第022回国会 本会議 第43号
昭和三十年七月十九日(火曜日)
 議事日程 第四十二号
  昭和三十年七月十九日
    午後一時開議
 第一 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 運輸省設置法の一部を改正する法律案(畠山鶴吉君外二名提出)
 第四 海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 第五 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第六 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した案件
 戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議案(永山忠則君外二十五名提出)
 日程第一 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 運輸省設置法の一部を改正する法律案(畠山鶴吉君外二名提出)
 日程第四 海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 戦傷病者等の日本国有鉄道無賃乗車等に関する法律案(原健三郎君外六名提出)
 日程第五 未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第六 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 覚せい剤取締法の一部を改正する法律案(早川崇君外四十名提出)
 簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    午後三時七分開議
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、永山忠則君外二十五名提出、戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。永山忠則君。
    〔永山忠則君登壇〕
○永山忠則君 ただいま議題になりました、各派共同提案でございまする戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議案の趣旨弁明をいたします。
 まず、決議案を朗読いたします。
   戦争受刑者の即時釈放要請に関する決議案
  戦いを終えて満十年今なお巣鴨刑務所には五百八十二名の同胞が、いわゆる戦争犯罪人の名のもとに残されている。講和条約が発効してすでに三年、その間本院においてこれら戦争受刑者の全面釈放に関して決議すること三度に及ぶにもかかわらず、いまだに、その根本的解決を見るに至らないことは、われらのもっとも遺憾とするところである。
  ひるがえつて世論の動向を見るに、戦争裁判に対するわが国民感情は、もはやこれ以上の拘禁継続をとうてい容認しえない限度に達している。
  時あたかも日ソ交渉において在ソ抑留同胞の全員送還の実現を要求している現状にかんがみ、政府は、これら戦争受刑者並びに留守家族の悲願と、国民の期待にこたえるべく、ただちに関係諸国に対し全員の即時釈放を強く要請し、きたる八月十五日を期して戦犯問題を全面的に解決するため、誠意をもって速かに具体的措置を断行せられんことを要望する。
 右決議する。
    〔拍手〕
 本論に入るに先だち、日本戦犯の全部をすでに釈放せる中華民国、フィリピン、フランスの三国の好意に対し、衆議院はここに重ねて深く感謝の意を表するものであります。(拍手)
 平和と信頼の講和条約が発効してより早くも三年有余となり、終戦後満十年を迎えんとする今日、なお五百八十二名の戦争受刑者が巣鴨に拘禁されているのであります。遠く海外にもまた未帰還同胞のあるはまことに遺憾しごくでありまして、われらは、ここに国民とともに、その即時全面釈放を世界の良心に訴えんとするものでございます。
 いわゆる戦争裁判が行われたのは、戦争直後の報復感情の熾烈なる時期でありまして、わが国は、敗戦国民として遠慮すべき立場と、世界平和の回復を一日も早く招来せんことを念願いたし、また平和のいしずえとしての意義を認めまして、忍ぶべからざるを忍び、涙をのんで戦争裁判の結論に服したのであります。従って、わが国の立場とすれば、この裁判の結果を誹諦するがごときは慎しむべきであると存じますが、今次大戦における戦争裁判は、パール判事の無罪論によっても明らかなように、世界史的観点に立って見るときは幾多の疑問を抱くものでございます。
 近代国家における裁判は、不変の真理をもって貫く正義が判断の基礎となってこそ、その権威を保持できるのであります。従って、その正義は戦争の勝敗を越えて厳然として存在すべきものでありまして、いやしくも戦勝国のみが正義の行使を独占することは不合理であると言わねばなりません。敗戦国もまたその正義を行使する権利があってしかるべきものであると存じます。原爆の使用のごとき、たまたまそれが戦勝国によってなされたといえども。世界の世論は明らかにこれを人道に対する反逆として問題とするに至っておるのでありまして、今や諸国民の感情は平静を取り戻し、戦勝国の一方的な戦争裁判なるものが果して国際法理論上正当なものであるか疑問とされているのでございます。(拍手)現に、その後における朝鮮動乱の終息、仏領インドシナ動乱の結果に際して、関係国が戦争裁判を再び持ち出すことができ得ないことは、戦争裁判の合理的根拠のいかに薄弱なものであるかを暴露しておるものであると言わなくてはなりません。(拍手)
 当時、戦争裁判は、一般に占領軍の軍司令官の定むる軍事裁判条例によって行われ、無罪より死刑まで裁判官の意のままに課せられて、実際には、死刑、終身刑、何十年という極刑または長期刑が、ただ一審のみで決定されたのであります。文明諸国の、三審制度により、事実の認定、法律の適用を公正にして、人権を不当に侵害せざる裁判の公平の原理にも反し、かつまた、戦勝国のみから裁判官が選任され、また、法律知識の専門でない軍人、しかも昨日まで戦場にてまみえたる軍人も裁判官となりまして、裁判の中立性、公平性を疑わざるを得ないものがあるのであります。
 戦争裁判は、侵略、すなわち平和に対する罪とか人道に対する罪とかといたしまして極刑に処せられたのでありますが、当時国際法上準拠すべきものは何ものもないのでありまして、これは文明国の厳に禁じている刑事法上の遡及、すなわち事後法でありまして、専横なる独裁者の報復手段に似たものであり、文明国の罪刑法定主義による裁判の神聖と人権の尊重の精神より見て、まことに遺憾にたえないのでございます。
 しかし、戦争裁判を占領政策の一環であると言うならば、それはそれとしての存在の理由がありますが、講和条約の締結されている今日においては、そうした理由はすでに解消しておると言わねばなりません。いな、今や、講和条約の精神により、一切の戦争による恩讐を越えて、ともに相携えて世界の平和に寄与せんとする現時に、なお巣鴨に拘禁するがごときは全く意味がないのであります。しかるに、戦犯の釈放の状況を見まするに、独立後今日に至る満三カ年余の間に二百九十人を釈放したるにすぎないのであります。これは講和条約発効前の六カ月間に釈放されました四百六十七人に比してきわめて少数であり、かくのごとく戦犯釈放が今なお遅々として進まざることは、まことに遺憾しごくに存じておる次第であります。これに引きかえて、ドイツ戦犯の釈放状況を見ますと、米国、英国、フランスの管理に属している戦犯は、本年五月五日現在わずかに百二十二人という状態で、わが国巣鴨在所者に比して非常に少数なのであります。
 もとより、日本政府は、講和条約第十一条により戦犯の釈放勧告を行なっており、吉田前首相も、欧米出張に際して、対日平和条約第一条の悲劇的義務解消を念願して関係国政府にその旨を要請し、また現内閣もあらゆる角度より戦犯釈放について不断の努力をいたしておるのでありますが、今なお釈放、仮出所はきわめて少数であります。米国は、これに関し、去る五月十六日、大統領命令により、仮出所、減刑についての手続簡素化を行うことになったのであります。われわれはこれに対して感謝の念を禁じ得ないのでありますが、従来の個人審査方式をもってしてはとうてい抜本的解決はできないのではないかと不安を持っているものであります。
 戦犯に対する釈放が遅々として進まざる結果は、若き戦犯者は、青年期を社会と絶縁され、学識や技術を身につけて世に立ち家族を扶養すべきその準備時代を完全に抹殺され、壮年期にあった人々は今日老境に入り、中にはよわい七十をこえる受刑者もあって、人道上まことに許しがたいものがあるのであります。また、受刑者の家族の精神的、経済的苦痛は言語に絶するものがあります。人権を尊重する民主主義の精神から言いましても、はたまた、その不平不満を悪用せんとする分子の暗躍等を考慮いたしますれば、戦犯の全面的釈放こそ一刻もおろそかにすべきものではございません。ソ連関係のいわゆる戦犯と称せられる抑留者釈放送還につきましては、すでに本院において議決をもって強く要望いたし、一方、政府もまた、目下ロンドンの日・ソ会談において松本全権をして強硬にソ連抑留拘禁者の釈放送還を要求し、国民世論もまた強くこれを支持しておるのであります。われわれは、世界の人道に訴えて、断じて全員釈放送還の実現を深く期待してやまぬものであります。
 今や、西欧においては、旧来の怨恨を忘却して、一切の行きがかりを捨てて、世界の新しい平和への道を開かんとしておる現時、十年前の戦犯問題が未解決であるがごときは、世界平和ヘの進展をはばむものであるとさえ言わざるを得ないのであります。戦犯に対する同情は日本全国民に行き渡っておるのでありまして、その釈放のため数十の団体が結成され、釈放嘆願書に署名したる者は三千余万人に及んでおるのであります。
 われわれは、終戦満十年の八月十五日を迎えるに当り、この事実を世界の良心に訴えるとともに、政府は、全力を尽して、この機会に巣鴨拘禁の廃絶を期し、戦犯即時全面釈放の有効適切なる措置を断行せらるべきであります。
 なお、第三国人戦犯の釈放に関しましては、関係国はすでに考慮中の趣きであると仄聞いたしておりますが、これが全面釈放のすみやかならんことを要望することをあわせて付言いたし、以上をもって本決議案の趣旨弁明といたす次第であります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。
 この際外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣重光葵君。
    〔国務大臣重光葵君登壇〕
○国務大臣(重光葵君) 戦争受刑者の釈放問題につきましては、政府におきまして、これまで関係諸国に対し熱心にその要請をなし来たったのでありまして、関係国の態度は漸次好転して参りましたものの、今なお多くの末釈放者があることは、戦争終結後十年の今日、まことに遺憾にたえません。政府は、ただいまの御決議の趣旨を体して、いわゆる戦犯釈放具現方につき今後とも全力を尽し、その実現を期する所存でありますことをここに申し上げます。以上。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 日程第一、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案、日程第二、農業災害補償法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員長綱島正興君。
    〔綱島正興君登壇〕
○綱島正興君 ただいま議題と相なりました、内閣提出、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案、及び、内閣提出、農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審議の概要を御報告申し上げます。
 まず、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 御承知のごとく、わが国特産の重要輸出品である生糸は、これと競争関係にある人絹、化学繊維等と異なり、従来とかく価格の暴騰暴落常なきため、需要者たる絹織物製造業者並びに輸出業者に投機的の感を抱かしめて、輸出の振興を阻害し、蚕糸業の経営を不安に陥れておりました。これが対策として、昭和二十六年十一月、政府は現行繭糸価格安定法を制定いたし、生糸を申し込みに応じて最低価格で買い入れ最高価格で売り渡すことといたし、もって生糸価格の異常な変動を防止することといたしたのであります。しかしながら、その後の推移を見まするに、政府は、一俵の手持生糸も持たないために、一昨年生糸価格暴騰に際してこれを抑制する適切な処置を取り得なかったのであります。なお、また、繭価の異常な低落を防止する措置についても明確を欠く等不十分の点がございますので、現行法のこれらの不備を補強し、もって輸出の振興と蚕糸業経営の安定をはかるため、ここに本法案を提出されたのであります。
 次に、改正案の要旨を申し上げますと、第一は、政府は、最高価格によって売り渡す生糸として輸出適格生糸を保有する必要のある場合は、最低価格を越える価格で買い入れることができるようにしたことであります。
 第二は、政府手持生糸の数量が生糸の価格の異常な騰貴を防止するために必要な数量を越えるような場合においては、その超過数量については、最高価格でなくても、時価によって売り渡すことができることとしたことであります。
 第三は、繭価維持のための補充措置を定めたことでありまして、繭の価格が、生糸の最低価格に見合う価格、すなわち最低繭価以下に下るようなおそれのある場合におきましては、農林大臣の指定する農業協同組合連合会が、あらかじめ農林大臣の承認を受けて、繭の出回り調節による最低繭価維持のために自主的に保管をしたときは、保管に要する経費について、別途糸価安定特別会計法の改正に基き補助金を交付することができることとしたのであります。なお、万一その保管した繭を一定期間中に最低繭価以上の価格で売り渡すことができない場合には、さらに政府がその保管繭を買い入れることができることといたしまして、繭価維持の万全を期したのであります。
 第四は、政府が買い上げた繭につきまして、その性質上長期の保管にたえがたく、またそれを一時に売り渡すことにより繭の時価に悪影響を及ぼすことを避けるため、生糸に加工または生糸と交換する規定を設けたことであります。
 第五は、政府が、生糸の買入契約、繭の買入契約、補助金の交付契約をする場合に、その金額の総計は糸価安定特別会計における収納済み歳入額と借入金の限度の総計の範囲内としたことであります。なお、以上を行う資金として、本法に並行して糸価安定特別会計法の改正により、現在の三十四億円に加え、証券発行及び一時借入金により三十億円を増額し、その目的の完遂を期しております。
 本案は五月二十三日付託となり、六月十日農林政務次官より提案理由の説明を聞き、次いで七月七日より質疑に入り、最低繭価の決定、日本輸出生糸保管株式会社の性格、機能及び乾繭保管の設備能力等に関し、各委員から終始真撃活発な御発言があり、特に日本輸出生糸保管株式会社の監督をいかに行うかとの質問に対し、河野農林大臣より厳重に監督する旨の答弁が、ございましたが、その内容は後刻書状をもって次のごとく明示せられました。すなわち、
 一、定款の中に左の事項を規定せしめる。
  1、会社は、繭糸価格安定法第九条の二に規定する買入、保管及び売渡及びこれに附帯する業務以外は行わないこと。
  2、役員の選任、利益金の処分及び定款の変更については、農林大臣の承認を得ること。
 二、指定に際して左の条件を附す。
  1、定款に違反したときは、指定を取り消す。
  2、会社が売主から徴収する手数料及び売戻の際に買入価格に加算する金利保管料等の額については、農林大臣の承認を受けること。
 三、法第九条の二によって、農林大臣は左の条件を定める。
  1、会社の買入には、すべて買戻条件を附すること。
  2、輸出に供するため買戻の請求のあったときは、これに応ずべきこと。
  3、糸価が最高価格に達した場合は、会社は売主に売戻すか又は輸出向に売り渡すべきこと。但し、会社が売り戻す場合の価格は、時価によるべきこと。
  4、前記2又は3による売戻又は売渡のなかった生糸で、一定期間経過したものは、第九条の二の規定により政府に売渡すべきこと。
 日本輸出生糸保管会社に対する農林大臣の監督事項は以上のごとくであり、後ほど申し上げます附帯決議の内容と一連の関係に立って、この会社の運営に万全を期することと相なったのでございます。
 本案は、同月十六日質疑を終了いたし、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもってこれを可決すべきものと決した次第であります。
 次いで、社会党足鹿委員より附帯決議を付したいとの提案がありました。採決の結果、これまた全会一致をもって可決いたしました。
 次に、附帯決議を朗読いたします。
 一、政府は、輸出適格生糸の特別買入及び売戻により第九条の二の農林大臣の指定する者に剰余金を生じた場合においてはその剰余金を養蚕農民に還元せしむるため必要な措置を講ずること。
 二、政府は、農業協同組合連合会の行う乾繭共同保管の数量については、農業団体の意見をきいて、必要にして且つ十分なる数量を保管せしめるとともに、最低価格による六ヶ月以上の融資斡旋措置を講ずること。
 三、政府は、前項の共同保管した乾繭であつて、一定期間経過後なお販売できないものを生じた場合は、その全量を買い上げることとし、これに必要な資金措置を講ずること。
 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案の御報告は以上をもって終ります。
 次に、農業災害補償法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 現行の農業災害補償制度が、農作物、家畜、蚕繭及び任意の各分野において当面している問題はすこぶる複雑多岐にわたり、数年前よりその根本的改正が論ぜられておりますことは、各位の御承知のごとくであります。これがために、政府においては、農業災害補償制度改正協議会を設けて改正の準備に当っておるのでありますが、遺憾ながら、いまだ最終的な結論に達しておらないのであります。従って、今回内閣より提出せられました本改正案は、目下当面しております二つの課題について、さしあたって解決をはかろうとせられておるのであります。すなわち、第一点は、町村合併の促進に伴いまして組合の合併が推進せられておることに関連いたしまして、農業共済組合の総代会が総会にかわって議決することができる事項の範囲を拡張しようということであります。第二点は、家畜共済に関しまして、死亡廃用共済と疾病傷害共済とを一元化いたしまして、いわゆる死廃病傷共済という新しい制度を設けようというのであります。
 この死廃病傷共済は、二十八年に制定せられた農災法に基く家畜共済の臨時特例法に基いて、一部の組合において実験せられて参ったのでありますが、この実験法が三カ年の限時法であり、また、実験の結果、おおむね本制度の全面的実施に差しつかえない見通しを持つに至りましたので、従来、家畜共済は、死亡廃用共済、疾病傷害共済、生産共済の三種でありましたのを改め、臨時特例法に基いて実験いたしましたのにさらに一部内容の改善を加えた死廃病傷共済と従来通りの生産共済との二種とするよう改正をいたそうとするのであります。
 なお、死廃病傷共済については、今後、組合員に対し、疾病及び傷害の事故にかかわる共済金は、その損害に相当する金額を一率に給付いたし、疾病及び傷害の共済金について診療費中のすべてを給付するものと、診療技術料以外の診療費を給付するものとの選択は、保険関係の成立の際に農業共済組合が農業共済組合連合会と協議して行わせることといたしてあります。そのほか、疾病及び傷害の共済事故にかかわる組合員に対する給付の改善をはかったことであります。
 なお、また、この死廃病傷共済の全面実施に当りましては、臨時特例法による指定組合の組合員に対する共済掛金の一部補助については、その交付の必要がなくなりますので、これを廃止いたし、そのかわりに、当分の間、農業共済組合に対し死亡及び廃用事故の低下に応じ算出される一定の補助金を交付することといたしてあります。
 本法案は、六月六日付託せられ、同十四日農林政務次官から提案理由の説明を聴取の上、委員会の審議にゆだねられたのであります。
 本改正案の内容につきましては、農業共済制度小委員会におきましても、かねてから検討いたしており、各委員とも本改正案につきましては異議がございませんので、去る十六日、質疑を打切り、討論を省略して採決いたしましたるところ、全会一致をもって政府原案の通り可決いたしました。
 以上、御報告を終ります。
○議長(益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第三及び第四とともに、原健三郎君外六名提出、戦傷病者等の日本国有鉄道無賃乗車等に関する法律案を追加し、三案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 日程第三、運輸省設置法の一部を改正する法律案、日程第四、海上運送法の一部を改正する法律案、戦傷病者等の日本国有鉄道無賃乗車等に関する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長原健三郎君。
    〔原健三郎君登壇〕
○原健三郎君 ただいま議題となりました三法案につき、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、運輸省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本法案は、国際観光事業の重要性にかんがみ、観光行政を強力に遂行せしめる必要上、現在運輸省にあります観光部を観光局に昇格せしめるため、運輸省設置法に所要の改正を加えようとするものであります。
 本法案は本月十五日本委員会に付託され、十八日提案者を代表して畠山鶴吉君より提案理由の説明を聴取いたしました後、質疑、討論を省略、直ちに採決の結果、本法案は起立多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたしました。
 次に、海上運送法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 まず、本法案の概要を御説明いたします。現行法制定後の施行状況に徴しますと、海上運送の実情に沿わない点がありますので、これらの諸点について所要の改正を加えようとするものでありまして、その内容のおもなる点をあげますと、第一点は、従来届出制でありました旅客不定期航路事業を許可制にするとともに、その運賃、料金及び運送約款等について所定の規制を加えようとするのであります。第二点は、旅客定期航路事業について免許基準の明確化をはかるとともに、人命の安全に関する法令に違反した場合には事業の停止または取り消しができ得るようにいたそうとするのであります。
 本案は、五月十六日予備審査のため本委員会に付託され、同月二十八日政府より提案理由の説明を聴取し、七月四日本付託となり、同月十三日、十八日質疑を行いましたが、その詳細は会議録で御承知を願います。
 かくて、討論を省略し、直ちに採決の結果、本法案は全会一致をもって原案通り可決した次第であります。
 次に、戦傷病者等の日本国有鉄道無賃乗車等に関する法律案について申し上げます。
 本法案は、旧軍人軍属たる戦傷病者に対する援護の一方途として、増加恩給、傷痍年金または傷病賜金を支給されている旧軍人、旧軍属等であって、現にその不具廃疾または傷病の程度が政令で定めるところに該当する者及び政令で定めるその介護者は、日本国有鉄道の鉄道及び連絡船に、政令で定める回数、等級、区間に限り、運賃を支払わないで乗車または乗船することができることとし、国はこの取扱いに伴う鉄道及び連絡船の運賃に相当する金額を負担することとしようとするもので、昭和三十一年四月一日から施行することとなっております。
 本法案は、本月十九日本委員会に付託され、同日提出者を代表して原健三郎より提案理由の説明を聴取いたしました後、質疑に入りましたが、その内容は会議録に譲りたいと存じます。
 かくて、質疑を打ち切り、討論を省略いたしましたが、本法案は議員の発議にかかる予算を伴うものでありますので、国会法第五十三条の三の規定により内閣の意見を徴しましたところ、植田運輸省監督局長より、本法案は事務的にはなお検討を要すべき点があるが、大きな方針に関する問題なので、方針決定の上は、その線に沿うて研究したいという意味の答弁がありました。
 次いで、採決の結果、本法案は起立総員をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) これより採決に入ります。
 まず、日程第三につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 次に、日程第四及び戦傷病者等の日本国有鉄道無賃乗車等に関する法律案の両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第五及び第六とともに、内閣提出、失業保険法の一部を改正する法律案、及び、早川崇君外四十名提出、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案を追加し、四案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 日程第五、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案、日程第六、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、失業保険法の一部を改正する法律案、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長中村三之丞君。
    〔中村三之丞君登壇〕
○中村三之丞君 ただいま議題となりました未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、失業保険法の一部を改正する法律案及び覚せい剤取締法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会における審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
 まず、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして御報告いたします。
 本改正法律案の要旨は、今回戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正により遺族年金の額が引き上げられましたのに対応して、本法による留守家族手当を増額すること、並びに帰還者に対する療養の給付期間が本年十二月二十八日で満了することとなっておりますのを、さらに三年間延長いたしたことでございます。
 本法案は五月二十三日本委員会に付託せられ、同二十五日政府より提案理由の説明を聴取した後、数回にわたり熱心なる審議が行われたのでありますが、昨十八日の委員会において各派共同提案による修正案が提出せられ、自由党の山下委員よりその趣旨の説明がありました。本修正案の要旨は、一、留守家族手当の月額が、政府案では二千三百五十五円となっているのを、昭和三十年十月分から昭和三十一年六月分までは二千五百八十三円、昭和三十一年七月分以降は二千九百三十七円とすること、二、留守家族手当または特別手当の額に相当する額の手当を、生還の場合は三カ月間、未帰還者の死亡の事実が判明した場合においては六カ月間、それぞれ延長支給すること等であります。
 次いで、質疑を終了し、討論を省略して採決に入りましたところ、修正案並びに修正部分を除く他の原案はともに全会一致可決すべきものと議決した次第でございます。
 次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして御報告申し上げます。
 本改正案は主として給付内容の改善をはかるものでありまして、そのおもなる点は、ます療養の給付期間を現行の六カ月から一年に延長すること、歯科診療における補綴を療養の給付に含めること、死亡及び分べんに関する現金給付を創設すること、並びに被保険者と同一の世帯に属する三親等内の親族で、主としてその者により生計を維持する者にまで被扶養者の範囲を拡大すること等であります。
 本法案は、五月三十日本委員会に付託せられ、六月十三日厚生大臣より提案理由の説明を聴取した後、数回にわたり熱心なる審議が行われたのでありますが、昨十八日の委員会において各派共同提案になる次の修正案が提案せられ、日本社会党の八木委員よりその趣旨の説明がありました。本修正案の要旨は、一、現在、本制度による給付の受給条件として、ニカ月間に二十八日の保険料の払い込みが必要となっておりますものを、ニカ月二十八日または六カ月七十八日のいずれかを選択的に認めることとして、受給条件の緩和をはかったこと、二、本法の施行期日が七月一日となっておるのを、公布の日に改めたことであります。
 かくして、質疑を終了し、修正案並びに修正部分を除く原案を一括して討論に入りましたが、日本民主党を代表して小島委員、自由党を代表して野澤委員、日本社会党を代表して八木委員、日本社会党を代表して吉川委員より、それぞれ賛成意見が述べられたのであります。次いで、採決に入りましたところ、修正案並びに修正部分を除く他の原案は全会一致可決すべきものと議決した次第でございます。
 さらに、日本民主党の小島委員より、各派共同提案による次の附帯決議案が提出せられました。朗読いたします。
    附帯決議案
 本修正により受給条件をニケ月二十八日又は六ケ月七十八日と選択せしむることとした。右修正は就労日数につき現下経済上月平均十四日とすることは必ずしも実情に副わずと思わるるにより暫定的処置としてこれを認めたるものなるにつき政府は今後これらの点につき再検討の上適当なる処置を講ずることを期待する。尚本法適用範囲の拡大についても更に至急検討実施せられんことを期待するものである。
 右決議する。以上であります。しかして、全会一致本附帯決議を付すべきものと決した次第であります。
 次に、失業保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、第一に、被保険者の当然適用の範囲を、医療看護その他の保健衛生事業、社会福祉事業、更生保護事業に対して新たに拡大すること、第二に、長期被保険者に対する失業保険金の給付日数を二百七十日または二百十日とする一方、季節的労働者を主体とする短期被保険者に対する給付日数を九十日とし、一律百八十日の給付制度から生ずる不合理を是正すること、第三に、被保険者資格の取得並びに喪失について政府の確認の制度を設け、権利の保護とともに不正受給の防止等をはかろうとすること、第四に、福祉増進のための必要な施設を設置するための明確なる規定を設けること、以上がこの改正の主要点であります。
 本案は去る五月二十六日内閣より提出され、同日付託されたのでありますが、本委員会は、五月二十七日政府より提案理由の説明を聴取いたしまして以来、慎重審議を続け、七月十三日質疑を終了いたしました。
 本日の委員会において、日本社会党両派共同提案による修正案が提出せられ、横錢委員よりその趣旨の説明がありました。本修正の要旨は、短期被保険者に対する失業保険金の給付の日数短縮に関する第二十条第二項及び附則第六項の規定を削除せんとするものであります。
 次いで、修正案並びに政府原案を一括して討論に入りましたところ、日本民主党を代表して小島委員及び自由党を代表して大橋委員より、修正案反対、政府原案賛成、日本社会党を代表して井堀委員、小会派クラブを代表して中原委員より、修正案賛成、政府原案反対の意見が述べられたのであります。
 次いで採決に入りましたが、まず修正案は少数をもって否決せられ、次に政府原案については多数をもって可決すべきものと議決いたした次第でございます。
 次に、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案について御報告申し上げます。
 本法案は、覚醒剤原料について取締りを行うとともに、常習犯については一年以上十年以下の懲役に処することとする等、覚醒剤に関する罰則を強化し、わが国特有の覚醒剤禍の撲滅を期することを目的とするものであります。
 本法律案は各派共同提案でありまして、七月八日本委員会に付託せられ、同十二日提出者より提案理由の説明を聴取しましたが、同十九日質疑を終了し、討論を省略して採決に入りましたところ、本法案は全会一致原案通り可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。横錢重吉君。
    〔横錢重吉君登壇〕
○横錢重吉君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました失業保険法改正案に反対の意を表するものであります。(拍手)
 失業保険法は、申し上げるまでもなく、失業中の者に対し保険金を給付することによってその生活を保障するという、わが国社会保障制度の重要な一環をなすものであります。この保険制度あるがゆえに、わが国のきわめて悪い雇用状態の中にあっても、失業者は、その生活を辛うじてささえ、次の職場を探すまでの生活の根拠としているのであります。ゆえに、この制度は、失業者からは暗夜のともしびのごく親しまれ、希望を持たれているのであります。従って、法の改正には慎重でなければなりません。また、その改正の方向は、憲法第二十五条に示すごとく、わが国の社会保障を向上させるという大前提のもとに行われるべきであります。
 鳩山内閣は、選挙に当って国民に公約した中に、特に社会保障制度を確立させると誓ったために、第一党にもなり、内閣を担当したものと承知をするのであります。しかるに、今回提出された政府の改正案は、乱用の防止と給付の合理化を唱えながら、その内容は、明らかに社会保障の後退であり、この制度の改悪であります。第一に、従来の保険金は六カ月以上被保険者であった者にはすべて百八十日の給付をなしてきたのであります。改正案では、これを六カ月以上九カ月未満の者は九十日に削減をするというのであります。この改正案提出の根拠となったものは、昨年度において十億円の赤字を出したからというのであります。しかも、その実態は、一カ年未満の者に多いために、これを半減することによって給付の総額を少くし、収支のバランスをはかろうとするものでありますが、この考え方は根本的に誤まっていることを指摘したいのであります。
 なぜならば、失業保険は、昭和二十二年十一月法施行以来、七カ年間に二百五十億の余裕金を作っているのであります。昨年初めて十億ばかりの赤字を出したからとて驚くには当らないのであります。しかも、赤字を出じた場合には、改正を行わなくても、保険料を増加徴収することができるようになっているのであります。しかも、改正案により犠牲をしいられるのは、乱用者ではなく、全くの失業者であります。政府は金もうけをするために失業保険を運営しているのではないはすであります。七年間に二百五十億の備蓄をなし遂げた今日においては、その給付内容を改善し、失業者の生活を守り、法の目的を一そう前進せしめるためにこそ改正案が出されるべきであります。また、その段階に来ているのであります。政府は、保険金の給付を制限するよりも、失業者のいない社会を作るためにこそ努力をすべきであります。(拍手)
 第二には、五年以上の被保険者には二百十日、十年以上の者には二百七十日と給付日数を改めて、さも改正をはかったかのごとく思わせておりますが、これは全くの見せかけだけでございます。これには、引き続き同一事業主に雇われた者との規定があり、この条件のために、実際に当てはまる者は現在わずかに一五%しかいないのであります。法を施行してまだ七カ年余りでありまするから、十年以上というのは、現在まだ一人も該当者がいません。三年先のから手形を示したにすぎないのであります。かかる例外規定は法の精神をそこなうものであります。法の運用は、被保険者全般に対し、あくまでも公正が期されなければなりません。
 第三には、資格の取得に確認制度を作ったことであります。このために、法案が通るならば、直ちに政府は二百五十人の職員を雇い入れようとしておるのであります。しかし、このさして必要のない確認事項も、これをやろうとするならば、八百万人の被保険者に対し、全国五百三十五カ所の職安においては少くとも二人の人員を配置しなければならないから、実際には二百五十人では問題になりません。少くとも一千人を必要とするのでございます。今日常に行政の簡素化を唱える政府が、何を好んで不必要な人員を増加しようとするのでありましょう。その意図を了解するのに苦しむのであります。
 政府はかかる改正を行なって失業保険の収支を償わせようとするのでありますが、ただいま指摘しましたごとく、今回の改正案は、明らかに、法の目的をまげる結果となり、失業保険に対する信頼を失わせるものと言わざるを得ません。デフレの政策を実施するならば、失業者の増加するのは当然のこ主であり、従って政府はこの受け入れ対策に万全を期さなければならないの
に、何らの対策を施さないばかりか、反対に失業者にしわ寄せをして、これを打ち切ろうとする、かかる考え方には、遺憾ながら同調することができません。(拍手)
 以上の理由により、政府改正案に反対をいたすものでございます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 井堀繁雄君。
    〔井堀繁雄君登壇〕
○井堀繁雄君 ただいま議題となっておりまするうち、失業保険法の一部を改正する法律案について、社会党を代表して反対の討論をいたしたいと思うのであります。(拍手)
 この理由は二つに要約することができると思うのであります。一つには、本案は鳩山内閣の政策の破綻を端的に露呈したものであると断言できると思うのであります。二つには、失業保険法の本質を無視するものでありまして、真の労働政策及び社会保障制度の精神を理解することを欠いでおる無能をみずから暴露するものであると断ずることができるのであります。(拍手)
 第一の問題は、政府は一兆円のワクの中において予算を組み、緊縮政策を遂行しようとしておりますことは申すまでもありません。これに伴うところの諸政策、法律案がただいま国会で論議されておるのでありますが、こういう諸政策を実施しようといたしますれば、ここには当然中小企業者に対する金融上の圧迫が加わり、農民や小市民に対する生活を脅威する政策が当然派生してくるのでありまして、緊縮政策を行わんとする場合には、こういう事態を事前に是正する政策が並行して行われるというのが、政治の常識であります。しかるところ、ただいままで政府が提案されておりまする諸法律案やそれぞれの予算の内容はすでに検討済みでありまして、これらの被害をこうむるべき弱小中小企業者もしくは農民、労働者に対する対策はまことに冷淡であることは申すまでもございません。たまたま、政府は、この法案を提案するに当りまして、当然失業の増大を見越し、その失業の救済をこの法案の改正に待とうという説明をいたしたのには、驚くほかないのであります。それは、次に申し述べることでありますが、少くともこういう緊縮政策の上から派生してくるところの失業問題というものを、恒常的な保険制度である失業保険でカバーしようとすることは、おそるべき無能を暴露し、政治を理解しない者の暴挙と言わざるを得ないのであります。(拍手)失業保険法の一部を改正するという事柄は政治思想全体につながることであるし、鳩山内閣の政策の破綻がきわめて露骨に現われているということを、ここに絶叫しなければならぬのであります。
 私は必ずしもインフレ政策に対して賛意を表するものでありません。しかし、デフレ政策を強行する場合におきましては、どうしても、金融上の問題、あるいは企業の縮小、閉鎖といったような事態をどうして阻止するか、失業問題をどうして緩和し阻止するかという対策が強硬にとられなければならぬことはもちろん、いずれの国においても、このことは強調されると同時に強行されておるのであります。こういう政策を失業保険法の改正によってカバーしようとする政府の提案が無能であると同時に、そのことは次に述べるところの失業保険を根本的に否定するような危険をあえてはらんでおるのであります。
 すなわち、失業保険の目的は、被保険者の相互扶助的な力と、これに社会的な力を加えて、労働者の失業に対して保険金で生活をカバーしていこうということは申すまでもありません。こういう趣旨の上から出ておりまする恒常的な保険制度でありますから、今日のように政策転換が行われまする場合に、こういう社会保険に対し、労働保険に対して、できるだけ手厚い保護的措置が講ぜられるというのが当然であるのにもかかわらず、ここに提案されておりますものは、先ほど横銭議員からも説明がありましたから繰り返しませんが、その改正の要旨はすでに明らかになっておりますように、季節労働者及び短期被保険者に対する従来の六カ月の失業を保険によって補償するという制度を、三カ月に削るということは何事です。
 中小企業の間には失業が増大するおそれがある。短期雇用を、雇い主も労働者も希望するはずはありません。雇用の安定をいずれも願っておりながら、政策のしわ寄せのために余儀なく事業の縮小や工場閉鎖の被害を最も甚大に受けるのは弱小企業、中小企業でありますから、個々には長期雇用を約し、長期雇用の安定を願っておりまする労使が、余儀なく失業者を出して、これを保険によって保護を受けようという方向は、増大してきましても、決して少くはなってこないのであります。この分にもっと保険財源を補って、そういうものをカバーするように改正するというのならば理解ができるのでありますが、せっかく六カ月の補償ができておりまするものを三カ月に削るということは、一体どういう根拠に基いてこういう議論が出るかということであります。これは、いかに弁解しようといたしましても、社会保険の制度を理解する態度ではなく、社会保障制度の精神を理解する力を持たぬものか、あるいは故意にこれを破壊しようとするものでありますから、それはおそるべき政治面の上から出発したものと言わなければならぬのであります。これは立場の相違ではありません。こういう改正案でありまするから、われわれは何としても容認することはできません。
 ことに、保険財源の問題はきわめて重要でありまするし、保険を強化し、拡大し、あるいは合理化していくという主張に対して、われわれはまことに賛成であります。しかし、その趣旨からいたしまするならば、現に、今日の失業保険法から申しまするならば、季節労働者は適用外に置かれておるのであります。しかし、事実上は、季節労働者であるか短期被保険者であるかということのけじめがつかないほど日本経済の混乱が起っておるのでありまして、その混乱がこの失業保険の中にじわじわと割り込んでおるのでありまするから、これを受け入れて保険制度を拡大強化していくというのでなければ、時代に適合する社会保険の改正ではないのであります。これを切ってのけようというようなことは、これはむちゃくちゃと言わざるを得ないのであります。さらに、その名に隠れて、短期被保険者は六カ月の既得権がありまするものを三カ月に縮めるというに至っては、これはどう弁解しても弁解の余地はないのであります。
 私は、ごく簡単でありまするが、以上の要点だけを取り上げてみましても、今回の失業保険法の改正というものは、わずか二、三カ条の条文を改めるということではありまするけれども、その基本的な政治的精神というものについて、おそるべき破壊をみずから招くところの鳩山内閣の政策の破綻を糾弾せざるを得ないのであります。(拍手)
 以上の立場から、私は、本案をわれわれの修正案に同調されて撤回されんことを委員会で希望いたしまして、ついに少数で敗れましたが、私は、当然こういうものに対して議員各位の十分なる御留意をいただき、社会保険の健全化のために協力を要望しまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず、日程第五、第六及び覚せい剤取締法の一部を改正する法律案の三案を一括して採決いたします。日程第五及び第六の委員長の報告は修正、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案の委員長の報告は可決であります。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって三案は委員長報告の通り決しました。
 次に、失業保険法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。逓信委員長松前重義君。
    〔松前重義君登壇〕
○松前重義君 ただいま議題となりました簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に関する法律の一部を改正する法律案に関し、逓信委員会における審議の経過並びに結果の概略を御報告申し上げます。
 この法律案は内閣提出にかかるものでありまして、その提案理由とするところは、簡易生命保険及び郵便年金の積立金は逐年累増しておるにもかかわらず、その運用は現在主として契約者貸付、地方債及び地方公共団体に対する貸付に限られておりまするので、一そう公共の利益をはかり、あわせて資金の効率的運用に資する目的をもって、運用の範囲を拡大しようとするものであります。
 今回の改正によって新たに融資の対象となるものは、第一は、法律の定めるところにより予算について国会の議決または承認を必要とする法人の発行する債券及びこれらの法人に対する貸付でありまして、具体的に申せば、日本国有鉄道、日本電信電話公社、日本放送協会の発行する債券及び住宅金融公庫その他政府関係機関等に対する貸付でございます。第二は、長期信用銀行法に規定する長期信用銀行、農林中央金庫及び商工組合中央金庫の発行する債券でありますが、これらの金融債につきましては、これに運用する積立金の額、一金融機関の発行する債券に対する引き受け、応募、買い入れの金額及び条件につき運用上の制限を設けております。第三は国債でありまするが、これは主として余裕資金の運用をはかるための短期運用を目的とするものであり、第四は国に対する貸付でありまして、さしむきは郵政事業特別会計に対し老朽郵便局舎緊急改善のために要する資金を貸し付けようとするものであります。
 逓信委員会におきましては、五月二日法案の付託を受けまして以来、しばしば会議を開いて、政府との間に質疑応答を重ね、あらゆる角度から慎重に検討を加えたのでありまするが、その詳細につきましては会議録に譲り、ここには審議の過程において特に問題となった重要な点のみについて御報告するにとどめたいと思います。
 その第一は、金融債のうち、長期信用銀行法に規定する長期信用銀行の発行する債券を運用の対象に加えることは、これら長期信用銀行の融資先が必ずしも公共性の強い基幹産業に限定されていないのであるから、大衆の零細な保険料や掛金の集積である簡易保険、郵便年金積立金の融資の対象としてな不適当であるという意見が委員間に多数を占めたことであります。
 その第二は、郵便局舎の改善を目的とする国に対する貸付額を本年度運用計画においてはわずかに五億円を計上するにとどめたことは、老朽狭隆局舎がきわめて多数を算する現状から言って少額に失する、将来においては、郵便局舎改善資金として、本積立金の運用総額中から一定割合を確保する方途を講ずべきであるとする意見が委員よりきわめて強く主張せられたことであります。
 その他、本件審議中の論議としては、本積立金の運用は、地方還元の本旨よりして、あくまで地方公共団体に対する融資に最重点を置くべきであるという見解、町村合併に伴う電話施設の整備統合に要する資金の供給等の必要からして、日本電信電話公社に対しても相当額の融資を運用計画に計上すべきであるとする見解等があったことを、つけ加えて申し上げます。
 かくして、本委員会におきましては、本日の会議の席上、質疑を終了の後、日本社会党松井政吉君から、先に審議過程中の論議として申し述べました趣旨によって政府提出原案中「長期信用銀行法第二条に規定する長期信用銀行」を削除する旨の修正案が提出され、次いで、右修正案及び修正部分を除く原案を一括討論に付し、日本民主党を代表して齋藤憲三君、自由党を代表して橋本登美三郎君、日本社会党を代表して井手以誠君及び日本社会党を代表して松井政吉君より、いずれも賛成意見の御開陳があり、引き続き採決の結果、右修正案及び修正部分を除く原案をいずれも全会一致をもって可決、すなわち本法律案は修正議決を見た次第でございます。
 さらに、委員会におきましては、本案の議決後、日本社会党井手以誠君より、本案審議の過程中の論議にかんがみ、次の附帯決議が提出され、これまた全会一致可決せられました。
 右決議を朗読いたします。
  政府は、簡易生命保険及び郵便年金の積立金の運用に当つては、左の各項の実施に努むべきである。
 一、積立金の運用については、地方還元の趣旨を充分に徹底すること。
 二、郵便局舎の建設を図るため、来年度以降、毎年度積立金運用総額の百分の三を下らない金額を国に対して貸付けること。右決議する。以上でございます。
 これをもって私の報告を終ります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長内海安吉君。
  [内海安吉君登壇〕
○内海安吉君 ただいま議題となりました公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 わが国の公共土木施設は毎年の災害により甚大な被害を受けておるので、今回これらの施設に関する災害復旧事業を特に推進するために、連年災害をこうむる地方公共団体の災害復旧事業費に対する国庫負担率を高めるとともに、緊要な災害復旧事業に対する国庫負担金の交付につき、政府の財政上の措置に関する規定を整備せんとするものであります。
 すなわち、第一には、連年にわたり相当の災害が発生した場合には、その復旧につき地方公共団体の財政が著しく圧迫を受けるため、国庫負担率を高めることが妥当であると考えられますので、従来の制度の特例として、連年災害に対しては特別な国庫負担率算定に関する制度を恒久的に確立することといたしたのであります。第二には、現在災害復旧事業に関する国の予算措置については、単年度予算制度をとっているとはいうものの、実質的には継続費と同様の考慮のもとにこれを行う必要があるものと考えまして、緊要な災害復旧事業として政令で定めるものにつきましては、政府は、これらの事業が三カ年以内に完了できるよう、財政の許す範囲内において、国庫負担金の交付につき必要な措置を講ずる旨を法文化したこと。以上であります。
 本法案は、去る七月六日本委員会に付託せられて以来、数回にわたり審査をしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
 かくて、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
 次に、西村力弥君より次のごとき附帯決議案が提出され、採決の結果、全会一致をもって本法案の附帯決議とすべきものと決定した次第であります。
 附帯決議は次の通りであります。
    附帯決議
 一、政府は、本法第八条の二に指定する緊要なもの以外の災害復旧事業については、これを四ケ年以内に完了するよう必要な措置を講ずること。
 一、政府は、過年度災害の復旧については、本法第八条の二の趣旨に基き、緊要なものと認めるものについては二ケ年以内、その他のものについては三ケ年以内に処置すべく必要な措置を講ずること。
 一、政府は、一ケ所の工事費十五万円以下の小規模災害復旧事業については、地方財政窮乏の実情にかんがみ、適当な措置を講じて、その促進をはかること。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十九分散会