第016回国会 本会議 第35号
昭和二十八年八月三日(月曜日)
 議事日程第三十四号
    午後一時開議
 第一 岡崎外務大臣不信任決議案(鈴木茂三郎君外百三十一名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の続)
 第三 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の続)
 第四 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の続)
 第五 信用保証協会法案(内閣提出)(前会の続)
 第六 戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議案(山下春江君外二十四名提出)
 第七刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第八 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第九協同組合による金融事業に関する法律等の一部を改正する法律案(千葉三郎君外十一名提出)
 第十 医療法の一部を改正する法律案(参議院提出)
 第十一 昭和二十八年六月及び七月の大水害による公立教育施設の災害の復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案(参議院提出)
 第十二 財団法人労働科学研究所に対する国有財産の譲与に関する法律案(橋本龍伍君外七名提出)
 第十三 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第十四 地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案(内閣提出)
 第十五 労働金庫法案(参議院提出)
 第十六 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(水産委員長提出)
 第十七 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第十八 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第十九 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十 昭和二十八年六月及び七の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十一 昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十二 昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十三 昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十四 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十五 昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十六 昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十七 昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十八 昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第二十九昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第三十 昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第三十一 昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 第三十二 昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
    午後三時十八分開議
●本日の会議に付した事件
 予算委員長辞任の件
 参議院提出、昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂の排除に関する特別措置法案を水害地緊急対策特別委員会に付託するの件(議長発議)
 日本工業標準調査会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 外務省参与任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 議員中助松君の逝去につき院議をもつて弔詞を贈呈し、その弔詞は議長に一任するの動議(三浦寅之助君提出)
 日程第一 岡崎外務大臣不信任決議案(鈴木茂三郎君外百三十一名提出)
 日程第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の続)
 日程第三 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の椀)
 日程第四 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(前会の続)
 日程第五 信用保証協会法案(内閣提出)(前会の続)
 日程第六 戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議案(山下春江君外二十四名提出)
 日程第七 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第八 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 日程第十 医療法の一部を改正する法律案(参議院提出)
 日程第十一 昭和二十八年六月及び七月の大水害による公立教育施設の災害の復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案(参議院提出)
 日程第十七 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第十八 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第十九 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十 昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十一 昭和二十八事年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)事
 日程第二十二 昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十三 昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林、漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十四事、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十五 昭和二十八年六月一及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十六 昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十七 昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関、する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十八 昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第二十九、昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案、(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第三十 昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第三十一 昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案(水害地緊急対策特別委員長提出)
 日程第三十二 昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のため特別措置に関する法律案(水害地緊急対策特別委員長提出)
    午後三時十八分開議
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。予算委員長尾崎末吉君から委員長辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。(拍手)よつて許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。参議院提出、昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂の排除に関する特別措置法案は、水害地緊急対策特別委員会に付託いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決定しました。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、日本工業標準調査会委員に参議院議員奥むめお君を任命するため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
    ―――――――――――――
○議長(堤康次郎君) 次に、内閣から、衆議院議員小金義照君、同じく早稻田柳右エ門君及び参議院議員岡崎真一君に外務省参与を命ずるため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) 御報告いたすことがあります。議員中助松君は去る七月三十一日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 この際、弔意を表するため、三浦寅之助君から発言を求められております。これを許します。三浦寅之助君。
    〔三浦寅之助君登壇〕
○三浦寅之助君 ただいま議長から御報告のありました故議員中助松君に対し、院議をもつて弔詞を贈呈し、その弔詞はこれを議長に一任するの動議を提出いたします。
 御承知のごとく、中君ば、去る七月三十一日、議院運営委員会に委員として出席中、にわかに病を得て、再起不能のまま、遂にわれわれ同僚と永遠にたもとをわかつに至つたのであります。まことに痛惜哀悼の至りにたえまえん。この際、僭越ながら、私は、諸君のお許しを得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を述べたいと存じます。(拍手)
 中君は、富山県のご出身でありますが、横浜市を第二の故郷として、この地と人に親しまれたのであります。明治大学を終えて数年の後には、弱冠にしてすでに神奈川県会議員に当選し、次いで副議長に選ばれて県政に尽瘁する等、その徳望推して知るべきであると存ずるのであります。昭和十七年、衆望を負うて横浜市より当選し、本院に議席を占め、若き政治家としてその将来を嘱望されたのでありました。その問、内務参与官として戦藤下の困難事な内治に参画されましたが、終戦後は、しりぞいて、もつぱら地方公共のために力を尽されました。雌伏数年、昨年十月には再び横浜市より本院議員に当選、本年四日の総選挙にも重ねて栄冠を得られ、もつて今日に至つたのであります。本院においては、議院運営委員として才幹を発揮されましたことは、御承知の通りであります。今期国会の会期も切迫した張る七月三十一日、議院運営委員会の開会中、急患を発して再び立たず、悲壮にもその職に殉ずるに至つたことは、私情を越えて、われわれの痛惜おぐあたわざるところであります。
 君は、資性豪放にして闊達、熱血の人として知られ、その明敏なる頭脳と、まれに見る雄弁は、政界の人として、まことに注目すべき存在でありました。日本の独立後日なお浅く、内外に幾多の問題をはらむ今日、あたら春秋に富む身をもつて、にわかに長逝せられましたことは、まことに痛惜傷心の至りにたえないところであります。われわれは、いまさらに生前の君を眼前にほうふつして、感無量なるとともに、ここにつつしんで哀悼の微衷を披瀝し、君の御冥福を祈る次第であります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) ただいま三浦君から提出されました動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議は可決せられました。
 ここに、議長の手元において起草いたしました文案を朗読いたします。
 衆議院ハ議員正五位中助松君ノ長逝ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
 この弔詞の贈呈方は議長においてとりはからいます。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) 日程第一は、提出者より委員会の審査省略の申出があります。事事右申出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、岡崎外務大臣不信任決議案を議題といたします。(拍手)提出者の趣旨弁明を許します。勝間田清一君。
    〔勝間田清一君登壇〕
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表して、両派社会党の共同提案になる外務大臣岡崎勝男君の不信任決議案の提案理由を申し述べたいと存じます。(拍手)
 まず案文を朗読いたします。
 衆議院は、外務大臣岡崎勝男君を信任せず。
  右決議する。
    〔拍手〕
 以下、これが提案理由を申し述べたいと存じます。
 われわれが岡崎外相を不信任する第一の理由は、岡崎外相の秘密独善の対米一辺倒の外交が、敗戦日本の国民すべての念願である独立を危殆に瀕せしめつつあることでございます。(拍手)もとより、私は、日本人といたしまして、今日の日本を独立国なりとみずから信じ、みずから慰むる気持の尊さを否定するものではございません。また、みずからの国をあえて卑下せんとするものでも断じてございません。しかしながら、終戦以来八箇年を経た今日、日本を完全なる独立国たらしめ、みずからの国をみずから支配する誇りある日本たらしめたいことを強く念願すればするほど今日の日本の実体を何らおおい隠すことなく、ありのままの姿を客観的に見きわめなければならないと存ずるものでございます。(拍手)そして、かく見れば見るほど、日本の独立は、残念ながら名目的であり、形式的であつてその実体を備えるのには、はるかに道遠きを覚えるのでございます。(拍手)そして岡崎外相の現にたどつておる道は、その完全独立への確実なる道ではなくして、むしろアメリカへの従属の道であることを指摘せざるを得ないのでございます。(拍手)
 このことは、日本と同じ運命をたどつて来た西ドイツと比較することによつていよいよ明白であります。すなわち、あの屈辱的条件とも称すべき無期限駐屯を外国軍隊に許容する講和条約や、独立と平和を脅かす日米安全保障条約あるいは行政協定といつた一方的押しつけの軍事条約を代償として、ようやくかち得た日本の形式的独立と、これとまつたく対照的に、よその国の野心を満足させるために、ドイツ民族の血の一滴も流さないと豪語いたして、形式的講和条約をあえて批准しておらない西ドイツの実質的独立との間には、大きな差異があることを発見するのでございます。(拍手)この差異を生ぜしめた原因は、あるいはドイツ民族と日本民族との間の自覚の差であると称する人もあるかも存じません。また、政治する者の個人的な識見や力量の差と称する者もあるかも存じません。しかし、それにも増して重要なことは、焦土から立ち上る民族の情熱と、これを激励し、これを力づけて、これに方向を与えて行くところの政治とがいかに直結するかにかかつておると、私は確信いたすものであります。(拍手)敗戦国日本の外交が困難であればあるほど、政治と大衆との結合されたかにたよらなければならぬことは、古今東西の歴史と経験とが教えるものであると私は存じます。従つて、外交は元来秘密であるといつたような秘密外交主義とか、あるいは国会が解散し、しかも選挙中であるにもかかわらず、不信任された内閣が通商航海条約に調印するといつたような非立憲的な独善外交からは、敗戦日本の独立と自由の外交は断じて生れて来ないものと私は確信いたします。(拍手)
 外国の軍隊が一国の国内及びその周辺に無期限に駐屯する国家に、はたして独立国たるの名称を付するに値する国が、世界のどこにあるでありましようか。(拍手)あのインドやエジプト等の、かつての植民地国家が、サンフランシスコ条約を評して、これはアメリカが引続いて日本国を占領するものであると指摘したことを、われわれは今日耳新しく思い出すのであります。それにもかかわらず、この国に駐屯するアメリカ軍隊が、今日はたして減少しつつあるとでも言うのでありましようか。いな、むしろ逆に、外国軍隊は今日増加し、軍事基地はいよいよその数を増して、今日七百数十箇所に及んでおるというのが、今日の日本の実態でございます。あの漁民の意思を蹂躙して強行された内灘の試射場の経験は、形式的独立の日本の真実を暴露した以外の何ものでもございません。(拍手)また日本の軍事的対米従属の具体的表現とも言うことができましよう。われわれの眼をもつていたしまするならば、岡崎外相は、アメリカの軍事基地拡大のために協力しておるのか、(拍手)日本の農漁民の利益を代表して働いておられるのか、私は遺憾ながら疑問を持たざるを得ないのでございます。(拍手)朝鮮動乱が平和的に解決せんとする今日において、軍事基地が漸次縮小され、農民に返還されて行くと考えるのが常識でございましよう。しかるに、今日の状態は、いよいよ土地や海浜が奪われておるのが今日の実情でございます。
 岡崎外相は、また、今日まで属人主義の刑事裁判権の回復の問題について、常々これを約束されて参りました。しかしながら、条約発効以来すでに一年数箇月を経た今日、いまなお改正さられておらないのでございます。ましてや、岡崎外相による屈辱的な行政協定の改正は望むべくもないのでありまして、そうして連合国の軍隊を今日いまなお無協約のまま日本に駐屯させておる岡崎外交を、われわれは糾弾せざるを得ません。(拍手)
 また、日本は、アメリカを中心とする西欧諸国と確かに講和を締結いたしました。しかし、中ソ両国との国交回復はいまだに見ることはできません。また、ビルマ、インドネシア等の自主中立外交をとつておる諸国といまなお講和を締結せず、日本がまさにアジアの孤児となつておる現実を私は悲しむものでございます。岡崎外相は、相手があることであるからしかたがないと言つて、その責任をこれら諸国に帰せしめんとしておるかに見えますけれども、これははたして正しいと言うことができましようか。私をして言わしむれば、あえて二大勢力の渦中に飛び込み、その一方たるアメリカに従属し、さらに中ソ両国を仮想敵国として、軍事基地を提供し、再軍備するサンフランシスコ条約を締結したことが、すなわち対米一辺倒の外交なるがゆえに、これら諸国が日本と講和を締結していないというのが真実でありましよう。従つて、今日のかかる状態を生ぜしめたことは、むしろ吉田・岡崎外交そのものに責任があると言わなければなりません。(拍手)ましてや、賠償問題に失敗し、いまなお東南アジア諸国と講和条約を締結し得ないことは、岡崎外交のぬぐうべからざる失敗と言わなければならぬのであります。(拍手)
 かく見て参る場合に、もはや日本の独立は、実質的にはもちろん、形式的にも、岡崎外交をもつてしては完全なる行き詰まりに当面しておるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)もし、日本がさらに独立の実を収め、中ソ及びアジア諸国家との講和を一歩前進させようといたしまするならば、まず岡崎外相の退陣が第一条件であると私は確信いたします。(拍手)
 岡崎外相不信任の第二の理由は、独立と同様なる重要性を持つておる平和を、岡崎外相は再び三たびここに誤り導かんといたしておる事柄でございます。
 われわれが常に声を大にして今日まで指摘して参つたごとく、わが国の平和確保の根本は民主憲法に明白に規定されておると私は確信いたします。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、私はこの憲法九条をあえてここに朗読しなければならない今日の日本の現状を悲しまざるを得ないのでございます。それほど今日自衛を名として武力の蓄積が公然として行われておるのでありまして、この九条をあれやこれやと解釈せんとする学者もございますし、これにかりて、みずからを合理化せんといたしておるのが、今日の吉田内閣の実態でございます。吉田内閣の言葉をもつていたしまするならば、まさに曲学阿世とはこのことであると私は存じます。(拍手)
 帝国憲法改正案が提案されたのは昭和二十一年六月二十五日でありましたが、その際、吉田総理は、「此ノ高キ理想ヲ以テ、平和愛好国ノ先頭二立チ、正義ノ大道ヲ踏ミ進ンデ行カウト云フ固キ決意ヲ此ノ国ノ根本法ニ明示セントスルモノデアリマス」と言わしれました。また、当時金森国務大臣は、補足的な説明の際に、「是コソ我が国自ラ捨身ノ態勢ニ立ツテ、全世界ノ平和愛好諸国ノ先頭ニ立タントスル趣旨ヲ明カニ致シマシテ、恒久平和ヲ希求スル我が大理想ヲ力強ク宣言シタノデアリマス」と説明されております。また、この新憲法の精神は、憲法改正委員会委員長である芦田均君の委員長報告によつてさらに明白でございます。すなわち、芦田均君は、「侵略戦争ヲ否認スル思想ヲ憲法ニ法制化シタ前例ハ絶無デハアリマセヌ」「併シ我ガ新憲法ノ如ク全面的ニ軍備ヲ撤去シ、総テノ戦争ヲ否認スルコトヲ規定シタ憲法ハ、恐ラク世界ニ於テ之ヲ口口嚆矢トスルデアリマセウ」と言われておる。(拍手)これは明らかに、自衛のための交戦権、すなわち国権の発動としての交戦権をも否定いたしておることは明白であります。
 しかるに、今日吉田内閣は、わずか七年にいたしまして、この憲法を破らんといたしておるのであります。その対外的な使い走りをいたしておるのが岡崎外相であります。(拍手)岡崎君は、自発的にして個別的、集団的な自衛のための固有の権利ということをたてにとりまして、直接侵略のための自衛力を今日つくりつつあるのでございます。その最も具体的なものが、このたびのMSA交渉でありましよう。岡崎君は当初日米安全保障条約の規定以上の義務を負うものではないと説明をされましたが、日米交換公文の発表せられるやいなや、ここに新たなる軍事的義務を負わんとされるということを言明するに至りました。また岡崎君は、MSA援助は日本の経済的援助であると宣伝されましたが、明らかに今日に至つては完成兵器の援助であつて、まさに純軍事的援助を受けんとするに至つておるのであります。(拍手)武力の保有の大規模なる計画を岡崎外務大臣はやりつつあるのでございます。従つて、今日においては、もはや議論のやりとりの問題ではないのでございます。具体的に明白なる憲法違反の行為を岡崎外務大臣は現に実行いたしつつあるのでありまして、まさに公然たる新憲法に対する挑戦と言うべきでありましよう。(拍手)
 岡崎外務大臣のこうした外交は、結局どこに進んで参るのでありましようか。アメリカの軍備を持ち、訓練を受けた三十五万の日本の傭兵を再軍備し、相互協定の美名に隠れた出兵の義務を負い、そして太平洋軍事同盟結成による、日本の国土と人的資源動員によるアメリカヘの軍事的貢献にこれはすぎないであろうことは明々白々でございます。(拍手)あるいはこの道は、第二の朝鮮の運命がわれわれ民族に押しかかつておるとも極言できるでございましよう。愚かにも、戦争の歴史がここに再び三たび繰返されようといたしております。四十万の犠牲を受けた広島の犠牲も、岡崎外相の脳裡にはなきかのごとくでございます。
 今日、しかしながら、われわれはいたずらにアメリカを非難せんとするものではございません。リンカーンやジエフアーソンといつた偉大な民主主義の精神が、今日アメリカ国民の良識の中に根をおろしておることを信ずるものでございます。ただ、われわれが今日おそれるところのものは、あのイギリスのアトリーが言つたように、アメリカには戦争を好む者があると言つた、その戦争を好む人、また戦争を好む経済的、社会的な原因でございます。日本の政治がこの戦争を好む原因と政治的に軍事的に結合するから、そのことから日本を守るというのが、われわれの真実の願いでございます。岡崎外相の個人的な良識を疑うものではございませんけれども、この戦争を好む外国勢力と日本の勢力とのきずなを断ち切るために、岡崎外相は当然不信任さるべきものであると私は存じます。(拍手)
 岡崎外相不信任の第三の理由は、日本の経済外交における、まつたくなすところのない岡崎外交の失敗でございます。
 過去八箇年にわたる敗戦日本の第一の課題は、八千九百万国民の生活をとりもどすことでございました。また、日本の経済構想が加工貿易方式を確保することなくして、われわれの生活確保はあり得ないことも確かでございます。食糧と原料を輸入し、加工製品を外国に輸出して経済自立を確保するこの日本経済の特質は、対内政策もさることでありますけれども、最も対外政策に重点を置かなければならぬことを証明するものでございます。従つて、日本の外交は、当然経済外交第一優先主義をとられなければならなかつたと私は存じます。
 私は先ほど西ドイツの場合をあげて独立の問題を申し上げて参りましたが、日本と西ドイツの差は、この経済の問題になれば一層明白となるのでございます。これを最も簡明に現わすものは輸出でございます。すなわち、西ドイツの輸出は今日すでに戦前の二二〇%に達しておるのであります。しかるに、日本の輸出貿易はわずかに戦前の四五%にすぎないのであります。一三〇と四五の差を生ぜしめた有力な原因には、国内的には鉱工業の回復に近代化をはかり、対外的には経済外交に重点を置いたことにあると思います。このことは、対内的には自由放任を、対外的には再軍備外交に終始して参り、経済外交をおろそかにした岡崎外交の責任がそこにあると思うのであります。(拍手)
 経済外交がいかに失敗したかという理由の中で、まず外資導入の実績でありますが、昨年まであれほど強く約束されたにもかかわらず、今日何ら見るべきものがないことは事実でございます。三百億円の予算を計上し、国際開発銀行に参加したのは、池田財政の当時でありました。しかるに、それから今日まで、びた一文外資が導入されていると言うことができるでありましようか。(拍手)過般来朝したガーナー氏も借入れに必要な総合的な計画のない日本の産業に貸し付けることはできないと言つておるではありませんか。しかも、このたびにおける日米通商航海条約においては、一見平等なる原則が立てられておるかに見えますけれども、事実は、除外産業を大幅に譲歩し、期間も三箇年といたし、さらに預金業務その他の占領中の既得権も彼らに与え、しかも経済的に弱小なる日本産業の保護に対しては何らのとりきめをなしておらないのであります。ガツト加入の問題も、日韓、日濠の漁業条約の締結も、今日いまなおできておりません。また、中共貿易促進決議案の上程の際に、岡崎外相は、中共貿易において西欧諸国に立ち遅れないように努力すると言われておりまするが、今日まで中共貿易も不当抑圧して、渡航さえ禁止した岡崎外相が、中共貿易にかわる何らかの代償をはたして得たと言うことができ得るでありましようか。(拍手)一枚看枚である東南アジア外交においても、このたびにおける東南アジア地域に対する日本の貿易の割合はわずかに七・六%にすぎない状態で、これはまさに一九三八年、今から十四年前の貿易規模であることをわれわれはここに考えて参りますと、東南アジア貿易の開発は何ら進展を見ておらないというのが今日の実態でありましよう。これは、賠償問題に失敗し、あるいは対日援助の債務の支払いに失敗いたしておる、あるいは河野一郎君の言つておる通りに、四千七百万ドルの日本の正当なる権利さえ蹂躙されておることを今日考えてみますならば、われわれは、岡崎外交の、なかんずく経済外交は今日失敗の極に達しておるものと私は断ぜざるを得ません。(拍手)
 これを要するに、岡崎外交をもつていたしますれば、日本の経済外交はもはや完全なる行き詰まりであり、岡崎外交をもつていたしましては、日本の経済自立は断じてできないと私は断言してはばからないところであります。
 以上、日本の独立と平和と経済自立の三点から、岡崎外相不信任の理由を説明して参りましたが、ある者は外交を政争の具に供してはならないと言う者があるかもしれません。しかし、私は、すでに最初に指摘しました通りに、外交は強き国民の輿論に裏づけられなければならないと存ずるものでありまして、そうして岡崎君個人が外相のいすから去ることによつて、日本の独立と平和と経済自立の外交が一歩前進するといたしましたならば、岡崎外交は当然ここに不信任されなければならぬものと私は確信いたします。
 以上、私は、ここに決議案の上程の提案理由を説明し、皆さんの御賛同を得ようとする次第でございます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) これより討論に入ります。佐々木盛雄君。
    〔佐々木盛雄君登壇〕
○佐々木盛雄君 ただいま上程されました岡崎外務大臣不信任決議案に対しまして、私は自由党を代表いたしまして反対の討論を行わんとするものであります。
 まず、本不信任案提出の理由といたしまして、提出者は岡崎外交の秘密独善性をあげております。もとより、われわれは、国民の権利義務に連なる条約や協定を国会に諮ることなく、秘密のうちに締結をいたしますようなことは断じて許し得ないのであります。たとえば、アメリカにおきましても、いわゆるヤルタ秘密協定に対して、共和党が猛烈なる反対を示しましたごときは、ともに国政担当の任に当るわれわれ国会議員といたしまして、大いに共鳴、同感を覚えるものであります。しかしながら、外交交渉におきましては、その交渉の過程において、その内容を一々残さず詳細に報告し公開するが、ごときことは、国際信義の上からも、またその交渉の円満なる妥結をはかる上からも、最も慎まなければならないところであります。(拍手)ゆえに、この意味におきまする限りにおきましては、外交の秘密ばその性質上絶対に厳守すべきことは国際外交の常識でございます。もちろん、相手国におきまして異存のなき場合におきましては、随時交渉の内容、経過等につきまして公表することは最も望ましいことでありまして、最近のMSAに関する対米交渉につきましても、政府は、まだ交渉の始まらない前から、問題の所在及びこれに対する政府の考え方をしばじば国会特に外務委員会において説明し来り、また国会で表明されました疑念につきましては、アメリカ側との間に特に文書を交換いたしまして彼我の見解を明確にし、これをただちに公表いたしておりますることは、御承知の通りでございます。(拍手)かくのごとき政府の態度は、決して秘密独善どころか、いな、ガラス張りの公開外交と言うべきであります。(拍手)民主政治のもとにおける外交の新しき方式といたしまして、まことに好ましき先例をつくつたものと言うべきであります。(拍手)
 次に、提案者は、岡崎外相が国会解散中のいわゆる選挙管理内閣におきまして日米通商航海条約に調印を与えたことを非難いたしております。元来、この条約は、すでに一昨年末以来、日米両国間におきまして交渉が継続せられておつたのでありまして、本年二月下旬に至り、わが方の主張を十分に取入れ、かつ両国間に完全に意見の一致を見ましたので、三月下旬に署名調印を行う予定となつておりましたところ、時たまたま野党提出の内閣不信任案の通過によりまして、衆議院解散という予想せざる新事態が発生いたしましたので、やむを得ず予定通り調印を行い、本国会においてこれが批准に対する承認が求められ、先日の本会議におきまして承認されましたことは、御承知の通りであります。(拍手)もちろん、本条約の効力発生の前提条件となるべき批准の交換は国会の承認をまつて行われるものでありまするから、決して国会無視というごとき議論は成り立ち得ないのであります。特に本条約は、アメリカ上院の慣習によりまして、すでに調印を了しておりまするアメリカと他の各国との通商条約を一括審議せられまする関係上、もし上院の会期中に間に合わないときは、一年間以上も批准ができないことになり、日米間の通商経済関係は依然として無条約のままに取残されることになり、これによる損害がまことに甚大なるものがありますことは、先日の本議場において私が指摘した通りであります。(拍手)すなわち、政府は、かくのごとき関係等を十分考慮いたしまして、急速調印を行うの必要に迫られたのでありまして、少しくこの間の事情に通ずる者にとりましては、政府の措置はまことに時宜に適したものと言わなければなりません。(拍手)
 次に、提案者は、岡崎外交をもつて向米一辺倒なりと攻撃をいたしておるのであります。そもそも、わが国とアメリカとの関係は、たとい軍閥指導者によつて誤れる戦争に巻き込まれ、数年間の不幸なる間隙はあつたとしても、すでに百年有余の長きにわたる親善友好の歴史を持つておりまして、ことにアメリカはへ日本独立の基礎を築くべき平和条約の締結に関しましては、並々ならぬ努力を傾け、また無防備日本の危険に対しましては、安全保障条約の締結によつて、わが国の平和と安全の確保を保障し、さらに敗戦後の経済回復のためには特質的援助の数々を与え、もつて日本経済の自立達成に莫大なる寄与をなしましたことは、何人もこれを留めるに異存のないところであります。(拍手)従いまして、日米両国間の政治、経済、文化各般の関係が、その他の諸外国に比して一段の緊密度を加えていることはもちろんであります。いわんや、いまなお日本との講和締結を拒否し、今もつて国際法上日本と戦争状態にあるソ連並びにその衛星陣営とわが国との関係に比べますれば、その国際関係の緊密なことは、まさに天地霄壌の差があることはもとより当然と言わなければなりません。(拍手)次に、提案者は、岡崎外交は中共貿易に対して熱意を示していないとのことでございます。もとより、われわれは、たとい今日の中共がいかなる政治形態の上に立つといたしましても、かつての善隣であつた大陸との緊密なる経済提携につきましては、かわらざる友好親善の手を差延べんとするものでありまして、本院におきましても、中共貿易促進に関する決議案が成立した次第であります。政府といたしましても、中共との平和的貿易の拡大に努力して参りましたことは、たとえば今年一月より三月までのわが国の中共貿易が、昨年の同期に比して、輸出入とも二倍以上に増加しております実績に徴しても明らかなところであります。しかも、三月以降、中共貿易は逐次拡大の一途をたどつておるのであります。岡崎外相は、本国会におきましても、朝鮮休戦成立後の情勢の変化に応じて、中共貿易について、決して他の西欧諸国に立ち遅れることのないように、積極的施策をとるため十分なる準備がある旨を述べておるのであります。しかし、国際連合の一員として、自由諸国家との提携をわが外交政策の基調といたしておりまする日本といたしましては、現に国際連合が、中共を侵略国と断定し、これとの貿易に関する制限を決議いたしておりまする関係もまた十分に考慮に入れなければなりません。従つて、この国際連合との協力関係を全然無視して、中共貿易一辺倒に走らんとするがごときことは、とうてい識者の認め得ざるところであります。(拍手)
 さらにまた、提案者は、内灘の問題等に対する岡崎外相の措置を非難いたしております。最近、内灘問題その他駐留軍に提供すべき施設及び区域につきまして、関係地元民初め各方面の反対の声が高まつて参りましたので、われわれも、外務委員会におきましても、参考人の出席を求め、種々意見を聴取する等の措置をとつておる次第でありまして、地元民の切実なる反対の理由につきましては、まことに同情を禁じ得ないのであります。しかしながら、一昨年四月、日米安全保障条約に伴つて締結されました行政協定により、日本の安全保障のため、アメリカ軍の駐留を認めまするとともに、これに必要なる施設及び区域は、条約上の義務としてこれを提供しなければならないことになつておるのであります。よつて、政府といたしましては、なるべく国有地の使用をこれに充て、民有地の使用は極力最小限度に食いとめまして、地元民に及ぼす悪影響を少くすることに努めておるわけでありますが、しかし、しよせんは、いずれかの区域はその犠牲となるのほかはないのであります。もとより、やむを得ずその指定を受け、損害をこうむります土地の関係者に対しましては、損失の補償等について、法令の許す範囲において最大限の考慮を払つておるわけであります。土地、海面等の提供は、多くの場合地元で歓迎されないのは当然でありますが、少くとも現在まで、内灘等のごとく特殊な例を除きましては、いずれも地元民と話合いの上、円満に実施されておる実情であります。われわれは、これが犠牲となりました地元民に対しましては心から同情をささげるものでありますが、一面彼らの純真なる叫びの背後にありまして、これをことさらに反米運動の政争の具に供しつつあるものの存在することもまた万人の認めるところでありまして、まことに遺憾千万に思うのであります。(拍手)
 さらにまた、提案者は、岡崎外相は、MSA交渉に関連して、憲法を無視して保安隊を自衛軍に切りかえる意向を表明したと非難いたしております。言うまでもなく、憲法第九条は、その前段において、国際紛争解決の手段としての戦争を放棄したものであり、その後段において戦力の保持を放棄いたしたものであります。およそ国際紛争が発生いたしました場合におきましては、第三国の調停あるいは国際裁判または外交交渉によりまして、平和的手段によつて解決をはかるのが常道でありますから、これを武力に訴えるというのは、おおむね国力伸張のための侵略戦争の場合であります。憲法はそのような侵略戦争や戦力を放棄したものでありまして、戦力に至らざる限りにおいて一わが国の自衛態勢を漸次強化せんとするのが、岡崎外相のみならず、わが自由党のかわらざる政策であります。(拍手)もとより、自衛力の増強は、すでに日米安全保障条約によつてアメリカ側から期待されておりましたものが、MSAを受けることによつて日本に義務づけられて行くべき方向にあることは当然でございます。しかし、戦力の保持は日本憲法の禁ずるところでございますから、MSAも決して憲法の禁ずる戦力の保持を日本に義務づけんとするものではありません。しかしながら、MSAの協定のいかんにかかわらず、今日日本の周辺が有史未曽有の脅威の前にさらされておりますとき、光栄ある祖国を外敵の侵略から守り抜かんとするわれわれが、憲法の許す限り、戦力に至らざる範囲の防衛態勢の確立を念願いたしまするは、けだし日本民族の切実なる悲願であろうと信ずるのであります。岡崎外相はしばしばこの旨の反復説明したものでありまして、これは自由党の一貫せる態度の上に立つものでありまして、憲法違反の言動はその片鱗とても発見することができないのであります。
 岡崎君は、昨年四月外務大臣に就任以来一年数箇月、サンフランシスコの平和条約効力発生後の独立日本の困難なる外交を担当し、この間におきまして実に五十七箇国との国交を回復したのでありまして、今や国民待望の行政協定の改訂を初め、国運民命を決定すべき外交問題が山積いたしておりますときに際し、われわれが国会におきまして外務大臣に不信任の焼印を押しつけますことは、単に岡崎君個人の政治的責任の問題ではなく、日本と諸外国との国際関係にきわめて悪影響のあることは申すまでもございません。今日いうところの岡崎外交なるものは、決して岡崎君個人の外交方針ではなく、わが自由党吉田内閣の基本政策の上に展開されるものでありますることは、国民のひとしく認めておるところであります。従つて、岡崎外相に対する不信任は、そのまま吉田内閣に対する不信任に通ずるものであります。(「その通り」拍手、笑声)よつて、提案者にもしも政治的良識と一片の勇気がありまするならば、国会解散覚悟の上で、吉田内閣そのものに対する不信任案を提出すべきものと考えるのであります。(拍手)
 外交問題は絶対に政争の具に供すべきでないとの国家的見地に立ちまして、世界の各国はいわゆる超党派外交を強力に展開をいたしております。われわれは、祖国再建の大業を進んで分担するとともに、八千万国民の終奮起を期待いたしておりまするとき、かくのごとき卑怯にして理不尽きわまる、あげ足とり的旧態依然たる政治的謀略が、必ずや良識ある国民の審判の前に強く糾弾されるであろうことを確信いたしまして、私は岡崎外相の不信任案に対しまして断固反対の意を表明して、私の討論を終る次第であります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 西村榮一君。
    〔西村榮一君登壇〕
○西村榮一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、外務大臣岡崎勝男君に対する不信任案の賛成の趣旨を申し述べるものであります。(拍手)
 ただいま、佐々木盛雄君から、岡崎外交信任の、るる御説明がございました。私が、ちようど一年ほど前に、外務常任委員といたしまして、佐々木盛雄君と席を隣にいたしておりましたときに、佐々木君が私にいわく、日本の外交を岡崎にまかせておいては、西村君……(発言する者多く、聴取不能)なりません。……(拍手、発言する者多く、聴取不能)わかりませんが、今日は立場をかえて、本日は自由党の代表として岡崎君の弁護をなさいました。私は、まことに心中お察し申し上げて、その内容の弁駁は差控えます。岡崎外交の最も欠点とされるところは(発言する者多し)――岡崎外交の最も欠点とされるところは、激動して行く国際政局に際しまして、わが国がいかに対処するかの外交の方向が明らかにされていないことであります。第二に、岡崎外交の特徴は、いわゆる世にこれを卑屈軟弱外交、その都度外交と申しまして、わが国をして一方の陣営に片寄らしめ、外交政策の柔軟性と一貫性が欠くるのみならず、その卑屈外交によつて、国家の主権は着々として侵害せられ、経済活動は拘束を受け、遂に特定国の隷属下に置かれんとする危機にわが国が直面するに至つたことであります。(拍手)第三には、国家国民の運命に関する重大な事項が、国民に何らの了解を求むることなく、秘密裏に一方的にとりきめられて、国家百年の大計が誤まられ、秘密独善外交によつて推進せられておるということ、これが国会を無視するの態度なりとして、私どもは反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 ある先人が喝破いたしました。二十世紀の歴史は、戦争と革命の歴史なりと。むべなるかな、二十世紀は戦争と革命によつて、歴史はまさに変革されようとしておるのであります。かくのごとく激動しつつある国際情勢に際しまして、わが国を一日も早く再建し、国際政局に対する発言権をとりもどし、新しい世界的使命をいかに果すかということが、わが国の外交の最も重大なる使命であらねばならぬのであります。この世紀の転換期に際しまして、世はいかにかわりつつあるかの歴史的感覚に立脚いたしまして、米ソの二大陣営の対立から来る国際情勢並びに列国間の利害関係を鋭く洞察いたしまして、日本の平和的発展と、国際的地位をいかに高めるかに対処するのが、現下日本外交の任務でなければならぬと確信するのであります。(拍手)岡崎外交はあえてそれをなさずして、唯々諾々として特定国に盲従するの外交はまさに国を誤るものにして、その気魂と識見の欠如はまことに遺憾千万と存ずるのであります。(拍手)
 第二に、岡崎外交の特色は、世にこれを卑屈軟弱外交と言われることであります。私は、なぜ岡崎外交がかくのごとく世の中の万人が認めるがごとき卑屈軟弱外交をとらざるを得ないか、その理由の発見に苦しむのであります。私は、この際われわれ国民代表として考えてみなければならぬことは、講和条約前文に何と書いてあるか。それは日本の外交の原則を貫くものであります。その講和条約前文に書いてありまする文字は……。(発言する者あり)自由党の皆さん、どうか静かにお聞きを願いたい。連合国及び日本国は……。(発言する者多し)あなた方が喧騒をきわめられまするならば――あなた方が喧騒をきわめられまするならば、それは議会の権威を傷つけるのみならず、私の演説が聞えませんから、騒いでおる間は私は演説をしませんから……。(発言する者多し)議長、騒いでおる間は私は演説をしません。(発言する者多し、拍手)講和条約前文に何と書いてあるかと申しますると、「連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、」云々と書いてあるのであります。この講和条約前文を貫く性格は、連合国と日本国との間においては、あくまで対等なる主権を有する友好国としての地位が確認されておるのであります。従つて、日米両国の関係もあくまで平等なる立場であつて、かりそめにも主権国と隷属国との間における城下の誓いであつては断じてなりません。(拍手)従つて、講和条約締結後に結ばれましたる日米条約は、この講和条約の平等主権のもとにおける友好国としての大原則によつて結ばれねばならぬのであります。
 しかるに、講和条約直後まず結ばれたのが、今問題になつておりまする日米行政協定であります。私は、この日米行政協定の前文を見まして、一体、国連憲章の精神に基いて樹立されたる講和条約において、しかも前文に明記されたる日米平等の原則が、行政協定のどこにその片鱗が現われておるかということを考えざるを得ないのであります。(拍手)近来、歴史の上において、講和条約で最も苛酷にして屈辱的であると言われたのが、第一次欧州大戦後におけるヴエルサイユ条約であります。しかしヴエルサイユ条約でも、本行政協定に見られるがごとき不平等性はございませんでした。ヴエルサイユ条約によつて、ドイツは、二万七千平方マイルの領土と六百四十七万人の人口との割譲を命ぜられ、賠償金は千三百二十億マルク、ドルに換算いたしまして二十二億ドルを賦課せられたのであります。しかしながら、ヴエルサイユ条約は領土の割譲と賠償金をかけましたけれども、連合国はドイツに向つて内政干渉はいたしておらないのであります。(拍手)しかるに、わが国は、講和条約によつて沖縄と小笠原を失い、かつまた千島と南樺太はいまなお未解決な状態にあります。同時に、なるほど賠償金は賦課されなかつたのでありまするけれども、安全保障条約に基いて、アメリカ軍の駐留によつて、わが国は毎年一億五千万ドルないし一億八千万ドルを分担いたしておるのであります。同時に、先ほど勝間田君からお述べになりましたように、本行政協定によつて、わが国は主要なる軍事基地をアメリカ軍に提供を命ぜられておりまするが、その箇所は八十四箇所であります。これは面積にいたしまして、大阪府に匹敵する面積である。しかも、その金額を概算いたしまするならば、それは大体五十億ドルでありまして、ドイツの賠償金の二倍に該当するのであります。(拍手)
    〔発言する者多し〕
○議長(堤康次郎君) 静粛に願います。
○西村榮一君(続) 日米行政協定は、かような財政上並びに軍事基地の苛酷なる負担にとどまらず、その国家主権を侵害する貪欲なる条約である。ということは、近世五十年の歴史において、外国の軍隊に対しかくのごとき特権を与えたのは、その類例を見ないのでありましで、これに対して、世人は、憲法違反なりとして、あるいは国民感情として憤激するや、岡崎外務大臣は議会において何と答弁したかと申しまするならば、この行政協定はほんの暫定的条約でありまするから、一年経過の後にこれは改訂をいたすのであります、ということを繰返し弁明されました。しからば、一年後において本行政協定が改訂されまするならば、何がゆえにその改訂の内交渉を昨年の秋ごろから行つておかなかつたのであるか。その外交的折衝を行わずして、一年経過して、今日なお行政協定の改訂が具体的に日程に上らぬということは、これ明らかに現内閣の怠慢か、議会を愚弄するものと言わざるを得ないのであります。(拍手)しかも、アメリカ軍に対してかくのごとき特権を与えた岡崎外交は、先ほど勝間田君が御指摘になりましたように、今日の日本において、かつての連合国に対し、むしろ無条約のままに占領当時の特権を付与していることは、一体国家の権威いずこにありやと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 かくのごとき自主性なき屈辱的外交に加えて、岡崎外交の一大特色は、何と申しましても秘密独善の外交であるということであります。私は、憲法を蹂躙し、国会を無視する過去の実例を一々ここに列挙することを差控えましよう、ただ、現在問題になつておりまするMSA援助についてその一例を申し上げましても、岡崎外相は、今まで、知らぬ存ぜぬと言うて、ほおかむりをしておいでになりました。(発言する者多し)しかしながら、その内容は、アメリカ側から……。
○議長(堤康次郎君) 西村君、ちよつとお待ちください。
 本日国会対策委員長会議において自粛の申合せをいたしました濃後でありますから、発言の妨害にならぬよう静粛にお願いいたします。(拍手)
○西村榮一君(続) このMSA援助は、単純なる軍事上の援助なりと解釈することは誤りでありまして、この援助によつて、わが国は軍事上、政治上あるいは経済上の多くの変化が招来されるのであります。すなわち、軍事的にはわが国の自衛力は増強せねばなりませんし、相互安全保障条約によつて海外出兵の義務は負わされるのであります。しかりといたしまするならば、この二点をさしても、わが国の憲法に根本的に抵触するということは議論の余地はないのであります。しかも、MSA援助を受ければ、条約上当然MSA機関が日本に設置されまして、その下に軍事顧問団、経済技術使節団、安全保障使節団等が、それぞれの部門にわかれて日本に駐留いたしまして、そのことによつて、政治上、経済上の内政干渉を行うところの法的根拠が、MSA援助だよつて確認されるのであります、私は、かような点を考えてみまするならば、MSA援助の受諾の可否は、単に保安隊に対する武器の貸与であるとか、域外買付による朝鮮特需にかわるわが国経済援助などと甘く考えることはできてないのでありまして、MSA援助という形式を通じて、わが国の政治に一大変化を与えんとするがごとき重要なる事項を、今日まで秘密裏に内交渉を進め来り、これを隠し切れずして、ぽつりぽつりとその一部分ずつどろを吐きつつあるのが、岡崎外交の特色であります。私は、この岡崎外交の秘密独善性は、国民の月をおおい、意思を曲げて、特定国に対し阿諛迎合せんとする買弁的外交なりと言わざるを得ないのでありまして、かくのごとき売国的外交は、やがて国民の憤激を買つて、その交渉の相手国に対しても大なる迷惑と不信行為を招来するということを憂えるものでありまして、私は、国民とともに政治を行う民主主義の立場から行きましても、かくのごとき秘密外交に反対せざるを得ないのであります。
 しかしながら、時の権力におもねて白を黒と言い、黒を白と言うて、万人をたぶらかすことは、岡崎君の人生観であり、常套手段であると申し上げざるを得ないのであります。(拍手)私は岡崎君のこの性格を物語る一つめ事例を提供いたしましよう。かつて、大東亜戦争のまつ最中に、外務省の書記官たりし岡崎君が、外交協会において世界の情勢を講演ぜられて、ソビエトは約束したことは必ず守り通す国であるから、わが国はソ連を信頼して世界政策を遂行することが最も安全にして有効なりということを堂々と力説されたのであります。(拍手)これらの意見が推進力となり、日本の南進政策の強化となり、遂にぬぐうべからざる日本の悲劇を招来したのであります。かつては、ソビエトは信頼し得る唯一の盟邦なりとして力説して、その傀儡外交を推進した岡崎君が、十年を経て、今日外務大臣としてその正反対の立場に立つて、アメリカは最も信頼する友邦にして、ソビエトは不倶戴天の仇敵のごとき言辞を弄していることは、やがて、あすはいかにその言葉がかわつて行くかということが予測し得られるのであります。(拍手)岡崎勝男君の五尺五寸のからだは、あたかもカメレオンのごとく、くるりくるりとその色合いがかわつて行くカメレオン外交なりと言わざるを得ないのであります。(拍手)私はその世渡りの上手さにつつしんで敬意を表するのでありますけれども、それがために、日本はかつてはソ連に苦杯をなめさせられ、今また岡崎君のために、アメリカ迎合外交は刻々として国家主権を侵害し、かつ外交の柔軟性と自主性を失い、日本再建の千載一遇の外交活動の好機を逸しつつある現状は、国民とともに憤慨にたえざるどころにして、後世の歴史家をして慨嘆せしめるでありましよう。
 かくのごとく、権勢に迎合し、その地位を保全せんとする岡崎勝男君の人柄は、単に外交のみならず、その個人的日常生活においても顕著に現われているのでありまして、かつて、岡崎勝男君の選挙に際して、饗応、買収の違反のなかつたことはないのであります。(拍手)岡崎君といえば選挙違反、選挙違反といえば岡崎君の代名詞のごとく、(拍手)目的のためには道義と法律を蹂躪して顧みない性格がここに端的に現われているのでありますが、その選挙違反も回を重ねるに従つてますます天才的手腕を発揮せられて、法網をのがれ得ずと見るや、その選挙事務長を逃亡せしめて法の盲点をつくなど、ますます巧妙しごくになりつつあると言わざるを得ません。私は、この神聖な議場に立つて、演壇に立つて、岡崎君の選挙違反をここに口にすることは潔しといたしません。しかしながら、政治にして道義をわきまえざれば、何によつて国民の信を得んとするのであるか。国民の信を得ずして、何によつて国を治めるのであるか。一国の大臣がみずから悪質なる選挙違反を起し、しかも言動常ならず、きのうは白と言い、きようは黒と言う言葉をもつて国民を愚弄せんとする外交政策こそは、信を国家内外に失い、政治の道義を失墜し、国を滅ぼすの因となるがゆえに、私はその反省を促さざるを得ないのであります。
 今、全国民あげて岡崎勝男君に対し憤懣の情を禁じ得ざるもの、これ国家の世論なりということを強調いたしまして、岡崎君にして一片の良心があるならば、胸に手を当てて外交と選挙違反を静かに反省し、日本の政治の権威のためにその職を去られんことを切に希望いたしまして、私の賛成演説を終る次第であります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 佐々木盛雄君から一身上の弁明のため発言を求められましたから、これを許可いたしますが、討論の再開とならぬよう、身上弁明の範囲にとどめて、なるべく刺激せぬよう、(笑声)身上弁明の精神を失わぬようお願い申し上げます。
    〔佐々木盛雄君登壇〕
○佐々木盛雄君 ただいまの西村君の発言中、外務委員会におきまして私が岡崎君に日本の外交をまかせることはできないと申したということでありますが、岡崎君と私とは十数年以来の親友であり、外交政策につきましてはまつたくその見解を一にしておるものでありまして、しかも政治家といたしましては、自由党内における血盟の同志であります。かくのごとき信頼せる剔頸の同志を裏切るごとき言辞を弄するほどに私は非常識ではございません。(拍手)外相不信任は、政治家にとつては一身上の重大問題であるのみならず、また政府にとりましても、まことに重大なる政治上の問題であります。私は、今日まで、西村君は良識きわめてゆたかな老練の政治家であると確信をいたしておつたのでありまするが、しかるに、かくのごとき、きわめて非紳士的に、荒唐無稽の中傷を行つた西村君の責任は、とうてい免れることはできないと思います。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 佐々木君、簡単に願います。
○佐々木盛雄君(続) 一昨晩の本会議におきまして……。
○議長(堤康次郎君) 討論にわたらぬよう、なるべく簡単に願います。
○佐々木盛雄君(続) 一昨晩の本会議におきまして、有田君のきわめて不規則なる発言をとらえまして、その責任を追究されたわけでありまするが、私は、かくのごとき言辞は、議院の品位を傷つけるものであると考えますから……。
○議長(堤康次郎君) 佐々木君……。
○佐々木盛雄君(続) 西村君におきましても進んで善処せられんことを、私は西村君の良識に訴えてお願い申し上げる次第であります。
○議長(堤康次郎君) 西村君からも一身上の弁明を求められましたから、これも討論にわたらぬよう弁明を願います。本日の議事申合せの点をよく尊重して、なるべく簡単にお願いいたします。
    〔西村榮一君登壇〕
○西村榮一君 ただいま佐々木盛雄君から一身上の御弁明を拝聴いたしました。私が先ほど申し上げたのは、――佐々木君は、今日自由党を代表して岡崎外交を弁護された。これは公人としての佐々木君のお立場であります。従つて、私は、個人として外務委員会でお述べになつておつたお言葉は、はなはだ儀礼を欠くと思いましたから、それを引用して佐々木君の御所見を反駁することを避けたのであります。(「何を言うか」と呼び、その他発言する者あり)ただ、私は、佐々木君が、岡崎外交に日本の外交をまかしておいてはだめだと私にお述べになりました時期は、たしか外務政務次官の人選に漏れた直後だと思います。(拍手)
    〔発言する者多し〕
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。鈴木茂三郎君外百三十一名提出、岡崎外務大臣不信任決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
○議長(堤康次郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
○議長(堤康次郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長朗読〕
 投票総数 三百二十六
  可とする者(白票)  百三十三
    〔拍手〕
  否とする者(青票)   百九十三
    〔拍手〕
○議長(堤康次郎君) 右の結果、鈴木茂三郎君外百三十一名提出、岡崎外務大臣不信任決議案は否決されました。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔参照〕
 鈴木茂三郎君外百三十一名提出岡崎外務大臣不信任決議案を可とする議員の氏名
   阿部 五郎君  青野 武一君
   赤路 友藏君  赤松  勇君
   足鹿  覺君  飛鳥田一雄君
   淡谷 悠藏君  井手 以誠君
   井谷 正吉君  猪俣 浩三君
   石村 英雄君  稻村 順三君
   小川 豊明君  加賀田 進君
   加藤 清二君  片島  港君
   勝間田清一君  上林與市郎君
   神近 市子君  木原津與志君
   北山 愛郎君  久保田鶴松君
   黒澤 幸一君  佐藤觀次郎君
   櫻井 奎夫君  志村 茂治君
   島上善五郎君  下川儀太郎君
   鈴木茂三郎君  田中織之進君
   田中 稔男君  多賀谷真稔君
   高津 正道君  滝井 義高君
   楯 兼次郎君  辻原 弘市君
   永井勝次郎君  成田 知巳君
   西村 力弥君  野原  畳君
   芳賀  貢君  長谷川 保君
   原   茂君  古屋 貞雄君
   帆足  計君  穗積 七郎君
   細迫 兼光君  正木  清君
   松原喜之次君  三鍋 義三君
   武藤運十郎君  森三 樹二君
   八百板 正君  八木 一男君
   安平 鹿一君  柳田 秀一君
   山口丈太郎君  山崎 始男君
   山田 長司君  山中甘露史君
   山花 秀雄君  山本 幸一君
   横路 節雄君  和田 博雄君
   淺沼稻次郎君  井伊 誠一君
   井上 良二君  井堀 繁雄君
   伊瀬幸太郎君  伊藤卯四郎君
   池田 禎治君  稲富 稜人君
   今澄  勇君  受田 新吉君
   大石ヨシエ君  大矢 省三君
   加藤 勘十君  加藤 鐐造君
   甲斐 政治君  春日 一幸君
   片山  哲君  川島 金次君
   川俣 清音君  木下  郁君
   菊川 忠雄君  熊本 虎三君
   小林  進君  河野  密君
   佐竹 新市君  杉村沖治郎君
   杉山元治郎君  鈴木 義男君
   田中幾三郎君  長  正路君
   辻  文雄君  堤 ツルヨ君
   戸叶 里子君  土井 直作君
   冨吉 榮二君  中井徳次郎君
   中居英太郎君  中崎  敏君
   中澤 茂一君  中村 高一君
   中村 時雄君  西村 榮一君
   日野 吉夫君  平岡忠次郎君
   中野 力三君  細野三千雄君
   前田榮之助君  松井 政吉君
   秘中 忠久君  松前 重義君
   三宅 正一君  三輪 壽壯君
   水谷長三郎君  門司  亮君
   矢尾喜三郎君  山口シヅエ君
   吉田 賢一君  始関 伊平君
   山村新治郎君  岡田 春夫君
   川上 貫一君  久保田 豊君
   黒田 寿男君  小林 信一君
   館  俊三君  辻  政信君
   中原 健次君  中村 英男君
   原   彪君
 否とする議員の氏名
   相川 勝六君  逢澤  寛君
   青木  正君  青柳 一郎君
   赤城 宗徳君  秋山 利恭君
   淺香 忠雄君  麻生太賀吉君
   足立 篤郎君  天野 公義君
   荒舩清十郎君  有田 二郎君
   安藤 正純君  伊藤 郷一君
   飯塚 定輔君  生田 宏一君
   池田  清君  池田 勇人君
   石井光次郎君  犬養  健君
   今村 忠助君  宇都宮徳馬君
   上塚  司君  植木庚子郎君
   内海 安吉君  江藤 夏雄君
   遠藤 三郎君  小笠 公韶君
  小笠原三九郎君  小川 平二君
   小澤佐重喜君  尾崎 末吉君
   尾関 義一君  越智  茂君
   緒方 竹虎君  大上  司君
   大久保武雄君  大西 禎夫君
   大橋 武夫君  大平 正芳君
   大村 清一君  岡田 五郎君
   岡野 清豪君  岡本 忠雄君
   押谷 富三君  加藤 精三君
   加藤 宗平君  加藤鐐五郎君
   鍛冶 良作君  金光 庸夫君
   川島正次郎君  川村善八郎君
   河原田稼吉君  菅家 喜六君
   木村 俊夫君  菊池 義郎君
   岸  信介君  岸田 正記君
   久野 忠治君  熊谷 憲一君
   倉石 忠雄君  黒金 泰美君
   小枝 一雄君  小金 義照君
   小坂善太郎君  小季 久雄君
   小西 寅松君  小林  鋳君
   小林 絹治君  小峯 柳多君
   佐々木盛雄君  佐瀬 昌三君
   佐藤 榮作君  佐藤善一郎君
   佐藤 親弘君  佐藤洋之助君
   坂田 英一君  坂田 道太君
   迫水 久常君  塩原時三郎君
   篠田 弘作君  庄司 一郎君
   助川 良平君  鈴木 善幸君
   鈴木 正文君  瀬戸山三男君
   閥内 正一君  關谷 勝利君
   田口長治郎君  田子 一民君
   田嶋 好文君  田中伊三次君
   田中 角榮君  田中  好君
   田中 龍夫君  田中  元君
   田中 萬逸君  田渕 光一君
   高田 弥市君  高橋 英吉君
   高橋圓三郎君  高橋  等君
   竹尾  弌君  武田信之助君
   武知 勇記君  玉置 信一君
   津雲 國利君  塚田十一郎君
   塚原 俊郎君  辻  寛一君
   土倉 宗明君  綱島 正興君
   坪川 信三君  寺島隆太郎君
   戸塚九一郎君  徳安 實藏君
   富田 健治君  中井 一夫君
   中川源一郎君  中村  清君
   中村 幸八君  中山 マサ君
   仲川房次郎君  永田 良吉君
   永田 亮一君  長野 長廣君
   灘尾 弘吉君  夏堀源三郎君
   南條 徳男君  丹羽喬四郎君
   西村 英一君  西村 直己君
   西村 久之君  野田 卯一君
   賜田武嗣郎君  葉梨新五郎君
  馬場 元治君  橋本登美三郎君
   橋本 龍伍君  長谷川 峻君
   濱田 幸雄君  林  讓治君
   林  信雄君  原田  憲君
   平野 三郎君  福井  勇君
   福田 篤泰君  稲田  一君
   福田 喜東君  福永 健司君
   藤枝 泉介君  船越  弘君
   船田  中君  降旗 徳弥君
   保利  茂君  坊  秀男君
   星島 二郎君  堀川 恭平君
   本多 市郎君  本間 俊一君
   前尾繁三郎君  前田 正男君
   牧野 寛索君  益谷 秀次君
   増田甲子七君  松井 豊吉君
   松岡 俊三君  松崎 朝治君
   松野 頼三君  松山 義雄君
   三池  信君  三浦寅之助君
   三和 精一君  水田三喜男君
   南  好雄君  宮原幸三郎君
   村上  勇君  持永 義夫君
   八木 一郎君  安井 大吉君
   山口喜久一郎君 山口六郎次君
   山崎 岩男君  山崎  巖君
   山崎  猛君  山田 彌一君
   山中 貞則君  山本 友一君
   吉田 重延君  吉武 惠市君
   渡邊 良夫君  只野直三郎君
   福田 赳夫君
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) これより日程第二ないし第五に入るのでありますが、前会の議事において一括議題とした五案中、国家公務員等に対する退職手当の臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案は、基本法が七月三十一日限り失効いたしましたので、この法律案は自然消滅となりました。
 日程第二、法人税法の一部を改正する法律案、日程第三、所得税法の一部を改正する法律案、日程第四、租税特別措置法の一部を改正する法律案、日程第五、信用保証協会法案、右四案を一括して議題とし、前会の議事を継続いたします。四案中、法人税法の一部を改正する法律案、所得税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しては、苫米地英俊君外二名からそれぞれ修正案が提出されております。よつて、この際修正案の趣旨弁明を許します。黒金泰美君。
    〔黒金泰美君登壇〕
○黒金泰美君 ただいま提案せられております所得税法、法人税法並びに租税特別措置法をそれぞれ改正いたしまする法律案に対しまして、修正案の大要を申し上げたいと存じます。案文につきましては、すでにお手元に配付いたしてありますから、朗読を省略さしていただきます。
 その趣旨は、これらの法律案は、それぞれ八月一日までに成立することを目途にいたしまして御審議を願つておつたような次第でありまするが、御承知の通りの状態におきまして、いまだに成立を見ておりませんので、この善後処置といたしまして、八月一日を公布の日と改め、またこの公布の前日まで源泉徴収にかかりまする日雇い労務者に対する所得税あるいは銀行預金の利子に対する所得税につきまして、現行法と改正法との差額をそれぞれ後に払いもどし、還付をいたそうという趣日日のものでございます。
 何とぞ御賛成あらんことをお願い申します。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。佐藤觀次郎君。
    〔佐藤觀次郎君登壇〕
○佐藤觀次郎君 私は、日本社会党を代表して、先日議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に反対するものであります。
 吉田内閣は、組閣以来、いわゆる減税一千億をうたい、これをその政策の一枚看板にして参りました。しかるに、現実の租税負担はその反対であつて、多くの国民は、苛烈な税に泣き、重税のために倒産相次ぐのが現状であります。これは、今までの減税が、いわゆる税法上の減税であつて、実質的には増税にほかならないからであります。一方において、税金をとるのに、強制的に差押えをしたり競売に付したりして徴税をしております。これまさに羊頭をかかげて狗肉を売るたぐいでございます。その一面には、自然増収であります。昨年末のごときは、七百一億余の自然増収がございました。かかるぐあいでありますから、まじめな国民は政府を信頼しなくなり、ために正直者がばかを見るという状態に追い込みつつあるのが、今日の姿でございます。(拍手)
 かかるとき、今度の税法改正が提案されたのでございますが、いかにも低額所得者には基礎控除、扶養控除及び給与所得控除などの引下げが行われておりますが、しかし、中小企業者、勤労階級などにはほとんど関係なく、いまだ源泉所得などは決して楽な税率ではございません。なるほど、今日一般に、申告納税ということになつておりますが、末端の税務署では、それは形式だけでございまして、前年度の何割増し、二割増しとか三割増しとかいうぐあいに毎年引上げられておる状態でございます。いくら当局が申告制度の公平を唱えましても、現実はしかと行われていないのであります。従つて、今回の税率が幾分引下げられたと申しましても、それだけかえつて税の割当が引上げられ、水増しされておりまして、まつたくの減税にはなつておらないのであります。
 さらに、奇怪なことは、今度廃止されました富裕税の問題でございます。政府は、この税法成立の当初は、公平なる税率だと申しまして、最高五割五分に引下げたのでありますが、この実施わずか三年に至らぬのに、徴税成績が悪いという理由でこれを廃止し、わずか一〇%の税率を引上げまして、お茶を濁してしまつたのであります。これなどは、上には薄く下には厚いと言われても、いまさら弁解の余地がございますまい。われわれは、その意味におきまして、年収二十四万円以下の人には全部免税をせよ、これによつてのみ初めて減税一千億ができるということを申しておりましたけれども、政府はこれを取上げません。従つて、今度の減税法案の正体は、どこにその根拠があるかということが判明いたすのであります。
 さらに、今回の改正法案のうちに、私たちの最もおそれておるところの内容が含まれております。これは企業組合や中小法人の危機のひそんでおる点でございます。このことにつきましては、前の国会におきましても、全国より猛烈なる反対があり、審議未了になつたのでありますが、今回も中小企業者の血の出るような反対がたくさんございました。本委員会において、当局は、企業組合や中小法人には絶対心配はかけない、迷惑はさせないということを言つておられますが、第四十六条の三及び第六十三条の三項は、税務署の一方的な解釈で組合の運命が決定されるのであります。今日ちまたで聞きます税務署の汚職事件は跡を断たず、もし、かかるとき、若い吏員にその解釈いかんの武器を与えれば、あたかも気違いに刃物を持たせるような危険がありまして、その及ぶところ、まことにはかり知れないのでございます。(拍手)せつかく中小企業者や協同組合などがようやく今日立ち上りつつあるとき、この法の濫用によつて大きな故障が来ないでございましようか。少くとも、戦後幾多の悲難のある税務署の吏員に、組合や中小企業の運命が、推定によつてその判断をさせるという危険は、私たちはどうしても納得の行かない点でございます。かかる意味におきまして、今回の税制改革は、いろいろな題目が与えられ、種々なる好餌を使つておりましても、結局、現政府が中小工業者の真の味方でなく、その敵であることを否定することができないのでございます。(拍手)今後、企業組合や同族法人の成否は、税務署の末端にその運命が託される結果に相なつて来るのでございます。従つて、本法案は、わずかの減税に名をかりて、中小企業者に大きな圧力を加えることがその最も危険なところでございます。
 数多くの企業組合の中から、私のところに次のような訴えが来ております。戦時中、税務権力の増強によつて、戦前に若干存在していたところの税務関係の民主的なものはすべて失われた、特に占領下においては、銃剣一歩手前のあらゆる強制手段によつて、いわゆる苛斂詠求、関係当局の威光をかさに着ることによつて、草木も怒るほどの、力ずくめの、あの重税に対する反感を抑圧して来た、独立して来たからには、税務権力の縮小によつて、税務関係を少くも戦前程度くらいまでには民主化すべきである、しかるに、今までの税法の改革は、税の客体の認定が紛争の因であつたのに、本改正では新たに税の主体を税務官庁として認定せしむることにある、実際に行われるであろうところの様相は、この規定を背景とする税務権力の飛躍的増強となつて現われるであろう、これは明らかに明治以来いまだかつてない画期的な税務権力の増強拡充であつて、この問題を知る者は何人も反対せざるを得ないという悲痛な訴えをたくさん起しております。(拍手)
 以上述べましたように、国民負担の公平という意味において、真の減税案にはわれわれ賛成でございますけれども、少くとも多くの国民の納得のあるものでなければなりません。今日、租税の問題は、国民のすべてが悩みの種であり、これらの解決には抜本的な方法をもつてしなければ、とうてい達成することができないのであります。今回の税制案は、一部苦心のあることは理解できますけれども、その大綱に至つては因循姑息な方法であつて、真の減税ではございません。少くとも負担の公平を主眼とする改正によつてのみ国民は税金苦から解放されるのであります。かかる意味において、私は、この姑息な税制案には反対であることを訴えまして、討論を終ることといたします。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 津香忠雄君。
    〔淺香忠雄君登壇〕
○淺香忠雄君 ただいま上程になりました法人税、所得税、租税特別措置法の一部を改正する三法律案につきまして、私は、改進、分自、自由の三党を代表いたしまして賛成の意を表するものであります。
 この一連の税関係の法律案は、言うまでもなく、国民の租税負担を一層軽減し合理化するとともに、資本の蓄積に資するための税制の改正を行おうとするものであります。
 すなわち、この一連の税関係法律案の審議の過程において、議論の中心となりましたその第一は、少額所得者の免税点と高額所得者の税率の点でありました。両派社会党の諸君からは、百万円もうける高額所得者は、また二十万円が自分の所得として残るけれども、一方は年収七万円でもまだ税がかかる、こんなべらぼうな不合理な話があるか、こう言われるのであります。率直に申して、各層を通じて、国民の税負担がわれわれも軽いとは思つておりません。国家の経費がもつと切り詰められ、許すならばもつと大幅な減税がなされるべきものであると考えておりまするけれども、一方国家の歳出の面から見れば、一応の限度があります。しかも、今回の改正では、源泉所得におきましては年収五万八千円以上の人に税がかかつていたのを、今度は七万三千円までは税がかからなくなつたことになり一これによつて納税者数は秘昭和二十四年に一千九百十二万人であつたのが、今度の改正では一千五十九万人と約九百万人減つて、ほぼ半数となつているのであります。こういうふうにだんだん課税の対象を少くしているのに、こういう少くする仕方はけしからぬとのお話は、私どもとしては理解いたしかねるのであります。(拍手)
 すなわち、所得税にその一例をとるならば、給与所得者、夫婦子供三人の家庭では、年収十八万円の場合、現行では五千五百九十円かかつていたものが、今回の改正ではゼロ、すなわち少しもかからないこととなり、年収二十四万円の場合は、約五割方税が軽減されるようになつたのであります。これにつきましては、「両派社会党」の諸君は、正直に言うと、内心では、今の財政状態からしてこの程度でやむを得ないであろうと、まずまず満足しておられると見受けるのであります。その証拠に、委員会におけるところの、両社会党の質問はきわめて精彩を欠き、はなはだ低調な論議に終始せられたこの一事を見てもわかると思うのであります。(拍手)
 さらに、最高税率の点でありますが、所得税の最高税率五五%を今回六五%に高めたことについて、両派社会党では、これでは少な過ぎるではないか、もつと最高税率を引上げよとの主張でありますが、高額者といえども、今回の改正の最高税率六五%に加うるに住民税、事業税、固定資産税と地方税一八%を加えると、約八〇%前後税を払わなければならなくなり、結局手に残るものは二〇%前後であります。しかるに、さらに税率を高めて、高額所得者の所得には、ほとんどとれ、とれるだけとれといつたかのごとき姿は、はたしていいのでありましようか。日本の現状は国をあげて経済復興という建前をとつている限り、資本の蓄積をはかり、生産を増強し、八千三百万人が食つて行けるような積極的な経済態勢を急速に整えなければならぬのであつて、ことに、朝鮮休戦を契機として、わが国経済は特需依存から脱却して正常な経済に、しかも国際経済の新しい段階に対処すべきとき、それには各層にどの程度の税の徴収が必要か、この必要のバランスをどうとるかが大事なのであります。ただ、持つている者からはとれ、それを低所得者に配分しようという、こういう考え方では、日本経済は断じて立ち直れません。世界経済に伍して断じてやつては行けません。失礼ながら、両社会党の諸君も、時代の要請する点にもつと視野を広くしていただく必要があろうかと思われるのであります。(拍手)
 また、法人に対する税率の問題でありますが、両派社会党では、大資本金の会社に対する法人税を引上げ、その反対に中小業者の法人税を引下げよとのことであります。しかし、これは理論的にもおかしいのであつて、すなわち法人税は、終極するところは個人に対する課税であり、それを法人の段階において課税するという建前であります。たとえば、資本金の大きな会社であつても、一人一株主もたくさんあるわけであり、また資本金が百万円とかの小さな会社であつても、それが同族的なものであり、従つて一人あるいはその親族で株式全部を持つているとすれば、その方に帰属するところの所得というものは、そう小さなものであるとは断定できないわけでありましよう。従つて、法人税は個人に対する課税の一つの手段であるということを考えて参りますと、大きな法人と小さな法人の税率を区分するというりくつが出ては参りません。同時に、最近株式が民主化され、大衆化されて参つたというこの事実をもあわせ考えますときに、理論ずきの社会党の諸君といえども、理論としても筋は通らないということがおわかりになると思うのであります。
 さらに、委員会一において議論の中心となつた企業組合に対する推定規定については、両社から論難のほこをこれに集中せられましたけれども、これは、前国会以来、主税当局から、脱税を目的とする悪質企業組合は別として、すでに法人格を承認されている組合については、新たに本法の条項を発動して法人格を否認するがごときことは絶対しないと、しばしば言明しているにもかかわりまぜず、むやみにこれにおびえるがごときは、認識不足か、はたまた極左分子の扇動に乗ぜられてか、あるいは、ためにせんがための悪声であろうかと存ぜられます。
 さらに、富裕税を二十八年度から廃止したことについても、ただいま佐藤君から反対の討論をされましたが、その反対される根拠は、ただ単に、富裕税を廃止することをもつて、あたかも資本家擁護であるかのごとき議論でありましたけれども、これは今回の税法改正を貫く一連の施策に対する御研究の足らない証拠であつて、すなわち、この富裕税を廃止するかわりにこそ、所得税の最高税率を引上げたのであります。それにはあまり触れずに、富裕税を廃止したことだけを取上げての御議論は、まことに遺憾に思う次第であります。この税はシヤウプ勧告税であつて、ねらいとしては確かに一つのねらい方でありますけれども、実際問題として、所得のない者でも税を払わなければならぬことは、非常に不合理がある点。いま一つは、この税は把握が困難であり、しかも煩雑な手数と経費がかかる。昭和二十七年度においては、わずかに十一億円の税収入にもかかわらず、その大半は徴税費に食われている。よつて、富裕税を廃止したそのかわりに、最高税率を引上げたのであつて、これによつてむしろ高額者の税負担は逆に重くなつたことを、この際しかとつけ加えて申し上げておきます。
 さらに、議論の中心となつた点の、実質減税か、名目上の減税か。両派社会党の諸君は、税法上の減税をやつても、自然増収を見積つているから減税にはならないと、ただいまも申されました。しかしながら、減税ということは、税法上の減税のほかにはありません。税率を下げても、国民経済が発展し、国民全体の収入がふえれば、それだけ税の収入が多くなるのは、当然過ぎるほど当然のことであります。具体的に言うならば、所得が一方でふえた場合でも、現在の税法をそのまま続けておれば当然払わなければならぬものを、今回の改正によつて払わなくなるのであるから、もちろん実質上の減税であります。しかも、今回の改正によつて、総額一千二十三億円というものが減税になるこの事実を、どうして減税にはならぬと言われますか。しかも、減税しても国の収入がその割に減らないということは、とりもなおさず、生産がふえ、国民所得の増加を来し、ひいては国民の暮しのよくなつたことを示すものであつて、従つて政府の経済政策に誤りのなかつた左証であります。
 われわれは、かくのごとく、数次にわたり国民の租税負担の軽減を行い、今また国民の負担を著しく軽減されようとしているのであります。しかるに、両派社会党からは反対、それもよろしい。しかし、反対される限りは、これにかわるべき修正案の御用意があつてしかるべきものであると私は考える。修正案の御用意もなく、ただ単に反対、年額二十四万円までの所得者に免税しろというがごとき抽象論だけでは、遺憾ながら納得はできません。察するところ、全納税者総数の六四%を占めるこれら低所得者に対する選挙対策か、それとも歓心を求めんがための理想案の濫発か。かかることをもつて政治とする心得るがごとき態度は慎んでいただきたい。(拍手)政治は、たとい反対党であつても、ただ単に非難攻撃のみを事とする態度は許されません。批判も、その底には一国の政治をよりよきものにするという真撃さを宿さなければなりません。われわれは、両派社会党の言われるがごとき空虚な理想論に終始することなく、あくまで現実に即し、公約の一つくを堅実に実現せんとするものであつて、過去の実績がこれを如実に示し、これを雄弁に物語つておるのであります。
 かような意味におきまして、ただいま上程になりました一連の税改正法案は、特に低額所得者に対する負担の軽減をはかろうといたした点は、きわめて適切な措置であることを認めるとともに、反対党のあえて反対せんがための反対論の根拠なきことを強く申し上げまして、私は改進、分自、並びに自由の三党を代表いたしまして、各案に心から賛成の意を表するものであります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 李岡忠次郎君。
    〔平岡忠次郎君登壇〕
○平岡忠次郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに所得税法の一部を改正する法律案の各案に対し反対の意見を表明せんとするものであります。
 まず、私は、法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に関連し、法人税について大会社と中小会社との間に実質上著しい差別待遇のあることを、簡単に数字をもつて指摘したいのであります。結論的にこれを申し述べますならば、両者一律に四二%の法人税を課すと言いながら、大まかに一千万円以上の大会社は実質的には二九%の法人税しか納めていないことを指摘したいのであります。
 改正案を通じて政府の法人税に期待する二十八年度徴収額は千七百億円、これを資本金別に大別してみるならば、資本金一千万円未満のいわゆる中小会社から八百億円、一千万円以上の大会社から約九百億円でございます。ところが、今回の租税特別措置法の改正がなかつたならば、大会社の法人税総額はなお七十六億円を増し、九百七十六億円余に達するのであります。換言いたしますと、一、特別償却適用範囲の拡張によつて十四億円、一、価格変動準備金制度の改正によつて二十九億円、一、貸倒れ準備金積立限度引上げによつて三十億円、一、貿易商社関係の輸出契約取消し準備金並びに海外支店設置費の特別償却によつて三億余円、以上合計七十六億円が特別軽減措置によつて集中的に大法人のために減税せられるのであります。もとより、この特例は中小会社にも及ぶべき規定ではあるが、資格上、たとえば貿易商社支店設置の事例を見ても、中小会社にして海外支店を出すこと等は制約があり、一千万円未満の資本金の商社では皆無の事例に属するのであります。従いまして、中小会社には縁のない恩恵規定でありまして、資本蓄積、輸出振興の美名に隠れた大資本擁護の改正であります。(拍手)すなわち、大会社には法人税九百七十六億円を課すべきものを、九百億円に減税するのでありますから、この数字から逆算すると、大会社は約三八%の法人税を払うにすぎない勘定になります。一千万円未満の中小会社の名実ともの四二%に比しまして、公然四%を軽減されるのであります。
 さて、大会社に対する政府の恩典がこれのみにとどまつておらない点に問題がございます。われわれが追求しなければならないことは、政府が、今回の法人税法改正において、徴税額に至大な影響のある交際費の制限規定を設けることを躊躇いたしまして、今回提案を見合せた点でございます。(拍手)これは明らかに大資本と結託した政府のサボタージユと申さねばなりません。(拍手)なぜならば、政府が資本蓄積奨励の対象として減税まではかつてやつている当のお相手である大会社は、二十七年度において八百億円という驚倒すべき交際費を、いわゆる社用族の長夜の宴のために浪費しておるのであります。(拍手)かかる手合いに今回のごとき減税特別措置を講ずるがごときは、まさに盗人に追銭であります。(拍手)交際費八百億円といいますと、逋脱さるべき法人税は三百三十億円余りであり、その大部分は大会社の不当利得に帰するのであります。それが二十八年度もまたぬけぬけと暗黙裏に脱税し続け得られるというのでございます。諸君、七十六億円は、吉田政府の大会社に対する白昼もはばからぬ公然たる贈りものであり、(拍手)三百三十億円は、吉田内閣の大企業に対するところの暗夜にまぎれたるやみの贈りものであります。(拍手)公然並びにやみで四百億円が軽減され、しからざれば千三百億円の法人税を負担すべきであるにかかわらず、九百億円にとどまるのでありますから、大会社は実質的には二九%の法人税を負担しているにすぎないのであります。中小会社との実質的な課税率の差は実に二二%でございます。私は、政府提案の改正法人税法における交際費制限規定の欠如の不当が存する限り、しかして特別措置法改正による大会社に対するところの公然たる擁護規定が設けられんとする限り、中小法人のために、その法人税率は、当然の権利として、大会社の実質的税率二九%まで引下げらるべきことを主張せざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、以上の理由で、政府提出の法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に関し、政府の企図に反対の意思を表明いたすものであります。(拍手)
 次に、所得税法の一部を改正する法律案に関しては、政府案では、低額所得者の負担軽減の特例諸規定を本改正において平常化し、五人家族年収十八万円が免税となることを誇示いたしておるのでありまするが、現行法よりは多少の進歩は認めますが、低額所得者の負担軽減は次の理由でもつと徹底的に行うべきものであつて、私はここに政府提出の原案に反対でございます。
 大蔵省主税局推計の、二十八年度において見込まれる所得階級別表を基礎といたしまして、年所得三十万円以下のものが納税者の中で占めている地位を見ますと、納税者の総人員一千七十万人のうち、七五%に当るところの八百万人の多数を占めているのであります。すなわち、現在わが国では、所得税の納税者の大部分は、年収三十万円以下の階層であるのであります。ところで、この三十万円を戦前の価値に換算いたしますと、物価は三百五十倍に騰貴いたしておりまするから、戦前の年所得八百六十円に相当いたし、戦前における第三所得税の免税点が千二百円であつたことを考えますと、現在の所得税の納税者の大部分は、戦前であつたら免税であつたわけでございます。(拍手)従いまして、この改正案をもつてしても、政府の所得税法は依然として大衆課税のそしりを免れることは絶対にできないのであります。(拍手)戦前の千二百円の免税点は、現在では四十万円前後に相当しますから、まだまだ政府の低額所得層に対するいたわりが足りないと言わなければなりません。わが党がつとに家族四人二十四万円まで免税を主張するゆえんのものは、敗戦国民として各階層とも負うべき犠牲を考慮した上での最小限度の主張であります。私は、言い古されたこの主張をここに再び最も新鮮な熱意をこめて申し上げ、各位の御同調を煩わしたいのでございます。(拍手)
 次に、同様、所得税法改正案に関連する企業組合の問題でありますが、政府は、今回の所得税改正法案のうち、中小企業等協同組合法において認められている企業組合の法人格を、所得税法においてはこれを認めまいとする暴挙をあえて企てたのでございます。(拍手)企業組合の一部が脱税組合に堕していると当局は言うが、また自由党の賛成者は申されておりますが、もちろん中には幾つか悪いものもありましよう。しかし、それは協同組合法の適格欠如者として除外すれば足りるのでありまして、企業組合の法人格を圧殺するいかなる税法上の改正規定をも正当化するものではございません。もとより、この企業組合の発生史をあとづけるならば、重税からみずからを守らんとずる企業者の自衛態勢であつたかもしれませんが、今や法人としての合理性を身につけて成長しつつあるのでございます。諸君、近代法の精神は、一人の無実の罪人を出すことを避けるためには、あえて十人の有罪者、容疑者をも放免することを建前としております。ところが、今回の企業組合に対する改悪改正案においては、一人の被疑者のために十人の無実者を法廷に呼び出し、法権力によつて一方的に有罪の宣告に従わしむるという公算きわめて大でございまして、言語道断の改悪措置でありまして、(拍手)この改悪案の骨子をなすところの第三条の二、第四十六条の三、第六十七条の三の各項は削除さるべき事を主張いたさねばならないのであります。
 そもそも吉田内閣の徴税の特徴は、税率は一応これを下げて査定を増すというからくりでございます。このことは、本年度の予算書を見ますと明らかでございます。すなわち、前年度税収予算額は、所得税二千六百億であるのに対しまして、本改正によつて徴収されんとする所得税の総額は、二十八年度において、平和不況が予想され、国民所得の減少が常識であるにもかかわりませず、二千六百七十一億が見込まれており、前年度に比しまして七十一億円が増徴されるのでございます。これが、自由党が過去二回の選挙において鳴りもの入りで喧伝した一千億大減税案の正体でございます。要するに、税率は下げるが、徴税において査定を増し、取立てを強行するところの大衆収奪政策こそ、政府並びに自由党の本性でありまして、(拍手)言うところは自然増収でありますが、その内容は人為的苛斂詠求でございます。(拍手)
 しからば、何がゆえにかかる強権的査定主義をとらなければならないのでありましようか。それは初めに再軍備の予算的要請があり、次にこれが充足のため国民への徴税プランができる。しかして、税務署が、そのブランにより所要額を割当て、徴税を強行する結果となるのであります。極論すれば、政府のうたう減税と徴税との間には何らの関係もないのであります。ここでは、ただ割当と査定のみが最高の権威であります。国民の血税の上に巨大なる再軍備費があぐらをかいている限り、このことはまた不可避的コースと申さねばなりますまい。(拍手)かくて、査定の道に横たわる一切の障害の取除きが強行されるのであります。企業組合の法人格を税法において否定せんとする今回の改正企図も、吉田内閣のこの収奪的徴税性格を端的に物語るものであります。
 さて、風上の中小会社並びに低額所得者の減税主張の私の反対論に対し、そのような減税による歳入不足は一体どうするかとの反間が当然起るでありましよう。私はその反問に答える義務を感じます。答えは簡単でございます。いわく、その問題はむしろ租税体系のらち内のみで解決すべきではないということであります。答案としての絶対論は、有害無用の財政支出をやめよということであります。(拍手)しかして、第二段としての相対的答案は、大法人の大脱税を追徴せよということであります。いずれもこれ政府の重大なる責任であると主張いたすものであります。
 以上をもつて税制改正各案に対する私の反対討論を終ります。(拍手)
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 まず、法人税法の一部を改正する法律案に対する苫米地英俊君外二名提出の修正案につき採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて苫米地英俊君外二名提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま修正議決された部分を除いたその他の原案につき採決いたします。修正部分を除いたその健の原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて修正部分を除いたその他の原案は可決されました。
 次に、所得税法の一部を改正する法律案に対する苫米地英俊君外二名提出の修正案につき採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて苫米地英俊君外三名提出の修正案は可決されました。
 次に、所得税法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案はただいま修正された部分を除き委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しまし
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する苫米地英俊君外二名提出の修正案につき採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて苫米地英俊君外二名提出の修正案は可決されました。
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案はただいま修正された部分を除き委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
 次に、日程第五につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) 日程第六、戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議案を議題といたします。委員長の報告を求めます。海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員長山下春江君。
    〔山下春江君登壇〕
○山下春江君 ただいま議題となりました戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議案について、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、決議案文を朗読いたします。
   戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議
  八月十五日九度目の終戦記念日を迎えんとする今日、しかも独立後すでに十五箇月を経過したが、国民の悲願である戦争犯罪による受刑者の全面赦免を見るに至らないことは、もはや国民の感情に堪えがたいものがあり、国際友好の上より誠に遺憾とするところである。しかしながら、講和条約発効以来戦犯処理の推移を顧みるに、中国は昨年八月日華条約発効と同時に全員赦免を断行し、フランスは本年六月初め大減刑を実行してほとんど全員を釈放し、次いで今回フイリピン共和国はキリノ大統領の英断によつて、去る二十二日朝横浜ふ頭に全員を迎え得たことは、同慶の至りである。且又、来る八月八日には濠州マヌス島より百六十五名全部を迎えることは衷心欣快に堪えないと同時に、濠州政府に対して深甚の謝意を表するものである。
  かくて戦争問題解決の途上に横たわつていた最大の障害が完全に取り除かれ、事態は、最終段階に突入したものと認められる秋に際会したので、この機会を逸することなく、この際有効適切な処置が講じられなければ、受刑者の心境は憂慮すべき事態に立ち至るやも計りがたきを憂えるものである。われわれは、この際関係各国に対して、わが国の完全独立のためにも、将又世界平和、国家親交のためにも、すみやかに問題の全面的解決を計るべきことを喫緊の要事と確信するものである。
  よつて政府は、全面赦免の実施を促進するため、強力にして適切且つ急速な措置を要望する。
  右決議する。
    〔拍手〕
 そもそも、講和条約発効以来、戦争受刑者の釈放措置等について決議案が本院に上程せられましたのは、今回が第三回目でございます。しかも、今回は、前二回とはまつたく異なつた情勢下において御審議を願うわけでございます。と申しますのは、昨年八月、中国が、日華条約発効と同時に、全員赦免を断行して、戦犯問題を一挙に解決して以来、本年六月に至るまでは、ひとり米国が前後十三回にわたり合計約六十名の仮出所を許しただけで、全面的解決の兆候はいずこの国にもこれを認めることができなかつたのであります。しかるに、本年六月に入るや、フランスが突如大減刑を断行して、ほとんど全員を釈放したのに続いて、このたび比島は、キリノ大統領の大英断によつて、モンテインルパに服役しておられた百八名全員の内地送還、しかも、同時に、死刑から終身刑に減刑となつた五十六名の巣鴨移管を除き、他の全員に対して赦免の措置がとられ、去る七月二十二日朝、横浜埠頭に、これらの方々全員のほか、痛ましくも異境の丘に散つた刑死者の御遺骨十七柱までもお迎えすることができたのでございます。
 八年という長い間、異国の獄中、苛烈なる運命に耐えて来られた、これらの人々を迎えるこの日の母国は、折からのつゆ空もめずらしく晴れわたり、岸壁を埋めた数万人の出迎人のどよめきの中に、戦友の御遺骨をしつかと抱いて、白山丸から歩一歩静かに祖国の土におり立つた方々の深刻な苦悩を刻んだ悲壮な姿は、人々に深い感銘を与え、群衆も一瞬鳴りをしずめたのでございます。(拍手)続いて、御遺骨に対するしめやかな拝礼が行われている一方には、上陸第一歩とともに自由の身となつた方々を囲む晴やかな歓声があがり、またその一方には、黙々として巣鴨の鉄窓の中に送り込まれる一団の方々がありました。まことに悲喜哀歓、あらゆる感激の場面が展開され、名状しがたい大きな感動がすべての人々の心を支配していたのでございます。生ける者、死せる者、すべてを母国に迎え得た、それはやはり国民の大きな喜びでなければなりません。(拍手)
 私は、この機会に、個人的な恩讐を超越して、よく比島国民の不満を押え、正義人道の大局からこのたびの大英断を下されたキリノ大統領に対し、最大の敬意と感謝をささげるものであります。(拍手)なおまた、この悲願達成の陰に、筆舌に尽しがたい苦難の道を乗り越えて、献身的な努力を続けられましたモンテインルパの聖者加賀尾秀忍師、マニラ在外事務所の金山参事官、復員局の植木事務官に対しましても、厚くお礼を申し上げたいと存じます。(拍手)
 さて、一方、この比島政府の英断が発表せられました直後、さらに大きな朗報が伝えられましたのは、いわゆるマヌス島に服役しておられる戦争受刑者の内地送還決定に関する濠州政府の発表でございました。この内還につきましては、さきに英国女王陛下の戴冠式にあたり、去る六月二日、本委員会委員長名をもつて、これらマヌス島の方々の内地送還実現につき、請願書を駐日濠州大使を介して同女王陛下に送りましたが、今日その実現を見ましたことは喜びにたえません。(拍手)すでに濠州政府の了解を得ましてお迎えに参りました白龍丸は、七月三十一日午前十時現地を出発し、ただいま日本に向つて航海中であります。昨二日午後九時、白龍丸から、このたびの内還は、議員各位、特に引揚委員長等の御同情と御努力によるところ大なりと考え感謝にたえず、なお今後一層御高配をお願いする、マヌス戦犯一同、という電報が来ました。かくして、来る八日には、過去八年絶海の孤島に孤立無援の生活を続けて来られました百六十五名の方々全員を日本にお迎えすることができますことは、私どもの大きな喜びとするところでございます。(拍手)
 マヌス島と申しましても、収容所の置かれていたその属島ロスネグロスにおいて、海軍基地建設の重労働に従事せしめられて参りましたこの方々は、温帯人の長期在住不可能と称せられる灼熱瘴癘の地に八年間、もみだらけの玄米と、コーンビーフとグリーンピースという、全然献立の変化のない食生活では生きる気力もうせなんとする悪環境に耐えて、奇跡的に生き抜いて来られたのであります。新鮮な野菜を食べたのは、八年間に二、三度ということであります。わけても僻遠の地である上に、通信連絡の制限は相当にきびしく、家庭との密接な連絡はきわめて困難なばかりでなく、内地からの来訪はまつたく許されない、いわゆるやしのカーテンに隔てられた別天地でございますので、ここに暮された御当人にも増して、肉親の方々の不安と懊悩はまことに深刻なものがあつたことでございましよう。いつ帰るという当てのない人を待ち暮す内地の肉親は、「神仏いかにかおぼす八年ごしあつき島わにつながるる身を」と、はるかに思いを遠く熱帯の孤島にはせて、ひそかに焦燥の思いを述べ、「待ちに待つ故郷人をしのびつつ今しばらくを強く生きませ」と祈り、かつ励ますほかはなかつたのであります。いずれも今村元大将夫人の作でございます。しかし、これらの方々の上にも、やがて喜びの日が訪れるのでございます。収容所入所以来、最初の往訪者であるスタンレー記者が現地より報ずるところによれば、帰国の日取りがきまつて、終身刑の戦犯たちの中にさえ笑い声が起つているということであります。八年間笑いを忘れていたとは、何たる悲惨なことでございましよう。この方々に対して喜びを与えられた今回の濠州政府の英断に対しまして、私は心から感謝の意を表するものであります。(拍手)
 さて、かくのごとくにいたしまして、もはや海外に残されました戦争受刑者は一名もなくなり、従来戦犯問題解決の途上に横たわつておりました最大の障害は完全に一掃されました。事態はまさに最終の段階に突入したものと考えられるのでございます。すなわち、平和条約によつて拘禁せられる戦争受刑者は、やがて濠州より送還される百六十五名を最後といたしまして、全員巣鴨に集結し、巣鴨は再び九百二十余名にふくれ上るのであります。これらの方々については、もはや助命運動も内還運動も一切は終了し、残された問題は、ただこの方々を一刻も早く巣鴨から釈放するということだけになつたのでございます。(拍手)
 ここで考えていただきたいことは、朝鮮戦争の終結でございます。惨列をきわめた武力戦が停止となり、恒久の平和がこれによつてもたらされることは万人の願いでございますが、このたびの休戦は勝敗なき休戦であり、降伏なき終戦であり、従つて戦犯裁判を伴わざる終戦でございます。開戦以来、この戦争においては、双方ともに相手方の戦犯行為を指摘非難して参りましたが、このような休戦となつてみれば、その処罰などは、双方ともやろうとしてもできることではございません。(拍手)結局、戦犯裁判というものが常に降伏した者の上に加えられる災厄であるとするならば、連合国は法を引用したのでもなければ適用したのでもない、単にその権力を誇示したにすぎない、と喝破したパル博士の言はそのまま真理であり、今日巣鴨における拘禁継続の基礎はすでに崩壊していると考えざるを得ないのであります。(拍手)
 最近、ソ連ばオーストリアの戦犯六百名を釈放し、さらにまた同国に抑留されている日本人戦犯の釈放内還見込みありとの報道も伝えられております。このごろの世界情勢の急変を見れば、ソ連が戦犯と称する全員を釈放して、巣鴨が現在のままに取残されるということなきを保しがたいのであります。(拍手)「獄にしてわれ死ぬべしやみちのくに母はいますにわれ死ぬべしや」、このような悲痛な気持を抱いて、千名に近い人々が巣鴨に暮しているということを、何とて独立国家の面目にかけて放置しておくことができましよう。(拍手)機運はまさに熟しているのであります。
 以上が大体本案の趣旨であります。
 本案は、七月二十七日本委員会に付託されたのでありまして、委員会は、現在の情勢を正しく認識し、その最終の段階に対処し、一刻もすみやかに問題の抜本的解決をはかるの要あるものと認め、本案をもつて本院における最終の決議たらしむべく、二十八日委員会において全会一致をもつて原案を可決すべきものと議決した次第でございます。
 右御報告申し上げます。
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は、委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
 この際、法務大臣から発言を求められております。これを許します。法務大臣犬養健君。
    〔国務大臣犬養健君登壇〕
○国務大臣(犬養健君) ただいま本院においてなされました御決議を、深き感慨をもつて拝聴いたしました。
 戦犯処理につきましては、最近に至つて相次いで海外より朗報が参つておりまして、関係各国のとられましたこの好意ある措置に対して満腔の感謝を表明するとともに、これによつて釈放せられた戦争受刑者とその御家族の心中を推察いたし、ともに深き喜びにたえないものがあるのであります。(拍手)
 しかしながら、他面において、フイリピン及び濠州より帰還した人々、また帰還せんとする人々を含めますならば、巣鴨拘置所における拘禁者の数は、ほとんど平和条約発効当時と同数となるような実情であります。これらの人々の釈放につきましては、米国政府並びにオランダ政府は、個別的に、かつ司法的にこれを処理するという意向を明らかにしておりますが、その結果としましては、米国関係は、昨年十月から現在までを通じて許可を得た仮出所者は総計七十三名であります。またオランダ政府は、最近初めて十二名の仮出所者の許可をいたして参つたような次第でありまして、この際日本国民の真情を率直に吐露いたしますならば、さきにオランダ政府によつて行われましたところのあの大幅な、しこうして一切の過去を清算して再出発を盟約し合うごとき寛大な措置が、他の関係国においても早急にとられるよう、衷心より要望せざるを得ないのであります。(拍手)
 もとより、おのおのの関係国においてはそれぞれの特殊性を有し、その特殊な国情に応ずる対策を必要とすることとは思いますが、わが方としましては、すでに全面赦免の勧告手続を過去二回にわたつて行つていることでもありますし、かつ個別的な赦免、減刑、及び仮出所の手続も事務的にはほとんど終了しておる次第でありまして、しこうしてこの政府のとりました手続は、その背後において日本国民の切なる悲願が凝結して政府を激励鞭撻したものであると申しても、あえて過言ではないと存じます。(拍手)
 あたかも、ただいまの本院の御決議のごとく、昨年における中華民国、このたびにおけるフランス、フイリピン及び濠州各政府より、寛容にして宗教的精神に満ちた処置を受けたこの幸いなる機会に、わが方は他の関係各国に対してもこの際一層の誠意を披瀝し、一段と有効適切な手段を講ずることが、真に緊急の必要事と考えられるのであります。先ほど提案者の述べられましたごとく、事態は現在いわゆる最終の段階に入つていると考えられますので、政府はここにおいてあらゆる熱意と努力とを傾けまして善処をいたし、もつて国民各位の熱望にこたえたき覚悟でございます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 日程第七、刑法等の一部を改正する法律案、日程第八、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長小林鉛君。
    〔小林進君登壇〕
○小林進君 ただいま議題と相なりました刑法等の一部を改正する法律案及び判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、それぞれ提案の要旨及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、刑法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 近時、受刑者の増加とともに、執行猶予の言渡しを受ける者も激増しましたが、同時にそれを取消される者も相当多数に上るに至つたのでありますが、現在これら執行猶予者に対し必要な保護と指導とを与える制度がないのであります。また他方執行猶予の要件がきわめて厳格である上に、猶予中さらに罪を犯した場合は必ず取消され、また取消し得ることとなつておるのでございます。そこで、本案は、刑事政策の目的達成上、これらの欠陥を補うため、刑法、刑事訴訟法、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法等につき、おのおの必要な改正を行おうとするものであります。
 改正のおもなるものをあげますと、第一点は、刑法の改正に関するもので、現行規定の前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を終りまたは執行の免除を得た日より七年以内に禁錮以上の刑に処せられたることなき者という「七年以内」の制限を、「五年以内」に短縮し、また、執行猶予中の者であつても、言渡し刑が一年以上の懲役または禁錮の場合にも、情状によりさらに再度の執行猶予を与え得ることとし、他面、執行猶予中の者は、これを保護観察に付そうとするものであります。第二点は、右に伴う刑事訴訟法上の改正でありまして、この保護観察は、手続上、刑の言渡しと同時に判決で言い渡すこととすることであります。第三点は、犯罪者予防更生法及び更生緊急保護法の改正で、刑の執行猶予をうけた者を犯罪者予防更生法による保護観察に付そうとするものでありまして、その他、保護観察官による引致、留置等の事項を定めようとするものであります。
 さて、当委員会における質疑のおもなるものは、第一に、人的及び予算の面において必ずしも十分な裏づけのない現在の保護観察機構のもとにおいて、執行猶予者を仮出獄者あるいは少年犯罪者同様の保護観察に付して、はたして本案のねらいとするも目的を達し縛るかいなか、すこぶる疑問であるというのであつて、これに対し政府は、執行猶予者に対する保護観察については、すみやかに別法を制定し、最も適切妥当な方法によつて、制度本来の目的を達成したい、また、目下行われている保護観察の制度は、過去の警察監視的なものは根本的に異なり、たとえば、就職のあつせん、家庭条件の調整をはかる等、本人が再び罪を犯す原因をなくすることに重点を置き、この仕事に当る職員は、民間保護司とともに、社会奉仕者としての自覚と熱意とをもつて努力しておるのであるが、今後とも、その任に当る者に有能適格者を得るとともに、予算面においても十分な措置を講じ、万遺憾なきを期したい旨の答弁がありました。第二に、再度の執行猶予の場合を、言渡し刑一年以下の懲役または禁錮とした理由いかん、むしろ進んで言渡し刑一年六月または二年以下としてはどうか、また、遵守事項違反を取消し事由とすることの当否等の質疑に対し、政府から、再度の執行猶予を与える犯罪は、目下のところさしあたりこの程度にとどめたい、また、遵守事項違反の場合の取消しには、特に慎重を期したい、なお、将来宣告猶予の制度を設けることについても、十分考慮したい等の答弁があつたのであります。
 かくして、審議の結果、小会派を除く各派共同の修正案が提出されるに至つたのであります。その内容は、本改正案が初めての執行猶予者をも保護観察に対することを得る旨定めておつた点を削除いたしまして、保護観察は再度の執行猶予の場合だけに限ることといたしましたこと、その他これに伴う附則を若干修正したことであります。
 かくて、討論は省略し、修正案並びに修正部分を除く政府原案をそれぞれ採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもつて可決されました。すなわち、本案は委員会において修正議決せられた次第でございます。
 なおその際、多数をもつて本案に対し附帯決議を附することを決しました。すなわち、その内容は、政府は保護観察制度の完璧を期するため、予算その他これに必要な諸般の措置を講ずるとともに、初度目の執行猶予者についても保護観察に付することができる等適切な法案を準備し、すみやかに国会に提案すべきものであるというのであります。
 次に、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案について簡単に申し上げます。
 御承知のように、現行法は判事補の職権の特例と裁判官の任命資格の特例とを定めたものでありますが、今回の改正案は、元の陸海軍法務官、公正取引委員会事務局の審判官、満州国の律師等の職にあつた者については、その職務の性質上、その在職年数を、一定の条件のもとに、裁判官の任命または判事補の指名に必要な法定の職歴年数等に通算しようとするものであり、これにより、裁判官に任命し得る者の範囲及び職権の制限を受けない判事補として指名できる者の範囲を拡張し、もつて裁判官の充実に資するとともに、人事の交流を一層円滑ならしめようとするものであります。
 本案に関する委員会の質疑につきましては、一切速記録に譲りたいと存じます。本案に対する討論はこれを省略し、採決いたしましたところ、全会一致をもつて原案通り可決せられたのであります。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 両案を一括して採決いたします。日程第七の委員長の報告は修正でありまして、日程第八の委員長の報告は可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
○今村忠助君 日程第九はあとまわしにされんことを望みます。
○議長(堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程第九はあとまわしといたします。
     ――――◇―――――
○議長(堤康次郎君) 日程第十、医療法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員会理事古屋菊男君。
    〔古屋菊男君登壇〕
○古屋菊男君 ただいま議題となりました医療法の一部を改正する法律案の、厚生委員会における審査の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
 医療法施行前に設置された病院、診療所で医療法の基準により構造設備に重大なる変更を加える必要のあるものに対し認められていた猶予期間は、来る十月の二十六日をもつて満了いたすのでありますが、病院、診療所経営の現状は、いまだ構造設備の大改造を一挙に行うだけの余裕を持つに至つておらないので、この猶予期間をさらに当分延長することとしようというのが本案提出の理由であります。
 本案は、七月の三十日本委員会に付託せられ、同日、提案者、参議院議員中山壽彦君より提案理由の説明を聴取した後、審査に入り、質疑終了後、討論を省略して採決に入りましたところ、本案は全会一致原案通り可決すべきものと議決いたしました。
 右御報告申し上げます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○今村忠助君 議事日程順序変更の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第十一とともに、日程第十七ないし第三十二を委員会の審査を省略して繰上げ、十七案を一括議題となし、その審議を進められんことを望みます。
○議長(堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程の順序は変更せられました。
 日程第十一、昭和二十八年六月及び七月の大水害による公立教育施設の災害の復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案、日程第十七、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案、日程第十八、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、日程第十九、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案、日程第二十、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案、日程第二十一、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案、日程第二十二、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案、日程第二十三、昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案、日程第二十四、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案、日程第二十五、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案、日程第二十六、昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案、日程第二十七、昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案、日程第二十八、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案、日程第二十九、昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案、日程第三十、昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案、日程第三十一、昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案、日程第三十二、昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案、右十七案を一括して議題といたします。委員長の報告並びに趣旨弁明を許します。水害地緊急対策特別委員長村上勇君。
    〔村上勇君登壇〕
○村上勇君 ただいま議題となりました昭和二十久年六月及び七月の大水害による公立教育施設の災害の復旧事業についての国の費用負担及び補助に関する特別措置法案につきまして、水害地緊急対策特別委員会における審議の経過並びに結果について簡単に御報告申し上げます。
 本案の目的といたしまするところは、今次の大水害によりまして生じた公立の教育施設の災害をすみやかに復旧するために、その災害復旧業事につきまして国の費用負担及び補助に関して特別の措置を講じ、もつて学校教育及び社会教育の円滑な実施を確保せんとするものでありまして、本法の立案につきましては、本特別委員会におきましても、つとにその必要を認めておつたところでありますが、参議院の水害地緊急対策特別委員会において起草され、参議院側より提案いたされたのであります。
 申すまでもなく、今次の大水害によ崎災害の復旧に当りますことは、逼迫を告げております災害地の地方公共団体の財政力をもつてしては、とうてい望み得ないところでありまして、国の費用負担及び補助に関して特別の措置を講ずることは、まことに妥当な措置と申さねばなりません。かかる見地から、特別委員会におきましては、本案は全会一致をもつて原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 以上簡単でありますが、御報告申し上げます。(拍手)
 次に、ただいま議題となりました昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案外十五件の各法律案について、提案理由を御説明申し上げます。
 これら十六件の法律案は、すべて水害地緊急対策特別委員会において起草提出いたしたものでありまして、本特別委員会は、当初、今回の北九州の豪雨による被害並びに過般の西日本一帯の水害に対し、その対策を早急に樹立するため、委員三十名をもつて設置されたのでありますが、その後新たに起りました和歌山及び奈良両県を中心とする南近畿地方における豪雨による被害調査の件が併託となり、委員の数が十名増加せられ、さらにまた今回の長野県下における豪雨による被害調査の件があわせ付託せられたのであります。
 委員会におきましては、これら水害地対策について、連日連夜にわたり協議を重ね、委員各位におかれましては、ひとしく被害地における罹災民の心を心とし、罹災地の絶大なる期待にこたえて、一日もすみやかに被害の復旧と民生の安定を念願するの熱意に燃えて、きわめて熱心かつ超党派的に、鋭意その対策樹立のために調査検討を重ねて参つた結果、ここに上程せられました十六件に及ぶ水害地対策に関する法律案を、全会一致をもつて起草提出するに至つたものであります。
 まず、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における災害救助に関する特別措置法案は、さきに災害救助法の一部を改正する法律案が両院を通過いたしたのでありますが、特に今次の大水害を受けた県に対する災害救助に関しては、本年六月一日より前述の一部改正法の施行の日の前日までの間、特別の措置を講じて、被害地域の早急なる民生の安定と復興に寄与せんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案は、水害後の伝染病発生の増大は特に憂慮されるところでありまして、伝染病の予防並びに伝染病院及び隔離病舎等の災害復旧、簡易水道の災害復旧及び布設または汚物の処理等に関し特別の措置を講じ、公衆衛生の保持に資せんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域に行われる国民健康保険事業に対する資金の貸付及び補助に関する特別措置法案は、今次の大水害で被害を受けた地域におきまして、国民建康保険を行う保険者に対して、貸付金の貸付及び補助金の交付を行うことにより、被害地域の国民健康保険事業の運営を円滑かつ健全ならしめんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律案は、失業保険法の適用を受ける事業所に雇用されている労務者が、労使双方の責めに帰し得ざる今次の大水害により就労することができない状態にある場合、失業保険法の適用に関して特例を設け、早急にこれら労務者の生活の安定をはからんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害地域における失業対策事業に関する特別措置法案は、今次大水害の被害地域における多数の失業者に対し、失業対策事業にできるだけ多数の失業者を吸収し、その生活の安定をはかるとともに、経済の興隆に寄与せしめるため、特別の措置を講ぜんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害により被害を受けた学校給食用の小麦粉等の損失補償に関する特別措置法案は、今次の大水害により流失、埋没のために使用できなくなつた小学校並びに盲学校等の小学部における学校給食用の小麦粉及び乾燥脱脂ミルクに対し、県が損失を補償し、国がその損失補償に要する経費について全額を補助せんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法案は、今次の大水害により被害を受けた農林漁業者、農林水産業各組合等が今後その経営または事業を維持するに必要とする資金及び農林漁業用施設を復旧するに必要とする資金が円滑かつ低利で融通せられる措置を講じ、もつてこれらの経営の安定をはからんとするものであります。
 次に、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案は、今次の大水害による被害農地並びに農林水産業施設の復旧にのきましては、従来通りの国庫の補助をもつてしてはとうてい不可能な状態にありますがゆえに、その復旧工事に対する国庫補助の程度を高め、工事の可及的円滑な促進をはからんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害農家に対する米麦の売渡の特例に関する法律案は、今次の大水害による被害農家に対し、政府所有食糧の補給をなし得る道を開かんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月における水害による被害たばこ耕作者に対する資金の融通に関する特別措置法案は、今次大水害による被害をこうむつたタバコ耕作者に対し、今後の経営維持のため、または設備復旧のため必要とする資金を円滑かつ低利で融通するの措置を講じ、タバコ耕作者の経営の安定をはかるため、日本専売公社が当該資金の融通について損失補償及び利子補給を行わんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害に伴う中小企業信用保険法の特例に関する法律案は、今次の大水害により被害をこうむつた中小企業者の事業の再建に最も必要なものは円滑なる資金の融通でありますので、ここに中小企業信用保険法についての特例を設け、もつて中小企業者に再建資金が円滑に流れるようにせんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による被害中小企業者に対する国有の機械等の譲渡等に関する特別措置法案は、今次大水害により被害を受けた中小企業者に対し、その機械設備の復旧をはかるために、国有の機械等を減額譲渡するの特別措置を講ずるものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害地域における自転車競技法の特例に関する法律案は、大水害をこうむつた地域内における地方公共団体が、昭和二十九年三月三十一日までに行う自転車競走について国庫に納付すべき納付金は、これを一回限り免除いたすこととし、これによりまして当該災害県の地方財政の増収をはからんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月における大水害による被害小企業者に対する資金の融通に関する特別措置法案は、今次大水害の被害地域にある小企業者の被害は甚大なるものがあり、これが復旧の促進と経営の安定は急を要するのでありまして、これら小企業者の負担を軽減するために、復旧資金の融通について利率を引下げるための特別措置を講ぜんとするものであります。
 次に、昭和二十八年六月及び七月の大水害による公共土木施設等についての災害の復旧等に関する特別措置法案は、災害の復旧等を促進するため、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、水防法、道路の修繕に関する法律、物品の無償貸付及び譲渡等に関する法律、公営住宅法、住宅金融公庫法について特例を設け、また地すべり等の防止施設に対する補助規定を新設する等の特別措置を講じ、もつて公共の福祉を確保し、あわせて民生の安定に寄与せんとするものであります。
 最後に、昭和二十八年六月及び七月における大水害による地方鉄道等の災害の復旧のための特別措置に関する法律案は、今次の大水害により、地方鉄道業、軌道業または自動車運送業を営む者は甚大な損害を受け、かつてその復旧は遅々として進まず、これら事業の公共性にもかかわらず、その営業の全部または一部を休止しているような状態にあります。この原因は、一にかかつてその復旧に要する資金を得ることが困難な点にありまするので、これらに対し、政府がその資金を補助し、復旧を促進せんとするものであります。
 以上、十六件の各法律案について、その概要を御説明申し上げたのでありますが、なお委員会におきましては、これら各法律案の起草にあたりまして、厚生対策、農林対策、通商産業対策及び建設対策等各部門別に小委員会を設け、それぞれ専門的に調査検討を進めることとし、各小委員会とも数次にわたり、連日連夜きわめて熱心に協議を重ねられたのであります。その間、一方、参議院の水害地緊急対策特別委員会とも緊密に連絡をいたし、厚生関係六法律案、農林関係四法律案、通商産業関係四法律案、建設関係二法律案をそれぞれ起草し、張る七月三十一日の委員会において、全会一致をもつて小委員会案の通り成案を決定し、これを委員会提出の法律案として委員長より提出いたした次第であります。
 何とぞ満場一致御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
○議長(堤康次郎君) まず日程第十一につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次に、日程第十七ないし第三十二の十六案を一括して採決いたします。十六案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて十六案はいずれも可決いたしました。
○今村忠助君 残余の日程は延期し、明四日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつで動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時三十一分散会