第002回国会 本会議 第27号
昭和二十三年三月二十日(土曜日)
    午後二時二十一分開議
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 議事日程 第二十四号
  昭和二十三年三月二十日(土曜日)
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説
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○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
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  一 國務大臣の演説
○議長(松岡駒吉君) 内閣総理大臣より施政方針に関し、また栗栖國務大臣より一般経済対策に関し発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣芦田均君。
    〔國務大臣芦田均君登壇〕
○國務大臣(芦田均君) 今回國会の指名により、不肖私が内閣を組織することになりました。國家に対し、國民大衆に対して、責任の重きことを感じます。この上は、私の肉体と魂のすべてをささげて、この重責を果すことに努める決心であります。
 つらつら内外の情勢を察するに、わが國再建の前途には幾多の難関が横たわつてをります。何とかしてこれを乘り切らなければ、われわれ民族の前途は危うい。それには、われわれ國民が一体となつて困難を克服する以外に、みずから救う途はありません。(拍手)わが國の現状、あらしの中にただよう難破船のように、これを救う唯一の途は、船客も乘組員もその力に應じて船の安全のため協力することが急務であると存じます。この際いたずらに党派心にとらわれて、議論に時を空費するがごときことは、われわれの断じて與しないところであります。(拍手)れゆえにわれわれは、機会あるごとに各党各派の政治休戰を唱え、同胞相携えて危機突破に邁進すべきことを強く主張してきたのでありまして、片山内閣成立の当時、自由党を含む四党政策協定を結び、互譲の精神をもつて政治の円満なる運用に努めたのも、そのためであります。今回の組閣にあたつても、私は政争の休止と國民総力の結集を目的にして各党に協力を求めたのでありましたが、今日の危機に対する認識において異なる点があつたためか、私の念願が完全に達し得られなかつたことは、深く遺憾とするところであります。しかしながら、われわれは決してこの望みを捨てるものではありません。あくまでも國内の総力を集めて政局と民生の安定をはかるごとに努力し、そのためには政府は常に謙虚な態度をもつて民論に耳を傾け、あくまで調和と融合の精神をもつて進退する覚悟であります。
 新内閣が達成せんとする最高の目標は、平和と自由と正義とが支配する世界を建設することであります。われわれは、この理想のもとに國内の再建に当り、この精神をもつて諸外國に対せんことを期するものであります。
 一昨年制定された新憲法は、絶対の平和と自由とを確立することを明らかにしております。われわれが平和と自由と正義の理想を追求し、それを実現することによつて、初めて日本民族は永久に價置あるものとなることを信ずるものであります。(拍手)新憲法の制定は、実にこの意味において民族更生の一大宣言でありました。われわれは、これを一片の紙上の宣言に止めることなく、國内においても外國に対しても、これを実践する努力に全力を盡さなければならないと信じます。
 新内閣はこれを施政の最高目標とするのでありますから、その歩まんとする道は当然に中道であります。何となれば、左右いずれにせよ、極端な思想は平和を維持するゆえんでないからであります。およそ無血革命と呼ばれるごとき國家の変動期においては、人心はややもすれば右か左かの極端に流れて、中正な進路を失いがちであります。しかしながら、偏つた思想と極端な政治活動は、帰するところ暴力革命に導く危險を包藏するのみであつて、断じて平和に通ずる道ではありません。この意味において、われわれは責任感の伴わない自由を排斥します。同時に、正義の名に隠れた利己主義をも排斥します。われわれは、あくまでも眞の民主主義を守つて中道を歩み、勤労を尊重し、社会連帶、國民協同の理念のもとに、生産の増大と分配の公正とを同時に実現せんことを企図するものであります。
 わが國が一日も早く世界の平和國家群に参加することは、國民のひとしく熱望するところであります。今のところ、講和会議がいつ開かれるかは、はつきりとした見透しはつかないけれども今から講和会議に備えて、日本が世界列強の信頼を博するよう最善の努力をいしたいと思います。世界列強の信頼を博する途は、われわれが平和の愛好者として、精神的にも物質的にも自由を尊び、正義感に燃え、世界文化に貢献する氣魄を示すことにあると考ます。講和條約の内容はもとより連合國の決定によるものでありますが、われわれの行動が平和と自由と正義の原則に適うものであれば、講和條件は必ずや日本の独立と生存を傷つけない公平なものであることを期待し得るでありましよう。(拍手)われわれは、今占領軍の治下に住んでおります。占領軍の指導が歴史上まれに見る公正寛大なものであることは、万人の認めるところであります。これに対してわれわれ日本國民もまた占領軍に対してきわめて協力的態度を示した結果、未だ平和條約の調印を見ずして、すでに平和生活に一歩を踏み出し得たことを幸福とするものであります。この際政府が特に注意を傾けようとする点は、現在の環境において、わが内政の処理をなすにも、まずもつて世界的関連においてなすべきものであるという点であります。(拍手)
 次に、政府のとらんとする経済政策については、他の閣僚より詳細申し述べるはずでありますから、私はその二、三について所見を述べるに止めます。
 現在の日本においては、いかなる政府もインフレーシヨンの克服に重点をおくべきことは言うまでもありません。それがために、インアレ克服の根本対策を立てて生産の増強をはかることは、何人も異論のない点であります。生産の増加については、資本と労働と経営の合理的調和をはかることが最も肝要でありますが、特に勤労大衆が崇高なその職責への自覚に立つて心かう協力するのでなければ、生産の増加が望み得ないことは明らかであります。その点から言つて、政府は労働組合の健全な発達を切に念頭しておるのでありまして、そのために必要な対策は十分考慮しております。しかしながら、自己の利益のみを主張し、社会協同生活に必要な調和の精神を欠くものは、労資ともに嚴に排尿しなければなりません。それは結局において國民大衆の利益と相容れないからであります。
 浮動購買力を吸收することは、インフレーシヨンの克服のために緊急必要とする施策でありますが、この点については、別に具体的の対策を準備しておりますから、遠からず國会に提案する意同であります。もつとも、この流通面に対する施策にあたつて最も重きをおくべきことは、通貨の信用を保持することでおりまして、政府はそのために万全の注意を怠らない考えであります。
 次に必要なことは資本の蓄積であります。日本は戦争によつて國富の三分の一を失つたのでありますから、生産を興すには、まず資本を蓄積しなければなりません。しかるに、國民の大半が勤労階級となつた今日では、資本は廣く大衆から集めることが一層必要となるのでありまして、從つてまた大衆の利益を擁護するため、投資の危険を少くする途を講じなければなりません。
 次に、産業の健全な発達のために経営を合理化し、その能率を十分発揮しなければ、生産の増大もはかられないことは明らかであります。今後日本が國際市場に進出することを許されたときに、輸出貿易が発達するかどうかはこの点にかかつておる点から言つても、経営の合理化は特に強調されなければならないのであります。
 なお、これに関連して必要なことは生産技術の向上であります。わが國の生産技術が世界の水準に比べて最近著しく遅れることはまことに遺憾でありまして、政府は生産技術の向上のために万全の施策を講ずる考えであります。
 なお経済政策としてわれわれの考えておる一、二の問題を附言して申し述べます。日本のような特殊の形態をもつ國においては、國土に適する産業を檢討して、これを振興しなければなりません。その点から水力電業を開発することは、石炭の不足がちなるわが國にとつて焦眉の急務でありまして、殊に大規模の発電工事については、政府がその資金を供給することも考慮しなければならぬと思います。
 食糧問題については、最近来の供出が未曽有の好成績を示しまして、すでに一〇〇%を超えております。これまつたく農民諸君の救國的精神の結晶でありまして、私はこの機会に、全國の農村に対し深く感謝の意を表するものであります。(拍手)しかしながら食糧増産のためには、なお第二次農地改革の徹底、供出制度の改善等幾多の施策を必要とするのでありますから、政府はこれらの点について具体的研究に着手いたしたいと考えております。なお、昨年度の水害による災害の復旧は一日も緩くすることを許されない事情にありますから、目下その対策について遺漏なきを期しておる次第であます。また平野地帯と山嶽地帯との中間に位する波丘地帯約三百万町歩の開発も、食糧増産、失業救済のために適切な事業でありますから、政府は具体的研究に着手したいと考えております。
 今後における経済再の基調については、各党各派の間あるいは基本的理念を異にするところがあるかもしれません。しかしながら、わが國が現在おかれておる環境からするならば、当面に行わるべき施策はおのずから発見されるはずでありまして、資本主義政党が経済の終局の目標を企業の自由におくとしても、物資が極端に欠乏しておる現状においては、ある程度の統制が絶対に必要であることは明らかであります。政府が近く発表する生産の長期計画によつて生産が増加するに從い、不必要な統制はこれを廃止し、合理的な経済体制を樹立する時期の來ることも予想し得ることであります。
 以上は、政府が企図する生産増加対策の概要でありますが、その効果の完全に現われるには、なお時間を要するとも考えられます。その間にインフレが高進して、日本経済を破局に陥れる危険ないとは言えません。よつて当面の急務は、生産増加に並行して不足物資を輸入に仰ぎ、一刻の急を救うことであります。不足物資の輸入は、一に連合國の好意的援助によるほかないのでありすが、さいわいに周囲の事情は好転して、おいおい多量の物資を輸入し得る曙光が輝き始めたことは、諸君とともに欣幸するところであります。(拍手)聞くところによれば、アメリカにおいては、日本経済を一九五四年までに、一九三〇年ないし三四年水準の一二十五%にまで復興させる援助計画を考慮する向きもあると聞いております。わが國の経済は終戦後一時どん底に落ちたのでありますが、その後國民の氣力と連合國の物資補給によつて、緩慢ながら、徐々に回復の方向に向い、インフレの高進にかかわらず、國民の実質的生活が向上したことは疑いないと、ろであります。この際連合國の物質的援助があれば、インフレの進行は著しく鈍化して、経済の再建は強固なる基礎の上に立つことができるでありましよう。かくして初めてわれわれは、久しい間の耐乏生活を脱却する希望をもつことが可能となるのでああます。(拍手)
 しかしながら、連合國の好意的援助を得るためには、まずもつて輸入の支拂のため輸出の増進を必要といたします。これと同時に、われわれの態度がその好意に値するものでなくてはなりません。(拍手)日本國民が諸外國の信頼に背かない明らかな証拠として、ポツダム宣言を厳格に実行することはもちろん、國内の民主化を促進し、文化國家の建設に全力を傾けたいと思います
 なお外國資本の導入を容易にするためには、今日までその隘路となつておつた幾多の障害を除いて、外國の資本家をして安んじてわが國の産業に投資するごとき受入態勢を整えなければなりません。政府は漸を逐うてこれを実現する考えであります。
 終戦以來、國内の治安は敗戦國としては予想以上によく維持されてきました。しかしながら、戦争の結果として文化道徳を頽廃させ、今なお犯罪の減少を見ないことは遺憾にたえないところであります。日本民族の血液から凶暴性を刈りとることは、一は國民生活安定の問題であり、さらにまた道義の高揚をはかる教育の問題であります。政府は最大の関心をもつてこれに善処する決心であります。
 地方自治体の運用は、新憲法に、よつて今試練の前にたつております。われわれは地方自治体が民主主義の根幹であることを思い、正しき自治精神が発場されて、地方分権が名実ともに完成されることを期待するものであります。地方に移管せられた自治警察が、今後眞に民衆の友として十分に機能を発揮する日も遠くはないと信じますが、同時に、国民諸君もまた進んで犯罪の防止に協力せられんことを切望してやまないものであります。(拍手)
 さらにまた國民道徳の高揚については、民族の名誉にかけて、この際速やかに適当の処置を講じなければなりません。われわれの傳統は、正しきを踏んで恐れない精神と、同胞に対する愛情とでありましてこの傳統をとりもどすことによつて、われわれの祖國は眞に住みよい國となり得るのであります。政府はこの精神を基調として教学の振興に今後一層努力をいたすとともに、六・三制の実施についても前内閣以來の方針を堅持する意向であります。
 こ際私は、國内において最も恵まれない境遇にある海外引場同胞と戦災者に対して一言いたします。これらの人々は、多くはまとうに衣なく、住むに家なき境遇にありますが、政府は事情の許す限り眞心傾け、國費を投じて救済に努めるこどを約束いたしたいと思います。戦災都市の復興も、まことに急を要する重大問題であります。政府はこの際、その道の権威者を集めて、その計画に基いて戦災都市の復興を促進する意向でありますが、特に住宅の建設については、欧米の実勢に鑑み、学ぶべき点は十分にこれを採用して、早急にその実現をはかりたいと考えております。(拍手)
 最後に、國際情勢に関するわれわれの関心について一言いたします。
 最近の大戦争によつて人類の受けた惨は、今なおわれわれの体験に新たなるものでありまして、世界の多くの國民は、飢餓と混乱のちまたに迷つております。それにもかかわらず、世界はさらに第三次大戦のまぼろしにおののいているというのが現在の姿であります。わが國は、まだ國際連合に参加する時期に達していないために、平和に対する発言権さえももち得ない立場にあろます。けれども、われわれの生存が密接に世界に関連をもつ今日、われわれは決して平和の維持に無関心であり得ないのであります。(拍手)殊に東洋の隣邦諸国において政情の安定を見ないことは、わが國の経済再建に大いなる障害をなすものであります。われわれは新憲法において、一切の軍備を放棄し、一勢の戦争を否認する決意を示しました。世界がこの崇高な理想において日本國民と歩調を同じくせんことは、われらの熱望であると同時に、われわれは今後引続きこの理想の旗のもとに、中和と自由と正義との支配する糧界の建設に不断の努力をいたしたいと決意しております。(拍手)
 以上私は、新内閣が政局の現段階に対する物心両面の用意と、経済危機の突破についての構想の概要とを申し述べたのでありますが、私は右に述べたような基本観念に立つて、廣く國内の政治力を結集し、國民大衆と力を協せて政局の安定をはかり、経済再建に直進する決心であります。今日世界の國國がひとしく窮乏にあえいでおる際、われわれは外からの援助のみによつて救われようとする卑屈なる態度をとろうとは考えておりません。食糧の補給も、物の生産も、まずみずから起ち上つて、できる限り自給自足をはからなければ、外からの援助は期待し得ないと思います。民族の特質は、かようなときにおいて最も顕著に現われるものでありまして、日本人が世界に伍して遜色なき國民であることを示すのは、逆境にある今日がその絶好の機会であります。(拍手)
 わが國が当面する危機は、今日ただいまも進行を止めてはいないのでありまして、これに打勝つことは容易ならぬ大事業であります。國会は申すに及ばす、廣く國民諸君の心からなる支援を得なければ、この大事業を遂行することはできません。
    〔発言する者多し〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○國務大臣(芦田均君)(続) われわれは、心を空しくして輿論に耳を傾け、廣く建設的意見に傾聽し……
    〔発言する者多し〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○国務大臣(芦田均君)(続) 誠心誠意奉公の誠を盡したいと念願する次第であります。(拍手)
○議長(松岡駒吉君) 國務大臣栗栖赳夫君。
    〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
○國務大臣(栗栖赳夫君) 本年は、端的に申し上げまして、わが國経済再建上まことに重大な年であります。いわば経済再建に一軽機を画するほどの重大な時機に当面した年であると存ずる次第であります。
 終戰以來、経済安定のための各般の努力がなされてまいつたのでありますが、敗戦の創痍はあまりに深く、かつあまりに廣く、今日國民の生活は、なお辛うじて飢餓と疾病を免れた最低水準を維持するに止まり、生産の回復もその進展は緩く、産業活動り本格的回復をはかろうといたしましても、輸送力、動力等の衰弱によつて制約せられ、これを回復しようとすれば基礎的資材の生産の過少に制約されるというように、経済の基盤はまだ安定正常化の段階に到達できないのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
また、これらの経済実態の総合的表現といたしまして、インフレーシヨンは最近やや足踏み氣味でありますけれども、なおその進行を止めず、そのために、また家計や企業も依然行先不安の域を脱していない現状でありまして、所詮は日本の現実の経済力においては、経済の再建をはかるためには、当面経済安定のためのあらゆる努力を盡し、國内生産の増強をはかるのと相まつて、どうしても食糧、輸出品用原材料等の必要な物資は、これを輸入に仰がなければならないのであります。
 もとより物資の輸入につきましては、連合國の好意的援助にまたねばならないのでありますが、本年は四囲の情勢からいたしまして、もしもわれわれが最善を盡して連合國の期待に副うことができますれば、従卒に比し連合國の経済援助に格段の期待をもち得る画期的な時期にあるように思うのでありまして、さいわいこの援助が実現し、これをわが國経済再建上有効適切に活出し、得ますならば、ここに経済安定の基盤を確立することができ、進んで本格的な経済再建の明るい光明を前途に認めることができるに至ると思うものであります。(拍手)実に本年は重要な年であるを申さなければならぬのであります。
 從いまして、一面現実の憂うべき経済情勢に鑑みまして、経済再建のためまずもつてその前提となる経済の安定、すなわちインフレーシヨンの克服をはかることを当面の責務といたしまして、前内閣以來の経済安定施策を踏襲し、これを民主化の線に沿いつつ強化して、その励行の徹底をはかるとともに、他面新たな情勢に対應いたしまして、連合國の経済援助を受け得る経済体制を整備し、輸入物資を最も効果的に役立てて、生産・輸出の画期的増大に努め、またでき得る限りの國民生活の安定と向上をはかることに最大の努力を補うことを本年度の経済施策の基調といたしたいと存ずる次第であります。
 次に、以上述べました趣旨に則りまして、主要経済施策の大要について逐次述べることにいたしたいと存じます。
 まず第一に、当面のインフレーシヨンの克服のためには、これまでの経済情勢の推移に鑑みまして國家財政及び地方財政の実質的健全化を確立いたしますとともは、健全金融の一層の徹底をはかる必要のあることは申すまでもありせん。本年度の國家財政は、一般会計に関する限り、本予算及び追加予算とも収支均衡の原則によつて編成されたのでありますが、現実には歳入と歳出との時期的ずれが著しく、殊に年度半ばを経過して巨額の追加予算が計上された事情でありまして、本年月末には、大藏省証券の発行高は三百七十億円に上つた次第であります。もつともこの発行高は、二月に入りまして、歳入の大宗である租税収入の画期的増加によりまして逐次減少し、三月十日現在では五十七億円を残すに止まり、國庫金の残高を考え合わせますと、ただいまのところは、実質的に全部償還された形になつております。しかしながら、特別会計につきましては通計して五百五十億円を超ゆる資金不足が予定せられ、結局において政府資金の対民間撒布超過は相当巨額に達しているのであります。
 以上の実情に徴しまして、昭和二十三年度予算は、実質的な健全財政の実現を根本方針といたし、財政の規模を國力に合致させるとともに、歳出については眞に必要かつ有効な費目のみに限定し、年間収支の均衡のみならず、財政収支の時間的調整をもはかつてまいる考えであります。また税制につきましても、国民の租税負担の均衡をはかり、生産意欲の障害を除くため、勤労所得税の大幅引下げを中心といたしまして所得税の軽減をはかりますとともに、企業の再生産活動を容易にするために、法人税について所要の改正を行う等経済情勢の推移に即應する改革を行う意向をもつて、目下その準備を進めている次第であります。
 なお歳入の確保のためには、脱税の防止はもとよりのこと、インフレ利得ややみ利得を徹底的に追求し捕捉する措置を講じ、これによつて徴税の徹底を期したいと考えます。
 他方産業資金面については、金融機関の融資がかなりの巨額に上がつたのみならず、なかんずく復興金融金庫の融資金が、大部分復興金融債券の日銀引受によつて調達ざれることを主因としまして、通貨増発の原因となつております。從つて、今後復興金融金庫の融資に対する監督を強化するとともに、赤字融資の抑制を継続強化する考えであります。また一般金融機関につきましては、現行の融資準則による融資規制の方法をさらに改善する措置を講じ、地面財政資金、復興金融債券の民間消化に一段の努力をいたす方針であります。しかしながらその反面において、政府経済計画実施に必要な産業資金は極力その供給を確保して、その事業活動を阻害梗塞することのないように留意することはもちろんであります。
 次に、健全金融の実施を確保するためには、資金の蓄積にまたねばならないことは申すまでもありません。國貯蓄運動が展開されまして以來、貯蓄成績は逐次向上の一途をたどつているのでありますが、他面財政資金、産業資金の需要に比較しまして、未だ決、て十分とは申されないのでありますので、政府としましては、定期的預貯金の優遇等に一層のくふうを加えたいと存じます。國民の一層の協力に期待いたす次第であります。なおこの際、新円再封鎖、平價切下げは絶対行わないことを確言するものであります。以上述べたましたことく、財政金融の面よりインフレーシヨンを抑制する方策を徹底いたしますことは、経済再建上の重要な要件と存じます。他面経済の復興をはかるためには、このような前提の上に立つて生産の増大をはかることを至上命令とするので、ありまして、これを達成することなくしては、終戦以來の窮乏と飢餓とから解放せられ、國民待望の経済再建の輝かしい光明を期待することは、とうていできないのであります。しかも、このための努力を國民みずから盡すならば、初めに述べましたことく、本年は恵まれた環境におかれることも期待し得るわけであります。從いまして、政府におきましては、國民各界の協力得まして、長期経済再建計画の完成をはかるべく、目下その策案を急いでいるのでありますが、さしあたり、その第一年度たる昭和二十三年度の計画目標といたしましては、前内閣が定めました石炭三千六百万トン、鉄鋼百万トン、硫安九十万トン等をもつて仮目標として、万難を排してその実現をはるつもりであります。しかしながら、この目標といえども、尋常一様の努力では達成可能とは考えられないのでありまして、格段の努力を必要とするものであります。政府は、國内の経済力をもつてしては達成することのできぬ物資につきましては連合國の援助を懇請する一面、全国民の奮起協力によつてその実現を固く期待しているのであります。
 増産計画の眼目といたしましては、依然として石炭・電力・鉄鋼・肥料も中心とする傾斜生産方式を継続強化し、他の産業活動の規模を逐次拡大していくための基礎的生産資材の重点的増産をはかるとともに、これに対應して、今日の産業経済活動の大きな制約をなしておる海陸輸送力についての損耗と破壊とを整備充実し、輸送能力の格段の増強をはかるための有効なあらゆる措置を講じ、いやしくも生産された物資については滞貨を生ずることのないよう万全を期する考えであります。また、これら基礎的産業部門の整備と相並行して、繊維工業等の輸出産業の振興に力をいたしますとともに、これに相関連する中小工業の振興につきましても、技術経営等の改善に着実な努力を沸いた所存であります。政府といたしましては、右に述べましたような計画の実現のために、全國民的な能率増産運動を展開いたしますとともに、資材割當の合理化、遊休資材の全面的動員活動による生産増強体勢の整備をはかる措置を実施する考えであります。また農業生産につきましても、供出責任制の実施と相まつて、肥料その他の生産資材の責任配給を行う等、政府におきましてあらゆる努力を盡しますとともに、関係方面の協力を得て、食糧の一割増産運動を強力推進し、計画的生産の確保をはかつてまいる方針であります。
 次に、本年は連合國の絶大の好意と理解ある援助により、綿花、石炭、鉄鉱石その他の必要物資の輸入も画期的増大が期待せられ、各種の外資も逐次導入を見るごとと予想されるのでありまして、日本経済も、今や戦争以來の長期間の孤立経済の状況から離脱し、諸外國との正常なる経済交流に備えるべきときが到來したものと考えられます。從いまして、かような事態に対應して、輸出振興についは、その重要性に鑑み、さらに一段と努力を拂う必要があることは申すまでもありませんが、それとともに、わが國経済を逐次國際経済へ順應させる方途を講じ、とりわけ國内産業及び企業経営の体制を逐次整備し、経営。技術、労働。生産の全般にわたつて合理化を推進して、わが國産業の國際的水準を向上充実させる労ことが格別重要で奉ると思うのであります。しかして、この産業の合理化につきましては、政府といたしましても、今後の慣格形成、資材・資金の割当等、各方面よりこれを促進することに努める考えでありますが、各企業におきましても、経済動向の推移に徴して、労資双方相協力して必要な合理化を推進し、企業の健全化と明日の繁榮に向つて協同の努力を盡され々ことを希望してやまない次第であります。(拍手)
 次に、國民生活の安定はつまるところ経済安定の基盤であり、経済の復興はつまるところ國民生活水準の確保向上にあると考えますので、飢餓と疾病を防止し、社会不安をなからしむるに必要な限度の食糧その他の生活必需物資を確保するはもちろん、さらに前年に比しまして生活水準の実質的改善をはかるために努力を傾注いたしますとともに、勤労者の生活安定、とりわけ生産増強に直接関連する重要産業に從事する勤労者に重点を置いて、その実質賃金を充実する方針であります。從いまして、これまでの生活必需物資対策を継続実施するとともに、さらに実施経過に徴して各般の改善措置を講じてまいりたいと考えております。なかんずく食糧については、昭和二十二年産米の供出が例年に見ぬ早期に完了し、これに連合國の好意により輸入食糧の機宜の放出によつて、從前に比べ國民の食生活に相当安定感を輿へているのでありますが、さらに引続き、今年こそは例年の端境期におけるがごとく食糧危機の再現を絶対に避けて、現行一般配給量の遅欠配のないよう全力を注ぎ、供出・輸送・貯藏・加工の部面について適切なる改善の措置を講ずるはか、重要産業労務者に対しては、現行労務者加配舞米制度を刷新し、配給基準を調整して、嚴に実稼働に應ずる効率的な運用をはかりますとともに、食糧事情をも勘案して、逐次改善強化いたしたい所存であります。
 魚類、蔬菜等の生鮮食料につきましては、現行統政に必要な改善を加えるとともに特にその励行に勤め、さらに加工水産物などとの総合配給制を実施して、格段の配給増加をはかつてまいる所存であります。その他衣料品、家庭燃料等の重要生活用品につきましても、一般民生の最低限維持のための配給を確保するほか、特に重要産業労務者に対しては、作業用品の供給力の増加によつて増加配給を行う考えであります。
 以上の措置の実効を確保するため、政府は、配給組織については、特に消費面の自主的な受配体制を育成強化するため、地域及び職域の生活協同組合の積極的活動を助長する措置を講じてまいるとともに、日用品の配給方式についてもこれを刷新し、統制品目を整理して、実効のある統制を確実に励行していきたいと考えておる次第であります。
 なお國民の住生活の面につきましても、本年度は乏しい資材の中から特に多くをこれに割いて、前年度に比し相当大幅の住宅建設を実現いたしますとともに、特に勤労庶民階級に対する住宅の供給に重点を置きたい考えで、あります。
 政府は右のような國内的努力を盡し、現行食糧配給基準量の配給確保体制を整え、その成果をまつて連合軍総軍令部に対し懇請し、できるだけ速やかに一般配給基準量の実資的な改善調整を実現できるように努めたい所存であります。
 次に物價につきましては、以上述べました各般の経済施策の一環をなす重要な問題でありますので、その安定のために最善の努力を継続する必要のあることは申すまでもないところであります。現に物價安定に関する一大國民運動の展開の機運にあることはまことに喜びにたえぬところでありまして、政府といたしましても、必要な支援を惜しまぬ次第であります。以上は経済施策でありますが、その施策の実施方式につきましては、現在のわが國経済の実情におきましては、今なお経済統制を継続強化するとともに、とりわけこれが適切な運営と確実な励行とをはかる以外に、いかなる政府といえどもその実効を攻める途はないばかりでなく、みずから盡すべきを盡さず、いたずらに他に求めることは、連合國の好意的援助にも報いるゆえんでないことは明らかでありまして経済再建上重要なる年を無為に過す懸念がないといたされない次第であります。從いましてわれわれは、日本経済の安定と復興とを國民みずからの手において実現すべき責任を自覚し、たた一遂に國民の総力をこれに結集すべきであると思うのでありまして、祖國再建のために、全国民諸君の奮起と協力とを特に切望するものであります。(拍手)
 なかんずく全國の勤労者及び農民諸君はすでに十分に自覚自負せらるるがごとく、今日においては、日本経済再建の成否はかかつて諸君の双肩にあると言わなければならないのであります。最近勤労者及び農民諸君の間に、健全な労働組合及び農民組合の運動が澎湃としてわき起りつつあることは、まことに注目すべきことでありまして、特に労働組合が眞にその自主性と責任制とを確立し、経営者団体と自主的に協力し、生産復興運動を推進されることは、その意義は今日きわめて大きいといわなければならないのであります。(拍手)政府は、これらのにして建設的な運動の急速にして活発な成長に対して、深き関心をもつものあります。政府は今後の施策においては、上述のごとく、あらゆる努力を盡してインフレーシヨンの抑止、と勤労者諸君の実質賃金の同上をはかる所存でありますが、勤労者諸君におかれては、政府の意のあるところを了察されて、積極的にこれらの安定施策に協力さることを特にお願いするものであります。
 以上、政府といたしまして本年度中にとるべき経済施策の重点を申し述べたのでありますが、さいわいにして全國民の増産と経済安定への努力が成功いたしました暁においては、終戦以來二年有余、ようやくにして困苦と混乱の中に経済再建への明るい展望が開かれるに至ることは疑いないのであります。もちろん敗戦経済の現状、わが國の自力のみをもつて解決しがたい幾多の欠陷があることは事実でありますから、これらの補強について連合國の好意ある援助を得られるよう政府として十分の努力を盡す所存でありますが、要は、全國民の祖國復興への眞勢な努力が具体的に示されることにあります。(拍手)重ねて祖國の復興再建のため各國民位の奮起と協力を切望してやまない次第であります。(拍手)
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○笹口晃君 國務大臣の演説に対する質疑は、明後二十一日定刻より本会議を開きこれをなすごととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○副議長(田中萬逸君) ただいまの動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれをもつて散会いたします。
    午後三時二十五分散会