第019回国会 外務委員会 第54号
昭和二十九年五月二十二日(土曜日)
    午前十時五十五分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 今村 忠助君 理事 福田 篤泰君
   理事 富田 健治君 理事 野田 卯一君
   理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君
      大橋 忠一君    北 れい吉君
      佐々木盛雄君    須磨彌吉郎君
      上林與市郎君    細迫 兼光君
      河野  密君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
 出席政府委員
        法制局次長   林  修三君
        外務事務官
        (アジア局長) 中川  融君
        外務事務官
        (条約局長)  下田 武三君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 外交に関する件
    ―――――――――――――
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 外交に関する件について、政府当局に質疑を行うことといたします。順次質疑を許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 私は質疑に入ります前に、会期末になりましたので、この委員会で懸案になつてそのままになつておりましたことを、ここでひとつただしたいと思います。
 それは三月二十五日の委員会で、委員会の意思表示をビキニ問題にからんでアメリカにしようということが決定されたのでございますが、そのことはすなわち原子力委員長の発表についてでございます。あの発表がもしも正しかつたならば、この委員会として何らかの意思表示をしようということがきまつたのでございますが、それに対しての問合せの結果をまだ委員会において承つておりませんので、その結果、あのときの発言が正しかつたかどうか、その点をまず承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 私の記憶では、あの委員長の言つたことはたしかあのとき問い合せておりますから、テキストが来ていたのじやないかと思いますがはつきりしておりません。あとで係の方から御連絡いたします。
○戸叶委員 それでは大臣は、そのテキストをお読みになつたのでしようか、お読みにならなかつたのでしようか。
○岡崎国務大臣 私はテキストは読まなかつたような気もしますが、何か来たというような覚えの記憶があるのでます。
○戸叶委員 それでは、あとから係の方がおいでになりましたらお開きすることにいたします。
 そこで大臣にお伺いしたいのは、昨日も少し出たようでございましたが、阿波丸の事件でございます。あの決議の中に悪いてございますところの――この決議案をお出しになつたときには岡崎外務大臣は委員長でございまして、この決議案を説明なさいましたその中に、「米国民の犠牲において日本の救済及びその復興のため、巨額の資金の支出を決定しておりますことは」云々と説明されておりますけれども、これを読みますと、明らかに今までアメリカから援助を受けておつたものが、米国民の犠牲で日本の救済及び復興に当つていたというふうに意思表示をせられておりますが、先ごろからの御意見を伺つておりますと、そういうふうなことを打消されまして、アメリカから援助されたものは債務であるというふうに発言せられております。この四月六日に決議案を説明されたときと、それからそのあと協定を結ぶに至られましたわずかの間に、そうした意見の違いが急に出て来た理由を承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 今のは私の決議案の趣旨の説明の中の文句を引用されたのだと思いますが、そこにはお話のように「米国民の犠牲において」云々と書いてあります。その少しあとのところに「米国政府によつてわが国に供与された借款及び信用は、わが国にとつては債務ではありますが、わが国の経済の復興及び再建にまことに有効なものであります。」こう言つて、このときでも債務と言つている。私はそのときのはつきりした記憶はありませんが、議事録にこう載つておりますから、そのときからこう言つておつたわけであります。
○戸叶委員 そうしますと、この「米国民の犠牲において日本の救済及び復興のため」云々ということは、何をさされてこういうことを言われたのでしようか。
○岡崎国務大臣 これはガリオアにしてもイロアにしても、その他のものにしましても、広く言いましてアメリカ政府の資金で出て来ておる。それはつまりアメリカの国民の税金によつてまかなわれておる、こういうわけであります。
○戸叶委員 日本から返すことになりますと、それがどうして米国民の犠牲ということになるのでしようか。
○岡崎国務大臣 たとい返すにしましても、もうすでに長いものは八年以上たつておる。その間返してないのですから、その間はやはり米国の国民が犠牲を負つておる、こういうことになりましよう。
○戸叶委員 私は今の御答弁納得いたしません。と申しますのは、あの当時は、昭和二十四年でございましたが、そのときには七年も八年も借りておりません。それからまたあの当時には感謝決議を出したり、またこのときたも大臣はおそらく委員長として米国民が犠牲になつたという気持で言われたと思いますが、今のような御答弁によりますと、私どもとしてはあとから急にそれがかわつたとしか思えないのでありまして米国民の犠牲というふうな意味がどうしてもわからないのですけれども、その点をもう少しはつきりさせていただきたいと思います。
○岡崎国務大臣 ある一部だけをとつて強調されるから戸叶さんのようなことをおつしやるのですが、そのすぐあとに、これはわが国にとつては債務でありますがと申しておりますが、これは一体どういうぐあいにおとりになりますか。
○戸叶委員 ここに「借款及び信用は、わが国にとつては債務ではありますが、」と書いてありますから、それは通じると思います。たとえば綿花借款とかあるいはほかの借款をしておりますが、そういうものが債務であるということは委員長がお認めになつてそう言われた、私どもはそう了承しておるのですが、そうじやないのでしようか。
○岡崎国務大臣 そのときの決議案の説明で、あるいは私の言葉が少かつたのですか、速記録がこういうふうになつておるのか、その当時の事情ははつきりしませんが、この中には、あとの協定の中にも占領費及び借款、信用となつておりますから、また私の調べたところでは、参議院の方の説明にもここに抜けておる占領費というのが入つております。ここでも御存じの通り「のみならず占領費」と一ぺん書きまして、「並びに終戦以来」「供与された借款及び信用」こういつて占領費並びに借款及び信用、こういうことになつております。ただその中に「終戦以来米田政府によつてわが国に供与された」つまりその形容詞が入つておるので、「借款及び信用は、」とおとりになるかもしれませんが、のみならずから続けてお読みになりますと、占領費、借款及び信用は、こういうことになると思います。
○戸叶委員 私どもは占領費は占領費で、借款と信用というふうに了承しておりましたが、そうなりますと、ますます米国民の犠牲で日本の救済、復興のためにしてくれたんだという救済という意味が、どこから出て来たのかどうしてもわからないのですが、もうちよつとわかるように説明してください。
○岡崎国務大臣 この文章で、ごらんになつてもわかりますように、「わが国にとつては債務ではありますが、わが国の経済の復興及び再建にまことに有効なものであります。」つまり債務であつてこれは返さなければならぬものかもしれぬ。返すならばもともとだという戸叶さんのような御議論もあるかもしれませんが、しかしそうじやないので、これは債務ではあるけれども、経済の復興、再建に役に立つたものであつてこの点は十分にアプリシエートしなければならぬ。こういうように言つておるのです。
○並木委員 関連して。大臣はそういう趣旨で言われたかもしれませんけれども、私たちはその受取り方を異にしております。これは二つのことがあげられてある。「なお米国議会は、米国民の犠牲において日本の救済及び復興のため、巨額の資金の支出を決定しておりますことは、御存じの通りであります。」これが一つの分類です。この日本の救済復興がすなわちガリオア及びイロアに相当するものであります。これについては債務だとかなんとかいうことは全然触れておりません。債務であると触れておるのは、それからあとの第二の分類であつて、それが「のみならず占領費」、それから「借款、信用」、この部類に入るのであります。ですからこのときの決議の趣旨においても、ガリオアとイロアは絶対債務であるということを言つておるのじやない、こういうふうにわれわれは受取つておるのです。もしわれわれの考え方が間違つておるのだとするならば、もう一度大臣からその点をはつきりしていただきたいと思います。これは明らかに二つ違うものだと思うのです。
○岡崎国務大臣 占領費の中には、直接占領費と間接占領費とありまして、衆議院の方の速記録は私今ここに持つておりませんからはつきり申されませんが、吉田兼任外務大臣は、参議院の速記録で私の記憶しておるところでは、少くともガリオア、イロア等はということを入れまして、一般に贈与と考えられておるがそうじやないということをはつきり申しております。また占領費の中に、間接直接の占領費のあることは、平和条約の規定の中に直接占領費は請求しないということがはつきり書いてありまして、直接という字を特に入れてあります。当時からガリオア、イロア等は間接占領費というとに解釈されております。
○並木委員 それでは経済復興のため巨額の資金の支出というのは、具体的に何をさしますか。
○岡崎国務大臣 これはガリオアとかイロアとか、その他信用供与の問題も入つて来ると思います。
○戸叶委員 そうするとどうして米国民の犠牲ということをおつしやるのでしようか。そこがわからない。
○岡崎国務大臣 一体金を相手に貸すという場合に、戸叶さんの場合はどうか知りませんが、かりにそういうことがありとすれば、これが返してもらえるかどうかわからぬ。また返してもらえるにしてもいつ利子を払つてもらえるかわからぬ。従つてその点においては返してもらうにしても将来その間の利子の負担もあるでしようし、これは犠牲であることは間違いないと思う。また現にアメリカがそういうを援助しなかつた場合に、われわれはどうしても食糧その他を輸入しなければならぬ状態でありましたが、その当時ほかの連合国の中で、日本にかりに貸しであつてもそういうものを貸して、日本の食糧を援助するということがあり得たかどうか、その当時の状況では、私はあり得なかつたと考えます。
○戸叶委員 その当時アメリカ以外の国がそれほど親切にしてくれたことはあり得ないとかあり得たとかいうことは、また別の問題だと思うのです。ただ私どもはここではつきり言われております巨額の資金の支出をアメリカの国民の犠牲において、日本の国を救つたり復興するために決定したというのであつて、このときに貸したのだということが書いてないのです。そのあとにわれわれがこういうことで借りたのだということで、さつき並木委員が指摘されたようにはつきり区別されておるのでありまして、いくら大臣が答弁されましても、私どもはどうしても最初の意味、米国民の犠牲において資金の支出を資しているということが、この言葉からどうも借りたという言葉はとても出ていないと思うのですけれども、どういうところで借りたのだということがこの中に含まれているのでしようか。借りたのだということはおしまいの方の文章から出ておるのであつて、前の方は出ていないわけなんですね。
○岡崎国務大臣 占領費の中には、直接間接の占領費があつて、間接占領費の中にはガリオア、イロアが入つていることは、これは常識上明らかであります。
○戸叶委員 ここではやはりこの文章は、「のみならず」というのとそれから「あります。」というところはわかれていると了承してよろしゆうございますか。
○岡崎国務大臣 初めのはアメリカ政府が、あるいは議会がこういう巨額の支出をしようとしておるのだということを言つておるだけであつて、それからあとの方は、日本側が実際に供与された各種のものは債務であるという、二つの別のことを言つておるのであります。
○上塚委員長 戸叶君、時間が来ましたから、集約してお願いいたします。
○戸叶委員 初めに入つたばかりですよ。中途半端な質問を年中繰返しておりますと困りますが、ではこの点は私まだ了承しないのですけれども、了承するまでいつか聞かせていただきたいと思います。
 次にちよつと伺いたいのですが、そうしますと財政法の八条に、「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」となつておりますけれども、これはどの法律に基いてなされたか。
○岡崎国務大臣 これは口がすつぱくなるほど言つているのであつて、債務と心得ているという意味で、要するに憲法にいう債務となるには、これによつて交渉して額が決定して、国会の承認を得たときになるのであつて、これは要するに従来の日本政府の考え方を確認しておるだけのことであります。
○戸叶委員 しかしこの決議案で、はつきりと日本の国の持つていた債権というものを放棄してしまつたのです。ですからその場合には、何かの法律に基かなければいけないということが、財政法に書いてあるというのです。それにその法律がなくて、この決議案を国会で承認して、その決議に基いて了承したのだというので、かつてに協定を結ぶというようなことは、憲法の精神からいいましても、とうてい私ども納得のできないことなんですけれども、その財政法の八条にもとらないという根拠はどこにあるのですか。
○岡崎国務大臣 要するに私は、その当時は政府の責任者じやなくて、戸叶さんと同じように政府を責める立場の一人であつた、議会の議員であつた。そうして私の考えでは、要するにこの決議案をつくつて、しかもこの決議案の中には、この決議に基いて政府でもつて措置をして、その結果を国会に報告せよ、こういつているから、政府が報告したので、それを了承した立場にあるので、それ以上のことは私にお聞きになつても無理であります。
○戸叶委員 今の大臣の御答弁を伺つておりますと、自分はそのときに責める立場であつたから、今言われてもしかたがないとおつしやいますが、今大臣として、国の外交の責任を負つていられる大臣として、あのときはやはり自分は間違つていた、協定を結ぶなら、もう少しはつきり国会の審議をして結ぶべきであつたというお気持が今おありにならないかどうか、それを伺つておきたい。
○岡崎国務大臣 私は、政府はこの決議案の決定に基いて十分なる措置をしたと考えております。決議案の中にはちやんと「政府は本決議に基いて執つた措置の結果を本院に報告すること。」こうなつておるので、その報告をされた以上はこれで十分である、こう考えております。
○戸叶委員 そう言つて来ますと、だんだん私疑問が深まつて来るのです。たとえば重大な外国との関係があるような決議案が国会を通つたとします。そしてその決議案に基いてなした措置を国会に報告すべしというような文章があつたとしますと、ほかの国との協定を、その決議案に基いて結んでも、これは憲法七十三条の違反ではない、そういうふうな協定をかつてに結べるということになりはしないかと思うのですが、そういうことが一体許されるものでしようか。
○岡崎国務大臣 そういう議論はその当時、昭和二十四年の四月にあなたはなさるべきであつて、そのときにこの問題はすべて承認されて、それでできているのです。それを今むし返されてもそれはどうもしかたがない。その当時なぜそういうことをおつしやらなかつたか。
○戸叶委員 私どもはその当時ガリオア、イロアが債務であるなんということは少しも知つておりません。政府は、食糧の援助をもらつたとかで感謝決議をしたり、あるいはまた、アメリカの犠牲でいろいろしてもらつたので、ありがたいということを言われておりましたし、私どもはそういうものは全部アメリカが援助してくれているものと思つております。債務なんということは存じませんでしたから、そこでそういうような議論の余地がなかつたのです。ところが今になつてそういうことを言われますと、いろいろな当時の政府の不備というような点が出て来るのでございますから、今疑問になつて出て来たわけであります。大臣がそういうことをおつしやつてもこれは無理だと思うのです。
○岡崎国務大臣 その当時政府の発表したものは、その当時御了承になつたわけであります。その政府の発表したものの中の了解事項には、占領費及び借款供与は「日本国が米国政府に対して負つている有効な債務であり、」こう書いてあります。これに対してはどういうお考えでありますか。
○戸叶委員 私どもはその決議案そのものについては反対しております。アメリカの援助は援助だ、しかし日本でとれるものは、日本人の多くを犠牲にさせたのだから当然とるべきであると、ちやんとこの決議案に対する反対討論をわが党の西村委員が行つたのを、岡崎外務大臣もよもやお忘れになつておらないと思います。そういうふうにそのときでさえも、いくらアメリカから援助をもらつても、援助と日本に払つてもらうべきものは違うのだということをはつきり言つているのでありまして、その当時からそういうふうに、たといアメリカの援助がただであつたにしても、違うことは違うということを意思表示しております。今のことに少しも矛盾しないと考えます。大臣のそれに対するお答えを伺いたいのです。時間の制限があるようですから、私はまたほかの機会に譲りたいと思いますが、ただいま大臣が私に対してお聞きになつたことに対して、私は今意見を申し上げましたが、それに対して大臣のお考えを承りたい。
○岡崎国務大臣 その当時反対があつたということは私も承知しておりますが、しかしその当時委員の多数の決議によつてこれは決定した問題であつて、一事不再議の原則におきましてその当時決定しております。そうして今詳しく戸叶さんが言われたようなことは、西村君の反対の討論の中には私は見出せないのであります。
  〔並木委員「関連してここで一問……」と呼ぶ〕
○上塚委員長 並木君のようにたびたび関連質問をやつていただきますと、議事の進行を整理することができませんから、並木君の番が来たときにひとつゆつくりやつてください。
 佐々木盛雄君。
○佐々木(盛)委員 ただいま戸叶君から質問されたことにつきまして私もきわめて簡単に伺います。趣旨において戸叶君とはやや考え方を異にいたしておりますけれども、この法律上の手続上の問題につきまして、なぜそのときに文句を言わなかつたかということを言われるのでありますが、占領当時でありますから、法的な手続に欠陥があつたということは率直に認められなければならぬと思うのであります。ただいま大臣であるあなたが外務委員長当時に、阿波丸に対する請求権を放棄するという旨の決議案をお出しになつて提案趣旨を御説明になつた。それに基いて吉田総理大臣が請求権放棄に関する協定ができたという報告をしたことがここにありますが、あなたの提案なさつたのは四月の六日でありましたが、二十六日に総理大臣が協定のできたことを報告いたしております。ただいまあなたは、その当時国会が承認を与えたという意味のことをおつしやつておりますが、国会が承認を与えたことは一度もございません。これはあなたの提案理由は、阿波丸に対する請求権を放棄するということの提案理由なのであります。その請求権放棄に基いて日米間に協定を結んで、その協定に対する国会の承認を省略するというようなことは別におつしやつているわけではないのであります。従つて、内閣は協定ができたならば、その協定は憲法七十三条でありましたかの事前もしくは事後に承認を求めなければならぬという規定に従つて、国会にその協定の内容を提出して、承認を求めるのが当然の措置である、かように考えるのであります。あなたの提案理由をよく読みましたが、そういう協定を結べというようなことはどこにも書いてありません。また総理大臣が国会で発表したことに対して、ただいまの吉田総理大臣の御報告を了承するに異議ありませんかというようなことを聞かれておりません。ただ一方的に報告したにとどまつておるのです。国会が承認したという形式はいずこにも発見することができないのです。そこで占領当時でありましたからいろいろなことがあつたと思いますけれども、正確に考えますと、これは正しい行き方ではない。条約や協定というようなものはやはり国会の承認を求めることが必要である。単に決議案が通つたからいかなる協定を結んでもよい、一方的に報告すればいいということになつたら、これはもうたいへんなことになつてしまう。このたび吉田総理大臣が外遊なさつて――われわれが、行つたら大いに日米間の調整をはかつて来いということを決議したとする。お前たちがそういう決議をしたから条約を結んで来たのだ、だからその条約は国会の承認を求める必要がないということになつてしまつたら、たいへんなことだ。私はきようその点につきまして責任を追究するということよりも――外務大臣、やはりここのところは率直に、その当時の事情からやむを得なかつたということを、ある程度お認めになつた方がよくはないですか。この条約のオーソドックスな行き方は、私の言つているようにやるのがあたりまえだと考えるのですが、いかがですか。
○岡崎国務大臣 当時その点について、いろいろ外務委員会の人たちの間でも、私は委員長として相談した記憶を持つております。その当時、一体日本の憲法のやり方はあまりきゆうくつではないか、諸外国においてはエクセプテイヴ・アグリーメントという種類のものがたくさんあつて、日本では承認を得るものでも、他国では承認を得なくて済むようなものがたくさんある。そこでそういう点も考慮してつまり国会でもつて、あなたのおつしやるように非常にむずかしく議論をされるとこんがらかつて来ますが、この決議の中にははつきりと、たとえば「請求権の放棄を基礎として、本事件を友好的に解決すること。」というようなことが書いてある。そこで本事件を友好的に解決するということは、両国間に何らかの協定がなければ、友好的には解決できないのであります。協定なしで友好的に解決するということは、どういう方法でやるのか私には了解できない。その内容としては「請求権の放棄を基礎として、」とこう書いてある。また国内措置も書いてありますが、そうしてその第一番目には、「自発的に且つ無条件に放棄すること。」その放棄を基礎として友好的に解決せよ、こう書いてある。そうして今度第四番目には、「本決議に基いて執つた措置の結果を本院に報告すること。」とここに書いてあるのであります。従つて、第二の「友好的に解決すること。というのは、私は当時はどう考えても両国間に協定を結ぶ以外に解決の方法がない、従つて「本決議に基いて執つた措置」というのは協定を結べということである、そうしてその協定を結んだものについては本院に報告せよ、こう書いてあるのであつて、つまりこれは憲法でいいますれば、一種の事前承認といいますか、国会でこういうことをしろということで、国会であらかじめこういうことをすることについて事前の承認を与えて、その承認に基いて政府としてはこういう措置をとつて国会に報告した、報告するということである以上は、総理大臣が報告すればそれでいいのであつてそれに対して国会の承認を、この報告に対して了承を求めるとか求めないとかいう問題はないのである、ただもしその決議に基いてとつた措置が、決議の趣旨と違つておりますれば、これは政府が政治的な責任は負うでありましようけれども、そうでなければこの決議の趣旨に基いてとつた措置は、これは国会に報告すればそれで足る、こういうふうに私は考えております。
○佐々木(盛)委員 決議といえば、御承知でしようが、別にこれは法律上の拘束力はないですよ。院議をもつて決議をいたしましても――政府がこれをその通り尊重しなければならぬことは、もとより立憲政治のもとにおいて当然でありますが、政府を拘束する力はないのです。しこうしてその決議を法的に有効ならしめるためには、衆議院において決議が成立したらそれを参議院に送つて、参議院でも同様の承認を与えた場合にこそ拘束力を持つでありましようけれども、この阿波丸の場合は、たまたま衆参両院において決議が行われたかどうか知りませんが、一片の決議をしたからといつて、この中に協定を結べというようなことはどこにも書いてない。なるほどおつしやるように、請求権を放棄して友好的に解決せよというなら、協定を結ぶ以外にないであろう、その通りでありましよう、その通りでありますから、それによつてできた協定は、当然憲法の命ずるところに従つて国会に提出をして事前もしくは事後に承認を求めるということが正しい行き方である、かように私は考えるのです。もしもあなたのようなことをおつしやいますと、うかつな決議はできないことになる。その決議に基いてどんなことでもできるということにも、拡大解釈すればなるわけであります。これは私は非常に危険な考え方であると思う。私は、憲法の事前もしくは事後の国会の承認ということは、もう少し厳格に考えるべきごとである、かように考えますが、いかがですか。
○岡崎国務大臣 国会でうかつなことをしてはならぬ、それはその通りであります。決してうかつな決議をすべきものではない。しかし佐々木君の言うごとくならば、この第四の「政府は本決議に基いて執つた措置の結果を本院に報告すること。」、この「報告すること。」というのはどういう意味になりますか。
○佐々木(盛)委員 報告すれば、報告したことに対して了承を与えなければなりませんが、どこでも承認を求められた事実はありませんよ。政府はかつて報告はなさつておりますけれども、それに対して承認を求めておりません。また議長も、決議に基いてこういつたのができたけれども、諸君はこれを了承いたしますかということで、われわれが異議なしと言つてこれに了承を与えておりません。一方的に報告したにとどまつておる。あの当時のことをとやかく取上げてあなた方を責めようという考え方から言つているわけではありませんが、どう考えても、決して私は完璧なものではないと思う。行き方の中にいささか疎漏があつた、このように考えますが、率直に言つてそのようなことはありませんか。
○岡崎国務大臣 私は、当時の政府を弁解する立場にはないのであつてむしろ決議の実行を監視する立場にあつたわけであります。従つて、当時の政府のとつた措置を特に弁解はいたしませんが、しかし報告しろと書いてあつて、憲法には事前または事後に、普遍は承認を求めろと書いてある。なぜそれではここに本院の承認を求めることと書かなかつたか、報告せよとわざわざ書いてある。これは報告しろということであつて、承認を求めろということではないと思います。
○佐々木(盛)委員 時間がありませんし、私はもう岡崎さんにかかつちや、とてもかなわぬからこれでやめます。決してあなたの御答弁では納得いたしておりませんけれども、話題をかえて承りたいと思います。
 きようの新聞などを見ますと、きのうも問題になつた吉田総理の外遊につきましては、国会で正式に発表なさるということでありますが、そのようになさるのですか。私は外務大臣が全然知らない――吉田さんが頭の中に何を描いて行かれるかということは、知るよしもなかろうと考えますけれども、大体外交のいろいろな手続の点から考えましても、外務大臣が全然知らぬということもなかろうと考えるわけであります。まず第一に承りたいことは、吉田さんの外遊の目的はきわめて近いうちに発表するようなそういう方針ですか。
○岡崎国務大臣 まず、佐々木君のせつかくの御質問に対して、納得の行くような説明ができなかつたことはまことに申訳ないと思つております。今後なおよく研究して十分御説明ができるようにいたす考えであります。
 総理の外遊につきましては、昨日も申しました通り、国内で発表するかどうかというような点につきましては、主として官房長官がこれを取扱つているのでありまして官房長官の見解では、なるべく早く適当な措置を講じたいという趣旨でいろいろ考えておるようであります。お話のようになることじやないかと私も考えておりますが、これは主として官房長官において研究しております。従つてもうしばらくお待ち願いたい。
○佐々木(盛)委員 私は、きようの新聞を見ますと、二十一日外務省におきまして、大蔵、通産、経審、外務、農林、運輸、郵政、電電公社などの首脳部が集まつて、対米借款の問題について協議をした、こういうことが報ぜられておるのであります。外務省も当然入つたわけでありますから御承知かと考えますが、別にこまごましたことを外務大臣がお知りにならなくてもけつこうでありますが、これによりますと、やはりこれらの対米借款の問題が、この額も、世界銀行に対するところの六千万ドルの割当であるとか、あるいは一億ドルの全額贈与によるところの長期の借款の申入れであるとか、こういつたことが現実の問題になつているようですが、やはりこういうことを吉田総理が行かれた向うでお話になるのではないですか。きのうあなたのお話では、単に親善のものだというお話であつたのですが、私は、単なる親善のために今日内外きわめて重大な時局に、吉田総理大臣がそれだけのことで行かれるということにつきましては、いささか納得しかねるところもあるのであります。私たちはどうしてもやはり国民の一般的な支持の上に、吉田さんの外遊というものを最も効果的にあらしめたい、こういうふうな考え方から、私はできるだけ事の真相を明らかにして行きたい、こういうふうに考えておるのでありますが、こういつた経済問題というものは当然向うでお話をなさつて、何らかの端緒をおつくりになるのではなかろうか。これはアメリカにおいてそれからイギリスにおいて、特にイギリスなどにおきましては、東南アジアの貿易の問題であるとかいうようなことにつきましても、相当話合いが出るのではないかと思うのですが、この点は一体いかがなものでありましようか。
○岡崎国務大臣 昨日外務省で会議をしたということは、ちよつと私開いておりませんので知りませんが、世界銀行等に関するものは、従来からも研究を続けておりましてこれは総理の外遊に関連なく――外遊されたときに話が出るかどうか、これは別として、ずつと事務的には話を進めております。ただけさの新聞を見ますと、何か世界銀行に対する借款とか、あるいは政治的の意味の借款とかいうようにわけて大蔵大臣が言つたように書いてありますが、私の確かめたところでは、大蔵大臣はそういう意見では言つていないようであります。ただ何となく総理の外遊に結びつけて、そういうことがあるのじやないかという予想のもとにいろいろ記事は出ておりますけれども、私の承知するところでは、また私の考えでは、そういう具体的な問題は、総理を煩わさなければできないという種類の問題ではないような気がいたしております。当然関係省でやり得る問題だと考えております。
○佐々木(盛)委員 もう一点で終りますが、外務大臣は十二日の外人記者会見におきまして、総理大臣は直接には母体的な経済問題には触れぬだろうけれども、あとは出先の大使や公使が具体的な経済問題は討議するだろう、こういうふうなことをおつしやつておるのでありますから、吉田さんが行かれるのについて、経済的な問題についても、あるいは大きな政治的な問題についても、日本の当面しておるたくさんの問題があるわけでありますが、それらの問題につきましては、私は単なる親善だけの使命ではなくて、何らか相当大きな政治的な、経済的なものをおそらくは持つて行かれる、またそれを持つて行かれなければ国民も容易に納得しない、そうして最も国民的な大きな支持の上で出先においても十分に活躍してもらいたい、われわれはかように考えておるようなわけでありますが、そういつた点につきましてはいかがでございますか。政治的な、あるいは経済的な面につきましても、吉田さんにも相当な外遊の使命があるのだ、単なる親善の使命のみとは、私は納得しかねるのでありますが、その点はいかがなものでございましようか。
○岡崎国務大臣 私の外人記者との会見では、私はむしろあれは書きものにして間違いないようにして読み上げたのでありますから、その原稿も持つておりますが、具体的の問題には触れないということを申したのであつて、何か今のお話だと、総理が口火を切つておいてあとで大公使がこれを完成するというふうにおとりになつたかもしれませんが、そういう意味では決して申しておりません。もし言つたとすれば、それは日本における関係各省及び出先でもつて解決すべき問題だ、こういうふうに言つたのじやないかと思います。総理の外遊につきましては、お話のように、いろいろ大きな立場から一般的の意見の交換等はもちろんされるのであつてそれがまた将来日本の政治、経済上に大きな効果を及ぼすような基礎になることはなるであろうと思いますけれども、具体的にこういう問題を解決する、ああいう問題を解決するという問題をひつさげて行かれるのじやないだろう、こういう意味で私は申しております。
○上塚委員長 佐々木君、時間が来ました。
○佐々木(盛)委員 よろしゆうございます。それではさらに重ねて私は承つておきますが、吉田さんが向うに行かれてお帰りになるときに、向うで忽然として何らかの条約を結んで――これは経済的な、あるいは政治的な条約などを結んでお帰りになるというような、そういつたようなことはございませんか。もう一つ承つておきますが、私はきようの日本タイムスか何かを見たのですが、今アメリカやオランダあるいはオーストラリア、イギリスなどの関係の七百五十三名とかの戦犯の釈放問題につきまして、アメリカやイギリスの関係者と吉田さんがおそらく話をするだろうというような意味のことが書いてあつたのでありますが、そんなこともやはり今度の目的の中には含まれておりますか。今申した二点につきましてお答えを願いたい。
○岡崎国務大臣 条約とか協定を結ばれるというようなことは、ちよつと今のところ想像できません。そういうことはないものと考えております。
 それから戦争受刑者の問題につきましては、われわれはもちろんでありますが、総理も非常に心を痛めておられます。おられますけれども、これも実は一般的な親善関係樹立の基礎において、解決がもつとやさしくなるということもあり得ましようし、また総理も非常に同情しておられますから、何かの機会に話が出るかもしれませんけれども、しかしこれはやはり平和条約の規定もあり、それ以来のいろいろの事務的な交渉もありまして、やはり普通のチャンネルによりましてこの解決を促進するのが筋道であろう、こう私は考えて、そのつもりで努力するつもりでおります。
○上塚委員長 大橋忠一君。
○大橋(忠)委員 私は首相の外遊に関しまして質問いたします。首相の外遊についていろいろ議論がありますが、これは国際関係の複雑なときであり、外国との関係において生存をしているこの日本において重要なことでありますから、最高首脳者の間でいろいろ直接会つて意見を交換するということは必要なことだと思いますが、この外遊に関連して私が非常に不愉快に感ずることは、またまた外資の導入、借款、経済援助というようなことがしきりに新聞に伝えられ、財界でもおみやげを期待しているというようなことがしきりに載ることであります。大体アメリカから外資を導入する、金を借りるということは、むろん筋が通り、かつその条件がよろしいならがそれはよろしいのでありますが、しかし一体個人であつても、国家であつても、借金ということはいいことではない。これはやむを得ざる場合においてのみやるべきことを、どうも民間においても政府においても、まるでアメリカから二文でもよけい借りる方がいいことであり、借りたのは手柄であるというふうな気分が非常にただよつておる。こういうふうにしてどんどん借りて行つたら、一体先がどうなるかという問題があると思う。一体返すめどというものが立つておるのかおらないのか、返すめども立たぬのに、むやみにねだつて借りる。そうしてその結果返すことができなかつた場合、一体どうするつもりなのでございましようか。私はアメリカという国はそういう甘い国じやないと思うのでありまして、必ずや借款というものについてはひもをつける。たとえばMSAの小麦の問題についても、やはりひもがついておると同様でありましてわれわれの時代はかりにいいとしても、われわれの子孫の時代にこれはどうなるでございましようか。私が返すことができなかつた場合を想像してみますと、結局アメリカの日本に対する圧力がますます加わる。そうして日本の軍隊は傭兵のようにますますなる。そうしてますます日本の独立というものが怪しくなる。その結果は、日本の青年がまた外国勢力をはねのけるというようなところから一種の反米運動が起つて、ちようど仏印のような事態になり、そこへ赤化勢力が入つて来る、私はそれを非常に恐れておるのであります。そこで私は借款はするのもよろしいが、よほどよく考えて、はたして返せる見込があるかどうか、また何に使うのかということをよく考えましてから借款をしていただきたい。ことに本日の新聞によると、何か治水、潅漑、干拓であるとか、愛知用水であるとかそういうことのための世界銀行からの借款のことが第一次に置かれておる。干拓にしても、こんなことは日本においてむだをやめて重点的にその方に予算をやるならば、日本限りでできるものである。しかるに何がゆえにこういうような問題のために第一次的に借りるのか、これは新鋭な機械を借りて日本の工業設備をよくするということならば、これはすぐに外貨獲得に役立つのだからこれは話も聞えるのでありますが、こういうようなところにまでむやみに借りることをもつて能としているような傾向があることを非常に遺憾と思います。
 私が二年半ばかり前にアメリカに行つた当時チャーチル首相が渡米をされた。当時国の、ドルがますますなくなつて、これはてつきりお金を借りに来るのだろうということを新聞が書き立てました。チャーチルがわざわざ来るのだから素手で帰すわけにも行くまい、二億ドルぐらいは少くとも貸さにやいかぬということを各新聞ともほとんど輿論のように言うた。チヤーチルはニューヨークに上陸すると、私が今回来たのは一文といえども金を借りに来たのじやないという声明をいたしまして、それから帰つて、いわゆる耐之生活によつてすつかり経済を立て直して、そうしてアメリカ人をあつと言わしたことは御承知の通りであります。しからばなぜチヤーチルがこういうような態度をとつているかというと、これは私はチャーチルの心のそんたくでありますが、世界平和の維持のためには、どうしてもアメリカの外交を押えて、そうして外交の自主性を回復せぬことにはいかない、あまりにアメリカにやつかいばかりかけておつては頭が上らない。そこでチャーチルが、やせがまんでありますが自力でもつて英国の経済を立て直した。アメリカが貸すやつまでいらないと言つて断つたところに、私はチャーチルの偉大性があると思つて、実は非常に感心しておるのであります。そこで日本も外交的にいわゆる対米一辺倒といわれて、アメリカに何か言われると頭が上らない、その言うことを聞かなくちやならぬという一番大きな原因は、経済的に金縛りにあつているという点であります。従つて日本はすぐというわけに行きませんが、徐々にやはり外交的にも独立せぬことにはいかぬ、独立の方向に向うべきである。従つてそういう点から申しますと、むやみにアメリカから金を借りて金縛りにかかるなんということは、これはよほど考うべきことである。外交自主ということから……。従つて私はどうしても日本も英国と同様に、英国のようにはむろん参りませんが、徐々にではありますが、まじめにひとつ日本の経済自立をはかつてそうして東亜の外交についてはもつと自主性を回復しないと、認識不足のアメリカのやる通りにまかしておいては、決して東亜の安定というものははかれないのではないかということを恐れておるのであります。そういう見地から私は吉田さんが向うへ行かれる際におきましても、チヤーチルのまねをせよとは申しませんが、この際日本を代表する総理大臣が、小さな問題でこじきのように金を借りるというような態度をとつてはいかない。やはりやせがまんでもアメリカのごやつかいなんかにならず、自分の経済は自分で耐乏生活で立て直すのだというような毅然たる態度をもつて行つてもらいたい。そうしてまた日本の方でも、何でもかんでも対米依存なんかやらずに、自力でもつて立て直すというほんとうの耐乏生活をやらなければならぬと私は思うのであります。
 第二に申し上げますのは仏印の問題であります。仏印の問題について今問題になつておるのは太平洋同盟の問題であります。この太平洋同盟に、吉田さんが向うに参りました際にアメリカからこの問題が持ち出され、そうして日本が参加を勧められはせぬかということが、一つのこれは各方面に抱かれておる憂慮であります。私はそういうようなことはないだろうとは思います。また派兵をしようといつたつて、憲法上その他の理由でできないことはわかつておりますが、しかしあるワシントン電報によりますと、もし日本がその方面でアメリカと協調すれば相当の金が来るというような電報もあるのでありまして国民の一部においては相当心配を持つている向きもあるのであります。はなはだこの仏印の状態というものは遺憾な状態でありますが、なるほど共産主義の侵略と言えば言えないこともないのでありますが、やはり長年フランスの植民地政策のもとに弾圧されておつた仏印が、この機会にどこまでも独立しようという、仏印の民族主義というものがもとになつている。従つて、その根はまことに深いのでありまして、私は実は同じアジア人としてひそかに彼らに同情を持つておるのであります。この仏印の民族主義を弾圧することに、いやしくも日本が協力するというような形になつては、東南アジア一帯の同情を失つて、もう南方へ進出することはできなくなる、いわゆるアジアの孤児になる。従いまして、いかなることがあつても、仏印の民族主義を弾圧することに協力するようなあらゆる協定なり行動というものには、私は反対なのであります。これについて日本に疑いがありますので、今申しました二点について、もしも吉田外遊について声明を出されるならば、はつきりしたことを述べられたらどうか、そうすれば日本国民も安心するし、アメリカ側でもその点について認識を持つて来て、国際外交上非常に有益だろうと思いますが、この点についての外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○岡崎国務大臣 第一点につきましては、私はまつたく御同感であります。いろいろの理由もありましようが、私が常に考えておりますことは、なるほどビジネスでもつてちやんと元利の返済ができて、向うも貸すことが利益であり、こちらも借りることが利益であるという場合には、これは普通の商業上の取引でありますから、借りても貸してもよかろうと思いますけれども、ただ国民が今耐乏生活を始めて自力で経済の自立をはかろうとしておるときに、何となくアメリカから金が来て楽に暮しができるのだというようなことになりますと、国民に対する精神的な影響も非常に大きい。せつかくの自立意識を失わせるような結果にもならぬとも限らない。むやみに金を借りて来ることが能であるなんという考え方は、私はまつたく反対であります。そこでしばくその趣旨のことも申しておりますし、総理が行つてもそんなことはおそらく話すことはなかろうということをたびたび言つておるのでありますが、新聞の諸君等はなかなか信用しないで、一億二千万ドル借りて来るんだ、何を借りて来るんだといつて記事にされる、それがまたアメリカに打電され、アメリカの方からまたそれに対してこうだ、ああだというようなことが来て非常に混迷いたしておりますが、私はそう考えておりますし、政府もその通り考えておる。従つて、金を借りる場合においても、これはビジネスで借りるのであつて、それなら何も総理の外遊を煩わす必要はない。普通の手続で借り得るものは借り得るし、なるべくならばそんなことなくして、自力で、節約して経済の立ち得るようにいたして行くのは当然のことだと私は考えております。
 それから例の太平洋同盟と申しますか、これについても御趣旨においては私は賛成でありまして、やはりそう行くべきものだと考えております。ただ、チャーチルの例もお話になりましたが、金を借りに行くのじやないということをあらためて声明するのがいやみになりはせぬか、人のまねになりはせぬかというような考え方もありますので、どういうふうにその立場を明らかにされるかは、総理なりその他政府一般で将来きめる問題でありまして、私からは今何とも申し上げられませんが、ただはつきり申し上げ得ることは、決して金を借りて来ればそれで成功だというふうに政府一同は考えておりません。できるだけ金を借りないで自力で行くべきものである。またそれが国民の精神作興と申しますか、自立意識を強めるゆえんでもあるし、また当然そうすべきものだこうかたく信じております。
 仏印の問題についても、総理大臣は国会でもしばしば、かりにこういう機構ができたとしても、日本としてはこれに入り得ないであろうということははつきり申しておりますが、まだ実は機構ができたわけでもなければ、機構の構想も、何らかの統一行動をとるのだとか、あるいは何らかの安全保障措置をとるのだという抽象的な意思表示は聞いておりますが、どういう機構をつくるのだという具体的のものはございません。これに対しましては、たとえば国連無毒のもとにおける地域的安全保障という場合には、これはけつこうな場合もあるのであつて、またおつしやるような意味でおもしろからざるような結果になる場合もあるかもしれません。しかし、これについてはつきり政府の態度を明らかにするということは、具体的の問題がないと、ちよつとどうかと考えるのであります。抽象的には総理としてもしばしば言つておるのであつて、つまり日本の療法に違反するようなことはできないからしてそういう機構ができても、その内容によつては政府としてお断りする以外に方法がないかもしれませんという趣旨のことは、もうすでに言つております。それ以上は、もう少し具体的になつた上でないと、はつきりしたことを言うのは適当でないのじやないか、こう思つておりますが、さらにこれは研究いたしてみます。
○大橋(忠)委員 仏印の問題については、大体において私の考えと同じラインにおいて考えておられるかどうか、その点だけちよつと……。
○岡崎国務大臣 それはその通りであります。同じラインで考えております。
○大橋(忠)委員 私はそれだけです。
○上塚委員長 並木芳雄君。
○並木委員 阿波丸のときの協定でございます。先ほど大臣の言われたことは、今日そんなに言うならばなぜあの当時おつしやらなかつたか、こういうので、これは確かに大臣の言うことは一理あると思うのです。今われわれが気がついてここで騒ぐなら、なぜあのときにこの協定は国会の承認を求むべきだということを言わなかつたかと大臣の言われたのは、それは私ども一理あると認めます。ただあのときは占領治下にあつたことで、われわれにはまだ独立の外交権がないといわれておつたことと、第二は、当時ゆめにもわれわれはガリオア、イロアというものを債務と心得ておらなかつた、そのためについあの協定に対しての鋭い検討を見のがしたということは、私どもこの際率直に認めます。しかし、今後の問題もございますので、どうしてもこの点については私からも確かめたいと思いますが、決議文の中には、ガリオア、イロア、こういうものを債務にするという項目は入つてないのです。これは大臣も御承知の通り、趣旨弁明は決議文ではございません。決議は本文だけが生きるものであつて、その決議の本文には入つておらないのです。ところが協定の最後のところに持つて行つて、了解事項のところで占領費、借款、信用は債務であると断定しております。ここが実質的に違うのじやないかと思います。そういう意味におきましては、実質的にもやはりこの協定というものは、国会の承認をあらためて求むべきではなかつたかと思うのでありますけれども、この点を大臣にもう一度確かめたい。
○岡崎国務大臣 私は当時の政府の一員でございませんから、当時の政府のやつたことをここで弁解する立場にはないのでありますが、ただ私の了解するところでは、この了解事項はその当時、政府が従来とつておりました態度を確認したものであつて何ら実質上の変更を企てたものではない、またちよつと記憶がありませんからここではつきり申し上げられませんが、少くとも参議院では吉田総理大臣は、ガリオア、イロア等は通常贈与と心得ておられる向きもあるかもしれないが、そうじやないので、これはここにいう債務であるということを言つておられます。従つて、改進党の所属議員は参議院にもおられることであります、衆議院ではあるいはそういうところまで言及されなかつたかもしれませんが、とにかく参議院ではそういうことを言つておることを私は議事録で承知しております。従いまして政府としてはそのときに決して占領費といつてガリオア、イロアのことをごまかしたのじやなく、ガリオア、イロアをわざわざあげて、そうしてこれがやはり贈与でなくて、債務である、こういう立場を明らかにしておりましてこれもさらに説明して、従来の政府の立場を確認したものである、こういうふうに言つておりますので、確認である、私はこう考えております。
○並木委員 それでは念のため、参議院の答弁と、もし衆議院で二十四年四月六日以前に何らかこれは債務であるということを印象づけるような政府の発言があつたとしたならば、恐縮ですが、ひとつ記録にしてあとで委員に配付していただきたいと思います。
 それからただいまの点で実質的の大臣の見解はわれわれ今承つたわけです。これが検討はまた後日に譲りますが、ところで実質的の問題でなく、ここに形式的の問題として、国会ではわれわれが衆議院、参議院別々にやる決議というものは、はたして憲法七十三条にいう国会の事前承認になるかという、形式上、法律しの問題が起ると思います。これはあるいは法制局の林さんにお尋ねした方がいいかと思います。大臣は先ほど来、国会でわれわれが決議したことは事前の承認になるのだ、こういう解釈をとられておりましたけれども、私は憲法七十三条にいう条約に対する事前の承認にならないと思う。何となれば、決議というのは、衆議院と参議院と別々になされます。衆議院でやつた決議が、国会法の定めるところによつて参議院に回付されて、それが参議院で承認を経て決議が成立して、国会の意思となるというものじやありません。これだけは法律などと違つてめいめい別個のものでございますので、これはいわゆる憲法七十三条にいう国会の承認、意思決定にならないと思うのですが、この点いかがでしようか。
○林政府委員 文字通り申せば、この憲法七十三条は国会の承認でございまして、今並木委員が仰せられましたように、両議院が同じことを別々に御決議なさいましても、これは両議院の決議でございます。その点はもちろん法律的には違うと存じます。アメリカ等では両院の合同決議というようなものもあるようでございますが、日本の国会法ではそこまではつきり認めたものはないように考えております。しかし当時のこの阿波丸に関する協定は、結局その当時、国会に総理大臣兼外務大臣が御報告したあとで、この点に関しては衆議院でも何か本会議で御質問があつたようでありますが、その点につきましては、結局両議院の一致の御意思でございます。その両議院の一致の御意思に基いて、行政府においてその両議院の一致の議決に基いた内容を実現するための実はとりきめなのです。これはいわゆる憲法の七十三条からいえば、第二号の外交関係の処理としてやつたのであります。こういうようにその当時御答弁しておるようでございます。
○並木委員 そうすると、私が聞いたのは一般論、原則論ですが、原則論として、決議そのものは、七十三条の国会の承認には常にならない、こういうことが言えますね。今のでいうと、林さんは実質的のところを持つて来て、あとから本会議で質問があつたとか、そういう実質的の実際問題からこれを合理づけようと苦心されての答弁ですけれども、そうでなく、法理論としては、必然的には事前の承認にならない、こういうことなのですか。
○林政府委員 形式的には、もちろんおつしやる通りに、国会の議決と両議院の議決とに観念的には違うわけであります。国会の承認というのは、今の国会法の考え方では、一つの議案について衆議院が議決をし、それが参議院にまわつて議決になる、こういう考え方、国会としての一つの意思としての考え方です。阿波丸のときの再議院の御議決は、両議院別々の御議決です。内容は同じでございますけれども、法律的に言えば国会の議決でない、両議院の議決である、こう考えます。
○並木委員 それがわかればいいのです。だから大臣が国会の事前の承認を得たという先ほどの答弁は誤りでございます。それは訂正していただきたい。七十三条による国会の事前の承認があつたからではなくて、この協定は行政措置であつたのだ。七十三条によつて国会の承認を得る必要のないところの行政措置にすぎないのだ、こう答えなければならなかつたと思います。大臣はそれを国会の事前承認であると言い、今見えた下田条約局長も前の外務委員会で、夢前の承認であると言つたのです。これは明らかに法制局の見解と違う。法理論からいつて許されない解釈でありますから、大臣は訂正しておいていただきたい。
○岡崎国務大臣 私は法律上の知識はあまりありませんから、あるいは間違つたかもしれません。間違つておれば、快く訂正いたします。私の言つた趣旨は、実質上は事前承認を得たという趣旨に言つたつもりだつたのですが、そうでなければ訂正いたします。
○並木委員 実質上事前承認と同じだと強弁することもむしろ矛盾するのです。これは決議で許されたその行政措置であつて、この協定はいわゆる憲法七十三条にいう条約では、ございません、こう言わなければいけないのです。だから事前であろうと事後であろうと、国会の承認を求める必要がありません、こうおつしやつた方がよいと私は思う。何となれば、憲法七十三条にいう条約に入らないで、政府対政府でやる協定もあるわけです。日英支払協定とか、いわゆる貿易上のアカウントに関する協定は、一々議会の承認を得ておりません。大臣がその範疇に入れて来れば問題はない。ところが、七十三条にいう事前の承認と実質上同じものだというふうに言われると、なお問題が起るのです。そこをはつきりしていただきたい。
○岡崎国務大臣 並木君の方がよほど条約上の知識があります。よく研究してみます。お話のような趣旨が適当であろうかと思いますから、よく研究して、御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
○並木委員 今後のこれはやはり重要な御題と思いますから、ひとつなお研究をしていただきたいと思います。
 それで私の大体聞きたいことはその点だつたのですが、今度は現実の問題で、アメリカとの交渉はどうなつておりますか。この間第一回をやりまして、第二回はいつ開いて、どういう方向にこれを解決して行こうというのか、これは大臣の見解とともにお尋ねをしておきたいと思います。
○岡崎国務大臣 第二回は、日は忘れましたけれども、すでに開きました。しかしまだ双方の資料の突き合せがなかなか時間がかかるように思います。私の聞いておる報告では、日本側で持つておる資料はあまりたよりにならぬようにいわれておりましたが、だんだん調べてみたら、これは相当よい資料がたくさんあるということで、アメリカの資料の方がかえつてあいまいなところもあるように聞いております。従つて相当程度これは両方で突き合わせなければならぬと考えております。なお大体の趣旨は、ドイツの例がありますので、少くともドイツの例よりも不利にならざる程度はぜひ確保したい。しかしなるべくならば、さらに日本経済上の情勢等もありますので、できるだけ経済に阻害を来さないように、また賠償とか、その他の対外支払いもありますので、この点も考慮しまして十分なる措置を講じたい。従つてまだ早急にはこれはなかなかまとまるまい、こう私は見ております。
○並木委員 それはその趣旨に沿つてぜひ日本の負担が少しでも軽くなるように私どもは強く大臣に要望いたします。来年度の予算に幾らかこれは計上するようになりますか。
○岡崎国務大臣 ちよつとまだ具体的にどうなるということを申すのは早いわけでありますが、ドイツの例を見ますと、協定ができますと、元本はすえ置きの期間がありますが、利息はすぐさま払つているようであります。従いましてある程度の来年度の予算計上ということも起るかもしれぬと考えておりますが、まだちよつと申し上げるのは時期が早いようでございます。
○並木委員 それでは首相のことについてくどいようですが、出発日取りは今のところ六月四日に変更ございませんか。
○岡崎国務大臣 実はまだ国会の模様もはつきりいたしておりませんので、今考えておりますのは、かりに四日出発すれば、こういうふうにずつとなる、この元がくずれますれば、また全部がかわつて来るわけであります。今のところは、まだそういう想定のもとに計画を進めておるというだけにしかすぎません。
○並木委員 井口さんが首相のメツセージを先方に持つて行つたというのは、それは何でしよう。日取りのことですか。どういうことでしようか。一週間滞在を延期するということは、出発を一週間延ばすということじやないのですか。またもし一週間滞在を延ばすならば、その理由はなぜでしようか。
○岡崎国務大臣 井口大使の話は、新聞には何か外遊について話したように伝えられておりますが、外遊につきましては、今申したように、こういう想定のもとに日程をつくれば、アメリカの中の旅行はこの程度になるという程度のことは、インフォームしてありますが、それ以外にもいろいろほかの問題もありまして、普通事務的な連絡事項が多かつたようであります、延ばすとか延ばさぬとか、そういう問題は何も言つていないように報告しております。
○並木委員 それじや一週間滞在を延期するということも、まだ決定した計画じやないのですか。もし決定していれば、その理由等も……。
○岡崎国務大臣 まだ決定いたしておりません。
○並木委員 首相一行の外遊費用は、どこから出ることに決定しましたか。
○岡崎国務大臣 これは原則として、各省に割振つてある予算内で各省のものはまかなう、こういうことになるものと思つております。
○並木委員 実は首相の外遊も大事でありますが、全国都市体育研究協議会から、外務大臣の方に陳情が来ているのを御存じだと思います。それは青少年が西ドイツへ行く問題でございます。ドイツのドクトル・ウイルヘルム・ローエルという人から、全国都市体育協議会の会長である平沼亮三氏あてに招待状が来ております。日取りはたしか七月二十五日から八月二十五日まで、向うに滞在する費用は一切先方持ちでありますが、途中の旅費だけを日本側で負担する、こういうことで外貨の問題なのです。大した費用ではないと思いますが、旅費は一人当り千百四十四ドル十セント、三十一人分で三万五千四百六十七ドル十セントで、邦貨に換算して千一百七十六万八千九百円になつております。これについてはぜひひとつ外貨の割当をしていただきたい、こういう要望であります。日取りも大分追つておりますし、若い人々が西ドイツへ行つて、健民少年団運動というものに携わつて来ることはけつこうだと思いますので、この方面について大臣に努力をしていただきたい。今まできつと陳情があつて、手配をしてくださつたかと思いますが、御答弁をいただきたい。
○岡崎国務大臣 私は青年が外国へ行くとか、あるいは運動競技で行くとかいうことは、みな非常にけつこうなことだと思つておりますが、同時にただいま日本の経済状態は、実は耐乏的な生活をいたして、ここ二、三年は歯を食い縛つても自立経済を達成すべく努力すべき時期であると思つております。非常にけつこうな趣旨でありますけれども、しかし三万ドルは何でもないじやないかとおつしやいますが、三万ドルといえども、ゆだんすると、それがありの穴になりまして、大河の決壊する場合もあるわけで、ございまして、われわれはいかなる場合にも気を引締めて、この一、二年は自立経済達成ということにまず努力をし、これができてから余裕ができたときに、青少年等が外国へ行くとか、あるいはスポーツの交換をやることは、非常にけつこうであります。まず八千七百万の国民が食えるようにいたすことが、第一の急務であると考えております。お説のような点については、私も昔から運動もいたしておつて、また青少年のことについても特に同情といいますか、強い気持を持つておりますけれども、同時にこういう点で少しぐらいはいいじやないかという気持は、私としては考えたくない。この際はできるだけ歯を食い縛つても一、二年がまんしてもらうということで行つております。この問題につきましても、さらに十分研究をいたしてみますが、三万ドル決して少い金ではない、外貨の割当といつても容易なことでないということは、御了承願わなければならぬ、こう考えております。
○並木委員 これはすこぶる難色あるというふうに、今の大臣の御答弁では伺いましたが、どうなのですか。それでは吉田さん一行の費用は大ざつぱに見て何方ドルくらいですか。
○岡崎国務大臣 すぐに吉田総理の旅行の費用なんかと比較されることは、私はちよつとどうも当を得ないと思います。政府としてもたとえば将来の――将来といつても、近い将来に役に立つ金を使わないというわけではないのであつて、またそれに対しても私は反対だと言つておるのではないのです。しかし三万ドルぐらいならいいじやないかというような安易な気持で考えるべき問題ではない、こういうことを私は強く申したいのであつて、運動競技ならば幾ら金を出してもいいというふうに言つて、それに反対すると、何か非常にけしからぬように言われますけれども、しかし八千七百万の国民が実際食えるか食えないかということをお考えくださいますと、それは容易なことではない。それを終戦以来のアメリカの今問題になつておる援助等で、何でも食えることは確実だというような前提に立つてお考えになりますと、これはまた違いますけれども、自力で食つて行くことは容易なことでないのだという点で、あらゆる点で節約をして行かなければならぬ、こういうことを私は強調いたしたいのであります。
○並木委員 その趣旨には決してぼくは反対しているのではないのです。それならば、またこだわるようですけれども、吉田御一行が親善旅行だというのも、大臣の趣旨から言うと少しおかしい。ですからこそ、私どもどういう要務があつて行かれるかということを聞いておるわけなのです。少しつじつまが合わないのですが、吉田一行の概算は何万ドルぐらいかかるのでしようか。
○岡崎国務大臣 外務大臣もまだ金の勘定まではいたしておりません。これは普通にかかる費用だけはかかるわけです。それは各省で割振つてある予算の中から支出する、こういうことになります。
○上塚委員長 この際先ほど戸叶君から御要求のありました、ビキニ水爆問題に関するアメリカのコール声明に対する調査の結果を、中川アジア局長から御報告を願いたいと思います。
○中川(融)政府委員 コール委員長のいわゆる声明事件というものにつきましては、その当時在米大使館に移牒いたしまして、調査さしたのでございますが、調査の結果、コール委員長の声明なるものは、正式に声明文等を用意してやつたものではなく、新興記者会見の席上において非公式になされたものであり、別にテキスト等も残つていない、速記等も残つていないということでございまして、従つて根拠となるべきものとしては、当時新聞に報道されたところがあるだけでございます。
 その内容は、第五福龍丸があるいは漁業以外の目的でおつたのかもしれないというふうなことをコール委員長が言つたと新聞では伝えておるわけでございます。もちろんコール委員長はアメリカ政府の責任者ではないわけでありまして、アメリカの国会の委員長でございます。従つて当時政府としては、コール委員長が新聞記者に非公式に話したことをとらえて、特にこれに抗議等の措置をとることはしなかつたのでございます。しかしその後、第五福能文がどのように航海しておつて、いつどのような事情のもとに被害にあつたかという精細な事実につきましては、三月末にこれを正式にアメリカ政府に伝達いたしまして、その内容は新聞にも公表されたのであります。従つて当然アメリカ政府及びアメリカの朝野におきましても、第五福龍丸がいわゆるスパイ等の行為をなしておつたのではないということは十分了解されたものと考えます。
 またその後におきましては、そのような趣旨の言動はアメリカ国内でもないのでございまして、従つてこれ以上の措置は、政府としてはとる必要がない、かように考えております。
○戸叶委員 ただいまのアジア局長のお話で、コール委員長が、はつきりと文字には残されなかつたけれども、新聞記者の諸氏に対してそういう意見を述べられたということがはつきりしたわけでございます。これはたといそこにテキスト等にして残さないにいたしましても、そういう発表をされたということは、その報道がアメリカ全体に知らされることであり、ことにまた日本の新聞にもそれが書かれたことでございまして、これは非常に重大なことだと思います。しかもその発言に対する取消しをなすつたという御報告は今ございませんでしたが、この委員会の決定事項としては、そういう発言をなされたとするならば何らかの意思表示をこの委員会でもしておこうというふうにきめられてございますので、委員長といたしましてもこの点はよく理事会等でお諮りの上、その決定に従つての処置をとられんことを私は望みます。
○上塚委員長 ただいま戸叶君から御申出の件は、理事会を開いてさらに検品討し決定いたします。――佐々木盛雄君。
○佐々木(盛)委員 私は法制局次長と下田条約局長に、先刻来外務大臣との間に問題になりました件につきまして、法律上の立場から承つてみたいと思います。
 ただいまの並木君の説によりますと、阿波丸に関する協定は行政権の範疇に属することであるから、憲法七十三条にいうところの事前もしくは事後の承認を必要としない、こういうことであつたのでありますが、私は根底から考え方を異にいたしております。(並木委員「そう答弁しなければおかしいというのじやないか」と呼ぶ)今の並木君のような考え方で、もし政府がそうしなければおかしいということで賛成なさるというならば、下田条約局長がこの間まで話しておつた見解というものはまつたく違うわけであります。私は重ねて聞いておきますが、ただいまの並木君のような説に御賛成でありますか。
○下田政府委員 阿波丸事件の処理に関する協定が、憲法第七十三条第二号の外交関係の処理に該当するか、あるいは第三号の承認を経て締結すべき協定に属するかどうかという点、これは国会とされましては国会としてのお考えがあろうと思います。しかし先般来問題になりましたのは、委員各位の方から七十三条の承認の問題として御提起になつておるものであります。承認の問題として御提起になつておりましたからこそ、実質上は国会がお言い出しになつたのでありますから、承認があるというふうにお答えいたしたのでありますが、当時政府側の立場は、もし承認が必要であるという条約とお認めならば、国会の決議において、この趣旨によつて協定を締結し、しかる後に承認を求めようということであつたはずであります。しかるにもかかわらず、承認を求むべしということはおつしやらずに、単に報告せよという御決議であつたわけであります。でありますから政府といたしましては、国会側におかれまして第七十三条第二号の外交関係の処理に属する協定とお認めになつたのか、あるいは第三号の問題と認めたが、事前の承認があるから、あらためて承認を求める必要なしとお考えになつたかのいずれかであるととつておつたのでございます。いずれにいたしましても、先般来問題になつております点は、承認をなぜ求めないかという点の御質問でございましたので、それは事前に、この議の、ごとくかくかくして、その結果を国会に報告せよという御決議でありましたから、その通りにいたしましたとお答え申し上げたわけであります。しかし私の記憶を先ほどの法制局次長のお話によつて正確に喚起されたのでありますが、当時政府側の考えは、やはり第二号の外交関係の処理として本件を取扱うという考えであつたことを思い出しましたので、それが政府の当初からの考えである、そういうように前回の答弁を補足かたがた申し上げたいと思います。
 なおついでに申し上げますが、先ほど並木委員からの御要求で、参議院の議事録を提出せよというお話でありますが、これは本来国会の議事録でありまして国会の文書でありますから、政府側から提出するのもおかしなものだと思うのでありますが、幸い私持つて来ておりますから、その部分だけを読ませていただきたいと思います。
 これは吉田兼摂大臣の申されたことでありますが、「尚、以上本文に附帯せしめて日米両国政府の間の了解事項といたしまして占領費並びに米国政府から日本に供与された借款並びに信用は日本に取つて有効な債務であり、これらの債務は米国政府の決定によつてのみこれを減額し得るものである旨が規定されたのであります。これは当り前な話でありまするが、併しこのクレジット、或いはいわゆるガリオア、イロア・フアンド、費用と言いますか、或いは日本に対する綿花その他のクレジットというようなものが、恰もアメリカ政府から日本が種々常に無償で以て貰つておるような誤解を与えておりまするから、この機会に了解事項として附加えたのであります。」そう申しておられます。
○佐々木(盛)委員 下田条約局長にお尋ねいたしますが、そうするとあなたはきのうまでおつしやつていたことを訂正なさるのですか。前言を翻してそういう新しい説をお述べになるのでありますか。あなたは国会の事前の承認を求めたものとすると、国会で決議したことは国会の事前の承認であるかのようにおつしやつたのですが、今日の説とは違うのですか。もしそうなつたならば、あなたは訂正なさるならば訂正してもらつたらいいのです。しかしその言いようが、そうしなければ言いのがれができないというような並木君の考え方には賛成することができないのです。
○下田政府委員 政府当局といたしましては、この種の協定が外交関係の処理に関するものであるというように国会がお認めくださいましたならば、非常に都合のいいことであります。そこで私といたしましては、もし前書が不十分でございましたらいさぎよく訂正申し上げまして、むしろ国会側のその御見解に賛同いたしたい次第であります。
○佐々木(盛)委員 あなたはそれはきのうまではどんなふうにお考えになつておつたのですか。国会がどう考えたかということよりも、この協定を結ばれたときは、普通の、一般の協定であるというふうにお考えでなかつたのですか。
○下田政府委員 正直に申し上げまして、この委員会の委員各位からなぜ七十三条三号の承認を求めぬかという角度からの御質問であつたと思いましたので、承認を求めなかつた理由を強調いたしておつたのであります。ところがただいま林次長からのお話によりまして当時の記憶を喚起されまして、林次長通りの御説明で行くのが、政府としても最も適当であると考えるに至りましたので、前のあれは訂正させていただきたいと存じます。
○佐々木(盛)委員 林次長に承りますが、あなたは先ほどだれかが質問をしてそれに対して答えたと言うのですが、ここに速記録がありますが、どこにそんなことがありますか。
○林政府委員 私は日にちはちよつとはつきり覚えておりませんが、二十四年に阿波丸事件の問題を吉田兼摂大臣が本会議で御報告がありまして、その後しばらくたつてからだと思いますが、本会議で志賀義雄議員が質問されております。これに対して吉田兼摂大臣が答弁されておりますが、その際にはつきり七十三条二号と言われたかどうか、実は私は記憶しておりません。しかし大体政府側としてはそういう考え方で、これについては実質的に実は国会で事前にこういうことをせよという両議院の御議決があり、それに従つてやることであるから行政部限りでできることである、こういう考え方で、それに基いた考え方でお答えをしておるように私は記憶しております。
○佐々木(盛)委員 法制局次長に承りますが、なるほど協定を結ぶということは、もとより外交権の中に属するのであります。しかしできたものは国会に提出して事前もしくは事後に承認を求めるということがあたりまえの行き方なのです。林法制局次長はこの決議さえすれば、それが事前の承認を意味するものであるから、あとは政府がかつてに、行政権の範囲でやつて、国会の承認を得なくてもいいという、そんなお考えを持つておるのですか。
○林政府委員 これは実は当時の衆議院及び参議院でまつたく同文の御決議がございます。それでありますから両議院の御意思はまつたく同じであつたと思うわけであります。もちろん形式的には国会の議決ではございませんけれども、両議院同趣旨の実は御決議であつた。その御趣旨と同様の、それの範囲を逸脱しない範囲において、政府においてアメリカ側と交渉をし、その御趣旨を実現する意味の実はとりきめをした、そういう意味におきましてこれは行政府において処理できることである、その内容につきましてはもう国会の御意思の通りにやつた、こういう考え方で当時取扱つたものと考えておるわけでございます。
○佐々木(盛)委員 従つてあなたのお考えによりますと、事前もしくは事後の承認というこの憲法の命ずる規定は、必要でないというお考えですね。
○林政府委員 これは前にもこの外務委員会で、西村条約局長も当時お答えになつておると思いますが、いわゆるあらゆる国際とりきめが、全部憲法七十三条三号の条約かという問題が出たことがございます。その際にたしかお答えがあつたことと思いますが、ここでいう条約は国と国との間の公法関係を生ずるとりきめが、ここでいう条約であるという大体お答えであつたと思います。そこで問題は、いわゆる国と国との間の約束であつても、私法関係の在外公館の敷地を貸すとか措りるとか、そういう問題はここでいつている条約ではない、もう一つは、行政部限りでやれる範囲のことについて、行政部同士がまつたく行政部限りの権限内でできることについてのとりきめ、これもここにいう条約とは解釈されない、こういうお答えをしておると思います。そのあとの方の問題にここでは入るものと考えたものと思います。
○佐々木(盛)委員 私はもしあなたがそういう考えを持つておられると恐るべき結果になると思うのです。しかもこの岡崎君によつて提案された衆議院におけるところの決議案というものは、これは阿波丸に関する請求権の放棄であつて、その他の一般的な占領費の債権債務の問題をここで決議したわけじやないのです。しかるに協定におきましては、一般的なものまでをも含んだものをつくつておるのであります。まるで決議の内容というものとできた協定というものはまつたく違うものであります。
○林政府委員 その点は当時の本会議においても御質問があつたことでございます。これは了解事項としてついておるのは、実はあたりまえのことをあたりまえの通りに書いただけであつて何ら政府としては新しい約束をしたのではない、そういう趣旨の御答弁をいたしております。そういう性質のものであろうと存じます。
○佐々木(盛)委員 私はやはり外国との間に結びますところの協定というようなものは、当然外交関係の処理の中に入つておつても、できたものについては、協定というものは国会へ提出して、事前もしくは事後に承認を得るということが普通の正道であると、かように考えるのです。私はその当時の客観情勢を考えて、占領下という特殊事情があつたから、従つて私はあえてそのことを深く追究しようとはしないのでありますが、今後とも外務当局あるいは法制当局は、国会で決議さえすれば、決議で大綱さえきめておけば、あとの細目とりきめは自由にやつて、それはもう行政権の範囲に属するのだから、国会の承認を得ないでもいいのだなんという、そんなことを考えられては恐るべき結果になると私は思うのです。その点はいかがですか。
○林政府委員 もちろんそれはその場合場合のことでございまして、その御決議の趣旨なり内容と関連して考うべきことだと思うわけでございます。その御決議の趣旨を逸脱し、あるいは予想せられておらないようなことを結ぶことが、当然に行政権の範囲内でできるなんということでないことは、これは明らかだと存ずるわけでございます。また当時いろいろな事情があつたことは、これは御指摘の通りだと存じます。
○上塚委員長 佐々木君、まだありますか。
○佐々木(盛)委員 下田さんどうですか。あなたも、あの当時の特殊事情からこういうことになつたのだけれども、本来は国会に提出して承認を求むべきものだというお考えではございませんか。あまりにこじつけをしたり、質問に対するところの適当な言いのがれさえすればそれでいいという考え方である。私はまじめにほんとうの大道を歩んでやるべきだとかように考えるのです。しかしそうされなかつたら――話の筋が通らぬとか通るとかいうような問題じやなくて、ほんとうの実情というものを率直にお認めになつて、良心のあるまじめな外交官だというならば、国会を軽視しない立場から、やはりこういうものができたならば、たとい国会から委任されたことであつても、できたものについてはあらためて国会に提出して承認を求めるという行き方が正しい行き方である。そうされなかつたら、秘密独善外交にならないと言えないのです。そういうことに対する基本的なあなたのお考えを、将来もあることですから、重大な問題ですから、承つておきたいと思います。
○下田政府委員 佐々木先生の御意見にまつたく同感でございます。かつ新憲法制定下に今まで行いました慣行、つまり外国に比べますと、国会に付議しておる条約の範囲が非常に広うございます。大体今まで御承認を仰ぎました一国間の条約で、日本だけが国会に提出して相手国が国会に提出していないものがきわめて多うございます。たとえて申しますと、先般の国通軍協定、これを国会に付議しておる相手国はわずかに一、二でございます。爾余の当事国はすべて政府限りできめておるのでございます。それほど日本の新憲法下の憲法慣習は、まだ慣習が成立しているとは申せないかもわかりませんが、外国に比べて政府側から承認を求めるために国会に出す条約の範囲が非常に広うございます。しかしこれはお説のように本来の民主主義の見地から申すと、それが正当な慣行であろうと私ども信じております。なおその決議と協定との関係でございますが、これは法制局次長の申された通りでございまして、たとえば先般原子力に関する決議が出ました。そこで将来原子力管理に関する国際条約ができたと仮定いたします。これは決議で原子力管理がうたわれたのだからこの条約を付議しないでいいのかというと、これはもつぱら決議とその結果できる協定の内容との見比べの問題でございまして、その際に個々に判断すべき問題だと存じております。
○佐々木(盛)委員 私はもう一回確認しておきますが、先ほど外務大臣は、日本はアメリカなんかと違つて、そう協定の承認というようなことについて、アリメカのようなそういつた権限を与えられていないのだ、従つて国会の承認が必要なんだ、しかし国会の承認というものは諸君が決議をしたから、これはもう承認されたと了解されておるのだ、こういうことを今日まで答弁いたしておつたのですよ。そうすると……、(「訂正したよ」と呼ぶ者あり)訂正しておりません。そういたしますと、大分考え方がかわつて来たわけですよ。この二、三日の間にうんとかわつておる。二、三日のみならず、今しがたこの席におるまでの間外務大臣はそういう弁答をしておつたことは速記録を見れば明らかでありますが、どちらの考え方が正しいのでありますか。
○下田政府委員 その際私はおりませんでしたが、外務大臣はいやしくも国会で御決議があつたら、もうあとで出て来た協定はすべて付議する必要がないのだとは決しておつしやらなかつたと思います。この具体的な阿波丸事件に関する決議の内容、御趣旨と、それからできました協定との関連においてだけおつしやつたことでありまして、全般的に何らかの決議があればもうそれに関する協定はしないでいいという、そういう意味では申されたのでは決してないと存じます。
○佐々木(盛)委員 外務大臣は先ほどだれかの質問に対して開き直つて、文句があるならその当時なぜ文句を言わなかつたのだ、こういうことを言つたのです。従つて文句を言わなかつたということは国会が了承をしたのじやないか、承認を与えたのじやないか、こういうふうなことを言つておつたのですよ。私はまつたく暴論だと思つたのですが、そういうお考え方とあなたの今のお考え方とうんと開きがあるのですが、こういうお考えをお持ちになつておりますと、まことに私は重大な問題になつて来ると思いますから、御意見を十分調整していただきまして、同時に何でもかんでもこじつける、とかく最近の政府の法律の解釈論というものは、こじつけが非常に多いようでありますが、私は占領当時のことなどについては、今日法理論をもつてこじつけ解釈することよりも、むしろその当時の客観情勢というものを訴えて、これは正しい行き方でなかつたのだがやむを得なかつたというようなことをおつしやつた方が、われわれは了解しやすいと思う。妙なこじつけをして、しかも大臣とその下僚の者との間の意見がまつたくてんでんばらばらである、あるいは法制局と外務省との鷲見が違う、こういうようなことでは、われわれは容易に納得することができないのです。そこで私はあらためてあなた方に警告しておきますが、これらの法律解釈の基本的な態度につきまして、私はもう少し反省していただきたい。もとより条約の承認の問題は、今の新憲法のもとにおきましては大小のいかんにかかわらず、国会の事前もしくは事後の承認を求めることが常則です。私はその点を要求しますと同時に、先ほど申しますように、あなた方をも含めて、最近の一般の政府当局の法律解釈論が、非常なこじつけに堕しておるということを非常に不満といたします。もつと率直に良心的立場に基いて、これから臨んでいただきたいということだけを申し上げて私は打切つておきます。
○並木委員 私のことが出ましたから一君言つておかなければなりませんが、私は七十三条第二号によつてこれは処理できるものだという自分の結論を申し上げたのでありません。私はやはり今の佐々木委員のように、七十三条の第一項の第三号で国会の承認を求むべしという見解を持つておるものなのです。ただ政府がどうしても今までやつて来たことを言いのがれをしようとするならば、七十三条の第三号の事前承認ではなく、その第二号の政府の外交措置、これによつてやりましたという以外にはありますまい、こう言つただけなのです。そうしたら岡崎大臣は態度をかえて来て前から言つていた事前の承認を得たものと思うということをかえて、考え直すというふうになつて来たわけです。なぜそういうことを私はついて行つたかというと、衆議院でやつた決議と参議院でやつた決議が、憲法七十三条の第一項の三号ですか、例の条約の事前承認に当るのだと言うから、それは違うのだ、これが私の重点なのです。両方で同じような決議をやつても、それは七十三条にいう国会の承認にはならないのだ、こういうことを確かめたのです。それに対してはつきり林次長からなりませんということを答えてありますから、その点については満足したのであります。だから佐々木委員は私が第二号にこれは該当するのだというふうな意見を持つておるというふうに了解しておるならば、その点は誤解のないようにお願いしたい。ただここに一つ問題がありますのは、もし政府があれを債務と協定で断定をするならば、それ以後どうして憲法八十五条によつて国会の議決を経て来なかつたか。国会の議決を経ないでおつた債務はかなりあると思うのです。その点については林次長、これは憲法違反ではないですか。憲法八十五条に「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」とあります。しかるにあの協定の了解事項では、これは債務ですといつておる。そうすると、その都度国会の議決を経ないでやつた債務はずいぶんあると思うのですけれども、それは憲法違反だと思いますが、いかがですか。
○林政府委員 その都度国会の議決を経ないでやつた債務とおつしやると実ははつきりいたさないのでございますが、ここで問題になつておりますガリオア、イロアにつきましては、今までずつと政府側もお答えしております通りに、いわゆるまだ債務の金額とか支払い方法というような確定的な条件を含めた債務となつておりません。要するに今後アメリカと交渉して、いかなる内容の債務として確定するかということは、まだ残つておる問題である、こういうお答えをしておることと存じます。そういうようにはつきり国の債務として支払い条件等も確定し、内容も金額も確定する、こういう場合に国会の御議決を願う、こういう趣旨だということを今までも御答弁をしておつたと存ずるのであります。今まで債務で確定しないものを払つているということは実はないのではないかと存ずるわけでございます。
○戸叶委員 私は佐々木委員が質問されましたので、一、二点だけ伺いたいと思いますが、林法制局次長に伺いたいのは、財政法の八条に「国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」となつていることと、この阿波丸の請求権の放棄との関係は、どういう、かうになつておりますか。
○林政府委員 これは阿波丸のときにつきましては、阿波丸に基く請求権は、実は内容から申せばあの船が沈んだあるいはその人の持つておりました積荷が沈んだという問題で、その請求権は実は船の持主である郵船会社あるいはその遺族、そういう方たちの請求権であると思うわけです。国そのものの請求権ではない。国はそういう人を代表してアメリカ側と交渉する、そういう立場になつたものと存じます。従いましてこの請求権の放棄ということは、国が自分で持つておりました債権の放棄ではなかつたと考えるわけであります。またそういう意味におきまして、国会の御議決の趣旨も、そういうものを放棄する基礎において日本政府としてはアメリカと交渉せよ、こういう趣旨だと思います。政府としてはそういうことを国会の御趣旨に従つて交渉し、かつ国民なりが持つておりました請求権を放棄ずるようなことをやりましたかわりに、いわゆる阿波丸請求権に関する法律を出しまして、国内的な補償をした、かようなことになつておると思います。
○戸叶委員 表面上はそうかもしれませんが、その阿波丸というのは半分は国がやらせたようなものになつていると思うのです。そういう意味からいうと、そうしていろいろあとになつて法律をつくつて国が補償してやつて、船会社にもまたその遺族の方にも補償してやる、そうしますと当然それは国の持つている――国が半分以上保護してやつているという形は、この国の債権というように考えられるのですが、そうじやないのですか。
○林政府委員 これは法律的に申せば、国が持つていると申しますか、国がアメリカ政府と交渉するのは、いわゆる臣民保護権という立場に立つて、実は権利というものじやなくて、広い意味の臣民保護権は国民を保護して、その立場を代表して外国政府と交渉する、そういうものだろうと思うのです。そういう意味に基いてアメリカ政府と交渉したということであります。請求権そのものは、この場合においては国民が持つていたものについての処理だ、かように考えます。
○上塚委員長 よろしゆうございますか。
 本日はこれをもつて散会いたします。
   午後零時五十一分散会