第019回国会 厚生委員会 第48号
昭和二十九年五月二十日(木曜日)
    午前十時三十八分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君
   理事 松永 佛骨君 理事 長谷川 保君
   理事 岡  良一君
      越智  茂君    助川 良平君
      降旗 徳弥君    安井 大吉君
      亘  四郎君    滝井 義高君
      柳田 秀一君    杉山元治郎君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
 出席政府委員
        国家地方警察
        本部警視長
        (刑事部長)  中川 董治君
        厚生事務官
        (薬務局長)  高田 正巳君
        厚 生 技 官
        (医務局長)  曽田 長宗君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局刑事課
        長)      長戸 寛美君
        参  考  人
        (警視総監)  田中 榮一君
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
    ―――――――――――――
五月二十日
 委員小平忠君辞任につき、その補欠として山口
 シヅエ君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 覚せい剤及び麻薬取締に関する件
    ―――――――――――――
○小島委員長 これより会議を開きます。
 覚醒剤及び麻薬取締りに関する件についての調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許可いたします。柳田秀一君。
○柳田委員 私は最近大きな社会問題になつておりますところの覚醒剤による、特にヒロポンによる幾多の犯罪事犯、特にこの覚醒剤が日本の青少年に及ぼしている害毒について、かつて中国は阿片によつて中国全体が虫ばまれておりましたが、今にして抜本的の対策を立てずんば、戦後の日本はヒロポンによつてくずれるということもあえて言い過ぎではなかろうかと思います。そういう意味におきまして当委員会におきましても、このヒロポン禍に関する論議は数回重ねられて来ております。これを立法的に、あるいは患者を収容するところの予算措置の問題、あるいは精神衛生の問題等からも論議されておりますが、それを通じて承ります厚生当局の考え方がはなはだ微温的であります。そこで私はきようは、特に国の治安を担当されているところの方々に御出席願つて、これが犯罪の面にどういうような影響を及ぼしているかというような点から、お尋ねなり、また論議をしたいと思つているわけであります。そこで警視総監がお越しでありますからまずお尋ねをいたしますが、ただお尋ねする前に御返答をいただくときのお心づもりに、私がどういう立場に立つて質問するかと申しますと、根本問題としてはヒロポンの製造を禁止しろということが一つ、それからヒロポン禍に対する罰則は思い切り強化せよということが一つ、従つてそういうような点に対してわれわれ厚生委員会として何らか立法措置を講ずる必要があるのじやなかろうか、こういうようなおもに三つの点から、立論の基礎になるものをお示しを願いたいという意味で質問申し上げるのであります。
 第一にお尋ねをいたしますが、現在ヒロポンの常用によつて起るところの犯罪の種別は、一体どういうものがございますか、その点をまず第一にお伺いいたします。
○田中参考人 ただいまヒロポンによりまするいろいろな、弊害につきましてお尋ねがございましたので、私からも申し上げたいと思います。
 実はヒロポン禍につきましては、毎年全国の自治体警察の警察長大会におきましても、これが問題と相なりまして、ヒロポンを製造禁止するような立法措置を講じていただきたい。またもしそれができないならば、その処罰を一層厳重にいたしまして、現在常用者以外に、製造販売をする者の処罰というものがきわめて軽微でございまして、われわれとしましては、抜本塞源的に常用者の処罰をすると同時に、製造販売をする者にもつともつと強い処罰をしていただきたいということを、毎年厚生委員会にも多分陳情いたしたはずでございましたけれども、まだそれが十分にお達ししてないかとも思うのでございます。
 そこで覚醒剤の昨年一箇年間の取締り状況から申し上げますと、昭和二十八年中に警視庁管下におきまして検挙いたしました件数が八千三百四件ございます。昭和二十七年の七千二百四十件に比較しますと一四%の増に相なつております。それから違反対象物としまして押収いたしましたものが、一昨年が四千三百六十九グラム、昨年は二万四千九百六十八グラムで約四倍以上に相なつております。水に溶かした液体が、一昨年が一千五百九十六万CCであつたのが、昨年は四千百十九万CC、これが約二・五倍に相なつております。原末が一昨年が二千百十七グラムで約五倍に相なつております。
 かような状況で年々検挙件数が増して参りましたし、これによつて押収いたしまする薬品類も相当数に上つておりまするので、常用者が相当激増いたしておるように考えるのでございます。
 昨年警視庁管下におきまして、常用いたしておりまする少年の数を調べたのを申し上げますと、二千五百九十名がヒロポンを打つておるのであります。それで実際問題といたしまして、不良少年の仲間に参りますと、うでやら手の甲、それからもものところにヒロポンの注射のあとがありませんと顔がきかない、ヒロポン注射のあとが多ければ多いほど顔がきく、それから次に女を持つていること、この二つが不良徒輩のリーダーシツプをとる要件に相なつております。警視庁で調べましたヒロポンを打つておる者が、今申しました二千五百九十名でございます。そうしてそのうちに刑法犯を犯しております者が七百五十六名、そのほか刑法犯以外の者が八百三十名、犯罪を犯すおそれのある者が百八十七名、不良行為として補導をいたしました者が八百十七名、計二千五百九十名と相なつております。そこで男と女の率はどうなつておるかと申しますと、男の子が二千二百四十名で八六%、女の子が三百五十名で一四%になつております。
 そこでどういう犯罪を犯しておるかと申しますと、この少年犯罪の中で殺人を犯した者が五人、直接ヒロポンのために殺人を犯したという者がこの五人のうちに一人は確実にございます。それからヒロポン患者で強盗をいたしました者が二十九名、しかもヒロポンが直接の原因になつておるというものが、その中に九件ございます。放火が一件、強姦が三件、これは全部ヒロポンが直接の原因になつております。暴行が十一件、傷害が五十六件、そのうち直接ヒロポンが原因になつておると認められるものが十二件、恐喝が四十三件、そのうち直接ヒロポンが原因になつておるものが二十六件、脅迫が一件、窃盗が四百九十件、そのうちヒロポンの原因によるものが百七十四件、すりが二十五件、うちヒロポンの直接原因によるものが十七件、詐欺が四十二件、このうち直接ヒロポンが原因になつておりますものが十九件、横領が十九件、うちヒロポンが直接原因になつておるものが六件、賭博が五件、うち直接ヒロポンが原因になつておるものが二件、さような状況になつております。
 そこでヒロポンが犯罪にどういう関係があるかと申しますと、大体におき、ましてヒロポンを打つために金が不足になる、金が不足になるために友だちのものを盗んだりあるいは人のうちへ入つて窃盗をいたしましたり、親、親戚のものを持出すというようなもの、あるいはヒロポンの金がほしいために他人とけんかをしましたり、あるいは恐喝をしたり、詐欺をいたしましたり、あるいはヒロポンの中毒のために発作的な病的現象を起しまして、あるいは他人とけんかをして傷害をするというようなもの、それからまたヒロポンの中毒病症の高進に伴う理性の麻痺、道徳心の喪失あるいは幻覚盲想というような発作的犯行等によつて、以上申し上げましたような犯罪が発生いたしておるのであります。特に申し上げたいと思いますのは、せんだつてたいへん社会の耳目を聳動させた事件が起きまして、申訳ないのでありますが、本郷の元町小学校で十一才の少女を強姦致死させました若い坂巻という二十一才の青年がございましたが、これがやはりヒロポン中毒患者でございまして、これがヒロポン中毒患者であつたことは、保護観察の人もよくわからなかつた。保護観察の方も言われたのでありまするが、これは結核患者でございまして、御殿場の療養所に入つておりまして、その後ひそかにヒロポンを打つておつたことが、保護観察司の方にも知られてなかつた。検挙されて、ヒロポン患者であつたということを、保護観察をしておつた人が初めて知つたということで、結局これもやはりヒロポン中毒患者の病的発作であるということが言い得るのでございます。
 以上のようなことで、大体におきまして少年の中でヒロポンを打つておる者は、いずれも不良の仲間に入つております。ヒロポンを打たなければどうしても顔がきかぬ。せんだつて警視庁におきまして、ヒロポンを打つておる、いわゆる常用少年の母親、または父親の座談会を開催いたしたのでございまするが、その際に、母親が涙ながらにわが子のヒロポンの中毒現象を語り、中にはヒロポンの薬が切れましたときに、親を傷害いたしたというような事件も発生いたしておりまして、これも親子の関係でありますから、不問に付しておるのでございます。
 そこで現在われわれといたしまして、取扱い上非常に困つておりますのは、せつかく警察で検挙いたしまして、その結果がどうなつておるかと申しますると、現在ヒロポンを持つておる者、それからあるいは原末または注射液を製造しておる者は、一律に三年以下の懲役、または五万円以下の罰金と規定してありまするが、実際は非常に刑が軽いのでございまして、製造した者も常用者も非常に刑が軽い。われわれといたしましてはむしろ抜本塞源的に、製造した者であるとか、あるいは販売した者は極刑に処していただきたい。少くとも麻薬取締法に準じて、密造者またはブローカーに対しては、七年ぐらいの体刑、五十万円以上の罰金程度に上昇する必要があるのではないか。それから現在警察で一番困つておりますものは、中毒患者を収容いたしますと、薬が切れると非常にこれがあばれ出すのであります。狭い警察の留置場で薬が切れるとあばれ出すものですから、警察官もしかたがありませんから、ヒロポンをほかから入手いたしまして打つてやる。そうすれば一応おちつくわけであります。それがために警察としまして、ヒロポン患者のために特別な留置場をつくつてやらねばならぬというような状況になつて、現在の財政から申しますと、特にヒロポン患者のために各警察署に留置場をつくるというようなことはとうていできませんので、保護室に入れまして、一応これを処理いたしておりますが、取扱上といたしましては非常に今困つております。
 それから現在千葉県の船橋市に、財団法人復興会の総武病院というものが設置されまして、これは非常によいことであると私は考えておりまするが、入院保証金一万円、入院費がおおむね二万円を要しまするので、貧困者の利用というようなことができません。現在ヒロポン患者の生活状況はどうなつておるかと申しますると、ほとんど大部分が下層階級でございます。千二百四人の生活状態を調べましたところが、六七・五%が下層階級で、浮浪者が一四%、中流家庭が一七・七%、上流が〇・八%、六七・五%が下層階級に属しておりまするので、せつかくこういう病院ができましても、なかなかこれを利用することが困難であるということが一つあるのであります。
 それから精神衛生法は強制入院を認めていませんので、ある程度法的にも欠陥があると思うのでありますが、精神病院は他の患者と区別した特別の病床を必要といたしますので、覚醒剤中毒者の入院をなるべく拒否するというような態度もあるようでありまして一特に中毒患者の重症者は精神分裂症として精神病院に入院させるのであります。しかし親権者あるいは保護者から言いますと、ヒロポン患者を精神分裂症、精神病者として入れるということは、いろいろ他に対する思惑、心配がございまして、精神分裂症と診断をして精神病院に入院させるということをみんないやがりまして、結局ひどい中毒患者も入院ができないという状況でございます。
 それから普通の中毒者は二、三箇月の入院治療で大体快方におもむきまして、ほとんど全快するのでございますが、ヒロポン中毒患者というのは精神薄弱者が多いのでございまして、これがために、しやばに出ますと、また再び不良の徒に交わりまして、そうして覚醒剤の常用を始めるために、せつかく快方におもむいたが、また再びその中毒患者になるというような状況で、取締り警察といたしましても、中毒患者の処置につきましては非常に困惑いたしておる状況でありまして、抜本塞源的に製造を禁止していただくか、あるいはこの罰則を一層強化いたしまして、少くとも製造販売した者に対してはもう極刑に処するというくらいにしていただいて、ヒロポンがだんだんなくなつて来れば、中毒患者も少くなるのじやないか、かように考えております。
 なおこの収容施設につきましても、ただいま申し上げたような事情でございますので、その点についても何らかの処置をしていただくことを、警察側としては希望いたしておる次第でございます。
○柳田委員 ただいま警視総監からたいへん貴重な資料を御提供願つたわけであります。治安の御当局者として、社会悪の根源をなしておるヒロポンに対しては、罰則の点において、あるいはこれがやみに流れておる製造販売その他の点において、あるいは精神衛生法の面において、収容施設等において、その他いろいろと手を焼いておられる。われわれ立法当局として、そういうような御苦労をお示し願つて、かえつて慚愧にたえないのであります。そこでさらにお尋ねいたしますが、このヒロポン患者というか、ヒロポン犯罪者が他の一般犯罪者と何らか特に異なるというような特異点、そういうものがございますかどうか。さらにこのヒロポン犯罪者あるいはヒロポン患者の年齢別構成はどうなつておるか。そういう点をひとつ……。
○田中参考人 大体におきまして、ヒロポン患者の年齢につきましては、これは犯罪ではございませんが、現在ヒロポン患者の八千五百九十七名の年齢別を申し上げますると、十四才から二十才ぐらいの間の者が千七百五名、全体の一二・五%、それから二十才以上の者が八七・四%、十四才未満になりますると、〇・一%になつておりまして、大体二十才以上のものが相当多いのじやないかと思うのであります。終戦後の混乱期に覚醒剤常用者が多くなりましたが、取締り強化のために、新に常用する者が漸次減少して参りました。従つて、二十才以上の者に違反者が多い。二十才以下の者については違反が少い。年齢別から申しますとかようなことに相なつております。
 それから犯罪の種類でございまするが、大体におきまして、犯罪は累犯者が非常に多いということが一つの特徴でございます。たとえば傷害をやるとか、あるいは詐欺恐喝をやるというのは、他の普通の刑法犯のものでありますと、ある特別な事情のために人を傷害したり、あるいは脅迫をする、あるいはまた窃盗をやることもありまするが、ヒロポン中毒患者の犯罪態様は、ヒロポンの中毒現象によつて起るものでございますので、同じようなことを何回もやつておる、何回も累犯を重ねるというのが一つの特徴でございます。それからまたヒロポンを打つてないときは非常におとなしくて、ほとんど犯罪者とは認められぬというような状況でございまして、やはり何と申しましても中毒現象から起る発作的な行為でございますので、傷害であるとかあるいは脅迫であるとか、そうした精神的な興奮状態から来る犯罪が非常に多いように考えられるのであります。
○柳田委員 警視総監は他に御予定もあろうと思いますが、そう時間はとりませんから……。ただいま都内の警視庁管内のことにつきまして警視総監から御報告いただいたのですが、これを全国的観点から、国警の刑事部長がお越しでありますから、その方からひとつ御説明願いたい。
○中川(董)政府委員 ただいま警視総監から警視庁管内のことについて詳細御説明がございましたが、全国的にいろいろな犯罪統計、その他関係警察から連絡を受けておりますので、それをまとめた状況を御説明申し上げたいと思います。
 覚醒剤違反事件の全国的趨勢でございますが、二十六年以来逐年増加している、こういうことでございます。数字的に申しますと、昭和二十六年は一万八千七百十一件であつたところ、二十七年は二万一千七百二十七件、二十八年は三万七千五百七十四件、これを人員で申しますと、二十六年は一万六千八百八十七人、二十七年は一万八千五百二十一人、二十八年は三万八千四百六十四人、こういう状況でございます。従いまして、この覚醒剤の違反事件は、関係機関相協力してこの予防と防止に一生懸命努力するとともに、犯罪の検挙につきましては、各警察とも非常な苦心をしておるのでございますが、違反者はますます多くなつておる、こういう結論に相なつておるのでございます。そうしてこれらの違反者のうち、少年の占める比率は、ただいま警視総監から御説明がありましたように、比較的少いのでございまして、しかも逐年減少しておるのでございます。これは昭和二十六年は二五%、昭和二十七年は一九・三%、昭和二十八年は一三・一%、こういうふうに相なつておるのでございます。
 私どもこの数字をどういうふうに考えているかということでございますが、だんだんヒロポン患者は累犯が多くなつて行き、だんだんと新たに成人の関係が多くなつておるということが一つ。それからわれわれ取締り当局といたしまして、犯罪はなるべく検挙という段階でなしに、補導とかそういう方面に力点を置いた指導とか取締り方針を立てているのも一つの原因でなかろうかと思うのであります。
 それから全刑法犯罪のうちで覚醒剤常用者の占める比率、全国的の統計はちよつとわかりませんが、ただいま警視総監から東京中心のお話がございましたので、大阪、近畿地方について、大阪管区本部のまとめた資料を中心に申し上げてみたいと思います。全刑法犯のうち凶犯とわれわれの名ずけている犯罪がございますが、これは殺人、強盗、強姦、この種の犯罪を申しておりますが、凶悪犯を犯した人間のうち七・一%が覚醒剤常用者である。そのうち、刑法の脅迫とか恐喝罪を犯したのを粗暴犯と呼んでおりますが、この粗暴犯を犯した人間のうち四・九%が覚醒剤の常用者である全刑法犯の七〇%は窃盗犯でありますが、窃盗犯のうち四%が覚醒剤常用者でございます。全刑法犯をおしなべて考えてみますと、全刑法犯で検挙いたします人間のうち三・六%が覚醒剤常用者である。こういう数字が近畿方面の関係府県の全部の統計から得た結論でございます。
 大体全国的な状況を数字を中心にいたしまして申し上げたのでございますが、具体的なケースは何と申しましても大都会が一番多いのでありまして、警視総監が御説明になつた状況と類似の形態において大阪その他関係府県に行われている、こういうふうに御理解願えばけつこうであります。
 全国的な数字から申しましての状況は以上であります。
  〔委員長退席、松永(佛)委員長代理着席〕
○柳田委員 警視総監からも国警の刑事部長からも、検挙者が年々累加しておるという御説明ですが、これは非常に大事なことだと思います。従つて、こういう検挙者が年々累加しておる原因は何か、ここへ問題をしぼつて行かなければ今後の対策に対する焦点がぼけて来る。そこで検挙者が年々累加している原因、どういう点が原因をなしているとお考えになりますか、これを警視総監なり国警の方から伺いたい。
○田中参考人 年々増して行くと申しますのは、先ほど私が説明いたしましたごとくに、二十才未満の者は数の点につきましては比較的少いのでありますが、二十才以上の者はやはり相当多いのでありまして、これはある意味におきましては、文士であるとかあるいは技術者であるとか、非常に興奮状態において制作するというようなよい意味における興奮剤使用の面もあるのでありますが、やはり興奮剤使用により性行為の満足を得たいというようなもの、それから不良仲間においてそういうものを使用しておりますので、先ほど申述べましたごとくに、注射の跡等が多いだけ不良仲間において重きを置かれるというようなことで、そうしたみえから来るものもあります。
 それからまたこれを利用する側以外の、提供する側でございますが、これにつきましては最初日本人の仲間でも相当に売つておつたのでありますが、最近におきましては朝鮮人なんかが相当これを販売して流しております。私どもの方におきましても、朝鮮人部落を何回も急襲いたしまして、相当な量をあげておるのでありますが、やはり販売する者があることによつてつい使つてしまう、やつてみるとなかなかいい、また一方においてはみえからもこれを使うというようなことから、需要者側がふえると同時に、それに基いてどうしてもヒロポンを売る者が出て来るわけであります。
 現在市場にと申しますか、やみに出て流れておりますのは、正規のものでは全然ないのでございまして、いずれも朝鮮人の部落等におきまして、きわめて簡単な方法によつてつくられておるものでございます。つくる方法としましては、御承知のように白金または銀を触媒としてエフエドリンから製造する製造方法としてはこれが一番簡単でございますので、これによつて原末をつくつて、蒸溜水または水に、一定の割合で混じて、自家製のアンプルに溶閉して、これをレツテルも張らずに流してしまう。もう一つのは、フエニル醋酸、塩化ベンゼル、青化ソーダなどの混合薬品を原料として、これらの化学的操作によつて製造するものでございます。ただこの方法は相当技術的な知識を要するのでありまして、原末密造につきましては前者の方法をとる方が簡単でありますので、当庁で検挙した原末密造六件のうち前者の方法によるものが四件、後者の方法によるものが二件ということになつております。朝鮮人等におきましては、原末を大阪方面から大体百グラム包み八千円程度でひそかに持つて参りまして、そして自宅でもつて水道の水または蒸溜水で割りまして、アンプルに溶閉してこれをひそかに売り出す。これが現在都内にも相当流れておるのじやないか、かように考えております。従つてわれわれとしましては、使う方があると同時にまたつくる方があるのでありますから、このつくる方を抜本塞源的に取締らなければならぬというので、朝鮮人部落等を何回も急襲いたしまして、その都度多量の薬品または原末あるいは水溶液等を押収いたしておるような状況であります。
○柳田委員 私の考え方は警視総監の考え方と大体同様でありまして、つくる側を押えなければならぬ。さらに今までのヒロポンは、正常なルートに流れておるものは一つもありません。みなやみのルートばかりでありますから、従つて使用した者に対する厳罰ということは同感でありますが、今申しました年々累加しておる原因は何かということであります。この点はしろうと考えかもしれませんので、ひとつお聞きかせ願いたいと思いますが、私が考えるのに、むしろやみで生産される量が年々ふえておるのではなかろうか。やみでふえるとなると、どうしてもそれをブローカーを通じてはかさなければ金にならない。従つて相当の手段を講じてやみの販路を広めておる。たとえて言うならば、ヒロポンの犯罪でも、ヒロポンによる幻聴幻覚が起るとか、そういう意味の発作的な犯罪、あるいはヒロポン代ほしさの犯罪、こういうふうにありますが、ヒロポン注射の入手に困つておる、入手に困つておるのは金がないから困つておるので、困つておるような人間に対しましてはその虚につけいつて、お前にはただで打つてやるから、これだけのものは責任をもつてはかせ、こういうふうな方法もとられるであろう。またこれがどこかの報告を見ましたところによつても、大学あるいは高等学校の学生等も使つておるということになると、試験勉強のときに何日か徹夜をする、こういうときにヒロポンを打つてみろ、頭がよくなるぞ、試験の前にヒロポンを打つておけばきつと合格するというような甘言を弄して、ブローカーが次から次と人を伝つてねずみ算式にふえて行くのではないか。むしろ検挙者が累加している原因は、やみで製造されておる製造量がふえておるのが根本原因ではなかろうかと思うのでありますが、この点はどうでしようか。
○田中参考人 先ほど私が御説明した中に警視庁におきまする覚醒剤取締りの結果の数字を申し上げましたが、これはいずれもやみで製造され、やみで販売されておつたものを全部押収されたのでありまして、大体一昨年よりは昨年の方が原末におきまして七倍、それから水溶液におきまして八倍の押収物件をあげております。それはもちろん取締りを何回もいたしました関係で多くなつたものもございますが、やはりお説のように密造並びに密売が相当多くなつておるのであります。特に関西方面から相当原末が流れて参りまして、それが都内に流れておるのではないかというように考えておりますので、なお今後もこの取締りだけは厳重にいたしまして、押収物件は全部押収してしまうという方法で取締つて行きたいと考えております。
○柳田委員 検挙者が年々累加する原因が、むしろ需要者にあるのではなしに製造者にあるという私の考えの一つのもとになるのは、統計を見ましても東京都に近接する神奈川県、静岡県、あるいは埼玉、群馬等に非常に多いのであります。これはやはりそういう東京都内に近接するところは、ブローカーがいわゆる需要者の販路を開拓するのにも都合がいい、あるいは開拓するのにもそれが採算に合うというような点があるのではなかろうかと推察されるのであつて、そういうところから検挙者がふえるのではなかろうかというふうにも考えるのでありますが、特に東京都に近接したところにこういう検挙者が多いという点をにらみ合せて、これに対してはどういうふうにお考えになりますか。
○田中参考人 私最初に申し上げました覚醒剤の原末の原料でありますエフエドリンが相当利用されておるのであります。このエフエドリンの取引状況でありますが、密輸入のエフエドリンは純白の精製品でありまして、米国製の旗印というのが一番優秀品だそうでありますが、香港では一キロ十七ドル前後で売買されており、内地ではブローカーが五百グラムを六千五百円ないし九千円くらいで取引をしておるようであります。内地製のエフエドリンは、麻黄から製薬会社で抽出して製薬するものと化学合成品と二つあるそうでありますが、国内消費は年間約五トン余でありまして、抽出品の価格は一キロ二万三千円くらい、合成品は一万六千円くらいで、内地産は主としてぜんそく、せきの薬などの製造原料として製薬会社で販売され、また薬局では粉末または錠剤として五グラムまたは二十五グラム包みとして市販されております。このように、価格はむしろ密輸入のエフエドリンの方が単価が安く、原末密造者は国内産では生産コストが高いので、密輸入品を原料にして盛んに使つておる。従つてやはりこのエフエドリンの密輸入ということも相当考えられますので、一方におきましてはこの密造を抑制する意味におきましてエフエドリン等の密輸入ということもよほと厳重に取締りをいたしませんと、結局エフエドリンそのものが覚醒剤原末の原料に相なりますので、こういう点も十分注意して行かなければならぬと考えております。
○柳田委員 仰せのごとくこのやみのルートは輸入、密造、譲渡、使用、こういう段階にわかれるのだろうと思いますが、最初、戦後は今国内で法的に製造を許されておる二つの会社の製品のレツテルを張つておつた。最近はそうではなしに、生じ出ておるということは信用度が高まつて来たという一つの証左であるということも何か新聞に出ておつたと思うのです。
 そこで製品が相当高度に機械化され、そしてかなり製品の精製度も高くなつて来ておるという現状で、先ほど警視総監のお話のように、朝鮮人部落においていろいろと小口の密造の場所もあるように聞いておりますし、先般来この青少年保護育成運動期間中に、後楽園あるいは深川等において手入れがあつたように聞いておりますが、それ以外に何らか地下に少くとも一つの企業として成り立つくらいの大きなやみ工場でもあるのではなかろうかというような疑いすら持つてるのですが、そういう点はどうですか。もしもなおそのほかに公開の席上で御答弁しにくいことがあるならば、委員長におとりはからい願つて秘密会にしていただいてもけつこうでございますが、そういう点もあわせてお答え願いたいと思います。
○田中参考人 大体密造の場合におきましてはきわめて小規模な工場でやつております。私の方でやりました中で比較的大きなものとしましては、大宮市で検挙いたしましたものは、小さい古い工場を借り入れて研究室をつくりまして、やはりエフエドリンを銀または白金の触媒によつて製造しておつたのでありますが、これが約六万五千本程度つくつて隠しておつた。これは元陸軍の薬剤関係に従事しておつた者で、復員してから非常に生活に困り、苦しくなつてやつたものであります。それから北区田端町の大内某というのが、これは朝鮮人が金を出しまして浦和市の常盤町の廃工場を借り受けまして、やはり研究所をつくりまして、昨年の八月から相当な機械等を入れましてこれをつくつております。大体におきまして大がかりになりますとすぐ警察の手が入れられますので、大体小さな自宅の八畳の部屋であるとか、あるいは二階でつくりまして、そうして転転として居所を転ずる。きようはここでつくつたけれどもあすはまたほかに行つてつくるというように、なるべく人目にかからぬようなところでつくる。従つて大規模の製造というものは現在われわれの方で検挙したものの中にはございません。大体において家内工業的な八畳の部屋でやるとか、二階のすみの部屋でやるとか、そういう小さなものでございます。ことにああいうものは小さいアンプルで、かりに一万本にいたしましても小さなものでございますので、製造の実体はさようなものでございます。
○柳田委員 ちよつと国警の方にお尋ねいたしますが、今全国で密造業者はどれくらいありますか。それからとにかく悪を伝播いたしますのはブローカーだと思いますが、このブローカーは大体どれくらいありますか。むずかしい統計ではありましようが、今までお調べになつてどれくらいの数と踏んでおられますか。
○長谷川(保)委員 ちよつと関連して。ついでに全国の中毒者の見込み数。
○中川(董)政府委員 この密造者とか、ブローカーの数はつかみにくいものですからしつかりした統計を申し上げにくいのですが、私ども刑事的に申しますと、覚醒剤違反の罪の中で、製造の行為で犯罪になつた数はわかるのでございますが、その他ブローカーとか、そういつた連中がいることも実際でございまして、そういう点の内偵には非常に苦心をしておるのですが、明確につかんだものはちよつと申し上げかねるので御了承を願いたいと思います。
○松永(佛)委員長代理 今長谷川委員からのお尋ねがございましたが、中毒者の数は全国でどのくらいあるか、ついでに御答弁願いたい。
○高田政府委員 中毒者の数でございますが、これも実はとても見当がつかない。あるいは何十万と言われ、あるいは百万とも言われているのですが、私ども昨年予算の問題なんかを考えました際に、いろいろの資料から一応の類推をいたしまして、大体この見当だろうという数字を実は立ててみたんです。これは実にあやふやなものでございましてさつぱり確信がございません。そのときに私どもが推定をいたしましたのは二十数万という数字を出したのでございます。しかしこれはまつたく確信のない数字でございます。御了承を願います。
○柳田委員 警視総監にお伺いいたしますが、大体警視庁で押収されてそこで調べられたところによりますと、一アンプルにつき原価は大体どれくらいかかつておりますか、さらにそれをどれくらいの値段で売つておりますか。
○田中参考人 大体密造いたしまする元でですが、元では一アンプル三円五十銭ないし四円で卸しまして、そうしてその間数人のブローカーが入りまして、結局実際の常用者の手に渡しまするときには現在相場が十五円から二十円でございます。
○柳田委員 そこで、わざわざ警視総監にお越し願つてお尋ねしたいことを一応聞いたんですが、これを法的に取締る、そこに麻薬取締法との関係もあります。現在ヒロポンもお説のようにまつたく軽い刑罰で、しかもその刑罰も実際にはさようには施行されておらぬので、あるいはせつかく警察当局の方でこれを検挙されましても、起訴猶予なつてみたり、あるいはその他わずかに一万円くらいの罰金になつてみたり何かしておるようであります。そこで先ほど警視総監もおつしやいましたように、罰則の強化ということはやはりわれわれも同感です。先般新聞に出ておりましたが、一読者の声として、中毒患者を犯罪として取締れという極論も出ておるのです。これは基本的人権等の関係からしてむずかしいと思いますが、中毒患者を犯罪として取締れ、これは一番きつい論ですが、これくらい思い切つた措置をとらなければ、先ほど申し上げたように、これは中国が阿片に苦しんだと同じように、なかなか根絶しにくいと思うのですが、これに対する御見解はどうですか。
○田中参考人 現在警視庁におきまして、中毒患者で犯罪を犯した者につきましては犯罪者として取扱つておりますが、そうでなくして少年の不良仲間でアンプル等を常にポケツトに持つておるとか、注射器と一緒に持つておるような者、これは不良行為ですから、別に犯罪にはならないのでありますが、そういうような者を連れて来た場合におきましては、われわれとしても実際取扱い上困りまして、あばれ出したり何かいたしますと、留置場でない保護室へ入れて注射を打たして、一応鎮静するのを待つて、聞いて家庭に引渡すという状況でありまして、われわれといたしましては、犯罪としてこれを取扱うことはいかがかと思つております。警視庁といたしましても、保護室くらいを整備して、そういうところでこれを保護して帰すという措置をとつております。できればこうしたものは元をついて薬をなくしてしまう、それによつてだんだん数を少くしてしまうということが、犯罪防止の上からも、社会道徳を高める上からも必要ではないかと思います。
○柳田委員 そこでやはり根源は密造の元をつかまなければならぬ。そこでこういう密造をしたり、あるいはこれを媒介したり、あつせんしたり、あるいは輸入したりする者に対して、今のような麻薬取締法その他のこういう法規では非常に手ぬるいと思うのです。かりにこれを罰則にするとするならば、法律をつくるのはわれわれの役目でありますから、そういう意味で専門家の総監にお尋ねするのですが、根本的に抜本的に罰則を強化するという建前では、どのくらいの罰則をもつて臨んだら適当か、これは御私見でけつこうです。
○田中参考人 先ほども申しましたように、体刑は今三年になつておりますが、少くとも七年くらいに持つて行くようにする。それから罰金につきましては、現在非常に額が少いのでございます。少くとも最高五十万円程度まで罰金をつけていただくようにしたらいいと想います。これは私の方の警察長の大会におきましても、多分決議をして罰則の強化ということをお願い申し上げたはずたと思います。
○柳田委員 私の方から総監なり国警の刑事部長にお尋ねするのはこれくらいですが、他の委員からの御発言があると思います。
 なお私はそのほかにこういうようなことを前提として、これが対策を厚生大臣並びに薬務局長にさらにお尋ねしたいのですが、その点を留保して一応これでやめておきます。
○滝井委員 関連して。今警視総監のいろいろな御説明で大体大要はのみ込めたのでございますが、第三国人が非常に覚醒剤の製造に関与をしておるというお話もあつたのです。これは国警の刑事部長さんにもお尋ねしなければなりませんが、麻薬の密輸入には大体百億の金が動くということは、この前薬務局長からもそういう推定的御説明もあつたわけですが、ヒロポンで大体どの程度の金が動いておられると御推定になりますか。これは全国的なごくあらましの推定でけつこうでありますが伺いたい
○田中参考人 国籍を参考に申し上げますと、昨年警視庁で検挙いたしました数で覚醒剤の密造者の国籍は、日本人が二七・三%、朝鮮人が七一・九%、中国人が〇・八%で、断然朝鮮人関係の密造者が多いのでございます。
 それから覚醒剤違反者、これは覚醒剤を打つておる者でありますが、今ちよつと数字がございません。
 それからどの程度の金が動いておるかということでございますが、これは今のところ私の方にも統計がございませんので、お答えすることができないのでございます。
○中川(董)政府委員 この犯罪として警察が見つけたものの注射薬の量はわかるのです。そこから推定するのはちよつと無理な話ですが、その量だけ申し上げておきます。昭和二十八年に犯罪の対象になりました注射薬は七千四百四十四万三千六百六十CC、錠薬が二十個、厚末が四十九万六千四百七十一グラム、今申し上げました数量は私ども警察が犯罪の対象として見つけた物品の量でございます。これを値段に換算して考えるということが一応の推定かと思いますけれども、ちよつとこれは危険かと思いますので、それだけ申し上げて御了解いただきたいと思います。
○滝井委員 この覚醒剤の経験をした青少年が非常に多いということですが、実は新聞その他の推定によればその経験のある者が百五十万といわれておりますし、さいぜんの薬務局長の御説明でも、中毒患者とみなされる者が二十数万、各新聞なんかを見ると七十万といわれておるわけです。今の動いた薬品の量等から推定してアンプル一CCで十円としても、優に七億以上の金が動くということになるわけです。終戦後ヘロインとかモヒというようなものは非常に微量で高価なものであつた。従つてこれらのものが政治資金として動く情勢というものは相当あつたと推定されるのです。これは公安調査庁の意見を聞かなければなりませんが、おいでになつていないようです。従つて現在中国人あるいは朝鮮人等が七〇%以上関係しておるということになれば、こういうものが何か政治資金として動いておる様子があるかどうかということです。もしそういうものとのつながりがあるということになれば、これは非常な根強さをもつてやはり日本の国内にはびこつて行く可能性は十分にあると私は思う。そういう情勢は全然ないものなのか、こういう点は当然あなた方においても調査されておると思うのです。というのは、麻薬との関係が終戦後相当あつたと私たちは見ておりますので、その点きわめて重要な点だと思いますから、ひとつ御説明願いたいと思います。
○田中参考人 先ほど私が説明いたしました北区田端町新薬研究者大内某、この事件を取調べておりました際に、ある朝鮮人が資金を出しまして、朝鮮人と合同出資でヒロポンを密造しておつたのでありまするが、その朝鮮人がさらにまた某市のある朝鮮人から数十万円の融資を受けまして、そうして製造をいたしておつたのであります。この朝鮮人がその某市の祖防隊のキヤツプをしておつた関係がございまして、そういう点からあるいは共産党の、共産党でなくとも、何かそうした政治資金にこれが利用されているのではないかというので、一応捜査をいたしておるのでございますが、その辺は十分明確でございません。結局単なる金を貸したんだということに一応なつておるのでありますが、この辺のところがまだはつきりいたしておりません。
○中川(董)政府委員 ただいまの御質問の点は、私ども警察といたしまして重要な関心を持つておりまして、犯罪を犯す動機、場合によつては共犯というような関係でも非常に注意をしておるのでありますが、ただいまのところ的確にそれをつかむ材料をまだ持つておりません。非常に関心を持つてはおりますけれども、今のところ正確な、そういう系統のはつきりした犯罪の形態が出ているというようなことを申し上げる状態の材料はございません。
○柳田委員 なお国警御当局にお伺いいたしますが、先ほどの御説明で大分わかつて来たのですが、密造の場合の薬の原薬がどこから入つて、どういうふうに動いて密造業者のところへ入つて来たかというルートですが、これに対しては相当お調べ願つておると思うのですが、今までにおわかりになつた点では、大体どの程度ですか。
○中川(董)政府委員 私どもは各警察においていろいろな事件を扱つておるのですけれども、この内容は非常に多様でありまして、外国から輸入をいたしましたものに基いていろんな販売制度をやつておる者もありますし、それから国内で正規なもののうちから横流ししたような事件もございます。態様は非常に千変万化でございますので、それを正確に調べた統計は、ただいまのところまとまつておりませんので、御了承いただきたいと思います。
○柳田委員 これに対して、こういうような密造の元を押えるために、密造の原料がどういうルートで流れておるかということの調査を、厚生当局から依頼でも受けられてお調べになつたことがありますか。
○中川(董)政府委員 厚生省と私ども警察とは、少くともこの問題につきましてはたいへん関係がございますので、しよつちゆう打合せをしております。私どもは犯罪の捜査という面で承知いたしました事柄で厚生省当局で御参考になろうと思われる事柄は、どしどし積極的に連絡しておりますし、また厚生当局の方からも、厚生省の行政上、犯罪面を通じて必要な点の連絡もございます。その点は緊密に連絡をとつております。ところが具体的に外国から来た数字はどうだとか何とかいうことになりますと、私どもの方でも実態をつかむのにたいへん苦労しておりまして、実態をつかみ終つたら犯罪の形で検挙いたしますので、そういつた点の数字が私の方でできにくい状況にございます関係上、そのものずばりは、正式に話合いがございませんけれども、この問題に関連しての相互の打合せはしよつちゆうやつておるという状況でございます。
○柳田委員 そうすると、こういうルートの動きは、ここ一、二箇月のうちにどういうふうに流れて行くかということは、ちよつと見通しがつきにくいという情勢であると判断してよろしゆうございますか。
○中川(董)政府委員 大体ただいまの御所見の通りだと思いますが、私どもは国内の正規の業者からの横流しの事案もあろうと思いますし、輸入等によつてやつている事案も、両方あろうと思います。その全体の数字を正確につかむということは相当困難でございまして、むしろつかみ得たものは検挙する、こういうことでございますので、実態調査というよりも、そういつた犯罪を一生懸命検挙に努める、こういうことになろうと思いますので、お説のように、そういう状況を明確に把握しろということはここしばらく困難じやないかと思いますので、御了承いただきたいと思います。
○松永(佛)委員長代理 この際ちよつと申し上げますが、中川国警刑事部長さんは法務委員会から出席を催促されておりますので、そのおつもりでお願いいたします。
○柳田委員 私は、もうあとはわれわれ厚生委員会として厚生当局を鞭撻をするなり、またわれわれ委員会自体としてこれの取締り強化等の立法に関心を持つので、御両所には私はもう質問はありませんので、他の委員の方でどなたかありましたら、そちらを先にやつていただきたいと思います。
○杉山委員 ちよつと伺います。先ほどからのお話で大体わかつたのですが、密造者の――これは密造者ですから場所はわからないでしようが、検挙した数によつて、全国的な分布の状態、どうせ東京とか大阪というような大都市のところが多いと思いますが、私ども大阪で聞きますのに、やはり大阪でも密造は盛んにしているが、しかしあるいは四国方面から来るのではないか、こういうことも大阪ではいわれておりますので、そういうような調査なり、また検挙したものがあるかどうか。そういうような意味で、むしろ都市ではだんだん皆さんの注意が厳重になつて来るので、目をのがれるために農村地帯に入つて行くのではないか、こういうこともうかがわれますので、今日までにそういうような密造者を検挙した各府県の分布状況をお示しいただけば仕合せであります。
○中川(董)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、大体密造関係の事犯は、大都市からだんだん大都市周辺の地域に移動しつつある。そうして現在の状況は、大都市に比較的交通等の便益を持つた地方の農村でこつそり密造されている事犯が相当顕著な状況である、こういう状態であります。
○杉山委員 検挙の分布の状況は――。
○中川(董)政府委員 府県別の検挙状況は、わかりますけれども、ただいまここで持つておりませんので、後ほどお答え申し上げます。
○杉山委員 それではいずれあとでそういう資料をお願いいたします。
○松永(佛)委員長代理 この際警察御当局と法務省御当局にお尋ねしますが、大体これは厚生委員会としては重大問題として、以前から研究に努めているのでございますが、これはその根源であるヒロポン及び相当広い範囲におけるヒロポン類似薬を全面的に製造を禁止してしまつて、そうしてそれに類似したものを持つておればそれは全部密造である、こういう行き方をした方がいいのか、あるいは先ほどから言われた厳罰主義による取締りの強化を主たる目的とするのがいいのか、あるいはまた便宜上現在の麻薬取締官にヒロポン及びその類似品の販売を検挙する権限を委嘱して、そうしてこれを一つの方法とするというようなことがいいのか、その点ちよつと簡単に、将来この委員会が研究して行く上の方法の示唆を与えていただきたいと思います。
○田中参考人 ヒロポンもほんとうに医療品におきまして、あるいはその患者の実際生理的の必要によつて、打たなければ非常に重大なる欠陥を来すというような場合もあろうかと考えておりますので、全然これがなくなつてしまうということもどうかと考えますので、われわれとしましては、製造するなら製造するで、ある一定の量を厳重なる政府の監督によつて製造せしめて、しつかりしたレツテル等も張つて、どこの会社で製造したのだということをはつきりいたしまして、そうしてその販売するルートも厳重に監督いたしまして、少くとも医者なら医者が持つ、そうしてその患者は医者の証明によつてそれが使用できる。他のものはできない。何らか医者の証明があれば使用できるというようなことにすることが必要じやないか、そのほかのものは絶対にこれはやはり持たせない方がいいのじやないか。ただ現在の中毒患者を全部解放して行くためには、きようはかりに五十本打つて、その翌日は四十九本、四十八本と次第に落しながらこれをなおして行くという状況でございますから、きようから全然打たなくなるということになつたら、非常に治療上にも支障を来しますので、患者全快のために治療上必要なるヒロポン、それからまた別途これを使用せなければならぬ実際の必要のある場合におきましては、医師の証明書か何かによつてこれを使用せしめる、また販売するところも指定するという程度の厳重なる措置が必要ではないかと考えております。それからまた罰則は、先ほど申し述べましたごとく、ぜひこれは厳重に強化していただきたいと考えております。
○柳田委員 その点は私は警視総監と大分意見が違う。警視総監から治安面について大分お教えいただきましたが、きようは私は専門家として警視総監に意見を聞いておいていただきたい。その点私は警視総監と意見がまつたく違う。そのようなことをしておつたのでは、いよいよヒロポン取締りが煩雑になるばかりである。現在でも武田と大日本製薬でこれは許されておるわけです。しかも今警視総監がおつしやつたように、それぞれの規制のもとに使用しておる。そんなものは絶対やみに流れていはしない。ヒロポン禍が年年増加しておるのは、密造ばかりである。一方ではそういう製造が許可されておる。われわれはむしろ抜本的に正規のルートも禁止してしまえという意見を持つておる。その一つの理由は、かりにそういうヒロポン患者が留置場に入つて、警視庁も困る、打つた方が早く楽になるという場合に、必ずしもヒロポンでなければ、そのいう暴れておる人間を鎮静することができないかと言えば、そうじやないわけです。ほかの薬を持つて来ればできるわけです。ヒロポンでなければならないというならともかくとして、それは十分できる。その点が一つ。それから現在もかなりのストツクがあるだろうと思う。今後この密造の元を押えるならば、患者の治療に要するくらいのものは、今あるストツクで十分行ける。あるいはまた今申しましたように、ヒロポンを使わなくてもほかのもので行けるのですから、行ける。そうなつて参りますと、他には研究材料だけのものです。研究材料くらいのものは正規に製造しなくてもよろしい、私はこういう意見を持つておりますので、これは警視総監も今後対策を立てられる上に重大な御関心をお持ちのことでありますから、それだけこれは意見として聞いておいていただきたい。
○松永(佛)委員長代理 ほかに田中警視総監、中川国警刑事部長並びに法務省当局に対する御質疑はありませんか。――それでは御苦労様でございました。
 次に厚生大臣並びに薬務局長に対する質疑に移ります。柳田君。
○柳田委員 そこで今度は厚生当局にお尋ねしたいのですが、今警視総監なり国警刑事部長の御説明で全貌がわかつて参りましたが、この恐るべきヒロポン禍を一掃するためには、何としても正常ルートの製造も禁止してしまうこと、さらにやみルートの製造を絶対禁止すること、さらにこういうものに対する罰則強化は、抜本的に思い切つてひとつ厳罰に処すること、さらに現在の中毒患者に対する収容施設、あるいは精神衛生法の扱い面なり、あるいは強制収容というような点にしぼつて来られると思います。そこでそういう観点から厚生大臣にお尋ねしますが、現在二つの製薬会社に製造を許しているところの正規のルート、これもこの際――とにもかくにもこういう青少年を虫ばみ、日本の悪の温床をなしており、かつては中国が阿片によつて滅びるといわれた。戦後の日本はヒロポンによつて滅びるかもしれない、こういう重大なヒロポンに対しては、正常ルートの製造すら禁止する御意向がありますか。むしろこの必要があるんじやなかろうかと思いますが、大臣としてどういうふうにお考えになつておりますか。
○草葉国務大臣 ヒロポンの中毒患者に対する、また中毒に対します処置は、お話のようにたいへん大きい一つの社会問題であり、速急にその処置を講じなければならない段階に来ていると思います。いろいろこれの対策を検討いたします上に、お話の使用薬の問題、さらに現在中毒症状にあるものをどうするかという問題、並びに今後かような状態になさないためにはどうするか、こういういろいろな問題がわかれて来ると存じます。そこで御指摘の使用薬の現状について考えてみますと、先ほど来だんだんお話のありましたこの覚醒剤の基本薬になつておりますあるいはエフエドリン、あるいはその他の化学製品、こちらの方で調べましたところ、大体エフエドリンによると使用が五に対して、化学薬品が三というくらいの割になつております。局長からあとで詳しくこのエフエドリンの動き方、そういう点についてこの機会に御報告申し上げたいと存じます。エフエドリンは、後刻申し上げるような状態で国内の動きを一応取調べてみましたその状態、さらにそれをいたしましても、化学薬品として割にたやすく密造ができるという場合の処置、こういう問題になつて来ると思います。しかも化学薬品あるいは合成薬というような場合においても、現在相当多量に用いられており従つてエフエドリンをかりに禁止しても、片一方にそれによる使用というものがどうしても起つて来る、こういう場合があるのであります。ただいまこのエフエドリンの動きを少し御報告申し上げさせたいと思います。
○柳田委員 私は法務省からどなたもお越しになつておらぬと思つて、実は厚生省の方に問題を持つて行つたのですが、刑事課長がお越しになつていると聞きましたので、これは長らくお待たせして気の毒であつたのですが、法務省の方にお聞きしたい。現在覚醒剤の取締法による罰則は非常に弱いものであつて、御承知のように三年以下の体刑あるいは五万円以下の罰金、こんなことになつている。ですが、これすら十分に履行されておらぬ。今警視総監のお話を聞いてみても、警察当局でもせつかく検挙してみても、これが非常に軽い罰になつている。あるいは先般高田薬務局長の説明でも、送検をいたして公判になりました結果、大部分の者が起訴猶予になつたり、あるいは執行猶予になつたり、罰金刑ぐらいで助けられているというような答弁もあつた。世上伝えられるところによると、一万円の罰金で百万円の利益をもうける、こういうことになつておる。これは法務当局から見たらもう少し強い罰則の法律をつくつて参りたいというが、これはわれわれも同感で、さよう考えて、またさように努力したいと思いますが、今の罰則すら十分履行されずに、また非常に軽い処罰になつておるのはどういうような理由ですか。その点ひとつ聞かせていただきたいと思います。
○長戸説明員 お尋ねのことを申し上げる前に、どのくらいの検挙をいたし、どのくらいの起訴をいたしておるか、それを先に申し上げます。
 覚醒剤の取締法の違反事件は年々増加しておりまして二十六年には全国の検察庁で受理いたしました者が大体一万一千人、それが二十七年には二万三千人になりまして、二十八年にはそれが四万三千人なるという状況でございます。昨年四万三千人受理いたしましたが、そのうち起訴いたしましたものは一万五千人、大体三分の一は起訴しておる。これは所持犯は青少年が多いものですから、起訴いたさないものもあるわけであります。ところが今度はその起訴をいたしましたものが、裁判所においてどうなるかという問題でありますが、これは昭和二十七年の一年間の全国の裁判所の統計でございますが、覚醒剤取締法の違反として六千九百人ばかり裁判所にかかりましたが、そのうちの千二百人が体刑になつております。重いものは五年以上行つているものもあります。これはおそらく他の犯罪と一緒になつておるという関係でございます。千二百人のうち八百人ばかりが執行猶予がついておる、こういうところに問題があるわけであります。それから罰金の方は、五千七百人ばかりが罰金になつておりますが、その罰金についてすら八十人ばかりは執行猶予になつておる。これは非常にセンスがないという感じがいたすわけであります。われわれといたしましては、この覚醒剤の及ぼす影響が非常に甚大であるというところから、たびたび今回もいたしまして、求刑等も重くやれというような指示もいたしておるのですが、このマキシマム三年というところには裁判所にも心理的な影響があるのか、なかなか重い方に行かないところがあります。そこで私どもは、麻薬のうちのヘロインがマキシマム七年でありますが、一般麻薬が五年である。そうすると少くとも五年はやるべきである。平時常習の場合は、七年くらいには上げていただきたいという感じを持つております。
○柳田委員 法務当局の見解は大体わかりましたが、必ずしもその通りどうも刑を執行されておらぬようでありますが、これは法律の不備もとよりさることであつて、やはり麻薬取締法と覚醒剤取締法の刑の軽重もありますから、一応そういうこともあろうかと思います。これはこちらも大いに考えなければならぬと思いますが、法務当局の考え方としては、現在の麻薬取締法による体刑、あれをこの際ひとつ上げて、覚醒剤も一緒に上げて行くというふうなところまではお考えになつておりませんか。すべて麻薬取締りはヘロインのところまで上げるおつもりですか。これは今後われわれが立法するときに参考になりますから、率直に伺いたい。
○長戸説明員 麻薬取締法は御存知のようにヘロイン七年、それから一般麻薬五年というふうになつております。これにつきましては、われわれとしては特に重要に思いまして、原則的に起訴という方針をとつております。起訴率も非常に高くなつておりますが、その体刑もなるべく高くするということでやつております。現に下関であがりました一連の麻薬事犯は、最高八年の一審言い渡しがありました。これは他の犯罪、窃盗なんかとくつついているかもしれませんが、それにしましても八年という刑をやつておるわけであります。従いまして、私は麻薬取締法の刑を今すぐに上げるとまで考えないで、この麻薬取締法の範囲においてそれを運用してもつとやる、それには検事の論告がおざなりの論告をしないで、麻薬の害というものを徹底的に述べる、裁判所も関心を高める、覚醒剤についてもしかりだと思います。覚醒剤については、一般輿論の方が強くなつておりまして、裁判所の方がその点どうかというふうな点もある。これは検察官の場合ももつと害を裁判所に明らかならしめて行くべきではないか。いずれにしましても、三年は少し低いという感じでございます。
○柳田委員 ここには精神医学の大家岡博士もおられるのですが、私は今国民に害毒を流しておる点から見るならば、麻薬の害より覚醒剤の害の方が、その幅において、その質において非常に悪質だと思う。また将来の国家にとつても、この方が恐しいと私は思うのです。特に覚醒剤の蔓延というものは戦前にはなかつたのです。これはほんとうに日本軍閥の落し子である。それが青少年の虫食病になつている。こういう見地から言うならば、麻薬の罰則よりも、むしろ覚醒剤の罰則の方を重くしてもあえて不当ではないというふうに私は思いますが、これはあとで専門家の岡君からも御意見があろうかと思いますが、一応法務省のお考えを伺います。
○長戸説明員 確かに御意見の通りであろうと考えますが、ただ問題は、私ども考えますのに、密造者、密輸もそうでありますが、密造者、ブローカーと実際に使用します者との刑の問題があろうかと思います。これは先ほど警視総監などもおつしやいましたように、密造者の七〇%というものが朝鮮人であるという問題もございます。密造者とかブローカーというものは徹底的に厳罰にしていいと思う。ところが覚醒剤は麻薬の場合とちよつと違いますのは、使用する者が青少年がかなり多いということだろうと思います。青少年につきましては、はたして刑罰だけでいいものか、あるいは少年院にやりましても、この少年院で始末ができるものかどうかというふうな点も考えなければならぬ、そういう意味においては、密造、ブローカーを厳罰にするのはけつこうと思いますが、片一方の青少年の扱いについては、さらにわれわれも考えますが、御配慮をいただきたいと考えております。
○柳田委員 そうするとこのたびは密造したり、これを伝播せしめるブローカー、これは青少年でありませんから、こういう者に対しては極刑をもつて臨むというような点においては御考慮を願える、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
○長戸説明員 さようでございます。
 それからもう一つ、これはそれに関連してでございますが、御了解をいただきたいことがあるのであります。それは捜査のやり方としましては、密造者が必ずしも密造の事犯としてあがらないことであります。これは非常に簡単な操作で密造される。液をつくるのと、それからアンプルに小わけするのは別にやつております。これもまた製造というふうに見ております。ところが製造したとなると、非常に重く処罰されるという感じから、密造したということをなかなか言わないのです。そこで所持という形で検挙しておる。従つて密造者がどのくらいおるかということは、われわれの方になかなか計数的に出て来ないわけでございます。その計数をちよつと申し上げますと、先ほど申し上げました二十八年度に全国の検察庁でこの種の事犯を四万三千人受理いたしておりますが、そのうちの二万八千人というものは所持禁止の違反として受理いたしておるわけでございます。それから製造禁止の違反としては六百人ばかりでございます。それから譲渡と譲り受けの禁止違反としては一万一千人、それから使用禁止の違反としては二千八百人という形でございます。そこでもしこれを立法するような場合には、理論的にはその製造違反というものを非常に重くするのはけつこうでございますが、刑としては所持違反もあげておいていただかないと、実際の抜本塞源的な検挙はできないという形になるのでございます。これは私どもの力が足りないので、そこまでやれないのはまことに申訳ないのでございますが、実際問題として所持違反で検挙するものが多いということでございます。
○柳田委員 私は法務当局に対してはこれで質問をとりやめます。
 次に厚生大臣、薬務局長に対して質問いたします。薬務局長に対する質問は、従来から岡委員が再三論議しておるので、これも結論的にお尋ねしたいのですが、お答えは簡潔でけつこうでございます。現在二つの製薬会社に許しておる正常ルートの製造を禁止する意向があるかないか、これだけでけつこうですから、これをひとつ……。
○高田政府委員 結論的に申し上げますと、先般も岡先生からそういう御質問がございました。その後実は私ども、専門家と言われる先生方にお伺いをしてみましたところが、それらの方方がどうしてもなければならぬというわけでもないけれども、それは置いておいてもらつた方が非常に都合がいい、一口に言えばそういうふうな御意見でありました。しかしこの点はほかならぬ岡先生のお話でもございますので、私ども厚生省内でもう少し研究してみる、これについては医務局が主となつて研究してもらう。それで私どもの気持といたしましては、お医者さんの側、いわゆる治療の側が必要ないものだという結論が出まするならば、何もこれを認めることにやぶさかではない。ただ現在の段階では、実は製造数量を調べてみましたが、――厚生省がその数量もちやんとやるわけでありますから、これは厚生省で全部わかりますが、昨年一年間の製造数量は日本全国で三百九十グラムの少量のものであります。しかも先ほど柴田先生から御指摘のように、メーカーから直接販売業者に行かないで病院に行つているわけであります。しかもその使用も、一般の方々が自由に使用されるわけではないので、指定された機関だけが使用できる、こういう態勢になつております。おれでこの間も申し上げましたように、現在の覚醒剤の惨禍が全然別の世界の者から起つておるという実情、おれから先ほど申し上げましたようなヘロインの状態、こういうものをいろいろ考えまして、比較考量の問題である。おれでこれをやれば必ず成果があがるというのならば、少々の無理をしてもこれはやらなければならない。しかし取締りの成果がこれによつてあがるかどうか、あるいは覚醒剤の惨禍に対してこれを禁止したことによつて相当なプラスになるかどうかということについて、片一方でまだ若干でも必要だと言われておるものと均衡の問題だと思うのであります。この点はしかし私どもといたしましても、専門的に十分掘り下げて結論を出して行きたい、こういうつもりであります。
○柳田委員 たいへん筋の通つた御答弁ですが、お説のようにヘロインは製造も使用も禁止された。しかしヘロインだけから起つているのではありません。おれはよくわかつておる。ただ今覚醒剤の害毒というものは一つの大きな社会問題なのです。そこでこれは単なるりくつだけじやなしに、これは一つの心理的作用というものもあると思うのです。片一方においては、やはり正常ルートで、全然覚醒剤禍、ヒロポン禍に対して何ら因果関係のないところのものであつても、心理的作用もあるので、この際大きな罪悪を除くためには少々の不便も忍ばなければならぬのじやないか、しかもこれがなくなつて多少それは不便は不便かもしれません。しかしこれによつて全然あとの所持ができないというものではないと思いますので、この点についてはお役所式の調査研究によつて正常ルートの製造を禁止したということになれば、どういうふうにヒロポン禍に影響があるか、そういうふうなことを研究しておつたら二年も三年もたつてしまう、少くとも二年たつても結論は出ない。こういう点は厚生大臣として政治的のニユーアンスと心理的な点を多少お考えになつて抜本塞源的な御処置が必要ではないか。
 それから内閣に青少年問題協議会、こういうものがおありになると聞いておりますが、これにはどういうような方々がどういうような定例日あるいはどういうときにお集まりになつて、どういうような御協議をなさつておるのか。またこういうものでどういう結論が出て来て、こういうヒロポン禍に対しては何らかこれが役立つものかどうか、これについて少し伺いたい。
○草葉国務大臣 内閣に青少年問題協議会をつくり、かつ地方にもこれをつくつていたしております。青少年の問題がいろいろあります中で最近はヒロポン中毒、いわゆる覚醒剤中毒というのが一つの大きい問題であります。厚生省から事務次官が出ますし、その他関係者が幹事等に出まして、目下盛んにこれを検討はいたしております。ただいまそのメンバー等をちよつと持つて参りませんでしたが、頻繁に開いておりますから、多分月に何回かであつたと記憶いたしております。
○柳田委員 大体これでお尋ねしたいことも済みましたが、そこで今の法的体系のもとではどうしても不十分であるということは異存がないと思う。従つてここに何らか立法措置を講じ――その立法措置は、今言いましたように、正常ならざるやみのルートに対するところの罰則規定が主でありますが、そういう点に対して先ほど来ほかの委員からも質問しておりますが、原料のエフエドリンその他合成化学薬品等の流れを調べた上で――しかもその調べの上に何箇月かかるだろう、こういうお話でありましたが、先ほど国警当局の調査ではなかなか調べられぬというが、そんなことを言つたら百年河清を待つごときもので、これが調べられるくらいならこの根源は今まで根絶しておると私は思う。調べられぬと思う。しかしそれはそれとして、今のようなこういう法的体系のもとだからなおさらはびこるのであつて、厚生当局で進んでこれに対する法律案を用意されておるかどうか。現にその作業をやつておられるのかどうか、お伺いしたいのであります。もしやつておられないとするならば、厚生委員会としてはこの問題は等閑に付するわけに参りませんので、小委員会を設けて超党派的に、日本の青少年を守るためにも立法措置を議員として職責上やる必要があるのじやないかと思うわけでありますが、厚生当局の御意見をお伺いしたいと思います。
○草葉国務大臣 お説のように、これはどうしても立法措置によつて処罰の強化その他の方法をとつて来なければならぬと思います。この点に対しましては私ども同意見でありますから、従つて現在関係省とも連絡をいたしまして研究いたしております。急いでいたしたいと思います。
○柳田委員 荏苒時を許すわけに参りませんが、本国会も余すところ少いのであります。大体原案はいつごろまでに作成される目安のもとにその作業をお進めになりますか。
○高田政府委員 立法措置が必要でありますることはこれはもう論をまたないところであります。しかもそれは本国会のうちに成立をさせていただきたいと私ども念願いたしております。それで手続の道行の問題になるのでありますが、御承知のように解散前の国会で参議院の方で議員提案で一ぺん参議院を通つて、そして解散のためにだめになつたといういきさつがございまして、今国会でも参議院でひとつこの問題を議員提案でやりたい、こういう御意向のようでございましたので、私どもはこの研究に参加をいたしまして今日まで参つております。参議院の方の法律案がおそらく近日のうちに参るのではないか、かように考えておるわけであります。それでただ参議院のただいまの案に含まれておらない部分がございます。この点は非常に法律論といたしましてもめんどうな事柄でございまして、その残された部分をどうするかということが今参議院でも議論になつていることであります。この案のいきさつにつきましては、ここにおいでになりました法務省当局も参加して、みなやつておるわけでありますが、そしてその残された部分をどうするかということを実は厚生省の方で研究いたしております。これは結論が出れば、参議院の方に盛り込んでいただくか、あるいはいろいろ日をとる関係もございますので、ただいまの原案をそのまま本国会で出して成立させていただいて、残つた部分については次の国会ということに相なりまするか、その扱いがまだどういうことになりまするか、確定をいたしておらないように私どもも拝承いたしております。大体さようなことでございます。
○柳田委員 それならば今政府が参議院で議員提案でやつておりますのに対して、なお足らざる面というような政府原案の面を至急われわれにひとつ資料として御配付願いたいと思います。私の質問はこれで終ります。
○岡委員 ヒロポンの問題は繰返しこの委員会で大臣お御出席になつて私どももともどもに心配をいたしておるわけであります。今さら問題として新しく提起すべきものは何もないわけでございますが、ただ先ほど来柳田さんとの質疑応答の中で、どうしても私どもがひとつやつてもらいたいと思うことは、これも繰返し申しておるのでありますが、今薬務局長の御答弁では、まだその点が踏切りがついておらないように思います。これはヒロポンの中毒禍を日本から除くためには、まずヒロポンの密造なり、また密売買なり、また不正なる商人に対しては厳罰をもつて臨む、少くともモルヒネ程度をもつて臨む、場合によつてはヒロポンを常習的に販売して利益を得る者に対しては、厳罰規定を置くことは当然であります。いま一つはやはり現在ヒロポン中毒になつている特に若い子供たちをどうするかということ、まあいわば早く回復せしめてやること、そのためには一応隔離しなければならないので、特別な収容施設等を考えるということが一つ。それからもう一つは、やはりヒロポンというものがどういう素姓のおい立ちを持つておるものであるか、こういうものがどういう害悪を社会に流し込むのかということを、やはり広く啓発宣伝する。これは常識的にその三本立で行くよりほかにしようがない。そして問題は啓発宣伝の問題なんですが、よく新聞などではトピツクとして、ヒロポンによる常識では考えられないような凶悪な犯罪が報道されておるけれども、しかしそれはあくまでも社会面のトピツクとして取上げられておる。そこで青少年保護週間としては、東京都内でも警察署の名前入りで、防犯協会というようなものが青少年をヒロポンから守りましようという立札をあつちこつちに並べておるだけで、こういうことでは、ヒロポン禍はいかに百万ぺん叫んでも、ほんとうに社会の常識がこのヒロポンから青少年を救うという啓発宣伝になつておらぬ。私どもの考えることは、やはり政治的のセンスから言うならば、ヒロポンをつくつてはいけない、禁止すべきだ、この踏切りをやはり厚生省がはつきり打出すことが、そのことがもうヒロポンを日本から駆逐する何にもまさる大きな意思表示になるのではないか。それが輿論を率いる大きな姿になるのではないかと思う。まずヒロポンを禁止するというここの踏切りをどうしてもつけていただきたいと思う。先ほど来薬務局長のお話を聞いておりますと、専門家の御意見等もいろいろ勘案されて、特に麻薬を引合いに出してのお話でありますが、たとえばモルヒネは医者には治療上欠くべからざるものです。しかしヒロポンは医師の治療上絶対欠くべからざるものではない。これは大家の意見が一致しておると思う。先ほど来田中警視総監のお話を聞いておると、五十本やつておる者は四十八本、四十本というふうに下げて行く、その四十八本を残しておくことが治療上必要であるというようなことでありますが、これはナンセンスです。私どもが手にかけておる者は五十本くらいのものは全面的に禁止しても何ともない。一時仮病を装うて非常に苦しみますが、臨症上は何の異常もない。それによつて早い期間内にヒロポンから解放されておる。これはヒロポンを扱つておる松沢病院の例を見ても林先生自身が言つておられる。ただヒロポンが必要なことは、非常に稀有な病気があるのです。ナルコレプシーという非常にまれな病気がある。この病気の場合は、ひよこひよこ町を歩いておる者が発作的に睡眠状態に陥る。また目が覚めるとひよこひよこ歩き出すという、非常に稀有な病気があるのです。こういう場合に、発作的に彼が睡眠状態に入つて倒れたときにヒロポンを注射すると早く気がつく。しかしこれは対症療法です。これによつてナルコレプシーという病気そのものがなおるのではない。ただ一時の対症病法とし、多少ヒロポンが効果があるのです。しかもこの病気は東大の精神科の統計を見ても一年間に一人外来を取扱うことがあるかないかというくらいで、これも問題にならない。治療上絶対に欠くべからざるものではない。しかも病気そのものがきわめて稀有なものです。それからいわゆる抑欝病というものもある。これは何でもかんでも自分にとつて不利な、自分を苦しめるような解釈を求めてしながら、だんだんと憂欝になつて来る。こういう場合もヒロポンを注射する。しかしこれもやはり対症療法なんです。してやると、一時少し気が晴れ晴れとするというだけのことで、抑欝病そのものをなおす根本的な治療の薬ではない。そういうふうに考えてみると、ヒロポンが治療上多少効果があるというにしても、それはほんの対症的なものであつて、決して病を根本的になおすものでない。そういう意味で、人道的観点からもヒロポンというものは日本の国土からなくしてしまう、この踏切りをやる、国会も政府も一体となつて、できるだけすみやかに、大きな具体的行動においてヒロポンを駆逐するという意思表示をやることが、最上の啓発宣伝である。またそうやらなければヒロポンの問題をどう取上げてみましましても解決しない。それにはいろいろな問題があると思います。補償の問題その他多少あるといたしましても、やはりどうしてもこの踏切りをつけなければならぬと思うのです。こういう点はさらにいろいろ関係の学者の方々の御意見も聞かれてけつこうです。また精神病の研究上ヒロポンがあつた方がよいということはそれはあるのです。しかしこれも内輪を申し上げると、人間を実験台にして精神分裂症の研究をやろうというもので、ヒロポンを使つて、人間が実験台になつて、アミン中毒が精神分裂症の原因であるということを究明しようというそのことも、すでに科学者としての良心的な問題があると思う。そういう点から考えても、研究上の必要ということも、人道的な立場からいうならば、あるいは科学者の良心から見てどうかと思う。そういうことになれば、ヒロポンの効用というものは一つもない。どうかそういう点でぜひともヒロポンをなくするという御方針をとつていただきたいと思います。
 それからもう一つ、先ほど来残りの部分についてはまた次の機会にでもそれをさらに改正すると言われておりますが、残りの部分と称されるのは現在中毒しておる青少年等をいかに処置するかということであろうと思います。これは大臣にもこの前申し上げておいたが、覚せい剤取締法はあくまでものを対象とすればいい、ものを対象として、そのものの製造なり売買なり使用について取締るという線をうんと強く出してそしてそのものをなくするという建前でやつてもらう。一方現在中毒しておる患者、これは青少年が非常に多いということから考えましても、やはり精神衛生法で行くべきじやないか、私は今もそういうふうに思つております。精神衛生法の一条には明らかに国民の精神の衛生の向上、保持をはかるということが書いてある。しかも今青少年の精神に一番大きな害をなしておるものがヒロポンであることは、これまた事実なんです。国民の、特にこれからわが国を背負つてくれる若い世代の健全な精神を育成して行く、向上をはかつて行くというなら、まず端的に精神衛生法の目的に沿わない、事実大きな害毒を与えておるヒロポン中毒、ヒロポン化から救うということは、やはり精神衛生法によつてやるべきである。そこで精神衛生法には第二十九条に強制入院の規定があり、入院をさせる――問題はそのために必要なる予算をいかに国家から出して行くか、またそういう患者をどういうふうに配置するかということであります。これもこの間申し上げましたが、薬務局あたりの御意見によると、二百なり三百のヒロポン患者を大都会を中心に一箇所に集めようということですが、事実上の問題としてそういうことはできないのです。これは松沢病院の脱走患者を見ましても、大体ヒロポン患者が脱走しておる。もし一つの病棟にヒロポンの中毒患者だけ集めましたら、まつたく強硬なモツブの集団を預かつたことになる。こういうことにしましたら、病院の管理はできつこない。でありますから、現在多少の予算をもつて地方に精神病棟の増加をはかろうとしておられますので、この予算をふやして、適当な地域に指定病院なり公立病院なりのベツドをふやして分散的にやる――その手続については二十九条の規定が援用できるかどうかは法律上いろいろの解釈もありましようが、そういうやり方で行つた方がいいのではないか、これは私見ですが、一応この機会に申し上げておきます。
○草葉国務大臣 よく御意見は尊重していたしたいと思います。
○松永(佛)委員長代理 なおこの際私からも申し上げたいのですが、今厚生当局から参議院の方で覚醒剤取締りの改正法案が立案されているというお話でございましたが、前回この法案ができました当時委員であられた岡委員なり亘委員は御承知だと思いますが、大体、この程度の製造は現在の病患者のために救済薬として残すがよかろうといつて残したものが、だんだん拡大されている、そして今日のヒロポン化に及んでおるということを考えますと、私どもはやはり今柳田委員等のおつしやつたように、製造面も全面的に禁止して、いかなるものでも類似品を持つておればこれすべてやみであつて犯罪であるということにして、業者は別途に考慮すべきである、われわれしろうと考えにそう考えるのですが、参議院の今回の立案では大体従前製造しておる正規ルートのものはこれを残しておくという方針のように拝聞いたしておるのでありますが、これは厚生当局としては御同意になつていらつしやるのですか、そこまでお考えになつていらつしやるのですか。
○高田政府委員 その問題は参議院の小委員会でも御審議がございました。そしていろいろお話の結果、今のところではそういうことで行こうということになつております。それで、これに対して厚生省が同意をしておるかという御質問でございますが、厚生省は――先ほど私が申しましたように、あの法律案ができましたことに、すでにその問題は参考人なり何なりを呼んで十分御審議になつてああいう形になつたと実は私は承知をいたしております。その後当委員会で岡先生からも御注意がございました。それで正直なところ実はそれから本格的に研究を始めたわけです。その研究の段階は先ほど申し上げたような段階でございますので、はつきりした態度をまだきめかねておる、こういう段階でございます。事務的な問題といたしましては、私が先ほどからたびたび繰返して申し上げておるところでございますので、この上はいろいろ先生方の政治的なといいますか、そこに事務以上の一つの判断が加わらなければならぬ。しかし、厚生省としてはまだ判断をいたしかねておる、従つて参議院の案に対して同意をするとかしないとかいうようなところではないわけであります。
○松永(佛)委員長代理 実は前回の覚せい剤取締法案が成立しました当時、私は不敏ながら当厚生委員会の委員長をやつておりまして、当時岡、亘諸先生方の御研究の結果、まあこの程度でというのであの当時の段階としてあの法案ができたのでありますが、事志の大いに違つた点を私ども当時この問題に関与した者として慚愧するとともに、抜本塞源的な対策を今度は講じなければならないという責任を痛感しております。その点で参議院の原案というものを拝聞すると、われわれは前回これを手にかけた者として納得しがたい点がありますので、なお厚生当局におかれましても、この点よく御研究くださいまして、きわめて焦眉の急として万全の処置をしていただきたい。こちらもその方針で委員の方々と協力して進んで行きたい、かように存じております。
 次回は明後日土曜日の午前十時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会