第196回国会 本会議 第6号
平成三十年三月九日(金曜日)
   午前十時二十六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第六号
    ─────────────
  平成三十年三月九日
   午前十時 本会議
    ─────────────
 第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
 日程第一 所得税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。財務大臣麻生太郎君。
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明させていただきます。
 本法律案は、働き方の多様化等への対応、デフレ脱却と経済再生の実現などの観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
 以下、その大要を申し上げさせていただきます。
 第一に、働き方の多様化等を踏まえ、給与所得控除及び公的年金等控除から基礎控除への振替並びに給与所得控除、公的年金控除及び基礎控除の適正化を行うことといたしております。
 第二に、デフレ脱却と経済再生に向け、所得拡大促進税制の改組、情報連携投資等の促進に係る税制の創設、事業承継税制の拡充等を行うことといたしております。
 このほか、外国法人等に係る恒久的施設の範囲の見直し、法人税の申告等の電子情報処理組織による申告義務の創設、たばこ税の税率引上げ等の見直し等を行うとともに、特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。
 以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明をさせていただいた次第であります。(拍手)
    ─────────────
○議長(伊達忠一君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。古川俊治君。
   〔古川俊治君登壇、拍手〕
○古川俊治君 自由民主党の古川俊治です。
 私は、自民・公明を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
 安倍総理は、財政健全化について、基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの黒字化を目指す目標を堅持すると重ねて発言しています。同時に、公的債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指すこととされています。
 この目標達成に向けて、これまでの取組を精査した上で、本年夏の骨太方針において、プライマリーバランスの黒字化の達成時期とその裏付けとなる具体的な計画が示されると伺っています。
 同時に、デフレからの脱却と経済再生を完遂させることが、これこそが国民が最も安倍内閣に期待していることだと思います。相当に工夫の要る経済運営が求められていると思いますが、財政健全化と経済の再生、デフレからの完全脱却という課題を解決するために、安倍総理は、今回の所得税法等の改正を踏まえ、どのような姿勢で取り組まれるおつもりでしょうか、お聞かせください。
 次に、基礎控除、給与所得控除の見直しについて伺います。
 昨今、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が増加しています。例えば、フリーランスの数は、民間調査では、平成二十八年で千六十四万人の対前年比増加となっています。在宅で仕事を請け負う子育て中の女性の方々、起業する方々などは働き方多様化の一例です。しかし、給与所得者には給与所得控除がある一方、フリーランスや起業、請負などでは実際に負担した必要経費という限定的な控除となっています。
 租税原則の基礎を成すものに、公平性の原則があります。この原則の中には、負担能力の大きい人により大きな負担をしてもらうという垂直的公平性と、等しい負担能力のある人には等しい負担を求めるという水平的公平性があります。
 この公平性の原則から見れば、給与所得者、フリーランスや起業、請負など、働き方や収入の稼得方法により控除が異なるということは、水平的公平性を損ねることになります。今回の所得税法改正では、誰もが受けられる基礎控除を一律増額するとともに、給与所得控除の一部を基礎控除に振り替えることとしています。自営業やフリーランスで働く方々など、様々な形で働く人々を広く支援することができる措置として評価できると考えています。
 一方、水平的公平性の観点からいえば、給与所得者と自営業者などとの所得捕捉率に格差があるものと指摘されています。そこで、今回の基礎控除の増額等の見直しは、働き方や収入の稼得方法の違いにより課税所得の捕捉率に差があることとどのような整合性を取ったのでしょうか。まず、その考え方を麻生財務大臣に伺います。
 続けて、もう一つの公平性、垂直的公平性の観点から伺います。
 前回の所得税改正では、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しの中で、納税者本人に所得制限として、給与収入の場合千百二十万円超の控除額を逓減、消失としました。そして、今回の所得税改正では、基礎控除の一律増額、基礎控除の増額分と給与所得控除の引下げ分の振替に加えて、八百五十万円を超える給与所得者においては給与所得の控除が頭打ちとなる一方、子育て世帯や介護世帯には負担額が増えないよう工夫されています。また、所得金額が二千四百万円超の給与所得者には基礎控除が逓減、消失される措置もとられています。
 これらの見直しは、一つ一つ根拠を持って決定されていることと思いますが、それぞれの見直しに関する所得額はばらばらで、垂直的公平性に関する政府の考え方が見えにくいことから、場当たり的に決定しているのではないかという疑問の声も一部にあります。
 そこで、これらの措置はどのような考え方に基づいて決められ、整合性が保たれているのでしょうか。この政府の考え方についても、財務大臣、お聞かせください。
 続いて、生産性革命について伺います。
 ロボットやIoT、人工知能といった生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーションは、これまでの世界の産業発展の様相を大きく変える力を有しています。我が国が厳しいグローバル競争の中で経済成長を続けていくためには、イノベーションの創造をリードし、あるいは確実に取り入れる生産性革命を実現しなければなりません。
 今回の税制改正では、平成三十年度から三年間を生産性革命集中投資期間として、時限措置で、IoT等の先端技術への投資に対して特別償却又は一定割合の税額控除を選択できるようにしたほか、企業が賃上げと国内設備投資を行う場合には、一定の要件で税額控除を可能としています。企業活動においてイノベーションを取り入れ、生産性を向上させる措置として期待しています。
 一方、生産性革命を成し遂げるには、イノベーションを生み出す力も必要です。例えば、革新的医薬品の研究開発でも、ゲノムに基づく創薬や再生医療技術による創薬、コンピューターシミュレーション創薬など、産業の未来を変える研究分野が数多くあります。アジア各国の研究力の向上もあって、科学研究の国際競争はますます熾烈となっており、世界の中に我が国が埋もれてしまうおそれがあります。
 そこで、生産性革命を推し進めるためには、企業へのイノベーションの導入促進はもちろん、イノベーションそのものを生み出す研究開発を後押しする税制を含む支援措置の強化が必要ではないかと考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
 さて、政府は、これまでも中小企業の経営力強化支援として様々な施策を発動させていますが、中小企業の皆様がその成立を待ち望んでいるものには、円滑な事業承継に対する税制改正です。現行では、雇用確保要件や実際に猶予される相続税額が全株式に対する税額の半分強にすぎないことから、利用している中小企業は対象の約一割にとどまっています。これでは、経営者の高齢化や後継者不足の深刻化により、事業の将来性があるのに廃業せざるを得ない事例が大量に発生する懸念があります。
 自民、公明共に党内でも大いに議論し、今回の税制改正には事業承継税制による相続税等の緩和が盛り込まれています。中小企業が日本のエンジンであり、日本経済や地方の活力を支える基盤であることを考えれば、円滑な事業承継税制は極めて大切な施策です。ただ、円滑な事業承継のためには、今回の税制改正も含めて、中小企業・小規模事業者の実態に即した施策を更に多面的に展開していく必要があると思いますが、総理はいかがお考えでしょうか、お考えをお聞かせください。
 先月二十五日に閉幕した平昌オリンピックは、日本人選手の大活躍で大きく盛り上がりました。本日からのパラリンピックでも日本選手の活躍が期待されます。これが終われば、次のオリンピック・パラリンピックはいよいよ東京です。
 オリンピック開催地では、受動喫煙を防止するための法規制を行うことが国際標準となっています。自民党内でも、受動喫煙防止のための議論について一定の結論を得ました。医師としてはいまだ不十分と言わざるを得ない内容ですが、一歩前に進んだものと理解しております。
 今回の税制改正でもたばこ税率の引上げが盛り込まれており、受動喫煙防止対策という面からも評価できます。また、加熱式たばこも喫煙者に有害なことは明らかですが、この加熱式たばこについても、課税方式を見直され、紙巻きたばこの約七割から九割程度にまで税負担が増加されることで格差も小さくなります。さらに、この税源が受動喫煙対策の充実に振り向けられることも期待しています。
 そこで、麻生財務大臣は、今回のたばこに関する税制改正についてどのように評価しておられますか、お聞かせください。
 最後に、グローバル化を背景にした節税対策への対応についてお尋ねします。
 多国籍企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用して過度な節税対策を講じることで、本来課税されるべきであるにもかかわらず税負担を軽減していることは、BEPS、税源浸食及び利益移転と言われており、OECDやG20各国で連携して対応しています。
 この問題の一つとして最近クローズアップされたのが、外国法人のインターネット通販会社が国内に倉庫のみを持ち、PEと呼ばれる恒久的施設、いわゆる支店に相当する施設を持たない場合には事業所得課税がされないという問題です。これについては、今回の税制改正で、いわゆる支店に相当する施設の定義が見直されることで課税できることになると聞いています。過度な節税につながる国際的な税制の隙間や抜け穴が塞がれなければ、正しく税を納めている者の不公平感は高まるばかりです。
 そこで、今後も、経済のグローバル化に迅速に対応し、過度な節税につながる道を断つために適切な措置を講じていくという総理の決意をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 古川俊治議員にお答えをいたします。
 安倍内閣の経済財政運営についてお尋ねがありました。
 私の基本的な考え方は、経済再生なくして財政健全化なしということであり、経済成長を実現し、税収を上げることで、財政健全化も進めていくというものであります。
 所得税法等の一部を改正する法律案では、働き方の多様化等を踏まえ、個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ、生産性向上のための税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充等を行うこととしております。
 こうした税制支援を含め、あらゆる施策を総動員することにより、デフレ脱却、力強い経済成長を目指してまいります。
 引き続き、デフレ脱却と経済再生を図りながら、歳出と歳入、それぞれの面からの改革を続け、プライマリーバランスを黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。
 研究開発を後押しする税制などの支援措置についてお尋ねがありました。
 資源に乏しい我が国において、イノベーションは経済成長の大きな源泉であります。生産性革命を推し進める上でも、その重要性は論をまちません。
 そうした観点から、昨年の税制改正において、研究開発投資を増加させた企業への税額控除率を引き上げ、イノベーションを生み出す大胆な投資を促すよう研究開発減税の強化を行ったところです。
 同時に、イノベーションの社会実装を進めることも極めて重要であります。そのため、今回の税制改正では、IoT、人工知能、ロボットなど、先端技術を取り込む設備投資に挑戦する企業には、税負担を大胆に引き下げ、革新的なイノベーションの積極的な活用を促してまいります。
 これらの税制支援に加えて、予算、規制改革など、あらゆる政策を総動員しながら、ソサエティー五・〇の実現に向けたイノベーションを力強く後押ししてまいります。
 中小企業・小規模事業者に対する事業承継支援についてお尋ねがありました。
 今後十年で中小企業・小規模事業者の経営者の約六割が七十歳を超えるという現実があります。黒字廃業が相次ぐような事態は我が国経済にとって大きな損失であり、事業承継問題は待ったなしの課題です。
 この強い危機感の下に、事業承継税制を抜本的に拡充し、承継時の贈与税、相続税の支払負担をゼロとすることといたしました。また、後継者による新しいチャレンジを応援する補助金などにより、切れ目のない支援を行います。
 さらに、安倍内閣では、既に事業引継ぎ支援センターを全国展開しておりますが、後継者難に苦しむ企業と事業を引き継ぐ企業のマッチング機能の更なる強化にも取り組んでまいります。
 そして、何よりも、こうした支援制度を十分に周知し、一つでも多くの中小企業・小規模事業者の皆さんに活用をいただくことが大切であります。自治体や商工会議所、商工会とも連携しながら、全国津々浦々にしっかりと普及させ、我が国の宝である中小企業・小規模事業者を次世代へしっかりと引き渡していく決意であります。
 国際的な租税回避への対応についてお尋ねがありました。
 国際的な租税回避については、課税の公平性を損ない、納税者の信頼を揺るがす大きな問題であると考えています。
 こうした租税回避の防止については、日本はこれまで、OECD、G20によるBEPSプロジェクトでの議論を主導し、例えば、日本が議長国を務めた伊勢志摩サミットにおいても、その合意事項を各国が足並みをそろえて着実に実施していくよう首脳宣言に盛り込みました。
 今般の税制改正案においても、BEPSプロジェクトの合意事項を踏まえ、各国企業が行う事業への課税の前提となるPE認定に関する租税回避に対応するために規定の見直しを行うこととしています。
 引き続き、政府としては、こうした国際的な合意を着実に実施するとともに、国際社会と協調し、租税回避の防止に向けて不断に取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 古川議員からは、個人所得税の見直しなどについて計三問お尋ねがあっております。
 まず、基礎控除の増額と所得の捕捉についてお尋ねがありました。
 今般の個人所得課税の見直しでは、特定の収入のみに適用されます給与所得控除から、どのような所得にでも適用できますいわゆる基礎控除に控除額の一部を振り替えるということにいたしております。この見直しは、働き方が多様化している現状を踏まえれば、適切なものと考えております。
 他方で、御指摘の事業所得者の所得の捕捉につきましては、これまでも、記帳義務制度の拡充、法定資料の整備充実、罰則の強化、また青色申告の普及促進など、適正な申告や所得把握に向けた取組を進めてきております。
 引き続き、マイナンバー制度を活用しつつ所得把握に努めるとともに、経済社会のICT化の動向などを踏まえ、適正な申告に向けた取組を進めていく必要があろうと考えております。
 次に、各種控除の見直しにおける所得制限等の考えについてのお尋ねがあっております。
 配偶者控除につきましては、平成二十九年度税制改正において、所得一千万円で消失することといたしております。これは、御存じのように、見直し前の配偶者特別控除につきましても、この額を超える納税者には控除を適用しないことにしていたということを参考にしたものであります。
 基礎控除につきましては、平成三十年度税制改正において、所得二千五百万円で消失することといたしておりますが、これは、所得再分配機能の回復の観点も踏まえつつも、基礎控除が最も基本的な控除であり、広い所得階層に適用されるべきものであることを総合的に勘案した結果であります。
 また、給与所得控除につきましては、控除が頭打ちとなります給与収入を八百五十万円超に引き下げることとしたところです。この水準は、家計への影響や地方財政への影響等を総合的に勘案して決定をいたしたものであります。
 このように、それぞれの所得制限等の具体的な水準は、各控除の趣旨などを勘案した上で決定されたものであります。
 最後に、たばこ税の見直しについてお尋ねがありました。
 たばこ税につきましては、高齢化の進展により社会保障関係費が増加いたしております中、引き続き厳しい財政事情にあることを踏まえ、たばこ税等を国と地方を合わせて一本当たり三円引き上げるとともに、近年急速に販売量が増加をいたしております加熱式たばこの課税方式を見直すことといたしております。
 こうした見直しにより、たばこの消費量の減少が見込まれる中におきましても、引き続き一定の税収を確保することが可能となりますほか、加熱式たばこの課税方式の適正化により、紙巻きたばこと加熱式たばことの間で税負担が大きく異なるといった税負担の公平性の課題の解決につながるものと考えております。(拍手)
    ─────────────
○議長(伊達忠一君) 藤巻健史君。
   〔藤巻健史君登壇、拍手〕
○藤巻健史君 日本維新の会、藤巻健史です。
 まず初めに、森友問題に係る財務省の公文書改ざん疑惑問題については、政府が国民に対してしっかりと説明責任を果たすことを要求いたします。
 もし改ざんがあったのなら、国民を裏切る行為であり、犯罪ですし、公文書の管理に関する法律を幾ら整備しても、機能しないものになってしまいます。
 さて、我が党を代表して、本日の議案について質問いたします。
 一九八六年から二〇一六年の三十年間の税収と歳出を比べてみますと、税収が一・三倍となったのに対し、歳出は一・八倍にも膨れ上がっています。この結果、借金が千八十六兆円にも積み上がり、対GDP比で世界最悪の状況となってしまいました。
 ところで、学者の中には、インフレのことをインフレ税と表現する方がいらっしゃいます。インフレは、債権者が大変な思いをし債務者が得をするということで、債権者から債務者への富の移行、すなわち債権者である国民から日本最大の債務者である国への富の移行という意味で税金と同じだからです。
 このまま借金総額が極大化すると、尋常なる方法での財政再建が不可能になり、大増税、すなわち大インフレ税の徴収という形での決着しかなくなるのではないかと危惧いたします。
 税制改革は国会審議を経なければならないのに、実質大増税と同じながら、国会審議を経ることもなく、インフレ税、すなわちインフレが財政再建のために導入されては、国民はたまったものではありません。インフレは、消費税よりも圧倒的に逆進性が強く、コントロール不能になれば国民生活が苦境に陥るからです。だからこそ、このような財政状況下にあっては、確実に歳出を削減し税収プラス税外収入を増やしていくことが極めて重要だと考えます。
 私ども日本維新の会は、身を切る改革を行った上で国と地方の歳出を真に必要なものに絞り込むことが重要だと考えています。また、税収プラス税外収入を増やすにも、安易に増税に頼ることなく、経済発展により税収の自然増を図るべきだと考えています。例えば、名目GDP、すなわち経済規模が二倍になれば国民生活も二倍豊かになり、税収も二倍になるのがあるべき姿だと思うのです。
 世界的に権威のある経済誌インターナショナル・エコノミーの昨年夏号の特集は、日本病は世界に蔓延するかでした。低迷する日本経済をかつての英国病になぞらえているのです。情けない話ですが、逆に言えば、根本的な改革さえすれば他国並みの経済成長はできるということでもあります。経済規模が三十年間で一・八倍になっていれば、増税せずに税収の一・八倍は達成できたはずです。そうなっていれば、借金もたまらなかったはずです。
 そこでまず、総理にお聞きいたします。
 この二十年間、日本の名目GDPは一倍、三十年間ではたったの一・五倍にしかならなかったわけですが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、中国は自国通貨ベースでGDPをいかほど伸ばしていたのか、お教えください。
 もし、他国が名目GDPを三十年間で二倍にできていたのなら、日本も二倍にするのは難しいことではなかったはずです。財政政策、金融政策を最大限に発動したにもかかわらずこの結果なのは、何が問題だったのでしょうか。そして、それは今後克服可能だと思われるのか、お答えください。
 総理はよく経済低迷の理由をデフレのせいにされていますが、デフレだったから景気が悪くなったのではなく、景気が低迷していたからデフレになったのではないでしょうか。
 私ども片山虎之助共同代表が予算委員会での代表質問でお聞きしましたように、安倍政権は財政再建を二の次に考えているようにも見受けられます。まさか、幾らばらまいても後でインフレ税で没収するからいいやなどとは考えていないと思いますが、その点は確認しておきたいと思います。総理、いかがでしょうか。
 今回の税制改革では、日本維新の会が成長促進のために主張していた中小企業の事業承継を容易にするための税制改革も含まれており、必要な改革が含まれている点では敬意を表します。
 しかし、税制は国が将来どうあるべきかを示すものでもあり、強力な誘導手段でもあります。結果平等主義の国家を目指すのか、機会平等主義の国家を目指すのかなどのメッセージ等がそこには含まれているべきだと思います。
 私ども日本維新の会は、簡素、公平、中立ではなく、簡素、公平、活力という理念に基づいた税制改革を目指しています。この観点から、幾つか総理に質問いたします。
 給与所得控除額が八百五十万円超で頭打ちとなる改正案ですが、これが同じ政府の掲げる働き方改革とどう結び付くのか疑問です。相反する政策のようにも思えます。八百五十万円の年収の人とは大金持ちではありません。その人たちに対しての所得税も累進性が既に十分過ぎるほど強いのですが、今回の法案はその累進性を更に強めることになります。
 私ども日本維新の会は、経済活動促進のためにフロー課税は低減し、薄く広いストック課税税制を目指すという観点から、所得税の税率構造のフラット化を検討しています。この方向にも逆進いたします。所得再配分機能が極限まで行くと、働き方改革どころか、働いても働かなくても手取りは同じ、すなわち結果平等社会ということになってしまいます。
 この税制改革による税収増は一千億円と聞いております。この増収分の一部を基礎控除に振り替えるという話です。しかし、なぜ税収中立で物事を考えるのでしょうか。例えば、いわゆる土地改良予算は一時二千百二十九億円と大幅に圧縮されていましたが、平成三十年度政府案と前補正予算案の合計額は五千八百億円と再び増加しています。これを四千八百億円に抑え、一千億円を抑え、大金持ちとは言えない人たちへの増税を回避した方が国の活力につながるのではないでしょうか。総理、お考えをお聞かせください。
 また、賃上げ及び投資の促進に関する税制ですが、この法律自身に問題があるとは思いません。しかし、労賃とは、他の物やサービスと同様、需給で決まるものです。税制で賃上げを図るという計画経済的な政策よりも、日本への対内直接投資を増やしたり空洞化を防ぐなどして日本人労働力に対する需要を増やすことの方が、より重要で、政治が対処すべき課題だと思いますが、総理、いかがでしょうか。
 最後に、名目GDPを拡大し、税収増をも狙えるという観点からすると、日本が世界より一歩進んでいるブロックチェーン技術の発展を温かく見守ることが重要だと考えます。ブロックチェーンは次世代プラットフォームにもなる可能性を持ち、経済産業省が一昨年四月に出したレポートによれば、影響のある市場は七十兆円近くにも上るとのことです。
 また、昨日、予算委員会で我が党の浅田議員が質問、提案しましたとおり、ブロックチェーンは改ざんができないというシステムです。今回、森友問題で起きている公文書改ざん疑惑など、ブロックチェーン技術を使えば起こりようがなくなります。行政にとっても非常に有効な技術となると考えます。
 一方、ブロックチェーン技術と裏表の関係にある仮想通貨では、取引所大手のコインチェック社で事件が起こりました。これは、交換所の問題であり、仮想通貨自体の問題だとは思えません。しかし、千五百もあるという仮想通貨には、まがいもののような通貨もあると聞きます。
 ブロックチェーン技術を育てる観点からも将来の税源として期待する観点からも、仮想通貨取引の税制整備や法整備は極めて重要な課題だと考えます。
 ブロックチェーン、そして仮想通貨の将来性について、そして法整備、税制整備の必要性についての総理のお考えをお聞かせください。
 我が党は、税負担を求める前に、まずは身を切る改革、徹底行革が必要とのスタンスです。民間の活力を最大限発揮できる制度を実現すると同時に、本当に支援が必要な人たちへのサポートを手厚くし、将来世代への思い切った重点投資を可能にすることを目指していきます。
 以上、国民の皆様にお約束して、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 藤巻健史議員にお答えをいたします。
 日本経済の長期的な動向についてお尋ねがありました。
 二〇一七年の名目GDPの自国通貨建て金額を一九八八年と比較すると、アメリカ三・七倍、イギリス三・七倍、オーストラリア五・二倍、シンガポール八・四倍、中国五十三・〇倍となっており、我が国の名目GDPが他の先進国、新興国と比べて低い伸びにとどまっていることは事実であります。
 この背景には、我が国がバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによる停滞の二十年を経験してきたことがあります。
 この間の経済対策を始めとする財政政策や各種の金融政策は、一定の景気下支え効果を有していたものと考えられますが、企業は賃金を抑制し、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷、デフレを加速するという悪循環から抜け出せずにいました。
 この経験を踏まえ、安倍内閣では、政権交代後、長引くデフレから脱却し、日本経済を力強く成長させていくため、これまでとは次元の違う政策として、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢に一体として取り組んできました。
 こうしたアベノミクスの取組により、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一一・七%、五十八兆円増加し、過去最高となりました。
 今後も、デフレ脱却、そして力強い成長のため、三本の矢の政策を継続していく考えに変わりはありません。働き方改革、生産性革命、人づくり革命など、あらゆる政策を総動員し、名目GDP六百兆円経済の実現を目指してまいります。
 また、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、引き続き、経済再生を図りながら、歳出と歳入、それぞれの面から改革を続け、プライマリーバランスを黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指してまいります。
 給与所得控除の見直しについてお尋ねがありました。
 給与所得控除については、主要国の概算控除額と比べて過大となっていること等を踏まえ、控除が頭打ちとなる給与収入を八百五十万円超に引き下げることとしたところです。
 ただし、子育て世帯等に配慮することにより、九六%の給与所得者は負担増とならない見込みとなっており、負担増となる者についても、給与八百五十万円超から急激に負担が増加するわけではなく、段階的に増える仕組みになっております。
 また、給与所得控除等から基礎控除への振替については、働き方に左右されない税制に向けた見直しであり、国の活力につながるものと考えております。
 このように、国の活力にも十分に配慮しつつ、個人所得課税の仕組みを見直すこととしていることを御理解いただきたいと思います。
 なお、御指摘の土地改良予算については、我が国の農業の競争力強化や農村の防災・減災対策の観点から必要なものであると考えております。
 賃上げについてお尋ねがありました。
 賃上げについては、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが四年連続で実現し、多くの企業で四年連続のベースアップを実施、パートで働く方々の時給は、統計開始以来、最高の水準となるなど、正規の方、非正規の方、それぞれで所得環境に改善が見られ、二〇一四年春以降、賃金は増加傾向にあります。
 また、有効求人倍率について、史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、正社員の有効求人倍率も、調査開始以来、初めて一倍を超えるなど、労働力に対する需要は高まっています。
 また、安倍政権では、生産性の向上や雇用の創出をもたらすとの観点から、対日直接投資の促進に向けて、法人税改革や岩盤規制改革等の事業環境の改善に取り組むとともに、私自ら我が国への投資を呼びかけてきました。
 引き続き、あらゆる施策を総動員することにより、経済の好循環を加速させ、労働需要の増加、賃金の上昇につなげてまいります。
 なお、四年連続での高い水準の賃上げは、所得拡大促進税制も一つの大きなきっかけとなって実現したものと考えており、平成三十年度税制改正においては、賃上げ等に積極的な企業の税負担を更に引き下げることとしております。
 ブロックチェーンや仮想通貨についてお尋ねがありました。
 ブロックチェーン技術については、御指摘の仮想通貨のほか、金融に限らず、様々な分野において利活用の可能性があると指摘されております。
 技術の安全性の確保など、なお課題はあるものと考えられますが、企業の生産性向上や様々なサービスの利便性、安全性向上につながるよう、様々な主体がその活用にチャレンジしていくことが期待されます。
 また、仮想通貨については、資金決済法の改正によって取扱業者を登録制とするなど、法制面や税制面での対応を図ってきたところですが、御指摘のとおり、問題となる事例も生じており、そのような状況も踏まえつつ、引き続き適切に対応してまいります。(拍手)
○議長(伊達忠一君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五分散会