第001回国会 治安及び地方制度委員会 第13号
昭和二十二年八月三十日(土曜日)
    午前十一時二十二分開議
 出席委員
   委員長 坂東幸太郎君
   理事 門司  亮君 理事 矢尾喜三郎君
   理事 川橋豊治郎君 理事 松野 頼三君
      大石ヨシエ君    笠原 貞造君
      菊池 重作君    久保田鶴松君
      松澤 兼人君    松谷天光光君
      大澤嘉平治君    佐藤 通吉君
      坂口 主税君    千賀 康治君
      中垣 國男君    大村 清一君
      中島 守利君    渡邊 良夫君
      外崎千代吉君    加藤吉太夫君
    ―――――――――――――
八月二十九日
 茅ヶ崎町に市制施行の請願(磯崎貞序君紹介)
 (第二四六號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付したる事件
 五大都市特別市制に關する件
    ―――――――――――――
○坂東委員長 これより治安及び地方制度委員會を開會いたします。
 本日の日程は、道路交通取締法案竝びに五大都市特別市制に關する件でありますが、その日程に入る前に、大澤君から緊急動議があるはずであります。大澤君。
○大澤委員 戰後の警察制度の調査、竝びに近く制定されるところの警察法等につきまして、本委員會の委員が、今度休會になります期間等を割きまして、全國の各警察に對しまして、調査竝びに監査をする權限を國會において賦與してもらうべく、提案をいたすものであります。これに對しましての、皆様の御同意と、御贊成をお願いいたしたいと思います。
○坂東委員長 ただいま大澤君から警察制度の大改正に伴つて、各種の事情を調査する必要上、本委員におきましても、適當な人數で各方面に調査に行つたらどうか。この調査をするにつきましては、決議をもちましてこれを議長に通告して、運營委員會できめるのでありますが、ただいまの大澤君の動議に贊成でありますか。御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂東委員長 それではさよう決定いたしまして、その旨議長に通じまして、適當の手續をとりますから、さよう御承知を願いたいのであります。
 本日の日程中順序を變更しまして、五大都市特別市制に關する件を議題に供します。まずその順序を一應申し上げます。
 この委員會におきましては、すでに六月から五大都市に特別市制施行の件を審査いたしまして、その結果七人の小委員を設けまして、その小委員會におきましては、滿場一致をもつて、五大都市に特別市制を施行することに決定いたしまして、去る八月七日、小委員長中島守利君に代りまして、川橋豊治郎君からこの報告がありました。その骨子だけを念のために申し上げます。
   五大都市特別市制小委員會報告書
 一、起草の趣旨
   本案起草の趣旨は、大阪市、京都市、名古屋市、横濱市及び神戸市を地方自治法第二百六十五條の規定により、特別市に指定するために法律を制定せんとするにある。
 二、本案の目的
   五大都市における行政事務竝びに施設は、その種類及び範圍において、廣汎であるのみならず、その質と内容とにおいても、きわめて高度化せられたものであり、これを效果的に運營するためには、強い自主性が要求せられておる。しかるに、現状においては、五大都市の上位に府縣が存在し、種々の點で不適當なので、五大都市を府縣竝に昇格せしめるため、これを特別市に指定し、もつて二重監督の弊を排して、これを政府機關に直結せしめんとするが本案の眼目である。
 三、成案
   以上の趣旨と眼目とに基いて、別紙の通り、法案を起草した次第である。
 右報告する
  昭和二十二年八月七日
    五大都市特別市制小委員會小委員長 中島守利
    治安及地方制度委員會委員長 坂東幸太郎殿
 それで、法律の案でありますが、「法律第 號」、この中には番號がはいります。
   地方自治法第二百六十五條第二項の規定による特別市指定に關する法律案
  地方自治法第二百六十五條第二項の規定により大阪市を特別市に指定する。
   附則
  この法律施行の期日は、政令でこれを定める。
 以下、他の四大都市も同様な法文でございます。議題に供します。矢尾君。
○矢尾委員 ただいまの委員長の報告に對しまして、私は修正意見を述べたいと存ずるものであります。小委員會の原案たる「地方自治法第二百六十五條第二項の規定により大阪市を特別市に指定する。」とありますのを第一條としまして、その次に第二條としまして、「地方自治法第二百六十一條の關係普通公共團體とは本法においては大阪市を指すものである。」を挿入いたしたいと存ずるのであります。以下四大都市についても同様であります。その理由は、憲法第九十五條の解釋におきまして、政府の解釋、その他いろいろ解釋されておりまするけれども、衆議院は衆議院としての獨自の見解に基きまして解釋を決定することが當然と存じますので、私はこれを狹義に解釋すること、すなわち同條一般指票は市民投票によるを適當と認めまして、ここに修正案を提出した次第でございます。よろしく御審議の上可決あらんことを望むものであります。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
    〔「大石(ヨ)委員「異議あり」と呼ぶ〕
○坂東委員長 ただいまの修正案は動議としては成立いたしました。これから案全體に關し、また修正案に關しまして討論を開始いたします。加藤君。
○加藤(吉)委員 私は特別市制に全面的に反對いたしたいのでございます。その理由といたしまして、
 第一に、もし特別市制を實施するといたしまするならば、總合的に、いわゆる國土計畫上より考えまして、または都市集中の弊を除くために、または都市人口の制限等より勘案しまして、府縣の廢合と合わせ、地方行政區畫に一大刷新を加える必要があると私は考えるのでございます。
 第二に特別市制というのは特別市を意味しておりまして、都市を在來の縣の區域外として法的に切斷するのでございますので、その結果縣の區域内に食糧、經濟、教育、文化、衞生、治安に重大なる番くるわせを生ずることは明らかでございます。そういう重大な問題に對しては、關係ある縣民すべての表決によらなければならないと私は思うのでございます。憲法第九十五條を廣い意味に解釋せねばならないと考えます。
 第三、將來都市の生活協同組合の發達とともに、平和産業及び農村工業の發展等を併わせ考うるときに、農村と都市との一體的活動にその必要の重要性あるものと考え、都市の分離は都市の幸福をもたらすものでないと私は考えます。
 第四に、京都を除く大都市のすべては戰災都市であります。その復興再建は實に容易でなく、まことに同情にたえないのでございますが、その復興再建は縣民の一體化の態勢によつてのみ期し得られると私は信じます。目下の食糧状況より見ましても、また都市の復興の資材面から見ましても、配給統制に依存してはそのまつたきを期し得られないことはあきらかでございます。
 第五、特別市制實施によりまして、重複せる施設あるいは官吏の増加は、かえつて財政の重壓を増大するものでありまして、農民は特にこの官僚の増大を最もいやがつております。
 第六、地方分權の趣旨を考えまして、分離することなく、特別行政部門に限り地方自治法の改正等によりまして、廣汎なる權限を付與して、でき得る限り二重監督の弊を除くことによつて、やつていくべきと考えておるのでございます。
 第七、將來の農村は絶對過半數を占むる人的資源と、加うるに協同組合化され、過剩勞力の農村工業への分散と相まつて、政治に文化に革新的一大飛躍をなさんとしておるのでございます。在來の農村とは別個の形態を備うるに至るは豫想に難くないと思います。ここにおいて新たなる構想のもとに、進歩的觀點から特別市制を論斷せられんことを、都市のお方に望んでやまないのでございます。
 第八、米國においても、サンフランシスコのごとき大きな都市が、依然として州より分離せずに都市の發展を期しておることを思いまして、私は特別市制に反對するものでございます。終り。
○大石(ヨ)委員 私は特別市制について、いささか所見を述べたいと存ずる次第であります。大都市制度のあり方として、特別市制の即時實行を強く要望せられるに至り、これをもつて唯一最善の大都市制度なりとする考え方が行われておりますが、私は特別市制は大都市制度の一つの行き方にすぎないものであつて、特別市制を主張するにあたつては、他の各種の方法についても併わせてこれを研究し、その結果として最善とせられた制度の實行方法を定めて、逐次實施に移らなければならぬと思うものでございます。この觀點からいたしますれば、特別市制は未だ最善の大都市制度とは申されぬばかりでなく、かえつて各種の弊害と矛盾に滿ちた制度とも言い得るのであります。何となれば特別市制實施の是非を考察いたしますと、まず第一に特別市制の主張は、その根本を二重監督の撤廢と、二重行政の廢止にこれをおいているのであります。このことたるや、明治二十一年四月法律第一號市制の公布によりまして、この施行に伴う明治二十二年三月法律第十二號市制中東京市、京都市、大阪市に特例を設くるの件、すなわちいわゆる市制特例にその端を發しているものであります。この市制特例は明治三十一年六月法律第十九號をもつて廢止とせられたのでありますが、この間すでに明治二十六年第五帝國議會におきまして、渡邊清氏ほか三名より提出せられた府制法案を初め、以後ほとんど毎議會に特別市制案または都制案の提出を見たのでありますが、その當初はほとんど東京市を對象とするものでありました。しかるところ大正九年に至り第四十三議會に、六大都市各別に特別市制に關する建議案の提出を見、法律案といたしましては、大正十二年第四十六議會において東京、京都、大阪三市の都制案を議員提出案として見るに至つたのであります。東京以外の大都市の特別市制または都制の法案として提出を見るに至りましたのは、これが最初でありますが、以後政府または議員より、ほとんど毎議會に特別市制の法案は提出せられ、しかも常に審議未了となり、この運動も今次の戰爭に至つて中絶し、ただ東東都制のみが、昭和十八年第八十一議會に上程せられて成立し、東京都制の實施を見るに至つたのであります。終戰後再び特別市制の運動が復活し、今次國會において議員提出法案として審議を重ねられたのであります。この特別市制の歴史を見て知ることは、論爭の中心は常に官治と自治の爭いであり、大都市は一貫して自治主義のもとに二重監督、二重行政を廢止して、大都市行政の確立をはからんとしてきたのであります。大都市のこの理想と努力とに對しましては、私も敬意と同情を寄せるものでありますが、このことたるや明治憲法治下におきましての合理性であり理想であつて、終戰後の今日においては、新憲法下地方自治は著しく進展して、從來憲法上根據すらもなかつた地方自治を、新憲法中において一章を割くとともに、道府縣制、市制、町村制等を地方自治法に切り替え、自治主義を強化し、都道府縣知事の直接公選、都道府縣官吏の公吏への切替、都道府縣知事の市町村に對する事前監督權の廢止に近いまでの削減、その他住民の條例制定、監督、解職、解散の直接の請求權等々、新たなる幾多の改革を行い、府縣廳は國の官廳であることを根本とする建前は解消せられたのであります。從つて現行制度のもとでは、制度的には府縣と市町村とは相ひとしきものであつて、その權限も若干の監督關係及び國から府縣知事に委任した僅かの權限のほかには大差ないものとなつております。殊に大都市に對しては、五大都市行政監督特例という法律があり、府縣知事が大都市を監督する權限は非常に縮小されておるのでありまして、いわゆる二重監督及び二重行政の廢止を叫ぶのも、このほとんど無いにひとしい監督關係と、國より委任せられているわずかの權限とをめぐつての主張であり、明治憲法下においてはともかく、現行法制のもとにおいては、特別市制を主張する論據としては、非常に薄弱なものとなつてしまつておるのであります。まず監督關係についてみますと、府縣知事は從來市に對して監督上必要なる命令を發しまたは處分をなす權限、法令または職權により命ずる費用を市の豫算に強制的に計上する權限、市長等が職務上執行すべき事件を執行しないときに、市の費用負擔においてこれを府縣が代つて執行する權限、市長助役ともに缺員の場合、官吏の職務管掌者を派遣しまたは臨時代理者を選任する權限を有していたのでありますが、これらの權限は本年五月三日地方自治法の施行と同時にすべで消滅し、その他の許可認可事項も昨年九月の地方制度改正以來減少し、特に五大都市行政監督特例により、地方自治關係では事前監督として殘つている實際上適用され得るものは全然なく、また府縣、市町村等の税を規律する地方税法中にも、同様に實質的な規定は全然ないという態度で、ただわずかに事務の視察報告、出納檢閲等の事後、監督の權限と、中央政府へ市役所より書類を提出する場合の經由、申達機關の立場等が殘存するのみで、地方自治法、地方税法の關係では、すでに監督というほどのこともほとんどなくなつておるのであります。地方自治を規律する二大法律である地方自治法、及び地方税法に規定せられている監督關係が、以上のごときものであるほかに、なお特別法の中で市の事務及び事業に關連して、若干府縣知事の認可許可等の權限を規定した條文がありますが、これは市に對する許可または認可の規定と、市以外のものに對する許可または認可の規定との二つでありまして、市に對するものは監督關係であり、市以外のものに對する許可認可は二重行政として論議せられるところであります。
 これらは何れも舊憲法を基礎として制定せられた關係上、當然近いうちに改正せられる運命にあるものも多く、また從前とても大都市に對しては特例を設けている規定もあり、いずれにしても法令の一部改正をなせば足り、またその情勢にあるものですから、特にこれを特市の根據とするほどのものでもなく、さらには市以外のものに對する關係、すなわち二重行政については、地方自治法第百五十三條第二項により、知事より市長に權限も委讓する途も開かれておりますので、これらの運用により行政の運營を促進せしめ、市の權限を強化することも可能なのであり、また從來權限委讓も教育、土木等の關係その他について幾多の事情をみているのでありまして、これを徹底するのも二重行政解消の一つの方法であると思うのであります。
 以上のごとく、特別市制を主張する根據である二重監督及び二重行政の問題は、この五月三日を境として大變化を生じ、客觀的な事情は一變したのでありますから、二十年、三十年の昔からの論旨をそのままに主張する特市論は、少しく見當違いではなかろうかと思いますとともに、客觀情勢の變化に對應した大都市制度を考究すべきであつて、二重行政、二重監督の廢止を中心として展開する特市理論は、すでにその論據の大半を失つているものと言わざるを得ないのであります。かくのごとき薄弱なる論據のもとに主張せられている特別市制は、從つてその要求も、沿革にみる既往の特市運動のごとく切實なるものと異り、一種の形式論となり、ひいては感情論となり易いのでありますが、それでも特別市制を布くことが府縣及び市民の利益となるものであれば、論據のいかんはしばらく問題外としてもよろしいと思うのであります。私は京都府の出身なるがゆえに、最も手近かな京都特別市の場合について推定いたしますると、遺憾ながら私には特別市制の影響について良好なる期待をもち得ないのであります。すなわち京都府の歴史及び地理より考察いたしますと、京都市は昔山城國葛野郡の一村落でありましたものが、都を奈良より移されるにあたり帝都と定められ、以來千有餘年の間、山城、丹波、丹後等とともに日本の最も古くより開けた地方として、大和民族の中心地をなし、帝都たる京都と、これらの地方との交渉も繁く、相ともに發展し、相ともに民族生活を營んできた一團の地域でありまして、殊に明治維新後八十年の間まとまつた自治體として、府民はともどもにその一體感を強くもつてまいつたものであります。それがもしも不幸にしてこの傳統と歴史とを一擧に失い、京都特別市の分離、獨立をみるにいたりました曉には、山城は府の飛地となつて、丹波丹後等との地理的なつながりを斷ち切られ、この三つの國を一つのまとまつた府縣として自治を行つていくには、幾多の障害を生ずるのであります。まだそれのみでなく、この長い歴史と傳統とにより府内の産業經濟、文化、教育、政治、交通、通信等あらゆる施策と施設は府廳の所在地である京都市を中心として、南は山城、北は丹波、丹後の兩域に伸びているのでありますが、特別市制の實施によつてこの中央地區が獨立する結果、府の中心は別の地點にこれを求めなければならなくなりますが、二つの地區に分れ、その中央地區が別の行政區域となつた自治體の中心點を新しく求めることは、はなはだ困難であるとともに、この新たに定められた中心地に府縣廳を移すこととなると、國の特別官廳、諸會社、諸團體等も同様に、これを二つに分けて新たな中心地に移さなければなりません。これに要する費用は最少限二億ないし三億圓に達すると思われるとともに、この費用よりもさらに困難な點は資材にあると思います。現在のごとく戰災による住宅の復舊だけでも巨額の費用と資材とを要する今日、何を好んでこの困難な時代に、このような大移動を行わなければならないでしようか。またこの移動をできるだけ行わないこととし、府縣廳のみの移動に止めるものとすれば、移動した府縣廳は特別官廳、諸會社、諸團體との常時の連絡は著しく不便となり、しかもこれに要する經常的な連絡費用及び時間は、すこぶる不經濟なものであるとともに、非常に大きなものとなるものと豫想されるのであります。このために京都府殘存部の受ける損失は莫大なものとなります。
 またこの新しい府縣廳の所在地を中心として營まねばならない産業、經濟、文化、教育、政治、交通、通信等の施策及び施設に要する經費と資材も輕視し得ぬ巨大なものとなりましようし、さらにこれらの完成するまでの不便は、京都府殘存部のみが負わなければならないものとなります。このようなことが特別市實現ということだけのために、資材資金の極端に窮屈な現状ではたして實行すべきものでしようか、また實行し得るものでしようか。地理的にも經濟的にも、もつと合理性のある措置をわれわれはとらねばならないと思います。國土計畫的な見方をもつてすれば、一つの行政區域または一箇の經濟圈の中においては、その人口産業等が適當に分布せられていて、その區域内においては、おおむね自給自足の形態をなしていることが理想なのであります。都市計畫、地方計畫等は、この理想の實現のために、一地方の立地條件を科學的に研究して、人口産業等の配分、社會施設の設置、都市と農山漁村との關連性等から、これの利用價値の増進をはかつているのでありますが、現在の府縣はその地域がいずれも狹少で、地方計畫樹立に幾多の障害をなしているのであります現在の情勢からすれば、この狹少な府縣の區域を打破再編し、國土計畫的な立場から、地方計畫樹立のために行政區域の改廢を行う必要があると思うのであります。
 地方自治法の國會において議決せられました際の附帶決議にも「府縣の區域を適當に整備統合すること」という一項もあるくらいで、この狹少なわが國府縣の管轄區域を整備統合し、自治の發展に資すべきにもかかわらず、特別市を狹い府縣の區域の中から分離獨立させて、府縣を二分し、京都府においてはその殘存部すら一團となり得ない地方計畫的には畸形的な自治體をつくり出すことになるのであります。むしろ國會の附帶決議の明記するごとく、府縣の區域を適當に整備統合し、廣域行政圈をつくるべきものと確信するのであります。この大局的な立場にたつて府縣の境界變更を行い、廣域行政圈を實現する前提のもとにおいてのみ、總合的な立案に基き、この立場においての特別市制を考究するのならばともかく、ただ單に現在のままの府縣から分離獨立させるというのでは、何らの意味をもなさない場當り的措置と言わなければならぬとともに、このために受ける府縣殘存部の障害は、永久的かつ致命的のものとなるおそれがあります。
 それから憲法第九十五條の解釋につきまして、いささか私見を述べたいと思うのであります。一つの地方公共團體のみに適用せられる特別法、すなわち特別市制指定の法律のごときは、この指定法律が、特別市を規律する内容的規程をもたず、内容的規程はすでに地方自治法に規定せられているのに鑑みますと、その本質は特別市となるべき市の府縣よりの分離獨立、すなわち境界變更の法律を見るべきでありまして、この本質よりすれば、當然府縣民の投票となるべきものと信ずるのでありますが、府縣民の投票により終局的に決定せられる法律を國會において審議するに當つては、十分その地元府縣民の動向を參酌する必要があるのでありまして、現に大阪、京都等においては特別市制よりも東京都のごとき都制を要望する聲もあがつてをり、この點よりしても、それぞれの地方においての公聽會等を國會として審議に先だちあらかじめもつ必要があると信ずるのであります。また特別市指定の法律の制定せられるにあたつては、殘存部の處置その他經過的規定、及び特別市及殘存部それぞれに今後の見透しをつけ得る法律の制定を見なければならないと思います。と申しますのは、指定法律の制定のみでは、今後見透しもつかぬため、府縣民として投票にあたり、その判斷に迷う結果となると思うからであります。
 要するに以上述べましたことは、大都市制度それ自體は、一日も早く確立すべきであるが、具體的にいかなる方法を採用するかは、科學的な檢討を盡し、利害得失を勘案し、地元民の動向を察して、平和日本建設の基盤となるべき地方分權の強化、完全自治體の確立の方向において國家百年の計として決定されなければならないというのであります。特別市制の利害得失については、概略申し述べました、大都市制度として別に考え得る都制、及び大幅な府縣知事より市長への權限委讓等については、さらに別の機會に私は述べたいと思うのであります。
○門司委員 ただいま小委員會の報告に對する修正の御意見の發表があつたのでありますが、私は前提といたしまして贊成の意を表明いたしておきたいと思います。さらに本問題につきましては、もはや論議をすることも、その必要性を感じないほど、論議が盡されておると考えておるのでありますが、私どもの考えております一、二の感想も申し上げて、これを御參考に供したいと考えておるのであります。
 なるほど今日の情勢から考えてみますれば、いろいろなことが言い得るとは思いまするが、大都市が同じ一つの行政區畫の中にあつて、他の町村と同じような取扱いを受けておるということにつきましては、これは先ほどの自由討論の際にも、私本會議において申し述べておつたのでありますが、一般地方行政の面におきましては、住民の生活状態が、ことさらに變つておる。さらに自治體みずからの性格、あるいは環境というものを異にいたしておりまする關係から、その地方の自治的の發展的方向、いわゆる指向というものは、おのずから異つておるのであります。こういうものが一つの行政區畫の中にあるということは、きわめて不健全な都市行政を成立さすのであります。その理由といたしましては、區域の點におきましていろいろ論議され、あるいは經濟的の面に論議が行われ、さらに復興であるとか、あるいは食糧であるとか、地方分權であるとかいうような問題について、いろいろ議論がなされておるのでありますが、私どもは今日の日本が新しく立ち直らんといたしまする際におきましては、特に日本を代表する大都市の貿易、あるいは産業というようなものが、きわめて日本再建のために重要なる役割を演ずるということは、論をまたないことだと考えておるのであります。從いまして、單に一地方の利害關係のみを全然無視するというわけにはまいりませんが、考慮する先に、まず日本をいかにして文化化するか、日本の貿易再開に關して、いかにこれに善處するかということが、きわめて重要な問題として取上げられなければならないと思うのであります。そう考えてまいりまするときに、現在本案において指定しようといたしておりまする五大都市のいずれも、説明を申し上げるまでもなく、日本における代表的の都市であつて、將來日本が外國貿易あるいは文化の基礎となるべき、その要素をもつ都市であるということは、御承知の通りであります。從いまして、これらの都市が、自由闊達に伸びてまいりまして、そうして日本の經濟復興、さらに文化のために寄與するということのためには、その支障となつておりまする二重行政というものの廢止を、一日も早く見なければならないと考えておるのであります。二重行政の點につきましては、先ほどお話のありました通り、いろいろな面について大幅にこれを、たとえば縣知事の權限というものを、地方に屬する行政官廳と書いてありますが、あるいは市町村長にこれを委讓することができるというように、地方自治法の規定の中に設けられておることは事實でありますが、しかしながら、單にこれだけのことによつて、今日の二重行政が廢せられたものではないので、現在でも大都市における府縣の干渉というものは、きわめて緻密な點まではいつておりまして、たとえば一例をあげてみますならば、都市が復興することのために、その財源を得まするため、これの起債の認可申請をいたしまするならば、その認可の申請に對しましては、府縣において必ずこれを斟酌して、さらに認可申請がまいりましても、それが當該都市に傳達される間に、きわめて長い時日を要することは事實であります。從いまして、その間における物價の値上り等によつて、一旦豫算を組んだものが、さらに豫算を組み直さなければ、當該事業ができないというような支障を來しておると同時に、最も私どもが奇怪に感じまするものは、そうした起債の面におきましても、これはごく細かいものでありますが、たとえばそういう縣に起債の認可の申請をいたしますと、一割を縣が、平たい言葉で申しますと、あたまをはねるということになつております。場所によりましては一割を超えておりますが、こういう事實は、明らかに地方財政の上にも、小額であると申しながら、制度の上にはきわめてよくない制度を設けられておつたというようなことが言い得ると思うのであります。
 それからさらに食糧の面でありますが、今月ややともいたしまするならば、食糧の面がきわめて窮屈であるから、この面で困るのじやないかという意見が、しばしば聽かされるのでありますが、今日の食糧は御存じのように、國が大體統制しておりまして、知事はその配給に對する運營、食糧の委員會を操作する權限のみをもつておりまして、いわゆる食糧營團の操作のみに權限をもつておりまして、集荷その他には知事自體は權限をもつていないのであります。從いまして、食糧の面等は、國の行政の上におきまして行われるものでありまして、決してそれらに對して知事の權限によつて左右をされるものではないということを、われわれはまず考えなければならないのであります。それのみならず、食糧の面から見まするならば、百萬あるいは百萬を超える大都市において、その市長のもつ食糧に對する權限というものは、わずかに米穀通帳に家族の人數を査定し、これを認定するだけに止まつておつて、食糧の面に對しては何らの權限ももち合わしていないのであります。ところが責任の上におきましては、百萬あるいは百萬を超える大都市人口の食糧の責任は、一應市長がもつておるということであります。この食糧面には、大都市はきわめて難儀をいたしておるのでありまして、もしかりに知事と同様の立場に市長が立つといたしまするならば、國家の食糧配給の割當等に對しましても、十分の發言權をもつて、十分の仕事ができ得るのでありますが、遺憾ながら、今日そういうことが行われておりませんので、食糧の面に對しましては、市長は市民生活の責任を負う立場におつて、權限に對しては何らの權限をもつておらないというような不都合な部面が現われておるのであります。
 さらに行政の部面でありますが、農村行政と都市行政との觀點について論議がありましたので、一應私申し上げておきたいと思いますことは、今日日本における各種の都市の行政を見まするに、大都市をもつておりまする府縣における地方行政というものは、必ずしも農村を中心とした地方行政が行い得ないのであります。私自身も地方議會におりまして、その體驗をもつておる者でございますが、ややともいたしまするならば、經濟力をもち、政治力をもつている都市に、すべての行政あるいは文化の施設というものが集中されて、そうして農村は忘れられがちになつておるということが實情でありまして、これはわが國の將來の都市計畫に對しまして、きわめて重要な問題であると考えております。殊に大都市を含む農村行政というものは、簡單には行い得ないのでありまして、その性格を異にいたしておりまする大都市制度というものを別に設けまして、そうして五大都市のごときものが獨立いたしますことによつて、初めて農村行政というようなものが正しい方向に向けられて行き、一切の農村を中心とする施策を設けることができ得るかと考えるのであります。私どもは地方行政に對する特別市制度の見解を、そういうふうに考えなければならないかと考えておるのであります。殊に日本の民主化が叫ばれてまいつておりますが、日本を民主化しようといたしまするならば、おのおのの立場のもつておる生活環境というものを十分に勘案いたしまして、その角度に副うて日本の民主化が行われなければならないと考えております。生活環境が違い、おのおのの地方自治體の指向いたしまする――目指して發展いたそうといたしまする環境の異りまするものが、同じ行政の區畫の中にあつて、ちようど二人三脚のような形にあります場合におきましては、なかなか日本の文化の向上、文化の發展というものは望み得ないのでありまして、われらはこれを切り離して、そうして十分に切り離された都市、郡部、殘存府縣が、そのみずからの信ずるところによつて、十分なる發達性、發展性を見るということ、またさらにわかれました特別市は、國家の要請に基きまして、そのものの信ずるところに、おのおの十分なる發達を逐げるというような方向に進むことこそが、ほんとうに日本をして民主化せしめる一大要素であると考えられるのであります。こういうことを申し上げますると、きわめて長い時間を要しまするので、私その煩雜性を避けたいと思いますが、要するに私どもは前の議會において――前囘のことを必ずしも私ども申し上げるわけではございませんが、前の議會において、大都市特別市制というものが必要であるとして、新しい憲法のもとに、その特別地方公共團體に關しまするところの自治法案ができておりまして、その趣旨に基いて、さらに本案を檢討することは、決して時期を失したものでもなければ、決してこの考え方が古いとは毛頭考えられないのであります。この法案のできましたのは本年の三月でありまして、そうしてこれの施行は五月三日から施行するということの前提のもとにここに可決されましたこの自治法は、必ずしも時日を非常に長い間經て、古い考え方だとは毛頭考えられない。こういうふうに考えておるのであります。
 さらに地方分權の考え方でありますが、從來の日本の國情というものは、すでに皆さんも御存じの通り、官尊民卑の思想がきわめて濃厚でありまして、その最も弊害の大きかつたのは、今日の縣の一つのあり方であつたと考えられておるのであります。これは地方分權を叫んでおります矢先におきまして、これが行政の面にどういう關係をもつておつたかということは、いまさら申し上げることもないと思いまするが、われわれは少くとも百萬、五十萬以上の人口をもつ大都市が、この地方分權の叫ばれておりますときに、當然經濟あるいは施設、施策、あるいは事業等において、府縣よりも大きな仕事をし、大きな豫算をもつて、人的要素におきましても、はるかに構成の大なるものが、小さなものに監督を受けておるという一つの行き方、いわゆる依然とした一つの官僚の行き方に對しましては、官僚政治を打破する意味におきましても、そういうものを廢しまして、そうして眞に地方自治體の民主化をはかりたいと考えておるのであります。これは御存じのように、縣の役人の構成と、市の役人の構成とは、同じ吏員と申しましても、格段の相違をもつておるのであります。いわゆる市における吏員は、御承知の通り市長の任命によつてせられ、局部長等に對しましては、自治體の會議の議を經なければ、これが異動ができないというような、きわめて民主的な行政のあり方になつておりますが、府縣におきましては、知事のみが公選になつており、そういう面におきましては、副知事が辛うじて縣知事の推薦するものを自治體が認めてそれを承認する。そういう形に置かれておりまして、やはり中央官廳と地方官廳間におけるいろいろな交流が行われておるというように、私ども考えますときに、地方分權と地方の民主化のためにも、これらの點を勘案いたしまして、當然獨立し得る行政の力、さらに經濟的と、諸般の要件を備えております五大都市というようなものが獨立することこそが、地方分權のために、地方の民主化のために、最も必要な一つの要素であると考えられるのであります。こういう觀點から考えまして、先ほどの矢尾君の修正意見を取入れました案件に對して、贊成の意見を表するのであります。
○久保田委員 私は特別市制問題に對しましては、時期の問題と考えておるのであります。この時期の問題につきましては、時期尚早なりと考えるわけであります。と申しますのは、各地方におきまして、行政の面と經濟の面と感情の面と、この三點について考えてみなければならぬのではないかと考えるのであります。今五大都市と五大府縣の間におきまして、五大都市特別市制にすべし、あるいはその時期早しという運動が猛烈に行われておるのであります。この間におきまして、特別市制を實施する場合においては、郡の者は市を通さない。あるいは市の者が郡の道路を通さないということに至るまでの感情問題がもち上つておるのであります。こういつたような點を考えまして、私たちは今國會において、これを通すべきや否やということは、非常に考えなければならぬと考えるのであります。こういうような意味合いにおきまして、私は特別市制實施という問題、また委員長から一昨晩決議による出席電報をいただいたのでありますが、本日はこの委員會において、特別市制を實施いたしますについての決議をされる意思であるのかどうか。そうであるならば、私はこの三つの問題、いわゆる行政の面と經濟の面と感情の面、この感情の面こそは、民主主義の根本と叫ばれております立場から、最も考えなければならぬ問題と思いますので、この點につきまして、この特別市制に對しては、時期尚早である。かように考えるわけであります。
○外崎委員 特別市制問題に對しましては、當然特別市制をもはや實施してもよいと私は考えております。それはもうすでに二十數年前から論議され盡されてしまつた問題でもあり、なかんずく日本の現状から見るときに、今日こそ時期尚早どころではない、急いで實施しなければならないのではないか。お互い一億國民は、一丸となつて戰つたけれども、遂に戰いは破れてしまつた今日において、何をもつて國家を再建していくか。もちろん農村を中心にしなければならぬけれども、貿易方面とか、海外の關係から見ましても、大阪、名古屋、京都、神戸、横濱のごときは、一府縣の都市でなくして、日本の都市であると、われわれは考えておるのであります。五十萬、百萬と一縣に匹敵するほどの人口をもつている大都市と、五千人や三千人しかもたない農村と、同一の取扱いをして、一々府縣を通してやらなければならぬということは、すこぶる不便である。一つの書類に對して半年もかかるような日本の行政において、府縣を通して政府へ持つてくるというような方法で日本の再建ができるか。府縣に對しては、まことに氣の毒である。反對することも意義あることであることでありましようけれども、これは一府縣の問題ではなく、一國の浮沈に關する場合であるから、一日も早く五大都市に特別市制を布いて、國家の建直しに邁進しなければならないと考えております。
 先ほど申されたことく、非常に感情問題になつているのは事實であります。私自身もこの問題を審議するに至つてから、實施しろという電報と、反對しろという電報と陳情が非常にきております。なるほどこれならば二十年も三十年も闘つても容易にできない問題だということがわかりました。もちろん今言うごとく、殘存府縣に對してはまことに氣の毒であるけれども、一國の浮沈に關する場合に、一切の感情は捨てなければならぬ。五大都市に特別市制を布くということは、もはや論議の餘地はない。第九十議會においても、地方制度改正特別委員會において、憲法改正の線に沿うて地方自治の民主化、地方分權の徹底を期するためには、五大都市に特別市制の實施が必要であるという意見が出來まして、衆議院で議決されるに際して、「五大都市に速かに特別市制を實施すること」という附帶決議が可決されている。これに對して政府は大都市の特別市制を内閣の方針として決定し、八月三十日大村内務大臣談話をもつて、速かなる大都市制度の確立を公約しておるのであります。地方制度調査會においては、昭和二十一年十月勅令第四七二號で、地方制度調査會官制が公布せられ、調査會は十月二十四日にその第一囘會議を開き、以來數囘開會せられ、地方制度の民主化について各般の事項を審議せられた結果、要綱が決定されている。第九十二議會においては、三月十七日衆議院に提出せられ、ただちに十八名の委員に付託され、委員會が數囘開かれて審議の上修正意見を提出し、二十二日の本會議に委員長報告通り修正可決されている。その後衆議院では、この修正可決されたものをもつて貴族院に送付し、貴族院は翌日本會議に上程し、ただちに二十七名の委員に付託され、委員會が數囘開かれ、鋭意法案の審議にあたりました結果、十數箇所の修正案を提案せられ、三月二十八日の本會議に委員長報告通り修正可決せられ、ただちにこれを衆議院に囘付し、その同意を求められて、衆議院は二十八日の本會議において同意を行い、ここに特別市制を含む地方自治法案は、その成立をみたのであります。こまごましいことを申し上げるまでもなく、すでに時期はここに至つている。反對せられる方にも大いなる意見もありましよう。またこれに反對を表する陳情團の意見も、われわれは聽かなければならない。まことに同情に値する點はあります。けれども、今や事ここに至つてしまつては、一府縣の問題ではない、一國の問題でありますがゆえに、私はこの問題は一日も早く五大都市の特別市制をつくるべきであると考えまして、これに贊成するのであります。
○大石(ヨ)委員 日本のデモクラシー、すなわち日本の眞の民主化というものは、共存共榮に私はあるものと信ずるものでございます。はたして私の府、すなわち京都府と市部を分離して、それで共存共榮になるでしようか。デモクラシーの眞の姿というものは、殘存郡部のことも考えてやるのがほんとうではなかろうかと私は信じます。たとえて言いますと、文化施設、警察、ホスピタルすなわち病院、學校、劇場その他あらゆる文化施設は、全部都會に集中いたしております。すべて都會の人々は、今日京都市などは惠まれたる生活を送つておるといつてしかりであろうと私は思います。郡部の者は實に文化の點において惠まれません。それを委員長はいかにこの文化の點を今後充實さすか。その點をまず委員長に私はお聽きしたいと思います。かつまた市部と郡部と分離いたしましては、郡部は經濟的に獨立することは全然できないような姿であります。それでもこれが眞の日本のデモクラシーの姿であるでしようか。私はまずそれを委員長にお聽きしたいと思います。委員長は非常にこの特市について關心をおもちで、特市に御贊成であると思います。しかも私は委員長というものは、たえず公平無私でありたいと思うのでございます。その意味において、委員長はいかなるお考え方をもつていらつしやいますか、それを私はまず拜聽いたしたいと思います。
○坂東委員長 お答えいたしたいと思います。常任委員會の立案というものは、常任委員會の希望によつてできますもので、私は贊成なるがゆえにこの案を取上げました。それが第一のお答えであります。先ほど小委員長の報告中、附帶決議は略しましたが、大石さんは特別市ができれば殘存郡部は困るのだ、その關係の見透しがつかないから困るということを申しまするから、複雜ながら附帶決議を申します。決して特別市というものは殘存郡部を放つておくものではないのでありまして、その殘存郡部と特市との關係は、協調相談によつてきめる、こうなつておるのであります。まずその原則を申し上げまして、附帶決議を申し上げます。
   附帶決議
 現下の情勢に鑑み、特別市の施行に當つては、行政の混亂と停頓とを極力避ける為めに、特に左の點に留意し、將來情勢の推移を俟つて逐次切替へ、整備に努めること。
 (一)府縣特別市の財産及び施設等で、兩團體に分割し得るものは、夫々協議して其の所屬を決定し、分割し難いものは、府縣特別市の組合を設けて、之を共同處理すること。
 (二)府縣の負債中、特別市内に在る施設に關するものは、組合に委讓するものを除き、特別市に之を移すこと。
 (三)特別市の施行に伴い、府縣、市の議會の議員の地位の存續に就ては、地方自治法の精神に則り、適當の措置を講ずること。
 (四)從來の府縣の職員にして特別市の施行に伴い、特別市の職員になる者の取扱に就ては、恩給、退職金等不利益を來さない様に措置すること。
 (五)國會議員の選擧は、次の別表改正の時まで、現在通りとすること。
 (六)特別市の施行に依り、殘存府縣の住民の負擔が急激に増加する場合は、特別市側よりの殘存府縣への繰入金、寄附金等の措置に依り善處すること。
 (七)國の機關は現在通りとすること。
 (八)府縣知事の權限に屬する國の事務の中で、やむを得ないもの及び府縣を區域とする公共團體等の取扱についても前項同様とすること。特別市の施行時期は昭和二十三年四月一日を目途とすること。以上をもつて大石さんに對するところの答辯にかえます。松澤君。
○松澤(兼)委員 簡單に小委員會の報告及び矢尾君の修正意見に對する贊成の意見を申し上げます。私どもは今特別市制の善惡可否ということについて論議をしておるのではなく、この委員會及びこの國會の行き方といたしましては、前囘の議會の議決をそのまま繼承いたしまして、どこまでもそれから先にそのことを進めていくという立場で議事を進行させていかなければならないと考えるのであります。從つて地方自治法に規定されております特別市、あるいは特別市になろうとする都市、つまり資格を備えておる都市というものは、すでに決定されております附帶決議の中において、速やかに特別市制を實施するということがある以上、その速やかなる機會ということは、つまりわれわれがこの特別市制の實施を決議して、これをもつていくということが、われわれに課せられてある任務であると考えるのであります。いろいろ先ほどから二重行政や二重監督に對する緩和がなされてあるということを言われておりますが、事實たしかに緩和せられております。これは長い間府縣の官治行政のもとにありまして、ずいぶん苦しめられてまいりました都市側の力強い運動の結果、二重監督、二重行政の一部が緩和せられたのでありまして、これは決して上からそういつた緩和が與えられたのではないのであります。一時そういつた二重監督や二重行政の緩和が行われましたけれども、行くところは完全なる自治、完全なる獨立ということにいかなければ、この問題は解決しないのであります。從つて現在は特別市制を實施するという段階に到達しているのでありまして、私は速やかなる特別市制の實施に贊成するのであります。先ほど申されました食糧の問題につきましても、現在市長といたしましてその生活のめんどうをみていかなければならない市民に對する配給權すら市長はもつておらないのでありまして、縣の割當てられたわくだけにおいて操作するにすぎないのであります。從つて縣の方でくれなければ、市民は飢えなければならない。こういう状態にあるのでありますから、少くとも私どもはこの食糧の配給、米穀の主食はもちろんのことでありますが、同時に蔬菜にいたしましても、あるいはまた生魚にいたしましても、同様に縣がこれを握つていくという状態のもとにおきましては、大都市の市長なるものは、安んじて地方行政をやつていくことができない状態にあるのであります。あるいは市は交通機關を經營いたしておりますけれども、その停留所一箇所こしらえるという場合におきましても、縣の許可がなければこれを行うことができない。こういうようなことをあげてみますならば、おそらくは緩和せられたものもあるでありましようが、なおなお殘つておりますところの府縣知事の權限というものは、すこぶる廣範圍にわたつているということがわかるのであります。從つて郡部におられる方々、もしくは郡部におられる人々の意見をとり入れられた意見には、いろいろと二重監督や二重行政の撤廢緩和ということを言われるかも知れませんが、都市の中に生活しておるわれわれにとりましては、なおなお力強い府縣の二重監督、二重行政というものが、われわれの現に生活している中にあるということが、はつきりと見えるのであります。また私が特に考えなければならないことは、特別市ができまして一應府縣の行政から獨立しますけれども、しかしたとえば大石君が御心配になりますように、特別市と府縣というものは、垣を設けて一切の經濟生活というものは遮斷するという意味ではないことは申すまでもありません。從つてこの二つの自治體、地方公共團體に適當なる行き方をさせていくということが、結局文化の興隆にもなり、經濟の興隆にもなるのでありまして、これを固苦しい一つのわくの中に閉じこめておいて、そうして文化の興隆發達ということを期待しても、あるいは經濟の繁榮ということを期待しても、結局できないということを、はつきりと知らなければならないのであります。これまで市が非常に大きな犧牲を拂つてまいり、そうして今日まで營々として大きな、つまり國家的な都市を形成したのであります。從つてこの時機において眞に獨立した都市として、その性格及び權限を與えてもらうということは、少しもふしぎなことではなく、これを阻止することが、むしろふしぎではないか、こう考えるのであります。
 次に新憲法九十五條の解釋でありますが、これはすでに申し上げるまでもなく、私どもはたとえば特別防火建築法であるとか、あるいは特別清掃法であるといつたような法律が、大都市の性格上、ぜひとも必要であるということを豫想して、法律をつくる場合に、その住民のあるいは財産的な、あるいはその他の負擔をかけるであろうということを豫想して、そういう法律を特別の市に適用する場合に、その市の住民の一般投票によつて過半數の同意を得なければならない、こういう趣旨でできておる。それと同時に、國の法律をもつてしても、地方の住民に對する負擔をかけるような法律は、その市の、地方公共團體の住民の意見を徴しなければ、これを實施することができない。制定することができない。こういつた趣旨から、この九十五條の條文ができているのでありますから、英文の憲法を讀んでみましても、あるいは日本文の憲法を讀んでみましても、文字通りの解釋を私たちがいたしますならば、斷じてこれは府縣の住民の投票によるものではなく、當該地方公共團體、すなわちその市の住民の過半數の同意を得るということになると考えるのであります。從つてこの意味から、先ほど提出されました兩君の小委員會の報告に對する修正意見に、私は贊成するものであります。
○久保田委員 五大都市を特別市制にすべしという點からいろいろの意見も述べられておりまするが、私は本委員會におきましては、もつと調査をいたさなければならぬのではないか、また委員會をして調査をしていただきたい。一例を申し上げますならば、大阪府のごとき、大阪市のみをもちまして特別市制とする。それ以外の市におきましても、私はこの意味から文化國家の建設をなすために、またその立場から民主主義を徹底させまして、地方分權を行うためには、兎の耳のような形になつておる現在の市をもつて、これを特別市制にするというようなこと等も、もつとわれわれは考えなければならぬのではないか。大阪府の中に市が十あります。こぶのように市にへばりついておりますところのこまかい衞星都市があるわけであります。これらをどの範圍まで現在の大阪市だけにあらずして、その大阪市にこの小衞星都市も入れるべきであるか、あるいはこれを切離すべきであるかというような點等も考えなければなりません。そういつたよう點を考えませずして、今日の五大都市をして特別市制に決定するということは時期尚早である。こういうような點等についても、本委員會においては公平な立場から、また地方分權の立場から、今後の民主主義を徹底させまする立場から考えていかなければならぬ、かように考えるのであります。こういう意味において、特別市制に對しましては、時期尚早である。かように考えます。
○外崎委員 今の新憲法の九十五條の「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半數の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」ということでありますが、この問題はやはり私らの狹い考えからまいりますれば、これはその問題になつておる市なら市のみにおいて投票すべきであると思う。なぜならば、これをもし廣義に解釋しますと、全國の中で小さい市町村を分離しなければならぬ場合もある。その場合に縣民全部の投票によらなければならぬということになると、これは重大なる問題になる。これは決してそういう意味のものではなく、やはり一番關係の深い市民の選擧によるということが適當であると考えます。それからこれが感情問題になつておるようでありますが、私がおそれておるのは、事實長い年月の間特別市制を布けとか、あるいはそれに反對であるということでやつてきた。私は今までのことは知りませんか、最近の事實をみましても、これはいつでも放つておくべき問題ではありません。府縣の方でもまた市側の方でも、一方は早く特別市制を布きたいということで、一生懸命運動してその陳情のために上京してくる。また一方はこれをやられてはたいへんだということで反對する。これがために双方の使う費用も莫大なものであります。しかもまたその費用どころではない、やがてはさつきどなたからも言われたことく、感情の問題も起つてきて、まことに容易ならぬ問題になつております。そういうことから考えましても、この委員會においてこれを決定して、法律として實施されるようになれば、あとはただこれは殘存府縣の問題であつて、どの府縣をみましても、産業經濟各方面からみまして、その市を取られて困るには違いないが、獨立し得ないという府縣はないのでありまして、市が取られても、十分に獨立し得る能力をもつておる縣ばかりであります。萬一獨立し得ない場合にはどうするか。縣民を殖やすにはどうするかということについては、その關係の縣民に對しては恐れ入りますけれども、隣縣と合併しても差支えないと思います。そういう觀點からも、とにかく私は一日も早く速やかにこれを實施しなければ、各都市間の感情がだんだんと高まつていき、双方の對立も深刻になる。そうなるとこれができあがつたときにおいても、双方が圓滿にいかないと思う。そういうことがあつてはならぬから、一日も早くこの法律を制定して、これを特別市として獨立させることが至當であると思います。
○大石(ヨ)委員 昨年私どもは内務省が解體されるということは、ひとつも存じなかつた次第でございます。ところが今囘内務省が解體され、そうして日本の警察機構が根本的に民主化されるときに、これは一體どうなるのでしよう。去年内務省の解體ということは確定しておつたでしようか。おそらく確定しておらなかつたと私は思います。にわかに内務省を解體するということが、今議會に提案されたようなわけであります。そのときにおいて、警察機構その他、すべてその根本策がまだ決定しておらないときに、特別市制を早急に布かなくちやならぬという理由はどこにあるのか、それをまず私は坂東委員長から拜聽したいと思うものであります。
 それから農村と都市とは、非常に現在融和を缺いております。今早急にこれをするときに、農村と都市との感情というものは實に激化して、恐るべき事態が私は到來すると思うのでございます。それからもう一つ文化の面から、すなわち府税、縣税でもつて大都市に全部集中された文化です。たとえば京都市です。京都市に全部文化が集中しております。そして府下は何ら文化施設に惠まれておらない。そのときにこの府が市と分離したときに、府下の文化施設はどうして行うか。そうして府下が獨立縣として三等縣となつた場合に、どうしても經濟的に行詰ると思います。そのときにこれをどうするか。その御意見を私は委員長にまずお聽きしたいと思います。どうぞ御返答を望みます。
○坂東委員長 參考に答辯いたします。特別市の必要であるということは、それは三箇月間十數囘にわたつた本委員會の審議によつて御承知をお願いいたします。また殘された殘存地點方面の文化については、殘存府縣の賢明なる當局によつて、適當なる方法が講ぜられるものと私は信じております。また殘存府縣と特別市がけんかするように言いますけれども、日本の國民はそれほどくだらぬ國民でないと信じております。以上で答辯を終ります。
○外崎委員 殘存府縣と都市のけんかが非常に起るとか、そういうつまらない感情問題にはしつていくよりも、もう論議は盡されておりますから、これを採決してしまつたらどうか、むしろその方をお願いいたします。
○松谷委員 私は直接利害關係なき者の立場から考えましても、すでにいろいろと各先輩が論議をされておりました點、また永い間にわたりまして、各先輩の今日まで論議されてまいりました點からみましても、今日の國家情勢を考えました場合に、今こそもはや特別市制を實施しても差支えない時期ではないかと私は考えております。從來いろいろと考えられてまいりました食糧の操作の點とか、あるいは文化の問題とか、またただいま大石女史の言われました警察權の問題等も、いろいろとわれわれ未だ實施し得ないところの現在においては、そこに相當豫想した不安の念もお互いがもち得るのではないかと思うのでありますが、しかし特別市制の實施にあたりまして、ここに論議をいたされてまいりましたいろいろの條項を、確實に忠實に實施し、そして獨立いたします市、あるいはまた區別されます殘存府縣等が角突き合わせての權限爭ではなく、お互いの協力によりまして、その足らざるところは、この附帶條件にもついておりますように、お互いがそこに協調的の歩調をとつて進み得るような餘地もあり、經濟的という不安の念も、この附帶條件の中に掲げられました條項によつて私は補つていけるものであると存じております。今日殊に貿易再開もまたその緒につきまして、工業都市としてこの五大都市が發展しなければならないであろうと言われるこの豫測のもとにおいて、五十萬を超える厖大なる人口を擁しますこの都市が、今日ここに特別市制として實施をみることは、私はむしろ當然ではないかと考えまして、速やかにこの特別市制の決定にはいつていただきたいと希望いたします。
○千賀委員 私も松谷議員と大體において同様な意見をもつておるものでございます。私どもは愛知縣の郡部でございまして、この問題には相當に深刻な關係があるはずでございます。しかしながら、私はイデオロギーにおきまして、最初から特別市制は斷行すべしという意見を抱懷いたしておるのであります。さらに地もとの議員竝びに町村長の諸君から猛烈な反對運動も起きておりますので、そのたびに私は自分の信念は斷固として變りはない。何度言われても信念は信念で變りはない。しかしながら政治行動にこれを移す場合には、おのずから考えることもあるだろう。考えないこともあるかもしれない。これはまたそのときである。こういうような返事をして今日にまいつておるのであります。私がこの特別市制を斷行すべしという信念を固めました動機につきまして、一應ここで聲明をいたしたいと思います。
 これは愛知縣が長く苦しみました三部制から胚胎をいたしておるのであります。三部制というものは、ちようど現在大きな聲で滅亡都市の復興をせよというのと同じような關係で、當時名古屋市の復興に非常に大きな費用を投ずべしという段階に到達したときに、郡部の方から要求いたしまして、そんなに大きな費用を名古屋市の復興のためにかけては困るのだ。どうか土木あるいは産業費等は、名古屋は名古屋の租税でやつてくれろ、郡部は郡部の租税でやるのだ。こういうことで三部制を實施したのでございます。これは今から四十年ほど前でございますが、その後都市の文化というものは非常に發達の速度が早い。農村は大體そのままきたのでございます。その結果名古屋市における家屋税は、本税一圓に對して六十錢くらいで濟んでおるのに、郡部においては、郡部における土木費あるいは勸業費等を賄うために、本税一圓に對して一圓八十錢ぐらい徴收しなければならない状態になつたのでございます。三部制あるがゆえにこういうことになつてまいつたのでございます。しかして名古屋市の家賃は同じ面積、同じ質の家の家賃としても、郡部におけるものの三倍、四倍、五倍というような家賃を取上げることができて、名古屋市民の幸福というものは、郡部の縣民のそれと比べて、格段の相違になつてきたのでございます。これを修正することができなかつたのが三部制であります。私はこの三部制を廢止するという政府の方針がほのみえましたときに、斷じて廢止すべしという者の先頭に立つて働いたのでございます。きようはここに愛知縣の縣會議長も振興課の方も傍聽にみえておりますが、この人らとともに働いたのでございます。今日特別市制の促進にお骨を折つておいでになる、五大市から選出されておる議員の中からは、三部制廢止すべからずと反對運動をなすつた方が大部おられたのでありますが、私は斷固として三部制反對すべしという第一線に立つたのであります。幸いにもこの運動は奏功いたしまして、三部制は廢止をされましたのであります。私らほんとうに長い間郡部の市民、殊に郡部の中でも商工業によつて生活を營む者の苦しみというものは、味わい拔いておるのであります。この特別市制がもしも斷行できなかつた場合は、また三部制を布いて名古屋の復興をやるんだということを愛知縣知事が談話として物語つております。あの恐ろしい三部制にまたはいるんだということは、私がここでどうしても特別市制を施行すべしという考えに傾いてきた第一であつたのでございます。特別市制を布きまして、今から建設の遂に最初にはいる者がお互ひに運命をともにして、それぞれの遂に進みますれば、あの悲慘なことになることはない。初めから最も能率的にいろいろのものが使えておのおのの使命のために戰つていくことができるということを考えております。また名古屋市の例は、おそらく他の四都市の例に近いと思いますが、名古屋市が殷盛であつたときには、愛知縣の總税收入の六割五分ぐらいまでは名古屋市で負擔しておつたのでありますが、現在は名古屋市の燒失滅亡によりまして、この負擔率は二割五分しか計上されないという悲慘な目にあつたのでございます。名古屋市の戰災による災害がいかに深刻であつたか、これより推しても知られるのでございます。そこで名古屋市の復興ということを考えますと、名古屋市をもとの姿にするには、非常に多くの金が要る。現金で要るか、あるいは市債、縣債で要るか、いずれにしましても、大きな經費が要ります。この保證引受は一體だれがするのかということになりますと、これは郡部におきまする農業利益あるいは林業利益、その他諸工業の利益、こうしたもがのその見返りになつていくのでございます。この點につきまして、私は將來どうするかを考えて戰慄に値するものがあると思うのであります。もしここで特別市制に反對いたしましてこの案を潰しましても、おそらくはいよいよ縣政を實際に運用するという點になりますと、あの名古屋市の復興に要りまする大きな費用、國の補給するものは別でありますけれども、縣債等によつてやろうといたしますと、確かにこれは郡部側から異議の出ることは、火を見るよりも明らかであるのであります。おそらく他の四都市もさようであろうと思います。ここでぶつかつてまた三部制に戻るならば、むしろ特別市制を布いた方がいいではないか。こういうことも私の考えを固めました一つの理由であります。
 私は愛知縣の民主黨に屬しております。市部も郡部も愛知縣は民主黨が大多數を占めておりますが、その民主黨の愛知縣支部におきまして、この特別市制問題をいかにすべきかについて役員會を開いたことがあるのでございますが、この役員會におきましては、大多數をもつて特別市制を斷行すべしという根本方針を立てたのでございます。愛知縣會竝びに名古屋市會等の大多數を擁しまするわが黨の同志は、數十日の間はこの線に沿つて進行をいたしておつたのでございますが、突如として愛知縣知事の反對運動が起りまして、その後郡部の町村におきまする態度がまずかわり、また縣會等におきまする態度もこれに從つて緩和されていつて、現在は反對の決議をせられたという段階になつているのでございます。この反對は決して民主的ではない。岡崎市に私が前囘訪問をいたしました際に、ちようど愛知縣知事の、この特別市制問題に反對をしてくれという勸誘状が來たという事實もあるので、これは相當縣知事が深刻に反對をして、それぞれの隷下の諸團體に向つて反對を慫慂しておられる事實ははつきりいたしております。かような現象が起りまして、反對があちらでもこちらでも起つてくるということになつたので、私はこの際この反對というものの裏面につきましても相當考えなければならない。割引をして考える理由もある。かようなことも思つております。
 以上いろいろ勘案をいたしましても、この特別市制というものは、原理においてやはり斷行すべし、もしも斷行しなければ、五大市は必ず三部制にはいる。かつてわれわれが戰慄をしたあの状態を再現する素因をつくるのだ、こういうことも考えます。また五大市が五十萬やそこらで特別市制とは何ごとだという聲もよく聞くのでありますが、これも當りません。五大市は相當な人口をかつてもつておつた。この人口はとりあえず附近の町村に流れこんでおるのであります。名古屋市の人口は現在六十萬と稱しておりますが、六十萬七十萬の人口は、大體尾張を中心といたしましてそこらに流れこんでおります。この人口は間がな隙がな、隙さえあれば名古屋市に復歸しようということで、虎視眈々としてねらつておる人口で、經濟的にあるいは資材の點で、餘裕さえできれば必ずこれは急速に名古屋市に流れこむのでございます。この現象はやはり他の四大都市も同じであろうと思いますが、こうした現在見ます形というものは、必ずしも將來まで約束する有様ではないのだ。現在の形というものは、將來の形までには非常に大きな變動性を藏しておる。同時に都市の躍進性をも約束しておる。こういう見方も至當であろうと思うのでございます。かような點につきましても、五十萬、六十萬の名古屋市の特別市ということを考えるよりも、やはり百萬、百二十萬の名古屋市が特別都市になろうとしておるのだ、こういう解釋の方が妥當であろうと思つております。
 私は以上の意見を開陳いたしまして、適當に討論を終結せられまして、採決にはいられたいという意見に贊意を表するのであります。
    〔「贊成」と呼ぶ者あり〕
○坂東委員長 もはや討論は終結ということに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
○坂東委員長 それでは討論終結の動議に贊成の方の起立を願います。
    〔贊成者起立〕
○坂東委員長 起立多數、討論は終局いたしました。
 それでは本起草案に對する正式の採決は關係方面との打合せもありますので、後日にいたし、一應假決定をいたしたいと思います。そこで修正案に對する贊成の方の御起立を願います。
    〔贊成者起立〕
○坂東委員長 それでは現在の出席者十六名中十二名の贊成であります。
 次に反對の方の御起立を願います。
    〔反對者起立〕
○坂東委員長 反對の方は三人であります。
 次には修正案を除いた部分の原案に對しての贊成の方の御起立を願います。
    〔發言する者あり〕
○坂東委員長 修正案は矢尾君の「地方自治法第二百六十五條第二項の規定により、大阪市を特別市に指定する」とありますのを、第一條といたします。第二条は「地方自治法第二百六十一條の關係普通公共團體とは、本法においては、大阪市を指すものである。」となります。この二つが修正案できまりました。小委員長の報告でありますところの原案に對して贊成の方の御起立を願います。修正案と言いますのは、矢尾君が出しましたのは、先ほど言つたような、第一條に第二條を加えたものであります。これが修正案であります。それがきまつたからそれを除きまして、小委員長報告の原案に贊成の方の起立を願います。
    〔贊成者起立〕
○坂東委員長 起立者は十二名であります。多數をもつてその通り假決定をいたしました。
 なおさらにお諮りいたしますが、ただいま申し上げましたように、正式の採決は後日に讓りたいと思いますが、その點委員長及び理事に御一任を願うことに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○坂東委員長 それでは御異議ないものと認めまして……。
○松澤(兼)委員 せつかくこの委員會で決定したことでありますから、全力を盡して實現ができるようにお願いいたしておきます。
○坂東委員長 それでは最後の點につきましては、滿場異議なきものと認めます。
 本日はこれをもつて散會いたします
    午後一時五分散會