第019回国会 法務委員会 第4号
昭和二十九年二月三日(水曜日)
   午後一時五十九分開議
 出席委員
   委員長 小林かなえ君
   理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
   理事 吉田  安君 理事 古屋 貞雄君
      野田 卯一君    林  信雄君
      牧野 寛索君    山中 貞則君
      高橋 禎一君    中村三之丞君
      木下  郁君    黒田 寿男君
 出席政府委員
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      鈴木  一君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小林 貞一君
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 委員久保田豊君辞任につき、その補欠として黒
 田寿男君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
 法務行政に関する件
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○小林委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件について調査を進めます。この際外国人の出入国の現状に関し、その概要の説明を政府当局より聴取することにいたします。鈴木政府委員。
○鈴木(一)政府委員 外国人の管理につきまして、法務省の入国管理局が責任官庁としてこれに当つておりますが、本局のほかに全国に十二の入国管理事務所と、二つの入国者収容所と、それから三十八の港出張所という役所がございまして、それに入国審査官なり入国警備官なり、全人員にいたしまして千三百五十の人員を配置いたしまして、北は北海道から南は今度わが領土にはつきり決定いたしました奄美大島に至るまで、人を配置いたしまして、外国人の管理をいたしておるわけでございます。
 これを扱います法律は出入国管理令――これは管理令でございますが、平和条約発効の際に法律の効果を与えられまして、法律になつておるわけでございます。この出入国管理令が外国人の出入りにつきましての管理をいたしております。もう一つの法律は外国人登録法というのがございまして、これは日本内地におります外国人が登録をいたしまして、その居住をはつきりさせて、日本側における公平なる取扱いをいたす基礎にするということになつておりますが、その外国人登録法の適用を受けます外国人は、現在約六十一万六千という数になつておるわけであります。この外国人登録法は、その現場の扱いは各府県の市町村役場におきましてやることになつております。
 出入国管理令によります外国人の出入りにつきまして申し上げますと、外国人が日本に入つて参ります場合には、おのおのパスポートを持つて、正式に船なり飛行機なりで入つて参るわけでございます。その際に、まず日本の在外公館におきまして、日本入国の査証をそのパスポートに受けて入つて参るおけであります。港または飛行場におきましては、入国審査官がおりまして、一々日本に入りますと同時にその人たちを審査いたしまして、適正な手続を経て入つて来たものであるかどうかということを審査をいたします。また出入国管理令によりますれば、いろいろな入国の欠格条項がございます。たとえば伝染病を持つておる者は入れない、あるいはかつて日本の治安を乱したというような人も入れないといういろいろな欠格条項がございまして、一応それに該当するかしないかを調べまして入れるのでありますが、現在正規に日本に入つて参ります数、いわゆるパスポートを持つて港なり飛行場なりから入国いたします数は、約四万人ございます。その内訳を申しますれば、観光であるとか、あるいは商用で来るとか、あるいは外国の官吏が公務で参るとかいうようないろいろな種類がございまして、その種類はいろいろ出入国管理令に規定してあるわけでございますが、まず正規に入つて参ります者は年に四万程度であると存じます。これは年々増加をいたしております。そのほかにほんとうのお客さんではなしに、一時日本に上陸をするという特別の寄港地上陸をいたす者があるのであります。特に多いのは船なり飛行機なりの乗組員、いわゆる船員と称する者が、船なり飛行機なりが着きました際に日本内地に上陸するわけでありますが、それはまた船あるいは飛行機が出ますときに乗つて帰るのでありまして、ごく一時の、数日ないし一日というごく短期の臨時の入国者でありますが、これも一々港並びに飛行場におきましてわれわれの方の入国審査官が審査をいたしまして、ほんとうに船員であるかということを見るのでございますけれども、この数が非常に多いのでございます。毎月五万ないし六万という数になりますので、一年を通算いたしますれば数十万に上るのであります。実はこういう船員の中に化けまして密入国を企てるといつた事例も間々にあるのでございます。
 以上大体正規に入つて来る人数でございますが、このほかに日本の港以外に密入国を企てる者がたくさんございます。特に日本の地理的関係から、一番近い朝鮮半島から密入国をして参ります数は相当数に上るわけでございますが、現在外から入つて参ります密入国者を取締る官庁といたしましては、海に海上保安庁、陸には国警、自治警という取締り官庁がございまして、密入国者を防いでおるわけでございますが、密入国をした人たちが司法当局によつて処分を受けました後に、わが方の入国管理局の方に身柄を受けまして、それを強制送還いたしておるのでございます。大体の数字を申し上げますと、密入国をして検挙をされておる数は、最近におきましては毎月平均二百名程度でございますが、昨年、一昨年から比べますと少し減つております。一昨年は三百近い数が出ておつたのでありますが、だんだん減つて参つております。ただ密入国でございますので、つかまつた数がそういう程度でありますから、つかまらない数がどのくらいあるかということにつきましては、当局としては非常に知りたいのでありますが、その数字が現在ではわかりかねるのであります。ただそう多くはあるまい、少くとも半分はつかまえておるであろうというふうにわれわれとしては考えておるわけであります。密入国しました者を強制送還いたしますが、この不法に入つた者につきまして、一応出入国管理令によつて丁重なる手続によつて三段階の審査をいたしまして、その決定を待つて退去強制の処分をいたすわけでありますが、第一段階におきまして、密入国であることを承認し、密入国者は強制退去されるものであるということで、帰りますということをみずから納得したものにつきましては、第一段階におきまして処分が確定いたしまして退去となるのでありますが、何らかの理由をもちまして、さらに日本に残るべきであるということを主張されますものにつきましては、法務大臣に対します異議の申立てという手続によりまして、二段階、三段階の審査を経まして、慎重な審査のもとに決定をいたしております。この決心に基きまして退去を強制されました者は、原則としまして出て来たところへ帰すのでありますが、この密入国者の年に二千名、三千名にも及ぶ大部分が、九〇%以上が、朝鮮から来ておる人たちでありますので、その人たちは一応長崎県の大村の収容所に収容いたしまして、毎月ほとんど定期に船を仕立てまして釜山に送つておるわけでございます。毎月出ます船には、平均しまして二百名ずつ乗せて帰しておるわけでございます。
 以上入国管理業務のごくあらましを申し上げた次第でございます。
○小林委員長 質疑の通告がありますから、順次これを許します。林信雄君。
○林(信)委員 出入国関係の現況につきまして御説明を承りまして、これに関し、またはその他の関係につきまして、この際御当局の御意見を承つておきたいと思うのであります。先ほど来手続に関しまして御説明があつたのでありますが、私の一応承らんといたしますことは、その手続に関して最も重要でありまする取扱いの面であります。このことも法令に規定のあることでありまするが、実際の具体例に当りますと、いろいろな場合があるであろうと思うのです。何分にも国内だけの問題でなくて、事は国際間の問題でありますから、単に普通の常識ばかりで考えられない。申しますれば、国際情勢にマツチして取扱わなければならない面も現われて来るであろう。従いまして、国家を中心といたしました過去を思い、現在に照らし、将来をおもんばかりまして、深く省みなければならない取扱いの面もあるのであります。こう考えます場合において、まあ一時の上陸といつたような程度でありますれば、これは別でありますが、なかんずく、永久の居住を希望いたしまする外国人の諸君に対しましては、いろいろ考えさせられるものがおそらくおありになるだろう。そういう面におきまして、一応抽象的にお考えになつておりますることは、どういうことなのでありましようか。また実際に公務に当られまして御経験になつたところにおいて、いわば御苦心の具体例もおありだろうと思うが、これら対外関係に関しまする一つの事務的基準といいますか、取扱いの基準といつたもの、及び具体的な御経験、例等によりましての御説明を伺いたいと思います。
○鈴木(一)政府委員 入国管理局が対象といたしております外国人は、その取扱いを誤りますればただちに外交関係に影響がございまするので、私は、常に、われわれの同僚並びに部下に対しましては、外国人の扱いということにつきまして、第一線の外交官たれということをモツトーにいたしましてその趣旨を徹底させているのでございます。ややもいたしますれば、権力を持つておりまする者としまして弱者の扱いをいたしがちでございますが、そういうことはいけない。特に、これから朝鮮に帰す人たちをとめておきます大村収容所のごときも、行くたびにそのことを申すのでありますが、ここはもちろん刑務所でもないし、そういう犯罪人を扱うところでもない、単に帰国する人たちの船待ちである。特に、外国人であり、わが方と対等なりつぱな人たちを扱うのであるから、その精神で、第一線の外交官たれということをすみずみまで徹底させて扱つておるわけでございまして、大村の収容所は、昨年の九月に落成式をいたしまして、ごらんいただいたと思いますが、現在の日本といたしましては最も完備した設備であると言つて過言でないほど、明るい、また民主的な扱いをいたしておるわけであります。食事その他につきましても、カロリーの点からも申分なしにやつておりますし、また主として朝鮮に帰る人たちでありますので、その風俗に合つた味をつけました食事を与える。あるいは最近におきましては、タバコ銭くらいは自分の労働によりまして得られるというようなことまで配慮いたしまして、中で、いわゆるアルバイトのできるような設備までいたしておるわけでありまして、入国管理の業務が単なる権力によつて人を扱うということ、そういうことから全然離れて国際慣例によつて民主的な扱いをやる、人権を尊重した観念によつてどこまでもあたたかい気持で扱うということをモットーにいたしまして取扱つておる次第でございます。御質問の趣旨は具体的の扱いがときによりまして一部のものが粗暴に流れておるというようなことを御指摘になつたのかとも存ずるのでありますが、万一そういうことがございますれば、どうか私の方にお知らせを願いたいと思いますが、その都度ぜひ末端までその趣旨を注意いたしまして徹底さしたい、かように存じておるわけでございます。
 私たちの扱つております対象である外国人の大多数が東洋民族でありまして、特に朝鮮の人たちが多いのでありますが、われわれの考え方といたしましては、その取扱いにつきまして東洋人であろうが西洋人であろうが、その人権を尊重した扱いにおいて何ら差別はないということでやつておりますが、先ほど御指摘がございましたように、朝鮮あるいは台湾というようなところはかつて日本の領土でありまして、そこにおりました人たちは日本のわれわれの同胞であつたのでありまして、そういう面で何か特別な扱いぶりがあるかという御質問であろうかと思いますが、この点は特に密入国者がありました際にその人たちを強制送還処分にいたしますが、そのときの考え方というものに具体的に一般の西洋人と違つた考え方が出て参るのは当然であるのでありまして、特にかつて日本人であつた人たちに対しましては十分な扱いをいたしておるつもりでございます。ただ御承知のように、終戦前に朝鮮から日本に渡りまして日本に在住しておりました朝鮮の方の数は、約二百万を越えておつたのでありますが、終戦後に百三、四十万朝鮮に帰つた、現在その差額の六十万程度の人が日本に残つておるのでありますが、朝鮮から日本に密入国をいたします動機をいろいろ聞いて調べてみますと、実に気の毒な人たちばかりなので、日本がたとえばアメリカのごとく経済的にも余裕がある国でございましたならば、かつて日本人であつたそれらの人たちは喜んで日本に受入れらるべきであると存ずるのでありますが、日本の現状はこれに反しまして、必ずしも全部日本から帰りました百三、四十万の朝鮮の人たちをおいでなさいといつて受入れるだけの余裕がないということになりますれば、どこかでこの範囲の人はよろしい、この範囲の人は受取りがたい、帰すというふうな線を引かなければならない。もともと世界共通に申されますことは、密入国者は必ず帰すという原則でありまして、その国際慣例によつて出入国管理令はできておりますので、一応密入国者は帰すという立場から立法されておりますが、その運営にあたりましては、今申し上げましたような特殊のものにつきましては割に甘い扱いになつておるのではないかと私は存じております。具体的に申しますれば、日本に相当長くおつた人がたまたま朝鮮に帰つた。その人が動乱で日本に来られなくなつた。いわゆる正規の外航旅券を請求して日本に帰ればよろしいのでありますが、それも非常に困難であるというようなことでやむを得ず日本に密航して来たというような例があるのでありますが、そういうような問題につきまして、一々そのケースケースを見まして、日本とのかつてのつながりまた将来のつながりというような面を考慮いたしまして、慎重なる審査の上で決定をいたしておる次第でございます。ただ最近の傾向といたしまして、婦人、子供が集団で密航をして来るという例が非常に多いのであります。以前はよく数名程度であつたのでありますが、それが二十名、三十名という集団で参る場合がございます。そういうものに対しましては、われわれの方としましては、集団で現行犯でその場でつかまえられたというような人たちは一括して帰すということの方がはつきりしておりまして、そうせざるを得ないという見解でおるのでございますが、その集団密航に際しましては大体ブローカーが間に介在をいたしておりまして、そのブローカーをたよりまして日本に来れば案外手軽に密入国ができるのではないかというような感じを受けております。そういうものに対しましては、つかまつたものは必ず帰すという原則を強行いたすことが密航を将来とめる方法であるというように考えておるわけでございまして、一人々々の場合におきまして、たとえば子供のごときその個人をとつて事情を聞きますと、まことに気の毒な者がかなりある。ところがさらによく調べてみますと、親はいないと言つておりながら本国に親はいる。密航するためにいろいろうそを申します者が非常に多いのでありまして、こちらからそういう者を帰しましても、決して人道にもとることはないという例が非常に多いのでございます。そういう点につきまして法の運用につきましてわれわれとしましては頭を痛めておるのでございますが、われわれの当局の一番頭を痛めるそういう点についても、御同情を賜わりたいと存じます。
○林(信)委員 お答えになりました前半の事柄は、われわれもそれぞれ収容所の実態を見まして、御配慮になつておるような心持が十分処遇に現われておると存じます。決して刑務所的な扱いでない点はきわめて適当であろうと考えております。従いましてそういう面についてとかくのことをもちろんわれわれは耳にもいたしておりません。ただその後半でありまする密航関係の者の在留許可に関する面でありますが、これらの諸君がやすやすとして在留し得る理由があるとは、もとより私も思わないのであります。そのための出入国管理令であるのであります。しからばといつて、ただこれらの諸君を入れない建前であるのだが、一切強制送還することになつておるかといえば、それは法令自体が規定いたしておりますように、時によつてこれを許す。かつて日本国民として本邦に国籍を有したことがあるというような者とか、「その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき。」等、これはやはり実際の要請に応じてできた規定であり、これは生かして考えて行かなければならぬと思うのです。従いまして、お述べになりましたような御苦心があると思うのであります。それを一切合財追い返してしまうということになれば、法の建前から行けば、出入国管理令は出入国禁止令の名をもつてかえるべきが適当であつて、それは決して適当な管理ではないと思う。先刻もお述べになりましたように、その在留許可等の取扱いはむしろ甘きに失しておるのじやないかというお話なんですが、それほどであるといたしますれば、やはり法の一応ねらつておりまする禁止令的な考え方でなくて、管理的な法令として事に当つておられることはうかがえるのです。しかし、言葉じりをとらえるわけではないのでありますが、この問題はお話のようにきわめてむずかしい問題だと思うのです。言葉のように甘くてもこれはいけないと思うのです。辛過ぎてもいけないと思うのです。適正な言葉を思いつきませんが、いわゆるその処理はきわめて適正でなくてはならぬ。公正であるのはもちろん、適正でなくてはならぬと思う。法に示しまするところは、きわめて抽象的な言葉をもつて表現せられておりますから、凡百の具体例に至りますると、非常にむずかしい問題があると思うのですが、特にわれわれが痛感いたしますることは、外国人といえども人なんですから、人間はただりくつだけでは生きて行けないと思うのであります。愛情が基盤となり、これがきずなとなつて、ほんとうに人生というものは過して行けるものであろう思うのです。しばしば世上国境を越えた愛情が美しいものとしてたたえられた例は多いのであります。愛情というものは国境によつては区別せられないのが、広く人道上の見方ではないかと思うのであります。国際愛に徹して、人道上からながめました場合の問題が、この種の密入国者の間において考えさせられるものがしばしば起つておるであろうと存じます。私も少い経験の間においてこれを経験しておるのです。たとえば御説明にあります最も数の多い朝鮮人、次いではおそらく中華の諸君であろうと存じますが、朝鮮のごときは一衣帯水でありますので、戦時中のあの事態で災害を避けて疎開の心持で避難いたしましたような諸君、これが一家こぞつて朝鮮へ疎開的に移動しておりました者、あるいは夫婦わかれわかれになり、あるいは親子別々となり、あるいは兄弟そのところを異にしておつたというような幾多の例があると思うのですが、それが時治まつて今日何といつても親子の情、兄弟の情、夫婦の情愛よりして一緒に暮したい。方法としては、日本にいる者が朝鮮に帰り、あるいは台湾に行く場合もありましようし、かの地より来る場合もあるのであります。そういつた一つの例を考えましても、またその後において特に近親の者が重病になり、あるいは死亡したといつたようなところから一時渡鮮したような者、あるいは同居生活はしていなかつたにいたしましても、かの地において何ら扶養する者がなく、比較的近親者にして日本に在留しておる者がこれを扶養してくれる十分の見込みのありますような場合等々、適当な例を私はあげ得ませんが、これらの例から見ましても、人道上の見地からいたしましてまことに惻隠の情禁じ得ざるものがあると思うのです。それらの者も、国際慣例をもつてし、ただ日本に在住せしめることが少くとも利益するものでないというような考え方一点ばりでその在留を許可しない。それはそう認めたという法の規定によつて扱つておると言えば言えないことはないでしようし、違法でないのかもしれませんが、はたして法の底を流れます真の法意に適合しておるかどうかということは考えさせられると思う。この法令がその規定をつくつておりますのは、真に大所高所よりいたしまして、日本国家として、日本政府として、日本人としてこうあらねばならぬというその心持に従つて取扱うべきであることを表現しておるものと考えるべきではないかと思う。かように私は存じますがゆえに、いたいけな子供のあるいは婦人の連中がかなり集団的にやつて来る、それはやつかいなことではあります。そのすべてが情において、来たからという一点のみをもつてこれの入国を許可し、あるいは在留を許可するということの不適正であることはもちろんであります。そんな甘いことが許されようわけがないのでありますが、それらの諸君を十分検討いたしまして、諸般の実情を慎重に、また綿密に調査いたしましたならば、さつき申しまするような見地より、国境を越えた高いヒューマニズムよりいたしまして、これを許すことが適当であると考えられるものがあると思う。ここにいたいけな子供が参りまして、あちらには身寄りの者がない、あるいは遠い者であつて、こちらにはきわめて近親、なかんずく父あり、母ありというようなものを引離す、実際に具体的な場合になりまして、そういう場面を見ておると、見ておれないような悲惨なものもあるのであります。こういう、いわばそのこと自体に区切つて考えてみますると非人間的といいますか、残酷な場面をそのまま見過して、これを密入国者として送還してしまうということは、法の規定、法の趣旨及び人間愛情の問題、これにプラスいたしまして、将来の国際親善、国交に及ぼす影響等を思いまするとき、この問題は一層慎重に考えなければならぬ問題であると思うのであります。これらに関しまして御当局は、従来法務大臣の言うところは、決してただいま局長の言われたような、なるべく峻厳にしてその例を繰返さないという一つの標準を打立てるような方針であつたようには承つて来ておらぬのであつて、ほかにもつと日本国として日本国民として適当な基準があるはずだと思う。その御基準がありまするならばお示しを願いたいし、また具体的にあたりまして、どういう御苦心がおありになりまするのか、これをお伺いしたいと思うのであります。
○鈴木(一)政府委員 お話の人道的な扱いという趣旨はわれわれもその通り考えておるのでありますが、これを具体的に運用いたしまする場合には、おそらくしよつちゆう数多く当つておりますわれわれと、それから個々の事例に御関係になりまする方々との間には、いわゆる傾向の相違があろうかと思いますが、われわれの方は、どうかそういう人は正規のパス・ポートを持つて入つて来てください。正規の道があいているではないか。なぜそつちの堂々たる道を歩まないで、密航をして来るのかということを申し上げているわけでありまして、お話のようなことにつきましてはりつぱな道があいておるのであります。ただこれは私の忖度でありますが、おそらくパス・ポートをもつて入つて来るということには、多少韓国側においては万人ができるということではなしに、一般的に道はあいておるけれども、実際その道を通れる者はそうたくさんはないのだということであるので、密入国になつて現われて来ておると思うのでありますが、そうしますると、韓国の国内事情をわれわれの方でしりぬぐいをしておるというような、まあまずい表現でありますが、そういうようなかつこうになつておるかとも思うのでございます。ただ、日本側といたしましては、韓国の事情いかんということはそう取上げるべきじやなくて、やはり法律が明示しておりまするように、正規に入つて来ていただきたい、不正規の人は原則として帰るんだという建前は、日本国としては貫いて行くべきであろうと思うのであります。ただそうばかりも申しておれませんので、具体的な問題には、大臣の御指示もございますし、大臣のお気持もよく事務当局にもわかつておりますので、できるだけあたたかい気持と法の冷厳なる運用との両方の間をどういうふうにやつて行くかということが、われわれに課せられました責務であると思つて、この審査にあたりましては、個々のケースにつきまして実に慎重に頭を悩しながら大勢で判断をいたしまして、解決をいたしておるわけでございます。先ほど申しましたように、この標準を、小さい子供は気の毒だからいい、あるいは夫婦であればどつちか一人はひとつ認めてやろうということになりますと、一時そういう時期があつた、お話のような基準で一時やつたことがございました。その際に結果として現われましたことは、女と子供の集団密航が急にふえた、それはあれが許されたから、おれも許さるべきであるということで、一つの標準が与えられますと、それを上手に使つて入つて来るということが往々にしてございますので、実はその点につきましてはわれわれとしては非常に苦しんだのでございます。そこで現在におきましては、ただその人たちが日本においてりつぱな人であり、あるいは生活に不安がないとか、あるいは日本の治安を乱さない人であるというごく普通の条件だけでは、これは先ほど申しましたようにあの百三十万人も全部受入れるということになりまするので、何かそこにもう一つ標準を設けたい、今ねらつておりますことは、かつて日本に非常に協力したとか、あるいは日本人の生命を助けてくれたとか、要するに日本国家としてその人に恩義を感じておる、その人をどうしても助けてやらなければならぬという高度な積極的な理由があります場合には、密入国であつても何とかそれは見てやろうじやないかというようなことを一つの標準としておるわけでございます。そのほか先ほど申しましたように、長いこと二十年も日本におつた、日本に本拠があつた人というようなことでありますれば、その人がたまたま向うに行つておつたという場合助けてやるということももちろん考えられるのでありまして、われわれの方でやつておりますことが非常に冷酷無比に扱つておるようなお感じもお持ちかとも思いますが、事実はそうではないのでありまして、異議の申立によりまして大臣の裁決まで上つて参ります事件について言えば、大体半分くらい救われておる、それで決して峻厳冷酷なものであるということはないと思うのであります。
○林(信)委員 まだ少し私のお尋ねしていることとお答えとがピントが合わないように思うのですが、繰返して言われます原則として、密入国者は送還せられるものだ、これはいわゆる当然でありまして、それを私伺つておるのではないのであります。特殊の場合に、特に法にも規定せられておるところでもあるし、考え方において許さるべきものが許されずに取扱われるということが遺憾である、端的に言つてしまえばこういうことなんであります。お話のように朝鮮なり、台湾なりの諸君は、かつては四十年、あるいは五十年にもわたる同胞としての諸君であつたのですから、一夜添うても妻は妻というようなもので、長い間の同胞生活をしておりました者には、それだけのまた人情というものもあり得ると思うのであります。向うにありまするし、われわれも持つてしかるべきものであると思う。そういう諸君が、目の前に人として、家庭人としてまことに気の毒な状況にありまする者を路傍の人のごとくに見ることがはたして日本人としてどうであるか、こういう結論なのです。しかしこれに対しては、それはあつちの方から――この場合朝鮮が主体です。台湾においてはそれほどやつて来てないでしよう。朝鮮の諸君との関係が深いのでありますから朝鮮が多いのですが、どんどんやつて来ることになつたならばいわば際限がないという考え方、これもわかるのであります。しかもそれは事情があるならばそれだけの正規の許可を得てやつて来るべきであり、来たらいいじやないかといつたような考え方、これも一応わかります。しかしかの国におきまして実際はそれが適正に行つておらぬということでありますれば、これはやはり考えてやらなければならないのではないかと思うのであります。向うの方がものわかりが悪くてわからぬことをしておる、そのためにこつちへやつて来たい者のうちにおいて気の毒な者があるという、お前の方で適正な政治がなされずに、適正な手続ができずにやつて来たんだから、おれの方じやいささかも同情するものがないといつてつつぱなしてしまいますることが、人道国家をもつて誇る日大国民としてどうであるか。もう時代もしかも国家の国政状態も変化しておりまするからあまり大きなことは言えませんが、少くとも大韓民国と比較いたしました場合の日本国は、まつたく等外囲と等内国の相違はこれは歴然としておりますし、一小国と一大国であるということもこれは言えると思う。その大国民の襟度として彼がまずいんだから、おれの方もまずくてけつこうだ、そんなやつはけ飛ばしてもけつこうだというふうな考え方、こういう思想が日本国民としてどうか、国家の外交面に及ぼす影響、日韓会議の行き悩み等も現実に見せつけられておりますし、これがすべての障害であるわけでももちろんないのでありますが、また障害の一こまにならないとも断言できない。これらを考えあわせまして、ここにまだ考えるべき面、再検討しなければならぬものがあるように思われてならないのです。このことを申し上げておるのであります。しかし現在お考えになつていることは、ただいままでに言つたことに尽きておると言われればそれまででございますが、これに関連して思いますのは、はなはだ失礼な言い分でございますけれども、これらの仕事に対しまして今までやつて参られました皆さん方に対してもその気分を軽くし、あるいは責任を軽くするという面から考えましても、また広く人をさばくといつた見地からされましても、すでに幾多の例が現われて参つておりますが、官に加うるに民の知識をもつてす。官民一体となりました一つの考え方を結論として出すという何々審議会といつたような、この種の制度を一つお加えになつて、やつてみたらどんなものであるかと考えておるのであります。これらに関して御考慮になつたことがありますか、あるいは考慮してみようというお考えでありますか、または全然必要ないと考えられますか、こういう点もお伺いしておきたいと思います。
○鈴木(一)政府委員 ただいま特に日韓の問題につきまして、現在の韓国政府がやつておりますことの関係から密入国者がふえておるということについて、韓国側はこういう態度であるから日本側はこうやつてもよろしいというようなふうに伺えますことがございましたが、これは先ほど私が申しましたのは決してそういう意味ではないのでありまして、その点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。特にこれは私の持論でありまして、現在の朝鮮人問題というものにつきましては、現在の韓国政府と関係なしに、在日朝鮮人の問題は日本の内政問題として扱うべきであるということを――これは入国管理局長の言う言葉でないかもしれませんが、私は政府としてそういうことをお考えいただきたいということをかねがね申しておるのであります。まさにそのことを御指摘になつたように思いまして、非常に私はありがたく思うのであります。先ほどお述べになりましたのは、密入国者に対する審査会といつたようなことのように小さくとればとれるのでありますが、これを大きくとりますれば、密入国者を日韓の関係から考えて国策を定めて行くという町までさかのぼりますと、これは単に密入国者だけを扱うという審議会ではいけないのでありまして、日本国が日本に六十万おりますこの朝鮮の人たちをどういう心組みで扱うか、この根本の政府の腹をきめる、あるいはそのきめたことによつて運用する審議会でなければならないと私は思うのであります。そういう意味合いにおきまして、国会方面から日本政府を鞭撻していただきますことは非常にけつこうなことで、これはまさに細々ではありますが、私が政府部内に対して、いろいろ進言をしておることなのであります。どうかそういう意味で、単に密入国者の審査のための審査会というような小さなものではなくて、もつと大きく在日朝鮮人全体の総合対策をどうするかという線までひとつ拡大してお考えいただきまして、ぜひ実現をおはかり願いたいと思うのであります。
○林(信)委員 在留朝鮮人の諸君の処遇について、広く検討を試みる機関等御希望のありまする点はよく了承いたしました。しかしこれは別の機会にいたしまして、当面いたしておる出入国管理令関係についていま一点お聞きしておきたいと存じますことは、ただいま申しましたような一こまを考えましても、加うべき制度の一つが考えられ、あるいは在来ありまする規定につきましても改廃すべきものが幾多あると思うのです。これは私実例より経験しました一つですが、たとえば幼児が密入国をして来た。これらに対して入国審査官が審査をする、そうしてその結果を通知して異議の有無を聞きまして、異議がないということでこれに服した者を強制送還をする。こういうようになつた実例を思いましても、なるほど意思能力がないとは言いませんが、是非の弁別は、常識的に考えまして相当年齢に達しなければできない。九才であつたり十才であつたり、十五、十八、しいて言えば二十未満の者にこれらの結論を出させることは無理だと思う。そういう者を、本人相手にしまして取扱いをしてしまうということは、規定の上では、書類の上では一応できたようになつておりますけれども、実際は、それはあつてなきがごとしじやないかと思う。こういう場合、日本の訴訟手続関係におきましては、付添人であるとかあるいは補佐人といつたようなそれぞれの決適例があるのです。そういうものがここに制度として加えられなければならぬと思う。あるいは五十三条の場合において、退去強制を受ける者の送還先というようなものの規定がありまして、いわゆる本人の希望により云々というようなことでそれぞれの方面があげられておるのですけれども、朝鮮人の場合はそうでもありませんが、中共関係の者あるいは中華の者においてはこの規定によつてそのあて先を求めようとしまするも、そのあて先の判明しがたいものあるいは本人の希望といいまするけれども、本人の希望はただ一つであつて、それらの国にいたくないから日本に来たのであり、日本に在留したいという希望なのである。それであるのにどこかに送り返すというならば、どうすればよいかというようなもう少し立ち入つた規定がなされなければならぬと思う。現に最近問題となつておりますような中華の諸君の三百名にも及ぶ者がどんどん入つて来たが、まだ一人も帰された者がない。おそらくこの辺の規定の不備よりしてどこに帰しようもない。本人の希望といえば、本人の希望はちつとも帰りたくないのだというようなことも災いしておるのではないかと思うのでありますが、さようなことは一、二の例にすぎません。元来、これは占領中につくられたポツダム政令が、ただ今日この出入国管理令に切りかえられただけのものであつて、規定はそのままであります。いわばアメリカからの天くだりのものだ、それがそのまま今日まであり、まだ一向にその改正も考えられないということは、私は当局の一つの怠慢と言われても弁解の余地がないのじやないか。もつと早く改正せられ、少くとも改正の方向に向うべきであつた。もしそれ改正ということに相なりますれば、単なるアメリカの立法例的なものにのみ準拠すべきではなく、各国の例を取入れて、特に今日日本の置かれておる国際上の地位を思い、国際情勢等にかんがみまして、真に適正なものがこの際に早急になされなければならぬと思う。斯界のベテランでありまする鈴木さんのこの点に関する御意見を伺つておきたいと思うのであります。
○鈴木(一)政府委員 ただいま出入国管理令がポツダム政令をそのまま受け継いだ法律である、改正をすべきであるという御意見につきましては、われわれもまさにその通りに考えております。われわれの方としても、外国人のこうした国際的な方式による管理ということは初めての仕事でありまして、一、二年間はこの法令でやつてみて、どういうところに欠陥があるかということを研究しつつ進んでおつたのでありますが、三年にもなりますれば、ややわれわれの方といたしましてもここをこうしたらよいというようなことがおいおい出て参りまして、目下外国の立法例ももちろん調べてそれぞれ研究ができておるわけでありますが、この出入国管理令についても、各条について目下改正の研究を続けておりまして、近いうちに成案を得たいと思つておる次第でございます。
○林(信)委員 大分今までお尋ねしたことに離れるようでありますが、ちよつと変な話でありますが、入国管理局で仕事をなすつておられるたくさんの諸君は、今までの経歴から見ますと、外務特出の人あるいはそうでなくて法務打出の人で、この出身関係よりして事務的にどうもぴつたり考え方が行かないというようなことがあるのではないかと、実は巷間に伝えられておる。そんなことはありませんということであればけつこうなんですが、もしそういうことがあるといたしますと、たいへん不自由でもありましようし、これはまずいと思うのであります。もしそういうことがあるならば、何とか調整をしなければならぬ問題です。また考え方によつては事の性質上そういう諸君がむしろ一緒にならなければいけないんだというふうにも考えられます。そうすると、その調整をどういうふうにして行くかということについて十分お考えにならなければならぬと思うのです。全然御苦心がなければけつこうですが、あるといたしますれば、局長のそれらに対するいわば御苦心談みたいなものを伺つて、われわれもいささかでも御協力できる面があれば御協力申し上げたい、こうも思うのです。この事務的な面の内面だけでなしに、先刻来申し上げておりますようなことで、少くとも外務省との密接な連繋は必要であろうと思うのですが、こういうことが、考え方でなしに実際のビジネスとして定例とかあるいは臨時ということで、連繋が具体的な例としてどういうふうにとられておるものなんでありましようか、全然ないものなんでしようか、これを最後に伺つておきます。
○鈴木(一)政府委員 部内におきまして出身によつていろいろ摩擦があるのではないかという御指摘でございましたが、私が見ております範囲では、ないと申し上げたいのであります。むしろ入国管理局が三年前にできました当時、出入国管理庁といつて出発したのでありますが、ほんとうの一夜づけの役所であつたのであります。二週間の間に法律を出せ、役所をつくれという最高司令官の命令でできた役所でございますので、非常に急速に諸事取進めまして、陣容も何百名かそろえなければならぬということで、その基盤が最初は外務省にあつたのであります。その当時一番人数を要します警備官には、主として日本から中国に行つておりました領事館の警察の人たちを、ちようど職がなくておつた関係で急速に集めることができましたので、そういう意味でむしろ領事館警察に近い気分があつたということは言えるのでございます。その後この出入国管理令ができまして、いわゆるイミグレーシヨンとして新しい国際的な機関としての機能を果すために新しい気分で一致団結して行かなければならないということで、不肖私がずつと最初から携わつて指導をして参つておるのでありまして、その後一昨年の八月、法務省に入つたのであります。法務省の方からは、特に弱体である入国管理局に対して非常な援助をしていただきまして、やつとここに至りまして一本立ちができるような姿になつて参つたのであります。私の念願いたしますことは、部内に二つの潮流があるということでなしに、新しい入国管理という独得な世界的な機構でございますので、いわゆる法務省の検察あるいは外務省の外交という範疇とは別個な、新しいイミグレーシヨンというものの新しい気分、新しい組織、新しい団結というものが必要である、それに向つて目下指導をいたしておりますので、御心配の点はないと思うのでございます。
○小林委員長 木下郁君。
○木下委員 出入国管理令は改正して行かなければならぬという点のお話がありましたが、私はさつきから伺つておつて二、三まだはつきり了解しがたい点があるわけです。その点についてお聞きしたいと思います。密入国をしたのはその手続が悪いから、そういうのを戒める意味、けじめをつけるような意味でイツコンタクリに返すことにする、そういう方針だと伺つたのですが、この点が出入国管理令の運用の面で一番考慮しなければならぬところであると思うわけであります。さつき林君からも事例が出ましたが、私の知つておる事例でも、両親とも戦時中から日本の内地におつた、たまたまおばあさんか何かが朝鮮におるので疎開の意味で子供をやつておいたら終戦になつてしまつたというようなことで、まだ十才にも満たぬような子供が密入国の一つの団体にまじつてやつて来たという事例があります。それは、やつて来る手続はなるほど間違いです。妙な例を申し上げるようですが、昔、今と違つて法定推定家督相続人が嫁入りする場合には娘の方は廃嫡する。そうでなければ嫁入りができないというので、廃嫡手続という非常にやつかいなものがあつた。そのやつかいなものをのがれるために東京市内では、御記憶もあると思いますが、それを商売にするのが出た。娘のところに自分の男の子を養子にやつて、そして娘に廃嫡の手続なくして嫁入りさせる、翌日はその養子縁組を解く。だからその男の子の籍を見ると、十何べんも養子に行つているというような事例があつたのであります。手続がむずかしい、弁護士に頼んで廃嫡の手続をすると相当の費用がかかる、それは自分では耐え得ないということになると、そういう方法をとる。それはまさによろしくありません。今のお話の密入国のブローカーというものが出るからそいつはけしからぬというのですが、その連中を取締るのにはおのずから別の方法があります。今の養子縁組を商売にしておつて、自分の男の子を養子にやる。そうして手数料をもらつて婚姻させて、翌日は自分がそれを離縁する。またよそでそういうことをするというような親、これは道義的にもけしからぬことですが、そういうものがこの婚姻届あるいは養子縁組届というものを、その意思なくして自分の商売としてするのですから、これは公文書偽造とかなんとかいう意味で取締るべきものであります。しかしながら実際的な社会的要求があつて廃嫡手続が非常にむずかしい、自分の経済力ではそれには耐え得ない、弁護士を頼まぬで自分でやればいいがといつても自分はそれができない、そういうものはその方法をとつて来た。それと同じような意味で、今の出入国管理令の手続がむずかしいからというので、朝鮮におる連中を密入国させるという商売人が出ておるかもしれない。その人間を取締るのには、おのずからまた別な方法を講ずればいいことである。行つて来た子供――両親は日本内地に戦争前からずつと引続き住んでおる。手続は間違つて来たかもしれないが、久しぶりに親子が何年かぶりに再会して、親子水入らずの楽しい生活をしておる、そういうものを追い返すべきでない。出入国管理令で永住許可をするのは、まさにそういうものをすべきであると思う。先ほどのお話によりますると、かつて日本のために非常に働いた人――それは日本と長く貿易をしたというような人もあるかもしれないが、おもにはそういう人は政治的に働いた人ではないかと思う。これは考え方によれば、かつての日本のあの帝国主義的な国の動きに加勢したいわゆる親日派的な人であつたかもしれない。そういう人について過去の功績というものを考えると、功罪はそう簡単に判断しにくいものだ。ただ永住を許可することが将来日本の利益になるかどうかという点が、一番むずかしい判断の標準にさるべきものだと思う。そこに行きますと、今の両親は日本の内地におり、そうして決してそれは第五列的な働きをするとかなんとかいう意味でもぐり込む密入国者でないことはわかり切つておる。小さな年のはも行かぬ連中なんです。その点ははつきりする。ただそれを親子だと称してだまして来るのではないかということは考えられるが、それは親子でないということが後にわかるならば政府はそのとき送り返してもいいし、またそういうことをした連中を罰することはちつともさしつかえない。そういう人情の一番大事な点にそぐわしてやるということが必要だ。それは年の行かぬ人間だから直接日本の利益になるかどうかわからぬ、そう言うこと自体が日本の利益にならぬことだと思うのです。そういう点で今まで永住許可をなさつた事例――数字は今すぐおわかりにならぬかもしれませんが、色わけにして、今の親子の関係というものを認めてそういう意味で許可したものがありはしないかと思うのですが、そういうものとか、あるいは先ほどお話があつたように、日本国に非常に功績のあつたものを許可したとかいうことは承つておりますが、大体どれくらいありますか、そしてどれくらい追い返したのでありますか、おわかりでしたら伺いたい。
○鈴木(一)政府委員 ただいまの数字の確たるものを持合せがございませんが、異議の申立てと申しまして法務大臣まで手続が参りまして、法務大臣がその特別許可をしまして在留を認めようという事案のうちで、半分ぐらいは在留許可になつております。従つて先ほどのような単身小さな子供がやつて来たというようなものは、救つたものもございますし、またその危いろいろな事情、理由等がございまして返したものもございますので、小さい子供は全部返しておるというわけでもないのであります。大体の見当は、大臣の特別許可の手続をしたもののうち、半分ぐらいは在留を許されておるというふうに御承知願つてさしつかえないのではないかと思います。
○小林委員長 何かそういう表でもつくつて出していただけませんか。どういう程度のものが許されて、どういう程度のものがこうなつておるとか、表に実例でも少しあげたものを……。
○鈴木(一)政府委員 材料をつくつて提出いたします。
○木下委員 これは実際の面では、常識的に見て何の追い返す理由はない。ただ来たやつが、先ほど申しましたように集団的に密入国した。この年の行かぬやつを入れるのには、私は先ほどかつての一つの婚姻の事例を申し上げましたが、向うで手続がむずかしいのです。そうするとやはりほかの人が行くときに一緒に連れて行つてもらおう、そうでなければ不安だということはあり得ることだ。行つて来た手続が悪いからといつて、それをすぐ無効にすべきものでない。やはり先ほど私が事例にあげた婚姻の点でも、一人娘と一人むすこが廃嫡の手続をしなければ婚姻はできないことに法律はなつておつても、昔の戸籍吏はこういうことには目をつぶつて婚姻させてしまう、あとで、あああれはするのではなかつたといつても、もう戸籍に廃嫡しないで夫婦ということで婚姻ができれば、それはやはり有効な婚姻だという取扱いをしておつた。私はその大審院の判例の取扱い方、それが法律生活と社会の実際生活とがみつちり行つた取扱い方だと思うので、決してそれが悪いことではない。ただそれを百も承知して書き込んでやる戸籍吏、これは罰してもよろしいのです。しかし一度あつたものはそうしてやる。それと同じような取扱いを、この出入国管理令においても取扱えるようにすべきではないか。ことに私が申し上げるまでもなく裸になつた日本人です。そうしてもう世界はやがては一つになろうということを日本人はやはり考えておる。その線に通じて、平和憲法をもつて国をやつて行こうという基本方針がある。それなら一番永住許可をすべきもの、していいものはかつての功績とかいうようなものじやなく、今の一番人情に沿うたものである。子供を親が引取つて、その親が日本内地でろくでもない生活をしておる、あるいは少し第五列的な運動でもするようなやつだとかなんとかいえば、それを返すとか返さぬとかいうのは別問題です。それと近く返すことがあるかもしれないような人間だからそれまで返さぬというならば、これはまだ理由がはつきりいたしております。それは経験の少い私におきましても、実際隣近所の人も、あの親子をどうして引離すか、警察も一生懸命になつて、親子だから何とかできぬだろうかと言つておる。そういうものをいつまでも、ただ出入国管理令によつてあなたの方の役所でこれをぐるぐるさせておる。そういうふうな取扱いがはつきりしないし、きびきび行かぬから、今の密入国ブローカーというものが出て来る。そういうことがひまどらないで、どんどんあたりまえの線で常識的にだれが聞いてもそれはという線で運営されて行きさえすれば、そういうものはずつと減つて来ると思う。これは資力があつていろいろ手続をし得る人間はできるけれども、実際は世間の狭い資力のな人間は、やはり仕方なしに親子引離されて追い返されて行く。これは立場をかえて考えれば、日本人の親子がそういう事情にある場合において、引離して一ぺん来た者を追い返すということになると、これは人情で、よしいつかは日本に対して同じような報復をしてやろう。これはだれだつて思いますよ。そういう点はやはり考えなくちやいかぬ。そういう意味におきまして実際のかれ等の話を聞いておれは、やはり集団的に密入国した。その事実一本でやるということは、これは取扱いの上では便利かもしれません。しかしそれは全体の法の運用の上から言つたら間違いだと私は考えます。そういう点については十分今後実情に沿うようにおやりになる意思があるかどうか。ただやつて来た手続が間違いだからと言つて、その手続の間違いを改めさせることだけを主にしてお考えになるかどうか。この点いま一度承りたいと思います。
○鈴木(一)政府委員 私の方は十ぱ一からげにするという考え方は持つておりません。個々に具体的の事情をあたりまして、今のような気の毒なものに対しては十分同情を持つた扱いをいたしたいと思つております。
○木下委員 お答え、まことに満足すべきお答えなんです。しかし実際においては、この朝鮮人は、疑い深いかもしりませんが、もう、一ぺん帰つたら、また許可を得て、その手続もなかなかむずかしい、どういうふうにするのかしりませんが、帰れない。せつかく久しぶりに会うことができたのに、追い返されたら生きわかれになるという連中が相当にあると思う。あたりまえの手続で実情を訴えれば、出入国管理令というものは、密入国した人間は、理由のいかんを問わず追い返すということにはなつておらない。これは改むべきところけたくさんあると思いますが、しかしやはりそこは特別の事情があれば、法務大臣は特に許可し得るだけの道が開かれておるのですから、それは十分に活用して民情に沿うといいますか、人種のいかんを問わず、常識的に納得の行く線できびきびやつてもらいたい。どうも役所の仕事というものはひまがいる。これは長官をなさつておればこの点は今後注意していただきたいと思うのですが、未決定のまま置くことは、その人が右するか左するか責任がはつきりしないからいいかもしれないが、えて官僚政治の弊害というものはそこにあるのです。現に保全経済会の問題にしたところで、匿名組合か匿名組合でないかがはつきりしないからといつて、事もあろうに法務省と警視庁と大蔵省とが相談して、一年半も考えておる。こういうばかげたことはない。自分がかんじんな地位にあればあるほど、その点は右にするか左にするか、はつきり自分の責任において判断すべきである。実はそれを一年半も考えましたというようなべらぼうな話はない。かつての行政裁判所が廃止になつたという一つの原因はそこにある。行政裁判所で一つの事件が結審した後判決が出るのは六年、七年は普通で、長いのは十三年、最も長い記録は二十八年かかつたというばかげた記録のあることを聞いております。ああいうことなら裁判所はない方がいい。双方の言い分を聞いて判断するというようなことは言わない方がいい。それと同じようなかつこうになるのであつて、現にこの出入国管理令の運用につきましても、積極的に、こういうことを言えば、ほんとうかどうか、疑問の点があれば、どしどし問い合せてもらえば、これは願い出ておる朝鮮人、子供はそういうことに答えませんが、両親はりつぱに答える。また、そういう連中の隣り近所の日本人もおのずからそれに対して判断します。だからそういう点はきびきび今後やつていただきたい。これは立場をかえて考えれば、すぐ結論が出ると思います。出入国管理令の役人が何人おるかわからないが、その人たちが同じ状態に置かれて、せつかくよそから何年ぶりに連れて来て、その手続は間違いがあるかしらないが、連れて来て会つて、親子水入らずの生活をしておる者をまた追い返すというような目にあつたときには、一体自分たちはそれに納得することができるかどうかということを十分考えてやつていただきたいと思うのです。なお将来管理令を改正するという点についても今のお話でそういうお気持もあるようであります。これはなるべく早くやつてもらいたい。国情も違いますし、情勢が違つて来た今日、それと先ほど林君からも話がありましたが、現に日本の新民法で家族関係というものについては家庭裁判所の審判員がたいていなことはどしどしきめておる。おやじが死んだ後に子供の認知というようなことまでもどんどんやつておる。民生委員みたような、家庭裁判所のその地の実情、その願出をしておる朝鮮人の生活の様子に詳しい人たちに許すか許さぬかということの最終決定を与える権能はやる必要はないかもしれないが、そういう人たちの意見を参酌してするということが必要ではないか。出入国管理令は外国人のことだから外務省だといわれるかもしれないが、外務省の役人というのは、おおよそ国民生活のまた社会のごみだめみたようなトラブルの起る生活というものはあまり知らない連中ばかり。外国との着飾つたつきあいをおもにする人である。諜報に出ておる人は別ですが、外交官という生活は、よそ行きの生活、舞台の生活がおもなんです。ところが出入国管理令の仕事は、生活の一番ごみごみしておるところを世話するというのが仕事。対外的の考慮はしなければなりませんが、仕事自身はごみごみした方の世話なんです。だから日本の国内事情を直接日本におる外国人の実情に沿うような方針でやつていただきたい、こういうふうに考えております。
○小林委員長 ちよつとお伺いしますが、韓国から日本へのパス・ポート――政府の人は別ですが、民間の人のパス・ポートを全然出さぬというようなうわさもあるのですが、実際は出しておるのですか。
○鈴木(一)政府委員 韓国から日本へ参りますときには、韓国政府がパス・ポートを出しまして、外交団係がまだございませんので、それをこちらの日本にありますミツシヨンを通じて日本の外務省に言つて参りまして、日本の外務省君からわれわれの万に連絡があるわけで、それに対しまして入国を許可してよろしいということを外務省に返事をして、また外務省がミッシヨンを通じて本国の外交部に通じているわけでありまして、日本に入ります場合には、パス・ポートを韓国側が出して、必ず入国管理局に連絡がございます。その関係から見ますと、韓国側から日本へ一月に三十名くらい新しい人が参つております。内容はやはりバイヤーが多いようであります。その中には留学生を認めましたのもございますし、また夫人を呼び害せるというようなものを認めたこともございまして、これは非常に例は少うございますが、道はあいております。
○小林委員長 他に御発言はありませんか。
 本日はこの程度にとどめて散会いたします。
 次会の期日は追つて公報をもつてお知らせいたします。
    午後三時四十三分散会