第002回国会 本会議 第14号
昭和二十三年二月三日(火曜日)
    午後三時五十二分開議
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 議事日程 第十一号
  昭和二十三年二月三日(火曜日)
    午後一時開議
 第一 自由討議(前会の続)
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○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
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○議長(松岡駒吉君) 前会に引続き自由討議を行います。
 安平鹿一君、発言者を指名願います。
○安平鹿一君 日本社会党といたしましては、田中織之進君を指名いたします。
○議長(松岡駒吉君) 田中織之進君、発言を許します。
    〔田中織之進君登壇〕
○田中織之進君 私は、選挙法改正問題につきまして、いささか私見を披瀝いたしまして、同僚各位の御批判を仰ぎたいと存じます。
 過般の片山首相の施政演説におきまして、総理は、政界刷新のために、選挙公営の徹底化を中心とした選挙法改正の方針を明らかにされたのでございまするが、日本の現在の至上命令となつておりまするところの、あらゆる方面における民主化を達成する見地からいたしまして、われわれは、特にその指導的部面を占める政界刷新の急務中の急務なることを痛感するものであります。この第二回國会におきましては、政界淨化を中心といだしまして、官界並びに財界をも含めたところの、いわゆる民主化の徹底のために、すでに不当財産取引調査特別委員会も発起を見ておるのでございまするが、われわれはこの際、過去の幾たびかの選挙、殊に敗戰後の二回の選挙を顧みまするときに、特に選挙の公営の必要を痛感する次第であります。
 敗戰國が必ず見舞われるというインフレのもとに、われわれは旧來のごとき選挙を行いますならば、結局においそ、金のある者、金権候補のみが選挙の結果勝利を得ることになるのは当然の帰結でありまして、ほんとうに日常労働によつて生活を確保しておる勤労階級の立場を代表するところの議員を多数國会に送るということは、きわめて至難なことに相なると思うのであります。その意味におきまして、われわれは、片山総理が施政演説に明らかに政府としての方針を示されておる、選挙公営の徹底化を中心といたしましたところの選挙法の改正を、政府提案ではなくして、われわれ國会みづからの手によつてこれを実現しなければならないということを痛感するものであります。
 過去の選挙において、いわゆる三バン主義ということが唱えられておるようであります。選挙にあたつては、カバン、地盤、看板の、この三つが勝利を占める必須の條件であるということが、よくいわれておるのでありまするが、看板並びや地盤はこれは当然のこととはいいながら、いわゆるカバンをもたなければ選挙に打つて出ることもできないし、まして当選することもできないということが、政界を腐敗せしめる最大の原因になつておるといつても、あえて過言でないと存ずるのであります。
 さらに、先般議員を辞任せられましたところの原侑君が、新聞記者会見において、これまた選挙用語といわれておるところの七当五落の現代的意義を説明されたように新聞紙で拜見いたしたのであります。原君の言うところによりますると、現在における七当五落、それは七十万円あれば当選するけれども、五十万円では当選しないという意味だそうであります。私は、この神聖なる選挙において、いかにインフレの時代とはいえ、七十万円という多額の金を使わなければ議員に当選できないというような、そうした選挙には絶対に反対を唱えるものであります。(拍手)
 私は、原君が辞任せられたから、あえてこの際原君の責任を追究する考えはもつておりませんけれども、原君は、現在の國会議員のほとんど全部が選挙戦において、七十万円と言わないまでも、少くとも何十万円かの金を使わなければ当選してこないという印象を國民に與えるような言辞を議員在任中にしたということは、きわめて遺憾なことだと思うのであります。この原君の言葉が出た翌日の朝日新聞の社説に、こうした議員の言動に対して國会が何らの意思表示をしないということは、議員全体が原君の言つているようなことを是認するにひとしいものであつて、國会の権威のために、國会議員の諸君がこの問題を取上げて責任を追及しなければならないという意味のことを掲げておるのは、私と同じ見解に立つものだと思うのであります。(拍手)
 いずれにいたしましても、金の威力がなければ選挙に出られない、そうした選挙が行われることを一日も速やかに改むべきであるという見地から、私は原君の言葉を引合いに出しておるにすぎないのでありましてわれわれは、この一つの言葉を取上げてみましても、いわゆる選挙公営の徹底化が必要であるということを立証するに余りあると存ずるのであります。(拍手)
 政府の考えておる選挙公営の徹底化ということは、どういう内容をもつているかということについて、政府を代、表する方がおられるならば伺いたいと思つて、実は片山総理大臣の出席を要求しておいたのでありまするが、お見えにならないから、いずれ別の機会において聽くこともできると思うのであります。
 ただ私が申し上げたいことは、まず選挙公営の徹底化にあたりまして、いわゆる演説会あるいは選挙公報、あるいは無料郵便、ラジオの利用等、ある程度公営で行われでおる部分もあるのでございまするが、まず選挙公営の徹底化にあたりましては、こうしたものを完全に公営にすることが必要だと思うのであります。從いまして、問題はこまかくなりまするけれども、いわゆる演説会、の公営の問題につきましては、ある程度現在行われておる、たとえば演説会の告知の問題にいたしましても、現在の公営の程度では、きわめて不十分であると申したいのであります。殊に、このことに関する経費の負担についての方針が明らかにされておらなやために、たとえば会場の問題にあたりまして、その設営についても、現在の市町村の財政その他の関係から申し上げまするならば、きわめて不徹底な設備しか行われないということは、結局、候補者自身の負担仁よる演説会場の設営という結果を來すのでありまして、私は演説会は立会演説一本にすべきであると考えるのでありまするが、この点については、おそらく各位の賛成を得られることと思うのであります。(拍手)しかも、この立会演説一本でまいりまするならば、いわゆる應援弁士も必要がない。しかも、この立会演説に参ります足の問題にあたりましても、でき得るならば、バス等の利用によりまして、不便な所へ参ることもできると思うのでございます。選挙公営の徹底化のあたりましては、足の問題もきわめて重要な問題だと考えるのでありますが、自動車をもつている者と、もつておらない者との不公平を除去する意味におきましても(「ひがんだつてしようがないじやなないか」と呼ぶ者あり)静かに聽いて、批判は後ほど十分にやつていただきたいと思うのであります。そういう意味で、公営の演説会に参ります足の問題についても、われわれは具体的な案をもつて臨まなければならないと考えるのであります。
 また選挙公報の問題でございまするが、いろいろの事情、殊に用紙事情がきわめて窮迫しているというような関係からいたしまして、昨年の選挙においても、きわめて不十分にしか公報が出されておらないのでございまするが、私は、演説会の公営が徹底化されまするならば、選挙に使う用紙は、全部この公報に集中いたしまして、一枚の新聞紙大のものにあらゆる候補者の政見を小さい活字で埋めこむというような從來の方式を根本的に改めで、十分配付された公報によりまして、各党各候補者の政見がはつきり理解できるようなところにまで改善を加えていかなければならぬと存ずるのであります。(拍手)
 その他公営の徹底化の問題については、細部にあたりまして具体的な意見をもうておりまするが、要は、この選挙公営に必要な予算は――選挙という問題は、その次の選挙が行われるまでの間の國の政治の基本的な問題でありますから、少くとも政府は、選挙に必要なる経費、惜しみなくこれをを使うというだけの考えをもつて当らなければならないということを申し上げておくのであります。
 次に、選挙法改正において重要な問題は、選挙区の問題でございます。昨年の選挙が行われる直前に、選挙法改正法律案が出されまして、國会で幾多の波瀾を呼んだことを私も承知いたしておるのでございまするが、この場合におきましても、いわゆる一旦府懸單位の大選挙区制までもつていつたものを、現在の中選挙区制に改められた。聞くところによれば、これについても、さらに極端なのは、一人あるいは二人区、三人区というような選挙区の細分が唱えられておるようでございまするが、私は、國民の政治意識の高揚とともに、理想といたしましては全國一区の大選挙区比例代表制、こうしたものにまでもつていくことが理想であると考えるのでございます。選挙区が細分化されるということは、結局現在の國民の政治意識の段階におきましては、古い、顔のきいておる者、あるいは従来のままでいきまするならば、金のある者が当選するというような結果になりまして、ほんとうに民意を代表する候補者が当選するということにはならないと思うのであります。しかしながら、選挙公営の徹底化という点から考えましても、この大選挙区制ということにつきましては、いろいろ困難な点のあることを私も承知いたしております。その意味におきまして、これは……
○議長(松岡駒吉君) 田中君、時間がありませんから結論を願います。
○田中織之進君(続) 別表改正という技術的困難も伴いまするので、せめて現行選挙区制度をもつて進むべきであろうということを、私の意見として申し上げておきたいのであります。
 その他いわゆる泡沫候補の出現を防止するために、供託金の思い切つた引上げを断行するというようなことも、選挙法改正にあたりましては考えなければならないと思うのであります。同時に選挙取締りのいろいろの規則が行われておりましても、これが厳格に励行されない以上、選挙の公正が期せられないという結果に相なりまするので、もちろん、以上申し述べたような條項を取入れましたところの改正とにらみ合わせまして、選挙取締りに違反いたした者に対する罰則の厳重なる励行ということも、併せて行わなければならないと存ずるのであります。
 要するにわれわれは、政府の不安の現在の段階におきまして、選挙法改正をどろなわ式に行うという印象を與えてはならないと考えまするが、速やかにこの選挙公営の徹底化を中心といたしましたところ選挙法改正の成案を得まして、われわれ國会みずらの力をもつて、政界を浄化する一つの方法といたしましても、この選挙の公正化を期するという方向にもつて努力をしたければならないということを申し上げて、私の選挙法改正に関する私見にかえる次第であります。(拍手)
○議長(松岡駒吉君) 石田一松君、発言者を指名願います。
○石田一松君 國民協同党は、吉川久衛君を指名いたします。
○議長(松岡駒吉君) 吉川久衛君、発言を許します。
    〔吉川久衛君登壇〕
○吉川久衛君 私は、國民協同党の立場から、日本経済再建の緊急にして根本の問題について若干申し述べてみいと思います。
 日本の今日のインフレーシヨンは、縮小再生産の一方でありまして、まことに心配でなりません。第一次世界大戰後のドイツのインフレは、拡張再生産が行われつつ高進したのでありました。しかしそれでも、遂に一九二三年十一月には、天文学的のイツフレとなけまして、國内的にも國際的にも放置しがたい状態に立ち至つたのであります。ドイツのごとき結果にならないうちに、わが國の経済の安定を得るためには、だれしもインフレ克服は生産第一主義に徹することであると考えるでありましよう。私も同様であります。
 政府は、通貨対策によつて、あるいは新物價政策によりてごの難関を切り拔け得るかのごとき感を國民に與えております。あるいはまた金本位制を採用と、米ドルとリンクして、日本通貨を國際的安定通貨にしないでは通貨の安定は考えられない、通貨の安定が行われなければ、いわゆるクレジツトの導入も、ブレトン・ウツズ協定への参加も考えられない、これが行われて初めて眞の安定せる見透しを得られるなどと言われる人もあります。私は、かくのごとき不徹底きわまる考え方や、他力本願的な考え方で日本の経済が再建できるなどという甘い考え方をなすものではありません。もちろん、敗戰後のこの悲惨なる日本において、他力の必要を否定するものではないのであります。しかし、他力のみに頼つて日本の復興を考えるということは、きわめて危険千万でありましよう。人事を盡して初めて他力の意義を生ずることを銘記すべきであります。
 しからば現下において、自力更生の國民的意欲は熾烈でありましようか。国民の日本再建の熱意いかんという問題になりますと、はなはだ遺憾ながらまことに困つた状態にあるといわねばならないのであります。私どもは、ここに深く思いをいたさなければならないのであります。すなわち現在まで、戰時戰後を通じてとられてまいりましたところの経済政策は、國民性を無視し、人間性を軽観した方式であつたりということであります。シルレルが、哲学が宇宙の構造を一支配するまではしばらくこれを支配するものは飢えと恋であるということを言いましたが、現今でも、この言葉はうなずかれるところがあります。すなわち政策なるものは、哲学のみ、倫理学のみの観念的机上プランであつてはならない。殊に破局的の本経済のもとにおいては、飢えだけであるかもしれません。この飢えを克服するということが、日本再建の基本問題であると思うものであります。
 日本の経済融合は、人間性の要求を生産の増加という形にとらえることによつて個人的経済活動の自由を活かさなければならない立場におかれております。個人的自由と社会的平等という近代民主主義的人格観念を構成する二つの契機をともに活かし得るような眞の民主主義経済社会を要求する現代経済意識の共通の志向を看取することができるのであります。かくのごとく、自由と平等とはまつたく別立てに考えるべきものではなく、両者をおのが内容として、ここに新しい社会正義を経済の面においても実現するというこれでなければならないと思います。これが生産第一、主義の原理であります。
 巷間説をなす者のうちには、自由のみを提唱し、これを救国経済の基本と考える向きもありますが、自由を求むるのあまり、不自由になることを注意しなければならないと思います。また平等のみを提唱し、これを救國経済の基本と考える者もあります。平等を求むめるのあまり、悪平等になること、これまた注意を要するにであります。バクーニンやクロポキンのごとく、あの財産家でありますならば、與えること、奉仕することも考えられるでありましようが、貧しい日本の人々は、もたない日本の人々は、掠奪主義に陥りやすいのであります。イデオロギーのみをもつて物事を考えるときは、倫理学としては成り立つでありましようが、現在日本における政治理念としては不十分であり、社会生活は協同生活であるということを認めなければならないのであります。ここに協同主義の要請される必然性を見るのであります。自由と平等のいずれの一方をも否定するのではなくて、双方をおのが内容として、ここに新しい救国の方途を発見すべきであります。
 かくして私どもは、陰陽の哲理、絶対二元の哲学の上に立つて、しかも現実的な救国経済の方策を考えるものであります。陰陽といい、晝夜といい、だれか、その一方を否定する者がありましようか。この哲学的にも実際的にも明瞭な基礎をもつ法則にあてはめて今の経済問題を考えるとき、安本の方式は、一にも二にも統制ということであつて、一日を晝のみと解するか、夜のみと断定することになるでありまよう。すなわち、直訳的なイデオロギーにとらわれて、人間性を無視した、機械的な事物の取扱いとなるのであります。
 日本の氣候風土ば、おのずから東洋的なるもののうちにも日本的なものを構成しておるのであります。風俗、習慣等一つの独特な傳統を形づくつているのであります。この現実の上に立つての施策でなければならない。民俗的にも、社会的にも、また経済的にも、日本は日本としての特異性を考慮に入れない政策は、絶対によい結果を招來するものではありません。人間がまつたく無知蒙昧な野蛮人であるとか、まつたく完成寄れた神や佛のような者であるならば、いざ知らず現段階においてはさきのシルレルの言葉の通りであります。從つて、その欲望を無視してはなりませんが、そうかといつて、自由を手放しにしてはならない。現在のごとく絶対量の不足する経済においては、ある程度の統制を実施することは当然であつて、自由を放任する資本主義に徹するときは、弱肉強食となり、八千万の民主をいかんせんということになります。これが現実に行われ得ないことは、自由党首班内閣当時のあの施策に徴すれば明らかなるところであります。これに対蹠的ではあるが、現内閣において、社会党が社会主義政策の行われ得ないということは、これを行うための條件を具備しないためでありまして、社会党の諸君を責めるのは、ちと苛酷ではないかと思います。と同時に、社会党内に社会主義政策をあえて行わんとする主張をする人々がありますとすれば、それは情勢判断に疎きこと、また驚くべきものであるといわなければなわません。
 私はこの救國経済の方策、すなわち生産第一主義の具体的な例として、工場でも農村でも、この人間性を認めて、その生産意欲の高揚をはかること、すなわち農民に対しては、土地面積、地方、あるいはまた数箇年間の実績、またこれに対する政府の肥料等の割当見込量等を勘案いたしましてすなわち合理的に再挙約に供出責任事前割当をいたします。供出完了のものは、その余分は、その次の生産を行えるようなある特殊な、すなわち特別價格にて食糧公團または農業協同組合がこれを買いとり組合は公團に、公團はこれをルートに乗ぜて配給するということによつて、絶対量の生産増加を期待することができると考えるのであります。工場においても、一定量の責任供出のほかに、資本家と労働者は、経営協議会によつて、おのおの納得のいくところの方途が講ぜらるるとするならば、労働者の社会的、経済的生活は保護せられまして、かくして重要物資の飛躍的増強をはかることができるのであります。
 生産を弊害するところの、この勤労者に対する一つの問題といたしましては、勤労所得税が、最近非常に多額に課せられておりますけれども、これらのものも、この方式でまいりますならば、おそらく課税の限度を相当程度思い切つて高めまして、勤労者の負担をできるだけ軽減する、この軽減することによりまして、勤労者に課せらるべきはずの税収入は減退するでありましようけれども、生産が増強することによつて、法人等にかけられる課税等が考慮せられまして、これによつて、この失を補つてなお余りあると確信するものであります。
 絶対量の増加によりて物資の需給が円滑となり配給が良くなれば、やみ取引がなくなつて、インフレーシヨンは阻止されることになる。通貨も安定し、クレジツトの設定も行われ、貿易は振興され、すべての生産が活氣を呈することとなることを確信するものであります。目下問題となつております隠退蔵物資などを明るみに出して、ルートに乗せることも必要でありましようが、これなどは片々だる問題であると言わねばなりません。要は、生産者の生産意欲を高揚する基本的生産方式、すなわち陰陽の経済、あるいは二重價格制、あるいは晝夜價格制と申しましようか、こういう基本的な政策を即時採用断行する以外に、日本経済再建の方途はないと、信ずるものであります。これは、私一人の所見ではなくて、國民多数の声であるということを、政府は十分御留意を願いたいと思います。安本長官は、このような政策の実施の御用意があるかどうかを伺いたいと思いますが、本日は見えませんから、後日にあらためて伺うことにいたしまして、私の演説を終ることといたします。(拍手)
○森三樹二君 本日の自由討議はこの程度で止め、明四日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 森君の動議に御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決りました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時三十分散会