第024回国会 地方行政委員会 第39号
昭和三十一年四月二十日(金曜日)
    午後一時四十五分開議
 出席委員
   委員長 大矢 省三君
   理事 亀山 孝一君 理事 鈴木 直人君
   理事 永田 亮一君 理事 吉田 重延君
   理事 北山 愛郎君 理事 中井徳次郎君
      唐澤 俊樹君    川崎末五郎君
      木崎 茂男君    纐纈 彌三君
      渡海元三郎君    徳田與吉郎君
      灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君
      堀内 一雄君    山崎  巖君
     茜ケ久保重光君    加賀田 進君
      川村 継義君    五島 虎雄君
      櫻井 奎夫君    門司  亮君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 大麻 唯男君
 出席政府委員
        警察庁長官   石井 榮三君
        警  視  長
        (警察庁警務部
        長)      荻野 隆司君
        警  視  長
        (警察庁刑事部
        長)      中川 董治君
        警  視  長
        (警察庁警備部
        長)      山口 喜雄君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (警視総監)  江口見登留君
        参  考  人
        (横浜市戸塚警
        察署長)    沢田  茂君
        専  門  員 円地与四松君
    ―――――――――――――
四月二十日
 委員原彪君辞任につき、その補欠として茜ヶ久
 保重光君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 警察に関する件
    ―――――――――――――
○亀山委員長代理 それではこれから会議を開きます。
 委員長が所用のためお見えになりませんので、理事の私が委員長の職務を行います。
 警察に関する件について調査を進めます。お諮りいたします。本件の調査について、警視総監江口見登留君及び沢田神奈川県戸塚警察署長の両君を参考人とし、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○亀山委員長代理 御異議がなければさよう取り計らいます。
 それでは本件について発言の申し出がございますので、順次これを許します。門司亮君。
○門司委員 まず最初に聞いておきたいと思いますことは、最近における警察の動向であります。たとえば四月になってからの問題を一応見てみましても、御承知のように四月の三日に起っておりまする事件、これは四月の初めでありまするが、いわゆる警視庁の予備隊の神奈川県における乱闘事件があります。さらに十八日の新聞を見てみますると、これも福島県における日共の事務所の裏壁の中に、マイクが取りつけてあったというような問題が出ております。それから同じ日でありますが、これは東京都の戸塚署管内で起つた問題でして、いわゆる警察官の現行犯を見のがしたということが、大きく新聞に報道されております。さらに京都における自供の強要事件は、四月の十四日に報道されている。また東京におきましても、警察官の被疑者の妻に対する無実の証言と、さらに暴行事件が、同じ四月の十五日に報道されております。同じ四月の十五日には、これも警視庁管内でありますが、八丈島における拷問による偽わりの自供が報道されております。十二日の大阪、京都における警察の事件に関する問題、こういうようにずっと考えて参りますと――今申し上げました大阪における問題は、これは検察庁関係の事件かとも思いますが、いずれにいたしましても、警察の下調べのあったことは事実であります。こういうことをずっと考えて参りますと、今月になってこういうものが大きく報道されている。以前にも、たとえば鳥取県における日共の、いわゆる日本共産党の活動に対する警察の関与というようなことが問題になったことがございます。私どもはこれらの問題を考えて参りますと、何か非常に大きな不安を感ずるのであります。それは一方において警察の行き過ぎ、あるいは警察の不手ぎわ等は、全体の治安関係から見て参りますならば、非常に大きな問題を起してくると私は思う。いわゆる警察が国民の信頼を得た警察でなくて、権力による警察のような感じが出て参ります。そういたして参りますと、警察と国民の心理というものはだんだん離れてきて、警察に対する信頼感は非常に薄くなってくる。権力の前には屈するが、反面警察を侮べつするという考え方が出て参ります。この思想、ちょうど戦前におけるあのおそろしい警察として国民から非難を受けておったときと全く同じような現象が出て参りますならば、犯罪検挙あるいは犯罪防止に対する国民の協力というものが全くなくなり、警察にはなるたけものを言わぬように、警察にはさわるなという態度が出てきて、国民と遊離した形になってくる。国民から警察が遊離すればするほど、権力の行使が行われるであろうことは当然であります。いわゆる協力でなくて、今度は権力によってものを始末していこうという考え方が出てくる。これは当然非民主的な行為になることはきまっておる。こういうことを考えて参りますと、今日の警察制度の中のどこかに大きな欠陥があるのではないか。私がこう申し上げておりますのは、最近におけるこういう事実を新聞紙を通じて見て参りますと、ことさらにそういう感じを大きくするのでありまして、これがかつての自治体警察のような形で、直接住民の警察として警察が守られておる時期には、私はこういうことはなかったと思う。また少かったと思う。ところが警察の今日の制度というものが住民の手から離れて、名ばかりの自治体警察という形になって、実際はかつての天皇制のもとにおける警察と同じような国家警察になってきた。ここに誤まった権力意識というものが非常に強く出てきたのではないかという心配を私は持つのでございます。大臣に最初にお聞きしておきたいと思いますことはこのことであります。権力意欲によってものを処理しようという警察の方針なのか。あるいは警察はあくまでも住民の協力を得て、そうして民主的の警察に育て上げようとしておるのか。警察制度が変ったからだということは少し言い過ぎかもしれませんけれども、われわれが考えてみますと、そういう気がするのであります。これがもし民衆の中で育ち、民衆の中にある警察なら、こういうことは容易に行われるものではない。権力を持っているという誤まった権力意識というものが、こういう方向に向けていくのではないかと私は思う。だといたしますと、今日の警察制度の中に、一つの大きな批判をしなければならないものが出て参ります。このことについて、大臣は国家公安委員長として、警察官に対する教養方針を、どういうふうにお立てになっておるか、この際はっきり承わっておきたいと思うのでございます。
○大麻国務大臣 ただいまの門司さんの御意見つつしんで拝聴いたしましたが、全く御同感であります。警察がそんなふうになっては一大事であると思うのでございます。あくまでも警察は民主警察で、そうして国民から信頼されるものでなくてはならない、かように考えております。そうして今の日本の警察制度は、御承知のように公安委員制度をもって立っておるのではございますが、その大きな特色は、あるいは時の政府とか政党とか、そういうもののための警察ではなくして、また一部の人のための警察ではなくして、国民全体のための警察でなくてはならない。それだから、戦前にありましたような時によってあるいは見方によっては政党の私有物のごとく、あるいは政府の私有物のごとく――というのも極端でございましょうけれども、そういうような弊に陥ることのないようにそれを排除するということが、公安委員制度の一つの大きな目的だ、かように考えます。それらの弊害が起らないように、国民の全体の警察に育て上げるということが最大眼目である、かように考えております。それで私おそれますのは、そういう警察を私有物視する勢力を排除するという方に非常に力を注いでおりますけれども、また一面それだけがあまり行きますと、警察が独善に陥るおそれはないか、ひょっとすると、そこに弊害がまた起りはせぬかといって、前国会のときも申し上げたことがございますが、今度は警察自体にも大いに自粛をさせまして、そうして独善に陥らないようにしなくてはならぬということは国会でも申し上げましたが、また警察首脳部の会同にもいつも申し上げておるのでございます。あくまでも警察は厳正公平に、そうして民主的で国民に親しまれる警察でなくてはならぬ、そういうふうに育て上げなくてはならぬ、かように考えておるわけでございまして、門司委員の仰せになったと同じような考えを持っておるということだけを、ここに申し上げておきます。
○門司委員 今の大臣の御答弁でございますが、ただ考え方だけでございまして、実際にどういう教養が施されておるかということの内容は、はっきりいたさないのでございます。従って私は以下新聞紙が報道いたしております内容に基いて、一応聞いておきたいと思うのでございます。
 ここにごらんの通り切り抜いておりますが、いずれも三段抜きから五段抜きで、こんな大きな記事が日付からいえば、ほとんど毎日のように出てきております。こういう事件が一体どうして起るかということは、さっき申し上げましたように誤まった権力意識というものが、一面あるということについては、今大臣の御答弁のようなことが考えられるのでございますが、もう一つの面から、これは警察庁の長官に聞いておきたいと思いますが、教養の問題でございます。これを見て参りますと、この中にはそうした一つの誤まてる権力というようなものと離れて、内部の問題として現実にあるものは、いわゆるホシかせぎといわれる功名争いがもう一つ加わっていやしないかということであります。それが頼まれもしないこと、やらなくてもいいこと等が行われる原因ではないかということが、これらの記事をずっと一通り見渡すと見えるのであります。これはあとで真偽をはっきりしていただきたいと思いますが、たとえば福島県にあった日本共産党の事務所の壁の中にマイクを取りつけておったということはよけいなことです。だれも上司が命令したとは私は考えません。もし上司が命令したとすれば大きな問題です。ただやはり何らかのそうした情報を得たいという本人自身の功名争いではないかというように善意に解釈ができる。そうだとすれば、やはり問題の所在は教養いかんになければならない。それからその他の問題にいたしましても、自供を強要させるというようなこと、あるいは被疑者の妻に対する暴行事件、あるいは拷問事件というようなものも、単なる特権意識だけでなくして、警察内部におけるそういうホシかせぎというような問題が、ここまで追い込んでいるのではないか、こう考えて参りますと、戦前における警察と何ら変りがなくなる。これは非常に警察のおそろしいところでありまして、何かものをでっち上げて手柄を立てよう、そのことによって出世していこうという出世主義のものの考え方、これは役人にとって最も恐ろしいことだと私は思う。それが権力を持つからなお始末が悪い。権力を持たない役人、役所ならば、せいぜい点かせぎでごまをするというので済むかもしれませんが、警察官は権力を持っておりますから、そういう心理が動いて参りますと、迷惑するのは国民だ。こういう結果になってくると思う。従って警察の内部の教養の点について、点かせぎというようなことに重点を置かれて、今日警察の行政が行われておるのではないかという心配をわれわれはするのであります。この点に対する直接の責任者としての警察庁長官の御答弁を願っておきたい。
○石井政府委員 警察官の教養の重要なことにつきましては、私ども十分承知をいたしております。警察教養の目的としましては、ただ単に職業教育としての警察に関する専門的な知識、技術を授けるということだけに終ってはならないのでありまして、むしろそれに先立って警察官の一人々々がりっぱな紳士であらねばならない。りっぱな社会人でなければならぬ。りっぱな人格を持つ、ゆたかな良識と知性を持って、国民から真に親しまれ、信頼されるそういう警察官でなければならない。こういう観点に立ちまして、警察教養におきましては、ただ単に専門的な職務執行のために必要な知識、技能というものを授けることなく、りっぱな社会人として、紳士たる教養ということに重点を置いて教養いたしておるのであります。特に法の執行に当りまして、民主主義の基調である人権尊重に対する深い認識に立って、先ほど御指摘のありましたような思い上った権力警察的意識を一掃することに努めます。国民に接する態度等につきましても、懇切丁寧にいたすようにということを絶えず繰り返し強調し、指導をいたしておるのでございます。何分教養というものは簡単にきょう教えたからといって、翌日直ちに効果が上るといったようなものではないのでありまして、教養の性質、性格そのものをじみちに努力を積み重ねて、それに時間をかけて初めて効果が発生するものであるという性質のものであります関係もありまして、今日まで私ども多年にわたり、いわゆる民主警察官の育成教育に努力をいたして参りましたけれども、まだそれが完全に理想的な実を結ぶまでに至っておらない。現に漸次改善向上されつつある段階にあると思うのでありまして、そのために全国各地を一々しらみつぶしに探しますと、一部にはまだそうした教養が十分身についておらないために、日常の執行務の上において行き過ぎがあり、あるいはへまをやるといったようなことになりまして、新聞紙上等で御批判をいただく。また皆様方からこういう席上で御批判をいただくという材料を、いまだに提供をしておるというのが偽わらざる現実の姿でございますが、今後とも教養の点につきましては、一そう私ども力を入れまして、できるだけ近い将来りっぱな理想的な警察の姿が具現するように、この上とも努力して参りたいと思っておるのであります。特に捜査につきまして、先ほどホシかせぎ、功名争いのために、往々にして失敗をし、問題を起すのではないかという御指摘があったのでありますが、その点につきましても、私ども捜査の適正化、合理化ということを特に機会あるごとに強調をいたしておるのであります。科学的な合理的な捜査方式によりまして真実を発見する、こういう捜査方式であらねばならぬ。従来往々にしまして、昔のやり方はいわゆる勘による捜査、見込み捜査、本人の自白偏重、こういった捜査の方式をとったために、ややもすると見込み違い、そこに人権を侵害する誤逮捕問題、こういう結果を招来しておったのであります。そうした旧式のやり万を一擲しまして、先ほど申しましたように科学的捜査方式、合理的適正化ということに私ども重点を置いて指導、教養を加えておるのであります。そのために科学施設等の拡充整備等と相待ちまして、警察の捜査のやり方も旧来のものを一擲しまして合理的、科学的の捜査方式に完全に切りかわるというふうに、一日も早く実現したいものと思いまして、機会あるごとに指導、教養を加えておる次第でございます。決して検挙成績を上げるために手段を選ばずといったようなことを放任はいたしておらないのであります。むしろ捜査の適正化、合理化のために一時検挙成績は下っても一向差しつかえない、どこまでも理想的な捜査のあり方というものを、この辺で打ち立てるように努力をしてもらいたいということを、少くとも私は本年初頭において、これをことしの重点努力目標にしてもらいたいということで、部内の部下職員に訓示をしたような次第でもございます。今後こうした方向に努力を積み重ねて参ります、一日もすみやかにりっはな警察を育成したい、かように考えておる次第であります。
○門司委員 きわめて抽象的な答弁でございまして、私は今の答弁自体を満足するわけには参りませんし、もしそういう警察庁の方針があるなら、今日ここに今申し上げましたような事件が、これだけ大きな活字で世間に報道されることはないと、実は私は考えております。従って警察内部における行政上の問題として、私は当然さっき申し上げましたようなことが今日行われておるということは、この際隠れもない一つの事実だと言わざるを得ないのである。科学捜査と言っておりますが、科学捜査に対するいろいろな問題はあるかと思います。もとより警察官も神様ではございませんので、ある程度の誤まりもあるでございましょう。また間違いもあるでございましょう。その点を私も責めるわけではございません。問題はここにも一つある。無理だ、これは違うと考えた場合には警察が即時にこれの捜査の変更をする、あるいは無理をしない、無理をさせないということが、これは点かせぎで非常に私は問題になっていると思う。捕えてきてみたところが、それは違っておるといってこれを放すということは、なんだか自分の失敗を公けにするような気がする。従って事件はどうしてもでっち上げなければならないという心理が、この際非常に動いているのではないか。ここに書いておりますのは、一一新聞の報道だけを読んでもよろしゅうございますが、非常に問題になっている事実は実際なかったといっている、事実がなくてそのまま済んでいる事件である。それを強要し、自白をさせるために非常に大きな無理をしている。科学的に捜査ができ、捜査することが完全に行われておるならば、こういう無理はないはずである。やはりここにも今の警察庁の長官の御答弁とは少し違う問題が出てきたのじゃないかというように考えられるのであります。しかしこのことを長く申し上げておりましても、おそらく私は水かけ論になるかというよりも、むしろ抽象的の答弁だけで終るかと思いますが、もう一つつっ込んで聞いておきたいと思いますことは、こういう事件のあった、たとえば四月十五日に日経が報道をいたしておりまする問題についての被疑者、これは窃盗の被疑者と思いまするが、窃盗の被疑者に対する赤羽警察の取調べ等を見て参りますと、ほとんど取調べ自体というものが、もし新聞に書いてある通りだとすれば、われわれの想像し得ないめちゃくちゃなことをやっておる。そうしてこの問題に対して警察側はどういう態度をとっておるかということが最後に書いてありますので、ここだけを一応読んでみますと、人権侵害であるとして山本東京法務局人権擁護部長は「最近警察官の人権じゅうりん事件は、人目にふれぬところで行われる傾向がある。いわば巧妙になって来たといえる。この事件もほかに人のいない小さな部屋で行われており、最近の傾向の一例だと思う。」こう述べておるのであります。そういう人権侵害が非常に巧妙になったというようなことは、取調べの上における一つの手段、方法として行われておることであって、これが教養でないと私は言えないと思う。おそらくそういう方針だと考える。たとするならば、これは非常に大きな問題です。だから警察はこういう取調べを昔の警察署と違った形の上に最近は取調べができるように、警察の内部の改造が行われておりますが、当局側はこういった手段と方法というものが――警察庁の長官として、そういう教養をしていますという答弁は、この際得られないと思いますが、一体こういうことをよろしいとお考えになっているかどうかということであります。これをもう一度聞いておきたいと思います。
○石井政府委員 先ほど申し上げましたことを繰り返すことは省略いたしますが、要するに、あくまで人権尊重を基本的理念とした上で、真実の発見に努めるというのが捜査のあり方でなければならぬというふうに私どもは考え、そういう教養をいたしておるのであります。現在その教養が十分末端まで浸透いたしておりますならば、御指摘のようなへまといいますか行き過ぎといいますか、人権侵害の事犯というようなものはなくなるわけでありますが、まだ教養が十分末端まで浸透していない、今浸透しつつあるという過程であるというふうに申し上げたのであります。従いまして、いろいろ新聞等で取り上げられる問題、またただいま御指摘のような問題は絶無であるとは申し上げないのであります。遺憾ながらそうした不祥事が全国的に若干あるということは、私認めざるを得ないのであります。今後そうしたことが一日も早くなくなるように理想的な警察のあり方、捜査のあり方というものを確立いたしたいというので、現に私どもは努力中であるというふうに、先ほど申し上げたのであります。上手に人権侵害をやれというようなことを教養するなどということは、絶対にあり得ないのであります。あくまで人権の尊重ということを基本的理念として真実の発見に努める、そのためにはいわゆる捜査のやり方を合理化し科学化しなければならぬ、こういう見地に立って必要なる指導教養をいたしておる、こういう状況でありますので御了承願いたいと思います。
○門司委員 一応の御答弁がありましたが、さらに突き進んでこの事件だけを申し上げて、お聞きしてもらいたいと思いますことは、こういう事件があったについての警察側の反省の態度であります。これはさっき申し上げましたような警察官の思い上った、いわゆる権力というものに、ものをいわせようとする考え方が明らかに出てきておる。どういうことを言っておるかというと、赤羽の署長の話では、前段は別といたしまして、最後に「本人も取調べに少しまずかった点があったことは反省しているので、古い事件をいまさら採上げなくてもいいんじゃないか。」こう書いてある。何ら反省の色は見えておりません。やったことが何が悪いんだ、古い事件を今ごろ持ち出さなくてもいいじゃないかと言っている。これは人権擁護部長の警視庁に対する告発といいますか警告といいますかについての考え方であります。この事件の調査は、すでに警視庁の人事課と人権擁護部にまかしてあるということが最後に書いてありますので、この事件は警視庁の方がよく御存じだと思います。警視庁の警務部付の末次警視ですか、当時の神田の署長と書いてありますが、この一人の話では、こういうことに結末がつけてある。従って私は警視庁に問題が移っておると思います。しかし問題は、署長が言っておりますように、古い事件だから今ごろ持ち出さなくてもいいじゃないかということ、自分たちの犯した、人権を侵害したその罪を問われることを、そんな古い事件を今ごろ持ち出さなくてもいいじゃないかという思想が取締り警察官にあるのですよ。犯罪事件に対しては、古かろうと新しかろうと検挙はするでしょう、そうして警察として処分をするでしょう。ところが自分たちの間違いは、そんな古いことを今ごろ言わなくてもいいじゃないかという理屈が、一体どこに成り立つかということです。こういうものの見方、こういうものの考え方というものが、警察官のあやまちがなくならない一つの原因だと私は思います。こういう点もやはり教養の内部だと思いまするが、一体警察としてはどういう処置をとられておるのか、もし処置をとられておるということがあるならば、その点を一つこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
○江口参考人 ただいま新聞をお読みになって御指摘の、赤羽署におきまする被疑者の妻か何かの取調べに当りまして、多少過酷にわたったことがあるというような事件で、人権擁護部に訴えられておるという問題でございまするが、私本日ここに詳しい資料を実は持って参りませんでしたけれども、私の記憶しておりまする範囲内でお答えを申し上げまして、それで足りません点は、また詳細に後ほど御説明いたしたいと思います。
 事件は昨年の事件だったかと思います。その取調べに当りました取調室が、非常に狭い部屋であったということは事実のようでございます。従ってそこで何が行われたか、はたから想像ができない。だから疑えば疑えるのじゃないかという部屋で取調べをしたということが、また一つの非難さるべき点ではないかと思うのであります。それからその婦人のからだに手をかけた。それで婦人がよろめいてテーブルの端でからだを打って、それからすぐ病院に行ったというようなことだったと覚えておりますが、その診察の結果は、常日ごろから非常に病弱な婦人であったようでございますし、打ちどころがからだにこたえたために、その後相当休養を要する事態になったというように私は聞いております。それから当該取調べに当りました警察官は、処分はたしかよそえ転勤さしたというふうに覚えておりまするが、やはり上司としましてもその処置必ずしも適当であったとは認めていないのでございます。やはり本人に帰すべき責任は追及しなければならないという意味で、責任をとらせる意味で勤務署をかえたように覚えております。それから人権擁護部の方からはたしか特に本人に対する処分は警視庁にまかせるといったような回答が来ておったのじゃないかと思います。
 以上私の記憶で申し上げたのでありますけれども、なお詳細は後ほどまた御説明いたしたいと思います。
○北山委員 今の御答弁に関連するのですが、警官が取調べに当って婦人のからだにさわったところが、よろめいてどこか机のかどでけがをしたというような非常にデリケートな表現が、ほかにもあったと思うのですけれども、この際お伺いしておきたいのは、先ほど門司さんのお尋ねにもたしかあったと思いますが、ことしの一月の十一日に井之頭公園において、警官が高等学校の生徒に拳銃の暴発でもって重傷を負わした事件があるのです。ところがその当時の新聞発表では、これは魚をとりにきておった学生がおって、それをとめようとしたところがその警官に抵抗してきて、手錠を奪われ、警棒を取られ、ピストルまで取られるような状態になってきた。そこでそれを押えようとしたところが、片一方に持っておったピストルが暴発をしてけがをした。こういうように初めは言っておるのです。ところがそのあと、たしか二月に入ってから、関係の署長以下が処分を受けている。もしも初め伝えられておるように、警察側においては公務執行に対する妨害であったから正当防衛であるといったような、新聞に伝えるような理由であったならば、何も落度がなかったわけでありまして、処分する必要もなかったんじゃないか、こう思うのです。この事件などは私も非常にデリケートな、同様の種類の内容を持っておるんじゃないかというふうに思いますので、一つこの事件の内容もあわせてお伺いしておきたいのです。
 どうもこういう事件を通じて考えられるのは、警官の間違った職務の執行なり、権力の乱用というようなことについて、警察の部内がこれをかばうということです。隠し合う。そうすれば外部から何ともしようがないんです。そういうような大きな警察機構というものが、相互に同僚なり下僚をかばい合って、その処分も適正にやらないということであるならば、これは大きな権力を持っておる組織として、しかも国民の生活、財産を守るという任務を持っておる機構として、そういう仕組みは非常に危険だと私は考えておるのです。実際これはそういうふうな格好に、ある程度なっているんじゃないかと思うので、そういう疑いから、今申し上げた事件について一つ概要をお話し願いたい。
○江口参考人 井之頭の事件について一時新聞で伝えられましたこと、並びにその結果等について申し上げます。最初新聞に報ぜられました記事は、大体署長の意見と申しますか、署長が事実はこうであったんだというようなことを記者に話しておるのです。その新聞記者は署長の言うことを信頼して記事として書いたわけでありますし、警視庁に対する報告といたしましても、署長が自分で調べた結果を直ちに報告してくるわけでございます。当初は署長の調べた結果が事実であろうというふうに考えておったのでありまするが、しかし直接上司の者の言うことだけを信頼して、警察の運営をやるということは危険を伴いまするので、その上に方面本部というものがありまして、それが監察をやることになっております。その方面本部に命じまして、真相を監察しろと申しまして、監察させましたところが、最初当該巡査が署に行って、あるいは署長に対して報告した事実と食い違う点が出てきたわけであります。それで警視庁といたしましては、この方面本部長の報告を重視いたしまして、その点からさらに詳細に再調査をいたしましたところ、どうも巡査の説明の仕方、あるいは記憶に誤まりがあったのか、正当防衛ではなくて、多少過剰な行為があったように認められましたので、直ちにそのことは訂正記事と申しますかそういうような意味で新聞社等にも流しまするし、結局その署長につきましても責任をとってもらいまして、たしか先般の三月の異動ではやめていると思いますが、そういうふうに責任を違った形で追及して、その責任を明らかにするつもりでございまして、当該巡査につきましても、ちょっと今記憶しておりませんが、何らかの懲戒処分を行なったように記憶しております。真相はそういう点でございます。
○北山委員 それは要するに初め署長が、そういうふうな実際に合わない発表をしたわけです。できるならばその程度で済ましたいと思って発表したに違いない。事実その通りであると思うならばそういう発表はできないのです。結局かばうためにそういう発表をしたのです。警察側には責任がないのだ、高校生の方が悪かったのだ、逆に警察官の方がなぐられて拳銃を取られそうになったから、撃つ気はなかったのだが、手に持っておった拳銃が暴発をしてけがをさしたんだ。しかし事実は逃げていく高校生をうしろから撃った、こういうようなことがあとの調べによって現われてきたので、どうしても隠し切れなくなって、そういう処分をせざるを得なくなった。事実はそうなんです。
 それで私お伺いしたいのは、そうなるとこれは刑事上の責任があると思うのです。単に転任だとか行政上の処分ぐらいでは済まないのではないかと思うのですが、その辺はどうなっておるのですか。それから被害者はどうなっておるのですか。うしろの方からたまが入って腹に抜けたというような重傷なんです。それはどうなっておりますか。どういうふうに解決しておりますか。
○江口参考人 本人のその後の負傷のなおり方ないし送検されましてその結果がどうなったかということについて、私調べてきておりませんので、調べた上で後ほどお答えを申し上げます。
 それから署長が部下の者をかばい過ぎるということでございますが、多少はそういう気分が働くことはやむを得ないのでございまして、一応事件の当初本人から聞いたことが事実であろうということで、それが新聞に報道されたのであります。しかし先ほども申しましたように、そういうことによってかえって真相がおおい隠されて核心からはずれるということは、警視庁の本意ではないのでございまして、最近におきましてはそういう事件が起った場合には、隠し立てをせずに、すべてありのままを報告するようにというような指示を十分にいたしておりますので、今後はそういう間違った事実が世間に流布されるようなことのないように注意をいたしていきたいと考えております。
○北山委員 これは正当防衛でもない、要するに職権の範囲を越えておる。そうすると警察官職務執行法の第七条に違背しているのですから、やはりそれに伴うところの刑事責任があると思うのです。これは事実いかんによりますけれども、そういうふうに不当な職務の執行であったということになれば、それは一般的にいえば、やはり刑事責任を伴うと考えますが、そういう場合には、いろいろ事情はあるかもしれませんが、不適当であるというならば、単なる転任とかあるいは戒告とか、そんなことじゃ済まされないと私は思うのです。公務員なるがゆえにその程度の処分で済ませるなら、これはむしろ職権の乱用を甘やかすもので、やはり厳重にやらなければならぬと思うのですが、このケースはお調べの上でお伺いすることにいたしますが、一般的にいえば刑事責任を伴うと思うのですがどうですか。
○江口参考人 たしか今お話ししましたように送検されたと思っております。その結果については調べた上で後ほどお答えしたいと思います。
○北山委員 それからもう一つ、門司さんのお話の中にもありました、福島市の日本共産党の事務所の壁の中にマイクを突っ込んで、それから線を引っぱって、近所のあるうちの物置でもって聴取をするようなしかけをしておったということ、この事件については警察庁としてはお調べになっておるかどうか、お伺いをしたい。
○石井政府委員 私ども新聞によりまして、初めそういう事実があるのではないかという疑いを持ちまして、さっそく福島県警察本部の方に照会をいたしたのであります。その結果によりますと、そういう該当の事実なしという報告に接しておるのでございます。
○北山委員 該当の事実なしというのは、壁の中にそういう装置がしてなかったというわけですか。事実はあったが、ただ警察は関係がない、こういうわけですか。
○石井政府委員 私の言葉が足りないで申しわけありませんでしたが、警察は関係しておらないという回答であったのであります。そういった施設が、新聞に報道されたように、あったということは事実でございますが、それには警察は何ら関係しておるのではない、こういう回答であります。
○北山委員 しかしかりに、警察が関係あるかないかは別としても、その壁の中にそういうふうな録音機のマイクを置いて、そうして他人の秘密というか、そういうものを聴取しようというような行為は、だれがやろうとも、やはり一種の犯罪の疑いがあると私は考える。従って警察としては、これは捜査をすべきものじゃないかと思うのですが、どうです。警察が関係がないと言って済ませるものですか。
○石井(榮)政府委員 その件につきましては、警察といたしましても、さっそく捜査を開始いたしております。
○北山委員 これは私どもから言えば、警察が関係があるという疑いが十分あるのです。なぜならば、これは新聞の伝えるところでありますが、その隣りのうちのおかみさんが、警察官が来て、そして物置に行ったということを言っている。その物置の中にそれを引き込んで聞く装置があるわけなんですから、そういうふうなことから言っても、警察が関係のある疑いがある。私どもから言えばそうなんです。あなたの方では、そういうことはないと頭からきめ込んである。このきめ込んでおるというところに、私どもは疑いを持つのです。従って警察のやることであれば、もうそれが違法の疑いがあっても、一つも捜査されないのじゃないかというような疑いが、こういうところにも現われておるのです。事は小さいようですけれども、重大なものを含んでいるのです。だからこれはよく調べて、その結果を一つお伺いしたいと思うのですが、こういうふうな例によってわかる通り、どうも警察が警察部内のことをかばう。
 私こういう例を知っています。実は私の郷里のある警察の中で起ったことですが、ある男が放火の被疑事件でもって現在裁判にかかっております。もう数年になりますが、その本人の申し立てによれば、拷問によって自白をさせられた。これは一審も二審も有罪で最高裁に来たのです。ところが最高裁においては、これはいわゆる自由な自白であるということを裏づけるには足らないというようなことで、今また仙台の高等裁判所に戻っている事件があるのです。私、第三者として考えて、その事件の内容を聞いた場合に、どう考えてもおかしい。そしてその警察に対して、同じ時期にその他数名の者から、拷問を受けたという訴えが、盛岡の人権擁護局に出されておる。ところが現在の人権擁護局の方では、無力なものですから警察部内の捜査ができないのです。何ともいたし方ない。そこでこういうはっきり有罪であると客観的に断定ができない人たちが、どんどん裁判が進んでいって、無実の罪に服してしまう、警察の部内には手が及ばないというようなケースを私は知っている。ほかにもあります。そういうことを考えますと、警察の部内では、そういう犯罪の捜査をする部内でもって、お互いに悪いことは隠し合うということでは、これはもう警察は信頼に値いしない、こういうことになると思う。ですから、門司さんの質問に関連をいたしまして、今井之頭公園の問題、それから福島市の問題、こういうことについて、もう少し詳しい、われわれを信頼、納得させるような調査をされて、報告をしてもらいたい。
 それから同時に、この前の委員会で、岩手県の小繋の部落に対する警察の捜査のやり方について調査をお願いしておりましたが、これがもしわかっておりますならば、お示し願いたい。警察の関係でなおございますが、関連質問でありますから、一応私これで終ります。
○石井政府委員 警察が部内の不始末をお互いにかばい合う、いわゆるくさいものにふたをする、あるいは部下の非行を上司がかばうといったようなことは、今まで絶無であったとは申しません。今までそういう傾向のあったことは認めますが、そういうことであってはならないのであります。あやまちを改むるにはばかることなく、お互い人間でありますから、ときには間違いをしでかすこともありますので、そうしたものは率直に悪かったことを認め、今後反省の材料にするということでなければならぬと思うのでありまして、日ごろそういうふうに指導いたしておるつもりであります。今まで過去においては、そういう意味合いから多少批判のある問題等もありましたが、今後そういうことのなくなるように努めて参りたい、かように考えております。なお先般御指摘がありました岩手県の問題についてのその後の調査の状況につきましては、他の政府委員から答弁いたさせます。
○山口(善)政府委員 ただいまここに資料を持ち合せておりませんが、あの事件は御承知のように、明治維新前後から懸案になっておる山の入会権の問題に関連をしております。数十年にわたって訴訟が行われておりまして、そこには一応入会はできない、採取ができないように裁判所の判決が出ておったのであります。にもかかわりませず、一部の人が村の人を扇動しまして、樹木を伐採させた事件であったと思います。警察といたしましては、そういう問題につきまして慎重な態度で臨んだのでありますが、何分にも一部の者が非常に扇動しまして、それを強行させたという疑いが非常に濃厚であったわけであります。そこでやむを得ず検挙をいたしたのであります。この事件につきまして私どもとしましては、そういう人々が特定の政党に属しておるがゆえに手をつけたということは絶対にないのであります。ただいま申し上げましたような事情が明らかになりましたので、これは地方的に非常に大きな問題になっておった入会の紛争でありましたが、その問題に関連をして、やむを得ず検挙をいたした。検挙の際には、これは関係者が多数おられましたので、払暁に一斉に強制捜査を始めたのであります。その捜査に当りましては、警察といたしましては、できるだけ慎重な配慮をもって臨んだつもりでございます。なおただいま資料を持ち合せておりませんので、不十分かと思いますが、また後ほど機会を得てお答えを申し上げます。
○北山委員 大体そのお話のような経過だと思いますが、扇動という点もあるいはあったかもしれぬ。しかしその部落の人たちは、扇動されなくても盗伐はするのです。これはもともとその部落の山だったのですから……。それがいろいろな明治以来の法律によって、その山が使えなくなった。これは理屈、道理に合わないというようなことと、それから一方、この山の木を切らなければ生活がなり立たぬのです。だから生きるため、生活のためにはやはり山の木を切るのです。ですからこれはだれが扇動しようとしまいとやっておった。前にも何かよほど前に盗伐があってその事件もあるわけなんで、必ずしも扇動がなければそういう事件は起らぬというわけじゃないと思うのです。扇動の結果じゃない。生活問題なんです。だからこそ世間ではその部落の人たちに同情しておるのです。その山を部落の人たちがある程度利用することが妥当であると普通の人は考えておる。そこでむしろそういうある政党の人たちが扇動したというけれども、だれも援助する者がなければ、そういう政党の人が援助をしてくれれば、やはりそれを力強く考えるというようなことだけであって、扇動によってだけそういう事態が起きたのじゃない。そういうふうな点は違うと思うのです。
 それからもう一つ私が申したいのは、初めから、たかが盗伐事件ですから、しかも五、六人のものを検挙すればいいのですから、それを検挙するのに四十戸の部落に対してジープその他を動員して、百数十名の警察官を動員して、これを襲撃するような格好でやるという形が私は適当じゃない、こういう点をお伺いしておったのであります。やはり盗伐事件でありますから、その被疑者を呼び出すなり何なり、次善の手段をとるべきである。私が警察本部長に聞いたところが、そういう手段をとらなかったという。突如として寝込みを襲ったような格好で、まるで軍隊がどこか敵国の部落を襲撃するような格好で、警察官が行くというやり方は適当でないし、無用に刺激をするし、世論を警察の味方につけるゆえんでもないのじゃないか、このやり方は適当でないのじゃないか、こういうふうに考えたのでお伺いしたわけなんですが、その点についてはどうなんです。
○山口(善)政府委員 お話のように実際上盗伐のようなことが行われて、それが大目に見られておった事例は、過去においてあったようであります。ただ今回の問題は、そういうことはいけないということをはっきり明示して、紛争の起らないようにしばしば注意もしてあるにかかわらず、いや、差しつかえないのだということで扇動された点に問題がある。従って警察としても、多年のそういう民事上の紛争がある問題にあまり介入したくもなかったのですが、事態があまりにも明らかにそういうようになりましたので、やむを得ず手をつけたという事情にあったのです。
 それから検挙のときの問題ですが、これは百数十人というお話でございましたが、現場に参りましたのはさような多数のものではないわけです。ただ、多数の村民が関係をしておりますので、万一の場合を考えまして、多少私服その他の予備隊をある個所に目につかないように配置はしておった、かように思っております。
○中井委員 私は一、二の点につきまして国務大臣それから石井さんなどにお尋ねをしたいのであります。先ほど門司委員の御質問に対しまして、大麻大臣から、警察官は国民に信頼される警察官とならなければならぬ、大いに努力をしておるというお話でございましたが、現実は最近の状況を見ますると、例の有名な花見帰りの乱闘事件だとか、あるいはまた京都におきまして、先ほどからもいろいろとお話がありましたが、私が大きな問題と思いますのは、殺人事件の被疑者の取調べその他につきまして、映画でもって「真昼の暗黒」というのが出て、それを見て真犯人が自分で自首して出たというまでは、あとの四人のあまり素行のよくない青少年であったらしいのですが、そういう人が殺人罪に問われておった。これは目下検察庁の関係もありましょうけれども、第一次の取調べは警察、こういうことになって参りますと、特に相手が青少年であります限りにおいて、大臣のおっしゃるようなことと現実とはだいぶ隔たりがあるように私は思うのであります。そうして一番遺憾に思いますことは、とかくそういう事件がありましたときには、結末についてはあまり世間ではうわさになりません。まず事件が起ったときに大きく取り上げられる。その場合にはいつもこの両方でもって意見が違う。花見帰りの乱闘のときの翌日の毎日新聞を見てみますると、警視庁側の言い分は「手出しはしなかった」こうある。これは四月三日の毎日新聞の見出しであります。ところが三和自動車会社の方では、総務部長の宮田君というのが「先に殴られた」こういうふうに書いてあります。京都の事件等も拷問があったとかなかったとかいうことでありまして、このことは非常に重要だと思う。よく調べましてからと言いますが、その前にいつもこういうふうに土俵へ出てくると、一人は白だと言い、一人は黒だと言うというようなことでありまして、そうしてそれきりになってしまう。ここで私は思い起すのですが、二年前に警察法がこの国会で審議をされましたときに、現在の警察法は警察の組織法だ。そうしてもっと重要なことは警察官各自の行為と教養の問題である。従ってそういう面についての何か法制的なものがなければ、こういう警察法のようなものを幾ら作っても、現実にそれと直接の関係のあります国民にとってはあまり影響がない。非常に能率的にやるとか、経済的にとかおっしゃったけれども、現実に警察活動で一番重要な面は、現場の警察官と直結いたします、直接応待いたします国民だと思うのです。その間のことがちっとも改善されてないということになれば、幾ら組織を改めてもだめではないかということを、私は一昨年あの警察法改正のときに申し上げたわけであります。そのときには時の警察法担当の国務大臣の犬養さん、それから途中でかわりまして小坂さん、両方とも御意見まことにごもっともであるから、それについてはこの警察法が通ったならば、直接すぐに十分よく研究をいたしまして、私どもはそれに対して何らか法制的な措置をいたしましょうということでございました。私はそれは言いのがれであろうとかいうような皮肉は申しておりましたが、とにかくそういうことがなされるべきであるということについては、時の警察担当の政府の皆さんも一様にそういうふうに言うておられたのであります。これをもう少し詳しく言いますと、警察法の中で警察官の身分とか行為については第三条にあるだけでありまして、「この法律により警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓」をせよというのが一カ条あります。それから第五章に警察職員というのがありますけれども、これは警察官のたくさんの階級のことを書いたり、その管轄の区域を書いたりしてありますが、行為についてあるいは身分についてはあまりありません。それから第七章の雑則の中で恩給の関係についてあります。それだけでありまして、全く内容は組織法であります。そこで身分とか行為とかいうものについては、どうであるかということでありましたら、明治何年かのいろんなそういう規則のようなものがある、それによってやっておるというふうなことでありました。今日いろんな問題が起ります基本の面といたしまして、やはり基本的に先ほど石井さんからもお答えがあったが、教養について大いに努力をしておる、その努力もわれわれは認めます。何でもこのごろは高校卒業以上の人が非常に志望者が多くて、警察官採用試験なんかもなかなかむずかしいというふうなことでけっこうでありますが、私どもが実は言いたいことは、現在のこれから入ろうというふうな方よりも、何十年の間警察事務をやっておったというふうな人、戦前からの昔の警察のくせがついておる人、この人たちの考え方を改めるということが、私は一番必要だと思うのであります。それで非常に民主的な教育を受けてお入りになっても、二、三年の間に、先ほども北山君が言いました、これは上が下をかばうというふうなこと、ちょっと乱暴しても、君、それはいいんだ、おれにまかせておけというふうな形、こういう形で何か事件がありますと、おれの方は悪くないといってまず一発かましておいて、それからいろいろやるというような形、この三和自動車株式会社は相手がおまわりさんだった、これはいけないというので、和解か何かをあくる日に申し入れをしておるというようなことを読むと、私はどうも昔ながらの警察であって、教養を改めるというのはむしろ上の方の人たち、古いおまわりさんである、こういうふうに思うのであります。
 そこでこの花見帰りの乱闘事係の皆さんについては、警視総監においても何か適当な処置をなされたようであります。新聞で拝見をいたしましたが、こういうものを処置をなされる基本的な根拠法というものは、これは一体東京都の条例か何かであるのか、どういうものなんですか。こういうものについて、私は全般的な考え方について大麻さんの一つ御意見を伺いたい。幾ら教育をやっても教養がよくならぬし、またその身分、行為等について、これは何も私はおまわりさんのやったことを守るために、そういう法律を作れというのではございませんで、国民の固有の権利を守るために、おまわりさんの行為について、どうこうするというふうなこと、一方また何も警察官をいじめるために、そういうものを作るわけではありませんから、私は理想を言えば何と申しますか、これまで過去の警察官というのはいわゆる薄給に甘んじて、清廉潔白で行くんだ、こういうことで何十年やって参りました。しかし現実は人間は食わにやならぬのですから、そうなりますと、いなかのおまわりさんというのは月給が安いから、つい隣近所から、私はいつも言います、卵をもらったり野菜をもらったりしまして、それもこれまでは醇風美俗だと言われておったが、それは間違いである、そういうことはやはりボスとのつながりができる、情実因縁ができるのであるから、そういう待遇等については、これはやはりおまわりさんといえども、全然団結権もなしに、また組合の組織をするというふうなことも禁止されておるのですから、そういうものについては十分見てやれ。しかし行為については、国民との側においてはもっと新しい感覚でやれ、これはもう二年も前からやかましく言うておりますが、皆さんはこの警察法が通ったらそれでほっとされて、そのままほおってしまわれた。そこで古い警察官の人たちは――あなた方は違います。あなた方は上層部の方ですからよくおわかりですが、その途中におられる皆さんの中には、ああ警察は昔に返ったのだ、これでほっとしたというようなことで、また元に戻っちゃった。この間のギャップを埋めなければ、私は日本の警察はよくならぬというふうに思うのであります。こういう点について、一気に何もかも申したようでありますが、国務大臣の御意見、並びに長官、それから最後に、この間の花見帰りの事件を処分なさった、こういうものについての根拠、そういうものを伺っておきたい。これは警視総監から伺ってみたい、かように思います。
○大麻国務大臣 今のお話まことに傾聴すべきことでありまして、つつしんで承わりました。何しろ警察官も非常に大勢おりますので、最返に間違った行動をしてみたり、行き過ぎたことをやってみたりして、世間の指弾を受けるようなことが(「たくさんある」と呼ぶ者あり)たくさんではございません。間々出るということは、まことに遺憾と考えている。(「大臣の責任だぞ」と呼ぶ者あり)人が話しているうちにそうしかりつけられては話ができぬじゃありませんか。――そんなわけでございまして、まことにそれは遺憾千万に考えております。おりますけれども、大多数の警察官は決してそんなことはございません。また新しく採用する者については、厳選していることはけっこうだという仰せでございましたが、古くからおります警察官の再教育につきましても、十分注意いたしているつもりでございます。それでこの議場などで現われました皆さんの御意見はよく熟読翫味いたしまして、将来あやまちを再びしないように注意いたしたいつもりでございますから、それだけ申し上げておきます。
○石井政府委員 警察官の教養につきましては、先ほど門司委員の御質問の際にお答えした通りでございます。教養の重要性につきましては、私ども十分承知いたし、あらゆる方法あらゆる機会をとらえて繰り返しやっているのでございます。特に新しく採用する者のほか、現在働いている者のうちの古い者の教養が必要じゃないかという先ほどの御指摘でございますが、私どももまさしくそのように考えておりまして、現任警察官の再教養ということにつきましては、いろいろ工夫をこらしているのであります。巡査、巡査部長の再教養につきましては管区学校、警部補以上の上級警察官においては警察大学校において教養するというふうにいたしまして、できるだけ教養には努めているのでございますが、しかしそれでも決してまだ現在十分であるとは申し上げかねるのでございます。今後さらに教養につきましては一そう努力して参りたいと思います。
 なお先ほど申しました巡査、巡査部長の教養につきましては、管区学校のみならず、各府県の警察学校も、もちろんこれをやっているわけであります。ただ単にそうした学校教養のみならず、毎日の職場を利用しての一般教養、こういうことにつきましても、もとより配慮いたしているのでございまして、学校教養となりますれば、おのずから施設の関係等がありまして、時間的にも制限されまして、同一の人間が教養を受ける機会、時間というものはきわめて局限されますので、それのみに依存するわけには行きませんので、日常職場においての教養、仕事を通しての教養、こういうものにつきまして、できるだけ配慮をいたしておるつもりでございます。
○江口参考人 先般の紛争事件を起しました警察官一同に対しまする処分並びにその根拠を話せということでございますが第七予備隊長並びに副隊長、これは監督者としての責任を問うわけでございます。この隊長以下警視、警部、警部補、巡査部長、巡査という階級の者でございますが、警視以下は御承知の通り地方公務員でございまして、従いましてこれらに対しまするいわゆる懲戒処分は、地方公務員法の規定によって行われることになります。地方公務員法の二十九条に、職員がこれこれのことをした場合に、懲戒処分として戒告、減給、停職または免職の処分という四種類があるのでございます。今回の処分としましては、現場での監督者である中隊長及び小隊長、合せて四人に対して減給を行なっております。それから直接手出しをしたような巡査部長、巡査に対しましては、十五人を戒告にしております。そのほか現場にはもちろん行っておりませんが、監督責任者といたしまして、隊長には総監訓告ということをやっております。それから副隊長には警務部長訓告というのをやっております。訓告というのは地方公務員法には直接規定はございませんが、部内の扱いとしまして、戒告に至らざる程度の者については、その上司がこれに訓告を加えることができるという通達が、実は二十六年に出ております。それに基いてこの二人に対する訓告を行なったわけであります。なおこれらの統括指揮者は警視庁におまりす警備第一部長でありますが、これに対しましては私から十分注意するように言い渡しをしております。以上がその処分と根拠であります。
○中井委員 今の大麻さんの御答弁は、あまり事情もよく御存じないので、努力なさるという抽象的な御答弁であります。再教育の問題については警察大学その他各管区で学校のようなものがあるのでありますが、その教育の内容につきまして、できれば少し御説明をいただきたい。これは非常に時間もかかる問題でありましょうし、私どもも警察大学は一度よく見せてもらいたいと思っておりますが、どうも技術的な、末梢的なことばかり教えておるのじゃないかというふうな批判が実は非常に多いのであります。そのことを一つ申し上げておきたいと思います。
 それから例の処分の件でありますが、警察官の仕事は権力関係であります。従いまして他の地方公務員とおのずから格好が違っております。それが同じであるならば、何も警察法なんというものを作って、特に、国家公安委員会を置いてやろうという必要はないのであります。従ってそういう面から、直接国民と結びつきまして権力関係で行う警察業務でありますから、これに対する罰則だとかあるいは身分だとかいうものは、地方公務員法によってそのままやっていいものであるかどうか。さらにまた警察官の中には国家公務員もおられるわけであります。その間の区別はどうであろうか、こういう点について皆さんでこれまで御研究になったことがあるか、またこれでいいと考えておられるか、その点を一つ伺ってみたいと思います。
○石井政府委員 警察大学校や管区学校の教養は、どういうふうにやっておるかというお尋ねでございます。これは詳細に申し上げますと、ちょっと繁雑に過ぎますので、ごく大筋だけを申し上げます。またお尋ねでございますならば、ここに警務部長も参っておりますから申し上げさせてもよろしいと思います。警察大学校におきましては、府県の警部補で警部昇任試験に合格した者を、警部に昇任する前に、将来の上級幹部たるの教養を加えるために、警察大学校に入校せしめるのでありまして、期間は一カ年というのが普通でございます。ただし本人の家庭の事情あるいは年令等の関係、また現についておる職務の関係等から、一年間任地を離れて警察大学校に学ぶのが適当でない者のために短期コース――これは四カ月にいたしております。短期コースの教養も施しておるのであります。この二つのコースが警察大学校の主たる教養コースでございます。そのほかに警視、警部の現任者の再教養の道も開いておるのでありますが、これは警部補よりもさらに上級の幹部であるだけに、府県におきましてそれぞれ重要な地位についております。たとえば警視であるならば、府県の本部の課長あるいは署長というような地位にありますので、長期にわたって学校にこれを入校せしめておくということは、いろいろ仕事の上にも支障を来たしますので、これは短期講習の形、おおむね二週間あるいは三週間といった程度の短期間になっておるのであります。この上級者のこうした講習等におきましては、専門的な法律その他の知識等を今さら繰り返し教養する必要はないので、むしろ精神的な心がまえの問題、あるいは時事問題等の、重要な幹部として当然備えておらなければならぬ高度の常識を、中央において十分養わせてやるというふうに取り扱っておるのであります。先ほど申しました警部補の本科系統の一年間あるいは四カ月のコースにおきましては、これは決してただ単に警察実務に直結した知識、技術のみの教養に偏量することなく、先ほど門司委員の御質問に対してお答えもしましたように、むしろ警察官たる前にまずりっぱな社会人、紳士たる警察官でなければならぬということから、情操教育と申しますか人格の涵養と申しますか、知性豊かな常識豊かなる人間を作り上げるという観点に立っての教養を、十分に加えておるのであります。将来の上級幹部たるべき資格のある人間に、十分その地位についた場合にりっぱな上司として部下を指導統率できるようなふうに教養を加えておるのでございます。管区学校におきましても、やはり精神は同じでございます。これはまた下級の警察官でありますだけに、それに即応したレベルのものを教養するということになるわけでありまして、これまた決して仕事に直結した法令知識あるいは技術的訓練だけでなくして、警察官としての心がまえ、特に民主警察の理念に十分徹した警察官のしつけということに重点を置きまして、教養をいたしておるような次第であります。
○中井委員 今いろいろと御説明がありましたが、りっぱな紳士を作る、高度の常識の持ち主を作る、その通りであろうと思います。しかし残念ながら現実はそうでない者が非常に出て参りますので、私どもはお尋ねをしておるのであります。警察大学その他の教育について今概括的なお話があったが、かんじんの教育の科目はどんなものであるか、こういうことについてはお話がなかったようであります。これは非常にこまかく分れておるだろうと思いますから、どういう科目を教えておられるか、一週間何時間くらいであるかということを、これは警察大学、それから各管区の学校等について一つ資料を比していたたきたいと思います。
 それから先ほどお尋ね申し上げた身分について地方公務員法を使っているが、そのままでいいかどうか、この点についてのお答えがなかったようであります。国家公務員との関連もありまするし、この点は二年前の警察法の審議のときに大いに論じられた問題であります。懸案になっている問題でありまするが、この点についてのお答えはなかったようでありますから、一つ御答弁願いたいと思います。
○石井政府委員 先ほど警視総監からもお答えいたしましたように、警察官は、身分的には、警視正以上は国家公務員であり、警視以下は地方公務員ということになっておりますので、それぞれ国家公務員法あるいは地方公務員法によって身分的に規制を受けておるわけであります。懲戒処分等につきましても、地方公務員法の規定は国家公務員法の規定をそのまま援用しておるような状況でありますので、国家公務員であるから、あるいは地方公務員外あるからといってそこに懲戒処分上の差異というものはないわけでございます。なおそのほかに、警察官の職務の特質にかんがみまして、他の法令におきまして、警察官に対する身分についての規制等もしております。たとえば刑法の百九十四条、百九十五条というような規定があることは御承知の通りでございます。おおむねそうした現行法の規定によりまして警察官の身分が規制されるのではないか、かように考えております。
○中井委員 最後のところがはっきりしなかったが、私がお尋ねしたいのは、そういう他の法令にもあるものを一本にまとめて、警察官の身分についての特別立法というふうなことを考えておられるかどうか。それからさらに警察官の行為等について、そういうものをまとめてわかりやすいものを作られる必要があるのではないか、この二点について御答弁を願いたい。作る必要がないと今お考えになっておれば、それを政府の意見として承わっておきますが、どうですか。
○石井政府委員 きわめて重大な問題でございますので、ここで簡単に私言い切るだけの勇気がございません。いろいろ御意見の点も拝聴いたしまして、さらによく研究をして善処したい、かように考えております。先ほど私がお答えしましたように、一応警察官の現在の身分関係から、国家公務員あるいは地方公務員、さらには警察官の職務の特殊性に基いて、刑法等における規定等もありますので、一応それによって現在まかなわれておる、かように考えておるのでありますが、先ほど来のいろいろ貴重なる御意見を拝聴しておりますと、われわれさらに検討を加えてみなければならぬような点もあるように感じましたので、今後十分研究さしていただきたい、かように存ずるのであります。
○中井委員 ちょっとその点大臣のお考えも、ついでに聞かしていただきたい。おそらく御同感だろうと思いますが、これは非常に重要でありますからお伺いしたいと思います。
○大麻国務大臣 同じでございます。
○中井委員 この点は私どもも、もちろん結論を出しておりませんが、警察官といえども下級の人たち、みな勤労者であります。そういう意味において何も警察官を縛ろうという意味だけではありません。待遇の問題その他も十分考えて、裁判官、検察官おのおの特例のようなものがあるわけでありますから、そういう面について警察官はどうであるか、これは十分研究をしてもらいたい。重ねてこの点はお願いをいたしておきます。
○大麻国務大臣 十分研究をいたしたいと存じます。
○亀山委員長代理 茜ヶ久保君。
○茜ケ久保委員 警察官の拷問の件について少しお伺いしたいのです。京都事件はだいぶ問題になりましたが、あの京都事件の四人の被疑者は警察で相当拷問を受けた事実があるといいますけれども、そのいろいろな関係方面の御意見としては否定的なようでありますし、さらに調査をしてということでありましたので、調査の結果判明した点がありましたら、ここで一つ御説明願いたいと思います。
○中川(董)政府委員 京都におきまして傷害致死事件が起りまして、先ほど御指摘のありましたような状況につきまして、私ども鋭意その真相の把握に努めて参りましたが、現在までに判明いたしました状況に基きまして要点を御報告申し上げたいと思います。
 起りましたのは昨年の四月十日でございまして、ちょうど日曜でございました。午後十時三十分ごろでございまして、相当夜おそい時刻でございますが、京都市内の上京区五番町、あそこの盛り場でございますが、盛り場におきまして、被害者の木下兄弟等が、遊興の目的も若干持って歩いておった。そのところで、まず第一に今度真犯人として自首してきました男とけんかになりまして、そのけんかは一応別れまして済んだのでございますが、その後双方四、五名の者とまた他のけんかが別に被害者の木下との間に起りまして、双方数名の者と被害者木下とのけんかが第一現場、第二現場、第三現場、こういう形におきまして追っかけごっこで行われていったのであります。そうして、そのうちの被害者木下だけが逃げおくれまして、これに対しまして数名の少年が追っかけて参りましてこれをやっつけた。こういう格好に相なりました。当時その現場には警察官も居合せておらなかったのであります。ところが、そこに見聞しておりました民間の方々からの御連絡によりまして、警察官がその現場にはせつけましたところ、被害者の木下君は非常に出血多量で苦しんでいる。こういう状況を現認いたしましたが、その被害者の救護がとりあえずの緊要事でございますので、救急車等によりまして病院に運んだのであります。病院に運びましたが重態のため死亡するに至ったのであります。そういう状況でありましたので、そこに居合せた民間の方々が――今にして考えれば、第二のけんかの仲間に加わり、しかも最後まで被害者と一緒にその近辺におりました少年の一人を、民間の方々が連れて警察署へ出頭して参ったのでございます。そのけんかの一翼をになった人は西川と申すのでありますが、西川君の供述と、現場に残された状況等によりまして、当夜――当夜と申しましても十二時近くでございますが、逐次捜査を遂げまして、翌朝、すなわち四月十一日午前五時前後までにそのけんかに加担した五名の少年を見つけることに警察は成功いたしたのであります。そうしてその五名の少年等について事情を聴取し、いろいろな状況を調べましたところが、宋という少年につきましては、被害者から出血多量のための返り血を浴びまして血をかぶっている目撃者がありまして、目撃者が、宋という人物はこの少年とけんかしておった、こういう事実を申し述べますし、宋がこれを殺したのである、こういう陳述も行なったのであります。そういう状況にかんがみまして、宋以下四名の者につきましては、緊急逮捕いたしまして引き続き捜査を遂げたのでございますが、内、西川被疑者につきましては、そういうけんかに関連を持っておりましたけれども、けんかに直接手を下していない、こういうことがわかりましたので、それは書類上で処置いたしまして、それ以外の宋外三名の少年に対しましては検察庁に送致する手続をいたしたのでございます。そうして、検察庁の捜査に基いて事件が御案内の通り裁判にかかり、裁判の途中において別の被疑者が自首して参った、こういう状況なのでありますが、ここに別の被疑者の状況等に関連いたしまして、今日現在で考えて参りますと、最初警察がめっけました、すなわち民間人の協力に基きましてめっけました被疑者は、けんかに加担しておったことにつきましては十分なる心証がある。そのことについてはまず間違いない、こういう状況でございましたし、ことに被害者の死亡に対しまして、結局は死亡いたしました被害者に対して手を触れておって、その死んだ人の瀕死の重傷の被害者に対して、その上に乗っかっておった、こういうことも大体明らかでございます。そういうことに基きまして、だんだん捜査を遂げておったのでございます。そのうち宋被疑者につきまして、自分がやったのだ、こういう自白が数日後において初めてあったのでございますが、この自白するに至った原因が、警察官の職務活動が拷問または拷問に近い形において強制が加わったのでないか、こういう点は私ども監督者といたしまして十分な疑いを持ちまして、これを現在引き続き捜査を遂げておるのでございますが、ただいまの現状では、大体こういう人たちがけんかに加担しておったことが事実でございます。ことに別のけんかが行われておったということは、その宋以下の一つのグループについてはわかっておりませんので、仲間のだれかが殺したという認識が、最初つかまりました被疑者につきましての認識がありましたので、こういうグループでは比較的親分的な役割を果す人間がありまして、親分的役割を果す人間が自分たちの仲間のうちだれかがやったという認識があったことに基きまして、親分的気質をおそらく発揮したと認められるのでありますけれども、これが自分がやったのだ、こういう供述をいたしておるのであります。その供述に基きまして、それでは自分が殺したということになれば、何か凶器があるであろうということに警察は疑いを持ちまして、凶器の捜索にずいぶん苦労いたしたのですけれども、凶器はついに見つけることができない。被疑者の陳述によれば、それぞれ隠した場所は数回申し述べたのでありますが、申し述べた場所につきまして捜索を実施いたしましたところが凶器が見つからない、こういう実情であったのであります。それでけんかの実相が非常に偶然性が加わった事件でございまして、一つのグループがけんかしておる間に、前のけんかの片棒が、今の最初つかまった被疑者とのけんかのときに追っかけられてきておる状態を、自分を追っかけていると誤認をいたしまして、そして突き刺した。これが現在判明している状況で、二重のけんかが錯雑しておって、だれが致命傷を与えたかということについての捜査が、今日にして思えば十分でなかった、これが実情でございます。
 その後検察官の取調べの段階並びに裁判の段階等において、また別の問題があるようでございます。その点につきましては、警察官は全然関与いたしておりませんので、これはもっぱら法務省に御調査願っておるのでございますが、われわれ警察官が関与しておりますところの最初のけんかの現場に居合せた者四名についての取調べ状況について、不当、不法のことがなかったかどうかという点が問題の要点なのでありますが、私ども警察の取調べの要点といたしましては、先ほどもしばしば御指摘がございましたごとく、警察官の一方的の陳述を聞くことによっては、真相把握が十分でありませんので、宋以下の関係人につきましても監察官が事情を聞いておるのでございます。そういう被疑者の陳述によれば、自分は拷問を受けた、こういう陳述をするのでございますが、その話の内容に比較的具体性がないという状況であります。そういう状況で真実の発見に大へん苦心をいたすのでございますが、二つのダブったけんかが同一現場において引き続き行われて、多く加担したグループの方だけが最初に警察に判明して、そのすきに乗じて真犯人がけんかのあだ討ちをやったという状況が、最初の捜査においては浮び上らなかった。すなわちわれわれ捜査に従事しておる者といたしましては、周到綿密に捜査するという建前からいたしますれば、結果においてけんかの最中にすきを見て飛び込んできた真犯人の捜査の究明について不十分であった、こういう点がまず第一に考えられますので、その不十分の点は確かに申しわけないと思っておるのでございます。そうして大きなグループとのけんかの真相につきまして、そのけんかに加担したことだけは本人も認めておりますし、みな認めておりまして、ことに傷ついた被害者に対して引き続きけんかを売っていった、こういう状況も真実でございます。ただそれに対して関係人が、自分たちがけんかに関与しておりましたので、自分たちの仲間がとにかく殺したのであろうという意識を全部が持っておった。そうすると、こういう不良グループにありがちなことでありますが、そのうちで比較的幅をきかす人間が、おれがやったのだ、こう言う段階が一つのケースとしてあり得るのでありまして、このケースもそういう段階であった、こういうふうに認められるのでございます。この事柄は、宋という被疑者が自分がやったということを自供しておりますので、自供をするに至った以上は、警察官の取調べに無理があったのではなかろうかということにつきましては、私も疑いを持ちまして一生懸命調べますし、ことに警察官側の言い分だけでなしに、被疑者側の言い分も聞き、その他状況等を総合勘案いたしまするに、直接暴行脅迫によって、こういうことになったのではなくして、こういうグループに基くけんかの比較的世の中にあり得る状態として、自分たちの仲間の者がやったという認識を各人持っておりましたものですから、そのうち自分がやったのだ、こういうことを言った段階があったのだ。その後その被疑者は、そういうことを自分は言ったのだけれども、当時酒などを飲んでおったので、比較的意識がもうろうとして事柄がはっきりしなかったということも、陳述しておる状況の時期もございますので、そういう時期があることを考え合せますと、事案の真相は私がただいま申し上げた通りでなかろうか、こういうふうに現在考えておる次第でございます。
○茜ケ久保委員 その御説明は大部分一方的な御説明でありますが、私の質問したのは、あなた方が調査をされて当該警察官が被疑者に拷問をした事実があるかどうかということなんです。その経過は一応専門的な捜査もありましょう。ただ殺人をしたという自白をするに至る間の警察官の態度、それがあなたが調査した結果拷問の事実があるかどうかということなんです。それがないとかあるとかはっきり答えて下さい。
○中川(董)政府委員 私もその点に同様に疑いを持ちまして、その点を中心に調べましたところ、そういう拷問をした事実は認められないのでございます。ところがその拷問されたという関係者が、自分は拷問を受けた、その結果そういうことの自白をしたのだと言っていることも事実でございます。それに基いて警察官の言い分だけを聞いておりますと、結論は水かけ論になりますので、水かけ論にならないように、総合的に前後の状況その他を勘案して、何が真実であるかを発見するのが私たちの建前でありますので、真実を発見するためにいろいろ工夫いたしました結果、いろいろな状況を勘案するに、現在四人のグループが自分たちがけんかに加担しておりましたので、けんかに加担した者のうちのいずれか一人が、そういう致命傷を与えた者だという認識があったので、そういうことになったのであろう、私はそういう結論を出さざるを得なくなったわけでございます。
○茜ケ久保委員 事は非常に重大であります。幸いにして京都の事件は真犯人が自白して参ったので明るみに出ましたが、世の中にはこれに類することが多いのであります。あなた方はいろいろな問題が起ると、警察当局には絶対に落度がないということをいつもおっしゃる。私は昭和五年に時の治安維持法で警視庁に検挙されました。何も具体的事実はない、ただ第三者の一つの自白によって検挙されまして、当時警視庁の豚箱に六ヵ月、豊多摩刑務所に三年半私は独禁されました。その六ヵ月の警視庁の豚箱生活において、私は非常な拷問を受けている。それはいすにすわらされてぶんなぐる、け飛ばすは当りまえで、数時間さかさにつるされて、つるされたあげくにおなかやあるいは背中をどやされて、何べんか意識を失った。そういう拷問は絶えずです。一番苦しんだのはなま爪をはがされて、これを一つ一つはいでいじってやるのとこの爪の間に縫い針を差し込まれてちくちくとやられるのは一番つらかった。私の爪が現に半分欠けておる。それで当時警察は絶対に治安維持法違反で拷問したとは言っていない。私は現に長い間の犠牲者である。そうすると当時の警察は絶対に拷問をやっていないと言っているが、私の同志は何人か死んでおる。こういうことを考えると、終戦後の警察はそこまでじゃないと思うけれども、今度の京都事件を思うと、決してあなた方が一方的にありませんとか言っても、われわれは信頼することはできない。人殺し一つしたよりも重大問題である。殺しもしないのに私が殺しましたということはまことに重大である。だれも人殺しの嫌疑を受けて、容易に人殺しになったりしては、大きな問題でありますから、簡単に行きません。私が殺しましたという以上は、これは相当にそこに警察の拷問がなければならぬと思う。私はあったと信ずるから、そこでこれはあなたがおっしゃるように水かけ論になるきらいがあるから、当然この委員会においても、当時の被疑者、関係者をここに参考人として呼んで、私どもは当然この場で対決してはっきりしなければならぬ。これはまた後日にやりましょう。私は刑事部長の御説明を聞いていて感ずるのは、あなたの意識の中に警察の態度を何とか弁護しようという心がある。厳正な立場で、こういう重大な問題を、たとい警察の面子にかかわろうとも、こういう問題をはっきりすることが、むしろ警察の威信を重んずることになると思う。こういう問題をただ単に拷問はいたしませんで、うやむやに葬ることは警察の威信を落すものであると思う。私はこの点石井長官には敬意を表しておる。もし問題を究明して、警察自体にほんとうに悪い点があったならば、はっきりしてこそ、警察というものはほんとうに信用せられると思う。そこでもうこれ以上申しませんが、私自身が過去において重ねてやられておるのです。実際先ほど言ったように警察は拷問しないとはっきり言っておるが、残念ながら私を拷問した諸君はすでにもうおりません。やらした諸君はこの議事堂にもたくさん来ておる。当時の特高の人たちの名をあげてもいい。自分はやらぬでもやらした連中はいる。やった諸君はいない。しかしながらこういうことを思うときに、私はせっかく警察が民主化され、しかも制度が変りつつあるときに、日本の治安維持のために非常に遺憾を感ずるのです。警察の立場を考え、警察官と民衆の融合を私は念願するゆえに聞きたい。そこでこれ以上刑事部長に言ってもだめですから、一つ石井長官この問題を責任をもって究明して下さい。そして警察当局のはっきりした信念を、ここに具体的に現わしてもらいたい。もしそうでなければ私はどうしてもこの委員会に関係者を呼んでこの点はっきり究明して行きたい。むしろ石井長官を尊敬し、信頼するがゆえに期待を持っておるのです。私はこのことについては一つ石井長官からこの事件をあくまでも責任をもって世間の疑惑を残さぬように、そうしたことは再び、三たびこういう問題が起らぬように、今後全責任を持って警察行政を担当して行く決意を表明してもらわなければならぬ。こういう問題は今後あり得るとは考えられないが、大麻国務大臣あなたはいつも何とかかんとかおっしゃるけれども、ちっとも責任を感じていらっしゃらない。あなたの責任は重大だ。特に大麻大臣はみずから第二次鳩山内閣や第三次鳩山内閣に対して自分から希望して残られて、しかも引き続いて警察を担当していらっしゃる。だてに残ったのじゃない。日本の治安を守り、しかも民衆を保護する警察官である。この間の戸塚の事件なんかとんでもないことです。警視総監などはしゃあしゃあと答弁なさっておるが、あなた自身が責任を負うべき問題である。治安を守るべき警官がたといどんな事態であったにしろ、酒を飲んでけんかするとは何ですか。こういうことをやらしておいて、警視総監は自分自身が辞表を出すくらいの責任をとらねばならぬのに、単に部下を懲戒したり減俸したりするくらいではだめだ。そんなことでは日本の警察はほんとうの正常な働きはできないと思う。ですからああいうことはとんでもないことだと思う。それをああいうことをやっておいて、そうした責任者がごまかしの処分をして済むのならば世の中は安泰です。大麻国務大臣、石井長官、江口警視総監はこの点に対してみな自粛自戒し、みずからを持して大いに部下を監督、訓育し、再びこういった不祥事が起らぬように、もし起ったら大麻国務大臣、あなたも責任をとっておやめなさい。石井長官もちろん、江口総監もちろんだ。とうとい税金でやっている警察なんだ。何も私どもけんかしてもらったり、われわれを無実の罪で捕えたりするための警察じゃない。国民の治安と生命財産を守るために置いてある警察なんです。私は自分の過去を考えてふんまんやる方ないものがある。あの四人の諸君がたとい前科があり、あるいは不良だったかもしれないけれども、殺人というような汚名を着せられたその心情は、私は幾ら考えても、とても考え及ばぬものがあるのです。これをただ単に警察当局はごまかしやその場当りの調査なんかで済ましては絶対いかぬと思う。私もつい二十数年前の目分の体験をここに思い出して申しましたが、私はそれを心配する。どうか一つ大麻国務大臣も石井長官もこういう点に対しては、今後の万全の調査と対策について一つ御決意を、それぞれここに表明してもらいたい。あとのことはあとでまたやります。
○大麻国務大臣 一言申し上げます。今日の警察制度が公安委員によって警察を管理いたしておるということは、私の考えをもって申しますれば、終戦後改められた日本の政治の中で、最もよいものの一つではなかろうかと、かように考えております。と申しますのは、日本の警察を民主警察に育成するということには、一番これが適当な制度のように考えております。私が好んでこの地位についたというお話がございましたが、それは何とかして日本の警察を国民の信頼ができるように民主警察に育成したい、それに自分の微力を尽したいというのが私の念願でございます。従いまして今御指摘になりましたような人権の尊重と申しますか、人権を少しでもじゅうりんというとどうか知りませんけれども、そういうようなことのないようにするということも、最も大切なことの一つだと考えております。このことにつきましては御指摘もありましたので、全力をあげて今後警察当局の諸君とともに、日本の警察をりっぱな民主警察に育成していきたい。それに成功したい、かように念願をいたしておりますということを、はっきりとこの席で申し上げまして、お答えにかえる次第でございます。
○石井政府委員 先ほど茜ケ久保委員のおいでになる前に、門司委員の御質問に対して、私、警察の捜査のあり方ということについてお答えをいたしたのでありますが、大事な問題でございますので、この際あえて繰り返してお答えをさせていただきたいと思います。
 警察の捜査は、従来見込みによる捜査、勘による捜査というようなことがずいぶん行われ、多年それが慣習になって、そのためにいわゆる人権を侵すような結果になることがしばしばあったのであります。そうしたことであってはならない。今日の民主警察の基本は、何と申しましても人権の尊重ということを基本的理念として、それの上に立っての警察運営でなければならない。従いまして警察の捜査のあり方は、どこまでも人権の保障を全うしつつ、科学的、合理的な捜査方式によって真実を究明するというのでなければならない。従って勘による、見込みによる捜査といったような旧来のやり方を一擲して、捜査の適正化、合理化をはかっていこうではないか。こういうように私ども、今日機会あるごとに強調して参り、またそれに必要なるいろいろな科学的な施設、鑑識施設等の整備充実をはかるとともに、個々の警察官に対しまして、捜査技術の向上のために必要なる指導、教養を加えて参っておるのであります。しかしながら、これがまだ十分に末端まで浸透いたしておらない。旧来の旧式な捜査方式を依然としてとるものも絶無でない。そうしたことから、まま不祥事を起しておるということも偽わらざる現実の姿でございます。そうしたことのないように、今後一日もすみやかに理想的な捜査のあり方を実現したいというふうに考えまして、私ども今後一そうの努力、精進をいたして参りたい、かように考えておるのであります。
 御指摘になりました京都事件につきまして、先ほど刑事部長が一応現段階における調査の結果を御報告いたしたのでありますが、御指摘の通り、私ども決してくさいものにふたをするということはしないで、どこまでも間違った点は率直にこれを改めることにやぶさかでない。今後とも十分に真実を発見しまして、誤まった点は十分反省をいたしまして、今後再びあやまちを繰り返すことのないように努めて参りたいと思っておるのであります。京都事件につきましても、さらに今後一そう必要なる調査を遂げまして、責任を追及すべきものは追及し、今後のわれわれの捜査のやり方について、反省すべき点は十分に反省する、こういう態度でもっていきたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
○北山委員 この問題は非常に重大であり、京都事件のみならず、各地にそういう傾向が発生しておる、それで私の知っておる事件におきましても、その被疑者が執行猶予という刑でありますから、それでがまんすると、がまんできるかもしれないような状況にもかかわらず、何十万という金を使って、何とかして拷問という事実に対抗して、そうして自分の無実を明らかにしたい、こういう努力をしておる人を私は知っておるのです。これが最高裁に上告になって差し戻しになった、こういうようなケースもあるのでありまして、今同志からお話がいろいろあった、こういう事件が各地であるんじゃないか、こういう疑いがあるわけです。私ども残念に思いますのは、公務員による拷問ということは、憲法第三十六条に明らかな規定として「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と書いてある、ところが憲法に書いてあるこの原則というものが、その他の法律あるいは行政機構の上において保障される裏づけが非常に弱いのです。警察部内で起ったことは何としてもこれは捜査ができない、人権擁護の機関もこの中には入れないといったような問題があるわけでありまして、これは立法的に考えましても、何らかわれわれとしては工夫をしなければならぬ問題であろうと思いますが、さらにただいまのお話を差しむき具体化をしていただくために一つ国家公安委員会としては全国の警察に対して、特に憲法第三十六条の公務員による拷問を絶対に禁ずるという原則に基いて、あらためて捜査の上において、そういうふうな人権を侵害するというようなことのないように厳重な通達を発していただきたい。これができるかどうか。これをはっきりと明らかにしていただきたい。
○大麻国務大臣 申し上げます。御意見ごもっともだと考えますので、さっそく最近の機会に国家公安委員の諸君に諮りまして、御希望に沿うような適当な措置をいたすつもりでございます。
○門司委員 私具体的に一応聞いておきたいと思いますが、これはすでに戸塚の署長さんもお見えになったようでありますから一応聞きたいと思うが、その前にはっきり聞いておきたいと思いますが、最近の警察の動向であります。警察の最近の動向は、まったくかつての特高警察の再現であると言っても差しつかえない。そこにもどなたか何か書いているのでしょう。警察官でしょう。公開の席上で会議録があるのに何を好んで警察がそういうスパイ行為をやるか。見たければ会議録は幾らでも見られる、しかも公開中だ、多くの傍聴人がここにいる、こういう根性が警察にあるのであります。私はこういうものの考え方の上に立って今日の警察を一応見直す必要がある。それは先ほど動向として一応申し上げました福島市における日共事件でありますが、これは警察庁にその報告がなされておるかどうか。まず最初にそれをお聞きいたします。
○石井政府委員 私ども新聞を見ましてその事実があるのかどうか、さっそく福島県本部の方に照会をいたしたのでございます。問題の場所にそうした秘聴器と申しますか、そういう施設が取りつけられておったということは事実であります。それは警察に関係があるかないかという点につきましての照会に対しては、直接に関係なしという回答が来ておるのでございます。しかし事柄が事柄でございますので、十分調査をいたすように下命をいたしておるのでありまして、その後の詳細についてはまだ報告に接しておらないというのが現在の状況であります。
○門司委員 その捜査の方法でありますが、どこの警察がこれを捜査しておるか、これは非常に今日の警察行政の上からいけば問題であります。犯罪を犯した当該警察にその事実のないことを証明しろと言ったって、どろぼうにどろぼうでないことを証明しろというのと同じで、できはしません。どこの警察に命じてこれを捜査さしているのか、これを明らかにしてもらいたい。
○石井政府委員 福島県本部長に対して、私どもはそういう照会をし、下命をいたしておるのであります。福島県の本部長はおそらく問題の起った福島警察署長に下命をして捜査をさせておるものと思っておりますが、その点はさらに私は確実に照会しませんと、はっきりいたさないのですが、私の想像では、通常の方法ではそういうふうになるのが当然であると思って、一応そういうふうにお答えいたしたのであります。
○門司委員 一応の常識的なものの考え方からくる御答弁だと思いますが、こういう事件についての取調べは非常にむずかしいのでありましょうが、もちろん私は、ほかにもしこれを調査するとするならば、やはり福島県の警察本部にこれを依頼して調査するというような行き方には疑問があります。最近警察にはこういうことが非常に多い。たとえば、この前の委員会でもお話を申し上げましたが、神奈川県における女の学校の先生に対する身分の調査を書類で出したでしょう。長野警察本部長は、これを県会でつかれて、その書類の撤回をいたしております。これはまぎれもない事実である。書類で身分調査を依頼しておる。同じように三月二十九日――きょう申し上げたのは四月に起った事件を大体申し上げたのでありますが、三月に起ったというよりも、むしろ発表されておりまする長岡警察の問題であります。これも共産党員であるかないかは別にいたしまして、いろいろ共産党の内部を警察に通報するようにというようなことで買収というか、物を与えて情報を集めております。この犯人が共産党員であったかなかったかということはよくわかりません。とにかくアカハタを読んでおったから、向うに関係があるだろうからということで、これを出せということになった。こういうものをずっと調べてみますると幾つでもある。たとえばこれは同じ長野県でありまするが、岡谷における問題あるいはそのほかの田口の問題、白鳥事件というような事件もいろいろあった。しかし事件があったからといって、警察官が少くとも思想調査にひとしいようなスパイ行為を平然として行わせるというようなことは、明らかに過去の特高警察の返り咲きだと私は思う。この警察の思想は非常におそろしいのであります。最近はこうしたことがたくさんある。しかも長野のこの事件等に対して、警察の署長は何と言っておるか。さきに申しましたような岡谷事件あるいは北海道における白鳥事件というようなものがあるから、それらの犯罪者があるいはそうした関係方面に何とかして手づるを求めてきておるのではないか、それを調べることのために当然であるという答弁をしておる。これは私は非常におそろしいことだと思う。ものによりますよ。ものにはよりますが、警察が他人にスパイ行為をしているということは、かつての特高の一つの手段であります。こういうことを警察自身でやるということである。この警察の動向をあなた方は一体どうお考えになるか。今同僚議員茜ヶ久保君からも申し上げましたが、かつての日本思想警察というものは、これはめちゃくちゃであったのであります。再び日本に思想警察が生まれようとしておる。かつて鳩山さんは、共産党に対してはきらいだと言われておる。これも内閣委員会で問題となった。いろいろ問題があったが、きらいだということとそれを取り締るということとは違う。私は何もここで共産党の弁護をしようとは考えておりません。きらいだから取り締る、きらいだからこっぴどくやるんだ、しかも公認された一つの合法政党であり、一つの社会運動であることは間違いはない。ただそれがきらいだからといって、もしこういうことが行われて参るならば、現在の政府、自由民主党の政策とわれわれの考え方は全く違っておる、これも違っておるから、ああいうものは少し徹底的にやった方がいいんだというようなものの考え方でやられたのでは、これはどうにもならない。警察は今日、上の方に上って批判の余地が非常に狭くなっております。このことは大臣はよく聞いておいていただきたいと思う。今までの警察は非常に批判の余地が広かったのであります。たとえば自治警察の場合は、自治警察を持っておりまする市町村に、警察を運営管理する公安委員会があった。従って住民が直接に警察に対する批判の自由を持っておった、また場所を持っておった。今も批判の自由は持っておりますが、場所の自由は持っておらない。県の段階で公安委員会があるとしても、任命権は国が持っておる。従ってこれも批判の場所というのはきわめて狭められておる、また責任の所在というものも、ほとんどこれは県の段階では追及することができないのであります。追及することができるとすれば下級警察官のみであります。指揮、命令、監督をする大事な警察の元締めというものは、批判の対象が非常に狭められておる。ここに警察の行き過ぎの原因がおのずから生まれてくるのである。従って私どもは一昨年のちょうど今ごろ、問題になっておりました例の警察法の改正のときには、こういう意味で徹底的に反対をし続けて参ったのであります。警察が民衆の警察であるとするならば、民衆の批判の前、民衆の批判の届くところ、目の届くところ、批判の行われる場所というものがなければ、おのずから権力を持っておる警察というものは、さっき申し上げましたように、権力の座にすわって横暴するに、人間である限りはさまっておるのである。こういう事態でありまするときに、こういう特高的警察の動向に、だんだん向っていくということになって参りますると、一体日本に再びどういう時期がくるかということであります。従って今日の警察の動向に対して一つ大臣から明確に――これらの問題が現実にあるのであります。ないとは言えぬのであります。現実にあるのである。従ってこの現実にあるこういう警察の特高的の行き方等について、どういうお考えをお持ちになっておるか、その点をもう一つ聞いておきたいと思います。
○大麻国務大臣 先ほども申し上げました通りに、私は現在の日本におきましては、公安委員制度でもって警察を管理していくのが一番よろしいと考えておるのでございます。それでその線をあくまでも堅持していくつもりであります。今御指摘になりましたような特高警察とか申しますような事柄には断じて返してはいけない。また公安委員制度、この制度のもとでやっていきますると、昔の特高の弊害なんというようなものは起りようはずがない、また起さないつもりでおります。そういう考えであることだけをはっきり申し上げておきます。
○門司委員 考えだけで起さないつもりであると言っても、現実にここに起っておるではありませんか。警察の行為であるかないかということは、今も取調べ中だと言うのですが、新聞紙の報ずるところでは、警察の者だと言って物置きを借りに来た人があるということを、貸した人がはっきり言っておる。その後警察がどうしたかわからぬと言っておる。これは新聞紙の誤まりであるといえば誤まりであるかもしれませんが、しかし現実にこういうことがずっと新聞紙に報道されておる。それからさっき申し上げたような長岡の事件も明るみに出ておるでしょう。警察の署長も返答をしているでしょう。たとえば神奈川県におけるあの女教師に対する問題でもわかっているでしょう。必要であればあなたの方から文書を出して思想動向を明らかに調査しているでしょう。これも憲法違反だといえば、むろん憲法違反です。信教と思想の自由は、日本国民は持っているはずだ、保障されているはずだ。これを警察が一体何を好んで公安委員会制度において運営されるというあなたのお考えはそれでいいかもしれぬ、しかし考えておられることと実際の面とは、うんと離れておる。従ってこういう事実が現われてきておる。現われてきた事実に対して、どう対処されるか、公安委員会としてはどうされるかということであります。この点をもう一度大臣からあらためてお聞きをしておきたいと思います。
○大麻国務大臣 今御指摘のありましたような懸念を抱こうとすれば抱かないわけもないでしょうけれども、決して私どもはそうばかり考えておるのではありません。よく慎重に調査をいたしてみませんと、新聞の記事だけで直ちにこれがあったと……(「署長が証明しておるのだ」と呼ぶ者あり)そうじゃありませんよ。そういうわけでありますから、――しかしお気持はよくわかっておりますから、その意を体してよく調査をいたします。
○門司委員 私は先ほど申し上げておりますように、大臣はそういうことはないというお考えでありますが、神奈川県一つだけを見てごらんなさい。警察本部長が明らかに文書を出しておるでしょう。文書を出しておる事実があなたの方にあるわけです。ないわけはない。現実にあるから、私はあると言っておるのです。ないことを言っておるのではない。岡谷の事件等についてもそういうことがある。警察が民間の協力を求めようとすることは、こういうことではないはずである。民間の人の協力を警察が求めようとする場合に、警察の信頼感による住民の協力でなければならない。警察の職権によって、あるいは行き過ぎた権力によって、国民からそういう情報をとるということは、これは警察と民間との間の協体力制とは言えないのです。従って事実があるのだから、こういう動向が最近あるということであります。従ってこういう最近の動向に対して、公安委員会としては一体どう処置をされるかということであります。
○大麻国務大臣 そういう動向があれば、それは早くつんでしまわなければいかぬと思っております。
○門司委員 しかし、それを早くつむといったところで、実際問題は、これはどうにもなっちゃいないですよ。これの根絶をすることのために、一体どういう具体的な処置をとられるかということを聞いているのであって、大臣は、警察というものは厳正公平でなければならぬということは始終言われますが、その通りなんです。警察法に書いてある通りなんです。それから、憲法を守らなければならぬことも、ちゃんと警察法に書いてある。警察法の二条には明らかにこういうことが書いてあります。職権を越えちゃならぬ。そして警察法の三条には、警察は厳正公平であるべきことを、警察官にはちゃんと宣誓させると書いてある。警察法の三条にそう書いてある。そういたしますると、大臣のお考えはその通りにちゃんと警察法に書いてある。ところがその通りやってないから問題が起るのです。だから、この警察法を守らせるために、公安委員会はどう処置をとられるかということを私は聞いているのである。お考えだけでは警察はなかなかよくなりません。どんなにいい大臣がおいでになりましても、お考えだけではよくならない。現実に起った問題をどう処置していくかということが一つの大きな問題であります。従ってこれについての大臣のお考えを、もう一度聞かしていただきたい。
○大麻国務大臣 考えておるだけではいかぬと仰せられますが、それはその通りであります。しかし考えなければなお悪いのであります。(笑声)そうして考えて、それを実行に移したいと思っております。もし一、二の行き過ぎがあるような場合には、行き過ぎないように……(「断固たる措置をとる」と呼ぶ者あり)やっております。
○門司委員 まだ少し答弁を得たいのでありますが、私どもがこういうことを非常に強く言いますのは、問題が思想関係を持っておるからであります。これは、普通の犯罪等に対する取調べというものはいろいろな問題がある。あるいはこれをいろいろ聞き出す問題にも、いろいろなことがあると私は思います。いわゆる聞き込みといいまするか、そういう捜査が行われることも一つの段階だと思います。しかしそれは、ここに犯罪事実というものがあって、その犯罪事実に対する捜査の過程においては、いろいろなことが行われると私は思う。しかし犯罪事実というものはないのです。人間の思想の自由が許されておりますから、犯罪の事実がないにかかわらず、それがいかにも犯罪であったかのごとき態度を警察がとっていくことは、世間の思想の自由を非常に大きく妨げるということである。この思想の自由が大きく妨げられて参りますと、そこにはひがんだ社会ができ上るということであります。これが思想警察に対する、とてもおそろしいことである。そうしてこれが万一――大麻大臣がおいでになる間は、私はそういうことはないと思って安心はいたします。万一間違った公安委員長がおって、何らかの意図によって、そういうことがなされてくるということになりますると、思想の自由が妨げられて、思想が一方に偏してくる。思想がいわゆる一つの型にはめられてくる。ここに、自由社会というものの範囲が非常に狭くなる。そうして基本的の人権と自由社会というものがゆがめられていくということが、一つの大きな社会問題になってくると思う。現在の警察の動向はそういうところに動きつつある。
 今、茜ヶ久保君も申し上げましたように、戦前弾圧を受けた経験のある私どもから言わせますると、これは実におそろしいことです。非合法当時だって、われわれも一つのものの考え方、いわゆる思想的のイデオロギーの上に立って信念的に戦っておったから、まあこれを一つのわれわれの体験、犠牲としてあの当時は戦っては参りましたが、今日自由が許されておるのだ。すべてが合法であるその中で、なおかつこういうことが平気で行われるということは、これは非常に大きな問題です。だからこの現実の姿の上に立って、一つ善処してもらいたいと思うが、これ以上大臣に聞いても、もうわからぬので、一つ石井君の方にお聞きしておきますが、警察庁の長官として、こういう問題について具体的にどういうふうに警察内部の行政の取締りをされるのか、もう一度お答え願いたい。
○石井政府委員 いわゆる思想調査というような問題を、今日まで若干の地において起したことにつきましては、まことに遺憾に存じております。そうしたことにつきましては、私どもその機会あるごとに、絶対にそうしたことのないようにということを十分注意を加えておるのでございます。今後ともいわゆる思想調査というようなことのないように十分指導を加えて参りたいと考えております。またそれと関連して、いわゆるスパイ行為を強要するとかいうことも、絶対にないように、従来とも十分注意をしております。今後ともそういうことの起らないように、さらに一そうの努力をいたしたいと思います。
○門司委員 私はもう一つ先を聞いておきたいと思いますが、絶対にないようにするというのは、そう言われる以外にない。あるようにするとは言えないと思う。
 そこで問題になりますのは、戸塚事件等に対しましては、警察官の行為がよくなかったということは事実であります。だからこれに対する処分をされた。しかしこれは社会の一般犯罪としてものを考える、通念的に考えて参りますれば、ありふれた一つの事件であります。だから処分はそれでよろしいかと思う。しかしもう一つのこの思想調査というものは、ありふれた社会の犯罪ではございません。特殊的の、将来おそるべきものを、かもし出すことのできる根の深い一つの問題であります。この根の深い、将来大きく社会問題を起すであろうと考えられるこういう思想調査等に対して、もしその事実があったとすれば、それに対する警察の処置というものは、きわめて今日緩慢であると思う。何らの処分を受けてないと思う。ありふれた犯罪、ただ起訴すればいいというようなものについてはあなた方は処分される。しかしこういう思想犯等は――われわれから考えれば、現在は明らかに思想犯ですよ。こう考えられるような犯罪行為のあった者については、警察はほとんど何らの処分をしてないでしょう。ここに問題があると思う。表面に出ておりまする、ありふれた、一般通念から考えた犯罪よりも、根の深い、将来大きな問題を引き起すであろうと考えられるようなものについては、特に警察としては注意を要すべきであると思う。単に警察官が、一般通常人と、同じように酔っぱらって、あばれたというようなことでは済まされないのであって、明らかに憲法に対する違反行為である。こういうものについて警察は何らの処置をとっていないでしょう。私はここにこういう問題を引き起してくる問題の関係が、一つひそんでおるのではないかと思う。従ってさき申しましたように、警察内部における行政上のこれの取締りをどうされるかということです。ただ注意するというだけでは済みません。私の観点から申し上げますれば、一般通念からくる戸塚の事件等よりも、はるかに大きい事件であります。いろいろの基本的人権に関係した問題であります。これに対する処分をどうお考えになるか、もう一応聞かせていただきたい。
○石井政府委員 いわゆる思想調査等の問題をもし不幸にして起しました場合には、当該警察官の処分はもとよりのこと、日ごろそうした部下に対する指導教養に欠くるところのある幹部の責任もあわせて追及するという方針をもって臨みたいと思います。
○門司委員 それ以上個人にわたる追及はいたしませんが、厳重に将来のことを考えてやっていただきたいと思います。
 次に問題になりますのは、戸塚の事件の内容は、すでに一部申し上げられておりますが、幸いに戸塚の署長さんがおいでになっておりますので、当該事件の今日までの経緯と、扱われた当面の責任者としての御報告をこの機会に、そう長い必要はございませんから、ごく簡単でよろしゅうございますから、一応お願いしたいと存じます。
○沢田参考人 大体のいきさつは、すでに警察庁の方へ報告しておりますから、長官から報告があったことと思いますので、ごく簡単に申し上げます。
 当日午後四時に、戸塚警察署のパトロールカーが、第二路線の巡回に出かけましたところ、大体時間は四時十五分から二十分の間ごろと思いますが、現場近くへ参りましたところ、あそこの現場に売店を開いておりますところの、梅園こと関口仁という人の奥さんの梅子さんという人が、今けんかをやっているからすぐ来てくれということを、国道の方へ出ておりまして知らせた。その知らせによって、現場へ急いでかけつけて、初めてそこで事件の発生を認知したという状況でございます。すぐそのことを、横浜市警察の無電によりまして中継して署の方へ報告が参りました。署の方では、署におりました人たち、それからその方面を受け持ちする駐在というふうなものに、直ちに現場へ行くように命令しまして、現場へかけつけたわけでございますが、当時、大体予備隊の方々が中隊長さん以下五十四名、向うの方の人は、直接乱闘に参加したかその点はわかりませんが、とにかく男の人が二十八名と記憶しておりますが、そういうような人が相当興奮しておって、なかなかうまいさばきがすぐそこでできなかったというふうなことが一つ考えられますが、とにかく事件の当時として、そこは国道で非常に目にもつくし、電話その他の連絡の関係も悪いので、署へ一応来てくれということを申しました。予備隊の方々にも、大体けんかに関係したと見られる方々のみ同行を求めたのですが、中隊長さんは、いや、そういう人ばかり行くわけにはいかない、全員で行こうというので、全員が署へ来られました。三和の方は、大体そこへ行って事件に関係した人というふうなことで申しましたところが、最初十四、五人の人が、それでは自分たちは関係人だから行こうと、うふうなことでありまして、残りの五十七名の奥さん方、子供さん方、あるいは会社の事務員の方々には、一応参考人その他としてそのとき同行は求めなかったのでございます。それで向うの人も、初め十五、六人の関係したといわれる人が全部来られることと思って、署員が先に立ってきたところが、実際あとで来たのは、警視庁の方は全部参りましたが、三和の方は四人しか来なかったというふうな状況で、あわてまして、さっそく沿道電話を利用して手配をやったのですが、私どもは六郷の方から来たというふうに考えておりましたが、実際は京浜の第二国道を通って帰られたので、とうとうその手配も間に合わなくて、結局その当日は、警視庁側は全員参りましたが、三和側はたった四名しか署へ任意の形でおいでを願えなかったというような状況になっております。私どもはもちろん当日一番先に行ったとき、警察官だということは、向うの予備隊の方からもわかり、またさらに原因を参考人等に聞きましたところが、警察官云々というふうな言葉が出たというようなことを申しましたので、ほかの何とか事件と違って、警察官に関係があるというふうなことから、特に原因とか、それに直接関与した人たちというふうなことについては、徹底的に調べるつもりでやりました。また神奈川県警察本部の方としましても、とにかく事件は徹底的に厳正公平に糾明しなければならぬというので、翌三日に和田刑事部長以下調査班が二個班出張して参りまして、戸塚警察署に捜査本部を置きまして、両方の方々の取調べに当ったのでございます。しかし全部わざわざ東京の管内から署へ来ていただくというふうなことも、これは面と向って見ていただけば非常にいいのですが、経済上その他のあれもありますので、実際問題としてできませんので、一応写真による面通し、あるいはさらに、それによってこの人とこの人というふうに出たら、一つ透視器による確認というふうな方法で、これは警視庁の方々にもそうしていただき、三和の方々にもそうしていただきまして、そのほかあの人もあばれておったとか、あるいは自分自身も、だれかわからぬけれども、めちゃくちゃになぐったというふうなことを言った人もありますが、結局だれがだれをやったというふうな確定したものはごく少いので、この点まことに申しわけございませんが、ほんとうにしぼって、あるいは本人が認め、あるいは相当数の証人があって、確かにこの人がこうしたんだというふうに確定できたものは、予備隊側は人員にして五名、件数にして七件、それから三和側で人員にして六名、件数にして八件というふうな者のみが、確かにこの人はこういうことをやったというふうに断定できたのであります。そのほかにも、先ほど申し上げましたように、自分もめちゃくちゃにあばれた、あるいはほかの人もだれは相当あばれておったというばく然とした者は幾多ございますが、しかしはっきり断定できるという域に行っていないので、一応ただいま申し上げました予備隊の五人の七件、三和の六人の八件というものを立件して、昨日検察庁へ送致したのでございます。
 なお私どもは、事件は一応送致しましたが、これは検察庁に送ったのだから万事終れりというようなことでなく、今後もなお疑惑の点は徹底的についていきまして、はっきりできるものははっきりさせるという方針をとっておるわけでございます。
 以上がごく概略の事情でございます。
○門司委員 私は警察の取調べの内容について、とやこう申し上げることは考えておりません。これは警察の良識ある取調べが行われておりますので、一応信頼をいたしますが、世間で納得し得ざるものが出るならば、その点だけはこの機会に明らかにしておきたいと思います。従ってまず署長さんにお伺いをしておきたいと思いますことは、今の署長さんのお話を伺いますると、万やむを得なかったというお考えかもしれませんが、当日被疑者と思われる諸君に警察に来ていただかれた。そうしてそれが新聞の報道によれば、私は事実だと思いますが、そのときに留置されておりません。これは全部一応釈放というか、その晩のうちに帰されておると思いますが、こういう事実があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
○沢田参考人 ちょっと今よく聞き取れなかったので、おそれ入りますが、いま一応お願いしたいと思います。
○門司委員 はっきり申しますと、事件の起った四月二日ですか、警察がお呼びになったが、今のお話では三和組は四人くらいしか来なかった、警察側は全部おいでになった、そして手配をしたがみんなつかまらなかったというお話でありますが、その晩にその被疑者と考えられる者について留置されたかどうかということであります。
○沢田参考人 留置は一切しませんで、最後まで任意捜査で行いました。
○門司委員 この点が世間では警察の行政上の措置として納得のいかざる一つの点であります。普通の場合であれば私は当然留置すると思います。けんかをして、しっぱなしでお前たち帰っていいということは私はなかなか言わぬと思います。そこで問題が残りますのは、警察官であるからこういう措置をしたのだというような世間の誤解を招くおそれがありはしないかということであります。従ってこういう犯罪については、今最後にお話がありましたように、警察庁の考え方あるいは県の警察本部の考え方、市警本部の考え方というものは、厳正公平に仮借なく徹底的にやれということで、世間の疑惑をなくすることに努められたと思いますが、そもそもの出発に、こういう手かげんを加えたのではないかという世間の疑惑を招くようなことにこのことはなると思うのです。これに対して別にここで署長さんを責めるわけでも何でもありませんが、その間どうして留置ができなかったのか、たとい四人でも五人でも来た人があれば、普通の場合は必ず一応留置していると私は思う。ただ警察が関連しているから留置ができなかったというような事実があるとするならば、私は一つの大きな問題だと思う。従って御迷惑でございますが、もう一度留置をしなかったとするならば、留置のできなかった理由を、この機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
○沢田参考人 よく世間では、一般の人が酔っぱらってけんかをするとか何かすれば留置をするというふうなことを申されるのですが、私の考えとしては、留置をするとかしないとかいうふうなことは、ただそのけんか自体、その一つだけのことでは判断はできないのではないかというふうに考えております。あの当時の状況からしましても、意思があるとかあるいは計画的なものだとか、あるいはさらに今後そういうふうなおそれがあるものかというふうなこと、いろいろ考えまして留置する必要はないのじゃないかというふうに判断したのでありまして、警察官が関係しておるから留置しなかったというふうなことは絶対にございません。
○茜ケ久保委員 署長さんに一つ関連してお伺いしたいのですが、それは御承知の通り私どもはいろいろな場所で大衆行動をいたします。その場合その中の一部の者が何か違反の嫌疑があったときには、その関係者だけを特に抽出して連行なさって、一緒に行動した者の警察への同行は普通は全部拒否なさっていらっしゃいます。だのに、戸塚事件の場合には予備隊の十数名の関係者だけでなく中隊長初め全部行っておる。これはおかしいと思うのですよ。被疑者だけ連れていって、その他の者は一応帰ってもらうのが当然だと思う。その他の中隊長以下も同行しておるというのは一つのデモです。一方の三和の諸君が数人しか行かなかったのは当然だと思う。片方は予備隊の実に屈強な乱闘要員です。私はこの予備隊のことはよく知っておるので、席を改めていろいろお尋ねすることがあると思うが、あの一個中隊の者が全部行ったら三和の諸君は行けませんよ。あなたのさっきの御説明の口ぶりでは、何か数人しか来なかったことに許して、私から聞くと、御不満のようなことでありましたが、それは違うと思う。それはそうとして、中隊長以下の関係者以外の者が行った理由並びにこれを行かした理由は何か。大麻国務大臣も石井長官もいらっしゃいますが、こういったことが警察の処置として適当なものならば――われわれがいわゆる大衆行動をする場合に、往々にしてわれわれの立場からは何ら不正がないと思うにかかわらず、警察の一方的な処置で、そのうちの特定の者を連行される場合が多々ある。この場合にわれわれが行をともにすると、全部拒否なさつておる。この予備隊の事件と関連して、集団的な大衆行動の場合に、関係者はその中の一部であって、その人人を警察で取り調べる場合に、ほかの者も立ち会えるものかどうか。これはどういう理由で中隊長以下が行くことに対して同意されたかということに対するお答え、それから石井長官に対しては、警察の取扱いとして、こういうことはどういうわけで拒否されるものか。あなたが考えて疑わしいという御判断ならば、今後のわれわれの大衆行動に対して重大な関係があるから、明確に石井長官から御答弁を願いたい。最初に署長さんの御意見を伺いたい。
○沢田参考人 ただいまのお尋ねですが、片方はわずか四人きりで、片方は中隊長以下全員を連れていったというふうにおっしゃられたのですけれども、予備隊は全部車に乗っては行きましたが、負傷をした人とそれから中隊長、幹部一名、それだけしか中へは入れません。残りの人は全部バスへ入れて警察のわきの裏庭の方へ入れておきましたので、三和の人が四人であってもその人たちのために威圧されるというふうなことはないと思います。私はそう考えておりました。
○茜ケ久保委員 質問はそうでなくて、警察にお連れになるときなんです。中でどうされたかはわかりませんが、取調べのために警察へ連行なさる場合です。われわれが大衆行動をして何か問題があった場合に、一緒に行くと言っても普通警察は必ず拒否なさる。そうして関係人だけをお連れになる。調べる場所に行く行かないは別にして、警察へ行ったということは一つの事実です。一方は四人しか行かなかった、そこで片方は五十何名屈強な予備隊が全部行くというので、これはやはり行く前に三和の諸君は威圧を感じたと思うのです。それはそれでいいのですが、それと関係なく警察の諸君を全部連れていったということに対して、一つの不審を持っておる。警察まで行くということが許されるならば、これはあらゆる場所における団体行動の上に前例になるわけです。あなたはそのときに中隊長がいや全部行くと言ったからそのままお連れになったのか、あるいはそこに何か理由があったのか、それをお聞きしておるわけです。
○沢田参考人 それは特別な理由はございません。私どもはただ関係者だけ来てくれということだったのですが、中隊長以下がその者だけを置いて帰るわけにもいかぬから、自分たちも一緒に行くと言うので、私どもは今になっていろいろ反省しますが、そのときはさりげなくほんとうに軽い気持で、一緒にあれしたというふうな状況でございます。
○茜ケ久保委員 先ほどもちょっと申しましたが、私はそういうことは重大だと思うのです。関係者が全部そのまま警察に行く、しかし多数の者が行くと、これはより大きな影響を持つ。そこでそういったことに対して――私は戸塚の署長さんの責任を言うわけではありません、とられた措置が適正であったかどうか。適正ならば、これは今後大衆行動というものについてまことにいい先例になります。私はここに戸塚署長さんは非常にいい先例をお作りになったと思うのでありますが、ここのところはほんとうに微妙な問題ですから、はっきりしたことを教えて下さい。
○石井政府委員 具体的に戸塚の場合が果して理想的な取扱い方法であったかどうかということにつきましては、いろいろ見方によりまして議論の余地があろうかと思います。およそ直接の事件を起した被疑者と申しますか、関係者を必要最小限度連れていくということで事足りる場合もございましょうが、事案の性質によっては、むしろその現場におりました大勢の目撃者というものを参考人として一緒に来ていただいて、事情を数多くの人に聞くということによって真実を早く発見して、究明し得る場合もあろうかと思います。従いまして必ずしもその事件に直接加担した者ではなくて、参考人という意味合いで同行してもらう、一緒に来てもらえば、それだけ取り調べる上に真実の発見が容易にできるという場合もあろうかと思います。しかしながらだからといって、すべての人に一緒に来てもらうということは、かえって混乱を来すということになりますならば、これは考えなければならぬ点もあろうかと思います。そうした点は個々具体的な場合に十分状況を判断いたしまして、最も必要でありかつ効果的な方法をとるということが、現地の指揮者として、あるいは署長の立場においてとるべき措置ではなかろうか、はなはだ抽象的な言い方ではありますが、そういうふうに私は考えます。
○茜ケ久保委員 具体的に先ほど署長さんがおっしゃったように、関係者十数名だけを連れていこうと思ったところ、中隊長の方から積極的におれたちも行くのだといってついていっているのです。しかも具体的な事例として、署としては参考人として一人もかり出していないのです。あなたはお逃げになっているのだろうと思うが、単例は具体的にあるのだし署長もおっしゃっているのだから何も避ける必要はない。十数人連れていくのに、中隊長みずから一緒に行こうといってついていくのですが、それを許容されている。おそらくこれでは済まぬと思う。もしほかの団体だったらどうかということなんです。そこら辺を聞いているのです。抽象論ではなくて、具体的にそれについての責任ある人の答弁がほしいのです。
○石井政府委員 中隊長としては団体行動をとっておりますから、戸塚署の取調べがどういうふうに進展するか存じませんが、かりにそのままその夜は留置される者があるといたしましても、その他の者を引き連れて帰ってくるという責任もございましょうが、とにかく署にどうしても出頭しなければならぬ者を送り届けるまでは行動をともにする、そしてその後の推移を見きわめて、その後に指揮者として、引率者としてのとるべき方法あるいは考えておったかもしれません。そういう態度に出ることもあるいはあり得るのではないか、かように考えるのであります。署長はここで直接署長のとった方法はどういう考え方に基くかはお答えをしておりますので、私はそれをとやかくここで批判がましく申し上げるのはどうかと思いますが、私は先ほど申し上げましたように、直接の事件の関係者のみに来ていただいて事足りる場合もありましょうが、同時に事案の性質によっては、現場に居合せた多くの人の、その目撃した状況を参考に聞くことによって真実を究明し得る場合もありますので、そういう場合には直接の関係者のみならず、現場に居合せた者も一緒に来てもらうことが望ましい、効果的だ、こういうこともあり得ると思って、そういうように申し上げたのであります。
○茜ケ久保委員 それでは、答弁は要りませんが、私はこのようにちゃんと長官に肝に銘じてもらいたい。
 今の中隊長のとった措置は、自分の部下がそういうことをやった場合に、あとを見届けたり、いろいろなことをしなければならぬということで、われわれが団体のことをする場合においては、団体の指揮者はやはりそれを感じます。団体の構成員が一部警察へ連行される場合には当りまえです。予備隊であろうと一般の団体であろうと、団体責任者は今あなたがおっしゃるように責任を感じ、あるいは引率者としてその意見を述べることは当然であります。従いまして今後われわれが団体行動をとる場合に、もし不幸にして警察か何かその一部の者が容喙した場合においては、われわれは今の警察庁長官のまことに思いやりのあるお気持を体して、その団体責任者は全構成員をもって拘引されたる警察へ御同行申し上げることにいたします。これはあなたにお答えを求めません。私はそう了解しておぎます。これで終ります。
○石井政府委員 先ほど申し上げましたところの御都合のいいところだけおとりになったのかもしれませんが、私は全員がそういうところへ行くことによって、かえって混乱を生ずるような場合には望ましくないということを申し上げたつもりであります。ですからすべての場合が全員行動をともにする方がいいというものではないということを申し上げたつもりでありますが、あるいは私の表現が適切でなく、言葉が足りないために誤解が生ずるような向きがありましたならば、その点は訂正させていただきたいと思います。
○門司委員 警視総監にお尋ねいたします。今の戸塚の措置については、私はこれ以上追及しようとは思いませんが、問題になりますのは、今茜ケ久保委員から申されましたように、大衆行動をとるとき、たとえばデモがジグザグ・コースをやったとかいったときに、何か問題が起ってくる。そういう場合に、われわれはしばしば体験をしておりますが、われわれが身分を保証する、名前もはっきりわかっている、いつでも出すから返してくれといっても警察はなかなか出さぬのです。この事件についてははっきりわかっているのだ、それについてもそのまま留置されておりません。その後もおそらくあまり留置していないと思う。任意に出頭して取り調べていると思う。そういう措置が妥当であったかなかったかということは相当批判はあると思いますが、警察の最高責任者としてこういうことがいいか悪いかということです。私がこのことを執拗に聞いておりますのは、世間ではそういうことが往々にして行われる。予備隊だったからこれが取り扱われなかったということになりますと、取調べの上に手心があったということになってはいけませんから、これば警察の威信に関する――警察の威信というものは非常に重大でありまして、もし警察が信頼できないことになってごらんなさい、どういう世の中ができ上りますか、これは世の中が乱れるもとですよ。ですから警察はどこまでも厳正公平であって、国民の信頼を得る警察であることが治安維持の最も大きな問題である。私はこういうことを心配いたしますので、こういう問題について手違いのないように、私は起された手違いについて、そうやかましく責めようとはいたしませんから、そういう問題については将来厳に戒めてもらいたい。警察はあくまで厳正公平であるべき態度をこの際ぜひ示していただきたい。
 もう一つこの問題で警視総監に聞いておきたいと思いますのは、五十名の諸君の服装はどうであったかということです。みんなどういう服装で出かけて行っておりますか。
○石井政府委員 今度の戸塚の問題の場合に、なぜ当日それ以後においても強制捜査をしなかったかというお尋ねであります。警察と関係があるから任意捜査にしたかというお尋ねであると思いますが、およそ強制捜査をしますのは、被疑者が逃亡するおそれがある、あるいは証拠を隠滅するおそれがある、こういう場合にやむを得ず強制捜査をいたすのでありまして、そうでない場合におきましては、できるだけ任意捜査をもってやるのが人権を尊重するゆえんでもあろうというので、そういう解釈を私どもはとっておるのであります。今回の場合もそういう意味合いから、しいて留置する必要がないということから、任意捜査をしたもの、かように承知しておるのであります。なお当日の服装については警視総監に特にお尋ねのようでございますから、私は省略させていただきます。
○江口参考人 普通のせびろで普通に非番の日に外出するような服装であります。別に出動服とか警察官の服とか、そういうものをつけて参ったのではありません。
○門司委員 きょうは時間がございませんし、本会議を五時から開く、こういうことでございますので、これ以上は聞きませんが、問題になりますのは行政処分の問題であります。警察としては先ほどお話のありましたようなおのおの処分をとられた、こういうことであります。問題になりますのは、こうした行動の場合における引率者と、それから警察官との間における個々の権利義務の関係であります。なるほど警察官という、あるいは予備隊という一つのグループでありますから、そのグループに対する責任者があったということも一応言える。しかしこれが行政上の責任を負う地位にあるかどうかということは私は疑問があると思う。だからこの引率者という権限を持っておった、あるいは指揮者という権限を持っておった警察官としての一つの行為でなかったとするならば、私はここに非常に大きな問題が出てくると思います。先ほどから行政上の責任だから処分した、そういう教育の仕方が悪かった、だから処分をした、――それから現地においても、せびろであって、全部オープンの立場であったとするならば、その間に階級がおのずからなくなることが私は一つのものの考え方だと思う。従って警察官というものは、どこまでもそういう一つの団体的の行動であり、団体の責任者は行政上の責任を負うべきだということになって参りますと、これはいろいろな問題を引き起す原因ができると思う。従って行政上の処置がよかったとか悪かったとかいうことは別にして、こういう問題が将来ないとは限りませんから、同時にこういう問題についての所在を明らかにしていっていただきたい。これは非常に大きな問題でありまして、個々のとった行為に対して責任を負わせるのか、あるいは団体の行為として責任を負わせるのか、こういう問題が出て参ります。従ってこの面は、こういうものを処罰する上において明らかにしておきませんと、将来の警察の士気にも関係いたしますし、個人々々の反省にも――団体の行為だったんだからというようなことで済まされては、自省の色といいますか自粛の色というものが、だんだん薄くなりますので、個人の行為は個人の行為として処罰すべきだと思いますが、どういう考え方でああいう行政処分をされたか、もう一言聞いておきたいと思います。
○江口参考人 監督者に対しまして非常に御理解のある御質問のようでございます。一面御質問のように考えられないこともございませんが、やはり現場に参りました監督者といたしましては、そういう紛争事件が起りますならば、引率者としてそれを極力阻止する、具体的にからだを持ち出してでも割って入ってでも阻止するという程度のことは、私はやはりやってもらいたいと思うのであります。われわれが調べたところによりますと、その点の中隊長及び三人の小隊長の努力が少し足りなかったのじゃないかという点が考えられますので、この四人の者につきましては減給という処分をいたしたのであります。それから現場に参りません予備隊長、それから副隊長に対しまして訓告を行なったという理由は、そういうところに出て参りました際に、警察官はせびろを着ておりましても、やはり民衆の保護という立場にある職責の者でありますから、そういう乱闘事件に巻き込まれるということがあってはならぬのだと思います。つまりこれは、考えようによりましては平素の教養、訓練が足りなかったのではないかということが言えるのでありまして、御理解ある御質問ではありますが、やはり隊長、副隊長に対しまして行政処分をしないでおくことは、ほかの警察官に対するみせしめにならぬということで、私はそういう処分をいたしたのであります。
○門司委員 その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、今の予備隊の性格であります。予備隊の性格はいつか、ちょうど今の江口さんが田中さんとかわられた直後のこの委員会でお話を申し上げたと思います。私は予備隊をやめたらどうかというお話を実は申し上げた。今度の事件も実は予備隊によってこういう集団行為がやられた。首都の治安は非常に大事であります。でありますからいろいろな問題で予備隊的存在も、あるいは警察の見方から見れば必要かもしれない。しかし治安の確保というものは、ものがあったら、そのときに出動してこれを取り締ることができる機関を持つということも、私は一つの必要かとは考える。しかしそれよりも、現在警察に現在の予備隊を含めるだけの警察官の総員がもし要るとするならば、日ごろ各警察にそれだけの人間が配属されて、今日治安の維持というものが十分に保てるような制度の方が望ましいのではないか。われわれから考えると、若い者だけを集めて一ところに置いておくと、それに一つ酒でも飲ませてごらんなさい、日ごろの訓練の見せどころというと言葉が悪いかもしれませんが、そういう心理が出てくると私は思う。今度の事件などというものは、これは少し酒でも入っておって、足を踏んだとか踏まないとか、そういうたわいないことから起ったのだから、大した事件ではないと思います。そういうことは制度上の誤まりがあるのではないか。もちろん教養等にもございましょうけれども、ああいう制度がなかったならば、そうしてこれが普通の個々の警察官として直接治安の責件の第一線に立って、日ごろ訓練された警察官であったならば、私はああいう行為はなかったと思う。どうも集団的威圧的行為ばかりやっている。労働組合が大会をやるといってはそのまわりに、労働組合の組合員より多いほど、まごまごすると出動させる、そして鉄かぶとをかぶせて威圧的行動をとって始終人をおどかしたり、団体の威力で何かものをおさめるような考えを持っている警察予備隊だから、さあ事件が起るということになると、さっき冒頭に申し上げましたように、やはり職権だけを万能なものと心得て間違った行為に出る。これは私は制度の欠陥が多少ありはしないかと思う。この点について、もしお考えがございますならば、警視総監からでもどちらからでもけっこうでございます、お答えを願いたい。
○江口参考人 たしか一年半ほど前でしたか、門司さんからそういうお話を承わったこともございます。それから直接の問題といたしましては、予備隊のあり方ということにつきまして、東京都議会におきましても予算上それから行動についての批判が相当にあるのでございます。われわれも今門司さんのお考えになるような点も考えられますけれども、しかし全く首都の治安が平静に帰しておるかと申しますとそうでもないのでございまして、二十七年当時が一番そういう方面の治安状況が悪かったのでございまして、その後は割に平静でございます。従いまして集団行動などに対します警備上の警察官の使用ということよりは、最近におきましては世の中が平静になりますにつれまして、いろいろな行事がふえて参りました。花火大会とかいろいろなスポーツとか、そういうものに対する雑踏警備、新潟県の例の事件でも御存じのように、ああいう雑踏警備ということが非常に重要になって参ったのであります。しかしそれでは従来からある予備隊の数が全部雑踏警備に必要かと申しますとそうではありません。一番たくさん予備隊員がおりましたときには三千四百人くらいおりました。漸次平静になるにつれまして、警察署の方にこれを組み入れていったりしまして、今では二千三百人おります。従いまして、治安状況とかそういう雑踏警備とかとにらみ合せまして、やはり予備隊的な部隊というものは、人数に差はありましても、多少はあった方がいいのではないか、私はかように考えております。
○門司委員 これ以上私は質問しませんが、考えておいてもらいたいことは、やはり警察の一つのあり方だと思います。それは集団的のいろいろな行事があるから、こういうものが必要だということも、取り締る方から考えれば一つの考え方かもしれません。しかし集団行為は必ずしも暴動になると考えられません。秩序のある団体であれば相手がなければけんかしません。砂川の事件とかたくさんありますけれども、あれは警察予備隊がいなければ、あんなけんかになりませんよ。相手がいるからけんかになる。片一方は日ごろ訓練されている関係上何とかしなければ工合が悪いし、予行演習等の関係もあって、どう考えても――私はむしろ増援の必要があるなら、各警察から増援を頼んで、そうしてそのつどそのつどに警備に当っていくという行き万の方が、どうもスムースのような気がするのです。やはり若い者は何かやりたい。
 もう一つは今日の治安の状況というものは、そういうところではないと私は考える。あの警視庁の前を見てごらんなさい。何が書いてありますか、毎日交通事故で何人死んだとか何人けがしたとか書いてある。あれがもし強盗あるいは普通の殺人事件だったら大騒ぎですよ。一日に五人も十人も警視庁管内にあってごらんなさい。世間はこれを非常にやかましく言う。警視庁あげて騒いでも間に合いません、交通事故だから大した問題になっていない。しかし人間の生命を失うということは同じです。治安の確保というのは人の生命、財産を保護するということが第一目的です。事件の内容いかんではないのであります。そういうことを考えて参りますと、二千三百であるかどうであるかわかりませんが、とにかく二千三百の人間が治安維持のために必要だとするならば、むしろ平生の住民の保護あるいは国民の保護というようなところに重点を注がれる方が、今日の警察のあり方としては正しいのではないかというように実は私考えるわけであります。それでお話を申し上げたわけであります。これらについては意見の相違かとも思いまするが、私どもは今度の戸塚の事件を見てみましても、やはり予備隊だからこんなことをやったのだ、あれが普通の警察の諸君なら、こんなことはやりはしないと思う。絶えず国民と接触しております第一線の諸君ならこんなことは起らぬと思います。足を踏んだとか踏まれたとかいうことで、こういうことはなかなかしないと思う。また相手がけんかを売りかけてきても、日常住民との間に仕事をしておりまする警察官ならこういう問題は起らぬと思う。日常民衆と接触をしない、しかも絶えず鋭気だけを養っておるという力のはけ口が、ああいうところに突発的に出る、これは人間の心理状態です。この際どうしても制度を改める必要があるのじゃないか、ああいう抑圧をすることのために置かれた使命を持っているような警察制度というものについては、この際考えるべきだ、私はこういうふうに考えておりますので、これ以上追及はいたしません。
 大麻大臣に最後に一つお願い申し上げておきますのは、この事件を私どもはこのまま見過ごそうとは思っておりません。しかしきょうのいろいろな質疑応答の中に、警察側にもある程度考え直していただく点があったかとも思いますので、将来この問題等についてはなお推移を見まして、いろいろな事実の前においでを願いましてお話を申し上げることがあるであろうということを、ここで申し上げておきます。
 時間もございませんので、私の質問は一応この程度で打ち切ります。
○中井委員 警察の問題につきまして、きょう午後から熱心な討議があったのですが、具体的な問題、それから非常に本質的なこと、いろいろ制度の問題、また拷問の事実等ありまして、実はこれで一応打ち切るつもりでおりましたが、まだ問題が非常にたくさん残っておるようでありまするから、日をあらためて、この問題をまた続行するということで、きょうは一つこの程度で散会してもらいたいと思います。
○亀山委員長代理 中井委員の御希望は幸い大矢委員長がお帰りになりましたから、大矢委員長によく御了承願います。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十五分散会