第010回国会 水産委員会 第15号
昭和二十六年二月二十七日(火曜日)
    午前十時四十分開議
 出席委員
   委員長 冨永格五郎君
   理事 鈴木 善幸君 理事 林  好次君
   理事 上林與市郎君
      石原 圓吉君    小高 熹郎君
      川端 佳夫君    田口長治郎君
      永田  節君    平井 義一君
      原 健三郎君    小松 勇次君
      水野彦治郎君    井之口政雄君
 出席政府委員
        水産庁長官   家坂 孝平君
        農林事務官
        (水産庁次長) 山本  豐君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (川南工業株式
        会社第一〇雲仙
        丸船長)    田作 宇一君
        参  考  人
        (川南工業株式
        会社第一七雲仙
        丸船長)    木下 時藏君
        参  考  人
        (大壽水産株式
        会社第三大壽丸
        船長)     谷澤  馨君
        参  考  人
        (大洋水産株式
        会社第六九明石
        丸船長)    堀田 義忠君
        参  考  人
        (日邦水産株式
        会社專務取締
        役)      江元 福太君
        参  考  人
        (報国水産株式
        会社常務取締
        役)      上田 哲夫君
        專  門  員 杉浦 保吉君
    ―――――――――――――
二月二十四日
 水産皮革行政の農林省一元化に関する請願(石
 原圓吉君紹介)(第八〇四号)
 鹿都漁港拡張工事施行等の請願(川村善八郎君
 紹介)(第八〇八号)
 漁船保險法による漁船保險制度改革に関する請
 願(石原圓吉君紹介)(第八四〇号)
 志布志町批榔島に蓄養場設置の請願(二階堂進
 君紹介)(第八四一号)
 水産資源保護法制定に関する請願(石原圓吉君
 外二名紹介)(第八六三号)
 燒尻村に漁港築設の請願(玉置信一君外一名紹
 介)(第八六四号)
 内之浦漁港を第四種に指定の請願(前田郁君紹
 介)(第八八一号)
 根占町に漁港築設の請願(前田郁君紹介)(第
 八八二号)
の審査を本委員会に付託された。
同月二十六日
 漁業調整委員会費増額等に関する陳情書外一件
 (大分市荷揚町大分地方事務所内別府湾海区漁
 民大会代表村山藤助外百四十四名)(第二六九
 号)
 志町批榔島に蓄養場設置に関する陳情書(宮崎
 市材木町二番地宮崎県漁業協同組合連合会会長
 日高木覊夫)(第二七四号)
 同(仙台市小田原宮町東裏町七番地宮城県漁業
 協同組合連合会会長丹野実)(第二七五号)
 同外二件(熊本県漁業協同組合連合会会長藤本
 泰助外二名)(第二七六号)
 小型機船底ひき網漁業整備に伴う転換資金交付
 に関する陳情書外二件(和歌山県紀北海区漁業
 調整委員会長山崎常一外四百七十九名)(第二
 八〇号)
 小型機船底ひき網漁業整備に伴う転換資金交付
 に関する陳情書(愛媛県伊豫郡上灘町亀井辰市
 外千二百五十名)(第二八一号)
 同外四件(兵庫県赤穂郡坂越町漁業協同組合代
 表入汐粂吉外百四十名)(第二八二号)
 小型機船底ひき網漁業整備に伴う転換資金交付
 に関する陳情書(広島県安芸海区漁民大会会長
 岡本惣市外五十四名)(第二八三号)
 漁業調整委員会費増額等に関する陳情書(大分
 県北海部郡海区漁民大会代表伊東儀一郎)(第
 二八四号)
 同(大分県東国東郡海区漁民大会代表者寺下健
 太郎)(第二八五号)
 同(愛媛県伊豫灘海上漁民大会遠藤松五郎外千
 二百五十名)(第二八六号)
 同(播磨海区漁業調整委員会会長安井章一)(
 第二八七号)
 同(広島県安芸海区漁業調整委員会会長岡本惣
 市外九名)(第二八八号)
 漁業制度改革に伴う諸施設並びに予算増額に関
 する陳情書外一件(兵庫県津名郡生穗町漁業協
 同組合長堀田文太外三十名)(第三〇九号)
 海区漁業調整委員会委員の公職の兼職に関する
 陳情書(大分県東国東郡海区漁民大会代表者寺
 下健太郎外七百三十六名)(第三一〇号)
 同(攝津、播磨、淡路海区漁民大会代表島田文
 治郎)(第三一一号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 連合審査会開会要求に関する件
 沿岸漁民の経済的危機救済対策に対
 する司令部よりの勧告に関する件
 漁業経営安定に関する件
    ―――――――――――――
○冨永委員長 これより会議を開きます。
 会議に入るに先だちましてお諮りいたします。国際捕鯨取締條約に加入することについて承認を求める件は、
 二十四日外務委員会に付託となりましたが、この問題は本委員会とも重要な関連があり、また委員各位からも、外務委員会との連合審査会を強く要望されておりますので、この際外務委員会に対して連合審査会の申入れをいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨永委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。なお開会の日時その他に関しましては委員長に御一任を願います。
    ―――――――――――――
○鈴木(善)委員 去る二十四日の本委員会におきまして総司令部天然資源局のスケンク局長より、吉田総理大臣に対して勧告が行われました沼津漁業の経済的危機打開に対する五ポイントにつきまして、岡崎官房長官に対して質疑をいたしたのでありますが、わが国の沿岸漁業が、資源の枯渇と漁業経営費の高騰、さらに魚価の低落、このようなはさみ状価格差による惡循環によりまして、刻々重大な危機に逢着いたしております現状にかんがみましてこのスケンク局長の政府に対する勧告は、きわめて適切にして重大なる内容を持つものと考えるのであります。これに対して、政府は迅速に強力なる施策を行うべきものと考えるのでありますが、本委員会におきましては、超党派的に、この沿岸漁業の危機打開のため、しこうしてわが国の漁業の安定と漁民生活の確保のために、政府に対して予算並びに具体的措置をすみやかに講ぜらるるように、本委員会の総意をもつて要望いたしたいと存ずるのであります。この取扱いにつきましては、委員長においてしかるべくとりはからいを願いたいと存じます。
○冨永委員長 ただいま鈴木委員より御発言がありました件につきましてお諮りいたします。その通りおはからいしてさしつかえございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨永委員長 御異議なしと認めます。
 それではその案文について、一応委員長から皆さんにお諮り申し上げて御了承を願いたいと思います。
   沿岸漁民の経済的危機救済対策
   に対する司令部よりの勧告に関
   する件
  漁民の経済的危機の起因として
 は、日本沿岸漁業に従事している漁
 民の数は戰前より約四〇%増加して
 いるが、総漁獲高はかえつて戰前水
 準より低下し、漁民の取分ははるか
 に少くなつていること及び漁民の操
 業費が増大したにもかかわらず、その漁獲物の価格が低下していることであり、この危機を救済するに足る最少限の対策として
 第一、濫獲漁業の今後の拡張を停止し、漁獲操業度に所要の低減を行うこと。
 第二、客種の漁業に対し、堅実なる資源保護規則を整備すること。
 第三、漁業取締り励行のため、水産庁と府県に有力な漁業取締り励行の部課を設けること。
 第四、漁民の收益を増加するため、漁獲物の品質の改良、加工保蔵の施設とその運営の改善、配給、販売方法を改善すること。
 第五、健全融資計画を樹立すること。
  以上五ポイントの計画が必要であるという趣旨の勧告を司令部より政府は受けたのである。
  本勧告は我が国水産業発展のためきわめて重要事項なるにかんがみ、政府においてはできる限り早期にこれが予算その他の措置について適切なる処置を講ぜられるよう要望する。
 以下の案文について御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨永委員長 御異議なしと認め、申入れすることに決定いたします。
 これについて水産庁長官より発言を求められております。これを許します。家坂長官。
○家坂政府委員 今回総司令部天然資源局スケンク局長より、沿岸漁民の経済危機に対する救済対策につきまして、五ポイントの勧告が政府になされたのであります。目下沿岸漁業といたしましては、漁業制度の改革途上にありまして、この際この五ポイントの勧告の内容というものはまことに適切なる核心をついたものであると私ども考えるのであります。従いまして政府におきましては、この五ポイントの精神にのつとりましておのおの施策を立てまして、あるいは予算措置も講じまして、極力強力にこの五ポイントを遂行して参りたい、かように考えておるのであります。これにつきましては、本委員会にも強力なる御推進、御協力を賜わりまして、その目的を、貫徹して参りたい、かように考えておるのであります。
○井之口委員 ただいまの水産庁長官の御意見に対して、三点だけ質問して、考慮を煩わしたいと思います。第一に、この五ポイントは、今長官のおつしやられるところによりますと、非常に物事の核心をついているというふうにおつしやられましたけれども、しかし今日沿岸漁民の経済的危機というものは、日本海沿岸だけに限らないのであります。とりわけ最近に至つてこの勧告がなされた。そして日本海港岸漁業に従事する漁民云々というふうになつておりまするが、これはわれわれ考えまするに、日本全体の沿岸の漁民がこういう状態になつておると思います。太平洋岸並びに瀬戸内海あるいは南支那海方面に面するところの漁民もみな経済的危機に直面している。とりわけ太平洋岸はもつとひどいと思うのであります。それだのにこれがなぜ日本海沿岸と限定してなされておるのか……(「日本沿岸と書いてあるじやないか」「思い違いだろう」と呼ぶ者あり)ああ、そうか。これに対してここのところをもつと明確に――太平洋沿岸の方をもつと明確に入れること、並びに瀬戸内海のこういうところももつと明確に入れることであります。
 第二番目に「濫獲漁業の今後の拡張を停止」ということが出ておりますが、濫獲漁業の拡張と停止し、漁獲操業度に所要の低減を行いますると、必ず失業者ができる、漁民として職を失う者がたくさんできるのであります。これに対して、政府は十分の生活を保障するということを第六項目に入れることが絶対必要であると思う。
 さらに第七項目として、もしこの「漁業取締り励行のため、水産庁と府県に有力な漁業取締り励行の部課を設けること。」となつておりますが、この点でもし大きな予算と組んで、海上保安庁等の拡張となり、これが日本沿岸並びに朝鮮との境、あるいは南支那海方面にただいま起つておりますところのいろいろな拿捕問題等に刺激されて、また昔の海軍復興ということになつて参りますると、日本の将来にとつて非常に危険なこととわれわれは考えるのであります。でありますからして、第七項目といたしまして、海上保安庁の強化となつて、将来隣国に対して侵略的な危險を與えないように、隣国との間に摩擦を起さないように、十分注意を拂つて……(「全面講和か」と呼ぶ者あり)これはもとより全面講和によつて完全に達するのでありますが、そういう考慮を第七項目に入れて置くことが絶対必要だ。漁民の生活の安定、生活の保障ということと、それから海上保安庁の強化にならぬように、さらに侵略主義の火ぶたが、この水産問題において切られないように、こういうことを十分考慮して第七項目を入れることが必要だと思うのです。それなくしては、この五項目は、現在の国際間の情勢上から見て非常に懸念するところでありますが、長官はこれに対してどうお考えになるか。
○冨永委員長 井之口委員に申し上げますが、この五項目は司令部が、こういう五ポイントの計画が必要であるという趣旨の勧告を政府にいたしたのを並べておるのです。それを井之口君は六項目、七項目を入れろとおつしやるのは、司令部に勧告をするということになる、そういう趣旨ですか、お伺いしておきます。
○井之口委員 勧告そのものをかえるというのではない。勧告はもう出されておるのですから、それはわれわれ水産委員会においてかえる権限はありはしない。しかしわれわれは政府に対して、重要事項にかんがみてできる限り早期にこれを実行せよという決議案をつくるのでありますからして、そういう場合に、なおこのほかこうこうこういう重要な項目があるから、政府はこれを考えてやるべきであるということを主張しておるのです。
○冨永委員長 先ほど決定していただきましたから、井之口委員の御趣旨について政府はどう考えるかという点について、家坂長官の答弁を求めることにいたします。
○家坂政府委員 ただいまの井之口委員のお尋ねにお答えいたします。この勧告は、五として日本の沿岸漁業全体にわたる漁民に関する勧告となつておるのでありまして、一部の沿岸ではないということははつきりしておるのであります。それから濫獲漁業の今後の処置でありまするが、これにはもちろん漁獲制限とか、あるいは漁船を制限するとか、いろいろの措置がとられることを考えるのでありまするが、これに対しましては、あるいは補償すべきものは補償で参り、あるいは転換資金の融資をやるものはその融資をやつて行くというような影で行くのは当然であるのであります。なお取締の強化の点に触れられておりましたが、これはもちろん水産庁あるいは府県の水産関係の一部におきまして、その組織を強化して、十分力を加えて取締りを励行して参る、かようなことでありまして、あながち他国との摩擦を強くするような、あるいは武力を用いるとかいうようなことは、全然この問題とは別個の問題でありまして、ただその組織を強化してやろう、こういう考え方であるわけであります。
    ―――――――――――――
○冨永委員長 これより漁業経営安定に関する件を議題といたします。
 本日は特に東支那海における拿捕問題につきまして、前回の委員会におきまして参考人の意見を聽取することに決定し、その人選については委員長に御一任願つたのでありますが、ただいまお手元に配付いたしました通りの方方においでを願つたわけであります。御了承を願います。
 まず参考人の氏名を御紹介申し上げます。
 作田宇一君、川南工業株式会社、第一〇雲仙丸船長、長崎市。
 木下時藏君、川南工業株式会社、第一七雲仙丸船長、長崎市。
 谷澤馨君、大壽水産株式会社、第三大壽丸船長、福岡市。
 堀田義忠君、大洋水産株式会社、第六九明石丸船長、下関市。
 江元福太君、日邦水産株式会社專務取締役、第三日邦丸船主、福岡市。
 上田哲夫君、報国水産株式会社常務取締役、報国丸船主、戸畑市。
 以上の方々でございます。
 これより田作宇一君の陳述を求めます。
○田作参考人 私は第十雲仙丸船長の田作でございます。昨年十二月二日十二時出航以来、農林二百九十六区にて四日八時より操業開始、それから三日間操業いたして、七日の十一時に怪しき船を発見、その後東に遁走するも、その怪して船十隻ぐらいに自分は包囲され、ある一ぱいの船が自分の船に横づけになり、自分はその船に監禁され、それから翌日の晝ごろに島につきました。その島は、世話人に聞いたら、花鳥山という所であると言いました。天気が惡いために十一日の午前六時までそこにおりました。それから上海に向けて出発して、同日午後二時に国営上海水産公司の阜頭に横づけされ、船員一同陸に揚げられてその会社より約十二、三町離れたところに收容されました。そしてそこで兵隊が二名ずつ歩哨に立つて、自分たちは監禁されておりました。それから二、三日後に、その水産公司の社長らしい人に呼び出されて、十七、八くらいの娘が通訳に入つて、いろいろ事情を聞かされました。その事情というのは、なぜ君たちは東支那海で操業をやるのかと言うので、日本では東経何度、北緯何度ということでマツカーサー・ラインが設けられ、そのラインから五マイルないし十マイルくらいの所で、日本の監視船が三ばい、五はいと監視しておるので、自分たちは安心して仕事をやつておりましたところ、あなた方に拿捕されたと言いました。そうしたら向うは、マツカーサー・ラインというのはマツカーサーと蒋介石とがかつてにきめたもので、今の新中国はマツカーサー・ラインは認めないということを言つておりました。その後自分たちは何も聞かれませんでした。(「何日くらい」と呼ぶ者あり)四十日くらいおりました。
○冨永委員長 次に木下時藏さんから、ひとつお述べを願います。
○木下参考人 私は第十七雲仙丸艦長の木下であります。私は二月七日に長崎を出港いたしまして十日に農林漁区第五百十三号で操業を開始いたしました。二月十七日十四時十分まで操業を継続しておりましたが、十四時十分にジヤンクを発見しましてそのジヤンクが私らの方に近づいて参りました。私らもそのジヤンクの方に近づいて、網をひつぱつておりました。そうしたらその前方二百メートルぐらいのところで針路をかえて、船体が見えなくなるまでジヤンクは南の方に南下しました。そのときに私はそのジヤンクが網なんかを張つておるものと思いました。そして私らは網を上げ、第十八雲仙丸が網を投げました。そうしたらそのジヤンクがまた私らの方に近づいて参りました。そのときにそのジヤンクは網を上げるものと思いました。ところがそのジヤンクは、第十七雲仙丸と第十八雲仙丸との間を通るようなかつこうをして、ジヤンクが帆をまいて私らに接近して参りました。私らが見たところが、そのジヤンクには赤い旗が立つておりました。ジヤンクには、人間は二人しか見当らなかつたのです。そしてその間を通るときに、第十八雲仙丸の方に接近して来ました。みなジヤンクが近づいてめずらしいものだから、船尾の方に八人ほど固まつて見ておりました。そうしたら五十メートルくらいのところで針路をかえて、今度は第十七雲仙丸の方に向つて来ました。そのときにともにおつた二人のうちの一人が、船首の方に走つて行つて様子をうかがつておつたようでした。それを船尾におつた第十八雲仙丸の船員は全部見ておりました。私はそのときジヤンクを見ておりましたが、ジヤンクの板の下から十人ばかり首を出していたようです。その瞬間みなが逃げたようです。私はそのときに拳銃か小銃を向けられたものと思いました。私はこれはいかぬと思つて、自分のワイヤーをひつぱつて、第十八雲仙丸に接近したのです。そのときにジヤンクは第十八雲仙丸の船尾をまわつて、左舷の方にかじをかえました。第十八雲仙丸の船尾をまわるときに、ジヤンクは第十八雲仙丸の左舷の中央に船首をぶつつけた。ぶつつけると同時に、向うは十名ばかり武装して乗つたわけです。私はそのジヤンクから二十メートルほど距離をあけて、ジヤンクの右舷の方を通つて、そうして第十八雲仙丸の船首をまわつて第十八雲仙丸の右舷に行きました。そのときに中国人が拳銃を持つて出て、船をここに横づけしろと言いました。そのときに船長は手旗をもつて私に、本船は台湾に行く、船員無事、皆拳銃を持つているから貴船は逃げよという信号を出しました。私はそのとき船尾におつて、第十八雲仙丸の様子を見ておつたところが、私を中国人が小銃でねらいました。私の船は少し船足が早いものですから、第十八雲仙丸と第十七雲仙丸の船尾が離れるときに二発発砲して来またし。そのときに少しかじを左舷にとつたところが、私の船が第十八雲仙丸に発砲している方に向きました。また一発打つて参りました。私はこれでは危險だからというので、百メートルばかり距離を離して停止して、それで第十八雲仙丸の様子を見ておりました。そうすると第十八雲仙丸はジヤンクを曳航して針路を西の方にとつて参りました。私はそれをあとから追つかけて参りました。私は距離を二、三百メートル離してついて行つた。約三十分行つたところが、ジヤンクを引いた第十八雲仙丸が煙を出して全速力で私の方に追つかけて参りました。私は追跡されてはいかぬというので、四十分ばかり逃げた。私の方の速力が早いものですから第十八雲仙丸は追つけないわけで、向うであきらめたか、振り返つてみると、ジヤンクは第十八雲仙丸が曳航して針路を西北西の方にとつて行きました。私はあとからまた行つたのですが、もう日没後であり暗くなりまして船体を見失つて、私は帰還につきました。
○冨永委員長 谷沢馨君から願います。
○谷澤参考人 第三大壽丸の船長の谷沢であります。昨年十二月二十四日の午前十時に長崎県の五島荒川港を出港いたしました。それで二十六日に農林漁区三百九区、その地方の天測位置東経百二十度四十五分、北緯三十度四十分に到着いたしましたので、ただちに操業を開始いたしました。明二十七日と二十八日も同じく三百九区附近において操業をしておりました。漁獲高は平均百ないし百二、三十箱でありました。昭和二十五年十二月二十九日第三百九区において操業中、午前七時ごろ、西方から参りました米式きんちやく船によく似た中共船が――いずれも百トンぐらいありましたが、近づいて参りまして、約三千メートル付近に二艘見ましたが、私はマ・ライン内のこととて別に気もかけずに、やはり網を引いておりました。急に銃撃をして来ましたのは約千メートル付近でありまして、私たちはびつくりして、怪船だと、すぐに網を切つて東の方に約十分か二十分ぐらい全速力で逃走いたしました。その中共船は、速力は十二マイルくらい出る船でありまして、私たちよりもうんと早く、銃撃もますますはげしくなり、また砲彈さえ撃つて来るありさまで、人命の危險はなはだしく感ぜられましたので、私は停船いたしました。停船いたしますと、その中共船は、ただちに私たちの船に横づけいたしまして、中共兵は銃を向け、着劍せる兵が四、五人と中共の船員らしい者が四、五名乗り込んで参りまして、無線電信のアンテナ線はただちに切断し、船員私たち一同を甲板に並べまして、身体検査を行い、機関士一名を残して、船員全部を船首の船員室に監禁いたしました。それから中国人が船を操縦いたしまして、全速力で航走――自分たちの船は全速力を出しますと約八マイル半くらいであります。航走二時間くらいして、船長一名出て来いと言われましたので、私がブリツジに参りました。ブリツジに参りますと、かじを交代して持つて行けと言われましたので、かじを交代して持つて行つておりました。その全速で走つておりましたコースは西に走つておりました。それからまた二時間ぐらい走つて、やはり私たちをつかまえたような米式きんちやく船が六隻、東の方に向つて航走しているのを私たちは見ました。マ・ラインに一番近い東の島パーレン島という島に、その夜の、暗くなつて時間はよく覚えませんが、十時ごろに着いてそこで投錨し、碇泊いたしました。明三十日午前八時、エンジンをかけてまた出航せいといわれて――やはり監視つきです。自分たちの船には監視兵は八名ぐらい乗つておりました。その日の午後の四時ごろ、また名も知らぬある島に着きました。その島かげで碇泊して、明三十一日午制九時ごろここを出航いたしまして、その日の午後十時、ごろ呉淞の海軍桟橋に着いて、海軍の兵舎に監禁されたのです。その監禁されたときも、私たちは便所に行くにも、やはり着創つきの兵隊が五名ないし六名ついて来たのです。夜は一歩もその室から出しませんでした。食事も日に二回でありました。そのときには別に調べはありませんでしたが、昭和二十六年の一月四日上海の水産公司に移されましてそこで小学校に監禁されたのです。その時分に取調べられましたのには、向うの水産公司の社長、それと海軍の階級は自分たちによくわからぬのですが、大分上の人と思います。その人が自分たちを調べたのですが、その人が、お前たちはどうしてここへ来たか、だれの命令でここへ来たかということを言われたのですが、私はそのとき、だれの命令で来たというわけではない、自分たちは、昔から東支那海は最もいい漁場だとして、ずつとやつており、今の時期は魚がうんとおると思つて来たと言つた。そうすると、お前たちは東支那海にいたが、自分たちの領海である東支那海に来て網を張るのは違反だということを言つたのです。そのときに自分は、自分たちはマ・ラインを基点としてそのマ・ライン内を操業していたので、何も中国の領海を侵しておらぬと言つて、つつぱつたのです。そうすると伺うは、マ・ラインは蒋介石とマツカーサーがきわめたものであつて、東支那海は全部おれたち新中国の領海であると言いました。だからそのマツカーサー・ラインというものは、新中共はこれを全然認めない。私たちは三百九区で操業をしておつて、拿捕されたのが二十九日の午前七時で、それから大体コースを西にとつて連行されて、パーレン島に着いたのは二十九日の午後十時だつたから、中国領海は絶対侵していないということを主張しましたが、それは受け入れられなかつたのです。最後に自分たちは、船をぜひ返してくれ、自分たちは帰つても、その船がなければあすの日から路頭に迷うのだからと、ずいぶん向うに頼んでみましたが、その船は君たち労働者のものではなく、資本家のものだから、それはお前たちには返さぬと言われました。そのときの上海における給與は、自分たちはまあ罪人みたいなものでありましたが、給與は別段悪いこともなく、三食腹一ぱい食べられました。一月十八日に帰国の許可が出まして、同二十日午前九時に日邦丸、雲仙丸、私たち五十四名が、もと華中水産時代に使つておりました古い船、約五十トン、百馬力の船に乗船いたしまして、一月二十四日午前八時博多港に入港いたしました。大体第三大壽丸がつかまりました経過は以上のようなものであります。
○冨永委員長 次に堀田義忠君から伺います。
○堀田参考人 私は第六九明石丸の堀田であります。私は二月一日下関港を出帆いたしまして、三日の早朝より農林漁区の二百八十七区あるいは二百八十八区、二百九十九区を十二日まで操業しまして、十二日の午後七時より漁場を変更いたしまして、農林漁区の二百九十六区で十三日の早朝網を入れ、引続き四網を終りまして、五網をやるために風上に航走しておりました。その日は東の風で天候は曇りでありまして、視界の見通しがなかなかきかなかつた日であります。ところが船首やや斜面におかしな船が現れて来ましたものだから、常々拿捕の話も聞いとおりますので、これはいかぬと思つて、僚船第六八明石丸に手旗をもつて信号しておりました。ところが見る見るうちに進路をかえて私の方に近寄つて来ました。そのときはすでに片船に信号を終り、その方を見ましたら、片船の方にもさらに米式トロールの船が近寄つておりました。なるほどこれはいかぬというて逃走にかかりましたときには、すでに三百メートル近くに接近しておりまして、信号を終つて遁走にかかりますと同時に、怪船は二そうとも発砲にかかりました。私はそれから約一時間ばかり発砲されつつ遁走しておりました。六時五十分に他船――つまり僚船の六八明石丸は本船の右舷約千メートルくらいの距離を、同じようなコースで遁走しております。同じく怪船は本船にも一隻、片船にも一隻ずつ追跡しておつたのであります。午後六時四十分、最後の片船の消息は、離れてはおりましたけれども、やや近寄つていると見受けられました。私の方はただいま申し上げましたように三百メートルあるいは二百メートルくらいの距離をもつて全速力で遁走しております。そのうちに、午後七時にはもう暗やみで、――その日は月夜ではありましたけれども、幸い雲で、視界が一度に見えなくなつて、私はまあ成功して逃げたような次第であります。片船の方を見ますと、そのときは片船はすでに逃げたものと思つておりましたところ、片船が遁走しております周囲に明りが三つも四つもつきました。そのように片船を追跡しておりました船は、電気を全部つけて、スローにしたように見受けられました。私はさらにその七時から同じ速力をもつて一時間逃げておりました。その電気をつけた船が、どうも近寄るのではないかと認められましたから、そこに停止して流し、片船を捜査しておりました。けれども見受けない。風はだんだんしけて来る、これじやいかぬというので、スローで自速でもつて、風上に片船を捜索しつつ残つておりました。ところが十四日の八時四十分ごろに、同じく私らの船のように手操り船の第十七共和丸に会いまして、私の船に無線がありませんから、第十七共和丸に、片船六八の消息をひとつ連絡してくれないかとお願いしましたら、さつそくしてくれました。すぐ昨日の午後七時から六八の無線の消息はないという返事を受けました。これじやいかぬというので、もう一度会社の方に連絡していただきましたら、ただちに本船は帰航するように命ぜられまして、十六日の午後三時五十分、ころ入港いたしました。あとで気がついたのですが、遁走している際に望遠鏡で怪船を見ましたら、怪船には黒の詰めえりを着た支那人らしい男が十数名銃を持ち、あるいはあちらこちらに走つておる者もまだほかにありました。射つて来たのは小銃と見受けます。それから旗は中共の旗のようにも見受けました。船体は先ほど申し上げましたように米式トロール船で、オツターを持つておりますし、無線の方向探知機を持つております。方向探知機であるいは怪船同志が連絡をとつて包囲したものではないかと見受けるのであります。
 以上であります。
○冨永委員長 次は江元福太君。
○江元参考人 私は日邦水産の江元でございます。私どもはこういう事業を子供の時分からやつております。それで、船長もし、漁撈長もして今までやつて来てようやく戰前に船主となつて今まで続けて来ました。戰争中には、政府の要請で統合して、そして食糧増産に励めという命令で、統合体をつくつてやつておりましたが、戰争の済まぬうちは全部徴用にとられました。そして戰争が終つてから、政府がまた日本の食糧が必要だから、君らの技術を生かして食糧を増産せよという命令が出て、その融資は政府があつせんをするというので、復金からあつせんを願うて造船にかかり、今までやつて来ました。
○冨永委員長 ひとつ拿捕の問題に関連して御発言を願います。
○江元参考人 それで二組を造船してやつておりましたところが、たまたまこういう事件が起つて第三、第五日邦丸を拿捕せられました。それでわれわれは多額の負債を負うて、今までマツカーサー・ラインがあるのに経営困難な状態を続けて来ましたが、このたび一組を拿捕せられたために、これから再起はどうするか。いよいよ立ち上りができぬという窮状になつて参つたようなわけであります。それで大体一組が水揚げするのが百三十万から百四、五十万、経費が七十万ないし八十万、また大型の方は百万以上いります。そういうことで、二組の負債を負うて一組で経営して行くことは、今後の再起は絶対にむずかしい。それで願わくは皆様のお力をもつて再起のできるようにごあつせんを願いたい、こういう考えを持つております。
○冨永委員長 上田哲夫君、お願いします。
○上田参考人 私は去る十八日から、会社業務連絡のために、福岡県の戸畑へ出張いたしまして、昨夜遅く東京にもどつて参つたものでございますが、現地に滯在いたしておるときに、たまたま私の会社の第七十五報国丸が拿捕せられたという事件が起きました。さらにまたこの不法拿捕の問題に関しまする福岡、佐賀地区の業者の集りがありまして、その対策を現地で協議したのでございますが、その席にも連なる機会を得ましたので、現地におきまする業者の緊迫いたしました動きと、非痛な状況をここに御報告いたしまして、本問題に対する当委員会各位の御援助を切に切にお願いいたしたいのでございます。
 第一に、私どもの所有いたしております第七五報国丸と一緒に操業をいたしておりました南星水産所属の和美丸が、どういう状況で拿捕せられたかについての概要を御報告いたします。
 同船は農林五百二十四区におきまして操業をしておつたのでございますが、今月の十八日の夜の十時に武装ジヤンクに襲撃せられまして大陳島方面に二隻とも連れて行かれたのでございます。そのときには、ただちに無線を封鎖されました関係か連絡がなかつたのでございます。たまたま前から発電機の故障のために十分無線連絡がきかなかつたので、無線連絡の故障ではなかつたかと思つて心配したのでございますが、二十一日の午前七時三十分に至りまして、初めて無線の連絡があつたのであります。それは兵隊が何か監視のために船に乗つて来ていたらしいのですが、その監視のすきをねらつて会社に無線をしたのであります。それによりましてわれわれは初めて両船が拿捕され、大陳島、南岐島方面に連れて行かれたことを承知したのであります。それが拿捕されてから四日目でございますが、その目の午前十一時半に再び連絡がございました。やはり拿捕されておるその位置などを申して参つたのであります。その後二十六日には、依然として監視が嚴重で通信ができないけれども、ひまを見てやるのだ。場合によつてわれわれは返してもらえるかもしれぬというようなことを申しておりまして、一体どこの船にやられたのか、どこへ連れて行かれるのか、台湾に行くらしいということを言つておりましたが、その程度の連絡でありまして、詳細は一切がわからないのが事実であります。以上申し上げましたのが拿捕の概要でございますが、このような事件が頻発いたしますことに対して、現地の業者はどういうようなことを考えているか。これを皆様にお訴えいたしたいと思います。
 まず緊急対策でございますが、拿捕船並びにその乗組員をなるべく一日も早く返すようにしていただく。これを全業者はこぞつてお願いしたいのであります。これは不法拿捕と申しますか、拿捕が不法と申しますか、いずれにいたしましても、拿捕されるということに対して、全然われわれとしては納得がいかぬのでありますから、何といたしましても一時も早く返していただくようにお願いしたい。これをお願いしているのであります。
 それから今後こういうような事故が起きないように、どういうような対策を考えたらいいかということに相なるのでございますが、このような拿捕が起きます根本の原因は、何といたしましてもマツカーサー・ラインというものがあるがためだ。従つて狭い漁場に集中して操業をするような事態を現在続けておりますから、そういうような無為な操業を避けしめるというような意味から、あるいは資源を保持しなければならぬというような意味から申しましても、何としても根本としてはマツカーサー・ラインを撤廃していただかなければ、安心して操業ができない。こういうことをお願いしたいのでございます。
 その次には、これもまた急速にはとうていお願いできかねかるもしれませんけれども、日本海、東海、黄海は日本の漁船だけが操業しているのではないのでありまして、中共の船も、国民政府の船も、あるいは朝鮮の船も――要するに国際的な漁場の性格を持つているのであります。従いまして講和の締結前、あるいは後を問わず、そういうような漁場でございますから、そういうような国際漁業協定というものがなるべく早く成立しないと、やはりこのような不祥事が続発することも考えられるのであります。これはやはりなかなか急速には成立できないかもしれませんけれども、このことを、やはり恒久対策の一つとしてお取上げ願いたいと考えているのであります。
 その次には東海、黄海における漁場には、御承知のように水産庁の監視船が出動しております。この監親船は違反行為を監視するとともに、業者の船を保護していただく、こういう二つの任務を遂行しておられることとわれわれは想像いたしております。監視船は非常に熱心にやつていただいておりますので、業者はこれに対して常に非常な感謝の念を捧げているのでございますが、このように嚴重な保護をしていただいているにもかかわらず、こういうような事故が頻発するということでは、とうていこのまま事業を継続することが困難である。現場ではこのような結論に到達しつつあるのでございます。理由は申し上げるまでもございませんが、われわれが所有いたしております船は国家の貴重な生産財である。それを不法に外国に持ち去られるということは、とうていたえられないのでございます。
 それからまた乗組員の不安の念がやはり刻々増大しておりまして、もし何ら適切な対策が立てられないならば、その面からいつても、とうてい事業の継続が困難になると考えられるのでございます。
 それから第三には、この四月、五月になりますと、海上が漸次平穏なるのでございますが、そういたしますと、ジヤンク船の行動範囲が広がりまして、この種の事故は、ますます頻発するであろうということが予想されるのございます。それからまた、この種の事故によりまする経済的な打撃の大きいことも、むろん皆様よく御承知の通りでございまして、保險その他の方法によつて、現在においては、何らの危險もカバーすることができないのでございます。全部業者の損害になつてしまうのでありまして、これはきわめて甚大なものでございまして、こういう危險にさらされながら、事業を継続するということが非常な困難に直面しておるわけでございます。
 今申しましたように、実情は、とにかく事業の継続困難というようなところにまで追い込められておるのでございますが、一面以西底びき業者の使命というものは、六大都市、特に京阪神市場方面におきましてその五〇%の魚類を以西業者によつて供給しておるのございます。従つて、このような危險に直面しながらも、今ただちにこの事業を全部やめてしまうということはできないのでございます。そこで講和が締結されまして、一切の不安が除去され、安全に操業できるまで、全部というわけには参りませんけれども、一部の船をつないでしまう。それは單に経済的な理由からではなく、今申しましたいろいろの理由により、真にやむを得ない敗戰国に残されたたつた一つの自衛の措置ではないかと思うのでございます。この点をよく御了解願いまして、繋船に要する費用は、講和までの短期間でよいのでございますから、どうか国においてごめんどうを見ていただきたい。こいうことが現地業者の血を吐くようなお願いの叫びなのでございます。この事業に携つております者は、直接間接を含めますと、二十数万と言われておりますが、その眼はひとしく国会における、当委員会の御活躍を期待しておるのでございますから、窮迫をいたしました現状緩和に、どうか一臂のお力をお願いいたしたいのでございます。
 私は昨夜おそく帰りましたために、何らの準備もなくここに参りましたのでございまして、はなはだお聞き苦しかつたことも多いと思うのでございますが、どうぞよろしくお願いしておきます。
○冨永委員長 ちよつと委員の皆様に申し上げます。今参考人の方々から申し述べられました内容につきまして、御質疑をお許しいたします。上田哲夫君についてお尋ねの方から……。
○川端委員 それでは上田さんにお尋ね申し上げます。拿捕のいろいろの事情を伺つたのでありまするが、船業は申し上げるまでもなく平和産業であり、しかも現下非常に喫緊な食糧問題の一端を背負つておるのであります。この船業に関係いたし、しかも遠く漁業に出ておられながら、共産勢力である中共によつてかくのごとき不法なる圧迫を受けられた皆さん方に対して、深甚の同情を申し上げたいと思うのであります。
 まずお伺いいたしたいのは、中共政権の船によりてこういう拿捕が行われていることは、先ほどどからの公述によりましても、赤旗を持つて来た船によつてやられておるのだということでございますので、私はあるいは中共の船の連中の謀略ではないかという感じを持つのでありますが、この行方が台湾の方向であるというようなことは、どういうことでおわかりになりましようか、お伺いいたします。
○上田参考人 第七五報国丸の場合は、簡單な電文が三通か四通来ただけで、現状判断しておるような状況なのでございまして、乗組員が帰つて来ないと詳しいことは実はわからないのでございます。乗組員といたしましても、言葉が十分通ずるわけではなく、行先なども多分そうはつきり言わないので、相当想像をまじえておることではないかと思うのでございまして、それが中共か国府か、上海に連れて行かれるのか、台湾に連れて行かれるのか、そう明確にはわかつておらない状況でございます。
○川端委員 そうでございましよう台湾であろうというように受取るのは、ちよつと私の早合点であつたかもしれません。そこで重ねてお伺い申し上げますが、拿捕の目的はどういうことのようにお考えでございましようか。すなわちこの陳情書で拝見いたしますると、日本の漁業を混乱に陷入れようとする目的のように見えるということも書いてございます。あるいは思想的に相当謀略宣伝を行いまして、労資の離間を策しておるという感じもあると書いてある。あるいは中共は非常に船に不足しておりまするから、この船を拿捕いたしまして――あるいはこれを戰闘のために使用するということだけではないかもしれませんが、そのほかの用途に使うことが目的であるか。あるいは共産党のやり方といいますか、こういう連中は、あるいは太平洋戰争の場合を見ましても、ソ連は中立條約を無視して侵入し、わずかに五日間の闘いにおいて満州以下の権益を奪取せられた、こういうような悪辣なる盗みとわのやり方、非常に憤慨にたえないことをわれわれ味つて来ておるのでありますが、漁獲物を盗むのであるか、あるいは拿捕の目的がどこにあるようにお考えでございましようか、伺いたいのでございます。
○上田参考人 この拿捕事件に関します業者の一致した見解は、何としましてもこの拿捕は国際公法を無視した不法なものである。それでただいま御質問なさつた先生のお話の通りに、いろいろの場合が考えられるのでございますが、最近私が現地で耳にいたしましたことも、一つは中共が今後新しい作戰をする場合に、必要な軍事資材を確保するという意味が多分に含まれておるのではないか、特に船はほしくないのだ、盛んにたくさんの船をつくつておるけれども、エンジンが足りないから日本の船をつかまえるのだというようなうはさが――これは特に根拠のある話ではありませんけれども、相当流布されておるような事情でございます。
○石原(圓)委員 先刻どなたからでありましたか、マツカーサー・ラインを撤廃せよというお説があつたのであります。上田さんかと思いますが……。十幾日か前に船長さんはつかまつて調べられた、ところがマツカーサー・ラインなるものは、蒋介石と連合国との間にきめたものであるから、そんなことは中共は認めない、こういうことに言うておるのであります。日本の定めた海区で操業しておるものを無法に中共がつかまえて行つたという事実は嚴然としておるわけであります。それにかかわらずマツカーサー・ラインを撤廃せい、こういう要求ははたして適当なのであるか、一方また中共ほマツカーサー・ラインは眼中に置かない、こういうのであるから、單にマツカーサー・ラインを撤廃するのみでこの問題が解決するのでないと思うのであります。そういう点に対してどういう考え方を持つておられるのか、その点が承りたいと思います。
○上田参考人 こちらはまる腰で、相手は武器を持つておるのでございまして、この状態は講和ができ、あるいはその後といえども急速には改善されないのでございますから、向うがその武器を振りかざして参りました場合は、こちらには対抗する手段は何もないわけであります。従つて先ほど私がお願いいたしましたマツカー・サーラインをかりに撤廃しても、同じような事故が起きるではないかという御意見はまことにごもつともなのでございますが、もしマツカーサー・ラインがないと、相当分散操業が可能になつて来るわけでございます。今とにかく局限された狭い区域で、密集して操業しておるために非常に襲撃されやすい。それが分散すると、幾らかその危險の程度が薄らぐのではないか、そういう意味もございまして、ラインの撤廃をお願いしておるわけでございます。
○石原(圓)委員 もう一つの問題としては、休業やむを得ないと認めて数箇月間休船する。その間の休船何と申しますか、休船するたための経費は国が負担するようにという御要望があつたようであります。このことは非常に重大な問題でありまして、さような定易な考え方で御陳情なさるということはいかがかと思うのであります。そういう危險区域は、これは單に支那海のみでもないのでありまして、北海道を取巻く海区にもよく似たことがあるので、そういうことのために漁業のできない人たち全部に、国が休業の費用を與えるということは、これは非常な重大問題であります。また国家の産業のためにも、さような考え方であつてはならないと思うのでありまするが、あるいは転業をするというか、何か他にお考えは持つていないのであるか、この点も承つておきたいのであります。
○上田参考人 船をつながなければならないというような状況に追い込まれておりますのは、採算が合わないで引合わないからというような、單なる経済上の理由でそういう状況に追い込まれておるのではなくて、もつぱら国際的な情勢上、危險のため操業ができないというふうになつておるのでありますから、これはぜひ国として補償していただきたい。こういうことをみなが希望しておるのであります。そこで先ほどもちよつと申しましたように、海運界の不況のときにとられました対策として、ボロ船を国が買い上げる、あるいは性能の悪い船を国の費用によつて改装する。そういうような政策がとちれたことを私どもは耳にしておるのでありますが、そういうケースをこの以西底びき業者にも当てはまらせていただけるものかどうか、それをお願いしておるわけであります。
○石原(圓)委員 皆様の公述を聞きますと、結論としては中共の不法なる行為が原因であります。要するに、マツカーサー・ラインと、日本の国際協定に従つておる漁業を不当なりと見て拿捕するのでありますから、結局中共が不法な拿捕をするということは嚴然たるものであります。それにもかかわらず、その点に対する船員、船主その地各関係者から何ら不平の声も出ない。中共の不法行為に対する何らの不当呼ばわりもないという感じを與えるのでありますが、この点に対してどうお考えになりますか。
○上田参考人 今までの、昨年十二月以来の拿捕事件の中で、嚴然と中共側に拉致されたものと、不明確なものと二つあると思うのでありますが、嚴然と中共側に拉致されたものに対しましては、そのときの状況は、ただいまの参考人からのお話で御承知と思いますが、これに対しまして、れわれは実に切歯扼腕しておるのでありますが、ただいかんとも対抗する手段がない、泣き寝入りの状態です。こういうことにわれわれは敗戰国民としての非常なる悲哀を感じておるのであります。私どもの方の場合も、おそらくそういつた中共側の拿捕かもしれないのでありますが、まだ不明確な点がございますので、この点をはつきり申し上げなかつたわけであります。
○冨永委員長 時間の関係がありますから、参考人の方々に一緒に御質疑を願います。
○田口委員 総括的な問題でありますから、上田参考人にお伺いしたいと思います。中共では何と申しましても、やはり日本の漁船はマ・ライン以内で操業しておつた。この事実を確認することが非常に重大だと思いますから一、二お伺いしたいのでありますが、この以西底びき漁船が、自分が操業している位置はどこであるかということを確定する方法といたしまして、各漁船は天測をやつているのでございますか。あるいは、無線によつてその位置を附近の船に問い合せて決定するのであるか。あるいは、出港した港から、どういう方向に何時間どういう速力で走つたから、船の位置はここにあると、そういう確定方法をやるのでございますか。その点をはつきりお伺いしたいと思います。
○上田参考人 法規の改正によりまして、五十トン以上の以西底びき船は、主船に全部ただいま無線装置を持つております。従いまして、正確な時刻がとれます関係上、ただいまは、全船が天測によつてきわめて正確に船位を測定しておるはずでございます。天候の悪いときはその天測もできないのでございますが、以西でやつておりまする人たちは、何十年間も経験を持つておりましてとれる魚、綱にひつかかるところのいろいろな海底のものなどによつてさえも、相当正確に位置をはかることができると思いますから、事故の発生の場所については、日本側の申立てが絶対に正確であると確信いたしております。
○田口委員 報国丸と和美丸、第十七雲仙丸、第十八雲仙丸、これは同じくジヤンクによつてやられているような御報告でございますが、御承知の通りジヤンクは風によつて帆走してやつてくるのです。こういうように、一方は機械によつて動いている船でないのに、とらわれる方は機械を持つている。こういうような実情におきましては、この日本の操業船が、ほんとうに緊張をして、そうして注意万端怠りがなければ、日本の動力船がジヤンクにやられるということは、ちよつと想像がつかないのでございます。この点については、日本の漁船がどうも少しぬかりがあつたというふうにも考えられるのでございますが、いかに注意をしても、どうしても、ジヤンクにでも拿捕されるという根拠が、私らにはよくわからないのであります。なるほど日本の漁船は鉄砲も持たないし、機関銃も持たないが、場合によつたら、突き当つて行つて、向うの船と心中するくらいの覚悟であると考えるのでございますが、どうもこのごろ盛んにジヤンクにやられている。これはいかにしても逃げられないものであるか、あるいは避けられないものであるか。その点を木下さん及び上田さんから、もう一度御答弁を願います。
○上田参考人 ただいまお話のように、ジヤンクは全然動力を持つていないのがわれわれの常識であつたのであります。ところが、最近の操業船からの報告によりますと、一、二のジヤンクは高速のデイーゼル・エンジンを持つているそうでございます。そこで、普通のジヤンクだと思つて、つい夜間などゆだんしておると、そうすると、するすると横について来てやられてしまうという状況だそうでございます。それからもう一つは、常業中、網をひつぱつて操業しているときは、ニマイルないし三マイルというごく低速力で網を引いているのでございます。そこで、いかにジヤンクが船足がおそいといえども、操業中に襲われると何とも防ぐ方法がない、そういうことだと考えるのでございます。それから、アメリカ式きんちやく網漁船による拿捕も大分あつたのでございますが、これも御承知のように約十二、三マイルという高速力を出す船でございまして、この船はわれわれは、ただ單に監視の任務だけに服している船かと思つておりましたら、ビーム・トロール漁業を操業している一応の漁船だそうでございます。これが軽機あるいは自動小銃、短銃というような火器を持つておりまして、ときどき操業の合間を見ながら襲つて来るのでどうにもならない、判断がつかないし、防ぎようがないというのが実情じやないかと思います。
○鈴木(善)委員 先ほど谷澤さんその他から、拿捕されてから中共に曳航された模様についてお話がございましたが、その中で上海の水産公司の社長さんからも取調べを受けた。また海軍の高級将校らしい者からも尋問を受けたというお話があつたのでありますが、私どもここで、上海の水産公司の性格というものが、單なる名前の通り漁機会社であるのか、それとも中共の特殊な任務を付課された特殊機関であるのか、この点を水産公社において取調べを受けられた谷澤さんその他からお伺いしたいと思うのであります。これが第一点であります。
 第二の点は、抑留中に特定の思想教育等を受けられたかどうか、これが第二点であります。
 第三点は、中共にひつばられて行つた船は、おおむね米式きんちやく船のような船になつて発砲され、拿捕されているように思うのでありますが、これらの船は数隻、あるいは十隻にあまるような組織的な活動をしているようにお伺いしておるのでありますが、これらの船は一定の船体を組んだ一つの組織を構成しているものと推定されますかどうか。また一般の中共の漁船と識別ができるような何らか特徴がございますかどうか、まずこの三点をお伺いいたしたいと思います。
○谷澤参考人 第一の点にお答えいたします。水産公司はもう中共の軍人と半々みたいなものでありまして、自分たちの拿捕されました船には、中共の海軍が二十名あまりと陸軍が二十名あまりと、米式きんちやく船を操従している船員が十五、六名で、もう四、五十名乗つておつたわけであります。それで水産公司というのは軍と密接な関係があつて、軍の自由になり得ると自分たちには思われたわけであります。
 第二の思想方面に関しましては、共産党教育――君たちは労働者であるからわれわれと同じである。労働者はみなお互いだ。君たちが今こうやつてひつぱつて来られているのは、労働者として同情するというようなことを言つて、今の内地の政府の吉田内閣は悪いのだから、君たちがこういうようにつかまつたのだ、資本家は打倒しよう、また米軍は日本から駆逐して、戦争には絶対反対しようというようなことを言われました。
 それから第三の識別に関しましては、米式きんちやく船でありまして、それに船員ばかり乗つているということはしかとは自分たちにはわからない。兵が乗つていて発砲するか、または操業しているか、その見わけくらいなものでありまして、その識別に関しては、それはもう十分向うの船であるからといつて逃走するような距離から、見きわめは困難であろうと私は思います。
○鈴木(善)委員 水産公司の性格が大分おぼろげながら輪郭がわかつて来たのでありますが、不法拿捕にもつぱら当つておりますこれら米式きんちやく船のような船団は、何らかそこに水産公司と関係があるように推定されますかどうか。もつと端的にいいますと、水産公司の指令下にこの拿捕船団が活動しているように推定されますかどうか、これが第一点。それから日本の漁船で拿捕されたものが、水産公司によつてあるいは改造され、あるいはエンジン等を撤去しまして、水産公司の手によつて特定方面にこれが処理されているように思われますかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
○谷澤参考人 私たちはよくわかりませんが、帰国に際しましても、自分たちの船です。その船には中共の海軍が数名乗つておりまして、生活をずつと続けておつた状況でありますから、多分海軍の輸送船の方面に使うか、水産公司の方で漁船に使うかわかりませんが、多分海軍の方に使うと思います。
○小高委員 田作さんにお尋ねいたします。あなた方が非常な苦労をなさつておられることにつきましては、私ども何とかこれの解決をしなければならないと、ただいま腹をきめてかかつているのでございますが、先ほどあなたの説明で、拿捕された状況はよくわかりましたが、帰されたときの模様がわからなかつたのでありますが、監禁されておつて、これから帰つてよろしいぞというような際に、どういうような訓練を受けて、またどういうようなかつこうで、どういうような船で送り返されたか、その実情を聞かしていただきたい。
○田作参考人 それは二月十六日、向うの中国人から、十九日に帰るようにきまつたから安心せよと言われて、そして十八日の晩に、中国の偉い人とわれわれ五十四名と会食するから出席しろと言われて、十八日の晩にやりました。そして水産公司の人と、海軍の偉い人と二人から少し訓示を聞きました。その訓示ははつきり覚えておりませんが、大体東支那海に来た船は、東支那海を荒した罪として船は絶対に返さないから、君たちは華中水産公司の船を修理して帰すから安心せよと言われて帰りまして、十九日の朝九時ごろその船に乗り込みました。その日は機械の運転から何から何までしなければならないというので、機械の運転やら準備をして、十九日の日に出港できるようにして二十日午前九時三十分ごろ出港になりました。そのときは日邦丸、大壽丸を拿捕した船が自分たちを上海の入口まで護衛してくれ、そうして自分たちは内地に向つたわけであります。
○小高委員 内地へは向うの船で送られたのですね。
○田作参考人 そうであります。
○小高委員 その送つて来た船はどこにどうしておりますか。
○田作参考人 自分たちが着いたときは、福岡の海上保安部の下に着きました。
○小高委員 その船はこつちにあるのですか、
○田作参考人 そうです。
○小高委員 その船の状況はどうですか。老朽船ですか。
○田作参考人 この船は帰つたら資本家にやらぬでもいい、お前たち五十四名の財産だから、お前たちがかつてにしなさいと言われました。
○小高委員 その拿捕した船は返さぬ、こう言つておるわけですね。
○田作参考人 そうであります。
○小高委員 本問題は、これは国際的な非常に重要な問題でありますので、私の希望といたしましては、外務委員会との合同審議によりまして、もつと外務委員会と提携して審議をして、そうして実情聽取をしたというにとどまらずして、何らかの解決点を見出さなければならぬと思いますので、外務委員会との合同審議を希望いたします。
○冨永委員長 了承いたしました。川端委員。
○川端委員 私のもう一、二点伺いたいのは、終戰後拿捕された船が七十六隻でありまして、今日なお未帰還のものが五十三隻に上つておる。最近中共政権の側より連続的に十三隻拿捕されておるということが書いてあるのでございます。これは船名も入つておりませんが、ただいまの状況はこの数字の通りでございますか。上田さん御存じなら……。
○上田参考人 こまかい数字は実は私今手元にございませんが、ほぼその数字の通りだと理解しております。
○川端委員 それでは政府側に伺いたいのでありますが、ただいままでのいろいろな質疑応答をお聞きになりまして、これに対して政府として、対外的にどういうふうな折衝を六つておられるか。しかも今後これに対する折衝の効果をどの程度に見込まれておるか、これをまず伺いたいと思います。
○冨永委員長 川端委員に申し上げます。ただいま参考人に対する質疑をいたしておりますから、政府の御答弁はあとにしていただきます。
○川端委員 それでは総括的に伺います。今いろいろの意見を伺つたのでありますが、向うに抑留をされまして、帰してくれるというような場合もございまするが、人員としてはまだ残つておる方がございまするかどうか。谷澤さんが向うのことに詳しいようでありますから、ちよつと伺いたいのであります。
○谷澤参考人 昨年つかまりました雲仙丸、大壽丸並びに日邦丸の船員五十四名も無事に帰りました。現在のことはわかりません。
○井之口委員 野党側の初めての発言でありますから、少しよくわかるようにお尋ねしたいと思います。上田さんのお話を承つておりまして、大体経済上の実情並びに政治的な御意見も大体わかりました。先ほど石原委員からのお話もありましたが、マツカーサー・ラインの撤廃ということを上田さんは主張なすつていらつしやいます。しかるにほかの方々のお話では、マツカーサー・ライン内においてやられたものだというふうなお話でございます。そういたしますと、もしマツカーサー・ラインが撤廃になりましたならば、それをもつと乗り越えて行つて、どんどんと衝突しながらでもやる方がいいというお考えか、このマツカーサー・ラインの撤廃ということを、業者の方がみな御希望なので、ございましようか、あるいはそうでないといたしましたならば、マツカーサー・ラインがあつては、先ほどもおつしやいました通り、中の方で密集していて、とても操業ができぬし、漁獲もたかがしれたものだから、これは中華人民共和国側との間の折衝なり、あるいは全面講和というふうなものによつて、この問題を将来解決しなければならぬ、こういうお考えだろうか、この辺が疑問になります。この問題は非常に重要で、笑い事では済まされない問題であります。場合によつては、この拿捕船の問題は、今の朝鮮の戰乱をもつとアジア全面に押し広げるような危機をはらんでおるのであります。これ單に漁業問題だけでなく、われわれ日本国民の……。
○冨永委員長 参考人に対する質疑だけにとどめてもらいたいと思います。
○井之口委員 よろしゆうございます。そういう重要な問題でございますから、業者の方において、この点のはつきりしたお考えを聞かしていただきたいのでございます。
 それからこのラインの中の操業では、非常に密集していて、これではわれわれとして採算上非常に困難するというようなことをさつきから言われておいでになりましたが、事件が起つているのはみなマツカーサー・ラインの境い目でございます。境い目においてすべて事件が起つておるのであります。この点を見まして、将来のわれわれの漁業のあり方といたしまして、また事故の瀕発を防止する――上田さんの話では、将来も瀕発することは予想されるということを言つておられます。そういう予想がどしどしと的中して起つて来るということになりますと、これは非常に危険なことであります。それでこのマツカーサー・ラインの設定は蒋介石政府と締結されたものでありまして、もしこの瀕発を防止しようというふうな政治上の手段をとろうとするならば、これは蒋介石政府と交渉すべきものとお考えなのでしようか、あるいは、今イギリスは中華人民共和国を承認しておりますが、アメリカは承認しておりません。そういう関係のもとにおいては、もし将来いろいろな事故が瀕発して起るといたしますと、それを交渉する相手方は、例の台湾におりますところの、蒋介石の古い政府と交渉すべきものであるかどうか。もしそれが今できぬといたしますれば――今までも蒋介石の政府によつて拿捕された船がたくさんあるのであります。現にお宅から陳情書として出ておりますが、それにも前の国府軍に三十一隻――撃沈されたものが二隻もありますし、まだ二十九隻帰つて来てないというふうなことがあります。またあなたの先ほどからの御発言の中にも、どこへ連れて行つたかわからない、あるいは台湾ではなかろうかというような予想もされる、こう言つておられますが、そういうふうな観点から考えてみましても、蒋介石政府と交渉することが妥当だとお考えになるのですか。事故の頻発を防止することにわれわれも全力を盡さなければならぬと思いますが、そういう点に対しては、どういうお考えであるか。
 それから三番目に、御要求といたしましては、繋船が戦敗国であるところの日本にとつて、ただ一つの最後に残された願いであるというふうなことをおつしやつておられましたが、これは船主全体がそういうお考えでございましようか。なるほどもし平和にやつて行けるものであつたならば、全画講和の方針でやつた方がいい。しかしそれができないから、衝突を避けるためにはどうしても繋船でもしてれ情勢をしばらく見て、将来講和後においてでもそういうことを実現して行きたい、こういうお考えであるかどうか。この三点にお答え願いたい。
 それから谷澤さんにお尋ねいたしますが、向うから帰られるときの事情は、さつきのお話によつてよくわかりました。帰られるときに向うから非常に親切にされて、送別会までやつてもらつたということが新聞で報じられておりますが、そういうふうな事実はございましたでしようか。さつきの話では、たらふく御飯もおあがりになつて、みなまるまると船員は太つてお帰りになつたというお話でありましたが、そういうふうなことがあつたでございましようか。そうして向うから船をもらつて帰つて来た。その船はあなた方の所有であるということを、向うからちやんと保証しておもらいになつたのですから、何か保証書のようなものをもらつたか、それから船が今どうなつておるか、こういうふうなこともお聞きしてみたいと思います。
 それから田作さんにお尋ねいたします。田作さんは鹿兒島の方のように見受けられますので、率直に朴訥なところで、政治的ないろいろ込み入つた問題がございますので、実情を聞かしていただきたいと思うのでございます。あなたは向うに逮捕されたとき、その逮捕される現場においでになつたのですから、そういうことは知つていらつしやるでしよう。おれたちはマツカーサー・ラインを認めないのだということを向うから言われたということを言つておられましたが、それはほんとうでございましたか。また日本に帰つたら、マツカーサー・ラインは認めないのだということを保証するようなものを日本の政府に突きつけろとか、いうふうなことでもありましたか。遠い海の向うのことだから、片口だけ聞いておつたのではわからない。はたしてマツカーサー・ラインを越えておつたのか、また内にあつたのかということも、われわれは愼重に考慮しなければならぬと思うのでありますが、そういう点をお聞かせ願いたい。
 それから向うの待遇について……。帰るとき船をもらつて、その船に乗つてお帰りになつたのか。資本家の方の船は禁を犯したのたから没收する、しかし漁業労働者の皆さん方には何ら危害を與える意思はないのだから、あなた方に上げますというふうにあなた方は言われて、船をもらつてお帰りになりましたか、この点お三人の方々にお聞きしたいと思います。
○冨永委員長 参考人の方に申し上げます。時間がござませんから、要点のみ簡單にお答え願います。
○上田参考人 三つの御質問がございましたけれども、いずれも関連性があると思いますから、総合してお答えいたしたいと思います。私どもは漁業をやつておるものでございまして、政治のことは何もわからないのでございます。従いまして、ただいまの御質問に対して的確な御反事ができないのでございまするが、要は安全に事業をやらしていただきたい、今の状態ではとても危險で、仕事がこのまま続けられないのだ、そのためにはラインを撤廃していただきたい、もしそれができなければ船をつなぐのほかはない、こういうことを申し上げたつもりでございます。ラインがあつても、ラインの中で事故があるのだから、そのラインを撤廃しても決して事故は絶えないのではなかろうか、こういう御質問に対しては、先ほどから繰返して申しておるように、分散操業が可能になるから、ぜひラインを撤廃して、もつと広い範囲でやらしていただきたい、これをお願いしておるのでございます。
○谷澤参考人 待遇のことに関しましては、自分たちの考えでありますが、船を五はいもとつたりすると、自分たちに腹一ぱいものを食わしても損はいかぬという考えで、近ければいかだにでも乗せて帰させるのだけれども、遠くでしようがないから、この船に乗せて帰れ、こういうわけで、また帰つてからの宣伝のためにそうしたのだと思います。
○田作参考人 私も同じであります。
○小松委員 谷澤さんにお尋ねしたい。あなたは拿捕された御経験を持つた方でありまするが、先ほど上田さんのお話の中に水産庁の監視船が出ておる、その監視船は違反行為を取締るためだけでなく、保護のために活動されておるのだが、それであつてもなおかつかように事故が頻発するので、将来不安にたえないというお話があつたのでありますが、あなた方は現地において、もし水産庁の監視船をさらに増強して、この取締りを徹底するとともに、保護の任務を十分に果すようなことができるならば、かような事故が防止できるとお考えになりまするかどうか、まずこの点をお伺いしたい。
○谷澤参考人 水産庁の監視船が、違反の取締りと同様に保護に重きを置かれてやつていただくことに対しましては、先ほど申しましたように、われわれ業者としては非常な感謝をしておるのでありますが、この監視船の隻数をふやすとか、もつと性能のいいのを持つて行くとかいうことでは、絶対にこの種の事故は防ぎ得ないとわれわれは予想しておるのであります。それは何分相手が武器を持つておることでございますので、こつちがまる腰である以上、たとい監視船の勢力がふえたところで、この事故は防ぎ得ないと思います。
○小松委員 谷澤さんにお尋ねいたしますが、あなたはあちらに抑留されておりました際に、非常によい待遇を受けたというお話でございましたが、その間におきまして、あなた方になお中共にとどまれといつたような勧誘はなかつたか。もしさような勧誘があつたとするならば、どういう意図によつて、あなた方をさように勧誘されたのであるか、そういうことについてちよつとお聞きしたいのであります。
○谷澤参考人 上海におりましたときに、その通訳した人は、東京の人だと思つております。三十五、六の小泉という通訳によつて自分たちは調べられたのであります。その小泉という人の話によりますと、共産党はよい、また若い者はこちらに残つて働け、それに対して報酬はある、内地の生活状態よりもずつとよい、自分一人であれば使いきれないくらいくれるということを言つておりました。
○小松委員 あなたは抑留中の待遇に関して、中共に対して感謝の念を持つておりますかどうか。かつまた共産主義の方たちは、非常にうまいことを言つていろいろ宣伝されておるが、実際に拿捕されたところの体験者として、共産主義というものはかくのごとく侵略主義であり、功利主義であるというお考えを、あなたはお持ちになつたかどうか
○谷澤参考人 自分たちは待遇に関しては別段言うことはありませんが、拿捕されて船が帰れなくなつて、内地に帰りましてもあすの日から生活に困るようでは、自分たちは共産党には絶対に反対であります。
○冨永委員長 委員の方にお諮り申し上げます。皆さんの方からなお参考人に対して御質疑があるようでありますが、時間の関係もありますから、大体この程度で打切りたいと思いますが、御異議は、ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨永委員長 それではさようとりはからいます。田口委員。
○田口委員 ただいままでの参考人のお話と委員諸君との質疑応答によりまして、大体この事件がいかなる性質のものであり、またどういうような方法でやつているかということについて、ややはつきりしたと考えるのであります。私は先ほどからマツカーサー・ラインの問題について、委員と参考人との話を聞いておつたのでありますが、何といたしましても、このマツカーサー・ラインがあるために、あの線よりも以西の方は中国の海である、以東の海は日本の海である、こういう観念を中共その他に與えていることは事実のようでございますから、この線の撤廃につきましては、政府といたしましては、この上とも努力されまして、一日も早くラインの撤廃をされることが必要と思うのでございますが、この点について政府の御意見を承りたいと思います。
 第二に、今までの話によりまして、わが漁船は適法に操業しております。言いかえますと、線内において、許された海区において操業をしている、にもかかわらず、先方では武器を持つて船をとりに来る。この不法行為に対しましては、どうしてもわれわれとしても対策を講じなければならないと考えるのであります。その対策の第一は、でき得れば米国の海軍に出動をしてもらいまして、安心して仕事ができる措置を講ずることも必要でありましようし、また日本にも多数の監視船がありますから、それに適当な武装をいたしまして、いわゆる自衛の意味におきまして、われわれは自分の身を守るという方法もございましようし、なお自衛のためでございますから、場合によりましては、漁船に対して最小限度の武器を持たせるということも、できないことはないと考えるのでございますが、米国に依頼する、あるいは監視船、あるいは、漁船に武器を持たせるという問題について、政府としてはいかなる考えを持つておられるか、伺いたいと考えるのであります。
 第三に、拿捕されました船を返還してもらうという問題につきましては、三月の十五日から日本におきましても日本の外務省が各国と問題によりましては、直接交渉をしていいということになると思いますから、第三国を通じて拿捕国に対して返還方を要求する、こういうことをやるべきだと考えるのでございますが、この点について政府はいかがお考えになりますか。
 第四にこの以西底びき網は今日まで非常にきゆうくつな漁場において操業をしているために、経営状態が各個人、各会社ともに非常に悪くなつております。このまさに破滅せんとする状態にある業者の上に、さらに大事な財産を持つて行かれるというようなことが起りましては、おそらく各業者は非常に大きな借金を現在負つており、その上生産手段がなくなつてしまうことになります。しかも事柄が不法にそういう問題が起つているという点からいたしまして、この問題に対しましては、ある程度政府が何らかの経済的の手を伸ばさなければ、業者としてはただちに破産してしまう。そのために日本の食糧問題がまた混乱するということになると考えるのであります。この方法といたしましては、漁船保險の問題もございますが、現在漁船保險は五百万円までであるが、今いかなる船をとりましても、以西底びき網におきましては、少くとも千万円ないし一千五百万円、大型のものになりますと、二千万円の船価のものでありますが、現在では漁船保險は五百万円しかつけられないということになつております。五百万円以上に、いわゆる戰時保険ではございませんけども、特別保險といたしまして漁船保險法を改正するという意思があるかどうか、あるいは現在研究しておられるかどうか、その点をお伺いいたしたいと思うのであります。さらに経済的の救済方法といたしまして、漁船保險外に何か政府で目下考えていることがあるかどうか、その点も重ねてお伺いをいたします。
○冨永委員長 ちよつと速記をとめて……。
    〔速記中止〕
○冨永委員長 速記をお願いします。
 それでは川端委員並びに田口委員に対する政府当局の答弁は、次会劈頭にこれを譲ることにいたします。
 参考人の方々に御礼を申し上げます。本日はたいへん御苦労でした。この問題は慎重に考えてとりはからいたいと考えます。
 なお委員の皆さんにお諮り申し上げます。これからただちに速記をとらずに秘密懇談会にいたしまして、漁業証券課税問題に対する政府当局の説明を聽取いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○冨永委員長 それではさようとりはからいます。
 本日はこの程度で散会いたします。
    午後零時三十九分散会