ということでよろしいですか。
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申しましたように、生命、身体の保護という観点からの議論でございまして、今御指摘のあったような考え方が基本的なベースになるものでございます。
○仁比聡平君 同様の趣旨を、著名な筑豊じん肺事件というのがありますが、最高裁判決では、現行法は「不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」という七百二十四条の後段を除斥期間と最高裁が解しているなどと言って、この「不法行為の時」というのはいつかということが問題になってきているわけですが、この筑豊じん肺事件においては、じん肺というのは体に粉じんが蓄積する、その場合に人の健康を害することになるという、そういう物質であるし、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害なのであって、その性質上加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に発生すると、だから起算点はその損害の全部か又は一部が発生したときにこれは始まるものと考えるんだと、こういう趣旨の判決をしているわけです。
 つまり、ちょっと改めて確認すると、この改正案での時効の起算点というのは、これは被害の実情、性質に応じてしっかりと具体的に判断していかなきゃいけないんだと、こういう考え方でいいんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘いただきました点は、まさに現行法でも解釈論としてそういう考え方がしばしば判例、裁判例に取られるところでございまして、そういった解釈論については改正法案の下でも特に変わるところはないというふうに考えております。
○仁比聡平君 ところが、先ほどのPTSDの事件ですが、一審釧路地裁は、これは除斥期間を超えているから権利は消滅していると言って門前払いしたわけですよ。現に裁判所はそういう判決をしているわけですよね。
 これ、局長、PTSDが早く発症する、あるいは、この釧路の方であれば三十代になってうつ病が発症していますから、そこから起算点を捉えたということだと思うんです、高等裁判所が。けれども、もっとひどい加害行為があって、ひどい症状が早くに固定していたら、そうしたら時効期間が早くに完成してしまって加害者が早く免責されてしまうと。これちょっと、とても不条理じゃありませんか。
 その先ほどのお話の流れでは、時効の起算点の問題になっているんですが、この時効の起算点を考えるだけで解決しないということもあるのではないのか。それを除斥期間だと言って門前払いするというのは、これはとんでもないんじゃないのか。ここはどう考えたらいいんでしょう。
○政府参考人(小川秀樹君) 除斥期間の一般的な問題点とされるのは、例えば中断、停止といった方法が取れないことであるのとともに、時期の経過によって客観的にもう確定させてしまうということで、例えば援用する必要もないというのが考え方で、考え方といいますか、制度の説明でございますが、今回は二十年の不法行為の消滅期間につきましては除斥期間ではないという整理をして、消滅時効というふうに考えております。
 したがいまして、先ほど申しましたような二つの点については、いずれもその対象にはなりませんので、例えば仮に二十年経過するまでということであれば、従来の中断の手法を取ることができますし、二十年経過した後であっても、時効を援用する場合に対して、それに対する権利濫用であるとか信義則違反といった主張が可能となるということでございまして、そういったもの全体で被害者保護に資するものと今回の制度を考えているところでございます。
○仁比聡平君 今局長が最後の辺りでおっしゃった、つまり、加害者側が時効であるから権利は認められないと主張する、このことを援用と法律用語で言うわけですけれども、それに対してこれまでは、二十年以上たっていたら、時の経過によって権利は消滅しているのであるから、どんなひどい加害者もその時効を使えるというようなことになっていた、けれども今度の法改正でそうした除斥期間ではないということをはっきりさせたんだという御趣旨の御答弁なんだと思うんですね。
 そうすると、実際に事件が裁判所にかかったときの裁判がどうなるか、ちょっと局長にお尋ねしますけれども、これまでは二十年たっていたらもうこれは門前払いということで、具体的な権利の濫用だとか、そのやり方は信義に反するじゃないかという事実の主張そのものが実際には認められないということになっていたわけですが、この法の考え方からすれば、そんなふうな形で門前払いすることは許されない、裁判所は当然に、権利の濫用ではないのか、あるいは信義則違反ではないのかということを主張、立証する場になる、判断する場になるということでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 従来は、二十年の消滅期間については、除斥期間であり、権利濫用を主張することはできないとしていましたために、権利濫用についての審理をせずに請求を棄却することが可能だったわけですが、改正法案においては、二十年の消滅期間についても権利濫用などを主張することができると解されますので、権利濫用についての審理をせずに請求を棄却するということはできなくなると解されます。
○仁比聡平君 裁判のありようはもう大きく変わる、変わらなければならないということだと思うんですね。
 先ほど来のPTSDのような事件でいいますと、これは家族の中で起こった事件ということもあって、なお権利行使は難しいわけですね。少なくとも、被害者本人が成人した、あるいは親の支配から完全に独立した、自立したと、こういうような要素が認められるかどうかというのを、これ、時効期間などを判断する上でも重要な判断とするべきではないかと私思うんですが、これ、局長、御感想お聞かせいただけますか。
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、権利濫用ですとか信義則違反というのは具体的な事情を前提とするものでございますので、家庭内の事情などについて、あるいはそれまでの経緯ということについても一つの考慮要素になることは言えようかと思います。
○仁比聡平君 そうした中で、もう一つ具体的な事案についてお尋ねしたいと思うんですが、皆さんもB型肝炎の被害というのは御存じだろうと思います。このB型肝炎の病気としての性質と言うべきことなんでしょうけれども、病状が長く継続することもあれば、一旦落ち着いて、治ったなというふうに思って普通に生活を取り戻しているんだけれども、思わぬときに再発するということもある病気なんですよね。良くなったり再発したりを繰り返して、いつ起きるか分からないウイルスの活性化におびえながら生活するというのがそのキャリアの被害者、患者の皆さんの実情だと思うんです。これ、再発してしまうと、B型肝炎の中でも予後が悪いものとしてとりわけ苦しまなきゃいけないと。そうした中で仕事を失い、あるいは家族の中でも折り合いがとても悪くなってしまうというような被害が深刻になって、そうした中で精神的に落ち込んでうつ病などにもなる方もあるわけです。
 私、そういう意味では、このB型肝炎の再発というのは新たな被害をもたらすものであって、予測も付かない状況でそうした被害が発生するということは、明らかにこれ、損害賠償の議論でいえば別の損害、だから時効の起算点の関わりでいうと別にちゃんと解されなきゃいけないと思うんですが、これ、局長、いかがですか。
○政府参考人(小川秀樹君) 申し訳ございません、事実関係あるいは具体的な状況について必ずしも十分把握しておりませんので、今の点につきましてはちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○仁比聡平君 これ、新たな起算点として考えなきゃおかしいんですよ。事案が個別であるというのは、それはおっしゃるとおりなんですけれども、被害救済のために改正したという今回の法趣旨からすれば、私はこの再発というのも救済するのが当然だと思うんですね。
 ちょっと法案に戻りますが、七百二十四条の後段、これまで最高裁が除斥期間だと解釈したことがあるこの条文をどうするのかという点について、先ほど御紹介した平成二十五年十月の要綱案のたたき台(四)ですね、こんなふうに言っています。「素案(二)は、民法第七百二十四条後段の期間制限が同条前段の消滅時効とは異なる性格のものであるという解釈の余地を封ずる趣旨で、「同様とする」という文言を使わずに、これらを各号の方式で併記するものである。これにより、二十年の期間制限が消滅時効であることが明らかになり、中断や停止が認められ、また、信義則や権利濫用の法理を適用することによる妥当な被害者救済の可能性が広がることとなる。」と。今日、局長がおっしゃっている趣旨を端的にこれ述べているんだと思うんですが。
 とすると、つまり現行法のこの条文も解釈で、最高裁の平成元年は除斥期間だと言った、けれども、学説始めとして、それはおかしい、消滅時効と解すべきだという議論はたくさんあるわけなんですね。この改正前の被害について除斥なのか時効なのかということは、これはもう裁判官が判断するということになるんだろうと思うんですけれども、今回の改正の趣旨からすれば除斥期間ではなくて時効だと考えるのが私は道理ある考えだと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案では、現行法七百二十四条後段の二十年の長期の権利消滅期間を消滅時効期間としておりますが、その適用関係を見ますと、改正後の規定は施行日前に二十年の期間が既に経過していた不法行為の損害賠償請求権には適用されませんので、こういったものには現行法の適用が問題になります。
 御指摘ありましたように、判例は現行法七百二十四条後段の二十年の長期の権利消滅期間は除斥期間としておりますが、改正法案は、この現在の判例を踏まえて検討されたものではございますが、現行法七百二十四条後段の二十年の長期の権利消滅期間の法的性質が除斥期間であるということを法的に確定させる性質のものではもとよりございません。
 したがいまして、その意味では、現行法についての解釈というのは依然としていろいろと可能であるということでございます。
○仁比聡平君 いろいろと可能であるという、含みのある、けれど大事な御答弁なんだと思うんですよ。法制審の議論で、この期間制限、つまり七百二十四条後段の期間制限が消滅時効とは異なる別の性格のもの、つまり除斥期間であるという解釈の余地を封じようということで今回の改正をやっているという以上、私が申し上げるように、消滅時効であると解釈をして、現行法を適用して被害者を救済するというのが道理ある裁判所の態度だということを改めて指摘をしておきたいと思います。
 幾つか通告をしている問いがまだあるんですが、ちょっと急に大臣にお尋ねしたいことがありまして、私も先ほど知ったことですので通告はしておりませんが、前回私がこの委員会で取り上げました有明海諫早湾干拓事業をめぐる長崎地方裁判所の開門差止めという判決に対して、今朝、山本農水大臣が控訴しないと、つまり差止め判決を確定させるという方針を表明したということなんですが、大臣は御存じなんですか。知っているかどうかですよ、大臣が。
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員からの突然の、通告のない質問でございます。
 御指摘の諫早湾の開門差止め請求訴訟の判決につきましては、判決の内容を精査して法的な検討をするとともに、関係省庁とも十分に協議した結果、国としては控訴をせず、本判決を受け入れるとの判断をしたものであると、このように受け止めております。
 引き続き、潮受け堤防の開門をめぐる一連の訴訟については適切に対応をしてまいりたいと、このように考えております。
○仁比聡平君 厳しく抗議を申し上げたい。これ、まだ控訴を放棄するなどという書面を裁判所に出したのではないんだろうと思うんです。これ、大臣、考え直して、五月一日まで控訴期限ありますからね、控訴をして、しっかりと農漁共存でどうやって有明海を再生するのか、その高等裁判所での和解の場を国がリードしてつくることも含めて、これしっかり責任果たすべきですよ。
 これ、土曜日の、四月二十二日の佐賀新聞でこんな記事があるんですね。「ある法務省幹部は「控訴せず」を強く主張する。開門しない国の方針を明確にした上で、別の訴訟で何らかの和解協議を設定することも視野に入れる。」。農水省は控訴して和解を探った方がいいんじゃないかと言うけれども、法務省の幹部が控訴せずを主張しているという、こういう報道なんですけれども、これ、大臣、事実なんですか。事実だとしたら、これ、あり得ないですからね。確定した開門請求権を持っている漁民が諦めるとか屈するとか、これ絶対にないですから。
 大臣、これ、差止め判決確定させたら問題の解決が極めて困難な事態になりますよ。それを自らやるというのか。いかがですか。
○国務大臣(金田勝年君) お答えします。
 いずれにしましても、本訴訟に係る判決対応につきましては、農水省と協議の上、適切に対応してまいりたいと、このように考えております。
○仁比聡平君 とんでもない。
 終わります。
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 いよいよ今日から民法の一部を改正する法律案の質疑ということでありますが、ちょっと最初にテロ等準備罪のことについて少し、少しと言うのは変ですけれども、お願いというか要望というか、させていただきたいと思いますので、金田法務大臣の方に是非お聞きいただければと思います。
 このテロ等準備罪、TOC条約にやっぱり加盟しなければならないとか、そしてまた、これからのテロの、行われることについてのある一定の歯止めをしていくためにもやっぱり必要であるとか、そういったことの理解はしております。法律の必要性についての理解はしておりますが、やはり、前回質疑をさせていただきましたように、まだまだ可視化が、一つは可視化ができていない、全体の二・八%ということであります。
 そんな中で、五点是非指摘をさせていただきたいというふうに思っておりまして、まず一点は、前回も質問させていただきました可視化です。これ、被疑者取調べの可視化の対象犯罪としてテロ等準備罪を是非追加すべきというふうに考えております。
 そして、二点目につきましては、弁護人の付与及び取調べの立会いについてですけれども、これ、テロ等準備罪に関わる事件について国選弁護人の付与を逮捕段階から可能とすること、そしてまたもう一つは、テロ等準備罪に関わる事件の被疑者の取調べについて弁護人の立会い権というものを付与すること、こういったことです。
 そして、これも一般質疑だったかと思いますが、GPS捜査、これ質問でもさせていただきましたけれども、法律をやっぱり作るべきじゃないですかということで質問させていただきましたが、これ、テロ等準備罪に関わる事件の捜査に当たってGPS捜査を用いることがあるべきだというふうに考えています。
 組織犯罪の解明、それから客観的証拠の収集に資するものである反面、個人の意思に反しそのプライバシーを侵害し得るものであって、刑訴法上特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に該当し、これを行うに当たっては適正手続の保障を図る必要があることを踏まえて、速やかにGPS捜査を有効かつ適正に行うための制度の在り方について、これを是非検討を加えて、必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の措置を講ずべきということを、検討条項ですね、附則に是非設けていただきたいということ。
 そして、通信傍受、通信傍受法の対象犯罪に関わる別表に、テロ等準備罪の本犯のうちテロの実行に関する一定の犯罪を加えること。
 そして、最後ですが、これはもうそんなに大したことではないと思うんですが、親告罪についてですけれども、テロ等準備罪の条項に、別表第四に掲げる罪のうち告訴がなければ公訴を提起することができないものに係るテロ等準備罪については、告訴がなければ公訴を提起することができない旨の規定を追加することということで、明確にするべきだということであります。
 以上五点の、是非修正すべきというふうな考えでありますので、是非御理解いただきたいというふうに思います。
 それでは、民法の改正についての質問に入らせていただきたいと思います。
 今日も午前中、答弁でも出てきました法制審議会についてお伺いをしたいと思います。
 今回の民法改正案では、平成二十一年に、当時の法務大臣、千葉景子法務大臣でありますが、法制審議会に改正を諮問したことで議論が始まったということであります。その議論の結果、平成二十七年に改正要綱が法務大臣に答申されたという経緯になるわけですが、非常に七年にわたってこれが議論されてきたということでありますが。
 そこで、まず、この法制審議会がどのような組織として位置付けられているのか、その答申とはどういうものなのか、お伺いをしたいと思います。
○政府参考人(小山太士君) お答えをいたします。
 法制審議会は、法務大臣からの諮問に応じて、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項を調査審議することなどを目的とする諮問機関でございます。
 法制審議会の答申は法務大臣の諮問に対する応答でございまして、多数の専門家による総会又は部会での審議を尽くした上で、最終的に総会において議決されたものがこれに当たるわけでございます。このような答申の性格から、政府におきましてはその答申を尊重して法案を提出しているところでございます。
 以上です。
○東徹君 衆議院の法務委員会の方で、我が党の議員、木下議員でありますが、法制審議会について、より多様な意見を反映させるために国会議員をメンバーに入れてはどうですかという質問をさせていただきましたけれども、これに対して盛山副大臣の方から、国会議員は国会の場で審議をすればいいという御答弁がありました。審議会の中で国会議員が入っていないのかなと思いきや、国土審議会というのがありまして、これは結構国会議員の方々がメンバーに入っているわけですね。
 今回のようなこの民法の大改正、これは百二十年ぶりで、非常に大きな大改正でありますから、こういったときぐらいは国会議員が入ってもおかしくないというふうに考えるんですが、これについての御見解をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 御指摘ありましたように、一部の審議会には国会議員がメンバーとなっているものもあると承知しておりますが、一般的には平成十一年四月二十七日に閣議決定されました審議会等の整理合理化に関する基本的計画というものがございまして、これに基づきまして、民間の有識者を委員とした審議会での御意見を踏まえて法案を作成し、立法府で御審議いただくというのが原則的な法案作成の流れであるというふうに私ども法務省の事務当局としては認識しております。
 法務当局といたしましても、改正に関わる様々な立場の方から幅広く御意見を聴取することが大切であるものと認識しているところでございまして、今回の民法改正案につきましても、このような考え方に沿って審議会を構成し、その意見を踏まえて関係法案を作成し、国会に提出したものであるというふうに認識しているところでございます。
○東徹君 そうしたら、お聞きしますが、審議会にほかの、国土交通省では国土審議会で国会議員が入っている、法務省としてこういう場合は国会議員を審議会に入れてもいいんじゃないのかというようなことがありましたら、是非お聞きしたいと思います。
○副大臣(盛山正仁君) 先ほど東委員から御指摘のありました国土審議会のように、審議会に国会議員がメンバーとして入っている方がどちらかというと例外かと思います。
 それで、法制審議会に国会議員を入れてはいけないという、そういう制約は何もございませんですけれども、法制上の論点を一つずつ検討を重ねていくという、そういう我々の法制審議会の過程に国会議員の方にお入りをいただいてというのはいかがなものかなと。それよりは、法令の専門家にその論点を十分御議論をしていただいて、そこで案をまとめて、それで我々の方から法案という形で国会の場で御審議をいただくという方がよろしいんじゃないかなと、そんなふうに思っているというところでございます。
○東徹君 国土審議会は、衆議院だったら六人、参議院だったら四人入って審議されるということなんですけれども、今回のような民法の大改正でありますから、より国会議員が入った方がいい議論ができたんではないのかなと、私、個人的にそう思いましたので、そのように言わせていただいたということであります。衆議院の方では盛山副大臣からもそういった答弁がありましたので、ちょっとどうなのかなということで聞かせていただきました。
 今回の民法改正の目的には、民法を国民にとってより分かりやすいものにすることということがあります。契約自由の原則のように、当たり前の内容が新たに条文化されたものもあれば、逆に、前の原則を、例えば、債権者は債務者に対しその債務の履行を請求することができるという当たり前の原則を明確にするための規定が要綱案にはあったようですけれども、最終的には法案に盛り込まれることがなくなったということもあります。
 例えば今回のような、先ほど言いました債権者はというところでありますけれども、国民にとって分かりやすくするという法改正の目的からすると、先ほどの条文案でいえば、債権者は債務者に対して、債務の履行が不能である場合を除き、その債務の履行を請求することができるというような案も作れたんではないかなというふうに考えます。
 法制審議会において、要綱案等には含まれていたけれども多くの基本原則の明文化が見送られることになったわけですが、なぜそうなったのか、見解をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会におきましては、民法を国民一般に分かりやすいものとするという観点から、民法における基本的な原則の明文化について検討がされました。検討対象とされました基本的な原則の中には、御指摘ありましたように、最終的に明文化することとされたものもされなかったものも両方あるわけでございます。
 まず、明文化されたものを見てみますと、これ、契約に関する基本原則でございます。すなわち、近代私法の基本原則と言われます契約自由の原則は、契約を締結するかしないかの自由、契約の内容を決定する自由、契約締結の方式の自由などを言いますが、これらの基本原則は現行法では明記されておりません。これらの基本原則は確立した法理として一般的に認められているものであり、民法を国民一般に分かりやすいものとするためには明文化することが望ましいと考えられます。
 具体的には、契約を締結しない自由があることや口約束でも契約が成立し得ることなどの多くの消費者が知るべき基本的なルールが、ここからより読み取りやすくなるものと考えられるわけでございます。そこで、改正法案においてはこれらを明文化することといたしました。
 他方で、明文化されなかったものの具体例は、これも先ほど御指摘ありました履行請求権でございます。すなわち、債権者は債務者に対して債務の履行を請求することができるという債権の最も基本的な効力については、現行法には明示的な規定がございません。そのため、改正法案の立案に向けた検討の過程においては、この効力を明文化することも検討されました。
 もっとも、改正後の四百十二条の二の第一項におきましては、債権者は債務の履行が不能であるときはその債務の履行を請求することができないという規定、これは履行不能に関する規定でございますが、この規定を設けることとしておりまして、この規定によって、履行不能でない限り債権者は債務の履行を請求することができるということもまた明らかにされていると見ることができようかと思われます。
 そこで、この規定とは別に、債権者が債務者に対して債務の履行を請求することができるという規定は設けないこととしたものでございます。
○東徹君 私は、この民法というものが、国民にとってより分かりやすくするべきだというふうに思っていまして、先ほどちょっと言いましたけれども、例えば、さっき言いましたとおり、債権者は債務者に対し、債務の履行が不能である場合を除き、その債務の履行を請求することができるというような文だったらどうなんですかね。
○政府参考人(小川秀樹君) もちろんそういう書き方も可能だと思われますが、いずれにしましても、そうなりますと履行不能の部分も含むことになりますので、あとは規定の仕方の問題ということになろうかと思います。
○東徹君 民法ですから、より、よりですね、分かりやすく分かりやすく私は書くべきだというふうに思っておりまして、その質問をさせていただきました。
 続きまして、第三者保証についてお伺いをしたいと思います。
 今回の改正案では、事業用融資における第三者保証の際に公証人による意思確認を必要とするという内容が含まれておりますが、この改正の趣旨についてまずお伺いをさせていただきます。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 事業のために負担いたしました貸金等債務を主債務とする保証契約におきましては、その保証債務の額が多額になりがちでありまして、保証人の生活が破綻する例も相当数存在すると言われております。
 その理由としては、保証契約は個人的情義等に基づいて行われることが多いことや、保証契約の締結の際には保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることもあって、保証人の中にはそのリスクを十分に自覚せず安易に保証契約を締結してしまう者が少なくないことが指摘されております。もっとも、例えば個人は保証人になれないこととするなど、保証人の負うリスクへの配慮が行き過ぎますと、それにより中小企業がそもそも融資を受けにくくなるということを危惧する意見も、これは中小企業団体を中心に有力に主張されておりました。
 そこで、改正法案におきましては、中小企業の資金調達に支障が生じないようにしつつ、個人がリスクを十分に自覚せず安易に保証人になることを防止するため、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約を全面的に禁止するというのではなく、このような保証契約については公的機関であります公証人が保証人になろうとする者の保証意思を事前に確認しなければならないものとし、この意思確認の手続を経ていない保証契約を無効とすることとしております。
○東徹君 このルールの例外として、主たる債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等は公証人による意思確認が不要ということがされておるわけでありますけれども、それは確かに大きな企業だったらそういったことは、当然会社の財務体質もよく分かっているんだろうと思いますけれども、中小企業、例えば本当に個人でやっているような株式会社も中にはやっぱりあるわけでありまして、経営者が親戚で、身内でやっているような、名前を貸しているだけとか、そういったことも中にはあると思います。そういった親戚は義理で保証人になることもこれは考えられるわけですが、このような場合も例外規定に該当するんでしょうかね。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、法人の重要な業務執行の決定に関与する機関又はその構成員である理事、取締役、又は執行役の地位に着目いたしまして、主債務者が法人である場合の理事、取締役、又は執行役が保証人である保証契約については、保証意思宣明公正証書の作成を要しない、例外事由としております。
 そのため、ここでいう理事、取締役又は執行役は、法律上、正式に理事、取締役又は執行役の地位にある者をいいまして、それらの地位に就いた理由が、単に例えば名前を貸しているだけという認識であったとしましても、法律上、正式に理事、取締役又は執行役の地位にある者はこれに含まれるというふうに解しております。
○東徹君 ということは、これは含まれるわけですから、私はここを本当に一番危惧するところでありまして、恐らく大きな企業だったらそんなことはないのかもしれませんが、一般的に、株式会社であっても個人的な株式会社ってたくさんあると思いますね、もう圧倒的にあると思うわけでありますし、そしてまた、社会福祉法人なんかであっても、理事もですね、結構身内の方がやられている場合もあったりとかするわけでありまして、こういった場合、これは経営状況を知らないまま安易に保証人になることを防ぐ趣旨であれば、この例外規定は趣旨にそぐわないんじゃないかと思うんですが、いかがですかね。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきまして、これは先ほど申し上げましたように、保証人になろうとする者が主債務者が法人である場合のその取締役などに当たる場合には、保証意思宣明公正証書の作成を例外的に不要としておりますが、こういう不要なものといたしましたのは、これらの者は会社法などの規定により主債務者の事業の状況を把握すべき権能が与えられ、かつそのことを前提に各種の義務を課された存在でありますことから、保証のリスクを十分に認識せずに保証契約を締結するおそれが類型的に低いと言えると考えられたことを踏まえたものでございます。
 確かに、個々の取締役などの地位にある者が実際にその責務を果たす意欲をどの程度有しているか、これは千差万別であろうと考えられますが、法律上は、先ほど申し上げましたとおりの地位にあることを踏まえまして、類型的にこれを例外として扱うこととしたものでございます。
 したがいまして、改正法案における保証意思宣明公正証書の例外規定の在り方には合理性があるものというふうに考えております。
○東徹君 そうですかね。本当にここは一番危惧するところでありまして、やはり私の周りを見ても、株式会社であっても本当に個人事業主で、確かに名前は取締役とか、そういった方はおられるかもしれませんけれども、実際には取締役会も開かれていないような会社というのはたくさんあるように聞いておりますし、そして、経営状況を聞く権利があったとしても実際はなかなかそこまでやっぱり聞けないというようなことも聞きます。だから、本当にこの趣旨に沿うのかなと甚だ疑問に感じるわけであります。
 この個人保証についてですけれども、民法改正案における個人保証の規制が不十分であると考えて、例外なく事業用融資に係る個人保証を無効とするために、個人保証廃止法案を我が党が、これ参議院でありますけれども、提出をしております。法務省は、事業用融資に係る個人保証について無効とすることについてどのように考えますか。
○国務大臣(金田勝年君) 個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立の必要性というものについてまず考えていかなければと。御指摘の事業性の融資については、経営者その他の個人が保証人となったためにその生活が破綻する例も少なくないと言われております。また、このような現状に鑑みれば、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立が我が国社会においては極めて重要なものであるというふうに認識をいたしております。
 他方で、保証の持つ信用補完機能といいますか、個人保証を利用することを全面的に禁止をした場合には、特に信用力に乏しい中小企業の資金調達に支障を生じさせるおそれがあるとの指摘が中小企業団体を始めとします関係団体等から強く寄せられておりました。この指摘も重く受け止める必要があると考えておるわけであります。
 この両者の調和といいますか、個人保証の問題に関しましては、これまでも個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けた取組が行政的な取組を中心に進められてきているんですけれども、その中でもこれらの相反する要請をどのようにバランスの取れたものにしていくかという点が重要であったものと認識をいたしております。
 その結果、検討状況と改正法案の内容といたしまして、改正法案の立案に当たりましても、これらの要請をどのように調和の取れたものにするかに配慮しつつ検討が行われたわけでありますが、事業性の融資に関しまして、公証人による意思確認手続を経ない場合には保証契約を無効にするという強力なルールを設けることを前提に、このルールの適用対象は弊害が顕著である第三者が保証するケースに限定するということにしたものでございます。
 また、このように個人保証を一律に禁止することは現時点においては相当ではないと考えているわけでありますが、法務省としては引き続き、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて関係省庁と連携をしながら改正法案の施行後の状況を注視していきたいと、このように考えている次第であります。
○東徹君 個人保証に依存し過ぎないということを強く言われるのであれば個人保証は無効にすべきだということを、是非こういったことも検討すべきだなというふうに考えますし、先ほどの保証人の話でもありますけれども、まだまだやっぱり実態というか、それにはちょっと追い付いていないんじゃないかなと、そういうふうにも思います。
 公証人制度について次にお伺いさせていただきます。
 まず、そもそも公証人制度とはどういうものなのか、お伺いしたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 公証制度、あるいは公証人制度と言ってもよろしいかと思いますが、公証人制度は、公証作用、これは私人の法律生活に関する事項を公に証明するという国家の作用でございますが、この公証作用を行うことを職務とする公証人という機関を設けて、証書の作成などの方法によりまして一定の事項を証明させる制度をいいまして、国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、法律関係の明確化、安定化を図ることを目的とするものであります。この公証制度はヨーロッパ諸国で発達したものでございますが、我が国におきましても明治十九年にフランス法などの影響の下導入され、以後、数次の改正を経まして現在に至っております。
 公証人の主な職務でございますが、これは嘱託人の嘱託を受けまして公正証書を作成すること、それから私署証書や定款の認証をすること、それから確定日付を付与することなどでございます。
○東徹君 公証人制度で公証人を利用すると手数料というのが掛かりますよね。これ、全体的に手数料どれだけ掛かっているか分かりますか。済みません、手数料というか手数料収入。どれだけ手数料収入があって、そして人件費がどれだけ掛かっていて、そして例えばその公証人役場の家賃とかにどれだけ掛かっているか、そういった収支状況、これ把握していますか。
○政府参考人(小川秀樹君) 手数料につきましては、これは公証人は手数料以外のものは受け取ってはいけないということでございますので、この点については全体としての額を法務省としても把握してございます。
 監督しております法務局で把握しております手数料収入の総額を基に平成二十七年における公証人の手数料収入を全国平均で算出いたしますと、一人の公証人当たりということになりますが、月額約二百五十万円程度でございます。公証人は、この中から役場維持経費として、役場の賃料、執務用設備の購入維持費、書記、事務補助者などの人件費等を支払っておりますが、この点につきましては法務省として必要経費などについては把握しておりません。これは、公証人は手数料で収入する言わば独立採算の制度でございますので、言わば個人の事業主と同様の立場にありますので、その意味では同様の立場にありますので、法務省として必要経費などについて把握するところではございません。
○東徹君 金田法務大臣に是非ちょっとお願いがあります。
 これはもう公証人というのは、手数料はこれは法律によってこれは決まるわけでありまして、手数料はそれに払わないけないわけでして、この公証人の手数料、この収入が、全体は今把握されていると言われましたけれども、じゃ、それがどの程度、今人件費一人平均何か、月二百五十万、まさか二百五十万毎月給料としてみんながもらっているわけではないというふうに思いますので、じゃ一体この手数料収入がどういうふうに使われているのか、これは是非把握していただきたいと思いますので、把握しろと、調査しろということを是非やっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(金田勝年君) 東委員からの御指摘でございます。
 公証人の手数料につきましては、公証人が嘱託人から受ける手数料等のみを収入としているというただいまの局長答弁もございましたが、これを踏まえつつ、事務の内容あるいは当事者の受ける利益を基礎として算定されておりまして、公証人の負担するコストに基づく経費積算方式を採用していないわけであります。これは、公証人が弁護士や司法書士といった他の法律専門職種と同様に、経営においては個人事業主としての性格を有していることから、国が公証人の負担するコストを把握する立場にないと考えられるためであります。
 いずれにしましても、公証人の手数料、提供される公証サービスに見合った適正なものとすることは重要であって、今後とも不断に見直しの要否について検討してまいりたいと考えております。
○東徹君 大臣、それはおかしいと思いますね。やっぱり、収入がどれだけあって、何にどれだけ使われているから、やっぱりそれに見合った手数料等が出てくるはずです。
 だから、手数料の見直しについては、やっぱり全体的な総収入からいろんな人件費、そしてまた事務の方、家賃、いろんなことを引いて計算されるわけですから。これは全体を是非実態を把握すべきということを申し上げまして、今日は時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 質問に入ります前に一言申し上げたいと思います。
 本日、沖縄防衛局は、沖縄県民の民意に反して、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部の護岸建設工事に着手いたしました。県民の民意は、名護市長選挙、知事選挙、衆議院選挙、参議院選挙において、辺野古新基地建設の反対を主張する候補者が完勝いたしました。そのことでも民意は明白に示されてまいりました。また、地元メディアの調査でも、沖縄県内の有権者の六一%が辺野古新基地建設に反対していることが明らかになっています。そうした民意を一顧だにしない政府の強硬姿勢は、地方自治をないがしろにするものであり、憲法に反するものではないでしょうか。
 政府は、辺野古埋立承認に付された留意事項である沖縄県との協議を打ち切っており、承認の留意事項に違反をしています。さらに、沖縄県の岩礁破砕許可申請は必要ないと一方的に判断し、手続を恣意的にねじ曲げております。このような政府のやり方は将来にも大きな禍根を残す重大な過ちであるということを強く申し上げ、質問に入りたいと思います。
 それでは、質問いたします。
 民法は、私法の一般法と言われ、私たちの市民生活の最も基本的なルールであります。この民法が一八九六年、明治二十九年に制定されてから百二十年が経過し、今回初めて債権法が大改正されることになりました。
 まず、全体的な点から質問したいと思います。本法律案の提出理由の、制定以来約百二十年間の社会経済の変化への対応についてお伺いをいたします。
 本法律案の提出理由として、制定以来約百二十年間の社会経済の変化への対応と国民一般に分かりやすいものとするということが挙げられています。制定以来約百二十年間の社会経済の変化への対応ということですが、この百二十年は到底一言では言い表せないような大きな社会経済の変化がありました。今回初めて債権法が大改正されるわけですが、制定から百二十年経過して初めて社会経済の変化への対応の必要性が生じたということでしょうか。金田大臣にお伺いをいたします。
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員の御質問にお答えいたします。
 社会経済の変化へのこれまでの対応はどういうものであったかという問いかけがあろうと思います。
 したがいまして、まずは、民法制定以来、様々な社会経済の変化が生じているわけでありますけれども、民法は条文自体がシンプルに書かれておりまして、その規定内容の抽象度が高いということから、社会経済情勢の変化に対しては、その改正をしなくても、条文の解釈によりまして一定程度対応することが可能であったものと考えられます。また、一定の分野における社会経済情勢の変化に対しましては、民法の特則を定めた法律を個別に制定すること等で対応してきたという面もあろうかと思います。
 他方で、民法の債権関係の規定は取引社会を支える最も基本的な法的なインフラでありますことから、その規定内容の見直しは取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがあると。そのために、民法の見直し作業は、法律の専門家でない国民各層からも広く意見を聴取をしながら慎重に進められる必要があるといった、個別に特則を制定することと比べてその改正に伴う社会的なコストというものが極めて大きいものと考えられてきたのだと考えております。そのため、民法の債権関係の規定につきましては、本格的な改正に着手されないまま現在に至ったものと考えられます。
 今回、ではなぜ改正する必要性があったかということになろうかと思いますが、もっとも、特に消滅時効期間や法定利率制度の見直し、あるいは定型約款に関する基本的な規律の創設といったことは、まさに民法において行うことが必要とされるものでありまして、民法自体を見直さざるを得ない状況に直面していたものと認識をいたしております。
 このような観点から、今般、民法制定以来初めて債権関係の規定の全般的な見直しを行うことといたしまして、法制審議会における慎重な審議を経た上で、約百二十年ぶりとなる民法の大幅な改正案を提出するに至ったものであります。
○糸数慶子君 変化への対応の必要が生じたことですが、これは今回初めてではないわけですが、最初に大改正が必要だった社会経済の変化が生じたのはいつ頃だったでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 民法の規定は国民生活の様々な場面に適用されます一般ルールでありますために、その全般的な見直しが必要とされるほどの社会経済の変化が生じたと、こういう判断をすることには著しい困難を伴うものと考えております。
 このため、これまでは、先ほども出ましたように、社会経済情勢の変化に対して民法自体の改正をするのではなく、個別の条文の解釈や民法の特則を定めた法律を個別に制定していくと、こういった手法によりまして対応してきたという面がございます。
 これに対しまして、今般の状況でございますが、消滅時効期間や法定利率制度の見直し、あるいは定型約款に関する基本的な規律の創設など、民法の規定の改正を要するような個別の項目について、これはいつの時点ということではなく、言わばその変化が徐々に積み重なりまして改正に向けた機運を醸成されてきたことなどから、初めて民法の債権関係の規定を全般的に見直すべき社会経済の変化が生じたと判断に至ったものでございます。
○糸数慶子君 社会経済の変化としては、取引の高度化、高齢化、情報化社会の進展等が挙げられていますが、民法を改正して対応すべき約百二十年間の社会経済の変化について、主な立法事実を具体的に挙げてください。
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の改正におきましては、社会経済の変化に対応するための改正事項が少なくないわけですが、ここで言う社会経済の変化といたしましては、具体的には、取引量の劇的な増大、取引の内容の複雑化、高度化、情報伝達の手段の飛躍的な発展などのほか、超低金利状態の長期継続なども挙げることができようかと思われます。これらが言わば立法事実の概要でございます。
 主な立法事実の具体例ということになりますと、例えば、先ほど申しました取引量の増大や取引内容の複雑化、高度化というものが約款を利用しました取引の言わば劇的な増大を招いておりますことから、改正法案においては、このような事態に対応するため、定型約款に関する基本的な規律を創設することとしております。
 また、先ほど申し上げました昨今の超低金利の情勢、この下では法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いておりまして当事者間の公平を害する結果となっていることから、法定利率の見直しを行う必要があると考えられたわけでございます。
 改正法案におきましては、これらの問題に対応するために所要の改正を行うこととしております。
○糸数慶子君 債権法は法制審議会の答申に従って改正案が提出されましたが、債権法よりも前に法制審議会の答申が出て、いまだに改正案が出ていない家族法についてお伺いをいたします。
 約百二十年間の社会経済の変化については、家族の在り方についても同様のことが言えると思います。百二十年前に明治民法ができるまでは、婚姻後の妻の氏は所生、いわゆる実家の氏を名のるとされたので、戸籍上も夫婦別姓でありました。明治民法ができて、婚姻は配偶者の一方が実家を出て婚家に入り、婚家の氏を名のることになり、夫婦同姓となりました。
 戦後、民法の親族、相続編は大幅に改正されましたが、新憲法の理念に反する家制度廃止に重点が置かれ、大改正作業に十分な時間がなかったことから、夫婦の氏などの規定については、衆議院司法委員会で、本法は可及的速やかに将来において更に改正する必要があると附帯決議が付されました。夫婦別姓を認めるかどうかの議論はこの民法改正直後から行われており、様々な経緯を経て一九九六年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度導入を答申しました。残念ながらいまだに実現しておりません。
 家族についても約百二十年間の変化は明らかだと思いますが、法務省にお伺いをいたします。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘がありましたとおり、法制審議会民法部会身分法小委員会では、平成三年一月、民法の婚姻に関する規定の見直しに着手いたしまして、法制審議会は平成八年二月に選択的夫婦別氏制度を導入することなどを内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申いたしました。
 法務省は、この法制審議会の答申を重く受け止めまして、平成八年及び平成二十二年、法案の提出に向け、この答申を踏まえた改正法案を準備いたしましたが、各方面から法制審議会の答申に疑問を呈する意見を含め様々な意見が出されましたことから、国民の意識に配慮しつつ更に慎重な検討を行う必要があると考えて、法案の国会への提出を見送っているものでございます。
 選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族の在り方に深く関わる事柄でありまして、国民の大方の理解を得て行うべきものと考えておりますが、平成二十四年の世論調査の結果を見ましても、国民の意見が大きく分かれている状況にございます。
 今後も引き続き国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における議論の動向を注視しながら慎重に対応を検討してまいりたいと考えております。
○糸数慶子君 重く受け止めたというふうにおっしゃいましたけれども、ただいまの答弁の中で、その世論の動向を見てということですが、もっと主体的に国会の中で議論をしていくべきだというふうに思います。この問題についてはまた改めてお伺いをしたいと思います。
 次に、債権法の中の、世界の中の債権法についてお伺いをいたします。
 私法の一般法である債権法の改正を検討するに当たり、世界の中の日本という観点が重要だと思います。我が国の民法は制定当時から、世界初の民法典といわれるナポレオン法典を持つフランスやドイツから大きな影響を受けてきました。世界の債権法に関する現状について御説明をお願いいたします。
○政府参考人(小川秀樹君) 諸外国におきましても、二十一世紀に入りましてから、民法のうち特に契約に関するルールの全般的な改正作業が行われつつあるものと承知しております。
 御指摘のありましたドイツ、フランスの状況でございますが、その状況をごく簡単に御紹介いたしますと、例えばドイツでは、二〇〇二年に、民法のうち債務法と呼ばれます、これは債権法に相当する部分をドイツでは債務法というふうに称しますが、債務法と呼ばれる分野について全般的な改正が行われております。また、フランスでは、二〇一六年に契約に関するルールについて全般的な改正が行われたところでございます。
○糸数慶子君 我が国では、制定後百二十年経過して初めて債権法が大改正されることになりました。フランス、ドイツでは、どれくらいの頻度で改正されたのでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) まずフランスから申し上げたいと思います。フランス民法は、御指摘ありましたように、一八〇四年に制定されたものでございますが、契約に関するルールの全般的な改正は、先ほど申し上げました二〇一六年の改正まで行われていなかったものと承知しております。
 次に、ドイツでございますが、ドイツ民法は一九〇〇年に制定されたものでございますが、契約に関するルールの全般的な改正は、これも二〇〇二年の改正まで行われていなかったものと承知しております。
○糸数慶子君 今回の改正に当たっては、フランス、ドイツ等、この外国の民法を参考にされたのでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) まず、改正法案は民法制定以来の社会経済の変化への対応を図ることを改正の主な目的の一つとしておりまして、この観点からは、今日、国際的な取引が著しく増大していることなどを踏まえ、契約に関する我が国の法制が国際的にも調和の取れたものとなることが望ましいと考えられるわけでございます。
 しかし、国際的な調和を重視する余り国内における取引実務と合わない法制に改めることは適切でないと考えられます。そこで、今回の改正では、我が国の民法の規定を外国の法律や条約の内容などに合わせる、そういったこと自体を改正の目的としているわけではございません。
 もっとも、我が国の民法は、その制定過程やその後の解釈の進展において、先ほど来お話がありますフランス法やドイツ法などの影響を受けておりますため、改正に当たりましては、これらの母法国の法制度等を参照することが有益であります上、一般的にも、新たな法制度を検討するに当たって諸外国の法制度などを比較参照することは、これは当然に必要な作業であると考えられます。
 また、民法のうち債権関係の規定は、国内取引、国際取引を問わず広く適用され得る基本的なルールを定めるものであるため、それが国際的な視点から理解し難いものになっていないかといった点には留意する必要があると考えられます。
 以上のことから、改正法案の立案に当たりましては、外国法制などに合わせることは改正の目的としないといったことを、これは前提とした上で、諸外国における法制度や議論の状況を十分に参照しながら、例えばフランスやドイツといった国になりますが、我が国の取引実務の実情に適した制度の在り方について議論が進められたところでございます。
○糸数慶子君 本法律案の提出理由の、国民一般に分かりやすいものとするということについてお伺いをいたします。
 国民一般に分かりやすいものとするという観点からの改正には、意思能力、将来債権の譲渡、賃貸借終了時のルールなどがあると答弁されていますが、それ以外の具体例について御説明ください。
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 民法を国民一般に分かりやすいものとする観点からの改正項目、これは従来から、御指摘ありましたように、意思能力と将来債権の譲渡と賃貸借の終了時の敷金返還ですとか原状回復に関する基本的な規律を例としてよく申し上げておりますが、これらの明文化のほかにも多数ございます。
 本日取り上げますのは、例えば契約自由の原則の明文化、それから、もうこれは学説などで一致して認めております債務引受けに関する規律を明文化したもの、さらに、契約上の地位の移転ということも、これも学説、判例などでも認められるわけですが、こういったことに関する規律の明文化などを挙げることができようかと思われます。
○糸数慶子君 では、次に本法律案の提出の経緯についてお伺いをいたします。
 まず、法制審議会の民法部会が二〇一一年四月十二日に決定した中間的な論点整理において五百以上あった項目が、二〇一五年二月十日に決定した要綱案では約二百になったということですが、法制審議会における議論の過程及び項目数が半数以下に減少した理由についてお伺いをいたします。
○政府参考人(小川秀樹君) まず、部会での審議の経過について申し上げたいと思います。
 法制審議会の民法(債権関係)部会における審議の初期の段階では、改正検討項目の性急な絞り込みをせずに、まずは見直しの必要性が指摘されていた項目を幅広く拾い上げる作業方針が取られておりましたため、中間的な論点整理の段階では改正項目は約五百項目と多数に上っておりました。その後、関係団体の代表などの委員が参画する部会がございますので、この部会における議論の場で改正の要否などについて精力的な審議を行いますとともに、パブリックコメントの手続を二度にわたって行いまして、関係諸団体へのヒアリングも実施してまいりました。
 部会におきましては、このように審議が重ねられました上で、理論的な観点と実務的な観点の双方から項目の絞り込みや内容面についての検討が進められました結果、最終的には改正項目は約二百項目となりまして、中間的な論点整理の段階から見ますと半数程度に減少することとなったものでございます。
○糸数慶子君 この議論の過程で改正の対象から外れた項目のうちで、主なものを挙げていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会におけます審議の過程で改正項目に挙げられながら、改正法案、最終的な改正法案では改正の対象外となりました項目は幾つかございますが、主な項目として挙げますと、例えば一つ、暴利行為に関する規定を設けること、それから保証人の責任の制限に関する規定を設けることなどが挙げられようかと思われます。
○糸数慶子君 この改正対象から外れた暴利行為についてお伺いをいたします。
 改正の対象から外れた項目の一つとして先ほど暴利行為というのを挙げていらっしゃいますが、暴利行為とは具体的にどういうものでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 暴利行為とは、一般的には、他人の窮迫、無経験などに乗じて著しく過当な利益を得ることを目的とするような行為をいうなどと理解されておりまして、このような行為は公序良俗に反するものとして現行法第九十条、民法九十条により無効であると判断した古い判例がございます。
○糸数慶子君 それでは、暴利行為が改正の対象から外れたのはなぜでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申し上げました意味での暴利行為ですが、これが公序良俗違反として民法第九十条により無効であるという結論を導きますことは民法九十条の文言それ自体からは必ずしも容易ではありませんため、法制審議会においては、予測可能性を確保するために、先ほど申し上げました判例を参考にしまして暴利行為を無効とする明文の規定を設けることが検討されました。しかし、何をもって暴利行為というかを抽象的な要件で規定いたしますと取引への萎縮効果が生ずるとして、経済団体を中心に明文の規定を設けることに反対する意見がございました。
 また、近時の下級審裁判例では暴利行為として無効となる範囲が広がりつつあるとの見方もありましたが、無効とされるべき暴利行為の内容が確立しているとは言い難い現状において、このような近時の裁判例をも踏まえてその要件を適切に設定することは困難であり、必ずしも予測可能性を確保するという目的を達することはできない上、現時点で一定の要件を設定することでかえって将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられたところでございます。
 そこで、改正法案におきましては、法制審議会におけるこういった議論の状況を踏まえまして、暴利行為に関する規定を設けることとはせず、引き続き、個別の事案に応じました現行法の民法第九十条の解釈に委ねることとしたものでございます。
○糸数慶子君 これは、今後も立法化に向けた検討を続ける予定はあるのでしょうか。私は、暴利行為は民法に規定を設けるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の民法改正法案は、社会経済の変化に対応することを目的の一つとしておりまして、今後も民法を社会経済の変化に対応させていくことは重要であると認識しております。他方で、民法の債権関係の規定は取引社会を支えます最も基本的な法的インフラでありますことから、その規定内容を変更することに伴う社会的なコストにも留意が必要でございます。
 そこで、法務省といたしましては、社会経済の変化への対応の必要性と改正に要する社会的なコストを勘案しつつ、改正法案の施行後の状況を注視した上で、更なる民法改正の必要性について検討すべきものと認識しております。
 なお、暴利行為の明文化につきましては、先ほど申し上げましたとおり、暴利行為という法理自体を否定的に評価する立場だけでなく、肯定的に暴利行為を評価する立場からも、あるべき要件を具体的に設定することの困難さという点が指摘されていると言えます。
 したがいまして、暴利行為に関する明文の規定を設けるには、少なくとも、具体的な事案を前提とした最高裁判例や下級審の裁判例が蓄積し、これについての学説上の議論が積み重ねられて、暴利行為についての適切な要件設定の議論が可能となることが必要であるというふうに考えられるところでございます。
○糸数慶子君 それでは、改正対象とならなかった消費者についてお伺いをしたいと思います。
 この暴利行為のほか、改正対象とならなかった項目として消費者に関する規定があります。二〇一一年四月に決定された中間的な論点整理においては、民法に消費者に関する規定を設けることの是非を検討すべきであるとされました。また、二〇一三年二月に決定された中間試案において、信義則等の適用によって、消費者と事業者との間で締結される契約のほか、情報の質及び量並びに交渉力の格差がある当事者間で締結される契約に関して、その格差を考慮すべきであるとの項目がありました。
 諸外国においても、ドイツにおいては、二〇〇〇年の民法改正によって民法に消費者概念が導入され、消費者に関する規律が民法典に置かれることになりました。また、スイス、イタリア、オランダなどでは、そもそも民法と商法の区別がなく、同一の法典に規定が置かれているとのことであります。
 民法は私法の一般法であるため、全ての人に区別なく適用されるルールのみを規定すべきであるとの考えもあると思いますが、民法制定以来百二十年間の社会経済の変化の一つとして、市民社会の構成員の多様化も挙げられるのではないでしょうか。現代社会において消費者は現実に存在しており、消費者と事業者の間には情報の質及び量並びに交渉力の格差があります。これらに着目し、消費者の利益擁護を図ることを目的とする消費者契約法という法律ありますが、私法の一般法である民法に消費者概念を明記するべきだと考えます。
 なぜ消費者概念の導入が改正の対象から外れたのでしょうか。また、今後、消費者概念を民法に導入することを検討する予定があるのかについてもお伺いをいたします。
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会におきましては、市民社会の構成員が多様化し、構成員の間には経験、知識などにおいて格差が生じていることなどから、消費者の概念を民法に取り入れるかどうか、取り入れる場合にこれらの概念をどのように定義するか、取り入れる場合にどのような規定を民法に設け、どのような規定を特別法に委ねるのかなどについて議論がされました。
 しかし、民法は私法の一般法であり、そのことを踏まえますと、取引当事者の情報や交渉力の格差の是正を図るなど、消費者の保護、それ自体を目的とする規定を設けるのであれば、特別法である消費者契約法などによることが基本になるものと考えられます。そこで、改正法案におきましては、消費者の概念を民法に取り入れるなどの改正は行わないこととしたものでございます。
 今後の検討についてですが、このように、御指摘の問題は民法と特別法との間の役割分担に関わる問題でありまして、現時点では更なる改正を想定しておりませんが、いずれにいたしましても、法務省としては、改正法案の施行後の状況を注視した上で、更なる民法改正の必要性について検討してまいりたいと考えております。
○糸数慶子君 まだ通告した部分もございますけれども、時間が参りましたので、次回に回したいと思います。
 ありがとうございました。
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。
 いつもなるべく質問がかぶらないように努力してきているんですけれども、ちょっと前の東委員のところまでいい感じだったんですが、少しかぶったところを御了承願いたいと思います。
 まずは保証について伺いたいと思います。
 本法案では、保証人の保護を図るため、保証債務に関する規定の整備が行われています。特に重要なのは事業用の貸金債務の保証についてのルールであると思います。背景には個人保証偏重の慣行を断ち切るとの成長戦略もあるとも思われますが、日本の個人保証の現状について金田大臣はどのように捉えているのか、伺いたいと思います。
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員の御指摘にお答えします。
 個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立の必要性ということについて申し上げますと、特に事業性の融資につきましては、経営者その他の個人が保証人となったためにその生活が破綻する例も少なくないと言われております。このような現状に鑑みれば、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は我が国社会において極めて重要なものであると認識をしている次第であります。
 そして、一方で、個人保証を全面的に禁止した場合には、特に信用力に乏しい中小企業の資金調達に支障を生じさせるおそれがあるとの指摘が中小企業団体を始めとする関係団体等から強く寄せられており、この指摘も重く受け止める必要があるものと考えております。
 したがって、両者の調和ということになるんですが、個人保証の問題に関しましては、これまでも個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けた取組が行政的な枠組みを中心に進められてきているわけでありまして、その中でも、これらの相反する要請をどのようにバランスの取れたものとしていくかが重要であったものと認識をいたしております。
 そういう中で、今回の改正法案に当たりましては、改正法案の立案に当たってもこれらの要請をどのように調和の取れたものにするかについて配意をしつつ検討が行われたわけでありますが、事業性の融資に関しては公証人による意思確認手続を経ない場合には保証契約を無効にするという強力なルールを設けることを前提に、このルールの適用対象は弊害が顕著である第三者が保証するケースに限定することとしたものであります。
 なお、今般の改正におきましては、債権譲渡についての譲渡制限特約の効力の見直しなども行うことといたしておりますので、個人保証に依存し過ぎない融資慣行を確立するための環境整備にも取り組んでいるわけであります。
 このように、個人保証を一律に禁止することは相当ではないと考えておるわけでありますが、法務省といたしましては、引き続き、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて、関係省庁と連携をしながら、改正法案の施行後の状況を注視してまいりたいと、このように考えておる次第であります。
○山口和之君 是非お願いしたいと思います。
 平成二十五年の五月十七日、安倍総理の成長戦略第二弾スピーチが、ベンチャー起業のところですけれども、抜粋させていただくと、ベンチャーがどんどん生まれ、投資であふれるような日本をつくるためには、個人保証偏重の慣行から脱却しなければなりません、モラルハザードは防止しなければなりませんが、個人の資産と会社の資産を区分してしっかり管理しているような真面目な経営者であれば、個人保証がなくとも融資が受けられるような、中小企業・小規模事業者向けの金融の新たな枠組みをつくりたいと考えています、一度や二度の失敗にへこたれることなく、むしろその経験を生かして積極的に起業をしていただき、新たな分野を切り開いてもらいたいと考えておりますというふうに述べていらっしゃいます。
 そして、参議院の、二十七年の八月、経済産業委員会の中で、これはある議員さんが述べているんですが、経営者保証、廃止どころか、公正証書さえあれば第三者の保証も可能である、個人保証は本当にこれは銀行を甘やかしているだけの話、銀行は審査能力も付かず、ベンチャー立国を目指すのであればしっかりとした規制を作っていくべきだと、これは元銀行員の、そしてベンチャー経営者である元参議院の松田公太さんが過去に述べられております。
 そういった方向から、是非金田大臣には、今後こういった国をつくっていくように努力していただきたいと思います。
 次に、保証人の中には、主たる債務者との情義的関係から本意ではなく保証契約を締結してしまう者が少なくないと、こういったことをなくすために個人保証を原則禁止にすることが効果的であり、債権法改正の中間試案ではそのような方針だったと聞いていますが、今回改正案ではそこまで踏み込めなかった、どうしてそこまで踏み込めなかったのか、もう一度伺いたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) まず、中間試案での記述から御説明いたしたいと思いますが、中間試案におきましては、貸金等債務が含まれる根保証契約であって保証人が個人であるものや、債務者が事業者である貸金等債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が個人であるものについて、保証人が主たる債務者のいわゆる経営者であるものを除き、無効とするかどうかについて引き続き検討することとされていたものと承知しております。
 ここで問題とされております事業性の融資といいますのは、経営者その他の個人が保証人となったために、その生活が破綻する例も少なくないと言われるものでございます。このような現状に鑑みますと、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は我が国社会において極めて重要なものであると認識しております。
 他方で、個人保証を利用することを全面的に禁止した場合には、特に信用力に乏しい中小企業の資金調達に支障を生じさせるおそれがあるとの指摘が中小企業団体を始めとする関係団体などから強く寄せられておりまして、この指摘も重く受け止める必要があると考えております。
 個人保証の問題に関しましては、これまでも個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けた取組が行政的な枠組みを中心に進められてきておりますが、その中でも、これらの相反する要請をどのようにバランスの取れたものとしていくかが重要であったものと認識しております。
 改正法案の立案に当たりましても、これらの要請をどのように調和の取れたものにするかに配意しつつ検討が行われましたが、事業性の融資に関して公証人による意思確認手続を経ない場合には保証契約を無効にするという強力なルールを設けることを前提にいたしまして、このルールの適用対象は弊害が顕著である第三者が保証するケースに限定することとしたものでございます。
 このように、個人保証を一律に禁止することは相当ではないと考えておりますが、法務省としては、引き続き、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けまして、関係省庁と連携しつつ、改正法案の施行後の状況を注視してまいりたいと考えております。
○山口和之君 いろいろ説明いただきましたが、第三者保証は広くやっぱり制限されるべきだというふうに思います。第三者保証に頼らず済む社会をつくっていただきたいと思います。
 次に、事業用の貸金債務の保証契約は原則として公正証書の作成がなければ無効であるということですが、しかし、主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者については、公正証書の作成がなくとも有効とされております。情義的関係から不本意な保証契約を締結するリスクが一番高い配偶者について、それを例外とした趣旨は何なんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 保証意思宣明公正証書の作成を義務付けます趣旨は、個人的情義などから保証のリスクを十分に自覚せず安易に保証契約を締結することを防止することにございます。そのため、改正法案の立案の過程におきましても、個人的情義などから保証人となることが多い主債務者の配偶者を例外とするのは相当ではないという指摘もございました。
 しかし、個人が事業を営んでいる場合には、その個人の財産がその事業に供され、かつ、その利益は個人に帰属することとなりますが、その個人事業主が婚姻しているときには、事業に供した個人の財産及び個人が得た利益は、その配偶者とともに形成した夫婦の共同財産であると評価され得るものでございます。そして、夫婦の共同財産が事業に供されるだけでなく、その配偶者がその事業に現に従事しているのであれば、事業を共同で行う契約などが夫婦間に存在せず、共同事業者の関係にあるとまでは言い難い事例でありましても、財産や労務を事業に投下し、他方で利益の分配を受けているという点で、実質的には個人事業主と共同して事業を行っているのと類似する状態にあると評価することができます。
 そういたしますと、個人事業主の事業に現に従事している配偶者は、その個人事業主の事業の成否に強い利害関係を有し、その状況を把握することができる立場にあると言えるわけでございます。また、現に、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も少なくないのが実情であります。したがいまして、このような融資の実情を考慮いたしますと、配偶者についてはこれを保証人とする客観的な必要性も高いものと考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者につきましては、主債務者の事業に現に従事していることを要件とし、これにより事業内容を把握することができる地位にあることを確保した上で、保証意思宣明公正証書による保証意思の確認がされなくとも保証契約を有効に締結することができることとしたものでございます。
○山口和之君 配偶者全員がそういうふうに、そういう立場なのかどうかということはどうも思えないところがありまして、配偶者を保証人にするということは、ある意味何か人質を取っているような感じもしないでもないです。主たる債務者と共同して事業を行う者とだけ規定した方がよかったのではないかというふうに疑問は残ります。
 次に、保証契約自体を公正証書によって締結した場合に、公正証書の作成があったことになるのかを伺いたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 保証意思宣明公正証書は、これは保証契約の締結に先立って作成されていなければなりませんので、保証契約について公正証書を作成していたとしても、保証意思宣明公正証書の作成があったということにはなりません。
○山口和之君 フランスの民法では、保証人となった後、離婚した配偶者を保護するための規定があるとのことですが、改正法では離婚後の配偶者は保護されないのかを伺いたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 保証契約の締結後に保証人が主債務者の配偶者でなくなった場合につきましては、二つに分けて場合を考える必要があろうかと思います。一つは、離婚するまでに既に発生していた主債務について、離婚したことを理由にその責任を免れることができるのかという問題と、もう一つは、特に根保証において生ずる問題でありますが、離婚した後に発生した主債務についてまで保証債務を負うことになるのかという問題がありまして、両者の区別が必要であると考えられます。
 まず、離婚前に負うこととなった保証債務についてですが、まず、離婚するまでに生じていた主債務については、元の配偶者は保証債務を具体的に負っていることとなりまして、保証契約は離婚によっては当然に効力を失わないので、債権者の同意なくこの債務を免れることは基本的に困難というほかはないものと考えられます。
 このようなケースにおいて配偶者が保証債務を免れることを認めるためには、例えば、あらかじめ保証契約において配偶者であることが保証債務を履行する条件であることを債権者との間で合意しておく必要があろうかと考えられます。
 次に、離婚後に発生した債務についてですが、根保証していた配偶者は離婚後に発生した債務についても責任を負うかという問題についても、根保証契約それ自体は離婚によっては当然に効力を失いませんので、原則として保証人である元の配偶者は離婚後に生じた主債務の債務についても保証債務を負うことになるものと考えられます。
 もっとも、判例上、根保証契約の締結後に著しい事情の変化があるときには、保証人は根保証契約を解約し、その解約後に生じた主債務の債務については保証債務を負わないとする余地があるとされております。特別解約権と言われるものでございます。そのため、保証人は配偶者であることを前提として保証をしたが、その後に離婚したという事案におきましては、そのような事情を著しい事情の変化に当たるといたしまして、根保証契約を解約し、その解約後に生じた主債務の債務については保証債務を負わないと主張する余地はあるものと考えております。
○山口和之君 離婚した際に事業用財産の全てを主債務者が保持し続けるような場合には、配偶者として保証人となった者を救済する必要は極めてあると思いますので、しっかりお願いしたいと思います。
 次に、民法は婚姻の無効と婚姻の取消しを予定しています。婚姻の無効が判明した場合、公正証書を作成せずになされた業務用の貸金債務の配偶者保証の効力はどうなるのか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 事業のために負担いたしました貸金等債務を主債務とする保証契約は、これは四百六十五条の九に定められました例外要件に該当しない限り、事前に保証意思宣明公正証書が作成されていなければその効力は生じません。そして、人違いその他の事由によりまして当事者間に婚姻をする意思がないといった事情に基づいて婚姻が無効である場合には、保証契約を締結した者は初めから配偶者でなかったものとされますので、そもそも例外要件に該当しなかったこととなりまして、保証契約はその効力を生じないことになるものと考えられます。
○山口和之君 婚姻が取り消された場合、公正証書を作成せずになされた事業用の貸金債務の配偶者保証の効力はどうなるのかということも伺いたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約は、第四百六十五条の九に定められました例外要件に該当する場合には、事前に保証意思宣明公正証書が作成されていなくてもその効力は否定されないということになるわけですが、その要件に該当するかどうかという点は、保証契約の時点を基準として判断されるものでございます。
 そして、御指摘がありました婚姻の取消しですが、婚姻の取消しは、民法七百四十八条第一項によりますと、将来に向かってのみその効力を生ずることとされておりますため、保証契約の締結後に婚姻の取消しがされたといたしましても、その効力が遡及することはなく、保証契約は効力を失わないものと考えられます。
○山口和之君 ずっと話していましたけれども、配偶者ということを要件にしてしまうと、配偶者という身分がなくなった場合、若しくは元からなかった場合などに複雑な問題が生じることになるおそれがあるように思います。やはり配偶者であっても、主たる債務者と共同して事業を行う者に当たる場合でなければ例外は認めないといった慎重な運用の方が望ましいのではないかと思います。
 次に、中小企業・小規模事業者の借入れでは、およそ九割に個人保証が付いており、そのうち七割以上では保証債務の額が個人資産以上であるとのことであります。そもそも履行可能性が乏しく、破産を余儀なくさせるような額について保証債務を求めることは、公序良俗の観点から問題ではないのかと。
○政府参考人(小川秀樹君) 一般論といたしまして、債権者としての権利行使が信義則などの一般条項に違反することはあり得るところでありまして、保証の分野においても、例えば平成十六年に民法改正が行われましたが、この民法改正によりまして包括根保証が禁止される前は、判例において、信義則や権利濫用といった一般条項を用いまして保証人の負うべき責任を制限した事案があったものと承知しております。
 もっとも、このような一般条項に違反するかどうかは、保証債務の金額や履行可能性のみならず、保証契約の締結の経緯ですとか保証人と主債務者の関係など様々な事情を考慮した上で、これは個別具体的に判断されるべきものであるというふうに認識しているところでございます。
○山口和之君 個人保証は、経済的破綻の原因となっているだけではなくて、自殺の原因や再チャレンジの阻害要因にもなっております。そういう事情を踏まえれば、第三者保証はもちろん、経営者保証についても制限していくことが望ましいと思います。また、裁判所による保証債務の減免や過大な保証債務履行請求の制限といった保証債務履行時点の規制についても検討を進める必要があると思います。今後に期待したいと思います。
 続きまして、根保証について質問したいと思います。
 今回の改正で、個人根保証契約は、極度額を定めなければ一律に無効となるとの規定が置かれております。しかし、債権者が優位な立場を利用して極度額を不当に高額に定めれば、この規定による保証人保護は骨抜きとなる可能性があります。
 極度額の定め方については制限はないのか、ないとすればなぜかということを伺いたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案では、極度額の定めについて、書面又は電磁的記録によることが必要であるとしておりまして、極度額は書面の記載又は電磁的記録の記録上でその額を確定することができるという必要がございます。これは、保証人にとりまして、自己の負担する責任の上限を予測可能なものとするため、個人根保証契約の締結の時点で確定的な金額を書面又は電磁的記録で定めておくことを要求したものでございます。
 他方で、極度額としての具体的な額の定め方については、これは当事者の合意に委ねておりまして、その上限を設けること等はしておりません。これは、保証契約が付される取引にも様々なものがあり、また保証人の資力や保証人と主債務者との関係にも様々なものがあることから、法律で適切な上限額を設定することは困難である上、仮に一定の金額を上限額として法定する場合には円滑な金融を阻害するおそれもあることによるものでございます。もっとも、極度額を定めた法律の趣旨に照らしますと、主たる債務者の資金需要や保証人の資力などを勘案しないで著しく高額な極度額が定められたというケースについては、これは保証契約が無効とされる可能性もあるものと認識しております。
 法務省といたしましては、当事者が合理的な極度額を定めるよう、極度額に関する規制を設けた趣旨を十分に周知してまいりたいと考えております。
○山口和之君 個人根保証との関係では、いわゆる身元保証が問題となると。そもそも身元保証とはどのようなものなのか、またそれを規律する身元保証ニ関スル法律とはどのような法律なのか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありました身元保証ニ関スル法律における身元保証契約とは、これは同法一条に定義がございますが、その名称のいかんにかかわらず、期間を定めずに労働者などの被用者の行為により使用者が受けた損害を賠償することを約束する契約をいうと定義されております。
 この身元保証契約の中には二つの類型があると解されておりまして、一つは、被用者が使用者に対して負う損害賠償債務を、これを保証する保証契約の性質を有するもの、それからもう一つは、被用者が使用者に対して損害賠償債務を負うかどうかにかかわらず、被用者が使用者に対して負わせた損害、これを填補する損害担保契約の性質を有するもの、この二つのものがあると解されております。そして、そのいずれの性質を有する身元保証契約を締結するかは当事者双方において決めることができるとされております。
 身元保証契約の内容は、一般に保証する責任の範囲が極めて広く、存続期間の定めもございません。他方で、身元保証契約は個人的情義などに基づいて行われることが多いことや、身元保証契約の締結の際には身元保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることもあって、身元保証人の中には、そのリスクを十分に自覚せず、安易に身元保証契約を締結してしまう者も少なくないと指摘されております。
 そこで、御指摘ありました身元保証ニ関スル法律は、存続期間を定めない身元保証契約は成立の日より三年間効力を有することとするなどの規定を置くことによりまして、身元保証人の責任の範囲を合理的なものとしております。
○山口和之君 身元保証は、雇用契約の締結時、老人ホームや障害者施設への入所時、病院への入院時等に広く使われております。それらは個人根保証契約に該当する場合が多いと考えられるが、性質上、極度額を定めるのは困難であると思われます。
 改正法施行後、極度額を定めずに個人根保証契約として身元保証がなされた場合、保証人は義務を負わず支払ってしまった場合も不当利得返還請求ができるということになるのでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 身元保証ニ関スル法律の想定する身元保証契約を含めまして、いわゆる身元保証と呼ばれている契約一般のうちで、これ先ほど類型があるというふうに申し上げましたが、保証契約の性質を有するものについては、身元保証人が個人であるときはその身元保証契約は個人根保証契約の性質を有し、改正法案に新設された個人根保証契約に関する各規定が適用されます。
 したがいまして、このような身元保証契約については極度額の定めがなければ効力を生じないということになりますので、仮に使用者に金銭を支払ったとしても、無効な契約に基づいて支払ったものとして不当利得返還請求が可能であると解されるところでございます。
○山口和之君 企業側が労働者を雇用する際によく使われる身元保証は極度額の定めが難しく、今回の改正で利用しにくくなると思われますが、債権者保護の観点から身元保証に関わる制度のニーズが高くなると考えられますが、改正案の作成過程でそういった議論は行われなかったんでしょうか。
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会におきましては、身元保証ニ関スル法律についても見直しの対象とする必要があるか否かなどに関しまして検討が行われました。もっとも、身元保証に代わる新たな制度を検討する必要を指摘する意見は、これはなかったものというふうに承知しております。
○山口和之君 日本では、福祉施設や病院の九割以上が入所、入院時に身元保証人を求めていることです。そのため、身近に頼れる人がいない場合には、必要な介護サービスや医療を受けられなくなるおそれもあります。設定が容易であり、他の債権者と競合せずに債権を回収できるといった特性から、保証は非常に有効な担保権と言えます。しかし、現代社会では保証に頼り過ぎており、その弊害が出てきているとも思われます。
 契約弱者保護の観点から、公益性が高い場合や交渉力に格差がある場合に、一方が他方に保証人を強制することについては制限する方向で検討を進める必要があると考えますが、金田法務大臣の御見解をいただきたいと思います。
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの山口委員の御指摘にお答えします。
 私法の一般法としての民法におきましては、原則として、契約をするかどうかを自由に決定することができるとされております。これは近代私法の基本原則でもあります。他方、契約を締結させることに高い公益上の必要がある場合などに契約の締結を強制することも民法の原則の例外として個別の特別法において規定されることがあります。このように承知しております。
 保証人を用意しない限り契約を締結しないという取引の実態があるのかどうか、その場合にそれをどのように規制をすべきかという点につきましては、個々の取引類型の実情に応じて関係省庁とも連携をしながら対処していくことになろうかと思います。例えば、ただいまの病院、介護の話であれば、厚生労働省とも連携をしながら対処していくことになろうかと考えております。
○山口和之君 最後に、祖父の時代に保証人で我が家というかは財産全てを失って、父の時代で全てを犠牲にして何とか家族を養って、兄弟を養って、大変な思いをしていたというふうに聞いております。
 是非前向きに検討していただきたいと思います。
○委員長(秋野公造君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時一分散会