第005回国会 法務委員会 第36号
昭和二十四年九月二十日(火曜日)
    午前十時五十四分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 角田 幸吉君 理事 田嶋 好文君
   理事 中曽根康弘君 理事 梨木作次郎君
   理事 三木 武夫君
      押谷 富三君    鍛冶 良作君
      佐瀬 昌三君    眞鍋  勝君
      武藤 嘉一君    猪俣 浩三君
      林  百郎君    世耕 弘一君
 委員外の出席者
        國家地方警察本
        部刑事部長   武藤 文雄君
        国家地方警察本
        部搜査課長   小倉  謙君
        國家地方警察東
        京都本部警察隊
        長       金谷 信孝君
        刑 政 長 官 佐藤 藤佐君
        東京高等検察庁
        検事長     佐藤  博君
        東京地方検察庁
        次席検事    馬場 義續君
        東京地方検察庁
        検事      山内 繁雄君
        参  考  人
        (警視総監)  田中 榮一君
        参  考  人
        (警視庁刑事部
        長)      坂本 智元君
        参  考  人
        (国家公安委員
        長)      辻  二郎君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
九月七日
 委員林百郎君辞任につき、その補欠として上村
 進君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十日
 委員上村進君辞任につき、その補欠として林百
 郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 帝銀、下山、三鷹、福島等各事件に関する犯罪
 の科学的搜査に関する件
    ―――――――――――――
○花村委員長 これより議会を開きます。
 参考人として辻国家公安委員長、田中警視総監、坂本刑事部長の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○花村委員長 御異議なければさように決定いたします。
    ―――――――――――――
○花村委員長 前会に引続き科学搜査に関する問題を取上げて議題といたします。
 申すまでもなく自由と秩序とは人間生活、國民生活の根本要請であります。しかして、民主憲法とその精神を受継いだ新しい刑事訴訟は一方において自由を確保するため、国民の基本的人権をあくまでも守り、いやしくも侵かされることのないことを理想とすると同時に、また一患において秩序を保障するため、公共の福祉を一つの指標として高く掲げているのであります。
 この新刑事訴訟法は、施行後八箇月を経たのでありますが、この間当委員会としましては、国政調査その他あらゆる機会をとらえて、国民の自役ないしは基本的人権の擁護と、社会秩序ないしは治安維持の両面を担当するこの新刑事訴訟法が、いかに民主的に運営されているかを常に重大な関心をもつて監視して参つたのであります。今後もみの調査研究を熱心に継続して、基本的人権の擁護と、現下のごとき社会不安の一掃を期し、もつて日本再建に寄與いたし、国民の負担にこたえたいと念願しているのであります。
 新刑事訴訟法は御承知のように、基本的人権を擁護する建前から、犯罪容疑者に対しましても、昔とは違つて、有罪判決が宣告されるまでは、これを罪人扱いをしないという大原則をとり、犯罪容疑者が検挙、搜査、審理される際にも、知らぬ存ぜぬの一点ばりで押し通すいわゆる完全な黙秘権をも認めているのであります。ところが取調べ官憲は、社会秩序維持の立場から犯人の口を割ろうとして、往々にして職権濫用の弊に陷りがちであります。従来のように犯人の供述、すなわちどろを吐かせる式の行き方では、憲法や新刑事訴訟法の理想とする自由と秩序とのいずれかを犠牲にせざるを得ないことになり、人権蹂躙、官憲彈圧の声が跡を断たないこととなるのであります。従つてこの際取調べ官憲の頭を徹底的に切りかえると同時に、拷問等人権蹂躙を避けるためには、世界的水準を目標とする、斬新にして有力な科学的搜査の裏づけが絶対に必要となつて来るのであります。広い意味での科学搜査の中には通信、交通の諸設備の問題も入るものと考えているのであります。
 先般、当委員会におきましては、下山事件等をめぐつて、諸学者から将来の科学搜査のあり方につき、ことに狹い意味での科学搜査、すなわち法医学上の諸問題についてその意見を求めたいのでありますが、本日は帝銀事件、下山事件、三鷹事件、松川事件、平事件等の世界的ニュースとなつた大事件をめぐつて、
一、搜査方針の決定について
 (イ)協議者の範囲
 (ロ)搜査組織、すなわち搜査本部、搜査議会
 (ハ)搜査方法
 (ニ)以上の事項については内規があるか、慣例によるか
二、帝銀、下山、三鷹、平、松川等各事件について
 (イ)前記一の問題
 (ロ)搜査の一般的経過報告
 (ハ)応用せられた科学搜査の方法及び結果
 (ニ)各事件の発覚から搜査指導者までの及び搜査着手までの連絡関係、所要時間
 (ホ)各事件の搜査費用三、これら事件を通じて得た実務上の体験に徴し、将来の搜査機構並びに科学搜査のあり方に対する所見いかん等につき御説明ないし御意見を承り、もつて当委員会の研究課題である科学搜査体制確立の参考にいたし、近く委員会活動を起したいと考え、公務多端の折柄でありますが、多数皆さんの御出席を願つた次第であります。本日御出席くださつた方々は刑政官佐藤藤佐君、高等検察庁検事長佐藤博君、東京地検次席検事馬場義續君、東京地検検事山内繁雄君、公安委員長辻二郎君、国警刑事部長武藤文雄君、国警搜査課長小倉謙君、東京警察隊長金谷信孝君、警視総監田中榮一君、刑事部長坂本智元君、以上の諸君であります。ではこれから参考人の意見を伺うことにいたしますが、あらかじめ御注意申し上げておきたいことは、各事件について従来新聞紙上に報道されたものは、国民として十分承知いたしておりまするから、本日は委員会としてもつと事件の核心に触れたお話を願いたいという点であります。なお委員の方々にも一言御注意申し上げますが、目下搜査中の事件もありますので、搜査に影響を及ぼすおそれのある事項については、質疑を避けらるるようお願いいたします。これより参考人の御意見を承ります。
 まず第一に「説明ないし報告要点記載」の、すなわち重大事件に関する搜査方針の決定について、まず警視総監田中榮一君よりお願いいたします。
○田中参考人 ただいま御紹介にあずかりました警視総監の田中でございます。本日参考人といたしまして、ただいま委員長かせお話の事項につきまして、時間の範囲内におきまして若干御説明を申し上げたいと存じます。なお非常に端折りますので、あるいはお聞き苦しい点があるかと存じますが、その辺はひとつ御了承願いたいと存じます。
 まず重大事件に関する搜査方針の決定につきまして御説明申し上げたいと思います。一体重大事件とはどういうものであるかということでありますが、当庁におきまして重大事件というのは、昭和五年に判定いたしました特別搜査本部規定というものがございまして、特に殺人事件であるとか、あるいは重大事件で発生いたしました際に、刑事部長が必要ありと認めたときは、任意に搜査本部を設置することができることになつております。その場所につきましては、指揮の便宜上本庁に置く場合もありまするし、あるいはまた殺人現場に近いもより所轄警察署に置くような場合もあります。次に現在どういうような事件に搜査本部を設けているかと申しますと、大体において帝銀事件であるとか、あるいは下山事件のような世間を相当衝動せしめるような事件、またそうでなくても、ちまたによく起り得る殺人、強盗、放火等で相当重要と認められるものにつきましては、現在搜査本部を設置いたしております。犯罪搜査中、殺人事件は原則として搜査の最も困難なものでございます。また刑事を動員いたしまして、その持ち得るところの最大の経験、またあらゆる犯罪の用い得られる手段を使いまして、現在搜査に努力いたしている次第であります。
 次に現在の搜査方法について申し上げたいと思います。これについてはわれわれはまず第一に、現場の観察ということに非常に重点を置いております。この現場観察ということは、要するに現場に臨検いたしました刑事のいわゆる長い体験から割り出した一つの観察でございます。世上とかく刑事の搜査は非科学的であるとか、あるいは單なる見込み搜査をやつているとか、非常に誤解を持つておられる方も多いようです。ましてや新憲法、新刑事訴訟法の基本的人権尊重の建前から、搜査上従来に比較して今日は相当制約を受けております。しかもこの制約のもとに、搜査に際してはあらゆる角度から最も愼重に検討を加え、あらゆる証拠を收集いたしまして、真実の発見に努めておるような次第であります。ただこの愼重に検討するということは、いわゆる犯罪の検挙の速度と相反比例いたしますので、愼重に検討する一面におきまして、犯罪のスピード検挙化ということにいろいろ努力をいたしている次第であります。
 そこで私は刑事の勘の搜査ということにつきまして少し申し上げてみたいと思うのですが、刑事の勘の搜査と犯罪科学の搜査というものとが両立するかどうかという点でございます。刑事の犯罪搜査のいわゆる経験と申しまするのは、長い者は四十末年間やつております。しかも彼らはこれを自分の畢生の仕事といたしまして、これに従事いたしております。朝家を出るときから夜寢るまで、常に犯罪検挙のことのみを考えて、それを人生の楽しみとしてやつているのであります。しかしながらこの犯罪検挙につきましては、多年の経験がある程度ものを言うのであります。刑事の経験、いわゆる勘と申しますか、そういうものは、單に現場に臨みまして直感的に受けるところの学初の印象、感覚というものではないのでありまして、これは多年にわたつて経験いたしましたその結論を集積いたしまして、これを統計的に、帰納的に結論いたしましたその経験を、その知識を用いて大体最初の観察をいたすのであります。ただ刑事が事件を見た瞬間的な感覚というものでは全然ないのでありまして、多年の事実を基礎にいたしました帰納的の結論で観察いたしておるような次第であります。しかも現場観察は最も重要なものでありまして、すべて事件の検挙は現場から始まり現場に終るとさえいわれておるのであります。残虐眼をおおうような犯罪の現場に参りまして、しかも冷靜に一本の髪の毛、また少しばかりの紙片、血液の飛散の状況、あるいは指紋の散在を観察するということは、相当な経験を要するものではないかと考えております。この点におきまして、刑事の勘の搜査というものにつきましては、これは科学を無視したものでは全然ないのでありまして、やはり科学の基礎の上に置れました、多年の経験と技術を基礎にしたものと御了承願いたいと思います。
 次に搜査の組織でありまするが、搜査組織につきましては、先ほど申し上げましたごとくに、重要犯罪につきましては搜査本部を設けまするし、また搜査本部を設けない事件につきましては、搜査一課が中心に相なります。ときには搜査二課、あるいは搜査三課が協力いたす場合もございまするが、現在は搜査一課が中心になつてこれをやるのであります。そこで大体におきまして、殺人係搜査班の主任警部をだれだれと指定いたしまして、そしてその班員に巡査部長六名、巡査二という刑事をつけましてこれを一班としまして、そうして大きな事件につきましては、あるいはこれが二箇班、三箇班、四箇班、たとえば今回の下山事件のごとき多数の班を集合いたしまして、これを動員して搜査をいたしておるというような状況でございます。中に小さな殺人事件、比較的單純なものにつきましては、あるいは一箇班をもつてこれに当てるというような状況でございます。
 それから次に搜査の端緒でございまするが、搜査の端緒は告訴、告発、投書、密告、聞込みというような種々なる方法でやつておりまするが、大体殺人等におきましては、被害者の家族であるとか、または近隣通行人等の発見者がもよりの交番に届け出るというのが従来の例でございます。
 それから次に報告、連絡、手配の関係でございまするが、搜査は事件発生とともに開始するを理想といたしております。すなわち時の経過は、証拠物件の隠滅されるというおそれがございますので、迅速に報告、連絡をとる。また現場保存等にも遺憾なきように注意をいたしておる次第であります。この報告を、たとえば巡査派出所で受けたといたしますると、この巡査派出所におきましては、訴え出の趣旨を十分に聞きまして、その大要をただちに警察電話をもつて本署に報告をいたします。そこで派出所におきましては、ただちに立番中の警官は休憩員を立番にかえまして、自分は現場に急行いたします。そしてあるいは現場保存の注意を與えたりなどいたします。それから本省に報告すると同時に、本署におきましては、ただちに事件の性質によりまして、あるいは本庁に連絡をいたしまして、本庁の係官の出動を求める、かような状況であります。この場合におきまして、犯人の氏名または人相宿判明しておるとき、その他犯行直後にして、犯人を現行状態において検挙可能と認められるような場合には、警視庁警戒規程に基きまして、緊急警戒を実施いたしております。たとえば強盗が入る、家人が重傷を受けた。その場合に警官が出動いたしまして、かりに被害者から人相、氏名――氏名はわからなくても人相等が大体聽取できましたならば、ただちにこれに基きまして関係警察署、犯人が逃げるであろうと考えられるような道筋の警察署にただちに指令を発しまして、緊急警戒をいたしまして、ときにこの緊急警戒によつてしばしば犯人が検挙されました例も相当あるのでございます。
 それから特に申し上げておきたいと存じまするのは、旧刑事訴訟法当時は、他殺容疑事件検死の場合は、検事の指揮を受けることに規定されておつたのでありまするが、新刑事訴訟法によりまして、他殺容疑の際は、警察官独自の立場で搜査することも可能になつたのでありますが、その間の関係をはつきり規定いたしまする、いわゆる職務規範というものがまだ未制定でありまして、この点におきましては、便宜上現在警視庁におきましては、昨年末地方検察庁と話合いをいたしまして、職務規範制定まで暫定的に従来の方法で犯罪搜査に当るということに、検察庁と大体話合い済みになつております。この場合におきまして、検察庁においては、検事は裁判所より検証令状をとりまして、現場に急行することに相なつております。次に次官の出勤でありまするが、署から殺人事件等犯罪発生の報告を受けますると、刑事部におきましては、搜査第一課よりただちに搜査第一課長以下搜査指揮の担当搜査従事員、これは刑事でありますが、刑事がつきまして参りますのと、鑑識課長以下現場係、警察医、写真係、なお他検からは担当主任検事、検察事務官等の方々がただちに現場に出張することになつております。
 次に現場の検証でありまするが、検証にあたりましては、所轄署の現場保存制服巡査が現場保存の警戒をいたします。その中にありまして、所轄署長以下と緊密な連絡のもとに検証にあたります。次に事件発生と同時に最初における搜査会議並びに搜査方針の決定、これは重要なものでありますが、以上の検証によつて得たる各刑事のいわゆる観察に基きまして、搜査本部長、あるいは第一課長がその現場観察の刑事の意見を十分に聽取いたしまして、総合判断して課長がその方針を、これは他殺である、あるいは自殺である、あるいは他殺にしても、これはどういうような殺害事件であるか、あるいは怨恨であるとか、痴情であるとか、あるいはその他の事情によつてやられたのであるかということで、大体第一課長が今後の搜査方針を決定いたすのであります。そこでいよいよ搜査方針が決定いたしますると、次に担当の主任刑事と係員を決定いたします。これらにつきましては、いずれもいかなる刑事にもそれぞれ專門の、この点については非常に得意である、この点はあまり得意でないという、いわゆる刑事独特の一つの得意というものがございますので、その得意によつて、その刑事の手腕力量等を考えて、その組合せをつくりまして、先ほど申しました班を設定するのであります。
 搜査方法は、大体において次のようないろいろな点から決定いたします。まず第一に敷鑑の搜査、刑事警察においては敷鑑と申しておりますが、敷鑑の搜査、要するに犯罪の多くは被害者に直接間接に何らかの関連性があるものが多いのであります。被害者を中心として犯罪の結びつきを搜査する方法であります。たとえば帝銀事件の場合におきまして、船中で被告平澤が松井博士に面接いたしまして名刺を交換した。この名刺の筋から犯人を割り出したようなのが具体的な事例であります。次に犯人並びに被害者の足取りであります。犯罪の場所には必ず犯人の足があるのです。その犯人が現場に来るまでと、犯行後逃走したその径路等を研究して、犯人が何人であるかということにたどりつく、いわゆる足取り搜査であります。次に贓品の搜査、犯人は金が欲しいか、あるいはもし金がなければ何かそこにある衣類等を持つて行く、いわゆる金品、衣類、そうしたものを必ず他へ売却もしくは入質いたしますので、この売却入質の贓物の点から足取りの搜査をして行くという方法であります。次に遺留品の搜査、犯罪現場におきましては、何らかそこに遺留品がある。その遺留品を何かつかまえて、それによつてたどりつく方法、それから犯人には一定の手口というものがあります。一つの專門的な特技がございますが、その手口から行くということ。犯人の心理関係に基く搜査。それから殺人等をやりまする場合の動機に基く搜査。これは物取り、怨恨、痴情、その他あらゆる殺害の動機がございます。その動機から割り出して行くところの搜査。それから地取り。犯罪現場を中心といたしまして、その付近一帶の住民が犯罪関係のある事項を何らか聞いていないかどうかという周囲の者からの聞き込みによるところのいわゆる地取り搜査であります。現在以上のような搜査方法から搜査方針を決定いたします。そして搜査期間は第一期を大体二十日間と見ております。もしこの二十日間に検挙できない場合は、さらに期間を延長することができます。そしてどうしても無検挙の場合におきましては、場合によつては搜査本部を解散いたしまして、いわゆる恒久的な方法といたしましてこれを搜査して行くという方法でありますが、現在まで終戰後一番長いのは、例の帝銀の十箇月間搜査本部を置いたのが一番長いのであります。
 次に搜査にあたる刑事の勤務の状況でありますが、現在労働基準法によりますと、刑事の勤務は違反になつて来るのじやないかと思いますが、しかし労働基準法によつて時間的に刑事がじや今日はここでもつて搜査を打切り、あとはあすの朝からということになりますると、犯罪の検挙はできませんので、刑事におきましては、労働基準法というものはある程度無視された形において現在やつております。しかしまた非常に過勤をした場合においては、それにかわるべき給與をあとから與えるというような方法をとつております。大体第一項に掲げましたようなこまかい事項につきましては、はなはだかけ足で十分におわかりにならなかつたかも存じませんが、時間の関係もございますので、以上をもつて説明とさしていただきます。
○花村委員長 次に国警刑事部長武藤文雄君。
○武藤説明員 重大事件の調査に対しまして、ただいま警視総監から非常に詳細にお話がございました。私から若干国警としてこれに付加すべき点をお話いたしたいと思います。
 国家警察といたしまして自治体警察と搜査上非常に違います点は、第一に国家警察といたしましては、その管轄域が自治体警察を除いた地域にある。従つて概して非常に交通不便な地方を担当しておるという点であります。そういつた意味におきまして搜査上非常な不便な、交通通信その他万事に非常なハンディキヤップがついた場合が多い。これは国家搜査における搜査の場合と自治体における、ここに警視庁と非常に違つた点の一つであります。
 第二には、同時に警察法に基きまして、国家警察は自分自身の管轄区域をもつていることであります。自治体警察からの応援要請に基いて出勤する場合があるということであります。今日大きな事件と申しますれば、ほとんど自治体管内に発生する。しかし国警としては、その多くの場合には応援要請を受けて、国警もこれに出動いなければならないという点、その意味において、自治体の事件は国警とは全然無関係とは言えない場合が多いという点であります。
 第三には鑑識の点であります。御承知の通り指紋カード等につきましては、すべて国警本部において、これを一元的に全国のものを管轄することになつております。また実際の施設等の点から、自治体警察の全部が鑑識施設を十分に持つことも困難だ。またそれほど非常な金をかけるよりもという点から、自治体から国警に鑑識については委託する場合が多いということであります。鑑識については広く自治警察に応援をする態勢になつておるという点、かような意味におきまして国家警察といたしましては、一面において自分自身の管轄区域に起る事件というものが、非常に交通不便な地に発生するという点に特良があるほかに、自治体に対していろいろの点で便益を供與する立場に置れておるという、二重の立場に置かれておるわけであります。そこで重大な事件に関しまして、われわれとして最も注意すべき点はどこにあるかと申しますと、まず大きな事件に遭遇した場合において、第一にわれわれが搜査上最も関心を持つものは資料と申しますか、資料の收拾及び検討という点であります。犯罪が発生したという場合において、まずそれについての現場保存という点をわれわれは最も重要視いたします。その現場ではちり一つすら重要な資料でありますので、ちり一つすらわれわれはそこでは無関心ではおられない、こういつたものまで詳細に資料の收拾をし、しかしてこれを精密に分析し、検討するということが、重大事件についてのわれわれの関心事の最大のものであります。一方その事件に関連して、いろいろの状況が考えられる、いろいろなことがあるということについて、広くこれについての資料を集める。そしてこれを検討するということが最も大事であります。
 第二には智能の動員という点であります。智能の動員、つまり搜査にあたつては、あくまでも智能をもつて合理的にこれの搜査に当らなければならないということであります。そのうちの最たるものは、科学搜査の点であります。あらゆる科学を動員し、その協力を受けて、それに基いて合理的な搜査をして行かなければならない。先ほど申し上げましたちり一つすら、科学搜査上においては重要な材料でありまして、こういつたものをあくまでも合理的に科学的に検討するという、この方面の智能の動員ということが現在の搜査において非常に大事なのであります。またそういつたいわゆる狹い意味の科学搜査のみならず、あるいは過去の事件において、これと似たような事件があつたかどうか、そういつた点についての検討も必要になつて参ります。あるいはこれに関していろいろ参考となるべきもの、あるいは法律関係、こういつたものについて嚴密に考え、これを動員して遺憾なきを期する、こういつた智能の動員というのが、搜査において非常に大事なことであります。
 第三は、有機的な活動という点であります。搜査についてはお互いに刑事と刑事の相互間、あるいは警察と警察の相互間、あるいは他の犯罪との連絡という点において、最も有機的な連係が行なわなければならない。かような意味において、警察の有機的活動ということにわれわれとしては重大な意を用いるのであります。たとえば大きな事件の場合において、新聞紙上に搜査本部が設置させられるということが出ますが、搜査本部はその刑事活動を有機化するための一つの方法であります。またあるいは手配をする、あるいは手口カードによつて検討する、あるいは指紋カードによつて検討するというふうに、手配あるいは手口カードというものの活用によつて、有機的に犯人を割出して行くという方法が講ぜられておるのであります。この有機的活動というのが非常に重要なことであります。いろいろあると思いますが、大ざつぱに言つてこの三つの点が、重大犯罪事件について、われわれとして最も意を用いている点なのであります。搜査の方法、組織等については警視総監から詳しくお話がありましたので、省略いたしたいと思いますが、国家警察においては、実際問題として大きな事件につきましては、それぞれ都道府県の警察隊長がその総指揮官となりまして、そのもとにおいて刑事部長が搜査本部の指揮をして参ります。その搜査本部にはそれぞれ担当の警察官を配置いたしまして、あるいは情報の收集なり、あるいは取調べの係なり、あるいは現場の検討なり、あるいは鑑識班なり、それぞれの分担をきめて、これが有機的に活動するという方法であります。ことに現在においては、この鑑識班が必ず搜査本部においては一体的活動をしておるという現状である。
 以上申し上げましたように、特に国警としての特色の点、それからやり方について簡單に申し上げました。
○花村委員長 次に高等検察庁検事長佐藤博君。
○佐藤(博)説明員 ただいま御紹介にあずかりました東京高検の検事長佐藤博であります。
 警察における重大事件搜査の方針決定につきましては、田中警視総監及び武藤刑事部長から詳細なお話があつたのであります。私は検察における搜査方針の決定について、この要点について、この要点に掲げられました数個の点にお答えを申し上げたいと思います。重大事件につきましては、検察庁が大なり小なり必ず関係をするということが従来の慣例であります。ことに検察庁がみずから告訴、告発を受け、あるいはみずから密告等を受けまして相当の証拠を握つて、ある種の見通しがつきました場合においては、ほとんどの検察券独自の、検察庁單独で搜査をするという場合もございます。それから警察に主たる搜査はおまかせいたしまして、緊密に検察庁がこれに努力をするという場合がある。さような場合においてここにお尋ねのような問題が主として起るのだろうと思います。
 検察庁にお尋ねの第一協議者の範囲、これは第一に地検あるいは地検支部において事件を受理いたしました場合に、まず主任検事というものが定まります。この主任検事から地検の次席検事、東京のごとき大きな検察庁でございますれば部長検事、それから部長検事から次席検事、検事正、事件の質によりまして、あるいはこの程度で一応捜査方針を決定して搜査を進めてて行くという場合もありますが、たいていは少なくとも高検の次席検事、検事長には報告があつて、それらの人々の会議で方針をきめて参る。さらに大きな事件、あるいは全国的に影響の大きい事件、非常に複雑な社会的に関心の重大な事件というようなものは、最高検に報告をいたしまして最高検の意見を求める。その場合に最高検では主任検事がきめられる。その主任検事と次長検事、検事総長、これらの人々によつて協議会をもちまして、地検の検事の詳細の報告を土台としてこれに解剖的な検討を加え、今後の搜査方針というものを定めて参るのであります。もつとも事件によつて非常にむずかしい法律問題がかかつてくるというような場合は、法務府に報告をいたして刑政長官、検務局長等の意見を伺つて、そうして搜査方針を進めて行くという場合もございます。
 次に捜査の組織でありますが、これは大体において第一線検察庁、すなわち地検あるいは地検の支部において捜査の担当というものがきまります。捜査本部というほど大きな組織をつくることもありますが、さようでなしに少数の主任検事を中心とした主任検事あるいは次席検事、それを取巻く補助検事によつて、捜査本部と称していい組織がつくられる、こういう場合もあります。そしてその捜査の経過はときどき高等検察庁、最高検に報告があつて、その意見を求める。その意見に従つて捜査を進めていく、こういうことになつております。その捜査の担当検事でありますが、これは主任検事のほかに、事件の進むに従つて相当の補助検事をつけなければならない。それは事件の規模、事件の性質上を見まして、検事正あるいは主席検事に最も適当な、最も有能な検事を補助検事としてつけ、これに捜査をやらせるというわけであります。
 捜査の方法でありますが、これらも早く刑事を動員して熱心に証拠資料の蒐集、これが分析判断というものをやりながら、今後の捜査の実績を上げるということに邁進いたしておるわけであります。以上のことについて何か関連があるかということでありますが、これは大体において従来の長い慣例であると申し上げていいと思うのでありまするが、ただ事件によつて内規と申していい訓令、通牒等によつてある種のわくをきめられておる事件はあります。そのわくのきめ方はある事件では着手について上司の指揮を受けると定められておるものもありますし、それから着手したならば、その経過の報告をしなければならないと定められておる事件もありますし、また訴訟については必ず稟請をして上司の決裁を経なければならないと定められておるものもあります。さような定めのあるものは、その定めに従つて処分あるいは捜査を進めて行くのでありますが、さようなわけで、重大事件についてはもつぱら従来の長い慣例によつて進めておるという現状であります。
 以上一応お答えを申し上げます。
○花村委員長 ただいま意見を述べられた諸君に質疑のあられる委員諸君は、被質問者の氏名を呼び、質問せられんことをお願いいたします。
○林(百)委員 佐藤高検検事長にお尋ねしたいのですが、検察当局の捜査本部というのと、警察官ですか、国警、自治警察の警察本部との関係はどうなるのですか。
○佐藤(博)説明員 この捜査本部が警察だけにできておるという場合と、それから検察庁にもできておるという場合もありますし、また検察庁が單独で捜査を進めるものについては、これは検察庁だけに捜査本部があるわけであります。従つてお尋ねの場合は警察にも捜査本部があり、また検察庁にも捜査本部があつた場合にはどう帰着するかということでありますが、これはきわめて緊密に終始資料の收集交換、情報の提出をいたしておりまして、捜査実績を確実に上げるということに協力をいたしております。
○林(百)委員 そうするとこの検察庁の捜査本部と、一線の警察の捜査本部との間に、捜査の方針や事件に対する見通しの食い違いというようなものがある場合もありましようか。
○佐藤(博)説明員 あるポイント、ポイントによつて多少の意見の相違はないとは言えないと思いますが、結局捜査の目標というものは、早く何者かがどういう犯罪を犯したというのを、検挙するというところに目標が置れておるのでありまするから、正しい犯人、間違いのない真正の犯人を早く確実な証拠によつてあげて行くということで、目標がまつたく一致しておるのでありますから、その目標については食い違いというものを生ずることはあり得ないと思います。
○林(百)委員 具体的に言いますと、たとえば下山事件について巷間伝うるところによると、検察当局はあくまであれを他殺という方針で行こうとしておつた。ところが一線の勘のよい刑事諸君の長い間の経験によれば、これは自殺だという結論が出て来た。そこで非常に食い違いが出て来て、検察当局と警察官当局との間の意見の食い違いをまとめるのにいろいろ会議を開いたりしたようでしたが、結局あれはどうなつたのか、違いがあつたのかなかつたのか、その辺は御説明が願えるなら御説明願いたい。
○花村委員長 林君に御注意申し上げますが、下山事件はこの次にやりますから、そのときにお願いいたしたいと思います。
○林(百)委員 委員長にちよつとお尋ね申し上げますが、私は松川事件等いろいろ調査して参つたのでありますが、先ほど資料の收集についてはちり一つすら非常に大切に思うというような御意見があつたのですが、実際現場における捜査の方法を見ると、それとたいへん食い違つておる点があるのです。こういう点についての質問はこの際してよいのか、具体的な松川、三鷹事件のときにやるべきですか。
○花村委員長 それは具体的に松川並びに平事件のところでお願いいたしたいと思います。
○林(百)委員 その場合に、武藤刑事部長なりにまた質問してよいわけですか。
○花村委員長 よいわけです。
○林(百)委員 佐藤さんにお聞きしますが、きようは捜査の科学的方法についてより一層完璧を期するという意味で、この委員会が開かれたのでありますが、日本の検察当局の捜査方法は、従来の慣習に従つて愼重にやつて行くのだという御意見だつたのですが、従来の検察当局のやり方というのは、自白一本主義で非常にむりが行われておるのです。新しい刑事訴訟法に基いて、検察当局の方もこういう科学的な捜査の方法を考えておる、あるいはこういう点について将来国会の強力な御支援を仰ぎたいというような構想があるなら聞かせていただきたいと思います。
○佐藤(博)説明員 ただいまの林議員のお言葉の中に、検察庁の捜査は昔のようなやり方でやつておるというふうに、私が申し上げたかのごときお威葉があつたのでありますが、それはあるいは私の御説明が足らなかつたためにさような誤解が起きたものかと思います。私が従来の慣習によつてやつておると言つてさしつかえないと申したのは、捜査会議の構成ということなんであります。つまり要点の一の「(イ)(ロ)(ハ)」の「(ニ)」に対するお答えとして、別段の規定、内規というものの例を申し上げたように思うのでございますけれども、そのほかはおおむね従来からの慣例でやつておる。内規か慣例かというお尋ねでありますから慣例、こういうことでございます。捜査会議の構成だけのことでございます。
○世耕委員 ちよつと佐藤高検検事長にお尋ねいたします。ただいまの御説明の中で、捜査のわくというようなことのお話があつたように思います。このわくのきめ方というのが、非常にいろいろな疑惑を世間に與えるのであります。たとえばこれは巷間伝えるところとして申し上げておきますが、最近に起つた漁網事件、あるいはゴム等の事件のごときは、それぞれの機関からわくをはめられて、これまで調べる、これ以上発展するとこの辺で切つて置けというようなことになつて来ると、検察庁の本来の使命ということが失われるのではないか、そのわくのきめ方に対して何か公正な方法をおとりになつておるかどうかということの御説明を願いたいと思います。
○佐藤(博)説明員 お答え申し上げますが、私がわくと申し上げたのは、着手については決裁を受けてから着手せよ、あるいはこの事件は経過の報告をせよ、この種の事件についてはその処分決定について、起訴、不起訴を決定する前に上司の決裁を受けろとか、わくという言葉が適切でなかつたかと思いますが、さようなきめがあります。その以外は先ほど申したように従来の伝統、慣習によつて捜査会水を設けて捜査方針を決定しておる、こういうことなんであります。そこで漁網の事件、あるいは肥料の事件、ゴムの事件というようなものは、すべてそのわくに入つておるわけではありませんが、あれは全国的に扱いを統一したいという必要から、最高検ですべて捜査の経過を徴して、それで全地検一斉にこの起訴、不起訴及び求刑の標準を協議したということにとどまるので、それについては、もとよりすべての事件はそうでありますが、多少の牽制策はあつたと思いますが、別にわくをはめていいかげんにやつておるということではございません。あれは今も全国的に取扱いを統一したいということから、最高検でとりまとめて決裁を與えておくということにすぎないのであります。
○世耕委員 い今のわくの話ですが、さような事実はないとおつしやつておりますが、どうも事実はあるようにわれわれ感ずる筋があるのであります。念のために申し上げておきます。
○中曽根委員 今のわくの問題でありますが、事件を科学的に捜査するという客観的な方針というものと、それから上司の許可を仰ぐとか、あるいは一定のわくをきめられるということは、どうも私は矛盾するところがあるのではないかと思います。今までの経過を見てみると、たとえば外国人に対する犯罪、あるいはまた涜職事件であるとか、あるいはそういうことに関係する殺人とか、そういうような多分に政治的に色彩を持つておる問題について、いわゆるわくとか制限とかいうものが従来はめられて来たのじやないか、その科学性というものと、検事なりあるいは上司の主観的な考えとをいかに調和させておるかということを、ひとつお聞かせ願いたい。また一体具体的にいかなる事件にどういうわくをはめられておるか、詳細に承りたいと思います。
○佐藤(博)説明員 どういう事件にどういうわくがはめられておるかというお尋ねに対しては、ただいま何も書類を持つて参りませんので、これはただいまお答え申し上げかねるのであります。ただある事件について起訴、不起訴をどういう標準できめるか、求刑をどういう標準できめるかということと、今国会で御心配願つております科学捜査と食い違いがあるのではないかという御質問でありますが、私はそれは食い違いはないと確信いたします。それはこのわくと申しますのは、先ほどお答えしたように従来なかつた新しい事件、つまり検事の経験に乏しい事件、あるいは全国的に発生をして、全国的に取扱いを統一的にきめて行かなければならないというような事件について、主任検事が処分を自由にすることをしばらく制約しようというだけにすぎないのですが、科学捜査の方法というものは、犯罪検挙にあたつて犯人及び証拠というものを科学的に、あるいは機械の力を活用して、早期に適切に引き出して行くということにあるのでありまして、引き出して犯人もきまり、犯状もわかつた、それを必ず起訴しなければならぬかどうか。あるいは起訴する場合も、求刑はどの辺を適当とするかということは、これは別の問題なんです。全然矛盾することはないように存ずるのであります。
○中曽根委員 検事長は矛盾しないとおつしやいます。もちろん私も矛盾しないであろうと考えておる。それでもその微妙な点はこれ以上私は申しませんが、具体的にいかなる事件をいかなるふうにさばいておるか、それは私ら相当関心を持つておる問題なんです。たとえばこの前石炭国管問題のときに、田中角榮法務政務次官が起訴されるかされないかという事件があつた。そのときに法務総裁の書類が出ておつたけれども、留保したとかなんとかいううわさがあつた。こういう点から世間から疑惑を持たれておるのでございまして、具体的にどういう問題をどういうふうにさばいておるかという詳細な資料を今手持ちがなければ、後刻この委員会に提出していただきたいと思います。
○田嶋(好)委員 簡單に田中警視総監にお尋ねいたします。今の御説明で概要は納得することができましたが、私たちの非常に関心を持つておりますことは、新しく刑事訴訟法が制定され、少くとも新しい刑事訴訟法のもとにおける捜査と、旧刑事訴訟法のもとにおける捜査とは、その方法組織において相当な改革なり変化がなければならぬものだと思います。この点に対して旧刑事訴訟法と新刑事訴訟法の間に、捜査にどれだけの変化がと改革があるか、この点をお尋ねしたい。
○田中参考人 お答え申し上げます。今次新刑事訴訟法におきましては、被疑者と逮捕いたします場合におきましても、きわめて愼重なる方法によりまして、正当なる手続きを経て、刑事訴訟法によつて一々これを逮捕する。それからまたかりに被疑者を留置いたしました際におきましても、常に弁護士諸氏の面会等におきましては、新刑事訴訟法の精神によりまして、十分に法の精神を尊重して自由に面会を許し、また被疑者を取調べます際にも、十分に被疑者の自由意思に基く陳述を求めて、かりそめにも苦況に陷るがごとき、あるいは過去にいろいろ問題が起きました拷問するというようなことは、現在絶対にやつておりません。最近におきましても、特にこの新刑事訴訟法の精神につきましては、従来の刑事諸君に何回も講習会を開きまして、また検察庁からも講師を招きまして、検察庁からの新意見も十分に取入れまして、法の精神を十分に納得させました上で、実際の刑事事務に従事させております。
○田嶋(好)委員 実はただいまの警視総監のお答え、当委員といたしましては、そうしたお答えを求めるためにお尋ねしたのではないのであります。実際上の捜査の面にどういう変化があつたか。今の法の精神を非常に重視しておる、その法の精神に沿うて訓練しておる、これは当然なことであります。きようの委員会で問題になつておりますのは、捜査に対する研究の問題でありまして、捜査に対する問題がお答えの中心になつていなかつたようであります。この点をお答えできれば、いま少しお答え願いたいと思います。
 なおこれに関連いたしまして、佐藤高検検事長にもお尋ねいたしたいのでありますが、やはり私たち委員といたしまして、事件の捜査、それから事件の具体的な取調べ等を研究いたしてみまするのに、新刑事訴訟法のもとにおきましても、実は旧刑事訴訟法と同じような方法、同じような形式において取調べを進められておると見られる点が多々あるのであります。特に最近に問題になりますのは、私たち旧刑事訴訟法時代、非常に怨嗟の的となつておりました強制検挙によりまして、勾引をたらいまわしした、こういう点が非常にわれわれは関心の的になつておりました。幸いに新刑事訴訟法におきましては、そうした国民の怨嗟というものが法律上から取去られたのでありますが、やはりたらいまわし的な行動が見られておる。たとえば横領事件で十日間被疑者を勾留する。その横領事件が的はずれをいたしまして犯罪を構成しないという場合に、今度は別な詐欺でその人間を勾留しようという場合、十日が切れまして検察券庁の玄関にまで被疑者を出し、玄関でまた勾引状を突きつけてひつぱる。これでは新刑事訴訟法というものはまるつきり精神が無視されている。こうしたことがまま見受けられるのであります。この点に関して、田中警視総監に対する今の質問に加えまして、佐藤検事長のお答えを願いたいと思います。
○田中参考人 お答えが少しピントをはずれまして、まことに相済みませんでした。新刑事訴訟法のもとにおきましては、犯罪の検挙につきましては、特に御承知の証拠審理でありますので、いわゆる傍証を固めるという意味から行きまして、非常に今までより以上の証拠を收集しなければならぬのであります。これがためには相当な経費も要員も必要でございますし、いずれ後ほどこの犯罪科学の点につきまして、またいろいろ御意見もあろうかと存じますが、われわれとしましては、あるいはこの証拠を固める際の足の問題であるとか、またいろいろな点におきまして、現在の状態におきましてはいまだ不十分な点が多々あろうかと考えております。この点は傍証を收集する上におきまして非常に科学設備におきましても、われわれが現在持つておりまする科学設備はきわめて貧弱なものでありまして、これらにつきましても将来いま少し改善をして行きますならば、比較的最小の労力をまちまして、最大の効果をあげることができるのではないかということも考えられるのであります。
 それからなおこれは小さな事件でございますが、最近参考人と申しますか、目撃者というようにものを多数お呼びしまして、これらについていろいろ陳述を聞きまして、これらが非常に大きな役割を演ずる場合が多々あるのでありまして、この際にも実際参考人として来られる方につきましては、警察といたしましてはできるだけ懇切に、また短時間でこれをやつておりますが、とにかく半日つぶして参りますと、相当電車賃もかかりますし、中には近県から来ていただくという場合もありまして、この場合に汽車賃なり電車賃なりを相当使わして、しかもそのまま帰すのであります。晝になつたら弁当くらい出さなくてはならぬ。中には便宜刑事が自分の持ち金から出して、弁当くらい食わしておる者もあるようでありますが、こうした一応参考人として司法警察官が呼んだときの、せめて実費弁償程度のものは、これは犯罪検挙は国家的なものでありますので、何らか国で犯罪検挙に参考になるような目撃者なり参考人を呼んだときには、せめてそうした実費弁償の費用くらいは支給できるような方法ができればまことにありがたいことだということは、実際に刑事事務を担当しておる者の意見でございますが、こういう点も必要ではないかというふうに思われるのであります。
○佐藤(博)説明員 御質問の要点は、大体強制検挙が従前のように頻繁に行なわれているのではないかという点にあるかと存じます。これは統計を持ち合しておりませんが、旧刑事訴訟法時代ならば、もうほとんど常識として、強制検挙をやつているだろうというような事件でありましても、今日では相当の傍証がなければ検挙しないということは、明らかな傾向になつて来ておると信じております。たとえば帝銀事件のごとき、あれだけの事件でありますが、あれが旧憲法時代でございますならば、相当多数の被害者を一応ひつぱつて、そうして究明しておつたことであろうと思うのでありますが、あれは何人強制検挙をいたしましたか、そう大したものではない。あるいは石炭国管事件でもそうであります。私の方ではたくさんの情報がありまして、調べたいことがまだまだたくさんあつた。あつたが、單なる情報ではそういうことはいたしかねる。相当の制約を受ける。従つて非常な困難も感じながら、ある程度のことができたわけであります。そこでただ横領で拘束して、横領が立たぬものだから、詐欺でまた拘束のし直しをやつたというようなことは、最近にはないことであります。それと最初拘束する場合においては、詐欺と横領があつた。しかしながら詐欺の方はまだ嫌疑が薄い、横領が相当はつきりしておるということで、横領罪一本で拘束する。ところが見込みは違いまして、ぐんと捜査して参りますと、横領の方がむしろ少くて、詐欺の方がはつきり出て来た。こういうような場合には、証拠が出て来た、逃走したらこの点がつぶれはしないかというような、証拠隠滅のおそれがあるというようなことが相当はつきりいたしますと、帰したくても帰せぬ、そういうこともございます。そういう警察の機微な点をお察し願いませんと、最初からごらんになりますと、たらいまわしをやつておるのではないかと思われるかもしれませんが、そういう面も実は非常に減つておると思つております。
 それと一つお考え願いたいのは、刑事訴訟法施行後まだ日が浅いのでございまして、新法適用に慣熟しないという点で相当遺憾な点があろうと思います。これは検察官再教育、監査ということによつて漸次改めて行くというふうに骨折つて参つておるわけであります。
○田嶋(好)委員 ただいまの御説明である程度わかりましたが、そうすると田中警視総監のお答えはこういうふうに聞いていいでしようか。結局新刑事訴訟法の施行後も捜査の組織の面においては目新しいものはあまりない。ただ刑事訴訟法の精神と、その法運営にあたつては万全を期している、こういうふうなお答えになるわけですね。それからなお佐藤検事長に私一言お願しておきたいと思いますことは、私が今申し上げましたことは、結局自白中心という点にある、旧刑事訴訟法と同じような自白中心主義をもつて、新刑事訴訟法がまた運営をせられておるのではないかと思われるきらいがあるのであります。この点は十分御注意を願いたい。
○林(百)委員 もう時間がありませんから、簡單に佐藤高検検事長にお尋ねしたいのですが、先ほどから質問が出ました通りに、国会で大きな注目を引いていることは、時の検察の方針が政治的な影響をこうむるのではないかという問題だと思うのです。これは中曽根並びに世耕各委員から質問があつたが、その被害の一番多いのは共産党である。民主党が反共の政策を掲げ出すと、やたらに検察当局が、事件をあたかも共産党のせいのような無責任な発表をやる。これはわれわれ非常な被害をこうむつておる。しかしこと共産党のみでなく、時の内閣のあり方によつて、刑事事件が取扱われるということは非常に多いわけです――多いようにわれわれは考えるわけです。そこで私があたにお尋ねしたいことは、一つは協議者の範囲ということの中に、法務総裁の時の事件の扱い方について関與する場合があるかどうか。あるとすればどういう場合があるかということが一つと、もう一つは、刑事事件について増田官房長官とか、こういう時の政府の要路者が意見を発表する場合、たとえば一例を申しますと、松川事件が起るとすぐ、あれは三鷹事件などよりもつと極惡な背後思想があり、背後組織があつてやつたというような場合は検察当局との連絡のもとに発表するのか。あるいはそうでなくて、独自な見解を発表されるのか。この二つの点をあなたからお聞きしたい。
○佐藤(博)説明員 重大事件の捜査会議に法務総裁が参與されるということは、従来ございません。報告すべき事件がありますから、それは報告をすることはしばしばございます。しかし検察庁がきめた意見に対して、法務総裁が異なつた意見を指示されたという経験は、いまだ私の知る限りにおいてはございません。
 それから官房長官が意見を発表なさるということについては、実は私批判いたしかねるのでありますが、なにがしかの情報なり報告なりを持たれて、そうして発表なさるのかと想像されるのでございますが、われわれの方から官房長官あるいは吉田総理大臣に具申をしたという例もございません。
○林(百)委員 そうすると、政府の要路者が刑事事件について意見を発表する場合は、検察当局と何ら関係なくして意見を発表するというわけですね。
○佐藤(博)説明員 そうです。関係しておらないです。
○林(百)委員 すると検察当局の捜査に基く根拠なくして意見を発表していると解釈していいですか。
○佐藤(博)説明員 それを意見を発表なさる時期によりますので、私の方は捜査の過程について、先ほど申すように、法務総裁に報告する場合があります。法務総裁から内閣に報告されることもあるのですから、捜査に即して発表している場合もあろうかと思います。私の方から、こうでございますから発表してくださいと言うことはないのです。
○林(百)委員 しかしたとえば松川事件のように、明らかに捜査当局の意見と全然違う意見を増田官房長官が発表するという場合はどうですか。
○佐藤(博)説明員 そりは何かほかの資料をお持ちになつて、それに基いて発表なさるのだろうと想像されるものですが、私はわかりません。
○梨木委員 田中警視総監に伺いたいのですが、先ほどあなたの御陳述によりますと、捜査にあたりましては、刑事の勘が非常に重要な役割を果すようなふうに伺つたのでありますが、終戰前と終戰後とにおきまして、警視庁の刑事はどういう異動があつたか。つまり終戰前に刑事をやつていて現在も刑事をやつている人の率はどうですか、終戰後新しく採用された刑事がどのくらいか、その率をまず伺いたい。
○田中参考人 お答えします。今の御質問の趣旨につきましては、私今手元に材料を持つておりませんから、ちよつとお答えできかねるのであります。ただ私が先ほど刑事の勘と申し上げましたが、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。もとより犯罪の検挙につきましては、本委員会でいろいろ問題にされております犯罪科学の向上改善ということが第一の問題であります。しかし犯罪科学と相並んで、やはり刑事の努力というものが必要であるということを、私が申し上げたに過ぎないのであります。そのところを誤解のないようにお願いいたします。
○梨木委員 そうしますと、終戰後における検察のやり方、捜査の仕方というものの中には、やはり終戰前の刑事の勘でやられて、非常に迷惑する点もたくさんあると思う。特に終戰前におきましては、検視庁の特高というものがありまして、これが盛んに特高的な、秘密警察的な思想犯の取締りをやつておつたわけです。従いましてこの特高的な刑事の頭の切りかえがなされないというと、終戰後におきましても、同じようにそういう思想犯、政治犯に対する特高的な取締りや捜査というものが行われる危險が非常にあると思う。その点についてはどういう指導をしておられるか。つまり刑事の頭の切りかえについてどのような指導をやり、また実際的な教育をやつておられるか、これを伺いたい。
○田中参考人 私が申し上げましたのは、あくまで犯罪の検挙について申し上げたのでございまして、現在におきましては特高警察とか、そういうものはございませんから、われわれは常に刑罰法規を根拠にして、しかも新刑事訴訟法の精神に則つて、人権を尊重しながらやつておりますので、今あなたの御質問のようなことは考えておりません。
○梨木委員 たとえば三鷹事件が起るとすぐ共産党がやつたという時は、特高的な刑事にそういう勘がある。そういうものを動かさないようにするためには、どういう教育をやつておられるのか。
○田中参考人 御質問の三鷹事件と、今の私の申し上げる刑事の勘とは、全然関係のないものと思いますので、私はお答えする必要はなかろうかと思います。
○梨木委員 それじやもう一つ伺います。そうすると警視庁には第二課第三係というのがありますね。これは思想的な、団体的な関係の調査を專門にやつておるように私は見受けておるのでありますが、これはどういう係ですか。
○田中参考人 刑事部に一課から三課までございます。第一課は主として殺人強盗等をやつております。それから第二課は詐欺、横領その他いわゆる公文書偽造横領、あるいはまた暴力行為、そういうような多少知能犯的なことに関係したこと、そりから第三課は簡單なすり、窃盗、のび、あき巣、そういうようなものをやつております。
○梨木委員 第二課第三係は団体の関係はやつておりませんか。
○田中参考人 別にやつておりません。これは主として外国人関係、朝鮮人方面のことおやつております。
○梨木委員 その次に伺いますが、たとえば特別捜査班、こういうものがたくさん出て来ると予算関係はどういうことになりますか。
○田中参考人 これにつきましては、大体特別重大事件が発生して都会に予算を要求いたしましても、時期の問題がございまして、間に合いませんから、既定の予算からそれを流用いたしまして、次期の都会にこの予算を要求いたしまして、大体必要なものは全部これを要求しております。
○梨木委員 下山事件はどのくらいかかりましたか。
○田中参考人 今までのところはどのくらいかかつておるか、まだ計算しておりません。
○花村委員長 ほかに御質疑はございませんか。なければ次に下山、三鷹、松川、平、帝銀事件の順序で議事を進めたいと思います。
 下山事件に関しましては警視総監田中榮一君、警視庁刑事部長坂本智元君、検事山内繁君よりそれぞれ事件の経過報告を求めます。時間は一人約二十分程度でお願いいたします。警視総監田中榮一君。
○田中参考人 下山事件のことにつきまして、簡單に御報告申し上げます。ただいま委員長からお話がございましたごとくに、この事件は目下検察庁とも緊密な連絡のもとに、鋭意捜査続行中でございます。従いまして十分なることを申し上げることができぬかとは存じますが、その辺はあしからず御了承を願いたいと思います。
 まず大体のことを申し上げますと、七月の五日でありましたが、午後一時半ごろ運輸省から刑事部長のところへ電話がかかつて参りまして、下山総裁がお前の方へ行つていないか、行つておつたらすぐ本省へ帰るように連絡をとつてもらいたいと言つて参りました。その前日私のもとに下山さんはおいでになつたのでありますが、本日はお見えにならないが、来たならばすぐ連絡をとるからということを刑事部長に私から話しまして、その旨連絡いたしたのであります。なおどうもけさから出て様子がおかしいがというので、それでは自動車の番号は何番か、四万千七十三号で、黒型のビユックのりつぱなものだということ聞きまして、それでは自動車がどこかに置いてあるのじやないかと思うから、自動車をただちに探してみよう、自動車さえあれば御本人もいるだろうというので、自動車の手配をいたしたのであります。そのうち午後三時ごろ国鉄側から、総裁がまだ帰つて来ない、行方不明だというお話がございまして、私の方もこれは困つたことだ、捨てては置けぬというので、ただちに署の方へ総裁行方不明の手配をいたしたいからということを申し出ましたところ、部長としては、正式に行方不明ということを署へ渡してしまうと出て来た場合に非常に困るから、もうちよつと待つてくれというお話で、それじや待とうと言つておりましたが、何としてもこのまま捨てておくわけに行きませんので、私直接芥川公安局長に電話をかけまして、君すぐ出て来てくれ、ともかま一応相談したいからというので、午後四時ちよつと前、芥川局長に出て来てもらつて、いよいよこれは本式にやろうじやないか、行方不明ということを君の方で発表したらどうか、出たときは出たときで何とかなるからというので、すぐ手配してもらいたいということで、運輸省としても腹をきめて手配をいたしたのであります。そこで警視庁としては、ただちに総裁の私邸へ刑事を派遣しまして、詳細なことをお聞きしましたし、また各署長から、総裁の自動車がまだ見つからぬという報告が入つて来たのであります。午後五時三十分ごろ国鉄の本省から、日本橋の三越本店南口において、大西運転手の自動車が発見されたという連絡があつたのであります。さつそく捜査第一課殺人班二箇班をして、三越辺内外における捜査を続行いたしたのであります。おそらく三越内部の捜査は、その日夜間十二時まで続行されたと思います。あるいは便所に倒れているようなことはないか、あるいはどこかで不慮の死を遂げられているのではないかというので、大分三越の中を捜査いたしたのでありまするが、見つかりません。そこで六時三十分ごろ、大西運転手に任意出頭の形で警視庁に来てもらいまして、当時の状況を十分に聽取いたしたのであります。そして大西運転手の自供に基きまして、総裁の立ちまわり先等が大体判明いたしました。その晩もさらに各警察署においては、総裁がどこかへ拉致されたようなことはないか、あるいはどこかで変死されているのではないかというようなことから、各署に命じていろいろ捜査をいたしておつたのであります。その翌日の午前三時半ごろ、国鉄の公安課から刑事部長の方へ、下山総裁の死体と覚しきものが綾瀬、南千住駅間にあつたという報告に接して、さつそく西新井署にその事実確認方を命じまして、午前四時三十分ごろ堀崎課長以下係員十一名、現場主任以下五名、地検からは布施、金沢両検事とともに現場に急行いたしまして、必要なる検証を実施いたしたのであります。大体検証を終了いたしましたのが午前七時三十分ごろと考えます。さらにその後の調査の手続といたしまして、印刷物にございます第一の容疑者の範囲、捜査方法――容疑者の範囲といたしましては、七月七日の午前十時三十分から午後二時までの間におきまして、警視庁刑事部捜査第一課別室におきまして、第一回の捜査会議を開催いたしました。その節刑事部関係といたしましては、坂本刑事部長、堀崎捜査第一課長、松本第一課長、浦島第三課長、塚本鑑識課長、ほか各係長、主任刑事以下約三十名のものが出席いたしまして会議をいたし、さらに本部事件関係といたしまして、馬場次席検事、山内検事、佐久間、金澤両検事さらに鑑識関係といたしまして東大の古畑教授が出席せられのまして、ここの第一回の捜査会議を開催いたしたのであります。また捜査方法につきましては、先ほど私が説明いたしました捜査本部設置に決定いたしまして、下山事件捜査本部を設置いたしました。本部長といたしまして坂本刑事部長を任命し、堀崎第一課長直接指揮に当り、なおさらにこれに松本捜査二課長、浦島捜査三課長も加わりまして、警視庁といたしましては相当厖大なる捜査本部を設置して捜査に努力いたしたのであります。なお下山総裁事件関係といたしましては、三越内外の捜査、三越から五反野南町の轢殺現場に至るまでの足どりの捜査等、それから西新井の現場を中心としてのいろいろな聞込み捜査であるとか、あるいは地下鉄その他東武鉄道、常磐線の電車、列車の乘務員の捜査であるとか、あらゆる方面にただいまの捜査をいたしております。現在のところ未だ死因の真相を糾明できませんことはまことに遺憾の次第でございまするが、警視庁といたしましては、さらに本事件につきましては未だ自殺と推定すべき事実も十分ございませんし、また目撃者その他の陳述等もございますが、まだ十分にこれも確認いたしておりませんし、一応推定事実はございまするが、これをもつてただちに自殺なりと断定することもできないのであります。また一面におきまして、他殺の線もまだ全然氷解していないので、他殺の嫌疑もあるということで、現在時々検察庁と連絡のもとに捜査を続行いたしておるような次第であります。
○花村委員長 刑事部長坂本智元君。
○坂本参考人 ただいま警視総監より下山事件の捜査経過につきまして、かなり詳しくお話がございますので、大体概要は盡きていると存じまするが、私が捜査本部の責任者を勤めさせていただきました関係上、捜査の詳細につきましてさらに補足して申し上げたいと思います。大体本部事件と申しまして、通常の殺人事件におきましては、おおむね多くて二十名程度、少なければ十二、三名のエキスパートの刑事をかけて事件を処理いたしておるのでございます。しかしながら下山事件につきましては、本事件の重要性にかんがみまして、捜査一課としての鍛錬を受けました刑事約七、八十名、さらに各現場、日本橋警察並びに西新井警察の刑事を合わせて約百十四、五名の刑事をただちに動員して捜査に従事せしめたのでございます。その半面におきまして、捜査二課の刑事をかけまして、これが下山氏の身辺その他に関しまする捜査を続行して参つたのでございます。現在まで大体五反野方面におきまするすなわち下山総裁の死体の発見されました現場における捜査につきましては、これは数字で申しますとわかりますが、附近約五百九十五戸くらい民家がございまするが、さき申しました足どり捜査、すなわち地取りの関係で、こういう家屋全部につきまして調査をいたしておるのでございます。なおまた現場附近を当夜通行いたしました百六十名につきまして詳細な調査をいたしております。なおまた現場附近において、他殺とすればあるいは容疑者ではないかと思われる者につきまして、四百八十一名の調査をいたしております。
 次に下山総裁の死体のひかれました貨物列車の前に通行いたしておりますところの上り下りの列車、電車等につきまして、百二十八本の調査を克明にいたしております。また現場を通行いたしました――現場と申しましても、その現場はきわめて不便なところでありまして、とうてい車の入るところではございませんが、それに達しますのに最も近く運んだとするならば、どういう場所まで運び得るかということも考えられます道が約六箇所ございます。その六箇所について車、自動車等によつて運んだ形跡がないかというので調査いたしましたところ、当夜約七台の自動車が附近を通行いたしているのであります。この七台の自動車につきまして、逐一調査をいたしておる次第でございます。なお七台のほかに、現地において自動車が通つたと考えておりまして、約三台の自動車が住民の口から出ているのでございますが、これは事件が発見されましてから後に、警察ないしその他の方面の事件調査に関連のあるところの自動車が三台現地に向つたのを、夜間のことでありますので、まあ寢ぼけたと申しますか、誤認して考えておつたことも明らかになりました。
 それからいかにして三越から現場まで行つたかということが、地取り捜査としては非常に大事なところでございます。これにつきましては、三越から現地へ参ります交通機関といたしましては、地下鉄、東武、バス、都電、三つの方法があるのでございます。これにつきまして時間その他を考えまして、東武のバスにつきましては約二十台、地下鉄につきましては午前九時から十二時過ぎ約一時ぐらいまでに通行いたしましたすべての地下鉄につきまして調べをいたしたわけでございます。
 それから次に三越でありますが、三越店につきましては、目撃者その関係、下山総裁が自動車からその時間にはたして降りたか、降りないか、あるいは三越からどういう方面に行つたか、こういう面につきまして、店員四百三十五名の調査をいたしております。
 また三越の地下に映画館がございますので、その方面につきまして約十六名、あるいは三越の店の上にも各種の事務所がございますので、この方面も逐一調べをいたしております。
 なお上野松坂屋の店員、また地下鉄ストア、その他三越から現場に参りまする地下鉄の沿線の各百貨店等をもくまなく調べまして、これは約三百二十五名の調査をいたしている次第でございます。浅草東武並びに地下鉄駅員、その他約十名について調査をいたしている次第でございます。本件に関しまして寄せられましたところの投書、密告の類でありますが、これは約千五十件の多きに及んでおります。しかしながらおおむねわれわれが捜査上の参考に取上げるに足らない、かなり荒唐無稽なものが多いのでございまして、そのうちをとつてかなり広く調査をいたしましたものが二百四十五件に及んでおります。本件につきまして、特にわれわれとして関心を拂つておりまするのは、鑑識の問題でございます。鑑識に関しましては、特に下山氏の轢断されましたところの列車につきましては、大体二回にわたつて鑑識をいたしております。一回は水戸まで参りまして鑑識をいたしましたが、さらに鉄道と連絡をいたしまして、貨車の帰るのを待ちまして、貨車は全部で五十輛の空車がついておつたのでありましたが、それが機関車ほか四十九輛まですでに一応参つておりますが、まだ一車輛だけ帰らないのでありますが、そのほかに、その前の貨車等につきまして血痕が現われたとかいうような話もございまして、そういう面につきまして調査をいたしましたり、それから現場附近に各種の小屋がございまして、それらのものにつきましても、克明に科学的な鑑識調査をいたしておる次第でございます。先ほど総監のお話がございましたように、いまだ確定するに至りませんので、国民の各位に非常に御心配をかけておりますことを恐縮に存ずる次第であります。
○花村委員長 検事山内繁雄君。
○山内説明員 東京地方検察庁刑事部長山内検事であります。下山事件の犯罪捜査経過報告を簡單に申し上げます。
 東京地方検察庁におきましては、休日、夜間におきましても、数名の検事が当直しておるのでありますが、今回の下山事件発生に際しまして、七月五日の午前四時半に、西新井の警察署から下山総裁らしき死体が小菅刑務所附近の鉄道線路上において発見されたという報告を受けたのでありますが、下山氏が列車に轢断された時刻は、同日の午前零過ぎごろであつたのでありまして、それを発見したのは午前零時二十四分にその現場を通過しました省線電車の運転手が発見したのでありまして、それを綾瀬の駅に助役に報告し、綾瀬の駅の駅手が現場に確かめに参りまして、さらに所轄の駐在所、警察署を経て、検察庁に連絡があつたのは、午前四時三十分であつたのであります。ただちに宿直の検事二名と係員が現場におもむきましたが、出発しましたのが五時三十分、現場に到着しましたのが六時二十分でありまして、警視庁の鑑識課の係員とともに綿密な検証をし、検証を終つたのは午前七時十分でありました。確かに言えば八時四十分であります。そうして死体をただちに東京大学に運んで、大学におきまして午後一時三十分から午後九時までかかつてその死体を解剖し、綿密な調査を行つたのであります。先ほど来警視庁の方が御報告なさいましたように、その翌日捜査会議を開きまして、検察庁といたしましては馬場次席検事以下係員が出席し、そして一定の捜査方針のもとに、捜査部面の担当者をきめて捜査を開始したのであります。
 殺人事件の捜査にあたりまして、どういう方法をとるかと申しますと、まず殺人の行われた現場に残されたものを克明にたどつて行く。また一方殺された被害者の身辺を克明に洗つて行く。そして両方の捜査のぶつかつたところに犯人を検挙し、完全な犯罪の証拠が收集されることになるのでありますが、今回の下山事件につきましても、犯行現場に残された死体並びにその死体に附着しておつたいろいろなものを克明に追究し、また殺人事件としますれば、被害者たる下山氏の身辺を克明に捜査を進めております。またその犯行現場におけるいわゆる足取り捜査と申しますか、目撃者を克明に探究しておるのでありまするが、今日までのところでは、先ほど警視庁の方々が御報告なさいましたように、いまだ自殺とも他殺とも断定し切れないような状況でありまして、その点は、私ども長年殺人事件を扱つて来た者としましても、非常に困難な事件だと思つておるのでありますが、いまだにその断定をし切れない状況でありまして、その捜査の内容のこまかい問題につきましては、ただいま捜査中でありますので、申し上げかねるのであります。簡單でありますが、これをもつて御報告といたします。
○花村委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。角田幸吉君。
○角田委員 まず最初に田中警視総監にお尋ねを申し上げたいと思うのであります。時間の都合がありますので、きわめて簡單に要点だけをお尋ね申し上げたいと存じます。
 下山事件に関しまして、当局が捜査するにあたりまして、近代科学をどの程度において応用されていたか、これを具体的に御説明を願いたいのであります。まず第一に、三越から轢断されました現場までの足取りにつきまして、これは科学的な捜査の方法がなかつたかどうか。この点をひとつ第一に承りたいと思うのであります。
 第二点といたしましては、まず現場に状況、ことに死体の解剖についての関係、これは古畑教授の解剖があるのでありますが、その際に取上げて承つておきたいのは、生活反応が轢断された部分にあつたかどうかということ、もう一つの点は、これは自殺説を裏づけるような問題にややもするとなるのでありますから承るのでありますが、下山の上ポケットの中の麦の穗が入つておる、このことについて何らか科学的な研究をなされたかどうか、さらに現場におれる血痕、その血液型について調査をされたかどうか、さらに死体について指紋等の何らかのことがなかつたかどうか、さらに進んで、死んだ後に四、五時間と推定するような鑑識をやつたかどうか、大体この程度のことをまず一応承りたいのであります。
○田中参考人 それでは私からお答え申し上げます。まず下山事件につきまして近代科学をどの程度までに応用したかというお尋ねでございます。この下山事件に関しまして、特に科学的機具あるいは設備を利用したということはございません。従来あり得る設備を利用いたしまして、捜査に従事いたしております。
 次に三越から現場までの間の科学的捜査をやつたかという御質問でございますが、これは主として下山総裁のいわゆる足取り捜査でございまして、別に足跡を探すとか、そういうものでなくして、現実に下山総裁がその辺におつたかどうかという、その足取りを捜査するのでございます。これはむしろ科学的の捜査よりも、やはり刑事のゆまざる努力によりまして、常に刑事の足によりまして、方々、聞込みをして歩くということが重要であろうと考えまして、現在この段階の捜査におきましては、刑事の足ということに重点を置いて探しておるのであります。なお現場附近で、あるいはライターが現在出ていないとか、まだ出てないようなものもございますが、こうしたものにつきましては、ある一定の機具を利用いたしまして、この機具の力によつて捜査をいたしたのでございますが、現在まだ見当らないのでございます。
 次に死体の解剖について生活反応があるかどうかということでございますが、これはむしろ、東大の古畑博士がお答えするのが至当であろうと思つておりまいが、私ども聞いた範囲におきましては、生活反応がなかつたやに承つておるのでございます。なお死体解剖のことにつきましては、私どもは專門外でございますので、お答えを申し上げましてかえつて間違いを起すおそれがございますから、この際はお答えを差控えたいと思います。
 次に下山氏のポケットの中にからす麦の穗が入つておつたかどうかということでございますが、こりは事実入つておつたのでございます。そしてこの点は、現場の土手にあるからす麦と同じものであるかどうかということにつきまして、国警の公述人科学研究所に依頼をいたしまして、そこで調査をしていただいたのでございます。大体現場の麦のようにも考えられておるのでありまして、まだはつきりしたことはわからないのでありますが、大体現場の麦じやないかと一応推定ができるようにも聞いてえるのであります。この点はまだはつきり申し上げることができないのであります。
 それから死体の指紋につきまして申し上げます。これは非常によいことを御質問になつたと思うのでありますが、死体が下山総裁の死体であるかどうかということを確かめるには、もちろん側近の者が行つて、同氏の残されたからだの部分について特徴等を調べたのでありますが、警視庁といたしましても、鑑識課におきまして、ただちに下山氏の指紋をとつたのであります。そしてその山下氏の指紋をとつたのであります。そしてその下山氏の指紋を根拠にいたしまして、何か下山さんの持物の中で出ているものはないかいろいろ研究いたしました結果、総裁室のひきだしの中にライターに入れるガソリンのびんがございます。このびんを持ち出して、そのびんの指紋の検査をやりましたところが、人さし指ともう一つどこかの指の指紋が、二つはつきり出て参りまして、そして下山氏の死体の指紋とはつきり一致いたしました。これが下山さんの死体であるということがいわゆる科学的に立証できたわけであります。もちろんそのほかいろいろ側近の方々が、下山さんのに間違いないということは言つております。
 それから死後時間の測定でございますが、これも私どもは、ただ医学者の発表をまつほかないのでありまして、この点につきましては、むしろ私からお答えするのは見当違いでありますので、この点は御了承願いたいと思います。
○角田委員 下山総裁が自殺したのか、殺されたのであるかということは、今事件が迷宮に入つております。ところで下山総裁のくつ下についておりました土と、それから現場の土とを鑑識いたしました結果が、これは異なるという鑑定がでた。さらに古畑教授らの解剖の結果、死んだ後にしかれたのだということも一致した。そうすると、どうしてもこれは死んだ後に現場にかついで行つて、それが列車によつてしかれたのだ、下山は歩いて行つたのではなくて、死んだ後に運ばれたという公算が強くなるのであります。そこで私はお伺いいたしたいのでありますが、そのくつ下についておる土のほかに、アスファルトがついておらなかつたか、当時東京都の附近にありましては、歩けばアスファルトがくつにつく程度の所が、およそ東京都に何箇所くらいあるか、こういうこともこの際承つておきたいのであります。
○田中参考人 下山総裁の轢殺事件につきましては、東大の法医学教室の見解によりますと、死後轢断ということになつております。私ども法医学の解剖の結果につきましては、相当重要視せねばならぬのでありまして、特に犯罪科学的捜査につきましては、この解剖というものは犯罪検挙の思要なる部分を占めておりますので、死後轢断ということにつきましては、われわれもただちにこれが他殺ではないかということを、一応想像できるのであります。ただ今の調査の段階におきましては、われわれもこれを他殺ということに重点を置きまして、いろいろと捜査いたしておるのでございますが、先ほど刑事部長から御報告申し上げました通りに、あらゆる方面を捜査いたしておりますが、いまだその検挙の端緒を得ないのでありまして、この点はまことに申訳ないのであります。今後さらに努力いたしまして、検挙いたしたいと考えております。
 なお現場のくつの裏にどろがついておつたというようなことも聞いておりますが、この点も目下国家警察の犯罪科学研究所の方へ依頼いたしまして、研究をいたしておるのでありまするが、これもまだ十分に確認というところまで至つていないのでありまして、こりも何らか近く決定されるものと思つております。
 それからなおアスファルトということでございますが、アスファルトにつきましては、私はまだ聞いておりません。この点はさらに調査してみたいと思います。
○角田委員 もう一点承りたいのであります。先刻田中警視総監は、足取りについては科学的な捜査はやらなかつた、こうおつしやつたのでありますが、私は足取りについて科学的な捜査の方を進められないことが今日の事件を迷宮に入らせた、こう考えております。
 まず第一に、くつ下についておつた土が現場の土と違うということであつたならば、これはそこで歩いていたのではないということから足取りの科学的な捜査ができるのであります。
 その次にアスファルトがどうなつておるかということがさらにはつきりすれば、この点から、当時東京都内に歩けばアスファルトがつく程度のところはどこにあるかということがまた考えられる。さらに進んで、その点ともう一つはつめの中から石炭のようなものが出ておる、こういうことを考えると、ある場所に入れられて、もがいて、そうしてそのときにつめの中に石炭がらが入つたのではないか、こういう点で想像いたしますと、大体こういう場所をこう行つて、どういう場所へどう行つたというような足取りが、これは科学的にわかるはずだと考えております。そうしてそこへ入つて行けば、指紋等を参照いたせば、そこにははたして下山総裁が入つたかどうかということが指紋上わかつて来る。そうしてさらに血痕の点を連絡いたしますと、その足取りというものが明瞭になるはずでありますが、この足取りの点について警視庁捜査当局が科学的な捜査の歩を進められないことが、今日迷宮に入つておるゆえんだと伝えるのであるが、この点に対する態度と御感想とを、この機会において伺いたいのであります。
○田中参考人 たいへん綿密な、われわれ捜査に従事するものにとりまして非常に有益な御意見だと考えております。もちろん刑事といたしましては、ただいま申し上げましたような点も十分に調査をいたしているはずであります。また今つめの中に石炭がらという話もございましたが、これははたしてその石炭がらであるかどうかということはなかなか判定がむずかしいのでありまして、むしろ今のところそれらのものを探すよりも、科学的にもつと大きなものを捜査した方がいいだろうということでやつておりまするが、もちろん今お示しの点につきましては、十分に調査もいたしておりまするし、また今後もせつかくの御注意がございましたのでこの点につきましてはさらに十分調査いたしてみたいと思つております。
○猪俣委員 下山事件は特異にして稀有なる事件だと思うのであります。捜査陣営においても、検察庁側は他殺の見解をとるがごとく、警視券側は自殺の確信を持つておられるようであります。法医学者は、東大系は死後轢断説、慶応その他は自殺説、新聞社も朝日は他殺、毎日は自殺、なお政党まで二派にわかれておるのじやないかと思われるのでありまして、民主自由党は他殺説、共産党は自殺説を絶叫さられておるようであります。天下の寄観というべきである。人のうわさも七十五日という。その七十五日が過ぎてもいまだに自殺も他殺もわからない。検察の任にある方々には気の毒であるますが、われわれとしても默過することができない場合になつておるのではないかと思うのであります。七月二十七日の朝日新聞は、検察庁側は自殺論は暴論だということを言つておる。八月三十日には、堀検事正の言として、またまた他殺の確信を固めたと言つておるのでありまするが、そこで検察庁側は、他殺の確信を固められたということにつきまして、どういう根拠に基いてさような確信を固められたのであるかを、まずお伺いしたいと存じます。
○山内説明員 検察庁といたしまして、今日他殺だと確信を持つておるわれではないのでありまして、先ほど申し上げましたように、まだ自殺とも他殺とも断定しかねる段階にあるのでありまして、検察庁が他殺だと考えておる点はどういう点だと言われますが、そりは解剖の結果とか、その他自殺だと断定できない、自殺だとすればこういう点が疑わしいのじやないかという説明のつかない限りは、やはり他殺の容疑をもつて捜査しなければならないと考えておるのでありまして、自殺だとは考えられない点が、つまり他殺だと考えておる根拠であるのであります。詳細な証拠説明はちよつと申し上げかねるのであります。
○猪俣委員 今御説明を承ると、積極的な根拠としては解剖の結果であるということに相なつておるのであります。われわれも法医学者の見解というものは尊重し、それがために当委員会も数回研究を重ねておるのでありますが、ただこの学者の研究方法その他につきましては、検察当局は特別の注意をお拂いくださつて、ある学者の見解を採用するについては、愼重の態度を要するのじやないか、その点につきまして、以下二、三お尋ねしたいと思うのであります。
 一つは下山氏を解剖されました桑島博士は、本件の解剖が初めての解剖であると聞いておりますが、その点いかん。第二には汽車の先端にありますところの排障器にまず頭部がぶつかつたと思われ、排障器は後方に三十六度、内角に三十八度曲つておつて、毛髪と血痕が附着している。死体の頭は三百グラムの脳みそしかなかつた。普通は千四百グラムある。それがさように相なつている。そうして後頭部の皮膚が何もなかつた。はなはだ不完全な頭部であつたのでありますが、この不完全な頭部に一体生活反応ありやいなや、測定できるかどうか。当の桑島博士それ自身も、脱却せられたる死体については自分は判定できないが、取残された部分について死後轢断の判定を下したのであるというふうに申されているのでありますが、しかりとすれば、その他殺の確信を持たれるについては、はなはだ根拠が不完全ではないかと思われるのであります。かような解剖学者の態度につきまして、あるいは方法につきまして、どういうふうにお考えになつているか。なおまた死体が轢断せられてから三日もたつて後に出血量の調査をされ、この出血量の調査が完了しないうちに死体轢断の意見を発表されているということにつきましても、われわれしろうととしても少しふかしぎな点があるのでありますが、かようなことにつきまして検察庁はどういうふうにお考えになつておられるのか、この点御説明を承りたいと思うのであります。
○山内説明員 検察庁といたしましては、桑島博士の判定の結果のみをとつて他殺と考えているというわれではないのでありまして、まだ判定書そのものは正式にでき上がつて参つておりませんし、ただ今日までの判定の途中において、博士の意見を参考にしつつ捜査を継続しておるのでありまして、判定の結果、その他いろいろな資料に基いて、どうしても自殺と断定し切れない点が多々あるのでありまして、それらの資料がやはり他殺と考えられる有力な根拠となつております。
○猪俣委員 なお秋田教授の乳酸反応の科学性について、検察庁の意見を聞きたいと思うのであります。このやり方もまだ研究の域を脱しないものであつて、実験は主としてモルモットでやつておる。人体研究というものはほとんどない。しかもその温度は三十度内外で研究されておつたのであるが、実際下山氏が死体となつて現われたその日は、中央気象台の報告によると二十一度の気温であつた。そこに気温の差が非常にある。これが乳酸反応には非常に影響を及ぼすそうでありますが、さようなことについて検察庁は一体どういうふうなお考えをお持ちであるか、これも承りたいのであります。最初午後九時ごろと判定し、次には十一時から十二時までの間、十一時半ごろだろうと判定をを控えておるということにつきましても、死後の経過時間の判定というものは非常に困難なものであるということを、事実が示しておるのではないかと思うのでありますが、この点につきましてどういうふうにお考えになつておるか、御説明を願いたいと思います。
○山内説明員 秋谷博士の乳酸反応の試験は、仰せの通り濕度、温度等、一定の條件のもとに説明せられる科学的な結果といたしまして、検察庁といたしましてもそういう考えのもとにこの意見を聞いておるだけでありまして、これだけを根拠にしておるのでもないのであります。
○猪俣委員 検察庁におきましては、法医学者の報告については疑問な点があるということを、他に漏らされたことがあるか。あるとするならばいかなる点が疑問であるかを御説明願いたいと思います。
○山内説明員 まだ捜査の途中でありますので、検察庁といたしましては、正式に他へそういう意見を発表したことは一度もないと考えております。
○猪俣委員 もしここに多少なり疑問の点があり、まださつきの御説明によりますと、法医学者の意見のみに頼つておるのではないという御説明があつたのでありますが、この古畑、桑島氏の解剖の結果論に対しましては、いわゆる有力なるところの法医学者が反対をしておる。こりは御存じのことだと思うのであります。たとえば慶応の中館博士、名古屋の小宮博士、東京都の八十島氏及び民主主義科学者協会の意見、これは公開状までも発表したしておるのでありますが、これらの人々ま意見というものをどの程度検察庁は親しく調べたか、また自殺他殺の点につきましては、心理学者の判定も科学捜査の一つとして重要だと思いますが、かかる心理学者の意見をどの程度聞かれたか、その点についての御答弁を願います。
○山内説明員 重大事件でございますので、お末の人たちにも来ていただいて直接説明を聞いて、参考資料ににすべて詳しく書きとつて、今月もなお検討を続けておる次第であります。
○猪俣委員 今あなたがそうおつしやられるけれども、先般本委員会でもつて中館博士の参考意見を聞いたときには、一ぺんも意見を徴されたことはないと言つておるのであります。
○山内説明員 それは博士の記憶違いだろうと考えます。現に私の方の佐久間検事が、直接博士の意見を聞いております。
○猪俣委員 なおこれは国警あるいは自治体警察の方々に、この下山事件の捜査の科学性について多少の質問をお許し願いたいのでありますが、轢断箇所における出血量の調査が三日間も遅れたのはどういう理由であるか。末広旅館に下山氏らしい人物が休んだ。それにつきましてコップとか火鉢とか、その他について指紋その他の科学捜査が十分やられたかどうか。なお国警科学捜査研究所の活動がどうもわれわれしろうとから見るとはなはだ不活発であるように見受けられる。たとえばくつのどろの検査、これもほとんど二十日も放つておいてある。麦の穗の検査もまだ何だかきまりがつかぬというような、非常に時日を要するものならば、われわれが考えた科学捜査というものも案外に役に立たぬようなことになるのではないかと思われます。われわれしろうとでわかりませんが、これは検査がむずかしいためにかように日時を費しておるのであるか、はなはだ弛緩状態であつた、その他のことのためにこのように時間をとつたのであるか、さような点についてもお聞かせ願いたいと思います。なお本件の下山氏のくつについておる土砂の検査のごときは、非常に微量なものでありますために、これの確実な検査には分光器というものがなければできないということを承つておるのでありますが、国警に分光器の設置がありやいなや。なお捜査に出かけた刑事の中にはストップウオッチを持つておつて、それの使い方を知らなかつた刑事があるというのであるが、かようなことがあつたかどうか。及び証拠品であるところの下山氏の時計がとまつておるのを、ネジをかけてしまつたという刑事があるということを伝え聞いておりますが、さような刑事がありやいなや。もしさようなことがありとしますならば、科学捜査に関して、いかにこういう教育を国警なり自治体警察はなさつておるか。さような点につきまして承りたいと思います。
○田中参考人 私からお答えする範囲のことをお答え申し上げます。現場における血液の調査でありますが、こりは御承知の通り、当日非常にしの突く雨でありまして、ほとんど全部血液は流出いたしておりまして、犯罪捜査の上にまことに重大なる支障を来したのであります。それからその後さらに血液その他につきまして調査をいたしたのでありますが、それらしいものも発見されませんので、やむを得ず線路を掘り起しまして、場合によつては線路の下のじやりの下に血液が少しあるのではないか、われわれは当時、ある意味においてはおそらくむだだろうという予想のもとにやつたのでありますが、結局やはり当初予想いたしました通り、何ら血痕の跡を認識することができなかつたのであります。そのほか粋お話のストップ・ウオッチのやり方を知らないということでありますが、そういう事実は私は聞いておりませんが、時計につきましては、これはだれかやはり巻いたのでございまして、おそらく刑事はそういうことはすまいと私は思つております。とにかく現場に参りました刑事は、相当永年殺人現場の証拠保全には、それのみを最初から苦心しておつた連中が、行つておりますから、たまたま総裁の腕時計が発見されて、それをただちに巻くというようなことはなかろうかと思つております。あるいは現場で刑事以外の人の手から刑事にそれが渡されておりますので、その間にだれかが無意識のうちに巻いたのではないかと考えております。
 それからなお末広旅館の指紋の点でありますが、これもただちに末広旅館に参りまして、当日総裁が飲んだと考えられる茶わんを取出させまして、ただちに指紋検査に取りかかろうとしたのでありますが、総裁が帰ると同時に、その茶わんはおかみが洗つてしまつたのであります。洗つてしまつても、なおかつ何か出やせんかと思つてやつたのでありますが、結局むだになりました。
 そのほか何か総裁がふれたと思われるようなものはないかということで、いろいろ物色いたしたのでありますが、それも見当りません。従つてまだ末広旅館の点につきましても、十分に百パーセントの確認ができぬような状態であります。この点は実際われわれとしましても非常に困惑いたしております。
○武藤説明員 下山事件につきましては、警視庁から国家警察の科学捜査研究所には十七回にわたつて鑑定の依頼が来ております。血液型あるいは肉片の調査依頼につきましては、逐次わかつたものから御回答を申し上げることにいたしております。分光器については、従来仮庁舎で余裕がありませんので、すえつけておりませんでしたが、新庁舎に移るとともに、備えつけて用いているわけであります。なおこの際鑑識という問題が大きく取上げられておりまして、鑑識の重要性、従つて警察方面に鑑識をもつと充実強化すべきであろうという点については全然同感であります。われわれといたしましても、この点に特別に努力を拂つているわけであります。警察官の鑑識に対する教養ということにつきましては、特に今後陳方の警察学校においても、特科教養といたしまして鑑識部面を取上げまして、その方面の專門警察官を養成することになつております。
○花村委員長 質疑の通告者が多いので、午前中はこの程度とし、午後二時より質疑を継続いたしたいと存じます。
 暫時休憩いたします。
    午後一時二十四分休憩
    ―――――――――――――
    午後二時二十一分開議
○花村委員長 休憩前に引続は会議を開きます。
 質疑を続行いたします。田嶋好文君。
○田嶋(好)委員 午前中におきましては民自党の角田委員、社会党の猪俣委員から、それぞれ專門的な知識を交えて当局に対する質問があつたようであります。実は私委員としての考えといたしましては、科学搜査の立場に立つて、国会におきましてこれをずつと論ずることも、国政の運営上必要なことでもありましようが、一応わが国の搜査を扱うところの警察、検察事務に対しまして、国民はこの検察と警察に信頼感を持つて進む以外にもはや道はないと存ずるのであります。ただ国会はそれらの職務執行者に対しまして、国政の立場からこれを聞き、また調べるという権能が與えられておるのであります。そこで本件も搜査の問題に対しましては、それら当局に信頼しておまかせする以外にないのでありますが、午前中に社会党の猪俣委員からの質問の中にお言葉がありましたように、何だか、この下山事件というものは、もはや搜査の段階よりも政治的な面においてとかく世の中の人が考えるようなきらいがありはしないかと、当委員も考えられる節があるのであります。猪俣委員は、民主自由党は他殺説をとなえ共産党は自殺説をもつて対立しておるというような極端な言葉の表現まであつたようでありますが、私は民主自由党の代議士といたしまして、他殺説をもつて共産党に対立しようというがごとき、小さな考えは持つておりません。少くとも民主自由党は、そうした政治的な面で下山事件を取上げることによつて、国民に対してこれをわが党に有利に宣伝し、有利に導こうというようなちつぽけな感情を持つた策謀を企図して政治をやろうというような政党でないことを、ここにはつきりと民主自由党の一員といたしまして断言しておきたいのであります。ただそうした言葉が出るということになりますれば、これはもはや否定はいたしましても放つておくことはできないのでありまして、われわれ委員といたしましてもその線に沿いまして、その点についてやはり自殺、他殺ということに対して相当の検討を加えなければならないことになつて参ります。またその検討を加えること自体を国民は希望しておりましようし、またそうやること自体が、国政の運用上必要になつて来るのではないかと思います。問題はその点にあるのでありますから、その点に沿つて以下関係各位に対して質問をいたします。
 まず第一に私たちが知りたいと思いますことは、今までは新聞紙上並びに委員会において、一部の政府の方から聞いた事実のみを知り得ておるのでありまして、その他の知らない事実がたくさんあります。そこで委員長から注意もありましたように、私はその知らない事実についてお確かめをいたしたいと思いますが、下山総裁は轢断せられた、汽車にひかれて殺された、こういう事実だけは争われないことだと思いますが、自殺であつても他段であつても轢断された状況、どういうふうな状況において轢断されたか。たとえば自殺の場合も、他段の場合も考えられるのでありますが、その轢断という事実、どういう方法によつて轢断せられたか、これをまず第一に承りまして、以後の質問を進めたいと思います。
○坂本参考人 現場の状況を簡單に申し上げます。飛び込んだとするか、置いてひかれたとするか、ここに問題が残つております。現状はわれわれの方で臨検をいたしました際におきましては、ちようど豪雨のまつ最中でありまして、従つて現場が普通の場合と著しく違つておつたのであります。すなわち豪雨によつて洗い流された状況で、死体は足を二本切断されておりますし、頸部も切断され、胴体が切断されており、そのほかに腹が破れまして腹から内藏が出ておるし、そうして足は汽車の進行方向から申しますと左側に、胴は中に、頭は外側にあるというふうな状況で、約五十メートルにわたつて死体が散乱しておつた状態であります。それから先ほどの脳のことなども問題に出しましたが、脳も損傷があり、きわめて不完全な状態でありました。以上であります。
○田嶋(好)委員 それについてもう一度やはり今の関連で、今までにたくさん人間が飛込み自殺をした場合もあると思いますが、その飛込み自殺をしたと思われる人間の死体というものは、どのような結果になつて現われるものでありましようか。私の聞くところによりますと、走つておる汽車に生きた人間が飛込んで死ねば、からだの肉骨というようなものはちよつとがたがたの状態になる。手や足が轢断されるというような状況は少い。かえるを踏みつぶしたような状態が見られるということを――私はしろうとでございまして專門家ではありませんが聞いております。飛込み自殺の場合はどういうような結果になつておりますか、それをひとつ伺います。
○坂本参考人 私どもの搜査に多年従事しております刑事の談によりますと、飛込み自殺の場合におきましては、足もひかれ、首もひかれ、手もひかれ、しかも死体が散乱するというのが往々多いのでございます。また場合によりましては、はかれた場所によりまして、そのまますぱつと切られる場合もあります。お話のように一概に申すわけには参りません。
○田嶋(好)委員 そういたしますと、現在なおかつ搜査を継続しているという言葉を皆さんから伺つたのでありますが、現在の搜査というものはどの程度においてやられているのか、先ほど田中警視総監から、当従の搜査状況、何人の人間が出動して何人の人間を調べた。こういうような御説明がありましたが、現在でもなおこれだけの警察官を動員してやられているのか、現在の搜査組織がもし説明ができましたら――説明ができないならしかたがないが、できましたらお話を願いたいと思います。
○坂本参考人 搜査につきましては、事件の起きました直後におきまして、できるだけ材料を集めるということが搜査の要点でございます。従いまして本事件につきまして、午前中に御説明申し上げましたように、百四十名の刑事、これは刑事の事件といたしましてはおそらく珍しいことだと思いますが、そういう多くの刑事を動員いたしまして、早期にできるだけ多くの材料ゑ集めるべく努力して参つたのであります。その搜査というものは、あらゆる場合を想定いたしまして、地取り、勘取り、あらゆる面を想定いたしまして、非常に大きな網を張つた搜査をいたすのであります。しかし搜査につれて、漸次本事件に関係のないということが明らかになるにつれまして、漸次人員を減少して参つております。現場につきましてはなお搜査を継続いたしております。自殺なら自殺といたしましても、現場からやはり材料が出なければ、本人が飛行機で運んで落とされたという筋のものではありませんから、そういう意味において現場の搜査は続けております。現場へ下山氏が三越からそこまで行くことについて、関係がないということが明らかになつた面については、漸次搜査を縮小いたしております。従いまして現在におきましては、初めのような人数ではありません。人数はちよつと申し上げられませんが、大分減じております。なおその搜査につきましても、他殺の面といたしましてもいろいろな情報があり、いろいろな話があり、またいろいろな他殺を信じせしめるような具体的な話もございまして、これらも逐次搜査を続けておりますような次第であります。
○田嶋(好)委員 今度は山内検事にお尋ねいたしたいのですが、先ほど猪俣委員の質問に対しまして、検察当局としては自殺、他殺いずれとも決定しかねる段階にあるのだ、こういう御答弁だつたと思いますが、そうすると今度の搜査によつて、やはり自殺、他殺のいずれに対する発表があるものと考えてよろしうございますか。
○山内説明員 社会的にも相当関心を持たれている事件でありますので、もし他殺事件で犯人を検挙した場合には、もちろん発表いたしますし、自殺だということが大体間違いないという段階に到着をいたしますれば、発表いたしたいと思つております。
○田嶋(好)委員 それは当然なことですが、私の問いはそこではなしに、私の説明が惡かつたと思いますが、たとい他殺による場合でも、犯人があがらない、迷宮事件になつて行くおそれがあります。そういうような場合にも、来るべき時期においては他殺か自殺かの発表をする考えでいるか、こういうことです。
○山内説明員 他殺であるということがはつきりいたしますれば、当然発表いたしたいと考えておりますが、他殺であるということがわかつても、犯人を検挙しないまでは、これは自殺でないということは発表できないと思います。
○田嶋(好)委員 もつと問いを変えましよう。ではこの事件が自殺か他殺かの結論が出ないまでは、搜査を継続するおつもりですか、搜査は一定の時期が来ればお打切りになるおつもりですか。
○山内説明員 搜査は検察庁といたしましては、確信が持てるまでは継続して行きたいと考えております。
○田嶋(好)委員 他殺、自殺の確信が持てるまでは搜査を継続して行きたい、こういうことですね。
○山内説明員 はあ。
○田嶋(好)委員 搜査ということは私たちが考えますと、先ほどちよつとあなたも御説明があつたようですが、犯罪のあることを前提として、搜査が行われるわけです。現在の段階においては、犯罪のあることを前提にしての搜査だと考えてよろしうございますか。
○山内説明員 もちろんさようでございます。
○田嶋(好)委員 そうすると現在の段階としては、自殺説をとなえる者は、それはかつてにとなえればいいのだ。検察当局、搜査当局としては、搜査という線に沿うているのだから、犯罪あるものとして力強く搜査を進めて行く、こういうことになるわけでございますか。
○山内説明員 さようでございます。
○花村委員長 この際一言申し上げておきますが、田中警視総監は所用のため帰られましたので、坂本刑事部長がかわつて答弁されますから、さよう御承知を願います。――中曽根康弘君。
○中曽根委員 大分いろいろ質問が出ましたので、私は二、三簡單に坂本刑事部長に聞きたいと思います。
 ある事件が起つた場合に、これに見当をつけるということが、当然犯罪搜査の場合に行われる。そうすると事件の起つた環境というものが当然問題になつて来る。下山事件について他殺説が最初に有力であつたという裏には、やはり行政整理を一環とするあの社会的な雰囲気というものが、私はやはり相当反応しているのではないかと思うし、またそれは正しいと思うのであるが、そういう客観的な社会的情勢というものも、科学的搜査の中に入り得るものかどうか、この点をまず承りたいと思います。
○坂本参考人 刑事の搜査につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、一つの勘取り搜査というものがございます。これは結局本人の貝周囲ないしその本人の生活環境、状況、そういうことが犯罪に結びつきがありはしないかという考え方であります。そういう考えのもとに、今の社会情勢ということはやはり一つの考えになる場合もあり得ると思います。しかしながら下山事件に関連しまして他殺説が多かつたとか少かつたとかいうことは、必ずしもお話しの通りでもなかろうと思うのであります。
○中曽根委員 まだ私はつきり納得できないのですが、要するにこの事件についてそういう環境が一つの資料になつて、当局がある考えをする材料になつたかどうか、そういう質問です。
○坂本参考人 今回の事件につきましては、特別の先入観をもつて搜査をするということは、必ずしも適当でないと考えまして、もつぱら地取り捜査ということをいたしますために、搜査一課が中心になつてやつたのであります。それと別に神取り搜査の方面について、搜査一課がそういう情勢をも考慮しつつ搜査を進めて参つたわけであります。現在搜査本部といたしましてやつております搜査は、地取りを中心にし、同時に下山総裁の周囲についての勘取り搜査ということが一課としての活動の中心でございます。なお二課の活動につきましても、これは必ずしもそういう社会情勢ばかりの反映ではなくして、熟練した刑事の手不足の面もありますので、内面をかねてやらせております。
○中曽根委員 学問に心理学というのがあつて、こりは科学として成立しているのですから、私はやはりそういう面も当然科学的搜査の範囲に入るし、今のお答えによると、多少そういう要素もあるように感ぜられるのですが、今度のこの場合、たとえば下山さんの行動を前後洗つてみて、われわれが一番平凡に常識的に考えるのは、下山さんが大分情報を欲しがつた。そこで行政整理と関連して、その方面の情報を非常に欲しがつていて、自分でやはりそういう情報とりをやつたのじやないか。そういうときに、もし他殺であるならば、そつちの方から来る謀略か何かにひつからまつてやられたのではないか――これは万一他殺の場合です。そういうことが考えられるので、その前後における情報の收集、あるいは労働組合関係とか、そういうものを詳細に洗つた事実があるかないか、このことをひとつ伺いたい。
○坂本参考人 ただいまお話にありました面は、本搜査をいたすにつきましては、最初からあらゆる條件を考慮して、あらゆる面に搜査をいたすわけでありまして、当然お話のような面もその一環として搜査は十分いたしております。
○中曽根委員 その搜査をした場合に、他殺説を裏づけるような何か疑点か問題点はございませんでしたか。
○坂本参考人 あまり具体的なお話になりますと、とにかくまだ搜査継続中の問題でありますので、お答えいたしかねるのであります。今お話のような点での搜査をいたしておりまする中には、むろん他殺を裏づけるようなうわさも出、あるいは必ずしもそうでない場合のうわさも出ておつたようであります。
○中曽根委員 この辺は微妙で、搜査にも影響すると思いますので、私はやめますが、もう一つ、そういう環境やら、私の非常に平凡に考えから質問いたしたいと思います。それは四百八十一人の容疑者を調べたと言わせた。巷間いろいろなことが伝えられているのですが、四百八十一人の国籍をひとつわかつたら大体知らせていただきたい。
○坂本参考人 四百余名の容疑者を調べたと申しましたが、これはいわゆる招致して調べたという筋のものではございません。これにつきましての国籍の問題は、ちよつと搜査の問題がございますので、お答えいたしかねまするので、御了承いただきたいと思います。
○花村委員長 梨木作次郎君
○梨木委員 坂本さんに伺いますが、七月五日午後一時半ごろに、国鉄から下山総裁の行方がわからないということの照会があつた、それから二時間ばかりたつて、三時半ごろになつたがまだわからない。そこでひとつ行方不明ということにして調べようじやないかということで乘り出したというように、先ほど総監から聞いたのでありますが、大体その通りでありますか。それをまず伺いたいのです。
○坂本参考人 大体総監のお話の通りであります。
○梨木委員 下山さんという人はときどき自動車からおりて、別にどれくらい時間がかかるということを言わずに、二時間も三時間も帰らないようなことが間々あつたということを聞いておるのでありますが、そういう事実は警視庁で知つておつたのですか、知らないのですか。
○坂本参考人 そういう問題になりますと、いろいろ搜査の問題に関連して参りますので、お答えいたしかねます。
○梨木委員 それではもう少し伺いますが、三、三時間の間行方がわからないというだけで、どういう理由で行方不明だということで搜査に乘り出したのか、その理由を聞かせてもらいたい。
○坂本参考人 これは鉄道当局の方からの御依頼によりまして、私の方でただちに搜査を開始したわけでありまして、その辺の行方不明という考え方の問題につきましては、主として鉄道当局の方の考え方に従つたわけでございます。
○梨木委員 それでその後下山総裁が行方不明になつたということを公表されたことはお認めですね。
○坂本参考人 これは私の方からは公表いたしません。
○梨木委員 どこから公表したのですか。
○坂本参考人 それはちよつとわかりません。私の方は存じません。
○梨木委員 あなたの方は知らないのですか。普通ならば行方不明になつた場合にも、搜査当局としては公表しないで、隠密裡に調べた方がより調べやすいと思いますが、あなたはどう思われますか。
○坂本参考人 これは状況によると思います。
○梨木委員 このときはどうですか。
○坂本参考人 このときは一応隠密裡に調べるというつもりで調べたわけでありますか。
○梨木委員 それが何ゆえか他の筋から公表された、こういうことになつておりますか。
○坂本参考人 こりはしかしわれわれの搜査は搜査でありまするし、それからほかの方の関係でそれを公表される、されないということは、搜査と別問題でございます。
○梨木委員 ですから搜査当局は公表しないが、他の方面からこの点が公表された、こういうふうに承つてよろしいのですね。
○坂本参考人 と思います。
○梨木委員 それでは次に伺いたいのですが、下山総裁が行方不明になつた、その後綾瀬の方面から轢死体が現われた、この轢死体が下山総裁の死体であるということを確認する証拠というのは、どういうものによつて確認されたのか、お伺いします。
○坂本参考人 死体の最後の確認は、先ほど総監から御説明がありましたように、指紋による確定であります。
○梨木委員 証拠は指紋だけですか、ほかにどういうものを証拠とされましたか、それを伺いたい。
○坂本参考人 むろん現場にありました着衣、身体の状況、所持品、それから轢断されました顔、こういうものが一応下山総裁に間違いなしということが明らかにせられておつたのでありますが、さらに指紋を照合するために、下山総裁の死体からとつた指紋と、下山総裁が日常使つておつたところのガソリンの入つておつたびんから得た下山総裁の指紋とを照合いたしまして、間違いなしに下山総裁であるということが確認されたのであります。
○梨木委員 それで顔はほとんどつぶれていて、人相はたれのものであるか判別しがたいものであつたとわれわれは新聞紙の報道を通じて知つているのですが、その点はいかがでありますか。
○坂本参考人 人間の身体のことでありますから、多少形も変るかもしれません、いろいろになると思います。しかし顔の色であるとか、感じであるとか、眉毛であるとか、こういうものが下山総裁らしいという感を持たせることになるわけです。
○梨木委員 顔の感じであるとか眉であるとか、そういう点が下山総裁の顔に似ているということは、だれによつて証挙づけられたのですか。
○坂本参考人 それは駅員によつて証拠づけられました。それから所持品の中にパスが入つておつた。
○梨木委員 駅員というのはどこの駅員ですか。
○坂本参考人 綾瀬の駅員です。
○梨木委員 それで家族の人はその死体について解剖に立ち会いましたか。
○坂本参考人 弟さんが立ち会われたはずであります。
○梨木委員 立会われたはずでありますか。それは間違いありませんか。私の聞いたところでは、解剖には家族は立ち会つておらないと、この前国会において鑑識課長が証言しておるのですが……
○坂本参考人 そうでありますか。それでは誤の記憶違いであるかもしれません。私も記憶が薄れておりますが、たぶん現場には弟さんが行かれたが、とにかく死体は弟さんが見られて、間違いはない、しかしそういう個々の話では不十分でありますので、さらに最後に指紋を照合して、間違いないという断定をしたわけであります。
○梨木委員 そうすると弟さんがそれを確認して、奧さんだとか、お子さんはこの死体の確認は立ち会つておりませんか。
○坂本参考人 立ち会つておられないはずであります。
○梨木委員 そうすると、この前の警視庁の塚本久一鑑識課長の証言によりますと、秘書官が確認したからということに伺つたのでありますが、これはあなたの御証言と違うようでありますが、いかがでしようか。
○坂本参考人 私も記憶がはつきり――今書類を持つておりませんのでわかりませんが、あの際は綾瀬の駅員が、まず最初にどうも死体があるというので参り、それでさてどうも下山総裁らしいという話がパスその他によつて明らかになり、従つてこれが公安局長の方へ連絡があり、鉄道の方の関係者も同地に参り、われわれも飛んで行つたという状況でありますので、大勢の言葉によつて大体こういう話になつて来たと思います。その中には秘書課長もおつたでしようし、いろいろな人がおつたと思うのであります。その一人一人の証言によつてどうということではないと存じますが、その点は御了承願いたいと思います。
○梨木委員 それでは次に伺いたいのでありますが、死体の確認ということは、それほど顔がめちやめちやになつているような場合に、一番科学的に死体確認の適任者であると思われる者はその妻であり、お子さん、これが一番適任者だと私は思う。それなのに、こういう人たちをなぜ搜査当局は確認せさるように措置しなかつたかという点を伺いたいのであります。
○坂本参考人 お話のように親族、ことに夫人宿は最ともよく知つておられることであると思います。しかしながら親族自体が、あるいは希望しない場合もあるでしようし、これを強制して立ち会わせるというような筋合いでもないと思います。そのときにおきまして、親族がどういう御意向であつたかはわかりませんけれども、下体確認のために弟さんが見えたということを、私は聞き及んでおるのであります。
○梨木委員 そうすると奧さんやお子さんに立ち会つてもらいたいというふうに通知された事実はありますか。
○坂本参考人 これはむろん鉄道の方からも、それらの方から連絡はいたしておるはずであります。
○梨木委員 あなた自身、搜査当局はやられましたかどうか。
○坂本参考人 今のところ私は記憶がございません
○梨木委員 次に伺いますが、服装やパスがその死体の附近から発見されたとしても、それは必ずしも下山総裁の死体であるということの客観的な証拠ではないと思いますが、その点についてあななたの御意見はどうでしようか。
○坂本参考人 お話のように、それだけでは十分ではないと思いましたから、指紋まで探しまして照合をいたしました結果、ぴつたり合つたのであります。従つてわれわれはこれを下山総裁の死体であることに間違いないと断定をしたのであります。
○梨木委員 それでは伺いますが、その指紋は、下山総裁の机のひきだしの中にあつたライターのガソリンのびんにあつた指紋だとおつしやるが、このびんの指紋が下山総裁の指紋であるということを証拠づける、どんな客観的な証拠があつたのですか。
○坂本参考人 これは下山総裁のひきだしの中にありまして、そしてその出ました指紋は秘書官のものでもない、ほかのものでもないということは明らかにされております。従つてこれは下山総裁の指紋であると考えたわけであります。これはわれわれが搜査をいたし、証拠を集めて行きます場合におきまして、人力の及ぶ限度というものがございます。われわれといたしましては、人力の及ぶ限度におきましてあらゆる方法を盡し、それがわれわれの正常なる常識によりまして納得し得る程度に達しました場合におきましては、一応これを間違いのないものと断定しなければならないのではないかと思つております。さような見地におきまして、この指紋を確かめ、しかもその指紋は秘書の指紋でもない、他の関係者の指紋でもない、従つてこれは下山総裁が常時使用したものであり、大体下山総裁の指紋に間違いないものであるということに断定をいたしたわけであります。しかして下山氏の体格その他から考えまして、しかも下山総裁の室のひきだしから出て来たものだ。そういうびんの指紋というものは、社会常識から考えますれば、一致いたしますれば間違いないと考えるのが私は妥当ではないかと思つております。
○梨木委員 それでは次に伺いますが、私のしろうと考えでは、下山総裁の室の机のひきだしから出た一つのびん、それは可能性としては下山総裁の指紋だと常識的に考えてよろしいと思いますが、しかしそれをさらに裏づける客観的なものとしましては、常時下山総裁の指紋のできそうな、たとえば家の中のやはり自分の始終使つておつたひきだしだとか、始終使つておる持物、これを全部指紋を検出して、そこから最も多く一致した指紋を発見して、これが最も下山総裁の指紋に近いと、こう決定をくだすのが私は最も科学的なやり方だと思うのですが、そういうやり方はされたかどうか。
○坂本参考人 ただいまの科学的な方法についての御質問はまことにごもつともなことでありまして、私どもといたしましても、平素そういう指紋をとります場合には、お話のような線に沿うて努力しておるわけでございます。下山総裁の死体の指紋と、下山総裁の何かほかの指紋がないかということにつきましては、家庭でもあちこちとりました。ところが家庭におきましては、御承知のように日本家庭、日本の家具におきましてはなかなか指紋が出ないのでございます。ときたま総裁室のひきだしの中でありますために、しかもその中にあつたガラスびんでありますために、うまく保存された指紋を手に入れることができたわけでございます。われわれといたしましては、この指紋が下山総裁の指紋であるかということについては、もう一つ家から何か指紋がほしかつたのであります。この点につきまして十分努力いたしましたが、御承知の通り食器の類については、全部日本の習慣として洗いますから出ません。それから柱やいすのようなものは、多勢の者が手をかけますために出ません。その他いろいろ努力いたしましたが、結局下山総裁の役所の机のひきだしの中から出たものが唯一の下山総裁の指紋になつたわけであります。お話の点は、われわれ科学搜査に従事するものについては、特に注意しなければならぬものでありまして、将来よく注意いたしたいと考えております。
○梨木委員 ではもう一点お伺いいたします。
 この下山総裁の行方不明と、その後発見された死体が下山総裁の死体なりやいなやということは、これはそこに犯罪ありやいなやという問題と関連して重要なる証拠資料だと思うが、この証拠資料は少くともこの事件が解決するまでは、最も大切に保管しなければならないものと思うのでありますが、それがその後火葬に付されておることになつておるのでありますが、この点は科学搜査の観点から、証拠保全にきわめて遺憾なものがあるように私は思うのですが、その点についての御意見を伺いたい。
○坂本参考人 お話の点は私もしごく賛成なのであります。ことに下山総裁の轢断が死後轢断であるか、生後轢断であるかということが、学者間にいろいろ問題になつておるようでありますが、かような死体については保存せられることが最も必要だとは思います。しかし現在の法律その他の面から申しまして、遺族の葬儀をむりに押おて、死体をそのまま長く維持することがいろいろな面に困難がありますので、できずにおるわけでございます。しかしながら将来の科学搜査の見地といたしましては、そういう特殊の重要な問題を生じます死体等については、相当期間保存できるような設備その他が必要なのではないかという感じも持つておる次第でございす。
○梨木委員 これはこの前鑑識課長の御証言によりますと、搜査当局はそう考えたのだが、検察庁の命令で火葬に付してしまうのだ。こういうふうに伺つたのですが、この点検察庁側の御意見を伺いたいと思います。
○山内説明員 それは私直接聞いておりませんが、従来殺人事件については、大体一応の調査をいたしましたあとで遺族の方へ死体を引渡す、こういうふうにやつております。お話のように死体を長く保存することは、現在の法律上もできませんし、またそういう物的施設も持つておりませんので、事実上それはやつておりません。
○梨木委員 もう一点伺います。解剖の際に、この死体を一応集めて写真をとつてありますかどうか。そのことと、もう一つは身長、胸囲、こういうものは全部はかつてあるかどうか。
○山内説明員 それは殺人事件に際して医者が解剖するに際しましては、必ず第一番目に身長をはかり体重をはかる。これは死体を特定する意味においても必ずやるのでありまして、下山氏の場合も丁寧に測定してございます。
○梨木委員 それでその報告書は検察庁当局に来ておりますか。
○山内説明員 報告書としては来ておりません。先ほど申しましたように、伺うからまだ正式に鑑定書類は届けられておりませんが、身長幾ら、体重幾らということは立会い検事から聞いております。
○梨木委員 それで写真なんかはとつてありますか。それをごらんになりましたか。
○山内説明員 死体の解剖に際しては、解剖しない前に写真をとるのです。
○梨木委員 そしてその身長は下山総裁の身長と符合しますか。
○山内説明員 大体符合します。
○花村委員長 林百郎君。
○林(百)委員 簡單にやりたいと思います。坂本刑事部長に伺いますが、第一、この前の日に下山総裁が警視庁に見えたというのですが、そういうことがあつたのですか。
○坂本参考人 見えたはずであります。
○林(百)委員 それは何で見えたのですか。
○坂本参考人 ちよつと、理由は、私記憶いたしておりません。
○林(百)委員 それをふしぎに思つたのですが、第二として、午後の五時ごろ警視庁としては三越本店の南口で自動車を発見したから、ただちに殺人事件調査班を派遣したというのですが、このころはまだ本人は生きておるのです。しかも殺人としてこの調査班を派遣するということは、これはどういうことですか。
○坂本参考人 お答え申し上げます。下山総裁が行方不明になりましたので、そういう搜査をいたしますためには一課の殺人とか、強盗とか、そういう係の刑事が最も適当でありますので、この係の刑事を――全員ではありませんが、相当数の刑事をさきまして、下山総の搜査に当つておつたわけであります。時たまたま自動車が発見されましたので、あるいは三越にと思い、すわつというので、ただちにその搜査に当つておつた刑事をそのまま派遣したわけでありまして、自動車の発見されると同時に、これを殺人事件として扱つたのではないのです。
○林(百)委員 それから下山氏のポケツトの中にからす麦の実が入つていた。これはズボンのポケットらしいのですが、これをズボンのポケットに入れるのを見たという人もあるし、またそれを見なくても、そのからす麦の実が付近にあるものかどうかはすぐ測定できると思うのですが、それがもう三箇月もたつのになぜ結論が出ないか、第一にふしぎに思つておるのです。
 また下山氏のくつの裏に、付近の草を踏んだような草のしるがついておるらしいという、これは付近の草のしると下山氏のくつの裏の草のしるとを分析してみれば、もうそろそろ結論が出てもいいと思うのですが、これも調査中だということになつておるらしいのです。
 それからもう一つは、自宅を出てから後、発見される五十分ほど前の午後十一時半までの下山氏の足取りが、警視庁の搜査によればちやんと判明しておるというのですが、そうするとほとんど格鬪して殺すとかなんとかいういとまはないと思いますが、この辺もどういうようになつておりますか。
 それからその次に、末広旅館のおかみの証言によれば、下山氏が單独で現場付近に来て休んだり、うろついたりした証拠があるというのですが、この辺も搜査の結果としてはどうなつておるか。
 その次は、死体の運搬について、土嚢でもつて模擬死体をつくりまして、それを運んで搜査した結果は、どこの道から来るにしても、その汽車にひかれた当時、付近にいた証人が七人ほど出ておつて、その死体を運んだとすれば、その人たちの目につかないはずはないわけですがこの点もどうなつておりますか。
○坂本参考人 ポケットからからす麦が出まして、これが現場とどう結びつくか。これはわれわれの今の搜査の研究の材料であります。足取りの問題につきまして、十一時半までの足取りだというような話を今伺つておりますが、その辺まで足取りがあつたかどうかということも、私どもから申し上げる筋合いでございません。それからくつの裏の問題、これは非常に下山事件をむずかしくしておりますのは、当日豪雨が降つたということなのです。豪雨がなければ、もつともつと問題が簡單だつたと思うのです。くつにつきましても、全部洗い流されてしまつたのでありまして、條件が非常に違うのであります。そこでこれにつきましても、確実なものをつかみたいと思つて努力いたしておるのであります。ただいまの御質問、まことに搜査のかんどころでございまして、できますならば、実はこれはお答え申し上げるのをかんべんしていただきたいと思います。
○林(百)委員 簡單でございますから聞きたいのです。それからもう一つは、下山氏の私金庫が千代田銀行にあつたはずなんですが、この私金庫の中を調査した結果、異常があつたかということ、これはどうなつておりますか。それが一つと、新聞によりますと、すでに死因は撲殺だといつて大きく発表になつておる。しかもその付近で格鬪して撲殺して、それからそこへ置いたというような発表があつたが、この新聞の発表は、搜査本部の科学的な搜査の結果とは全然縁のない新聞の発表であるかどうかという点が一つ、それからさらに下山事件の合同搜査本部会議が三日に開かれて、この場合には警視庁の金原係長から全般的な搜査の説明ののちに、搜査の結果は自殺と断定せざるを得ぬというような結論が警視庁としては出ておつて、この結論に対しては、検察庁及び法医学側も大体了承したというようなことをわれわれは聞いておるのでありますが、この問題はどうなつておるか。
○坂本参考人 撲殺したという記事があつたかどうかは、私非常に不幸にして存じませんでしたが、警視庁が発表しております問題は、搜像本部発表として出しましたもの以外は、警視庁として発表したものはございません。それ以外は私どもとしては存ぜぬことでございます。三日の会議に警視庁が自殺と断定したという報告をしたというお話でありますが、実はそういうことはございませんので、解剖所見につきまして、いろいろ学者の御意見を伺い、またわれわれの搜査の内容も申し上げて、そうしてわれわれの搜査をどういう方向にもう一ぺん考えるべきかということのための中間的な連絡会議でございまして、そこで決して自殺と断定したわけではございませんから、御了承いただきたいと存じます。
○林(百)委員 最初の下山氏の鑑定――警視庁の鑑定員の方が鑑定書を書いた場合には、これは自殺だという鑑定書になつていたのが、その後下山氏の名刺が出て来たために、これは非常に政治的にも重要な問題になるだろうということで、それが書き直されたという事実があるということを聞いておるがどうか、これが一つ。それから秋谷東京大学の法医学教授の乳酸量の測定に基く死後推定時間が、最初は午前のたしか九時から十時ごろという鑑定であつたのが、その後になつて、それが十一時から十二時というように、またこれも修正されたという二つの訂正がなされたという事実を、われわれ聞いておるのでありますが、その点事実なのかどうか。
○坂本参考人 ただいまの名刺が出て来たから、自殺を他殺に書きかえたというような事実はございません。これは搜査本部の者が前夜からかかつて搜査にあたつた連中が、皆ほとんどどしや降りの雨の中をついて未明に現場へ行つたわけです。それと同時に鑑定人にも来てもらい、それから検察庁からも見えておりますから、これはすぐ司法解剖に付しようというので、すぐ司法解剖に付したわけであります。その間に簡單に自殺の診断書が出るべき筋合いのものではありません。おそらくそれは話が違うのじやないかと思います。しかし見た人たちの間にいろいろの意見はあるかもしれません。しかし鑑定書がどうこうということはおそらくなかろうかと存じますので、御了承願います。それから秋谷博士の鑑定について、時間がどう修正されたかというお話でありますが、これは鑑定というものは神聖なものでございますので、おそらく正式の鑑定書は、これは検察庁の方でまだ御委託になつておりますから、検察庁の方からもまだ出ていないかもしれません。そのことについては今申し上げるわけに行きません。
○林(百)委員 最後に山内検事に検察当局の御方針を聞きたいと思うのでありますが、結局この事件について、検察当局が今の階段において持つている結論はどういう結論かということ、それが一つ、それから最終的の結論の一体どうなるのか。こういう重要な問題が、こんなにいつまでたつても自殺か他殺かわからないような状態が延びて行くことについては、やはり社会的な不安を増すことにもなるし、迷惑をこうむる側もありますし、その責任も一応感じていただかなければならぬと思う。最終的な結論は一体いつ出るのか。それまでどうするのか。それを最後にお聞きしたいと思います。
○山内説明員 現在どう考えているかということは、先ほど申し上げましたように、まだ他殺とも確信を得ませんし、それかといつて自殺だということも断定しておりません。要するに搜査がそういう判断をするのにはまだ未熟なのであります。つまり資料が足らないということになるだろうと思います。
 将来これをどうすかということは、結局これは政策の問題でなくて、刑事事件というものは、どこまでも事実の真相を追求するというのが使命なのであります。検事として、確信が得られるまでこの事実の真相を追求する。これは現在の法律の許す範囲内、あるいは現在日本の検察庁並びに警察の物的人的施設でやり得る範囲内において努力するよりしかたがないのです。現在どういう見通しかと申されても、できるだけ早期にこれを解決したいということを申し上げるよりしかたがないと思います。
○林(百)委員 実はこの事件が自殺か他殺かということで、迷惑をこうむつている側もあるわけです。あたかも巷間伝うるところによれば、他殺みたような、しかもそれが組織的な背後の何かの団体でもやつているようなことを伝えられ、あるいは書かれている側もあるわけであります。こういう側としては、いずれかの結論をはつきり出してもらうことが非常に重要だし、また社会の全般的な関心から言つても、こういう時の要路にある人の死因が自殺か他殺かわからぬ、しかもいつ結論が出るかわからぬという状態では、やはり治安の責に任ずる検察当局としては、責任を果せないことになる。そこでこれは実は今こういう搜査の方法をし、科学的な研究もしておつて、大体この総合的な結論はいつごろには出るつもりで、大体の見通しはこうなつている。もう死体は荼毘に付されているわけでありまして、あとは理論的な問題じやないかと思います。また残つている科学的な検査についても、そういつまでもかかるわけはないので、大体いつごろまでには結論が出るということでないと、検察当局の責任を果せないことになると思う。その点国民に対して、検察当局ははつきり理由を表示する必要があると思うのですが、大体の見通しはわからないですか。
○山内説明員 事件後すでに二箇月余になりまして、なおまだ資料が足りないということは、なるほど部外者の方から見ると、これは疑いを持たれるのももつともだと思うのでありますが、何さまあの下山事件につきまして、最初豪雨のために現場における証拠收集が十分できておりませんので、死因の想定をして搜査して行くうちに、ある一つの事実を発見すると、さらに新しい疑問が発生するのでありまして、その疑問を解決してさらに一歩進むと、またそこにこちらの思わぬ新しい疑問が発生して来るのであります。そういう状況でありまして、現場の残された死体について判定し、一応の調査はしましても、さらにそれについて学者の間に争いがあるということになれば――学者というものは、大体一定の條件のもとにおける一つの理論については、一応の結論を出してもらえるのですが、その條件というのは、われわれ搜査当局が出さなければならないのでありまして、そういう状況で、新しい事実を出された。また條件が多少かわつて来る、それについてもう一歩突き進んだ学者の意見を聞くというようなことで、だんだんその搜査が進めば進むほど、もちろん範囲は狹まつて行きますが、調査すべき事項は非常にふえて行くというようなこともあるのでありまして、それならば、現在いつごろになつたら終点につくかということを今はつきり申せと言われても、それはちよつと責任を持つてここにお答え申し上げるわけには行かないと思うのであります。
○花村委員長 世耕弘一君。
○世耕委員 供述してくださる方がお疲れのようでありますから、こちらは数点簡單にお尋ねしておきます。
 まず第一に刑事部長さんにお尋ねいたしたいと思いますることは、今度の下山事件の搜査に当つた警察犬を利用したか、こういうような事件には諸外国の例を見ましても、警察犬を活用することがきわめて効果的であるのであります。科学搜査の一助として、警察犬に対してどういうような見解を、あるいはこのたびの事件に対してどういう取扱いをしたかという一点、もう一つは事件が起つた直後だと思いましたが、情報を的確に提供した者に対しては五十万円の懸賞をかける。こういうことを新聞に発表されたことをわれわれは承知いたしております。ところがたまたまその記事が後に至つていつの間にか消えてしまつて、懸賞問題はなくなつたと伝えられておる。巷間伝えられるところによると、單なる聞込みぐらいで五十万、百万の賞與を政府が出すということがかりにありとするならば、われわれの現在の待遇をなぜ改善してくれぬかという横やりが出て、そこで警視総監はうやむやにした、こういう新聞記事さえ出たのであります。私は今日の議会において、事件が事件だけに、むしろ大衆の知惠を借りるという意味から、懸賞非常にけつこうじやないか、なぜそれを奬励なさらないのか、もし政府なり警察庁に金がなければ、大いに募集してこれに当るべきが最も時宜に適した方法ではないかと私は思います。この点についてどうですか。
○坂本参考人 警察犬の使用につきまして、含蓄のあるお話を伺いましてありがたく存じますが、実は残念ながら警察庁は警察犬は持つておりません。以前飼つておつたようでありますが、最近は食糧の事情や何かで警察犬は持つておりません。その当時警察犬の話が出ましたが、ただその條件としては、ちよつとあの事件には、警察犬を使つても降雨のために案外効果がなかつたのじやないかと思います。しかし将来の問題として、警察犬の使用というものは研究しなければならぬと私は思つております。新聞広告はたしかに見ましたが、これは私ども存じませんことで、私からお答えするわけに行きません。
○世耕委員 いずれ田中総監から聞いた方がよくわかると思いますから、そういたします。
 次にお尋ねいたしたいことは、末広旅館の実状調査に対して即日調査をしたか。聞くところによると、数日たつてから調査にかかつた。こういうふうに聞いておりますが、この点はどうですか。
○坂本参考人 刑事の足取り、地取り搜査のほかは、やはり聞込みでございます。聞込みというものは、こういう話をしておつた、ああいう話をしておつたということが耳に入つてからでないと、その線にたどりつけないものでございます。末広旅館の話が出ましたが、末広旅館の調査をいたしましたのは、むろん向うから話があつたと同時に調査をいたしておりますが、そういう話が入りましたのは即日ではなかつたと思います。そのために一日、二日あとの日になつたと思います。
○世耕委員 私の聞いたところでは、末広旅館の実情調査は四日以後に及んでおつたということを聞いております。もし事実とするならば、先ほど田中総監が刑事の勘というということを非常に賞揚しておりましたが、私はあまり勘がよくないと思わざるを得ない。それからもう一つは、下山総裁のポケットの中にピースのあき箱が二箇入つておつたということが伝えられております。ところが末広旅館に立ち寄つたときは、タバコを吸わなかつたということが公表されておるように思われるのであります。結局自殺か他殺かの問題は、自殺を濃厚に裏づける急所は末広旅館にあると私は考える。しかるにこの点に関して警視庁は十分の手配が届いていないのじやないか、この点にもう少し全力を注ぐべきじやないか、かように考えるのであります。他の委員からも質問があつたようでありますが、今日なお自殺か他殺かはつきりした返答ができぬということは、われわれ国民としてもまことに妙な感じをいたすのであります。他殺、自殺が犯罪搜査の上において重要で、搜査中であるから発表できぬということも一応了解ができるのでありますけれども、それは他殺の場合のことであります。自殺の場合は犯人というのはないのだから、むしろこれこれこうこういう実情だから自殺と推定するという、その根拠を私はこの機会に発表してさしつかえないと思う。この点はどうですか。
○坂本参考人 ただいま刑事の活動の問題につきましていろいろお話が出ました。実は刑事の活動というものはきわめて人に目立たないものでございますので、一般に御存じがないために、最近すこぶる信用がないようでございます。ちよつと時間をいただきまして説明させていただきたいと思います。アメリカの映画で「裸の町」という映画が参りました。その映画の中で、優秀なる刑事が非常な活動をいたしておるのでありますが、この刑事の活動の根本になるものは何かといえば、足であります。町中を歩きまわつて、どの家がこの薬瓶を売つたかというのを探しまわるのが、あの事件の犯罪検挙の端緒であります。この点につきましては、日本の刑事の活動とかわらないのであります。日本の刑事の活動の違います点は、アメリカのように自動車がないこと、電話ですぐものが足せないこと、無電もない、あるいはカードその他の整備についてアメリカほどうまく行つてない。これは機械力を使つておりますので、非常に能率を上げておるようでありますが、そういう点きわめて不十分であります。それから刑事の勘搜査ということをいろいろ申しますが、たとえば一人の犯人なら犯人、あるいはこの人間じやないかと思われるような人間があつたといたします。この人間かどうかということを目撃して確める場合に、あなたこの人を見ましたかと言つて、その人間の写真を出すものではないのであります。初めに、こういう人が来たそうだと言つて話すと、そういう人を見ましたよと言えば、どういう顔の人で、どんな服装をしておりましたかと尋ねる。そう言つておるうちに、向うは問わず語りに何でも話すのを最後まで聞くのです。聞いてしまつて自分のメモに入れておいて、自分の考えと合わせて行くわけです。そしてかりに写真を見せるにいたしましても、初めから本人の写真を見せるのじやありません。何枚かの似たような写真を見せて、この中にいるかと尋ねる。これは違うと言えば、また違つた写真を出してこれにいるかと言つて尋ねる。これですと言えば、そこに一つの勘が来るわけです。それからまた場合によりますと、顔の見なえい、姿だけしか見えないような、逆光線になつたような写真でございますね。そういう何人か並んだ中から、どれかということを相手に見せる。そうするとこれだと図星が来る。こういうふうに非常に手のこんだ搜査をいたしておるのであります。また彼が警察にこういう人に会つた、あるいは見たあの人間が犯人だということを言いに来た動機をわれわれは知らなければならぬのであります。あるいは人を陷れようとしてそう言う場合もございます。そこになぜ彼が警察にそういうことを申し出たかと心理について、克明に彼の語るところを聞き、問い、そしてそこにきわめて自然なものがある。あるいは子供が言い、親が言う、そしてその言動が一致して来るというところに、初めて目撃者というものの値打が出て来るのであります。決して刑事の活動というものは、一般世間で言われておるような、ただ自分の單純な気のついた面だけを先入観でのみ込んで調査をするというものではありません。こうして非常に長い間遠い距離を歩きまわつて、そうしてそういうものを探し出して来るわけであります。お話が出ましたのでそういう点をつけ足して申させていただきます。
○世耕委員 今の説明で一応了承いたしましたが、私はなおこれについて意がありますが、議論になりますから見やめます。警視庁が自殺説の出て来る根拠、これを一つ御説明を願いたい。
○坂本参考人 先ほどから申し上げておりますように、警視庁が自殺説をとつておるわけでは必ずしもございません。むろん自殺を推定せしむる面もあり、他殺を推定せしむる面もある。そういう意味でわれわれとしてはあくまでも搜査を続け、真実を発見したいと思つて努力いたしておるわけであります。巷間ややもすると警視庁が自殺に決定したとか、自殺説をとつておるとかいうふうに盛んに言われておりますが、決して私は自殺説をとつておるわけでもございません。なお私どもといたしましては、真実として自殺、他殺いずれにしろ決定するには、私はまだ資料が一部不十分であると考えておる次第でございます。御了承いただきたいと思います。
○世耕委員 露骨なことを申しますが、あるいは聞き伝えるところによると、警視庁搜査第一課は自殺説、第二課は他殺説、これを決定するのに刑事部長が苦心されておるということまで伝えられておるのであります。真疑は別であります。それはそれで、事実でなければまことにけつこうでありますが、しかし私は先ほど来申し上げたように、他殺説には犯人があるという点を考えられるから、搜査にさしつかえるということがあるが、自殺説は犯人がないので、こうこうこういうわけであるから自殺説が出るのだという、何らかそこに根拠がなければならない。また自殺、他殺両面にわたつて搜査が進められておるものとするならば、私は他殺説は遠慮しますが、自殺説の方は説明なさる方がむしろ国民が納得が行くのではないか、かように考えておりまするから重ねてお尋ねするのであります。検察当局の方と両方からお答え願えればなおけつこうだと思いますることは、当時下山さんをひいた列車が出発が八分遅れておる。機関士を起すのに三十分遅れた。機関車の圧力が低下したために八分遅れた事実、それからそのダイヤを乱して電車が先発した。当時において重要なダイヤが紛失されたということを伝え聞いておるが、このことは事実であるかどうか。またこういう聞込みに対して嚴重な調査をなされ、現に四十数台の貨車その他も調べたということを御発表になりましたから、当然御調査になつたと思いますが、この点御説明を願いたいと思うのであります。
○坂本参考人 お話の点十分調べてございます。遅れたという事実もございました。そのなぜ遅れたかという理由もはつきりわかつております。電車が先発したということは私聞いておりません。現場通過ごろには相当時間を回復しておる事実がございます。全部調べております。
○世耕委員 先ほども、総監の説明だつたと思いますが、死体発見が電車の車掌から報告があつたというように説明を聞いたのであります。われわれが專門的な人の意見を参考に聞いておりましても、機関車の車を走らせるときには、線路の上の針一本ひいても感じるものだ。もちろんくぎ一本ひいても十分感ずる。それが人間をひきながらその機関士が報告しなかつたということについて十分御調査なさつたかどうか、この間の御報告を承りたいと思います。
○坂本参考人 ただいまのお話のように、貨車の直後を通りました電車の運転士がこれを発見いたしております。ひきました貨車の方は、ヘッド・ライトが非常に暗いのであります。その下山総裁をひいたことについてショックがあつたか、あるいは何か異状がないかということにつきましては、われわれの方で克明に調べております。
○世耕委員 簡單でありますから最後にもう一点伺いますが、先ほど田中総監でありましたか、あるいは刑事部長さんでありましたか、下山さんが持つていた時計の針、ぜんまいをまわしたというようなことを聞いております。これはたれがまわしたのか。なお重ねてお尋ねしますが、自殺説の根拠について私が追及いたしましても一向に御説明のないところを見ると、いわゆる勘で自殺ということを考えておられるのか、何か自殺説に合すべき特殊な資料があるかということを重ねてお尋ねいたします。しかし説明ができなければ、お尋ねすることを差控えます。
○坂本参考人 私どもの方の刑事といたしましては、証拠品というものは非常に大事にいたすものでございます。下山総裁の遺留品を持つて参りました際、私は搜査本部におりましたのですが、ねじを巻かぬように、ねじを巻かぬようにと注意しながら、私に渡すくらいの注意力を皆持つておるのであります。しかし時計を持ちますと、とかく龍頭のところをやるくせが一般にできておりまして、非常に大事に始末をいたしておりますのですけれども、必ずしも担当の刑事ばかりがそういう証拠品を扱うわけでもございませんので、場合によると、ねじの巻かれる場合もあるかも知れません。しかし下山総裁の時計につきましては、ねじが巻かれても巻かれませんでも、時計自体は壞れておつて、時間はきちつと汽車の時間を示しておりましたから支障がない。ストップ・ウオッチというお話が先に出まして、ここでお話申し上げるのはどうかと思いますが、これはストップ・ウオッチを持つて行つたけれども、同時に死体運搬の練習をして、どのくらい時間がかかるかという測定をしておつたのでありますから、死体をかつぐのに一生懸命になつて、押すのを忘れたのでありまして、必ずしも刑事の非科学性ということにはならないのじやないか。ただ刑事といたしましては、いわゆる高等教育を受けたものでございません。従つていわゆる自然科学に対する知識は、必ずしも相当教養のある人に対して十分だとは申せないと思います。しかし刑事は殺人なり何なりに関しましては、普通常人以上の法医学的の知識もあり、その状況その他につきまして、いわゆる刑事として経験もし、本も読みして一つの勉強をいたしておるのでありまして、その道にかけましては相当のものだと私は信じております。将来なおかような知識につきまして、科学搜査、ことに証拠收集、そういうような面につきまして非常に大事なことは申すまでもないことでございますので、御趣旨の線に沿いまして、今後とも刑事の科学的な知識につきましても、できるだけ教養に努めたいと考えております。
○世耕委員 もう一点伺つておきますが、山内検事にお尋ねいたしますが、あなたは下山総裁事件の主任検事でしよう。
○山内説明員 さようでございます。主任の一人でございます。
○世耕委員 済みました。
○花村委員長 猪俣浩三君。
○猪俣委員 坂本さんにお尋ねいたしますが、下山氏らしい人物が当日徘徊しておつたという証人を何人くらいお調べになりましたか。そのうち確実なりと思われる証人が何人くらいあるか、それを一つお尋ねいたします。
○坂本参考人 ただいまの御質問でありますと、搜査の実体の問題になりますので、現在の段階におきましては御答弁申し上げかねますので、御了承願いたいと思います。
○猪俣委員 どうも私どもは不可解なんです、今国民の輿論を代表して私どもが質問申し上げておる。しかしどうもさつぱり要領を得ない。これも十日や二十日のことならわれわれもがまんするのですが、もう七十余日たつておる。何人が犯人なりやという問題ではない。自殺であるか他殺であるかという問題につきまして、さような判断ができない場合じやないと思うのであります。私どもが聞くところによれば、警視庁におかれましては相当の確信をもつて事実を認定されておる。そうして下山氏らしい人物が生存したりとする最後の時間が十一時五十分とおわかりになつておるということである。しかしこれを発表なさると、他殺説を自然と消滅せしめるがために躊躇なさつておるのじやないかと思う。今まで調べてわからぬ。また十数人の確実なる証言があつてほぼわかつておる。これ以後新しいそういう黙撃者が出るという期待のもとにまだ搜査を継続されるというのであるか、私どもは常識上考えて判断がつかぬ。今まで七十余日搜査なさつて何百人の人間をお調べになつた。そうして今日の段階に来ておるのに、下山氏らしい人物がその付近を徘徊したという証人が今後出て来るというお見込みのために発表なされないのですか、その点を発表願いたい。常識上考えられぬ。今後そういう人物が現われて来るであろうということで、いまだ搜査中であるというのか、それは今までのあなた方の調査の結果を国民に発表なさつつてもよいのじやないかと思います。何もそんなことにこだわらぬでもよいのじやないかと思います。ここらあたりで国民もさつぱりとしたい、あなた方もさつぱりなさつた方がよいと思う。あつちの面子、こつちの面子を考えずに発表なさつたらどうですか。中間発表の形でもよい。今までの搜査の結果においてはかような状態であるということを天下に向つて発表することは、何ら躊躇なさる必要はないと思います。その点について所感を承りたい。
○坂本参考人 犯罪の被疑者を発見する場合は、帝銀等の場合をごらんになつてもわかると思いますが、数箇月経た後に真犯人の調べに入る場合が往々あるのでございます。むやみに内容を搜査の途中において、確信の持てないうちにいろいろ発表いたしておりますと、これが殺人事件であつて犯人がもしあつたといたしますと、その犯人の調べあるいは探究について、非常な支障を生じてしまうことになるわけでございます。さような意味におきまして、われわれといたしましては自殺の線にいたしましても、他殺の線にいたしましても、いずれにいたしましても搜査の途中におきましては、なるべくこれは発表できないのでございます。もしこれを発表いたしてしまいますと、搜査のときにじやまになつてしまうわけでございます。われわれといたしましては自殺なら自殺、他殺なら被疑者をつかまえる。ここまで行かなければ、事件の搜査の内容につきましては、搜査上の必要から大体発表いたさない建前にいたして参つたわけでございます。さような意味をもちまして、特に御了承を願いたいと存じております。
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか――他に御質疑がなければ、次に三鷹事件を議題といたし、東京警察隊長金谷信孝君及び東京地検次席検事馬場義續君より、それぞれ搜査経過の報告を求めます。おのおの二十分程度でお願いいたします。東京警察隊長金谷信孝君。
○金谷説明員 三鷹事件の関係につきまして概略を申し上げたいと思います。
 事件は七月十五日午後九時二十三分に相なつております。これの事故の状況につきましては、新聞紙上等でおわかりのことと思いますので、詳細は省きたいと思いますが、場所は三鷹駅の構内であります。この三鷹駅と申しますのは、警察管轄から申しますと、三鷹町警察署の管轄に属するのであります。自治体警察署であります。所轄署でありまする三鷹町警察署の署長は、事故発生後とりあえず関係方面に連絡をとつたのでありまするが、事故のために電話がなかなかかからない。不通の状態でありまして、幸い武蔵野に国警の支署があるのであります。この支署から連絡をとつたような状況であります。すなわち国警の本部及び検察庁の方に連絡をとつたのであります。国警の各本部におきましては、宿直が連絡を受けまして、応援の要請を受けたのでありました。それが大体午後十時ごろになつております。ただちに宿直の搜査課員が現場に参りまして――距離の関係上十一時近くになつたと思います。しかも当初におきまして事件の内容が明瞭でなく、どういう程度の事故であるかも詳細は判明いたしませんでしたが、だんだん相当大きな事故であるという様子でありますので、国警本部の刑事部長が現場に参つたのであります。大体これが午後十二時近くであつたろうと思います。国家警察と自治体警察につきましては、平素から搜査に関しましては相互の間に共助協定というものがございまして、お互いに助け合う。大きな事故が起きました場合には、お互いに通報し合うということに協定ができておるのであります。なお本事件の場合におきましては、所轄署よりの要請もありまして、ただいま申し上げましたようにただちに応援の措置をとることといたしたのであります。それから急遽必要なる警視官を集めまして、事故の真相究明に当ることになつたのであります。その間事故が発生しましてから後、死者も出ましたし、負傷者も出ましたし、これらの救出の仕事、あるいは現場の保全の仕事というふうな仕事がございました。当時停電をいたしまして非常に困難な状況のもとであつたのでありますが、こういう仕事にも応援をいたして努力いたしたのであります。かような一応の経過を経まして、国警の私どもの方としましては応援するに至つたのでありまするが、翌十六日の早朝に至りまして、正式に三鷹署と国警本部との両者が相談をいたしました結果、合同搜査本部というものを国警の武蔵野市署に開設いたしたのであります。これは三鷹署がまだ臨時の庁舎で、新庁舎ができておらないので、便宜上武蔵野市署に搜査本部を設けたのであります。三鷹町の署長と、それから私の方から派遣されました刑事部長と、両人がこの本部の責任者として事実調査に当つて行く、こういうかつこうに相なつたのであります。人員は大体平均しますと五十人から六十人、大体六十人近くの陣容をもつて搜査に当りました。もちろんそのうち私の方から派遣をいたしましたものが、大体六十人くらいの場合は五十人近くで構成をいたしたのであります。先ほど申し上げましたように、事故直後からいろいろな負傷者の救出なり、あるいは現場保全をいたしますと同時に、事故の事実調査というものに当つたのでありまするが、搜査の一般的な経過につきましては、一応合同搜査本部は解消いたしましたものの、なお続行しておる面もあるのであります。なおまた公判前でもありますので、詳細にわたりまして申し上げることができませんのを、お許しいただきたいと思うのであります。大体われわれの搜査として、この合同搜査本部がとりました考え方なりをごく概略申し上げてみたいと思うのであります。
 先ほど申し上げましたように、翌十六日の早朝合同搜査本部が正式に開設をされまして、関係の所轄の検察庁とも密接な連繋をとりまして、現場を中心として真相究明に着手をいたし、できる限りの基礎材料を收集して参つたのであります。当初におきまして、事件がはたして人為的のものであるかどうかということも研究されたのでありますが、一応事件は人為的なものであるという結論を得ました。しかる後、人為的であるならば犯人はどうであるか、少くとも電車の知識なり、現場に密接な関連を有する者ではないかというふうに判断をいたしまして、根本的な搜査に乘出したのであります。搜査は先ほども申し上げましたように、現場を中心にいたしまして、基礎調査に重点を置いて基礎材料の收集に当りました。地取り搜査、あるいは聞込み搜査、参考人等よりいろいろ状況を聽取いたしまして、それとあわせまして現場中心の物件の採集に当りまして、極力合理的な搜査を行つて参つたつもりであります。かように逐次材料を收集し、搜査を進めて参りまして、被疑者の検挙をみたのであります。その間若干の物件を採集いたしたのでありますが、これは国警本部の鑑識課なり、研究所なりに依頼をしておる物もあるのであります。なおこれにつきましては、電気あるいは機械、理化学というような專門的の知識も相当活用されて、搜査の進展に寄與いたしたものと信じておるのであります。搜査のいろいろな方針、決定等でありますが、これは別段目新しいことではございませんので、三鷹署としては別に規定はないのであります。国警本部といたしましては、警視庁自体の規定なり慣習に基いてやつた方式でありまして、特別な方式というものは考慮されている面もないようであります。
 最後に今度の搜査に当りました自治体署である三鷹町署と、応援をいたしました国警の合同搜査という面についてでありますが、こういう複雜な大きな事件につきましては、今まで私どもとしては体験はないのでありますが、この点は両者の関係が非常にうまく参りました。搜査に関する共助協定の精神を生かして、平素から精神的なつながりを持つて、両者が謙虚な気持で搜査に当つて行くことが非常に大事ではないかということを痛感いたしたのであります。搜査を進める上におきまして、この点について非常にスムースに参りましたことを御報告申し上げておきたいと思うのであります。非常に抽象的でございましたが、概略だけを申し上げてお許しを得たいと思います。
○花村委員長 次に東京地検次席検事馬場義續君。
○馬場説明員 ただいま金谷隊長から事件の概要の説明がありましたので、私からは検察庁がこれに協力しました経過を簡單に御報告いたしたいと思います。
 事故の発生は七月十五日の午後九時二十三分ごろで、検察庁に対する連絡は三鷹町警察署から武蔵野区検察庁にその日の午後十時ごろ報告があつたのであります。そこで武蔵野区検察庁に在勤しております斎藤副検事がただちに三鷹警察署に参りまして、一応事件の概要の報告を受けて、事が重大であるため、ただちに八王子支部に連絡するような手配をしたのでありますが、電話の設備が非常に不便でありましたために、八王子支部にその事故の報告が到着しましたのが、午後の十時半ごろであつた由であります。これは今後の搜査について非常に重大な点でありますから、私どもの希望を申し上げたいのでありますが、従来警察電話は警察の所管に属しておりまして、俗に私ども直通電話と申して、すぐ警視庁の交換台に入つて、それから八王子の検察庁に通ずるというような仕組みになつておりましたのが、電気通信省の所管に移りました関係から、その直通電話が非常に少くなりまして、現に私の役所にあつたものも取上げてしまつた。仮に私が八王子の検察庁に連絡する経過を申し上げますと、私の所から法務府の交換を通じ、それから警視庁の交換を通じ、国警本部の交換台に行く。それから国警の八王子支署の交換を経て、それから八王子の検察庁に行く。こういうコースをたどりますために、どこか一つ話中であればもう通じないというので、お晝などはほとんど急に間に合わない、こういうような状況であります。このたびのこの報告も夜で、割合に早く通じたと申しましても、約三十分の間隔があつたわけであります。そこでこの報告を受けた八王子支部では、宿直の橋詰検事がただちに現場におもむくことになつたのでありますが、事が重大でありましたたために、幸い磯山検事が近くに居住しておりましたのを呼んで、そうして現場に出発しようといたしましたところ、八王子支部には古い車でありますが、一台配置しておりますが、運転手の宿舎がないために、運転手がいない。それで車が動かせないというので、今度は八王子の少年刑務所に自動車を貸してもらいたいという申し込みをする一方、八王子の管理部にも検事が現場に行くのに車を手配してもらえないかというようなことを頼んで、ようやく八王子管理部の三にある車を呼び寄せ、そうして検事が出かけて行くというようなことで、現場に着きましたのが十一時四十分ごろになつておつたのであります。新聞社の車はすでに十時ごろには現場に到着しているのでありまして、検事はよほど遅れて行つたというような状況であつたのであります。一方八王子支部においては、武蔵野区検から今申しましたように報告を受けて、磯山、橋詰両検事が出張をして現場の検証を行つたのであります。先ほど金谷隊長からも説明がありましたように、停電して現場は非常にくらい。それで結局正確な現場検証も意のごとくならず、翌日にまわすということになつたわけであります。そうしますと、ああいう事件になりますと、大勢の者が現場に参りますから、警察官としては立入らないようには努めておりますけれども、どうしても現場がこわれる結果になりますので、私ども今度の事件の体験から申しましても、とにかく夜ただちに現場にかけつけて照明の設備もあつて、時を移さず検証、現場の保存をやるというような設備がなかつたならば、新しい訴訟法のもとでは捜査がなかなか困難であるというように考えられるのであります。
 以上のような手配をいたしまして、一方徹宵情報を收集し、それから鉄道当局に依頼して、自然発車であるか、あるいは人為発車であるかというような点も取調べを進めまして、翌朝になると、先ほど隊長から説明がありましたように、合同搜査本部を中心に、現場附近の聞込みその他の基礎調査を始めまして、そうしてその集まつた傍証によつて被疑者を逮捕し、国警と協力して搜査を継続した結果、すでに御承知のように、今日までのところ九名をこの事件の容疑者として東京八王子支部は起訴をして、その後東京地方裁判所で公判に付することに大体決定したようでありまして、近く公判が開廷になる運びになつておるのであります。
 こういう下山事件なり三鷹事件なりの搜査を通じて、私どもが特に痛感しましたことは、現場の保存、現場における証拠收集の施設を大いに拡充することがどうしても必要で、検察庁にもある程度証拠收集の施設を設けることが絶対に必要であるということを痛感いたしておるのであります。たとえば本年の二月十四日に、やはり三多摩八王子支部管内の西国立と谷保駅間で、南部線における列車妨害事件というものが起きておるのであります。それはその両駅間の相当長い距離の軌條面に、道路標とか、線路のいろいろな標識でありますとか、あるいははしごかけ、墓石、コンクリートのかたまりというようなものを並べて、列車妨害をいたした事故があつたのであります。ところがその所轄署というのは、谷保村の署員十数名の小さな自治体警察で、指紋採取というような施設も全然持つていない。そこで報告を受けた八王子支部ではすぐ国警の応援を要請して、早く指紋等を採取するように勧めたのでありますが、向うの言うところによると、国警の援助を要請するにつき、費用に自信がなかつたというような点もあつて、荏苒時を過して、ついに十分な指紋の採取もでき得なかつたというような事実もあるのであります。そういうときに、指紋採取施設というようなものはそう大したことではないのでありますから、検察庁にもありましたならば、そういう自治体警察の事件のようなものも、検事が具体的に指揮して、ただちに証拠を保存するというようなこともできようかと思うのであります。それからいろいろな事を通じて、第一線に搜査をしている刑事の意見として出ておりますことは、搜査機関と鑑定をする機関とは別個にあることがいいのではないか、旧刑訴時代には、御承知のように裁判所は強制状をもつて鑑定命令を出し、裁判所が鑑定を命令して鑑定をするというような形になつておつたのでありましたが、新刑訴では搜査機関から裁判所に命状を求めて鑑定を命ずるという形になつております。いずれにしても同じようなわけでありますが、どうも搜査機関の鑑定機関で鑑定したのでは、同じ結論が出ても色めがねで見られるというような疑念が私はあると思う。たとえば今度の三鷹事件のあの発車原因等につきましても、そういう別個の鑑定機関というものがありましたならば、私どもとしても非常に便利に搜査を進めて行くことができたように思うのであります。それからたとえば下山事件で、いろいろな学者の間に意見の相意があつたというふうになつておりますが、そういう場合も、中立的な鑑定機関がありまして、そこにいろいろな学者が集まれるような組織にしておきまして、鑑定をいたしましたならば、そういうトラブルも起きないという結果になるのではないかと思うのであります。
 それからもう一つ、よく科学的搜査ということを申しますが、科学的搜査という言葉の意義はいろいろに使えますので、その人の考え方で広狹いずれにもなると思いますが、どうも科学的というとすぐ指紋とか、あるいは理化学的なものを使わなければ搜査が科学的でないというふうに言われがちでありますけれども、私どもとしては、これはむしろ合理的搜査という形に置きかえる方がよいのではないかと考えております。その合理的搜査の中には、むろん先ほど来問題になりましたいろいろな機械施設等が十分に設けられることは必要でありますが、やはり搜査陣容が相当豊富にあつて、聞込みでも熟練した搜査管がこれをなすというようなことにしまして、なるべく時のたたないうちに証拠を保全しまして――証人でも時がたてばたつほどその記憶の内容が間違つて来て、犯罪搜査に非常な誤りを來すような結果になりますので、最近のように非常に難件の起きております現状にかんがみましても、どうかそういう鑑識施設を拡充していただきますとともに、搜査の陣容、それから交通、通信の施設におきましても、国会において格段の御配慮をいただきますことを、私ども実務にあたつておる者としては切に希望する次第であります。
○花村委員長 質疑の通告がありますから、これを許します。中曽根康弘君。
○中曽根委員 三鷹事件については巷間諸説粉々としておつて、卒直に申し上げると、検察当局の発表すること、共産党の発表することが大分食い違つていることがある。国民も相当迷つているようでもありますし、私もいずれが真相であるかまた判定に苦しんでおる。ところが共産党の人たちが今まで号外や何かで発表したところを読んでみると、人権蹂躙もはなはだしいことを実はやつている、あるいは科学搜査などとはまつたくゆめの、見込み搜査のおそるべきものをまだやつているようにも考えられる。私は今まで権威ある共産党の諸君からそういう資料をもらつたことがない。ところが幸いにも先ほど梨木作次郎君、林百郎君から資料をもらつた。この委員会に共産党のそうそうたる同志である林君が、国会議員の名前で出したのだからうそはないだろうと思う。しかしこれがほんとうであるとすると、日本の司法当局というものはおそるべきことをやつていることになります。先ほどからこの委員会で、自由党と共産党との間に冷い戰争が行われておりますが、私は第三者である。そこで第三者として、これがはたしてほんとうであるかどうかということを対決させたいのであります。林君の言われることは、ここにあるから、私は検察当局にそこへ立ていただいて、私の一問一答に、自由にかつ勇敢に答えていただきたい。馬場さんと隊長さんにひとつ伺います。
 まず第一に申し上げたいことは、林君の権威のある書類によると、調査すべきことを調査してないということが書いてある。この林君の出した書類においても――今から三十分前に林君から手渡された「正義と自由を愛する皆さんへ」というこの書類にしても、大体同じことが書いてあります。そのまず第一は「事件発生以前より国鉄、警察当局は、三鷹駅附近で何か事件が起ることを予知していた。」そういうことが書いてある。その一つの例として、「立川国警支所長は七月二十八日に「事件当夜八時半頃、国警本部から三鷹附近で何か事件が起るから注意して警戒に当るよう通知をうけた」ともらし、立川市署長は二十七日に同様のことをもらしておる。と言つております。」はたしてこの事実があるかどうか、このことをまずお聞きしたいと思います。
○金谷説明員 お答えいたします。ただいまの御質問に、事件当夜国警から警察署に、三鷹で今晩何か起るかもしれないぞということが出たではないかというふうなことがある。こういう内容でありますが、警察といたしましては、当時事件が起りましたのが七月十五日であります。七月に入りまして巷間いろいろなうわさが飛びますし、警察としてはあらゆる不法なる事態が起らないように警備、警戒をするのが警察の仕事であります。当日具体的にどういう内容のものが出たかは私は存じませんが、警備の仕事として警戒の各署に対しまして――もちろんこれは自治体の方を除きまして、私どもが直接指揮できるのは国警だけでありますが、警戒措置は絶えずとつているのであります。必ずしも当日のみではない。ただ当日三鷹の事件のようなああいう大きな事件が起る、あるいは今晩大きな事件が起る、そういうふうなことを流したことは私は全然承知いたしておりません。
○中曽根委員 国警の方から、今晩三鷹事件が起るから注意しろといつたようなことは、事実無根である、そういうふうに解してさしつかえありませんか。
○金谷説明員 三鷹に今晩大きな事件が起るということを出した覚えはありません。
○中曽根委員 そうするとこれは間違いでありますね。その次に今度は検察当局に聞きますが、一方検察当局は、事件当時現場近くに隠れていたり、直後に現場で密議をしたり、死人の足首をふりまわしたような怪しい挙動のあつた民同派の田村、高田、石井氏らのような人々を逮捕せず、逆にその人たちを相談相手にして搜査を進めた。そういうことが書いてある。これは非常に政治的な搜査であるというふうに解するのですが、はたしてそのような搜査をしたのかどうか。これは馬場さんに……
○馬場説明員 今お話のような人であるかどうかしらぬが、民同派についても、いろいろ疑わしい点があるということを言う向もあつたので、それらについても検事と警察当局において搜査はしております。それからそれと相談をして搜査をするというようなことはありません。ただいろいろな状況を知るために、それらを取調べた事実はあると思います。
○中曽根委員 民同派だけを特に対象として、あるいは隔離したりして、情報を探知しようとかいうようなことはやらなかつたという意味ですか。
○馬場説明員 そいつはありません。
○中曽根委員 その次に進めますが、政治検察の事実として、こういうことが書いてあるのです。いかに検事が現在の政権と結びついて、本事件を政治的に利用せんとするかが明らかである。「検挙された共産党員の検挙理由」と書いてある。たとえば飯田七三氏は、事件前に三鷹附近にいた。事件後、六三型電車の欠点この通りと宣伝したという理由だけで検挙起訴された。山本久一氏は、事件当日中野にいなかつた。当日三鷹に重大事件が起ると言つたという理由であるが、これはその釈放が示す通り、事実無根である。その他七容疑者は、六三型電車の欠点を宣伝した、事件直後現場附近にいた、現場附近で会議をしたという理由で検挙されている。こういうことが書いてあるのですが、そのように特定の目的で、あるいは漠然たる理由で検挙したのか、その点を私はお聞きしたい。
○馬場説明員 私どもといたしましては、先ほど申しましたように、諸般の基礎調査をして、その調査の結果に基いて、今起訴されている人たちに容疑があるということでやつたので、その人たちが共産党員であるか、そうでないかということは、私どもの関知する外でありまして、たまたま検挙された者が共産党員であつたというだけであります。
○中曽根委員 そうすると、司法当局は権威をもつて、その林君の書いたことが間違いであると言うわけですね。
○馬場説明員 私どもはさように信じております。
○中曽根委員 しからばその次に被疑者に待遇の問題ですが、八月一日に逮捕された七名の被疑者は、府中の刑務所に留置されたが、その刑務所の処遇は、治安維持法時代にも見られなかつたほど残酷なものだつた。独房の窓はわざわざ板張りして、わずかの光線しか入らないようにした。人員不足を理由にして、ほとんど運動する時間を與えなかつた。差入れを許さず、読書の機会を與えなかつた。こういうことがかりにあるとすれば、私は時代錯誤もはなはだしいものであると思いますが、ほんとうにそのように板張りをしたか、運動をさせなかつたか、差入れを許きなかつたか、こういう点について伺いたいと思います。
○馬場説明員 それは刑務所のことで、私からはちよつと返答いたしかねます。しかし今日の刑務所の処遇が、そういうひどいものであるということは、私には信じられません。
○中曽根委員 あなたの所管外ですからそれは別といたしまして、その次に見のがすべからざる問題は、被告取調べに際して、人権蹂躙の事実があつたということが書いてある。両方の資料が同じですから、読んでみますと、こういうことを言つておる。富田検事は横谷君を取調べるに際し、お前はすでに共産党を除名された。党本部は襲撃されてむちやくちやになつている。共産党員は自分の身辺が危うく、身の振り方に困つておる。こんな事件などは捨てている。現に弁護士だつてだれも来ていないではないか。お前はいつまで党に義理立てしているのか。自分のことは自分で処理せよと虚偽の事実でだましたとか。あるいは磯山検事は田代君を調べるにあたり、もし正直に自白しなければ、お前は認定で死刑か無期になるのは間違いないと強迫した。あるいは屋代検事は外山君を取調べるにあたり、お前がもし検事の取調べを断るならば、自分も取調べに来ない。そうなればお前は死刑か無期だから、そのつもりでおれと強迫し、泉川検事は清水君を取調べるにあたり、共産党がやつたという証拠がある。今のままだと犯人と認定され死刑だと強迫し、木村検事は宮原君を取調べるにあたり、自白しろ、自白しないと法律で頭をぶち割つてやると言つておる。平山検事は竹内君を取調べるにあたり、竹内自身が單独で犯行したと自白しているのに、共産党員がこれと共同して犯行したとの目白を強要した。以上のような人権蹂躙の事実があると、まことらしく書いてあるが、はたしてまことか、うそか、これは重大な問題ですから……
○馬場説明員 さような意味の告発がありましたから、検事に対してそのことを聞きますと、全然さような事実はないと申しておりますが、これは告発でありますから、高等検察庁で搜査をしていただくことになつております。
○中曽根委員 佐藤検事長さんにお伺いいたしますが、そのような告発がありまして、今事件にしておりますか。
○佐藤(博)説明員 さようであります。
○中曽根委員 どういう方針でこれをお取調べになりますか。
○佐藤(博)説明員 最近主任検事を指名いたしました。主任検事に搜査方針の樹立を命じております。なるべく近く着手する予定であります。
○中曽根委員 次に、読売新聞でありましたか、七月十七日の読売新聞には、ハンドルにひもをつけた写真が、電車の運転台の実況として掲載された。これはあとでインチキだとか何とかいう報道があつたが、これははたして真実のものであるかどうか。どうしてこういう写真が出たか、そのことがおわかりでしたら、ひとつ知らしていただきたい。
○馬場説明員 私どもには全然わかりません。
○中曽根委員 読売新聞がかつてに出したというわけですか。
○馬場説明員 そうです。
○中曽根委員 それでは最後にお尋ねしますが、この三鷹事件を総括して、林百郎君や共産党の方々は、これは共産党を押しつぶそうとする吉田民自党内閣の警察政治であると断定しておる。このような事実がはたしてあれば、これはもうゆゆしい問題であつて、民主憲法の根底をゆるがす問題であるだろうと思うのであります。こういう言葉に対して、検察当局はどういう信念をもつてお答えになるか。またどういう考えでやつておられるか。はつきり言つてもらいたいと思う。
○馬場説明員 私どもは法の命ずるところによつて、公正に搜査をしております。その結果はいずれ公判において明らかになるだろうと思います。
○中曽根委員 最後にもう一つ聞きますが、今商業新聞の報道は、検察当局の宣伝以外の何ものでもないといつている。つまり朝日や読売や毎日など、一般の新聞の言つていることは、要するに検察の犬だ、そういう断定を下している。これは実に見のがしならぬ言葉であつて、プレス・コードというものにもある通り、これこそまた民主主義の根底をくつがえすものである。私はこういうことが真実にあるとすれば、国会の考査委員会でも調べなくちやいかぬ問題であるだろうと思う。はたしてこの朝日や毎日や読売の言つていることは、検察当局の宣伝をやつているのかどうか。私は検察当局自体の考え方を聞きたいと思うのであります。
○馬場説明員 搜査は秘密にやることが刑事訴訟法の建前でありますので、私どもはできるだけ搜査の内容を秘匿しておるのであります。決して一般の新聞に宣伝をしてもらうなんという気は毛頭ありません。
○中曽根委員 そうしますと、大体ここに書いてある共産党の林君や梨木君の言うことは事実と違う。検察当局としては、これを事実と違うと断定すると私は判断するのでありますが、われわれは国民を指導する上にそういうことも参考に聞いておきたいのですが、これを総括的に御返事を賜わりたい。
○馬場説明員 ただいまの答弁で御了解願います。
○中曽根委員 終ります。
○花村委員長 林百郎君、時間もありませんから、簡單に願います。
○林(百)委員 この今起訴されておる被告の中で、共産党員と共産党員でないものとありますか。
○馬場説明員 竹内被告が共産党に入党していないと思います。
○林(百)委員 この被告の中で自白をしているものがあります。
○馬場説明員 それは申し上げる限りでないと思います。
○林(百)委員 そうすると、あるかないかは言えませんか。
○馬場説明員 すべて搜査の内容でありますから、公判において……
○林(百)委員 だからその事件の内容はどうでもいいのですが、自白しているものがあるかないかについて……
○馬場説明員 あるかないかについては、私は申し上げることを遠慮したいと思います。
○林(百)委員 どうして言えないのですか。
○馬場説明員 新刑訴法の建前で、公判において明らかにするつもりであります。
○林(百)委員 内容はどうでもいいのです。
○馬場説明員 内容もやはり言われぬのです。
○林(百)委員 自白している者があるかないかぐらい、いいじやないですか。
○馬場説明員 これは私の申し上げる限りではありません。
○林(百)委員 そうすると、その自白している者は共産党員であるかないか……
○馬場説明員 それも私は公式に申し上げる必要はないと思います。
○林(百)委員 新聞に下手人は竹内……
○馬場説明員 それは自白に基いて認定したかどうかという……
○林(百)委員 自白しているということが全部新聞に出している。
○馬場説明員 私の方で発表した事実は断じてありません。
○林(百)委員 新聞はそれじやどこかで……
○馬場説明員 それは私は知りません。
○林(百)委員 そうすると、全部を共同正犯として起訴しておりますが、これらの被告がそれぞれどういう行動をしたかということは、なぜ起訴状に書かなかつたのですか。
○馬場説明員 この起訴事実は書く筋合いのものでないと思います。
○林(百)委員 筋合いないにしても……
○馬場説明員 今の下手人をおいて、あとは公判において明らかにしたいと思います。
○林(百)委員 だから下手人があるならば、他の者はどういう役割をしたかということぐらいは、なぜ書かないのですか。
○馬場説明員 それはこちらの搜査と、公訴の都合で書かない。
○林(百)委員 しかし起訴した以上は、合理的な起訴の根拠を示すのが起訴官としてなすべき義務じやないですか。
○馬場説明員 だからあの七名か八名の者が共同で謀議しまして、そしてあの二人が下手人として出た、こういう見解のもとに起訴をしております。
○林(百)委員 ですから、こういう人たちがどういう行動をしたかということは……
○馬場説明員 これは公判において明らかになります。
○林(百)委員 次に横谷君の問題ですが、あなたは下手人の中に横谷君を入れています。その横谷君が、その後検事の強迫によつて上申書を書かされたが、取消したいという申出をしているのを、なぜ検事局で許さないのですか。
○馬場説明員 そういうことは搜査の内容でありますから、公判においていずれ明らかにいたしたいと思つております。
○林(百)委員 そうすると取消しをしないという事実はどうですか。検察当局がその上申請の取消しを許さないということ……
○馬場説明員 上申書を取消すとか取消してないとかいうことは、おかしいと思います。上申書を出していれば、それを撤回するのは……
○林(百)委員 ですから検察局で検事の強迫のもとに目白をさせられた、それは私は間違つていると思う。取消しをさせていただきたいということを言うのは、どうして検事局は認めないか。
○馬場説明員 認める、認めないの問題じやないと思います。
○林(百)委員 そうするとあなたに聞くと、竹内と横谷が下手人としてやつていると言つておるが、竹内は一人でやつたのかということくらい……。それがはつきりしなかつたら、今中曽根君が言つたように、われわれの方がぬれぎぬを着せられて、共産党がやつているのじやないかというようなことになつて……
○馬場説明員 それは間もなく公判で明らかになりますから……
○林(百)委員 たとえば平澤事件のごときは、自白をすればすぐ発表している。この事件だけ竹内君が自分一人でやつたと言つているのを、なぜ検察局が新聞に発表しないのか。
○馬場説明員 私の方は必要ない限りは発表しません。
○林(百)委員 平澤事件などは、なぜ自白すると検察局がすぐ発表するのですか。
○馬場説明員 検事局としては発表しておりません。特に新刑訴法上、私は公訴の公判に至るまでての資料は発表しないことが訴訟法の建前である。こういうふうに信じております。
○林(百)委員 そうすると、たとえば例を申し上げますと、平澤事件のような事件は、あんなに詳しく事実がちやんと新聞紙に出ております。ところが三鷹事件だけは、ちやんと私がやりましたと出ているのを、全然新聞紙に出ないが、この点はどうですか、検事局は関知しないというのですか。
○馬場説明員 私が先ほど申し上げましたように、検事としては発表する筋合いでないと思つている。現に私が昨年やりました昭和電工事件におきましても、どの被疑者が否認して、どの被疑者が自白したとか、一度も発表した記憶はありません。それと同じような取扱いをしている。
○林(百)委員 ある事件によつてはその目白を詳しく書くこともあるし、ある事件によつては書かない場合もある。
○馬場説明員 私はどの事件も書くべき筋合いのものでないと思う。
○林(百)委員 それからこの事件の取調べに当つて、検察当局では、共産党はこういうようなことばかりやるのだ。共産党は本部が襲撃されてめちやくちやだ。共産党はこれ以上の暴力革命を意図しておるのだというような、共産党に対するあらゆる誹謗を、検察当局はこの刑事事件の取調べについて言つておるのでありますが、各被告も弁護人全部に訴えておるのでありますから、どうして刑事事件の捜査に当つて、共産党の誹謗をかく検察当局が言う必要があるわけでありますか。もつとはつきりした証拠を申し上げますと、九月十六日に出射検事は、共産党は沈潜の一途をたどつていると言つておる。この一検事が、共産党の政策に対してかような談話を新聞社に発表する必要があるのですか、これをもつて検察当局が政治的に動いておると言われてもしかたがないじやないか、この新聞を見てください。
○花村委員長 林君に御注意申し上げますが、先ほど中曽根君から同様な質問がありましたので、質問の重複を避けられんことを希望いたします。
○角田委員 議事進行について……。今日は科学搜査がいかに運営されておるかということを主たる目的として審査を進めておる委員会でありますので、その線に沿うた部分の発言を努めて求められんことを、委員長にこの際求めます
○林(百)委員 よくわかりましたが、実は共産党の私たちがこういうことを言うことは検察当局の取調べのやり方が非科学だと思う。全く目白一本で、何とかして自白を強要して、犯罪の唯一の証拠にしようという危險が多分にあるわけであります。これは法務委員会の皆さんにもよく知つていただきたいと思つて、科学的搜査のために、こういう拷問や誘導尋問によつて、自白中心の立場はやめてもらいたいという希望から言つておるわけであります。その点は御了解願いたいと思う。そこで自白を誘導する一つの方法として、ことに共産党員を取調べる場合には、共産党に対するあらゆるデマを飛ばす、あるいは共産党をお前除名されておるということまで検事は言つて、自白を強要しているわけですが、どうしてこういうことを検事は言われるか、なぜそれほど自白を必要とするか、あるいは物的証拠が足らないのかということをお聞きしておるわけであります。
○馬場説明員 いろいろなことを申されましたが、検事の説明によりますと、さようなまるでうそのようなことを言つた事実はないと申しております。ただこれは、そう申しても弁解にすぎないというようにおとりになるかも知れませんけれども、先ほど申し上げましたように、監督官庁たる高等検察庁の検事に搜査をしていただくことになつております。その結果をお待ち願います。それから何か出射検事ですか、これは最高検の検事の個人の資格としてやつたのではないかと思いますが、私どもは全然どういうことで出ているか、それはわかりません。
○林(百)委員 検事の諸君が共産党員を調べる際に、共産党に対するあらゆる誹謗をするということは、これは検事と被告の間ですから、ここで検事の方が否定されればそれまでですが、私の方も被告の方から聞いておるから言うわけです。ところがここに動かしがたいことは、九月十六日の読売新聞に、全然刑事事件と関係ないのに、出射検事が、共産党が今や党員の氣勢は沈滯の一途にあるかに思われるという、全然刑事事件に関係のない発表をしたのですよ。それは民自党とか、ときの政府の要路が政策の違いから言うならいいのですが、刑事事件の責任と治安に任ずる検事まで、しかも最高検察庁の検事が、なぜ共産党の党員の気勢が沈滯の一途にあるというようなことを言われるのか。この一事を見ましても、三鷹事件の全部の被告にわれわれ共産党に入つているものに精神的な打撃を與えながら自白を強要しているということについては、われわれどうしてもこれを信ぜざるを得ない。もしこれを否定されるような材料がおありになるならば、私は虚心坦懷にお聞きしたい。
○馬場説明員 それは先ほど申しましたように、共産党本部がつぶれていないのにつぶれているといつても、つぶれているかいないかはすぐあとでわかることですから、いかに検事でも、そんな見え透いたうそは言うわけはありませんから、また現に検事もさように申したわけであります。今の御意見につきましては私どもは全然開知しておりません。御意見は伝えておきます。
○林(百)委員 そうすると、この出射検事の談話は、出射検事個人としてやつたので、検察当局としては関知しないということですか。
○馬場説明員 私どもは全然関知していない。そういうふうに……
○林(百)委員 それからその次に、たとえば自白を強調する中に、たとえば自白を強要する中に、先ほど中曽根君も言いましたが、各被告が訴えるところによりますと、たとえば横谷、宮原君を調べた木村検事は、自白しないとお前の頭をたたき割つてみせるぞ。外山君を調べている屋代検事正は、貴様は生かしておけない。だれが何と言つても殺してやる。しかしおれたちは暴力ではなくて、法律で殺してやるから。それから清水君を取調べている泉川検事は、お前はけだものみたいなやろうだ。自白をしないなら自白をしないで、そのままで行けばお前は死刑になるが、そのつもりでいろと言うので、仕方がないから清水君は、正しく鬪つて死刑になるなら、それは本望だと言つているわけです。各被告もこれを涙をもつて訴えているわけなんです。今もつてこういう尋問を受けている。しかも午後の一時ごろから夜中の九時、十時までやつて、へとへとになつてしもう、これを毎日繰返されているのです。この点については、検察当局は何か御意見がありますか。
○花村委員長 それはただいま中曽根君が下問されて答があつたんじやないですか。時間がないですから、そういう重複した質問は避けていただきたいですね。
○林(百)委員 中心問題に触れると言わないんですから……
 それから山本久一君も、最初にこの三鷹事件に関係ありと言われた。この山本久一君はその後どういうことになつておるか。
○馬場説明員 山本久一被疑者につきましては、搜査の結果、まだあの当時起訴するに足る嫌疑が十分でないというので、これは留保のままになつておりますが、いずれ搜査が完了すれば、処理についての決定をするつもりです。
○林(百)委員 これも科学搜査の点に関していますが、最初検察当局では、これを三鷹事件の首謀者だと言つて飯田君と二人を起訴しているわけです。ところが、その後山本久一君は、全然三鷹事件と関係がなくて、公務執行妨害協ということで起訴になつているはずなんですが、この点はどういう点から最初検挙されて、それが公務執行妨害になつたのはどういう根拠からそうなされたか。その搜査の最初の方針について、何か思い違いがあつたのか、何か物的証拠が、足りなかつたか。その点はどうですか。
○馬場説明員 いかなる嫌疑で逮捕したかということの詳細は、先ほど申し上げましたように、まだ公判前でありますから申し上げることを差控えますが、山本久一につきましては、その当時三鷹事件に関連がある、別に首謀者と申したわけではない。容疑者という見解のもとに検挙して取調べた結果、あの二十日の勾留期間の取調べによりましては、三鷹事件に関係があるということを断ずるに足る証拠を発見することができなかつた。一面搜査の過程において、中野の電車区のあの事実と共犯であるという事実がはつきりわかりましたから、その嫌疑で検挙したわけです。
○林(百)委員 この電車が自然発車であつたか、あるいは人為的な発車であつたかということを証拠立てる一番重要な点は、高圧線を調べることが非常に重要だということを專門家が言つているのでありますが、この三鷹事件が起きて、警察官が出動するまでに相当の時間がかつて、地元の町の人たちがむしろその防衛に当つて、それから死体の搬出やいろいろで、アセチレンやいろいろ使つてしまつて、高圧線が切断されてしまつた。この電車が自然発車か人為発車かについて最も決定的な結論を出す高圧線が切断されてしまつたということを、われわれは聞いているのでありますが、この点はどうですか。
○馬場説明員 自然発車であるか、人為的発車であるかということは、事が非常に專門的な問題になるようでありますから、私どもに十分な專門的知識がないから、最初鉄道の関係者に十分な調査を委託して、その所説を聞き、またさらに第三者である――今名前を忘れましたが、ある技術者に鑑定を依頼して、その結果、自然発車でない、人為的発車であるという結論を得ております。
○林(百)委員 高圧線の切断の問題については、切断されていたかいなかつたか、その点は……
○馬場説明員 そういうことを共産党で言われているということを聞いておりましたものですから、その点の調査も命じておりますが、さような事実はない、何か修復したか何かを、そういうふうに誤解しておられるのじやありませんか。
○林(百)委員 すると、切断されていないと検事側は認定されるのですか。
○馬場説明員 私はこれまでのところ、そういうふうに切断したというふうには聞いておりません。
○林(百)委員 その次にその人為発車については、コントローラーと、運転手知らせ燈という電線があるのですが、そこをひもで縛つたということになつているらしいのですが、その縛つたひもが紙のひもか、あるいは麻のひもか、この縛つたひもが証拠として收集されているかどうか。この点は犯罪の認定の上に非常に重要ですがその点とれているか。
○馬場説明員 ある種のひもが証拠品として押收されている事実は申し上げてもいいのですが、それから先は先ほど申し上げましたと同じような理由で、公判において申し上げます。
○林(百)委員 すると、紙のひもだとも断定できないわけですか。
○馬場説明員 肯定も否定もしません。要するに、ある種のひもが証拠品として押收されている事実、これを申し上げるにとどめます。
○林(百)委員 それからこの暴走電車から指紋が検出されたか、されないか、その点。それからそれが各被告の指紋と照合して合致しているかどうか、その点はどうなつているか。
○馬場説明員 ある種の指紋が検出されておる事実がありますが、それから先はやはり搜査の内容でありますから、公判においてやりたいと思います。
○林(百)委員 それからこれはわれわれ弁護士としての名誉に関することでありますが、高相会議は、自由法曹団の弁護士連中がでつち上げた偽装のアリバイだということを検事が言つておるのであります。これは被告から伝え聞いておりますが、この点については何か科学的な根拠があるのかどうか。これはわれわれ弁護士としては、証拠を偽装したというようなことを言われることは非常に心外なのです。ですからその点について物的な、あるいは科学的な根拠があつて検察当局はこれを発表したかどうか。
○馬場説明員 さようなことを検事が発表したかどうか存じません。
○林(百)委員 それから次に新しい刑事訴訟法によりますと、被疑者が検挙されると同時に、弁護人と被疑者との面会が自由にされなければならないのに、その後検事の故意あるいは過失かは知らないが、弁護人と被告、あるいは被疑者との間の交流が非常に妨げられておる事実がある。現に私が竹内君に会おうとしたときに、検事が中に立つて会わしていない。こういうことは新しい刑事訴訟法の精神を非常に蹂躙することだと思うのですが、その点について検察当局は今後の注意をされたいと思います。これはどうですか。
○馬場説明員 何か連絡をかねるための面会が非常に支障を来したというようなことで、告発されておるようですが、検事が搜査をしておる最中に面会に来られたから、今搜査中と言つてお断りしたことがあると思いますが、故意に面会をじやましたということは私はないと思つております。それから私の方から申し上げたいことは、要するにこういうものはどれが真実であるかということを発見することが搜査の目的でありますから、弁護人の方でも真実の発見にはできるだけ御協力を願いたいと思います。
○林(百)委員 それから最後にお聞きしますが、ただいまあなたの言われた通り、真実を発見する必要があるということで、われわれ弁護人としては府中の刑務所に行きまして、被告の訴えた事実を率直に発表して、社会の人たちに対して三鷹事件の認識を高めようとして発表した。それに対して馬場検事が、この発表は実に意外であるということを発表されたのですが、今言つたように、真実を発見するためには、事の経過を率直にでき得る限り一般の人たち、あるいは国会に発表して、お互いに真実の発見に努力すべきであると思います。ところがわれわれのこの問題の発表に対して心外だと言われたのは、どういう根拠からですか。
○馬場説明員 これは私は、むしろ林さんが発表されたことの方が意外だと思つております。と言いますのは、事の真相を発見するのは、公判において明らかにするのが新刑事訴訟法の精神であると思います。現にああいう自白があつたかどうか知らないが、ああいうことを発表されますと、気の早い者は竹内を真犯人と考え、その家族に迫害を加える者があるかもしれない。あのことを公判まで秘密にしておくことが新刑事訴訟法の精神であり、思いやりのあることだと思つております。そういうことで発表したのです。
○林(百)委員 それほど竹内君のことを考えてくれておるのに、共産党員がこれに関係したということが毎日新聞に出て、その日の搜査の経過が事こまかにその日の新聞に発表になる。これは少くとも搜査当局と新聞社の方の直接間接の関係なくしては出ないことです。新聞にこういう事実が現に出ておることに対する検察当局の責任はどうするのですか。
○馬場説明員 実は新聞記事は私ども迷惑しておるのです。先ほど申しましたように、搜査は秘密にしておく、同時に御承知のように、新刑事訴訟法では証人を発見しましたならば、それを公判で初めて出して、裁判官に真証をとつてもらうことが新刑事訴訟法の精神であります。だから検事は秘匿しておるが、また報道陣は報道の使命があるから、いろいろな方法で記事をとつておられるので、それをみな検察庁の責任にされては、実の私ども迷惑に思います。
○林(百)委員 あなたは迷惑だと言われますが、発表される方はなお迷惑なのです。しかもあなたの方が何らかの関係がなくして、その日の搜査でたれが自供した、日もちやんと合つておる。しかもその自供した内容まで全部出て来るということは、あなた方が何らかの関係があるからだ。それは新聞記者ばかりに責任を負わせるわけに行かないと思う。もしあなたが私の発表に対して心外だと言われるなら、今後検察庁に絶対秘密を守つていただいて、少くとも公判に行くまでは絶対に新聞に出さないようにしてもらわなければならない。
○馬場説明員 その点は私まつたく同感です。私はそのつもりで去年以外仕事をしております。それから今事こまかに出ておるとおつしやいましたが、これはいずれ公判に検事の搜査の結果を立証しますが、そのときに新聞記事と対象してごらんになれば、検事が発表したかどうか、おのずからわかると思います。
○林(百)委員 私はこれで終ります。
○花村委員長 梨木君、時間がありませんから簡單に願います。
○梨木委員 無人電車が走つたというこの事件、現場の調査は、検察当局としてはいつたれにやらせたかを伺いたい。
○馬場説明員 人は知りませんが、鉄道の係員に命じて最初やらせまして、後にたしか高速度交通営団であつたと思いますが、第三者に正式に鑑定を依頼しまして、鑑定書ができております。
○梨木委員 この調査の結果、いつ検察当局は人為発車であるか、自然発車であるかということを確認されたのでか。
○馬場説明員 それは十六日に、すでに一応人為発車であるという結論を得ております。
○梨木委員 何時ですか。
○馬場説明員 時間はちよつと今記憶しておりません。
○梨木委員 私の調査によると、国鉄当局の技術団が来て調べたのは、当日の午前の十時前らしいのです。この点はあなたの方は御記憶はどうですか。
○馬場説明員 それは私直接いたしておりませんから、時間の点ははつきり申し上げかねます。
○梨木委員 それでは飯田、山本の両被告に逮捕状を出した時刻は何時ですか。
○馬場説明員 私は午後四時ごろと報告を受けております。
○梨木委員 この逮捕状が出る前に、ある新聞社から逮捕されたとか、逮捕状が出たとかいう号外が出ておるのでありますが、この点は搜査の秘密の点、また個人の基本的人権の点から言つても問題だと思いますが、この点についての検察当局の考えを伺いたい。
○馬場説明員 その点御説の通り、私どももあれが漏れたことは遺憾に思つております。
○梨木委員 検察当局の方が、自然発車か人為発車かということについて、実際に調べておらない事実がある。というのは十六日の午前十時ごろから、国鉄労働組合の方から專門家が搜査当局に、われわれにも調べさせてもらいたいと言つておる。それに非常に反対しておるのでありますが、それを許さない、そういう事実があるのですがこの点は、すべての国民が検察に協力するということを拒むような検察当局の態度であると思うのでありますが、これはどういうのですか。その点を伺いたい。
○馬場説明員 ああいう搜査に、いろいろな人が入り込んで来ては混乱してしまいますし、やはり今申しましたように、一応鉄道当局に調査をさせて、それから第三者に調査させるという手続をとつたものと思います。
○梨木委員 今の嫌疑者として逮捕されておる人たちの指紋がとられておるのかどうか、符合する指紋がとられておるかどうか、その点を伺いたいのですが。
○馬場説明員 逮捕した被疑者の指紋はもちろんとつておると思います。
○梨木委員 どこにあつた指紋ですか。
○馬場説明員 そういう逮捕した被疑者の指紋をとつて……
○梨木委員 それは電車の中の……
○馬場説明員 電車の中につきましては、先ほど申しましたように、ある種の指紋をとりましたが、それが符合するかしないかは、公判にて明らかにしたいと、先ほど来申し上げておる次第であります。
○花村委員長 時間がありませんから、簡單に願います。
○梨木委員 今逮捕されている方々から、先ほど来、非常に検事の調べ方に対して、どうも基本的人権並びに検挙の公正について疑わしいようなことを聞くわけであります。そこであなたに伺いたいのは、こういう調べに対しては、最も基本的な人権を尊重するようなそういう具体的な指導、しかも検挙の公正をはかるためにどういう措置がされたかを伺いたいのです。
○馬場説明員 これは検事の平素の心がけでありまして、常に私どもは搜査をする場合に、いろいろな世の非難を受けるような方法でない搜査をするようにということは、常に指導しております。
○梨木委員 私の知つている範囲内では、東京地検の検事の中には、デモ行進に参加する人間たちに、あれは非国民で、国賊だ、こういうような考え方を持つておる検事がおると聞いておるのですが、こういう頭で、これはしかも少くともこの事件に共産党があるのではないかというような頭を持つていると、そういう考え方に結びついて来る傾向がある。この点について、あなたの方ではどういうふうに共産党に対する認識を深めるための努力をされているか、それを聞きたい。搜査について、搜査当局の頭が切りかわつていないからそういうものが出て来る。
○馬場説明員 私どもとしては先ほど来申しましたように、どの政党がどうということはもちろん考えておりません。去年以来の事件をお考えになれば、どの点についても検事は遠慮したということはない、さように確信しております。
○梨木委員 なぜそういうことを私が伺うかと申しますれば、今国鉄労働組合の中にも、いわゆる統一派と言われるものと、民同派と二つある。こういう事実。その両方の動きがわからなければ、やはり実際は国鉄の労働組合に関係ありということの搜査の見込みでもし進められるならば、やはりそういうことに対する正しい認識が検察当局の頭になければ、検察のやり方が誤つて来る。この点を私は聞いておる。でありますからまず私が伺いたいのは、共産党の第五回党大会の宣言を検察当局は、読んでおるか、読ませておるかどうか、こういう点を聞きたい。
○花村委員長 答弁しないそうです。
○梨木委員 ではその次に伺います。清水時一という人がおります。これはこの事件が起つた後職場へ出勤しないで、約半月後の七月三十日になぞの入水自殺を遂げておるという事実は、検察当局は知つておりますか。
○馬場説明員 存じております。そうしてその当時この事件に関係があるかないか、搜査しております。
○梨木委員 どの程度の調べをしておられますか。
○馬場説明員 今その詳細は、資料がないからお答えできません。
○梨木委員 それからもう一つ伺います。町家五郎という人も、七月十五日に事件が起つた後に、病気と称して休んでおる。その挙動に不審なものがある。奇怪な点がある。こういう点があるのであります。これは検察当局は調べられましたか。
○馬場説明員 それも調べました。そうして関係ないという結論を得ました。
○梨木委員 検察当局の調べ方をみますと、いわゆる民同派と称する人たちの調べは、ほとんど全部身柄を拘束して調べておらない。共産党員並びに共産党員と目される人々は身柄を拘束して調べておる。こういうふうに見られるのでありますが、これは一体どういうわけですか。民同派と称する人々は身柄を拘束しないで参考人として調べておる。町家五郎などは非常に奇怪である。共産党員であれば拘束するような奇怪な行動があつた。われわれはその証拠は握つておる。一体これはどう意味ですか。
○馬場説明員 私どもは公平に調べておるつもりであります。ただ町家なり、その他の共産党員で容疑者と言われる人たちも一応調べましたけれども、これを逮捕して調べるだけの容疑の事実がなかつたということを申し上げるほかないのであります。
○梨木委員 山本久一君は当初の嫌疑より別の嫌疑で起訴されておる。この点は有力なる客観的証拠なくして、三鷹事件の嫌疑ありということで逮捕したことを裏づけるものであるが、この点はいかようにお考えですか。
○馬場説明員 それは見解の相違でありまして、あの当時あの程度の嫌疑があれば、逮捕するのはやむを得ないという観点に立つて逮捕しております。
○梨木委員 今の三鷹事件を調べておる七検事に対して告発が出ておるということをお認めになりますか。この七検事は今でも三鷹事件の搜査に関係しておるかどうか、伺います。
○馬場説明員 搜査をやつておる検事と、していない検事とあります。搜査陣は縮小いたして、ある程度帰しております。
○梨木委員 職権濫用の嫌疑あるものとして起訴されておる人間、告発されておる人間、この人間に調べさせるということは、はたして検察が公正に行われるということを保証されますか。
○馬場説明員 それは公判廷において、搜査の結果により御判断願うよりほかないと思います。
○梨木委員 少くとも公正であるべき検察のやり鯨が、起訴され、告発されるような、そういう検事に今でも依然として搜査をやらせるということは、だからこそ政治的意図をもつてやられておるということを言われても、弁解ができないだろうと思います。私はこれだけにしておきます。
○林(百)委員 簡單に今の新聞の問題ですが、佐藤さんに求めたいのです。これは政党として迷惑なのであります。民自党、社会党、共産党の間に各党の批判をし合うことはよいが、検事から共産党が――こう書いてある。「共産党の戰術を見る上で問題を含んでいるが、その後行われた国鉄、全逓、東芝などの労働攻勢はことごとく失敗している。このため党内に自己批判が起り、革命の時期を定めたことの誤り、暴力主義反対などが指摘され、この党内動搖をいかにさばくかがきわめて注目されていた」なんということをなぜ検事が言うか。これは民自党の諸君が言うならわれわれ納得します。しかしいやしくも絶対中立の立場で治安の任に当るべき検察当局が、この天下の公党である共産党に対してこんなことを言うことは許しがたいと思う。ですから私は、これは佐藤高検検事長に対してこの問題を十分調査して、これを取消させて、その結果を私の共産党の方に通告してもらいたいと思います。そうでなく、こういうことが許されると、これは政党を否認することになもなるし、またかつての東條時代の検察ファショにもどる。これはやはり日本の政党政治を守る上からも、検事からこんなことをわれわれ政党が言われる理由は絶対ないと思う。政党政治を守る上からも、国会の一員としてわれわれはこれを黙視できないと思います。適宜の処置をして、その結果を、少くともわれわれ法務委員でけつこうですから、御報告願いたい。これを要求しておきます。
○佐藤(博)説明員 その新聞記事は、実は私も拜見してやや感を深くしたのでありますが、はたしてそういう通りの内容の発表をされたのかされないのか、どういう機会にされたのか、どういう意図をもつてされたのか関知しておらぬことは、馬場次席検事がお答えしたのと同様であります。その事情と、責任とを取調べて報告するようにという御注文でありますから、これは検事総長にお伝えいたしますが、出射検事は最高検の検事でありまして、私の部下ではないのであります。検事総長にお伝えすることだけをお約束しておきます。さよう御承知願います。
○花村委員長 次に松川、平、帝銀事件を議題に供し、これが報告を求むることにいたします。搜査課長小倉謙君にお願いいたします。
○小倉説明員 福島県の松川事件につきまして、簡單に御説明いたします。御承知の通り松川事件は七月の十七日午前三時十分ごろの事件でありまして、事故の現場は東北本線の松川駅、金谷川駅の中間において起つたのであります。客車は七輛でありましたが、このうち機関車が完全に転覆いたしましたほかは、相当傾斜いたしましたまま脱線をいたしたのであります。死傷等につきましては、新聞において御承知の通りでございます。この現場は松川町と金谷川との境界にあたるところでございまして、カーブしておりまして、見通しのつかない場所であります。またこの妨害の手段から見ますると、レールの接続板左右四枚をとりはずしましたところ等から見まして、これは故意による妨害事件であると判断いたしたのであります。この搜査状況につきましては、実は私直接搜査をいたしておるわけではありませんので、福島県からの報告に基きまして、その要点のみを申し上げるのでありまするから、その点御了承願いたいのでありまするが、この事故の発生を警察の福島県本部におきまして承知しましたのは、午前四時過ぎでございます。ただちに搜査課員を派して、搜査に入つたのでありますが、この管内は国家警察の福島地区の地区署の管内であります。従いまして国家警察の警察隊長が中心となりまして、直接には本田刑事部長が指揮者となりまして、搜査員約五十名くらいをもちまして搜査を進めておるのであります。
 まず現場における状況でありますが、この妨害手段に用いましたと思われる器具を発見することができまして、これが出所等について現在検討中でございます。それからその現場においては、先ほど申し上げましたように、相当場所を知つている者ではないかというふうにも考えられますので、その土地の状況に通じている者、それから当時その時刻ごろ現場附近に足取りを持つていると思われるような者を中心といたしまして、搜査を行つているのであります。当夜は福島市において盆踊りがありました。また松川町において少女歌劇ですか、レビューがあつたそうでありまして、相当人出が出ておつて、その付近に足取りを有すると思われる者が相当数あるのでありまして、これらの者について逐一搜査を進めているのであります。しかしながら現在のところ、搜査状況は大体において順調であると実は思つておりますが、いまだ事件の十分な判明を見ておらない状況であります。細部の点につきましては、搜査上の点もございますので、あまり申し上げられないと存じます。
 それから次は平事件でございますが、これは事件発生後相当日数もたつておりますので、事件の概要は説明を省略いたしますが、本日の委員会の趣旨と考えておりますところに関連をすると思われてます点二、三を申し上げまして、御参考に供したいと存じます。当時平市署におきましては、午後の三時ごろからだんだんと群衆が集まりまして、五時ごろには署の中におつた者、外におつた者を合せて六百名以上の数字に達したような報告を受けております。平の市署から国家警察の方に搜査の応援の要請もありましたし、ただちに検挙をいたすべく準備を進めたのでありますが、群衆の数に対しまして、警察官の数が急速には集め得なかつたというような状況もございまして、極力現場における証拠の收集に努めたのであります。特に写真の活用を十分行いまして、当時平の支署において持つておりましたカメラ数台を用いまして、事件発生と同時に警察署の二階あるいは玄関表等に分散配置いたしまして、できるだけの撮影をいたしたのであります。この間デモ隊はカメラに対してはもちろん、警察署の建物に対し盛んに石を投げて妨害をいたしますので、相当困難ではありましたが、暴行の現場、あるいは集合した群衆の状況、あるいは庁舎破壞の状況、また退散後の現場等相当の写真をとることができまして、これが非常にこの事件搜査の資料となつておるのであります。そのほかガラスを破壞して庁舎内に投げられました石は非常に多く、数十箇もありましたが、そういうようなもの、あるいは群衆の使用した丸太、あるいは角材等も証拠としてとつてあるように聞いております。なお写真の撮影につきましては、この平市における事件と相前後しまして福島、郡山、内郷あるいは湯本等の警察署管内において事件が起つたのでありまするが、ある警察署においては、警察官が写真を撮影しようといたしましたところが、群衆のためにむりやりに写真機を奪取せられて、せつかくの写真がむだになつたというような事例もありまして、かなり写真撮影に対する妨害が盛んであつたように報告を受けております。なお搜査会議のことについてのことでありますが、国家警察に応援要請がありました関係上、福島県国家警察の本田刑事部長が搜査の中心となりまして、これに平支署及び平地区署の署長が加わり、さらに地方検察庁の平支部、あるいは地検の方からも参加していただきまして、十分緊密に連絡をとりながら搜査を進めて参つたのであります。今日までの検挙件数を御参考までに申し上げますと、逮捕者は百五十三名に上つております。まだ令状が発せられて逮捕にならないものがございますので、なお搜査は続行中でございます。簡單でございますが、以上をもつて御報告を終ります。
○花村委員長 この際一言申し上げますが、帝銀事件に関しましては、田中警視総監、坂本刑事部長がただいま関係方面に参つておりますので、他の機会に讓りたいと存じます。――何か御質疑がありますか。
○林(百)委員 松川事件について、私は現場に行つて来た関係で、小倉さんにお聞きするわけですが、御存じと思いますが、あの犬くぎを拔いたバーというものがあるのですが、そのバーが線路の隣のたんぼの中に突きさしてあつた。そこでそれを調べに行つて、このバーでもつて犬くぎを拔いたのだという有力な物的証拠になつたわけです。ところがこのバーに泥がついているといつて、警察官がみな洗つてしまつた。そこでせつかくそのバーからとれる指紋が全然とれなかつた。非常に有力な証拠を逃がしたという問題が起きたのですが、この問題についてあなたの方に報告があつたかどうか。先ほどからお聞きしますと、東京あたりの警視庁、あるいは国警あたりでは非常に愼重な態度で証拠を取扱つているようですが、こういう科学的な考えが地方の警察官まで透徹されていないのではないかと思いますが、その点の報告があなたの方に来ているかどうか、ちよつとお聞きしたいのであります。
○小倉説明員 お答えします。私直接に参つておりませんので詳細はわかりませんが、当時相当雨が降つておりましたことと、それからただいまお話のバーがたんぼの中に捨てられておつたという関係で、指紋の検出はなお続行中であるが、相当困難ではないかというふうに聞いております。
○花村委員長 これで各事件の御意見も承り、質疑も終りました。
 次に各事件を包括して資疑を願いたいと思います。田嶋君より質疑の通告がございますから、これを許します。田嶋好文君。
○田嶋(好)委員 本日の科学的搜査に対する国会としての研究は、非常に意義があつたと思いますが、今までの質疑の中で重大な点が一つ落ちておるのではないかと思います。それは国会といたしまして特に重大なことでありますが、今後の搜査を進める上に必要な経費の面であります。これは科学搜査を充実する必要があるとすれば、なおさら必要なことになると思うのであります。つきましては帝銀、下山、三鷹、平、松川等の事件に対する現在までの搜査費用につきまして、各関係者の御答弁をお願いしたいと思います。具体的にお答えができないといたしますれば、概略これくらいの経費があれば十分なる搜査ができるというようなお答えでもけつこうだと思います。
○坂本参考人 下山事件に関してお答えいたします。実は東京都の予算といたしまして、本来の搜査費として百数十万円の予算をいただいてやつております。しかし鑑識の問題は、むろん日日の事件について費用が必要であるというよりも、設備に非常な費用がいる。現在われわれといたしましては、まだまだ鑑識の設備を整えますには、現在までにかかつた以上のものが必要なのでありまして、ことに精密機械式のもの、こういう面の設備が非常に足りないのだ。しかもこれは非常に莫大な費用を要するのでございます。やはりそこに都財政というものがあり、警視庁自体がそれだけの設備を整えるには非常な困難がある。どういうものの設備かいうことになると、いろいろございまして、一例を申し上げましても、国警はあるようですが、警視庁としても分光器に現われたものをそのまま写真にとるという設備がほしいが、非常に高い。顯微鏡の台数もほしい。そういうような面、たとえば写真機の問題一つを考えましても、われわれといたしましては、鑑識の場合にはいまだに組立式のやつを持つて行つてフラッシをたいてとつておるという実情です。最近設備を整えるために、数十万円で新しい写真機を二、三台入れることになつております。それからまた場合によりますと、犯罪の状況を保全するために、映写機等も必要であります。これがまた相当の費用がかかります。一台くらいの映写機では決して役に立たない。やはり少くとも数台いる。こういう面のみならず、いわゆる鑑識として必要な血清検査にしましても、相当な費用がいる。これは簡單にどれだけのものがいるかということは、私も現在の状況ではちよつと申しかねますが、こういう面が非常に金がいるのではないか、こういうふうに考えております。
○金谷説明員 三鷹事件の関係でありますが、費用につきましては、まだ現在のところ一部搜査を続行中なので、全体の費用はこうであるということははつきりここに申し上げるまでに至つておりません。ただ現在まで私の方で応援をいたしました人数について要しました費用が、おそらく六十万か七十万くらいの見当になると思います。大体そういう見当だろうと思います。ただ鑑識関係におきましては、御承知の通り三鷹町署としては何ら持つておりません。また指紋の採取器とか、若干のものがあるだけで、あげてわれわれの国警本部あるいは国警のものを利用しております。特に国警本部といたしましては、警視庁とわかれましてから、鑑識設備におきましてはまだ生れたばかりで、非常に貧弱でありまして、もちろん警視庁あるいは国警本部と、所を同じくしてお膝元でありますので、ダブる点はありましても、ある程度の充実は必要だ、今後これについての経費は必要と思います。
○山内説明員 帝銀事件はすでに搜査を完了して公判継続中でございますが、搜査中に要しました費用を主任検事から計算して出させましたところ、大体三百二十七万円かかつた。しかも手持資材等の消費を加えると約五百万円かかつておる、そういう大体の見当になるのであります。
 下山事件については、まだ今日途中でございますので、大体の見当もつきませんが、私の方でいろいろな撮影機とか、あるいは照明機とか、その他の現場の証拠收集、保全等の器具を設備した鑑識自動車を設けるとしたならばどれだけかかるであろうかということ一度計画してみたのですが、現在の時価で約三百万円くらいかかるのではないか、そうしますとこの自動車一台あれば、この五百万円のむだな金を使わずに済んだのではないかということも言えるのであろうと思います。と申しますのは、この帝銀事件の搜査経過を見ますと、大体犯行は晝の三時ごろに行われて、警察署なり、警視庁に連絡があつたのは夕方六時ごろです。現場へ検事並びに警視庁の鑑識課員が参りましたのは、もう日が暮れてからである。十分な現場の検証、証拠の保全ということができないで翌日にまわしておるのであります。これなどはその日に丹念に検証しておれば、例の小切手が紛失しておるということは当日発見し得たのであろう、従つてその翌日午後二時に、犯人がその小切手に基いて、現金引出しに銀行に行つた現場を押えて、難なくこの事件は解決ついたのであります。遺憾ながらそういう施設がなかつたために、翌日午後四時になつて――金が引出されてから一時間余後になつて、初めて小切手の紛失ということを発見したような実情であります。また下山事件についてそういうことが言えるのであります。大体あれが犯罪であるならば、午前零時過ぎに行われている。そしてこれが下山氏の死体であることが早く確認され、しかも交通通信の機関が完備しておれば、これが早く本部に連絡できて、こういう鑑識自動車の設備がありますれば、すぐこれで現場にはせつける。そこへ多少雨が降つておりましても、テント張りでもして、あるいは一時汽車の運行も、複線でなく單線運行にでもして、嚴重な仔細な現場の検証並びに保全をしておりますれば、もう少しはつきりした現場の証拠をつかみ得て、あるいは簡單に片づいたのじやないかと、今日は後悔しておるのが実情であります。そういう完備した科学的な設備がないことを非常に遺憾に考えておるのであります。
○田嶋(好)委員 そういたしますと結論といたしまして、結局科学搜査に対する日本の警察、検察の設備というものはいまだ十分でない。従つて今後もつぱらこれらを充実して完璧を期せられるのだ。こういうことに皆さんの御答弁は承つてよろしゆうございましようか。――それではよいということに承つて、私の質問はこれでよろしゆうございます。
○梨木委員 佐藤高検検事長並びに馬場検事にお伺いやら、また希望をしておきたいのであります。先ほども私がちよつと触れましたが、実際今の検事の中には、デモ行進に参加することさえ非常に犯罪的なことのような感覚を持つている検事がいる。そして私たちがここに先ほども出しました文書の中で、検事の調べ方を見ると、三鷹事件のごときは、共産党のやり口はこんなことしか行わないのだとか、共産党がやつたという証拠を持つておるとか、こういうように言つて調べたのです。次席検事の話によると、それは当局局は否定しておると言います。これは調べた結果わかると思いますが、とにもかくにも私は全然言わないことは、被疑者は言うまいと思う。そこでこういうような頭の検事が、かかる複雑な、政治的また思想的な背景を持つたと思われるような事件を調べるにあたりましては、もつと現在の共産党に対する正しい認識を持つた人がこれに当る必要があると私は思うのです。聞くところによりますと、この三鷹事件には思想検事の経歴を持つた人が当つておると聞いておりますが、この事実なんかも私は非常に問題でと思うのであります。特に私はお願いしたいのは、共産党は第五回党大会宣言におきまして、日本共産党は現在進行しつつあるわが国のブルジョア民主主義革命を、平和的かつ民主主義的傾向において完遂することを当面の基本目標とすること、民主主義的な方法というのは議会主義的な方法ということになる。これは公然と天下に公表した宣言であります。これは共産党から出ている一切の文書を見れば、三鷹の無人電車を走られて、革命をやろうということを、どこに指令している文書があるか。それでは秘密指令が出ておるということを言つているが、われわれの入手してところによりますと、こういう指令は全部にせの指令である。このにせの指令を一体だれが出したか。こういうことを追究すれば必ずわかるのです。最近われわれが摘発したところによりましても、大阪におきましては、スパイを共産党の組織の中に放つて、この人間が、おれは共産党の本部から電信線を切断しろという秘密指令を受けておるということを、言いふらしておつた。おかしいから調べてみると、警察とどこかでこしらえたものであるということが、そのスパイによつて暴露されたという事実もあるのです。私たち共産党の今までのやり方を見て来られても、終戰前、共産党の合法的な活動が禁止されておつた場合において、そのもとにおいてわれわれの目的とする革命をやる場合と、今の革命をやる場合とは全然違う。違つたからこそこの第五回党大会宣言において、こういう革命の方式というものを発表したのであります。今下山事件や三鷹事件を共産党がやつて、大衆の反感や憎しみを受けるようなことをして、大衆の支持を得られますか。こういうばかなことをやつて、かえつて共産党の信用と権威をなくすようなはずはないということは、少くとも常識を持つた人間ならわかるはずなんだ。しかも共産党に嫌疑をかけるということは、いかに検察当局が現在共産党に対する認識が不足しているか。そうでなければあらかじめ政治的な意図をもつて、共産党を彈圧する目的を持つてやつておるものと言わざるを得ない。だからお願いしておきたいことは、共産党に対する正しい認識をもつと持つように、検察方面を教育する必要があるということを私は強調したい。これはぜひやつてもらわなければならぬ。検察当局の名誉のために、検察の公正のために希望しておきます。
○花村委員長 梨木さん、時間がありませんから、意見を述べることは差控えてください。
○梨木委員 もう一つ。現在被疑者として拘束されておる方々は、これは文書の授受も禁止されているし、面会はしておりますが、これも禁止されておつた。差入れも禁止されておる。それから監獄法で当然許さなければならないにもかかわらず、運動というものは全然許されておりません。こういうこともまつたく基本的な人権を蹂躙するやり方である。これは戰争前と同じやり方である。やはり運動させないことは刑務所の責任だろうと思うけれども、文書の授受は検察当局が指示しているので、こういう点も十分今後考えていただきたいということを私はお願いしておきたい。
 もう一つは、下山事件のごときも、これは私は七月七日ですか、法務委員会で樋貝国務大臣に質問した。国務大臣ですよ。この人がまずどういうことを言つておりますか、私は自殺でないというふうに考えております。その点は当時総裁が失踪した前後の状況から考えましても、それから死体の発見の状況から考えましても、自殺でないという終局的な考えを持つております。政府当局がこう言つておる。そうしてこれを新聞に一ぺん他殺と発表されたのが、その後いろいろ動揺しておるところに、やはりこの事件の検察の扱い方がきわめて政治的な含みを持つておるのじやないかという疑問を持つのである。こういう点についても、検察当局はやはり独自の立場でやつてもらいたいと希望しておく。この点について検察当局のお考えを伺いたい。
○佐藤(博)説明員 三鷹事件の検挙に、思想検事の経験のある者が関係いたしておるという御指摘でありますが、私の知る限りでは、さような者は関係しておらぬように記憶いたしております。なお共産党に対する検察官の態度、あるいは考え方については、私は意外なことを承るような感じがいたしたのでありまして、さようなことはおそらく万々ないと私は信じております。ことに私の部下に関する限りにおいては、私は機会あるごとに、検察官というものは現象をついて行くのである。現われた現象が不法越軌であれば、それはあくまでも究明しなければならぬ。その思想がどうの、あるいは政党が左右どつちであるというようなことにこだわつて検察権を行うべきでないということは、くれぐれも注意いたしておるわけでございます。なお御指摘のようなことがございますならば、今後一層注意いたします。
○花村委員長 最後に搜査当局の実務上の体験に基き、搜査機構、科学搜査等について、将来のあり方につき御意見を簡單に承りたいと存じます。まず国家公安委員長辻二郎君。
○辻参考人 国家公安委員会は、個々の運営については権限外でございますので、個々の事件についての意見を申し上げることは差控えます。ただいま御指摘がありましたごとく、科学搜査の現状及びあり方につきまして意見を申し上げたいと思います。先ほどから皆さんの御意見を伺つておりまして、科学搜査を十分やつたかという御質問が非常にたくさんあつたように思います。またそのその設備、方法はどうであるかというような御質問が非常にたくさんあつたように思います。新刑事訴訟法並びに新警察法の施行以来、人権の尊重は十二分に行わなければならないのでありまして、旧来の勘による、あるいは名人藝による搜査ということは一擲いたしまして、すべて科学的な帰納法によりまして犯罪を搜査することが、きわめて重要なことは申すまでもないのであります。昨年以来国家地方警察におきましても、科学搜査研究所を創設いたしまして、今日に至るまで鋭意この準備に忙殺されておりますが、何分にもまだ発足以来間もないことでありまして、旧来の方法から新しい方法に切りかえるべく、もちろん頭の切りかえ、方法も切りかえるべきでありますが、実際の方法となりますと、どうしてもこれは無手ではできないのでありまして、十分なる設備を持たなければ実行が不可能なのであります。現在の科学搜査研究所は五十二名の職員と、本年度の予算二千二百万円をもつて職務を営んでおります。一民間の科学研究所でも、現に七百名の研究員をもちまして研究に従事しておる。この研究所は終戰前までは、千八百名の科学者を擁して研究をしておつたのであります。この五十二名という人員がいかに少いものであるかということも御賢察を願いたいと思います。現在の研究所の施設、方法等をつぶさに見まして、世界の大体の水準には質におきましても、応用物理方面におきましても、電気その他の施設におきましても、一通りは施設を持つておるのでありまして、いかなる試験にも応ぜられることは確かであります。しかしながらこれはただ一応ひな型をそろえたというだけでありまして、これを運営して科学搜査の実をあげるためには、これが実用化されなければならぬ。全国において実行されて、また時を移さずこれが行われなければならないのは当然であります。そのためにいかにこの五十二名の職員を持つた研究所が規模が小に過ぎるかということは、申すまでもないことであると思います。科学搜査研究所の仕事は、研究と同時に鑑識をいたし、検定をいたすのでありまして、工業で申しますならば、試験所の性格、検定所の性格を持つた作業所でなければならないのであります。従つて試験官を振り、顯微鏡をのぞくだけの研究では済まないのでありまして、これを実用に供さなければならないのであります。従つて現在の規模では、とうていこれが思うような実積をあげられないことは、ここに申し上げるまでもないのであります。私はこの機会に国会の皆様にお願いいたしまして、十分なる科学搜査をなすための、必要にして十分な設備を持たなければならぬ、これに向つて皆様の全面的な御協力を願いたいと思うのであります。搜査の科学的な方法は、だれがどこまで行ないましても、まつたく同じ結果が出なければいけないのであります。資料のごときも、もちろん現在の研究所におきましては、その三分の一を研究所におきまして試験に供し、他の三分の二に対しまして、だれがどこで行つてもいいような機会を與えることを現に行つておるのであります。しかしこれを外国の例等に見まするならば、たとえばアメリカの連邦搜査機関は、指紋にいたしましても六千万の指紋を持つているに対し、国警の鑑識課では、三百万の指紋を持つておるという状態でありまして、一事が万事で、自動車のタイヤのサンプルにいたしましても、数百、数千のあらゆるメーカーのものを全部登録を持つておりましてこそ、初めて搜査の科学的な方法が成功するのであります。電線のサンプル、地下のサンプルに至るまで、ことごとくこれを集めて、いつ何時でも照合できるということが行われますためには、予算も数倍の予算をいただきまして、人員も十分に充実し、科学者を十分に配置いたしまして行うのでなければ、真の科学搜査の実はあがらないのは当然であると思います。しかしこれは何分にも莫大な費用を要することでありますが、新警察法、新刑事訴訟法のために、これはいかなる費用をも惜しまずにやることが、結局においていいことではないか、実のあがることではないかと考えております。もちろん科学搜査は、ただ單に顯徴鏡とか分析とかいうようなことでなしに、搜査全体の方法が科学的でなければならないことは申すまでもないのであります。また先ほどどなたかからもお話がありましたごとく、通信の施設、また機動力等が加わつてこそ、初めて迅速な科学搜査が敢行できるのであります。これらの一般の施設に対しまして、現在の日本の警察では、これが近代警察と申すにはあまりに貧弱な状態でありまして、これの整備に対しましては、今後の科学搜査のあり方について十分にお考えをいただきまして、きわめて公平な、嚴正な、しかも整備した研究所を持ち得るように、議員諸君の御協力をひとえにお願いする次第であります。
○花村委員長 次に高検検事長佐藤博君にお願いします。
○佐藤(博)説明員 皆様御承知の通り、警視庁には犯罪搜査科学研究所というものを持つております。相当の施設が漸次充実しつつあるのでありまして、これをわれわれももども利用をさしていただいておるのでありますが、検察庁に関する限りにおきましては、おはずかしい話でありますが、さような機械的な、あるいは自然科学的な施設、機械というようなものの設備は、ほとんどまつたくないと申してさしつかえないのであります。早い話が、写真機一台を持つているという検察庁は数えるほどよりございません。大多数の検察庁は写真機一台も持つておらない。また写真機のある所でも、写真機を縦横に操縦して、これを活用するという技術を持つている人がおらない。先ほど馬場次席からもお話がありましたように、たとえば電話であります。ようやく公衆電話は一通り全国に通じましたが、これは皆さん御経験のように、公衆電話はしばしば故障があります。遠方にはなかなか通じません。そこで警察電話がごく最近でありますが、非常に整備されて参りました。この警察電話に依存することが非常に多いわけであります。しかしこの警察電話は、主として警察相互間に御利用になるために設けられているのでありまして、三段階、四段階に交換台を経由しなければ相手方を呼び出すことができない。こういう現状でありまして、時間を要する。また警察でお使いになる場合は、われわれはこれを利用することができないというようなことで、連絡の設備が非常に不自由をいたしております。
 そこで、それならば搜査は、これに科学的な搜査は、警視庁なり国警なりにおまかせしてもいいのではないかということも一応考えられるのでありますが、これはそうは参らぬ。こういう施設というものはあらゆる所にあつて、これが相競つてその成果をあげて行くというところに、非常に進歩発達があると思うのであります。それよりもなお手元なところで、検察庁が独自で搜査をする必要がしばしば日常多数にあるのであります。ことに検察庁が直接手をつけた方がよろしいという事件も、経験上非常に多いのであります。警察は一応証拠固めができればいいというところまでは、警察の職務でありますが、検察庁は検察官として、法律家として、さらにこれを分析解剖して参りまして、公訴を提起する価値があるという判断をしなければならない。公判に移りましては公判を維持する責任を持つている。公判廷において立証するということが検察庁の責任なのであります。さようなために、検察庁に独自の科学搜査施設というものが必要であることは、言うまでもないと思うのであります。今申すように、せめて手近なところから――大きな科学施設を全国各庁に設けることは、これは今日の国家財政の上から申しても容易ならぬことでありますが、ごと手近なところから漸を追うて完備するという御方針でもよろしいのでありますから、検察庁の科学搜査の施設及び技術を入れるということに、ひとつ強い御協力をぜひ仰ぎたいのであります。私の考えておりますのは、先ほど申した写真機の設備、それからら検察庁の直通電話、無電、その他先ほど山内検事から申しましたが、鑑識自動車というようにものも、せめて高検の所内だけでも配置が願えれば、どれだけ費用が節せられ、搜査が合理的、かつ早期にできるであろうか、こう考えております。せつかくの御配慮でありますので、ぜひこの機会にこれが実現できるようにお願いをしたいのであります。ところが結局搜査の科学化と申しましても、犯罪を早期に、かつ合理的に検挙するということなのであります。これはただ機械設備、自然科学的な施設ばかりでは、決してその機能は果すことができない。これに加えますのに、やはり人的の面について、よほど考えていただかなければならないことがあろうと思うのであります。検察庁今日の現状を申しますと、欠員も相当ありますが、検察官も事件の負担量が最近非常に激増はい参りまして、ざつと調べたところによりますと、昭和二十二年で、一昨年までの過去十年の統計を見ますと、検事一人についての一年の担当事件数は八百八十三件にすぎなかつたのでありますが、二十三年、昨年度においては、俄然これが一人、二千四百七十一件、まつたく三倍に激増しておるのであります。これが本年に入りまして、刑事訴訟法が非常にむずかしくなつたということで、相当制約を受けておりますので、あるいは事件が多少減りはせぬかと考えておつたのでありますが、全国と三分の一の事件を持つております私の管内の東京高検において、過去六箇月、一月から六月までの統計で見ますと、昨年の一月から六月までの審理件数よりも五割五分増しております。これでありますと、事件は減るというようなことは、ほとんど考えられないのでありまして、あるいは本年は検事一人あたり三千件あたりを持つことになりはしないか、こういうように予想されます。これがいかに負担過重であるかということはお察し願えるのであります。
 それと負担量が多いので、検事も相当疲労もいたしまするが、この負担量をこなして行くためには、検事の数をふやす。それから科学的な施設でもつてこれを補つて行くということの二つの道があるのでありますが、そのほかに検事の素養、能力を増して行くというくふうもぜひとも必要なことでなかろうか。何となれば、検事の増員ということは御承知の通り非常に資格に制限がありますので、そうふやそうとしてもふやすわけには参らないのでありますから、どうしても検事一人の教養、訓練というものを強化して参りまして、一人々々の機能をより一ぱいに出させるということのために、検事の待遇というものをひとつあわせてお考えを願う必要がある、こう考えるのであります。検事の待遇は、一昨年国会の非常な御盡力で、大体において裁判官、判事と同等の待遇をするという制度ができたのでありますが、検事は国家公務員法の上で、一般職になつております。裁判官は御承知の通り特別職でありまして、人事院の制約を受けないのであります。しかも最高裁判所が財政権を持つておりますために、報酬法の範囲内で自由に昇給ができる。そのために制度の上におきましては、判検事平等というひとを御承認願つたのでありますが、実際の運用において、判事の方がはるかに高い待遇を受けておる。はなはだしいのは、何十年かまつたく同格で来た者が、あるいは多少下つておつた判事が、同格あるいは一段も二段も検事より上の待遇を受けておるような実例が多々あるのです。そこで大体調べてみますると、一般の判事、いわゆる平刑事、地方裁判所以下の平刑事ですが、平刑事の一人平均本俸は二万八百八十二円、これに対して一般検事の一人平均本俸は一万六千百二十五円というので、四千七、八百円も開いております。これが検察官の志願者にたちまち影響いたしまして、どうしても判事の志願者が多いのであります。検察庁はいかに努力をいたしましても、判事の志願者の方がはるかに多い。現に昭和二十二年度におきましては、判事の任官者が六十三人、検事の任官者が四十人、二十三年度におきましては、判事が三十二人に対して検事が十八人、本年採用いたしましたのは判事が六十八人、検事が四十人にすぎない。検察官の方は非常な努力をこれに拂つておるのでありますが、志願者がない。また素質も相当落ちる。待遇の面等におきまして、志気に非常に影響いたしまして、十全な機能を出させる上においてかなり困難があるというようなこともございますので、できますことならば、国会の御盡力によつて、検事も判事も今日のところでは資格あるいは任免の手続等においてそう径庭はない。日本では従前から判事、検事をあわせて司法官と申して、まつたく見られて参つたのでもありますので、判事と同様に、検事も公務員法の上において何とか特別職というふうに願えぬものであろうか。そういたしますと、待遇等の上において相当運用が楽であるということになりますし、検事の地位もより一層安定する。それから検事だけではやはり検察機能というものは発揮できないので、検事の活動には常に影が伴うように、検察事務官というものが必ず補助をいたすのであります。これもよく御承知の通りでありますが、この検察事務官の待遇が非常に惡いのでありまして、御承知の通り、これは特別職というようなわけにはどうお願いしてもできないと思うのでありますが、一般公務員の待遇でも、警察官、刑務官、経済調査官、海上保安官あるいは財務官というようなものについては、特別法の規定が定められておるのでありますが、ほとんど警察官とかわれがない。ことに検事搜査の事件については、警察官とまつたく同じ動きをなしておる。それから庶務、会計というような一般の行政事務をやつておりますものでも、これは当直をしておる。大衆犯罪が起きますれば、広島の日鋼事件でもそうらしいのでありますが、会計の者であろうが、庶務の者であろうが、秘書の者であろうが、飛び出して搜査に従事するというようなことで、事務官僚を平生はいろいろわけておつて、全部が全部犯罪搜査に従事するわけではありませんが、一朝大事があれば、同じように搜査に飛び込むのであります。従つて平生それにたえ得るだけの指導訓練を強硬にやつておるのでありますのに、これが特別俸給表の恩典に浴することができない。それで非常にみじめな待遇に甘んじて、機能を発揮する上において非常にさしさわりを来しておるという現状でありますので、警察官、あるいは経済調査官、あるいは刑務官とほぼ同様の特別俸給表に組み入れていただきたいということを、数年前から強くお願いいたしておるのでありますが、まだ実現いたしておりません。人事院当局においても大体おわかりくださつたことでありますので、ここで国会の御協力が得られますものならば、遠からず実現可能だと、切に期待を申し上げる次第でありますので、御盡力を仰ぎたいのであります。
 検察事務官の本俸を申し上げますと、現在の六千三百七円ベースで一人当り四千五百四十五円です。これは本俸ですが、これで夜中でもどこへでも飛び出すことは非常にむずかしい。いろいろ申し上げましたが、人的な面において強行できますように御配慮をお願い申し上げます。
○花村委員長 次に刑政長官佐藤藤佐君にお願いします。
○佐藤(藤)説明員 先般以来当委員会におきまして、犯罪の科学的搜査について重大な関心を寄せられまして、愼重御審議くださいますことを、私どもは非常に感謝いたしておるのであります。申すまでもなく新憲法並びに新刑事訴訟法のもとにおきましては、犯人を搜査し、これを訴追し、これが裁判を求めるためには、もつぱら科学的方法によつて証拠を蒐集し、かつ犯罪事実を立証することが当面の急務と申さなければならぬのであります。ところが最近の犯罪現象を見ますと、犯罪は増加の一途をたどるばかりでなく、その様相はいよいよ複雜化し、また集団化いたしておるのでありまして、最近には、今朝以来御調査になりました平事件、下山事件、または三鷹事件等困難な事件が相次いで発生して参つたのであります。かような犯罪傾向に対しましては、従来のような犯罪搜査の方法、または立証方法をもつてしては犯人を迅速に検挙し、かつ円滑に公訴を遂行することがきわめて困難と感ぜられるに至つたのであります。この困難を克服するために、法務府におきましては、まず中央に検察科学研究所を設置して、検察の科学化に関する研究を担当させることといたしまして、さらに検察官の科学的教養を一般に高めることに役立たしめたいと考えておるのであります。なお検察陣の機動的運営と、迅速かつ的確な搜査の遂行のためには、通信施設及び交通器具の整備を計画いたしまして、目下大蔵当局とその予算上の折衡を続けておる次第でありますので、幸い予算が国会に提出せられましたあかつきには、何とぞ御協賛くださいますように、あらかじめお願いいたい次第であります。なお搜査を遂行する上において、その搜査の完璧を期しますためには、どうしても検察官と司法検察職員とが密接なる協力のもとに、常に緊密な連絡を保つて、同一歩調をもつて進んで行かなければ、搜査の完璧を期しがたいものと考えておるのであります。刑事訴訟法におきましては、御承知のように従来の犯罪搜査に関する制度を改めまして、従来はすべて検察官の指揮命令のもとに司法警察職員が犯罪搜査に当つておつたのでありまするが、新刑事訴訟法においては、検察管と離れて、独立して司法警官職員にも犯罪搜査の権限が認められたのであります。しかしながらこの犯罪搜査と申しましても、検察官が犯人を起訴し、そうして刑罰権を行使する。その目標のもとに犯罪搜査をいたすのでありまするから、犯罪搜査に当つては、司法警察職員は常に検察官の一般的な指示指揮に従う。また検察官が独自に犯罪搜査をする場合においては、その搜査の補助として指揮に従わなければならぬ。こういうような新刑事訴訟法の建前になつておるのでありまするが、これは一に犯罪搜査については、検察官と司法警察職員とが常に緊密な連絡を持つて、そうして相協力しなければならぬという建前をとつておるによるのであります。現在国警本部の方に科学搜査の研究所がありまするし、また警視庁その他の自治体警察のおきましても、鑑識の設備があるのでありまするから、検察当局としましてもその鑑識設備を利用して、犯罪搜査に役立たしめることができれば非常に幸いなのであります。しかしそれだけではとうてい犯罪搜査を期することができないので、その点を痛感いたしまして、法務府としては、最近犯罪搜査並びに犯罪の立証について検察の科学化を研究し、また検察官の科学的教養を一段と高めたい、こういう希望のもとに検察科学研究所の設置を考慮いたしておる次第であります。
○花村委員長 これにて本日の日程を全部終了いたしました。下山、三鷹、松川、平等各事件に関する犯罪の科学的、搜査に関し、国家地方警察、警視庁、検察庁、法務庁、国家公安委員会のそれぞれの立場より、有力な意見を述べられたことを委員長よりお礼を申し上げます。
 本委員会といたしましては、これらの意見を参酌し、次回国家において搜査機構の改革整備、科学的搜査体制の確立につき、適切なる立法並びに予算措置を構ずべく、委員会活動をいたしたいと存じます。よつて国家の治安維持、犯罪の予防並びに防止に資したいと考える次第であります。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時十九分散会