第022回国会 社会労働委員会 第23号
昭和三十年六月十五日(水曜日)
    午前十一時十四分開議
 出席委員
   委員長 中村三之丞君
   理事 大石 武一君 理事 大橋 武夫君
   理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
   理事 吉川 兼光君
      植村 武一君    亀山 孝一君
      草野一郎平君    小島 徹三君
      床次 徳二君    越智  茂君
      倉石 忠雄君    中山 マサ君
      永山 忠則君    多賀谷真稔君
      滝井 義高君    中村 英男君
      井堀 繁雄君    受田 新吉君
      岡  良一君    中原 健次君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 西田 隆男君
 出席政府委員
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      江下  孝君
 委員外の出席者
        専  門  員 川井 章知君
        専  門  員 引地亮太郎君
        専  門  員 浜口金一郎君
        専  門  員 山本 正世君
    ―――――――――――――
六月十五日
 委員石山權作君及び堂森芳夫君辞任につき、そ
 の補欠として滝井義高君及び岡良一君が議長の
 指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
六月十四日
 美容師法制定に関する請願(古井喜實君紹介)
 (第二一七六号)
 クリーニング業法の一部改正に関する請願(松
 本俊一君紹介)(第二一七七号)
 同外一件(赤松勇君紹介)(第二二三六号)
 同(福田昌子君紹介)(第二二三七号)
 同(小坂善太郎君紹介)(第二二三八号)
 同(島村一郎君紹介)(第二二三九号)
 身体障害者の更生資金制度実現に関する請願(
 保科善四郎君紹介)(第二一七八号)
 理容美容業における徒弟制度復活反対に関する
 請願(志賀健次郎君紹介)(第二一七九号)
 同(砂田重政君紹介)(第二一八〇号)
 同(山下榮二君紹介)(第二一八一号)
 同(松井政吉君紹介)(第二一八二号)
 同(野依秀市君紹介)(第二二三五号)
 健康保険における医療給付費の二割国庫負担等
 に関する請願(中村時雄君紹介)(第二一八三
 号)
 同(床次徳二君紹介)(二二四〇号)
 国立療養所の附添廃止反対に関する請願(小笠
 原三九郎君紹介)(第二二三一号)
 戦没者遺族等の援護強化に関する請願外八件(
 江崎真澄君紹介)(第二二三二号)
 医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
 (石橋政嗣君紹介)(第二二三三号)
 理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(
 加藤鐐五郎君紹介)(第二二三四号)
 未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用
 期間延長等に関する請願(中川俊思君紹介)(
 第二二四一号)
 医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関す
 る法律の期限延長に関する請願(松永東君紹
 介)(第二二四二号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員及び小委員長の選任
 参考人招致に関する件
 失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九四号)
    ―――――――――――――
○中村委員長 これより会議を開きます。
 まず失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。倉石忠雄君。
○倉石委員 私は政府の労働政策に関してお伺いをいたすべきでありますが、そういうことは他の機会に譲ることといたしまして、最近政府は、しばしばいろいろな機会に、政府の雇用政策について発表しておられますが、大体政府の雇用の政策について、ただいま考えておられる御方針を承わりたいと思います。
○西田国務大臣 お答えいたします。倉石さんのお尋ねの雇用政策と申しますのは、日本全体のいわゆる経済六カ年計画に基く雇用政策の意味でしょうか。
○倉石委員 そうです。
○西田国務大臣 御承知のように、経書で作っております経済六カ年計画によりますと、今年度以降逐次増加していく労働人口、これを来年度からの経済規模の拡大が逐次進行するに従って、全部吸収してしまう。そして二十九年度において完全失業者として推定されております失業者を、最終年度においては四十三万程度に押えるというのが、大体の構想でございます。毎年毎年の失業者、労働人口をいかにして吸収するかという問題につきましては、まだ労働省におきましても、的確に最終年度までは作られておりません。とりあえず三十年度の問題を取り上げまして、これはある程度御説明のできる内容を持っております。従って三十年度の雇用をどういうようなふうに労働省は考えておるかというような点について、若干御説明いたしたいと思います。
 御承知のように、二十九年度では完全失業者が六十三万・三十年度で増加いたしまする労働人口が約八十万程度、現在の経済規模をもってしましては、この増加する労働人口を完全に吸収することは困難であって、約二十万程度の完全失業者の増加が見込まれる。従って、この二十万人の完全失業者を、労働行政の面においていかにするかという問題が、当面の非常に重大な問題と考えて、労働省では取り上げております。従って、この二十万人の就労し得ない労働人口に対しては、結局労働省においては、失業対策事業等の遂行によって、この人たちに就労する機会をあらしめたい、こういう観点で、予算面に現われておりますところでは、特別失業対策事業として三十五億を計上しまして――、一カ月二十五日間の就労ということを目標にして三十五億円、人員にして三万人というものを計上いたしております。それから一般の失業対策と申しますならば、二十九年度中に行われておりましたような失業対策事業で、前年度十七万人であったものを三十年度では十九万人にぶやしまして、通計して二十九年度よりも五万人だけ、一カ月二十五日という就労の日数を予定してぶやしております。それから建設省におきまする、前年度においては緊急就労対策といわれておりましたものを、これを今度道路建設事業という名前に変えておりますが、その中に、昨年度九億であったものを五十億計上いたしまして、四十一億の増加によって、ここで三万から三万五千程度の失業者を吸収いたしたい。それから鉱害復旧事業、これは通産省の予算になっておりますが、四億二千万円増加して十三億二千万円を計上いたしまして、一万から一万五千吸収いたしたい。大体これが基本になりまして、その他公共事業、水道事業によって若干の吸収を予定いたしております。これを集計いたしますと、二十一日間の就労人員に換算しますと、合計して約十三万人がとれに吸収される。そのほか国勢調査あるいは統計等の調査のための人員として、インテリ失業者と申しますか、そういう人々を約一万人ぐらい吸収できるという予定でございます。従って十四万人程度の失業者の救済を目標として予算が編成されまして、あと残りまする約六万人近い方々は、職業補導所にこれを収容するということで、職業補導所の経費を増加いたしまして、これで年間に五・六万人の人間の収容が可能になるだろう、そうして職業を補導した上で就職をあっせんしたい、こういう観点に基いて労働省の予算ができておりまして、万全とはいえませんが、どうにか三十年度はこれで切り抜けていけるのではないか、かように考えております。
○倉石委員 失業保険法の一部を改正する法律案の提案理由説明書の中に「一昨年末より実施せられました緊縮政策に伴い、失業情勢は悪化し」とありますが、緊縮政策に伴って失業情勢が悪化したということをここに提示されたには、それ相当の理由があると思うのでありますが、この点について、政府委員でけっこうですから御説明を願いたい。
○江下政府委員 御説明をいたします。雇用関係の動向を把握いたしますいろいろな指標がございます。一つの指標といたしまして完全失業者の数、これを見て参りますと、二十八年度は年間平均いたしまして月四十五万という数字が出ております。二十九年度の平均といたしましては、ただいま大臣が申し上げましたように、六十三、四万ということになっております。すなわち二十八年度から見て二十九年度におきましては、完全失業者におきまして相当増加を見ておる。なお本年度におきましても、その点が心配されますので、大臣が申し上げましたような点について、考慮をいたしておるのでございます。
 それから失業保険によります離職者の数字でございますが、これも実人員で申し上げますと、二十八年度におきましては、月平均三十五万人の人が安定所に保険をもらいに来たわけでございますが、二十九年度におきましては四十七万程度で、相当な増加を示しております。
 なお、公共職業安定所の窓口の日雇労働者の数でございますが、これも二十八年度におきまして大体三十四、五万という数字でございましたが、二十九年度になりまして、三十七万から三十八万という数字を示しております。最近の統計では、この四月に四十二万一千という数字を示しております。
○倉石委員 ただいまの御説明によりますと、失業者が出てきたのは、緊縮政策の結果だということに結論がつけられておるのでありますが、そうすると、政府においては、昭和三十年度予算を――労働大臣の所属せられる民主党及びその政府は、いわゆる経済地固め政策ということを強く要望されて、予算の通過に際しては、われわれもその御趣意を尊重して通過に努力をいたしたわけであります。従って、今年いわゆる地固め政策を遂行することによって、失業者がさらに増加するということを、大臣はやはり想定された上に雇用政策をやっておいでになるのでしょうか、いかがでございますか。
○西田国務大臣 お答えいたします。さっきお答えいたしましたのは、二十九年度における完全失業者が六十三万、そして三十年度に増加する労働力人口をプラスいたしまして、企業面に吸収し得ないものが三十年度では約二十万人は出るであろうという想定に基きまして、この二十万人の失業者を、いかにして失業対策の面に吸収するかという観点に立って、労働省の予算で失業対策費は計上しておるわけでございまして、あとの労働力人口の増加は、三十年度の経済計画の実行によって、これを他の経済面、企業面に吸収し得るという想定のもとに失業対策を立てております。
○倉石委員 私どもは、経済政策についての基本的な考え方は、大体現内閣と一致しておると思うのです。ことに労働大臣のお立場については、非常に理解と同情を持っておるつもりであります。いろいろお尋ねいたしても、それは、できるだけ労働省当局が現在の政治面において成功していただくように祈りながら、私どもはお尋ねしておるのでありますが、どうも現内閣も、もちろん前内閣もそうのようでありますけれども、経済政策を立案する場合に、たとえば、これは御発表になったものかどうか知りませんが、総合経済六カ年計画の構想というものが経済審議庁から出ております。これを拝見しても、先ほどお話のように、最終年度において四十三万五千人の失業者にとどめる、こういう構想であります。私は今日これを年次を追うて、この構想が非常に不安なものであるというようなことを、ここで立証しようとは思わないのです。けれども、どうも経済政策を一方において立てて、そのしわ寄せを労働省に持ってきておる傾向が従来非常に多いのです。たとえば、石炭鉱業合理化臨時措置法というようなものを、この間政府当局から御説明をいただいて、つぶさに拝見いたしました。私どもは、ああいうものを拝見いたしましても、これを立案した趣旨、あの法律案全部を、自由党がそのまま賛成だというのではありませんが、石炭鉱業を何とかしなければならないということについては、全く同感であります。しかし、あの法律案を通産当局から御説明を承わっておると、産業政策としてこういうことをやるんだ、しかしそのよって来るところのしわ寄せは労働省で何とかするだろうというふうなものの考え方ではないかと思うのであります。これは大臣のお立場もおありでありましょうが、先ほど御説明になりましたこの六カ年計画に基く経済政策を、政府が推進していかれるについて、もう一つは石炭産業の合理化法案をおやりになるにしても、そういう点について、閣内において大臣はどういうふうな立場をとっておられるか。私は、やはり雇用面を先に考慮して、――少くとも同時に考慮して政策を立ててもらうべきではないか、こう思うのでありますが、今の六カ年計画及び石炭産業合理化法などをお考えになるときに、政府は雇用政策について、どういう考えをもっておやりなったかを、最初に承わりたいと思うのであります。
○西田国務大臣 お答えいたします。倉石さんの言われるのは、ごもっともでございます。理論的に抽象的に考えますと、あなたのおっしゃる通りですが、さて政策を法律案の形で打ち出すという段階になりますと・御承知のように、セクショナリズムではありませんが、各省々々の主管の関係がありまして、今例にお引きになりました石炭合理化促進法案のようなものは、通産省から提案をすることになっておりますので、原案そのものは通産省でこれを立案する、原案ができましたものを、関係各省に通産省の方から協力を求めるという姿で、それからいろいろ議論を開始するというのが、法律案を国会に審議を願う今までの大体の方針であったと私は承知しております。今回の合理化法案につきましても、おっしゃるように、最後のしわ寄せは、労働行政の面にみなかかってくる、この解決がつかない限り、あの法案の審議が国会で進もうとは私も考えておりません。従って、労働省としましては、労働問題の解決・言いかえますならば、失業者になるであろう人々の不安を解消するための万般の措置がとられたあとでないと、この法律案そのものを国会に提案すべきでないという主張を強硬にいたしましたし、なおそれに対しましての対策は、労働省だけでなくて、関係各省と緊密な連係をとって、ある程度具体的な問題の解決を促進しながら、今の法律案を国会に実は提案したのであります。従って、石炭合理化法案の一つを取り上げてみてもそういうことでありますように、経済六カ年計画における雇用の問題の解決、日本経済の発展を、どういう産業で、どういう方法でどの程度持っていくかということに対して、雇用の問題というものが大体において考えられない先に、企業そのものの合理化、機械化、経済規模の拡大というものを抽象的に観念的に取り上げて、そのあとで、労働問題をどうするかというようなことに現実はなっておるのであります。これは、私が当委員会でも基本方針でお話し申しましたように、少くとも現在の日本の経済問題は労働問題、言いかえますならば、雇用問題の解決なしでは・とても日本経済の自立の達成は不可能だ。だから、何よりも労働問題を先に考えて、そうしてこれに対する妥当な結論を生んだ後において、実際問題の政策奥行に当るべきだという主張は、かねがねいたしておりますけれども、御承知のように、その問題だけにとらわれて、経済問題を次に考えていろいろな法律案を出すということば、実際視亀としては冠雑な情勢にありますので、経済閣僚懇談会等におきましては、盛んに発言をいたしておりますけれども、私が考えております程度までも、現在は達成が非常に困難だという情勢下に置かれております。しかしながら、国が実行することによって生じます失業者というものに対しましては、少くともその法律を制定するに当りましては、法律制定と並行して、この問題の具体的な解決を講じた後においてなすべきだということだけは、石炭合理化促進法案の審議の問題とからみまして、これだけはどうにか充足されていきそうに私も期待いたしております。従って、将来の問題に対しましては、倉石さんのおっしゃるように、先にその問題の解決を具体的にはかって計画を立つべきでありますが、まあまあ日本の実態から考えまして、そういう問題に対する具体的な一つ一つの解決策が並行して実施されますならば、どうにか切り抜けていけるのではないか、こういうふうに実は考えておるのでございます。
○倉石委員 私は今大臣のお述べになりました御意見については、おそらく党派を超越して、労働委員会の方々は御賛成であろうと思うのであります。私は将来さうありたいと思うのですが、現在は皆さん方の政府でありますから、われわれもできるだけは御協力をいたしますが、そういう雇用の面に、もう少し重点を置いてやっていただくことを、私は極力希望いたすものでございます。
 そこで、先ほどお話のありました政府の雇用政策の基準になるであろうと思われる総合経済政策六カ年計画で、最終年度四十三万五千人分失業者にとどめるということになっておりますが、先ほどは三十年度のお話がございました。そこで、最終年度四十三万五千人になって参りました理論的な数字的な根拠をお示し願えれば仕合せだと思うのです。
○江下政府委員 その点につきましては、大臣も申し上げましたように、なお政府でも検討中の点もございますので、後刻また資料等で差し上げまして、御説明を申し上げさせていただきます。
○倉石委員 それでは、この資料はお出し下さるのですね。
○江下政府委員 できております限度においてお出ししたいと思います。
○倉石委員 それでは、その点について私は質問を保留いたしてお誉ます。
 先ほどお話にありました石炭鉱業合理化臨時措置法の実施に伴う他のことは別といたしまして、雇用関係について、この間大臣は本会議で大体御説明になりましたが、本日この委員会で、あれ以上お話下さるととはありませんか。
○西田国務大臣 衆議院の本会議でお答えをいたしましたことは、かなり具体的に、長過ぎるといって怒られるほど、実は数字をあげてお答えいたしたのでありますが、それより以上の問題は、実際にそういう問題が起きて一つ一つの事業にかかってみて、どこに―これは推定はいたしておりますが、各地区別、炭田別にどういう内容を持った失業者がどれくらいできてくるかということが具体的にわからないと、それより以上詳細なお答えをすることは困難であります。従って今日ここでお尋ねになりましても、本会議で読み上げましたもので省いておった数字を、具体的に申し上げるという程度であって趣旨としてはあれより以上の内容を持ったものをお答えするものはございません。
○倉石委員 そういたしますと、最初に伺っておきたいのでありますが、この合理化法案というものを御提案になったのでありますから、もちろん政府は、これが国会で通過されることを予想しておやりになっておるのでありましょう。そうしますと、本年度大体どのくらいの失業者を見込み、来年どのくらいということの御計画を、事務当局でけっこうですから、ちょっと御説明を願いたい。
○江下政府委員 お答え申し上げます。石炭合理化法案の実施によりまして、これは実施が年度末に近づきますので、本年度は比較的数が少いのでございますが、四千七百の離職者がある。それから三十一年度におきまして一万四千二百、三十二年度におきまして八千三百、合計いたしまして約二万七千人でございますが、これは石炭合理化法によります低能率炭鉱の政府の買い上げ等の措置によりまして離職する者の数でございます。
○倉石委員 そうしますと、昭和三十年度には、ただいま御説明の四千七百人というものが想定されておったのでありますが、今年の失業対策には、もちろんこれをお入れになっての予算でありますか。
○西田国務大臣 三十年度の予算を編成いたしますまでは、石炭合理化促進法というのが国会に提案されるかどうかという問題について、まだ決定をいたしておりませんので、労働省に計上いたしております失業対策事業費の中に、四千七百人というものは見込まれておりません。従って、この四千七百人の失業者を、初年度にいかに吸収するかということになりますと、これは別の観点に立って吸収の方法を考えなければならないというので、労働省ではそれに対して、地区別に具体的な策を今立てておるわけであります。
○倉石委員 そうしますと、その予算的措置は、三十年度予算とどういう関係になるのでしょうか。
○西田国務大臣 これは、特に炭鉱合理化の促進によって生ずる失業者という特定の費目のもとには、予算は計上してございません。しかし、公共事業――河川、道路、水道等々によって、倉石さんも御承知のように、今度の予算でも大分修正増額されておりますし、四千七百名だけの吸収であれば、総体的な失業対策事業費の中からの捻出が絶対に困難だとは考えておりません。従って、特に失業のよけいに発生しておる地区における生産的・建設的な失業対策事業という観点に立ちまして、鉄道の建設というものを考えて、これは一応閣議決定をいたしておるわけでございますが、これに対しましても・現在までの鳩山内閣が出しました予算には、そういう新線建設に対して、失業対策としての構想による予算は計上してございません。今回の五億円新線建設に増加になりましたものは、初年度分の測量調査費、用地買収費等に若干の、分け前といえばおかしいですが、内容を分けてもらいたいというので、今折衝いたしております。鉄道建設審議会の方で、新線建設の中に取り入れられた場合においては、あの中から出していただける。もしそうでなかった場合は、また新たに別な観点に立って、合理化による失業者の救済を考えなければならないというふうに考えております。
○倉石委員 ただいまの御説明によりますと、三十年度の予算の中には、この炭鉱合理化によって生ずる四千七百人の失業者の予算的措置は講ぜられていないというお話であります。そういたしますと、その四千七百人というものは、との間大臣から地域別に、石狩であるとか釧路であるとか留萌であるとか、いろいろお話がありましたけれども、そういうものは結局予算の面から見れば、はみ出す計算ではないですか。そうでなければ、今まで予算編成のときにおやりになりました失業対策の予算というものは、何を目標にしてお立てになった予算でありますか。つまり、炭鉱合理化法を提案するかどうかわからないという時代に編成した予算であるならば、それはすでに全国各地の失対事業などに対して割り当てられる予算――先ほど御説明になりました違う方の予算に出ておる三十五億円でありますか、それなども、ちゃんと計画が立っておいでになった。それに石炭合理化法による失業者がよけいに加わることになるのでありますから、予算的には、どうしてもそれだけはみ出す結果になると思うのでありますが、その点いかがですか。
○西田国務大臣 お答えいたします。倉石さんも御承知のように・失業対策予算を組むにいたしましても、何町、何市に何百人の失業者が出るという数字を)完全に集計して予算を組まなくちゃならぬものであろうとは思いますけれども、実はそういうような予算の編成の仕方はいたしておりませんで、さっき申しましたように、一応二十万人程度失業者が増加するであろうという見解に基いて、大まかに組んであります。三十五億の特別失対のお話がありましたが、これも、人数をどこにどう振り分けるという内容を持っておりませんで、道路の重舗装にこれを出したい、港湾の改修に持っていきたい。そのためには、国庫負担の額を五分の四にふやし、材料費は四十五円のものを二百十円にふやして、完全に道路の重舗装、港湾の改修その他ができるような意味合いにおきまして、三十五億円という経費を計上いたしております。従って、四千七百名程度の失業者は、この合理化法案に基く特定な失業対策事業と結びつけて考えなくても、何とかでやりくりをつけていけば、つけられないこともありませんし、今回の予算の修正によって、特にこの公共事業方面の水道その他に相当な金額が増加されてもおりますし、こういった面から考えますと、四千七百名程度の石炭合理化による失業救済は、新線の建設ともからみ合せて、予算の基本的な考え方をぶちこわしてしまうというような影響を与えるほどのことではなくて、何とかやりくりしてやっていける。これは新しい法律による犠牲失業者でございますから、それと結びつけて、はっきりした予算措置をとりたいと考えておりますけれども、現在の段階では、それも困難な事情にありますので、ひとまず現在の失業対策事業に組んである予算と建設省の公共事業費、それから特に増額されました水道等の建設にこういう失業者を吸収いたしたい。しかも鉄道の新線建設に――大体石炭の合理化による過半数の人間を、御承知のように九州が一番多いのでありまして、特に福岡、佐賀、長崎地方に小さな炭鉱が多くて、これに失業者が大部分出て参ります。この失業者を吸収するために、新線の建設を地方で行いまして、それに大部分のものを吸収いたしたいというような構想をもって考えておりますので、鉄道建設審議会で新線建設が是認されますと、失業対策としても、はっきりした姿において石炭合理化法による失業者の吸収が可能になると私どもは考えております。
○倉石委員 今までいろいろお話しになりました結果によれば、ただいま最後に力を入れてお話しになりました北九州方面の新線建設というのは、非常に危険な状態になっておるように私どもは承知しておるのでありますが、今お話しのように、この合理化法で一番犠牲を生ずる北九州の新線建設については、どういうお見込みでありますか。
○西田国務大臣 お答え申し上げます。これは言っていいことか悪いことか、私は閣僚になって日が浅いので、よく存じませんが、ざっくばらんに申し上げますと、私の考えでは、一般会計から、石炭合理化による失業対策事業費として、特定なものに結びつけた予算が実はもらいたかったのであります。ところが、いろいろ困難な事情がありましたので、最終の閣議で、資金的な措置を講ずるということの閣議決定をいたしております。これは時期がいつになりますか、はっきりいたしませんが、私の推定では、おそらく第四・四半期に入ってではなかろうかと考えております。従って、かりに今問題になっております川崎線の建設にいたしましても、用地買収費、測量費等で、運輸省の見積りでは、三千七、八百万円の金があれば現在考えておる川崎線の建設にかかれる。しかし、用地の買収や実測をやっておったのでは、失業者の救済は直ちにできませんので、この点から申しますと、川崎線の建設にいたしましても、三十一年度からほんとうの工事を開始するというのが、実際じゃなかろうかと考えております。従って、失業者の発生しますのも、三十一年度は大体一万四千七百五十名ですか、大量の失業者が出まして、三十一年度では鉄道の方に二千五百人程度の人員を吸収するということで、三十一年度になれば、今申しました予算措置か資金手当か、いずれかは必ず大蔵省でやってくれる、こういうふうに私は了解をして、実はこの問題を進めておるわけであります。
○倉石委員 要するに、私は労働大臣が雇用の面において成功されることを祈っておるのでありますから、ただいまのお話も成功されることを祈念して、この問題についてはこれ以上お尋ねすることはやめます。
 今度は失業保険法について政府の御意見を承わりたいのでありますが、現在行われております失業対策事業というのは、初め私どもが労働委員としてやり出したころは、労働省当局もそうでありますけれども、失業しておる者にとにかく生活費を出してやりたい、だから、まあいわば生活保護費的な考え方で始めたことです。従って私どもは、失業対策事業などというものは、一日も早くやらなくて済むようにしたいということを念願としておった。ところが、だんだん私どもの郷里のようないなかの方でも、やはり帰農してくる失業者が出て参りまして、そういうところで、失業対策事業をやることによって、きたないどぶがきれいな川になったり、それから道路舗装の前に側溝をやってもらったりといったような建設的な方面に失対事業が使われるようになって、かえって非常に喜ばれるようになってきた。非常にけっこうなことだと思うのです。そこへ持ってきて、また今度は、先ほどお話にありましたような公共事業だの、そういう方面に優先的に失業者を吸収するという計画も、前内閣時代から行われ始めた。ところが、場所によりますと、非常に不経済な、こんなところへ国費を使って、一体何をやっているのだろうと思われるようなものも、至るところにある。私どもは、そういう問題に比較的関心を持っておるものでありますから、ときどきそういうところをたずねて拝見するのでありますが、現在の政府当局は、いわゆる失対事業というものに対して、どういうお考えを持っておられるか、あなたの御意見を承わりたいと思います。
○西田国務大臣 お答えいたします。今までの失業対策事業というものは、倉石さんが今お話しになったような方向で行われておると、私も承知いたしております。従って、失業対策事業を行うにおいて、大別しますと、二つの考え方があると思います。その一つは・よくいわれますように生産的・建設的な事業、もう一つは、いわゆるほんとうの社会保障的松意味における、生活保護的な意味合いにおける失業対策事業、大別してこの二つに分けられると思います。しかしながら、二つに分けられはしますものの、失業者の質、内容の問題等がからみ合いますので、これを本筋にして考えて、どれに力を入れてやるかということになりますと、これは実際問題としては、なかなかむずかしい問題でありますが、私の考え方は、一応この二つに大別いたしまして、そうして労働能力をある程度持っている人たちは、ことごとく建設的な失業対策事業・生産に寄与し得る失業対策事業にこれを吸収すべきである、かような考え方で実は来ておりまして、そうするためには、現在の地方に対する補助をするという形におきましては・地方財政が非常に困窮いたしておりますので、少くとも国庫負担を、地方の負担軽減のために、より多くほしい。材料費等も、完全に建設的な生産的な事業を充足するに足る材料費を計上することによって、地方の負担を軽減し、そして労働者をその方面に吸収したいというので、三十年度の予算の折衝に当りましても、これに重点を置いて大蔵省と折衝をいたしましたけれども、さっき申しますように、今までの失業対策事業のカテゴリーが、生活保護、社会保障的な見地に立って予算が計上されておりましたので、なかなか私の考えておる通りには参りませんでした。今まで五千人しかなかったものを、このうちで三万人だけは一応予算の三十五億に計上することが可能になりまして、労働者の失業者の質、内容の調査と相待って、生産に寄与できるような建設的な事業に三十五億の金だけは優先的に使えるという形に一応なっております。あとの十九万人と申しますのは、これも今までのカテゴリーの中にとらわれて使う必要はない、これは純粋な意味における生活保護、いわゆる社会保障的な観点に立っての失業対策、その中であっても、これもやはり建設的な事業というふうに二つに分けまして、そしてできるだけ建設的な事業の方面に吸収をしたい。大体こういう考え方をもって失業対策事業というものを遂行すべく、今調査ので嘗ていなかった点は調査を進めて、報告を待っておる段階でございます。
○倉石委員 政府の御意見は、大体わかりましたが、私どもは、この失業対策事案ということについては、もう少し違った考えを実は持っておるわけです。しかし、今日は時間もございませんから、またほかの機会に御相談することにいたしまして、この際伺っておきたいと思いますのは、いわゆる日雇い労務者のなさる労働運動の最近の傾向について、一つどなたからか、御説明を願いたい。
○江下政府委員 現在安定所に登録されております日雇い労働者の数は、先ほど申し上げましたように約四十二万、この日雇い労働者の人々が組織を作っておるのでございますが、大きく分けまして、全日労と申します団体が一番大きい力を持っておりまして、これが全体の半分程度は掌握しておるように思います。そのほかにも、なお全国的な組織も一、二ございますけれども、これは比較的力が弱いという実情になっております。これらの人たちは、組合を組織いたしまして、この失対法が実施されましても、先生も御承知の通り、非常に要求項目を掲げまして、例年盆と暮れには猛烈な労働攻勢をかけて参っております。大体、私どもの方といたしましても、時節になりますと、この組合との応待に日もなお足りないというような事態も生ずることがたびたびでございますが、一応面接をいたしまして希望を聞きまして、政府として考えられることは、これによって措置をするというようなことで、現在まで至っておるのでございます。なお、ここに統計がございますが、昭和二十九年度におきまして、いわゆる求職闘争ということで事件がございましたのが一万一千七百六十七、参加人員として四十七万六千四百三十一という相当大きな数字に上っておるのでございます。
○倉石委員 日雇い労務者が一ころ、赤旗を立てて、われわれもこの国会の下でつるし上げに会った時代もありますが、このごろはそういう闘争方式でなくて、もう少し現実的な要求を持ち出すようになってきたと思うのです。そこで、との日雇い労務者を各地で使っておられますが、あとでけっこうでありますが、いわゆる六大都市の日雇い労務者とその他の地方とを分けて、資料として一ぺん出していただくようにお願いいたします。それから日雇い労務者というものは、つまり地方自治体に雇用されている者が非常に多い。そこでこれに金銭を支給する場合に、日雇い労務者というものの身分は、どういう取扱いをしておられるのか。その日その日・安定所から送られるには違いないが、どういう身分になるものでありますか、政府の御見解を承わりたい。
○江下政府委員 形式的に申し上げますと、これは地方公務員の特別職ということになるわけです。現実には日々雇用される。日々雇用関係が始まり、日々雇用関係が消滅する、こういう形をとっております。臨時の雇い、こういうことになるわけであります。性質といたしましては、国家の失業対策、失業救済という恩恵的な施策によってやられるもの、こういうことになるわけであります。
 そこで、建前といたしましては、今申し上げましたように、日々雇用されるというのでございます。これは先生も御承知の通り、失業対策で雇われておりますものは、もちろん定職があれば、その日にでもほかに変るべき性質のものでございます。永久に常雇い的な形にこれを持っていくととは、厳に避けなければならないのでございます。あくまでも建前といたしましては日雇いということにいたしまして、雇用関係を一日々々更新していくという建前になっております。
○倉石委員 どうも私も先般来、日雇い労働者というものの身分関係について、非常な疑惑を持っておったものでありますが、政府の御見解によれば、その日その日ではあるが、地方公務員の特別職、こういうことになっておるようであります。特別職であって地方公務員ということになりますと、いわゆる争議はできないのじゃないか、団体交渉権もないのじゃないかというふうに法律上は考えられるのでありますが、政府の御見解はいかがでありますか。
○江下政府委員 先ほど申し上げましたように、地方公務員法を見ますと、一応この特別職の範疇に入るわけでございます。御承知の通り、特別職というものは、これは一般の国家公務員でもそうでございますが、労働組合法等の関係から一応除外されております。従いまして、団体交渉ということは、これは私どもとしても非常に疑問がございますけれども、事実上現在参っておるということに対して、応待をいたしておるということでございます。この点については、なおこれは法律的にいろいろ検討しなければならぬ点もたくさんあると思っております。
○倉石委員 私は、この労働関係の問題については、今のような疑問の点がまだほかにもたくさんある。こういうことは、やはり私は西田労働大臣のようなしっかりした大臣がおられる間に明白にされる方がいいと思う。それで、今の政府委員のお話によれば、まあ来られるから、一応応対はしなくちゃならぬ――これはそうでありましょう。しかし、これは社会政策的な意味で応対をしておるのであって、どこまでもやはり法治国である以上は、法律というものを曲げてなすべからざる運動などをしてはいけないので、そういうところに国家の乱れるもとがある。私は先般来、月雇い労務者というものの身分関係について、いろいろ考えましたときに、今日までやっておられます運動方式は、これはまずいのではないかということについて、一ぺん一つ労働省の専門家の御研究を願いたいと思っておったことなんであります。これは非常に重要な問題でありまして、地方公務員の特別職といえば、国家公務員の特別職と同じ意味で、内閣総理大臣や西田労働大臣と日雇い労務者とは、ただ国家公務員と地方公務員ということが違うだけであって、公務員の特別職であるという点においては同じです。私はそういう法律関係を明白にして、やはり将来の日雇い労務者に対せられる態度を決定されなければならぬと思うのでありますが、それは後刻一つまた機会を見て政府の御研究の結果を承わりたいと思っております。
 そこで、ただいま提案されております法律案の実態について、若干のお尋ねをいたしたいと思います。政府の御提案になりました改正案第六条のうちに、当然加えられるべきものの中に、教育事業を除いておいでになるのでありますが、どういう理由で教育事業をお除きになったかを承わりたい。
○江下政府委員 教育事業につきましては、実は私ども今回の改正によりまして、他の強制適用事業と同じように、強制適用に当初いたすべきであるという考えで事務的に進めておったのでございますが、その後、教育関係の方々の実態を見てみますと、失業保険の面から見ますと、率直に申し上げまして、離職により失業保険をもらう機会が非常に少いのであります。もちろん社会保障制度といたしましては、そういうものも含まねば、これは経済が成り立たないわけでございますので、そういうことも当然考えたのでございますが、事実問題として、離職による失業保険の恩恵が非常に少い。私どもの計算によりますと、一般の離職者の離職率が一・一%ということになっております。教育関係を見ますと、幼稚園から大学まで平均いたしまして〇・五%程度でございます。もちろんこの程度のは、ほかにもあると思いますが、従来これを除外いたしておりました趣旨が、そういうところにあるのであります。いま一つは、公共職業安定所で学校の先生を職業紹介するということは、事実上はなはだむずかしいという点もございます。あわせまして、率直に申し上げさせていただきたいと思いますが、実は学校関係の団体から、相当これに対して時期尚早であるという強い意見もございました。それらをあわせ考えまして、今回は強制適用にいたしませんでしたが、この次の改正等には、十分考慮いたしたいと考えております。
○倉石委員 そこで、現在の失業保険経済の実態について、御説明を願います。
○江下政府委員 昭和二十九年度におきましては、収支差引約十億程度の赤字でございます。この赤字のよって生じましたところは、先ほど来申し上げましたような緊縮政策の突然の実施という点が主となりまして、あわせて今日提案いたしております失業保険法の改正の主眼点になっております季節労働者等の短期被保険者の非常な増加ということ等が原因と思いますが、そういうことに相なっております。本年度に入りましてから、四月には初回受給者が七万三千でございます。当初私ども予算で予定いたしておりましたのは、上期七万五千という一応の線でございますが、まあどっこいどっこいと現在のところはいっておるのではないかと考えております。
○倉石委員 ただいまのお話によりますと、大体保険経済の現況はわかるのでありますが、失業保険の経済は、つい先年までは非常に黒字で裕福であって従って率の引き下げを、私どもは二回ほどやったような記憶をいたしておるのであります。ところが、健康保険と同じで、だんだんこの保険経済が逼迫して参った。その大きな原因が、ただいまの御説明のうちにありましたようね、いわゆる季節労務者というものが非常にふえてきた。それに支給されるものが、労働省のお調べによりましても非常に多いようでありますけれども、この法の第二十条にあります季節労務者をこういうふうに改正されるということについて、つまり受給年月の改正という御趣意は、提案理由の御説明を拝見いたしまして、私どもはこれは常識的なことだろうと思います。他に御意見もあるかもしれませんが、私は今回の提案理由の御趣意はごもっともなことだろうと思うのです。そこで、保険経済を死に瀕せしめておる一つの原因をなしておるといわれる季節労務者というものは、各国にもあるようでありますが、日本は、現に私どもの同僚の北海道、東北の代議士のお話によれば、極端なものが多い。東北の者が北海道へかせぎに出て行って、そして保険金を受ける資格を得ればそれで帰ってくる、帰ってきて実家で遊んでおる方が、どこかへ出て働く収入よりも多い、こういうような奇現象を呈しておる。そういうことによって国の経費を乱費するということは、私どもははなはだよろしくないことだと思うのです。もちろん私どもは、先ほど大臣のお話にありましたような、就業意欲を持ち、健全なる身体を持っておられるにもかかわらず、今日の経済状態で失業されておるというようなものの生活を保障するのが、失業保険のねらいであったので、しかもその法の盲点を縫って、そして受給資格を獲得すれば帰ってきて遊んでいるといったようなことでは、私は失業保険の目的と全くそれた、これを悪用するものであると思うのです。私は、今日の保険経済の現況を見、それからまた季節労務者、現在秋田、北陸方面から季節的に北海道へ出ていってやっておられる人人の実態の報告を聞けば、かような人人に失業保険を支給しておることが元来おかしいと思うのです。私は、失業保険法並びに失業保険経済について、今日において政府が目ざめられなければ、悔いを将来に残すと思うのです。これは非常に大事な問題でありまして、この失業保険法の改正に当って、私は政府に猛省を促したいと思うのですが、政府の見解はいかがでありますか。
○西田国務大臣 お答えいたします。お説のように、失業保険法の本旨に反するような乱用者、不正利用者でありますが、季節労務関係その他によって、短期の労務によって非常に大きな弊害をかもしておる数字を申しますと、六カ月から九カ月間働いて保険をもらっておる者の数が二十九万一千、この中で季節労務者といわれる人々が約二十二万九千人おる、こういう人は、今、倉石さんが言われたように、出かせぎに行って六カ月たてばすぐに郷里に帰ってしまって、そして六カ月の保険金をもらえる、そしてそれが切れるころまた向うへ行って働いておる、そういう一種の不当所得といいますか、そういろ形で失業保険の支給が行われているということは、保険経済の面から参りましても、また失業保険法の本来の趣旨から申しましても、決してとれは看過すべきではないという建前に基きまして、実は今回の失業保険法の一部改正法律案を国会で御審議を願っておるのであります。これによりまして、この法案が通過いたしますならば、現在赤字を出しております失業保険経済は、今までの倉石さん方が保険料の値下げをされたときほどのことはないかもしれませんけれども、一応赤字を見ないで、少額であってもある程度の積立金が増加していくというような形で、運営ができるという一応の見通しをつけて、この法案を出したようなわけであります。
○倉石委員 私は、今度の改正法だけでは、ただいまのお話のようなものを完全に救済することは、まだ不可能ではないかと思うのです。もう少し失業保険法を改正すべき個所が残っているのではないかと思われるのですが、そういうことは後にいたしまして、この失業保険の受給資格というものを獲得するには、どういう方法でやるのでありますか。
○江下政府委員 これは、従前もそうでございましたが、離職の日以前一年間に六ヶ月の被保険者期間を必要とする、これが受給資格の条件でございます。
○倉石委員 そのことは、法律にそういうふうになっているのでありますが、雇用される者が使用者に使われるということになりますと、職業安定所では、たとえば倉石忠雄という者がAという事業場に就職した、そうして本日から六カ月働けば受給資格があるのかどうか、そういう実態を職業安定所ではつかんでおられるのでありますか、おそらく今日ではそうじゃないと思うのです。
○江下政府委員 どうもお答えを取り違えまして申しわけありませんでしたが、お話の通り、現在の失業保険法におきましては、事業主が適用になった、つまり失業保険法による強制適用事業場になったということを安定所に届け出るだけでございまして、そこに働いております個々の被保険者について何ら届け出をしないというのが、現在の法律でございます。
○倉石委員 今度の改正案では、それは明確にはならないと思うのですが、いかがでございますか。
○江下政府委員 その点につきまして、従来とかく被保険者の権利の擁護、あるいは被保険者の受給の乱用という面が出ましたので、今回の改正によりまして、その点を明確に規定をいたしたのでございます。十三条の三というところで「第六条各号の事業主又は第八条第一項若しくは第十三条第一項の認可を受けた事業主は、命令の定めるところにより、その雇用する労働者についての被保険者の資格の取得又は喪失に関する事項を労働大臣に届け出なければならない。こういたしますと、個々の事業場といたしましては、従来のように、単に事業場が安定所に自分の名前を届け出るいうとことではなくして、今度は個々の被保険者の名前等も書きまして安定所に届けることにいたしました。それによりまして、安定所はそれを台帳に整理いたしまして、変更のつど、また届け出を受け加除をいたす。それで、離職をいたしました際に、果してこの者が当初から六カ月の資格があったかどうかということを安定所の方で確認するということを、今回の改正の一つの主眼点といたしまして、その点を置いておるのでございます。
○倉石委員 被保険者に対して、何か手帳みたいなものを渡しておいて、そしてそれにA事業場に就職した、そして何月何日に離職したというふうに、自動車運転免許証みたいなものを交付しておけば、ただいまのような危険はなくなると思うのでありますが、そういうことをどうして政府はおやりになりませんか。
○江下政府委員 労働手帳の問題も、今実は検討いたしておるのでございますが、実施いたしまして、との労働手帳というものが実際に有効に働きますのは、主といたしまして働き宏がら保険金をもらっておる、つまり給料を他にもらいながら保険金をもらっておる、この点がなかなか安定所でつかみかたい点がございます。そこで、もし被保険者手帳というものを作るとしますれば、働きながら保険金をもらうということを、事業主に協力していただいて、働いた以上は、全部収入その他を被保険者手帳に書き込んでいただく、これを安定所に必ず提示させる、こういう形をとりますと、この点がうまくいくのでございます。実はいろいろこの点を検討いたしたのでございますが、その点については、事業主の全面的な協力が得られるかどうかというような点も考えなければなりませんので、これはなお、実施するとしましても、施行規則の方で考えられることと思いますので、あわせて検討をいたしております。
○倉石委員 私が一番心配しいたしますのは、先ほど申し上げたような趣旨の失業保険法でありますから、その盲点をくぐって、これを政府に乱費させる。そうして不当なる利得を得られて、しかも働けるからだを持って遊んでおるといったような者を出さないようにすることが、われわれのねらいなんであります。まじめに勤めておったのに、どうしても職がなかったというような者は、もちろん救済をしなければならぬのは当りまえのことでありますが、そういうことをするためにも、保険経済を確立しなければならないので、従って私は、いわゆる季節労務者の、法の盲点をくぐって悪徳行為をしておるような者は、厳に取り締らなければならないと同時に、今は季節労務者のことを申しましたが、私の知っておる範囲では、そういう東北、北海道方面ばかりでなく、中央部における一般産業でも、臨時雇いの形でそういうことをやっているところがぽつぽつ出てきた。これは外国などでも、そういうことについて非常に困っておることを聞くのでありますけれども、そういうものはちょっと現在の法律で取り締ることができないのではないかと思うのです。そういうことに対して、政府はどういうお考えをお持ちでありますか。
○江下政府委員 お話の通り、季節的労働者に限りませず、いわゆる循環的な雇用といわれておりますもの、または半年だけ雇われることを条件として雇用しておる、失業保険をもらうための雇用というのが、全般的な最近の傾向となりつつあるわけでございます。そこで、これらのものに対しまする対策といたしましては、従来、過去一年間に半年被保険者期間があればよかったのを一年に延ばす、そういたしますと、一年のうち一部働いて一部保険金をもらうという弊害はなくなるのでございます。それでも、完全にはなくなりませんけれども、しかし、相当部分がこれで排除されるのでございます。実はその点についても、私どもこの法律の改正案では、慎重に考慮いたしたのでございましたけれども、何と申しましても、一応現在まで六カ月被保険者期間を有しましたものに対しましては、百八十日の給付をいたしておりますので、これを全部一年に引き引き延ばすということにいたしますと、相当雇用秩序の面で大きな影響があることが考えられたのでございます。非常に妥協的な案ということになりますけれども、今回の改正におきましては、一応その中をとりまして、特に短期の被保険者につきましては、被保険者給付日数を九十日にする。これでは、先生のおっしゃるように、まだ不正受給の完全な排除はできないのでございますが、今回の改正におきましては、この案でもって処理をすることが適当と考えたのでございます。
○倉石委員 法第二十三条に「詐欺その他不正の行為によって失業保険金の支給を受け、又は受けようとした者には、その失業保険金の支給を受け、又は受けようとした日以後失業保険金を支給しない。」これはまあ当然のことだと思うのですが、「但し、やむを得ない事由があると認められる場合には」とありますが、この「やむを得ない」というのは、どういう場合のことをいうのでありますか。
○江下政府委員 やむを得ない場合と申しますのは、本人が改悛をして、不正受給したあとすぐ、これは悪かったと自首をしたというような場合とか、あるいは不正受給の金額が非常に軽微であるというような場合等につきまして、一応考えておるのであります。
○倉石委員 政府当局もおわかりになっておられると思うのでありますが、私どもの知っておる範囲では、小さな事業場においては、経営者と雇用される者とが話し合いの上で保険金を支給させるような陰謀をやっておるものが、相当数あるのです。それで私は、やむを得ないというようなことをいっていると、やはりそういうことで逃げる危険が非常に多いと思うのです。もちろん、今あなたの御説明になりましたようなものは、同情すべき点もあると思うのでありますが、何しろこれは国民の血税でできておる国の予算を使うことでありますから、私は行政当局は、その点について十分に厳格にやっていただくことが、皆さんの義務だろうと思うのです。私はそういう見地から、この失業保険といったようないわゆる社会保障制度を悪用する者は、普通の犯罪よりも重く考えるべきだと思うのです。私は、今の御説明によって、このやむを得ないということにについて、賛成も不賛成も申し上げるまでもありません、もう少しわれわれも検討してみたいと思うのでありますが、今度その第二十三条の二に、従って今私が申しましたような趣旨からいえば、最終のところに「一部の返還をすべきことを命ずることができる」と書いてありますけれども、命ずることができるのはおかしいので、当然これは命じなくちゃならない。どうしてこういうふうに緩和的な言葉を使っておられるか。
○江下政府委員 従来の規定におきましては、返還の命令を出しますものは、不正の受給を受けた者だけでございます。今回、先生のおっしゃるような趣旨で、事業主となれ合いの上の不正を防ぐために、特に事業主にもこの返還請求をなすことができることといたしたのでございます。ただ、この規定の書き方ついたしまして「命ずることができる」ということにいたしておりますし、また「全部又は一部」ということもございます。これ等につきましては、先ほど私が二十三条のただし書きにおいて説明いたしましたような、真に宥恕すべき事態の起った場合にのみは、やはり返還をさせないでおくことができるということも考えなくてはならないということで「できる」ということを書いておるのでございます。なお、この「全部又は一部」と書いてございますのは、これは不正受給金額の中で、必ずしも全部が全部不正受給金にならない場合もございます。これは不正受給金なんですが、たとえば五千円まではもらえるのを、六千円に山かけして出した、こういう場合もございますので、そういう真に気の毒なというような例がございました場合には、その不正部分だけを返還せしめるということも出占えて、こういう規定にいたしておるのでございます。
○倉石委員 政府委員の方に、もう少しお尋ねしたいことがありますが、大臣が御都合があるようでありますから、一点だけお尋ねいたしまして、私は大臣に対する御質疑は、先ほど申し上げたところの保留を除いては終ります。
 最近官報の付録資料に、労働省当局が御発表になりましたものを拝見いたしますと、現在潜在失業者六百万人ということを指示しておられます。今までいずれの内閣も、潜在失業者の数を数字をもって明確に発表せられた例はないのでありますが、この潜在失業者六百万人ということを発表されました。政府はこれを責任を持って御発表になっただろうと思いますけれども、労働大臣はいかがでありますか。
○西田国務大臣 お答えいたします。ただいま倉石さんのお述べになりました潜在失業六百万人と申しますのは、労働省ではそういう数字を発表した覚えはございません。多分内閣の調査室かなんかで、三月末に完全失業者八十四万、潜在失業者六百万というような数字を出しておるのを新聞で拝見したのでございますが、御承知のように、日本における潜在失業者というものは、なかなか実数がつかみにくい状態でございます。諸外国のように、雇用状態が、国内の八〇%も九〇%も雇用状態にありますところにおいては、潜在失業者というものは割合につかみいいのですが、日本のように農業、水産業、林業等々、中小の商工業ですか、こういうふうに完全な雇用状態でない部門が非常に多ちございますので、完全失業者の数につきましては、三百万という人もあるし、六百万という人もある、あるいは一千万以上という人もあるような実態でございまして、この調査も、労働省としましては、しなくてはならぬと考えておるのでありますが、なかなか実態の把握が困難であります。従いまして、今の潜在失業者六百万の発表という官報に掲載されておりますことについては、労働大臣としては承知いたしておりませんし、私としては、日本の潜在失業者というものを、どういう観点からどこに目安を置いて考えるかという問題がありますが、三百万程度が潜在失業者としては適当な数字ではなかろうかと、私個人は考えております。
○倉石委員 私は、ただいまのお話の潜在失業者六百万人ということを、とにかく官報付録の資料をもって政府が発表されるということについては、私はこの六百万人というものを、政府がほんとうにお認めになるとすれば、労働政策についても、われわれは相当考えなければならぬと思う。ただいまのお話で、何となく政府部内にそういう大事な問題について不統一のような感じを受けるのでありますが、こういうものを発表されるということについては、私は労働大臣は内閣において十分慎重にやっていただきたい。これは、ひとり私ども議員がそういうことを考えるだけではなくして、重大な影響を持ってくる問題であります。どうか一つ、こういうことは何かの機会に、しかも労働省当局が責任を持たれないような潜在失業者の統計を、政府の名において官報付録の資料でわれわれに配付されるというのがそもそもおかしな話です。これは一つ十分に内閣において慎重にやられんことを希望いたしまして、私はもうあなたに対する質問はこれでおしまいにいたします。
○西田国務大臣 御注意いただきまして、今後の問題につきましては、万全を期したいと思いますが、内閣の調査室で発表しました数字も、全国的にこれを詳細に調査したのでなくして、抽出法によって一応の事務的数字を出したものではないかと考えますが、私は内容にわたっては詳しく存じておりませんので、早急に内閣の方と連絡をとりまして、どういうことであったかということについては、慎重な態度で臨みたいと思います。
○中村委員長 この際参考人招致に関する件につきお諮りいたします。
 先刻の理事会におきまして、中小企業における労働争議問題につき、明十六日午前十時、当委員会に参考人を招致して、その御意見を聴取したいとの結論を得ましたので、参考人として細井化学株式会社社長の細井信三君、同じく財務部長内田川之助君、杏林製薬株式会社専務の大野忠次君、同じく組、合側の芦川隆子君、生光会療養所理事長の山田寅次郎君、同じく組合副委員長の佐竹和子君、愛世病院理事長の鹿毛俊吾君、同じく組合執行委員長の藤、岡温君、以上八君を選定することに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
 なお、ただいま決定いたしました諸君は、明日の委員会に御出席願うこととなりますので、先方より変更の申し出があるかもしれませんので、その変更等、手続に関しましては、すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
○中村委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。先刻の理事会において協議いたしました結果、特需関係の労働問題について、小委員会を設置し、本問題の調査を進めたいとの結論を得ましたので、小委員十名よりなる特需関係労働対策小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
 なお小委員及び小委員長の選任に関しましては、委員長より指名するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なければ、そのように決します。
 小委員及び小委員長の指名は、申し出がありました後にいたしたいと存じます。
 午前中はこの程度にとどめ、午後二時半まで休憩いたします。
   午後零時三十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時四十二分開議
○中村委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
 失業保険法の一部を改正する法律案についての質疑を継続いたします。倉石忠雄君。
○倉石委員 本年度の予算審議の最中に、政府からいろいろ御発表になりました話の中で、特需の減少ということを言っておられるのですが、特需の減少に伴う失業関係について、御説明を願いたいと思います。
○江下政府委員 お答え申し上げます。特需の減少に伴いまして、最近一番大きな問題として冨士モータースの問題がございます。冨士モータースの場合といたしましては、御承知の通り四千人近い人が離職せざるを得ないというような事態に立ち至るおそれが現在ございます。なお、将来の見通しといたしまして、特需による離職者がどのくらい出るであろうかということも、実際問題として、なかなか正確に計算するととはむずかしいのでございますけれども、一応私どもの方で通産省方面からの資料等も取り寄せての推算だと、本年度内に全般として冨士モータースも入れまして九千人程度離職のやむなきに至るのではないだろうかということでございます。これに対しまして、いろいろ問題もございますが、一番大きな問題といたしましては失業の問題でございます。これにつきましては、とりあえず冨士モータースの場合といたしましては、離職が確定ということになりますれば、神奈川県におきまして、富士モータースのための特別な離職者の配置転換の対策本部を作りまして、関係機関、関係団体集まりまして、できるだけ有効にこれを動かして参りたいというふうに考えております。当座の問題といたしましては、失業保険制度によりましてこれを生活安定せしめるということも考えておるのでございます。
○倉石委員 駐留軍労務者の減員というものがあると思うのですが、その予想も一つ……。
○江下政府委員 これも、実際問題としてなかなか予測しがたいものでございますけれども、約二万程度が本年度内に減ずるのではないかというように一応推定いたしております。
○倉石委員 今の特需関係の出てくるであろうと思われる失業者を、他の機会に違う説明をしておられるのではないですか。今のお話では、三十年度に九千人程度と見込まれるというお話でございましたが、それでいいですか。
○江下政府委員 私が御説明しましたのは、実は今日が初めてでございます。ただ、大臣が申し上げましたのは、こういうことではないかと思います。要整理人員として一応出ますのは一万二千程度でございますが、そのうちに社内配置転換可能人員というのがございますので、それを差し引きますと九千ということではないかと思います。
○倉石委員 失業保険の給付予算というのは、二十九年度で三百五十六億七千万ですか、三十年度が約三百四十二億四千万円、三十年度は約十四億三千万円減っておるわけです。それは、予備費の支出か何かを考えておいでになるのですか。
○江下政府委員 お話の通り、実は本年度の失業保険の予算の総額といたしましては、二十九年度より減っております。二十九年度におきましては、政府の超均衡予算のしわ寄せが急激に参りまして、離職者も相当大幅に出たということもございましたが、最近におきましては、なお政府のこの方針が続きます限りは、離職者もやはり相当出るわけでございますが、昨年ほどではないだろう。そこで本年度におきましては、一応先生のおっしゃったような数字を見込んだわけでございますが、実はそう申しましても、今も申し上げますように、特需の問題あるいは石炭の問題というように、相当今後離職者も増加するおそれもございますので、予備費を特別に四十二億だけ置きまして、こういたしますと受給実人員が五十一万人以上になりまして、昨年度の四十九万余人に比べますと約四%の増加になります。私どもといたしましては、これだけ準備をしておれば、何とか切り抜けられるのではないだろうかというふうに考えております。
○倉石委員 そうすると、念を押して伺うのですが、その場合に、今の駐留軍労務者の失業が出る、それから特需関係の失業者を考慮してただいまの予算でまかなえる、こういうことでございますか。
○江下政府委員 さようでございます。
○倉石委員 他に御質疑なさる方も多いようでございますから、なるべくその方に譲りたいと思いますが、今度の法の中に福祉関係の施設を見ておられます。これは今までも、若干そういうことをやっておられたと思うのですが、今度これによってどういうことを計画しておいでになりますか、御説明を願いたいと思います。
○江下政府委員 今回の法律の改正によりまして、新たに福祉関係の規定を置いたのでございますが、これは先生御承知の通り、失業保険法には、福祉施設を置くという規定は、従来ございませんでしたけれども、特別会計法の中に福祉施設という言葉が上っておりますので、これによって従来措置をいたしておったのであります。従来、実施しましたのは二つでございまして、一つは、総合職業補導所の設置でございます。これは失業保険法の趣旨に沿いますように、できるだけ失業を予防するというために、技能の短期の訓練をいたしまして、呼び出してやる、こういう制度でございます。現在これを設置いたしております個所は十六カ所でございます。昨年度におきましては、保険施設の経費といたしまして四億計上しております。今年は五億五百千円に額を増額いたしました。さらに本年度も、その趣旨に沿って失業保険施設を充実していきたいと考えております。いま一つは日雇い労働者の福祉施設でございますが、これも現在までに日雇い労働者の宿泊施設を中心といたしまして、全国に数カ所設置いたしております。本年度におきましても若干これを増額いたしたい、かように考えております。
○倉石委員 それでは、先ほどお願いいたしました資料などを御提出願いましたり、また本日の御説明を承わったことを基礎にして、私の方の資料を整理いたしましてから、最後にもう一度お尋ねすることにいたしまして、私はこれで一応質問を打ち切ります。
○中村委員長 山下春江君。
○山下(春)委員 社会保障制度を充実いたし推進いたしますことは、健康にして文化的な国民の生活をもたらすために、ぜひとも力を入れなければならない重要なことであります。わが国の社会保障制度は、近来官民の一致した努力によりまして、国民の生活になくてはならない大切な制度となっております。ところで、社会保障を一そう推し進めるためには、何よりもその財政収支を健全にして、ほんとうに社会が保障する必要のある人々を救済し、いやしくも制度の趣旨を曲げてこれを乱用するがごとき人々の存在を許してはならないのであります。社会保障を乱用する者をそのままに放置したり、制度の欠陥を拱手傍観したりいたしまして、その結果、一たび赤字を許しますと、それは制度全体の崩壊をもたらしまして、ゆゆしい社会の危険に発展いたしますことは、英国の社会保険が、かつて苦い経験をなめましたことによって、すでに万人周知の事実であります。われわれ国政をあずかるものといたしまして、社会保障制度の健全な運営を見守り、これをより発展させるために適切な立法措置を講じますことは、国会があげて任すべき重大な責務の一つであると、かたく信ずるのであります。近時の大量の失業者の発生に対処いたしまして、失業保険は、よくその役割を果して嘗ていると思うのでありますが、それとともに、法の盲点をついた制度の不当利用者や、明らかに不正受給をしていると考えられるものも目立って参りました。これが一部の非難を招いていたことも、御承知の通りであります。今朝来政府より、失業者の実態あるいはこれの救済の実態について御説明を伺ったのでありますが、失業保険は、私はこの機会に再検討すべき時期が来ておると存じておるのであります。私も、都内のある職安の窓口をちょっとのぞいてみたのでありますが、四月は九百二十人の失業者、五月になりまして一千二百四十人というふうに漸増をいたしておりまして、それと反比例いたしまして、就職あるいは求人の方は逐次減っておるという、まごとに憂慮すべき段階のようでありまして、この失業保険が果します役割は、社会の不安を食いとめます唯一のとりでとして、非常に重大な意義があると思います。そういう意味で、今回政府から提出されました失業保険法の改正は、こういったような観点から見まして、果断かつ適切なものであると考えるので、賛意を表するものでありますが、なお若干の質問をいたしたいと思うのであります。
 第一に、社会保障制度審議会は、その労働大臣への答申において、失業保険制度を乱用する者を極力排除し、ま、た就職あっせん、職業補導等の施策を強化するよう、すみやかに検討された・いと言っておりますが、それはこの法律では、どのように具体化されたのでございましょうか。
○江下政府委員 お話の通り、今回の失業保険法の改正につきましては、社会保障制度審議会の答申を得まして提案いたしたのでございますが、その答申の中に、乱用を防止するとともに、就職あっせん、職業補導の強化という面がうたってございます。これにつきまして、私どもで今回考えておりますことを申し上げたいと思います。
 まず第一に、何と申しましても、これをやりますためには、国、地方を通じます職業安定行政機構を拡充強化しなければならないと思っております。本年度におきましては、実は切り詰められた国家予算でありますにもかかわりませず、一応事務費といたしまして約四千万円の増額を特に認めていただいております。なお、別途提案いたしております本省の職業安定局に失業対策部というものを設置いたしまして、中央・地方相呼応いたしまして、就職あっせん機構の強化をはかりたいというふうに考えておるのでございます。
 なお、この職業補導でありますが、これもお話の通り非常に重要な問題でございます。今年度の予算の中にも、特に一般の職業補導所の拡充といたしまして、夜間の、つまり、昼間勤めておりまして、将来他に進みたい、あるいは近く離職するというような方に対しては、夜間の職業補導を実施する、そのための予算を特に計上いたしまして、本年度は六千五百人でございますが、これを実施したいと考えております。
 なお、本日御審議願っておりますこの改正案の中に、失業保険施設という条項を設けまして、この失業保険施設といたしまして、職業補導所を拡充強化いたしたいと考えております。先ほど倉石先生からの御質問にお答えいたしましたように、本年度は五億五百千円の予算をもちましてとの事業をさらに大幅に拡充して実施したいと考えておるのでございます。
○山下(春)委員 社会保障制度審議会の答申に基いてのそれらの点については、ただいま御説明を承わりまして、非常に深く意を用いられておる点は、私も認めるのでございます。しかし、この問題は、前段に申しましたように、この失業保険法は、非常に深刻化していこうとする社会不安を救済する唯一のとりででございますので、なお一そうその点については御勘考を願いたいと思うのであります。
 それから第二に伺いたいのは、先ほど倉石委員より、詳細お尋ねがありましたが、やはり本法案の一番重要な、扱いにくい問題であろうと思いますので、なお重ねてお伺いをいたしておきますが、季節労働者が失業保険を利用して、いわゆるデカンショの現象が目立ってきている。これはまじめな労働者の生産意欲を弱め、種々の不道徳を生む原因となっておると思うのであります。
  〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
先ほど倉石委員から、いろいろな観点からお尋ねになった通りであります。これを規制する方法は、十分に講じてあるとお考えでございましょうか。
○江下政府委員 私から御答弁させていただきたいと思います。お話の季節労働者に対しまする規制の方法といたしましては、この法案で考えておりますのは、季節労働者の稼働期間が、おおむね九カ月以内でございますが、今回は六ヶ月から九カ月の被保険者期間しか有しないという者に対しまして、従来百八十日の保険金を支給いたしておったのでございますが、これを半分の九十日にいたしたのでございます。この点は、先ほどお答えいたしました点と重複いたしますが、実はこういう措置を講じましても、なおかっこれを乱用しようという者は出て参るわけでございます。しかしながら、曲りなりにも一応現在までこの六カ月百八十日の支給をいたしておったのでございまして、今直ちにこれをやめてしまうということにいたしましてもいかがかと存ぜられますので、特に今回の改正では、その中間の九十日だけを支給するということにいたしまして、その乱用の弊をできるだけ排除するという方針で考えた次第でございます。
○山下(春)委員 これは労働省におきましても、いろいろ御研究になっておるだろうと思いますが、季節労働者というものは単に雪国等の人たちが、雪の積っておる六カ月間出かせぎにいくというようねケースだけでなく、おそらく労働省であまり気がついていないのではなかろうかと思う方に発展をしておるのであります。一つの例を申しますと、今日では東京で大学等への入学が非常に困難になって参りましたために、地方から出てきました高等学校卒業生は、なかなか地方からいきなり東京の大学に入学することができないのであります。従って、御承知のように、あの予備校というものが非常な膨大な発展を遂げておるのでありますが、あすこに入っております子供たちが、いなかから出ておりますので、親の仕送りがないためにある事業所で働きまして、そうして次の試験のある六カ月前に就職いたしまして、試験のころにちょうど失業いたしまして、そうしてその間その試験を受けて、あと次の就職を――試験が受かる受からないにかかわらず、それで次の職を探すというふうなところにまで、これが今利用されておるのであります。私はこういう面で、非常にこの気持をさばくのに行き詰まってくるのであります。それをもいけないと処罰するのには、何だか人情として忍びないところがあります。この季節労働者については、今日まで労働省としても、取締りに区別をつけるのに非常に困難なケースで、いろいろ御努力になっているにもかかわらず、なお、かまえてこれを悪用しておる者があって、そのために、むしろ農村の青年の生産意欲をそぎ、堕落せしめているというような半面があるかわりに、こういうまことに痛ましい半面もあります。そういう面だけ見れば、この季節労働者に向って九十日に減額したということは、これはある意味での後退であることは免れないのでありますが、そういったような点について、労働省では多少の御調査をお進めになったことがございましょうか。
○江下政府委員 お答え申し上げます。お話の通り、単に季節労働者だけでなくして、半年働いて半年もらうという制度は、これはあくまで現在一般的な傾向となりつつあるわけでございます。そこで、先ほど来申し上げますように、こういう形で今後失業保険制度が使われますと、失業保険制度は成り立たないのでございます。あくまでも、私どもといたしましては、失業保険はもちろん失業に対処するものでございますから、ある程度の期間の保障はなくてはならないと思うのでございますが、これが長きに失しても、短かきに過ぎても困るのでございます。中庸を得るということがむずかしいのでございます。そこで、今提案いたしておりますように、それらの人に対して、はっきりこれは失業保険の対象にしないということにいたしますと、今、先生もおっしゃるように、一時に急激に生活のかてを奪われるということもある。さりとて、それではこれを従来通りほうっておきますと、先ほど申し上げましたようになりますので、今回の改正といたしましては、これらに対する失業保険の給付期間を従来より半分に軽減するという措置に、実は出ざるを得なかったわけでございますので、御了承を願います。
○山下(春)委員 失業保険が保険である限り、保険料を納めない者には保険を払わない、そういうような気持でなければ、保険経済は成り立たないと思うのであります。そういう意味から申しまして、本法の改正に当りまして、五年あるいは十年という非常に長い被保険者であった者に対して、三十日ないしは九十日のプレミアムをつけたというようなことは、非常に私は妥当な措置であると思うのでありますが、しかしながら、今申しました保険経済を破壊するようなことは、これはゆるい考え方ではなかなかっかみ切れないと思いますので、いっそここで、保険料を払わない者には保険金を払わないというような制度を規定したらいかがでございましょうか。
○江下政府委員 失業保険は、偶然的に起ります失業に対して保障しますために、合理的に計算されました保険料を収入として運営されておるのでございますから、仰せの通り、保険料が思うように入らない場合には、保険は成り立たないのでございます。そこで、先生のおっしゃるように、これは保険料と保険金支給を連係させまして、保険料を納めない者には保険金は出さないということは、確かに一つの考えであると思います。諸外国等でも、このやり方でやっておる国が相当多いのでございます。ただ、日本の場合にいたしましては、これは御承知の通り、その面について必ずしも関連を持たせてないわけでございます。そとで私どもとしましては、保険経済に破綻を来たさせないために、できるだけ保険料の徴収を十分に行うということをやることによりまして、この問題を処理いたして参っておるわけでございます。現在でも、その方針によって措置をいたしておるのでございますが、この点についてはなお将来の研究問題としては、十分考えてみたいと思っております。
○山下(春)委員 私は今、非常に長期間の被保険者に対して、プレミアムをつけて余分に支払うということは、これは保険経済からいって妥当だとは申しましたが、しかし、給付日数を延長することによって、将来の収支が赤字になるような原因になるおそれはありませんか。
○江下政府委員 保険経済の問題でございますが、本年度は、この法案を通していただけますれば、九月から実施したいと思います。平年度にいたしまして、おおむねこの改正によりまして保険経済は収支のバランスが取れるという見込みでございます。
○山下(春)委員 その点につきましては、あくまで社会保険の精神を貫くために、なお一そう御研究を願って、やはり保険経済が根本的に破壊しないようね措置は、常に厳重に立てられることを希望するものであります。
 それから追徴金、延滞金についても、やむを得ない事由があるときは追徴金を徴収しないことができるものとする、こういったような趣旨の宥恕規定を設けることは、その趣旨は了解されますが、これは保険料を徴収することの阻害になる傾向にはなりませんか。
○江下政府委員 追徴金制度に対しまして今回宥恕規定を設けました。追徴金は、御承知の通り申告納付制度をとっております関係上、納付期限を一日でも経過いたしますと、追徴金を徴収する建前になっております。ところが、現実の場合を見ておりますと、思わざる天災地変等のために、その納付期限までに納められなかったという、ほんとうに気の毒な場合があるわけでございます。これはあくまでも客観的に立証で透るものでなくてはなりませんし、事業主の個々の個人的な経済的な理由では、これは困るのでございますが、今申し上げましたような例の場合には、相当気の毒な場合がございます。そこで、そういうものに対しましては、追徴金を免除することができるということにいたしまして、その点は厳格に運用をいたしたいと思いますので、今お話のような、保険経済に大きな影響を来たすということはないものと考えております。
○山下(春)委員 大体わかりましたが、最後に福祉施設を本年度は特に拡充するという予算措置をしておられるようで、大へんけっこうなことだと思うのでございますが、との福祉施設、たとえば総合職業補導所等も、従来少しはあったと思いますが、十六カ所とおっしゃいましたが、その補導所から出ました者の成績あるいは簡易宿泊所、日雇い労働者等にあてがわれておる簡易宿泊所等の状況がわかれば、ちょっとお知らせを願いたいと思います。その補導所を出ました者の就職とか、あるいは出ました者の方向、あるいは宿泊所の状況等を、わかればお知らせを願いたい。
○江下政府委員 総合補導所は、実は実施いたしましたのは一昨年からでございますけれども、一昨年においては、予算が少なうございましたので、ほとんど基礎的な工事以外にはできなかったのでございまして、現実には、昨年度予算から建設をいたして参っております。そこで、大本補導の期間が一年でございますので、まだ総合補導所からの卒業生は出ておりません。ただ二十九年度で、それでは補導所の定員は何人かと言われますと、約二千人程度が補導所に入るということだけ申し上げられると思います。
 それから福利施設の宿泊所におります日雇い労働者は、現在までのところ、主として港湾の荷役の日雇い労働者を収容いたしております。
○山下(春)委員 大体、私は質問をその程度にしておきたいと思いますが、なお、本法施行後につきましても、今の季節労働者に対すること等も、まだこれで十分とは考えられませんので、今回政府が非常に勇敢にこの改正案を出されたというその趣旨が徹底いたしましてその成果を上げますように、なお一そう遺憾なきを期していただきたいということを付言しておきまして、私の質問を終ります。
○大石委員長代理 滝井義高君。
○滝井委員 今回失業保険法の改正が出てきたわけですが、日本の失業対策、われわれの同胞の失業した場合に、救い得る方法は三つあるわけです。一つは、まず失業すると失業保険で救ってもらえます。六カ月の失業保険が切れると、その次には緊急失業対策事業で救われるわけです。これで働けないという姿が出ると、ここに生活保護法というもので救ってもらえる。これまでが、いわば日本の広い意味の失業対策になると思うのです。ところが、現在の日本の状態を見てみると、失業保険も赤字なんです。これは、いわば一つの行き詰まりがで嘗ているということです。おそらく今の日本の客観的情勢から見て、行き詰まりだと私は思う。それから失業対策自体においても、もはやこの日雇い労働者を中心とする緊急就労対策というようなものも、もう限界がきておると思うのです。相当あぶれも出てきておる。これはあとでもう少し触れますが、日雇い労働者自体が恒久的な一つの職業化してきておる、とてもこれは臨時的なものでなくなってきておる様相が出てきておる。当初この制度を作った時の状態と、相当違った様相が出てきておるということになれば、その制度自体は、一つの行き詰まりがきておると見なければならぬ。同時に生活保護自体も、もはや日本の国民の約八分の一になんなんとする一千万以上の人がボーダー・ラインにある。しかも二百万くらいの人は、生活保護の対象にならねければならぬ、これをもうちょっと緩和すれば、一千万人くらいに及んでしまう。こういうことで、これも今政府はやっきになって、予算の膨脹を防ぐためにあらゆる手を用いてきておるということですが、こういう一連の失業対策の状況を見ると、どこからも火の手が上ってきておるわけです。どこも行き詰まりの状態が出てきておると思うのです。失業対策の主管省としての労働大臣は、当然これは生活保護の方まで見通した国の失業対策を考えなければならぬ段階にきておると思うのですが、大臣、そういうことをお考えにねったことがありますか。
○西田国務大臣 結果的に見て、今滝井さんのおっしゃったようなことがいえると思います。しかし、失業保険の問題は、私は必ずしも現在の状況下においては、行き詰まりがきておるとまでは考えておりません。なぜかと申しますと、これは御承知の通り、午前中倉石さんからもお話がありましたが、失業保険の対象になる失業者の増加が、過去においてはそうひどくなかった、最近において急に増加してきたということで、相当の積立金は持っておりますけれども、二十九年度の失業保保険経済は、十億程度の赤字が出ておる。こういう一つの結果的な現象が生まれておるわけですが、それだからといって、必ずしも――今後の日本の失業状態というものが、失業保険経済を破滅に瀕せしめるような膨大な失業者を腕にかかえたまま、経済の拡大も生産の増大も行われない実態になりました場合には、滝井さんのおっしゃるようなことになるかもしれませんけれども、われわれはそういうことは考えておりませんので、失業保険経済というものが、現在行き詰まっておるということは考えておりません。
 それから生活保護の関係と失業対策の関係とについて、マッチした考え方でいかなければいけないのではないかとおっしゃる点においては、私も全く同感でございます。しかし、生活保護を受けておる人々も、失業対策事業の対象になっておる失業者も、これは起きてみなければ結果がわからぬことですが、現内閣としましては、六カ年経済計画の線に沿ってだんだん減らしていって、日本全体の経済的の拡大と、生産の増大による国民組織の増強に伴って、だんだんそういうものをなくしていこうという念願に燃えて計画の実施に当ろう、かような考え方を持っておりますので、この面におきましても、生活保護法の規定の適用を受ける人々が、今よりか急激に増加するということも考えられませんし、失業対策事業の対象にねります人員も、完全失業者として六年目には四十六万三千程度に押えたいという考え方で諸施策を行なっていこうと考えておりますので、私どもとしましては、生活保護法と失業対策事業との関連性において根本的な対策を立てることは、いついかなる時代においても必要であると考えておりますが、すべてのものが破綻してしまっておるとまでは現在考えておりません。
○滝井委員 私は、破綻とは言わないが、とにかく破綻の危機に瀕しておる、こういうことだと思うのです。
 そこで、失業保険が、昨年たまたま十億の赤字で、現在は行き詰まっていないということでございましたが、大体政府は、今年は四万人くらいの失業保険の対象者を、昨年から見れば平均的に低く見積っておると思うのです。日本の現実の失業者の状態を、大まかな数字で二十八年、二十九年、三十年を見ていきますと、大体二十八年度においては失業者が六十万台であったと思う。二十九年度になりますと七十万台が出てきておる。しかも、昨年の総理府の統計を見ても、八月末で七十一万というものが出てきている。さいぜんあなたは、労働省は責任は持てないのだという、倉石さんの質問に対して御答弁になりましたが、今年はとにかく総理府が八十四万の完全失業者を出してきた。二十八年が六十万台、二十九年が七十万台、今年はすでに八十万台が出てきたわけです。それと同時に、今度は失業保険をとる人たちの月の状態は、昨年までは四十万台であったはずです。従って、政府は今年も四十万台と見ているわけですけれども、現実には、これは年間を通じて見なければならぬが、五十六万台は出てきている。現在の客観的な情勢から見て、五十六万台が四十万台にぐっと減るという情勢は、今の駐留軍の解雇の状態、特需減少の状態あるいは綿布部門のああいう危機の状態、続いて出てくる今度は炭鉱の合理化法案、おそらくそれに続けば鉄鋼も合理化されてくるでしょう、基礎産業というものは、必然的に合理化が行われてくると思う。こういう形になってくれば、今の情勢よりかは失業保険の状態がよくなるということは、今の客観情勢からはどうしても出てこないのです。将来のことはとにかくとして、今労働省が見積られたように、昨年に比べて四万人も年間を通じて平均で減ってくるという情勢が、どういうところから出てくるのか、これを御説明いただけば、失業保険の危機ではないという証明にねると思うので、これを一つ御説明願いたいと思います。
○西田国務大臣 数字をあげてのお尋ねでありましたが、私の持っております労働省で調べました資料によりますと、完全失業者が二十八年度月平均四十五万、二十九年度月平均が五十八万、それから滝井さんは一番多い三月をとられましたが、三十年の四月は七十万ということになっております。それから失業保険の受給人員が二十八年が三十五万、二十九年の月平均が四十六万五千、四月が五十三万一千となっておりまして、今度は予備費を取っておりますが、予備費を含めまして三十年度を通じて五十一万の平均受給人員ということを想定いたしておりますので、数字的に大して狂いは出ない予定でいたしております。
  〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
○滝井委員 私は正確な数字を持たないので、大臣がそういう御説明ならば納得しますが、現在の日本の資本主義の生産力の発展の状態から考えて、現在の日本は、大ざっぱに見て百万の人口がふえていきます。三十年度の経済計画大綱では、百三万人の増加になっておりますが、そうしますと、ここで大体において十五才から六十四才くらいの労働力のある人口は八十四万人です。この中で病人とか、結婚して就職戦線に出ていかねい者を引くと、政府の方では出ておりませんが、人口問題研究所の推定では七十八、九万。そうすると、日本の資本主義が一年に雇用し得る新しい雇用力というものは、大体三十六、七万というのが学者の一致した意見だと思うのです。そうしますと、ここにいわゆる生産人口に達した者の中から四十瓦の失業者が出てくるのです。そうしますと、これは全く新しく出てくるもので、日本の資本主義が吸収する三十六、七万の者をどけた、もはや職のない完全失業者が四十六万も出てくる。それから現実に企業の中から削り落されてくる者が、今大臣の御説明になったものでも、今年すでに四月ですか、七十万ということですから、その中にはおそらく私の言う四十万が重複して入っているのであろうということは推定はできますが、とにかくそういう情勢から考えていくと、その人たちが全部失業保険を受ける関係にはないでしょうけれども、こういう重圧というものは、間接には必ず失業保険に加わってくることは明らかです。もう少しこういうことの具体的な解明がほしいと思うのであります。
○西田国務大臣 日本の人口の増加、それに伴う労働力人口の増大等につきましては、大体滝井さんの言われたような程度のことを政府でも考えております。ただ違いますのは、労働力人口をいかにして雇用面に吸収するかという見通しと申しますか、計画と申しますか、その点について、滝井さんは四十万と言われましたが、政府ではいわゆる完全失業といわれる姿においては三十年度で二十万、多くも二十二、三万以上は出ない心従って、その者にいかにして職を与えるかということが失業対策事業の対象になりまして、三十年度の失業対策事業費というものが一応予算に計上をされておりまして、午前中倉石さんに御説明申し上げましたように、万全ではございませんが、二十万から二十二、三万程度の完全失業者の増加であれば、何とか失業対策事業の面において吸収が可能である、かように考えて予算を計上したわけであります。
○滝井委員 政府がそういう大きな雇用量の増大を見込む面は、おそらく四十二万戸の住宅建設と、この経済大綱にある国民の総生産というものが、昨年に比べて二・六%増加するということ、おもなものはこれだと思うのです。そのほかに鉄道建設だとか、公共事業的な面とかいうものをつけ加えておりますけれども、公共事業というような面のものは、これは現在の地方公共団体の赤字から見て、能率の上らない、いわゆる日雇い労働者的な人を多く雇うということは、現在の公共事業の建前として、効率主義的な面が強調される状態から考えると、そう多くない。そうすると水道事業、鉱害復旧というような単純、労務の面で、穴を掘ったり埋める程度ではそう多くの雇用というものは見込めない。住宅の建設も、実際に手がかかるというのは十万そこそこであって、あとの二十何万というものを民間でやるということになれば、やはり労働能率の上る労働者を雇う。そうすると、十万くらいが対象になるだろう。従ってあとの二・六%上ると言われたととろの国民の総生産の中にそれを吸収していく以外にない。ねるほど、机の上ではそういうことが言えるのですが、実際に具体的な失業の面になると、それが果して具体的に机上プランのように吸収されていくかとというと、現実に、たとえば大臣も御存じのように、あの筑豊炭田の状態を見ても、あぶれた失業者がうんといる。炭住の中を見ると、閉鎖されたものがほとんどです。しかも、それが失業保険の切れたあとは、生活保護にどんどんかわっていっている。それで、働こうとしても、なるほど遠賀川の改修工事その他の事業がありますが、距離的に遠いということで行けない。はなはだしいのは四十キロもトラックに乗って行くという例さえある。こういう状態では、政府がこれとこれとこれをやりなさい、これには何人吸収しますと言っても、地域的の関係その他いろいろな面があって、必ずしも具体的にそれが失業対策の軌道に乗ってこない。こういう面が非常に多くて、数字の面では計算が合うでしょうが、実際具体的底面においては、合わない面が非常に出てくるのです。こういう点で、なるほど机の上では合理的なものに見えるが、実際面になると非常に大きなギャップがそこに出てきておるということを感ずるのです。そういう点は、大臣は筑豊の出身ですから御存じだと思いますが、そういう点も加味して、もっと具体的に――私はせいぜい三十五、六万だと思うが、大臣の方の考えでいけば六十万以上吸収することになるわけですが、その点をもうちょっと明白にしていただ巷たいと思う。
○西田国務大臣 滝井さんのおっしゃることは、一々ごもっともでございます。今まで失業対策事業に吸収される人員あるいは一般の産業の雇用関係というものに対して、御承知のように、日本の統計というものに今完成されたものがありませんので、将来の計画に対しては、机上プランみたいね格好で実はやられておったことは仰せの通りであります。今度の労働省の行う失業対策事業あるいは建設省、通産省に組まれておる失業対策に引き当てられておる事業につきましては、労働省としても、労働省自体のものは労働省で詳細に調査いたしまして、失業者の発生しておる地区に、人数に応じて失業対策事業を行うということは現実にやっております。また建設省、通産省に計上してあります予算を使います場合も、労働省で十分に関係各省とも打ち合せまして、ここにこれだけの失業者がおるから、こういう事業をここでやってくれということを話し合った上で、失業者を吸収するということを現在具体的にやっておりまして、まだ完全とは申されませんけれども、逐次そういう傾向をもって進んで行ったならば、滝井さんの御懸念になったような、今までのような結果でなくて、よりよい結果が生まれてくるということを私は確信しております。
 それから雇用者の増大、労働人口の増大に伴う雇用の状態を具体的、詳細に示せということでございますが、一々の数字は今私ここに持っておりませんので、労働省の方で考えて計画いたしております数字の範囲内において、倉石さんも言われておりましたから、後刻資料として当委員会に出しました上で、また御質問をお受けいたしたいと思います。
○滝井委員 それは資料として一つ出していただきます。
 次に、老人人口のことですが、現在日本では、多くのところは定年制という形をとっていなくても、五十五才くらいになると、大がい会社、工場、鉱・山をやめていくということになっております。地方自治体でも、最近閣議で問題になったように、地方自治体に定年制をしこうじゃないかということがきまったようでございます。おそらくそれは過去の日本の習慣から考えて、五十五才前後が定年の基準になると考えられるのです。ところが、厚生年金は、昨年の改正で六十才になければもらえない。そうしますと、五十五才の定年制になると、厚生年金をもらうまでの間に五年間のブランクができるのです。また日本の平均寿命は六十五才となっております。平均寿命でいくとそこに十年のブランクがある。従って、少くとも厚生年金をもらうまでの五年間というものは、どこかで働かなければならないのです。現在の日本の人口構成からいいますと、次第に老人の人口がぶえてきております。従って、この老人人口というものを、遊ばしておくわけにはいかない。まあ能率は幾分落ちておるかもしれない。しかし、能率が落ちておるからといって、今われわれが論議しておるけい肺とは違って、肉体は健全である。生理的に落ちておるだけであって、臓器に故障があるわけではない。そうしますと、この老人人口を、やはりどこかの職場で働かせなければならないという対策は当然出てこなければならない。すでにヨーロッパ、アメリカにおいても、この老人人口の問題は、就職における非常に大きな問題になっておる。もちろん一部は社会保障として養老院その他の完備で、そこへ送られていくでしょう。しかし、日本の老人を全部養老院に吸収するわけにはいかない。従って、当然、余っておる労働力を日本の生産に活用するといろ形が出てこなければならないと思うのです。先般経済審議庁長官の高碕さんに、今後数年の間に日本の老人人口は労働力の中に相当大きな比重を占めてくる情勢にあるがどうするのかと質問したところ、私の会社では退職した人を全部集めてやっておるが、非常に能率がいい。五十五才を給料のピークとするならば、六十才になったらそれから何ぼ下げる、六十五才になったら何ぼ下げるというようにしたら、なかなか調子がいい。だから、私はこれを一つみん血に普及しようと思っておるというお話があったのですが、そういう高碕さんみたように、大臣になって太っ腹の人なら、それができるか知らないが、普通の会社ではそれはできない。従って、厚生年金の六十才と五十五才の定年との間の五、六年という問題は、今から真剣に労働省としては考えなければならない段階にきておる。もちろん五十五才あたりでやめれば、九カ月の失業保険がもらえて、九カ月はしのげますが、あとはしのげない。こういう形が出るので、この老人の労働力について、労働省は今後どういう計画を立てようとしておられるのであるか、お伺いいたしたいと思います。
○西田国務大臣 高碕さんのお話が出ましたが、実は私のところの炭鉱でも、定年制は設けてはいますが、一人も本人がやめるという思意表示をしない以上、やめさせておりません。日本の企業における定年制というものは、やり方によっては、各企業自体には大した負担にならない。今おっしゃったように、退職金の制度の適用を多少程度を下げるとか、あるいは年令に応じて作業が転換し場合、一時賃金に幾らかの差をつけて支給しておりますが、能率的には大した違いはないようであります。これは私と高碕君とがやっておるから、日本全体の企業がやれるとは申しませんが、各企業によって生ずる定年制の問題に対しましては、各企業々々で相当な考慮を払っていただければ、大した摩擦なくして、五年くらいのことは何とかやっていけそうに考えます。しかし、これは各企業に従事しておる雇用関係のある人たちでございまして、それ以外の各地方々々の特異な内容を持った五十五才以上の人々が、一つの地方に大ぜい集まっておるということであれば、また何とか方法があると思いますが、全国各地にばらばらになって、しかも質と内容の違う人が、ただ年令だけ同じような年令で散らばっておるというものを、国家的にまとめてどうしようということは、これは非常に困難な問題と考えます。従って、労働行政の面においては、やはり一種の失業者という感覚の上に立って、何らかの対策を実際に今から講じて万遺憾なきような措置をとる以外には、今のところちょっと方法はなかろうと思って、労働省といたしましては、今後そういう問題に対しましても、研究を進めてい誉たいと考えております。
○滝井委員 ここ数年で、平均寿命がぐっと延びてきましたし、日本の厚生施設、社会福祉的な施設に、もしそういう労働対策ができないとすれば、非常な重圧になって、日本の老人関係を扱う社会福祉的施設には、多くの予算を食うために行き詰まってしまう情勢は、すぐ出てくると私は思うのです。そういう点で、今後十分経済審議庁とも御連絡の上、老人労働力の活用について御検討願いたいと思います。
 それから日雇い労働者ですが、現在東京で調べてみましても、日雇い労働者で、すでに三年以上の勤務者というものが、五割以上を占める状態が出てきました。さいぜん申しましたように、これはすでに一つの職業となってきたわけです。従って、この職業となって参ったところの日雇い労務者というものを、あの普通の賃金の八割というようなワクで今くびっていっておることになっておるのですが、そういう考え方が今後もずっと続いていっていいかどうかということです。現在、こういう日雇い労務を使う失業対策の合理化、効率化ということが、非常に大蔵省あたりで唱えられてきたわけです。そういう面からも考えて、最近日雇い労働者の中で、体格検査をやって甲乙なんか作って、能率のいい、体格の隆々としたのは何かほかのところに持っていくのだ、こういうような話も出てきておるわけです。こういう面から考えても、日雇い労務者の取扱い方について、考えなければならない状態が出てきていると思うのです。日本の生産力の拡充というものが、急速にここ二、三年の間に進んでいけば、それはいいでしょう。しかし依然として、さいぜんも御説明になったように、もう三十二年になっても四十三万五千という失業者は依然としてあるので、十万か十五万しか吸収されない。こういう点から考えても、あの緊急失業対策事業なり日雇い労働者自身について検討する段階がきておると思うのですが、その点、大臣はどうお考えになりますか。
○西田国務大臣 御説ごもっともです。午前中倉石さんにお答えしましたように、私は失業対策の面から見る事業の内容を、大別して二つに分けてお話し申し上げましたが、その上にもう一つ私が考えておりますのは、現在の失業対策事業というのは、緊急就労対策事業とかいう基本理念のもとに作られたものでございまして、毎日々々その日その日の失業者を救う、こういう基本的な考え方の失業対策事業というものが考えられてきておったようでございます。私は、失業対策事業といいながらも、生産性を帯びた建設的な事業を、しかも長期にわたって、今のはやりの言葉で申しますならば、雇用の継続、連続と申しますか、そういう姿で一定の雇用関係が成り立つというような建設的な生産性の強い失業対策事業を行わなければ、国費をただむだに使うことになって、ちっとも効果がない、捨てるような金だ、言葉は悪いかもわかりませんが、そういうふうに考えておりますので、今度の予算でも、特別失対事業費として三十五億取ったわけでございますが、こういうふうに、どうせ失業者というものが日本経済の実態から考えて、一人もいなくなるということはもちろん考えられません、相当数の対策を要する職を持たない人が将来も発生するであろうということだけは考えられますので、これに対しましては、今申しましたような雇用の継続というような意味合いにおいて、相当長期の事業を計画的に失業対策事業として実施をしていく。そういうことになりますと、従って労働能力の高い者と労働能力の低い者と二つに考え方を分けて、失業対策事業というものを考えざるを得なくなってくる。労働能率が高くて、賃金をよけい払って、しかも建設的な事業に従事する者は一定の雇用の継続をするという形で失業対策事業を考えます。それからその他の労働能率の非常に低い人で生活保護法の適用を受けるまでに至らない失業者、これに対しましては、今までの考え方による失業対策事業として、一般の労働賃金よりもある程度低い賃金であっても、どうにか生活がまかなっていけるという程度の軽易な失業対策事業というものと、二つ併用して将来の失業対策事業は考えるべきであると考えております。従って、失業対策事業の対象とする人々に対するところの労働問題と申しますか、雇用関係と申しますか、こういうものも、日雇い労務者に対しましては、根本的に一つ検討する段階に現在来ておるものと、かように考えております。
○滝井委員 長期の事業に能率の高い人を吸収していくということは、失業対策事業に入ってくる人たちの職種が非常に雑多なために、長期事業というものが、何か一つの、たとえば鉄道を十年かかって建設していくとか、ダムを十年もかかって作るというようなものに持っていくためには、炭鉱労務者のような肉体労働に従事しておった人ならばいいが、綿布部門とか、あるいは特需部門で自動車とか車両を扱っていたというような者は、なかなか使いにくいところが出てくる。こういう長期事業に切りかえていこうとしても、そういう職種が非常にバラエティに富んでいるために、これをひっくるめて持っていくことは非常に不可能なんです。ここに失業対策事業の長期事業への切りかえのむずかしさというものがあるのですが、そういう点、大臣、何か妙案でもお考えになっていますか。
○西田国務大臣 特殊の技術を要するようなものに対しましては、そういう集団的にどうするこうするということは非常に困難でございますが、軽度の技能と申しますか、これだけ習得しておったならば、少くとも軽度な仕事であれば支障なくやっていけるであろうと思われる程度の職業の補導は、職業補導所の拡大によって、そこに半年なり一年なり収容して、職業の補導をした上で就職のあっせんをするという考え方を持っておりまして、今年度も予算をある程度ふやしておりますし、年間通じまして五、六万の人間は職業補導所に収容して、そうして就職のあっせんをするだけの実態をもって対策事業を考えておるわけであります。
○滝井委員 この問題は、少し専門的になりますから、またいずれ機会をあらためてお尋ねしますが、聞きますと、最近、たとえば新制中学あたりを卒業した三、四千から五千円くらいの労務者で、離職者で失業保険をもらう段階になった人が多く、この失業保険をもらう額が少いために、権利放棄が相当あるということを聞き及んでおりますが、大臣はそういうことをお聞きになっていますか。お聞きになっておれば、同時にその数をお教え願いたい。
○江下政府委員 失業保険の支給金額は、御承知の通り離職前の賃金額の六割でございます。ところがこの場合、その基礎となります賃金には、臨時的ね賞与等も入って計算される。それから所得税等の公課が差し引かれませんので、手取りといたしましては、これは六割以上になり得るわけでございます。ただ、今お話しのごく若い人たちで保険金の少い人という場合も、もちろんあると思いますけれども、ただいままでのところは、私どもといたしましては、そういう放棄の傾向が目立っているというふうには承知していないのでございます。
○滝井委員 あとでその数を調べて、わかれば一つ教えていただきたいと思います。
 それから、少し法案に関連はないことでございますが、倉石委員の質問に対して、最近、石炭合理化によって、不良炭鉱を買い上げる。そのために本年度四千七百人の失業者が出ると、こういう御説明があったのですが、その四千七百人の中には、いわゆる縦坑を掘って合理化をして、その合理化のために出てくる失業者も入っておるのですか。
○西田国務大臣 それは入っておりません。
○滝井委員 そうしますと、当然今年度においても、開発銀行から六十億くらいでしたかの融資も出るし、それから現実に着々とすでに大手筋の炭鉱では縦坑の開発が行われておるわけです。従って、この面からも、本年度末から来年度にかけては、失業者が出てくると思うのです。その失業者はどのくらいになりましょうか。
○西田国務大臣 滝井さんも御承知と思いますが、炭鉱労務者の新規雇い入れをしないことによる自然減少が、大体今までの数字から申しますと、年間平均一万五、六千人は常時減少していくという実績が示されております。従って、今縦坑のことをいろいろおっしゃいましたが、合理化、機械化によって人員の減少を来たすものは、新規の雇い入れをしなければ、そう大した職場転換をはかる必要もない程度で、石炭合理化に見込まれておりますあと三万近い人間は、五年間で何とか、新規に雇い入れさえしなければ、失業者として考えなくてもいいのではないか、こういうふうに考えておりますが、そのうちにおきましても、合理化が急速に進んで、自然減少より以上の失業者が出て、そして配置転換もできないというような失業者に対しましては、これはやはり国として何らかの措置を講じなければなりませんので、そのことは、十分数字的に、現地の企業所々々々によって調査しまして、それに対しては万全の措置をとりたいと考えております。
○滝井委員 そうすると、四千七百人プラス・アルファとして出てくる合理化によるものもひっくるめて、さいぜん倉石委員に御説明になりましたような対策を講じていく、こういうことになるわけです。さいぜん、その四千七百人が今年の予算のワク外である、こういう御説明があったのです。そうしますと――特需や駐留軍の関係は予算の中に入っておられる、こういうことだったのですが、政府はとの合理化というものは、何も今年から石炭合理化法案を作る準備をしたわけではなくて、すでに昨年ごろから、鳩山内閣になった初めのころからそういう構想があったと私は思うのです。そうしますと、どうしてこれを今年の予算の中にお入れにならなかったのですか。
○西田国務大臣 お答えいたします。実際問題としましては、昨年の第一次鳩山内閣ができましたときから、石灰、鉄鋼の問題は通産大臣、大蔵大臣の間で、ずいぶんはなばなしく取り上げられておりましたから、あなたのおっしゃるような準備ができていなければならぬはずでございますが、この準備と申しますのは、労働省だけでできることでございません。各仕事の現場、それから通産省で案を作りまして、どういう基準でどういうものを買い上げて事業をやめさせるかというのが、具体的にある程度計画性をもってきめられませんと、労働省の方の失業対策事業としては、考えようがありませんので、従って計数のはっきりしないものを予算に計上するというわけにも参りませんし、まだその当時ははっきり石炭企業合理化促進法案というものを、国会に提案するということも考えられておりませんでしたし、御承知のように選挙管理内閣としていわれておった鳩山内閣でありまして、選挙で勝つであろうとは思っておりましたけれども、内閣が作れるであろうかどうかということも、これは確信を持って申し上げられなかったのでございまして、従って選挙が終って後の問題でございます。新しい問題を織り込んで予算をどうするこうするという段階に至らなかったがために、実は一般会計あるいは資金の運営の面においてのことが、予算の面で現われないで、閣議決定のまま残されておる、これが実際の実情でございます。しかしながら、合理化法案が通過いたしまして効力を発生した場合においては、困らないだけの措置をするように閣議決定をいたしております。
○滝井委員 そうしますと、今の予算のワク内では、私は具体的にいえば、とうていできかねるんじゃないかと思う。というのは、今までいろいろ大臣からの御答弁を聞いてみましても、必ずしも現実に出てきておる失業対策そのものについて、われわれは確信を持てないわけです。いわば、非常に机上のプラン的に要素が多いという感じを受けるわけです。そうしますと、そういう机上プラン的な要素の多い予算の上から、さらに今度は、それに現実に具体的な失業者の出る石炭合理化法案というものが加わってくる。それが、人数は三十二年度までに二万七千そこそこで少うございますし、なおこれに縦坑の開発その他もあるし、あるいは不測の事態というものは、特需や駐留軍労務者等の関係、あるいは綿布の部門のように、不測の事態も起ってくる可能性もあるわけです。そういうものをいろいろ加えていきますと、やはり政府は合理化をほんとうにやろうとするならば、われわれはこの合理化に反対なんですが、当然万全の失業対策というものがそこになければ、具体的に今まであった失業者に対しても、きわめてどうもはっきりしない状態なんだから、いわんや今後のものはなおはっきりしないという疑いを持つ可能性が十分出てくる。だから、もう少しこれを具体的に予算の裏づけまでつけたものを当然やるべきだと思う。そういうやるべきだということは、政府はそれがためには、少くとも臨時国会でも開いて補正予算でも出すのだ、こういう御言明がなければ、単なる内閣で財政措置をやりますといっても、鳩山総理は何か参議院の予算委員会でも、補正予算は台風でも来ない以外には絶対に組みません、組んだら華処しますと言明をされておる。大臣は何かやるんだという。今の一兆円予算の中で、行政措置というようななまやさしいことでは、この鳩山内閣の重要法案のトップにある合理化法案というものも、そうやすやす乗り切れぬ状態が出てくると思う。もっとこれは補正予算を組むとか、財政的な裏づけのある失業対策というものをお示し願いたと思う。
○西田国務大臣 お答えいたします。使う、使わぬにかかわらず、財政的な裏づけをはっきりすることによって、整理を受ける人たちは安心感を持つことであろうということは、あなたのおっしゃる通りです。実際の問題としてこれを申し上げますと、石炭合理化促進法が通りましても、整備事業団ができますのは九月であります。従って、整備事業団ができまして、そうして炭鉱の整備にかかりまして、経営者、労働者の話し合いのできた炭鉱からこれを処置していくことになりますと、おそらく実際に炭鉱の開発が始まりますのは、歴年でいいましても早くても十二月、おそければ一月、二月という時期になろうかと思います。従って、かりにそういう時期にできましても、その炭鉱に働いておりました人が解雇されましたところで、最小限度六カ月間の失業保険を受けられる。これは失業保険をもらわないで働くんだという心がまえがある人は――全部が全部そうあってもらうことの方がほんとうは望ましいのですが、そういう場合はあまり多く考えられません。従って、財政的な裏づけ、予算的な裏づけというものが、今形式的にはっきりしてなくても、実際問題としては、そう滝井さんのおっしゃるように困るような実態の運営にはならないと、私はかように考えております。
○滝井委員 それは現在政府の買い上げの対象になるのは、現在歩いている炭鉱というものは買い上げの対象になる。現実に歩いているような炭鉱は、労務者は緊急失業対策に出るか、生活保護の対象になっておるのです。そういうものも今度の合理化法の中では対象になっているわけですから、最近の状態をごらんになると、ここ、二カ月の間に炭鉱の再開が非常にふえてきました。再開といっても、それは全然労働者が入って再開しているわけではない。保安電力を送り、そうして水を揚げておるという、いわゆる歩いているというものなんです。こういうものは、すでにハーモニカ社宅の労働者というものは、失業保険をもらって切れた人か、あるいは生活保護の対象者になっているか、緊急就労対策で日雇い等労働者になっている人かなんです。そうして、そのうちから何人かの人が保安電力を守り、あるいは水揚げに行っておる、こういう事態が相当ある。こういうものが多い。ですから、そういう状態から考えてみると、これは今大臣が言われるように、急ぐ必要はないと私らも思う。しかし、それは今の対象になっておるどどっと出てくるものは、この法案が出てくると同時にどどっと出てくるものは、私はそういうものが案外多いのではないかと思う。こういう点も考えられるわけです。
○西田国務大臣 一応御説ごもっともと思います。しかし、現在現実に失業対策事業の対象になり、公共事業の対象になっておりますものは、もちろん失業対策事業の本年度予算の中に、そういうケースは個別的に何町村が何ぼとは計上してありませんけれども、総括的に入っておることは御承知の通りであります。なお、今炭鉱を始めているとおっしゃいますが、炭鉱合理化促進法によりますと、法律が通過しますと、その当時から六カ月前から作業を継続してやっていないものは、買い上げの対象にならぬという基準があるようでありますから、急に炭鉱を始めても、それは買い上げの対象にならぬと考えておりますので、これは滝井さん、法案を読まれたら御承知ができると思います。
○中村委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
○中村委員長 速記を始めて下さい。
○滝井委員 では時間の都合がありますから簡単にしますが、今度のこの失業保険の改正で、段階をとられておりますが、五年以上の勤務者が離職をする場合というのは、私は非常に少いと思うのです。保険糧済の危機を乗り切るために、一方においては五年以上の人を非常に優遇する形ができたけれども、しかし、実際の保険の対象を受ける人というのは、一、二年で離職する人が非常に多い、特に季節労務者的なものが多いわけであります。さいぜん大臣は二十二万一千ですか、何かそう御答弁になった。そういうように非常に多い。そこで、五年以上の者で離職する人は大体どの程度あるのかということと、それから同時に、季節労務者と関連して臨時工です。さいぜん倉石委員も、いろいろ御質問になっておったと思いますが、最近の日本の雇用状態を調べてみると、非常に臨時工が多くなってきたということ、たとえば市町村の自治体の状態を見ましても、徴税関係、選挙関係、こういうものは臨時工を非常に多く雇う。しかも一カ月ないし二カ月。仕事が余れば切りかえていく。もちろん切りかえた人で一年で六カ月以上納めれば、失業保険の対象になると思いますが、とにかく臨時工的なものが地方自治体にも多くなっておりますし、民間の企業にも臨時工が相当多くなってきておる。大体戦争の時にも、臨時工の問題は、政治的な大きな問題となったことを私は記憶しておりますが、この季節労務者をこういう形ですばりと切ることになったわけですが、臨時工との関係はどうなるか。それから現在日本の臨時工はどういう情勢にあるか。と同時に、この臨時工がどの程度失業保険の対象になっておるのか。現に失業保険をもらっている人の中に、臨時工的な要素のものが――季節労務者は二十二万と出ましたが、なかなかおわかりにくいと思いますが、そういうものがわかっておれば御説明をお願いしたい。
 これで一応終ります。
○江下政府委員 五年をこえる者の受給者がどのくらいあるであろうかということでございますが、昨年の実績で見ますと、全体の失業保険の受給者百五万のうち、七万五千になっております。なお、この受給者は、受給期間を延長いたしますとすれば、なお相当ふえるという私どもの見込みを立てておるのでございます。
 それから、臨時工の問題の御質問でございますが、これはまことに残念でございますが、臨時工を全国的に把握いたしました統計というのは、実はないのでございます。これは推算以外には方法がないと思います。それから失業保険の関係も、臨時工とそれ以外とを分けて実は今まで調査をいたしておりません。非常に残念でございますが、これをもって御了承願いたいと思います。
○中村委員長 それでは井堀繁雄君。
○井堀委員 はなはだ勝手で恐縮でございますが、実はわが党といたしましては、この失業保険の改正についてはきわめて重大な関心を持って、あるいは法案に反対するかもしれぬという考え方をとっておるのであります。それは、今までそれぞれ討議をされております過程でも、ある程度明らかになつておりますが、この失業保険の改正の時期が、きわめて私は重大な時期にあるということであります。これは政府の提案説明の中にも明らかになっておりますように、一方では鳩山内閣の経済政策として、また内閣全体の政格を表わす一般の政策の中から判断いたしましても、たとえば経済政策で、ここに明らかにされておるように、緊縮政策を打ち出してきておる。しかも一兆円のワクの中でデフレ政策を行おうということで、さらに一部でありますけれども、基本産業については企業の合理化を行おう、こういう一連の政策というものを、日本のような労働力のきわめて過剰な、人口問題それ自身が大きな社会問題になろうとしておるときに、こういう基本的な政策がとられれば、これはどんなにつじつまを合せた説明をしようとしても、現実は大きな失業問題としてはんらんせざるを得なくなってくる。こういう乱暴きわまる見解で、この際失業保険を改正しようということについては、よほど政府の意のあるところをただしておきませんと、われわれはこういう法案に取り組めない、こういう意味で、実は御迷惑かと思いましたけれども、一、二お尋ねをいたしたいと思います。
 そこで、デフレ政策、緊縮政策は、これはもう好む、好まないじゃありません、現在の自由主義経済、資本主義経済が遂行される限りにおいては、どうしても労働者に犠牲を強要することになることは、どんな有力な政治家が現われて手腕をふるいましても、落ちつくところはきまっておる。こういう点から、先ほど倉石委員が政府の見解をただしております際に、私は非常に重大な関心を持ちましたが、私も他の委員会におきまして、同じ国務大臣の経書長官にただしたのであります。それは、一番大事なことは、現在の日本の労働力の実態をどういう工合に把握しておるかということ、それがどう推移していくかということ、しかもこの内閣は、六ヶ年間の長期経済計画というものを曲りなりにも発表しておる以上は、この中に、それぞれ納得のできる説明が必要血のでありまして、この点を実はお尋ねいたしまして、その答弁は速記にも明らかになっておりますが現在日本の失業対策の対象になる人口というものは、今の不徹底な調査に基く完全失業者をもって論議の対象にするということは、これは私は危険なことであると思うのです。それは、先ほども御答弁の中にも明らかになり、私はむだを省きたいと思いますが、倉石委員の質問で、労働大臣が御答弁なされましたので、私は非常に不可解に思って資料を調べてみました。倉石委員は、政府のと言いましたが、労働省の出しております官報付録の五月二日付の中に、明らかにされておるのです。この労働省の見方と経審長官の答弁とは、数字の上に、かなり食い違いがあるようであります。経審長官は、失業の対象として、政策を盛る場合に考えなければならぬことは、不完全労働もしくは潜在失業といわれるようなこういう労働人口の動きを正確に把握するのでなければならぬということを、正直に御答弁なさっておる。その数字は一体どのくらいと見るべきかといことを、これは立場こそ違え、政治を志す者としては、当然明らかにする義務があると思いまして、私の見解を述べ、経審長官の考え方、政府の見方をただしたのに対して、約一千万ないし八百万古いろものについては、私もこの失業対策の対象にしなければならぬということは同感だということが、速記録をごらんになれば明らかにされておるわけです。もちろんこの一千万といい八百万という潜在もしくは不完全労働者が、どういろ性格で、どういう数字になるかということの正確を期することは、日本の現状においては、何人も困難だと思うのです。しかし政治的な問題を政策の上に盛る場合において、これを把握することは必ずしも至難ではない、いろいろな資料があるわけですから、経審長官もこういう答弁をなさったものと思う。現に労働省は、私はさっき六百万と言いましたが、労働省は完全失業者六十数万、六百万に達するといわれる潜在失業ということをここに明らかにして、しかもそれを政策の基本的な内容にしておったのです。との論文を私は読まぬのですけれども、これは労働省の発行したものなんです。これは常識なんです。今日これを六百万というか八百万というか一千万に押えるかということは、程度の相違だと思う。一番問題になりますのは、潜在失業もしくは不完全労働、ことにその前提となっておりますのは、日本産業の特徴であるといっておる家内労働者なんです。昭和二十六年から二十八年の日本の労働人口の移動について、労働省はここに責任ある説明を加えた。これは私は過去の実績に基く数字であるから、正しいと思う。こういうことを言っておるのであります。日本の労働人口の移動の中で、その増加の実態は、昭和二十六年から二十八年にかけ三百万に及んでいるが、その半数以上が家族従業者の増加であって、就業労働力とはいっても近代的雇用労働力ではない――問題はここなんです。でありますから、単に潜在失業、潜在失業というのではなく、ここで失業保険の改正を行おうという場合に、その適用範囲を拡大しようというねらいは確かにいいのですから、これをやらなければ解決にならない。その場合に、こういう情勢を見通しておるにもかかわらず、一体日本の産業構造といろものをどういう工合にごらんになっておるか、政府の正確な日本の事業場の実態調査の総理府統計局の資料に基きましても、これは昭和二十六年のものしかまだできておらないのでありますが、二十六年のものを取り上げてみましても、五人未満の少数の従業員を雇用しております事業場は、製造業とそれから商業、すなわち現行法の適用になっております業種、七の業種のうちの五人未満の事業場というものが、全体の八二・五%、すなわち全体で三百十九万八千余のうち、二百六十四万二千が五人未満の事業場になっております。ここに雇用されております労働者の数も、製造業だけで見ましても、四百八十四万人の多きに達しておるわけであります。これがこの失業保険とは無関係に置かれておるわけです。とういう問題に触れない失対改革なんていうものは何事だ。また内容におきましても、他の委員も指摘されましたが、この改悪にひとしい条項が出てきておる一体進歩か後退かわからない。こういう本質を論ずる大事な問題について、私は政府の所見をただしておきたい。中小企業対策に対して、一体基本的なものがあるかについて、他の委員会でただしてみたのでありますが、これは残念ながら、従来よりも一歩も出ていない。抜本的な対策はないのでありますから、今後一番失業のうき目を見るであろう、すなわち緊縮政策なり、合理化あるいは財政の引き締めなどによってこうむる一番大きな被害の産業は、この零細企業並んです。これが結局今後失対事業にはんらんして出てきたり、失業保険がから回りしてくるわけでありますから、私は政府が言っておりますように、抜本的改革がで透るとは思わないが、前進の姿をとってもらわなければほらぬ。
 こういう根本的な点について、政府の考え方がどこにあるかをただすために、具体的にお尋ねをいたしますが、まず第一に、緊縮政策その他の一連の政策が予算案にも出てきましたから、昭和三十年度の政府の大体の方針はやや具体的になってきました。失業増大は必至です。ことに、中小企業、零細企業に、失業者が出ないという確信をあなた方はお持ちでありますか。
 それから次に伺っておきたいのは、もうすでに駐留軍労働者の問題、あるいは特需労働についても、本委員会でも特別委員会を持ったくらいでありまして、現に大量失業が出てくる。こういう目に見えた失業増大があると同時に、一番目に見えない、しかも日本産業の大きな動きを示すであろう零細企業、特に日本の経済の一番弱点であります、しかもそれがいろいろな意味合いにおいて日本の経済の大きなファクターを占めておりました中小企業、あるいは家族労働、こういうものを一体失業対策の外に置いてお考えになるのか、この際、多少でもそういうものを中に取り入れようというお考え方があるか、まずこういう点に対する所見を伺いたいと思います。
○西田国務大臣 お答えいたします。井堀さんの御説、まことにごもっともであります。社会保険制度を実施する上において、非常に弱いと申しますか、使用者の非常に少いような業種の人々が、この社会保険制度で失業の場合に完全に救済されないというようなことは、おそらくあなたのおっしゃるように、まことに非常に大きな欠陥だと考えております。しかしながら、社会保障制度の個々の施策につきまして、日本は世界的に見まして、まだ非常に立ちおくれた国ではございます。特に、終戦後の日本経済の実態が、御承知のようにほんとうに脆弱な姿でおりまして、国としての歳入も、御承知のように非常に窮屈血歳入の関係にあります。従って、理念的にはそういう人々を失業保険の対象として法律改正を行うのは、議論を待たないのでありますけれども、現在の実態といたしまして、現在施行されております失業保険の状態から考えますと、そういうものを今一時に強制加入として加えてしまいますと、保険経済の負担する負担が非常に大きくなるために、あるいは保険料率を大幅に引き上げなければならない、あるいは失業保険の実施に関する関係のある各行政機関をこれもまた非常にふやさなければならぬ。いろいろな問題がありますので、今回の失業保険法の改正に際しましては、ごもっともなことであるとは考えておりましたけれども、五人未満の事業所を強制加入にするという改正を行わなかった次第でございます。しかしながら、五人未満の労働者を有する事業所といえども、失業保険の強制加入の対象にはなっておりませんけれども、これは任意包括の対象になっておりますので、加入しようと思えば加入されないことはありませんし、現在においても、任意加入しております事業場は相当数ありまして、人員の数は十万人程度でありますが、そういう人々は失業保険の適用を受けておるという実情でございます。従って、将来の問題といたしまして――将来といっても、何十年先というわけではありませんが、今後の問題といたしましては、当然五人未満の事業所でも強制的に失業保険の対象として恩典に浴する、そういうような改正を行わざるを得ないであろう、かように考えております。
○井堀委員 そこで、中小企業、零細企業の任意加入に対する政府の行政方針ですが、こういうものを勧めるような方針をおとりになるかどうか、その点を承わりたい。
○江下政府委員 任意包括制度は、今大臣が申しましたように、行政適用以外の面、つまり中小企業五人未満のもの、あるいは農林関係におきましても言えると思いますが、この数は約十万ある。この実際の運用といたしましては、もしこれをただ放任的に自由に届出制度でやりますと、逆選択のおそれもございますので、現在は一応各地方の官庁の認可制度にいたしております。現在のところ、そういった中小企業のものの適用につきまして、特にこれを排除するというようなことはいたしていないつもりでございます。
○井堀委員 今の政府委員の答弁は、私の大体想像しておったところです。私は勧奨するかということを具体的に聞いたのです。今の認可制度というようなことですが、ここに私はこの法案の改正の第二の大きな疑いがある。先ほど来、他の委員が御心配になりましたように、不正受給を防止するということについては、私も全く同感です。保険が不正に利用されるようになりましては、保険自体が特に社会保険の性格を持つのでありますから、よほど注意しなければならぬという点については、私は同感でありますけれども、しかし、どういう方法でそういう不正を防止するか、またその不正の原因がどこにあるかということをどういう工合に政府はつかんでおるか、またその対策をどう立てるかということは、非常に重大な問題であります。ところが、残念ながらこの法案に現れておるところ、あるいは今まで他の委員の質問に対する政府の御答弁は、全く私にとっては心外にたえないという感じを受けておりますので、私の間違いかもわかりませんから、この点を明らかにしておきたい。それは、この改正案のたしか新しく条項を設けることになっております点ですが、この不正を防止するために、取得及び喪失の認定を政村の役人でやろうという考え方、これはいろいろ重大な問題が出てくると思う。こまかい議論はあとでやりますが、政府の施策について私はお伺いしておる。問題は、こういう保険は、先ほど来論議されておりますが、私は保険の本質に対する政府の見解が大事だと思う。障害保険や生命保険は、今日の民間の営利社団が経営しておりましても公的性格を持つものでありますが、この失業対策、すなわち当然政府の政策の破綻から起ってくる、あるいは日本性済それ自身の持つ病として出てくる弊害をチェックしていかなければならぬことは、政治の本道なんです。失業者を救済するという必要は、政府の政策の破綻から当然起ってくるのですから、その当然起ってくるものの事前の対策がなければ緊縮政策をやる資格は城府にない。一方に緊縮政策をとる以上は、そこには当然失業者が出る。人口の増大と日本の敗戦後における諸事情からくる日本の社会的な責任を、どういう工合に処理していくかということは、倉石さんも言われたけれども、それが労働者にしわ寄せされるようになったら無政府状態だ、公正な政治じゃない。労働者にしわ寄せせられようが、経営者にしわ寄せせられようが、国民の一部に偏して背負わせる、そんな政治がありますか。犠牲は公平に国民が分担すべきである。この点については、失業保険というものは、そり責任を国なり社会なりが負うという保険制度であるということは、争う余地がないのであります。そこから起ってくる保険制度の中の欠陥を是正するために、結局角をためて牛を殺すような、保険をいろいろに不正利用をしておる事実を私は知っております。中には、全く保険制度それ自身の幼稚なために、補強をしなければならぬところに、あるいは社会的責任がそこにまで力が及ばないために、そういう矛盾が現われてきておるというような例をわれわれは見ておる。むしろ、それに類する傾向が強いと思う。だから、そういうものを結局是正するという形になりますれば、これは具体的にここに出ているからお尋ねするのですが、これが監督を厳重にやろうとするならば、私はこの不正を防止するためには、一体何人失業保険に関係する公務員を増加するつもりであるか。そういうことを法律にする以上は、当然その責任は道義的にも、法律的にも官庁の責任になってくるわけであります。私が非常に心配しておるのは、そんなものをふやして、もとを断たないで、出てくるものだけ、人間が人間を取り締るようなもの、こういうことはここでやるべきではない。これは保険の性質からいえば、要するに相互保険である。国民全体の責任です。だから、そこには当事者である経営者と被保険者、その経費は一部は国が負担するのであるけれども、もともと労使の負担の上に政府が補助金を与えるという形であります。その当事者の自主的な統制や管理によって防止していくという建前、これが政治の理想である。こっちは官僚統制である、民主主義はどこにもありはしない。もし官吏でやるとするならば、官吏は一体当事者の指揮命令、意思によって行動するという形がとられなければ保険の精神を冒涜するものである。事柄はごく簡単なようですけれども、不正受給に名をかりて、要するに、とんでもない考え方が具体的に出てくるものだと思います。これは鳩山内閣の性格にもさわることだと思いますから、一つ労働大臣の責任ある御見解を伺っておきたい。
 もう一つ申し上げますと、私は、少くとも道義的責任は、いずれにもあると思いますが、あくまで今日のようにこういう組織でありますから、その組織を、すなわち組織的人格を尊重するという扱い方が行われなければ、一人の被保険者に一人の公務員がつき、それに監督官をつけなければならぬというようなことが出てくる。賃金支払い、その他については一体どういう規定があるか、特に私がさっき申し上げました五人未満の零細事業所にこれを適用する意思があるか、それを拡大するための行政措置を考えておるかと言ったら、あるという。ここに欠点があるわけでありまして、こういう点をどういうふうに考えておるかということでありまして、これはあとの条文に出てくるけれども、一字一句の事柄について言うよりも、その精神が大事であります。精神が曲っておりますと、どんなに美辞麗句を並べましても、この法案は改悪であります、逆行することになるわけであります。これは非常に大事なことでありますから、はっきりしていただきたい。
○西田国務大臣 理論的に井堀さんはお話しになりましたが、人間の社会というものは、ことに井堀さんのおっしやるような状態で運営されていくならば、これに越した幸福はないと考えております。しかしながら、現実の情勢といたしましては、使用者側と加入しておる労務者側との間におきまして、今日までいろいろな弊害が現われておるように、是正されないまま運用されてきておる。その程度の、日本の保険に対する認識が薄いと申しますか、関心が持たれていないと申しますか、誤まったことをしておっても、それを見て見ぬぶりをする、気づいておってもその悪さを感じないというふうに結果的になっておりますので、そういうことが行われておりますにもかかわらず、それを承知しながら、じんぜん策を講じないで放擲しておくということは、これはよいことではないと思います。官僚統制云々のお話がございますけれども、現在の公務員が、井堀さん御承知のように、むしろ戦争前に考えておったような官僚統制をやる考えを持っておるかどうか、また実際の力を持っておるかどうかということにつきましては、私が申し上げるより、井堀さんの方がよく御承知だと考えております。従って、理念的に多少の非難を受ける点はあるかもしれませんけれども、最終責任は労働大臣が負うという形において、何らかの規制する措置を法案の中に規定しておくということは、決して井堀さんのおっしゃるほどの大きな社会悪ではない、さように考えておるわけであります。
○井堀委員 決して議論しょうとは思いません。私は大臣の考え違いがあるのじゃないかと思うのです。私は不正があっていいと言うのじゃないのです。現実の不正は承知しているのです。その不正を除去しなければならぬということにおいては、人後に落ちない。それの方法なんです。あなたが、役人は絶対公正だという考え方であれば別ですけれども、人間の集まりですから、公務員になったからといって、人格が焼き直るほど変るものではありません。汚職、涜職は今瀕発している。人を言うのじゃありません、問題は組織なんです。鳩山さんも、友愛という言葉で民主主義を説いておられるわけでありますから、民主主義的なものの上に生まれた保険なんですから、その保険の改正に当っても、民主主義の思想に反せぬように、方向を誤まってはならぬという意味において、その不正を除去するために役人を使ってやるというのは、失業救済のためにはなるかもしれませんけれども、保険財源を乏しくするだけです、そして、責任はいたずらに官庁にかぶさってくるだけなんです。むしろこれは民主的な自主統制といいますか、不正を自主的に排除していくという行き方が――警察の制度さえ変ってきておるのに、こういう民主的な、しかも相互保険ですよ、これを政府が横合いから出てきて――よその国をごらんなさい、こういうものはみな労働組合にまかせておる、政府がやっておるのは珍しいくらいです。いろいろお世話下さることはけっこうですが、実はそういう意味合いのことを聞いているのです。これは議論にわたる必要はないと思うのでありまして、こういう大事な点について政府の所見を承わり、あとは逐条については、われわれの党の態度をきめてこの会議に臨み、いろいろ質疑をいたしていきたいと思います。
○西田国務大臣 お答えいたします。井堀さんのおっしゃる十三条の二の規定ですが、政府が統制をするとか、強制をするとか、厳重な意味における取締りをするとかいうように窮屈に御解釈にならないで、あなたの今おっしゃったように、政府がお世話申し上げるのだという考え方でお受け取りを願いたいと思います。その程度の意味合いで、そういう観念でどうする、こうするというように窮屈にお考えにならないようにお願いいたします。
○中村委員長 休憩前に設置いたしました特需関係労働対策小委員会の小委員及び小委員長の選任は、委員長に一任されておりましたが、申し出がございましたので、この際委員長より指名いたします。まず小委員に
   植村 武一君  草野一郎平君
   小島 徹三君  小林  郁君
   野澤 清人君  山花 秀雄君
   横錢 重吉君  井堀 繁雄君
   吉川 兼光君  中原 健次君
以上十名を指名いたします。次に小委員長に小島徹三君を指名いたします。なお小委員及び小委員長に欠員を生じました場合の補欠選任につきましても、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
  午後四時三十四分散会