第026回国会 法務委員会 第7号
昭和三十二年二月二十二日(金曜日)
    午前十一時十三分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君
   理事 長井  源君 理事 横井 太郎君
   理事 菊地養之輔君
      小林かなえ君    世耕 弘一君
      高橋 禎一君    馬場 元治君
      花村 四郎君    林   博君
      松永  東君    山口 好一君
      横川 重次君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
 出席政府委員
        警察庁長官   石井 榮三君
        検     事
        (大臣官房経理
        部長)     竹内 壽平君
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
 委員外の出席者
        検     事
        (大臣官房経理
        部主計課長)  羽山 忠弘君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      関根 小郷君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局総
        務課長)    海部 安昌君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局経理局
        長)      岸上 康夫君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局経理局主
        計課長)    上野  宏君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
二月二十一日
 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する
 法律案(内閣提出第三五号)
同 日
 鹿児島地方法務局大口出張所移転改築等に関す
 る請願(池田清志君紹介)(第一一〇〇号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する
 法律案(内閣提出第三五号)
 法務行政に関する件
 裁判所の司法行政に関する件
    ―――――――――――――
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 昨日付託になりました滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案を議題とし、政府当局より提案理由の説明を聴取することといたします。中村法務大臣。
○中村国務大臣 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案について提案の理由を御説明いたします。
 現行制度のもとにおきましては、同一の財産に対しては滞納処分と強制執行または競売との手続を重複して行うことは許されないというのが従来の一般の解釈とされておりまして、そういう取扱いになっておりますが、しかしながら、一方の手続が開始されるとその財産について他方の手続が行い得ないということは、いろいろな不合理な結果を生ずる場合があるのであります。すなわち、従来は、滞納処分が先に行われた場合には一般の債権者は滞納処分による差し押えの解除を待って強制執行を始めるほかはないのでありますが、目的たる財産が滞納処分により差し押えられたまま長期にわたり放置されるときは、その間強制執行または競売による権利の実行ができないばかりでなく、差し押え解除後目的財産が直ちに他に譲渡されると、もはやその財産を差し押えることができなくなるのであります。また、強制執行または競売の手続が先に行われました場合には、租税その他の公課は、競売の売得金から交付を受けることができまして、しかも原則として私債権に優先して満足を得られますから、この点では私債権に比して有利な地位にあるのでありますが、強制執行等の手続が財産の換価を見ないで終了した場合には、直ちに滞納処分による差し押えをしないと、目的財産の譲渡によって、その効を奏しないおそれもあるわけであります。従いまして、右に述べましたような不都合を除くため、動産、不動産、船舶等に対し滞納処分と強制執行等との手続を重複して行うことができることといたしますとともに、両者が競合した場合の手続の調整をはかるため、何らかの立法措置を講ずることが、かねて各方面から強く要望されてきたのであります。政府におきましても、その具体的方策につきまして法制審議会の意見を徴しましたほか、租税徴収制度調査会に諮問して調査研究して参りましたが、このほど成案を得るに至りましたので、ここにこの法律案を提出いたした次第であります。
 この法律案の要点は次に述べる四つの点にございます。
 第一は、民事訴訟法により強制執行をすることができる有体動産、不動産または登記される船舶に対しては、先に滞納処分が行われていても、さらに強制執行または仮差し押えの執行をすることができることといたしまして、強制執行等が重ねて行われた場合の手続の調整措置を次のように定めたことであります。まず、後に行われた強制執行による財産の売却のための手続は、原則として滞納処分による差し押えが解除された場合に限り行うことができることといたしました。次に、滞納処分による差し押えを解除すべき場合には、収税官吏等は、その占有する有体動産を後に強制執行等をした執行更に引き渡さなければならないこととし、さらに、滞納処分による売却代金について滞納者に交付すべき残余は、これを後に強制執行等をした裁判所または執行吏に交付し、裁判所または執行吏は、その交付を受けた金銭について競売による売得金の処置と同じ取扱いをすることといたしたのであります。
 第二は、すでに強制執行が行われております有体動産、不動産または登記される船舶に対しても、さらに滞納処分を行うことができることとし、滞納処分が先行する場合の措置と対応して、後に行われた滞納処分による売却手続を制限するとともに、強制執行による差し押えを解除すべき場合には、執行吏は有体動産を収税官吏等に引き渡すべき義務を負うことを定めたことであります。なお、仮差し押えの執行後に滞納処分が行われた場合につきましても、仮差し押えの性質に反しない限り、滞納処分後に強制執行が行われた場合と同様の取扱いをすることといたしました。
 第三は、滞納処分と強制執行とが競合した場合に、換価手続の促進をはかる措置を講じたことであります。すなわち、執行裁判所は、先に行われた滞納処分の手続が法令の規定またはこれに基く処分によって進行しない場合等において、相当と認めるときは、差し押え債権者等の申請によりまして強制執行を続行する旨の裁判をすることといたしました。また、これに対応して、執行裁判所は、先に行われた強制執行の手続が中止または停止された場合にも、相当と認めるときは、収税官吏等の請求によって滞納処分の続行を承認する旨の裁判をすることといたしました。
 第四は、滞納処分と競売法による不動産または船舶の競売との競合及びこれらの手続の促進につきましても、滞納処分と強制執行との手続の調整措置に準じてこれを取り扱うことといたしたことであります。
 以上がこの法律案の提案理由の大要でございます。
 なお、御質疑等に応じまして逐次必要な御説明を申し上げて参りたいと思いますが、何とぞすみやかに御審議の上議決を願いたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
○三田村委員長 次に補足説明を求めます。村上民事局長。
○村上(朝)政府委員 この法律案は、第三章から第四章までに分れておりますが、第一章総則といたしまして、第一条に、この法律が民事訴訟法、競売法及び国税徴収法の特例をなすものであることを規定しております。第二条におきまして定義規定を設けております。この第二条に関連いたしまして、特に申し上げておかなければなりませんのは、この法律による調整の対象として取上げておりますのは、現実に調整の必要が特に強い財産について規定するという趣旨におきまして、不動産と船舶及び有体動産のうち民事訴訟法の有体動産に対する執行手続によって執行の行われるものだけに限ったのでございます。従いまして、自動車抵当法による自動車、航空機抵当法による航空機、あるいは建設機械抵当法による建設機械等につきましては調整の対象からはずされておるのでございます。なお、債権その他の財産権に対する執行についても、特に調整の規定を設けてありません。
 次に、第二章でございますが、第二章は、滞納処分が先に行われまして、その後に強制執行または競売法による競売の手続が行われるときの規定でございます。その中で、第一節といたしまして、有体動産についてまず滞納処分が行われ、後に強制執行の行われる場合、第二節といたしまして、不動産または船舶に対してまず滞納処分があって後に強制執行をする場合の規定を設けております。
 第三章は、強制執行または競売法による競売の手続が先に行われまして、後に滞納処分が行われるときの規定を置いております。そのうち、第一節が有体動産を対象とする場合、第二節が不動産または船舶を対象とする場合というふうに分けて規定いたしております。
 それから、第四章は雑則でございまして、実施のための施行規則を政令及び最高裁判所規則に基く趣旨の規定を掲げております。
 なお、附則におきまして、この法律の施行期日を本年十月一日からということに定めておりますが、これは、この法律が成立いたしまして数カ月間は、収税官更及び執行裁判所、執行史等に趣旨を徹底させるための期間が必要だと考えられますので、施行期日を十月一日と定めたわけであります。
 なお、各条の詳細な説明は逐条説明としてお配りしてございますので、それによって御承知を願いたいと思います。
○三田村委員長 以上で補足説明は終りました。
 本法律案に対する質疑は次回に譲ることといたします。
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○三田村委員長 次に法務行政に関し調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。池田清志君。
○池田(清)委員 先日の当法務委員会におきまして、中村法務大臣はその経倫の一端をお示しになり、特に人権の尊重、事件処理の迅速化、綱紀の粛正、治安の維持ということにつきまして力説をせられ、中村法務大臣といたしましての法務行政施行の根本的方針をお示しになりましたのでありますが、これは私の最も同感とするところでありまして、願わくは、中村大臣におかれましては、その根本方針に基きまして、法務行政を強く正しく積極的に御推進あらんことをお願いを申し上げておく次第であります。
 私はこの際数項につきまして簡潔に具体的に問題を取り上げてお尋ねをいたします。
 その第一点は、法務行政及び司法の重要性と、その尊重についてであります。申すまでもなく、すべての国民は個人として尊重せられなければなりません。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で最大の尊重を必要といたしますことは、日本国憲法第十三条に規定されておるところでありまして、詳しく申し上げるまでもないのであります。こういう方針に基いて、基本的人権といたしまして、日本国憲法はその第三章に詳しく規定をいたしておる次第であります。個人が基本的の人権を皆ひとしく持っておりますことを明らかにいたしておるのでありまして、この基本的人権こそは、個人々々がお互いに他の人の基本的人権を尊重いたすべきはもちろんといたしまして、国自体におきましても、この基本的人権の尊重は、どこまでもこれを進めていかなければならないということに相なっておる次第であります。国といたしましては、こういうような基本的人権を持っております国民の集まりであります。ですから、個人おのおのが自己の基本的人権を強調するばかりでありますと、個人と個人との間にいわる不祥事と申しましょうか、不調和と申しましょうか、そういう事態が発生することも予想されます。また、個人すなわち国民と国家との間におきましても、基本的人権を尊重しなければなりませんが、そればかりを尊重するということになりますと、国家の目的が達せられないという場面に逢着することも予想せられるのであります。そこで、国といたしましては、個人と個人との間の基本的人権についての衝突がないように、そしてまた、国家と個人、国民との間の衝突がないようにということを基本といたしまして、いわゆる秩序維持について努力をいたしております。その秩序を維持する方法といたしましては、いわゆる法律をもってこれを明らかにし、これを規制をいたしておるのであります。つまり、個人と個人との間の秩序維持、国家と個人との間の秩序を維持いたしますために法律を制定し、法律の力によって調和をはかろうというのがわが国の行き方であり、すべての国の法治国の行き方であろうと思うのであります。こういう観点に立ちます際におきまして、この法律による秩序を維持するということがありませんと、国民の間にいさかいが生じましたり、国家と国民との間に問題が起きたりすのでありますが、そういうことがないように、いわゆる法律による秩序を維持するということは、国の生存上最も大事なことであると思うのであります。ここにおきまして、国といたしましては、法律による秩序を維持するということは、その国の国政の上で最も大事な事柄であると思う次第であります。そして、国の国政の分化上、この重大なる国家の任務を実行いたしますものは、わが国の現在の分れ方におきましては、法務行政であり司法であるわけであります。政府におかれましては、こういう根本的な重要性について十分認識をせられており、そしてまた、そのことを担当しております法務当局及び司法機関において、みずからその重要性を認識して進んでおられることは申すまでもないと思います。しかしながら、世の中において現われておる事柄から考えますと、ときとして法務行政や司法が置き去りにされておるような傾向がありますことを遺憾といたします。たとえて申しますと、予算の編成におきまして、果して政府はこの法務省及び最高裁判所の予算についてどれだけその重要性を認識し、それを実行に移したかということについては、まことに私は遺憾と思う次第なのであります。法務当局や最高裁判所当局においては、みずからの任務の重要性を認識せられまして、予算編成に当って十分の努力をせられたということは私は認めます。しかしながら、政府自体として、これらの機関に対する予算の配分において必ずしもその重要性を表わしておるという結果が現われていないことを私は遺憾に思うのであります。
 抽象的なお尋ねでありますが、この際中村法務大臣にお尋ねをいたしますことは、法務行政及び司法の重要性についてであり、そうして、その重要性を実行いたしますために、予算編成等においてさらにその重要性が実現するような予算編成にならなければならないと思うのでありますが、これらについての対策、所見、抱負、そういうものについてこの際お示しをいただきたいと思います。
○中村国務大臣 池田さんから非常に適切な、いろいろな角度からの御意見を拝聴いたしました。池田さんの述べられましたことは、ことごとく私どもとしては全く同感でございます。ことに力強い御鞭撻をいただきまして、この点深く感謝をいたす次第でございます。
 お説の通り、法秩序の維持ということは、法治国家として最も基本的な問題でございますと同時に、半面において、個人の人権を尊重する、その個人の人権尊重がしかも調和がとれていかなければならぬ、こういう点まことにごもっともでございます。ただ、法務省の予算が、非常に仕事自体地味な事柄でございますので、おそらく、今年度だけでなくて毎年度、予算編成に際しましては、予算を査定いたしまする大蔵当局の理解を十分に得ることがなかなか至難な点がございまして、意のごとくに参らないことは御指摘の通りでございます。大体昭和三十一年度の法務省の予算は約二百十億でございましたが、今年約二百三十一億ほどに相なりました。そのうち、公務員の人事院勧告を政府としてこの際実現に移そうという公務員のベース・アップに関連をいたしますものが十三、四億ございまして、その他が法務省予算として今回増額をされました分でございますが、この程度をもっていたしましては非常に運営に困難を感ずる点もございますが、法務行政の重要性にかんがみまして、与えられた予算の範囲内において最も適切に法秩序の維持と人権の尊重のために所要の行政を運行して参りたい、かように考えます。ことに、先般も申しましたように、今日の刑罰制度の上から見まして、保護行政の重要性、人権擁護の重要性、これらは私どもも最も力説をいたした点でございましたが、保護にいたしましても、人権擁護関係にいたしましても、予算増額がきわめて少かったのでございます。幸い、人権擁護関係におきましては全国に多数の人権擁護委員の方々がおられ、保護につきましては保護司の方々がおられて、非常に奉仕的に――奉仕にのみたよることはよろしくないことでございますが、非常に熱心に奉仕していただいておりますので、これらによりまして万全を期して参りたい、かように存じておる次第でございます。
○池田(清)委員 三権分立の日本の憲法のもとにおきまして、司法が立法、行政両権に対し対等独立の分野にありますことは御承知の通りであります。先刻来申し上げておりますように、司法はいわゆる法秩序を維持する最後のものであると思います。国民といたしまして信頼するものがなくなった最後のものはこの裁判であると思うのであります。近来はこの司面の手によって公正なる判断を求める傾向も多くなって参っておるのでありますが、現在の日本の内閣制度から申しますと、司法関係は担当の大臣を内閣に持っておりません、そういうことは三権分立から実現されておることだと思いますけれども、たとえば、先ほど来論じております予算の編成等におきまして、裁判所当局の主張を閣内に反映する筋がないのであります。便宜上法務大臣がこれを担当してやっていただいております。それによりまして相当の効果を上げておるのは事実でありますけれども、最高裁判所の御意見といたしまして、予算編成についての御苦労の仕方、あるいはその重要性を実現するために予算獲得になお努力をしなければならぬ点、そしてまたこれがために制度を改むべき主張等がありますならば、そのことをこの際お尋ねをいたしておきます。
○岸上最高裁判所説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、予算の編成について、裁判所が閣議に列席する者を持たないことから、予算の編成上不利ではないかという点でございますが、私どもといたしまして一般的に考えておりますことも、ただいま仰せの点は同感でございまして、裁判所関係の予算について閣議で決定される場合に、裁判所の利益を直接に主張するメンバーの方が列席してないということは、いろいろの面で不利であろうというふうに考えております。事実問題といたしましては事務的に大蔵当局と折衝いたしておりまして、大蔵当局もそういう点はもちろんある程度理解をしてくれておることとは存じますが、やはり、何といいましても、重要事項について最終決定の段階において、その裁判所の主張が内閣に反映することが薄いのじゃないかということを心配いたしておる次第でございます。これはいろいろな点から問題はあることと存じますが、将来の問題として、裁判所側といたしましても、どういうふうにしたらいいかという点は大いに研究もいたしたいというふうに存じております。
○池田(清)委員 第二点のお尋ねといたしましては、法務当局及び司法の関係において、事務量の増加と人員と予算との関係であります。たとえば、民事の事件のごとく、あるいはまた刑事の事件のごとく、だんだん増加する傾向にあると伺っております。増加することでありますならば、これをさばきますところの裁判官あるいはまた検事こういう者の数が事務量の増加に応じて増加していかなければならない理屈であります。実際に伺いますと、その辺のことが必ずしもそうなっていないということをお伺いするのでありますが、私がこの際お尋ねを申し上げますことは、いわゆる民事、刑事の事件の数と、これに要する裁判官、検事、及びそれらに必要なると申しますか、過去における予算の関係について、統計的な説明をお願い申し上げます。この際、御説明しにくい点もありましょうし、数字の点もありますから、その数字的なところは後日資料として御提出をお願いします。
○中村国務大臣 数字の点は政府委員から後刻答弁をしていただきますが、大体、大局的に申しまして、お話のように、人権の尊重、個人の権利というものが普及徹底をいたしますにつれて、訴訟事件というものがふえるのが自然の社会傾向だと思うのであります。さような関係で、事件の件数は、民事、刑事事件ともにふえつつあるのであります。刑事事件は次第に減らしていくのが必要でありまして、ただ、近来交通関係の事件等が非常に件数が多くなったものですから、統計上件数はふえておりますが、本質的な刑事事件としては横ばいの状態にあるかと思います。しかしながら、民事の事件等も次第に増加いたしておるのでございまして、これらの点から申しますと、裁判所側の裁判官及び検察側の検事、これに伴う行刑関係等必要な人員の増加が事件の件数に伴ってふえていくのが通常でございますが、政府全体といたしましては、行政整理の関係等もございまして、人員増はしないという全体の建前をとっておりますために、法務関係あるいは司法関係のみに増員を認めますことは、他にまた波及する点もあり、ほかが押え切れない事情も起きて参りますので、なかなか増員の承認が得られない、こういう状態にございます。のみならず、さきに行われました行政整理等の場合には各省庁とも二割なら二割減という一つの基準ができる、その基準を実施するという段になりますと、これは一つの省だけが事情があるから絶対に譲れぬということでがんばりますと行政整理全体がくずれる危険がありますので、そういうことのために行政整理にも余儀なくいろいろな工夫と努力をしながら進行して参りました過去もございますので、それらとの関係上、実際の上においては人員増の必要性も、省内におきましても、また裁判所におかれましてもかなり叫ばれておるのでございますが、なかなか実現困難な実情にございます。しかしながら、われわれといたしましては、現在与えられておる人員をもちまして、できるだけ円滑にしてかつ適切なすべての処理をはかっていきたい、かような努力を続けておるような次第であります。
○池田(清)委員 ただいま中村法務大臣から、事務量は増加する傾向にある、これを処理する職員の数の増加は事務量の増加に必ずしも一致しない、それは行政整理等のためにほかの省とのつり合い等もあるというようなお話でありまして、部内で大へん御苦労をいただいておることをお察し申し上げるのであります。事務量は増加する傾向にあり、これを処理する職員はこれに伴わないということでありますというと、一職員の担当事務量は年々歳々増加していく、こういうことが言えるわけです。そういたしますと、その職員の方々は、その増加する事務量を処理するために、みずから教養をして能率を上げるというようなことにも努力していただいておると思います。法務当局あるいは裁判所当局におきまして、検事及び裁判官、こういうものにつきましては、右のような事情でありますから、一人当りの能率を上げるために特別の教養をしていただかなくちゃならないことがうかがわれます。実際その教養について深い努力をしていただいておると思うのでありますが、どういうことをやって検事、裁判官等の職員の教養をしていただいておるかをお示しいただきたいと思います。
○中村国務大臣 いずれも近来特に研修に努力をいたしまして、取り扱うべき職務の適正な合理的な処理をするために、研修に今非常に努力をしてやっております。なお、判検事は別といたしまして、事務を処理いたしまする事務関係につきましては、事務の機械化と言っては大げさになるかもしれませんが、今まで一々書いておりました記録をタイプライターに置きかえるとか、機械化をはかりまして、そういうような方法によって人員の不足を補って、少い人員でも十分の能率を果せるような方向を作り出すことに今最善の努力をいたしておりまして、かなり実績を上げつつある状態でございます。
○池田(清)委員 検事あるいは裁判官が取り扱いまする事柄は、個人々々の基本的人権であります。その取扱いいかんによりましては、その個人的基本的の人権が侵害されるおそれなしといたしません。新聞等に散見するのでありますが、捜査、検挙におきまして真犯人でないほかの人を逮捕いたしましたり、あるいはまた判決におきまして誤まった判決をする等の事柄を、ときとして新聞紙上等で見るのであります。教養をやっていただいておるにかかわりませず、そういうことがあって基本的人権の侵害の憂いが絶無でないということは、まことに残念に思う次第です。なお今後におかれましてもこの教養につきましては特段の努力をお願いを申し上げます。
 そこで、私、具体的にお尋ねを申し上げてみたいのは、終戦の後におきまして検事及び裁判官につきまして簡易なる任用の制度が行われておりますことは御承知の通りであります。それまでは検事、判事というような方々は厳格なる資格要件を必要といたしておったものでありますが、終戦後におきましては、副検事の制度があり、簡易裁判所判事の任用の制度は簡潔になった。昭和二十三年、法律第二六〇号というようなもの等によりまして、裁判官の任用資格が緩和されておる関係にあります。こういうような関係は、人員を二時に必要とするために行われたものであるとは思いますが、今日から考えますというと、こういう方々が誤まった事務の執行をせられるとは思いませんけれども、先般裁判官弾劾裁判所で判決を受けましたところの高井裁判官のごときは、そういう簡易の資格任用によっての裁判官であったと伺うわけです、こういうような事例等をも勘案してみると、判事、検事というような方々については厳格なる登用制度のもとにおいて行わるべきである、こう思うのです、ここにおきまして、端的にお尋ねいたしますることは、副検事の制度や簡易裁判所判事の任用の制度、こういうような簡易なる任用制度を廃止するの意思なきやいなや、こういうことであります。
○中村国務大臣 判事に関することは裁判所側からお答えを願うことにいたします。
 副検事につきましては、いろいろ世間から御批判をこうむっておりまして、われわれとしても十分この点は研究しておるのでございますが、副検事の制度ができました当座は、いろいろ警察関係等から副検事を多数採用いたしましたり、あるいは書記官の中から採用いたしました。さような関係で、検察に十分の経験と知識を持たない者もあったと思うのでありますが、その後、先ほども申し上げましたように、一定の期間研修所へ入れまして、そうして研修をできるだけ綿密にやっていくということに努力いたしておりますことと、一面、なるほど副検事という制度をこれ以上広げたりあるいは拡張していくということは好ましくないのでありまして、現在では、できるだけ副検事はもうふやさない、ただ、現在おる副検事をできるだけ教養を高めまして、研修を十分に整えて、そうして手続上取扱い上遺憾の点のないようにしていきたい、かような努力をいたしておりまする次第で、今直ちにこれを廃止するといいましても、検察官の任用には司法官試験を通り一定の期間の修習を経た者でなければ採用資格がございませんから、検察官を直ちに増員をしてこの制度を改めるというわけにもなかなか参りませんので、とにかく、さしあたりできるだけ副検事の増員を差し控えるということ、現在おります副検事に十分の教養を与える、この点に重点を置いて努力をいたしておるような次第でございます。
○関根最高裁判所説明員 今池田委員からお話の簡易裁判所の判事の問題でございますが、これは、実は、裁判所法ができました当時新しく簡易裁判所ができまして、これが五百以上全国に設置されました。しかも、この簡易裁判所の手続は非常に簡単で、外国の例をとりますと、いわゆる治安裁判所、ジャスティス・オブ・ピース、こういったしろうと裁判官が関与してもいいといった趣旨の裁判所を作る、しかもこれは警察署単位ぐらいに置いて、従前の裁判所とは違った意味の簡易な裁判所で、手続も簡易化してやっていこうという趣旨ででき上りまして、それに伴いまして、裁判官もどちらかと申しますとしろうと裁判官と申しますか、非常に常識の豊かな裁判官という趣旨で当時任用資格が定められたわけでございます。今お話がございましたように、当初は、この五百名ばかりの簡易裁判所判事を充員いたしますために、かなり急いで任用したという関係から、必ずしも厳格な試験をやるようなこともなくて、従前の古い書記官の方あるいは警察署長、あるいはまた学校の校長の方などから採用されて参ったのでありますが、実は、その後、この簡易裁判所の手続が簡易化されることなくして、どちらかと申しますと地方裁判所と同じような手続がそのまま用いられる。従って、そこにある程度のそごがありました。しかし、その後、簡易裁判所の判事の教養の問題につきまして研修所で研修を頻繁にいたしまして、さらに、新たに任用いたしまする簡易裁判所裁判官につきましてはかなり厳重な試験をやっております。これはもう少し詳しく申し上げますと、筆記試験と口述試験をやっておりまして、最近任用されます簡易裁判所裁判官は、むしろ司法試験を合格した者と大体同じような実力を持っておるわけでございます。
 今お話がございましたこの簡易裁判所判事をやめるかという問題でございますが、これは、何と申しましても、全国で五百ばかりございます裁判所の裁判官を今やめるということは、たくさんございます事件の処理上とうてい不可能でございまして、でき得べくんば、この採用のときにさらに厳重の度を加えていって、しかも古い簡易裁判所裁判官には研修をさらに繰り返してやるということで参りたい、われわれの方では大体そういうふうに考えております。
○池田(清)委員 検事、判事の登用についての法務大臣及び最高裁判所の御意向を伺いまして、ごもっともと同感いたします。私が言わんとするところは、基本的人権を侵害するようなことがないようにしてほしいという趣旨でありまするから、御苦労でございますが、この上ともそういう方々の研修に十分御努力をいただきまして、基本的人権を侵すようなことがないようにしてほしいということをお願い申し上げます。
 お尋ねの第四点としましては、裁判の迅速化ということであります。近来、民事の事件にいたしましても刑事の事件にいたしましても、なかなか長い歳月を要する事例が多いのであります。民事にいたしましても、権利の関係を確定いたしまするのに何年もかかりましては、実際の値打がなくなってしまうということもありましょう。あるいは刑事の関係におきましても、未確定の状態で何年もほうっておかれるということも、あるいはそういうことを望んでおる部分的な方もあるかもしれませんけれども、一般の方といたしましては、そう長期化するということはおもしろくないと思うわけであります。そこで私は裁判の迅速化ということを強調しておるものでありますが、この意味におきまして、第一審から最高裁判所に至るまで裁判の迅速化のために改むべき点がいろいろあろうかと思うのであります。最高裁判所におきましては、第一審裁判所の充実というようなことを主張しておられ、具体的に実行に移されたやにも伺うのでありますが、その点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
○関根最高裁判所説明員 今池田委員からお話しの訴訟の促進の点でございますが、これは数字の点にわたりますとあまりこまかくなりますので、簡単に申し上げますと、実は新聞その他におきまして有名となりまする事件は相当長くかかっております。これはいろいろな事由がございまして、御承知のように、裁判をされる身になってみますると、促進よりもむしろ慎重の上にも慎重を重ねて審理をやってもらいたいという気持のある事件もあろうかと思います。それで、特殊の有名事件につきましては慎重な審理、そういった当事者側からの要望もありまして、かなり長くなることはございますが、一般に平均して統計的のことを申し上げますると、たとえて申し上げれば、百件のうち七〇%程度、七十件程度のものは一年以内に片づいていく。そこで、残りました数のものがかなり延びて参ります。確かに個々の事件を取り上げて申し上げますと延びておる事件はございますが、全体としてごらんいただきますると、審理の促進という面もあり得るということを申し上げたいと思います。
 それから、数字をこまかく申し上げますと時間がかかりますから省略いたしますが、今お話がございました一番充実の問題でございます。これは、一審の裁判が、新しい裁判所法になりましてから、原則として単独の裁判官で処理されることになりまして、合議体――言葉を変えて申し上げますと、三人の裁判官で一事件を審理するといった事件の割合が、百件のうち十件以内ということになりまして、従って、当事者の側といたしましても何となく不安を感ずる。裁判をする身になりましても、相談相手がいないというところから、同じように不安を感ずることがないとは言えない。そういうところから、なるべく二人以上で裁判をするという方法がいいんじゃないか。現在の制度といたしましては一人から三人ということになりますが、なるべく単独体を合議体の方に持っていって審理を慎重にしたいという方向で一審充実の問題が取り上げられまして、具体的にその方向に進んでおるわけでございます。あわせまして、でき得べくんば一人を二人の合議体にということも考えていいんじゃないかという論議も出ております。
○池田(清)委員 およそ裁判は、事実を究明し、その事実に法律の適用があるわけでありますが、事実を究明し、神様が見てもこれだというところの究明をいたし、これに対し法律の適用について神様が見ても誤まりないということをいたす、これが裁判の要諦であると思います。ところが、人のやることでありますから、神様のようには参りません。そこで、誤審がありましたり、粗審、粗判があったりするというようなことで、裁判所にいろいろな事柄をよけいにお願いする件数がふえてくると思うのであります。私が申しまするように、神様が見た真実に対し神様が見て誤まりない法律の適用をするであろうならば、第一審の裁判で関係者は満足するはずであります。ところが、そうでなくて、法令の適用違反がありましたり、あるいはまた憲法や判例にたがうところがあったりいたしまして、上訴が盛んに行われておる、こういう実情にあると思うのです。こういったような事柄からいたしまして、最高裁判所制度の改革というような問題が取り上げられて、中村法務大臣のもとにおいても御研究に相なっておる。内閣といたしましてもこれが提案をしようかということに相なっておるやに伺うのでありますが、このことについてお尋ねをするわけであります。もとより、憲法におきましては、最高裁判所は憲法違反の決定をする権限を有する終審裁判所である、こういうようなことが書いてあります。これは憲法上の問題でありまして、少し横道になりますが、私見といたしましては、法律が憲法に違反するかどうかということを決定するのは司法権の範囲でないと私は考えます。現在の憲法においてはそれが最高裁判所の任務としてあるのでありますから、現在においてはやむを得ないが、憲法改正等の機会があったら、これは司法権のほかにそういう機関を設けるべきであるという私は私見を有するわけです。さらにまた、最高裁判所の裁判官は国民審査という手続を経なければなりません。これについても、私はその必要がないという私見を有しております。そういうようなことは憲法改正の問題でありますから、この際は触れないのでありますが、中村法務大臣にお尋ねをいたしまする事柄は、最高裁判所の機構の改正等について提案をされるというのでありますが、その提案がいつごろになる予定であるか、そしてまた、その提案される内容についての概要を明瞭にしていただきたいと思います。
○中村国務大臣 最高裁判所の機構改革の問題は、御承知の通り、かねてから上告事件が最高裁判所に非常に多数積滞をいたしまして、なかなかその迅速な処理が困難であるという実情から、このままではいけないのじゃないかということで、各方面からそういう意見が起りました。裁判所側には裁判所側の意見があり、また在野法曹には在野法曹側の意見があり、法務当局には法務当局の意見がございまして、いろいろな食い違い等がございましたが、いずれにしても解決をいたさなければならない問題でございましたので、昨年法制審議会にこの裁判所の機構改革の問題を諮問いたしました。法制審議会には在朝在野各方面の法曹の権威者が集まっておるわけでありますが、ここでいろいろな角度から研究を続けられまして、昨年ようやく一つの成案を得て、答申を受けておるのでございます。それぞれの立場から言えば、その立場に立っての言い分はございますが、とにかく一つの結論を得ました。その法制審議会の結論は、私どもその後検討を続けまして、大体妥当なものである、かような見解を下しております。しかしながら、これにはさらに関係方面の意見等も徴さなければなりませんので、在朝在野関係の意見をその後徴しまして、大体各方面とも、この法制審議会の答申が、十分でないという見方の人もあるにしても、まあとにかく正鵠を得たところであろう、こういう意見のようでございますので、私どもとしましては、さらにこの具体化をはかりまして、目下検討をいたして、実は提案の準備を進めておるような次第でございます。
 内容の要点といたしましては、一つは上告の範囲の問題でございまして、民事の事件は、御承知の通り、憲法の解釈、適用の誤まり、判例の抵触、そのほかにつけ加えられておりますのは、法令の違反が判決の結果に影響を及ぼす場合には上告の理由になるのでありますが、刑事事件の方は、このあとの分が切られておりますので、在野法曹側としては、刑事事件に関する上告の間口をもっと広げるべきである、やはり法令の適用を誤まっておってそれが判決の結果に影響を及ぼす場合には上告の理由とすべきである、こういう意見が非常に強いのでございますので、今度の法制審議会の答申では、法令の違反が判決の結果に影響を及ぼしてそれが著しく正義に反する場合にはやはり上告の理由になる、こういうことに答申をされており、私もこれは理論としてもっともだと思うのであります。
 さて、さなきだに上告事件の処理が非常に積滞をいたしまして、今の十五人の最高裁判所裁判官をもってしては困難でありますところへ、そういうことになりますと、これでは一そう事件の処理は至難になりますので、最高裁判所の機構を改革しよう、こういうことになってきておるわけでございますが、具体的にまだ申し上げる段階には至っておりません。大要を申しますと、最高裁判所に大法廷を置きまして、大法廷は憲法に違反をするもの、憲法の解釈が誤まったもの、あるいは判例に抵触するもののみを取り扱う、そのほかに、今小法廷は三つしかございませんが、六つほど小法廷を置きまして、そこで一般上告事件を取り扱う、こういうような構想で改革をはかって、事件の迅速な処理と、それから在野法曹等から熱心に要望されております刑事事件に関する上告の範囲を民事事件と例を同じくするような方向に改善しよう、こういう点が大体大きな要点になっておるような次第でございます。
○池田(清)委員 最高裁判所の機構を改めることはなかなかむずかしい事柄であろうかと思います。中村法務大臣は近く法律案を提出される、こういうことに伺いましたので、その法案がわれわれの委員会にかかりました際には、さらに詳しくお尋ねを申し上げることにいたします。
 第五点といたしましては、犯罪の予防鎮圧のことでございます。およそ、犯罪が起きた後に捜査、検挙をして裁判するということは、末のことであると思うのです。従来はえてしてこの方法に重点が置かれておったやに思うのでございますけれども、犯罪ができない前にこれを防止するということが何よりも大事な事柄であると思うのでございます。これらにつきましては、法務省あるいは検察庁等におきましていろいろと努力をしていただいておるのでありますが、この点につきましてお尋ねをしてみたいのは青少年の犯罪であります。青少年の犯罪が、日々新聞紙面をにぎわしておると言っても過言でないくらい盛んに行われております。まことに残念に思うのです。青少年の方々は日本の将来を背負って立ってもらわなければならない大事な方々でありますから、私、願いまするのは、健全なる心身を持ったところの青少年であり、そしてそういう方々が犯罪などをなさらないようにしていただきたい、こう思うのです。ここにおきまして、青少年犯罪の予防、鎮圧ということは、刑事政策上最も重要な事柄になって参ると思うのであります。そこで、一つ資料としてお願いを申し上げておきまするものは、昭和二十九年以降今日までの青少年犯罪の増加の傾向を統計資料によってお示しをいただく、こういうことであります。映画館に入ってみますと、一時にぎわっておりました太陽族映画というのがございます。太陽族映画そのものよりもさらに感心しない映画があることを刑事政策担当の方はお気づきになっていただきたいのです。旧劇におきましてはドスで切り合うというのでありますが、これはわれわれ現代の生活には遠い事柄であり、歴史上の事柄として画面を見るでありましょう。ところが、現代劇においては、われわれの生活に取り入れて行うことのできるような事柄が画面に現われておるのがあります。たとえて申しますと、賭博の現場が出ておる。ピストルで撃ち合う、ドスで突き合う現場が出ておる。これは現在のわれわれの生活に直ちにもって取り入れることができるような事柄なんです。青少年の方々がこういうものを見て、それを利用するという気持に全部がならないということであるなら申しませんが、えてしてこういうような影響を受けて青少年犯罪を犯す若い方々があるであろうと懸念いたしまする際、これらの事柄について当局といたしましては心を配ってもらわなければならないと思う次第であります。
 犯罪の予防、撲滅について次にお尋ね申し上げまするのは、多数の人々が集まりまして公務の執行を妨げるという事例があるように見受けます。たとえば、砂川事件というものの中において、測量をしようという公務執行の一団が多数の威力によって公務執行ができなかったということも聞いております。あるいはまた、官庁の廊下に多数がすわり込んでおる、大臣や次官その他要職の部屋の中にまで入り込んですわり込んでおるというような事例も、御承知のようにだんだんあるのであります。これが公務執行妨害となりまするには、暴行脅迫という行為がなければ、その暴状に従ってこれを処断することができません。暴行脅迫に至らない程度の多衆の威力によって公務が執行されないという場面がだんだんあるのではないかと思うのです。公務は法律によりまして国家社会の利益のために執行されるのでありまするから、その公務執行は平穏にかつ円滑に行われなければならないと思います。そういう大事な公務執行であるのに、多数の力によってそれが制約を受けるという事態は、見のがすことができないと私は思うのです。ここにおきまして、当局にお尋ねいたしますのは、現在ありまする法律によってこれを処断することができるのかできないのか、それができないとするならば、これについての特別の立法をいたすべきではないか、こういうことについてお伺いをするわけであります。
○中村国務大臣 池田委員から非常に重要な点についての御質問がございました。先ほどお話しの犯罪の予防ということは、法務行政全体の上からは非常に重要な問題でございます。ただ、この点を大別いたしますと、二つになると思うのであります。一般の犯罪予防という点になりますと、これはひとり法務省の努力だけではとうていその効を奏し得ないのでありまして、ただいま御指摘がございましたように、映画の影響等もいろいろございましょう。社会教育の関係もあると思うのであります。映画などにつきましても、私どもの目から見れば、大いに映画の倫理化をはからなければならないといいますか、映倫協会ができて努力をされておるようでありますが、改善をすべき点もあると思います。これらを政治全体として総合いたしまして、総合的な施策をどうしても確立をして力強く進めていく必要があると私は考えておりますので、御趣意に従いまして、そういう方向に努力をしたいと思うのであります。同時に、法務省の直接の所管といたしましては、犯罪の再犯を防止するということでございます。犯人の多くには再犯者が非常に多いのでございまして、再犯をいかに防止するかということは、これは世の中のあり方にも関係がありますが、同時に行刑、保護更生、こういう法務行政に関係した部分も非常に多いのであります。従いまして、私どもといたしましては、行刑の面を通じ、またそれに関連をいたしまする保護更生の点につきまして、できるだけ努力をして、再犯者を出さないようにしよう、一度犯罪を犯した者で行刑を受けた者は、その行刑中に十分改誤遷善するように持っていきたい。それには、各刑務所、少年院等で今もやっておりますが、さらに強力にやっていきたいと思いますのは、そこにおります間に一つの職業を覚えて、釈放になったならば職につく実力を持つ、職業を身につけるという方向に持っていきたいために、作業ということについては十分力を注いで参りたい。ことに少年院等におきましては、少年院におりまする間に作業等のほかに教育も十分いたします。そして一応の教育過程を終った者については、適当な学校と連絡をいたしまして、その学校の卒業証書を授与できるような方法も講じております。それから、たやすく職につけるようにするためには、そろばんのけいこなどを皆にやらせまして、三級であるとか三級であるとか、それぞれ珠算の級を取らせる、こういうようなことにも力を注いでおりますが、一そうこういう点をやって参りたいと思うのであります。なお保護更生関係につきましては、もっともっとこれは力を注がなければなりませんし、保護司の方々に非常な犠牲を払って努力をしていただいておりますが、保護関係はまだまだ力を注ぐべき余地がたくさんありますので、本年の昭和三十二年度の予算編成に当りましても、私どもは保護関係の経費の増額についていろいろ努力もできるだけいたしまして、幸い、ようやく、不十分ではございましたが、四千万円ほどの保護関係の経費増額を見まして、これによりまして、私どもとしては、保護の充実をはかって、そうして釈放の先の保護更生の基盤をしっかり築き、仮釈放も安心してできるような保護の基盤を築く、こういうことに着眼点を置きまして、今後大いに努めたい、かように考えておるような次第でございます。
 それから、多衆共同して公務の執行を妨害する事例は、近来残念ながらいろいろな機会にたくさんあるのでございますが、これは、厳格にこれを進めて参りますれば、現行法規をもって処理し得ないことはないと私は思うのであります。たとえば、ある一定の個所に陳情団がすわり込んで夜を徹して動かない、こういうような場合には、明確に退去命令を発してその手続を行いますならば、家宅侵入罪にもなりますし、他の犯罪を構成いたしますから、これによって処置し得ないことはないと思いますので、今後、社会秩序を維持するためには、われわれとしてはできるだけ厳正にこれをやっていきたい、かように考えておるようなわけであります。本日の閣議におきましても、春季闘争については、現に政府は人事院勧告をすべて受け入れて、そうして公務員の給与改善もすでに法律案を出し、予算を提案しておるにかかわらず、なおかつ官公労等が非常に不穏な闘争計画を立てているということでありますが、政府側に人事院勧告を無視しているような事態があるならば、これは一方に無理があるから、ある程度の無理はやむを得ないということも社会常識上成り立つかもしれませんが、本年の場合におきましては、現に政府としては、まじめに人事院勧告を受け入れて、これを実施に移しつつある段階でありますから、にもかかわらず不当な闘争を行います場合においては、十分現在あります諸法規を適用して、厳正な態度をもって臨む、こういう閣議決定をいたしましたような次第で、できるだけ秩序の維持には万全を期して参りたい、かように考えております。
○池田(清)委員 時間も相当経過いたしましたが、もう一点だけお尋ねの第六点として申し上げまする事柄は、いわゆる裁判所及び法務関係機関の営繕の問題であります。先ほど来申し上げておりまするように、司法及び法務行政というものは、国の最も大事な仕事をやっていただいておるのである、こういうことを申し上げておるのであります。これらの機関といたしまして、府県市町村末端に至るまで、たくさんの機関が全国に散布されておるわけでありますが、それらの庁舎その他機関の営繕につきまして、まことにみすぼらしい、あるいは危険の多い、あるいは役に立たない、そこに保存しておる書類等の汚損するような、雨露の漏るというような建物が至るところにいまだ散在するということは、まことに残念に思います。たとえて申しますと、宮城県の登米の裁判所は、明治四年の建造であるそうでありまして、そこでは原敬や斎藤実、こういう両先輩が給仕をいたしつつ勤められた役所そのものが現在裁判所として残っておるそうであります。重要建造物としてならいざ知らず基本的人権を預かっていただいておりまする裁判所が、そういう古色蒼然たるところで行われるということは、司法に対する国民の信頼も薄らいでしまうと思うのであります。また、法務当局におきましては、少年院とか、矯正院とか、刑務所とか、あるいは収容所とか、いろいろありますが、これは人の自由を拘束しておる建物なのであります。それがきたない、雨水の漏るようなところであったり、あるいはまた戸籍や不動産等の登記書類を保存しておりまするところの法務局関係の建物が朽ち落ちておるというようなことは、まことにもって残念なことであると思うのです。法務省並びに裁判当局におかれましては、予算編成のたびごとに営繕の予算を取るべく努力をしておられまする実情を拝見しております。しかしながら、それが思うように取れていないということは、これまた冒頭に申しましたこれら機関の重要性を認識していないのだというふうにも考えるわけです。ところで、私がここでお尋ねをいたしますのは、両当局は今後これらの営繕について何年度の計画を持っているかということ、五年計画とか、あるいは七年計画とか、いろいろありましょう。そういう計画があるかどうかということ、もしそれ計画がないならば、この際五年計画とかいうような年度計画を作って、これを必ず計画通りに実行するという方針を国できめ、年々その方針に従って実現すべきであるということを強調するものでありますが、これについて両当局の御意見をお尋ねいたします。
○中村国務大臣 まことにごもっともな御意見で、われわれの微力の点を強く御指摘をいただいたのでありますが、従来数年前までは法務省、裁判所とも年額十億近く、少くとも八、九億円の営繕費を受けましてこれによって所要の増改築等を進めて参ったのでありますが、数年前に官公署の建物の営繕費を大幅に節減をいたしました際に、各省庁とも平均に切られまして、法務省、裁判所とも六億数千万円台、六億台に大体切られてずっと続いて参りました。そのために非常に営繕関係が行き届かない部分が多くたまってしまっておりますような次第で、私ども、この実情を見まして、何とかもとの状態――これは同程度では困るので、むしろもとの状態以上に何とか予算の配賦を受けて、そうして適切な増改築、修理等を進めて参りたい、かような考えをもちまして三十二年度予算の編成に臨んだのでありますが、思うように参りませんでしたが、法務省関係におきまして、本年度は約三億円ほど営繕費が大幅に増額を見ました。従って、十億近くになったわけでございます。裁判所の方も大体それに伴って増額をされているわけでございます。この状態で五、六年間たてば、まあやむを得ざる部分の改善だけはできるんじゃないか、かように見込んでおりますが、なおこれだけでは不十分でございますから、明年度以降におきまして、今御指摘のありましたような場所が他にもまだ数カ所ございますので、至急改善されるように最善を尽して参りたい、かように考えております。今年はここ数年間よりはよほど急速な増改築ができる、かように考えておりますが、明年以降も一そうこの点については留意をして参りたいと考えております。
○岸上最高裁判所説明員 裁判所の庁舎の営繕問題につきましてただいま御指摘になりましたことは、まさにその通りでございまして、大きく分けますと、裁判所の庁舎の中には、戦災を受けましてバラックのまま残っているもの、これが全国で申しますと約一万四、五千坪くらいあります。それからお話の登米等の裁判所のように、明治時代にできまして、木造で四十年以上たっているというものだけを拾いますと、約五万坪ほどになります。その他、終戦後に新しくできました家庭裁判所、これも地方裁判所に同居できるところは多少の無理をしても同居いたしているのでありますが、同居できないものでなお裁判所らしい庁舎がないところがまだ数カ所ございます。さらに、従来戦前にはなかった地域に戦後新しくできました簡易裁判所で、なおまだ庁舎が整備できなくて、借りものでやっておるというのが、全国で約八十個所ほどございます。こういうものを合せまして、実はこれを大体現在の方針にのっとりまして最小限度に整備していくということでごく大ざっぱに計算いたしましても、今後なお百二十億ぐらいの費用がかかるというふうなことに相なっております。私どもといたしましては、一度にやるということは実際上不可能でございますので、これを五年計画でやれば、五年計画で毎年かりに十億とすれば、どの程度までやれるか、あるいはさらにこれを十年計画に延ばせばどこまでやれるかということもございまして、内々計算はいたしておるのであります。いずれにいたしましても、最小限度にこれをこなすには大体百二十億くらいかかるということでございます。予算は、ただいまお答えいたしましたような状況で、ことしは前年に比べまして二億三千万円ほどふえたのでございますが、それでも総額なお八億三千万円ほどでございました。これでいきますと、百二十億としても十五年かかるというふうな計算になるのでございますが、ところによりましては、調停案が足らない、法廷が足らないという苦情は、もうしょっちゅう聞いておりまして、私ども非常に心苦しく存じております。そういう関係にございますので、営繕につきまして、裁判所の予算のうちでも重要経費の筆頭に最近はあげまして努力いたしておるのでございますが、残念ながら十分のところまでいっていないという現状でございますので、今後一そう努力いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
○池田(清)委員 お尋ね申し上げたいという項目は済んだのでございますが、警察庁長官がお見えになっておりまするので、先刻犯罪の予防鎮圧のところでお答えをいただくべきでしたのですけれども、光に進ましていただいて申しわけありません。
 先ほど来中村法務大臣からも犯罪の予防鎮圧は大事であるということは述べられましたが、一般的な犯罪の予防ということは警察庁の設置法上当然に担当しておる事柄であるわけです。これについていろいろと警察庁は努力しておられると思うのでありますが、先ほどお尋ねをいたしました二つの項目、すなわち、青少年犯罪の予防鎮圧についてどういうことをしておるかということ、並びに多衆威力による公務執行を妨害されるという事柄についての立法的御意思等をお尋ねいたします。
○石井(榮)政府委員 お答えいたします。
 およそ、犯罪が発生をいたしまして、それを捜査、検挙することが私ども警察の任務であることはもとよりでありますが、さらに、犯罪の発生以前に犯罪を予防するということも、これまた警察の重要な基本的な任務であるのでございます。その重要な任務にかんがみまして、警察といたしましては、あらゆる角度から犯罪の予防ということにつきましては鋭意努力をいたしておるのでございます。第一線の警察官の活動につきましても、防犯活動というものは重点的にこれを考慮いたしまして、一般警察官の第一線における警ら等につきましても、防犯的見地でこれを最も有効適切に運営するというような点に十分配意をいたしておるような状況であります。なお、警察の力は何と申しましてもおのずから限度があるのであります。広く犯罪の防止のためには、私ども警察で最善を尽すと同時に、国民各階層の方々のわれわれ警察に対する御協力をいただかなければならぬと思うのであります。従来もいろいろ各種の防犯団体等の御協力をいただきまして犯罪の防止予防ということに努力をいたしておるような状況でございます。なお、最近の犯罪発生の傾向等から見ますると、現在の警察力ではまだ十分でない、警察官をさらにふやしたいというようなことも私ども考えてはおるのでございますが、中央地方の財政の状況等もありまして、警察官の増員というようなことは、そうたやすくできることでもございませんので、現在の警察官の実員をもって、各人の質的強化と申しますか、そういう点に力をいたしまして、いわゆる警察官の教養に力をいたしまして、一人々々の警察官が十分に力を発揮し得るように配意をいたしておるような次第であります。なおまた、警察官の頭数をふやすのみならず、警察力の増強のためには、いわゆる施設、装備、こういった面の充実によりまして、警察力の総合的な力を増強していくということも考えなければならぬのでありまして、そういった面につきましても予算的にもいろいろ考慮いたしておるような状況であります。
 次にお話のございました、少年犯罪、少年の非行というものが最近好ましくない状況にあるというお話でございます。まさにその通りでございます。少年非行の状況、いわゆる少年刑法犯の数も、また触法少年の数も、虞犯少年の数も、すべてここ数年、逐年増加の傾向にあるのでありまして、これら将来わが国を背負って立つ国民の将来を考えますときに、まことにゆゆしい問題であるわけでございます。私どもとしましては、少年非行の防止のためこれはただ単に警察の力をもって解決し得る問題ではないのであります。文教、厚生等の対策と相待ちまして、警察は警察の立場におきまして、少年の保護の任に当る各種の機関等とも緊密な連携を持ちまして、少年非行の防止、保護少年の早期発見、これが指導、補導といった面に十分力をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。
 なお、次のお尋ねの、公共の秩序を破壊するような犯罪に対する取締りについて、現在の法令で十分であるかどうかというお尋ねのように拝聴いたしたのでありますが、法務大臣からお答えのありました通り、私どもといたしましては、現行法をフルに活用することによりまして、そうした事態に対しましては十分取締りをやって参りたいと思うのであります。しかし、なおいろいろ過去の実績に徴しまして研究すべき点も多々あるようにも思いますので、きわめて適切な御意見を拝聴いたしましたので、今後十分に関係法務省とも連絡をいたしまして、さらに研究を進めて参りたい、かように考えております。
○世耕委員 今の問題に関連してちょっとお尋ねいたしますが、日本の戦後の道徳の頽廃があらゆる新しい犯罪――しかも凶悪犯罪が簡易に行われているということは国情の一端を表わすものだと思いまして、必ずしも警察力の無能を叫ぶべきじゃないと私は思いますが、幸いにして最近は科学捜査あるいは電波その他の機動的な面が非常に発達したにもかかわらず、依然として凶悪犯罪の犯行があったにもかかわらずそれの検挙に非常に時間がかかるように思われるのです。と同時に、またその凶悪犯罪がしかも簡易に行われるという二面に、何かどこかにくぎの抜けたようなところがあるんじゃないか、そういう面について、あなた方は現場でこういう問題と取り組んでおられる立場から、何か御所感があれば承わっておきたい、こう思うのであります。それは、たとえば警察官の待遇をもう少しよくするとか、今お話があったように人員の不足とか、あるいはこういう点に予算面が不十分であるとか、何かさしあたっての問題として扱うべき問題があるんじゃないか、かように考えるのですが、この点が一つと、もう一つは、なぜ犯罪捜査の上に不便である、どうすればいいということを、あなたが部下のそれぞれの機関からそういう意見を聞く機会をお持ちになっておられるかどうか、あればどういう組織でそういうことを進言させる機会をお持ちになっておるかどうかということも、この機会に承われればけっこうだと思います。
○石井(榮)政府委員 ただいま御指摘の通り、戦後犯罪の傾向を見ますと、凶悪化しておる、いわゆる凶悪犯、粗暴犯というものが逐年ふえておるという好ましくない傾向にあるのであります。しかも、それに対する警察の取締り、検挙が十分でないという御叱正をいただいたわけですが、警察といたしましては、もとより最善を尽しておるのでございますが、また、お話しになりましたような科学的な施設も活用いたしまして、捜査の適正なやり方、合理的なやり方というものに配意、努力をいたしておるのでございますが、一方、犯罪を犯す者も、やはり科学の進歩と申しますか、そういうことによりまして、犯罪がきわめて巧妙化しておる、そういうことが一つのきわめて顕著な傾向として言えると思います。さらにまた、交通機関の発達等と同時に犯罪が広域化して、広い地域にわたって犯罪が行われておる、また集団的な犯罪が多くなっておる、また累犯者の数が年々多くなって、ただ単に気まぐれの思いつきの初犯の者よりも、前科のある者が罪を重ねる、しかもまたそれが単独犯罪でなくして集団、複数によって共犯のある犯行というものが多い、こういうふうな犯罪を犯す傾向があるのであります。それだけに警察側といたしましては捜査に非常に困難を来たしておる、こういうことに相なるのでありまして、犯罪の量的な増加のみならず、こういった質的悪化の傾向にあるということが捜査に当る警察官の負担を重からしめている、こういうことに相なっておるのでございます。警察といたしましては、人権の尊重ということをあくまで基本としつつ、合理的、科学的な各種の施設、装備を活用いたしまして犯罪の捜査に当るということに鋭意工夫をいたし、努力を続けておるのでございまして、年々その成績は向上しつつあるというふうに私ども考えておるのでありますが、なお捜査の不十分な点もありまして、中には数多い警察官の中に、ときに誤まった逮捕をするといったような不始末をしでかす場合もありますけれども、そういったことの絶無を期しまして、さらに一そうの指導をいたして参りたい、かように存じておる次第でございます。
○世耕委員 もう一点お尋ねしたいと思いますが、簡潔にお尋ねする意味でぽつりぽつりお尋ねいたしますが、たとえば警察官が簡単に殺される、簡単に傷害を受けているということは、従来もあったのかしらぬが、特に最近目立つようですね。警察官が殺される、あるいは傷害を受けるということが非常に目立つようにわれわれは耳にする。これはどういうところに欠陥があるのかということはおそらくお考えになっておられるだろうと思う。最近においても殺害されたものが数件あると思います。これは、過去においてあまり目立たなかったのが、どういうわけでこう目立つのであるかということと、それから、もう一つは、犯罪捜査の上に見込み違いということで非常に今まずい捜査を繰り返して往々にして人権問題が起ってきているということは、今申し上げたように人権の尊重の建前から丁寧にやっているからこういう違いが起ったのであるとも想像できますが、どうも見込み違いのために非常に大きな人権侵害が起っているという事実。それから、もう一つは、今累犯が多いということもお話しになりましたが、累犯の多いということも想像はできますけれども、むしろ初犯者が大きな犯罪を犯している、いわゆる凶悪犯罪はむしろ少年犯罪が多い、こういうふうに私たちは感じておるのであります。そうすると、累犯とか再犯というのでなしに、初犯者に対する防犯という面を考慮しなくてはならないのではないか、それには、たとえば学校とか、あるいは少年工を使うような工場とか、そういう面に対して十分の調査連絡が行き届かなくてはならないのではないかということが考えられるのですが、この点について手が伸びておるかどうか、まずこういうような点だけ伺っておきます。
○石井(榮)政府委員 警察官が最近殺されたりあるいは傷害を受けたりしてるような事故が多いではないかというお尋ねでございますが、これは以前にもあったことでございまして、特に最近著しく多いというわけでもないのでございます。これにはいろいろ理由があるかと思いますが、昨年一年の統計は、ちょっと今私はっきりした数字を覚えておりませんが、警察官が公務執行中に犯人に襲われて殺されたりあるいは傷害を受けたというものが、全国で約六十件くらいあったと記憶いたしておるのでございます。その犯人がどういう動機でそういう挙に出たかということを探ってみますと、警察官の携帯している拳銃を取りたいというものがかなりある。また、警察官に以前に取調べを受けた、その恨みを持って報復的にやったというもの、こういったものがあるわけです。その他いろいろ理由があるのでございますが、今申し上げました、警察官の携帯する拳銃をねらって、その拳銃を盗んでさらに犯罪を犯そうという、そういう凶悪な分子がいるということは、われわれの今後十分留意して参らなければならなぬところだ、かように考えておるのであります。
 それから、見込み捜査をやって、そのために結果において間違いを起した、いわゆる人権を侵犯しているような事犯が多いではないかという点であります。先ほども申し上げました通り、人権を尊重しなければならぬことは申すまでもないところでありまして、われわれ、捜査のあり方といたしましては、あくまで基本的人権の尊重ということを基本といたしまして、科学的、合理的に捜査をするように、いわゆる捜査の適正化、合理化ということを、日ごろやかましく強調し、そのための努力を続けて参っておるのであります。古い捜査の方式、いわゆる勘による捜査、見込みの捜査というものは、往々にいたしまして人権を侵犯する結果になることが多いのでございますので、そうした旧式な捜査方式を一擲いたしまして、あくまで科学的、合理的に理詰めの捜査をやって、どこまでも人権を尊重しつつ真実の発見に努める、こういう新しい捜査方式をとるべきであるということで、そのためには科学的ないろいろな施設、装備というものを活用いたしまして、犯罪捜査を科学的に合理的に進めていくということでなければならぬというふうに日ごろ教養に努めておるような次第でございまして、今後、そうした教養の徹底により、またいろいろな施設の充実によりまして、見込みによる捜査によって人権を侵犯する、あるいは間違った人間を逮捕するといったようなことの絶無になるように、努力の目をそこに置きまして、今後さらに精進を続けさせていきたい、かように考えておる次第一でございます。
 なお、その次の問題として、凶悪犯者には累犯者よりも初犯者が多いのじゃないかということでございますが、確かに少年犯の中には凶悪な犯罪を犯す者は初犯者が多いのでございます。若い者でそれ以前にそんな大それたことをやったことのない者がそういう凶悪犯罪を犯すということがかなりあるのであります。先ほども申し上げました通り、少年非行の防止ということにつきましては、私ども今日までもいろいろと工夫をこらして参っておるのでございますが、今後ともこの点につきましては十分工夫をこらしまして、各関係機関、特に、先ほどもお話がありました通り、多くの少年工等をかかえておる工場、事業場等の経営者、そういった方々とも十分に連絡を密にしまして、少年の善導と非行防止のためのあらゆる方策を講じて参りたい、かように考えております。
○世耕委員 最後に一点だけ伺いますが、今のお話の中に拳銃を盗みに来る事件があるということでしたが、この拳銃は、昔で言えばさむらいの刀、です。昔は刀を盗みに来るということはなかった。(笑声)武士には刀が魂であった。もし拳銃が警察官の魂だとすれば、その魂を盗みに来るということはあり得ぬことであるし、そこに警官の精神的な訓練の弛緩があるのではないかということも、これは皮肉ではございませんが、そう考える。ですから、この点はよほどお考えになる必要があるのではないか。せっかく持った護身用でありあるいは人権を擁護すべき警官の魂である拳銃が、かえって凶悪犯に利用されるチャンスが多くなるということになると、警官自身が拳銃を所持することに問題が発生すると思いますから、特に陣頭に立っておられるあなた方がこの点はよほど精神的な訓練をしていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。
○三田村委員長 委員長からちょっと申し上げておきますが、先刻池田委員から青少年犯罪に対する資料の御要求がございましたが、事態の重要性にかんがみて当委員会においても十分真相を調査いたしたいと思いますから、できるだけ詳細かつ迅速に資料を御提出願います。
 本日はこれにて散会いたします。次会は公報でお知らせいたします。
   午後一時五分散会