第012回国会 本会議 第4号
昭和二十六年十月十五日(月曜日)
 議事日程 第三号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三十九分開議
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(林讓治君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鈴木正文君。
    〔鈴木正文君登壇〕
鈴木正文君 自由党を代表いたしまして、講和に関する諸問題、特に平和條約と日米安全保障條約並びにその結果として当然に来るべきことが予想されるところの幾つかの政策につきまして、吉田総理大臣並びに関係大臣に質問をいたしたいと存じます。
 講和国会のこの本会議において、国民が何をおいても聞きたいことは、條約の技術的、法律的解釈よりも、より基本的な次の二つの問題に集約されると思うのであります。よつて冒頭において、次の二つの点について吉田首相の見解を国民とともに承りたいのであります。その一つは、平和会議後の日本の国際的に進むべき方向線は一体どこに置かれておるのであるかという、外交の基本線の問題であります。その第二は、この方向線を進むことは、戦乱の危険から日本を救う最良の道であるか、それとも共産党その他少数の人々が言うがごとく、戦争へ一歩近接するものであるかというこの問題について、はたしてこの妄説がほんとうであるか、この問題について信念を明確にして、国民の向うベき道をまず示していただきたいと思うのであります。
 思うに、今日日本国民最大の悲願は、憲法の規定を待つまでもなく、再び戦乱の中に、自分をも、他人をも、世界各国民をもさらしたくない、この一点にあるのであり、国民はこの一点を講和会議に関して最も重要なる将来の方向として見詰めておるはずであります(拍手)われわれは、共産党及び一部の人々が説き立てる戦争誘発論を反駁する前に、この講和会議において現実に見た事実をもつて、そのでたらめ性をまず指摘したいと思うのであります。
 今回の平和会議に臨むにあたり、多数講和か全面講和かという最も基本的な形態について一応の議論のあつたことは、御承知の通りであります。しかして吉田内閣並びに自由党も、できるならば全面講和こそ最も望ましいものであるとする意見においてかわりなかつたのでありまするが、相手にその意思のない限りは不可能であり、可能なる多数の自由平和愛好の諸国家群との間にまず講和を完成せらるべきであると考え、多数の国民諸君もまたこの見解か支持したと思うのであります。(拍手)サンフランシスコの会議においてソ連代表が行つたあの懲罰的修正案は、一体平和会議をまとめ上げんとする努力であつたでありましようか、それとも、これをぶちこわそうとするところの、かけひきであつたでありましようか、言わずして明らかであると思うのであります。われわれはこの現実を見るに及んで、国民諸君とともに、講和会議に臨む以前の見通しにおいてわれわれの見解の正しかつたことをあらためて確信するのであります。(拍手)全面講和論者がまだおるといたしましたならば、それら全面講和論者は、全面講和でさえあるならば、ソ連の持ち出した、あの代案による平和條約でもけつこうであるというのでありましようか。(拍手)日本国民として、一体そんなことが言えると思うのでありましようか。
 今回の平和條約は、わが国としては、かかる現実の世界情勢に即し、自由にして平和を愛好する諾国家群との団結の中に日本の世界における新にして明確なる立場を確立し、この線の上に祖国の安全と再建をはからんとするものであり、先般調印せられました平和條約及び日米安全保障條約は、自由国家群との団結と集団的安全保障機能を強化し、赤色帝国主義の世界侵略の中から祖国及び世界の平和を守らんとするものであるという結論において間違いがないと思うのであります。(拍手)われわれは、もとより、ソ連とも中央とも講和を達成することを、いずれの国よりも熱願はしておるのでありまするが、現実的に不可能な夢の中に民族の運命をいつまでも放置するがごときことは、責任ある公党として、とうていでき得ないのであります。(拍手)
 しかるに、少数ではあるが、共産党及びその周辺は、この條約を目して、自由、共産両陣営の間に緊迫感を深めるとともに、一方アジア諸国の不安を招来して戦争誘発の危険を倍加せしめたるごとくに宣伝して、国民を惑わさんとしておるのであります。(拍手)もとより、共産党の常套手段のごときは、今日においては一般国民もまた周知卒業しておるところでありまするけれども、それとは別に、前にも述べました通り、戦乱の回避こそ今日日本国民最大の念願であるのでありまして、平和條約を結ぶことがなぜ戦争に近寄つたというのでありましようか。現在の緊迫せる国際情勢のもとで、できもしない全面講和の夢を追いながら、無防備の裡のままで、独立もせずに右往左往するという、それが平和を守るゆえんであるなどと一体どうして考えられるというのでありましようか。(拍手)朝鮮における侵入は、韓国及び国連軍が自衛力を持つたということから始まつたのではないのでありまして、北鮮及び共産諸国が、彼らの武力が韓国及び国連軍の朝鮮半島における防衛力にはるかに立ちまさつたと判断した瞬間において行われたのであります。(拍手)
 以上の見地に立つて、第一に吉田総理に伺いたいことは、今後日本のよつて進むべき国際的な進路を明確に示していただきたい一点であります。次いでこの方向に進むことこそが戦争を避ける最も有効なる方向であり、方法であるという明確な信念を吐露していただきたいのであります。この方向と信念の上に立つて戰争回避の国民の念願を達成すべく、総理みずから渾身の努力を傾ける覚悟を披瀝していただきたいのであります。
 さらに伺いたいのは、われわれの今後の外交方針が自由諸国家群との団結にある以上、インド、ビルマ、タイ、韓国等のアジア自由国家群との国交回復は、今後に残された重大な問題であります。これらのアジア自由国家群との関係はどうなつておるか、政府はいかなる方法によつてこれを達成しようとして努力しておられるか、この点をも明らかにしていただきたいのであります。
 次に政府に伺いたいのは、平和條約と安全保障條約との関係であります。われわれの見解は、平和條約と安全保障條約とは一体不可分だともちろん考えておるのであります。われわれが伺いたいのは、條約調印の技術的、時間的関係において、形式的にそれがどうであつたかというような問題ではないのであります。いずれの国といえども、まずみずから守るのは当然であります。ただ今日においては、自国の守りはそれ一国をもつてしてなし得ないこともまた周知の通りであります。いわんや現在のごとく、日本において平和條約のみ締結せられても、武装を解除せられているのであつて、固有の自衛権を行使すべき有効な手段はあり得ないのであり、しかも一方において、赤色帝国主義の侵略がまだ世界から駆逐されていないところが、朝鮮半島の実情を見るとき、安全に対する何らの保障も、将来の方式の確立もなくして、平和條約のみを結んで、一体どこに防衛と建設の基本線を求めることができるというのでありましようか。(拍手)共産党のごとく一切反対であるというのはわかつております。それは、それが共産党だからわかつておるのであります。(拍手)しかし、少数ではあるが、共産党とは一線を画すると平素言つている人々が、安全保障條約には反対であるというのは、一体いかなる確信と具体的方式をもつてこれにかえようとするのでありましようか。(拍手)これらの人々は、国民をして納得せしむるに足るところの具体的な方法論をこの際掲げることができないのでありましたならば、この民族的な重大事の決定にあたり、彼らが平生唱えているところの、共産党と一線を画しておるという言い分は根底からくずれ去つてしまうに違いないということを指摘せざるを得ないりであります。(拍手)この点について、反対ならば反対でよろしい、堂々と具体的な代案をこの国会を通じて示していただきたいのであります。
 われわれ自由党は、先に述べた通り、平和條約と日米安全保障條約は一体不可分のものであつて、この両條約を通じて初めて世界の平和とわが国の安全を期し得るものであると確信するものであり、さらに進んで将来において、日米安全保障條約の第四條にいうがごとく、さらに多くの諸国との間における個別的もしくは集団的安全保障にまで発展すべき積極性をも持つておるものと解釈するのでありまするが、この点について、政府、特に吉田総理大臣の見解を表明していただきたいと思うのであります。(拍手)
 安全保障協定は、暫定的措置ではありまするが、現在の段階においては、わが国の独立と安全を保障するための最善の手段と確信するものであります。しかし、その具体的内容は、條約第三條に示しておる通り、日米両国政府の間における行政協定によることになつておるのであります。この点については、国会の條約審議権との間に深い注意を拂つて、今後の推移に応じて、国会を通じてその内容を国民に十分伝えるべきであると思うのであります。特に所要の予算または法案の審議を求める機会において詳細な説明をすべきであると思うのであります。政府は行政協定と国会の審議権との関係について確信ある見解を有しているはずであり、この機会にこの見解を表明しておいていただきたいと思うのであります。
 さらに、行政協定の内容をなすべきわが国の負担、米国軍隊の特権等につきましては、国民が深い関心を寄せているところであります。政府はいかなる方針で行政協定とりきめの交渉を進めて来たか、その今日までの推移を明らかにされるとともに、将来の方向について、可能な限りそれらを明らかにせられたいのであります。さらに、世上一部に伝えられる妄説、いわゆる秘密協定云々というふうなものに対しましては、ないこともちろんとわれわれ了承いたしまするが、この壇上より国会を通じて明確に吉田総理に鮮明せられんことを要求するものであります。
 次に、いわゆる再軍備の問題であります。安全保障協定はわが国の軍備をただちに義務づけるものでないことはわれわれの信ずるところでありまするが、しかし独立国である以上、みずから守り、みずから国土を防衛するために、国力の充実に応じて逐次自衛力を充実することは、わが国の権利であり義務であると信ずるものであり、かつ防衛の方式は国連集団保障の中にあることも、すでに指摘した通りであります。かつまた、こうした自衛力の整備こそ国民を戦乱の危険から守るに足る手段であることも、すでに申し上げた通りであります。何らの具体策も持たない観念論的中立論のごときは、なすべきをなし得ない人々が最後に逃げ込む、たぬきのどろ舟にすぎないのであつて、(拍手)このどろ舟に乗つて、国民とともに狂瀾怒濤の国際社会の中をさまよつていいなどとは、われわれには毛頭考えられないのであります。これらの点につきまして、再軍備とはどういう意味であるか、再軍備でないまでも、いわゆる自衛力の強化を国力の充実に応じて逐次進めて行く、その考え方、方式等について吉田総理の考え方を伺いたいのであります。
 次は、領土問題について総理の見解を伺つておきたいのであります。奄美大島、琉球諸島、小笠原諸島、その他二十九度以南の諸島の領土権が日本に残されているという米国全権及び英国全権の言明は、領土問題についてわれわれに一つの光明を感ぜしめたものであり、これが解決のための基礎條件であるところの、世界、特にアジアと平和関係を確立して、以上の諸島がわが国の行政のもとにもどることを期待してやまないのでありますが、特に奄美大島や小笠原群島等、軍略上の必要の少い諸島につきましては、現地住民の切実なる念願をも考慮に入れられまして、連合国側の特別なる配慮を煩わすことに政府の格段の努力を期待いたしたいのであります。(拍手)この点について、政府はどういうふうに考え、またいかなる努力を拂つておられるかを明らかにせちれたいと思います。
 次に、千島列島及び南樺太が侵略によつて日本に奪取されたものであるとするところのソ連の主張は、われわれの絶対に承服し得ないところであります。サンフランシスコ会議において、吉田総理が断固この点について所信を明らかにされたことに対しましては、日本国民がいかなる感激をもつて問いたか、記憶に新たなるものがあるのであります。歴史的、民族的に当然日本の領土であつたものに対しましては、すみやかに事情の許す限り返還されることを期待してやまない、これは日本人の偽らざる念願であり、また国際的にも正当な要望であると信ずるのであります。さらにまた、色丹島、歯舞諸島のごときは明らかに北海道の一部であるのであります。たまたま終戦当時日本兵営が存在していたためにソ連に占領されて、そのままになつておるのに間違いないのであります。これは明らかに不法の占領である。政府はこの点についてどう考えておるか、どういうふうな措置をもつてこれに対処しようとしておるのであるか、この点をも伺いたいのであります。
 次に賠償の問題でありまするが、役務賠償の具体的とりきめは、今後に残された重大問題であります。われわれは誠意を盡してその履行に当らなければならないことはいうまでもないのでありまするが、領土の四五%をその資源とともに喪失して、莫大な海外資産を接収され、しかも荒廃した国土に八千数百万の人口を擁しておる、困難きわまる現実にかんがみ、役務賠償も、その程度と、その時間的速度を誤るような無理な方法をとるときは、日本再建はおろか、国民生活を破壊して、平和條約及び安全保障條約の線に沿つて世界の平和に貢献せんとする日本の努力自体も不可能になるおそれのある問題であります。賠償は日本経済を破壊せぬ範囲において行わるべきであるということは、すでに了解されております。この意味は、單に日本国民が最低生活を保持するに足りるというような消極的な意味ではないはずでありまして、少くとも日本経済が新たな発展を遂げて、自由諸国の強化の役割を果し得る限度と解すべきであり、ダレス代表が、全関係者を裨益する経済的仕組みのうちに正義の理想に奉仕する賠償方式という言葉をもつて表現したところの意味もまた私どもはここにあると希望をつなぐのであります。池田大蔵大臣にただしたいのでありまするが、この点について、従来関係諸方面といかなる話合いを進め、その問題に対処する見通しと準備を進めておられるか、でき得る限り詳細に、また総括的にこれらの点を明らかにしていただきたい。国民をして大よそその向う方向と、なすべき努力の限度とを知らしめて、希望と勇気と誠意を持ち得るような総括的な見通しを披瀝していただきたいのであります。
 次に、わが国の完全な独立は、安全保障條約とともに経済自立の裏づけがあつてこそ初めて可能であることは、いうまでもないところであります。平和條約の効力発生とともに、この問題はいよいよ本格的にこれを推進する段階に入つて来るはずであります。政府は、これに対していかなる構想と具体的な対策を用意しておられるか。特に電力、石炭、食糧、船舶等の開発並びに増産、物価の安定、資金の確保等はその根幹的な課題であると思いまするが、石炭も電力も必ずしも楽観を許さぬ情勢のもとにあることは、すでに各方面から指摘されておる通りであり、その他もまた思い切つた重点的施策を断行するのでなければ、講和後の諸問題の解決に対処する日本経済の根本態勢は整つたと言いがたいのであります。質問時間の関係上、これらの問題の詳細をあげての質問は省きまするけれどもどれら議題のらくが講和の実質的完成に至大の関係を持つものでありまするから、自立経済の新たなる構想については経済安定本部長官に、電力、石炭については通商産業大臣に、それから船舶の問題については運輸大臣に、米の統制解除問題等をも含む食糧政策については農林大臣に、それぞれ講和後の政策の中心問題としての角度から説明をしていただきたいと思うのであります。さらに講和後の財政整備の一環であるところの行政整理は一体どこまで進んでおるか、機構整備の問題はどうか、これらは行政管理庁長官に、また遺家族に対する援護の限度と熱意等を厚生大臣に、それぞれお伺いしておきたいと思います。
 最後に、治安の問題について法務総裁に伺います。われわれは、講和会議によつて治安が不安な情勢になるなどとは毛頭考えておらないのであります。しかしながら、独立国家としてみずから国家の治安を守るためには、現在の国家警察並びに警察予備隊、海上保安庁の制度が十分であるとは考えておらないのであり)同時にまた、治安に関する現在の関係機関の機構も雑然として不備であると思うのであります。警察国家の、ごときは、われわれの夢想もせぬところでありまするが、当面の問題として、これらの充実と整備が必要となつて来ることは当然と考えるのでありましてこの点について政府はどう考えておられるかを伺うのであります。さらにまた不法な破壊的の分子の動きがあつた場合、一般的治安を維持するだめの方策、これらの分子によつて主要な産業に対する破壊的行動が国民への損失によつて行われるようなおそれのある場合、それに対処して国内の治安と産業を守り、日本独立の使命を果すために、法務総裁はいかなる構想でこれらに対処すべき方式を準備しておられるか。
 以上の諸点につきまして、総理大臣並びに関係各大臣に質問をいたします。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 わが外交の基本線はどこにあるかという第一の御質問であります。今日すでに発表になりました講和條約、安全保障條約等についてごらんの通り、日本としては将来国際連合の線に沿うて外交をやつて行くということを、はつきりここに申したいと思うのであります。今日世界が、よく人が申すところでありますが、共産主義と自由国家組織と相対立している、その間の関係がだんだん微妙になりつつある、あるいは苛烈になりつつあるということをよく申します。どの程度までこれが宣伝であり、これがうわさであり、根底のあるものかは、私はここにはつきり申しませんが、しかしながら、気持として対立国々いることは事実であります。そのいずれにつくか。いずれにもつかない中立の態度をとるというがごときことは、日本の国民性もこれを許しますまいのみならず、またこれはいたすべきことではない。日本としてはあくまでも自由国家群に投じて、この国家群とともに世界の平和を守る、世界の自由を守る、繁栄を守るという方向に邁進いたしてこそ日本に対する尊敬が増すゆえんであり、またこの趣意で日本とともに世界の平和に寄與したいという気持から日本に対する早期講和という空気が醸成せられたことは申すまでもないことであります。その世界の期待に沿うためにも自由国家群に対して共産群を排撃するという態度に出づべきものだと私は確信いたすのであります。(拍手)
 またアジアの諸自由国との間の関係はどうするかよいう御質問でありますが、それは日本としてはあくまでも善隣外交で行く。でき得べくんば、極東における、あるいはアジアにおける自由国家群を率いて日本が世界の平和、世界の自由に貢献するという立場に立ちたいと私は思うもの、であります。またこれは、けだし單に私一個の希望ではなく、国民の多数もその気持であると私は信じて疑いませんのであります。
 安全保障條約と講和條約との間の関係いかんという御質問でありますが、講和條約によつて日本の独立が承認せられたのであります。この独立をいかにして守るかということが安全保障條約によつて守らるるわけであります。すなわち独立と安全保障、その相関連しているがごとく、この両條約は相互いに関連をし、相互いに輔車脣歯の関係をいたすのであります。
 また日本の再軍備についてお尋ねでありますが、こらはしばらく私が申す通り、今ただちに再軍備をせよと言われても、国力がこれを許さないのであります。この再軍備については、お話の通り国力の発展とともに再軍備の方向に向い、しかしてまた、その再軍備をなすがためには、完全なる再軍備をいたさなければならないのであります。中途半端な再軍備をなすということは、いたずらに共産主義者を助けることになるのであつて、私の賛成しないところであります。
 領土問題についてお尋ねでありますが、これは八月十四日の、ポツダム宣言を受諾いたした日本の態度から考えてみまして、かれこれ言うべきではない。敢然としてこの無條件降伏を甘受した日本としては、今日においてとやこう申すということは、これははなはだ男らしくない態度であると考えるのであります。しかしながら、樺太あるいは千島等については主権を放棄する。権原を放棄する。しかしてその後どうなるかということも、最後の処置については規定されておりません。ただ日本としては――すでに無條件降伏を受諾いたした日本としては、その権原を放棄するというだけの点で十分であるのであります。また奄美大島等については、これまた先ほどお話でありましたが、アメリカが、信託統治に将来なるであろう、その可能性だけが記載されております。その最終の結果については、今後の国際連合との間の関係を待つよりほかしかたがないのであります。また色丹等の領土については、島については、私がしばらく申す通り、日本としては、あくまでもそれが北海道に属すべきものであるということを主張してはばからないのであります。(拍手)
 賠償の問題については、これは日本が占領中において幾多の損害を與えた、不当な損害を與えたものに対しては、日本の国力の許す限りこれに対して賠償をするという主義だけを言明されて、主義だけが認められたのであります。またその限度についても、日本の国力の許す限りであつて、日本の国力、日本の経済政策を破壊してまでもということは要求されておらないのであります。これまた、ただに正義の観点から日本が受諾するのみならず、アジア諸国との間の善隣関係を打ち立てる上からいつても、この賠償義務を認めることが至当と考える、また善隣外交を実現するゆえんであると考えたから、この賠償義務を認めたのであります。しかもその限度は、日本の国力の許す限り、日本の経済生活、あるいは生活水準を破壊してというまでの要求ではないことは諸君も御承知の通りであります。
 その他については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 賠償の限度についての御質問でございまするが、ただいま総理大臣よりお答えになつた通りであります。私は、この問題につきましては、日本の経済をあくまでも維持し、また東南アジア諸国との親善関係を確立する、この二つの目的で交渉を始めるべきだと考えているのであります。日本が経済的に伸びて行けば、それだけ賠償も多く支拂い得ると思うのであります。あくまでこれは金銭賠償ではございませんで、役務、賠償でございます。賠償を要求する各国も、日本の経済を破壊しては賠償がとれないのでありますから、との間おのずから相通ずると思うのであります。具体的交渉には入つておりません。ただ私は、講和会議から帰りました後に、フィリピンの代表と一回会いましたが、この際におきまして、金銭賠償はまつぴらだ、役務賠償に限るという平和條約第十四條を主張しただけでございます。(拍手)
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
○国務大臣(周東英雄君) お答えします。講和條約成立後における日本経済の自立についてのお尋ねであります。
 詳しくは委員会等において述べたいと思いまするが、これを要するに、戦後における、講和條約締結後における対外、対内各方面からする新しい経済負担の増加ということを内蔵しているわが国経済としては、これを克服しつつ自立経済を遂行するには相当骨が折れるとは思いまするが、過去六箇年間におけるわが国経済の復興の状況を顧みまするときに、私どもは決して悲観する必要はないと思います。しかしてその方法としては、何といたしましても貿易規模の拡大、生産の増強と国土の開発、インフレの回避、国民生活の安定ということを基本とした強力な政策を遂行して行くつもりであります。貿易規模の拡大、生産の増大等につきましては、最近における生産指数がすでに戦前の一四〇%近く上つておる現状は、これを示して余りがあります。わが国に残されたる未稼働の工場、しかして残された余りある労働力、しかもその労働力は、技術的に世界各国に比較してひけをとらない労働力、このものに結びつけるに必要な原材料の確保であります。その点につきましては、国際経済に積極的に参加し、協力し、この協力を通じて、アメリカその他の自由国家群から必要な原材料を確保して行くことによつて日本の生産は増大し、増大する生産による貿易の規模の拡大は期して待つべきものがあると考えます。これらの問題を推進するについて、ほかの点は心配ありません。要するに最後は電源であります。これらにつきましては、政府は電源の開発について、このたび積極的に資金を集中しまして、最近における状況にかんがみ、突貫工事等をいたしまして積極的に開発に乗り出すつもりでありますから、御安心を願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇〕
○国務大臣(高橋龍太郎君) お答えを申し上げます。申すまでもなく、講和後の日本経済の最大の課題は、自立経済の達成と、民主自由諸国との協力態勢の強化であります。しかして、かかる課題を達成する道は、結局わが国の産業力を最大限度に発揮し、民主自由諸国との貿易を極力振興することに盡きるものと信ずるものであります。わが国の鉱工業生産は、終戦時の壊滅状態から立ち直り、急速な回復を見せ、ことに本年に入つてからは、春以来の異常豊水に助けられて順調な伸張を示し、去る七月には、昭和七年ないし十一年の平均に対して一四二という高い水準を示したのであります。しかるに、八月以降出水状態が急激に悪化いたし、九月には過去九箇年平均に対し七九%、十月初旬には七一%と異常渇水を現出して、これに伴つて生産のカーブも急速に降下いたし、地区によりましては、あるいは業種によりましては影響も異なりますが、重要産業の生産は、最近いずれも計画を下まわつている状態であります。しかも、従来渇水等によつて水力発電が減少した場合に、これを火力発電をもつて補つて参つておりますが、最近におきましては石炭の需給が逼迫いたし、電気事業の火力発電設備もこれを動員し得ない状態なのであります。これによつて、電力不足の現状に対処しましては、通産省としては、電力用炭確保のために、中央地方の全機構を動員して電力用石炭の回収に努力し、また金融の措置その他あらゆる方法を講じ、総体として下半期に四百七万トンの火力用炭を確保するほか、未稼働の自家用発電所の動員等の措置を講じておりますが、他面、現行の電力需給調整制度及び料金制度をもつて重要産業の生産を確保し得るかいなか、きわめて疑問でありますので、これらの改正についても急速な再検討の必要があると存ずるのであります。(拍手)
    〔国務大臣根本龍太郎君登壇〕
○国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。
 講和後におけるわが国の農業制度の基本方針についてでございまするが、御承知のように、現在わが国の自立経済上の基本となるものは、やはり食糧の自給度を増すということが根本であろうと存じます。すなわち、わが国が四十数パーセントの領土を失い、地価において人口が飛躍的に増大いたしました。この間にありまして、われわれは貿易の振興をもつて自立経済の道を歩まなければなりませんけれども、一面におきまして現在におきましては、いまだ八千万の国民を養うに足るだけの生産が確保されておりません。従つて、これらの食糧は大部分海外の輸入に仰いでおるのでありまして、従来はガリオア・フアンドにおいてこれがまかなわれておつたのでありまするが、今後はどうしても貿易の振興による外貨の獲得によつてこれをあがなわなければなりません。こういう観点からいたしますれば、ぜひとも自給度を高めることが必要でありまして、このために、すでに政府は、土地改良並びに開墾、さらには技術の改善によりまして、この農産、さらに水産の拡大増産をはかろうとしているのであります。
 さらに食糧問題において大きな要件をなすのは蛋白資源でございまするが、これは御承知のように、従来マッカーサー・ラインの制限のもとに、水産の振興はなかなか困難でございましたが、講和成立の後は、この制限せられましたところの海洋魚業がわれわれの前に開かれると信ずるものであります。従いまして、この水産の開発によつてさらに食糧資源が豊富になると存ずるのであります。(拍手)
 この観点からいたしまして、われわれは明年度の適当なる時期において主食の統制を撤廃しようと考えているのでありますが、この論拠は、先ほど申しました理由のほかに、わが国の食糧行政の変化を見ておりますと、以前は日本の農村が不当なる価格によつて生産が維持できなくなるであろうことを憂えて、これに対しましては米穀法によつて価格支持政策をとるとともに、一面におきましては豊凶の差によつて、もし凶作の場合、国民に対してその食糧を確保できないという心配のために、海外からの輸入によつてその需給調整をはかるというのが、戦前におけるわが国の米穀政策の基本でございました。しかるところ、日本が戦争の渦中に陥るに至りまして、まつたく世界経済と孤立する段階になり、やむなくいわゆる自給自足の経済、アウダルギーの経済に入らざるを得なくなりました。このために、従来の需給調整制度を改めまして、強権をもつて農村から農産物を取上げ、一面におきましては流通を規正しまして、法律に基く、いわゆる政府の配給以外には国民がその食糧を得られないように制約したのであります。これすなわち戦時中における一つの遺物であります。
 今や日本は、講和会議を……、(発言する者あり)批准を前にして、まさにわれわれは独立の国家として世界の市場に入り得る段階にあります。従いまして、食糧の不足は御心配ございません。われわれは小麦協定に参加するのみならず、さらに世界各国と自由なる貿易がなされ得るのであります。外貨の問題につきましても御心配はございません。従いまして、国民が必要とするところの食糧の絶対量は、絶対心配ございません。問題は、農村で心配しておるのは、国際経済に突入することによつて、日本の農民が、その生産した農作物の価格が非常に暴落するのでぱないかという心配でありますが、これにつきましては、需給調整法に基きまして最低価格を保証するのみならず、一面におきましては、外国食糧については政府がすべて管理することにより、国民の必要とする食糧は十分にこれを確保する、この二つの根拠のもとにわれわれは統制を解除せんとするものであります。さらに市場における投機の心配を言われているのでありますが、これにつきましては、穀物市場法におきましては、従来行われたような清算取引は行わしめず、現物取引、正米市場においてこれを確保する、こういう観点からいたしまして、投機の対象となるような措置は講じないつもりであります。かくのごとくにいたしまして、戦時中の遺物であるところのこの強制供出、管理をやめるとともに、国際経済との関連において日本の食糧の安定をはかる、これがすなわちわが党の主食に対する基本方針であります。(拍手)
    〔国務大臣山崎猛君登壇〕
○国務大臣(山崎猛君) お答えいたします。講和後における海運政策のねらいはどこにあるかというお尋ねであつたのであります。一言にして盡せば、船腹の増強拡充あるのみであります。(「その通り」)今日の日本の政策が貿易政策を重点としなければならないということは、国民全体の一致したる論であります。貿易はすなわち海運によらざるを得ないのであります。すなわち船腹の増強を必要とするゆえんであります。現在におきましては、わが国が輸入する物資の、せめては五〇%を自国船によつて運びたいと考えるのであります。しかしながら、現状は五〇%を満たすことができず、なお六十万トン、七十万ドンの船腹不足を告げておる次第なのであります。政府におきましては、これに対して計画的造船計画を立てて、現在は七次の前期を進行中なのであります。われわれは、さらに進んで七次の後期、第八次と計画造船をますます進展せしめて、貿易第一政策の目的達成に海運の政策を向けて行きたいと、かように考えておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍伍君登壇〕
○国務大臣(橋本龍伍君) お答えを申し上げます。
 戰傷病者及び戰歿者の遺族等の処遇の問題に関しましては、政府といたしましても、従来から、その精神的な扱いにつきまして、また物質的な扱いにつきまして、両面ともいういろいろ努力をいたして参りました。戰後、極東委員会の指令がございまして、なかなかうまく行きませんでしたが、精神的な面の問題につきましては、先月サンフランシスコ会議の後におきまして、初めて、慰霊祭等の問題につきましては、特に戰歿者の遺族等を冷たい扱いをすることなしに、普通に慰霊祭等を催してよろしいというふうに話をまとめることができたのであります。なお物質的な面の問題に関しましては、できるだけ早くから、遺族扶助料の復活、それから戰傷病者の年金増額につきまして努力いたして参りましたが、これも今日におきまして、ようやく具体的な方向に持つて行くことができました。今回の補正予算におきまして、遺家族等の援護調査費に一億円を計上いたしまして、遺族や傷痍軍人等につきまして、その権利者をはつきり確定するような調査を来年の三月までに完了いたすつもりであります。別途これの援護の法律案を準備いたしておりまするが、これに必要な経費を二十七年度の本予算に計上いたしまして、この調査費によりまするところの権利者の調査を三月までに完了したところに従つて、来年四月から十分の援護をいたすつもりであります。(拍手)
 なお講和後におきまする行政組織の運営の方針についてお答えを申し上げます。日本の行政組織は、昭和六年に満州事変があつて総動員体制に入りまして以来、終戦後におきましても、占領下の特殊な要請と民主化の要請とがからみ合いまして、いろいろに複雑に相なつて参りました。人員も非常に増大をいたして参つたのでありますが、今回二十年ぶりで平和の民主国家として独立をすることができましたので、今後におきましては、できるだけ少い経費で、民主主義国家としてふさわしい行政運営をするつもりで、できるだけ簡素能率的な行政組織にするつもりであります。今国会におきましては、事務の整理を主体にして、十二万の人員整理をいたすつもりで、定員法の改正案を提案いたすつもりでございます。行政機構の問題につきましてはなお検討中でございまして、成案を得次第国会にお諮りいたしたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
○国務大臣(大橋武夫君) 講和條約の発効を契機といたしまして、国内治安の基調につきまして急激な変化を予想しなければならないような事態は、現在においては全然ございませんが、終戦以来国内治安の押えとして厳存いたしておりました連合国軍最高司令官の権威が解消することに相なるのでございまするから、治安行政においては特段の留意を要することは当然であると考えます。ことに治安に関しまする法規中には、現在ポツダム政令によるものも相当あるのでございまして、これらの政令には、わが国の現状から見まして必要を痛感せられるものもありまするので、講和発効に際して、その法律化を考える必要もあり、当局といたしましては、現にその準備を進めておる次第であります。
 次に、警察予備隊、国家地方警察、自治体警察、特審局、出入国管理庁等、治安行政に関する行政機関につきましては、すでに昨年以来整備に努めて参つておることは御承知の通りでございまするが、今後なお必要に応じ能率的な機構として整備をはかりまするとともに、相互の有機的連繋ある活動を可能にいたしまするよう機構及び運営の上にくふうを加うるべきである、かように考えておる次第でございます。(拍手)
 なお、民主主義と憲法とを暴力から守り、国民の自由と権利々独裁の脅威から守りまするとともに、国の経済を破壊から予防いたしまする必要は御説の通りでございまするから、このために必要な法規は急ぎ準備したいと考えておるのであります。しかしながら、治安に関する対策は、往々憲法上の基本的権利でありまする自由権の制限を伴うことを免れないのでありまして、この種の自由権は民主主義のよつて立つ基本でありまするから、公共の福祉を守る立場からする制限というものは、真にそのために必要な最小限度にとどめられるべきものであり、このことは、法規の内容におきましても、また行政機構の組織の上におきましても十分なる保障が與えられるまう、くふうされなければならないと考えております。この保障なくして單に一方的な権力の行使を許すような仕組みは、かえつて民主主義に対する不当なる抑圧を招きやすく、今後の対策としては断じてとるべきではないと考えておるのであります。要するに、今後の治安対策としましては、單なる権力の行使のみでは十分でなく、政府による権力の行使は常に憲法に従つて正しく行われ、不当な濫用は断じてあり得ないという国民の信頼の上にその権力が行使されるような保障を持つことが必要であると考えておるのであります。以上の基本的態度のもとに必要なる法規及び機関の整備をはかりたいというのが、ただいまの治安対策の根本であります。(拍手)
○議長(林讓治君) 三木武夫君。
    〔三木武夫君登壇〕
○三木武夫君 私は、国民民主党を代表して、平和條約並びに日米安全保障條約を中心に吉田総理大臣に伺いたいと考えます。
    〔議長退席、副議長着席〕
 吉田首相が老躯みずから首席全権としてサンフランシスコにおもむかれましたことに対しては、国民とともに、その労苦を多とするものであります。しかしながら、帰国後における吉田総理の御発言や、本会議場における吉田首相の施政方針の演説を承つて、講和に対する吉田首相の感覚と国民の感覚との間には非常なずれのあることを発見せざるを得ないのであります。(拍手)また国際的に見ましても、同じ自由国家群と申しても、アメリカあるいはヨーロツパの自由国家群と、アジアにおける自由国家群との間には、物の考え方の中に相当の開きがある。従つて、アメリカやヨーロッパで一言にして理解されることが、アジアにおいては数百言を費さなければならない場合が多多あるのであります。こういうことを考えてみると、この国民と吉田首相との間にある感覚的なずれ、またアメリカや西ヨーロッパ諸国とアジア諸国との間にあるこの開き、こういうものをできる限り埋めることが政府の責任であります。(拍手)これに対して、従来政府の努力というものは非常に不定しておる。そこで政府は、この機会に、明確に、また詳細に、国民に対しても、世界に対しても政府の態度を明らかにされることを要望しておく次第であります、
 国民が政府に聞きたいことは、この講和條約並びに安全保障條約を結んで、今後の日本が一体どうなるのかということが、最も聞きたい中心であります。八千万の国民の運命に関係するような重大な決定をして帰国された吉田総理が、先般の施設方針の演説に現われたるがごとき一片の事務的の報告で、国民は決して満足できるものではないのであります。(拍手)吉田総理大臣は、サンフランシスコの講和会議の席上において両條約を欣然受諾された以上は、この両條約を結んで、日本は大丈夫だ、日本はこうしてやつて行くんだ、この確信を当然吉田総理大臣はお持ちのことと思うのであります。国民が聞きたいのはこの総理の確信であり、この確信に基いた外交、内政に対する基本政策をこの機会に聞きたいのであります。(拍手)
 これを外に対する基本政策ということについて申すならば、第一に、吉田首相の平和維持に対する確信を国民は聞きたいのである。両條約は、アジアの平和と、ひいては世界の平和によりよく貢献するということが條約締結の目的でなければならないのであります。八千万の国民が、おとなも子供も、一人の例外なく、日本を再び戦争に省き込んでもらいたくはない、何としても平和を維持してもらいたいということが、備わらない国民の折りであります。(拍手)いやしくもこの講和條約を結ばれた吉田首相は、この国民の祈りにこたえるものでなくてはなりません。場しかしながら、この問題につきましては、国民の間にも、アジア諸国の間にも非常なる不安と疑惑のあることは事実であります。その不安と疑惑のよつて来りまするゆえんば、米ソのはげしい対立の中で、朝鮮における戦乱もいまだ解決せず、アジア全体がきわめて不安定な基礎の中に置かれているときに、日本が一方の陣営に加担することが、いかなる影響をアジア諸国に與えるかという、このアジア全般に対する背景と、もう一つの問題は、平和條約の第五條によつて、日本はあらゆる援助を国際連合に與える義務を負うでおるのであります。また日米安全保障條約の第一條には、日本に駐留する米国軍隊は、日本の防衛のみならず、極東の平和のためにも出動する、ということが規定されておるのであります。このアジア全般の情勢と、この平和條約並びに日米安全保障條約の規定とを結びつけて、国民は、この條約によつて日本が再び戦争に巻き込まれるのではないかという不安を感じておるのであります。(拍手)政府は、この條約は、戦争ではなくして、アジアの平和に、世界の平和に寄與するという確信のもとに結ばれたことと信じます。政府は、この機会において、国民の前に、この條約を締結することが、アジアの中和に、ないしは世界の中和によりよく貢献し得るゆえんのものであることを、国民が納得できるように御説明願いたいと思うのであります。(拍手)
 第二点は、ソ連、中共に対する対策であります。日本の外交の基調が世界の平和の維持に置かれなければならぬことは言うまでもありません。少くもも日本は、アジアにおいて戰争の原因にならない、アジアにおいて平和の妨げにならないということが必要であります。吉田首相は、自由国家群に加わつて防衛力に貢献せば平和が維持できると、簡単に割り切つていられるのであります。しかしながら、現実はさように簡単なものではないのでありまして、その具体的な方式としては、今後日本が血みどろな努力を平和の維持に拂わなければならないということであります。われわれは、もし共産陣営が日本を侵略するがごときことがあるとするならば、あらゆる国力を傾倒してこれと戦う覚悟であります。しかしながら、日本がソ連に対しても中共に対しても進んで侵略するがごとき意図が全然ないことは明白であります。アメリカもまたさような考えを持つておるということは信じられないのであります。日本国民全体は、中国の大衆に対してはでき得る限り親善関係を結んで行きたいという強い希望を持つておるのであります。この日本人の真意が曲解されて、中共政府が日本を目標として中ソ同盟條約のごときものを締結されることは、まことに遺憾しごくであります。私どもは、この中ソ同盟條約の締結が日米安全保障條約に対する一つの根拠を與えておると信じます。しかしながら、このソ連、中共に対して日本の真意を伝えることが一切むだであるとあきらめることは、平和に対する熱心な日本の態度であるとはいえないと思います。われわれは、あらゆる機会をとらえてソ連・中共のみならず、アジアの諸国に対して日本の真意を伝え、アジアの平和を確保するためにあらゆる努力を拂うという労をいとうてはならないと考えるのであります。
 吉田総理は、サンフランシスコにおいて、中国との経済関係というものを非常に過小評価されました。数量、金額の点においては別といたしましても、質的に見て、中国の経済と日本の経済とは非常に重大な関通性を持つておることは明らかであります。これを過小評価されたということは、総理が国民政府を承認せんとする伏線ではないかと思うのでありますが、この点はいかがでありますか。中共、ソ連に対する態度と、今申し上げました点に対する総理のお考えを承うたいの岩あります。(拍手)
 第三には、アジア全般に対する政策であります。従来吉田外交の重点がアメリカ並びに西ヨーロッパ諸国に置かれて、アジア諸国をネグレクトされたことは事実であります。その結果、インド、ビルマのごときは、この講和條約には参加しなかつたのであります。また、その他のアジア諸国の発言を見ましても、日本に対し相当峻厳なもののあつたことは、総理お聞きの通りであります。われわれは、西ヨーロツパ並びにアメリカ諸国からも孤立してはいけないと同時に、アジアから孤立して日本の将来は断じてないのであります。(拍手)われわれは、今後日本の外交の基調が、アジアと日本とがいかにして結びつくかというところに置かれなければならないと信ずるものであります。アジアの誤解を解き、アジアの信頼をとりもどすような外交政策が講和後においてとられなければなりません、そのため、われわれは、共産主義に利用されるソ連隷属の民族主義運動は別としても、純粋な形におけるアジアの民族主義の要望に対しては、日本はよき理解者でなければならないと思うのであります。日本がアジアの民族主義運動に対する抑圧の勢力であつてはならないのであります。また一面においては、アジアの貧困に対しましては、日本の技術と日本の工業力を提供して、できる限りアジアの工業化に貢献をし、アジアの生活水準を高めるために、日本は縁の下の力持ち的役割を果すことが必要であります。総理は、先ほどの答弁において、アジアを率いてというようなことでございましたが、そういうふうな立場ではなくして、謙虚な立場で、アジアの経済開発に対して縁の下の力持ちをするという態度が、アジアと日本とを結びつけるために必要と考えますが、アジア全般の政策について、吉田首相はどういう御見解をお持ちであるか、承つておきたいのであります。(拍手)
 第四には内に対する基本政策でありますが、第一には経済についてであります。講和を受入れる国内の態勢としては、政治経済にわたる日本の安定ができ上つておるということが必要であります。ところが、今日終戦後六箇年を経過し、アメリカからは二十億ドルにわたる経済援助資金を日本に與えられておりまするが、日本の経済は少しも今日安定はいたしておりません。一口に申せば、物価と景気の変動の中に浮いたり沈んだりしておるのが日本の状態であります。日本の経済活動の一切がスペキュレーシヨンであるということである。投機であるということである。糸へんの景気だといえば、繊維工業というものが無制限にできて来る。何へんの景気だといえば、それにどつと流れて来る。日本の経済構造のどこにもバランスのとれた発展が考えられないのであります。(拍手)計画的に日本の基礎生産力を培養しようという努力が少しも拂われておりません。現政府の経済政策は、設計書なしに家を建てようということである。
 電力飢饉のごときを例にあげてみても、少し雨が降らぬといえば、すぐに電力飢饉が来て、工場も家庭生活も麻痺状態になる。しかも、それが壁にぶつかるまで何の対策も講じない。この古くさい自由放任経済によつて、いかに今日の日本の経済の安定が阻害されているか、反省されなければならないのであります。今の政府がとつておるがごとき素朴なる自由放任の経済を世界でやつておるのは、おそらく中南米の植民地と吉田内閣くらいのものであります。(拍手)私どもは、こういう国民をあげて投機経済に追い込むがごとき自由放任の経済には反対である。また、今日の経済のごとく、きのうまでは非常に大きな事業をしておつたかと思うと、今日は食うや食わずの生活に陷るような、こういう振動の幅の広い経済ではなくして、振動の幅を狭くして、国民経済に対して安定を持たしたいというのが、われわれの立場であります。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○三木武夫君(続) 日本のこの限られた領土、限られた資本、資源のもとで八千万の国民が生活をして行こうというのでありますから、野放図な自由放任経済で国民生活の確保ができるものでは断じてありません。電源開発にしても、日本の今後における産業の活路は電源を開発するということに全力をあげなければならぬことにあることは申すまでもないのであります。しかるに、この内閣は、二十五年度における電源開発は、自家用発電を除けばわずかに二万キロワットの開発しかしていないではありませんか。電源開発のごときは、五箇年計画なら五箇年計画という長期の年度計画を立てて、資材・資金等のごときを優先的に配分して電源開発をするというような政策をとらなければ、電源開発のごときものは確実に実現できるものではないのであります。(拍手)
 また今日、鉄鋼であるとか、非鉄金属であるとか、あるいはまた石炭であるとか、こういう基礎的な重要資材に対して、日本のごとく無制限にその使用を許しておる国はどこにもないのであります。町にはたくさんのビルディングが建つても、一方山崎運輸大臣も言われたような造船のごとき国家緊要な事業が少しもはかどらないというような政治は、これは正しい政治のあり方であるということは絶対にできないのであります。(拍手)重要資材に対する用途制限というものは、ただちに実行することが今日の日本の国情であります。
 また資本の点につきましても、今日のごとく資本の少い日本で、資本に対する統制も実施しないで、資本が国家の望む重要な部分に確実に流れて行くという保障はないのであります。今自由党内閣のとつておる自由放任経済を継続して、経済の安定がはかれるという確信を吉田総理はお持ちになつておるのかどうか、この機会に承りたいのであります。(拍手)
 次は政治に関してでありますが、今日の政治もまた安定を欠いておるのであります。政治の安定の基礎になるものは、秩序が守られておるということと、もう一つ政治が進歩を目ざしておるということが、政治の安定の基礎條件であります。(拍手)ところが、秩序の点について考えてみまするならば、毎日の新聞紙上を見ましても、官庁の収賄であるとか横領であるとか、汚職事件が出ていない日はないのであります。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○三木武夫君(続) 今日ほど日本の官紀が紊乱しておる時代はかつてないのであります。政府の監督下にある官庁の秩序のごときすら今日は守られていないのであります。
 また政治が進歩を目ざしておるかという点についてでありますが、団体等規正法の改正、あるいはまた労働三法の改正等に現われておる吉田内閣の考え方は、進歩に逆行した方向にこの改正を考えておるのであります。(拍手)たとえば労働三法についても、吉田総理は、施政方針の演説に労働三法改正の意図をほのめかされましたけれども、部分的に日本の実情に沿わない点を改正することはわれわれも反対でない。けれども、労働三法の原則、労働三法の精神というものに改正を加えようとするがごときことがあつたならば、今後日本は通商協定を結ぶこともできないであろうということは、総理自身がサンブランシスコの会議を通じて御承知のはずであります。やはり日本は、労働三法のごとき国際的労働條件のスタンダードは苦しくても守つて行くということが、世界に対する日本の信頼を深めるゆえんであります。(拍手)
 要するに、今日の吉田内閣の政治の傾向として非常に強く現われて来ておることは、権力政治、金力政治の傾向であります。この内閣の性格を最も端的に代表するものは池田蔵相であります。先般も、庶民の生活がわずかに支えられておる主食の配給を撤廃するというがごとき無謀な計画をこの内閣が発表されまして、池田蔵相の言として、米が高くなつで、貧乏人が米を食うことができなければ、貧乏人は麦を食えということを、堂々と新聞に発表せられておるのであります。(拍手)これは簡単な言葉ではありまするけれども、この言葉の中に、国民はつぺこべ言うなという権力政治のにおいがある。またこの言葉の中に、「金持ちは何をしてもいいのだ」という金力政治のにおいがあるのであります。(拍手)
 吉田内閣の施政を通じて、私ども国民は、高いヒューマニズムというものを少しも感ずることができないのであります。(拍手)吉田内閣の政治経済を通ずる政策の中には、一片のヒユーマニズAがないということであります。(拍手)今日における政治が、各国とも社会保障制度のごときをきわめて熱心に取上げて、国民とともにわけ合つて生きて行こう、国民とともに乏しいながらもわけ合つて生きて行こうということが世界政治の傾向である。政治の中にこの根底がなければ、治安の維持すらも将来においては問題が起つて来るのであります。
 現に日米安全保障條約の中には、日本文では内乱、騒擾という大きな言葉が使われておりまするけれども、しかし條約の原文は、ライオツトとデイスターパンスという言葉を使つてあるのであります。このライオツト、デイスターパソスという言葉は、日本語に訳した内乱、騒擾ということよりかは、もつと小さい場合を規定する言葉であります。してみると、日米安全保障條約によつて駐留する米国軍隊が、極東の平和の維持に出動するばかりでなく、国内の治安の維持にも出動できる。それが騒擾であるとか、あるいはまた、ちよつとした不穏な形勢にも出動できるようになつておるのであります。むしろ、この條約は、できる限り米軍が出動しやすいようにできておる條約であります。国民からするならば、せめて国内の治安の維持くらいは政府によつてやつてもらいたいことが率直な気持であります。しかしながら、政府が国内の治安の維持に対しても自信を失つて、米軍の出動をしてもらわなければならぬということならば、一体今日まで治安の維持に対して政府は何をやつておつたのかと言いたいのであります。(拍手)こういう條約を結ばなければならなくなつたということだけでも、大橋法務総裁は辞職をするくらいの責任を感じなければならない。(拍手)
 以上申しました官紀の紊乱、団体等規正法、労働三法の改正等に現われる政府の非民主的傾向並びに治安の維持等に対しての国内政治の安定に関する吉田首相の方針を承りたいと考えます。
 次は平和條約の内容についてであります。われわれはポツダム宣言を受諾いたしたのでありますから、領土に対しても、ある程度の領土を喪失することは当然に覚悟をいたしておりました。けれども、戰争によつて膨脹した以外の領土は当然に日本に返還されるであろうということが、国民の期待であつたわけであります。こういう点で、千島とか、あるいは、南西諸島が日本の手から離れますことは、国民の深く失望したところであります。ところが千島につきましては、これはソ連がこの講和條約の調印に加わつておりませんから、千島の将来の帰属というものについては問題が残されて来るわけであります。私どもは、千島の領土権に対しては将来にわたつて日本が主張すべしという意見であります。政府の見解を承りたいのであります。
 また奄美大島、琉球、小笠原等の諸島につきましては、われわれは、米英共同宣言にある、米英は新たなる領土を欲せず、米英は住民の意思に反して領土の変更を行わずという共同宣言を信じて、将来においてこういう地域が日本に返還されるものと期待いたしております。少くともアメリカが管理されておる間における処置としては、住民の国籍を変更することをしないこと――国籍の無変更、あるいは通商交通の自由は認めてもらわなければならないと考えておりますが、との点、政府はどういう意思を持つておるのか承りたいのであります。
 さらに賠償については、日本が戰争中実害を與えたアジアの諸国に対して、日本が誠意をもつて賠償の義務を履行すべきことは当然でありまするが、もし無理な賠償を日本に要求して、日本の力が弱体化するならば、アジアの自由国家群全体の上についても、これは決して望ましいことではないのでありまするから、賠償に対しては、現地の経済開発、現地の農業技術の向上等に日本の技術、労務を提供する形において賠償の義務を履行することが適当であると考えておりますが、政府の賠償に対する見解はいかがでありますか、承りたいのであります。
 さらに、いつも問題になりながら明らかになつていない点でありますが、平和條約第五條に、日本は国際連合にあらゆる援助をしなければならぬ義務規定があるのであります。「あらゆる」ということの限界は当然になければならぬと考えますが、この際明らかにしていただきたいのであります。さらに、これだけり義務を日本が国際連合に対して持つ以上は、国連へり加入が、安全保障理事会の拒否権等の都合もありましようが、急速に実現されなければならぬと考えますが、国連加入に対して政府はどういう考えを持つておるか承りたいのであります。
 次は、日米安全保障條約をこの内閣が締結された前提として、吉田首相の世界情勢に対する的確な判断を国民の前に明らかにしてもらいたいと思うのであります。吉田首相は、サンフランシスコにおもむかれるまでは、外からの侵略は日本にはない、内の治安も大丈夫であつて、時局を重大に言うことは、かえつて神経戰にかかつておるのだといつて、国民を警告したのであります。ところが、サンフランシスコに吉田総理が参られると、この情勢判断は百八十度の転換をして、日本は北海道のごとき北からの侵略の脅威にもさらされておれば、また国内の治安も、日米安全保障條約によつて米軍の出動を懇請しなければならぬ非常な不安定なものであるということになつて参つたのであります。総理が、かくのごとく世界情勢に対する判断をときどきに変更されますことは、国民としても非常に不安であります。(拍手)総理は世界情勢に対してどういう判断をお持ちになつておるのか、この際明白に承つておきたいのであります。(拍手)
 また日米安全保障條約と再軍備との関連性であります。吉田総理が調印された日米安全保障條約の前文には、日本は自国防衛のために漸増的にみずから責任を負うと書いてあります。漸増的にみずから責任を負うということは、端的にいえば再軍備ということである。また総理は、サンフランシスコの演説において、日本は将来みずからの力によつて日本を守る覚悟であります、という演説をされておるのであります。みずからの力によつて日本を守るというのは何であるか。それは結局再軍備ということではないか。再軍備ということ、日本が軍備を持つということは、八千万国民がだれ一人として喜んでいるものはない。けれども、日本が軍備を持つということが必至の情勢であるとするならば、吉田首相のごとく再軍備か否定して――事実は十分に世界情勢を承知されながら、国民の前に再軍備を否定して、国民に対して見通しを與えないという態度は、国民に対する忠実な態度であるとはいえないのであります。(「ノーノー」)その時期は別といたしましても、国民にその覚悟を促すことが総理としての責任である。(拍手)これに対して総理の見解を承りたいのであります。
 次は、日米安全保障條約の性格について、重要な数点をお尋ねいたします。
 第一点は、わが国は非武装憲法を持つておるのであります。この日米安全保障條約と、非武装を規定する憲法九條との関係を政府はどういうふうに解釈しておるか、承りたいのであります。
 第二点は、この日米安全保障條約の性格は、対等国家間のとりきめであります。また講和條約が効力を発生しても、九十日間という占領軍の引揚げ猶予期間があるのであります。しかるに、国民の中にも、あるいはまた世界にも、この点については相当な誤解を與えておりますが、なせこの日米安全保障條約を日本が独立後に締結して悪かつたのでありますか、この点を承りたいのであります。
 また第三点は、この日米安全保障條約は、アイデアのみあつて、骨組みすらも條約の中に規定されていない、非常に異例な條約であります。アイデアのみでなく、なぜ骨組みの大綱ぐらいは條約の中にお入れにならなかつたのか、承りたいのであります。(拍手)
 また第四点は、米軍は外部からの攻撃に対して日本国の安全に寄與することができると、第一條に規定してあります。日本の安全に寄與することができるということであつて、日本防衛の積極的かつ決定的義務はこの條約の中に欠けておるのであります。しかもこの條約には期限がついておりませんから、あるいは條約上は、永久駐兵もできれば、何時でも引揚げることが可能になつておるのであります。対等国家間のとりきめとしては、これはきわめて不完全な條約といわなければなりませんが、政府はこれについてどういう意見を持つているか、承りたいのであります。(拍手と
 次は、二の條約は行政協定に重要な諸点がゆだねちれておりまするが、その交渉は一体どうなつておるのでありますか。対等国家間のとりきめであれば、交渉の途中であつても、政府の方針というものがなければならないのであります。従つて以下申しまする諸点に対する、交渉の経過ではなくして、政府の方針を承りたいのであります。
 第一点は、米軍が極東の平和のために出動する場合のその判定は、米国が一国でやるのか、あるいは他の機関たとえば国際連合等の機関に諮るのか、日本の同意というものがその場合に必要なのか、承つてきたいのであります。また国内の治安に対する出動の判定は、これは政府の要請にばるということでありますが「政府が要請をする場合の判定の基準はどうなつておるのか、承つておきたいのであります。
 第二点は、日米合同委員会の組織と権限は対等でなければならぬと考えますが、この組織と権限を、どう政府はしようという方針であるか、承りたいのであります。
 第三点は、基地新設あるいは拡充、駐留兵力というものは無制限ではないはずと思いますが、これはどうなるのか、承りたいのであります。
 第四点は、軍人の裁判権は別として、地域的な治外法権の設定は両国のためにならぬと私どもは考えておりますが、この法律関係はどういうふうになつているか、承りたいのであります。
 第五点は、費用の分担に対してはどういうとりきめになるのであるか、政府の方針を承りたいのであります。
 最後に、もし行政協定という名のもとに、いかなることもこの行政協定によつて結べるということになつて来ますると、これは戦争中における国家総動員法以上のものであります。(「ノーノー」拍手)こういう広汎な白紙委任状を政府に渡すことは、日本の憲法にも違反するところであります。(「ノーノー」拍手)従つて今後、国民の権利義務に関することは一切国会における立法措置を伴わなければならぬと考えますが、政府の見解はどうでありますか、承りたいのであります。(拍手)
 以上の諸点について、国民の疑念に対し、余すところなく答えられなければならぬと考えます。独立国の中に外国の軍隊が駐留するということは重大なことであります。しかも、その駐留する外国の軍隊が、国内の治安に対しても出動するというのでありますから、これはきわめて重大なことであります。そこで、多数の国民がその事実をよく納得して、米国の駐留軍と日本人との間に善意と協力の関係が成立しなければ、かえつてこの駐留軍隊は日本の防衛力にはならないのであります。(拍手)日本人も米国軍隊をやつかいなものがおると考え、また米国の駐留軍も背後に冷たいものを感じたのでは、これは決して日本の防衛力にはならないのであります。従つて、この日米安全保障條約については十分に審議を盡して、国民の疑惑に対して、余すところなく答えるという態度を政府がとることを国家のために要望するものであります。(拍手)そうすることが日本のためでもあり、米国のためでもあるのであります。われわれは、かかる厳粛な問題を政党のかけひきに利用しようというようなことは毛頭ないのであります。しかしながら、もし政府並びに與党が、審議を十分に盡さずして、多数の力によつてこの法案の通過をはからんとするならば、断固として闘うものであるということを表明するものであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。
 このたびサンフランシスコにおいて調印されたこの講和條約と保障條約、それが三木君のお話によると、かえつて世界の戦争、米ソの戦争を激発する原因をなすのではないかという御心配でありますが、これは断じてそういうことはないと私は断言いたします。何となれば、保障條約、またこの講和條約、これはことごとく平和を保障せんとする趣意に出たのであります。日本に独立を與えた。その独立は、防禦のない日本としては、いかにその防衛を維持するか。すなわち安全保障條約によつてアメリカが援助をする、あるいは言葉をかえていえば、集団攻撃に対しては集団的に防禦をするという條約の趣意であります。この條約の趣意から考えてみても、これはいくさをするためではなくて、平和を維持するためであります。また独立を維持するためであります。日本がもし戦争の渦中に省き込まれるというようなことがあれば、これは極東全体に及び、やがて世界の戦争を省き起すから、日本に真室状態が生じないようにしたいというのが、保障條約の趣旨とするところでありまするから、日ソの戦争あるいは世界第三戦争を省き起すその動因になるということは、私はあり得べからざることであると信ずるとともに、趣意はまつたくその反対であるということを、ここに断言いたします。(拍手)
 またアジアとの間の、中共もしくはソビエトとの関係をどうするかという御質問でありますが、中共もソビエトも講和條約に参加を拒んだ国柄であります。但し中共は少しく違いまするが、少くともソビエトは参加を拒否した国であります。この参加を拒否した国に対して、日本がその参加を求むるということは不可能なことであります。しばらく時日を待つよりほかいたし方がないのであります。中共に対してまた大同小異の議論が立つと思いますが、インド等は日本と早く講和條約を結びたいという意思を表明しておるのであります。ゆえに、日本がインドその他アジアの諸国からして全然孤立いたしておるということは、これは妄断であるといわざるを得ないのであります。(拍手)のみならず、賠償の規定を置いた、賠償の義務を認めた、これに応ずることを承認したということは、よつてもつで善隣関係を回復いたしたいという趣意に出ずるのであります。もし日本が占領中に不当な損害をかけた、またそのために国民が非常に困つておる、まことに気の毒な状態にあるとするならば、これに対して日本が国力の及ぶ限り賠償をする、その回復の援助をする、これは善隣の義務であると思います。この善隣の義務を果すがために賠償要求に応ずることの原則をきめ、但しそれは日本の国力の及ぶ限りにおいてできるだけ出す、これは少しもその趣意において疑うぺからざるところであります。
 また国連加入につきましてもお尋ねがありました。国連加入にはいろいろ條件がありまするから、国連が日本に対していかなる條件で加入を勧めるか、承諾するか、これは今後の交渉にまつほかいたし方ないのであります。
 世界の情勢について、私の考え方が始終かわるというような話でありますが、私の世界情勢に対する判断は、かつてかわつたことはないのであります。(拍手)第三次世界戦争は起らない、米ソ関係は何とかしかるべく調整せられるであろう、この観点から絶えず考えをいたしておるので、ただ私の申したことを曲解いたせば、いかようにも私の意見がかわりますが、本人の私の意見としては、毫もかわつた覚えはないのであります。
 また行政協定についていろいろお尋ねがありましたが、行政協定は今後の協定にまつのであつて、今日までは何らきまつたところがないのであります。しかしながら、なぜそれならば独立した後にやらないのかというお尋ねでありますが、平和條約も独立以前において調印されたのであります。平和條約が調印されて独立が確保せられるというときに、その独立をいかにして守るかという條約に調印をしてなぜ悪いのか、私は判断に苦しむのであります。(拍手)また平和條約の中には賠償の規定があります。賠償の規定は、ただ原則がきまつただけの話であつて、その内容は何もきまつておらないので、今後の交渉にまつのであります。もし行政協定の内容がわからぬから安全保障條約もいけないとおつしやるならば、平和條約もまた御賛成ができないはずであると私は思うのであります。(拍手)そういうよなことを、るる申してもいたし方ないのでありますが、私の考えるところは、そういうようなところであります。
 その他についてはまた後に御説明いたします。(拍手)
    〔三木武夫君発言を求む〕
○副議長(岩本信行君) 三木君に申し上げますが、申合せの時間を経過しておりますから、この際特に許しますが、簡潔に願います。
    〔三木武夫君登壇〕
○三木武夫君 ただいまの吉田首相の答弁は、私の質問に対してきわめて不満足な答弁であります。(拍手)そこで、次の重要な数点に対して私は再質問をいたします。
 第一点は、平和條約の第五條にある、あらゆる援助を国際連合に與えなければならぬ、この「あらゆる」というのは、場合によれば日本の義勇軍あるいは警察予備隊の海外に対する出動をもこの中に含んでおるかどうかということを明らかにしておいてもらいたいと思うのであります。(拍手)
 また第二点は、中共と国民政府の問題の選択が日本に許されておるということであるが、私は、中国と日本との経済関係を過小評価するのは国民政府を承認する意図かどうかということを聞いたのであります。これに対して、吉田首相の見解を明らかにしておいてもらいたい。
 第三点は、行政協定の内容については交渉中であるから明らかにされないというお話でありましたが、もし従来の條約であるならば、当然に行政協定に含まれるがごときことは條約の中に含まれなければならないのでありますます。條約の中に含まれなければならないようなことを一切行政協定にゆだねてあるのでありますから、当然どういう行政協定を結ぼうとするのであるかという政府の方針を明らかにすることが必要であります。(拍手)アメリカのごとく大統領の権限が非常に広汎で、行政というものに広汎な権限を委任されている国と違つて、日本の憲法は国会が国権の最高の機関であるのであります。従つて、国民の権利義務に関係をするがごとき重大な、当然に條約の中に規定されなければならぬようなことを、行政協定にゆだねておるのでありますから、国会で行政協定の内容についての政府の方針を明らかにせよということは、日本の憲法の建前からも当然に言えることであります。
 最後に、條約の中には、日本の国土を防衛するという決定的な義務規定がないではないか、場合によつたならば、期限もないのであるから、いつでも引揚げ得る余地も残つておるし、永久の駐兵もできる。そこで、この條約は日本に対する決定的な、積極的な保障の義務を欠いておるから、條約の不備ではないか、不完全な條約ではないか。この不完全な條約のもとに日本の安全保障が完全であると、総理大臣はどういう理由から考えられておるのか、これを明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 「あらゆる」の意味がさしあたり何であるかということは、今後行政協定との関連においてはつきりするところであります。今日一方的にできないということは、あたかもアメリカから日本がしいられることがないということと同じことであります。
 中共についてお話がありますが、中共の関係について私は過小評価したのではないのであります。事実を事実といたしたのである。日本は中国との経済関係がない限りは存立できないようによく言われるのでありまして、これを過大評価せらるる言論がしばしば聞かれるのであります。ゆえに私は、終戦後六年の間、中国との間に経済関係なくして、経済協定なくして今日まで来たことによつて見ても、中国なくしては日本が成立できないということは、過大評価であると言わざるを得ないと申したのであります。(拍手)
 また行政協定は、やがてこれは予算の形かあるいは法律の形において、いずれ諸君の協賛を経ることになりますから、そのときた十分御批判があつたらよいと思います。
    ―――――――――――――
○福永健司君 国務大臣の説に対する残余の質疑は延期し、明十六日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 福永君の励議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十七分散会