第012回国会 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第9号
昭和二十六年十月二十五日(木曜日)
    午後一時二十一分開議
 出席委員
   委員長 田中 萬逸君
   理事 北澤 直吉君 理事 倉石 忠雄君
   理事 島村 一郎君 理事 竹尾  弌君
   理事 笹森 順造君 理事 並木 芳雄君
   理事 水谷長三郎君    池田正之輔君
      石田 博英君    石原 圓吉君
      石原  登君    伊藤 郷一君
      植原悦二郎君    小川原政信君
      菊池 義郎君    栗山長次郎君
      近藤 鶴代君    佐瀬 昌三君
      鈴木 正文君    田嶋 好文君
      田渕 光一君    橘  直治君
      塚田十一郎君    仲内 憲治君
      中山 マサ君    西村 久之君
      西村 直己君    原 健三郎君
      福田 篤泰君    藤枝 泉介君
      守島 伍郎君   山口喜久一郎君
      若林 義孝君    小川 半次君
      坂口 主税君    中曽根康弘君
      三木 武夫君    山本 利壽君
      吉田  安君    猪俣 浩三君
      勝間田清一君    西村 榮一君
      松岡 駒吉君    田島 ひで君
      林  百郎君    米原  昶君
      中村 寅太君    黒田 寿男君
      佐竹 晴記君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣
        外 務 大 臣 吉田  茂君
        法 務 総 裁 大橋 武夫君
        大 蔵 大 臣 池田 勇人君
        厚 生 大 臣 橋本 龍伍君
        通商産業大臣  高橋龍太郎君
        運 輸 大 臣 山崎  猛君
        労 働 大 臣 保利  茂君
        国 務 大 臣 周東 英雄君
 出席政府委員
        内閣官房長官  岡崎 勝男君
        外務政務次官  草葉 隆圓君
        外務事務官
        (政務局長)  島津 久大君
        外務事務官
        (條約局長)  西村 熊雄君
    ―――――――――――――
十月二十五日
 委員松本瀧藏君辞任につき、その補欠として三
 木武夫君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 平和条約の締結について承認を求めるの件(条
 約第一号)
 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約
 の締結について承認を求めるの件(条約第二
 号)
    ―――――――――――――
○田中委員長 これより会議を開きます。
 昨日に引続き質疑を継続いたします。三木武夫君。
○三木委員 この日米安全保障條約が真に防衛力の目的を達成するためには、日米相互の善意と理解が不可欠の要件であると考えます。そのためには、国民に條約の精神及び目的はもちろんのこと、その実施手段の骨組みだけは、本国会を通じて十分の理解を与えることが必要であります。のみならず、アジアにおいても、日本の真意というものを誤解して、この條約は日本が不本意ながら結んだものではないかという誤解もあるわけでありまして、このアジアの誤解を解くことも必要であります。
 総理がよく引例されます平和條約の賠償條項にも、目的、精神のみならず、実施手段の大綱が示されておりますが、安全保障條約では、一切をあげて行政協定に譲つてあるのであります。しかも今日まで政府は、行政協定については交渉に臨む基本的な方針を明らかにされておりません。もちろん外交交渉をこれからおやりになるわけでありますから、その間いろいろ政府としてもこれに臨むにあたつて、外国に与える影響等もお考えになると思うのでありますが、とにかくこの條約が対等の條約であるという意味からして、この交渉に臨む政府の基本的方針はなければならぬと思うのであります。これについて国民の間にも不安と疑惑があるのでありますから、この不安と疑惑を條約承認前に氷解しておかなければ、日米相互の善意と理解は得られない。こういう点で、以下行政協定の内容にわたつて質問をいたしたいと思いますから、総理におかれても率直に御答弁をお願いしたいのであります。
 第一点はこの安全保障條約の発動に対する基準であります。この安全保障條約は、国外に発動する場合、また直接の侵略を日本が受けたときに発動する場合、国内の治安のために発動する場合、この三つの場合が、保障條約を発動する場合として予定されておるのであります。第一の国外に発動する場合は、極東の平和と安全を維持するために、米軍の国外出動を予定しておるのでありますから、その場合日本の基地に対する報復爆撃等の可能性も生じて参りまして、これはきわめて日本に対する重大な問題であります。そこで極東の平和が脅かされたということが、米軍が国外に出動する基準になると思うのでありますが、この極東の平和が脅かされておるという判定は、どういう手続と、いかなる機関によつてこれを判定するのであるか、総理の御所信を承りたいのであります。
○吉田国務大臣 お答えしますが、しばしば申す通り、この行政協定は、今日におきましてはまだ結論に達しておりません。この協定はいかにも重大であるように言われますが、政府の見るところでは、そう重大問題とは考えておりません。しかしそれは見方であります。それでいかなる場合に日本以外に出動するか、これはそのときの状況によるのであつて、これは白米の間の話合いの結果出動すべきである。日本政府も同意すれば、そういう事態も起るのでありましようが、いかなる事態にということを、ここで架空の問題として原則をきめるということは、これはできないことではないかと思います。実際の状況によることであると思います。
○三木委員 今の御答弁は、少くとも安全保障條約の国外に対する発動は日米の完全なる同意のもとに行われる、こういう御答弁と解釈いたしてよろしいですか。
○吉田国務大臣 同意というか、協議の結果、結論に到達するということと考えております。
○三木委員 次に日本が直接侵略を受けた場合でありますが、この相互の措置、たとえば国警とか警察予備隊、こういうものが米軍の指揮下に属するとかいう相互的なその場合における措置は、いかにお考えになられるか承りたいと思います。
○吉田国務大臣 それは一応今日の考えとしては、日本における治安は日本の国警その他をもつて維持する。その力の及ばざるような事態が発生した場合においてのみ、米軍が出動をするといいますか、竹本と協力する。そういう事態が起るでありましようが、これらについても今日どういう事態にという具体的の話はできません。
○三木委員 今のお尋ねは、日本の直接侵略の場合における相互の措置はどういうものであるかということをお尋ねしたのです。これは国内治安に対する保障條約の発動の場合ではなく、直接侵略の場合をお尋ねしたのであります。その問題もあとでお答え願えればお答え願いたいと思いますが、次に国内治安の維持については、これは日本の責任において自力でやるということが原則であろうと思うのです。従つて国内治安の維持のためにこの安全保障條約を発動することを要請するというのは、ごく限られた場合、たとえば外国の教唆によるクーデターのごとく、政府の転覆を直接行動をもつてはかる、こういうよくよくの場合以外は、国内の治安維持については直接に政府が責任を負うべきものと考えるのでありますが、政府においてはこれをいかがお考えになりますか。
○吉田国務大臣 その通りであります。
○三木委員 ただこの場合共産党との関係でありますが、共産党の国内治安の撹乱につきましては、共産党がモスクワの指令によつて動くものだということは、これは世界の定説であります。
    〔「うそを言うな、どこからそんなことが出た」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 静粛に。
○三木委員 従つて共産党が関与する直接行動は、外国の教唆によつて国内の治安を撹乱するというこの條項に、非常に当てはまりやすいのであります。共産党の治安撹乱と本法の発動の要請について、政府はどういうふうにお考えになつておるか、承りたいのであります。
○吉田国務大臣 これは共産党と限らず、いずれにしても日本の治安が外国の教唆等によつて乱されるという危険が生じた場合に起る問題でありますが、それにしても、原則としては日本の治安は日本の力でみずから守るというふうにいたしたいと考えます。
○三木委員 その国内の治安の維持のために本條約の発動を要請する場合の、その要請すべきであるという判定は、政府の一存によつて御判定になるのか、他に何か判定の基準、機関等が設けられるのか、承りたいのであります。
○吉田国務大臣 これはそのときの状況によりますが、日本の警察等によつて力の及ばないほどの重大な事態において、初めて考えるべきものであると私は考えております。
○三木委員 次に費用の分担の点でありますが、本條約にも漸増的に自衛の責任を負うということを前文に書いてありますために、日本側の分担金は最小限度にとどめて、日本みずからの自衛力強化に振り向けることが必要である、そうすることが本條約の精神にもかなう道であると考えます。このように米国の了解を得るように、当然政府は努力をされることと思いますが、政府の所信を承りたい。
○吉田国務大臣 日本の治安を守るために、日本の安全保障のために、外国――米国軍の駐留を希望いたしておるのでありますから、日本国としても日本国相応の、その事態に相応するだけつの分担をするのが、これは日本国民の名誉といいますか、自負心からいたしましても、いたすべきであると思います。しかしながら、今のところは何らの話はしておりません。話がそこまで及んでおりません。
○三木委員 費用の点については今申したようにわれわれは強い希望を持つておるので、そういう意見を体して御折衝あらんことを希望するものであります。
 第三には基地設定の原則と申しますか、基地設定に関してでありますが、われわれは無用の摩擦を避ける意味において、基地が都市を離れた――少くとも六大都市というようなものの周辺に基地を設けらるべきものではないということが、無用の摩擦を避ける意味において必要だと考えるのでありますが、政府は基地設定についてどういう御見解をお持ちになつておられるか。
○吉田国務大臣 基地設定という考え方は今日毛頭ございません。しかしながら米国軍が駐留する場合には、どこに設営するかという問題が自然起つて来ると思いますが、しからばどこの地点かということはまだ具体的には話しておりません。
    〔発言する者あり〕
○田中委員長 林君、静粛に願います。
○三木委員 こういう話合いはできておいでにならぬかもしれませんが、この條約の中にも、基地という言葉を使つてあるわけであります。これを基地という観念でないということは――條約の中にすでに基地という文字があるわけで、これは当然に基地という問題が起るのである。基地を考えてない、ただ軍隊の配備だけだということは、総理の少しお考え違いで、基地が当然に予想されるわけであります。その基地という問題が今後起つて来るわけですが、基地は今申したように都市を離れる方がいい、こういう考えをわれわれは特つておるのですが、総理自身の見解をお尋ねしたい。
○吉田国務大臣 言葉じりを言いますが、基地という考えを持つておりません。しかしながら設営その他の問題は自然起ると思いますが、その場合には、御希望の通りなるべくとりはからいたいと思います。
○三木委員 言葉を返すようで恐縮でありますが、この第二條には、アメリカの同意なくして基地におけるもしくは基地に関する権利、権力もしくは権能、そのほかにもいろいろ書いてありますが、これらを第三国に許与しないとあつて、すでに條約の中に基地という観念がある。第三国にこういう基地を与えてはいけないということは、やはりこの間に基地という問題が当然に出て来るのではないか。この第三條のアメリカの軍隊が日本国内及びその付近に配備をするという場合、たとえば飛行場のごとき場合に――非常に限られた地域の飛行場というものを占用する場合に、それは基地という観念がそこに出て来ることは当然でありますが、そこはどういうふうにお考えになつておるか、承りたいと思います。
○西村(熊)政府委員 お答えいたします。墓地というものは一定の地域に限りまして、その範囲内の地域を九十九年なら九十九年という所定の年限、相手国に対して全部管轄を委譲することをいうのであります。いわゆるヂユリスデイクシヨン――ある所定の地域に対する国家のヂユリスデイクシヨンを相手国に委譲することが、すなわち基地であります。この安全保障條約では、そういう基地を設けるということは両政府間に毛頭ないところでございます。
○三木委員 それでは政府の考えておられるのは、ある一定の地域を基地として設定するようなことはしない、施設の便宜を米軍に許与する場合には、ただ施設であつて、それは地域的なものを含まないというように解釈をされておるのでありますか、承りたい。
○西村(熊)政府委員 日本におりますアメリカ軍隊が、起居のために必要な建物とその所要の土地を使用する、使用する間はアメリカ軍がそれを管理するということだけを考えているのであります。
○三木委員 これは、私どもと政府との基地という観念の相違だと思うのです。ある一定の地域を限つての飛行場の土地と飛行場の施設、これが基地でないとこう言われるのですが、これはわれわれの観念としては一つの基地である。これは納得をいたしませんが、これにかかわつてもいたし方ないので進みます。そうすると、米軍と日本人との法律関係は、飛行場なら飛行場という一定の地域を限つての治外法権というものはない、と解釈していいものかどうかお尋ねします。
○西村(熊)政府委員 さような治外法権は全然存在いたしません。
    〔発言する者あり〕
○田中委員長 共産党の田島君に注意いたします。
○三木委員 それでは政府が基地でないと言われるのですから、基地でないという政府の見解に従つて、ある地域、ある建物、こういうものを米軍がある一定の期間占有し、これを使用されるわけですから、そういう場所は制限され、かつまたこれを行政協定の中に明示さるべきが当然だと思う。フイリピンの場合もそうでありますが、これは制限、かつ列挙、明示されるかどうか、承りたいのであります。
○西村(熊)政府委員 日本がいかなる土地建物を使用に提供するかは、むろん相互の話合いで明定されることと存じます。(「紙の上に明定するかというのだ」と呼ぶ者あり)そういう方式までまだ話合いの段階に入つておりません。今後の問題であります。
○三木委員 これは国民の権利義務にも重大な関係を持つわけでありますから、当然に行政協定の中に、列挙、明示すべきものだ。政府はどういうふうにお考えになりますか。
○西村(熊)政府委員 日本政府が提供いたします施設、便益については、むろん具体的に明定する方針で参りましよう。
○三木委員 演習地の問題が起つて来るわけであります。これは一定の地域を限られなければ、無制限に全国至るところを演習地とすることが不合理なことは当然であります。これも一定の地域を限つて、これが行政協定の中に明示さるべきことが当然であると考えますが、政府の見解を承りたい。
○西村(熊)政府委員 演習地域のようなものが常設的に協定され、永続的な形で存在するということは、好ましくないと考えております。できるだけ数少く、必要な場合だけに限定するというような方法をもつて、話合いをすべきだと考えております。
○三木委員 次に米軍の特権に関してでありますが、これに対する法律関係、治外法権は、米軍の軍人に限る、しかも公務を執行しておる軍人に限る、休暇とかその他で公務執行中でない者は別であつて、公務を執行している軍人だけに限るべきものと考えますが、これは総理の御見解を伺いたい。
○吉田国務大臣 そういう問題は今日まで話合いになつておりませんから、お答えいたしませんが、しかしお話のようなことになるであろうと思います。
○三木委員 いろいろ日本人に対して米軍が損害を与える場合もあると思うのです。この米軍に対する損害賠償権は、当然被害者が持つておると考えますが、これは念のために政府の見解を承りたいのであります。
○西村(熊)政府委員 御指摘の点は、十分被害者が救恤を受けられるようにとりはからうべきだと考えておりまして、そういう方針で話をしたいと思つておるところでございます。
○三木委員 日米安全保障條約を実施する機関でありますが、これが世間では日米合同委員会のごときものがつくられるといつて、何か新聞紙上に外国電報等によつて国民にいろいろなことが――この日米合同委員会の構想のごときものが知らされておるわけでありますが、何らかの実施機関をつくらなければならないわけであります。日米合同委員会という名前は別として、何らかの実施機関をつくる場合における機構、権限、人事、こういうものは政府はどういうお考えでアメリカ側と折衝される考えであるか、承りたいのであります。
○吉田国務大臣 新聞にいろいろ出ておるかもしれませんが、しかし今日われわれの話合いのところでは、こういうものをつくつたらどうか、ああいうものをつくつたらどうかという話をしたことはありますが、確定したものはまだ話合いができておりません。従つて権限等については何らきまつたものがないのであります。
○三木委員 これを私が質問をしておるのは、何も行政協定を示せというわけではない。これはまだ交渉中であつて、示し得ないのだが、政府はどういう方針か、これから交渉に臨まれる政府は、政府としてのこれに対する基本的な方針がおありでありましよう。そんなものはなくて交渉するのだというのならば、これは対等の交渉にならない。政府は政府として交渉をされる基本的な方針というものがなければならぬわけであります。それを聞いておるのであつて、またできていないというようなことならば、全体の質問に対してそういうことは全部答えられないどいうことなんです。政府はどういう方針で外交交渉に臨まれるかを聞きたいのですから、そういう心組みでお答えを願いたいと思う。名前は別としても、何らか日米の間に常置的な機関が設けられることは、当然予測されるところであります。それは対等の原則でなければならないし、対等の原則であるということは、委員の数のごときも同数であり、また意見が異なつた場合は、これは両国政府できめるよりほかないと思いますが、そういう対等の委員会であり、また当然にこういうふうな機構、権限、人事のごときは――国の運命に関係するような問題も、この中できめられるわけであります。わずかな大したことでない委員会のごとき人事までも、国会の承認を受けているのですから、やがて設置を予想される実施機関の機構、権限、人事は、国会の承認を当然に受けなければならぬと考えるのであります。今申した対等の関係しかもその機構、権限、人事は国会の承認を必要とする、これに対して総理の所信を承りたい。
○吉田国務大臣 それは対等にいたすつもりであります。しかしながら今日のところ、具体的に委員会を設けるとか、人事をどうするとかいうようなことはきまつておらないから、きまつておらないと申すのであります。
    〔発言する者多し〕
○田中委員長 靜粛に願います。
○三木委員 これはまだきまつてないが、そういう機関がなければならない、これについていろいろなこまかい問題が起つて来ることは、総理も御承知の通りです。当然にそういう機関ができるわけです。そういう場合に、機構、人事、権限等は、国会の承認を当然に求めなければならぬと思うがどうかということなんで、これを簡單にそうだとか、どうだということをお答え願いたい。
○吉田国務大臣 これはその委員会なるものの構成が、いよいよ具体的になつたときにお答えをいたします。仮定の問題についてはお答えしない。
○三木委員 仮定と申しましても、こういうふうなとりきめについては、当然実施機関ができるわけでありますから、これは仮定できないのです。こういうものが必ずできるわけでありますから、総理はこういう機構、権限、人事等について、国会を倉重しなければならないということを、ここに申し上げておいて、次に移ります。
 この日米安全保障條約は、條約としてはきわめて異例なものであつて、ほとんど類例を見ない。行政協定に含まれるような條項は、当然にこれは條約の中に規定さるべきものであります。従つて今後締結される行政協定は、むしろ條約自体よりも、行政協定というものが、日本国民の権利義務に重大な関係を持つて来るわけであります。従つて国民の権利義務に関係をするような重大なことが、ただこの條約を国会の承認を得たからといつて、政府がかつてに行政協定を結ばれるとすると、立法機関の機能を喪失するわけです。国民の権利義務に関係する事項は、立法的な措置を講じ、予算に関係することは、もちろん予算として国会に提出することが当然であります。立法的な措置を講じなければならぬことは当然と思うのですが、念のために承りたい。
○吉田国務大臣 行政協定の中に、もし国民の権利義務に関することがあれば、むろん法律事項でありますから、国会に提出いたします。また予算においても同様、これはしばしば申している通りであります。
○三木委員 この行政協定の中には、公表される行政協定以外に、秘密協定はないものと解釈いたしますが、念のためにお尋ねいたします。
○吉田国務大臣 行政協定ができ上つた上で相談いたします。
○三木委員 次に、この行政協定の改訂の手続というものは、どういうふうな手続になるか。一旦きめた行政協定であつても、改訂しなければならぬ必要が起つて来ると思う。その改訂の手続はいかがであるか承りたい。
○吉田国務大臣 いずれこれらも行政協定の中に規定せられることと思います。
○三木委員 この行政協定というものは、時期によつて改訂の必要も起つて来ると思うのですから、これは改訂ができる余地を残さなければならぬことは当然であります。ただ最後に、この日米安全保障條約には、時期というものを切つてない。この時期というものを切つてないということは、すみやかに日本が自衛的な処置を講じて、できるだけこの條約を暫定的なものにして、きわめて短かい期間にこの條約の目的を果せしめるという気構えからだと思うのです。そうなつて来ると、この條約の将来の次のステツプと申しますか、これがきわめて暫定的なものでありますから、次のステツプとして、どうしても日米軍事力を組み合せて、対等の相互防衛協定に移つて行かなければならぬものである、こういうふうに解するのでありますが、政府のこれに対する見解を承りたい。
○吉田国務大臣 お話のようなことになるでありましようが、今日はそこまで話は進んでおりません。
○三木委員 政府の方針について私どもは承りたかつたのです。話が進んでおらないという点ではなくて、政府がどういう方針のもとにこれから交渉に望むかといろ、そういう心構えを承りたかつたのでありますが、総理の御答弁では、あまりに総理が用心深くて、政府の基本的な方針というものを示されない。この際に私は国民のためにも、もう少し総理に大胆にお話を願いたかつたのでありますが、これ以上追究いたしましてもお答えにならないので、私の質問を終ります。
○田中委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。
 この際午後三時まで休憩いたします。
    午後一時四十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時四十五分開議
○田中委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 これより平和條約の締結について承認を求めるの件、及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の締結について承認を求めるの件を一括議題として討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。守島伍郎君。
○守島委員 私は自由党を代表いたしまして、平和條約及び日米安全保障條約に対し賛成の意見を述べます。
 終戰後日本は、きわめて忠実に終戰條件を守りつつ、その民主化と復興に邁進して来たのであります。その結果、日本が国際社会に再び復帰し得るところの資格はすでに充実して来ておりました。従つて数年来われわれは、一日も早く平和條約ができましで、独立国家として世界に復帰し、自由なる活動によつて祖国の復興に一段の拍車をかけるとともに、世界の平和と繁栄に直接参与することを願つて参りました。これは当然の願いでございます。アメリカも日本がすでに資格を持つて来ておるということを認めております。ところが講和条約がなかなかできなかつたというのは、主として国際的意見の不一致のためでございます。そこでわれわれはもう講和が待ち切れぬという気持であつた。これはわれわれの偽らざる気持でございます。しかるに最近一年以来、米国の非常な努力によりまして、本年九月八日サンフランシスコにおいて、自由国家四十八箇国との間に條約締結の運びに相なりました。のみならず、共産主義国家以外の国々、すなわちインドその他の国は未調印国でございますが、相次いでサンフランシスコ平和條約の線に従つて、二箇国間の平和條約を締結する機運にございます。まことに喜ばしい状態である。
 今次平和條約の内容は、過去における諸平和條約に比し、寛大にして公正であり、ことに日本の将来の活動に対し、政治的にも、経済的にも、その他あらゆる点において、何ら永久的の制限を加えない自由平等のものである。このことはわれわれが銘記しなければならぬことである。もとよりわれわれは本條約に百パーセント満足するものではございません。かくあれかし、かくあつたならばよかつたというようなことがございます。しかしながら、われわれが忘れてはならぬ一つのことがある。それはどういうことであるかというと、われわれは戰争をした、そうして負けたという厳然たる事実がある。本條約は和解と信頼を根本の精神としそのとりきめは前例のない寛大かつ公正なものではあるが、それとともに、日本が敗戰国であるという事実を全然度外視しているわけではない。その結果として、われわれの受くる損失と負担は少くありません。しかしながら、われわれは敢然としてこれを甘受しなければならぬ。われわれがもし敗戰の事実を無規して、戰わなかつた、さらに負けなかつたと同じ結果を法外に求めるとしますならば、それはわれわれの未練でございます。いわんやこのわれわれが受くる戰争に負けた結果というものは、従来の例、たとえばヴエルサイユ條約その他敗戰国の受けました負担よりは、はるかに少いのでございます。ここで私は本條約の各條章につきまして、二、三私の意見と希望を述べたいと思います。
 私が第一に述べたいことは、領土問題に対するわれわれの意見である。日本はポツダム宣言を承諾いたしました。従つて本條約第二條及び第三條の決定の中には、日本の歴史、地理、人文的関係と矛盾し、かつ日本人の希望に反するものがありましても、これらの理由によつて、本條約の批准に反対するということは適当ではございません。しかもなお私は領土問題に関し、やはり一言せざるを得ない。それは千島の問題と南西諸島及び南方諸島の問題でございます。千島はだれも知るように、古来日本の領土である。われわれはこれを戰争でとつたものでも何でもない、そうして長い間平靜にこれを保持して来ておつた。これが今度の講和条約によつてわれわれが離さなければならぬということは、われわれとしては不満を感ぜざるを得ない、ことに歯舞、色丹諸島は千島の一部ではない、明らかに北海道の一部である。これは周知の事実である。こういう島々をソ連が今日占拠しておるということは、これは明らかに不当であり、不法である。われわれは嚴重に抗議をするものである。歯舞、色丹につきましては、ダレス氏も国際司法裁判所に対する提訴をサゼストしております。その方法なきにしもあらず、しかしながらソ連が現在のような態度をとりているときにあたつて、この国際司法裁判所に対する提訴によつてこの問題が解決するということは、これは非常に困難である。また相当の長年月を要するだろうと思います。しかしながら政府におかれましては、この日本国民、ことに北海道道民の至情を察せられて、そうして本件については、今後長きにわたつて適当に善処せられんことを切望いたします。
 次に南西諸島及び南方諸島の問題でございますが、これらの島嶼に関しまして、われわれとしては、いろいろ希望もあり感情もあります。しかしながらすでに條約がそのステータスをきめておる。しかもそれが国際安全保持のためであるという以上は、われわれはこれを受けなければならぬと考えます。幸いにしてこれらの島嶼に対する主権は、日本に残されます。また本委員会における政府当局の言明によりますれば、これらの島嶼民は引続き日本国籍を保持するであろうということでございます。たいへん喜ばしいことである。この上われわれが切望いたしまするところは、日本国民、ことに現地におる住民の至情ができ得る限り生かされて、それが本土との交通、通信、交易及びこれら島嶼の生存、生活のうちに、できるだけ取入れられることを希望いたします。この点も切に政府の善処をお願いいたします。
 次に第三章の安全に関する問題でございます。本委員会における政府当局の説明によれば、わが国の国際連合加入は、ソ連の反対が予想されますけれども、正式加入はできないとしても、将来何らかの便法が講ぜらるる希望があるということでございます。これは、はなはだ吉報でございます。しかしながら右便法が講ぜられます前にも、本條約第五條により、日本国は国連憲章第二條に基く義務を受諾する一方、連合国は日本との関係において、右第二條の原則を指針とすべきことを約しでおるのであります。従つて安全に関する限りは、日本は国連加入前といえども、連合国との関係においては、国際連合加盟国と実質上同一の立場に立つわけであります。さらにこれが同條c項及び第六條a項但書、並びに日米安全保障條約との結びつきによつて、日本の安全は一応見通しがつく。たいへんこの点もわれわれは安心するわけであります。
 次に賠償問題について一言述べたいと思います。近代の大きな戰争のあと、敗戰国が十分な賠償をする能力のないということは、これは世界だれでも知つておることである。現在敗戰後日本の置かれておるステータスも、まつたくさようでございます。昔の例をあげてみますと、あのヴエルサイユ條約によつてドイツに課せられた巨大なる賠償義務が、結局においてはきわめて一部分しか実行されなかつた。しかもその部分的履行さえ、欧洲、ひいては世界経済にきわめて不利なる影響を与え、さらに各種の政府的混乱を来し、結局はあれは世界全体に対する損であつつたということ、これも歴史に明らかでございます。以上の次第でありますから、本條約の定むるところの、存立可能な経済の維持その他の條件のもとにおける役務賠償を規定しました今度の條約は、きわめて賢明なる策であると存じます。政府はできるだけすみやかなる機会に、被災国との間に交渉を開始して、そうして十分の誠意を示し、相手方にできるだけ満足を与えるように善処せられたい。同時に私は相手国に対して、そういう国々が卵を生むところの鶏を絞め殺すというような気持にならないで、公正妥当なる態度でわが方に対処せられんことを希望してやみません。
 ここに一言したいことがございます。それは世間で賠償額が八十億ドルだとか六十億ドルだとか、何十億ドルだとか、いろいろなことが伝えられておる。そうするとこの賠償額を漫然と総括して、平和條約成立のあとには、日本は数百億ドルの賠償をしなければならぬ。こういうことを言つておる人がある、また宣伝しておる人がある。しかしながら、これはまつたく事実に反する悪意の宣伝であるか、あるいは事実を認識をしない流言にすぎません。すでに本條約において一定のわくがきまつておる。そのわく内の賠償である。であるがゆえに日本の経済を根本的に破壊したり、日本人の生活水準を切り下げるような賠償がとりきめられるわけはない、この点は安心していいと私は思います。
 次に在外資産、ことに連合国にある私有財産が、賠償の一部として沒収されることでございますが、これは日本に対する非常な負担であります。しかしながらこれは第一次世界大戰以来、すべての敗戰国に課せられたものでありまして、日本だけがその運命からのがれるわけには行きません、ただ中立国にありました財産までが沒収されるということは、前例にございません。初めてのことでございます。しかしながら賠償問題全体としてこれを見まするならば、わが国の受ける負担、第一次世界大戰後の敗戰国及び第二次世界大戰後のほかの敗戰国の場合と、日本の場合とを比べまするならば、日本の方が相当負担が軽い、そういうわけでございますから、これまた涙をのんで承諾しなければならぬと思います。ただこの機会に政府に申し上げたいことは、これに対する補償の問題でございます。これも日本の現状としては非常に困難なことでございますけれども、しかし最大の好意をもつてこの点も御考慮願いたい。以上をもつて本條約各條章に対する意見を述べました。
 最後に申し上げます。戰争の結果、日本はほとんど領土の半分を失いました。国富の四分の一を失つた。また非常な戰災を受けました。さらに今度は莫大なる在外資産も、賠償のかわりとして出さなければならぬ。将来日本の前途というものは決して容易ではございません。しかしながらここで私どもは過去を顧みたい。明治維新のときに日本は国を世界に開きました。そのときの日本の状態、日本の立場というものは容易ならぬものであつた。経済状態は非常に悪い。加うるに安政條約、あれは日本に種々さまざまな制限を加えたものであつた。しかしながらわれわれの先輩は刻苦精励また忍耐、そうして外国との関係を非常に親密にし、一歩々々いばらの道を開いて行つた。そうしてこれは皆さん御承知の通り、あれだけの国をつくつた。これをわれわれは思い出さなければならぬ。しかるに無謀なる戰争の結果、日本はこの人なる名誉と財産を一朝にして失いました。しかしながらわれわれは、われわれ先祖伝来の強き意思の力と活動力はいまたお持つておるはずでございます。現にわれわれは終戰以来六年の間に、米国の絶大なる援助はございましたけれども、根本はわれわれのこの意思の力と活動力によつて、とにかく今日まで再建をして来ておる。そういうわけでございまして、今度の平和條約は、われわれといたしましては個々の問題については不満の点はございまするけれども、しかもなお全体としては前例のない寛大かつ公正なものであり、ことにわれわれ将来の活動に対して、政治的、経済的その他いずれの点についても、何らの永久的制限を加えないという事実は、われわれがこれから先日本をりつぱな国に建て直すことに対しての勇気を倍加させるものであると私は思います。私は日本がみずからを信じつつ、本條約を基礎といたしまして、一層の努力と勤勉と、さらに忍耐をもつて進みますならば、必ずや遠からず再びきわめて有意義なる国家として、世界の平和とデモクラシーと繁栄のために寄与し得ることを信じて疑いません。以上の意味をもちまして、私は本條約に賛成の意を表します。(拍手)
 次に安保條約について申し上げます。一九四五年世界戰争の終結と前後して、連合諸国は国際連合を結成いたしました。また英米等は終戰後約一年半の間に、戰争中の陸海空軍を約十分の一に減らしてしまつた。さらに英米の志とするところは、国連において他の列国と協議して、軍備の一段の縮小をはかる考えでございました。ところが共産主義国家は、戰時中の巨大なる軍備の大半を今日まで持して来ておる。同時に国連の円満なる運営に対して、あらゆる妨害を加えておる。一方この巨大なる国際共産主義の軍事的勢力は、初めの間は西の方欧洲に向いました。ところがベルリン封鎖が完全に失敗する。さらにイギリス・フランス及びベネルツクス、五箇国の條約、次いで北大西洋同盟條約が結成されますると、今度は共産軍はその主目標を東方に、極東に向けて来た。そうしてとどのつまりは、皆さんも御承知の、去年の六月の共産軍の韓国侵入でございます。もしあのときに国連軍あるいは英米の軍隊が出てあれを防がなかつたならば、共産軍は必ず日本に向つて進んで来たであろう。これは戰後における国際的常識であります。
 そこで、日米安全保障條約の問題に入りますが、平和条約ができます。そうすると特別のとりきめがない限りは、進駐軍は日本から撤退することになります。そうなるとそのあとはどうなるか。前に述べましたような国際情勢から考えまして、いわゆる真空状態の日本に対して、共産軍が侵入して来る、または侵入して来る可能性が非常にふえる。少くとも私は過去における私の経験と私の知識に照らしまして、そういう場合には、共産軍は必ず日本に侵入して来るということを確信いたしておるわけでございます。(拍手)そういうわけでございますから、平和條約の成立のあとには、独立後の日本の安全を守るための何らかの手当をしなければならぬ。そうでなければ、はなはだ危険である。このことは三歳の童児にもわかり切つたことである。そこでその手当というのが、この日米安全保障條約であると私は解します。ところがこの三歳の童児にもわかり切つたことが、わからぬ人がいる。その一つは共産党である。共産党は安保條約に反対しておる。ところが共産党が反対するのは、私は意といたしません。日本共産党というものは、これは世界共産党の支店でございます。そうして国際共産軍が日本に入つて来るための第五列であつて、共産軍が日本に入る道を何とかしで開こうというのが共産党であるがゆえに、共産党がこれに反対するのは、これはあたりまえであります。ところが共産党以外の人で、安保條約に反対する人がある。はなはだしきに至つては、共産党以外の人が安保條約ばかりじやなく、平和條約にも反対しておる。これは共産党ならわかります。しかしながら共産党以外の、向うから命令を受けてない日本の人がこの両條約とも反対しようというのは、一体どういうことであるか。私は了解に苦しむ。
    〔「インドもビルマもあるじやないか」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 委員外の議員の不規則な発言を禁じます。
○守島委員 結局その人たちは、ただ観念論で、実際の事態を見て事に処するというだけの頭のない人であると私は軽蔑せざるを得ない。ところがそうでない、平和條約には賛成するけれども、しかしながら安保條約には反対するという人がある。どうしても切り離すことのできない二つの條約の、片一方には賛成して、片一方には反対するという人がある。それではその人たちは、私どもと同じに平和條約によつて日本を独立させて、そのあとの独立はどうして守ろうというのであるか。ある人は中立あるいは永久中立のようなことを言いますが、今のように世界が二つにわかれていて、相格闘し抗争しておるその中に、中立ができますか、永久中立ができますか。これができると言う人があれば、これも頭の問題でございます。またネール氏の立場をとらえる者がございますが、ヒマラヤ山脈にとりかこまれて、国際共産軍の侵入の危險性がほとんどないインドでは、ネール氏の理想論もいれられましよう。しかしながら日本の置かれてある地位は違う。そこまで国際共産軍が来ておる。全然立場が違います。ですからこれも何にもなりません。また国際連合による一般的保障を唱うる者があります。これは国際連合を創始した人たちの理想でございますが、国際連合は今日そこまで発達いたしておりません。まだ大分時がかかります。このときに国際連合の一般保障などということも、これまた空想でございます。要するに空想はいくらでもある。机上の空論はいくらでも立てられるが、それは机上の空論であり空想である。われわれは現実にこの日本をどう守つて行くかという現実の問題に処しなければならない。また日米安保條約は、いわゆる完全なる安保態勢ではない、相互的ではない、こういう批評をする人がありますが、ヴアンデンバーグ決議、あれがある。あれがある以上は、これはしかたがございません。われわれは最善を得られなければ、次善を選ばなければならぬ。今度の條約は次善でございます。そうしてしかもこの條約には、暫定的なものとしておる。私どもはこれでとにかく今われわれの安全は保持できる。これを信じて疑いません。またある人は、日本の安全は、日本が、急速に再軍備すればいいじやないかという人がおりますが、この状態で日本が急速に再軍備しましたならば、日本はよろいを着てかつえ死ぬという状態になる。それは共産党の思うつぼに陥るのでございます。これも問題になりません。
 最後に、私は過日本委員会において、安保條約が往年の日韓議定書に形式において類似しておるという理由をもつて、本條約は安保條約にあらずして、むしろ米国による日本の保護條約であるという論が述べられたことを想起いたします。しかしながら、かくのごとき論は全然根拠のないものである。と申しますのは、その主張はまつたく時代の変遷ということを見ておらない、いわゆる時代錯誤の議論でございます。今から四十八年前、明治三十七年二月二十三日日露戰争が起りましたすぐあと、日本が韓国との間に結びました議定書、これを締結いたしましたときの時代と現在とは国際的の風潮、思想というものが非常に違つている。当時は帝国主義横行の時代である。世界の諸国が帝国主翼的勢力の伸張に狂奔していた時代である。ところが今日におきましては、共産主義国家を除きまして、世界中の国々がいずれも平和を望んでおる。そうしてこういう国々は、国際の平和及び安全の維持のための最良の方法として集団保障態勢を採用しておる。その態勢というものは、決して一朝一夕に起つたものではない、この新しき平和的風潮というものは、一朝一夕に起つたものではない。これはだれも知つておることでございますが、第一次世界大戰、さらに第二次世界大戰の長い経過を経て発達したものでございまして、今日においてはアメリカだとか、イギリスだとか、その他の大国も、この態勢によらなければ、あの無責任な共産主義の軍国主義に対抗して、そうして世界の平和を維持し、各国の安全を保つことができない、こういうことになつておる。かくのごとき状態の変化を全然念願に置かないで、日米安保條約の文字が日韓議定書のそれに似通つておるという單純なる理由をもつて、これを保護條約と見ることには私は断じて賛成するわけに行きません。
 以上述べましたところによりまして私は今次日米安保條約が、現在において日本のとり得ベき唯一かつ最良の安全態勢であるということを確信いたしまして、本條約に賛成する次第でございます。(拍手)
○田中委員長 小川半次君。
○小川(半)委員 私は民主党を代表いたしまして、以下意見と希望を申し述べ、しかして民主党の態度を明らかにしたいと思うものであります。
 まず思いますことは、この平和條約を結ぶにあたつて、アジアの友邦諸国が、こめ條約締結に参加しなかつたことは、惜しみてもあまりあるものがあるのであります。平和條約は和解と信頼の條約であると言われておるのであります。しかしながら和解と信頼の條約であると認定するには、なお幾多の疑問が残されておるのであります。まず領土的に見ましても、日本として権利と要求が認めらるべき幾多の領土を失い、あまつさえ当然日本の領土であらところの琉球、小笠原諸島等が、信託統治という刻印を押されたことであります。御承知のごとく、琉球は五百年前の足利時代から、日本の付属国として認められて来たものであり、また小笠原島は、徳川時代に日本人によつて発見せられて日本の領土となつたことは、歴史の証明するところであります。そこには百万人に近いところの日本人が居住し、日本民族の産業地としてその生活が営まれておるのであつて、いかなる理由よりしても、またいかなる形式を問わず、日本より切り離すべきではないのであります。もちろん平和條約によれば、これらの島々の主権者は日本であると規定してはいるのでありまするが、これは空文にひとしいという意見が、すでに国の内外に論ぜられているのであります。思いますに、これは国際連合が法人組織ではないがために、これらの島の主権者は、国際連合であると解釈し得られないし、またアメリカの領土とするには、米・英・中の三国は領土拡張の意思を有さないというあのカイロ宣言に違反する関係上、やむを得ず信託統治の下に置くということにしたものではないかという疑問が残るのであります。條約の説明によりますれば、これらの島島を信託統治としたのは、極東の防衛上必要があるからであるという理由でありまするが、それであるならば、信託統治とせずに、安全保障條約の範囲内に入れて、すなわち日本領土内の琉球、小笠原島においても、軍事基地を供与するということにすればよいのではないかと思うのであります。かように考えまするとき、極東の防衛とは單なる理由であつて、これらの島々を日本から切り離して、日本を監視し、日本を牽制するためにする設備が必要であるからとの理由も成り立つのであります。このこと一点だけを見ましても、和解と信頼の條約であるということは、日本人である限り言えないものがあるのであります。
 また賠償の関係を見ましても、條文には完全な賠償を行い、かつ同時に他の債務を履行するためには、現在日本の国力が十分でないことが承認されるとあつて、一応寛大なことく見えるのでありますが、これとて金銭賠償でなくとも、生産、沈船引揚げその他の作業による日本国民の役務によつて賠償するのであつて、形式は異なつても賠償には何らかわりがないのであります。この委員会におきましてもしばしば申し上げましたごとく、現在の日本国民の生活水準は戰前のペースの八〇%であり、輸出貿易におきましては四〇%にすぎないのでありまして、こうした貧困なるわが国力に加えて、外債四億六千八百万ドルと、国民が、国民負担によらないであろうと信じ切つておつたところの対日援助費二十億ドルも、講和の結果債務となることが明らかになつたのであります。しかも大蔵大臣の説によれば、これらの外債は賠償よりも先に支払わねばならないということであります。日本の賠償とはこうした過大な負担のもとにおいてなされるものであつて、和解と信頼の條約とすれば、ここでも苛酷な点のあることは明瞭であります。特に在外資産が政府、法人、個人の区別なく、ことごとく沒収されるということに至つては、人権侵害の不法行為であつて、かつて世界に例を見ないところの、国際法を無視した講和條約であるということが言えるのであります。ポヅダム宣言にも人権尊重のことは規定してあるにかかわらず、海外にいて戰争とは全然無関係であつたところの日本の人たちが、海外において所有していた一切の財産をその人の承諾なしに押収されるということは、かつてない人道上忍ぶべからざることだと思うのであります。しかしながらわれわれの望むところは、たとえば信託統治の領域においては、あくまでも日本の領土であり、主権者は日本人であるという基本に立つて、教育あるいは行政を初め、一切が日本人として日本政府の連絡のもとに行われ、ただ軍事的な面のみが国連のもとに置かれるという方法を講じていただくことができれば、国民ととても、またわれわれとしても望むところであります。また賠償の関係におきましては、戰前の国民生活水準を回復するまでは、技術指導の無償供与や、特許権の使用提供など、比較的負担の軽いものにとどめ、本格的な賠償の支払いは一応延期するという方針を確立して、やがて経済のバランスと国民の生活水準の向上が可能となつたあかつきにおいて根本的に話合うという方法を、政府は必ず講じてくれることをわれわれは望むものであります。さらに在外資産のうち、特に個人に関する、すなわち私有財産においては全額補償はとうてい困難とすれば、その幾割かを補償する亡とが政府として当然なすべき責任であるというわれわれの意見に対して、政府は適当な処置をとるということを言明されたのでありまして、一応了承したのであります。
 次に安全保障條約に関してであります。政府は、日米安全保障條約は日米対等の立場で締結されたものであると説明されたのでありまするが、この條約文に現われている性格から見て、平等の條約とはどうしても考えられないものがあるのであります。日本が独立して初めて外国と締結する條約であつて、過去六年の間日本国民がしいられて来た屈辱的な形や性格を残してはならないはずであります。あくまでも毅然として、独立国たる平等の立場で締結されなければならないはずであります。しかるに政府及び関係者は、六箇年の屈辱的な習慣が身にしみている関係か、その卑屈さがこの條約に現われていることは遺憾であります。しかしながらその屈辱的なものを少しずつでも打消す方法は、今後の行政協定によつてせめてもの望みが期待できるのであります。委員会においても各委員から御指摘されたように、日米安全保障條約によれば、合衆国は日本に対して広汎にわたるところの権利を有しておるにかかわらず、義務規定がないのであります。すなわち、いかなる場合でも必ず日本を保護するという決定的なものがないという点に、国民は非常に不安感を抱いておるのであります。これに対して政府は、合衆国はすべて国際連合のさしずによつて行動するものであつて、合衆国の一存で簡單に日本を放棄できない、また合衆国は国際的信用の立場から見ても、一方的に日本を見捨てるような国でないという確信に満ちたことを披瀝されたことによつて、われわれは一応了解するものでありますが、さらに望むところは、米国はこの條約を通じて日本の自衛体制がすみやかに完成するよう協力すべきでありへかつ自衛体制完成のあかつきは、ただちに日本から撤退するという確約を行政協定の中に織り込んでもらえることをわれわれは期待するものであるし、また平等の立場からアメリカがこの條約を締結するといたしますれば、当然アメリカもその気持があると思うのでございます。また費用分担の点におきましても、甘木の経済力の貧困であることは、合衆国においてもよく了解しているはずでありますから、政府において積極的な努力と交渉によつて、負担可能の線までこぎつけることができると思うのであります。さらに国民の最も不安の一つであつた、日本国内における合衆国の治外法権はあり得ないということも明らかになつたし、配備の点、すなわち軍事基地供与の点については、六大都市以外に設定されることが考慮されるであろうことをわれわれは信ずるものであります。その他行政協定によつてとりきめられる事項には政府は必ず国民の気持の上に立つて誠意を示してくれるものと信ずるのであります。
 なお日本の自衛体制については、過日来の吉田総理の御答弁によつて、わが国の再軍備はもはや必至であることがうかがわれるのでありまして、当然日本民族の自尊心と独立自主の気魄を樹立するために、早急に再軍備に着手すべきであることは、われわれの唱えて来たところであります。世界の独立国家で外国の軍隊に依存している国はどこにもないりであつて、外国軍隊に保護されているうちに、その国の国民は去勢され、無気力な、そして知らず知らずのうちに屈辱主義的な敗北思想に陷つて、立ち上るというたくましさを失つて行くのであります。今や世界は、民主主義陣営と共産主義陣営の二大勢力に相対立したのであります。その中にあつて、日本はいずれにもくみしないというような安価な中立論などは考えられないほど、世界の情勢にはきびしいものがあるのでありまして、このとき日本は毅然として民主主義の陣営に参加したのであります。それは日本を救い、世界を救い、やがて終局の目的である世界平和を打立てるものは民主主義以外にないということを、明らかにさとつたからであります。この條約には、日本の立場としてまことに悲しむべき幾多の疑問があります。しかしながらこの條約によつて日本が民主主義陣営に加入し、そうして世界の平和を打立てろのであるという大理想のために、われわれは忍ぶべからざるを忍び、これを承認するものであります。(拍手)しかしながらわれわれの望むものは、民主主義の陣営に立ちつつも、なお共産主義陣営との和解と信頼の道を打開しなければならない点であります。アジアの友邦と手を握り、アジアの一員としてアジア民族との和解の線を示しつつ、民主主義陣営の役割を果すことが、独立日本に与えられた最善の道であることを訴え、それを可能にするためには、この條約を承認することであるということの結論を得たからであります。
 この條約締結の日は、日本人にとりて喜びの日であるとともに、悲しみの日であります。私は民主党を代表いたしまして、断腸の思いを抱きつつ、この両條約に賛成するものであります。(拍手)
○田中委員長 西村榮一君。
○西村(榮)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、講和條約並びに日米安全保障條約に対しまして、わが党の態度を表明いたしたいと存ずるのであります。
 まず第一に、講和條約に対する態度であります、本條約は和解と信頼の原則に基き、平等なる平和條約と言われておるのでありますが、しかしながらその内容を検討いたしますれば、領土條項、賠償條項あるいは政治経済の條項については、わが国の完全独立と、自立経済の達成を妨げ、国民生活を窮迫に陥れるところの不平等なる條件、すなわち敗戰国の屈辱的な條約であることは、何人も否定と得ないのであります。それゆえにわが国は、ここにおいてこのたび失われたるわが国の固有の領土である千島、南樺太、沖縄及び小笠原、その他の日本領土の失地回復に全力を注ぐとともに、国民生活を圧迫し、日本の経済自立を妨ぐるところの賠償條項並びに政治経済條項の改訂運動を展開し、もつて完全独立と日本経済の自立達成をはからねばならぬと確信いたしまするが、この諸目的を達成するためにも、かつ被占領国民たる地位よりも、たとい危険と窮迫が前途に横たわるということを考えましても、国家を独立せしめ、日本民族の発展と国家の再建を、みずからの創意と努力によつて達成せしむるという完全独立の契機といたしまして、今日のこの講和條約に対しつまして、社会党は以上の條件を付して賛成いたすものであります。(拍手)
    〔「反対」と呼び、その他発言する者あり〕
○田中委員長 静粛に願います。
○西村(榮)委員 次に安全保障條約でありますが、これは本来講和條約と切り離してわが国が態度を決すベきものであると私は信じておるのであります。何とならば、講和條約第六條によつて、條約発効後連合国は九十日間わが国に駐留することができるのであります。これは講和條約発効後でありますから、従つてその時間的ゆとりは、大体において今後五箇月ないし六箇月あるはずであります。しからばわが国は講和條約をまず締結いたしまして、その批准を完了した後に、日本国家の独立態勢と外交権の確立という、この基礎的な條件の上に立つて、日米安全保障條約というものが、具体的に考慮さるべきものであると信じておるのであります。しかるに遺憾ながら講和條約の締結後、いまだ半日を出でずして本條約が調印されたということは――講和條約には、日本国が主権国として、集団的安全保障のとりきめを締結する権利を有することを承認するということが書いてあるのでありますが、いまだ日本は先ほど申し上げましたように、講和條約締結による権利を公式には与えられておらないのであります。そこで私は、まず安全保障條約は手続上承認いたしかねるとともに、同時に考えてみなければならぬことは、これは單に手続上の形式論にとどまらずして、その内容において、日本の完全なる主権の回復以後に締結される條件と、今日その中途半端の状態のもとにおいて締結を余儀なくせしめられる條件とは、重大なる影響と相違を発見せざるを得ないのであります。
 私が具体的にこれを考えてみますならば、まず第一に、日米安全保障條約と唱えられておりますけれども、安全保障條約のその内容は、明らかにアメリカの駐兵権の獲得にして、日本の防衛に対する義務規定はいずこにもないのであります。従つてこの條約は、アメリカが日本に駐留する権利は獲得しておるが、いつ兵を引上げるとも、また日本の防衛を放棄するとも、これはアメリカの白自由にまかされておるのであつて、これが單にアメリカの軍事基地の獲得にほかならないものであることは、何人も否定し得ません。従つてわれわれは、この條約によつてわが国の国防上の安全感は確立せられないのであります。私は安全保障條約を結ぶ上からは、少くとも日本の安全という立場において考えられるこの保障條約というものは、北大西洋同盟條約のモデルに従い、一艦一機の攻撃に対しても共同防衛の態勢に立ち得る、すなわち日本国に対する武力攻撃はアメリカに対する武力攻撃とみなして、共同防衛に立つという明確なるアメリカの義務規定がない限りは、本條約に賛成いたしかねるのであります。ということは、われわれが本條約と対照して考えてみなければならぬことは、中ソ友好同盟條約の存在であります。これは日本並びに日本の防衛国を仮想敵国とせる中ソの軍事同盟でありまして、この同盟條約は中ソ両国いずれが攻撃されても、共同防衛に立つとの完全なる軍事同盟であります。従つて日米安全保障條約と対照して考えられるところのこの中ソ友好同盟條約が、かくも明確なる中ソ両国の義務規定に基いて共同防衛を構成しているのに対して、日本の安全保障條約が、わが国のみ義務を負うて、しこうしてアメリカの防衛義務が明確にせられていないということは、わが国将来の国防上大なる不安を存することは前段申し上げた通りであります。特にこの日米安全保障條約から当然来るべき宿命は、太平洋同盟條約のコースであります。太平洋の奥深くにすわつておる国家と、一衣帯水を隔てて一千三百万の赤軍を向いに持つておるところの日本のこの国防上の危険と不安とを考えまするならば、これは太平洋上奥深く存在する国家の危険感と不安感とは、とうてい同一に論ずることはできないのであります。
 第二には、日米安全保障條約に従つてその経費を分担することになつておるのでありますが、これは明らかにアメリカの駐兵権の要求でありますから、わが国のこの財政窮乏の今月において、この財政的負担をする必要は寸毫も私は認めません。第三に、日米安全保障條約によつて当然来るものは、太平洋同盟の結成であり、同時にそれは日本の中立性の侵害であります、不安であります。総理大臣は先般の本條約委員会並びに本会議において、米ソの対立の今日において、中立などというものはあり得ないと断言せられたのであります。私は現下の險悪なる国際情勢のもとにおいて、中立を維持することのまことに困難をきわめる事態であるということは了承いたします。しかしながら、わが国が外交政策の上に立つて公式に中立を放棄する前に、われわれが解決しておかなければならぬ三つの点があります。第一に、総理大臣が言われたように、自由主業国家の陣営に参画して、世界の平和を守るのであるということをかりに承認するとしても、しからば自由主義国家群がわが国の国防に対して軍事上のいかなる保障を与えてくれるのであろうか。第二は、わが国が万一海上封鎖されたときに、国民の食糧は毎年最低三百万トンから三百二十万トン海外から輸入して来なければならないのでありまするから、その供給地の確保並びに海上輸送に対して、戰時中いかなる保障を自由主義国家群はわが国に確約せられるのであるか。第三点においては、わが国の工業用の原材料は現在海外から六割二分を輸入いたしております。万一のどきに一体それらはどうして確保せられるのであろうかという、以上三点の保障と確約がなければ、わが国はみずから進んで中立政策を放棄するがごとき愚をなすものでは断じてありません。もちろんこのことは、思想上において独裁政治と闘い、自由を擁護する建前に立つ思想的イデオロギーの世界観は別といたしまして、今日われわれは国民の生命と財産と生活上の保障を信託された政治家といたしまして、その政策として中立政策を放棄する前には、これらの問題を解決しておくことが当然の義務であり、政治家の責任であると私は確信いたしておるのであります。しかるに日米安全保障條約は一方的な軍事基地のアメリカ側の確保であり、わが国の安全保障につき明確な義務規定がないのみならず、国民生活と日本の経済、国防上、軍事上の保障なく、日本の中立を放棄せしめられるという性格を持つた條約でありますがゆえに、以上述べた諸点が明確になるまで、日本社会党は国際連合憲章に基くところの暫定的安全保障の必要は認めるのでありますが、遺憾ながら以上の理由によつて、今回とりきめられんとするところの日米安全保障條約に対しては、反対の態度をとらざるを得ないことをまことに遺憾とする次第であります。こいねがわくは、政府の努力とアメリカ側の公明にして聰明なる政治的判断のもとに、以上日本国民が不安を持ち、危惧の念を持つ諸点につき一日も早く解決を与えられんことを切望いたしまして、本條約に対する反対の意思表示をいたすものであります。
○田中委員長 田島ひで君。
○田島(ひ)委員 日本の歴史上かつてない二つの亡国的な條約――平和條約並びに日米安全保障條約に、私は日本共産党を代表して反対いたすものであります。
 まず第一に、日本国民の大多数は、国の運命を決するこの重大な二つの條約の締結にあたり、今日までその内容について真実を知らされていないのであります。特に日米安全保障條約のごときは、吉田総理は二月以来ダレス氏と條約の交渉を重ねて来たと述べながら、その内容については国会に報告もせず、審議にもかけず、何一つ国民の前に明らかにしていないのであります。政府は今回の講和條約にあたつて、まず国民の言論、集会、出版の自由を奪つておいて、一方的な宣伝だけで国民をだまして来ました。特に本年八月初めごろから民主団体の平和集会さえ一切禁止し、わが党議員の国会報告演説会に武装警官を動員し、演説を禁止し、あるいは一警官が演説の内容に干渉したり、録音や筆記をとり、理由なく国会議員の家宅捜索を行つています。現に私にも尾行がつき、私服刑事が家のまわりを取巻いたり、特高的秘密警察が完全に復活され、政治活動の自由が彈圧されています。私は社会運動に参加して以来三十年になりまするが、戰前の反動時代においてさえ、国会議員の身分がこのように保障されなかつたことを知りません。いよいよサンフランシスコ会議が近づくや、政府は九月四日、わが党幹部及び国会議員十九名に逮捕状を出し、さらに追放して、国会議員四名の議席を奪い、続いて連日全国的に家宅捜索を行うという弾圧を加えて来ております。驚くことに十月九日のごときは、全国で八百六十一箇所の家宅に侵入するという不法行為がなされております。本委員会における條約審議も、吉田総理のごときは、わが党を代表する米原委員の質問に対して答弁を拒否し、また政府与党は、審議に必要な時間をむちやくちやに制限して、條約の内容を国民の前に隠蔽しているのであります。政府の説明によつても、講和條約のねらいが日米安全保障條約にあり、日米安全保障條約の最も大切な部分はことごとく行政協定にゆだねられているのでありますが、この行政協定の内容はまつたく秘密にされていて、国会の承認を必要とじないというのであります。これこそ二つの條約が、日本民族を戰争と奴隷と破壊に導くものであり、その真相が国民の前に暴露ざれることをいかに恐れているかを証明するものであります。
 第二に、いやしくも平和條約と呼ばれるためには、各国との戰争状態を完全に終結し、再び戰争に参加しないということを約束するものでなければなりません。ところがこの條約では、日本の軍国主義を打倒するために血を流したアジア諸国民の意思はまつたく無視されています。特に最大の交戰国、日本侵略軍の主力と最も長い間戰つて、一千万の人間と五百億ドルという損害を受けた中華人民共和国が不合理にも除外されています。だからソ連も反対し、インドも出席を拒んだのであります。今日の中国は、英雄的な抗日戰の勝利の結果、過去百年の侵略者を完全に本土から駆逐し、歴史上初めて民族の独立と国内の統一をかちとつたのであります。日本の国民もまた再びアジアの兄弟と相争うことを望まない。過去の誤つた軍国主義者の侵略政策に闘わないで、だまされて犯した罪ではあるが、誠実に歴史的なあがないを強く感じているのであります。ロンドン・タイムズ紙でさえ、今度の対日講和について、アジア諸国との提携の機会が失われるならば、たとい五十箇国が調印しようとも、会議は失敗であるといつているではありませんか。吉田総理は、ソ同盟がかつてに調印せず、その意思を持たないと言い、またサンフランシスコ会議では、中国がその内部不統一のために参加しなかつたことは残念であると述べている。まつたく事実を歪曲し、ごまかしているのであります。だれでも知つているように、中国の内政に干渉し、第七艦隊を台湾に派遣し、事実上台湾を――しているのはアメリカ政府ではないか、初めからアジア――の意図のもとに、アメリカ政府のかつてにきめた戰争條約にどうしてソ同盟が調印できるか、このようなものが平和條約でも和解の條約でもあり得ないことはあまりにも明らかであります。
 第三に、従つてこの條約は、平和條約ではあり得ないばかりでなく、公然とソ同盟、中国、朝鮮、その他アジアの人民を敵対的立場に置き、アジア侵略の新しい戰争を始めるために日本を戰争にかり立てるものであります。アチソン長官と吉田総理との交換文書によれば、平和條約の効力発生と同時に、日本国民は、国際連合がこの憲章に従つてとるいかなる行動についてもあらゆる援助を義務づけられるのであります。たとえばアメリカ軍が日本の承認もなく、納得もなく中国本土を爆撃し、軍事行動に出た場合、日本はアメリカ軍にあらゆる援助を与えねばならないのであります。従つて必然的に彼らの始めた戰争に巻き込まれるのであります。この條約を承認することは、日本の婦人に、再びその夫とむすこたちを朝鮮戰争に肉彈として提供することを承認することになるのではありませんか。まことに戰争か平和かというような一国の運命に関する重大な問題を、日本が自由に決定することさえできないばかりか、日本に無断でアメリカ軍が始めた戰争にすべての協力をさせられるという恐るべきこの條約、このような條約では、主権はおろか、日本民族の独立は得られません。政府はまた今回在日朝鮮人四十万を、一片の政令で戰乱の収まらない故国に無理やりに追い返そうとしております。これは在日朝鮮人を朝鮮戰争の肉弾として補充するためであります。在日朝鮮人の運命こそは、次に日本民族のたどるべき運命であります。
 吉田総理は、たびたび再軍備は今ただちにしないと言つているが、一方では国内の軍事体制を着々と進めている。たとえば警察予備隊を強化し、架橋、爆破など敵前上陸の猛訓練や、ロケツト砲による大々的軍事演習を初め、旧陸軍将校を大量に追放解除して、警察予備隊に編入しています。それどころか東北地方では、予備隊の強制割当募集さえしているといわれているのです。戰時中の隣組や婦人会や青年会を組織し……。
    〔発言する者多し〕
○田中委員長 静粛に願います。
○田島(ひ)委員 日赤奉仕団の支部では、家庭の主婦たちに、戰時中の国防服のようなものを平強制的につくらせているところさえあります。文部大臣が、国家の道徳的肝心は天皇であると、かびのはえた天皇道徳をひつぱり出して来たのも、軍国主義の精神的支柱を復活するためにほかなりません。吉田総理の本心は今では明らかであります。再軍備を反対する圧倒的多数の国民を弾圧し、戰争熱を吹き込み、国民の要望と責任において巧妙に再軍備を実現しようというにすぎないのであります。だからヒトラーや東條が使い古した共産主義の侵略に対する防衛という怪物を引出し、国民に軍国主義復活の思想を宣伝しているのであります。
 さらに本條約は、アメリカ政府によつて初めから公然と国際協定を踏みにじつて強行されたものであります。一九四五年のポツダム協定、一九四二年の連合国共同宣言からカイロ宣言、ヤルタ協定、ポツダム宣言、極東委員会の諸決定に至るまで、ことごとく一方的に破棄してしまい、国連憲章の基本的原則に反し、形式的にも内容的にも、まつたく非合法かつ無効なものであることを私は宣言せざるを得ません。このような戰争條約とはまつたく反対に、ソ同盟、中国こそ、日本から全占領軍が撤退し、日本が完全に独立し、日本の平和産業と貿易が自由に無制限に発展できる正しい早期講和の提案を再三行つて来たのであります。ソ同盟、中国は、国連が平和の維持という主要な本来の任務を遂行する能力を失つている現在、米、英、仏、中、ソの世界の五大国が、戰争によらないで交渉によつて現存する意見の不一致を解決する道は、五大国間で平和協定を結ぶことであり、このことが可能であると世界に呼びかけているのであります。今日講和について国民の知りたいと望んでいるのは、この條文の美しい言葉や説明ではありません。この條約によつてほんとうに日本が平和になれるのかどうか。独立がはたしてできるのか。愛する夫や子供、兄弟を戰争に引出されるようになるのではないか。きけわだつみの声は、今もひしひしと青年学徒の胸を打つのであります。家庭の主婦たちは、家畜の飼料やいもの葉で飢えをしのいだことを忘れることはできません。あの原爆の生地獄は日本国民だけが体験したのであります。日本の国民はいかなることがあろうとも、あの戰争の悲劇をもう一度繰返すことは決してしたくないと決心しているのであります。南方の島には未だに同胞の白骨が原野に雨ざらしになつている。
○田中委員長 田島君に申し上げます。約束の時間が参りました。
○田島(ひ)委員 白衣の傷病者は路傍に立ち、遺家族の生活は保障されず、戰争未亡人は生活の道をパンパンに求めねばなりません。このようなありさまのまま、国民をだまして再び戰争への條約を結び、日本の国民の運命を奴隷と破壊に導く吉田政府に対して、国民は限りない憎しみを抱かずにはおられません。
 日本民族は歴史上これまでにないような重大な危機に直面しています。八千万国民の血と奴隷化を代償としてあがなうこのような屈辱的亡国條約の締結にあたり、国権の最高責任の地位にある国会において、われわれが断固として反対する勇気を持たなかつたならば、必ずや子々孫々に至るまで悔いを後世に残すでありましよう。
 いまや東亜の被圧迫民族は西欧帝国主義の長期にわたる侵略の手を払いのけ、独立と自由と平和のために何ものをも恐れることなく立ち上つています。イランでもエジプトでも、偉大なる民族解放革命の歴史が繰広げられています。
○田中委員長 田島君、重ねて注意します。
○田島(ひ)委員 ひとり日本だけがかかる屈辱的な西欧帝国主義のための墓場となることは、断じてあり得ない。国鉄、日教組、全自労を初め、労働者、農民、学生、家庭の主婦たちも、至るところで怒りに燃えて批准反対の決議、全面講和、再軍備反対の署名運動を弾圧のあらしの中で進めている。吉田政府は国民の生活を欺くことはできない。国民の各層の分野にいろいろな形で深刻な矛盾や対立、分解作用が現われて来ているではないか。必ずやこれら各層の国民が、日本民族の解放のために一つになつて立ち上るでありましよう。
○田中委員長 田島君、三たび注意いたします。
○田島(ひ)委員 この時こそかかる亡国條約は一片の紙くずとなるでありましよう。明治維新の祖先の革命的愛国の血は、決して日本民族の血管の中から失われておりません。五億中国人民も、日本の人民が民主主義と独立と平和と進歩をかちとり、両国人民がかたく団結して極東の平和を守り、この売国條約に反対して相どもに闘うことを訴えております。フランス、イタリアはもちろん、イギリスやアメリカ等でも、平和を愛する大多数の人民は、また日本国民に激励の言葉を寄せて来ています。世界人類の平和のとりでソ同盟、中華人民共和国、人民民主主義諸国を先頭に、全世界の平和を愛する人々の戰いと援助の手は、日本国民に無限の勇気と勝利の確信を与えております。日本国人民は必ずやこの屈辱的條約をはねのけ、世界の平和愛好人民の期待にこたえるでありましよう。
 以上日本共産党は、両條約の締結に絶対反対するものであります。(拍手)
○田中委員長 中村寅太君、
○中村(寅)委員 私は農民協同党を代表し、平和條約並びに日米安全保障條約に対し見解を申し述べ、わが党の態度を明らかにする次第であります。
 今回の平和條約が第一次大戰後の講和條約に比較して、敗戰国に対するものとしては歴史上画期的に公正に近いものであるという点を、率直に認めたいと存じます。アメリカその他の国々のわが国に対する好意に対しては、心から感謝の意を表するとともに、吉田首相以下全権各位の労を多とするものであります。(拍手)しかしながら、この條約には次のごとき不十分な点がありますので、今後これが修正または訂正せられるの機会が最も早からんことを、念願するものであります。
 すなわち第一、領土の問題であります。アメリカの信託統治になりました琉球、小笠原、奄美大島等につきましては、全島民あげて日本復帰の悲願に燃えておるのであります。日本国民もまた割切れぬ感情を残しております。さらに千島列島に至りましては、條約第二條により列島の主権放棄が明記されておりますが、千島列島という言葉がはなはだ漠然としております、條約の原文によれば、択捉、国後、色丹、歯舞諸島は、日本の主権下に置かれることが当然と考えられるのであります。
 第二点は、全面講和、永世中立、非武装のうちに、日本の安全と世界の平和が確立せられるという希望が実現せられなかつたことであります。敗戰直後、連合国側の厳正にして寛容なる態度を前に、国民あげて戰争を懺悔し、武装放棄の新憲法のもとに永世中立を念願し、やがて世界平和の実現に寄与し得るものとの確信を持つて祖国の再建に黙々として努めて来た国民といたしましては、大きな失望を感ずるのであります。しかしながら現実の世界情勢は、この日本国民の悲願をいれ得ないところの実情にあるのであります。
 第三点といたしましては、賠償問題が根本的に解決されることなく、今後の問題として残された点であります。その後交渉を通じて各国との間に種々困難を生じ、友好回復に支障を来しはせぬかとの懸念を持たれるのであります。
 第四点といたしましては、中国その他のアジア諸国の参加を得なかつたことであります。中国の参加しない講和條約が将来の日本を政治的にも経済的にもいかに困難な立場に追い込み、アジア諸国との協調、協力に大きな支障があるかということを考えなくてはならないのであります。さらにアジア諸国がそれぞれの理由で條約に反対し、不満の意向を決していることも軽視できない点であります。ことに英軍の長年にわたる駐兵に苦しめられて来たエジプトが米軍の日本駐屯に反対していることは、日本国民の見のがし得ない重大な点であると思われるのであります。
 すなわち日本人が最も望んでおるのは真の独立と平和であります。二度と戰争に巻き込まれてはならないということは、共産党の專用語ではなく、戰後より今日に至るかわらざる日本国民の国民的悲願であります。この点を考えるとき、外国軍隊の駐屯がいかに国家の独立を脅かすかということを身をもつて体験せるアジア諸国のこの見解は、国民の深く味わうべき点であると思うのであります。われわれは一刻も早く国力の回復とともに完全なる自衛力を確保して、真の独立を期せなければならないと思うのであります。
 最後にこの條約は世界の平和に連なるものでなく、戰争に連なるものであるという近視眼的な見解に対しては、私はこれを否定するものであります。この條約には種々の不満と不安が件つておるのでありまするが、現在の国際情勢下において、米ソ両国を初め関係各国、敗戰日本等がひとしく満足してこれを嚴守し得るという完璧の條約は立て得ないところであります。終戰後六箇年にわたり、講和條約が結ばれず、世界歴史にいまだかつてない長い間の占領政治から寸時も早く解放せられて、真の独立国に返りたいという国民的熱望を考えるとき、明らかに連合軍による占領継続にまさるものとして、私はこの平和條約に賛成をするものであります。次に日米安全保障條約についてであります。
 世界の平和が維持されるためには、アジアの平和が絶対に必要であります。アジアが平和であるために、日本の安定が確立されなければなりません。終戰直後の世界情勢は、各国相互の信頼と協力によつて世界の平和が確保され、日本国家の安全と生存を維持しようという日本国憲法の前提は、米英ソの対立激化と朝鮮事変の勃発等、国際情勢の変化によつて不幸にもくずされてしまつたのであります。
 かくのごとき不安なる情勢下にあつて、日本国家の安全と独立を維持し、日本国民の繁栄と幸福を守つて行くためには、次の三つの方法があると思うのであります。すなわち第一には、日本自身による完全なる自衛力の確立、第二には、国連による集団安全保障、第三には、特定国との安全保障條約の締結、しかるに日本の現状は、第一、第二ともにただちに実現困難なる立場にあります。従つて日本が平和條約締結後いわゆる真空状態のまま置かれるということは、日本のために危険であるのみならず、世界平和のためにも許されないことであります。ここにおいて日米安全保障條約の必要が生ずるのであります。日本憲法の建前からいえば、多少の疑問が残るのでありますが、平和の実を守るためにはこれを否定することのできない緊迫せる世界情勢を認識しなければならないのであります。(拍手)われわれは今米ソいずれも全面戰争を欲しているとは思わないけれども、地方的の小発火が全面的な大発火につながる危險があることを考えるときに、この危險をあらかじめ防ぐためには、侵略を誘発するような危險のある不用意な態度を示してはならないと存ずるのであります。この見地に立つて、われわれは日米安全保障條約によつて平和を維持して行くうちに、真実の世界平和の局面が展開せられることを念願し、かつ待望するものであります。
 特に注意すべき重大なる点は、アメリカ軍隊の駐屯により、日本国民の主権と独立が侵される懸念が多分にあるので、やがて定められるといわれているところの行政協定において次の諸点に誤りなからんことを切望するものであります。
 第一点は、軍隊の数と軍事基地は最小限度の必要に限ることであります。第二点は、駐屯するアメリカ軍隊と軍事基地は日本の安全と独立を保障するだけに使用されることを望みたいのであります。第三点といたしましては可及的すみやかに日本の完全なる自衛体制を確立して、アメリカの軍隊はすみやかに撤退してもらいたいということであります。第四点といたしましては、駐屯費は日本の経済自立を妨げざる範囲にとどめるということを願いたいのであります。
 これらの諸点の確立を強く要請いたしまして、私らはこの條約に賛成するものであります。(拍手)
○田中委員長 黒田寿男男君。
○黒田委員 私は労働者農民党を代表いたしまして平和條約及び安全保障條約の締結承認に反対するものであります。この二つの條約は不可分でありますから、私は一括して反対理由を申し述べたいと考えます。
 反対理由の第一。この條約の締結の結果は、わが国を新たな国際的従属関係に陷れることになります。日本の独立という見地から私は反対しないわけにはいかない。元来平和條約はそれによつて独立が回復せられるものでなければなりません。わが国民が六箇年の長い間平和條約の締結を待ちに待ち望んでいたのは、平和條約が独立への門出となると信じたからであります。しかし、いかなる内容の平和條約でも独立への契機となるべきものではありません。ここに問題があると私は考える。平和條約の締結によつて新たな従属関係が他の国との間に発生するような講和條約であるならば、それは独立への契機たるべき平和條約では断じてない。私はこの両條約をかくのごとき條約であると断定するのであります。なぜ私はこう言うか。一つの事例だけを指摘してみようと思います。わが国がいかなる他の国から奪取したものでもないところの琉球や小笠原諸島を、大西洋憲章の原則に反し、またポツダム宣言第八項でわが国に約束されている領土処分の手続方法に反してさえも、あえてこれを信託統治領域とし、しかも国際連合の規定と現在の国際間の現状ではこれらの諸島を戰略的信託統治地域とする見込みがないので、普通の信託統治地域とし、しかも事実上は戰略的信託統治地域としての効果を持たせるというような、率直に言えば、国際連合憲章の裏をくぐるようなことをしてまでも、米国の軍隊をわが国の周辺に置くことに、條約締結の結果としてなるのであります。このようなことがこの平和條約の結果として起るのであります。また平和條約の條項に基いて安全保障條約が締結せられるのであります。これらは、あるいは対等の地位に立つてなされるとか、あるいはわが国の依頼によつて締結せられるのでおるというように言われておりますけれども、はたしてそうであろうか。北はアラスカ、アリユーシヤンから南はフイリピンに至るまでのアメリカの戰略線上の一拠点として、日本をアメリカの軍事基地化するための條約でこの條約はあるのではありませんか。これが両條約の真のねらいであると私は思う。日本のことよりもより多くアメリカのことが考慮せられてできた條約であると私ども断定しないわけには行かないのであります。でありますから、日米安全保障條約においては、アメリカはわが国に対し駐兵権を持つけれども、わが国の安全を保障する條約上の義務はない、このような一方的な権利義務の関係を設定するような條約ができるのであります。安全保障條約の真の姿は、日本の安全保障の役割を務める條約ではなくて、先日も私が指摘しましたように、日本を保護国化する條約であると私は思う。日本の政治家でこのくらいのことがわからぬものはないはずであります。わかつておりながらこれを国民に明らかにしないのは、国会議員としての職責を盡さざるものであると私は思う。(拍手)この際われわれは、わが国がその勢力のもとに置かれようとしておるその勢力の世界史的意義から見たところの、すなわち人類の進歩の歴史の見地から見たところの役割を明らかにしておかなければなりません。最も近い例をあげれば、今エジプトが解放のために立ち上りつつあるとき、これを軍隊の力をもつて妨害する外国勢力、イランが解放の運動に立ち上つたときに、その立ち上りを妨害した外国支配力、これと一連のつながりを持ち、同じ性格を持ついわゆる西欧的資本主義の勢力、今わが国はかかる勢力のもとに隷属させられようとしておるのであります。その支配に服することはわが国民の退歩であります。それから独立することがわが国の進歩であります。それが世界歴史の示すところであります。アジア、アラブを通ずる諸国が今や解放への、すなわち進歩への道を力強く踏み出しましたときに、わが国はこれから従属の道に第一歩を踏み入れようとしておるのであります。それを日本民族の恥辱でないと思うものがありましようか。われわれは断じてかかる隷属的條約に賛成することはできないのであります。
 反対の第二の理由は、この條約によつてわが国の安全保障が、保証せられないというだけでなく、かえつてこの條約の締結は、わが国の意思に基づかずしてわが国を戰争に巻き込む可能性をつくり出すことになる、これが私の第二の反対の理由であります。元来安全保障條約の歪曲せられざる解釈に従えば、日本の安全の保障を單にアメリカの好意に期待し得られるだけのものにすぎない。決してアメリカを義務づけているものではないのであります。しかしこれだけのことであるならば大したことはありません。しかし、この條約第一條に規定せられておるように、万一米国軍が極東のいずこかの地点で他国の軍事力に対し行動を起すような場合が起つたときにどうなりましようか。この條約あるがために、わが国もただちにこの争いの中に巻き込まれるのであります。そのとき日本人が外地へ出動する義務があるかどうかということも、委員会の審議の過程で問題にせられた。これも重大な問題ではありますけれども……。
○田中委員長 黒田君、時間ですよ。
○黒田委員 この問題は別といたしまして、私はもつと重大な問題があると思うのであります。すなわち、わが国が基地化されておるというその事実によりまして、ただちにわが国は相手国の爆撃の目標とされるのである。かような事態が発生しても、これに向つて抗議することは、この條約があるがためにできないのであります。そのような場合に、アメリカの防衛力の擁護を受けられると言う人があるかもわかりません。けれども、もしそのような擁護が受けられるとしても、これが日本の安全保障にならぬことは朝鮮の場合がよくこれを証明しているのであります。このような危険にわが国を巻き込む條約に、わが国民大衆の生命と財産とを託されておるわれわれ国会議員は、断じて賛成することができないのであります。
 さらに第三の反対理由は、この両條約締結の結果は、アジア、ことに日本との最大の交戰国でありました中国とわが国の経済自立のためにその国との通商関係の回復が不可欠の関係にありますところの中国とわが国との間に和平関係を回復することにならぬのみか、かえつてみぞを深めるような結果になり、ひいてアジア諸国とわが国との関係を悪化せしめるようなことになる。この條約の締結の結果は私はそこに落ち行かざるを得ないと思うのでありまして、このようなところに落ちて行く條約に私どもは賛成することはできません。
 反対理由はこれで盡きるのではありませんけれども、私に与えられております時間には制限がございますから、私は以上をもつて私の反対理由といたしたいと思います。(拍手)
○田中委員長 佐竹君。
○佐竹委員 社会民主党を代表いたしまして、次の三つの希望條項を付して両案に賛成いたします。(拍手)
 第一、平和條約第二條(c)千島、樺太の放棄・同第三條の北緯二十九度以南の諸島の信託統治は、ポツダム宣言八項に規定する、カイロ宣言の條項は履行せらるる旨の條件に背反するものと思う。よつて正常の状態に復帰せしむるため最善の方策を講ぜられんことを要望する。
 第二、賠償に関する規定は表面上きわめて寛大のように見えるが、実質においては世界に類例のない苛酷なるもののあることを否定することができない。よつてこれが実施運営については十分の注意を払われるよう希望する。
 第三、日米安全保障條約は片務的不平等條約と見るのほかはない、よつてすみやかに国内防衛態勢を確立し、双務的対等條約への改正に邁進すべきである。
 さて、平和條約中領土の点はあまりに苛酷でございます。われわれは実に四三%の領土を失い、八千万国民が四つの島と付属する小さな島に重なり合つて生活しなければならない状態に置かれ、生活権を脅かされるまでに深刻な状態に立ち至つております。しかもこのことは、われわれが受諾いたしましたポツダム宣言の條件を逸脱する主権の放棄や信託統治によつて一層その深刻さを増しておるということに考え及びまするときに、われわれは、少くともわれわれの受諾いたしました條件の範囲に復帰せしむべく最善の方策を希求してやみません。すなわち、日本国はいわゆる無條件降伏をいたしたといいますけれども、それはポツダム宣言という條件を無條件に承認したことにあつて、無條件降伏をしたから何らの発言権がないというのとは違います。従いまして同宣言に定められておりまする條件の履行を求むる権利は当然にあると考えます。今ポツダム宣言第八項によれば『「カイロ」宣言ノ條項ハ履行セラルベク』とあります。カイロ宣言には何と書いてあるか。はつきりと、同盟国は自国のため利得を求めず、また領土拡張の念を有しない、といつておるのであります。さらに、同盟国は一九一四年の第一次世界戰争の開始以後、日本が奪取しまたは占領した太平洋におけるすべての島を日本から剥奪すること、並びに満洲・台湾及び澎湖島のような、日本が清国人から盗みとつたすべての地域を中華民国に返還すること、とあります。さらにまた日本国は、暴力及び貧欲によつて日本が略取した他のすべての地域から駆逐せられる、と述べておるのであつて、この條件は今回の條約においても基本になつておりますることは、総理大臣の説明の通り疑いをいれる余地はありません。しかるに本條約第二條の(c)の樺太及び千島の放棄及び第三條の北緯二十九度以南の島に対しまする信託統治は、右カイロ宣言のどの條項にも該当するものではございません。日本が正当に領有して参つたところの右カイロ宣言の條項に該当しないその島を放棄ないし信託統治に付するということは、何ら法律上根拠のないものと考えます。連合国もまた領土拡張の意思を有しないことは先ほど申し上げた通りである。日本国はこの明記された條件を受諾しておる。その宣言のごとく実行せられることをわれわれは期待し信頼して今日に至つた。よつてこの條件に該当しない、領土を放棄し、あるいは信託統治によつてほとんど主権放棄同様な状態に置かれるということについては、まつたくポツダム宣言に定める條件に背反するものと言わざるを得ないと存じます。他面樺太、千島については、ヤルタ協定があるではないかというかもわかりませんが、しかしこれは日本を拘束しないのみならず、その協定自体、国際法上効力を有しないものでありますことも疑いをいれないと存じます。ここにこれを援用することは許されないと信ずる。よつていずれにいたしましても、右主権の放棄及び信託統治は正常のものと認めることはできません。すみやかに原状に復帰せしめるために、最善の方策を講ぜられんことを熱望するものであります。
 ついで賠償に関する規定は、一見まことに寛大のように見えておりますが、その実質を深く検討いたしますると、その賠償の方法は微妙をきわめておりまして、世界に類例のない苛酷なるもののあることを認めざるを得ません。その実施にあたつては、よほどの注意を払われんことを要請せざるを得ません。
 次に日米安全保障條約は、政府の言明や弁解にもかかわりませず、片務的不平等の條約であることは、おおうべくもないと思います。まさしくヴアンデンバーグ決議に基く差別の表現と見るほかはないのであります。われわれははなはだ不満足でありまするけれども、さりとて日本を無防備の不安な状態に放置しておくことは許されません。この際一まず隠忍してこれを肯定し、まずもつて国内の防衛態勢を確立し、来るべき双務的平等條約への切りかえに向つて邁進するのほかはないと思います。
 そのほか本案については幾多の問題を包蔵し、また不満の点がありまするけれども、与えられた五分の間にこれを論じよというのは無理であります。しからば、かくのごとき不満があれば反対の態度をもつて臨めばいいではないかと言うかもわかりません。けれども一部に対する不満のため全体に対し反対いたしますることは、時局の緊迫とその重大性にかんがみ、より以上の重大なる結果に陷るのおそれあることを憂えまするがゆえに、ここにあえて両案に対し希望條項を付して賛成をいたしまする次第であります。(拍手)
○田中委員長 討論は終局いたしました。
 これより採決をいたします。まず平和條約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。本案を承認すべきものと決するに賛成の諸君は起立を願います。
    〔賛成者起立〕
○田中委員長 起立多数であります。よつて本件は承認すべきものと決しました。(拍手)
 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君は起立を願います。
    〔賛成者起立〕
○田中委員長 起立多数であります。よつて本件は承認すべきものと決しました。(拍手)、
 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
○田中委員長 御異議なければその通りにいたします。
 これにて両條約に関する議事は終了いたしました。(拍手)
 この際一言ごあいさつを申し上げます。(拍手)去る十日、新しい日本の進むべき動向を決すべき画期的な両條約が本委員会に付託されまして以来、委員各位におかれましては、終始国家国民の将来を思い、また両條約の保持すべき対外的及び国内的諸要請にかんがみて、平和條約を貫く和解と信頼の精神にのつとつてよく論議を盡され、ここにその審査を終了いたしましたことは国家のためまことに御同慶にたえません。(拍手)委員長はここにあらためて委員各位の連日の御精励に対して敬意を表するとともに、熱心なる御協力によりまして大過なく委員長の重責を果しましたことに対して、衷心より感謝の意を表して本委員会を閉ずることといたします。(拍手)
    午後五時三十八分散会