第026回国会 外務委員会 第8号
昭和三十二年三月六日(水曜日)
    午前十時玉十四分開議
 出席委員
   委員長 野田 武夫君
   理事 高岡 大輔君 理事 森下 國雄君
   理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君
   理事 松本 七郎君
      伊東 隆治君    菊池 義郎君
      並木 芳雄君    前尾繁三郎君
      町村 金五君    松本 俊一君
      大西 正道君    田中織之進君
      田中 稔男君    戸叶 里子君
      福田 昌子君    森島 守人君
      八百板 正君    岡田 春夫君
 出席政府委員
        外務政務次官  井上 清一君
        外務事務官
        (アジア局長) 中川  融君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        外務事務官
        (情報文化局
        長)      田中 三男君
        外務事務官
        (移住局長心
        得)      石井  喬君
 委員外の出席者
        運輸事務官
        (気象庁次長) 太田九州男君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
二月二十八日
 委員大西正道君辞任につき、その補欠として西
 村彰一君が議長の指名で委員に選任された。
三月一日
 委員田中稔男君及び西村彰一君辞任につき、そ
 の補欠として淺沼稻次郎君及び大西正道君が
 議長の指名で委員に選任された。
同月六日
 委員淺沼稻次郎君辞任につき、その補欠として
 田中稔男君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
三月一日
 日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定の
 批准について承認を求めるの件(条約第四号)
 (予)
 日本国とインドとの間の文化協定の批准につい
 て承認を求めるの件(条約第五号(予)
 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部
 を改正する法律案(内閣提出第六三号)
同月四日
 日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の
 国交回復に関する議定書の批准について承認を
 求めるの件(条約第六号)
 日本国とポーランド人民共和国との間の国交回
 復に関する協定の批准について承認を求めるの
 件(条約第七号)
同月一日
 原水爆禁止及び被災者援護に関する請願(三鍋
 義三君紹介)(第一六二七号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部
 を改正する法律案(内閣提出第六三号)
 日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定の
 批准について承認を求めるの件(条約第四)(
 予)
 日本国とインドとの間の文化協定の批准につい
 て承認を求めるの件(条約第五号)(予)
 日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の
 国交回復に関する議定書の批准について承認を
 求めるの件(条約第六号)
 日本国とポーランド人民共和国との間の国交回
 復に関する協定の批准について承認を求めるの
 件(条約第七号)
 国際情勢等に関する件
    ―――――――――――――
○野田委員長 これより会議を開きます。
 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定の批准について承認を求めるの件、日本国とインドとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件、日本国とチェッコスロヴァキア共和国との間の国交回復に関する議定書の批准について承認を求めるの件、日本国とポーランド人民共和国との間の国交国復に関する協定の批准について承認を求めるの件、右各件を一括議題といたします。
 政府側より提案理由の説明を求めます。井上外務政務次官。
○井上(清)政府委員 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の提案理由及び内容を御説明いたします。
 外務省といたしましては、この改正法律案において、在外公館の新設及び種類の変更につき、次のように措置する方針であります。
 第一に、新設するものといたしましては、ネパール・ポーランド、チェッコスロヴァキアの三つの国に大使館、イエーメン、アイスランド、アイルランド、チュニジア、リビア、モロッコの六つの国に公使館、合せて九つの大公使館を考えておりますが、これはいずれもさしあたり法律上の設置にとどめ、近くの国にすでに駐在する大公使に兼任大使あるいは兼任公使として勤務せしめることとし、現地における事実上の在外公館の開設につきましては、追っておのおの現地の事情、相下国の意向等を慎重に研究いたしました上、予算措置の裏づけを待ちまして実施する方針であります。
 これらの在外公館を新設する理由を申し上げますと、まずおのおのの国について政治上、経済上、その他さまざまの理由があることはもちろんでありますが、全般的に申しまして、世界の国々と広く外交関係を結び、友好の実をあげ、わが国の国際的地位を高め、ひいては世界平和に寄与せんとすることは、政府の根本方針の一つでありまして、この方針にのっとり、平和条約発効以来五年を経過した今日、いまだ外交関係の回復していなかった国、あるいは新しく独立した国との間には、すみやかに外交関係を開くこととした次第であります。特にこれらの国々は、いずれも国連加盟国でありまして今後わが国が、国際連合において、積極的に活動する基盤を拡充するためにも、まず外交関係の開設を必要といたします。以上が在外公館の新設を必要とする理由でございます。
 なお、在ネパール大使館につきましては、昨年夏、国会閉会中におきまして緊急にこれを設置する必要が生じましたため、九月一日政令第二百八十号をもって設置され、現在すでに在インド大使が兼轄するところとなっておりますが、このたびこれを法律化しようとするものであります。
 以上が新設公館についてでありますが、第二に、現在すでに設置されている在外公館の種類を変更するものといたしましては、まず在ドミニカ、在ペルー、在チリー、在キューバ、在ベネズエラ及び在コロンビアのいずれも中南米にあります六つの公使館を大使館に昇格せしめたい所存であります。
 これは御存じの通り、中南米諸国はいずれも戦後急速に国際的地位を高め、国際政治上も無視し得ない勢力となってきておりますので、欧米諸国は競って大使を派遣している実情であり、他方中南米諸国はいずれも儀礼と格式とを尊重する傾向が強く、わが国に対しても大使交換を強く要望してきておる実情であります。よって、経済上も、移住の面においても、中南米に深い利害関係を有するわが国といたしましては、相手国の意向を尊重し、現在の公使館を大使館とすることが友好関係増進の実をあげ、対中南米外交に万全を期するため必要と考えられますので、さしあたり第一段階といたしまして、特にわが国と関係の深い以上六カ国につきましては、公使館を大使館に昇格せしめようとするものであります。
 そのほか、種類を変更する在外公館といたしましては、在ヘルシンキ総領事館の在フィンランド公使館への切りかえがあります。これは、わが国といたしましては早くからフィンランドと正式の外交関係を結ぶことを希望していたのでありますが、フィンランドはソ連との間の微妙な関係に対する考慮から、とりあえずは相互に総領事館を設けることとして今日に至ったのでございますが、日ソ国交も回復した今日、フィンランドとの間に正式に外交関係を結ぶこととし、現在の総領事館を外交機関たる公使館にしようとするものでございます。
 以上が各館別の説明でありますが、これらの措置をとるためには、昭和二十七年法律第八十五号在外公館の名称及び位置を定める法律及び昭和二十七年法律第九十三号在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する必要がありますので、今般右二法律の一部改正をうたった本法律案を今次の第二十六国会に提出する次第であります。以上が提案理由の説明であります。
 次に本法律案の内容につき説明いたします。
 本法律案の第一条におきまして在外公館の名称及び位置を定める法律の一部改正を行い、すでに御説明申し上げました各在外公館の名称及び位置を定めることといたしました。
 また、第二条におきまして、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部改正を行い、以上申し述べましたうちポーランド及びチェッコスロヴァキア両大使館以外の在外公館、並びに別に外務省設置法の一部改正により新設される在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部、さらに、第二十五国会において名称及び位置を定められましたが在勤俸はいまだ法律上定められていなかった在ソ連大使館、以上の在外公館に勤務する外務公務員の在勤俸を定めることといたしました。ポーランド及びチェッコスロヴァキアの二つの大使館に関する在勤俸が含まれていないのは、在勤俸を定めるためには、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の第五条の規定に従いまして、まず在外公館の所在地における物価、為替相場、生活水準等の諸要素を勘案する必要がありますが、この二つの国につきましては、このような諸要素の的確な把握が困難であり、目下調査方鋭意努力中でありますが、時期的に本法律案の提出期日に間に合いませんので、このたびはまず名称及び位置だけ定めることとし、在勤俸については後日できるだけ早い機会に所要の法制上の措置をとりたい所存であります。
 最後に附則でありますが、附則におきまして本法律案の施行期日は四月一日と定めましたが、ポーランド及びチェッコスロヴァキアの両大使館は、国交回復の文書が三月三十一日までに効力を発生しなかった場合は、その効力が発生して国交回復が実現した日に大使館の設置も法律上効力を発することとし、また、イエーメン及びリビアの両公使館の新設につきましては、目下進行中の両国と国交を開くことに関する公式の話し合いが万一二月三十一日までに完了しないような事態も予想されますので、かかる事態に備えるため、施行期日は別に政令をもって定めることとしました。また、中南米の六つの公使館の大使館への昇格につきましても、先方の国はいずれも大使館への昇格を相互同時に発効せしめることを強く希望しておりますが、先方の国がわが国にあるその公使館を大使館に昇格できる時期はそれぞれの国の国内手続の関係上異なることとなりますので、かかる事情を考慮してこの部分の施行期日もまた政令にゆだねることとした次第であります。
 以上をもちまして本法律案の提案理由及び内容説明を終ります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御採択あらんことをお願いいたします。
 次に日本国とインドとの間の文化協定の批准について承認を求めるの件及び日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定の批准について承認を求めるの件の二件につきまして一括提案理由を説明いたします。
 まずわが国とインドとの間には、歴史的に深い文化的つながりがあるのでありますが、戦後インドが独立するに及んで、ともにアジアにおいて重要な地位を占める両国の間に文化協定を締結したいという要望が両国において漸次高まって参り、昭和三十年十一月以来東京において協定締結交渉を行なって参りましたその結果、協定案文につき意見の一致を見るに至りましたので、昭和三十一年十月二十九日に在京インド大使と重光前外務大臣との間にこの文化協定の署名調印が行われたのであります。
 次に、ドイツ連邦共和国との協定については、近来わが国とドイツ連邦共和国との間の文化交流が次第に活発となるに従い、伝統的に深い文化関係を有する両国間に文化協定を締結せんとする機運が次第に熟し、昭和三十年十一月以来東京において協定締結のための交渉を行なって参りましたところ本年二月に至り両国政府の間で協定案文につき意見の一致を見ました。よって、たまたま来日したハルシュタイン西独外務次官と本大臣との間で二月十四日この協定に署名調印を了した次第であります。
 この二協定は、さきに国会の御承認を得て締結いたしました日仏、日伊、日メキシコ及び日タイ等の文化協定とおおむね同様の規定を内容とし、わが国とそれぞれの相手国との間に伝統的に存在しております密接な文化関係を一層緊密なものとし、また、その文化交流を一層活発にすることを目的としています。これらの協定の実施により相手国との文化関係を通じて両国民間の相互理解は一そう深められ、ひいては両国間の政治的及び経済的友好関係の増進に資するところ少くないものと確信いたします。
 よって、ここに本件二協定の批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
 次に日本国とポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定の批准について承認を求めるの件及び日本国とチェッコスロヴアキア共和国との間の国交回復に関する議定書の批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を一括御説明いたします。
 ポーランド及びチェッコスロヴァキアは、昭和二十六年九月サンフランシスコで開かれた平和会議に他の連合国とともに参加いたしましたが、同会議において成立した日本国との平和条約に対しては、その署名を行わなかったため、わが国とこれらの国との間の国交は回復されないまま五カ年余を経過いたしました。
 その間、昭和二十九年末以降両国より復交交渉開始のための接触も両三度ありましたが、政府は、これら東欧諸国との復交はソビエト連邦との国交正常化後に考慮する旨の方針を持しておりました。しかるに、昨年十二月十二日日ソ共同宣言の発効により日ソ間に平和関係が回復されるに及び、政府は、ポーランド及びチェッコスロヴァキア両国との平和処理を行うことに決定し、本年初頭よりそれぞれニューヨーク及びロンドンで個別的に交渉を行いました結果、二月八日にポーランドとの協定が、また、同月一三日にチェッコスロヴァキアとの議定書が署名されるに至りました。
 これらの協定及び議定書は、ともに、戦争状態の終了、外交関係の回復、国際連合憲章の諸原則の順守、内政不干渉、戦争請求権の相互放棄及び通商関係の条約または協定の締結の諸事項につき、先般締結されました日ソ共同宣言の該当条項と全く同趣旨の規定を盛った条約でありますが、ソビエト連邦との国交正常化の場合と異なり、戦争から生じた懸案の解決を将来に残すことのない最終的平和処理を行なったものであります。幸いにしてこれら両文書の批准につき御承認を得られますれば、わが国が正常関係を有する国に新たに二国を加えることとなるわけであります。
 よって、ここにこれらの協定及び議定書の批准につき御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
○野田委員長 これにて提案理由の説明は終りました。
 文化協定について質疑の通告がありますので、この際これを許します。高岡大輔君。
○高岡委員 ちょっとお伺いいたしたいのであります。それは、ただいま政務次官から提案がございまして、その文化協定の問題につきまして、インドとドイツとの文化協定は、さきに締結いたしました日伊、日仏、日メキシコ及び日タイの文化協定とおおむね同様の規定を内容としておる、こういう御説明があったのでありますが、私はこの日本とインドとの文化協定には多少要素の上において違うとでもいいましょうか、他に要素があるような気がいたしますので、この点についてお伺いをしたいと思います。
 それは、この文化協定を拝見いたしますと、いろいろごもっともなことが協定されてあるのでありますが、どこを見ましても経費のかかることが相当ございます。たとえて言いますと、図書館を作りますとかなんとかここにいろいろ書いてあるのですが、この費用の捻出についてであります。それは御承知のように、日本とインドとは平和条約を結んだのでありますが、その際に日本のインドにおける財産は没収しない。同時に日本におけるインド人の財産も返してもらいたいという話があったはずであります。しかし私が聞いております範囲におきましては、インドにおける日本の財産がたしか十五億円ぐらいが見積られ、日本にありましたインド人の財産は三億程度と見積られておったような気がするのであります。ところがインド側では日本にありましたインド人の財産は、三億でなくて九億ぐらいなんだという計算をした、こういうことからなかなかこの問題がまだ解決しないで今日に至っておりますが、過般大阪の岸本さんが何かの資格でインドにおいでになったときに、日本の取り分のうちから三億だけインド側の方へ一つ寄贈しましょうといったような発言がありましたために、だいぶ話が軌道に乗ったとでも申しましょうか、この問題が解決のめどがついたように私は聞いておるのであり−ますが、その際において日本のインドにありました財産の一割程度のものを将来文化協定を結んだ場合の経費とでもいいましょうか、そうしたことに充てたいという希望がインド側、特にネール首相にあったように私は聞いておるのでありますけれども、この点につきましてその後の経過がどうなっておりますか、御承知でございましたら伺いたいと思います。
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。ただいまのインドにおきますわが日本人の財産の返還の問題でございますが、自来交渉が進捗しまして、ただいまほとんど円満に解決できかかって実施の途上にあると思っております。その際に、インドにある財産全部を返還するのでなくて 一部管理の費用とかその他所要の費用のためにそれを差し引くというようなことが行われたと思っておりますが、これはインドにおける財産の所有者全部が、そういうふうな解決に満足して、満足のうちに返還が近く行われるということになっておると思います。そこでお話の文化的な問題に充てるというのは、あるいは交渉初期のときにはあったかもしれませんが、その後実際に返還になりました場合には、もはやその問題は全然出ませんで、文化の経費に充てるということはなく、ただ管理とかその他の所要の経費だけを差し引いて、それが所有者の満足のうちに返還せられる。従って文化的な問題のために留保するということは中途で全然ドロップされたものであると思います。
○高岡委員 ただいまの条約局長のお話では、日本のインドにありました財産の問題につきましては、この文化協定とは関係がなくなったといいましょうか、交渉中にその問題はドロップしたという御説明でございましたから、その点は事実そうでございましょうからそのように了承いたします。
 ところでこの文化協定を見てみますと、これは相当金がかかるわけでありますが、ただこれだけの問題でなく、一般的な点からお伺いをしたいと思うのであります。
 御承知のようにお互いにその国情を知らせますことは、これは非常に大切であります。ところで日本人は、インドを知っておるようなことをおっしゃるけれども、実にインドに対する知識というものは非常に少いような気がいたします。極端な例を言いますと、インドは仏教が盛んだというようなことをよく言う人がありますが、申し上げるまでもなく、今日インドに仏教なんというものは一つもございません。そういうとんちんかんなことを日本ではよく言いますし、またインドへ行って日本のことに対してどんなことを言うかといいますと、非常にとっぴなことを申しまして、日本はいつシナから独立したのかというようなことを聞く人もあります。それが決していなかの農家の人が言うのではなく、相当の知識人といわれるような人たちがそういうことを日本でも言い、向うのインド人の方でも言う。それくらいに日本とインドとの事情の理解というものがきわめて少いと私は思います。これはもちろんインドだけではありませんで、日本人はとかく海外事情というものについてはうといようであります。従ってこれをいかにして相手国に国情を知らしめるかということは、いろいろな文書等も必要ではありますが、一番手つとり早いのは映画であります。ところでことしの外務省の映画に関する経費を見ますと、まことにどうもお気の毒千万だと申し上げざるを得ないのであります。一つの例をとって言いますと、東京にありますアメリカ大使館が持っております映画は、約三千本のフィルムを持っております。東京にありますイギリスの大使館が持っておるフィルムの数も三百ないし五百近いフィルムを持っております。ところが話に聞きますと、日本は全世界に配っておりますフィルムの数が三百そこそこだというようなことを聞くのでありますが、そういうことが事実でございますか、どうか。私ども聞いて驚くような数字なんでございますが、その点一つお伺いしたいと思います。
○田中(三)政府委員 今御質問の映画による日本事情の紹介、これは私どもも最も有効な手段であると考えておりますし、現に各国とも対外宣伝に非常に努力をいたしておるのであります。そこで今御指摘のように、特にアメリカの大使館のごときは東京のUSISのフィルム・ライブラリーに三千本余りのフィルムを用意して一般の貸し出し希望等に応じておる。これはアメリカのみならず、たとえばイギリス、カナダ等にいたしましても、やはり三百本か三百五十本のフィルムを東京だけに持っておるのであります。そこでそういう各国が、こういう方面に非常に力を入れ、かつ海外宣伝上最も有効なる手段である映画については、われわれ外務省といたしましても特に力を入れるべきだというのでいろいろと努力をいたして参っておるのでございますが、今のところはまだ在外八十公館に備え付けておりますフィルムが、外務省から送ったものが三百本余り、それから民間等の寄付を受けましたものが、さらに約同数あるかと思うのでありますが、そういうきわめて貧弱な状態にあるのであります。そこで新年度の予算につきましても相当額の映画関係の予算要求をいたしたのでありますが、結局直接映画につきました予算が一千五百万円でございます。一千五百万円と申しますと、十六ミリのフィルム一本で、カラー・フィルムにいたしますと約十万円見当でございますので、百五十本ばかりしか手に入らないことになるのでありますが、私どもはさらにこれを本省の報償費の一部をお願いいたしまして、できるならばもう百五十本程度、すなわち三百本程度のフィルムをこの新年度に在外公館に送りたい、さらに民間の協力を求めまして民間で作っておりますいろいろのPR映画、これなどの寄贈等を受けることによって、さらに百本ないし二百本のフィルムを作ることにいたしたい、かように考えて努力中でございます。なお全八十公館に一本ずつ備えるということは非常にむだが多いのでございますので、八十公館のうち主要公館約三十公館にフィルム・ライブラリーを作りましてここにフィルムを集中的に置きまして、その付近の公館の貸し出しに応ずるということにいたしますれば、今申しましたように三百本外務省で買い上げるといたしまして、一フィルム・ライブラリーに十本のフィルムがつく。そうすると約一ヵ月に一本ずつの新しいフィルムが送り込める、こういう計画を今進めておるような次第でございます。御指摘のように現在のところは非常に貧弱なのでございますが、できるだけの努力をいたしたいというように考えておる次第でございます。
○高岡委員 ただいま局長は非常に情ないようなことをおっしやるのでありますが、これは欧米は白黒でもけっこうでございましょうが、特にアジア・アフリカ・グループと申しましょうか、この諸国には白黒は全然だめであります。そういうフィルムを持っていきますと、日本の文化程度を疑われる危険が非常にございますので、これはどうしても天然色でないとだめであります。これはここで私が断定的なことを言いますが、私の体験から言うことでありますから、同違いがございません。従ってそれだけの金がかかるわけでありますが、一つこれは外務省は外務省なりのフィルムをお作りになることはけっこうでありますが、私がここに申し上げたいことは、今局長もおっしゃいましたように、民間のフィルムを協力を得よう、こうおっしゃるのであります。一つの例を言いますれば、ある自動車会社が箱根をずっと回るところの文化映画を作る、いわゆる観光地を自動車でドライブする、その自動車にちょっと自動車会社のマークを入れただけでその自動車会社としては非常な宣伝になりますし、また日本の国立公園のようなところをドライブする映画をとりますと、これは相手国の日本に対する観光客を誘致する非常な大きな影響といいましょうか、効果があると、こう思うのであります。そのほか機械を、このごろは技術援助でありますとか、ないしは何々のプラント輸出というようなことが盛んにいわれ、いわゆる経済外交の面からいってもグリンプス・オブ・ジャパン、日本の瞥見、うち工業部門とかあるいは造船部門とか、いろいろ一貫した日本の産業を知らしめる映画とでもいいましょうか、そうしたものはそれぞれの工場会社等になされば非常な宣伝にもなりますし、同時に外務省としてはあまり金がかからない、そういったようなところに交渉したりするときの交渉費ぐらいで済むような気がしますので、この点を特に局長の御奮発を願いたいと思うのであります。
 今フィルム・ライブラリーのお話がありましたが、それにしましてもなかなか数からいって情ないような気がするのであります。どこの大使館でも何かの祝日のようなときにその土地のいろいろな方をお呼びするのでありますが、そういうときにマグロのすしを出すかわりに映写会をやる、特に東南アジア、アフリカあたりでは気候のいいときでありますと、夜外で飯を食う方がむしろ気分がいいのでありますので、そういう際に野外で映写会をやるということを、相当しつこいまでにこの方面の努力といいましょうか、宣伝を願いますことが、日本の国情を知らしめる私は一番手っとり早い方法だというような感じがしますので、この点は特に外務当局にお願いを申し上げたいと思うのであります。
 次に私がお伺いしたいことは、インドとの関係だけでもございませんけれども、日本とインドとの文化協定を見ますと、文化施設ということがございます。この文化施設ということはここに書いてあります第三条の内容を持つものでありますが、これは一体どんな規模でお考えになっていらっしゃいますのか、この点をお伺いいたします。
○田中(三)政府委員 まだこの協定が発効いたしておりませんので、具体的にインド側と協定の運用についての話し合いはいたしておらないのでございます。さしあたり私どもが考えておりますのは、もちろんこれは予算等の関係がありますので、その点から非常に制約を受けるのでございますが、今年度は特にこの東南アジア地方に柔道使節、これは講道館にお願いいたしまして、りっぱな柔道の先生を二人選んでいただきまして、外務省の費用で東南アジア各地の柔道の盛んなところに行っていただいたのでございますが、これは非常に好評を博したのでございます。
 いま一つはいけ花の先生をわれわれの方から派遣をいたしたのでありますが、これまた現地の外交官から非常に要望がございましたので、これに応じて出したわけでございますが、これまた非常な成績をおさめたわけでございます。来年度といたしましては私どもは一つこの方面は今インドのお話があったのでございますが、大体仏教が盛んな地域でございますので、だれか適当な仏教学の大家にお願いいたしまして、一、二カ月この方面を旅行していただいて、各地の大学あるいはいろいろの集会等で講演をしていただく、こういうことをやってみたらどうだろうということを、内々計画を進めておるわけであります。今のところ文化人の交流といたしましては頭の中に言えておりますのはその程度のことでございます。
○高岡委員 これに関連する問題でありますけれども私が文化センターの問題を言いますことは、特に図書館等についての問題をお願いしたいことは、東南アジアの諸国の人が日本まで来るということはなかなか−生活がちょっと変ります。日本食に変るということ、あるいは日本家屋に住むということ、それから日本語をしゃべらなくちゃいけないという、いろいろな隘路がありますので、日本語で勉強したいけれど、なかなかその点は困難な点がたくさんある。ところが東南アジアのどこかに一つ図書館とでもいいましょうか、文化センターがありますと、そこへ行って、日本の知識を、そう完全に得なくとも、大体日本というのはこういう国なんだということを知るのには、自分らの言葉が共通とでもいいましょうか、英語でしゃべるとか、また生活状況においても大して変りないという点から、そういう東南アジアのどこかに一つ教育センターといいましょうか、文化センターを置きますと、日本までわざわざ来なくとも、そこへ行きさえすれば大体の見当がつくという点で、私はこれは非常に有利な問題じゃないか。一部でそういうことを考えていられる方があります。私の知っております学校の先輩で、セイロンのカンディにそういうものを置きたいといって、わざわざ向うに出かけられた人さえあるのでありますが、私はその方の具体案が全部正しいとは今申し上げませんですけれど、そういう線でお考えになることが非常に私はいいのではないか。すなわちインドに教育センターないしは図書館等をお置きになる場合には、そういう構想でなさることがいいのであって、ただ単に日本の何でもかんでもいいから、読めない日本語で書いた本をそこへ送るということは、非常にむだなのじゃないかというような気がするのであります。これは昭和十三年ころだと思うのでありますが、日支事変が起きた前後であります。そのときにタゴールが経営しておりましたシャーンチ・ニケタンの大学へ私が参りましたときに、蒋介石政権から二万冊の漢書を持ち込んで、あそこでいわゆるシナの宣伝をやったことがあります。もちろんインドの学生はその漢書は全然読めないのでありますけれども、何しろ目の前に二万冊という本がずらりと並べてありますので、何かそこに一つのボリュームからくる魅力を感じて、蒋介石政権に対して親近感を持ったということもございますけれど、私は読めないような本を送ったところで、これはしようがないのじゃないかというような気がしますので、そういう点につきましても格段の御配慮を願いたいと思うのでございます。
 それからただいまの局長のお話では、来年にでも仏教家が講演して回られる計画を立てておるというお話がございました。なるほど仏教家といいましょうか、哲学者が回られるということはけっこうでありますが、これはちょっと線が違ってくるかもしれませんけれど、もう一つそういう趣旨からいいましていいことは、日本の巡回医療団というものを派遣する、これは一つの大きな親善の要素になる、私はこう思うのであります。このごろ東南アジアを回るということが非常にはやりになって参りました。経済外交でありますとか、いろいろな言葉が流行語のように今なっております。そうして日本の偉い方が向うへ行かれまして、偉い方と手を握って、今後は大いに協力しましょうという言葉で、さようならして帰ってくる。その人が日本に帰ってきて、ほんとに自分があっちこっちで言ったことを実現するために努力されるならけっこうなんでございますけれど、帰ってくると全然違った政治行動ないしは別な生活をなさるということになりますというと、向う側の人は、せっかくあれだけ私の手を握っておいて経済開発をしましまうとか、経済協力をしましようとか、合弁会社を作りましょうとかいっていろいろなことを言ったのだが、帰った様子を大使館を通じて聞くというと、その人はちっともそういう方向に努力していない、日本人というものはその場限りの、でたらめなことを言うのだというので、日本人に対して、いよいよあきれ返るといいましょうか、情ない気持を持つような傾向が私には感じられるのであります。従いまして、このごろはやりのトップ・レベルの話し合いもけっこうでありますけれども、もう少し現実的な考えをしなくちゃいけない、こういう気がするのであります。それで仏教家の方がずっとこのあたりに行くということは、そういう方々だけの会合であって、お互いに精神的のつながりをつけるというのでありますから、これはもちろんけっこうでございましょうけれど、私はもう少し現実的な面も考えていただきたい。その一例としまして、医療団の巡回ということは相当現実的であって向う側もほんとうに喜ぶのじゃないか。同時に、私がこれを言いますことは、御承知のように、日本のお医者は、このごろは大分変っているものとは思いますけれど、大体ドイツ語を使っておられるのであります。ところがアジア・アフリカ諸国では、ドイツ語よりも英語の方が多いのでございますので、ドイツ語を習ったお医者さんというものは、なかなかどうもうまくいかない。それから開業資格が日本と向うでちょっと違ってくるというようないろいろな面で、まだ日本のお医者さんが東南アジア、アフリカの方に進出するということは、いろいろな険路があるのでありますが、これらの点を逐次解消していきます上においても、向うで開業するのではなく、ただ巡回するのだということで、
 一応日本の医術になじませる意味において、医療団を派遣するということは一非常に必要なのじゃないか。しかもアジア・アフリカの方の病気は、もちろんいろいろありましょうけれども、私が見た目で、一番重点を置いてお医者さんを選択しなければいけないことは、まず結核であります。それから性病、これは衛生知識が低いためでありましょうが、性病患者はかなり多いのです。もう一つは小児麻痺が非常に多い。これは気候の関係と衛生からくるのでありましょうが、大体東南アジアを回ってみてわれわれが気づく点は、結核と性病と小児麻痺というような気がするのであります。もちろんこれは専門家の方の御意見を承われば、もっと的確なものが出てくると思うのでありますが、そういう東南アジアにおける一般的な病気というものを一応御研究の上、その方の専門のお医者さんをもって組織をして巡回しますと、それは非常に日本のためにもなり、また向うのためにもなり、日本との間の、今度の戦争による傷も、それによって逐次解消されていくのではないかという感じがするわけでありますので、医療団の派遣ということも一つ考えていただきたいと思うのでありますが、これについての外務当局の御意見を承わりたいと思います。
○田中(三)政府委員 第一に御質問になりました、東南アジア地域のどこかに文化センターと申しますか一カ所、いろいろの日本に関する書籍あるいはいろいろの情報を提供するセンターを作るのが非常に有効ではないかという御意見でございますが、これはお説の通りでありまして、われわれもかねてからそのことを考えて、今年度はとりあえず、ニューヨークにインフォメーション・センターを設けることにしたのであります。新年度におきましては、第二に東南アジアを考えるべきであるというので、来年度の予算に、わずかでございますが、予算を計上いたしておりますので、これはバンコックにセンターを設けることにいたしたいと思っております。われわれの計画といたしましては順次中近東、それから中南米、ヨーロッパ、これらの地域にとりあえず一カ所すつ、国の費用による文化センターを設けていって、お説のようにそこへ行けば日本に関するいろいろなことが日本に来なくても情報がとれるというような施設を設けたい、かように考えておるのであります。なおそういう全世界の数カ所ではなかなか足りませんので、その他の地域にもいろいろとチャンスがあれば同様の施設を順次作っていきたい、かように考えておるわけでございまして、現にメキシコとブラジルは戦争中凍結されました公金が向うの政府から解除されましたので、これを大蔵省にお願いいたしまして、現在メキシコに日墨文化会館を建設中でございます。なおまたブラジルにも同様の凍結された公金の解除がありましたので、来年度はブラジルに日伯文化会館を建設する予定を進めております。なおインドにも、この協定の第三条には文化施設を設ける場合にはお互いに援助し合おうという規定ができておるのでありますが、先ほど高岡委員のお話の中にもあったのでございますが、もし民間の好意によって相当の資金が出るというようなことがありますれば、そういうものを利用してインドにもこういうセンターを作りたい。また解除される金の中に公金等があるならば、さらに大蔵省と話し合って、予算上認められるならば設けることにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
 次に、単に仏教の大家を学術的な意味で出すだけでなく、さらにもっと現実的な医療団の派遣等を考えるべきではないかというお話でありますが、これはまことにもっともな時宜に適した計画と思うのであります。相当これには費用等も要りますので、アジア局なりあるいは移住局方面ともよく協議いたしまして、なるべくそういうことが実現されるように私としても努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
○高岡委員 先ほど座談のうちに外務省の予算が少いという話が出ていたのでございますが、そういう計画をなさると外務省の予算がふえて参ります。と同時に、何か私外務省のちょうちん持ちをするようでありますが、これは日本のために私は言うのでありますが、そうやってお互いの国交が緊密になって参りますれば、東南アジアに対する賠償問題にもこれは関連して参ります。御承知のように今日はインドネシアあるいは南ヴェトナムの賠償問題があるのであります。そのほかタイに対しても特別円の問題等があります。これらの問題をただそれだけのそろばん勘定ではじきましたところで、これはお互いにつばぜり合いといいますか、火花を散らす議論だけしか出ないのでありまして、そういうものに、別に謀略的ではありませんけれども、医療団を派遣することが、交渉を円満にし、しかもお互いに解け合って話し合うもとを作っていくというような感じがしますので、この医療団の派遣費がどれくらいかかるかわかりませんけれども、こういうところに金を使うことこそ、私は賠償問題がスムーズにいく要素を作っていくという感じがするのでありますので、どうか一つ格段の御奮発を願いたいと思うのであります。
 さらにもう一点お伺いしたいのでありますが、第二条にあります教授その他の交換であります。このことについて私常日ごろ心配しておりますことは、たとえて言いますと、東南アジア諸国の、端的に言いまして、これは日本とインドとの文化協定でありますからインドに指定して申し上げますと、インドで日本から学者や技術家を呼びたいということで学者を出すのでありますが、さてその学者が日本の大学を離れて二年ないし三年の契約で向うへ行かれます場合、なるほど向うにおいでになっていらっしゃる間は相当の俸給をもらうのでありますから、その間は教授の方にも何ら不服はなかろうと思います。ところが二年ないし三年間の期限が切れまして日本に帰って参りますと、その大学ではもう受け入れません。ほかの教授がもうちゃんとそのいすにすわっているわけです。そうすると二、三年海外に行って多少よりよい俸給をもらったにしても、日本に帰ってしまうともう職がなくなってしまうというところから、私は日本の有能な学者が海外に出ることを非常にきらわれておるのじゃないかという感じがしますので、この点を一つ何とか打開しませんと、せっかく文化協定を結びましても、りっぱな学者が海外に行って下さらないだろうという危惧の念を持つのであります。そういう点を外務当局としてはどうお考えになりますか。
○田中(三)政府委員 御説のように、そういうりっぱな先生の交換等にいろいろ困難があるのであります。いろいろ御指摘のように地位の問題もありますし、また俸給の問題もあるのであります。つきましては私どもは文部省にお骨折りを願ってなるべくこの問題を一生懸命解決していくように、今までも努力して参ったのでありますが、今後もそういう具体的の問題が起りました際には、文部省の御協力を得て、なるべく円満に解決するように努力いたしたいと考えております。
○高岡委員 ほかに質疑を御希望の方がおありのようでありますので私の質問はこれで終りますが、この文化協定は非常にりっぱなものでまことに好ましいものでありますが、これに関連して幾多の隘路がありますことを外務省当局は十分に御賢察下さいまして、それぞれの隘路を打開していただきますよう特にお願い申し上げて私の質問を終ります。
○野田委員長 山本利壽君。
○山本(利)委員 この文化協定に対しては、そのねらうところや、また条文の上から見ても私賛成でございまして、いいことだと思うけれども、実は私きょうこの委員会に出るまでは、こういう文化協定というものには何らの強制力がない、罰則がない、だから外務省としてはどこの国とどこの国との文化協定ができたという一つの喜びはあるかもしれないが、これはほとんど儀礼的なものであって、実際活動はどうかと思っておったのでありますが、今高岡委員の質問に答えられたところ等によると、相当利用されておるようであります。今までに結ばれておる日仏、日伊、日メキシコ及び日タイ等の文化協定については、締結されてから今日までどういうことがそれぞれなされておるか。もしやっておれば、一口にこの席で全部を説明していただくことは大へんなことかもしれませんので、これは資料としてこの次までに一つお出し願いたいと思います。
 それから、この文化センターなどというものも非常によいことではあるけれども、私は高岡委員の質問にあった今の巡回医療団というものは非常によいと思う。とかくこの文化センターとか図書館とかいうものは、書物その他が死蔵されやすい。外を通っている一般の通行人が、これが日本の文化センターだとか図書館だとかと思うかもしれないけれども、その利用度というものは私は非常に少いように思う。だから、金が幾らでもあればそういうこともやっていいけれども、それは先ほどのお話のような巡回医療団というようなことにどんどん金をつぎ込んでいくことが、その地方の人々の幸福にもなるし、日本の文化の程度を広めて信用度を増すことにもなると考えるのです。
 それからもう一つ、映画のフィルムの問題がありましたけれども、アメリカの在日大使館は三千本持っている、また英国の在日大使館は三百本も持っているとかいう話があったが、これはどういう工合にして利用されておるのかということを承わりたい。幾ら何千本あろうと何万本あろうと、その数だけで驚いている必要はないと思う。だから、よその国や日本が在外公館等に持っておる映画というものが、どういうところでどういう工合に活用されておるのか。もしこれが活用されないで、高い金をかけてフィルムを送って、そして何かの式のときに一ぺんその土地の社交界の人たちを招いて見せてあとはしまい込んでおくようなことでは、私はこのフィルムの金を出すのは惜しいと思う。そこらの、映画のフィルムというものに対して、一般の商品としての劇映画その他のものはそれぞれ営利会社の取引によって入場料も取りしていろいろ外国でやっておると思うのですけれども、外務省関係のフィルムというものは私は非常に利用度が少いように考えるのです。利用度が多ければ私は効果は多いと思う。しかし私自身なんかも、これはアメリカの映画だとか英国の映画だとかいって一般の町の映画館では見たことがあるけれども、そういう大使館を通じたり外交関係を通じては私は見たことがないような気がするのですが、そこらに対する外務省のお考えなり実情を承わりたい。
○田中(三)政府委員 まず最初に、この文化協定というものがどうもりっぱであるけれども強制力がないというような御質問でございますが、その通りでございます。ただしこの協定を作り、このインドの場合にありますように混合委員会を設けまして、お互いに協議をしてプログラムを作り、それに基いて文化交流事業を進めるわけでございますので、そういう意味ではやはり私どもは協定ができている方がより企画性を持たせ、また積極的に文化交流がやり得る、かように考えておる次第でございます。ただいままで作りました協定で何をやったかということにつきましては、資料を出せという御要求でございますので、次の機会にお出しいたしたいと思います。
 次に、外務省の持っておる文化宣伝のフィルムがどのように利用されておるかという問題でございますが、実はこれは非常に需要が多いのでございます。現在のところ各地で持っておりますものは、多いところでせいぜい二十種類、少いところはほとんど持っておらぬような状況でございます。たとえばボンであるとかあるいはパリに備え付けております日本のフィルムは、東京から大使館に送り込みますと、それがもう一年も二年も大使館に戻ってこない。すなわち、各地方団体等から借り出しの要望がございまして、それを順次一つの団体から次の団体、次の集会というふうに回しておるうちに、一年も二年もかかって返ってきたときは大がいすっかりすり切れてしまっておる、これほどの状況でございまして非常に需要は多いのでございます。先ほど高岡委員からお話がありましたように、大使館等でいろいろの催しの際に利用する機会が非常に多いのでございます。これは各国の大公使館が同様にこの集会等にフィルムを利用しておるのでございますが、これに比べましてわが日本の出先はフィルムの数が非常に少いために、そういう機会には非常に不自由をしておるというのが実情でございます。
 さらに、そういう一般の文化フィルムよりも劇映画の方がおもしろいのではないかというふうな御趣旨もあったように思うのでございますが、これまたそういう点ももっともでございますので、われわれとしましては民間の劇映画を作っておる会社等に依頼をいたしましてフィルムを借りまして、これを今巡回映画で各在外公館を回しておるのでございます。劇映画、さらに産業関係のPR映画及び文化宣伝のための文化フィルムというものを組み合せまして、そうして東南アジア、中南米、ヨーロッパ等を巡回いたしております。新年度におきましても、東南アジアは年に二回ぐらい、中南米、ヨーロッパ等は年一回ぐらいの割で劇映画を含めた巡回映画をいたしたい、こういうので今準備を進めておるわけでございまして、われわれの持っておりますフィルムも需要には応じ切れないような状況でございます。これはおっしゃるように、三千本持っておればどのくらい利用されるか、それはまあちょっと問題かと思うのでございますが、われわれは一つのフィルムセンターに五十本や六十木のフィルムはぜひ必要だ、かように考えているわけでございます。
○山本(利)委員 私は、これは継続して審議されることですから、質問は打ち切りましてまた次の機会にいたします。
○野田委員長 承知しました。
 次に岡田春夫君。時間の関係でなるべく簡単に願います。
○岡田委員 私も簡単に一、二伺いますが、この条約を見ると、まず第一に、第一条では「できる限りの便宜」ということを言っておるし、第二条のでは「可能なあらゆる便宜」、それから第三条では「可能なあらゆる便宜」、それから第五条では「できる限り奨励する」というように使っているのですが、私は原文というか英文の条約を調べてみたのだけれども、第一条と第二条を比較した場合に、エヴリポシブル・ファシリティとなっているので、これは同じ意味だろうと思うのだが、こういう表現を変えてあるというのは一体どういう意味なのですか。
○高橋(通)政府委員 確かにインドの場合「できる限りの便宜」ということがございます。それから二条その他にも「可能なあらゆる便宜」ということがございますが、文字的には違っておりますけれども、特に正確に違えたという意味ではない、感覚の問題であるかと思っております。ただ第一条では、「自国の法令に従い、」というようなことがございますので、むしろそれにはできる限りというような言葉を使った方がよりいいのじゃないかと思っているようなわけであります。
○岡田委員 あまり小さな点についてあれこれ言うつもりはなかったのですが、あとに関連があるからそれを伺っておいたのですけれども、第一条の「できる限りの便宜を相互に与えるものとする。」。ここで、民間団体が文化の交流をやることについて政府側は、これについてできる限りの便宜を与えるものである、こういうように解釈してもいいと思うのだが、こういう点はいかがでございますか。
○田中(三)政府委員 私どもはこの協定によって文化交流を全部政府の手でやるべきものだとはもちろん考えておりません。予算等の関係のことがございますので、むしろ民間方面でいろいろの計画を進めていただく、それに対してわれわれとして可能な限りの援助をするというのが筋だと思っておりますが、それは一ついろいろの具体的な計画の内容なり趣旨、目的等をよくわれわれの方でも検討いたしましてそれに応じた援助の方法を考えたい、こういうように考えておるわけであります。
○岡田委員 たとえば具体的に伺いますが、民間団体の文化交流について政府ができ得る限りというか、可能な限りというか、今局長の答弁されたような援助をするという場合には、日本の国内においておよそ公的に認められた合法的な民間団体がこの文化交流をやった場合に、政府としてはこれに対して援助する、こういう意味に解釈してよろしいわけですか、いかがですか。
○田中(三)政府委員 個々の計画の内容によりまして、ある場合は財的な援助をする、ある場合には名義上の援助をする、あるいはそういう表に立たない実際上の御協力をするとか、いろいろな問題があると思うのでございますが、おっしゃるように国内の合法的な団体がやることについては、今言ったような趣旨で特に区別をしてやるという考えは持っておりません。
○岡田委員 そこで具体的に伺いますが、今度インドから舞踊団が来るはずです。サラバイという舞踊団ですが、このサラバイという舞踊団は、日本の合法的な団体であるアジア連帯委員会――非合法の団体ではありませんよ、合法的な団体でありますが、これが最初の文化交流の仕事としてやるわけですが、これに対してはどのような御援助を与えるお考えですか。
○田中(三)政府委員 すべてのことにわれわれが援助するかどうかということは、先ほども申しますように、十分事業の内容なり目的等をわれわれの方で検討した上できめていきたい、こう思っておるのでありますが、今御指摘のあった具体的な舞踊団の問題につきましては、さらに十分検討いたしましてわれわれの態度をきめていきたい、こう思っております。
○岡田委員 先ほど山本議員から罰則がついていないという点のお話があったが、罰則がついているならば、田中局長は困るのではないかと思う。というのは、あなた自身が罰則を受けなければならないような場合が出てくるかもしれないから、困るのではないか。というのは、今言ったサラバイ舞踊団を日本に受け入れるのについて、あなたはどういう援助をされましたか。私が知っている限りにおいては、あなたはインド大使館の情報部長に対して、サラバイの舞踊団は、アジア連帯委員会が入れる限りにおいては援助はできない、こういうことをはっきり言っているじゃないか。それでは、あなたの今言った、できるだけの援助とは全然違うじゃないか。そういうできないということで、この条約と違うならば、罰則があったら、あなたは罰則を受けなければならないことになってしまうのだが、その罰則の問題はともかくとして、そういう事実があることをあなたは御存じだろうと思うが、この点はいかがですか。
○田中(三)政府委員 アジア連帯委員会が舞踊団を呼ばれる計画を持っておられるということは、私も承知しておるのでありますが、このアジア連帯委員会につきましては、外務省内にいろいろの意見がございまして……、(「どういう意見だね、そんなことは穏やかならぬぞ」「あなたはさっき合法的な団体はいいと言ったでしょう」と呼ぶ者あり)そこで、そういうことで、援助、協力の方法なり程度について省内にいろいろの意見がありましたので……、(「どういう意見があったか聞いてみたい、言ってごらんなさい」と呼ぶ者あり)それはちょっとここでは申し上げられませんが、そういうことがありましたので、われわれの方としても、積極的に援助するということは今のところ多少控えたという実情でございます。
○岡田委員 しかし、今のところだし控えたという程度ではないでしょう。あなたはインド大使館の情報部長に、援助はできないということを言ったという、これはきわめて重大ですよ。協定違反じゃありませんか。できる限りの便宜を払うと言っておる。それに対してアジア連帯委員会が悪いとかいいとかいうふうな、いわゆる公安調査庁のような仕事をあなたのところはやるわけはないのだから、そうすれば、あなたは合法的な団体は認め、できる限りの、その程度の援助はいたします。とこう言っているならば、アジア連帯委員会が日本にある団体である限りにおいて、援助はやらなければならない義務があるはずですよ。それをあなたは援助ができないと言われた理由を私は伺わなければならぬ。援助しないとかなんとかいうことについてはノー・コメントというならば別だけれども、援助をしないと言ったことはきわめて私は重大だと思う。しかもサラバイ舞踊団というのは、インドの大蔵省から金をもらって日本に来るわけです。そういう団体に対して、日本のアジア連帯委員会がやっているから援助はできないというようなことであるならば、両国間の関係として、あなたはどういう影響を与えるか、お考えになりますか。こういう点から考えても、あなたの発言はきわめて私は重大だと思う。私はむしろあなた自身が取り消されるいい機会を与えようと思って質問しているのだから、この点はこういう適当な機会においてお取り消しになって、今後適当な援助をされるという御決意を表明されることが、あなたとして賢明だろうと思いますが、いかがですか。
○田中(三)政府委員 実は私はこの問題についてインド大使館と直接話をしたり、電話をかけたことはございません。ただこの舞踊団が来ることについて、インド大使館側のいろいろなインフォーメーションを係の者が求めた事一実はございますが、私自身はこの点に一ついては、直接はインド大使館のだれとも話し合ったことはございません。
○岡田委員 最後に政務次官に伺っておきますが、そういう今お聞きのような事実があるのです。そうすると、こういう協定を出しておきながら、先ほど山本君も言われたように、形だけであって内容は逆の結果になりつつある、こういうことが果して適当であるかどうか、特にこのサラバイ舞踊団の問題について、そのような措置をとられることについて、あなた自身はいかにお考えになりますか、この点だけ伺っておきたい。
○井上(清)政府委員 ただいまサラバイ舞踊団のことにつきまして御質問がございましたが、実は私きょうここで初めて承わったわけであります。それからまたそのいろいろな交渉の経緯につきましても、実は私は知らなかったのであります。一つ省へ帰りましてよく事情も聞き、一体どういう舞踊団であるのか、その舞踊団の来日の目的がどうであるのか、舞踊団の内容がどうであるのか、またこちらで御主催なさる団体が、どういう御趣旨でもっておやりになるのか、こういう点をいろいろ調べました上で、御答弁申し上げたいと思います。
○岡田委員 しかし、警察的なそういう調査の上でというようなことはいけないと思う。やはり調査をされるというのは、外務省の立場としての調査ならけっこうですが、その舞踊団がどういう意図のもとに来るか、これは踊りに来るのですよ。思想宣伝をやりに来るわけじゃありませんよ。アジア連帯委員会がこれを呼ぶというのは、思想宣伝をやるためじゃないのです。この点ははっきりしているのですよ。そういう意味での調査をされるというわけじゃないだろうと私は判断します。少くともこの協定の趣旨に沿って善処されるという御意思があるかどうか、この点だけについてお答えをいただいておきたいと思います。
○井上(清)政府委員 私が調査をいたしますと申し上げましたことは、この文化協定の趣旨は、何と申しましても両国間の文化的な関係を親密ならしめ、両国の親善をいやが上にも高めていこうという趣旨でございますので、その趣旨に沿っているということがやはり第一の問題であろうと思うのであります。そういう見地から調べるわけでございます。警察的な調査をするというわけじゃございませんから、はっきり申し上げておきます。
○野田委員長 戸叶里子君。
○戸叶委員 簡単に二点だけ伺いたいと思いますが、きょうの提案理由の中にもありましたように、フランス、イタリアとわが国との間にはすでに文化協定が結ばれておりますが、今後ごく近い機会に文化協定を結ぼうと計画されている国があるかどうか伺いたいと思います。
○田中(三)政府委員 今交渉中でありますのが、エジプトとイランとセイロンの三カ国でございます。エジプトとの文化協定は、近くカイロで署名調印されるように取り運んでおります。セイロン及びイランとの文化協定も、私どもとしては今国会に承認が求められるように署名調印をしたいというので、相手国側をいろいろ督促をいたしておりますが、これは今のところ今月中に署名調印できるかどうか、ちょっとまだ見当がつきかねておりますが、以上三カ国が目下交渉中でございます。
○戸叶委員 今度ポーランドとの国交も回復されるようでありますが、ポーランドやあるいはソ連などと文化協定はお結びになる御意思があるでしょうか。
○田中(三)政府委員 ソ連が現在文化協定を結んでおります国は、共産国を除きましてはフランスとシリアの二国のみでございます。ベルギーが結んでおったのでございますが、ハンガリー問題の起りましたために、この協定の運用が困難であるという理由で、ベルギーが一方的に廃棄を通告した、こういうふうに聞いております。こういう実情で、ソ連と結んでおります自由主義国は非常に少いのでございますが、われわれとしましては、どういう理由で自由主義国がソ連との間に文化協定を結ばないのか、またソ連の文化政策の目的なり内容等をもう少しよく検討した上で、日本側の態度をきめるべきではないか、かように考えております。ポーランドやチェコとの問題につきましても、大体相手国の実情がまだよくわかっておりませんので、今後よく検討した上で日本側のわれわれの態度をきめるべきだ、かように考えております。
○戸叶委員 もう一点だけ伺いますが、インドとの間の文化協定によって、学者や学生の交換ということも盛んになると思うのですけれども、今年度学生の交換で何か特別の御計画がおありになるか、そしてまたこの日本からも大体どのくらい向うへ送られようとしているかということ。
 それから時間がございませんから続いて伺いますが、それらの人たちを迎えた場合の受け入れ機関というものが、いつも問題になるのですけれども、そういう学生の方たちを収容していけるだけの準備はもうできているかどうか、この点だけ伺っておきます。
○田中(三)政府委員 学生の交換でございますが、御承知のように文部省の方で国費による留学生の計画があるわけでございますが、従来日印間には毎年インド側から五名ばかり、日本から一名程度インド側に留学をいたしておるのであります。今年度は文部省の方でさらに二、三十名留学生をよけい呼ぶ予算がとれたようでございますので、来年度――新年度でございます来年度は、多少これをふやし得るのではないか、かように考えております。
 なおついででございますが、ドイツの場合は、日本からドイツへ二十数名の留学生がドイツの招聘で参る、それに対しまして日本は三名程度ドイツ留学生を招いておるのでございまして、この点につきましても、さらにわれわれとしては予算上の措置を講ずることによって、もっと積極的な留学生の交換をしなければならない、こういう心づもりで努力しておるわけでございます。
  〔委員長退席、高岡委員長代理着席〕
 なおこの留学生の受け入れの問題でございますが、外務省といたしましては国際学友会の施設を利用する考えでおるのでございますが、文部省の方面でも、新年度は別な団体を作って、別の学生の収容施設を計画しておられるようでございます。こういうわけで、文部省と協力して留学生の受け入れに万全を期したい、こう考えております。
○高岡委員長代理 穗積七郎君。
○穗積委員 時間がおそくなりましたから、簡単にいたしたいと思います。私のお尋ねいたしたいのは二つありますが、第一は日本と中華人民共和国この間における気象業務についてであります。第二は、移民業務についてお尋ねしたい。中に重要な問題も含んでおりますので、ぜひ岸外務大臣にお答えをいただきたいと思っておりましたが、本日は遺憾ながら御出席がありませんから、大臣に対する質問の予備的な意味でお尋ねいたしておきたいと思います。
 最初に気象庁の太田次長にちょっとお尋ねいたしますが、日本の気象観測というものは、大陸の気象情報が不可欠な条件であるとわれわれも聞いております。そういう観点に立って気象長官である和達先生が昨年からの、おそらくはアン・オフィシャルな資格においての御努力だろうと推測いたしておりますが、中華人民共和国の気象台または関係部署との連絡によって、昨年の六月からこの両国間における気象情報がすでにある程度の満足さをもって交換されつつあるということをわれわれは漏れ承わっておりますが、その経過並びに実情について最初に一般的に御説明をいただきたいと思います。
○太田説明員 それでは私から、中国からの気象資料の日本に対する連絡関係を経過的に申し上げます。
 中国からは終戦以来のごたごたによりまして、しばらくの間−昭和二十一年ごろからすでに日本には気象資料は入って参らないのであります。ところが今穗積委員もお話しになりましたように、大体日本の気象関係としましては、西の方から気象が東の方へ移っていくという関係で、毎日の天気予報に出ておりますところの低気圧とか、あるいは高気圧、すべて西の方から日本に影響するわけでありまして、それが入らないということになりますと、日本の気象予報というものが非常に不確実になるということはお話の通りであります。従いまして、気象庁としましても、何とかして中共の方から資料をいただきたいということを念願しておったわけであります。国交の関係で、政府としては直接に利用ができませんので、気象庁の関係としましては、もっぱら職員でできておりますところの気象協会の職員組合というものがありますが、その方からいろいろと中国の方に働きかけまして、昭和二十八年には中国あてに気象協会の職員組合の方からメッセージを送りまして、できるだけすみやかに気象資料を提供してもらいたいということを要望したこともあります。相手は中共政府だと考えております。その後二十九年に至りまして、和達長官が学術文化視察団の一人として向うに行かれることになり、これは私人として加わっておられたわけでありますが、和達長官から向うの周恩来首相に対しましても、ぜひ資料をもらいたいということを話されたように聞いております。その際に周首相からも何とかその希望に沿うように努力するというようなお話もあったように聞いております。ところがその後また、三十年の一月ごろでありますが、関西にあるところの気象職員組合から、今度は中国の気象学会あてに文書でそういうことを要望したという事実もございます。その後三十年の三月に至りまして、今後十五メートル以上の風速が予想されるような台風、その他寒波、いわば警報の出るような異常の気象のときには、その情報を放送するということが中共の気象局長から放送されまして、それをNHKで受信した。その後警報については、引き続いて日本にその資料が入って参ります。それから、昨年の五月三十一日でありますが、新華社電において六月一日から全国的に気象情報を公開放送するということの放送がありまして日本でもそれを傍受したのでありますが、そのことの放送がありまして以来、六月一日から向うから気象資料がどんどん入ってきておりまして、日本としてもそれに即応して、六月十四日から日本の日常の気象業務にその資料を取り入れて天気予報なり何なりをするということになっております。
 それから、ただいまのところ日本に入って参ります放送関係としましては、北京と漢口からの放送を日本として気象庁で受信いたしております。北京と漢口の二カ所と申しましても、その北京と演目に中共の中の各地から集まったのを、そこで集約してこっちに入るわけでありまして、中国関係の地点として塗三月一十地点くらいはその中に入っておるというようになっております。なおまた上高層の資料といたしましても、一日二回、これはゾンデ関係が六十地点、パイロット・バルーン関係が百二十地点、そういうふうなものがそこに含まれておりまして、北京と漢口の放送を通じて日本が受理しておる、こういうことになっております。
○穗積委員 和達気象庁長官並びに科学者の職員組合の諸兄が科学的良心によって、内閣が非常に消極的であるにかかわらず、適宜の措置をとられたことに対して、われわれは国民を代表して敬意を表します。
 そこで続いてお尋ねいたしますが、今までこちらから口頭または文書をもって向うへお送りになっておられるようですが、それに対して向うの個人または機関からこちらの気象庁長官または個人、あるいは職員組合等に文書をもって回答があったものの記録がございましたら、次の機会に参考資料として、写しでけっこうでございますから、御提出いただきたいことをお願い申し上げておきます。なお重要な、たとえば和達長官が北京を訪問されたときに、周恩来総理とお会いになって、この問題に触れたときの会談の記録等が控えとしてございましたら、これもあわせて参考資料として承わっておきたいと思いますので、資料提出方をよろしくお願いいたしておきます。
 そこで第二に質問をいたしたいことは、そういう状態を伺いますと、すでに昨年六月からは日中間におきまして場は 気象情報交換の業務は、ほほお互いに友好親善の立場に立って満足に近い状態に行われるわけでございますが、それに対してわれわれ奇異に思いますのは、気象庁と向うの気象台でございますか、そういう関係機関、いわば政府機関と政府機関との間における正式な協定または取りきめ、文書の形式は何でもよろしゅうございますが、いやしくも政府間の公文書によります協定にひとしいもの、これがあることが望ましいと思うのですが、気象庁の方々はこういうような完全なる政府間の取りきめ等があって情報が合理的かつ友好的に行われた方が望ましいとお考えになっていらっしゃるかどうか、この点についてお尋ねいたします。
○太田説明員 ただいまの御質問の点でありますが、先ほど申し上げましたように、毎日の気象業務につきましては、中国の方から資料としては、十二分にとまではいきませんけれども、大体日常の作業に事を欠かないような資料が参っております。従いましてさしあたりの処置としまして、気象庁としましてこれ以上さらに何か業務上の協定を結ぶというようなことはただいまのところは考えておりません。
○穗積委員 失礼でございますが、あなたは技術専門の方でございますか。
○太田説明員 事務系統でございます。
○穗積委員 そうすると、今の御答弁はこういう意味に解釈してよろしゅうございますか。現在の状況においてはすでに協定の有無にかかわらず、ほぼ目的を達しているので、どうしても今すぐ結ばなければならぬほどの必要性は感じていない、そういう意味に解釈してよろしゅうございますね。
○太田説明員 よろしゅうございます。
○穗積委員 私の質問の趣旨はそういう意味ではないのです。すでに両国間において友好、親善、平等、互恵の立場に立って気象情報の交換が行われている現在、しかも事務系統の方であるならば、なおさらわれわれと同感だと思うのだが、そういうことが正式に行われ、しかもこちらの要請は周総理または向うの政府機関に要請している。こちらは個人名義または職員組合名義であっても、やはり政府機関です。しかもそれが両国の国民の利益のために気象情報の交換をやろうということですでにやっているのに、何らのオフィシァルな取きめがないというのは不自然なことではないか、そういうふうにお感じにならないかどうかということを聞いているのです。
○太田説明員 私のお答え申し上げましたのは、気象庁の業務を通じまして、いわばきわめて事務的な御答弁を申し上げたわけでありまして、それ以上の協定のことになりますと、そのほか外交的な問題にも触れてくるかと思うのであります。
○穗積委員 そのことは聞いておりません。それは外務省に聞きます。あなたは、気象庁として、気象情報の交換については、現在で必ずしも不十分、何というのか非常な不満を感ずるわけではないけれども、そういう事情からするならば、すぐ先に協定を結んでもらわなければ情報交換ができないというような意味ではないけれども、交換を事実上やっている以上は、協定があるのが常識的に当りまえだと考えるべきではないか、そういうような意味なのです。
○太田説明員 これは外交上のことは……。
○穗積委員 外交上のことは外務省に聞きますから、外交上の判断はやめて下さい。気象庁として答えていただきたい。
○太田説明員 今の点でありますが、業務上の点につきましては、ただいまお答えいたしましたような感じを、ただいまのところは持っておるわけでありますけれども、しかし、たとえば、今気象庁で計画しておりますのは、近く数値予報方式というものを採用して、もっと情報の精度を向上したいということも考えておるわけでありますが、そういうふうにしまして、気象庁のやっておりますところの業務が、今後さらに高度の精度を追求して変っていくというような段階におきまして、あるいは今のような技術上の連絡関係では足らない、従って、もっとさらに積極的な協定を結ぶ必要もある、というふうなことがあるいは将来出てくるかもしれないとは存じますが、ただいまのところは、業務上どうにかやっているというような程度でありまして、今すぐ協定を結ぶという必要は事務的には考えておりません。
○穗積委員 実はきょう和達長官に来ていただいて、周総理とお話をされたこと、その後の業務の交換状態等から見て、常識的に見て、やはり政府機関間の取りきめというものがあるのが常識だと、私は和達さんが答えられると期待しておったが、しかしあなたは、先ほどの言葉の中に出たように、そういうことを気象庁で言うことが、外交的な判断に何らかインフルエンスを与えはしないかということを懸念して答弁しておるようですが、失礼でございますが、昨年来交渉されました記録等を要請するとともに、和達長官自身からその判断についてあらためて伺いたいと思っておりますから、お帰りになりましたら和達長官御多忙中恐縮ですが、こちらの要請のありましたときにはもう一ぺんこの委員会に来ていただくようにお伝えをしていただきたい。その上で気象庁としての正式な態度を伺いたいと思っております。
 次に外務省にお尋ねいたします。まず条約局長にお尋ねいたしますが、日本は、言うまでもなく、中華人民共和国の政権を承認いたしておりません。従って国交は回復いたしておりません。しかしながら、それらの国との間において、非常にビジネスライクな政府間協定を結ぶことが、必ずしも相手国の政権を承認したこと、ないしは国交回復を承認することにはならないという、正当な国際条約上の立場における御解釈の発表が外務省の意見としてございました。われわれも同感でございます。そこで、今お聞きの通りの実情でございますから、ここでさらに一歩進んで局長にお尋ねいたしたいと思いますことは、次のことです。すなわち、御承知の通り、日本と中華人民共和国との間において、すでに一年近くの間、完全とまではいきませんが、友好互恵の立場に立って気象情報が交換されておる。そうであるならば、自然の姿としては、中華人民共和国が気象に関しまする国際協定の中へ参加するならば、日本国も入っておるわけでございますから、日本国と中華人民共和国との間における気象の国際協定を通じて一応正式に関係が成り立つわけですね。ところが、われわれの判断によりますと、今中華人民共和国がこの国際協定に参加することは非常に困難だとわれわれは判断せざるを得ません。しかしながら、一方においては、今太田次長からも御説明のように、日本の気象観測のためには絶対不可欠な情報である。しかもそれが今後ますます発展せざるを得ない状態にあることは、お聞きの通りでございます。そうであるならば、暫定的な措置といいますか、やがて中華人民共和国が、国際的にその政権が承認され、国交が回復されて、そして中国が一つの政権になったその暁において、今の気象に関する国際協定の中へ参加するまでの間、それも私は必ずしも遠いとは思いませんが、それまでの間、暫定的にほぼ同様な内容を持つ、または両国間において今日少くとも必要とする程度の、非常にビジネスライクな気象交換に関する協定、そういったようなものを結ぶことが、中華人民共和国の政権を日本政府が承認した結果になると御解釈になりますかどうか。私はそういうふうには考えないわけですが、私どもの考えが誤まっておりましたならば、この際その理由を明らかにしていただきたいと思うのです。
○高橋(通)政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げますが、気象の問題でございますが、やはり法理論的に申しますと、しかもごく一般的に申しますと、これはやはり気象情報の交換でございますし、非常に技術的な問題じゃないかと、一応今私は考えております。従いまして、これを交換するということは、先ほどおっしゃいましたように、非常に狭い技術的な問題ではないかというふうに考えています。しかし、そこで問題を回避するわけじゃございませんが、やはり協定とか、そういう形を持ちますとやはりどういう形を持つかとか、どういうふうな条項を盛るかとか、そういう問題が出てくると思います。そこでその形式とが、個々の内容とかを一々検討した上で具体的な問題は判断いたすべきじゃないかと考えます。
○穗積委員 その内容については、これは全く技術的な、ビジネスライクなことですから、またあらためて気象庁の意見も聞いてみなければならない。そして私の判断では、最終的には、この協定がどういう性格を持つ、どういう解釈をすべきかということについては、それは案が両方合意に達して具体的にできて、そして調印直前でなければわからない。しかし私の今言っておるのは、そういうビジネスライクなものは、先般お答えの中の政権承認の協定とか、そういう内容を含んだものとは、少くとも法律的解釈においては別問題であり得るというポシビリティを今聞いておるわけでありますが、そのように理解してよろしゅうございますね。
○高橋(通)政府委員 純粋に法理論的に申しまして、一般的に申しまして、そのように解釈していいと思います。しかし、個々の問題とか内容とかの問題になりますと違った問題になります。
○穗積委員 そこで政務次官閣下にお尋ねいたします。先ほど来事務上のこと、条約解釈上のことはお聞き及びの通りなのですから、これ以上説明をいたしません。そこで今日はとっさの質問でございますから、あなたは、政府または外務省を代表されて、その場合ならば日中間の気象協定も結ぶように考えてもよろしいというふうなところまで御答弁いただけるかどうかについては、私は必ずしもきょうは要求いたさない。そこでお尋ねいたしたいのは、そういうような実情であり、国際常識から見ましても当然あり得べきことであり、しかも、そのことが内容からいきまして、貿易協定等の取りきめを政府間協定に引き上げる場合と違って全く両方に実益、実害のない、経済的なものを伴わないことですから、従って台湾またはアメリカに不当に遠慮しておられる今のあなたの属する政府といえども、この可能性があるのではないかと私は思うのです。そこであなたは、この問題は絶対に研究の余地がないとお考えになられるか、それとも一度総理並びに外相ともよく相談をして、それで良心のおもむくところ、国際常識のおもむくところに一つ進んでみたいとお考えになられるか、ごく一般的な前哨質問ですから、その程度のお答えをいただきたいと思います。
○井上(清)政府委員 お答えを申し上げます。わが国気象観測の上におきまして中国の気象状況を知ることが非常に大切なことだということは、私も実は前々からよく承知しておるところであります。先般和達気象庁長官が中共へ行かれまして、いろいろそれらの問題について打ち合せられた結果、非常に重要な気象観測の資料をお互いに交換することができるようになりました。これは気象観測上からは非常な収獲であったと私は考えております。事実上の両国の協力というものが、日本の気象観測の上に、ことに台風観測の上などにおいて非常に役立っておることは、私十分承知しておるわけであります。先ほど高橋局長から、法理論としては、こうした純然たる、政治的な色彩のない問題については条約を結ぶことも学問的には可能であるというようなお話がありましたけれども、しかし、学問的には可能でありましても、政治的な要素がいろいろ加わりますと、なかなか簡単にはいかない場合が非常に多いと私は考えております。中共との問題におきまして、たとえば電話の問題とか郵便の問題とかいう問題も、これは同じような観点から考えなければならぬ問題だと私は思います。その日におのずから段階はあるとは思いますけれども、考えなければならぬ問題であります。また中共におきますところのいわゆる未消息の在留邦人に関する調査なども、これは現在はジュネーヴの総領事館から向うの大使を通じていろいろ調べてもらっておりますが、そういう問題についても何らか手を打つことがあるいは必要だというような議論もいろいろあるわけであります。ですけれども、これはやはり先ほど穗積委員からもおっしゃいましたように、現在の中共の国際的な立場からいって、そう政治的な色彩のない取りきめといえども、国家間の取りきめというものは、なかなかいろいろな問題があるわけであります。私はどうかと聞かれますと、現在の段階においては困難であるという意見を私は持っております。なおしかし、この問題は、わが国の気象観測という問題から相当重要な問題でございますので、政府としてはさらに検討を重ねていきたい、かように思っております。
○穗積委員 それではちょっと聞きますが、それは岸外務大臣と御相談の上の御答弁ですか。あなたの次官としての個人的な御判断でありますか。
○井上(清)政府委員 私の個人的な意見でありますが、なおまた岸大臣とも十分相談をいたします。
○穗積委員 しからば要請いたしますが――それをもって私は外務省ないしは岸内閣の最終的な答弁だとは受け取らない。あなたの個人的な観測だと思う。そういう点では、今の答弁はちょっと落第です。それであらためて要請いたしますが、岸大臣によくお伝え願ってそうしてこの問題は研究した上で御答弁をわずらわすようにいたしたい。私の岸外務大臣からの答弁要求は、この問題につきましては留保しておきます。そのことを政務次官はよく外務大臣と御相談になっていただきたいということを要望しておきます。
○森島委員 私も岸外務大臣に伺おうと思ったのですが、話が出ましたから、ついでに関連して条約局長に伺いたい。
 岸外務大臣が満州国の要人だったことは御承知の通りだが、その時代に満州国と北支との間で通車通郵協定というものが成立いたしました。これは政治的な問題でなしに、純然たる業務協定だという趣旨のもとにできたもので、通車というのは、山海関を通って北京と奉天間に自由に汽車を走らすという協定であります。それから通郵は、中国においては満州国を承認しないという建前で、久しく、満州国から出します郵便物については北京の郵便局で別に印紙を張っておったが、そういうめんどうなことはやめようじゃないかということで通郵協定というものができました。これは当時満州国でも、業務協定だということで、政治的な問題でないということを明らかにして協定しその当時日本政府もむろんかいらい政府であった満州国政府のやったことですから十分承認しておったことは岸君も御承知であるが、この通車通郵協定のごときものを中華人民共和国との間に結べば、従来の経過からいって、これは当然業務協定として締結して可なりという見解を私は持っているのですが、大臣に対する質問の予備的な意味で一つ条約局長の御意見を伺っておきたい。
○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。私は、寡聞にして、その具体的内容の詳しいことは存じませんけれども、そういう事態が満州国当時にあったということを承わっております。この問題につきましては、協定の種類のいかんを問わず、一切の協定が政府または国家の承認を意味するものだとか、また、一切のいかなる協定でもそれを意味しないのかというふうに、一律に法理論的には解決できない問題でございまして、やはりおのおのの協定、たとえばそういう政治的な意味合いのない、また経済的な意味合いのない、純粋な技術的な、しかも不可避的に国家間の接触で国民間に接触の起るような業務的なものを解決するというふうな協定は学しも承認になるものじゃないというふうに考えております。
○穗積委員 聴聞がおそくなりましたから、次に、先ほど予告いたしておきましたように、移民業務についてちょっとお尋ねしたいのです。時間がありませんからほんの糸口だけできようはやめておきますが、あらかじめ私の質問の要旨を申し上げておきます。
 この前、この委員会におきまして海外移住振興株式会社法なるものが審議されたときに、移民の実態、移民の行政事務等についていろいろ意見がございましたが、われわれ外務委員としては、党派を超越いたしまして、外務省一本で有効適切なる移民業務をやってもらいたいということを強く要望いたしました。ところが、その後ときどきいろいろ様子を聞きますと、必ずしもそれがわれわれの期待通りにいっていない。そこで私は、きょうは大体三つの問題をここで提起いたしておきます。
 第一番目は、移民のあっせん業務、これが全く野放しといいますか、無監督状態に行われてある意味においてはもぐりにひとしいような旅行あっせん会社または協会等々が、移民の弱みにつけ込んで、これから不当な利得をしたり、あるいは無責任な移民をさせてかえって移民の本人はもとより受入国に対しても迷惑をかけておる。それが無監督状態に置かれておるという実情をいささか耳にしたり、われわれも多少調べてみました。これが一点。
 第二には先般の法律でできました海外移住振興株式会社、その運営並びに融資の実態等々について、われわれの意図せざるところが相当多いように見受けられますから、この問題についてただしたいと思っております。
 第三は、移民は行政官庁としては外務省一本でやりたいという強い要望であり、われわれもそれを支持し、法律並びにこの行政事務の打ち合せ等も、そういうことに協力した。特に農林省の問題が出て参りまして、そこでなわ張り争いというか、あるいは競合の形が出たために、移民業務が十分に行われないという事実をわれわれは察知いたしまして、外務省統一論を主張し、それで大体そういうふうに協力し、かつまとまってきたように見受けるのですが、その後のいろいろの実情を聞いてみますと、これまたもとのもくあみといいますか、必ずしも円滑にいっていないような状態のようにわれわれも見受ける。その点について実はただし、かっこれをまっすぐにしたい。
 以上私の移民業務に関する質問の点は、三つでございます。
 きょうは先ほど、言いましたように時間がございませんから、第一点だけであとは留保いたしておきたいと思いますが、これは申すまでもなく、ちょっと調べてみますと、明治二十九年に制定されました移民保護法というものが、法律の形式上の取扱いからいきますと、まだ死んだ法律ではないはずにも思われますけれども、新憲法ができましたために、実情はこれが死文化しておるように見受けるわけです。そうなりますと、この旅行あっせん業務を行います会社または組織というものが、運輸省の所管になっているようでございますが、その場合に登録されておる会社というものは一、二しかなくてそれ以外のものは実は未登録。これは許可法人になっておるかどうか、それをまず第一に運輸省の方にお聞きしたいと思ったが来ていないので、この次に一つ要求いたしますが、その間の事情を外務省は御存じになっておられるかどうか、どういうふうに心得ておられるか、それをお尋ねしたいと思います。それから逐次実情についてお尋ねいたします。
○石井(喬)政府委員 お答えいたします。ただいま御指摘のございました通り、移民保護法は現在でもまだ生きております。しかしこれもおっしゃいました通りにほとんど死文化といってもいいと思います。この移民保護法の中には移民を取り扱いまする、移住者を取り扱いまする団体につきましては、これは外務大臣の許可事項になっているという規定もございますけれども、実際問題として移民保護法それ自体を適用することが非常に困難でございます。実質的には野放しになっているというお話の通りだろうと存じます。ただしかし私どもといたしましては、昔からいろいろ歴史のある団体もございますので、そういうものにつきましては、できるだけ指導をいたしましておかしなことのないようにしておりますけれども、最近の移民熱と申しますか、それに乗りまして、いろいろインチキなものが出つつあるのじゃないか、あるように私どもも聞いております。そこで私どもといたしましては、できれば本国会に移住者を取り扱いまする団体を規制する法律を出しまして御承認を願いたいと思っておりますが、この法律につきましては、各省間の意見がなかなか調整困難でございまして、進行しないという状態でございますの
○穗積委員 もうすでに心配したように無法律、無監督状態だということを認めざるを得ない。そうであるなら私のちょっと調べてみたところでも、未登録のいかがわしい会社と思われるものが十社見当あるわけです。それで少し事情を調査してみますと、これらの諸君が移民の弱みまたは無知を利用して、向うから呼び寄せ移民の形式をとることが一番簡易だというので、白紙委任状のようなものを向うから取り寄せて、そうして規格に合わないようなものでも、おれがやってやるというようなことで数万ないしははなはだしきに至っては数十万のあっせん料を取り上げてやっておる。行ってみるとその約束通りにはさっぱり行われていないというようなことで、ないしはあっせん料を取られっぱなしでそのまま放置されておるところもあるようです。そういうような実情を外務省はお聞きになって御存じになっておられるかどうか、御存じになっておるとすれば、それに対して今までどういう措置をおとりになってこられましたか。
○石井(喬)政府委員 実は私どももときどきそういううわさを聞きまして、いろいろ調べてみるのでございますが、なかなか内地を出ます前にそういうことを言うのはおりませんで、結局現地につきましてから私は金をとられたというような話を聞くのであります。そういう通信がございますと、さっそくその旅行あっせん業者のようなものを呼び出してみたり探したりしてみるのですけれども、なかなかどこにいるのかわからぬ、住所不定というようなのが多いものですから非常に因っておる実情でございます。
○穗積委員 これらはある場合においては明瞭に刑法上の詐欺だと思うのです。従ってこういうところは当然警察当局にも通報して、調査または検挙すべきものだと思う。ただ様子がわからない、手紙を出してみたが返事がない、事務所があってもなきがごとき幽霊会社だ、こういうことで困っておるというだけでは足りないのであって外務省としては警察に正式に調査を依頼され、通報さるべきだと思うのですが、その御意思がございますか。
○石井(喬)政府委員 明らかな事実がつかめますればそうしたいと思っております。ただ今申し上げましたように現地からの通信ということでどうもはっきりこうだということは非常につかみにくいのでございます。間接のまた間接ぐらいにそういううわさを聞くだけでございますから、非常にやりにくくて困っております。そういう事実がはっきりしますれば、ぜひやらなければいかぬと思っております。
○高岡委員長代理 穂積君、時間がきておりますからお急ぎ願います。
○穗積委員 委員長から時間の催促がありましたので、途中で残念ですがやめますけれども、実はそういうのが私の調べによると約十社、その名前があなたの方のお調べと合っているかどうかしらぬが、ここで一々その名前を言うのも必ずしも適当でない、必要なときは言いますけれども、そういうわけですから一度よくあなたの方でもお調べいただきたい。そうして外務省としては手足の都合で調べができないならば、これこそ警察の力をかりて調査されるか捜査されることが当然だと思いますから、そういう手続をお願いしておきたいと思います。その上でまたあらためてお尋ねいたしたいと思います。
 それからこれにつきましては実は今の移民関係の団体法といいますか、そういうようなものについても実はさっきおっしゃったように、おそらくは農林省との間でまだ調整がつかないということだろと思うのですが、その実情を実は開きながらどういう内容を持ってやられるつもりなのか予備的にわれわれの提言をしておきたい、法律案として出てくる前にそういう意味で実は尋ねてみたかったのですが、委員長特にお急ぎのようですから、この問題はこの次の機会に続けてお尋ねいたしたいと思っておりますからよろしく御準備をあらかじめお願いいたしておきます。
○高岡委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時散会