第016回国会 本会議 第10号
昭和二十八年六月十九日(金曜日)
 議事日程 第十号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前回の続)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後一時四十一分開議
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。田中久雄君。
    〔田中久雄君登壇〕
○田中久雄君 私は、改進党を代表いたしまして、主として文教問題を中心に、内政問題について、施政方針に対する質問をいたさんとするものであります。
 第十五国会劈頭におきまして、吉田内閣総理大臣は、占領政治の行き過ぎを是正するということを強調せられました。この点は、私の大いに期待するところであります。今回の施政方針演説においては、あらためてこの言葉はありませんでしたけれども、吉田内閣の性格と責任より見まして、当然にこの考えは継続せられておるものと存ずるのであります。しかるに、教育関係としてはいかなる占領政策行き過ぎの是正が行われたか、またいかなる是正を行わんとするのであるか、この点に関しまして、以下総理大臣の御信念をお伺いいたしたいのであります。
 前の国会におきまして大問題となりましたのは義務教育学校職員法でありましたが、政府が同法に求めておりましたものは、その表看板である義務教育費の全額国庫負担ではなく、教職員の政治活動を禁止するというところをねらつておつたのでありまして、同案は、その他においては格別に見るべきものがなかつたことは、すでに御承知の通りであります。また、昨年八月の抜打ち解散の結果は、全国市町村に地方教育委員会が義務としていかなる小さい村にも設置せられることとなりまして、十一月一日よりこれが発足を見ております。この委員会制度は、教育の民主化という点におきましては、自由党的考えよりすれば非常に飛躍した理想的政策の断行であると申すべきでありますけれども、その実、これに必要なる経費は六十億を要するにかかわらず、政府はわずかにその三分の一に当る二十億を支出しておるのでありまして、今や全国の市町村当局と地方教育委員会との間には非常な摩擦を生じまして、まさに平地に波瀾を巻き起しておるのが、この地方教育委員会の問題であります。(拍手)看板に掲げますところの教育の地方的民主化よりも、実はこれによつて教職員の選挙活動を監視せしめるの底意に出たものであることは、歴然たる事実であります。(拍手)もしも吉田首相にして、教職員の政治活動がこの二つだけをもつて押え得るとお考えになつておるのならば、これはいたずらに国費を濫費して、その実態を見ざるもはなはだしいと申さなければなりません。かくのごときは、よつて来る根源をきわめずに、その現象に惑わされておるものでありまして、本質を考えないで影を追うておるものと言うべきで、施策のきわめて拙劣なる処置と申さなければなりません。
 現今、わが国教育の方向は、占領下に制定せられました教育基本法、学校教育法、教育委員会法の三法に基いて行われておることは当然であります。しこうして、この三法におきましては、文部大臣は、いかなる学校をも、また教員をも監督し、もしくは指導することを許していないのであります。単に文部大臣は、学校や教職員に対しましては勧告と助言をすることのみが許されておるのであります。文部大臣が国民と直接のつながりを持たなかつた旧憲法のもとにおきましては、一応もつともなことでありますけれども、新憲法は議院内閣制をとり、国民の総意による国会の指名に基いてできた政府の一員である文部大臣の権限が、わずかに勧告と助言の域を出ることができないということは、最も明らかに占領政治の行き過ぎなりとお考えになりませんか。およそ、この三法は、日本の軍国主義教育体制を破壊し、さらに進んで民主化の名に隠れて日本を弱体化し、もつて分裂と解体を目的とした初期占領政策の現われであるとさえ言われておるのであります。日教組の左翼偏向を是正するために、義務教育学校職員法と地方教育委員会をもつてこれを縛り上げ、しかも文部大臣は形式的な身分任免権を持つままにしておいてこれで能事終れりとするがごときは、本末を転倒したものと言わなければなりません。
 本来、直接教職に当る全国教職員の九九・九%は穏健中正な者なのであります。これが指導監督のよろしきを得ますならば、決して憂慮すべき何ものもないはずのものであります。しかるに、文部当局が直接何らの指導監督もできないままにしておいて、いたずらに教職員の暗躍を黙認し、これが本部より流されて来る、左派の社会党をも敵としておるフアツシヨ勢力、(「黙つて聞いているのか」「何言つているのだ」と呼ぶ者あり)左派社会党を乗り越えて、その左へ行つて社会党を敵としておる勢力、この極左分子の流す赤い熱線を無条件かつ無批判にのまされておる末端の教職員は、その本質のいかんにかかわらず、この指令に従わざるを得なかつたことは、やむを得ないことと存ずるのであります。総理大臣は、教職員の極左偏向を責める前に、文部大臣の責任と権限に関し、この教育三法を改正するお考えがありやいなや。もしこの教育三法を改正する意思がないならば、いかなる構想と方針に基いて文教の刷新をおはかりになる考えであるのか。日教組の極左指導を防ぎ、日教組の共産党指導を防ぎ、いかにして穏健公正なる九九・九%の教職員をお守りになるか。具体策があれば、お示しを願いたいのであります。(拍手)これ私が総理大臣にお伺いする質問の第一点であります。
 さらにまた、かくのごとき点から申しますならば、義務教育学校職員法のごときは、その根元を改めることによつて、もはや必要のないものとなりましよう。しかもなお、適当な機会にこの義務教育学校職員法が再び提案せられるのではないかということが、しばしば教育関係者の疑心暗鬼を生んでおるという事実であります。政府は、この際、義務教育学校職員法は将来再び提案しないということを声明せられ、無用な不安を取除かれたいと考えますが、総理大臣のお考えはいかがでありますか。また、地方教育委員会に対しても、かかる観点よりいたしますならば、義務設置をやめて、よろしく任意設置に改められるのが当然と考えますが、この両案に対しまする総理大臣の御所見をお伺いいたすのであります。これ私が吉田首相にお尋ねする第二の点であります。
 吉田内閣は、いたずらに教員の政治活動を抑圧することに急であつて、文教の根本を改めることに何らの考慮が払われておりません。何らの努力の跡も見えないのであります。改むべき教育制度や教育内容や教育施設に何らの努力をなしていないということは、日本の文教の大きな問題であります。教育の最前線において日々学童の教育に当つている教職員が、政府施策の貧困に絶望し、教職員組合としての本来のあり方を逸脱して、遂に極左をも含めた指令にも、やむを得ずこれに屈するに至りましたことは、多年にわたる吉田内閣の文教政策の貧困と怠慢であると言わなければなりません。(拍手)
 以下、私は、わが国教育の制度、内容、施設のうち、すみやかに対策を必要とする数点に関し、文部大臣及び大蔵大臣、農林大臣、人事院総裁のそれぞれの御答弁を求めたいのであります。
 まず第一にお伺いいたしたいことは、全国の義務教育学校並びに高等学校の校舎は、戦時戦後を通じまして、実に二十年間荒廃にまかされております。いわゆる老朽校舎は、五十年以上のもので五十万坪、五十年以下をも含めますと百八十万坪になんなんといたしておるのであります。しかも、そのうち二十万坪は、危険校舎として使用禁止の現状にあります。さらに、積雪寒冷地帯の学童は、屋内体操場の設備がないために、一年のうち、多くは半分、少くとも三分の一は体操ができません。従つて、成長盛りの学童にとりまして、健康上憂うべき状態に置かれておるのであります。本年度予算におきましては、前者は十二億、後者は五億を計上せられておりますが、二十年間放置せられました学校施設に対しては、あまりにも少額に過ぎるのであります。少くとも前者には三十億前後、後者には十億ぐらいの補助を継続して与えることが必要であります。地方財政の窮迫せる今日、地方の独力をもつてしては、とうていまかない得ないことは当然でありますので、施設の改善に対し、起債のわくを拡大する、こういうことに対して、文部大臣、大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
 第二は、学校給食の問題であります。学童の体位向上、偏食防止、衛生、並びに自立の精神の涵養、及び童心に貧富の懸隔を及ぼさないという配慮等より、今や学校給食は最も価値あるものと言わなければなりません。アメカが占領下になしました幾多の文教諸施策の中で、このことのみが唯一の、最もよい置きみやげであつたとさえ言われております。世界各国は、学童に対しまして、今や競つて学校給食を拡大しつつあります。わが国の現状においては、せつかく全国父兄の努力によつて給食の施設が完備しておるのであります。しかも、これを継続するだめには父兄の負担が相当額に上る結果、今や学校給食は継続するか放棄するかの岐路に立つておる現状であります。しかも、政府補助金といたしましては、文部省所管には一文もないのでありまして、農林省の食生活改善費から、わずかに年額十六億余りを補助せられておる実情であります。あるいは、政府におかれましては、財源難を理由に、この増額は困難であると言われるかと思いますが、私はここに非常に大きな財源を提供いたしたい。
 大蔵大臣は、先日の御演説におきまして、米の輸入を減らして、小麦にかえて、小麦を増加する、こういうことを仰せられております。まことにありがたい考えであります。二十八年度の輸入食糧の予定数量について見ますと、米にかうるに小麦をもつていたしますると、給食財源などは問題ではない。文教施設全般にわたつて使つても金が余つて来る。改善する経費の一切は簡単に出るのであります。すなわち、外米百万トンは八百二十八億円であり、小麦百五十万トンが五百七億七千余万円であります。この外米を半分だけ小麦にかえますならば、すなわち外米は五十万トンで四百十四億円、小麦は二百万トンで六百七十六億八千万円になるのでありまして、その差額二百四十四億円が浮び上るのであります。どうぞ政府におかれましては、勇気をもつて米を半減し、これを小麦の輸入とし、その差額の半分でも、せめて三分の一でもよろしい、どうぞ学校給食の完全化、老朽校舎の施設改善に充てられたいのであります。これに対する文部大臣、農林大臣、大蔵大臣の御所見はいががでありますか。これが私の第二の質問点であります。
 次に第三に、教職員の給与体系の是正についてお尋ねをいたします。現行の教職員の給与体系は、きわめて不合理、不公平である。大学教授及び高校教員の待遇を是正することは、教育政策上の急務であります。実態調査によりますると、旧師範学校卒業の義務教育学校の教員に比較して、大学、高等学校教員はきわめて不公平な状態に置かれております。かかる給与の悪平等は、占領政策の行き過ぎであつて、健全なる教育の発展のために、すみやかなる改正をいたさなければなりません。国家公務員法第二十九条、第六十四条と、教育職員免許法から見ましても、資格、職務内容の相違が裏づけられており、大学、高等学校、義務教育学校の三本建給与体系とすべきは、もはや当然と言わなければなりません。諸外国の教職員の給与の実態もまた、ほとんどすべてが三本建体系となつております。私ども改進党におきましては、この三本建の方針に一決いたしております。政府は、これに対しいかなるお考えを持つておられるのであるか、文部大臣及び人事院総裁の御所見を伺いたいのであります。
 第四に、教科内容について文部大臣にお伺いをいたします。六・三制実施によりまして、一応学校校舎の建築はなされましたが、現在の学校教育には魂が入つておりません。これまた占領政策の行き過ぎの一つであると思われます。すなわち、教科内容において、社会という認識は相当深められましたが、占領後の教育には、国に対する観念が完全に失われてしまつたのであります。(拍手)私の申します国とは、戦時中の国家主義であるとか、軍国主義的国家の観念でないことはもちろんであります。アメリカにも、ソ連にも、中央にも、国としての考えはあります。現在のわが国の教育には、国に対する教育が全然行われておりません。明らかに占領政策の行き過ぎの一つであると言わなければなりません。(拍手)先般来、愛国心に訴えてなどということが、この演壇でも政府当局から言われましたが、国の観念のないものに、どこに愛国心が湧いで来るか。今や、日本では、独立心のない恐るべき国民をつくる教育が日々行われておるのであります。(拍手)文部大臣はこれに対していかにお考えであるか。これ私の質問せんとする第四点であります。
 第五は、教科書の問題であります。現在の教科書の制度は、経済的に非常に父兄の負担を多くして苦しめております。一方、学童の学力水準には非常な違いをもたらしております。問題は、教科書の内容が民主的に検討してきめられるかどうかが望ましいことなのでありまして、出版会社が三十も五十もあるということが、民主的になつておるということではないのであります。(拍手)父兄の負担を軽からしめるとともに、その内容を民主的につくつて、そうしてここに学童の教育の均等化を考える、こういうことは、もはや当然に、かつすみやかに行わなければならぬ問題であると考えます。義務教育について国定教科書制をとり、父兄の負担の軽減と学力の均一化をはかることについて、文部大臣はいかにお考えになつておるのでありますか。これ私のお尋ねせんとする第五点であります。
 次に、青少年の社会教育につきまして、戦後何らの処置が講ぜられておりません。思慮の未熟なる青少年が、激情のままに罪を犯しまして、後悔をしておる者は数限りなくございます。適切な指導を怠つた国家の責任は大なるものと言わなければなりません。全国一千数百万に及びます青年に希望と発奮心を起さしめ、有為の国民たらしめるために、一体いかなる社会教育を施さんとせられるのでありますか、具体的に御案をお伺いいたしたいのであります。
 第七には、戦時中、学校校舎並びに教育の施設が軍の利用に供せられましたが、戦争後は、引続き占領軍にこれが接収せられました。占領軍がようやく駐留軍とかわつたら、今度は保安隊が使用し始めた。学校教育は、かくのごとく日本の軍閥政治にしいたげられ、占領軍にしいたげられ、今や保安隊にしいたげられて来ておることについて、特に私は木村国務大臣の御考慮を煩わしたい。どうぞ学校施設、教育施設は本然の姿に返されたいのであります。文部大臣は、全国で一体幾つの学校が現在保安隊に利用せられているかということもあわせて御報告を願うと同時に、この際教育施設に対しては、すみやかに本然の姿として学校にお返しを願いたいと思うのであります。(拍手)
 以上は、教育施設と内容の改善、これに対しますところの私の考え方でありますが、こういうことが完全に行われて行きますということは、やがては全国六十万の教職員諸君が、その職責に対して失われたる希望をとりもどすところのよすがともなり、自主的、自立的に、学校教職員としての良識によつて、教員組合が当然にあるべき姿の組合に立ち返り、また教育三法に示された教職員の政治的中立性はおのずかち保持せられて来るだろうということを、私は深く信じて疑わないのであります。(拍手)現に、数日前宇治山田市で行われました日教組の全国大会におきましては、ソ連につながるといわれております一部の極左分子と、組合の自立をはからんとする新幹部との間に猛烈なる激突が演ぜられ、ソ連につながるといわれるこの一連の諸君が日教組の執行部より排除せられたという新しい事実があるのであります。総理大臣は、この大きな事実を御存じであるか。大達文部大臣は、この真相を御存じであるか。今にして行き過ぎの教育三法の改正をはかり、教育施設の改善に努力して、全国教職員の諸君が喜んでその職場に勤められるようにしてやらない限り、この指導権は再び極左分子に奪取されないとだれが保証することができるでありましようか。(拍手)
 自由党内閣は、教育行政の根本対策を怠り、いたずらに末梢の現象をとらえて、一つには教職員を国家公務員として政治活動を禁止し、二つには地方教育委員会によつてその政治活動を監視せしめ、教育委員会をして自由党の番犬たらしめんとしているがごときは、教育に対する冒涜であり、怠慢なりと申すべきであります。(拍手)政府は、教育三法改正の意思があるかどうか、さらに義務教育学校職員法は再び提案をしないようにしたのかどうか、あるいは万一将来提案するならば、そういう考えにあるのかどうか、地方教育委員会を任意設置制にするお考えはないのどうか、この三点に対しては、どうぞぜひ吉田総理大臣からお伺いをいたしたい。その他のことにつきましては、文部、大蔵両大臣及び人事院総裁よりの、それぞれ責任ある御回答によりまして、全国の教職員並びに父兄をして文教に対して希望と光明を持たすように、どうぞこの演壇を通じて御発言を願いたいと思うのであります。
 引続きまして、中小企業の問題について質問をいたしたいと存じます。吉田内閣の長き政治のもとにおいて、わが国の大産業の生産は増加し、特需の収入は増しまして、料理屋は復興し、自動車は氾濫し、大きなビルは次々と建つて、まさに再建はきわめて順調に進んでいるように見えますけれども、ただいま申しました教育の世界と、これから申し上げんとしまする中小企業は、何らの復興を見ていないのであります。吉田内閣は、中小企業の実態に対する認識がきわめて乏しいか、あるいは誤つた認識を持つておられるのではないかと思うのであります。
 わが国の農林漁業を除きます全産業の事業所数は三百十九万八千であります。そのうちの、従業員二百名以下の、いわゆる中小企業の事業所の数は、実に三百十九万四千、すなわち総数の九九・八%を占めているのが、二百名以下の事業所を持つておりますところの、この中小企業に属するものであります。全産業の従業員数はどうであるかと申しますと、農林漁業を除いたこの従業員数は一千六百三十一万人でありまして、このうち、中小企業の従業員数は一千三百三十万でありまして、実に八八%を占めているのであります。吉田内閣の中小企業対策の貧困なるを見て、私は、吉田総理大臣が、この重大なる事実をあるいは御存じないのではないかと思うのであります。もとより、大資本によつて生産せられますところの富の量は多大なものであります。けれども、これを事業所の数や従業員の数より見ますときは、中小企業に対する大企業は、まさに一握りの感を深くするものであります。吉田総理大臣は、この事実を御存じであるか。
 これら全産業の圧倒的多数を占める中小企業者が、今日いかにあわれなる姿のままに放置せられているかという事実を具体的に申し上げますならば、三百十九万四千の中小企業者のうちで、辛うじて税金を納めている者は、わずかにその半分の百五十万にすぎません。残りの半数の百五十万は、税金の対象になつていない零細者なのであります。この税金を納めでおる百五十万の人々も、一戸当りの平均年額所得はわずかに三十万円にすぎません。しかも、彼らは、健康保険や厚生施設、労災保険等の社会保障制度の恩恵に何ら浴することができていないのであります。ために、生活の安定度も、また実質所得も、大産業労働者よりもはるかに下に沈淪しているのが今日中小企業者の実態であります。
 さらに、本年度の政府財政投資を見ますならば、総額二千八百三十三億円のうち大産業に流れるものは一千三百余億円に達しておりまして、この九九・八%の従業員を擁する中小企業に注がれるものは、わずかに三百六十億でございます。これが吉田内閣の多年にわたる中小企業対策の全貌であります。もつとも、中小企業は首くくれと言うなら、これまた別問題でありますが、幸いに池田蔵相なき現内閣に私が期待をいたしますものは、どうぞこの事実をしつかりとお考えになつて、中小企業対策に対して本腰を入れていただきたいということであります。内閣総理大臣にそのお考えがあるかどうか、これが私のお尋ねをする第一点であります。
 さらに、次に中小企業を窮迫に追い込んだものは何であるかと申しますと、言うまでもなく重税と金融であります。たとえば金融について申しますならば、一例をあげますと、終戦後、ことにここ三、四年の問に、株主相互金融という新しい形態の金融機関が非常に発達して参りました。この種の会社は、本店支店を合せて営業所の数は二万を越え、これを利用している者は実に三百万に及んでいます。多くは一つの会社で十数万の加入者を持つており、そして、この会社の貸付総額は一千億に及んでおると言われるのであります。しかも、これはわずかに三、四年間にできた新しい金融形態である。これらは、もとより政府よりは何らの保護助成をももらつておらぬ金融機関であります。のみならず、この本社なるものは、市中銀行の一支店にも及ばない貧弱なる木造建築をもつてやつておるのが大部分であります。その責任者は、社会的に名の通つた有名人ではない。しかも、金利が割高だろうことも想像せられまして、経営者はまじめな者ばかりとも言えないことは当然であります。
 しかも、これがわずか三、四年の間に洪水のごとく大発展を遂げた原因はどこにあるかという問題であります。建物が貧弱で、気のきいた人がやつていない。金利が高い。しかもこれが、あつという間に二万も事業所を持つようになつて来た。これは一体どこに原因があるか。これは、金融に追い詰められた零細企業者が、破滅の寸前に必死に生きようとする姿がここに現われて来ておるという事実を、総理大臣は御承知願いたいのであります。政府の施策がいかに貧困であり、かいしようのない者は首をつつて死ねという政治が、いかに中小企業者を困らしておるかということ、何ら信用を置けないかもしれない、危険のあるものにさえもすがりついて行く零細業者の実態を、総理大臣はよくお考えを願いたいのであります。(拍手)政府の中小企業施策も役に立たない、市中銀行も相手にしてくれない、こういう人々にとつては、この金融機関が唯一無二の命の親であり、これが零細業者にとつては救世主のごとくに見えることは、これはやむを得ぬことである。これをしも大資本に奉仕し続けた自由党政府の失政と言わずして何を失政と言うことができるか。(拍手)
 政府は、商工中金であるとか、国民金融公庫をもつて中小企業対策成れりと、鳴りもの入りで宣伝をしておられますが、今中小企業金融の実態を申し上げますならば、市中銀行が中小企業に貸しておる――もつとも、これは少くとも中企業でありますが、その金額が八千億円、相互銀行、これが二千億円、信用金庫、これが一千五百億円、合せまして一兆一千五百億円が中小金融として動いておる金でありますが、これに対する政府の助成施設である商工中金、これはわずかに三百五十億、国民金融公庫、これが二百億円、合せて五百五十億円にすぎません。今回新設を見る中小企業公庫も、その総額は百二十億を出でないのであります。どこに中小企業に対するほんとうの対策と言えるものがありますか。二階から目薬という言葉があるけれども、あたたかもエンパイア・ビルの屋上から一滴の目薬を落したようなものである、落ちて来ないうちに空気になつてしまう。こういう程度をもつて中小企業対策成れりとすることは、根本的にお考えを改めていただきたいと思うのであります。(拍手)私は、政府に重大なる反省を促すとともに、特に大蔵大臣にお伺いいたしますが、中小企業金融に対して、今まで御発表になつたほかに、何かお考えを持つておいでになるかどうか、もしあるならば、具体的に御説明を願いたいと存じます。
 さらに、税金について申し上げますが、いかに中小企業者が重税に苦しんておるか、御存じではないかもしれませんが、政府諸公に申し上げますと、最近一年間における繊維、雑貨の全国小売売上げ金額は総額二千三百五十億円でありますが、その繊維、雑貨の総売上げのうちの六割は百貨店が売つておる。六割に当るところの一千四百十億というものは百貨店の売上げである。あとは、全国の小売業者の売上げがわずかに四割であります。もしここに生産業者の売上げ、卸売業者の売上げに至れば、大資本の売上高の比重がますます増大することは、これは当然であります。これに対して徴税金額を見ますると、政府の二十八年度予算においても、中小企業者の納める所得税の見込額は七百五十三億であるのに対して、法人税――大資本法人の納めるこの法人税は、わずかにその二倍強にすぎない一千七百億にとどまつておるのであります。この事実は、大資本に比較して、いかに中小企業が重税にしいたげられておるかを示すものであります。政府は、この事実を見ても、明らかに不均衡と苛酷に過ぎる重税であるということをお考えになると思います。大蔵、通産両大臣の御答弁をお願いする次第であります。
 わが国のごとく、領土は狭く、天然の資源に恵まれず、人口は多く、国民所得はアメリカの十八分の一というような国においては、中小企業が没落し、産業の組織が大工業となつて、資本家と労働者に二分せられるような場合においては、労資の争いが激化し、ただちに革命を見ることは、何人も否定することのできないところであります。今日、わが国において、激烈なる共産革命の危機を防いでおりますものは、実にこの重要な役割を占めている中小企業にありと申さなければなりません。(拍手)わが国独特の産業組織と言われる中小企業といえども、経済の原則を無視しては、生きることは許されないのであります。設備の改善も、品質の改良も、重税と金融に追い詰められたる業者にとつては、何ら手の施しようがないのでありまして、中小企業こそは、今や破滅没落の寸前にあると申さなければなりません。ことに、朝鮮休戦を境といたしましての特需の激減、輸出の不振は、下請工業を主とするこれら業者にとつて、あたかも爆撃機に見舞われておる戦争末期の市民を思わすようなものでありまして、実に心さびしい限りであります。中小企業の壊滅はすなわち共産革命の近道であるということを、どうぞ吉田総理大臣は御記憶を願いたい。現内閣としては、これに対して、単なるちやらんぽらんの出まかせでなしに、本気で、いかなる策を持つておるか、どうぞこの機会に全国民の前に御発表願いたいのであります。(拍手)
 以上、文教問題、中小企業問題につきまして、吉田総理大臣並びに関係各大臣の御答弁を求めてやみません。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 第一文教問題についてお答えをいたします。占領政治の当時においては、日本に対する占領軍の認識が不十分であり、また誤解もあつたために、あたかも日本が平和を破る好戦国である、またその好戦国として、中央集権、国家主義の考えのもとに、すべての施設、すべての制度ができ上つておるという考えから、文教に対しても、中央集権を破壊する、文部大臣の権限はなるべく縮小するというような建前から、教育基本法その他ができ上つたのであります。これに対して、その誤りを正し、その誤解を正して、日本の実情について、また日本の教育の実際について、だんだん説明をいたしました結果、占領政策の行き過ぎ――文教に関しても同様でありますが、その行き過ぎを是正するために、互いに日本政府とともに行き過ぎ是正を考えようということになつて、何と申しますか忘れましたけれども、行政改革の委員会をこしらえて、朝鮮の学識経験者を集めて調査するに至つたのであります。その結果、十分占領軍との間に話ができ上らない間に、しばしば総司令官等がかわつたために、占領中に十分効果を見ることができませんでしたが、独立後の今日において、占領軍撤去後の今日において、この文教政策については、政府としては深甚なる注意を払つて、お話のような教育基本法その他については、十分検討を加えて、改正いたさんという考えを持つております。詳細は文部大臣からお答えをいたします。
 また、中小企業の問題について、中小企業の重要なことは、私の施政演説の中にも述べておいた通りであります。従つて、予算においても、金融措置あるいはまた行政措置については相当考慮をめぐらしておるつもりであります。できるだけの考慮をめぐらして、中小企業の発達に援助しようという政府の考え方は、予算案に十分盛り込んであるつもりであります。詳細については通産大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
○国務大臣(大達茂雄君) ただいま総理大臣のお答えになりました点で、なお一、二私から補足させていだだきます。
 初めに、教育職員法、これを出すのか出さないのかという意味の御質問でありましたが、教育職員法につきましては、いろいろ全面的に検討を必要と考えますので、せつかく研究して参りた、かように存じております。
 それから、地方教育委員会に関する委員会法、この地方教育委員会の委員を任意設置にするか今のままでおくか、かようなお尋ねでありました。申し上げるまでもなく、地方教育委員会法は、教育の地方分権、教育の民主化という立場でできた法律でありまして、しかも実施後あまり日がたつておりません。今後実際についてその結果を見まして――今ただちに予測がつきませんので、その結果を見定めた上できめたいと思います。ただいまのところでは、任意設置にする考えはございません。
 それから、私に対するお尋ねでありますが、第一に公立学校施設の整備、これは御承知の通り、戦後の各種の困難と財政窮乏のうちにもかかわらず、鋭意努力が重ねられたのでありますが、今日もちろん非常に不十分であります。昭和二十八年度の公立文教施設の補助といたしましては、約四十五億円が予算に計上してありますが、これは、ただいまお話のありました老朽危険校舎の改築費であるとか、あるいは屋内運動場の整備費その他の補助費であります。もちろん不完全でありますが、今後予算の増額、急速な施設の改善に努力をして参りたいと思います。
 それから第二は、学校給食のお尋ねであります。従来の学校給食費に比べまして、今日では父兄の負担額が若干高くなつております。これはまことに遺憾でありますが、現在の学校給食の補助は、原麦代の半額補助、それから脱脂粉乳の買入れ資金に対する利子補給並びに輸入税の免税措置、かような立て方になつておりまして、必要な経費として、農林省所管において十六億円が計上せられております。これで前年度並の給食は実施できるのでありますが、今後できる限り父兄の負担を軽減するように努めて参りたいと存じております。
 それから次には、現行の教員の給与の問題であります。給与の決定の基準は妥当を欠く点があると存じております。すなわち、修学年数を経験年数と同一あるいはそれ以下に見ております。また、教員の学歴、職能的要素と民間経歴というようなものを相互に合理的に換算しておらぬ、そういう妥当を欠く点がありまして、給与決定の結果の上にもはなはだしい不均衡を生じております。これらの点につきまして是正をいたしまするとともに、実情に即して、高等学校教員の給与制度に必要なる改訂を加えたいと存じております。
 次には、教育内容についてのお尋ねであります。民族的の自覚や、あるいは愛国心を喚起することが必要であることはもちろんであります。現在の生徒、児童が、歴史、地理についての知識に乏しい、こういうことを世間でとかく言つておるのでありますが、これはもちろん教師の指導力が欠けておる点もありましよう。しかしながら、今後におきまして、教科内容につきましては、とくと十分な検討を加えまして、小学校、中学校、高等学校を通じて指導系統に一貫性を持たせて、歴史、地理に基本的、系統的知識に欠けることのないようにいたしたい、かように存じております。
 その次には、現行の教科書の検定制度についてのお尋ねであります。ただいまの検定制度の結果、不正な競争が行われておる、あるいはまた教科書の種類が多過ぎる、あるいはまた定価が高過ぎる、かような非難があるのでありますが、これにつきましては、不正競争を防止するの措置を講じております。また検定の上におきまして、定価の点をも検定の内容に含めて、今日ではあまり高い教科書が出ないように配慮しておるのであります。ただ、国定教科書をつくるつもりがあるか、こういうお尋ねでありましたが、ただいまのところでは国定教科書をつくるつもりはありません。ただ、需要が非常に少く、また民間でできないところの特殊な教科書、たとえば盲聾唖学校の教科書であるとか、あるいはまた特殊な職業教育に必要な教科書、かようなものにつきましては国定教科書をつくるつもりであります。
 それから最後に、青少年の社会教育の問題であります。青少年の社会教育はきわめて重大でありますが、遺憾ながら、ほとんどそのまま放置してあるのであります。これらの勤労青少年に対しまして、青年学級が開設せられておるものが約一万であります。これらの青年学級というものを普及させるとともに、その開設、運営を援助するために、特別な立法措置を講じて参りたいと存じております。なお、全国青少年団体の健全な育成をはかることも必要でありますが、これには、公民館であるとか、その他社会教育施設の整備充実、あるいは視聴覚教育の普及その他必要な方策を講じて、青少年教育の振興をはかつて参りたいと存じております。
 次に、戦後学校施設が他の施設に利用せられておる、これを早く学校施設として元へもどしたらどうかというお尋ねでありますが、まことにごもつともであります。ここに数字がありますが、本年の五号二十日までに接収施設のうちで解除になりましたものが、学校が二十七、社会教育施設が十四であります。まだ未解除のままで残つておりますものは、学校が二十一、社会教育施設が八つであります。保安庁において使用しておりますものは、商船大学の校舎に予定せられておるものであると思います。これらにつきましては、個々の具体的の問題として、なるべくすみやかに接収の解除せられるように努力して参りたいと存じます。
 最後に、私は、全国の教職員の大部分は穏健な考え方を持つておるものと確信しておるのであります。しかしながら、日本教職員組合が少数過激な人人によつて指導せられ、ややもすると行き過ぎがあるということをまことに遺憾に存じております。私は、今後におきましても、教育の中立性を堅持するために、あらゆる努力と配慮とをいたしたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君) 危険校舎等の予算措置についてのお話でありましたが、本年特に補助金を十二億円計上いたしましたほかに、起債につきましても、前年度よりさらに三十億円増加いたしまして、七十億円を予定して、危険校舎の改築の促進をはかることにいたした次第であります。
 さらに積雪寒冷湿潤地帯の屋外体操揚の問題についてのお尋ねでありましたが、これも前年度より一億円の予算増額をいたしております。
 さらに学童給食についての問題でありますが、これは文部大臣からお答えがありましたが、末段について申し上げますると、輸入米を小麦に切りかえて、これを財源とすべしとの御意見に対しましては、政府といたしましては、粉食の奨励は学童給食に見るごとく非常に努めておるのでありますけれども、今日ただちに現在の米の配給量の切下げを行つて、御説のごとくに小麦を米に切りかえるかどうかということになりますと、これは実行困難ではないかと実は考えるのでございます。
 なお、政府の二十八年度予算における助成財政投融資が中小企業に薄いではないかというお尋ねに対しましては、これは、ご承知のごとく、二十八年度の予算におきまして、特に中小企業の最大問題である金融面に対しまして、積極的施策としては中小企業金融公庫を新たにつくることといたしまして、百億円の新規財政資金を投ずることといたしました。また国民金融公庫に対しましても、八十億円の新規財政投資を行つて、小規模企業に対する貸付財源を充実しております。もとより、政府といたしましては、電力、海運、石炭、鉄鋼等の重要産業の拡充及び合理化の急務でありますることにかんがみまして、開発銀行、電源開発会社などに対する財政投融資などについてもこれを強化いたしておりますが、これは何ら大企業に対する奉仕とか偏重とかいうごときものでないと存じます。
 中小企業に対する金融対策についてのお尋ねでございましたが、この金融難を打開する策と致しまして、ただいま申し上げましたように、新たに中小企業金融公庫をつくります。国民金融公庫の資金量の確保とか、日本開発銀行による設備資金の融通とか、あるいはまた資金運用部資金による商工中金債券の引受、あるいは国庫余裕金の中小金融諸機関への預託等いろいろやつておりまするし、このほかにも、信用保証協会の法制化とか、あるいは信用保険制度の充実等をいたしております。今後の中小企業者の金融難の打開の具体策といたしましては、財政資金の確保とその充実をはかろうと考えておるのであります。このためには、国民金融公庫に対する資金量を増大いたしまするほかに、ただいま申し上げましたいわゆる中小企業金融公庫を、政府出資百億円の政府資金をもつていたします。このほかに、なお相当量の預託等をいたします。これらのことをやりまするほかに、たとえばこの信用保険制度につきましても、保険対象の拡張をいたしますとか、付保率の引上げをいたしますとか、あるいはまた信用保証協会を法制化いたしまして、その機能の発揮をはかる等のことをいたしまする所存でありまするし、さらに商工中金、相互銀行、信用金庫等の中小企業金融機関に対しまして、その育成強化は引続きはかつて参りたい所存であります。
 なお、いわゆるやみ金融についてのお尋ねもございましたが、貸金のみを業といたしまする貸金業者は、貸金業等の取締に関する法律による規制を受けておるものでございまして、その数は約一万ぐらいから届出があるところから見て、あるいは二方くらいまでに最近では達しておるのではないかと見ております、従来、この貸金業につきましての公正な運営を保障するために種々法的規制をなして来たところでありまするが、今後もざらに検査等を厳重に実施いたしまして、その結果、預かり金、金利違反等の事実が判明いたしましたならば、適当なる措置をとりたいと考えておるのであります。
 さらに、所得税、法人税等についての中小企業に対するお話がございましたが、御承知のごとく、これらの税金は、いずれも所得を課税対象としておるものでございまして、その売上高を必ずしも標準にしておるものではございません。従いまして、所得が売上高と比例するわけではございませんので、小売業者と百貨店の間の売上高が違うからといつて、それが課税の不公正な取扱いではないかと考えるのであります。昭和二十八年度予算におきましては、御承知のように、申告所得税は七百五十三億円、法人税は千七百一億円となつておりますが、これらの税収見込み額は、最近までの実績をもとといたしまして、経済の状況を考慮して見積つておるものでございまして、決して売上げのみをもつて税収見込額を立ておる次第ではございません。従いまして中小企業者の負担が重いとか軽いとかいうことは、これだけでは言えないと存じます。また滞納につきましても、現在差押えを行つておるものの大部分が中小企業者であるということは考えられぬのでございます。なお中小企業に対します租税負担の軽減につきましては、私どもの常に意を用いているところでございまして、今度の税制改正につきましても、特に少額所得者に対する負担軽減の措置がとられておるのでございます。
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
○国務大臣(岡野清豪君) 大体、お尋ねの点は、今大蔵大臣が申し上げた答弁に尽きておると思います。まず、お説の通りに、事業は従業員が多くて経営の基礎が弱く、そうして財界の波ごとに経営難に陥るということは、しごくごもつともでございます。また最近、内外の経済情勢がかわるにつれまして、非常に苦しみつつあるということも、私は認識しておるのでありまして、政府といたしましては、中小企業に対して非常に重要性を認め、そういう認識は持つている次第でございます。今後、われわれといたしましては、金融対策、組織化の対策、安定対策、合理化対策というものを中心にいたしまして、諸施策を実行して行きたいと存じております。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 田中君、もうこれでよろしゆうございますか。
 八百板正君。
    〔八百板正君登壇〕
○八百板正君 私は、日本社会党を代表して、吉田内閣総理大臣の施政方針演説、並びに小笠原大蔵、岡野経済審議庁長官の演説に関連して、それぞれ二、三の点について関係大臣に質問をいたすものであります。
 今日わが国の当面する問題は、こんなことをしていてほんとうに経済が立つかどうかという問題であり、軍備を置くか置かぬか、このままごまかしを続けて行けるのか、憲法の改正をするかしないか、アメリカの軍事援助MSAを受けるか、これはアメリカ隷属の道に深入りするのではないか、受けないで独立のくふうをするにはどうすればよいか、こういう切実な問題に対して、これと四つに組んで、精根を傾けてその苦難の道を開いて行く、それをわれわれは今どこからやつて行けばよいか、こういうことではないかと思うのであります。
 まず経済の面から見て参りますに、日本の経済が、朝鮮戦争以来三年にわたり、いわゆる特需にたよつて来た病的なものであつたこと、このために、自立経済確立のために払わなければならぬいろいろな努力が投げやりのまま今日に及び、日本経済の基礎が脆弱となり、貿易をしようにも、物が高くて国際的に競争力がないこと、それを急に今になつてあわて出して来たということ、一方、この国際競争力の弱さを、逆に国内消費者の負担で切り抜けようとして、たとえば一例を肥料工業に見るように、カルテル化の方向をとつて国内価格をつり上げ、そうして合理化の不始末を隠蔽して、国内農民の犠牲において輸出をやろうとして来たこと、こういう傾向を現に見るのであります。ところが、成り行きというものは恐ろしいものでありまして、一時的で不健全な需要と知りつつ、兵器生産等、朝鮮特需を追いまわしているうちに、いつの間にか、これを満たす産業や企業がふくらんで参りまして、今度は、今やこの産業の固定した設備は、一つの既成事実となつて、大手を振つて日本政治に物言いをつけ、その圧力を加えるに至つたということであります。
 また一方、特需は一面国際収支の赤字を一時的にせよ埋めて参つたがために、知らず知らず正常な財政経済の感覚が麻痺して、これでもいいんだというふうに思うようになりつつあるということであります。だから、このまま進めば朝鮮のようなことが長く続かぬ限り、遠からず壁に突き当ることは、わが国経済必至の運命であり、今いよいよこれを切り捨てるべきときにあたつて、今またMSA援助の問題が現われたというのであります。経済の良心的感覚の麻痺は、MSAをもつて埋め合せればいいのだというような気持になろうとしておるのであります。非常にあぶない。これは、ヒロポン患者が注射が切れるといけなくなるように、特需経済は絶えずヒロポンを要求するのであります。(拍手)過日、経団連防衛生産委員会なるものが、兵器生産のために四十九億の資金を要求し、政府と日銀に圧力をかけたということは、明らかなるその症状と言うべきであります。(拍手)
 しかるに、政府は、こ中毒患者から、やみの薬礼でもどつさりもらつたとでもいうのでありましようか、せがまれて今や医者としての良心を忘れ、出すべからざる処方箋を出して、MSAの注射をさせようとしておるのであります。健全なる財政と経済、その上に経済の自立、政治の独立を心から念ずる愛国の情あらば、朝鮮特需がとまらんとするこのときこそ、かつてドツジ氏と池田大蔵が竹馬の足を切つたように、勇断をもつてこのヒロポン患者の要請をしりぞくべきではないかと思います。(拍手)MSA援助を断つて、兵器産業を平和産業に転じ、経済の自立をはかるチヤンスだと思うのでありますが、総理大臣はそうは思わないのでございましようか。腹の中では再軍備のチヤンスだと考えておられるのでございましようか。(拍手)国民は心配しておるのでありますから、はつきりお答え願いたいと思うのであります。
 それから、MASを断る場合は問題はございませんが、もし受けるなら一大事であります。それは、条約とか協定とかの形をとり、あるいは伝えられる相互安全保障条約のような双務的なものとなるのであるかどうか。
 吉田内閣は、国民の過半数の支持を受けていないのであります。また国会でも、総理大臣指名の衆議院規則十八条によるところの投票の過半数を得ておりません。消極的に指名ざれた結果になつて生れた内閣であります。国会の正式の積極的信任に基く内閣とは認めがたいのでありますから、この点、仮政府のようなもので、憲法上の疑義もあろうかと思うのであります。だから、吉田個人は大物かもしれませんが、内閣そのものは月足らずであります。(拍手)このような内閣は、一国の運命を左右する条約の調印などを、これまでのようにかつてに調印して、事後に国会の承認を求めるなどというやり方は断じて許されないのであります。(拍手)ましてや、岡崎君のごときはきのうでもわかるように、舌足らずもはなはだしく、国を代表する外交の資格などありとは思われないのであります。わが党の安平君の質問に対して、新聞を見ろ、写真が出ているとは、一体何事でありますか。岡崎君こそ、新聞をよく読んではどうか。どの新聞も、岡崎外相は早くやめろやめろと毎日書いてあります。(拍手)岡崎君のごときは、日本の運命をすり減らす、動けば動くほど減るすりこぎ外交、すりこぎ大臣とでも申すべきでありましよう。(拍手)写真もよくごらんください。不信任案が出ます前に、とくと御反省あつてしかるべきだと思うのであります。
 憲法第六十一条及び第七十三条は、内閣の行う条約の締結は、原則として国会の承認を経て後批准書に署名することを定め、時宜により事前に批准書に調印が許されておるのであります。事後承認を求めると言うようなことは、例外として緊急事を想定したものであり、その際は、締結の際に条文の中に条件付で許されておるのであります。アメリカの大統領とは違います。日米通商条約でも同じ間違いを犯している。こうして国会の審議が尽されて、初めて国民の意想と輿論が反映し、国家百年の運命を誤らざるを期し得るのであります。このことに限つたわけではありません。今後は総じて総理はそういうふうに扱つて行くお考えがあられるかどうか、その見解を伺たいと思います。
 さらに財政経済演説について見まするに、いずれも特需依存の脱却を唱えておられまするが、問題は、その具体的な裏づけとなるべき予算や財政金融政策のどこにそれがあるかということであります。輸出は伸びない。とにかく、外貨不足は輸入減少の形となる。物は減る。ところが一方、財政の面ではインフレの要素ばかりであります。現に二十八年度予算では、一千九十八億の財政資金の散布超過となつておる。明らかな財政インフレであります。(拍手)物は減る。金はふえる。これでは必然に物価高となります。まず歳出規模を見ましても厖大なものでありまして、前回の不成立予算は九千六百五億円であつたのでありますが、今度の予算は九千六百八十二億円、七十八億ふえております。さらにつつ込んで見ますると、保安庁経費を百十億円、連合国財産補償費を九十六億円減らして、旅費、物件費など節約四十億円、合計二百四十六億円を削つてほかに使うというのであります。考えていただきたい。保安庁経費や連合国財産補償費を二百億も削除するとか節約するとかいうと、ちよつと聞えはよろしい。しかしながら、実際は、これは言つてみれば、削らない方がまだましとも言えるのであります。この金が削られて黙つているのでもよくおわかりになりますように、もともと使わない、いらない金を隠しておいたものであります。(拍手)大蔵省で予算をごまかす熟練工として長年飯を食つて参りましたところの池田勇人君が、たまたま自由党の政調会長になられましたので、いわば同じ穴のむじなとでも申しましようか、隠し金をひつぱり出してこれを使うというのでありまして、実質的には明らかなる財政の膨脹、放漫財政であります。このそしりは免れないのであります。四月、五月暫定、六月も七月も暫定、うつかりすると八月もまた暫定予算、半年は新規事業をしないで寝て暮らしたのでありますから、あとの半年の予算では、そんなにたくさんの金を使いようがないのであります。少くとも三、四割は天引して、ちようどつり合うのであります。それをふやしたのでありますから、言うことと、やつていることは逆である。それがみな不生産的な支出であります。
 また大蔵大臣は、きのうの答弁で、投融資の強化を輸出第一主義のきめ手のように自慢しておられるのであります。しかし、それがまた逆にインフレを呼んで、貿易を阻害する条件にもなる。何もかにも下半期に重なり合う。二重投資の問題も起る。それも特定のものに集まる。問題は、金さえ出せば貿易が伸びるというように考えておられることは、業界から惑わされておるのではないでしようか。投資効率の低下は防ぐことはできないのであります。これでは、物価の引下げ、輸出の増進、貿易の拡大などはとても及びもつかない。これで矛盾を感じないのであるか。財政経済の面で、どこに輸出が伸びる要因があるというのでありましようか。(拍手)小笠原殿には、御協力を願いたいと仰せられましても、手前ども御協力のいたしようもござらないのであります。これでも輸出をするのだと言えば、それはインフレによる実質賃金の切下げをやり、この低賃金による、コストの引下げをはかり、かくて労働者の犠牲で行くか、それとも広く国民の犠牲と負担で補給金をまた出すか、ほかに手はないのであります。そしてMSAにたよる。駐留軍に娘をささげては、そのドルを当てにする。やがてこの道は亡国の道、かくして屈辱と不合理に目ざめた日本の民族の立上りは反撃となつて現われる。これを押さえるに権力と弾圧が加えられる。これが吉田内閣の先行きだとすれば、暴力政治、フアシズムの発生は今日ここより発生すると申さなければなりません。(拍手)
 あるいはまた政府は言う、金融引締めによつてインフレを阻止し、企業合理化資金の確保をはかると。それはいかなる政府の権限において可能なのであるか。銀行法の改正、金融統制を行おうというのであるか、それとも、伝えられるがごとく銀行局長通牒や官民の協議会など、運用の妙味に期待しようというのでありましようか。およそ役人の懇意による運用の妙味ほど腐敗と危険を呼ぶものはないのであります。(拍手)財政金融一体の運用をやるところの法的根拠、その経済目立と輸出振興に果す役割について、その自信のほどを承りたいのであります。
 また、重点融資は大口金融を有利にするし、金利の引下げは金融機関のコスト高のために、弱小産業をますます圧迫いたします。中小企業の資金需要は、むしろ運転資金であります。試みに今日の金融の実情を見ますると、不渡り手形は空前のレコードを示し、その金融困難の状は目に余るものがあります。従来の銀行金融について、全国金融の融資残高のうち、中小企業がどれだけ借りておるかということを見ますると、中小企業は、件数では九六・二%と大きな比率を占めておりまするが、貸出し金額はわずかに三二・六%にすぎないのであります。これ貸出しがいかに大企業に集中しているかを示すものであります。また資金の吸上げの面を見ましても、地方資金を吸収して大企業に融資され、中小企業の預金が逆に大企業に使われておるということは、これまた統計によつて明らかなところであります。(拍手)政府は、ただいまも中小企業対策を述べられましたが、それは言葉だけであつて、実は困るように政策は仕組まれておるのであります。(拍手)また金融々々と言われまするけれども、金に困る赤字経済、その根本に対して対策が触れないではだめであります。赤字に金を入れば、またかえつて悪い結果も起つて来る。はたして中小企業がよくなると思つておるのであるかどうか、正直に良心ある見解を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 次に、経済自立の基礎政策についてお伺いいたしたいと思います。農業、食糧問題に重要性のあることは、政府も指摘いたした通りであります。食糧輸入の経過を見ますると、戦前、昭和十年にはわずかに七・七%にすぎなかつたのでありますが、最近どんどんふえて参りまして、試みに二十七年上期について見ても、実に三一・五%という比率となつております。二十七年の輸入食糧は三百四十万トン、この金は五億ドルに及ばんとしております。玄米換算にして約二千一百万石、日本のお金で千五百億円であります。国民の一日平均量からいうと、〇・七合の食糧を外国からの輸入食糧に仰いでおるというのが現状であります。政府は、消費の増加を補つてなお輸入量が年々横ばいの状態を示しておるのであるから、すでに食糧増産の実はあがつた、使つた金のかいがあつた証拠だと言われておるのでありまするが、途中で月切れする自由党政府でもそうでありまするならば、わが党がやれば、三倍くらいにはふえたろうと思うのであります。(拍手)いばるには両方とも早いのであります。
 鉱工業生産指数は、昭和九―一一年平均一〇〇といたしまして、現在、十八年一五四%になると発表されしまたが、農林漁業生産は、ちよつと高い水産の一三四を加えても、去年は平均一〇七という数字で、戦前の水準をやつと回復した程度であります。どれだけちんばになつておるかということは、これでもおわかりの通りであります。非常に遅れておるのであります。この遅れておるということは、農業そのものの持つ宿命的な事情によるもので、零細な日本農業では特に顕著であります。それは農民みずからの責めに帰すべきものではないのであります。従つて、当然に政治の責任において保護され、補われなければならないものであります。まずこの点の認識から違つて来ますると、農業問題、食糧問題はお話にならないのであります。その辺の認識を、農林大臣、わけても従来認識の足らなかつた大蔵大臣から、明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 日本は、終戦以来七年半で、約二十億ドルの援助をアメリカより受けたという。この金は、日本がこの七年に食り糧を外国から輸入した額とちようど同額であります。これからも年々五億ドルからの金が支払われる。こういう事情を考えて、なぜ思い切つて食糧増産の総合的、計画的なきめ手を今日打たないのであるか。(拍手)一番いけないことは、できないくぜに、二言目には米の自由販売というようなことに自由党がこだわることであります。現に麦の統制をはずして、あの半端な買入れ制をとつて、中間統制方式をとり、一年やつて見た結果の成績はどうでございましようか。去年はこの麦の補給金で八十億も使い、ことしはまた六十二億も使う。農民は、高く売るどころか安く売らされる。消費者は高いものを食わされて、消費者にも生産者にも何の足しにもならない。中間の加工業者がみなもうけてしまう。麦作は菜種にかわつて減つて行つた。食糧の増産では、米というものはなかなか急にはふやせないものでありますが、麦はやり方ではすぐにも倍にはできるものでありますから、この方に力を入れなければならないのであります。今すぐこの問題といたしまして、すなわち米価審議会の答申を尊重して、これに基いて、まず麦価を上げて消費者価格を上げぬという二重方式の決定をなすべきであります。
 米の価格も同様である。国際事情も米不足であります。消費者価格をすえ置いて、生産者価格を石一万円以上にする二重価格制度を主張するのでありますが、これを実行して行つてはどうか。金はいるのでありますが、やる気なら、やみの軍備をちよつと削れば、財政操作はわけはないのであります。(拍手)現に外米は一万一千円から一万四千万ぐらいになりまして、まずいものを買つておる。従来のように、政府が米価審議会の答申を無視して一方的決定を行うならば、米麦価の決定権については、今後はこれを政府より取上げて、国民代表の立場から直接国会の審議に付すべきものであると思いますが、どうか。同時に、この機会に価格支持政策を法制化してはどうか、政府の所見を承りたいのであります。
 また、急場の凍霜害、水害に対しては、農民が十分立ち上れるよう、予算的措置と法的措置を応急、恒久両面から講じてもらわなければならないのであります。長い間の農民収奪の政治の結果、小さな打撃でも倒れるまでに自己資本の蓄積を持ち得なかつた農民に対して、不可抗力の災害に対しては、その百パーセントの国家補償をすることは、政府の当然の義務であります。さきに紡績には原料購入や設備に財政金融の特段の保護を加え、石炭もまた同様であります。農業以外の大産業には、あるいは税制の保護を加え、資産評価、法人税等において、明らかに資本家のために資本の蓄積を公然とやつておるのであります。これからもやろうとしておる。凍霜害に対して五億ばかりの金で、一体済むと思うのであるか。凍霜害に対しては幾ら出すのであるか、水害に対しては幾ら出すのであるか、ここで明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次に、農地と林野調整について伺いたいのであります。最近、地主的農村支配が復活しつつあります。法を無視した地主の土地取上げが起つておる。やみ小作料の引上げが行われておる。農地法は空文になろうとしております。山林の解放はどうするのであるか。国土面積の六〇%の山を計画的に解放して山の高度利用をはからずして、日本の農業は成立することができないのであります。利己的な山地主に持たせておりまするから、木材の値上りでは木を切つて、治山治水の計画は立たない。大水が出る。災害も起る。自由党も太る。山林を含めた農地政草の徹底を今こそ考えるべきであります。(拍手)
 また目今、演習地、接収地など農地の取上げも多いのでありまするが、これには耕作農民の使用収益の権利を保障することを建前としたところの農地補償要綱を確立する必要があります。農林省では認めるが、調達庁では認めないというのではだめでありまして、法的効力のあるものとして、これを確定せられたいと思うのであります。そして、農民が奪われたる権利に対して、離作料、生活の保障を具体的に定めて、弱い者は投げつばなし、うるさい者にはよけいやるというようなことのないようにしなければならないと思うのであります。農林大臣の所信をただしたいと思うのであります。
 日本の農業は、世界有数の多肥栽培の農業であります。二十七年度について見ると、農家の九五・七%は、化学肥料を金を出して買つております。農民は金肥と呼んでおります。農家の現金支出では、肥料代が最も高い費目であります。稲では総現金支出の二〇%、小麦では二七%を占めておる。農業にこれほど深い関係のある肥料は、一体今日どうなつておるか。顧みますると、終戦後日本の肥料工業が壊滅にひとしいときにおいて、また食糧不足が、われわれの三度の食事を二度にしても足りないときにおいて、食糧の不足は肥料から解決しなければならないというので、昭和電工を初めとする幾多の肥料会社に対して、われわれは財政資金を入れて、国民の税金で肥料工業を復興したのであります。価格は厳にそのとき統制せられておる。しかるに、自由党政府は、肥料工業が一応の立直りを見まするや、自由販売にして会社にもうけさせることにしたのであります。こうして、今日においては、たとえば硫安において見るように、約二百二十万トンからの生産が可能になり、百五十万トンを国内に売り、五十万トンないし七十万トンを海外に輸出可能というような実情になつたのであります。ところが、この硫安は、あるときは国内には農民に一俵九百円で売りつけ、外国には六百円で輸出するというような、驚くべき農民犠牲の肥料価格を押しつけて参つたのであります。そして、今度は、今や高くついて外国には売れないから、その補助金を国から製造業者に出せというのであります。肥料委員会は、あるいは東畑案、藤山案、購連案といろいろ論議中でありますが、この考え方はいずれも肥料会社を保護するという立場に立つたきらいがあるのであります。
 要するに、肥料問題については、問題を扱う角度がきまつていないから、らちが朋かないのであります。問題は、余つているが、高くて外国には売れないというのでありますから、それならば、ほんとうにあり余つて始末に困るかというと、そうではない。高いから、農民はほしくても買えずに、百五十万トン程度の需要にとどまつておるのであります。肥料を求めている農民と田畑はうんとあるのであります。これに目を向けて、農民が買えるように値段を下げる。そうすれば三、四割はふえる。ここから出発して初めてこれを達威するこができるのであります。それを、幾ら幾らもうかるかを隠しておいて、損する損するといつて農民の肥料を高くして、輸出競争の無能力の分は政府に補助させようとするのでありますから、根本的に狂いがあるのであります。この点肥料の国家管理をやり、安い肥料を農民に渡し、一方輸出産業としての肥料工業を伸ばすという以外に、この解決の策はないと思いますが、政府は秋肥を前にして決断すべきときである。政府は、選挙で自由党にかけられた肥料独占資本のひもを断ち切つて、日本経済の自立の立場から対処すべきであります。農林大臣の所見を明らかにしていただきたいと思います(拍手)
 最後に、総理大臣と犬養さんにお伺いいたしたいと存じます。
 さきに第十五国会において、その施政方針を述べて、五大法案なるものを党と内閣の責任において出すということ、さらには道義の高揚を唱えられたことは、記憶に新たなるものがあります。それは、申すまでもなく、独占禁止法の改正、警察法の改正、軍人恩給、スト規制法、義務教育学校職員法の制定の問題であつたのであります。しかるに、今回の施政方針演説を伺いますと、前とかわりはないと述べておられる。第十五国会の初めに五大政策なるものを揚げまして以来、半年余りを経た今日、内外の情勢は変化を遂げております。輿論も五大政策を支持しなかつた。だから、政府は、五大政策はこれを全部ひつ込め、この十六国会には新たなる問題と取組むべきだと思うのであります。すなわち、予算審議を短かい時間に急がなければならないこの国会は、時代に逆行の法案でひまをつぶす余裕はないのであります。もつと大事な朝鮮休戦の問題、この新事態に対して、日本の独立をどうして達成するか。MSAをどうするか。そのようなものにたよらずに、自立を達成するその努力の方法、そういう日本の運命を切り開くところのプラスになるものこそ取上げて、四つに組んでこの国会で論ずべきであります。五大政策をひつ込めるのが、総理大臣のよく言われる筋を通すことであるとお考えにならないかどうか。無理押しをするのは、ちよつとひがんだ筋のように思われますが、総理の言う筋は、香車が桂馬のように飛ぶような筋もある。曲つても筋は筋とお考えになつておられるのかどうか。それでも筋とおつしやるならば、筋は曲つておらないが、おつむとおへそが曲つておるから、お気づきにならないと思うのであります。
 次に、犬養ざんにお尋ねいたしたいと思うのであります。警察法は出さないという話が流れておりますが、ほんとうにさようでございましようか。民主的警察制度の確立と、その質的充実向上は、われらの期待するところであります。ごまかしの警備隊、保安隊などは即時廃止しても、真に信頼を置ける自治的警察制度が確立せられ、整備せられ、民衆の協力を受けますならば、わが国の平和と安寧を保持することは何ら心配はないのであります。(拍手)保安隊と警備隊はなくとも治安上不安はないと、犬養大臣もお考えであろうと思う。大臣はそうお考えにならないかどうか。そこで、警察制度に対して、第一線警察官吏の教養を高め、月給を上げ、生活の安定をはかり、権力にこびない、公正な警官をつくるように、いかなる方針と新構想を用意せられておるか。犬養所管大臣の所見を明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 最後に、総理大臣が、先般の選挙のときに選挙公報でも公約されており、また今回も述べられておるところでありますが、道義の高揚という点であります。そこで一言いたしたいことは、道義の高揚を実践するには、説く者がまず身をもつて行うことである。総理は、国のお金がむだに使われていないかどうかをきびしく監察するために特別の機関を設置することを強調されておる。現に、食糧増産のために農村に金を流せば、土建屋とボスに食われて、その実はあがらない。私の聞いた、はなはだしき鳥取県の例を申し上げますと、八十七億円の工事が、地元では二十八億円の請負いとなつて仕上げられておる。行くところ利権あらざるはなく、不正と濫費の限りを見ることは、心ある者のまゆをひそめておるところであります。(拍手)総理のその着目はまことに正しい。しかし、道義の高揚といい、行政の監査といい、綱紀の粛正といい、それはことごとく良心をもつて責任を果し、法律を守ることから発足するものであります。総理は、国の基本法たる憲法をごまかして、やみの軍隊を持たせ、軍備をもつて軍備にあらずと強弁して、国民を欺いておる。総理が国の最高法たる憲法を守らないで、どうして国民に法律を守れと言えるのであるか。(拍手)内閣みずからが、外国に対して日本を代表する外務大臣に刑事被疑者を置き、さらにまた内閣の大番頭たる官房長官には、なまなましい選挙違反の現役をかかえておる行政の監察は、法を守れということである。みずからが、このていたらくをもつて、何の面目あつて国民に道義を説き、官吏の行政の監察をやろうとするのであるか。みずからは守らず、他人にだけ守らせるという道義は、奴隷の道義である。隷属の道義である。独立日本には、そのような道義と綱紀はないのである。総理は、即時岡崎外相、福永長官を罷免すべきであると思う。(拍手)総理は、はたしてその決意を持つておられるかどうか。福永官房長官は、選挙違反のために、その運動員が首を切つて自殺せられております。それともまた、選挙違反で五人や七人自殺するような者が出ても、お気の毒ではあるが、やむを得ないと申されるのでありましようか。間違いを起しても責任はとらないでもよいという習慣は、吉田総理そのものの責任内閣制を無視したことに発し、みなこれをまねしておるのであるということを、賢明なる総理大臣はこの際とくと御勘考いたされたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 日本経済の基礎が脆弱であるということは、私も御同論であります。何がゆえに脆弱であるか。わが党の、あるいはわが政府の施策が悪いから脆弱だというお話でありますが、私は、ただちにはこれは承服できない。敗戦の結果、過去百年に近い間の蓄積を失い、領土の半ばを失つた日本国が、経済の基礎が脆弱であるのは当然であります。問題はいかにしてこれを強化するかということであります。(拍手)いたずらに内閣を攻撃するばかりでは、日本の経済の基礎は強化できないのであります。また、それゆえに、MSAの性格の何であるかということをいまだ確かめずして、これによつて日本の経済の脆弱を強化しようなどということは、私は夢にも考えたことはないのであります。(拍手)
 次に五大法案でありますが、これは漸次国会に提出する考えであります。
 また道義の高揚云々で、わが閣僚の中に不幸にして選挙法違反の問題があつたが、古人も申しております。片言をもつ下獄を断ずべからず、ただそれだけの問題で、重要な地位にある閣僚を進退させる考えは、毛頭ございません。(拍手)
    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
○国務大臣(小笠原三九郎君) 輸出振興といつても、予算がインフレになつて云々というお話がございましたが、昭和二十八年度の予算におきましては、相当額のいわゆる散布超過が予想されますことは、過日申し上げた通りでございますけれども、政府といたしましても、施策の重点をば特に通貨価値の安定を確保する点に置いているのでございまして、金融面で可及的に貯蓄の増強をはかりますとともに、日本銀行を通ずる信用調整政策をやつて参るのでございまするから、十分インフレを抑止し得るものと確信をいたしております。従いまして、その点よりいたしまして、コスト高で輸出貿易が阻害されるというおそれは万ないものと存じております。なお、各種の輸出振興策については過日来申し述べましたから、ここでは省かせていただきます。
 なお、中小企業の日本経済における比重の重要性については御指摘の通りでございまして、中小企業金融の疏通につきましては、政府としても格段の配慮を加えている次第で、これも、先刻御答弁申し上げました通り、中小企業金融公庫を新たにつくつて積極的にやりますが、なおほかに、国民金融公庫を通ずる資金供給の増加をはかるとか、あるいは中小企業信用保険制度を改善するとか、信用保障協会を法制化するとか、さような措置を実施する予定でありまして、私どもといたしましは、今後ますます中小金融の疏通について努力を続け、中小企業の健全なる発達をはかりたいと考えております。金融操作といつても、あるいは銀行法の改正でもするのか、あるいは役人にかつてにやらしては困るではないか、危険があるのではないかというお話でありますが、私ども、金融操作につきましては、日本銀行を通ずる信用調整という点に重点を置いているのでございまして、かつてありました臨時資金調整法といつたような法的金融措置をとろうとは考えておりません。なお金融の疏通につきましては、なるべく金融機関の自主性を尊重するという建前でございまして、直接官庁の方で融資等に関与する等のことはこれは過去の経験から見ましても適当でないと考えておりますので、さような方式はとる考えを持つておりません。
 それから、経済自立態勢のために、日本農業に対して大蔵省の認識が足らぬ、もつと金を入れるべきではないかというお話がございましたが、この食糧の増産は、私どもきわめて緊要な問題であると考え、また日本経済自立のためにも、大きな金額を占めておる輸入食糧をできるだけ少くいたしたいのでございますから、従つて国内での増産に対しましては、これをきわめて重視し、耕地の拡張とか改良とか、あるいは耕種の改善とか畜産の奨励増殖とか、こういつたことを行つて積極的に食糧増産をはかりまするほか、また農業用工業施設の災害復旧とか病虫害の防除とか、こういうことを行いまして減産の防止をはかる等のため、食糧増産対策費としましては、二十八年度予算には御承知のごとくに四百九十四億円を計上いたしておるのでございまして、前年度に比べますと実に二割三分の増額に相なつております。また農林漁業金融公庫には、一般会計から百八十一億円を出資いたしまして、資金運用部資金と合せて二百三十一億円の新規資金を確保し、そのほか財政投資の面から食糧増産に積極的な施策を講じておりますることは、予算等で御承知の通りであります。(拍手)
    〔国務大臣内田信也君登壇〕
○国務大臣(内田信也君) まず第一に、食糧増産についてのお尋ねでございましたが、食糧増産の必要なることは、ただいま大蔵大臣も申し上げた通りでございまして、十箇年の計画をもつて、おおむね自給自足ができるように計画しておる次第でございます。しかし、その効果がてきめんに現われないというお言葉でございましたが、統計上において、てきめんに現われておらぬことは、まことに遺憾にたえません次第でございますから、私は、予算の実行にあたりまして、今後一層その適正化と有効化並びに土地改良その他の技術の向上進歩をはかつて、所期の目的を達成せんといたしておる次第でございます。
 次に、米の二重価格についてのお尋ね、御意見でございましたが、むろん、なるべく生産者から高く買つて消費者に安く売りたいのは人情でございますが、そこには財政問題もありますとともに、ただいまも大蔵大臣から申し上げた通り、土地改良等について多額の財政資金を投入して、それによつて農民もまた収入あるいは食糧増産の恩沢に浴するという方法も一つの考え方でございますから、目下各観点から検討、研究中でございます。
 それから次に、農産物の価格支持のことでございます。御承知の通り、米、麦のほかに澱粉その他をこれに加えておりますが、さらにその他一、二の重要なる農産物についても、価格安定の対象といたしたいと考えておる次第でございます。
 それから、軍事基地、演習地等の農地についてのお尋ねでございました。もとより、極力農地をつぶざないように注意しておりますが、その中に点在せる農地等がございまして、その農地をいかにするかということにつきまして、もしこれを除外することができません場合におきましては、そこに耕作権の継続を要求しようと思つておる次第でございます。それから、やむを得ず農地をつぶす場合におきまして、これの補償につきましては、その使用収益を中心として補償いたしたいと考えておる次第でございます。
 次に、霜害、水害の点についてお答えいたしますが、凍霜害につきましては、必要な予算及び融資等の措置を講じまして被害の対策を講じておることは、すでにご承知の通りと存じます。また水害につきましては、被害状況及び実情に応じまして、予算及び融資等の必要な措置を講ずるつもりでございます。
 それから、農地法は空文でないようにしろという御意見、またお尋ねでございますが、農地法もとより空文にする気は毛頭ございません。もしもそういう弊害があるならば、弊害を改めるように関係地方庁及び関係機関にこれを注意し、また農民諸君に対しても、こういう農地法があるのだから間違つてはいけないということをよく宣伝いたすつもりでございます。
 それから、林野の解放につきましては慎重な検討を加えたいと存じますが、今ただちにこれを実施するということは、なかなか困難でございます。
 最後に、肥料につきましては、肥料対策委員会の答申がもう近日出て参りますから、それをもととして態度を決定いたしたいと存じておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
○国務大臣(犬養健君) お答えをいたします。
 政府は、諸般の情勢にかんがみまして、今警察法改正案の再検討を慎重にやつておる次第でございます。ただいまお話の、民主的で、国民に親しまれ、かつ権力にこびない、能率的な警察をつくれということは、私どもは異存はないのみならず、賛成でございまして、これらを主眼点として研究中でございます。
 もう一つ、保安隊や警備隊はいらないじやないかというお話がありましたが、われわれの平生予想しないような、非常に大きな、異常な内乱的騒擾であるとか、あるいは遠く海外に出まして密貿易や密入国を取締るような仕事は、現在のわれわれの観念における警察の範囲では少し重荷なんでありまして、これはやはり保安隊や警備隊に存在してもらいたいと思つておる次第でございます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 岡良一君。
    〔岡良一君登壇〕
○岡良一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先般来の首相を初め各閣僚の演説に関連をし、特に今日内外の注目を浴びておりますところの基地問題を中心として、政府の根本的な心構えを伺いたいと思うのであります。(拍手)
 まず私は、日本の民主主義を守らんとする立場において、石川県内灘村地内の強制使用に関し、吉田首相の所信をただし、あわせて政府の政治的、道義的責任を追究しなければならないのであります。(拍手)内灘地内の砂丘地は、昨年十一月二十五日の閣議決定により、日本の工場でつくられる完成兵器の性能試験場として使用されることとなつたのであるが、当時、地元の村の議会はもとより、石川県議会、金沢市議会のすべてが、公的機関を通じて反対の決議をし、所在の労働組合や婦人、青年団体等、石川県民百万はあげてこの反対運動に厥起したのである。これに狼狽した政府は、昨年の旧臘、当時の林屋亀次郎前国務大臣と外務省の伊関国際協力局長を現地に派遣せしめ、冬期四箇月の一時使用とし、四箇月後には必ず撤収して、これを村当局に払い渡すなどの条件により、ようやく地元民の納得を得て、その使用をいたすこととなつたのである。
    〔議長退席、副議長着席〕
ところが、約束の四月三十日の期限到来を待たず、突如として無期限継続使用を決議するに至り、ここに再び百万の県民は、あげて政府のこの公約無視の不信行為を糾弾し、今日諸賢の知らるるがごとき実に全国的な反対闘争に立ち上つておるのである。吉田首相は、しばしば綱紀の粛正を語り、道義の高揚をうたつておる。しかるに、政府みずからが公約を無視するのみならず、その不信を糾弾して立ち上つた村民に対し、千名を越える警察力を動員し、こん棒を振い、力ずくで強制使用の挙に出ておるではないか。吉田首相は、組閣早々の声明において民主主義の確立を誓つておる。ところが、民主主義どころか、県民の反対の意思を無視し、暴力をもつてこれを強制接収しようとするに至つては、まつたく軍閥フアシヨの再来と言わなければならぬのである。(拍手)このようにして、内閣の一方的決議によつて、住民の利害、公共の福祉はもとより、国民の要求を踏みにじり、どしどし権力をもつてわが国の国土が惜しげもなく第三国に割譲されるの道を開くに至つては、政府みずからが、わが国の領土主権をなげうち、独立の尊厳を冒涜するものと言わなければならない。(拍手)実に、本月十五日の朝内灘に放たれたる一発の試射弾は、政府の不信に憤る住民に対し、いな日本の民主主義と日本の独立を守らんとする愛国者に放たれたる挑戦の一弾と言わなくてはならないのである。政府の政治的責任はきわめて重大である。あえて吉田首相の責任ある所信の表明を要求するものである。(拍手)
 しかも、伝え聞くところによれば、日米合同委員会においては、当初より、アメリカ側に対しては、内灘の長期使用についての了解を与えていたとも伝えられておる。従つて、アメリカ側は、今日の事態に対しては、むしろ非常な当惑をもつておるとも聞いておるのである。林屋国務大臣と同道した外務省の代表が、数百の村民の前に、四箇月一時使用をかたく約束をしたことは、今日何百人の村民がみな物語つておる。素朴な村民の前には、恬然として作為をもつて二枚舌を使い、一方、力のあるものの前には、そのごきげんを伺うに汲々とする。その結果が、今や内外にその信を失い、問題は全国的な規模に拡大され、日米両国の関係にも重大なる暗影を投じておるではないか。これはまさしく政府の重大なる外交の失敗と言わねばならぬ。しかも、昨日の外務大臣の答弁によれば、外部からの扇動によると申しておる。連日夜を徹して、着弾地点に近く、数百の村の主婦が、自己の郷土を守らんとし、命がけですわり込んでおるのである。政府みずからがその種をまきながら、いざとなれば、これを第三者の責めに帰する。まつたく顧みて他を言わんとするよりは、耳をおおうて鈴を盗まんとするにひとしい。(拍手)その責任は、われわれは断じて許すことはできないのである。
 さらに、昨日の夕刊紙によれば、伊関局長は、内灘の試射場は政府の手によつて保安隊の試射場として収用すべきはずのところ、当時再軍備問題とからんで保安隊の性格が批判されておる際でもあり、米軍に依頼した方が事が円滑に運ぶという話合いから、駐留軍の試射場になつたものであると申しておる。内灘の試射場で試射しておる弾丸は、すベて保安隊用のものであり、保安隊用の弾丸が、すべて一旦アメリカ軍に納入されてから保安隊に引渡されるところから、アメリカ軍の力を借りて内灘の試射場を駐留軍用の試射場として設置したというのである。平たく言えば、米軍の圧力を借りた方がものがうまく行くというのである。(拍手)実にこれは国会と国民を侮辱するもはなはだしいではないか。(拍手)米軍の圧力を借らなければ保安隊の試射場一つできないというのでは、吉田内閣そのものがアメリカの傀儡政府であるということを言つても……(発言する者多く、聴取不能)と思うのである。(拍手)米軍の圧力がなくてはその試射場一つも持てないというならば、保安隊は明らかにアメリカの傭兵だということになるではないか。(拍手)
 すでに一時使用に対してとられた手続は、行政協定の実施に伴う国有財産の管理に関する法律に基き特別調達局が処置をしたものであり、これは明らかに政府みずからが公の名において法を乱るものである。しかも、村民に対して支出しておる見舞金の五千五百万円、あるいは道路改修費等の二千万円、漁業補償の一千四百五十万円は、一体いかなる予算費目から支出したのであるか。行政協定に伴う安全保障費から出したのではないか。最近、内灘に至る道路改修のために補助金の指示が参つておるが、行政協定の実施に伴う安全保障費から支出され、地元ではこれを行政協定の道路と称しておるのである。しかりとすれば、政府は、明らかに、当然保安庁の予算から支出すべきものを安全保障費から支出することによつて、財政法を乱り、国会の予算審議権を無視し、まつたく憲法の条章に違反するものと言わなければならぬ。(拍手)木村長官は、即刻かくのごとき非違を更改する決意ありやを、この機会に明確に表明をしてもらいたい。(拍手)このような重大なる非違が作為に基いて犯されたとするならば、もはや一局長の進退をもつては済まない。実に政府全体の重大なる責任である。行政執行の最高の責任者たる内閣総理大臣は、もしかかる非違が部内にあるならば、いかにしてこの責任を明らかにせられる所存であるか。また当の責任者たる岡崎大臣は、これらの事態に対して、当然自己の進退をもつて責任を明らかにさるべしと信ずるものであるが、その率直なる所見を承りたいのである。(拍手)
 次に、私は農林大臣に対してただしたい。去る六月二日閣議において決定を見たる内灘の無期限使用に関し、私はその法律酌根拠をただしたいのであるが、その質問主意書に対し、政府は農地法第七十八条及び第八十条の一項に基くと答弁をして来ておる。農地法は、その第一条の目的にも掲げられたるごとく、耕作者に土地を与え、その生産と生活を保障せんとするわが国民主化の重大なる基本立法である。ところが、この法律の目的に目をおおい、しかも個人の所有から開拓地として買い上げた開拓予定の国有地を、この法を援用いたしまして、政府は駐日米軍の演習場に提供しておる。これは実に、本法の目的に目をおおい、法律の綱渡りをする属僚的詭弁以外の何ものでもないのである。このような逃げ口上こそが、今日屈辱的な不平等条約を根本的に改訂し、真の独立を築かんとする一片の誠意も政府には持ち合せがないということを告白するものでなければならぬ。(拍手)
 そもそも何がために内灘や浅間の問題が、今日のように内外の輿論を動かし、またその注目を集めておるのであるか。その根本原因は、実にわが国の国土の中に、ともすればわが国の主権の及ばざる地域が次々と出現せんとするこの事態に対して、独立を念願する民衆が政府の越権に抗して立ち上つたところに、この真の政治的意義が存するのである。補償の有無にかかわらず接収に反対する素朴なる農民や漁民のこの真情の中にこそ深い愛国的情熱をくみとることが、為政者に課せられた最も重大なる責任と言わなければならぬ。しかるに、農地法第七十八条あるいは第八十条は、未墾地の転用に関し、その所有権や管理権の移転に必要なる条件手続を規定したにすぎない。このようなものを援用し、内灘や浅間問題の帰趨が国の主権にかかわる国の一大政治問題であるという認識を欠き、形式的な手続上の問題、所有権の移転の問題となしておる。かくては、実に向米一辺倒の政府の症状も末期的な症状を呈していると言わなければならぬ。(拍手)農民の生産と生活の安定と目的とする農地法をたてにとり、開拓予定地を在日米軍の基地として提供せんとする。もしこれを農林大臣が認めたならば、あなたは農地法第一条の目的に違反をしているものと言わねばならぬ。私はすみやかにかくのごとき詭弁的答弁書の取消しを要求する。政府は堂々、行政協定の実施に伴う国有財産の管理に関する法律、あるいはその実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法に基くものであるということを、この機会に言明をしてもらいたい。国会に対し、一切の不平等なる条例、法律を改訂すべき信念を明らかにし、しかして農林大臣がその先頭に立つて、農地法の目的を守られんことをこの機会に誓われるやいなや、特に農林大臣の所信を承りたいのである。(拍手)
 さらに私は、文部大臣に、日本の文化と平和を守る立場においてただしたい。浅間山が上信越国立公園の中心地であることは周知の事実である。国立公園は、国立公園法において、各種の保護規定をもつてその風致景観の保持か顧慮されている。軽井沢町もまた、わが国会が国際親善文化観光都市としてその平和的発展の保障を与えておるのである。これは厚生大臣も建設大臣も熟知せられるところであろう。しかも、浅間山が演習場として、接収されるならば、国立公園はその生命を失い、軽井沢町もまた、平和なる観光都市から浮薄なる軍都と化し去る憂いもなしとはしないのである。私は、国立公園法あるいは都市建設法がまつたく無視されんとするこの事態に対し、この際厚生大臣並びに建設大臣に深甚なる注意を喚起するものであるが、特に文部大臣の所感を伺いたい。
 浅間山火山観測所は、わが国地震学者の犠牲的な努力のもとに、二十有余年の長き歴史を有し、先年オスローに開催された国際学界におけるこの観測所の研究と観測の報告は、世界的業績として、実に高く評価されているのである。しかも、このような微妙な観測は、実に一発の空砲によつても重大な誤差の生ずることが、先般の実験によつて明らかとなつておる。従つて、この地が演習場として接収されんか、実に二十年にわたる学界の犠牲的努力はここに挫折を余儀なくされるのであつて、日本地震学界もあげてこれが強制使用に反対している。世界の学界も、また心ある学者も、わざわざ声明書を寄せてこれに抗議をしている。実に浅間観測所の閉鎖は内外学界の一大病根事とされているのである。無謀なる戦争とその敗北のあとを受けて、わが国における科学の発展は、遺憾ながら多くの分野においては国際水準に及んでおらない。ただ、日本の誇りとしては、火山活動と地震に関するその研究と観測の誠実さこそは、実に世界の水準を越え、世界の学界がその将来に対し重大な期待を寄せておるのである。この観測、研究の中心たる浅間山火山観測所の機能が閉鎖されるならば、学界の努力が水泡に帰するばかりではない。世界中の学界の失望もまたきわめて大である。文化国家として新生せんとする独立日本が、その門出において、日本が世界に誇るこの数少い文化財が第三国軍隊の砲煙と炸裂音の中に埋没しようというのである。かくては文化国家の誇りも権威もまつたく地に帰するではないか。
 私はまた、過ぐる日、内灘村において若き漁民の主婦が訴えるのを聞いた。戦争のあとに生れて、やつと学校に出たばかりの子供を抱えて主婦が言つている。砲弾とは一体何のものだ、戦争のものだ、何のために戦争しなければならないか、この子供たちは戦争から守りたいと主婦は言つておるのだ。この素朴なる漁村の婦人たちの訴え、しかも彼女ちたは、今やそのために砂丘にすわり込み、きのうもきようも命がけで政府に抗議しておるではないか。言うならくは、われわれ同時代者たちはすべてが戦争の責任者であると言つてもいい。われわれが平和国家たる信条を貢ぐがためには、せめてわれわれを継ぐ若き世代、戦争を知らざる若き世代をして、真に平和をにない得る勇気と情熱と叡知を与えることが、われわれに与えられた歴史的な責任ではないか。(拍手)今や、内外の抗議を無視し、浅間山を模擬戦場に提供して、日本の貴重なる文化財を失い、素朴なる主婦の平和への願望を踏みにじつて、轟然たる試射を開始しつつある。これは、日本が内外に宣言した文化と平和国家に対する公然たる挑戦であり、平和憲法をどろ足をもつて踏みにじるものと言わなければならぬ。かかる事態に直面したところの文部大臣は、科学の振興と平和教育の推進についていかなる所信を持つておられるかを、この機会に責任ある答弁を求むるものである。(拍手)
 さらに私は、日本経済の自立と大衆の生活安定の立場において、この基地問題を追求したい。そもそも内灘村において強引に試射が急がれたのは何ゆえであるか。言わずと知れた、内灘の試射再開を急いだものこそ、いわゆる特需に基いて、四月以降においてさえも六百万発以上の迫撃砲弾の受注を抱えておる日本の一連の兵器メーカーであり、政府はもろくもその圧力に屈したものと言わねばならない。しかしながら、朝鮮動乱の終結とともに、動乱と日本経済を結んだベルトは断ち切られようとしている。
 経済閣僚が、その施政演説において、こもごも経済自立を強調しておるが、日本の経済を具体的に自立せしめるためには、過去三年にわたりわが国の年間ドル収入の六割を補つた特需の功罪を見きわめることから出発せねばならない。なるほど、朝鮮動乱に基く特需が、当時の日本経済の危機に、現実には一つの有力なる支柱を与えたことを、私は否定はしない。しかしながら、その一面においては、まずわが国経済をいよいよドル資本に依存せしめ、わが国産業をアメリカ軍需産業の下請とし、しかも常に緊急の調達に応じなければならない結果として、わが国産業界の合理化と計画化とは妨げられ、健全なる資本の蓄積ははばまれ、ひいてはわが国経済が国際市場から遊離し、貿易においても、ポンド地域との因縁は薄くなり、原料高から国際水準をはるかに上まわる物価高を現出しておる。しかも特に指摘しなければなりませんことは、その受注条件に見る驚くべき低い時間賃率によつて労働の強化と賃下げが強行される一方、インフレの進行によつて大衆の生活は二重に圧迫されて来た。実に向米一辺倒、秘密独善の政府の外交によつてもたらされたこの不幸な日本経済の堕落を、今こそ勇気と決断をもつて克服することから、実に日本経済自立の道は開かれるのである。
 隣国において人民が血を流して戦うとき、わが国には好景気が訪れ、この国に平和がよみがえらんとするや、たちまちにして経済の危機におびえなければならぬ。狼狽した経済閣僚が、口々に事新しく経済の自立を説いておる。日本経済をこのような不安のはめに追い込んだ最大の責任者こそは、実に朝鮮動乱の勃発を天佑などと言つて迎えた吉田首相そのものの責任ではないか。(拍手)しかも、わが党委員長が動乱に伴う根本的施策をただすや、不動の国策を云々する。実に、議場で聞いておつて、泣くに泣かれぬ日本の喜劇と申さねばならない。私はここに、政府が平和産業を根幹とする具体的なる長期にわたる計画的な経済計画を用意しておるかどうか、所管大臣の責任ある御答弁を願いたい。
 さらに、日本経済の自立と最も密接な関係を持つMSAの受諾に関し、首相を初め閣僚の演説は、これを回避するもののごとくである。それに関する追究は今後の機会に譲ることにするが、トルーマン・ドクトリンに始まりポイント・フオアに終る一切の海外援助を総合的に調整したこの法律の適用により、アジア諸国に対し軍事、経済、技術援助を与えて、しこうしてアメリカ合衆国の安全保障を推進せんとするこの条約の受諾は、アジアの労働力や、一切の生産資源、また一切の生産要素というものがアメリカの防衛に奉仕する結果になる危険もある。かくては、日本がアジアの兵器廠たる運命に落ち込む公算もきわめて大である。現に日本の資本家団体は、MSAの伝えられるや、いち早く二兆八千億に上る防衛生産八箇年計画を堂々と公表し、政府の関係閣僚また符節を合するごとく防衛五箇年計画なるものを語つているではないか。わが党は、日本の経済の軍事化をはからんとする一切の企図と対決することを宣言すると同時に、あの兵器メーカーが死の商人と呼ばれるゆえんは、単に兵器をつくることによつてのみ死の商人であるのではない。彼ら及び彼らと結ぶ政府は、常に労働者を低賃金と労働強化に追い込み、その基本的権利を剥奪し、その国の経済を戦争に依存せしめることによつて、世界の平和と自由に挑戦する。かくて、近代史は、兵器メーカーに死の商人の名前を与えたのである。
 しかしながら、アジアの国々において、新しき世代は立ち上つておる。イスラエルにおいても、ビルマにおいてもすでに社会主義政権は確立され、インドにおいても、本年初頭より、五箇年計画は国民運動の形態として進展しつつある流血の犠牲によつて、ヨーロツパの植民地支配、資本主義的搾取を克服し、民族の独立を闘い取つた東南アジア諸国は、今なお内部における摩擦に耐えながら、しかも平和な経済自立の道に向つて進んでおるのである。従つて、ビルマにおいても、イランにおいても、インドネシアにおいても、MSAの交渉に対しては実に毅然たる態度をもつて臨んだではないか。しかも、彼らは、過ぐるアジア社会党会議において、平和経済を樹立する支柱として、日本がいずれの陣営にも属することなく、みずからの意思によつてその運命を開くならば、すべてのアジアの国々は全幅の支持を惜しまないことを約束してくれておるのである。しかるに、日本の経済自立の生命線とも目される東南アジアとの経済提携のため、政府がその相談相手として選んだグループを見れば、ある者は買弁的産業資本家か金融資本の元締めか、古色蒼然たる十九世紀的経済人の第二番町会のグループだ。こうした政府の態度では、東南アジア諸国は、きつぱりと日本の差出した手を払いのけることは、火を見るよりも明らかである。
 今や、わが国は申すに及ばず、インド、インドネシア、ビルマを中心に、東南アジアの国際的同志は立ち上つて、アジア諸国の資源と労働力と技術と設備を計画的に動員し、自主的なるアジアの平和経済を確立せんがために立ち上つている。日本にして真に平和のために立ち上り、自主独立の立場を堅持し、日本の勤労大衆の信任を受けた手が東南アジアに差延べられるときにおいてのみ、彼らは欣然としてわれわれの手を握つてくれるのである。この結合に立つて、われわれが、真にアジアの平和を守り、アジアの貧困と闘い、自由なる文明と福祉のために努力するならば、このアジアを連ねた一体の努力は、必ずや世界と国連の輿論を動かすこともできるという確信にわれわれは立つている。この立場に立つて、わが党の提唱したアジア経済会議も、あらゆるアジアの同志の賛成するところとなつている。私は、政府のこのアジア経済会議に対する全面的なる協力を要求するとともに、この機会に所管大臣の東南アジアに対する経済提携の具体的なる所信を承りたい。
 さらに、われわれは、アジア社会党会議において、昨年五月ジユネーヴのILOの総会において議決された社会保障の最低基準に関する国際条約を提出し、わが党の提出には、アジア諸国もまた快くこれに賛成をしてくれておる。わが国が平和と独立を守らんとすればするほど、わが国の国民の立つ道はいばらの道であるということは、もとより覚悟の前である。平和と独立への冠は、すべての国民の頭上に差出されたいばらの冠となることも覚悟しなくてはならぬ。しかして、この道が国民に犠牲をしいればしいるほど、政府は、真にこの国に生れたことに幸福を感じ、またこの国に働くことに誇りを感ぜしめるところの施策をやらねばならない。この意味において、われわれは政府が社会保障制度の実現を急ぐべきことを心から強調するものである。
 すでに二十五年の十月に社会保障制度の勧告もあり、第十二、十三国会においても、衆参両院は社会保障推進に関する決議を行つておる。すでにフランスにおいては、モネ・プランによる生産増大の年次計画があり、これと並行した社会保障の基準、特に年金額を生産指数の増大に対応して引上げて行こうとする長期計画の樹立を見ておる。西ヨーロツパ諸国、なかんずく、いくさに負けた西ドイツにおいても、社会保障はもはや対内的な防衛費としての性格が認識され、戦後においては、軍事費と社会保障費は対等の地位が与えられて、国家財政にその存在を主張しておるのである。しかるに、わが国は実にわずかに九%である。イギリスの一八%、フランスの一五%、西ドイツの三七%に比べて、その四分の一にも足りないではないか。私はここに社会保障については詳しいことは申さないが、政府はすみやかに社会保障の最低基準に関する国際条約の批准に関する手続を完了せられんことを要求するものである。
 以上の諸点について、わが党を代表し、所管大臣の責任ある御答弁を求めるものである。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。米国軍に施設を提供することは、日米安全保障条約の規定であり、日本政府の負担する義務であるのであります。しかしながら、なるべく関係地元とは円満な話合いをつけようという考えから、林屋君その他が現地に出て、当該方面において話を続けつつあつたのであります。その間に、何らわれわれはこれを非難すべき欠点が見出されないのであります。また関係警察官が不当に暴力を使用した事実は断じてないのであります。(拍手)
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
○国務大臣(岡崎勝男君) 内灘地方の試射場につきましては、当時地元でも、風紀の問題や米軍将士との摩擦等、その他いろいろ心配する点がありましたので、さしあたり四月までとして、その間に実際に試射を行つてみて、いかなる弊害を生ずるか確めんといたしたのであります。幸いにして、風紀上の問題もなく、また米軍将士との摩擦も生じなかつたので、われわれとしては、ぜひ一箇所の試射場はわが国として必要でありますので、四月以降、新たに誠意を尽して関係各方面と折衝を行つたのであります。完全に了解に達することができなかつたのはまことに残念でありまするが、政府としましては、今後とも、なお地元に対しできるだけ相談をいたしまして、円満な措置を講じたいと考えております。また問題の砲弾は米側の注文によつてつくられたものでありまして、従つて、その砲弾の試射は当然米側で行わるべき性質のものであります。
 MSAにつきましては、問題が重要でありますので、先般も申し上げましたように、いろいろの異なつた観点から、各般の関連事項について検討中であります。政府としては、もちろん憲法の精神等に反するような行動はいたしません。
 アジア経済提携の構想につきましては、前に申し上げた通りでありまするが、われわれとしましては、最も謙虚な気持で、相手国の利益のために力を尽す考えでおります。(拍手)
    〔国務大臣内田信也君登壇〕
○国務大臣(内田信也君) 農地を農作地以外の目的に使用いたしますことは、これは防止いたしたいのでございますが、内灘のごとくに公用のため使用する場合におきましては、農地法の規定によりましてこれを認めますことは、ただいま岡崎君御説明の通りでございます。しかしながら、政府は、地方関係民のために、行政上必要なる措置を講じて、補償の道を立てておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣大達茂雄君登壇〕
○国務大臣(大達茂雄君) 浅間山麓を演習地として使用する問題につきましては、昨日も申し上げました通り、現地における実験を基礎といたしまして、ただいま日米双方の専門家の手で検討いたしております。その地震観測に及ぼす影響について検討いたしております。政府は、その結論をまちまして、純粋に学術的見地からこれを解決したいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣岡野清豪君登壇〕
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申し上げます。
 わが国の経済を善隣外交のもとに平和経済に発展さして行きたい、これはまことに御同感で、御説の通りであります。ただ、東南アジアの方面についてわれわれが協力したいということを提唱いたしておりますと、武器生産とか米国防衛態勢に参加しておるのじやないかという御説がございましたけれども、われわれとしては純経済的に考えております。
 それからまた、エカフエの問題でございますが、ただいまはアタツシエ・メンバーとして入つておりますが、これは正規のメンバーになりたいと思つて、今極力これをやつておる次第であります。
 それから、長期計画について大体を申し上げたいと存じますが、まず基本的の考え方といたしましては、一番にやはり国民生活の水準というものを考えなければならぬ。私どもといたしましては、現在の主食とか繊維などの消費水準は、そのままぜひ維持して行きたいというのが一つの考え方、また正常貿易によりまして国際収支の均衡を得て行きたい、これがそれに対する二つの考え方、そうして特需などがあります間に、右の目標をちやんとやつて行きたい。
 それではどうして行くのか、こう仰せになるかと存じますが、まず施策の重点といたしましては、外貨の収入を増加することが一番でございまして、それには輸出の振興をしなければなりません。この輸出の振興につきましては、まず第一番に経済外交の推進をやらなければならぬ。ガツトへの加入とか、通商協安の締結とか、貿易協定をやるとか、またその次には、コストの切下げによつて競争力の充実をしなければならぬことは当然であります。そのコストの切下げにつきまして、それではどういう計画を立てておるか、こう申しますれば、石炭につきましては、縦坑の開発を七十九本やりまして、五箇年間に約二割くらいのコストの切下げをしたい、こう考えております。五箇年に、政府資金といたしましては四百九十億円を投じて行きたい。また鉄鋼につきましては、五箇年に、要望額といたしましては約千五百億円ぐらいいることになつておりますが、それに対して財政資金を相当につぎ込みまして、薄板とか銑鉄とかいうものが二〇%くらいのコストの切下げになる、こう考えております。また硫安は、もう少し早く計画を完成したいと思いまして、三箇年と踏んでおります。これには大体二百億円くらいの金がいるわけです。これも大体コスト二割切下げを目標にしております。機械工業は五箇年くらいでございますが、これにはやはり千二百億円くらいいるはずであります。そういうふうにしておりますが、これは要望額でございまして、財政資金といたしましては約千億円くらい使つて行きたいと思つております。
 それから二番目に、外貨の節約をいたしたいと存じます。それにはやはり国内の自給度を向上しまして、農林省の計画でございますが、これは五箇年間に千七百万石を増産する。これは相当の金がかかるのでございますが、しかし、財政資金といたしましては四千四百億円くらいを投じて行きたい、こう考えております。また合成繊維につきましては、四箇年間に完成したいと思いまして、一億五百万ポンドくらいつくりたいと思います。これに対して財政資金は二百億円くらいをつぎ込みたいと思います。また外航船の増強につきましては、大体年三十万総トンくらいをつくりまして、資金を年に四百五十億円、財政資金はこれに対して五割くらいでございます。また、その他奢侈、不急の輸入品を抑制する。こういうふうにしてやつて行きたいと思います。(やつたやつた」と呼ぶ者あり)やつたやつたと仰せになりますが、お聞きになりましたから重ねてお答えいたします。(拍手)
    〔岡良一君登壇〕
○岡良一君 吉田首相の御答弁には答弁漏れがあつたので、この際重ねてお尋ねを申し上げたいと思います。
 それは、昨日の読売夕刊紙において、自由党総務会の席上において、外務省の国際協力局長である伊関君が、内灘の試射場は実は保安隊の試射場である、しかしながら、当時保安隊の性格に対し、とかくの批判があつたから、米軍と話合いのもとで在日米軍演習場といたしたのであるということを申されております。こういうことになるならば、その結果として、これが使用手続においても、これが施策に伴うところの予算にしても、すべてが安全保障条約や行政協定の実施に伴う法律によつて実施されておる。こうなれば、いわゆる日米合同委員会というものは国民と国会の目をごまかすためのなれ合いの場であると言つてもさしつかえないのであります。(拍手)この点について、もしかかる非違があるならば当然吉田首相は、その事実を究明し、その責任を明確にさるる所存あるやを伺つたのである。
 また、岡野通産大臣に対しても、私は、完全雇用と生産の増大に伴う長期の生産計画、長期の経済計画、これに見合う社会保障制度の実現というものが並行的に進められねば成らないということを強調し、かかる構想の用意があるかどうかを伺つたのであるが、この点については、また後日委員会等において政府の意見を伺うことといたします。
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
    〔「総理大臣を出せ」と呼び、その他発言する者多し〕
○国務大臣(岡崎勝男君) 伊関協力局長の説明につきましては、私から直接問いただしたところ、そのような事実はなかつたのであります。(拍手)
    〔「総理大臣、総理大臣「首相の答弁の要なし」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○副議長(原彪君) 内閣総理大臣は答弁がないそうでございます。(発言する者多し)岡良一君。――岡良一君。
    〔岡良一君登壇〕
○岡良一君 私の質問の趣意は、もし日米合同委員会がそのようなものであるという印象を与えるならば、これは将来における日米外交関係においても重大なる影響があることをおそれての質問である。私は決して安曇吉その責任あるところの外務大臣の答弁を要求しているものではない。これを統制し監督すべき任にあるところの総理大臣の所見を伺つている。われわれは……。(拍手、聴取不能)
    〔「議事進行、議事進行」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○副議長(原彪君) 総理大臣は答弁がございません。
 有田八郎君。
    〔有田八郎君登壇〕
○有田八郎君 私は、吉田総理大臣の施政演説中、日本の防衛問題に対し少しく所見を述べ、これに対する政府の所信をお伺いいたしたいと思うのであります。
 国が軍備を持たなければならぬという理由は、言うまでもなく他国の侵略に備えんがためであります。今日の国際情勢において最も警戒を要する相手は、率直に言つてソ連であると思いますが、このソ連に対して日本を防衛するには、まずソ連のいわゆる侵略とはいかなるものであるかを検討してみる必要があるのであります。ダレス氏は、東ヨーロツパの諸国が相次いでソ連の衛星国となつた事実を批評して、これは大戦後各国が用心を怠つて、国際的悪漢の手先に恐るべき活動の機会を与えたからであると言い、公然と武力攻撃を受けたということもないのに、多くの国家はそのとうとき自由を奪われ、帝国主義的共産主義の桎梏のもとに置かれるに至つたと言つている。ソ連のやり方は、ダレス氏の言う通り、常にこの手を用いることは、歴史の示すところであります。(拍手)今日ソ連の衛星国となつているブルガリア、ルーマニア、チエコなどの例を見ても、これらの国々は、いずれも第二次世界大戦の際独伊の味方であつた関係から、独伊の敗勢とともにソ連軍の侵入を免れることを得なかつたのであるが、ソ連は、かくして侵入したソ連軍の存在を利用して、国内共産党の強化をはかり、進んで共産党による政権の獲得を策したのであつて、軍隊の力をもつて一気にこれをその傘下に収めるような無謀な危険なやり方はしなかつた。その共通なやり方を見ると、まず広汎な諸階層、諸党派をもつて、国民戦線、人民戦線というような統一戦線を結成し、次いで各政党政派からなる連立内閣を組織せしむるとともに、共産党をしてその指導権を握らせることであつた。しかも、その連立内閣の中で、国内政治に最も大きな実権と影響力を有する内相、法相、情報宣伝相のごときは、常に共産党員をもつてこれに充てることを忘れなかつたのである。かくして、連立内閣において指導権を握つた共産党は、秘密警察と司法権の活動によつて、ほとんど連続的に仮借なき追放、粛清を断行し、連立内閣のボルシエヴイーキ化を進めて来たのであります。かくのごとくソ連は、ヨーロツパ、ことに東ヨーロツパにおいて確固たる共産主義勢力を樹立したが、それは、第二次世界戦争の機会に侵入した軍隊の威力を背景にして、非共産系を圧迫するという手段方法によつたもので、直接軍隊を使用したとか、外部からの武力による侵略的行動に出たというわけではない。私共、こういう相手に対しては、その手口に応じて防衛措置に万全を期すべきだと信ずるものでありまするが、この見地かも、以下五つの点について総理大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 質問の第一は、外国からの武力侵略に対する防衛についてであります。再軍備論者は、独立国である以上、みずからを守る軍備を持たなければならないと言うが、憲法上の問題は時間の関係上しばらく別として、今日の日本がソ連からの直接侵略に対してこれを防ぐに足る軍備を持ち得るかどうかというと、かりに三十万人の陸軍、三十万トンの海軍、四千機の空軍を持つとして、その経費は幾らかかるかというと、年々七千二百億円の経常費を要する勘定である。こういう金の余裕が日本にあるわけもないが、たといあつたとしても、この程度の、原子爆弾も原子兵器も持たない軍備では、ソ連軍に対しては蟷螂のおの、ほとんど何らの役にも立たない。いわんや、国力に相応する自衛軍などというものは、名は軍隊でも、現在の保安隊程度のもので、外敵の侵入に対して全然無力であることは言うまでもありません。(拍手)今日のような国際情勢において、いかなる国でもまつたく無防備であることはできません。ガンジー式の絶対平和主義、絶対無抵抗主義で、とらや、おおかみのえじきとなるもあえて辞さないというのでない限り、他国の侵入に対し、軍備を持たない日本としては何らかの安全保障態勢を持たなければならないということは、再軍備論者であるといなとを問わず、一致した意見であると思うのであります。(拍手)この点から、国際連合の保障によるべしとの説もありまするが、国際連合の現状から考えると、当分これに期待することはできません。今日の場合一番有効適切な方法は、国防について共通の利害関係を持つ強国と共同して国防に当ることであります。昭和二十五年一月、アチソン前国務長官がサンフランシスコでした演説は、きわめて重要なるアメリカの国策を中外に宣明したものであるが、その中に、日本の敗戦とこれに伴う武装解除の結果として、アメリカは、自国の安全と太平洋地域の安全とのほかに、日本の安全のために必要の存する限り軍事的に日本を防衛しなければならないことになつた、アメリカとして日本の防衛を放棄したり、これを弱めたりすることのないのはもちろん、その防衛はいかなる形の協定によつてとりきめられようと維持せられなければならず、また維持せらるべきであるという一節があります。この一節は、日本の防衛は、アメリカの安全、太平洋の安全という見地から、どうしてもアメリカの力によつてなされなければならないという強いアメリカの意思を表示したものであつて、とりもなおさず、アメリカと日本とは、日本の国防について共通した利害関係を持つものであることを明らかにしたものであります。日米安全保障条約は、つまりこの関係の相互認識の上につくられたものであつて、自分自身の軍備を持たない、また持ち得ない日本の国防上の欠陥は、これによつて補われておるわけであります。現在の日米安全保障条約は、本格的安全保障条約であるとかないとかいう議論もあるようですが、アメリカが日本をその国防の第一線に加え、ことにその軍隊が日本に駐留しておる以上、日本に対する攻撃は同時にアメリカ、少くともアメリカ軍に対する攻撃ということにならざるを得ないのでありますから、アメリカと戦争する決意も覚悟も持たず、できるだけこれを避けんとしておるソ連としては、日本に対して直接侵略の挙に出るということはないものと見なければなりません。
 以上のような大局的の見通しの上に立つときに、私は、日本の防衛は、直接侵略に対しては、日米安全保障条約があればそれで足ると思わざるを得ないのであります。日本は日本人の手で守るべきであるという論法から、なけなしの金でもつて、使う機会もなく、機会はたといありても、何の役にも立たない竹やり軍備をつくろうとすることは、百害あつて一利もないことを断言するにはばからないのであります。(拍手)要するに、私は、直接侵略に対する防衛態勢、ことに日本はみずからを守るに足る軍備を持ち得ると考えられるやいなや、この点について政府の御意見を承りたいと思うのであります。
 質問の第二は、間接侵略に対する防衛についてであります。対ソ防衛上最も必要なことは、すでに述べた通り、間接侵略に対するものであるが、これに対する根本対策は、日本の社会に不平不満なからしめ、共産主義の跋扈を許さないようにすることである。これがためには、少くとも、社会保障制度審議会がさきに政府に提出した二回の勧告をできるだけ早く実行することであるが、政府はこれまで、財政上の理由ということで、常に必要経費の支出を渋つておるのであります。そうかと思うと、昨年度のように、保安隊の増強というようなことには数百億円の増加もあえて辞さないのである。かくのごとき政府の態度は、社会の不平不満が間接侵略にすきを与えるものだという、現在日本の当面しでおる国防の性質を知らざるがために、重点の置きどころを間違えておる結果であると言わなければなりません。(拍手)政府は現在の防衛費をさいても、鋭意社会保障制度、福祉制度の急速確立をなすべきものであると思うのであります。しかし、右のような政府の努力にもかかわらず、外国勢力につながる武装蜂起でもあれば、これは国内治安維持をその任務とする警察力によつてこれを鎮圧しなければなりません。この意味において、強化されたる警察の存在は必要であるのである。普通の場合でも、軍隊のない国の警察は、軍隊を持つ国の警察より強力でなくてはならないことはもちろんであるが、さらに、その国の地勢なり、その国の置かれたる国際環境からして、内乱や騒擾が隣接国と密接なつながりを持つような場合には、警察の装備、機動性、訓練が、いわゆる軍隊に類するものでなくてはならないことになるのである。すなわち装備について言えば、機関銃はもちろん、場合によればある種の大砲や戦車のごときも必要であり、また日本の地勢のように、北から南に細長く伸びておる国では、移動、集中を敏速にするために、ある種の飛行機を持たねばならないであろう。また、国外からの武器の密輸入や地下運動を指導する帝国主義的共産主義者の潜入を取締るだめには、ある種の武装せる艦艇も必要であろうし、営舎に集団生活し、軍隊的行動の訓練を受けることも必要ではないとは言えません。しかし、そこにはおのずから限界がなくてはならない。私は、最近保安隊及び警備隊を見学して、その装備といい、訓練といい、はたまた精神教育といい、国内治安維持というよりも、国外からの敵の侵略に備えることに重点が置かれておることを見て驚かされたのであります。国内における組織的暴動は、多くは外国人をまじえた日本人によるゲリラ的の性質のものであるから、これに対処するには、国外から来る精鋭な敵の大規模の襲撃に対処することとは、おのずから違つた取扱いを必要とする。従つて、保安隊には特殊な研究から来る特殊な訓練を必要とし、軍隊的のものであつてはならない。私は、日本が軍備を持つことには、その名称のいかんにかかわらず反対であるが、強化されたる警察力を持つことは絶対に必要なりと考うるものであります。しかしそれは、保安隊法に当てはまる保安隊であつて、これに当てはまらない現在の保安隊ではない。私は、間接侵略に対する防衛態勢、ことに保安隊、警備隊は国内治安維持の警察なりやいなやにつき、政府の所見をお伺いいたしたい。
 質問の第三は、憲法第九条の戦力についてであります。今日問題になつておる保安庁長官の談話は、政府を代表して言つたのではないとしても、防衛問題の主管大臣の談話であるだけに、その内容はこれを厳重に検討しておかなければならない。同長官は一部には憲法第九条の戦力の解釈について、国際紛争解決のための戦争は放棄したが、自衛のための戦力は持つてもさしつかえないとの意見があるが、傾聴に値するものであると思うと言つておられる。しかし、芦田均氏は、この点について、すでに一昨年の一月同様の意見を述べており、木村長官の指摘しておる議論は別に耳新しい議論ではないのである。芦田氏らのこのような説に対し、金森徳次郎氏は、憲法で放棄しておるのは、国際紛争解決としての戦争すなわち侵略戦争であつて、防禦戦争については一言も触れていない、触れていない以上は、できると解釈すべきであり、防禦もできぬ、自衛権もないとは解釈できない、ただ第九条二項によつて一切の戦力を持てないのであるから、実際においては防禦戦争もできないと言つており、政府も従来この意見を採用しておつたことは事実である。しかるに木村長官が、今日突如として、自衛の場合なれば戦力を持つてもいいとの説に同調をしているのは、了解に苦しむところである。保安隊を増強せよとのアメリカ側の要請は、政府を引きずつて、今や保安隊本来の任務たる国内治安維持の範囲を逸脱する程度に、至らしめ、さらに今度は、MSA交渉に関連して、非公式ながら保安庁をしていわゆる防衛五年計画を用意せしめるに至つたのである。アメリカの要請ということは事実ではないかもしれないが、国民にはそう思われている。政府としては、このアメリカ側の要請と、憲法第九条の改正はしたくないという国内情勢との間に、板ばさみとなつておる形であるように思われる。いずれにしても、現憲法のもとにおいて、自衛のためなら戦力を持つてもよいという解釈をなすことは、結局憲法第九条を骨抜きにしてしまう結果となる重大問題である。政府は、この点に関し、いかなる見解を持つておられるかを承知いたしたいのであります。
 質問の第四は、自衛力の漸増ということであります。予算編成期になると、いつも自衛力漸増の問題がやかましくなつて来る。保安隊の増強はもうたくさんだと言つておるのに、今年もまたMSA問題に関連して増強問題が起つている。国民は、アメリカは日本の自衛力をどこまで持つて行くことを期待しておるのか、日本政府はどこまで持つて行くつもりであるのかということに、多大の不安を感じておるのであります。国民はもう十分だと思つているのにMSAからの軍事援助の計画が飛び出したり、国民が保安隊は警察であると思つているうちに、いつしか軍隊に似たおばけができて来るということでは、国民は、政府に対してばかりでなく、アメリカに対しても決していい感情を持てないことになるのであります。政局の安定を希望し、日米協力がきわめて必要だと思つている人々にとつて、これほど遺憾なことはありません、よつて私は、自衛力はどの程度まで増強すればよいのか、その程度について政府の御意向を承知いたしたいのであります。また、でき得れば、アメリカとしてはいかなることを期待しておるのか、この点もあわせて承りたいのであります。
 質問の第五は、世界平和への努力についてであります。世界平和は世界の人々がこぞつて熱望しておるところであるにもかかわらず、第二次世界戦争が終つたか終らないのに、平和を乱す新しいいろいろな事実が次から次と出て来て、世界は今や大きな二つの陣営にわかれて抗争を続け、軍備競争は激甚をきわめておる実情であります。ひつきようこれは、相互信頼感の欠如から、疑惑が疑惑を生んでここに至つておるのであるから、世界の政治家は、世界平和のため、今こそ大局的見地に立つて、相互信頼感のとりもどしに乗り出さなければならない時期であると考えられるのであります。ミユンヘンの失敗を警戒することもさることながら、アイゼンハウアー、チヤーチル、マレンコフの三巨頭が、一地に会合して、胸襟を開いて世界の平和を談じ合うことは、もはや躊躇すべきでなく、成敗いかんのごときこの際顧慮する必要はない。時もあろうに世界が平和に向つて動き出そうとしておる際、もし日本が、新軍の基礎を築くというような観念から、保安隊を強化したり、さらに進んで平和憲法を改正してまで再軍備をしようとすることあらば、国民大衆の失望これより大なるものはありません。先年グランサー大将が、アメリカの国会における軍事財政の合同委員会に出席して予算の説明をした際、国防の直接責任を持つ専門軍人としては、月をも要塞化したいくらいに思うものだが、その取捨決定は政治家の責任であると述べたことがある。世界軍備競争の炎の中に日本再軍備という一束のまきを投げ込んで、世界を破局に導くことり片棒をかつぐか、平和憲法を擁護して世界平和への前進を妨げないようにするかということは、日本の政治家の選択にまかされておるのであります。この点に関し、旧日本の経験から、つぶさに政治家の責任の重大さを痛感されているはずの吉田総理の御決意を承り得れば幸いであります。
 以上をもつて私の総理大臣に対する質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 有田君にお答えをいたします。
 従来終戦直後において、あるいは占領中、ソビエトの間接進撃と申しますが、とにかく侵略については、いろいろなうわさが絶えず行われておつたのであります。例を申せば、暗夜ひそかにソビエト軍といいますか、ソビエトのスパイが潜航艇でもつて日本沿海岸――その当時は秋田と聞いておつたように思いますが、秋田地方に上陸したとか、あるいはまた北海道の北辺にある設備をなしたとか、あるいはソビエトの飛行機が北辺を脅かしたとかいうようなうわさのために、絶えずわれわれは脅かされておつたのであります。また朝鮮事件が始まりますと、あるいは今日なおその話が往々にして伝わりますが、ソビエトの侵略は終局において日本を目標といたしておるのである、朝鮮に次いで危険を感ずべきものは日本であるのである、朝鮮の戦争は決して外国の戦争ではない、日本自身の危険を感ずべき戦争であるというようなことを言われ、われわれは日本の防衛はどうしたらいいか、日本の経済力、国力から申して、独立の陸軍を持ち、独立の海軍を持ち、もしくは独立の空軍を持つということは、これは国力が許さないが、同時に直接か間接かとにかく共産主義国の日本に対する侵略方針は、はなはだ顕著なものがあるかに言われて、私どもはこれに対して日夜ひそかに心を悩ましておつたのであります。しからば、いかにして日本の防衛を完全にするか、すなわち、ここに考えられたことは日米安全保障条約であります。お話のように、直接侵略は、一応これによつて日本の防衛が完全になり得ると私は信ずるのでありますが、間接の侵略については、決していまなお私は安心をいたしておらないのであります。何分共産主義国はすぐ日本の隣にあるのであります。しかも、日本海を隔て、もしくは支那海を隔てて、日本の南北にわたるこの長い島を守るについては、いずれのところからも侵略せられ、いずれのところからも侵入し得られるような地理的条件にあるのでありますから、この日本の地理上の関係から申して、日本に対する間接侵略というものに対しての防禦はいかにしたらいいか、これはいまなおわれわれははなはだ心中忸怩の念にたえないのであります。社会保障制度を完全にするならばというお話でありますが、ごもつともであります。これは、国力が許し、あるいはまた日本の経済力、財政力が許すならば、社会保障制度も理想的にいたしたいのでありますが、今日はこれを許さないのであります。保安隊の経費にいたしましても、極力その倹約をはかり、その縮減をはかつて、本年の予算においても昨年度よりも収縮いたしておるような状態で、どうかして日本の財政の基礎を確立し、よつてもつて日本の国力を培養したいというところに、私は主力を注いでおるのであります。(拍手)日本の国力が充実したならば、社会保障制度にしても、あるいはその他の防衛にしても、さらに充実ができるのでありますが、今日においては、いかんせん、敗戦後の日本としてはぜいたくは申せないのであります。すなわち、現在の保安隊にしてもあるいは防衛にしても、でき得べくんば現在の程度でとどめておきたい。これを漸増するということもわれわれは考えております。しかしこれは、国力の充実によつて自然に漸増せらるる線に持つて行つてはどうかと思うのでありますが、しかしこれは国外の環境あるいは外国との関係――侵略と申すのは言葉がおかしそうでありますが、共産主義がどういう態度に出るか。国際の情勢は日にはかるべからざるものがありますから、いかなる場合においても防衛費はふやさぬとは申しませんが、しかしながら、現在の状態において、現在の環境においては、得ベくんばこの程度で防衛費をとどめたい。よつてもつて国力の培養に主として努めたいと考えておるのであります。(拍手)
 さてしからば、戦力とはいかん、自衛力の漸増とはいかんというお尋ねでありますが、これは保安大臣から常に説明をいたしておりますから、木村君にお願いいたすことにいたします。
 そこで、世界平和の努力についていかんというお尋ねでありますが、これ世界平和は、いかにしても日本国としては自由国家群に協力して、そうしてこの自由国家群の防衛力と申す、その勢力がますます強くなり、日本も含まれた太平洋の安全が保障せらるるように、日本としては、あくまでも国連あるいは自由国家に協力をいたすことが、条約上の義務であり、また実際政治の必要とすべきところと考えておるのであります。(拍手)
 その他については主管大臣からお答えいたします。(拍手)
○副議長(原彪君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会