第007回国会 外務委員会 第5号
昭和二十五年二月二十二日(水曜日)
    午前十時二十分開議
 出席委員
   委員長 岡崎 勝男君
   理事 菊池 義郎君 理事 近藤 鶴代君
   理事 佐々木盛雄君 理事 竹尾  弌君
   理事 仲内 憲治君 理事 福田 昌子君
   理事 並木 芳雄君 理事 聽濤 克巳君
      大村 清一君    塩田賀四郎君
      中山 マサ君    橋本 龍伍君
      益谷 秀次君    増田甲子七君
      武藤運十郎君    山本 利壽君
      小林  進君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣
        外 務 大 臣 吉田  茂君
 出席政府委員
        外務政務次官  川村 松助君
        外務事務官
        (政務局長)  島津 久大君
        外務事務官
        (條約局長)  西村 熊雄君
        外務事務官
        (管理局長)  倭島 英二君
 委員外の出席者
        專  門  員 佐藤 敏人君
        專  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
二月二十日
 在外同胞引揚促進の請願(小平久雄君外一名紹
 介)(第八九四号)
の審査を本委員会に付託された。
同月十五日
 中共地区残留同胞引揚促進の陳情書(東京都議
 会議長石原永明)(第三六四号)
 未帰還同胞引揚促進に関する陳情書外八件(長
 野市長野県議会議長片桐知從外十名)(第三七
 二号)
同月十八日
 未帰還同胞引揚促進に関する陳情書外一件(広
 島市広島県議会議長小谷傳一外一名)(第四二
 一号)
 外地戦犯服役者の内地服役許可に関する陳情書
 (高松市香川県議会議長大久保雅彦外五百四十
 四名)(第四二四号)
 在外財産補償に関する陳情書(大分市中央通り
 五百六十五番地大分県更生連盟会長首藤定)(
 第四三九号)
 未帰還同胞引揚促進に関する陳情書(大牟田市
 議会議長坂井又雄)(第四四八号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 国際情勢等に関する件
    ―――――――――――――
○岡崎委員長 ただいまより会議を開きます。
 国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑は通告順にこれを許します。佐々木盛雄君。
○佐々木(盛)委員 吉田総理大臣は、一両日前のわが民主自由党の役員会あるいは閣議等におかれまして、中ソ同盟の出現によつて、戰争の危険性が急迫したかのごとくに説く者があるけれども、これは一部の謀略的な宣伝であつて、自分の見解によると、戰争はここ数年間は起らないと思う旨のことを、披瀝されたとのことであります。国民一般はこの総理の言葉に非常な関心と期待を抱いておるものと考えます。なぜかならば、もし起るといたしますならば、この次の世界戰争というようなものの性格が、非常に悲惨な、文字通り人類の最終戰の様相を物語つているときに、たまたま日本並びに日本と結ぶ国々を対象といたしました中ソ軍事同盟が出現いたしましたために、冷たい戰争の状態から、さらに進んで熱い戰争の段階に突入したと見る国民一般に、大きな不安と脅威を投げかけているときにおきまして、今回の総理の戰争は当分起らぬというような声を聞いたのであります。まつたく国民はやつとほつとして生気をとりもどした感を持つているわけでありますが、この点は全日本国民大衆がひとしく抱いております重大関心事でありますから、ひとつ国会を通じ、この機会に首相のお考えのほどを明らかにしていただきたい。なお総理の国際情勢に対する見通しの根拠等につきましても、承ればけつこうかと思います。
○吉田国務大臣 佐々木君との間の取合いでは、やおちようのような感があつて、はなはだどうも私として答えにくいが、現実やおちようでないことを、まず第一あなたとの間に協定しておきたいと思います。
 それから今のお話のうちに、中ソ協定というのは、陰謀であるとか、謀略であるとかいうようなことは、これは役員会では言つておりません。謀略であるかどうか、中ソ條約なるものがどうしてできたか、その経過とか性質等について、われわれは今日新聞以外に何も承知しておらないのでありますから、これは謀略なりと断ずることは、私においてできないのみならず、また連合国の間の二箇国の話合いでありますから、これを何も知らない日本の当局者がかれこれ申すということは、穏かならぬ話でありますので、もしあなたがそういうふうにお聞きになつたなら、これを訂正していただきたい。
 それから国際情勢はいろいろ議論の立て方もありましようけれども、ことに今日日本のような、国際関係について何らの正確なる情報を持つておらない、あるいはまた情報を得る機関もない今日においては、ひつきよう私の考えも、また見方も、結局勘ということに帰着するのであります。そう言わざるを得ないのであります。何となれば、何らの外交機関を持つておらない今日に、客観情勢はこういうふうに発展しているのだ、あるいは中ソ條約はこういうふうにしてできたというような、正確な情報を持つておらないのでありますから、結局勘ということになるのであります。この勘が大事だと思うのであります。いろいろ議論がありますけれども、新聞等にいろいろ名論卓説が出ますが、ずいぶんわれわれから考えると、勘のはずれた議論がたくさんある。この勘はどうしてできるかというと、結局われわれのような外交で苦労した人でなければ、この勘は理解ができないと思うのであります。まず岡崎君のような專門家と話合いをすれば、これはすぐわかると思いますけれども……。これはやおちようかもしれませんが、この勘が大事だと思うのであります。ことに将来日本が武力のない国としては、国際情勢がどう判断されるかということは、国民がどう判断するかということが大事だと思います。それでこの勘が正しいか正しくないか。この間世耕君が、長生きするだろうと私に言つたけれども、私から言うと、世耕君は命が短かいだろうと思います。何となれば、勘が惡いのだから……。盲でも勘の惡い者はどうもはなはだ命が短かいと同じように、目のあいた人間において最も大事なことは勘だと思います。この勘はどうしてできるかというと、今申したように、多少その道で苦労しないと、年期を入れないと、この勘はできないと思います。この点について佐々木君がいかなる勘があるか、私は知りませんが、この勘は平生において国際情勢に注意しておられませんと、自然出て来ないのであります。
 あとは勘の問題になりますが、私の勘としては、当分戰争はあり得ないと思うのであります。というのは、今日二つの大戰争を経たときにおいて、しかも親を失い、子供を失つた人がたくさんあつて、戰争に勝つた国でも苦労している。イギリスのごときは勝つた国でありますけれども、にもかかわらず社会生活からいつてみても、個人生活からいつてみても、非常な苦しみをしている。過去においてゆたかな生活をしたイギリスが、今日極端な例を申すと、イギリスはスコツトランドのごときはウイスキーの本場であつて、そのウイスキーをイギリスにおいて飲めない。すべて輸出する。好きな酒さえも飲めない。日本でも好きな酒が飲めぬということになれば、大事件であろうと思います。カストリといえどもあえてこれを辞せないというほど、酒に対する国民の興味があるのですが、その大事なウイスキーが飲めないというような状態でありますから、もつて一斑を知るに足るので、勝つて損、負ければなお損、こういうような戰争を再びしたいという気分に当分ならないはずだと思います。しかしどの戰争のあとでも、一時平和が危殆に瀕するということはあり得るのであつて、これは歴史が証明していると思います。第一次世界戰争のあとでも、ルールの占領当時一時平和が乱れ、平和が危殆に瀕した。これは著明な、だれも今日記憶に残つている事件でありますが、第二次世界戰争においても、戰争後四、五年たつた今日などは、最もそういう神経が過敏な時期だと思う。そこで冷たい戰争とかいろいろなことを言いますが、私は戰争をきらうという、戰争のさんたんたる記憶が、まだ人間の記憶に新しい今日において、大戰争が再び起るということは、常識においても、勘においてもないと思う。しかしながら冷たい戰争がどうとか、それから戰争は今にも勃発するようなことを言う人は、これは勘のない人か、故意に言いふらす人か、あるいは知識のない結果であるか、その三者であろうと思います。概念から申して、戰争は当分あり得ない。遠き将来は知らないけれども、この近き将来において、近年において、少くとも面前において、中ソ條約ができたからといつて国際情勢が非常に緊迫した、それでただちに戰争ということは、私は関連した一つの問題とは考えられないのであります。その他の根拠はどこにあるかと言うと、今申したように在外公館の機関がないのでありますから、こういう事態がある、ああいう事態があると申しても、新聞以上の物的証拠はない。従つて勘でお話するよりしかたがないのであとは勘の問題であり、知識の問題であり、あるいは党利党略は別とすれば、二つの問題だけであります。この判断から考えてみて、私は当分の間は戰争はあり得ない、あればわれわれは極力いかなる方法をもつても平和を維持するために努力をする。少くとも日本国は平和の運動の先がけになつて、国民は世界の平和のために盡すという覚悟が必要であるということを、この間党の幹部会で申したのであります。それが私の申した話の真相であります。
○佐々木(盛)委員 次に簡單にお尋ねいたしますが、これは先般も私が本会議におきまして緊急質問をいたしました。これに対して殖田法務総裁も答弁されたのでありますが、共産主義というものが暴力によつて少数者の独裁政治を実現しようという考えであることが、近代民主主義に反することは明白であります。従つて講和会議を迎えるために、ポツダム宣言の命ずる日本の民主化ということがその先決條件であるといたしますならば、日本の正しき民主化を阻害する共産主義活動というものに対しても、――またこれは対日講和というものを妨害するものであろうと私は考える。これに対しまして政府当局はどんなお考えを持つておられ、またどんな対策を持つておられるか。講和会議のじやまをするものである、こういうようなお考えをお持ちでないかどうかを承りたいと思います。
○吉田国務大臣 政府としてはいかなる思想を持ち、いかなる考えを持つておるか。思想の自由を認めた以上は、共産主義が概念としてははなはだ国家のために有害である、あるいは講和促進のために有害であることは考えられましようが、それだけでは、政府はいかなる取締りもいたしません。しかしながらそれが行動に現われて現実に講和を害する行為に出た、あるいはまた治安を乱したという場合には、すなわち国法、国憲に反する行為があつた場合には、これは断然たる処置をとるべきだと私は考えております。
○岡崎委員長 佐々木君、遺憾ながら時間が参りましたから、次にまわします。竹尾弌君。
○竹尾委員 私のお尋ねは約六つばかりありますが、時間がありませんから簡單にお尋ねをいたします。
 第一、中ソ條約の付属協定と申しましようか、大連、旅順の返還に関する協定で、大連、旅順は対日講和ができたらすぐこれを返す、もしできない場合でも一九五二年までにはこれを返還する、こういうことをうたつてあるようでありますが、その條項に関する外相のその内容についてのお考えを承りたいと思います。これは二年の間に対日講和ができるという意味でありましようか、あるいはその二年間に、こういう條約を廃棄してもいいというような事態が生ずるという場合を予想したのかどうか。そういう点についてひとつお尋ね申します。
 それから第二番目は、この講和の受入れ態勢つきましてはいろいろ外相も委員会の席上その他でしばしば説明されております。国民外交の実をあげなければならぬ、昨日は院内の閣議で、永世中立という消極的態度をとることでなく、もつと積極的に平和の確立に対して努力しなければならぬ、こういうようなことをおつしやられておるようでありますが、しからばその平和確立に対する積極的な何か具体的な方法があられるかどうか。この点についてお尋ね申します。
 第三番目は、これは佐々木委員の質問に関連いたしますが、共産主義に対する思想的な宣伝についてはこれを取締らない。しかし具体的な行動についてはこれを取締らなくちやならぬ、こういうことでございますが、しからばこれについて、将来何かこれに関する取締りについての法律などを出される御意思があるかどうか。これをお尋ね申します。
 第四番目は、中ソ條約の締結に伴いまして、アジアの情勢がいずれにいたしましても緊迫化するということは想像されるところでございます。そうなりますと、今いろいろ問題になつておる反共の線を結ぶ太平洋條約というような、この太平洋條約の締結のごときもアジアの政治日程に上らないとは限りません。日本もこれについて無関心ではおられないというような事態が起るかもしれません。これはあるいは仮定の問題かもしれませんが、これにつきまして外相の御所見を承りたいと思います。次にもう一問ございますが、共産党が最近非常に全面講和論を表面に押し出して参つたのであります。全面講和はわれわれ世界人類がこれを熱望するところでございましようが、現在の情勢におきましては全面講和どころか、いわゆる單独講和すらも困難視せられておるような状態でございます。この点について、はたして講和というものが早急に締結できるものかどうかというような点につきまして、首相兼外相の御信念を伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えいたします。中ソ條約についての行きがかりとかあるいは性質とかいうことは、先ほど申した通り、新聞以外何らの正確なる情報をわれわれは持つておりませんし、かつまた連合国の二箇国の間に結ばれた條約でありますから、これに対して政府当局としては、かれこれ批評がましいことも愼みたいと思います。また正確なる材料がありませんから資料もできないような始末であります。またこの條約ができたがために、はたして東亜の状況を緊迫せしめたかどうか。緊迫せしめたという説も立ちましようが、あるいは緊迫しないという説も立ちましよう。先ほど申す通り、これは勘以外に私としてはお話をするという何らの材料を持つておりませんから、これに対しては、あなたの御満足の行くような答弁はできにくいと思います。しかし大体の私の勘から申すと、さつき申したようなある二箇国の間にある條約ができた。それはむろん客観情勢に何らの刺激を與えないとは考えられませんけれども、その刺激の程度が、ただちに冷たい戰争まで持つて行くほど危殆に瀕せしむるかどうか。今日われわれの承知いたしておるところでは、中ソ條約ができたからただちにどうこうということは、中国の内政にはどういう関係を起すか、反響を生ずるか、これは私がここでもつてかくあるべしというようなことを言うだけの何はありませんけれども、共産政権ができた今日において、こういう條約がかりにソビエトとの間にできれば、中共政府の地位としては、相当有利にこれを利用するであろうと想像いたしますけれども、それが中国以外に出て、東亜の、少くとも日本にどういう影響を生ずるか、私は影響はないものと思います。また條約ができたからその條約が必ず行われるか、これは行われる場合もあれば、行われない場合もあります。ことにソビエト国が條約を破棄したとか無視したとかいうことは、過去においてもずいぶんあることでありますから、中ソ條約ができた、それが日本の講和とどういう関係があるか、あるいはまたその條約が中国において約束通り一九五二年に至れば撤兵するとか、引渡しをするとかいうことが行われ得るか、行われ得ないか、これも相当疑問のあるものではないか。條約通り必ず條約が履行せられる、條約が履行されなかつたり、もしくは條約を破棄した例もあることでありますから、その條約通り五二年に至つて條約が実現するかどうか。これは多少問題がありやしないかというような状態であります。こういうような過去の例もありますから、この條約ができたからといつて、ただちに極東の平和に云々とか何んとかいうことは、中国内の内政にいかなる影響があるか知りませんけれども、客観情勢に非常な影響を及ぼすということは、ちよつと私においては、私の勘としては考えられないのであります。またこれが日本との講和にどうなるかということになれば、これはそういう情勢ができたということは、列国としてある條約ができた、あるいはそれが中国にある影響を生ずるというようなことがあれば、その状況をすべて判断して対日講和に臨む、極東委員会あたりが対日講和を取上げる場合に、極東における形勢はどうであろうか、一応形勢を見定めてからということも考えられるでありましようから、このために対日講和がおそくなるとも早くなるとも言えません。が、そのために対日講和條約をやらないという結論に達するということも、これまた言い過ぎではないかと思います。 それから永世中立の問題でありますが、これはよく永世中立云々ということを言われるのでありますが、私は永世中立ということが、日本の国防なりあるいは日本の地位なりにどういう関係を生ずるか。戰争に巻き込まれないことはけつこうなことであります。しかしながら永世中立という條約ができたからといつて、日本が戰争を避け得るか。これはかつて申したこともありますが、ベルギーが中立條約を持つておるにもかかわらず、戰争が始まるとただちに国境を侵されたということもありますし、條約が万能で、すべて約束が條約通り行われるものと考えれば、――これは今日までの歴史を見ても、條約通り行われた場合もありますけれども、條約を守らぬ国があれば、その條約は効力を失う事例はたくさんありますから、たとい日本が中立條約を持つたからといつて、これでもつて安心ができるかといえば、私は安心ができないという方が確かであろうと思います。そこでしからば日本の国防をどうするか、日本の安全をどうするか、これは私が始終申す通り、日本国が世界の平和を指導するといつては何でありますが、世界の平和にあくまで国をあげて参加して、世界の平和を保つ、あるいは世界の平和を増進する、国民がその意気を持つということが、みずからの安全保障をするゆえんである、こう私は始終考えもし、そう言つておるのであります。
 また共産主義に対して何らかの立法をするか。先ほど申した通り、共産主義者のある行動が国法を侵す場合には、立法ということも考えなければならぬでありましようが、今日その程度までになつておるか、なつておらないか、ただいまのところは特に法律を設けて取締らなければならないというところまで来ておらないと思いますから、ただいまのところは特に立法をする考えはありません。
 それから太平洋條約のお話がありましたが、これは太平洋條約の具体案なるものをわれわれ見ておりませんから、従つてこの條約には参加するか、参加すべからざるかということは、今日において断言するには時期まだ早しと考えております。
 それから全面講和云々のお話でありますが、これは私は日本においてかくのごときことを問題にすること自身がおかしな話だと思うのであります。今日までドイツにしても、オーストリアにしても、まだ講和條約を持つておりませんが、これらの国において全面講和が可なりや、單独講和が可なりやというような問題を問題にしておりません。しないはずであります。全面講和がいいにきまつておるのであります。しかしながら、なぜ日本において全面講和をかくほどに熱心に主張せられるか。私から申すと実におかしな話で、これほど愚かな議論はないように思います。全面講和でいいにきまつているのであります。しかしながら全面講和でなければ講和條約は結ばない。しからばいつまでも戰争状態に置くか、日本と外国との間の関係を、常に戰争状態に置くことがいいと主張する人は何人もないであろうと思います。ゆえに事実上の講和であろうが、二箇国、三箇国の間の講和であろうが、いかなる国といえども平和関係に入り、通常関係に入つて国交を回復しようという国があるならば、私は抽象論としてはこれと同意すべきであると思うのであります。全面講和か、しからずんば講和しないというような議論をする人があつたらおかしな人だと私は思う。これは常識が許さないのであつて、一体全面講和可なりやいなやの議論をすることさえも、はなはだおかしな話である。いわんや学者とか有識者がこれを論ずるに至つては、まことに当世の杞憂と言わざるを得ない。
○岡崎委員長 並木芳雄君。
○並木委員 大分首相気焔をあげられましたが、今度はかわつてやおちようではありません、野党でございますから、そのつもりで私は首相に少しお尋ねしたいのですが、戰争が勘でもつて――勘でも起らないのはけつこうでありますけれども、これを裏づけるために、先ほどお話のありました中立以上のものを求めてわれわれは立つ、その首相の意気、これは非常に私はけつこうで、これがあれば初めて国民も安心するんじやないか。ところが平和を愛好する、平和の先がけとしての意気を国民は示すべきだという御答弁でありましたが、国民はその意気を持つているのです。ところがかんじんの政府、その総帥であるところの吉田総理が、いつもどうも強いようで弱いのです。国民から見るときに……。ほんとうに吉田総理大臣が平和を愛好する意思をもつて、あくまでも中立以上のものを世界に呼びかける、示すという意気を持つておるということを、現実にわれわれは示していただきたい。非常にいいお医者さんであろうと思うのです。そうであるけれども、処方箋を見せていただきませんから、われわれは中立なんというよりも、もつと積極的に世界が戰争をやむべきだというその調剤を知りたいのでございますが、たまたまああいうことを言われたために、あるいは日本は国防軍を持つのじやないか、またただいまお話になりました太平洋同盟に加わるのではないか、こんなような推測までも行われるようになつております。若い人たちはわれわれは再び義勇軍に参加することさえ許されるのではないかという間違つた方向に向いておるようでありますので、首相がおつしやつたあくまでも平和運動の先がけとして、戰争をやめる意思であるということは、具体的にどういうことに表現されるのであるか、その意気を示していただきたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 意気はただいままで十分示したつもりでありますが、この意気を裏づける具体案と申しても、今日外交の停止されておる日本においては、外交上の措置は講じられない立場にあるということを御承知願いたいと思います。あとは以心伝心でひとつお願いしたいと思います。
○並木委員 たとえば原子力管理の問題でございます。非常な惨禍で先ほども首相が子供を失い、夫を失つた――戰勝国でさえ戰争をきらう気持が起つておる。ましてや敗戰国の日本ですから津々浦々まで起つておる。しかるにかかわらず、原子力あるいは水素爆彈といつたような問題が起つて来ている。こういう惨禍に対して戰慄している。こういうものが絶対に使われないように、われわれは平和を愛好する気持で、原子力の使用というものは国際法上認めないようなところまで、ひとつ世界の強国が推進してもらいたいという強い意欲が首相の言葉の中から出ていいのではないかと思いますが、そういう点について御所見を承りたいと思います。
○吉田国務大臣 お話の通り原子爆彈が適用されるような事態が起る。すなわち戰争状態に入るということは、われわれはあくまでもこれを避ける。あるいはまた戰争放棄の條章のある憲法によつてみても、国民はこれに参加することはできないのであります。しからばその原子爆彈管理に日本が参加しろとおつしやつても、独立を回復しておらない講和條約以前においては、外交上何らの措置もとれないという事態にあることを御了承願いたいと思います。
○並木委員 そういたしますと、やはり現段階においては、日本はあくまでも嚴正中立を守つて行くんだという点から強く呼びかける方が、もつと現実的な効果的なものではないかと、私は首相のようにくろうとでもございませんし、勘もありませんから、感じておりますけれども、それについてやはり日本の一つの大きな政策の転向と申しますか、一旦緩急あつた場合にも、わが国は巻き込まれないで済むという態勢を整えておくべきだと思うのであります。その一つとして食糧の自給自足、今まで外国からの輸入に仰ぐということを首相も申されておりましたけれども、この機会に徹底的な重農政策をしいて、たとえば四百五十億の補給金を国内の農業にまわすような方策をとつて、十分食糧が自給自足できるような重農政策をとられたらどうか。
 もう一つ中立堅持の建前から、日本の治安の維持は、あくまでも日本政府の手によつて確保できる。進駐軍のおる間は大丈夫であるけれども、引揚げられた後は、その点不安だということでは、嚴正なる中立は維持できませんので、こういう点についての対策を万全にすべきと思うのですが、万全であるかどうか、その点いかがでございましようか。
 また韓国の李承晩大統領がこの間おいでになりまして、北方からの脅威、これはやがては日本の脅威となるであろう、こういうものに対して共同戰線を張るべきだという御意向があつたようでありますが、事実そういうようなおそれがあるのでありましようか、もしそういうことがあつたとしたならば、やはり日本としては十分これに対する対策を備えておくべきであると思いますが、そういつた治安の維持という点においても、万遺憾ないでありましようかどうか、その三つの点をお伺いします。
○吉田国務大臣 日本の食糧自給自足けつこうな話でありますが、まず国民食糧の確保が必要だと思います。終戰直後において、日本の食糧が非常に足りなくて食糧の統制をするとか、いろいろの経験をして来て、そのために国民はずいぶん苦しんだのでありますが、仕合せにその後アメリカの補給とか、あるいは豊年とかいうために、食糧事情は非常に緩和され、その緩和されたことが日本の今日安定をだんだん回復しつつある一つのおもなる原因だと思いますから、国民の食糧確保ということが第一であり、その次は自給自足というふうに行くべきのが順序だろうと思います。しこうして日本の国民食糧を確保する、あるいは自給自足に持つて行くのに重農政策がいいか、重商政策がいいか、これは問題であろうと思います。私の今日考えておることは、今の農業経済、農家経済と申すか、個人経済から考えてみても、今のような農業経済ではいけない、自立ができておらないと思うのであります。たとえばこれは始終申すことであるが、農業労働者あるいは一家がこぞつて農業に従事しておる、その農業に従事しておる家族の労金を計算して行つたならば、今日の米の経済もあるいは養蚕の経済も、計算上は立つて行かないはずであると思う。これで日本の農業経済が健全なりやいなやというと、これは健全でないと私は思う。家族の農耕者までも相当な労金が計算せられて、農産物の価格がきまるということにまでならなければ、農家経済というものは健全でないと思います。その域まで持つて行くのにどうしたらいいか、そのためには農事の改良ということも必要でありましようし、農業のやり方、多角農業経営と申しますか、それにすることも必要でありましようし、その他農業政策として考えるべきものがたくさんありはしないか、ことに戰時、戰後を通じて世界の農業は、よほど改良されておるという話であります。たとえばアメリカの農産は戰前に比べると三倍、四倍の増收になつておる。これは灌漑とか、あるいは治水、利水というようないろいろな国家施設の結果であるという話でありますが、そういう施設も必要でありましよう。各方面から国家がいろいろな政策を十分に考えて、農家経済が独立した、採算に合う経済に持つて行くためにはどうしたらいいか、これが重農政策というか、重商政策というか、農家の農業によつて生じた農産物その他の価格が、貿易に振向けることによつて上るということも考えられるでありましようし、簡單に重農政策とも言えず、重商政策とも言えず、政策においても多角的に考えて農家の経済を健全な、そして採算に合う経済に持つて行くというのにはどうしたらいいか、これは政府としてもまた国家としても、考えなければならぬと考えて、関係省を通じて研究をいたしております。そういうふうに日本の経済を改良して行かなければ農家も将来国際水準に立つて、国際水準の農産物の価格の上から考えてみて、日本の農家を守るためには、いろいろな方面から研究をいたさなければならぬ問題があると思つております。またこれについては研究を怠らぬつもりでおります。
 それから国内の治安の問題でございますが、治安問題については、具体的に申せば警察組織でありますが、現在の警察組織で満足すべきものであるかどうか、これは予算の関係もありますが、いたずらに警察を拡大する、増員するというようなことになつて、現にいろいろうわさが聞えますが、これによつて日本が再軍備するのだ、警察の名前において軍人を使用して一つの軍備をするのではないかというような疑いが、濠州方面でかなりあるそうであります。ゆえに警察の増大、拡大ということも内外の予算の関係、あるいは客観情勢から考えてみて、よほど愼重にいたすべきものであるとして、政府はこの治安の維持の手段についての改良は、相当苦心して、今研究をいたしております。現在の状態で決して満足はいたしておりません。そこでアメリカの兵隊が撤兵したその後における治安はどうするか、これは先のことでありますから、その場合場合で撤兵後において研究いたしたいと思います。今日こうする、ああするということの多少の考えはなきにしもあらずでありますが、これをここでもつて発表いたしますのは、多少何といいますか、想像を交えてのことになりますから、具体的にこうしようという案は立てておりませんが、こうしたいということについての多少の案はあつても、これは申しにくいのであります。
○並木委員 朝鮮からの問題はどうでしようか。
○吉田国務大臣 この間大韓国の大統領と話をいたしましたときに、日本との間の交際は親密にいたしたい。日韓の関係は歴史的にもまた地理的にも、非常な緊密な関係を持つておる国柄であるから、将来においても親善関係をますます深めて行きたいという大統領のお話がありました。私もこれには大賛成であります。ことに日本としては将来善隣外交をもつて趣旨といたす考えでありますから、特に隣国に対しては意を用うべきであるということを答えておきましたが、さて今お話のような同盟條約、その他の問題につきましては、今日日本としては独立を回復せざる以前において、外務当局者としてこうああということは申しにくい立場にあることを御承知おきを願いたいと思います。
○並木委員 時間がありませんから簡單に項目だけを申します。為替レートの変更というものは、輸出振興の建前から再考慮さるべきものであると思いますが、いかがでしようか。
 それから関税協定、この問題と、日本の貿易を盛んにするために、自由港の制度というものも考慮せらるべきではないかと思います。この点についてお伺いいたします。
○吉田国務大臣 お答えいたします。替為レートを変更する変更するといつたがために、あるいは変更するといううわさが立つたために、一時貿易が中止されたということは御承知の通りであります。そこでさしあたりのところは、将来たとえばポンドが再び切り下げられるとか、そういうような国際情勢がかわればともかくでありますけれども、今日のところは三百六十円のベースをかえる考えは政府として持つておりません。
 また自由港の問題については、自由港はこれはいろいろ利害あつて、設置することが利益という場合もありましようし、不利益な場合もあろうと思いますが、これも講和條約ができて後の話であります。かりに実施し得るとしたところが、講和條約後であります。現在問題といたしておりません。研究はいたしております。
 関税協定はこれまた独立を回復して後に、相手国との間において独立国としてなさるべき協定でありますからして、今日のところはこれをなす能力もなし、またなすについては国際情勢その他あるいは日本の現在の通商上の立場とか、あるいは相手国の関税の立て方とか、あるいは戰争後におけるヨーロッパのごときにおいては、関税の協定なり、あるいはヨーロツパ全体の單一関税を設けようというような議論もあるししますから、いろいろな客観情勢を考え合せてでなければ、関税條約というものは日本の立場のみからしては考えられないのでありますから、これまた研究はいたしておりますけれども、こういう関税條約を結びたいという具体案はまだできておりません。
○岡崎委員長 仲内憲治君。
○仲内委員 中ソ同盟や韓国の問題についてお尋ねしたいと思つたのですが、もうすでに質疑応答がなされておる点もありますので、私は方面をかえていわゆる在外事務所の問題について御質問を申し上げたいと思います。これは最近アメリカに四箇所つくるというような報道があるのでありますが、その在外事務所のいわゆる性質と申しますか、かねて総理は正式の講和ができないまでも、一日も早く事実上の講和ができたと同じような国交関係の回復を希望しておるというようなお話であつたのでありますが、その事実上の講和の具体化と申しますか、その案としてわれわれはこの在外事務所が設けられるというような報道を非常に喜んで聞いておるものでありますが、ただその在外事務所の職能、性質というものについて、どういうふうに連合国との話がまとまつたのであるか。あるいはまた外務当局としては、どういうお考えのもとに、この在外事務所の運営を企てようとされる方針か。まずその性質をお伺いしたいと思うのであります。さらにまた実際に置かれる場合につきましては、いわゆるその陣容と申しますか、いかなる場所を選ばれるのか。またこれに配置される人材の問題もきわめて重要なものであると思うのであります。さらにまた予算の非常に困難な、ことに外貨の困難な日本の財政の上から見まして、経費の問題は政府としては非常に大きな問題ではないかと思うのでありますが、こういつた陣容が、それとなく聞くところによりますと、非常に貧弱であるというような声があるのであります。せつかくこの事実上の講和態勢ともいうべき在外事務所が設けられるというのにもかかわらず、もしもその陣容において、場所の選定なり、あるいは関係者の人物の上において、あるいはまたその活動に要する費用の面において、十分の用意がなかつたならば、せつかくこの與えられたいい機会に対して、十分な国民の期待に沿う機能を発揮し得ないのではないかという心配があるのでありますが、この点について総理はいかなる御方針、いかなるお考えをお持ちであるか、伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。在外事務所は、今お話のような事実上の講和云々と、まあ大きく言えばそうなるかもしれませんけれども、性質はまつたく当面の事務処理であります。たとえば戸籍とかあるいはまた子供が生れたとか、あるいは結婚したとかいうような戸籍事務、あるいは日本の通商その他取引等について問合せがあつた場合には、それに対して便宜を與える。通商上の取引の便宜とか、あるいはまた戸籍関係の方であるとか、單なる事務所でありまして、これは外交機関でも何でもない、当面の事務を処理するために便宜のために設けられた、また設けることを希望された結果、その国の、たとえば問題はアメリカでありますが、アメリカ政府の希望によつて事務的の事務を処理するために、相方の便宜のために設けられたものであつて、外交機関でも何でもないのであります。従つてその陣容も、貧弱といわれれば貧弱でありましようが、なるべく経費のかからないように、必要に応じた最小限度の経費で、最小のごく貧弱なる陣容と申してもいいようなものを四箇所、ニユーヨークとか、ロサンゼルスとか、サンフランシスコ、ホノルルに置く。そうして領事とか、あるいは書記生といいますか、なるべく少い陣容で置きたいと思つております。それから経費は、今申した通り、ごく最少の当面の事務を弁ずるだけの経費をもつてうまく開設したい、こういうふうに考えております。
○岡崎委員長 福田昌子君。
○福田(昌)委員 私は軍事基地の提供に関しますことについて、お尋ねさせていただきたいと思います。
 今まで軍事基地の提供に関しましては、仮定の事実に対しては云々ということで、御答弁がなかつたのでありますが、十三日の参議院の外務委員会におきまして、吉田総理大臣におかれては、軍事基地の提供もやむを得ない、それは日本の義務であるというような御答弁をなすつたということが新聞に出ておつたのでありますが、このような軍事基地提供というものが、日本にとつての義務であるということに対しましての国際法上の理論的な解釈を聞かせていただきたいと思います。
 それからこういうような軍事基地の提供というものは、どういうような條約のもとになされるものであるか、講和條約の一つの條件になるのか、あるいはまた軍事條約のような形になるのか、そのことをお伺いしておきたいと思います。
 第三番目にポツダム宣言に基いた占領下にありながら、こういうような他国の承認を得ない一国に対して軍事基地を提供するということは、ポツダム宣言に対して、ことに日本の履行義務に対して違反にならないのであるかどうかを承りたいと思います。
 第四番目には憲法第九條との関係でございますが、このような軍事基地の提供は、憲法第九條の違反にならないかどうか、いろいろな学者の間におきまして、今日憲法第九條をめぐりまして、講和会議その他自衛権の問題に関していろいろな検討が行われておりますが、その中でもことに今日の政府に対して非常に有利な意見を吐かれる横田博士におきましても、軍事基地を提供することは 憲法違反になる、軍隊の通過とかあるいは経済的な援助という程度なら、第九條に対しても違反にならないが、軍事基地を提供することは、明らかに違反だということを言われておりますが、こういうことに対しての御意見を承りたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えいたします。軍事基地を提供するのは日本の義務だなどということは申したことはございません。また今日進駐軍がその占領の必要上、いかなる施設をなそうがなすまいが、これは進駐軍の自由であります。またこれに対して政府が協力すべき條約上の義務を持つておるのであつて、これは憲法第九條にも、またポツダム宣言にも、横田君にも関係ない話であつて、進駐軍がある占領の必要上こういう施設をする、これに日本政府が協力するのは、今日占領下にある日本としては政府の義務でありますと申しただけであります。
○福田(昌)委員 先ほど太平洋同盟條約のお話が出ましたが、太平洋同盟もその内容や性格がわからないから、今ただちにどうこうという意思表示はできないというような御答弁でございましたが、まつたくその通りかと存じます。しかし昨年の春近藤政務次官におかれては、太平洋同盟に対しては、これに日本は進んで参加したい。また講和会議が締結されていなくても、日本が防衛同盟に参加することは、妨げられないのだということをおつしやつたことを記憶いたしておりますが、そのことがどういうわけで今日このように変化されたか、伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 近藤代議士にかわつて答弁いたします。その当時世間に伝えられておつた太平洋條約というのは、大西洋條約等に学んで、太平洋における各国が共同の利益を保護するために、同盟條約を結ぶというような概念から話が伝わつておるように私は承知いたしております。それならばまことにけつこうな話でありますが、しかしながら当局者として、抽象的に見れば賛成であるが、その條約の原文を見ない限り、ただちにこれに対して批評は加えにくいというのが私の立場であります。
○福田(昌)委員 外務官吏研修所と申しますか、その性質と内容を聞かせていただきたいと思います。
○吉田国務大臣 外務官吏研修所を設けたのは、私の第一次内閣のときでありますが、これは日本が将来外交にますます重きを置くというためには、官吏の素質をよくしなければならぬ、普通の教育以上に専門知識を與えるために、時間は短かいが特別な教育を與えたいという考えでつくつたのであります。その内容は、外交に関すること、領事事務を取扱うに必要な知識を與えることを主として、外務省の官吏あるいはその他必要に応じて外国の教師とかまた随時必要に応じていろいろな専門家の話を聞かせて、外務省の事務に必要な予備知識を與えるためにこしらえております。現在の状況その他について詳細のことは係官からお聞き願いたいと思います。
○福田(昌)委員 これは希望でございますが、そういう研修所におきまして、婦人の外交官を育てたいという大きな気持を持つていらつしやる大臣が、研修所で婦人外交官を養成していただくということは、非常に私どもとしまして喜んでおるのでございます。日本が従来男子偏重の外交で誤つた点にかんがみましても、どうかそのお気持を大きく伸ばしていただきまして、婦人外交官を男子と同様な積極性をもつてお育ていただきたいということを希望いたします。
○岡崎委員長 菊池義郎君。
○菊池委員 質問応答の時間が十分間でございますので、私の質問に対しましてはほんの一分か二分でけつこうでございます。中ソ同盟條約に関しまして外国の新聞も言つておりますし、アチソン国務長官あたりも、これには條文のほかに隠れた祕密が蔵せられておるということを言つておりますが、これに対する総理の勘をお伺いいたしたい。
○吉田国務大臣 私は勘でお答えはできません。そしてまた勘以外の何らの確報を持つておりません。私の知識は普通の知識以外に特殊にこういうことがあるだろうということは、想像以外に何らここで御報告いたすだけのものは持つておりません。
○菊池委員 中ソ同盟條結は明らかに日本を敵性国家として扱つておりますし、日本に協力する第三国をも敵国扱いにいたしております。こういうときにおきまして、日本といたしましては、敵と味方とはつきりと再認識いたしまして、対外国策を確立すべきであると思うのでありますが、これに対する総理の御信念をお伺いいたしたいと思います。
○吉田国務大臣 先ほども申した通り、連合国の二箇国間の條約であつて、しかもこれに対して的確なる何らの情報を持つておらない私として議論はできませんが、ただ私の一つの考え方としては、かりに日本に対して敵意ある条約であるとしたところが、その敵国をしてなるべく日本に好意を持たしめるように導くというか、了解を求めるなり、友交関係に引きもどすことを、日本の外交として考えるべきものであつて、條約がこうあつた、あるいは條約において日本を攻撃した、あるいは非議したという場合に、これをただちに敵国として取扱う、敵視するということはどうかと思います。外交はまず善意をもつて敵国に対しても臨むというくらいな度量を持つて行かなければ、その目的を達成しにくいものだと考えております。これは勘でありますか、理論でありますか、とにかくそういうような考え方をしております。
○菊池委員 それから今後連合国の日本占領中におきまして、アメリカが軍事基地を要求することはもちろん拒むこともできないし、またわれわれはどしどし軍事基地を提供してさしつかえないと考えておるのでありますが、もし同じ占領国でありますところのソ連が要求して来た場合においても、われわれは沈黙を守るべきであるか、あるいは何か打つべき手があるのではないかと考えますが、総理のお考えを伺いたい。
○吉田国務大臣 実際の形においては総司令部を通じて要求して参るのでありましよう。しかしながら総司令部を通じてそういう話は今のところないのでありますから、これに対して私がとやかく断定を下すことはよろしくないと思いますから、差控えます。
○菊池委員 この前カイロ宣言の台湾、澎湖島の問題について西村局長に伺いましたが、あまりにも抽象的で満足を得られなかつたのであります。カイロ宣言は三国の共同宣言であります。今日英国は中共国家を認めております。アメリカは依然として国民政府を認めております。台湾、澎湖島は三国の共同宣言によつて、日本からチヤイナに與えるということが言われておりますが、今日におきましては、三国の共同宣言の前には、いかに英国が中共に與えようとしても與えることができない、アメリカが国民政府に與えようとしてもこれを與えることができない。それでカイロ宣言をわれわれがいかに忠実に実行しようといたしましても、実行のしようがなかろうと思うのであります。従つてこのカイロ宣言だけでは台湾、澎湖島の領土権の帰属は決定しがたいものと私は考えておりますが、この際もし中共が台湾攻略に出た場合におきましては、これは明らかにカイロ宣言の片割れでありますところのアメリカに対する敵対行為であると見なければならぬと思うのでありますが、総理はこれに対してどういう見解を持つておられますか。
○吉田国務大臣 カイロ宣言の協定に日本は参加いたしておらないのでありますから、調定国として抗議を申すとかいうことはできない。のみならず今日日本の外交は停止されておるのでありますから、講和條約まではいかなる処置もとれないという事態にあるということを御了承願います。
○菊池委員 私は法理上の解釈を求めておるわけでありますが、結局このカイロ宣言は、台湾、澎湖島の領土権に関する限りは、実行しようとしても実行できないと考えますが、いかにお考えになりますか。
○吉田国務大臣 領土権の問題は各国ともに非常に神経を悩ます問題であり、われわれ当局者として、この領土問題に触れるということは、国際情勢のはなはだ微妙な今日においては愼むべきと思います。ですからお答えをいたしません。
○菊池委員 たとえ形式的にも講和会議が、できるできないは別として、始まります場合において、中共と国民政府はどちらが会議に加わることになりましようか。
○吉田国務大臣 これも連合国相互間の協定にまつべきものであり、その間におのずから協定ができましようが、われわれとしてはこれに介入する地位におりませんから、何とも申し上げにくいのであります。
○岡崎委員長 聽濤克巳君。
○聽濤委員 私は中ソ條約について端的にお伺いいたしたいのでありますが、このたびの中ソ條約は一口に言うと、日本からの侵略に備えてこれを防止するという見地で結ばれたことははつりきりしておる。その中に日本帝国主義の再起を指摘し、また日本と結びつく外国の侵略云々ということを規定しておるのでありますが、これについて日本として何か思い当ることがあるでしようか。
○吉田国務大臣 外国の條約に日本に対してある批評を加えられたといつて、一々これに反駁――ことに今日においては反駁する立場におりませんから、何ともいたしかたがない、こう申すよりしようがないと思います。
○聽濤委員 私の聞いたのは逆なことでありますが、ああいうふうに指摘されておる通りのことが日本で行われておるのではないか、つまり一口で申しますと、日本の軍事基地化がどんどん進んでおることはだれでも知つておるし、最近におきましては軍需産業の復活が顯著なものがあるのでありますが、こういう事実があるとすると、中ソ條約が言つておる通りの事態が、日本で起りつつあると言わざるを得ないと思いますが、どうでしよう。
○吉田国務大臣 私はそうは考えません。
○聽濤委員 これは首相の個人的考え云々によつて事実をおおえるものではございません。第一日本の軍事基地化につきましては、もうすでにアメリカの新聞記者でもどんどん発表しておるところである。これによりますと、今日本全国民は少くとも、横須賀には海軍基地がある、あるいは青森県の三沢、北海道の千歳には空軍基地がある、その他全国で八箇所の空軍基地があるということが報道され、実際まのあたりに見ておる。こういう事実がどんどん進んでおる。しかもこれにつきましてこの間首相は、たしか参議院の外務委員会で日本は、たとえば軍事基地を設けるとかこういうことについて協力するといいますか、條約上これを承認する義務があるということをはつきりと明言しておる。これは吉田総理が今までは仮定の問題だ、仮定の問題だと逃げておられたのが、公然と軍事基地があることを認めたことになるのでありますが、私は端的に聞きますが、一体ポツダム宣言や降伏文書のどこにこういうことに協力しなければならない義務があるのか、お聞きしたい。
○吉田国務大臣 これはしばしば御説明いたしております。進駐軍がその占領の目的のために必要とする施設をする。政府はこれに協力する義務がある。それだけの話であります。
○聽濤委員 それではお聞きいたしますが、今や日本の軍事基地化というものは、どこそこに軍事基地があるというだけの問題でなくして、実際にアチソン長官の声明を見ましても、アチソン長官はこの間はつきりこう申しておる。米国は日本をアジアにおける共産主義の主要な防壁として再建しなければならない。ところが二月二日にジヨンソン国防長官は、米国の国防計画というものは、一つの敵を想定してやつておる。その敵とはソ連であるということをはつきり言つておる。ここに明らかなことは、日本の軍事基地化ということは、極東の防共基地という考え方によつて規定されて来つつある。すでに日本全体が――戰略的にも軍事的にも、こういう観点から日本の地位が決定されつつあり、国際上の問題になつておる。ここでソ連を仮想敵国とする日本の軍事基地化が進んで行くというのが、公然たる事実になつて来ておるのだが、この中で、一体占領軍から要求があつた場合に、何でもかんでもこれに協力するというようなことが、実際に国際的な條約に基いて日本に課せられた義務であると、今でもあなたはお考えになつておるのか、もう一度お聞きしたい。
○吉田国務大臣 私は外国の政治家の言論に対しては、責任を持たない。それからまた軍事基地なるものを言つたことはない。進駐軍の占領の目的に必要なる施設をするということは、日本政府の義務である。これに対して協力するのが日本政府の義務である。これは降伏文書上の義務であることは義務であると申しただけである。
○聽濤委員 それではさらにお聞きいたしますが、日本の占領行政というものは、はつきりポツダム宣言や降伏文書によつて規定されておる。この中に、また米国の、降伏後における対日方針なんかにも規定されている。その究極の目的は、吉田総理がもうすでに十分御承知のはずだと思うが、日本国を再び世界の平和の脅威にならないようにすること。ここで日本の徹底的な非軍事化ということが占領行政の第一目的になつておる。こういう占領行政の正常な運営に協力するということは、当然な義務でありまして、今日軍事基地化として問題になつておるのは、明らかにこういう域をはるかに越えておる。このことについて、あなたはどういうお考えを持つておるか。
○吉田国務大臣 私は進駐軍の施設は、進駐軍の占領の必要の以上に越えておるものとは考えません。あとは進駐軍にお聞きを願いたい。
○聽濤委員 進駐軍に聞けなどとはなはだ……。これは聞くか聞かないかはこつちのかつてですが、あなたが日本の総理大臣として、実際にこういう事態を国民がもうすでに知つておるにかかわらず、こういうことを言つておられることは、責任は非常に重大だと思いますが、時間がないからこれ以上あまり追究いたしません。
 もう一つ聞きたいことは、吉田総理は、戰争はここ数年ないと確言しておられるのだが、一体日本の軍事基地化ということは、明らかにだれが考えてみたところで、戰争準備であります。これは明らかに戰争準備だ。こういう戰争準備に協力しておきながら、戰争の危險はない、しかも戰争とかなんとかいうようなことは、共産党の惡質宣伝であると言わんばかりのことを言つておられるのは、何という言いぐさか。私は実際きつぱりとお聞きしたいと思う。
○吉田国務大臣 これは私は従来申した通りであつて、私の説はあなたと意見を異にするだけであります。
○聽濤委員 今度は仮定の問題から意見の相違になつて来ましたが、それでは産業の軍事化なんかが行われておらないと言いますけれども、実際われわれが聞いておるところによると、海軍工廠の復活も伝えられておる。陸海軍の燃料廠の復活さえ伝えられておる。いろいろ問題がたくさんあります。たとえば明らかに軍需資材と思われる塩化ビニールの製造がいろいろな化学工場で行われつつある。あるいはアルミナイトの製造も行われつつある。こういう状態の中で、これは徴候的なことだけを申し上げるのですが、たとえば三菱の下丸子では、すでに戰車や軍用自動車のエンジンの工場になつておる。あるいは最近におきましては、全国の火薬労働組合連合会が、このたび政府の出される火薬取締法の改正について、日本の平和を守る立場から、絶対に反対であることを表明せざるを得ない状態にさえなつておる。こういう事実は明らかに日本の軍需産業の復活を物語る徴候でありますが、こういう事実を前にしても、あなたはそういう軍需産業の復活なんかはないと言われますか。
○吉田国務大臣 そう申します。
○聽濤委員 それでは別なことをお聞きいたしますが、このたびの中ソ條約におきまして、もう一つの重要な問題は、対日講和について両国が共同してこれを獲得する、こう言つておるわけでありますが、これは両国の人民の数を合せますと約七億になる。世界の三分の一の人間の意思表示であります。ここに日本が講和を非常に要望しておる際に、この世界の三分の一の人口の意思表示を無視して日本の講和ということは、当然あり得ないのですが、これにつきまして吉田総理はこの間、この早期講和のことが中ソ両国で言われておることは、欣快にたえないという意味のことを言われておるのですが、それは共産党やその他の多くの人が主張しておる全面講和が促進されるということを、あなたは意味しておられるのかどうか、お聞きしたい。
○吉田国務大臣 私の言うのは、條約に対日講和條約を早期促進したいとありましたか、文句は忘れたけれども、それはけつこうである。対日講和條約を早期促進したい、まことにけつこうなことであると申しただけであります。
○聽濤委員 そういたしますと、今まで総理は、国際情勢によつて、全面講和を望ましいが、できないのだという意味のことを言つておられる。その中にははつきりと、中ソ両国がこれに賛同しないからと言わんばかりに言つておられたのですが、その前言は翻す御意思でございますか。
○吉田国務大臣 前言を翻す考えはありません。また私の始終申しておるのは、講和條約というものは客観情勢によると、こう申しておるのであります。あえて中ソ両国ということを指摘したことは一度もないのであります。
○岡崎委員長 もう時間がございませんが……。
○聽濤委員 ああそうですか。ではいろいろお聞きしたいことがありますが、時間が来ましたからやめますけれども、今お聞きしたことをいろいろ総合してみましても、あなたはこれほどはつきりした、しかも国民の一番重大な関心の問題について、意見の相違であるとか、いろいろなこと言つておられますが、しかし実際に日本の軍事基地化が進み、軍需産業の復興がどんどん進んでおる、こういう状態の中で、しかも中ソ條約ができて、日本の早期講和を主張しておる、こういう状態がはつきりして来ました今日、実際吉田総理こそ日本の正しい全面講和を妨害しておるところの当の一人であると私は主張せざるを得ない。これについての御意見を承りたい。
○吉田国務大臣 全然反対であります。
○岡崎委員長 中山さん質疑でしたけれども、総理の時間がちよつと延びましたから……。山本さんも質疑でしたけれども……。
○山本(利)委員 この前のもう一つ前の委員会で、私の御質問申し上げたことに対しての御答弁を承りたいと思います。
○倭島政府委員 米国における移民法の最近の模様のことだと思いますが、それについてお答え申します。この移民法のことにつきましても、政府としましては新聞報道等のほかはあまり正確なものを持つておりませんので、今承知しておるところを御説明申し上げますと、米国の議会に提出せられております移民関係の法案の中で、日本人に特に関係のあるものと思われますのは、いわゆるジヤート法案とウオルター法案という二つのようでございます。
 ジヤート法案の関係は、御承知の通り一九四〇年の米国移民法を改正しまして、帰化し得る者の範囲を広め、従つて日本人も帰化し得るようにするという趣旨が一点と、それから一九二四年の移民法によります入国割当――普通クオータと言われております――の規定を、各国民に平等に適用するようにしようというこの二つの趣旨でございまして、すなわちこれが通りますれば、日本人の入国は一年に百八十五人あて移民として入国許可せられることになるわけであります。この二点について特に日本人に関係があるわけでございますが、このジヤート法案は昨年の三月一日米国の下院を通過いたしまして、上院の司法委員会に回付せられて今日に及んでおります。その後どういうふうな手続がとられましたか、まだわれわれ承知しておりません。
 もう一つのウオルター法案のことでございますが、この法案の趣旨もまだ正確にはわかつておりませんが、承知しておりますところでは、一九二四年までに米国に入国しまして、いわゆる移民というかつこうが多いのでありますが、入国しまして合法的に現在米国に住んでおる帰化不能の外国人に対して、帰化の資格を與えるようにするという趣旨の法案でありまして、ジヤート法案とは少し違つております。提案者の説明が報道せられるところによりますと、一九四〇年の人口調査では、このウオルター法案の関係から申しますと、これに関係して来る日本人、つまり米国に一九二四年前に入つて、米国に住んでおつて、一九四〇年の調査に出て来た日本人の数は八万四千六百五十八名というふうに当地の調査ではなつております。従つてこの約八万人見当の日本人が帰化できるようにしたいという趣旨の法案であります。この法案は御承知の通り国籍法の改正ということよりも、現在の国籍法に対する特例の形になつておるようでございます。最近の新聞報道によりますと、このウオルター法案は二月一日上院本会議に上程せられた趣でございますが、その際一部上院の中で異論があつて、現在審査が保留されている模様でございます。以上手元にあります報道によりまして最近わかつているところを御説明申し上げました。
○山本(利)委員 続いてまだお答えにあずかつておりません点だけを申し上げます。私の首相に対する質問はこの次の機会に讓りまして、私にまだお答えをいただいていないことだけをお願いいたします。もう一つは一月三十一日の毎日新聞にビルマは日本人の入国を許可するという意味のことがラングーン発のAFP電として載つておつた、このことを御質問いたしましたが、外務省においてはまだ知らないという、取調べるということでありましたが、いかなる者がいかなる手続によつて入国し得るのか、御答弁願います。
○島津政府委員 一月三十一日の新聞報道につきまして取調べをいたしたのでございますが、この新聞報道以外に何ら事情がわからないのであります。想像いたしますと、おそらくこれは日本人だけのことではなくて、何か外国人の入国に関する一般的な規則なり法律なり、そういうものがビルマ政府でできたのではないかと思われるのでございます。この上とも取調べることにいたしたいと存じます。
○山本(利)委員 それに関連いたしまして、本日の毎日新聞はアルゼンチンに農業移民百家族を入れるということ、しかもこれは日本カソリツク教区連盟のお骨折りによるという記事が載つておりますが、これに対する外務当局はいかなる御意見でございますか。
○倭島政府委員 大体同趣旨の件につきましては、先般も新聞で報道せられて、あるその関係者の方々が現在アルゼンチンへ移民をするために募集をしておられるようなことも新聞に出ておりました。現在その実情をまだ取調べ中でございますが、一部判明いたしましたところによりますと、これはアルゼンチンのコリエンテスという州のことで、そこに現在在住しておられる日本人の人たちが、アルゼンチン特にコリエンテス州の開発計画等と関連をして、米をつくるために日本からその関係者を呼びたいという熱烈なる希望を表明せられて、コリエンテス州の当局ではけつこうではないかという話が進んでいるようであります。ただそのコリエンテス州の話の模様がどの程度にはつきりしているのかというのを、現在もなお調査中であります。なおこれは今申し上げましたコリエンテス州の当局との話でありまして、さらに実際問題として、わが国からその農業関係の人が向うへ行けるようになりますためには、アルゼンチン政府のはつきりした了解と申しますか、許可が必要なわけでありますが このアルゼンチン政府との関係はどういうことになつているか、その点も現在調査中であります。わかりましたらさらに御報告申し上げたいと思います。
○山本(利)委員 日本の人口問題の解決の一助としての移民問題ということが、現在国民の関心の中心になつているわけでありますから、後手々々でなしに、あらゆる方面に連絡をとられまして、しかもそういう方面について努力してもらつていることに対しては感謝の意を表し、さらにより以上の便宜を與えるというふうな方向に、積極的に動いていただきたいと思うのであります。
 それでまだ御返事にあずかつておりませんのは、戰争犯罪裁判に関する事柄が残つておるのであります。私の質問の一つ、濠州の日本戰犯九割が釈放されたという記事が載つておつたけれども、これは戰犯容疑者の釈放であるか、あるいは服役中の者の釈放であるかというお尋ねをしておいたのでありますが、その点に関する調査はどうなつておりますか承りたい。
○島津政府委員 濠州戰犯関係の御質問につきまして取調べましたところが、あの新聞に出ましたような事実は何もございません。どこから来た情報かも見当がつかないのであります。
○山本(利)委員 次に十二月二十五日マ元帥発表によつて、巣鴨拘置所から四十数名の戰犯者が釈放されたのでありますが、死刑囚に関してはこの減刑という恩惠がなかつたようであるが、今後戰犯の死刑囚に対してもそういう恩典があり得るものであろうか、あるいはあるように政府は要望し、嘆願する意思があるかという意味のことをお願いしておきましたが、その点いかがですか。
○島津政府委員 死刑囚のことにつきましては、前会に見通しその他申し上げられないようにお答えしたと記憶しておるのでありますが、今日におきましてもこの点はいろいろ機微な関係もございますし、それに触れない方が適当かと考えております。
○山本(利)委員 今の点に関して、私はこの前の委員会では感謝決議文を出したらどうかという意味のことを申しましたが、いろいろ外交上の問題もあるようでありますから、一応そのことは保留いたします。
 もう一つはフィリピンの死刑囚からの手紙がわれわれ議員に向つていろいろ来ておるけれども、これは死刑囚そのものが書いたのか、あるいはだれか遺族の者が書いたのか、非常に不明瞭な点がある。しかしどの程度こういうものが来ておるかどうか、調べられたらお調べ願いたいということを申しておきましたが、そこらの点について伺いたいと思います。
○島津政府委員 ただいまの点は、もう少し調べた上でお答え申し上げます。
○中山委員 私は樺太から終戰当時日本に渡ろうとして、密航船という名前のもとにソビエトに連れて行かれた人たちの話をこの間聞きましたが、この人たちは密航というかどで投獄されまして、刑を終つて出て参りましたところが、東向きの切符をもらい、若干のお金をもらつてそのまま出された。そうして食糧に対する配給の書類も何も満刑者にはないので、こじきをして、歩いてやつとナホトカにたどり着いて、もぐり込んで帰つて来たという人でございます。このナホトカの輸送関係の管理部長とかいう人に会つて、そうして満刑者がソ連側の官憲に連れられてナホトカに送り届けられたことがあるかという質問を発しましたところが、ただ一人自分がいる間にあつた、こういう話から総合いたしますと、満刑者はそうしてかつてにこじきをして、やつとたどり着いて、この部隊にもぐり込んで帰つて来るというのが結論ではないかと私は考えたのであります。このように食もなしにさまよい歩いて、ある場合は野たれ死にする者もあるかと思いますが、そういう人に対して、このポツダム宣言に関連いたしまして、何とかせめて食糧だけは與えてやる方法をとつてもらうように、何か対策を立てていただく御信念があるかどうか、そういう対策ができるものかどうか、お伺いしたいと思います。
○倭島政府委員 ソ連の地区において刑を終えられた方々が、困難な状況におられる模様につきましては、情報をときどき得ているのでありますが、その件につきましては、いま少しそれを確かめ、資料を集めました上で、何とかその状況の改善せられるように司令部を通じてお願いしたいと思つております。
○岡崎委員長 それでは本日はこれで散会いたします。次会は公報をもつて御通知いたします。
    午前十一時五十六分散会