第024回国会 法務委員会 第13号
昭和三十一年二月二十七日(月曜日)
    午前十一時十二分開議
 出席委員
   委員長 高橋 禎一君
   理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君
   理事 三田村武夫君 理事 猪俣 浩三君
   理事 佐竹 晴記君
      加藤 高藏君    小金 義照君
      小林かなえ君    小山 長規君
      二階堂 進君    廣瀬 正雄君
      古島 義英君    横井 太郎君
      横川 重次君    菊地養之輔君
      武藤運十郎君    志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 牧野 良三君
 出席政府委員
        警  視  庁
        (警察庁刑事部
        長)      中川 董治君
        検     事
        (刑事局長事務
        代理)     長戸 寛美君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      戸田 正直君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      内田 藤雄君
        公安調査庁次長 高橋 一郎君
 委員外の出席者
        検     事
        (入国管理局次
        長)      下牧  武君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
二月二十四日
 委員田子一民君、島村一郎君、宮澤胤勇君、山
 崎巖君及び坂本泰良君辞任につき、その補欠と
 して戸塚九一郎君、古島義英君、松永東君、三
 木武夫君及び勝間田清一君が議長の指名で委員
 に選任された。
    ―――――――――――――
同月二十七日
 委員戸塚九一郎君、小島徹三君、花村四郎君、
 三木武夫君及び楢橋渡君辞任につき、その補欠
 として加藤高藏君、小山長規君、小金義照君、
 二階堂進君及び廣瀬正雄君が議長の指名で委員
 に選任された。
同日
 委員加藤高藏君、小山長規君、小金義照君、二
 階堂進君及び廣瀬正雄君辞任につき、その補欠
 として戸塚九一郎君、小島徹三君、花村四郎
 君、三木武夫君及び楢橋渡君が議長の指名で委
 員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 外国人登録法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第五五号)
 人権擁護に関する件
    ―――――――――――――
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案についてはすでに質疑は終了いたしております。
 これより本案を討論、採決に付します。討論の通告がありますので、これを許します。志賀義雄君。
○志賀(義)委員 私はこの一部改正案に反対であります。前国会から引き続きの特徴でありますけれども、本国会に提出される法案を見ますと、一部改正案というのがかなり目に立つのであります。ほんの一部を改善する、あるいはごく小部分を改善するように見せかけて、実はこれが憲法改悪の問題とも関連する、国民の権利に関する重要な案件が非常に多いのであります。ことに今日採決を見られる法案というものは、日本に来る外国人にも関係する問題でありまして、非常に重要な問題であると思います。こうして次第々々に日本という国をまた戦前の反動的な国へ、目立たない形で、一部改正ということでやっていくことが、今国会に提出される法案の特徴であります。
 第一、今度は市町村長に日本に入国してくる外国人の調査権を持たせるのであります。御承知のように、日本ではそういう点についてはすでに警察というものがあります。公安調査庁というものもあります。その上に今度はこういう調査権を市町村長に持たせますと、日本に来る外国人、ことに長い間日本において生活の本拠を持っておる外国人というものは絶えずその生活権をすら脅かされる、こういうことになる。公民権が日本においてはじゅうりんされておるということは、すでに朝鮮民主主義人民共和国の金日成首相も公然と発表したことがありますが、この法案というものはその点において最も遺憾な点の多い法案であります。従って、市町村長にまでこういう警察権に類するようなものを新たに持たせることは厳重に慎しまなければならないものであります。ところが、この法案はそれと逆行するものになっております。
 次に、予算から見ますと、予算は、小さい端数は省略し、概算において六千万円ということになっておりますが、これでもって今のような警察権に類するようなことをやれということになりますと、それでなくても地方財政の赤字が多い時節に、さらに困難なことを強制するということになりまして、結局、煩瑣な事務によって、日本に在住する外国人に迷惑を与え、しかも日本の市町村という地方自治体にとっては財政破綻を一そう進めるようなことになるのでありまして、非常にその点では不用意な法案ということが言えるのであります。
 さらに、第三の点は、指紋という問題でありますが、指紋というものは、ここにおられる法務委員の方でとられた方はごく少数でありましょう。あるいは三田村委員はとられたことがおありでございましょう。(笑声)これは経験がおありと思います。あれをとられたとき、果して気持のいいものかどうか、今記憶を思い起していただきたい。非常に愉快な気持になられたということは絶対に言えないと思う。これを日本に来る外国人に法律によって必ずとることにするということは、日本に来る人をすべて罪人扱いにするという印象を与えがちなものであります。それについて、アメリカを初め多くの国々、世界の半数の国々がこういう指紋の方法をとっているじゃないか、こういうふうに言う人もあります。ところが、このアメリカがやっていることは、アメリカの政府自体がアメリカの建国以来の民主主義に逆行するようになって初めてこれをとり始めたのであります。これが今日いかに世界の民主主義の人々から指弾されているかということは、もう周知の事実であります。アメリカのやることなら何でもかでもいいというふうにこの法務委員会で判断してこれに賛成するということは、この法務委員会にとって一つの恥辱ものであろうと思うのであります。さらに、外交官その他に対しては、指紋をとることにはきまっておっても、慣行上やらないのだと言う。そういう慣行があるなら、その慣行をどこにけじめをつけるか。結局、これによって苦しむのは、日本に生活の本拠を置かなければならない外国人、第一には在日朝鮮人、第二は華僑、こういう人たちが非常に困るのであります。結局、こういう人たちを苦しめ、困らせ、そうして生活をますます困窮に陥れ、そうしてそれを追い回す、こういうような悪循環の結果を招くにすぎないのであります。そういう点について、この法案を実施し運用する場合には、警察官なんかの関与しないようにする、法を悪用しないようにすると言われますけれども、法は立法者の意思いかんにかかわらずひとりでに動き出します。こういう法律の性質として、悪い方に動くということは、これまでの日本の歴史の証明するところであります。
 以上三つの理由によって私は反対するのでありますが、第一、そういう日本に在住する外国人に対して、しかも、旅行によって一時来る、あるいは商売上何年いるとかいうのでなくて、戦前の日本の政府の都合によって自分の国を追われて日本に住まなければならなくなって日本を生活の本拠としている人々を苦しめる結果になるのであります。こういう法律案を出す場合には、あらかじめこれを一般に新聞その他の方法をもって周知させる必要があるのであります。これがなされておらない。そうして、わずか一週間か十日の間にばたばたとこの法務委員会を通ろうとする、こういうことでは、今後日本の国際信用にもかかわる問題であります。
 以上の理由によりまして、私はこの改正案に反対するものであります。
○高橋委員長 池田清志君。
○池田(清)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております外国人登録法の一部を改正する法律案に賛成の意を表するものであります。
 わが国が独立をいたしまして後、近ごろは外国人にしてわが国に来られる方がずいぶんふえて参りました。あるいは公けの資格において、あるいは商用のために、あるいはまた観光のために等、いろいろな目的で日本にたくさんの外国人が来られるのであります。これら外国人の方々につきましては、わが国はできるだけけの親切をもちましてこれを遇する方途を講じておりますことは御承知の通りであります。しかしながら、数多い外国人の中には、不正に入国をされる者がありましたり、あるいはまた、わが国の秩序を乱したり、国の根本に侵害を加えんとするかのごとき行動をする人がないとも限りません。これらの方々に対しましては、わが国は刑罰その他法律によりましてその不正外国人をそれぞれ処置いたしておるのであります。しかしながら、そういうような不正のない外国人につきましては、わが国は手厚くこれを待遇し、長く日本に滞在していただきたいという趣旨のもとに、外国人登録法というものができておるのであります。すなわち、今回の改正はまさに正しい外国人を保護せんがために登録関係においていろいろと便宜をはかるということがその趣旨であるようであます。
 さらにまた、指紋をとるという点につきまして一つの議論もありますけれども、これも、つまり、正しい外国人を保護する建前からいたしまして、しこうしてまた、独立国日本といたしまして、独立諸外国の例等にならいまして、この程度はよろしかろうという自主独立の考えからこの法制が行われようとするものであると考えます。
 市町村の調査につきましてもいろいろと議論がありまして、公安調査庁や警察が調査するではないかというお話があります。しかしながら、公安調査庁の調査は御承知のように破防法に関するところの調査であり、警察の調査は警察法の定むるところによる犯罪のための調査でありまして、おのずから外国人登録法に定める調査とは全く趣きを異にするのでありまして、この点は混同がないようにいたしたいと思うわけであります。
 繰り返して申し上げますが、正しい外国人はどこまでも保護しなければなりません。そういう趣旨においてこの外国人登録法の一部改正をせんとする趣旨に賛成をいたす次第であります。
○高橋委員長 佐竹晴記君。
○佐竹(晴)委員 日本社会党を代表して、希望意見を付して賛成の意を表します。
 まず、外国人登録に際し指紋押捺を強制することについては、大いに考慮しなければならないことがあると考えます。わが党といたしましては、この指紋制度を廃止するため適当な方策がないものかと考えまして、すでに政策審議会にこれを諮り、当局よりも御出席をいただきましていろいろと検討を加えたのでありますが、今日の情勢においてこれを廃止することは至難であるという状況をつぶさに承わりましたので、本法案の審議に当りましては、わが党として、しいて指紋押捺の制度を廃止すべきであるという意見を強行することを避けたのでありまして、他面、通商代表あるいは見本市などに参りました外国人に対して六十日をこえるとすべて指紋押捺をしなければならぬといったようなことについては、その運営の方法いかんによりましては何らか適当な対策はないかと考えまして、これまた当局に対しましてもしかるべき運営方法を要望いたしたのであります。外務省との関係においても十分連絡をとって十分その辺考慮をしてみるというような意見もございましたので、この際、私ども社会党といたしましても、指紋制度全般に関する運営について弊害や非難を起さないように特に留意されたいことを要望いたしまして、一応賛成を表するものであります。
 さらに、今回の改正によって、市町村長に調査権を与え、また一般的に市町村長の本法施行に関する権限を強化いたしておりますので、その運用を誤れば、いろいろの事件を惹起し、その弊害をかもすおそれがありますので、本法審議の途上におきましても、特に私より、その監督を十分にし、また監督制度を設くる等、その運用の誤りなきを期するよう十分留意されたいことを要望いたしておいたのでありますが、本採決に当りましてこれを強く要望いたしまして、これら希望条件を付して賛成の意を表する次第であります。
○高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。
 直ちに採決を行います。外国人登録法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
 ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成については委員長に御一任を願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さよう取り計らいます。
    ―――――――――――――
○高橋委員長 次に、人権擁護に関し調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。林博君。
○林(博)委員 人権問題に関しまして、本日は昭和三十年の二月二十七日に施行されました総選挙におきまする横井太郎君の選挙違反の関係者に対する取調べに関する質問を申し上げたいのであります。
 その前に、選挙違反取調べに関する一般的な事項に関しまして二、三質問をいたしまして、それから具体的な問題についての質問をしたいと思います。
 選挙違反の取調べに当りましては、選挙違反は、通常の刑事自然犯と異なりまして、取調べを受ける方の側の者も一般の善良なる市民であります。ことに、その取調べに当りまして非常にむずかしい法律的な問題がございまして、御承知のように、買収費と認められ、あるは労務賃と認められ、あるいは食事代と認められるような、その限界に非常にむずかしい点がございます。それで、取調べの対象となる者といたしましては、労務賃を当然もらい、食事代を当然もらったんだというふうに考えまして、犯罪を犯したのだという観念のない者を取調べの対象といたす場合も間々あると考えるのであります。それでありますから、特に選挙違反の取調べに当りましては、その取調べの対象となる人々の人権の尊重に関しては、捜査当局といたしましては一そうその人権の尊重という問題に対して配慮するところがなければならないというふうに考えるのであります。この点に関しまして、まず長戸刑事局長代理に御質問申し上げます。
○長戸政府委員 お尋ねの選挙違反の取調べにつきましては、一般の刑事事件につきましてもそうでございますが、特に選挙違反の取調べは、ただいまお話しのようなこともございまして、検察当局といたしましては特に人権尊重の点に遺憾のないようにすべきであります。その点については、累次の会同においても、また通牒等によりましても、かりそめにも人権侵害のそしりを受けることのないように厳重に注意いたしておる次第でございます。
○林(博)委員 ただいま刑事局長代理からお答えのあった通りであると私も考えるのであります。ただ、昭和三十年二月に行われた総選挙におきましては、そういう通牒が具体的に出ておったにもかかわらず、実際問題としては各方面においてかなりいろいろなる過酷な取調べ炉あったと考えるのであります。現に、前国会の法務委員会に当局から御報告もありました通り、数人の自殺者を出しておるという事実も、結局相手方が善良なる市民であったためにこういう問題も起っておると考えるのであります。また、これに関連いたしまして、特に選挙違反の被疑者等に関しましては、被疑者といたしまして自分の立場を弁護する、防御する準備の機会を十分に与えなければならないと私は考えるのであります。ところが、前回の総選挙の際において、取り調べられた被疑者たちが果して十分な防御の機会を与えられたかというと、必ずしも与えられておらなかった。現に、各方面においていろいろ起ったことで、弁護人との接見の問題でありますけれども、東京地検等におきましても、前回の総選挙における弁護人と被疑者との接見の問題に関しまして、ほとんどの事例におきまして八日目あるいは九日目まで弁護人との接見の機会を与えられておらないような状態であります。そこで、一般的な問題ではありますが、この点に関しまして刑事局長代理の御意見を承わりたいのでありますが、この選挙違反におきまして接見禁止になりました被疑者に対して、弁護人が面会をする機会をどのように与えられておったか。これは大体の方針があったと考えるのでありますが、この点に関して御質問いたします。
○長戸政府委員 選挙違反におきましての弁護人との接見の問題でございますが、これは、各地検察庁と弁護士会等との話し合いによって、それぞれ妥当なる線を打ち出してやっておるというふうに私は承知しております。これを統一的にやった方がいいという御意見もあるやに聞くのでございますけれども、それはかえって具体的な妥当性という問題からははずれるのではないか。従って、それぞれの地区におきまして弁護士会とよくお打ち合せの上なさる方がかえっていいと考えております。また実際においてもそういうふうに行われているのであります。ただ、私どもは、いわゆる弁護権と申しますか、被告人の防御権を十分に活用させるために、その弁護人との接見の時間が非常に短かいというふうな場合には、これはやはり客観的に妥当な時間を与えるべきであるというように会同等において指示いたしておるわけでございます。
○林(博)委員 私の経験いたしますところでは、ほとんどの事件について一週間ないし八日までは弁護人との接見を一回も許しておらなかったような実情である。それから、これは私が非公式に刑事局長にお尋ねしたところでありますが、またそういう取扱いをしておったところもあるようでありますけれども、当初において弁護届を取るために五分間の接見時間、次に十分程度の時間を与えられた、勾留更新になって十分間の時間を与えられた、こういうような取扱いになっておって、そうしてこれが最もゆるやかな取扱い方であったというように私は記憶しておるのであります。ところが、私が考えまするのに、この刑事訴訟法の三十九条の規定にあります弁護人との接見の三項に、検察官、検察事務官または司法警察職員は、捜査のため必要があるときは・接見の日時・場所等を指定することができるということになっておりますが、そのただし書きに、「その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」となっておるのであります。そこで、八日間もの間一回も会わないということは、これは被疑者に防御の準備をする権利を全く与えなかったと申して差しつかえないと考えるのでありますが、かりに当初に五分間の面会時間を与えられたといたしましても、その五分間で被疑者と弁護人との防御の準備を整えるだけの話し合いをする時間が果してあるかどうかという点でございます。私は、この日時、場所等を指定するということは、捜査の期間が限られており、警察の方は四十八時間であり、また勾留期間は一応十日間であるというような点からいたしまして、弁護人が毎日行って何時間も面会されたのでは捜査の支障を来たすので、結局ある短かい期間を限って、そういう不当なる捜査の妨害をされないようにしよう、こういうために制限時間を設けたのであると考えるのであります。それだからといって、五分だの三分だのというように、被疑者が全く防御の権利を失うような仕方はなすべきではないと考えるのでありますが、この点に関して刑事局長代理の御意見を伺いたい。
○長戸政府委員 先ほども申しましたように、会同におきまして、この三十九条の指定のことについて、実際上の弁護人との面会時間等についていろいろ討議いたしました際に、やはり、非常に短かい時間で、だれが考えても十分に話し合いのできないような指定は妥当でないとして、そういうことのないように注意いたしております。
○林(博)委員 現実には、選挙違反等の取調べに当りまして、弁護人の面会等の権利というものは今まで非常に制限されておったと考えるのでありますが、その点に関しまして、刑事局長代理といたしましては、そういう制限について今後何らか措置を考えられる御意向がありますか。
○長戸政府委員 ただいま参議院の選挙が近いわけでございまして、われわれといたしまして、長官会同あるいは次席検事会同を予定いたしておりますが、その際に、各地の実情等をもう一ペん再検討いたしまして、妥当を欠く処理のないようにいたしたいと考えております。
○林(博)委員 中川刑事部長にお尋ねいたします。司法警察員の取調べ時間の四十八時間以内でございますか、この間におきまして弁護人が面会に参りました際に、ほとんど面会をさせないというのが実情であるように私は思うのであります。それで、弁護届を取る場合にも、弁護人には接見させないで弁護届だけを取り、弁護届を取る際に会わせる場合におきましても、警察官が立ち会っておりまして、事実関係については話さないでくれといって会わせておるのが大多数であると私は考えるのであります。この点に関しまして中川刑事部長の御意見を伺いたい。
○中川(董)政府委員 四十八時間以内の接見の問題でございますが、この点につきまして、林委員の御指摘のように、相当制限をきつくして、結果において不当に防御する権限を抑圧する、こういう傾向が若干あったことは私も認めております。ところが、そういう傾向の著しい点につきましては、私ども、各地の警察官に教養の徹底をはかりまして、ことに、最初の選任届で面会される場合もだいぶあろうと思うのでありますが、そういう場合につきましては、この接見のことにつきまして十分配慮をするというふうにいたしておりまして、この法律の趣旨はだいぶん徹底する方向にいっておると思うのであります。しかし、四十八時間内に捜査を遂げて検察官に送致をしなければならない建前でありますので、接見を全然認めないというのは適当でないと思うのでありますが、それを認めるということにして、ただし、時間の点は、四十八時間の制限もございますので、何としても短時間にならざるを得ない、こういうふうに理解いたしておるのであります。接見につきましては、立会人なくして接見するというような趣旨も十分徹底しておるのでありますが、設備の関係上、接見室のない警察署も遺憾ながらあるのであります。そういう警察署につきましても、法律の定めるように立会人なくしての接見を認めるよう趣旨の徹底をはかるとともに、接見室を逐次整備して参りまして、現在の警察署の相当数は接見室を設ける、こういう状態になっておる次第であります。
○林(博)委員 ただいま刑事部長からお答えがありましたけれども、実際におきましては、なかなか接見をさせておらないのが現状でございます。ただいま刑事部長のおっしゃいました趣旨をさらに徹底いたしますように、何らかの方法を講じていただきたいと要望いたす次第であります。
 なお、長戸刑事局長代理並びに中川刑事部長にお尋ねいたします。この選挙違反等の取調べに当りまして、憲法三十八条には、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とあり、自白の強制は取調べ上できないことになっておると考えておるのであります。ところが、最近の選挙違反の取調べに現われた傾向といたしましては、数人の者が入れかわり立ちかわり長時間にわたって取り調べるということであります。朝早く引っぱっていって、夜の九時ごろまで、入れかわり立ちかわり何人もの人が取り調べる。そうして自白の強要をする。さらにひどいのは、一人の被疑者を取り調べるのに、選挙違反、贈収賄事犯等について特に最近顕著に現われた傾向として私どもが注目しておるのでありますが、五人、六人の人が被疑者一人の前に立ちはだかって、あるいはおどかし、あるいはなだめる等して取調べを行なっておる。このようなことは、明らかに憲法三十八条の目白の強制禁止の違反であるというふうに私は考えるのであります。この点に関する御意見を伺いたい。
○長戸政府委員 自白強要ということが許されないものであることは言うまでもないことと思うのでございます。検察庁の選挙違反の取調べには、それぞれ主任検事を定めております。ただ、甲という被疑者の主任検事がおるとしますと、その者が調べまして、さらに真相究明のためにその上の総括をする検事が調べるということはあり得ると思いますけれども、大ぜいの者が寄ってたかって取り巻いて調べをするということは、われわれ聞いておりません。そういうことはまたさせるべきではないというふうに考えます。
○中川(董)政府委員 ただいまの点でございますが、大ぜいの者が取り巻いて調べるということになりますと、威迫するというようなことになりましても大へんいけないことでありますので、私たち、警察におきましては大体そういうふうなことにならないように指導をいたしておるのであります。さらに、一人で調べるということにいたしましても、調書の内容とか、思い違い、聞き違い等もありますので、大体二人が同時に被疑者と対応するというのが適当な状態である、こういうふうに理解いたしております。私どもも、いろいろ大ぜいで立ち向って調べたというようなことも若干耳にいたしまして、だんだん調べたこともあるのでありますが、ごく例外でそういう場合もあったこともあるのでございますが、そういう誤解を受けた例は、部屋等が一つの部屋で、同時にいろいろの事件を多数調べております場合においては、たとえば、大きい部屋で、向うの片すみでは二人の捜査員が被疑者の方の供述を受けておる、また別の方でも同様なことが行われておる、こういう場合にそういうふうに誤解された面もありますし、部屋等のない場合において、ことに参考人の供述なんか聞く場合におきましては、普通の執務室の一隅で聞く場合もありますので、そういう場合には当然その部屋に勤務して曲る他の警察官も大ぜいおったということで誤解をされたという事実もあるのでございます。それで、理想的な取調べ室を作るということが根本的な解決策であろうと思いまして、そういう取調べ室の建築と申しますか、設備という点につきましても、警視庁初め、だんだんそういう設備の改善の方向に努めておるのでありますが、全国の警察署に全部取調べ室を完備するというふうには参っておりませんので、自然、場所の関係等でそういうふうに誤解される向きもあるのでございます。そういう点は誤解ないように努めることが適当であろうと思いますが、取調べに当りましては、単数の捜査員が調べると、事務の進捗上、時間の制限等によって処理が遅滞をすることは適当でないと思うのであります。二人、せいぜい三人程度がいろいろの事情を聴取して調べて参る、こういうのが適当であろうと思うのでありまして、多数人が取り巻いて調べるということがないようにしたいと思います。
○林(博)委員 これは人権擁護局長に伺いますが、取調べに当って自白を強要しないために、従来警察官が取調べの際に行なっておりましたように、やはり口をきくのは一人と一人で、じっくり聞くことが私は自白を強要しない方法であると考えます。二人、三人ということになりますと、ただいま聞き落しもあるというようなことを申されましたけれども、聞き落しでなくて、自然言葉も鋭くなり、相手に畏怖を与えるようなことになってしまうのでありまして、どうしても相手方に対して恐怖心を与え、自然に自白を強要することになり、場合によっては虚偽の自白もしいかねないことになるのではないかと思うのであります。この取調べ方式の問題に関しまして、人権擁護局長の立場からお答えを願います。
○戸田政府委員 警察に呼ばれたり、取調べを受けるということだけですでに非常な精神的な重圧を感じております。それを、大ぜいの者で取り巻いて調べて威迫を感じさせる、あるいは自白を強要するというような疑いを持たれるような方法で取調べをすることは、よろしくないと思うのであります。ただ、先ほど刑事部長も話されましたが、二人ぐらいで調べるということは必要じゃなかろうかという感じはいたします。たとえば、私の方で人権侵犯事件で調査するという場合でも、一人だけではなかなか調査できません。やはり書く者がおりまして書いて参りませんと、多数の者の取調べをする場合に、一人では聞いたり書いたりというようなことは実際上むずかしいんじゃないか、かように考えますので、一人が聞き一人が書くという程度のことは何ら差しつかえないんじゃないか考えております。
○林(博)委員 横井太郎関係の具体的な問題についてお尋ねいたしたいと思います。この事実は二つにわたっておるのであります。その一つは、昭和三十年二月二十七日の総選挙に関する横井太郎君の違反事件の関係者の取調べについてであります。まず長戸刑事局長代理に伺いますが、昭和三十年三月二十九日の、名古屋市千種区鍋屋上野町に居住します山田たまという者に関する取調べであります。三月二十九日に千種署から田中という主任さんが参りまして、検事さんが駐在所に出張しておるから来てくれというので、自動車をもってやってきたそうであります。ところが、このおばあさんは八十一歳のおばあさんでありまして、しかも、心臓病で十数日間寝ておりまして、ようやく起き出せるようになったばかりであったそうであります。それで、検事さんが警察に出張しておるからどうしても来てくれということを言われましたので、おばあさんはびっくりいたしまして、隣の人が見ておったところによりますと、頭を畳にすりつけて、何とかして連れていかないで下さいと言って懇願しておったそうであります。ところが、なおどうしても来てくれというので、畳に頭をすりつけて拝みながら後ずさりをしておったというのであります。隣の人が見かねて、おばあさんは今病気から起きたばかりで、警察まで行ったのではとてもからだが持たないから、何とかして行かないようにしてくれと言って懇願いたしました結果、主任さんも、これは無理だと思ったのでしょうか、そのまま帰りました。検事さんを連れてくると言って一たん帰りまして、副検事さんを連れてきて、そこで取調べに当ったそうであります。かなりの長時間にわたって取り調べたそうであります。そして、この取調べが終りましたあとで、おばあさんが隣の人に言うのには、ほんとうに警察というのはいやなところだ、警察に来いと言われたときには心臓がとまりそうになったと言って嘆いておったそうであります。ところが、その晩――三月二十九日の四時ごろまで取調べがあったのでありまして、その晩でありますが、翌日の三月三十日の午前二時にこのおばあさんが死亡しておるのであります。医者の診断によりますと心臓衰弱ということになっておるのでありますが、まわり近所では、この取調べに当っておばあさんが非常なる打撃を受けた、そのことが死因であるということを申しておるのであります。こういう点に関しまして、そういう老齢の病人を取り調べるに当って、捜査当局として手落ちはなかったかという点について、あるいは御調査ができておらないかもしれませんが、長戸局長代理に伺いたいと思います。
○長戸政府委員 お尋ねの件は、名古屋市千種区鍋屋上野町の山田たまという八十一歳になるおばあさんが、横井候補の運動員某から昭和三十年二月二十一日ごろ自宅で金を供与を受けたというふうな容疑がありまして、ただいまのお話のように、同人は老齢であって所轄の千種署に出頭できないというふうなことでありましたので、千種署からは巡査部長外一名が三月二十四日午後四時ごろに山田方におもむきまして、同家で午後五時まで約一時間取調べをして供述調書を作成しております。この事件が名古屋地検に送致されましたので、名古屋地検といたしましては、副検事鈴木勇に検察官調書の作成を命じたわけでありまして、同検察官は三月二十九日午後三時五十分ごろから午後五時五分ごろまでの間約一時間十五分にわたりまして右山田方で検察事務官木村清司の立ち会いの上で取調べをし、供述調書を作成しております。直ちに辞去しておるのであります。名古屋地検からの報告によりますと、山田たまというのは八十一歳の老齢でありまして、自宅において炊事等をしておって、調べの際には病人のような様子は見受けられなかった、こう申すのであります。取調べにつきましては非常にすなおに供述しておるようでございますが、報告によれば、談笑のうちに供述調書を作成し終った、こういうふうに言っております。ところが、遺憾なことには、山田たまはお話のように三十日の午前二時に死亡しております。近隣の加藤という医師が診断したようでございますが、死因は心臓病による老衰である。私どもとしましても、こういうふうな事案につきまして、取調べが過酷であるとかあるいは妥当でないというふうなことからこういうふうな結果を惹起しては大へんでありますので、累次にわたって注意を喚起しておるわけでありますが、この事案は特に取調べに当ってそのような結果を生じたというふうには考えておりません。
○林(博)委員 ただいまお答えのありました点で一応了解できるのであります。ただ、本件につきましては、最後に検察官が出張になってお調べになった際に、だれも家族の者も立ち会っていませんし、それから、これを聞いておった者もないのであります。従って、どのようなお取調べがあったかということは私ども推測できないのが非常に遺憾でございます。本件としましては、おばあさんを連れていこうとするのを見ておる者だけがあったような状況でございますので、私どもとしてこれ以上の追及もできないわけでございますが、ただ、私は、この横井太郎の関係におきまして、なぜこのような問題を今取り上げたかと申しますと、全般の取調べ方が非常に過酷であるように考えるのであります。たとえば、末端の関係者を朝引っぱっていって、夜の十時まで何らの取調べもしないで、そのまま帰すと言って帰した、あるいは、取調べに当って、取調べの最中にほかの刑事が入ってきて、まだ調べておるのかと言って手錠をじゃらつかせながら下っていった、そういうような幾多の事例がございます。また、いま一つこれからお尋ねするような、私としましては非常に過酷と思われるような事実がありますので、あるいはこの死亡に関する取調べに当りましても何らかの行き過ぎはなかったかという推測を持って私はお尋ねいたすのであります。
 それから、いま一つ具体的な事実についてお尋ねをいたしたいのであります。それは、北野田鶴子というやはり選挙違反の関係者に対する取調べに当ってでありますが、この北野田鶴子氏は年令ははっきりしませんが四十才前後の御婦人であります。この方は昭和三十年三月十五日六時四十分ごろに千種署の阿波という刑事さんが千種署に連れていかれたのであります。この人は肝臓病でありまして、銀行を約一年間、昭和二十九年中休んでおりました。そうしてこの選挙に当って横井さんの選挙を多少手伝ったのであります。ところが、三月十五日に連れていかれました。この嫌疑は、おそらく買収容疑でありまして、三百円入りの封筒を何人かの人に渡したという買収容疑であると考えます。ところが、この取調べに当りまして、三月十五日午前六時四十分に千種署に同行をいたしまして、これを取り調べるのに三人の、最初は阿波刑事さん、次に吉野さん、その次に野野山主任と、三人の方がかわって調べておるのであります。取調べが、否認しておりましたために非常に長くなりまして、夕景になりました。しかも取調べを継続しておりまして、夜になって本人が気持が悪くなった。そのために最初は小使部屋に寝かしておったそうであります。畳の上に寝かしたままで取調べを継続しておった。ところが、小使部屋が他の用で使われるために、今度は刑事部屋に行ったそうでありますが、その刑事部屋に寝たままで取調べを継続しておったそうであります。朝の六時四十分から夜の九時ごろまで取調べを継続しておったそうであります。ところが、いよいよ気持が悪くなって、吐きけを催して、非常に苦しくなって参りました。答弁もしどろもどろになって参ったそうであります。野野山主任さんという方が最後に調べたそうでありますが、これは本人の申すことでありますから名前等についてはかなり不確実なものがあるかもしれません。その野野山主任さんの言うには、お前は仮病を使っておる、だから医者を呼んで見せてやる、こう言って藤井というお医者さんを呼んできたそうであります。そして、藤井というお医者さんと野野山主任さんと二人で、お前裸になれと言われた。そこで、本人は洋服を脱ぎ、シュミーズを脱いで半裸になったわけであります。シュミーズを脱いでしまったから、少くとも上半身は全然裸になってしまった。そして、そのままふとんも敷かずに畳の上に寝せられて、婦人警察官の立ち会いも何もなく、野野山主任さんがそのそばに座っておって、お前あっち向けこっち向けと言って医者に見さしたという事実があるのでございます。この点に関しまして御調査をなさったことがあるか、長戸政府委員にお尋ねをいたします。
○長戸政府委員 本件は、あるいは中川刑事部長からお答えする方がより詳しいかと思いますが、私どもの方で調査したところによると、名古屋市千種区吹上本町の加藤健子という四十七才になる女の方、この方の買収容疑がございまして、昭和三十年の二月二十三日に、まず昭和警察署で巡査部長外一名が取調べをし、さらに同月の二十八日市警本部におきまして巡査部長外二名が取調べをしたようであります。その取調べの途中におきまして、被疑者が腹や腰が痛いと苦痛を訴えたので、取調官が背中をさすってやった際に、被疑者自身が、帯を締めていると苦しいからと申して、みずからこれを解いたという事実がある。先ほどのお話では洋装のようでありますが、こちらの調査によりますと和装のようになっております。また三月の二十三日には飯野という医者を招いて診断を受けさせ、三月の二十八日には矢崎という医者を招いて診断をさせておるという事実があります。その程度のことは私どもの調査でわかっております。
○中川(董)政府委員 ただいま林さんのお尋ねになりましたのは北野田鶴子さんという方の関係の事件のようでございますが、実は、私どもも、率直に申しまして、そういったことがないかどうかということを、当時の名古屋市警察関係者について調べたのでございますが、先ほど長戸政府委員から申した通り、加藤さんの関係については、本人炉みずから自分で帯を解いて何したという、こういう関係は、私の方で調べて、ただいま長戸政府委員からお答え申した通りなんです。お尋ねの要点は別の関係のようでありますので、別の関係の事件は実は調べがついておりませんので、ただいまお聞きしました北野田鶴子さんの問題にかかる件につきましては、ただいまお述べになりました要旨に基きまして、第一線の関係等についてさらに調べましてお答え申し上げたいと思います。
○長戸政府委員 私の方でも、加藤健子という方は北野田鶴子という人から金の供与を受けたというふうになっておるようであります。お話のは北野田鶴子という人自身に関することでありますから、これは私どもとして再調してお答えしたい、こういうふうに考えます。
○林(博)委員 この問題につきましてはお調べがついていない模様でございますので、再質問の機会を留保いたしまして、お調べがついてから御質問申し上げたいと思うのであります。
 ただ、一般的な問題としてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、こういう際に、仮病であるからといって医者に検査をさせることができるものであるかどうか。また、かりに医者に見せるという場合についても、何らか妥当な方法があると考えるのでありますが、そういう一般的な問題について、そういう際の警察官の処置を中川刑事部長にお伺いしたい。
○中川(董)政府委員 一般的な問題につきまして、ことに身体検査等をやる場合は、憲法、刑事訴訟法に基きまして、ちゃんと所定の手続を経た後でなければならないという建前を厳守いたさせたいと思うのであります。そのほかの問題といたしまして、たとえば、参考人の方、被疑者の方々で、そういう健康でない人たちは健康の回復を待って調べるとか、あるいは急ぐ場合等におきましては自宅へおもむいて事情を聴取するとか、そういう方法が適当な場合があろうかと思うのであります。また、健康であると思いまして取り調べて曲る途中におきまして、たとえば、そこでせき込むとか、調べておる最中に容態が変になる、こういう場合におきましては、これは普通の私どもが医者にかかると同じような意味におきまして、応急手当等の関係において、すぐもよりの医者等に診察していただきまして、必要な応急処置の治療をやっていただく、こういう事例も少くないのでありまして、こういう場合は身体検査という概念に当てはまりませんので、その被疑者の方、また参考人の方の御承諾を得て、むしろその求めにより医者の治療が行われる、こういう例も相当あるようであります。仮病だからすぐ身体検査をするという考え方も一つの考え方かもしれませんけれども、そういう仮病だから云々ということでなしに、大体被疑者の方々の健康について十分注意を払うという趣旨に基いて医者の来診を求め、いろいろ応急手当なりそのときの科学者としての御処置を仰ぐ、こういう場合もありますし、そういうことはまだ適当ではないかと思うのでありますが、無理やりに本人が承知もしないのに医者を呼んで検査する、こういう点がかりにありますれば、非常に適当なことでございませんので、そういう点につきましては、本件の事案はもっとよく調べてからお答えいたしますが、一般論といたしましては、強制的に検査する場合には、もちろん憲法、刑事訴訟法に定むる手続を厳守する、それ以外のは応急手当的の趣旨に基いて医者の来診を求めて御処置を願う、こういうことが適当であろうと思います。ことに、本人の御承諾があって医者の治療、診察を求める、こういう事柄は、むしろ敏速にしなければならぬ面もございますので、そういう点は、けじめということをはっきりしながら、結局、本人の意思に反して医者が身体検査を行う、こういうことがあってはならないということを中心に置き、他面、警察においでになっている関係者の方々に医者の治療、診察の機会を奪わない、こういう点も同時に強調して、その全体の調和といいますか全体のやり方が脱法的なことをやらない、こういうふうにして参りたい、こう思うのであります。
○林(博)委員 ただいまの問題は、これは実を申しますと取調べを受けた側の一方的な供述に基くものでありますので、なお御調査の結果を待たなければ、強制検査であったかどうかということは確定できない、このように考えるのであります。ただ、いずれの場合にいたしましても、人権の問題は特に尊重しなければならない。選挙違反関係の取調べの際におきまして、かりに医者に診断させる場合にも、そこに何らかのあたたかい措置が必要であったと考えるのであります。たとえば、ふとんを敷いてやるという措置も必要でありましょうし、あるいは婦人警官を立ち合わせる場合は立ち会わせるという措置も必要であります。それを、取り調べに当った方が、畳の上に寝かせて半裸体にして医者に見せながら、しかも乳房まで出ているわけでありますが、そこに警察官が立ち合っておって、そうして、あっちを向けこっちを向けと言って検診をさせておるということは、私はいずれにいたしましても妥当でないというふうに考えるのであります。まあ御調査の結果を待たなければならないことでございますので、この点は質問を留保いたしたいと思います。
 なお、いま一点、これもあるいは御調査が済んでおらないかと考えるのでありますが、一応御質問しておきたいのであります。やはり北野田鶴子の取調べに関する問題であります。これは、この日の調書ができておりませんので日時の点ははっきりいたしませんが、勾留になって、あるいは逮捕になってからかもしれませんが、五日間ぐらいたっても否認しておったそうであります。その際に警察におきまして辰己検事という方が取調べに当ったそうでありますが、その取調べに当りまして、庄司という捜査課長、野々山主任、吉野、家田、他に二人、七人の方が前にずらっと並びまして、入れかわり立ちかわり尋問した。この女は一筋なわでいくような女でないというようなことを言って、こもごも検事と警察官が一緒になって尋問した、そのために自分はこわくてしようがなかったということを申しておるのであります。私の知る限りにおきましては、今までに検事と警察官とが一緒になって調べるという事例は経験したことはございませんし、このようなことは非常にまれな例ではないかと思うのであります。かりにあったといたしますならば、これは私は明らかに自白強制であるというふうに考えるのであります。御調査の結果を待たなければ、これも判明いたさないことでございますけれども、もし真にこのようなことがあったとするならば、その措置が妥当であったかどうかということに関しまして、長戸刑事局長事務代理並びに中川刑事部長、戸田人権擁護局長の御三者に御質問申し上げます。
○長戸政府委員 ただいまの件は、まだ調査いたしておりませんので、調査の上お答えしたいと思いますが、一般的に申しまして、先ほども申し上げましたように、検事が警察官と一緒になって入れかわり立ちかわり調べるということは、まずないことと思っております。よしかりに警察官と一緒になって調べることがありましても、多数の者が取り巻く形に幸いて取調べをしたというふうなことは、その形式からだけ見ましても妥当でないというふうに考えます。
○中川(董)政府委員 該当事案につきましては、よく調査してみたいと思いますけれども、一般論といたしましては、ただいま長戸政府委員から申したと同様な考え方を私も持っております。
○戸田政府委員 私、その事実を承知いたしておりませんので、具体的な事実に対する御答弁はできませんが、先ほども申しましたように、多数の者が被疑者を取り巻いて威圧を感じさせる、そして自白を強制するような態度で取調べをするということは好ましくない、かように考えております。
○林(博)委員 ただいまの点に関しては、まだ当局の方におきましても調査ができておらない模様でございますので、この点は留保をいたしたいと考えるのであります。
 ただ、一般的な問題について一、二お尋ねを申したいと思うのであります。これは中川刑事部長にお尋ねいたしますが、選挙違反の捜査に当りまして非常に功績があったというような者に対しまして、何か特に論功行賞というようなことをなされておるのかどうか、その点に関しましてお尋ねいたします。
○中川(董)政府委員 警察官の表彰の問題でありますが、いいことをした警察官を表彰するということは非常に好ましいことでありますし、同時に、悪いことをした警察官は処罰する、信賞必罰と申しますか、こういうことを警察といたしましては警察規律の一つの大きな問題としてやっておるのであります。その表彰のやり方が、たとえば犯罪捜査事件等につきまして全く形式的な件数によって賞与が出る、そういう機械的な事柄によって警察官をほめるということに相なりますと、警察官も神様ではありませんので、自然無理な捜査が行われる、こういうことになりがちな傾向がありますから、私どもといたしましては、こういう事柄による表彰は、件数的な機械的なものの考え方はいたさないという見地に基いてやっておるのであります。それ以外のそういう弊害を伴わない表彰の方法につきましては、いろいろ苦心いたしまして、普通の警察官以上に寝食を忘れてある犯罪事実をつかんだ、たとえば、強盗事件の内査をして、その資料に基いて強盗事件の被疑者の推察ができたという場合、ないしは、相当久しく警察官をやっておりまして、その久しい経験年数の間あやまちがなく、だんだん功績をあげたという人たちの表彰、そういう角度で、いろいろ弊害を伴わない、しかも警察全体がだんだんよくなっていくという趣旨の表彰につきましては、私ども警察部内におきましてやっておるのであります。その表彰の内容につきましては、たとえば強盗事件も対象になりますし、それ以外の事件も対象になりますし、犯罪防止に対する功績も対象になりますし、選挙違反事件等のごとき犯罪事件の関係につきましても、そういう弊害を来たさないという見地に基いての、もちろんその内容によりますけれども、広い意味の賞与の制度があるのでございます。この賞与の制度は、ことに選挙違反のごとき事件につきまして、へたに機械的に何件以上やった者は賞与をやるということにいたしますと、大へん弊害を招致いたしますので、そういう方法は用いていないのでございますが、そういう弊害を伴わない方法によるところの表彰、賞与の制度は、刑事事件に限らず防犯上の問題すべてにつきまして、総合的に、また個々の警察官の内容等によって考え、実施いたしておるのであります。
○林(博)委員 選挙違反等に関する警察官の表彰問題に関しましては、まあこういうことはないと思うのでありますが、功をあせる余りに無理な逮捕をし、無理な取調べをするというようなこともありかねないことであるというふうにも考えられますので、特にこういう点に関しては今後十分なる御留意を賜わりたいと考えるのであります。この点要望いたしておきます。
○中川(董)政府委員 ただいまの点は全く私も同様に考えておりまして、変な表彰をやりますと大へん無理が出てくる。これは広い警察運営についても重要なポイントでございますので、そういった趣旨についてはかねがね努力して参ったつもりでございますけれども、表彰制度に伴う弊害が出ないような方式につきましても、さらに努力をして参りたいと思います。
○林(博)委員 私の質問は調査が済むまで保留いたしまして打ち切りたいと思うのでありますが、ただ、本件に関しましては、名古屋の町では、名古屋の市長が社会党の方で、助役もそうである、それで警察の方も多少政治的な色彩があってこういう非常に御無理な取調べをやったのだということも言われておる模様であります。私はこんなことはあり得ないことであるというふうに信用はいたしておりますけれども、あまりにもいろいろな御無理な調べがありますと、またそのような疑惑をも招きかねないことになりますので、一つただいま御質問申し上げましたようなことを十分御調査下さいまして、納得のいくような御答弁を賜わりたいというふうに考えます。これで私の質問を打ち切ります。
○高橋委員長 次に、先般の志賀委員よりの質問に対する報告を公安調査庁及び人権擁護局より求めます。
○高橋(一)政府委員 先日志賀委員からお尋ねのございました件について、調査ができましたのでお答えをいたします。
 一つは、名古屋市の栄町センター喫茶店就職中のSという婦人が公安調査官によってスパイを強要され、それを拒絶したところが、翌日その勤め先を首になったという点であります。お話の模様からして、Sという婦人は名古屋市内の広小路サロンに勤めておった柴田とみよという婦人であると思われるのでありますが、もし別人でありましたならばまたその点を調べなければならないわけであります。一応この柴田という婦人であるということで調査の結果をお答えいたします。この婦人は、この間お話しのように、昭和二十七年七月七日、名古屋における大須の騒擾事件の被告人として公判係属中の人であります。罪名は騒擾の率先助成と爆発物取締罰則違反という疑いによるようであります。中部公安調査局の調査官の犬飼義臣君が昨年の一月十日にこの婦人と最初にその勤め先で会ったのであります。その際に、その勤め先の主人と会って、この婦人について知り得る限りのことを聞いたようでありますが、その後さらに一月十二日と十三日、合計三回にわたってこの婦人と会って協力を求めたのでありますけれども、結局それに成功しなかったようであります。その後一月二十日に勤め先の主人がこの婦人に対して退職を勧めて、その結果同月二十七日にここをやめたようであります。このような事実の経過からいたしまして、本人の方として何らか調査官の策動によって結局やめさせられたのではねいかというふうにあるいは感じておるのかもしりませんけれども、実情は、一月十日に調査官がここの主人に会いましたときに、主人は、この者は十二月の忙しい時期に際して雇い入れた者であり、かっこの仕事に必ずしも向いておらぬようであるからやめさせたいと思うということをすでに申しておったそうであります。また、その後においても、調査官がスパイを強要するとか、あるいはそれが成功しなかったから勤め先の主人に対して働きかけて本人をやめさせるとかいうことをやったという事実は全然ないように見受けられます。このSという婦人に関する事情はこのようなことであります。
 次に、羽佐田調査官がやはり大須事件の被告人であります伊早坂という人に金をやったという問題であります。これは伊早坂竹雄という人に対して――この人もやはり大須事件の被告で公判係属中でありましたが、昨年の四月二十日に自宅をたずねて、このときに一千円を置いて参ったようであります。次に四月二十五日にもう一度たずねて、このときには卵を一箱置いて参ったようでありますが、この人は家庭の事情を見ると非常に困窮しており、また本人も当時何か耳の病気をしておったようでありまして、そのような事情から見てこのような措置に出たようでありますが、結局これも別にその後は関係がありません。
 次に、この間おっしゃった近藤調査官、丹羽調査官が工場に行ってスパイを強要したという事案であります。これは、工場の名前だけで、それ以上の具体的な事実のお示しがなかったわけでありますが、大体それに該当すると思われることについて申し上げます。一つは、近藤調査官が大隈鉄工所の工員に対して協力を求めた関係でありますが、近藤調査官はその後昭和二十九年二月一日に退職いたしまして、そのときの相手方の氏名も別に記録にも残っておりませんので、氏名はどうも判明いたしません。ただそういうふうな事実はあったようであります。それから、丹羽調査官が東洋レーヨン愛知工場のある工員に対してやはり接近したことがありますが、これもそれだけで、その後別段の関係がございません。これらは、もちろん、いずれも調査のためにこのような党員ないし党にきわめて近い人に接近したわけでありますが、すべて不成功に終った事例であります。
 事情は調査の結果以上の通りであります。
○志賀(義)委員 この前調査願っておったものについて、報告が高橋さんの方からないのですが、戸田さんにはそのことはお願いしているわけです。菅生事件ですが、まだできておりませんか。
○戸田政府委員 大分の刑務所の事件の御要求でございますが、この前この事件の御要求はなかったように思っておったので、従って、具体的にこまかい事実がわからないものですから、公安調査庁の報告を得て……。
○志賀(義)委員 公安調査庁のお調べが済んでからであなたの方はよろしゅございます。
 ちょっと高橋次長に伺いたいことがあるのですが、この前私は申し上げたように、名古屋の大須事件の裁判長の方で非常に困っている事件がある。というのは、公安調査庁の方あるいは警察の方で就職先に出かけていっていろいろ調査をする。ただいまあなたが言われたように、スパイをすることを――これはあなたが認められた言葉です。そういう事実があったと退職の調査官について言われているのですから、あなたの方も間諜の事実を認めらたのですが、そういうことをされるので、就職先が安定しない。従って、公判に出ていこうにも出られない。公判廷で自分の権利を擁護する機会をさえ奪われるということになっている。それについて、そういう事実があったかどうか。この点をあなたは現にこう言っておられるでしょう。その点については、「まず第一に御指摘のような事実があるかないかということを調べまして、その結果を待ってしかるべき処置をしたいというふうに考えております。」、こういうふうに答弁されておるのです。その点の御答弁はない。
 それから、もう一つ、これは忘れられたんだろうと思いますけれども、昨年の七月三十日に私が質問した金沢における事件で、本屋の店頭で売っている一部五円のものに対して千円の金を党員に出したりして、いろいろ強要したという事件がありましたね。あれも、ただいまのところわかりませんから、事実を調査して答弁いたしますと、これは速記録にも残っております。その点の御答弁もない。
 この二つの点について御答弁を願います。
○高橋(一)政府委員 今お尋ねのありました金沢の方の事件については、前の世耕法務委員長の当時でありましたけれども、ちょうど国会の済むときの御質問でありまして、私どもその後さっそく調べまして、書面をもって委員長のお手元までこれを届けてあります。従いまして、当然志賀さんの方にもそれは伝達されていると思っております。また、書面をもってお答えするということは当時すでにお答えするときに申し上げたと思っておるのであります。従いまして、もしまだでございましたならば、その書面があるはずでございますから、それについて御了解願いたいと思います。
 それから、事実を調べました上でしかるべく処置するということを確かに申しておりますけれども、それは、志賀さんのお疑いになりましたような、不当に就職を妨害するというような事実がございますならば、それはきわめておもしろくないことでありますからして、そのようなことのないようにしなければならない、こういう考えであります。調査の結果、私どもの方としては、やむを得ざることであるというふうに考えておりますので、特別なる処置は講ずる必要がないというふうに考えております。
○志賀(義)委員 どうも高橋次長の答弁はごまかしです。そのこと自体は一つの問題ですよ。権力をもって国民にスパイを強要する、金品を提供してそれをやらせるということは当然だという、そのことが一つの問題だが、今後ともその点については問題にしますが、今私が言っていることは、この前あなたがしかるべく答えると言ったことは、裁判のじゃまになるような結果になっているそういう事実があるかどうかわからないから、調べてということなんでしょう。それについて、あなたの方は何も答弁してないじゃないですか。それを重ねて尋ねたところが、今のように、それはちっとも御承知ない。その点はどうなんです。
○高橋(一)政府委員 裁判の妨害になっておりますれば、当然裁判所の方からも何らかの御要求があるのではないかというように考えているのであります。それはございません。それから、今日調べましたこの経過によりまして、これによって裁判を妨害するというふうな判定は出てこないように私は考えております。
○志賀(義)委員 あなたは、この前、それは調べて報告すると言ったでしょう。そんなごまかしを言っちゃだめですよ。私の言ったことにはっきり正面から答えなさい。
○高橋(一)政府委員 私は、当時志賀さんからお聞きしまして、さらになお具体的に事実の詳細を知って、それに基いて調べたいと思いまして、すぐに私どもの方の職員をやりまして、志賀さんに問題の要点をさらに書いていただいたわけです。それに基いて誠実に調べをしたつもりでございます。今のようにそれが裁判所の裁判の妨害になったかどうかということは、これはきわめて抽象的な問題でございまして、私の方ではこのような調査をすれば十分であるというふうに考えておった次第であります。
○志賀(義)委員 私は事実の有無を聞いているのです。高橋次長の解釈を聞いているのではないのです。速記録をもう一度読み直して、自分が言ったことを調べてから答弁して下さい。それでなければ納得できません。今ここで押し問答する必要はないから、もう一度その事実を調べていただきたいと思う。委員長の方からもそのように手続をとっていただきたいということが一つ。
 それから、もう一つは、委員部の方に答弁の書類が来ておりましたら、ここでその責任を問うのではありませんが、一つあとでお示し願いたい。
○高橋委員長 志賀委員のお話に関しては、書面の問題等も調査しまして、なおこの問題について質疑を継続するようにするかどうか等は理事会にも諮りまして善処いたしたいと考えておりますから、さよう御了承願います。
 他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時三十八分散会