第015回国会 予算委員会 第6号
昭和二十七年十二月三日(水曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 太田 正孝君
   理事 尾崎 末吉君 理事 小坂善太郎君
   理事 塚田十一郎君 理事 橋本 龍伍君
   理事 井出一太郎君 理事 川島 金次君
   理事 勝間田清一君
      相川 勝六君    淺利 三朗君
      石田 博英君    植木庚子郎君
      植原悦二郎君    岡本  茂君
      加藤常太郎君    北 れい吉君
      重政 誠之君    島村 一郎君
      田子 一民君    永田 亮一君
      永野  護君    灘尾 弘吉君
      西川 貞一君    貫井 清憲君
      原 健三郎君    本間 俊一君
      南  好雄君    森 幸太郎君
      山崎  巖君    川崎 秀二君
      北村徳太郎君    櫻内 義雄君
      鈴木 正吾君    中曽根康弘君
      古井 喜實君    松浦周太郎君
      宮澤 胤勇君    石井 繁丸君
      片山  哲君    河野  密君
      西村 榮一君    平野 力三君
      水谷長三郎君    伊藤 好道君
      稻村 順三君    上林與市郎君
      成田 知巳君    八百板 正君
      福田 赳夫君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  吉田  茂君
        国 務 大 臣 緒方 竹虎君
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
        大 蔵 大 臣 向井 忠晴君
        文 部 大 臣 岡野 清豪君
        農 林 大 臣
        通商産業大臣 小笠原三九郎君
        国 務 大 臣 木村篤太郎君
 出席政府委員
        法制局長官   佐藤 達夫君
        大蔵政務次官  愛知 揆一君
        大蔵事務官
        (大臣官房長) 森永貞一郎君
        大蔵事務官
        (主計局長)  河野 一之君
        大蔵事務官
        (主税局長)  平田敬一郎君
        大蔵事務官
        (理財局長)  石田  正君
        大蔵事務官
        (銀行局長)  河野 通一君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  佐久  洋君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (自治庁選挙部
        長    )  金丸 三郎君
        専  門  員 小林幾次郎君
        専  門  員 園山 芳造君
        専  門  員 小竹 豊治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 昭和二十七年度一般会計予算補正(第1号)
 昭和二十七年度特別会計予算補正(特第1号)
 昭和二十七年度政府関係機関予算補正(機第1
 号)
    ―――――――――――――
○太田委員長 これより会議を開きます。
 昭和二十七年度一般会計予算補正外二件を一括議題といたし、質疑を継続いたします。
 この際、昨日当委員会において行われた、北村委員及び関連質問に立たれた中曽根委員の炭鉱融資問題についての質疑に関し、政府より発言を求められております。これを許します。
○向井国務大臣 昨日の本委員会におきまして、北村委員から御質問がありました炭鉱労務者住宅建設資金の問題につきましては、いろいろ調査いたしましたところでありますが、順序として、まず本件の経緯等について、あらためて御説明を申し上げる方がよろしいと思います。それにつきまして石炭鉱業の所管大臣でありまする通商産業大臣から、その点の御説明を申し上げたいと存じます。
○小笠原国務大臣 炭鉱労務者住宅建設の経緯につきまして申し上げます。
 終戦後わが国の経済を再建するにあたりまして、まず石炭の増産が強く要請されましたが、当時の石炭鉱業は、戦時中を通じての強行出炭と償却不足によりまして、設備の荒廃が著しく、また一般的な資材の不足がこれに重なりまして、坑内外の設備をまず充実して、合理的な採炭方法により増産を実現することは、まつたく不可能な状態にあつたのであります。しかしてこの矛盾を克服するために、設備面の不備を労働力によつて補い、ともかくも増産の目標を達成するという施策が、総司令部方面より強く要請されまして、政府もこれが実現のために、多数の労務者を炭鉱に集めることと相なつたのでありまするが、当時炭鉱といたしましては、このように大量な労務者を受入れる設備に欠けておりまして、企業としてかかる設備に、自己の責任において、巨額の資金を投じますることは、経営上耐え得ない状況にありまして、業界といたしましては当初よりその旨を強く主張していたのであります。しかしながら総司令部の強硬な推進もございまして、昭和二十二年一月七日の閣議で、炭鉱労務者住宅建設計画を定めまして、昭和十二年一月八日、内閣訓令第一号、炭鉱労務者住宅建設用資材確保要綱、及び昭和二十二年一月十三日、閣令第二号で、臨時物資需給調整法に基く臨時炭鉱労務者住宅建設規約を制定いたしまして、資材の最優先確保を期しますとともに、資金面においては利率は日歩一銭五厘、年五分五厘でありますが、償還並びに償却は十箇年とし、借入金の償還費用は炭価に織り込むことといたしたのであります。そして昭和二十一年下期より二十二年上期までの炭住資金融資額は約百、五十五億円に上り、増産の目的は一応達成いたしましたけれども、当初の融資の条件に関しましては、総司令部の意向もありまして、当初の条件は満足させられず、金利はおおむね九分五厘となり、償却年限は十五箇年で、しかもこれすらも公定価格の中に十分には織り込まれていなかつたのであります。その後昭和二十四年九月十四日をもちまして、配炭公団の解散並びに石炭の統制が撤廃されて、その後におきましても、炭住借入金の償還並びに償却が十分行われ得ない事情にありましたので、石炭業界より負担の軽減措置に関しまして、炭住資金の金利を無利子とすること、右の返済金は法人税法上損金とすること、右の償還期限を最低二十年とすること、右の措置は炭住借入金の性質にかんがみ、借入当初にさかのぼつて実施すること、この四点について強い要望があり、国会におきましても、しばしばこれらの点の改善に関しまして、強い要請があつたのでございます。
 通商産業省におきましては、この間のいきさつ並びに前述の閣議決定の趣旨にかんがみ、石炭企業の負担を軽減するとともに、回収困難な状態にあつた炭住資金の返済を促進し、国家資金の有効な活用をはかる建前から、炭住資金の取扱いにつきまして、償却年限は原則として十箇年とし、償却の範囲内で、年々の償却金をもつて元金の返済に充てるが、各企業の実情に応じて、償却金を越えて返済が可能な場合におきましては、その部分については、繰上げ償却とみなして免税をする。金利については前述の閣議決定の趣旨に基きまして、年利五分五厘とし、貸付時に遡及して実施し、過払い分については、将来の金利支払い分に充当するものとするという二点について、大蔵省当局と折衝を重ね、決定を見たわけでございます。
○向井国務大臣 本件の経緯につきましては、ただいま通商産業大臣から御説明のあつた通りでございます。政府としましては、占領行政下における特殊な事情にかんがみまして、不本意ながら当初決定いたしました案の内容のうち、金利、償却条件等の重要な部分についての変更を余儀なくせられたのでございます。またこれらの経費を炭価に織り込むという当初の方針も、当時炭価が改訂の都度司令部の承認を要した等の事情によりまして、結果的には当該経費の全部を炭価に織り込むことはできなかつたのでございます。従つてただいま通商産業大臣から御説明がありました通り、石炭増産のために政府が強行いたしました炭住に対する融資は、その本来の性質上条件を緩和すべきものでありましたので、融資の元利金の返済も順調を欠く実情にあつたのでございます。このため国会その他各方面においても、むしろ当初決定の線まで融資条件を緩和して返済を促進すべきで、その方が得策ではないかという議論が逐次活発となつて来たのでございます。これらの事情を総合的に勘案いたしまして、過般の善後措置が講ぜられた次第でございます。
 なお本措置が財政法等の会計法規に違反するものではないかという点につきましては、何ら法規に抵触するものではございません。
○太田委員長 中曽根君に念のために申し上げますが、関連質問は従来の慣例もございますので、私から申し上げるまでもなく、しかるべく御発言を願いたいと思います。
○中曽根委員 ただいま両大臣から御説明を承りましたが、どうもわれわれがお聞きいたしますと、業者の言い分を代弁しているにすぎないという印象を持つのであります。公正な政府の判定というよりも、むしろ業者の言い分がほとんど盛られているという印象を禁じ得ないのであります。
 そこで昨日の質問に関連いたしまして、われわれの誤解がまだ消え去らない一番大きな点は、一体炭鉱経営というものが、このような特権的措置をやる必要があるのかどうかという問題です。これは各業者別に調べてみなければわからぬ問題でありますが、当時政府が閣議決定あるいは閣議了解をやろうとして、GHQ方面から九分という金利を押しつけられたというのは、どこに原因があるかというと、炭鉱業者の経営その他の面について目に余るものがあつたからこそ、こういう措置がやられたものであるとわれわれは思う。現に当時石炭国管法案を通そうといたしましたが、あのとき業者が使つた反対資金というものは実に莫大なものであります。何十億という金を使つている。それらを政党その他に散布したことは、この間うちの検察当局の調べでもわかつている。あるいは炭住資金がどこに流れたかというと、キャバレーに流れた事実もある。あるいは炭鉱業者の妾宅に流れたのもずいぶんある。そういうものが目に余つたからこそ、GHQ方面では金利を下げろということでやつて来た。それに対して政府は屈伏したから、そういう措置をやつたのではありませんか。必ずしもGHQの一方的命令があるからというわけで、盲目的に従つたのではない。そんな無責任な権威のない政府ではなかつたはずである。吉田内閣はそんな権威のない政府でなかつたはずである。そういう点を考えて、われわれは過去にさかのぼつて五分五厘に下げるという理由がわからない。炭鉱経営がそれほど苦しかつたという証拠を、どうぞここでお示し願いたいと思います。これが第一の質問であります。
○小笠原国務大臣 今中曽根さんが言われました点で、当時の石炭事情につきましては私はよく存じませんが、しかしこの炭住をつくりました当時のいきさつはよく承知いたしております。この炭住をつくります当時は、御承知のように、日本の従来のものでなくして、一人に対して何坪とかいうような相当大きい要求がありまして、当時の炭鉱業者では、それは耐え得ないものであるという苦情がしばしばあつたのであります。しかし向うの厚生的な目から見て、これだけのことはぜひやらなければならぬということを強要されましたので、しかもその炭住資金を出しました当時の石炭事情は、日本として、いわゆる傾斜生産をやるくらいの事情に置かれたことは、よく中曽根さんの御承知の通りであると存じます。
○中曽根委員 炭住をおつくりになつた当時の事情はわれわれも了解できます。それは傾斜生産をやる上からも、人間を入れるということは必要だつたと思う。しかしその後の炭鉱経理や会社の利潤あるいは配当というものを見ると、必ずしもその当時の事情だけを考える必要のない状態にある。今回政府がおとりになつた措置は、昭和二十七年の三月にきめられたことであつて、過去を見通しておやりになつたことであります。一つの例を申し上げれば、昭和二十六年において長者番付にだれが載つたか、全国の長者番付で一番から六番までは炭鉱業者じやありませんか。そういうふうに炭鉱経営の利潤率が高い、配当率も高い、従つて当初の事情だけを考える必要はなく、過去における経営全般を見て措置をやらなければならぬのであります。ほかの経営を見ても同じことです。なぜそういうことをおやりになつたか、御説明を願いたい。
○小笠原国務大臣 その件については、政府委員より答弁いたさせます。
○佐久政府委員 石炭局長でございますが、その間の事情は、最初大臣が御説明申し上げましたように、最初からの約束を履行するということが、やはり重要な問題であるということで履行されたように思います。
○中曽根委員 最初からの約束を履行されたと言つたけれども、一体どんな約束を政府はしたのですか。政府はちやんと政府の行為として九分なら九分にするということをきめたのじやないですか。それとも何か石炭業者と吉田内閣との間に密約があつて、GHQでも帰つたら五分に下げてやるという秘密協定でもあつたのですか。どうも吉田さんのやりそうなことですが、どうですか。
○小笠原国務大臣 私が承知しておるところを申し上げます。当時の事情におきましては、GHQの方にも二つありまして、炭鉱の方の部面における係官は、この金利を引下げて五分五厘にすべきである。それで石炭の増産をやるべきであるということを言いましたが、大蔵省部面の金融を担当している方においては、金融面から特別な除外をなすべきでないということがあつたように聞いております。その点が強く出て、九分五厘というように金利が高められたのでありますが、その後におきましては、炭鉱業者は相当成績を上げたということで、これはまた下げてやつて、いささか功に報いてやつてもいいじやないかというような考え方になつたので、こういうことになつたと私は承知しております。
○中曽根委員 今の御答弁を聞いて、ますます疑惑が深まるばかりであります。小笠原通産大臣は、炭鉱業者はもうけたと言われた。もうけておるならなぜ金利を下げてやる必要があるのか、これが第一。
 第二番目は、先ほど石炭局長が言われたのには、約束があつたから履行したと言つた。この密約がどうなつているかということもはつきりしない。明確に御答弁願いたい。
○小笠原国務大臣 私の言葉がたいへん間違つておりました。もうかつたというふうにお聞きになつたのは、増産の実を大いに上げたという意味でもうけた、そういうふうに申し上げたわけであります。
○中曽根委員 増産の実を上げたということと、もうかつたということは必ずしも関連のないことではない。なぜそんなに増産ができたかといえば、もうかつたから増産ができた。炭価が非常によかつたから増産ができた。現にその証拠には、先ほど申し上げましたように、昭和二十六年の長者番付においては、参議院議員の西田隆男君以下六番までは、石炭業者がなつておる。その中にはたしか麻生鉱業も入つておつたと記憶しますが、そういうふうにもうかつておる。そういうふうにもうかつておる企業に対して、これのみになぜそのような恩典を与えるのか、これが国民にはわからぬところである。なぜ石炭だけに与える必要があるのか。石炭の金利を安くするのは、実は国家全体の財政計画あるいは経済政策から、生産費を安くするためだ、こうあなたはおつしやるかもしれぬ。一番基幹産業だからやるのだとおつしやるかもしれない。しからば石炭はなぜ増産するのか。鉄鋼をつくるためであり、造船をやるためであり、機械をつくるためである。その鉄鋼や造船や機械についてもなぜ同じようなことをやらぬのか。目的は、鉄鋼や造船や機械のために石炭を増産する。そのもとだけやる必要はない。やるならなぜ最終生産である造船やその他にもやらぬのか。石炭だけこういう恩典をやるのはわからぬ。そういう点である。
○小笠原国務大臣 私の承知しておりますところでは、当時の炭鉱業者の意思に反して押しつけた、炭鉱業者の意思に反してやらした次第でありますから、それらの措置をやることが必要であつたと思います。
○中曽根委員 意思に反してやつたということは、供出が一番大きなものである。小笠原農林大臣は一番よく知つているじやないか。ジープ供出で、あらゆる供出をやられて裸になつたじやないか。その農民に対して政府はしからば何をやるのか、過去にさかのぼつて何をやつてくれるか、お答え願いたい。
○小笠原国務大臣 供出に対しましてのお話でございますが、これは日本の食糧需給の計画から立てておるのであります。その点からこういうふうな取扱いができたのであります。
    〔発言する者あり〕
○太田委員長 静かに。
○中曽根委員 食糧需給計画からやつたというのですが、石炭だつて同じじやないか。日本の産業政策からこれだけ増産したい、これだけ増産しなければ汽車がとまる、それでおやりになつた。これだけ増産しなければ配給ができない、それでジープで供出した。それと同じことではないか。どこがお違いになるのですか。
○小笠原国務大臣 お答えいたします。石炭の増産に関する一般の資金は、一般の金利で出しておるのでありまして、炭住に関する問題だけが、さつき申した通り、GHQの方の注文によつて、やむを得ず業者の意思に反してやつたのでありますから、それだけの資金は別になつておるのであります。
○中曽根委員 今の御答弁でも私の質問に対する御答弁になつておらぬ。問題はもちろん炭住のことを言つている。ほかの経営資金を言つているんじやない。炭住よりもつとひどいことをやられたのは供出です。あなたは農林大臣をやつておられてよく御存じだろうと思う。なぜ農民に対して金を返しておやりにならないのか。あの供出米価というものは非常に不当な米価であつた。しからばなぜ政府は過去にさかのぼつて六年分の米価に対する補償を出しておやりにならないか。同じりくつです。おやりになるというなら別ですけれども…。
○太田委員長 中曽根さんに申し上げますが、炭住問題についての関連質問でございますので、米に関する問題は……(「答弁の方が間違つている」「委員長横暴」と呼び、その他発言する者あり)もう少し聞いてください。その意味で、その範囲を逸脱しないように双方ともお願いいたします。
○小笠原国務大臣 今おつしやられている米価については、当時としては相当であると考えております。
○中曽根委員 当時としては相当であるという意味をお答えになりましたが、これは実に重大なことです。私は農林大臣は農村のためを思つて農林大臣になつてくださつたと思つておりましたけれども、あの当時以降昨年くらいまでの米価はそれでよかつたのである、そういう御方針であると承りますが、間違いありませんか。全国の農民に聞かしてさしつかえありませんか。もう一回お答え願いたい。
○小笠原国務大臣 供出米価につきましては適当だと認めます。
○中曽根委員 それではその問題は一応打切ります。
 先ほどの御答弁の中で、約束があつたから履行したという言葉があつた。これもなかなかたいへん大事なことである。大臣から正式にその間のいきさつを御説明願いたい。
○小笠原国務大臣 約束ということは少し過ぎておつたかもしれませんが、無理やりに建てさせたという事実を申したのであります。
○中曽根委員 それでは先ほどの局長の答弁は間違いであつたから取消すという意味ですか。
○小笠原国務大臣 私が申し上げる通りであります。
○中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、先ほどから申しておりますように、昭和二十六年における長者番付の石炭業者の顔触れを見てもわかるように、われわれの観点では、石炭業者はかなりもうけている。その後の事情においては、炭価の高騰やその他の関係があつて採算が成り立つている。その採算が成り立つているものから炭住資金を返すとか、金利を払うということは不可能ではない。その間の事情をなぜ放置しておかれるのでありますか。
○小笠原国務大臣 経理内容等から見ますと、借金は相当大きいのでありまして、炭住資金については、最初申し上げた通り、特別なはからいをするほかない情勢に置かれたので、特別なはからいをしたものと存じます。
○中曽根委員 借金が非常に多いと言われますが、石炭の借金は、私の調べたところでは、五百八十一億です。電力は九百六十三億、造船が六百四十七億、鉄鋼が百二十五億です。それではもつと借金の多い造船とか電力はなぜそのまま放置しておくのか。もうけの率からいえば、造船や電力よりも石炭の方がもうかつています。最近に至つては、造船なんかは、国際価格その他から比べて、引合わないということは、十分通産大臣御存じの通りです。電力の事情についても大差ない。それになぜ石炭だけそういうふうにやるのか。さらに奇怪なことは、この問題につきまして、大蔵省銀行局長から開発銀行総裁あてに通牒が出ている。その通牒の最後のところに備考としてこう書いてある。「本措置は、炭鉱労務者住宅融資に限るものとし、類似ケースまたは他産業に波及しないものとする。」しからば類似ケースというのは具体的に何があるか、お答え願いたい。
○向井国務大臣 それは政府委員から答弁いたさせます。
○河野(通)政府委員 かわつてお答え申し上げます。類似ケースと申しますと、重要産業につきまして、いろいろ経理上程度の差異はあつても、苦しいものがあります。しかしながらこの措置につきましては、炭住という特別の経緯にかんがみまして、これだけについてそういう特別の措置をいたす、そういう趣旨を表わしたものであります。
○中曽根委員 ですから、類似のケースとしてほかに何があるかということをお答え願いたい。
○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。類似のケースと申しますのは、たとえば重要産業として、お話のように電力、鉄、造船その他ございます。しかしこういうふうなものは、重要産業であるから、それに対して特別の金利の引下げを行うのではなくて、炭住という、政府がある程度強要してつくらせたという特別の事情のあるものに限つてこの措置をするのだ、こういう意味でございます。
○中曽根委員 類似という言葉は、同じようなという意味でしよう。だから炭住と同じような性格のものについては適用しないのだという意味であつて、この範疇に属さない電力とか、造船というものは、あなた方の考えでは入らないとお考えになつておるのですか。類似というのは、何かほかにあるから、こういうことを書いているのじやありませんか。あなたはよく日本語を知らないように思いますが、類似という言葉をどう思いますか。
○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。ここで類似という言葉を使いましたのは、ちよつと使い方がよくなかつた点が、あるいは御指摘の通りあるかもしれませんが、私どもといたしましては、炭住のこの資金に限つて、こういう特別な金利の引下げを、さかのぼつて行うのだという趣旨のことを申したのであります。
○中曽根委員 今の答弁でもはつきりいたしません。この石炭の炭住だけに限つてこういう特権的な免除を与えるという理由は、国民の前にはつきりいたしません。私は何もこれで事を荒立てようと考えておるのじやない。実際石炭業というものを見ると、なるほど当初は苦しかつたかもしれないが、特に統制撤廃以来というものは、非常な炭価の暴騰によつて相当なもうけをやつておる。また石炭管理法案を出す前においても相当もうかつておつた。そのためにあれだけの資金を使つて反対運動をやつて、疑獄事件すら起きたというケースなんです。だから石炭企業というものは、その採算に合わないものであるということは言えない。ほかの産業と比べてみれば、格別に現在の状態において保護を与えるという必要のあるものではない。これは炭住についても同様である。経理全般を考えてみれば埋合せがつく要素がかなりある。しかも復金やその他の金利の状況を調べてみると、昭和二十二年九月から、公団については七分、その他の一般産業については七分七厘ないし八分、二十三年二月から、公団については七分七厘、一般産業については八分から九分、二十三年七月には、公団は九分九厘、石炭は九分五厘、その他の産業は一割から一割六分、こういう金利をとられておる。大体一般に重要産業として認定されて、保護を与える金利というものは、見返資金の放出でありますが、見返資金は七分五厘です。ところが当時炭鉱が統制解除によつて相当もうかつたと見られた過去にさかのぼつて、この七分五厘をさらに下げて、五分五厘にするというような理由はさらに見当らない。最近においては、一般産業は大体一割以上が金利の水準になつております。中小企業は一割以上です。ほんとうに困つておる連中は、御存じのように、その辺のやみ金融会社から一割五分から三割というもので、借りなくちやならぬという状態です。そういうふうに一般の産業、特に中小企業が困つておるというのに、相当もうかつている、長者番付に六人も載つておるような石炭に限つて、炭住という名目で出す理由がわからない。会社経理の内容について、もう少し具体的に御説明を願いたい。各石炭会社の経理内容をここで公開して、われわれの納得の行くようにお示しを願いたいと思います。
○小笠原国務大臣 具体的な経理内容は今ここに持ち合しておりません。必要の場合後刻お知らせを申し上げることにいたしたいと思います。
○中曽根委員 この問題にやや関連すると思うのでありますが、住宅金融公庫の金利は一体幾らになつておりますか。
○河野(通)政府委員 お答え申します。五分五厘です。
○中曽根委員 そうすると、住宅金融公庫の比率に合せて、これは五分五厘というように下げたのでありますが、五分五厘の基準は、なぜ五分五厘にしたのか、大蔵大臣にお尋ねします。
○向井国務大臣 住宅公庫の金利を考えましたが、同時に初めに日歩一銭五厘という金利でもつて炭住を建てさせるという点も考慮した次第であります。
○中曽根委員 私はこの炭住の金利というものが、特にこれに要する経費というものが、炭住に入つている労働者にかかつて来るとは思わない。おそらくこれは会社が一本でやつておるのであつて、労働者は実物給与でただで入つている。従つてこの炭住の金利が炭鉱労働者の家計に響いて来るなら、これは私らは大いに問題にしたいと思つている。直接的に響いて来るなら問題にすべきである。間接的には響くにきまつております。しかし今のお話のように、直接的にはこれは響かないのであつて、炭鉱の会社経理全体の問題としてこれは取上げられるわけです。そういう点を考えてみると、政府が五分五厘に下げたという理由がなおさらはつきりしない。なるほど労働者にかかつて来るなら、これを下げるということも、住宅金融公庫の例をとつてみて、これに併行するということで、ある程度りくつは立つのです。しかし直接はかからない、実物給与になつておる。しかも今のお話によれば、約束があるからやるというのがやはり基本になつている。約束があるからやるというのなら、その後の状況によつて、そう約束を果す必要もないという状態が出て来たのに、何ゆえこれに対して払う必要があるのか。政府は約束したといつても、文書でやつた約束じやないでしよう。おそらく政党の幹部がある特殊な関係で取引したから約束したのでしよう。そういう政府の公式の約束でも何でもない、閣議決定でも何でもないものを、わざわざ約束がある、約束があると、いまさら言うのは変だ。その当時ならばいいが、過去五年間の経理状況を見れば会社の経営はもうかつている。それを国家機関である通産大臣や大蔵大臣が、過去にさかのぼつて安くするという理由がわからない。この点は皆さんがみなわからないと思う。その点を明確にしていただきたい。単に二十一年から二十二年に約束があるというのでは、政府の仕事としてはきわめて怠慢であります。石炭鉱業やあるいは会社経理の全般を見通して、利潤の状況やその後の変動を見て、そうして適切な措置をするのならこれはわかりますが、その当時の単なる口約束をたてにやられるのは、これは政府として穏当を欠く措置であります。われわれの見方では、先ほど申し上げましたように、六人も長者番付に載つている石炭鉱業に、そういう恩典をやる必要はない。これはわれわれの見解です。この点をもう一回明確にしていただきたい。
○小笠原国務大臣 五分五厘ということに、最初の貸出しが当時の閣議でなつておりましたので、その後かわりましたけれども、それが元にもどつたので、最初の閣議決定の五分五厘ということになつたのでございます。
○中曽根委員 昭和二十一年の八月に復金の貸し出したのは五分五厘である、約束したわけですね。これは電力に対しても、造船に対しても、鉄鋼に対しても五分五厘で貸し出している。それじや約束に従つて、電力や鉄鋼や何でも同じように下げなければなりませんが、炭住だけのお約束であるか。昭和二十一年八月には、全部に、一千万円を越えるものについては五分五厘と復金はきめているのです。何も炭住だけにそういうように約束しているだけでなく、電力でも何でも約束をしているわけであります。
○小笠原国務大臣 繰返し申し上げまする通り、この炭住というものは、取扱いの最初のいきさつにおきまして、業者が好まざるものを、当時の占領行政下において、向うの要望によつて石炭増産のためにやむを得ずやつたのでありますから、そういう炭住のとりはからいが行われたことと存じます。
○太田委員長 中曽根君にちよつと申し上げます。むやみにとめるのじやないからお聞きください。御不満の点もあろうと存じますが、しかし総括質疑のあなたの御時間もございますので、大分関連時間としては超過いたしましたので、私はとめる意味では断じてありませんが、そういうようにお願いできればけつこうと思います。
○中曽根委員 あまり時間をとつても恐縮ですから、それでは私は簡単に申し上げたいと思います。
 小笠原大臣の答弁を承りますと、炭住については特別の約束があり、強制的にやつたのだから、こういう措置をやるのだとおつしやつている。なるほどその当時はそういう事情があつたかもしれない。その後の炭鉱経理状況を見れば、炭価の暴騰によつて相当莫大な収益を炭鉱はあげておる。それに目をおおつて、単に昔の約束があつたというだけで、こういう恩典的措置をしてやるということは、国民が納得できない。その後の炭鉱経理はどうなつておるか、もうかつておるか、もうかつていないか、この点明らかにすることが、この国会における大臣の責任でなければならない。その点を明確にしてもらいたいということです。
 もう一つの問題は、そういう措置をおやりになるならば、しからばほかの供出の問題、あるいは炭鉱の問題以上に一番大事な問題は、生命の問題であるが、国民健康保険に対する赤字はどうするのか。協同組合は赤字で困つておる、そういう問題はどうするのか。国政全般のバランスを考えてみたら、この炭住だけにこれだけの恩典を与えてやるという理由はない。炭住にやるならば、国民健康保険の赤字に出しなさい。あるいは供出の問題について、超過供出を免税にしなさい。超過供出は免税になつておらぬじやないですか。そういう全体のバランスがとれていないということを、私はまず鋭くつきたい。
 もう一つ申し上げたいのは、炭鉱経営というものを政府は把握していないということです。政府が完全に炭鉱がもうかつているのか、どういう経理状態であるかということを把握していない。だからこういうあいまいな措置が出て来る。私は今国会におきまして、この予算委員各位にお諮り願つて、炭鉱経理の監査をやる調査機関をつくつていただき、国会としての活動を開始したいと思います。そういう決意をこちらは持つておる。それに対して通産大臣は、今の私の質問に対して一体どういう御所見をお持ちになるか、まとめて明確に御答弁願いたいと思います。
○小笠原国務大臣 経理の内容につきましては、私ども十分調査いたします。
○中曽根委員 最後にもう一点お尋ねしますが、それは財政法との関係です。財政法の第八条によると、国の債権を放棄するときには法律でやらなければならぬと書いてある。向井さんは財政法に抵触しないと申されました。これは非常にむずかしいところです。なるほど……。
○太田委員長 ちよつと中曽根さん、参議院で通産大臣を要求されておりますので、座をはずしてよろしゆうございますか。
○中曽根委員 それでは私は質問を留保しておきます。
 財政法第八条に、債権を放棄するときには法律でやらなくちやならぬと書いてある。ところが復金に対する政府の出資あるいは復金債、こういうものは政府の直接の債権ではない。従つて金利を上げたり下げたりすることは、これは財政法違反でない、こういう御趣旨だろうと思う。私もその点はそういうふうに解釈せざるを得ぬと思います。だから直接的な債権ではないと思う。しかしここで問題にしたいのは、政府の措置としてそれが穏当なりやいなやということの問題です。不当性の問題であります。復金は、御存じのように、政府機関の一つです復金の予算はちやんと予算に載つて来ておる。総合予算の中に載つて来ておる。従つて国民の税金が関係している部面もあるし、政府が監督しなくちやならぬところもあるわけです。そういう復金の経理から納付金というものが政府に入つて来ているわけです。そうすると、この復金の経理がうまく行くか行かぬかということによつて、税金の額も違つて来て、国民のふところも違つて来るわけです。そうすると復金がむやみに金利を下げたり、不当にやつたりするということは、直接的に国民のふところ状態に相当な打撃が来るのであつて、特にこの炭住についてのみこういう恩典的な措置をやつたのは、間接的に国民に損害を与える行為ではないか。従つてそういうような重大な問題については、政府が了解であるとか、前の口約束であるとか、はたしてそんなことでやつていいかどうかということであります。国民全体の希望や意思や、あるいはそういうものを相手にした何かの措置を講じなけりやならぬではないか、つまり国会というものがある以上、これを無視して簡単にやつてはならぬことではないか、このことを大蔵大臣にお尋ねしたい。
○向井国務大臣 ただいまおつしやいましたように、財政法から申しますと、日本開発銀行は国とは別個の法人でありまして、法律の適用を受けないのでございます。本件の場合は、単に日本開発銀行の商取引上の問題であつて、財政法その他の会計法規にはこれは抵触いたしません。そのほかの今の御質問につきましては、すでにたびたび御返事を申し上げた通りであります。
○中曽根委員 今の御答弁ははなはだ不誠意の御答弁であります。日本開発銀行がそういう措置をしたのは、なぜやつたか。政府はちやんと銀行局長通牒というのを出しているからではありませんか。銀行局長の通達はどこから来たか。閣議の了解から来たではありませんか。政府が発動したからこそああいう措置をやつた。何も開発銀行は経済上の理由でやつたのではない。従つてそういう政府の措置が、間接的には国民のふところに響いているのではないか。なぜ政府は関係ないと言われるか。私は法律論を言つておるのではない。少くとも行政の措置としてそういうことをやつてよいかという政治論を言つている、責任論を言つているのです。
○向井国務大臣 法規に抵触するかという御質問がございましたから、法規に抵触しないとの御返事をいたしました。
○中曽根委員 私は法規に抵触するなんて一言も言つていない。財政法第八条には抵触しないと言つている。但し政府の行為として、こういう国民のふところ状態に影響を及ぼす行為を、独断でこんなにやつてよいかという問題である。それは財政法第八条の精神を考えて措置しなくちやならぬではないか、それを言つている。それではこれから政府がいかなることについても、開発銀行に対して、自分の関係している会社に対して、利子を安くしろとかつてに濫発して、われわれ国会議員として黙つておられますか。これが第一波です。そういうことを申し上げている。法律違反の問題ではない。
○向井国務大臣 さつきからしばしば御答弁を申し上げた通り、炭住の件につきましては、ああいういきさつからしまして、返金を促す上から言いましても、金利を下げる方が穏当である、そういう考えで金利を下げたのでありまして、金利を下げてやりますと、元金を返す意思が強くなる。(笑声)初めにおいてやりたくないと思つたことをしいたのでございますから、それに対して……。
    〔発言する者多し〕
○太田委員長 静かにしてください。
○向井国務大臣 やりたくないということをやらしておいて、そうして結局石炭の増産ということができたのでございますから、それの金利を下げるということは決して不穏当と存じません。
○中曽根委員 今大蔵大臣は、金利を下げるのは返す意思を生ませるためだ、こうおつしやつた。それならいつそのこと無利息にしたら一番返す意思が出て来るかもしれぬ、それと大同小異のことです。私の言うのは、これ以上繰返しませんが、ほかの産業と比べてみてこういう措置はよろしくないということを言つている。そういうことを政府が独断でおやりになつてよろしいか、これを言つているのです。その問題について明確な御答弁がありません。あなたに何回言つてもむだかもしれませんが、最後にもう一回もう少しはつきりとわかるような御答弁をお願いいたしたい。
○向井国務大臣 ほかの点については私は考えておりませんが、炭住につきましては、ただいま申し上げたような事情でございます。
○中曽根委員 時間をとりますから、これで私は関連質問はやめますが、この石炭の問題は非常に重要な問題です。現在すでに国会の内外には炭労の争議で火の手があがつておる。この予算委員会においてはまたまた炭がくすぶり出して火の手があがつて来ている。政府は内外から石炭の炎に包まれているような感じであります。それだけ重要な問題であります。その一番のポイントは会社の経理の問題である。もうかつているかもうかつていないか。われわれの観点では、もうかつている会社に対して、こういう不当な措置をやつてよいかどうかという問題である。この疑問が残つておる。また通産大臣も答弁をやるという約束をされております。従つて、私はこの問題に関しては後日に質問その他を留保いたしまして、一応これで打切ることにいたします。
○太田委員長 ただいまから五分休みまして、十一時半から再開いたします。暫時休憩いたします。
    午前十一時二十五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時三十五分開議
○太田委員長 休憩前に引続きまして会議を進めます。
 最初に井出君から簡単な資料の要求がございますので、これを許します。
○井出委員 ただいま提起せられております炭住資金の問題は、きわめて重要でありまするが、大蔵大臣並びに通産大臣の御答弁を伺いましても、何らわれわれの琴線に触れるものがございません。はなはだ遺憾であります。そこでわれわれは、以下申し上げまする詳細なる資料の御提出を願いまして、その上日を改めまして、さらに質問を展開したいと思いますので、委員長におかれましては、どうかさような機会をお与え願いたいと思います。
 そこでわれわれの要求したい資料の第一は、この炭住資金の取引当初にさかのぼりまして、その取引の行われた年月日、借入者の氏名、会社の場合においては代表者名をも付記していただきたい。その貸出額の明細、貸出し条件については期限、利率等の詳細をリフト・アップしていただきたいと思います。
 第二は、その後の経過についてでありますが、元本への返済額がどれだけで、その年月日はいつであつたか、その他利子の受入れ額についての明細、並びにその年月日。
 第三点といたしまして、現在貸出し残高がどれだけあるか、これは現在のものと、この問題の閣議了解のあつたと伝えられる三月某日現在、それを合せて、貸出し残高を両様にわたつて明細をお示し願いたいし、さらに滞納利子がどのようになつておるか、この積算も合せてお示しを願いたいのであります。
 第四点は、今回問題になつておりまする払いもどしを受けました氏名を、個人、法人についてお示しを願い、その金額並びに年月日の詳細を掲げていただきたいのであります。
 第五点、払いもどし利子を受入れました炭鉱企業者、この経理の実情を詳細お知らせ願いたいと思います。
 以上が私ども野党各派の要求する資料でございまして、何とぞ大蔵大臣並びに通産大臣、ともにまだ就任後日も浅く、あまりお知りでないようでありますから、十分御勉強に相なつて、次会の御答弁を願いたいと思います。
○太田委員長 なお、この問題につきまして西村榮一君、勝間田清一君より関連質問があるとのことでございましたが、留保されました。この旨を申し上げますそれでは総括質疑に入ります。片山哲君。
○片山委員 私は憲法問題、再軍備問題を中心といたしまして、主として総理大臣に質問をいたしたいのであります。吉田総理大臣は憲法を改正しない、再軍備をしないということを、明白にお答えになつておるのでありまするが、その根拠、その根底はどういうところにあるのであるか、その基礎的なお考えを聞きたいのであります。
 今日伝えられておりまする憲法改正反対、再軍備反対の意見はいろいろあるように聞いております。そのうちのどれに当るのであるか。私の聞いておる反対論の中には、再軍備は戦争の前提になる、戦争に通ずるゆえをもつて再軍備に反対をするのである、こういう意見もあれば、国民生活を犠牲にするがゆえをもつて再軍備をしない。あるいは経済的、財政的見地からいつて耐えられないゆえをもつて再軍備をしない、あるいは国際的な今日の情勢から考えるべきである、あるいはわずかな軍備を持つたところがいたし方がないので、今日は再軍備をする時期ではない、また単なる時期尚早論を述べる意見もあるように聞いておるのであります。さらにその中には、日本において最も必要なるものは、憲法の指示いたしておる民主政治の確立である、この見地から、たつて再軍備をすべきではない。私のこれから質問をいたしたい根底は、日本における絶対至上命令は民主主義の滲透、民主政治の確立であろうと存じておるのであります。
 その意味から申しまして、憲法の使命、役割は実に重大であると存じます。その見地から再軍備を考えて行かなくてはならないと存じておるのでありますが、まず首相のお考えといたしまして、たびたび繰返し述べられます、憲法を改正しない、再軍備をしないという理由をいずこに置いておるのであるか。今私のあげましたる世間の議論のほかにもなお再軍備反対というお考えを持つておられるのであるか、まず最初にこの点を御説明願いたいと存じます。
○吉田国務大臣 お答えをいたします。再軍備をしないという理由は、財政上の理由、すなわち国力これに耐えない、また国情も、国の輿論も、一致して再軍備というところまで参りませんから、再軍備をいたさない、従つて憲法改正をいたさない、こういうのです。
○片山委員 そうすると、大体これを分類いたしてみますと、財政的な見地から再軍備をしないし、まだ国民の輿論も上つて来ない、認識も深まつていない、そういう意味から時期尚早というふうに解釈されるのでありますが、これには幾多の疑問があると存ずるのであります。国民の認識が深まつて来る、あるいは下から盛り上つて来たときにこれを考えて行こう、こういう考え方は、問題を国民に転嫁いたしている考え方であると思われるのであります。重要なる地位にあつて、国民指導の立場に立つ政府としては、はつきりとこの重大なる憲法改正問題と再軍備問題につきまして、積極的な意思表示をなさることが必要であろうと考えるのであります。この意味におきまして、顧みて他を言う感がある疑点があります。それから下から盛り上つて来る要求はそのままに放置しておくべきではないのであります。あるいは民主政治教育の滲透をはかるとか、あるいは憲法制定当時において強く唱えられておりました憲法精神の普及徹底をはかるとか、こういう問題につきまして、積極的な対策を立てて国民を教化する、あるいは政治教育の滲透をはかつて行く、ことに社会主義化の理法に従いまして、常に動きつつある今日の社会情勢、政治情勢等を勘案いたしますと、民主主義の滲透、民主政治の確立について積極的な努力をして、国民をよりよき方面に導いて行くという、積極的な熱意が必要であることは言うまでもないのであります。
 さらにまた国民経済の問題を考えましても、国民大衆の生活安定と向上による経済的基礎の充実なくしては、一国の経済の基盤というものは確立するはずはないのでありますから、国民大衆の生活向上とその充実をはかることにつきまして、常に努力し、不断の前進がなくてはならないのであります。こういう見地から考えますと、ただ漫然と時機の来るのを待つというようなことは、はなはだふがいのない話であつて、政府といたしましては、積極的にこの日本の民主政治確立についての熱意がなければならないと存ずるのであります。
 そこで私の伺いたいことは、民主政治教育についてどれだけのことをやつておられるのであるか。また憲法の最も高く掲げております前文の高遠なる理想を、国民教育の資料として採用して、わが国の民主政治確立のために、社会教育なり、あるいは国民教育なりについての基本方針を立てて、盛り上つて来る国民の輿論なり、動き方についての積極対策がなくてはならないと存ずるのであります。さらにまた前の話でありまするけれども、憲法普及問題、その持つ精神を普及するという運動について、今日はどういうような対策をとつておられるのであるか。これらのことについて積極的な活動なくして、漫然と待つということは無策であるといわなくてはならないのであります。政府といたしましては、国民の盛り上る輿論と、それから経済的な国民生活の充実、向上について漫然と放置しておるのであるか、あるいは積極的な方針――今日はこの憲法を守つているのでありますから、憲法の精神を普及するということについての熱意のあるなしを伺わなくてはならないのであります。この点についての御所見を伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 私はこの再軍備についての責任を輿論に転嫁する、あるいは漫然と待つということは決して申しておりません。私の申すのは、国力がさらに充実されて、そして軍備に耐える、軍備を持つだけの経済力と国力ができたときが、すなわちそのときである。漫然と待つておるのではないのであります。この漫然と待つておらないということは、予算その他における政府の施策について御承知を願いたいと思う。
 それから、民主政治確立についてどうするかというお話でありますが、これは私は施政方針その他の演説で、民主政治の確立ということを絶えず申しており、また自由党としても、その確立のために、選挙その他において各層に対して呼びかけております。また文部省としても、教育の方針のうちに、国民の輿論を啓発するといいますか、国民の愛国心を啓発誘導するというような意味合いで、相当積極的に今後も努力いたすことになつております。
 それから憲法精神の普及についてでありますが、これは申すまでもなく、政党としても、政府としても、非常に努力いたしておるのみならず、私は憲法なるものは、いやしくも軽々に改正あるいは訂正とかいうことをいたすべきでないと考えますから、憲法改正ということは、ますます慎重にいたしたいと考えております。
○片山委員 積極的な対策を聞きたいのです。具体的な民主政治確立についての対策及び国民の民主教育についての対策、国民の精神についての対策、これらの具体的対策及び国民大衆の生活向上安定による国民経済の充実、こういう対策を伺いたいのでありますが、ただいまの総理大臣のお答えでは、はなはだ抽象的で、やつておる、自由党としてもやつておる、こう言うだけで、はなはだ不満足であります。しかしこれは政策等と関連をいたしておりますから、他日に譲りまして、次の問題に移りたいと存じます。
 しからば、憲法は軽々にかえるべきではない、憲法の精神は常にこれを尊重して、進んで政治対策を立てておるのである、こういう建前であることを前提として質問をいたすのでありますが、政府の言われますところの自衛力漸増、あるいは自衛権確立とか、自衛権の充実とか、こういう意味を伺わなければ、これだけではよくわからないのであります。御説明によりますと、自分の力で自分の国を守ることは当然である。これは包括的には、自分の力で自分の国を守つて、ほかの国で守つてもらうことはいやであるという、独立の国家としての心持はわかるわけでありますけれども、さて具体的に自衛力の漸増ということを考えて行くと、何になるか、結局のところは、これは武器を充実する、あるいは保安隊といつておる軍隊まがいのもの、これにも議論はありますが、そういうものの人数をふやす、つまり七万五千を十一万に、十一万をさらに二十万か三十万にする。武器もいろいろと近代的な科学武器を保安隊に持たして、軍隊まがいのような構想に持つて行く。つまり人数をふやすことと、武器をふやして充実をするということが、自衛力の漸増になると考えて行くべきが常識であろうと思うのであります。最近の情勢から見ましても、どんどんそういう様相が見えるのであります。日米間の船舶貸与協定によりますと、千五百トンのフリゲート艦十八隻、及び上陸用舟艇五十隻の、五箇年間の無償貸与があります。これはいずれ国会の問題になつて来ると思うのでありますが、これが海上警備隊の自衛力漸増であるといわれておるのであります。しかしこの漸増は、本質的には軍隊であり、武力であり、戦争用に使われる品物であるということには間違いはないと思うのであります。
 いま一つは、かねがね問題の旧四日市の海軍燃料廠などの軍事施設の払下げの問題でありますが、いろいろとごたごたをいたしておりましたが、結局のところ政府発表によりますならば、一切を白紙に還元して、新たな見地から適宜にこれを処理する、こういう閣議決定があつたように報道をせられておるのであります。これは何でしようか、これは旧軍事施設である。何に使うか、政府が、白紙に還元して、政府の施設としてこれを使う。これも自衛力漸増になつて来るということも明らかであるといわねばならないのであります。さきに申し上げました海上警備のために艦船の一時借入れという、治安維持が軍備の準備かわからない性格不明の自衛力漸増、それから兵器発注によつて防衛生産設備を整える。これも性格不明の自衛力漸増であろうと思うのであります。これらは武器または設備の内容で充実して来るのでありまして、再軍備の準備、再軍備の用意と何ら限界がないのであります。治安維持のための自衛力漸増といいながら、ずるずると吸い込まれるように、そのまま何らの境目なしに、事実上の再軍備または再軍備の用意、準備になつて来る。
 そこで私の聞きたいことは、限界を定める必要があるんじやないか、かりに治安維持のために、それらのある程度の保安的設備を認めるといたしましても、ずるずるとひつぱり込まれることはいけない、限界を定めるべきである。国連の軍縮会議においては、一応の兵力の定義を下しておるのであります。ソ連のゲー・ぺ一・ウーや、あるいはスペインの特別警察隊や、大砲を積んでこれを監視しておる監視兵などを兵力とさす、こういうふうに一応の限界を定めておるのであります。私はその意味において人数を限定すべきである、人数によつてその限界がわかるのである。さらにまた、その兵器の種類を明らかにすることによつて限界を定めるのである。そうしないことには国民の疑惑は解けない。また説明も非常にあいまいになつて来るのであります。よつてここに政府といたしましては、ただ漫然と言い訳をするのではなくして、国民の疑惑を解くために限界点を明白にすべし。明白にすることが必要である。私の考えておりますように、人数と兵器とを明らかにいたしまして、限界点を明白にすべしと思うのでありますが、これについての首相の御所見を伺います。
○吉田国務大臣 保安隊は、保安隊に関する法律において、その性格は明らかになつております。つまり治安維持のため、あるいは平和維持のため、国内の秩序維持のために設けられるので、その目的以外に使用され、その目的以外の軍備、力を持つならば、それは再軍備でありましよう。しかしながらその保安隊の性格は法律に明らかになつており、しかしてこれに予算が伴つており、この予算は国会でもつて審議せらるるのでありますから、ここに幾ら兵隊を持てば軍備である、あるいは幾ら持てば自衛力であるという限界は、私は言う心要はないと思います。目的は国内治安のため、秩序維持のためなのであります。これに必要なる力を備える、これが限界であり、しかして予算において国会が始終監督しておられるのでありますから、再軍備のためという場合には、異議が国会から出るでありましよう、また政府としては再軍備しないということをしばしば申してあるのでありますから、この点について国民が疑惑を持つとすれば、私はその疑惑は当を得ないものであるといわざるを得ないと思います。
○片山委員 目的さえわかつておれば、人数は何であろうと、武器は何であろうと、それは再軍備ではない。こういうことでは国民の理解は得られない。これを動かす主観的なその人の心持でどうでも動かされると思います。今日は民主政治の時代でありますから、ほんとうに国民の総意を盛つたやり方で、一部の主観にまかすべきではないのであります。でありますからして、どうしてもこれは限界を定めるべきである。限界をはつきりすることによつて再軍備と再軍備の準備に入るのか、あるいは治安維持として国民のために生命と生活を守るのか、こういうことで保安隊との限界が客観的にきまるのでありますから、どうしてもこれは主観的なやり方ではなくして、客観的に、その対策をはつきりとして、政府はこれを国民の前に明示すべきであるということを私は強く主張いたして、反省を促したいのであります。
 次に、防衛々々と言われまするが、元来非武装の日本はどういう防衛を想定いたし、構想の中に入れまして、日本民主国というものが出発したのでありましようか。敗戦後の再建日本の出発はどういう防衛構想をもつて進んで来たのであるか、こういう点であります。これは吉田内閣の堅持されておる、憲法の精神から割り出して来なければならないのであります。憲法は何を明らかにしておるか、どういうふうにこの点を明らかにいたしておるかということを、検討しなければならないのであります。わが日本の敗戦後の再建出発にあたりましては、わが日本の防衛は、正義と平和を愛する世界の集団的安全保障による防衛、安全保障を受けることを決意して出発した。こういうことが憲法前文に明らかにされておるのであります。念のためにこれを読んでみますと、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、決意のほどを明らかにいたしておるのであります。しからば防衛は、この正義と平和を愛する世界の安全保障を受け得るという態勢で出発したに相違ないと患われるのであります。よつてもつて憲法第九条ができ上りまして、非武装の国となつた。この関連性を考えて行かなければならないのであります。第九条は漫然とでき上つたのではなくして、前文に決意いたしました決意によつて生れたる第九条でありますから、憲法を堅持する上から申しますと、この精神はどうしても守り通さなくてはならないと考えます。
 しからば自分の力で自分の国を守るということは、結局経済的な、思想的な面もありますけれども、要約して申しますならば、これは武力防衛、治安維持隊の持ついろいろなる設備、物質的な道具、これを武器と称してもよいと思うが、そういうようなものをもつて防衛するという、武力防衛に今日進みつつある観があるのであります。
 しからば憲法前文で明らかにいたしましたし、第九条によつて確約せられております集団安全保障を受け得るという、わが国の防衛構想というものと、自力でやつて行こうとする武力防衛と、どう調節して行くのであるか。その矛盾なきやいなや。二本建で行くのであるか。あるいはまた安全保障の問題はそうたよりにならない、はつきりしないので、ここで自力防衛に転換をするのか。自衛力漸増というような見地から考えてみますと、いかにも転換をしつつあるという様相を持つて来るのであります。口では憲法を守り、再軍備をしない、こう言われましても、事実の上におきまして自力防衛、すなわち武力防衛、自衛力漸増、こういうふうなこの現実の状態を見ますと、かわつて来ておるという観がある。事実の上において、憲法の精神からかわつて来ておる、反しておる、こういうことが考えられるのであります。
 そこで私は二本建で行くのかどうか。今日この吉田内閣は二本建としてわが国の防衛ということを考えて行くのであるか、あるいは憲法の精神、前文はかまわない。前文はこれは前の文章であるから、条文ではない。こういう考えのもとに、憲法の安全保障による基本方針を、自衛力漸増に切りかえて行こうとして準備されておるのであるか。この点を明らかにしなければならないと存ずるのであります。これについての首相の御所見をお伺いいたします。
○吉田国務大臣 講和条約によつて独立した日本として、その独立と安全を守るのは当然自力で守るべきであるということは、これは一般の原則と考えてよいと思います。しかしながら国力はこれを許さないのであります。事実上自力をもつて日本の独立、安全を守るということは、今日の現状においては、ことに敗戦後の日本としては、その国力に耐えないから、そこで国内治安は保安隊で守る。しかしながら集団的攻撃を受けた場合には、安全保障、すなわち集団的防禦方法を講ずるという考えでおるのであります。しかしてこれが憲法の精神を蹂躙しておるものでもなければ、また再軍備の用意のために、ずるずるの間に再軍備をするというような構想は毛頭ないのであります。かりにあるとしたところが、これは国会の審議、予算の関係あるいは国論の批判も考え、もしそういうような底意をもつて政府がいたしておりますならば、政府は当然攻撃を受くべきものでありますが、今日はそういう考えは毛頭ない。従つて憲法は改正しない。
○片山委員 治安問題は国内の保安隊で守る、これは言うまでもないのであります。外敵に対しましては安全保障によつて進んで行く。こういうことでありましようが、ここにこの前の国会のことを私は新聞で承知をいたしておるのであります。首相は芦田君の質問に対しまして、こういうふうな御答弁をされておるのであります。戦争放棄の条項は、いろいろの考慮のもとに遂にこの結論に達したのであります。但し日本としては、いつまでも外国の力によつて独立を保護せられておるということは、日本国民のプライドが許さないということは、しばしば申しております。日本国力の許す場合には、いかにして日本の独立を保護するか。これは自力で保護いたさなければならない。これも憲法の精神をなるべく遵守して行きたいと考えている。こういう趣旨が報道されておるのでありますが、これについて疑問があります。外国の力で独立が保護せられておるということと、憲法の明らかにいたしておる正義と平和を愛する世界の安全保障を受けるということとは、これは本質が違うわけであります。根本的に国際法的にというか、あるいはまた国家の性格といたしまして、世界の安全保障を受ける、こういう建前でありますから、ただ一時的に外国の力で独立が保護されているとかいうのとは、全然違つております。
 それから自分の力で自国を守るのが当然だという意味も、先ほど申します通り、いろいろの点において、時が来れば軍備をして自分の力で外敵に当るのである、自力で防衛をする、外敵に当る、こういう考えもその中に含まれておるかと思うのであります。しかしこれは前の国会の答弁でありますから、これをとやかく申すわけではありませんが、この点ははつきりとして、外敵に対しましては、どこまでも憲法の掲げるところの安全保障の対策で行く。先ほど申します通りに、限界を明らかにして、再軍備にならざる治安維持体勢、この点については、われわれはどうも納得することができないのであります。そこでこの平和を愛する世界の安全保障を受けるという決意のもとに、これをどんどん前進しなければならないと思います。憲法を改正しないと断言されておる吉田内閣といたしましては、この世界の安全保障を受ける建前で外敵に対する用意をして、再軍備はしない、この精神を一貫しての対策が必要であります。前進が必要であります。
 そこでまず第一には、どうしても国連加入を急ぎ、国連の協力と安全保障を受け得るという建前を推進しなければならないのであります。これはすでに本会議においても議論のあつたことでありますから、繰返しては申しませんが、ただ簡単に伺いたい。ソ連の拒否にあつたが、その後ソ連に対して拒否のままであるか、何らかの対策をとつておるかどうか。これは直接であつても、あるいは間接であつても、これに対する対策のあるなしを伺いたい。アメリカに対しては何らかの動きをしておるのであるか。あるいはその他の国々に対しましても、国連加入についての政府としての努力の経過を伺いたいのであります。
 それから講和条約の第五条(a)には、御承知の通り、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎しむこと。」こういう条項がありますが、これはわが国にとりまして少しも支障にはならないかどうか。さらにまた、米国は平和と安全のため日本及びその周辺にその軍隊を駐留せしむることを欣諾す。但し日本が直接及び間接の侵略に対し自国の防衛のため漸増的にみずから責任を負うことを期待する。こういう安全保障条約前文の文字も、国連加入についての条件にならないのであるかどうか。さらにまた国連憲章第四十二条及び四十三条――これは前に星島次郎君も質問の際に引用された条項でありまするが、これらも条約上における国連加入についての日本にとりましての義務にならないのであるかどうか。再軍備をして来い、憲法を改正して来いというような話もあるし、あるいはまた、だだ乗りは許さない、税金を払わなければならない、何らかの義務負担ということが一応いわれておるのでありますが、その義務とは何ぞや。国連憲章、あるいは日米安全保障条約の前文等のこれらの条項が、この義務を規定する前提になるのであるか、ならないのであるか。これらの点について、条約上国連加入について日本は義務があるのであるか、ないのであるかということを、明白にお答え願いたいと存ずるのであります。
○吉田国務大臣 お答えいたします。国連加入は不幸にしてその実現はいまだ見るに至りませんでしたが、しかしその善後策につきましては、外務省としては自由国家等の諸国に対して、国連加入がすみやかになるようにいろいろな手段を尽しております。それについて先例もあります。たとえばイタリアのごときは、同じく国連に加入を許されませんでしたが、それについてオブザーヴアーを出したらよかろうというような提案もあつて、これはイタリア政府が承知いたし、また日本に対しても同じような話がありました。正式の加入こそ望ましいが、非公式というのもおかしいけれども、変則な加入はどうであろうかというような考えから、ただちに同意をいたしておりませんが、交渉は継続いたしております。その詳細については申し述べることを差控えます。決して漫然といたしておるわけではないのであります。
 しかして国連加入の条件はいかん。これはまた国連加入の際においていかなる条件を付するかということは、きまつておらないのであります。またその条件次第によつては、あるいは日本としては、かりに許される場合があつたとしたところが、加入条件について日本国として満足のできない場合もあるかもしれず、従つて条件等については、いまだはつきりしたことは承知いたしておりませんが、いずれ加入する場合には、こういう条件、ああいう条件という条件は提示されましよう。但し軍備をいたさないということに憲法はなつており、その憲法を改正せよとかいうようなことは、現在の国情の上において、あるいは条約その他の束縛を受けておるのを前提として、日本の加入条件はこうしてもらいたい、ああしてもらいたいということになるであろうと思います。しかしこれは条件としていまだ示されておりません。加入がさらに具体的になつた場合には、いずれこういう条件ではどうだろうかというような話は、国連から政府に当然の交渉があるでありましようが、ただいまのところはまだそれまでには至つておりません。
○片山委員 ただいま申し上げました条約は、向うから一方的に持つて来て日本に押しつけるとか、あるいはこれに対して日本がこれをどういうふうにするか、こういう前提となる条項でしようか。つまりこの条項によつて、これを基本として日本の義務をきめる、こういう条項であると解釈していいのでしようか。
○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、これはただいま申す通り、加入条件について具体的に明示されておりませんから、ただ想像でありますが、日本の憲法を改正しろとか、あるいは条約を改正しろということまでも強要するような加入条件が、付せられようとは想像いたしません。但しこれは想像であります。
○片山委員 しからば日本のこの安全保障に関して進むべき道は、国連加入を推進すること、加入がいまだしということであるならば、かりに真空状態を避けるために、日本の安全を守ろうといたしておりまする今日の日米安全保障条約、あるいはこれに伴う行政協定を、そのままにしておいてはいけないと思うのであります。不平等条約であるという議論が、この間の本会議においても出ましたが、私は日米安全保障条約そのものは、講和条約の締結された翌日に結ばれたのでありまして、占領下に結ばれた安全保障条約であります。これはもう言うまでもないのでありますが、それが独立をいたしました今日においては、幾多の問題について、これを改訂要求して当然のことであろうと思うのであります。それから引用されたるところの行政協定に至りましては、言うまでもないのであります。こういうわけあいから、この不平等条約、占領下において結ばれたる、対等の立場において結ばれていないところの日米安全保障条約改訂について、準備があるというような外務大臣の答弁があつたように思うのでありますが、首相にとりましては、この改訂の必要を認められておるかどうか、改訂すべきものである、こういうふうに考えられておるかどうか、この点を伺いたいのであります。改訂準備の経過も伺わなければならない。いろいろこれらについて、こまかい問題が箇条的にあげ得ると思うのでありますが、それは省略いたします。しかし総括いたしまして、締結の経過から見ましても、またその内容から見ましても、あるいは国際的な今日の北大西洋条約等と対照いたしましても、この日米安全保障条約及び行政協定は、改訂の必要があることを痛切に感じておるかどうか、これらについての総理大臣の御所見を伺います。
○吉田国務大臣 お答えをしますが、もし安全条約が占領中にできたものであるから、これは不対等だといわれるならば、講和条約またしかりといわざるを得ないのであります。講和条約も安全保障条約もその当時において対等である。和解と信頼は、これは対等の言葉であります。その気持のもとにできたのであつて、もし安全保障条約が強迫によつてできた、あるいは占領中にできたものであるから不対等である、こう言われるならば、国会において協賛を経ることができなかつたろうと思います。あの当時ダレス氏もしばしば、これを強要によつてできたのではないのだ、対等の立場において公平にできたんだということを申しておつたのであつて、今日において不対等といわれるのは、私ははなはだおかしいと思うのであります。従つてまた安全保障条約その他について、いまだ改訂をいたすべき必要は私は感じておりません。
○片山委員 講和条約と日米安全保障条約が全然違うということは言うまでもないのであります。講和条約によつて日本は独立国としての立場を獲得するのであります。獲得した後において安全保障条約を結ぶならば順序として、経過としては適当であろうと思いますけれども、翌日に結んだという点においてわれわれの不満があり、また内容においても不満があるのであります。ただいまの御答弁には満足することができません。
 私はさらに進んでわが国の今後進むべき方針、すなわち憲法をどこまでも堅持する吉田内閣としても、あるいは日本国民の意見といたしましても、今後非武装国たる日本、正義と平和を愛する世界の安全保障を受ける建前で、外的防備に立つて行くわが日本の進むべき方針を、この際に大きな立場に立つて定めるべきであろうと思うのであります。世界に向つて独立国として呼びかける建前をとり得るのでありますから、雄々しく全世界に向いまして非武装国たる日本の叫び声を、この機会に現わすことが必要であろうと存ずるのであります。その意味におきまして、今日第三次戦争の問題を考えて行きまして、勇敢に第三次戦争防止のために、日本の叫び声を現わすことが必要であろうと存ずるのであります。その前提としてお伺いいたしたいのでありますが、一番必要なことは、原子爆弾の問題であります。原子爆弾については、被害を受けたのはわが日本だけである。洗礼を受けてつぶさに原子爆弾による惨害を経験いたしたのでありますから、この原子爆弾の被害状態を、このさんたんたる広島と長崎の状態を、つぶさに全世界に表明すべきであろうと存ずるのであります。政府は各国の権威ある機関や、あるいはまた有力なる団体や、有識者にこれを訴える必要があろうと存ずるのであります。わが国においては、民間においてその材料を蒐集したり、あるいは写真を編集したりしたことを聞いておるのでありますが、政府はこれらの原子爆弾による惨害実情を、つぶさに政府の機関によつて集められておりますかどうか。集められたその材料をもつて、この第三次戦争防止の大きなる役割を演ずるところの意味をもちまして、政府は世界の権威ある機関や有力なる団体その他にこれを報告したり、あるいはまたこれを説明したり、その趣旨を明らかにした経過ありやいなや、もしありとするならば御報告願いたい。また全然やつていないとするならば、それも率直にお話を願いたいと存じます。
○吉田国務大臣 今日しばしば国会で申しますが、第三次世界戦争の危険は漸次薄らぎつつある、遠のきつつある、これは私が申すのではなくて、英米の政府当局者が申しておるところであります。すなわち第三次戦争が薄らいでおる今日に、日本がこれを防止する方策を立てる、まことに勇敢でありますが、しかしながらその必要があるかないか。現に第三次世界戦争が迫つて来ておるとか、あるいは爆弾を使用するとかということの事態が明らかになつておるならともかく、今日はその決意は、アメリカ当局者その他においても、一応原子爆弾の使用については議論しておるときであります。ゆえに、日本として原子爆弾の危険のない今日あるいは将来を見越して、大いに第三次世界戦争防止論を唱えるのはまことに勇敢でありますが、少々的がはずれていやしないかと私は思います。
○片山委員 原子爆弾の被害報告については……。
○吉田国務大臣 申し落しましたが、これは民間においても、政府においても、かなり広く米国人には訴えております。その結果、広島に来て調査を現にしておるアメリカ人もあり、平和記念塔でありますか、あれをあそこに米国人が進んでこしらえるとか、これまたこの広島における惨状が明らかになつた結果であり、米国官民に徹底した結果であると私は思います。
○片山委員 戦争の危機は今は迫つていない、戦争はないであろう、これはまことにけつこうであります。しかし冷戦がややともすれば危機をはらんで、その険悪なる様相を呈しておることも事実であります。迫つてから、もうどたんばに入つて防止運動というようなことをやつても、これはしようがない。あらかじめ冷戦のうちにおいて、日本の立場より世界に貢献をする。こういう熱意を表明いたしまして貢献する、働くということが、原子爆弾の惨害を受けた日本としてやるべき必要な平和運動ではなかろうかと存ずるのであります。平和に対する熱意があるならば、平和に対する積極的な心持があるならば、単に勇敢だといつてこれを葬り去ることは、われわれ断じて承服することができない。常に平和のために努力するということは、危機が迫ろうがあるいはまた様相を呈しようが、未然にこれを防ぐ運動として必要であります。でありますからして、国民運動といたしましてもこれを展開しなければならない、これこそほんとうに等閑に付すべきではないと存ずるのであります。なお政府として被害状況をアメリカその他に報告したというならば、ひとつこれは議員には見せてもらいたい、十分参照資料といたしたいのであります。私はその報告状態を議員に示してもらいたいことを要求いたすのであります。
 第二段の構えといたしまして、単に勇敢だとして、しろうと外交論だとして、これを葬り去らないで、ほんとうに日本の進むべきただ一途である。そうして世界の平和と人類の幸福のために貢献をする、こういう意味におきまして、日本が率先をいたしまして、原子爆弾の使用を禁じ、人類の惨劇、広島、長崎の経験者たる悲痛なる者の提案といたしまして、これも適当なる機会を見つけなければなりませんけれども、あらゆる機会を上手に考えまして、そうして、世界にこれを提案する必要があろうと存ずるのであります。原子爆弾の使用禁止についてトルーマン大統領が昨年アメリカにおいて演説をしたということを放送されておるのでありますが、それによりますならば、原子力が破壊のために使われることを避けて、人類文化のために、産業経済隆盛のためにこれを使う道を見つけ出すことが、最も必要である。原子爆弾の積極的な生産への転換問題を演説されておる記事を見たのでありますが、アメリカにおいても権威ある人々がこういう意見を心のうちに持つておられる際でありますから、被害を受けておりまず日本としては、当然世界に叫ぶべき提唱であろうと存ずるのであります。その意味によりまして原子爆弾の戦争使用禁止を、わが日本は適当なる機会を早く見つけて、これを世界に提案するということが必要である。決してこれは勇敢でなく、しろうと論ではない。平和愛好者としての切実なる叫び声でなくてはならないと存ずるのであります。
 さらにまた今日国連におきましても、世界軍備縮小問題が取上げられまして、常時的な委員会としてこの問題を取上げておるようであります。ソ連側の軍縮論もあれば、アメリカ側の軍縮論もあれば、さらにまた小国側の意見をまとめたる軍縮論もあるようであります。これは国連に加入していない日本といたしましても、オブザーヴアーとして出席をなし得るような外務大臣のお話があつたように思うのでありますが、あらる機会をつかんで、そうしてこの軍備縮小問題に対する日本の意見を主張すべきである。率先非武装となつて軍備を放棄した、戦争を放棄した日本の、当然全世界に向つての叫び声であると、私は信ずるのであります。
 政府はこういう建前に立ちまして、今日原子爆弾の使用禁止と軍備縮小問題に対して積極的に動き出されることが必要であろうと思います。これはぜひ日本国民全体の意見もまとめて行かなくてはならない、国民運動として展開しなければならないと存ずるのでありますけれども、まず政府は、これらの問題について、この憲法堅持の建前から申しまして、これが当然なすべき積極的な対策であろうと信ずるのであります。これに対する御所見を伺います。
○吉田国務大臣 御意見としては伺つておきます。しかし、私の考えは先ほど申した通りであります。
○片山委員 どうも失望をせざるを得ないのであります。憲法を守り、再軍備をしないという建前なんです。建前であれば、当然こういう進み方に進むべきであろうと思うのであります。この考えをもう一度他の方面から伺います。今度は中立問題に対する政府の所見を伺いたいのであります。私はここぐ国際法上の永世中立論や、米ソに対するアジア第三勢力結集台頭による中立問題を論ずるのではありません。これはかりに別にいたしましよう。別といたしまして、私の尋ねたいことは、第二次世界戦争後中立の観念がかわつ来ておることを思うのであります。国際法規の上でいわれた永世中立論その他は画一的でありまして、動く世界の情勢に対応したる考えとしては、ぴつたり行かないということから、様相がかわつて来ておると思うのであります。すなわち新しき中立問題というものが出て来ておると思います。それは何であるかと申しますると、非武装国が生誕したことであります。今までなかつたところの、世界初めての戦争を放棄した憲法によつて、新しく生誕したるこの非武装国の出現ということを、一体国際法的にどう扱つて行くか、ここに中立問題が新しき様相をもつて出で、来なければならない状態になつて来ておるのであります。しかもその非武装国たる日本は――非武装国たる新しく生誕される国家は、その性格といたしまして、先ほどから申しまする通り、平和と正義を愛する世界の集団的安全保障を受ける決意のもとに出て来たのであります。この出て来たこと自体、生誕して来たこと自体が、国際法上新しき観念といたしまして、別個の中立観念を持たざるを得まい。別個の新中立構想をもつてこれを取扱うべきであるとともに、また非武装国たる国家の中立的観念をもつて全世界に呼びかけ得る立場を認められて来るのであると思うのであります。
 そこで私は、中立国としての様相を多分に持つて行かなければならない、非武装国たる新しく生誕せる国の外交も、当然自主外交で行くべきである。独立国家として扱われるのでありますから、どこまでも完全独立、自主外交で進むべきは言うまでもないのでありますが、その自主外交の基本策を、新しき意味の中立政策というところに置くことが、必要であろうと思うのであります。インドは、御承知のように、国連に、参加いたしておりますけれども、問題別に中立的立場をとつたり、あるいは中立政策をとつておることなども考慮に入れ、あるいはその他国連参加の国々におきましても、時々問題別にいろいろの意見を発表いたしておる等々を考えてみますならば、この自主外交による基本をどこに置くか。私は戦争不介入という大きなる問題を取入れたる中立政策ということが、当然非武装国たる新しき国に許されるところの、また当然とるべきところの外交政策の基調となるのではなかろうかと存ずるのであります。憲法前文は単に憲法の前置きではないと思います。これこそ世界に向つての大きなる宣言であろうと存じます。戦争を放棄した自分は、非武装国となつた、新しく民主主義と平和を愛好する国として、全世界にお目見えするのである。生れかわつて出て来るのである、こういう世界宣言であろうと存じております。この前文の意義を強調しなければならない。この前文こそは憲法の精神を集約し、憲法の精神を率直簡明に、かつまたこれを実に名文をもつて全世界に呼びかけるとともに、またわが国民を指導する大きなる政治教育、国民教育の指導原則になつて来るものであろうと存ずるのであります。あるいはこれを歴史的に検討いたしまするならば、必ずやフランスの人権宣言、アメリカの独立宣言にも比すべき歴史的な文献、歴史的な非武装宣言、しかして世界の集団安全保障を受け得るという建前で進んで来るべき前文であろうと存ずるのであります。その意味から申しまして、憲法を堅持して進んで行きまするわが日本の自主外交政策は、当然戦争不介入の中立宣言ともいうべき前文から割出したる中立政策、こういうことで行くべきではなかろうかと存ずるのであります。ことに世界情勢険悪なる今日において、一国追随はいけないのは言うまでもないのであります。一辺倒外交政策をとるべきではないのは言うまでもない。全世界を相手といたしまして、正義と平和を強く主張して行かなければならない。総理大臣はこの非武装国たる日本の自主外交の基本をいずこに置くか、この点を明らかにされんことを望むものであります。
○吉田国務大臣 政府として外交の基調といいますか、国交の基調と申すか、この筋道は安全保障条約及び講和条約において明示されておるのであります。すなわち政府としては、国連、自由主義諸国と協力して参るということが、基本になつておるのであります。御趣旨の、中立論を天下に、世界に唱道しろということ、これはけつこうなことでありますが、御意見として私は伺うにとどめておきます。
○片山委員 これ以上求めましても無理かもしれないし、お答えがないのでありますから、方向を転換いたしまして、今度は国際的に日本の特殊なる事情を明らかにいたしまして、そして世界の理解を深める根底を築き上げる裏づけが必要であろうと思う問題を、お尋ねいたしたいのであります。すなわちそれは、国内政治におきましても、日本の特殊事情を十分表わし、平和を達成し、民主主義を信条として進んで行くのであるということを表わすためには、どうしても国会の権威を高めることに集中して行かなければならないと存ずるのであります。そこで、国会の権威を高めて民主政治を達成し、世界の信用を博し、日本の発言権が世界平和と人類幸福のために役立たしめる土台としての対策でありますが、これがためには、まず国会の権威を高める方法を私は三段にわかつて考えたいと思うのであります。一つは、国会を構成する選挙法の民主的な徹底的改正であります。第二は、公明選挙の制度化であります。第三は、これと一連の関係を持つております、国会の構成を変更する解散の民主的なやり方であります。解散問題を別個に切り離してはいけない。どうしても選挙法の改正と、公明選挙の制度化と、解散の民主化とが不可分一体の関係に立ちまして、国会の権威を高めるという問題に集約して考えて行かなければならないのであります。
 選挙法改正については、詳しく申し上げる必要もないと思いまするが、政界の浄化あるいは二大政党の対立、民主政治の確立から申しましても、金のかからない徹底的な公営選挙が必要であろうと思つておるのであります。そして何としてもわが国の選挙をきれいにし、わが国の選挙が民意を民主的に代表して、もつて国会構成の基本をこの際に固めて行かなければならない。それから公明選挙の制度化――この間は公明選挙が民間において唱えられて来たのでありますけれども、政府の方においては一向これを具体的に、あるいは制度の上に表わすことについての熱意がなかつたように思われますので、犯罪者に対する連坐厳罰主義とか、政界を浄化する意味において、あるいは国民の政治教育、国民全般の公徳教育の点から申しまして、現に政府自体が、道徳的な点においてみずから率先して、これを明らかにする必要があろうと思うのであります。この意味から申しまして、どうしても、この選挙法の改正の徹底的公営主義育成なども、それと関連をして検討することが必要でありまするが、問題の基本は公明選挙の制度化と徹底的な公営、――金をやたらに振りまくとか使うとかいうことではなしに、英国選挙法が幾多の困難を経過いたしまして、相当な厳罰主義をとつて今日に来つたことを見ますると、わが国におきましても、このきたない選挙界を根本的に一掃することが、国会の権威を高める意味において必要であううと思います。
 これと関連をいたしまして、解散をやはり民主的に考えて行かなければならない、この間あなたのおやりになりました解散は、前に本会議においても議論がありました通り、結果だけを見て、国民の支持を受けたからあれがよかつたというような議論は、どうもこれは成り立たないと思うのです。結果よりもその解散のやり方を民主的に考え直してもらわなくてはならぬと思います。旧憲法時代の考えをもつて、選挙法と公明選挙けだをやつて、解散は別個にこれを扱つて、独断で政府の権限であるというような考えは、何としても承服ができないのであります。でありまするからして、解散問題につきましては、ひとつこの際両院法規委員会の決定――これは自由党の諸君も、野党の諸君も一緒になりまして、全会一致できまつた決議と伺つておるのでありまするが、両院法規委員会決定を尊重して、それによつて今後の解散はやるのである、といつて、近い解散などに再びああいうふうな抜打ち解散をやられたのでは、一貫性がないことで、私は実に矛盾しておると思うのであります。この意味をもちまして――たびたび解散をおやりになるかどうかそれは知りませんけれども、吉田内閣も第五次から第十次内閣までおやりになる決意を持つておられるそうでありますが、そういう際において、この解散問題は、国会の権威を尊重する、それと選挙法と相並んだ一連の関係において、民主的にこれを取扱う意味において、前の考えをひとつかえていただかなければならない。しかして両院法規委員会の決定を尊重するかしないか、この点を明らかにいたして、そうして相並んで国会の権威を上げることについて御努力を願いたいと思うのであります。
 選挙法改正と公明選挙の制度化と解散問題についての両院法規委員会尊重、これについての御意見を伺います。
○吉田国務大臣 御意見として承ります。
    〔「何だ何だ」「委員会を侮辱するな」と呼び、その他発言する者多し〕
○中曽根委員 ただいま片山委員の御質問に対して総理大臣がお答えになりましたことは、前総理に対する礼儀ではありません。(拍手)片山委員は、前総理として国家を代表された方である。しかも御質問の内容は、じゆんじゆんとして一番基本的な問題を御質問になつておるのであります。それに対して、現総理であられる吉田氏が、そのようなそつけない態度であられるということは、予算総会の権威においてわれわれは許すことができない。吉田総理が自由党内部においてわがままをするのはかつてにやりなさい。しかし、予算総会においてやるのは断じてわれわれは許しません。どうか委員長は、今の吉田総理の態度を改めるように、御発言願います。今後の吉田総理の御答弁の様子によつては、われわれは議事の進行について重大な決心を持つております。御注意願います。(拍手)御注意願います。
    〔「その通り」と呼び、その他発言する者多し〕
○吉田国務大臣 私が伺つておくと言つたのは、決して前総理大臣に対してそつけない態度ではない。伺つておくので、答弁は専門になりますから政府委員からお答えいたさせます。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
○太田委員長 ただいまの総理大臣の御返事は聞えなかつたかもしれませんが、総理大臣の言われた御返事は、専門のことは自分ではできないから……。
    〔「専門じやない」「議事進行議事進行」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○太田委員長 お聞きください、聞いてください。その御返事のいかんによつてなお御発言願いたいと思います。
○佐藤(達)政府委員 委員長の御指名があつたからお答えいたします。
 ただいまの御質問の選挙法の改正の問題と、それから公明選挙の制度化の関係は、御趣旨はごもつともであります。国会においても御研究中のことと思いますけれども、政府においてもこの間の総選挙の経験に徴して研究をいたしております。
 解散の問題は、前回の解散が非民主的とは毛頭考えておりません。なお、解散権を法律的に制限することについては、憲法問題がいろいろあるので、従つてさようなことは考えておりません。
    〔「そんな答弁は聞く必要はない」「総理々々」と呼び、その他発言する者多し〕
○吉田国務大臣 私の意見は、ただいま政府委員から申し述べた通りであります。
○中曽根委員 ただいま吉田総理大臣がお答えになられました御答弁は、またまた誠意のない御答弁であります。片山委員が御質問になりましたのは、国会の構成に関する基本的な問題であります。あるいは解散権に関する憲法上の問題であります。国策であります。こういう国策に関する問題は、政府の責任において直接総理大臣から答弁すべきが当然であります。政府委員のごときに話させるべき問題ではありません。政府委員に答弁さして、ただいまの通りでありますなどということは、言語道断の態度であります。総理大臣の態度は改まつておりません。そういうような態度をとられるならば、われわれはこれから相談をして、この議事に関して重大な決意をやります。委員長にもう一ぺん反省を促します。総理大臣に警告をして、まじめな答弁をされるようにおとりはからい願いたい。
○太田委員長 片山君の御質問は、委員長においてよく了承いたしました。総理大臣の御返事は法律の専門家である法制局長官に依頼し、自己が責任を持つと言われるのでありますから、その意味におきましてお聞取りを願いたいと思つたのでございます。
○片山委員 私の質問のいたしました点は、法律の解釈を聞いておるのではないのであります。国会の権威を高めるために、選挙法の改正、ほんとうによりよき選挙を行う選挙法と相並んで、一環の関係において解散も考えて行かなければならないのではないか。この意味において首相の解散に関する所見を伺う。事務的な、法律的なやり方ではないのであります。政策の問題として、国策の問題として解散の所見を聞いておるのでありますから、この点において総理大臣から直接の御答弁を願いたいと思います。
○太田委員長 総理大臣に申し上げますが、ただいま片山君の言われた通り、法律論じやございませんので、選挙法の徹底的改正、公明選挙の制度化、解散の民主化、こういうことについての率直なるお考えをお願いしたい、こういうのでありますから、誤解のないように……。
○吉田国務大臣 私の申すのは、選挙法改正とか、それから公明選挙の法制化というようなことは、法律によることであつて、これをどう法制化するかということは、法制局長官の専門事項というか、主管事項でもありますから、私よりは正確なお答えができると考えて、法制局長官に依頼したのであります。法制局長官の意見はすなわち私の意見であると御承知を願いたい。
 しかして解散につきましては、憲法の条章によつて解散をいたしたので、これが非民主的であるとは私は考えないのであります。この解散論についても、いろいろ議論があるそうでありますが、私は憲法の条章によつていたしたのであります。
○片山委員 しからば、この両院法規委員会の意見、あるいは決議と申しまするか、明白なる意思表示を無視してやつたのであるか、あるいはこれを尊重してやつたのであるか、今後においてもこの両院法規委員会の決定を尊重するお考えを持つておるかどうか、この点をはつきりしてもらいたいと思うのであります。
○吉田国務大臣 その経過については法制局長官からお答えをいたします。
    〔「いかぬ」「それでは違う」と呼び、その他発言する者多し〕
○佐藤(達)政府委員 両院法規委員会の勧告につきましては、これは解散権か非常に広いのだということを前提としての勧告であります。しかしてその解散権を行使せられる場合について、幾多の事項を規定したのでありますか、その根本においては、両院法規委員会の勧告に従つての措置である、こういうことを申し上げます。
○中曽根委員 ただいま法制局長官からまた同じような答弁がありましたか、片山委員が重ねて申し上げましたように、単なる法律技術論を聞いておるのではない、政府の国策を伺つておるのであります。こういうような注意乞申し上げるのは三回目であります。これ以上こういう注意を繰返すようなことは、われわれは絶対やりたくない。私はここでただちに休憩されんことを望みます。(拍手)採決を願います。
    〔「委員長、動議が出ている。」「採決、採決」と呼び、その他発言する者多し〕
○太田委員長 暫時休憩いたします。午後一時半から始めます。
    午後一時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時十二分開議
○太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
○川島(金)委員 私は改進党、両日本社会党の野党連合を代表いたしまして、議事進行について委員長を通じ、総理大臣に厳重な警告を発するよう申入れをいたしたいと思います。
 午前中におけるわが党の片山委員から発せられました質問に対し、ことにその質問の条項は、公明選挙の問題あるいは選挙法の改正、解散権の問題に関する両院法規委員会の決定の問題に対して、総理はいかなる見解を有するかという質問であつたのであります。これはわが国の現下の政治について、きわめて重大な問題でございますので、総理みずからが答弁をするということが当然であります。また質問者も総理大臣にこれを尋ねておつたのであります。しかるにこれに対して総理大臣は、一事務官僚をして答弁をさせて、この問題を片づけるというきわめて安易な態度をとつたということは、わが予算委員会の権威を軽視し、質問者の真意に対する態度を欠いたものと、私どもは感ぜざるを得なかつたのであります。
 総理はかつて絶対多数を持つておりました国会において、ややもすれば本会議において、あるいは委員会におけるところの答弁が、その多数の上に安座しながら、自分の気に食わない質問でも発せられると、たちまちこれをつつぱねるような不親切な態度をとつたり、あるいは答弁をまつたく回避するというような態度をしばしばとつて参りました。これに対してわれわれはかつて野党をあげて総理の国会軽視の思想に対して、幾たびか厳重な警告を発し、あるいはその反省をわれわれは真剣に申し入れて参つたのであります。しかるにそのことがいまなお寸毫も改められないで、ことに本日の午前中における委員会の総理の答弁、なかんずく最後の片山氏の質問に対する答弁のごときに至りましては、われわれ委員会としては断じてこれを黙視することができないということの感を深くいたしたものでります。われわれは政府のこの委員会における審議には、あえて協力を惜しまぬものであります。しかしながらわれわれの真剣な審議に対して、政府みずからがこれに応ずるだけの熱意と誠意のないようなことであります場合には、われわれは遺憾ながらこの予算委員会におけるところの審議に協力ができないことになるやもしれないことを、この際委員長は、十分にこの委員会の意思をくまれまして、その旨を総理大臣に申し入れ、今後かかる国会軽視、あるいは質問に対するところの不親切、不誠意きわまる態度を改めるよう、厳重にひとつ委員長から警告を発していただきたいと思うのであります。
 以上本委員会の議事の進行に関しまして、野党連合を代表いたしまして、委員長に申し入れをいたす次第であります。(拍手)
○太田委員長 ただいま川島委員からのお言葉がございました。本委員会の議事がまるく進まないのは、ひとえに私の未熟な委員長の立場にあることを皆様方におわびしておきます。政府といたしましてもただいまお聞き及びの通りでございますから、この審議をして権威あらしめるために、どうか懇切丁寧に御答弁なさることをお願いいたします。しかしてどちらにいたしましても、政府といい、また委員といい一体となつて質疑応答の完全を期せなければならぬので、ともに謙虚なる気持を持つて当つていただきたいと思います。
 なお申し上げたいのは、委員長が発言を許しましたその場合におきましては、これは絶対のものでありますから、たとえいかなる発言がありましても、静かにお聞取り願うようにお願いしたいのであります。
○吉田国務大臣 ただいまの委員長の御忠告はつつしんで拝承いたします。しかしちよつと申し添えますが、私として、議事関係大臣もしくは政府委員に答弁をかわつてもらうのは、むしろ正確を期する意味と御承知を願いたいと思います。さらに御質問の要点に対しては、一応政府委員からお答えをしましたが、なお政府委員の申したことを、特に私が片山君に敬意を表してお答えいたしますから、御承知を願いたい。
 民主政治における選挙制度の重要性は御指摘の通りである。従つて政府としては、その改正につき過般の選挙の実績において調査し、慎重に研究をしております。
 選挙の公明化運動について従来通り一貫して続けておるのであります。
 過般の解散は非民主主義的であるとは毛頭考えません。解散権に関し法律で制約する点については、解散の当否はただちに国民によつて審判されるものであるからその必要を認めません。両院法規委員会の勧告は、解散権は広いものとしているから、政府の解釈に一致する。なおその勧告には、解散をなされた場合として、解散決議のあつた場合等を例示しておるが、決して解散の場合を限定しているものではない。以上であります。これは政府委員の答弁しました通りであります。
○片山委員 御親切にあらためて御答弁を願つたのでありますが、内容はどうもよくわかりません。私の尋ねておる要点の一つは、両院法規委員会の解釈を説明してもらうのではないのでありまして、政府は、この次の解散等におきまして、いかなる方法によつて解散をするか、やはり従前通りの考えで解散をするのか、両院法規委員会の決議を尊重して、それに従つてやるのか、きわめて簡単な問いであります。両院法規委員会の解釈はこうであるとか、あるいは法律的所見はこうであるとか、そういうことは尋ねません。両院法規委員会の決定の趣旨を尊重して、それによつて解散を行うことが民主的と考えて、やるならやる、この点を明確に、簡潔にお答え願いたいと思います。
○吉田国務大臣 読み残しましたからつけ加えます。今後においても、解散は民主政治の運営上、新たに国民の総意を問う必要ある場合になされるべきものと考えている。
○片山委員 どうもさつぱりわかりません。おそらく委員の全部がわかつていないと思うのです。また総理大臣自身もあまりのみ込んでいないのじやないかと思われるので、(笑声)この問題につきましては、さらに他の機会においてこれを明白にすることにいたしまして、政府は、議会の権威高揚と、選挙制度の改革と相並んで解散の問題について、明確を期してもらつて、国民にこれを明示してもらいたいと存じます。
 公明選挙の点につきましては、政府は賛成であるという先ほどのお話がありましたが、これはもつともなことと存じます。そこで私の伺いたいことは、公明選挙を汚したり、あるいは公明選挙によつて疑惑をかけられておるということは、大きな問題として検討しなければならないと存じます。公明選挙は、要約するならば、法に反し、法を無視し、法によつて問われるようなことのなきを期して、適法、遵法、そうして理想的に、正しく粛正されたる選挙で進まなくてはならないにもかかわらず、その雲のかかつて疑惑を受けた、公明選挙を汚した、こういうような疑点に包まれておりまする人を、政府の重要なる地位につけるということは(「ヒヤヒヤ」)公明選挙の趣旨に反するのではないか。公明選挙の徹底を期するためには、かかる疑惑を一掃いたしまして、真に公明に徹することを要望しなければならないのでありますが、首相はかかることありとしても、なお公明選挙の推進をやつておるということが言い得ますか。この点について明確なる御意見を伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えをします。この問題については、いずれ裁判の結果、あるいは当局において事態を明らかに決定せられるであろうと思います。この際には明白に処分をいたしますから、御承知を願いたいと思います。
○片山委員 それは、つまり裁判の結果にまつというのは、司法的制裁のことである。政治上の問題といたしましては、疑点のかかり、疑惑に包まれている人を採用するということが、公明選挙を汚すのではないか、この点であります。これについては明白にしてもらわなくてはならないのであります。重ねて政治上の問題について――司法上の、刑法上の問題ではなくして、政治上の道義の問題、ことに国民に対しまして、政治道徳、あるいはまた国民教育の推進をして、民主政治確立に進まなければならないときにおいて、きわめて明白にこれをしてもらわなくてはならないと思いますから、重ねてお伺いします。
○吉田国務大臣 お答えしますが、一応の疑惑だけでもつて重要な位置におる人の進退を決するわけには行きません。また任命する場合には、当時一応検察当局等の意見を確めた上で任命したのであります。もし疑惑あるものありとするならば……。
○片山委員 そういう考えは、国民の精神高揚あるいは道徳の高揚という点において、まことに遺憾であります。真に大衆運動あるいは大衆の生活高揚、大衆の指導、こういう立場に立ちます際においては、明白にこの点をしなければならないと存ずるのであります。強くこの点を、警告いたしたいと存じます。
 進んで特別情報機関の設置につきまして、過日緒方長官より答弁がありましたが、世界的な情報を集めて国民にこれを知らす、こういうふうなお話でありましたが、総理大臣にこの点を伺いたいのであります。とかく戦時中の例にかんがみましても、政府にかかる機関を置きますると、いわゆる言論の統一あるいは言論の自由を抑制する、こういう傾きがあるものであります。あたかも国際情勢まことに急を告げております際においては、とかく都合のよい情報のみを発表し、不利な情報を禁止するというような傾向に堕する憂いをわれわれは持つのであります。何を好んで特別なるかかる機関を今日置くのでありましようか。現在における政府の機構を通じて、あるいは外務省の積極的な活動を通じて、十分世界的な情報がとれるのではなかろうか、とり得るものであると存ずるのであります。私はその意味において、かかる言論抑圧に、自由抑制に堕する憂いのありまする特別情報機関の設置には反対をし、不必要であると信ずるものであります。首相の御意見を伺います。
○吉田国務大臣 これは、その趣意は、本国会の議場においても説明いたしましたが、事実を事実として、国民に内外の事実について真相を伝える、国民が事実の真相を知つておるということが民主政治の基本であり、その事実に基いていかなる判断をするかは、国民自身の審判によるべきものでありますが、国民としての審判の材料を政府が提供する、あえて思想統一でもなければ、圧迫する趣意でもないのであります。これはしばしば申した通りであります。
○片山委員 どうも先ほどお約束の、親切丁寧に、納得の行く御説明を願う趣旨には、まだ満足をいたさないのであります。(「その通り」笑声)これは他日また重ねて質問することにいたしまして、前半において私が質問をいたしました防衛力の問題は、結論といたしまして憲法を堅持し、再軍備をしない、国内の治安は保安隊をもつて維持する、こういうふうに防衛体制は、国内問題としては治安の維持ということに解釈をいたしまして、これを前提といたしまして質問をするのであります。私の趣旨は、防衛というものは、国内における思想の向上、あるいは教育の滲透、要は国民生活の充実、こういうところに集約をいたしましてこそ、国内の治安は保たれると思うのであります。国内の治安を維持するためには、内乱の防止、火炎ビンの飛ぶような、この悪化状態を防止する対策といたしまして武器弾薬を整えたところが、これはほんの一部であります。武力をもつて押えつけるということは、結局暴力反発をおびき出すような結果となつて、極右、極左の闘争になるというようなことは、まことに嘆かわしい、憂うべき状態であります。そこで防衛ということは、国内に関する限りにおいては、武器弾薬よりも、重点を国民の生活力充実というところに集中しなければならないのであります。
 そこで具体的に申しまするならば、今日のこの食糧問題、大きなる広い意味における国民防衛の体制といたしまして、食糧対策を根本的にやりかえなくてはならないと思います。昔からのいわゆる原始的な平面農業にそのまま放置いたして、荒れ行く農村をそのままに見ておる。食糧を生産する農民の生活の窮乏をそのままにして、なお働きが足りないのである、もつと働けと、いわゆる興農主義にこれを放置したり、あるいはまた外国から食糧を仰がなくてはならないやむを得ざる状態であると、これもまたそのままにしておる。今日広い意味における防衛体制としての食糧対策は、実に無為無策であるといわなくてはならないのであります。さらにその次は道路問題であります。道路も大きなる防衛体制の中に入れて行くべきであります。石ころだらけなそのままの道路に、いかに戦時中において国民が困つたか、食糧に続いての放置されたる道路政策であります。その次は住宅問題であります。住宅もマッチ箱を並べたような密集住宅、焼夷弾によつて一晩のうちに焦土と化したこの悲惨なる状態を考えて行きますならば、防衛体制を武器弾薬にのみ頭をつつ込んでしまつて、このかんじんな国民の生活を充実いたしまする食糧、住宅、道路問題について、さつぱり新しき対策を立てるべき構想を持つていないと思うのであります。主管大臣はこれらについていろいろの計画があるとか言つていますけれども、これは小さな計画であろうと思います。第四次吉田内閣といたしまして、自衛力漸増を叫ぶときに、この国民の生活力を充実して、防衛態勢への重点をそこに置く、こういう構想がすでにあるはずであると思います。なければならないと思います。
 そこで私は吉田総理大臣に向いまして、この具体的なこまかい政策は別といたしまして、わが国がこの複雑な国際情勢に対処いたしまして、国民の生活を向上せしむるためには、どこに重点を置いて考えておるか、食糧、道路住宅についてどういう考えをもつて行こうとするか、国策として大所高所から大きな見地に立つて、この国民の生活を預かる、引受ける、こういう構想を持つておられるはずだと思います。ここにおいて私はその点について、在来の米麦、穀類主食方針をどうするか、あるいはまたでこぼこの道路をどういう計画をもつているか、国防体制として国力充実、経済、産業発展の土台として、いかにこれを構想しておるか。住宅問題も同様、あげて生活力充実に対する基本的対策を示してもらわなければならないと思うのであります。この意味におきまして、総理大臣のこれらに対する基本的な大きなる総合的対策をお示し願いたいと思うのであります。(拍手)
○吉田国務大臣 過般発表いたしました重要施策に、道路問題も、食糧増産の問題も、また住宅問題も含めておるのであります。政府は決してこれを軽視いたしておるものではありません。
○片山委員 どうもそれだけではだれも満足しないと思います。時間が経過いたしておりますから、その内容を聞きたい。いかなる対策を持つか、聞きたい。他日必ず御発表願いたい。これを明白にしまして、そしてわが国の国力充実に対する所見を御発表願いたいと思います。これを強く要望し、かつ警告をいたしておきます。第二は、日本の特殊なる事情を世界に向つて理解せしむるということが、日本の立場を国際的に保障せしむるという意味において必要と思うのであります。これは実に考えて行かなければならない問題でありまして、それこそ人口問題であろうと思うのであります。昨日北村君に対しましてお答えがありましたが、私の考えは、憲法を堅持し、再軍備をせずして進んで行こうとするこの日本の特殊事情を、世界的に理解せしむる道は、人口問題に関する政府の所信を明らかにいたしまして、そうしてまず移民問題等につきましても、侵略的な移民ではなくして世界の経済、産業、あるいは文化の上に貢献をする、平和的な移住の自由から発展をいたしまする移民対策――あるいはまた国内の問題につきましても、富める者はいやが上にも富み、貧乏する者はどん底の生活に追い込まれて来るというような、貧富の懸隔、階級差別が激化して来るような状態では、どこに世界的な国際信用が高まりましようか。やはり国内においては分配の公平を期するとともに、生産におきましても真に国民の生活を向上し、経済の隆盛を期する意味の対策が立てられて行かなければならない。われわれは民主主義の滲透こそは、これを十分に期待せしむるものであると信じておるのであります。そういう意味におきまして、世界の聞かんといたしておりまする日本の特殊事情、過剰人口に悩みつつあつて、資源も少く、敗戦の苦痛にあえいでおる。産業いまだ充実せず、しかも毎年々々ふえて来つつあるこの人口問題を、われわれは悩む問題として検討しつつあるのである。しかし今日においては憲法を堅持して、この憲法の精神でこの問題を解決し、再軍備をせずして、一路人口問題の解決に民主主義の滲透をはかつて、そうして国民生活の向上発展を期して行こうとする、新しき対策がなくてはならないと存ずるのであります。すなわち憲法堅持と人口問題の関係、世界的信用を高める人口問題の対策、これらについては、施政方針の中にもなかつたと思います。北村君に対する答弁も十分聞きとれなかつたので、あらためてこの重大なる世界に訴えるべき日本の人口問題をいかに考えておられるか、これについての大綱を総理大臣から述べていただきたいと存ずるのであります。
○吉田国務大臣 この問題は、過日北村君のお尋ねに対して一応述べておきましたが、人口問題の解決案のごときは、そう簡単に述べられるものではないので、たとえば海外移民と言われるが、海外移民のよしあしについては、相当問題があるのであります。たとえば労働力といいますか、生産力に最も富んだ青年あるいは生産力のある労働移民をいたすならば、それだけその国の労働力を減らすのであつて、はたしてそれが人口問題を解決するゆえんであるかどうか。いわんや諸国ともに人口の増加が食糧の増産に伴わない大問題でありまして、移民問題は決して容易でないのであります。結局自国が資源を開発するなり、あるいは産業を開発するなり、国が経済的に富んでいて、そして国民が生業を得る、生業をよけいにする以外に、人口問題の解決はないと私は信ずるのであります。しかしながら、同時にこの人口問題は、日本だけの問題ではなくして、すでに世界的の問題であつて、しばしば国際会議あるいは国連等において取上げられる問題であります。その都度日本政府としては、日本の状態を理解せしむる、また諸外国の協力を得るということに努めて来ております。またこの意味から申しても、私の申す情報機関といいますか、広報機関の設置は必要であり、これらの機関によりますます日本の特殊の状態を理解せしむる方法をつくるべきであると私は思います。
○片山委員 最後に、私は最近の労働争議に対する政府の所見を伺いたいと思うのであります。御承知の通り、電産を初め、炭労、関西を中心とする私鉄争議、年末を控えまして、いろいろ多くの問題を投げておるのであります。産業の発展の上から申しましても、勤労者の生活の窮迫の上から申しましても、この問題をそのままに放置することはできないのであります。政府は自主的解決を待つ、こういうような考えのもとに、今日まで進んで来られたようでありまするけれども、重大なる時期ともなりまするし、被害が各方面に大きく出て参つておりまする今日においては、政府は積極的にあつせんに乗り出し、早くこれが解決して、そうして事業を行う上においても、働いておりまする大衆の上に対しましても、あるいはまた一般交通問題、あるいは電力問題に関係を持つ国民全体の上から申しましても、自主解決にそのまま待つておるというときではない、迫つておると考えるのであります。よろしく政府はこれらに対して一つの方針を立てまして、もちろん法規の許す範囲内でもあるし、また労働問題に対する深き認識をもつて、何がゆえにかかる問題が起きて、熾烈なる闘争を展開しておるかと、十分認識を深めたる上の話であることは言うまでもありませんけれども、これの解決についての方針がすでになくてはならないかと存ずるのであります。これに対する政府の考え、労働争議激化いたしておりまする今日に対するこの解決についての具体的なる対策を、明示していただきたいと思います。これも総理大臣に伺いたいのであります。
○吉田国務大臣 政府はこの問題に対して決して傍観いたしておるわけでもなければ、そのまま放任いたしておるわけではないのであります。労働大臣、労働省はすでに数箇月の間この問題に没頭してその解決案に極力援助し、またその解決を急いでおるのであります。しかしながら法の立場からいつて政府がただちに干渉し、もしくは緊急調整というようなことをすることがいいかどうか、また現在の事態がどういうような方向に発展しつつあるか、労働省は終始最も深い注意をもつて臨んでおります。決してこれを傍観いたしておるわけではありません。今日も労働大臣から報告を受けましたが、この数日の成行きをさらに見たい、あまり政府が干渉がましいことをいたしても、できるものができないという場合もありましようし、また一つには感情問題でありますから、あまり刺激することもおもしろくないということで、労働大臣としてはかなり苦心を払つておるので、決して手をつかねて待つておるわけではないのであります。
○太田委員長 片山君の質問は終りました。稻村順三君。
○稻村委員 最近自由党では、国会に臨むにあたり、新政策というものを発表いたしましたが、これを発表する以上、現に総理をやつている吉田氏は自由党出の、自由党の総裁でもありますので、在任中に当然に何らかの形で、またどれだけかの程度でこの新政策を実行すること、すなわち予算にこれを組み込むという義務を負うておるものだと考えてよろしいですか、その点、御答弁願います。
○吉田国務大臣 これは漸次予算に盛つて参るつもりであります。
○稻村委員 もしそうだとすれば、吉田内閣はいつまでも、――それは任期は長いほどいいかもしれませんが、鳩山氏も命旦夕に迫つておるといつたぐあいでありますから、おそらくいつまでも続くものではないと思う。そうすれば、少くともこの補正予算の中にも、この政策がどれだけくらい盛り込んでおられるのか、総理の御意見を伺いたいと思います。
○吉田国務大臣 お答えをいたしますが、補正予算は本予算の補正予算でありますから、新政策の多くは本予算、本年度の予算に載つておらない部分は、来年度の予算に盛り込んで参ります。
○稻村委員 そうしますと、現在の補正予算というのは、本当初予算のふくらましにすぎないということに解釈されるのであります。ところが昭和二十六年度の予算及び二十五年度の補正予算の政府の説明を考えてみますと、この予算は十五箇月予算である。しかも単に過去の当初予算が足りないからこれをふくらますということは、日本の今後の財界その他の動きから考えて、非常に危険な様相がたくさんあるからして、われわれの今後の予算いうのは補正予算とあるけれども、次年度の予算の計画をこの中に盛り込んでいる、その次年度の予算の頭をここに出しておくのだ、こういうような説明をして、それが吉田内閣財政方針の特徴であるかのごとくうたつております。そうしますと、この吉田内閣の特徴だといつて誇つたこの予算編成方針は捨ててしまつて、補正予算は単なる当初予算のふくらましにして行く、こういうふうに方針をかえたのだといつてさしつかえございませんか。
○吉田国務大臣 私の説明は右の通りでありますが、詳細は大蔵大臣からお聞き願いたいと思います。
○向井国務大臣 御答弁を申し上げます。このふくらましというお話につきましてはあとからも申し上げますが、今回の予算補正におきまする減税とか公務員等の給与改訂、米価の引上げに伴う措置等について、二十八年度予算に直接影響するものでございますから、明年度予算との関連も考慮して決定したものでございますが、明年度の予算全体については目下慎重検討中でございます。補正予算の編成方針が、二十七年度予算の物価騰貴によるふくらましにすぎないとおつしやいますが、今次の補正予算の編成では、財政演説におきましても明らかにしました通り、健全財政及び通貨安定を基本として、財政金融方策の弾力的運用によつて、国民経済の充実発展、国民生活の安定向上をはかることを基調としまして、当初予算編成後の諸般の事情の変更に即応しようといたしたものでございます。すなわち国民生活の安定のために減税措置を講じ、また公務員給与の改訂、米価改訂に伴う措置、地方財政の充実、経済基盤の充実強化、国民生活の向上のための財政投資及び公共事業費の増額に重点を置いて、特段の考慮をはらつたつもりでございまして、決して単なる物価騰貴によるふくらましではございません。
○稻村委員 大蔵大臣に対する質問はまたあとからいたしたいのでありますが、単なるふくらましでないということは、私にはちよつとわからないのであります。というのは給与ベースなどというような問題は、これはやはり物価高から来るところのふくらましの部分にすぎないと思うのであります。大体私はパーセンテージをとつてみましたところが、ここで公共事業費が三三%ふえております。農業、漁業資金への出資金が三〇%、農業保険が二五%、失業保険費が三九%、地方財政平衡交付金が二〇%と、たいてい二〇%から三七―八%くらいが――これはおのおの差異はあるけれども、この程度にふえているのです。これは要するに足りなくなつたから――私当初予算のときに、すでにたしか河野主計局長に質問して、物価高は一体どれくらいあるのだといつたら、四〇%くらいは、二十六年度予算に対して、予算単価は高くなつているだろうという話でありました。そうしますと、これで大体三〇%から四〇%くらいな予算の不足が、各項目に出て来るのではないかといつた。ところがそういうことはないというような話であつたのです。ところがこうやつてみると、そのときの質問と同じように大体二七―八%から三八―九%だけふくらましている。それでもつてあの当時当然これだけのものを組まなければならないものを組まないでおいて、そしてあとからただ足りなくなつたからふくらました、これだけのことなのです。私はこれでもつて次年度の財政計画は織り込まれているなどと、どうして言えるかということを言いたいのです。その点もつと明確に聞きたいのでありますけれども、これは答弁を要しません。あとからあらためて質問いたします。
 それで自由党の新政策を読んでみますと、その中心をなすものは何といつても外交と食糧自給促進の問題であります。この外交の中に友好善隣ということをうたつております。だが友好善隣という以上は、おそらくアジア諸国との間に善隣関係を結ぶということを意味しておるだろうと思うのでありますが、しかし、これらアジア諸国との間に友好関係を保つて行こうとすれば、賠償問題を解決しないというと困難であるということは、結局近代のジャーナリズムにも報ぜられているようでございます。
 そうするとこの際総理にお尋ねしたいことは、これら諸国との間に、賠償問題の解決に対して、どのように進行しているかということであります。この点御意見をお伺いしたいと思います。
○吉田国務大臣 お尋ねの賠償問題でありますが、これは平和条約にも規定してある日本の義務でありますから、誠実に遂行して参りたいと思います。そのために近日フィリピン方面に向つて調査団を派遣することになつておりますし、またインドシナ方面に対しても、かつて調査員を出しましたが、さらに調査員を出して、そうしてこの賠償の実行に移りたいと、こう考えております。
○稻村委員 今総理が答弁になりましたが、フィリピン及びインドネシアとの間には、すでに交渉が行われたように報ぜられておるのでありますが、ところがその後どういう原因かわからぬけれども、途中で頓挫を来しておると思うのであります。しかしてその頓挫した原因というものは、国民は明確にわかつておらぬのであります。この点その交渉の経過を簡単に、国民に知らせるという意味におきまして、また頓挫している原因がどこにあつたかということに対しまして、明確なる御答弁を願いたいと思います。
○吉田国務大臣 詳細は外務大臣からお聞き願いたいと思いますが、かつて昨年でありましたか、津島壽一氏に頼んで、フィリピンに行つてもらつたのであります。そのときは互いに両方の意思を語り合うという程度であつて、そうして実際問題までに入ることができなかつたのでありますが、その後、私の記憶いたしておるところでは、フイリピン政府側において、いろいろ国会においても、またそのほかの政党の方面においても、賠償に対して、非常に大きな額を要求するようなけはいがありました。これに対して政府としては、どれだけの用意をいたすべきか、互いに研究しておつて、腹の探り合いといつたような程度に最近まであつたのでありますが、だんだん気持が近寄つて、そうしてフイリピン政府側も妥当なる申出を出すような気持になつたように承知しておりますが、インドシナについては、二、三回、たとえば官房長官も行き、最近は稻垣君も行かれ、そして向うの当局者、政党、国会議員諸君を歴訪したり何かして、そして事情の疏通に努め来つたのでありますが、最近これも多少気持が緩和したらしく考えられます。しかしインドネシアについては少しく事情が違うのは、総選挙が近いとかいろいろな事情があつて、はつきりした態度がまだ明瞭にされていないうらみはありますけれども、いずれにしても、賠償義務は講和条約の規定しておるところでありますから、誠実に履行いたしたいというつもりでおります。
○稻村委員 詳しいことは外務大臣にあとから質問することといたしまして、今日本に対する求償権を持つている国といえば、ビルマ、インドシナ、ヴエトナム、カンボジア、フイリピン、ニユージーランド、オーストラリア、インドネシア、これらの国だろうと思うのでありますが、これらの国々がこれまで日本に対して、どれだけの賠償をしてもらいたいという正式の申入れというようなものがあつたかどうか、あつたならば、それがどのくらいあつたのか、また正式でないにしましても、大体外交関係その他を通じて要求されている額がどれくらいであるのか、それからもう一つは、この賠償の種類あるいは支払い方法などについて、こういう国から要求が提出されておるのかどうか、これらの賠償額はドルにして総額大体どのくらいになると予想されるのであるか、この点国民が非常に心配しているところでありますから、大額でもよろしゆうございますが、御発表願いたい。
○岡崎国務大臣 ただいまのお話につきましては、まず賠償関係を持つさしあたりの国としては、フイリピン、インドネシア、仏印、ビルマ、こういうふうにわれわれは考えおります。要するに、日本の軍隊が行きまして占領したがために生じた損害がある国を主としておる。従つて今おつしやつたような他の国々につきましては、今のところ別にそういう話がないのであります。そこで賠償の額でありますが、これはいろいろの計算方法がありまして、たとえば当時よく新聞に伝えられましたような八十億ドル前後というようなこともいわれておりますが、これは一つの計算方法でありまして、日本の支払い能力とか、またその他いろいろの事情からいいますと、大分かわつて来るものと考えております。但し仏印なり、ビルマからは、まだそういうような話は今のところは来ておりませんが、そのうちに何らかの意思表示があるかもしれないというように考えております。そこで一体日本の方でどれくらいの総額ならよろしいかということにつきましては、ただいまいろいろ話をこれから進めようというときであります。こちらはこれだけだというようなことをここで述べますことは、かえつて交渉について先方に間違つた感じを起させるおそれがありますので、これは慎みたいと考えます。
○稻村委員 賠償に対して、まだ相手方の要求というものが明示されていないのですか。
○岡崎国務大臣 先ほど申しました通りに、計算の方法の一つとしては、たとえば八十億ドル前後というような数字も上つたことは、当時新聞で御承知の通りでありますが、それ以外には、別にただいまのところ、具体的の数字は上つておりません。
○稻村委員 賠償問題は早く片づけなければならないということになるのでありますが、これは二十八年度中に片づくという見通しがありますか、どうですか。
○岡崎国務大臣 これはいつも言います通り、相手国のあることでありますから、ここで見通しがあるとか、ないとか私から申すことは困難でございますが、政府としては、もちろん来年度中にでありますが、それもなるべく早く片づけたい意向であります。これは今後の交渉にまつことでありまして、今見通しとして、ちよつとここでは申し上げられない、こう考えております。
○稻村委員 これと関連して大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、二十八年度にもしも賠償関係の問題が片づくということになりますと、これは相当多額の金を二十八年度の予算の中に見積らなければならないと思うのであります。そうしますと、一体これはどういうふうな見積りの仕方をし、また予算計画の中にどうやつて入れて行くつもりか、この点御意見があればお伺いしたい。
○向井国務大臣 金額のわかりませんものを見積ることは困雑ではございますが、平和回復善後処理費というような費目がございます。そこに見積りをして行きたいと思います。金高については、ただいまのところではお答えできません。
○稻村委員 それは少くとも従来のような百何億という平和処理費では、とうてい間に合わないものであるということだけは、大蔵大臣は御承知であろうと思うのですが、その点あらためてお伺いいたします。
○向井国務大臣 それはおつしやる通りでございますが、やはり一ぺんに払うというのはむずかしいので、話はきめても、払いの方は、手がたく申せば延べ払いというようなことになるのじやないか。それからもう一つは、お金で払うということよりは、役務で払うというようなことが多いだろう、それでまとまつた金高を見積ることはまずないと思うのでございますが、これは相手があるので申し上げられません。
○稻村委員 賠償問題と予算の関係については、大蔵大臣にあらためて質問することにいたしますが、もう一つお伺いしたいのは、日本軍がかつて占領地に発行したところの軍票による損害の問題であります。この点を政府としては大体の調査ができておるのかどうか。講和条約によりますと、無価値の通貨を使用したことによる損害は、これは支払わなければならぬことになつておるようであります。そうしますと、日本でも相当広い地域にわたり軍票を発行しておるようでありますし、聞くところによると、五兆億だの六兆億なんといわれているようであります。こういうような軍票に対しては、政府はこれによる損害に対して補償するという立場をとつているのでありますか、これは補償しなくてもいいという立場に立つているのであるか、その点お伺いしたい。
○岡崎国務大臣 まず戦争中に発行いたしましたいろいろの軍票というか、紙幣もありますが、これらは無価値のものであると必ずしも言えないのでございます。当時それの裏づけには物資を出しましたり、あるいは金を現送いたしましたり、いろいろいたしております。従つてその後にこういう紙幣に対して、先方でもう効力なしというようなことをいつて無価値にされた場合もありますけれども、当時ちやんと裏づけがあつて通用しておつたとわれわれは了解しております。また現にそういう物資などを出しておつた。従いまして、この問題もあるいは将来むろん検討さるべき問題ではありますが、ただいまのところ、こういう点には触れませんで、主として役務の賠償をどの程度にするかということが研究の中心になつております。なるべく詳細に研究はむろんいたしますけれども、この問題は別に考うべきものである、こう考えております。
○稻村委員 そういう考え方はきわめて楽観に過ぎるのではないかと思う。たとえて申しますれば、なるほど物資の裏づけはあつたかもしれぬけれども、敗戦によつて日本の軍隊が崩壊してしまつた。そうしますと、そこに軍票が無価値になつて、経済の大混乱を来したというように問題があつたときには、相手国は必ずこれは軍票発行による損害として要求して来るだろう。そうすると、賠償の中にはこういうものも一応含められているのではないかという計算をしておかなければならないと思うのでありますが、それはとにかくといたしまして、もう一つは、われわれが今後払わなければならない問題として、すでに昭和二十七年度の予算の中に頭を出しておりますところの外債償還と連合国財産の補償、それから対日援助費の償還の問題であります。この問題はことしあたりからいよいよ本格的になるのじやないだろうか、こういうふうに私考えておるのでありますが、ことしはこれは昨年に比してふえる見込みであるのか、減る見込みであるのか、これは二十八年度予算の編成にとつて非常に重要な問題でありますので、この点御意見を伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 外債の方はもうすでに大部分の話はできるようにきまつております。一部フランス関係のものはきまつておりません。従いまして、毎年支払うべき額はただいまのとりきめの範囲内ではわかつておるわけであります。ところがこれは今までは平和関係処理費の中に入れておりましたが、今度どういうような予算技術になつておるかは別問題として、この問題だけは確定数字が出て来ておりますから、あるいは別の取扱いになるかもしれません。それから連合国財産の補償、これも前に説明いたした通り百億円程度のことでありまして、これもまずはつきりした数字でありますから、予算の上においてどういうふうに現われるかは別として、これはすでにほとんど確定した数字であります。そこで問題は対日援助のガリオア等の問題、ほかにもたとえばイロアとかいろいろありますけれども、これにつきましてはまだ今後の話合いによるのでありまして、やはり不確定数字といわざるを得ないと思います。しかしながら、ある程度平和関係処理費等の中に盛つてもらいたいと私の方では考えております。その点で賠償の数字もまた不確定でありますので、これらを含めまして、ある程度の予算を盛つてもらいたいと考えて、今大蔵大臣に話をいたしておる最中であります。
○太田委員長 稻村さん、ちよつと申し上げますが、総理大臣はよんどころのない公務の関係で四時半にここを帰らなければならぬそうであります。御質問の順序もございましようが、それをお含みの上、御質問なさるようにお願いします。
○稻村委員 総理大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、どうも最近の新聞などから報ぜられるところから政府の態度を推測すると、外債償還あるいは連合国財産補償、対日援助費の問題が、むしろ賠償よりも優先的に考えられているのじやないかとさえ、私たち思われる点があるのであります。善隣友好ということになれば、アジアが一番大事な国であると思いますし、しかも賠償問題を片づけなければ、アジア諸国との間に善隣友好関係が生れて来ないのでありますが、常識的に戦争の被害という立場から考えれば、むしろ賠償の方が優先すると思うのであるけれども、総理はどういうふうにお考えであるか、その点お尋ねいたします。
○吉田国務大臣 賠償も重大と考えます。また条約上の義務として日本国が負うておるところでありますから、むろん大切には考えますが、これは相手との交渉によらなければならないことであつて、交渉はまだ始まつておらないような状態でありますから、賠償を先にするというわけにも行かないのであります。従つて、たとえば外債処理などの話がついたものは、その片づけ得るものだけを先に片づけて参りたい、こういう方針で参ります。
○稻村委員 私がなぜこういうことを質問するかといえば、どうもこれも国民が非常に疑惑を持つておるところでありますけれども、賠償だの外債償還あるいは連合国財産補償というようなもの、あるいは対日援助費というようなもの、ことに賠償以外の対外支払いというものが、最近再軍備といいましようか、自衛力の漸増といいますか、こういうものとの間に両天びんにかけられておるような感じが非常にするのであります。もしも自衛力を漸増というか、再軍備をするならば、おれの方では外債の償還、連合国財産補償、いや、それよりむしろ対日援助費の問題は考えてやろうじやないかという意味のことも、アメリカの新聞に、これは個人の意見ですが出ておつたものもございます。そういたしますと、われわれといたしましては、こういう両天びんにかけられて、そうしてずるずるとと自衛力増強というものが日本の自発的な意思でなくて、外部の意思によつて引きずり込まれて行くというふうにとられがちなのでありますので、その点こういうことがないならないというふうに、はつきりしておいた方がよかろうと思うのであります。
○吉田国務大臣 これははつきり申しますが、何ら両天びんというような関係はございません。
○稻村委員 次に一昨日星島氏は、条約は憲法に優先するから、条約の立場から再軍備すれば、これはやむを得ないことであるというような意味のことを話したのに対して、総理はこれに反対しております。しかし総理はさらに進んで、憲法と矛盾するところの条約は一切結ばないというかたい決意を持つておるかどうか、その点をここでお伺いしたいのであります。
○吉田国務大臣 これは政府としても私としても、憲法に違反する、あるいは抵触するような条約は断じて結ばないつもりであります。
○稻村委員 次に善隣というようなことをいえば、同じく隣にあるところの中共及びソ連との関係について、これを考慮して行かなければならないと思うのであります。今のところ、隣の中共及びソ連との間に、何の外交関係も持つていないようでありますが、これについてはこのままにしておいてよいというふうに、総理はお考えになつておるかどうか、その点お伺いいたします。
○吉田国務大臣 政府としては、善隣関係の中には、むろんソビエトも中国に入つておりますが、しかしながら中国もソビエトも、日本に対して一種の敵国というような考えで、同盟条約みたいなものがあり、また日本との間に交渉を開始する、あるいは平和条約の締結というようなこともなされておりませんから、当分の間はたとい善隣関係は、ソビエト、中国を考えても、政府としてはいかんともすることができない状態にあるのであります。
○稻村委員 総理はこれまで幾たびか自衛力を漸増しなければならない、というのは、外国より侵略が予想されるから当然であり、特に今日世界が二つにわかれておつて、そうして中立があり得ないという立場から、われわれが自由主義陣営に入つて自衛しなければならない、こういうことを申しております。その上に今ソ連と中共との間に、敵国の関係のようなものがあるというように言われておるところを見ますと、自衛力漸増の対象は、中国及びソ連であるということ、具体的にいえば、そういうものであると解釈してさしつかえないかどうか、ということをお伺いいたします。
○吉田国務大臣 決してソビエトもしくは中国を目標として漸増ということは考えておりません。一に日本の独立、安全を目標として、これを守ることが自衛といいますか、自衛の目的であります。
○稻村委員 私はそういうふうな解釈で総理がいつもおれば文句はないのであります。ところが、ときどき総理はあたかも共産主義国が侵入して来るからというような――直接侵入がなくても間接侵入がある。あるいは、コミンフオルムがどうのとかいつて、一種の仮想敵国のごとき態度をとり、そしてその言動には、少くとも中国及びソ連を相当刺激するものがあるというふうに解釈しているのであります。私はそれだからといつて、決して中共及びソ連をあくまでも擁護せよというのではなくてわれわれが仮想敵国であるというふうに考えれば考えるほど、むしろこれとの間における正式な外交関係を持たなければならぬのではないか、こういうふうに考える。もしも将来われわれが仮想敵国としなければならぬという立場にあればあるほど、われわれとしては中共、ソ連に対して正常の外交関係をつくつておく、こういうことが必要になつて来ているのではないか。先ほど情報機関の設置に関して、いろいろな意味での各国の客観的情勢を探る機関が必要だと申しましたけれども、外交機関がないというところには、私はやはり情報機関などというものもなかなかむずかしい思うのであります。従つてこういうところに外交関係を結ぶためにどういう努力をしたか、この点をはつきりと、その努力をした跡を説明願いたいのであります。
○吉田国務大臣 私というか、政府としては、中共あるいはソ連を仮想敵国といたしたことはないのであります。しかしながら向うが仮想敵国としておるので、講和条約さえも結ばない、あるいは日本を仮想敵国としての同盟条約といいますか、一種の条約をこしらえておるというような状態である。この状態を打破するためには何か方法はないかと言われますが、これは相手方も日本に対する気持が直らない限りは、手の出しようがないのであります。むろんそのために仮想敵国の相手方を怒らせるようなことを主としていたすようなことはありませんけれども、相手方の気分――相手国が日本に対して、日本国と友好関係に入りたいという気持がないのに、こちらからいろいろ申したところで、結局無効に終るので、今日では方法がないのであります。
○稻村委員 方法がないというように言いますけれども、私は、努力をして、その努力の結果効果がないようなことは絶対ないと思うのでありまして、この点は私は努力を全然しておらないというふうに解釈しているものであります。共産圏内と自由主義国家圏内との間における対立が、世界経済というようなものを非常に困難な事態に陥れていることは、最近イギリスあたりの雑誌を読んでみますと、これは何も進歩的な雑誌を見なくても、エコノミストのような雑誌ですらもが、この点を相当強調しておると思うのであります。今日すでにアメリカを中心とする軍拡景気は中だるみというか、不況の状態に陥つておる、それのために欧州経済も非常に困難な事態に当面しつつある、これを打開する道は、東西貿易をするよりほかに道がないという主張が、イギリスでは非常に強くなされておるのでございますが、こういうような事態は、アジアにおいては日本と中国との間の関係にもこういう関係はないだろうか、こういう点を総理大臣は――私は何も具体的でなくてもいいのですが、総理大臣の意見としてこういう点があるかないかをお伺いしてみたいのであります。
○吉田国務大臣 イギリスはソ連と外交関係を持つており、中国とも外交関係を持つておるのでありますが、今のような東西貿易の展開というようなことは、日本としてはその方途がないのであります。ないがゆえに努力いたしたくもしようがない、こういわざるを得ないのであります。
○稻村委員 今のに関連質問があるそうでありますので、私は今日は総理に対する質問はこれまでにしておいて、関連質問にさせていただきたいと思いますがどうですか、
○太田委員長 簡単なものでございますならばけつこうかと思いますが、今申し上げました通り、従来の例もありますから簡単にお願いいたします。
○勝間田委員 総理大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、私は日ごろ政治の明朗ということが一番大事である、と同時に政党のあり方にいたしましても、また政治のあり方にいたしましても、やはり明白に国民の信頼を受けるようにして行かなければならぬと実は考えておるわけでありますが、その中で私が常に思つておりますのは、政党献金の問題でありまして、たとえば政府が重大な施策を行つた場合におきまして、業者なら業者に非常な利益を与えるといつた場合において、一応合法的でありましようとも、他面において政党献金というものが多額になされる。こういう形をとつて参りますと、国民をして真に政治に信頼をさして行くことが、非常にむずかしいのではないかという感じを常に持つておるのであります。また政党献金をやつたり、運動したりすれば、政治は何とかなるといつた印象を国民に与えて行くことは、私は非常にいけないのではないかと思つております。もちろん政党献金の問題と重要施策の問題と、どう関連さして行くかということは、今後の研究問題でありますが、そこで政治の明朗を期する上において、政党献金と重要施策との関連の問題を、総理は今後直す考えがあるかどうかという問題を、私はこの際ひとつお尋ねしておきたいと思うのであります。
○太田委員長 今の御質問は少し関連が遠いように思いますが、あなたの御質問の時間に譲ることはできませんか。
○勝間田委員 いやこの問題は今日は総理が来ておるのですから……。
○太田委員長 総理は来ておりますが、稻村さんの質問とは関連がないようですがいかがですか。
○勝間田委員 どうかひとつお願いしたい、重要な問題でありますから。
○太田委員長 関連というのは稻村さんの御質問に対する関連ですが、ちよつと私の判断では……。
○勝間田委員 今発言を許していただいたわけですし、この問題はさつきの質問で留保してあるからお願いするわけです。
○太田委員長 どうですか、あなたの御質問の時間もとつてあるわけですが。
○勝間田委員 総理がいる現在……。それがけさ問題になつて関連質問を留保しておりますから……。
○太田委員長 特別なる例として――私は実は関連質問の範囲を出ていると思いますけれども、すでに発言されたことですから、簡単な時間におきまして総理大臣の御返事をお願いいたしましよう。
○吉田国務大臣 ちよつと御質問の御趣意が私にはわからないのでありますが、重要施策を一方に掲げて、一方には政党献金を募集しておるというようなお尋ねですか。
○勝間田委員 そうです。
○吉田国務大臣 そういう事実はございません。
○勝間田委員 それでは自治庁にちよつとお尋ねしたいと思うのであります。炭鉱の今度の問題は二十三億も返したという問題であります。この選挙におきまして炭鉱業者及びそれに関連する団体から各政党にどの程度の献金がなされたか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
○金丸説明員 各政党に対しまする総選挙に関連いたします寄付が、各府県、の選挙管理委員会へ届出になつておりますが、日本石炭協会から自由党へ千三百万円、改進党へ三百万円、日本社会党の右派へ百万円、共産党へ炭鉱労働組合から二万円寄付した、こういう届出になつております。
○勝間田委員 日本鉱業協会からあるはずでございますが、どうですか。
○金丸説明員 お答えいたします。日本鉱業協会から自由党に対しまする寄付が四百万円ございます。
○勝間田委員 私は決してこれが合法、非合法という問題はとやかく言いませんが、いずれにしろ、二十三億も返すという政策を行う一面において、千七百万円という金が政党献金される。こういう問題は、私は今後の政治を行つて行く上においては、重大な研究問題だと考えるのであります。私はその意味におきまして、副総理からこの際こういう問題をほんとうに改善して行く考え方があるかどうか、この点をひとつお尋ねしてみたいと思います。
○緒方国務大臣 お答えをいたします。政治の純潔を期することは、どこまでも努力をいたしたいと思います。
○勝間田委員 終ります。
○太田委員長 稻村君の御質問は明日に継続することといたします。本日はこの程度にいたし、次会は明四日午前十時より開会いたします。
 これにて散会いたします。
    午後四時三十三分散会