第022回国会 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号
昭和三十年六月十四日(火曜日)
    午前十時五十九分開議
 出席委員
   委員長 高岡 大輔君
   理事 臼井 莊一君 理事 辻  政信君
   理事 堀内 一雄君 理事 中山 マサ君
      赤城 宗徳君    眞崎 勝次君
      眞鍋 儀十君    中川房次郎君
      山下 春江君    楯 兼次郎君
      柳田 秀一君    受田 新吉君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (引揚援護局
        長)      田辺 繁雄君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      江下  孝君
 委員外の出席者
        厚生事務官
        (引揚援護局引
        揚課長)    坂元貞一郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 遺家族及び留守家族援護に関する件
    ―――――――――――――
○高岡委員長 これより会議を開きます。
 本日は、遺家族及び留守家族援護に関し、戦傷病者戦没者遺族等援護法、未帰還者留守家族等援護法及び恩給法の一部を改正する法律案について、前会に引き続き質疑を行うことといたします。質疑は通告順に順次これを許します。中山マサ君。
○中山(マ)委員 私は、この前お願いしてお寺ましたが、労働省の方に御質問を申し上げます。
 これは私がラジオで聞いたのでございますが、私どもが絶えず悩みといたしておりました遺児の就職の問題でございます。この三月卒業いたしました子供たちも就職試験で相当優秀な成績をあげておりますにもかかわらず、最後の段階になりますと片親だからというので職につけないで、やっとこのごろ三回日でようやく、泣きついて、遺児が片親であることは当りまえであるということで、やっとある個人商社に入れてもらったような実例を持っておるのでございますが、それで、この間ドイツの放送局の人が私に面会に来てくれましたので、向うの様子を聞いてみたのでございます。そうしましたところが、向うでは最も優遇をしてこれを就職せしめるという態度をとっておるということでございましたのに、同じ敗戦国であるこの日本ではそれの逆でありまして、遺児は成績は優秀でも職につけてもらえないという大きな悩みを持っておりました最中に、ラジオで聞きましたのに、労働省がこの問題を取り上げられて、就職して一年以後に何か問題を起した場合には、労働省がその傘下のどこかと連絡をとって、――あとは聞き漏らしたのでございますが、これはいわば保証人のような立場に立つということでございましたが、実際にどういうふうにしてやっていて下さいますのでございましょうか。それとも、これは単なる一つの放送の流れでございましょうか。私は、実際のことを聞かせていただきまして、今後の就職に関する参考にしたいと思っております。
○江下政府委員 お答え申し上げます。
 いわゆる孤児といわれておりますところの、両親のない者、また片親のない者、これは、直接戦争によります者のほかにも、間接に戦争により孤児になった者も相当ございます。労働省といたしましては、就職面では、一応直接、間接みんなひっくるめまして、戦争のための孤児に対する職業の確保につきまして、実は昨年から相当力を入れてやって参ったのであります。今お話の、ドイツ等でも相当これを優先して就職せしめる方策を考えておるということは、実は私も聞いております。日本において現在やっておりますやり方でございますが、考え方としては、孤児であるがゆえに特別に就職ができないということは困る、むしろ孤児であるがゆえに格別の考えをしなければならぬ、こういう基本的な考え方で実は就職問題を取り扱っております。実施の措置といたしましても、いろいろ方法があると思いますけれども、現在私どもはもっぱら、これを使います事業主の方たちに、孤児のかわいそうな事態を十分認識してもらう、それから、孤児であるがゆえに非常に悪いということは決してない、むしろ孤児であるがゆえによい状態を示しておるのもたくさんございますので、そういう方面を事業主に非常に強く訴え、そのための広報活動を昨年以来、今年特に新しく卒業いたしました者のために活発に実施をいたしました。特に一番問題となりますのは、御承知の通り、金融機関等が、長い間の伝統で、片親または両親のない者は雇わないという鉄則があるのでございます。この点について私どもも特に力を入れまして、今年度は、職業安定機関が特別に孤児については就職面で一般の人よりも考えてやるという措置を、行政措置ではございますけれども、とったのでございます。その結果として、先般新聞紙上に出ておりましたが、本年度の学校卒業者の就職状況、成績を見てみますと、一般の、つまり両親のある者よりも孤児の方が就職率がわずかではございますけれどもいいという結果が生まれたのでございます。この結果は非常に貴重なものである。つまり、事業主等が相当これについての関心を持ち始めたということではないか。これをもう少し強く本年度も進めていきたいと思っております。
 今先生のお尋ねの点でございますが、実は身元保証の問題であろうと思います。身元保証ということば、実際問題として考えてみますと、いろいろなむずかしい問題がございまして、私どもとしても、方針としてはぜひもう少し孤児が安心して就職できるような態勢を作ることが大事だということで、この点について昨年来考えましたのは、結局、親がないのでありますから、たれか親になる者を、これは民間の方でもだれでもよろしいから、りっぱな人を推薦いたしまして、その方に身元保証をしていただく。それで、もしその一年あるいは何年かの間に不祥な事件が起った場合には、身元保証をしました人に損害をかけないような措置を政府で何か考えようじゃないかということだったと思います。これはまだ厚生省でもほんの話し合いの程度でありまして、話はまとまらないのでございますが、実は赤い羽根の募金がございます。とういう募金はこういう性質のものに使われてしかるべきではないかという考えで、事務的には寄り寄り話し合いをしております。まだ話はきまらないのでございますが、そういう線で実は考えております。
○中山(マ)委員 私は、そういうラジオの放送を聞いて非常に喜びまして、遺族の人たちにも、こういうことがあるんだからみんな勉強してしっかりやるようにということを申しておりましたが、まだそれが現実に実っておりませんようでございましたか、この孤児たちが、国に父親を捧げてその上に二重の苦しみを受けるというような考えから、あるいは妙な方向へ走ったりするようなことがございませんように、――赤い羽根の募金のお話も非常にけっこうな考え方であって、身元引受人になって下さる方に縁もない人のために金を出していただくのは気の毒でございますので、ぜひその考え方はお進めくださいまして、それが何とか形がつきましたならば、ぜひその経過及び結果を御発表下さいますように、私はその日を今日から非常に期待を持って待っていることを申し上げまして、感謝をいたして終ります。
 もう一つ伺いたいのは、やはり戦争によって災害を受けました未亡人の就職の率でございます。その問題ば今どういうふうになっているでございましょうか。強制雇用もやっている国もあるというようなことも聞かされるのでございますが、日本ではそういうことはまだ行われていないようでございます。いかなる方法で未亡人の就職の問題を労働省としてはお考えになっていて下さいますか。
○江下政府委員 先生のおっしゃいますように、未亡人について特別に強制的な措置は講じておりません。しかしながら、政府といたしましては、先ほど申し上げました孤児と同じような気の毒な方でございますので、安定所における紹介活動の面では未亡人の就職問題を丁寧にやっているということはいたしております。ただ、未亡人の方は、お子さんがあられたりして、なかなか一般の職業につかれることはむずかしい場合があるのでございます。実際問題として、一方において家計を相当し外に出るというのはなかなかむずかしい面もございます。そこで、未亡人の方には何か未亡人に向く仕事を政府として考えてやらなければならぬ。実は、本年度の予算で、非常にわずかではございますけれども、未亡人の方々を対象として家事の訓練――家事技術と申しますか、これの職業補導を行うということを主として、未亡人の方に特に便宜をはからって措置するということを考えているわけでございます。それから、中には、年中出ておるわけにはいかない、ときどき臨時の内職的な仕事がほしいというような方も相当おられるわけであります。これは主として私の方の婦人少年局が担当いたしておりますが、きょう局長が参っておりませんので、私かわりまして申し上げますけれども、婦人少年局の方で、これも非常にわずかな予算でございますけれども、とりまして、そういう未亡人の方で特に簡単な仕事をしたいというような方々に対しまして、先ほど申し上げましたような家事の技術という程度までいかない、ごく簡易な仕事の面の訓練をしまして、あっせんをしてやる、こういうものを相当実施するということにいたしております。何と申しましても、現在のところ、こういう社会の一番気の毒な人に対します就職問題でございますので、特に私どもといたしましても一番関心を持っておる点でございます。実は、強制的な雇用という面も一つの考え方でございますが、ただ、現在私どものやっておりますのは、あくまでも国民のあたたかい同胞愛によってこれをできるだけ円滑に実施していくということがいいではないかということで、現在の段階におきましては以上のような行政的な措置によってやっております。なお今後ともこの問題につきましては特別な努力をいたしたいと存じております。
○中山(マ)委員 それには予算は幾らくらいとっておられますか。
○江下政府委員 実は、きょう婦人少年局長が参ると思ったものですから、私予算を持って参りませんでしたが、両方合せまして十万円程度かと思います。
○中山(マ)委員 今日、婦人議員団から売春禁止法案というようなものも出ておる時代でございますが、まことに申しにくいことでございますけれども、未亡人層がそういうふうな職業にやむを得ず流れていっておるというような話も聞きますときでございますので、ぜひこの未亡人の問題にもっと力を入れていただきたい。千万円と申しますれば、国家の予算から見ましたらまことに微々たるものであろうかと私は思うのでございます。労働省としてはぜひこの面でもっとしっかり予算をとっていただきたいと思います。この未亡人たちは一向ストもいたしませんから、それで政府はこういう面については非常に御関心が薄いのではなかろうか。女がストをやりかけましたら、まことにしつこいかもわかりませんが、その戸なき声を一つぜひ聞いていただきたいと思うのであります。ほんとうにこういう人たちは何も声をあげる磯間を持たないのであります。ただいま鳩山内閣におきましては国防会議というような法案も出そうかというような段取りになっていますけれども、私は、こういう人をしっかりお世話願っておかなければ、幾らそういう法案をお出しになりましてもどうかという考えを持って見ております。まず前の橋から渡っていただいて、こういう人を十分世話していなだいて、得心をさせていただきたいということが私の非常な願いでございます。婦人議員という建前から、始終この未亡人の声に悩まされておる――悩まされておると言うと語弊があるかもわかりませんけれども、まことにお気の毒た人があるのでございますから、この次の予算がございますときには、これだけは増したぞということをぜひわっしゃっていただきますように、私は今日からもう切望をしてやまない次第でございます。
○臼井委員 関連して。今中山委員から遺児の就職の問題でいろいろお話がございました。これから遺児の方が高等学校を出られる、あるいは専門学校、大学を出られて就職という問題がますます多くなる状態になると思うのです。そこで、身元保証の問題が出ましたが、今伺うと、適当な保証人が自分でわからなければ、探して、そしてなっていただいて、場合によったらそれを保証する、こういうようなお話がありました。そういうものをもう少し制度化して、そういうことをやってもらえるのだということがわかっておれば、遺児にしても安心して勉学ができると思うのですが、そういうときどうなるんだというようなことを心湿しておる向きも相当あるように見受けられるのです。たとえば、今、金融の面で信用保証協会というようなものがありまして、物的の保証の足りない者には信用保証協会で保証する、こういうようなことをしておりますが、そういうようなことを何かある程度制度化して、自分で見つからぬ場合にはそういうところで保証してもらう、これは何も政府の機関としてでなくても、土地の有力者にそういうものの会長にもなってもらって、そしてそれを政府の方で万一の場合には再保証と申しますか応援する、こういうことにすると安心していかれるのじゃないかと思いますが、この点について何か政府の方にお考えがありますか。
○江下政府委員 お話の身元保証の問題でございますが、現在私どもの考えておりますのは、身元保証につきましては、やはり政府の方でだれだれというふうになかなか強く指定というわけにも参りません。これはあくまでも民間のりっぱな人格者の方々から希望者を募って、適当な人にお願いする、こういう建前になろうかと思います。今お話の、制度としてということでございますが、実はまだこれは成案をもちろん得ておりませんので、研究調査、連絡の段階でありますが、私どもとしましては、もちろん将来この運営がうまくいくということであれば、制度の問題も考えていかねばならぬと思いますが、何しろ実はまだこれは初めて今考えている問題でございますので、どの程度までこれが参りますか、私どもとしましては、今行政的な手段でとりあえずこういう面をやっていきたいということで厚生省とも相談をしておる段階でございます。
○臼井委員 一つその点もよく御研究いただきたいと思います。
 もう一つ、現在、遺児の生徒、学生等に対しては、各府県におきまして、奨学益金を出しているような遺児に対しては、夏一度くらい集めてレクリエーションをやって話し合う、こういうようなことはやっていますが、もう少し積極的にといいますか、もう少し中へ深く入って将来の職業につく上においての指導というようなことも特に考えてあげないといかぬと思うのでございますが、それについてどういうふうなお考えを持っておられますか。
○江下政府委員 ごもっともだ御質問だと思います。実は、孤児あるいは遺児の方々は、ともすればどうも性格がゆがむとかいうことをいわれておるわけでございますが、私どもといたしましては、就職の段階においてこれをやっても、お話の通りなかなか効果があがらない、むしろ学業中から職業指導と申しますか、かわいそうな孤児に対しては特別にそのころから個人的に職業面の指導を実施していくことがどうしても必要であろうと思います。先ほど中山先生の御質問にお答えいたしました、いろいろ孤児の対策として考えておりますことの一つとしてそれが入っております。ことしは実はまだそこまでやる段階には参りませんでしたけれども、来年度の学校卒業者の問題がございますので、この問題はぜひ今からある程度――これも財政の乏しい国家機関でございますから、全部の孤児に対してそこまで手が届くかどうか、なかなか問題だと思いますが、職業安定所にもそういう職業指導、特に心理学の研究者も相当おりますから、そういう方々を必要に応じて学校方面に派遣いたしまして、そういう措置を取り計らうということも考えていきたいと思っております。
○中山(マ)委員 私は留守家族の援護に関して先日ある老人から手紙をもらいました。それは、二十七年でございますかに打ち切られて、あとは恩給に切りかえ、そして帰った人に二万円の帰還手当をやるというようなこともいろいろとやっていただいているのでございますが、その老人の手紙は、これは軍人でございますが、まだ帰らない間は、いわゆる家族手当としてお金を出し、そうして、帰ってくれば、その家族に出した分だけのお金を差し引いてそれに渡すというようなことを政府はやっておる、これは――その手紙の通りを申し上げますると、両刀使いではないか、そういうようなことでいいのかということをやかましく言って参ったのでございます。これは二万円の帰還手当とかそういうようなことが出てこない間のことを言っておるのであろうと思いますけれども、私もはっきりと老人の手紙の意味がわからないのですが、一度お尋ねして、そうして返事を出してやらなければならぬ、こう思うのでありますが、その両刀使いということでございますね。いわゆる帰らない人たちの留任家族に留守家族手事をやっておるが、それでは生活ができないので、生活保護を頼みに行ったところが、そういうお金があるのだからやれないと覆われた、政府はこれで生活保護と両刀使いをしているのではないか、こういう難題でございますが、何かこれに対する回答があるものでございましょうか。私も今はもうそういうことはないと思うのでございますけれども、しきりにそういうことを言ってよこすのでございますが、いかがでございましようか。
○田辺政府委員 留守家族手当を支給している人が生活保護法の適用を受けられるか、こういう問題でございますが、理論的に中しますると、受けられる方もあるし、受けられない方もあるわけでございます。つまり、最低生活の保障でございますから、留守家族手当の支給を受けることによって最低生活が営み得るという状態に達した人には生活保護法は適用されない。しかし、留守家族手当をもらってもなおかつ最低生活がでぎない場合においては、その足りない分は生活保護法でやる。こういうことになります。
○中山(マ)委員 それを差し引くというわけですね。
○田辺政府委員 差し引くというよりは、足らずまいを生活保護法で差し上げるわけでございます。差し引くという問題ではなかろうと思うのでございます。両刀使いと申しますが、それは生活保護もあれば留守家族援護もある、両方あるという意味ではないかと思います。
○中山(マ)委員 その意味じゃありません。ずっと前の法律をこれは誓うているのだろうと思いますが、いわゆる向うにおる人に与えるべき金の中から、留守家族の援護をしておる金を、帰ってきたときにばそれを引くそうです。私もわからないのでございますけれども、それが手紙の文面なんです。結局、生活保護の費用はくれないから、今の場合ではそれが生活保護費に当る、そうして帰ってから引いて、引いたいわゆる残額を渡すとすれば、それは両刀使いではないかというのが来た通りの文面なんですけれども、そういうことがあり得るのでしょうか。
○田辺政府委員 ただいまのお話、伺いましても、どういうことを陳情の方が言っておられるのかよくわかりません。後ほどよく調査をいたしまして、事情を明らかにした上で御返答申し上げたいと存じます。
○高岡委員長 山下委員。
○山下(春)委員 私は前会にもちょっとこの問題に触れて局長の御意見をただしたのでありますが、五月十日だと思いますが、労働省から責任ある引揚者の就職状況についての御報告をいただいたのであります。それによりますと、第八次、すなわち二十九年九月二十七日に引き揚げられました者の就職率は五四・五%、それから第九次、二十九年十一月三十日に引き揚げられました者は五七・六%、それから第十次、三十年二月二十四日に引き揚げられました方は三三・三%、それから第十一次、三十年三月二十九日に引き揚げられました者は一七・二%という就職率でございます。この就職率については私どもあえて不平を申し上げるわけではありません。労働省が、この引揚者の方に対しては優先的にあっせんするようにということを、あらゆる出先機関に次官通達か何かを出されまして、非常に熱心に強力にごあっせんを願っていることは、様子を聞いております。しかしながら、実際の就職率はかような状況でございまして、多くの方がなかなか職につきかねて、十年も故国を離れておりまして、社会情勢その他が非常に急焚いたしました今日でば、非常に生活に困っておられる方があろうと推察いたすのです。そこで、前回も申し上げましたように、現行の未帰還者留守家族等援護法によりますれば、引き揚げますと直ちに留守家族手当が打ち切られることになっておりますが、かような現状から見まして、これを直ちに打ち切りますことは、いろいろな面から見て大へんお気の毒だと思います。こういうことはこのままに捨て置いては相ならぬと思いますので、ぜひとも引き揚げてこられました方々に対して、引き揚げ後九十日間留守家族等援護法による留守家族援護金を支払うということにしたいと思うのでありますが、局長はどのようにお考えでございますか。
○田辺政府委員 その点につきましては、この前御返事申し上げました通り、ごもっともなことでございますので十分考慮したい、こう考えております。
○山下(春)委員 そこで、健康でお帰りになる方はよろしいのでございますが、留守家族といたしまして、十年間、よもやに引かされて、あるいは生存して帰るのではなかろうかとかすかな希望を抱いて待っておりました者に対して、死亡処理をいたさなければならぬという段階が現に出つつあるのでございますが、この死亡処理を受けました家族の打撃は、われわれの想像に絶するものがあると思います。物心両面に全くとほうにくれるであろうと思うのであります。そこで、この死亡処理をされましたあとの残った気の毒な家族の人々は、他の遺家族援護法等によって救済を受けるわけです。しかしながら、それに移行いたします手続上の時間が相当長期間かかるのでございまして、この間、たださえ精神的に非常に大きなショックを受けました気の毒な家族たちが、その待っているという期間がブランクになるということは、これまた忍びないことだと存ずるのでありますが、この点につきまして、死亡処理をいたされますと、現行法によれば直ちに留守家族等援護法による手当を打ち切られますので、この死亡処理を受けた家族に対しては、引き続き留守家族手当を六カ月支給するということが非常に妥当ではなかろうか、ぜひそういう取扱いをしてもらいたいと思うのでおりますが、局長はどのようにお考えでございますか。
○田辺政府委員 今御指摘になりました、死亡処理を受けた場合の取扱いにつきましても、未帰還者が帰還した場合と同様の考慮をなすべきものだと考え、ております。
○山下(春)委員 われわれ委員会の委員の考えますことに政府当局の御同意を願いまして、まことにありがとうございました。この委員会は政党政派を超越した人道的立場に立っておる委員会でございますので、この問題はぜひとも皆様の御賛同を得てそのようにいたしたいと念願いたしております。委員長におかれましても、その点お含みの上、ぜひともさようにお計らい願いたいことを付言いたしまして、私の質問を終ります。
○高岡委員長 了承いたしました。
 柳田秀一君。
○柳田委員 未帰還公務員は恩給法によって若干停止がされておるわけでありますが、結局そのために普通恩給を受領できる留守家族の範囲が極度に圧縮せられておる、わずかに百数十名の留守家族だけが恩恵に浴しておる、こういう現状のように聞いておりますが、これは政府の方で若年停止の規定を除外する考えがあるか。傷痕者の場合には若年停止の規定が除外されておりますが、それと同様本人に稼働能力というものがないから、そういう規定を除外するというふうに改正される御意思が政府当局の方にありますか。その点を伺っておきたい。
○田辺政府委員 ただいま御指摘になりました点は、実は恩給法の問題でございます。未帰還公務員の処遇について、若年停止だけの問題でなしに、いろいろと問題があるわけでございます。恩給局に対してもわれわれの方の所見を述べまして、いろいろと御検討をいただいておるわけなのでありますが、また、この点は留守家族としても強く要望している点であります。われわれの方も、留守家族の援護という見地から、そうしてほしいという希望を持ちまして、恩給局には、陳情と申しますと語弊がございますが、いろいろ意見の開陳なり、希望は表明しておったのでございます。いろいろ問題が恩給法に多うございまして、そこまで手が伸びなかったのではないかと思われますが、今日までのところ具体的な結論を得るまでに至っていないような状態でございます。なお、われわれといたしましては、今後ともでき得る限り家族の希望に沿い得るように心がけて参りたいと思っております。実情はそういうふうになっております。
○柳田委員 きょうは恩給局は来ておらぬですね。
○高岡委員長 また話し合いがつかないのだそうで……。
○柳田委員 そこで、田辺局長の御答弁によりますと、やはりこれは留守家族の切なる要望であり、その妥当性は認めておられるようであります。すべて、請願とか陳情というものは、えてして日分たちの範囲のみから少しく主観の強過ぎる場合も多いのですが、これなんかは、客観的に見ても、今局長のお説のように、留守家族は決して無理なことを要求しておるのではないのでありまして、大体、援護局当局は、未帰還公務員の若年停止というような問題は、これは除外したい、こういう御趣旨のように承わったわけであります。従って、現在恩給法の改正が出ておりますが、今回は問題になっておらぬわけであります。こういう点は、また次の機会に、恩給局の方が来ましたときに恩給局から確かめてみたいと思います。
 なお、これも局長に伺いますが、未帰還公務員が死亡した場合、いつ死亡したかという判定はなかなかむずかしく、人によってみな違うのですが、実際昭和二十年の八月、九月に死亡したということが、判明したのが十年もおくれた場合には、その判明した日の翌月からそういう者に対して公務扶助料が支給されるということでは、実際遺族は浮ばれないと思います。しかもまた、現実の問題として、特に問題になりますところの大陸の場合においては、これは時の責任ある政府も変っており、実際判明はむずかしいと思いますが、しかし、大体においておそらく終戦直後に死亡した者が大多数なんですから、これなんかは、あまりしゃくし定規にこだわらずに、大体死亡した日というものを一応何らかの形において線を引いて、その日からやはり公務扶助料を支給された方がよいのじゃないかと思いますが、これは局長いかがですか。
○田辺政府委員 未帰還公務員の中で大多数を占める状況不明者の問題をどうするか、これは私どもの非常に頭を悩ましておる一番の問題であります。しかし、終戦後十年にもなる今日でありますから、いつまでも現状のままで放置しておくということはできませんが、同時に、やはり十年もたっておるだけに、また人命の問題である、たけに、個々の家族が十分納得し得るだけの手を尽さなければならないと思っております。その手は、国内的の調査究明だけではなしに、相手国からの誠意ある資料を出していただいて、その上でなおかつはっきりしない場合においては、これは政府だけではなしに皆さん方が一緒になって何らかの結論を出さざるを得ない事態がくると思います。そういう事態に備えてどうするかという問題もあわせて、遺家族の問題を考えて参りたいと思います。お話の通り、終戦直後に死亡したと認められるような状態の人が相当数あるわけでありますから、こういう方々の処遇について、現状通り死亡の事実が判明したときからということにして公務扶助料をやるのがよいのか、あるいは、もう少しさかのぼってやるのがよいのか、これは大へん大事な問題だと思います。扶助をやるから死亡処理にすればよいじゃないかというような取引的な考えは私は持っておりません。これはまた留守家族に対して非常に失礼な考え方でありますが、しかし、それはそれとして、死亡処理がされた場合においても、なおかつ筋の通ったできるだけの処遇をするという考えから検討していかなければならないと考えております。
○柳田委員 これは政府の方も非常に御苦労なことだと思います。この状況不明者というものは、大体あの混乱のときに、しかも大陸等においては、政府も変っており、今の政府には責任がないということで、追及しても今の政府では逃げてしまえばそれまでのことで、いつまでたってもわからない。ここに戦争の悲劇というものがまざまざとあるわけですが、大体、多数の状況不明者というものは、どさくさまぎれにまず死亡したものと、こう見ておいて、――中にはもう公葬までしてしまったのにあとからのこのこ帰ってくるというような例もあるので、そういう者は八月十五日までというわけには参りませんから、それは例外措置としてやって、大体状況不明者というものは、ある一定のときにおいて現地で死亡されたという線を引かれて、そうしてその日の翌月から公務扶助料をお出しになるたり、政府として何らかの手をつけなければならぬと思います。そのうちに調査もわかるだろう、そのうちに確報が得られるだろうというようなことで待っておられては、いつまでたってもわからないだろうと、思います。だんだん御努力によってわかってくるだろうと思いますが、それがわかるのはほんの九牛の一毛で、大多数は依然としてわからない、これがほんとうじゃないかと思うのです。わかったといっても、おそらくこれは死亡の確認された日でたく、いつ死亡されたということはわからないと思います。だから、これは厳密な意味の死亡した日ではありませんが、おしなべてある一定の日を切って、この日に状況不明者が死亡されたという日を一応立てられて、そうしてその日を基準として公務扶助料をお出しになる、そういう何らかの日をおきめになるべき時期が来ているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○田辺政府委員 柳田先生は非常にお詳しいので、非常に達観したところから御議論をなさっているわけで、われわれもその通りに感じます。ただ、問題は、政府の責任として問題を処理していく場合におきましては、やはり順序が大事だと思うのであります。その順序を踏んだ上においてこの問題は解決していかなければならぬ、こう考えておるわけであります。お話の通り、いつ死亡したかはっきりしない場合におきましては、一定の時期を限って、それによってやるというほか仕方がなかろうと思います。問題は、死亡したことが終戦直後であるということがはっきりわかって死亡処理される場合もあろうと思います。そういうことをいろいろ考えまして、現在の規定では不備な点がありはしないかどうかということを、われわれのみならず政府部内において検討をいたしておるようなわけでありします。
○柳田委員 くどいようですが、私は状況不明者はいつまでたってもおそらく状況不明者だと思います。たから、いわゆる昭和二十年八月十五日からそう隔たっていない日くらいに線を引かれて、そうしてそのときに死亡されたということにされたところで、私は行き過ぎじゃないと思う。特に十五日の日以前になくなられたということが確認された場合には、その日にさかのぼれはよろしいし、多少その日からあとまで生存されたということが後になってわかっても、いたし方ないと思う。そのくらいのところはやはり思いやりのある措置をとらなければ、いつまでたっても、十年くらいの間も、その死亡された方の遺族は、その間本来ならば当然遺族扶助料をもらえるものももらえない、こういうような不合理になりますので、これはやはりもう少しお考えを願いたい。しかも、こういう場合、軍人軍属で行った未帰還公務員でなくて、文官の未帰還公務員の場合は一体どういうふうになっておるか、一つお聞きしたい。
○田辺政府委員 未帰還公務員の場合も一般文官の場合も同様であります。同じ未帰還公務員という範疇に入りまして、同じように処遇されるわけでありますが、死亡の事実が判明したときから公務扶助料を支給する、こういうようになっております。それで、その死亡の事実が判明したときに退職したとみなすことに一応なっておるわけであります。この点も、先ほど御質問のありました点と合せまして、われわれだけでなしに、政府部内として十分研究していかなければならぬことだと思っております。
○高岡委員長 受田新吉君。
○受田委員 援護局長さんに一つ質問します。この間問題になった、外国人になった人に対する遺族援護法及び恩給法の適用をどうするかという問題ですが、これはどのくらい適用せられるか、たとえば、戦争の末期に、日本人として台湾人や韓国人、それらの人がどのくらい応召し、どのくらい戦死しているか、当然援護法及び恩給法の対象となるべきはずの者で今日対象から除外されているところの数字がどのくらいあるかを、資料として御提出いただきたいと思います。それに関連して、最近、列車内で、自分は韓国人の傷病者である、しかし出往当時は日本人として応召し、日本人として傷ついて傷痍の身となっているが、今日韓国人の身分にされたために、日本から何らの保護を受けていない、日本の傷演者は援護法及び恩給法でそれぞれ援護の道が開かれたにかかわらず、白衣の私は韓国からも日本からも何らの保護を受けておらない、非常に悲惨な状況に置かれていると嘆いて、浄財を集めております。これは人道的にも大へんな問題だと思うので、日本の国内に今戦前と同じように住居しておって、お隣は日本人として援護法、恩給法の適用を受け、自分は韓国人にされたために、昔と変らない生活状態でありながらも何らの保護を受けない、こういうことになったのでは、これは人道的にも許すことのできない大きな罪悪だと思うのでありますが、この点に関しまして、その日の生活にも困っている傷ついた韓国人、台湾人とかいうような人々に対する何らかの手を打っていないのかどうか、この点、政府としては非常に困った問題とお考えかもしれませんが、重天な問題でありますので、政府のこれらの人々に対する態度をお伺いしたいと思います。
○田辺政府委員 この問題は、先般受田さんからの御質問に対して私がお答えした通りでございますが、一応、法律の建前としましては、留守家族援護法も遺族援護法も、対象ではないということになっております。ただし、留守家族援護法では、未復員者給与法というものが留守家族援護法に切りかわった面もございますので、従来未復員者給与法によって処遇を受けておった者も若干おったわけで、その実績を保障する意味におきまして、留守家族援護法におきましては第三国人に対しましても従来やっておった人に限ってそれを継続しているわけであります。全般の問題として、恩給法なり援護法でこれをどう処遇するかという問題につきましては、先般もお話しました通り、対外的な関係もございますので、まだこれを援護法なり恩給法たりでどう取り扱うかということについて決定いたしておりません。私の知っておる限りにおいての政府の態度は、先般申し上げた通りでございます。
○受田委員 未復員者給与法、留守家族等援護法等によって保護されたことのある第三国人が、自分の家へ帰って韓国人としての正常な生活に立ち返った場合には保護を受けることはできないというのは片手落ちだと思うのです。特に、戦犯などとして巣鴨へ収容されている期間ば日本国から保護を受ける、巣鴨を出されるとほうりっぱなしにされる。これも三国人にとっては耐えがたい苦痛だと思うのですが、しかし、今日本に現実に住んでいて、日本人として応召し、日本人として戦死して、今日本人の仲間に入って生活している善良なる韓国人がおるのです。この人々が傷ついたままでほうり出されてということになったり、大事な生命を奪い去られたりしておいて何らの手も打たれないということになると、これは人道的にも許しがたい罪悪だと思うのです。これは現実に第三国人であるが、厄年省として生活に困っておるこれらの人々を救う何らかの方法はないのですか。現実に月の前にそういう悲惨な人々がおった場合においては、応召とか現地召集とかいうような問題を抜きにしても考えていく道はないのでありますか。
○田辺政府委員 これは社会局長からお答えする方が適当かと思いますが、生活保護法に準じて処遇いたしておるのでありします。
○受田委員 それは私としては非常に重大な問題だと思うのです。日本人として召集されて、日本人として殺されたのです。ところが、今日何らの保護を受けないということは、非常な片手落ちだと思うのです。アメリカなどを調べてみると、国籍が異動しても当然国家がその遺族に対して扶助料を出しておる。フランスもその通りです。世界のおもな国々は、そうした国家が侵した責任はあくまでも国家が果すという形をとっているのです。これは将来日韓友好の立場からも大問題が残されると思うのでありますが、何とか早くこれを解決していただきたい。しとから出していただく資料でその数がはっきりするのですが、そうたくさんではないと思いますので、この点、早急に、外交上の処理、あるいは外交しの問題でなくして国内問題として国内法で――外国人に扶助料を出したからといって国際的な制約を受けるのではないと思うのでありますが、そういう点について御研究された限度内の御答弁を願叩いたいと思います。
○田辺政府委員 この前お話し申し上げました通り、韓国なりあるいは台湾政府との関係において、外交の問題の一環としても考慮されなければならぬと思います。確かにお話の通り国籍を離脱した場合においては恩給法の適用がないことはその通りでございます。しかし、これは一般の自己の意思によって国籍を離脱した場合と違っておるわけでございます。その点は確かに時別な考慮が払われなければならぬ事態だと思います。ただ、恩給法の問題あるいはそういった身分の問題になりますと、戦死者だけの問題でなしに、一般公務員として朝鮮総督府に長く在職された韓国人の問題も出てくると聞いております。そういったいろいろの問題もあるので、これを恩給法なり遺族援護法なりの形で取り上げるのがいいのか、あるいは対外的な交渉の面においてこれをその一環として考えるのがいいかという問題が残っております。従って、これは私の方ないしは恩給法だけで解決のつく問題でございません。もっと大きな問題でございますので、お話の筋の問題とそういう問題とにらみ合せて考慮しなければならぬ問題であろうと考えております。
○柳田委員 関連して。今の受田委員の発言は重大だと思うのです。今受田委員も指摘された通りに、日本の国策の犠牲になられて戦死され、戦傷されたというような方々には、生活保護法の面ではこれはあるいは何らか国家の手が伸びておるかもしれませんが、しかし、この生活保護法の方は、御承知のように現在第三国人の生活保護の問題は大事だと思うのです。ことに、最近、どういう方法によってか知りませんが、日本に来られて生活保護を受けておられる第三国人もおられるわけでありますが、日本人の身分であって、しかも政府からの命令で強制的に、自己の責に帰することなしにそういうような戦傷された人に対してはその道が開かれぬということは、非常に大きな問題だと思います。援護局長の今の御答弁は、これは局長自身の立場からはあれ以上の答弁はできないと思いますが、しかし、この問題はやはり厚生省の責任ある地位の方から――これは社会局の関係もありましょうし、あるいは援護局との関係もありましょうし、恩給局との関係もありましょうし、外務省との関係もありましょう。受田委員ば韓国人とおっしゃいましたが、韓国人のみならず、北鮮人なり、すべて朝鮮人全体だと思いますが、これは全般的な立場から何らか答弁できる政府委員を呼んで、受田委員の提唱された問題はこの委員会である程度究明しておく必要があると思います。私はさようにお取り計らい願った方がよいのじゃないかと思います。
○高岡委員長 ただいまの柳田委員からの御要望は了承いたしました。
○中山(マ)委員 ちょっと関連して……。私も非常に不合理を感ずるのであります。生活保護の面では、日本に、六十万でございますか、韓国人、第三国人がおって、その一割が今生活保護を受けておる。いわゆる難民は助けるけれども、国のために働いた者は何もしてあげないというのは、そこに非常に不合理を感ずるわけでございます。ですから、今の御提案の通りに、外務省なりどこなりを呼んでいただいて、この問題についての見解を聞かせてもらうということは、私は必要だと思います。そこに非常に妙なもの、でこぼこを感ずるわけであります。生活のできない者は助ける、しかし功労のあった者はほうっておく。いかにも何だか筋の通らないものを感ずるわけでございまして、ぜひ一つ今御要求になりました人々を呼んでいただいて、こういう問題について私は話を聞きたいと思います。
○高岡委員長 よろしゅうございます。了承いたしました。ほかにありませんか。――ほかに御質疑がなければ、本日はこの程度といたします。
 これにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
   午後零時散会