第004回国会 本会議 第6号
昭和二十三年十二月八日(水曜日)
 議事日程 第五号
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
 本日の会議に付した事件
 道路の修繕に関する法律案(建設委員長提出)
 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後三時七分開議
○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○今村忠助君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、建設委員長提出、道路の修繕に関する法律案は、委員会の審査を省略してこの際上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 道路の修繕に関する法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。建設委員長柏原義則君。
    〔柏原義則君登場〕
○柏原義則君 ただいま議題となりました道路の修繕に関する法律案につきまして、提案の理由並びに法案の趣旨を御説明申し上げます。
 本委員会におきましては、去る十一月十日、道路に関する事項につき國政調査の承認を受け、特に道路小委員会を設置いたしまして本案起草に当つたのであります。その間、諸外國の制度も研究いたし、かつ関係方面の意向も参酌し、慎重檢討いたしまして、本日委員会におきまして最後的な検討をも加え、全会一致をもちまして道路の修繕に関する法律案を決定いたしまして、ここに提出の運びとなつた次第であります。
 まず、提案の理由並びに趣旨について御説明申し上げます。
 わが國の道路は、戦時中の酷使と修繕の放置により著しく損傷を受けておりまして、幹線も支線もともにその機能が阻害され、交通輸送に重大なる支障を與えており、國土再建の見地より、まことに憂うべき状態にありますことは、皆様周知の事実でございます。しかるに、現行道路法によりますと、道路の新設、改築、修繕及び維持につきましては、道路の管理者、すなわち地方公共團体の長が、その所属する地方公共團体の費用をもつて行わなければならないことになつておるのでございます。しかも、道路の新設または改築等につきましては、その費用の一部につき國庫補助をなし得るように規定しているのでありますが、修繕と維持につきましては國庫補助の規定がないのでございます。維持につきましては、現行法通り管理者にその所属する公共團体の費用をもつてこれを行わしめるべきものと考えられますが、修繕につきましては、多年のやむを得ざる事情のため、その費用が増嵩の一途をたどり、現状においては、地方においてのみこれを負担することは、地方財政の面からも、すこぶる困難であると考えられるのでございます。從いまして、この修繕につきましても、新設改築と同様に國庫補助を認めることが絶対に必要となつて来ているのでございます。また現行道路法では、道路の新設改築については國の直轄工事を認めておりますが、修繕については國の直轄工事を認めていないのでございます。地方財政の困難な折柄、新設改築と同様、修繕についても國の直轄工事を行い得る道を開くべきものと考えられるのであります。
 たまたま十一月二十七日付をもちまして、関係方面より日本政府あてに、道路の維持修繕五箇年計画に関するメモランダムが発せられました。日本政府に対し、道路の維持修繕に全力をあげること、そのために昭和二十七年までの道路維持修繕五箇年計画を樹立し、これを一定期限までにCTSに提出することを、業務として命ぜられているような次第でございます。このメモランダムの要望にこたえるためにも、この補修の問題をすみやかに解決する必要があるのでございます。現行道路法の全面的改正は、目下建設省において研究中でありますが、これは相当の日子を要するものと考えられますので、ここに暫定的措置としまして、單行法として本法律案を提出した次第でございます。
 次に、本案の内容につきまして御説明申し上げます。
 本法律案は二條よりなつております。第一條は、当分の間、地方公共團体に対し、道路法に規定する道路の修繕に要する費用の一部を國庫より補助することができることを規定しているのでございます。第二條は、建設大臣は必要がある場合には國道の修繕を直接行うことができるということを規定してあります。但しこの場合、地方公共團体は、その費用の一部を負担しなければなりません。なお、その補助の率等に関しましては、別途政令をもつてこれを定めることにいたしております。
 以上、本案提出の趣旨及び内容について御説明申し上げました。本法律案は、國土再建の見地よりも、きわめて重要でありますので、何とぞ満場一致御賛成くださることをお願いいたしまして、本法律案の趣旨弁明を終ります。(拍手)
○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案を可決するに御異議がありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(松岡駒吉君) 國務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。原彪之助君。
    〔原彪之助君登場〕
○原彪之助君 私は、日本社会党を代表いたしまして、内角総理大臣の施政に関する演説につきまして御質問申し上げたいと存ずるものでございますが、去る四日に行われました首相の施政方針演説を拝聴いたしまして、まことに失望を感じたものでございます。これは、ただ單に私一人の感じのみではなく、諸君もおそらくそうであつただろうと存じますが、國民全体のひとしく感じた感じであろうと私は感ずるのであります。いやしくも施政方針と名づけまする以上は、その行わんとするところについて具体的にこれを示して、われわれに審議の基準を示すと同時に、また國民に向つては、この内閣を信頼していいかどうか判断するところの材料を與えなくてはならないものだと考えるのでございます。しかるに、総理の言うところはきわめて抽象的でありまして、何ら具体的な施策を示さず、しかも、現内閣の與党である民自党の諸君が在野時代に決定発表せられました政策については、ほとんど何ら触れていないのであります。
 現内閣は、民自党單独内閣にあらずして吉田單独内閣であつて、町の批評家の言葉によれば、現内閣は吉田総理大臣その他大勢によつて構成されていると言つておるのでありますが、まことにうがち得た諷刺であると存ずるのでございます。昨日の、民自党を代表せられました辻君の御演説といい、それに対する閣僚諸公の御答弁といい、いかにも政府と與党との背離の跡を糊塗し、また公約無視の跡をごまかそうとするさまがうかがわれまして、まことにお氣の毒にさえ感ずるのであります。それらの欺瞞性、または各般の施策につきましては、続くわが党の同僚によつて完膚なきまでに追究していただくことといたしまして、私はもつぱら、わが國の民主政治のあり方、日本國憲法運営の根本的な問題に関連いたしまして、いささか質疑を試みたいと存じます。
 吉田総理は、組閣早々に、口を開けばただちに解散を云々されるのであります。あるいは、小数党内閣であるがゆえに、まず解散すべきである。あるいは、公務員法の改正案が通過すれば、給與は緊急措置にまかせて解散をする。さらに、追加予算が成立したならば、ただちに解散する。総理の言われるところは、解散というものをまつたく政界の万能膏と心得ておられるかのごとき観があるのでありますが、しかし、ただ解散ということによつてのみ政界の粛正または政局の安定ということは望まれるものではございません。むしろ、そのやり方次第によりましては、逆に政局の混迷を來し、不安定を生ずるところの因にならないとも限らないのであります。もちろん、私たちといえども、今日の政治情勢が解散を必要としておることは十分認めております。また、國民の氣持もここにあることは明瞭であります。しかし、いやしくも責任のある政治家が、一党の総裁として在野時代に天下に発表し、いよいよ朝に立たれて、これを実行に移し得る権力の裏づけを得られた一國の総理大臣が、政策のことを語らずして、いたずらに口を開けば解散のことを叫ぶのは、あたかも往年、話せばわかると言つた犬養首相に対して、問答無用、撃てと命令した青年將校の態度をさえも連想させるものがあるのであります。(拍手)
 私は、吉田内閣の成立いたしました当時の外國新聞の不評をまことに遺憾といたしまして、日本國民として、吉田総理とともにこの悪印象を佛拭いたしたいと考えておりました。総理もまた、その点については近く認識は改められるであろうと語つておられるので、ありまするが、第三回國会においては、衆議院の屡次にわたる要求にもかかわらず、遂に施政に関する演説をなさいませんでした。かくのごとく憲政史上まれにみるところの悪例を残され、しかもまた、このたびようやく聞き得ましたところの演説が、かくのごとく内容空疎なものであつてみますれば、残念ながら、われわれもまた現内閣の非民主性、反動性を認めざるを得ないのであります。(拍手)
 民主政治とは話し合う政治であります。話して國民にすべてを知らせ、納得を得て行う政治でございます。ほかから求められなくとも、みずから進んで話し、國民の批判を求める態度こそ、眞の民主主義政治家の態度でなくてはなりません。(拍手)旧憲法時代におきましてすら、議会の開会劈頭に施政方針を明らかにする演説を行うのが恒例となつておつたのであります。しかるに、民主憲法となりまして、國会を開くことまだわずかに二回、まだ創業訓練の時期であるところのその第三回目の國会におきまして、早くも施政方針の演説をしないという異例をつくつたのであります。しかも、みずから憲政のためによき慣例をつくりたいと言つておられる吉田総理その人によつて、かくのごとき態度に出られたということは、まことに奇怪しごくだと申さなくてはなりません。今後このような傲岸な態度が日本の民主政治の正しいあり方の上において許されるとお考えになるかどうか。國民の納得できる御説明を願いたいのであります。
 次に吉田総理は、現内閣は少数党内閣であるがゆえに、まず解散を行うべきであつたと言われます。思うに、これはいずれは多数によつて反対せられるであろうというお考えの上に立つておられるものと思うのでありまするが、一應はごもつともでございます。私たち政党人としては十分反省すべき問題を含んでおると思います。政策内容のいかんにかかわらず、與党であるがゆえに賛成をし、野党であるがゆえに反対をするという偏狭な、反対のための反対ということは、大いに愼まなくてはなりません。過去の政党が、極端なこうして党派感情にとらわれまして、國家國民を忘れましたところに、政党への不信が生れ、フアツショ勢力が台頭いたして参りました事情を思い起こしまするならば、議会人として、われわれは自他ともに自粛自戒しなくてはなりませんが、そのためにこそ私は、正しい議会政治のために、一層吉田総理の態度を遺憾とするものであるのでございます。
 政党は政策をもつて立ち、政策をもつて相争うのであります。そうして、その是非善悪を判定し、審判をするものは國民であります。解散をして信を國民に問うと言われますが、一体何によつて國民の審判を求められるおつもりか。國民の知らんと欲するところは、時の政府によつていかなる政策が実行されるかということにあるのであります。朝に立つたときにおいてこそ責任をもつて國民に訴えられるべきではないかと思うのであります。そのときに、もし院内の多数がかりに反対をしたといたしましても、その主張のどちらが正しいか、どちらが悪いかは國民が審判するのでありまして、そのときにこそ、ほんとうに國民の審判に問うという正しい解散があり得るのでございます。(拍手)総理は、日本憲政によき慣例をつくりたいと言われますが、一体解散について、この点いかに考えておられるでございましようか。
 さらに総理は、よき慣例の一つとして、総選挙後においては第一党首班の原則を樹立したいと言われております。しかし、この原則が憲政のよき慣例たり得るためには、その國の政党が二大政党に、二つの陣営に対立することを前提とし、政党勢力の再編成が行われなければなりません。けだし、吉田総理が日ごろ二大政党の対立論を理想として主張されておりますことも、こうしたお考えからであろうと存じますが、しかし日本の現状は、小党分立の有様であるのであります。首相は、この二大政党対立の理想と小党分立の現実を、いかに調和されようとするものであるか、その方策をお伺いいたしたいと存じます。
 わが党は、社会民主主義を根本理念として結集され、右に資本主義を排し、左に共産主義をしりぞけて、今後いよいよその本領に徹しようとしておるものでありますが、資本主義陣営の先頭に立つて、民自党の総裁として、吉田総理には、はたしてブルジョア政党を結集して、この議場にわが社会党と相まみえるの成算があるのでありましようか。理想は理想として高閣につかねて置くだけでは、空想であるのであります。常に理想を現実と結びつけ、現実を理想に向つて一歩でも前進させようとする不断の努力がなされてこそ、眞の理想主義者たり得るのであります。私は、総理がいつ、いかなる方法で、この理想実現への具体的工作をなされようとするかを、日本憲政の將來のために明白にしていただきたいのであります。それは、立憲政治によき慣例をつくり、憲政運営にレールを敷くことを畢生の念願としておられる吉田総理の義務でもあると考えます。
 このことに関連いたしまして、ついでにお尋ねいたしたいことは、吉田総理は、第一党首班の原則を主張されるとともに、連立内閣の弱体性を指摘して、これをしりぞけられたのでありまするが、近く予想される総選挙の結果において、過半数を占める政党がなかつた場合には、いかにして政局を収拾すべきであるとお考えになりましようか。もし民自党が第一党となつた場合に、解散を起死回生の妙薬と考えられているらしい吉田総理としては、重ねて解散に問う勇氣があるかどうか、この点についても総理の所見を明らかに示していただきたい。
 しかも、この場合に非常に重大な問題は、解散権の所在いかんということであります。吉田総理は、最初は憲法第七條による解散を主張されたのでありまするが、先般の演説におきましては、追加予算提出後二週間の後、野党の不信任案提出を待つて解散すると、憲法第六十九條によることを明らかにされておられます。これは一体、解散権に関する総理の心境が変化したものであるか、それとも、先般二十八日の公務員法の改正案をめぐつて事態が紛糾いたしましたときにできた協定によつて、余儀なくされように決定されたものであるか、これは將來日本國憲法の運営にあたつて至大の関係を有する問題でございますから、素直に信念をもつてお答を願いたいのであります。この問題は、單なる憲法の解釈論として片づけられる性質のものではないのであつて、立憲政治の本質論にも触れる問題でありますから、もしも憲法の條文の表現の上に不十分なものがあるか、あるいは條章のあんばいの点に不適当な点があることから解釈が二、三となり、そのために日本民主化に誤解を招くようなことがありとしまするならば、憲法の修正をもいたさなくてはならない重大な問題であると存じます。
 民主憲法が制定されて、とみに明朗化せらるべきわが國の政局というものが、むしろ暗澹として安定を欠き、國民をして政局の動向に常に迷わしめるところの根本的な原因は、新しい日本國憲法の試練時代にあつて、アメリカ流の絶対的三権分立主義と、イギリス式の憲政運営論とが、帰一するところなく乱れ行われ、しかも、これを行使するところの主体である政党がフランスのごとき小党分立の状態にあるという点に存すると思いまするが、この際、日本政治の明朗化と政局安定のために、よき政治慣習を打立てようとせられる総理の意図には、満腔の共鳴と敬意を表するものでありまするが、政治的謀略に堕することなくして、明朗闊達のうちに、総理の御演説中にうかがわれるところの解散、総選挙、第一党首班の原則、しかして連立内閣の忌避という一連の構想を、いかにして実行されようとするか、その進展の見通しをも、あわせてお伺いいたしたい。
 私は、吉田総理が愼に日本の民主化、日本の民主政治の確立ということに対して信念と情熱と勇氣とをお持ちであるといたしまするならば、ついでに附言しておきたい。総理は演説中に、さきの芦田内閣当時に現われた白票問題を云々せられ、しかも、かつてはこれをもつて解散の理由とさえせられたかに見えるのでありまするが、白票の持つ意味については、すでに学者間にいろいろと論議されておりまするが、民主党の諸者が投ぜられた白票のことについてはいざ知らず、わが社会党は、当時の野党第一党であるところの民自党に政権をゆだねることに決してやぶさかなるものではなかつたのであります。しかし、指名は個人の名前を書かなくてはなりません。総裁をいただいて、りつぱに公党として存在している民自党を推すのに、総裁以外の人を指名するということは、いかに他党のこととは言つても、政党人の誇りと見識がこれを許さない。しかしながら、吉田茂と書くことは、勤労者の意地と感情が許さなかつたのであります。(拍手)吉田総理もお忘れではないと思いますが、第一次吉田内閣のとき、勤労階級が当然の権利を合法的に行使しようとしているときに、これを不逞の徒とののしられたのであります。この労働運動に対するところの認識不足と時代感覚の欠如とが、勤労階級の全面的な不信と憤りを買うておるのであります。春秋の筆法をもつて言わしむれば、吉田総理社会党をして白票を投ぜしむるといい得るのであります。愼の民主政治とは、ただ單なる制度や機構の改廃だけで行われるものではございません。人間相互の信頼と愛とを基調として初めてりつぱに行われるものであります。吉田総理の念願されるところの民主政治への道を総理みずからの言行が妨げておることを反省されまして、第二次吉田内閣の総理として、労働運動に対して現在いかなる心境をお持ちであるか、これもあわせてお伺いいたしたいのであります。
 以上は、民主政治の根本的問題について、主として総理の見解をお尋ねいたしたものでありまするが、由來政治は生活なりといわれ、ことに民主政治におきましては、國民生活の安定ということを第一の要件といたしますが、現内閣が、施政方針の中に、この点に言及することきわめて少いのは、一体なぜであるか。わずかに生産第一主義にのつとつて、そのためには労働力の生産性の向上に期待するというのであります。戦後の日本が、領土を失い、資源は少く、しかも生産施設が破壊せられておるなど、幾多の悪條件を克服して経済を建直し、生活の安定をいたしますためには、勤労者の労働力にまつところ、すこぶる大きいのであります。その力をいかに振い起し、いかに組織するかということが問題であるのであつて、行政整理とか企業整備と申しましても、その方法いかんによりましては、ただちに勤労者の地位に関係するものでありますから、逆に勤労意欲を阻害して、生産増強はおろか、勤労國民の生活を破壊する結果とならないとも限らないのであります。一体物を生産するということは、人間の生活をゆたかにし、潤いあらしめることが目的であるのであります。しかるに、利潤追求ということをすべての経済活動の根基としておりますところの資本主義的運営のもとにおきまして、はたして生産第一主義が國民生活安定の結果をもたらし得ると確信されるかどうか。資本主義のもとにおける生産増強は、いきおい労働強化となります。資本家への利潤奉仕以外の何ものでもありません。労働大臣は、生産第一主義と國民生活安定との関連調整をいかにしてなされようとせられるか、具体的に御答弁願いたいと存じます。
 私は、國民生活安定の目的にかなつた生産増強、そのための労働力の生産性の向上ということは、現内閣の手によつては、とうてい行い得ないものと考えるのであります。なぜならば、労働の生産性を向上させるということは、勤労者が自発的に働くという気持を起すことでなくてはなりません。しかるに、現内閣の閣僚諸公の考えておられるところ、行つておられるところは、ことごとく勤労者の信頼を失い、むしろ怨嗟の的となつて、勤労意欲を逆に阻みつつあることを、見のがしてはならないのであります。公務員法の取扱い方のごときは、よきその一例であります。公務員法改正に対するマッカーサー元帥の要請は、公務員に対する権利の制約と相表裏して、政府の公務員に対する福祉利益の保障を義務づけておることは、その書簡によつて明白であります。それにもかかわらず、政府は公務員の権利の制限にのみ急であつて、給與改善に対しては、まつたく熱意を欠いておる。政府は、当初法律の改正だけを行つて、給與のことはあとまわしとしてまず解散によつて事態をごまかそうとしておられた。一体昔から、働く者が年の瀬を越す苦しさというものは骨身に徹しておるのであります。いわんや、今日のごとくインフレの波高く、険しい年の瀬を、働く勤労者はどうして越すとお考えになりますか。働く者にとつて、來る春の楽しみも喜びも、年の瀬の苦しさに押しつぶされてしまつております。明るい希望のないところに、どうして働く元氣が起きるのでありましよう。これをしも忍んで働け、労働の生産性を向上させようというのは、勤労者に難きをしいるものであり、これこそ資本家根情の露骨な現われであります。
 幸にして、わが党の主張いたしました公務員法の改正と給與改訂の不可分関係が認められまして、給與含む追加予算案の提出を見ることができましたけれども、これによりますと、新給與ベースは五千三百円となつております。ここにも、現内閣の勤労階級に対する冷酷な態度を見るのであります。大蔵大臣は、はたして五千三百円のベースで、この高物價時代に、一体生活が維持され、勤労意欲が向上させるとお考えになつているのでありましようか。これでは、公務員法を改正したいばつかりに、申訳的に追加予算を出したとしか解釈されないのであります。これはまさに、公務員法と新給與との関連性において相対的に見る場合には、勤労階級への不当の弾圧であります。現に、政府機関の一部である人事院においては、六千三百円を要求しておるのであります。われわれは、この額といえども決して十分とは考えないのでありますが、政府にして愼に勤労階級への理解と同情がありますれば、せめてこの六千三百円ベースをとるべきではなかつたか。総理は、政府部内に二つの異なつた意見があることを、いかにとりまとめようとせられるか知りませんが、一体給與改善費として、さらに追加予算を提出される意思があるかどうか。その点について明確にお答えを願いたいが、さらにまた、この給與予算が成立する時期とにらみ合せまして、その成否いかんにかからず、公務員が年の瀬を越し得るように、年内にその時期を逸することなくして給與支拂いの適当な措置を講ぜられるかどうか、この点も、はつきりとした御答弁をお願いいたしたいと存じます。
 今日生活の苦しさは、決して一般労働階級ばかりではございません。中小商工業者の窮状というものは、まつたく想像に絶するものがございます。不公正な徴税や不当な査定などによつて、今や中小商工業者は生活浮沈の境にさ迷つておるのであります。大蔵大臣は、空疎な経済演説などをなされる前に、税務署の窓口に行つて、眞剣な中小商工業者の顔をごらんになるがいい。税金を苦にして死を決した、氣の独な事実さえも報じられております。内閣に列して、今このひな壇に納まつておられる大臣諸公の命も、ちまたのバラックに、働いて働いて声なく死んで行く勤労階級の命も、人の命の尊さにかわりはないはずであります。(拍手)この世相にかんがみて、大蔵大臣は、徴税の方法に人情味を加え、さしあたつて納税の方法を緩和するお考えはありませんかどうか。これもあわせてお尋ね申し上げます。
 最後に私は、外務大臣としての総理に、日本國の將來についての御抱負をお伺いいたしたいと存じます。第三回國会において、講和條約促進懇請の決議案が院議をもつて可決されましたことは、まことに御同慶にたえないところでございまするが、そのために、わが國としては、いかなる方法に訴えようと考えておるのでありましようか。総理は、その要件として、経済の復興あるいは政治の民主化、外國信用の回復等々の要件をあげておられるのでありまするが、しかし、これは連合國側の制定にまつべきところであつて、われわれは、その日の一日も早からんことを断念しておるものなので、日本側としては、一体いかなる具体的な工作をなされようとしておるか。それが先般の決議案の求めているところでもあるのであります。日本國民が講和條約の促進を待望してやまないというのは、世界各國のよき友邦となつて、世界平和に協力するために、完全な独立権を回復したいとこいねがうからであるのであります。國家の自主性を保ち、民族の独立を欲するという氣持ちは、何ものにも増して大きい國民感情であり、民族意識のしからしむるところでありまするが、しかし、この感情ほど、よき知性の指導を欠いた場合には、盲目的に動きやすいものもまたないのであります。最近、外國資本の奴隷か、民族の独立か、という標語のもとに國民感情を刺激して、経済再建に必要な外資の導入にさえ見当違いの國民的反感をあおろうとする勢力や、あるいは國際情勢の不安を利用して、誤つた軍國主義、帝國主義的な自主独立の観念を再燃させようとするものなど、両極の過激な勢力に悪用される危険なしとしません。
 今や日本國民は、國内事情によるところの生活不安と、國際情勢による平和への脅威によりまして、二重の不安と恐怖に襲われておる現状であります。日本國憲法は、戦争放棄を世界に向つて宣明しました。われわれは、全世界の國民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存すべきことを確認いたしておるのであります。しかるに、われわれが独立をして仲間入りをしようとする國際情勢はすこぶる微妙をきわめ、冷たい戦争の声をさえ聞く今日、軍備を捨てて平和な文化國家を建設しようとする日本として、この國際情勢に対処して、いかにしてわれわれの所期の目的を達成しようとするか。すみやかな独立を待ち望んでいるところの國民に、その後に処すべき日本の態度と願望とを素直に語つて、將來への明るい希望と安心とを與えるということは、責任ある國政担当者の責務であります。日本の民主化とともに、日本の運命に関連する重大なる問題として、切に外務大臣の御所見を伺うものであります。
 これを要するに、総理大臣の演説は、世評にいうがごとき解散宣言であつて、何ら施政に関する具体的な説明は行われておりません。かくのごとき施政方針演説は、先般なされました大蔵大臣の予算に関する説明演説と同一類型に属するものであつて、まつたく現内閣の無策無能ぶりを曝露したものであります。(拍手)いわゆる問うに落ちずして語るに落ちたと申すべきでありましよう。
 はなはだしきは、昨日の岩本國務相の答弁ぶりであります。大臣の答弁としては、珍しくとうとう数万言を費して、具体的な成果を示して、しきりに與党側の喝采を買つておられたようでありますが、あにはからんや、その内容は、いまだ閣議の決定を経たものではなく、まつたく大臣個人の私見であつたのであります。神聖なるべきこの議場をかりて、私見をもつて、あたかも政府の施策であるかのごとく吹聴して、國民を錯誤に陥れようとする、その無責任と不審議と欺瞞行為とは、断じて許されません。(拍手)政権を握つて内閣を組織いたしながら、責任ある施策の説明もせず、個人的私見や無責任な在野時代の宣傳のみを繰返して國民を欺瞞し、早急に解散を強行して総選挙に臨み、與党を有利に導こうとするところの政府の態度こそ、党利党略に出るものであると断じても、あえて事実をしうるものではないと存じます。私は、総理が御演説中に述べられ、われわれを戒められたところの党利党略という言葉は、これをそつくりそのまま、のしをつけて政府に返上して、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
○國務大臣(吉田茂君) 原君にお答えをいたします。
 私の施政演説が、たいへん原君の御失望を買うたそうであつて、まことにお氣の毒に思います。しかしながら、私が施政の演説において申し述べた通り、第三國会はすなわち公務員法を議する特別議会である、ゆえに施政方針を言うことはむだな話であるということは、しばしば申し述べた通りであります。
    〔発言する者多し〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○國務大臣(吉田茂君)(続) また、第四國会における私の施政の演説も、これまた予算の範囲において申し述べる。何とならば、これはたとい私が國会において首班の指名を受けたとしたところが、まず第一に、しばしば繰返して申すが、少数党内閣であるがゆえに、まず信を國民に問うて、國民からあらためて信任を受けてこそ、私の首班なるものが確定するのであります。ゆえに、施政の方針なるものは、しばしば申す通りに、予算の範囲において言うべきであつて、よけいなことは申すべきものでないと考えるのであります。総選挙後におきまして、わが民自党内閣が再び政権を國民の指名によつて受けましたならば、さらに諸君が満足せらるる以上の抱負を述べて、諸君の御満足を買うつもりであります。
 また、民主政治の本質について云々というお話で、いかにして二大政党の対立を憲政のために常道として持ち來すか。今日、なるほど小党分立であります。何とならば、敗戦後の日本として、思想の混乱、生活の不安等が、自然に小党分立せしめたのでありまするが、爾來生活の安定が得られ、思想の安定を得て來れば、自然二大政党になり、小党は消滅すると私は確信するのであります。(拍手)それが、いずれの國においても常道であります。これを否認せらるる諸君には、私は御同意ができないのであります。
 また、もし民自党内閣が総選挙後において小数であつたとしたならばいかん。そのときは、先ほども参議院において申し述べたが、淡々たる氣持で、総選挙後の第一党に政権を譲るつもりであります。たらいまわしというようなことは断じていたさないのであります。(拍手)
 また、解散権云々についてお話がありましたが、解散権について、その所在がどこにあるか。第七條によるとか、第六十九條によるとかいうことは、政府としては一度もこの解釈を述べたことはないのであります。解散せられたときの状態によつて善処するということは申したが、憲法の解釈は、政府といたしては一度も声明したことはないのであります。
    〔発言する者多し〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○國務大臣(吉田茂君)(続) しかして、四党協定の趣意によつて、不信任投票が通過した後に解散をいたすということは、過日の施政演説において述べた通りであります。
 また國際関係においては、平和会議促進の決議案はどうしたか。これは、当時の各議員諸君の演説の翻訳とともに、いさい総司令部の方に傳達いたしております。総司令部においては、諸君の言動及び諸君の希望せられるところは明らかに予承しておられるところであります。
 また、私のこの民主自由党内閣、吉田内閣について、外國のはなはだおもしろからざる風聞があるということは、諸君がお立てになるので、諸君の宣傳がすなわち外國の通信になつたのでありまするが……。
    〔発言する者多し〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○國務大臣(吉田茂君)(続) 吉田内閣成立以來、各新聞等に対して、私の説明は十分徹底しておるのであります。私の感ずるところ、私の接触した範囲においては、吉田内閣は断じて海外において不評でないということを諸君に断言いたします。(拍手)
    〔國務大臣増田甲子七君登壇〕
○國務大臣(増田甲子七君) 原さんが私に答弁を求められましたから、お答え申し上げます。
 資本主義下において、ことに生産第一主義を標榜いたしますと、必ずそこに労働強化があるというお尋ねでございますが、私は断じてないと思つております。すなわちわれわれは、決して労働強化を要求せずとも生産を上げ得るという確信に立つております。由來、終戦後におきましては、ことにそうでございますが、吉田内閣におきましても、また片山内閣のもとにおきましても、芦田内閣のもとにおきましても、とかく労働者諸君のうち、ごく一部でございますが、権利思想について理解がない方がある程度あるではないか、こう私は感ぜられる節が多々あるのでございます。権利の裏には必ず義務がなくてはならぬ、権利というものは、決して平面的な二次元の世界ではありません。われわれの住んでおるような三次元の世界であります。すなわち、義務というものが必ず裏づけられていなかつたならば、権利思想それ自体が存立し得ない、こう感じておる次第であります。われわれは、労働者諸君が大いに権利は主張してほしい、その代り義務は大いに守つていただきたい、という態度で臨んでおるだけでございます。
 それからその次に、われわれのとつておる労働政策は、私が先般米窪君にもお答え申し上げました通り、社会党の諸君、あるいは民主党、國協党の諸君が労働政策と本質的には同じであろうと私は感じておる次第であります。違うところは、社会党の諸君は産業の社会化を主張する、われわれは産業の社会化によつては生産力は発展しない、すなわち私企業の原則、あるいは公正なる自由競争の原理に立たなかつたならば、かんじんのわれわれの必要なる消費財あるいは生産財が多量に生産されない、すなわち生産力が発展しなければ勤労大衆を含む國民大衆が困つてしまうという見地に立つておりますから、生産政策といたしましては、われわれと社会党とは断じて違いますが、労働政策としては同じである。しかも、われわれの主張する生産政策によれば、勤労大衆を含む國民大衆が、豊富なる消費財あるいは生産財の生産によつて非常に潤うのであるから、結果的に見まして、われわれの労働政策こそより進歩的であると私は確信しております。(拍手)
    〔國務大臣泉山三六君登壇〕
○國務大臣(泉山三六君) 原議員にお答えを申し上げます。
 社会党を代表せられまして、たとい野党といえども、是を是なりとし非を非なりとする、さようの御見解には、敬意を表するものであります。(拍手)しかるところ、國家公務員諸君の新賃金ベースに関しまして、政府がその改善に熱意を欠く、またはなはだしきは、五千三百三十円のベースはまことに冷酷なる態度であるというのは、まつたく言われなき批判であるといわなければならないのであります。政府におきましては、本新資金ベースを決定いたしまする場合に、本新賃金ベースが高きに失するときにおきましては、必ずや民間の資金の上に悪影響を及ぼしますことは、火を見るよりも明らかなのでございまして、さような観点に立ちまして、物價並びに資金の面に悪影響を及ぼさないその限界がまず求められたのでありまして、他の反面におきましては、財政的の限界をも勘案した結果といたしまして、新給與ベース五千三百三十円は、今日におきましての資金水準並びに國民の消費水準とも、まことに均衡のとれた適当なものである、かような判断の上に立つたのでございまして、何とぞ事情御了承願いたいと思うのでございます。從いまして、本新給與に関する限りにおきましては、さらに追加予算を編成するがごときことは、政府においては毛頭考えておらないのであります。
 以上をもちましてお答え申し上げます。(拍手)
    〔発言する者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 静粛に願います。
○原彪之助君 すべて御答弁は非常に不十分であります。聞けば聞くほど現内閣の反動性を私は強く感ずるものでありますが、これ以上お尋ねすることはやめまして、私の質問は打切ります。
○議長(松岡駒吉君) 苫米地義三君。
    〔苫米地義三君登壇〕
○苫米地義三君 私は、民主党を代表いたしまして、総理大臣の施政方針演説に対する若干の質問をいたしたいと存じます。質問の中には、原君の質問とやや重複する点があるかもしれませんが、この点は、國民全体が質問したいという意味のことだと思いますから、その点に対してもお答え願いたいと思います。
 去る四日に行われました首相の施政方針演説を拝聴いたしますると、その多くは組閣以來の経過報告のような感じがありまして、今日の重大な政局を背負つて立たれる総理大臣の國政管理に対する高邁な抱負経論を聞くことができなかつたことは、原君同様、國民とともに深く失望せざるを得ないところであります。(拍手)そこで私は、まず第一に、首相の唱えられるところの健全なる民主政治ということについて、その御信念を伺いたいと思うのであります。
 現内閣は、成立以來すでに二箇月、その唱うるところの民主政治なるものの審議を見ますに、第三國会におきましては、國会の傳統的慣習でありまするところの総理大臣の施政方針演説を、院議をもつて要求いたしましたにもかかわらず、これを行わなかつたことは、まことに遺憾千万にたえません。それは、組閣当初において声明されました、いわゆる健全なる民主政治の確立にも反し、また吉田首相が言われました。正しき憲法上の慣習をつくりたいということに対しましても、言行の不一致であるということを示すものであるといわねばなりません。また、公務員法改正案の審議につきましては、いわれなく期限を付して議院の審議権を抑制せんとし、あるいは議員の質問に対する答弁ぶりは、はなはだしく誠意を欠くのうらみがありまして、これをもつて健全なる民主政治のあり方とは思われないのであります。(拍手)
 さらにまた総理は、第三國会は芦田内閣の召集せるものであつて、公務員法及びその関係法規のみを審議する國会だと申されますが、民主自由党は、去る九月二十二日、百三十名の連署をもつて、成規の手続により、臨時國会を十月一日に召集すべき旨政府に要求したではありませんか。しかして、その審議法案としては、國家公務員法の改正案並びに取引高税廃止法案の二件を國会開会と同時に提出するという要求でありました。すなわち、第三國会は芦田内閣自身が召集しないでも、民自党の要求によつて当然召集されておつたはずであります。しかるに、その要求した國会に提案を公約したところの取引高税廃止法案は、遂にその姿を見せず、政府も與党も恬然として顧みざるは、はたして民主政治の責任ある態度というべきでありましようか。
 今や、日本の民主化は世界監視のもとにあつて、その成長に対しては各國の関心事であることは、想像に難くないのであります。ことに、わが國はすでに戦争放棄を宣言し、國際信義に依頼して平和國家を建設することを立國の基本としたのでありまして、民主政治の健全なる確立こそ、信を内外に傳して、復興再建を促進する唯一の道であると存じます。しかるに政府は、口に健全なる民主政治を唱えながら、その行うところ、はなはだしくこれに反するのうらみがあります。吉田内閣の成立するや、國際的輿論は、首相の弁解にもかかわらず、必ずしも好評ではなかつた。(拍手)むしろ、日本の右翼化を警戒し、民主化の前途に危惧の批判さえ行われたのでありますが、組閣以來の政治運行が、ややともすれば、これを裏書きするごとき印章を與えることは、海外援助を仰ぐべき立場にあるわが國としては、まことに悲しむべきことであると存じます。私は吉田総理に対しまして、切にその反省を求むるとともに、民主政治実行に対する首相の信念を伺いたいと存じます。
 第二に、労働政策について労働大臣に伺いたいと存じます。政府は、経済復興と國民の奮起とを求められておりますが、これはまことに願わしい事柄であります。しかし経済の復興は、敗戦後のわが國においては、しかく容旨なものではありません。健全なる財政金融の方針を堅持しながら、あらゆる悪條件を克服いたしまして、生産復興を第一義とせねばならないのでありますが、これがためには、労働者の勤労意欲を高掲いたしまして、その能率化をはかり、資本、経営、技術とともに一体協力の成果を収むるのでなければならないのであります。それについては、どうして労働者の生活安定と向上の機会と希望とを與えねばならないのであります。ところが、現在、政府職員の新給與はなお未解決のままとなつており、また民間にあつては、電氣、炭鉱の二大事業を初め、所在に資金闘争をめぐつて生産の停頓を見つつあることは、御同様すこぶる憂慮すべき状態にあると存じます。
 前内閣は、経済十原則の不可分性にかんがみまして、その重要項目たる資金安定策を策定し、食糧増配の時期をとらえてこれを実施せんと企図したのでありますが、現内閣は、この好機を逸しまして、無為無策に経過することすでに二箇月、民間企業の賃金は野放しとなつて漸増の一途をたどり、ひいては企業の不安定を招き、物價を高からしめ、インフレーションを促進する傾向が顕著となつておるのであります。政府は、賃金安定策について、どういうような具体策を持つておらるるか、伺いたいのであります。
 また今日の労働は、旧資本主義時代のごとく、單なる商品的資金に満足するものではない。企業における労働は、資本、経営、技術とともに平等の要素として取扱わるべきであり、資本に対し従属的立場に置かるべきではないのであります。從つて企業利益は、もはや資本家の独占に帰すべきでなく、また從來のごとき恩恵的賞與の形式でもなく、実に労働の権利として利潤分配にあずかるべき段階に進んでおると思うのであります。現に戦争以來、欧米各國においては、この傾向が非常に顕著でありまして、新資本主義または修正資本主義の名のもとに、近代世界経済学界の一転機となりつつあることは、皆さん御承知の通りでありましよう。政府は、この点に対しまして、労働政策上また企業経営上いかなる見解をとつておられますか、この点を伺いたいと思います。
 さらにまた首相は、行政整理、企業の合理化を断行すると言つておられますが、それによつて生ずる失業者群に対し、いかなる措置をとらんとするのかであるか。その施策に明確を欠くのみならず、今提案中の追加予算案にも何らこれに対應する措置を講じておらないことは明らかであります。この点に対しましても、政府の対策を伺いたいと存じます。
 第三点は、物價改訂の必要を認むるやいなやの問題であります。政府は、賃金安定策の策定を怠り、自然放任の状態を続けておるが、その結果といたしまして、資金は漸増の傾向をたどつております。企業の赤字と物價の高騰は、もはや免れざる状態にあると存じます。政府は、赤字金融を認むるか、物價改訂を余儀なくせしめらるるか、両者そのいずれかを選ばなければならない段階にあると存じます。もし、このまま無為にして推移するならば、企業は萎縮して生産は減退し、産業界に思わざる混乱を招來して、政府の企図する生産第一主義は崩壊する結果となるのでありましよう。(拍手)政府は、現在の産業経済界の実情に照しまして、物價の再改訂に迫られておるのではありませんか。これを明確にお答え願いたい。
 また、政府今日の無策なる態度よりいたしますれば、やがては財政面とからんで、運賃、通信料金の値上げをも余儀なくせらるると思われますが、政府は、これらに対して、どういうふうにお考えになりますか。因循姑息の態度は、かえつて経済復興を妨げ、インフレーションを助長するにすぎません。政府は、周囲の事情に制約されておるように思いますが、この際敢行すべき経済政策を誤ることのないように希望してやまないものであります。
 第四点は、農業政策に関しまして農業大臣の御意見を伺いたい。わが國の農業問題は、もとより多種多様でありまして、これに対する施策の要すべきものがすこぶる多いのであります。しかして、今私は食糧自給度の増強に対する所見を述べ、政府の所信をただしたいと存ずるのであります。終戦以來、われわれは、アメリカの好意と援助によつて、幸いにも生活上わずかに事なきを得ておるのでありますが、深く國際関係の前途及びわが國の輸出力を考察する時、食糧の國内自給度を高むるの必要はきわめて大切なることを痛感するのであります。
 由來、わが國の農業政策は、主として、農業行政の面に重きを置いて、生産の科学的経営を促進するの施策に貧しかつたのは確かであります。食糧の不足は、國内生産を二割増加することによつて完全に解決されるのであります。すなわち、わが國の食糧問題は、この二割の増産が可能であるか不可能であるかの問題であります。しかるに、実際農業の現実を精査すれば、旧態依然たる慣行農業が多いのでありまして、普通農家と篤農家とは、耕地を隣接して二、三割の生産を異にする事実は、見のがすことが出來ないのであります。耕地の開拓拡張はもとよりつひようでありますが、既耕地の土地改良と耕土の利用度を高め、水利と水温調整、種子の厳選、肥料の施用法、耕作技術の浸透等科学的経営の全面的実施によつて、食糧増産をきわめて容易に、きわめて迅速に達成し得ることは、十分見込みがあると私は存ずるのであります。(拍手)政府はよろしく、農業技術の滲透と科学的経営の普及に対して官民の技術者を動員し、全國的一大運動を起すとともに、必要なる施策を敢行すべきであると思うのであります。これに対し、農林大臣の所見を伺いたい。
 なお、わが國農業は天災地異によつて年々思わざる被害をこうむり、農家の営々たる努力も一朝にして壊滅し去るの運命的現実を見るのであります。かくのごとき不可抗力な天災は、実に國家の災害であつて、農家個人の負担となすべきではない。先年農業保険制度を設けて、これが救済を講じておるけれども、これは共済組合の範囲を出てないのであつて、不徹底きわまるものであります。政府は、農業保険に対し、さらにその範囲を廣め、その負担を公正ならしむべきであります。さらにまた、災害地の復旧工事の促進は実に刻下の急務であります。政府は、補正予算において、一般災害対策費として六十億円を計上しておりますが、かくのごとき、少額をもつてしては、どうてい復旧の目的を達せざるのみらず、姑息なる復旧対策は再び災害を繰返すに過ぎません。政府はよろしく財源を求めて、災害対策費を増額すべきであると思います。この点に対して農林大臣の意見を伺いたいと思います。
 第五は、統制と自由との限界に関する問題であります。政府は、在野党時代に主張する経済政策は、すなわち自由経済を基準として、あくまでも戦前の経済状態に復帰せしめんとするにあると思われます。その意味においてか、民自党は、現在なお統制撤廃を叫び、自由放任を要求しているように思います。われわれもまた、資本主義を基調とし、新自由主義を主張する立場においては、おおむねこれに同調することができるのでありますが、しかしながら、戦後における世界経済の進路は、もはや十九世紀的資本主義時代の姿に帰るものではありません。社会主義理論でさへ修正せざるを得ない趨勢にあることは、欧米並びにソ連の経済学説の推移を見ても明らかであります。
 この点において、わが日本國憲法は、ひとり政治上の民主革命のみを意味するばかりでなく、基本的人権の確立とともに、経済体系ののあり方をもその中に明示されておることは確かであります。すなわちわれわれは、自由と権利との保障によつて利益幸福の追求と財産権の保護とを受くるのでありますが、これは、いずれも公共の福祉という社会的公益性に拘束されるのであつて、從來のごとき無制限の目的や権利は認められないのであります。すなわち、資本主義といい自由主義というは、ことごとくこの社会性に拘束されるきでありまするから、わが國の経済形態は、もはや戦前の状態に復帰することができないのであります。ここに修正資本主義の本質があり、社会化自由主義の論拠があるのであります。首相は、この厳然たる時代の変化を認められるやいなや、この点を首相に伺いたい。
 しかるに、固随なる自由主義者たちは、あくまでもこれも新憲法前の自由経済時代に復帰するものと思い込み、わが國現在の環境と諸条件とを認識することなく、単に即時統制撤廃を叫び、自由放任を強調することは、いたずらに一部國民を迷わすのみであつて、経済復帰を阻害するものであると思うのであります。戦争によつて産業経済力を極度に破壊され、今なお過小生産の苦悩時代におきまして、みだりに統制を撤廃し自由放任にまかすことは、たちまち経済秩序を乱し、消費の正常を失いまして、ひいて國民生活に重大な悪影響を招來することは、明々白々であると思います。(拍手)さればこそ政府は、一たび責任の地位に立つや、在野時代に主張せる料飲店即時再開、生鮮食料品の統制即時撤廃、取引高税廃止法案の即時提案、米麦出後の自由販賣等が実行不可能なるに陥り、また統制の大幅緩和のごときも、組閣以來二箇月に至るも何一つ実行できないではありませんか。(拍手)むしろ前内閣の時代に、この冬にはいりまして栗炭、薪類の統制をはずしたるに反しまして、現内閣は、かえつてたどん、ガラ炭を統制するの皮肉なる現象を見るに至つたのであります。
 これ等の痛烈なる政治体験によつて、在野時代の主義主張が現実に即應せざることが明らかとなつた以上、政府はよろしく、そのあやまちを正しこれを國民の前に勇敢に反省し、一大轉換をなすべきであると思います。しかるに政府は、しいてその非を歪曲し、これを隠蔽せんとするがごとき卑劣なる態度は、まことに惜しむべきであると私は思います。いわんや國会解散を利用してこれが暴露を逃避せんとするがごときは、これこそ吉田首相の言う党利党略の策にあらずして何であるかと言わざるを得ない。(拍手)
 最後に私は、政治形態の問題について重ねて首相に伺いたいと存じます。吉田首相は、平素二大政党論を説いておられます。われわれもまた、今後時至れば、穏健なる二大政党が互いに相練ましながら國政運用の衝に当ることを望みます。しかしながら、われわれの言う二大政党とは、右翼保守党と左翼急進党の二者ではない。極端なる左右両翼の主義者を排除し、日本國憲法の眞髄を把握したる現実政治に忠実なるものでなければなりません。すなわち、そこには社会政策を多分に主張する政党と、自由主義を多分に主張する政党とが、憲法のわく内において、おのおのその具体的政策を練りながら、國家の進運と國民の幸福のために責任ある政治を行うところに、二大政党の妙味があると思うのであります。(拍手)
 世間ややもすれば、戰前の自由主義時代をあこがれまして、再び帰らざる夢を追わんとする者、また未來永遠に実現不可能なる夢を描いて、いたずらに現状を打破せんとする者、いずれもこれは戰後の思想混乱時代に醸成せらるる現象でありますが、かくのごとき両極端の二大政党であつてはならない。われわれは、新憲法の抱く崇高なる理想を目標とし、民主化、社会化精神を把握しつつ、個人の尊重と自由の廣汎なる権利を活用して、公共の福祉と個人の幸福とのために適切なる政治を行わねばならぬと思います。われわれの唱うる中道政治とは、すなわちこれを指すものでありまして、これは新しい世界に共通する政治のあり方であり、この道こそ眞に救國の大道であると確信するものであります。(拍手)
 なお私は、憲法上のよき慣習をつけるという首相の言明に関連いたしましてお尋ねしたい。この点は、原君が先に触れた点でありすまが、重ねて私からお伺いしたいので、御答弁を願いたいと思います。すなわち首相は、総選挙の結果第一党たる地位を占むる場合においては、当然内閣を組織すべきであると言われておるのであります。ところが、第一党となり、首班選挙に当選いたしましても、國会に與党が多数を占むることができない場合には、むしろ組閣を断念すべきであつて、強行すべきでないと思うのであります。そうでなければ、現内閣のごとく、いたずらに解散を繰返すことにすぎないこととなり、政局は不安定を続けて、國政は澁滞するのみであると思うのであります。すなわち内閣は、常に國会に多数の支持を得て政局担当の任に当ることを常道とすべきだと思います。(拍手)特に今日の日本は、振古未曽有の難関に遭遇し、いたずらに政争を事として祖國の再建を妨げてはならない。われわれは、あくまでも挙國的協力をもつてこの難関を突破し、輝かしき平和國家の基礎を築かなければなりません。このことは、実にわれわれが祖先に対し、また子孫に対する重大なる責務であると信ずるものであります。この点に対しましても、首相の御意見を承りたいと思います。
 私の質問は、これをもつて終りといたします。(拍手)
    〔國務大臣吉田茂君登場〕
○國務大臣(吉田茂君) 苫米地君にお答えをいたします。
 私の施設演説をいたさないことについて、またおとがめがありましたようでありますが、これは先ほど申した通り、私といたしては、たとい國会において首班として指名せられても、少数党であるがゆえに、まず國民の信を問うべきである。これは、私の民主政治の精神にかなうものとの信念から出ずる言葉であります。ゆえに、第三並びに第四國会における施政演説は、努めて内輪に、あまりいろいろのことを申し立てずに、なるべく抑遜して、必要な範囲の政策を申し述べたつもりであります。
 また、取引高税について云々というお話がありましたが、このたびの予算は緊急やむを得ざるもののみを掲げたのでありまして、取引高税については、再び私が首班に立ちました場合には、今後の予算においてこれを提出いたす考えであります。
 また外交について、海外の評判についていろいろお話がありましたが、これは私といたしましても、外國の日本に対する了解は大事であると考えて、種々外國の動靜、消息については研究いたしております。これも先ほど申した通り、私に関する限り、私の承知した範囲においては、吉田内閣に対する外國新聞の認識は日々新たになりつつあることを確信いたします。
 また、ただいま修正資本主義云々という言葉がございましたが、これは吉田内閣といたしても、民自党内閣といたしても、ただちに自由主義を唱道するものではないので、必要な範囲において自由主義、また不必要な統制は解く、この方針で進んで参つておるのであります。
 さらに、挙國政権云々というお話がありましたが、私は、挙國連立政権ということはよくないことであると、こう考えるのであります。主義政策を同じゆうした政党がともに手を携えて提携するということはよいことでありまするが、單に政権を目的として連立内閣をつくる、その結果は、既往においても、あまりおもしろからざる例がたくさんあるのでありますから、得べくんば主義政策を同じゆうする政党政派が提携して行つて、この大事な日本の復興が最も急務であるこの時期において、得べくんば政策を同じゆうする政派が相集まつて、そうして國家のためにお互いに政局に当る、これが一番よいのではないかと信ずるのであります。
 一言お答えをいたします。(拍手)
    〔國務大臣泉山三六君登場〕
○國務大臣(泉山三六君) まず御質問の第一点である、今日物價改訂の必要を認むるかどうか、かようなことでございましたが、物價の改訂は、本年六月におきまして、芦田内閣当時その補正を行われたのでございますが、賃金の安定政策を伴わない價格改訂は、失敗の歴史を繰返して参りました。その苦き経験に徴しまして、政府におきましては、まずその前轍を踏まざるよう十分配慮いたしておるのであります。なおまた、その後におきましての経済事情の推移、またやみ物價の動向、実質賃金の充実等の状況を見ますときは、現在におきまして、その改訂の必要に迫られておらないと思うのであります。むしろ今回、いわゆる経済三原則を固く守りまして、物價の引上げによつて賃上げの要求をまかなわんとするがごとき他力本願の傾向を一掃して、企業の合理化を推進することが、むしろ刻下の急務であると、かように考えておる次第であります。
 質問の第二点は、統制と自由との限界、その他統制の問題についてのお尋ねでございますが、統制と自由との限界は、要するに当該物質の需給状況がいかなる程度の均衡を得ておるか、またそれが不均衡な場合に國民経済にいかなる影響があるか等によつて決すべく、一般的、抽象的なる限界を設けるのは適当でないと考えている次第でありまして、すべからく個々の物資のそれぞれにつきまして、その需給状況、將來の見通し、また外國よりの援助等の関係をも慎重に檢討いたして、個別的にこれを実践に移したいと考える次第であります。この見地に立ちまして、この際害あつて盆なき統制はもとより、もはや不必要と相なつた統制のごときは、思い切つてこれを廃する、かような考えでありまするが、その一面におきましては、國民経済の安定と復興とに欠くことのできない基本的なる統制は、その縮小せられたる領域を対象として、むしろ強力に行つて行く所存であります。
 申すまでもなく、生産増強の要諦は、各企業の積極的なる創意と責任とにまつべきものでございまして、限られたる領域における統制方策が明瞭にいたされまするならば、すなわち明るい統制のもとに自由なる活動が認められますれば、各企業は、必ずや自己の責任におきましてその向うべきところを自覚し、活発なる企業活動がこれによつて初めて期待できるものと、固く信じておる次第であります。(拍手)
    〔國務大臣増田甲子七君登場〕
○國務大臣(増田甲子七君) 苫米地さんの御質問にお答え申し上げます。
 経済十原則のうちの最も重要と思考せられるところの賃金安定策は、芦田内閣のもとにおいては、食糧の加配を契機としてこれを実行したかつたというお説でありましたが、われわれも、できるだけ賃金安定策を実現いたしたいと思つてはおりまするが、私どもの構想によりますると、たとえば十月にいたしましても、十一月にいたしましても、全農業労働賃金が調和ある一つの構成を持つていないのでございまして、御承知のごとく鉄と肥料とは、割合に賃金がもう安定してもよろしいというところで設定されておりまするが、電氣にいたしましても、あるいは石炭にいたしましても、むしろ今の賃金闘争は、これらの鉄とかあるいは肥料産業等の労賃に対するさや寄せ運動といつてもしかるべきだと私は考えております。そこで、全産業労働賃金につきまして調和ある賃金体系を得ましたときに、われわれは賃金の安定策を講じたいと考えておる次第であります。
 それから次に、労働者は決して生産條件のうち從属的部分ではない。從つて、利潤等をあげた場合に労働者諸君に対して分配することの是非いかん、これに対する内閣の所見いかんということについてお答え申し上げます。私も、苫米地さんと同様、労働者の占むる立場は生産條件のうち重要部分を構成しておると考えております。労働者諸君が大いに働き、大いに能率を発揮していただいた結果生産力が発展される。從つて、大いに利潤が増加したという場合に、労働者諸君がその利潤の分配にあずかるということは、しかるべきことであると私は考えております。
 それから、第三の失業対策いかんという御質問にお答え申し上げます。今や、行政整理なりあるいは産業合理化が必然性を持つておるが、これに対して吉田内閣はいかなる失業対策を持つておるか、というお尋ねにお答え申し上げます。私どもの考えといたしましては、行政整理なり産業合理化は、吉田内閣の與党である民主自由党の公約の一つでもございまするし、また一般世論の要求でもございまするし、必ずこれを実行いたしたいと存じておりますが、ただ一時に多量の失業者を出すことは、よほど考えなくてはならないと思つております。從いまして、たとえば行政整理にいたしましても、岩本國務大臣も賛成されると私は思うのですが、結局配置轉換を考えて行政整理を断行する。たとえば、休職給のごときを一年間與えまして、その間、行政管應はもとよりのこと、皆さんと一致協力いたしまして適当なる就職先をあつせんするということによつて行政整理を断行するという方途も考えております。また一般産業労働者につきましても、一時に多量の失業者を出したくない。できれば、むしろ積極的に受入態勢をまず設定いたしまして、そしてそこに受け入れて行く、すなわち配置轉換をするという方向を考えております。私の考えによりますと、皆さん御承知のごとく、終戰処理費等は、全額においてはインフレ下において上つておりまするが、事業量は漸減の傾向にございますので、これらの方向に必要であつたところの資金資材等は一般民需産業等に轉換し得る。そこで、やはり相当の失業者の配置轉換の余地がある、吸収の余地があると考えております。それができない場合には、さらに労務の需給調節、職業安定の仕事には大いに力を入れるつもりでございますが、また輸出産業等の方面においても大いに力を入れまして、この方面でも相当吸収できる。われわれ、荒つぽい計算でございまするが、今日一般産業労働者が六百数十万ございまするが、まず産業合理化が行われまして、一〇%ぐらいの失業者が出ると考えております。この一〇%の失業者も配置轉換によつて吸収できるということによりまして、経済復興に参加していただきたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    〔國務大臣周東英雄君登場〕
○國務大臣(周東英雄君) 苫米地さんの御質問にお答えいたします。
 第一点は、科学技術を農業に導入することが食糧の自給度を高める上において必要であると思うがどうかという御質問であります。まことに同感であります。今日、國土を極端に狭められた日本といたしまして、でき得る限り國内における食糧生産の自給度を高めることは最も必要であります。それにつきまして最も遅れているのは、科学技術を農業に導入することであります。目下政府におきましては、農業改良局設置法案によつてできましたところの農業改良局が中心になりまして、その技術研究部、経済研究部等が各都道府縣にある農業研究所と密接な連絡をとりまして、農業技術、経営の研究に没頭いたしております。しかして、その結果というものは逐次これを地方に滲透せしめるべく手段を講じているのであります。なおその結果につきましては、助成金あるいは補助金等を交付いたしまして、地方の民間の隠れた篤農家等を奨励いたしまして、参加いたさしめることになつております。なおその普及の方法につきましては、今日都道府縣内において、数箇町村を中心にして農業技術員というものが設置されておりますが、これが研究の結果を農家に滲透せしめ、かつ農家に対するよき相談相手となつて行くことになつておりますし、さらにこれを助けるために、地方の農業者あるいは専門家というものが、土壌、肥料あるいは畜産、耕種等に対する専門的立場から普及員を助けて、農家との間に立つて、この研究された結果を滲透せしめる方法をとつております。これらの一連の方策を実施することによりまして、でき得る限り隠れたる民間の専門家あるいは篤農家あるいは学者等を動員して、御趣旨のように進めて行くことがよろしいと私どもは考えております。
 第二点は、農業共済保険の制度が、今日時期的に見て実際に合わぬのではないか、これを拡大する意思はないかとのお尋ねでありまするが、これも同感であります。インフレの極度に高進しております今日、共済金等の額があまりにも低過ぎて、最近頻発する災害に処して役に立ちません。これに対しまして、目下共済金等の引上げ等につきまして財務当局と折衝中であります。近くこれは実現を見ることと存じます。なお話がございました、内容的に虫害をこれに加えるかどうかというような点につきましては、その線に沿うて今研究中であります。
 第三の、災害救済に対する予算が少ないではないかということにつきましてはまことに今日の財政上いたし方なしといたしましても、今日できましたものだけでは十分とは私どもも考えておりませんが、財政一應六十億の範囲がきまりました。農林省の関係におきましては十八億一千万円ほどありますが、これらに対しまして、不足分につきましては、なお今日予算外國庫負担契約の余力等もありまするので、それらの活用、また從來財政的支出のできる、前に御承知のようにできました預金部資金の融通等がございますが、これらの融通の預金につきまして、その返還等の時期について今いろいろ折衝いたしまして、でき得る限り財政措置の不足分に対しまして、補助と申しますか、救済を別途考えておる次第であります。(拍手)
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○今村忠助君 國務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明九日帝刻より本会議を開きこれ継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(松岡駒吉君) 今村君の動議に御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会