第001回国会 鉱工業委員会公聴会 第3号
昭和二十二年十月十五日(水曜日)
    午前十時四十八分開議
 出席委員
   委員長 伊藤卯四郎君
   理事 大矢 省三君 理事 青柳 高一君
  理事 生悦住貞太郎君 理事 澁谷雄太郎君
   理事 早川  崇君
      金野 定吉君    松本 七郎君
      萬田 五郎君    生越 三郎君
      庄  忠人君    西田 隆男君
      長谷川俊一君    三好 竹勇君
      有田 二郎君    神田  博君
      平島 良一君    深津玉一郎君
      淵上房太郎君    谷口 武雄君
      前田 正男君    高倉 定助君
 出席公述人
      齋藤 次郎君    俵田 武彦君
      竹内 喜助君    土居 禎夫君
      奧田 良三君    長崎銀次郎君
      渡邊 一良君    石渡信太郎君
      青山秀三郎君    槇田 久生君
      松村  弘君    武藤 一二君
      平井寛一郎君    植松 延秀君
      松井 俊次君    高山慶太郎君
      川添 隆行君    中野  實君
      平岡 達明君    久保山雄三君
 出席政府委員
        商工政務次官  冨吉 榮二君
        石炭廰長官   菅 禮之助君
 委員外の出席者
          専門調査員 谷崎  明君
          専門調査員 保科 治助君
    ―――――――――――――
本日の公聽会で意見を聽いた案件
 臨時石炭鉱業管理について
    ―――――――――――――
○伊藤委員長 これより鉱工業委員会の公聽会を開きます。
 一昨日及び昨日は二日間にわたりまして、炭鉱関係の公述人の方々から、あるいは経営者の立場から、あるいは労働者の立場から、多年直接に石炭鉱業に從事せられた、豊富な体驗に基く専門的な御意見を伺いまして、本委員会の法案審査の上に多大の參考となつたのでありますが、本日及び明日は、石炭鉱業に関する金融、資材、食糧、輸送、技術の面から、また鉄鋼、機械、電氣等関連産業の面から、また経済、報道並びに一般から選定せられました公述人の方々から、それぞれの立場の観点より御意見をお伺いすることといたします。
 なおこの際委員諸君に御報告を申し上げます。委員長及び理事に一任せられておりました未決定の公述人中、資材関係の公述人として、西日本坑木株式会社業務部次長竹内喜助君と、食糧関係の公述人として、福岡縣副知事の奧田良三君が決定いたしました。なお公述人から代理人の申出があります。経済関係の公述人森信明君は、代理人として同じ東洋レーヨンの取締役の松井俊次君を、また大塚萬丈君は、代理人として同じく日本産業協議会に所属する國策パルプ工業会社の社長水野成夫君を出席いたせさせたいとの旨申し出でておられます。これについてお諮りいたします。両公述人の代理人より意見を聽くことに同意することに御異議はありませんか。
○伊藤委員長 御異議なしと認めます。それでは同意することに決定いたします。
 なおこの際本日新たに御出席をいただきました公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本委員会が臨時石炭鉱業管理法の審査にあたりまして、特に公聽会を開きまして、臨時石炭鉱業管理について眞に利害関係を有する者、学識経験者より廣く御意見を拜聽することにいたしましたゆえんのものは、本案が廣く國民の一般的関心及び目的を有する重要な法律案であり、さきに議院の内外におきまして、賛否の意見が活発に展開せられております現状に鑑みまして、本案の審査に廣く國民の世論を反映せしめるとともに、それぞれの部門における豐富な御意見を拜聽することによりまして、本委員会の審査を一層権威あらしめ、かつ遺憾なからしめんとする精神に出でたものにほかならないのであります。本日特に御出席を願いました各位は、それぞれの各部門を代表せられておりますのでそれぞれの角度から、忌憚なき御意見を陳述あらんことを切にお願いいたす次第であります。
 次に今明日の公聽会の議事について一言申し上げておきます。本日は公述人の御発言は発言台にお出でを願います。発言台にお立ちのときに職業と御名前をお述べいただきます。多くの人人々から御意見を伺うために、公述人一名あたりの発言時間は十五分以内にお願いすることにいたします。それではこれより公述人の方から御意見をお伺いいたします。まず最初に資材関係から始めます。セメント工業会社会長齋藤さんから御意見の御発表を願います。
○齋藤公述人 セメント工業会長齋藤次郎です。セメント業と石炭の関係を簡單にまず申し述べさせていただきますが、大体この十二、三年間を顧みまして、石炭の全生産額の最高四%三ないし一%九という数字をわれわれは配当を受けて、セメントの製造に從事しておるわけであります。その間最高のものは昭和十五年に五千七百万トンの石炭の三%三、すなわち百九十二万トンをいただきまして、大体六百万トンのセメントの生産を行つたわけであります。すなわちセメント業に対しましては、石炭の量ということが非常に重大なる関心をもつべき事柄でございます。なお炭質という問題につきましても、これまた同様でありまして、大体十四年の原料炭の配給を停止せられましたその当時におきましては、大体石炭一トンにつきまして三トン強のセメントが製造されておりました。しかるに最近におきましては、石炭一トンに対してセメントの生産数量は二トンをちよつと上まわるという程度でございます。のみならず、これに続きまして、セメント品質も非常な大きな影響を受けておるのであります。セメントと申しますれば、石炭は実に死活の問題であるのでありまして、問題の焦点は石炭の品質の向上及び石炭の量の増大という二点なのであります。ゆえにこれから國管法の問題につきまして、まず観点は炭質向上及び炭量の増額ということ以外には、われわれとして重大なる関心を持てないのであります。國管法の終局の目標は何であるかということを考えてみますと――もつとも、ただいまの國管法は、伺うところによりますと何か公團法とともに表裏の関係において提出されるものであるということだそうでありますが、その公團法と申しますか、裏づけの法規がないために、ただいまの法律だけでただちに増産になるか、非増産になるかというようなことを、簡單に批判いたしますことはどうかと考えられるのでございます。内容において別段炭鉱の財産権とか、あるいは所有権というようなものには全然触れておりませんが、経営いかんによりましては、石炭業全体の機構について、相当変革が起り得るのではないかというふうなことも考えられるのであります。しかしながらこの問題は、われわれが今セメント業として取扱う増産、非増産という問題につきましては、むしろイデオロギーの方の問題になると考えられますために、私はこれには触れぬつもりでおります。
 そこで、私は國管法の第一條にあります産業の復興と経済の安定に至るまでの間、緊急臨時の措置として政府が國管法を行われる、しかしてその目標とするところは石炭の増産にあるということに額面通りに考えまして、これからわれわれの態度を判断する唯一のかぎとすればよろしいという考えをもつておるのであります。
 そこで、まず國管法をずつと見ますと、業務計画の基準は石炭局長がお定めになつて、それを基準にして業務計画ができ上がり、しかしてこれを決定されるのもまた石炭局長であります。なおその変更及び局長自体とされての監督上のいろいろの命令及び指示等が出される式になつております。しかしてその対象となるものは炭鉱の管理者でありましてその管理者は石炭局長の監督のもとに業務計画の実施に当たるという仕組になつております。この仕組を考えますのに、企業の活動の中心は石炭局長と及びこれを実施されるところの炭鉱管理人に中心が移つてくるというふうに考えられるのであります。しかしなお條文の後段になりますと、石炭局長の選任につきまして、学識経験のある方を選任するというふうに書いてあります。たまたまその機構におきましても、大体過半数の方は石炭に対する学識経験者をもつてこれに充てるというふうにございます。しかしてその石炭局は全國が四つになつております。そういたしますのに、一方炭鉱の数を伺いますと、約千以上ということだそうであります。かりにこれを一石炭局平均二百五十といたしましても、その全体が指定炭鉱になるかどうか、それはわれわれにはわかりませんが、非常に厖大な規模と考えられるのであります。炭鉱会社の大体の機構について伺つたところによりますと、七つかの鉱業所を持つておられて、それに対して労務者が六万人、職員が五千名、しかも本社を担当せられる職員が五百名あられるというふうなことを伺いました。この指定炭鉱に相当するものの数が必ずしも二百五十になるかどうかわかりませんが、その数の比例から見まして、石炭局の機構は非常に厖大なものとなるように考えられます。そこで、かくのごとき厖大な機構で、はたして機能を鈍化せずに運営ができるかどうかという問題であります。たとえば、今セメント業におきまして、大体三十五工場が、職員を含めて一万六千人の從業員によつて事業を運営しておりますが、そのうちにおいても、すでに機構の過大なものとしからざるものとの間に、能率の変化がはつきりと伺われるのであります。そうすると今申し上げたような、石炭局長が主宰する千以上の炭鉱が、企業規模として適正なものであるかどうかという点に私は疑いをもつのであります。そういう点からみて、物と人とで運営していく企業それ自体の考えから、國管法がはたして増産をもたらすものであるかどうか疑いをもつものであります。
 次に人の問題でありますが、ただいま申し上げました通り、この企業経営の中心に出てこられる石炭局長と、從來の経営者または事業主との経営面の優劣ということを考えてみるのに、炭鉱主または事業主、あるいは経営者として活動された方についてみますと、学識経験必ずしも一般の学識経験にあらずして、各現場の認識の決定ということであろうと思うのであります。すなわち子飼いからある炭鉱に全財産なりあるいは生涯を注ぎこんで、その経営に当るのに対し、一方それに比較される官吏である石炭局長の方は、やはり轉任とか轉職ということが必ず生起すると思うのであります。この点において、ただいまの学識経験ということは、結局現場の認識という企業の最も必要欠くべからざる問題については、外面に触れるという程度ですごしてしまうではないかと考えるのであります。
 次に機動性の問題でありますが、われわれ仕事をしておる場合に一番重要な問題であるこの機動性ということは、非常に限られた資材、限られた資金をもつて運営をする点からみれば、最も重要なことであると思うのであります。この点において、從來の方々と新しく経営の中心になる石炭局長及びその周囲の人々との間に、比較にならぬほどの優劣があろうと思うのであります。かくのごとき点からいたしまして、大体企業の組織及び人という点から見ましても、今囘の國管案が必ずしも増産にならぬと私は考えておるのでございます。なお一方その運営の問題になりますると、中央におきましても、地方におきましても、また経営の單位におきましても、大体委員会がその中心の機構になつております。しかも企業経営の責任制がきわめて焦点をぼかされておつて、どこに責任があるかという点になりますると、殊に主宰者である石炭局長のそれに至つては、何も法文に書いてないのであります。ゆえに、組織なり人なり、あるいはその運営全体の状態におきまして、このような形においては、おそらく企業全体としても活発なる活動は望めないのではないかと考えるのであります。ゆえに大体論といたしまして、本國管案からは、少くとも増産を期待するということは、なかなかむずかしいと私は考えるのであります。
 次に過渡的の問題でありまするが、國管案は大体三年というふうに臨時の措置として決定いたされておりまするが、ただちに起りますことは、本案が通過すれば、炭鉱の指定または無指定ということが、企業者の関心の的になつてくると思います。また石炭局が新設されるにつきましても、おそらく厖大なる人事を要する点から、從來の民間業者から多くの人を攝取する。また官界におきましても轉任、轉職ということが相当廣範に行われると思うのであります。そういう場合に、それの落つくのに相当の時を要するのは明かなのであります。加うるに、この機構の運営上、今までなかつた新しい問題として、たとえば、業務計画とか、新しい炭鉱管理者の選任であるとか、あるいは生産協議会であるとかいう新しい制度があります。これもおのおのの選任なり、決定なり、あるいはその運行について、板につくまでに相当の時間がかかると思うのであります。なお最もどうかと思われます点は、この國管案が臨時三年と限定されておりまするために、いわゆるその期間を通じて、全体が腰かけ的の考え方に左右せられるのではないかと考えられる点であります。そこで実行期間三年間が、すべてはたして満足に十分なる機能を発揮し得るかどうかという点を考えます場合に、おそらくは過渡的ということが三年全体にわたるのではないかと考えられるのであります。
 次にもう一つ考えなければならぬと思いますることは、私は昨日も一昨日も傍聽いたしておりませんので、ただ新聞で拜見するだけなのでありますが大体において経営者側の方はこの國管法に対して反対でおられます。しかして組合側の方は賛成をされておるという形に見受けるのでありますが、これは本案がイデオロギーの問題でないと言われておるにかかわらず、受取る方の側においては、むしろイデオロギーの問題であると考えられておるのではないかと思うのであります。從いまして、かりに本案が通過いたしますと、何かそこに矛盾と申しますか、摩擦と申しますか、そういうものが起るのではないかと考えるのであります。もしも國難的の経済危機に際しまして、石炭増産ということが経済の復興と、産業の安定を期する唯一の途である、すなわち増産ということがただ一つの途であるというふうに考えられるならば、もつと端的に、單純に、その間の協力一致ということが実現し得るのではないかというふうに私は考えるのであります。この両日炭鉱業者がこぞつて本席において反対せられたということにつきましては、政治家とされて大いに重厚なる御考察を願う必要があるのではないかというふうに、私は考えるのであります。
 結論を申し上げまするが、セメント事業といたしましては死活の問題が石炭にある。ゆえに炭質の向上、炭量の増加ということが問題であります。その純粋なるそれだけの点から見て、國管案がわれわれにもつと、必ず増産になる、必ず出炭が向上するということをはつきりお示しいただけない以上、われわれとしては賛成がいたしかねるといういうことでございます。
○伊藤委員長 次に全日本セメント労働組合協議会委員長俵田さんに御意見のお述べを願います。
○俵田公述人 全國セメント労働組合協議会委員長俵田武彦であります。どうぞよろしく。
 セメントと石炭の産業の関係につきましては、今工業会長が述べましたから略しますが、單にセメントは石炭の需要者であるというばかりでなく、大きな資材関係、ここに出ておりますように、供給者という点でも非常に関連があるのであります。すなわち大体今セメントから石炭へ供給しておりますセメントの量は、毎月六万トン内外、全セメント生産量の九%内外、マル進向けを除きました國内向けといたしますと、二〇%内外を供給しておる。それも殊に優先的に供給しております。この点から申しまして、業者が密接な関連があることは疑いないのであります。從つてわれわれとしても今度の國管案に対して非常な関心をもつております。私といたしましては、この國管案の個々の條文については詳しい研究はできませんので、大体において労働者の立場として、原則的に石炭産業の社会化、あるいは國家管理という問題について賛成の意見を述べていきたいと思います。
 石炭の増産はどういうふうにしたら達成されるか、これはまずだれも言いますように、炭鉱労働者の労働條件の引上げ、社会的の地位の向上がまず第一であります。またこれと併行いたしまして設備の機械化、能率化が達成されなければ、増産は期待できないのであります。ところがこの労働條件の引上げとか、社会的地位の向上、あるいは設備の機械化、能率化というふうなものは、ただ金や物をどんどん石炭産業へ投げ入れれば達成されるかというと、決してそうではないのであります。今までのいろいろな例から見まして、金や物を與えても、それが決して生産の流れに投入されない場合が多いのでありまして、経営者にとつては、まずどうしても資本の保護であり、利潤の保障でありますから、そういう考えが先に立ちますと、いくら資材がありましても、その資材を三年も四年も寝かせておいたり、あるいは物交をしたり、あるいはやみで賣るいうふうな結果になります。石炭の増産を國家的な見地からぜひ達成しよう。そうしてこれにたくさんな金と資材をかけようというためには、もはやこういう産業を、一個人や一グループの自由なる経営ということに任せておけないことはもちろんであります。資本主義の祖國アメリカでさえも、獨占禁止法その他の、いわゆるいろいろな法律で企業の自由性ということを拘束しておるのであります。イギリスにあつての銀行炭鉱の國管に引続き、鉄鋼その他の産業に対しても同様な処置がとられようとしておる。しかもこれに対して、必ずしも保守党は、自分たちが、天下を取つたら國管案を中止するといつていなくて、逆に國管案を継続するといつておることは、四、五日前の新聞にも出ております。かつまたヨーロツパの各國におきましても、決して私の企業というものは全然拘束されないで、自由にあるというものじやないのであつて、何らかの意味でいろいろの制約があるわけであります。從つてもはやこれはイデオロギーの問題でなくして、社会の常識と言わなければなりません。
 この意味で企業の社会化が必要であるとしたならば、今度の法案はよくその目的を果すのに十分であるかどうか。遺憾ながら私は今度の法案は、その根本的な点において、この國家管理あるいは社会化という点を十分に実施されないようにできておると考えるのであります。すなわち労働條件の引上げ、あるいは社会的の地位の向上というふうなことには何ら触れておりません。しかしいくら資材なんかを出しましても、人の和がなければ増産は期待できないのであります。炭鉱労働者の待遇を非常に低い地位におきまして、経済條件を現在のような惡化さした條件のもとにおいて、その社会的地位を非常に低いところにおいて、それで炭鉱の石炭の増産を達成しようと申しても、それはできないことであります。戰爭中に暴力的に強制労働さした朝鮮の労働者諸君のあとを引継いで、地下数百尺のところに潜つて働いておる労働者の現在の待遇をよくお考えになつてみれば、これはおのずから明らかであります。これらの達成はどうすればよいか、それは経営の徹底的な民主化でなければならぬのでありますが、今度の法案にはそれが少しもにじみ出ていない。経営の民主化でなくて、労働者の意見を參考にちよつと聞こうというふうな機構にしかなつていない。マツカーサー元帥が、労働者に対する食糧、住宅の確保ということを、政府に責任をもつてやれということを言つておるのに、この法案にはそれについては触れていないのであります。そうしてその各管理委員会、あるいは協力会というふうないろいろな機構が、大体において商工大臣、石炭局長が多くの権限をもつておりまして、労働者、炭鉱のほんとうに働く者の意見というものは、そこに決定的に反映できないようになつておる。こういうようにいろいろの制限を受けておるのに、片方で爭議権を否認されるようなことになつている。こういう点は非常に殘念だと思います。また関連産業の協力につきましても、これが一般的に運営が民主的でなく、石炭局長あるいはそういうふうな官僚の命令によつて、勝手に進められるというふうな点についても、われわれは反対せざるを得ない。要するにわれわれとしましては、炭鉱の國家管理には絶対賛成でありますけれども、今囘の法案は、この國家管理の本質に十分触れていないという点で、同意できないことがあるのであります。
○伊藤委員長 次は西日本坑木株式会社業務部長竹内さんに御発言を願います。
○竹内公述人 私は西日本坑木株式会社業務部長竹内でございます。坑木は石炭のコストから見ますというと、御承知のごとく四パーセント少しを占めております。炭鉱の資材の供給量から見ますと、量的にはこれは最大な取扱い量でございます。次にその量を炭鉱として賄うためには、資材部門の中でおそらく七十パーセント以上の入手をかけて坑木問題を炭鉱ではやつております。かように炭鉱にとりまして重要なる坑木の、過去にさかのぼりました実績を御參考までに申し上げたいと思います。
 九州地区におきます全炭鉱の標準の手持量と申しますと、現在のところ約七十万石を保有しておることを理想状況にされております。これに対しまする実績を申し上げますと、從來西日本坑木統制組合、要するに統制組合時代の実績をまず申し上げます。二十一年度の四月に三十四万八千石、五月に三十七万三千石、六月に三十五万九千石、七月に行きまして二十九万石、八月に行きまして三十万六千石、九月にに至りまして三十四万四千石、十月に行きまして三十九万二千石、十二月に行きまして二十四万五千石、この十二月をもつて西日本炭鉱坑木統制組合というのは終焉したわけであります。組合の末期におきましては、組合の改組その他によりましてだんだん惡くなつてきまして、十二月に至りまして二十四万五千石、坑木の赤信号が出たわけであります。
 次に西日本坑木統制組合を改組しまして、西日本坑木会社というものを全炭鉱の共同機關として一月に設置いたしました。その一月の実績は二十四万九千石、二月におきましては二十五万六千石、三月におきまして三十二万九千石、四月に至りまして三十九万石、五月に四十八万五千石、六月には最高レコードを示しまして四十八万七千石、この六月をもちまして、西日本坑木株式会社は独占禁止法その他の関係によりまして、事実上の事業を中止したわけでございます。
 次に官廰統制に移りましてからの実績を申し上げますと、七月は四十一万五千石、八月は四十一万三千石、九月は、速報でありますが三十八万石を割つております。西日本坑木株式会社が全炭鉱の共同機関といたしまして、坑木の問題解決に乗り出しまして、徐々にその効果を発揮しまして、六月に至りましてはここ数年間の最高記録を打ち立てたわけでございます。ところが七月に至りまして、御承知のごとく坑木も切符制度に変りまして、この切符の処理は全部商工局でやる。西日本坑木は独占禁止法の關係によつて、実質的に業務を終焉するということになつたわけであります。その後官廰におきましては非常な力を入れて、切符の発券により炭鉱の需給を調整すべく、現在まで努力を続けてきておられるわけでありますが、実績は先ほど申し上げましたごとく、日に日に低下しております。これは何に起因するか、こういうことを私の実務の面から申し上げますと、まず坑木に關します切符制度そのもの、これは惡くないと思います。ただし官廰におきまして、その実際衝に当る人が坑木問題におおむね精通していない。要するに鋼材あるいはセメントのごとき物質と同一の見方でもつてこの需給調整をやる。これが最大の原因じやないかと思います。
 次に坑木問題を最も惡化しています問題は何かと申しますと、鉄道並びに汽船によります輸送の場合、輸送証明書が要るという問題であります。これは一船一車ごとに、全部発駅着驛について許可をとりまして輸送するわけでありますが、しかもその輸送証明書を発行されるところはどこかと申しますと、農林省の資材調整事務所であります。資材調整事務所は各駅にありまして、多くの坑木屋さんがそこまで輸送証明書を――たとえば鹿兒島縣で申し上げますと、鹿兒島の市中までもらいに行く。遠隔の土地は、往復三日も費やして証明書をもらいに出かける。非常なめんどうな手続が要るわけであります。坑木屋はわれわれの目でみますと男商賣であります。七めんどうな報告をしたり、手続きをするというようなことが不向きな人が多く坑木屋をやつております。こういう人に対しまして非常なめんどうな手續をとらせるということ自体が、坑木供出の低下している原因になつています。われわれ過去におきまして、何ゆえ輸送証明書が必要かということを、実際貨車輸送面について統計をとりましたところ、これは宮崎縣でございますが、山から出まして駅に出ます。この間に横流れがあつたりすることは多少あると思うのでありますが、少くとも駅に出まして、貨車に載つて炭鉱に着くまでの間、その坑木が行方不明になつたり、あるいはやみに流されたというようなことは、われわれのとりました統計上はないわけであります。こういうふうにわれわれの目から見ますと、必要のないようなことを官廰の方ではお考えになつてこういう統制でもやれば、坑木がうまく炭鉱に流れるのじやないかというようなおつもりで、お始めになつたと思いますが、事実はこれに反しまして、非常に坑木供出に阻害をいたしております。これは私から見ますと、官廰の方が輸送証明書でもやれば、坑木が炭鉱にうまく流れるのじやないかということの逆現象だと思います。
 その次は、現在最も供出を阻害しています原因は、坑木業者の金融問題の梗塞でございます。これは坑木、立木の手当資金としまして、過去におきましてすでに二億五千万円の融資が炭鉱補償を通じまして坑木業者に流れております。なお最近引続きまして、一億円余りのものが、坑木資金として業者の方に流れるということになつております。しかしこれくらいの金ではとうてい坑木の資金問題は解決いたしません。炭鉱の方でも、坑木代は何をおいても資材代の中では優先して支拂いされておりますが、炭鉱の現状では坑木屋の満足を買うほど支拂いをいたしておりません。平均いたしまして七月以降は掛になつております。この資金問題を解決しなければ要するに炭鉱に金融をつけてやりまして、坑木代の拂いを敏速にする。供出を從つて促進する方向に向わなければ、坑木が出ないこういうふうに考えます。
 それからその次は坑木官設置の問題でありますが、私の見ましたところでは、各縣に二名乃至三名の坑木官を置いて、坑木問題を処理することになつておりますが、この坑木官たるや、たとえば当該縣におきまして木炭檢査所の事務をやつておつた。道路の測量を担当しておつた。こういう人がその衝に当るというようになつておると思います。かような人々によつて、坑木というものが炭鉱にはたして流れるだろうか、私は断じて坑木官として現在程度の知識をもつた役人を何人置いても、坑木が一本でも炭鉱に流れることはないのではないか。これあたりも、官吏を置いて処理させれば、坑木問題が解決されるのではないかという思想の現われではないかと思いまするが、私の目をもつて見ますと、坑木官は今の程度で何人置かれましても、なんにもならないと考えております。
 次に坑木の資源状況は、御承知のごとく、戰時の山林の濫伐その他によりまして非常に枯渇しております。これの解決の一助としまして、先般強制伐採もでき得るような法令が出ておりますが、これに対して法令が出たきりでございます。各縣、各官廰において、これに基く具体的な方策をどこで定められるか、その精神に基いて、森林の所有者から伐採業者に渡るというような斡旋なり、あるいはその促進なりをどこでおやりになるか、どこでもおやりなつたところはないと思います。これなんかは通り一片の規則をつくつて、結局死文に終つている。
 以上私は皆さん政治家の前におきましては不適当なと思いますが、私は過去西日本坑木の業務運営の担当者といたしましてやつてきたので、ごくかいつまんだことを申し上げました。それで私はこの國管問題に対しましては、官廰もそれぞれ特色があります。あまり細部まで官廰が資材問題に手をつけるということは資材問題を行き詰まらせる。從つて資材に関する限り、官廰は大所高所から民間を指導し、善導していく。民間人が自主的にこれを一つの経済行為としてやつていくというところに、資材問題の解決があるのでないかと思います。從いまして、私國管自体はあまり深く認識しておりませんが、少くとも官吏によつて、あるいは官廰によつて、細部までも資材問題を取扱うということに対しましては反対でございます。もし國管法が細部まで官廰及び官吏によつて資材を取扱わそうということを盛りこまれておるとしますと、これまた反対でございます。結論としまして、官吏及び官廰は、要するに大所高所から資材問題の解決促進をはかつていく。その実際の運営は民間の機関においてこれをやらすということではないかと思います。以上簡單でございますが終りといたします。
○伊藤委員長 次は日本企業会常務理事土居さんに御発言を願います。
○土居公述人 私は日本林業会常務理事の土居禎夫であります。炭鉱に要します坑木の数は炭鉱によりましていろいろ差があります。北海道、常磐、宇部、九州と、それぞれ地方によりまして炭鉱の事情が違いますし、また扱い方も違いますから、一概にトン当りいくらということは申されないのであります。また坑木と称して入れましても、一方において燃料に使つたり、その他の用に供するものもありますので、正確なところは言えないと思うのでありますが、しかし総じてトン当り一斗平均といたしますと、三千万トンの石炭採掘に要しますものが、坑木のみでありますれば三百万石くらいじやないかと思います。そのほか鉱山用木というものあるいは住宅その他に要するものもありましよう。これを合計いたしますと五百万石乃至六百万石くらいじやないかと考えるのであります。坑木は、以前においては各地とも多く松を使つておりました。耐久力において松が一番よいのであります。ところが坑木が少くなりまして、たとえば北海道のごときはえぞまつ、とどまつを多く使つておりましたが、近年植林の落葉松を使うことになつて、これがために非常に坑木は潤澤になりました。もつとも落葉松は御案内の通り、とげがありますために、坑木はこれを嫌います。それがために永い間落葉松は使わなかつたのでありますが、近年とどとどの不足に從つて、落葉松を平氣で使うようになつた。また北海道においては、全然濶葉樹は使わなかつたのであります。これは腐殖しやすいし、目方が重く取扱い困難という点から使わなかつたのでありますが、坑木の不足によつて濶葉樹をどんどん使うことになりまして、現在においては三割乃至四割の濶葉樹を使つております。東北常磐におきましても、だんだん松以外のものも使うことになりつつあります。九州、宇部におきましても、また多少そういう傾向をもつております。かようにいたしまして、使うところの坑木の種類もだんだん変り、また使い方も変つてまいりますので、経済的にだんだんとなり、またその足らないところのものも充足されるような傾向をもつてまいつたのでありますが、これを総じて考えまするときにおきまして、炭鉱用の坑木というものは、必ずしも今日では不足をいたしていないと考えるのであります。一般に唱えられております。坑木が足らぬから採炭ができないというようなことを申し述べておりますが、これわただ價格の問題、あるいは輸送の問題、その他の問題が関連いたしまして、坑木が足りぬからというて訴えているのでありますが、生産の面におきましても、全國的に申しまして必ずしも不足を告げていない。また不足してもこれがために炭鉱の仕事に支障を來すと考えておらないのであります。將來宇部におきましても、九州におきましても、松以外いろいろのものを使い、殊に濶葉樹を使う。重いことをがまんし、節のあつたり、曲つたりすることもがまんして使うということになりますれば、坑木の供給においてさほど憂うるに足りない。しかもわずか三千万トンの石炭を出すというためには、さほど日本においては坑木の不足を告げ、これがために増産ができないというふうに考える必要はないじやないかと思うのであります。本年度におきます日本全体の木材の生産高は、大体七千万石を標準にいたしております。この七千万石は大体において生産ができる見込であります。戰爭前におきまして、あるいは戰爭にはいりましても、日米のこの大きい戰爭の前におきまして、一番多かつたのが約一億万石であります。これからだんだん減りまして、最近におきまして六千五百万石ないし七千万石のところへいつておりますが、本年の目標といたしましては、さき申します通り七千万石であります。この数字は大丈夫できる見込でありますが、これができますれば、大体において日本の今日の木材需要には應じ得る見込であります。もちろんぜいたくに言いますれば、さらにさらに多くを要するのでありましようけれども、大なる支障は來さぬでいくでありましよう。現在は消費面において非常な制約をいたされております。殊に建築においては非常なる制限をいたしております関係上、木材は多少だぶついた事情にあると思います。從つて先般マル公の改訂をいたしましたけれども、木材價格はそのマル公を下まわりまして、全國を通じまして大体七掛ないし八掛のところにあります。マル公よりも安い相場にあるという状態は、すなわち木材がややだぶついておるということを物語るものと考えます。繰返して申しますが、坑木という面におきましては、價格の面において適正化をはかり、そして輸送面その他においてはある程度の助力をもつてするならば、石炭三千万石の掘鑿に対しましてさほどの不自由を感ずるものではないと私は信じておるものであります從つて今の國管問題とこれを結びつけましたときに、必ずしも國営あるいは國家管理でなければ、坑木資材あるいは鉱山用材の資材の面において、非常に重大なる支障を來すというふうには考えられないのであります。私はそう考える必要はないのじやないかと考えます。すなわち現在の炭鉱経営状態においても、坑木資材の供給面において、大なる支障を來すものじやないと考えておる一人であります。最近この九月から坑木の價格を改訂いたしまして、全国を通じて約七割強の價格を引き上げたのでありまして、坑木は順調に出つつあるのでありますが、ただ輸送面において非常なる障害を來しておるがために、産地においてそのまま滞貨しているものが相当あるのを遺憾として、これが滞貨一掃に私ども盡力いたしておるわけであります。
 一般論といたしまして、炭鉱の國営を必要とするところは石炭の増産にある増産の目的さえ達成するなればよろしいのであります。今日の増産が予期のごとくに進捗せられぬということは、大体企業者においてその炭鉱の経営が拙劣であり、非科学的であるというにあらずして、戰時中における無理な採炭が今日なお囘復しておらぬ。それからまた資材及び労務者の不足。炭價の改訂が適正でなかつたということ。あるいはまた戰後人心の虚脱的傾向にあつて、これが從業の上下を通じて生産意欲が欠除したということに基くものではないかと思うのであります。これが囘復をなし、その欠を補うにおきましては、必ずしも國家管理の要を認めないと思うのであります。その必要とするところの面に沿つて國家が助成するにおいては、現在の民主民営において、十分その目的を達せられるものと思うのであります。炭價の適正をはかり必要なる資材を充足せしめ、人心をして生産意欲を向上せしむるの方途を講ずるにおきましては、おのずからその目的は達成せらるものであると考えるのであります。國管によりましてかえつて企業者の企業心を喪失せしめ、いたずらに國家権力が禍いして、減産に導く憂いはないでありましようか。労務者が安易を求めて労務を厭う傾向を誘発するものではないでありましようか。いたずらに國費の増蒿を招いて、角をためて牛を殺すの類に終るようなことはないでありましようか。今日の國営事業を通観いたしまするときに、決して満足すべきものではないと思うのであります。私は國管法に対して全面的に不賛成を唱うるものではないのでありまするが、管理方式におきまして、いわゆる官僚支配に堕することなく、経営者、労務者一体となり、民間の自主的組織と活動とを主眼として、政府はあくまで、これを助長するの建前において関與することを主眼としなければならないであろうと考えるのであります。國家が未端細微の仕事にまで立ち入ることは好ましからざるのみならず、企業者は企業の意欲を失うというようなことになるおそれがあり、産業を萎縮せしめるものであろうと考えるのであります。以上であります。
○伊藤委員長 次は食糧関係としまして、福岡縣副知事奧田さんに御意見のお述べを願います。
○奧田公述人 私は福岡縣副知事奧田良三であります。実は委員長より公廰会に食糧関係について出てこいというようなお招きを受けまして、あるいは皆さま方の方からお問があれば、私どもの関知いたしておりますところを率直に申し上げようというふうな氣持で出てまいつたのであります。率直に申し上げまして、私ども地方におりまして、食糧の操作をいたしておる者といたしましては、炭鉱の國管ということは食糧にはあまり関係がないように考えるのであります。また炭鉱國管の実施せられるか否かにかかわらず、食糧問題は、ぜひとも政府の力で炭鉱食糧を優先的に、しつかり確保してもらいたいという希望をもつておるのでございますが、せつかくの機会でありまするので、福岡縣という地元の立場から実情を申し上げまして、皆さま方の御參考に供したいと考えるのであります。
 福岡縣は大体食糧の操作の上によります人口は約三百二十二万でございます。これは農家等も含んでおります。そうして一般の配給人口は約百八十三万でございまして、それ以外炭鉱関係に配給いたします人口は約五十二万でございます。炭鉱関係に配給いたします人口は、本年になりまして漸次増加の傾向がございまして、最近では五十二万が五十六万、五十四万というような数字に相なつておるのでありますが、大体七月に調べましたところは、五十二万ということに相なつておるのであります。すなわち炭鉱関係に対する食糧の配給人口は、福岡縣の一般配給人口を加えまして、配給総人口の約二割八分を占めておるのでございますが、炭鉱は労務者六合、家族三合というわけで増配がございますので、配給いたしまする食糧の量におきましては約三割三分、約三分の一ということに相なつておるのであります。すなわち人口におきましては二割二分でありますが、量におきましては約三分の一というような大体の状態でございます。從いまして福岡縣といたしまして、炭鉱は非常に重要なものだと考えておりますが、言葉は悪うございますが、実は重荷になつておるのであります。
 福岡縣は全國でも有数な食糧の生産縣でありまして、昭和二十一米穀年度におきましては、当初の供出が百一万石でございまして、なお一〇%の増があつたわけであります。昭和二十二年米穀年度すなわち本年産の米におきましては、百二十二万五千石の供出割当を受けておるわけであります。百二十二万五千石と申しますと、全國でも北海道、新潟に次ぎまして第三位の供出をするといふような状態なのでございます。それだけ多量の食糧が生産されるのでありますが、先ほど申し上げますように、一般人口その他多数の炭鉱勞務者がございますので、供出いたしましたものは大体数箇月で全部を使つてしまうわけであります。すなわち炭鉱優先という意味で、政府におきましては炭鉱の食糧は優先的に確保されるのでありますが、福岡縣内に食糧があります限りは、大体においてどんどんこれを食つていくという状態でございまして、先ほど申し上げましたように、百何万石の供出がございましても、四月、五月ごろには大体全部食つてしまうというような状態でございます。縣内におきまする米がなくなりましたころ、政府はこれを縣外から求めるわけでありますが、炭鉱優先という意味で、炭鉱の分は縣外からどしどしと、政府の力で優先的にある程度確保されるのであります。しかしながらそれ以外の一般縣民の配給の分につきましては、まあわくはいただきますけれども、それを実際縣内に入れるのは、大体縣の努力によつて入れてくるわけでありますので、米から麦への端境期、つまり五月、六月の端境期におきましては、福岡縣としては、一般縣民の配給につきましては格別苦心、苦労、努力をいたしたのであります。すなわち麦ができます少し前の、六月下旬から七月上旬にかけましては、炭鉱方面は、政府の努力と縣の努力によりまして、大体全部遅配なく配給いたしておつたのであります。労務加配が少し遅れた点がありますが、大体炭鉱方面は全然遅配なく配給いたしておつたのでありますが、一般縣民は六月末から七月上旬にかけましては、平均いたしまして約二十二日の遅配でございまして、福岡市のごときは三十日に及ぶ遅配を受けておつたのであります。そういう食糧配給の実情でございます。しカもこの政府が確保いたすべき炭鉱労務者関係の食糧がうまく行きませんので、六月末現在におきましては、炭鉱以外の一般縣民の食糧を約四千六百石食いこんでおつたわけであります。なお皆さん御存じのように、食糧の操作を完全にいたしますためには、ある程度の操作のランニング・ストツクが必要でございます。炭鉱のために約二万石のランニング・ストツクというものを縣として用意しなければならぬのであります。そういたしますと、先ほど申し上げるごとく、六月末現在におきましては、約四千六百石の一般米の食い込みとランニング・ストツクの約二万石を加えまして、約二万五千石というものが、炭鉱労務者のために一般縣民の配給から割愛しておるというような状態であつたわけであります。二万五千石と申しますと、福岡縣の一日の一般の配給は五千石でありますから、約五日分だけを炭鉱労務者のために割愛しておつたというのが現状なのでございます。たださいわいにいたしまして、麦の早期供出によりまして、七月の数には順次配給も円滑になつてまいりましたし、そのうち政府放出米によりまして、その後は一應順調な配給を受けておるわけでございます。その点もいろいろ不都合な点もあるわけでございますが、大体におきまして、その後は一應順調に配給を受けておるわけでございます。そういう点からいたしまして、私どもといたしましては、ただいまのような放出食糧がなかつたならば、ほんとうの端境期、すなわち九月、十月、十一月の端境期に、一般縣民に対していかに食糧を確保するかという点につきまして、著しく不安をもつておつたわけであります。ただ、ただいま申し上げるごとく、さいわいにその後は配給は一應出米によりまして順調でございますが、そういう点からいたしまして、私ども三分の一程度の食糧を炭鉱のために配給いたしておりまする福岡縣といたしましては、炭鉱の食糧はぜひともこれは政府の力、政府の努力によつて、福岡縣一般の配給とは別に、ひとつ確保していただきたいという強い希望を実はもつておるのであります。殊に福岡縣は御存じのごとく、炭鉱に対して機器、器材あるいは鉄鋼を供出すべき有力な各種の工場、事業場もあるわけであります。それらの工場、事業の場も、すべて炭鉱以外の一般の配給として私ども縣内一般米として配給いたしておりますので、もしも今申し上げるごとく、炭鉱に対する食糧の確保が不十分で、一般縣民の食糧に食いこんで來ますならば、すなわち六月末のごとく、一般縣民の遅配が三十日にも及ぶというふうな状態になりましたならば、炭鉱に対して供出すべき各種の機器、器材、あるいは鉄鋼、その他の必要資材の供出も不円滑になるのではないか。食糧の面からいたしまして、そういう状態にあるわけでございますので、この機会にお願いいたしますことは、炭鉱國管に関連して、あるいはこれとは無関係で、ぜひとも炭鉱関係の食糧は、地元のわずかの食糧を食いこまないで、政府の力によつて、政府独自で十分なお手当を願いたいという希望と意見をもつておるわけでございます。あるいは、炭鉱國管には直接関係が少いかもしれませんが、地元の縣内といたしましては、そういう食糧事情でございますので、御參考までに申し上げておく次第であります。
○伊藤委員長 次は輸送関係といたしまして全國貨物自動車輸送労働組合常任委員長崎さんに御発言を願います。
○長崎公述人 私全國貨物自動車労働組合の長崎銀次郎と申します。実は私の発言の前に一言申し上げたいのですが、ただいま奧田さんのお話にもありますように、私は本日この公聽会に出席のお手紙をいただきましたが、輸送に從事しております私としては、輸送の面で今日何か御質問をいただくものだというような考えでこちらに參つたのであります。その点で実は輸送に関する資料は持つてまいりましたが、今囘の炭鉱國管法については、私たち毎日輸送の実務についておるために、逐條的な、法律的な研究がなされておりませんので、理論的には説明が申し上げられないのでありますが、私ども貨物自動車輸送の從事しております労働組合の立場から、一言申し上げさしていただきたいと存じます。
 私どもがいつも資材の面でお話を伺いまするのは資材が出まわらないとか、あるいは物資が中心地に輸送されないときには、いつも輸送の隘路ということが言われるのであります。私どもは本年の三月東京都内に食糧の遅配欠配がなされたときに、私ども貨物自動車輸送に從事する労働組合といたしましては、都民食糧救援輸送隊というものを労働組合の手によつて結成いたしました。そうして現在私どもの産業において、非常に輸送力は低下いたしておりまするが、現在都民諸君の食糧の救援は輸送力の隘路によつてなされないということならば、われわれはいかなる犠牲もあえて甘受しなければならぬのであります。都民のための食糧の輸送ならば、ないところの車輛ではありましたが、一日三百台を動員して、近隣にあるところの――たまたま三月頃はとこ芋の放出期にありましたので、私どもはこれらの食糧は、率先自分たちの手によつて、都民の皆さんのお台所まで運ぼうじやないかということまで協議いたしたことがあります。食糧輸送隊を組織した私どもの氣持というものは、とりもなおさず、局部的ないわゆる國管に類するものではないかというふうな考えをもつております。現在滿たされない輸送力の隘路を、やはりその産業に働く勞働者の熱意によつて打開しようということを、私どもは考えたことがあるのであります。そのときも私どもは各関係官廳に申し出まして、自分たちは都民の皆さんのお台所の食生活を滿たすためには、これだけの決意をもつてやるから、われわれの所属産業である民間のトラツクを利用していただきたいということを、申し上げたことがあるのですが不幸にして私どものその要請を一台も御利用は願わなかつたので、そのまま食糧事情は今日に及んでおる。先ほど申し上げましたように、私はこのたびの國管法に対して、逐條的にあるいは法的に御説明は申し上げられませんが、現在の炭鉱に働く私どもの同志の諸君は、やはりこの國管を望んでおられるのじやないか。炭鉱経営は國家管理がよろしいというようなことを、労働組合の皆さんは言つておられると思うのであります。私どもは自分たちのトラツク産業に対して、労働組合の立場からトラツクを動員して、一般大衆力を提供しようという氣持と、今炭鉱に働く皆さんの氣持も、みな相通ずるものがあるのじやないかと思います。そこに働く労働者の意欲の高揚によつてこそ増産がなされ、また輸送の増強もなされると思うのであります。私はたいへん雜駁なことを申し上げますが、とりもなおさず炭鉱に働く諸君の氣持は、國管を望んでおられるとするならば、また現在大体私の拜見しましたところによりますと、資材あるいは労働者の福利施設、その他のものは全部國管によつて滿たされるというような考えをもつておりますので、私は炭鉱國管のことに対しまして、全面的に賛意を表するものであります。
 たいへん雜駁な意見を申し上げましたが、これで終ります。
○伊藤委員長 午前中はこの程度に止めまして、暫時休憩いたします。午後は一時より再会いたします。
    午後零時四分散会
    ―――――――――――――
    午後一時三十七分開議
○伊藤委員長 午前中に引続きましてこれより公聽会を開きます。
 まず、日本船舶運営会理事長の渡邊さんに御発言を願います。
○渡邊公述人 私船舶運営会理事長渡邊であります。内部的の打合せの不備のために、本日私がここに來て意見を述べるというようなことは、一つも知らされていなかつたために、実に來て遺憾だと思いましたが、皆様お述べになるのですから、私も一應述べさせていただきます。
 海上輸送の面から申しますと、炭鉱が國家管理にならうがなるまいが、大して影響が、ないように思われます。ただし現在船舶運営会の輸送しております物の量は、毎月八十五万トンないし九十万トンでありまして、そのうち五割五分は石炭であります。しかして運営会の船舶でたきます燃料炭の量は、一箇年約七十万トンくらいになると思います。その点から申しますと、石炭が増産されれば輸送の量も殖えるし、減産されれば輸送の量も減る、こういうことでありますから、全然無関係というわけではありませんが、國管になりましたからというて輸送の能率が上るわけでもなし、國管にならないからといつて輸送の能率が下るわけでもないと思います。最近において私どもがよく耳にいたしますことは、石炭三千万トンを掘るが海上の輸送力はこれにマツチするだけの力があるかどうか、せつかく石炭を掘つても、輸送力がなければ運ぶことはできない。どうも見たところ輸送力がなさそうだから、石炭三千万トン掘つてもだめではないか。こういうような御意見をたびたび聽きますが、私は本年の三月以来あらゆる会合に出ましたが、現在の日本の船腹から見て、石炭三千万トン掘つても大丈夫運べるし、またそう信じております。現在の月間の輸送力は、大体百万トンないし百十万トンもつておりますが、実際運でいるのは八十五万トンないし九十万トンで、船の方が余つている状態であります。この問題は、去年の暮に石炭三千万トンの問題が出て以來、どうしても船としては運ばなければならぬのだ。船の面で運ぶことができないというのであつては、天下に申しわけがない。あらゆる動かない船、あるいは沈没船、そういつたものの引上げとか修繕とか、あるいは稼動率の増強とか、そういうものに対してあらゆる手段を講じてきたところ、最近におきましては、石炭も最初の計画通りに出て來ない、物資も予定の通り動がないし、とうとう船の方が余つたような形になつております。但しこれから冬期に向いますから、当然船の稼行率も落ちてきますので、今二十万トン近くの輸送力が余つているとしても、一月、二月のころにはたして二十万トンの輸送力が余るかどうかということは非常に疑問で、それほど余るまいとは思いますが、一方において石炭増産に対應するために、やがてこの年末ごろに動くと思われる船を、着々と準備しているのであります。だからこの一年間において、石炭三千万トンというものが出ても、船の方ではそうたいしてびつくりしないでもよいと思います。從つて石炭三千万トンを出すための副資材の輸送とかいう問題も出ますが、炭鉱の主力の北海道、九州に対して、もしも必要な鋼材とか、セメントとか、木材というものが行くとしても、船としては帰り道の片荷として積んでいくのですから、たいして船の能率には影響なく行くことができます。現在日本のもつている船舶は、非常にかたわの船でありまして、中には六十艘くらい、戰時中の標準型の一番小さいやつですが、ウインチのない船があり、これは戰時中は鉄砲を主とする輸送をやつていましたが、揚地にことごとくウインチの必要がなく、陸上の機械をもつて揚げておりましたので、その途はありましたが、終戰後物の流れが変り、そういうところに使えなくなりましたので、現在遊ばしている船も相当ございます。もしも九州で石炭の増産ができますれば、そういう遊ばしている船も動員してやるということもできますので、約一年ぐらいは、海上輸送の面においては石炭三千万トン出されても、決して御心配は要らないと思つていただいて、大体間違いないのではないかと思います。もつとも船には石炭のみを運んでいるばかりでなく、これに付随したいろいろなものも増量するわけですが、その増量のやり方によつては多少の違いはありますが、今の見透しでは、石炭が殖えると同時にほかの物も殖えるだろうということを見込んでも、さしあたつて三千万トンの増産があつた場合の輸送力は、船の部面においてはたいしてことを欠かぬということを、皆さんひとつ御承知置きを願います。
 ところで國管の問題ですが、よいか惡いかということについては、私きようそういうことは全然案内がなかつたものですから、考えてまいりませんでした。ところがここへ來たところ、どうしても賛否をきめろというお話であります。船舶運営会としての意見はございませんが、私個人としての意見を申し上げるならば、私は戰時中にいろいろの統制にも携わり、また輸送の部面を担当してまいりましたが、結論において、あまり國家が強力に口を出したものは、うまくいつてなかつたのじやないかという氣がいたします。たとえば船のごときも、ある一定量どうしてもつくらなければならぬのだ。それのみに焦慮したと申しますが、力を入れてろくでもないような船をつくつて、数字だけは合わしておつた。こういうかつこうがあの当時のはやりでありました。そのために現在の日本がどれほど苦労しておるかわからない。あのときは戰爭中でありましたから、一か八か、死ぬか生きるかだから、一時はそれでよかつたが、これからはずつと引続いて長くいくのですから、そういう場あたりのやり方はどうも感心しない。國家がやるいろいろのことは、大体に申しますと、國家の立てられることですから、理路整然としていかにも筋は通つておるだろうと思いますが、しかしこれを左右するお方々は、比較的経驗の少いお上の方々でありますから、理論上では左右はできますけれども、実際の面においては、人間というものは複雜で、二二が四、三三が九の通りに割り切れるものではないから、これはなかなか筋の通りには動かない。その動かないことが、過去において失敗のもとだつたのじやないかという氣がいたします。だからこれからのものはある事業をやるならばこれを畢生の事業とし、一生これに叩きこむ熱意をもつている連中を主体としてやらねばならぬ。もしもその人のやり方がまずかつたのならば、うまく善導して、よい方に仕向けるというかつこうの方がよいのじやないかと思う。從つて國家が非常にこまかいところまで、すべてこれを経営するというやり方は、理論の上から言うと別問題でありましようが、能率の上から申しますれば、むしろこういうことをやらない方がよいのじやないかという氣がするのでございます。
 それで現在の炭鉱の國管がよいか惡いかという問題は、ほんとうのところは、炭鉱に從事していらつしやる労働者、あるいは資本家の方々の方がほんとうにこれを討論さるべきものであつて、一歩離れて輸送というものは輸送部面の方がやる。これを考えるということは、どつちかと言えば、お役人が考えるのと大した違いがないようなことで、これはあまり効果的なものじやなくて、ほんとうは炭鉱それ自体に関係のお方々が立てらるべきじやないかという氣がいたします。私どもの方から申しますと、石炭七十万トンは毎年バンカーとして消費しておりますが、石炭の品質のよし惡しは船の運行能率に非常に影響すると同時に、また経済面においても七十万トンが八十万トンたかくなくてはならなかつたりするようなことが多いのでありまして、非常に重大な関心をもつわけでございます。御承知の通り船のたき料炭は最も優良なものでないとうまくいきません。惡い石炭を数多くたいたらよいじやないかと思いますけれども、決してそうはいかない。数多くたいても能率が下ります。その点から申しますと、非常にりつぱな石炭を出していただかなければならない。もしもこれを発端にして、三千万トン目標あるいは三千五百万トン、四千万トンの目標にしてその数字のみにこだわつて品質はどうでもよい、数字さえ出ればおれたちのやつたことの一應の筋だけは済むのだという観念でやつたならば、いかに石炭が増産されても、実際の部面においてはあまり役に立たないのじやないかという氣がいたします。その意味におきましてこれを自分の畢生の事業とし、自分の名譽にかけてこれをやるというようなやり方がよいのではないか。この國管法は私初めて拜見いたしましたのですが、目標は大体三年とすると書いてあります。この大きな事業を二年とか三年とかいう短期間でやることは、過去の経驗から徴しまして、先ほどどなたかおつしやいましたが、比較的氣分的になつて、時が過ぎれば自然にそれが解決するからよいという観念になりやすいという氣がいたします。その意味において、結論として私は、たびたび繰返すようですが、この事業はこれを畢生の事業として、これによつて自分の一身をかけるという、それくらいの熱と努力をもつてやるやり方が一番よいのじやないかと思います。
○伊藤委員長 次は技術関係で石炭増産協力会副会長、労働科学研究所理事石渡さんの御発言を願います。
○石渡公述人 私石炭増産協力会副会長、勞働科学研究所理事をやつております石渡信太郎であります。第一、國管法に対する賛否につきまして、第二、今年度の石炭生産予想につきまして、第三、國管法によつて急速増産ができるかどうかということにつきまして、第四、國管によつて増産できないとするならば、増産をどうするのかということにつきまして、簡單に意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 第一の國管法に対する賛否でありますが、わが國の石炭鉱業は、地下における石炭埋藏量の天然條件からいいまして、近い將來において國有國営か、國有民営か、あるいは共同國管のもとにおける民営か、そのどれかになるべき運命をもつている。つまりわが國の石炭業はそういうふうに運命づけられておると思うのであります。しかし今日は國管を施行すべきではないというのが私の意見であります。ただし特殊の地域の炭鉱全部、あるいは全國炭鉱の中の特殊事情にある炭鉱に向つてはこの限りではないのであります。必要ありと認めなければならぬと存じております。
 第二は、石炭生産の今年度の予想でありますが、水谷商工大臣は、経済安定にいたるまでの緊急措置として、石炭鉱業を政府において管理し、石炭の生産に関する國家の要請と、経営と労務の三者一体となつて最高の能率をあげて急速なる増産をなすことが、國家管理のねらいどころであると申されておりますが、一体政府が今年度の的確なる生産の見込高がいくらであるかは、まだ私は承知することができないのであります。計画ではない、的確に今年度出る見込みの、政府が予想する数量がいくらかということは、まだ知らないのであります。私が便宜言うならば今年度の石炭生産数量は二千八百万トン、これを上期下期に分ければ、上半期において千三百万トン、下半期において千五百万トン、計二千八百万トンであろうと想像いたします。これは私が特に弱氣な数字を出したわけではありません。政府当局も経営者も、また勤務者側もわれわれ横から協力するところの者も、ともに骨を折つて初めて達成できるところの予想数量であります。私としては、一方において品位の向上をみつつ、二千八百万トンの生産が今年度中にできたならば、これはむしろ全國民の感謝を受けてしかるべきことだとさえ思つております。
 第三は、國管法によつて急速に増産ができるか。遺憾ながら私はできないと考えております。その理由の一つは増産に向つての坑内の坑道の延長、それらの準備のためにぜひとも必要であるところの鉱区の整理に対して、この國管法は何ら強い手を打つておらないのであります。もしこれをやるとするならば、鉱業法の改正によるか、さもなくば主要鉱物増産法第四條第五條を、むりに施行するほかはないと思うのであります。それではおもしろくないのであります。
 その二は、わが国の石炭輸送は海を主とし陸が從とならなければならぬのであります。これが戰爭のために、逆に陸主海從になつております。これは結局海主陸從にしなければ、石炭のような目方が多くてかさの大きいものは運びきれぬと思います。これは戰爭前の実際から見て、御承知の方は御納得できると思うのであります。ところで、今は石炭の増産につれて、結局この細長い日本においては、どうしても海洋を主にしなければならない。これは今から海主陸從に方向轉換しなければならないと思います。その点につきましては、先ほど渡邊さんから海の方は大丈夫だ、引受けたと言われましたけれども、私はまことに失礼な申し分だが、全面的にこれを信用することはできないのであります。それはこの海主陸從の轉換にいくらか混乱状態を呈しつつあることと、それに附随して港湾設備その他の点からしまして、今のままではおそらく三千万トンの運搬はできないと思います。現に下半期の割当は、上半期に比して、月五十万トンくらい増加すると思いますが、かりに十月から毎月五十万トン増産したとしますれば、はたしてその運搬がうまくいくかどうか。私はこの國管案は、海陸の運搬の保障を裏づけなくては無意味だと思うのであります。その点政府は、昭和二十二年以降二十七年度まで五箇年間の生産計画の数字を発表しておりますが、これは私から見ますれば、まさに一方的のペーパー・プランであつて、信用をおくことができないと思うのであります。かかる年度計画、いわゆる経営の堅実なる会社、あるいは堅実なる炭鉱としましては、一番に立てなければならぬ炭鉱工業のかんじんの土台であります。これを今度の國管法案によりますと、炭鉱の生産協議会にもつていつて決定しなければならない。そしてその生産協議会は、経営者及び労務者側から同数の委員が出て、これをきめることになつております。これは趣意におきましてまことに結構でありますが、國管法案の第三十一條以下第四十條についてみますに、この生産協議会の組織運営では、ほんとうに事業計画はできないと私は思います。なお同附則第六十九條によりますれば、本法の有効期間は三箇年となつておるのでありますが、炭鉱の三年後の坑内状況は、おそらく前と比べて荒廃するだろうと思います。それは官僚統制と言つては失礼ですが、ややそのにおいのします今度の國管案によりまして、三年間というきわめて短い期間における生産競争の弊害として、必ずや出てくるものと私は思います。
 この四、金融、資材その他大きな隘路として殘つておりますものは、國管によつて簡単に解決できるものとは信ぜられないのであります。私の考えますところでは、今殘つておる大きな隘路は、山元にあらずして、いわゆる本元の東京にある。隘路の所在地は東京であると思う。この大きな隘路打開は、山元の生産協議会や、山元の力では容易に解決できないと思うのであります。なおこの隘路の今後生れてきますもとは、山元にあらずしてやはりお役所の、本元の東京でだんだん出てくると私は思うのであります。終戰後減産のどん底まで落こんだ石炭生産は、今年度の第二・四半期の後半に入りまして、ようやく増産の曙光が見えてきたのでありまして、いま一ふんばりというところであるのであります。この下半期の減産を補い、なお下半期に割当てられた非常に厖大な、私どもから見ますればむりな数字の生産に向つて、最後の邁進をしなければならぬと同時に、明二十三年度の生産の基礎をこの下半期においてつくりあげなければならぬのであります。すなわち今が最も大切な時期であるのであります。この大切な過渡期において、研究討論のまだ十分と思われない、國民がまだ十分國営そのものについて、納得できないこの國管法を実施せんとすることは、まことに冒險千万であると思うのであります。惡くすると今日出てきつつある増産の順調を乱すことになると思うのであります。
 以上が私の國管によつてはただちに増産に役立たぬということを申し上げる主な理由であります。
 第四、國管法によらずして、ほかに適切な増産方法はないか。これにつきましては、当面の対策と將來の対策とにわけて、簡単に述べさしていただきます。
 当面の増産方法としましては、國管法の発布をまたずして、現在目の前に横たわつている、増産に向つての障害を片つぱじからどしどし排除することができれば、それでよいと思うのであります。つまり政府においてはほんとうに腰をすえて、労務体制を改善し、石炭に関する特別労働委員会をつくるそれには政府は非常な覚悟をもつてやらなければいかぬと思いますが、これができたならば、経営者の責任において設備の復旧、殊に炭車の新造、修理を急いで、切羽から積込場までの運搬が円滑にいくならば、また電力の確保ができたならば、労資双方の総意によつて、労働者の坑内外の規律と能率給の確立ができたならば、配炭公團と運輸省の責任において、炭鉱から消費地までの輸送が迅速一直線にいくことができたならば、政府、事業主、経営者、技術者、労務者一体となつて、おのおの責任を分担して奮闘したなれば、増産の道は確かにひらけると思うのであります。数日前私のところに、わが國の石炭技術者の幹部と思われる方がおいでになりまして、こういうことを申されたのであります。今日のみじめな石炭生産の現状は、まさにわれわれ、しかも多年石炭鉱業に務めているわれわれ技術者に重大なる責任がある。われわれはその責任を自覚して今日の生産の復興に死を賭して突進しなければならぬ。われわれは何も事業主にこびるものではない。また労務者を恐れるものではない。事業主はもし今やつている石炭鉱業がだめだ。行く先き見込みがないというならば、鉱業権を賣ることもできる。他に轉業もできる。また労務者も、この炭鉱はだめだ、働く氣がないというならば、ほかの炭鉱に行くことができる。しかしわれわれ技術者は、この炭鉱を出てどこへ行きますか。われわれの行き場所はないのだ。われわれはこの炭鉱を自分の家と頼み、死に場所として奮闘あるのみである。今後は一層その点を自覚して、大いにがんばろうと思う。もしそれ坑内に火災であつた場合には、まず労働者の安全のために一番先に技術者は飛びこむ。今後はお説教でなしに、不言実行で身をもつて増産にあたるのみである。もしわれわれ技術者に労働者と同じようにつるはしをもてというなら、もつという悲愴な話も聞いた。私は技術者出の老人でありまして、まことに愉快涙をもつて傾聽したのであります。こういう氣持を事業主も、また勞働者ももつているならば、ここに生産意欲、しかも國のために生産しなければならぬ石炭に向つての増産意欲は、起きてくるのではないかと思うのであります。
 次に近い將來の石炭対策といたしましては、政府はよろしく先般石炭増産協力会から提出した建議の、石炭政策審議会というものをおつくりになつて、新しい各界の権威者を集めて、わが國石炭の基本対策としまして、現在すでに半ば以上國管になつている石炭鉱業を純民営に引戻すか、あるいは國家管理とするか、あるいは國営にするか、國有民営にするか、それらに対しては、これを全炭鉱に実施するか、地域的または炭鉱の特殊事情によるかということを、十分に檢討いたしまして、そのできた案を政府に出しまして、政府はこれを議会に提案して、賢明なる皆様の御審議を願い、そうしてわが國の大事な石炭の根本対策を始めていただきたいと思うのであります。これが近い將來の石炭対策についての意見であります。ただここに國管をまつまでもなく、委員会にかけて檢討するまでもなく、即時國営もしくは國管等によつて着手してもらわなければならぬことがあります。それは新炭坑の開発ということであります。今にしてこの休眠鉱区を取上げて開発しなければ、ここ数年後、私だけの考えでありますが、おそらくは三千五百万トン程度の出炭を最高として、わが國の石炭は再び減産に逆轉するということは明らかであります。今日大問題となつておるところの國管とは切離して、一足先に政府は断固として、この新炭坑開発に着手することを、ここに御出席の議員諸公を通じてお願いしたいのであります。これはただに石炭のみならず、亞炭についても同様のことが申し上げられます。
 最後に申し述べたいことは、現在のわが國の石炭鉱業は、決して健全ではないのであります。今なお更生の途中にありまして、きわめて不安定の状態にあることは隠されません。この不安定、國民から見ても、まことに安心できないところの石炭鉱業に向つて、食糧の増配にせよ、資材の優先割当にせよ、いろいろの点において、全國民に相当大なる犠牲を拂つてもらつておるのでありますから、炭鉱経営者も労働者も、深くその点に顧みて、一層奮励をしなければならぬ。そうして増産をもつて、國民の期待に報いなければならぬと思うのであります。同時に政府としましても、國民の納得のいくように、今日以上石炭鉱業に向つての管理、指導を強めることが必要であると思うのであります。それには、今度の國管法のごとく、地方石炭局を商工局より分離しまして、それにただ局長をもつていくということでありますが、私どもは中央の石炭廰をもつともつと強くし、技術経理方面の監督を強化してもらいたいと思います。それから地方石炭局と中央において石炭に関係ある官廳、たとえば経済安定本部とか、石炭廳とか、労働省のごときところに、優秀なる技術官を大増員しまして、これは実はもちろん皆さん御承知でありますが、技術者というものが、実際中央の役所にはいないのであります。実にあわれなものでありまして、これでは石炭管理も、國管もできないと思うのであります。その技術官大増員をいたしまして、そうして常に急所々々を衝くような適切な指導管理をすることが必要であると思うのであります。しかしこれは何も國管法のごとき、かかる大げさな管理によらずとも、石炭廳の拡張と申しますか、石炭廳の力を十分振わせるように政府がしてくれたならば、その目的は十分に達し得らるることと思うのであります。以上私の意見を申し上げました。
○伊藤委員長 次は石炭増産協力会技術部会主査、東大教授青山さんに御発言を願います。
○青山公述人 私はただいま御紹介いただきました東京大学で教授をしております青山であります。ただいま石炭増産協力会の技術の方の面において御協力を申し上げておるのでありまして、本日も私はここで技術関係の者として立つておりますので、申し上げます問題も、大体その範囲に重きをおくことと存じます。私ども外におります者から見まして、石炭の國家管理と申しますか、この案についていろいろお話を伺つておつたのであります。商工大臣がお述べになつております國家管理の必要性を拜見いたしましても、これは最後の案だろうと思いますが、それまでのいろいろな法案の途中のものを伺いましても、三千万トンを対象にするとか、いろいろありましたので、その都度それについて考えてまいつたのでありますが、事実この法案が今日の形をもつに至るまでに、いろいろの曲折を経ておつたと同様に、この石炭の経営者、炭鉱の採掘の作業というものは、容易ならぬものであるということを、これは裏書しておるのであろうと思うのであります。ただ地面の下から黒いものを掘つてくればよろしいというのではないのであります。長くこの炭鉱の経営状態を見ますと、あたかも私はこれを人間にたとえますならば、一つの炭鉱は人生と同じものを経てきておるのではないかと思うのであります。発見の当初が幼年時代であれば、それが少年、青年、中年、老年となつて、いよいよ廃坑になるまでの間には、ちようど同じような径路を経てきておるのであります。また人間にも美醜大小さまざまの形体があるがごとくに、炭坑それ自身も、一つの炭坑を個個によく専門的に調べますならば、ここには非常にこまかい相違がありまして、それぞれに個性があり、山の性格もあると思うのであります。またこれを経営いたします上におきましても、必ずしもこれを一つの形式によつて統制して、簡単にいく相手ではないのであります。殊に私ども技術関係のものから見ますると、炭坑の採掘技術というものは、はなはだむずかしいものなのであります。今日いろいろな科学技術の面におきまして分野があり、それぞれ研究いたしておりまするが、そういうものが統合されまして初めて炭坑の技術、採炭の技術というものが生れるのであります。最近司令部からの書簡として伺つておりますところにおきましても、技術の結集ということが申されております。まことに当然なことであり、日ごろわれわれが考え、また申しておることがそのまま裏書されておると感ずるのであります。いろいろな技術が結集されまして石炭が採掘され、また坑内の保安が保たれるようになるのであります。それには技術関係者が常に非常な努力をし、またその山々の個性に應じまして苦心惨憺いたすのであります。北海道のある炭鉱のごときは、採炭のためにその採炭方式――これは根本方針でありますが、採炭方式に関しましても、最近十年ばかりの間に、数度これを更変いたしまして、われわれ技術を見ておりますものは、その都度これは最善の方法であると考えまして、学界はこれを表彰したのであります。また二年経ち三年経つて新たなる方法が生れる。またこれに対して、再び表彰しなければならぬというほどに、採炭の技術、採炭の方式を、現場で技術者が案出いたしますためには苦労いたしております。なお今後この仕事を継続いたしますためには、坑内の條件は過去より現在、現在より將來へとますますその困難さを増していき、周囲の條件はむつかしくなるのであります。やれ坑内が非常に深くなつて暑くなるとか、水が出るとかガスがたまるとか、地盤の沈下を見るとかいうような條件がひしひしと起りまして、これにみな闘つていかなければ石炭は出てこないのであります。そういう観点からいたしまして、今度の臨時石炭鉱業管理法案を拜見いたしたのでありますが、私どもはとにかく常に技術が頭にありますために、どこに技術の字があるかというところをまず探したくなるのでありますが、遺憾ながら技術の字というものは発見し得ないのであります。専門に関係しては、管理委員会等においてその部会を開くということになつておりますが、それだけのことでこの重要な技術の面が、また炭鉱個々に特性をもつております経営が、はたして十分に振興していけるのであろうかということを、はなはだ不安に思うものであります。また先ほど石渡さんからお話がありました新坑の開発あるいは炭鉱の將來性についてでありますが、この問題は年々あるいは四半期ごとに考えるような問題ではなくて、もつと根本の問題であります。これはやはりその炭鉱においても、その区内あるいは隣接地内において考慮されるでありましようが、離れたところに新炭坑を開くというような場合には、そこにはまだ事業主も、管理者もないのでありますが、そういう者はここに発言することはできません。関係をもつことはできないのでありますが、そういう方面を開拓し、また仕事の永続性をもたせるということでなければ、今日までさえ相当経営に困難を感じておつたのでありますが、將來の仕事を、今日の状態あるいはさらに困難な状態にぶつかつて進展していくということに対しましては、私どもは相当な不安をもつのであります。殊にただいまのような情勢におきまして、三年あるいは五年後の生産目標を定めろうというようなことは、むろん言う方が無理であるかもわからないのでありますが、いたずらにその需要の面、あるいはその生産の方に偏して、それぞれに考えるということは、そこにおのずから無理があるかと思うのでありますが、やはりある程度これに対して相当な意見の集まつた、あるいは相当な意見を聽けるような形で、それぞれの立場の意見を総合いたしまして計画をもち、その計画によつてその年、あるいは翌年、あるいはそのまた翌年の生産目標をきめて、それに突進していくというのでなければならないと思うのであります。ただ今年は三千万トン、あるいは來年は三千何万百トンということで行つたのでは、これを一生の仕事、一生の努力として考えております特にその炭鉱の技術の面を担当しておりますものからいけば、はなはだ不安の念をもつのであります。今日その目的を達成しろとおつしやれば、もちろん出すでありましよう。彼らもわれわれと同じく、日本の將來を考えるものであれば、三千万トン出せと言えば、私は出すだろうと思いますけれども、來年において、またそれよりもよけい出すということが考えられるとすれば、やはり彼らは長い炭鉱の生命を考えておりますから、先に行つてもう出ませんということは言えない。また自分もそういうことは考えない。從いまして、その計画をもちながらも、本然の任務を盡そうとするのであります。そこに無理があると思います。從つて少くとも三年、五年というものに対する多少の計画、あるいは多少の目標を示して、そうして今年度はこれだけ出そうじやないか、お互ひ協力してやろうじやないかということになれば、自然仕事の励みも出るわけであります。そういうことに対する計画、企画をもつということもただいまのこの法案の中においては、十分これを実行することに困難を感ずるものであります。もしこの法案にしてこのままの形で今日あるいは近き將來において実現されるとすると、われわれは三年後の先を考えましても、あるいはさらに將來を考えましても、相当な不安を抱かざるを得ないのであります。そこに今申し上げましたような條項を御勘考になりまして、皆様の御善処を心から仰ぎたいのであります。こういう法案は、必ずしも法案だけが命ではないので、その機構において、十分人を得、その人の動きによつてのみ、この法案が生きるのでありまして、要は人であろうと思います。そういう方面におきましても、國家百年を考え、十分なる御考慮をいただきました上に、増産目的が達せられますように願いたいのであります。最後に、その理由として「その態勢を整えるためには、」と書いてありますが、どうもこれだけではまだ整えられていないという感じがいたします。ただいま申し上げましたようなことを、多少なりとも御参考に願いまして、ほんとうに態勢を整えて、増産の目的達成に突進していただいて、また、ともにお進みいただくことを、私ども非常に期待し、希望するものであります。
○伊藤委員長 関連産業関係より、日本鋼管需給部長の槇田さん、御発言を願います。
○槇田公述人 私は日本鋼管需給部長槇田久生でございます。鉄鋼業にとりまして、石炭が重要であるということにつきましては、十分皆様方御承知かと存じます。われわれの現在における鉄鋼業の状況から考えますのに、石炭の全量のうち、約一割ないし一割五分くらいを使用するということは、普通の通説になつております。しかも鉄鋼業にとりまして、石炭が非常に質的にも大事であるということも、われわれの関心の非常に強いところでございます。さらにわれわれの鉄鋼業は、基礎産業の点において、石炭と同様に非常に重要視されているという意味で、われわれそれはこの石炭の問題につきましては、最も関心をもちますので、しかもその増産に対しては、特に切実なる希望を抱くものでございますので、その点につきまして、意見を述べさせていただきたいと思います。
 私が考えますのに、國家管理を必要とする場合というのは、國家公共に必要であつて、あるいは個人の恣意に放任し得ないというような場合には、一應考えられると思います。從つて石炭そのものが、あるいはその対象に考えられるということも考えます。しかしこれは増産という問題につきましては、一應別個ではないかというように考えます。増産につきましても、われわれの仕事も同様でございますが、労力、資材、資金等が、適時適所に充足されて、これが合理的な経営のもとに有機的に総合運営されて、初めて実際に実行するにあたりましては、一定の作業方針のもとに、経営者、労務者が、渾然一体をなし、それぞれの責任をとる体制をとることが必要だと考えます。從つてここに書いてございます國家管理ということは、増産させるかさせないかということは、もつぱらその主観的、観念的な問題でありまして、これのみをもつて絶対なりということは、考えられないと思うのでございます。從つて客観的、具体的な方策が実施されない限り、増産の期待はおそらく不可能ではないかと考えるものではないかと考えるものであります。
 さらに内容にはいりまして、この法案が一應ただ單に法案のみによつて増産するものと考えれば、その全部であるということは考えられないといたしましても、一應國家管理が是認されたといたしまして、この管理はどうであるかと考えますのに、この法案の中にございます内容は、一應いわゆる官僚管理であるということを、私は感ずるのであります。何となれば、國家管理が官僚管理であるということは当然でありますが、官僚の独善的な管理であるということは、非常におもしろくないことと考えます。つまり一方的に、それぞれ官廳において、相当の指令権をもたれておるのでありますが、この責任については、何らの規定もありません。さらに数種の委員会に諮るということになつておつて、その内容も次第にぼかされておるという点であります。それからこの官廳管理をいたします場合に、時間的な問題が一体どうなるかという氣がいたします。これは動的に動いておるものを、むりに靜止した状態で考えようとしておるような氣がいたします。つまり事業計画を立てて実施すると申しましても、それを実施する場合には、相当いろいろな事故が起り、変更せざるを得ないことが当然起ると考えられます。これらは通例、今までそれぞれ即断によつて変更し、遂行しておるわけでありますが、これが一々官廳の許可、監督等を仰ぐとなれば、その時期を失する場合も起ると思います。
 次に報告、監督、命令等の手続の違反について、あるいは廃休止、利益の処分等の処罰規定等は、この中にございますが、本來が増産を目的としてをるのに対して、これに関係した何らの処罰規定もございません。さらに以上は管理を受ける方の側の処罰規定でありますが、実際に管理する側の怠慢、あるいは不注意、あるいは決断遅延、不熱心というようなことによつて遷延する場合が、往々にしてあるということも考えられますが、これに対する処罰規定はないようであります。さらに増産に対して、これほど増産を期待しながら、実際には報賞というようなことは何ら考えられていない。この点については、十分考えなければできないのではないかというように考えます、從つて私が考えますのに、この本案が実施されました曉におきましては、複雜なる規定によつて、経営者は常に縛られ、手続の処罰等を恐れることとなりまして、経営者としてはその申開きの探究のみに汲々として、増産の方向に向わないのではないかという懸念をもつのであります。
 結論といたしまして、國家管理はかかる意味におきまして、單なるイデオロギーの問題になりまして、これによつて直接具体的に効果があがるものと考えることはできないと考えます。増産ということは、本案が実施されるされないということではなくして、政府の実際の問題であると思います。そういうわけで、この案によつては増産はできない。從つて私といたしましては、賛成できかねるということが、結論であります。
○伊藤委員長 次は全國鉄鋼労働組合幹事松村さんに御発言を願います。
○松村公述人 私は全國鉄鋼産業労働組合協議会の幹事を務めております松村であります。われわれ鉄鋼産業に從事しておりまする労働者といたしまして、いわゆる重点産業であるとか、基礎産業であるとか言われますところの石炭と鉄との関係においては、この問題については、非常な関心をもつものであります。われわれが今年の一月、三月にいわゆる傾斜生産なる名のもとに、鉄、石炭の雪だるま生産ということで、鉄鋼部門より石炭部門へ資材を提供し、それによつて掘られたるところの石炭をまた鉄鋼にもらつて、そうして鉄の増産をはかり、ついで他産業に及ぼすというあの傾斜生産におきまして、われわれは鉄鋼に向けて希望されたところの石炭からの需要の量のあまりにも少いことについて、不審に思つておつたのであります。われわれの方では、少くとも時期的には四月、五月にわたりましたが、石炭部門から要請せられましたところの鉄資材を、百パーセント炭鉱へ向けて届けたつもりでおります。しかしわれわれは一月、三月の間に、石炭をはなはだ少量しか現物化することはできなかつたのであります。御承知のように電力事情の逼迫とともに、石炭の鉄鋼へ向けての配給が惡かつたために、はなはだ鉄鋼の生産に対しては支障を來しました。しかしこの石炭に関する資材に関しては、十分な協力をいたしたと思つております。殊に現下石炭の輸入がほとんど考えられない、少くともわれわれ鉄鋼の石炭は、國内産の石炭をもつてこれに当てなければならないというこの時期におきまして、われわれが使いまするところの石炭は、單に量のみでなく、質においてはなはだやつかいなものを要する今日、この石炭を生産するいわゆるわが國の石炭事業の生産復興をはかり、増産をはかるということを目的とする場合、この石炭鉱業の國家管理案なるものは、われわれ鉄鋼の労働者といたしまして、はなはだ十分な関心と注意を拂わなければならない。やはり石炭に次いでわれわれの考えておりますところの鉄鋼の國管案というようなものからみましても、この問題については、十分な関心をもつております。それでその点からいきまして、われわれといたしましては、原則として基礎産業である石炭、鉄鋼、電力というようなものは、國管を前提といたしまして、國有國営にならなければならないと、こういうふうに考えておるのであります。しかしわれわれとして、今度の國管案を増産という形からみました場合に、現在細文化されていて増産を阻んでおると考えられまする現在の鉱区の整理統合をはかつて、また大資本系統に属しておりますところの未開発の鉱区を開放して、これを國営をもつて開発するというような方法をとらなければ、國管としての増産をはかることは不可能ではないかと考えております。また現在資材の面においても、その資本の配分その他について、炭鉱の山そのものが希望するものが、すべて十分に配分されるような方法がとられ、たとえその量が十分あつても、出にくいのではないか。そういうところから分配を民主的管理に移して、生産の増大を目途とするように、公正に配給しなければならない。こう考えております。すなわち眞に増産を目的とするならば、臨機の手段で、その國管をするという立場だけを考えましても、その炭鉱の必要とする資金、資材を國家的に確保して、その公正な分配をなして、眞に労働者の自主的の創意とその責任においてこれを実行したならば、その増産は可能ではないかと考えます。これに加えまして、労働條件の安定――われわれは鉄鋼業といたしまして、高熱重筋作業に從事しておる労働階級でありますが、やはりわれわれがみましても、まだ炭鉱の労働條件等につきましては、その安定が鉄鋼に比べまして惡いという考えをもちますので、労働條件の安定と、高度の罹病率、罹病率の低下、それから炭鉱特異の生活環境の打破、こういうものを行いまして、炭鉱の安全施設を拡充強化して、しかもわれわれが考えます鉄鋼においても、まだ機械化は進んでおりませんので、大部分は土方仕事のようなものであります。それに比ベれば、なお一層炭鉱業の者は、土方作業というような機械力によらない人力による労働力を強いられておりますので、機械化の促進ということをやりまして、実働を有効化すということが、増産ではないかと考えます。それにはまた技術の秘密がございます。これはあに石炭のみではありませんが、技術の公開を断行いたしまして、労働力の高度技術化をなすような態勢をとらなければ、これまた國管としての増産を考えることもできないと思います。また生産協議会その他で、労働者の発言権の強大をはかることを示されておりますが、これなども、ただ労働者を座らせて話を聽くという程度だけしか考えられませんので、そういうことによつての成果は期待できません。それだから協議会その他は労働者の発言権を強化して、その権利と義務を十分果せるようにさせなければならないと思います。それで現在示されております法案をみますと、これはわれわれはかつての軍の工廠を思わせるような制度であると考えます。ただ諮問機関として生産協議会であるとか、管理委員会であるとかいうところに、労働者の代表を加えてはおりますが、これだけでは、今言いましたように、ただ労働者を座らせて話を聽くという程度で、これは事務機構をますます煩瑣にして、官吏制度のいろいろな手段による生産妨害等をなすことによつて、能率はかえつて低下するのではないか。すなわち國管に名をかりた官僚統制の強化であると考えるのであります。しかるに眞に民主化されている官僚統制であるならばともかくとして、まだ民主化されていない官僚によつて強力な統制をやられるということは、國管としての統制は当然でありますが、官僚による統制の強化ということになりまして、これはあながち國管という名前をかりた官僚統制の強化であるとしか思えません。しかもいろいろの場面に官僚の指令権が発揮されておりますが、これに対する責任が明確になつておりません。ただ單に労働者の責任によつてのみ、生産の責任が求められておりまして、この國管による成否は、指令権を発する政府そのものにあるのではないかということが、明確にされておらなければならないと思うのであります。しかも政府は勤労者の発言権と責任とを強化して、もつて石炭増産を強力に推進するために、この國管案を立案したといつております。不十分な点もあることと思うが、日本の民主主義化と、労働組合発達の不十分である現段階においては、事情やむを得ないということを言つておりますが、眞に労働者の生産意欲の高揚を期待して、労働組合発達を希望する政府であるならば、以上述べましたような諸点を断行して、民主日本の完成に努力してこそ、炭鉱國管の意義と目的が達せられるのではないかと思います。
 結論といたしまして、以上の点から考えまして、國管の根本趣旨には、われわれは賛意を表するものでありますが、この実施にあたつては、十分な労働者の意図を把握して、修正すべきところは十分に修正していただいて、もつて目的達成に努力をしなければ、目的とする増産は減産になつて、多額の國費を失費することになるのではないかと考える次第であります。
○伊藤委員長 次は全日本機器労働組合常任中央委員長武藤さんに御発言を願います。
○武藤公述人 私は全日本機器労働組合常任中央委員長をやつております武藤であります。われわれ機械器具の労働者としまして、今度の國管案に対して、非常に大きな関心をもつております。同時に、全日本の労働者という立場から考えましても、非常に大きな関心をもつておるわけであります。われわれ関連産業におきましては、現状において皆さん御承知のように、日立三万三千はすでに去年二十六日から、食えないためにストライキにはいつておる。それがために炭鉱用の資材といつたものにおいて、非常に大きな問題が出ておるわけであります。しかしながら、先ほど來述べられましたが、要するに石炭の増産だけを目的にしての國管案につきましては、われわれとしては、非常に疑義があるわけであります。石炭の増産とわれわれの生活の改善といつたものは、表裏一体でありまして、これは絶対に切離せない。從つて労働者の発言権がはつきりと確立されなければ、決して増産は望めないと、われわれは信じておるのであります。由來炭鉱は、少くとも二十年くらい経たなければ、減價償却ができない。そういうふうに、他産業に比べて、競爭する場合には、非常に不利な点が多分にあるわけであります。從いまして、過去のような、われわれがすぐ頭に浮ぶような、いわゆる北海道あたりにありました監獄部屋を想像するような、労働者がそういう劣惡な條件で奴隷的頤使ができたときにおいては、そういつたこともある程度までは緩和されたかもわかりません。しかしそれはすでに終りました。現在のような、こういうふうに、とにかく民主化されなければならない必然的な運命をたどる日本の現状においては、絶対にそういうことはあり得ない。しからば石炭が個々の企業として存在するためには、どうしてそれが必要になるか。すなわちそれは皆さんすでに御承知のように、個々の企業となるためには、そういうふうに、労働者が頤使されるときに成立つたのでありまして、これは戰時中に例をとらなければならぬ。いわゆる経済界の普通の状態における経済現象においては、企業としては成立たない。從つて戰時中におけるような、ああいつた外部的な大きな作用によらなければ成立たないという企業の面をもつておるわけであります。しかるに現在の状態におきましては、今申したように、すでにその最も重要な要素であつた労働力は、過去の監獄部屋的な存在は許されなくなつたきたのであります。しかしてそれに対して個個の企業においてもこれを維持し得るかといえば、われわれはほとんどその考えはできないのであります。從つてこれは石炭のもつ社会性といつた面からいきまして、当然國有を前提とする國家管理でなければならないという結論が出てくるわけであります。しかるに今の政府案を見ても、全然われわれの意図するところとははるかに縁遠いのでありまして、その点に対しましては、われわれとしては非常に不滿の意を表するものであります。しかしながら、石炭の増産と、石炭の社会性といつたものを考えます場合において、われわれは少しでも前進する國家管理の方向だけをわれわれは買いまして、石炭の國家管理に対して賛成する次第であります。
○伊藤委員長 本日の公述者各位からの御意見を伺うことは、この程度におさめて、委員各位からの質疑にはいりたいと思いますが、質疑は本日行うことにいたしますが、いかがいたしますか。
○伊藤委員長 それでは、この質疑に対しては明日一括して行うことといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
○伊藤委員長 それではそのようにいたします。明日は午前十時より再開することといたします。明日は本日の公聽会の継続となりますので、時間の厳守を切にお願い申しておきたいと思います。
 本日はこの程度にて散会いたします。
    午後二時四十七分散会