第017回国会 外務委員会 第2号
昭和二十八年十一月一日(日曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 富田 健治君 理事 並木 芳雄君
   理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君
      金光 庸夫君    須磨彌吉郎君
      勝間田清一君    神近 市子君
      武藤運十郎君    加藤 勘十君
      北 れい吉君    川上 貫一君
 出席政府委員
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
 委員外の出席者
        検     事 古川健次郎君
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
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十一月一日
 理事田中稔男君の補欠として穗積七郎君が理事
 に当選した。
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本日の会議に付した事件
 理事の互選
 日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁
 判権の行使に関する議定書の締結について承認
 を求めるの件(条約第一号)
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○上塚委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。理事田中稔男君が、去る三十日委員を辞任せられましたので、理事が欠員となつております。それゆえ、この際理事の補欠選挙を行いたいと思いますが、これは慣例によりまして、委員長より指名することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上塚委員長 御異議がなければ、さように決定いたしまして、穗積七郎君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
○上塚委員長 次に、日本国における国際連合の軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。穗積七郎君。
○穗積委員 大臣はきようお見えになりませんか。
○上塚委員長 大臣は督促いたしております。時間が許せば、来られることになつております。
○穗積委員 私の質問は、法律のこまかい条文の問題でなしに、基本問題で少し大臣の御所見を承りたいので、大臣が見えてからにしていただきたいと思います。
○上塚委員長 それではさようお願いいたします。戸叶里子君。
○戸叶委員 私は十一時から用事がございますので、大臣の御出席を待つていられませんから、二、三点だけ条約局長に伺いたいと思います。
 まず一点は、ただいま上程になりました議定書は、わが国の新憲法下の国会においての最初の事後承諾の形をとつたものであると思いますけれども、それはいかがなのでございましようか。
○下田政府委員 本議定書が、新憲法下におきまして最初の事後承諾であるというお話でございますが、実はそうではございませんで、むしろ最近の例では、事後承諾の方が多くなつております。一番多かつた事例は、例の平和条約の付属宣言におきまして、平和発効後一年以内にこれこれの条約に日本は加入しなければならないという義務を負つておりますが、そのたくさんの条約に加入をいたします際に、あいにく衆議院の解散に際会いたしまして、国会に事前の御承認を求めることができなくなりましたために、平和条約の規定通り、先に一年の所定期間内に加入いたしまして、さきの国会で御承認を経た例がございます。
○戸叶委員 そういうような場合には、大体批准条項か何かについてすべきじやないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
○下田政府委員 ただいま申し上げました例では、これはもうできておる条約に日本があとから加入するわけでございますので、批准の問題は起らなかつたのでございますが、たとえばこのような二国間の条約で、批准条項を設けて、国会の御承認を仰ぐという場合になりますと、政府の憲法第七十三条の解釈と申しますものは、批准を要する条約につきまして、政府が批准をする前に国会の御承認を求めましたならば、これは事後の承認ではなくして、事前の承認である、そういうように考えております。従いまして、批准条約につきまして、事後承認ということはどういうことかと申しますと、政府の責任において先に批准いたしまして、そうしておとで国会の承認を仰ぐのが、それが事後承認だ、そういうように解釈しております。
○戸叶委員 政府の責任において先に批准をするというのは、私ちよつとわからないのですけれども、どういうことなんでしようか。
○下田政府委員 批准はやはり政府のいたす行為でございます。憲法第七十三条に条約の締結ということをいいまして、事前に、または時宜によつては事後に、国会の承認を求めなければならないと書いてあります。その条約の締結ということの意味でございますが、これは署名によりましてただちに発効するものでありましたら、署名が締結にほかなりませず、また批准条約でございましたら、政府が批准することが締結行為にほかならない。そういうように考えております。
○戸叶委員 そうすると、この協定は、結局憲法第七十三条の三号に基いてなしたことになるわけでございますか。そうであるといたしましたならば、この「時宜によつては」ということは、どういうふうな解釈のもとになされたのでございますか。
○下田政府委員 仰せの通り、憲法第七十三条の時宜によつては事後に承認を求める、そういう手続をただいまとつておるわけでございます。この議定書には批准条項はございません。それでございますから署名と同時に実施せられておるわけであります。従いましてまさに事後の承認になるわけでございますが、なぜそういうことをしたかという理由につきましては、昨日大臣からも御説明がございましたように、日米間の刑事裁判権に関する新たなるとりきめが九月の二十九日に署名されまして、一箇月後に実施されるということになつております。ついこの間の二十九日に日米間の議定書は実施されておつたわけでございます。そうしますと、日米間の方はNATO方式、つまり日本側の裁判権が非常に広くなつておるわけでございますが、もし国連軍に対する議定書を遅らせますと、どういう事態が起るかと申しますと、日本を守るためにおる米軍の方が非常に不利な地位に陥る、国連軍の方が有利な地位に置かれる、これは米軍としては非常に困ることであるわけであります。また一方国連側は今までは米軍と均等待遇ということを強く主張して参りました関係上、やはり米軍に対して普通犯罪は、日本側が裁判するという事態になりましたら、それと同じように国連軍に対しても、普通犯罪は日本側が裁判するというように切りかえを一緒にしてもらいたいという希望がございました。そうして実はこの国連軍の議定書の調印期日は本国会の会期が決定いたします前に、二十六日と関係国との間にきまつておりまして、その後会期が決定と相なりまして、わずかの差であるが、国会に事前に承認を得てから署名することにしたらどうかということも考えたのでございますが、やはり先ほど申しました関係上、いろいろ支障が起ります。また日本側の裁判所関係におきましても、日本におる外国の軍隊は、やはり一律に同じような取扱いに切りかえるということがやはり便利でございますし、かたがた米軍の都合、国連軍の都合、また日本側の都合によりまして、やはりこれは一時に切りかえるということが、何と申しましても便宜の措置でありますので、かたがた国会が始まります前に、関係国との間に約束しました通り二十六日に署名いたしまして、二十九日に米軍と同じように切りかえることになつたわけであります。
○戸叶委員 この議定書は、いわゆる国連軍と日本側との間の裁判権の問題だけでありますけれども、そのほかの面につきましては、きのうの岡崎大臣の答弁にありましたように、いろいろ国連軍に対しては、日本側として経済的な面において駐留軍の場合と差をつけたいけれども、今のところそういうわけにも行かないというようなお話でございまして、これは明らかに日本の国と国連軍との間の全体的な協定のうちの一部のものでございますけれども、ほかの国にもこういうふうな一部だけのとりきめということがなされておる例がたくさんあるでしようか。
○下田政府委員 同様の関係がございます。ヨーロツパのNATO協定は、初めから全般的な協定でございますNATO協定というのがございまして、それを批准するかしないかというだけの問題でございます。日本側は何もないところへ持つて行つて、NATO協定と同じような刑事裁判権の問題のみならず、いろいろな問題も一切ひつくるめました全般的な協定の締結を交渉して参つたのでございます。そしてその全般的な協定の交渉の主眼点は、日本側は刑事裁判権に関しては、NATO協定と同じものでなければならないという強い主張でございます。向う側は、財政経済等の点につきまして米軍と同じ待遇を受けなければならない、つまり米軍は施設をただで貸してもらう、国連軍は施設の借料を払えというような差別待遇は困るというのが強い主張でございます。そして交渉の山は、刑事裁判権において向う側が譲れば、施設の借料等も日本側が譲つてもよいというようなところに実は持つて行きたかつたわけでございます。ところが先に日本側の主張通り刑事裁判権の問題を先方が譲つて、これが先に済んでしまつたわけでございます。そこで日本側の主張だけが先に通つたからあとは知らぬという態度では、実は私は日本側としては少しひど過ぎるのじやないか、向うは男らしく刑事裁判権については日本側の主張通りのものを先につくりました。でございますから、かけひきの道具は向うは失つてしまつたわけでございますが、私は日本側としては、向うのいさぎよい態度に相当応ずべき腹構えで、臨んでやるべきでないかと個人的に考えております。
○戸叶委員 そうしますと、結局向うがそういうふうな態度に出て来ましたために、今いる駐留軍並の扱いをしなければならないということになるわけだと思いますが、そういうふうなものにいたしましても、予算の面やらいろいろな面で、日本にとつては不利な面がたくさん出て来るのじやないかと思いますけれども、それをお認めの上にこれはがまんしなければしかたがない、こういうふうなお気持でいられますか、それとも何かの機会にそういう点はもう一度あらためて交渉し直すというようなお気持がおありになるかどうかを承りたい。
○下田政府委員 抑せの通り予算等の関係もございます。そこで政府部内で大蔵省との折衝では、何も財政当局としても全部借料を取立てる気持はない、全部取立てたところで、国連軍の施設全部の借料としても実はせいぜい年に五億くらいのものなのであります。それを半分くらいとつたらどうかというようなことを実はこの夏まで言つておつたのでありますが、そうしますと、せいぜい二、三億のものを日本側が取立てるか、あるいは二、三億をやめてただで貸してやるかというだけの問題なのでございまして、これはいずれにしましてもどちらにきまりましても、たといとるにきまりましても、取立てはむろん――取立てない場合にも、予算的の措置が済んでから実行するわけでございまして、予算の裏づけがないのに先にやるというわけには参らないと思つております。
○戸叶委員 今のところ二、三億程度に考えておられましても、いろいろな事態が起きた場合に、その予算がふえるというようなことも考えられはしないかと思いますが、この点はどうですか。
○下田政府委員 実は大蔵省でもその点を心配しておられるのですが、全部ただという原則をつくりました場合に、万一また在日国連軍の数がふえた場合には、非常な負担になりはしないかという点は確かにございます。これは見通しの問題でございまして、休戦会談も始まつておりますので、再び朝鮮に戦乱が再発して国連軍がたくさん来るという見通しは、むしろ少いのではないかと思つております。むしろ国連軍の数は減つて行くのではないか、しかもきわめて近い将来に減つて行くのでないかという見通しの方が、まず公算が大ではないかと思つております。
○戸叶委員 非常にあぶなつかしいお考えのもとにこの協定を、しかたがないからそのままにほつておくというふうな態度にしかとれませんので、私どもはまことに遺憾でございまして、一日も早くこちら側の考えているような線をもつて、もう一度交渉を始められていただきたいことを望む次第でございます。
 あともう一、二点だけ伺つておきたいのですが、それは第九条の(g)項のところでございます。「派遣国の政府の代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち会わせる権利」とありますが、その代表者といいますものは、一体どの程度のどういうふうな代表者であるかということと、そしてまたどの程度の権利を持つているかということを承りたいと思います。
○下田政府委員 これにつきましては、何も軍隊に限りませず、国際法上、外国人がある国で逮捕されるという場合には、その外国人を保護する立場にあります領事官憲というものは、これに接見し得る権利を持つておるわけであります。従いまして、軍隊の場合も同じように、軍人がつかまりました場合には、政府の代表者と会う、ないし連絡する権利を保障するということを認めるのは当然でございます。しからば政府の代表者とは具体的にどういうものかと申しますと、この点は今後合同会議でいろいろ話があると思いますが、これは兵隊でございましたならば、その分隊長とかあるいは直属の将校、あるいは先方の軍法会議と申しますか、軍の司法関係の当局というものが考えられるのではないかと存じます。裁判に代表者を立ち会わせる権利、これは議事録にもありますように、日本側は憲法上裁判公開の原則をとつておるので何ら困難な問題ではないのであります。これはつまりたくさん並べまして、しかも議事録で、日本は憲法上、また日本の法律上これらのことはすべて保障されておる、またここに書いてあること以外のことまでこういうような被拘禁者についての保護が完全なものであるということを、実は大いばりで書いておるわけなのですが、実はなぜこういうことをくどくど書きましたかというと、NATO協定を審議いたしましたアメリカの国会におきまして――いよいよヨ―ロツパのNATO諸国及び日本で、アメリカの子弟が外国の裁判所で裁判されることになるその場合に、前にも御説明いたしましたように、アメリカは自国人はどこにおつても自国の裁判の権利に均霑させたい、そのかわり外国人がアメリカに来ても、その外国の官憲に裁判させて一向さしつかえないという伝統的な政策をとつておりまして、その伝統的政策に対する政策の大きな変更であります。そこで米国の上院におきましては非常に心配しまして、拘禁された場合の人権の保障ということを強く政府に念を押して、そういう希望条項をたしか出したと思います。そこで日米との間に、非常に安心させるような、日本はもう憲法が、たとえば被告になつた場合にでも、人権の保障はこんなに完璧なんだということを誇示して、安心を与える規定を設けまして、それがそのまま国連軍との間のこの文書にも採用されておるようなわけであります。
○戸叶委員 これは日本の国内法に照し合せてみましたときに、そういうふうな代表者を立ち合わせる権利というものが、一体日本の国内法で認められるものでありましようか。
○下田政府委員 日本は裁判の公開の原則をとつておりますから、格別の事由がない限りは立ち会わせて一向さしつかえないわけであります。でございますから、政府としてさしつかえないということを、権利という言葉を使つて申しても私はさしつかえない、そういうふうに思つております。
 なおその点に関連いたしまして、議事録の方の「裁判の公開に関する日本国憲法の規定を害するものと解してはならない。」ということだけが実は留保なのでありますが、これは憲法の第八十二条の第二項に、裁判の公開の原則がうたつてありまして、但し公の秩序、善良なる風俗に害がある場合には、裁判の公開をとめることができるという規定がございますが、たとえば猥褻犯罪のような場合には、軍法会議の代表者が入つて来ることはさしつかえないわけでございます。これは一般人には猥褻犯罪の裁判に立ち合わせることは悪いでしようが、向うの軍の司法当局がやることはさしつかえない。しかし困りますのは、まず想像できないことでありますが、日本の国家としての機密に関するような場合には、これは先方の軍の代表者といえども立ち合わせたくないというような場合があり得るかと想像いたします。そこで他の場合はすべて日本の憲法並びに法律上一向さしつかえないことでありますが、その点だけの留保が、実は議事録に「裁判の公開に関する日本国憲法の規定を害するものと解釈してはならない。」という表現で留保されておるわけであります。
○戸叶委員 日本の裁判の公開の自由ということはわかつておりますが、ただその場合に傍聴人として立ち合わせることは許されておつても、その代表者が立ち合つて一体どの程度までいろいろ発言する、そういつた権利を持つておるか。これについてお伺いいたします。
○下田政府委員 立会人が参りましても、法律上は傍聴人とまつたく同じ立場でございます。従つて何らの発言を許すわけでもありません。ただ来てすわつておるというだけの話でございます。
○戸叶委員 それでは別にそういうことを特別に書く必要はないと思うのですが、特にここにお書きになつた理由はどういうところにあるのでしようか。
○下田政府委員 日本は人の国の子を裁判する重大な責任を負うわけでありますが、向うから見ますと、自国の子弟を外国裁判所で裁判させる不安を率直に言つて持つておるわけであります。しかもその不安は、先ほども申しましたように、国会におきまして議員側から非常に強く表明された不安でございまして、先方の政府といたしましても、この点国会側の不安はこの通り保障されておると言つて対内的に見せる必要があつたのであります。そこでこういうものを入れて安心を与え、しかも安心を与えることによつて、わが方は憲法上、法律上何らの支障がないのみか、むしろわが国法制において、たとい被告となつてもこれほどまでに人権が保障されておるという点は誇示できるのでございますから、私はこれを書きましても一向さしつかえない、そういうふうに存じております。
○戸叶委員 私どうもその点了解に苦しむのですが、時間がございませんので追究できないのが残念ですけれども、もうちよつとはつきりしていただきたいのです。だれでも裁判を受ける人のその周囲の人が不安を持つということはあたりまえのことです。それでどうなるのだろうかといつて傍聴に行くわけであります。日本としてアメリカのそういうふうな立場を理解して、そうしてその子弟を持つた親たちに、日本ではこれだけの親切な扱いをしておるのだということをお見せになるために、これをお入れになつたとおつしやるのですが、ちつともそんなことには私はならないと思う。そんなことになりませんし、今御説明を聞いておりましても、それならば何もこんなものをわざわざ入れるということが、どうしても私はふに落ちませんので、もうちよつとわかりやすく何とか説明していただきたいと思います。
○下田政府委員 こんなものを書いても何にも安心の具にはならないとおつしやいますが、現に交渉に参りました先方の国防省の法律専門家が非常に喜んで帰つております。それで帰りまして国会側に対して十分な、日本はこのようにりつぱな保障があるということを説明できるといつて喜んで帰つておりますので、その点は確かに安心を与えるとともに、日本の進んだ法制を内外に私ははつきりさしたという効果があると思うのでございます。
○加藤(勘)委員 関連して。ただいまのお答えを聞いておりますと、立会人ということは傍聴人とまつたく同じである、こういう御趣旨のようにお伺いしたのです。すると、日本の裁判公開の原則は傍聴人を許す、非常に特別な場合においては裁判長の権限で非公開にするということもあり得るけれども、普通の場合は裁判公開が原則であつて、傍聴人として来ることはまつたく自由なのですから、特にこういう条項を設けて、立会人という、ことさらに何か裁判上に発言権を持つとか、あるいは発言権までは持たないとしても、無言の圧力を加えるとか、こういうような印象をこの文字から日本国民は受けるのです。そうすると、裁判公開の原則の上に立つという日本の憲法の建前からいいましても、何かしら特別に無言の威圧を加えるような印象を、国民に与えるような文字はむしろない方が適当である。日本憲法の権威を保持する上からいつても、ない方が適当だと思うのです。法律専門家が来て、この文字が入つたために安心して帰つたというようなことでありますけれども、外国人は安心して帰つたかもしれませんが、日本国民はこういう文字を見ると、裁判そのものに何かしら無言の圧力を加えられておるような感じがするのです。そうすると、裁判の神聖ということが何かしら侵されるのじやないか、侵されないまでも、脅かされるのじやないか、裁判官が畏怖を感ずるのじやないか、こういうような印象を日本国民に与えることは、憲法の権威を確保する上からいつても不利でないか、こういうことにつきましては当事者としてはお気づきにならなかつたかどうか。
○下田政府委員 私の説明が足りませんで誤解をお与えしましたことを申訳なく思いますが、実は(g)の規定はNATO協定にやはり派遣国の代表者と連絡する権利、それから代表者を立ち会わせる権利という字句がありまして、それをそのままとつたわけでございます。それでわが方はNATO協定通りとすべしということを強く主張しておりますので、NATO協定にある立会いの権利を削除しますことは、これこそ先方に不必要な誤解と不安を与えることでありまして、NATO協定にありましたことでございますし、しかもそれが日本の憲法上、法律上完全に保障せられておりますことでございますので、NATO協定の規定をそのまま採用いたしたわけでございます。従いまして何も日本だけにこういう規定を設けたわけではございません。
○加藤(勘)委員 外務当局は、日本だけに特別にこういう条項を設けたことはないという逃道を一つ持つておられるのです。たとえば火力借款の問題の場合においても、これは日本だけの特殊の問題ではない、いや、これはほかにもあるのだ、こういうことでありますけれども、われわれ日本国民の立場から行くならば、外国の例がどうあろうとも、日本の正当なるものは正当なものとして主張するところに本来の趣旨があるわけです。NATO協定通りというけれども、NATO条約が結ばれた当時のヨーロツパ諸国の情勢と、日本の今日の情勢との間に変化があれば、当然その変化に基いて、条約なりあるいは協定なりの相手国である日本の立場というものは尊重されなければならない。外国にあるからその例を持つて来たというようなことは、秋は弁明にならぬと思います。日本の実情においてどうだ、こうでなければならぬ。ことに日本の今日の憲法は、言うまでもなく占領下において司令部のサゼスチヨンによつて原案というものがつくられておる。形式は日本の議会において決定したものであることは言うまでもありません。われわれは日本国の国民の憲法であると信じておりますが、少くともその原案作成にあたつては、司令部は多くの発言権を持つておる。司令部すなわち当時はアメリカである。従つてアメリカがそういうことを知らぬはずはない。そういうことを知つておりながら、なおかつ外国のほかの国もそうであるから、お前の国もこうやれということは、やはり一種の強圧を加えたものではないか、こういうことが当然感じられるわけです。でありますから、われわれはそういう日本国民に不要な一つの不安を覚えさせるような事柄はないことが正しいと思うのですが、そういうことについてどういうふうにお考えになつておりますか。
○下田政府委員 ごもつともでございます。何も外国に例があるからそのまま採用する必要はごうもないのでありまして、時の変化、国際情勢の変化によりまして、すべてこういう国際間のとりきめはかわつていいものだと存じます。しかしながら刑事、裁判権に関するきわめて複雑な法律的技術的な問題を処理するにあたりましてNATO協定ができますときも、いろいろな法制の差異があり、国内の事情の差異がある国々の専門家が寄つてたかりまして一つもモデルをつくりまして、そのモデルは日本が第三者の立場から見ましても、現実の国際法に最も近い合理的なフオ―ミユラであると政府は前から信じておりまして、前からNATO方式の採用ということを強く主張して参つたわけであります。そこで先方がNATO協定の採用にいよいよ譲歩して日本の要求に応ずる段階になりまして、いやこの条項は日本側によつて少しおもしろくないから削れとまた言い出しましたことには、もう収拾がつかなくなる。そこでNATO協定通りということを前々から強く主張いたして参りました日本政府の立場上、またここで問題を繰返して新たにやり直すということは避けまして、こういうとりきめを採用いたしました次第で、この点は何とぞ御了承をいただきたいのであります。
○加藤(勘)委員 ただいまの御説明ではまだ納得が行かないのです。なるほどNATO協定通りということを当時日本の外務省側で主張されておつたが、それは根本の精神においては、なるほど現在の段階においてはNATO協定の精神にのつとる。しかるに部分部分においては当然その協定締結の当時の実情に即して、実際に合つたものでなければならぬということが、私はこの協定締結の建前だと思うのです。NATO協定が結ばれるときは、言うまでもなく当時のヨーロツパ諸国の不安、ソビエトに対する脅威が非常に大きく政治的に作用しておりまして、その当時においではアメリカの力を非常に必要とした。そういう関係で、多少アメリカ側から言われた点において無理だと思われる点があつても、政治的な考慮の点から、私はそういうことが了承されたと思うのです。しかし今日の日本の立場においては、NATO協定が結ばれる当時においてヨーロツパ諸国が対ソ脅威を感じていたような脅威を、われわれは国際的に感じていない。当然平和の方向に向つて行きつつあるというこの現実の段階において、日本の実情が土台として協定が結ばれてこそ、両国の親善を増進して行くことになる。一方が何かしら押しつけられたような感じを受けるようなことでは、ほんとうの親善の意味は失われて行く、こういうように思うのです。私はこのきわめて簡単な代表者を立ち会わせるということは、これを法律的にずつと見のがしてしまえば、おつしやる通り傍聴人とまつたく同じもので、何らの権利も持つていないというのならば、権利という言葉も使う必要はありませんし、傍聴人同様として裁判を傍聴することができるということを言えば、それでいいわけでありますが、この立ち会わせる権利ということの中には、法律的な意義が相当あると思いますが、同時にこういう協定においては、法律上よりも、もつと政治的な意義が重大に感じられなければならぬと思うのです。そういつた点をただ法律的な技術的な問題として事務的に扱われるというのでは、どうも私どもとしては得心が行かないわけですが、そういうことについて、条約局長は一体どういうようにお考えになつておるか。この言葉の中には政治的意義をお感じにならないのか。単なる法律的な技術的な事務的な問題として片づければいいと思つていられるのか。そのいずれであるかをはつきり聞かしていただきたいと思う。
○下田政府委員 法律的、技術的な面のみに没頭して、政治的な意義を度外視するということは、けしからぬというお話でございますが、その点はまことにごもつともだろうと思います。そこでNATO協定でございますが、これは言うまでもなく、お互いに自国軍を相手国に派遣し合う国がたくさんあるわけでございまして、ただいま仰せのようにアメリカの圧力でこういうようになつたのでも何でもございません。実は先日参りました国防省の係員がNATO協定諸国との交渉をやつたのですが、一番強いことを言うのはフランスだつたそうであります。フランスは法律的でりくつつぽいところで、フランスの法務当局というのは非常にタフだつたと語つておりましたが、日本はどうかというと、日本はフランスよりもタフだといつて実は驚いておつたのですが、しかし刑事裁判権の問題は、実はアメリカの強圧でも何でもございません。こういう法律の問題になると、フランスは御承知のように非常に法律的でりくつつぽいところでありまして、むしろフランスの代表する大陸法的な考えというものが割合に強く出ております。従いまして日本の法律も実はもとをただせばフランス法なんかを相当取入れておるところがありまして、日本の考え方にも割合に近いわけであります。従いましてもとのNATO協定がアメリカの政治的強圧によつてできたものでもございませんし、日本がこれをとります上につきましても、何らアメリカの強圧というものは微塵もございませんでしたことを一言申し上げたいと思います。
○加藤(勘)委員 そういう点についてはまだ十分私ども得心が行きませんが、私はもう一つ法律上の技術的な問題としまして、裁判公開の原則によれば、だれでも自由に傍聴できということが公開の原則のすべてであるわけなのです。ところが裁判所構成法を見ましても、訴訟法を見ましても、憲法を見ましても、傍聴の権利ということはうたつていないのです。そうすると、ここには代表を立ち会わせる権利、こうなつておるのですが、この権利という言葉を特にここにつけ加えられなければならなかつたのはどういう意味ですか。
○下田政府委員 国内法で申します場合の権利と国家間の条約で申します権利と、実は意味が違うのでございまして、ここで立ち会わせる権利と申しましても、それが訴訟法上の権利、つまり個人がそういうことを要求した場合に必ずそれを満足させ得られる権利、そういうような権利という意味ではございません。たとえば先般の日米通商航海条約につきまして、わが国は制限業種について制限する権利を留保するという言葉を書きましたが、これは何もそういう国内法上の権利があるわけでございませんで、日本が相手国に対してそういう制限を行い、相手国に文句を言わせないという一つの法律上の地位をつくることを意味するわけであります。この場合でも一々の、アメリカなり国連軍の政府の代表者が立会権という訴訟法上の権利を持つわけではごうもないわけでありまして、向う側が立ち会わせてくれといつた場合には、日本は立ち会わせてやることを承認する一つの法律的の地位を意味する次第でありますので、その点は御了承願いたいと思います。
○加藤(勘)委員 それではこの点は単純なる傍聴人と同一であるということを法律的には確信していいわけですね。
○下田政府委員 ここに古川検事がお見えになつておりますから間違いましたら御補足願いたいのですが、まつたく法律的には傍聴人と同じことでございます。ただこの傍聴人ですと切符をもらつて早く行かないと切符がなくなつて入れないという場合もございますが、しかしこの場合は政府の代表者の方には、切符なしで優先的に入れてやるというような法律的以外の配慮があるでございましようけれども、そういう点を除きましては発言権もない、ただすわつているだけでございまして、傍聴人とまつたくかわらないと存じます。
○上塚委員長 皆さんにお諮りいたします。本会議が始まりますが、なおこの委員会を継続いたしますかどういたしますか。これで一応休憩したいと思いますが、いかがでございますか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上塚委員長 御異議なしと認めます。
○穗積委員 議事進行について。大臣の御都合はあすはどうですか。
○上塚委員長 まだ交渉しておりませんが、できるだけ出席していただきます。 それでは暫時休憩いたします。
    午前十一時二十六分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は開会に至らなかつた〕