第007回国会 文部委員会 第26号
昭和二十五年四月三十日(日曜日)
    午後零時四分開議
 出席委員
   委員長 長野 長廣君
   理事 岡延右エ門君 理事 高木  章君
   理事 圓谷 光衞君 理事 水谷  昇君
   理事 原   彪君 理事 松本 七郎君
      柏原 義則君    木村 公平君
      佐藤 重遠君    千賀 康治君
      渡部 義通君
 出席政府委員
        文部政務次官  平島 良一君
        文部事務官
        (文部大臣官房
        総務課長)   森田  孝君
        文部事務官
        (初等中等教育
        局長)     稻田 清助君
 委員外の出席者
        参議院文部委員
        長       山本 勇造君
        文部事務次官  伊藤日出登君
        参議院法制局参
        事
        (法制局第一部
        第二課長)   岸田  實君
        衆議院文部委員
        会專門員   横田重左衞門君
        参議院文部委員
        会專門員    竹内 敏夫君
        参議院文部委員
        会專門員    岩村  忍君
四月三十日
 委員淺香忠雄君、坂田道太君、本多市郎君及び
 若林義孝君辞任につき、その補欠として岡村利
 右衞門君、苫米地英俊君、龍野喜一郎君、及び
 田中不破三君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員龍野喜一郎君辞任につき、その補欠として
 木村公平君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月二十九日
 文化財保護法案(参議院提出、参法第六号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 文化財保護法案(参議院提出、参法第六号)
    ―――――――――――――
○長野委員長 ただいまより会議を開きます。
 文化財保護法案を議題といたします。本法案は去る二十九日本委員会に付託になりましたものであります。
 ちよつと速記をとめて……
    〔速記中止〕
○長野委員長 速記を始めてください。
 それでは暫時休憩いたします。
    午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十六分開議
○長野委員長 再会いたします。
 質疑を許します。
○松本(七)委員 前回山本委員長から提案の理由の説明の際に、この案は衆参両院でもつて協議して、長い間検討を加えて、むしろ衆議院の意見を全部織り込んで出したのであるから、詳しい提案の理由の説明は恐縮だというようなお話があつたのですが、その後検討してみますると、たとえば十三條に委員長及び委員が、法律の定めるところによつて相当額の給與を受ける規定がある。この点に関しては、衆議院側では全会一致して、委員はすべてこれは無償でやる、奉仕的にやるということに申入れもしてあつたと記憶するのであります。こういう点が出て来ると、はたして衆議院側の意見というものが、これ以外に全部含まつておるかどうかということも、一応疑問になるので、この十三條の規定を挿入された理由と、それから他にまつたくそういう点がないかどうか。一応委員長からお答え願いたいと思います。
○山本参議院文部委員長 この前提案理由を申し上げましたとき、私は両方とも話合いでやつておることであり、かつまた皆様からいただいた法案を織り込んでしたのであつて、そういう点から言うと、私はこちらへ来て感謝の言葉を申し上げることが、そのまま実は提案理由みたいなもので、話せばわかるということがあるが、これはたいてい話さなくてもわかるような案だろうというふうな御答弁を申し上げたわけであります。衆議院と何回も打合せをやつておりまするから、大体御意向もわかつておりますし、織り込んだのでありますが、ただいまの松本さんからの御質問の点につきましては、たしかここのところは衆議院の方とかわつておるのであります。これは私前のときに申し上げていることでもあり、ことに委員長には、前の委員長にも、今度の委員長にも懇々われわれの方の考え方はこうである、また事実こういうところにあるのだということを申し上げたつもりでありますが、あるいはまだ皆さんの方に御徹底になつていないとすると、私の手落ちかもしれませんが、その点につきまして、それでは十三條の問題につきまして申し上げます。
 この決によりますと「委員長及び委員は、別に法律の定めるところにより相当額の給與を受ける」こうなつておりまして、衆議院案では、ここのところは手当程度にお考えになつておつたようであります。それも一つの考え方であると思うのでありまして、むろんわれわれはその点気づかないでおつたとか、あるいは無視したというのでは決してございませんが、御存じの通り、この文化財保護委員会というものは、行政機関でございまして、普通諮問機関であるというのとは、名前は委員会でありますけれども、この委員は、單に委員会が開かれたときに、ぽつと出て来て意見を述べで帰るというようなものとは違いまして、行政機関であつて、毎日出て来てほんとうに大きな大事な事業をやつて行く委員会でございますから、無償であるとか、あるいは手当というのでは、いかなる人でありましても、今日の状態では困難ではないか、あるいは相当の生活ができる人を委員にいたしたといたしましても、今無償でそういう毎日出て来て行政の事務をとるということは、ほとんど、それはいかなる人にも望めないことだと思いましたので、給與ということにいたしましたのと、なおまたこういう委員会が、ほかに前例がなくてするなら、それは別でありまするけれども、こういうふうな委員会におきましては、相当額の給與を出すというのがほとんど普通であります。たとえば国家公安委員会、公正取引委員会、全国選挙管理委員会、地方自治制度調査会、外国為替管理委員会、統計委員会、電波監理委員会、中央更生保護委員会、証券取引委員会、これらすべてみな委員会の形になつておりますが、相当額の給與を出しておるのであります。従いまして、今申し上げます文化財保護委員会も、毎日出て来て行政の事務をとるのでありますし、ただいま申し上げましたようなほかの委員会も給與を出しておるのでありますから、これはひとつ衆議院の方においても御考慮願いまして、われわれの方にぜひ御同調を願いたいと思うのであります。なお念のために申し上げておきますが、そのほかに、たしか名前が幾らか違つておるかと思いますが、日本国有鉄道審議会というような諮問機関の委員に対してさえも、やはり相当額の給與を出しておるのであります。そういうふうな例を見ますと、この委員会には給與を出すということについて、ぜひ皆様の御賛成を願いたい、こう思うのでございます。
○松本(七)委員 ただいまの委員長の御説明で、委員長の考え方がどういうものであるかということは、よくわかりました。しかし今のお話では、衆議院の前委員長原さん及び現在の長野委員長に十分お話をしてあるというお言葉ですが、実は原前委員長に私が昨日お目にかかつたときに今日はぜひ来ていただくように申し上げておいたのですが、お出でになりませんから、われわれ衆議院側の委員としても責任がありますので、私がかわつて御質問をするわけでありますが、原さんはこの点は非常に憤慨されておつた。衆議院の意向をあれだけ強く主張しておつたにかかわらず、この点がやはり入れられておらないということを言つておられた。これは衆議院側の問題として、そういうわけならば、前委員長としてもやはり責任があるのですから、参議院の意向というものはこういうものであるということを、事前にもつとわれわれに徹底するようにはかるなり、相談する機会を持つべきであつたと思うのであります。しかしこれはわれわれの問題であります。ただ私がお伺いしたいのは、はたして参議院の委員長が前委員長に話されたときに、原さんが了解されておつたのかどうか、そこのところをいま少しくはつきりお答え願いたいと思います。
○山本参議院文部委員長 原さんとこの問題は前から話しておりましたが、手当というようなことは、原さんの御持論であつたかと思います。それからわれわれの方としては今申しましたようなことですが、これは私個人だけでなく、参議院の文部委員会としてそういう考えでありましたから、その意味のことを原さんにはよく何度も申し上げてあるのでありまして、私の方としては、そういう建前であり、またこの委員会の性質上、何といつても行政機関でありますから、こうしていただかなければやりきれないのだからということを、るる申し上げてあります。ただ原さんからは、そのとき承知したというお言葉は、私は聞いておりませんけれども、了解していただけるものと思つておりましたことと、それから長野さんにおかわりになりましてからも、この点は前から原さんとの間で問題になつていたが、しかしこれはぜひひとつ御同調を願いたいということを申し上げたのみならず、いつでありましたか、博物館の問題につきまして、理事会のような形で両方の合同理事会がありました席でも、私この問題に触れて申し上げてあるはずだと思つております。ただ皆さんの方の委員会といたしまして、その点どこまでお進みになつているか知りませんけれども、私といたしましては、これは非常に大事な点でありまするので、自分としては申し上げたのでありまして、その上これに御同意願えるかどうかは、また皆さんの方の委員会でお諮りを願いたいと存じます。何しろ申し上げたような行政機関とありますから、無償とか、あるいは手当程度というようなことでは、毎日出勤して来てやるという建前から申しまして、いかなる人が出て来ましても、それではとうていやつて行けない、何らかのことをしなければ、生活が立つて行かぬだろうと思いますので、この点はぜひともひとつ皆さんの方で御審議を願いたい、かように存じます。
○松本(七)委員 この問題は、今後はむしろ衆議院自体の問題だと思いますが、提案者の御趣旨は了承いたしました。ただ別に法律の定めるところによつてやるとしてありますが、この点他の委員会などの例を考慮しまして、どういう法律でこれを定めることになるのでありますか。
○山本参議院文部委員長 それではたいへんいい御質問ですから、具体的に申し上げます。先ほど九つでありましたか、委員会の名前をあげましたが、その場合における給與がどうなつているかということを、まず最初に申し上げます。国家公安委員会におきまして、は、委員長が月額三万二千円、委員も三万二千円となつております。それから公正取引委員会におきましては、委員会は三万二千円でありまして、委員は二万五千六百円になつております。それから全国選挙管理委員会におきましては、委員長はやはり三万二千円でありまして、委員は二万四千円になつております。それから地方自治制度調査会におきましては、委員長が三万四百円、委員が二万四千円であります。それから外国為替管理委員会は、委員長が三万四百円、それから委員が二万七千二百円、大体こういうふうになつております。文化財保護委員会の方はどういうふうになるかと申しますと、ほかの委員会と同様、この委員長は非常に大事であり、またりつぱな人にしていただかなかつたならば、この運営がうまく行かないと思いますので、ほかの委員会の例に従いまして、委員長は三万二千円というふうに考えております。委員はほかの委員会では三万二千円とか二万五千円とかあるいは二万七十円というのもございますけれども、むしろその下の方に当ります二万四千円というのをとつております。
○松本(七)委員 これはどういつた法律できめるのですか。
○山本参議院文部委員長 附則の百二十五條でございます。
○渡部委員 この問題ですが、文化財保護法関係の委員長なり委員会なりが、そのように頻繁な任務を持つものなのかどうか。大体私たちは、博物館の人たちその他と始終接触しておりまして、こういう問題についても意見を十分交換したわけですが、それに述べられたいろいろな委員会の場合には、選挙管理委員会等を除いては日常起り得る諸問題について、刻々に解決の道を講じて行かなければならぬような委員会が多いわけですが、この文化財問題については、そういう毎日起り得るをような事態、一々解決して行かなければならないというような性質のものではないのじやないか。これはやはり国宝に対する、あるいは重要美術に対するそれがそうあるべきような認定をはつきりさせ、それについての保護の根本方針をきめるというような性質のものであつて、そういう場合には、述べられた経済関係その他の委員会等とは非常に性質が違うのじやないか。この点はどうお考えですか。
○山本参議院文部委員長 この委員会は、この法案をごらんの通り、前の国宝保存法とか重要美術に関する法律とか、あるいは史蹟、名勝、天然記念物というようなもの、それらは今まで御存じのようにそういう法律があると同時に、それぞれの委員会があつて活動していたわけですが、そのほかに無形文化財であるとか、あるいはまた埋蔵文化財というようなものも入りまして、それを一緒にいたしまして、それらのものを整理統一して行政を行つて行く機関であります。單に昔の国宝保存会というふうなものでありましたならば、それほどでないかもしれませんが、今度のですと、それらをみんな統一してやりますので、非常に事務が多い、各方面にわたつて事務が多いわけであります。そしてどれのものも御存じの通り戰後みんな放任されておつた形であり、また戰後におきましては、御承知の遡り国宝美術等の指定がストツプされておる状態でありまして、これから急にやつて行くといたしますと、長い間放任されておつたのでありますから、非常に事務が多いだろうということが予想されるのであります。ことに今度は国宝というようなものが今までのと考えをかえまして、前にはたいへん国宝の数が多いかつたのですけれども、国宝とする以上は、できるだけ国で保護をして行かなければならぬ。それにはこんなに多い。あれも国宝だこれも国宝だと、名前だけ国宝で、さつぱり保護を加えてないようなのではいけないから、すつかりここでもつて指定が解消になるごとに選びかえをやろうというわけで、單に国宝とか重要美術品とかいう方のものだけを見ましても、これを一応重要文化財を下げまして、あらためてまた選びかえるということは、このこと一つだけでもたいへんなことであり、また選びかえて行くにつきましてはそれぞれ調査をし、またそれの台帳をつくり、そういうのを、何といいますか印刷にしてまわすようなこともいたさなければなりませんので、單に選びかえの上でだけでも、非常に大きい仕事があると思うのであります。それからまた保存をどういうようにやつて行くかということも、ただいま申し上げましたように戰時中からほうつておいて、また戰後においても十分に行つていないのでありますから、こういうりつぱな委員会の方々によつて再調査をしてもらつて、そうしてほんとうにやつて行つてもらわなかつたならば、これはできないだろうと思います。それからまた、今まででありますると、文化財を公開をするような場合、大体所有者の方の御理解を得て出品を願つておるわけでありますが、中にはおれのうちのものは、そんなにむやみに見せられぬというようなことで、出さぬようなことになつておりましたが、今度はそういうふうなりつぱな国宝なり重要文化財として指定されるようなものは、それは所有としては個人の所有に相違ないのですけれども、しかしながらまたそれは国民の文化財だというような考えに立ちまして、できるだけその公開をしてもらうように努めることになりますので、そういうふうな点においてでも所有者の理解を得るとともに、また喜んでそういうのに出してもらうという建前をとつておりまするから、そういうふうな勧告等の問題もずいぶん含まつて来るだろうと思われます。非常に多くて実はこのくらいの委員で、このくらいの事務組織で実際やつて行けるかと心配しているくらいでありまして、用は十分にあるとわれわれは信じておるわけでございます。
○渡部委員 つまり委員会の任務というのは、国宝重美の選定や保護や管理の基本方針をきめて行くというようなところに向いて、その下部の機構が、おつしやつたような選定上の具体的な準備をやつて行く。たとえば国宝重美に関するその性格とか特質とか意義とかについての研究調査の根本的な部分は、下部組織においてもちろんやつて行くのだろうと思われるわけです。そうすると下部組織の行つた調査研究に基いての認定をするというところに、委員会の性質があるように思うわけですが、そうなつて来ますと、委員会の任務というものは、一々まかいことにまで、印刷等に至るまで関係するようなものではないのじやないか。今までの委員会に見ましても、私はそういう性質のものではないと思うのですが、その点にやはり山本さんの方との考え上における違いが出て来るのではないかと思うのですが……
○山本参議院文部委員長 下の者にやらせて、委員はただ下の者がやつて来たのを盲判を押して進めて行くという委員会なら、こんなものを設ける必要は私はないと思うのです。そういうふうな指定や何かしますのには、専門審議会というようなものを設けまして、それに諮問をいたしまして、いろいろなことをしなければなりませんけれども、この問題に関する行政のすべでの責任は、全部委員にあるのでありますから、委員がほんとうにやつて行かなければならないのでありまして、下の者のやるのに盲判を押すか、あるいはそうやつておけと言つて放つておくような委員会ではない、こういうふうに私は考えておるわけであります。
○渡部委員 私たちはこの問題については、実は博物館とか、その他いろいろな文化団体等の代表者と、常に根本的な討論を続けて来たわけです。そういう見地に基いてわれわれとしは意見を出したわけなので、おそらく現実にそのことに携わつている専門家たちの考えるところは、そう私は狂いがないんじやないかという見地から、衆議院の方等においても、こういう点を相当参照しまして出た議論であつたわけなんです。
○山本参議院文部委員長 お答えいたします。今の問題はおそらく衆議院案でも大体私が申し上げたと同じような考え方に立つていたのだと思うのです。今ちよつと手元に持つておりませんが、どこまでも委員会が中心でありまして、そうして問題等につきましては、五人の委員だけで独断でやるのはいけないから、そのために専門審議会をつくりまして、十分にその専門の人たちの審議を経、あるいはまたそういう人たちから建議があれば、その建議も受ける。しかしながら執行するのは、どこまでもこの委員会なのでありまして、そういう意味から言うと、どこまでもこの委員会が中心であり、同時に中心であるから一番忙しい。決して單に委員会があつたら、その時に出て来て、何か意見を述べて帰つて行つてしまうというふうな、普通の諮問機関などと違つて、行政の執行機関でありますから、これが忙しいことは当然なわけです。かりに国宝を今度選びかえるということは、その国宝とはどういうものにするかという問題、これは当然専門審議会でも皆さんに御相談することだろうと思いますが、そういうものをきめて行くことだけを考えましても、たいへんなことだろうと私は思います。この委員会でやる仕事はたくさんありまして、この委員会が單なる諮問機関程度の楽な委員会だとは、私は考えておりません。
○渡部委員 大体意見はわかりました。
 それからもう一つお聞きしたいのです。それは四十四條ですが、委員会が文化の国際的交流その他の事由により特に必要と認めて許可した場合には、輸出を許すことになるでしようが、現在こういう形でやつておると、やはり海外輸出というものが相当出て来る可能性があるじやないかというふうな危惧があるわけですが、この点はどうですか。
○山本参議院文部委員長 海外に輸出してはならないとここにも明示してありますし、前の国宝保存法等においてもやはりある。最も大事な物でありますから、この法案が早く通つて、ぜひともそういうふうに持つて行きたいとわれわれ考えており、国民もそう思つておるだろうと思います。これをくぐつで何かやろうという人があれば、もちろんそれは探してそれぞれ処罰しなければならないでしようが、くぐつてやるのはどれだけありますか。そういうものをなるべくくぐつてやらないように、ひとつ委員会あたりで考えていただかなければならぬと思つております。但したとえば醍醐の花見に使つたときの、醍醐寺や何かにあるりつぱな秀吉の使つた屏風が、今でも何十双とかあるように聞いておりますが、こういうふうな同じ種類の物がたくさんあるというふうなものでありますれば、――これは一例で、決してそれをと言う意味ではございませんけれども、日本に同じような物がたくさんある場合におきましては、そしてまた当事者が出したいというような希望でもありましたら、そういう場合に委員会等がそれを出すのは、やはり日本の文化というものを海外に紹介する意味で、私はけつこうだと思うのです。
○渡部委員 輸出という意味がつまり文化を交流するために一時的に所有権をこちらに持つておつて、展覽のために供出するといつたようた意味の輸出であるのか、売買関係を伴うような輸出であるのか、この点はどういうふうな意見ですか。
○山本参議院文部委員長 それはもちろん両方だと思います。売買を伴つて出すものは、十分にわかつて出さなければなりません。それから、たとえば南米なら南米のような所で、日本のそういう古い文化の物を見たいというような場合には、向うで展覽会を開くなんというのは非常にけつこうなことで、場合によつては南米にこつちの相当いい物を展覽会に出す。そういうふうな場合もあると考えられるわけであります。
○岸田参議院法制局参事 ただまの輸出の観念は、日本の港から海外に出るという場合を全部含めた意味で使つております。ですから、一時的な場合、たとえば博覽会等に出品するというような場合も、この輸出の中に入れております。
○山本参議院文部委員長 大体今までの御答弁で、皆さんに御了解が願えたかどうかわかりませんが、まあ今のように考えておるわけであります。渡部さんから、さつき博物館等のお話もございましたが、この問題は、御承知の通り最初に文部省がやつておつて、文部省ではいかぬというところから、戰後急に博物館に持つて行つた。しかしまた博物館というものは、どこまでも博物館の本来の使命があるわけでありますから、そうすると博物館は博物館本来の姿に帰つて、そうしてこういう保護行政というふうなものは独立しなければならぬという考え方が、單にわれわれの方の委員会ばかりではなしに、識者の間でも強くて、前からこの問題は民間にもあり、また関係筋等にもあつたわけであります。それらのことよこの中には相当反映しておるわけでございますから、そういう意味におきましてこの委員会は重要だと考えますので、ちよつと補足的に申し上げておく次第であります。
○長野委員長 この際暫時休憩いたしたいと存じますが、御異議ありません
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長野委員長 御異議なければ暫時休憩いたします。
 再開時刻は三時以後になる予定であります。
    午後一時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時八分開議
○長野委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 ほかに質疑はございませんか。
○原(彪)委員 私は党の用が忙しかつたために、ここ数日来委員会に出席しなかつたところ、突然文化財保護法案が、四月の二十六日に付託になり、非常に驚いたわけであります。今期末に参議院側がかような重大な法案をお出しになる意図が、非常に私は疑わしいのであります。この法案の全貌を通読いたしますと、大体において寛容な気持をもつて衆議院案をお入れになつたことには敬意を拂うものでありますが、ただ要な点において衆議院案をお入れになつていない点があります。この点はついてどういうお気持か、御意見を承りたいと思うのであります。まず第一に第十三條の――これは先ほども御質問があつたそうで、ほかの委員会もさようであるというような御答弁、さらにまたこの委員会が常勤であるという点から、かような委員に対しで高額な紛與をお拂いになるという御答弁があつたそうであります。しかしこれは衆議院側の――これは自由党の諸君もそうでありましたが、全部が国権の最高機関であるわれわれ議員の給料よりも、よけいな給料をこの委員に拂うということは、僭越ではないかという御意見が多数でありまして、しかも衆議院側の意向は教育委員会のように、費用弁償で、この委員の方々に給與を與えた方がよろしいというばかりではなく、その方が広く文化人を兼務させることもできるし、文化界の最高の権威を呼ぶこともできるという衆議院側の全部の意向でありまして、これは再三参議院側にもお願い申し上げでおつた通りであります。その当時は国務大臣と同等の待遇を與えるという條文に相なつておつたのでありますが、ところが当時衆議院側に先ほど申し上げましたような意向があつたためかどうかしりませんが、文章は、十三條は「別に法律の定めるところにより相当額の給與を受ける」と、ぼやかしてあるようであります。別に法律に定めるところによりますと、百二十五條の「特別職の職員の給與に関する法律の一部を次のように改正する。」云々という條文でありまするが、そうすると全国の選挙管理委員長と同額、つまり委員長三万二千円、それから委員は全国の選挙管理委員と同じように二万四千円というような、選挙管理委員会と同等な待遇を與える。ほかの委員会がそうであるから、この文化財の方もそうしてくれというような行き方のようであります。当時の衆議院側の意向としては、いい人材を、いい文化人を得るために、どうしても費用弁償で、ほとんど常勤ではなく――おそらく執行機関ではありますけれども、常勤ではなく、つまり常勤というのはその事務局長が常勤であつて、一切の采配を振り、重要文化財の事務局長より提出された重要文化財を、審議にかける一つの重役会のごとき形をその委員会に持たせて、判断するという委員会の形にした方がいいではないかということが、衆議院側の意向であつたのであります。その当時も参議院の方の御意見は、国務大臣と同等にやらせたいという御意向であつたが、衆議院側の意向は入れられずに、そのままそういうふうになつておるのであります。この点が非常に食い違つて、ここにおられる圓谷さんも急先鋒であつたと記憶いたしますが、おそらく千賀さんもそうであつたと存じますが、今私は野党におりますけれども、超党派的にこのことは申し上げておるはずであります。そのことにつきまして、ひとつ参議院の委員長さんの御意見を承りたいと存じます。
 それから国宝の基準の問題でありまするが、第二十七條第二項に「委員会は、承要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。」これはけつこうでありますが、まことに抽象的であつて、それならば国宝を指定するのに、どういう基準でこれをきめなければならぬか、基準が一番大事であります。これは一つの作文にすぎないのでありまして、衆議院側ではこの作文に対して、国宝指定の基準は委員会規則によつてきめるということを書いてあるのであります。それをなぜ委員会規則によつてきめるかと申しますと、衆議院側では、各方面の知識はお持ちになつておられますが、その方の専門家ではない方もおられるようでありまして、こういう法律をつくる場合において、いたし方はないのでありまして、この委員会の専門的な知識によつて、この国宝の査定の基準というものを規則によつて出す方が適当ではないか、こういう意味合いで、そういう條項を衆議院側は入れたのでありますが、これが参議院側で削られておる点であります。この基準がないということは、法律に魂がないと言つても過言ではないと思うのであります。この点について御意見を承りたいと思います。大体さような点がおもなるところであります。
○山本参議院文部委員長 ただいま原さんからのお言葉でありまして、この法案がたいへん遅くこちらに出まして、まことは申訳なく思つております。しかしながらこれは会期末の、ごたごたのところに急にぽつんと押し出したような仕事ではございませんで、御承知の通り昨年から、ことに原さんが委員長をなすつておられた当初から、一生懸命にお互いの協力のもとにやつて参りましたもので、決してわれわれが單にこれを延ばしておつたのではなくて、遅くなりました理由はさまざまな事情によりますので、その御事情はおそらく原さんも御承知でいらつしやると私は信ずるのであります。そうしてこちらに提出ができまするようになりましたときには、できるだけ皆さんに審議をいただきたいと思いまして、すぐに本会議が通らぬうちに予備審査にこちらにお願いしでおるくらい、われわれの方といたしましては、会期末にはなりましたけれども、できるだけ急いだ方法をとつております。その点はひとつ御了承をいただきたいと存じます。
 ただいま原さんからの御質問は、二つあると存じますが、第一は給與の問題だと存じます。給與の問題につきましては、先ほど原さんがいらつしやらなかつたときにもございましたので、その際かなり詳しく申し上げましたから、重複になる形でありまするけれども、もう一回申し上げますと、この委員会というものは行政の機関でございまして、單なる諮問機関や何かでは――名前は委員会でございますけれども、行政を担当する委員会でございますから、單にあるときに会議があつたら、そのときにちよつと出て来て、意見を述べて帰つて来ればいいというのでなくて、ほんとうに文化財の行政面をやつて行くのでありまして、普通の委員会でない。先ほども申し上げましたように、ここに類似するような委員会が九つほどございますが、それがすべてみな委員会の名になつておりますが、給與を出しております。そうしてその出しておる給與は、先ほど原さんが御指摘になりましたような額でございまして、この文化財委員会におきまして特別に高くしておるというようなことはないのであります。ただいま御指摘になりましたように、十三條で前には国務大臣級という言葉を使いましたが、衆議院の方のお言葉もありましたので、私の方も衆議院の御意見を尊重いたしまして、それを修正して「別に法律の定むるところにより」という言葉に、相違点は直しでおりますので、その点からしますと、法律の定むるところによつておるので、これだけ特に高いことをしておるのでない。先ほども一々数字を上げましたから重ねて申し上げませんが、決して特殊に高いものにしておるのでないのでございます。それからまたこの委員会に出て参ります人が連日のように出て来るのでありますから、原さんのおつしやるような無報酬にするとか、ないしは手当程度ということでありましては、これだけの地位を保つて行きます方も、昔でありましたら、資産を持つておる方なら、おそらく喜んで出られるだろうと存じますが、今日の時世におきましては、給與がまるでなくて、毎日出て来て行政の機関のことをやつて行くということは、ほとんどいかなる入にでも、おそらく生活の上で困難な問題が起るだろうと思います。そうしてこれだけの行政の委員会でありますならば、相当額の給與を出すことは不当でないと思います。実は原さんにも、この問題は私何度か申し上げたと存じます。但し、原さんは原さんのお考えを持つておられまするから、今日も御同意を得られないならば、たいへん私残念に思うのでありますが、どうもわれわれの方の立場としては、今のような立場をとつておりましてこの問題は私のとき始まつたのではなくて、私の方の前委員長の田中君の時代から申し上げておる。不幸にいたしまして委員長がかわりましたために、連絡等のことが十分でなく、またあなた様の方も委員長の御更迭がございましたので、それらの点で十分な連絡ができていなかつたかもしれませんけれども、しかし私の方といたしましては、この問題は今日初めて申し上げる問題ではなくて、前かりずつと申し上げ、また後任の委員長に対しましても申し上げ、あるいはその後の理事打合会、その後におきましても、衆議院の方々に対しまして、この問題は申し上げておることでありまして、今のような性質の行政機関を担当されてやつて行く委員でありますから、ひとつこの点御同調をお願いしたいと存ずるのであります。
 第二の、国宝に対して、国宝とはどいう基準をもつてやるべきであるか、それを定めてないのはいけない。まことにごもつともな御意見でありまして、われわれといたしましても、その基準が定められるものならば、当然定むべきだと考えましたし、またその点についてずいぶん調べたのでございます。しかしながら、基準の定められるものと定められないものとございます。たとえば国宝というようなものは、かけがえのないものでありまして、かけがえのないものというのは、どういう基準をつけるかということは、一つ一つかけがえのないものでありますから、これを一般的な基準でもつて押えるということは、とうていできないことであります。現にこれにつきましては、国宝保存法の前に古社寺保存法というのがございまして、古社寺保存会におきましても、国宝というものの定義づけをしようとして非常にやられたことがあるのでありますが、とうしてもできない、ユニークなものをユニバーサルにしようといつても、とてもできないことであります。そういうことを法律の上で文字に表わすということはできませんから一つ一つのユニークなものを調べまして、そうしてやつて行くよりしかたがない。でありますから、そういう基準のような專門的なものは、委員会及び委員会には專門審議会のような專門家の集まりもありまして、そこに諮問いたすことができるのでありますから、委員会及び專門審議会において一つ一つのものについて定めて行つてもらう、そういう建前から基準を設けなかつたのであります。決しで設ける意思がなくで設けなかつたのでなく、設けようとしても法律の上でそういう記述ができないためにいたさなかつたので、お考えは原さんと私とまつたく同じでありますが、法律技術においてどうにもできないことでありまして、そういう意味でここに入つておらないのでありますから、この点もひとつ御一考をいただきいと思うのであります。
○原(彪)委員 御丁寧な御答弁でありますが、十三條の給與の問題は、御意見によりますと、執行機関である行政機関であるというお言葉であります。それならば日本の一番大事な教育のいわゆる教育委員会も一つの執行機関でありますが、これに対して給與というものは與えていないのであります。まして文化財についての広い識見を集める意味において、私は手当の方がしかるべきだと思う。手当と申しても、御承知のように今は最高一日千円も出るのでありまして、毎日出れば月三万円の手当にもなりますし、十分な手当が出るのではないかと思います。さらにまた、たとえば美術学校長が非常に美術文化に対する識見の高い人であり、もしこれをこの委員に当てはめるとするならば、美術学校長をやめなければならぬというようなむずかしい段階になるのではないか。そういう場合にやはり美術学校長に在職させて、一週に一ぺんなり二へんなりこの委員会に出て、文化財の査定その他のことに当ろという方が妥当ではないかと私は思う。給與の額もさつき申し上げた通り、国会より高い額、近ごろたくさんほかの委員会でもそれが出るということは、国会より高い給與ならば、大臣とかあるいは司法部の最高裁判所長官だとか、そういうものならばいざ知らず、何もかもそういういろんな委員会ができて、国会議員より高い給與を受けるということは、どうも国権の最高機関の冒濱のように私は思います。そういう意味合からしましても、手当の方がいいのではないか。これはその当時、この法案の衆議院の案を出す場合にも、私個人の意見ではなくて、今は野党にいますけれども、自由党の皆様の意見を尊重して、私は参議院側に申し入れたわけであります。この法案について、共産党とは私の方の党はちよつと違いまして、是々非々主義の態度をとつておりますので、決して反対せんがための反対はいたしません。ただまだ党の方にも諮つておりませんので、遅ればせに出て参りまして、かようなぜいたくなことを言えた義理ではないかもしれませんが、お許しをいただいて、党の方の機関に諮らしていだたく余裕を與えてくださらんことを委員長にお願いしたします。
○山本参議院文部委員長 ただいまの原さんの御意見にお答えを申し上げます。国会議員よりもこの文化財保護委員会の委員の給與の方が高くなつて不都合だというお言葉でございましたが、国会議員は月二万八千円でございます。この委員の方は、五人のうち四人の委員は二万四千円になつておりまして、国会議員よりは低いのでございます。ただ委員長だけが高くなつておりますが、しかしその委員長もほかの委員会の委員長よりも高い給料にはなつておらないのでありまして、やはり大体同じなんでありますから、委員長だけは国会議員より一人だけ高くなつておりますが、ほかの四人の委員は国会議員よりは高くなつておりません。それからまた教育委員会は、ただいまのお話にありましたように地方行政機関でございますが、月一回になつておるようでございまして、給與のないということはないのだと存じます。そういうふうなことでございますから、今の点についてちよつと申し上げておきます。
○長野委員長 ただいま原委員より、しばらく時間をさいていただき党の機関に相談したい旨の希望意見がありました。この際いかにとりはからいましようか、お諮りいたします。
    〔「必要なし」と呼ぶ者あり〕
○松本(七)委員 午前中に私から御質問して、提案者のこの條項に関する考え方というものは十分わかつたのです。それで私の方でもその点を今まで党に報告しておつたことは、衆議院側の意見はこうであるということと、それからいつでしたか、理事の打合会のときの参議院側の意向を伝えたもので、この法案になつてから、先ほど午前中の山本委員長からの御答弁を報告して、その上で至急に政調会の方で態度をきめるということで、もうしばらく時間をほしいといつておりますから、そう長くはかからぬと思います。今、原前委員長の質問と、それに対する参議院側の答弁を聞いて、その上で最後的なものを持つて参りますから、しばらくでけつこうですから、時間をいただきたいと思います。
○長野委員長 いかがでしようか、時時間を制限して……
    〔「必要なし」と呼び、その他発言する者あり〕
○長野委員長 速記をやめて……
    〔速記中止〕
○長野委員長 速記を始めてください。
 ほかに御質疑はございませんか。
○渡部委員 この法案に関する衆議院の、いわば文部委員会案ともいうべきものの作成の過税においでは、私もこれに参與した者です。その際には、自由党の諸君も全部この條項には反対であつたわけです。その自由党の諸君が意見をかえられたのかどうか、この点をまずはつきりさせてもらいたいと思います。
○長野委員長 渡部君の御質疑は、委員に対する質疑ですか。そのように聞えます。
○渡部委員 こういう問題が、委員会においてほとんど全員をもつて決定されたような事柄が、始終ひつくり返るようなことがあるとすれば、私たちは委員として相当考える必要があると思うのです。十三條の問題については、自由党の諸君が全部反対されたことは事実であるわけです。速記録を見ればわかります。
○長野委員長 渡部君に申し上げます。それは審議の経過において当然もたらされた結果であつて、意見が多少前後かわることはあり得ると思います。研究し検討し審議して行く間に、誤つたことがあれば反省して行けばよろしいと思う。かような意味において、御意思はよくわかりますけれども、そうなつた事態をここでことさら究明する理由はないと思います。
○渡部委員 いいか惡いかでなく、そういう事実があつた、それをかえたのであるかどうかということが問題であると思います。
○長野委員長 それはよくわかりました。
 それでは質疑を終了するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長野委員長 御異議なしと認めます。これにて質疑は終了いたしました。
 水谷昇君より本案に対する修正案が提出せられております。まず提出者の修正案についての御説明を願います。
○水谷(昇)委員 まず文化財保護法案に対する修正案を朗読いたします。
 文化財保護法案の一部を次のように修正する。
 目次中「附則(第百十三條―第百三十一條)」を「附則(第百十三條―第百三十條)」に改め、第百三十一條を削る。
 この修正案について御説明申し上げます。この百三十一條は「地方税法の一部を次のように改正する」というのでありまして、ただいま地方税法は、衆議院は通過いたしましたが、参議院において審議中であります。そこで文化財保護法案をここで可決いたしますると、地方税法案が通過していない先に可決することになりまして、そういう場合には地方税法案を修正するということになります。この点に支障がありますので、今回第百三十一條を削除いたしまして、本案の通過をはかりたいと存ずる次第であります。すでに内容については委員各位が十分御承知の点でありますから、この点を御了承いただきまして、この修正案に御賛成をお願いする次第であります。
○長野委員長 何か御質疑はありませんか。――なしと認めます。
 原案並びに水谷君提出の修正案を一括議題とし、討論に移ります。水谷君
○水谷(昇)委員 ただいま上程中の文化財保護法案並びにその修正案に対し、私は自由党を代表して賛成の意見を申し述べます。
 本法案提出の契機となりましたものは、申すまでもなく法隆寺金堂壁画の燒失でありますが、昨年一月二十六日のこの悲報ほど、全世界の文化人を聾動させたものはございません。遠くはギリシャ、近くは西域、インド風の局部的エレメントを統轄して、一つのまとまつたあの端麗な芸術様式を生み出したものは、結局唐の初めのゆたかな生活感情のうちに、はぐくまれた斬新な芸術的官能にほかなりませんが、聖徳太子出現ごろから民族的自覚の域に入つたわれわれの祖先は、あたかも国民感情が最も高揚し、国力も最も充実した時期に、世界文明の粹を集めたこの壁画を残したのであります。ラングドン・ウォーナー氏はこれをヴアチカソのシスチンチャペルやスタンブールのアヤソフィヤに比しておられまするが、薬師寺の三尊仏や三月堂の諸彫像に示された芸術的表現は、ここで一段のさえを示しているのであります。しかもこの時代の作品が現在中華民国に皆無であるのを思うとき、この世界的壁画の燒失は、惜しみても余りあるものがあります。このゆえに政府としても十分にこの点を考慮し、財政逼迫の際にもかかわらず、応急措置のために、はたまた二十四年度修理予算として相当に多額の支出をなし、さらに二十五年度も、より以上多額の予算を確保し得たることは、われわれのひそかに喜びとするところであります。
 この法隆寺金堂壁画の燒失を契機として輿論が沸き立つたこともむりはありません。顧みれば太平洋戦争以来、わが古美術はほとんど捨てて振り返られるところがなかつたのでありますが、ウオーナー博士を初め、アメリカ将兵の理智と良識とが、わが奈良、京都を爆撃から救つたことが明らかとなるに及んで、われわれもにわかに反省し、ただひたすら古美術品の散逸防止に努力いたしたのであります。しかるにここにまた法隆寺壁画が燒失し、ウオーナー氏をして長大息せしめたこともあずかつて、ここに古美術品の保存の徹底ということが叫ばれるに至りました。太平洋戦争以来のわれわれの古美術放擲ぶりは、思うだに慄然たるものがあります。破れがさ同然の加茂の燈明寺本堂は、岡山県長幅寺の三重塔や山口の洞春寺観音堂とともに、破損国宝の三大関と称せられておりますが、さらに京都御所の戰時中の無残なるとりこわしや、桂離宮の荒廃ぶりをまのあたりにいたしまするとき、何人といえども痛憤の念にたえないものがありましよう。
 かく申しますことは、決して懐古趣味に浸つての事ではありません。古美術品はしかばねではありません。これをわれわれがながめますのは、單に古い品物であるからでなく、珍しい品物であるからでもなく、また眼に訴える美しい品物であるからでもなくして、実にわれわれはこの古美術品を通じて、これをつくり出した民衆の魂に触れんがためにほかなりません。これはわれわれの遠い祖先への追慕、懐古の至情でありますが、同時に、われわれはでき得る限りこれを後世に伝うべき責務をになつておるわけであります。
 今回参議院の同僚議院によつて本法案が提出せられましたが、本法案は昨年より両院文部委員会においてそれぞれ草案を作成し、たびたび相互に折衝して最後に衆議院文部委員会案のおもなる点を十分取入れて、参議院側において作成したるものであります。私はまず第一に、それが古美術保存の急務がほうはいとして起つた好機をとらえていることを喜ぶものであります。
 次に、本法案によりまして、従来の国宝や重要美術品に関し、再検討の機会が與えられたことを幸いに存ずるものであります。本年一月十五日現在の国宝六千九百三十七点、重要美術品八千三百六十九点、計一万五千三百六点これをことごとく完全に保存いたしますことは、現在の国家財政よりしては、とうてい許されるところではありません。従つて本法案によりまして、従来の国宝と重要美術品の区別が廃せられ、そこにあらためて吟味と淘汰がなされまして、真に保存の価値あるものだけを取上げ、これを国家が責任を持つて、保護いたすようになりますのは、われわれの最も歓迎するところであります。その間において古美術品の環境保全の規定が設けられましたことは、まつたく新しい試みであり、その他の点でもあるいは古美術品の国への委託、管理者の選定等を規定し、場合によつては強制修理、強制管理もできるようにいたしております。かくして本法案はさらに進んで、国家が古美術品の所有者の所有権を侵さない程度で、その出陳や公開を勧獎し、もつて国民の文化的教養に役立てることにいたしておりますが、文化国家の建設を念願するわれわれといたしましては、当然首肯し得られるところであります。
 本質論といたしましでは、古美術品を保存する主体は国家か国民かという問題がありますが、われわれとしては、でき得べくんば政府にまかせきりでなしに、志ある団体や力ある個人、つまり民衆の手でこれを保存して行きたいと思うのでありますが、現在のわが国の国情といたしましては、一婦人の献身的運動によつてマウント・ヴアーノンなるワシトンの家が保存されるというようなわけには参らぬのであります。本法案においても、この点ずいぶん研究せられたものでありまして、保存行政は、あげて国家の仕事といたしまするとともに、この行政機関を委員会制度として、その民主的運営を企図いたしておりますが、わが国の現状におきましては、この程度をもつて最良策といたすべきであると存ぜられます。
 なお本法案は、有形文化財はもちろんのこと、演劇、音楽、工芸技術その他の無形文化財までも取上げ、さらに史跡、名勝並びに天然記念物及び埋蔵文化財をも取上げておりまして、実に理想の高く、構想の大なるものがあるのであります。自由党といたしましては大いに賛成するところであります。
 ただここで遺憾なことは、この法律の裏づけとなるべき予算が実に僅少である点と、われわれが最も主張いたしました重要文化財と指定されたる古美術品に対する免税措置が実現し得なかつた点であります。これはわが自由党といたしましては、基金制度を設けるなど、今後責任をもつて善処いたしたいと存ずるものであります。
 諸君、われわれの祖先が精魂を傾けて製作した芸術品が、しかばねではなくして生きものであることを思うとき、その散逸ないし滅失は、まことに骨肉にわかれる思いがいたします。われわれはこの法案をぜひともここに通過せしめ、国民同胞ことごとくがこれを忠実に遵奉して古美術の保有の完璧を期し、これを活用して、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献いたしたいと存ずる次第であります。
 以上をもつて自由党を代表しての本法案及び修正案に賛成の討論を終ります。
○長野委員長 松本君。
○松本(七)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本法案並びに水谷委員から提案になりました修正案に対し、賛成の意見を述べるものであります。
 この法律案につきましては長い間の参議院と衆議院の協議の結果出て参りました。現在の国の財政状態その他から非常に不満な点もございますが、法案としてはまことにりつぱな法律案であると思うのであります。ただこの機会に二、三の要望をしておきたいと思うのですが、先ほども問題になりました第十三條の問題につきましては、こういういい法律ができて、これを運営して行くためには、委員長その他の委員の人選ということが非常に大切である、そういう観点から、われわれはこれをあまりり多くの結與を與えないで、優秀な人間ならば兼務でひとつやつてもらつた方がいいのじやないか、この観点から主張しておつたわけであります。先ほど休憩をお願いしたのも、そういう論が特に党内に強くございました。山木参議院文部委員長も御承知のように、この法律案の作成については、わが党の議員でも、特に参議院の議員は非常に熱心にこれまで努力して来ておりますので、本法自体をどうしようというような考えは毛頭ないのですが、ただせつかく議員提出のりつばな法律が、今後りつぱに運営されるということを念じておりますので、この点が問題になつたわけであります。しかしながら、委員長のお話にもありますように、現在の状態では給與なしということになつても、また人選になかなかむずかしい問題がある、こういう点も考えられます。要はりつぱな人をぜひ選んで、この法律がうまく運営できるように、この点を要望いたしますとともに、先ほど水谷委員から詳しく御説明がありましたように、予算の面あるいは免税の面というようなことで、将来この法律がほんとうに生きて日本の文化財を保護して行けるように、完全な運営を要望いたしまして、賛成いたすものであります。
○長野委員長 原君。
○原(彪)委員 私は国民民主党を代表いたしまして、本法案並びに水谷君提出の修正案に賛成の意を表する次第であります。
 この法案は、約一年前より参議院、衆議院双方で審議を重ねて来たものでありますし、さらに私といたしましても、その当時民主自由党に連立をいたしておつた関係から、委員長の職を汚しておりまして、特にこの法案につきましては、自由党の諸君の御意向を体して衆議院案として作成し、まとめ、しかも本委員会全部の意向を代表して、今最高裁判所に行かれました田中前委員長と数次にわたつて個人的にも夏の暑いさ中にあつて、約五時間もぶつ続けてこれを逐條審議などいたしたのでございますが、さらに前の国会の終りまするや、ただちに文部委員会より九州、中国、北海道、近畿、関東と各班にわかれて、この法案をつくる目的で現地の国宝を視察し、さらに有識者と懇談会を開いて民意の反映に努めて参つたのであります。すかも衆議院側の原案のまとまつたものに対して、参議院側がこの法案を多分に取入れて、ここに提出に相なつたことは、感謝にたえないところであります。
 しかしこの法案を、本月二十六日付託になつて、会期まぎわになりましてなおさらに検討いたしますると、二、三の疑問を残すのでありまして、先ほど私が御質問申し上げた趣旨も、実にこの文化財の重要性にかんがみまして、よりよき法案をつくりたいという熱意からでありまして、決して野党であるがために法案を阻止しようというような惡意は、少しもなかつたのであります。幸いに委員長が十五分間の休憩を與えられたことによりまして、党の方とも話合いを進めまして、本案に賛成する段階になつたことは喜ばしいのでありますが、ただこの法案成立にあたつて、特にお願い申し上げなければならねことは、先ほども御質問申し上げた点であります。この委員が、結局は文部大臣の指名に相なるということになります場合、常勤であり、給與をとるということになります場合、どうかこれが官僚のうば拾て山にならぬように、私は切にお願いしたいのであります。
 もう一つの点は、三人以上の政党員が占めることができないということがありますが、なるべく国会人よりはとらない方が、常勤である建前よりして、いいのではないかと私は存じます。こういう点を特に行政府に対して、私はお願いするものであります。
 もう一点は、国宝指定の基準であります。この法案には明文化されておりませんが、いずれは国宝を指定する場合に、この基準を委員会においてつくらなければなりません。つくる場合には、この法律に委員会の規定によらなければならないという條文がない場合に、私は支障が起ると思います。いずれはつくらなければならないと思うのでありますが、そういう点を先ほどお伺い申し上げたわけでありますが、こういう希望條件を付しまして滿腔の敬意をもつてこの法案に賛成するものでございます。(拍手)
○長野委員長 渡部君。
○渡部委員 わが党もこの法案の成立については賛成であります。民族の歴史的な財産である国宝や什器その他のものが、非常に荒廃にまかされており、また散逸の危険も十分にある。これは文化とか科学とか教育とかいうものに関する従来の関心が非常に低かつたばかりでなく、これを蔑視する傾向さえあつたということの必然的な結果であります。それで今にしてこのような無関心状態からはつきりぬきんでて、科学、教育、文化というものが、日本の民主的な建設の上にいかに重要なものであるかということに対する明確な認識を持たれて、この民族的な歴史的な財産に対する適切な保護、保存の方法を講ずると同時に、国宝とを什器とかいうものを再び厳密に選定し直して、その名にふさわしい権威を與えるというような仕事のために、ぜひともりつぱな法案がつくられなければならないという考えは、わが党だけではなしに、私一文化人としても非常に強い関心を持つておりました。そのために参議院及び衆議院の文部委員会においては、法案の作成、成立のために努力して参つたのでありまして、ここに出ました法案については、私たちはなお多くの点で修正されなければならぬし、今後改変されなければならないものを見出すわけであります。たとえば私たちの考えでは、無形文化財というものは、やがで別個な法案になさるべきであると考えるし、それからこの法案における機構の点も、もつと広汎なすぐれた文化人を集中し、かつ民主的に運営し得るように改むべきところは改められなければならないし、さらに現在最もわれわれの憂うるような海外への流出というような問題についての規定も、さらに嚴密にされる必要があろうし、ことに保護の上からいつて、免税の規定が実現できない状態にあるということ、非常に不満に思うわけであります。しかもまたこれについて十分な財政的な措置が講ぜられない状態である。CIEの図書館にすら見返り資金のうちから二億数千万円の金か出されているときに、日本の民族的な、歴史的な財産を保護することにさえ、非常にけちけちした金さえも出されていないというような現状、このことが私たち国民として非常に遺憾に思うのであつて、これは党派を越えてこういうような状態を今後なくして行かなければならぬという私たちは信念を持つているわけであります。従つてこういう点については十分今後は考える必要がありますし、そうして今申し上げたような点、その他の点につきましても、最近の国会におきましてさらにりつぱなものに修正し、改変して行くというような意味におきまして、私はこの法案に賛成するものであります。(拍手)
○長野委員長 これにて討論は終局いたしました。
 まず水谷昇一君提出の修正案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
○長野委員長 起立多数。よつて水谷君提出の修正案は可決せられました。
 次に、ただいま可決せられました水谷君提出の修正案の修正部分を除く原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
○長野委員長 起立多数。よつて原案は修正議決せられました。(拍手)
 なお報告書の提出については、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長野委員長 御異議なしと認めます。それではさように決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十六分散会