第019回国会 外務委員会 第1号
昭和二十八年十二月十一日(金曜日)
    午後一時三十九分開議
 出席委員
   委員長 上塚  司君
   理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君
   理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君
   理事 戸叶 里子君
      佐々木盛雄君    増田甲子七君
      岡田 勢一君    須磨彌吉郎君
      神近 市子君    帆足  計君
      西尾 末廣君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 岡崎 勝男君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 佐藤 達夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
        専  門  員 村瀬 忠夫君
    ―――――――――――――
十二月七日
 委員北れい吉君辞任につき、その補欠として佐
 藤親弘君が議長の指名で委員に選任された。
同月八日
 委員佐藤親弘君辞任につき、その補欠として北
 れい吉君が議長の指名で委員に選任された。
同月十一日
 委員星島二郎君及び武藤運十郎君辞任につき、
 その補欠として佐々木盛雄君及び帆足計君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 参考人招致に関する件
 国政調査承認要求に関する件
 外交に関する説明聴取
    ―――――――――――――
○上塚委員長 これより会議を開きます。
 まず国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては、今国会におきまして、前回と同様外交に関する事項、移民に関する事項、行政協定の実施に関する事項の三項目につきまして調査をいたしたいと思いますので、この旨議長に承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。
    ―――――――――――――
○上塚委員長 次に参考人招致の件についてお諮りいたします。
 本委員会といたしましては、来る十五日在日国連軍に関する問題について呉市長鈴木術君及び呉市会議長奥原義人君を参考人として招致し、その意見を聴取いたしたいと思いますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。
    ―――――――――――――
○上塚委員長 次に外交に関する説明聴取の件について審議を進めます。
 なお、外務大臣は午後四時よりアンダーソン海軍長官を招待されておりますので、午後三時半には委員会を退席せられねばなりません。従つて、外務大臣に対する質問時間は約二時間でありますから、時間整理の都合上、各党の持ち時間を二十五分とし、関連質問のある場合は持ち時間に加算することといたしますからさよう御了承を願います。
 これより質疑を許します。福田篤泰君。
○福田(篤)委員 外務大臣にお尋ねしますが、日韓交渉につきましては全国民が非常に大きな関心を持つてながめておるのであります。大臣はたびたびアリソン大使とお会いになりまして、最近に至つてアメリカがある一定の条件のもとに、日韓交渉に対してオブザーヴアーとして、あつせんの労をとつてもいいというようなことを言つたと伝えられておりますが、最近の十二月五日のINSのワシントン電によりましても、これを裏づけるような報道かあるわけであります。この点について御説明願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 日韓問題については、アメリカ政府も両方の国に対して特別の条約関係にも立つておりますから、いろいろ心配をしておられるようでありますので、われわれも、日本側の考え方、日本側の立場というものは十分アメリカに説明をしておるわけであります。アメリカ政府としては、調停とか仲介とかいうようなむずかしいことではなくして、非公式に両方の関係当局と会つて、できるだけ円満に解決するように慫慂しているというのが実際の段階でございます。その結果、オブザーヴアーを出すようになるかならないかはまだはつきりきまつておりません。というのは、会談再開ということもまだ実は今のところきまつておるわけではないのでありますから、あるいはそういうことになればオブザーヴアーという問題も出て来るかとも考えられますが、正式に言えばまだ何も決定はいたしていない。但し、両方の間に立つていろいろ意思の疎通をはかり、円満に解決するように間接に努力はいたしておる、こういうことだろうと思います。
○福田(篤)委員 この日韓交渉につきまして、確実な筋からの情報によりますと、日韓交渉の再開に関しまして、韓国側は二つの条件を日本側に申し入れておるようであります。一つは、この前のいわゆる久保田発言の何らかの形における陳謝または訂正、及び日本側の代表を変更してもらいたいという二つの要求を出しておるわけでありますが、これにつきまして外務省の御方針を伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 日本の代表を変更してもらいたいというような意向は全然私は聞いておりません。先方もそんなことを言つておるとは考えません。しかし、御承知のように、久保田代表は、今回メキシコに赴任することになりまして、もう発令をされておりますので、かりに日韓会談が再開されましても、久保田君を引続き代表として交渉に当らせるということは事実上不可能だと思います。従つて、代表は新しい人が選ばれることは、これは日本の国内的な事情、外務省の人事からいつてもやむを得ぬことであります。但し、韓国側としても、相手方の代表をかえろとかかえるなとか、そんなことは言うべき筋でもありますまいし、また言つてもいないと思います。
 それから久保田君の発言は、これも日本側に何ら先方から申入れはありませんが、先方の発表その他新聞報道から見ても、久保田君の発言に対して異議ありということは事実であります。ところが久保田君の発言というものはあのときの記録を見ましても、これは自分の個人の意見であるというようなことを再三言つておりまして、従つて、政府としてあの発言を取消すとかなんとかいうことにはなりません。しかしそんな、前のああいつた、こういつたということでもつて子供のような言い合いをするのは本意ではないので、日韓会談の目的は、要するに、建設的に日韓の関係を将来に向つて友好裡に確立しようということが趣旨でありますから、われわれとして別に面子にこだわる必要もないので、その点は適当な処置がとれるものと考えております。特に取消すとかなんとかいうようなことは別にまだ今聞いておりません。
○福田(篤)委員 今増原次長がおいでにならないようですが、あとで政務次官が来られてから重ねて保安庁にお尋ねいたしますが、最近増原次長はパーソンズ参事官との間に防衛計画についていろいろ話合いをしたことは御承知の通りでありますが、それについて外務大臣はどういう報告ないし連絡を保安庁から受けておられますか、これについて伺いたい。
○岡崎国務大臣 実は私は、増原君が最近話合いをしておるということも聞いておりませんので、従つて話の内容は聞いておりません。しかし保安庁長官も、今せつかくいろいろ考え中であるから、一応の考え方がまとまつたときにはぜひ私どもと話合いをいたしたい、こういうことでありますので、その考え方のまとまるのを待つているような次第であります。
○福田(篤)委員 ただいまの大臣の御答弁を聞きまして非常に心外に思うことがあります。御承知の通り、防衛問題というものはわが国の重大な一つの国際性を帯びた外交問題であります。残念ながら、現在の日本の実力から申しまして、アメリカの援助なくしては、わが国の防衛力の漸増計画が、実質的には遂行できないというような現状から言いまして、これはりつぱな一つの外交問題である。こういう意味から申しまして、外務大臣としては、責任者として、この重要な外交問題について当然もつと積極的な意欲を示すべきで、かつまた、保安庁の動きに対しましても、これを単なる国内的な他の官庁の動きというように傍観視しているような態度ではきわめて心細いのであります。御承知のごとく現在カナダでも、外務省では、中に防衛連絡局というものがちやんと制度化されてありまして、国防に関しまして外務省としてりつぱな制度化をして一局が設けられておる。このような現状から見ましても、ことに日本のようなむずかしい国際情勢下に置かれている立場から言うならば、外務省は、外交的見地から、たとえばカナダ外務省が持つておりますような一つの防衛連絡局と申しますか、そういうものを制度化いたしまして、防衛計画に対する外国との交渉の経過にもはつきりと参画する、そうしてその結果についても責任を持つというような態度こそ当然であろうと思うのであります。かつて大東亜戦争の戦前におきまして軍部が外交を支配した、そのために非常な不幸な国運の没落を見たことは御承知の通りであります。私は、現在の外務省の防衛問題に対するきわめて消極的なやり方を見ておりまして、再び外交の二元化を来すのではないかということを非常におそれている者の一人であります。こういう意味において、今後の日本の外交一元化という根本的な重大な問題から考えましても、願わくは外務大臣は一つのイニシアチーヴをとつて、ここに制度化をするなり、あるいは防衛計画について何らかの積極的な方針をとられ、また責任をとられることが正しいと思うのでありますが、これについて御意見を承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 これは私が御答弁をすると、まだ三百代言的だとかなんとかおつしやるかもしれないと思いますが、元来私は、アリソンとの書簡交換で明らかになつているように、日本の防衛力の漸増の時期と態様は、日本政府が決定するものだ、アメリカと交渉して決定するものでないという建前をとつておるのであります。従いまして、この問題についてアメリカと話合いをしてきめるのが私の任務ではなくして、国内の予算なり、あるいはその他の国民の輿論等の動向を考えて、日本自体の防衛計画をきめるものである。それがきまつてから、MSAに関連していかなる援助を求めるかということを、アメリカ側と交渉する。もし増原君がかりにだれかアメリカの大使館の人たちと話をしておるとしても、防衛計画をああしよう、こうしようということの交渉をしておるのではなくして、おそらく何らかの参考にするために、いろいろアメリカ側の制度なりやり方なり、そういうものを聞いておることはあるかもしれませんが、それは少くとも私は関知しておるところではなくして、いよいよ保安庁でこういうものをこういうふうにやるのだという大体の計画がきまりましたときには、保安長官ともよく相談し、また予算等の措置についても、大蔵大臣とも協議をして、日本の案をきめる。この案をきめることについては、外務責任者としては、当然内閣閣僚と話はいたしますけれども、きめる前にアメリカ側といろいろ相談をしてきめるというような考え方は、今持つておらないのであります。従つてこれをはなはだ冷淡だとおつしやられれば、どうもやむを得ませんけれども、筋道はそうだと私は思つております。
○福田(篤)委員 私の申し上げたいことは、日本の防衛計画はアメリカの援助なくしては実現できないという客観情勢から考えて、あなたの言われるような純粋な国内問題として取扱うことは、不可能であるということを指摘したわけであります。決してあなたの御答弁についてあげ足をとるとか、いろいろな考えは少しもないので、日本の外交の一元化、かつての悲劇を二度と繰返さないという気持から、特にお願いしていることは、そういう点から考えて、防衛問題は明らかに外交問題である。国際問題である。それについて保安庁は今話をしているようであるが、あるいはしているかもしれませんが、それは結果がまとまつてからよく相談するのだということでは、非常に心細いわけであります。どうかこの点は積極的に――私は先ほどカナダの例を申し上げましたが、ヨーロツパでもそういう例がございます。日本は当然外務省内に一つの防衛連絡局なり何かの制度を設けまして、絶えず、進行状態をキヤツチして、第三人者ではなくして、直接当事者としてやつて行かなければ、私は今後の日本の防衛計画につきましても、きわめてこつけいなことになるし、外交の分裂を招くと思います。先般池田特使が行かれたことについても、いろいろ問題になりましたが、私はこの委員会においても、池田特使個人から直接確かめたことは、外交問題に関しては政府におまかせするというようなことも、はつきり御答弁願つたのであります。この際特に私は重ねてお尋ねし、また御用意を伺いたいことは、日本の外交一元化という、長い目で見て重大な根本問題でありますので、防衛計画に関して、何か制度化するお考えがあるかどうか、もう一度お尋ねしたいと思います。
○岡崎国務大臣 ただいまのところ、私は行政機構をできるだけ簡素化しようという考え方を持つているわけですから、防衛問題につきましても、省内の関係部局でやらせたいと思つております。新しく局を設けたりすることは、できるだけ避けたいと思つております。しかし今おつしやつた外交の一元化という問題は、もちろんわれわれも強く考えておることであります。また何か誤解がおありになるかもしれませんが、増原君なりだれなりがかりに話をしておりましても、それは決して外交上の問題で話をしているのではないことと私は確信しております。つまり先ほど申したように、何らかの参考のために、アメリカの制度等について聞いておるというようなことはあるかもしれませんが、防御計画について増原次長がアメリカ側と交渉しておるということは全然ないことは、確言できることであります。従いまして外交の一元化ということは、もちろん当然のことであります。またこれは外務省の仕事であります。これは閣内でもはつきりしておることであります。
○福田(篤)委員 少しくどいようでありますが、大事なことでありますから、もう一度お尋ねをいたします。増原次長がパーソンズ参事官と話をしておることは全然関知しないと言われた御本人が、全然外交問題に触れてないと言われたことは、おかしなことであります。また池田特使がいわゆる側面から政府の問題について御努力願つておることは、決してわれわれはその労を無視するものではい。喜んではおりますが、特に私が強調したいことは、あくまで外務大臣が、こういう国際的な防衛問題についても、りつぱな当事者としてイニシアチーヴをとつてやるべきだということを、重ねて強く要望しておきたいと思います。
 それから今行政簡素化の問題が出ましたが、私どもの調査によりますと、行政簡素化は趣旨としてきわめていいことである。全国民の一致した要望といたしまして賛意を表するものの一人でございます。ただ天引き一割というようなことは、きわめて非科学的な乱暴なやり方である。たとえば外務省を調べてみますと、定員総数は千六百五十名でありますが、これは戦前はたしか五千名あつたと思います。そうなりますと、戦後二倍、三倍ないしは四倍近く膨脹いたしました他の官庁、特に経済関係の官庁に比べますと、むしろ三分の一ないし四分の一に人員が減らされておる。しかも今後外務省の役割というものは、きわめて重要であつて、このような定員すらいわゆる一割天引きするというようなことになりますと、はたしてこれをもつて事務に支障を来さないかどうか、これを非常に心配するものであります。特に現在通商貿易が日本の国運の死命を制するという立場から考えましても、現在の千九百五十一名の在外職員だけでは、とてもこれは実際にやつて行けない。現在百三十四の公館もあります。これについて二十九年度において今あなたが行政簡素化を言われましたが、やはり従来通りの天引き的なお考えをもつてやるのか、あるいはまた減らしても、この人員で日本の今後の経済外交について事務上支障がないという御確信があるのか、この点をお伺いいたしておきたいと思います。
○岡崎国務大臣 外務省の全体の定員につきましては、これはいろいろな見方があります。たとえば中国に置きました領事警察関係の警察官まで実は外務省の定員に入つておりますから、ただ定員の数だけ比べても、私は比較にならない場合があると思います。それから外務省に限らず、どこの省でも有益な仕事をしておることは、これはもちろんでありますから、人を減らせばそれだけ仕事が減るので、いい仕事ができなくなるというりくつは立つわけであります。しかしもう予算節約を叫ばれておる現在でありますから、目をつぶつて、思い切つて減らすよりほかに方法はない、こう考えております。ただ大蔵大臣とも十分話をし、塚田君とも話をしておりますが、今度の行政整理等におきましては、決してこれは天引き的に、いるものもいらないものも全部減らすというのではなくして、いらないものはうんと減らして、いるものは残しておくという趣旨であります。そこで経済的な外交処理につきましても、現在の定員で足りるとは決して申しておりません。これは多きに越したことはない。仕事は幾らでもあるのであります。しかしそれは、たとえばそういうりくつを言えば、今の定員を倍にしたつて足りないかもしれない。あるいは三倍にしても足りないかもしれません。これはものの考えようであります。それよりももつと大きな国内の情勢を考えまして、少くともこれ以上ふやさないで何とかやつて行きたい、こういうのが私の希望であります。
○福田(篤)委員 私は、外務大臣に期待しておりました御答弁と非常に違うので、大きな失望と危惧を持つのであります。私の申し上げたいのは、防衛問題にしろ、また日本の死命を制する通商外交にいたしましても、私は現在の外務省の制度ないしはスタツフでは、とても国民は期待することはできないと思う一人でありますが、今おつしやるところによると、人員についても国家的な要請に応じて減らすつもりだというお気持があるそうでありますが、あなたは総理大臣でなく、外務大臣ですから、外交に対してもつと積極的な、非常に失礼な言葉でありますが、大きないい意味の野心といいますか、希望といいますか、計画性をお持ちになつて、やはり必要であればむしろ国家的な要請として増員を要請されるという態度こそ必要であると思います。この点については繰返して申しませんが、特に御再考を促したいと思います。最後に、現在アメリカ、ソ連、この二国が日本の国内において広汎な文化活動をやつておることは御承知の通りであります。豊富な資金ときわめて巧妙な組織をもつて、今や日本国内は、米ソ両国の一つの文化活動の思想的背景を持ちました活発な舞台になつておることは、だれも認めるところでありますが、この間に処しまして、日本が独立国になつた、日本本来の純粋な日本的な立場に立つた、そのアジア的立場における文化活動というものが、強く識者から今要請されております。これについて外務省は一体どういう組織を持ち、また予算を持ち、どういう活動をしておるか、これについて御所見を伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 ちよつとお断りしておきますが、私も、外務大臣としての考え方ももちろんありますけれども、行政整理などということになりますと、やはり国務大臣の一人として一般的なことも考えなければならぬ。もちろん外務省のことは専門的に考えます。従いまして、総理大臣でなくしても、やはり全体の予算その他の関係において考慮を払わなければならない、こう私どもは考えております。なお文化活動につきましては、われわれも情報文化局という一つの局を持つて、いろいろ努力をいたすつもりでおりますが、実は予算等の制限もありまして、とても思うようなところには行つておりません。われわれとしては世界中に文化的な方面でも活動したいと思いますが、とてもそれは予算的にそういうふうには行きませんので、一番大切な東南アジアをまず主力といたしまして、これについてできるだけのことをいたしたい、こう思つております。内容的に申しますと、たとえば普通の留学生の交換とか、あるいは講師を派遣して日本の実情を話したりするとか、あるいは日本の書籍等を頒布したり、あるいは映画をつくりましたり、普通一般にやつていることをこちらもやつておるのでありますが、その活動状況は、人員とともに資金も十分でありませんので、思うにまかせない実情であります。
○福田(篤)委員 来年度も要求されておりますか。
○岡崎国務大臣 来年度も本年度よりは少し余分に要求しております。
○上塚委員長 並木芳雄君。
○並木委員 私は先般来外務大臣にぜひお尋ねしてみようと思つておつたのでありますが、なかなかその機を得なかつたのです。本日その機会を得ましたので、ニクソン副大統領の演説に関連して質問をしてみたいと思います。
 それは去る十一月十九日東京会館でニクソン副大統領は、日本を非武装化したのは失敗であつたという意味の演説をされたのであります。ダレス長官は二十四日の記者会見でこれを支持しております。一説には、日本の外務省はアリソン大使に頼んでニクソン副大統領にそういう演説をしてもらうようにしたのだということでありますが、その辺のいきさつはどういうことになつておりますか。私としては相当思い切つたことを副大統領は演説されたと思いますが、まず大臣の御所見を伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 外務省が頼んでやつてもらつたという事実はございません。
○並木委員 この日本を非武装化したことは失敗であつたということは、アメリカ式のフランクさというものは私多分に買いますけれども、この事柄はあまりに重大であり深刻であると思います。日本人としてやはり聞きのがせないのです。ただ失敗であつたというだけで、この大きな占領政策、至上命令にも匹敵すべき占領政策というものがひつくり返つて来るということは、われわれの受けた打撃があまりに大きかつただけに日本人としては聞きのがせないのであります。
 そこで非武装化の線から出て来た憲法第九条でありますけれども、これは日本を非武装化したことが誤りであつた、失敗であつたというならば、重大な錯誤があつたことになるのであります。従つて、民法でも錯誤があれば取消すことができる、そういう点から考えましても、この憲法九条というものは無効ではないか、こんな感じを抱くのでありますが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
○岡崎国務大臣 私は当時憲法の改正には携わつておりませんでしたから、その内情は知りませんけれども、あの憲法は、国会において審議をされ、国会議員のほとんど全員ともいうべき大多数で承認がされてこれができたと思いますので、これは日本国民のつくつた憲法である、こう考えざるを得ないように思つております。
○並木委員 形の上ではそうでありますけれども、ニクソン副大統領は、明らかに日本を非武装化したのはアメリカの政策であつて、これは日本国民がとつた政策ではないという演説をしておるのです。その当の張本人が失敗であつたと認めておるのですから、それならばもし当時占領政策に非武装化というものが盛られておらなかつたとしたならば、あの憲法九条がはたしてでき上つておつたかどうかということに、多大の疑問があるわけであります。無効であるとは言わないまでも、少くともその当時の改正手続と同じ方法をとつて今日再検討すべきではないか、新しい憲法に盛られた手続によらずして、当時政府の提案によつて出席議員の三分の二の多数決で採用することのできたその方法によつて、憲法九条は再検討すべきであるというふうに考えるのでありますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○岡崎国務大臣 私は現憲法があります限りは、現憲法の改正手続を、必要とすればとるのが当然であると思います。
○並木委員 あくまでも形式的な立場に立てばそうなりますが、その根本をなす日本の民主化あるいは日本の非武装化というものは絶対的な占領政策であつたわけであります。それが誤りであつたということを言われた以上は、私ども日本人としては、それならばそれから出て来たところの憲法九条あるいは日本の当時の軍隊の武装解除、こういうものは取返しのつかない大損害をこうむつたものであると言うことができると思うのであります。従つてそれならば、今日再軍備をしたければしてもいいという状態にまでなつて、われわれが真剣に考えておるその再軍備の要素である陸軍、海軍、空軍、その装備が今日あのままになつておつたとしたならば、われわれは非常に助かるわけです。ですから私たちとしては、原状を回復してもらいたい、あるいはわれわれがこうむつた損害を賠償してもらいたい、こういう声が出て来ても不自然ではないのじやないか、こういうふうに考えられます。当時解体された陸軍、海軍、空軍の装備は、今の金に換算しますと、どのくらいになるのでしようか。また大臣としてはただいま私が申し上げましたように、その損害を補償してもらいたい、あるいは原状を回復してもらいたい、こういう要望を先方に出すおつもりはありませんかどうか、そういう点についてお尋ねをしたいと思います。
○岡崎国務大臣 日本の装備がどのくらいになるのか、私は今知りません。
 それから損害賠償ですか、原状回復ですか、何かそういうことを要求する、そういう考え方は持つておりません。
○並木委員 私はやはり大臣にその点は真剣にお考え願いたいと思うのです。そういう問題を前提としてMSAの援助を受けるということを考えて行くと、割に答えは簡単に出て来ると思うのです。私たちが小さくならず、またひもつきだなどということにびくびくせず、これはアメリカとしても、失敗を認めているのだから、その償いの意味からも当然MSAは日本に供与すべきである、そういう気持になりつつあるわけです。ですから、そういう点でぜひとも大臣に再考を煩わして、そうしてMSAの問題なんかも日本に有利に仕向けていただきたいと思うのですが、御決意のほどを承りたい。
○岡崎国務大臣 私が非常に形式的なことを言うようにお考えになるかもしれませんが、憲法ができましたときには、当時の国会議員の大多数が賛成されたのでありますが、もしこれが自分の気に染まないものであつたならば、おそらく当時の国会議員であつても、死を賭しても反対する人がたくさんあつたはずだと思います。おそらく占領下にありましたから、そういう憲法の問題につきましても法律につきましても、アメリカの司令部の承認を必要としたことは事実でありましよう。しかし同時に、それでは国会議員が司令部の指令があつたら、全然反対な気持だけれども、唯々諾々として賛成したのだとは私は考えておりません。やはり国会が独自の考えから、これはいいと思つて制定した憲法であろうと思つております。従いましておつしやるようなことについては、ただいまそういうような措置をとる考えは持つておりません。
○並木委員 その点はどうしても大臣と私は違うと思うのです。当時ポツダム宣言にも日本の武装を解除することがはつきり書いてあつて、降伏文書でそれを日本が認めているのです。ですから、武装解除、非武装化ということは、日本の民主化と並んで絶対的なもので、当時いかにそれに対して反対の意思を持つておる国会議員があつたとしても、私は反対できなかつたと思うのです。そういう点は大臣の御再考をお願いします。
 私が調べた当時の陸軍、海軍、空軍の装備を今の金に換算しますと、大体十四兆円くらいになるのでございます。しかしこれは正確な資料ではありませんから、政府としても調べておいていただくようにお願いいたします。
 それからMSAの問題でありますが、先ほどの大臣の答弁をちよつと伺いますと、いよいよ防衛計画とMSAとは切つても切離されない、こういうふうに受取りましたけれども、その通りでありますか。従つて防衛計画ができなければMSAの本協定に調印はできないのでありますかどうか。
○岡崎国務大臣 これはたびたび繰返して言うようでありますが、防衛の計画というものはMSA交渉の必須の条件ではないのでありまして、なければないで、その交渉をいたすわけであります。しかし今できつつあるという実情でありますから、それならできてから、それを待つて交渉した方が実際的である、こういう理由で防衛計画のでき上るのを待つております。
○並木委員 いつごろまでにそれができ上るお見込みでございますか。
○岡崎国務大臣 これは予算の関係もありますから大体の方針は年内にきまるのじやないかと思つておりますが、予算の関係から言えば、最終的には来年の一月の二十日前後までにきまるものであろう、こう思つております。
○並木委員 今大臣の指摘された現在話合いが進んでおるという防衛計画は、二十九年度の防衛計画ですか、それともあるいは三年、五年先まで含めての防衛計画でしようか。
○岡崎国務大臣 まだ成案を得ておらないようでありまして、私も内容については聞いておりません。いずれそのうち聞くと考えておりますが、おそらく一年だけではなくて、二年なり何年なりの計画じやないかと思いますが、この点はまだ申し上げられません。
○並木委員 それがきまり次第MSAの調印ができる、こういうわけですか。
○岡崎国務大臣 そうは参りません。そういう計画ができると、これに必要なものを提供してもらう交渉をするわけでありまして、日本側の希望するものをアメリカ側はこれくらいでいいだろうというようなことで意見が食い違いますれば、また交渉もしなければなりません。防衛計画ができれば自動的にMSAの援助の額がきまるというわけでもないわけであります。いろいろ交渉しなければならぬと思います。
○並木委員 調印の方は。
○岡崎国務大臣 調印の方は、私の希望では、実質的な援助の内容がきまつたときに調印したいと考えております。何となれば、調印だけで中身がないでは、これまた実質上の意味がないのですから、できるならば中身がきまつたところで調印をしたい、こう考えております。
○並木委員 そうすると大分遅れて、一月の末ごろになりますか、調印の方は……。あるいは二月にかかるのでしようか。
○岡崎国務大臣 それは交渉してみないとわかりません。おそくなるかもしれません。しかしあるいは今おつしやつたように、協定の方はもうその前に話合いが当然ついておりますから、協定は調印して、実質的な交渉はあとまわしにするという場合も考えられないことはないわけであります。つまり国会の審議の関係もありましようから……。しかしおそらく国会に協定を出せば、並木君等から、これは協定はできたが中身はどうなるんだという御質問があろうと思いますので、われわれもなるべくならば中身も説明ができるようにしたいというのが、ただいまの考えであります。
○並木委員 今三派で防衛の話合いをやつておりますけれども、これは関係ありませんか。
○岡崎国務大臣 これは大いに関係があります。
○並木委員 そうすると保安庁でやつている計画と三派の防衛話合い、これは不可分のものと見てよろしゆうございますか。
○岡崎国務大臣 これは実際上、保安庁としては内部面を見て計画を立てまして、三派の話合いというものがきまれば、それを取入れて直すところは直すということになるだろうと思います。
○並木委員 例の五百五十条による大麦、小麦の供与でありますが、これは本協定が調印されなければできないと思うのです。本協定のほかに別個の協定ができるとのことですが、それはどんなような名称になつて来るのですか。これは理論上、本協定ができてからでき上るべき協定と思いますが、いかがですか。
○岡崎国務大臣 これはMSAの五百五十条に基く買入れでありますから、当然本協定ができてからでないとできないと思います。しかしあの五百五十条の中をごらんになりますと、別個の協定もつくることになつております。従つてもう一つ、五百五十条に基くほかの協定も必要だろうと思います。そこでただいま申したように、もしかりに小麦等を早く入手する必要があり、それには本協定が必要であるというような、特に急がれるような場合があれば、先ほど申しました実質的の問題が少しおそくなつても協定を調印して、五百五十条の小麦をとるような話合いを進めて行くという必要もあるかもしれぬと思いまして、従つて実質的の内容がきまらなければ協定をどうしても調印しないのだというむずかしい態度は今とつておらぬわけで、どうしても必要があれば協定を先に調印してもよかろうじやないか、こうも実は考えているわけであります。
○並木委員 そうすると五百五十条によつて農産物の協定ができる、その中で五千万ドルのうちで、千万ドルが贈与で、あとの四千万ドルについてはアメリカが日本で積立て円をつくると言つております。その贈与の部分の一千万ドルに対する何らかの協定というものはまだ別にできるのですか。
○岡崎国務大臣 これはどうなりますか、まだそこまで話を進めておりませんが、大体の考え方は大きな本協定が一つできる。それの中でもつて五百五十条の小麦等の農産物の買入れの協定ができる。それに基いてさらに五千万ドルになりますか何千万ドルになりますかは別として、その買入れたものは円でアメリカに払うのであります。国内に円ができるわけであります。その円のどの部分をどういうふうに使う分という使い道の協定を一つつくる必要があるのじやないかそういうふうに今考えております。
○並木委員 あと詳しいことは土屋局長に伺いますが、私MSAは無償であるという答弁を得ておりましたから、農産物ことに過剰になつた農産物なんか当然無償であると思つたのですけれども、結局四千万ドル分は日本が買うことになるというのでこの点はびつくりしているわけです。結局四千万ドル分はそれを域外買付に振り向けられたとすれば、日本が外国から外貨を獲得できるにかかわらず、アメリカで余つた小麦を買つたのだ、外貨を受取るかわりに四千万ドル分は小麦を受取つたのだという勘定になりますけれども、そうなるのですか。MSAは無償であるという原則に反すると思いますが、いかがですか。
○岡崎国務大臣 MSAは無償であるという原則は私はないと思います。完成兵器は原則として無償である、しかしその他の部分につきましては、必ず無償であるということにはなつていない思います。ことに小麦についてはドルは払わないが、その国の通貨で払うのだということがはつきり五百五十条に書いてあるわけで、従つてそれを払うのがいやなら、小麦を受入れないだけの話で、もし小麦をドルで払うよりは円で払つて入手できるなら得であると思えば、それを受入れるだけであります。原則にこだわつて、何かただでくれるのが原則であるから、小麦もただでくれるというのはちよつと筋道が違うので、金を払うのがいやなら小麦を買わないだけの話だと思います。
○並木委員 この場合どうも私は問題があると思うのです。そういう金の払い方をしてまで、この五百五十条による小麦を受入れるかどうかということは、多分に私疑問があると思います。
 時間が参りましたから最後に二つお尋ねをいたします。その一つは奄美大島の問題です。これは二十日に返還がほぼ確実だという報道でありますが、確かにその通りでありますかどうか。それで問題になつている円の換算の点ははつきりきまりましたかどうか。
 もう一つはフイリピンの賠償と戦犯との関係で、きのうから外電の伝えるところは非常に悲観的な情報がございます。大臣は先刻御承知と思うのですが、二億五千万ドルくらいの賠償額で十五箇年以上費してやるという日本の案は問題にならない。こんなことでは巣鴨にいる戦犯をクリスマスに釈放することなどは思いも寄らない、というようなまことに寝耳に水の報道でありますが、これは何とかして困難を打開していただきたいと思いますが、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思うのです。それとともに、こういうことになりますと、例の沈船の問題なんかも影響を受けて来るのじやないかと思いますが、フイリピンにおける沈船作業の方は支障なく行くでしようかどうか。それからこの問題は今後ほかの国国との賠償の問題に先鞭をつける重要な問題と思いますので、その業に当るものの選定などにつきましては、近代的作業の技術や化学的設備の拡充などを十分考慮して厳選していただきたいと思いますが、そういう方針で進まれるかどうか。どのような方針で選定されるおつもりでありますか。私の質問を終ります。
○岡崎国務大臣 賠償と戦犯の問題というのは、これは直接関連がないと私は思いますので、いろいろ新聞の報道等は見ておりますが、今特にこれについては静観をしていたいと思います。賠償の方につきましても私自身でここで額がどうであるということは差控えますが、日本としてはできるだけのことをいたすつもりでいるのであつて、その誠意については将来了解せられるものと私は信じております。
 沈船の引揚げの方は、これは賠償問題が片づかなくてもその間にやろうというのが元来趣旨でありますから、賠償の問題全体と関連なく進み得るものと思つております。そこでサルベージの会社等についての御意見でありますが、これは外務省としてもその点は十分注意を払いますが、こういう問題については外務省に専門的知識を持つた者がおりませんから、事情、考え方をよく話しまして、運輸省において適当なものを選んでもらう、こういうつもりでおります。
 奄美大島につきましては、換算率とおつしやつたが、換算率は三対一ということできまつている。ただ、どういうふうにしてこれを引きかえるかという問題がまだきまつておりません。二十日にやりたいと思つてやつておりますが、このB円と円とを引きかえるという問題だけが今残つておりまして、これについては、大蔵省等の意見もありますので、できるだけ二十日にやりたいつもりでおりますが、まだ最終的にきまつておりません。
○岡田(勢)委員 関連して外務大臣にお尋ねいたします。三項目にわけて御質問申し上げます。インドネシアとの賠償関係の総額の問題が決定されたかのようにきようの日本タイムスに載つているが、それは内定でありましようか、大体の了解が相互に成立したのでありますか、あるいは総額の金額の問題についての了解がついたのか、お構いなければ詳しく御発表を願いたいと思います。
 第二の問題はインドネシアの役務賠償をいたします地域でありますが、これはおそらくスマトラからセレベスに至る間であろうと思いますが、チモール島海域は入つておりましようか、あるいは元の蘭領ニユーギニアが入るのでありますか、そういうようなことをお尋ねしたい。
 第三点は、オーストラリアの政府が最近アラフラ海あるいは大陸だなと申します海域について、日本人の真珠貝採取に対して退去命令を出されたかあるいは指令が出されたことで、日本の採取船たちは総引揚げをやるというようなことを聞いているのでありますが、具体的にこの濠州政府はこれらの排斥方策を講じようとしておりますかどうか、これに対して外務省とせられましては、どういう態度でこの問題の交渉をされますか、あるいは将来されるつもりであるか。もともと大戦ずつと以前から日本人の既得権益になつておりましたところのアラフラ海大陸だな方面の真珠貝採取が、今後自由にやれなくなるのかどうかということ、それらの点について、なるべく詳しい御説明を願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 インドネシアについて、賠償の額等について了解がてきたというような事実は全然ございません。何か間違いだろうと思います。ただ中間賠償として、沈船引揚げの協定は、ごく最近に調印ができるはずであります。その沈船の引揚げにつきまして、私は詳しく場所は知りませんが、インドネシアの領海内のものであることはもちろんでありますが、その中でこれからよく調べなければ、つまり引揚げの費用が多くて、スクラツプがあまり少くて引合わないというものは引揚げないつもりであります。ただ航路の障害になつておるものは、これはスクラツプのいかんにかかわらず引揚げねければならぬものもありましようが、こういうことを一々協定して行くわけであります。これはごく最近でき上ると思います。
 それから濠州の問題につきましては、濠州政府との話合いが決裂というか、話合いがつきませんでしたので、濠州の主張と日本の主張は、今般御承知のように国際司法裁判所に付議して、この決定を仰ぐ、こういうことにしております。その間は暫定的に、決定ができるまでの暫定期間をどうするか。ということを、濠州政府と話合いをしなければならぬ、これは今やりつつあります。今度行きましたものは、予定の採取量を得て帰つて来るはずでありますが、来年の分はどうするか。これももちろん濠州側でも一定の区域は日本側が来てもいいが、ある区域は来ては困るという意見がありますので、これをどういうふうに調整するか。来年一ぱいもかかれば、国際司法裁判所の判決もできて来ると思いますので、来年の分については、少くとも中間的な暫定措置を、濠州政府と話合わなければならぬ、こう考えて今やつております。
○岡田(勢)委員 ちよつと一言だけ…。採取船が総引揚げをやつたことは事実でございますか。それから同時に、この採取しましたものを、日本に帰りまして陸揚げが済んだら、あと引続いて出られます見通しでありますか、出られない見通しでありますか。
○岡崎国務大臣 総引揚げなんということは聞いておりません。あれはしかし一定の時期がございますので、すぐに出て行くと私は考えておらない。それまでに暫定的措置を講じて、この次の船が出られることはもちろんでありますが、出て予定の採取量が取れるような方法を講じたいと思つて話合いをいたしておる最中であります。
○上塚委員長 帆足計君。
○帆足委員 昨今の日本の貿易がたいへん不振でありますことは、これは国際的にも一般に不景気の前兆が強くなつておるような状況でありまして、国際連合の統計を見ますと、日本の貿易は戦前の三〇%、しかるに世界の水準は一三六というようなことで、輸出非常体制をしいてよいくらい、国際収支の問題は緊迫を告げておるのでございます。ただいまの外交は、やはり経済外交といつてよいくらい経済が重要でございますから、輸出振興に対して一段の御努力を願いたいのでありますが、幸いにして貿易の条件であります国際情勢は、多少平和への曙光が強くなつて参りまして、特に原爆から水爆に移り、最近は航空機は音響速度の二倍を越えまして、香港から日本まで一時間で来られるくらいの発達を示しつつある状況でありまして、チヤーチルの言うこと、それから一昨日のアイゼンハウアー大統領の声明などは、歴史的、画期的な声明として十分検討し、尊重に値するものでないかと思つております。こういう状況でありますから、日本はこの平和の中において、貧しくても簡素で、そして清潔な生活、清潔な自立経済について、ぜひ心を砕くときであると思いますが、内外とも、また労使双方にわたつて、国民の自覚を必要とする重要なときであると思いますが、日本の貿易の一還として、どうしても東南アジア並びに北アジア、中国との貿易について一段と努力せねばならぬと思います。先日中国で経済使節団が協定を結んで帰りましたにつきましては、外務大臣からもこの実施については、大いに自由諸国との協調の範囲で協力するというお話がありまして、われわれは大いにこれを多とし期待しておるわけでありますが、さて西欧並ということになりますと、まだ政府当局の施策御熱心の度合いにおいて多少隔たりがあるように思います。そこで輸出制限の品目につきまして、西欧並にいたしますために一段の御努力を払われたいのです。たとえば今度自動車の輸出を認められましたが、しかし自動車の部品を輸出することは今差控えられております。部品を持つて行かずに自動車を輸出するということは、修理ができませんために――機械工業ではすべてサービスを条件にいたしておりますから、たいへん困つておる次第でございまして、至急こういうことを通産省と御一緒に御研究願いたいのでございます。また硫安の輸出や苛性ソーダの輸出も認められまして、硫安等は需給逼迫の今、春肥を控えておりますので非常な操作が必要でございましようが、これらでもキヤンセルされてしまいまして、西ヨーロツパのものをすぐ買われるということになりますと、むざむざ国際収支の緊迫したときに、開らん炭や塩を買う資金を失うわけでございますから、事情の許す範囲において、もう少し外務省当局においても積極的に御推進を願いたいのでございます。また硫安が出ませんと塩を買うことができない。現在自転車だけでも四万台からの発注を引受けて、一月中に送つてしまうことになつておるのでありますが、その見返りも塩でございます。硫安ができないばかりに塩の値段もきまらないというように、バーターでございますから相互に連関いたしておりますので、ひとつ経済局におきましては、西ヨーロツパ並ということでけつこうでございますから、積極的に御鞭撻、また政府当局にできることは御協力のほど願いたいと思います。別に書きましたものも差上げておきました。また議員連盟等で研究いたしたものも事務当局にお届けいたしておきましたから、大臣並びに関係官におきまして御善処方を要望いたしたいと存じます。
 私どもは今日の内外の状況のもとで、中共貿易だけで問題が解決するなどという安易なことを考えておるのではございません。日本は貿易国でございますから、アメリカとも西ヨーロツパとも、東南アジアとも――そのために外交というものがあるのでございますから、千々に心を砕かねばなりませんけれども、水爆の時代、超音航空機の時代になりまして、平和は来るという確信がますます持てるときでありますから、国内の生活を緊張さして、そうして倹約をして、そうして自立するための自覚を持たねばならぬ重要なときだと思います。その一環として、中国五億の民のおる市場から機械的に隔離されるということは忍びがたきことで、とうてい日本経済の自立は不可能でございますから、国際情勢が平和に向いましたのと相まつて格段の御努力を願いたいというわけでございます。
○岡崎国務大臣 御趣旨は承知いたしました。
○上塚委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 実はきようは少し時間をいただいて大臣からゆつくり最近の情勢についてお話を伺う予定でしたが、われわれの予定がはずれて、大臣の御都合で時間もありませんので、きようはアジアの問題に限つて関連してちよつとお尋ねいたします。
 実はせんだつて外交方針の演説に対しまして、共産陣営特に中央との不可侵条約あるいは通商条約なり漁業協定なりを結ぶことが、日本の今の外交上あるいは、経済一般上必要だということを強調してお尋ねをしたのですが、それに対しまして十分なるお答えをいただけなかつたので、きようはそれに対して少し具体的にそれを進めることのできない政府側の理由をお尋ねいたしたいと思います。
○岡崎国務大臣 どうも一ぺんに不可侵条約というのは私はよくわからないので、国交が回復してから後に条約を結ぶのがあたりまえだろうと思います。まだそこまで行つておりません。
○穗積委員 言うまでもなく、不可侵条約ということは当然両国間におきます講和条約がそれに付随するのです。従つてその批准手続等につきましては、これはいろいろ順序がありましようが、今申しましたように、特にアジアにおきます中共との関係は、先般来お互いに確認いたしましたように、日本の経済自立の条件として必須の条件になつて来ている。それをもつと有効適切にするためには、どういたしましても外交上全般にわたりまして日本と中国との間におきます友好状態を回復しなければならない。それに対しまして先般郭沫若がソ連に対して向う側に意思表示を現にしておるわけであります。従つてそれを目標としてこちら側からどういう誠意をもつてこれに当るのか、そのことをお尋ねしておるのであります。
○岡崎国務大臣 要するにサンフランシスコ条約とか安保条約に対してこれをやめなければいかぬというようなことは、一国の内政に干渉するようなことになりますから、こういうことはよくないことと思うし、また北京放送等が、何か日本に暴力革命でも扇動するようなことを言つておるのもこれもよろしくないし、中ソ不可侵条約の、日本をあらかじめ仮想敵国のように言つておる、これもどうも困る。これはいろいろな条件があるわけでありまして、まだそういうことを考える時期に来ていないと私は考えております。
○穗積委員 せんだつてのバーミユーダ会談におきまして欧州軍の問題が取上げられておつたわけです。これは言うまでもなく、アメリカの要請によりまして、他の二国が一応そのことを原則的には了承したわけです。続いてフランスの議会は欧州軍条約の批准について反対の決議をいたしております。また確実なる情報の報ずるところによりますと、ドイツ自身もソ連との間における不可侵条約を提案したい、こういう意向を持つておるのでありまして、言いかえるならば、米ソの間にはさまれました中間諸国はことごとく、あるいはかつての中国あるいは最近までの朝鮮のごとく、両者の間の冷戦の犠牲になることを避けることに主力を注いで外交の方針をとつていると見ていいと思うのです。そのときにアジアの情勢をながめますと、日本は朝鮮問題の次に戦争の危機に立たされる危険がありますが、もし政府に平和に対する熱意がここで言われるごとくあるとするならば、中共との関係、経済回復と並行して外交全般に対する友好関係を確立することが必要だ。そのとき今言われたようにサンフランシスコ条約の特に軍事条項だと思いますが、それを廃棄してもらいたいというようなこと、あるいはこちら側から言えば、中ソ友好条約を持つている以上は困難だというようなことはございましよう。これはお互いの行きがかりでございますから、従つてそれで動きがとれないということでは外交は一歩も前進しないので、そこが外交交渉であり、話合いだと私は思うのです。そういう点については向うからすでに先般貿易協定を友誼的に結んでくれただけでなしに、続いて今申しましたような外交全般に対しての友好関係を結ぶ意思表示をしておる。それをきつかけとして日本としてはそれに対して何らかの努力をすべきだと思うのです。ただそれに対して友好条約をたてにとり、あるいはまたサンフランシスコ条約を向うがやめてもらいたいと言うことが内政干渉であるというようなことを言つて拒否するなら、アメリカとの関係においても内政干渉にわたるようなことはいくらでも発言しております。ですからそういうことは向う側の外交上の希望であつてお互い敵対的な態度あるいはまた条約はやめようじやないか、こういうことを言つているのに対しては、私は何ら内政干渉でもなければ、敵意でもない、あるいは謀略でもないと思うのです。終戦以来蒋介石にいたしましても、あるいは毛沢東の指揮いたします八路軍にいたしましても、日本に対して何らの報復的残虐行為はやつていない。終戦当時から日本との友好提携ということを明らかに宣言いたしております。そういうときにそういう言いがかりをつけて、これに対して協力しないということに対しましては、われわれはなはだ心外と思うわけでございます。その点いくらお尋ねいたしましても、今の大臣のお答えでは納得できない。もう少し確固たる理由を明らかにしていただきたいと思うのです。
○岡崎国務大臣 お説は承つておきますが、どうも私と穗積君とは意見が違うようであります。また不可侵条約などについては、日ソ不可侵条約は昭和二十年の八月十日にえらい苦い経験を持つておりまして、共産国との不可侵条約についてはもう懲り懲りしている。どうぞ穗積君が責任者になつたときはそういうことをお願いいたしたいと思います。私はどうも意見が違うようであります。
○穗積委員 はなはだ誠意のない御答弁でございまして、これはお互いに問題を討論によつて解決しようという努力を否認したものだと思う。私ははなはだ遺憾に存じます。たとえば国際情勢に対する認識やあるいは政策において違いがありましても、もう少し熱意を持つて討議すべきであると思うのです時間がありませんからこれでやめますが、一点明らかにいたしておきたいのは、保守党の諸君が共産陣営との話合をいたしますときに、常にすぐ、ソ連が不可侵条約を破つて、満州に侵入したではないかと言つて、それが何べんでも繰返され、一般国民をその方向に持つて行くことを引ずりもどうしていると思うのですが、実は大臣も御承知の通り、ソ連が満州へ入りましたときは、実は不可侵条約を廃棄したというのは形の上ではそうでありますが、実際はもうすでに七月中旬からアメリカとの関係で無条件降伏までは行きませんが、天皇制問題を中心にして降伏をするという交渉をしておつた。八月十五日まで知らぬでおつたのは日本国民だけでありまして、国際間において日本はもう敗北をする意思があるのだということになりますれば、七月下旬から明らかに国際関係において日本はみずからの存在を否定している。従つてソ連のアジア政策といたしましては、日本自身がアメリカと降伏の交渉をしておつて、ほとんど妥結の見込みがついたということになりますれば、あとはアジアにおけるアメリカとの関係をどう処理するかということである。そういう政治工作に入るのは当然であります。従つて形式の上では不可侵条約を無視したということは、明らかにその手続上あるいはその態度において不十分なものはありますが、あれは何も日本をやつつけるというのではない。日本がまだ英米との関係において戦う意思があれば、そういう問題は起きなかつたということ。みずから放棄いたしましたから、そこでアメリカとのアジアにおける外交政策上どうしても発言権を確保するために入る。従つて満州に入りましたのは、日本侵略ということではなく、アメリカとの外交政策上入つた、こう解釈すべきだと思う。それを何も知らない国民を利用されまして、無理やりにあそこへ入つて来たというようなことを、今後共産諸国との国交問題に対しまして常にそれを言いがかりにして交渉を進められるということは、かつての東条さんの反共運動と何ら選ぶところがないとわれわれは思うのです。それに対してもう一度お答えを願いたいと思います。
○岡崎国務大臣 穗積君のお話を聞いていると、私は驚き入つたお説を拝聴するものだといわざるを得ないのです。これはもう国民のだれに聞かしても穗積君の御意見が強弁にすぎないということは私は明らかなことだと思う。特に私の意見を申し上げる必要はないと思います。
○上塚委員長 次は神近市子君。残り時間が八分ですからそのつもりで御質問を願います。
○神近委員 私はアイゼンハウアーのバーミユーダ会談後の国連における演説について、ちよつと外務省のお考えをお尋ねしたいと思います。あの演説は大統領が就任後行われました演説の中で、内容を拝見しましても非常に強力にひとつの方向を打出してあるというふうに私どもは感じるのでございますが、その点では大体放射能兵器の資材管理ということに重点が置かれていたのではないかと思います。これは英仏の側からの支持を十分得たとお考えになつておりますか、ちよつとその点をお聞きいたします。
○岡崎国務大臣 その点、私知りませんが、おそらく英仏側も賛成したものと信じております。
○神近委員 私もいろいろのヨーロツパ側の新聞の反応をうかがいますと、それがはつきりすると思うのですけれど、放射能兵器資材の管理ということは、アメリカの共産圏に対する態度の変化というようなものとつなぎ合して考えれられると思いますけれども、その点で大臣はどういうふうにごらんになつておりましようか。
○岡崎国務大臣 アメリカ側は御承知のようにバーナード・バルークという人を初めに委員長にしまして原子核とかその他の兵器、武器につきまして何らかの国際管理をやろうという方針でずつと来ておりましたが、ソ連側の受入れるところでなかつた、それは国際委員会が行つてどこの国でもかまわずに入れて約束を破らないようにするという点で、ソ連側と話がつかなかつたように思います。そこで今度のは原子兵器を管理するというのではなくして、各国が自国の防衛のために必要なものは持つていてもいいが、その余りのウラニウムその他の原料を国際管理に移して、あまり大げさなものができないようにしようじやないかという一つの別個の提案でありますが、趣旨はやはり原子戦争等を回避しようという前々からの方針のその方法を、ソ連側にも受入れやすいような形で出そうと試みたものだと思います。
○神近委員 それできのうのソ連代表のそれに対する回答めいたものでは、これを兵器の禁止まで持つて行かなくちやならないじやないかということを言つていたと思うのです。これは側面からの消息通という人たちの考え方によれば、一応そういう回答は打出すにしても、徐々にそれが緩和されて、あるいはアメリカの提案が受入れられるのではないかというようなことが出ていたようでございますけれど、その可能性はあるとお考えでございましようか。
○岡崎国務大臣 どうも私には大分離れておりますので、可能性があるかどうかというところには判断ができません。あればいいと思つておりますけれども……。
○神近委員 それにしましても、アメリカ側がああいう形で――内政の関係でもアメリカではあの演説には非常に味方をしてるような通信が、新聞の論調などで見ても入つていたと思います。それによりますとどうしても考えられることは、冷戦の緩和ということが英仏側から要望されて、そうしてアメリカも今までの強硬態度をかえなければならないというところに来たというふうには考えられないでしようか。
○岡崎国務大臣 アメリカもいろいろ考えてはいるでしようが、原子兵器の管理ということは、国際連合が始まつて間もなくアメリカが唱え出したことでありまして、これは終始一貫してやつていつことであります。これは何とかして戦争の武器にしないで平和的な建設の用に使いたい、これは一貫した方針でありまして、それを何とかしてソ連側にも受入れられるような形で持出したいというので、方法がときによつて違いましようけれども、この考え方は何ら急に今始まつたことじやないと思います。
○神近委員 今度の演説が――今までのアイゼンハウアー就任以来いろいろと、この間のガツトの問題などでも、防衛の問題でも、前の政府のやり方を継承しなくちやならない、自分たちの考えを立てて協議することができないというアメリカの事情が出ておりましたけれども、この問題でもやはり同じだと思うのであります。防御の問題あるいは軍備の問題、原子爆弾の問題というようなものも初めて強力に打出されたアイゼンハウアー政府の考え方ではないか。そういうふうなことを考えますと、アメリカの今の動向というものは、世界の全部にほとんど関係あるのでございますから、大いにわれわれの防衛の問題などいろいろからんで来るものが多いと思います。それでこの次の委員会あたりまでにどうかもう少し立ち入つた御説明を伺うことがきるように御研究願いたい、これが一つでございます。
 それからさつき福田委員のお扱いになりました朝鮮の問題に少し関連してきまして、そうして私の考え方も経済、外務あるいは防衛、こういうような大事なチーム・ワークが行われなければならないということに関連しております。私が伺いたいことは、この間木村長官が対馬、五島に行かれまして非常に勇壮な閲兵と申しますか、視察と申しますか、そういうことをなすつたのでございますけれども、ああいうふうな行動あるいは視察というようなことは、大体閣僚会議の間の御了解のもとに行われるのでしようか、独立した庁の長官として単独に行われるものですか、それをちよつと伺いたいと思います。
○岡崎国務大臣 これは事態によりまして違うので、大体所管事項についてのことは所管大臣がやられるのが当然でありますから、出かけられることはわれわれも承知しておりましたが、特に相談というか閣議の了解を得るというようなことはなかつたのであります。
○神近委員 それであのときに対馬で海軍マーチか何かを吹奏されて非常な大歓迎を受けて、木村長官は生涯の栄誉だというようなことをお話になつている、それから五島に行きまして五島では実弾射撃の演習が行われている。こういうことは私ども国民として隣の国となるべく早く穏やかに話がつくようにということを望んでいたわけですけれども、そのことが韓国の国民あるいは大統領に非常にいろいろな問題を起して、日本は不穏な強硬態度に出るのだというようなことを示唆したということに受取られて、いろいろ動揺しているというような通信が入つておりますけれでも、外務大臣としてあれはどういうふうに行き過ぎというふうにお考えになるのでしようか、あれは必要であつたというふうにお考えになるのでしようか。
○岡崎国務大臣 私も朝鮮との話は円満にかつ平和的に話したいという強い希望を持つておりますから、その点では御意見は一致しておりますが、木村長官が保安庁長官として法律に定められてある範囲内の行動をされることは、何ら日韓交渉とは関係ないのであります。またこんなことを言うのはよくはありますまいが、実は韓国側はもつといろいろなことを盛んに言つておるのでありますから、別段これは日韓交渉にどうこうということはない。国内的の保安庁長官としての仕事であると思つております。
○上塚委員長 神近さん、もう時間が経過しましたから……。
○神近委員 もう一つだけ。私はさつきの福田委員の御発言にその点でちよつと共鳴を感じたのです。チーム・ワークということがあまりうまく行つていない、たとえば日韓会談をうまくやりたいということは外務省では念願していらつしやる、そこに木村長官のような非常に男らしさを尊重する人が飛び込んで来て、そうしてあまりその会談にはプラスにならないような行動をおとりになる、そういうふうなところに私は福田委員の御不満もあつたのではないか思います。このことにつきまして私はもう少し質問がございますけれども、時間切れでございますから、この次にもう一度いろいろ御教示願いたいと思います。
○上塚委員長 次は戸叶里子君。
○戸叶委員 先ごろ池田・ロバートソン会談についていろいろと問題になりましたが、私どもはいまだ池田特使の資格問題に納得いたしておりません。しかしその問題の追究は次の機会に譲るといたしましても、ここで思い出されますことは、戦争中にルーズヴエルト大統領がハリー・ホプキンスという人を各国につかわして、アンオフイシヤルの形でいろいろなことをとりきめられた例がございますが、おそらく池田さんもその例にならつたものではないかと思います。アメリカ側もそういう考え方で池田さんを迎えられたのではないかと思いますが、その点の外務大臣のお考えを承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 総理大臣の個人的の特使というようなことは、ハリー・ホプキンスの例もありましたが、その前にもしばしばあることでございます。特に異例というほどのことでもないと思いますから、アメリカ側もそれは普通のことと思つておつたでありましよう。ただそれには話をする権限がどこまであるかということは池田君も明らかにしておりまして、交渉じやないのだ、お互いに腹蔵ない意見の交換をやるのだということでありますから、その点も了解しております。
○戸叶委員 非公式という形でいらしていながら、池田さんがあちらへいらつしやいましてから元の保安庁担当主計の村上さんとか、あるいは鈴木財務官というような官吏の方を呼び寄せたということも聞いておりますが、それはどういう資格で呼び寄せられたのであるかを承りたい。
○岡崎国務大臣 私は池田君が呼び寄せたということは承知しておりません。いろいろの人が行つておりますが、それは役所々々の都合でもつて出張させたものもありましよう。それを池田君が向うでもつて意見を聞いたり参考にしたりすることはございましようけれども、池田君が別に呼び寄せたということは聞いておりません。
○戸叶委員 その問題は、あるいは岡崎さんの御存じないことか、あるいは知つていてそうおつしやるのかどうかわかりませんが、私はそのように聞いております。しかしそのことをさらに追究してもしかたがありませんのでいたしませんが、そこで、あの問題になりましたところの新木通告の問題です。東京会談をするということを、政府が認めただけだ、こういう御答弁でございましたが、その問題の東京会談というのは一体いつごろから開始をなさるのでしようか。
○岡崎国務大臣 MSAの中の小麦の話などはもう始めております。それから先ほど申した通り、MSAの実質的な援助の問題はまだやつておりません。ガリオア等の問題はまだやつておりません。いつやるかはつきりきまりませんが、援助の問題についてはこちらの計画ができますれば話をしようと思つております。
○戸叶委員 そうするとそのときにきめられた東京会談というものは、もうすでに始つた、こういうふうに了承してよいかどうか。もう一点は、東京会談の内容は、池田・ロバートソン会談での内容に沿うたものがなされるかどうか、この点も承りたい。
○岡崎国務大臣 東京会談は一部始まつております。今言つたように小麦の問題は話をしております。内容は、コミユニケに現われているところでは、内容というほどのものはありません。従つて池田君の話、腹蔵ない先方の意見を聞いて来たのですから、これはもちろん参考にしますが、東京会談は政府の考えでもつてやるのであります。
○戸叶委員 たとえば池田さんが特別のことをきめて来られなかつたとおつしやいますけれども、いろいろ条項にわたつて、話合いをなすつたと思うのです。その話合いをなすつた条項に沿うて、あるいはそういう条項を討議なされようとするのかどうか、その点を承りたい。
○岡崎国務大臣 それは先ほども申しましたが、MSAの援助の問題、小麦の買入れの問題、それからガリオア、イロアの処理の問題、こういう問題について話をするつもりでおります。
○戸叶委員 そうすると、今後においても防衛問題もすでに大体話合いは済んだものとして進められるか。あるいはまた東京会談で防衛問題も取上げられるかどうかを承りたい。
○岡崎国務大臣 防衛の計画は、先ほど申した通り、この時期と能様は日本政府がきめるということになつておりますから、日本政府できめます。そしてそれに基いてどれだけの援助が来るかという交渉をいたします。
○戸叶委員 そこでただいま外務大臣がおつしやいましたすでに進められております小麦の問題でございますが、私が先ほど大臣の答弁を伺つておりましたときに、あるいはよく理解できなかつたのかもしれませんが、大臣の御答弁によりますと、MSAの援助を受ける場合には、本協定を結んで、それに基いて買入れ協定を結び、それに基いて買入れしたものを円で払うか、どの部分をどう使うかという使途の協定、こういうふうにおつしやいました。そうするとそれは本協定と買入れ協定と使途の協定というふうに三つの協定になるわけでございましようか。もう一度念のために伺いたい。
○岡崎国務大臣 それは先ほど申した通り、まだそこまで行つてないからそういうふうになるかどうかは言えませんが、そういうふうになる可能性があるこういうことを申したのであります。
○戸叶委員 そこで本協定、それから買入れ協定の問題ですが、もしも買入れ協定を結んだといたしましたならば、これは巷間伝わつておるところによると、あるいはまた池田特使からのお話によりますと、大体四千万ドル程度のものを日本が買い入れて、それは円で買うのですから、その円はアメリカ側が自由に使う、これはアメリカ側が特需関係に使うのだ、あとの千万ドルはグラントの形、贈与の形で、いわゆるほかの国のECA、経済援助に相当するものであるということを、この前池田特使がお話になりましたが、そういうふうに了承してよいわけでございますか。
○岡崎国務大臣 なるべくそうしたいと思つて交渉いたしております。
○戸叶委員 そこでECAの問題ですけれども、この千万ドルの経済援助というものが、ほかの国におきましては相当大幅に使うことを許されております。日本の場合には特定の軍需工場なり何なりに使うというふうに、限定されるおそれがあるのではないかと思いますが、その点の見通しのほどを承りたいと思います。
○岡崎国務大臣 これはただいま交渉中でありまして、まだ結論まで出ておりませんが、今軍需工場と称せられるものは、実にたくさん注文があつても受け切れないような状況にありますので、これを拡張することは必要であろうと思つております。そういう方面に使いたいという気持も持つておりますが、まだ決定しておりません。
○戸叶委員 もしもこの一千万ドルがそのような日米両者の話合いで、一応特定の関係の産業にのみきめられるということになりましたならば――もしも特定の工場にのみ使用されるということにきめられたならば、もつと大幅にそれを使わしてもらいたい、こういうふうな交渉をお進めになる意思がおありになるかどうか。
○岡崎国務大臣 これは元来MSAの一部でありますから、その点をお考えにならないといけない。MSAというのは、軍事援助を主たるものといたしております。それの残存部分にECAとかなんとかいうものが入つております。従つて軍需産業等にこれを使うことが適当であろうと思つております。
○戸叶委員 ところがほかの国のECAの例を見ますと、私どもが考えて軍需産業というふうに限られてない方面にまで使われております。たとえばその国の合理化のために工作機械がほしいと思えば、それが買えるというふうにまで使われておりますけれども、日本の場合には、そういうことが許されないのではないか、このように私どもは危惧の念を抱くものでございます。この点について池田特使に伺いましたところが、今は一応軍需産業と限られるかもしれないが、将来のほかの国並の経済援助になる突破口であるというふなお答えでございましたが、外務大臣のお考えのほどを承りたい。また将来そういうふうな可能性があり得るかどうかというような見通しのほども承りたい。
○岡崎国務大臣 ECAは御承知のように向うではやめてしまいまして、その残りがMSAに吸収されておりますから、現存のMSAでは本来のMSAの形になつておるのであります。その残存部分はだんだん減つて行くわけであります。しかしわれわれとしては、池田君も言われましたように、できるだけこれを利用して経済援助の方に持つて行ければけつこうだと思つて、話合いをするつもりであります。できるかできないかはわかりません。
○戸叶委員 今のところはできない方の見通しが多いんじやないでしようか、その辺を承りたい。
○岡崎国務大臣 まだ交渉の途中でありまして、そう悲観的に考えなくてもいいだろうと思つております。
○戸叶委員 このECAは元来デイフエンス・サポートという意味のサポートと思いますけれども、それではデイフエンスというものの範囲を、外務大臣はどの程度までお置きになるかを参考までに承りたい。
○岡崎国務大臣 デイフエンスというのは国の守りであります。
○戸叶委員 その程度のことは私もわかつておりますけれども、そのデイフエンス・サポートというものが、一体基幹産業にまで及ぶように了解してもいいのか悪いのか、その点を承りたい。
○岡崎国務大臣 言葉の意味から言えば、基幹産業に行かないものだ、たとえば水力電気とかそういうものには行かないものだと思います。
○戸叶委員 そうしますと、結局今の段階においてのMSAの協定、MSA援助というものは、どの面から考えてみましても、これは軍事援助一本だということしか私どもには考えられません。というのは、グラントの形で幾らか経済援助になるのではないかというふうに言われましたけれども、今のような御答弁を聞いておりますと、これは明らかにどの面から見ても軍事援助以外の何ものでもない、こういうふうにしか了解できないのですが、岡崎外務大臣はどう思われますか。たとえばグラントの面でもしもそのお金がいわゆる基幹産業の面にまで使われるならば、これは経済援助の意味を多少帯びるかもしれないけれども、そうでなくして軍需産業の援助にのみ日米の話合いで使わなければならないとするならば、これはどの面から見てもMSA協定全部が軍事援助以外の何ものでもない、経済援助は少しもないというふうにしか感ぜられません。その辺のお考えを承りたい。
○岡崎国務大臣 私は軍需産業に使われても、軍需産業もやはり経済活動の一部であつて、これは経済活動の一部じやないということは言えないと思います。従つて広い意味の経済援助ということはできると思いますが、できればそれ以上にさらにほかの産業にも使えるように将来はいたしたい、こう考えております。
○戸叶委員 軍需産業も経済援助の一部であるというふうにおつしやいましたが、なるほどそうおつしやればそうかもしれませんが、私どもから考えるならば、それは一部の特殊の産業を助けるだけであつて、国民の生活に潤いをもたらすというふうに考えられない面から見ましても、これは経済援助でないというふうにしか考えられません。しかし今岡崎外務大臣が、なるべくほんとうの意味の経済援助の内容を持つものにしたいというようなお考えをお持ちになつておりますので、その面を努力なされるだろう、このよううに了承いたします。私はまだほかに質問がございますが、あとに質問者が残つておりますので、今日はこの程度で質問を打切りたいと思います。
○上塚委員長 次は西尾末廣君。
○西尾委員 先ほど並木君の御質問に対して、外務大臣はフイリピンの戦犯釈放と賠償問題の交渉は無関係であるということを言われましたが、どうもこれは了解できないのでありますが、やはりそうお考えでしようか。
○岡崎国務大臣 戦犯の解決は、賠償問題ができなければだめだというような意見もずいぶん前にあつたのでありますが、完全ではないにしても、賠償問題解決の前にキリノ大統領は御承知のような措置をとられたのであります。必ずしも賠償問題と関連があるべきでない。また本質的にいえば違う問題でありますから、私どもはそう考えております。
○西尾委員 これを形式論から言いあるいは本質論から言えば、これは別なものであります。しかし外交というものは、本質論とかあるいは形式論でやつてもらつては困るのであります。相手方がどう感じているであろうか、この問題の解決のためにはいかなる手順をふんだらよかろうかということは、十分な考慮を払わなければならないと思うのであります。そこに外交のうまさとまずさがあるのであります。そういう意味から見ますならば、フイリピンの賠償の問題と戦犯釈放の問題は重大な関係があると私は思うのですが、いかがでしようか。
○岡崎国務大臣 私は今申した通り、その前に現に戦犯の半分は釈放され、半分は釈放はされなかつたけれども、刑期をかえられて日本に帰つているという例があるのですから、私はなるべくそういうふうに考えたくないし、またこれは一種の人道上の問題でもありますので、先方の理解を得るように努めるのが当然であろう。こう考えております。
○西尾委員 先方の理解を得るということでありますが、先方もいろいろ国内の国民感情というものも尊重しなければならぬでありましようし、先方の政治的関係ということも、これは考えなければならぬのであります。そういうように考えてみますと、この問題はあなたのように単純な考え方をしておりますならば、これは非常な失敗に終るのじやないかと思うのであります。第一、私の考えるところによりますならば、賠償問題をこの際取上げたというところにも、非常な失敗があるのじやないかと思うのであります。と申しますのは先般の選挙によりまして、ナシヨナリスタのマグサイサイが大統領になつたのでありまして、来年の初めからキリノ大統領といわゆる政権の移譲が行われるのであります。キリノ大統領は、現在形式的にはなおフイリピンを代表しておる大統領ではありますけれども、政治の実質的にはもう過去のものになつておるのであります。それから新しいマグサイサイの政権といたしましては、やはり日本との賠償問題の解決ということは、自分の手でやりたいと考えているのではないか。ある程度向うの立場も考えてやる、向うにもある程度花を持たせるというようなこともやはり外交交渉の上には考慮しなければならぬのではないかと思うのであります。そういう向うの国内情勢などについても十分な考慮を払わないで、賠償の問題と戦犯の問題とは別だと考えるような、そういう形式的な考えがあつたのでは、私どもは成立しないのではないかと思うのであります。私ははなはだ悲観的でありますが、この賠償問題は大統領がかわつた後でなければ、決して妥結するものでないと考えております。そこらの考慮は一体どういうふうに払つておられるのでしようか。
○岡崎国務大臣 これは私が向うへ行きまして、政府側の人たちとももちろん会いましたが、政府側の人たちの理解を得まして、ナシヨナリスタの領袖とも会つて、いろいろ意見を交換したのであります。その結果、現在ある十九人委員会も超党派的で、実は今の野党、今度のナシヨナリスタの人たちが大部分を占めており、超党派的に取扱うということになつている。またそういうような関係もあつて、提出の時期等にもいろいろ意見の交換をいたしました結果、一番適当な時期は大体最近の時期である。こういうふうに理解をいたしまして、また先方もそれを了解したと考えております。
○西尾委員 どうもそこらが政治的感覚の違いだと思うのでありますが、形の上では、いずれはキリノからマグサイサイに移りかわるのでありますから、超党派的にやつているということは間違いないのでしよう。しかしそれを政治的感覚で判断しますと、そうではあるけれども、やはり新政権がこの問題を自分の手で解決したいと考えているであろうということまで、やはり考慮を払つて外交交渉を進めないとうまく行かぬのじやないか、こう思うのであります。おそらくはそういう考慮が単純に――こう言つては失礼ですけれども、単純に考え過ぎる結果として、釈放の問題は賠償とは別だという取扱いをしたために、あるいは賠償の問題はまだ時期でないとして、正式にこつちから切り出すことは来年に延ばしておいて、そうして単純に戦犯釈放だけを、正月のもちは家族とともに食べさすようにしてもらいたいという人道上の問題で――向うがほかの問題とからませたくないと思つても、国民感情等から見てからんで来るのであります、現に外電の報ずるところでは、からんで来ておるのであります。そういうことをからませないようにこれを扱えば、あるいはひよつとすると戦犯は家族とともにお正月のもちが食べられるようになつたのではないかという可能性を私は信ずるのであります。これは今後のことになるのでありますけれども、まことに私はこれは岡崎さんの失敗でなかつたか。今後こういう点についてはもつと深い政治的考慮を払つてもらいたいと思うのであります。最後に御意見があれば承りたいと思います。私はこれで終ります。
○岡崎国務大臣 実は私どもは逆な考えを持つているのであります。これは向うに行つていろいろ話もしましたけれども、賠償に対するエイドメモアールの返事も出せないようでは、とうてい戦犯のことをさらに考えるということは、やはり困難であろうという事情を私としては見て取つて来たのであります。お考えとは実は逆な方面に考えておるのであります。これがいいか悪いかは別問題であります。私としてもそう単純に考えてやつているというわけでもないのであります。
○西尾委員 私は実は賠償の問題につきましても、まだ時間が二三分あるようですから申し上げますが、金額に少しこだわり過ぎているのではないか、金額はもう少し多くなつても、事実上それが日本のマーケツトを開拓するということになれば、差引勘定その方が日本の国家としては利益になるのではないか、私はそういうような考え方をしているのでありまして、そういうように見て来ますと、これは私はまた悲観的なのですけれども、今外務大臣が考えられているように、今のこちらから持つて行けるような案で向うがのめそうだということであるならば、あの問題を提案することによつて、日本はそこまで誠意があるということで、戦犯釈放の問題についてもいい結果が来るわけでありますが、あの日本の案が向うにのみにくいものであるとすれば、やはり戦犯問題に悪い結果が来る。私はのみにくいものであろうという前提に立つて、今のようなことを申し上げたのでありますが、話がそこまで行きましたから一応伺つておきたいのでありますが、金額の面にばかり――と言つては言い過ぎかもしれませんが、こだわらないで、もつとやはり広い視野から、つまり日本の国際的なマーケツトを開拓するというような観点からも、もつと弾力性のある賠償問題の交渉をせられる御意思があるかどうか伺つておきたいのであります。
○岡崎国務大臣 その点は私もまつたく同感なのでありまして、要するに全部の差引勘定の問題ですから、賠償の金額に特にこだわる必要はないと思うので、その趣旨いろいろ努力もして来たのでありますけれども、一方財政的に見ますと、なかなかそうは行かない。ちようど金があれば夏の間に冬のしたくをすつかり整えておくこともできるけれども、ないとどうしても冬になつてぎりぎりにならなければできない、高いものを買わなければならぬとわかつていながら、そうしなければならぬような事情もあるようなわけで、それは最終的な面で見て、大きな金額でも決して日本にとつてそんな破滅的なことにならぬといたしましても、今の財政の建前からいつて、それだけの金が出なければどうにもならぬということにもなるのでありまして、これでなかなかやりくりのむずかしい現在でありますから、この点はどうも私の考え通りには国内的の財政上からうまく行かないということは認めざるを得ないと思います。
○上塚委員長 佐々木盛雄君。五分ぐらいでひとつ……。
○佐々木(盛)委員 委員長の約束もありますし、大臣もお忙しいようですから、簡単に一点だけ伺つておきます。それは引揚げ問題に関連したことでありますが、日本とソ連との間は、未だ正式国交は回復しておりませんけれども、幸いにして赤十字社であるとか、その他の友好団体を通じて、引揚げ問題が円満に進捗いたしておりますことにつきましては、われわれもまことに喜ばしく思つているわけであります。つきまして非常に気にかかりますことは、今もつて帰つて来ない相当多数の残留同胞が中共地区にいることであります。従つて中共地区に残留する未帰還者の引揚げを、どういうふうにして促進するかということで、留守家族たちは日夜心を非常に悩ましておるわけでありますが、外務省の方でいろいろ説はあるようでありますが、一体どのくらいの者が残つておるというふうにお考えになつておるかという点と、もう一つは日本赤十字社の方で、今まで中共地区の引揚げの問題にいろいろ努力をしてくれた中共の李徳全さんなど紅十字等の団体の代表の方々を日本に招待をして、そうしてその労をねぎらう、かたがた引揚げ問題を促進いたしたい、こういうことですでに日赤を通じて外務省に入国に対する承認を与えてもらうように要請をいたしておるということでありますが、私はもとより日本と中共との間に正式国交がない今日でありまして、まことに微妙な関係もあり、とりわけ李徳全氏は中共政府の衛生大臣かをいたしておるようなわけでもありますし、微妙な関係もあるかもわかりませんが、しかしながら日本と中共との間には正式な外交ルートがないだけに、できますならば何らかのルートを通して引揚げ問題の解決をはからなければならぬという必要にも迫られておるわけでありますから、政府があまりむずかしく、かみしもを着て招待をするというわけではありませんから、これを招待することを認めたらどうかと私は考えるわけであります。先般も国会議員の代表が北京を訪問いたしました際にも李徳全氏自身が、今まで引揚げ問題についてはずいぶん努力をして来たけれども――早い話がこの引揚げ問題やその他中共政府が正式に招聘して中共を訪問した日本人の数は数百人とかいうことでありますが、国会議員の数もわれわれの承知する限りにおきまして数十名の者があるわけであります。しかしながら日本においていまだかつて一人をも招待したことがないというようなことについて不満を述べておつたということでありますが、ここで政府が呼ぶわけではありませんから、日赤やあるいはその他の宗教団体、慈善団体ないしは友好団体等が招聘をするという場合におきましては、私はその引揚げ問題の円満な解決をはかる、またそれ以外になかなか道がないという現状に立つて、外務当局としては入国に対して承認を与えてしかるべきではないか、このように私は考えるわけでありますが、今申しました、どのくらいの者がおるだろうかということと、またその入国の承認を与える問題について、外務省はどのような考え方を持つておるか。もう申請をしてから大分日がたつておるようでありますが、どういうふうになさる御方針であるか、この点だけを承つておきたいと思います。
○岡崎国務大臣 残留者につきましての数は私どもには算術的なものしかわからない、その中のどれだけがなくなつておるか、どれだけが帰化しておるか、いろいろなことがありましようから、どうもはつきりした数字を申し上げることは私はできませんが、少くとも数千という数はおるであろう、こう思つております。そこでこれらの人々を一日も早く帰したいというのは、これはだれもかわらない気持でありますから、われわれもそれに向つてできるだけ努力をして行きたい、そこで今お話のようなことも一つの方法ではありましようが、これは島津社長が向うに行つてそういう話を直接されたので、この人の意見もよく聞いてみなければなりませんが、私どもは元来初めには、議員団が行かれるときにも、このお返しとして、向うの人をこちらに入れるということは、今の場合政府として好ましくないから、かかる条件ならばごめんをこうむるということをはつきり申したわけであります。従つてこの問題はいろいろ他にも関連するところがあるので、まださらに慎重に考慮して行きたい、こう思います。
○佐々木(盛)委員 いつごろその結論をお出しになるような御予定でございましようか、日本政府としていろいろ微妙な関係にあることも、私は国際的立場から了承するのです。それはそれとして、引揚げ問題の円満な解決をはかる上からいつて、日本政府が中共政府の要人を正式に招待するという問題ではなくして、国際的なそういう慈善団体、世界赤十字社、日本赤十字、そういつたものが向うの赤十字の代表である人を呼ぶわけでありますから――その赤十字の中共の代表が李徳全さんであつて、その方がたまたま中共政府の衛生大臣をしているだけのことでありますから、あまりそうこだわらないでも、招聘することに承認を与えても、そう大した問題はないじやないかというふうにも実はわれわれは考えるわけでありますが、私たちはこの引揚げ問題のすみやかな解決ということを念願いたしておりますので、そういう気持から申し上げるわけでありますが、重ねて承つておきたいのであります。あまりこれも荏苒日をむなしくすることもどうかと思いますので、大体承認を与えない方針なのか、与えたい方針で、そのために努力しておるのか、いつごろその結論を出すかというような点も、ひとつ承つておきたいと思います。
○岡崎国務大臣 これは私はその中共のそういう人を呼ばなければ、ほかの引揚げができないというりくつが実はよくわからないのであります。りくつばかり言つてしかられますけれども、向うは希望する者は今後帰す、こういうことを言つておられるから、希望する者は帰れるものと予想しておるのです。一方国民政府等は日本はどうも中共と貿易をやつたり、交通したりして、はなはだ心もとないので、あんなものに奄美大島や沖縄を返してしまつたら、防衛はどうなるかというようなことを議論をいたしておるような事情もありまして、いろいろ考えなければならぬ点があると思います。そこでいつということも申し上げられないと思います。いろいろ事情もよく考えて、この人を呼ばなければどうしても引揚げが今後だめなのか、こういうはつきりした結論であるならばこれはまた別ですけれども、慎重に考慮いたしたいと思つております。
○佐々木(盛)委員 たいへんくどいようですけれども、大体承認を与えないというような方針のようでございますが、そういうことが理由になつてただいま遅れているのでありますか、その点だけ……。
○岡崎国務大臣 別に与えないという方針をきめておるわけでもない、しかし与えるという方針をきめておるわけでもない、慎重に考慮したいと思つております。
○並木委員 私は佐藤法制局長官に当面しておる憲法問題を二つ、三つ質問いたしたいと思います。
 最近保安庁法の改正やあるいは三派で防衛の話合いをしておるとか、あるいは与党である自由党の中にも憲法改正の調査会をつくるとか、つくらないとか、いろいろ憲法問題がやかましくなつて来ております。
    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕
そこでまずお尋ねをいたしますが、憲法を改正するときの国民投票の手続に関する法律は、政府の手で立案されておると聞いておりますけれども、どうなつておりますか、今度の国会へ上程する運びになりますかどうか。
○佐藤政府委員 昨年の暮れでありましたか、ことしの初めでありましたか、たしか昨年の暮れであつたかと思いますが、憲法制度調査会か何かの調査会で憲法改正国民投票法案要綱というものをきめられまして、政府に答申をいただいております。それに従つての立案作業というものは、ある程度自治庁において進行しておるわけであります。ただこの次の国会に出すか出さないかというお尋ねになりますと、実はこの法案は憲法改正の直後に、すなわち昭和二十二年の五月あたりにつくつておけば非常によかつたと思うのでありますけれども、つい出しそびれてしまいまして、時期が妙なことになつてしまつたわけです。従いまして、よほどの必要が生じた際ということになりますかどうか、そういうようなにらみ合いの問題もあるものですから、政府としては次の国会に出すとか出さないとか、全然きめておらない次第であります。
○並木委員 次に陸軍、海軍、空軍の三軍の統帥権の問題でございます。三軍の統帥権については、現在の憲法下ではあるいは国会にあるのではないか、あるいはいな、それは総理大臣にあるのだ、あるいはまた現在の憲法ではその点がはつきりしておらないのだ、だから新たに規定を設けなければ、統帥権というものは出て来ないのだろうというように、説がいろいろあるようでございます。この際、三軍の統帥機関などの問題が出ておりますから、はつきり政府として、現憲法下において統帥権の所在は何人にあるのか、その点を解明していただきたいと思います。
○佐藤政府委員 統帥権という言葉自身、私あまり好みませんので、統率権という言葉でお答えをさせていただきますが、元の統帥権に当るような指揮権というものを、現在の憲法のもとで、かりに保安隊を自衛隊に直した場合にどこが持つことになるかというお尋ねだと思います。これについては、今のお話にもありましたように、そういう統率権というものの性格が何であるか、すなわち立法、司法、行政の、三権の外にあるもう一つの違う第四権のようなものだ、本来そういうものだという議論になりますと、話は現在の憲法にはもう乗つて来ないことだと思います。しかし私どもの考えておりますところでは、そういう指揮権、統率権というものは、やはり今の三つの権力の分立の中で分類すれば、広い意味の行政権に入ると見ざるを得ない、また見ることが正しいことだろうと思つております。それが正しいといたしますと、今の憲法の建前から、これはもう並木さんには釈迦に説法になりますけれども、行政権が内閣にあり、そして内閣は行政権の行使について国会に全責任を持つという仕組みの中にはまつて参りますから、やはり一応内閣の責任のもと、統率のもとということに立つのじやないか、そしてそれに関して国会に責任を負うという仕組みになるだろうと思つております。
○並木委員 よろしゆうございます。その点は要するに、内閣総理大臣にある、こういうことですね。
○佐藤政府委員 内閣の各大臣のだれにその事務を分担管理させるかということは、これはまた立案のときに考えられます。あるいはその自衛隊の長官に当る国務大臣ということも考えられるのです。今のお話のように総理大臣ということも考えられます。これはその立法政策の問題としてお考え願つてよろしいと思います。
○並木委員 次にお伺いいたしたいのは、徴兵制度の問題でございます。これも徴兵制度と言うと、今の筆法で行くと、長官はこの言葉をいやがるかもしれません。統帥権でさえも何だかびくびくしているようですから、徴兵制度なんて言うと、びつくりするかもしれませんが、私最近驚いたことに、案外志願制度なんかではだめだという声が多いのです。それは現在の保安隊を見ているせいかどうか知りませんが、要するに、三軍を整備して日本の防衛に当るのに、志願制度ではとても魂の入つた防衛隊というものはできつこない、やはり徴兵制度にして行かなければだめだ、義務制度にして行かなければだめだという声の多いことに驚いているわけです。私は徴兵制度なんということは夢にも考えませんでしたし、志願制度でなければいかぬと思うし、それは第一憲法の職業の自由に抵触して来るのである、こう考えておつたのです。そこでお伺いいたしますが、必ずしも憲法に抵触しないというような解釈が成り立つかどうか。これは三軍ともなれば職業とは別なんだ、職業の範疇からそれた別のものであるという解釈をもつて、憲法を改正しなくても徴兵制度というもの、義務制度というものをしくことができるのかどうかという点について、政府の権威ある見解をお尋ねしておきたいと思います。
○佐藤政府委員 ちよつとお言葉の末をつかまえるようでありますが、統帥権を私が統率権と申し上げたのは、深い意味で申し上げたのではないのであつて、第一統帥の帥は漢字制限に載つておりませんし、いわんやその関係から来る連想がいやなものですから、そんな単純な気持で申し上げたので、戦力なき軍隊とかいう深い連想を持つて申し上げたのではございませんから、お断りしておきます。
 徴兵は徴兵として私はお言葉通り承りますが、ただ今並木委員御自身夢にも考えておらぬというようなお言葉がございました通り、われわれ自身も実は夢にも考えておらないのでありまして、政府といたしまして別に現実当面の問題ということになつていない今日においては、あるいははずかしいことかもしれませんが、その点について研究もしておらず、結論も得ておらないということが率直なお答えであると思います。学説などわれわれ法律書生としての立場で見ておりますけれども、確かに現憲法下でもできるという説もあるようではありますが、大体の傾向としては、現憲法のもとではむずかしいという学説の方が、われわれの目に触れる範囲では多いのではないかということで、なかなかむずかしい問題だなという気持を持つておるわけであります。
○並木委員 その点はなお政府としても結論を出すように努めていただきたいと思います。いずれこれは問題になつて来る重要課題であると思います。ただいまのところでは、やはり憲法に抵触する、憲法違反の傾向が多いのじやないかというように――これは個人的でもけつこうですが、長官としてはそういうように考えておられますか。
○佐藤政府委員 全然まだそういう結論は得ておりません。申訳ありませんけれども、不勉強のゆえをもつて結論を得ておりません。
○並木委員 何だか言葉の奥には非常にむずかしい要素も含まれておるのじやないかと思います。職業選択の自由と徴兵制度との問題は、もう少し単純に結論が出るのじやないかと考えておつたのでありますが、やはりそんなにむずかしいものなんですか。
○佐藤政府委員 いろいろな意味で非常にむずかしいと考えております。
○並木委員 それでは次の質問をいたします。それは憲法九条の戦力とは何ぞやという問題であります。これも今までしばしば繰返された問題でありますが、先般の臨時国会を通じてやや具体的に戦力とは何かという答弁が政府の筋から出て来たようであります。たとえばある場合には、陸上部隊三十二万五千ができ上つたときにはそれはもはや戦力であるとか、あるいは米軍が撤退をして日本軍がこれにかわつた場合には、そのときには憲法九条の戦力になるのだというようないろいろな答弁があつたようであります。そこでこの際そういう答弁を統一する意味におきまして、法制長官に、はつきりと政府としては憲法九条の戦力とはこういう場合を言うという具体的の説明を加えていただきたい、こういう意味で御質問申し上げるわけであります。
○佐藤政府委員 実は非常にむずかしい問題なのであります。戦力の限界ということについては、御承知のようにこの憲法ができます際にも帝国議会でしきりに問題になりまして、金森国務大臣は当時、どのくらいになれば戦力になるということは、とうてい具体的に数字をあげてお答えすることはできないということを、はつきり答弁しておるということもございます。学者の本をひもといてみましても、積極的に戦力の限界はこうだという学説を書いておる本は、私の見た範囲では一冊もございません。ただ政府の言つておる戦力の限界は高い高いという御批判は皆さんなさつておりますが、さて御本人たちがどのくらいの限界を考えておるかということになると、全然目途のつけようがないというような事柄であると思つております。この間「世界」という雑誌に、宮澤俊義氏が座談会で戦力問題をしやべつているのが出ておりましたが、宮澤氏あたりも、その限界はちようど重い病人と軽い病人との境目みたいなものであつて、なかなかわからないのが当然である、法律の世界ではそういうことがたくさんあると言つておりました。またこの間は、例の火炎びんについて、あれは爆発はするけれども爆発物ではないという最高裁からの判例も出まして、なるほど同じような問題はほかの世界にもあるなと私は思つたわけであります。しかしそうかといつて全然これは目途はございませんといつて逃げるべき問題では決してないと思います。そこでかりにこういう程度はどうだというお言葉があれば、それは私どもとしてはかねて申し上げたこともあつたかと存じますけれども、たとえば今アメリカの三軍のごやつかいになつて日本を守つてもらつておる。かりにその陸海空を含めてのアメリカさん、その他よその国のごやつかいにならずに、日本が独自で日本を守れるような力を持つという段階になれば、これは自衛戦力ということになるでありましようから、そうなつたら戦力ということになるのじやありますまいかという見当は、これは申し上げてよろしいと思います。
○並木委員 陸上三十二万五千という場合はいかがでしよう。これはアメリカの方からも出ておる数字ですし、かりにそれは別としても、日本の方がまず二十五万から三十万くらい陸上部隊を整備すれば足りるというふうに考えて、計画なども論議されている今日ですからお尋ねするのですが、三十万前後といつたときになつたら、大体これは戦力と見てよろしいのじやないかと思うのです。いかがですか。
○佐藤政府委員 大体そういう軍事方面の学識というものは全然私にはございません。のみならず、今の人数だけをおあげになりましてもおかしなことですけれども、かりに竹やりをみな持つておる。竹やりを持つた人が三十二万ということがお話にならないということは申すまでもないことだろうと思いますから、やはり装備とかなんとかを総合勘案しなければならぬということになり、これは本来簡単に言えることではないという気が、いたします。従つて先ほど申し上げましたような、漠然たる目途ということしか言えないのではないかということでございます。
○並木委員 すると、現在のところ先ほど長官の答弁にありました、米軍が撤退をして日本軍がこれにかわつたときということが、一番具体的な例としては的確なものですか。そのほかに何か長官としてもう少し国民の前に、この標準ならばなおはつきりするだろうというものがあつたら、この際お尋ねしておきたいと思います。
○佐藤政府委員 今までの話の筋道を見ますとアメリカ軍がだんだん撤退して、こつちは漸増か増強か知りませんけれども、自主的の力を増して行くという話はたびたび出ておりますし、そういう筋道からたどつて参りますと、先ほど私が例に引きましたように、全然アメリカさんのごやつかいにならずにやれるという段階を想定するのが自然な形ではないか、適例ではないかと思つておつたのでありまして、それ以外に別に名案は持ち合しておりません。
○並木委員 それでは最後にもう一つだけお尋ねしておきたいと思います。それは私先ほど岡崎外務大臣にちよつと要望的な質問でございますけれども、ニクソン副大統領の演説を引用してお尋ねをした問題であります。それは十一月十九日に東京会館でニクソン・アメリカ副大統領が、日本を非武装化したのは失敗であつたと演説しております。そしてダレス長官は、二十四日の記者団会見でこの言明を支持しておるのです。そうしますと、ニクソン副大統領の正直さというものに対してはわれわれ敬意を表しますが、非常に重大な問題が出て来るわけなのです。憲法九条というものはまさしく占領軍の日本非武装化の線から出て来たものであつて、いかに形は国会において改正した憲法であるとはいいながらも、あの場合に憲法九条に対して否定的な立場というものはとれなかつたのじやないか。ごく一部の特殊な人たちならば別でありますけれども、日本の非武装化はポツダム宣言にもうたつてあります。そのポツダム宣言を降伏文書で日本は受諾しておるのでありまして、これはほんとうに日本の民化と並んでの至上命令、動かすべからざる占領政策であつたわけです。その根本にぐらつきが来たということは、私はたいへんな副大統領の言明であると思うのです。こういうふうに考えてみますと、憲法九条というものの効力に対して疑問を抱かざるを得なくなる。民法でも、錯誤あつた場合には取消すことができるようになつているはずです。この場合も従つて、私は形はとにかくとしても、実質的な憲法九条ができ上るまでのいきさつというものを考えました場合には、アメリカが失敗であつたと認めるならば、それは重大な錯誤があるのですから、この条項に限つては効力を失うのではないかと思うのです。効力を失うというと、またさかのぼつてすべてのものが無効になるということになつてやつかいな問題が起るでしようから、かりに一歩を譲つて、少くとも憲法九条に関してはもう一度国会の意思を問うべきである。問うことは、新しい憲法の中に盛られた改正方法によらずして、当時の憲法改正のときの手続、すなわちあのときは内閣が提案したと思います。内閣提案によつて出席議員が三分の二の、その三分の二の多数で可決すればよかつたのでありますから、新しい憲法における手続よりもはるかに楽なわけであります。そういう方法によつてこの憲法九条を抹殺することはできないものであるか。それであと再軍備をやるとかやらないとかいうことは別の問題になつて来るのです。とにもかくにもこれは日本を縛り、日本を無力化する非武装化の線から出て来た憲法九条であるのであるから、もう一度国会に当時の手続でかけて、この九条は抹殺する、こういう方法をとるのが妥当なやり方ではないかとも考えるのでありますけれども、長官の御見解をお示しいただきたいと思います。
○佐藤政府委員 これはわれわれの今までの考え方から申しますと、原子爆弾にも比するような重大な御発言であり、御疑問のように思います。御着想としては非常に非凡な御着想だと思つて拝承しておつたわけであります。ただ実は私先ほど岡崎さんに対する御質問のときにおりませんでして、岡崎さんのお答えの後半でちよつとここへすわつて聞いておつたのでありますけれども、憲法の成立ちそのものについていろいろな話はございますけれども、結局司令部からの何らかの働きかけがあつたことは事実であろう。しかしながら、それが公式な形の働きかけであるとは言い切れない面がまた一つあるわけであります。それから国内手続といたしましては、これは今岡崎さんの答えておつたのを私聞いたのがたしかそうだつたのではないかと思いますが、当時の帝国議会でとにかく両院とも三分の二以上の所定の多数をもつて可決されて、手続上何らの欠陥なしに成立しておるということから考えて、司令部の示唆というものがかりにある種の力を持つておつたとしても、これは因果関係の中断ということになつて切り離されてしまつているのではないかというような考えで今までおりましたし、またそれが間違つてはいないと思いますので、ただいまの御発言は一つのお考えとして感嘆いたしますけれども、結論としてはわれわれとしては違つた考え方を持つておるということを申し上げておきたいと思います。
○戸叶委員 私は質問というよりも、一、二点だけ法制局長官としてのお考えというか、その解釈を承つておきたいのですが、先ごろから改進党の方で、日本の憲法の九条は一九二八年に締結されたケロツグ条約とまつたく同じものだというような解釈の仕方が出て来ております。また、ケロツグ条約の場合には、侵略戦争と自衛戦争というものをはつきり区別しているから、憲法の九条とは違うのだということを言つている人もあるようでございます。そこで憲法制定の当時の空気からお考えになつて、一体これはどちらの方が正しいかということを、法制局長官としての解釈を承りたいと思います。
○佐藤政府委員 これは憲法の九条の中で第一項と第二項とをわけて考えなければならないことだろうと私ども思つております。この第一項の方だけを見ますと、「国際紛争を解決する手段としては」という条件を大きく掲げております。その「国際紛争を解決する手段としては」ということはどういうことをいつておるだろうかということは、当時から研究の対象であつたわけでありますが、われわれといたしましては、そのころから、また今日に至るまで、今お言葉にありましたように、主として侵略戦争を放棄しておるのだろう、侵略の手段としての戦争を禁止しておるというのが、第一項の主眼であるというふうに考えて来ております。従いまして第一項だけから言いますと、自衛戦争というものには全然触れておらないのみならず、もちろん自衛権も否定しておらない。ところが今度は目を移しまして第二項の方を見ますと、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」こう書いてあるわけであります。そこで芦田説とか佐々木説とかいわれますところの先生方のお考えと、われわれの考え方とのわかれ道がそこへ出て来るわけであります。われわれとしても、これは憲法制定の当初から第二項というものは、侵略戦争のためはもちろんのこと、自衛戦争のためでもこの戦闘力というものは放棄しておるのだ、戦力というものは放棄しておるのだという考え方で来ておりますから、従つて第一項の表では自衛戦争は認められておるような形になつても、第二項の関係から、そのための有力な手段を否定されておる。あるいは交戦権という法律上の手段も否定されておる。従つて金森さんも言つておりましたように、りつぱな戦争の形のものができないということを言葉で表わしておりました。そういう気持で今日までおるわけでございます。
○戸叶委員 それでわかりました。もう一点はこれはどうかという質問ですが、改進党の言つておられる自衛軍というものと、それからこの前の国会ではつきり出て来ました戦力なき軍隊というものとは、一体違うのでしようか、同じなのでしようか。違うとすれば、どういう点が違うかということを伺いたい。
○佐藤政府委員 この間軍隊の定義ということが予算委員会でずいぶん問題になりまして、当時木村保安庁長官が、それは定義の立て方で、鉄砲かついだ兵隊さん、その部隊が軍隊だということになれば、警察予備隊も軍隊であつたし、何とかだつて軍隊だというふうに軍隊の定義をいろいろわけて、定義いかんによつて違うということを申されました。私はやはりこの定義というものは、国内法上はもちろんのこと、国際条約を見ましても、何をもつて軍隊とするかという定義をあげたものがございません。また軍縮会議などに出席した人の話を開きましても、軍隊の定義、軍艦の定義というものをつくろうじやないかということで、各国の代表者が知惠をしぼつたけれども、とうとうできなかつたというような経緯さえも言われておるくらいでありまして、この定義のないことは事実なのであります。従いまして私どもといたしましては、ちようど金森さんが新憲法のときに、この憲法によつて団体はかわるかという御質問があつたのに対して、団体という定義によつて答えは違います。治安維持法に言うような国体をもつて、すなわち政治組織といいますか、国の政治組織をもつて国体というならば、これはかわつたとお答えしなければならない。ところが国体という定義をもつて国の根本の特色というように定義をするならば、天皇をあこがれの中心として国民が結びついておるような国の特色はかわつてないから、国体はかわつておりません、とお答えしたわけですが、ちようどそういうような場面が今度の軍隊論議に現われて来たものであると思うのであります。従つてこれは定義いかんで軍隊だとも軍隊でないということも言えると申し上げざるを得ないのであります。自衛軍というお言葉を今のお言葉ですと、改進党あたりが使つていらつしやるということでありましたが、私はあまり勉強しておりませんけれども、少くとも芦田学説、それから佐々木学説ではやはり交戦権の関係のことは、私たちと同じような立場に立つていらつしやるようですから、そういう定義の上から行くと、やはり本物の軍隊とは言えないのじやないかという気持で、いわゆる交戦権がないような軍隊は本物の軍隊と言えるかどうかという問題になつて、それが本物の軍隊と言えないということになれば、佐々木惣一博士の説なんかもわれわれと同じことになるのではないかというふうなことを考えられますし、要するにこれは定義の問題に帰することかと思います。それで今お言葉にありました、戦力なき軍隊というのは、非常に近ごろはやり言葉になりまして、われわれはほほえましいことに考えておるのですけれも、これは、実は速記録を見ましたけれども、吉田さんは「戦力なき軍隊」という言葉は使つておりませんでした。ただ「戦力に至らざる軍隊」という言葉を使つておりました。これは、私としてはどつちでも同じことだと思います。ただ戦力なき軍隊ということが非常におもしろく愉快に響くのは、戦う力のない軍隊というふうに戦力という言葉を平たく感じて読みますからして、どろぼうしない盗人というような感じに響くので、そこにおもしろさが出て来るのではないか。ところが憲法にいつている戦力というものは、先ほど来も並木委員の御質問にお答えしましたように、全然戦う力を憲法は否定しているとすれば、これは暴力団と戦う力も否定していることになる。そうなれば普通の司法警察も持てないということになります。しかして憲法にいう戦力というのは、平たい意味の戦う力ではなくて、やはりそこに一定の基準があるのではないか。さつきも例に申し上げましたように火炎びんは確かに理化学上は爆発作用を起す。しかし爆発物取締罰則にいう爆発物ではないという最高裁判所の判決があつたわけであります。およそ爆発するものは爆発物であるかというと、そうでないということで、やはり爆発現象に一定の基準があつて、それに当るものが爆発物として取締られるわけであります。そういう意味の見解があるのではないか。でありますからわれわれの言葉をもつてしますれば、戦力なき軍隊というのは、近代戦遂行の能力に達せざる実力規模の軍隊というように翻訳できるように思うのであります。そういうことであれば世間からあまりおもしろがられないのじやないかというような気がいたします。突き詰めて行けばそういうことだろうと考えております。
○戸叶委員 戦力なき軍隊という言葉を聞いて非常にほほえましく思われたという意味は、私、頭の中でいろいろに考えたのですが、最後にどろぼうしない盗人とおつしやつたときに、それは文学的にいろいろ考えられますけれども、戦力なき軍隊というものとは、大分私は違うのではないかというふうにしかとれません。それは考え方の違いと思いますが、結局軍隊というものの定義がない。で今の政府の考えられておりますのは、その人の解釈によつて軍隊というならば軍隊と言つてもしかたがないし、それを軍隊と言わないでほかの名前で言つたらそれもいいだろう、その人の定義次第であるというふうにしか了承されませんが、そう解釈してよろしゆうございますか。
○佐藤政府委員 今お言葉にありましたように、どろぼうしない盗人というのと違う方が私どもいいのでありまして、その点は戸叶先生と意見が一致したと御了解願つておきたいと思うのであります。
 第二に、実はわれわれが定義の問題を非常に軽く扱つているようにお考えになつていると思いますが、私どもは実は定義の問題は軽い問題だと思つておりません。と申しますのは憲法第九条第二項というものは、名義といいますか、レツテルはどういうレツテルが張つてあるか、どういう看板がかけてあるか、そういう看板とかレツテルなどにこだわつて、それを手がかりにして禁止しているようなそんな甘ちよろい、なまやさしいものではないと思います。どんな看板がかかつておろうと、当然それが恐るべき実力であつたならば一切いけないというのが、私はほんとうの憲法の趣旨だろうと思います。従いまして国内の治安のためとか、あるいは大規模の内乱を押えるためと言いましたところで、そういうレツテルを張りそういう看板をかけておつたところで、その実力が恐るべき実力であつたならば、これは憲法でも決していけない。それは軍隊ではないというかもしれませんけれども、それはやはり実力の方からいけないのだ、そういうふうにすべてこれは実力そのものをつかまえて判断しないと、あらゆる脱法というものがそこに考えられる。従いまして軍隊とおつしやつても恐るべき規模であるかどうかということによつて――憲法はそこを恐れているのではないか。そこが徹底しないとどうも話が通らないのではないかというふうに思います。
○佐々木(盛)委員 私は先ほど並木委員の質問に対して法制局長官のお答えになりましたことが、あまりにも基本的人権に関連した問題でありますから、重ねて確認いたしておきたいと思います。
 長官は先ほどの並木委員の質問で、強制徴兵をすることは現行憲法においてはできないのではないか、強制徴兵することは憲法違反ではないかということに対して、中にはそれは合憲であるということを述べておる人もある、こういうふうなお言葉のようでありましたが、私はこの憲法のいずこを探しましても、日本人の基本約人権が現行憲法の改正なくして奴隷的な待遇を受けたり、何人も自己の欲せざるところの職業につかなければならぬというようなことはどこにもないと思う。憲法の中には、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」こういうことも書かれております。また「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない、」こういうような規定もあるわけであります。そこで、日本は法治国でありますから、法律の根拠なくして人間を強制徴兵に服従させるというようなことはできないと思いますが、徴兵制度もまた合憲であると言つておる者があるならば、どういう根拠に基いて言つておるか、私はその理論的根拠を承つてみたいと思います。
○佐藤政府委員 その議論にだんだん入つて行きますと、また私の不勉強を暴露することにもなりますから、この機会においてはお許しを願いたいと思いますが、要するに先ほど来述べましたように、私の気持は、非常にむずかしい問題である、むずかしいというのは、簡単にできる問題かどうかという意味で、むずかしい問題だということを申し上げておるわけであります。あとは私の性分といたしまして非常に臆病な性格でありますために、言つてもよさそうなことを言わないで、あいまいな形にしてしまう、そのために誤解を生ずることがたびたびあつたのでありますけれども、この問題はやはり臆病であつた方がいい問題と思いますから閣議の決定を経たわけでも何でもありませんし、ここで簡単にお答えするにはどうだろう、いわんやそれだけの準備もしておりませんから、ということで、お許し願いたい。
○佐々木(盛)委員 こういう基本的人権の問題は、私は閣議の決定とかなんとかいうことによつて、政治的に人権が侵されるべき性質のものではないと思う。私は基本的なものだと思うのであります。むしろこれに対して判決を与えるものがあるというならば、最高裁判所によつて判決を受けるのであります。閣議がかつてなご都合のいいような解釈をすることによつて、人権に対して重大な圧迫を加えるというようなことは、なすべきことではないと思います。あなたはあまり政治的なことは考慮してもらう必要はないと思います。純法制上の立場から、あなたは一体現行憲法の範囲内において強制徴兵ができるとお考えになるのか。この問題は遠い将来の問題ではなくして、現に現実の問題としてわれわれの目の前に大きくクローズ・アツプされておるのです。従つてまだ不勉強で、この問題を考えたことがないというようなことは、もうこれは私には遁辞であるとしか考えられません。従つて純然たる法律的な立場から、あなたはこの問題についてどういうふうにお考えになつておるかということを承りたいと思います。
○佐藤政府委員 佐々木さんにお言葉を返すのは、はなはだ心苦しいのですけれども、政府を代表してここで政府委員としてお答えしておるという雰囲気のもとにおいてのことでございますから、われわれとしてはあまり当面の大きな問題になつておるようなことについて、独断的な発言はできないというのが、われわれ属僚としての心得じやないか。あるいは参考人としてお呼び出しになつて、個人としての意見を思う存分言えとおつしやれば、そのときはまた別ですが、とにかく政府委員としての立場でございますから、カレント・トピツクスの重大問題について、閣議の決定も何もきまつていないことを申し上げるのはどうだろうという意味で、御遠慮申し上げておるのです。その点は御了承願いたいと思います。また非常にそれはむずかしい問題だということは、これはもう当然おわかりになつておることだろうと思います。それは御推測にまかすわけであります。
○佐々木(盛)委員 私は、そうかた苦しくお考えにならずともいいと思います。個人的見解でもけつこうだと思いますが、一体そういうことが現行の憲法の範囲内においてできるというふうにお考えになるのだつたら、あるいはそういう説があるというのなら、その説の根拠というものを示していただきたいと思うのです。どういうところからそういうことが生れて来るかという、その法律的な根拠を政治論的にこれを言うならば、どのようにでもできますよ。しかしながらあなたの純法律的な立場から、基本人権の問題は時の政府によつてどうされるという問題ではなくして、もつと冷厳なものだと考えます。そういう考え方に立つてあなたに、個人的な見解でもいいのですが、見解があればおつしやつていただきたいし繰返して言うようですが、そういうような説をなす人があるなれば、大ざつぱでけつこうですが、大体どういうところを適用することによつて、たとえば公共の福祉に反しない限りは何人も基本人権を妨害されないといつたような規定も憲法にあるわけです、しかしそういうことを非常に拡大して解釈するならば、せつかくできた民主的な憲法というものから全体主義的な解釈ができないわけではないのです、強制徴兵をすることが公共の福祉だというならば、この現行の憲法の範囲内において強制徴兵できるというこじつけた解釈もできると私は思うのです。そういう説をなす者があるというならば、きわめて大ざつぱでいいのです、私も了承しかねるのですが、どんなことを言つている人があるのでしようか。
○佐藤政府委員 われわれとしては、最後の決心をするためには直観だけではいけませんから、あらゆる賛否両論を対照した上で検討して最後の決断をきめなければならぬ、公の立場において最後の決断をきめるべきものだと思うのです。たとえば、今のお言葉にありましたけれども、アメリカで徴兵制をとつたときに、実は憲法問題があつたことは御承知の通りです。アメリカの憲法の建前というものと日本の憲法の建前というものはあまり大きくかわつていない、アメリカの憲法のもとにおいて徴兵がかりに合憲だということになれば、それはどういう理由によつて合憲ということになつたのかということも、一通りは調べた上で合憲論を唱えて、われわれををお責めになる人が出て来た場合には、それに対して猛然と反撃するなら反撃する、こちらが正しいということにはそれだけのはつきりした勉強はちやんと積んでおかないと私はいけなことだと思います。従いましてそれはつまらぬ議論であるかもしれません、つまらない議論であるかもしれませんけれども、世間にある議論というものは一応調べて、これはつまらぬのだという最後の断定をした上でなければ、ほんとうの腹というものはきめられないのです。それで私の気持はどうだとおつしやれば、それは先ほど来の私の言葉で十分おわかりになつていることと思います。
○佐々木(盛)委員 重ねて聞きますが、そういう説をなす人があるなれば、大体どういうふうな考え方に立つてそういう説をなすのかということをお聞きになつたことなどありませんか。
○佐藤政府委員 これは次の保安庁法の改正に、この徴兵制度を盛り込むがいいとか、盛り込まぬがいいとかいうような議論がかりにどこかにありまして、ことにまた政府部内で徴兵制を入れようじやないかというような議論でも当面の問題として出て参りますればわれわれはもう真剣にその問題と取組まなければならぬ、しかしながら今日においては、われわれとしてはそういう雰囲気は察しておりません。政府部内におきましても、今度の保安庁法改正に際して徴兵制を取入れようなどという議論は、全然私はまだ耳にもしておりませんし、感じてもおりません。その点で、今のような態度で沈然とした態度じやないかとおつしやればそれきりですけれども、われわれとしては深刻にそこを調べなければならぬという立場にまだなつておりません。その意味でかようなお答えをしたわけであります。
○佐々木(盛)委員 重要な問題でもありますし、長官の立場もある程度私は了承しないわけではありませんが、しかし長官のお考えになつておるような、まだ遠い夢の問題あるいは架空の問題ではなくして、私は現実の事態はそこまで来ておると思うのです。早い話が現実に三十二万というような数字が現われて参りますと、これは任意による契約によつてどれほどのものを募集し得るかという点になりますと、私はそこまで考え及ばなければならぬ段階にすでに来ておると思うのです。でありまするから、長官の立場上の問題を私は了とするわけでありますが、ことさらに私の気持としては了解することができません。しかし本日はその程度にとどめておきます。
 次に私は承つておきたいのでありますが、先刻来いろいろ承つておりますと、たとえば強制徴兵の問題であるとか、あるいは戦力の問題であるとかにつきまして、いろいろ議論が行われておるようでありますが、当局の御見解は私にはちつともはつきりのみ込めませんそこでどの政府でもいいですが、たとえば今の政府によつてかりに強制徴兵が現実に行われ、あるいは何人が見ても社会通念としてこれはりつぱな戦力である、こういう段階になりましたときに、なおかつ政府当局はいやこれは戦力ではない、あるいは強制徴兵は決して憲法に違反をしないという見解をとつて、一般国民の考え方と政府の見解が完全に対立をした。そして国会もまたこれは憲法違反であるということを明らかに意思表示をした。しかし政府はあくまでもいや憲法には違反をしない、こういつたほおかむりで行こうという場合におきましては、今日の新憲法のもとにおきましては、内閣総理大臣が閣僚に対する任免権を持つておる、首切りは自由自在である。昔のような輔弼の問題もない。あるいは統帥権という言葉が今のところいいか悪いかは別といたしまして、陸海空の三軍を命令するところの権利を持つておる。あるいはその他最高裁判所の長官の問題につきましても、法制上は権利はありませんでも、政治的な影響力は総理大臣は持つておる。こういう立場から考えますと、いかに国会が憲法違反であるといい、国民大衆が憲法違反であるといつても、政府はそうではないといつて、実際の実力を持つてがんばり通した場合において、一体いずれの主張が正しいということになるのか、はたしてそれが憲法に合つているということになるか、違反をしているということになるか、一体それはだれが判決を下すのでありますか。
○佐藤政府委員 今佐々木委員御心配のようなことは、私は今の憲法のもとでは起り得ないのではないかという気がします。と申しますのは、かりに戦力に達するか達しないかという認定の問題は、もちろん第一義的には当面の責任者である政府が認定いたします。ただ兵力を増員するために予算をお願いし、また装備を増すために予算をお願いするというような形で、どうしても国会に御審査のために提出して、そして装備はどうなつている、その編成はどうだというような御質問を受けて、その答えが納得を得なければ、その予算は通らない建前になる。法建にしても同じだろうと思います。そういうことでありますから、政府の考えは間違つておるということが国会の御審査によつてはつきりすれば、それに相当する予算は削られる。あるいは法律は修正なり否決なりされるという形において、そこで勝負はきまつてしまう。第二段に国会が賛成してしまつた場合、そのあとのことは今のお話にございませんから、しいて言いませんけれども、少くとも国会の段階におけるチエツクというものは、現憲法下ではりつぱに保障されておるのではないかと思つております。
○佐々木(盛)委員 私はあまり政治論を唱えているわけではありませんが、かりに国会が、議員が不明にして、かつての新体制運動のごとく、あるいは政党解消というようなことも一時は考えられたことがあつたのであります。そういう場合におきましては、国会が多数の意思をもつてかりに政府の考え方に同調するというような場合がないとは何人も保証できない。現にわれわれその苦い経験を味わつた結果が大東亜戦争にまで発展し、こんなみじめな姿になつて来た。従つて一般大衆が時には国会の意思と反しても、これは明らかに憲法の違反であるのだと考える。しかも現実に徴兵を受けた。あるいはまた徴兵を受けたことによつて死んだ、けがをした、こういう問題が生れて参りましたときに、これが憲法違反であるかどうかということがまず前提に立つて来るわけであります。そのときに憲法違反であると一般が考え、しかも政府はあくまでも憲法の違反ではない、こういうふうに考えたならばどうなるか。政府は今何でも持つておるのです。征夷大将軍以上、太政大臣関白以上の権限を法律上与えられている。ですからやろうと思えば何でもやれる。それに対して正しい判決を下すものが一体どこにあるのか、お聞きしたい。
○佐藤政府委員 徴兵の例は政府としては毛頭考えておらぬことでありますから、例として出すことも差控えたいと思いますが、ただいまお話の戦力の限界の問題にしても、先ほど国会の段階においてのチエツクと申しましたけれども、かりに今のお話のように、国会もそれに賛成してしまつたという場合の後の段階として考えられるところは、まず国会の意思と国民の意志とが一致しているかどうか、そして国民は全然反対の見解を持つているという場合においては、次の総選挙の機会に、衆議院の構成なり参議院の構成なりが大きくかわつて行くであろう。国民の輿論をになつた新しい議員が出て来られて、過去の法律を廃止するなり、あるいはその次の予算を成立されるなり、そういう国民の直接のコントロールが国会議員の改選を通じて行われるであろうということが、まず一つ憲法の期待しおる調整作用であると思います。第二段階は例の予備隊の違憲訴訟というような形で、現にあれは最高裁に直接出ましたものは却下になりましたけれども、地方裁判所に出ておりますものはまだ係属しておるはずであります。そういう形で今度は裁判所を相手としての判定を求めるという手続が進められるであろう、そういうことで、憲法上は国民の意思に反した無理なことはできないようにという建前は完備しておるものと私は考えております。
○佐々木(盛)委員 ただいまの御答弁の中の前段の政治論につきましてはその通りでありますから、私は別に異議はございません。私があなたに御質問いたしておるのは、別に政治論を承つておるのではなくして、法律論を承つておるのです。そこであなたの答弁の後段の、つまり裁判所によつて判決を受けるのだということであります。ところが憲法によりますと、憲法八十一条には、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と書いてあります。国の出す法律や命令が憲法に合つておるかどうかを決定する最後の裁判所である、こういうふうに私は解釈いたしておりますが、そういたしますと、かりに今日ただいま、仮定の問題でありますが、徴兵によつて強制的にひつぱられてしまう、ひつぱられるときに、いや現行憲法によつては、われわれは基本人権は永遠に守られておるのだ、われわれはそれに応ずることができないと言つたときには、その問題を最高裁判所に持つて行かなければなりません。最高裁判所は終審裁判所であります。従つてこの問題は受付けません。あたかも社会党の左派の諸君が、保安隊というか、当時の予備隊でありましたが、これは現行憲法九条に違反をするのだということによつて最高裁判所に提訴いたしました。しかしこれは当最高裁判所の管轄権外であるということによつて却下されたことは御承知り通りです。しかしその最高裁判所の却下した理由の中にも、全部ではありませんが眞野判事のごときは、明らかにこれは憲法の違反であるという補足意見を個人の意見として加えておるような次第であります。近くは苫米地さんの場合で、国会の解散の問題であります。昨年の十月でありましたかの解散が、憲法六十九条に基かないものであつて、その日にちは忘れましたが、とにかくこれは憲法違反であるということを提訴した。しかしこれまた最高裁判所の管轄権外ということで却下されてしまつたので、やむを得ず今度は具体的な問題で、あの解散は無効であるから自分は今もつて国会議員である、ゆえに歳費を請求する権利があるのだというので、歳費請求の訴えを東京地方裁判所に起したことは御承知の通りだと思います。その判決の結果が苫米地さんの勝ちとなつたわけであります。そういうことを考えますと、今かりに徴兵制度というものが突如として行われて、そうして国民が強制徴兵にあつたという場合におきましては、最高裁判所にすぐ持つて行くわけに行きません。そういう場合にはどうなるのでしようか。どうして国民の基本的人権は守られるのでありましようか。あなたは今日のこの憲法やあるいは最高裁判所その他裁判所法規の中に、非常な矛盾や欠陥がある、盲点があるというようにはお考えになりませんか。
○佐藤政府委員 最高裁判所へ直接持つて行くことは、過去の二つの例によつて最高裁の態度はきまつたのであります。今憲法の建前からいうと、これを却下をしたことは無理もない判決であろうと思つております。ただそれだからといつて訴訟の道がないというわけではないので、今お話にも出ましたように、地方裁判所から順序をふんで上つて行くという道があるわけであります。それではあまりにゆうちよう過ぎるではないかというお考えが出て来れば、これは憲法改正論の問題として、ヨーロツパ諸国にもあるように、憲法裁判所というものをつくればいいではないかという御議論につながるわけでありますが、しかし憲法裁判所なるものをつくることがいいかどうかということは、重大な三権分立の上から疑問があるというわけであります。いずれにせよそつちの問題になつて来ると思います。だから要するにこういう問題は、日本国の現在の憲法においては、国会を国権の最高機関、あらゆる信頼を国会に寄せておるわけでおります。その国会が最善の良識をもつて、国民の意向を体して活躍されるということを前提にして、かりにそれを無視し、くつがえしてしまつて、そういう信頼性が国会にないということになつて来ました場合においては、日本国憲法はりつぱな解釈はできないではないか。やはり国会はすべての信頼を集めておるというところから行かなければならぬと思つております。
○佐々木(盛)委員 最高裁判所は憲法に違反なりやいなやという問題を扱わないことは、ただいま説明された通り、私が申した通りであります。そこでかりに徴兵を受けたという場合に、その人が裁判所の判決を得ようという場合におきましては、地方裁判所に提訴する道があるとおつしやいますが、地方裁判所は、そんな徴兵制度が憲法に違反であるかどうかというような問題は扱いません。従つて地方裁判所に持出しますときには、自分は憲法に違反をして徴兵をされた、そして軍務に強制的に従軍させられた、その結果けがをして足を一本失つた、あるいは戦死をした、よつてその損害は政府が負担する義務があるというので、損害賠償の請求を国家を相手に提訴するこういう具体的な問題にならなければ、地方裁判所は扱つてくれないわけであります。そうすると現実の問題になりますと、徴兵制度というものはすぐ今日行われる。しかしそれに対して憲法に違反するやいなやという問題は、地方裁判所、さらにそれがだんだん上に上りまして、最高裁判所に行くまでには数年の日がかかりはせぬかと思う。われわれの選挙違反の問題でも、三年も四年もかかるわけでありますから、こういう問題は簡単に解決ができません。従いましてこの間に四、五年の時間の経過というものがありますと、世界の大勢は一変してしまつている。世界の大勢がかわつてしまつてから初めて判決が下つてもどうにもならないわけであります。ここに大きな憲法の盲点がありはしないかというふうに思うのですが、これはどういうふうにお考えになりますか。たとえば今申しましたように、強制徴兵を受けた人間が、これは憲法違反だから行きたくないという場合におきまして、その基本的人権を一体どこに訴えることができるか。どういう具体的な処置をすれはいいのかという点を御答弁願いまして、同時にこの現行の憲法におきまして、はたして基本的人権が十分守られ、そしてその憲法違反の問題を立ちどころに審査するところがあるかどうかという点を承りたい。
○佐藤政府委員 この一つの例になつております予備隊の違憲訴訟でも、やはり今お話があつたように、具体的の、あるいは税金の関係でしたか何か知りませんけれども、そういうことに引きつけてはありますけれども、根本の訴訟の趣旨は、警察予備隊令は憲法違反だ、従つてそれに対応する行政措置は無効だというような趣旨で争つて来ておるのでありますからして、その争いは、結局最高裁まで行つて、そうして警察予備隊令なるものは憲法違反かどうか、無効であるかどうかということがきまる建前になつておると思います。ただ今のお話のように、それに長くかかつて、何年もかかるじやないかということは、これは裁判所の訴訟の促進の問題として別に現在すでに問題になつておりますから、その方の問題として解決する努力は当然必要だろうと思いますけれども、筋道はさようになつております。ですから結局今のお話に出たような根本を考えて見ますと、やはり国会が国権の最高機関であつて、行政の監督権もお持ちになつておる、立法権もお持ちになつておる、あるいは財政上の権能もお持ちになつておる、すべての大きな権限が国会に集中されておるのでありますから、その国会が間違いをされるということを前提に考えますと、これは国会を押えつけるもつと強いものをつくらなければならないじやないかという必然的な議論になると思います。そうすると、裁判所をもつと強くして、国会を押えるような裁判所をつくらなければならぬという問題が起る。そういうことでは、私は現在の日本国憲法の三権分立の精神に大変革を来すのではないか、にわかにそういうところまで話を進めるということは、私どもとしてはどうだろうかという心配もあります。
○佐々木(盛)委員 私はそういう政治論を聞くのではなくて、純然たる法律論的立場から承つておるのです。今申しますように、重大な国民の基本的人権に関することで、それが憲法に違反しておるかどうか、そういう問題を訴えるところが実はないのです。最高裁判所へは下級裁判所から上つて行かなければなりませんが、下級裁判所へ訴える場合においては、具体的な事実がなければならない。かりに今日徴兵があつたからといつて、すぐ最高裁判所へ持つて行くこともできないし、地方裁判所へ持つて行くこともできないのであります。受付けてくれないのです。そうすると一体基本的人権はどこによつて擁護されておるか、今法律上そういうことができない立場にあるということを申し上げておるのですが、この点は認められませんか。
○佐藤政府委員 佐々木先生は政治論政治論とおつしやいますけれども、これは私は大きな憲法論だと思います。憲法論はすなわち法律論であると思います。憲法のあり方は、やはり法律論として十分考え得ることであります。また法律論に基いて今の憲法は私はできておるように思いますし、法律論としてお答えしておるつもりであります、要するに今のような国民の意向を代表する国会というものがあつて、国民が行政に満足しない、あるいは納得しない、行政によつて損害を受けておるという立場が国民にあるとすれば、それは、まず一つは直接に国会に対して働きかけて、それが輿論として反映して来るであろう。それによつて国会は立法措置をとり、あるいは財政上の措置、あるいはまた行政監督権を発動されて、当然そこで第一次の是正作用が行われるであろうというのが憲法の法律的な仕組みであろうと私は考えるわけであります。それでもなお誤りがあつた場合の措置として、最高裁判所その他の裁判所というものが司法権として別に保障されておるというのが、どうも憲法の根本組織であつて、国会にすべての信頼を置かないということになつてしまつたら、おしまいじやないかという気がします。
○佐々木(盛)委員 私は余分なことは聞いておりません。私が承つておるのは、かりに今徴兵を受けたという場合において、その人間が憲法に違反しておると考えたときには、一体どこに提訴したらいいか。
○佐藤政府委員 それは国会の方に輿論として反映して、あるいは請願、陳情の形で出ることもありましようし、国会に対しての働きかけが当然そこにあるでありましようし、一方においては裁判所による司法権の救済の方法をとるという道を選ぶことになると思います。
○佐々木(盛)委員 それでは裁判所に対する手続の問題を承りたいと思います。
○佐藤政府委員 裁判所はそれを受付けて、早く……。
○佐々木(盛)委員 受付けますか。
○佐藤政府委員 それは今の例にもおあげになりましたように、とにかく自分の身体なり自由が不当に拘束されておる、その根拠は何かということになれば、ある法律があつて、その法律によつてそういう拘束を受けた、その法律はどういう立場にあるかというと、憲法に違反する法律であるということによつて、自分の身体に対する損害賠償の形となり、あるいは自由の拘束を解けという形になつて裁判所に出た来る。そうしてそのもとになつておるところの法律は憲法であるから、これを憲法上違反と確認して、そうして自由を確立するという形で出ると思います。
○佐々木(盛)委員 最高裁判所は、過去二回にわたるところの憲法違反の審査の提訴に対して、これを却下したという事実から考えましても、こんな問題は最高裁判所の管轄権外だということで却下すると考えます。地方裁判所に出すときには、今申しますように、具体的なけがをしたとかあるいは死んだとかいうような問題から、損害賠償の訴えという具体的な問題にならなければ、地方裁判所は扱つてくれません。従つてそれからだんだんと上訴して行つて、最高裁判所の最後の判決が下るまでの間は、相当の、それこそ数年という時間が必要ではなかろうかと思います。そうなりますと、その判定が下るまでの間というものは、不当に国民の権利が侵害されるということになるわけなのであります。私はただいまのところ、ほんとうならば憲法違反かどうかという問題は、憲法裁判所があつて、すぐさまそこに何人も提訴することができるということになつた方が好ましいと思います。それはいろいろなむずかしい問題もあると思いますが、そう思うのです。そこで最高裁判所において頭から違憲審査を受理できるようにする道があると私は思うのです。これは憲法改正をしないでできる道があると思う。ただいまのお話によりますと、憲法改正をしなければできないということでありましたが、裁判所法というものをお読みになるとわかりますが、裁判所法の中で、最高裁判所の行う管轄権のところに上告と特別抗告と二つしかありません。これにさらに違憲審査という項目を一つ加えるような法律の改正をすれば、私は最高裁判所がすぐさまに違憲審査の問題を取扱うことができるのではなかろうか、現行憲法の範囲内においても、私はできるのではなかろうか、こういうふうに考えるのでありますが、長官はどのようにお考えになつておりますか。またそういう違憲審査をやるところが必要であるということを認めておられないわけでありましようか。その辺を承りたいのであります。
○佐藤政府委員 ごもつともなお言葉だと思います。その第一段のお話にもどりますけれども、訴訟が遅れているということは、確かに事実であります。従いまして現に法務省に法制審議会というものを置いて、その点ばかりを今真剣に研究しております。これはいずれ結果を出して来ることと思いますが、それよりも今重大なことは、今あとのお話の、最高裁判所というものに直接の違憲判定権を与えるかどうかという問題、それが現在の憲法の上でできるかどうかという問題、これは大問題だと思います。そういう説をとつている人もないではありません。ありませんがわれわれが一般のオーソドツクスの考え方として今日まで考えておりますのは、司法権とは一体何かということになるわけです。モンテスキユーと申しますか、昔から三権分立ということが言われており、その中の司法権とはどういうものかということに尽きるわけであります。オーソドツクスの考え方としての司法権というものは、個々の具体的の事件について、何が法であるかを確認して、それを当てはめる権威のある作用であるということであつて、個々の具体的争い、具体的事件というものが、司法権の必然的な要素として今までずつと言われて来ておるわけであります。これはオーソドツクスと申しましたが、おそらく一般的、普遍的の建前になつておると思います。そういたしますと、日本国憲法は、司法権は裁判所に属すると書いてあります。その司法権というのは、一体、どういうものを司法権として観念しておるかということになりますと、今までのオーソドツクスの三権分立論から、その司法権というものをそこに受けて書いておるわけであります。そういうものが裁判所の権限に属するということを言つておるのであつて、そしてあとは、下級裁判所と最高裁判所とあつて、段階が地方裁判所、高等裁判所とある。その段階の中で、ある仕事の性格のものは高等裁判所に直接持つて行く、選挙訴訟なんかは確かに高等裁判所に直接持つて行く。あるものは最高裁に直接持つて行かしてもいい。そういう下級、上級の間における受持を最高裁に持たせるという考え方は、私は現在においても不可能ではないと思います。現に選挙訴訟なんかはそうなつております。ところが司法権そのものの本質は、憲法で予定しておるすれば、あくまでも個々の具体的の事件についての具体的の争いについてという制約がかぶるのでありますから、かりに最高裁に持つて行くとしても、そういう制約をつけて持つて行くということになれば、あるいは可能ではないか、これもさつきのように、私はきわめて臆病でありますから、断定的のことを申し上げる勇気はありませんけれども、そういう意味からいえば、憲法にも触れないで事が処理し得るのではないかという気持がするわけであります。そうでなしに、一般的にこの法律は憲法違反であるということで、何ら具体的の争いを持ち出さずに、すぐ最高裁に持つて行くということになりますと、先ほども申しましたように、国会が唯一の立法機関として制定されたものが、あるいは国会が全会一致で制定された法律が、一私人の訴えによつて、横から批判を加えられ、場合によつてはそれが無効にされるというようなことは、三権分立の建前からいうと、大きな権利を司法権に与えたということになり、三権の分配の上から相当の問題になりはしないか。従つてかりに憲法改正論として憲法裁判所を設置すべしという御議論が出て来たとしても、その御議論に対しては、今までのような三権分立の趣旨からいつて、国会の権威をどうするのだというような反対論が必ず出るような性質のものであろうと思います。
○佐々木(盛)委員 私はこの問題はもう深く追究しないで、この程度でとどめますが、先ほども述べましたように、憲法第八十一条において「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所てある。」と書いてある。そこで終審裁判所というところが問題になつて来るのであります。そして終審裁判所であるから管轄権外だというわけで却下しておるのです。従つて今徴兵令という制度が施行されますと、徴兵制度という法律は憲法に合つておるのか違反しておるのかという問題になりましたときに、これをすぐさま最高裁判所に持つて行くことも、もし終審裁判所でなかつたらできるわけなのです。しかしこれは最高裁判所は終審裁判所であるということが書いてありますために、最高裁判所は却下するのです。従つて地方裁判所から具体的な損害賠償の提訴などをいたして、終審裁判所である最高裁判所へ持つて行くまでの間には、時間的な相当の経過が必要なのであります。さようになりますと、その間は国民の権利というものが非常に圧迫をされ侵害をされるという危険性も実はあるわけなのであります。従つて私は、かりにそういう場合、徴兵されたというような場合においてはどうすればいいか、どうすれば自分たちの基本的人権の侵害を訴えにすることができるか、日本は法治国であつて、何人も法の前には平等の権利を持つておるが、訴えて行くところがないというのが今日の現状じやないかと考える。そういう意味からいつて、憲法改正というようなことはまことにむずかしい問題でありますけれども、裁判所法規の中に、最高裁判所の行う管轄権というものが、先ほど申したように上告と特別抗告の二つに限られておる。それにもう一つ、裁判所法の一部を改正する法律案か何かつくつて、違憲審査という項目を加えたら、あしたからでもこの保安隊が憲法違反なりやいなやという問題は、最高裁判所において扱うことができる。私はさような見地に立つて、そこに新憲法の盲点がありはせぬかと思つて承つたのですが、その程度にとどめておきます。
 次の問題は、あまりそうかたくならないでお答え願つてけつこうです。それは今までの話にも関連のあることでありますが、苫米地さんが東京地方裁判所に持ち出しました解散無効に基くところの歳費請求権の訴えが、苫米地さんの勝利において判決を見たわけであります。ちよつと承つておくのですが、第一審の判定はすでにあつたのですが、そうすると苫米地さんの方から国会に対して仮処分の要求をして、歳費をすみやかに払えと言つて来れば、やつぱり払わなければならぬのですか。
○佐藤政府委員 どうも訴訟手続の方は、正直なところ私ほんとうにしろうとでございますから、その問題はお答えする能力はございませんということでごかんべん願いたいと思います。
    〔「ちよつと外務委員会と違う」と、呼ぶ者あり〕
○佐々木(盛)委員 直接外務委員会と関連のないことでありますが、ついででありますから承つておきたいのです。第一審においては解散が無効だというのですから、もしこれが最高裁判所において依然として解散が無効だということになつたならば、その間にできた法律は一体どうなるのですか、その間に議員だつた人間はどうなるのですか、全部無効になるのですか。
○佐藤政府委員 それはこの間の判決がありましたときにわれわれ法律屋の仲間では、非常に興味本位で考えたことがあります。それを持ち出しますと、あの判決は今のお言葉にもありましたように、歳費請求の訴えですから、解散の行為が取消されたとか、そういうふうな直接のあれはないわけです。ただその理由づけにあの解散は無効だということになつたわけで、現実の結論はお金を払えということだけなのです。そこで解散が無効であつたとすると、それを原因として起つた次の総選挙は無効じやないかという場合が出て来るわけです。その場合はその場合として別に無効確認の訴えでもお起しになつていただく。そういう形であらゆる方面からの利害関係者から訴訟が出て来ると思う。それによつてはなかなか法律的には興味ある問題が出て来る。そういう形になると思います。
○佐々木(盛)委員 いろいろ承りたいことがありますが、他の方に御迷惑になりますから、この辺で質問を打切ります。
○富田委員長代理 次会は来る十五日午前十時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十一分散会