第024回国会 法務委員会 第34号
昭和三十一年五月十二日(土曜日)
   午後零時二十五分開議
 出席委員
   委員長 高橋 禎一君
   理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君
   理事 高瀬  傳君 理事 福井 盛太君
   理事 猪俣 浩三君 理事 菊地養之輔君
      犬養  健君    加藤 精三君
      小島 徹三君    世耕 弘一君
      渡海元三郎君    林   博君
      花村 四郎君    古島 義英君
      松永  東君    眞鍋 儀十君
      神近 市子君    戸叶 里子君
      平田 ヒデ君    福田 昌子君
      古屋 貞雄君    細田 綱吉君
      山口シヅエ君    吉田 賢一君
      志賀 義雄君
 出席政府委員
        検     事
        (法制局第二部
        長)      野木 新一君
        警察庁長官   石井 榮三君
        警  視  長
        (警察庁刑事部
        長)      中川 董治君
        検     事
        (刑事局長事務
        代理)     長戸 寛美君
        検     事
        (矯正局長)  渡部 善信君
        文部事務官
        (社会教育局
        長)      内藤譽三郎君
        厚生政務次官  山下 春江君
        厚生事務官
        (社会局長)  安田  巖君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (自治庁行政部
        行政課長)   角田礼次郎君
        法務事務官
        (事務次官)  岸本 義広君
        労働事務官
        (婦人少年局婦
        人課長)    高橋 展子君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局家庭局
        長)     宇田川潤四郎君
        参  考  人
        (警視庁防犯部
        長)      養老 絢雄君
        参  考  人
        (警視庁警備第
        二部長)    野田  章君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月十二日
 委員三木武夫君、松尾トシ子君、横井太郎君及
 び佐竹晴記君辞任につき、その補欠として加藤
 精三君、平田ヒデ君、渡海元三郎君及び福田昌
 子君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
五月十二日
 横堤町に大阪拘置所移転促進に関する請願(菅
 野和太郎君紹介)(第二一七六号)
の審査を本委員会に付託された。
   ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 売春防止法案(内閣提出第一七一号)
 売春に係る処罰、保安処分及び更生保護に関す
 る法律案(片山哲君外十四名提出、衆法第二八
 号)
 売春に係る処罰、保安処分及び更生保護に関す
 る法律の施行に伴う裁判所法等の一部を改正す
 る法律案(片山哲君外十四名提出、衆法第三四
 号)
    ―――――――――――――
○高橋委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 売春防止法案について質疑を行います。質疑の通告がありますので、これを許します。眞鍋儀十君。
○眞鍋委員 すべての立法がそうでなければならないと同様に、特に今回の売春防止法案は処罰の対象となると予想されるものが最初から何十万かきまっておるように思われますので、この立法に当りましては、私どもが特に注意をして万全を期してあげなければならぬと考えておりますので、そういう建前から、主として補導、保護更生、こういった面について政府のお考え方をただしておきたいと考えておるわけでございます。大体、根本的な対策としましては、倫理、道徳を基本とする文教関係や、健康、衛生を中心とする厚生関係、社会秩序の方面から見た法務省の関係、それから貧困家庭の婦女等の社会福祉施設の関係等についてお尋ねをしてみるわけでございます。
 私がまず心配いたしておりますのは、今日まで赤線、青線、近くはまた白線というものができているようでございますが、一応密集した場所においては比較的取締りが行き届いた面があったのでございますが、今度そこから野放しということになりますと、業者などの手から解放されて新たにもっと悪らつな町のごろつきといったような方面がこれに爪牙を伸ばすというような心配もございますので、特に行き届いた保護更生の施設が伴わなければ心配な点があるのでございます。さらに一ぺんに大量の者が社会にはんらんして参りますと、現在考えておられますような程度の保護更生の施設では、受け入れ態勢がはなはだ不安な感じを私は持たされるものであります。幸いにして、先般調布の業者が自発的に廃業いたしまして、一つのケースを示してくれたわけでございますけれども、わずか十四軒、六、七十人の従業婦が処分されるという小さい転業でありましたにもかかわりませず、昨年の十一月から本年の三月くらいまでかかって転廃業がなかなかうまくいっておりません。まだそこに残っておる者もあるようでございますし、こういう実情を見ますときに、保護更生の面はこれは並み大ていのことではうまくいかないのではなかろうか、そういった心配をいたしておるものでございます。大体、当局のお考え方では、どのくらい売春婦というものの実数があって、それがこの法の実施によって保護更生されなければならないものでございましょうか、大よそのところを一つ示していただきたいと思います。
○安田(巖)政府委員 お話のように、保護更生の仕事は大へんむずかしい仕事でございますので、私どももそれについては大へん心配をいたしておる状況でございます。とにかく、画期的な売春防止法が生まれますのでありますからして、われわれといたしましては、できるだけの対策を立て、施設の数等につきましても多少余裕があるくらいのことを実は考えたいと思っておるのでありますけれども、しかし、何分にも、どの程度の数がそういった保護更
 生の機関に入ってくるだろうかという
 ことも、なかなかつかめないような実情でございます。ただ、今度の法案によりますと、刑罰法規が実際に施行になりますまでに若干の期間もございますので、この法律が公布になれば、それによってどういうふうに業者なりあるいは従業婦が影響を受けるかという
 こともだんだんにわかってこようかとも考えておる次第でございます。それらの動きによりまして、さらに万全な措置をとって参りたい、こういうふうに考えております。
  それから、先ほど調布の売春業者の転廃業の問題のお話があったのでありますけれども、これにつきましては、私ども、実は、婦人の更生施設を行なっておられます方に調査に行っていただいたわけでございます。従業婦を集めまして懇談会をいたしまして、もし困る場合には私どもにも来てくれというような話をいたしましたが、現在わかっておりますのは、結婚をした人が二人で、あとの方がどうなったかということは、警察等を通じましてもまだよくわからない、また相談等に来た者もないというような状況であります。
○眞鍋委員 実数をお尋ねいたしましたのは、調布のことばかりではなしに、この法の対象となるべき総数、大体売春婦がどのくらいあるかということをお尋ねいたしました。
○安田(巖)政府委員 売春婦の全体の数は、これは昭和二十八年の十月に各府県の保健所を通じて調べた数字があるのでございますが、労働省でも同時にそういったようなお調べをなさっておるようであります。その数字を突き合せまして、私どもが大体推定いたしますのは、十七、八万人ではなかろうかということでございます。もちろん、その後期間がたち、状況もいろいろ変っておりますので、確かなことはわかりませんけれども、一応、この法案を作りますに当りましては、大体十七、八万人ということを考えておった次第でございます。その中で、いわゆる赤線、それから青線というふうに、比較的まとまった形であります者が八万四、五千人だろうというふうに見ております。重ねて申し上げますと、その中でどれだけの者が、それではすぐに施設の厄介にならなければならぬだろうかということは、なかなか予測がむずかしいのでございましてこの法案が公布になりました暁は、そういったような点につきましても大体の動向がつかめはしないか。幸いに猶予期間が一年有余ございますので、その間にできるだけ少しずつなしくずしに方向転換をしていく措置をとっていきたい、こういう考えでございます。
○眞鍋委員 私は、当局でお考えになっております今の数字とは、だいぶ大きな開きを持ったものが実数であるとにらんでおるのでございます。それは、厚生省自体もなかなかこの的確な把握は困難だと言っておられますが、この中には、性病予防法による強制検診や患者の接触者調査から各保健所がつかんだ数なども入っておるようでございますが、これらをもとにして売春婦の実数をお出しになりますということは、私どもの考えた数字とはだいぶ開きが出てくるわけがあるのでございます。最近私もある程度調べてみたんですが、公の診療所などには大体いやがって来ないのです。そしてそこへ参りますと住所・氏名から一通り全部調べ上げられますので、あとがうるさいというので、大体お上でこしらえていられますような強制検診を受けるようなところには門前雀羅を張るといったような状態でございまして、そのかわり、組合などでこしらえておりまする診療所などのごときは千客万来というわけで、この面をお調べになった上の実数を出してごらんになりませんと、受け入れ態勢構成の上において大きな誤算が生じてくると思いますが、そうはお考えになりませんですか。
○安田(巖)政府委員 先ほどから申し上げますように、確かな数字というものはなかなかつかみにくいわけでございまして、厚生省が保健所を通じて調べました数は、今眞鍋先生の御指摘になりましたような接触者調査でありますとかあるいは検診等を行いましたものを入れましても、せいぜい十六万ぐらいであります。先ほど十七、八万人と申しましたのは、そのほかに散娼等においてつかみにくいものも推定で入れまして、大体十七、八万人だ、こういうことを申し上げたのであります。あるいは、これは推定が入っておりますから、若干の間違いがあることだと思っております。
○眞鍋委員 水かけ論でございますから、やめます。若干というような程度のものではないかと思いますが、そうおっしゃいますならば、それでよろしゅうございます。それにいたしましても、昨年の国会において、保護更生の施設に政府の答弁の中で一番高い数字を示しておりましたのは八十億でございます。その次にぐっと下って十六億円台であります。それが、その保護更生の施設を予算的措置をして出すという約束の出た今度の法案には、厚生省あたりでゼロにひとしい四千万とかいうような単位を持ってこられて、大体は都道府県に押しつけ仕事にしてしまった。それで、その都道府県に押しつけましたものの中でも、逃げられないものは婦人相談所だけで、あとは、婦人保護施設は設置することができるとしてありますから、やりたくなければ地方公共団体はやらなくて済むのですが、そんなたよりない法律を先に作って、それで私は大丈夫だろうかと実は心配いたしておるわけでございますが、一体、政府がもくろんでおられまする受け入れ態勢というものでは、どのくらいの員数が処理できる見込みでございますか。その目下の構想における受け入れ人数というものを一つお示し願いたい。
○安田(巖)政府委員 先ほど八十億円という費用が保護更生のために要るというお話がございましたが、この前の国会に出たことは確かにその通りだと思います。それは、当時そういった婦女が五十万おるというような話がありまして、警察の方で五万くらいは検挙できるというような話をされたとかいうような新聞記事が出たものですから、当時のこの五万人をもし全部入れるとすれば八十億円の費用がかかるということを申したわけでございます。その後だんだんこの法案の輪郭もわかって参りまして、売春行為自体が処罰されておりません。また、施行の期日が昭和三十三年の四月一日でありますこと等も考え合せまして、明年度は、とりあえず、とにかく各府県に婦人相談所を置く、同時にまた相談業務に従事いたしますために婦人相談員を置き、これでできるだけさばくような相談指導をやっていきたいと思っております。それでなおうまくいかないものもございましょうから、それを引き受ける施設といたしまして保護施設を作るわけでございます。御指摘のように、設けることができるということは、はなはだ不徹底でございますが、いろいろな事情もございましたし、また各府県ごとにいろいろ売春の環境も違いますので、必ずしも各府県に一つ設けなければならぬということにきめますことがいかがかというような点もございまして、とりあえずはこういうふうなやり方で参ったわけでございますけれども、この法案が公布になりまして、その後の状況を見まして、予算措置として必要でありますならば万全の措置を考えたいと思っている次第でございます。
○眞鍋委員 収容人員は。
○安田(巖)政府委員 収容人員はなかなかここではっきり申し上げられないのでありますが、それでは、施設に幾らくらい来るか。これは、昨日申し上げましたように、大体本人の同意があって相談づくでここに入っていただくことでありますので、引取人その他のある方につきましては、相談所で引き取ってもらう場合が相当あるかと思います。施設に入れましても、一年とか半年とかいう回転の速度等の問題もありますが、現在かりに各府県に一カ所ずつあるというふうに考えますと、相談所を合せましてもせいぜい二、三千人の数しか入れられないかと思っております。
○眞鍋委員 かりに政府の数字のように十七、八万人として、その中で特に収容しなければならぬ者はわずかなものでありましょうから、その数字をつかまえて収容施設との比べ合せをすることは穏当ではないと思います。しかし、法務省の保護局でお出しになりました東京保護観察所における売春婦更生保護実施状況の中には、東京地検が扱った売春関係の事件のうち起訴猶予にした六割について述べてございますけれども、この起訴猶予のほとんど全部が売春婦だというように書いてあります。従来、この保護更生の手当が万全でなかったために、再び同種類の犯行を反復するおそれがある者をもそのまま釈放せざるを得ない状態だったと書いてございます。どうしても保護更生施設の完備と職業の補導などをやらなければならないその対象員数は、政府のお考えになっておりますよりももっと膨大なものでなければならぬと思いますので、私は、甘い考えを捨てられて、ほんとうに法の運用をなさろうというのならば、もう少しじっくり腰を据えて的確な数字をつかまえて、遺憾なきを期せられるように希望いたしておきます。
 私は、この案が運用されるというときになって参りますと、少年法を改正したり、少年院の大改革をやり、大粛正を行なって、根本的にこの保護更生の施設については再出発をしていただかなければ、今のようなルーズな状態で、そこへ大ぜいの補導者を送り込まれるということに対しましては、どうも心配でおまかせができない気持でおります。おそらく、お役所のことでありますから、実態にはきわめてうといであろうということは想像いたします。もっとその直接の関係者の面からいろいろの問題を実例によって取り上げて、しっかりこの法の運用に当っては出直していただきたいと思いますので、極端な事例についてあげてみようと思います。大体、私どもの調査したところでは、初等少年院もあれば中等少年院もあり特別少年院もありますが、しかし、この少年院に入れられた者は、初等少年院で補導の目的が達せられた者にきわめて少くて、それは順繰りに中等少年院に進級し、また特別少年院へと上って参りまして、ここを循環して長い間補導の目的を達しないという者が七〇%くらいはあると聞いておりますが、そういうことはございませんか。お係の方で御説明を願います。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 二十才未満の少年の問題につきましては、現在少年法の適用がございまして、少年院で矯正教育を施すことに相なっておるのでございます。女の子を収容する少年院は、現在全国で十四カ所ございます。その収容者が全体で約千百名ばかりでございますが、その少年院に収容いたしておりまする少年の中で、売春の経験を持っておりまする者は大体四百名でございます。パーセンテージにいたしますと約三七%に該当いたしておるのでございます。これらの女の子たちは、いろいろな罪名で入ってきております。売春をいたしました経験もありまするが、直接少年院に収容された者の犯罪行為ないしは虞犯行為は、窃盗が最も多いのでございますが、そのほか、詐欺とかあるいは横領とか、その他特別法犯、これは覚醒剤違反なんかが相当多いのでございます。その他虞犯というのがございますが、こういういろいろな罪名その他虞犯行為によりまして、収容されて参っておるのでございます。
 これらの収容施設におきましては、大体一年から一年二、三ヵ月余りにわたりましていろいろ学科あるいは職業指導を主にいたしました補導をいたしまして、それぞれ教育を施し、目的を達した者につきましては、ほかに更生保護委員会というのがございますが、その更生保護委員会で審査をせられた結果、仮退院もしくは退院の処置をとっておるのでございます。この少年院に収容いたしております子供たちは、いろいろな経歴を持った子供たちが多いのでございましてこれを教育していきますることはなかなか困難でございます。しかしながら、学科教育をいたしますと同時に、主として職業指導をいたしまして、収容施設から釈放後独立の道が立てられるというようなことを考えまして、もっぱら教育を施しておるのでございます。お説の通り、その効果の万全を期することはなかなか困難でございまするが、まだこの施設を出ました者の再犯率等につきまして的確な数字をつかみ得ないのでございます。と申しますのは、この少年たちにつきましては、実は指紋の採取をいたしていないのでございます。刑務所へ収容されました者は全部指紋をとっておりますので、これが再犯をいたしました場合、割合再犯率をつかむことがたやすいのでございます。少年につきましては、それをいたしておりませんので、的確な数はつかみ得ないのでございます。しかしながら、われわれの考えでは、相当高度な成績をおさめておるものと考えております。的確な数字は申し上げかねまするけれども、一応さように御了承願いたいと思います。
○眞鍋委員 なるほど、なかなか一筋なわでは参らない者が御厄介になっておるのですから、そう簡単には成績があがらぬだろうと思います。むろん本人の性向などにもよろうと思いますけれども、もう一つ、そのほかに、これを補導すべき教官が適任者でないという面がありはしませんでしょうか。どういう人を一体少年院の教官にされておりますか。大体の目安をどこにつけておいでになるのですか。採用規定か何かあるのですか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げました通り、少年院におきましては、いわゆる矯正教育を施すのでございます。従いまして、学科教育をいたしますると同時に、その者の今後のなりわいの道を立てさせるという意味から、職業指導をやっておるのでございます。御承知のように、こういうふうな施設に参ります子供は、割合学校のきらいな子供たちが多いのでございまして、学科教育をいたそうと思いましても、なかなか十二分にいきかねるのでございまして、義務教育を十二分にやっていない者も相当入っておるわけであります。これらに対しましては、義務教育を受けさせまして、それぞれ中等の教科を終えたという卒業証書等を受領させるように導いておるのでございます。しかしながら、ただいま申し上げますように、学科教育ばかりじゃなくて、職業指導をいたします。さような面から申しますと、必ずしも学校の教師の免状を持たれない方が――農業の指導をするとかなんとかいうふうな必要性も起って参りますので、全部が全部免状を持った方というわけには参らないのでございます。
  少年院の教官は現在のところ千六百五十四名おります。そのうち教員の免許証を持っておりますのは三百六名でございます。学歴を申し上げますと、大学を卒業した者が二百三十六名、専門学校の卒業者が三百四十九名、中等学校もしくは新制高校卒業者が八百二名、高等小学校卒業者が二百四十八名、小学校卒業者が十九名、こういうふうな状態に相なっておるのでございます。この高等小学校もしくは小学校と申しますのは、ただいま申しましたような農業の指導をいたしております人、あるいは竹かごの製造とか大工とか、そういうふうな技術の面で指導いたしております者も教官として採用しておるのでございます。
 この教官の採用の基準につきましては、詮衡要領というものを設けておりましてこれは昭和二十六年の通牒で出しております。これをちょっと読み上げますと、「左の資格を有する者より学科試験、身体検査及び人物考査を行って教官としての必要な学識及び適応性を有するかどうかを判定したうえ採用者を決定する。(1)学校教育法による高等学校又は旧中等学校令による中等学校を卒業した者で青少年の教育及び指導の実務若しくは担当すべき実科種目と同種の職業に三年以上の経験を有する者。但し職業補導関係の職務に従事する教官の資格は昭和二十五年八月十五日法務府人補第一、六九三号官ヘの採用又は昇任の基準についてに定める資格によることができる。(2)短期大学学校教育法第一〇九条による修業年限二年又は三年のもの)を卒業した者又はこれと同等以上の学歴があると認められる者」、これを基準といたしまして、採用試験を行なって採用いたしておるのでございます。なお、ちょっと参考までに申し上げますが、矯正施設の中で――刑務所でも矯正教育をやっておるのでございますが、刑務所と比較いたしますと、少年院の方の教官は相当学識が高くなっておりますので、その点もちょっつとつけ加えて申し上げたいと思います。大体の比率を申し上げますと、少年院は、ただいま申しますごとく教官が主になっておりますが、そのほかに、技官とかあるいは事務官、雇用人も全部含めて申し上げますと、ただいま申しますような教官の比率がさらに悪くなって参るのでありますが、それにいたしましても、現在の少年院では、小学校卒業だけの者が二・五%、それから高等小学校、新制中学卒業以上の者が二〇%、それから新制高校卒業程度の者が四四・八%、それから専門学校卒業の者が一九・五%、大学卒業者が一二・三%ということになっております。これを刑務所と比較いたしますと、刑務所の方では、小学校卒業者が二・三%、高等小学校卒業ないしは新制中学卒業程度の者が五八・二%、それから新制高校卒業者が三三・八%、専門学校卒業者が三・七%、大学本業者が二・〇%、こういうふうな比率になっておりまして少年院の方では専門学校もしくは大学卒業者が約三二%、三割を占めておるという状態でございますので、教官を中心といたしました職員の教育程度ないしは人物につきましては相当関心を持ちまして、りっぱな者を採用するようにという考え方で目下採用いたしておる状況でございます。
○眞鍋委員 大へんよく事情がわかりました。ことに、相当の教育を受けました者がその少年院の中に入ってきているのですから、そういう者に対しましてはやはりそれ相当の教官を差し向けて善導していただかなければいけないだろうと思います。世間の評判では、簡単な見張りぐらいに使われたり看守程度の人が教官と称して相当からいばりをしておりますために、補導せらるべき側の方で大分感じが悪いものがあるということでございます。刑務所と違いまして労役に服させる場所ではなく、補導する場所でございますから、なるべくその者が信頼できるような教官を差し向けられて下世話の言葉で言うと、なめられることのない補導のあり方を希望いたすものであります。
 なぜそういうことを私が取り上げているかと申しますと、法務省の少年院でしばしば問題になってきておりますのは、リンチ事件です。暴力を振わなければ補導ができないというような考え方を持たせることは、入っていく者についてもいい気持ではございますまいし、また、教える方でも、暴力でいかなければ教育ができないような考え方では、目的は達せられないと私は思うのでございます。昭和二十八年の三月に、久里浜の少年院のリンチ事件というものを各新聞社が取り上げまして大騒ぎした事件がございましたが、この事件の発覚の端緒はどこだったかというと、全身に傷を負うようなひどい目に久里一浜の少年院であったために、ここを逃亡して警察に融け込み訴えをしたというのが、この事件の発覚の発端でございます。私の聞くところによれば、このリンチ事件の教官は、公務員試験にも通っておらぬし、まあヨタ者の上りみたいな者であったといううわさが立っております。むろん御処分になったと思うけれども、いまだに久里浜の少年院というものは各少年院の中で最も有名なリンチの盛んなところだと申されております。現在そこに行って子供たちの身体検査をしてみればすぐ証拠が出ると言われているくらいでございますが、久里浜の少年院に対しては現在の情報は何もお持ちになっておりませんでしょうか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 昭和二十八年の久里浜少年院におきまする不祥事件の発生につきましては、私どもまことに遺憾しごくに存じまして、監督の立場におりまする矯正局といたしましても深くおわびを申し上げる次第であります。
 この事件は裁判所の裁判を受けましてすでに確定いたした事件でございますので、今全部の資料はございませんが、ただいま私の手元にありますのは、仰せのごとく、昭和二十八年十一月四日の午後四時ごろに起った事件なんでございます。久里浜の少年院と申しますのは特別少年院でございます。少年院の中に四種類の施設がございます。初等少年院、これは小さな子供でございます。それから中等少年院、これは年令十六才以上をおおむね収容いたす施設でございます。それから医療少年院、これは主として精神あるいは身体の障害のあります子供たちをなおす施設でございます。それから、もう一つが特別少年院と申します施設でございます。この特別少年院と申しますのは、最も処遇上困難を来たしまする性格を持っておる少年たち、こういう処遇上非常にむずかしい少年たちを収容する施設なんでございます。この久里浜少年院もその特別少年院の一つなんでございまして、ただいま申しますような少年たちを収容いたします関係から、施設が足らないところを急に広げました関係もございまするけれども、実は以前刑務所であった施設を転用いたしまして特別少年院に切りかえました施設でございます。ここに収容いたしております少年が、当日教官に対しましてまさかりを振り上げて切りつけまして、教官に重傷を負わしたのでございます。その際に、同僚の少年たちが、その加害者の少年を取り静め、また、かけつけました教官たちがその加害のO少年に暴行を加えたという案件なんでございまして、この当該の少年が教官にまさかりを持って瀕死の重傷を加えた事件と関連を持った事件が本件なんでございます。その際に少年も警部その他に傷を負ったのでございますが、どうも、真相を聞きますると、教官たちがあるいは背中をなぐったとか、あるいはしりをバットでなぐったとかいうふうなことのほかに、同僚の少年たちが先生に加勢をいたしまして、相当なぐったりけったりしたのも加えられて、それが全部先生の責任に帰したようなきらいも見受けられるように存ずるのでございます。いろいろな事情があったかと思いまするが、この教官のうち三名が起訴されまして二名は懲役八カ月、一名は懲役六カ月、三名ともいずれも二年間の執行猶予の判決を受けたのでございます。それで目下確定いたしたのでございます。
 さような状況で、この事件ははなはだ申しわけございませんが、さようないきさつから起った事件なんでございますが、この特別少年院と申しますのは、ただいま申しますような少年たちを収容いたしておりまするために、その処遇上非常なむずかしさを伴っておるのでございます。私らの方でも、その原因をいろいろと調査し、いかにかような少年たちを処遇したらばよかろうかというので、あらゆる方面からこれを検討いたしているのでございまするが、大体こういうふうな扱いにくい少年たちは、よく調べてみますと、性格的に相当片寄った少年たちなんでございます。
 少年院に入っております少年たちの精神状態を調査いたした資料がございますが、それを大体申し上げますと、正常な精神状態の者は約二八・八%、三割弱でございます。それから、準正常と申しまして、まずまずこれならば普通として取り扱われるだろうという状態の者が三八・五%でございます。それから、精神障害者、ただいま申しますような精神上に支障のあります者が三二・六%ということに相なっているのでございます。大体三分の一は正常な者、三分の一は準正常、三分の一は精神に障害のある者というように、大ざっぱなことを申しますと三分の一ずつに分れるのじゃないかと思うのでございます。その精神障害者の中で、精神病質の者が一一%、それから神経症の者が一・九%、それから精神病の者が一・三%、それから精神薄弱者が一七・九%、こういうふうな状況を呈しているのでございます。従いまして、これら精神的な欠陥のあります者か大体いろいろな事故を起す少年たちでございまして、これらをいかに取り扱っていったらいいかということに一番の悩みを現在持っているのがわれわれ矯正職員でございます。これを科学的にいろいろ検討いたしまして、実は最近調査をいたしておりまして、まだ結果は出ておりませんが、ことしの二月から都下の大学の精神科の先生あるいは心理学の先生等を動員していただきまして三班に分けまして東京付近の特別少年院の少年たちを個々につきまして全部調べていただいたのでございます。そして、それらの調査の結果を集計いたしまして、これらの少年たちをいかに取り扱っていったらよかろりかという、何らか一つの指針を持ちたいものだというので、資料を集めていただいているのが現状でございます。非常にこれらの少年たちを取り扱いますのは困難でございまするが、目下われわれといたしましても懸命の努力をいたしているのでございます。ただいま御指摘の久里浜の少年院は、さような少年たちを収容いたしておりますが、二十八年以来はさような不祥事件は起さずに現在まで参っております。現在では少年たちも明るくその日その日を送っておりますので、眞鍋委員におかれましても、一つ久里浜少年院をごらんになっていただきまして、職員を激励していただきますれば、まことに仕合せだと存ずる次第であります。
○眞鍋委員 なかなか、お心づかいもわかりまして教育の困難さはよく納得ができます。しかし、こういう体罰のうわさの高い、常にリンチが行われているというところに、この法律が通過いたしますと、十四才からのかわいい婦女子を送り込まなければならない親の身になって私は考えてもらわなければいかぬと思う。まさか、こういう者と一緒に、この法律によって生ずる保護更生施設としてからみ合わされるものではなかろうとも思いますけれども、あまりにも今日までのルーズな状態を見るにつけ聞くにつけ、私には、根本的な大改革をする御決心がないと、この法律からそういうところに送り込むことは非常に心配されますので、あまりいい方のお役所からだけの報告を信じないで、民間からの情報もお取り入れになった方がよかろうと思います。少年院の脱走事件というものはしばしば行われるものでございますが、われわれの知っておる範囲では、このうち体罰、リンチというものに対する恐怖観念が逃亡の動機になっておるのが相当の数に達しておると見込んでおります。これは私の私見でございます。しかし、この私見を裏づけるものに、現在平気でリンチをやっておるといううわさの高いところがある。それは多摩の少年院でございますが、現在でも牢名主がおって、この牢名主には一番乱暴者が選ばれておる、そういう事実がございますかどうか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 仰せのごとく、少年院から逃走する少年たちが相当ございます。その原因は種々あるのでございまして、一がいには申されないのでございますが、少年院は、施設の設備からいたしまして大体、閉鎖式のものと、半閉鎖のものと、開放のものと、三種類に分れておるのでございます。従いまして、開放の施設が本来から申しますと少年院としては最も理想的なものでございますので、かくあらしめたいと実は考えておるのでございますが、少年たちに矯正教育を施すにつきましても、何と申しましても身柄を確保しておくことがまず大切なわけでございまして、さようなところから、動揺期にあります少年たちにつきましては、やむを得ず強制的に身柄をとめ置く閉鎖もしくは半閉鎖の形式をとらざるを得ないのでございます。さようなところから、どうしても開放もしくは半開放の施設におきましては逃走も相当多いのでございます。しかしながら、目下だんだん逃走の事故は減りつつあるのでございます。大体、概数を申し上げますと、昭和二十五年には年間二千二百三十一名逃げたのでございますが、二十六年には千五百四十七名、二十七年には八百六十六名、二十八年には九百三十、二十九年には八百八十三名、三十年には七百五十二名というふうに、漸次逃走の事故は減少いたしておるのでございます。なお、この逃走の理由といたしまして、仰せのごとく収容少年間のリンチということが原因したものも私は皆無だとは申しません。あるとも思いますけれども、しかし、すべてがこれに原因しておるのだとは私は考えません。少年たちは非常に動揺しやすい少年期にある少年たちでございます。ちょっとした刺激にもすぐ動かされまして、施設を飛び出すというような少年が多いのでございます。実は、私、せんだって大阪の浪花の少年院に巡視に参りまして、ちょうど院長室に入りましたところが、どやどやと大騒ぎ、何事かと思って窓から見ますと、少年が二人逃げておるのを実は私現認いたしたのでありますが、これは、少年院の校庭で先生が体操させておるそのすきに、先生の目の前で飛び出したのでございます。考えてみますれば、さようなところで逃げ出してもすぐとっつかまるのでございますが、もう、ちょっと逃げ出したくなると、矢もたてもたまらないというのが少年の心理状態であると思うのでございまして、かような事件もあるのでございます。どうぞその辺もよくお察しを願います。必ずしもさような原因から少年たちは逃げるとは限らないわけであります。
 なお、ただいま多摩少年院にも牢名主がおるというお言葉でございます。私、さようなことはなかろうと実は確信いたしておるのでございますが、よく調査をいたしたいと思います。牢名主と申されますと、いかにも牢屋のようなところのように聞えますが、多摩少年院は実は日本における一番古い歴史を持ちました少年院でございます。この少年院は周囲に垣は全然ございません。なお、各寮には先生がついておりまして、出られないようにはなっておりますが、なお、単独室と、雑居と申しましょうか、五、六人から十人くらい一緒に収容しおります室とがあるのでございます。大体寮舎ごとに閉鎖式にいたしております。各部屋々々は閉鎖式にはせずに、寮全体を閉鎖式にいたしておるのが現在の半開放式の少年院の現状でございます。一応申し上げておきます。
○眞鍋委員 もとより、当局の方へ牢名主という届は出ていないと思います。しかし、あそこらになりますと、教官はそういう者を手下に持っていなければ統御ができないという現状になっていないでしょうか。私の聞くところでは、どうしても一番乱暴な者を牢名主として見させていなければ教官の権威が保てないというような実情だと聞いておりますので、最も由緒の深い多摩少年院でございますから、私どもも一ぺん内部をよく見せていただきたいと思います。私どもの伝承いたしたところによりますと、シャープ・ペンシルを手の甲から中に通り抜けるくらいのリンチはしょっちゅう行われておるということで、見に行きましても、その少年にちょっとからだを見せいと言ってそれとなくのぞいてみるのでなければ、わきからはなかなか証拠に上るようなものは見せないという話も聞いておるのでありまして、特に今後この更生施設の完備という点などに触れて参りますと、どうしても今までのあり方ではいかぬ、新規まき直しにお考えになるのでなければ官僚独裁の臭味が露呈されてくるのじゃないかと思いますので、この点について特に私は御注意を喚起いたしておるわけでございます。
 そこで、本法案の成立によって家庭裁判所とのつながりが出てくるわけでございますが、この家庭裁判所というものをあまりこわがらせないで、少くとも売春問題からよって生ずる裁判には、強盗、窃盗と同様な心持で接せられることは私は当を欠くものだと存じまして、今後の家庭裁判所のあり方につきましても、この少年院等に私が非常な不安を持っておると同様に、家庭裁判所に対しても少し私は希望を申し述べてみたい。
 昭和二十六年に、千葉家庭裁判所で、当時十八才の少年が無罪を主張しておったにかかわらず、窃盗罪で入所させられて、刑期が終ってから真犯人が発見されたが、これに対しては刑事補償も何もないために、少年なるがゆえに泣き寝入りをさせられたという事件があったでしょうか、どうでしょうか。
○高橋委員長 この際お諮りいたします。
 警視庁養老防犯部長及び野田警備第二部長を参考人と決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さように決します。
 次に、最高裁判所当局より発言の申し出がありますので、国会法第七十二条第二項の規定により、これを許可いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり]
○高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。宇田川家庭局長。
○宇田川最高裁判所説明員 眞鍋委員のお尋ねの事件は、昭和二十四年六月、柳悦次郎という少年が、千葉県で衣類七点を盗んだということで、家庭裁判所の方に千葉一ノ宮地区警察署から送致されました。この事件につきまして、柳悦次郎が終始犯罪事実を否認しておったにもかかわらず、家庭裁判所といたしましては、少年から臓物を買い取ったという竹内はるという女性の取調べなどを行なった後に、犯罪事実を認定いたしまして、東京少年院の分院、水府学院の方に送致したという事件がございますが、多分この事件が御指摘の事件でなかろうかと思うのでございます。
 この案件につきましては、その後、竹内はるが、一ノ宮の簡易裁判所におきまして、その証拠物になっておる衣類の窃盗をしたということで起訴されまして懲役一年六カ月に処せられ、判決が確定いたしました。従いまして、このあとの刑事事件から見ますると、前の少年の事件は冤罪であるということに相なりまして少年の保護者から東京の地方裁判所の方に国家賠償法による損害賠償の請求がございました。その結果、東京の地方裁判所におきまして、昭和二十七年十月二十七日に和解が成立して四万六千二百円を国が原告である柳悦次郎に支払ったということがございます。この事実がおそらく眞鍋委員の御指摘の案件ではなかろうかと思います。
○眞鍋委員 今のは、国が支払ったというのですか。
○宇田川最高裁判所説明員 御承知の通り、保護処分につきましては現在刑事補償法の適用はございませんので、国家賠償法の規定に基いて国が原告柳悦次郎に、先ほど申し上げました金額を支払ったのでございます。
○眞鍋委員 その問題は確かにそれに間違いないと思いますが、刑事補償法に基いては補償ができないというその面については、今後とも、御改正になる意思はございませんで、現状通りを御踏襲になるわけですか。
○宇田川最高裁判所説明員 保護処分も、やはり、刑事処分と同様に、国民の側から申しますと、強制力をもって身柄を拘束される結果になりますので、かりに本件のような不当な拘束があった場合には、国民である少年に対して何らかの国家的な補償をする方が妥当ではないか。御承知の通り、国家賠償法によりますと過失主義になっておりますが、刑事補償法の方は無過美主義になっておりますので、刑事補償法の補償は必要じゃないかというような議論が私ども家庭裁判所の実務家の中から常に叫ばれておりますので、この問題につきましては、私どもも目下検討し、法務省の係官とも数回話し合ったことがございますので、これについてできれば立法を考慮いたしたいと存じております。しかしながら、立法当時の事情を聞いてみますると、かような保護処分については世界各国どこの国におきましても刑事補償法的な補償をしている国はないというふうな点などもありまして、なかなか議論の存するところでございます。しかしながら、私ども家庭裁判所の実務家の意見といたしましては、ぜひともこういう問題につきましては立法的な措置を講じてほしい、こういうふうに言っているのが事実でございます。
○眞鍋委員 ぜひこの問題は外国の例などにこだわりなく一つお取り上げを願っておきたいと思います。
 そこで、もう一つお伺いしておきたいのは、この家庭裁判所の審判というものには、一体、刑法上の刑の量定と申しますか、何年くらいまではその家庭裁判の審判で言い渡しを受けられるのですか。
○宇田川最高裁判所説明員 保護処分、ことに少年院送致のような収容処分につきましても、刑事処分のような刑期というものは現在ございません。しかしながら、保護処分は、まさしく、少年を補導して、少年をして再び犯罪を犯すようなことなからしむるようにする教育処分でございますので、おのずと教育がうまくいっておるかどうかと、いうような点を少年院の方で考慮いたしまして、また、あるいは、更生保護委員会という委員会がございますが、その方で考慮いたしまして、これを仮退院あるいは退院せしめておる。従いまして、実際は、刑期はございませんけれども、一年かあるいは一年半くらいで少年院を退院または仮退院しておるのが実情でございます。
○眞鍋委員 その者が少年の際、少年院に送られた者が、すでに成年に達したという場合には、成年に達してもなお少年院に置くというわけでございますか。
○宇田川最高裁判所説明員 少年院の収容期間につきましては、少年院法の第十一条に規定がございまして、一般的には、二十才まで少年院に置いて、二十才に達したならば退院させなければならないということになっております。少年院法第十一条には、「在院者が二十歳に達したときは、少年院の長は、これを退院させなければならない。但し、送致後一年を経過しない場合は、送致の時から一年間に限り、収容を継続することができる。」、こういうような規定がございます。従いまして、このただし書きの場合には、二十才をこえた場合でも少年院に継続して収容される場合がございます。このほか、十一条の第二項には、「少年院の長は、前項の場合において、在院者の心身に著しい故障があり、又は犯罪的傾向がまだ矯正されていないため少年院から退院させるに不適当であると認めるときは、本人を送致した裁判所に対して、その収容を継続すべき旨の決定の申請をしなければならない。」ということになっておりまして、かような場合、一は、裁判所の決定を経て二十才以上において収容を継続することができるわけでございます。なお、そのほか、特段の場合には二十六才まで医療少年院に収容を継続することができるということが五項に定まっておりますが、実際問題といたしましては、かような長く収容することは全くございませんので、現に二十三才以上の者は一人もないと聞き及んでおります。
○眞鍋委員 二十六才まで置けるという規則があるとすれば仕方がございませんが、しかし、大体通常の場合は、なるべく、満二十才に達したら少年法の適用から他の方に引き直すか何かしていただいた方が、いい面があるように思いますので、なおこの点については御研究を願っておきたいと思います。私の聞いた範囲でも、満二十才をこえてもなおかつ少年院を出されなかったためにだいぶいらいらして気分が悪くなったというような実例も聞いておりますので、その点は一つ御研究を願っておきたい。
 なお、私はしろうとでございますからわかりませんが、この少年の入所に対しましては、刑法のいわゆる仮出獄と申しますか、そういうようなものが何かありますでしょうか。
○宇田川最高裁判所説明員 犯罪者予防更生法に仮退院という制度がございまして、これはほとんど仮出獄と同じような審査を経まして、そうして退院をさせております。
○眞鍋委員 なかなか今申されたような適用はないらしいのですが、あるとすればよろしゅうございます。
 そこで、この間の例の京都の傷害致死被告事件の森島検事の上申書を見ましたですが、なんですか、この問題は、一番最初から検事の方に持っていってこの事件が表向きにされたのですか、あるいは、少年であるために、それまでの間に何か一つの段階が必要であるようにも考えられますが、それはどういうものなんでございますか。
○長戸政府委員 お尋ねの京都事件の四人は、当時皆二十才未満の少年でございましたので、警察の取調べがありましてから京都地検に事件が送致されまして、検事において調べた上で家庭裁判所に送致いたしまして、家庭裁判所の調査官の調査及び家庭裁判所の審判を受けました上で、少年法二十条によって、検察庁の方に刑事処分担当として逆送されて参ったわけであります。その上で、地検の方から今度は一般の地方裁判所、刑事裁判所の方に起訴した、こういう次第でございます。
○眞鍋委員 そうすると、私にちょっと一つ疑問がある。これは簡単な問題とお考えになっちゃいかぬ。この誤判事件の一番大もとになってくるところは、家庭裁判所の少年調査官が最初調査をしておるわけですが、家庭裁判所の少年調査官はこの事件を起訴すべきものなりやいなやということをきめて検察庁に逆送するんじゃないかと思いますが、その点はどういうふうになっておりますか。
○宇田川最高裁判所説明員 京都の五番町事件につきましては、私どもの調査した範囲内におきましては、調査官が調査いたしましたところが、刺傷の点につきまして少年はともに否認いたしますので、真相が明らかでなかった。従いまして、その少年の三名について調査に当った川口調査官は、すべて検察庁に送致することを不当と初め考えまして、一人の少年を少年院送致、一人を試験観察、一人を保護観察というような意見をつけて裁判官の方に提出いたしたのであります。しかしながら、他の塩見という調査官は、山田という少年を調べたところが、やはり犯罪の事実がはっきりしないというところで、さような場合には刑事裁判所の公正な刑事裁判を受くることが妥当だという意見のもとに、真相を明らかにするという趣旨から検察官送致の意見を付して家庭裁判所の裁判官に提出したのでございます。その後川口調査官もさような意見に変りまして、結局、四少年につきましては、家庭裁判所で調査をした結果、刺傷の点がはっきりしてないという結論で、家庭裁判所の裁判官であります小田裁判官は、そういう点を刑事裁判所ではっきりさしてもらうという意味も含めまして二十条送致をしておるのでございます。
○眞鍋委員 私は、この問題が大きな事件として取り上げられる大もとには、家庭裁判所の調査官の問題が今まで表に出てきてないことだと思う。この問題がほんとうに究明されなければ、この問題の核心がつかめない。家庭裁判所というものの大事なこと、これは私はなおざりにならぬと思う。本来ならばここから掘り下げていかなければこの問題の解明にはならぬのであるが、この上申書にはそういうことは一言も触れてないので、なるべくならば私も触れたくないが、その後起るあらゆる事象について、これか先入主となったり、あるいはこの問題が大きな波紋を描くような重大な要素を持っておることを一つ銘記していただきたい。今後も起ることでございましょうけれども、成年未満のことについてはどういう面でもはっきり見通しがつくというくらいな見識を持って臨んでいただかなければ、今後解放される婦女子がこの家庭裁判所においてお取扱いを受けるというその法律を審議いたすに当りまして、私はこの点は御注意を喚起しておきます。法律的にはいろいろ問題があろうと思いますが、私は、常識的な判断で、過ぎたことではあるけれども、もしこの少年調査官にしてここではっきり間違いない判断を下しておったとすれば、この問題は起らなかったかもしれない、こういう考えを浮べるのでございますが、今後本法の施行によって拡大強化されなければならない家庭裁判所の将来に向っての御当局のお心持ちをここで承わっておきたいと思います。
○宇田川最高裁判所説明員 人権の問題はまことに重大であります。従いまして売春少女の取扱いにつきましては、ことに他の強盗とか窃盗とかいうような刑法犯と違いまして、まことにむずかしい問題があると存じます。従いまして、私どもの方針といたしましては、なるべく、売春少女につきましては、従来もそうでございますが、女性の調査官をして調査に当らせる、しかもその女性につきましては教養の高い者をして当らせることを考えておる次第でございますので、さよう御了承願います。なお、売春少女のみならず、一般少年につきましても、今後とも、眞鍋委員のおっしゃる人権尊重の問題等について家庭裁判所においても十分注意するように、会同その他で裁判官あるいは調査官に伝えたいと存じます。
○眞鍋委員 どうも、しろうとのことばかりで、お答えがしにくいだろうと思いますが、この少年法の方でいきますと審判されるのだろうと思うのですが、この審判されるということは、刑事訴訟法の適用を受けて最初から弁護士というものがこの中に介入できるのですか、できないのですか。専門家から一つ教えていただきたい。
○宇田川最高裁判所説明員 弁護士は、つき添い人として少年につき添って、少年の審判に立ち会う場合がよくございます。弁護士という制度はございませんけれども、つき添い人という制度で、弁護士がつき添い人として少年審判に立ち会って少年の保護に努める場合が非常にございます。
○眞鍋委員 そうなって参りますと、私はもう少しお尋ねしなければならぬ。一体、少年なるがゆえに、特に弁護人がおって陳述し切れないところを補足して誤まりなきを期さなければならぬと思うが、その少年に対しては正式の弁護人として立ち会えないということは、それでよろしいとお考えになりますか。
○宇田川最高裁判所説明員 弁護人として立ち会うのでなく、つき添い人として弁護士が立ち会うのでございまして、弁護人がつき添いを申し出た場合には、裁判所の許可その他がなく立ち会えることになっております。なお、少年につきましては、審判に必ず保護者を呼び出しまして、保護者のつき添いのもとに審判をするというのが原則になっておりますので、さような点から、保護者によっても少年を保護するというような建前をとっております。
○眞鍋委員 私のいろいろ聞いた範囲では、最初から刑事訴訟法の規定通り少年といえども審判を受ける場合には弁護人が正当についておって、そして安心のいく陳述をさせたいということを、この問題で苦い経験をなめた連中からしばしば聞くものでございますので、子供であるから特別な行き方をなさるでなしに、むしろ、子供であるからこそ、この弁護人にも十分な弁護のできるように取り計らっていただくことがよかろうと思うのですが、専門家のおっしゃることですから、それで遺漏がなければけっこうでございます。
 そこで、今度は鑑別所の問題について少し伺っておきたいと思います。裁判所法の改正などによりまして、おそらく、法務省の矯正局の所管事項の中の少年鑑別所とかが、これから大きくクローズ・アップされることであろうと思います。だが、従来の鑑別所というところの印象は非常に悪い。世間では、監獄にやるぞと、こう言いますが、あの方面では、鑑別所送りをするぞ、こう二言目には言っておるようでございますが、聞いてみると、監獄よりは――監獄と言いません。今は刑務所ですが、刑務所よりはこの鑑別所の方をこわがる、非常にこれは印象が悪い。それは、鑑別所自体が全く血の通わないしゃくし定木一点張りの冷たいところで、しかも、ここから送られる先は、おそろしい、そうして法の庇護下にあるまじき暗黒世界で、そこには悪の花が毒々しく咲き乱れて、かえって好ましからざる教育を受けるところにこの鑑別所を通じて出ていくのだ、こういう観念がこびりついておるようですが、もう少し鑑別所というもののあり方に反省をなさる御意思はないか。ことに、かよわい女性が、鑑別所送りをさせられるということに対しては、おそらく恐怖心を持って最初から戦々きょうきょうとして出頭に応ずるんじゃないかという印象を受けております。例外なところもございましょう。しかし、格子なき牢獄という別名において鑑別所を呼んでおるような感じがいたしますので、むしろ、この人たちは、そういう格子なき鑑別所送りをさせられるよりは正しい刑務所に入れていただいた方が安心だという陳述をしておる者もあるぐらいでございますので、私は、極度の罪人と違って、性の問題でこういうところに出入りいたします者については、何とか今までの印象を改めてお前たちの保護更生のために、この鑑別所の門を通じてよりよき道を開いてやるのだ、そういうお心持がほしいと思いますが、私の感想に対してお答えを望むことはまことに相済まぬと思いますが、御当局の方はどうお考えになっておられるでしょうか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 少年鑑別所と申しますのは、実は少年法が改正されましたときに新しく設けられました役所なんでございまして、戦後少年法を改正いたしまして、少年たちを今後最も科学的に合理的に保護育成していくのにいかにしたらばよかろうか、この少年たちに対しまする方針は家庭裁判所において審判をなさるのでございまするが、その家庭裁判所で裁判をなさるについての重要な資料を提供するところがこの少年鑑別所なんでございます。かような使命で生まれたのが少年鑑別所でございます。
 現在少年鑑別所は全国に五十一カ所、ほとんど各府県に一カ所ずつあるのでございまするが、ここには家庭裁判所におきまして観護処分の決定を受けました少年たちが収容せられるのでございます。この観護処分は大体十四日を期限として収容せられるのでありますが、その収容せられておりまする間に、精神医学の先生、あるいは心理学の先生、その他内科等の医学的な見地から、また社会科学の点から、この少年たちの資質、心身の状況を鑑別するというのが現在鑑別所に課せられました使命なんでございます。この十四日間に、ただいま申しますように心理学的あるいは精神医学的にいろいろと鑑別をいたすのでありまするが、それには、現在各国で採用しておりますいろいろなテストを行なっておるのでございます。このテストは何十種類にも及んでおります。いろいろな方法がございますが、これらの方法を用いまして現在やっております。昭和二十四年にこの鑑別所ができましてから、まだ実は日が浅い。と申しますと、あるいはおしかりを受けるかもわかりませんが、この問題は非常に困難な状況にありまして、画一的な方法はなかなかむずかしいのでございます。現在いろいろやっておりまするが、昨年以来、何らかこれに標準的なものを持ちたいというところから、このテストの方法を、科学的に基準を設けるべく、目下その集計をいたしておるのでございます。なお、このテストをいたしますと同時に、少年を収容しておりまする間、その少年たちの起居動作その他のすべての行動を通じまして、少年たちが一体いかなる性格を持った少年であるかということを観察いたしております。これを行動観察と申しておりまするが、心理学的な、あるいは精神医学的なテストによりまする分類と、もう一つは行動を観察いたしましたところから帰結せられまする本人の性状、この両者を大体合せまして少年たちの資質の鑑別をいたしておるのであります。ほんとうを申しますと、これだけではまだ足らないのでありまして、なおその上に少年たちの過去の歴史的な状態を加味いたしまして、それをも含めて判断をしなければならないのでございまするが、この方面は、家庭裁判所の調査官が、大体今までの本人のおい立ち、あるいは現在の環境、交友関係あるいは近隣の状況その他万般の社会的な状況をお調べになりますので、それらの資料もなるべく鑑別所の方に提供していただいた上で、本人に対する資質の結果を判断いたします。それを家庭裁判所の方にお送りすることになっておるのでございます。この資質の鑑別につきましては、現在脳波――脳の動きでございますが、脳波の機械あるいは心臓の動きをとらえまする心電、こういうふうないろいろな科学的な機械も備えつけまして、各方面から実は資料を収集いたしておるのでございます。
 ただいま眞鍋委員のお話に、牢獄に通ずる悪の花が咲くとかいうお言葉がございまして、私、どういうことを意味するのかよくわかりかねるのでございますが、ただいま申しますような状況で少年たちを十四日間、これでもしも足らない場合には、さらに家庭裁判所の方で延長していただくのでございますが、さらに十四日延長していただくことになっております。大体この二十八日が限度でありまして、その間に、ただいま申しますような科学的な鑑別をいたしまして、家庭裁判所に資料を提供する。そういたしますると、この資料をもととされまして、家庭裁判所の方では、調査官の調査されました結果をしんしゃくせられ、家裁の判事さんが直接少年たちをお調べになり、保護者等の状況もよくお調べになりまして、その上で少年たちの保護処分を御決定になるのでございます。その上で、家庭に帰す御処分の場合もありまするし、いろいろな処分を御決定になるのであります。従いまして、鑑別所から何か暗いところへすぐ入るというものでございませんので、家裁の方ですべてを御決定になりました上で処分がきまるのでございます。
○眞鍋委員 よくわかりました。ただいまのお話にもございました通りに、まず鑑別所に行って、そこで大体の方向がきめられて、家庭裁判所の審判を受けて、それがどういうふうになるかによってこの者の処分がつくのだろうと思いますが、一般の印象では、鑑別所に入りきりで、それから先どこをどう回されているのやらわからぬといったようなしろうとの印象から、結局は最初連れられていった鑑別所というところへ焦点が移っていくのだろうと思いますが、次に申し上げますようなことを御記憶でしょうか。昭和二十九年十二月二十日に東京家庭裁判所において一年三カ月の審判を受けた長谷部八重子という者が、あなたの方に三日間とめ置かれて、京王線の柴崎駅付近の愛光女子学園に入れられたということでございますが、あなたの方に何かそういう御話録がありましょうか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。お話のような事件がございました。これは少年鑑別所の方には昭和二十九年十二月六日に収容せられております。そして同月二十三日に鑑別所を退所いたしまして、同日から愛光女子学園と申しまする女子少年院に収容せられた事件でございます。
○眞鍋委員 この愛光女子学園というのは、女子少年院とどういう関係があるのですか。
○渡部(善)政府委員 愛光女子学園と申しますのは少年院の一つでございます。これは中等少年院でございまして、女子のみを収容する少年院でございます。
○眞鍋委員 わかりました。この長谷部八重子は、在園中に、先に在園しておる者からからだに入れ墨を入れるように勧められて、友だちの名前を腕に入れられておるようであります。今度退園するときに当りまして、その入れ墨を、医学的にとれるものでしょうか、とったけれどもなかなかあとが残っているというような話でございますが、そういう事実があったかどうか。そして、入園中の者からすりを教えられて、一通りすりが上達するようになって、入園者十数名と旅行したときにはすりを実演して、すったものを分け合ったと申しておるようであります。さらに、入園者一同で、園のやり方に不満があるということで、火つけをした事実があるというのですが、そういう事実があるかどうかはおわかりになりませんか。
○渡部(善)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまの少年は、いろいろな経過をたどって入った子供でございます。愛光女子学園に収容せられましてから、ただいま仰せのごとくに、所内で同僚から入れ墨をされた事実はございます。
 なお、放火をしたということでございますが、これは収容せられましてから間もなくでございますが、翌年の一月の三日ですか、さような放火をしようとした事件が起りまして、その事件に加担いたした事実はございます。
 詳しく申し上げますと、大体ただいま申し上げますごとく、この少年院に収容せられます子供たちは、いろいろな過去を持った少年たちでございます。従いまして、私らといたしましては、お互いに悪い影響を受けないように、感化を受けないようにということをいつも注意しながら教育を施しておるのでございまするが、何分四六時中のことでありますし、大体、女子少年院では、考査期間――考査期間と申しますのは、入りましてから間もなくの時期でございますが、この間にどういう処遇をしていいかということの方針をきめます。これは少年院によって違いますが、大体十日から十五日ぐらいの期間でございますが、その間は単独室に入れまして、少年たちの今後の指導をいかようにしたらいいかということを判断いたします。鑑別所からもいろいろ調査した結果をもらいます。少年院としてもいろいろ調査をしなければなりませんので、その期間の間は、他との交渉を断ちまして、独居室に入れ、そしてよく本人たちの資質を調べるのでございますが、その期間を過ぎますと、大体七、八名から十名くらいの大きな部屋に一緒に収容して教育をいたすのでございます。その間、先生方も十二分に注意はいたしておりますが、どうやらしますと、お互いの間でいろいろな話をいたしまするし、その間に自分の過去の話なんかも出てくることもあり得ると存ずるのでございます。この少年は、一月三日でございますが、ちょうど同じ部屋におりました少年たちが、火をつけてその騒ぎに乗じてここの少年院を逃げ出そうじゃないかというような相談をいたしまして、その仲間に入りましたが、幸いにしまして未然にそれが発覚いたしましたために、さような事故もなしに済んだのでございます。その際に、本人もその中に一枚加わっておりましたので、いろいろ先生からもしかられたことはございます。
 なお、五月五日でございますが、このときに入れ墨をいたしております。同僚の、名前はちょっと申し上げかねますが、Nと申す女の子でございまして、これもなかなかのしたたか者であったようでございます。この少年も女の子でございますが、ちょうど五月五日で子供の日でございますが、お休みの日に、便所に入りまして、先生の目を盗んで、そこでこの少年から入れ墨をしてもらっております。自分のかしら文字をH・Yと自分の手に入れ墨をしてもらったのでありますが、これがわかりまして先生からも非常に不心得をさとされました。また、これは八日の日でございますが、母の日に、母親が少年院にたずねて参りましてとんでもないことをするじゃないかと言って、母からも非常にしかられたことがございます。その後先生からもいろいろと涙の訓戒を受け、だいぶ肝に銘じておるようであるというふうに日誌に書いてございます。そうして、本人もこれにつきましては相当反省もいたしました。だいぶたってからでございますが、十月の十四日でございますが、この入れ墨を手術いたしまして取りのけております。これは、私の方に医療少年院がございますが、その医療少年院から外科の先生が参りましてこの少年の入れ墨を取る手術をいたしまして、取ってもらっております。
 この少年院でさような悪感化を受けないようにということを、ただいま申しますごとく、いろいろと先生方も注意はいたしておりまするが、ちょっとしたすきを見ましてかような間違いをしでかすことがございますので、われわれとしましても、その点十二分に気をつけております。なお、これを動機といたしまして、少年たちにかような間違いのないようにということを十二分に教育もし、少年院を出まするときは、大体少年たちも自分の非を悟り、喜び勇んで退院をしているような状況でございますが、なお行き届かない点もあるかと思いますので、われわれとしても、これはいろいろ御叱正を受けて十二分に改善していきたいと思っております。その点御了承のほどをお願いいたします。
○眞鍋委員 岸本次官にお尋ねいたしますが、ただいまお述べの通りに、私が聞いた話とそちらの御記録とはぴったり合っております。しかも、少年院で直接やっているという。私はそうは思わなかったが、ところが、あなたの直接の管轄下にあるこの少年院で、入れ墨はするし、すりは教わるし、火つけはやるし、一通りここでそういう教育が行き届くというこの問題と、将来の少年院の問題について私がさっきから申し述べていることに対して、あなたの御感想はどうですか。これから婦女子も相当送り込まれなければならぬのですから、一つ責任のある御見解を承わりたい。
○岸本説明員 答弁いたします。御指摘の問題につきましては、主管の局長から詳細にるる御説明申し上げたような次第で、この御説明によって詳細の点は御了承いただけたことと存じますが、一般的に申し上げまして、少年院制度の実施と申しまするものは、はなはだ期間が短こうございまして、少年院の目的とするところ、つまり、少年を感化育成いたしまして、一般善良な社会人の人列に加えようとするこの目標を達成するには、まだまだあらゆる面におきまして欠くるところがあると申し上げざるを得ないのでございましてわれわれといたしましては、運用の面におきまして、また、法制的に改善すべき点がございまするならば、立法その他制度の面において改善しようというつもりでこの問題と取っ組んでおるような次第でございます。やがて売春防止法の関係におきまして女子少年をも収容することになろうと存じまするが、先ほど来御指摘の点は十分体しまして、先ほど申し上げましたように、運用及び制度の両面から十分調査研究いたしたいと存じております。御了承願います。
○眞鍋委員 私は、皆さんの方の欠点を摘発しようというような意味でなしに、正当な生活力を持たないで自分のからだを売ってわずかに支えていこうというような、いわゆる生活力の薄弱な女子供がこれから世話になるところにしては、ちっとひど過ぎると思いますので、どうか一つ気をつけて下さい。将来は、本法によって少年院入りの婦女子と、他のそういう相当のしろものと、やはり同じ所で補導しようというのですか。将来はこの面から来た者どもに対しては分離して補導するというようなお考えでもあるのでしょうか。その点を一つ承わりたい。
○渡部(善)政府委員 先ほど申し上げましたように、千百名の女子の収容少年のうち三割七分の四百名余りが売春の経験を持った女でございます。しかしながら、これらの少年たちは必ずしも同じ罪名で入っていないのでございます。いろいろな犯罪を同時に起しまして入ってきておるのが現在の状況でございます。窃盗、横領あるいは詐欺、覚醒剤の違反、いろいろな形態で入って参っておるのでございます。今後、この売春防止法案が通過の暁、いかような形で入って参りますかわかりませんが、これだけで入ります少年たちは案外少いのじゃなかろうか、この売春行為自体は処罰はされないことになっておりますので、いわゆる勧誘行為で入ってくる者もあるかと思いますけれども、まず、それだけですぐさま少年院に送られる子供たちは割合少いのじゃなかろうかと私は思います。あるいは、この少年院の処分だけが保護処分じゃないのでございまして御承知のように、保護観察処分もございますし、いろいろな保護の手が差し延べられますので、さような面で保護せられる者が多いのじゃなかろうか。私らの少年院に参ります子供は、ただそれだけじゃなくて、その他、ほかに窃盗とか覚醒剤違反とか、いろいろな違反がまじった者が来るのが多いのじゃなかろうかという気もいたしております。しかしながら、われわれといたしましては、なるべく、ただいま申し上げますような悪影響というものがあってはならない。これは眞鍋委員の御指摘のごとく、まことに申しわけないことでございます。われわれといたしましては、さような少女がもしも今後入って参りますとすれば、それらを特に収容する施設を設げたい。もしも少年院の中でどうしてもできなければ、別な建物を建てまして、そこで処遇していきたいというふうに考えております。
○眞鍋委員 行き届いた御答弁を承わりまして、そうでなければなるまいと思います。なるほど、ただいままでやっかいになっております者には、いろいろな他の犯罪がくっついておったかもしれませんけれども、今年はこの法律がその犯罪とは関係なしに成り立ってくるのです。ですから、売春関係のみの者が相当行かなければならぬ。私は、売春関係のみによってそちらに伺った者に対しては、別室でやっていただきたいということを申し上げておったのですが、それに対しては特別な配慮をするという御答弁でございますので、満足いたします。
 それから、そこまではとお考えになるかもしれませんけれども、今度は裁判所の決定で都道府県知事に送致され、保安処分も出てくることだろう。転々として責任の所在が移行いたします間に、お上の気持というものが他の面においても行き渡らないようなことがあってはならぬと思いますので、せっかくのその少年院に対する法務省のお気持が、都道府県を通じて処分をされます面にまで一つ行き届くような御配慮をいただきたい。
 次に、本法では、十八条に、「都道府県は、要保護女子を収容保護するための施設を設置することができる。」というふうになっておりますが、それは私どもはあまり当てにしておりません。やってくれるかどうかはわからぬのです。けれども、十九条に民生委員などの協力がうたってあります。民生委員、指導員、保護司、更生緊急保護法に定められた更生保護事業を営む毛の、それから人権擁護委員、こういうものがこれから協力してもらわなければならぬわけでございますが、私は更生保護事業を営むものというものはよくわからないのです。これは詳しく言えばどういう人が更生保護事業を営むものというのに該当するのですか。
○岸本説明員 御質問の更生保護事業を営むものについてでございますが、これは法務省所管の事業の一つでございまして、主管の局は保護局で主管いたしております。大体私のただいま了解している点を概略的に申し上げますと、検察庁で起訴猶予処分になった者、裁判所で執行猶予の裁判を受けた者、また刑務所で仮出獄の処分を受けた者、こういったような者に対して、それぞれ寄留地がないとかあるいは保護者がいないとかいったようなのが多数ございます。そういうような者を、主として民間の特殊の方々が営んでおりまする保護団体というのがございまして、その保護団体がある一定の期間一時的にその持っておる施設に収容し、それぞれ必要な保護を加えるというのがおもな事業でございます。詳細な点は主管の当局に説明させることにいたしたいと思いますが、大体そういう概略的な事業を営むものがここにいうところの更生保護事業を営むものに該当いたしております。
○眞鍋委員 この保護団体に対しては、当局としては補助かなんか出しておられるのでしょうか。この人たちは社会奉仕的に無料でやっているものでしょうか。
○岸本説明員 国家が多少必要な費用を出しておりまするが、保護団体を経営するものは、多くの費用を自費をもって経営するもの、あるいは寄付をもって経営するもの、あるいは共同募金の支出を受けるものといったようなことで経営いたしておりまして、本来ならばこれらの経費は全部国家が負担すべきものだと考えておりまするけれども、更生緊急保護法というのがございますが、この更生緊急保護法の成立当時のいきさつからいたしまして、まだその処置をとるには至っておらないのでございます。
○眞鍋委員 自費を投じてこういう方面に貢献せられている方々に対しては、心からの敬意を表したいと思います。ただ、民生委員なり、児童委員なり、保護司なり、更生保護事業者というものの中には、少し玉石混淆がありはしないかと私は思う。あるいは、受け入れてやろう、こういう言い渡しさえあれば、それに対してすぐ乗っかって、その引き渡した子供の将来について、もう自分の手から離れてしまったというような気持で考えられているように思われるものも二、三にしてとどまらないと思います。特に、この際十万、二十万というような大量の婦人に関する法律が通るという段になりますと、私はこの玉石混淆のこういう人たちを一応再審査して、それで玉をとり石を捨てて、よりよい効果があがるようにしてほしいと思います。私の聞いた範囲でも、ずいぶんいかがわしいものが補助を受けて私利私欲を得ておるということが耳に入っておりますが、小田原の少年院の裏に住慈園というものがありますが、これは小さいのであなたの方の記録にはなかなか出てこないかもしれません。けれども、委託費として一人四千円から六千円程度受け取っておるかもしれません。しかし、その預かった者はブリ網に強制的に働かされておる。それから上る利益はこの竹内という園長が全部ふところに入れておる。このブリ網に働いております雇い人なども、その預けられた子供が、先生々々と言ってしょっちゅう尊敬をしないとリンチを受ける。仕事の上でけがをさせられてもおっぽり投げる。おまけに、この竹内という人は前科があるかどうかを調べてほしい。もしかりに前科三犯でもあるというような事実があるならば、こういう保護団体などは一応お調べを願いたいと思います。これは一角にすぎませんが、救済してもらうに急なるの余り、相手方を選択しないでやたらに子供を送り込むようなことがあってはならないと存じますので、一応これはお調べを願いたい。そういう面についてなぜしつこく申し上げるかというと、いろいろの問題が起りますところには必ず悪い事業家がおるのですから、これを御委託になるときには、もう相当余裕もあるのですから、半年なり一年の間にそういう点は考慮していただきたい。なお、保護司なども、これからの時世に適応した、いわゆる時代的感覚を持ったような保護司を少しはお入れになりませんと、ずいぶんいかがわしい保護司などもおりはしませんでしょうか。ここで名前を申し上げることは遠慮いたしますが、児童保護の委託を受けるような人たちは、よほど人選をしていただかないと、子供の将来に対してえらく悪い影響が及んでいくと思います。
 以上申し述べましたような点で、これからの受け入れ態勢は、十分一つ政府がこの法案の通過と同時に親心を持って処理されますようにお願いをいたします。
○高橋委員長 これにて暫時休憩いたします。午後四時より再開いたします。
   午後二時五十三分休憩
     ――――◇―――――
   午後四時三十三分開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際委員各位にお諮りいたします。ただいま、片山哲君外十四名提出の、売春に係る処罰、保安処分及び更生保護に関する法律案、並びに、売春に係る処罰、保安処分及び更生保護に関する法律の施行に伴う裁判所法等の一部を改正する法律案の両案が、成規の手続を経まして、撤回いたしたいとの申し出がありますが、衆議院規則第三十六条により、これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
 それでは、売春防止法案について質疑を続行いたします。眞鍋儀十君。
○眞鍋委員 午前中から大へん長い時間を拝借いたしまして、委員各位にも大へん御迷惑をおかけいたしておりますので、あと転廃業の問題だけ質疑いたしまして、なるべく簡単に終了いたすつもりでございますから、しばらくお許しを願います。
 この問題は、考えようによっては何でもないように思えるのですが、立法者としては、こういう点も大乗的見地に立って、なるべく無理のいかないような運用をしてもらいたいという気持で御質疑を申し上げるわけでございます。すなわち、今日まで娼家を経営しておった人たちの転廃に当りましては、自然風俗営業のワク内で転廃業を試みると、こう見なければなりません。ところが、そうなりますと、風俗営業に対してはきわめて厳格なワクをほめているところがありまして、おいそれとは応じ切れないのでございます。たとえば、公庫の貸付対象にいたしましても、全然これは貸付の対象になりません。カフエーとか料亭とか料飲店とかいうものは、いずれも、内規がありまして、貸し出すわけには参らないのでございます。私は、何か政府の方で、こういう場合に、この際に限って臨機特別に転廃業者にワクを広げてもらって、スムーズに転廃できるようにさせたいと念願しているものでございますが、その点に関しまして、何か臨時特別の処置をとってやろうというような御考案はありませんでしょうか。その点を承わってみたいと思います。
○岸本説明員 お答えいたしますが、ただいま御質問の点につきましては、法務省に関します限り、御承知のように、内閣に売春対策審議会が設けられまして、今回の法案もその審議会の答申に基いて法務省から本国会に提案したような次第でございますが、この審議会はなお引き続き他の問題に関して審議継続中でございます。ただいま御質問になりました転廃業者に対する対策の問題につきましても、この審議会において審議が続行ざれることと存じますので、その審議会の審議の経過に待っていただきたいと存ずる次第でございます。かように御了承願いたいと存じます。
○眞鍋委員 その転廃業の問題について、審議会が今後取り上げて適切な措置を講じてくれるかどらかに対しましては、私も見通しがつきませんが、一応その点は残された問題として、これ以上お尋ねもいたしませんけれども、何としましても、中小企業金融公庫などの業種別の中には該当しそうなふうもございませんし、何か臨時特別な方法を立てていただかないと、非常に困難を来たすと思っておりますので、善意をもって御勘考を願っておきたいのでございます。
 さらに、いわゆる猶予期間の問題でございますが、昭和三十三年四月一日が本法の業者に対する発効の時期となるだろうと思いますが、資金面などからいろいろと考察して参りますと、日銀の統計月報から出てくる銀行貸し出しの中には、おそらくこの対象となっております業者は融資を受けていないと思いますが、いわゆる相互銀行系統の方面からは相当のものが流れ込んでおると思量されるのでございます。相互銀行の貸し出しの残高で三千七百億円というものが見えるようでございますが、少くとも遊興娯楽方面に三百五、六十億のものが出ておるだろうと思います。その借り入れの状態を調べてみますと、大体は、いわゆる日掛と申しましょうかあと払いの日掛で借り入れておりまして、これが契約は大よそ短きは一年、長きは三年となっておるようであります。そういたしますと、本法の通過によって一応この債権者は急速な取り立てを行うと考えなければなりません。商売ができなくなるということになりますと、もはや日掛もできなくなってくるし、いち早くこれが回収にかかると思われるのであります。そこで、三年間の契約で日掛をいたしております者から言えば、それまでの間猶予期間を置いてもらえれば、三年間の日掛の返済は、償還は可能になって参りまして、その点に対しまして何らのトラブルなくスムーズな償還ができるという結果になって参りますので、私は、この保護更生に関する三十二年の四月一日という線はできるだけ早く実行に移さなければならぬと思いますが、業者の最終期、それは昭和三十四年の四月一日とすれば非常にスムーズな切りかえができると存じておりますが、政府の方では、一年間猶予期間を延期して三十四年四月一日より発効するというように直すことに対しては、どういう御意見でございましょうか。そちらの方のお建前もあろうと思いますが、転廃業をさせられる業者の面に大へん都合がいいという結果が招来して参りますと、御再考を願いたいと存ずるのでございますが、御所見を承わりたいと思います。
○長戸政府委員 御存じのように、対策審議会におきましても、この猶予期間の問題が非常に重要な問題として慎重に取り扱われたわけでございます。有識者お集まりの上、眞鍋委員御存じのように、一年または二年というふうないろいろなお説があった次第でございますが、ただいまお話しのようなことも含め、その他諸般の事情から、審議会においては、三十三年の四月一日というふうに御決定になった次第でございます。政府といたしましては、その審議会の御答申を尊重し、なお、会計年度等のこともありまして、保護更生の措置を先行せしめ、その間一年間の猶予を置きまして、刑事処分を行うということは三十三年四月一日、かようにした次第でございます。さよう御了承願います。
○眞鍋委員 審議会の審議の内容についてはここで申し上げたくございませんが、先ほどから私は保護更生の施設について政府の所見を長時間にわたってただしました。そうして、政府御自身もお考えつきになったことでございましょうが、大量に送り出される売春婦を受け入るべき受け入れ態勢が、今日のような状態ではとうてい間に合わないということも御理解がいったことだろうと思いますし、また、かりに昭和三十二年の四月一日から保護更生の施設にかかりましても、わずか一年間であれだけの収容力を持つ目算は政府といえどもついていないはずだと思います。してみますと、受け入れ態勢なしに出してしまう。そして、ただ表にあったごみ箱を裏っ側に置き直したというようなだけで満足すべきものではございますまい。私は、少くとも二年間くらいは期間を置いて、受け入れ態勢を整備した上、この間に、業者といえどももう目先は見えているはずでございますから、おのおのその転廃業については始末をつけることと思いますので、受け入れ態勢の完備と業者自体の切りかえの最終期が昭和三十四年の三月三十一日だといたせば、この点から見ても、私は、保護更生の施設予算は昭和三十二年の四月一日から実行に移し、あと二年間保護更生施設の完備を待って、三十四年四月一日から本法が完全な実施に入るということの方が妥当だと存じておるものでございますが、政府は、一年間に、いわゆる三十二年の四月一日から始めて三十三年の三月三十一日までには受け入れ態勢は責任を持って整備する、こう言われるのでございますか。
○山下(春)政府委員 保護更生の問題に対しましては、厚生省といたしましては非常な重大な責任を感じておりますけれども、本法が発効されまして、その状態を見まして、三十二年度の予算に当りましては、眞鍋委員の御心配の点などを十分に勘案いたしまして、遺漏なきを期すべく努力するつもりでございます。
○眞鍋委員 私は大蔵省の御出席を求めましたけれども、御都合が悪いということですが、政務次官のお気持は、私、よくわかる。けれども、今度の手ぎわを見て、あれだけの予算を請求しておいて、それで実際に獲得されたものはわずか一億円そこそこだ。これが、この次の一年間に、現在の予算の立て方から見ると、満足するだけのものを組み込んでくれるかどらかについては、私は残念ながら政務次官のような楽観説はうべないかねるのでございます。できれば、ここで大蔵省関係の方に立ち会ってもらって、ことしのような不始末が来年も繰り返されることをあらかじめ防ごうと考えて、むしろ事務当局の方を求めたのですが、何かの御都合で御出席ができないのだろうと思いますけれども、どらも、今年度の厚生予算の取り方では、どんなえらいお力を持っていらっしゃるか知りませんが、心もとない限りでございますとは言い得ると思う。従って、形だけは法律ができた、そして、更生施設はやるのだ、そうは言われるけれども、さて実際問題になりますと、一向に更生施設ははかばかしくいかぬ、こういう結果になりはしないかと存じまして、ともかく、私は、自分の見解としては、昭和三十四年四月一日より業者に対する本法の発効を見るように主張いたすわけでございます。
 さらに、性病予防の建前から申しますと、本法が実施されるようになりますれば、赤線なり青線なりの内部においていろいろの予防措置を講じておったのと違って、今度は野放しになるのでございますから、今持っておる業者の診療施設というものはもう不要になります。しかし、それを性病の問題とにらみ合せて参りますと、現在よりも性病はびまんするという見通しを立てていかなければなりませんので、こういう性病予防法に基いて当然必要だと思われるような、現在の業者ないし組合が持っておりますこの施設は、政府の方のお考えとしては何か御考案がございましょうか。まあ、露骨に申しますれば、吉原あたりの診療所も約一千万円近くはかけたものでありましょう。その他四、五百万円ぐらいかけました診療所はみな持っておるようでございます。診療室なり、医務室なり、看護婦室なり、入院室なり、手術室なり、薬局なりというものは一通りそろっておるので、利用価値は十分に出てくるものと思いますが、こういう公共施設として今後本法を適用されてもなおかつ必要な部分については、転廃業者に対してどういうふうにお取り扱いになるつもりでございましょうか。御当局の意見を承わっておきたいと思います。
○山下(春)政府委員 眞鍋先生のお気持はわかりますが、実は、本法が施行されますれば、ただいまの赤線、青線という地区はなくなるのでございまして、なくなりましたときにおきまして、その地域にある診療所が必要かどうかということは、ただいまちょっと即答をいたしかねます。それを買い上げて多少でもあたたかい手を差し伸べることのために考えたらいいではないかという御趣旨であろうと思いますが、厚生省といたしましてはいそれを直ちに買い上げますことの必要があるかないかということを今後よく研究をいたしませんと、直ちには、それを買い上げるとかどうとかいうことの決定はいたしかねますので、今後よく御趣旨の点を勘案いたしまして研究をいたしたいと存じております。
○眞鍋委員 薬石日報という新聞がございますが、この新聞の記事にも、医師の側から、どうしても今後性病は、野放しになったことによってびまんすると思わなければならぬが、現在の施設の、いわゆる公共的なものだけでは間に合いそうにないので、せっかくこれだけの整備しているものを、その方面に必要なりと認めたものについては、これを何らかの措置によって買い上げなり何か利用なりするというようなことが必然的に起ってくるべき事態だと見られておるわけでございまして、必要なる面については政府は適当の措置をするというお気持はございませんですか。
○山下(春)政府委員 従来性病の原因になっておりましたものの非常に多くのパーセンテージが、常習売春婦から感染することが多うございました。今度それが野放しになるということで非常に御心配のようでございまして、厚生省もこの点に対しましては非常に重大な責任を持ってこの性病の蔓延を防がなければならないと思っておりますが、大体常習売春婦というものをなくしたいというのが本法の趣旨でございましてこれが完全に施行されますれば、性病の蔓延の源になるものが非常に少くなるということを予想いたしております。現在あります地域は、限られた赤線地域とか、あるいは非常に密集しておる青線地域とかいうことでございますので、それを直ちに買い上げるということは今考えてはおりませんが、先ほど申し上げましたように、必要があればそのときに十分考慮いたしたいと考えております。
○眞鍋委員 五時から本会議ということでございますから、私、これでやめます。山下政務次官と私との見解の相違は、私は、本法の施行によって性病はきわめてびまんすることがはなはだしいと思う。この信念は、あなたの答弁によっては動かされない。これは、お互いに現実の問題にぶつかってみてこの集団した状態がばらばらになって性病の問題について、現在よりも減少するか、急激なる増加を来たすかということは、お互いに事実の問題で立証してもらうよりほかないと思いますが、私はあなたとは全然反対の見解を持っております。
 以上をもって私の質疑を終ります。ただ、最後的に申し上げますれば、本法を通過さすに急なるために、厚生施設の最も肝心な面が何となく置き去りを食っておりますように感じております点は、いろいろな政府の答弁に接しましてもなお釈然たらざるものを持っておりますが、あまりに時間をいただき過ぎましたので、これをもって終ります。
○高橋委員長 本会議開会の関係上、休憩いたしたいと存じます。本会議散会後直ちに再開いたします。
 それでは暫時休憩いたします。
   午後五時二分休憩
     ――――◇―――――
   午後六時九分開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 売春防止法案について質疑を続行いたします。世耕弘一君。
○世耕委員 私は簡単に二、三点当局にお尋ねして結論を得たいと思うのであります。
 まず最初に法務次官にお尋ねいたしたいと思いますが、先日来法務当局を代表している方々にこの法案の取扱い等に関して数点お尋ねいたしたのであります。本法案は間もなく本委員会を通過するものと考えられるのでありますが、本法案の成立は、ある意味において時宜に適した処置と考えられる。しかしながら、これを第三者の公平な立場から見ますと、ちょうどくさいものにふたしたという程度であって中のくさいものをば取り去るということに注意が欠けておるように思われる。せっかく御提案になった法案が、その有終の美をなすのに対しましては、施行の上にも相当慎重を期する必要がある。しからざれば、かえって大きな悪影響を社会に流すであろうということを危惧する者の一人であります。その点から、過般来いろいろな観点からお尋ねいたしたのでありますが、次官に対しまして私は簡単に二、三点お尋ねいたしたいと思うのであります。
 まず、過般呈示いたしました中央公論に出た谷崎氏の「鍵」、石原氏の著述された「太陽の季節」、この二点に集約してお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。実は、谷崎君は、文化勲章をもらった人で、文化人としては最高の権威者として世間に認められている人です。そうして、石原君は、新進作家として、しかも最近芥川賞をもらった文人なんです。その二人が、一方は六十過ぎから七十代を代表する、一方は二十代を代表した、いわゆる性に関する発表なんです。しかもそれが世間に大きな波紋を投げかけておる。たまたまそういうときに、画期的な性の法典がここに成立するというような事態に立ち至ったのであります。これをもっと露骨に批評してみますと、文化勲章を首にぶら下げて閨房の日記を公然と発表しているということになる。漫画に書けばそういう形になる。そして、一方の石原君は、これまた漫画に書けば、いわゆる「男の陰茎で障子を突き破ったところに本をぶつけた」というものである。私はこれが最近の文芸価値があるかどうかは知りません。また、自分の愛人を兄貴に五千円で売ったり買ったり、その金を都合したのは愛人であり、しかもそれが妊娠して掻爬手術が不成功に終って腹膜炎で死んでおるのです。しかも、この文章の内容を検討してみますと、それは創作ではなくして、現実ありのままをここに表現したということが文芸界の批評である。現実の問題なんです。空想ではない。これを、処罰しろとかなんとかということは別問題といたしまして、このまま放任しておいて果して性の善良なる社会秩序が維持できるであろうか。幸いにして私はすでに老境に入っておりますから、あの両方の本を見ても、ふふんと笑う程度で、何ら感じは出ません。けれども、中学校、高等学校の生徒が盛んに読んでいる。「太陽の季節」を読んで、しかもほとんど数十万部売れ切れております。私が今日こういう質問をすると、お前は本屋の宣伝になるからやめろという話がある。あるいは本屋の宣伝になるかもわからぬ。また、本屋はそこをねらって書かしたかもわからない。けれども、これは一つの社会問題としてわれわれは考えなくちゃならぬ問題である。また、考えさせるために、この文壇の二人がここに現われてきたのではないかとも考えられる。私は、この際文学価値があるかどうかという議論を差しおきまして、かくのごとき出版物を流布せしむることが、果して社会秩序、性秩序を維持する上において効果ありやなしやということは、少くともこの性立法を立案して議会に出される当局としては、一応の御所感があってしかるべきである、かように考える。この点について、特に次官はそういう方面の権威者というわけじゃありませんが、いわゆる検事としてやわらかい面もかたい面も十分経験の深い、その道のベテランである。だから、私は、これはかたいばかりがいけない、やわらかいばかりがいけない、大きな社会問題である、何かこれについて結論的な御所感を承わって私の結論にしたい、かように思うのであります。
○椎名(隆)委員 答弁を保留して、世耕委員の質問に関連してお伺いしたいと思います。
 この法案が出ましても、やはり世耕委員のおっしゃられる通り、文書図画で青年男女の春情を催すようなものがあるとするならば、これに対して厳重な取締りをしなければ、結局、この法案が可決せられても、私は役に立たないと思う。それゆえ、私は二、三冊持って参ったのですが、これは昭和二十五年七月一日発行の「アベック」というのです。表題は「仙次郎旅日記諸国色修業」、大阪の淀川から信州路を回って各宿々において女を犯した状況がきわめて詳細によく出ておる。こういう本が街頭に現われて、しかも店頭でどんどん売っておる。最近は、「あるす・あまとりあ」、これは二、三日前に私買ってきたのです。これには、内容を見てみますと、性交の態位各論が六十二通りあるという、性交の説明がよくしてある。その中の一片を取り上げて読んでみますと、こういうことが書いてある。その二百一ページ、「眠れるワイフを呼び起し、頓に口当てキスすれば、ニッコリ笑うて目を開き、ホワイトペーパはホヤイズイット」、こういうことが書いてある。また、この中の内容は、読めば読むほどすごいです。たとえば、「肉体による前戯16法の分析」とか、「肉体的表出による雰囲気」とか、いろいろある。こういうのが店頭に幾らでもある。これを取り締ることなくして、この法案が出ましても、果してこの効果が発揮できるかどうか。文書図画に対する当局の取締り方針がどこにあるか、この点を一つはっきりとおっしゃっていただきたい。
○岸本説明員 この法案は、御承知のように、性という問題に基調を置いた法案でございまするので、その取扱いにつきましては、はなはだ微妙な関係があると存ずるのであります。いろいろな方面にもろもろの影響を及ぼします問題でございますとともに、およそ性の問題は、一片の法律をもって取締る、それで性の問題が解決されるというふうには、私ども絶対に考えておりません。しかしながら、本法の第一条におきまして本法制定の目的が示されてございますように、何とかしてこの乱れた性の問題を一定の標準を置いて規正し、性道徳を確立しよう、同時に、善良な風俗を乱すものを正していこうというところにあるのでございまして、われわれの考えといたしましては、この目的を実現するために、それぞれ関係官と十分な連絡協調のもとに善処したいと考えておるのでございます。繰り返して申し上げまするが、先ほど来申し上げますように、非常に微妙な関係を及ぼしまする関係上、この取扱いにつきましては、いわゆる運用の妙を発揮しなければいけないのではないか、かように考える次第でございます。
 また、わいせつ文書図画に関する問題でございまするが、これまた、はなはだむずかしい、困難な問題を多数包蔵しておるのでございまして、世にいわゆる文書図画、しかもその文書図画なるものが芸術の名に隠れてわいせつな文書図画を発行発売するというような事案につきましては、これは問題なく検挙の対象にすることができるのでございますけれども、先ほど来御指摘のような芸術家、世間一般がりっぱな芸術家として認め、また、いわゆる小説その他、一般に芸術の範疇に入る分野に関する問題につきましては、この取扱いにつきましては、われわれとして十分なる注意、慎重なる態度をもって臨まなければならないと考えておる次第でございます。一般に考えられますように、こういったわいせつの内容を含む文書図画の取扱いにつきましては、あるいは青少年に及ぼすいろいろの影響を勘案いたしまして、青少年対策の問題については別個にそれぞれの施策を考えなければならぬことでございましょうし、また、一面、芸術家自身が、かようなものを発行し制作するということをみずから規制していただくというようなことも要望して差しつかえないのではなかろうかと存ずる次第であります。ただ、検挙取締りの対象となる範囲程度がどうかということは、きわめてむずかしい問題でございます。従来こういったふうな事案が再三にわたって出てきておりますので、そのつど検察当局ははなはだ頭を痛めて参ったような次第でございます。しかしながら、われわれといたしましては、かような場合に、個々具体的な事案をつかまえて、そのつど良識をもって判断し、適当な処置を講じていくほかはない、かように考える次第でございまして、十分なる答弁ではなかったかと存じますが、ただいまのところ、かように考える次第でございますので、御了承願います。
○世耕委員 了承いたしましたが、まだ腹がきまっておらないようだから、これから一つ腹をきめていただくように願いたいと思います。
 簡単に文部関係の社会教育局長にお尋ねいたしたいと思います。実は、読売新聞のけさの朝刊でございますが、「編集手帳」という記事があります。その記事の中に、私がきのう質問したことについて出ているのですが、「日本を代表する大家であり、文化勲章の受領者に対してはいささか無礼であろう」というようなことが書いてある。どうも非常に恐縮しているわけでありますが、文化勲章をもらっておれば、こんな文章を書いても世間は通るんだというふうにも解釈されるのです。そうなると、そういうりっぱな文章なれば、一つ文部省はこれを教材にしてやったらいいじゃないかということも考えられる。はなはだこれはとっぴなことになるかもしれないが、この論調だとそういうことになるのですが、私は、文化勲章を持っている人は、文化勲章を持っているような芸術家であってほしい。ところが、いや、それは芸術にもいろいろあって、あれは閨房芸術である、閨房の技術はかくあるべし−。自分の女房をウイスキーやその他のアルコールに酔わして、そうしてまっ裸にして螢光灯をつけて、至るところをなめ回して、――それから先を言うのは、私は、きたないから、もう言えないのですが、もっと芸術的な表現が現われておる。われわれの年寄りでもちょっと変な感じが起るような、これがいわゆる文芸的価値のある文章だから、そうなるのかもわかりません。私は、チャタレイの本を見ましてもだれの本を見ましても、文芸価値があるとかないとかいうことを今ここで論じることは差し控えたい。それよりも、こういうものを若い人たちに読ませて、果して性道徳の教育が完全にできるであろうかどうか。むしろ挑発させることになる。年寄りがやっているんだから、おれがこのくらいやってなぜ悪いかという理屈を教える結果になるのではないか。いわゆる男女七才にして席を同じゅうせずというような、そういう儒教精神を今さら取り上げて私は申し上げとうございません。むしろ性は解放すべしというのが、ほんとう言うと私の議論なんです。ちょっとももの端を見せるから感じが出る。ぐっとまくってしまえば、むしろ感じは出なくなる。そこまでいくのならいい。ところが、妙な法律がここに出てきて、いかぬという。ふたをしろというのなら、下の方をめくるようなことはさせない方がいいのではないか。これは常識論じゃないかと私は思う。勲章を持っているから、あの人は芸術家だからいいわ、芥川賞を持っているから批評しては悪いということを言うことは、それは民主的じゃございません。むしろ時代おくれの観念ではないか、かように私は考えている。すなわち、貫一お宮の小説から、いわゆるダイヤモンドから起って、そして、今日では、今の舟橋君の説によると、愛情なき結婚は売春なりという結論までせりふの中に出てきている。われわれは矛盾した法律をここに作っているのではないかと、私は実は心に何か妙なしこりを感ずる。時代に応じて法の行き方が違うということも私は了承いたしております。こういうことをどう考えるか。貫一お宮の場合、今度の石原君の英子の場合、そして最近起っている、すなわちロマンス・グレー、こういうようなことを全部総合してみますと、非常に複雑なんです。しかも今度の法律は非常に厳罰主義だ。これを適用するのには、よほど取締り当局の幹部がしっかりした腹をきめて方針を確立しなければ、現場の人は立ち回れない。やがてまたこの法案がむだな権威なき法案に帰することを憂えるから、それを私は考えて、ここに議論を戦わしたような次第であります。私の今の議論は、社会から正しい健康な性の世論を起してほしいということのきっかけを、できたら作りたいというのが私の希望するところであります。
 そこで、最後に申し上げたいことは、国家権力によって性教育をやるか、それとも社会道徳に基いて性道徳を向上せしむるか、この二通りの行き方がある。今、この法律は、国家権力に基いていわゆる性のあり方を求めようとしているのでありますが、それだけでは不十分である。本案の立法の理由の中にもそれが出ておりますが、私は、少くとも社会道徳を高揚する、あくまでも社会道徳を主にして現在の法文を生かしていくということが最も正しい行き方ではないか、かように考えるのでありますが、この点に関しまして、文部御当局はどういうふうに考えておりますか。集約して申しますと、売春防止法成立後の文化対策、性教育のあり方、国家権力だけで性の問題を解決するか、いわゆる日本人の理性に基く、道徳の向上に基く解決を主にするか、これを並行していく場合にどういう方法が最も理想的にいけるかどうかということを文部当局から御返事をいただいて、私の質問を終りたいと思います。
 なお、新聞に出ているところによりますと、この「太陽の季節」の著者は数百万円かそれ以上の金をもうけて、その金を何に使うかと言ったら、株を買うというようなことが新聞に出ている。これは私の作りごとじゃございません。それが芥川賞をもらって、それにさわることがいわゆる芸術論に抵触することだからといってちゅうちょしているというのでは、この性の問題と取っ組んでいく資格なし。もっと勇敢につっ込んでいって、現実をよくとらえて、このせっかく立案された法案を生かしていただきたいということを切望してやまないのであります。どうぞ、文部省の社会教育局長から最後に御返事をいただきたい。
○内藤政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。
 まず最初に、この芸術と、特に、文化勲章をもらわれた方が「鍵」というような性の問題の扱い方についての点と、矛盾しはせぬかというようなお尋ねであったと思いますが、私どもの考えでは、芸術とはやはり一般の国民の志気を高揚し、あるいは精神を高揚するようなものが高い芸術であると考えるのであります。そういう意味から、りっぱな芸術は国民の間に長く保存され、親しまれるものであるべきだと考えるのであります。しかし、今の「鍵」、このお話しの点が果して芸術かどうかという点になりますと、いろいろ問題があると思います。谷崎さんの過去のりっぱな業績に対して文化勲章が授与されたのでありまして、その「鍵」の問題は別に論議されるべき問題ではなかろうかと思います。そこは、わいせつになるかどうかという問題とも関連すると思います。高い芸術は卑俗なものを含んでならないと思うのですが、この点はもう少し慎重に検討せなければならぬと思うのです。特に、私どもといたしましては、この売春法が通過いたしました後の文化対策といたしまして、できるだけ青少年によい生活環境を与える、特に、芸術とかスポーツとか、あるいはレクリエーションとかいう健全な指導によりまして、健康な青少年の育成をはかるとともに、学校教育、社会教育の面を通じまして純潔教育を徹底して、正しい性道徳の確立に努力いたしたいと考えているのであります。
 最後にお話しの、国家権力によるか、社会道徳に待つかというお話でございますが、これは、根本は、お話しのように、社会道徳の確立に待つべきものだと思います。ただ法律はやむを得ない措置として最小限の規制をいたすわけでございますので、その点についてはお説の通りと思うのであります。
○世耕委員 今法務当局からも芸術というお話があったし、文部当局からも芸術というお話がありましたが、この二つの文壇の著書をもし芸術品と仮定するならば、だれに見せてもいいじゃないか。学校の生徒の教材にしてもいいじゃないか。芸術に秘密はないはずです。芸術はどこに展示しても芸術じゃないか。簡単に常識的に割り切れるんじゃないか。それはどうです。これは芸術品なりとしてまだ結論は得られないが、さっそく学校で教材にしてもかまいませんか。疑いがあるなら、それはむしろ芸術的価値がないという結論が出てくる。そこに矛盾があるじゃないか。これは早急に解決しなくちゃならぬ。これはむしろ、法務委員会で論議すべきではなくて、文部委員会で専門の連中が論議すべきじゃないか。たまたま性の問題の立法があったから私は発言したのですが、これは、文部当局も、機会をとらえて、もっと公然と、こういうような代表的作家の問題について、芸術的価値というものについて国民に認識きせる必要がある。実際から言うと、先生が読まないうちに生徒が読んでいる。先生の知らぬうちに、先生よりも生徒の方が性の問題は認識が深いという結論が出てくる。それではほんとうの性教育はあり得ない。あいまいというか、ぼけてるということで、こういうことが気がかりになるのであります。私は、きょうはもちろん結論を得ようという趣旨ではありませんが、この点は特に文部当局に要望いたします。
 なお、法務当局に対しては、芸術論に対してかれこれ言う前に、出版業者がどういう意図でこれを出したか、金もうけで出したのか、あるいはりっぱな芸術品を出していわゆる性に対する反省を求めるために出したのか、何かそこにねらいか良心があるだろうと思うから、それを追及して結論を得て、世間に公けに見せられて、子供たちにも公然と見せて批判させるようなチャンスを与えていただくことを要望して、私の質問を終ります。
○高橋委員長 椎名隆君。
○椎名(隆)委員 文部省の方が御用があるそうですから、先に一、二点お伺いしておきます。
 どうも、文部省は、追及されると、機構制度の上において監督権がないからと、じきに逃げちゃうのですが、一体、文部省では、女学校、高等学校の生徒に、純潔教育ということをどういう標準で教えておるか。なお、簡単に分割して申し上げますが、まず男女同権というこの言葉、男女同権ということはどういう意味で、どういう方法で生徒に教えているか。実例を上げますると、桃色グループというのがよくあげられる。その桃色グループのメンバーというと、大体高等学校の生徒か女学校の生徒なんです。たまたまつかまったところの女学校の生徒四名、これは、男の生徒をつかまえて四人で性交を迫って、四人ともその目的を達した。取締り当局につかまえられて尋ねられたときに、その四人の少女がどういうことを言うたかというと、男の子供らは女一人をつかまえてやっているじゃないか、私たち四人が気をそろえて男一人とやったのが何が悪い、現在においては男女同権じゃないかということを言っておる。そうしてみると、文部当局が教えておるところの男女同権ということはどういうことを意味するのか。最近純潔教育の中で性の神聖ということを教えているらしい。しからば、性の神聖ということはどういうことを教えているか。たまたまつかまったところの女学校の生徒に対して、性の神聖というその面から質問した。これは公然とみな見ているところであります。たとえば、男が甲乙丙丁とあり、女の方はABCD、こうある。その一間でもって、男女が同じ場所でお互いに性交している。中には相手をかえて同じ場所でやっておる。性は神聖なり、神聖なものは何も二人だけで隠す必要はない、神聖なるがゆえにみんなに見せて、そうして性交することが何が恥かしいというようなことをこう然として言っておる。一体、文部当局は、高等学校の生徒とかあるいは女学校の生徒に、純潔教育ということはどういう指導理念をもって導いているのか、その点についてお伺いしたいと思います。
○内藤政府委員 お尋ねの点ですが、男女同権と申しますのは、基本的人権において男女が差別されないという意味でありまして男が悪いことをしたら女も悪いことをしてもいいんだ、こういうことは決して同権の趣旨ではないと思います。男がどろぼうをしたから、女もどろぼうをする、男が強姦したから女も強姦をするというようなことは、男女同権の精神に入らないわけであります。
 そこで、文部省はどういう指導をしておるかというお尋ねでありますが、正しい性道徳のあり方を指導しているのでありまして、性というものをいたずらに隠すことはよくない。年ごろになりますれば、もちろん月経もありますし、子供も生まれてくるし、いろいろと身体的なあるいは精神的な変化もあると思います。これが子孫を生むというようなことに関連して正しい知識を与えていく。しかしながら、男女の交際というものはあくまでもきれいな交際をしていかなければならぬということで、正しい意味で性道徳が守られ、確立されることを期待してまたそういう方針で指導しておるのでございます。
○椎名(隆)委員 そういたしますると、現在の誤まれる男女同権の観念並びに性の神聖という方面に誤まれる観念を持っておる女学校の生徒に対してどういう指導理念を今後文部当局は持たんとするのか。
○内藤政府委員 ただいま申しましたように、正しい性道徳のあり方について、すでに、文部省でも純潔教育の審議会がございまして、りっぱな答申が出ておりますので、これについて地方にも趣旨の徹底をはかっておりますが、今後さらに機会あるごとにその趣旨の徹底をはかりたいと思います。さらに、子供を扱うところの母親の学級とか、青少年の団体等についても、純潔教育の必要性とその普及発達に努力をして参りたいと考えております。
○椎名(隆)委員 文部当局にはもっと質問申し上げたいのですが、時間もありませんから、この程度にして、次に法務省の関係で一つ……。
 どうも、私から申し上げますと、売春防止法という名前自体が非常にいけないんじゃないかと考えます。なぜかと申しますと、一べん売春をやった連中が、更生してまじめな生活に入っている。そうすると、あの人は売春婦であったというこのたった一言で、また逆戻りする場合が往々あるのです。あるいは、前科者が、たまたま誤まって懲役に服して、釈放されたのちに更生をした。ところが、あれは前科者であったということで、せっかく就職していたにもかかわらず、そこから追いやられて、またもや罪を犯さなければならないというような場合が往々あるのです。私は、売春という文字を使わなくても、風俗取締法あるいは風紀取締法というような名称で、結局この目的は達せられるのじゃないかと思う。先ほどお伺いすると、この業態婦は十七、八万あるという。昨年は五十万ないし六十万と言われた。その業態婦連中がことさらにきらう売春防止法という、売春という文字を冠しなくてもよかったんではないか。粋人として日本で第一番といわれる菅原通済さん、あの人が会長になったんだから、私は、売春防止法というような名前だけは、あるいは売淫防止法というような名前だけはつけないんじゃないかというふうに考えていた。ところが、出てきたところは売春防止法である。答申された結果をそのまま採用したのですが、その点に対しまして、売春防止法という名称をことさらつけぬでもよかったというふうに考えるのですが、そこはどんなふうに考えられますか。
○長戸政府委員 ごもっともな御意見でございます。この点に関しましては、風俗純化に関する法律案というふうな名称を考えた次第でございます。本来を申せば、先ほど世耕委員から仰せのように、売春問題はこれのみによって性道徳の確立ができるものでなくて、広範にわたる万般のことについての措置を必要とするということから申しますと、仰せのように、風俗取締りとか、あるいは風俗純化とか、そういうような網羅的な法律を作ることが望ましいわけでございますけれども、われわれとしては、最も当面する売春の防止というものを先決問題といたしますので、その面におきまして、この範囲の売春防止にとどめ、また、それによってこの法律の名称もそれを最も端的に現わすのが妥当である、そのように考えて、この売春防止法なる名称を使ったのでございます。しかしながら、仰せのように、私どもといたしましては、売春婦というような名称はなるべく避けるべきである、そういうことから、そこに出入りするところの婦人相談所というふうなものも、そういう名称を用い、また、その世話をされる者も婦人相談員というふうな名称を用いまして、なるべく売春をされた人たちが更生するについて差しさわりのないような配慮を加えたつもりでございます。
○椎名(隆)委員 極端から極端にわた るかもしれませんが、一体禅師が旅をして歩いていまして、たまたままっぱだかで水浴している女を見るや、局部に対しましてじゅずをさらさらともんで拝んだ。側近の人がわけを聞いたところが、女くらい偉いものはないんだ、釈迦も孔子も阿羅漢もみな女から生まれたんだ、よって女ほど偉いものはないということを言われておる。また、キリストは、 マタイ伝で、「なんじジョセフ、彼をめとらんことを恐るるなかれ、彼は聖霊を夢見てはらみたまえばなり」と言っている。それほど女が大事だということを一体禅師は言うておる。それに反しまして、ソクラテスや孔子は、女子と小人は養いがたしと言っておる。これは正反対である。私は、マーシャル群島のヤルート島に約二カ月おりまして、性的な問題を調べたことがあります。あそこは性は全部開放しておる。かりに夫婦でありましても、同じところにいるときには女の方はたばこを吸いません。ところが、一たび亭主と左右に分れるや、たばこをすぱすぽと吸い始める。たばこを吸うことは何人の要求にも応ずるというしるしなんです。それですから、あの島は婦人連中が全部梅毒患者なんです。それに反しまして、今世界で一番売春婦の少いところはどこかと申しますとビルマです。このビルマは国民全部が仏教徒なんです。かりに売春婦ありといたしましても、きわめて少いのです。一方は性を全面的に開放している。一方は売春婦さえもきわめて少い。これは両極端です。この法律も、見方によりましては、この法律が出たならば私通、姦通、めかけを持つことを奨励する法律である、あるいはまた、現在業態婦として五十万いるというその婦女が餓死線上に押し出される、――きょうも、生活線を守れとか何とかいうので、こういうビラの配布かあったのですが、この法律が出るとするなれば即時に私たちは職を失って餓死線上に迷わなければならぬから、売春法だけは通してくれるなという陳情です。また、この法律のいい面を見てみますなれば、売春に関する諸法令がごたごたになっているのを統一するところにいいところがあり、また私はこれは認むべきだと思うのです。松原政務次官並びに岸本さんもおっしゃったように、これは画期的の法律である、――確かにそうかもしれません。しかしながら、売春を禁止しようとしたのは今度が初めてのことではないのであります。徳川時代に一回売春を禁止したことがある。それは、明暦三年正月十八日に江戸に大火があった。そのときに新吉原というものが初めてできた。吉原の黄金時代というのは寛永十七年、「吉原が明るくなれば江戸が明け」――あの当時の女郎さんが、松の位の大夫で十万石であった。その遺風が今もって、女郎道中というのですか、くるわ道中と申しますか、その遺風が残っておるくらいで、あまり弊害がすごい。このまま吉原をしておいたのでは、いわゆる良家の方々が、せっかくためた資金を何もかも全部蕩尽して、家内における平和というものは保たれない。それではいかぬというので、夜間営業を禁止した。ところが、夜間営業を禁止しますと、即時に現われたのがいわゆる湯屋の二階などの売春営業、水茶屋の茶くみ女、あるいは矢場の女というふうなものが現われてきた。そこで、今度は、その売春自体が、吉原で営業する以上にはげしくなったために、これはいけないというので、またまた一ぺん禁止したところの売春を解くようなことになった。私は、この法律が所期の目的を達することができるのかできないのか、それは一に政府当局の決意いかんにあるだろうと思います。これは昨日も世耕委員からしばしば言われたのでありますが、この法律がなくても、取締りしようと思えば取締りできないことはない。勅令第九号あり、あるいは刑法、憲法あり、児童福祉法あり、職業安定法あり、各種の法律で十分取締りはできます。今まで、いわゆる戦前のわが国におけるところの警察力によれば、あの当時は、警察犯処罰令という法令がありますし、また警察力も充実しておった関係上、十分取締りができた。ところが、戦後におけるところの警察当局の力というものが、いわゆる無力になった。こうした各種の法律があるにもかかわらず、現在のように性道徳が頽廃したということは、一面から申しますと政府当局の怠慢です。そう言われても仕方があるまいと私は思う。もしそうであるとするなれば、この法律が効果を発生するまでには何年かあります。その間の取締りができないことになる。この法律が効果を発生しなくても、現在の法令で十分に取締り得る。しかしながら、私は、この法律ができることによって、地方条例と憲法の十一条、十二条、十三条、十四条、十九条等におけるあの摩擦を一応防ぎ得ると思う。二十二国会において提出せられました売春法案は、結局個人売春、単純売春を処罰しておりましたので、その点非常に疑問があったのでありますが、今回の政府提案を見てみますと、その点がはっきりと抜けて、今後の研究題目とされている。この法律がいかに出ましても、売春そのものは決してやまるものじゃない。しかしながら、でき得る限りやめさせる方向にいかなければならない。それについては、法律ができても、なおかつ審議会を置く。これは私は非常にけっこうだと思うし、また、更生保護の面も、たとい不十分であるとはいえできておりますので、非常に満足しております。しかしながら、今後この法律が実施される暁におきましては、今までの法令等のごとく、いわゆる警察当局が取り締るべきにかかわらず取り締らなかった、それがために現在のように性道徳が頽廃したというようなことがあるわけであります。そこで、本法案に対するところの政府当局の心持をお伺いしたい。
○岸本説明員 先ほど世耕委員に対して答弁いたしましたように、少くとも法務省といたしましては、この法案を実施するに当りまして、それぞれ関係機関と十分密接な連絡のもとにこの運用に万遺憾なきを期する覚悟でおります。さように御了承願いたいのであります。
○椎名(隆)委員 性病の問題についてちょっとお尋ねしておきます。この法律が実施せられますと、今の売春が地下にもぐるものが相当あるだろうと私は思います。実例をあげてみますと、たとえば、私がパンパンを買いに行って、一、二回行きましたときに、私が相手方に対しまして脅迫する。今後はおれの言うことを聞け、おれの言うことを聞かなければすぐに告発するぞ、告発したならばお前さんは懲役に行かなければならぬ、かりにお前さんがのがれても、いわゆる場所を提供した家に迷惑をかける、今後おれの言うことを聞かなければいけないというのが、これがそもそもひものつく原因です。それで、ひもがついて、その結果、今後はそのひもの連中のところに女が集まってくる。そうすると、女連中を働かして自分自身は食っていけるのですから、勢い、自分のいわゆる傘下にできる限り多くの女を集めて、一定の営業場所、区域を定めて営業する。甲乙がそれぞれ自分の持ち場を争うことになる。いわゆるばくち打ちの賭場争いと申しましょうか、なわ張り争いと申しましょうか、これが血を見るようなけんかになりはせぬかと思う。それと同時に、今までは自主的に全国性病予防自治会というものがあって――これは、昭和二十年の十一月の二十二日に花柳病予防法特例というものができまして、二十三年五月に廃止されて、そして現在の性病予防法というものになったのでありますが、私は、おそらく、この法案が可決せられれば、現在ある全国性病予防自治会というものは解散せられるのではないかと思う。そうすると、この法律ができると同時に売春婦とか置屋とかいうものはなくなるかもしれませんが、法律が実施せられたからといって、先ほどの眞鍋委員の言葉ではありませんが、病気そのものは決して減らないのです。花柳病予防法特例のときには病院施設についての規定があった。ところが、現在の性病予防法には施設の根拠がないのです。施設を設けなければならないという規定がないのです。今後、この法案が可決せられ、そうして全国性病予防自治会が解散せられた場合、自主的に検診その他をやっていくということがなくなってしまう。そうすると性病はますます蔓延してくる。健康日本ということを主眼にして、むしろ明日の日本の健康のためにこの法案が私は一番必要なんだと考える。御承知の通り、わが国におきましては、社会保障費というものはきわめて少い。アメリカは、軍事費の次に、社会保障制度が確立せられて、その歳出は第二番目になっておりますが、わが国は、肺病患者三百万に対しても、わずか百三十億にすぎないのです。そういうような状態で、結局花柳病がますます蔓延し、これが家庭内に持ち込まれるとすれば、健康日本は決して作られなくなってくる。この花柳病予防をどういうふうにして防ごうとなさいますか。一つ厚生省のお考えを承わりたいと思います。
○山下(春)政府委員 椎名先生の非常に薀蓄の御豊富な卸研究に対して、私ども全く教えられる点があります。かつてアメリカで、禁酒法を出しましたために、世界中のお酒がアメリカに集まり、非常に悪質のギャングを作りあげたというようなことをも考えあわせ、その点は、私ども、そういう事態が起るかもしれないことを予想して、その困難にうちかってこの仕事を完遂しなければならないと、ますます強く決意をさせられるところでございますが、先生御指摘の通り、性病、特に梅毒というものの感染状況を見ますと、大体その感染源の七六%は売淫の常習者からでございまして、この性病が家庭内に持ち込まれますことによって先天的な梅毒児がたくさん生まれる、そういうことで家庭生活が脅かされておるという現状に私どもは大きな関心を払いまして、この法案の審議に当りまして、更生保護という問題がたびたび取り上げられましたが、実際問題としては、私ども、更生保護の問題は、たとえば職業補導とか、あるいはいろいろ精神上の訓練というようなことも大切と思いますけれども、すでに冒されている性病患者、非常に悪質あるいは相当重大な深い病根に冒されておるような女性は現にたくさんあることを考えまして、この後、保護措置というものは最も大きな重点を置いて、この性病予防及びすでにかかっている者を何とか治療してやりたい、その設備に対しましては今後予算措置に当りまして万遺憾なきを期することを実は私ども固く決意しておるのでございまして、いろいろな原因がございますけれども、なるべく病根を断ちたいということを主眼としておりまして、甘いと仰せられるかもしれませんが、この法律が完全に施行せられますれば、売春の勧誘及び施設の管理、場所の提供、周旋、資金の提供等の直接、間接の売春行為をさせる者を処罰いたしまして、そうして、要保護婦女子に対する保護更生措置を徹底させることによりまして、幾分でも売春婦の絶対数が減るのではなかろうかというようなことから、性病に対する感染源を少しでもなくすることができれば幸いと考えておりましてこの点に重大な決意を持って困難な仕事に取り組んでいきたいと思っております。
 大した具体的な政策ということでもございませんが、とりあえず、こういう問題に対しましては、散娼化して一般国民の中に溶け込んできた売淫者に対して、広く一般国民に正しい性病予防知識を教え、また、単にこれらの売淫者のみならず、相手方となる男子等に対しても十分なる教育を実施する必要があるので、その措置を講じたいと思っております。また、散娼化しました売淫者を対象としました感染源追及の方法としまして、今後接触者調査を強力に実施いたしまして、特にそのケース・ワークの技術につきましては職員の訓練等に十分な措置を講じていきたい、かように考えておりまして、その御心配の点に対しましては、政府当局といたしましても重大な関心を払いまして、この点がこの法律の成立するかしないかのポイントになるとまで考えて、実はその困難に打ちかっていきたいという決意を固めておるものでございます。
○椎名(隆)委員 御承知でもございましょうが、一九四六年の四月十三日、フランスの議会において、左派社会党婦人代議士マルクス・リンセールの発案によって売春禁止法が可決された。男連中がちゅうちょしている間にさっとやったのです。その売春禁止法が施行されると、さかさまに梅毒患者が三十%もふえているのです。わが国においてもそういうおそれがあるので、この禁止法が実施せられると同時に、反対に梅毒患者がふえていくのじゃないか。それをどういうふうにして防ぐか。現在、花柳病患者がお医者さんにかかると、お医者さんの方から主務当局の方に届け出ることになっているのじゃないでしょうか。おそらく届け出るお医者さんはきわめて少いように考えておりますが、その点いかがですか。
○山下(春)政府委員 御指摘の通り、届出をすることになっておりますけれども、非常に憂慮にたえないような状態の場合には、強制検診の発動を行うことになっております。過去に行なった事例もございますし、今後も行うことができますので、なるべく花柳病に対する教育を普及させることによって自発的に届出をさせるようにいたしますけれども、万やむを得ないときには強制検診の発動によって防ぎたいと考えております。
○椎名(隆)委員 法務省の方にちょっと伺いますが、この法案を見てみますと、体刑及び罰金を法定的に併科するようになっております。この罰金、体刑の刑罰体系の目的はどうなりましょうか。今まで、法定併科としては、臓物故買ですか、あそこには体刑を科すると同時に罰金を科するようになっております。この法律を見てみますと、第八条の一項、十一条の二項、十二条、十三条の一項、二項、これはいずれも法定併科になっておるようでございますが、刑法との調和はどういうふうになっておりましょうか。
○長戸政府委員 お尋ねのように、刑法におきましては、臓物故買罪については当然併科になっておるわけでございます。この法案におきましては、体刑としては、たびたび申し上げましたように、その他の法令との均衡において十年という刑期を設けた次第でございますが、われわれといたしましては、この二年間の猶予期間を設けて、その間に業者等の転廃業なり更生というふうなことを推進いたしまして、その猶予期間が過ぎてもなおかつその業態なりあるいはかかる所業をなす者に対しては、その根絶を期したいという強い決意を持つものでございます。従いましてこの法文において刑を盛ります場合に、その決意を示す意味におきまして、特にこのような利得犯に対しては当然併科という態度をとった次第でございます。懲役または罰金、これは確かに今までの法制の大体のしきたりでございますけれども、もしそういうふうな態度で臨みました場合には、あるいは罰金をもってとどまるというふうなことが行われるかもしれないのでございますけれども、この猶予期間後にそれがなされるという場合、ことにそれが利得犯であるというふうな場合には、その絶滅を期する意味において当然併科も有効であるということになると思います。これは、先ほど政府の方で仰せになりましたように、この法律が施行されたからには、今までのようにずるずるべったりなことでなく、決然としてその根を断つというふうな考え方から、このような条文にいたした次第であります。
○椎名(隆)委員 そうしますと、現在の陣容でこの法律が実施されたというときに、責任をお持ちになることができますか。
○長戸政府委員 たびたび申し上げますように、私どもは処罰が目的ではございませんので、この二年間の猶予期間の間に保護更生の措置を十分にいたしまして、売春婦に対しては、その間に家元に帰るなり何なりさせて更生の措置を推進し、また、業者の方々にも転廃業をしていただきたいと思っております。そうして、われわれの理想といたしましては、昭和三十三年の四月一日というときにはこういうふうな業態のものはなくなる。自然になくなるということを希望しておるものでございます。但し、それにもかかわらずなおかつなされるという者に対しましては、われわれとして強い態度をもって臨む、そういうふうな覚悟でおります。
○椎名(隆)委員 これは、労働省、厚生省、法務省、各省の方にお伺いしたのですが、労働省における保護更生、厚生省における保護更生、それから法務省における保護更生、みなてんでんばらばらです。これを何とか統一して、平均に保護更生の実をあげるようにすることはできないでしょうか。厚生省へ行くとかりに百円、労働省へ行くと百二十円、今度は法務省が一番貧乏だから八十円、てんでんばらばらになっている。これを統一して、いわゆる売春婦に対する場合においては、労働省においても、法務省においても、あるいは厚生省においても、みな同一だというような方法がとれないものでしょうか。
○安田(巖)政府委員 保護更生を、各省にまたがっているものを何か統一できないかというような御趣旨でございますが、私どもの考えといたしましては、この法案によりますところの婦人相談所というのを一つの統一的な総合的な窓口にいたしたいと思います。法務省におかれましても、あるいは労働省の婦人少年室その他におきましても、それぞれのお仕事がございますが、その権限の中で当然そういった保護更生のことに当らなくちゃならぬわけですが、しかし、正式の窓口といたしましては婦人相談所を設けてやる。要するに、ほかの省でおやりになりましてうまくいかない場合には婦人相談所の方へ送った方がいい。それを婦人相談所の方で受けて、同時にまた、婦人相談所でいろいろ相談なり何なりをやりまして、また労働省の所管の婦人少年室などの方へお送りいたしまして御協力を願う場合もあるが、ともかくも窓口は婦人相談所、こういう考え方でございます。
○椎名(隆)委員 これは最も大きな問題だろうと思うのです。業態婦を婦人保護寮に入れる、あるいは婦人収容所に入れる、そうして更生さして出した場合、労働省と連絡をとってうまく受け入れ態勢ができておるかどうか。わが国には潜在失業者が七百万、完全失業者が七十万、そこへもってきてこの業態婦、果してうまく受け入れ態勢ができるかどうかということが一つ。この業態婦連中に会って話を聞いてみると、何も私は好きこのんであそこにいるのではない、もし私がこの商売をやっていないとするならば、肺病で病院に入院している自分の夫はどうなるか、子供も扶養しなければならない、と言う連中が非常に多いのです。自分自身は、どこへ行っても、まじめな生活をしろといえば今すぐにでも足を洗ってまじめな生活ができるのだが、自分の背後関係はこういう状態で、やめることができないのだ、これが多いのです。かりに今一万円ずつ業態婦に贈ると、五十万人いるとすると五億、一年を通じて六十億になる。業態婦だけを対象にしてこれです。それで、家族関係は生活扶助費をもらえばいいじゃないか、こうおっしゃられるかもしれませんが、生活扶助費をもらうことをきわめてきらうのです。この前も紅露政府委員のときによく申し上げたのですが、ちょうど自分の金でもくれるかのごとき状態で、もらいに行くこと自体を非常にいやがってきらうのです。今日本全国の統計をとってみるのに、あの生活扶助費をもらっているのは韓国の人間が一番多いのです。日本人自体でほんとうに困って生活扶助費をもらいたいという者はほとんどそういう状態ですが、ひとり業態婦ばかりでなく、家族関係のことについてお考えをお持ちになったことがおありでしょうか。
○山下(春)政府委員 もちろん、その婦人の多くの人たちのうしろに家族がいることは常に考えております。仰せではございますけれども、その家族たちを養うのに、生活保護法はいやだ、派手な生活はしたいということではいけない。しばらく婦人相談所におりまして、正しい道に立ち直らせる、これは非常に甘い言い方に聞えますけれども、そういうことで生活を正しく立て直すということも、この婦人相談所の非常に大きな仕事でございまして、私ども常に考えておりますが、そうして正しい生活、正しい職業につきましても、その家族、病人とかあるいは子供たちを完全に養っていけないという場合には、厚生省の生活保護法をいやでも適用いたしまして、決して困らせないようにいたしたいという実は覚悟を持っておるのでございます。
○椎名(隆)委員 委員長の方から、委員諸君がなるべく早く結末をつけろと言ってきておるということでありますから、適当に切り上げますが、あと二、三点お伺いしたいと思います。聞きたいことはたくさんあります。
 政府委員にお伺いいたしますが、旧憲法におきましては、「日本臣民ハ法律ニ佐ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ」ということがあったのですが、旧憲法においては条例でどの程度の刑罰を科せることになっていたか。
○角田説明員 この点につきましては、旧憲法時代におきましては、旧市制、町村制、府県制、いずれも同じような建前になっております。営造物に関する条例においても、過料をつけることができることになっております。いわゆる刑事罰はつけることができない建前でございます。
○椎名(隆)委員 この条例の根拠法である地方自治法十四条、この立法理由はどんなものでございましょう。
○角田説明員 私からあらためて申し上げるまでもないと思いますが、新しい憲法によりまして、従来の地方団体とは全然違った意味におきまして、憲法の地方自治の規定に基きまして新しい地方自治法ができたわけでございます。結局、この十四条の規定の考え方と申しますのは、その地方団体というものの自治権というものをいかに考えるかというところから出発していると思います。同時にまた、条例は、その地方団体におきまして、地方団体の住民が直接選挙したところの住民の代表者である議会で制定した法規という意味におきまして、その条例というものが従来の旧憲法時代の条例とは非常に意味の違った一つの法形式である、そういう意味におきまして、この十四条というのができ上っているのだと思います。
○椎名(隆)委員 これで最後の一点にしまし、占う。地方自治法の第十四条は罪刑法定主義と抵触するようなことはありませんか。なお、十四条の二は、アメリカの自治制度を母法としてとったのでございましょうか。
○角田説明員 ただいまお答え申し上げましたごとくに、私どもとしては、その条例と申しますものは、正確な表現ではございませんが、法律に準ずる法形式である。御質問の点は、総括的なものを条例に委任しておる点が問題ではないかという御趣旨だと思います。その点につきましては、先ほど申し上げましたような条例の性質から申しましてこれは罪刑法定主義に反するものではないというふうに考えております。
 なお、アメリカの法制を模倣したかどうかという点につきましては、これは別にそういうふうには私ども信じておりません。この規定は、昭和二十二年の十二月に、たしか国会の修正で入ったように記憶しております。当時そのような事情があったかどうかについては、私、特別に承知しておらないのでございます。
○椎名(隆)委員 もっとお伺いしたい点がたくさんあるのですが、遺憾ながらこの程度でもって質問は打ち切っておきます。
○高橋委員長 他に質疑はございませんか。――なければ、本案に対する質疑は終了いたしました。
 これより売春防止法案(内閣提出第一七一号)について討論、採決を行います。
 討論の通告がありますので、順次これを許します。池田清志君。
○池田(清)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、政府提案の売春防止法案に賛成の意見を述べるものであります。(拍手)
 この法案は、政府は、終戦後都会といわず地方といわず、地に落ちた性道徳の実相を把握し、風俗の壊乱しておりまする実相を見きわめまして、性の道に粛正を与えんとの決意をなし、しかも、第二十二回国会の衆議院において議決をいたしました事柄を順奉し、さきに売春対策審議会を作り、これに諮問をいたし、その答申に基きまして法律の範囲内においてこの目的を達成せんとするために提案されたものであります。その内容といたしましては、婦女の人権を保護せんとする立場からいたしまして、売春の道に転落することを防止し、不幸にして転落しておられまする婦女の方々に保護の道を与えますために、各種の保護更生施設を昭和三十二年四月一日から実施をいたし、これによりまして、指導機関を設け、売春の道にいそしんでおると申しますか、落ちておる方々がないようにしようということを第一義といたし、もしそれ、そういうようなことをやりましても、なおかつその道に落ちておる方があるといたしますならば、売春ということを定義をいたし、売春自体は倫理規定といたしまして、刑罰をもって臨むのではありませんが、売春を目的とするところの勧誘や周旋や場所を貸すこと等、すなわち、売春を本丸といたしますならば、その外堀から埋めていきまして、結局売春を絶滅しようというところにそのまた第二の重点を置いております。
 申すまでもなく、この第二点は刑罰をもって臨むのでありますが、これを担当いたしますものは、警察であり、検察庁であり、裁判所であります。これらの機関に属する方々も人であります。国民の公僕であり、身みずから性交をなさる方々です。ですから、不粋な取締りがあろうはずはありません。ところで、この法律は、たとえて申しまするならば山門の両側に立っておる仁王様の姿そのものでありますけれども、その心は本殿に座しますみ仏のお心であろうと思うのであります。もちろん、この法律だけをもって性の道を粛正することはできません。その他、文教的施策において、あるいはまた道徳的施策において、政府は大いにやるべきであります。ここでまた国民の方々の自粛自戒をお願い申し上げます。
 今日の段階におきましては、この法律をもって最適のものであると考え、画期的な法案であると考えまして、私は満腔の賛成を表するものであります。(拍手)
○高橋委員長 次に吉田賢一君。
○吉田(賢)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして本法案に賛成をするものであります。(拍手)
 われわれ日本社会党におきましては、さきに売春についてその防止、保安処分、保護更生対策など各般の内容を持った売春法案を本国会に提案いたしましたが、本日これが撤回の手続をし、御了承を得た次第でございます。よって、私どもは一応何ゆえに賛成するかの趣意を申し述べたいと存じます。
 いろいろと性道徳の頽廃が論議されておりましたが、要するに、これは、政治の貧困と社会保障の欠陥が最大の原因であるという認識に立たなければなりません。これを忘れまして、いたずらに現在の性道徳の荒廃せることを嘆くということは、まことに政治家としまして反省なきもはなはだしいと申さねばならぬのでございます。そこで、これが対策としましてわれわれは売春に関する広範な内容を持ちました法案を提出いたしました。これは百三条に上るものでございます。この法案と政府案とを比較いたしてみますると、これは答弁に立たれました政府当局においてもお認めになっておるごとくに、たとえば、今回の政府案は保安処分が全然欠如いたしております。また、保護更生に関する各般の施設規定はまことに不備そのものでございます。これらの規定が完全するにあらざれば、真に売春法の体をなさざるものであるということは、おそらく多くの人が一致してお認めになるものであろうと思うのであります。ただ、根本におきまして売春行為に対する処罰規定を置くかどうかということが非常に重大な論点として審議会以来論ぜられてきたのでございました。この点がわれわれの主張と政府案とはなはだしく食い違いました点でございます。けれども、売春対策審議会におきまして、政府の方あるいは会長を除く十八名の委員のうち十名までは、売春行為に対する処罰規定を置くべしという御意見に一致したのでございます。こういうことを考えてみましても、売春行為に対しましては軽い処罰をもって臨み、一方においては選択的に保安処分をなす、それは裁判官の良識に待って処置をすべきである、かくして、保安処分におきましては、あるいは保護観察に付し、あるいは矯正教育を施し、各般の綿密丁寧なる手続をいたしまして、そうして保護更生に対する広範な施設にこれを迎え入れるということにいたしますることが、これが私ども現在の売春対策といたしまして最も重要なねらいでなければならぬと信ずるのでございましてよって、これらの内容を広範な規定に盛り込みまして提出したわけでございます。さりながら、このたびこれを撤回いたしましたのは、全国のこれを熱望せられるところの人々、たとえば、三十三団体などは、十円、二十円という小さな醵金をして、ただいまもここに十万の醵金者の署名をもって、どうか本日これがここを通過して成立するようにという熱願の結晶を書類にして持ってきておられるのでありますが、こういうような血の出るような思いをもって正しい売春法の制定を望まれるところの数十万の律々浦々の日本の良心の結晶、こういうものが本日この法案の成立せんことを熱望しておられるのでございまして、私どもは、この全国の正しい良心にこたえることが国会の責務であるという観点に立ちまして政府案は不完全で、ある、それはざる案であるとはまことに妙な表現であるけれども、審議会会長のおっしゃった、こういうような不完全なものではありますけれども、将来の充実を期し、将来の改正を期し、なお、現在保安処分については審議会においても検討中であるということに望みを嘱しまして、また、他面、全国にほうはいとして起りつつありますところの、完全な売春関係の法規の制定というものに全国民が熱情をささげておられることに大きな期待を持ちまして、また、われわれ立法府にある限り、わが党といたしましても、ほんとうに画期的なこれらの法律の将来の完成を期すということを心の中にひそかに期待をいたしまして、わが党案を取り下げ、そうして政府案に同調するに至った次第なのでございます。いわば、白奴解放といいますか、実に世紀的なる立法であるこの売春法に対しまして、大きな時代的、文化的、理想的意義をすら感ずるのでございます。こういうような観点に立ちまして不完全ではございますけれども、それは将来の完成を待ち望み、これについての努力を政府とともにいたすということを決意いたしまして、この法案の成立を望み政府案に賛成するに至った次第なのでございます。
 簡単でありますけれども、賛成の趣旨を述べました。(拍手)
○高橋委員長 次に、志賀義雄君。
○志賀(義)委員 本日、当法務委員会におきまして、売春防止法案が満場一致で通過しようとしております。これは、戦後十年間、日本の国民の半ば以上を占める婦人の世論を代表して民主的な諸団体が努力せられた結果でありまして、私は、明治のころから多年迫害の中にこの法案を成立させるために努力してこられた先覚者に対して、心からの敬意を表したいと思います。
 この法案は、なお不備な点はあります。しかし、その要点において、第一に、第四条に人権を侵害しないことを規定しております。また、私ども共産党では、単純売春はこれを処罰してはならないという立場に立っております。単純売春は、社会全体の力、国家の力をもって、全力をあげて施設を十分に行うのでなければ、とうてい防ぎとめることができないものであります。この単純売春ということの問題は将来に待つことにしまして、とにもかくにも、不幸な女性を売春に引き入れるあらゆる要素を今日この法律によって取り除くことに着手するのでありますから、私どもはこれに賛成するものであります。
 なお、本日、椎名委員の質問に対して岸本法務事務次官は、運用に遺憾なきを期すると言われたのでありますが、この法案に対して法務省から出されました売春防止法案逐条説明書があります。これは昨日も私は質問の中で触れておきましたけれども、たとえば、業者が旅館あるいはアパートに変った場合、そのままでは、そこで売春が行われてもこの法律を適用しないことになっております。これでは、ことわざに仏を作って魂を入れずと言うのでありますが、せっかくこういう売春防止法という仏を作っておいて、わざわざその魂を引き抜いていくという結果になる。何のことはない、法務省が、この法律の抜け穴はこういうことでございますといって、一冊のガイド・ブックを出すようなものであります。こういうことは厳重に慎しんでいただきたく、また、これを運用の基準とされないように、法務省においては十分注意されたいと思うのであります。こういうことではこの法律は死んでしまいます。ことに、貸金業者に対し、事情を知ってこれを貸す場合は処罰するが、知らない場合は処罰しないというふうに解説書に書いてあります、およそ、金を貸す者で、相手が何に使うか知らないようで貸す甘い金融業者は日本には一人もおりません。解説書でこういうことを言うのは、もし法を適用される場合には、その事情を知りませんと言えば免れますよということを、わざわざ手引きすることを法務省が出しておるということになるのであります。でありますから、この法案を成立させるに当っては、この逐条説明書というものから断固切り離して、この法律を法務省が率先して忠実に履行する、その間人権を十分顧慮して実行するという心がまえでやっていただきたいと思うのであります。このことについては、全国民の半ばを占める婦人が、世論の力としてこれを要望しております。国民の大多数がこれを切実に要求しておるのであります。そのことを忘れずに、この逐条説明書は、参議院の審議過程において法務省がいさぎよく撤回され、この法律を忠実に運用するという心がまえになられることを希望しまして私はこの法案に賛成の討論を終る次第であります。(拍手)
○高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決いたします。売春防止法案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔総員起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)
 なお、ただいま議決せられました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議がなければ、さよう決定いたしました。
 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後七時四十四分散会
     ――――◇―――――