第009回国会 本会議 第4号
昭和二十五年十一月二十五日(土曜日)
 議事日程第三号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後二時八分開議
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
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○議長(幣原喜重郎君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。笹森順造君。
    〔笹森順造君登壇〕
○笹森順造君 国民民主党を代表して吉田内閣総理大臣の施政方針演説に対し私は総括的な質問をいたし、総理並びに関係閣僚の御答弁を求めます。
 第一は、政府が早期国会開催要求に誠意のなかつた責任についてであります。去る七月三十一日、私たちは成規の手続を経て、急速臨時国会を開くことを要求したのでありますが、政府は荏苒四箇月の日をけみしたのであります。その間に国内の情勢、国際の情勢が非常に変化をして参つております。これに対する政府の態度が私どもに不明であります。その上に国内のいろいろな産業面等の萎縮もありまして、あるいは社会混乱に追い込み、かてて加えて官公綱紀の紊乱が、まことにはなはだしいものが現われて参つたのであります。そこで、このたびようやく第九臨時国会を召集はしたものの、次期通常国会の会期が迫つておりまして、四十幾つに余るこれらの法案を十分に審議するためにその日を持たせなかつたようにされた責任を政府は痛感しなければならぬと思うのであります。(拍手)しかもこれは、あるいは補正予算等をつくるために、無力にしてひまどつたというのかもしれません。この点について明白なる御答弁を求むるものであります。
 第二に、電気事業再編成のポツダム政令措置の不当についてであります。総理は集中排除法に基きすみやかに再編成しなければならない、また電力の供給の豊富をはかるという、それはその通りだと思いますが、しかしそれだからといつてポ政令によらなければならないという理由は成り立たないのではないでありましようか。政府がきめておりまする来月中旬からのすべり出しは、この国会において十分に審議してもできるはずなのであります。それをポ政令によつたというのは、何かはかに意味がなければならないと考えられるのであります。それは、政府の九分割案に対して與党内で異論が百出して、各地から猛烈な反対運動が起つたのでこれを訂正しようとすると、関係方面からは、初め政府が頼んだのであるから出した、その承認の通りの原案をなぜ出さないのかという詰問さえ受くるのではなかつたでありましようか。それに日発事件、スキヤンダル等が表ざたになり、さすがの大世帯も分裂の寸前に至り、どうすることもできなかつたので、(拍手)総理が苦慮のはて打つたのがポ政令という結果ではなかつたでありましようか。せつかく講和が近づいて、日本の自主性が成長して来たときに、政府みずからが国会の審議権を無視するような結果を、やむを得ずつくつたと申しますが、そのやむを得なかつた理由は、少しも説明がない。これでは納得が行かないのであります。
 わが党は、集中排除法に基きすみやかに再編成をして、しかも電力を豊富にし、産業の高能率をはかつて、かつ消費面の公共性を堅持して、最も合理的な案を立てて日発を五分割し、九配電を県單位に細分することを主張して国会における審議に備えて参つたのであります。その他確信のある修正の討議の機会を失わしめたことによつて今後招くところの国内の産業の大混乱と実害は、ことごとく政府失政の責任でなければならぬのであります。(拍手)ポツダム政令によることをオーソライズされたということは、内容次第ではないでありましようか。それはすべしということであるか。やむなくばやつてもよろしいということであるか。選択の自由はなかつたのか。よつて吉田総理は、この際マ書簡の原文を示し、国会に審議させぬまことの理由を明らかにされたいのであります。(「何だ、賛成演説みたいじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)
 このたびの補正予算は、明年につながる十五箇月予算の一環といたしまして、その内容が必然的に関連して参りますので、この観点を若干含めてお尋ねをしたいと思います。この補正予算を一見して何人もただちに感じますことは、一片の事務官僚羅列の予算でありまして、本年度当初予算が組まれた後に起つておりました内外の激変した情勢、特に朝鮮動乱等に即応する適切な政治的識見が最初にはなかつたように見受けられるのであります。そこで今日まで、予算編成の手遅れになつた最後のどたんばまで、修正、訂正また訂正を余儀なくせられた、まことに支離滅裂なものと考えられるのであります。(拍手)つまり、やむを得ずしてつけ加えました、あの百億のインベントリー・フアイナンスのごとき、あるいは予定された減税がさらに八億減らされたということ、あるいはまた公務員の年末手当が、一箇月やるべきものが半箇月になつたというようなこと、いろいろな点においてまことに不手ぎわな補正予算ができたように見受けられるのであります。さらにまたこの内容を見ますると、せつかく、あるいは興農国会と申し、救農国会というこの国会に対しまして、適切なる農林水産面のことがまことに微々たるものであり、せつかく文教振興に対しまする首相の言葉も、この方面にはまことに貧弱であります。あるいはまた中小企業の手当にいたしましても、あるいはまた災害対策にいたしましても、その他失業保險等につきましても、さらに政府が最も力を入れたと申します輸出金融についても必ずしも妥当ではないと思うのであります。つきましては、これから若干その点に触れてお尋ねをいたします。
 一つには、超均衡予算の行き過ぎ是正についてであります。寛大な米国の対日援助二十億ドルは今後早晩に減少し、あるいは打切らるることを考えて日本の経済の自立計画をはかることは当然でありましようが、しかし、いましばらくは、日本の客観的な事実から見まして、米国の援助なしにはわが国の経済自立の基盤をなす国際収支の均衡は至難ではないでしようか。むりに国民の所得を引下げて消費を極端に切り詰め、飢餓輸出を強行して、外部援助の縁切れを促進するような政策は、国民の生活水準の最低限度を割つて、あるいは失業を起し、日本の経済復興が逆転するような悪結果を生むのではないでありましようか。
 きのう大蔵大臣は、わが国の経済輸出の将来のために国民はもつと冗費を省き、また奢侈を戒めて資本の蓄積をしなければならぬということを言われたのであります。(「あたりまえだ」と呼ぶ者あり)この話を聞いておりますと、まことに外国から見ますならば、日本の国民はぜいたくをしておるごとく、あるいはまた冗費がある如き感じを與えられるのであります。この冗費は、国民の省くものではなくして、行政の責任にある政府が省くべきものであることを申し上げるのであります。(拍手)その証拠には、われわれ国民の生活水準は、現在では戰争前のまだ七割ぐらいにしか上つておりません。西ドイツの三分の一ぐらいしかないといわれておるのであります。これでなお冗費があり、あるいはまた奢侈があると大蔵大臣は考えられるのでありましようか。日本の国のこの正月から八月までの輸入総額の八億ドルのうち二億六千二百万ドルというものは援助であつたではありませんか。(「わかつておる」と呼ぶ者あり)おわかりでありまするならば、わが国の政治的、経済的自立の諸條件がようやく育成せられようとしまするこの大事なときでありまするから、来年の六月までの約一億ドルといわれております援助費をぜひとも懇請するとともに、せつかく増産の軌道に乗つて参りました日本の産業を、金詰まりをさせて窒息させないような御用意をしなければならぬのでありますが、この点についての用意が欠けておるのではないでありましようか。
 しかるに、政府予算の方針を検討してみまするのに、わが国経済の実態と国民生活の真相を外部に正しく伝えることを怠り、また予算の超均衡とインフレ収束方針だけを強行するのあまり、財政面においては、あるいは租税であるとか、あるいはまた輸入の食糧、原料の売上代金であるとかを巨額に吸い上げまして、しかも生産面への散布が不足しております。インフレを収束しようとして国費の活用を怠つたことから起つた金詰まりと、これによる増産の阻害の責任は政府が負うべきものではございませんか。(拍手)ゆえに今後は、収支の均衡をはかるにいたしましても、吸上げ超過にならないように行き過ぎを是正しなければならない。また私どもが前国会から主張しておりましたように、この債務償還はぜひとも法定額限度内にとどむべきではないでしようか。また金融でまかなうべきものと財政面でまかなうべきものとをはつきり識別しなければならない。本年度百億円を加えて補正予算編成の難航といわれたインベントリー・フアイナンスのようなものも、当然これは金融面でまかなう措置をすべきものであつたではないでしようか。この点のお答えを求めます。
 二つには、租税負担の軽減公約無視に関する点であります。自由党の本部の一千億円の減税をするという大看板は、いかに私どもの心を動かしたことであつたでしようか。(拍手)しかるに参議院の選挙が終りますと、この看板はいつの間にか消え去つております。そうして今度は七百五十億にするという放送が出て参りました。今度また五十億減るということであります。さらにまた、それがもつと少くなるということではありませんか。こういうことを考えてみますると、この公約はどこにふつとんで行つたのかという疑問が起つて来るのであります。(拍手)この補正予算の減税にいたしましても、先ほど申し述べた通りであります。
 しかるに日本の実情を見ますると、過年度の税金の滞納額だけでも一千二百億の巨額に達しておると申します。つまり国民の担税能力がもう限度にまで達しておるといわなければなりません。その上に、なおまたこれは政府の租税徴収の上に大きな欠陥があることに起因すると思われます。そこで政府が公約に反して国債及び証券償還資金の大部分を国民の租税から充てたのは、民間資金を枯渇させて経済自立に必要な資本蓄積を不能にし、また外資導入を妨げ、長期資金の調達をはばんでおる。従つてこの際、政府はその公約通りに行政の簡素化をやらなければならないはずであるが、これからしようというのが、きのうの総理の演説であります。いかにこれをされたかということは明確になつておらないのであります。これを明確にしていただきたい。
 また私どもは、国税、地方税においてもその軽減をはからなければならない。よく大蔵大臣は税金を軽減したと申しまするが、国税においてはそうでありましよう。しかしながら地方税においてはふえております。さらにまた価格差補給金等がやめられております。池田大蔵大臣は、これは国の産業を健全化するためだと申しておりまするが、実際のところ国民の負担増になつておるのであります。こういう政策で、決して国民はその負担が軽くなつておらぬのであります。(拍手)そこでこの税の軽減をはかつていただきたい。国民一般の人方の、低額所得の人の税をもつと考慮していただかなければならぬと思うのであります。つまり、私どもの身にひしひしこたえ参りまする直接税のようなものをだんだんと間接税のようなものにして、それによつて負担のできるものだけがこの租税をまかなうという方面にこれがかえられないものでありませうか。また酒の税金にしてもそうであります。今度約二億を減らしたと申しまするが、これは実際において、まだこの倍くらい減税をすることによつて初めて減税の目的が達せられると思うのであります。この点についての御所見を承りたいと思います。
 三つには、平衡交付金の増額についてであります。本年度においては、地方負担の増加と、税法実施の遅延による下半期の納税しわ寄せ等、国民負担を緩和するためにも、平衡交付金約二百億円を増額すべきではないか。特にこの地方税法の大幅改正によつて地方配付税が廃止になつて、地方財政が困難しておる。この調整のために特別に本年度と来年度五十億を要求するのは、これは全国の知事会議の要望でもあつたのであります。しかるに、ごくわずか――この補正予算案には三十五億幾らしか出ておらないのであります。これではたして地方の要京がまかなわるるつもりであるかどうか、大蔵大臣の所見を聞きたいと思います。
 四つには、地方起債限度の拡張についてであります。現在地方自治体が財政の運営上に重大な支障を来しておりまするのは、地方起債があまりにも制限せられているからであります。地方においてはその緊急な必要があり、将来においてこれを償還する能力があり、しかも急速にこれを施さなければならない公共の多くの事業や教育施設がたくさんあります。これに村しまして、地方還元に最も適し、多額に政府が擁しております預金部資金等の地方還元をはかつて地方財政の運用を円滑ならしむべきであると思いますが、この点についての政府の御所見を承りたいと思います。
 五つには、政府資金の放出、運用についてであります。戰後わが国の資本の蓄積は極度に貧弱になつて参りまして企業体は自己の蓄積資本によつては設備の拡張もできない状態になつております。でありますから、国内に幾らかでも蓄積された資本があるならば、これを常に最大限に、高能率に活用する方策を立てる必要がある。ところが現在においては、諸種のものを合せて一千六十九億円という巨額な資金を長い間遊休の状態に置いておるということについて、この不適切な処理をしておつたことの責任を政府は何とお考えになるか承りたいのであります。これらの資金は、その長期的性格にかんがみまして、わが国の経済自立、民生の安定、生産増強の根幹をなすところの発電であるとか、配電であるとか、あるいはまた船舶の建造であるとか、また繊維工業その他輸出向の大事な工業、石炭等の設備等にもこれを向けて長期資金を運用すべきはずではなかつたでありませうか。それを食糧証券や外国為替証券のような短期証券に八〇%も使つておつたということは決して適切とは考えられない。一方に、それは通貨増発の潜在力を押えるためだと言われるかもしれません。ですけれども、本質的には適切ではなかつた。しかもまた、実際において貸出増加は起つている。これを政府は、あるいはまた国債及び証券償還で打消したと言うかもしれませんが、現実においては、これが約五百億の引上げ超過を来しておるという結果を生んでいるのであります。これらのことをよく考えまして、政府は、ぜひともこの資金の放出増額の必要にこたえなければならない。この点が昨日の蔵相の演説にもはつきりしておりませんので、重ねて基本線のお尋ねをする次第であります。
 六つには、通貨増発限度の拡大についてであります。わが国の経済の客観的な実情は、国際経済の推移とともに、特に朝鮮動乱の影響を受けて特需が増大しております。その結果通貨の需要の必然的に増大するのはあたりまえでありましよう。すなわち、近来現われておりまするすべての国際商品の価格の上昇、諸補給金の撤廃による生産資材の値上り、輸出貿易の伸長、諸生産費の増大等、必然的に各企業の運転資金を必要とする度が増し加わつて参つてあります。この切実な要求にこたえるために、わが国経済の自立を適切に施策せられなければならない。それなのに、政府はいつまでも古典的な通貨数量説を固守しているのではなかろうか。この意味において、インフレを警戒しつつ、必要に応ずる限度増発を拡大するの政策が必要と思われますが、これに対する所見を伺いたいのであります。
 七つには、特に特殊金融機関の設置についてお尋ねをいたします。わが国人口の大半を占めておりまする中小企業者または農林水産業者は日本経済自立の国民的基盤でありますから、今日のようなこの金融逼迫の時期では特別の措置が必要であります。しかるに、この補正予算の中には、これが明らかに見受けられません。とにもかくにも、市中銀行では、これらの人は相手にしてくれない。でありますから、ぜひとも特別な資金の機関、いわゆる特殊金融機関を設けなければならぬと思うが、これらに対する政府の所見を承りたいのであります。
 その次に、この補正予算で一番力を入れたといわれまする災害対策のことであります。本年度の予算の措置方法として国庫全額負担にきめたのでありまするが、これもその方法はやめるのだということを言われております。それはどういうことであるか。補正予算において相当額出したと申しましても、災害の実態にこれを照してみますると、その効果はまことに九牛の一毛のうらみがあるのであります。この点について、建設大臣の責任、特に巨額を要しまする日本復興のための災害対策費というものの根本方針と、これでよろしいかという確信についてのお答えを伺いたいと思うのであります。財政面に対する最後の一点として、公務員給與改善についてお尋ねをいたします。総理は、経済の安定度が増して来た、財源の余裕ができて来た、そこで公務員の給與改善に考慮を拂つたと言います。ところが、その考慮の拂い方がはなはだ不十分ではないでしようか。人事院の勧告の八千五十八円のペースは、実は五月の実態の計算であつたではありませんか。その後に地方税もふえ、米価も上つて来ている。それらのものは、きのうの大蔵大臣のお話では減税で吸い上げられると申しておりますが、この減税は過去におけるものについて処理されたのであつて、将来においては決してこれを吸い上げるに足るとは考えられない。よつて人事院の勧告に従いまして、少くとも最低限度において、今年の九月にさかのぼつてこれはやるべきものであつたのではないでしようか、(拍手)それを政府は、あれは来年の正月に延ばすという。さらにまた年末手当は半箇月分にするということを聞くのであります。いずれにいたしましても、政府が人事院の勧告に従わぬような財政策を立てるということは非難さるべきであると思います。(拍手)よつて人事院勧告の通りに実現するのが正当と考えるので、政府の見解と、今後とるべき態度についての御答弁を伺いたいと思うのであります。
 これを要するのに、池田大蔵大臣の有しておられまするこの方針を見ますると、ドツジ顧問がせつかく日本に来まして、三ぺんもよいアドバイスを與えられて日本の経済自立を助けようとしておるのに、その真意がおわかりになつておられぬのではなかろうかと思います。従つて、それを誤り用いて国民を困らせるような政策に置きかえておるように見受けられるのであります。かかる不都合な政策はこの辺で大転換をされることを要望して、この点のお答えを望む次第であります。(拍手)
 次には文教問題についてお尋ねをいたします。総理は、昨日の演説で、精神を作興し、文教を振興することの重要性を説いております。文部大臣は、修身科を復活し、教育勅語にかわる道徳綱領をつくつて学校教育に資せんとしておるようなことを仄聞するのでありますが、それは確かでありましようか。この点は私ども真剣に考えてみなければならぬと思うのでお尋ねをするのであります。つまり、戰後日本の教育の中から修身科というものが除かれたことによつて、社会科の授業だけではどうしても道徳振興には費せられないという不自由さを感ずる、こういう教育者の言を開くのでありますが、はたして文相もそうお感じになつておるかどうか。
 アメリカから参りました第二回の教育使節団の報告を見ますると、一体国民の道徳というものは、いわゆる日常の家庭生活、社会生活、学校生活の間から、お亙いに訓練、鍛練されるうちに人と人との関係が結び上げられる、この人格と人格との倫理の関係であり、従つて一つのステロタイプの型を押しつけて教えるべきではないという意見でありますが、文相はどちらを一体お考えになつておるのか。このようなことではたして日本の指導ができるかどうかといふことの基本的なことを承りたい。なぜならば、教育というものが結局するところ日本再建のもとであるということを首相も言つておるからであります。なおまた、ほんとうにそういうことをするというならば、そういう道徳基準のようなものをつくるよりは、数千年間の多くの人々の間に愛読されましたところの、東西聖賢の聖典のようなものを学校の中で十分に研究するように勧めた方がよろしいのではなかろうか。もちろん学校内において宗教の教派を講ずることには十分の警戒をしなければならないのであります。この点に対する道徳振興の指導方針を承りたいと思います。(拍手)
 次には政治教育関係法規の改正に対する首相の見解であります。教育基本法の第八條と、学校教育法の第五十二條とによつて、政治教育の振興と、また特定政党支持あるいは反対の禁止と、さらにまた教育から来る応用的能力の展開との間に大きな矛盾を感じ、あるいは空白を感じておるのが今日の法制の現在であります。これを改正するのでなければ、首相が機能言われましたように、民主国家を破壊するような勢力に対する正しい指導ができないと思うのであります。これに対して文相はいかなる構想を持つておるかをお尋ねしたいのであります。
 総理は、この民主的秩序に対する暴力破壊に言及しておられますが、教壇レッド・パージのことが今問題になつておるのであります。今日の日本の教育をつかさどつておりますその責任の衝にある先生方は、一たびは皆教職適格審査を受けた人々であります。それがさらに適格審査を受けるというならば、新しい基準がはつきりと理論的にも実際的にも示されなければならない。従つてこの基準をつくり、方法を新たにしてこれに臨むという考えがあるかどうか、それを明確にされたいのであります。(拍手)
 また学生自治会の問題でありまするが、過般レッド・パージに関連して起つた学生の騒動は、まことに悲しむべきことでありました。その背後に不法暴力を推進せんとする作為の陰謀のあつたことは事実であります。(拍手)従いまして、当局の自治会に対しまするこの法的の取扱いにおきましてもその適正を欠いたことを反省してこの問題が適切に指導されなければならない。学生自治会に対する今後の指導方針について文相にお伺いいたします。
 次は簡單に申し上げますが、常にこの国会において主張せられまする科学教育振興に対することであります。今度の補正予算の中では、あるいは文化財保存に関する予算は計上されてありまするが、最も必要と感ずる科学振興のことについての配慮は欠けておるように思うのであります。皆さんが仰せになるこの経済の振興も、結局は日本の科学技術の振興によるところが大きい。あらゆるものが合理的に進めて行かれるための科学技術の振興のために、もつとこの予算が計上さるべきだと思いますが、この配慮の欠けたことについての文相のお答えを求むるものであります。
 次には六・三制校舎のことでありまするが、これは御承知の通りに日本の教育再建のための一礎石をなすものでありますが、最低一人当り〇・七坪の校舎を完成するためには、なお大十三億の金が必要なのであります。ところが、明年の予算の中に四十五億しか組んでいない。そうすると、あと十八億足りない。この十八億が当然今度の補正予算にあるべきものだと考えたのでありますが、これがありません。これは文相に熱意がなかつたのか、あるいは蔵相に同情がなかつたのか、この辺のことをはつきりと示して、国民の納得の行くような御答弁を求むるものであります。(拍手)
 次に申し上げたいことは、わが国の税制に関係を持つておりまする標準義務教育費交付金の問題であります。従来地方自治体に交付しておりました義務教育費は、大部分平衡交付金の中に入りました。このわく内にありまする結果、不明のままに地方に流されますので、結局するところ、財政の貧弱な地方自治体においては、との義務教育費を他に流用して学校自体が非常に困つておるという事実を見るのであります。従いましてこの義務教育費は特に最後までその目的に使われるように、これは文部大臣において措置すべきではないかと思う点をお尋ねするのであります。
 文教費の最後の一点をお尋ねいたします。それは教育職員の待遇改善に関することであります。今日教育の素質が低下し、有力な、優秀な教育に進もうとする教育方面の学生がまことに少いということを憂えられております。これは待遇が悪いことに大きな原因がある。そこで、このたびの皆さん方のお出しになります予算の内容を見ても、まことにその配慮が少いのであります。特にこの教員の給與を改善することについて、文部大臣はどういう実数をこの予算の中に盛られたか。またこれをどう解決されるか。特に年末手当について、この内容をどう思つておるかを明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)
 かくのごとくいたしまして、精神的な、あるいはまた経済的な面から、ほんとうに首相の主張する対策ができるでありましようか。これを見たのでは、まつたく不安の状況にありまするので、以上文相にお尋ねするのであります。
 その次は、この国会は私どもといたしましては、特に救農国会として要望したのでありまして、これに呼応して農林大臣は興農国会だと申しましたが、その放送が、この補正予算の中に何か出て来たか。ほとんど見るべきものがないのであります。(拍手)この助成の方面の金額がきわめて少い。しかして価格差補給金等をやめたものが非常に大きいのでありまするから、これは農相によつて極楽に引上げられたのではなくして、地獄に落されたような感じを農民が持つておるのであります。(拍手)詳細に関しましては同僚の河野金昇君からお尋ねするつもりでありまするが、その根本の気構えだけを農相から伺いたいと思うのであります。
 その次は地方公務員法制定に関してであります。総理は、民主国家にふさわしい公務員制度の完成を期すると申しております。しかるところ、このたびの政府の提出案は、地方公務員に無用の制肘を加え、わが国の正常な民主化を妨ぐる点ありとして、ただちに同意しがたいものを発見するのであります。わが党は、高い国家的見地から全国民将来の福祉を目ざしまして、この地方公務員に対しては、勤労者であり、かつ市民であるその権利を尊重しながら、その職務上の公共的特殊性より来る制肘を緩和せしむる方途を講じて、かつまた極端に窮迫した地方の財政に過重な負担をさせないというような方針から、次の諸点について伺います。
 一つは、地方公務員の政治活動の制限は、職域上の政治の中立、勤務時間内の政治活動、地位利用による政治活動、政党役員、顧問等の重要地位の就任などは同意いたしませんが、選挙運動に関しては、担当区域以外における政治活動を自由にすべきではありませんか。(拍手)
 二つには、地方公務員の公共性からして罷業並びにサボタージユは禁止すべきであつても、平和的な方法による団体交渉権はこれは認むべきであり、当局との団体交渉がととのわない場合、公平委員会に裁定せしむべきではないでありましようか、特にこの点についてお尋ねをいたします。そうして、これと並行して国家公務員法も改正せらるべきであることをお尋ねしたいのであります。
 最後に、超党派外交推進に関する、外務大臣たる総理の所見をお尋ねいたします。前国会以来、わが党は高い国家的な見地からいたしまして、外交問題は政争の具に供すべからずと申して参りました。この基本線には各党とも御同意のようであります。しかるに、責任の衝にありまするところの吉田総理は、この問題に対して熱意を示さない。そうしてまた、この問題はまだその基本線がはつきりしておらないから今論議するのは早い、あるいはまた、日本の国が特にこういう状況において占領せられておるのであるから発言は遠慮すべきだ、こういうような態度をとつておるのではないでありましようか。
 しかし、よく考えてみますると、日本の国は四箇国共同宣言のその制約の中にあつて、自由にこの問題は討議せられなければならない。この講和條約の内容が公表された後においては、超党派外交も、国民の輿論のおもむくところのその結果を期待することができないのであります。今日すでに手遅れになつた感じがないでもありません。すなわち講和に対する日本国民の健全な輿論が打出されて世界の輿論に響き、われわれの希望が遂げられるまでは、よほどの日がかかるのであります。平和な繁栄する日本を招来する模範的講和條約をつくると、太平洋ドクトリンに明らかにされておる今日であります。対日講和條約締結の方式並びに條件の七つの項目は、御承知の通りダレス米国務長官顧問によつて、各国代表に覚書の形式で提示せられ、各国の反応が報道せられるたびに全国民は一喜一憂を禁じがたいのであります。しかして、交渉は今や第二段階に入つたといわれております。しかるに、総理は黙して語らず、その態度は一切不明であります。そこで私たちは、超党派外交の線によつて総理の所見をただしたいのであります。(拍手)
 第一は、講和会議の方式並びに手続に対する政府の理解についてであります。講和條約は、対日戰に参加した極東委員会構成の十三箇国と日本とで結ぶ、その方式は多数決主義によつて四大国の拒否権を認めないという場合に、初めから全面講和ができれば理想的でありましようが、ソ連が一九四七年以来主張した拒否権をやめないならば、まず講和に賛成する国々から、一つでも多くの国々から講和を結びたいという、この思想は昨日の演説にも現われているようであります。そこで、日本がそれからの国々と講和を結んで国際の仲間入りを順次にして参るという希望を申しておるようでありますが、もしもそうであるとするならば、そのときに依然として講和を結ばない国が残つた場合に、日本が大きな苦難に陥ることがないかどうか。日本に好意を持つ国が最高司令官を出しておるので、わが国は困難の中にも順調に進んで来たのであります。しかるに、あとに残つた国が依然として占領を解かないとしたならば、日本の主権の関係はその支配下に従属して困難を増すのではないか、これを憂えるであります。これに対する対策を明らかに示されたのであります。
 二つには、国連参加の資格の問題であります。日本の国連参加の許可は、その参加資格を具備するということが先決となります。それは共同制裁参加の義務となります。しかるに自由党の政策を見ますと、日本憲法によつて戰争放棄の規定を嚴重に守る、また平和安定勢力の任務を完全に遂行し、平和を脅かす勢力は排除するとあります。それでは、戰争を放棄しながら、軍備を持たずして国連参加の資格が一体どうして得られるか、それでもつて共同制裁の義務をどうして果すか、それが明確に示されていない。何によつて平和侵害者を排除することができるか。(「頭でやる」と呼ぶ者あり)国連の求める資格は、頭ではなくて実力の行使であります。よつて、共同制裁参加の義務送行の限度において起る必要に即して憲法の改正が用意せられずして、はたしてこれをなし得るかどうか。憲法は国民のための憲法であつて、国民は憲法のための国民ではない。日本の将来のために、世界の平和安定のために必要とあらば、国連の同意する内容と限度においてこの改正が用意せられなければならないのではなかろうか。これに対する総理の所見を伺います。
 三つには、領土の帰属の問題であります。これはすでに今日までわれらの受諾した公式文書によつてほぼ明白でありまするが、まだ未定の点が若干残つていることは御承知の通りであります。すなわち、日本の国が暴力で、あるいは貪欲によつて略取したものでない、歴史的、民族的に所属する版図は変更されないのが原則であります。この点から考えまして、千島、琉球、奄美大島、小笠原、硫黄島などが決定せられる場合には、その住民の自由意思に反せぬ処理を望むことは当然ではありませんか。人口過剰に悩み、尺地寸土でも国民生存の基盤である領土は、日本国民将来の平和生活の上にぜひ必要土でありますから、この真実を伝えて理解同情を得るように努力すべきであると思います。ただ米国側が戰略的立場から小笠原、沖縄の信託統治を意図すると伝えられておりますが、これに応ずるとしたならば日本復帰の希望が失われるのかどうか、それとも安全保障のために必要なる間だけこれに応ずる考えなのかどうか、この場合の住民の国籍はどうなるのか、外務大臣の所見をお尋ねいたしたいと思います。
 四つには、日本の安全保障のため国連に便宜を與える点についてであります。米占領軍が日本を撤退して、国際連合の安全保障の保護を得るに至るまでのその無軍備の真空帶においては、日本は非常な国防上の不安を感ぜざるを得ないのであります。日本をエデンの花園の神話に夢みるようなことは、生存競争の激しい国際情勢下においてはまつたく非現実的なものといわざるを得ないと思うのであります。従つて、日本が国連に参加し、その保障を得る状態に至るまでは、集団保障がなさるべきであり、米国を中心とする多数の国、できるならば国連が一定の期間この責任を負うために一定限度の便宜を供與することは当然ではないでありましようか。この点に対する所見を伺います。
 この点に関しまして特にお尋ねいたしたいことは賠償取立ての問題であります。今日まで日本の国が当然負うべき責任として、この期間共同宣言の指示によつて正当な賠償をしなければならないので、昨年の中ごろまで中間賠償取立てに応じて、忠実に日本の国はやつて来た。ところが戰争が終ります直前に、わずか数日間の戰争によつて、日本は非常な大きなものをソ連に押えられております。当時の百三十億円、時価にして数兆億円のものが押えられておる。これに反して米国は取立てを中止したばかりでなく、さらに日本に対するところの大きな援助金を與えて、日本が再建復興のために非常な同情を寄せられておるのであります。私どもは、このことを見ますると、これはまつたく人類史上にいまだ見ない、大きな、高い人道主義の現われといわなければならない。(拍手)この点については、米国のこの措置に対して、人類の名誉の名において賞揚し、記録すべきことであると思います。しかもまた、このことを外国にもならわせようとしていることは感謝すべきではないかと思うのであります。日本の国は、これに対してしばらくの時をかりて、日本自体が許されたる賠償以上のものを、この許した国々に対して将来またお返しするという日本の国策がなければならぬと思うのでありまするが、総理はどうお考えになりましようか。それがために要することは、日本が国際経済に復帰する点であります。幸い日本には、講和條約が結ばれた後に通商條約が結ばれて、おそらくは最惠国約款によつて、一切の通商あるいは旅行、その他外国における事業の自由が許されるの日が来るでありましよう。今からある点は開かれておるようでありますが、一層これに努力すべき点について外務大臣の抱負を伺いたいのであります。
 これを要するに、日本がやがて希望的に待望いたしておりますこの講和條約のために、総理がこのときにその態度を明らかにするという必要は非常に多いのではなかろうかと思うのであります。すなわち、講和は少数外務官僚の結ぶものではなくて、これは全国民が結ぶものでなければならないのであります。(拍手)外交のことは自分一人にまかせておけという態度がありまするならば、それはお改め願いたい。(拍手)総理は現内閣で講和に臨むと放送しておりまするが、衆議院において與党は三分の二以上を持つておりません。参議院においても半分を持つておりません。この現状にかんがみて、どうして講和態勢に当るのには超党派外交の線が出て来なければならない理由があるのであります。(拍手)これに対して、ぜひとも総理は熱意を披瀝してこの面に進んでもらわなければならない。わが党が超党派外交の推進を主張して来たゆえんもここにあるのであります。どうかこの際総理においては国民のために謙虚な気持でこの方面に邁進してくださることをお願いをいたしまして私の質問を終りますが、なおまた答弁のいかんによつては再質問を許していただきたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 国会の召集が遅れたということは怠慢ではないかというお話でありまするが、政府といたして今日国会を召集することを要望するに至つた理由を述べます。第七国会の後、また臨時議会において、当時は朝鮮事件が勃発したときであります。朝鮮事件の態様あるいはその結果がどうなるか見すえのつかないときであつたのであります。またこの朝鮮事変なるものの内外に対する影響は非常に大でありまするから、その結果を見定めた上で政府としては施策を立て、また国会においても議論をいたすべきものであると思うのであります。またこの朝鮮動乱の結果日本の産業、社会生活等に及ぼす影響は重大であるので、その結果を見定めて補正予算を組むべきものと政府は考えて、愼重に国会召集は考えておつたのであります。今日はその時期なりと考えて召集をいたしたのであります。
 またポツダム政令についてのお話がありますが、これは私はしばしばお話をいたした通りに、また第七国会においてもすでに提案をいたしておつたのであります。にもかかわらず、しばしっばの政府の説明等については承知せられたものであるかどうか知らないが、とにかく不成立になつて今日までに至つたのであります。しかしながら、一面この水力源の涵養ということは日本の将来にとつて重大なことであります。日本の資源がはなはだ乏しい今日において、水力電源のみが唯一の資源であるのであります。ゆえに、この培養については、この開発については、政府としても、また諸君におかれても非常に重きを置かれていることと承知するのでありますが……(発言する者多し)静かに聞いたらどうだ。(拍手)ゆえに水力源の発達のためには、政府もまたGHQにおいても非常な関心を持つて考慮し、研究し来つたのであります。特にGHQにおいては、ケネデイ氏を、昨年の十月でありまするか、特に日本に派遣して、そうしてこの問題を專心研究し来つたのであります。どうかして日本の水力源を開発せしめて日本の電力資源を豊富ならしめたいという考えから、非常に熱心に昨年来研究せられておつたのであります。政府もまた同様であります。にもかかわらず、遂に電力再編成法案は今日まで成立に至らなかつたのであります。電力再編成ということは、御承知のごとく集中排除によつて日本政府が課せられた一つの義務である。またこれを経済的に考えてみても、戰争と申すか、総力戰を目標とする総動員法の結果としてでき上つたこの日発なるものは、すみやかに解体して、これを経済的に経営すべきものであり、政府の考えもまた同様であるのであります。諸君がこれに対して反対せられる理由は、私ははなはだわからないのである。(拍手)しかるに日発の工事は進行いたしたにもかかわらず、もしこの再編成が行われなかつた場合においては、今日まで継続し来つた工事も中絶いたさなければならないような状態であるのであります。また中絶いたすとしても十五億余りの金を要するというような現状にあるので、再編成をすみやかにいたさなければならないはめに陥つておるのであります。ここにおいてか、また政府としては、なるべく国会において再編成法案を成立せしめたいものと今日まで努力し来つたのであります。しかしながら、GHQにおいても再編成について考慮いたした結果であると思いますが、マツカーサー書簡によつて、ポツダム政令によつてすみやかに再編成を実現するようにとの指令を受けたのであります。ゆえにマツカーサー書簡によつて、すなわちポツダム政令を出したのであります。これが惡いとおつしやるならば、まずポツダム政令を出されたGHQに対して質問を発せられるがいいであろうと思う。(拍手)
 次に文化教育問題については、政府としては最も重大な問題と考えて研究に研究を重ねておりますが、この教育問題については、最も造詣のある文相からして詳細にお答えがあることと思います。
 次に超党派外交――その前に講和の形式について云々といお話であるが、全面講和を慫慂する――私も全面講和はけつこうであると思う。ただ、これに同意せぜる国があつたならばいかんともできないということは、しばしば申したのであります。あたかも超党派外交がいいのであるけれども、趣意においてはいいのであるが、しかしながら社会党が同調しない限りできないのと同じことであります。また領土の問題とか、あるいは国連に加入の條件をどうするか、あるいは国連参加までの間の日本の安全保障はどうするかというような問題を御提議になりましたが、これは私として今日答弁する地位にないのであります。あるいは條約によつてきまり、あるいはまた降伏條約の結果、連合国の指示にまたなければならぬ面あり、またいまだ発生せざる事態でもありいたしまするから、これは答弁いたしません。
 また超党派外交の問題でありますが、超党派外交はまことに趣意においてけつこうであると考えて、私はしばしばこの趣意はこの議場においても申したのであります。しかしながら、同調せざる者があればいかんともできないことは、あたかも全面講和が大事であるが、同調しない者があれば、いかんともできないと同じことであります。これは私の熱意一つではないのであります。もし超党派外交が国家のためによろしいということであるならば、單に私の熱意を問題とすべきものではなくて、各党がともに熱意を示してこの問題を成立せしむべきものである、こう私は思うのであります。(拍手)
 また私は、講和問題を独断に、もしくは少数の官僚のみで扱つていいとは申しておらないのであります。講和條約についての議論は自由である。国民の希望のあるところ、また意見のあるところを、政府としてはよく聽取して、その希望、要望に基いて交渉をいたすべきものであつて、政府がこうしろ、ああしろと国民に命令すべきものではないのであります。(拍手)これは不可解な議論である。共産党の議論である。国民の衆知を集めて、国民の輿論の帰するところを察知して講和條約を政府が取結ぶ、これがすなわち民主主義であると私は思うのである。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 財政経済政策につきまして御質問がございましたが、これは昨日の演説で御了承願いたいと思います。
 なお具体的に今年度の債務償還をいつするかという問題でございまするが、適当な時期にいたしたいと考えております。ただいま千二百億円の債務償還計画のうち、大体二百億円の債務を償還いたしました。警察予備隊その他に二百数十億円を使いまして、一般会計に残つておりまする債務償還に向けらるべき金は二百数十億であります。しかして特別会計のものはみんな償還いたしましたが、見返り資金のもののみ五百億円残つております。お話の通りに、ただいまは食糧証券その他に使つておりまして、別に遊ばせておるわけでもないのであります。日本銀行の貸出しの情勢、あるいは政府の資金引上げの状況等を考えて、この七百五十億円は、今年度内に償還を予定いたしております。何月にどれだけするかということは今後の金融情勢できまりまするが、債務償還に充てられた金を他の費途に使う気持はございません。既定方針通りで参ります。
 次にインベントリー・フアイナンスの百億円の繰入れは、昨日申し上げましたように、日本銀行から借りて外貨を買つて来る、いわゆる輸出資金を日本銀行の貸出金に頼つて行くということはインフレへの危險がありますので、財政資金でまかなつて行くことにいたしたのであります。
 次に、減税額七百五十億円と新聞に出ておつたのが七百億円になつたのは非常な公約無視ではないかと言われますが、私としては七百億くらいが適当な減税額と考えております。なお農民の所得税が高過ぎるというお考えでございまするが、昨年に比べまして今年の農民の所得税は、お調べになりましたらおわかりになりましようが、非常に安くなつておるのであります。(拍手)来年はもつと安くすることをここで申し上げます。
 次に、今回の税制改革で少額所得者に対して酷ではないかというお話でございまするが、計算してごらんになりましたら、決して少額所得者に酷ではないのであります。
 次に、平衡交付金は三十五億円の増額では足りないではないかというお話でありますが、足りないという根拠が私にはわかりません。今の財政の状況から見まして、私はできるだけこれを出すように努力いたしました。当初は九億円と見込んでおつたのでありまするが、これを三十五億円に増額したのであります。
 なお地方債の起債につきまして、もつとふやしたらどうかというお話でございますが、その通りでございまして、ただいまこれをふやすべく関係方面と協議を重ねております。
 次に、政府資金の放出を急いだらどうか、ことに長期資金が不足しておるから早くやつたらいいじやないか、こういうお話でございます。従つて、昨日財政演説で申し上げましたように、今後どしどし出して行くつもりであります。しからば今まで出さなかつたのはどうか、こういう御質問でございまするが、大体年度の第一・四半期、第二・四半期は、昨年も非常な引上げ超過であります。今年一・四半期ないし第二・四半期は五百五十億円余の引上げ超過、昨年は五百億円近い引上げ超過であつたのであります。しかして、これによる資金不足は日本銀行の貸出しによつて今までまかなつて来ておつたのであります。第三・四半期になりますると、政府の支拂い超過が非常なものになつて来るのであります。従いまして、一時千七百億円の日本銀行の貸出しは、第三・四半期に政府の支拂い超過によりまして、今まで千百億円と、六百億円減つております。こういうふうに金融に波が打つのは、これは日本の財政経済上やむを得ないのであります。従いまして、今後におきましは、昨日申し上げましたように、こういうことを是正しながら、その波をできるだけ少くして行くように努力して行きたいと考えております。
 次に通貨の発行限度をどう考えるか、機械的にきめるべきではないじやないかという御意見でございます。まことに、ごもつともでありまして、われわれは通貨の発行にそうとらわれておりません。先般通貨発行審議会で、今年末の発行の大体の見通しを三千九百億円と決定いたしました。昨年は三千五百六十億円でございまするが、今年は三千九百円億円と一応決定いたしました。今日は昨年の今ごろに比べまして四百億円程度上まわつておりますので、まあ三千九百億円くらいにきめるのが適当かと思います。しかし、これ以上発行してはいかぬというのではない、この限外発効はわれわれは予定いたしております。従いまして、一応通貨の発行を三千九百億円ときめ、百億円あるいは二百億円くらいの限外発行があつてもやむを得ない。それをとめる気持はございません。
 次に、特殊金融機関を設けてはどうかというお話でございます。そういう考えも持つておつたのでありまするが、新しい金融機関を設けても、なかなかまわつて行かないのであります。従いまして特に新しい機関を設なければまわらないようなものにつきましては設けます。すなわち輸出銀行でございます。しかし、農林・商工その他の方面では既存の機関を使つてこれに資金を與えれば、それの方がよくまわる、こうなつておりますので、今後は新しい金融機関をつくるよりも既存の金融機関を活用する方針で行きたいと考えております。
 災害復旧が四十一億円、その他を加えて五十億円程度で、少いというお話でございまするが、われわれとしては減税もしなければなりませんし、災害復旧もしなければなりませんし、また産業資金も出さなければならないので、その程度でやむを得ないと思つておるのであります。この点は皆様方の御批判を願いたいと思います。
 なお、公務員の給與を人事院の線までなぜ持つて行かなかつたかという御質問でありますが、今の財政経済事情でできる限りの給與を引上げまして、大体平均八千円程度になるのであります。これに別に超過勤務手当がつくのであります。人事院の分は、われわれの計算で行きますと八千四百円程度になると思うのであります。
 なお最後に、大蔵大臣が議会で冗費を節約しろと言つたら、日本はそんな節約をする冗費があると思われて日本の信用にかかわるじやないかという御注意でございまするが、これはどこの大蔵大臣でも、節約を主張しない大蔵大臣はございません。冗費は出さないというのが古今東西を通じての大蔵大臣であります。決して日本の信用は御心配になるほど惡くなつておりません。最近日本の外貨債がニユーヨークで上場せられたことは、日本の信用が敗戰国のどこよりも回復しておるということを意味するものでございます。どうぞ日本の信用は日とともに向上いたしておることを御了承願います。(拍手)
    〔国務大臣天野貞祐君登壇〕
○国務大臣(天野貞祐君) お答えいたします。
 まず第一に、道徳要領とか道徳教育とかいうことについて御質問がございましたが、人間はだれでも日々の行動に対して基準を持つておることが必要であります。そうして、そういう基準は普通自然法的にだれでも知つておりますけれども、それを組織立てて、体系づけておくということは、人にとつて便利な場合があると思います。もちろん私は、そういう基準があれば、それですぐに道徳者になれるとか、容易に道徳が社会を支配するようになれるとか考えるわけのも本ではございません。ただ、そういうものもあることが便利なとも言える。長い間教育勅語がそういう役目をいたして来ましたけれども、現在教育勅語が妥当性を持つておりませんから、何か一般の国民が自分からそれを守つて行くというような形の基準があることもよいのではないかという考えで、それを研究いたしているわけでございます。私は決して道徳要領というようなものを教育勅語と同じにするとか、またかえるとかいうような意味ではなくして、もつと平たく、親しみのあるわれわれの日々の生活基準というような考えでおるのでございます。次に、従来修身といわれた学科については非常に欠点が多かつたのでございます。一体修身の科目というようなものが、すべて道徳的なことを書いた教科書を使つて、先生が毎時間道徳的なことを言つておれば、生徒はまたお説教かというようなことで、少しも道徳的な効果を現わして来ないのであります。でありますから、このたび修身科というものが廃されて、それが社会科となつたということは、私はいろいろの意味でよいと思うのでございます。従来の修身料というものが、ややもすれば個人道徳に偏するのに反して、社会道徳というものを主体にした社会科というものは、時代に即したものだと思います。けれども、なお非常に不十分なところがありますので、そういう点を改めて行きたい。もちろん、ただいまおつしやいましたように、古典的な聖賢の書を読むというようなことは、当然よろしいことでございますけれども、しかし、そのほかになお平易なもので、生徒を導くのに都合のよいようなものがあり、またそれを教えるに適当な人が受持つて教えるということも必要なのではないかという考えなのでございます。もちろん私は、教育というものは、決して道徳教育とか人間啓発ということを離れてないのですから、すべての人が道徳教育を受持たなければならないのですが、特にそういう学科もあつてよいのではないかと思うのでございます。
 第二番目に学生の政治活動でございますが、これは教育基本法の学校という文字の解釈だけでは行かいものがありますから、何かここに学生の政治運動に対処する法律を考えることが必要だと思つております。レツド・パージと普通いわれるものは、これによつて行き過ぎた教授を探し出して、その教授を追放しようなどと考えるものではなくして、ただ大学の秩序というか、一般の学園の秩序を守ろうというわけなのであります。そういう消極的な目的は、すでにあるままで到達されておると自分は考えておるのであります。ただいま申された基準の点に関しましては、なおよく研究してみたいと思つております。
 第三番目に、今後の指導方針ということでございますが、これは大学の教授であるならば、ただ研究者でなくして教育者であるという自覚を深めて、もつと学生の指導に熱心になつていただくとか、あるいはまた、あまりに人数の多いところは人数を考えるとか、いろいろのことが考えられると思つております。
 四番目に科学振興のことでございますが、これは非常に必要なことであつて、また日本人が非常な素質を持つておることでありますから、本予算には十分の予算を計上して科学振興に資したいと考えておるのでございます。また科学教育の点につきましても、科学教育研究所をつくつて、その点を考えて行きたいと思つております。
 五番目には六・三制の校舎の建築のことでございますが、おつしやるように、決してこれで十分だとは言えませんが、私はさらに続けて、決して〇・七坪ではなく、〇・九坪までもこれを進めてやりたい考えでございます。
 六番目に標準義務教育費のことでございますが、これはぜひとも必要であつて、平衡交付金にすべてを繰入れてしまうというのでは不十分で、この点についてはおつしやる通りであつて、標準義務教育費を確保する何らかの方策を考えたいつもりでおります。
 なお教員の手当のことでございますが、これは一般の待遇も改めなければいけない。一体社会において教育が盛んになるためには、教員諸君の待遇を改善することがぜひとも必要であつて、その点には十分な努力をいたしたいと思つております。また年末手当については、平衡交付金に三十五億というものが繰入れられることになりましたから、その点からこれを円滑に実現することができるという見通しを持つております。
 これをもつてお答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
○国務大臣(廣川弘禪君) 笹森さんにお答え申し上げます。
 救農と言つたことに対して興農と答えたその精神内容を言えということであつたと思いますが、私はこの字のごとく、救農のように消極的でなく、興農のごとく積極的であるということをお答え申し上げます。
 なお本年度補正予算について、予算面に農業予算の補正が少いじやないかということでありますが、その通りであります。しかし、少いからといつて決して農業を興さない予算ではないと御承知を願いたいのであります。
 なお大蔵大臣も言明しておるごとく、本補正予算は来年度予算と一貫して編成いたしておる予算でありますので、来年度予算には十分興農の気分が満ち満ちておるということをご承知を願います。
○議長(幣原喜重郎君) その他に御要求の大臣がありますか。
    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(幣原喜重郎君) なければ次の質疑に移ります。水谷長三郎君。
    〔水谷長三郎君登壇〕
○水谷長三郎君 私は、日本社会党を代表し、昨二十四日行われた総理の施政演説並びに蔵相の財政演説に対し若干の質疑を試みんとするものであります。
 まず第一にお伺いしたい点は外交、特に講和問題についてでありまするが、世間の一部では、無條件降伏をした日本の立場としては日本の言い分が通るかどうかはわからないから、なまじつか講和問題を論議するよりも、無條件に連合国を信頼する方がよいというような説をなす者もありまするが、しかし無條件降伏してからすでに五箇年の月日は流れ、世界の情勢また当時とは激変いたしました今日におきまして、日本民族百年の運命を決する講和問題につきまして、国民は講和條約に関する折衝がどのように進展しているのか、政府はこれに対していかなる受入れ態勢を準備しておるのか、国民の要望するところがどの程度取入れられておるかなど、それらの点につきまして真劍に聞きたがつておると思うのであります。私は、この国民の真劍なる願いに沿うて、次に述ぶる諸点につきまして、総理の率直にして明快なる御答弁を要求するものであります。
 まず第一点は、国際情勢の見通しいかんの問題でございます。朝鮮動乱の勃発によりまして世界の危機が切迫した感があつたことは事実でありまして国内におきましても、たとえばか、の悪名を国の内外にとどろかした外交白書のように、朝鮮事件をもつて国連対国際共産陣営の争いであると断じ、尋常の手段では解決できないこの思想戰において、中立などというものは敵前逃亡にひとしいといつたたぐいの世界戰争必至論や、義勇兵の出陣のような好戰的言動が行われ、非武装平和憲法の放棄すらも論ぜらるるに至つたのは、まことに遺憾であると思うのでございます。(拍手)ことに、とかく右か左かに割切ることのすきなわが国民に対しまして、好戰的心構えを上から押しつけようとする政府の態度こそは、まことに民主主義と平和に対する冒涜といわねばなりません。(拍手)
 しかしながら、国際情勢の冷静なる判断によりますれば、第三次世界戰争の危機は、決して回避できないものではございません。このたびの朝鮮事件のもたらした最大の成果は、侵略戰争に対する国連の安全保障の能力が格段と強化されたことであります。すなわち朝鮮の戰闘は、外交白書のいうような東西両、スロツク間の武力抗争ではなくて、いずれの陣営にも属しない中立諸国、たとえばスエーデン、イスラエル、回教民族国、インド及びユーゴスラビア等がこぞつて、世界平和を破る侵略者に対して、国連の旗のもとに共同して正義と秩序を維持する警察行為のために結束したことにおきまして、従来の戰争観を一擲せしむるものがございました。このことは、現下の世界の不安が東西両陣営の正面衝突に帰結することなく、国連という世界輿論の結集体の力によりまして、武力によらずして処理される希望を與えるものであることに、非武裝平和を誓つた、わが国を含めた全世界の軍事的な弱小国は、必ずしも東西いずれかの陣営との間に軍事協定を結ばずして、国連の力によつて外敵の侵略から保障される道を開いた、まことに人類史上画期的な進歩といわなければなりません。(拍手)すなわち、われわれが平素主張するごとく、第三次世界戰争は決して不可避ではない、また日本の将来の安全保障は国連の集団保障に求むべきだということが事実によつて裏づけされたと思うのでございますが、総理は相もかわらず依然として、あの外交白書にうたわれたように、世界戰争は必至であり、中立は敵前逃亡にひとしいというお考えを持つておられるかどうかということを承りたいのでございます。(拍手)
 さらに第二点は、かかる国際情勢上の一般的な楽観材料にもかかわらず、現に東洋におきましては、インド支那における冷たい戰争の強化や、チベツトに対する中共軍の侵入のほかに、中共軍部隊が北鮮戰線に投入されるような危険な事態が発生いたしました。元来朝鮮という土地は、地政学上からいつて、太平洋から満洲、シベリアに対する侵略のかけ橋でもあり、他面アジア大陸から日本列島や太平洋に侵略する順路でもあるのであります。従つて朝鮮の事態に対して最も直接関心の深い国は日本、中国及びソ連であります。わが国に関する限り、朝鮮民族が国連の援助のもとにすみやかに統一を完成して、真に高度民主主義的な、平和的な独立国となることを衷心より希望するところであります。
 中共が、中国の立場から、満鮮国境方面の軍事的、政治的並びに経済的事態に対して重大なる関心を拂うことはもつともであります。しかし、今度の中共の朝鮮出兵に関する動機が右のような純粋に中国的なものであるならば、台湾問題に関して中央代表が国連総会に出席する機会に、国連側と十分話し合つた上、合理的な解決に到達することが可能であると信じます。またもし中央がコミンフオルムの世界戰略の見地から国連軍を北鮮方面にくぎづけするため、いわゆる火中の栗を拾う決意であるならば、その影響ははなはだ甚大であるといわねばなりません。われわれは、中共の指導者も中国の民衆も好んで世界戰乱の醸成をあえてするものではないと信じたいのでございますが、この点に関して総理はいかなる見通しをお持ちであるか、所見を承りたいと思うのであります。
 第三点は、わが国の講和問題について一言いたしたいと思います。まず講和問題と密接不可分の関係にある安全保障につきましては、わが党のかつて主張したごとく、日本憲法に即応する唯一の安全保障の体系は、東西の両陣営のいずれかに軍事的に身を投ずることでなく、またスイス型の永世中立国でもなく、国連による世界的な集団保障でなければならないことが今やわが国の輿論として確立され、(発言する者多し)関係諸国もまたこのわが国民的要望に耳を傾けつつあることはまことに喜ばしい次第であります。今や国連がその安全保障の能力を強化いたしました今日、われわれは特定国との間の軍事協定や、特定国に対する基地の提供等の方法によらないで、いずれの陣営、いずれの国をも仮想敵国として扱うことなく、平和日本の軍事的中立性を保持しながら国連の集団保障にわが国の将来の対外的安全保障を託し得ると信ずるものであります。去る第八臨時国会におきまして、吉田総理は軍事基地の提供に反対の意向を述べられたのでありますが、ここに再びわれわれはその確認を求める次第でございます。
 第四点は、安全保障に関連いたしまして、近来日本の再武裝が論議されておりますが、われわれが国連に安全保障を託する場合、国連の憲章を守る義務のあることはもちろんでありますが、同時に日本の憲法の特殊性を十分に尊重して軍事的負担を免除してもらうことを要請することは、決してわが国のみの身がつてではなしに、真に世界平和のためであると信ずる次第であります。しかるにかかわらず、近来国内におきまして軽率なる再武裝論が行われていることは、はなはだ危険であるといわなくてはなりません。(拍手)もとより独立国の日本が自然法的な自衛権を放棄したと見るべきではございませんが、憲法の規定によつて自衛戰争をも含めて戰争を放棄し、かつ一切の戰力を保持しないことをきめました以上、われわれが軽々にみずから進んで再武裝を口にすべきでないことは明白でございます。(拍手)最近タス通信が、日米秘密軍事協定説や日本軍再建等のデマを飛ばしておるのでありますが、この際吉田総理は再武裝の意思のないことを明確にすべきではないかと思うのであります。
 第五点は、講和條約のいま一つの重要な問題は領土問題でございます。この点に関しまして、わが党は過般明確なる見解を発表いたしました。しかるに政府や自由党は、この重大な問題について何ら国民の声を代表して世界に訴えるところがないのは、まことに遺憾千万であるといわなくてはなりません。(拍手)なるほど、われわれ無條件降伏をいたしました。しかしてポツダム宣言を受諾いたしました。しかも侵略主義を放擲いたしまして、真に平和国家と生れかわつた日本といたしましては、過去の侵略や戰争の結果獲得した外国の領土のごときは、これを放棄するにやぶさかではございません。従つて、カイロ宣言に該当する領土、すなわち朝鮮、満洲、台湾、膨湖島及び旧南洋委任統治区域はわが領土権を放棄いたします。しかしてこれに該当しないで、しかも本州、四国、九州、北海道にあらざる島々につきましても、ポツダム宣言を受諾した以上、関係四箇国が決定するの方式には異存がございません。
    〔議長退席、副議長着席〕
しかしながら、これら諸国は、周和のごとく連合国共同宣言において、みずから領土を求めず、また領土の変更は住民の意思によることを決定しておる次第でございますから、われわれといたしましては、沖縄島を含む南西諸島、小笠原諸島、硫黄列島、大東島、鳥島並びに南樺太、千島列島、歯舞、色丹島のごとき祖先墳墓の地は日本の領土権を承認してもらいたい旨を率直に述べるのが正しいと思いますが、政府の所見はいかん。(拍手)さらに経済條項につきましても、平和産業に制限を設けないことや貿易の自由等につきまして、また賠償についてはその打切りを要請すべきだと信ずるのでございますが、総理の御所見はいかがでありますか。
 第六点は講和條約の方式でございますが、もとよりこの点については、最後的には日本の希望通りに行かぬような国際事情もあるかもしれませんが、われわれ日本人の立場から言うならば、講和條約という以上は、同時にすべての交戰国、なかんずく極東委員会関係十三箇国との間の完全なる戰争状態の法的終了と国交の回復を希望するのはきわめて当然でございましよう。(拍手)さらにわれわれの力の及ぶ限り対日講和問題に関する列国間の論争点を日本側からつくり出したり、またはこれを激成しないために注意すべきことも自明の理であろうと思います。われわれは、かかる見地から、とかく列国の間の論争の種となつておる日本の安全保障や講和の原則について、非武裝、軍事的中立及び国連による安全保障の三原則を主張して参つた次第であります。今や幸いにして列国もまた国連による安全保障方式に賛成の模様でもあり、かつは主導的地位にあるアメリカ側におきましてもソ連、中国を含めた全極東委員会関係国間の折衝に努めており、さらにソ連もこの話合いに応ずる姿勢をとつたときでもあり、われわれといたしましては、日本の国論を結束して、その基礎の上に今世界の輿論を動員して、その力のもとに全関係国が小異を捨てて対日講和條約をまとめるよう強く要請すべきものであると信ずるのであります。(拍手)ことにわが国内の一部に、全面講和はとうてい不可能だというような半可通的な、または投げやり的な言動が行われ、全面講和といえば共産党の亜流かソ連の第五列であるかのごとき惡罵を放つたりする者があるのは、はなはだ遺憾でございまる。われわれが完全なる講和を主張することは、自主的な見地から正しく、しかもわが国に利益があるからでありまして、断じて一方の陣営に媚態を呈せんがためではございません。性急なる單独講和一辺倒の考えは、あまりにもアジアの民族主義運動を無視した考え方であり、われわれはソ連の最終的の最終的な意思が決定されるまでは、理想としての全面講和の実現に努力すべきではないかと考えております。(拍手)
 さらに第七点は、いわゆる超党派外交について一言したいのであります。外交、ことに講和問題を政争の具に供しないことは、わが党のかねがね主張して来たところでございます。但し、ダレス氏の著書にもありますように、超党派外交が成立するには、おのずから基本條件が備わつておらねばなりません。たとえて言うならば、まず第一に政府が真劍であること、案が固まらない間に話し合うことなど等でございます。しかるに、従来の超党派外交の動きはこの基本條件を全然無視されておりまして、しかも内政的かけひきのにおいが、きわめて多分に含まれていたのが遺憾でございます。(拍手)わが党が再々この問題につきまして拒否の態度をとつたのは、天下の公党としてまさに当然のことであり、この点につきましてわが党の態度を批判するがごとき説をなすものは、まことに見当違いもはなはだしいと言わねばならぬのでございます。(拍手)
 次に私は経済と国民生活についてお尋ねしたいと思います。この貸間は、主として大蔵大臣並びに最後の部分は安本長官から御答弁を煩わしたいと思います。
 まず第一点は、予算折衝遅延に関して蔵相の所見をお伺いしたいと思うのであります。予算折衝にかくも手間取りまして、最後には十五箇月予算の建前はくずれて明年度予算案を切り離し、本年度補正予算の大綱のみを国会に提出されまして、私らの予算審議に多大の不便と迷惑をかけられたことにつきまして、一体蔵相はいかなる責任を感じておられるかということでございます。ドツジ氏とは来朝以来一箇月半にわたつて折衝されましたが、かんじんの国会に対しましては、わずか十日ほどの審議期間しか與えられないことは、国会を軽視するもはなはだしいと言わなくてはならぬのであります。(拍手)
 しかも折衝妥結にあたりまして、蔵相が新聞に語られるところによりますならば、折衝が長引いたのは朝鮮動乱の影響を政府原案に織り込むためであつたと言つておられます。まことに驚き入つた次第であると言わなくてはならぬのであります。(拍手)朝鮮動乱の発生は言うまでもなく六月二十五日でありまして、発生前後によつて日本経済の実態は著しく変貌を示しております。日本経済に與えた朝鮮動乱の直接的影響は軽視できないものでありますが、それにも増して大きな変化は世界経済の動向であります。すなわち戰略物資の世界的買付競争は、それら物資の価格を高騰せしめ、さらにまた一般的にも国際的な価格上昇傾向を濃化せしめておる次第であります。輸出原材料はもちろんのこと、食糧を初め国民生活に必要な被服原料などを海外の供給に仰ぐ日本経済への影響は断じて軽視できないと思うのであります。この国内、国外の情勢を無視して二十六年度予算原案は作成されたのであります。すなわち明年予算案は、朝鮮事変後の国際経済、国際政治の動向とは何らのかかわりもなく、二十四、二十五両年度予算と同じように財政の均衡化をはかることを主眼にし、減税の公約と公務員給與改善の名目的な実現を期した、單なる骨格予算にすぎないものであると極言いたしましても、あえて言い過ぎではないと思うのであります。(拍手)おそらく蔵相といたしましても、朝鮮動乱の影響を無視した予算案が、朝鮮事変が日本経済に及ぼす影響を検討することを主目的として来朝されましたドツジ氏の試験にパスしないことは万々承知の上、ただ名目的にでも公約を果したい、いな、果したいという風を見せたいという党利党略の党人根性から、(拍手)こんな甘いサツカリン予算が組まれたものであると思うのであります。(拍手)そのため予算折衝を必要以上に長引かしたものといわなくならぬのでございまして、この点におきまして、何ゆえ蔵相はこのたびの予算編成にあたつて朝鮮動乱の影響をば最初から織り込まなかつたかということを、はつきり私は御言明を願いたいと思います。(拍手)
 また蔵相は、巷間伝えられるところによりますれば、明年度予算についてもその大綱は決定したが、ドツジ氏から発表するなという話があつたので、閣議にもまだ出しておらないし、国会でも触れないつもりであるということを蔵相談話として言つておられます。もしこれが事実であるといたしますならば、一体これは何たることでございますか。いかに戰いに敗れたとはいえ、いやしくも一国の大蔵大臣として、私は断じて口にすべき言葉ではないと思うのであります。(拍手)ドツジ氏にも御迷惑なことであり、また国会の立場からも、こういうようなことを言われれば、われわれは無視するわけには参らないのであります。すみやかに国会にその本予算を提出すべきであると思います。少くとも来年度の本予算におきまして終戰処理費は一体どうなるか、あるいはインベントリー・フアイナンスの問題はどうなるか、あるいは国際情勢の変化におきまして、あるいは警察予備隊、あるいは保安庁その他いろいろの歳出の増加があるにかかわらず七百億の減税はどうしてできるかということを、むしろ私は蔵相がみずから進んで国会で説明すべきものであろうと思うのです。(「ヒヤヒヤ」拍手)もともと十五箇月の予算の建前からすれば、当然補正予算の背景として明年度予算が明らかにされねばならないのに、そのことをあえてせないのは、これは巷間伝えられるところによれば、明年度予算は原案から相当変貌しておるので、臨時国会乘り切りのために伏せておく方が政府のために便宜であるというようなことが一部伝えられておりますが、もしこれが事実であれば、私はきわめて遺憾です。国会の権威を蹂躪し、国会の審議権を冒涜するものといわなくてはならぬのでございますが、この点に関する蔵相の明確なる御答弁を願いたいと思います。(拍手)
 第三点は、蔵相は世界経済の見通し並びに日本経済の現状に対しましてどういうお考えを持つておられるかということを聞きたいと思います。われわれは、過去一年有半、ドツジ・フインの一本道にすがりまして、インフレ収束に專念して参りました。ドツジ氏が日本のインフレの根源を財政に求めたねらいは正しかつた。復興と安定との中間案をしりぞけて安定第一に限定したことも正鵠を得ていたと思います。しかし、さすが一気呵成のインフレ収束外科手術は、効果はてきめんにききましたが、犠牲の面もまた莫大であつたと思うのであります。インフレは収束し、通貨は確かに安定いたしました。しかし、この通貨安定の陰には、勤労大衆のおびただしい犠牲があつたと思うのであります。(拍手)たとえて言ふならば、その手術は、新米の電車の運転手が前方に障害物を見てびつくりして急停車したようなものであり、電車はとまつて障害物にぶち当らなかつたが、かんじんかなめの車の中の客はみな将棋倒しになつて大けがをしたのである。しかも、その人けがをさせられた客はたれであるか。それはいうまでもなく低賃金に悩む労働者諸君であり、低米価に苦しむ農民諸君であり、そして池田大蔵大臣から自殺の自由を與えられた中小企業の諸君であると思うのでございます。(拍手)
 かくて、ドツジ・ラインが公式化されて機械的に推し進められることは、すでに限界に達したものといわざるを得ないのであります。時たまたま十月七日、三たび日本を訪れたドツジ氏は、依然としてデイスインフレ政策を堅持することを声明されたのでございますが、一方におきましては、日本の資本、設備、技術、労働力は、いわゆる完全雇用の状態にはない。従つて、これを活用して生産増強に努める必要があるという点も指摘されておるのであります。私らは、この声明に多大の期待を寄せました。しかるに、このたびの補正予算を見ますると、あれほど蔵相が、去年、今度限りと声明されましたインベントリー・フアイナンスの問題は解決されないで、外為特別会計を中心といたしまするインベントリー・フアイナンスは補正予算百億円、伝えられるところによれば明年度五百億円が計上されて輸出銀行に対しては、全額見返り資金より繰入れないで、一般会計から補正予算二十五億、明年度五十億を政府から出資しておるのであります。しかるに、一方において、公務員に対しては、人事院の再度の勧告を無視して、千円引上げという姑息な道を選び、また予定された年末手当一箇月分も半箇月分となりまして、補正予算は相かわらず超均衡予算の痕跡をとどめておることは、まことに遺憾であるといわなくてはなりません。(拍手)自立経済達成への切りかえを急がなくてはならない今日、このような予算の編成方針がとられたにつきまして、蔵相ははたして世界経済の見通しをどのように立てられ、日本経済の現状をどのように認識されておりますか。日本経済はすでにデフレの時期を去つて、経済界にデフレ的作用が及ぶことを心配するよりも、むしろインフレを懸念すべきであり、デフレ対策よりもインフレ対策を考えねばならないというぐあいに見ておられるのであるかどうか。この点は、きのうの財政演説におきましても並列的に述べられておりますが、そういうようなことでなしに、今の日本としてはどれに重点を置かなくてはならないかという点を明瞭にお答え願いたいと思う次第であります。
 第三点といたしまして、補正予算の意義についてお尋ねをしたいと思います。このたびの補正予算案は、さきの政府原案の歳出が約二百七十億円であつたに対しまして、それが約三百六十三億円に増大しております。その主因は、外為特別会計の増加運転資金といたしまして百億円を一般会計から繰入れられたところにあります。インベントリー・フアイナンスの問題は、ドツジ式予算編成に際しまして、デフレの要因として絶えず問題にされたところであり、池田大蔵大臣も、二十五年度予算案の審議にあたりましては、インベントリー・フアイナンスはこれ限りであると繰返し明言されておりました。これはおそらく池田大蔵大臣も御失念ではないと思います。
 ところが、本年度補正予算で百億円、また伝えられるところでは、明年度予算で五百億円がインベントリー・フアイナンスとして一般会計から繰入れられることになつております。今までのところ、この外為特別会計の増加運転資金は、日銀を通ずる金融操作によつてまかなわれておりました。この操作をそのまま続けたところで、それをもつてただちにインフレと見るのは早計もはなはだしいといわなくてはなりません。何となれば、現在の物価の値上りの傾向のよつて来る原因は特需の圧迫、輸入の停滞などにあるのでございまして、断じて金融操作でないと私は信じたいのであります。(拍手)輸入促進に敏捷かつ大胆なる手を打たないで、いたずらに金融操作によつてインフレを防ごうといたしますならば、それこそ角をためて牛を殺す危険を冒すことになるのでありましよう。政府がこのように超均衡予算の亡霊にとりつかれておる限り、見返り資金、預金部資金の動員に積極性を示したところで、それは頭隠してしり隠さずとなるだけであろうと思うのであります。
 もう一つの問題点は、減税のからくりであると思います。政府は、その一枚看板たる減税を実施するために、さきに述べたような、サツカリンのような甘い予算を編成してドツジ氏の大手術を受けたことはいうまでもありません。ところが、この大手術のあとも、なおこの看板にしがみつく前に、実質的にはこの看板を掲げた意義をば消失せしむるがごときことをやつておるのであります。すなわち、税收の自然増加が原案の二十五億から六十八億に、価格調整費の不用額二百億が二百六十億に改められまして、年末手当は一箇月分が半箇月分になりました。二百六十億に及ぶ補給金がとりはずされ、米価が五千五百円に上れば物価の上昇は必至であり、それは生計費、特に勤労者の生計費に大きな影響を及ぼすことはいうまでも、ございません。また政府のいう税法上の減税は六十三億でありますが、他方税収の自然増加は、政府原案より実に四十三億も水増しされておるのであります。これらの諸條件を勘案いたしますならば、政府の呼号する減税の看板は、減税のための減税であつて、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を売るたぐいといわざるを得ないのでございます。(拍手)
 政府は、さらにまた明年度七百五十億程度の減税を宣伝されておるのでありますが、インベントリー・フアイナンスですでに五百億が歳出増となります。そのほか警察予備隊あるいは海上保安隊などの費用増加も必要と見られている以上、この減税の線を確保しようとすれば、またまた莫大なる租税收入の水増しをやられるほかに道はないと思うのであります。(拍手)しかしながら、このしわは、今までの例を見てもわかるように勤労大衆に寄せられているのでございますから、政府のとなえる減税のから念拂は、勤労大衆の塗炭の苦しみをまぎらわす阿片の役目しか果せないといわざるを得ないでございましよう。これに対して大蔵大臣はいかにお考えでございますか。
 第四点は、自立経済計画と予算の関連であります。さきに政府は、自立経済審議会におきまして、三箇年計画をもつてわが国経済を自立させるプログラムの立案を命じました。また最近アメリカにおいて、いわゆるグレー報告なるものが発表されまして、その中には、御承知の通り、特別の事情がない限り、従来の対日援助は来年六月をもつて打切られることが勧告されております。わが国経済の自立を早期に達成する必要はまさに眼前に迫つて来たのであります。自立経済経議会の今までの試案その他を見ますと、そこには相当規模において自立を達成することが目標とされております。しかしながら、この観点から翻つて十五箇月予算の政府原案を見ますると、私はそこに自立経済達成を目ざす政府の積極的な意欲を見出すことができないのは、きわめて残念であると思うのです。そこでは依然として超均衡予算の建前が必要以上に嚴格に貫かれており、低米価、低賃金をてこするところの資本蓄積が強行されておるのであります。しかして、自立達成に欠くことのできない基幹産業に対する国家の計画的な育成はまつたく顧みられておらないのでございます。たとえば、財政と金融の分離という十九世紀的古典理論を公式的に振りかざしまして、補給金に二百六十億の大なたを振い、それをもつて補正予算最大の財源とするやり方には、わが党は、わが国基幹産業の物的基礎の脆弱さを知るものとして、まことにあぶないかなと叫ばざるを得ないのでございます。(拍手)安本長官は、このたびの予算をもつて、安定より自立へ切りかえられた予算であると認め得るかどうか。自立経済のてこである電源の開発、造船、鋼材、綿糸、食糧につき、この予算で所期の増産を達成し得ると考えられるかどうか。これを承りたいと思います。なおあわせて、この際政府作案中の自立経済の構想をば、できるだけ明瞭にひとつお聞かせ願いたいと思います。
 最後に私は、憲法政治、憲政の運用について政府はいかなる考えを持つているかを承りたいと思うのであります。そもそもこのたびの第九臨時国会は、第八国会終了と同時に、衆議院並びに参議院が、憲法の規定に基き、定員四分の一の署名をもつて、救農臨時国会として早期召集を要求したにもかかわらず、政府は何ら顧みるところがなかつたので、九月上旬、再び九月末目と期限を切つて、議案も用意して重ねて政府に要求したのであります。憲法第五十三條には「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と規定されておるのであります。従つて両院の成規の手続に基く要求に対しては、政府はその態度を決定しなければならなかつたのであります。しかるに、八月、九月、十月と放置しておいて、十一月に入つてようやく臨時国会開催の決定をしたことは、政府みずから憲法を軽視し、国会の意思を蹂躙し、さらに反対党の存在を無視する独裁的傾向の現われといわなくてはなりません。(拍手)特に警察予備隊の設置、海上保安庁の機構の改革、これに必要なる予算の流用等、立法事項として予算の修正を必要とするにかかわらずポ政令で決定して実施したごとき、また第六国会で参議院において審議未了に終つた食糧確保臨時措置法の改正をポ政令で実行したごとき、いずれも憲法を軽視し、国会を蹂躪する反民主主義、独裁的傾向の現れでございまして、われわれのとうてい容認せざるところであります。(拍手)しかるにかかわらず、今また突如として全国民生活に大きな影響を與え、全産業を支配する今国会における最大の法案である電力再編成法案をば、国会開会中にもかかわらずポ政令で処理するに至つては、憲法無視の政府の暴挙ここに至つてきわまれりと、われわれはいわなくてはなりません。(拍手)
 かくのごとく、党内の矛盾対立を押えるために、男を女にし、女を男にする以外のことは何でもできないものはないという、あのイギリスのことわざ通りの絶対過半数の力を持つておりながら、みずから進んで国会の自主性を放棄した内閣は、みずから政権担当の能力を失つたことを天下に公表するものであるといわなくてはなりません。(拍手)かくのごとき内閣のもとに講和会議を迎えることは、まさに日本民族の悲劇であるといわなくてはなりません。(拍手)よろしく政府は国会を解散し、広く民意に問い、全国民の要望をになう政権を樹立して講和会議受入れの国内態勢を確立することこそ、現在国民のすべてが吉田内閣に望んでおるところでおろうと思うのであります。(拍手)わが党は、かかる見地に立ちまして、国会解散、総選挙の即時断行を要求するものでありますが、これに関する総理の明快なる御答弁を願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 講和に対する国民の希望を今日率直に言うべきではないかという御趣意のようでありますが、これは私も同感であります。ゆえに、講和に対する国民の希望要望については、私は常に率直の表明を奨励いたしておるのであります。しかしながら、政府といたして、これに対してこうしろと政府の考えを言うべきときではない。何となれば、この大事なときにおいて、その責任の地位にある当局としては、一言一句といえども愼重に考うべきものでありまするから、政府としては何らの答弁はいたさないが、国民としては自由に表明すべきものであると確信いたすのであります。(拍手)
 また国論の統一云云のことについては、これは先ほど私一応答弁をいたしておきました。
 また外交白書に云云というお話がありまするが、多分外交白書とは「朝鮮の動乱とわれらの立場」という外務省発表の文書をおさしになると考えますが、そのパンフレットの中には、非武裝、平和憲法の放棄とか、あるいは世界戦争必至とか、好戦的気構えをもつて書いてあるところはないと思います。どうぞもう一度さらにこのパンフレットを御精読になつた上で御質問を願いたい。
 また中共の今後の見通しについていかんということでありまするが、私も中国は世界の禍乱の醸成を好むというがごときことはないと信じます。(拍手)しかしながら、連合国の一国である中国の将来について私は批評がましいことは愼みます。
 また国連による集団保障、これは私も希望いたすのでありますが、問題はその條件いかんであります。この集団保障の條件いかんによつて、すなわちわが国が受入れ得る條件によつて集団保障のもとに日本の安全が保障せられるならば、まことにけつこうであると思います。
 また軍事基地とか再武裝というようなことは、私は今日考えておりませんことはしばしば申しております。
 また領土問題については、御承知のごとくポツダム宣言の中に一応規定されております。これに対して、また先ほど申した通り、政府としてかれこれ申す立場にないのであります。
 また産業の自由その他についての希望でありますが、これは私も希望するところである。どうか講話條約において日本の産業活動、経済活動について自由が與えられることを念願してやまないものであります。
 次に講話條約の形式についてお尋ねおりましたが、私もしばしば申す通り、前面講話はわれわれの希望するところである。これも客観情勢によることでありますから、日本がこれを希望して相手方が承知しないかもしれない。あたかも超党派外交と同じであることは、しばしば申す通りであります。(笑声、拍手)
 また超党派外交については一応先ほど述べましたが、これを内政に利用しようとする――この超党派外交論を、私は、あるいは少くとも自由党は、これを内政に利用しようとするがごとき考えは毛頭ないのであります。(拍手)
 臨時国会召集について御議論でありますが、これは先ほど一応述べておきました。
 また電力再編成の政令を出したことについてもお話がありましたが、これはすでに先ほども、るる申し述べたところであります。
 これを要するに、お話は総選挙もしくは解散の御希望であるようでありますが、これはしばしばごめんこうむつております。(拍手)
 これをもつて私の答弁を終ります。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 水谷君にお答え申し上げます。
 何ゆえ朝鮮動乱の経済界に及ぼす影響を予算に繰込んで予算を編成しなかつたか、こういうお話でございます。予算案は朝鮮動乱を十分織り込んでおります。政府が関係方面に出すために一応内定いたしました予算案には朝鮮動乱を見込んでおりませんが、御審議を願つた予算案には十分見込んでおります。何ゆえに朝鮮動乱を見込まなかつたかと申しますと、本年の予算は八月一日までに関係方面に出すことになつておつたのであります。六月二十五日に起きました朝鮮事変を、関係方面に八月上旬に出すのに、その間に見込むことは、物理的にもあれでございます。十日や二十日で朝鮮動乱の影響を予想することは、いかなる人でもできない事実であるのであります。従いまして私は、一応骨格予算を内定して、しかもわれわれの公約を織り込んだ予算をつくつたのであります。しかして、おもむろに朝鮮事変の影響をだんだんに加味して行つて、昨日提案いたしましたのが、最もわれわれのいいと考えておる予算案であるのであります。(拍手)
 公約実行に汲々として編成が遅れたか、こういうお話でありますが、われわれ党員は、公約の実行には最も汲々とするものであります。(拍手)
 なお今回の予算は十五箇月予算だから一度に出したらどうか、こう言われますが、十五箇月の予算は編成の場合の十五箇月でございまして、提出は別途であります。補正予算は今年度だけであります。しからば来年度の分はどうかと申しますれば、ただいま発表の程度には至つておりませんが、発表し得るものは昨日申し上げた通りであります。きまり次第にだんだん出して参ります。
 次に世界の経済状況をどう見るか、しかしてわが国の財政金融政策いかんといふことであります。世界の今の経済は、今の国際情勢を織り込みまして、軍需資材を初め、その他の物価は騰貴の状況であります。インフレの気構えが世界的にあります。従いまして、物価の状況を申し上げますと、アメリカは朝鮮事変の勃発を一〇〇といたしまして、十月までに大体卸売物価指数は七%、イギリスは同様で一三%、日本は九月までで一四%の上昇であります。フランス、西ドイツも大体この傾向です。しかして日本の一四%は公定価格の引上げが影響しておりますので、イギリスの一三%より上になつておりますが、あまり心配はいりません。こういう物価高の状況でありますので、アメリカを初め、軍事費をまかなうために、みな増税の傾向であります。これが世界の情勢。しかし日本は、ただいま申し上げました通り非常な安定の状態でありまして、減税もしますし、またインベントリー・フアイナンスを認め得るような経済安定の状態なのであります。
 次に、インベントリー・フアイナンスをやらなくても、特需輸入促進で経済の安定ができるじやないか――輸入がどんどんできれば――水谷君のお話のように輸入がどしどしできれば、インベントリー・フアイナンスはいらない。今の国際状態は、われわれがいかに輸入をしようといつても、輸入のし得られない場合が相当あるのであります。かるがゆえに、インベントリー・フアイナンスもやらなければならぬ。それを日本銀行からの借入金でやつたならば、あなたの心配しておられるインフレになるからインベントリー・フアイナンスを認めたのであります。もちろん私は、朝鮮事変の影響を見るまでは、予算を内定いたしますまではインベントリー・フアイナンスはいらぬだろうと思つておりましたが、いかにも朝鮮事変を契機として世界の経済情勢はかわつて参りましたから、最小限のインベントリー・フアイナンスをやつたのであります。これが朝鮮事変を予算に織り込んだ最も大きい問題であります。
 なお債務償還につきましては、今年度は予定通りやることは先ほど申し上げた通りであります。
 なお減税の意味について言いますが、酒は特級酒千百七十五円が九百五十円になるが、これは増税ではありますまい。また所得税で二万五千円の基礎控除を三万円にしたり、税率を引下げたり、あるいは扶養家族の控除を引上げた。これは減税以外の何ものでもありません。決して増税はしていないのです。所得がふえて税金がたくさんになるのは当然だ。酒の値が下つて増税だというのは水谷さんだけだと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)なお見込みについてどうこう申されまするが、全体として租税牧人は予算よりもある程度ふえました。しかしタバコの益金は、予算よりも百億以上減つておるのであります。国家の歳入はできるだけ確実にしなければならぬ。これは大蔵大臣の務めでありますので、ここで申しますると、勤労所得税等は予算に比べまして二百五十億円の増、法人は百八十六億円の増です。しかし、中小企業を中心とした申告納税は、予算に対しまして三百三十二億円の減を見込んでおります。減少の見込みであります。タバコ益金を加えますと、差引実際において非常な減税であることを御了知願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) 水谷君にお答えいたします。自立経済達成に関する予算措置があるかというお尋ねであります。水谷君のお話のように、あるいは援助資金等が遠からずなくなる場合を予想して日本の自立経済達成に関する施策をとることが必要であるので、政府としてはそれに対しまして着着準備を進めておることは御承知の通りであります。しかして今度の予算の中においても、それに関しまして先ほど大蔵大臣からも申されましたように、たとえば輸出銀行の設置等に関する処置または預金部資金、見返り資金等の活用によつて設備の合理化、新設、改善に対する処置をとること等は、その予算の一部であります。しかして来年度予算には、さらに食糧の増産、設備の合理化資金等に関する問題は含めてございますから御承知を願いたいと思いまするが、自立経済の達成につきましては、何と申しましても七十年間に蓄積した日本経済が数年間の戰争によつて壊滅したのでありますから、そう今年の予算だけでみな盛れと仰せられるのは、いささかむりであります。しかしながら、これに対しましては年度計画を立てつつ適切なる施設を徐々にやつて参りますつもりでありますから御安心願いたいと存じます。
 しかして自立経済は、結局は適正なる生活水準を維持しつつ国際収支の均衡を得せしめることであります。今日は少し貿易関係が楽になつておりまして、今までは輸入がたくさんあつて輸出がこれに伴わず、常に援助資金によつてこの穴を埋めておつたのは周知のことであります。最近におきましては、朝鮮事変等の影響もありまして、輸出は非常に伸びております。従つて、そういう問題から見ますと自立経済ありと言うかもしれませんが、私どもは、この一時的のものには満足しておりません。もちろん輸出について今日の状態を続けたいとは思いますが、同時に輸入に関してもあらゆる手を打つておることを御承知願いたい。ことに輸入に関して今日いろいろネツクになつておる点について、金融の問題についてはユーザンス問題を解決し、さらに今後の資金についても考慮いたしておりますが、最も大きな問題は、各般の手続がうるさかつたことであります。政府の努力によりまして、あるいは長期の契約を認め、あるいは自動許可制によりまして自由に相当数の品目をいずれの国からでも買えるような処置をとる等あらゆる施設をあわせて考えておりますことをつけ加えて申し上げておきます。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 深澤義守君。
    〔深澤義守君登壇〕
○深澤義守君 私は、日本共産党を代表いたしまして、吉田総理の施設演説に対して質問を行わんとするものであります。
 吉田総理は、口を開けば(「聞いていないじやないか」と呼ぶ者あり)平和日本の再建と言い、あるいは日本が極東のエデンの園であるなどとたたえております。講和の受入れ態勢は着々として整備しているということを言つております。しかしながら、現実は決してそうではありません。総理の言うところのエデンの園からは、日夜戰闘機、爆撃機が飛び立つておるということを皆さん御承知でありましよう。その数は、事変勃発以来延べ五万機に達しておるということが発表されているのであります。また日本の海岸が作戰上の重要基地となり、二百余隻の船舶と、多数の船員と、多数の自由労働者が戰争に動員されていることは、もはや世界周知の事実であります。(拍手)それだけではございません。たとえば輸送においても、産業においても、また農業においても戰時的体制はいよいよ強化されて、国をあげて――動員されているというところの事実は、何人も疑うことはできないのであります。私は、以下これらの具体的な事実について、吉田総理の答弁を求めんとするのであります。
 第一に軍事物資の調達の問題でありますが、すなわち鉄條網用の鉄線が十七万巻きも調達されております。鉄製の兵舎が数千戸分、木製の兵舎が六十五万戸分出されているのであります。その他尨大な土嚢用の麻袋、マニラ・ロープ等が調達されているという事実があるのであります。さらに輸送の画では、門司鉄道部の管内におきましてだけでも、無蓋車三千両中のその半ばが軍事物資の輸送に動員されているのであります。旧横須賀海軍工廠は復活され、旧第一陸軍造兵廠、旧相模原造兵廠は再び戰前の姿となつておるのであります。それのみではなく、旧中島飛行機工場までが着々と復活されておるのであります。吉田総理の言うところの平和国家の再建などということは、一体どこにあるのでありますか。(拍手)これらの一連の事実こそは、実質的に朝鮮内職に介入しているところの証拠であると言わなければなりません。(拍手)英国のエコノミスト誌でも、日本は極東における前方作戰基地であると報道しておるのであります。かかる巖然たる事実にかかわらず、吉田総理は平和日本の再建であると言ひ切ることができるでありましようか。この点について明確な答弁を求める次第であります。
 第二に、吉田総理は、かかる一切の陰謀を隠蔽して国民を欺くために国連協力を振りかざしておる事実を、われわれは指摘しなければなりません。言うまでもなく、国連は世界平和と諸民族の安全を保障するところの国際機関であります。そのためにこそ私どもは大国一致の原則を根本とし、その精神に基いて安全保障理事会を最も重要なる機関として認めておるのであります。このことが国際連合の権威であり、国連憲章の精神であります。しかるに、現在の国連の運用は明らかにこの精神にもとり、大国一致の原則を無視し、單に一方的な多数決方式によつてすべてが解決されようとしておるのであります。現にこのたびの朝鮮事件におきましても、大国の一つであるソ同盟及び事実上の中国の主催者である中華人民共和国の参加なしにその決定が行われておるのであります。(拍手)その結果、国連は世界平和の機関でなくて、戰争を合理化する道具として運営されておると言われてもしかたがないのであります。かかる現実を目の前に見ながら、いまだ参加も許されていない日本政府が国連協力を振りかざして国民を押えつけておることこそ、その名目、口実の何たるにせよ、これは明らかに国連協力の名において。外国のために極東諸民族の独立と解放闘争に干渉し、国内における一切の民主的勢力を彈圧する、最も陰險なる策謀であると断言してはばからないのであります。これによつて喜ぶものは国際独占資本であり、それにつながるところの国内の買弁資本であります。
 しかし、これに反して日本の人民は、その自由と権利と生活とその安全の一切が加速度に失われているのであります。現に買弁資本であるところの日本鋼管、旭電化、大日本紡その他巨大産業の利潤は、事変後において三倍ないし五倍に上つているのであります。貿易部門におけるところの伊藤商事のごときは、事変後四十四倍に及ぶところの利潤を上げているのであります。三井物産、三菱商事等も着々として復活されているのであります。これに反し、日本人民の生活は深刻なる破綻に当面しております。労働者は十一時間、十二時間の奴隷的労働を強制されておる。労働災害は続発し、健康は破壊されておる。横浜の波止場においては、軍需品積込みのために、沖仲仕の災害は事変前の九十倍に達しております。失業者の数は八月には本年度の最高に達しているということを、労働省みずからも発表しております。また日本石油等の軍事工場におきましては、YMPと称するところの武裝した補助憲兵のもとに強制労働がしいられております。
 農村におきましても、農地改革によつて欺瞞された日本の農民は、今また――徴発的な供出と重税のために極度窮迫をしております。しかも全国農村にわたりまして、進駐軍の名のもとに食糧確保臨時措置法を無視いたしましたところの強制供出が全国的に行われておる。そのために、保有米を、あるいは種麦までも供出し、さらに買出し供出をやつておるという事案が日本全国至るところにあるのであります。不法徴税が行われておる。脱穀機が押えられ、電動機が押えられ、牛や馬が押えられ、さらに農家の土地家屋が差押えられておるという事実があるのであります。中小企業は軒並につぶれておる。商店も続々と閉鎖をしておる。これが事実であります。これこそ吉田総理のとなえるところの国連協力の実態であり、これらの過程を通じで、全日本の隷属化―――――はますます深まつておるのであります。
 国連協力協会会長である佐藤参議院議長は、公然と戰争を謳歌して、戰争をきらつている母親に対し、その子を軍人にすることを勧めておる。日の丸は復活し、君が代は歌われ、全国の新聞には戰争写真と戰争記事が満載されておる。映画といわず、ラジオといわず、ことごとくが――宣伝に狂奔しております。国民は、これに対してひとしく憂え、かつこれに反対しおる。吉田総理は、かかる国連協力を国民に押しつける根拠が一体どこにあるのでありますか。われわれは、国際独占資本と、その手先になつておるところの一味の利益のために行われるとしか思われない。この国連協力の事実に対して総理の明確なる答弁を要求するものであります。
 第三は、再軍備とフアツシヨ態勢の強化の問題であります。総理は口を開けば平和と言い、民主主義と言い、自由と言つております。吉田総理の平和とは一体何でありますか。民主主義とは何でありますか。事実はこれとまつたく反し、国際帝国主義の手先として、一切の政策を人民彈圧と侵略戰争の加担に傾注しておるではないか。警察予備隊がその代表的なものであります。しかも政府はこれを三倍にするということを伝えられておる。海上保安隊の拡充、一万九十名に上る戰争犯罪人の大量追放解除、ことごとく国際フアシズムと――への準備以外の何ものでもないのであります。さらにまた共産党指導者の追放、進歩的労働者のパージ、民主的団体の解散、特審局の拡充、秘密警察の復活、旧軍人将校の活用等、何一つとして軍事復活等、人民弾圧のためのフアツシヨ態勢以外の何ものでもないのであります。かくして、朝鮮内戰干渉のためには国内において大韓民国軍隊の訓練さえ命じ、朝鮮戰争には日本人が軍隊として使われているということが伝えられておる。だからこそ、北鮮人民民主主義共和国外相朴憲永氏は、朝鮮戰線に日本人を軍隊として採用しておるということを国連に訴えておるではありませんか。
 さらに国内においては、フアシズムに反対し、戰争に反対し、吉田内閣のフアシズムと軍国主義復活に反対する人民大衆、なかんずく労働者階級に対し、言語に絶する武力的暴圧を加えておるのであります。私は、これについて二、三の事実を申し上げたい。
 旧中島、富士、三鷹の飛行機工場の復活に対して反対した労働者に対して、二千名の武裝警官が動員されて血の彈圧が加えられておる。電業社蒲田工場では、不当首切りに反対した労働者に対して数百名の武裝警官を動員して、無謀にもピストルを発射しておる。新宿の職安におきましては、職を求める日雇い労働者に対して武裝警官はピストルを乱射し、母親の背に負われていたところの赤ん坊は、こん棒で負傷せられ、六十八歳の老人は昏倒させられておる。――徴税は全国至るところに機動部隊によつて行われており、強権供出は―――で行われている。大阪を初めとして全国にわたる共産党代議士の国会報告演説会は禁止され、労働組合、民主団体は自己の集会さえ事実上禁止されているのであります。あるいはまた、原爆世界最初の被害地であるところの広島においては、原爆記念日たる八月六日の平和大会をも暴力をもつて禁止し、これを断圧しているのであります。奈良市においては、観光都市建設に反対したものを逮捕、投獄した。
 こういう事実こそ、はたして平和であり、自由であり、民主主義であるのか。吉田首相に対してこの点を明確にお伺いしたのであります。もしも吉田総理が、これが平和であり民主主義であるというならば、この壇上から、それを国民の前にはつきりと言明していただきたいのであります。われわれは、これこそ戰争への道であり、民族破滅への道であり、国際帝国主義への隷属化の道であると断言してはばかりません。
 最後に、講和と安全保障の問題についてお聞きしたいのであります。吉田総理は、日本の安全保障を世界の特定国に一任し、その軍隊と日本の再軍備によつてこれを行わんとする所存でありますか。第二に、吉田総理はまた日本の安全を大国間の合意と協調に求めず、ソ同盟並びに中華人民共和国を敵とするところの帝国主義陣営の側に立つてこの保障を求めるつもりでありますか。もしそうでないと考えておるならば、何ゆえに大国の合意と協調を破壊する單独講和あるいは多数講和を主張するのであるか。今世界には社会主義並びに人民民主主義の陣営と資本主義陣営の二つがあることは事実であります。それゆえに、一切の国際関係が、これら相互の陣営に属するところの大国間の合意と協調、すなわち大国一致の原則に基いて処理されてこそ初めて世界の平和と二つの陣営の共存と繁栄が保障されるのであります。これこそが国連憲章であり、これこそがポツダム宣言、極東委員会その他国際語協定の精神であります。ことに非軍事化を約束する日本にとつては、かような原則に基くところの講和、すなわち四大国の合意と協調に基くところの全面講和のみが日本の安全と独立と国民生活の安定と向上を保障し、民主日本を樹立する絶対唯一の道であるのみならず、これによつてこそ世界の平和に貢献することができるのであります。それゆえに、ソ同盟及び中華人民共和国は終始一貫して対日早期全面講和を主張して来たし、現に強くこれを主張しているのであります。かかる巖然たる事実をことごとく無視されて、あえて日本を危険にさらし、侵略―――の道具に陥れ、日本人民をその肉弾に供するところの單独講和方式を主張しているということは、一体何ごとでありますか。しかも吉田総理は、この單独講和の陰謀さえもひた隠して、国会においても、この問題を審議することを極力回避せんとしているのであります。これは一体いかなる意図に基くものであるか、明確にお答えを願いたいのであります。
 われわれは、かかる政府――政策に反対し、次の講和條項を主張いたします。第一、四大国の合意と協調による早期全面講和。第二、主権の完全なる回復、いかなる国家もしくは国際機関に対しても主権が侵害されるような一切の義務を負わない。第三、日本領土からの完全なる撤兵を要求する。第四、日本領土の軍事基地化並びに再軍備に絶対に反対する。第五、侵略に反対し、いかなる名目にせよ国内問題に対する外国の干渉に対しては、人民がみずから守る民族固有の自衛権を主張する。第六、いかなる名目にせよ、日本は侵略戰争に加担しない。第七、経済の完全なる自主権の確立。
 日本の安全は、かかる講和によつてのみ保障されるのであります。吉田総理は、かくのごとき講和を主張し、日本人民の希望と要求にこたえ、世界の平和に貢献する考えがあるかどうか。(笑声)このことは日本の人民にとつて当面する死活の重大問題でありますから、ここにこの壇上から、全人民に対し政府の所見を明確にされたいのであります。吉田総理の明確なる答弁を求めまして私の質問を終ります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) ただいまの深澤義守君の発言中不穏当な言辞があつたように考えますが、速記録を取調べの上、適当な処置をとります。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 今日、朝鮮動乱以後、日本は軍事動員をいたしておるというお話でありますが、いたしておりません。今日種々産業はなるほど興つておるが、これは経済的活動であつて、軍事動員ではないのであります。また問題は取引であります。日本人一人といえども朝鮮動乱に参加して鉄砲を撃つたりなんかいたしておりません。共産党は知りません。(拍手)
 また国連の協力について、はなはだ不都合というお話でありますが、私はそうは考えないのであります。国連の目的とするところは平和維持であります。日本はあくまでも平和主義をもつて徹底せんと欲しておりますから、国連協力は当然なことであると思うのであります。
 また、この朝鮮動乱の結果、あるいは強制労働をさせられたり、国民は困つていると言わるるが、むしろ国民は、共産分子の活動によつて労働の不安を生じ、また生産の減退を生じておることは明白であると考えているのであります。(拍手)
 また国連の協議の形式、組織云々について、私はここに答弁をする義務を持つておりません。
 また安全保障、單独講話、全面講話云々ついては、しばしば私が申しておりますから、私のこれまで申した説明によつて御承知を願いたい。
 また、あなたの言わるる共産党の講話條件は、私の承服せざるところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
○福永健司君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日定刻より特に本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決定しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十六分散会