第026回国会 社会労働委員会 第2号
昭和三十二年二月十一日(月曜日)
   午前十一時九分開議
 出席委員
   委員長 藤本 捨助君
   理事 大坪 保雄君 理事 亀山 孝一君
   理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君
   理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君
      植村 武一君    小川 半次君
      越智  茂君    倉石 忠雄君
      小島 徹三君    田子 一民君
      田中 正巳君    中村三之丞君
      中山 マサ君    八田 貞義君
      山下 春江君    赤松  勇君
      岡本 隆一君    栗原 俊夫君
      五島 虎雄君    堂森 芳夫君
      山口シヅエ君    山崎 始男君
      山花 秀雄君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 神田  博君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (大臣官房会計
        課長)     堀岡 吉次君
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局
        長)      山口 正義君
        厚生事務官
        (医務局長)  小澤  龍君
        厚生事務官
        (薬務局長)  森本  潔君
        厚生事務官
        (社会局長)  安田  巌君
        厚生事務官
        (児童局長)  高田 浩運君
        厚生事務官
        (保険局長)  高田 正巳君
        厚生事務官
        (引揚援護局
        長)      田邊 繁雄君
 委員外の出席者
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局環
        境衛生部長)  楠本 正康君
        厚生事務官
        (医務局長)  河野 鎮雄君
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
二月十一日
 大橋武夫君が理事に補欠当選した。
同日
 理事藤本捨助君委員長就任につき、その補欠と
 して亀山孝一君が理事に当選した。
同日
 理事岡良一君及び滝井義高君辞任に、その補欠
 として八木一男君及び吉川兼光君が理事に当選
 した。
    ―――――――――――――
二月八日
 戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
 杉浦武雄君紹介)(第四〇一号)
 同(並木芳雄君紹介)(第四〇二号)
 同(福井順一君紹介)(第四〇三号)
 同(福田昌子君紹介)(第四〇四号)
 同(前田房之助君紹介)(第四〇五号)
 同(柳田秀一君紹介)(第四〇六号)
 同(川崎末五郎君紹介)(第四九二号)
 同(小島徹三君紹介)(第四九三号)
 同(伊東岩男君紹介)(第四九四号)
 同(永田亮一君紹介)(第四九五号)
 同(大高康君紹介)(第四九六号)
 同(北澤直吉君紹介)(第四九七号)
 抑留同胞引揚者の援護対策拡充に関する請願(
 愛知揆一君紹介)(第四七三号)
 助産婦教育過程の低下防止に関する請願(岡崎
 英城君紹介)(第四七四号)
 結核公費負担に関する請願(池田清志君紹介)
 (第四七五号)
 奄美群島の医療対策に関する請願(伊東隆治君
 紹介)(第四七六号)
 生活保護法等の一部改正に関する請願(大村清
 一君紹介)(第四七七号)
 国立療養所等の賄費増額に関する請願(大村清
 一君紹介)(第四七八号)
 家族計画予算確保に関する請願(鈴木周次郎君
 紹介)(第四七九号)
 中国、ソ連関係戦犯帰国者の援護に関する請願
 (中馬辰猪君紹介)(第四八〇号)
 太原関係戦犯帰国者の軍人軍属としての身分確
 定に関する請願(中馬辰猪君紹介)(第四八一
 号)
 奄美大島地区戦没者遺族に死亡時給与金支給に
 関する請願(山中貞則君紹介)(第四八二号)
 環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律
 制定の請願(愛知揆一君紹介)(第四八三号)
 同(池田清志君紹介)(第四八四号)
 同(加藤鐐五郎君紹介)(第四八五号)
 同(亀山孝一君紹介)(第四八六号)
 同(高橋等君紹介)(第四八七号)
 同(田中龍夫君紹介)(第四八八号)
 同(保科善四郎君紹介)(第四八九号)
 同(粟山博君紹介)(第四九〇号)
 同(吉田重延君紹介)(第四九一号)
同月九日
 健康保険法の一部改正反対等に関する請願(纐
 纈彌三君紹介)(第五四四号)
 衛生検査技師の身分法制定に関する請願(竹内
 俊吉君紹介)(第五四五号)
 同(徳田與吉郎君外二名紹介)(第五四六号)
 戦傷病者援護の単独法制定に関する請願(小澤
 佐重喜君紹介)(第五四七号)
 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す
 る請願(小澤佐重喜君紹介)(第五四八号)
 同(徳田與吉郎君紹介)(第五四九号)
 戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
 大高康君紹介第五〇五号)
 同(加藤常太郎君紹介)(第五五一号)
 同(加藤鐐五郎君紹介)(第五五二号)
 同(川野芳滿君紹介)(第五五三号)
 同(菊池義郎君紹介)(第五五四号)
 同外一件(徳田與吉郎君紹介)(第五五五号)
 同(山本猛夫君紹介)(第五五六号)
 環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律
 制定の請願(臼井莊一君紹介)(第五五七号)
 同(河野金昇君紹介)(第五五八号)
 同(笹本一雄君紹介)(第五五九号)
 同(瀬戸山三男君紹介)(第五六〇号)
 同(田子一民君紹介)(第五六一号)
 同(田中彰治君紹介)(第五六二号)
 同(福田赳夫君紹介)(第五六三号)
 同(横井太郎君紹介)(第五六四号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 社会保障制度、医療、公衆衛生、婦人・児童福
 祉及び人口問題に関する件
    ―――――――――――――
○藤本委員長 これより会議を開きます。
 社会保障制度、医療、公衆衛生、婦人・児童福祉及び人口問題に関する件につきまして調査を進めます。
 先般の厚生大臣の説明に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。植村武一君。
○植村委員 昭和三十二年度の厚生省の予算は、先般御説明いただきましたように、前年度に比較いたしますると百十一億余円の増加となっておりまするし、その内容もまた、現内閣が社会保障の推進に熱意のありまする点もわれわれは了承するにやぶさかじゃないのであります。それだのに、一例をとりますと、健康保険の改正という問題になりますと、全国の医療担当者は現在この改正問題に対する非常に熾烈な反対の態度を表明されておる。これらの反対の要点は、患者の一部負担、さらに官僚統制の強化というようなことで、非常な反対をされておるようであります。
 ところで、もちろんそれも一つの理由ではあろうかと思いますが、これらの問題については医療担当者としては多少誤解の点もあるかのようにも考えまするし、さらにまた三年先までに国民皆保険を打ち出しておられまする現内閣としては、将来の保険医制度に対してはどういう考えを持っていらっしゃるか、さらにそれに引き続いて診療報酬支払い制度そのものを一体どのように取り扱われるか、さらにまた一点単価を二十六年以来据え置きだのに、このままでやられるかどうかというようなことに対する、診療担当者としては先行きの不安というものがあることもこれは間違いないと思います。従って私はこの際この委員会を通して、大臣はこれらの問題に対して政府の考えていらっしゃる点を明確に宣明されることが、この問題の解決に非常に利益じゃないかと思うのでありますが、この点まず大臣に伺っておきたいと思います。
○神田国務大臣 お答えいたします。ただいまお尋ねございました継続審議中の健康保険法一部改正等の法案に関しまして、医師会あるいは歯科医師会の方々、全国的に非常な猛烈な反対をされておられる。またこれはそういった医療担当者だけでなく、被保険者の側においてもいろいろ反対されておることにつきましては私もよく承知いたしております。
 そこでお尋ねございましたことも、非常に御心配の余りお尋ねと思いますが、私も実はこの問題につきましては厚生大臣に就任する前から、厚生省と診療担当者側において前々から対立と申しましょうか、意見の相違と申しましょうか、どうもしっくりいってないということにつきまして実は憂いておった一人でございまして、大臣に就任いたしまして特にその感を深くいたしたのでございます。何といたしましても現内閣といたしましては国民皆保険をこの四年間で完遂したい、医療制度の充実をいたしたいという方針でございますので、診療を担当される医師を向う向きにさせて厚生行政を進めようというようなことはもちろん考えておりません。今日法案をめぐって非常な対立のように見えておりますのを、できるだけ一つ納得していただけるような十分の話し合いをいだしまして参りたい、こういうふうに考えております。法案の改正の問題も植村委員からお尋ねのように、誤解の点も多々あろうかとも考えております。また反対をされている内容につきましても、法案通過の後におきましても、法の運用によってもこれらは解決できるというようなこともできる、こういうように考えております。それからなお根本的なことでございますが、ただいまお尋ねにもございましたように、医師の生活権と申しましょうか、昭和二十六年以来そのままになっております今御指摘の点につきましても、十分調査を進めておりまして、これらの点も合理的な解決をいたしたい、かように考えております。
○植村委員 厚生大臣のお考え、非常にけっこうだと思うのでありますが、日本の医療行政そのものを、医療担当車と厚生省とが相剋摩擦を繰り返しているというような状態で私は完全なる医療というものはできないと思う。どうしてもこれは医療担当者と厚生省がもっと率直に腹を打ち割って協議して適当な妥結点を見出す努力をさらに重ねられなければならぬと考えるのであります。そういう点において、厚生大臣はぜひそういうふうにやりたいというお話はまことに私はけっこうだと思うのでありますが、最後にお答えのありました保険医制度、診療報酬の支払い制度に対して、もう少し将来どういうような構想をお持ちになっているかということを、もし大臣で十分でなければ局長からでもけっこうでありますが、御説明いただきたい。
○高田(正)政府委員 診療担当者の待遇改善というふうなことにつきましては、大臣がただいま仰せられましたように、われわれといたしましても、将来このままで放置しておくわけには参らない、どうしても適当な機会において何らかの方法によってこれを解決しなければならないというふうな基本的な考え方をいたしているわけでございますが、具体的な問題といたしまして、保険医制度あるいは支払い制度をどういうふうにしていくつもりであるかという具体的な御質問でありますが、保険医の制度につきましては、国民健康保険をも含めまして申し上げますならば、健康保険系統の今の被用者保険の系統におきましては、現行の保険医というものの制度に、法律改正でただいまお願いをいたしておりますような改正を加えましてそれを建前にやって参りたいと考えております。なお国保の関係につきましては、保険医制度でございませんで、療養担当者の制度ということになっておりまして、保険者と療養担当者とが相談をして契約でやって参るというかっこうに相なっております。これにつきましても将来十分に検討はして参らなければならぬと思いますが、ただいまの私どもの考えでは、これは保険医に一本にするというようなことを考えませんで、現行制度のままにしてこの運用をやっていったらどうであろうか、かような考え方を持っているわけでございます。この点につきましては、将来の問題といたしましていま少し検討を加えたいとは存じておりますけれども、ただいまのところではさような考え方をいたしております。
 それから支払い制度の問題でございますが、これは支払い制度ということになりますと、現行の点数単価制度、これが大体社会医療には全般的に採用されているわけでございますが、この点数単価制度につきましてもいろいろ論議のあるところでございまして、これを根本的に研究して参るということは必要であろうかと存じますけれども、しかしこれを根本的に変えるような制度ということになりますと、なかなか問題も多うございますので、点数単価制度の基本というものはやはりこのまま残していかなければならないのじゃないか、ただその点数単価制度の中におきましても、現行のようないろいろ欠点のありますところは、これは直していかなければならない。その点数単価制度の建前のもとにより合理的にいたしたいということでただいま中央医療協議会で新しい点数表の根本的な改正を御審議いただいている途中でございます。この御答申を得ましてそちらの方向に合理化して参りたい、かように考えておる次第でございます。
○植村委員 なおこの問題は、法律の改正案を出されるときに論議を重ねることにいたします。
 次に伺いたい二、三点を引き続いて質問いたしたいと思いますが、第二は母子家庭の対策についてであります。今度は福祉資金の貸付の国庫の負担率を二分の一より三分の二に増加せられました。これは前国会における社会労働委員会の意思を尊重された結果でありまして、この点はまことにけっこうなことなんでありますが、さらにその上生活保護におきます母子加算を五百円より千円に引き上げられて、母子家庭の生活保護に入る基準を上げられた、これも私はけっこうなことであると思うのであります。ところで私の考えておりますのと多少考え方に違う点があるということを遺憾に思うのであります。それは、行政のあり方としてはボーダー・ライン層の人々をできるだけ生活保護に追い込まないような行政が私は願わしいことじゃないかと思うのであります。またボーダー・ライン層の人は何とかして生活保護に転落しないように非常な努力をされていることも事実であります。ことに母子家庭においてはそういう意識が濃厚なんであります。そうすれば、私はできるだけこの母子家庭を生活保護に追い込まないような対策をまず立てるべきではないかと思うのでありますが、今度のこの生活保護の母子加算というものを考えてみますと、ボーダー・ラインでいけなければどんどん生活保護にお入りなさい、受け入れますぞというような意思表示をされているように思うのであります。その点どういうふうにお考えになっておりますか、一応伺ってみたいと思います。
○安田(巌)政府委員 母子加算の問題について御質問がございましたが、御質問の御趣旨まことにごもっともなことであります。ただ生活保護の基準を引き上げますと、必ずそれだけ生活保護を受けます人がふえてくるというのが理屈であります。今度の場合も今のお話のようにボーダー・ライン層だけに母子手当でも出そうかということはいろいろお話もあったのであります。しかしそういたしますと、現に生活保護を受けておりますところの母子世帯の方もやはり何らかの手当をしないと、一番困っておるところに金をやらないで、その次の段階のボーダー・ライン層に金をやるということになって参りますので、そこで一番困っております生活保護を受けております母子世帯に若干の手当をすることによりまして、そういう人たちの生活を少しでも楽にしてあげたい、同時にまた基準が上りましただけ、従来生活保護を受けていなかった人々に対しまして、若干でもお金を出せるということをとりあえずの処置としてとったわけでございます。
○植村委員 局長のお考えの点はよくわかるのでありますが、私が最初に申し上げたように、なるたけ国民は生活保護に入りたくない。また入らせたくないという行政が必要なんで、簡単に因っているだろうから生活保護に入りなさい、受け入れてやろうというようなことは、ほんとうに国民の自立という精神に反する行政になると思うのであります。そういう考え方からしまするならば、――もちろん生活保護に入っている母子家庭に対する加算、これはけっこうなことであります。と同時に何とかして生活保護に転落しないようにがんばっているボーダー・ライン層の母子家庭に対しては、手当とかなんとかいうような形においてめんどうを見るべきじゃないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
○安田(巌)政府委員 大へんごもっともなお話でございまして、何らかの形で公費でもって母子世帯を援助するということが、何らかその母子世帯の自尊心を傷つけ、あるいは自立心を傷つけるというようなことがありますと、これははなはだ行政としてはまずいわけであります。もしそういうことがありますならば、先ほども御指摘がありましたような母子福祉貸付資金というような形でいくのが一つの方法ではないかと思うのであります。要はものの考えようだと思うのでありますけれども、今の生活保護法がわが国の公的扶助制度としての一つの完備した体制をとっておりますが、しかしそれを年金制度にでもいたしまして、資産、資力の認定をやらないで、一定の条件の者には全部年金でもやるということになりますならば、お話のような点が気分的にだいぶ違うのではないかと思います。しかしそれは今すぐということは実現がなかなかむずかしいようでございますので、今回の措置といたしましては、そういった一番困っておるところから、あるいはまた生活保護の母子加算を引き上げることによりまして、その上の薄い階層を少しでも楽にいたしたい、こういったような措置をとったようなわけであります。
○植村委員 この問題はまた法律案が出ますからそのときに譲ります。
 次に伺いたいのは、昨年非常に委員会でも論議がかわされておりました乳並びに乳等の省令改正に関する問題であります。現在の省令は非常に不合理な点があるということで、当局はその不合理を認められて早急にその省令の改正をやるということを委員会で言明されておったのでありますが、その後どういうふうに改正されましたか、一応伺っておきたいと思います。
○楠本説明員 お答えを申し上げます。ただいま御指摘のように、従来いろいろ牛乳の現行省令につきましては御批判があったわけであります。私の方も昨年来この合理化について検討を進めて参っております。おおむね成案を得ましたので、近く改正省令として公布をする予定でございます。
○植村委員 大体いつごろの見込みでしょうか。
○楠本説明員 ぜひ年度内に実施に移したいと考えております。
○植村委員 やはり現在の省令を改正するという構想なんですね。牛乳法というような法律を作るというお考えはないのですか。これはどちらなんですか。
○楠本説明員 現在の牛乳省令というものは、必ずしも法制的に見まして合理的でない面もございますので、さらに生産から消費の過程をも含めた総合的な牛乳法というようなものを作りたいという考えのもとに昨年来研究を進めて参りましたが、時間の関係等もございまして、今期国会に御批判を願う段階には立ち至らないのじゃないかと考えております。そこでとりあえず牛乳省令を改正いたしましてできるだけ合理化をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
○植村委員 もう一点伺っておきたいと思います。医師充足対策として貸費制度を御採用になられた。私はこれは非常におもしろい制度だと思っておりますが、これは戦争前の軍の委託学生というような制度だろうと思うのであります。しかし今度の貸費制度の採用は主として保健所の充実のための一つの施策であると聞いております。それももちろん私はけっこうだと思うのでありますが、しかしもうちょっと大きい目でこういう一つの構想を練ってみたらどうかと思うのであります。それは今後日本が海外進出をする場合、たとえばインドネシアとか東南アジア等日本が大いに今後市場を開拓しなければならぬ、貿易を拡大しなければならなぬというようなときに、その拠点として、医者というものを現地に送り込んで、しょっちゅうそこらの民族と手をつないで、そして日本の技術とか日本の民族性というものを原住民によく把握せしめるという、いわゆる日本海外発展の拠点を医者に求めるというような構想を考えてみたらどうかというふうに私は思うのでありますが、これは大臣並びに外務大臣あたりに質問すべきことなんですが、そういうような構想はお持ちになっておりますか、一つ伺っておきたいと思います。
○小澤政府委員 ただいまの御質問の御趣旨は私ども非常に賛成でございますが、さしあたって事務的にはそういう構想を持っておりません。将来そういう問題が起きた場合においては、十分貸費制度とからんで考慮いたしたいと存じます。
○中山(マ)委員 関連して。二十九年度くらいでございましたか、私が厚生省に政務次官をいたしておりましたときに、日本の病院あるいは医療関係の分布図につきまして非常に疑惑を持ったのであります。屋上屋を架するように、大都市には幾らでも病院があり施設があるのに、ずっと地方に参りますと無医村が非常に多い。その結果今質問がございましたような制度を厚生省として取り上げたらどうだということを私が提案いたしましたときに、その当時私その言葉は覚えておりませんが、こういうことをすることは何かの法律に違反するからそういうことはできないのだといって断わられたことを私は覚えておるのでございますが、その当時の考え方と今日とどういうふうな変化をもってこういう制度を取り上げようということになりましたのでしょうか。厚生省のその考え方の変化を聞かせておいていただきたいと思います。
○山口(正)政府委員 ただいまのお尋ねの貸費制度の問題でございますが、これは先ほど植村先生から御指摘になりましたように、現段階におきましては、主として保健所の医師の充足対策ということで考えております。これは両三年来医師の保健所における充足対策の一つの方法として考えて参ったわけでございます。ただいま中山先生から御指摘のありましたように、勤務地を指定して義務づけるというようなことは、労働契約の関係でなかなかむずかしいということでございまして、この今回の考え方におきましては、これはいずれ貸与いたしました金額につきまして免除するというようなことも起って参りますので、法律案として御審議を願わなければなりません。その際にいろいろ御審議いただけることと思うのでございますが、勤務地を義務づける、あるいは勤務を義務づけるというようなことでなしに、政令で定めます一定の期間、保健所あるいはそのほかの政令で指定いたします場所に勤務いたしました場合には、返還することを免除するというような形で持って参りたいと存じておりますので、戦前ありましたいわゆる軍の貸費制度とは少し考え方を変えているわけでございます。そういう関係で義務づけるということができませんということを数年来申し上げておったわけでございますが、今回の考え方も義務ということからそれて、勤務した場合には返還を免除するというような形でこの制度を運用して参りたいというように考えております。
○中山(マ)委員 それでは結局言葉の魔術でごまかそうという制度なのでございましょうか。そうすればずるい人はそういう恩典を受けても逃げられるという一つの法律になる危険性はないのでしょうか。
○山口(正)政府委員 決して言葉の魔術という意味ではございませんので、根本的な考えが、新憲法下におきましては義務づけるということが不可能だというようになっておりますので、こういう制度をとるわけでございまして、ずるい人はということになりますと、(「そんな人はいない」「医者はみんな正直だ」と呼ぶ者あり)表現は適当でないかもしれませんが、初めからそのつもりでこの貸与を受けて、どうしても需要上事情が変って保健所あるいはそのほかの場所に勤務することができなくなったというような場合には、これを返還させるということにいたさなければならぬと思うのでございます。
○中山(マ)委員 それならば勤務ができないような事情ということは、どういうことを想定していらっしゃるのでございますか。今のお話ではお医者様にはそういう人がないというようなヤジが飛んでいるようでございますけれども、しかしこれは国家の予算を使うことでございますから、よっぽどしっかり考えてもらわなければならぬと思います。この児童加算にいたしましても、未就学児童が百五十円、就学児童が三百円という話を私がUP通信の記者にいたしましたら、これは一日に百五十円かと聞かれまして、私がいやそれは一カ月だと申しましたら、そうか、一日かと思った、まあベター・ザン・ナッシングだということを言われまして、私はUP通信の記者にからかわれましたことを考えますと、こういうふうなお金は、それならばずるい人はのがれて、気の毒な子供にやろうという金は百五十円とか、三百円ということになりますと、話がちょっとおかしくなるように思うのでございますが、何とか逃げられないような体制に持っていって貸費を――私は、貸費生を作ることには、その当時から私が提案したくらいなのですから、むろん賛成なんです。しかし国家予算を使うことでございますから、世の中がだいぶ進んで参りまして、日本も昔は医は仁術であったのですが、今日では算術になったということも言われている時代ですから、私はぜひ一つ国家の予算がむだに使われないようにという点を心配して、厚生省当局がどういうふうにしてそのお金がむだにならないような方途を考えてこれをおやりになるか、それを承わっておきたいのであります。
○山口(正)政府委員 目的は医師充足対策でありますが、先ほど私の申し上げ方があるいは逆になっておったかと存じますが、医学修得に必要な金を貸して、そしてそれを返してもらうということが原則でございます。それでもしも政令で指定します場所に一定年限勤務した場合には返してもらわなくてもいいという免除規定を設けようというわけでございます。そういうことから、できるだけ経済的に困っておられるような方、あるいは保健所、あるいはそのほかの公衆衛生畑に勤務したいという意欲に燃えておられる方にこのお金を貸して、そして公衆衛生行政の方に勤務する方の不足しているその充足対策の一助にかえたいというふうに考えておるわけでございます。
○植村委員 ちょうど大臣見えましたので、もう一度私の先ほど質問をいたしておったことを伺って、大臣の御所見を承わりたいと思います。医師充足対策としての貸費制度の御採用まことにおもしろい構想だと私は思うのでありますが、ただ昔のように軍の委託生の貸費のような、強制的に勤務地を指定するというわけには参りますまいと思います。しかしこの構想のよって来たるところは保健所の充実ということにあるようでありますが、私はそれもけっこうだと思うのであります。しかしながらこの構想よりももう少し発展した海外進出の基盤を医者によって作らせよう、こういうような考え方が私は必要じゃないかと思う。だんだん外国との友好も深まって参りまするし、今後インドネシアとか東南アジアとかいうような方面にわが国は大いに経済発展を期さなければならないときに、そこらの一番困っておることは私は医者の不足だと思う。そういうところに優秀な日本の医者を送り込んで、そうして日常原住民との接触によってその地方の民族と日本民族とのつながりを持たして、医師によってその地方の開発の基盤を作る、一つの海外進出の先兵となるというこういう構想は、私はぜひあってしかるべしだと思う。これは厚生大臣だけでなくて外務大臣とも関係ありますが、そういうような構想に対しては厚生大臣としてはどういうふうにお考えになっておりましょうか。一つお伺いいたします。
○神田国務大臣 ただいま植村委員から、わが国の医師に海外の後進国に進出してもらう、後進国の医療の向上に寄与したらどうかというお尋ねでございまするが、これは実は私も非常に賛成でございまして、厚生省におきましても、この問題につきましては前から懸案として研究を続けておったようでありますが、私参りまして特にこれに熱意を持ちまして、医師の進出はまた医療機械の進出にもなり、さらに医薬品の進出になりまして、彼我の交流がますますあたたかいものになってくる、何とかそういうような方法を具体的に一つ進めていきたい、こういう構想でございますが、ただいま御指摘ございました外務省関係その他関係省間においても今後十分対策を練りまして、これらの問題に検討を加えまして進めていきたい、こういうように考えております。
○亀山委員 ただいま同僚植村委員から御質問がございまして、厚生大臣からわが国の医師関係の方の海外進出について努力するというお言葉がありましたが、これについてお伺いしたいのは、単に今の場合は医師を海外に進出させることにつきましては、戦前はわが日本は大英国とメキシコとのみ相互条約で開業できた、この条約ができなければいくらわが国から医師を進出させようとしてもできない、そこでこの問題に対してどういうような努力をしておられるか、現在は医師、歯科医師の開業の相互条約はどうなっておるか、その点を医務局長にお伺いしたい。結局はこの条約が先行する問題であります。いくらわが国で医師を出そうといたしましても、相互条約、同時に、わが国が出るかわりにその国からまた日本において無条件で開業させなければならぬということになってくるのだから、その点を一つこの際はっきりお伺いして、今後はできるだけそういう方面の国際関係といいますか、相手国との相互条約を結ぶということにつきまして格別の御配慮を願いたい。今の実情をちょっとお伺いしたいのです。
○小澤政府委員 ただいまは相互に資格を認め合うという条約はなくなっております。特に申し上げたいことは、南方の方の医学教育というものは必ずしも日本とは同じではない。今後さような協定を結ぶにいたしましても、この点は十分考えていかなければならぬと思うわけでございます。
○亀山委員 そうしますと、結局今厚生大臣は医師、歯科医師の方々を海外に出すと言われましても、この条約がなければ結局だめなんですよ。そこで臨時にわが国がビルマ、タイ等の水力発電等の工事をやる場合の日本人だけを見る場合の医師ですら問題がある。その点は今大臣が、単にわが国の医師の海外進出も何とかするとおっしゃいましたけれども、要はこの条約がなければだめなのですから、この相互条約をどういうようにやられますか。今医務局長の御答弁もありましたが、今後特に御研究になってすみやかにこれが解決されなければ今のようなものは結局実行できないと思います。もう一つ大臣にはっきりと御所信をお伺いしたい。
○神田国務大臣 お答えいたします。ただいま亀山委員のお尋ねの通りでありまして、これは外国交渉が先行しなければ――私どもの今申し上げておることはそれを前提として申し上げているわけでございまして、十分一つ関係省とも協議いたしまして、そういうことができるだけ早く行われるように、日の目を見るというようなことに努力を続けて参りたいと思います。
○亀山委員 今植村委員の御意見は私もまことに同感なのです。わが国の医師、歯科医師、その他の技術者の方が海外に出られることは非常に望ましい。それにつきましては今医務局長の御答弁になったように相手国の医学はおくれておるといっても、そのために相互条約をもしも結ばぬということになりますと、結局わが国の医師は出ていかない。従ってこれはぜひ早急にお考えになって、これらの国との間の相互条約の締結につきまして格別の御配慮を願いたい、きょう希望申し上げまして、私の質問を終ります。
○山下(春)委員 ただいまの植村委員からの御発言の補足質問でございます。前内閣の小林大臣のときから、これは委員会から非常に強い御要望がありまして、当時曾田医務局長もこのことに対しては非常な御共感でございました。従いまして厚生省が今回のこの改正等の制度が確立いたしましたことはまことに慶賀にたえませんが、同時に石橋内閣が声を大にして東南アジアヘの各方面の文化あるいは経済その他の一切の交流を強調いたしておりますときに、南方向けのわが国の厚生行政に携わるものから見て何が最も大切かというときに、やはり医療に対する、医師、保健婦あるいは看護婦等これらの人々が南方諸地域の人々の人情とも非常に深いつながりを持つ。あるいはこれらのものが先行すれば向うではほんとうにえん然として迎えるであろうほどに低い地位にある人々に対して、当然考えられる条約の問題がありますけれども、その国内における心がまえが私は非常に大切だと思う。従いまして、大臣がそういうことに非常に深い関心を持ってぜひやろうという御決意は大へんけっこうです。先ほど小澤さんは少し、今のところそんなことは考えてないというふうに聞えましたが、それはとんでもないことでございます。条約その他外交上のことは別でございます。日本の厚生行政、特に石橋内閣の厚生行政をつかさどられる方は目をそこまで開いてお考えになることが当然であろうかと考えられますので、これは委員会としては、前内閣の委員会の特に大橋忠一委員などの非常な強烈な御要望があり、厚生省としてはそれの深い根がそこにさされてあるはずでございます。条約等のことはわれわれの受け入れ態勢が完成したときにやるのでありまして、今条約をやりましても、今の医務局長からの御説明では南方等の病気に対しての手当をする医師の心がまえがまだ完成しておらないようにも聞えましたので、そういうことを今から研究させることが必要でございます。その面に対しては、委員会としては前の委員会から非常に強い要望がございました。石橋内閣としては当然そのことに着目されるはずであるし、岸外務大臣もこれに対して御反対であるはずは私どもには受け取れないのであります。もう少し明確に、もう少し腹をすえて、その問題を一つ国家百年の計の一番下の大事なところのいしずえとしてお答えを賜わりたいと思いますが、もう一度大臣の御所信を承わりたいと思います。
○神田国務大臣 山下委員より医師の海外進出について厚生省担当大臣としてうんと熱意を傾けろという御意見と承わりました。これは先ほど植村委員、亀山委員にお答え申し上げた通りであります。もちろんこれは相手国の受け入れ態勢を十分尊重して参らなければならないのは当然でございますが、石橋内閣、岸外務大臣としては、特に東南アジア後進国に対する積極外交と善隣関係を濃厚にいたしたい、こういう方針でございますので、これらの方針と十分一つ協調いたしまして、御意見の通り善処いたして参りたい所存でございます。
○中山(マ)委員 関連して。ちょっと伺っておきたいのでございますが、同じ問題でございますけれども、かつて吉田内閣の時分に役務賠償として二年くらいの予定でもって病院に日本の医者を送るとかあるいはいなかをめぐらせるような組織をもってやるとかいう話が出ておったことを記憶いたしておりますが、厚生省としてはそういうお話をお聞きになったことがございましょうか、単にこれは巷間流れておった問題でございましょうか、そういう問題をお聞きになって、それがどう立ち消えになったか御存じの方はないのでございましょうか、また大臣は、もしそういう立場があったならば外務省と提携してそういう問題を押していく御意思がございますでしょうか。
○小澤政府委員 私どもの所管では、ビルマから、もしも話し合いがつけば歯科医師をビルマの歯科医師として行政上取り扱うから来てもらいたいものであるということで照会があったことがございます。それにつきまして、私どもは歯科医師会と連絡いたしまして、ただいまビルマ政府に向いまして、外務省を通じまして、待遇その他の面を問い合せ中でございます。
 なお、先ほど亀山先生から相互条約についての御質問がございましたことは、私はこういうふうに解したのでございます。つまり、日本の医師が医師として向うに進出することは、逆に向うの医師が医師として日本に来る場合もあり得る。その場合に、医師の資格、程度等が変っておった場合には、行くばかり考えないで受け入れる場合も相互条約とすれば心配しなければならないという点を御心配あって御指摘になったのだろうと存じまして、さように私も答弁したつもりでございます。
○植村委員 もう一点だけ質問いたしまして私の質疑を打ち切りたいと思います。それは、私がいつも申し上げるのでありますが、同和地区の部落改善事業の問題であります。今度は社会局長の非常なお骨折りで、隣保館が一つふえたようでございまして、これはまことにけっこうなことなんでありますが、それよりも私は、この前の国会でも申し上げたのでありますけれども、同和地区の不良住宅を改善することが一番必要なことではないかと思うのでございます。ところで、きょうまで建設省の予算でもって公営住宅としての不良住宅改善をやられておりますが、きょうまでやられた結果は、決していい成績を得ていないと私は思うのであります。もう府県市町村当局あたりは、参ったというような声を聞くのでありますが、それは結局予算の裏づけが乏しいということなのであります。どうしてもこの同和地区改善事業というようなことは、厚生省の社会局において、そういうような予算も持って積極的に、魂を打ち込んでやらなければ、建設省の予算だけで不良住宅地区の改善だというようなことでは、ほんとうは部落改善事業というものはできないと思うのでありまして、もっと厚生省としては総合的な施策を打ち込むべきだと考えておるわけでありますが、大臣のこの点に対する御熱意のほどを一つこの機会に承わりたいと思います。
○神田国務大臣 植村委員の同和問題に対する御意見、全く私も同感でございます。御承知のように戦前におきましては、この同和問題が複雑な社会問題であるというようなことで、それに対する総合的な施策をするという方針で、ずっと一貫して参りましたことは御承知の通りでありますが、戦後は特別な体系を立てないで、一般の中のケースとして考えていこうというようなことで、隣保館とかあるいは共同浴場とかの助成をして参ったわけであります。今日これらの部落から、戦前のような体系的な特別な施策を、抜本的に講じてもらいたいという熾烈な要望が参ったことも事実でございます。そこでこの同和問題につきまして、厚生省といたしましてはさらに熱意を傾けたい、かような考えを持ちまして、戦後この十年間において共同浴場が五カ所、あるいは隣保館が十七カ所というような遅々たる助成であったのでありますが、今年度におきましては隣保館を四カ所建てたい、それから共同浴場も五カ所やりたいと、今まで十年でやってきた五カ所の分を、今度は一つこの三十二年度で一ぺんに五カ所やりたい、こういう計画を立てまして、補助金も一千四百数十万円を計上いたしまして、三十二年度からは特に熱意を傾けまして、複雑な同和問題をあたたかい心をもって解決していきたい、こういう次第でございます。
○植村委員 今私が御質問申し上げた点の不良住宅の改善、この施策は一つ厚生省で総合的に予算を握られておやりいただく以外に、私は建設省にまかしておいてはどうしてもこれはうまくいかぬと思うのでありますが、その点に関するお答えがなかったので、もう一度伺っておきます。
○神田国務大臣 お答え申し上げるのを落して恐縮でございますが、住宅対策につきましては、御承知の通りずっと建設省が担当するというような建前になっておりまして、実は今年度におきましても、第二種住宅等について特に厚生省として発言はいたしたのでございますが、まだこの同和問題につきましても、そこまで進んでおらないのでございますが、住宅問題は、建設省だけの面ではそういった方面の施設の改善ができないのでございますので、今年度は今申し上げたような事情でございますが、今後一つ十分検討を加えまして、政府の方針等につきましても再検討と申しましょうか、そういう要望が入れられるような努力をいたして参りたい、かように考えております。
○植村委員 重ねて申し上げておきますが、この同和地区の不良住宅の改善に関する限りは、今後もっと厚生省が積極的な立場をおとりいただきたいということを、この際特に要望申し上げまして、私の質疑を打ち切ります。
○藤本委員長 岡本隆一君。
○岡本委員 最初に大臣の御所信を承わっておきたいと思うのであります。石橋内閣の厚生大臣として最初に御就任になったときに、厚生省の予算というものは、大蔵省へ行って頭を下げてもろうてくるものと違う、これは当然ぶんどってくるべきものだというふうな、非常に頼もしい御声明が新聞に出ましたので、これは非常に心強いことだなと、実は喜んでおったのであります。そしてここでお目にかかりますと、前のもう一つ前の川崎厚生大臣をちょっと小型にしたような風貌のお方でありまして、社会保障の問題には非常に御理解が深いように見受けられるのでございます。(笑声)そこで今度石橋内閣の出してきた厚生省の予算というものが、大臣として非常に満足すべきものとお考えになっていらっしゃるか、あるいは、これは非常に不満なんだけれどもやむを得ない、まことにお恥かしいお粗末な次第で、国民の諸君には申しわけございませんというふうな感じを持っていらっしゃるのかどうか、そういう点の御所信を一つ承わりたいと思います。
○神田国務大臣 お答えいたします。石橋内閣成立最初の打ち出しと申しましょうか、社会保障につきましては、大きな柱の一つといたしまして、石橋内閣が福祉国家を建設する前提として、社会保障の充実をするということを天下に声明したことは御承知の通りでございます。そこでこれを基本方針といたしまして、昭和三十一年度の予算の編成をいたしたわけでございまして、この三十二年度予算に盛られた厚生省の予算は、これは私どもといたしましては、わが国の現下の財政状態におきましては、この程度においては相当盛られている、こういう確信を持っております。
○岡本委員 非常に自信のある予算をお出しになったということでございますが、そういうふうなお言葉であると、国民の側からは非常な不満が出てくると私は思います。これでもってりっぱなものでございます、いいものをやったということでは、なかなか承服しがたいのであります。それは見解の違うところでございましょうけれども、たとえば今度の国会におきまして、私どもが審議しなければならない一番重要な問題は、やはり健康保険の問題の解決であると思います。これはいずれ近く法案が審議されますので、そのときの機会に譲りまして、きょうは予算その他の問題についてお伺いしていきたいと思うのであります。予算書の順を追うて質問をしていきたいと思います。
 まず第一に結核対策の問題であります。吉田内閣の当時から結核予防法というものができまして、結核対策が講じられておるのでありますが、しかしながらこの結核予防法におけるところの政府の対処する道というものは、健康診断をやっていき、どんどん今まで潜在しておったところの患者を掘り出してくる。掘り出してくるまでは、もちろんそれはどんどん捜し出さなければなりませんから、それは非常にけっこうなんです。ところが出してきたところの患者に対する治療の問題ということになってくると、きわめて予算がないという理由をもって不熱心なんです。従って結核予防法に従って結核患者の治療に特殊な比較的費用のかかる治療を要する場合には国で半分補助しましょう、こういう建前になっておる。そういう建前になっておるけれども、しかしながら実質には掘り出した患者はその三分の一くらいは手当をしておりますけれども、三分の二くらいは掘りっぱなしなんです。従ってどういうふうなところでそれが掘りっぱなしにされているかというと、生活保護法を受けるような立場の人である。あるいはまた健康保険の被保険者である。そういうふうなものは全部ほったらかしておる。そして健康保険も生活保護法も適用されたいような人の部分だけは、これは国が半分の公費負担をやる、こういう建前になっております。しかも公費負担の一部というものは財政の非常に乏しい地方団体が受け持たなければなりません。だから地方財源が乏しければ乏しいほど今度は自分の出し分がつらいものでありますから、できるだけ結核予防法の適用を拒もうとする。そういうのが全部健康保険の保険財政にしわ寄せになっている。今日の健康保険の財政の赤字というものは、結核予防法に対して当然政府が負わなければならない義務を政府がやっていかないところに健康保険の赤字が出てきた。これはもう私が言うんではなくて、前の川崎さんが委任されたところの七人委員会がはっきりその報告で指摘している。二年前に指摘されたところの、しかも時の大臣が信任して指摘されたところのこの明らかな事実に対して、今日でもこの予算というものが全く目をつぶっておるということなんです。石橋内閣として国民の輿望にこたえるような予算を出したと大臣はおっしゃいますけれども、結核対策というものに対して国が当然負わなければならないところの義務というものを完全に放棄しておるというところに一番大きな欠陥があると思うのでありますが、大臣のお考えを一つ承わりたい。
○神田国務大臣 先ほどの植村委員の御質問で私の言葉があるいは足りないのでおっしゃっておる点があろうと思いますが、今の御質問とも関連いたしますので、あわせてお答えいたしますが、三十二年度予算の厚生予算が相当のものだということを申し上げたのは、わが国の財政の現況においてということを私前置きして申し上げたのでございまして、福祉国家を建設しよう、社会保障を充実しようという際におきましては、私は日本のこの社会状態の現状からして、金が余裕がつくならば、なお多々ますます必要に応じて予算化しなければならない問題が多々あることは、これはもう岡本委員御指摘の通りであり、私もそれは重々承知であります。しかし国の財政にもおのずから限度がございまして、そこで国の現在の財政下においては、こういうことを申し上げたのでございます。そこで今の結核対策の問題でございますが、今御指摘になられましたようなことも、私も日は浅いのでありますが了承いたしております。そこで結核対策として、結核撲滅に一つ十年対策を打ち立てよう。そこで結核の漸減していくことが健康保険財政の基本的な立て直しであり、またわが国の国民経済の上から言いましても、また医療保障からいきましても喫緊の問題でございますので、できるだけ多くの予算対策を立てたい、こういう念願でございましたが、先ほど申し上げましたようにわが国の財政状態から考えまして 結核対策といたしましては早期診断、早期治療を一つ打ち出そう、三薬使用もしようじゃないか、また国費負担も増額して参ろう、さらに進んで、低額所得者に対する医療費の貸付制度も創設いたしまして、そうして着々進めて参ろう。こういうことでございまして、今日の結核の非常に国民の中に占めている割合から考えますれば、これが満足すべきものであるかというお問いでございますれば、これははなはだ遠いといわなければならぬのであります。繰り返すようでありまするが、厚生行政を進めて参りますには、やはり各部門にわたって予算的な措置をしなければならない面があまりにも多いのでございまして、そういうものを手当して参りますると、やはり結核対策におきましては、今計上したようなことになってくる。こういうことであろうかと思います。
○岡本委員 間口が広いから奥行きが浅うなるのはやむを得ぬ、薄くちょびっとずつばらまいたのである、そのかわり至るところに行き届いておるというふうな御意向のようであります。つまみ金に近いものですが……。しかしいやしくも国が法律を作った限り、その法律に伴うところの義務というものは国は果さなければならないと思う。結核予防法ができまして、今日ではすでに数年になっている。その数になっている。その数年の歴史を持ち、数年間運営されてきて、もうその欠点は完膚なきまでにわかっている。そして最初は、あれほど掘り出しても患者が出てこない、こう思って半分公費負担しようと言ったのかもしれない。やってみたらものすごう出てきた。これは大へんだという。しかしながらやっぱりそれは国が結核の治療に対して半額は公費負担しよう、こう言うた限りにおいては、国は負担をする義務があると思う。ところがやってみたら、たんと出てきた。そこでふるいにかけて、どうにもこうにもならぬのだけめんどう見ましょうというのが今の結核予防法の運営なんです。従って健保の被保険者でない方たちは公費負担の結核の治療が受けられる。しかしながら健康保険の被保険者は公費というものを何ら結核の治療というものに関する限りは受けておらないわけです。だからそこには不公平があるわけですね。そしてまたそのために健康保険財政が健全に運営していけるのなら、私はそれでもいいと思うんです。ところがそのためにがぜん大きな――いわば今まで比較的円滑に動いていた車の前に、ごんと大きな石を政府がぶち込んでしまった。結核予防法というものを作って、その赤字をぽんと持ち込んで、せっかく健康保険がまるく運転しているところへがんと大きな石をぶつ込んだ。それでどうにもこうにも健康保険が運営できなくなったのが今日の赤字問題である。そして昨年は全国的に保険医の総辞退をやるとかなんとかいうて大騒ぎになったような始末なんですね。従ってそういうふうな義務負担というものを一体それではあなたは今後やっぱりほおかぶりでいく気かどらか、ほおかぶりが間違っていると思っておられるのか、ほおかぶりでいって当りまえなのだと思っていらっしやるのか。その辺の御所見を承わりたいと思います。
○高田(正)政府委員 ただいま岡本先生のお尋ねの点ごもっともだと存じますが、ただ岡本先生の御質問の中に義務義務というふうなお話が出ております。結核予防法の精神は無差別平等の精神でございますが、国は地方が予算化したものに対しては負担しなければならない義務になっております。都道府県知事は義務制になっておりませんので、その点が少し抜け穴になっているのでございます。そういう点で予算上の制約がございまして、無差別平等の精神が生かされていないという点はまことに遺憾でございますが、これはできるだけ予算化に努力して参ります。地方財政との関係もあってなかなか大幅な増額が行われていないのはまことに申しわけないことでございますが、今後は、先ほど大臣からもお話がございましたように、国の財政ともにらみ合せてできるだけこういう精神を生かすように努力していきたいと考えております。
○神田国務大臣 岡本委員のお尋ねに対しましては、今政府委員から答弁がございましたように、厚生省といたしましては、今後十分この法の運用によって措置して参りたい所存でございます。
○岡本委員 今の答弁ではまだ不服なんですけれども、これは今の状態その他をよくお調べおき願って、あらためて健康保険の問題のときにもう一度大臣の御意見をお伺いしてみたいと思います。
 次いでらい対策費の点をお伺いしたいと思います。前々国会でございましたか、この委員会でらい療養所におけるいろいろな手当金の問題について御質問申し上げました。その後、昨年の夏でございましたか、私は前の佐々木委員長と一緒に熊本の恵楓園を視察に参りまして、患者さんからいろいろ具体的な問題についてのお話を承わりました。御承知のように、らいの療養所というのは患者がみずからの意思で入っている療養所ではございません。ああいう病気を他の人にうつしてはかわいそうだというので、半強制的というと語弊があるかもしれませんが、とにかく本人さんに非常に強く勧めて療養所へ行ってもらう。だから療養所に入っている人は、国へ帰りたい、家族と一緒に暮したいけれども、公衆衛生の立場から国民に対する義務だと思ってそこにいるというわけです。しかし、このごろは非常にいいお薬ができて直るようになりましたから相当希望も持っておる。私が数年前に行ったときと今度参りましたときとは非常に大きな変化がある。患者の顔が非常に明るいのです。直るいう希望を持ち始めたということです。私が今度療養所へ行きましたときは、なるほど医学の進歩というものはこんなにも暗い療養所の空気を明るくするものかと思うほど大きな空気の違いがございました。それにしても、自分のふるさとから離れて療養しているということは、長年養生しなければならないという点からも非常に気の毒なことだ、そういう人に対しては国が十分な措置をするのが当りまえであろう、こういうふうに思うのであります。そのときに患者さんからいろいろな注文が出た。おもな注文をあげますと、作業をいろいろやります。たとえば患者さんの使った着物の洗濯をしたり、あるいは破れているのをつくろったり、お掃除をしたり、国が収容している限り当然国の手でもってやらなければならない作業を中の比較的からだの自由のきく人にやらせるわけです。それに対して払う手当が非常に少い。その問題をこの前申しましたら、公衆衛生局長は――そうでございましたね。医務局長でしたか、それは食費その他すべての生活費を現物給与してその上で給与する給付であるから少くても当りまえである、こういうふうな御意向でありましたけれども、熊本の恵楓園へ参りますと、作業者のもらう何は患者全体をおしなべると一日十五円になる。個々の何であると、最高が三十五円、次が三十円、二十五円の三段階になっているというふうな話でございます。三十円ずつもらったとしても月九百円、約千円である。長く入院しておりますと、家族から小づかいはちっとも送ってこない。そこでたばこ銭がほしい、あるいは身の回り品、シャツを買ったり、たびを買ったりする金がほしい。それに対して三十日働いて千円の小づかいである。これではいかにも乏しくて困るという。そのほか一般の慰安金が五百円渡って千五百円のお小づかいになるが、たばこもすえばある程度の欲望も持っている一人前の人が月千五百円のお小づかいというのはあまりに殺生じゃないか、もうちっと気ばってもらいたい、こういう強い要望があったわけです。それが、この予算書では、患者さんのそういう手当についてはベース・アップをされておらないように見受けますが、その辺はどういうふうになっておりますか。
○小澤政府委員 ただいま御指摘の通りに、患者慰安金は患者一人おしなべて月五百円、それに従事する作業の種類によりまして一日二十五円から二十五円の割合で謝礼金を出しております。御指摘のように、考えれば非常に少いのでございますが、何せ収容患者でございますので、その作業そのものを十分注意いたしまして、過労にわたらないように、最もたくさん働いていただく人でさえ一日三時間程度という配慮をいたしております。なお、同士愛と申しますか、同僚が助け合うという美しい人類愛の発露からやっていただくという考え方で、この程度の謝金で御満足をいただかざるを得ない。もつと大きい問題は、作業のできない身体不自由者、この人は一カ月五百円だけであります。これは気の毒ではないかというので、従来予算面では、一月それに加えまして百円でありましたが、百円では足りない、これをもっと多くしてくれという要望があったのであります。これに対しまして、私どもといたしましては、来年度予算面におきまして二百円、おそらく実行予算におきましては多少これより上回るものと存じますけれども、増額いたしまして今度の予算案として御審議をお願いしたような次第であります。
○岡本委員 不自由者慰安金の問題は次にお尋ねしようと思っていたのですが、ちょうどお答えいただきました。三十二年度の予算においては、今まで百円であった不自由者の特別の慰安金をもう百円増しておられるというお話でしたが、あそこで聞いたところによると、平均十五円というのは、不自由者が従来の六百円ではどうにもならないので、みんなが出し合って全部を寄せてプールして、それを分けると結局一日十五円より当らない、こういうようなことになる。私今思い出しましたが、そういうことをやっているようなんです。つまり働いた者も働かぬ者も慰安金は全部集めて、それをみんなに、自由な人たちにも不自由な人たちにも分け合うのだ。不自由な人は六百円でしんぼうしておれ、達者な人は働いて千五百円だ、それでは非常に不公平で、不自由者のことが見ておれぬから、働いた者も不自由者に分けるんだ、そういうふうな美しいことを収容者の人は相見互いでやっておるようなんです。結局それで十五円より当らない、こういうことになる。だから達者な人はある程度の作業をしながら、なおかつ不自由者にその乏しい中から分けるために、一日働いても十五円の作業費になってしまう、こういうことでは健康な人に対して非常に気の毒だと思うのです。だからもう少し気ばって上げることができぬものでしょうか。
○小澤政府委員 身体不自由者の慰安金は予算面では百円でございますけれども、従来実行上のやりくりで百五十円にしております。今度は予算面で二百円でございます。それに加えまして実は不自由者の数をふやしてございますから、予算面から申しますと、従来の二倍になるべきところを三百三十万円から八百六十万円でございますから、従来よりは二倍以上の実際的効果があるのじゃなかろうか、こう考えておる次第でございます。
○岡本委員 そういうあたたかいお心尽しがあると存じまして、非常にうれしく思いますが、今後ともこういう人に対して大いにあたたかい御配慮を願いたいと思います。
 さらにそのときに聞いて参りました話でありますが、ことしはこの予算書を見ますと、整備費が減っております。ところがあそこの恵楓園の患者さんの言うのには、建物が非常に老朽化してきておる。この老朽化した建物をもっとよくしてもらわなければならないし、また古い昔に作られたものはだんだん近代的なものにかえていってもらいたい。ことに不自由患者、目の見えない人の一番強い要望は、目の見えない者が大きな部屋に入られておると実際困るというのです。なるほど見ますと、二十畳くらいの部屋に十人くらいが収容されております。そうしますと、目が見えないものだから、みんな壁を伝って廊下に出る。ところが部屋のまん中にいると、壁のところまでいざっていくのが大へんだ。御承知のように、らいの患者は目が見えないだけじゃない、目が見えないと一緒に手も足もやられている。だから目が見えなくていざりだという状態で、そういう非常にからだが不自由で、しかも目が見えない、単純なめくらではないのです。そういう人が壁までいざり寄って、そうしてその壁を伝って廊下に出る。廊下に出れば、綱がずっと張ってある。その綱をたぐって目の見えない人が便所に行く。その便所が、またその部屋から行くとなると遠いのです。なるほど不自由な人がそういうような要求を出すのも全く無理はない、つくづくそう思って帰って参ったのです。そのときに中庭に患者が大勢集まりまして、いろいろな要望がありまして、前の委員長がぜひ一つ今の慰安金の問題あるいは設備の問題をうんと改良してもらうように努力する、だから帰って今度はうんとよくさせるからというふらな約束をして帰られたと思うのです。もちろん前委員長から厚生省の方へも報告があり、お申し入れがあったと思うのでありますが、そういう点少くとも現在は自民党の副幹事長の佐々木さんでありますから、そういう人が向うで書いてきた手形でありますから、その手形を不渡りにしたんでは、佐々木さんに対して気の毒だと思うのでありますが、その点みごとに落していただけますか、あるいは不渡りにしたままで金がないから仕方がないというのか、その辺もう少し設備の改善をやってやろうという御意見がありますかどらか、承わりたいと思います。
○小澤政府委員 国立らい療養所の整備費予算は確かに減っておりますが、この減りましたのは、御指摘のような修繕費を減らしたのではないのであります。実は数カ年計画で職員宿舎あるいはらいの児童のための高等学校の整備等をやっておりましたが、これが一応完了いたしましたので、その済んだ分を落したのでございます。御指摘の患者の宿舎等の整備は今後とも重点主義を貫いて参りたいと存じます。
○岡本委員 もう一点お伺いしておきます。奄美大島に奄美和光園という療養所があるのでございますが、そこで医師の定員が五名になっておるのが一名よりいない。それで患者は非常に不安でもあり、不自由を感じておるのでありますが、これをぜひ増員してもらいたい、そのときにこういう申し出があったのでありますが、その後どうなっておりますか。
○小澤政府委員 御承知のごとく、らい療養所に勤務しようという医師の希望者が非常に少いので実は困っております。奄美大島がこちらに返還されまして優秀な方に特に行っていただいておりますが、さらに一人では足らぬので、百方手を回しまして人数をふやすために努力しているわけでございます。まことに遺憾ながら今日まで増員の運びに至っておりませんことを残念に存じます。
○岡本委員 もちろんらいの療養所にはよほど人道的な、ヒューマニズムに徹した人でなければ働まらない。私はらいの療養所に勤めているお医者さんにそのときにも心から尊敬の念を払いました。そこでそういうらいの療養所で一生を捧げる修道僧に似たような犠牲的な精神を持っておられるお医者さんに対する待遇の問題であります。そのとき聞いた話によりますと、ちょうど菊池の恵楓園の横に法務省の菊池支所がある、監獄があるわけなんです。そこには二人が入っております。ところがその療養所の方は木造の粗末な建物でありますが、その刑務所の方は鉄筋コンクリートの実にりっぽな建物で、がちんとかぎがかかってしまえば、不自由だから刑務所の中はいやでしょうが、かぎがかかってなくって、お前らどっちに入ると言ったらおれはこっちに入りますと言いそうなほど建物はけた違いに刑務所の方がいいんです。ひとり建物だけでなく先生方の給料の問題ですが、刑務所の所長は、犯罪をした患者たった二人を見ている。その刑務所の所長さんの給料と、それからそこの園長は、外声のお医者さんで、医者になって以来そこにずっと勧めて六十才に近い、白髪温顔の実にりっぱな方でした。その方とどっちも二号俸で、同じ給料なんです。私は刑務所の所長さんをどうこう言うのじゃありません。しかしながら、少くもそれだけ長い間、救らい事業というと今ではちょっと語弊がありますが、らい治療というものに一生をささげてきたもう六十才に近い方が、それだけ待遇の開きがある――同じだということは開きがあるということなんです。そういうような点について、大臣の方でも、これはちょっと何とかせねばいかぬということを一つ考えていただきたいと思うのであります。さらに、技官ですね、お医者さんの方になりますと、五号俸というのですか、それで片方の刑務所の方は三号俸なんですね。刑務所に勤めている技官もやっぱりお医者さんなんですが、刑務所に勤めているお医者さんよりも、療養所に勤めているお医者さんの方が号俸が低いのです。そういうふうに待遇が悪いから、法務省と厚生省とこんなに待遇が違うのは何ぼ何でも殺生です、こういうふうな話でした。それだけじゃございません。監視長と、それから患者の方の係ですね、それも三号俸と五号俸の違いがあって、すべて末端に至るまで厚生省側の方がはるかに悪いのです。これは一つあとでごらん願いたいと思うのですが、そういうふうなことであるから、奄美大島への補充ができぬ、こういうふうなことになってくると思うのです。そこで、先ほど植村さんが言われたことなんでございますけれども、らいの療養所を希望する人は少かろうと思うのです。従って、貸費制度というものをお考えになるなら、ひとり保健所だけでなしに、もっとワクを広げて、厚生省所管の医師を集める。そして特にらいの療養所を希望する人には手当を厚くする。そしてさらにまた奄美大島というような僻地ですね、ほんとうに僻地の離れ島ですね、そういうふうなところに行く人にはもっといろいろな面での優遇をする、こういうふうな措置を一つ考えていただきたいと思うのですが、大臣のお考えを承わりたい。
○神田国務大臣 ただいま岡本委員から御指摘のありましたらい療養所における職員の待遇の問題、またらい療養所そのものの設備等の問題、実は私は就任以来御承知のように日が浅いのでありまして、今初めて伺ったのでございますが、まことに道理ごもっともな、事実に基いた御意見でございまして、私そのままお開きする機会を得まして、実に仕合せに存じております。意のあるところは私も全く同感でございます。今後一つ改善等につきましては十分意を用いまして、御期待に沿いたいと思います。
○岡本委員 それでは次の問題に移りまして、医療機関の整備の問題でございます。無医地帯に今度はいろいろな対策を講じたいというふうな予算が出ておりますが、先日承わりますと、国立のものを六カ所、それから公的医療機関に代行せしめて二十カ所、合せて二十六カ所ということでございますが、それを三年計画で無医地帯をなくするようにしたい、こういう御意向であります。そうしますと三年間に何カ所ほど予定しておられるのか、承わりたいと思います。
○小澤政府委員 私どもの行いたいと思います僻地医療対策は、経済的に医療が成り立たないようなひどい僻地を想定しております。最初調査いたしましたところが、さような地域が大体百カ所ということでございましたが、現在なお調査を続行中でございます。そういたしますとだんだん数がふえて参りまして、かれこれ二百前後になるのではないか。なお調査が進みますればこの数も動いてくるかと存じます。従いまして昭和三十三年度以降の計画はそのときまでの調査結果を待ちまして、三年あるいは四年、五年の計画を改善していきたい、かように考えております。
○岡本委員 現在の調査では約二百カ所、そうしますと、もうちょっと具体的にお伺いいたしたいのですが、京都府では何カ所計上なさっていらっしゃいますか。わかりましたらどこどこというところまで承わりたいと思います。
○小澤政府委員 ちょっと今手元にその資料がございません。
○藤本委員長 あとで調査して御報告して下さい。
○岡本委員 無医地帯とはどういうふうなところを言うのか、経済的に成り血たないというではちょっと抽象的のように思うのですが、もう少しその定義を詳しく承わりたい。
○小澤政府委員 第一は人口希薄だということでございます。従ってある診療区域を想定いたしまして、半径四キロのところに、従いまして五十平方キロでございますが、三百人ないし二千人程度の住民しかいないところ、それから第二は、最も近い医療施設、おそらくそういう地域でありますから、どこかいなかの診療所だと思いますけれども、そこから一時間以上の距離を隔てているところ、それからその付近を通る交通路に定期交通がほとんどない、あってもせいぜい一日一回か二回程度である、それからその町村の財政程度が低くて、基準財政需要額に比べまして収入が大体四割以下であるというところ、そういうところをさしております。従いまして、地方から僻地として報告のあった分も、精査いたしますとその地域に該当しないというところも出てくるわけでございます。
○岡本委員 無医地帯がそういうふうな定義でありますと、そういうところへお医者さんを派遣いたしましても、いろいろな、各科全般にわたるところの治療をやらなければならない。眼科の治療も外科も内科も、ときには産婦人科も、あらゆる応急手当ができなければならない。ところが現在の日本の医学教育というものは、専門教育である。各科別に専門的に分れておる。従ってだんだん医者というものはかたわになりつつあります。お医者さんだといっても、実際は眼科の医者に裸になってさあ見てくれと言っても、このごろでは聴診器は形だけは当てられても何が聞えているのやらわからぬ、と言うと語弊がありますが、そのくらいかたわになっている。それが今の日本の医学教育の一つの弊害なんです。悪い面なんです。ところで、そういうふうな無医地帯へおそらく内科の人が派遣されると思うのです。しかも学校を出てインターンを終えて国立病院から交代に派遣するということになると、非常に経験の浅い人が派遣される。しかもだれからも助言を求めることはできない。こういうふうな状態に置かれるときに、私は無医地帯に対する今度の対策は、それはないよりましだ、今までなかったからしんぼうしておけということになると思う。しかしながら同じされるなら、もう少しそういう意味においてはそういう無医地帯に診療する医者は、厚生省においてやはり一つの総合的な機構を持つ、深いところまでいかなくても、各科について一わたりの経験を持つというふうな何を作って、それで順繰りに行ってもらう。そういうふうにしなければ、無医地帯の人はいわば羊頭狗肉をあてがわれるということになると思うのですが御見解はどうでしょう。
○小澤政府委員 ただいまの医師が次第に専門化するその弊店をいささかでも防止するために実はインターン制度を設けたのでございます。僻地医療を担当していただく医者は、いわゆる新進気鋭の方であります。社会医療の忠義を知り、情熱を持った人を選びまして、行く前には一応必要だと思われる自分の専門科以外の見学実習等を若干やっていただきまして、半年か一年交代で僻地に行っていただく考えでおります。生涯そこに生活せしめるということになりますと、なかなかいい人が得られないと思います。なお向うへ参りましても二月に一回くらいは本院に帰りましていろいろな連絡をしてもらうという段取りになっております。また病院において治療をする必要がある程度の垂症者は直ちに本院に送るという措置を講ぜしめたいと考えております。
○岡本委員 国立病院の話が出ましたからもう少し国立病院のことで承わっておきたと思います。今年の予算書はまだ見てないのですが、前年の予算書を見ましても、国立病院へ相当な一般会計の繰り入れがあるのです。従って国立病院の経営というものはそれ自体において大きな赤字であるということがいえると思いますが、それは何に原因するものであるとお考えになっていらっしゃるか承わりたい。
○小澤政府委員 一般会計の繰り入れば、主として国立病院を整備する経費でございます。それから看護婦養成に必要な経費の二分の一でございます。それから各種のセンター、たとえば脳溢血センター、高血圧センター、心臓病のセンターとかというものを特に施設するための特殊整備費で、一般経常費については、この数字におきまして繰り入れば受けておりません。大体経営面においては今日まではとんとんでございます。
○岡本委員 今度はとんとん大臣の次にとんとん局長が出現してきましたが、(笑声)病院の経済は、診療面においては赤字を出しておる、こういうような仰せである。そこで元来、今仰せになるところの整備費の中には建物の維持費が加わっておる。すべての企業においてその建物の維持改善費のないところの企業はないわけです。従って全額国から補填を受けておるということは、それ自体赤字であるということになると思うのですが、赤字でないという御意見は承服しかねる。だからそういうふうに一般会計から繰り入れしなければならない原因は何にあるか、こういうことをお尋ねしておきたい。
○小澤政府委員 国立病院の建物は、御承知のように陸海軍病院を引き継いだものでございまして、中には三年か四年持てばよいという実にひどいバラックもございます。今日においてはほとんど用をなさないのみならず、非常に危険でございます。従いまして相当多額の一般会計の繰り入れを得て、その改築、改修をいたしております。その程度は一般の程度よりもはるかにひどいものである、こういうふうに御了解願いたいと思います。
 なお、国立病院全体につきまして収支はほぼ均衡しておりますが、病院によりましてはやや黒字のところもある。どうしても赤字を免れ得ないところもございます。それらの病院についてはそれぞれの理由がございまして、たとえばその病院がきわめて僻陬の地にあるがゆえに患者さんが少い。従いましてどうしてもその支出に応ずるだけの収入をあげ得ないというようなところもございます。また案外繁華なところにあって、職員の数に比べて比較的多数の患者が来ておるために、若干黒字のところもございます。従って国立病院全体としてこれを一口にいうことは非常に困難ではないか、かように考えております。
○岡本委員 どうも今の答弁では納得しかねるのでありままけれども、インターンには給料を出しておらない。それから看護婦も、これは養成の生徒をたくさん使っておる。建物は古いとおっしゃいますけれども、しかしながら、それでもかりに民間のものが国立の建物の払い下げを受けてやるとすれば、やはりそれに対してあと借入金とかそれに対する利子を払い、その償還をし、しかもそのあと建物の補修をやっていくわけですから、そういうふうなことが診療の何になるとは思わない。これは国立病院がやっておる診療の体制の非常な放漫か、それでなければ収入の面における診療費の単価の問題、それに関連してくると思う。故意にその収入面の単価の問題をほおかむりしようとするから、そういう苦しい答弁が出てくるのだと思う。そういう点もうちょっと率直に研究をし、故意にある方向に結論を持っていこうとせずに、よく検討して国立病院の運営を考えていっていただかなければならぬ。
 そこで先般来国立病院で患者の食費の問題が非常にやかましくなっておる。私は、その食費の問題も結局同じだと思う。食費というものは、健康保険において、すでに十三点、約百五十円支払われておる。食費の中から九十六円より材料費を計上していない。ところが他の民間病院は百二十円くらい材料費を計上しておる。そういう患者の食いものまでしぼって、しかもそれを収支のバランスに当てていかなければならない。まるでこれは公然たるどろぼうにひとしいのです。食いものを取っていくのですよ。そういうようなことで国立病院の運営をやっていかなければならないというところに、――実際上建物すら国から供給され、その補修費は全部国から補給され、そして人件費も見習生とか研修生という人によって相当節約できるような機関の国立病院の運営というものが、なおかつそのような苦しいものであるという実態について、もう少し掘り下げた研究をしていただきたいと思います。これは私は健康保険の問題のときにまたもう一度繰り返したいと思いますし、また滝井委員からもこの問題についてもっと掘り下げてやっていただけると思うので、この程度で済ましておきたいと思います。
 それから今度は母子対策費の問題でありますが、母子対策費の問題は、先ほど植村さんから御質問がございましたが、前のときにも質問いたしまして、母子対策として、未亡人に対する対策として、とにかくその人を生活させていく、こういうふうな形だけでは不十分ではないでしょうか。これは大臣に、この前の論議を開いていらっしゃらないから、もう一ぺん聞いていただきたいと思いますが、母子家庭の未亡人に、とにかく食えるようにしてやったらいいじゃないか、もちろん生活できるようにしてやっていただかなければなりません。しかしそれだけでは不十分だ、できる人、比較的若い人についてはもう一度再婚させる、こういうふうなことも一つ考えていただけないか。男性の場合は配偶者を失ってもどんどん結婚していきます。ところが未亡人は大がい結婚できないのです。それは子供があるからです。未亡人の再婚について一番の不利益な問題は子供の問題です。だからそれについてもう少し何らかのことを国が手を差し伸べたら、再婚がもっと容易になるのではないかということでもって、生活保護法を受けておる、あるいは受けておらなくても、未亡人が再婚する場合には、その子供の生活は国がある程度めんどうを見てやろうじゃないか、生活保護法をその子供にだけは適用していく。結婚していく未亡人にはもちろんそれは何しませんが、つまり再婚する相手の男性側から前の夫の子供の扶養の義務をある程度はずすか、軽減してやる。そういうふうにすれば未亡人の再婚も容易になるのではないか、そういうことをお尋ねしましたら、一つ考えてみよう、そういうふうなことを児童局長がお答えになったと思うのですが、それから後どのように考えていただけたか、あるいはまた大臣は、そういう問題について、これはいい方法だというふうにお答え願えるか、そんな金はとても出せぬとおっしゃるか、一つ大臣のお考えもあわせて聞かせていただきたい。
○神田国務大臣 お答えいたします。今未亡人の再婚の問題につきまして、しかもこれと関連いたしますお子さんの跡始末といいましょうか、将来の育成の問題に関連してくるお尋ねだと思いますが、この未亡人問題解決の非常にあたたかい一つの提案だと思って私は拝聴いたしました。私も戦後未亡人対策の一つとしてそういう面を実は考えたことがございます。今回そういう仕事を担当する省を受け持ったわけでございまして、ただいまの御念見につきましては、一つ十分取り組んで検討を加えてみたい、こういう気持をさらに新たにしたわけでございます。
○高田(浩)政府委員 前の委員会において、未亡人対策をいろいろ厚生省は考えておるようだけれども、やはり結婚の問題を十分考えなければいけないという岡本委員のお話、確かに承わりました。私どももこの問題は未亡人問題を考える場合に、第一に考えなければならない問題だということにつきましては、全く同感でございます。ただこの問題は、普通の行政事務や何かと多少違う性格のものでございまして、気持はさようでございますけれども、これを実際に行政的にどう実現するかということについては、必ずしも単純なものではないと思います。残念ながらまだ具体的に一般的な行政事務としてこれを処理するというところまでは進んでいないわけでございますので、お気持の点は、今後われわれ未亡人関係の仕事に携わっていきます上において、十分肝に銘じまして進んで参りたいと考えておる次第でございます。
○岡本委員 もう一点未亡人の問題で伺いたいのですが、この中に母子寮の建設ということについて予算が計上されていないようであります。されておりますか。――どこにありますか。
○高田(浩)政府委員 児童福祉施設一本になっておるわけであります。
○岡本委員 では母子寮の建設はどういうふうなものが計画されているか、ちょっと伺いたい。これはこの前に聞いたかもしれませんが、もう一度お願いいたします。
○高田(浩)政府委員 前に御説明申し上げましたように、母子寮の建設でありますとかあるいは保育所の建設でありますとか、養護施設の建設でありますとか、そういったものの整備費は、児童祉祉施設整備費として一本に計上されております。金額としましては、前年と同じく四億でございます。この内訳につきましては、細目の点はなお検討を要する点がございますけれども、一応母子寮につきましては、全体として補助率が二分の一になっておる関係もあろうと思いますが、実はこちらの予想しているよりも建設の希望が年々少いのが実情でございます。それと、それから今年は、――これはよけいなことでございますけれども、去年自治法の改正によりまして、五大都市が新たに県と同じレベルにおいて行政を行うことになりました関係上、それらの都市におきまして、児童相談所でありますとか、あるいは教護院でありますとか、どうしても置かなければならない施設に充当しなければならないという事情もあるわけであります。それらの関係からいたしまして、去年あたり実施いたしておりましたよりも多少減るかと思います。その点御了承願いたいと思います。
○岡本委員 母子寮の問題でありますが、これは母子家庭を自治させるのには、そのお母さんが働きに出られるような態勢を作り上げるということが大切だと思います。家をあけて、子供も学校に行く、母親も出ていく。貧しい家庭だから、何も取られるものがないといっても、これはやはり不安だ。従って安んじて働きに行けるような態勢を作ってあげるのには、母子寮が一番いいと思うのです。そしてまた同じような境遇にある人が集まって、慰め合い、励まし合って生活をしていくというふうなことが、また母性の転落を防ぐ一つの道だと思うのです。ことに非常に住宅問題がきびしい折から、母子寮を作って、そこへ母子世帯を収容していくということは、これは厚生省として母子福祉対策の中にうんと熱意を入れていただかなければならない。むしろ貸付金よりもこういうことの方が私は大事だと思うのです。一人で商売せい、資本を貸してやる、わずかな金を借りたって何ほどの資金にもならない。だからこういう母子家庭の保護というふうな面に力を入れていただきたいと思うのです。
 時間をとって恐縮でございますが、予算関係のことを全部はずしますから、もう一、二点お許し願います。
○藤本委員長 簡単に願います。
○岡本委員 簡単にやります。最近ガス中毒がたくさん新聞に見られます。昨日私国へ帰りましたら、やはり国でも中学校の女の先生が寝しなにストーブをつけて寝て、そのままガス中毒で朝になって死体になっているのを発見されたというふうな新聞記事を見ましたが、東京の新聞を見ますと、始終ガス中毒の死亡者があるのです。そこでこれほどガス中毒というものがひんぱんに出てくるようになると、これに対する対策を何らか講じなければならないのではないか、こういうことを私は痛感するのです。私がそういうことを考えるのは、実は私の家庭でも数年前に母親と四人の子供たちが危うく中毒をいたしまして、一番末の子供はもうだめかと思うような状無になったのを中へ飛び込んで救い出してきて、やっと助けたというふうな苦い経験を持っています。従って近時ますますガスの暖房用具が用いられるような時勢になって参りまして、これに対する対策というものを何か立てなければ、これはもうふえる一方だと思うのです。従って厚生省として何か対策を考えていただいておるのか、あるいは任意するよりしようがないじゃないかということで、広報活動よりしょうがないというふうなことなのか、一つその辺お考えを承わりたいと思います。
○楠本説明員 お答えを申し上げます。御指摘のように最近におきまして、ガス中毒事例は多発をいたしておりまして、大へん心配をいたしておりますが、これらの実態を調査いたしてみますと、やはり家庭の使用者側におきまする不注意による場合もかなりございまするので、これらに関しましてはそれぞれ広報機関、あるいはガス会社のよきサービスの一環としてそれぞれできるだけの正しい扱い方について啓蒙をいたしておる次第でございます。さらに一方器具その他の不備による場合もかなり多うございますので、これらにつきましては目下ガス会社と相談をいたしまして、臨時に技術者が全使用者の家庭を訪問することによりまして、器具の点検等を行いまして、不良なものがありますれば即時これを修理あるいは取りかえるというようなことを目下実施をいたしておりまして、大体これは東京都内で申しますと今月の十五日ぐらいに全使用者に対して完了する見込みでございます。さらに一方ガス器具、ホース、ゴム管、その他の器具類につきましても、いささか危険を伴いやすいものもございまするので、これらは目下規格品といわないまでも正しい物を作りますように、それぞれメーカー等を指導いたしております。かような対策を総合的に講ずるとによりまして今後はこの種事例がなくなるというふうに期待をいたしておる次第であります。
○神田国務大臣 岡本委員のただいまお尋ねになりました、ガス中毒の問題が近時頻発いたしておりますが、これはなかなか重大なことでございまして、実は厚生省といたしましてと申しますか、私直接ガス会社の本田社長を招致いたしまして、この詳細の事情も聞きまして、ただいま政府委員がお答えいたしました通り種々指示をいたしておりますが、ガスの消費が急激にふえて参りまして大都市以外にも出てくるような傾向がございますので、ただいま政府委員のお答えがございましたが、厚生省といたしましては特に重大視いたしまして、この種の頻発を避けるように、根絶いたしたい、こういう考えをもちましていろいろ検討いたしておりますことをつけ加えて御答弁申し上げます。
○岡本委員 このガス中毒の問題は、これから後ますますガスの使用というものがふえて参りますので、このままであればこの被害というものはもっともっと多くなっていくおそれのある問題でありますので、これに対しては私たちは非常に慎重な態度で臨まなければならないと思う。そこで先日新聞を読んでおりますと、戦前と戦時中にガスの製造方法が変った、燃料を節約してできるだけ多くガスが製造できるような仕組みに転換された。他のものは全部もうすでに戦後ではないというふうに自民党内閣はおっしゃって、すべては戦後ではないかもしれませんが、ガスは戦後状態のままなんです。そしてできるだけ石炭を少くしてガスをよけい供給できるというふうな体制に切りかえたために、供給されておるところのガスの質というものが非常に変ってきておる。そして一酸化炭素が――ガス中毒は御承知のように一酸化炭素中毒でありますから、その一酸化炭素の量が戦前の三倍になっておる、こういうふうなことを新聞は書いております。従ってもし果してそうであるとするならば、毒性がそれだけ強いものを、戦後の経済が立て直った今日、なおその設備をそのまま放置しておくということは、これはいかに利潤追求を目的とするガス会社といえども私は許せないと思うのです。やはり時勢に伴ってまた経済の拡充に伴って、そのような毒性の強いものを供給しない、できるだけ安全度の高いものを供給して、需要者に少しでも迷惑をかけないように努力する、これが私はガス会社の努めだろうと思うのです。そういう点について厚生省は、私もきょうまでに調べておこうと思ったのですが、ガスの製造法というものについてもう一ぺん検討して、研究してもらいたいと思っておりますが、厚生省の方も一つ供給されるガスの質の問題についてある種の規制を加える、そして中毒の被害というものを少しでも少くするというような方向に努力を願いたいと思いますが、一つ大臣そういうふうな方法を直ちにお願いいたしたいと思います。
○神田国務大臣 ガス中毒の根絶の問題といたしましてガスの製造工程における内容の調査を十分にして、抜本的な対策を立てるという趣旨の御質問かと承わりました。ガス会社のガスの製造方法について工程が戦前、戦後どうなっておりますか、実は私もまだつまびらかにいたしておりません。意のあるところをよく承知いたしましたので、十分調査をいたしまして善処いたしたいと思います。
○滝井委員 今岡本君からガスの質の変化について御指摘があったのですが、最近のガスは確かに一酸化炭素が非常に含まれておるということは、新聞等の報道においても大体そういう意見がちらほら見えておる。これは石炭の不足によって重油等が使われておる形跡が非常に多くなってきているということなのです。われわれが今までかいでおったガスのにおいと、最近のガスのにおいと非常に違ってきておる。こういう点は明らかに環境衛生と申しますか、公衆衛生の上に非常に大きな変化を、知らず知らずのうちに与えておると思うのです。そこでこれは資料として、厚生省は最近におけるガス会社のガスを作る原料がどういうような変化を来たしたのか、それを一つ資料として、調査をしてできるだけ早い機会に出していただきたいと思います。
○岡本委員 老人福祉対策について少しお伺いしてそれを最後にしたいと思います。
 国民年金制の確立は焦眉の緊急事、こういうふうな表現を先般の大臣の予算の御説明の中で承わりましたが、老人に対する年金制というものをいつごろを目途に、またどのような程度のものを構想の中に描いて御計画になり、御調査をお進めになるのか、その辺のお考えを承わりたい。
○神田国務大臣 戦後国民の平均寿命が非常に延びて参っておることは御承知の通りでございます。なおまた一方戦後わが国の家族生活と申しましょうか、民法の改正によってこれが変って参りましたことも御承知の通りでございます。そこで今御指摘になりました老齢年金の問題、これは母子年金もあわせて考えておるのでございますが、福祉国家建設の意味においてどうしてもそこまで到達するような線を出したい、これが実施をはかりたいというのが石橋内閣の熱意でございます。そこでこの年金制度をしくにいたしましても、これはいろいろの問題がございますので、三十二年度におきましては斯界の権威に委嘱いたしまして、五人委員というのを一つお願いいたしたい。そして基本的な調査をいたし、また諸外国の例等も十分調べまして、わが国の国情に合うような年金制度を打ち立てていきたい、こういう考えでございます。いつまでにそういうことをやる見込みかというお寺ねでございますが、私どもが今日考えておりますのは、少くとも三十二年、三十三年、この二カ年度くらいは、これが調査にどうしてもかかるのじゃないだろうか、こういうような考えを持っております。この制度を最善、最良なものにいたしたいということと、さらにまた財政上の問題も考慮しなければならぬことはもとよりでございますが、しかしそれならば平均寿命が延びて、しかも家族制度が変っておる今日の段階において、そういうものが一つできて、その五人委員会の報告を待って、それを検討するまで今日のままでいくのかということではないのでありまして、それは基本的な考え方としてはそういうしっかりした調査を進めるが、たとえば三十二年度において母子加算を加えたというようなことも、母子年金を想定しながら考えたわけでありまして、三十二年度は間に合わなかったのでありますが、三十三年度以降においては、老齢者に将来年金にかわるような、何がしかのことを打ち立てていきたいというのが、私どもの目下の構想でございます。
○岡本委員 わが国の国情に合ったというお言葉が、われわれ非常に気にかかるのでございます。ということは、結局先ほどの結核対策のように、ごくおざなりなものになっていく。結局日本は日本並みにということになって、そして国情に即したということが、結局日本の国の財政に即したというような形で、ほんのお小づかい程度のものが支給されるというようなことでは、年金制の実に沿わない。従って年金制というものを構想として打ち立てていく以上、これはやはり老人が安らかに老後を養える、こういうふうな構想をもって進んでいただきたい。そこで今現在の養老施設の問題についてお伺いしておきたいと思うのでありますが、これは社会局長の御所管ですね。養老施設に対して今どのような規制を加えておるかということを承わりたい。というのはかって養老院が焼けてたくさんの死亡者がございました。従って建物の問題もあるだろうと思います。また中に収容されている人の、やはり食事の問題、あるいは日常生活の問題、そういう点について何らかの指導、監督をやっておられるのか、あるいはそれぞれの経営者に、その誠意と良心とを信じて全くまかしておられるのか、その辺のところを一つ承わりたい。
○安田(巌)政府委員 養老施設は現在全国で大体四百二、三十、収容されております者が二万七、八千と記憶いたしておりますが、これらはいわゆる保護施設として、国から必要な経費を出しておるわけであります。従ってそういうものができますときには、いろいろむずかしい基準――これは建物の上にも、その他の上にも基準を作りまして、それに合うようなものを作らせる。それに合わないものは認可しないという形で参っておりますから、最近できますものにつきましては、今お話しのようなことは少いと思いますが、ただ戦後ああいったような状態でございましたときに、応急に作ったものの中に、まだ不完全なものがございますので、そういうものは設備、構造、その他につきまして、絶えず改普をするように、実は補助をいたしましたり、指導いたしておるわけであります。そのほか食事その他につきましても、一定の基準がございますけれども、府県の方で十分指導するようにさせております。
○岡本委員 養老施設というのはこれからだんだんふえなければならぬ。昔のような家族制度というものは、法律的にも変って参りました。また若い人たちの気持も変って参っておりますから、養老施設というものはもっとどんどんふえていかなければならぬ。また平均寿命が延びていくと老人というものがふえていくのでありますから、養老施設というものはふえなければならぬ。ところでそれに対するある程度の規制というものがないと、その善意にまかすだけでありますと、やはり何かしら昔のままの、何と申しますか救護施設というふうな観念が養老施設の運営の中にまだ残っているのではないか、極貧者を集めて、お前らをそれに収容してやるのだというふうな、いわゆる慈善事業としての観念ですな。そういうふうなものが養老施設の中に残っておるのではないか。そういうふうなことを私は考え、またおそれるのです。また現実に私どもの手元にはそういうことを訴えてきておるのです。どういうことを訴えて来ておるかと申しますと、まず第一として食事がきわめて粗末だ。何ぼ何でもこれはひどい、そしてその予算がやはり大体児童収容所の子供と同じように、一日に六十円ぐらいが、食事の材料の予算として組まれている模様なんです。老人だからカロリーが要らぬじゃないか。それはまあそうであるにしても、今まさに一生働き通して人生の最後を終ろうとするときに日々の食糧がそのようにお粗末であるということはやはり気の毒だと思うのですね。従ってそういうような面についてもある程度の心づかいというものをしていただかなければならないと思うのです。さらにこのごろ非常に養老院に対するところの何といいますか、補助の引き締めといいますか、そういうふうなものが出てきているようなんです。それで、やはり養老院でも、中で内職するのですね。内職すると、内職の賃金が本人にある程度手渡されておった。それが従来でありますと内職をしたら、内職の収入の中から五百円までは本人に手渡されて、それがタバコ銭になったり、身の回りのものを買う費用になったわけですね。そしてその残りは全部保護費の中に戻入してしまうのです。つまり保護費を始末するために戻入さすわけですね。ところで、それがことしから三百円になった。物価は上っているのに、逆にお小づかいは減ってしまうのですね。何ぼ働いても、三百円以上かせいだら、それを全部保護費の中に戻入されちまうのです。だから働く楽しみがないということです。だから働いたら働いただけ、ある程度気ばってやればお小づかいをもらえるというので、楽しんで年寄りがマッチ箱を張ったり、袋張りをしたりしてちっとでもタバコ銭を作りたいと思っておるのに、それが三百円だけ残して全部戻入ということではあまりひどい。何でも最近は、何か百円に減ってきているというようなことも聞くのですが、そんなことは事実なのか。あるいはさらに恩給や扶助料の入る人がありますが、それも同様なんです。ある限度、その程度まで残れば全部戻入さしてしまう。だから恩給のある者も公務扶助料のある者も、内職をしても何をしても小づかいというものはもう三百円に限定されて、それ以上はちっとももらえないのだ。これではあまり人生の最後の人に対して国の措置が冷たいではないか、私はこう思うので、彼らの不服が正しいと思うのですが、そういうふうなことについて、大臣はもう少し何とかしてやろうというようなお気持をお持ちになりませんでしょうか。
○安田(巌)政府委員 老人でございますからそういう人たちの世話を十分いたしますという制度であればいいのでございますけれども、今はやはり生活のできない老人に対する生活保護の適用をいたしますわけでございますが、そのときに居宅保護をするのが第一、それからうちに身寄りなんかがなくて、あるいはそこにいることが適当でないというような場合に養老施設に収容するわけでございます。そういたしますと、やはり先ほど申し上げましたような財産を持っていたり、あるいは扶助料でありますとか各種の年金をもらっておりますが、それだけでは生活できないけれどもしかしそういったような収入があるといった場合に、そういう人たちにはこれは保護費に戻入ではなくて、それだけ保護費が行かないということです。それだけの生活扶助が行かないというわけですが、同じ保護を受けて中にいる人でも、あの人は恩給をもらって同じような飯を食っている、この人は全然収入がないからそこのところがないのだということになりまして、どうしても差し引きの問題が起って参ります。これはちょうど一般の生活保護と同じであります。しかし大体養老院では、そういうふうな差し引き問題が起るのは主として恩給その他の年金でございますが、内職というのはあまりやらせておりませんから、そう内職収入が多過ぎてそいつをよこせという問題は割と少いと私は考えておりますが、よく実情を調べまして善処いたしたいと思います。
○神田国務大臣 老齢者を収容といいますか、お預かりしている養老院の今やっている現況は社会局長のお答え申し上げた通りで御了承いただけると思いますが、このままでいいかどうか、大臣の所見はどうだというお尋ねのように承わったのでございますが、気持としては岡本委員の述べられましたような感じを私は強く持っております。しかし今の要保護の観念と申しましょうか、ずっと行政事務の一環として扱っておる関係で、一体今の私どものあたたかい気持をどう現わすかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題があるように考えられるわけであります。よく一つ検討いたしてみたいと思っております。はなはだ御納得いかないお答えであったかもしれませんが、御了承願いたいと思います。
○藤本委員長 午後二時半まで休憩いたします。
   午後一時三十七分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時七分開議
○藤本委員長 休憩前に引き続き、会議を再開いたします。
 午前中の質疑を続行いたします。滝井義高君。
○滝井委員 石橋内閣ができて初めて新しく神田厚生大臣が生まれたわけですが、新しく大臣が生まれると、それぞれ大臣の名前をつけた固有の行政というものがどの省でも、あるように見受けられます。今度神田厚生行政というものができ上ることになるわけですが、神田厚生行政は当然石橋内閣の大きな施策の一環として出ていくことになるわけです。その船出に当って大臣の厚生行政に対する基本的な方針と申しますか、そういうものを実はこの前大臣のあいさつで承わらなかった、大臣は直接に昭和三十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案についての説明だけをぽっとやられて、基本方針というものを聞くことができなかった。当然神田厚生行政というものが発足したわけですから、その神田構想というものを今度は聞かしていただかなければならぬと思うのです。
 そこで御説明がなかったので私の方からぜひお聞きしたいのですが、それは石橋総理が一月八日に日比谷の公会堂で五つの誓いを立てられました。その五つの誓いを基本方針として岸臨時総理代理が施政方針を述べられたんですが、五つの誓いを基本として述べた施政方針演説の中においても同様にこの福祉国家の建設というものが出てきておるわけです。私は石橋内閣の福祉国家の横想というものがどういうものであるかということをここできょうお聞きしたいところでございますが、これは広範な日本経済の構造と密接不可分なものだろうと思います。日本経済の基盤の上に福祉国家というものがそびえ立ってくるのですから、これは非常な時間を必要といたします。従ってきょうわずか一時間でそういうところまでなかなか聞くことはできません。そこで私の方から具体的に問題をしぼってお聞きして参りたいと思います。
 石橋総理が五つの誓いを述べることによって、石橋内閣というものが非常な国民的な人気を博しました。五つの誓いの中で、国民的な人気を博した点は三つあると思います。その一つは一千億の減税です。その二は完全雇用です。その三は、いわゆる国民皆保険でございます。一千億の減税というものは、米価の値上げと運賃の引き上げという二つの問題が出ることによって、がぜん一千億の減税そのものに対する人気というものは、急降下に下火になって参りました。次に完全雇用も、やはり今までの内閣は完全雇用ということを大胆率直に言うことができませんでしたが、石橋内閣はこれを大上段に振りかぶった。これはあす労働行政のときに聞かしていただくことになりますが、この完全雇用も、だんだん聞いてみると、どうも自民党の党内の完全雇用はできたようでございますが、真の意味における、国民的な意味における完全雇用というものは、これはなかなかできそうにございません。従って、こういう掲げた大きな二つの一千億減税と完全雇用というものは、日にちがたつにつれて、羊頭を掲げて狗肉を売る、こういう情勢のために、石橋総理の病気と相まって、国民的な人気というものが、急激に下りつつある。この石橋内閣の国民的な人気を挽回する最後の手段は何かというと、これは国民皆保険なんです。こういうことを考えると、神田厚生行政の責任重かつまた大なりといわなければならぬ。そこで、神田厚生行政における国民皆保険が羊頭を掲げて狗肉を売るものでないということのためには、ここに国民皆保険、もっと別な言葉でいえば――われわれは五カ年でやると思っておりましたが、閣議では四カ年で皆保険を実現するという医療構想を御発表になっております。そこで、一つ神田厚生行政の船出に当って、医療保障四カ年計画の具体的な構想を御説明願いたい。これが大臣に第一に私がお願いしたい点です。
○神田国務大臣 石橋内閣発足に当りまして、五つの大きな誓いをした、そのうちの大きな誓いとして、福祉国家――これはもちもん産業経済の裏打ちがあってのことでございますが、社会保障の充実をやる、その社会保障の充実は、まず国民皆保険からである、こういう一連の構想をもって、国民皆保険を三十二年度から四カ年計画をもって三十五年度を達成目標としてやろう、こういうことであることは、御承知の通りでございます。そこで、この皆保険を三十五年度まで四カ年計画をもって完了するということは、これはなかなか大事業でございまして、私どもこれを完遂いたしますにつきましていろいろと検討いたしたのでございます。そこで皆保険を完遂するいろいろの方法を考えました結果、これに支障なからしめるように、達成することに必要とする条件を具備しようということで、四カ年の目標を、各府県、各市町村にわたって詳細な調査をいたしまして、未来の皆保険の年度割りを立てまして、そしてまたその普及をさせるについて所要の財政措置もとっていきたい。なおまた従来皆保険の事務費等におきまして、いろいろ町村財政を圧迫するというような非難もあったことも御承知の通りでありますので、三十二年度におきましては大幅な改訂をして、八十五円まで持っていった。その他医療の補助等につきましても、相当予定される予算を計上いたしまして、四カ年をもって必ず完遂いたしたい、こういうことでございます。詳細は政府委員から説明させましょう。
○高田(正)政府委員 大体は今大臣がお答えをなさいましたので尽きておるわけでございますが、私ども国保の普及計画につきましてはしばらく前に各府県からそれぞれの府県内の市町村と一応の相談をしてもらいまして、何々県の何々市、何々町は大体いつから始めるというふうな大体の目安をつけまして、それによりまして三十二年度以降の各年度の各普及計画を一応策定をいたしたのでございます。それによりますと、それぞれの年にどこが始めて、全体の被保険者の増加は大体この程度になるだろうという年次計画を持っておるのでございます。ただしかしこれは相当先のことでもございますし――もちろん来年度から始めるのはもうすぐでございますけれども、三十五年度あるいは三十四年度ということになりますと先のことでもございますし、これらの国保の事業を開始いたします際におきましては、市町村当局といたしましてもいろいろ検討いたさなければならぬところが残っておるだろうと思いまして、ただいまの計画が間違いなくそのまま参るというふうには私どもは考えておりません。若干の出入りがあることと存ずるわけでございます。従いまして来年度に入りましたならば早急に、ただいまそれぞれ計画をいたしております年度割の計画というものを市町村とも話し合いまして、もう一度精細に練り直して、逐次実行計画というものを立てて参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。
○滝井委員 そういう抽象的なことでは皆保険はできません。すでにこれは昨年の予算委員会においても、あるいは一昨年の予算委員会においても、大蔵大臣と経済企画庁長官と厚生大臣を前に置いて、具体的に数字をあげて私は御説明を求めた。ところが厚生大臣の答弁、経済企画庁長官の答弁、大蔵大蔵の答弁、全部違う。何らそこに関連がない。しかし今度は石橋内閣というものは大胆に率直に福祉国家の建設というものを掲げてこられた。すでに退去二年にわたって一貫した構想のなかったものが、少くともこれは構想が出てきたわけなんです。従ってこれは具体的に、今のような町村と打ち合せてどうだこうだ、あるいは町村の計画を集めてどうだということじゃなくして、当然これは国家がこういう方針で医療保障を四カ年で――九千万の国民のうちで六千万が受けて残り三千万が受けてないのですが、この三千万の国民にやるのだという具体的な構想を立てなければいかぬ。算術計算をしても七百万の人を一年にやらなければできないのですから、七百万をやるためには現在の五割の本人負担の国民保険を実施するについては大体幾ら金が要るのだということは、そろばんの上では出てきておるわけです。従って問題は、あなた方が組んでいることしの国民健康保険の予算というものがわずかに医療給付費が二十三億増加をして事務費が九億増加しただけで、あなた方の言うような五百万が入れるか、断じてこれは入れない。すでにこれは過去においてはっきりしてきておる。二十三億や三十二億くらいでは入れぬということは、すでにこれは――大臣は初めての就任だからわからないかもしれないが、局長初めみな知っておる。だからあなた方は、三十二億じゃない、良心的にもっと大きく要求されておるはずです。しかし悲しいかな削られている。そういうことになるとこれはできないのです。だから少くとも予算は予算として、ほんとうに正真正銘厚生省が少くとも一カ年七百万なり五百万を入れていくためにはこれだけの財政上の処置はしなければなりませんという確信ある数字があるはずなのです。それを私はまず出してもらわなければならぬと思う。それで今の五割を基礎にしてこれだけのものがあればぴしっとできますか。明後日になれば医療保障の勧告案に対する質疑が行われます。医療保障の勧告案だって、日本の財政の見地から見て、少くとも国民健康保険を三カ年ないし四カ年間で全国民に実施していくためには六十億ないし八十億が必要でございますということ、これは日本の財政が負担可能なものである、こう言っている。しかもそのほかに第二種健康保険――現在の政府管掌健康保険には政府管掌で五十億、それから新しくできる第二種健康保険には七十億入れなければだめだ、こういうことがはっきりしておるわけなのです。これは政府の権威ある諮問機関がそう言っているのですから、いわんや事務的な機構を持っている厚生省というものが皆保険というものを掲げたならば、それに対する数字上の基礎というものをこの委員会に当然明白にすることが忠実なるゆえんだと思うのです。それでさいぜん私は、減税もどうも羊頭狗肉のたぐいだ、完全雇用も党内の完全雇用はできたけれども、国民の完全雇用というものはおかしい、最後のにない手は皆保険だと言ったが、この皆保険も羊頭狗肉なら、石橋内閣は国民に偽わりの公約を掲げたということになってしまう。これはわれわれ厚生行政に協力しておる者としてはとらざるところなのです。この三つのうちこれだけは実現してもらいたい。そこできょうはまず具体的に数字をあげて説明していただかなければこれは納得いかない。いずれ時間があれば、これは予算委員会で大蔵大臣にもやるつもりですが、まずきょうはあなた方の気持というものを聞かしてもらわなければいかぬ。一つ数字をあげてこれだけのものが必要だということを御説明願いたい。
○高田(正)政府委員 先ほどは大体の筋をお話申し上げたのでありますが、さらに重ねての御質問でございますので、先ほど申し上げましたように、さらにこれは詳細に実行計画を立てて参らなければならぬと思いまするが、一応の計画の荒筋を御説明申し上げたいと思います。
 昭和三十二年度に私どもが考えておりますのは、都市で四十四都市、町村で三百五十九、計四百三でございます。それでそこに住んでおりまする人口は千四百二十五万四千ということで、その市町村におきまして国保の被保険者として考えられる人口数は八百二十七万八千という程度でございます。それらの大きな市の中では、名古屋市とか広島市とか川崎市とか、さらに十ばかりの市が開始するということを予定いたしております。それから昭和三十三年度の計画におきましては、都市が二十五、町村が二百五十七、計二百八十二ということでございます。ここにおきまする被保険者の数が八百十万ということでございます。この中には東京都の特別区その他五大市も含まれております。さらに中都市といたしましては、岐阜とか函館とかいうものが予定されておるわけでございます。三十四年度といたしましては、都市が二十一、町村が百八十で二百一、被保険者の数が四百十二万四千ということでございます。この中には福岡とか熊本とかその他若干の有名な都市が含まれております。昭和三十五年度では都市が十九、それから町村が百五で百二十四、被保険者の数が三百十七万八千ということで一応予定をいたしておるのでありますが、これらは先ほど申し上げましたように、府県が当該市町村と連絡の上での一応の年次計画でございますので、これがそのまま、たとえば三十二年度に予定をされた市町村全部が必ずその三十二年度に開始できるかどうかということにつきましては、これはさらに実行計画として綿密に検討をいたし、準備を進めなければならぬと存じます。さような意味合いにおきまして、被保険者の数といたしましては、今申し上げたような年次計画でふやしていくという一応の計画でございます。
 それから計画通りにいかないだろうという一応の推定を加えまして、その結果は、昭和三十二年度においては年間で五百五十六万余り被保険者がふえるであろう、昭和三十三年度においては、七百九万二千くらいふえるであろう、昭和三十四年度におきましては、五百三十万八千程度ふえるであろう、昭和三十五年度に六百七十万程度残るであろう、こういう一応の推定をいたしておるのであります。それでさような前提のもとに、各年度の国庫の補助金といいますか、さようなものをも計算をいたしたのでございます。それぞれ各年度にわたって二割の療養給付費の金額をはじいてみたわけでございますが、これには受信率の伸び、一件当りの点数がどうなるかというふうなことをも推定を加えて一応の金額をはじきましたので、これがこの通りであるということは申せないかと思うのでございます。たとえば最終の昭和三十五年度の国庫負担療養給付費二割分の金額をわれわれの推定に基いてはじきますならば、二百二十億程度に相なるであろう、こういうふうな推計もいたしておるわけであります。なおこのほかに御存じのように専務費の国庫補助というものもございますので、それらにつきましてもそれぞれ各年度の事務費の総額というものをはじいております。さようなわけ合いでございまして、私どもといたしましては、数字的な基礎に一応基きまして計画を立てておるわけでございますけれども、しかしこの実施ということになりますと、何しろ相手のあることでございますし、それぞれ町村が自分で意思を決定するという格好にもなって参りますので、ただ簡単にやれやれと言うだけで開始ができるものではありません。従いましてこれらの実際の実施細目の実行計画というふうなものは、先ほど申し上げましたようにさらに時をかけて綿密に検討いたして参らねばならぬ、かように考えておるわけでございます。
○滝井委員 財政上の最終年度、昭和三十五年度の二割が二百二十億とだけ御説明いただきましたが、できれば三十二、三十三、三十四年と御説明願っておきたいと思います。
○高田(正)政府委員 これは先ほど申し上げましたように一応の私どもの持っておりまする計算でございますが、三十三年度は百三十三億程度に相なる予定でございます。三千四年度は百七十四億程度に相なる予定でございます。
○滝井委員 国民保険のこまかいことはいずれ国民保険の法律が出てからただすといたしたいと思いますが、大臣、国民健康保険の抜本的な改正案を今国会に御提出になるのか、それとも御提出できないのか、これを一つ明白にしていただきたいと思います。
  〔委員長退席、亀山委員長代理肴席〕
○神田国務大臣 出すつもりで準備をいたしております。いろいろまだ未解決の点が相当残っておりまして、急いで成案を得るように努力いたしておりますが、それじゃ必ず間に合うかと言われますと、現在におきましては私といたしましてそこまではっきり大丈夫だというところまでまだめどをつけておりません。しかし出したい、出そうということで努力いたしておる、さよう御了承願いたいと思います。
○滝井委員 実は国民皆保険のかなめはこの国民健康保険法がどういう工合に改正されるかということで、国民皆保険の運命がきまるのです。そうしますと、一応提出の予定であると言いますが、その提出予定の国民健康保険は強制設立の項を入れるのか入れないのか、これは簡単ですから一つ……。
○神田国務大臣 そのことも目下研究中でございます。
○滝井委員 そうしますと、これは強制設立をするかしないかを今検討中だというならば、今仰せられたことはもう全部絵にかいたもちです。実行できません。これは断言してはばからない。それができないばかりじゃなくて、ことしあなたたちが言う五百万というものもできません。それは過去において――これは時務当局でけっこうですが、昭和二十五年以来の国民健康保険の毎年の被保険者の増加を御説明願いたい。
○高田(正)政府委員 国民健康保険の被保険者の伸びの数字につきましては、まことに申しわけございませんが、今その資料を持ち合せて参りませんでしたので、次回にお答えを申し上げさせていただきたいと思います。
○滝井委員 はなはだもって怠慢だと思う。それでは詳しい数字はいいですが、およそどのくらいかおわかりだと思う。二百万をこえて伸びた年はそうないと思う。二百万をこえて五百万近い数字で伸びたことはないと私は見ているのです。およそのところでけっこうですが、その点はどうでしょうか。
○高田(正)政府委員 私あまり古いことは承知しておりませんが、最近におきましては、たしか三十一年度予算は三十年度と比較いたしまして、年間で三百万の伸びを予定をして予算を組んでおります。大体本年度の推移は順調に推移をしているやに私は承知をしております。その前の年がこれはたしか二百万か二百五十万くらいの程度であったのではあるまいかというふうに私記憶いたしておりますが、非常に不確かでございますので、この次に一つ申し上げたいと存じます。
○滝井委員 問題は局長さんも御存じの通り、現在残っておるのは非常に大都市のいわゆる高い医療を受けておるところ、東京、大阪、福岡、名古屋というような、こういう消費的な大都市なんです。しかも高度の医療を受けておる。あるいは非常に零細ないわゆる厚生省のお得意な低額所得層があふれておるところなんです。あるいは町村で残っておるところは、これはもう地方財政が苦しくてどうにもこうにもいかぬ、保険料が払えないというところが残っておるのです。そこに今からやるのですから、これは財政的な負担と地方財政との間をよほど勘案しなければ、これは実現できない。私はいずれ法案が出れば地方財政と国民保険との関係は詳細に御質問いたす所存でございますが、今日はそういうことは時間がありませんからやりませんが、そういうところなんです。たとえば名古屋のごときはこれは受診率二七〇ぐらいに見ていかなければならぬ。そうしますと二七〇だと被保険者の一人の保険料というものは千円をこえますよ。そうすると名古屋あたりで一世帯当り三・六人ですから、四千円をこえる保険料を平均して納めなければならぬということなんです。こういうことが現在の日本の経済の状態の中で、いわゆる二割国庫負担でできるかというと、これは断じてできない。だからそれをやろうとするならば、名古屋市に対して少くとも三割だけはやります、そのかわり絶対やらなければならぬという強制設立の形をとらなければならぬ。それば同時に国の財政負担が多くなることを意味する。こういう点はいずれ具体的になったらお聞きしますが、そうしますと今の厚生省の三十二、三十三、三十四、三十五年の被保険者の数は二千三百万にしかならない。そうするとあと約五百万人の人は一体どこにいくのですか。これは全然入ってない。現在大ざっぱにいって三千万ですが、正確には二千七、八百万残っておる。大蔵大臣は本会議で国民健康保険に入れることが合理的であり、これをやりたいと言った。神田厚生大臣ははっきりしませんでした。その点は検討中だ、こうおつしゃった。大蔵大臣は国民保険に入れると言っておる。厚生省はそうではありません、検討中だと言っておる。もうすでに内閣で、三千万の未組織の国民に対する入れ方が、大蔵省と厚生省で意見の食い違いを見るようなニュアンスがあるということなんです。こういう点、足し算しても五百万ばかり足りない。この五百万というのはどこに入れるのか、第二種というものを作るのか、それともわれわれ社会党が主張しておるような健康保険に全部入れるというのか。残りの五百万の諸君が五人未満の零細企業に勤めておるということをつかんで、そういうことをわざと抜かしておるのか、そこらあたりをお聞かせを願いたい。
○高田(正)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは三十一年度の被保険者の年間の伸びというものを申しておりませんので、いわゆる三千万、三千万と俗に申しておりますのは、昨年の三十年度末、いわゆる三十一年度の初めごろにそういうふうに申しておったわけであります。そのときにもこれはいろいろ統計のとり方によって違いますけれども、二千九百万程度であろうかというふうな統計も出ておりますが、それをまるくして三千万、三千万と申しております。三十一年度の被保険者の伸びはただいま申し上げましたのと別に、三百四十五万程度のものを予定いたしております。
○滝井委員 三百四十五万ほんとにできますか。
○高田(正)政府委員 三十一年度は目下年度が進行中でございまして、大体この程度参るのではあるまいかと考えておりますが、もう少し様子を見ないと、それぞれの市町村の事情を、私今ここでは詳しく存じておりませんので、確かなところは申し上げられないと思います。一応こういうことで予定をいたしております。
○滝井委員 これは事務当局に尋ねたいのですが、現行の国民健康保険の体系で、強制設立の形をとらずにいった場合に、あなた方事務当局としての専門的な見地から見てどうですか。今三十二、三十三、三十四、三十五と約二千三、四百万の国民を国民健康保険被保険者とする形の構想を御説明いただいたのですが、今の国民健康保険の姿でこれがいける自信がありますか。
○高田(正)政府委員 先ほど滝井先生が御指摘になりましたように、今日残っておりますところは六大都市でございますとか、それからどっちかというと大きな都市が多いわけであります。それから農山村で残っているといたしますると、相当困難なところ、こういうふうなことになっておりまして、従いまして、一口に申せば、今後伸ばす分は相当むずかしいところだということは確かな事実でございます。しかしこれは考えようでございまして、結局、たとえば東京都なら東京都というものの区部が踏み切って実施しまするならば、ここでどっさりと被保険者の数がふえるわけです。もしその他の五大市がこの国保に踏み切りまするならば、ある意味におきましては、中都市もそれにどんどん続いて参る可能性が多分にございまするので、むしろ山はその辺にあるんじゃないだろうかというふうに、私どもは大きな見通しとしましては、考えまして、これら東京都特別区、それから五大市等につきましてはいろいろと、府県当局が相談に乗るだけでなしに、われわれ厚生省当局も府県当局と一緒になって、先ほど御指摘の保険料の点であるとか、あるいは受診率の伸びの見方でありまするとか、さような点等につきましても相談に乗って、実はやっておるわけでございます。今の情勢では、御存じのように、名古屋市が来年度から多分、これは最後的な決定になっておりませんけれども、三十二年度中には始める運びに相なるということでございます。三十三年度におきましては、これは東京都特別区におきましては画一に年度当初から実施をするということで、東京都庁の庁議をまとめておられるようであります。これらにおきましては、相当な基礎調査をいたして、相当な準備をいたしておりまするので、私はさような運びに実現できるものと考えております。大体そういうふうなわけで、大きな山は東京都を中心とした大都市、それに続く中都市というふうなものにあるように思いまするけれども、しかし実施困難なところも、いわゆる客観的に見ても非常に困難なところもまだ残っておるわけでございまするから、従って現在の法律のままでは国民皆保険というものを念頭に置いた場合には何かと不都合があろうかと存じます。従ってそれを念頭に置いてどういうふうに国民健康保険法を改正をいたしたらいいかということにつきまして、目下、先ほど大臣が仰せのように案を練っておるわけでございます。その際に強制設立云々というお話がございましたが、たしかにこの辺が一つの法案の山であろうと思います。それをまだ検討しているというようなことでははなはだ情ないではないかという仰せでもございますが、この点が一番大きな山でございまして、これはまだ厚生省で全部案がまとまったわけではございませんが、私の気持を言わしていただきまするならば、市町村が団民健康保険を実施するものとするという、その建前の線でも、ある意味における強制の程度には持って参りたいというふうに考えております。ただ実施をしない場合に、しからば代執行的なことをやるとか、あるいは実施をしない場合に罰則をかけるとかいうふうな、何と申しますか、やかましい意味の強制というものは、これはどうであろうかと思いまするけれども、その程度の建前上の問題等につきましては割り切りたいと、私は個人的には考えておりまするけれども、これはさらに省内でも検討をいたし、関係の政府部内の部局もございまするので、そこいらと十分に検討を加えて何らかの成案を得たいと、かように考えておるわけでございます。
○滝井委員 大体局長のその答弁で、私はある程度了承がいくと思います。ぜひ一つ大臣も、今の局長の御答弁をお聞きの通りでございます。少くとも国民皆保険をやるならば、扇のかなめは強制設立に近い線に持っていくかいかぬかということです。強制設立の線近く持っていくということは、それはどういうことを意味するかというと、国の財政負担が二割か三割にならなければ実現できないということを意味する。これは今後のいわゆる神田厚生行政の運命を決定する大きな問題でございますので、どうか一つ大臣は、今後がんばっていただきたいことを、まず冒頭にお願いしておきたい。それで国民皆保険のことは、時間がありませんから、いずれ機会を改めて、いろいろな方面からお開きいたしたいと思います。
 次にお尋ねいたしたい点は、これは大臣、今後閣議でがんばっていただかなければならぬ点でございますが、それは御承知のように、国家公務員の給与の改訂が行われようとしております。昨年〇・一五が年末手当に繰り入れられることになりました。と同時に全般的な給与の改訂というものは、地域給の廃止という線を閣議は大体決定したようでございます。そうしますと地域給がなくなる。まあ大都市には特別の何か都市手当というようなものを出すということでございますが、地域給がなくなるとすれば、当然現在の一級から四級までのそれぞれの既得権というものは本俸の中に何らかの形で繰り入れられる形が出てくるわけです。ところがこの地域給と類似しているものが厚生行政の中にはあります。たとえば具体的に言ってみると、生活保護の級地があります。一級の中にもたとえば甲と乙がある。さらに二、三、四、五級とある。たとえば一級の甲の標準都市の扶助額が八千二百三十三円六十三銭です。ところが五級になってくると五千八百三十四円六十三銭ということになります。三千円ぐらいの開きがある。同じように今度は医療の方にやはり甲地、乙地というものがある。六大都市は甲地区で十二円五十銭、その他の市町村は十一円五十銭で乙地区、こういうのがある。それから日雇い労働者の諸君においても、たとえば福岡県でも甲地区が二百八十円、乙地区が二百五十円、丙地区が二百三十五円、一つの県の中でも日雇い労働者の賃金にもこういう格差が出てきている。ところがこれは戦後における経済的なアンバランスあるいは地域的な物価差、こういうようなものを基礎にしてここに地域給というものが生まれ、そうして同時に、それにならうといってはおかしいが、それと同じような理論的な、あるいは経済的な根拠によって生活保護の緑地が生まれ、あるいは医療における田地、乙地が生まれ、日雇い労働者にやはり地域的な、差いうものが出てきている。ところが地域給が撤廃になれば、当然これらのものも撤廃をしなければならない段階がもうすでに来ております。従って大臣はこの点についてどういう認識と考え方を持っているか、これをお尋ねしたい。
○神田国務大臣 国家公務員の地域給廃止の問題につきましては、閣議の話題になったことは事実でございます。しかし今滝井委員のお述べになられたように、決定を見たようであるがということでありましたが、実は決定になっておりません。大体閣議の空気としては、諸般の情勢が変ってきているから、この際地域給というようなものにとらわれない方がいいのではないか、今度の公務員の給与改訂については、均衡を得るための是正もあわせて行いたいというようなことも言っておりますが、まだ具体的に地域給を略止して、六大都市には何らかの形で一つ手当をつけるかというようなことば話題にはなっておりまするが、その線までいっておりません。そこで、これはどうなるかによって話がまた違うとは思いますが、もし今国家公務員の地域給の廃止というものが全体的に行われるという事態が参りますれば、これに右へならえしておる諸般の制度というものに、やはり再検討を加えなければならないということは当然であろうと私は思うのです。どういうふうになるかということについては、今のところまだ熟しておりませんので、考え方としてはそういうことを考えなければならぬのではないか、こういうことだと思います。
○滝井委員 これは事務当局にお伺いしたいのですが、今大臣としては理論的に、当然地域給が全廃になれば再検討しなければならぬ、こういうことでございます。これによって再検討することになれば、当然これはその線に沿うというような情勢が出てくると思いますが、何か事務当局として、地域給が廃止された場合には、医療における甲地、乙地、生活保護の級地の改訂等に、それを改訂することによって重大な行政的な支障があるというような点があれば御説明願いたいと思います。これは保険局と社会局ですが……。
○高田(正)政府委員 今地域給の問題に関連をいたしまして、甲地、乙地という問題が御指摘ございました。実は私どもこの甲地、乙地という保険の方の単価の区別というものは、現行はその制度で参っておりながら、これはほんとうを申しますと、地域給の廃止云々ということとは別に再検討をいたしたい、かように考えておるわけでございます。その再検討の方向は、できますならばこれを一本にいたしたい、さようなことを考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても、今日直ちにそれをやります場合に、甲地と乙地の金国平均単価ということでこれを一本にいたしますれば、これは行政的にもすぐできるわけでございますが、そのことは甲地の医療機関に及ぼしまする経済的な影響というものが相当ございまするので、その辺のところを配慮いたしまして、将来医療費の算定等につきまして基本的な検討、研究を加えます際に、あわせてこの甲地、乙地の問題をも処理して参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。
  〔亀山委員長代理退席、委員長着席〕
○安田(巌)政府委員 生活保護費の級地の別でございますが、これは今のお話のように、一級地の甲というのが六大都市でございまして、一級地の乙というのが六大都市に次ぐ大都市、それから一、三級地というのが地方の中都市、四、五級地というのが地方の町村部となっております。それからこの分け方は、都市と農村の生計費の実態、生活内容の相違というようなことを実は考えて分けておるのでありまして、確かに物価が都市と地方とあまり違わなくなったとか、あるいはまた今後公務員の給与のやり方が地域差が少くなるとか、なくなるというようなことにつきまして、生活保護の方の地域差も影響は受けると思いますけれども、しかし一般の生計費の実態というものと、それから最低生活費の実態というものとは、やはり多少の相違があるように私どもは従来理解いたしております。そういう点もかみ合せまして十分研究してみたいと思います。
○滝井委員 再検討々々々とおっしゃいますが、すでにあなた方のもらう、いわゆる給与の改訂というものは、具体的に政治の舞台に上ってきているのですよ。今度の予算の中に含まれている、しかも御存じの通り町村の合併というものはもう終了しちゃった。従って名自治体には今まで村であったものが大都市に編入されておるという、こういう形が出てきておる、それをそのままに放置するということは、その地区におけるところの国家公務員に非常に大きな支障を来たすから、政府としては地域給を一本化しようということなんです。それと同じことが貧しい生活保護の階級の諸君には、今まで村であったものが市になれば当然これは二ないし三級というようなところにいかなければならぬ、生活保護ではまた医療においても同じなんです。国家公務員の諸君が今まで一番最高のところをもらっておるのに、その地区が乙地であるということは、これは許されないことなんですよ、こういう点はすでにもう町村の合併促進によって大きな矛盾というものが出ているのです。そうしてしかもその矛盾を排除するために、あなた方の給与というものが今度の予算の改訂の上に具体的に出ておるときに、なおそれらの他の甲地、乙地あるいは生活保護の地域給や日雇い労働者諸君の給与というものは、今から検討していってそれがいつかということはあまりにも不親切だと思う。少くともやはりこれはすみやかにその成否というものを出すべきだと思う。特に生活保護の級地の問題と、医療の甲乙あるいは日雇い労働者のこの問題というものは当面重要な問題なんです。従って私は、これはもう荏苒日を過ごすことを許されないと思う。従ってもし地域給の問題が具体的に結論が出たならば、さっそく厚生省としては検討をして、早期に結論を出し、少くともこれは来年度の四月の会計年度が発足するくらいまでにはその態度を鮮明にすることは、私はできないことはないと思う。どうですか大臣、そのくらいの誠意はあってしかるべきだと思いますが、来年度の四月の新しい三十二年度の予算が発足するまでにはそういう態度がとれましょうか。
○神田国務大臣 今滝井委員から国家公務員の地域給の廃止を前提としてお述べになっておられる部分が相当多いようでございまして、その他新市町村発足に当りといいましょうか、町村合併が進んで参りまして、その村なりが町になりあるいは市に編入になった、その編入になったことによって生ずる問題と二つになっているんじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、これはただいま十分厚生省として長く調査をしなければわからないという問題ではないように思いますので、早急に調査を進めてみたい、かように考えております。
○滝井委員 この問題は非常に重要な問題をはらんでおりまするので、検討検討と言わずに、一つ実行してもらいたいと思います。検討の方を実行してもらうのですよ。今まで検討すると言うだけで、一向ここで明白な答弁をいただけないのです。具体的に一つ検討して結論を出していただきたいということです。
 その次に今の問題と関連をして、ただいま甲地、乙地の問題は医療の方では十一円五十銭とか十二円五十銭とかという問題があります。これは新しい医療費の体系と非常に関係が深い問題なんです。そこで、新しい厚生大臣としては新医療費体系というものについて、大体どういう取扱いをされていくのか、これを一つこういう方針でいくんだということを――当然これは前の大臣はいろいろやられておりますが、大臣としても新医療費体系の取扱いというものは確信があるはずです。と申しますのは、御存じの通り米価は一応据え置きになりましたが、これは食管会計の赤字のために、少くとも米価というものは一般会計から負担をするか、値上げをしなければならぬという客観情勢が出ております。運賃も鉄道運賃一割三分上昇です。ガソリン税も六千五百円、地方道路税を含んで上げられます。給与も少くとも平均千四百二十円程度の改訂が行われます。失業対策費も二百八十二円から三百二円になる、生活保護費も六・五%上るというように、全般的な引き上げが行われようとしております。こういう中で新医療費体系というものを検討しておるわけなんです。そうしますと、一体これはどうするつもりかということです。私はもう点数と単価なんというものは要らないと思う。初診料は百円でございます、何円以下の注射は何ぼでございますというようにお金一本で表わして、そして、昔と同じように医者の窓口に行けば掲げておるという態勢の方が、大衆もわかりやすいし、医者もめんどうでないんです。私実は社会局長に生活保護のめんどうくささをやろうと思ったんですが、時間がないからこの次にしますが、今の事務は大へんだということなんです。特に生活保護なんというもので医療扶助は大へんなんです。扶助人員が、生活保護が百九十万から百七十万に減り、今年百五十万に減ったというのは、これは事務がめんどうくさいから減った。自然発生的に減ったのじゃなくて、減らされたんです。いずれ私は機会を見て事務を全部ここで公開しますが、事務が複雑で、それはもうちょっとやそっとじゃできません。生活保護者を二十何件も受け持ったら一晩徹夜しなければ請求書は書けないという状態で、大へんな事務なんです。この基因はどこにあるかというと、点数と単価に五厘というようなものがっくんです。大体今の商売で五厘の計算がついて商取引が行われるようなものはどこにもない。医者だけです。それはかかってこの医療費体系にある。だから、今後大臣は医療費の体系というものをどういう方向に大体持っていかれるのですか、これを簡明率直にお答え願いたい。
○神田国務大臣 今滝井委員からお述べになられました、あるいは例を引かれましたことは、実は私も厚生大臣になる前からずいぶん聞かされておりまして、どうも非常にややこしいめんどうなことをやっておるという考えを持っておったのです。今度そういうところを担当したわけでございますが、もうそろそろ何といいますか、実態に徴しまして、この辺で実際にもっとわかりやすい、新しい考え方を出す時期に来ているんじゃないかという率直な――私の意見を述べますとそういうことを申し上げるわけでございます。そこでその前段になおお問いになりました医療体系をどうするか、公務員のベースが上ってきている。また要保護者の生活某準も上ってきている、日雇い労働者の待遇も上ってきておる。それと関連してのお尋ねでございましたが、私どもも、これは当然考えなくちゃならないことであるというふうに考えております。しかし従来からこの医療体系を改正する際には中央医療協議会に諮問をして、そしてその答申を待って考えておるような実情のようでございまして、今回もそういうような方法によって進めて参りたい、こういう考えでおります。
○滝井委員 新しい酒は新しい皮袋に盛らなければならぬといいますが、幸い神田厚生大臣、非常にフレッシュな考え方をお持ちです。今大臣の言われたように、やはり新しい姿を出す時期が来ている、当然もう考えなければならぬ。今までの大臣は就任の初めはみんなそうおっしゃる。ところがだんだんしておると、新しい酒は新しい皮袋に入れるという気持がなくなつちゃって、厚生省のお役人さんの古い考えにずうっといっちまうんです。一つ大臣はこういうことを就任の初めにやらなければだめです。だんだんやっておると、やはり習い性となって、厚生省の考えに引きずられる。新しいうちに客観的にものを見る考え方でやっていく方がいい、一番先に手がけるものはやはり国民皆保険と医療費体系をやられたらそれでいいと思うのです。あまり何もかもやろうとしても、五年も六年も続いた厚生大臣はないのですから、どうせ一年かそこらですから、そのうちにやるには重点主義です。やれるものは、一つか二つしかないと思う。だから、一つぜひ皆保険の政策一筋の道を示すということをやる。そのくらいのことで私はけっこうだと思うのです。今聞くところによりますと、この医療費体系を作る専門委員会を作っている。ところがその中央社会保険医療協議会の部会に専門委員がおります。これは学者なんですが、予算がなくて、出てきた日当やなんかももらえぬらしい。調べてみますと、なるほど昭和三十一年には社会保険中業の総合企画運営に必要なる経費、多分これがその経費になると思いますが、二百万四千円です。三十二年には二百二万九千円で、ずいぶん医療費体系はもみにもんでおるのです。そうしますと、二百万四千円くらいはもう使って金がないじゃないかと思う。そのために学者が来てもおそらく何にもやらずにただ働きをさしておるんじゃないかと思う。そうしますと、経済学者なんかやってこない。そういう形でもし医療費体系を厚生省がやっているとすればこれは大問題だと思う。少くとも日本の総医療費は約三十億になる。そうなりますと、二千億、国民所得の三%ないし四%を決定する問題です。それをわずか二百万やそこらの金で、しかもこれは社会保険審議会と中央社会保険医療協議会の運営費用だということでは医療保障の基盤は断じてできません。少くともここに二千万円くらいの金を注ぎ込んで調査費、研究費を出さなければできません。これは大臣答弁は要りません。一つ帰ってよく局長にお聞きになって実態がどうなっているかお調べ願いたい。私はおそらく金がなくてただ働きをさせられておるんじゃないかと思う。
 それから次に、神田厚生大臣は今まで通産の委員長をされておりました。そこで通産に関係のある、いわば大臣が今まで専門的にやっておられたことを一つお聞きしたいのです。それは二十四国会の当時に当委員会で小林厚生大臣のかわりに――山下さんここにおられますが、山下政務次官から御言明をいただいたいわゆる公害防止法案です。化学工業から流れる悪水、豆炭あるいはシャモットの煙、セメント、電力会社から出る煙害、あるいは銅山なんかもありますが、そういういわゆる公害です。その公害の防止法案というものを今国会に提出をするという御言明を得ております。これは再々にわたって質問をして御言明を得ているのですが、何かうわさに聞くところによると、通産省その他から横やりが出てなかなかできない情勢だということでございます。現在各都道府県は条例によってこの公害を防止する方策を講じております。ところが各県も条例を出すと、わんさ陳情がやってくるけれども、法律の根拠がないためにこれはどうにもしようがないという情勢に追い込まれている。そこで今回いわゆる炭鉱の方の鉱業法が改正をされまして、無過失賠償の責任ということで今までは政府は補助金を出しませんでしたが、鉱工業事業に関係するものについては補助金を出すということは、大臣通産委員長のとき非常にお骨折りになっておるので御存じだと思いますが、現在大阪を初めその他の大都市におきまして化学工業が地下水をくみ上げる、脱水現象等のために地盤の沈下が起っております。これは地盤の沈下につきましても工業用水については補助金が出るという形が出ているわけです。ところが、ひとりわれわれとうとい人間に害を与えるところのその公害、もちろん化学工業から出る汚水というものは、水産業その他農業にも非常に大きな公害を与えますが、問題を一応われわれ人間だけにしぼっても人間に与えるこの公害というものの防止について何らの法的な措置がない。いわゆる無過失賠償の責任というものに対する保護規定というものがない。これは私は片手落ちだと思う。そこで、厚生省としては、二十四国会のときに、次の通常国会には必ず提出しますというお約束を得ておるのですが、通産行政にも御造詣の深かった大臣、どうですか。今度お出しいただけますか。
○神田国務大臣 いわゆる公害の問題につきましては、私もしばしばその実情も承知いたしておりますので、今滝井委員のお述べになられたような法的処置が必要だということには全く同感でございまして、この法案をすぐ出すかどうかということでございましたが、実は厚生省でその法案の内容を私十分まだ承わっておりませんので、また前国会にそういうお約束のあったことも今初めてお聞きしたようなわけでございますが、準備しておりますことは承知しておりますが、どの程度資料が整っておりますか、これは何といいますか、いろいろ資料の充足も期間も要るだろうと思いますが、必要であることについては私同感でありますので、十分調査してみたいと思います。
○滝井委員 これで終りますが、今の問題は前に御言明を得ておりますので……、一つこの点は通産省にもちょっと来てもらわなければならぬので、いずれ次会か何かにちょっと時間をいただいてやらしていただきまして、大臣も一つ事務当局から十分この公害防止法の由来をお聞きになって、次会の質問に譲らしていただいて、きょうは一応これで終らしていただきます。どうもありがとうございました。
○藤本委員長 野澤清人君。
○野澤委員 だんだんの質問で大体解明されると思うのですが、私は総括的な事項で新大臣にお尋ねをしたいと思うのです。それは、今度の石橋内閣が組閣されて、今度の内閣の重点政策の一つに社会保障制度というものが大きく打ち出されております。従って国民のあらゆる階層が大きな期待を寄せておる場合でありますので、この社会保障制度に対する新大臣の基本的な考え方と申しますか、つまり一がいに社会保障制度というても非常に広範でありまして、しかもまた日本の社会保障制度の発生過程から今日まで歴史的な一つの経過から見ましても、かなり輻湊した行き方をしておる。たとえば大正、昭和にかけて逐次頭を持ち上げてきましたものは、疾病患者のいわゆる弱者の階層が取り上げられる、あるいはまた貧困な者の階層が取り上げられる、こういうふうに発生してきたものが、少くとも国家の恩恵的な考え方が基本になって一つの流れを生んだと思います。そうしまして、戦後の世界の主潮でありますところの社会保障制度の確立ということで、これはもうあらゆる政党も、また社会人も、官民も、ひとしくこの問題に関心を寄せている。そうしますと、一体日本の社会保障制度というものは、保守党だ、社会党だという立場はともかくとしても、政府自体における社会保障制度の基本的な考え方はどういう方向に進んでいくのか。こうした禅問答のような質問の仕方ですが、もし率直に御言明が願えれば大へんけっこうだと思います。
○神田国務大臣 石橋内閣の社会保障の基本的な考え方は一体どうかという意味に承わったのでございますが、その前提でございました過去における社会保障は防貧であり救貧であった、そういうことからだんだん発達してきたんだが、今日においてはそういうことより以上な目的を持っておる、いわゆるわれわれの社会生活を明るくしていこうという、もっと積極的な面をもって進んでいくことが当然であると言われた野澤さんの御意見については、私は全く同感なんです。
 石橋内閣も、発足以来福祉国家を念願して、完全雇用を一つ目標として、そして社会保障をうんと充実していきたい、こういうことをしばしば言明されております。もちろんその裏づけとしての産業経済の躍進を一つはかろうということでございまして、私どもその面で一つ厚生関係の内容を充実していってみたい、こう考えておるわけであります。ただしかし今日の厚生行政のきめ手と申しましょうか、これはなかなかどうも限られたことだけではないので、やはり総合的な施策によって押し進めていく、こういうことに尽きるのではないか、しかしそれならば大筋のものがあるだろう、こういう意味でのことでありますならば、やはりこの内閣の三十二年度予算にも盛られているように、国民皆保険というものが大きな重要施策であり、また結核と取っ組んでこの撲滅をはかっていこう、早期発見、早期治療という線で、さらにまたこのあたたかい面を低所得階層に及ぼしていきたい、こういつた施策が三十二年度予算には盛られている、これがこの内閣の性格を表わしているのだ、私はこういうふうに考えております。
○野澤委員 そうしますと、現内閣の方策は、大体三十二年度の予算に盛り込まれたもので見当はつくのです。
 そこで今度の新内閣の厚生大臣となられた大臣の立場から、今までの社会保障制度の理念といいますか、考え方を一応把握されて今後おいきになると思うのでありますが、どういうところを重点的に今後お取り上げになっていくか。たとえば考え方にしましても、社会保障制度の行き方は国々によって違うと思います。従って国自体の責任において社会保障制度を確立するという行き方と、それから国民自体の要望にこたえていかにこれをマッチさせるかという行き方と、もう一つは社会人としての相互契約に基くところの社会保障制度を確立するというような行き方もあると思います。これを混用したりあるいは取捨選択をされるという向きもありますが、一体日本の社会保障制度というものは、今どういう行き方をしなければならぬか、総合施策と言われますけれども、総合施策そのものの全体から見てどうももの足りない感じがする。そこで新大臣としてはどういう方向でいかれるか。非常に答弁しにくい問題点だと思いますが、一応お伺いしたいと思います。
○神田国務大臣 非常に広範にわたるようなお尋ねでございまして、短かくお答えすることはどうかと思いますが、詳しく申し上げますとまことにめどのつかないことに相なろうかと思うわけであります。
 今のお尋ねでございますが、私はやはり、日本の将来の先の先までということではないのでありますが、当面の社会保障というものはこの三十二年度に盛っているような具体的な総合的な面で一つ押し進めていく、どれを重くしどれを軽くするという段階ではないのではないか、もっと具体的に言えば、日本の社会状態から見ればまだ防貧とか救貧とかいうような面をもっと明るいところに持っていかなければならないのではないか、だからもっと予算をつぎ込む必要があるのではないか、今年度の予算が国の財政から考えて相当ふえたと言うっていることは、今までは非常に少かったのだということであって、今年度あたりから画期的なふえ方を今後ずっと続けていく、そういうことによって国民の貧富の差がだんだんついてきているのを是正していくようにして、みんなが明るい生活ができるようにしていく、こういうようなあり方に推し進めていく、これが私は厚生行政のこれからのほんとうの筋道を立てたやり方ではないか、こういうふうに考えております。
○野澤委員 その総合施策については、お説の通りだと思うのです。そこで今予算のお話が出ましたが、先ほどお尋ねしましたように、国の立場、国民の立場、社会人としての社会制度を生む相互契約といいますか、そうした三つの面から分析してこの社会保障制度というものは推進する必要があるのじゃないか、そうしまして、これを基本的に、たとえば国民の世論なり、社会の制度として新しく要望されるようなことを政府が取り上げて、一つの施策としてこれを法制化し、実施するという建前で今後いくのだと私は想像するのですが、そういう観点でいかれるのか、あるいはまた世論政治であるから、もう国民が熱望して陳情戦でも行われなければ、とうてい法制化できないという考え方なのか、大臣としての今後の厚生行政を扱う上においての基本的な考え方、これを第一にお尋ねしたわけであります。これについては別段今どうやるのだという御言明を願わなくてもけっこうですが、大体この三つの層から社会保障制度というものは分析していく必要があるのじゃないか。そこで問題になってきますのは、そうした経過からたどっていきますと、今もお話がありましたように、予算が中心になるということは当然であります。ところが日本の行政機関のうちで予算のぶんどり戦等がにぎやかに行われますが、この予算の獲得の状況を見ると、厚生省が一番弱い。それで今度は神田大臣ですから相当強心臓に、重点的に相当な予算を盛られて大成功だとわれわれもこれは喜んでおります。しかし反面日本の政治機構の貧弱さはこういうところにあると思うのです。そうしますと、厚生行政のみならず、一般の施策もその通りですが、一体日本の政治というもの、あるいは日本の行政というものは、政策が先で予算が裏づけされるものなのか、予算が先で政策が樹立されるのか、この辺に私は相当疑問の余地があると思う。この点に関して大臣はどういうようにお考えになりますか。
○神田国務大臣 私はやはり政策が生まれてその政策の線に沿った予算をつけていく、これが政治の行き方だと思います。
 それからその前にいろいろお述べになられましたが、厚生行政は一体声のあるところだけやるのか、声がなければやらぬのかというような意味のお尋ねがございましたが、これは私はやはり声のあるものについても理のあるところは考えていかなければなりませんが、むしろ声なき声は一つさらに取り上げて厚生行政を推し進めていく、これが必要だと考えております。
○野澤委員 ところでこの予算編成に対する従来の行き方というものは、各省から予算規模を提示して、大蔵省で査定する。しかも七月ごろにそういうものができ上って、十二月ごろにもうぶんどり合いを始める。そして大臣の試験場のように、まるで大臣が中心になってその省を代表して予算獲得をやる。これは政党政治であるからやむを得ないのだといえばそれまでですが、少くとも一国の予算編成の方針というものが打ち出されたならば、もう少し的確な予算の編成の仕方があるのじゃないか、同時に予算を請求したときからぶんどりに至るまでの間における厚生省当局の態度というものはきわめて弱体だと私は思うのです。つまり大きな柱を幾つも立てておきながら、国民には何ら知らせていない。そしていよいよ予算獲得の戦場に近づくと、国民皆保険というようなものを打ち出す、結核対策をするというようなことを打ち出してくる。またきょうあたりの新聞でも環境衛生の蚊とハエの運動を大々的にやるのだ、こういうふうにいよいよどたんばにいってにつちもさっちもいかなくなってから政策を打ち出してくる。厚生省のアドバルーンは、大体風が静まってしまってからアドバルーンを上げておるという現況だと私は思う。そこで新感覚を持った厚生大臣だといって滝井君がほめたのですが、ついでに私はあなたにお願いしておきますが、政策が先で予算の裏づけをとるのが建前ならば、そのような行き方をすべきじゃないか。また予算をぶんどってみなければ政策が立たないというならば、これもまたやむを得ないと思う。それでしかも重点施行しておるというが、どこに政策の重点があるのか、これは厚生省の予算要求の内容を調べてみれば、大臣としてもたとい前の大臣がやられたとしてもよくおわかりになると思う。どこがほんとうに重点施策かということの判定もせずに、とりやすい課目をとってしまった、とったからさあこれを具体化しようじゃないかということではいつまでたっても厚生行政というものは国の第一線に立つことはできない。厚生省が予算化について非常に弱体だと言われていることはこういうところにあると思いますが、この点に関して厚生大臣はどうお考えになっておりますか。
○神田国務大臣 厚生省が弱体であったということは、私新任で古いことはよくわからないのでありますが、外から見ておった感じで申し上げますと、敗戦後日本の置かれた地位が、他に早急やらなければならない面があった。そこで厚生行政が日が当らなかった――決して日を当らせないつもりはなかったんだが、やむを得ない面でできなかったことであって、むしろ厚生省におられる方々から見れば、何といいましょうか、非常に孤城を守ったという言葉は少し行き過ぎかもしれませんが、御不満もあり、またよくしんぼうされておったということじゃないかと思います。神武以来の景気だと言われておりますが、御承知のように貧富の差が相当ついておる今日におきまして、石橋内閣が厚生行政を重視して、そうしてここで思い切った施策をやろうと打ち出しましたことは、私は当然なことだと思う。
 そこでこの三十二年度予算の獲得でございますが、私は赴任早々で省内の事情も、また厚生関係の施策についても十分承知はできなかった。しかし結果から見まして相当予算がとれたということは、もちろんこれは石橋内閣の、また自由民主党のあと押しというか、施策が当を得たことは当然でございますが、厚生省の内部が一致団結して三十二年度予算の十分な獲得に努力したたまものじゃないか、こう考えておるのでございます。従いまして今度の予算は私は厚生省の主管と申しましょうか、厚生省設置法によりまする各事項についてのバランスのとれた予算が獲得できた――今予算委員会で審議願っておる予算案は、厚生省の主管事項としてそれぞれバランスのとれたものが一応獲得できた、こういうふうに考えておるのでございます。予算の獲得にいたしましても先ほども申し上げたように政策がやはりきまって、そうしてその政策に基いて予算が乗っていく、こういうことはどの省、どの政府においても当然だと思いますが、今度特にはっきり出たのではないか。この予算をとるにつきましては、特に社労の委員長初め委員の方々に非常に御支援願ったことが多いのでございまして、私はこの機会に皆様方に敬意を表するとともに厚くお礼を申し上げたいと思います。
○野澤委員 非常に満足すべき大臣の態度でおそれ入ったのですが、私は全然逆なのです。少くとも予算折衝の面で、社労の委員長や委員あるいは党の者が協力して予算を獲得したとか、大臣が辣腕家で予算をぶんどって、そして満足すべき状態にまでいったと誇りを持つような行き方というものは、政治的にいかぬじゃないかと私は思うのです。少くとも厚生行政というものは一つの施策を立てて、その政策に裏づけすべき財源というものは、いかなることがあっても削られないほどのしっかりした資料を持たなければいけないのじゃないか。それをずさんにもただ二千億請求しよう、千五百億円請求しよう、それが千億に削られたが、千百億出たんだというて喜ぶような行き方を繰り返しておったのでは、私は満足な厚生行政はできないのじゃないかと思う。従ってこの点についてはものの考え方でありますし、あなたと私の主観の相違ですから、これは議論の余地はないと思います。そこで先ほども御質問があったようでありますが、今回の国民皆保険の問題一つ取り上げてみましても、突然こうしたアドバルーンがふっと上ってくる。わずかの調査費が織り込まれる。そうすると社会党の方とすれば年次計画を出せ、きのうかおとといあたりの新聞にも八百五十万とかいうて年次計画が出ております。そういうふうな内容につきましても、一体厚生省自体がどれだけの準備と抱負経綸を持っておるかということがわれわれ自体にもわからない。わからないはずなのです。予算請求をするときには黙ってやっておって、いよいよとなったらアドバルーンを上げるという後手に回っておるのです。
 そこで大臣に第二に念を押しておきたいことは、少くとも進歩的な神田さんが大臣なのですから、これから予算編成時期までには、一応厚生行政の重点施策というものを序列をつけて発表さるべきじゃないか。そして国民の世論も問い、国会議員にもその内容を示すという親切心があってこそ、初めて大蔵省としても査定上困らないような審査の仕方ができるのじゃないか、こういう感じがいたします。それでもとれないという重点予算については大臣が骨を折るのは当りまえでしょう。しかしかいもく見当のつかない施策にふろしきをかぶせておいて、これは野菜ものなのか肉なのか見当がつかぬというような議論を百万べん繰り返しても、私は厚生行政は進展しないと思うのです。この点に対する大臣の決心を一つお伺いいたしたいと思います。
○神田国務大臣 厚生行政の進展は国民の協力を得ることが第一であると同時に、またこれを推進するということは、国会の御支持がなければとうていできないわけでありまして、今野澤委員のお述べになられましたことは私もまことに同感でございます。三十三年度の予算を具体化するような時期が参りまして、私さらにそこにおる限りにおきましては、ただいま野澤委員のお述べになられたような方法まことにけっこうでございまして、十分一つ念頭に置きまして善処いたしたい、かように考えております。
○野澤委員 第三点にお伺いしたいことは、ちょっと具体的な問題に入りますから大臣でなくてもけっこうであります。それで最後に大臣の御所見を伺いたいと思いますが、今まで厚生省が提案して新たに予算を獲得して実施した事項について、どの程度まで跡始末をしているかという問題であります。たとえて申し上げますと、この環境衛生方面では、蚊とハエの撲滅国民連動をやるということで相当多額の費用が計上されて、しかも今度の予算では十倍以上にふえております。国民としては非常に熱意を持って蚊とハエの撲滅をはかろうというので、町村としてもおそらく半数くらいはこの運動に参加しておる。ところが政府が実際にどうことを指導し、どういう成果を上げているかという報告は全然ないのです。これは一つの事例でありますが、環境衛生部長から、いやそれはこういうことを報告しておるんだということであればけっこうであります。
 また第二の問題点としては、多分薬務局長の所管になるだろうと思いますが、海外に派遣をいたしまして輸出振興の対策を講じております。これは昨年初めて香港に駐在員を配置したのでありますが、これらについても、配置された人まで私たちは知っております。しかしたとい三月でも半年でも、当然これは係官の方から、一応こうした成果については、予管編成時あるいは予管獲得運動の際に、明示すべき筋合いのものではないか、こういう感じがいたします。これは一つの具体的な例を申し上げたのでありますが、蚊とハエの対策なんかは、環境衛生部長から聞けば、三億五千万円くらいあったら満足なんだという個人的な話は聞いております。こういうことに対してせっかくよい政策を発表し、よい施策を公表して予算の麦づけをとっているが、役人は一体何をしておるのですか。そうしてその次の年には倍額の要求をし百倍の要求をしても、実際に配分された費用を見るとその十分の一にも満たない。昨年の予算から見ますれば十倍にふえているという現況でありますが、もう少し厚生省自体として、こういうことをはっきりと国民に認識させ、国会に反映させるというような方法がないかと思います。そういうことが今まで具体的に発表されておったということであれば別でありますが、なかったならば、部長さん、局長さんから一応御説明願いたいと思います。
○楠本説明員 ただいま御指摘のように、私ども国民の協力を得まして蚊とハエの駆除を実施して参りました以上、それらの成果につきましては、十分広く国民の御納得を得ることが必要でございます。実はかような点につきましては心がけてきて参ったつもりでございまするが、徹底を欠いた点につきましてはまことに遺憾に存じております。今後もこれらの点につきましては、よく国民の理解と納得を求めまして一そうその協力を得て進みたいと考えております。
 一言従来の実績を申し上げますと、三十一年の終りで、この蚊とハエの駆除に参加をいたしております国民の数は二千四百万人に達しております。これがそれぞれ地域社会において組織活動の運動として実施をいたしておりますが、その地域数は約一万八千に及んでおります。また一方これらの具体的成果につきましては、これらの二千四百万人参加の実績のうち、約三分の一は、ほとんど完成にまで近い成果をおさめて、すでに夏でもかやをつらないというところまで達しております。また一方これらの地域社会の運動につきましては、まずお互いに相協力してりっぽな地域社会を作っていこうという一つの社会教育的な意味がございまして、大きな地域組織、りっぱな地域社会を作っていこうという団結と申しましょうか、気持が自然のうちにわいて参っております。これは目に見えない大きな効果ではないかと考えております。なおそのほか私どもが実施いたしました地域につきまして調査をいたしました結果につきましては、疾病の減少が特に目立っております。これも単に伝染病に限らず、あらゆる内科的疾患の減少が目立っております。またこれに伴って乳児の死亡率等も著しく減少をいたしております。一方この仕事が広く生活と生産に結びついております関係から、生活改善の基盤となり、特に昨年来実施をいたしましたる新生活運動のうちでは、これが唯一の成果をおさめた仕事だと言われております。また生産面の結びつきにおきまして、特に畜産関係等につきましても、多大の効果を上げているやに聞いております。これらの点につきましては、今後一そう国民の理解を求めまして、運動の推進をはかって参りたいと存じます。
○森本政府委員 ただいま香港の輸出斡旋所につきまして、その実績について報告をしたことがあるか、あるいは実績はどうであるかという御質問がございました。これは御存じの通り本年度予算で初めて設けておるのでございまして、年度途中、すなわち昨年の八月に、現実に人を送りまして業務を開始したわけでございます。従いまして、公けに全般的な成績をまとめて報告あるいは発表したという段階までは実は至っておりません。しかし置きました実際の結果、現状はどうであるかということになりますと、一言に申して所期の目的を達しておると考えております。大体行きましてからまだ半年にも足らぬのでございますが、毎月あるいは週に一回とか、定時報告といっておりますが、それの現在の状況を見ますと、香港あるいは中共、東南アジアにおきますいわゆる医薬品の市場の調査、これが眼目でございます。どこの商品がいかなる価格でどの方面に入っておるか、またこれに対してわが国の医薬品は、どういうものをいかなる価格で持っていけば競争に耐え得るかというような見地から、効果を上げております。最初参りまして、これなら間違いないという結論を下し得る程度の資料は、私それを拝見しましてまだ自信はございませんが、ともかく従来わからなかったところが非常に明らかになった。およそもうしばらくいたしますれば、非常に有効な手が打てるのではなかろうかという自信を私自身も得つつございます。それらのことが基礎になりまして、今後の対策が確立するだろうと考えております。それから従来断片的な情報が香港等から入っておったのでございますが、右斡旋所を開設しました後の報告、調査の状況を見ますと、内容あるいは着眼において格段の差がある。ともかく何かいい手が打てるしっかりした材料が得られつつあるという印象を持っております。
 かような一般的な情報あるいは市場調査ということのほかに、個々の商社があそこに代理店等を持っておりません。それが個別的に照会したり、調査を依頼しておるという事例が相当ございます。これなんかきわめて身近に目先の利益を受けつつあるということが申せると思います。従いまして、近く派遣しております者が二月下旬くらいに帰ってきて、現在現地で確認しました状況等を持ち寄りまして、今後の対策をもう一度立て直そうというように打ち合せておりますが、ともかくまだできましてから半年足らずでございまして、たとえば具体的にどれだけの数輸出ができたか、あるいはどれだけ伸びたかという早急な結論を要求するのは無理かと思いまするが、とにかく大きなめどがつきつつあるので、近くそういうような成果も上るのじゃないか、かように思っております。非常に抽象的でございますが、現段階におきましては今の程度の状況でございます。
○野澤委員 もう一つ、二つ具体的な問題で、これは薬務局長、保険局長、医務局長にお尋ねしたいのですが、医師法、歯科医師法、薬事法の改正が行われて、いわゆる医薬分業というものが四月一日から実施された。前にもお尋ねしたことがあるのですが、一体その後処方せんの出工合といいますか、法律の趣旨が実際に制度上行われておるかどうか、この点について簡単でけっこうですから。またそういうことを調査しておるか、また調査ができているできていないにかかわらず、官公立の病院等に対しては、必ず処方せんを規則通りに出すべきだという指導をしたかどうか、こういう点についてお答えを願いたい。
 もう一つは、やはり薬務局関係ですが、薬業合理化補助金というものが年々出されておるけれども、これは実際にどういう成果があり、この補助金のためにどういうよい結果が生まれておるか、これについてもわれわれはほとんど解説を受けたことがありません。時間がありませんので要点だけでけっこうでありますから、簡単に御説明を願いたいと思います。
○森本政府委員 医薬分業実施の状況につきまして概況を御報告いたします。この実施状況につきましては、昨年の四月に医薬分業の新制度が実施された機会に調査をしたわけでございます。簡単に数字を申し上げますと、昨年の三月、すなわち医薬分業が実施されない月におきます一カ月の処方せんの出た数を調べたのでございます。それによりますと、約六千七百枚というのが実施前の出た処方せんの数でございます。それから四月にいよいよ広報宣伝等を行いまして実施をいたしたのでございますが、その数字が四月におきまして一万三千四百枚弱となっております。ともかく三月と四月と比較しますと、約倍になっておるという一つの数字があるのであります。その後全般的な調査をいたしておりませんが、社会保険関係につきましては支払い基金で整理者がありますので、それに基いて調べをいたしたのでございます。それによりますと、これも一例でございますが、社会保険関係だけで昭和三十一年の八月に約五千枚、それから十月で七千枚、十一月で七千六百枚という数字がございます。これは社会保険でございます。それを一般の自由診療を含めまして同じ伸びを考えますと、大体二万枚近くのものが十一月に出ておるのではないかと推定せられますので、処方せんの出方は、非常に緩慢ではございますが、ともかくふえてきておるという傾向は察知されます。
 これの対策につきましては、厚生省としましてだんだん進めて参りたいと思いますが、早急にといっても無理があってはいけませんので、ともかく少し気長にと申してはなんでございますが、地について国民並びに医療関係者の習い性となるというように持っていくべきではなかろうかと思います。今後考えなければなりませんのは、何と申しましても医療費体系と申しますか診療報酬の支払い方式、これが医薬分業と表裏の関係をなすわけでありますが、その点についての改正をしなければ処方せんが出ないだろうという問題が一つございます。これはただいま検討中でございます。それからわかり切ったことでございますが、医療機関におかれましても、あるいは薬剤師の関係におきましても、あるいはまた国民一般におきましても、新制度の趣旨をよく理解していくことを、絶えず、しかも大ざっぱな方法でなしに、じみちな具体的な方法でやっていくことが必要であると存じます。また近く再調査もいたしたり、所要の推進の手も打って参りたいと思っておりますが、一応そういうことで……。
 ついでに薬業合理化の補助金の実績についてのお話でございますが、これは二十八年から毎年、工業化の補助金につきまして約七件、応用研究につきまして約三件、この補助をいたしております額を合せまして毎月五百万ほどでございます。これの実績でございますが、一年ではこれは結果は出ておりません。ただいまのところでは昭和二十八年、二十九年の両方の合理化研究の結果が出て参っております。それによりますと二十八年度、二十九年度の工業化の件数が十三件ございます。その中で成功したものが六件、それからおおむね成功いたしましたがなお研究を要するものが六件、それからこれは研究をいたしましても不成功に終るだろうという見込みができたのが一件というようになっております。
 それから三十年、三十一年につきましてはいずれも研究を継続中でございます。たとえば成功しました六つのものについて一例を申し上げますとインシュリンの製造でございます。これは従来わが国が輸入をいたしておりましたが、この製法によりまして、最近におきましては過半にわが国の国内産でまかなうようになった例であります。あるいはトリコマイシンでございますとかロイコマイシンとかいうような新しい抗性物質が工業化されておる。それぞれ一億、二億円の生産をあげておるというような例もあります。その他注射筒でありますとかガンマーグロブリン、逆性石けんの製造というように相当な成績をあげておるということも申し上げておきます。
○小澤政府委員 医薬分業の趣旨の徹底をはかることは薬務局とともにわれわれの任務の重要な任務であると存じます。それでできるだけ多くの機会をとらえまして従来とも努力して参ったのでございますが、何せ多年の習慣を変えることでございますので、にわかに成果を上げていないことを残念に思います。幸いにしてただいま薬務局長から申し上げました通り、徐々ではありますがだんだん趣旨が浸透していくと考えております。なお今後とも薬務局と協力いたしまして一段と努力をして参りたいと存じます。
○高田(正)政府委員 医薬分業の関係につきましては、私どもの立場はむしろ受けて立つ方でございます。医務局、薬務局の方でその御趣旨の徹底をせっかくお願いを申し上げておるわけでございます。私どもの方といたしましては、いろいろな手続等につきまして年度の当初、これは若干おくれましておしかりを受けたのでありますが、改正等を加えまして受入れ態勢は持っておるつもりでございます。ただ、先ほど薬務局長のお答えいたしましたように、支払いの形式の問題が一応暫定方式ということにいっておりますが、これらがただいま根本的には御検討いただいておる最中でございます。この点が解決をいたしませんと、その普及につきましても保険の方におきましては相当伸びにくいのじゃないだろうか、こんなふうな考え方をいたしております。
○野澤委員 そこで大臣に総括してお尋ねしたいのですが、ただいま五つの問題点を具体的に拾ってみたのです。そうして、たとえば薬業の合理化資金の問題とか、あるいは海外駐在の問題とか、こうした新しい施策のものが次々と打ち出されて予算化され、しかも官僚によってこれが一応発足をしておるのですが、今お聞きの通りにきわめて私は監督がずさんだと思うのですね。たとえて申し上げますと、輸出振興のために駐在員を置いてまだ半年だから報告ができぬ、これでは厚生官僚として局長の立場ではきわめて手ぬるいと思うのです。なぜ手ぬるいかということは、大臣が今後厚生行政を統括される上においてお困りになると思うから申し上げるのだ。つまり半年の実施ではあっても、たとい一カ月でも二カ月でも具体的にこういう成果が上った、こういうことに苦心したその資料をもって予算折衝をするならば、今度の予算でも私は相当増額できたのじゃないか。ところが予算はかけっぱなし、しかも報告はおそらく毎月来ているのだと思いますが、その来ているものの統合を局長の方で、係の方でやっておらぬ。従って大臣のところまでその答申がいっておらぬ。分業問題にしてもその通りです。わざわざ三局長に聞いたということは――これは四月以降、六月の初めに一回聞いております。また臨時国会でも聞いております。そのときと一歩も前進しておらぬということです。具体的に、医務局長にしても保険局長にしても、どういう施策を講じたか、どういう対策を講じていくかということを私は質問している。ところが、従来も努力して参りましたが今後とも努力して参ります、薬務局長のお話を聞けば、習い性となるのを待っているというマンマンデーのお話です。それもけっこうでしょう、厚生省自体がそういう考え方で今後法律を運用されるならけっこうですが、少くとも保険局長に至ってはセクショナリズムもはなはだしい。要するに私の方は受けて立つ方だといって涼しい顔をしている。もともとこの法律が発案された当時は高田局長は薬務局長をしておられた、当面の責任者です。そうすると、保険の方で社会保険が今国民皆保険になろうという段階のときに、経済分業だ、技術分業だと叫ばれたあれだけの紛争のあとを引き受けて、ただ私の方では支払い形式を整えるだけが仕事なんだというセクショナリズムでは、厚生行政がどんなに予算をとったって満足なものはでき上らないと思う。従って、医務局長は機会あるごとに趣旨を徹底させるといいますが、どんな対策を講じたのだ、具体的にどんな説得をしたのだ、官公立病院に対してはどんな命令を出したのだ、こういう具体的なものを私ほお尋ねしたのですが、今お答えがないし、また重ねてお答えを得ようというのじゃございません。大臣に現在のこうした厚生行政のあり方について総括的に私が第三の質問点として申し上げたことは、一体大臣あるいは次官等ほかたくさんおりますが、そういう新しい費目等についてはすみやかにデータも出し、記録もし、また予算化する、半年くらいあとにはもう予算の折衝もしなければならぬのですから、そうしたことについてはもうセクショナリズムを排撃すべきだし、人的要素が、課が別になった、局が別になったといって責任回避でなしに、少くとも国民の血税によってこれだけの行政が行われていくのですから、日常綿密な周到な計画と実施経過と結末を見ることが必要じゃないか。この点に対して大臣は、同感であるから今後は十分監督をする御方針か、今まで通りにありきたりのまま、役人のやるままに放任しておくお考えであるか、ここのところをはっきりとお伺いしておきたいと思います。
○神田国務大臣 ただいま野澤委員の御留意になっておられます厚生行政のあり方につきましては、私もともにその感を深くいたしまして、今後そういうことは――万事万端大臣が事務を見るということはできるわけでもないし、またその必要はないと私は思いますが、いやしくも政治問題になりあるいは予算化したということであるならば、これが一体解決の方向に十分進んでおるかどうか、予算化されたものが、実際においてその予算化した趣旨に沿った用途に充てられて、しかもそれが成果をあげておるのかどうか、これは明年度の予算折衝にもまた重要な参考になるわけでございますから、その点につきましては十分留意いたしまして、行政能率の上ることに一つ努めて参りたい、かように考えております。
○野澤委員 今の大臣のお答えで満足ですが、ただ大臣は忙しくたくさんの業務を持っておられるので、なかなか監督が行き届かないと思いますが、国民の立場から考えますというと、少くとも予算編成当初において、勘定科目をきめて大きな筋を打ち立てたものについては、たとい忙しくても大臣は監督すべきではないか、また局長もこれに留意して、国民にしっかりした受け答えのできる態勢に持っていくべきではないか。こういう老婆心で、注射がどうの、予防接種がどうのという小さなことまで、大臣に御監督願いたいという意味じゃありません。たとえて申しますというと、輸出振興対策などというものを、ちゃんと番号を十四とつけて、これは通産省の方に計上をされてあるがというので、カッコをつけて五百万からの予算を組んでおる。こういう大筋のものだけは、少くとも政治行政を担当する大臣の立場としては、監督の責任が生まれてくるんじゃないかという意味で申し上げたのでありますから、その点ぜひ御了承を願いたい。
 最後に、時間がありませんので一点だけお尋ねしますが、第一点から三点まで柱を立てて参りまして最後にお尋ねしたいことは、この社会保障制度の確立という面から考えますと、先ほど申し上げました通りに、弱者が一体に拾われている。疾病治療を目的にして、いわゆる医療保障を確立するとか、あるいは防貧対策をするとかいうので、非常にこうした貧しい者、弱々しい、痛たしい者に対する施策、あるいは婦人とか児童、こういうふうな面に対する施策というものは、かなり積極的にやられておる。ところが戦後十一年もたっているんですから、自民党自体としても重要政策だというて、内閣をバック・アップしながら今度の内閣が重要施策の一つに社会保障制度というものを打ち出した。そうしますと今日の時代において、大臣自体が過去の経歴と現実の問題点とを把握して、一体今後の日本の社会保障制度というものは、労働意欲を増強さして労働者の体位向上をはかり、健康保持をするという目的で、今後社会保障制度というものを中心に伸ばしていくのか、国民皆保険を打ち出している重要施策という面から見ると、やはり人道的な倫理観から出発して、弱き者、貧しき者、痛々しき者を救おうという考えで今後対策を講じていくのか、これはもうこの前の前の大臣にもお尋ねしたのですが、はっきりしませんでした。つまり厚生行政の対象というものは、常に弱者が拾われている。そこで労働意欲を充実するというような労働立法を中心にした社会保障制度を充実していくのか、それとも一般国民大衆を総括的に救っていこうという考え方でいくのか、その基本的な考え方についてもう一度お尋ねをいたしたいと思います。
○神田国務大臣 今の野津委員のお尋ね、端的に申し上げますれば、これは国民全体の問題でありまして、もうすでに今日の時世においては、防貧であるとか救貧であるとか、あるいはまた労働大衆のためだけをはかってやるというような行政であってはならぬと思います。やはり国民のすべてが明るく楽しい生活を享受するのだ、こういうような考え方で厚生行政というものを押し進めていくという考え方であろうと思います。
○野澤委員 よくわかりましたが、そこで社会福祉対策あるいはその全般の国民対策として、いろいろなものを打ち出されておりますし、生活困窮者等に対する対策等もよくわかるのですが、それでは現段階として、現実の問題点として、こういう点を大臣はどう考えられるか。つまり社会保険が高度に発達してきましても、医療保障等の面は非常に進んで参ります。また生活扶助等の問題点も相当進んで参ります。新聞にあります通りに、質屋が成立できなくなって、今夜逃げをしなければならぬというような状態ができているということは、これは私は景気がいい、悪いじゃなしに、もう生活扶助というものが相当行き渡ってきたから、ああいう事態が生まれてくるのじゃないかと思う。最低生活するのに満足し得る状態にまでやや近づいてきている、こういう感じがします。そこで困窮者とか弱者とかいうものを除いて、健康な者に対する厚生当局の、いわゆる社会保障制度的な考え方の何か施策があるかないか、またこういう方面についてお考えをする気持があるかどうか、この点についてお尋ねいたします。
○神田国務大臣 これは、私はやはり国力の問題じゃないかと思います。現段階において、今の国情下においては、今やっている程度でやむを得ない。しかし国力の上昇に伴って、そして逐次より以上に社会保障を進めていく、あるいは、時には国力を若干上回るようなことがあってもやるべきことはやっていく、こういうことが今後の社会保障のあり方じゃないかと私は思う。しかし国力の度を越えるということになると、結果はかえって災いをなしますから、おのずからそこに限界がある、こういうふうに考えております。
○野澤委員 ちょうど思うつぼに入ってきたのですが、私は予算を食うものばかりが政策じゃないと思う。対策じゃないと思う。それでお尋ねしたことは、健康な労働者や健康な国民が、社会保険等が高度に発達してきても何らその恩恵に浴しない、十年も十五年も医者にもかからないという人たちに対する施策を、もうそろそろ打ち出してきてもいい時期じゃないかという質問を申し上げている。そこで、たとえて申し上げますと、厚生省所管である温泉行政であります。日本は温泉地というものを大体歓楽地にしておりますが、しかし諸外国の例を見ますと、健康な労働者の保養地になっている。そして現在も各地へ行ってみますと、大会社が厚生施設として、よく働く、また無欠勤だというような夫婦を、一カ月なら一カ月、二十日なら二十日そこに保養に出すというようなことも、すでに民間で始められている。こういう問題について、私は少くとも現実の問題点として厚生省あたりで、この温泉行政等についての施策が生まれてこなければならぬのじゃないかと思う。同時にこういうものを検討していきますと、この施設も、あるいは旅館経営等の実態から見ても、公的な性格を持った保養地の発展というようなことも、今後の労働対策なりあるいは国民の保健対策なりには必要じゃないか。つまり健康な者が激務のために不健康な状態に落ちないような施策を講ずることが、社会保障制度の一環としてやはり考えらるべきじゃないか。こういう意味でありまして、もし金がないから、国力に沿わないからできないというならこれは別でありますが、現在の温泉行政の実態を見ますと、もうめちゃくちゃに温泉を掘る、掘ったために温度が下り、量が少くなって、もうどこへいっても権益の争いばかりであります。こういうものについても、新大臣が新感覚によって、大した費用も要らないのだから、一つ検討を加えてみようというなら大へんけっこうだと思う。また同じ経費のかからない方法といえば、今やかましく言われている温泉地の環境衛生にしましても、あるいは保養施設の改善にいたしましても、掘っている源泉に対して課税するというようなことを考えている向きもあります。またこれを目的税として温泉地の設備の改善ということも考えられている人もある。こういうことでありますから、実態として決して私は架空なものじゃないと思う。こういう問題をいち早く――これは一つの例に過ぎませんが、健康者に対する社会保障の考え方としては、たとえば温泉保養地というようなアドバルーンを早く上げられて、そうして七月、十月、十二月というように流れていく際に、そのアドバルーンが時代おくれにならないように、早くからこういうものを幾つか上げて、今後の厚生行政の進むべき道をはっきりされることが必要なんじゃないか。これは最初から三つの問題点を御質問申し上げました締めくくりとしてお願いするのですが、どうか伏せておかずに、いい施策は早く発表する。そしてそのアドバルーンを見た国民や国会等が十分検討できる態勢に持っていく。そしてそれが成案を得たならば、どんなことをしてもその裏づけの予算をとるんだという考え方で今後進んでいただけば大へんけっこうだと存じます。最後のお願いでありますが、どうかそうした重要な施策に対して十分検討される御意思があるかどうか、また着手してこういうものを逐次まとめていくという考えがあるか、また健康体の者に対してはその他の施策でもなるべく研究するというお考えであるかどうか、この点御質問をいたしまして、そのお答えによって私の質問を終りたいと存じます。
○神田国務大臣 ただいま野澤委員のお尋ねになりました健康な国民大衆のいわゆる健康な場所というものを作ることに厚生行政が努力すべきではないか、そういう方面に一つ大いにやるべしという御意見につきましては、私も全く思いを同じゅうするものでございます。例に述べられましたように、わが国は温泉地帯が非常に豊富であり、また景色もきわめてよい環境にあるのが多いのでございまして、これらの地域等におきまして勤労大衆、健康な国民が疲労を回復するとか、あるいは進んでレクリェーションをするというような機会をできるだけ与えるような努力につきましては、まことに同感であります。三十二年度の予算等におきましても、国立公園あるいは国定公園等の予算を新規に計上することに努めましたこともその現われでございます。なおまた厚生年金還元融資の資金にいたしましても、従来労務者住宅とか病院というような限られた面だけの融資ということになっておったのでございますが、三十二年度からは一つもっとその用途を広げたい、金額も昨年より二十億ふやしまして、今年は七十五億ということに相なっておりまして、勤労大衆あるいは国民大衆のレクリエーション等に役立つあるいはスポーツ・センターと申しましょうか、そういった面まで拡充していきたいということで大蔵当局にもその旨申し入れまして、還元融資の用途については相当積極的な面を一つ開こう、こういう了解をもつけてございます。まことに同感のことでございまして、今後十分意を用いて参りたいと思います。
○野澤委員 けっこうです。
    ―――――――――――――
○藤本委員長 この際お諮りいたします。岡良一君及び滝井義高君より理事辞任の申し出がございましたが、これを許可するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。
 つきましては、現在私が委員長に就任いたしましたこと及び委員の異動に伴いまして生じました理事の欠員を合せまして、理事に四名の欠員が生じておりますので、その補欠選任を行わねばなりませんが、委員長より指名するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○藤本委員長 御異議なしと認めます。よって
   大橋 武夫君  亀山 孝一君 
   八木 一男君  吉川兼光君を理事に指名いたします。よろしくお願いいたします。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後五時十五分散会