第015回国会 本会議 第7号
昭和二十七年十一月二十七日(木曜日)
 議事日程 第六号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後二時十三分開議
○議長(大野伴睦君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
○議長(大野伴睦君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。川崎秀二君。
    〔川崎秀二君登壇〕
○川崎秀二君 私は、昨日重光総裁が大所高所から総理の所見をただされましたので、本日は内外施政の焦点につき具体的な問題をとらえて、政府の所信をたださんとするものであります。(拍手)
 自衛力の強化を初め、幾多の案件をめぐつて、国民が最も関心を払つておる点は、講和成立後、日本が国際社会に伍して独立国家としての性格を完全に把持し得るかどうかという点であります。この意味で、現下国民の神経が集中しつつある問題は、国連軍との行政協定であります。この協定の締結が難航し、交渉中の日本代表が多数の関係各国の間に孤軍奮闘しつつある状況は、国民の目にいたくしく映じ、その御努力には敬意を払いますが、思えば、災いは、近く日米行政協定における吉田内閣の犯したる秘密外交の過失にあるのであつて、私は今日になつて国民に窮状を訴えつつある政府の態度には共鳴することはできないのであります。(拍手)
 まず、この問題の焦点たる、駐留軍の軍人、軍属や家族が軍の施設外並びに公務外において犯したる犯罪について刑事裁判権が日本側にあることは、国際法の原則、国際慣行に照し明白であります。政府のこれに基く主張は、われわれも極力これを支持するものでありますが、今回国連軍との交渉にあたり、岡崎外相はその主張の大筋として属地主義をとり、裁判権が日本側に帰属すべきことを主張するとともに、日米行政協定におけるアメリカ軍の地位は日本の懇請により駐留するものであり、国連軍は朝鮮戦線に参加する途次日本の基地に寄港または臨時に駐屯する旨、その性格の差異を述べて、国連側に譲歩を求めておるよしであります。日米行政協定においては属人主義をとり、今回は属地主義をとるという御都合主義はともかくといたしまして、今回の主張と、米英軍の使命、性格についての岡崎外相の理路は、国民の何人も納得するところであります。しかるに、交渉は十数回に至るもまとまらず、一昨日、イギリス連邦軍は長文の声明を発表し、日本側に誤解のあることを訴えております。
 私が岡崎外相に伺いたい第一の点は、国連側が列挙する幾多の理由の中で、いかにしても譲歩を示さぬ最大の理由は何かということであります。イギリス連邦軍の声明の中で、日本側の誤解といううちに記された第一の条項には、第二次大戦中アメリカ軍がイギリス連邦の基地から作戦を行つておつた当時、それらの地域では真の戦争が行われていなかつたにもかかわらず、イギリス、カナダ、オ―ストラリア、ニユージーランド各国は、すべての地域の駐留米軍に対する独占的な裁判権をアメリカにゆだねたと例を引いており、今日の日本も事態が同じであると指摘しておりますが、これは誤れるもはなはだしきものといわなければなりません。(拍手)第二次大戦中の英連邦諸国は、いずれも対日本、対ドイツヘの交戦権を発動しており、陸上戦闘こそ行われなかつたにしても、本国はその爆撃に見舞われて、これがためアメリカ軍に基地を提供し共同作戦を遂行していたのであつて、今日の日本のごとく、単に国連軍に便宜を供与しつつある立場とは同日の談でないことはもとよりであります。また一九四八年当時のベルギー等の例もあげられておりますが、これも過去の例外中の例外を適用しようとするものであつて、すでに締結された北大西洋条約の進歩性に国連軍は目をおおうているものといわなければならぬのであります。かく見れば、日本側の誤解と指摘する英連邦軍の声明なるものは根拠きわめて薄弱でありますが、私は、彼の主張はむしろ次の点にあると思うのであります。
 それは、米英両軍の日本駐留における使命と性格の差異を日本側が主張するに対し、イギリス側の反駁が、何ゆえにアメリカ軍と差別待遇をするのか、極東の僻遠の地朝鮮にまで遠征をしておるのはアメリカ側の要請によるものであることを理由とし、統一体としての国連軍構成の各部隊間に差別待遇を設けようとしている日本の態度は、関係国に誤解と反感を起させるおそれがあると声明しておるのであります。裁判権帰属に対する是非の議論は別として、これはイギリス側の感情としてはけだし当然であり、アメリカがイギリスと、血は水よりも濃し、両国の関係上、今日義理を合せて同一歩調にある以上は、私は、この際政府は勇断をもつて日米行政協定の改訂を大胆に提議すべきものと思うのであります。(拍手)
 今春、日米行政協定が国会の論議となつた際、わが党は、この条約にひとしい協定は当然国会の議決を要するものとして、野党共同の決議案を提出したが、独善的にして絶対多数を頼む吉田内閣は、これを安全保障条約に伴う単なる行政事務なりと称し、遂に国会の承認を求めず、属人主義という不平等な裁判権は、占領下、カーキー色のカーテンのかなたで決定されてしまつたということを、われわれは今日忘れておるものではありません。(拍手)これは明らかに日本中を治外法権とし、フイリピン以下の植民地国家に隷属化したものと言つてよく、独立を前に、吉田外交は占領下最後のページを汚したのであります。(拍手)
 要するに、最初のボタンをかけ間違えたことが、今日もなお問題を残したといえるのであります。私をして言わしめるなら、国連協定難航の原因は日米行政協定にあり、アメリカ側は、在外米軍の裁判権はアメリカ側にあるどいう一九五一年のアメリカ大統領令なるものや、北大西洋条約の行政協定が未発効であるという理由を発表しまして、ただちにその改訂を回避しておるかに見られますが、アメリカが真に世界の大局と極東情勢を洞察するならば、日本国民が一人の例外もなく憤懣の念を持つている、の問題の解決にあたり、指導的国家として堂々たる態度をとり得ない理由はどこにもないと思うのであります。(拍手)この命がけの仕事は、身辺政治上の疑念を放たれておる岡崎君等にまかせるものではなく、総理大臣みずから発意して難局の打開に当るべきものと信ずるのであります。われわれは、今日、平和を信条とし、相互に独立国の名誉を重んずる国連加盟国が、もし、小なりといえども、独立したる日本に対し、裁判の自主性というささやかな希望をさえ無視するならば、国連の持つ大理想は根底より崩壊するものといわなければならぬのでありまして、これらの諸点に対し、吉田総理大臣の明快なる答弁を承りたいと思うのであります。
 また、巷間、この協定が難航するときは、無協定のままで来年四月まで引延ばそうという政府の態度が伝えられておりますが、これはかえつて事件の起るたびに紛争を招くきらいがありまして、今やこの問題は、条理を尽し、互譲の精神をもつて当るならば、必ずや裁判権がわが方にあるという大原則だけはつかみ得ると思うのでありますが、これらに関して、岡崎外相の明快なる答弁を承りたいと思うのであります。(拍手)
 次に私が論及せんとする第二の点は、本年五月の吉田書簡はいかなる意図をもつて出され、これはわが国とイギリス連邦諸国との関係をいかに拘束するかということであります。吉田総理大臣の秘密外交は、元来お家芸でありまして、珍しいことではありませんが、占領下ならばいざ知らず、独立後、あのような書簡が総理大臣の責任をもつてひそかに出されたことは、国民をして唖然たらしめたものであります。まずこの書簡については首相にお伺いをいたしたいが、この文書の性質は一体いかなる種類のものであるか。もとより一国の総理大臣の責任をもつて出したものでありますから、これによつて日英両国を国際的な約束として拘束し、日本の法律関係もこれによつて規制されるものかどうか。この点、明快なる解釈を伺いたい。
 またさらに、五月十七日及び六月二十三日に発せられた刑政長官通達なるものでありますが、この内容と吉田書簡の内容は著しく食い違つており、これがため神戸のイギリス水兵事件が意外なる波瀾を呼んだことは否定すべき事実ではないのであります。ことに吉由書簡が出された後の清原通達には、吉田書簡が、軍人軍属のみでなく、家族の犯罪まで、国連側の要求があつた場合はその身柄を引渡すことになつておるに対し、その間の事情を知つておりながら、家族の場合は、身柄の拘束について一般の在留外人と同様の取扱いをなすべきことを規定しておるのであります。これはまつたく政府部内の不統一と矛盾撞着を物語る以外の何ものでもありません。(拍手)先ごろ、法務委員会においてわが党の清瀬一郎氏より、かかる国内と国外と態度を二つにする政府の方針が対外信用を失墜せるものとして論難せられたことは、けだし当然であります。しかし、私は司法官僚を責めません。むしろ、かかる重大なる書簡を発しながら、国民や国会には何らの報告もせず、水兵事件の発生により、イギリスのイーデン外務大臣の抗議によつてこれが初めて国民の耳に達したという事態は、一体いかなるものであろうか、この秘密外交をわれわれは追究せんとするものであります。(拍手)
 吉田書簡は、聞くところによると、わが国の一方的行為であるともいわれますが、目下発生しつつあるイギリス、オーストラリア兵の自動車強盗事件などが、吉田書簡と第二次刑政長官通達により処理されることとなれば、明らかにこれは拘束力を持つものであります。これこそは、まさに独立後政府の犯したる重大なる外交上の失敗であります。吉田首相は、昨日秘密外交をやつた覚えはないと言われたのでありますが、歴然たる証拠はこれではないか。(拍手)吉田総理大臣は、問題発生前、いついかなるときに国会にこれを報告されたか承りたい。イギリスのオブザーヴアー紙も、最近の号に、吉田書簡と国連協定は独立後吉田政府の犯したる秘密外交の失敗であると、大見出しで報じておるのであります。まさに外交を独断専横したるもの、さきに安政の井伊掃部頭ありといえども、吉田茂にははるかに及ばざることを私は指摘いたしたい。(拍手)しこうして、今日近代国家の総理大臣の態度ではないということも、あわせて論難をいたしたい。これをしも総理大臣は秘密外交でないと言うならば、その秘密外交でないという証拠を私はお示しを願いたいと思うのであります。(拍手)
 次に問題を一転して、財政政策と国民生活の向上について、主として向井大蔵大臣にお伺いをいたします。
 今回提案を見ました補正予算を論ずる前に、世上が最も注目しておりまするのは向井財政の基本的構想であります。昭和二十三年以来、わが国の財政経済は、ドツジ氏の経済九原則を皮切りとする、いわゆるマネタリー・スタビリゼーシヨンによつて貫かれて来たことは周知の事実であるが、これを背後の圧力として国家財政偏重の政策を強行し、その結果、地方財政をますます赤字の窮地に陥れ、国民経済を金詰りに追いやり、その最後のしわ寄せを農民、中小企業者、労働者に及ぼして、一部の富裕者と、これらの階層との生活落差が一段と拡大し、ここに深刻なる社会不安を惹起している事実は、諸君の御承知の通りであります。
 ドツジ・ラインの功罪を一言にして言えば、インフレを抑制して通貨の安定を将来したかわりに、財政と経済とのアンバランスは積極的経済活動を萎縮させ、その社会的不合理性を随所に発生せしめて、景気を今日のごとき不況に陥れ、庶民の苦悩を増大したことは、自由党の諸君といえども遺憾とせられておるところと思うのである。(拍手)すなわち、今日は明らかにドツジ・ラインの修正ないし転換が行われるべきときであります。これを断行することなくして、資本蓄積も、あるいは経済規模の拡大も期待し得ないことは、多弁を要しません。日本経済の今日の状態は、日本経済自身の内包する以上のような不均衡と、従つて資本蓄積も産業設備の近代化も遅れており、その上世界的不況の余波をこうむり、市場の狭隘化とともに、輸出の不振、さらには繊維価格の暴落等、不況途上のわが国経済は今や破産一歩手前の暗澹たる不安であるという言い方も有力であります。
 今日、なるほど政府が指摘されているように、鉱工業の生産は昭和九年――十一年の平均に対して一四〇%程度の上昇率を示し、農業生産の回復も一〇%を越える状況とはなつております。しかし、有効需要は、輸出並びに国内消費ともに、大勢的に見て急増するという希望を持ち得ず、すなわち生産の増大は、需要がこれに伴わないために、すでに一部には多数の失業群を社会に放出して、設備需要は頭打ちのかつこうとなり、操業短縮の余儀なき実情にあることは、深憂にたえざるところであります。従つて今や二千六百億という厖大な滞貨金融を余儀なくされ、しかもこの間にあつて最も打撃を受けたものは中小企業であります。不況の深まるにつれ、地方の中小企業は次々に落伍し来り、その苦悶の投影は激増する不渡り手形として現われ、東京手形交換所の十一月一日以来二十二日までの不渡り手形の発生は、一日平均八百枚と、戦後の最高記録を示し、昨年同月の三倍に達しているという状況であります。かくして、雇用量もまた次第に幅を狭め、失業者の増加は次第に顕著になりつつあるのであります。かかる悪材料の増加を見ると、たとい年末における財政資金の散布、農村方面の供米代金の支払いによる若干の景気刺激材を見ましても、日本経済の本質的改善向上とはなり得ず、従つて、大蔵当局の言明のごとく、動乱ブームの調整過程であるというような楽観的見解をもつてしては、国民は納得できないのであります。この点、昨日の答弁では満足ができませんので、掘り下げた御議論をお示し願いたいし、不況対策につきましても具体的な構想を承りたいと存ずるのであります。(拍手)
 次に、大蔵大臣は、財政演説におきまして、当面の金融政策運営上重大な問題は、物価の安定をはかりつつ、緊要な部門への資金の融通を確保して、民間産業の自由な活動を助長することであるとして、今後、民間資本の蓄積、財政による産業投資を実行することを言明し、補正予算に続いて、明年度予算にも財政投資を相当に行うことを示唆されております。
 その前に、今回の補正予算の歳入面を見てみますると、その大部分の七百一億は自然増収に仰いでおられます。この方法は、国民の自由な資本蓄積に何らの施策を用いず、生活水準の向上にもきわめて無関心で、ただ一切を自然増収に置いておることは、ドツジ方式以来の安易なやり方を固執するものではないかと思うのであります。もとより、これには反論があります。敗戦国にあつては国民生活の水準も低い、資本蓄積も行われない、そのために、まず徴税の形で政府が国民資本を吸収し、これを政府のふところに引き締めて、所要に応じ、財政投資の形で、ぽつりぽつり民間に還元して生産をはかるのだという反論も予想される。予想されるが、もし池田前大蔵大臣の言明のごとく、今日の日本経済の段階が安定がら繁栄へおもむく段階であるとすれば、かかる消極的政策をもつてしては、繁栄経済を招来することは不可能であるといわなければならぬのであります。(拍手)このとき、向井蔵相の財政投資の言明はきわめて注目に値します。しかし、内容がわからない。従つて、財政投資とはいかなる内容と具体的構想を持つものなりや、これは政策の転換を意味するものなりや、私の伺いたい第二の点であります。(拍手)
 われわれは、今日はすみやかにドツジ財政を修圧するの必要を痛感するものでありまして、まずそれには歳入、蔵出両面の構造の変化を断行しなければならない。第一に、政府余裕金の活用を断行して、中小企業、農林漁業の振興、住宅等の建設に充当し、第二に、生産公債を発行して、電力、造船等のコンマーシャル・ベースに乗つた産業はこの際公債資金をもつて充当し、これにより大幅なる実質的減税を断行し、国民負担の軽減をはかるとともに、歳出面において社会保障的経費の飛躍的拡充をはかり、国民生活の充実を期するのが、今日とるべき、ただ一つの方途であると考えるのであります。(拍手)
 もとより、これがためには、石炭、鉄鉱、造船、電力、農業その他重要産業を初め、金融、貿易等の一切にわたつて長期経済計画の立案と実施が必要であるのでありまして、自由党内閣が今日までとつて来た、行き当りばつたりの、その日暮しの政策では、これを達成することはできません。今日、世界のいずれの国家もが、自国の繁栄のためには、長期にわたる計画経済を企図し、公共性、社会福祉性を中軸とし、その大わくのもとにおいて自由なる経済活動を促進しておるにもかかわらず、このとうとうたる世界的傾向に逆行しておる自由党の政策では、国際経済との波長がまず合わないということを、私は指摘をしなければならぬのであります。(拍手)政府は、この際施策を根本的に転換する意思はないか。財政投資の大幅活用がもし採用されるとすれば、それは地すべり的転換にはなりましようが、自由党は、しばしば今日まで、政策の転換については、再軍備問題のように、ほおかむりをして来ておる。ほおかむりをして来ているうちに既成事実をつくり上げて行くという、小出し的白状とも申すべき悪いくせがあるのでありまして、この際明確に、ドツジ・ラインを修正するか修正しないか、この点を私は伺いたいと存ずるのであります。(拍手)
 第四点は、輸出対策についてであります。輸出の不振はわが国経済自立にとり甚大なる脅威であることは申すまでもありません。最近の月一億ドル足らずの輸出は、国際収支への赤信号であります。国際収支の黒字は、二十六年度は五億六千六百万ドルであつたものが、本年の見込額はわずかに六千九百万ドルになつております。下手をすると、さらに減じて赤字になるおそれすらあるのでありまして、この悪化の主因が輸出不振にあることは争えない事実であります。しかるに、今回の補正予算案には、この輸出振興という大問題についてはほとんど手が打たれていない様子であります。日本の死命を制する貿易の振興について、政府はいかなる基本構想を持つか、現行為替レートを堅持するかいなかという問題を、これはひとり大蔵大臣だけでなしに、通産大臣からも伺つてみたいと思うのであります。
 なおこの際、補正予算について技術的な質問を二、三点いたしたい。
 来年度予算の財政規模の問題であります。本年も、補正予算を合せて、その規模は九千三百億円になつておりますが、来年度も、自衛力の強化、社会保障、あるいは遺家族、軍人恩給、ベース・アップ等の考慮から、歳出は相当の増加を予想され、選挙当時自由党が言われました九千億ではとどまらぬものと思われますが、大蔵大臣は、およそどのような見当をつけておられるか、これを承りたい。
 また、軍人恩給の前提として、一億八千万円の年末の特別給与金が計上されておりますが、これを単に行政措置として行うことは、はなはだしく不当であります。当然立法措置を講ずべきものと考えるが、蔵相の御見解を承りたい。
 さらにまた、前年度剰余金というものを計上しておらないということは、いかなる理由によるものか。国会運営上の何らかの含みでもあるのか、これもひとつ承つておきたいと思うのであります。
 選挙の際、自由党が公約したものの中に、貯蓄公債七百五十億というものがあつたが、これもさつぱり表面化しておらない。一体実施するつもりなのかどうか。自由党の政策はしばしば行方不明になることがありますので、この際捜索願かたがたお伺いいたしておきます。
 文部大臣に、緊急問題で一言伺いたい。それは老朽危険校舎の問題であります。これは、今日の児童保護の建前からいたしまして、一日も許されない問題であります。これは単に起債のみで糊塗することなく、積極的な国庫補助をもつて国の責任を果すべきと思いますが、このような緊急問題が、なぜ九十億も予算を出しておいて閣議でけられたか。その点、文相の政治力とからんで、お尋ねをいたしておきたいと思うのであります。
 次に、わが国経済自立上最も根幹である農林問題についてお伺いをいたします。吉田自由党政府の従来の農林政策を考えますと、農林業の基本的問題の解決を怠り、一貫性を欠き、米の自由販売と統制との間を右往左往して、農民大衆を混迷に陥れて来たことが、ただ一つの実績でございます。しかるに、現在わが国農業は、かつてない数々の困難な問題に直面をいたしておる。農地改革によつて、働く農民によつて農地は所有され、封建的地代は近代的地代に改められ、これを基点として、農業の堅実なる発展は一時約束されたごとき感を与えましたが、事実は、農業は政府の超均衡財政の犠牲に供せられ、低米価の抑圧下に、厖大なる過剰人口を擁して呻吟している実情であります。しかも、近時ややもすれば、自由主義と農業の窮迫に乗じ、往時の地主制度の復活を策し、農地改革の成果実力をもつて蹂躪せんとする傾向があることは、はなはだ遺憾であります。
 さらに一方、農村内部において、貧富の階級分化が逐次深刻の度を加えつつある動向も見のがし得ないのであります。もとより、わが国の農業経営は、零細経営のもとに、高度の技術によつてささえられて来たのでありますが、多子相続制度の実施、人口増加によつてますます経営の零細化を招来しつつあるのでありまして、これらに対し政府はいかなる対策と方針を持たれておりますか、お伺いをいたしたいと思います。
 また、外国の農業との競争過程に入らんとする今日、わが国農業の弱点たる労働生産性の低位をいかにして克服するか、さらに農業労働生産性の高揚と、零細貧農の多数である現状とをいかにして調整して農業の発展をはからんとするものであるか、その基本的問題について、政府の明快なる御方針を承りたいと思います。
 また先般、小笠原新農林大臣は、明細なる食糧自給計画なるものを決定して、五年間に三千二百七十八億の資金をもつて、一千七百五十五万石の増産を実施することを明らかにされました。従来とも、この種の増産計画がしばしば吉田自由党政府によつて唱道されたことはありますが、実際の効果はほとんど見るものがありません。従つて、この重大なる計画を実施せんとするには、その所要経費については、今後の財政事情の変遷によつて変更されない確実なる基礎を確保する必要がある。その予算的措置についても継続費をもつて計上し、さらに生産物の価格についても、生産農民が信頼するに足る制度を確立する必要があると信ずるのであります。従つてこの当然の帰結として、食糧農産物の価格安定の方途としては、勢い一般市場価格に左右されない、すなわち、これとは絶縁したる生産者価格を確立する必要があるのであつて、この意味から申せば、当然米麦のごとき食糧農産物については二重価格制度をとるべきであります。従来諸外国において実施されました食糧自給強化対策を見ましても、その生産物の価格の安定に重点が置かれておるのであります。先般、これらの問題について、わが党の竹山祐太郎君から質問がありました際に、政府は明確に二重価格制度の採用を否定されております。しかし、今政府の掲ぐる食糧増産計画も、実はこれでは羊頭を掲げて狗肉を売る結果をおそれるものであります。これに対する政府の所信を承りたいと思います。
 また、先般のこの本会議場におきまして、本年産米の消費者価格につきましては、竹山君の質問に対し、農林大臣より、米価審議会の意見に基き決定する旨の言明があつたが、いまだ米価審議会は一日も開かれておらない。その意見をも聞かず、政府は一方的、独善的に補正予算を終了しておるではないか。しからば、この間の竹山君に対するあなたの御答弁は食言ということになるのでありますが、いかなる御心境を持つておられるかを承りたいのであります。(拍手)はたして政府は、米価審議会の声を聞いて今後米価問題を取扱おうとするのか、それとも米価決定の方法について何らか従来のやり方を変更する方針でもあるのか、これらに関し率直なる所信を国民大衆に明示されたいと思うのであります。われわれが小笠原農林大臣に期待することは、従来の広川欺瞞農政をすみやかに払拭して、声なき農民大衆の心に聞き、その信頼のもとに希望の持てる堂々たる農政の展開であります。このわれわれの期待にそむかざるよう、以上の農業問題について、小笠原新農林大臣、あなた自身の抱いておられる率直なる構想を御発表願いたいと思うのであります。
 最後に私がお伺いをいたしたい点は、独立後の労働運動のあり方であります。独立後の労働運動の進路は、日本民族の運命を決する性格を帯び、世界平和にいかに貢献して行くかという巨大なる役割を考えるときに、政府はその労働組合の健全なる助長について、寸時もその協力を惜しんではならぬと思うのであります。終戦後、わが国の労働者は、いわゆる労働三立法の制定によつて擁護され、長年にわたる被搾取的立場から解放されるとともに、日本経済復興の推進力として、その大多数は、たゆみなき勤労により、汗とあぶらをもつて国家と民族に報いつつあることを、われわれは銘記しなければなりません。(拍手)しかるに、ここ数年来、国民は、労働対策につき、労働者の福祉を増進し、生活を向上する上において、常に清新な、積極性のある労働対策を要望しておりましたが、これに対して、政府はあまりにも無感覚な反応に終始して来たといわなければなりません。
 まず私が労働大臣に伺いたい点は、第一に労働対策の基本問題であります。労働対策というと、何かストライキ対策のように一般に考えられておる今日の日本の状況は、まことに悲しむべき実情であります。第二次大戦後の世界的風潮として、労働権の確立と完全雇用、社会福祉政策の完備は、各国をあげての競争的状況でありまして、国民各階層との利害の調整に立つて、この理想を追求することは必然でもあり、合理でもあります。われわれは、もちろん労働者にも国民協同体の一員としての社会秩序の尊重と自覚を要望するものでありますが、それ以前に、政府の施策は一体どうなのか。政府の施策は積極的にその福祉増進に向けられねばならぬと存ずるのであります。この意味で、たとえば世界の五十三箇国までが実施している最低賃金制度の構想はその後どうなつておるのか、また社会保障制度審議会の勧告に対して、政府はどういうふうに社会保障を進めて行くのか、真剣に取組んでいただきたいし、この点についてお答えを願いたい。
 また、衣食生活と並んで、むしろそれ以上の緊要の問題となつている労働者の集団住宅の建設のごとき、世界各国はほとんどこの集団住宅政策の確立のために邁進をしておる現状なのにもかかわらず、日本の状態はまことに貧困であります。そうして、政府はいまだこれらの政策を具体的にまたは大規模に取上げようともせず、争議が起れば、一切は中労委にまかせ切りである。これでは、労働組合が健全なる姿を示すわけはないのであります。
 今日、われわれは、労働対策の基本的な考え方として、まず第一に、労働者の国民的生活権の確保、すなわち正当なる労働権の擁護、社会保障制度と雇用対策の確立、第二に、日本の全国的労働組合の国際自由労連へのすみやかなる加盟、第三に、労働組合の政治的中立性の確保を大きなムーヴメントとして起すべきではないかと考えるのであります。巨大なる組織を擁するわが国の全国的労働組合が、世界各国の民主的労働者の唯一の集合体である国際自由労連に参加せず、孤立しておる現状は、一日も早く脱却しなければならぬと私は思うのであります。
 昨年以来、わが国の労働組合は、講和条約の前後から、一部に再び政治的偏向が表面化し来り、経済闘争の裏面には、必ず平和三原則の名のもとにおいて、執拗な政治的スローガンと闘争が掲げられて来ておる事実を、われわれは断じて見のがすものではありません。(拍手)かつて、わが国の労働運動を少数の指導者によつて暴力的に牛耳つておつた共産党は、今日衆議院にその議席を有せず、組合の指導的分子はその表面から消えたようでありますが、有力なる組合の一部においては、なお極左分子が新しき衣を着て国際自由労連べの参加を拒否し、一部の全国的争議に見られるがごとき巧妙なる闘争戦術を展開し、ときには年中行事のごとき交渉、ストライキを続行しつつあることは、われわれ国民ととも遺憾千万といわなければならぬのであります。もちろん、これには経済状態や政府の施策に反対する反感もさることながら、われわれは、国民協同体の一員としての労働者の自覚を待つとともに、穏健堅実なる労組が多数輩出して、その代表的団体が国際自由労連への参加を決議し、国際社会の労働組合組織に肩を並べる日のすみやかならんことを期待しておるものでございます。これらに対し、戸塚労相はいかなる見解を持つておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
 電産争議の遷延についても、輿論は次第に高まつて来ておる。もとより、個々の争議の場合、いたずらにストライキを行うからといつて労働者側を責めることは片手落ちであり、今度の争議の場合、経営者の、相手の足元を見抜いての頑強なる態度も、輿論によつてきびしく批判さるべきであります。しかし、われわれが政府に対して特に注意を喚起したいのは、電産争議のごときは、争議がいくら長引いても、労使双方とも格段の損害をこうむらないという特殊な状態にあるのであります。交通機関や、その他の公共企業においては、ストライキによる損失は会社、組合とも莫大なるものでありますが、電産争議の場合、被害をごうむるものは労使双方にあらず、常に一般消費者、ことに停電等によつて自己の生計を失うおそれのある零細なる中小企業者であることを、われわれはここに指摘をするものでありまして、かかる人々の利益擁護のためには、たとい一部の労働者や経営者の悪罵を受けようとも、われわれは敢然立つて所信を貫くべきであると思うのであります。(拍手)私は、天下の良識は断じてこの態度を支持するものと確信をいたしております。
 そこで、私は政府に伺いたい。私は、労働問題に関する限りは、直接政府に強権を与えることは反対であります。従つて、緊急調整も改進党は反対しておる。しかし、第三者の立場にあり、公正なる立場に立つところの中央労働委員会の権威が今日のごとく失墜しておつて、はたしていいものであろうかどうか。これは深刻に考えなければならぬ問題であつて、中労委裁定は、労使双方が実力を背景として融和しない現在、まつたくほご同然の状態であるが、かような姿であつていいものであるかどうかということは、深刻に考えなければならぬ問題であります。私は、この際中央労働委員会に自発的強制調停権を持たせるとか、またはその拘束力を持つような何らかの立法は当然必要であると考えるのであります。多年懸案であります中央労働委員会法を制定し、その権能を強化することも一案かと考えるのでありますが、労働大臣の見解を伺いたいのであります。
 この際私が政府に対して特にお伺いいたしたい点は、政府は口を開けば、中央労働委員会の裁定を尊重せよと労使双方に勧告しておる。しかるに何ぞや、政府はこれと同じ種類の労働機関である人事院の勧告や、国鉄仲裁委員会の裁定を、無残にも足げにしておるではないか。民間企業や労働組合には中労委の裁定の承認を迫つておいて、みずからは財源の不足に籍口して、政府みずからつくつた労働法の趣旨を蹂躪することは、断じて許されないと私は信ずるのであります。(拍手)それでは、天下の労働者諸君が一人たりとも現政府を信頼することはできません。全労働者を敵視するものといわなければなりません。私は、この際、あえてかたきを忍んで裁定、勧告をのんだ国鉄労働組合の諸君の、ごとき健全なる立場には敬意を表するものでありまして改進党は、中労委裁定、人事院勧告等、権威ある労働機関の裁定を常に遵守する精神に燃えておることを、この際はつきりと宣明するものであります。(拍手)
 以上の労働対策もあわせ、先ほどからお聞きしました施政全般にわたる、首相初め関係閣僚の具体的な答弁を私は要求して質問を終るものでございます。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 川崎君にお答えいたします。
 国連軍との協定、裁判権の問題についての協定交渉は、順調に進捗いたしております。孤軍奮闘でもなければ、国民に哀訴嘆願もいたしておりません。岡崎外務大臣は、国連軍との間に、数次に数次を重ねて、国際法の原則、儀礼に沿うような線において妥協点を見出そうとして努力いたされておるのであります。そのために数箇月を費したところが、その結果において妥当なる結論に達することはけつこうなことであります。時間がかかることをもつて苦情を言いなさる理由はないと思う。
 また吉田書簡についての御議論でありますが、吉田書簡なるものは外交文書か、あるいは法律的の云々というお話でありますが、これは単に政府の所見を述べただけの一方的の書類、宣言であります。この書いてありますことは、国際法において普通のことを普通のままに書いたのであります。これをもつて国際の例に反するというならば、これは川崎君において、もう少し国際法の勉強をいたしていただきたいと思うのであります。また、この書簡がたまたま秘密外交もしくは何か密約であるかのごとくにとりざたされるから、これを発表いたしたのであります。発表いたして、決して秘密に付しておるものではないのであります。昨日も申した通り、民主政治において秘密外交はできないのであります。ことごとく議会の協賛を経るものであります。(拍手)
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
○国務大臣(岡崎勝男君) 国連軍との間の協定につきましては、お話のように、今一番問題となつておりますのは、差別待遇でないようにしてくれという先方の要求であります。この先方の立場等はよくわかるのでありまするけれども、私は、この協定にあたりましては、日本の国民がこぞつて国連に最大の協力をするような態勢を持ち来したいと考えておるのでありまして、国連側の主張をそのまま認めることは、必ずしもかかる協力をもたらす結果にならぬことをおそれておるのであります。しかし、行政協定も、御承知のように、NATOの協定が発効すれば、その際、あるいはそれでなくても、来年の四月二十八日以降においてはさらに協議をすることになつておりまするから、暫定的の協定であります。従つてそのときに至るまでの間の国連側との話合いは、十分に隔意ない意見を交換すれば、先ほど総理の言われましたように、何らか実際的な解決案ができるものと考えまして、ただいま努力中であります。(拍手)
    〔国務大臣向井忠晴君登壇〕
○国務大臣(向井忠晴君) 財政金融政策運営の基本方針は、国民経済全体の安定と健全な発達をささえ、かつこれを促進するにあると信じます。従つて、これの運営の方式は、経済情勢の変化に対応し得る伸縮性を持つていなければなりません。経済の現状は、戦後の悪性インフレ収束時や、朝鮮動乱後の世界的ブームに対処しなければならなかつた当時に比べますと、一応の安定を示しております。それらの変化に応じた範囲内においては、従来の方式に多少の変更を加える必要もあろうかと思われますが、他面、財政は国民経済の一環として運営さるべきものでありまして、今日回復と安定をとりもどした国民経済を健全に育成して行くことが何よりも必要であると存じます。従つて一部論者の言われるようなインフレ政策は、この際採用すべきものでないと考えます。従つて今後の財政経済の基本方針としては、健全財政、健全金融の方針はあくまでもこれを堅持して、経済の実情に応じて、その運営方式に弾力性を持たして行くべきものと考えます。
 ドツジ方式ということでお話がございましたが、わが国経済の現状におきましては、経済の運営はやはり財政収支の総合均衡の線に即して行くべきものと考えます。この意味で、いわゆる均衡財政の方針はこれを堅持しながら、日本経済の安定充実の程度に応じて、情勢に即して調整の措置を講じて行きたいと思います。
 景気回復策を大いにやれとの御趣意のようでございますが、今はいたずらに不況の声におびえて目先だけの景気回復策をとるべき時期ではないと存じます。また、それでは、かえつて国民経済健全化の基本方針を誤らしめることになると考えます。景気の現状は、朝鮮動乱後のブームによる行き過ぎが是正されているのでありまして、この際はむしろ若干の苦痛を耐え忍んでも、産業界の合理化、近代化を推進して、将来の正常な国際経済の発展過程に乗り遅れないように、底力をたくわえるべきときであると考えます。政府としては、資金運用部の蓄積資本による金融債の引受、蓄積外貨の活用によつて合理化、近代化を促進する措置をとりたいと思います。
 前年度の剰余金を使用しません理由は、従来とも前年度剰余金は翌々年度の歳入に繰入れる方針になつていますので、二十六年度剰余金は二十八年度の財源に充てるのが適当と考えます。
 積極的に財政政策を進めるといいましても、経済の実勢に応じて、財政及び金融を通ずる総合的な弾力ある運用をはかつて行くべきものでありまして、経済の運営にあたりましては、長期的の経済計画が必要であることは御趣旨の通りでありますが、とかくこのようなものは数字の遊戯に終りやすく、現段階におきましては、国際経済に伍し得る経済基礎の充実強化をはかることが最大の課題であると存じます。来年度予算の規模は目下鋭意検討中でありまして、まだ具体的に数字を申し上げる立場でございませんが、その規模は本年度と大差のない程度でとどめたいと思つております。
 輸出振興について為替レートの点がございましたが、これを変更することは全然考えておりません。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) 貿易振興政策につきましての御質問でございまするが、大体私は四つにわけられると思うのであります。まず第一は、通商航海条約等外交手段によりまして各国との経済関係の円滑化をはからなければなりません。第二には、海外市場の開拓であります。第三には、輸出競争力を国内的に高めて行くことでございましよう。第四には、為替金融その地貿易商社の強化をはからなければなりません。これがためには、外貨並びに国内の金融につきまして格段の努力を要する、こういう方針のもとに振興策を考えておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。老朽校舎、危険校舎のあることはお説の通りでございましてこれを放置いたしますことは社会問題であり、これは、お説の通り、しごく同感でございます。但し、あれは、都道府県が主となつて起債によつてやるべき性質のものであつたのでございます。しかし、私といたしましては、これをこのまま放置することは、お説の通りに社会問題でありますので、今回補正予算に組み込もうと考えたのでございますが、しかし補正予算は、御承知の通り、本予算がありましてその後の情勢変化によつて補正するのが補正予算の建前でございまして同時に起債によつて都道府県がやるべきものを国庫がこれに補助をしよう、こう考えるのでございますので、またその性質も考えなければなりませんから、明年度の本予算において考慮いたしたいと存じております。(拍手)
    〔国務大臣山縣勝見君登壇〕
○国務大臣(山縣勝見君) ただいま川崎君より、老齢元軍人に対する特別措置に関する法制上の問題に対して御質問がございましたから、お答えを申し上げます。今回の特別措置は、御承知でありましようけれども、六十才以上の老齢の元軍人またはその未亡人に対しまして二千円の給与をいたさんとするものであります。これに対して法律を要するのではないかというお話でございましたが、御承知の通り、今回は、昭和二十一年の一万から旧恩給法による普通恩給あるいは普通扶助料が停止されております方々に対して、ことにそのうちの老齢の方々に対して特別の措置をいたさんとするものであります。従つて、これは本年限りの金銭上の措置でありまするがゆえに、あらためて権利を制限いたしましたり、あるいは義務を課するものでないのであります。従つて、これに対しましては法律を要しないと、私は法制上考えております。ことに、これは国庫より補助金を出しまする際におきましてもその例にならつておりまするから、今回は法律によらずして行政措置によつてやつてしかるべしと考えておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君) 川崎議員の御質問にお答え申し上げます。
 増産高につきましていろいろ御鞭撻をいただきましたが、昭和二十八年度から三十二年度までの第一次五箇年計画で、仰せのごとくに千七百五十万石の米麦を増産しようといたすのでございますが、このうちには農地の拡張三十七万町歩、土地の改良三百七十万町歩及び耕種の改善等が含まれておるのでございまして、この計画は実地に即しまして綿密な調査を遂げた上にできておるものでございまするので、これを五箇年にわけて予算上の措置を講じたいと考えております。相当巨額に上りまするが、御承知のごとくに、これは日本の民生安定上にも、また財政負担軽減のためにも、また国際貸借改善のためにも、ぜひ食糧の輸入を減少しなければなりませんので、これはそういう措置をぜひとりたい、毎年の予算上の金を獲得いたしたいと考えておりまするとともに、食糧自給促進法とでも申すべき立法措置をいたしまして、近く提案し、国会にお諮り申し上げたいと考えております。
 それから生産物の価格安定についてお話がございました。まことに、ごもつともなことでございまするが、米は現在統制のもとに置かれておりまして、また麦も一定価格で政府で買い入れております。その他のものについて申しますると、かんしよ等のために、さきに澱粉買入れを政府で実行いたすことにいたしましたが、さらに重要農水産物である菜種とか鯨油とかいうものにつきましても、何らか、の方法をとる必要があろうかと存じまして、目下検討中でございます。
 米価の二重価格制度の問題につきましては、さきにお答え申し、ました通り、さしあたり採用する考えはございません。
 なお、零細農家の対策につきましていろいろお話がございました。実は私どもも、率直に申し上げれば、すこぶる苦心いたしておるのでございまするが、政府といたしましては、土地改良事業、耕種改善等に要する助成融資、農業共済事業に対する国の再保険等、各種の財政援助を行つておるのでございます。また農業協同組合の育成強化、再建整備を行い、その組織を通じての生産の指導、農産物の共同販売、農業資材の共同購入等によりまして、農業生産条件の改善をはかるとか、また国が補助しておりまする改良普及によりまして国の農業の生産指導を積極的に進めたいと考えており、農家の技術向上によりまして零細農対策の一助といたしたいと考えております。なおお話もございましたが、農家零細化の実情にかんがみまして現行相続税、相続法等につきましても、あるいは何らかの検討を加えなければならぬのではないかと、目下研究をいたしております。
 その次に米価審議会の問題がございました。これは実は率直に申し上げますと、総選挙が行われまして、審議会の委員の方の顔ぶれも相当異動を生ずることに相なりましたので、目下国会関係の委員の方に対して、それぞれ御交渉申し上げておる次第でございます。それらの方々が近く決定いたしますれば、このことをお諮りしたいと存じておるのでございますが、この今とりきめました来年一月一日よりの米価六百八十円の問題は、補正予算編成上内定したものでありまして、ゆえに委員が決定いたしますれば、審議会にもお諮り申し上げたいと考えております。
 右お答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕
○国務大臣(戸塚九一郎君) ただいまの川崎君のお尋ねにお答え申し上げますが、新任の私が特に激励をいただいたような感じをもつて承りました。
 最低賃金制については、御承知のように、だんだん遅れておりまするが、目下労、使、公益三者の代表によつて構成されておりまする中央賃金審議会で、制度化について審議を煩わしておるのでございます。同審議会におきましては、すでに二十回を越えてこの問題を熱心に審議いたされておるのであります。現在におきましては、低賃金産業についてさらに専門的な調査をいたすために専門審議会を設置いたしまして実態調査を続けておる次第であります。政府といたしましては、この審議会の答申をまちまして、これが制度化について十分検討いたして参りたいと考えておるものであります。
 労働組合運動に対して、これが健全なる発達をさせる意味での私の所見をということでございました。健全な労働組合運動の発達を助長いたしますことは、わが国民主化の基盤を強固にいたし、国民経済を再建するために重要な施策の一つであります。政府といたしましても、従来通りの方針を堅持いたしまして労働組合運動にみずからが介入するようなことは絶対に避けると同時に、これが自主的に健全に発達いたすことを望んでいるのであります。いやしくも正常な道を逸脱することのないように極力助長育成して、常時これが動向を見守つて参りたいと考えております。争議等だけで、ほかのことについては考えないのかというようなお話でございましたが、私は労働者の福祉の増進については格段の熱意を持つて今後進んで参りたいと考えております。
 集団住宅のことにつきましては、労務者住宅と申しますか、これについては、政府といたしましても、建設省と連絡をとつて努力をいたして参りたいと考えております。
 なお総評の問題についてお話が、ございましたが、前に申し上げましたように、いずれの組合に対しても、その健全なる発達を願うという基本的態度を持つておるのでありまして、この際特に総評についての批判は避けたいと存じます。
 なお労働組合の国際自由労連への参加というようなお話でございましたが、これは当然のことでありまして、いかなる方向に限定をして行くかということは、政府の介入すべきものではありませんが、自由に、組合の自主性によつて、この国際自由労連へ、健全な、自由なる組合運動を目標として参加することは当然のことと考えておるのであります。
 なお電産のストに対しまして私の見解をお尋ねでございました。たびたび申し上げ――ここでは申し上げなかつたかもしれませんが、(笑声)自主的に解決をせられることを基本の方針として参つておるのであります。ただ、お話のございましたように、この電産の争議は、特に被害が第三者に及ぶことが多いのでありまして、この点については、私も非常に心配をいたしておるものでございます。それで、これが解決について、なおまた今後の問題として、いろいろの御意見も多々あることを承知いたしておりまするけれども、ただいま炭労、電産の両争議はきわめて微妙な段階に立ち至つておるのでありまして、ただいまここで、具体的に、あるいはまたこういうことをというような考えを申し上げることは差控えさしていただきたいと思います。また目下のところといたしましては、中山会長のあつせん、調停によつて、少しでも早く解決をはかるということを願つておる次第であります。ただ、ただいまの法制では、政府がいたずらに介入することはできないのでございます。なお緊急調整等のお話も、ございましたが、こういうことも、その事態を見きわめた上でなければ、いたずらに口にいたすことはどうかと考えております。
 国鉄の裁定あるいは人事院の勧告を尊重しないというお話でございましたが、これは決してさようなわけではありません。政府といたしましては十分に尊重をいたしておるのでありまするけれども、従来言われておりまする通り、予算上支出不可能なことで、国会の御意見を伺うよりほかしかたがないのでございます。(拍手)
    〔川崎秀二君登壇〕
○川崎秀二君 吉田総理大臣は、人の質問をよく聞いて答弁してもらいたいと思います。私は、三十年も外交官生活をやつたあなたに、外交文書の性質だけを聞いて、これに背反したとか、違反したとか、そんなことを聞いているのではない。秘密外交をしておるこの事実があるのに対して、あなたは秘密外交はやらないと言つておるけれども、歴然たる事実があるのではないかということを申しておるのであります。その事実を、今度は事実について申し上げます。
 すなわち、吉田書簡は五月三十一日に発せられたのであります。その後、イギリス水兵事件は六月二十九日に発生し、しかして七月の末から八月にかけでこの問題が重大化して、イーデン外務大臣の抗議が発せられたのは八月の初旬かと思いますが、これらの間、国会は連続開会されておつて、七月三十一日まで第十三国会があつたということは、歴史上否定すべからざる事実ではないか。しかるに、その国会に対して、あなたは何らの報告をしておらないので、これは秘密外交ではないかとわれわれは言つておるのであります。(拍手)しかして、この際もつとつつ込んで申し上げるならば、政府はこの内容を、何ぞ、八月の二十九日――八月二十八日の解散の翌日になつて発表いたしておる。これは、吉田内閣が先般第十四国会を解散したことは、昨日河上右派社会党委員長が指摘しておられた通り、憲法に違反しているという論もあるが、いま一つ、つつ込んで問題を考えるならば、党内運営がにつちもさつちも行かなくなつて解散をしたという、(拍手)このもう一つの事実の裏には、もう一つ解散の底流として、イギリス水兵事件が表面化し、しかして、この吉田書簡の内容なるものが天下に公表されては選挙はどうにもならぬという事実をおおわんがために解散をしたのだという、(拍手)吉田内閣の一大陰謀があつたと私は思うのであります。(拍手)この点に関して明快なる答弁を私は煩わしたいと思うのであります。
 労働大臣の御答弁については、不満の点が多いけれども、今日は見のがしておきます。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。川崎君の質問は、私の答弁を曲解されて批評をせられた感があります。私が国民に哀訴嘆願というのは、国連軍との協定について岡崎国務大臣が哀訴嘆願したと申すのであつて、吉田書簡について哀訴嘆願をいたしたのではないのであります。また、吉田書簡は普通のことを述べておるのであるから、あえて公表を必要としないと考えておつたのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
しかしながら、あたかも密約であるかのごとく言われるから発表いたしたのであります。発表いたしたと同時に、輿論は鎮静いたしたのであります。これをもつて秘密外交の証拠となすことはできないのであります。秘密外交ではなくして、しかして秘密外交と言われたものを発表してみれば、輿論はこれで鎮静した。これはたまたま吉田内閣が秘密外交をいたしておらない歴然たる証拠であります。(拍手)
○副議長(岩本信行君) 加藤勘十君
    〔加藤勘十君登壇〕
○加藤勘十君 私は、日本社会党を代表して、吉田内閣の経済政策、とりわけ労働問題、経済不況と兵器生産の関係、貿易に対する対策、中小在業の対策等について、政府の所信を問わんとするものであります。(拍手)
 政府は、さきにいわゆる五大政綱を発表し、さらに総理大臣その他から、本議場においてこれを敷衍するがごとき施政方針の演説がなされたのであります。その多くは抽象的文字の羅列であつて、国民を納得せしむるに足らないものであります。(拍手)きのうの各党代表の質問演説に対しても、そのお答えは大同小異であり、かつ質問の焦点をぼかし、国民が触れんとする急所を避けておるのであります。かくして著しく国民を失望せしめたのである。政府は、そのようなおざなり的な答えではなく、この議場を通じて全国民を納得せしむるに足る具体的な方針をお答えあらんことを切望するものであります。(拍手)
 私の第一に問わんとする労働対策について、私は率直に申しますれば、五大政綱を読み、施政方針の演説を聞いて、深い失望と憤りさえ感じたものであります。さらに、日本の将来のために悲しみをさえ覚えたのであります。一撃一今、われわれは、日本の代表的二大産業である電力と炭鉱の産業にはげしい争議が展開され、争議の当事者はもとより、全国民は、はかりがたき打撃を受け、社会不安におののき、争議の一日もすみやかに解決せんことを要望しておるとき、政府がその政策を発表し、国会に臨むにあたつてこの国民的関心の焦点である争議の問題に対し、一言半句も触れるところがなくてよいであろうか。政府は、この二つの争議が国民生活にどのような関係を持ち、また労働問題が日本の経済全般にどのような重大な性格を持つておるかということを承知されないのか、理解できないのか、まことに驚くべきことであります。(拍手)われ人ともに、これでよいのかと叫ばざるを得ないのであります。しかも、この二つの争議は、全労働者の争議の先頭を切つて立つた氷山の一角である。あとからあとからと巨大な波浪はひつきりなしに押し寄せて、日本産業を麻痺せしめ、国民生活を混乱に陥れるおそれなしとはしないのであります。そのような争議は、政府の労働問題に対する無理解に基くものである。政府はそのことを責任をもつて痛感しなければならないはずである。(拍手)
 ある意味においては、日本の運命を左右する重大なる性格を持つといつても過言でない二つの代表的争議が、かくも長引いていることは、労使両者が、一つは強固なる団結に、一つは独占企業に安座しているからでもあるが、また実に政府が労働問題に対する正当なる認識を欠いておることと、争議解決のために尽す誠意と努力をしないことに、大きな原因があるといわなければならないのであります。(拍手)政府は、緊急調整の権力的手段を唯一の頼みとし、いまだその発動の時期でな、とばかりに、成行きにまかせて傍観しておるのであります。アメリカの大統領は、国民生活に重大な関係のあるような争議に対しては、みずから乗り出してこの解決のために努力し、労働長官の、ごときは、寝食を忘れて東西に奔走しておるありさまである。日本においても、政府が真に問題の性質を理解し、ぜひとも解決しなければならないと欲する熱意があるならば、あえて緊急調整の法律などにとらわれることなく、裸になつて、至誠を労使両者の腹中にしき、政府の運命をかけて解決のために努力するならば、解決は必ずしも困難ではない。(拍手)政府がこの挙に出ないで、傍観的態度をとつておることは、これを善意にとれば無能の表明であり、これを悪意にとれば、政府の意図は、労働者に対する社会的反感を助長し、国民の安易なる愛国心をあおり、弾圧法制定の口実を設けて、再軍備のための兵器生産の問題を一挙に解決せんとする底意を有するものといつても過言ではないのであります。(拍手)政府は何ゆえにあつせんに乗り出さないのか。ことに労働省は、他の行政官庁と異なり、サービス省であることがその性格である。私には、政府がこのような態度をとつておることは、どうしても理解できないのであります。政府は、その真意を披瀝して、国民の疑惑を一掃しなければならないと思う。
 さらに、国民の前には、政府と国会との協力によつて、ぜひとも解決しなければならない問題として、第一には、国鉄の裁定案、第二には、電電公社の調停案、第三には、人事院の勧告案、第四には、近く出されるであろう専売公社の裁定案等が相次いで解決を迫つておるのであります。私は国鉄の裁定案、電電公社の調停案、人事院の勧告案等が政府によつて、あるいは実施期日において、あるいはその予算化において、裁定案、勧告案を裏切つておることは実に不満であります。公共企業体の従業員並びに公務員諸君は、法律によつて争議権を奪われておる。実力によつて生活条件を闘い取ろうとしても、その方法がないのであります。裁定は、法律によつて労使双方に服従の義務を規定しておる。政府が財源不足に籍口して、その義務を履行しないことは、政府みずから法律の精神を蹂躪するものであるといわなければならないのであります。(拍手)これらは、いずれも国家の公の機関が、公正に経済の実情、国の財源、勤労者の生活実態を勘案して決定したものである。従つて、政府は、道義上の義務としてもこれを実行しなければならないはずであります。政府は何ゆえ法で定めた義務を実行することができないのか、明確にお答えを願いたい。
 第二に、中小企業に働く労働者の生活安定と向上化についての問題であります。大企業に働く労働者諸君は、みずから組織し、みずから闘う力を持つており、実力によつて必要な条件を闘い取ることもできるが、中小企業、ことに小企業に働く労働者諸君は、みずから組織することはできても、その運営に余力を持つていない。憲法は労働者に団結と行動の自由を保障しておる。だが、小企業に働く労働者諸君は、生活向上のために必要とする条件をみずから闘い取る力を用い得ないのである。同じ仕事に従事しながら、大企業に働く労働者と比較して、あまりにも劣つた条件を押しつけられておるのであります。いかにしてこれが均衡をはかるかは、もとより大問題である。しかし、いかに困難な大問題であろうとも、ぜひとも解決されなければならない問題であります。これを解決する道はいろいろありましようが、なかんずく社会保障制度を確立して、実質的給与の均衡化をはかることが最善の道だと思われる。その意味において、社会保障制度は、生産意欲増進の道だとも言うことができるのであります。政府は、せめては社会保障制度審議会の答申に基く程度のものは実行するのでなければならないと思うが、これを実行する意思ありやいなや、厚生大臣からお伺いしたいのであります。
 第三に、土木建築に働く労働者諸君の生活安定に関する問題であります。同じ労働者の中でも最も恵まれない運命にある人は、公共職業安定所を通じて働く自由労働者の諸君ではありますまいか。今日、これらの労働者を加えて、土木産業に働く労働者の数はおよそ百五十万人といわれております。これらの諸君は、低い賃金の上に、就業た安定を欠き、賃金以外には何らの保障もないのであります。憲法は文化的にして健康なる生活を営むことを保障しておりまするが、実際には、これらの諸君は、絶えず生活不安に脅かされ、基本的人権すら保障されていないありさまであります。これらの諸君に対し、せめては健康保険加入の道を開き、あるいは労働保護法を制定して生活の安定をはかることは、人道上の義務でさえあると考えられるのであるが、政府は一体どのように考えられるか。(拍手)あるいは、政府は口ぐせのように、財源がないとか、手続がめんどうだとか言われるかもしれないが、大企業に対する保護施策から見れば、百五十万人の労働者が生活不安から免れる問題である。財源があるかないかの問題ではなく、政府に誠意があるかないかの問題である。(拍手)これらの産業のある部門においては、架空の事業団体をつくつて全額負担して、加入の形式をとつている気の毒な労働者さえあるのであります。私は、このような実情に基き、ぜひともこれが実現について政府の重大なる考慮を促さざるを得ないのであります。
 次に、労働関係法規の改廃の問題について政府の所信をお尋ねいたしたい。御承知の通り、労働組合法は、その沿革に徴するまでもなく、労働者の団結と行動の自由を守るための労働者保護法である。前吉田内閣は、これを取締法的性格に改悪したのである。また労働基準法は、職場における労働者の最低生活を保障する保護法である。これまた吉田内閣によつて反動的な改悪が行われた。労働関係調整法についても同様であります。労働者の、こうごうたる反対の中に、権力的干渉を許す改悪を行つたのであります。これらの労働関係法規を、本来の保護法的性格に改善せんとする意思はないかどうか。私は、こうして労働者に憲法によつて保障する権利を保護することによつて、初めて労働者をして労働組合をして正常なる道を歩かしむることができると思うのである。(拍手)
 最後に、賃金問題に対する政府の所信をただしたい。ただいま川崎君は最低
 賃金の問題について触れられましたが、労働大臣の答弁はきわめて不満兄である。賃金は労働者の唯一の生活の源であります。賃金が生活を維持し、明日のエネルギーを補給し、労働再年産を可能とするものでなければならないことは、賃金の原則である。しかしながら、賃金はその国の経済活動のわくの外に出ることは許されない。経済の実態を無視した賃金は、いたずらに悪性インフレを助長するばかりで、労働者の実質的な生活の向上とはならないであろう。それゆえに、賃金はあくまでも生産と伴う生活水準を高める実質賃金に重点が置かれなければならないことはいうまでもありません。しからば、現在のわが国の賃金の実態はどうであるか。それは生産との比率において、また物価上昇との割合において、あまりにも低いのであります。たとえば、生産が戦前の一三〇%以上に達し、労働者一人当りの生産性が著しく高められておるにもかかわらず、生産上昇の根源である勤労大衆の生活水準は、都会地においてはわずかに七〇%を出ずるにすぎない状態であります。物価の上昇率に比べてもまた同様のことが言われる。このように生産と物価と賃金とのアンバランスが、労働者のたゆみなき闘争を呼び起すのである。ゆえに、産業の平和を保ち、その生産の上昇をはかろうとするならば、何よりもこのアンバランスを是正し、勤労者の生活安定が確立され、労働者の経営参加による産業民主主義が徹底しなければならないのであります。この点に対する政府の所信をお伺いいたしたい。(拍手)
 最近、最低賃金制制定の要求が現実に日程に上らんとするに至つておる。ただいまの川崎君の御質問も、この意味にほかならないのであります。この最低賃金制制定の運動は、賃金と物価とのアンバランスを是正せんとする運動の現われにすぎない。われわれは、原則的には最低賃金制に賛成である。要はその基準の定め方にあります。物価の変動期は最低賃金制制定の時期ではなく、物価の安定期を選ばなければならないことはいうまでもありません。現在は物価は比較的安定点にあるとは申しながら、政府の高物価政策、米価の引上げ、ガス、電燈、鉄道料金の引上げ等のために、生活必需物資は安定化していない。政府は、いかにして物価を引下げ、物価を安定せしめるとともに、実質賃金を引上げんとする方策を持つておるか。また産業の性質、企業規模の大小によつて経済の実態が著しく異なつておることはいうまでも、ございませんし、これは最低賃金制制定にあたつては無視することのできない重要な要素であります。最近伝うるところによれば、労働組合総評議会は、マーケット・バスケット方式による理論生計費を根拠として最低賃金制の制定を主張しておるようでありますが、中央賃金審議会が審議を進めつつある最低賃金制とは、内容に非常に大きな相違がある。この点に関して、政府はどのような所信を持つておられるか、明確にお答えを願いたい。
 私の第二に問わんとする点は、経済不況と兵器生産との関係についてであります。現在、わが国の経済は、貿易の不振と、国内購買力の非常なる減退、金詰まりとによつて一部の特需関係を除いては、まつたく慢性的不況の実情にあります。ある業種では相当数の倒産者を出し、失業者は増大の一途をたどり、憂うべき現象を呈しております。この深刻なる不況を辛うじてカバーしておるものは、特需と変則的な駐留軍費の散布とである。(拍手)しからば、一体この不況は克服することができないものであろうかどうか。私は決してこれは避けられないものとは思わない。現在のこの不景気は、自由党内閣の多年にわたる失政に基くものであるといわなければならない。従つて、政府の政策さえ更新されるならば、現在の不況から脱すること必ずしも困難ではないのであります。新内閣は、日本の直面せるこの経済難局を打開するために、今までの政策を故郷して、新しき政策を実行する勇気と、国民に対する誠意をお持ちになつておるかどうか、これを聞きたい。
 国土狭小、人口過剰、その上にさらに資源に乏しいわが国としては、優秀なる生産技術による加工輸出による以外には、国の平和と繁栄をもたらす道はないのである。周知のように、吉田内閣の経済政策は、いろいろの形によるアメリカの援助によつて日本経済復興を進めて行くという、その基礎の上に立てられたものであります。すなわち、ガリオアによる救済費、イロアによる経済復興援助費、特需、新特需による物や労務の買入れ、米国からの原料物資の供給、さらに今後の問題としては、電源開発や企業合理化のための外資の導入、東南アジヤ開発に基く輸出の増加や、兵器生産の拡大による特需の維持あるいは増大など、形はいろいろかわつておりまするが、結局は、これらの政策が、これまでと同様に、アメリカの恩恵にすがろうとする卑劣なる従属政策であるといわなければならないのであります。(拍手)
 日本国民にとつて、日本の経済再建の根本方針は、何と申しましても、独自の立場において生産と労働との均衡の上に立てられた貿易の発展をはかる以外にはないのであります。しかるに、政府は、経済不況の打開策として、兵器生産に重点を置かんとしておりまするが、およそこれくらい危険きわまる政策はないのであります。(拍手)かくのごとき政策をとることは、第一に、日本をして知らず知らずの間に世界争覇の火中に巻き込むことになり、不幸にして、もし大戦が勃発せんか、全国民の意思に反し、戦争の仲間入りを余儀なくされることになつてしまうのであります。また第二には、兵器生産に依存するときは、その受注に変動がありましたとき、わが国の経済は、ただちにパニックに襲われる危険さえなしとしないのであります。いずれの点から見ましても、政府が、現下の不景気を兵器生産によつて打開せんとする方針をとることは明らかに誤りであり、われわれは断じて承服しがたいのであります。
 かつて、吉田総理は、また昨日の議場においてもそうでありましたが、世界の情勢は戦争よりは平和の方向に動いておると言つたことがあります。今日なおこの考えを持つておいでになるとするならば、政府はこの総理の方針に基いて平和的経済政策を樹立し、輸出貿易の発展にこそ主力が注がるべきであるにもかかわらず、戦争への近道としての兵器生産に重点を置くということは、吉田総理の考え方と矛盾しておる。(拍手)それでも、吉田総理は、いつの間にか世界情勢は平和よりは戦争への方向にかわつておるとでもお考えをおかえになつたのかどうか。世界戦争を予想し、無条件にこれに追従するが、ごとき兵器生産の拡大育成の方針には、新日本の建設、国際平和への寄与、国民生活の安定のために、私は断固として反対する。(拍手)かくのごときは、極度に戦争を嫌悪し、平和をこいねがう国民の意思と感情を無視した反国民的政策であると断ぜざるを得ないのである。(拍手)この点に関し、私は特に吉田総理大臣から、腹をすえた、明確なる御答弁を願いたい。(拍手)
 第三に問わんとする点は、日本の貿易政策についてであります。御承知のように、今日の貿易状態は、政府の予想を裏切つて沈滞に沈滞を続け、遂に今日の不況を見るに至つたのであります。これが原因を追究しますれば、もとより一、二にしてとどまらないであろうが、政府の貿易政策もまた貿易不況の主要なる原因の一つであると数えなければならないのであります。日本は、食糧、綿花、鉄鉱石、粘結炭を初め、重要物資の大部分をドル地域から輸入しておるにもかかわらず、ドル地域への輸出はこれと均衡が保たれていない。従つて、正常貿易だけについて見れば、常に輸入超過であります。特需とか、その他の貿易外収入によつて、わずかにこれを補つておるありさまである。わが国は、今やドル地域、ボンド地域、オープン・アカウントの地域全体にわたつて再検討しなければならない段階に来つておるのであります。
 元来、日本経済の実情は、ドル地域よりはポンド地域と深い関係があり、日本が経済自立を達成しようとするためには、どうしてもポンド地域との貿易の拡大をはからなければならないのである。しかるに、現状はまつたく反対であります。ポンド地域への輸出は、英連邦諸国の輸入の制限措置によつてますます減少の一途をたどつておる。もし、このままの状態で推移するならば、繊維製品を初め多くの商品は頭打ちとならざるを得ない状態である。ポンド地域に対する政府の方針は、ここ数年題動揺常なく、方針が定まらなかつたのであります。すなわち、輸出増加が問題になつたかと思うと、翌年はその不振に悩み、輸入減少が心配されたかと思うと、次には過剰輸入が問題になる。こういうありさまは、一にこれアメリカの依存という安易さから来たものであるといわなければならないのであります。
 政府は、最近、鉄鋼製品、また極度に輸出不振に陥つておる繊維製品に対して米綿輸出リンク制を採用して輸出の振興をはからんとしておりまするが、この程度の措置では、ポンド地域への貿易振興は困難と思われる。業者はもちろん、識者は、日本の貿易の不振と国内経済不況とを結びつけて、先行きを非常に憂えておるのであります。政府は、本国会において科学的根拠に基く貿易増大の将来の見通しを明確にして、不況打開の具体策を示し、国民の不安と憂慮を一掃することに努められたい。
 政府は、日英支払い協定の改訂、英国が行つておる輸入制限の措置に対し、その打開のために、積極的に交渉すべきであるし、また交渉しつつあることと思うが、現在一体どの程度に交渉が進行しておるか、その点を明らかにしてもらいたい。またアメリカに対しては、アメリカが一方においてガリオア、イロア等によつて日本の経済復興を援助するかと思えば、他の一方においては、日本の商品に対し、関税の障壁を設けてこれを阻止せんとしておる。これは明らかにアメリカの矛盾である。ことに共和党の新政権下においては、共和党の性格から、この傾向は一層強まるものと思うが、政府はこの傾向に対してどのように観察し、どのような方針をもつて対処せんとするつもりであるか。この点に対して、通産大臣、外務大臣等から、その所信のほどをお伺いいたしたい。
 また、隣国中国との関係であるが、元来中国は、わが国にとつて有力なる原料供給国であり、有数なる市場であつた。両国が密接な関係にあつたことは、あまねく人の知るところであります。戦後、中国の政治的変革が行われ、これに伴つて経済構造が変化し、わが国の生産内容の変化と相まつて戦前の状態を再現することは不可能であるが、しかしながら、両国の関係が回復するならば、日本にとつて、中国は、東南アジア諸国と同様に重要なる関係を持つことは、争われない事実であります。日本は中国に対しても正常な関係を回復するために、できれば両国間の平和関係を回復するために政治交渉が行われることが望ましい。しかし、現在の国際情勢のもとでは、ただちにそのことを望むことはできないであろうが、せめては経済関係の正常化をはかるために、政府は一体どのように考えておられるのか。(拍手)
 われわれは、日本を独立国とするために、日本との平和条約に署名し、批准した国々が、日本が完全な独立国となるために、その裏づけとしての経済自立のために必要とする諸外国との経済交渉を妨害するとは思われない。日本は、道理のあるところ、国際正義に従う限り、だれに遠慮することはない。所信に向つて邁進すべきである。(拍手)政府は、アメリカの鼻息をうかがうにきゆうきゆうとしてかえつて他の国々からあなどりと反感を招いているとさえ思われる。政府は、このようなそしりをしりぞけるためにも、卑屈な態度を一擲し、アメリカに対して堂々たる交渉を進めなければならないと思う。この点に対しても、私は外務大臣から、ほんとうの腹を割つた御答弁を願いたいと思うのであります。
 さらに、東南アジア諸国、近・中東諸国との間にも、どうして国交の調節をはかり、貿易の振興をはからんとするか。われわれにとつては、こうした国際貿易上の問題を総括して政府の具体的な説明を聞かんとするものでありまするが、さらにわれわれにとつて一層重要なことは、貿易不振による国内の不況、中小企業の倒産、失業者の増大をかかえて、一体企業対策をどうしようというのか。この点に対しても、何ら政府は具体的に案を示すことがないのであります。
 さらに、いま一つ重要なことは、輸入食糧と内地生産との関係であります。食糧は国民生活の基礎物資として、その供給の潤沢なことはもとより望ましいのでありまするが、年々巨額の輸入は、国民経済に耐えがたき重圧を加えておる。現在、米、麦などの輸入の状況は、どこの国から、どの程度に輸入されつつあるか。またその将来の見通しいかん。この点に対しては、農林大臣から、次の項とあわせて、所信ある言明をお伺いしたいのであります。(拍手)
 すなわち、農民が食糧生産に精魂を打込んでその生活を楽しみ得る、換言すれば生産費を償つてなお若干の余裕がある価格で買い上げ、自給自足の体制を整え得られるように、食糧価格の引上げの問題、農村の総合的開発に関してのお考えを伺いたいのであります。ただいま川崎君の質問に対してお答えになつた点は、多少この点に触れておるようでありますが、私の質問の焦点と、川崎君の質問の焦点とはおのずから異なつたものがありますから、この点は決して省略することなく、具体的な説明をしてほしい。もちろん、この場合、買上げ価格が消費者の負担に転嫁されないように、二重価格制をとる必要があることは言うまでもありません。二重価格制のために政府が財政上の負担となるにしましても、高価な輸入食糧のために負担しておることを思えば、大した苦痛ではないはずである。農林大臣はどのようにお考えになるか。この点もあわせて御説明を願いたい。
 第四に私の問わんとする点は、中小企業対策についてであります。わが国の中小工場は、その数において全工場の九割以上を占め、その生産高において六割、その従業員数において全工業労働者の七割を占めているのであります。言葉をかえて言えば、中小企業は日本の経済の中核をなすものであるといわなければならない。このような日本経済の上に重要な地位を占めている中小工業が、今日見るような窮乏状態に陥つたことは、ある意味から言うならば、日本経済の活動を半身不随に陥れたものであるといわなければならないのである。(拍手)中小企業のこのような困窮は、単に重大なる経済問題であるばかりでなく、実に大きな社会問題であるといわなければならないのであります。しかるに、政府は、もつぱらこれを金融の面からのみ取上げようとしておる。しかも、政府の言う金融施策は、わずかに国民金融公庫などに若干の政府の出資金を増額し、年末融資のある程度のわくを広げようというのにすぎない。中小企業に対する本格的な金融措置を講ずるがためには、第一に中小企業の生産性を高めるに必要なる生産技術の向上、第二に設備の更新、第三に精密技能の助成、これらを科学的に分析し、長期融資を目的とした政府出資の専門的金融機関の設置をぜひとも必要とするのである。この構想に対し、大蔵大臣は一体どのようにお考えになるか、確固たる御答弁を願いたい。官僚の書いたメモでは不足である。(拍手)
 中小企業の極端な行き詰まり、金詰まりを打開するために、応急策として金融措置が講じられなければならないことはいうまでもありません。だが、中小企業行き語まりの原因は、必ずしも金詰まりが第一義的なものではなく、むしろ政府が日本の産業、経済における中小企業の価値を正当に認識せず、産業、経済、金融政策を樹立する場合に、常に中小企業を無視もしくは軽視して立案されたところに、ほんとうの原因が存在しておるのである。(拍手)この根本的原因に触れないで、単に金融措置を講じても、一時的、弥縫的な応急策としてより以上に出ることはできないであろう。中小企業問題に対し、政府や金融業者が最近著しくあわて出した。このことは、中小企業の窮状があまりにも深刻化し、大企業との関連において放置することができなくなつたからであつて、大企業は、特需の危険を中小企業に分散せしめる必要から、にわかに対策としてあわて出したにすぎないのである。ほんとうに中小企業の価値を正当に認識し、その上に立つての中小企業の自主的発展を考慮した結果ではないのであります。
 自由競争を最上のものとして主張して来た自由党の経済政策は、別な言葉で言えば弱肉強食である。大きなものが小さなものを、強いものが弱いものを搾取するに都合のいい考え方である。(拍手)池田通産大臣は、かつて大蔵大臣の当時、中小企業者が五人や十人死んでもしかたがないと放言したが、これは無意識に自由主義経済の本音を吐いたものであるといわなければならないのであります。(拍手)池田通産大臣は、今もなおこのような考え方を持つておいでになるかどうか、この席上においてはつきりと御答弁を願いたい。中小企業が関連下請工場として大企業から受けておる重圧は、数字には明示し得ない大きなものがあります。中小企業の金詰りの原因は、中小企業庁が発表した中小企業金融実態調査の示している通り、その第一が税負担の……。
○副議長(岩本信行君) 加藤君に申し上げます。加藤君、申合せの時間がありますから、なるべく簡潔に願います。
○加藤勘十君(続) いや、そうではありません。了解を得ております。
 中小企業金融実態調査に示しておる通り、その第一が税負担の過重と徴税の強行であり、その第二が売掛け代金の回収の不円滑、すなわち親工場、問屋の支払い遅延、貸倒れの増大等々である。また中小企業連盟も、新内閣に対する要望として、中小企業に対する税負担の軽減、大企業の下請工場及び関連産業に対する未払い及び支払い遅延を解決するため、税務行政の刷新及びこれに対する徹底的な具体的措置を講じてもらいたいと訴えておるのであります。政府は、この中小企業連盟の要望に対し、いかにこたえんとするか、政府の所信を大蔵大臣、通産大臣からお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 政府は、特需に対しては大企業をあらゆる面で保護しておるのである。それならば、同じく特需の危険を分担する中小企業に対しても、大企業と同様に保護すべきではないか。政府は、この点に対しては、中小企業は死んでも倒れてもしかたがないという考えを依然としてお持ちになつておるかどうか。(拍手)中小企業の危機が、実は金融以前に伏在しておることは、今申し述べた通りであります。政府は、その本質に触れることなく、一時のがれの金融措置によつて局面をごまかそうとしておりまするが、私は、政府がすみやかに、誠意をもつて、平和産業に基く生産の活発化、恒常的な貿易の増進を前提とした中小企業の自主化、生産設備を精密工業化し得る技術指導、市場の確保、諸税の大幅軽減とその取扱い手続の改正等をこの際取上げ、これを実際的に行われんことを強く要望し、これに対する政府の所信のほどをお伺いして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 加藤君にお答えいたします。
 独立間もない今日、国力の培養をはからなければならない今日において、ストライキが起つたために生産が衰え、国民生活に不安を生ずるということは、政府の最も避けたいと考えておるところであつて従つてストライキの起る兆候のあつて以来、政府は非常な関心を持つてその経過を注視しておるのであります。この経過の委細については、主管大臣からお聞きを願いたいと思います。
 これにつけ加えて申しますが、私の戦争の危険に対する観念は少しもかわつておりません。漸次薄らぎつつあるものと確信いたします。しかしながら、兵器産業の発達は、これは全産業の一環としてその発達を政府は希望いたすのであつて、ただそれのみに力を注ぐわけではないのであります。(拍手)
    〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。
 労働争議の解決は自主的に行くことが最もよいのであり、またそれが現在の法律の上からも考えられておるところであるから、政府としては、みだりに介入をするというようなことはいたさない、かように考えてそれで自主的に解決を願つておる。もしそれで自主的にどうしても解決ができないときには、中央労働委員会があつせんをするようになるのが現在の建前であります。ただ、先ほどのお尋ねで、政府が全然傍観的の態度をとつておつた、かようなことでありまするが、今私が申し上げましたのは、決して傍観的の態度をとつたのではなくて、みだりに介入をしてはいけないと思つておつたからであります。それで、電産の争議につきましては、去る十三日、だんだん被害も大きくなり、国民の迷惑も多くなるということを考慮いたしまして、当事者双方の方においでを願つて、早く中山会長のあつせんのもとに交渉をすることをお勧めしたような次第であります。それから会長のあつせんのもとに昨日まで交渉をいたしておつたのであります。
 なお緊急調整のお話がありましたが、先ほど私が申し上げましたのは、そういうことを言いふらすように誤解を受けてはいかぬから、この大事な際であるので、きわめて微妙な段階にありまするから、この成行きも十分に注視をしておりたいものである、かように申し上げた次第であります。
 なお次に、自由労務者の健康保険加入の道についてのお話でございましたが、これは私も、もしできるならば、まことにけつこうなことだと考えておるのでありまして、厚生省とも常に連絡をとつて協議をいたしておるのであります。
 なお、労働関係法規が改悪されたというお話でありましたが、私どもは改悪されたとは考えておりません。もちろん法律のことでありますから、かえることができないわけではありませんが、その労働関係の実態、あるいはまた世論の動向等を常に考慮いたしまして、研究の上に、かえるべき場合にはまたかえなければならぬと思つておるのであります。
 次に賃金の問題でございますが、先ほど川崎さんにもお答えをいたしましたように、目下中央賃金審議会において御研究をいただいておるのであります。
 なお、生産指数その他について詳しくお話がありましたが、まだ数字の点について私が十分わきまえませんので、これは委員会等でお答えいたすことといたします。
 それから国鉄、電通等の裁定の問題、人事院勧告のこともございましたが、これは先ほども申し上げましたように、裁定そのものは尊重いたすのでありますけれども、予算上支出不可能な場合に国会の御意思をお尋ねいたすものであります。(拍手)
    〔国務大臣山縣勝見君登壇〕
○国務大臣(山縣勝見君) ただいまの加藤君の御質問の二点についてお答え申し上げます。
 まず中小企業の労働者に対する社会保障制度を新たに設けるか、あるいは何らかの措置をとつてはどうかという御質疑でありましたが、御承知のように、社会保障制度は、老齢あるいは疾病、あるいは傷害、出産、その他労働者の死亡等に対しまして、万一の場合にこれに対処いたすものであります。従つて、これに対しては別途に考慮いたすべきものと考えるのでありまして、これらの労働者に対する実質給与の引上げをこの社会保障制度をもつて望まれることは範囲外と考えるのであります。
 なお第二の点でございまするが、この自由労働者に対して健康保険加入の道を開いてはどうかというお話でございますが、これに対しましては、ただいま勤労意欲を高揚いたし、あるいはまた疾病がこれらの人々に対して非常な生活の脅威になつております点にかんがみまして保険財政の点、あるいは保険技術の点等から、せつかく検討いたしておるわけであります。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君) 加藤議員のお尋ねに対してお答え申し上げます。
 私も、加藤議員同様、衷心より農家の生活安定向上を念願してやまぬものであります。但し、米の生産者価格につきましては、パリティ米価に、資本投下量の増加と、都市と農村の実質消費水準の均衡をはかるための調整比率によりましてそれを算定した加算額を加えて、三等裸、石当り七千五百円に決定した次第であります。農林省調査の米の推定の生産費と比較いたしますると、この価格によりまして、米の生産費は相当償えるものと考えております。
 その次に消費者価格についてのお話がございましたが、これは財政負担の問題等もございますし、また漸次統制をゆるめて参りたい考えもございますので、ただいまのところ二重価格制を採用する考えは持つておりません。
 農家経済安定についてのお話がございまして、まことにごもつともに存じました。米麦以外につきましても、国民経済上、はたまた農業経営上、重要な農産物につきましては、その価格の安定をはかるために、必要に応じて政府買入れを行う等の措置をとるの要があることを考えまして、さつき申しました通り、すでにかんしよ及びばれいしよによります澱粉並び、にてん菜糖等につきまして食糧管理特別会計法によつて政府買入れを行つておる次第でございますが、さらに他の重要農産物の価格安定につきましても適切なる措置を講じたい所存でございます。
 なお農家経済についてのお話がございましたが、戦前、昭和十一年ごろを一〇〇といたしますと、私どもの調査では一一七になつております。但し、農家の一層の経済の向上を期待しておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 第一の、兵器の生産に産業政策の重点を置いておるのではないか。この御質問には、先ほど総理大臣よりお答えの通り、われわれは特にこれに重点を置いておるわけではございません。産業の一環として、また準輸出として取扱つておるのであります。大体兵器の生産の分量と日本の生産全体を比べられましたら問題は解消すると思います。
 第二に、ポンド地域べの輸出の問題でありまするが、御承知の通り、日本の貿易はポンド地域には出超で、ドル地域からは入超ということは、もう数十年来の宿命であるのであります。しかるところ、最近に至りまして英連邦は輸入を制限いたしましたために、従来ほど輸出が伸びなくなりましたただいまでは輸出入均衡しておるのであります。私は、これを解決いたしまして極力輸出をはかるためには、まず日本から、たまつた外貨で、スターリング地域の品物をどしどし輸入して相手方に日本からの輸入力を与えることが先決だ、こういう考えのもとに、先ほど申し上げましたような輸出振興対策を実行に移しつつあるのであります。
 なおこの問題に対しまして日英支払協定の問題でございますが、御承知の通り、八月に一応四箇月延期をいたしましたから、今年末改訂になることになつております。ただいま交渉に対します腹案を関係当局と練つておる次第でございます。
 最後に、中小企業対策につきましてのだんだんの御覧は、大体において私も同感でございます。そういう線に沿つて今後極力中小企業に対しましての振興方策を講じたいと思います。
 なお、特に御質問のありました、昭和二十五年三月一日の私の言として新聞に載りましたことにつきましては、その直後、この壇上で私の心境を話しております。その後におきましても、何らかわりはございません。ここではつきり申し上げますが、インフレ経済から安定経済に向いますときに、この過渡期におきまして、思惑その他の、普通の原則に反した商売をやられた人が、五人や十人破産せられることはやむを得ない――お気の毒ではありまするが、やむを得ないということを、はつきり申しておきます。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 静粛に願います。
    〔国務大臣向井忠晴君登壇〕
○国務大臣(向井忠晴君) 中小企業に対していろいろの借地を講じます上に、金融のことをおつしやいましたが、商工組合中央金庫を強力化して行きまして、そうして金融上の助けをしたいと思いまして、別の組織をつくる考えはございません。中小企業についての重要性は、特におつしやいませんでも、大きな企業と申しましても、必ず中小企業によつて助けられて行きますので、これを等閑視することは決してございません。(拍手)
    ―――――――――――――
○久野忠治君 国務大臣の演説に対する……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)明二十八日定刻より……(議場騒然、聴取不能)本日はこれにて散会されんことを望みます。
    ―――――――――――――
    〔「再質問」と呼び、その他発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
 加藤君より再質問の申出がありますから、簡単に許します。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
    〔加藤勘十君登壇〕
○加藤勘十君 ただいま私の質問に対して、各大臣はまつたく焦点をはずれた、でたらめな答弁をされておる。(拍手)のみならず、外務大臣は、答える道を知らない。このような不誠意な内閣が一体どこにあるか。(拍手)しかも、通産大臣のごときは、みずから五人や六人……。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○加藤勘十君(続) 一体、五人や六人の国民は死んでもいいのか、それはどうかと聞いておるのである。これに対して通産大臣は一体何と答えたか。(拍手)ひとり議員を侮辱するばかりではない。全国民を侮辱するものである。(拍手)私は、通産大臣の明確なるお答えと、外務大臣のはつきりしたお答えを聞きたい。(拍手)
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○国務大臣(池田勇人君)(続) 先ほど申し上げましたごとく、昭和二十五年三月一日の私の新聞記者会見につきまして、本席で申し上げました、速記録に載つておるのは、ただいまも私の考え方でございます。しこうして、今死んでもいいということを言つたかどうか覚えませんが、もし……。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○国務大臣(池田勇人君)(続) 私の心境は、インフレ経済から安定経済に参りますとき、やみその他の、正常な経済原則によらぬことをやつている方がおられた場合において、それが倒産をし、しこうしてまた、倒産から思い余つて自殺するようなことがあつてお気の毒でございますが、やむを得ないということははつきり申し上げます。
    〔発言する者多し〕
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。ポンド圏に対するいろいろの問題につきましては、先ほど通産大臣から申された通りでありますが、特に英国側等の輸入制限措置につきましては、日英支払い協定にあたりましても、十分その点を考慮するつもりでやつております。
 共和党の方針につきましては、まだ政府を組織しておりませんからわかりませんが、政府としては、常に客観的事実を明らかにしまして、理解を深めておりまして、その範囲では、今までも十分成功しておると考えております。
    〔発言する者多し〕
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
○国務大臣(岡崎勝男君)(続) 中共貿易につきましては、朝鮮で現に血を流している最中でありますので、共産側の戦力を増強するような措置はとるべきではないと考えまして、各国と歩調を合せて適切な措置をとつておるわけであります。また中共側におきましても、厳重な貿易統制を行つておりますから、中共貿易が大幅に拡大するということは、ちよつと今のところ考えられないような次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○久野忠治君 国務大臣の演説に……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)……延期し、明二十八日……継続すること……本日はこれにて散会されんことを望みます。
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時三十六分散会