第019回国会 外務委員会 第25号
昭和二十九年三月二十五日(木曜日)
   午前十一時十八分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君
   理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君
   理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君
      大橋 忠一君    北 れい吉君
      佐々木盛雄君    喜多壯一郎君
      須磨彌吉郎君    上林與市郎君
      細迫 兼光君    河野  密君
      西尾 末廣君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 緒方 竹虎君
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
 出席政府委員
        法制局長官   佐藤 達夫君
        法制局参事官
        (第一部長)  高辻 正己君
        外務事務官
        (欧米局長)  土屋  隼君
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
三月二十五日
 委員金光康夫君辞任につき、その補欠として三
 和精一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助
 協定の批准について承認を求めるの件(条約第
 八号)
 農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国
 との間の協定の締結について承認を求めるの件
 (条約第九号)
 経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国と
 の間の協定の締結について承認を求めるの件(
 条約第一〇号)
 投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国と
 の間の協定の締結について承認を求めるの件(
 条約第一一号)
    ―――――――――――――
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防御援助協定の批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。
 なおこの際念のため申し上げておきますが、ただいまの理事会の決定について御報告申し上げます。MSA四協定の審議取扱いについては、本委員会における討論採決の予定日を二十九日月曜日とすることに決定いたしましたから、さよう御了承をお願いいたします。
○戸叶委員 議事進行に関して。私はまず先に昨日の理事会の決定をこの委員会の決定としていただきたい。その第一はビキニの問題に関連いたしまして、アメリカ側が危険区域を非常に広めようとして来ておりますが、このことは国際法上から見て、はたして妥当であるかどうか、いろいろ問題が残されております。そこでこの委員会といたしましても、適当な時期に参考人を呼びまして、学者なり何なりを呼びまして、その意見を聞くということを昨日きめたと思いますが、それを確認していただきたい。
 それからも一つは、昨日の夕刊に出ておりましたアメリカの上下両院合同原子力委員長のコール氏の発表、すなわち今回起きたビキニの問題に関しまして、いかなる政府機関も議会の承認なくしては、損害賠償に応ずることができないという点と、それから漁船が、スパイであるというような発言をし、また日本人の漁夫の被害が誇大に報告されているというような重大な発言をせられたやに報道せられました。このことにつきまして委員会で昨日質問をいたしましたが、岡崎外務大臣にそれについては十分調査した上で適当な措置を考えるという御答弁でございました。従つて外務省として一刻も早くこの点が事実であるかどうかをお調べくださいまして、事実であつたとしましたならば、この委員会から何らかの意思表示をする、そういうことが理事会で決定いたしましたが、その点をこの委員会としても決定していただきたい。これをまずおきめ願いたいと思います。
○上塚委員長 ただいまの戸叶君の発言について申し上げますが、昨日理事会で決定いたしましたことは、一、国際法学者招致意見聴取の件、それから二は、コール氏の声明の詳細調査をなし、もしそれが事実であつたならば、外務委員会において何らかの意思表示をすること。但しこの意思表示の方法については理事会においてこれを決定することというようなことであつたのでございますが、これを確認することに御異議がございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上塚委員長 それではさよう決定いたします。
 これより質疑を許します。富田健治君。
○富田委員 私は主として緒方副総理にお尋ねいたしたいと思います。日本は敗戦後アメリカ軍が進駐いたしまして、このときにいわゆる自由主義諸国家の陣営に立つということを運命づけられたわけであります。それがさらにサンフランシスコ条約、また日米安全保障条約によりまして一層その立場が明確になつたと思うのでございますが、それが今回のMSA協定が妥結されますならば、決定的なそういう立場になる。私は今度は非常な決定的な段階じやないか、かように思うのであります。現にこの協定の中にも人力、資源、施設また経済の許す限りにおいて全力をあげて防御力の増強をしなければならぬという義務を負うことになつておるのであります。これに対してはいろいろ反対論もございますが、すなおな大多数の国民はこれに賛成であると私は確信を持つのであります。それについてもここまで踏み切つてアメリカと手をつないで行こうという場合に、一体アメリカの態度というものがどうもわれわれすつきりしておらぬ、割切れぬものがあるように思うのであります。これまた国民に相当そういう感情が私はあるのじやないかと思うのであります。終戦後十年になんなんとしまして、まだ戦争犯罪人というものが日本の国内で投獄されておる。また国連関係の各地にもそういう人がおるというのは一体どういうことか。これは人道問題から申しましても、国際法の法律論からいつても、ずいぶん疑問があると思うのであります。それから小笠原、沖縄の復帰、返還問題ですが、これなどは、この狭い領土で、また日本本土と切つても切れぬようなところを、いつまでも主権がどうなつているかわからないような状況に置いて、小笠原の人のごときは、先般もここで公聴会がございましたが、実に悲惨で、帰るにも帰られぬという状況であります。一体こういうものをアメリカはどう見ておるか。さらにビキニの今度の被爆の問題でありますが、これは今後のアメリカの態度を見なくちやならぬのでありますが、こういういろいろの事態を考える場合において、われわれすなおな国民におきましてもなお非常に割切れぬものがあるのであります。先ほど申しましたようにMSAの協定が妥結されますならば、非常な決定的なアメリカと手を握つて行くという段階になるのでありますからして、ひとつ民間としても考えなくちやならぬと思うのでありますが、一番大きな責任の地位に立つていただいておる政府といたしましては、いい機会でありますから、この機会をとらまえて、日本がここまで踏み切つたのでありますから、アメリカとしても誠意をもつて対してほしい。言いたいことを、悪口でもこちらが言つても、アメリカは喜んで受取つてくれる。法規とか条約というのではなしに、政府においては日本国民のために、日本再建のためにやろう、そうして大きく世界平和に寄与しよう、こういう考えを持つてもらうように努力していただきたい。今までもいろいろ御尽力を願つておると思うのでありますが、いいチヤンスであります。また非常に率直なことを申せば、国会で答弁をうまく切り抜けるということは問題ではないと思うのであります。ほんとうにアメリカと日本が手を握つて行く、こういう方向に政府としては行つていただきたい。きようは外務大臣はおいでにならぬのでありますが、こういう考えを私は持つておるのでありますが、これにつきまして副総理の御所見をお伺いしたい。
○緒方国務大臣 今回のMSA協定締結によりまして、軍事上の義務が加わつたとは書いておらないのでありますが、いずれにいたしましても、双方で締結された平和条約に調印いたしたことによつて――私は今の世界は常識的に見て共産陣営と自由陣営とがある。その両陣営の対立した客観情勢の上における日本の立場というものは、はつきりいたしておると思うのであります。従いましてこの国際情勢の上において日本の迷いがあつてはいけないので、国際的の義務もできるだけ果すと同時に、日本として自主的に国の方向を考えて行かなければならない。そういう意味から今御指摘のありましたような、アメリカとの間に十分今日以上に率直に意見を交換をし、また現に日本の国民感情の上にいろいろな影響を及ぼしております戦犯の問題、あるいは領土の問題、あるいは今度のビキニに関する問題の処理につきましても、政府といたしましても率直に話合いを進めて、納得のできる結論に持つて参りたい、さように考えております。
○富田委員 ただいま副総理から御答弁をいただいたのでありますが、ぜひそういう御趣旨で進んでいただきたいと思います。承るところによれば、総理の外遊というようなことも、うわさを聞いておるのでありますが、総理の外遊も外資の導入というようなこともまた重要でありますが、ただ単にそんなことだけでなしに、今のような根本的なほんとうの日米関係の基盤になるようなことの確立、これにひとつ力を入れていただきたいとお願いする次第であります。
 次にこのことにも関連をいたすのでありますが、今回防衛関係の法案が出まして防衛庁になり、また自衛隊というものができる。われわれの知つております範囲ではシヴイルの方とユニフオームの方と両方合せて四万人の増員になつておるようでありますが、これに対しまして一人二人ではございません。私の聞いただけでも相当多数の軍事専門家が、現在は御承知の通り十一万ありますが、十一万で十分だ。十一万で十分だというのは、一つは日本の立地条件、国土狭小なこと、また経済的な日本の状況から考えて、これで十分やつて行けるのだ、一番かんじんなことは精鋭な軍隊をつくることだ、いくら人ばかりふやしても何にもならない。またいわんや保安隊は御承知の通り警察予備隊からだんだん発展をしたものでありますがゆえに、警察隊程度の意識といいますか、規律訓練を受けておる。これがだんだん直接侵略にも対抗するような部隊になる場合には、よほど違つた規律訓練が必要だという立場からも、人ばかりふやしてもしようがない。今の人員で十分やつて行ける。ただこれを精鋭にするためには、方法論としては、たとえば幹部師団を養成して、師団をみな幹部の師団にする。そうして一般隊員は随時短期間召集してやつて行く制度がいいのだというようなことを、多数の軍事専門家から聞くのでありますが、おそらく副総理も各方面からこういう御意見を聞いておられるであろうと思うのであります。またこれとは違うのでありますが、大体二個師団くらいのアメリカ軍がおるやに聞いております。今度は相当数の部隊が自衛隊としてふえるのでありますが、これを機会にアメリカが帰る。そうしてよく総理は陸海空の均衡を得た自衛力ということを言つておられるのでありますが、海空は非常に金がかかるのであります。また均衡というのはどういう意味かしりませんが、均衡をとるためには非常な金がいると私は思うのであります。従つてこの際は、むしろ海空は今まで通りアメリカにお引受を願つて、そして地上部隊の方は、一切こちらでやつて行つても、いいのじやないか、そういうことをお話ができないのかどうか。これは前の問題にも関連するのでございますが、来年自衛隊は十八万人になるとかいろいろいわれておるのでありますが、精鋭にして質が向上すれば自衛力は増強される。しかし私は人員ばかりふやすというアメリカの考えというのは、どうかと思うのであります。アメリカ人がいくら物がわからぬといつても、アメリカの軍事専門家ならわかると思います。こんなことがほんとうに話し合えないものだろうか。またほんとうに腹を打割つて日本の防衛力の増強になる、しかも日本の国力にも相応じた、国力の発展にも決してじやまをしない、いわゆるバターと大砲の両立にもこれが益するのだ、こういう話合いができないものかどうかと私かねてから疑問を持つておるのでありますが、この機会に副総理に御所見を伺いたい。
○緒方国務大臣 日本の防衛力につきましては、総理初め政府として国力の許す範囲で安保条約の義務と申しますか、期待に沿うべく漸次増強して行く、いわゆる漸増方式を従来とつて参つておりますが、しかし国力にも限界があるのでありまして、今日の国際情勢に対し、日本が独力で日本の防衛に当るということは、結局できないことである。これは日本だけでない。今日の兵器の非常に進歩した状況から見ますれば、イギリスといえども、あるいはアメリカといえども、一国で防衛ができないくらいの段階にすでに入つているのではないかと思いますあります。従つて日本の防衛力をどういうふうに組織、発展さして行くかということは、今お話の通り非常に大きな根本問題であると考えるのであります。結局幹部部隊というか非常な精鋭なものをつくつて、そして国民的に増員力を持つておるということが、要諦でないかと思いますが、そういう点につきましても行く行くアメリカとの間に話合いをして、日本の国力の検討も十分に尽しました上で、話合いはむろんやつて行けることであるし、またやつて行かなければならぬと考えます。
○富田委員 次に法制局長官にお伺いしたいと思います。今度の自衛隊法案によりますと、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つておる。それから外国の武力攻撃に対しまして出動を命令するという規定があるのであります。しかもその自衛隊は、間接侵略以外に直接侵略にも対抗するということになつております。また先般、法制局長官も法律論としては自衛のためには海外派兵もあり得る、誘導弾の基地をたたくようなためには、自衛のために海外派兵も考えられるのだ、理論上はあり得るというような御答弁があつたかと思うのでありますが、私もまさにその通りであると思います。こういうことになりますと、実際は用兵作戦、ほんとうの戦闘行為になると思います。言葉はどういう言葉を将来使われるかわかりませんが、これは昔の統帥権といいますか、統帥命令ですか、統帥ということになるのではないかと思うのでありますが、法制局長官の御意見を伺いたい。
○佐藤(達)政府委員 統帥という事柄の定義につきましては、ただいまお言葉にありましたように、はつきり定義いたしかねますけれども、その実体をとらえてみますと、およそ部隊があつて、その部隊を総括的に指揮命令する、そういう権能であろうということは申し得ると思いますが、その方から話をたどつて参りますと、警察などについても一種の部隊がある以上は、その指揮権というものがなければならぬということで、本質は共通なものであろうと一応考えるわけであります。ただ今までの統帥権という概念を日本の場合について考えますと、昔の明治憲法時代における統帥権というのは、実は三権分立よりもむしろ四権分立と申し上げた方がいいような特殊性を持つておつて、議会も内閣も、それについては干渉できない特殊の一種の権力であつたと思います。今日の憲法のもとにおきまして、あるいはまた今後のあり方を考えましても、民主主義を徹底いたして行きます上かは、昔の形のような統帥権というものは、むしろ考えられないことではないかということが一方において思われます。かたがた現在の憲法のもとで考えましても、そういうことが当然不可能のことは明瞭であるわけであります。現在の憲法に当てはめてそれを考えますと、申すまでもなく、三権分立の建前をとつておつて、部隊の最高指揮権というものはその分類の中のどれに入るかというと、これは行政権の中に入つて来ることは申すまでもないことである、その行政権が憲法上内閣の所管事項になつておることも明らかでありますし、その内閣はまた国会の監督のもとに立つ議院内閣制をとつておるということも申し上げ得ると思います。現行の憲法のわく内でたどつて行きますれば、今の最高指揮権というものは、名前がいかになりましようとも、やはり内閣の責任事項であり、国会の監督のもとに立つ仕事であるということになりまして、結局内閣の最高責任者である総理大臣がすべての行政事務と同様に、最高責任者になるということにならざるを得ないというふうに考えておるわけであります。
○富田委員 そこで伺うのでありますが、今度の自衛隊の出動の場合であります。この自衛隊は、私は用兵作戦と同じことだと思うのであります。その内容は相手方を殺傷する場合が当然起ると思う、またこちらも生命を賭して戦場というのか、戦闘場へ出かけて行くということになるのでありまして、戦闘行為ということにおきましては、戦力でなくても、また軍でなくても、同じ行為を実質的にはやることになるのじやないか。そこで今お話のように、内閣総理大臣が最高指揮監督権を持つておるのでありますが、その内閣の総理大臣と申せば、いろいろの場合が考えられるのでありまして、選挙管理内閣の総理大臣も考えられますれば、憲法七十何条でありましたか、総辞職直後の暫定内閣の総理大臣が命令をする、こういうこともある、そういう総理大臣によつて殺傷を命令される、また自分が命を賭して戦闘場に向つて行くということが、国民感情から一体ぴつたり来るかどうかという問題であります。法律では今日憲法が認めておらぬというのでありますけれども、そういうことがいつ起るかわからぬのであります。昨日来もいろいろお話がございましたが、マレンコフが国内の情勢から、また国際関係から、今日平和的態度をとつておるといわれますが、これはどうなのか、スターリンの冷戦の根本の態度というものは、私はかわつておらぬと思うのでありますが、またそういう論者も多いのであります。そしてまた今日のいろいろの国際情勢を見ますと、非常に危うい、備えをしなくてはならぬ点が多いと思う、現に今日それでMSA協定を結ぼうかとわれわれは考えておるのであります。そういう際に内閣総理大臣だけの指揮監督権で、最高指揮命令権で出動権でいいのかどうか、こういう問題になつて来ると私は思うのであります。御承知の通り憲法第七条には、天皇の国事行為というものがございます。この国事行為は十項目ございまして、これはいづれも重要なものでございますが、今度の出動命令権、自衛隊の最高指揮命令権というものは、これらのどの項目に比べても、重要さにおいて、決して劣るものではないと私は思うのでありますが、今日は憲法を改正しないという立場にあり、憲法はこれを規定しておらぬのでありますが、法制局長官は、将来憲法改正の場合これは当然、少くとも国事行為になるべきものだとお考えかどうか、これを承りたい。
 ついででございますが、今、統帥というものは、戦争前は三権のほかに四権になつておつたというお話でございます。日本はまことにこのために不幸であつたと思うのであります。しかしながら今日、軍の長は、御承知の通り民主国のイギリスでも元首、すなわち国王がなつております。ただ統帥ということが国務のうちにあるかどうかでありまして、軍の長が元首であるかどうかということとは関係がないと私は思う。また国務のうちに統帥が含まれるということであれば、前のような日本の不幸もなかつただろうと思う。現にヒトラーの時代でも、われわれが聞きますのに、国務のうちで政治が統帥に優先しておつたそうで、あの当時は日本だけが統帥権が独立であつたように承つておるのであります。そういう意味でいろいろ考えますと、軍の長は元首である、あるいは少くとも国事行為にすべきものではないかと思うのでありますが、ひとつ御意見を承りたい。
○佐藤(達)政府委員 おつしやる通り、旧憲法のごとき統帥権独立の制度そのものは、外国を見渡してもあまりなかつたと思います。これはおそらく旧プロシア系統の伝統から、ああいうことになつたのだと思います。
 今のお話に入るわけでございますが、要するに憲法改正がかくあるべしというようなことは、私ふぜいが申し上げるべき筋でもありませんし、また考えてもおりませんけれども、しかし大きな方向としてものを考えて行きます場合、やはり民主主義の原則というものが、今後も厳格に維持されて行かなければならないことは当然であろうと思います。そこで国を守るということからそれを考えてみましても、昔はあるいは天皇のために国を守るという形であつたかもしれませんが、今後におきましてはやはり国民のために国を守るという原理で、すべてが考えらなければならないと思います。従いましてかりにその統率権と申しますか、統帥権をある機関に与えるにいたしましても、その原則だけはずつと堅持して行かれるのが、今の憲法の精神であり、また今の憲法が今後の憲法に対して期待しておるところであろうということは考えておるわけであります。
○富田委員 私さらに法制局長にいろいろお伺いいたしたいことがあるのでございますが、時間もありませんのであらためてまたお伺いいたします。
 そこで最後に緒方副総理にもう一度お伺いいたしたいと思いますが、MSA協定の審議を通じて問題になつておりますのは、今の統帥権の問題、海外派兵の問題、自衛権の問題、また将来予想されるものとして集団防衛体制加盟の問題があります。こういうことはいずれも憲法に非常に重要な関係があり、言葉が適当でございませんけれども、私は気持から申すと、何だかあげ潮が憲法改正のラインに向つてひたひた押し寄せているような感じがするのであります。ところが政府の立場としては憲法を改正しない、戦力は持たない、再軍備はしない、また今の段階ではしないということで、ひとえに国力の回復に応じて自衛力を増強して行こうというお立場でありますが、それには思想的な立場から憲法は改正しなくちやいかぬとか、改正すべきものでないとか、また再軍備反対である――現に今日の状態がすでに戦力であり、あるいは憲法違反であるというふうに、いろいろな議論があるのであります。こうして憲法に対していろいろな疑義があり、また国民感情としてもいろいろ惑つておるこの際、私は政府としてはもう少しはつきりさるべきものではないかと思う。憲法の改正が問題になり、先般も戦力に至れば憲法を改正するというふうに、政府が御答弁になつたことを私記憶いたすのでありますが、それは事実上どういうことになるのか。戦力になつたならば憲法を改正するといつて、右から左にすぐ憲法を改正することはできないのであります。国民感情から申しましても、次第次第に憲法を改正することが必要であるとお考えになるような状況であるならば、人間的な立場からしても、政府としてはこの際ぽつぽつお考えを願わなければならぬときではないか。それは大多数のすなおな国民のためにも非常に不幸なことであります。
  〔委員長退席、福田(篤)委員長代理着席〕
思想的な立場から反米、反再軍備というようなことを、無人の境地を行くがごとくにやらせておくことは、きわめて不親切である、不誠意であるとさえ私は考えておるのであります。こういう意味におきまして、国家理性、また民族的理性を今日持つことは、国民の誇りであるという指導と申しますか――今日は民主主義でありますので、上から押しつけることはどうかと思いますが、政府としてはぼつぼつお考えになる時期に来ておるのではないかと思うのであります。質問の意味が十分おわかり願えぬかと思いますが、これについてもし御所見を副総理からお伺いできれば非常に幸いだと思います。
○緒方国務大臣 憲法を改正しない、少くも現在その意思がないということは、国会で総理大臣初め政府当局からしばしば申し上げて参つたのでありますが、これは改正しないというよりも、改正を口にしないということの方が政府の立場であるのであります。(「腹にはある」と呼ぶ者あり、笑声)と申しますのは、国家一日も憲法なかるべからずと思いますし、その憲法が何か欠陥がある憲法であるかのごとき立場を政府がとることは、国民の遵法精神を聞違いなくして行く上からもどうかと考えられるのであります。もちろん政府といたしましても国際情勢の動き、またそれに対応いたしまして日本の防衛の問題についても、常に周密に考えておるのでありまして、それと憲法の関係も研究をいたしております。公式には、党の方におきまして憲法調査会を設けておることも御承知の通りであります。そういう意味から憲法の問題につきましても、国民感情と政府の考えがかけ離れてしまわないように、その点につきましては十分注意をしておるつもりであります。輿論の趨向、また国際情勢の動き、従つて日本の防衛力についてどうあるべきかということにつきまして、周到なる注意を持つて進んでおるつもりであります。
○福田(篤)委員長代理 須磨彌吉郎君。
○須磨委員 今回MSAの四つの協定が締結されますことは、日本の外交及び内政体制の転換の一つの大きな現われであると思わなければなりません。申し上げるまでもなく、政治は指導精神によるべきでありまして――私の見るところによりますと、最近の政府には、指導精神がおありであろうと思いますが、ぼんやりしておるように思います。これを見ますと、今度のMSAという体制ができましたときにあたりましては、どうしても指導精神を発揮しなければ、日本にはあるいはたいへんな困難が来るかもしれないと思うのであります。さようなことの事例を一、二あげまして、御所見を承りたいと思うのであります。
 第一には、このMSA体制というものは、申し上げるまでもなく、アメリカを主といたします自由主義の陣営が、共産主義の陣営に対立をいたします二つの壁だと思うのでございます。そういたしますと、今までと違いまして、この協定を結びましたあとにおいては政府は、これと同時に、今までも必要であつたのでありますが、共産主義はどういうものであるいうことに対する、国民に対する啓蒙の施設が非常に必要になつて来ると思うのであります。われわれ日本人は共産主義というものにつきましては、あるいは書物の上等で読みますこともございますが、体験は非常に少いのであります。私はヨーロツパのスペインにおきまして三年有半、共産主義自身のもとに行われました行政をつぶさに見て参つた一人でございますが、かようなことというものは日本人にはまだ意識されておらない、こういうような意味におきまして、この共産主義に関します啓蒙の施設をおとりになることが、私は厳格に必要になつて来たと思うのでありますが、まず私は副総理に対しましてさような施設をこれからおやりになり、これに対する何か確定の一つの方策を持つておられますかどうかを伺いたいと思うのでございます。
○緒方国務大臣 共産主義の実体に関する政府の指導、その他輿論あるいは国民の思想に対する政府の立場からの指導ということは、これは特別に機関をもつてすることにつきましては、政府はあまり積極的な考えを持つておりません。政府は共産主義に対する立場はきわめて明確にいたしておりますが、その国民に対する影響と申しますか、指導というものは、これは実際の施政あるいは論議を通してやつて参りたい。あるいは今日では輿論の威力というものは大きなものでありまして、いわゆるプレス・コンフアレンスといいますか、新聞との接触面、そういうところにおきまして自然な形で政府の考えなり、共産党に対する指導精神が現われて行くということを期待しております。今のところ御指摘になりましたような機関をつくつて政府が指導に当ろうということは考えておりません。
○須磨委員 私の考えといたしましては、たとえば今のプレス・コンフアレンスにいたしましても、きわめてこれは定期的なものといたしまして、常時国民の目に入るような施設を――あるいは何も役所をこしらえる必要はないと思いますが、さような施設を必要とするものではないかと思うのでございます。
 次にお伺いいたしたいことは、かようなMSA体制というようなものになりますと、世界全般ですでに事実となつておりますように非常な思想戦術と申しますか、心理戦術と申しますか、さようなものの戦場になることが明らかでございます。すでに一月二十四日に失跡いたしました元のソビエト連邦の書記官ラストボロフ事件のごときは、まだその全貌は明らかとなつておりませんけれども、漸次それが現われて参りますならば、これはその現われの一つであると申さなければならぬのでございます。これは列国の例に見ます場合におきましても、かようなる類似のことがこれからだんだん起つて参ろうかと思うのであります。つまり言いかえれば、一口に申せば防諜の施設でございます。今回この委員会にも提出されるそうでございますが、MSAに関連する秘密擁護の秘密保護法でございますか、そういうものが出るそうでございますが、そういうものとは離れまして、政治的に防諜の施設というものは各国とも非常に発達をいたし、最近、ことにアメリカ等におきましては特別な施設をいたしておる様子でございますが、かようなる意味におきまする考慮が今から必要であろうかと思うのでございます。さうよなものがなくて、ただMSAの協定だけを結んでおるというようなことでありましては、これはまた国際情勢から申しましても、あるいは内政から申しましても危険にさらされる場面が非常に多いと思うのでございますが、第二の点としては政府に防諜に対する用意ありや、防諜に対する何らかの施設ありやをまずお伺いいたしたいと思うの、でございます。
○緒方国務大臣 政府は防諜に関しましては、まずそれに関する調査、情報を集める、そういう意味から現在は公安調査庁におきまして、人員その他におきましてまだ十分とは申しかねますが、非常に少い限られた人数で非常な努力を払つて、共産党の活動につきましてはできるだけの情報を集め、それによつて先ほど申し上げましたようなルートを通して防諜的な指導をやつておるつもりでございます。
○須磨委員 さらに第三の点としましては、外交上の問題でございますが、このMSA協定を結んだからとて、さつそくさようなことが起るわけではないのでございますが、国際の情勢といたしましては、どうしても一つの抵抗を感ぜざるを得ないと思うのであります。現に新聞論調その他ラジオ放送等よりますと、このMSAに非常な反撃を加えておりますものがあるいはモスクワからあるいは北京から、その他のわれわれが予期しないインドから、インドネシアからもあることは、御承知であろうと思うのでありますが、これがだんだんとこれからふえて参る。また実際考えてみますと、われわれの中国いわゆる支那大陸におきましては、中共という大きな共産主義の国家が存在しておるわけでございます。一衣帯水の朝鮮半島におきましては、北朝鮮はまぎれもなき共産主義の国家でございます。わずかに南朝鮮、韓国があるわけでございますが、この韓国のごときは緩衝地帯と申してもいいかもしれないのでございますが、それとの関係がすこぶる日本は悪い。これは私はこの問題とも離れて憂慮にたえないことでございますが、MSA体制によつて国際的抵抗が自然と来る情勢にあるときにおきましては、韓国の問題は私は実にゆゆしき問題になつて来ると思うのでございます。しかるにこの二十日の東亜日報とか申します京城の新聞の報道だそうでございますが、これによりますと、韓国はさらに新たに日本に対して経済的弾圧措置をとつておる。たとえば韓国の銀行に日本の信用状の取扱いを禁止したり、日本国との取引を禁止するというふうな措置をとつたり、いまだかつて外国に対してやつたことのない強い態度をとつたとこの新聞は報道しておるのでございますが、それは事実であるかどうかはもちろん私は存じませんけれども、ともかく韓国との関係が一つも調整されないで置くということは、ただいままで私の申しました啓蒙及び防諜の施設と相まつて、外におきまする日本に対する一つの攻撃の塹壕となるかもしれぬ、塹壕という言葉は当るかどうかしれませんけれども、さような点におきましては、韓国との関係を早きに及んで調整する特別なる措置をとることを必要とするのではなかろうか、考えますとこの韓国との問題を調整いたしますることにつきましては、アメリカは去年の八月八日にダレス長官と李承晩大統領との署名によつてできました米韓の条約におきましても、私は一つの義務として存在しておるのではなかろうかと思うのであります。少くともアメリカは日韓関係の良好化ということについては、共同の利害を感じておると思うものでございますから、この条約が結ばれました機会において、私は大いに奮発をお願いいたしまして、日韓関係の調整に当つていただきたいと思うのでございますが、さようなことに対しまして新たなる御決意をもつてお臨みになる御計画もしくは企画がございますか、それを伺いたいと思うのであります。
○緒方国務大臣 日韓の関係は不幸にして漁業の問題とか、あるいは漁船拿捕等の問題が起りまして、そのために国民感情が非常に悪い方に向いつつあることにつきましては、政府といたしましても非常に遺憾に存じております。今お話のありましたように、いろいろな意味におきまして今日の韓国と日本との国際関係は、これはできるだけ親密にして、経済的にも政治的にも、あるいは思想的にも、この間の調整を国としても十分にはかつて行かなければならない、そういう点につきましては政府としても深い自覚をいたしまして、漁業問題以来日韓会談が中絶されておりますことについても、あるいはアメリカを通し、その他機会あるごとにいろいろな方法をもつてその再開を期待しているのでありますが、今日のところまでは、まだ御承知のような状態にあるのであります。これにつきましてはやはりこういう事態になれば、第三国の介在も必要であるのではないか。そういう点からお互いに今日の国際上における両国の立場を、政府におきましてもあるいは国民的にもだんだんに自覚をはつきりさせまして、この関係の打開がすみやかにできるように努力を尽している次第でございます。
○須磨委員 ただいま申し上げました三点がすべてここにまた帰するわけでございますが、アメリカの最近の情勢は御承知のごとく、この共産主義との対立について内政上においても非常な問題を起しているわけでございます。いわゆるマツカーシズムというものが出て参りまして、ほとんど政府でない、与党である共和党そのものが二つに割れるかもしれないというような情勢にまで発展しているわけであります。またアメリカの自分のところであると思つております中南米を加えましれ両米大陸におきましても、この形勢が非常に広がつて参りまして、三月四日、カラカスで開かれました第十回米州会議の総会における演説等に見ましても、ダレス国務長官は明らかにこの共産主義というものとはこれから同居ができないかもしれぬというような言葉をもちまして、暗にこの共産主義に対しましては、非合法化の措置をだんだんとらなければならないような情勢にあるということを幾分か認めているような様子でございます。わが国といたしましては、これは先物を申すのではございませんけれども、政府というものはさような決意をいたしておくということが、私が冒頭に申し上げました指導精神ということでございます。ただいま問題になつております教育法案にいたしましても、その他これから出て参りますいろいろなことにつきましても、すべてがそこに現われて来るわけでございますが、政府はさような意味におきまして、私の申す指導精神という意味におきまして、漸次この世界の情勢から見ましても、共産主義に対しましては断固たるさような措置でお臨みになる御決意がおありであるか、またおありでなければ、このMSAというものの失行が非常な困難に遭遇する場合があり得ると思うのでありますが、その決意のほどをこの際お伺いをいたしたいと思うのでございます。
○緒方国務大臣 共産主義陣営と自由主義陣営との間の思想戦が日本を一つの足場とし、舞台としてやつていることは、これはほとんど常識的に考えられるのであります。今日の日本の輿論がいかに共産主義陣営から指導されているということは、これは軽々に申せませんけれども、結果といたしましてその現われがあるということはこれはおおうべくもない。そういう意味からも政府といたしましては、日本が国際的にも日本の立場をきめました以上、この共産主義の浸潤に対しましては、実は深い決意を持つているのでありまして、今回国会の協賛を願つております教育法案も、いわば政府としては第一段階として、一には左糸思想の浸潤、さらにはまた教育の上において次の世代をになつて行きます若い人々の知識があるいは教養が偏向したものにならないように、純粋なものであるように、また日本の国の立場と違わないように、その点についてこれをいい方に導いて行きたい。そういう一つの共産主義に対する現われといたしまして、法案を提出しているような次第であります。今お話の共産主義に対して日本を守るということにつきましては、政府といたしまして深い決意を持つております。
 〔福田(篤)委員長代理退席、委員
  長着席〕
○須磨委員 このMSA協定との直接の関連についてではございませんけれども、間接に関連をいたして参りますことは、申し上げるまでもなく日本の防御の問題でございます。この防衛につきましては、今度の軍事協定で引受けます武器によつてだんだんできて参ろうかと思うのでありますが、これは初年度のことでございまして、私どもは従来この防衛問題について考えますときにおきましては、実は政府与党の人々とも話し合つて、五箇年くらいの長期計画を必要とするのではないかということは、常に私どもが申して参つたところでございます。これはきようは保安長官はおられませんけれども、保安長官はときによるとこれをぼかしまして、さような計画はどうもできないとかいうようなことを申されまして、実は予算委員会等でもこれを確かめて、そういう計画をいたすということは確認をしておられたのでありますが、最近のまた予算委員会におきます御答弁によりますと、いかにもこの五箇年計画というものが、どうもこしらえようと思つてもできませんというようなことを申しておられたように記憶をいたしております。これは事実上に困難な点があるということは、私どもも共感できるわけでありますが、しかしながら五箇年ぐらいの計画をもちまして日本の防衛に関する大体の企画をお持ちになるということは、MSA協定をこしらえて行きます上においては、どうしても決意が必要である。これは私どもの話合いにもあつたわけでございますけれども、きようは副総理のおいででございますから、私はあらためて政府としてこの五箇年計画をお立てになるおつもりをもつて御研究中であろうと思うのでございますが、それをもう一ぺんここで御確認をいただきたいと思うのでございます。
○緒方国務大臣 政府といたしましては、防衛に関する長期計画を持つ意思は持つているのでありまして、このことはすでに吉田・重光会談のときにも覚書の中にこれを織り込んでおりますし、またこの前の委員会でありましたか、総理大臣からもその意味のことをお答えいたしているのであります。保安長官が予算委員会で申しました答弁は記憶しておりませんが、現在において長期計画を立てるべきいろいろな要素が間に合つてないということでありまして、政府といたしましては防衛力問題につきまして、やはりこれは長期の計画を持つべきである。かように考えております。
○須磨委員 この問題は外務大臣に対してはすでに当委員会においてもいろいろ問題になつたことでございますが、今MSAの四つの協定を私どもが考えて、これを通過をいたしますにつきまして、やはり日本の兵隊が出兵するかしないか、海外派兵のいかんという問題が、どうもまだ残つているのでございます。このことは厳格にこの条文から考えますとどうであるかということは、私あとから申し上げたいと思うのでございますが、まず副総理におかれましても、これは海外派遣はしないのだという政府の意図を持つておられるかどうかを、直接に承りたいと思うのでございます。
○緒方国務大臣 政府としましては今回のMSA協定を締結したことによりまして、何ら今御指摘のような問題について新たな義務を生じているとは考えていないのであります。今日の日本の国情また日本の防衛力を持つ精神から申しまして、海外派兵というようなことは絶対に考えておりません。
○須磨委員 それを承つて安心したわけでございます。さてこの条文でございますが、この条文によりますと、第八条に日本が自由諸国家の防衛に寄与をするという言葉がございまして、寄与としましては、人力の許す限りということがあるわけでございます。人力の許す限り防衛に寄与するということは、これはどうしましても字義の解釈といたしましては、人力は人夫もございましよう、いろいろなものもございましようか知りませんが、やはり兵隊という務めを持つた者が出るということもあり得るわけでございますが、そういうことからいたしますと、これはどうも疑義としてやはり残つて来る。ところがそう申しますと、第九条の第二項において、この協定はこの日本の憲法の条項に従つてこれが行われるのだと書いてあるから、憲法上はそういう疑義がないからよろしいという御解釈をおとりになると思いますが、憲法は生きものでございまして、たとえば自衛隊の問題につきましても、私どもの考えておる自衛隊の考え方と、政府のお考えとは相当違う。またその他の方々とも違うわけでありまして、その解釈につきましても、また他日どういう解釈が出て来ないとも限らぬのでございます。従いまして私はこの海外派兵の義務がほんとうに行われることがないということは、外務大臣とアリソン大使とのお互いの演説の中にもありはいたしましたけれども、これを明確ならしむる上におきましては、一つの覚書といいますか、議事録のようなものをおつくりになつておかれると非常にいいのじやないか、さような意味をもつて私は臨時にここに用意をいたしたものがありますから、読み上げてみますが、MSA本協定第八条修正議事録案、日本国とアメリカ合衆国との相互防衛協定第八条の解釈に関する合意された公式議事録、日本国とアメリカ合衆国との相互防衛援助協定第八条中の「人力の許す限り寄与」なる字句は、この協定の適用上、日本国政府はいかなる方法によるを問わず、日本自衛隊の属する人員の海外派遣を約するものでない意味を留保なく解釈されることが了解される。まあこういつたような趣旨のものが議事録として現実として残されることになりますと、私は国民の疑惑が霧散するというふうに考えるのでございますが、きようは外務大臣もお見えになりましたし、政府といたしましてかような私どもの提案をおいれくださる御用意があるかどうか、これを私は伺いたいのでございます。
○岡崎国務大臣 この問題につきましては、先般喜多君の御質問に対しても私からはつきり申し上げて、喜多君はそれで了承しましたというお話でありました。またこの八条の条文の解釈につきましては、そのときに条約局長から詳しく申し上げて、この解釈には一点の疑念もないと思いますが、さらに念のため調印式のあいさつに申したくらいでありまして、条理の上からいいましても、また政府のたび重なる声明から申しましても、何ら危険のないところと確信しております。この条文なりあるいは公式議事録等はすでに署名を了しまして、国会に提出をいたしておるのでありますので、この程度の政府の明確なる言明を御信用くださいまして、修正なしに新しく御意見を加えられることなく、このままの形においてお取扱いを願いたいと思います。
○須磨委員 ただいまも申されました外務大臣のお言葉は、先般来の質疑応答によつてもあつたのでございまして、私はこの解釈上の疑義は存しないとおつしやつても、これはまた他日どういう場合があるかもしれないということを考えまして、かような案を申し上げた次第であります。なお二十九日の最後の場合に私は討論に立つつもりでございますが、さような場合までひとつお考えおきを願いたいと思うのでございます。
 いま一つは、先般私どもの委員でございます並木委員から、外務大臣に対しても御質疑がありましたが、今度のビキニの問題であります。このビキニの試験というものは、非常に大きな結果を及ぼしておる。日々到着いたします情報によりますと、その損害の偉大なることには、アメリカも非常に意外として驚いておるくらいでありまして、しかも近着の新聞に、ハンソン・ボールドウイン――御承知のようにこの人は軍事記者として有名な人でありますが、この人の書きました論文があつたのであります。それによりますと、太平洋で近く行われるところの実用水爆第一号というものの初めての実験は、飛行機によつて投下されるものであるのみならず、軍事的水爆時代の新機軸となるであろう。こういう一句がニユーヨーク・タイムズに掲載されておるのを私見たのでありますが、もちろんこんなものを見なくても、そのうちには出て来るかもしれぬ。言いかえますと、この間の三月一日の試験ですらアメリカが予想外の大きな結果を生んだことに驚いておるのでありますが、ハンソン・ボールドウイン君のごとき軍事専門家が、かような新機軸でさらに恐ろしいものだということを言つておるのでありますから、これの及ぼす結果は、私どもの予想がつかないものであると思うのでございます。またこの実験のために、日米関係はもちろんでございますが、ひいては人道上ゆゆしき問題が起ることを、われわれはひそかにおそれるものでございます。従つて、かようなボールドウイン君等の指摘をもお考えくださいまして、この次のかようなものはしばらくやめてもらいたいというような御提議をなさいますことが、私は世界平和のためにも非常に適切ではなかろうかと思うのでございます。ここで一言申し上げたいのでございますが、この爆発の試験だけでも非常に恐ろしいことについては、あるいはこれはごらんくださつたか知りませんが、先日来上映の「戦慄の七日間」という英国の映画を見ても、また今朝の報道で、チヤーチル首相が下院において今度のことについて涙をもつて述べておつたということからしても、私は如実にわかるわけでございます。これの及ぼす影響は、人道上まことに大きな問題である。ことにわが日本は三回もその犠牲になつておるわけでございますから、今度の実用水爆第一号の試験は、控えてもらいたいというような御措置をとつていただくわけには参らないものでございましようか、重ねてお伺いをいたす次第でございます。
○岡崎国務大臣 政府としましても、原子力の国際管理ということについては、これはぜひやりたいものだと考えております。それで、チヤーチル首相も言われておる通り、これは困難かもしれませんけれども、今後いろいろの機会に、希望を失わずにできるだけこちらの方にものを持つて行くように、努力をいたすべきだと考えております。しかしながら、それができ上る間におきましては、ソ連側においても英米側においても、いろいろの実験をし、発明をやろうと努力をしておるのであつて、自由主義諸国の防衛力を弱めるような措置は、私はとりたくないと考えております。従つて、今度の実験についても、その範囲が非常に広い、しかしこれも特に危険をおもんぱかつてかなり広い場所を指定したものと考えております。その方面は調べてみますと、普通の貸客船が通るということよりも、おもに漁船の問題であつて、日本の漁業にどの程度の影響が及ぶかということが一番ただいまのところは問題であります。その点は今後過去の実績等を調査するわけでありまして、漁業の損害について適当の措置を講じ得るならば、それ以外については、できるだけ協力的態度でアメリカの実験を妨げないようにいたしたいと思つております。但し国際管理等ができれば、これはまつたく別問題でありますが、その間においては片手落ちになるような措置を、われわれ自由諸国の内部でとることについては、考慮を要するのではないかと思つております。従つて、ただいま漁業の損害についてはいろいろの材料を集めて調査中あります。これについては適当の措置を講じたいと思つております。
○上塚委員長 須磨君に申し上げますが、緒方副総理は十二時半に退席をせられることになつておりますが、あなたはもう緒方副総理には御質問ございませんか。
○須磨委員 もうございません。
 昨日の本委員会において問題となりました原子力委員会委員長の談話その他でございますが、私がけさ聴取しましたラジオのニユースによりますと、あれとまたかわつたような言い方も聞いたのでございます。というのは、きわめてあいまいなことでございますが、日本に非常に同情的なこともあつたようでありますが、あれに対して、お取調べの結果何か的確なるものを入手されたのでありますか、その点を伺いまして私の質疑を終りたいと思います。
○岡崎国務大臣 今連絡をいたしておりますが、ただいまのところまででは的確な材料は入手しておりません。
○上塚委員長 午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時三十八分開議
○上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を継続いたします。細迫兼光君。
○細迫委員 副総理にお尋ねいたしたいと思います。私がかつて総理に憲法を擁護する義務が総理大臣としてはあるはずであるが、どういうお考えであるかという質問をいたしました際に、その通り憲法を擁護するつもりだという趣旨の確答があつたのでございます。これはもちろん当然しごくなことでございまして、国政は国民からの厳粛な信託によつたものでありまして、今国政をとつておられるお方、それはその信託に基いてやつておられる。しかしこれは無条件ではなくて、憲法に従つて国政を執行しているということであることは申すまでもありません。その憲法従つていえば、すなわち憲法の一箇条にあります、国務大臣を初め国会議員はこの憲法を擁護する義務があるということがうたつてある、その条章をも履行しなくてはならぬことは言うまでもないのでございます。憲法を擁護するとは一体何であるか。自分のからだを擁護するといえば具体的には佃であるかといえば、平素衛生に注意するというような問題もありましようが、しかし自分のからだに対する直接の侵害を排除する、いろいろな打撃をして来る攻撃に対して、これを排除するということが、からだを守るという具体的な意味でなくてはならぬのであります。同様に憲法を擁護する、憲法を守るといえば、これに対する侵害に対してこれを攻撃し、排除するということこそが、憲法を擁護するという具体的な意味でなくてはならぬと思うのであります。今MSA協定問題に関連しまして、自衛隊の問題あるいは戦力の問題、海外派兵の問題やあるいは交戦権の問題等、いろいろと憲法のからを破るものではないかという論議がなされていることは御承知の通りであります。ことに政府の言われるところによりますれば、自衛力を漸増してこれが戦力に至るならば、憲法を改正しなくてはならぬという言葉自体からいたしましても、この自衛力の漸増というものは、いつかの日にあるいは近い将来に憲法のからにつつかかり、からを破る憂いのある事実であると認定しなくてはならぬ、そういう危険を持つた状態に今やある。この憲法を侵害するかもしれない危険に対しまして、あらかじめこれを排除する、防御する態勢をとつてこそ、初めて憲法を擁護するといわれるのであります。しかるに今吉田総理大臣は自由党総裁として党内に憲法調査会を設けられておるのであります。この調査会は明らかに憲法擁護のための調査会ではありません。これはいかに強弁なさいましても、どうにかかえるところがあるだろうかということを調査するということに、せいぜい善意にとつても結論せざるを得ない。これは決して憲法擁護の方向を向いた行動ではございません。一方を向いては憲法を擁護すると言われますが、具体的な行動において憲法を――よくいえば改正でありますけれども、憲法侵害の方法を、あるいはどこを突破口としようかというような侵害の箇所を探しておられる行動をとつておられる。これは明らかに矛盾しておるのであります。一体政府の、ことに総理大臣の顔は、憲法擁護の方を向いておるのか、憲法を改正しようという、あるいはわれわれからいえば改悪である点が多いと思うのでありますが、改正しようという方向を向いておるのか、一体どちらをを向いておるのか。改正はいたしません、あるいは必要なときには改正しますということでなくて、一体現在顔はどちらに向けておられるのかということをひとつお尋ねいたしたいと思います。
○緒方国務大臣 憲法を擁護するという言葉を総理大臣がどういうところで使いましたか、私記憶にないのでありますが、しかし今御引用になりましたから、どこかで使つたのであろうと思います。でありますが、擁護という言葉は、何か侵害者がある場合にそれに対抗して擁護するので、総理大臣がそういう言葉を使つたとすれば、前後に何か質問か、あるいはそれに照応する言葉があるのではないかと思いますが、政府としましては今憲法が侵害されつつあるとは考えていないので、従いまして憲法の条章を遵守することは、これは間違いありませんが、ほかからの何かを排撃して擁護をするというふうな考えではおりません。しからば政府は現行の憲法にどういう態度をとつておるか、並びに総理大臣の顔はどつちを向いているかというお尋ねがありましたが、総理大臣はこの憲法を今改正する意思はない。従つてどこまでも憲法の条章を尊重し、遵守して行くという方に顔を向けていると考えます。
○細迫委員 遵守では足らないのでありまして、憲法第九十九条は、明らかに天皇、国務大臣、国会議員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うと、はつきり義務づけておるのであります。そういうお心構えでは、いわゆる国民の厳粛な信託に応ずるゆえんでないと私は考えるのでございますが、擁護といえば、具体的な意味は先ほど私が言うた通りでありまして、総理大臣の自由党総裁としての行動と矛盾する、それで副総理の口からどうしても擁護とは言えない、私はこういうふうに理解せざるを得ないのでございまして、そういう理解を持つことにいたします。
 次に参りますが、あの国際連合に対する政府の態度でございます。御承知のように、このMSA協定の中にも、至るところで国際連合憲章の目的と厚則を尊重し、その目的に沿うてというふうに、これによつてMSA協定を意義づけようとしているのであります。しかるに実際の国際連合の動きというものは、国際情勢の変化に伴いまして、いわゆる自由諸国家群、アメリカを中心とする自由諸国家群、これの機関化している状態であります。これにはイギリスなどにおきましても相当な不満の声がありまして、イーデン元外相なんかもたしかそういう言葉を吐かれておりますが、そういう国際情勢になつていることは、現政府当局としても認めている趣旨をこの委員会でもしばしば承つておるのであります。一体政府の大方針といたしまして、国際連合憲章の目的及び原則、これは世界戦争終了直後に組織せられたものであります。もちろん世界各国、すなわちソ連をも含めました加盟各国の平和をこいねがう、そういう趣旨のものでありまして、その間に対立的な気持を含んでなかつたのであります。その情勢の中で国連憲章は夢となつてはならないと確信いたすのであります。これは精神に従つて行動しようとしておられるようには考えられない。すなわちアメリカは国際連合に加盟することを希望しておられるようでありますが、これは実質的には、現在ほとんどアメリカを中心とするいわゆる自由諸国家群に入ることであり、ことにこのMSAそのものはそのことを露骨に具体化したものであるのであります。政府の大方針としましては、世界平和、世界各国との平和をこいねがうのではなくて、一にアメリカを中心とする自由諸国家、反共産主義勢力といわれておるその勢力と一蓮托生の運命に、日本の運命を置こうとするコースをたどつておられると私は思うのでありますが、さように理解してよろしいでございましようか、お尋ねいたしたいと思います。
○緒方国務大臣 国際連合の目的は、要するに国際間の平和及び安全を維持することでありまして、平和に対する脅威の防止及びそれを除去することと、侵略行為あるいは平和破壊の鎮圧のために、有効な集団的措置をとることを第一の目的としておるのであります。その他に諸国間の友好関係を発展させること、及び経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決すること、これらの目的の達成にあたつて、諸国の行動を調整するための中心となる等のことでありまして、国連憲章の原則は、要するにこれらの目的を達成するために必要な行動を規律したものであると解しておるのであります。日本は世界平和を考えておるのか、あるいは自由陣営で共産陣営と対抗するつもりでおるのか、という御質問のように拝したのでありますが、今の国際情勢は、不幸にして両陣営の対立になつておることは御説の通りでありますが、日本の終局の目的といたします理想は、もちろん世界平和にあるのでありまして、今日のこの両陣営の対立した客観情勢というものも、何らかの努力によつて、日本もまたその間に貢献して、ほんとうの平和にもたらそう、そういう目的であることは、サンフランシスコの条約調印後も少しもかわりはないのであります。
○細迫委員 そもそも今日このMSAを結ぶに至る第一歩は、サンフランシスコの平和会議にあるのでありまして、一段、二段、三段とますますアメリカとの一蓮托生の運命――われわれからいえば、日本が非常に危険な状態に深みへ入つて行く段階を進んでおると思うのであります。実際にわれわれが最も心を痛めなくてはならないことは、日本の国の運命と日本国民の安全、具体的にはこれでなくてはならぬと思うのでありまして、アメリカ陣営に入つて一蓮托生の運命をともにする覚悟をいたしますと、なるほどアメリカは強いからまさかのときが起つても、最後には勝つということになるかもしれませんが、わが国の位置は御承知のようにその最前線にあつて、おそらくは緒戦において最もはげしい戦火をこうむる地位にあるのでありまして、わが国が壊滅のあかつきに、いくらアメリカが勝つてくれたつてしようがないのでありまして、具体的にわが国が戦火をこうむり、国民が生命を失うというこの惨禍から免れることはできない。私は政府のお考えは間違つた、正反対の方向を向いておられると思うのでありますが、そのことはそれでおきます。
 次に、このMSA協定をもつて、日本を独立の方へ一歩近づける方法だというような御説明、あるいは公聴会における公述人の意見などがあるのであります。私はMSA賛成論としては最も傾聴すべき議論だと思つております。すなわちMSAを受けて自衛力を大いに強化したならば、アメリカの兵隊が引揚げて行つてくれて、結対中立の姿に一歩近づくことができる、それを漸次進めて行けば、遂に完全な独立の姿に相なるであろう、こういうことは、私は見方が違いますけれども、論理としては傾聴すべきものであり、筋が立つておると思います。おそらくは吉田首相も今ごろ日記をつけておられるならば、今言つたような気持で自分はおるのに、燕雀鴻鵠の志を知らず何か騒いでおる、というようなことを書き込まれておるかもしれない。一番筋の通つた説だと私は思うのでありますが、しかしこれは完全な間違いでございます。これは日本の独立と申しますれば、もちろん政治上の問題でございますが、このMSAを受けましてアメリカの規格による装備をいたしますれば、この武器その他装飾は、アメリカがくれない、あとを補給しないと言えば、それつきりに相なりまして孤立してしまい、もらおうと思えばアメリカの言うことを聞かなければならぬということに相なること申すまでもありません。あるいは飛行機にいたしましても補充はつきません。原動力の油なんかはそうであること説明するまでもありません。生殺与奪の権を軍事上において握られるのみならず、経済の独立なくしては国の独立はあり得ないこと言うまでもございません。今日のようにアメリカ経済に完全に従属せしめられた状態を持つて行きますれば、武力による脅威ではなくても、威嚇ではなくても、経済による威嚇によつて自由にせられる運命に陥る。私はいつかこの委員会においてイランのことを申しましたが、実際こうした生殺与奪の権を握られた軍隊によるクーデターというようなことすらも、私は決して杞憂ではないと考えておるのでありますが、こういうふうに軍事上、経済上生殺与奪の権の握られる方面に深入りしつつあるのが事実問題だと思うのであります。そういうような観点からでもあると思いますが、今や欧州におきましても、いわゆる援助よりも貿易という空気が、非常に濃厚になつていること御承知の通りであります。ここらに願みることがあつたに違いないと思うのでございます。このMSA協定を結ぶことによつて、はたして独立へ近づくものと相かわらずお考えに相なるでございましようか、またそのほかの御意見によつて、MSA協定結ぶべしというお考えを持続せられておるのでございましようか、お伺いいたします。
○緒方国務大臣 私はこのMSAの協定の締結によりまして、日本の防衛力の増強を援助する、それによつて日本が自衛権をより強く行使し得るということは、これは独立国としての日本を強めると申しますか、日本の独立を強めるということに相なると考えるのであります。第一次大戦、第二次大戦を戦いまして、今日では戦争は何ものも解決しないということが、一つの常識になつておると私は思います。第一次大戦のあとには、久しぶりの戦争でありましただけに、かつまた世界的な大戦争でありましただけに、これが戦争を終るための最後の戦争であるかのごとく一時思われた。しかしながらそれから二十年もたたぬうちに第二次大戦が始まつて、そうしてあれだけの戦争をしたにかかわらず、さらにまた共産陣営と自由陣営の対立が非常に深刻になつておる。そうしてまた戦勝国も昔の戦争と違つて、戦勝によつて必ずしも大きな利益を得ていない、いわゆる戦争は何ものも解決しないということが、常識になつておると考えるのです。そういう意味から、各国とも世界の現実に照して防衛力は持たなければなりませんけれども、真の人類の希望というものは、ますます平和に向いつつあると考えるのです。ただその間におきましても、兵器の進歩その他から、防衛力をお互いに整えて参る、そういう現実は、独立というような意味を多少かえて参つておるように考えるのです。今日は一国が一国の防衛を全うするということは、兵器の進歩その他からなかなかできぬ時代になつておる。そういう点から、いわゆる地域的の集団安全保障という構想も生れて参つたのでありますし、MSA協定によつて日本の防衛力増強に外国の援助を得たということは、日本の独立を傷つけるものでは何でもなくて、むしろ逆に私は日本の独立国としての立場を強めて行く、防衛力を持つた日本と防衛力を持つたアメリカとがお互いに協調して行くところに、アメリカとしても日本としても、防衛が全うし得るのである、そういう考えを持つております。
○上塚委員長 上林與市郎君から細追君の時間の範囲内で発言を求められておりますから、これを許します。
○上林委員 緊急を要する問題の一つとしてお伺いいたしますが、広島の大久野島弾薬庫についてでございます。私どもの聞くところによりますと、かつては毒ガスをつくるように施設されておつた。現在は弾薬処理場と聞いておりますが、この施設は朝鮮動乱が終りますと、一年半後に日本に返還される条件になつておつた。こういうふに私どもは聞いておるわけでございます。この広島の大久野島弾薬庫が、きようの期限で米軍に引渡される、こう伝えられておるのでございますが、これは事実でございましようか。
○岡崎国務大臣 この問題は特別調達庁の係であろうと思つて、今調べておりますが、まだ調査が来ておりません。
○上林委員 それではその問題は、できてから御回答をいただいてけつこうでございます。
 次に副総理に一つお伺いいたしますが、日米相互防衛援助協定の第三条によりますと、秘密保持に関する措置を講ずる、こういうふうに出ております。秘密保持の措置として秘密保護法がすでにできております。これは私から言うまでもございません。これができますと、おそらく私が今質問する事項等はこの秘密保護法によつて制約をされるであろうと思いますので、お伺いしておきますが、現在日本には原子兵器が来ておりましようか、あるいは原子爆弾が日本に来ておりましようか、これをお伺いいたします。
○岡崎国務大臣 さようなものは来ておりません。
○上林委員 この秘密保護法がかりに国会を通過いたしたといたします場合に、今私が質疑いたしましたような兵器の実在、こういう問題について国会で質問する、あるいは公開の席上で発表する等は、この第三条に関連する秘密保護法の対象になるかどうか。
○岡崎国務大臣 これはアメリカ側から日本側にそういう兵器を供与された場合とか、あるいはそれに関する特殊の機密の条項を漏らした場合、日本政府としてはこれを発表しないという約束はいたします。
○上林委員 それはそれでよろしいのですが、前の方の大久野島の弾薬庫の問題は、いつ御調査できるのでございますかきようはできませんか。
○岡崎国務大臣 こんなものはじきできると思います。ただ今係がいないからわからないだけの話です。
○上塚委員長 それでは戸叶里子君。
○戸叶委員 副総裁がお見えになつておられますので、このMSA協定に関係いたしまして、政府の態度をお伺いしたいと思います。
 今日世界の平和を望まぬ人はどこにもございません。ところが今回アメリカの意図するMSA援助は、自由主義世界の平和を守るために必要な措置として、各国に軍事援助を与え、あるいは経済援助、あるいは技術援助の場合もありますが、そういうものを与えて、これらの国とともに自国の平和を維持しようとするものでございます。そこでここに考えられますことは、アメリカ自身でさえも、今回日本と結ばれますMSA協定の中にも、自由主義世界の平和を脅かす国とはつきり言つておりますように、自由主義世界以外の国は世界の平和を脅かす国、こういうふうに断定しておるのでございます。そういうような考え方に日本としても同意をなさるかどうか、これを承りたいと思います。
○緒方国務大臣 ちよつと聞き落しましたが、それはアメリカの何か公のものに書いてあるのでございますか。
○戸叶委員 そうではございません。このMSA協定の付属書の中におきましても、世界平和の維持を脅かす国との貿易を統制するというふうなことが書いてございまして、はつきりと自由主義世界と世界の平和を脅かす国というふうにわけて考えております。そういう考え方に日本も同意するかどうか、これをまず承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 これは別に自由主義諸国とか共産国家とかいうことは書いてありません。いずれにいたしても平和を脅かすような国がありましたならば、これに対して貿易制限をほかの平和愛好国と一緒にやろう、いずれが平和愛好国であるかということは、おのずからそのときに、わかつて来ます。
○戸叶委員 MSA協定を調印なさる場合にこういう文句が出て来ておりますけれども、この世界の平和を脅かす国というのは、どこと考えて調印されたのでしようか、その点を承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 現在侵略国として国連総会で決議されておるのは中共であります。
○戸叶委員 そうしますと中共だけをさすだけで、ほかには今ないわけですか。
○岡崎国務大臣 それは現在のことであつて、将来平和を脅かすような国があればやはり中に入つて来ます。
○戸叶委員 そこで考えられますのは、このMSA協定に関連して考えて参りますと、今日自由主義世界に属する国でありましても、MSAの受諾を拒否している国がございます。そういう国はなぜそれを拒否しているか、こう考えて参りましたときに、いわゆるMSAを受諾して国家群と、それらの受諾した国が自由主義世界の平和を脅かす国家群と呼んでいるところの国家群と、二つの陣営が対立していると思うのでございます。そのことにつきましては、けさほどの委員会におきましても緒方副総理が、はつきり今日二大陣営が対立しているというふうにおつしやつておられましたが、そこで、自由主義諸国に属しているといわれている国が、このMSAの援助を拒否しているという理由は、それらの二大陣営が万一衝突したような場合に、その衝突の中に巻き込まれることを恐れるがゆえに受けていない、こういうふうに考えられる面もございますが、その点につきましてはどうお考えになるか、緒方副総理にお伺いしたい。
○緒方国務大臣 それはその国々によつていろいろな国内的な事情があるでありしようし、一概には申し上げられないと考えます。
○戸叶委員 一概には申し上げられない。それはその通りだと思いますが、そうしますと、ここで世界の二大陣営が万一衝突した場合に――平和を脅かす国と断定された国家群との軍事的な衝突があつた場合に、MSAを受諾した国家群の一員として、MSAを受けた国家群の方に日本が軍事的な助力、協力をするかどうか、これを伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 そういうことはMSAの協定から何も出て参りません。これはアメリカ側から武器、装備等の援助を受け、日本もアメリカの不足する物資があればこれを援助しようという相互助術援助協定でありまして、お互いの防衛力の充実に寄与をするようにいたそうということであります。MSAの援助を受けたからといつて、どういう戦争に入るとか入らないとか、そんなことは全然協定とは別問題であります。
○戸叶委員 そうしますと、もしも二大陣営が衝突した場合には、どちらの方にも加担しないで、日本は日本の防衛を消極的に守つて行く、別にMSAを受諾しているからといつて、そういうふうな自由主義国家群の方に協力はしない、こう判断していいわけでございますか。
○岡崎国務大臣 それは大間違いであります。私が言つているのは、この協定からはそんなことは何も出て来ないというのでありまして、将来どういうことが起るかわからぬけれども、日本の国としては、少くとも、われわれの考え方としては、正義にくみして、世界に正義の行われるような努力をするのが当然だと思つております。
○戸叶委員 それでは今の岡崎大臣のお言葉を解釈いたしますと、そういうふうな両陣営の衝突が起きた場合には正義にくみして、そして一方の方に加担するということが考えられると了承していいわけですか。
○岡崎国務大臣 そんな仮定の問題でもつて――一体両陣営が戦うというその両陣営とはどの陣営なのか、どの国が入るのか、原因がどこにあるか、それをおつしやらないで、ただそういう戦争が起つたときとおつしやつたつて、これはお答えのしようがないのであります。ただ日本の国のあり方としては、正義にくみして、世界に正義が行われるように努力するのが当然である、こういう一般的な御返事をいたしておるのであります。
○戸叶委員 大臣は仮定の問題とおつしやいますけれども、そういうことは仮定でなくて、あり得る場合もあると思います。そういうことを一応いつでも予想していなければならないと思いますけれども、それではもつとはつきりと私が申し上げますが、先ほどから緒方副総理の御答弁を聞いておりましても、今世界が二大陣営にわかれているとはつきりおつしやいました。そこでこの両者の衝笑というようなことも考えられると思います。その場合に日本は、一方の国からMSAの援助を受け、しかもその国と、自国並びに集団的自衛の態勢強化、そういうようなことをはつきりと約束をしております。そういうふうな立場にある日本が、このどちらにもくみしないで、消極的防衛にとどまつている、そういうふうに解釈してもいいかどうか、この点を承つたのであります。それをもう一度はつ盲きりお答願いたいことと、もう一点は、正義のためならばとおつしやいますが、それではどういうことを標準にしておつしやるか、その点も承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 戸叶さんの御質問がはなはだあいまいでありまして、戦争の原因がどこにあるか、そして一体二大陣営とおつしやるが、今のいわゆる二大陣営というものが両方とも全部戦争に参加するのかどうか、こんなことはわかりません。そういう原因もわからないようなことを仮定して、その場合日本がどうするということは、それはお答えできないのが当然であります。一体どういう原因で、どちらが先に手を出して、どういう戦争が起つたときということを条件でおつしやれば、それは答えができるかもしれません。それがなくて何もお答えできるわけがありません。私が一般的に申しますのは、人類の社会でもわれわれは正義にくみして、不正義をなくするような努力をするのが当然であると同時に、国際社会においても正義が行われるように努力するのは国として当然のことである、これだけを申し上げているのであります。
○戸叶委員 それでは具体的に申し上げますが、アジアのどこかの一角におきまして今申し上げたようなことが起きた場合に、日本はどういう態度をとりますか。
○岡崎国務大臣 アジアのどこで、どういう原因で、どういう国が、どういういくさをしたかということをおつしやらなければ、お答えのしようがありません。
○戸叶委員 私が今ここにこういうことがあつてという例を言わなくても、大体岡崎さんはそのくらいのことは御承知の上で、またそういうふうな国際情勢を判断していられると思いますが、一国の外務大臣ともあろうものが、そういうような国際情勢に対する何らの見通しもないということは、日本の国民の一人としてまことに悲しむべきものだといわなければならないと思います。この点に対しまして私はもつと深くお聞きしたいのですが、緒方副総理がいられますのに岡崎外務大臣がかつてにそこで御答弁をなさつておられますので、(笑声)緒方副総理の方に御質問を申し上げたいと思います。
 まず伺いたいことは、防衛力漸増の問題につきまして岡崎外務大臣は、防衛力の漸増とMSA協定とは大して関係がないというふうな御答弁を幾たびかなさいました。私はこの協定文を読めば読むほど、関係がないということは絶対に言えないと思うし、どうしてもこれは表裏一体のものであるとしか考えられません。また政府の答弁を聞いておりますと、防衛力の漸増は日本の国の問題であつて、よその国にとやかく言われてするものではない、こういうこともおつしやつておられます。それをすなおに了承するとして、ここで考えてみますと、昨年の六月二十六日、まだMSA協定がアメリカの上院だけで問題になつておりましたときに、緒方副総理は予算委員会で、現在の保安隊は増しません、今後もこの態度はかえません、こうはつきりおつしやつております。また岡崎外務大臣も、六月のころには二百や三百はふやすかもしれないが、それ以上はふやさないと言い、またその次には、二千や三千はふやすかもしれないが、それ以上はふやさない――それ以上のことは何にもおつしやつておりません。ところがわずか一年足らずにしてここに陸海空を入れて十一万から十六万にふやすに至つた。その動機は一体何であるか、これをお伺いしたいと思います。
○緒方国務大臣 六月二十六日に私がそういうお答えをしたかどうか記憶しておりませんが、そのときそう申しておれば私はそう考えておつたと思います。その後国内的にも事情がだんだん変化して参りまして、九月の末には非常に積極的な防衛力増強論を持つておらるる改進党総裁と吉田総裁との間に意見の交換がありまして、防衛力を増強する意見が一致しましたので、その前後からこれはMSAの問題とは何ら関係なしに、防衛力増強を国力の許す範囲内においてできる限りやつてみようという考えが出て参り、その結実いたしましたものが今度御審議を願つておる防衛力漸増案でございます。
○戸叶委員 九月の重光さんと吉田さんの会談で防衛力増強の話が出て来たという、その裏には何かなければならないと思うのですが、どういうことが動機となつてそうなされたかという、その内容をもしおさしつかえなければ、私どもの納得の行くように説明していただきたいと思います。
 それからこれは岡崎さんとお二人に伺いたいのですが、よく政府のおつしやいますことは、経済カが許すならば、許す範囲内で自衛力を漸増するということでありますが、一年くらいのわずかな間に経済力が一体どういうふうに変化したか、自衛力を増し得る体制になつて来たというその根拠を示していただきたいと思います。
○緒方国務大臣 これは総理大臣からたびたびお答えをいたしたと思いますが、むろん一国の防衛力を考えます上には、国民生活の安定ということを基調といたしまして、国民生活に犠牲を及ぼさぬように考えることは当然のことであります。もう一つは安保条約によりまして、アメリカにおきましては日本に長く軍隊を駐留させ得ない事情もあり、漸減したい意向がだんだんに強まつて参りましたので、それに呼応いたしましてわが方におきまして、義務とは申しませんが、かねて安保条約の一つの期待となつております漸増の方針、そのピツチを多少早めたということはあります。これはその客観情勢に呼応いたしまして今回のような防衛計画を進めて参つたのであります。
○岡崎国務大臣 私の場合は、去年申し上げたのは去年の計画のことを申したのであります。つまり本年三月までの予算でこれ以上の増員はないが、船が来たり何かするたびに二、三百のこともあろうし、二、三千のこともあろう――しかし明年度以降のことは何ら言つておりません。それはその当時の速記録をごらんになればよくおわかりになることと思います。
○戸叶委員 私は緒方副総理の御答弁にもどうも納得が行かないのです。それは何か情勢が変化しなければ、急にそういうものをふやすということがないと思うのです。六月から九月までの三箇月の間に世界の情勢がかわつたわけでもございませんし、国内に急に暴動が起きた、あるいは外国からの侵略を受けそうだという脅威を感ずるようなことは別になかつたと思うのですが、そういうことを緒方さんにいろいろお聞きしてもしかたがございませんから、これで打切りますけれども、岡崎外務大臣が昨年の予算ではそういうことはできなかつた、今年の予算ではそういうことができる体制になつて来たということを言われるが、今年の予算は緊縮予算として一兆の中にはつきりと縛られております。そういうふうに財政がきゆうくつなのにもかかわらず、防衛力を漸増することができるだけのゆとりが今年はできたということは、一体どこにそういう根拠があるか、その点を承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 私の申すことはそういうことではなくて、今年の三月に終る本年度の予算の中には、せいぜい二千かそこらの増強計画しかないという事実を申し上げたのであつて、経済力がどうとかそういうことを申し上げておるのではないのです。
○戸叶委員 それはわかりましたけれども、経済的な安定ができて初めて防衛力の漸増が考えられるということは、外務大臣は幾たびもお答えになつたと思います。私は耳の中に残つております。そこでこの三月まではだめだつたけれども、今度はできるようになつたという、その経済的な見通しはどこから出て来たか、それをお尋ねいたします。
○岡崎国務大臣 それは三月まではだめだとかだめではないとかいうのではないのでありまして、日本の経済力からいえば、つまり八千七百万の人口を擁して相当の国民所得がある――たとえばイギリスが四千八百万の人口で、国民所得は日本よりも多いのですが、約九十万の軍隊を擁しておる。フランスの経済状態は必ずしもよくないし、人口も四千万そこそこであるけれども、八十数万の軍隊を擁しておる。それに比べれば、日本が八千七百万で相当の国民所得がある現状において十一万というのは、まだかなり上へ伸びるものを伸びさせずにいたような実情でありますから、本日の経済力で一ぱいが十一万というのではないと私は思う。ただそれを八千七百万だから一ぺんに百万にしていいかというとそうは行かない。しかしだんだんに伸ばして行けば伸びる可能性はあるのであつて、昨年が手一ぱいで今年は余裕がないということではないと思います。
○戸叶委員 いまいろいろな国の例をお引きになりましたが、それらの国の経済状態と比べてみるならば、日本はまだ手一ぱいになつていなかつたのだということに、ようやく今度お気づきになつて、ふやしたのだ、そういうふうに了承するよりしかたがないと思います。そこで私どもが心配いたしますのは、政府の経済に対する考え方でございます。日本経済をだんだんに自主的経済の方向に持つて行かなければならないにもかかわらず、依然経済への方向に非常にたよつていると思う。たとえば今回のMSA問題。日本は、敗戦直後にはガリオア、イロアの援助によつて日本の経済を何とか維持しておりました。それから朝鮮特需で国際収支のアンバランスを何とかごまかしていたけれども、だんだんに朝鮮の特需も期待できなくなつて、絶体絶命になつた結果、その穴埋めとしてMSA協定に署名して、域外買付その他によつて国際収支のバランスをとろうという方向へ持つて行こうとしていると思います。これは非常に危険であると同時に、日本を自立経済からますます依存経済の方へ持つて行くのではないかというような危惧の念を抱くのでございますが、緒方副総理のお考えはどうでございましよう。
○緒方国務大臣 今回のMSAによつて、域外買付等日本の自立経済に多少の利益があるということは、御指摘のように、間違いのない事実でありますが、日本の戦後の経済自立政策がそういう外国の援助のみによつておるということは、これは見方が違つておるのでありまして、今回のいわゆる均衡予算も、朝鮮のブーム以後、特需に依頼して、インフレーシヨンをだんだんいつとはなしに助けて参つた結果、日本の国際収支がアンバランスになりまして、このままでほつておくと、経済自立どころではない、日本の経済が崩壊するおそれさえ見えて参りました。そこで政府は、一旦財政をできるだけ圧縮いたしまして、何よりも国際収支の均衡をはかり、一面財政圧縮によつてインフレーシヨンを避けつつ物価を引下げて、国際貿易に優位な立場をとつて行こう。この努力は、わずかなMSAの利益の均霑というようなものとは、とても比べものにならぬものでありまして、今回の均衡予算がその目的を達するまでには、もちろん二十九年度の努力だけではいけないので、まだ非常な努力を国民的に要請しておると考えます。その一部分の利益にはなりますが、それに依存して日本の経済を立てて行こうというようなことは全然考えておりません。それはいわゆる自立経済の達成ではなくて、日本経済を危うからしめる結果になると考えております。
○戸叶委員 経済面のこういつたMSAに対するお考えは、非常に軽く考えていらつしやるようでございますが、それではもしもMSA援助を拒否した場合に、国際収支のアンバランスというものは、収支償えるかどうかということ、それから何らか域外買付というものが期待できるかどうか、MSA援助を拒否しなかつた場合と少しもかわらずに、そういうがあり得るかどうか、ということをお伺いします。
○岡崎国務大臣 戸叶さんの御質問ですから、お答えいたしますが、初めから反対をきめておつて御質問している。一向態度がお直りにならぬとは残念でありますが、国民に伝える意味でお答えいたします。
 日本政府の根本方針は、今副総理から言われた通りでありますが、しかし経済というものは、いくらよくても急激な変化を起すことは考えものであります。そこで一方において根本的な政策を樹立すると同時に、急激に外貨の収入が減つたり、あるいは日本の工業に対する注文が減つたりしないような措置は、大いに講じなければいけないわけであります。その意味においては、MSAの受諾ということは相当の、応急的な効果はある。これは域外買付にいたしましても、あるいは国内における発注にいたしましても、その他小麦とかいろいろな問題について、応急的な効果は相当あると考えております。
○上塚委員長 戸叶君に申しますが、あと五分くらいしか残つておりませんから、質問を整理されるようお願いいたします。
○戸叶委員 もう一点だけお伺いいたします。アメリカの対外援助が――経済援助が一九五六年に、軍事援助が一九五七年に、一度期限が切れて、また新しい構想のもとに始められる、こういうことを伺いました。そうしてランドール委員会では、軍事援助は続けられるだろう、こういうふううなことも発表しておりますが、それが続けられるならば、日本はそれをお受けになるかどうか。先のことは別といたしましても、そうしますと、それまでの間は日本はこのMSAの協定を全然かえずに、今回署名したMSA協定に従つて援助を受けて行かれるのかどうか、その点を承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 これは先のことでありますから、今からはつきりどうということは言われませんけれども、ただいまの状況がかわらないとすれば、ただいまの協定で援助を受けて行つてさしつかえないと考えております。
○戸叶委員 そうしますと、この協定文を全然かえずに、また憲法も改正しないで、五六年、五七年まではそのまま行く、こう了承していいわけですか。
○岡崎国務大臣 憲法をかえる、かえないは、この協定とは全然関係ありません。日本の国内の問題であります。いずれにいたしましても、この協定は、現状において変更がなければ、このまま続けて行つてさしつかえないものと考えております。
○戸叶委員 そうしますと、憲法の、たとえば九条というようなものをかえるとすれば、この協定もかわつて来る、こう了承してもいいわけですか。
○岡崎国務大臣 それは九条のかわり方いかんによるので、そこまではまだわかりません。
○戸叶委員 私はその点についてもつと伺いたいのですが、これをもつて質疑を打切ります。
○上塚委員長 次は大橋忠一君。
○大橋(忠)委員 副総理にお尋ねいたします。今回アメリカからMSAの援助を受けて自衛力を強化する、保安隊が自衛隊になる。これに関連いたしまして私が非常に心配していることは、政府の方でその受入れ態勢と申しますか、よほどしつかりした準備をしてやられないと、国内治安を保つ、あるいは侵略を妨ぐ軍隊になるかわりに、革命の軍隊いわゆるクーデターの軍隊になるおそれが非常にある。もつともアメリカの陸上軍がおるうちは、そういうことは起らないでありましようが、MSAによつて日本の自衛力が強くなるに従つて、向うも減らすというのでありますから、結局いなくなるのでありますが、そういうときが非常にあぶないのではないかと私は恐れておるのであります。満州事変のクーデターの際の青年将校の行動を見てみますと、明治初年からいわゆる忠君愛国の指導原理が衰えまして、結局天皇に対する絶対服従という観念が薄れたところにもとがあるのであります。ところが忠君愛国の思想が今度の戦争によつてなくなりました。民主主義、自由主義という新しい原理がアメリカから入つて来たのでありますが、どうもまだその思想というものが一向統一されておらない。保安隊においてもおそらくまだこの思想というものが、骨の髄までしみ渡るようなことは絶対ないであろうと思うのであります。従つてある意味において精神的に申しますと空虚である。その空虚なところに極左の思想であるとか、あるいは極右の革命思想というものが入り込みまして、そうして外部の扇動と相まつて、いつ同時どういうことが起るかもしれないというような素因を持つておるのではないかと私は思う。こういう点について政府当局としては相当研究しておられだろうと思うのでありますが、どうしたら思想的にもう少ししつかりした軍隊をつくることができるか、その用意いかんという点について第一にお尋ねしたいのであります。
 第二に、これも満州事変当時の青年将校を動かしたのでありますけれども、当時いわゆる日本の財閥というものは巨富を擁して、しかも腐敗させる政治家と結託して悪いことをした。一方彼らの出て来た農村は非常に疲弊して、農民は困つておるにかかわらず、財閥は冨を抱いてぜいたく三昧をしておる、けしからぬ、この思想が非常に青年将校を動かしたことは御承知の通りであります。ところが現在におきまして、私はどうしてつくつたものか知らぬが、数百億円の巨富を一人で持つておる者がある。税金をちやんちやん納めておつたらそういう富はできないはずであるのに、現実あるのでありますから、これは脱税によつてやるのか、あるいはリベートその他でもうけたのか知りませんが、とにかくあるのであります。にうして一方において相当困つた者が非常に多い。そしてその困つた将来経済不況とともにますますふえるのではないかと思う。従つてかくのごとき状態に対して、いわゆる社会正義を思い切つて実行いたしませんと、そこに革命思想というものが出て参りまして、それが必ずその軍隊というものに感染して来るのであります。従つて軍隊を安定勢力たらしめるためにはまず社会正義を実行するという点について私はよほど深い注意を払われぬとかいかぬと思うのであります。そういう点について政府はどういう考えを持つておられるか、伺いたいと思うのであります。
 第三点は言うまでもなく現在の汚職疑獄による国会の不信用、おそらく満州事変や二・二六事件の起きた当時以上の国会の不信用、政治というものは、ほとんど国民は信用しないというような現在でありまして、これまた保安隊や自衛隊に革命思想がうつる一大原因であろうと思うのであります。従つて自衛隊をして真に自衛隊たらしめるためには、徹底的に政界を粛正し、そうして国民の信頼をつなぎ、政府は完全に自衛隊を握り得るところの強固なものにせぬといけないと私は思うのであります。従つて政界は徹底的に再編成をし、徹底的に粛正せぬことには、自衛隊などむしろ持たぬ方が安全じやないかと思うのであります。しかし自衛隊を強化する以上は、この点についてよほどしつかりした覚悟を持つておられぬと、たいへんなことになると思うのでありますが、この点に対する政府の覚悟いかん、この問題であります。実は満州事変の起つた最大の原因は、私は現地におつて比べられたからよく知つておるのでありますが、当時平和不戦条約や国際連盟の主張によつて、軍縮また軍縮、軍人の力はいつまでたつても昇進しない。しかるに外務省の力は平和の波に乗つて仕事がどんどんふえて、機構が大きくなり、どんどん昇進する。私のごときは当時三十九歳でありましたが、すでに大佐相当官であつたにかかわらず、私の同期生はわずかに大尉から少佐になるかならぬかというぐらいの差がある。実は私が比べられたのであります。そのつまり非常に軍人の先の暗い、前途がないというところから、やけぎみで革命気分というものが起きて来たことは、真実なる事実であります。従いまして今日はどんどんふやして来たからよろしいが、将来これを減らす、いわゆる軍縮をやるというようなときに、非常に注意をしないと、不平軍人というものが勃発するのであります。私は軍隊というものは非常な薬であると同時に、一つ間違うと非常な毒になると思う。従いまして政府としては自衛隊を真に自衛隊たらしめるためには、よほど諸般の準備を完全に整えられることに全力を出されぬといかぬと思うのでありますが、この点について緒方副総理の御答弁を伺います。
○緒方国務大臣 日本を守るための自衛隊が、日本の秩序を脅かす軍隊になるおそれがないとは言えない、それに対してどういう用意があるかという御質問でありましたが、私どももそういう点につきましては深い関心を持つておるのでありますが、根本的に申しますと、いわゆる祖国が、自分らの生活を中心に考えてみて、守るに価する祖国であるという認識が国民の間にはつきり持たれるということ、及びその国の歴史についてそれを自分の祖国観念と結びつけて、その歴史を尊重する気持が出て参らないというと、これはひとり保安隊だけではない、終戦後ほとんど虚脱状態に一度つつ込まれた国民の思想と申しますか、愛国的な気持がほんとうに盛り上つて来ないのではないかという心配を持つのであります。先ほどお述べになりました忠君愛国の思想といいますか、いわゆる天皇中心制度というものはいろいろな批判もありましたでありましようが、ともかくも歴史の裏づけを持つた一つの思想で、長い間、ほとんど三千年に近く国民はこれが自分らの祖国のほんとうの姿であると考えて参つた。それが敗戦の結果、今日のような状態に、簡単に申しますれば、よりどころのない祖国になつたような形になるのであります。これは、私は保安隊だけの問題としてはなかなか解決できないと思う。国全体の問題として、守るに値する国ということは、やはり政治が中心になつて、一人の不平者がないというまで政治が清められ、りつぱにならなければ、容易にほんとうの祖国愛というのはわいて来ない。同時に、教育の面におきましても、戦争後日本の歴史はうそで固められたように宣伝された、その歴史の真実性を国民の心の中に取返す、その両面から持つて行かなければ、なかなかこれは容易なことではないと考えます。でありますが、保安隊だけをとつて考えますれば、そういうことをいうておつても間尺に合わぬこともあるのでありまして、その点からいいますと、保安隊の教育というものは非常に大切である。戦争前の軍の教育方針と違つた、簡単に申しますれば、常識に富んだ、視野の広い教育方針によつて教育をする、また一面には保安隊の使命を十分に認識さして、政治に干与するような風習を初めから徹底的に養わないようにして行くということが、さしあたりの方法として最も大切でないか。その間に指導よろしきを得ると、。あるいは軍記の問題とか、いろいろなことがありますけれども、根本においてはそういう点に深く思いをいたさなければ、保安隊を、あるいは自衛隊をせつかく増強しながら、それが国の秩序にむしろ脅威になるという場合が生じないとも限らない、その点は私も同じような関心を持つのであります。
 それから満州事変の前の情勢を回顧されましたが、まつたくその通りでありまして、これもやはり政治がまず腐敗して参つて、従つて国民の政治でない、それとかけ離れたような政治になり、農村がひどく疲弊して――これは政治だけの面もありましたが、あの満州事変前の陰惨な状態ができまして、その結果としてああいう不幸が勃発した、これも一面明らかな事実であつたのであります。それに対しましては、今日の政治といたしましては、社会保障制度等、社会の発達に伴つて当然に現れて来るいろいろな弊害に対しまして、政府で先んじて即を打つて行く、そしてこの制度によつて、不幸な境遇におる人々を国として、あるは社会的にこれを救済して行くということを率先してやつて行くことが、私は必要であろうと考えます。
 それから三番目に、今日の国会の状態では、再び満洲事変前のようなことを繰返して、いわゆる政党政活とか国会政治というものに対する不信用から、ファツシヨと申しましようか、かわつた政治形態が現れて来るおそれがありはしないか、こういうこともすでに満洲事変前に一度経験しておりますだけに、歴史は繰返すと申しますから、絶対にそういうことが起り得ないということは、ひとり日本だけでなく、恐れなければならなことだと考えるのであります。それにつきましては、今回の汚職の問題を御引用になりましたが、汚職問題の実態がどうであるか、またどこまで発展するかということは私どももまだ検察の手にあるので十分に承知しておりませんが、その実態がどうでありましようとも、これを機会に、金のいらぬ政治――第一選挙からしてもう少し金のかからない選挙をし、この機会に日本の政治、日本の将来の政治というものをお互いにりつぱに仕上げて行きたい、これは考え方によりましては、今回の不幸を国としての歴史の上において仕合せにする一つの契機でもあろうかと思います。そういう意味において私どもも日夜この善後措置についていろいろ考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、初めに帰りますが、保安隊の育成ということは、社会的背景がすべてのものをいうのでありまして、そういう意味からまず政治をよくして行く、そして国民的に祖国愛というか、そういう気持の起るような環境つくつて行つて、だんだんに一つの民族としての体制を固めて行く、その結果でないとほんとうのよい保安隊はできないのじやないか、さしあたりの問題としては、先ほど申しましたように、特に教育、また保安隊の中の一つの雰囲気というものをつくることに、保安隊の当局者において十分の心を用いてもらいたい、これが私らの考えであります。
○大橋(忠)委員 御答弁のごとく、保安隊の背景をなす思想的、経済的、社会的、政治的基盤が健全であるかどうかという非常に大きな問題でありますが、同時に、これは日本の民主主義興亡のわかれる重大問題であろうと私は考るのであります。南米におきましてもアジアにおきましても、その憲法はいずれもりつぱな民主憲法でありますが、実際はクーデターによつてカーネル何とかいうような者が大統領をやるという事実でありまして、ほとんどクーデターによつて政変が行われておる。日本においてもまた民度が低いがため、いわゆる民主主義が発達しないがために、すでに満州事変が起り二・二六事件が起つて、そして完全な軍政となつて日本が滅んだ苦い経験を持つておるのであります。
 そこで私は政府に向つて要望したいと思うのあります。いかにして保安隊、自衛隊というものを健全なものにするかということをその見地から調査し、研究するために、特別の機関を――もつとも上に立つ人の少数でよいのですから、まじめな、真に憂国的な、過去のこともよく心得ておる人を集められて、そういう機関を今度できる防衛庁なり何なりに付置するなり、あるいは国会に付置してもよいのですが、そういう機構を設けて、日本の思想的経済的、社会的、政治的の欠陥を指摘して直して行くというようなことも、一つの案じやないかと思うのであります。これはよほど真剣にやらぬとしくじると思いますから、これは普通の質問でなく――私は実は軍人の内容をよく知つておるから心配にたえないのです。この機会にあえて申し上げるのでありますが、御答弁を煩わしたいと思います。
○緒方国務大臣 私もこの問題に非常に関心を持つておりますことは先ほど申し上げた通りでありますが、ただ今お述べになりましたような、保安隊を外から常に監視しておる機関があるということは、保安隊の中の者の自信を失わしめることになるおそれがありはしないかという意味で、私は即答いたしかねます。しかしながらそれにいたしましても、国権の最高機関であります国会が、常に保安隊のあり方につきましても、鋭い批判を持つておるということは、私は保安隊をよくする意味において非常に必要なことではないか。同時に保安隊の責任者と申しますか幹部が、今お述べになりましたようなことをよく考え、指導を誤らないようにして行くことが一番ではないか。特に草創の際において、そういうことが最も必要であろうと考えます。
○上塚委員長 この際佐々木盛雄君より、大橋忠一君の残余の時間を限つて質問したいとの申出がありました。これを許します。残り時間は十分であります。
○佐々木(盛)委員 私は他にもたくさんお聞きいたしたいことがあるのですが、今のような事情で、簡単に、あまり趣旨の弁明をいたさないで質問いたしたいと思います。
 今回のMSA協定が本委員会にかかつて以来今日までの間、真剣に審議をいたしておるのでありますが、その審議の過程を通じてわれわれがはつきりと見ましたことは、MSA協定の受諾をめぐつて、今世界が二大陣営にわかれているその中にあつて、日本は中立政策をとるべきである、あるいはインドのような第三勢力の行き方をなすべきである、こういつた議論がかなり強く現われ、ことに学者の陣営などにおきましては、公聴会等におきましても、その説が非常に強く現われたことは見のがせない事実であります。ところが私たちは平和条約、安保条約並びに今回のMSAを通じてその間に一貫してかわらざるものは、もはや疑う余地もなく、日本が反共の陣営にあつて、自由世界の一員としてのみ日本の運命を託そうという基本方針は、私は何ら疑う余地はないと考えるわけであります。しかしながらそれをしも、場合によつて日本の態度が不明確なことが、かえつて私は日韓会談において、あるいは台湾との交渉等におきましても、反共陣営という共通の基盤の上に立ちながら、アジアにおいて善隣友好であるべきお互いが疑い合つているような、まことに不幸な事態を来しているのじやないかとも考えるのです。私はこの機会に、明らかに日本が反共の陣営に立つて、自由主義陣営の一員として日本の活路を見出すべきである、こういう点をこの際政府はもつと勇敢に、明確にそれに対する決然たる決意のほどを示していただきたい。このことは特にMSA協定の締結とは直接関係がないといたしましても、私はこの機会に日本がそういつた明確な態度を示すことが、アジアのためにも世界の平和のためにも、またわれわれの行くべき道を示す上におきましても、まことに私は妥当なことである、そうしなければならぬということを確信いたすわけであります。私はそういうふうに考えますが、この点はいかがでございますか。
 さらに第二点は、私はそういう観点から考えますと、共産主義並びに共産党というものに対するところの一般の考え方というものが非常に甘いものであつて、民主主義の世の中においても、言論、結社の自由の名において共産主義というものが存在し得るのだというような考え方をお持ちの方がいまだにあるのじやないかと思うのです。共産主義というものの本質をお考えになるならばわかることでありますが、マルクス主義の立場から考えましても、レーニン主義の立場から考えましても、スターリン主義の立場から考えましても、これは明らかに武力革命――暴力を使うことよつて目的を達成することは、これもまた合理的であるという暴力革命の原則に立つておる。これが今日の世界共産党のとつております基本的な行き方なのです。従つて思想は自由であるが行動は別だというのではなく、思想と実際の行動というものは、共産主義の世界においては不離一体のものなのです。従つて私は共産党、共産主義というものの実体をもう少し研究していただくならば、民主主義の世の中においてこの共産党というものの存在を合法政党として認めることは、私は非常に疑問であると思う。かつてマツカーサーでございましたか、アメリカの独立記念品に際して、共産党の合法性に対して疑問を抱いておるということを申しましたけれども、私はこのアメリカが日本に投げかけた共産党の合法性に対する疑問点につきまして真剣に考えてみたい。この点について政府は、依然として共産党の存在を、合法政党としてこれを長く認めるという考え方か。私は共産党の非合法に対して、政府は真剣に考えるべき段階に到達していると考えるが、この点はいかがでありますか。
 さらにもう一点は、今度のMSAに関連をいたしまして、御承知のような秘密保護法ができました。もとより私は国防の関係上秘密保護の必要は十分認めておるところでありますが、今度の秘密保護法というものは、MSA協定によつてアメリカから与えられる武器についてのみの秘密であります。私は日本が将来日本の国防を担当しようとするならば、日本独自のものがあつてしかるべきである、かように考える。伝え聞くところによりますと、もともとは今度のMSA協定に基くところの秘密保護法を提案する前に、政府におかれましては、関係方面が、日本独自の立場から軍機の保護ということについて、何らかの措置を講じようというお考えがあつたようでありますが、なぜそれを引込めたか。日本独自の秘密保護、軍機保護というものが必要ではないか。この点について政府は将来どういうふうにしてやつて行くか、そういうことを承りたいと思う。
 さらに最後にもう一点、私は今日の重大な時局をながめ、国際情勢の中に浮かんで来る日本の重大な時局を考えましたときに、どうしても私は日本におきますところの保守陣営というものが既往の一切の行きがかりを捨てて大同団結をする、そうして結集されたところの保守陣営の総力をもつて今日の左翼陣営と対決をする。私はこの対決においてわれわれが勝つたときこそ、初めて国家百年の大計を立てることができるという信念を持つておるわけであります。先般の予算の通過の際におきましても、ここにわれわれが改進党並びに同憂の士とともに手を握りましたならば、予算通過に際しましてもこれは三百三票対百四十三票でもつて予算が通過したということ、この事実は政局を担当する者は厳粛に考えなければならないことだ、かように考える。従つて政局の安定――特に先ほどもお話がありましたが、今政局は社会一般には非常な不安の目をもつて見られておるけれども、私はこの際どうしても政局の安定に、政局を担当する方々がほんとうに献身的な努力を捧げてやつていただきたい、私はかように考えるわけでありますが、この政局の安定ということについて、保守陣営の大同団結をして、これによつて左翼陣営と対決するのだという気構え、決意のほどをお漏らし願いたいと思いますが、いかがでございますか。
○緒方国務大臣 国際情勢のいわゆる二大陣営の対立に対して、中立論あるいは第三勢力などがあるが、今の日本としては平和条約、宏保条約、MSAを通ずる根本方針からして、こういう中立論、第三勢力なんというものは一掃して、日本の国是をはつきりしなければいけないという御意見でありますが、私も同感でございます。よく第三勢力という意見がありますが、これはいわゆる二大陣営の対立そのものが必ずしも世界戦争に突つ込んで行く態勢ではない、私はいつかそこに解決点が見出されるであろうと思いますが、その間に処して第三勢力的なものがあることが、むしろ問題の処理にじやまになるのじやないか。むしろはつきりした対立から、そこに新しい段階が生れて来る。そういう考えから、第三勢力なんというようなものは現実においてあり得ないし、またそういう考えをもつて日本の体制を固めることをはばんではいけない、その点につきましては同感でございます。
 それから共産党の非合法化のお話がありましたが、これは憲法の関係もありますし、よほど慎重を要しますし、共産国の今日の状態またはその思想的な侵略というものに対しては、目に余るものがありますけれども、これにいかに対処して行くかということは、慎重に考究する必要があると考えます。
 それから日本独自の軍機保護法というようなものがいりはしないか。将来そういう必要を生ずるかもしれませんが、今のところは考えておりません。
 それから大同団結、政治的な大同団結が時局安定に最も重大なものではないかという御質問であります。これは自由党としましてもかねて熱心に考えておるところでありまして、先般鳩山自由党の三十名ばかりが自由党に復帰して参りましたときに党として声明いたしました中にも、将来同憂の諸勢力が必ずや大同につくことを期待しておるということが書いてありましたのは、まつたくその意味でありまして、今回の政界の情勢から見て、保守勢力が結集して大同団結を結ぶことは、最も望ましいところではありますが、ただ各政党ともいろいろ行きがかり、あるいは立党以来の考え方がありまして、容易に、すぐにもできそうでなかなかはかどらぬのは、私ども非常に残念でございます。さらに努力を尽すつもりでおります。
○佐々木(盛)委員 もう一問だけ……(「時間だ時間だ」と呼ぶ者あり)時間の範囲内ですから……。ただいまの御答弁の第一の項目の中で、第三勢力というようなものの存在が、かえつて今日の国際政治を不明朗ならしめておるというようなお説にはまつたく賛成でありますが、この際私はもつと毅然として、日本が反共の態度を鮮明にすべきだと思う。平和条約のどこを探しましても、あるい安全保障条約のどこを探しましても、MSA協定のどこを探しましても、そこに一貫して流れておりますものは、自由主義世界の一員として日本が存在すること、そこにのみ日本の活路があるわけであります。今日ややともすれば中立やあるいは第三勢力のごとき誤解を、日本が与えていないでもない。現に隣国の朝鮮やあるいは台湾におきましても、そういつた態度を今日持つておる。これが私は今日アジアにおけるいろいろな国民感情の齟齬を来しておる、そのように考えるわけでありますから、私はもう少し毅然として共産主義陣営にくみするものではないという態度を明確にすることの方が、かえつて日米の親善のためにも、世界平和のためにも、日本国民に進路を与える上からも必要ではないか、かように考えるわけでありますが、この点につきまして、重ねてひとつ積極的な御意見を承りたいと思います。
○緒方国務大臣 共産主義に対する政府の態度でありますが、今お述べになりましたような宣言あるいは声明等を特にいたしはいたしませんけれども、しかし政府は考え方において、お述べになりましたところと全然同一でありまして、今回御審議を願つております教育に関する二法案のごときも、そういう将来の顧慮から提案しておるような次第で、あるいは新聞の会見等におきましても、機会あるごとに政府の立場は述べておるつもりでありまして、この共産主義に対する態度は、今お述べになりましたように、政府としてもきわめて毅然たる態度をもつて行つておるつもりであります。
○上塚委員長 並木芳雄君。
○並木委員 私はMSAの協定を結んでその援助を受けるようになつたら、今後の日本の防衛力をどういうふうに持つて行くか、主として協定締結後の日本の国のあり方について、この際吉田総理大臣の代理としての副総理に御質問申し上げたいのであります。まず防衛力増強の最終目標をどこに置くかということであります。従つてまた言いかえれば、その限界をどこに置くかという問題にもなりましよう。MSA協定によりまして、今まで自衛力の漸増は期待でありましたけれども、今度は義務になつて参りました。義務にはならなくても、これをわれわれ自身で積極的に増強して行くべき問題であることは副総理も同感であろうと思います。そこで自国の防衛力を発展させて、政府はこれにいかなる役割を果させようとお考えになりますか。安保条約によつてアメリカ軍と二本建としての共同行動をとらせるようにすることが目標でありますか、それで事足れりとされるのか、あるいは米軍の撤退を促進される、最終的には米軍の撤退を促進させる、そこに目標があるのか、それとともに将来集団的自衛権によつて外国を防衛することのあるべき集団とりきめに参加するところの御意思を持つておられるかどうか。私はそれがあつてもいいと思うのです。当然一本立ちの防衛力を持つて参りますれば、集団とりきめに参加する権利は確認されております。それを今度行動に移してもいいと思うのでありますが、そのお考えがあるかどうか。集団的自衛権の発動として外国をも守るために、外国の領土に派兵なり駐兵というようなことを含む条項があつてもいいのじやないかとさえ私は思つておるのでありますが、これらの点についてまず副総理のお考えをはつきりお聞きしたい。
○緒方国務大臣 防衛力の限界をどこに置くか、これは何と申しましても、やはり国力それから国際環境のいかんによつてきまるもの、同時に動かざるを得ないものであると考えます。今の日本といたしましては、国力には結局戦前よりも大きな制約があつて、日本だけで今日の非常な兵器の進歩した中に立つて、日本の防衛に当り得るかということは、大きな疑問であろうと考えます。結局何らかの形における集団安全保障という方式をとらざるを得ないのではないか。現在の考え方といたしましては、アメリカの地上軍の撤退を可能にするということ、その際これにかわる日本の地上の防衛力を持つこと、それが一応の限界ではないかと思いますが、アメリカの空軍あるいは海軍、これはアメリカの防衛であると同時に日本の防衛にもなつておるのでありますが、その撤退を可能にするという時期は、少くとも今から予想ができない。従いまして、防衛力の限界というものは、今から申し上げることは不可能であると考えます。
○並木委員 最後のところで申し上げました集団自衛権に基く集団安全保障とりきめについての答弁がまだないようであります。
○緒方国務大臣 集団安全保障というのは、第二次大戦以後に生れて参りました一つの構想で結局私はどこの国もこれによらざるを得ないと思いますが、日本の国力に限界がありまして、他国の防衛にまで派兵し得るような事態になるかどうかということは、今から予見できないと思います。
○並木委員 しかし憲法違反でないことはお認めになると思いますが、いかがでございますか。
○緒方国務大臣 今の憲法には違反でございます。
○並木委員 副総理はどの点で違反とされるとお考えになりますか。
○緒方国務大臣 今は自衛権が国家固有のものであり、その自衛権の裏づけとして防衛力を持ち得るということ以外に根拠がないのであります。
○並木委員 もちろん集団的自衛権は認められております。これは個別的自衛権と違いますから憲法違反にはならないと私は思う。
○緒方国務大臣 集団的自衛権は、日本の自衛力がまだ日本を守るに十分でない、そこで安保条約によつて集団的な安全保障ができておるのだと思います。
○並木委員 その点は見解の相違になりそうですからこれでとどめておきます。
 次に戦力の問題であります。防衛力をだんだんと強めて行きまして、政府としては戦力に至るまではこれを増強して行くおつもりでありますか。法律的の見解になつて参ると思います。法律的に防衛力をどこまで強めるかと私が尋ねますれば、副総理は憲法の戦力に至らざる限度までとお答えになるに違いないと思います。しかしけさほどの副総理の答弁では、憲法改正の問題は口に出せないような問題である、つまり政府としてはあまり言いたくない、こういうふうに受取りました。それをもう少しそんたくすれば、口には出さないけれども、腹の中には将来憲法を改正するという気持を持つておるのだとも思われるのです。口に出してはいけないということを口に出したのですから、これはかなり腹を割つたわけなのです。そこで私はざつくばらんにお尋ねするわけですけれども、副総理としては、許せばやはり憲法を早く改正したい、こういうお気持を持つているのじやないでしようか。
○緒方国務大臣 憲法を改正するかどうかということは、主権者である国民がきめることであつて、政府にいろいろな意見を持つ場合が生ずると思いますが、先ほど私が申し上げましたのは、憲法改正のことを政府が言うべきものではないと申したのでありまして、今日で改正しないと言いながら、腹の中に陰険なことを考えておるというふうにおとりになると非常に困ります。
○並木委員 何もこのことに関して政府が遠慮されることはないと思うのです。信念があつたら、やはり改正すべきだと思つたら、改正するつもりでありますということを言つてもいいと思います。どうしてそれを遠慮されているのか、私どもにはよくわかりません。これは一つは政局の安定に非常に影響を持つて来る問題でありますから、この際私は副総理からはつきりと、できれば憲法を早く改正したいと言つてもらいたいのです。ことに与党たる自由党の中に憲法調査会ができておりまして、これが憲法を改正すべしという結論を出して来たときには、おそらく政府はこれに従つて行くのじやないかと思います。その点はいかがですか。
○緒方国務大臣 それも大分先のことでありまして、今から何とも申し上げられません。
○並木委員 副総理は大分慎重で、それではその点はこれだけにしておきましよう。
 次に、その防御力増強の限界を予算的に見てお尋ねいたしますけれども、大体副総理としては、今後防衛力のために支出される費用というものは、国民所得に対して何パーセントくらいをもつて、適当なる線とお考えになつておられますか、お尋ねいたします。
○緒方国務大臣 今から考えられますのは、現在は国民所得の三%にも達しないかとも思いますが、これ以上あまり大きな費用を防衛力にさくことは不可能であろうと思います。
○並木委員 そうすると、くどいようですが、三%内外、せいぜい大きく見ても五%以上に出られないというくらいにわれわれ受取つてよろしゆうございますか。
○緒方国務大臣 国民所得もまた増大して参ると思います。
○並木委員 増大するか、減るか、これはことしのようにデフレ政策をとると、案外減るのじやないかと思いますけれども、要するに国民所得に対してのパーセンテージですから、増減は関係ありません。
○緒方国務大臣 大体その程度でございます。
○並木委員 それから集団安全保障の問題がずつと出て来ておりますが、私自身の考えにもなるかと思いますけれども、私は、二大陳営の間にはさまつて日本が発言力を持つて他国に軍縮を叫ぶという地位になるには、やはりこの防衛力をできるだけ伸ばして行かなければならないという信念を持つております。たとえば原子力兵器のごときものも、行く行くはやはりわれわれは持つべきだ、そうして実力の上に、日本が平和を受好する発言をして行かなければ、いつまでたつても従属的地位にある限り、われわれはせつかくうるわしい平和愛好の精神を持つていても、それを実行に移すことができないのじやないか、こう思うのであります。私の方の党では、さしあたり平和的に利用するために、原子炉の予算を計上することを要求したのでありますけれども、これは平和的のみならず、原子力兵器としても、将来は日本国としては考えて行かなければならぬと思いますが、この点について副総理はどうお考えになりますか。
○緒方国務大臣 日本がそういう大国になることは望ましいとは考えますが、何と申しましても、政治の基調は国民の生活の安定ということにあらねばならないと考えます。今世界に向つて軍縮を叫ぶために日本が軍備を整えるということは、なかなか将来ほど遠いと思います。
○並木委員 先ほどの答弁ですと、大体地上部隊は別として、アメリカ軍と日本の自衛隊、これは空軍、海軍なども含めて二本建で行く期間が相当続くのではないかと思います。その場合に、駐留軍と日本の自衛隊との共同動作について、現在の安保条約及び行政協定には、緊急の場合と称して行政協定二十四条があるだけでございます。私は今後非常に大きな問題を惹起すると思います。今までは保安隊で微力であり、共同動作を起すようなことがございませんでしたから、表面の問題にはなつて参りませんでしたけれども、これからは一本立ちをするわけでありますから、この共同動作について今後どういうふうに協定をされて行くつもりでありますか。また国内の法規をどういうふうに直して行くつもりでありますか。アメリカとの関係におきましては、安保条約または行政協定をこの点において改正する必要があるのではないかと思います。緊急の事態に処する場合にどちらが指揮権を持つかという点についてです。
○緒方国務大臣 共同作戦の協議には入つて行くべきであると考えますが、今すぐ安保条約の改正をする必要はないと考えております。
○並木委員 指揮権をどちらに置くかということについて何か構想はございませんか。これは当然日本側が持つべきでありますが、この点はまだ政府として考慮中だというのが今までの答弁であります。共同動作をする場合の指揮権、決定権でありますが、これは両方協議議するときなかなかきまらない場合があると思います。
○緒方国務大臣 はなはだ抽象的のことを申し上げますけれども、やはり両方で協議してきめる以外にないと思います。それは規模の大小がありますが、第二次大戦以来、そういう連合軍の慣行が自由諸国の間にもできておりますから、そういう形をとるであろうと考えております。
○並木委員 自衛隊法の中に日米共同動作に関する協議事項というものはないように私は読んでおります。ざつと読んだだけですからわかりませんけれども、あればけつこうですが、これも自衛隊法の中にうたつて行くべきじやないかと思いますが、いかがでしようか。
○岡崎国務大臣 ただいまのところでは、自衛隊法の中にはその必要はないと思います。これは、かりに何か事がある場合には、必ずしも自衛隊ばかりとは限りません。警察隊を必要とする場合もあり、あるいは消防隊を必要とする場合もあり、その必要の限度等は行政協定二十四条による協議をすれば足りると考えております。
○並木委員 副総理にお確かめしたいのですが、自衛権の発動として行動する場合に、場合によつては、侵略の根源をつくために外国における基地のようなところを爆撃したり砲撃したりすることがあり得るということは、今までの政府の答弁にあるのでありますが、これは、自衛権というものに対しての地域的限界はないわけでありますから、そのときの判断によつて、真にそれが自衛権の発動に条件が合つておりますれば、外国を爆撃したり砲撃したりすることはあり得るわけです。この点については副総理は異論はないと思いますけれども、この際はつきり確かめておきます。
○緒方国務大臣 異論はあります。自衛権の発動に地域的な限界がないということは非常にあぶない大きな問題で、そういう増え方が太平洋戦争に至つた一つの原因をなしていると考えます。たとえば、日本の第一線は鴨緑江にあるとか、満洲にあるとか、そういう考え方のもとに日本が逐次大軍備を持つようになつたことも、戦争の一つの原因だつたと考えております。この点につきまして、どこまでも自衛権の発動というものは限界をはつきりさしておくべきであり、どう限界をはつきりさせるかということにつきましては、いろいろな場合を想定して慎重に考慮を要しますが、これは非常に重要な問題であると私は考えるのであります。
○並木委員 それはまことに重要な問題であり、今までの政府の答弁とは違つて来ているところがあるわけです。自衛権の性質としては、地域的に限界を設けるということはりくつには合わないと私は思う。真に日本の国をみずから守るという意味において必要だという判断が立つた場合には、たとえば敵のロケツト機が飛び立つその基地に対して爆撃をしなければならぬような場合もあるのじやないか。その点、副総理はどういうふうに地域的に線を引くつもりか。つまり、外国の領土、領海、領空には絶対に反撃を加えてはならないというふうにお考えになつているのでしようか、もう少しはつきり伺いたい。
○緒方国務大臣 それは旧来の軍閥の考え方だと思います。たとえば、満州に日本を攻撃する爆撃隊の基地があるから、それを壊滅しなければならぬ、殲滅しなければいけないということで日本の軍備を考えて行くというと、これは際限のない従来の軍部の考え方と同じようになるおそれがあると思います。
○並木委員 それでは、副総理の答弁に便利なように岡崎大臣に申し上げます。岡崎大臣は今までの政府の答弁を御存じでしよう。要するに、近代兵器の発達した今日においては、ただいまの副総理のような解釈をとつていると必ずしも役に立たない場合がある。こういう点から、今まで私どもが外務委員会を通じて聞いたところは、あり得る、こういう答弁なのですが、その点の違いをはつきり調節しておいてもらいたい。
○岡崎国務大臣 副総理の考えとわれわれの考えはちつとも違つておりません。つまり、繰返して言うようですが、自衛権と申すものは、危険が急迫した場合、そうして他にとるべき方法がない場合、そうしてその場合でも、自衛権の範囲内においての最小限度の措置をとる、こういうのであつて、従いまして、今例にとられたような満州から爆撃機が来る場合、そのときは戦闘機で防げるかもしれぬし、またその他の高射砲弾で防げるかもしれない。それなのに満州まで出て行くということは自衛権の範囲を越えるわけでありまして、たとえば、ウラジオからロケツト砲が来て、そのたまが雨あられと日本の上へ降つて来る、ほかに全然防ぐ方法がない、ほうつておけば日本人はみな殺しになつてしまう、こういうような万やむを得ざる場合には、その根源をつくということはあり得るかもしれないという程度の、自衛権の一番極端な場合を例にとつて言つたのであつて、それが通例の自衛権だというふうにおとりになると非常な間違いであります。従つて、最も極端な例をここで議論しても、それはあるかないかわからないようなことであり、国際的にはそれだけの広い自衛権というものを確保するが、これを使うかどうかということはまた別問題であります。日本としては、できるだけ局限をして自衛権というものを考えなければならぬ。従つて、ただむやみに、どこに基地があるからそこを攻撃しなければならぬというふうに簡単に考えていない。これは緒方副総理と同じでありまして、あなたのおつしやることは、一番極端の極端の最も極端な例をとつて、それで議論されるからとかく誤解を起す、こいうことになるのであります。
○並木委員 曾我の十郎、五郎が兄弟で応援演説をやつているように聞えますけれども、緒方副総理いかがですか。今お聞きのように、緒方副総理とそつくり同じですと言いながら、あれだけの、長い釈明を岡崎大臣がしなければならぬという苦哀のほどをお察し願いたいと思うのですが。
○緒方国務大臣 岡崎大臣は私と同じ意味のことを言つていると思います。
○並木委員 これは大事ですからそれに関してもう一回お尋ねいたしますが、副総理としてはお考えはいいと私は思うのです。なるべく自衛権の限界というものを縮小してお考えになる、これは当然であろうと思うのです。しかし、いくら縮小して考えても、どうしても自衛のためには必要な場合があるという岡崎さんが、あの冷静な冷静な岡崎さんが、私の質問をとらえて、ありもしない、起り得もしないようなまことに極端な例をとられたと言われたけれども、しかし、その極端なところまでわれわれは確かめておかなければいけないのじやないですか。その義務があるから私は質問をしているのですけれども、緒方副総理がきわめて縮小したお考えをしようということと、それが全然ないということとは別だと思うのです。あり得ないということは別で、やはり場合によつてはあり得るという答弁でないと困るわけなのです。
○緒方国務大臣 それは、日本の水ぎわを防衛している飛行機が、爆撃に来た敵機を爆砕するために追跡するということはあり得ると思うのですが、ただ、陣地が満州にあるとかいうことで、これをやらなければ日本のほんとうの自衛ができないというふうな考え方、これはやはり太平洋戦争以前の日本の軍閥の考え方であつて、非常に危険だと思います。そういう意味で持つ自衛軍あるいは自衛隊であつてはならないと考えます。
○並木委員 その点は、われわれもさらによく考えましよう。
 それから次にお尋ねをしておきたいのは、MSA協定に伴つて秘密保持の問題が起ります。それともとに、公衆に周知せしめるための広報という責任が日本の政府に出て参るのであります。そこで私どもが心配いたしますのは、かつては情報局総裁であつた緒方さんのことでありますから、また情報局を復活するのじやないか、言論の統制をすることがおすきじやないかと思うのです。きらいならけつこうですけれども、このごろ偉くなつているから、案外すきになつているのじやないかと思います。そこでこの際お尋ねいたしますけれども、かつての情報局のような言論統制、新聞とか放送とか発行とか、そういうものに対する統制は絶対にしてもらつては困るのであります。この点昨日も私は福永官房長官には確かめておきましたけれども、総理の代理としての副総理に、はつきり答弁願いたい。
○緒方国務大臣 外務私はちつとも偉くなつたとも思いませんけれども、偉くなつたから、言論統制をするというロジツクは出て来ないと思います。言論統制は作戦の一環としてやる場合があり得ると思いますけれども、今情報局というようなものを復活して、言論統制をやろうというような考えは毛頭ございません。
○並木委員 今後広報活動は非常に活発になつて来ると思うのです。今までもかなりやつていますけれども。これについては、やはり政府として何かお考えがなくてはならないと思うのです。情報局は困りますけれども、たとえばきよう配付になつた「世界と日本」という外務省情報文化局発行の新聞を見ましても、ちよつと読んでも、あじけないものです。これでは読みません。これにMSAの文字が幾つ入つているか、当てた者には賞品をくれるという懸賞でもついておれば、読むかもしれませんけれども、こういうお上の広報というものはあじけがなくて、効果が薄いのではないかと思う。これを打破するために何らかの新しい構想をお持ちだろうと思うのですが、その点はいかがですか。
○緒方国務大臣 私は取締られる方の新聞社にも長くおりましたし、言論を指導する――当時は指導という言葉を使つておりましたが、指道する情報局にもおつた。両方の経験からいいまして、国民の思想を闊達にして行く上から、言論統制というものは不必要であるのみならず、できないと考えます。政治のあり方あるいは日々の政治家の言論というものが、一つのかわつた形の指導になることはあり得ますけれども、政府が指導する形において指導することは、むしろ逆効果になつて、いわゆる指導の目的というものは達し得ないと考えております。
○並木委員 これも私吉田総理にじきじきにお尋ねをしておきたかつたことでありますけれども、どんなことがあつても私どもは徴兵制度だけはとつてもらいたくない。これは憲法違反でもあります。岡崎さんも答弁しておりますが、これはやつぱり首相からお聞きしたい言葉でありますから、お尋ねいたします。かりに憲法は改正になりましても、永久に徴兵制度というものはとるべきでないと要望的に私はお願いするわけですけれども、副総理はいかにお考えでありますか。
○緒方国務大臣 おそらく私が生きておる間にそういう制度になるような時期は来ないと思いますけれども、しかし同時に、私は世界戦争は起らないであろうと考えますが、しかし非常に大きな戦争が起つた場合に、徴兵制度をとることは、アメリカやイギリスというふうな自由主義国においてもやつておることで、未来永劫徴兵制度を絶対にとらないと予言することはできません。
○並木委員 ただいまの答弁ですと、緒方副総理としても非常な関心を持つておられるということを感じたのです。つまり副総理が生きている間は別としても、現実の問題としては考慮に入れる余地がある。たとえば自衛隊がだんだん拡大されて来て、これはあぶないから志願しないのだというので、募集が思うように行かなかつたような場合には、やつぱり起つて来るのじやないかと思います。
○緒方国務大臣 先ほど、世界に向つて軍縮を叫ぶために、日本は大きな軍備を早く持つべきであるという議論がされましたが、そういう大きな軍備を持つ場合には、国の財政としても、志願兵ではなかなかやつて行けないと思います。しかし私は、そういう世界に向つて軍縮を叫ぶために大きな軍備を持とうなんということは全然考えておりません。
○上塚委員長 おいおい時間が迫つて参りましたから……。
○並木委員 自衛隊の員数がだんだんふえて参りますと、それに対する給与の費用もふえて来る。日本の経済力の許す範囲において、防衛力を増強して行くためには、自衛隊の員数を減らすことはできない、もつとふやさなければいかぬというような場合には、今自衛隊員に支給されている給与というようなもののベースを、下げなければならないというような事態にだんだんなつて来るのではないでしようか。その点をお尋ねします。
○緒方国務大臣 それはよほど先のことで、今から予想して申し上げる時期に達していないように思います。
○並木委員 MSAの中に、御承知の意味するところの、平和を脅かす国との貿易の制限がございます。しかし最近の情勢は、アメリカなどが非常に中共の取扱いについて慎重になつて来たと思いますし、あるいは条件付で中共を承認するようなことも考えられるのではないかという昨今でありますので、この際副総理にお尋ねしておきたいのは、もしアメリカが中共を承認するような場合がありましたら、日本としてもこれにならつて、中共との国交を開始するということが考えられますかどうか。
○岡崎国務大臣 これはそのときの事態を今から仮想してみてもわかりません。現在アメリカでは反対の意見の方が強いのであります。しかしどこかの国が中共をあらためて承認するに至るかということは、中共の態度がかわるとか、国連の決議が取下げられるとか、何か特別の事態が起る場合でありましようが、日本としてはやはり日本の立場から研究しなければならぬ問題で、どこの国がかえたから、すぐに日本もかえるということには、理論的には、当然なり得ないと思いますが、実際にいろいろ中共との関係が改まつて来るということになれば、あるいはまた別問題でありますが、これは要するにここで議論をしても尽きない問題であります。実際は、先ほど戸叶さんのお話のように、実際どういう事態が起つて、どういうことが行われ、どういう具体的の条件があるかということがわからないで、ただよその国が中共を承認したら日本もするかといつても、よその国は中共を承認するということは言つてないのでありますから、そういうことはわかりません。
○並木委員 もう一点だけお尋ねして私の質問を終りたいと思います。MSAはわれわれの立場からいうと、大賛成であります。自由党内閣は今までのいろいろな行きがかり上弁解めいた説明をしなければならない苦しい場面が多いと思いますけれども、私たちは割にはつきりしておりましたから、結論は簡単なのです。ただ昨今の情勢は、MSAの受入れ態勢に必ずしもいいとは思われない。たとえば国際情勢が平和の方へ向いて来ている。副総理の答弁の中にもありました通り、世界戦争は起らないだろうということになると、世界戦争が起る可能性がほとんどないなら、どういう危険が存在して来るのか、極東の空にどういう危険が存在して来るのだろうかという問題が起ると思います。そこで世界戦争は起らないといたしますならば、MSAによつて防衛力を増強するというが、その平和を脅かすものはどういうスケールのものであるか、どういう種類のものであるか、これはどうしてもお聞きしたい点です。
 それからもう一つのMSA受入れ態勢に不利な条件としては、ビキニにおける水素爆弾の実験の問題であります。MSA反対の論者は、これ幸いとばかり、これによつて再軍備反対の線をすでに打出しておるのであります。これに対して政府はどのように処置して反対論者の攻撃を阻止するつもりであるか。アメリカとの交渉その他においてどういうふうにされて行くおつもりであるか。それともう一つは、これはたまたま緒方副総理の個人的な関係になつて恐縮ではございますが、報道では緒方副総理に関係しておられるとのことでありますが、例の日平産業、これがMSAの協定を持つていわゆる軍需産業として大いに活動しようというので先物を買つておつた。そういうところからはしなくも金融的に破綻を来した。あたかもMSAの国会の承認が遅れているために、日平産業は破綻が来たのだというようなこともいつているので、これはわれわれとしてはなはだ心外なのですけれども、こういうことが実際に行われているのかどうか。つまりMSAの成立を予見して早くも軍需産業の方面において一もうけも二もうけもしよう、こういうことが行われているのかどうか。そしてそれが政府の高官と結託をしているのかどうか。こういうことはMSAの受入れにとつては不利な条件なのであります。私はそういうことを知りたくありませんけれども、この機会に以上三つの点について、少しでもMSA受入れ態勢に不利なことのないように事態をはつきりさしていただきたい。
○緒方国務大臣 世界戦争が遠のいたであろうとかないであろうというのは、私限りの何といいますか予想、想像でありまして、かるがゆえに日本のMSA協定にどうという因果関係は持ち得ないのであります。かりに世界戦争がない場合に、どういう戦争があるかということですが……。
○並木委員 そうです。どういう危険があるかということはどうしても疑問になります。
○緒方国務大臣 これは危険の問題でなくて、国が独立して、また国力の許す以上は一応の防衛力を整えておくということは、今日の世界の現実と申しますか、国際的な環境からいうて独立国である以上は当然のことだ。私は今日の日本の防衛力はその範囲を出ていない、さように考えます。
 それから日平産業のことは私知りませんが、ビキニの問題……。
○並木委員 ビキニの問題は今再軍備反対にこれが利用されているわけです。
○緒方国務大臣 それはやはり大きな戦争がないから防衛が必要でないというのと同じように、非常に大きな原子力の威力が戦争に使われることもあり得るかと思いますけれども、しかしそれとは別に、これは全然別個に、今日本が用意しつつある程度の防衛力は、独立国である以上持つべきであると考えております。
○上塚委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 時間がありませんから簡潔に緒方副総理にお尋ねをいたします。このMSA協定によりまして強く強調れておりますのは集団的自衛権ということでございます。この集団的自衛権の発動に関しましては、これが学界の学説に二通りありまして、一つはわが国におきましては東大の横田喜三郎博士とかそういう方々は、特別な他の国との軍事的協定なくして固有の権利として発動し得るのだという解釈と、それからもう一つはこれの発動のためには、その前に特定国との軍事的協定を必要とするという解釈と二通りあります。これを私は気になりましたので下田条約局長にお尋ねをいたしましたところが、局長は明確に事前にとりきめなくして集団的自衛権の発動はあり得ないという御答弁でございましたが、内閣といたしましてはその通り確認していただいてよろしゆうございますか。念のためにこの際内閣を代表してはつきりしておいていただきたいと思います。
○緒方国務大臣 あらかじめとりきめなしに集団的自衛権の発動というものはあり得ないと思います。
○穗積委員 そうして次に、御説によりますと、集団的自衛権発動のために、特定国との軍事的協定を結ぶことは、憲法違反であるという御解釈でございました。そういたしますと、この協定の中で、集団的――そういう特殊な憲法を持つている日本に対して、しかも協定なくしては発動のできない権利をこの条章の中で認めておりますことは、つまりこういう意味に解釈してよろしいか。すなわち集団的自衛権というのはただちに発動し得る顕在的権利でなくて、特定国との間に軍事的協定を結ぶことができるという潜在的権利と解釈していいわけでございますか。
○岡崎国務大臣 集団的自衛権と申しますものは、私はいろいろなものがあると思います。国連による集団的安全保障というものもあれば、また形はかわつておりますが、日米安全保障条約も集団的安全保障の一つの形であると思つております。従つて池田との間に軍事協定と言われましたが、何かお互いに兵隊を出してどうとかするというようなことが必ず前提であるとは私は考えておりません。がいずれにいたしましても、国際とりきめの中で、つまり平和条約やその他のものの中に集団的自衛の権利があるというのは、国際的に見たときは日本は広い権利を持つている。その中で日本国内でその権利をいかに使用するかは、憲法その他の問題あるいは日本の政治的な動き方にはつても変化があるのであつて、国際的に確保している権利をそのまま使わなければならぬという義務はない。従つて日本国内の憲法なり政治、国民の考え方によつてこれはどうにもなり得るが、とにかくそれだけの広い権利はよその国益に持つているという趣旨であります。
○上塚委員長 穂積君にちよつと申し下げますが、緒方副総理は五時二十分に外国使臣と会見の約束がありますので、十分には退出せられますから、そのつもりで緒方副総理に対する御質問を願いたいと思います。
○穗積委員 それでは今の問題はあとで外務大臣にまたお尋ねいたしますが、続いてお尋ねいたしたいのは、今の自衛権の根本である個別的自衛権でございますが、自衛権発動の地域的限界についてお話がありましたが、それらはすべて自衛か侵略かという紙一重の解釈に立つていることは申すまでもありません。そこで自衛と称して侵略にならないためにその限界を置かなければならぬという場合に、今の緊急にして不正な侵略があつた場合、しかもそれに対抗する場合にも、地域的に無制限ではないというような考え方を用いて説明なさつたと思います。そこでもう一歩根本的に返つてお尋ねいたしますが、副総理の考えておられる自衛権の発動と侵略戦争とどこを標準にして区別しておられるのか、それは一体その戦闘行為が自衛権の発動であるのか、侵略的性格を持つものであるのか、それは一体だれがそれを判定してきめるのか、そのことをお尋ねいたします。
○緒方国務大臣 日本のような四方海に囲まれておる国におきましては、今御質問の点は割合にまぎらわしくなく判断し得るのではないかと思うのでありますが、これが自衛力の発動に値する、自衛力を発動していいかどうかということは、とつさの場合は、国家といたしましてやはり主権者である国会がきめるのではないかと考えます。
○穗積委員 そうすると、日本のその戦闘行為が自衛であるかないかは、一定の基準、客観的な基準というものはなくて、時の国会の多数の判断によつて決定する、こう解釈していいわけですか。そうして、日本のその行為が侵略でなくて自衛であるということは、日本の国会における多数がそうであると認定した場合には、それが国際的に通用するとお考えになつておられるという意味に解釈してよろしゆうございますか。
○緒方国務大臣 それは国際的にというのではなくて、日本の憲法が日本の自衛力のあり方をきめておりますので、国内的な問題であります。
○穗積委員 そのことはかつて東条戦争の場合におきましても、これは侵略戦争だと議会で言われた方はほとんどなかつたわけでございまして、国会のほとんどすべての多数の議員は、あれを自衛戦争、やむを得ざる戦争であると認定されたわけでございます。しかしこれは客観的に見まして、当時の枢要なる地位におられた緒方さん自身ですら、これは侵略戦争であつたという認定をされる、今になれば、そういう状態が起きて参りますれば、これはあくまで自衛権の発動について限界を置いて考えなければならないということを厳に戒しめられておつしやつておられるが、そういうことでは実際問題として、前のときはそれが侵略戦争であつて、今日は――前のときは国会の多数できめたが、あれは侵略戦争であつて自衛戦争ではないと言つて、今度また同じようなことを、国会がきめさえすればそれは自衛戦争であるということになるのでしようが、これは何ら違いはないのです。そうすれば日本の国会のそういう主観的なことできまる、こういうことですか。
○緒方国務大臣 民主主義のもとにおいて主権者である国民に選ばれた国会がそうきめれば、私はいたし方ないと思います。但し、今お述べになりましたことは、旧憲法におきましては統帥権の独立が認められておりましたので、ああいう事態が国民あるいは当時の議会と交渉なしに進められたのでありますけれども、今後においては、国会の威信が立つておれば、そういうことはあり得ないと考えております。
○穗積委員 当時におきましては天皇がそれをきめたのであつて、あの開戦の詔勅の中には、明らかに侵略戦争とは言つておられない。やむを得ずして、もうかんにん袋の緒が切れて、向うが挑戦的な態度に出て来ておるからやるのだということを言われたのです。明らかに自衛と平和のためと言われました。そうすると、時の主権が決定したもの、かつては天皇、今日は国会、これが決定したものは内外に通用するものだという御解釈になりますが、これは、はなはだどうもこれだけでもつて日本は自衛行動に名をかりて侵略戦勢をやらないという解釈にはさらにならないので、自衛権の拡大解釈というものがそこで主観的に、エゴイステイツクに行われる可能性がございますが、何かそこにもつと客観的な標準がなければならない。こう思いますが、いかがでございましよう。
○緒方国務大臣 とつさの場合には、危険が急迫して他の手段をもつては防ぎ得ない場合に、必要な最小限度において自衛権を発動させる、こういうことは国際的に認められて参つておる。但し、先ほども申し上げましたが、日本が前のような、旧憲法のもとにおけるような統帥権でなしに、国会がそれを認めた場合には、私はこれをとめるものはないと思います。
○穗積委員 はなはだ不十分なお答えでございまして、これではやはりアジアの諸君が、日本の再軍備に非常な反感と恐怖を持つのは当然だと思います。
 そこでそれに関連いたしまして、重要ですからまだ続いてお尋ねいたしますが、今の論旨を拡大いたしまして、たとえば国連が中共を侵略国と規定いたしまして、それに対してアジア地域におきまして義勇軍を募集した場合、それに日本の保安隊の隊員その他が自発的に参加した場合、義勇軍に応じました場合は、これは日本の国権の発動としての海外派兵とは違うと思いますが、そういう可能性は憲法上許されるとお考えになりますか。
○高辻政府委員 便宜私から一応お答え申し上げたいと思います。まず国連が中共を侵略国と規定した場合ということでございますが、抽象的に申しますれば、国連の一種の活動に対してということになろうかと思います。もつともこの国連の活動をただいま予定して物事を考えるということは、実はしかと研究しておりませんために、正確な断定的なお答えを申し上げるのはいかがかと思われますが、いずれにしましても、日本があるときに、保安隊あるいは自衛隊というように御指摘があつたようでございますが、そういう国家の機関の一部のものに対して他国の交戦に参加するようなことを要請され、その自衛隊なり、保安隊の一部の者が義勇軍としてそれに参加するということにつきましては、いずれにしましても、国の一つの機関でありますために、国家としてはそれを傍観することは許されないことであろうというふうに考える次第であります。
○穗積委員 重大ですから続いてお尋ねいたしますが、もし保安隊員が隊を脱退いたしまして、そうして国家機関たる保安隊員であるという身分を一ぺんとつて、そうしてそれに応募したらそれはさしつかえないという御解釈か、憲法違反ではないという御解釈か。
 続いてお尋ねいたしますが、近代戦争は、言うまでもなく総合作戦でございます。従つて第一線の戦闘行為ではなくて、後方部隊におきます補給またはその他の補助行為として日本の保安隊がこれに参加した場合、これは憲法違反になるかならないか、それは一体戦闘参加ではないかどうか。
 もう一点お尋ねいたしますが、極端な場合を考えますならば、さらにうるさくなれば、日本の保安隊員が一ぺん国籍を脱退いたしまして、アメリカの国籍に入つて、それで保安隊員が第一線の戦闘に参加した場合は、それは一体どういう解釈になるのか。特に問題になるのは、保安隊員が国家機関たる保安隊を脱退いたしまして、個人の資格、義勇軍に応募した場合と、それから保安隊、国家機関そのものの形で、部隊を編成いたしましたままで、たとえば元山上陸における掃海作業に――これは後方作戦でございますが、その作戦に参加した場合は、これは一体戦闘参加になるのかならないのか、これはどういうふうにお考えになつておられるのか。自衛権の発動としての限界の中に入るか、入らないか、それとは全然別の問題であつて、それは個人的な行動であつて、戦闘行為ではないというふうな御解釈であるのかどうか、その点を明確にけじめをつけておいていただきたいと思いますが、この点は責任者である緒方副総理に特にお答え願います。
○緒方国務大臣 どうもはつきりしませんから、政府委員からお答えいたします。
○高辻政府委員 まず一つは自衛隊の隊員がやめて、向うの義勇兵として募集に応じて行つたらどうかということだつたと思います。それは自衛隊の隊員がやめて向うに入つたということでありますれば、ちようど国民の一員がまつたく自分の自由意思で向うの義勇軍に応募して行つたということと同じであろうと思いますが、そういう場合、国家として知らないうちに、まつたく個人として出かけて行つたということについては、これはどうも憲法の規定は国に対する規定でございますから、そういう場合は九条関係として解釈される問題ではないのであろう、そういうふうに考えます。
 それからもう一つの自衛隊が部隊として云々ということでございますが、その場合後方作業と申しますものの、前線の活動と一体として考えられるような場合でありますれば、これはやはり現行憲法上はむずかしい問題だろうというふうに考えます。
○穗積委員 そうしますと元山の出動はどう解釈されますか。
○高辻政府委員 元山の出動を、私ども責任ある者として法律的に検討したたとは実はないのでありますが、元山の出動ということをよくわれわれ耳にするのでありますけれども、あれは何か掃海作業に従事して、そのために機雷に接触して犠牲者が出たというふうに聞いておりますので、直接の戦闘参加に連なるものであろうかどうか、その辺の事実を私よく存じませんので、確たることは申し上げかねます。
○穗積委員 それではあとを留保しておきます。
○上塚委員長 ちよつと速記をとめて。
  〔速記中止〕
○上塚委員長 速記を始めて。
 今日はこれをもつて散会いたします。
   午後五時十八分散会