第007回国会 本会議 第11号
昭和二十五年一月二十三日(月曜日)
 議事日程 第九号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 議員請暇の件
 仮議長の選挙
 吉田内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 青木国務大臣の経済に関する演説
 池田大蔵大臣の財政に関する演説
 故議員高橋定一君に対する受川新吉君の哀悼の辞
    午後一時二十九分開議
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
議長(幣原喜重郎君)お諸りいたします。議員山崎猛君、岩本信行君、今村忠助君、椎熊三郎君、淺沼稻次郎君、松木瀧蔵君から、米国議会制度調査見学のため、一月十三日から三月五日まで五十二日間請暇の申出があります。これを許可する賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて許可するに決しました。(拍手)
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 仮議長の選挙
○議長(幣原喜重郎君) 岩本副議長不在につき、本日議長のみにては何時議事に支障をきたすやもはかられませんから、この際あらかじめ仮議長の選挙を行いたいと存じます。
    ―――――――――――――
○山本猛夫君 仮議長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて、議長は庄司一郎君を本日の仮議長に指名いたします。
    〔拍手〕
     ――――◇―――――
 一 国務大臣の演説
○議長(幣原喜重郎君) 内閣総理大臣より施政の方針に関し、青木国務大臣より経済に関し、また池田国務大臣より財政に関してそれぞれ發言を求められております。これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 第七国会開会際しまして、ここに施政の方針をぶるは、わたしの欣快といたすところであります。
 終戦以来箇年有余、同情ある外援と国民の努力によりまして食糧事情は緩和せられ、生産は逐次回復し、貿易また増進いたしまして、財政の均衡を得るとともに、インフレは終し、今や国家復興によみがえらんとする国民の意気とみに旺盛なるの概あるは、まことに御同慶至りであります。(拍手)経済の安定は自然政情の安定を促し、民主主義は国民の間にますます根底を固め、健全なる発達をいたしておることは、諸君御承知の通りであります。過激思想に対して、国民は正確なる判断のもとにこれを支持せざる事実は、累次の各種選挙においてはなはだ明瞭なる事実であります。(拍手)すなわち各政党の得票に徹しまして、この事実ははなはだ明瞭と私は信ずるのであります。(拍手)労働運動、過激、挑発的傾向より、逐次合法手段によつて労働階級の利益の保護増進に努めんとし、穏健なる歩調をたどつております。わが政治経済の安定は、自然連合国の好意と期待とを持つて迎えられ、対日講和の機運を醸成しつつあるは、諸君のつとに感知せらるるところと信ずるのであります。
 隣邦諸邦を顧みますれば、中国の政情はなはだ安定を欠いておるのみならず、その外交関係はしきりに紛糾を加え、東南アジアもまた、分子の活動に非常な脅威を感じておるのであります。(拍手)極東の平和のために、まことに憂うべき事態であります。この間、ひとりわが国は、復興再建の曙光に一層の希望を抱き、新年を迎えて新日本建設の決意を新たにするの状あるは、まことに邦家の大であるのであります。国民は講和実現、国家の復興、東洋の平和のために相率いてますます努力をいたすべきときと私は信ずるのであります。幸いに講和條約なり、国際団体の一員として再び国際間に活動の自由を得るにおきましては、国民は一段と矜持をたかむるとともに、新たなる希望に燃えて政治経済活動に一層の光彩を添うることと考えます。その機会の一日もすみやかに至らんことを私は切望いたしてやまないものであります。(拍手)
 さきに臨時国会におきまして、講和問題につき種々論議せられましたが、全面講和の何人もこれを希望するのはもとよりでありますが、しかしながら、これは一に国際の客観情勢によることでありまして、わが国の現状といたしましては、いかんともできないことであります。また、わが国の将来の安全保障につき内外多大の関心を生じていることは当然のことでありますが、我が憲法において厳正に宣言せられたる戦争軍備の放棄の趣意に徹して、平和を愛好する世界の論を背景といたしまして、あくまでも世界の平和と文明と繁栄とに貢献せんとする国民の決意それ自身が、わが安全保障の中段をなすものであります。(拍手)戦争放棄の趣意に徹することは、決して自衛権を放棄するということを意味するものではないのであります。(拍手)わが国家の政策が民主主義、平和主義に徹底し、終始この趣旨を厳守して行動せんとする国民の決意が、平和を愛好する民主主義国家の信頼を確保するにおきましては、この相互の信頼こそ、わが国を守る安全保障であるのであります。(拍手)この相互信頼が、民主国家相互の利益のため、わが国の安全確保の道を講ぜんとする国際協力を誘致するゆえんであるのであります。
 今回ここに提出いたします、明年度予算は、本年度予算同様、総合均衡予算の原則を堅持するものであります。また既定の経済安定復興政策を、さらに積極的に進行せんとするものであります。総合均衡予算は、既往昭和六年以来初めて現内閣においてここに編成せられたものであります。(拍手)ただに真の均衡を確保し得たるのみならず、明年度は本年度に比して約八百億円の歳出入の節約を断行いたします。九百億円の減税を実現いたします。また約一千億円の公共事業費を計上いたしまして、わが国経済の積極的復興をはかるとともに、教育費に約四百億円、災害復旧に四百七十億円、失業対策等社会政策諸費に五百六億円、その他の重要行政費に相当の額を計上いたしまして、国民の安定向上に資せんとするものであります。(拍手)
 税制改革は国民多年の要望であり、また政治の源であります。政府は、シヤウブ博士の勧告に基き、前国会に引続き、中央地方を通じ、すでに全面的税制の大改正を行わんとしいたしておりますが、なお進んでますます行政の簡素化、官庁、営業の合理化ないし統合を遂行いたしまして、財政の緊縮、課税の軽減をますます行うのみならず、地方行政調査委員会議の調査を待ちまして地方制度をも改革し、健全なる自治の発達、地方財政の確立をはからんとするものであります。地方府県民諸君は、政府の趣意のあるところを了承せられて、地方制度の簡素化、支出の節約、府県民の負担の軽減を自主的に実現せられるよう、また政府に十分の協力をせられるよう切望してやまないのであります。
 政府は、今回の公務員給與ペースに関する人事院の勧告には応じがたしとの結論に達したものであります。現給與は、実質的には昨年三月改訂せられたばかりでありまして、爾来物価は毎月低落の傾向にあるにもかかわらず、もし給與の引上げを行いますならば、遂に物価と賃金の悪循環を引起し、再びインフレに逆行することはもちろんであるのみならず、減税、各種手当の適正なる支給、社会施設の充実整備等の向上によりまして公務員の生活保障に努めんとするものであります。しかしながら、政府も目下の給與をもつて足れりとするものではないのであります。財政の余裕を持つてさらに検討を加えまして、もつて十分なることをいたしたいと考えておるのでありますが、公務員諸君もしばらく忍んで国力の回復に協力せられんことを希望いたします。(拍手)
 統制の整理撤廃は、わが党年来の政策でありまして、政府もつとめてその実現に力をいたし、統制品目の大部分を整理いたしましたが、なお明年度においてさらに大幅にこれを減少して、残存品目はこれを最小必要の限度にとどめたい見込みであります。
 鉱工業昨年度の生産は、戦前の八〇%に達し、一昨年に比し二割余の増加を示しております。ことに質的方面における向上の跡は、まことに顕著なるものがあります。貿易は漸次増進いたしまして、昨年の輸出は一昨年の倍額に上つております。最近輸出入ともに管理貿易より民間の自由貿易に移行せしめましたが、なお他面、通商協定、海外渡航、政府出先機関、商社の支店の設置、船舶の増加に伴う可及的自国船舶による通商等、貿易の條件に改善を加えんと力をいたしております。
 食糧問題は著しく好転いたしておりますが、政府は、あとう限り国内食糧を増産して自給度の向上をはかるべき根本方針は、あくまでもこれを堅持する方針であります。また新たに農政審議会を設け、農地の改良保全、農産物の最低価格の維持等、農家経済の改善安定に費する施策に万全を期したいと考えておるのであります。(拍手)
 その他重要なる諸般の問題につきましては、主管閣僚において説明するところによつて御承知を願いたいと思います。
 最後に特に一言いたしたいことは、海外抑留同胞のことであります。現在なおソ連地区に残留しておる多数同胞の実情調査に関し……。
    〔発言する者多し〕
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
○国務大臣(吉田茂君)(続) 先般東京において、シーボルト議長のもとに開かれた対日理事会の討議に基き、米国及び満州政府のとられたる措置に対し、政府は深甚なる謝意を表せんとするものであります。政府は、引続き本問題の迅速満足なる解決に全力を傾倒いたしたい考えでございます。(拍手)
○議長(幣原喜重郎君) 青木国務大臣。
    〔国務大臣青木孝義君登壇〕
○国務大臣(青木孝義君) 本日、第七国会の再開にあたりまして、日本経済に関する諸情勢と重要施策につき一言申し述べる機会を得ましたことは、私の欣快とするところであります。
 わが国経済の諸情勢が、昨年春の均衡予算の編成と、單一為替レートの設定を中心とする経済安定施策の実施によつて、急速に安定化の道をたどつて参りましたことは、まずもつて御同慶にたえないところであります。
 日銀券の発行高は、一昨年末の三千五百五十三億円から、昨年に入つて收縮を続け、七月末二千九百五十五億円となり、年末は一昨年末とほぼ同額をもつて越年し、おおむね正常な季節的変動の型におちつく姿を見せております。物価につきましても、補給金の削減為替レート設定等に伴い、若干公定価格の値上りはありましたが、一方自由価格は昨年以來低落を続けておりますので、これらを総合いたしますれば、実効物価は昨年初頭以来大体同一水準にあり、平均賃金もおおむね横ばいの状況であります。これらの経済諸指標について見まするに、わが国の経済は、ここにほぼ安定の線に立ち返つたと申し上げ得るのであります。
 右のごとく、わが国経済安定化の傾向著しきものがありますとともに、生は昨年度に比して二割程度の上昇を示し、需給の均衡は次第に回復して参りました。かような情勢に応じ、政府は統制の大幅廃止に努めつつあり、この統制の廃止と需給の均衡化は、自由競争の範囲を拡大して、企業経営の合理化を初じめ、経済の一般的な正常化に大いに貢献しているのであります。貿易についてみましても、輸出は、海外市況の不振、ポンドの初下げ等困難な條件のもとにおいても、全国民の協力と努力とにより、昨年度に比して二倍近くに上昇する予想であります。かく経済が安定し、生産、貿易も上昇したので、国民生活もおのずからおちつきを示す傾向にあり、これらはいずれも、わが国経済の各分野において拂われた全国民の経済再建への努力と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表する次第であります。しかしながら、一歩顧みて、わが国民経済の基礎に思いをいたしますならば、わが国はいまだ巨額の輸入超過の状態を免れず、その赤字は一に米国の援助によつてまかのわれていることは御存じ通りでありまして、また国土の復旧は思うにまかせず、企業の資本は減耗し、わが国経済の将来の発展の基盤は、いまだ十分ではないといわなければならないのであります。さらに目前の問題といたしましても、産業資金確保の困難、一部商品の相対的過剰と輸出入滞貨等の現状から、生産の伸び悩みの傾向も見られるのであります
 以上申し述べましたような、残された長期的な問題とともに、われわれの当面している現実の諸困難を打開して、わが国経済の真の自立を得るためには、なお各界の一層の努力により、国民経済規模の着実な拡大に努めなければならないと信ずるのでありまして、以下、これがための重要なる諸施策について所見を申し述べたいと存ずる次第であります。まず貿易の振興策でありますが、貧弱な国土資源のもとに厖大な人口をかかえているわが国経済としては、将来の自立と発展は一にかかつて貿易の振興にありと申しても過言ではないのでありまして、政府といたしましても、この点に施策の最重点を置き、これが推進について鋭意努力している次第であります。
 先般、第六臨時国会において成立を見ました外国為替及び外国貿易管理法の施行は、終戰後のわが国貿易にとつて、まさに画期的な意義を有するものでありまして、すでに諸般の法令の整理もほぼ完了し、輸出貿易につきましては、昨年十二月一日から、政府の許可制度は原則としてこれを廃止し、業界は従来の煩雑な手続から解放されて、きわめて自由に輸出業務に従事することができることとなりました。また輸入費易につきましても、本年一月一日から、従来の政府輸入が大幅に民間輸入に切りかえられ、すでに本年一月ないし三月分として受取勘定一億七千百万ドル、支拂勘定一億四千八百万ドルの外貨予算の成が完了いたし、民間輸入実施の第一歩を跡み出すことになつたのであります。かくして、ここに民間貿易の領域は著しく拡大せられ、業界の創意と経験による貿易規模の拡大に期待するところまことに大なるものとなつたのであります。
 しかしながら、貿易の飛躍的増大を期するためには、これと同時に、さらに各般の施策が強力に推進されることが必要であります。
 まず第一に、海外輸出市場の拡大をはかることが最も重要であります。これがため、貿易協定の範囲をさらに拡大して行きますとともに、協定の運用にあたつては、協定国相互間において積極的に買い進むことによりまして、協定額の拡大的均衡を達成することが期待されるのであります。さらに戰前においてわが国貿易の五〇%以上を占めていたアジア諸地域との貿易につきましては、そのわが国貿易の上において占める地位の重要性にかんがみ、極力その回復増大をはかつて行きたい次第でありまして、これがため、わが国の買付市場を極力これらの地域に転換する等の措置により、これらの地域における輸入力不足の打開に資したい所存であります。
 第二に、貿易條件の改善をはかることが刻下の喫緊出であります。すでに昨年来、連合諸国の好意により、あるいは外貨保留制度の運用等によりまして、貿易関係者の海外渡航は相当件数に上り、いわゆるめくら貿易の打開に貢献しておりまするとともに、昨年秋にはフロア・プライス制度が撤廃になり、また本年一月からCIF輸出、FOB輸入取引も実施されることになり、大いに取引條件の改善が期待されることになつたのであります。政府といたしましては、今後とも貿易関係者の海外渡航をさらに促進いたし、かつ通商代表の海外派遣をすみやかに実現するとともに、海外市場の調査機能を整備強化して、めくら貿易の打開に一層努力し、あわせて邦船の外航就航を期待して外航船の建造を促進し、貿易収支の改善をはかりたい所存であります。第三に、国際物価の低落傾向、海外市場のいわゆる買手市場化の傾向、及びポンドを初めとする各国の為替切下げ等により、輸出面における競争はまことに熾烈をきわめているのでありまして、この間に伍して、わが国の輸出貿易を伸長させていくためには、産業の全面的な合理化の推進が要請せられるのであります。輸出コストの切下げと品質の改善に向つて、全産業あげて努力を傾倒しなければならないと考える次第であります。政府といたしましても産業合理化の推進に積極的に協力して参りますとともに、特に輸出産業につきましては、資材資金等の確保において最優先の取扱いをなし、これが育成に努力していきたい所存であります。
 以上の諸施策につきまして、幸い連合諸国の好意ある配慮を得て、国民あげて貿易第一のために努力を惜しまないならば、貿易の振興は期して待つべきものがあると信ずるものであります。
 なおこの際外貨の導入について一言いたします。申すまでもなく、日本経済再建のためには、外貨の導入に期待するところまことに大なるものがありますが、政府といたしましては、目下利子、利潤等の海外送金の確保、外国人課税に対する特例等につき、その具体的方策を鋭意検討いたしておる次第でありまして、これらの施策により、また国内経済の安定向上の趨勢とも相まつて、外貨の導入は今後大いに促進されるものと信ずるのであります。
 次に生産について申し述べますと、戰後わが国の鉱工業生産は、国民各位の努力と政府の施策とによりまして逐年増加の一路をたどり、戰前に比較いたしまして、約八割の回復を示すに至つております。しかし、国際経済への全面的参加を急ぐへき日本産業の立場から考えまするならば、原材料及び製品の品質の向上、コスト及び原單位の引下げ、労働能率の改善等、緊急に解決を要すべき重要な問題が幾多残されているといわなければならないのであります。もとより、かような企業合理化への努力は、昨年以来の経済正常化の進捗に伴い著しく推進されつつあり、すでに相当程度の成果を收めつつあることは、まことに喜ばしいところであります。政府といたしましては、今後企業合理化をなお一層推進するために、各企業がみずからの創意とくふうを生かして自主的に合理化努力をなし得るよう、また自由競争原理の導入によつて、各企業がきそつて経営合理化を推し進め、その成果を收め得るよう、そのための諸条件を整えることに万全を期して行きたい所存であります。最近における経済統制の大幅の廃止は、かかる見地から見て、きわめて重要な意義を有するのであります。すなわち、当初二百五十二品目に及んでいた指定生産資材に関する割当統制は、昨年中における大幅の統制廃止に引続き、さらに本年に入り八十一品目の統制を廃止した結果、現在おおむね四分の一程度に縮小するに至つております。また物価統制についても、逐次その幅を縮小して、現在おおむね二分の一程度になつております。今後もさらにこの方針を推し進め、経済正常化の基盤を育成して行く所存であります。さらにまた、各企業がみずからの合理化を全面的に推進するためには、当然老朽設備の補修改良と近代的設備の導入が要求せられ、これによる労働能率の向上と、それらの前提となるべき工業技術の改着が切実に要請されるのであります。またこの点につき、今後積極的な外資導入に伴い、新しい技術の導入が期待せられているのでありますが、政府といたしましても、工業技術の振興、技術の導入に一層の努力を傾けて行きますとともに、産業設備合理化のためのいわゆる合理化貸金の確保に支援を惜しまぬ方針でありますが、各企業に対しては、さらに一層合理化への努力を拂うよう、重ねて要望してやまぬ次第であります。
 なお、ここで中小企業の問題について申し上げます。わが国における中小企業が国民経済において占めまする役割のまことに重要なことについては、すでに御承知の通りでありまして、ことに当面する輸出振興の建前から申しましても、これら中小企業が、みずから経営を合理化して、その特質を発揮し、十分その使命を達成し得るかいなかは、今後のわが国貿易に至大の関係かは、今後のわが国貿易に至大の関係しましても、わが国中小企業の実情に即しつつ、その企業内容の強化、金融上の措置、技術指導につき、許す限りの努力を傾けておる次第であります。
 さらに、これらの施策と関連して、資産再評価の問題を控えております。政府は、これによつて企業の資本の充実を促進し、経営の正常化に貢献することを期待しているのでありますが、その実施にあたつては、できるだけ企業や経済の人情に即した方法によつて実施の円滑と成果を期していきたい所存であります。
 以上のごとき産業合理化への努力によつて、わが国経済は逐次その基礎条件を強化して行くべきことが期待せられるのでありますが、さらに今後におけるわが国の人口構成と、これに応ずべき国民経済の規模、産業の構造等をもあせて深く思いをいたしますならば、わが国経済の自立と発展の基盤はなお脆弱たるを免れないのでありまして、この際あえて各般の困難を克服しつつ、あとう限りわが国経済の基盤の育成と健全化をはかり、もつて将来に備えうべきことが要請せられるのであります。このため政府は、たとえばわが国生産力の基幹となるべき電源の開発につき、ふらゆる努力を重ねてその実施の推進に努めるほか、鉄鋼、石炭等重要産業の生産設備の更新改良等をさらに積極的に進めるとともに、外航船の建造等にも力をいたしつつある次第であります。
 経済基盤育成の問題は、さらに農業生産についても同じく重要なるものがあります。農民諸君の久しきにわたる努力と輸入食糧の増加等によつて、最近における食糧事情は著しく緩和せられて来たのでありますが、この反面、農村人口の増大、農業経営の零細化、農家所得の減退等によりまして、農業経営は困難を加えつつあります。しかして、いわゆる農村インフレによつておおわれていた農業の生産基盤の脆弱さが、ようやく表面化せんとするやに懸念せられ、ことに将来日本農業が外国農業と競争関係に立つへきときをも考えますると、幾多重大な問題を将来に控えているといわなければならないのであります。政府は、ここに思いをいたしまして、農業生産の基盤確保のために、耕地その他の災害復興や、水利及び土地改良等、農地の改良構成その他の農業諸施策を国力の許す限り促進して、農業経営の安定に資したい所存であります(拍手)。
 なお水産については、連合国の好意による漁区の拡張が認められ、漁獲高も漸次回復して参りましたが、今後におきましても、水産物が国民の蛋白給源として最も重要であることにかんがみまして、特に水産資源の保持育成と、その利用の高度化を推進して行きたい考えであります。
 しがしながら、ただいま申し上げましたようは鉱工業、農業等各部面における国内資源の利用開発にあたつては、その施策は最も総合的かつ基本的なるを要するのでありまして、政府は、これがため、今後さらに広く、治山、治水、利水、電源開発及びこれに関連した産業立地等について、総合的な国土開発と強力なる建設を推し進めて行きたいと存ずるのであります。
 しかしながら、以上のように生産を充実し、経済基盤を育成するための諸施策を実施するにあたつては、特に所要の設備資金確保の問題に当面するのであります。まず、この点につき重要な役割を果すベき見返り資金の運用でありますが、政府はもとより、その早期有効なる運用に一層のくふうと改善を凝らして行く所存でありまして、これにより効果的かつ迅速な投資目的の達成を目ざすものであります。二十五年度の見返り貸金総額は、前年度からの繰越しを加えまして約千五百八十億円と見積られ、その運用にあたつては、国有鉄道、通信事業、国有林野寺に使用するほか、住宅建設や道路、河川工事等の公共事業に対しても相当額を活用することとし、さらに私企業につきましては、現下喫緊の電源の開発、船舶の新造及び改造ほか、重要鉱工業及び農業面に対しても投資の円滑を期して行きたい考えであります。また二十五年度におきましても、相当額の政府債務の償還によつて、大量の資金が、金融機関に還流することが予想せられております。政府は、この還流資金が有効なる投資に向うよう、日本銀行の市場操作を中心とする活発なる融貸あつせん等に期待しますとともに、さらに日本興業銀律その他長期金融機関の増資による債券発行の拡張等、融資活動の積極化をはからんとするものであります。なおまた、増資、起債によつて企業の自己資金調達の円滑化をはかる等、これらの諸施策をあわせて正常なる長期資金供給に力をいたしますほか、預金部資金の産業資金への流用についても、その実現を期する所存であります。このような諸方策に即応した金融機関の積極的な協力によりまして、健全にしてかつ正常なる金融が確保せられるとともに、金利の引下げによる生産コストの引下げをも期持してやまぬのであります。
 さらに政府は、セメント、鉄鋼等の良好な生産現状にかんがみて、財政面におきましても、災害復旧、治山、治水等に重点を置いた公共事業費の増加、住宅資金の新規計上等、建設資金の確保に、財政力において許しまする限りの努力を示しますとともに、これらの面からも有効需要と雇用機会の増大に資せんといたしたのであります。
 以上申し述べました施策を適時適切に実施いたしました場合の昭和二十五年度の生産と貿易の見通しにつき、ここに一言いたしまするならば、おおむね次の通りであります。
 まず二十五年度の鉱工業生産は、二十四年度に比べまして約二割の上昇が期待できるのであります。今、重要部門について一応推算いたしますると、一部機械類、非金属等で、補給金の削減、需給の関係等より生産上昇を期待しがたいものもありまするけれども、重要基礎資材についてみますれば、たとえば電力は約三百八十億キロワツト・アワー、普通鉄鋼材約二百五十万トン、セメント約四百万トン等を予想られるのであります。これらの数字を昭和七――十一年の水準と比較いたしますると、鉱工業生産は九〇%程度に当り、終戰直後のはなはだしい資材難の当時と比較いたしまして格段の上昇と復興とを認め得るわけでありまして、また同時に、輸入の増大、企業の合理化の促進等によりまして相当なコスト切下げや品質の向上を期待し得ると信ずるのであります。(拍手)他面貿易におきましても、前に申し述べました民間貿易体制の実施によつて、二十五年度は、輸入約十億ドル、輸出は六億ドルを越ゆるものと予想せられるのでありまして、このうち輸出は、二十四年度の輸出見込みと比較いたしましても二割以上の増加となり、これをあわせ考えますれば、一部困難な事情や部面もありましようけれども、全国民の積極的なる問題打開への努力によつて、総じて明るい見通しを抱いてよいと信ずるもりであります。(拍手)
 最後に、以上の諸施策と関連して国民生活安定の問題でありますが、申すまでもなく、国民生活の安定は、基本的には生産の上昇、貿易の振興による国民所得の増加と、物価安定の効果的達成によるべきものでありまして、生産及び貿易については、前に申し述べた通りであります。物価につきましては、経済の正常化の要請から、初給金の削減に伴う一部公定価格の引上げ、並びに昨年末以来貨物運賃、電力料金、消費者米価等の引上げを実施したのでありますが、他面輸入の増大や生産の合理化によるコストの低下と、繊物消費税、取引高税、物品税等間接税の撤廃ないし軽減の実施、並びにこれに伴う一部自由価格の下落傾向をあわせ考えまするならば、実効物価としてはその水準に大きな変動はなく、また今後もこの傾向を持続するもりと考える次第であります。しかして、このような物価水準のもとにおいて、政府といたしましては、今後とも物価体系の正常化と、三百六十円レートを基準とする国際物価水準へのさや寄せ等所要の調整に留意して参りたい所在であります。さらにまた、政府は、このような物価安定への一層の努力とともに、税制改革による所得税軽減の措置をもつて、財政事情の許す限り国民負担の軽減をはかり、生計費への圧迫を防止して、実質賃金の充実に努めることといたした次第であります。(拍手)
 また、この実質賃金の充実のためには、衣食住にわたる国民生活の安定がその根本でありますが、この点については、当初五十四品目あつた指定配給物資の割当統制はおおむね半減し、生活必需物資の需給は全般的に次第に緩和して参つたのであります。特に主食につきましては、今後相当量の小麦、米等の輸入が期待せられますので、政府は配給食糧の質的向上に努めることといたしたのでありますが、なお今後においても需給の見通しが明確になる時期におきましては、配給量についても検討を加えたい所存であります。(拍手)また綿花、羊毛等の原料輸入の増加によつて国民の衣料事情は大いに改善せられ、一人当り四ポンド近くに当たる見込みでありますが、特に国民の最も要望する綿製品につきましては、現在の見通しでは約二ポンドで、本年度の二倍近くを配給することができる見込みであります。さらに依然として深刻な住宅問題に対処いたしまして、公共事業費による庶民住宅の建設、住宅金融機関の創設等の諸施策によつて在宅建設を促進し、住宅不足の緩和をはかつて行く考えであります。(拍手)
 かくして政府は、実質賃金の充実と国民生活の安定が漸次達成せらるべきことを念願するのでありますが、現在の経済諸條件の制約のもとにおいては、運用の問題はきわめて重要な問題となるのであります。もちろん、雇用の機会は根本的には各種産業活動の拡大と貿易の振興によつて増大して行くべきものと考えるのでありますが、前に申し述べました通り、政府といたしましては、一般的な産業及び貿易の振興とともに、公共事典費の増加や、見返り資金等による建設投資の促進によつて積極的に雇用機会の増大をはかつて行くことに全力を傾注する所信でありますが、この間不幸にして発生した失業者に対しては、失業対策費の適切な運用、失業保險制度等の充実によつて補つて参りたい所存であります。(拍手)
 以上、わが国経済の現状及び将来につき、政府の諸対策と見通しの大要を申し述べたのでありますが、これを達観いたしまするに、わが国経済はようやく安定の域に達し、今後さらに全国民の秘極的な再建への熱意と努力が展開せられ、これとともに施策のよろしきを得まするならば、少くとも二十五年度の経済は、本年度に比べまして一段の前進を期待し得ることと信ずるのであ力ます。(拍手)しかしながら、その前途には、国内的にも国際的にも幾多の克服すべき困難な問題が横たわつているのでありまして、国民をあげてさらに決意を新たにすべきことを重ねて要望してやまぬ次第であります。国民経済の真の自立と再建こそ、真の政治的自立の基本であります。戰後のあの混乱と障害とを切り抜けて、ここまで到達することを得たわが国民の熱意と労力とをもつていたしますならば、必ずや明るい希望を持つて国際社会に参加し、自立と自由の国民として立つ日の遠からぬことを信ずるものであります。(拍手)
○議長(幣原喜重郎君) 池田大蔵大臣。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 政府の財政金融政策につきましては、さきに第六回国会において昭和二十四年度補正予算案の審議を煩わしました際、その大綱を明らかにいたしまして、各方価の批判に問うたのてありますが、ここに昭和二十五年度予算案の提出に際しまして、重ねて所信を申し述べる機会を與えられましたことは、私の最も欣快とするところであります。

 昭和二十五年度予算案編成の基本構想は、前国会において申し述べましたところと何ら変わりはございません。すなわち、本年度補正予算及び来年度予算案を不可分の一体として取扱い、一年有余にわたる経済界の見通しと照応し、経済の安定及び復興のための諸施策を、本年度に比し一層積極的に本格的に実現することに努力いたしたのであります。以下、本予算案の内容のおもなるものにつきまして申し並べたいと存じます。
 まず第一は、いわゆる総合予算の真の均衡を堅持したことでございます。来年度予算案は、一般会計において、歳入歳出とも総額六千六百十四億円余とりつておりまして、その他の特別会計及び政府関係機関を通じまして、收支の均衡は厳に確保いたしております。政府は、来年度予算案におきましては、単に量的に収支のつじつまを合せるだけでなく、国民経済と財政との調和に最も意を用い、本年度に比し約八百億円にも上る歳出の大幅な節減を断行いたしまして、国民負担の画期的な軽減をあわせて行いつつ予算の均衡を確保いたしたのであります。戰前及び戰後を通じ増加の一途をたどりました財政負担が名実ともに減少いたしまたことは、実に十数年来のことでありまして、将来の正常財政への第一歩がここに印せられたものと確信いたします。(拍手)
 第二に、歳出を節減いたしましたおもなるものは、まず本年度補正予算の場合と同様、価格調整補給金でありまして、本年度当初予算に比しまして、その半額以下の九百億円にとどまつておりますが、この価格調整補給金の整理による影響は、極力企業勢力等によりまして吸収することにし、一般物価への影響は僅少にとどめ得る見込みであります。
 次に、貿易、食糧管理その他の特別会計並びに復金等の政府関係機関に対しまする一般会計からの繰入れ、出費等は、本年度の約千二百八十億円に対しまして、来年度はわずか二百二十億円と、大幅に減少いたしております。これは経済安定の進歩によつて、これらの会計等の運営が正常な状態に立ちもどつて来たことを示すものにほかならないのであります。
 なお、経済運営の正常化に伴つて、政府の諸般の経済統制、公用方式につきましても根本的検討を加え、最小限度必要とする範囲のものを除き極力廃止する方針のもとに、着々整理を実施し来つたのであります。その結果、予算の面におきまして、歳出の節約に寄與したところ決して少くないのであります。また本年度に実行いたしました行政管理につきましては、その統制の整理に伴う事務の減少とも相まちまして、その財政的効果を保持することに努力し、人員の増加及び機構の拡充は、きわめて例外的な場合を除いては計上していないのでございます。
 第三に、歳出の減少に伴いまして、本格的な税制改革を来年度を期していよいよ実施することにいたしました。その結果、来年度の一般会計歳入中、租税及び印紙収入の総額は四千四百四十六億円となり、本本度に比し七百億円以上の減少を示しております。本年一月一日からすでに実施されました一部の減税措置をあわせ考慮いたしますならば、実質的には本年度に対し約九百億円程度の減税となりますことは、前国会において、申し述べた通りであります。(拍手)
 税制改革案についての詳細な説明は、法案提出の機会に譲ることといたしますが、その大要は、まず所得税については、基礎控除、勤労控除、扶養控除、税率等について、現下の事態に即応するように改正を行うことといたしました。特に勤労控除、基礎控除等につきましては、シヤウプ勧告に示された以上の緩和の措置を講ずることといたし、(拍手)わが国の実状に照して国民負担の合理的な軽減をはかりましたほか、高額資産者に対しまして新らたに富裕税を課することといたしました。また法人については、経済界の実情に即応し資産の再評価を行い、超過所得、清算所得に対する法人税の課税を撤廃し、その経理を適正化することによつて企業経営の基礎を確立し、現在最も緊要な資材の畜材に資することといたしました。その他相続税等についても相当大幅な改正を行つております。なおこれ関連いたしまして、政府はタバコの値下げを行うことを考慮いたしております。これらの改正によつて、後にも述べますような地方税の改革による若干の負担増加を考慮いたしましても、(「若干じやない」と呼ぶ者あり)国民の租税負担は、総体として相当軽減することは明瞭であるのであります。
 なお税務行政の面におきましても、シヤウプ勧告の次第もあり、また今般の税制改革が税法の忠実な励行を前提としていることにもかんがみまして、その運営の刷新につきまして格段の努力をいたす必要があるのであります。その一端として、政府は、徴税機構をさらに充失し、他面青色申告書制度の採用、異議申立に関する協議団の新設等所しい制度を採用し、徴税の合理化に資することといたしました。これらの措置と相まつて、政府は今後極力納税の円滑化に努力する所存でありますが、国民各位におかれましても、申告の励行、滞納の一層に特段の御協力をお願いする次第であります。
 第四に、公共事業費等建設的な資金について、思い切つて多額を計上いたしたのであります。まず公共事業費でありますが、本年度に対し約六割増の九百九十億円を計上し、災害の復旧、資源の保護開発等、経済復興の基盤の培養に努め、また従来とかく本十分でありました文教施設につきましても相当額を計上し、その充実を期したのでちります。また鉄道、通信等の事業における建設的な経費についても、本年度に比し担当大幅な増額を行つております。次に見返資金特別会計におきましても、また鉄道及び通新事業のほか、公企業及び公共事業に対しても投資することとし、合計四百億円をこれに予定いたしておるのであります。このほか、私企業に対します直接投資は四百億円程度が可能となる見込みであります。従いまして、一般会計、特別会計、政府関係機関を通じ、建設面に向けられた経費は総額実に約二千百五十億円に達するのでありまして、本年度の総額約千二百七十億円に対し約七割の増加と相なつているのであります。(拍手)かくのごとく多額の建設的資金を計上することができました結果、今後における有効需要の提起、失業者の吸収、経済の再建に寄與するところがきわめて大きいと確信いたしておるのであります。(拍手)
 第五には、引揚者対策、失業対策、困窮者の生活保護、保健及び衛生その他の社会政策的事業につきましても相当多額の経費を計上し、国民生活の安定に資することといたしました。特に住宅対策につきましては、住宅需給の現状にかんがみまして、公共事業費中に、住宅建設資金として三十八億円を計上いたしますとともに、五十億円を出資して住宅金融公庫を設立することとし、別途また百億円に上る見返り資金をこの方面へ運用することと相まつて、庶民住宅対策に万全を期することといたしたのであります。(拍手)なお、科学研究費、国立大学関係経費、育英資金、国宝保存費等文化的な施設につきましても積極的な方針をもつて臨み、文化国家としての発展に資しているのであります。
 第六には、本年度予算以来の特色となつております債務償還の問題でありまして、来年度予算におきましても、一般会計、特別会計を通じて七百八十六億円を計上し、さらに見返資金特別会計においても五百億円を計上しているのてあります。債務償還は、現段階における経済安定の手段として、また最も確実な資本蓄積の方法として特に重要視しなければならないのでありまして、今後とも、その運用にあたりましては、経済界の推移に即応し、愼重な配慮をもつて臨む所存でございます。
 第七に地方財政の問題であります。シヤウプ勧告書は、中央及び地方の財政問題を一体として取上げ、地方財政の制度につきましても、きわめて適切な改革を勧告しているのであります。政府は、その趣旨をくみまして、地方自治団体の財政基礎の充実に資するため、地方配付税の制度を廃止して、新たに地方財政平衡交付金の制度を創設し、一千五十億円を計上いたしました。なお地方税につきましても、国税体系との関連をも考慮いたしまして、附加価値税、固定資産税、住民税の増徴等を行い、その反面、不動産所得税を廃止し、入場税を軽減する等、全面的改革が予定されており、不日、本国会に提出される見込みであります。これらの措置に伴い、相当の収入が見込まれますので、地方財政は来年度以降格段の充実を示し、地方公共団体の自主的活動を促進することになると存じます。
 第八に、本予算案編成の基礎となつております物価及び給與ペースについて一言いたします。物価はおおむね現行の水準を維持するものとし、その基礎の上に立つておりますが、最近いわゆる消費者実効価格もまつたく定定しており、政府は、今後ますますその安定を強化し、さらに低落の傾向にも導きたいと努力している次第であります。
 特に国家公務員の給与ベースにつきましては、先般人事院より改訂の勧告もありましたが、政府といたしましては、給与ベースの変更はこれを行わない考えであります。すなわち、現行のベースが完全に実施せられました昨年三月以降における消費者物価指数は、横ばい、あるいはむしろ低落の趨勢にあるのでありまして、実質給與はその後決して低下していないのが実状であります。また国家公務員の給典ベースの改訂は、実際問題として民間給與に相当影響を及ぼすおそれなしとしないのであります。なおかりに先般の勧告を実施いたすとすれば、中央地方を通じ、一箇月当り約五十億円の財源を必要とするのであります。一年に直しますと六百億円に相なるのであります。そのためには、一般会計において予定されている減税の大部分を見合すこと、あるいは特別会計においては運賃、料金の値上げ、地方財政については平衡交付金の増額、地方税の引上げなどの措置を講ずる必要が起るのでありまして、かような事態に立ち至りますれば、現在のわが国の経済安定のための基本的な政策がすべて破壊されることになるのは明らかであります。賃金水準、物価水準の安定こそは、経済安定のための不可欠の条件であります。従いまして、政府としましては、給與ペースの改訂という安易な方法を排しまして、勤労所得税において特にシヤウプ勧告以上の減税を行い、また副利実施の充実、消費者実効価格の引下げ等によつて実質給與の向上をはかる考えであります。国家公務員諸君におかれては、経済安定の現段階をとくと認識せられ、一時の苦しさに耐えて、経済安定に協力されんことを切望してやみません。(払手)
 以上、昭和二十五年度予算案の特色を申し述べましたが、財政政策と不可分の関係にある金融政策の根本方針につきまして、簡單に所見を申し述べることといたします。
 政府は、本年度予算の実施以来、国民経済に占める金融の重要性にかんがみまして、適時積極的な方策をとることに努力して来たことは、御承知の通りであります。来年度においては、一般会計、見返資金特別会計、預金部などの政府部門に蓄積される資金は相当巨額に上る見返みでありまして、今後の金融政策の重点は、これらの資金が、その他の一般の蓄積資金とともに、わが国経済の再建に真に役立つような方面に積極的に再放出されるように指導調整することにあると信じます。従いまして、政府は、巨額の債務の償還に際しても、その償還資金が、日銀を通じ、あるいは直接市中金融機関から緊要産業に再び放出されるよう適切な指導を加えたいと存じます。また見返り資金、預金部資金等についても、適時に適量を披出することといたしまして、日本銀行の積極的な指導、市場操作と相まつて極力適正な通貨量を維持し、もつて経済の円滑な発展をはかりたいと存じます。
 資金の供給につきまして、政府が従来最も力を注いで参りましたところは、長期設備資金、農林水産関係資金及び中小企業資金の供給の諸点であります。特に長期設備資金の供給については、日本興業銀行その他の金融機関に優先株式を発行せしめ、見帰り貸金がその全額を引受けることによつて自己資金の充実をはかり、あわせて長期金融債の発行限度を拡充するため、諸般の準備をとり急いでおります。本措置によつて、長期設備資金の供給は一段と順調になるものと信じます。
 次に農林水産関係資金についても、既定方針に基づき農林中央金庫の増資を行い、他方同じく見返り資金の引受によつて棒先株式を発行せしめることを考慮いたしておるのであります。
 中小事業金融についても、すでに市中銀行を準ずる見返り資金融資の制度が発足しておりますが、さらに商工組合中央金庫の増資による拡充を行います他、右に準ずる優先株式発行の方法についても鋭意研究を進めておるのであります。なお預金部資金については、昨年末百億円を市中金融機関に預託して、銀行のみならず広く庶民金融機関への資金還元をはかり、もつて年末金融の緩和に資するところがあつたのでありますが、今後もその活用について一段とくふうを凝らしたい所存であります。しかしながら、長期資金は企業の自己資金によつてこれをまかなうのが本来の建前でありますから、政府といたしましても、企業が自己資金の調達を容易に行い得るような素地を育成するととに努力したいと存じます。
 これがため必要なことは、第一に企業経営の合理化であります。企業経営の合理化は、すでに昨年以来相当進歩を示しているところではありますが、今後国際経済との関連の上にわが国の企業を再建して行くためには、引続いたインフレーシヨシのために不当にゆがめられた企業の経理を、この際一日もすみやかに正常な健全な姿に立て直さなければなりません。政府は、かような観点から、今回資産の再評価を実施し、企業経理の適正化に資することとしたのであります。各企業においても、わが国経済の現段階をとくと認識せられ、企業の健全な発達に格段の努力をいたされんことを要望いたします。
 その第二は、証券市場の現状に照し、株式による資金の調達を容易ならしめるため、積極的な措置を講ずることであります。証券市場の健全な発達が経済再建の重要な條件の一つであることは論をまたないところでありますが、最近における証券市場は、諸般の原因から意外の不振を示しているのでありまして、かくては企業の長期資金の調達も困難を来すおそれがあります。政府は、このような情勢を打関するため、先般来証券金融の優遇をはかる措置を講じ、また各方面の協力を得て、日本銀行のオペレーシヨンの活用、放出株の調節、企業再建整備等による増資の時期的調整、その他株式取引の円滑化をはかつて参つたのでありますが、今後ともさらに積極的方策を講じ、健全な証券市場の育成と、投資家大衆の保護をはかりたいと存じます。
 なお市中金融機関の一般貸出し金利については、わが国経済の国際的地位にかんがみ、この際一層銀行経営の健全、合理化をはかる必要があり、また産業界における合理化を促進するためにも、貸出し金利をさらに引下げることを適当と考え、二月一日から原則として二厘方引下げを行うことといたしたのであります。(拍手)
 次に、この際貯蓄につて一言申し述べますと、本年度における貯蓄実績は、昨年末に早くも目標額の二千五百億円を突破する好成績を示し、また預金と通貨の比率、預金総額に占める定期性預金の比率等も次第に戰前の健全な常態に復帰しつつあることは、まことに御同慶にたえないところであります。このような著しい貯蓄成績を上げ得ましたことは、昭和二十一年十一月、国会の総意に基いて設置せられた通貨安定対策本部の、四年有余にわたる活動によるところが実に大きいのでありまして、昨年末有終の美爽をもつて解散せられた同本部の多年にわたる御協力に対し、衷心より謝意庶を表する次第であります。(拍手)
 次に、国際収支の問題について所信を申し伸べたいと存じます。国内経済の安定がその緒についた今日、すみやかに国際収支の改善を実現することが今後わが国経済に課せられた最も重大な問題であることは申すまでもありません。これがためには、まず輸出の振興をはかることが大切でありますが、ポンド切下げ直後一時憂慮された輸出の停滞も、最近においては幸いにして完全に回復するに至つたことは御同慶にたえません。政府としては、今後既定り方針をますます推進するとともに、先般確立された新方式による民間貿易の活発化をはかり、また貿易外の収支の改善についても積極的に各般の施策を推進する予定であります。なおこれと関連し、外資導入についても、利潤等の海外送金、外国人に対する課税等の問題をすみやかに解決し、経済再建に貢献する優良な外資がわが国に投下されることを強く希望している次第であります。
 外国為替管理につきましては、世界経済に直接連結する態勢の下の、海外金融機関とのコルレス契約の実現等、漸次その道を開拓しているのでありまして、適正な外国為替管理を実施し、信を世界に得たいと考えております。(拍手)これらのあらゆる施策を通じて、今後における米国の対日援助の漸減に対処し、経済自立の態勢を整えたいと存じます。
 以上、昭和二十五年度予算案を中心として、政府の財政金融政策の概要を申し述べたのでありますが、しばしば繰返しましたように、政府の政策の基調はデイスインフレーシヨンでありまして、決してデフレーシヨンではありません。いわんやインフレーシヨンでないことは言うまでもないのてあります。巷間一部でば、政府の政策及びその結果としての国民経済の現状をデフレ的と評し、経済不安を云々する者がありますが、その誤りであることは、主要な経済指数の上に明瞭であります。たとえば、通貨は昨春来特に異常と認められる動きを示しておりません。物価も賃金もまつたく安定しております。生産水準は上昇しており、昨年十一月のごときは、戰後最高の水準をさえ示しております。かかる状態は、まさにディスインフレーシヨンであると確信するものであります。(拍手)この現状を率直に認識することを回避し、いたずらに経済の不安定を説くことは、いわゆるためにする議論にすぎないのであります。(拍手)
 来年度予算は、このすでに築かれたディスインフレの基盤の上に安定を強化しつつ、国民経済を安定からさらに復興へと躍進せしめんとおるものであります。これがため、国民経済に調和するように国の財政規模を縮小し、これに伴つて画期的な減税を断行するとともに、この縮小された範囲内で大幅の債務償還を実現し、他方においては公供事業費その他の建設的資金をできるだけ多く計上し、また見返り資金の有効適切な活用によつて、鉄道、通信施設の建設、改良、電力、船舶その他の基幹産業の拡充をはかつているのであります。かくのごとく、政府の施策は、耐之の一面、巨大な建設を予定しているものでありまして、このような充実した財政政策は、近来わが国にその例を見られなかつたところであります。これらの予算上の施策は、国民経済に健全な資本の蓄積を可能ならしめ、適切な金融政策とも相まつて、わが国経済の真の再建、生産の上昇の素地をつくることに寄與するところが大きいと確信いたします。
 これを要するに、財政金融政策の全般を通じまして、当座の困難に惑わされ、いたずらに施策の緩和を望むような安易な考え方は絶対に排すべきでありまして、予算の運用にあたりましても、あくまでも既定の方針を貴き、まず経済の安定を強化することに全力をあげ、しかる後、安定せる基盤の上に、安定の度合いに応じて経済復興の諸施策を着実に推進して行くことが、現下の急務であります。(拍手)
 私は、国民各位が政府の財政金融政策を十分理解せられ、その一層積極的な御協力を得て、来るべき昭和二十五年度を、経済安定から復興、再建への歩みを進める年とすることを切望してやみません。この一年を全国民の努力をもつりて乗り切りますならば、昭和二十六年度には、さらに減税が可能となり、資金の供給も一層潤沢になりその地経済生活のあらゆる面において一段と明るい希望に満ちた年となることを、ここに公言してはばからない次第であります。
     ――――◇―――――
○議長(幣原喜重郎君) この際御報告を申し上げます。議員高橋定一君は昨年十二月二十五日逝去せられました。まことに痛惜、哀悼の至りにたえません。高橋君に対する弔詞は、議長において先例によりすでに贈呈いたしました。
 この際同君に対する弔意を表するため、受田新吉君より発言を求められております。これを許します。受田新吉君。
    〔受田新吉君登壇〕
○受田新吉君 ただいま議長より御報告がありました通り、本院議員高橋定一君は、昨年十二月二十五日、不幸病気のために遂に永眠いたされたのであります。まことに痛惜にたえない次第であります。私は、ここに諸君りお許しを得まして、議員一同を代表いたしまして、つつしんで哀悼の辞を並べたいと存じます。
 高橋君は、山口県岩国の御出身でありまして、東京帝国大学を卒業いたされまするや、ただちに鉄道局に勤務せられ、爾来運輸行政に専念せられること十数年、昭和十四年四月、本省の自動車部長を最後にいたしまして官を辞され、その後華北交通株式会社に勤務いたされまして、その豊富なる経験を生かされ、着々と才幹を振われたのでありました。その後終戰に際会いたしまして、二十一年五月内地に帰国いたされますや、同時に財団法人大陸鉄道従業員援護会理事に就任いたされまして、なお大陸に残留を余儀なくせられておりまする幾多鉄道従事員の引揚げ促進とこれが援護に献身努力を傾倒いたされたのでありました。
 同君は、人となりまことに誠実でありまして、しかもきわめてまじめであり、温情に富み、同時に清濁合せのむところの雅量を持つておられたのであります。かかるがゆえに、郷党の信望もきわめて深く、昨年一月の総選挙にあたりましては、初陣ながらもよく当選の栄光をになわれたのでありました。在職一年間、君は運輸委員会委員として、また多年の経験を豊富に生かされまして、着々と業績をあげられましたことは、われわれのよくこれを認めるところであります。前途なお幾春秋に富まれる君が、今期国会の再開日である本日を待たるることなくして、卒然と長逝せられましたことは、まことに返す返えすも痛惜にたえない次第であります。
 思えば、昨年一月二十三日は、私たちが吹雪を冒して闘い続けた総選挙日であります。この日、幾多の有力な候補の中に推されまして、初陣よく当選の栄出をになつた日の高橋の、あの希望に満ち満ちた風貌が、なお眼前にほうふつとして迫つて参るのであります。くしくも満一年を経過いたしましたる今日、私たちは、悲しくも同君のあの英姿をこの議場に見ることができないのであります。私は、君とともに選選挙に馬を推めた立場より、本日ここに同君に対して追悼の辞を述べることは、まことに切々として胸に迫るものを覚えるのであります。しかしながら、君が再建途上の憲政の上に残されましたる偉大なる功績は不滅でありまして、同時に君の着実、真摯なる民主政治確立への意欲は、よく君の後へ続く幾多の人々によつて拡充発展せられることでありましよう。
 私は、ここにつつしんで高橋定一君の遺徳をたたえまするとともに、同君に対し心より哀悼の誠をささげる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○山本猛夫君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し明後二十五日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後二時五十七分散会