第010回国会 大蔵委員会 第56号
昭和二十六年五月二十六日(土曜日)
    午後零時五分開議
 出席委員
   委員長代理理事 小山 長規君
   理事 奧村又十郎君 理事 西村 直己君
   理事 内藤 友明君 理事 田中織之進君
      大上  司君    川野 芳滿君
      佐久間 徹君    島村 一郎君
      清水 逸平君    高間 松吉君
      苫米地英俊君    三宅 則義君
      宮幡  靖君    宮腰 喜助君
      松尾トシ子君    竹村奈良一君
 出席政府委員
        大蔵事務官
        (銀行局長)  河野 通一君
        大蔵事務官
        (主税局調査課
        長)      泉 美之松君
 委員外の出席者
        大蔵事務官   近藤 道夫君
        大蔵事務官   大島  弘君
        専  門  員 椎木 文也君
        専  門  員 黒田 久太君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 連合審査会開会要求に関する件
 閉会中審査に関する件
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一六〇号)
 船主相互保険組合法の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一六八号)(参議院送付)
 外国保険事業者に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第一六九号)(参議院送付)
 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一七〇号)(参議院送付)
 商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法
 等の金融関係法律の整理に関する法律案(内閣
 提出第一七八号)
    ―――――――――――――
○小山委員長代理 これより会議を開きます。
 まず商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案を議題といたします。
○宮幡委員 金融機関に対しまして、株主の帳簿書類閲覽に関する商法の規定を排除しようという御趣旨、この点につきましては私も一応従来の関係からいたしまして、その理由の幾分を承知しておるものでありますが、最近税の問題につきまして、シアウプ勧告に基くものでありますが、預金の秘密というものが保持されておらないような状況であります。これは保たれることがよいとか悪いとかいう議論はしばらく別でありますが、従来帳簿の閲覽権等を認めないという金融機関に対します特例というものは、預金の秘密その他一切の秘密が保持されるというところに重点があつた。ところが、その一角であります税の場合におきましては、税務官吏が自由にこれを閲覽し、しかしてこれを謄写する等の方法によりまして、またかつての無記名預金も廃止せられまして、ために預金の秘密というものは完全にないことになつて、資本の蓄積に対しましても非常な障害になつているように聞いております。こういう場合において、ひとり株主にだけ帳簿を見せない、こういうことを守る必要があるかどうか。ここに私は多大の疑問を持つものであります。むしろかような排除規定を設けまして、金融機関の秘密性を保持して参りたいというならば、やはり大蔵省と法務府との関連等におきまして、特殊の場合、承認あるいは許可とまで強くなくてもいいが、了解の上において、それぞれの機関を通じて、話合いの上で銀行の諸表の閲覽ができる、預金の書類も確認することができる、かようなことはしてもよいのでありますが、そうでない限りは、やはりこれと並行的に、單に株主のみならず一般の方々の、特に税法の調査上につきましての帳簿その他の閲覽権というものを、禁止はできないでありましようが、ある程度の規制を加える、こういうお考えを持つておるかどうか。この点についての御意見を承りたいと思います。
○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。ただいま今度の改正法に関連いたしまして、帳簿の閲覽等に関しまするお話でありますが、株主等が銀行の帳簿書類の閲覽についての新商法の規定の適用を排除いたしましたのは、銀行等の信用機関が預金を預かり、しかもそれが短期の預金を預かつております関係上、この帳簿を見られることによりまして、いろいろその閲覽の結果を濫用されることによりまして、あるいは取付の問題を起す。決してそういうことが起るべき実態でないにかかわらず、いろいろ信用が撹乱されまして、信用機関としての公共性の立場を維持することができないようになることを心配をしておりまして、この新商法の規定の除外をいたしたわけであります。それに関連いたしまして、お話の税務官庁が銀行の帳簿について預金の状況を調べるという点でありますが、これは今宮幡委員からお話がありました通り、制度として、国家の機構でありますところの税務官庁が預金を調べてはいかぬと、こういうことは、制度としては宮幡さんもおつしやる通りできないことであります。要は運用の問題でありまして、先般も無記名預金までは参りませんでしたけれども、預金の源泉選択という制度も開かれましたし、いろいろ帳簿の調査等につきましても、できるだけ今お話のような弊害を伴わないような範囲において、これを極力話合いでもつて、支障なく運用して行くようにいたして参りたいということで、いろいろ検討を續けて参つております。若干まだ国税庁当局との間に話合いのつかない点もありますけれども、今お話のような御趣旨に従いまして、できるだけ資本の蓄積の妨げにならないように、制度の運用として考えて参りたい。ただ繰返して申し上げますが、税務官庁が預金を調べることができないと禁止することは、これは法的機関であります関係上できませんので、運用において考えて参りたい、こういうように考えております。
○宮幡委員 その点はごもつともな考えだと思いますが、こいねがわくは、今こそ資本の蓄積を要する時期でありまして、もちろん脱税を慫慂しようというわけではありませんが、それらにつきましては、従前もありました形をよく勘案されまして、しかるべく運用の妙を発揮せられたいことを切望しておきます。これに関連いたしまして、一体株主の閲覽権というものは、これは法務府の方に聞く方が正しいかもしれませんが、実際大蔵省で御存じになつておるかどうか。こういう点につきまして、もう一つ念のために伺つておきたいのであります。株主が通常本店の店頭に備えつけられる帳簿書類の閲覽を要求いたしましても、財務諸表といえば、最終的な静的状態を示します貸借対照表、動的状態を示します損益計算書、これだけでありまして、これが商法に定められた書類であつて、その他のものは、内訳表等があれば見せる方もあるし、りくつでもつて行きますれば、ほとんどそれを見せないという形、従つて銀行だけが付属書類という書類の中の預金台帳から、その他の特殊な貸付契約とかいうものにまで、閲覽権が及ぶものと大蔵省は考ておるのか。商法の明示しておるところでは、判例においても明らかなように、さような細目のいわゆる付属書類には及んでいない。株主の閲覽権というものは財産目録、貸借対照表、損益計算書、しかもそれにはまだ定義がないのであります。財産目録といえば、会計学者の言うような詳しいものを含めたものでなければ、財産目録とは言わぬと解釈する者と、ただ金額を明示して科目を並べて、何々外何件ぐらいに書いても、これは財産目録だとがんばつて、少しも内容を見せない者もある。従つて預金の台帳とかあるいは特殊な貸借の契約とか、その他特定のいろいろな取引上の問題にまで及ぶ閲覽権が株主にあるとは、私ども考えていない。それをしいて禁止しなければならぬというところには、何か大蔵省として、金融機関を監督せられる立場において、また預金者保護の立場において、あるいは経済混乱を防ぐ立場において、何か十分な理由がなければならぬ。その点を、もしありましたならばお知らせ願いたいと思います。
○河野(通)政府委員 お答え申し上げますが、ただいまの新商法における帳簿書類の閲覽権と申します点につきましては、詳細は実は法務府から伺つていただいた方がいいと思いますが、私どもの承知いたしております限りにおきましては、今度の新しい改正商法の結果、株主の要求いたし得る帳簿書類閲覽権の内容は、相当詳細なところまで、いろいろな帳簿が見れるように伺つております。従いましてそうなりますと、一々何某に対する貸付は幾ら出ておる、あるいはこういうふうな不良の有価証券を持つておるというようなことが、もし不良でもないにかかわらずそういうふうに宣伝されることによりまして、短期の預金を預かつておる金融機関といたしましては、それで信用を非常に害する、あるいはつまらぬことで取付を起すというような心配もありますので、これを排除いたした、かような次第であります。しからば株主の保護は一体それで確保できるかという点が別にあるわけでありまして、この点は御承知のように、金融機関につきましては、特別に強い監督をいたしております。検査も励行いたしまして、金融機関の内容の堅実性を保持して行くために、あらゆる方途を講じておりますので、この辺につきましては十分その監督の実をあげることによりまして、株主の利益も十分保護される、こういうふうに考えて、この規定を排除いたしたわけであります。
○宮幡委員 法務府の方の見解を聞かなければわかりませんから、これ以上は伺いませんが、帳簿、付属書類の閲覽権というものは、新商法の精神はかなり深く行くものである。こういうことは、私どもはぜひそうさせてもらいたい。そういう立場から、銀行といたしまして、あるいは金融機関一般といたしまして、これを禁止するということをまず妥当と認めます。もし一般の閲覽権というものの範囲が、従来の判例のようにきわめて狭い範囲であるならば、こいねがわくは、かような法制は逆に排除していただきたい。これが私どもの考えであります。
 それから次は未払込み資本金の問題でありますが、これは商法改正当時いろいろ議論がありまして、われわれも当時は政府委員の形で答弁の衝に立つて、しかるべく答弁をいたしておりますが、一体この未払込株金というものを、大蔵省の立場で見てはどういうふうに見られておるか。これを保証資本として認められておるのかどうか。この点について保証資本なるがゆえに、保証の意味を達成せられないから、かようなものは不必要である、こう考えるのか。それとも、いたずらに公称資本の体裁を誇りまして、世人を眩惑するというような危険があるのでありますか。あるいは簡單な理由からお考えになつておるのか。その根本のお考えをちよつとお知らせ願いたいと思います。
○河野(通)政府委員 今お尋ねの点もやはり商法一般の問題と思います。私どもといたしましては、商法につきましては、金融機関の立場からこの問題を考えてみました場合に、今お尋ねの点につきましては、特別に一般の企業、一般の株式会社と違つた取扱いをする必要はない。しかし一般の株式会社について、今お話の点をどう考えるかという点につきましては、むしろ法務府あたりでお聞きを願つた方がいいかと思いますので、私からお答えすることを差控えさせていただきたいと思います。
○宮幡委員 その点はつきりしておきますが、未払込み資本金を持つては悪いという理由が、何かはつきりしております。
○河野(通)政府委員 今お尋ねの点は、未払込み資本金の問題でありますか、授権資本と現実の払込み資本との差額の問題でありますか、そこはちよつと私もはつきりわかりませんが、後者でありますならば、銀行等については、資本金を確定いたさなければならぬ。保証資本の性質もありますので、授権資本と払込み資本との差額は、保証資本としてこれを考えて行く。そうして銀行法等で最低の資本金を要求しておりますものは、授権資本でなくして払込み資本の方を考えております。その点からいいますと、金融機関として特別の取扱いをする必要はないものと考えております。
○宮幡委員 それはお説その通りだと思いますが、おおむね商法の問題でありますので、法務府との関連で、ちよつと質問もなかなかしにくいわけでありますが、金融機関の資本に対しまする観念、これが新しい商法で行きますと、結局取締役が金融機関の全面的な権限を持つことになるのであります。大蔵省といたしましては、地方銀行の会合とか、十大銀行の会合とか、その他私はあまり賛成しませんが、資金や資本の懇談会というようなものを持つておりまして、ともすると一つの――厳重な意味とは違うかもしれませんが、カルテルとかトラストに近いような操作をしている。こういうことから資本との間に非常にむずかしい関係ができている。こういう問題について、あるいは大蔵省は知らぬかもしれません。しかしながら一般の株式会社と違いまして、取締役万能の新商法の運営というものは、はたして金融機関そのものに合致しておるのか。この点についての特別の除外というものが今回の改正法令には書かれておらぬのでありますが、この点はどうでありましようか。あるいはまた七月一日から監査役という制度がなくなりまして、会計監査というものができる。そういうような場合におきまして、大蔵省の検査と権限の分界といいますか、その責任の所在というようなものは、どういうふうに大蔵省はお考えになつておるか。その二点だけをお伺いしたいと思います。
○河野(通)政府委員 お答えいたします。第一点につきましては、結局資本がある特定の方向に集中するということがあるのではないか。それは金融資本ということから、非常におもしろくないではないかというよなお話のように思いますが、新商法の趣旨は、できるだけ資本の調達を容易にいたしますために、株主取締役会でこの問題を解決しようということになつております。銀行等につきましても、この点の原則については、別段私どもはこの規定を排除する必要はないと思います。しかしながら資本の調達等につきましては、金融機関の資本というものも、できるだけ民主化して行く方向がいいと思いますので、こういう方向に指導して参りたいと思いますのみならず、資本金をいろいろ調達いたします場合に、すべてこれを大蔵当局の認可にしておりますので、普通の企業会社と同じように、何らの制約もなくやれるということはないのでありまして、この点から今御心配のような点も、何とか支障なく運営して参れるのではないか、かように考えております。
○佐久間委員 ただいま議題となつております商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案につきましては、大体質疑も尽きたと思われますので、この程度で質疑を打切られんことを望みます。
○小山委員長代理 佐久間委員のただいまの動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 異議なしと認めまして、さようとりはからいます。
    ―――――――――――――
○小山委員長代理 次にお諮りいたすことがございます。会期も余すところわずか数日となりましたので、この際閉会中審査に関して御協議願いたいと存じます。本委員会といたしましては、これまで議院の閉会中に、納税及び徴税状況、金融状況等の調査を進めて参りましたので、今度の閉会中におきましても、本調査を行いたいと存じます。つきましては本調査を行うために、議長に対し、閉会中審査の申出をいたしたいと存じますが、この点御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 御異議ないようでありますから、さようとりはからうごとといたします。
 なお閉会中審査申告の手續等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。
 次に閉会中委員派遣の件についてお諮りをいたします。国会法第四十七条によつて、閉会中審査事件が委員会に付託されるごととなつておりますが、閉会中審査事件が付託された場合に、その調査のため、本委員を各地方に派遣する必要も生ずることが予想されますが、委員派遣の件につきましての派遣目的、地方、人員等の決定を、議長のもとに提出する承認手續等につきましては、すべて委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、この点御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。
○宮幡委員 この際ちよつとお願いしたいことがあるのです。これは予算委員会ではやつたように発表されておりますが、それは新財政金融政策という言葉で話があつたのであります。大蔵省は二、三日中にその成案を得るであろうということを、大蔵大臣は予算委員会――当時私ちようど予算委員ですが、他の党務のために欠席しておりました。もちろんその予算委員会で説明したものは荒筋のものでありますから、それで満足すべきものではない。休会となりましても、日米協力態勢等によりまして、十分事前に検討を加えて行かなければならぬ。そういう意味で、この休会中の審査の中に、ぜひこの新財政金融政策の問題についての会議を續けるようにしたいと思いますが、この点をひとつお諮りいただきまして、休会中の審議の案件中にお加え願いたい、こう希望するわけであります。
○小山委員長代理 ただいま宮幡委員から申出の件は、まことにもつともな問題であると思います。閉会中の審査の対象として、先ほど申し上げました納税及び徴税状況、金融状況のほかに、日米協力態勢に関する新財政金融政策の調査、これを加えることに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 それでは御異議ないようでありますから、これまたさようとりはからうことといたします。
 午前中はこの程度にとどめまして、午後は一時半から再開いたします。
    午後零時二十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時二十九分開議
○小山委員長代理 休憩前に引續き会議を開きます。
 保険業法の一部を改正する法律案、外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案、及び船主相互保険組合法の一部を改正する法律案の三件を一括議題として、討論に入りたいと存じますが、保険業法の一部を改正する法律案、及び船主相互保険法の一部を改正する法律案の両案につきましては、修正案が提出せられておりますので、まず右両案について提出者の趣旨弁明を求めます。西村直己君。
    ―――――――――――――
○西村(直)委員 ただいま提案いたしました修正案は、今国会で商法の一部改正が行われましたにつきまして、関係条文の整理をいたします意味におきまして、修正案をつくりまして提案いたした次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
○小山委員長代理 修正案の趣旨弁明は終りました。
 これより三案及び修正案を一括議題として討論に入ります。
○西村(直)委員 ただいま議題となりました船主相互保険組合法の一部を改正する法律案、外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案、及び保険業法の一部を改正する法律案の三法案につきましては、すでに質疑打切りになつておりますので、この際討論を省略しただちに採決に入られんことを望みます。
○小山委員長代理 ただいまの西村君の動議のごとく決定するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 御異議がないようですから、右三案及び修正案については討論を省略して、これより採決に入ります。
 まず保険業法の一部を改正する法律案につき、西村君提出にかかる自由党修正案の採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○小山委員長代理 起立多数。よつて本修正案は可決せられました。
 次に本修正案の修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
○小山委員長代理 起立多数。よつて本案は西村君提案のごとく修正議決せられました。
 次に船主相互保険組合法の一部を改正する法律案につき、まず西村君提出にかかる自由党修正案の採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
○小山委員長代理 起立多数。よつて本修正案は可決せられました。
 次に本修正案の修正部分を除く原案に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
○小山委員長代理 起立多数。よつて本案も西村君修正のごとく修正議決せられました。
 最後に外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○小山委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
○小山委員長代理 次に租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、質疑を續行いたします。
○田中(織)委員 この法律に関連をしてちよつとお尋ねをしておきたいと思うのであります。今度の漁業権の消滅に伴う補償金、あるいは土地收用法の適用によつて、土地を取上げられた者が取得した代金に対する課税の軽減の趣旨には賛成するものでありますが、同様な趣旨からいたしまして、別途われわれの方で、本国会に決議案あるいは議員提出の法律案として出すまでには、時間的な余裕もないかと思うのでありますけれども、最近行われた行政整理等の関係で退職をした者、あるいは最近の各民間企業等においても、本人の意思による場合、あるいは意思によらざる場合とあるわけでありますが、退職者が退職にあたつて、当座の生活の資金として、長年の勤務に対してほんの涙ばかりの退職手当等をもらうわけであります。これに対して現行の所得税法の関係から参りますと、相当の部分を課税対象として税金をかけられる関係から、当座の次の就職が見つかるまでの生活の資金になり、あるいは長年の勤務に対するほんのわずかばかりの埋合せ的な意味の退職金が、身につかない実情があるのであります。しかもこれに現行のような課税をやられることになりますと、單にそれだけの問題ではなくて、これが地方税における住民税等の関係におきましても、さらに二重の負担をしなければならぬという結果になるので、この点については根本的に課税を免除すべきであるということを、われわれは考えておるのであります。この点について最近企業者団体の方でも、企業の経理のやりくりから出すところのものに対して、それがほんとうに退職者の身につかないという点を考えて、この課税の免除についての強い希望が、政府方面にも出ておることと思うのでありますが、この点に関しまして、大蔵省当局として、今度の漁業権の消滅に伴う補償金等に対すると同じような趣旨から、この際むしろこれらの退職金につきましては、思い切つて税を免除すべきであると考えるのでありますが、政府当局としてこの問題についてどういうように考えておりますか、この機会にお伺いしたいと思います。
○泉政府委員 お答えいたします。御承知と思いますが、二十五年の税制改正によりまして、退職所得、譲渡所得、山林所得及び一時所得につきまして、それ以前におきましては半額課税の方式をとつて参つておつたのでありますが、二十五年の改正におきまして全額課税の方式をとる。そして退職所得、山林所得及び水産の漁獲から生ずる所得、あるいは原稿料からの所得というようなものにつきましては、平均所得といたしまして五箇年間の平均課税をするという方式をとつたのでございます。ところがこの方式によりますと、従来に比べましてむしろ負担のふえる場合が出て参るのでございます。従いましてわれわれといたしましては、施行の結果にかんがみまして、これらの、どちらかと申しますれば臨時的な所得に対しまする課税の方式につきまして、ぜひ再検討をいたしたいと考えておるのでございます。今回租税特別措置法を改正しようと思いますのは、そのうちで特に譲渡所得に関連しまして、政府の強制的な措置によつて実現せしめられる場合の譲渡所得税を、軽減したいという意図に出ておるのでございまして、その他の全般的な山林所得及び退職所得、譲渡所得、一時所得の課税方式につきましては、ぜひ再検討をいたしたいと考えております。退職所得の問題につきましては、今申し上げましたように、全額課税の方式をどのように改めて行くかということについて、目下検討いたしておるのでございますが、ただいま田中委員が御発言になりましたような、全額免除するということは、なかなかむずかしいのじやないかと思つておるのでございます。しかしできるだけ軽減して行く方法で再検討いたしたいと思つております。ただその改正案を次の臨時国会に提案できるか、あるいはその次の通常国会まで待たなければならぬかにつきましては、目下十分研究いたしておりまするが、間に合うかどうかという点できまることになろうかと思うのであります。われわれといたしましては、できるだけ早く再検討をいたして行きたいと思つております。
 なお退職金に関連しましては、退職所得の場合の所得税の課税のほかに、法人が退職者のために退職手当積立金を積み立てた場合の問題もあるのでありまして、この点につきましてもあわせて再検討いたして参りたい、かように考えておるのであります。
○田中(織)委員 大蔵当局におきまして、特に退職手当に対する課税について、できるだけ早い機会に改正法律案を提案せらるべく検討を加えられるということを承つて、ぜひとも一日もすみやかに政府案が示されることを、われわれ期待するものでありますが、退職手当につきまして、私の対象として申し上げておるのは、いわゆる勤労者に属する部類の人たちであります。その意味で、私らの立場から全額免除をぜひ考慮していただきたいと思うのであります。但しそういう場合に、大体金額で押えますと三十万円程度のところに一種の免税点を設けて、そこから上は軽度の累進的に行くような――私どもの党の立場で行きますと一種の妥協案でありますが、そういう方法で行くこともよいと思います。具体的な検討にあたりましては、その点十分御考慮を願いたいと思うのであります。
 なお、これは別途本国会で成立するかどうか、非常に危ぶまれているのでありますが、公団あるいは出先機関等の整理の関係で、現在清算過程にありまする団体機関から近くやめられる諸君は、現行法によりますると、三年未満で二箇月半というような退職手当を受けるわけであります。これらの非常に存續期間の短かかつたところの機関から、その機関の閉鎖になつたためにやめなければならない諸君は、失業保険法の完全な適用もないのであります。退職手当としてもらつたものと、通常の場合の失業手当との間の差額だけしか、失業保険においてもらえないという制約を受けているのであります。特にこうした関係の諸君は、三月三十一日で大部分の者がやめまして、公団あるいは閉鎖機関等の関係において、約三万人余りの者が六月末ないし五月末で、これまた失業者の群れに入つて行かなければならぬ立場にあるわけであります。こういう関係の諸君の実情を見まするならば――これは先ほど私が申し上げたように、やめてから当座食うて行くための最低の資金なんです。全額課税、しかもそれを五箇年平均で徴收するというのでありますけれども、所得の算定は必ずしも数字的にそう明確にできるものではないので、これは非常に過重な負担になつていると思う。最近のように、一方には街に失業者があふれている状態であるときに、職場から投げ出される諸君は、相当考えてやらなければならぬと思います。従来漁業権というような一つの権利を持つておつた人が、漁業権の再配分によつてその権利を失うのでありますけれども、それには二百億近い金が補償金として出るのであります。ところがこの退職で出て行く人たちには、補償的な意味のものはないのであります。これはやはりさしあたりの生活費の一部として出されるものでありますから、これに課税するということは、社会政策的な見地から見ましても考えなければならぬと思います。わが党といたしましては、でき得るならば全額免除を、しかし高額のものを一時にもらう人もなきにしもあらずでありますから、そういう点でやはり三十万円というような免税点を設けて、それ以上は軽い累進的なもので行くように、せつかく大蔵当局において検討中だということでありますから、検討せられる機会には思い切つた検討を加えて、すみやかに提出されることを強く希望しておきます。
○小山委員長代理 本案にはほかに御質疑はございませんか。――御質疑はないようでありますので、本案については質疑を打切り、これより討論に入りたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 討論は通告順によつてこれを許します。竹村奈良一君。
○竹村委員 私は本案に対しまして、日本共産党を代表して、希望的条件をつけて賛成するものであります。
 その条件の一つを申し上げますと、この漁業権者のうち、不在地主的に漁業権だけを持つておつて、その権利の金をとるというようなものに対する減税という点には、われわれ同意しないのでありますが、実際に業をやつている小さい部面、たとえば七〇%に当る部面に対する減税にはわれわれ賛成でありまして、そういう意味で賛成するわけであります。
 なおつけ加えて申し上げておきたいのは、先ほど田中委員からもいろいろ質問がありました退職所得者に対する減税の問題であります。こういう権利者に対する減税措置が講ぜられる場合には、並行して勤労者に対してもこういう法案が出さるべきである。ところがそれがあとまわしになつて、特に権利者に対するこういう減税案が出されたということは、実は了解に苦しむのでありますけれども、政府当局の言をもつてするならば、次期国会という見通しはつかぬけれども、出す腹があるということでありますから、できるならば次期国会にはぜひこういう退職所得に対する減税法律案を出され、基礎控除で五十万円を越えざる限度とされるようにすることを特に希望して、本案に賛成するものであります。
○小山委員長代理 田中君。
○田中(織)委員 私は、社会党を代表いたしまして本案に賛成いたすものであります。特に今後の漁業権の消滅等に伴いまする一時的な所得の減税につきましては、わが党としては、たとえば先般の農地改革等によつて、農民が所得した土地に対する課税の軽減と同様な趣旨において賛成するのであります。これは勢い漁業権の民主的な再配分という目的に沿うために行われる措置でございまするので、本案に賛成をいたしますけれども、問題は漁業権の消滅だけでなしに、土地收用法の関係において、補償としてもらうものに対する課税の軽減も行われるのでありますが、土地收用法の関係は、別途今国会に提出せられました土地收用法の改正法案によりまして、特に補償の面が今後一段と強化せられることに相なつて来ておりまするけれども、特に従来までの土地收用法の関係で補償せられるものは、まつたく権利を蹂躪したものに対する申訳的なものであります。その点今度の漁業権の場合のように、土地收用法による場合は、補償金も大きな額には上つて参らないのでありますから、この法律に従つて、軽減された課税率の適用におきましても、その補償金の取得金額等の調査にあたりましては、特にそういう実情を考慮した取扱いをやつてもらいたいという希望を述べまして賛成いたします。
○小山委員長代理 討論は終局いたしました。
 これより本案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
○小山委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決せられました。
 なお先ほどの三法案及びこの法案の四法案に関する報告書の作成につきましては、すべて委員長に御一任をお願いいたします。
    ―――――――――――――
○小山委員長代理 次にお諮りいたしますが、ただいま内閣委員会で審査中の北海道開発法の一部を改正する法律案、及び同じく通産委員会で審査中の緊要物資の売払に関する法律案の両案につきましては、本委員会の所管事項にも関連がありますので、右両案についてはそれぞれ内閣委員会、通産委員会に連合審査会開会の申入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小山委員長代理 御異議がないようでありますから、さようとりはからうことといたします。なお連合審査会開会の日時等につきましては、委員長に御一任願います。
 本日はこれをもつて散会いたします。
    午後四時五十三分散会