第002回国会 本会議 第45号
昭和二十三年五月六日(木曜日)
    午後四時二十七分開議
        ―――――
 議事日程 第四十一号
  昭和二十三年五月六日(木曜日)
    午後一時開議
 第一 自由討議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 製造たばこ「新生」の價格の改定に関する法律案(内閣提出)
○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、製造たばこ「新生」の價格の改定に関する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 製造たばこ「新生」の價格の改定に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長早稻田柳右エ門君。
    ―――――――――――――
   〔早稻田柳右エ門君登壇〕
○早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました、製造たばこ「新生」の價格の改訂に関する法律案について、財政及び金融委員会における審議の経過並びに結果について簡單に御報告申し上げます。
 製造たばこ「新生」は、昨年十一月一日より、十本当り四十円の定價をもつて発売せられたのでありまするが、売行きが思わしくないというので、政府においては、本年二月初旬、福引券をつけて売出しを実施し、歳入確保に努めたいのでありまするが、昨年度四十三億本の販売計画に対して、約六〇%の販売成績を收めたに過ぎず、なお二十億本の売れ残りがあるのでございます。これを現在のままの價格で販売するとすれば、売り畫しに長い日月を要し、その間やみタバコをさらに蔓延させることともなり、また気候の関係からも品質が悪くなるおそれもあるのであります。そこで、この際「新生」の定價を十本当り二十円に値下げして、これを短期間に売り畫し、専売益金を確保するとともに、やみタバコの防止にも役立たせたいと考え、本案が提出されたのであります。
 本案は、昨五日、本委員会に付託されたのものでありまして、本日提案理由の説明を聴取した後、ただちに審議に入り、社会党の川合彰武君、民主党の中曽根君、國経党の内藤君、民主自由党の石原、淺利の二君、社会各新党の本藤君より、やみタバコ、配給制度、タバコの原價等に関して種々質疑がありましたが、詳しくは会議録に譲りたいと存じます。次いで、討論を省略し採決に入り、全会一致をもつて原案通り可決いたしたいのであります。
 右、簡單ながら御報告申し上げます。(拍手)
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決しました。
     ――――◇―――――
○議長(松岡駒吉君) お諮りいたします。國土計画委員長荒木萬壽夫君、司法委員長松永義雄君、文化委員長福田繁芳君、厚生委員長小野孝君、水産委員長青木清左ヱ門君、商業委員長喜多楢治郎君、運輸及び交通委員長正木清君、決算委員長竹山祐太郎君、懲罰委員長大原博夫君より、それぞれ委員長を辞退したいとの申出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつてこれを許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(松岡駒吉君) つきましては、ただいま辞任されました常任委員長の補欠選挙及びすでに欠位となつております予算、労働、農林、通信の各常任委員長の補欠選挙を行ないます。
○笹口晃君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、議長において指名せられんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 笹口晃君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて議長は
 國土計画委員長に   中島 茂喜君
 司法委員長に     井伊 誠一君
 文化委員に      小川 半次君
 厚生委員長に     山崎 岩男君
 労働委員長に     安平 鹿一君
 農林委員長に     井上 良次君
 水産委員長に     馬越  晃君
 商業委員長に     堀川 恭平君
 運輸及び交通委員長に 川野 芳滿君
 通信委員長に     土井 直作君
 予算委員長に     鈴木茂三郎君
 決算委員長に     松原 一彦君
 懲罰委員長に     森 三樹二君
をそれぞれ御指名いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、山本幸一君提出、徴税問題に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 徴税問題に関する緊急質問を許可いたします。山本幸一君。
    〔山本幸一君登壇〕
○山本幸一君 私は、不当なる課税方針に対する全財労組が発表いたしました公開状に関しまして、大藏大臣の所見をお尋ねいたしたいと存ずる次第であります。
 インフレーションの高進によりまして、國民生活は日を遂うて深刻化してまいり、原稿税制におきましては、さらに勤労大衆の負担が加重せられるのでございまして、従つて勤労大衆全体の大きな不満として爆発いたそうとしておるのであります。大衆負担の軽減を行ないまするには、一口にして申し上げまするなれば、いわゆる担税能力のある者から税を徴收するという方法であるものでございまして、すなわち、インフレ利得者あるいはやみ成金等々のこれら高額所得者から十分に捕捉のできるような手段を講じなければならないにもかかわらず、現実にまつたく反対でございまして、いわゆる現行の税務制度及び税務官吏、特に幹部諸君の考え方におきましては、むしろ大口の利得者の見逃しに援助を與えておるというように見受けられまするし、さらにこれによつて來るところのマイナスを勤労大衆に轉職するかのごとくに私どもには見受けられるのでありまして、はなはだ遺憾だと存じておるのであります。
 特に今回の農業所得税の徴税にあたりましては、依然として変らず、いわゆる天降り主義的な、あるいは割当主義的な徴税方針をとつておられるのでありまして、その結果、供出の責任をもつところの農民大衆の生産供出意欲をば非常に減退させておることは、見逃すことができないのであります。さらに農民は、せつかく農地が開放せられまして、非常に喜んだのでありまするけれども、農地の開放によつてむしろ負担が加重せられたという点につきまして非常に大きな恨みをもつておると私どもは考えておるのであります。最近におきましては、開放せられた農地が次から次へと手放しされようといたしておる現実を私どもが承りまするときに、実にこのこと自体が農民の供出意欲をば非常に減退させるものと考えておるわけであります。
 こういう中に徴税成績をあげようといたしまする際には、すなわち徴税技術に十分なる注意を拂うとともに、税務官吏、特に幹部諸君は、この徴税技術につきまして、いわゆる大口所得税者を捕捉できるように最善の努力を拂わなければならぬと信ずるのであります。しかし事実はまつたく反対でありまして、税務官吏、特に幹部の考え方は、いよ厖大衆の負担を強化いたしまして、高額所得者を援助するがごとき方針が各地において行われているのであります。今私は、その最も具体的な事実をあげまして、大藏大臣の所見を質したいと存ずるのであります。
 すなわち、具体的な事実といたしましては、去る四月の十三日、全財労組岐阜地連において、次のような公開状を新聞紙上に公にすると同時に、この公開状を、名古屋財務局長あてに嚴重な抗議文として送つておるのであります。この公開状につきまして、私は過日これが調査のために名古屋財務局の泉直税部長及び全財労組岐阜地連の諸君と面談をいたしまして、その事実をば調査したのであります。しかるところ泉直税部長は、あくまでもその公開状の内容を否定いたしておるのでございますが、一方労組側は、これは單に名古屋財務局内の問題でなくして、全國的に、しかも過日全國の直税部長会議におきましてこの問題が明らかにせられておると言つて、さらにこの公開状を強調いたしておるような次第であります。
 そこで私は、この公開状を今読み上げまして、一つ一つ、この点について大藏大臣の御答弁を承りたいと存ずるのであります。公開状は非常に長いものでございまするが、私は、そのうちの一部だけ質問いたしたいと存じます。
 まず公開状の前段には、前書として「名古屋財務局長に対する質問書」といたしまして、「敬愛する上司、名古屋財務局長松崎健吉氏に次の各項についてお尋ねいたし、明快なる御回答を賜わらんことをお願いする。次の質問は税務行政に対するわれわれの豪を啓いてもらいたい要望をもつて提出するものである。(大藏大臣の「全國の財務職員に告ぐ」九項「全職員の自覚により勤労者として正当な要求はあくまで堂々と主張され、政府を鞭撻して、よりよき徴税機構、その他財務機構の確立に進まれんことを希望する」によりお尋ねするものである。率直明快、かつ政策的欺瞞なく答えられんことを望む」、こういうような前書きをいたしまして、第一番に、割当課税の正当性、割当額の絶対性を確信せられておるかどうか、從來、割当額に達せぬ税務署は嚴しいお言葉を頂戴いたしておる、こういうことを追究しております。
 すなわち公開状の第一点は、全財労組が、所得税が申告主義であるにもかかわらず、依然として天降り的な割当責任主義であることを質しておるものであります。万一、全財労組岐阜地連の公開状の内容が事実といたしまするならば、いわゆる國会の決議を無視し、法を無視したる名古屋財務局の責任は、きわめて重大なるものと信ずるのであります。私は、この公開状の内容が、おそらく事実に近いものと確信をもつておるのであります。
 すなわち、今回の農業所得税に関しまして各納税者に発した更正決定通知は、あまりにも機械的であり、あるいは税務当局の査定標準を強制的に押しつけている事実。またわれわれが、二月上旬から中旬にかけまして、この税金の問題について大藏省の主税局長とたびたび懇談いたしました際に、われわれは、主税局長に対して、大藏省は所得税は申告主義であると称しておるけれども、事実は各税務署に対して、一定の標準を示して、判強制的に徴税するような方針をとつておるがどうか、こう質問いたしましたところが、主税局長のその都度の答弁は常に一貫いたしておるのでありまして、所得税はあくまでも申告主義であります、ただわれわれが一つの査定基準を全國の税務署に通知いたしましたことは、全國的なバランスをとる上において行つたのでございます。こういうような答弁であつたのであります。このことは明らかに割当主義を肯定いたしておるのでありまして、はなはだけしからぬとわれわれは存じておるわけであります。大藏大臣は、この割当主義、この事実をいかように処置せられるか、私は最も明快なる御答弁を承りたいと存ずるのであります。
 公開状の第二点は、泉直税部長は岐阜縣下税務署長会議において、税務署の百万円、六十万円という大口査定に対して、それほど高くてもよいか、再調査せよと言い、労働者・農民・庶民・中小商工業者の査定に対しては、平均何ほど引上げよと指導、指令したが、これは局長の税務行政上の信念に基くものであるかどうか、財務局事務官は、たとえば農民所得の調査においては、屋敷の柿の木の数、鶏の羽数と産卵の数まで細くまなく調べ、所得に算入せよを言うたが、危險を伴う大口やみ所得者の所得調査については、局長はいかなる対策を立てておられるのか、こういうように公開状の第二点に記載せられております。
 すなわち公開状の第二点からは、いわゆる大口所得者を意識的に見逃して、大衆課税をいよいよ強化し、申告主義を無視して、実際所得以上、負担をば大衆に押しつけるようにうかがわれる一方、やみ成金、インフレ所得者、すなわち新興財閥等のブルジヨアジーの利益を擁護するイデオロギーを最も明確に表わしておるものと信ずるのであります。芦田内閣は、世間で申しますのに、その背後に資本家が組織的に背景となつておると承つておるのでありますが、本公開状の内容は、その事実を雄弁にほのめかしておると考えるのであります。日本再建のかぎが勤労大衆の双肩にかかつておる今日、勤労大衆を圧迫するような徴税方法は、芦田内閣の反動性を表わすものでありまして、一体大藏大臣は大口所得を見逃すような考え方でおられるかどうか、もしこのような考え方がないとするならば、この公開状に表われておる名古屋財務局の責任をいかに処置せられるか、明快なる御答弁を承りたいと存ずるのであります。
 質問の第三点は、本件については重大なことでありますので、すでに大藏当局はこれが調査を行われておると信じますから、私は大藏大臣からいまさら儀礼的な答弁があるはずがないと信じますけれども、万が一にも、岐阜全財地連が虚偽の公開状を発表し、いたずらに問題を起さんがための行為があるとするならば、これまたきわめて問題が重大であるのであります。元來常識的に考えて、かかる公開状が発表せられるがごときは、たれしも容易にうなずけないことであるのでありまして、それがしかも内部から公然と発表せられるにおいては、常々大藏当局がかかる方針を末端の機関に示しておると考えられるのであります。しかしながら、大藏当局がこれを否定せられるならば、公開状を発表した全財岐阜地連の責任をいかに処置せられるや、はつきりとした答弁を要求いたしまして、簡單ながら私の質問に代える次第であります。
    〔國務大臣北村徳太郎君登壇〕
○國務大臣(北村徳太郎君) 山本君の御質問にお答え申し上げたいと思います。
 第一点は、割当制をとつておるかどうかといふことでありますが、大藏省としては、割当制はとつておりません、これは、この本会議場において、たびたび申し上げた通りであります。但し、われわれは一應の責任ある予算を立てなければなりません。從つて、どの地区でおよそどれくらいの割合のものをとるべきかといふようなことは、当然の問題として、これを具体的に調査いたしております。從つて、ある財務局のその管内における努力の目標は大体この線であるというようなことを財務局長に指示したことはございますけれども、各税務署に対して割当額をもつて割り当てとるというようなことは、断じていたしておりません。
 それから第二点は、名古屋の財務局の直税部長が大口は見逃しても小口をとれと言うたというようなお話であります。さようなことは断じてないと信じておりますけれども、もしさような事実があれば、これは今の時代に許すべからざることでありますから、十分調査をいたしたい。のみならず、全財の公開状というものも、これはまだ眞偽のほどはわかりません。十分に調査いたします。調査いたしまして、いずれか間違いがあれば、必ず相当な処置をとりたい。かように考えておる次第であります。
 なお、小口の所得者、特に勤労階級の所得を軽減するためには、ただいま私どもの計画いたしておりますだけでも、おそらくは六百億以上の減收を來す。けれども、勤労所得者の課税が重い。これは事実重いのでありまして、しかもまた源泉課税でとられるのであるから、一〇〇%とられる。われわれが、こういうような場合に、社会正義の観念から申しましても、その他税の本來の性質からいたしましても、かような時代にやみ所得を捕捉するということは当然である。從つて、その面において十分なる努力をいたしまして、やみ所得者、いわゆるインフレ所得者の捕捉には十分努力はしております。それから農家の所得についても、これはただいま軽減について相当の考慮をいたしております。
 以上、簡單でありますけれども、お答え申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(松岡駒吉君) これより自由討議の会議に入ります。
 小澤佐重喜君、発言者を指名願います。
○小澤佐重喜君 民主自由党では、中嶋勝一君を指名申し上げます。
○議長(松岡駒吉君) 中嶋勝一君、発言を許します。
    〔中嶋勝一君登壇〕
○中嶋勝一君 私は、民主自由党を代表いたしまして、まず農林大臣に、食糧一割増産対策の問題についてお尋ね申します。大藏大臣に対しましては、タバコ増産計画をいかにしておられるか、この点についてお尋ね申し上げてみたいと思うのであります。
 本日は朝日新聞を見てみますると、「緊急回米指令を用意、政府六、七月の対策急ぐ」、こういう見出しのもとに、今後の食糧問題が相当詳しく掲載せられておるのでございます。ところが、この間大藏大臣の車中談として私ども新聞で見ましたところによりますると、もう食糧は大体大丈夫である、二合八勺の配給ができるだろうという意味のお話があつたように見たのでございます。本日の新聞では、食糧問題はまだ非常に窮屈であるように掲載せられておる。大藏大臣のお話という新聞記事を見ますると、たいへん樂観していいように私どもは見受けられるのでございます。
 ところが、私どもが議員として考えまするときに、今年の食糧問題というものは、まだまだそんなに樂観を許すべき時代ではない、かように私どもは考えておるのでございます。ところが、はたしてしかりとするなれば、車中談としてもあまり樂観的なことをお話にならない方が國民が喜ぶのではなかろうか、私どもはかように考えておるのでございます。
 これに関しまして農林大臣は、御就任直後であつたと私ども思うのでありますけれども、銀座でありましたか、街頭録音において、大臣は食糧をやみで買つておいでになるかと聽いた人があつたように新聞で見たのであります。これに対して大臣は、やはりやみ米を食うておると言われたと書いてあります。それは率直にお話になつたので、すこぶるよかつた。こういうふうに聞いたのでありますが、これに対して、また次の質問は、日本の食糧のやみ取引がいつごろ解消するか、こういう質問に対して、大臣のお答えといたしましては、これは日本政府の力をもつてはいかんともすることができない。こういうお答えがあつたように私は新聞記事を見たのであります。はたしてこれが事実でございましようか。私は、事実であるとするなれば、すこぶる遺憾千万と考えざるを得ないのでございます。(拍手)いやしくも農林大臣に御就任なさるからには、日本の食糧政策に関しては十分自信をもつておいでになるはずと私は思う。そうして、いやしくも農林大臣たりせば、日本の食糧政策、これは一人の力をもつて背負うて、一人の力をもつて解決するというだけの自信と抱負をもつていただきたいと思うのでございます。ところが、この言はたしてしかりとするなれば、今年は食糧一割の増産をしなければならない。全國の農村に対しましては、津々浦々まで一割の増産をしなければならないということが傳わつておるのであります。ところが大臣は、この一割の増産をはたしてなし得られるところの計画をお立てになつておるのであるか。この点をまずお尋ねしたいと思うのでございます。
 けれども私は、これは御研究になりさえすれば、一割の増産はおろか、二割五分というものは完全に増産ができるというところの確信をもつておるのでございます。どうしてであるかと申し上げますなれば、これは率直に私は申し上げたいと思う。今、日本の農村に肥料が足りないことは、私が申し上げるまでもない。これは世間周知の事実、國民が皆知つておる。でありますから、肥料の面から食糧の増産ができないことはもちろんでありまするが、さて、その肥料政策を講ずるにあたつて、もう少し徹底したところの御方針はないか。
 この点につきましては、私は昨年七月七日の本会議におきまして、肥料政策の問題を論じて、マンガン肥料をどんどんおつくりなさい、これをつくつていくなれば、もう増産がストツプしておるところの硫安、窒素肥料、こうしたものをあまりつくろうと努力しないでも、しかして外國からカリ肥料をあまり買わないでも、これによつて十分に日本の農村に肥料を行き渡らせることができるという意味の意見を述べまして、答弁を求めたのであります。平野農林大臣の答弁はすこぶる不徹底でありましたけれども、しかしながら私は、これにつきましては絶対信念をもつておりまするから、その後農林省に参りますること、眞にお百度参りというほど参りました。西ヶ原の農事試驗場に何回行つたでしよう。あるいは東大の某博士という方にも会つてお話しました結果、ようやく理解せられまして、今年の一月三十一日に、日本で初めてマンガン肥料をつくり、これの販賣をすることの許可を得たのであります。
 ところが、今これによつて許可を受けたものがどんどんつくつておりまするけれども、しかしながら、この会社がつくるぐらいのことでは足りないのであります。ただいま生産能力が一日に十トンか十五トンしかないものに対して、何十万という注文がそこに來ておるのであります。これは一体何を物語るか。非常に有効なるところの成分をもつ肥料が、つくりさえすればいくらでもあるのであります。
 ところが、私が農林大臣にお伺いしたいのは、今農林当局は、マンガンという鉱石を微粉にして施したのみでは、これは肥料としては効果がないから、マンガンそのものに対して硫酸処理を施さなければならない。しかして水溶性マンガンにして、これを肥料にして施さなければいけないと、かようにおつしやつておるのでありますけれども、私ども十二箇年の経驗によりますと、その必要はございません。マンガン成分二〇%内外の鉱石でありましたなれば、これを八〇メツシユ以上の微粉にして植物に施すことによつて、完全に肥料としてあらゆる食糧が二割五分の増産をいたしておるのであります。これは最近におきましては、九大、東大のマンガン肥料に関するところの御調査をなされました人々、この学界の権威者が折紙をつけております。ただ土壤学の大家といわれる某博士のみが反対しておられたのでありますけれども、最近は、この博士にも賛成していただいたのであります。
 でありまするから、私がお願いしたいのは、このマンガン肥料を日本の農村が希望するほどつくつて農林省が出す。これは一年で日本の農村が希望するだけのマンガン肥料ができ得るのである。どうしてつくるか。御承知のように、マンガン鉱石は日本においては無盡藏でございます。無盡藏であるところへ、戰時中にマンガン鉱石を製鉄原料として出さなければならなかつた。しかしながら、製鉄原料に使いまするのは、含有量が二五%以上の富鉱でなければならない。しかるに、日本の國に埋藏せられておるマンガン鉱石は、いずれも二〇%内外の貧鉱でございます。ですから、これを二五%以上、あるいは三〇%にも四〇%にも含有量を多くするために、帝國鉱業開発株式会社の貸出しによつて選鉱場をつくつたものが、全國に四十幾箇所もあると思いますけれども、この四十幾箇所もありましたものが、現在ではほとんど遊休して、腐朽しつつあるのでございます。でございますから、この選鉱場を全部動員して、そうしてこのマンガン肥料をつくることになりますれば、わずか十五億円ほどの運轉資金がありましたならば、全國の農村が希望するだけのマンガン肥料は一箇年でできるという確信を私はもつておるのでございます。
 これを実施いたしましたなれば、硫安肥料も少くてよろしい、窒素肥料も少くてよろしい、カリ肥料を外國から輸入する必要はなくなると存じます。それだけではない。このマンガン肥料を日本でつくつて、日本の農村が希望するだけ全部これを配給して、余つたものはアメリカが買うてくれる見当が十分についておるのでございます。ですから私どもは、將來におきましては、大いにこれを輸出もいたしたい、かように思つておるのでございます。
 ただ、ここにおいて私お願いいたしたいのは、ただいま申し上げましたように、西ヶ原の農事試驗場の技術家の方々は、水溶性マンガンにするにあらずんば効果なしと言われておりまするが、私どもの経驗によりますると、そういうことはございません。マンガン鉱石そのものだけを微粉にして、そうして植物に施しまして、完全に二割五分増産の成績をあげておるのでございますから、希わくは、この議事堂の前で菜園をつくつて、その菜園で試驗してもらいたい。私ども大いに試驗をいたしましよう。試驗をしてみた結果、私の申し上げることが事実であるとするなれば、これはどうしてもこの増産計画を立てていただきたい、かようにお願いするのでございますが、これに関する農林大臣の御意見いかん、これをお聽きしたいと考えるのでございます。
 しかして、このマンガンという肥料は、まだ日本の学界、世界の学界において研究の行届かないところがあるであらうということを、私どもの同志で今研究を遂げている者は言つておるのでございます。その同志の話によりますると、マンガン鉱石は太陽の光線を誘導する非常に大きな力をもつている。でございますから、これを土壤の中に入れた場合には、晝のうちに太陽の光線をその土壤の中に引入れる。それであるから、夜でもこの植物が太つていき、繁つていく。でございますから、この試驗の結果は、富山縣あるいは岩手縣というような冷害地、すなはち水が冷くて稻のできが惡いところにこれを施した場合に、非常に好成績をあげておるのでございます。そうしました場合には、なおより以上に、これには嗜光成分というものが今研究の届かない点にあるのではなからうか、私どもはかように考えておるのでございます。この点は十分に御研究、御調査をお願いしたいと思つておるのでございます。
 かようにいたしまして、肥料政策を完全に講じました場合には、食糧の二割五分の増産は請合つてでき得ると私は確信いたしておる次第でございます。
 次は、大藏大臣にお尋ね申し上げたいのでございます。先刻、あの「新生」というタバコを二十円に値下げをせんければならぬという問題が起つてまいりましたが、これは私どもは当然だと思う。どうしてであるか。この「新生」が人氣が惡くて、二十円に下げたということは、これは「きんし」からきておるのではなかろうか、私どもはこう思う、あの「きんし」にいたどりを一〇%入れておられるということは、これは道徳上から言つても許すべからざる問題なのではなかろうか、私はかように考えておる。今國民が、タバコが少いタバコが足らないといつて困つておるからというので、タバコにあらざるところのいたどりをとつてきて、一〇%まぜてタバコとして賣つている、こういうことは、民間事業であつたならば完全に犯罪を構成する問題ではなからうかと私どもは考えておるのでございます。
 このいたどりを入れられたために、「きんし」が非常に品質が惡くなつた。そこへもつてきて、あの「新生」も「きんし」と同じようにいたどりが入れられておるのだというような風説がずいぶん立つたように私どもは聞いておるのであります。いたどりを四十円も出して買われるかいという氣持、そういう風説が傳わつて、そのために「新生」というものの人氣が非常に惡くなつて賣れないのではなかろうか、かように考えておるのでございます。はたしてしかりとするなれば、いたどりを入れるかはりに、もう少しタバコの増産計画を立てていただけないものでございましようか。
 日本の農業は、すでに平面耕作、平面によるところの増産の時代は過ぎたのでございます。すなわち、いくら開墾しようとしたつて、山を打ち開いたつて、打ち開いたのみでは植物はできません。ですから、今度は立体農業に移らなければならぬ。土を深く耕して、根を廣く張らせる、それによつて幹を大きく出して、穗を大きく出して、それによつて増産をはからなければならぬ時代であると思うのであります。それには、タバコにマンガン肥料をやりました場合には、四五%ないし五〇%、すなわち五割増産になるということは、これは九大の吉村博士が長年経驗の結果、折紙をつけておられるのであります。こうして、きめて有効適切なるところの肥料があるにもかかわらず、そのものを施そうとせられない。
 私は去年から、北村大藏大臣が民主党の政務調査会長をやつておられる時代に、マンガン肥料の問題をたびたびあなたに御相談をいたしました。これは私は自信をもつておりますから、これを大藏省の專賣局長官、あの当時の野田長官にもしばしば言つて、これを使われたらいかがでございますかという御相談をしておる。ところが、いまだにこれを研究なされたということを聞かないのであります。いたどりをまぜたタバコをつくらなければならぬほどなれば、どうしてこのマンガン肥料を使つてタバコの増産をはかられないか。このマンガン肥料をやれば五割の増産になる、この肥料をやりさえすれば増産になるということは、これはわれわれが言うだけじやない。学界の博士が折紙をつけている。その有効適切なる肥料があるにもかかわらず、これを利用することをしないで、タバコにあらざるいたどりをタバコと言つて賣るという政策を改めていただきたいと思うのであります。
 かくのごとくいたしまして、マンガン肥料を増産していただくことになるなれば、食糧の二割五分増産は私は確信があるのでありますが、しかしながら、当面の問題としては、なお農林大臣にお伺いしておきたいと思うのでございますけれども。今硫安をつくることについては非常に御努なさつておるし、獎励せられておると思うのでありますけれども、私どもが、この硫安の原料である硫化鉱石を生産しておる鉱山に行つて見ましたときに、この鉱山から鉱石を送る道路が惡い。そのために輸送能力が非常に減じておる。橋の十分なるものがかかつておらぬために輸送能力が減退しておるというような実情を見受けるのでございます。そういう実情に遭遇しておりますから、その山は、鉱石をせつかく掘れといつても、鉱石のコストが高くなつて思うように掘れない。こういうような現場を私ども実際に見てきておるわけでありますが、こうした点に関しましては、農林省自体におかれて、もう少しこの道路政策のごときにもつつこんで、肥料増産に関する限りこれにお力を入れられる御意思はないか。そうせられたならば、私は必ずや硫安肥料も増産になつてくると確信いたす次第でございます。
 今年の食糧一割増産の問題に関しまして、今農村が非常に困つておりますのは、今年の供出は非常に無理であつたと言われる点もあるのでありますけれども、そうかどうかしらんが、自己の保有米どころの騒ぎじやない、もうほとんど供出し盡して、今すでに還元米の配給をもらわなければ生活ができないという家が相当あることを私どもは知つておるのであります。この還元米対策に対しては、今年はどういうお考えであるか。今ただちにどうせられようと思つておるのであるか。この還元米対策を誤られたならば、今年の一割増産に影響してくるのじやないか。私はこれを恐れるのであります。この点に関しましてお答えをいただきます。それによりまして、私はさらに再質問をさせていただきます。(「質問じやないよ」「自由討議だ」と呼ぶ者あり)質問でも結構だと思うのです。
    〔國務大臣北村徳太郎君登壇〕
○國務大臣(北村徳太郎君) ただいまの中嶋君の自由討議のお話の中で、私に答えをお求めになりました点につきまして、一應お答え申し上げたいと思います。
 その第一点は、車中談の中で二合八勺を配給するというふうなことをお前言つたではないか、こういう意味のお話であつたと思うのでありますが、そういうことは言つておらないのであります。それで、私は大体食糧問題などに觸れて話したことはないのでありますが、もしありといたしますならば、先般某方面の代表者をお目にかかりました際に、日本の労働不安をどうして除去したらいいか、日本における現在の労働不安というものは、これはいろいろクレジツト設定等に差障りがあると思うが、大藏大臣として日本と労働不安をどうして解消しようと思うかというような話がございました際に、私はその問題については、日本においては食糧問題が実はきわめて重大である、從いまして、生計費の多大の部分を食生活に注がねばならぬという現状では、たとえば賃金が上がつても、それだけでは裏づけがないから、結局賃金と物價の惡循環を継続しなければならぬと思う、從つて、さような観点から日本の食糧問題について再檢討していただきたいということを言つたのであります。さような話をしたことは、かつて新聞記者にも話しましたので、あるいはそういうことが何か違つて傳えられたかどうかしたのだろうと思いますけれども、食糧に関する私の考え方について、何かおしやべりをしたといたしましたならば、以上の点だけであります。
 それからタバコ專賣の件でございますが、これは御指摘の通りでありまして、まことに恐縮にたえぬところであります。何と申しましても、ただいまは税收入と、タバコを中心とする專賣收入が國家財政の二つの柱になつておりまして、しかも、このタバコの増産についてはリミツトがある。今年度は、おそらく五万町歩になろうと思いますけれども、これは食糧増産のために必要なる田畑がタバコ生産にかえ得るという限度は、すでに極度にきておる、かように考えますことと、それにしてもなお十分に需要を満たすことができないということで、葉タバコの輸入等について懇請いたしております。けれども、現状においては、この程度以上の増産はなかなか困難である。さいわいに、ただいま中嶋君のお話にありましたようなことで、倍にも増産できるということならば、これはまことにありがたいことでございますから、十分研究いたしたいと思いますけれども、現状においては、やむを得ないところへきておる。この点を御了承願いたいと思うのでございます。(拍手)
    〔國務大臣永江一夫君登壇〕
○國務大臣(永江一夫君) 中嶋君にお答えいたします。
 一割増産につきまして、肥料の増産が絶対に重要であるという熱心なる御意見でございました。私もまつたく同感でございます。ただマンガン肥料につきまして、中嶋君は從來から非常に熱心な御意見をおもちになつております。農林省といたしましても、マンガン肥料が増産されることにはもちろん反対をいたしておりませんが、ただこれを全國的な肥料といたしまして実施いたしまする場合については、責任上いろいろ科学的の研究をいたしておるのでありまして、今中嶋君の御意見のように、マンガン肥料が非常に有効なものであるということが的確にわかりました際においては、中嶋君の御意見通り、全國的にこれを増産いたしたいと考えております。
 なお次に、硫化鉱の搬出について、その鉱山の附近における道路その他搬出状況の不良なことについて御注意がございましたが、私もこの点については同樣に考えておりまするので、適切な方法をとりたいと思います。
 第三の還元米についてでありますが、これは本年度、府縣を通じまして相当多額ないわゆる還元米――私どもは農家手当米と称しておりまするが、この要求がございまして、これは本年の食糧増産の上に非常な関係のあることでありまするので、愼重に関係方面と折衝をいたしまして、それぞれ府縣を通じて適切なる手当米を行いたい、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○笹口晃君 自由討議はこの程度に止め、本日はこれにて散会されんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時十五分散会