第196回国会 厚生労働委員会 第15号
平成三十年五月二十四日(木曜日)
   午前十時開会
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  出席者は左のとおり。
    委員長         島村  大君
    理 事
                石田 昌宏君
                そのだ修光君
                馬場 成志君
                山本 香苗君
                小林 正夫君
    委 員
                石井みどり君
                小川 克巳君
                大沼みずほ君
                木村 義雄君
                自見はなこ君
                鶴保 庸介君
                藤井 基之君
               三原じゅん子君
                宮島 喜文君
                伊藤 孝江君
                三浦 信祐君
                足立 信也君
                浜口  誠君
                石橋 通宏君
                難波 奨二君
                倉林 明子君
                東   徹君
                福島みずほ君
               薬師寺みちよ君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 成子君
   参考人
       社会福祉法人豊
       中市社会福祉協
       議会福祉推進室
       長        勝部 麗子君
       認定NPO法人
       抱樸理事長    奥田 知志君
       日本女子大学人
       間社会学部准教
       授        岩永 理恵君
       生活保護問題対
       策全国会議代表
       幹事       尾藤 廣喜君
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  本日の会議に付した案件
〇生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮
 者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
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○委員長(島村大君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、社会福祉法人豊中市社会福祉協議会福祉推進室長勝部麗子君、認定NPO法人抱樸理事長奥田知志君、日本女子大学人間社会学部准教授岩永理恵君及び生活保護問題対策全国会議代表幹事尾藤廣喜君でございます。
 この際、参考人の皆様方に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますが、まず、参考人の皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、参考人、質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず勝部参考人にお願いいたします。勝部参考人。
○参考人(勝部麗子君) それでは、大阪の豊中市の社会福祉協議会から参りました勝部と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、日々現場で制度のはざまの方々を地域の中から住民の皆さんとともに発見し、そして解決をしていくというコミュニティーソーシャルワーカーという取組、これは平成十六年から動き始めまして、その延長線で、現在、生活困窮者自立支援事業の主任相談員としても活動をさせていただいております。
 今日は、私の方からは、今回の法律の一部改正ということで五点ぐらい、現場の意見としてお話をさせていただければというふうに思って参加をさせていただいております。
 ちょっとこちらの方の本を御覧いただきたいと思います。漫画の本なんですけれども、この漫画は、実はアルコール依存で地域から排除されていた男性が、地域の住民の皆さんに支えられながら、生活困窮者自立支援事業によって、そして仕事ができるようになり、周りの方たちと一緒に暮らしていくというふうな、いわゆる私たちの目指す取組を実際にかなえたような取組なんですが、実はこの漫画を書いた人が、ちょうど一年三か月前に出会った、二十年引きこもっていた引きこもり経験の女性であります。
 二十年ずっと、大学卒業してから社会に行き詰まりを感じて、なかなか出ることができなかった彼女、一年二か月前、二、三か月前ですね、お出会いをしたことで、ちょうど彼女が美大を卒業して、コミックが書けた、そういうことを、親御さんが御相談で来られまして、私たちとすれば、何とか彼女を社会に引き出したいということで、ちょうど、漫画、実はこれ四作目なんですけれども、一作目、二作目、三作目という漫画も、そういう引きこもり経験者の人たちと一緒に作ってきましたが、彼女の書いてくださったことで、彼女は今はお店でお仕事ができるようになっています。
 まさに生活困窮者自立支援事業というのは、これまで社会になかなかつながりにくかった人たちをアウトリーチという形で私たちが訪問をしたり、そして今まで諦めかけていたような人たちとつながって、そしてその人たちの得意な分野であったり、できることから社会の中へもう一度戻していく。支えられていた人たちが支え手に変わるということを実現させる大変すばらしい事業だというふうに実感をしております。
 今日は、こういう事業の中で私たちはこの五つの点を少しお話をしたいと思います。
 まず、今回の生活困窮者自立支援の定義の明確化のところにつきまして、まず一点目、お話をさせていただきたいと思います。
 この中に、地域社会との関係ということによって困窮していくというふうな定義が書かれました。まさに我々は、これまで出会いましたごみ屋敷、それから引きこもり、八〇五〇問題、八十代の親に五十歳の無職の娘さんや息子さん。もう今の社会は、八十代の方々というのは、高度経済成長期、一生懸命終身雇用で働いた方たちはある程度年金があって、その前の方もその後の方たちも今経済的に非常に厳しい。特に五十代以下の方たちは、派遣や、それから非正規、多くの方たちがなかなか正規職員として働くことが難しいという時代になっていますが、八〇五〇という社会の問題というのも、これまでは家族の問題、自分の家の親の育て方の問題のように捉えられていましたけれども、こういう方々の問題も、この生活困窮者自立支援事業によって全国の自治体が、ああ、こういう問題が今まで見えなかったんだということを気付くことができたという意味でも大きな意義を感じています。
 その中で皆さんがおっしゃっていることが、私の育て方が悪かった、自分が悪いというふうに思っていたが、実際には、そういう思いの中でどんどん社会から孤立をしていき、SOSが上げられない人たちがたくさんいたということであります。
 現代の困窮というのは、私たち審議会の話合いの中でも、経済的困窮ということはもちろんですが、人間関係の困窮ですね、人間関係の困窮イコール社会的孤立ということが本人たちをますます追い込んで、本当に自分から助けてと言えない社会にしているんではないかということを議論してまいりました。そういう意味でも、今回の定義が明確になったことというのは大変良かったというふうに思っております。
 最近、イギリスでは孤独担当大臣というのができたようにお聞きしています。何かOECDの調査では、日本が孤立しているというのは、家族以外の人と話し相手がないというのが一五・三%ということで、断トツOECDの中で一位。それで、イギリスは五%ですが、五%で年間五兆円ぐらいの経済損失があるというふうに言われています。GDPが日本はイギリスの倍ですので、そして孤立率が三倍ですから、単純に考えると三十兆円ぐらいの損失があるんではないかというふうにも思います。
 そういう意味でも、孤立の問題にどう立ち向かっていくかということについては大きな課題だというふうに思っています。
 二点目です。今回の自立相談支援事業の利用勧奨の努力義務という、いわゆる高齢者、障害者、様々な機関でつながった人が困窮状態にあれば早く自立相談支援機関につなぎましょうという、こういう努力義務ができたことはとても有り難いと思います。
 一昨日、私たちの町で子供食堂がありました。新高校一年生になった女子の学生さんがボランティアとして参加してくれました。彼女は一年半前、私たちの前に現れたときは、お昼御飯の時間になりますと、お弁当がないので廊下に出て、どうしたんだと聞かれると、おなかすいていないと言っていた彼女です。その子が、先生が何度も何度も質問する中でどうもおかしいというふうに気付かれて、私たち相談支援機関につないでくださいました。彼女はそれから、進学も諦めていましたが、学習支援そして子供食堂に来ることを通じて進学がかない、地域の皆さんがそのときに、合格したときお赤飯を炊いてくれたりというふうな、そういう地域の大人、家族以外の大人に支えられて、今、今度は支え手に変わり、ボランティアとして活動しています。
 一方、同じような課題でも、八〇五〇、三十年間引きこもっていた息子さんを抱えた八十歳のお父さんからの御相談があって、どうして今まで御相談されなかったのですかということをお聞きしますと、彼は、どこに相談していいか分からなかった、小学校は行けた、中学校の途中から不登校になった、高校は単位制で三日でやめた、そこからはどこにもつながらなかったというふうにおっしゃっています。
 もしその御家族が高校中退の際にこういう相談機関のようなところにしっかりつながっていれば彼の三十年の人生は全く違ったものになっていたのではないかというふうに考えますと、こういう早期発見というのがどんなふうにできるかということ、これはとても重要なことですし、大抵の方々が何らかの相談に一度は行っています。でも、そこで自分のところの対応ではないということで帰されたことから、もうどこにも頼ることができないというふうに諦めてしまっています。
 そこで、私たち自立相談支援機関は、断らない福祉ということを目指し、どこからもこぼれてきた人、どこにもつながらなかった人たちも全て受け止めるということを趣旨として頑張っていくということを目指していますが、断らないということを決めれば、出口を何とかつくる必要があります。その出口には、住民の中で子供食堂をつくってみたり、また学習支援の場をつくったり、それから、お金がないよということであればフードバンクをつくったり、そして小口の小さな貸付金をつくったりということを、各自治体の相談機関が様々この二年で生み出してまいっております。早期発見の入口と出口をどうつくっていくか、この事業のとても要になることだと思っています。
 ただ、この要になる仕事をします専門職の力量が非常にこの事業は問われます。どういう力量でそういう人たちを諦めないで支え切るかという、こういうところが重要なんですが、我々の業界では、実はこういう冗談のようなことがあるんですけれども、三月までは相談員で四月になると対象者に変わる。相談員自体が非正規の人たちが大変多いという現状です。こういう相談者の待遇改善、それから研修体制、これをしっかりできることが重要ということで、この度の改正の中では都道府県レベルでそういうケアする人たちをケアしていけるような体制をしっかりつくっていくということを明記されたことが重要だなというふうに思っています。
 四点目です。
 実は、私どももいろいろメディアで取り上げていただく機会が多くあります。そうしますと、全国の福祉事務所のない自治体の皆さん方がいろいろと御相談に来られます。電話が掛かったりメールが来たりということがあります。福祉事務所のない自治体は生活困窮者自立支援事業の窓口を持っていません。都道府県などが代わりに実施をするということになっていますので、そういう名前での相談窓口を、実質的には受けておられますけれども、明記されていないということで、私たちの町にはそういう窓口がないというふうな御相談が入ってきたり、あるいは片道車で何時間も掛かって相談窓口まで行かないといけないということになりますと、本当に困窮している人が一日パートを休んでそこまで行くことというのはなかなかできないということになりますので、この度の町村でしっかり窓口ができることの重要性、そして、できれば全ての相談機関がアウトリーチという形で訪問していただきたいなというふうに切に願っております。
 最後に、家計支援というのがこの度一体的に、就労支援と家計支援を一体的に行っていくと。これまでは任意事業ということで、やってもやらなくても、それぞれ自治体任せですよということを話していただいておったわけですが、ちょっと今日の資料の中の、お手元の、どの辺かというのは言いにくいんですが、生活困窮者の対象というこのクロスの資料を御覧いただきたいと思います。
 一体、生活困窮者というのはどういう人ですかということをよく聞かれておりました。縦軸が緊急度が高い人、低い人、横軸が就労までの距離が遠い人、近い人ということで、このページちょっとお開きいただけますか、真ん中ぐらいなんですけど、ABCDと書いたページです。済みません、ページ数がちょっと打ってなくて、申し訳ないです。
 緊急度が高くて就労までの距離が遠い人というのは、高齢者とか障害がある方で、比較的生活保護にすぐつながっていくような方々になります。
 緊急度が高くて、現在働いているのにお金の収支が合わない、こういう方。ギャンブル依存であったり多重債務があったり、例えば、一日単位でのお金の計算はできるんですけれども、一か月単位になるとうまくいかない。あるいは、年金が二か月単位でお金が来ると、偶数月の月初めになると必ずお金が足りなくなってしまう。こういう方々は緊急度が高い、今働いているけれどもなかなか生活ができないという、家計支援が必要な方々になります。
 こういう家計支援が必要な方々をしっかりと、管理するのではなく、その人がうまく生活が回せるように伴走していくような体制をつくることで多くの人たちがうまく生活が回せるようになっているという事例がたくさん出てきております。そういう意味では、今回の生活困窮者自立支援事業にこの家計支援をしっかりとセットアップしていくと、こういう形ができることが非常に効果が上がるのではないかなというふうに感じております。
 最後ですが、生活困窮者自立支援事業、この二年の間に、制度のはざまでこれまでSOS上げられなかった人たちを、私たちの町ではローラー作戦のような形で多く救うことができました。地域から排除されている。ライフラインが止まっています、どうにもなりませんという八十代の女性。実は、生活困窮だということで、みんなですぐに食材を持っておうちの方に運ばせていただきましたが、実は通帳の中にはお金がありました。自分でお金を下ろすことができなくなっていました。こんな方々は御自身でSOSを出すことはなかなかできません。
 こんな方々を地域の皆さんの優しい目でどうやって救っていくか、こういう地域づくりをしっかりとやっていくこの事業、とても重要だというふうに考えておりますので、今回の改正、是非、御審議いただき、前向きな議論をいただけると有り難いなというふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
○委員長(島村大君) ありがとうございました。
 次に、奥田参考人にお願いいたします。奥田参考人。
○参考人(奥田知志君) 皆さん、こんにちは。私は、NPO法人抱樸理事長の奥田知志と申します。
 当法人は、一九八八年から、ホームレス支援を最初に皮切りとして、今年でちょうど三十年の活動になります。現在では、ホームレス、生活困窮、あるいは子供、刑務所出所者、十七部署にわたるNPOとしてはちょっと大きなNPOの活動になっています。
 これまで、ホームレスの方々でいうと、自立された方は三千人を超えました。半年間の自立プログラムで九三%が自立されます。うち、五八%は就労自立であります。生活の継続率も、地域で九割の方々が生活を継続しているという実績です。
 抱樸の特徴は、私たちの活動の特徴は、制度外というのが一つの特徴です。私は、制度が不要だということを言っているわけではありません。この国の制度は個々それぞれ高い専門性がある、そのことは本当にそうだと思います。しかし、若干、なぜか私は、人以上に制度が優先されていく、あるいは制度の枠組みがお断りをする理由になっている、そんなところがやはり出てきたのではないかと、そう思っています。
 しかし、あらゆる制度においても、結局のところ大切なのは、人を大事にできるかということ、人そのものの問題です。
 では、その人とは一体何か。それは、総合的で多様だということです。そのような人を支援するときに、一つの制度や枠組み、分野にとどまっていては、なかなかうまくいかない。例えば、ホームレスというのは一般に家がない人を指しますが、しかし実際にはそう単純ではありません。
 今日、私がお持ちいたしました資料の一を御覧ください。最初のページです。これは、私たちが関わったホームレスの中から五十人の人を無作為に選んで、その要因を調べたものです。生育環境の問題や知的障害、低学歴、不安定就労、多重債務、依存症、犯歴、様々な問題が混在しています。特に、未婚が四割、相談できる知人がいなかった若しくは相談できる親族がいない、特に相談できる人がいなかったは九割を超えています。まあ一言で言うと、孤立ということが非常に大きな要因となります。さらに、生活保護だとか障害手帳など、制度利用がなかった人が五割という結果が出ているんですが、逆に言うと五割は制度につながっていたということです。一言で言うと、制度だけではホームレス化が止められなかった。何が足らないか。やはりそこには人がいなかったという、そのことが大きいと思います。
 ここから見えてくる第一の課題は、一人の人の中に複合的な困難が存在しているということ。第二の課題は、孤立しているということ。第三の課題は、制度や給付だけでは駄目だということです。
 ホームレス支援といいますけれども、ホームレスという人は実際にはいません。山田さんとか田中さんとか、名前の付いた個人がそこには存在するわけでありまして、私たちは人を属性で見ない、人を制度に当てはめて事を始めるという、そういうやり方はしない、個別型のパーソナルなサポートをどうするかと、これが三十年の柱になってきた考え方です。そのような活動の中から、今回の生活困窮者自立支援制度というものについて、私は、割とざくっとした話になってしまいますが、三つのポイント、重点をお話ししたいと思います。
 第一のポイントは、この制度が経済的困窮のみならず、社会的孤立に注目しているということです。
 私たちは、活動の当初から、野宿者に対する支援でありましたけれども、ハウスとホームは違うという、そういう概念に立ってきました。ハウスレスは、家に象徴される経済的困窮、家がない、仕事がない、お金がない、こういうものをハウスレス、経済的困窮と呼んできました。就労支援等、居宅設置して、アパートに入られる。野宿時代とはもう隔世の感があります。お訪ねすると、本当にもう身ぎれいにされていて、就労の方に向かっておられる。本当によかったなと思うんですね。しかし、帰り際、部屋の中に一人ぽつんと座っていらっしゃる姿が、駅の通路でぽつんと一人座っていた日の姿と何が違うんだろうかというのが、実は活動の当初から問われました。自立が孤立に終わっているんじゃないかと、このことが大きな問題でした。畳の上で死にたいと路上で語っていた方が、アパートに入ってこれで安心とはなかなかならない。俺の最期は誰がみとってくれるだろうかという、そういう問題が次に起こります。すなわち、ホームと呼べる家族や知人がいない。彼らはハウスレスであり、ホームレスの状態でありました。
 このハウスを経済的困窮、ホームを社会的孤立という、この二つを同時に解決できる仕組みが必要だとずっと考えてきました。しかも、この両者は相互に連鎖していると私たちは考えています。
 まずは、お金がないということが社会的孤立を進める。まあこれは分かりやすいですね。お金がないと、進学や結婚、ネットを含めた情報取得ができない。社会参加に支障が出ます。経済的困窮が社会的孤立を促進する。金の切れ目が縁の切れ目とよく言ったものです。
 一方、見落とされがちなのは、その逆です。社会的孤立が経済的困窮を生むということです。なぜならば、人は何のために働くかとよく言うんですけれども、実際のところは、人は誰のために働くかというのが実は労働の大きな動機になるからです。他者との関係がなくなることによって生きる意味や労働意欲がなくなるというのは事実です。離婚や家族との離別をホームレスになった理由に掲げている人は少なくありません。縁の切れ目が金の切れ目というわけです。経済的困窮と社会的孤立は相互に連鎖していきます。
 今回の改正案において、尊厳や孤立、連携という言葉が明示されました。これはとってもよかったと思います。第三条の定義においても、関係性が困窮の要因だということが加筆されました。これは重要です。今後、孤立の問題は更に大きくなると思います。
 しかし、課題もあります。この法律ができたときにやはり大きな背景にあったのは、生活保護のその他世帯の増加だったと思います。ですから、どうしても就労や増収が事業評価の柱になっていくという傾向がある。この孤立の問題をやはり重点に置くとするならば、就労、増収も大事なんですけれども、この孤立に対しての評価軸というのはどこに置くかというのは大事です。
 第二のポイントとしては、断らない相談ということを掲げたことです。
 生活困窮とは一体何か。先ほど勝部さんの発言にもありましたけれども、生活困窮者とは誰かと、大分議論になりました、最初の頃。
 改正案では、生活困窮とは、就労の状況や心身の状況、地域社会との関係その他の事情により、現に経済的に困窮しという一連の最初の法案の言葉が続きます。しかし、これは大分私は補充されてよかったと思うんですけれども、正直、だから誰というのが正直なところです。しかし、私は、この曖昧さがこの法案の重要さだと思います。
 従来の制度は対象者を限定してきました。縦割りの制度が対象者を明確化する中で、一方で、それが断る理由となってきました。あるいは制度のはざまというものを生み出してきた。一方、今回のこの制度の持つ豊かな曖昧さというものは断る理由を放棄したという、それがこの制度の一つの特徴だと思います。曖昧さこそが断る理由を失ったという根拠であります。
 資料の二を御覧ください。次のページですね。
 困窮、孤立に加えてほかにも様々な問題があるわけです。これを大きくくくったものが困窮概念でありまして、どれというふうに限定しないということですね。
 断らないということになると、従来の問題解決型の思考では全部解決するのは無理だと。だから引き受けないということにもなりかねない。問題解決は大事です。しかし、一方で、社会的孤立に注目したわけですから、私は、ともかくつながることに意味があるとまず言うべきだと。つまり、この制度においては相談そのものが支援なのだ、これが今回のこの制度が切り開いた大きな支援論の新しい地平だったと思います。第二の危機、第三の危機が起こる不安定な時代になっています。例えば非正規雇用が増加している。一回問題が解決しても、第二、第三の危機が起こるということです。
 次の資料を見てください。
 生活保護が最後のセーフティーネットと言われてきました。私はそうかなと正直思うんです。例えば、ある市においては、年間三千人が生活保護申請をし、千人が受給します。じゃ、残り二千人はどうなったんですかね。最後のセーフティーネットに掛からなかった二千人を引き受けるのは誰なんでしょうか。やはり、その生活保護制度の更に下に困窮者制度があって、漏らさない、断らない、全てを受けると、この覚悟が決まったのが今回の制度、断らないという意味だったと思います。
 課題もあります。社会的孤立とは何かということ自体の検討が必要です。社会的孤立のリスク、経済的損失、それをどう測るのか、あるいは伴走を軸とした支援理念の構築や人材育成も必要です。
 第三のポイントは居住支援の強化です。
 今回の改正において、一時生活支援事業が強化され、地域における訪問や見守りが始まります。一時生活支援事業はホームレス自立支援法から引き継がれた事業でありますので、さきに述べたとおり、多様な問題を持っているホームレス者に対する対応ということは、範疇を選ばなかったということが特徴です。
 その中で、各地にありますホームレス自立支援センターは、センターの中に、アウトリーチ機能、自立相談、就労支援、居住、地域移行、生活保護利用など、もう様々な機能を持っています。ある意味、この生活困窮者制度の総合性を体現しているのが自立支援センターであります。にもかかわらず、センター利用がホームレスに限られているというのはこれはもったいない。ここで縦割りを生んでどうするんだと。これだけ多機能なものをやはり全ての人に開放していくというセンターの多機能化ということが私は更に必要だと思っております。
 資料の四は、自立支援センターの費用対効果です。
 センター利用しないでもし生活保護になった場合、どのようなことになったかというのをセンター利用者との対比で費用対効果を出しました。費用対効果が出るのは明らかでありました。ですので、私は、生活保護が必要な人には当然生活保護なんですけれども、その上でセンターの利用というものがこれから非常に重要になるというふうに考えています。
 最後に、貧困ビジネスの対策と単独居住が困難な人に向けた日常生活支援居住施設の創設、これ私は非常に歓迎すべきことだと思っております。そもそも貧困ビジネスで議論になった無料低額宿泊所は、廉価な居住であって、支援の概念がありませんでした。今回、そこに支援をちゃんと付けるということで、国もこれをサポートするということになります。
 ですから、私はかつてから、こういう民間型の生活支援施設にきちんとしたサポートをするべきだ、制度化するべきだ、高度な技術を持っている一種施設と無低である二種施設、この間の一・五種が必要だと、そんなむちゃくちゃなことを言ってきました。ある意味、今回は、私はその願いがかなったというふうに考えております。
 悪徳なところはきちんと規制すべきです。しかし、いいところはちゃんとサポートしていくというのが大事です。しかし、課題は日常生活支援ということの中身です。現場を踏まえた会議の場が必要です。生活支援に関する委託費の試算はどうするのか。サービス内容の実情を踏まえた額であるべきです。規制の中で住宅扶助費の減額等が議論されていますが、減額された同額を生活費として回すというようなことでは何の解決にもなりません。
 更に大きな問題は、今回のこの施設が、いい施設なんですが、やはり縦割りだということです。なぜか。対象者は生活保護受給者に限られているということです。今後、誰でも入れて、個人にサービスが付いていくような、そういう施設が必要です。そのような施設を、入口を、誰にそのサービスが必要かということを決めていくのは、対象者を絞り込まない生活困窮者自立支援というこの枠組みは非常に有効だと考えております。
 一つ付け足しですが、この間、これらの事業の中で価格競争入札がされているということをよく耳にします。福祉を安売りしてはいけません。私は価格競争入札は禁止すべきだと思います。
 最後に、私は生活困窮者自立支援法が成立したときの感動を今も忘れていません。自己責任論が吹き荒れる中で、絶対に断らない、あなたを一人にしないと私たちは約束した。それは、社会が無化する中でもう一度社会を取り戻す挑戦だったと私は信じます。この改正案は、与党も野党もなく、早期に成立されることを真に望みます。
 以上です。
○委員長(島村大君) ありがとうございました。
 次に、岩永参考人にお願いいたします。岩永参考人。
○参考人(岩永理恵君) お願いいたします。
 日本女子大学で教員をしております岩永と申します。お手元にあるレジュメに沿ってお話させていただきます。
 私は、日常、日本の貧困問題とその解決策、特に生活保護に関係して、最近では住宅や被災者の支援にも目を向けて研究をしてまいりました。今、既に御発言なさった二人と違いまして、研究者の立場で少し、あとちょっと今日とても緊張しているんですけれども、この際なので先生方に根本的な問題を一緒に考えていただきたいと思いまして、発言させていただきたいと思います。
 まず、生活困窮者自立支援法についてなんですけれども、生活困窮者自立支援法とは何かというふうに書かせていただいたのですが、五年前に法ができまして、実施されてからはちょうど三年程度経過していると思います。一方、後で取り上げます生活保護法は七十年以上の実績があって、対照的かなと思います。どちらも今回の法改正については私はやや小規模な内容かなと思うんですが、生活保護法の歴史を研究しておりまして思うのは、このように国会で議論されるということがほとんどないまま通り過ぎてきて、何年か置きに国会で議論されるということそのものがとても大事だなと思って、今回の議論を聞いております。
 レジュメのところで、二〇一三年の法成立時に、厚生労働省がこの法について主な対象者は次のように説明されていたと思います。この内容について、今回、二〇一八年の法案では基本理念が創設されまして、主な対象者と制度の目指す目標とされていたものが法案に書き込まれたのかなと理解しています。
 生活困窮者の定義についても少し内容が付加されたわけですが、では、主な対象者というのは誰なんだろうと思ったときに、まだ絞り込まれていないのではないかなと思います。現場レベルで明らかになったことはケースとしても知られておりますし、件数は明らかにされているんですが、残念ながら現時点で実績データが十分に検討されているとは言えないのではないかなと思います。特に私たちの研究者の立場で分析可能なデータというのが少ない、現時点ではとても少ないので、是非次の見直しのときにはその成果をきちんと検討した上で法をもう一度見直していただく必要があるのではと思います。
 その際、現時点でもすぐに測定可能だと思われるのが生活保護の捕捉率です。つまり、生活保護を受給していない最低生活費以下で暮らしている方というのは、広い意味で生活困窮者となり得る人たちを測定している数値だと思いますので、これを公表し、これを上げていくということと、そこに入ってくる人を少なくするということが生活困窮者自立支援法、そして生活保護法共に目指されるべき方向ではないかと思います。
 まだ、はっきり言って三年分の内容が私自身よく理解できておらず、今後この法制度について、どこに重点を置いて、いかに発展させていくのかというのは難しい問題だなと思いますし、私で十分、何というか、先生方に示唆できることがあるか分からないんですが、今回ここの参考人にお呼びいただくに当たって、金曜日と火曜日の先生方の質問を拝見しまして幾つか挙がった項目があるなと思ったんですけれども、一つは自治体間格差の是正と任意事業の更なる普及、それから一年委託契約の見直し、支援員の待遇の充実、バーンアウトしない仕組み、支援員の質の向上、研修の充実というのが挙げられていて、それぞれ私も大事だろうなと思います。
 ただ、この先もう少し発展させていく上で考えたいのは、ここに関係している人というのは大変多様で、まず、国、地方自治体、委託機関、それから、ここには書いていないですけれども、行政の関係者、もちろん支援員とそれから利用者、様々な人が関係していて、その関係する方一人一人というか、一つ一つの立場を思い浮かべて考えてみますと、上記で欠けているなと思われた点としまして、利用者の制度の使い勝手というのはちょっと考えてみる必要があるのではないかと思います。その際、これは支援員の待遇充実にもつながることなんですけれども、現在の法体系では各事業の最低基準というのが整備されていないのではと思います。
 例えば、次の専門職への信頼を高める方策というのにつながるんですけれども、支援員の資格といいますか、どれぐらいの力量のある人であればこの制度の支援員として適当なのかということがないと、すばらしい実践はいろんなところで聞けることができるんですけれども、全国いろんなところがあると思いますので、それを底上げしていくには何らかの基準というのは必要ではないかなと思います。
 一方で、いろんな基準を作っても、先ほどの奥田参考人のお話にもあったように、生活困窮者の人たちを支援していくというのは、それは多分倫理観だと思うんです。その倫理観を育てるには、専門職としての信頼を、スキルを高めて、その教育を充実していく必要もあるんだろうと思います。その際、研修やスーパーバイザーを付けるというようなお話があったと思うんですが、では、果たしてこの研修の講師やスーパーバイザーとして適切な方がどれくらいいるんだろうというのがやや疑問なところです。
 私も県の研修講師を実はしておりまして、毎年、まだ二年目なんですけれども、何で私がやるんだろうと思いながら試行錯誤しているんですが、その研修する人間、それからスーパーバイズする人の育成も視野に入れていただければなと思います。
 また、現時点では難しいとは思うんですけれども、私が大学で社会福祉学科において学生を指導し、ソーシャルワーカーを育てるという仕事をしておりますが、その際、実習に学生を出すんですけれども、その実習先として現在生活困窮者自立支援法の関連機関は入っておりません。それは、先ほど申し上げたような支援員の体制が脆弱であるということによるんだとは思うんですけれども、とてもいい実践をされていらっしゃるところがたくさんあって、是非学生にもそういうところに実習に行ってもらいたいなと思うんですけれども、社会福祉士法の改正は予定されていると思いますので、その法や施行規則の改正などの際にも御考慮いただければと思います。
 そして、支援者の待遇、それから様々なスーパーバイズなどを含めて支援者がエンパワーメントされて、やりがいの搾取にならないような状況をつくっていただければなと思います。
 次に、生活保護法の改正についてなんですけれども、この点につきましては、私は正直、今回の法改正に入っていないことの方が重要だと思っておりまして、一つ目は保護基準の見直しについてです。
 この保護基準については現在水準均衡方式を使っていると言われますけれども、これは一九八〇年代に採用された方式で、私が研究するところでは八〇年代から既に行き詰まっている方式だと思います。事実としては、二〇〇三年から十五年間、全体の傾向として保護基準は引き下げられていて、水準としては下がっています。
 そのこと自体をどう考えていくかというのは次にお話ししたいんですけれども、近年の基準の見直しの結果、これは厚生労働省の資料ですが、レジュメの三枚目にございますように大変算定が複雑です。三年掛けて基準を下げていくに当たって、このような計算式をしなければ基準を算定できないので、私は授業で学生に自分の生活保護費を算定させるんですけれども、これはもう、こうなってしまうと学生に算定させるのはちょっと難しいなと思えるほど複雑になっていて、これはケースワーカーの方にも理解しにくいと思いますし、さらに利用者の方にどう説明するんだろうというのが疑問なところです。
 二点目に、では、保護基準と最低生活費についてどういう議論をしていけばよいのかということについてなんですが、まず、審議の中でも基準見直しの影響を測定すべきではないかという御意見があって、私もそのとおりだと思うんですが、もう一つ検討していただきたいのは、基準を見直したということは、基準が下がったので、そのことによって給付を受けられなくなった世帯がいるということが一番の問題だと思います。なので、その世帯の推計というのは必要ではないかと考えます。
 それから、保護基準の水準均衡方式というのが一九八〇年代から行き詰まっているというお話をしましたが、では、今後どうしたらいいのかということで、二枚目の点なんですけれども、生活保護に負わされている役割というのは物すごく大きくて、負荷が大きいなと感じています。他制度も準拠していて、基準が下がることでほかの制度の基準も下がってしまうと。それはやはり良くないことだとは思うんですが、その全ての役割を保護基準が担うというのは重いと思いますので、保護基準の算定と最低生活費の在り方の議論は分けて、後者は参照基準として、こちらを最低賃金、ほかの非課税限度額とかにも準拠してもらうというのがよいのではないかと思います。
 また、保護基準の議論をする際には、これは運用で決められていることですけれども、資産の額、まあ資産といってもそんなに資産をたくさん持っている方が受給者の方にいるわけではないので、手持ち金の額と扶養義務の範囲の検討を併せて行っていただきたいなと思います。これを議論するのに先ほどの捕捉率の推計も必要だと思いますし、生活困窮者への波及というのも検討できるのではないかなと思います。
 最後に、実施体制についてなんですけれども、ケースワーカーの数が少ないというのはよく取り上げられるんですが、そもそも行政の職員ですので、質は余り問われてこなかったと思います。そのことの問題も大きいと思います。
 他方で、行政に課される業務が相当多くなっているなと感じておりまして、先ほど見ていただいたこの資料で、二〇一三年から三年間、保護基準の変更があったわけですけれども、新聞報道などでも、システムの間違いによる過払いや過少支給というのが報道されていました。
 システムについてなんですが、これは最後のものですけれども、自治体によって使っているシステムが違うわけです。つまり、自治体ごとに開発している。もちろん基準が地域によって違うということはあると思うんですけれども、このようなシステムの構築こそ国がしていただければとてもよいのではと思う点です。
 最後に、法改正をむしろしていただきたいなと思う点について三点挙げさせていただきました。
 一つは、高等学校等就学費を教育扶助に入れていただきたいということです。これは、大学進学が今問題になっていますけれども、高等学校等就学費は今、生業扶助に入っていまして、保護の要否判定の際に用いられる基準に入っておりません。高等学校等就学費を教育扶助に位置付けることも重要だと考えます。
 それから、先ほどの扶養義務の範囲については夫婦間と未成熟の子の親に限定する、又は保有可能な手持ち金額を明記することも必要と考えています。
 以上です。ありがとうございます。
○委員長(島村大君) ありがとうございました。
 次に、尾藤参考人にお願いいたします。尾藤参考人。
○参考人(尾藤廣喜君) 弁護士の尾藤と申します。
 私は、現在、一九九五年、平成七年の十月に設立されました、生活保護の裁判を担当している弁護士等がお互いに協力するためにつくった団体であります全国生活保護裁判連絡会の代表委員をやっております。それから、生活保護を始め社会保障を良くするための運動団体であります生活保護問題対策全国会議の代表幹事をやっておりまして、日本弁護士連合会では貧困問題対策本部の副本部長を拝命いたしております。
 それから、これは過去の経歴になりますけれども、一九七〇年の四月に厚生省に入省いたしまして、一年半保険局の企画課において医療保険を担当し、その後、一九七一年十月から社会局の保護課で生活保護を担当した経験を持っております。
 今回、生活困窮者自立支援法等の一部改正法案の審議に当たり、生活保護法に関連する問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
 一番本当は大きな問題は、この法案の中身には入っていないわけですけれども、厚生労働省が今年の十月から三年間で平均一・八%、最大五%の基準引下げを予定しているということでございます。
 この問題については、私の方でお配りをしています資料で少し図になったものがございますが、資料の三枚目でございますけど、日弁連で作りました図でございますけれども、このように、二〇〇四年から今回の引下げに至るまで、実は次から次へと引下げが行われている。先ほど岩永参考人も言われましたけれども、ここずっと引下げが続いているということでございます。夫婦二人世帯でいいますと一〇・九%の引下げ、それから、老齢加算が引下げ、削除されました二〇〇四年からいいますと、単身の高齢世帯については実に二四・五%も引き下げられているという実態があるわけです。これが一番私としては問題ではないかというふうに思います。
 今回の引下げの一番の問題点は、実は、そこの資料にありますけれども、所得の下位一〇%の層との比較、均衡で基準を決めているということでございます。先ほど岩永参考人も話ありましたけれども、水準均衡方式というのは少しずつ変わってまいりまして、今回のやり方というのは本来の当初の水準均衡方式とははるかに離れた問題になっています。
 下位の一〇%の層と比べるということになりますと、日本で、先ほど議論になっています、生活保護を本来利用できるはずの人で利用している割合が大体二〇%を切るんじゃないかというふうに言われておりますので、本来ですと、生活保護を受けている世帯の層の基準と生活保護世帯の状況を比べてみるということになるわけで、言わば低い層同士で比べてみる。本来であれば生活保護を受けられた層と比較をするということになってしまうわけでありまして、そこが一番の問題ではないか、これでは際限なく下がっていくんではないかということであります。
 それからもう一つは、実は二〇一三年の引下げのときは一般の低所得世帯の消費水準と生活保護基準の比較をしただけではなくて、当時の審議をされていました部会の結論とは別に、デフレによって物価が下がっているんだということで厚労省の独自のCPI、つまり消費者物価指数を用いまして引下げを行ったということがあります。それで最大で一〇%、平均六・五%と引下げがなされたわけですけれども、ところが、今回は不思議なことに、本来、物価の変動を考えますと、基準部会に出された資料によると、上がるはずのところが、それが全く検討されずに、結論的にその部分は全く使われずにこういう結論になっていると。いささか方針というか計算式に一貫性を欠くのではないかというふうに思っております。基準の問題で申し上げますと、それが一番大きい問題ではないかなというふうに思っております。
 それから次に、生活保護法の改正案の関係で、私どもが所属しております日弁連では、これも私が配っておりますけれども、資料で後ろの方に法六十三条に関する非免責債権化と天引き徴収についてこれに反対をするという意見を、会長名、日弁連として意見書を出させていただきました。私も同意見であります。
 ここで少しちょっと技術的になってしまうんですけれども、今回の改正案は、法六十三条、つまり生活保護費を受け取り過ぎた場合の調整、不当利得という、法律的に言うと不当利得なんですけど、受け取り過ぎた場合の調整の問題と七十八条の債権、これはいわゆる不正受給、不法行為によって取った債権ということになりますけれども、その両者を一緒に取り扱おうということでございます。この点につきましては、法の六十三条の性格というものをもう少し考えなければならないんじゃないかなと思うわけです。
 先ほど申しましたけれども、私が厚生省におりまして生活保護を担当していた時期に、ちょうど私の資料に出しておりますけれども、通達、後ろの方に裁判例、裁決例、通知の内容ということで表にしておりますが、昭和四十七年の十二月五日に通達をお出ししました。この通達はくしくも私が起案をして、当時の係長であります河出英治、後に総務省の事務次官になられました河出さん、それから厚生労働省でその人ありと知られる中野課長と三人で法制局と協議した上で出した通達でございますが、この考え方は、法の六十三条というのは、まず債権として確実になったときから返還の対象とするということ。それから、何としても自立の助長ということを考えなければいけない。自立の助長を考えて六十三条の返還を定めなければならないということを基本的な考え方として、これ法制局と協議して通達で出させていただいたわけです。これは、生活保護を受けている人たちが、例えばお金が入った場合にこれを全額収入認定してしまえば今後の自立に対するスプリングボードがなくなるわけですね。多額入った場合にはそれを収入認定せずにゼロ円決定、六十三条の返還を求めずに保護を廃止、つまり自立してもらうという機能も持たせるということでありまして、ある意味で自立の助長というのは非常に重要な問題なわけです。
 ところが、今回の場合には、その六十三条、つまり、目的も違うし債権の性格も違うものを七十八条と同じ形で破産した場合も非免責債権にすると、それから天引き徴収を可能にするということになっておりますので、これはちょっといかがかというふうに思います。日弁連の意見書にあるとおりでございます。
 むしろ六十三条の返還の決定に当たっては、私どもが当初出しました通達のように、自立のために必要な経費を控除できるということを御存じない利用者の方もいらっしゃいますから、それも控除できるんだということで自立の手助けをしながら、そして控除額を決定すべきではないかというふうに思います。そういう判決はたくさん出ておりますので、その判決も出しておきました。
 それからもう一つ申し上げたいのは、ジェネリック、後発医薬品に対する給付を原則とするということの問題でございます。
 前回の法改正では、ジェネリックについて、可能な限りその給付を行うよう努めるものとすると、まあ努力目標であったわけですけれども、今回は原則として後発医薬品によりその給付を行うものという形になって、原則規定としたわけですね。
 御承知のとおり、一九八一年の世界医師会総会で、患者の権利に関するリスボン宣言がございまして、医療についての自己決定権が非常に重要であると。それから、国際人権規約の十二条では、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利というものが認められているわけです。
 こういうふうに、国際人権規約とかリスボン宣言という前に、私が担当していたときの医療に対する考え方ですけれども、健康保険の給付と生活保護の給付というものは全く同じにすべきであるという考え方で貫いていました。つまり、命と健康はお金のあるなしにかかわらず平等なんだというのが一つの哲学だったわけですね。今回はこの考え方を根本的に崩すものであるので、これは日本の医療保障、特に貧困者に対する医療保障については重大な問題ではないかというふうに思っております。
 それから最後にもう一つ申し上げますが、今回の改正案で大学進学のための費用の支給制度が認められたというのは非常に大きな一歩であるというふうに思います。しかし、率直に申し上げてそれだけでは不十分でございまして、大学に進学した場合に、その方は世帯を分離されて、生活保護費の支給はされない。つまり、大学の進学の費用と自分の費用というものを賄わないと大学に行けないという状況になっているわけでございますので、やっぱりそういう形の保障を是非とも検討していただきたい。今回無理であれば、厚労省が生活保護世帯出身の大学生の生活実態全国調査をされて、そのデータが既に三月頃に届いていると聞いておりますので、その内容もしっかり分析していただいた上で、何が大学進学のために必要なのか、これで十分なのかどうなのかということをしっかり検討していただきたいというふうに思います。
 私が申し上げたいことは、生活保護制度というのは市民の岩盤、いざというときにどういう給付がなされるかということで、岩盤を支える非常に重要な制度でございます。若い人も、高齢の方も、障害のある人も含めて、いざというときに生活保護の利用ができるということが本当の意味で希望を支えるという制度でございますので、その点を十分理解していただきまして、いい制度にしていただきたいと。
 先ほど岩永参考人も言われましたけれども、今回の改正案では、残念ながら、そういう根本的な改善、制度の改正、例えば資産の保有の問題、先ほどの預貯金の問題をどうするのか、自動車の保有の問題をどうするのかという問題とか、あるいは先進諸国の中で一番厳しいと言われておる扶養の問題をどうするのか。あるいは生活保護法という名前でいいのか。お隣の韓国では国民生活基礎保障法というように名前を変えていますですね。ドイツでは、社会扶助という言葉では受けにくいでしょうからということで、稼働年齢層が受けやすいように、失業手当U、第二の失業手当という形で名前を変えておられます。もっともっと受けやすいような形にすべきだと思いますし、生活保護がなかなか理解されていない状況の中で、きちっと申請すれば利用できるんだということをもっともっと広める必要があるのではないかということでございます。
 以上でございます。
○委員長(島村大君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○自見はなこ君 参議院自民党の自見はなこでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、それぞれ、実践の現場におられる立場として、そして研究者として、そして制度に対する活動の弁護士の立場としてされている、それぞれの四人の参考人の方々に貴重な御意見をいただきましたことを改めて心から感謝を申し上げます。
 私、本職小児科の医師でございまして、断らない福祉、断らない相談というところは非常に腹に落ちるところがございました。医療現場でもそうでありますけれども、来た患者さんを一切断ること、もちろん念頭にもございませんので、その上で制度設計をどうするかですとか、その上で自分自身の医師としての技量をどうやって研さんして磨いていくかということが我々の職務だと思って働いておりましたので、この断らないということを前提にしたというところに非常に私自身も共感を覚えたわけであります。
 また、制度は人のためにあって人は制度のためにあるわけではないという言葉が実は私は非常に好きでありまして、制度はいつも完璧ではないわけでありますけれども、それをどうやって、人間として関わっていきながら、制度にないものを埋めていくかといったところも含めて、我々がやっていくことは非常に大きいんだろうというふうに思いました。
 今日は限られた時間でございますので、まず、勝部参考人と奥田参考人に御質問をさせていただきたいと思っております。
 今回の改正案では、生活困窮者自立支援法第二条に基本理念というものを創設されました。そして、人間関係のことも触れていただきましたけれども、地域社会からの孤立ということの現状において、包括的かつ早期に支援を行うということや、あるいは地域における福祉等の関係機関、民間団体との連携や支援体制の整備に配慮して支援を行うべきことというふうに定めております。
 このように、今回の法改正というところは、やはり大きなポイントは、社会的困窮ということだけではなく社会的孤立ということも明記した、あるいは地域づくりということ、また困窮者支援を充実するための地域資源の充実に取り組むという、こういった視点が盛り込まれたというところはやはり大きなことだというふうに私自身は感じているところでございますけれども、この基本理念というものが打ち立てられたということは現場の支援相談に従事する方々にとってどのように受け止められているのかということと、それから、この基本理念を明確化したことで実際の生活困窮者に対する支援にどのような効果が現れるということが期待できるのかということの二点について、それぞれのお考えをお伺いしたいと思います。
○参考人(勝部麗子君) 今の御指摘は我々も今回大変期待をしている点であります。
 社会的孤立ということがこの法律の中で明記されていなければ、生活困窮に陥るということ自体が自己責任、自分が悪いんだからSOSを出しちゃいけない、周りの人もそういう状態にある人に対して冷ややかに見ている。
 残念ながら、先日も、札幌です、八〇五〇の残念な事件がありましたが、ああいう問題も、周りの方は実は知っていた、薄々知っているけれども相談に乗ってあげていいのか分からないとか、あるいは見て見ぬふりをしている。今回の課題が、社会的孤立に対してしっかりと明記したということで、早期にみんながSOS出していい、そういう優しい地域づくりをしていくということが法律のもう一つの柱になったということは、我々としては地域の人たちがSOSを出しやすくなるということにつながると思いますので、非常に重要だというふうに思っております。
○参考人(奥田知志君) 私も二条に理念が入ったことはとてもよかったと思います。それはひとえに孤立という概念が明確化されたということであります。
 ただ一方で、やはり私は地域も大事だし、人が最終的には人を支えるということが原則なんですけど、それがゆえに、やはり公的なものが一方でしっかりしていくということがやっぱりセットなんだと。自助、互助、共助、公助ということをよく言われますけれども、私は、ダム決壊論みたいに、自助が駄目なら互助、互助が駄目なら共助、共助が駄目ならいよいよ公助という、現実、現場はそうなっていません。私は、ある意味自己責任取れる社会になりたいと思っているぐらいで、本人が本当に頑張るためには、やはり共助の部分も公助の部分も並行して活用できる、そこに何の規制がないという、やっぱりこれは対象を選ばないとともに、手段を選ばないというか全てのものが使えるということが前提であります。
 ですから、このところで関係性の強調とともに、私はやっぱりそれが全てがセットになっているということは非常に重要だというふうに考えています。
 以上です。
○自見はなこ君 ありがとうございます。
 社会とのつながりということ、あるいは徹底した本人尊重ですとか人を属性で見ないということと同時に、この制度設計の難しさも私も感じているところですので、これからもしっかりとこういったところも見極めながら法案審査に関わっていきたいと思っております。
 次に、岩永参考人にお尋ねをいたします。
 今回は、法改正におきましては、健康管理の支援事業の制度上の定義について新たにいろいろなことの施策がうたわれておりますが、この法改正の中で盛り込まれました健康管理支援事業ということに関しまして、生活保護制度の中でどのような意義があるというふうにお考え、あるいは評価されるというふうにお考えか、お聞かせください。
○参考人(岩永理恵君) 率直に申し上げますと、生活保護を受給している方は健康状態が悪い方が多いと思いますので、そういう意味で健康について配慮する方が増えるというのはいいことだと思います。そして、関わる人が増えるというのはいいところだと思うんですけれども、そもそもは生活保護に入る前の時点からの健康に留意できる環境でないと生活保護の問題というのはいつまでたっても解決しないところかなと思いますので、その点は御留意いただきたいなと思っております。
 以上です。
○自見はなこ君 ありがとうございます。
 残り少ない時間になっておりますけれども、最後に尾藤参考人にお伺いしたいと思います。
 今回の法改正と直接的には関係ないかもしれないんですが、基本的な考え方のところでございますが、スイスで国民投票も行われましたベーシックインカムというような議論も、私たちどこかでやっぱり考えていったり、あるいは念頭に置きながら法制度の設計というのをしていく必要もあるのかなという、これは検討事項となってくると思うんですが、このベーシックインカムということについて尾藤参考人の御意見をお聞かせください。
○参考人(尾藤廣喜君) ありがとうございます。
 実は、ベーシックインカムとか負の所得税、一緒にはなりませんけれども、そういう形の考え方は私が厚生省にいたときからもう既に議論がございまして、私も在職中に議論をしたことがあるんです。
 もう今だから言っていいと思いますけれども、ベーシックインカム、賛成だという方と反対だという方、非常に分かれていたわけですけれども、私はどちらかというと反対派でございます。
 その理由は、今でもそうなんですけれども、ベーシックインカムということになると、金銭給付ということになりますので、日本の場合、例えば医療の給付を考えてみますと、個人的に医療給付を、物すごく金額の給付、差があるわけですね。重度の医療の必要がある方、それからそうではない方ということでかなり違いがありますね。それから、例えば介護に関してもかなり違いがあると。そういうものをまとめてベーシックインカムという形で、基本的に全ての人を平等に、もちろんミーンズテストをやらないということでないとベーシックインカムの意味はないと思いますので、そういうことで全ての需要を本当に賄うことが可能なのかどうなのか。もしそれを全ての人で賄うベーシックインカムをするとすれば、莫大な費用が掛かると思いますね。だから、そういう財政が賄えるのかどうなのかと。そういう意味で、私は、日本の状況においてベーシックインカムを導入することはちょっと無理なのではないかというふうに考えております。
 ただ、ベーシックインカム的な考え方で、私も先ほど申し上げましたけど、医療とか教育とか、まあ住宅も含めていいと思うんですけれども、基礎的な問題について私は全ての国民に保障するという考え方は必要だと思いますので、もしそれを現物として何らかの形で考えるということであれば、そういう制度は考えてもいいのではないかなというふうに思っております。少しオーソドックスなベーシックインカムの考え方とは違うと思いますし、そんなふうに考えております。
○自見はなこ君 ありがとうございました。
○山本香苗君 公明党の山本香苗でございます。
 本日は、参考人の先生方、本当にお忙しい中お越しいただきまして、本当にありがとうございます。
 まず、勝部参考人と奥田参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
 今日お話を伺わせていただきまして、ようやくこの生活困窮者という定義が現実に即したものになったんだなというお話を伺わせていただいたんだと思っております。
 社会的孤立というものをしっかりとその判断の中で、どういう人が生活困窮者に当たるのかという中で、しっかり皆さん方が実態としては見ていらっしゃったけれども、制度になかなか書いていなかったことによって混乱があったようなケースもあったと、これが解消されると思っておりますが、じゃ、今度は社会的孤立というものにどうアプローチしていくのかというところで、ここが一番、書いたはいいが、実際これをしっかりやっていくんだという中で、支援の現場で頑張っていらっしゃいますお二人の参考人から具体的なお話を伺わせていただきたい、また、それに当たっての課題も併せてお伺いさせていただきたいと思います。
○参考人(勝部麗子君) ありがとうございます。
 社会的孤立の問題については日々奮闘しているというのが現状でありますが、先ほども申し上げましたが、OECDの中で一番孤独になった日本の人たち、そして誰もが一人になっていく、お一人様になっていく社会。お二人暮らしであっても、どちらか亡くなれば独り暮らし。独り暮らしになると電球交換すらできない世帯がたくさん増えていく。孤立死、それから離婚ですね、核家族のことで、本当に社会そのものがばらばらになっていっているというのが現状であります。
 このばらばらになっていっているのは、勝手に自分たちが群れることを取り戻せるかというのは、これはなかなか難しいというふうに思っていまして、地域でやっぱりそれぞれの人の居場所と役割をつくっていくための地域のコーディネーター、これは住民の中からそういう人たちが生まれるということも実際ありますが、私たちの仲間、ボランティアの方々は、知ることによって優しさは生まれるというふうに言います。本当にその人たちが置かれている現実を、住民同士だともう一歩踏み込んで知ることができませんので、そこに専門職がしっかり介在をしながら、本人のいろんな悩み事であるとか、そういうことをしっかりと分かる、そういう存在をつくっていくことが一点。
 それから、この社会的孤立というのは、私は何か少子化ということと非常に似ているように思います。以前、少子化というのは個人の問題で、子供を産まないという選択をしているんだというふうに言われていましたが、孤立を望んでいるという話と子供を産まないというのは何かよく似たように思います。孤立にさせられていっている。あるごみ屋敷の男性が、ごみ屋敷になってセルフネグレクトだと人に言われたが、そうではない、私はソーシャルネグレクトに遭っているというふうな話を聞きました。
 実際に社会がこういう問題を考えていくと、自己責任にしないということで、是非孤独ということを徹底的に議論できる国の機関でありますとか、そういう体制を今この時期に御検討いただけることがこの問題に立ち向かっていく一つの方策ではないかというふうに思います。お願いします。
○参考人(奥田知志君) 私は、本当に難しいこれからのことだと。元々、その社会的孤立というのをどう捉えるかということ自体から始めなきゃならないというのが先ほども言いましたとおりです。
 でも、その上で、実際、ホームレスから始まった様々な現場でいうと、一つは、もう当たり前のことなんですが、生活が安定、安心するという、これをちゃんとやらないと、これ、社会的孤立が今問題だと私は繰り返し言いましたけれども、あくまでも、経済的困窮と社会的孤立という、これセットですから、何かぼろは着てても心の錦みたいな世界を描こうとしているわけではなくて、これはあくまでセットであると。だから、生活の安定がやはり対になっていないといけませんというのが、まあこれは生活保護の問題も含めてそうです。
 もう一つは、今、勝部さんおっしゃったように、やはり助ける側と助けられる側の固定化が一番まずかったですね、これは。助けている人はいつも機嫌よくやっているんですけど、助けられている人はいつも謝らされている、済みませんと言わされている。ここに、やはり役割とか自分の社会的意義みたいなものをどうするか。やっぱり、自尊感情とともに自己有用感ということをどう仕組みに変えるかということが非常に大事だったですね。
 あと、私は、社会的孤立を専門職とか、三番目の問題としては人の問題そのもので、ただ、私は何かその孤独担当大臣の話もニュースで聞いてびっくりしたんですが、今後、この社会的孤立に対するアプローチができる人材の育成、これも必要だと思います。けど、まあちょっと語弊のある言い方ですけど、私は、最終的には質より量だというのが現場の感覚です。何か物すごい専門職を一人養成するよりか、細い線でいいから何百本の線をつなげていくということが実は大事で、そこの中で人というのは実は何げない日常を暮らしていくわけです。だから、問題解決においては高度な専門職が必要でしょうけど、一方で、社会的孤立に関しては、まあ語弊がありますが、質より量だとこの頃ちょっと恐れず言うようにしておりまして、専門職からは嫌がられているということであります。
 以上です。
○山本香苗君 ありがとうございます。
 支える人たちをたくさんつくっていくということが大事なんだなと思うんですが。
 それで、済みません、時間が。
 次に、岩永先生の方にお伺いさせていただきたいと思いますが、アカデミックな立場で、今お二人は実践の場でおっしゃっていただいたんですが、社会的孤立って定義付けるというふうに思ったときに、どういうふうな考え方というのが必要だと思われますでしょうか。
○参考人(岩永理恵君) 社会的孤立という言葉を聞いたときに私が一つ思い出すのは、日本で貧困問題が問題になりました九〇年代以降にもう一つ新しい言葉が出てきて、それは社会的排除という言葉だったんですね。これが社会的孤立にちょっとずつ置き換わってきたように感じていて、それどちらも必要だと思うんですけれども、どちらかというと社会的排除は構造に着目していると思います。社会的孤立は、先ほどからの御発言にあったように、個人に着目していると思うんですが、やはりその社会的排除の概念、諸外国で用いられたときにも、仕事に就けないとか、失業であるとか、非正規の労働であるとか、あるいは家族がいないわけではないんだけれども家族環境が悪いというような、そういう根本的な問題にも着目する、そちらの概念にも着目をしていただきながら定義していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○山本香苗君 ありがとうございます。
 ちょっと、尾藤先生、済みません、お時間来たんですが、最後におっしゃっていただいた進学準備金の、生活保護家庭のお子さんの大学進学、今おっしゃっていただいたとおり、実態調査、厚生労働省の方があの大阪市大と堺市がやった分の全国版をやっていただいておりますが、まだちょっと出ていないそうなんですね。出たらちゃんとしっかりやりますのでとお伝え申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。済みません。
○参考人(尾藤廣喜君) 報告は一応三月に上がっているということをお聞きしていまして、今まとめ中ということで、本当はこの法案の審議までにおまとめいただければ有り難いなというふうに思っていたわけですけれども、せっかくなさった調査ですので、その成果を是非とも今後の制度の充実のために、まあ小さく産んで大きく育てるというお考えだと思いますので、是非とも生かしていただきたいなというのが私の趣旨でございますので、よろしくお願いいたします。
○山本香苗君 終わります。
○足立信也君 国民民主党の足立信也です。
 四名の参考人の先生方、本当にありがとうございます。
 私は、昭和三十年代、所得倍増計画があって、そして自己責任の社会が生じていったと、そのように捉えています。結婚、出産、子育て、教育、そして老後も自己責任の社会に入っていったと、そのように思っていまして、それは何かというと、競争社会を生んだ、そしてその結果孤立になってきた、そのように捉えておりまして、四名の先生方、やはり孤立ということが一番の対象なんだ、あるいは課題なんだということだったと思うんです。
 奥田さんに質問したいんですけど、私は、これは生活困窮者自立支援ですが、自立しても孤立にはなると思うんです。自立と孤立は反対語ではないと。なので、本来、これ生活者自立支援よりもやっぱり孤立解消ということがメーンに出るべきことだと思っておりまして、その一つの手段として、地域包括ケアシステムという形でコミュニティーの再生をしようということをしていったわけですが、これ二〇〇九年当時、総理は、新しい公共ということで、ボランティア、NPOの方々にしっかり担ってもらわなきゃいけない、質より量かもしれません、先ほどのお話でですね。なんですが、これをシルバーイノベーションっておっしゃられたので、私はそれ否定したんですが、今後、二〇三〇年ぐらいまでは七十五歳以上は増えるけど、それ以降は減っていく、しかし四〇年までは八十五歳以上が増えていく、しかしその後は減っていくということの中で、質より量は確かなんですが。
 お聞きしたいのは、自立支援という概念よりもやはり孤立解消ということがメーンではなかろうかという私のその考えに対して、奥田さんの考えを伺いたいと思います。
○参考人(奥田知志君) そうですね、あれかこれかでは私は当然ないと思います。ただ、今回のこの法案とか制度において、やはりやっと孤立という問題がメーンに出てきたということは非常に大きい話でありまして、これを、先ほど私の発言の中にありましたように、例えばこの事業の成果指標を就労や増収だけで見てしまうというのは非常に危険であると。
 で、この孤立の解消というのはどう見るのかということですよね。それは、やはり今後新しい指標等も含めて考えるべきだし、私は、一般的にはやっぱり自立の反対は依存だと言われてきて、依存するな、自立しろ、若しくは人に迷惑を掛けるなというのが自己責任論社会の道徳になってきたと、これによって若者たちは助けてと言えなくなった、まさにこれは社会的に排除されていったわけです。
 でも本当は、自立の反対は、先生今おっしゃったとおり、私は自立の反対は孤立だというふうに考えていまして、依存という言葉で表すかどうかは別ですけれども、人と人が助け合って生きていくというのはそんなイレギュラーな問題ではなくて、今後のこの社会の在り方の本質そのものだと考えていますので、そういう意味においては、孤立問題を解消するというのは非常に大きいわけであります。
 以上です。
○足立信也君 ありがとうございます。
 岩永先生にお聞きします。
 捕捉率のことを今おっしゃられました。これ、扶養と資産の問題が大きいということなんですが、例えば、私、大分なんですが、国東半島で国東時間という、これ週休三日制の会社なんですね。なぜかというと、ほかの地域と同じように、週休二日のその二日は家族のためというのが、あるいは自分のためというのが大きいんですね。しかし、残り一日の休みは地域のため、コミュニティーのために働かないと維持できないんです。そういう時間帯を取っているんですね。
 資産のことについて伺いたいんですが、今、捕捉率平均二〇%ぐらいですよね、日本の報告は。その中で、資産があることがかえって大きな負担になっていて、そしてその地域に残された、まあ主に中山間地ですけれども、その人たちはそれが負担になり、かえって本当に支援受けられなくて孤立されている方が非常に多い。
 この資産の評価の在り方といいますか、捕捉に関係して、保護の認定に関係してどのように捉えておられるか、お聞きしたいと思います。
○参考人(岩永理恵君) 今おっしゃったような困ったことがある世帯については、むしろ生活保護よりもこの生活困窮者自立支援法が利用可能な世帯なんだろうなと思います。
 資産については、どう評価するというのは難しいなと思うんですけれども、そうですね、地方と大都市部とを一体に論じるのは難しい面もあるかなと今お話を伺って思いました。大都市では小さくても土地を持っていればやはり価値は高いですけれども、売れるか売れないかというと、地域問題というのはすごく大きいのではないかと思います。
 済みません、不十分ですが、以上です。
○足立信也君 ありがとうございます。
 まさに今先生おっしゃったことが、リバースモーゲージのモデルとしては地方の方は当てはまらないことの方が多いということだと思います。
 今回の法案審議に当たっても、生活保護について、次は尾藤先生にお伺いしたいんですが、医療扶助、これが生活保護の中での半分を占めていると、大きな問題だと。先ほどジェネリックのことはおっしゃいましたが、前回の質問で我が党の浜口さんが資料を出されたんですけれども、これ前から私も指摘しているんですが、外来受診については高齢者と生活保護の方ってほとんど変わらないんですね、回数も費用も。そこでジェネリックということが果たして効果があるのかという、これは置いておいて、問題は入院です。明らかに入院の方が費用が高いわけですね。
 この医療扶助の中での入院のところは、どのような方策、先生が最初は保険局でその後社会局におられたということで、発言の趣旨とはちょっと違いますけれども、この医療扶助が大変な大きな問題だと私は思いますので、特に入院についての先生の考え方、お伺いしたいと思います。
○参考人(尾藤廣喜君) まさに御指摘のとおりでございまして、私、生活保護の今の財政の中の非常に重要な問題は医療扶助の問題であると。しかも、その中でウエートの一番大きいのは入院の問題でありまして、その中でも精神に関する入院が非常にウエートが高いわけですね。だから、その問題、実はその問題は、私が在職していた今から四十数年前にもう既に萌芽がございまして、精神の問題を医療扶助としてどうするかという議論はあったんですけど、率直に申し上げて、全く手付かずというか、そのままになってきている。
 私は、精神の入院についての医療扶助の在り方というものを根本的に検討をして、一定の私は制限といいますか、はやらなきゃいけないんじゃないかと。生活保護の給付を充実すべきだという運動団体をやっておりますけれども、でも、やっぱり規制すべき点は規制すべきだと思いますので、御指摘の点は非常に大事な点だと思います。ただ、一般の入院の問題についてどうなのかというのは、データを見てみなければ分からないと思います。
 ついでにちょっと申し上げますと、外来に関して、生活保護を利用している方々が言わば自己負担がないために受診が多いのではないかという御指摘があるわけですけれども、実際は現場の状況はそうではございません。
 例えば、二〇一二年に西成の特区構想を当時の橋下市長がやられたことがありまして、そのときに西成の外来の調査をされたことがあるわけですけれども、生活保護受給をされている方と一般の方との外来での比較はそれほど有意の差はないという結論が出ておりますので、自己負担分がどうなのかということで給付の問題を解決をするという方法は私はおかしいのではないか、実態を見ていないんじゃないかなというふうに思っております。
 先生御指摘の入院の問題は非常に大事なことであると私も思っております。
○足立信也君 ありがとうございます。精神の問題ももちろんそうですね。
 入院と外来の決定的な違いはどこにあるかというと、外来は自己決定、自己判断ができるんですね。入院の場合はほとんど医療者側の判断でやっている。ここに改善の余地があるということは、いろいろ手は前から打っていますが、そういうことだろうと思います。
 どうもありがとうございました。
○難波奨二君 立憲民主党の難波奨二でございます。
   〔委員長退席、理事石田昌宏君着席〕
 今日は、本当に四名の参考人、それぞれ御活躍なされておりまして、心からの敬意を表したいと思います。全て四名の方の御意見、私、共鳴ができるところでございます。
 時間が少なくて大変恐縮なんですけど、共通して四名の方にお聞きしたいと思いますが、私は、岡山県の中山間地、集落は七軒、山の湧き水を飲んで大きくなりまして、小学校六年でおやじを交通事故で突然亡くしまして、母親の手の下で育ってきたんです。
 国会でこういう生活困窮者の問題等々の議論は常にあるんですけど、そのときやっぱり改めて私が申し上げたり感じるのは、たまたま私はまんよくレールを外れることなく生きてきたのかなというふうに思いますけど、国や行政がいろんな施し、施しという表現は非常に本当はまずいんですけど、施しを行うことが本人にとっていいのかどうなのかというのは、実は、私自身は、やっぱり一定程度自己責任というのはあるべきだし、自らが自立して生きていくんだという、そういう生きることに対する強い思いというものを持ってやっぱり人間というのは生きていかなくちゃならないんじゃないかというふうに思っているんですね。
 しかし、私が、当然、政治家としても包摂社会というものを目指して今までもきましたし、これからもそういう立場で議会活動を行ってまいりたいと思いますけど、根本的にこれから解消していかなくちゃならない、我々、我が国が目指していかなくちゃならないというのは、やっぱり格差をなくしたり、困窮者をいかに生まない社会をつくっていくことだと思うんですよね。
 そこで、大変恐縮です、時間がもう短うございますが、それぞれ四名の方、生活困窮者を生まない社会、そのためにはどういうやっぱり今後制度の見直しや様々な社会構造の中で変化を、新しい息吹といいますか、そんなものをつくっていかなくちゃならないかを、生み出していかなくちゃならないか、少し、短い時間ですけれども、御意見お伺いしたいと思います。
○参考人(勝部麗子君) 様々要因はあると思うんですけれども、私も両親は島根県の雲南市、山間地で、自殺率が高いのが秋田、岩手、島根ということで、実はやはり社会的に、閉塞的に人間関係がしっかりとあって、お互いがつながっていればいいかというと、つながりがまた苦しさにもつながるというところもありますので、非常にそういう意味では、そういう地域も把握しているつもりでありますが。
   〔理事石田昌宏君退席、委員長着席〕
 先生のおっしゃっておられる根本的に格差をなくすためには何がというのは、一つはやっぱり子供の貧困の連鎖を断ち切るというところ。ここをやっぱりやり切らないと、親の家庭の状況によってその子の人生が決まってしまうということになってしまいますと、希望も、将来生きていくというところも厳しくなると思いますので、私は、どのような家庭に生まれてもその子の持っている力を引き出せるということをしっかりできるような社会を目指していくということが、唯一逆転できるというか、そういう部分につながるのではないかというふうにも思っています。
○参考人(奥田知志君) 私は、様々ありますけれども、二つ。
 一つは、今、勝部さんおっしゃった子供に絡むことですが、今回の改正案の中で、子供の学習支援というタイトルが、子供の学習支援、生活支援事業という、生活支援というタイトルが入りました。これの生活という範疇をどこに定めるかなんですが、今まで私は、やっぱり子供をどうするか、学習も含めてですね、議論してきましたけれども、実はこれは世代間の社会的相続ができていないということがもう一つの問題で、親の支援とワンパッケージにできるかというところですね。
 昨年、実は私、厚労省の調査事業をやらせていただきまして、子供の支援されているところを調べたんですが、子供の学習支援と生活支援、セットでされているところ、ほとんどありませんでした。ですから、この親の世代をどうするかという、この世代丸ごとの形をどうつくれるかというのが一つです。
 もう一つは、先ほども言いましたけれども、居住がベースです。ともかく家の確保をきちっと安定してできるかということがベースになります。ここが不安定になると、もう就労から社会的手続から全てが崩れますので、安定した居住の確保というこの居住支援がこれからの私はベースになるというふうに考えています。
 以上です。
○参考人(岩永理恵君) 私も最後おっしゃられた居住支援はとても大事だと思いますが、一番大事なのは労働環境だと思います。
 大学で学生を教えていて、今就活しておりますけれども、以前勤めていた大学で生活保護を受給していた家庭に育った学生がおりましたが、その学生のその後を見ていても、やはり良い労働環境のところに就職できるということがその後の彼の人生にとってもすごく大きいなと認識しています。
 もう一つは、高齢者の貧困を考えると、やはり所得保障を十分、水準はともあれ、いろんな人たちが所得保障にきちんとアクセスできるということが大事だと考えます。
 以上です。
○参考人(尾藤廣喜君) 貧困の根本的な解決のためになすべき方法というのは、私は、比喩的に言いますと、生活保護に対する負荷を、生活保護が今果たしているような役割を軽くできるようにすることだと思う。逆説的な意味かもしれません。
 それはどういうことかと申しますと、貧困になるには原因があるわけで、その原因にふさわしい対策をそれぞれ打つことによって生活保護が全てを引き受けているという状況を変えることができる。
 ですから、例えば高齢の方ですと、やっぱり年金の増額によって生活保護を利用しなくても生活できるような自立した生活基盤ができること。働いている人については、ちゃんとした賃金が支払われて、自分が働くことによって生活できるというような職場環境が整えられること。障害を持つ人については、障害者も働きたいという願いがかなえられるように、きちっとした作業についての工賃が支払われて、そして不足している部分については手当が支給されると。そういう形で、何が貧困の原因なのかということについての適切な対応がなされることが必要だと思います。
 ですから、私は、生活保護の充実を運動の標目にもちろん掲げておりますけれども、生活保護だけを良くして事態が解決するとは全く思っておりません。生活保護のむしろ負荷を弱めるということにこの社会として全力を尽くすことによって貧困は防げるわけだし、そうでなければならないというふうに思っております。
 以上です。
○難波奨二君 岩永参考人にお伺いいたしますけど、生活保護の額の基準の問題ですよね。これ随分研究なされておられるようでございますが、ベストミックスというか、一番やっぱり何を基準にそういう水準の額が決定されるべきか、お考え、研究なされておられる中で披瀝いただきたいと思いますが。
○参考人(岩永理恵君) すっきり回答できると格好いいんですけれども、難しいなと思っていて、八〇年代から行き詰まっていると先ほど申し上げましたが、それはそれなりの理由があるなと思います。みんながずっと知恵を絞ってきたけれど、うまくできない。それは、やはりこの生活保護の中でということになるともうもはや議論するのは難しいなと思っているので、別に議論してほしいということを先ほども申し上げました。その議論の場がまず大事だと思います。
 算定方式については、一つこれでもうパーフェクトというのはなかなか難しいと思うので、過去使われた方式なども含めて幾つかの方式を組み合わせて考えるというのがいいのではと考えています。
 以上です。
○難波奨二君 どうもありがとうございました。終わります。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 今日は、四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 先ほどの続きのようなことから、難波委員の続きの話から始めたいと思うんですけれども、やっぱり生活保護世帯の実際の暮らしぶりをお聞きしておりますと、これが憲法で規定された暮らしぶり、最低生活水準ということと照らして本当にこれでいいんだろうかという思いを常々思っているわけです。岩永参考人には、先ほど少し時間も足りなかったので、ちょっとやっぱり、そもそも健康で文化的な最低限度の生活を営むことのできる適切な水準、現状がそう言えるようなものなのかどうかということでお考えをお聞きしておきたいと思います。
○参考人(岩永理恵君) そうですね、高齢の世帯についてはとても水準が低くなったなと思います。世帯類型によってかなり基準が異なりますので水準も違うかなと思うんですけれども、その生活水準に影響を与えるのは、保護基準もそうなんですが、先ほど手持ち金、資産要件という話をしましたけれども、今の生活保護は丸裸にならないと入れない状態になっているので、その低い状態からむしろ生活保護に入ると高い生活になって抜け出るのが難しいという話もあるわけですが、とはいえ、私も少ない件数ですけれども生活保護受給世帯のおうちにお邪魔したときに思うのは、もう何というか想像以上に物がないというか、大きい、何というか、家の中にある物を聞くと、もらってきたものだとか、何というか、中古品であるとかというふうに聞いて、すごく工夫して生活していらっしゃるなと感じます。
 他方、ではそういう工夫ができないような、例えば病気があったり様々な障害があったりして暮らせない方というのは、やはりその人それぞれの使える能力によっても違ってくるかなと思うので、それは生活保護でどういうふうに担保するかというのは、基準以外のところでも支援が必要なのではと考えます。
 以上です。
○倉林明子君 ありがとうございます。
 それでは、尾藤先生に二点でお伺いしたいと思うんです。
 先ほども少し入院と外来の医療費の自己負担問題で質問がありましたが、今、医療費の窓口負担を検討してはどうかという御意見が様々上がってきております。これについて、先ほどの発言に加えて御意見伺いたいということと、あわせて、やっぱり基準問題なんですね。今回の引下げについての御意見は弁護士会のお話ということで問題点も指摘いただきました。やっぱりそもそもどうあるべきなのかというところについての御意見を、どうぞ残り時間使っていただいて結構ですので、お話しいただきたいと思います。
○参考人(尾藤廣喜君) ありがとうございます。
 第一点でございますが、生活保護世帯について医療費の一部負担を導入したらどうかという御意見があるというふうにお伺いしていますけれども、私は率直に申し上げて、それは憲法に違反していると思います。なぜかというと、生活保護基準を決めるときに医療費は計算に入っていないわけでございますので、自己負担を強いるということになれば計算に入っていないものをあえて負担するということになります。
 償還払いにするということになると、一定の期日後に入るわけですので、その間は最低生活を下回っている生活を強いることになるわけですね。だから、その間は最低生活を保障していないということになるわけですから、たとえ一円であろうが十円であろうが自己負担を強いるということになりますと、これは憲法二十五条に違反して、最低生活の計算上、私は憲法に違反しているというふうに考えます。法的に言うとですね。
 それからもう一つは、やっぱり制度を運用し、あるいは新しく変えようというときは、きちっとした事実に基づいてやらなきゃいけないと思うんですけれども、先ほども少し申し上げましたけれども、西成区の医療が非常に問題になっていると。あそこの状況をどうするかということで、当時、橋下市長が西成区を特別扱いにしましょうと。特に、あそこにいろんな形で集中をすることによって西成区というものを底上げしようという発想で、西成特区構想を二〇一二年に検討されたわけですけれども、そのときに、西成における医療扶助を受給している方についての外来の調査、医療費の分析をされたことがございます。それはデータとして既に報告されておりますけれども、橋下市長が御心配になっていたような結果ではなくて、結局、生活保護を利用している方と一般の方との差はそれほどないと、外来の関係ではそれほどないということが出ておりますので、そういう点からも、自己負担がないから過剰診療になっているとか、あるいは乱診乱療が起きるという状況にはなっていないということで、データに基づいて議論をすべきだというふうに思います。
 それから、少し時間いただきましたので、余計なことかもしれませんけれども、私、日弁連の一員としてイタリアに調査に行きました。これ、イタリアに調査に行ったというのは、イタリアは、財政事情非常に厳しいですけれども、医療費は全て無料なんですね。
 なぜそういう形になっているのかという実態を調査に行ったわけですけれども、担当の健康省の保健局のフランチェスコ・ベーベレという局長さんとお会いをして、なぜイタリアは医療費が財政状況厳しい中で無料になっているんですかというふうにお聞きしましたところ、医療と受益者負担とは本質的に矛盾すると。つまり、医療費が負担できない貧困層こそ医療が必要になってくるわけだから、そういう受益を非常に多くなっている人に負担を求めるということになると、結局、お金のある方は医療にアクセスできるけれども、お金のない方は医療にアクセスできないということになるんだということを言われました。
 私は、あえて、そうおっしゃるけれども、乱診乱療の問題とか、自己負担を増やすことによって医療費の無駄な支出というのを抑えるという考え方は取れないんですかと、こういうことを、私の考えとは違いますが、あえて御質問申し上げましたら、鼻でせせら笑われました。
 その理由は、自己負担増で受診抑制しようとするのは無能な行政官のやることであると。つまり、その結果どうなるかというと、貧困層が医療から遠ざかるということになるので、自己負担によって受診抑制とかあるいは医療費を抑制するという考え方は、それはある意味で簡単かもしれないけれども、長い年月の中に、国民の健康という面からすると、非常に大きな負担と後退をもたらすことになると。そういうことよりも、自己負担の問題ではなくて、どういう医療があるべきなのかということを国民的に問う。例えば、先ほどの入院ですと、入院の在り方としてどうなのかということを問う。国民の自己決定というのを大事にしながら合意形成をしていく努力をすることこそが行政官の役割で、安易に自己負担によって医療の規制をするべきではないというのがお答えでした。私、感激しました。
 その考え方からすれば、生活保護受給者について、自己負担を強いることによって医療から遠ざけるということになりますと、これは明らかに生活保護受給層が医療を受けられないという事態を招くことになりますので、私は、法的な面からしても実態からしても、あるいは諸外国の例からしても、全く反対でございます。
 以上です。
○倉林明子君 残り僅かなんですけれども、そもそも生活保護基準はどうあるべきなのかということで、残り時間でお願いします。
○参考人(尾藤廣喜君) 先ほどもお話が出ましたけれども、今の格差縮小方式というものが本当にいい方法なのかということについては、もう随分前から壁にぶち当たっているわけですね。基準部会の先生方もどういう形での議論をすべきかというのをいろいろ専門的な立場から御意見もいただいてもおりまして、それでいろんな意見も出ていたわけですけれども、その結論が出ないままで、第一・十分位との比較で今回引下げという結論になっているわけで、私はそういうやり方はやっぱり再検討をすべきだと。
 これ、個人的に申しますと、私は新マーケットバスケット方式と言っているんですけれども、最低生活の中身というものを現代に合わせて、どういうものが必要で、どういう費用が必要なのかということの新しいマーケットバスケットみたいなものを考えながら基準を再度練り直していいんじゃないかなと思います。そのための資産とか需要というものは、イギリスでもやっていますけれども、平均的な家庭でどれぐらいの資産が必要で、どういう需要なのかということの需要調査もやらなきゃいけないと思います。
 実は、昔、マーケットバスケット方式からエンゲル方式に切り替わって、その後、格差縮小方式から水準均衡方式に切り替わる経過でも、しばらくの間はマーケットバスケット方式の計算もやっておられた。私がいましたときはマーケットバスケット方式の計算もやって、それとの比較をしながら決めていたということございます。だから、新しいマーケットバスケット方式も一つの方法ではないかと。
 先ほど岩永参考人も言われましたけれども、いろんな形の意見を出し合いながら、本当に最低生活の在り方というものを、憲法に基づいて健康で文化的な基準を決めていただきたいというのが私の考え方でございます。
○倉林明子君 終わります。ありがとうございました。
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 今日は四人の参考人の方にお越しいただきまして、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 まず最初に、勝部参考人の方にお聞きをさせていただきたいと思います。
 非常に熱心に取り組んでおられるということがすごく伝わったわけですけれども、その中で、先ほどもちょっとお話の中で、難しいのは、生活困窮者の対象のあのマトリックスのところで、やはりその緊急度が高くて、それから就労までの距離が遠いと言われる、高齢とか障害の方たちだと思うんですが、そういった方たちをどうやって支援していって自立に結び付いていくのかというのは非常に難しいところだろうと思うんですけれども、この点はどうやって支援していっているのか、ちょっと具体的に教えていただければと思います。
○参考人(勝部麗子君) 現在、豊中市は自治会の組織率も四二%台まで落ちております。その一つの要因が、マンション、集合住宅にお住まいの方が六六%ということで、マンションは自治会をつくらない、管理組合だけというところも増えておりまして、なかなか地域とのつながりがない状態の人たちが多くいるということで。
 そこで、今日、資料にも少し入れさせていただいておりますが、究極の掘り起こしということで、最近では地域の住民の皆さんとコミュニティーソーシャルワーカー、地域包括支援センターで、選挙ではございませんが、ローラー作戦ですね、年間四千軒ぐらい、毎年、地域の方々等を増やしながらSOSを探し当てるというところまで動き始めております。
 やはり、多くの方々が困った状況になればなるほど御近所の付き合いが離れていくということで、自治会もやめられたり、御近所の付き合いなくなっていくということがありますので、そういうところを一軒一軒訪問しながら把握をさせていただくということも含めて、発見というところを努めております。
○東徹君 その発見した後ですね、どのようにして自立というか支援をしていくのかというところはどうなんでしょうか。
○参考人(勝部麗子君) 発見をして、これまでは何で発見しなかったかというと、発見と解決というのは車の両輪でして、住民はちゃんと解決してくれるところがあれば御近所の問題というのをつないでくれるということがあるわけですけれども、今、断らない福祉が始まりました。
 高齢者の中には、このAの層の方々ですね、どちらかというと、今、緊急度が高くて、そして働けないという状況の中の人たちには、もちろん生活保護以下の生活をされている方もおられますので、生活保護につなぐという、一つあります。
 障害があったり、あるいは発達障害等でなかなか今まで診察などを受ける機会もなく、自分が生きづらさを抱えながらも地域で役割を見付けられない、仕事に就けないという人たちについては段階的な支援というものを独自でやっております。
 お手元の資料の中で、今のマトリックスの二枚後のところですが、アウトリーチ、それから居場所をつくる、人間関係を回復していくということですね、そして自己肯定感を高めた上で中間的就労という、二時間五百円ということでやっておりますが、こういうふうな活動、全ての人たちが参加できる場所をつくり、そして地域の事業所の皆さん方に応援をいただいて就労体験をして、そして就労準備、そして一般就労。これは全部の方が一般就労を目指すということではありませんが、その人の能力、それからその人のできることを最大限発揮できるような役割、居場所ということをしっかりとつくっていくということを提案し、本人とともに動いております。
○東徹君 ありがとうございます。
 続きまして、奥田参考人の方に是非ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、このNPO法人抱樸、私余りまだ調べてはおらないんですけれども、奥田理事長がこういった自立支援の取組をなさっておられて、このNPO法人の運営とかどうやってやられているのかなとか、果たして本当にうまく回っているんだろうかとか、資金的にとかですね、そういうちょっと何か余計な心配で申し訳ないんですが、そういったところ、すごく気になるんですが、そういったところは大丈夫なんでしょうか。
○参考人(奥田知志君) 済みません、御心配いただきましてありがとうございます。
 うちのNPOは十七部署になっているとさっき言いましたけど、実は、ある意味就労の不安定な時代にできたNPOなので、やっぱり基本、正規雇用でやっています。だから、百人、今スタッフがいるんですけど、フルタイムのスタッフは七十名、これ全て正規雇用です。ですから、ボーナスも社保も全部、労働法規もきちっと当然守ってやると。ただ、運営は大変です。
 ですので、例えば私ども、無料低額宿泊所をやっているんですが、生活保護基準が下がるというのは、その人自身の生活レベルが下がるとともに、その人たちをお世話する人たちの事業が成り立たなくなるということで、これは非常に大きな影響が出てきているわけですね。ですから、その辺りも含めて受皿がなくなるということもやはり考えなきゃならないということです。
 ただ一方で、これはやっぱりある程度の規模があるからごまかしているという、ごまかしているんですけれども、ある意味きちっと収益性のある事業を一方でやりながら、ないところに投入するという、そういう構造をつくり出すというのが一つと、もう一つは、やはり三十年やっていますので、実は毎年寄附を市民の方々中心に三千万以上集めないと、私たち活動できません。ですので、ただ、私は、寄附は単なるお金じゃなくて市民の社会参加そのものなんですね。それと、NPOにとっては寄附が自由の担保です。
 自分たちが本当にやらなきゃならないと思うことを制度に頼らないで自分たちでまず実行する、それをいずれ制度や枠組みに変えていくという、そういうことをやってきましたので、ただ、運営は非常に大変で、毎年真っ赤っかの状態です。
 以上です。
○東徹君 ありがとうございます。
 スタッフが今百人というのはもうすごく驚いたんですけれども、こういったことに携わる人たちをどうやって発掘して、どうやって教育してやられているのか、その点のところもちょっと教えていただければと思います。
○参考人(奥田知志君) 独自に実は伴走型支援という支援論をつくっていまして、テキストも全て作って、この六年間、伴走型支援士養成講座というのを全国でもやっていまして、もう千人が今、これは社会的孤立ということに着目した支援論なんですが、そういうふうな育成プログラムも作っています。
 ただ、結局のところは、この間、本当に私、日本の若者たちがうちのしんどい事業をある意味狙って来てくれているような面もありまして、若者たちはやっぱり出番待っていると思います。ですので、やっぱりこういうやりがいのある職場をどうつくるかということが大事なのが一つ。
 もう一つは、実はその百名中、今一五%が何らかの難しい状況にある人、例えば元ホームレス、引きこもり、さらに精神。私は、職員が増えたと同時に、一定、やはり普通の職場じゃ難しい人をちゃんと、最終目標は三割というんですけど、今無理です、三割は。今、一五%がそういう事情を抱えた人たちの雇用に充てているというのが現状です。
○東徹君 ありがとうございます。
 その中で、先ほど、この資料の中にもありました、自立をしていくことによっての費用対効果の推計というところの資料をいただいておりますけれども、実際に支援していくことによって就労につながって自立していくと、こういったケースというのはやっぱりかなり多いということでよろしいんでしょうかね。
○参考人(奥田知志君) 私、ここの就労自立の議論で、やはりまず押さえなければならないのは、言わば、例えば生活保護なり云々という状態と就労自立という、この二元論で議論するのは非常に危険です。この間はグラデーションになっていまして、例えば我々がよく使う言葉で半就労半福祉、これは補足性の原理があるわけですから、足らないところは保護で足すということができるわけです。あるいは、生活はベース保護にしていったとしても、先ほどから出る医療費の問題ですね、そういうことを考えると、社会参加をちゃんと担保していくやっぱりケアが足らないわけです。生活保護は現金給付に割と特化し過ぎたというふうに私は思っていまして、ケアが足らないところで、結果、社会的コストが増えているということもあり得るのではないかというのは、現場の割と感覚です。
 以上です。
○東徹君 ありがとうございます。
 ちょっと時間がなくなってきましたので、もう終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
 今日は、深いお話をそれぞれ四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 まず奥田参考人に、三千万円寄附をもらっても百人スタッフはなかなか大変ではないかと思います。それから、放火を繰り返している人の、要するに受刑者を引き取って一緒に家で暮らしていらっしゃるドキュメンタリーを見て、もうすごいと、こう思ったんですね。先ほど質より量とおっしゃったけれど、もう質の方でも大変。
 ですから、二点お聞きをします。
 経済的にどうですかという問題と、二点目は、今日のお話でも就労支援などが結構成功しているわけですね、その苦労話や、しかし伴走ってとっても大変だと思うんですが、そこで、何か苦労話や、でも、こういうことをやっているというようなことをお聞かせください。
○参考人(奥田知志君) 苦労話、山ほどあるんですけれども、そうですね、まずはお金の話ですか。
 お金は、だからもう本当大変なんですけど、他のNPO等に比べれば、基本、給料の初任給等もある程度は担保できているかなというふうには思っています。だから、やはりいろんな事業の組合せを、だから私、制度じゃないというのが特徴だと言ったんですけど、正直、一部制度も使っていまして、障害福祉制度や介護保険制度も使っておりまして、そこのお金を全体的に回していっているということもあります。
 それと、質より量の話、一方、質なんじゃないかという話なんですが、確かにそうです。ですから、最初の部分、例えばその放火の方ですね、この方、今は八十六歳になって、五十二年間刑務所入っていた。十一回放火を繰り返して、最後、下関事件を起こすんですけれども、彼は全部の裁判で知的障害が指摘されたのに、最後の事件に至るまで障害手帳を持っていなかった。これやっぱり、彼自身の問題だけじゃなくて、社会に穴が空いているということなんですね。ですから、そこのところをまず一つ考えるということがありますし、急性期においては、実は専門家グループをつくってどうケアするか。やっぱり放火繰り返すということは、ある意味、脳内分泌物がどうかなっていたりとか、そういうアディクション系の問題があるかもしれないというのがあったので、やりました。
 でも、今は、それから出所されてもう二年たつんですが、やはり質より量で、もう専門家の出番はほとんどありません。どれだけ多くの人の中で生きるかということによって、彼は今本当に幸せに暮らしておりますので、その辺りは大丈夫かなと。
 で、苦労話の方、就労支援のことですけれども、これも質より量です。もうともかく、かつての日本社会みたいに、一発就職してそれが三十年四十年続くという前提が残念ながらもう崩れた。この不安定さが実はいろんな貧困につながっていくというのは一つ問題なんだけど、でも、その大本の問題は是非国の方でやっていただきたい。
 でも、我々現場ですから、Aという会社が駄目ならBだ、Bが駄目ならCだ、五回やって駄目なら六回だという、これしかもうないですね。その間に我々はやっぱり関係ができていく。人は、ある意味、世話になっていく中で、その人のためにも頑張ろうという気持ち、そういうふうな関係性、やる気というのが生まれるというのは、これはやっぱり事実なんですね。ですから、やっぱりそういうふうな支援ということは非常に大事です。
 以上です。
○福島みずほ君 尾藤参考人にお聞きをいたします。
 今日も岩永参考人からもありましたが、捕捉率の問題と、それから様々な集会に行くと、母子加算の引下げや今回の引下げがつらいという話を本当に聞くんですが、そのことについての御意見をお聞かせください。
○参考人(尾藤廣喜君) 捕捉率が日本は非常に低いということは、本当に大きな問題だと思うんですね。
 その原因はいろいろあると思うんですけど、一つは、やはり制度の中身が本当に知られていない。例えば、申請したら必ず受け付けられなければならないということすら知られていない。現場でも平気で申請を拒否をしているというふうな状況とかですね。あるいは、どういう場合に生活保護を受けられるのかということについてもちゃんと知られていない。例えば、自動車を持っていても一定の場合だったら生活保護受けられますけれども、それも知られていない。あるいは、年金を受けていたらもう受けられないんじゃないかなというふうに思っておられる人、働いていたら受けられないんじゃないかなと思っている人、先ほど奥田参考人言われましたけど、半就労半福祉というのがあるわけですし、生活保護受けながら働いている方ももちろんたくさんおられるわけですけど、そういう状況を分かっていない。ただ、非常にその制度自体に誤解が広がっていて、それが制度の利用に結び付いていない。
 私は、そういう状況を解消するのは本当は行政の責任だと思うわけです。ドイツですと、そういう場合、制度を周知徹底するのは行政の責任だという法律がございますので、ちゃんとPRも熱心にやっています。そういう発想を変えていって、制度というものをきちっとPRするということと、それから、現実に水際作戦と言われるような違法な申請拒否などをやらないということ、非常に大事だと思うんですね。
 それと、もう一つは、先ほど奥田参考人が言われたことといみじくも同じなんですけど、例えばなかなか相談に来ない、申請しない。これ、福祉事務所に申請したらひどい目に遭ったとか、そういう体験で、二度と行きたくないという人、非常に多いわけですよね。だから、そういうバリアみたいなものをもっと下げる必要があるんじゃないかな、もっと努力をしなきゃいけないんじゃないかなということが一つです。
 それから、基準が引き下げられたことによる被害の問題は、私はもうずっと、この間、いろんな生活保護を利用している方たち、特に母子加算と老齢加算が削減、なくなったときからずっと相談にもちろん乗っておりますので、例えばお風呂に入るのも一週間に一回とか二回しかできないとか、食事を二回にしているとか、特に高齢の方非常に多いですね。それからもう一つは、子供さんを持たれる母子家庭の方非常に多いという生活実態がありますので、その中で下位一〇%の方、つまり生活保護の捕捉率が低いために生活保護を申請していないかもしれない方たちも含めて比較をして基準を決めていくという手法は、まさにそういう貧困をどんどんどんどん拡大していく手法になるんじゃないかなと思うので、そういうやり方はもうやめていただきたいというふうに思っています。その生活実態から見ても、今の基準の決め方というのは非常に問題だなというふうに思っております。
 以上です。
○福島みずほ君 奥田参考人にお聞きをします。
 生活困窮者支援と生活保護の関係についてなるほどと、こう思ったんですね。もう一つ、あと、日本の場合は年金が無年金の人もいるということもあり、高齢者で生活保護を受ける人の割合が多いと。それから、生活保護を受け続けるのではなくて、どこかで就労支援や生活保護をもらわない次のステップに行けるようになると、生活保護に対するイメージももっと変わるというふうにも思っているんですね。そういうことについてはどういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(奥田知志君) そうですね、イメージは変わらないかぬのでしょうけれども、最後の話からいきますと。ただ、やっぱりそれ以上に困窮や保護に対する差別意識が物すごく高まっているので、まずは生存権とは何かみたいな当たり前のことを確認していくということを社会側がやらないと、そのちょっとゆがんでしまった社会の感覚に合わせて印象を変えるという発想は、何か本質を見失うんではないかという気がします。
 ただ一方で、高齢者の生活保護の問題ですが、私は、まずは、生活困窮者自立支援法と生活保護法は、いずれ私は一体的に運用していかざるを得ないときが来ると思います。それはなぜかというと、生活保護がやっぱりケアの部分が弱いからです。どちらかというと、生活困窮者自立支援法は給付はないけどケアで勝負しようとしている。これどっちも必要なんですよ、本当は。だから、これは、こっちを使えばこっちが使えないという立て付けになっていますが、いずれこれは議論する日が来るだろうというふうに思っています。
 高齢者のことについては、私は、生活保護の見直しをもしするんだったら、今三点セットですよね、生活と住居と医療は三点セットですが、この辺りをどう考えていくのかというのがあると思います。
 その中で一番大事なのは、やっぱり居住。最低限の居住の確保をやはりきちっとやれるかどうかで大分選択肢が広がるように思うんです。例えば老齢基礎年金のレベルで払える家賃とは幾らなのかということも一方で考えるという、そして更に足らないところは補足するという、例えばそういうふうなことをやっぱりやっていく中で高齢者のことは考える。
 さらに、やっぱり医療の問題ですね。やっぱり元気で過ごせるというのはとっても大事だと思います。
 以上です。
○福島みずほ君 時間ですので。本当にどうもありがとうございます。
○薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。
 本当に今日はいろいろな御意見をいただきまして、私自身も勉強になりました。
 奥田参考人がおっしゃった、まさに制度というものが逆に区別、差別を生んでいるというような、私も実感したことがございまして、子供食堂というものが今すごく全国で行われまして、私どもも何かお手伝いできることがというふうにお声掛けしたことがあるんですが、逆に、やめてくれと。そういうことをされてしまうと、子供食堂の定義みたいなもので、衛生はどういうふうにあらなければならないとか会計はどうしなきゃいけないみたいなことをやられると自由度が奪われてしまう、だからこそ見守ってほしいというような言葉をいただいたことがございまして、なるほどというふうに納得したところでございます。
 そこで、ちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。勝部参考人と奥田参考人に、やっぱり、逆に制度があるからこそ置いていかれている方々、制度があるからこそ何かこうやって我々が見失ってしまっているものというのがございましたら、済みません、現場からお声いただきたいと思います。お願い申し上げます。
○参考人(勝部麗子君) 先ほどの子供食堂の話も現場ではいろいろと議論があるんですけれども、ただ、地域のつながりをつくっていくという意味であったり、それからいろんなことを発見していくというところではとてもああいう事業というのは大事なんですが、でも、そもそも、先ほどのお弁当を持ってこれない子供がいるというところで、中学校給食というのは一体どうなのかとか、そういうことというのはもうベースのところでしっかりできるということがあればいいなというふうには思います。
 一つは、生活保護をなかなか敷居が高く思っていらっしゃる方が多くて、福祉を受けるぐらいだったら、親戚に知らせられるぐらいだったらもうサービス拒否するというふうな、その立て付けの厳しさみたいなことがあって制度を受けることができないという人たち、これ社会の目との関係だと思いますけれども、この辺のことを日々、我々としてはどうやって払拭していくかということについて考えていることが日々あります。
○参考人(奥田知志君) 制度で全てはいかないというのは事実でありまして、例えば居住の問題でいうと、今までの制度の施設というのは、一つの属性の人たちがその施設に全部いたわけですよね。ですから、逆に言うと、非常に多様な属性を持っている人はなかなか一つの制度に乗らないという元々の問題があるんですけど、その手前に、制度までは行かないけれどもやはり独り暮らしは難しいという、今回のまさに改正案でできたような、日常生活の支援が必要な人という概念がもうかつてから現場ではあったんです。しかし、じゃ、それって今まで誰がしていたのというと、これ率直に言うと家族だったんです。家族機能の中でそういう日常生活の見守りみたいなことをやってきた。
 しかし、今後、多分日本の社会はここがもう既に崩れてきていますから、ある意味その家族で果たしてきた機能をどう社会化するかということが社会保障の概念の一つだろうと思うんですが、それを公的制度のみならず、やっぱり民間とのマッチングの中でどうしていくかというその部分が今つくられようとしているというふうに私は理解していまして、だからこれ、先ほど言いましたように、非常にいい施設で期待しているんですけれども、生活保護世帯しか対象にしないといったら、また制度かというのが率直な私は気持ちでありまして、ここのところを、制度であって制度ではない、専門家であって専門家ではない、そういうふうな、おまえ、何言ってんだと言われそうですけれども、これが実は現場なんです。その辺りがやはりもう少し国との中での対話になればいいなというのが現場の望むところです。
○薬師寺みちよ君 ありがとうございました。
 本当に制度の限界というのを私どもも今日のお話の中でも様々感じているところだと思います。だからこそ、じゃ、何をどのように支援していったらいいのかということまで考えていかなければ、これは抜本的な見直しにはならないのではないのかなと。小手先だけでこれ以上本当に救いを求めていらっしゃる方々にまできめ細やかにできないなというのが今日本当に感じたところでございます。
 ところで、岩永参考人にもお伺いさせていただきたいと思います。
 研究者として様々な立場でいろんなもう研究していらっしゃる中で、例えば海外のこういう事例が今後日本は取り入れていくべきなのではないかとか、私どもが、日本のこの、先ほどもございました家族制度が補っていたものが補えなくなってしまっている、もちろん就労形態もこれは変わっているということも鑑みて、これからどういうふうに保障というものを組み立てていくべきなのか。今日もいろいろアイデアをいただいたところでございますけれども、もしそういう事例みたいなものを御存じでいらっしゃいましたら教えていただけますでしょうか。お願い申し上げます。
○参考人(岩永理恵君) 事例というか抽象的な話になってしまうんですけれども、今日のお話の中でもいろんなところで出てきたように、生活保護に負わされている役割は物すごく大きくて、先ほど困窮者の方はケアで、生活保護の方は給付だという話がありましたが、逆に言うと給付は生活保護しかほぼない、ほかにももちろん少しずつはありますけれども。
 生活保護には八つの扶助があって、医療も介護も全部生活保護の中に入っている。この仕組みは、戦後直後からしばらくの間、とても分かりやすいといえば分かりやすいですし、いいところもあると思うんですけれども、もう少し一つ一つの扶助を使いやすくするというのが必要かなと思います。
 それは、外国と比べても生活保護丸抱えの公的扶助というのは珍しいと思いますので、もっといろんな人が使いやすくなるような生活保護のありようというのは考えられるのではと思います。
○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。
 本当にもう私も、ちょっとこの生活保護という制度自体がもう古いものであるからこそ、もう少し抜本的な見直しが必要だというふうに感じていたところ、尾藤参考人からもネーミングの問題も出てまいりました。生活保護だからこそ、そこに何となく行きづらい、そういう生活保護を受けるということからして抵抗感がある、やっぱりこれは多くの方々が感じていらっしゃることだと思います。
 先日のちょっと委員会でも大臣にもお尋ねしたんですけれども、やっぱり低年金、無年金者の皆様方とお若い方で生活保護を受けていらっしゃる方、問題がもうかなりこれは乖離してしまっておりまして、生活保護から立ち直るのか、あるいは生活保護で一生を終えてしまうような可能性がある方々なのか、これはもっとしっかりきめ細やかにするためにも、そこ、ネーミングを変えるとともに、制度の面でも少し区分けをすべきではないかなというふうに私は思っておりますけれども、参考人、もし何か御意見ございましたら教えていただけますか。
○参考人(尾藤廣喜君) ありがとうございます。
 ネーミングの問題は軽い問題のようですけれども実は非常に重要な問題でございまして、各国やはりいろんな工夫をされているわけですね。先ほどドイツの例も申し上げましたけれども、ドイツは社会扶助という、扶助という言葉を使っているので、もっと受けやすくということで、第二の失業手当、失業手当Uという名前に変えて受けやすいようにと。だから、ネーミングをどうするかというのはある意味で利用しやすくするための非常に大事なことでございますので、是非とも権利性の強い、国の責任が明らかになって、利用しやすいような名前をお考えいただければなというふうには思っております。
 それからもう一つの問題は、いろいろなケース、事例に応じて必要とする給付も違うので、それに対する対応を考えるべきじゃないかという御指摘、誠にごもっともだと思うんですけど、その場合に二つ方法があると思うんですが、一つは、韓国で最近変わりましたように、扶助をばらばらに、例えば介護だったら介護、医療は医療、それから生活扶助は生活扶助、ばらばらにしてそれぞれを受けやすくするという方法も一つあるだろうと思います。ただ、日本の場合は、非常に有機的に結び付いているというところのメリットもあるわけでありますので、それが単純にいいかどうかということは言えないと思います。
 もう一つの問題は、スウェーデンでやっていますように、課題ごとに担当の部局を変えて、例えば青少年のためのグループ、担当するグループはそのためにやっていますし、依存症の人たち、依存症という言葉は使わずにリハビリ部門というふうに言っていますけど、課題ごとに部門を変えて、そこの専門性を発揮しながらやっていくと。先ほど奥田参考人も言われましたように、就労に結び付くケースについてはどうやって半就労の形、スウェーデンは非常に半就労が多彩にある国ですので、いきなりフルタイムではなくて就労できるという状況になっていますので、そういう形での、いろいろなグループみたいなものを分けながらケアの内容を変えていくというのも一つのやり方ではないかなというふうに思っております。
 以上でございます。
○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。
 時間になりましたので、終わります。
○委員長(島村大君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十二分散会