第026回国会 法務委員会 第10号
昭和三十二年三月一日(金曜日)
    午後二時一分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君
   理事 福井 盛太君 理事 横井 太郎君
      小林かなえ君    世耕 弘一君
      高橋 禎一君    馬場 元治君
      林   博君    古島 義英君
      松永  東君    山口 好一君
      佐竹 晴記君    坂本 泰良君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
 出席政府委員
        検     事
        (法制局第二部
        長)      野木 新一君
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
        運輸事務官
        (自動車局長) 山内 公猷君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (自治庁税務部
        府県税課長)  細郷 道一君
        大蔵事務官
        (主税局税制第
        二課長)    吉国 二郎君
        大蔵事務官
        (国税庁徴収部
        長)      飯田 良一君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      關根 小郷君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
三月一日
 委員片山哲君辞任につき、その補欠として古屋
 貞雄君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する
 法律案(内閣提出第三五号)
    ―――――――――――――
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。古島義英君。
○古島委員 私は、昨日、本法を施行することは利益よりは弊害が多いというので、その一例をとって、銀行の取付のようなことになりはせぬかということで質問いたしたのでありますが、その件に関連をいたしましてさらに質問を進めたいと存じます。
 本法を施行しますと、一方で滞納処分なら滞納処分で差し押えをする、そのことが多くの債権者を刺激して、ほかの債権者がどっと押しかけるということになれば、これは、取付と同様に、相当な資産を有する者でも倒産するのやむなきに至る、こう存じますが、そういうふうな弊害はありませんかどうか、承わりたい。
○村上(朝)政府委員 銀行の取付のようなことになるおそれはないかという点でございますが、銀行の場合ですと、すべての預金者に対して銀行の全資産をもって弁済しなければならぬわけであります。それに反しまして、本件の場合は、特定の財産に対して滞納処分が行われており、その財産に関してのみ債務名義を持った債権者が執行をするわけであります。他の財産につきましては、もし滞納処分の目的になっていないものがあれば、何時でも債権者は債務名義さえ持っておれば強制執行できるのでありまして、滞納処分の目的になっておる財産についてかりに債務名義を持った債権岩が執行いたしましたからと申しまして、直ちに取付のような状態にそれだけの原因でなるということは考えられない、かように存ずるわけであります。
○古島委員 私はあげ足をとるのではありませんが、総財産に向って執行をするかどうかということは、その債権が少いから総財産に対して執行をしない。財産が大きいかわりに債務が大きければ、全財産でもなお足らないのです。そこで、滞納処分で一方に差し押えをして、他の債権者には示談の道があるのであるが、それが同時に一切どの債権者もこれにのしかかってくれば、結局は示談の通がとれない。示談の道がとれないということになると、一どきに金策をしなければならぬということになって、結局はその人が倒産するのであります。そうなると、総財産を相手にする銀行の場合と違って個人の特定財産であるから総財産を対象にしないというような局長の見解は、全く間違っておると思う。いずれも総財産を相手にする。そうなれば、示談のできるところも示談ができない、猶予を願うところも猶予が願えないということになって、結局倒産のやむなきに至ると私は考える。その点いかがですか。
○村上(朝)政府委員 かりにこの法律がありませんでも、債務名義を持った債権者はいつでも債務者のいかなる財産に対しても強制執行をすることができるわけでありまして、それが示談その他で強制執行を猶予されておる状態にあるといたしますと、たまたま一つの財産について滞納処分が行われ、それに対してある債権者が強制執行をするといたしましても、それによって債務者のすべての財産に対してすべての債権者が執行してくるということは考えられないのでありまして、もし債務者の信用状態が悪化したということですべての債権者がかかってくるといたしますと、それは、滞納処分があったときに限らず、債権者の中の一人が強制執行をした場合にも同様の心配があるわけであります。たまたまある財産について滞納処分があり、それに対してある債権者が強制執行したということだけによって、債務者の信用状態に対する重大な問題になるとは考えられないのでございます。
○古島委員 見当違いの答弁をされては困る。そうじゃない。一方に滞納処分で差し押えをする、これにまた強制執行ができるということになれば、今日までは滞納処分で差し押えを受けたのを片方の債権者は黙って見ていなくちゃならなかったのが、これですぐ差し押えができるということになれば、これらの滞納処分の問題外の債権所、それが一時に押しかけてくるから、これを順次整理していくその機会を失う。これは、どの債権者でも債権を持っていれば執行ができるのはわかっております。いわゆる債務名義が確定しておれば執行ができるのはわかっているけれども、これが同時にできるということになれば刺激しはしないか。刺激したがために大へんな弊害が起ってくるが、それは何とか緩和はできないか、こういうことなんです。
○村上(朝)政府委員 お言葉を返すようでありますけれども、滞納処分された財産に対して私債権者が差し押えできるということになりましても、そのことだけによって他の債権者を刺激し、債務者が示談の機会を失うという心配はないと思います。
○古島委員 しからば、さらに進んで、国税滞納処分による不可差し押え物件と強制執行による不可差し押え物件とは、その範囲、量が違います。そこで、もしあなたの方の意見で言うならば、国税滞納処分で差し押えをして、国税滞納処分の方は処理ができれば、そのあとの方は一般債権君の差し押えの方にこれを引き継ぐというわけだ。引き継ぐことになれば、不可差し押え物件が竜においても数においても違っておるということになると、そのまま引き継ぐことができるか、その点はどうなんですか。
○村上(朝)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよくわかりかねるのであります。
○古島委員 国税滞納処分による不可差し押え物件がありますね。それから、民事訴訟による今の強制執行編の不可差し押え物件があります。その不可差し押え物件の量が同じものならば一向差しつかえないが、国税滞納処分と強制執行の分とは違う。違った場合に、一方が押えたものを引き継ぐということになれば、不可差し押え物件で一方では差し押えできないものまで引き継がなければならぬことになりますが、そんなことが許されますか。
○村上(朝)政府委員 あるいは御質問の趣旨をとり違えておるかもしれませんけれども、滞納処分によって差し押えられた物件と、私債権によって民事訴訟法の規定により差し押えられた物件とが違います場合、さらに私債権者が滞納処分の目的になっております財産に対して民事訴訟法による差し押えを行なった場合、かような場合におきまして、かりにこの法律による続行決定が行われまして、民事訴訟法の手続の方に移行いたしますと、全部が民事訴訟法による差し押えの手続の対象になるというだけのことではなかろうか、かように考えるわけであります。
○古島委員 全く解釈が違うのです。たとえば、国税滞納処分で言えば、国税徴収法の十六条によって不可差し押え物件がきまっております。ところが、片方は民事訴訟法の方で言うと五百七十条によって不可差し押え物件が明瞭に書いてあります。この物件の範囲が同様ならば一向差しつかえない。ところが、範囲が違います。たとえて言うならば、滞納者及びその同居の親族の生活に必要なる六カ月間の食料は差し押えることができないというのが国税滞納処分にあります。ところが、一方では、この食料については三カ月です。三カ月違うわけです。三カ月違うと、十二、三人の家族のある農家は幾らもあるのですが、一日に六升ずつ食っても一カ月では一石何斗かになる。三カ月違うとだいぶ違います。そういうものまで引き継ぐことができるか、こういうことなんです。あるいはまた、国税滞納処分でいけば、第三のところに、「主トシテ自己ノ労力ニ依リ農業ヲ営ム者ノ農業上欠クベカラザル器具、肥料、牛馬及其ノ飼料並次ノ収穫マデ農業ヲ続行スル為欠クベカラザル種子」となっております。一方では棟ではありません。農産物です。片方は棟だけを除けばほかのものはみな抑えられるのだが、一方の強制執行の方で言うとそうではない。農産物とあるから、農産物全部がそういう必要のときには押えることができない。こういういろいろの食い違いがある。また十番目にもそういうことがある。「滞納者及其ノ同居親族ノ修学上必要ナル書籍器具」となっておる。これが片方にはない。こういうことになると、一方では不可差し押え物件であるから差し押えない、ところが一方では範囲が広いからその分も抑える。狭い分は押えないのだが、その部分が移譲されることになれば、その申し込みをしただけによって押えることのできないものが押えられる、こういう結果になるが、その方法は何か打ち合せができておるのかどうかと私は聞いておる。
○村上(朝)政府委員 御質問の趣旨がよくわかりました。御指摘の、国税徴収法によって差し押え禁止物件とされておりますものと、民事訴訟法によって差し押えを禁止されておりますものとの間には若干の食い違いがございます。滞納処分による差し押えは国税徴収法によって許されたものだけについて行われますし、また、この法律によりまして重複して民事訴訟法による差し押えをいたします場合にも、民事訴訟法によって許された財産についてのみ差し押えをするわけであります。後に本来許されないものの差し押えを引き継ぐという問題は起きない、かように考えております。
○古島委員 そんな迂遠な心配が出てくるから、この法律を施行すればかえって害があると私は申し上げるのです。この場合においても、強制執行では三カ月分しか残さないで差し押えることができる。ところが、国税滞納処分では六カ月残しておくのだから、三カ月分だけ食い込むことができるのです。ところが、国税滞納処分の方では六カ月残しておいてあとは押えるということになるから、今度はそれを三カ月分だけ残せばいいので、残りの三カ月分だけはこれをつかまえることができるという強制執行になっておるのだが、そのときに、片方の国税滞納処分が済めばこれは後の強制執行したものに全部移譲するのだということになると、三カ月の食い迷いが起る。つまり、差し押えできない分まで差し押えて移譲するということになれば、移譲された者はそれだけ利益になり差し押えされた君はそれだけ損害を受けるのだが、それが大蔵省とどういう打ち合せになっておるか。
○村上(朝)政府委員 この法律によりましても、民事訴訟法によって差し押えるものの範囲は民事訴訟法で許されたものだけに限るわけでありますから、本来差し押えの対象になっていない分につきましては引き継ぎを受けるという問題は起きない、かように考えます。
○古島委員 それでは全部の移譲ではないですね。その引き継ぎをするうちのある部分というものは、先に差し押えたものが国税滞納処分で差し押えた場合には、国税庁の方でその分だけを除いて引き渡す、あるいはまた、強制執行でやった場合には執行吏がその部分だけは除いて今度は引き渡す、こういうことになりますか。
○村上(朝)政府委員 かりに今お引きになりました例で申し上げますと、強制執行で三カ月分だけ差し押えが許されております場合に、三カ月一の差し押えがあった後に収税官吏が食料品を差し押えます場合には、六カ月までの分は差し押えられないわけでありますから、その本来差し押えの対象になっていないものにつきましては収税官吏に引き継ぐという問題が起きないかと考えるのであります。逆の、滞納処分が先にありました場合でも、滞納処分で差し押えになりました目的物件の中で民事訴訟法によって差し押えの許されるものだけにつきまして執行吏が差し押えするわけでありますので、続行命令によって引き継ぎをいたします場合には、民事訴訟法によって差し押えが許される、従って差し押えの行われておる分だけを引き継げばいい、かように考えます。
○古島委員 一方が多く差し押えをした場合にはどうなります。片方ではすぐ引き継がなければならぬのだが、多く差し押えをしたのだから多い部分も全部引き渡すのですか。
○村上(朝)政府委員 初めに行われました差し押えで、かりに十のものを差し押えたといたします。その場合に、あとの差し押えではそのうち八つしか差し押えが許されないといたしますと、重複差し押えは八つだけについて行われるわけであります。続行命令がありました場合に、収税官吏から執行吏に引き渡しますのは、重複差し押えの対象になったものだけでありますから、そのうちの八個だけを引き継げばいい、こういうことになります。
○古島委員 そこで、大蔵省と打合せをして、大蔵省でそういうふうな譲歩をすればそれができるが、この法律で大蔵省を拘束することはできないと私は思う。これはもそっと押えられるのだが押えることができなかったので、押えることができなかった分をまた押えておる、そうしてその分を引き継ぐということになれば、今度は金銭上の計算をせねばならぬ。特に計算をしなければ引き渡しができないようなことでは、かえってめんどうを重ねるだけで、何らの利益がないと私は思っておりますが、そんなことはありませんか。
○村上(朝)政府委員 この法律案がかりに成立施行されますと、もとより大蔵当局もこれに拘束されることは当然でございまして、ただ、運用上裁判所側の執行機関と収税官吏との間にいろいろ打ち合せを要する問題が起きるかと存じておりますが、これは、将来この法律が施行になる際には、十分裁判所当局と大蔵その他関係当局との間で事務の打ち合せが行われて、円滑な施行をはかることになる、かように考えております。
○古島委員 いつまでも押し問答をしましても尽きない問題であります。民事局長は自分の想定したいいかげんなことを言います。私はこの法律を根拠に置いて申し上げておるのでありますから、いつになっても尽きません。
 そこで、やむを得ないから次に承わりますが、あなたが予想しておる滞納処分の続行あるいは強制執行の続行とはどういうことを言っておられますか。
○村上(朝)政府委員 強制執行の続行と申しますのは、初めに滞納処分が行われまして、その後民事訴訟法による差し押えがありました場合には、強制執行の手続が差し押えましたままの状態で進行しないわけであります。滞納処分が解除になるまでは強制執行の手続は進行しない状態にあるわけでありますが、裁判所が続行決定をいたしますと、強制執行の手続が進行することになりまして、滞納処分の手続は進行しない、そういう効果を持つものと考えております。
○古島委員 滞納処分の続行というのは、少くとも同一の税金で一緒に差し押えたものをまた継続してやるというのであろうと私は思う。また、強制執行の続行というのは、一の債務名義で一部差し押えてあるが、一部足らないからそれをやるのが続行だ、こう思っておる。どうでございますか。それに間違いありませんか。
○村上(朝)政府委員 この法律で使っております強制執行の続行という言葉は、差し押えられたままの状態で進行していない強制執行の手続を、その後の手続を進行させることを強制執行の続行と申しておりますし、滞納処分の続行という言葉は、まず強制執行が行われまして、その後滞納処分が行われた場合に、強制執行手続が終了しない限りは滞納処分の手続が進行をしないわけでございますので、その滞納処分を進行することを続行と申しております。
○古島委員 法案にはそう書いてございます。法案にはそう書いてあるが、法案の字句についてこれを確定しておかねばならぬ。つまり、同一債務名義で一部差し押えを強制執行でやったが、その一部債務名義が残っておるから、その部分をやるのが続行であり、また大蔵省関係の滞納処分でいく場合も、源泉課税に対する税金が残っておって、それに今度は所得税に対してこれを執行することは続行ではない。別の債務名義でやる。また、片方の強制執行にしても、どこの裁判所の何十年のワの第何号、いつくれた執行文、この確定したる債務名義に基いて執行する、こういうことになる。それで、ほかの者がまた行って今度は東京の執行文と――同じ東京であっても横浜であってもかまわぬが、ほかの債務名義の違う君が行った場合は、これは続行ではない。一つの債務名義で行かなければどっちにしてもならぬ、こう思うのですが、一個の債務名義であるものを続行といい、ほかの債務名義で行くものは続行ではないと考えるが、どうか。
○村上(朝)政府委員 この法律に使っております続行という言葉は、古島委員の御意見の通りの意味でございます。
○古島委員 そうすれば、同じ債務名義でなくんばならぬということになれば、それ々引き継ぐとか、その売却その他の手続の終了する前に続行ということは自由にできるわけですね。たとえば、大蔵省で、十万円の源泉課税の税金がたまっておる、これを押える。その場合に、八万円しか押えられないから、残りの二万円はほかのもので、その日は差し押えしないが、今度はその翌日押えるとか数日置いて押える、これは自由にできます。また、片方が同一債務名義である場合には、差し押え物件が一部うちばであるというような場合は、債務名義の残りの部分でまた差し押えることができる。これはできますね。できるにかかわらず、今度はそれができぬようなことになるんじゃないか。ことさらに裁判所の決定を待つ。国税徴収法によって徴収する場合には、足らなくんば幾度でもやれるわけです。また、強制執行でも、一ぺん債務名義の確定の正本を狩っておれば幾らでもできるわけです。ところが、この法律が出たがために、ことさらに裁判所の続行の決定を待たねばならぬことになる。そこで、大蔵省も、自由にできたものが、今度はこの法律ができたがために裁判所に持っていって続行の申請をせねばならぬ。一般の債権者もそうです。続行の申請をせねばならぬ。ただ執行吏に言えば幾らでも継続してやれるものを、今度はこの法律が出たがためにことさらにそういうふうな申請の決定を待たねばならぬということになる。その決定もいつでももらえるのではない。裁判所が相当と認めた場合のみ出す。こうなれば、この法律は債権の執行についても非常な不利益を与えるのではないか、その点いかがですか。
○村上(朝)政府委員 この法律は同じ財産について滞納処分の差し押えと強制執行とが競合して行われる場合の調整を考えておるのでありまして、本来滞納処分で差し押えられていない財産について私債権者が民事訴訟法による同じ債務名義に基いて他の財産を差し押えることは現在と少しも変りはない、かように考えております。
○古島委員 そんなばかばかしいことを言うものじゃないですよ。一方で差し押えてあるものを押えるというのが前提でこの問答をしておるのです。一方で差し押えたもの、差し押え物件がある、これを押えることは自由です。これは何ら問題は起らない。それは差し押えでないのです。それは今までの規定で十分できるのです。差し押えてあるものにさらに差し押えができるということがこの法律の骨子じゃないですか。その問答をしておるのだから、差し押えたものというのでしょう。たとえば、一つの物件が十万円するものを、八万円だけの源泉課税であるからこれは八万円だけ押える。この残りの二万円を押えるということは従来でも許されたのです。ところが、そうではない。この十万円のものを十万円押えておるが、それに向ってまた押える、こういうことになる。そうなると、この続行というものと大へん違ってくるのです。全部を押えるということになれば、続行ということはそのものに向って押えるのだから、十万円の物件を八万円で押えても、これは一向差しつかえないのです。片方の強制執行もそうです。ところが、そうではなくて続行をするということは、少くとも一個の債務名義の額に達しないようなものを抑えることが続行です。また国税滞納処分の方でも、その税金に足りない分、つまり、言えば、十万円の滞納があって十万円押えなければならぬけれども、八万円のものしかないから、残りの二万円を押えよう、両方合せて十万円だけ押えようというのが続行でしょう。そうすれば、この続行という問題が大へん誤まってくる。つまり、言へば、今までは自由にできた。国税徴収法でその金額に達するまでは幾度でも押えることができた。また、強制執行も、一個の債務名義があれば、その債務名義額に達するまでの間は幾らでも押えることができた。ところが、この法律ができたがために、今度は次の差し押えをするときには特に裁判所の続行の決定を待たなければならぬということになれば、その決定を受けるだけむだなことではないか。ことに、国税庁の徴収のごときは、それがために非常な弊害を受けると私は思っておりますから承わっておるのですが、そんなことはありませんか。
○村上(朝)政府委員 十万円の債権のうち八万円だけ差し押えて、残り二万円についてさらに他の財産について差し押えをするということは、現在も自由にできますし、この法律が施行になりましても自由にできることになっております。また、すでに強制執行法による差し押えが十万円の財産について行われております場合におきましても、この法律ができますと、収税官吏はその財産全部について徴税上必要な限度で差し押えができることになるわけであります。現在以上に不便になるということは、ちょっと考えられないのであります。
○古島委員 どうもふに落ちぬですね。だから初めに聞いておるじゃないですか。滞納処分の続行とはいかなることをいうか、強制執行の続行とばいかなることをいうか。そうすると、あなたのお答えは、滞納処分の続行とは、その滞納処分をした一個の滞納、つまり所得税なら所得税、あるいは源泉課税なら源泉課税そのものについて継続して差し押えをするのが続行だ、強制執行の続行とは、一個の債務名義の一部は執行したが一部まだ残っておるという場合に、これを続行する場合を強制執行の続行という、こう定義が下った。その定義が下ると、従来そういうことは自由に国税庁でもやることができ、あるいは執行吏もこれを執行することができたにかかわらず、この法律のためにことさらに申請をして続行の決定を受ける、こういうことだけよけいなことじゃないか、これがためにかえって債権者は続行するための不利益を受ける、国税庁はこれがために滞納処分の不利益を貫ける部分をいかにして救済するか、そんな不利益が起るか起らぬか、これの答弁を聞いておるわけです。
○村上(朝)政府委員 続行という言葉の意味についての説明が十分でなかったかと思いますが、同一債務名義の一部について執行をし、さらに他の部分について執行することを続行と申しておるのではないのでございまして、強制執行と滞納処分という二つの手続が並行して行われることになるわけでございますので、先に行われた手続の方を進行し、あとに行われた手続の方が、差し押えだけをして、あと手続を進行しない状態にまず置かれるわけであります。この進行しておる方の手続をとめて、とまっていた方の手続を進行するということを続行と申しておるわけであります。つまり、従来とまっていた手続を続けて進行するわけでございますので、これを続行と呼んでおるわけでございます。
○古島委員 民事局長のお答えによれば、滞納処分の続行ではなくて、滞納処分の活動ではないですか。滞納処分の活動ですよ。また、強制執行にしても、続行ではない。続行とは読んで字のごとく続いて行う。一ぺん押えておるけれども、この債務名義でまた続いて行うからこれを続行というので、この債務名義で抑えた分が売れるか売れぬかというのは、これは活動です。この活動と続行と間違っては困る。もし誤まっておるならば続行という文字を削らなくんば、とうていこういうようなことは納得できない。一般に事務家は、この強制執行の続行というのは、同一債務名義で続いて二度も三度も押えることを続行といっておる。また、国税庁にしても、滞納処分で一つの源泉課税なら源泉課税、あるいは所得税なら所得税の滞納について一個のものでやっておるが、うちばであるからこれをさらにやる、こういうのが続行です。あなたは、続行と滞納処分の差し押えたものの活動、これを誤まっておるのではないですか。誤まりませんか。
○村上(朝)政府委員 あるいは言葉が不適当だという御批判はあるかと思いますが、この法律案に使っております続行という言葉の意味は、古島委員のおっしゃる、とまっていた手続が活動することを続行といっておるわけであります。
○古島委員 それでは一般の強制執行をやる人あるいは国税滞納処分をやる人の従来の通念に反することであるから、この点改めることにあなたの方は同意をいたしますね。
○村上(朝)政府委員 普通、提出されておりました手続を進める場合に、続行という言葉がそれほど不適当な言葉だとも私ども考えておりませんが、他に適切な言葉がありますれば、御修正になりますことにはむろん異存はございません。
○古島委員 あなたも法律家であり、委員の方も多くは法律家であります。その法律家同士が寄って、こういう一般に従来使っておるような続行というのと別の意味における続行だ、そういうふうなことが初めてこの法案に割り込んできたのです割り込んでくるというようなことは、かえって従来の法律を非常な難解なものにし、この法律をして非常な難解なものにすると私は思っておりますが、それならば、かえって、続行の申請をするというようなこと、続行の決定を受けるというようなことをなくしたらどうですか。――全部なくしたら。
○村上(朝)政府委員 この法律案に使われておりますような意味の続行という言葉が奇異な感じを与えるというお言葉でございましたが、実は、民事訴訟法の五百四十七条あたりにも、第二項に、「強制執行ヲ続行ス可キコトヲ命」ずるというような言葉が使ってございますが、これは停止された強制執行の手続を進行することを続行と申しておる一つの例であろうかと思います。
 この続行の申請とか続行決定とかいう手続をやめてはどうかというお言葉でございますが、帰納処分の手続と強制執行の手続と二つ同じ財産について開始しております場合に、それを他の手続の方に移行いたします場合、果して移行することが相当であるかどうかということを裁判所の判断によってきめることが適当だと思いますので、申請によって裁判所が続行すべきかどうかをきめるということが適当であろう、かように考えております。
○古島委員 この五百四十七条の続行というのは、これは一投に今まで停止しておったのをまた開始してやるというのを続行と言うのです。これは差し押えたもののその続行です。あなたのこの法案に使っておる続行というのは、その債務名義で一応差し押えをしたが、その次の差し押えをするということに聞えるのです。停止したものをやるというのじゃないのです。差し押えを続行する、また、国税滞納処分、この滞納処分を続行するということである。やめておいたのをやるのを通俗に続行と言うのは、これはわかるのです。そうでない。あらためてやる分までこれを続行と混同して全部同じようなことに使ってある。そうすると、今までにわれわれの使っておる強制執行の続行の通念と、またあなたのこの法案に使った続行とは意味が違うことになる。そこで、長い間法律家の使っておった続行の意味にこれをとられては大へんだから、この続行という言葉をほかに変えねばならぬ。
 また、国税庁の方から言えば、今までは裁判所のやっかいにならずに国税滞納処分はできた。ところが、この法律ができたがために、あらためて今度は裁判所のやっかいにならねばならぬということが起ってくる。その事態を引き起すということが、この法律をこさえるための弊害ではないか、それは弊害にならぬか、また国税庁の方ではそれに同意しているのかどうか、このことを聞いておる。
○村上(朝)政府委員 たびたび繰り返して恐縮でございますか、この法律案に用いられております続行という言葉は、一つの債務名義に基いてすでに一たん差し押えをして、さらに他の財産について差し押えをするということを言っておるのではないのでありまして、条文をごらん下さればわかりますように、第三条におきまして、まず滞納処分による差し押えのされておる財産についても強制執行による差し押えができると申しました。次に、第四条で、「競売その他強制執行による売却のための手続は、滞納処分による差押が解除された後でなければ、することができない。」ということになっております。当該財産に対する強制執行の手続が、差し押え以後の手続はその規定によって停止された状態になっているわけでございます。それを進行するという意味で続行という言葉を使っておるわけであります。
○古島委員 それは初めからわかっているのですよ。きのうの質問でその点はわかっている。わかっているが、おそらく、一般の強制執行の続行というようなことは、停止された分を実行することよりは、不足分のさらに差し押えをする、同一債務名義で押えるということが続行といわれておる。国税滞納処分でも、一ぺん差し押えをしたが、そのまま何かの調子でその実行を、つまり競売、公売をすることを停止しておいて、それをやることは、これはもう何ら議論はないのです。ただ、混同した言葉をここに使うと、一般のわれわれの考えておった通念とこの法律の用いる続行と大へん違ってくるが、その点をどうするか。そうして、かつ、国税庁の方では、自由にやれたものが今度は裁判所の許可を受けねばならぬ。また、一般債権者から言うても、従来は自由に続行はやれたものが、この法律ができるがために許可を受けねばならぬ。こういうよけいな手数を経るということは、これは債権者あるいは国税庁から言えば大へん不利益である。私は弊害が起るからこれを聞いているのですが、その弊害が起った場合に、国税庁は唯々としてこれを承諾しておるのか、従来承諾したのか、この点です。ここを承わっておきたい。従来はそれだけの手数をしないでもできたのです。ところが、この法律ができると、続行の申請をして、その続行をすることが必要だと思えば裁判所は続行の決定をする。そうでなくんばしない。そうすると、裁判所によって抑制されることになるのです。この点が大へん不自由だと思うから聞いているのですが、こんな下自由はありませんか。国税庁はこれを承諾しておるのか。
○村上(朝)政府委員 従来、強制執行法によって差し押えられた財産につきましては、収税官吏は滞納処分による差し押えはできないという解釈でございます。この法律によりまして、さらに重複して差し押えをすることができることになるわけでありますが、しかし、差し押えの後の手続は進行いたしません。それを、収税官吏の方の手続、すなわち国税滞納処分の手続を進行させていこう、強制執行法の手続をとめて滞納処分の手続を進行させるために、続行承認の決定を受けるわけでございますが、従来、先ほど引かれました例で申しますと、十万円の税金のうち八万円について差し押えが来た、続いて残りの二万円について差し押えをするということが自由にできますことは、この法律ができましても現在と同様であると思います。
○古島委員 そこで、私は承わりたい。国税庁で滞納処分をする場合は、従来徴収吏員を派して財産の差し押えをする。それで競売を何日にきめるということで競売をしてきた。ところが、この法律がありますと、ほかに今度は一般の強制執行はできないから、やはり裁判所に申請せねばならぬ。よけいな手数です。また、一般の債権者から言うならば、従来は、差し押えてあったものは、これをどこへ売ろうと、あるいは売り日をきめようと、または債務名義の満足するまでさらに差し押えを進めようと、これは執行吏の手によって自由にできた。裁判所の決定を待って後できるということになれば、それだけ債権者も不利益をこうむる。もしくはまた国税庁でもそれだけの不利益をこうむることになるが、この法律提出には、やはり、一般債権者の方はいたし方がありませんが、国税庁の方は同じ役所ですから、その同意を得て出しておるのか、同意を得ずして、そのうち同意を得るつもりで出しておるのか、その点を一つ。
○村上(朝)政府委員 もとより、政府提案でございますので、政府関係当局の一致した意見に基きまして提案したわけでございます。ただいま、従来収税官吏が差し押えをすれば、それは裁判所の裁判などを受けなくても自由に公売することができたのが、この法律ができますと裁判所の決定を受けなければ公売することができないようになるのじゃないかというお尋ねがありましたけれども、滞納処分による差し押えがまず行われた場合におきましては、そのまま滞納処分の手続を進行していくわけでございまして、公売いたしまして、税金、督促手数料等を差し引きまして、残余がございますればそれはあとに差し押えをした執行吏の方に引き渡すというだけのことでございます。ただ、強制執行の方が先にありました場合に、現在ですと収税官吏は差し押えができないわけでありますが、この法律案によりまして収税官吏があとから差し押えをすることもできるのでありますけれども、その場合はすでに強制執行が進行しておるわけでありますから、勝手に進行することはできない。強制執行が何らかの事情で進まないというような場合には、滞納処分の手続の方を進行させるために裁判所に続行承認の決定を受ける。こういう建前になっておるわけであります。
○古島委員 私はことさらにこの法律ができれば煩瑣になるという考えを持っております。
 それから、次に承わりたいのですが、「滞納処分による差押後に仮差押の執行をした不動産の滞納処分による売却代金について滞納者に交付すべき残余を生じたときは、収税官吏等は、これをその不動産に対する強制執行について管轄権を有する裁判所に交付しなければならない。」ということが書いてあります。その強制執行についての管轄権を有するというのは、不動産の管轄権ではありませんで、いかように遅くもその債務名義を発行したるその裁判所という意味ですか。
○村上(朝)政府委員 債務名義を出した裁判所という意味ではございませんで、通常不動産に対する強制執行の管轄裁判所は不動産所在地の裁判所になっております。通常の管轄裁判所という意味でございます。
○古島委員 不動産の所在地という意味でございますね。
○村上(朝)政府委員 そういうことになります。
○古島委員 あとは大臣に聞きたいと思いますので、そのときに譲ります。
○三田村委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 私は法の運用その他の方面の関係から二、三お聞きしたいと思います。
 最初に法務省にお聞きしたいのは、本法案は有体動産、不動産、船舶だけが対象になっておりまして、一般債権その他の財産は除外されておるが、これはどうして除外されたか。ことに、一般財産権について株券、そういうものが除外されておるのですが、これはどうしたわけか。もう一つは、自動車、航空機、建設機械、これはおのおの自動車抵当権、航空機抵当権、建設機械抵当権というのがあるわけですが、これを本法律案から除外した理由を承わりたい。
○村上(朝)政府委員 お尋ねになりました各種の財産の中で、株式は、民事訴訟法上有体動産として取り扱っておりますので、調整措置の対象になるのであります、自動車、航空機、建設機械は民事訴訟法の有体動産に対する執行手続によらないわけでございますので、これは除外しているわけでございます。また債権も調整の対象になっておりません。
 本来、この法案のねらいといたしますところは、租税の徴収と競合する場合における差し押え権実行上の支障を除こうとするものでありますので、強制執行の対象となるすべての財産を調整措置の対象とするのが筋合でありますが、なるべく早い機会に立法措置を講ずることが各方面から要望されておりますので、通常強制執行の対象とされるおもな財産であり、従って必要度の高いもの、しかも現行制度の基礎の上で法律技術上調整の困難でないものに限定して立案したわけでございます。
 まず、債権についてこれを除外した理由を申し上げますと、金銭債権に対する差し押えは、滞納処分または強制執行のいずれの手続でありましても、第三債務者に対する差し押えの通知等によりまして効力が生じますので、差し押えを一般に公示するということがございません。従いまして、滞納処分と強制執行と執行機関を異にしておりまして、相互に他の執行機関による差し押えが行われたことがわからない場合が多いので、現在一たん差し押え命令の出た債権について他の債権者のために差し押え及び転付命令が出るという事例もございまして、これも将来の一つの問題としては検討を要すると思うのでありますが、債権に対する重複差し押えの場合の対策を再検討した上でなければ、直ちに滞納処分と強制執行の調整措置の対象として取り上げることは技術的にもむずかしいのであります。また、一面金銭債権を差し押えます場合には債権額の限度で差し押えるのが普通でありまして、たとえば百万円の債権について十万円の税金のために差し押えられているという場合には、百万円のうち十万円の限度だけ差し押えられるのでありますから、残りの九十万円については債権者が差し押えができるということで、必ずしも調整の必要度も動産、不動産の場合と比較して大きくないのであります。
 自動車につきましては、調整措置を講ずる実益は少くないと存じますが、これに対する滞納処分の手続に関しましては、国税徴収法には差し押えの登録に関する規定が一カ条設けられているだけでございます。裁判所の方の執行手続及び競売手続につきましては詳細な手続規定が最高裁判所規則で設けられておりますけれども、本来、自動車のような動産について抵当制度を設け、また不動産に準ずる執行の手続を設けましたことは初めての例であった関係もありまして、手続の進行上必要な占有の取得が必ずしも容易でない、その他の事情で、執行及び競売の手続が必ずしも円滑にいってないような実情であるように輝いておりますので、関係法規の再検討を必要とすると考えております。自動車についての調整措置も、これら過去の実施の実績に応じまして執行手続を十分に検討した上で調整手続を考えるということが適当かと考えまして、今回は対象としてございません。
○三田村委員長 坂本君にお諮りいたしますが、先刻の古島君の法務大臣に対する質問が留保になっております。法務大臣は予算委員会の方で質疑がまだ残っておるそうでありますから、この際古島君の質疑を続行いたしたいと存じます。
○古島委員 私は、お忙しいところをおいでになった法務大臣ですから、ごく簡略に承わりたいと思います。
 今こちらで審議いたしております法案につきまして、二重差し押えを許さなかったのを許すようにしたい、つまり、私の考えからすれば、二重差し押えが許されてよろしいものだ、さらに、強制執行法にも、国税徴収法にも、差し押えを許さないという法条はない、法条がない以上はこれをやっても差しつかえないのだという持論であります。しかし、多くの学者、実際等では、二重差し押えを許さないということになっております。ただ、二重差し押えを許さないといたしましても、国税徴収法の三十条によれば、その売得金の一部が残った場合においてはこれを債権者のために供託をすると書いてあります。そこで、国税滞納処分のみでなく、ほかの債権者もあるはずである。それも予想しておるのです。債権、抵当権者とか、もちろん予想の範囲でありますが、その他の債権も当然これは予想している規定である。また、一方において、民事訴訟法の六百四十五条に三重競売を許さないということかあるが、二重競売は事実上許せる問題ではないか、――一ぺん競売をしてしまえば第三者の手に移るのだから、競売はできないにきまっている。ここは二軍差し押えの意味にとり、また二軍差し押えの可能な範囲に考えるならば、そしてもしこの法条がじゃまだというならば、民事訴訟法の六百四十五条の修正及び国税徴収法の第三十条の修正のみをもって、この法律のような、まるで滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律というような法成寺入道式の長い名前をつけたこういう法条を特に出す必要はない、特に出したがために幾分かの損害が国税徴収の面においても強制執行の面においても起るんだが、そういう損害なくしてやる場合には、民事訴訟法の一部と国税徴収法の三十条を訂正すればこれができる、こう考えておりますが、この法律を撤回してこの国税徴収法の一部及び民事訴訟法の一部を改正するという法律に出し直すお考えはないか。
○中村国務大臣 古島さんから非常に詳細な点にわたって御指摘がございました。なるほど、民事訴訟法においてもあるいは国税徴収法においても、一方からすでに差し押えの行われているものについて、他方から差し押えをしてはならぬという禁止の規定もございませんし、一応可能なように見えるのであります。しかし、これが明治以来一方の差し押えのある場合には二重の差し押えができないという解釈をそれぞれとって参りましたのは、結局するのに、それが競合した場合における調整の方法がない、調整規定がどこにも設けられていない、それだからこれはやはりしないのが正しいんだ、こういう解釈に立脚して今日に至っておるものと思うのであります。そこで、問題は、今御指摘のように、それでは訴訟法なり国税徴収法なりの一部分の部分改正を行なってやればこの法律を新たに設けなくてもできるではないかということも一つの構想として成り立つと思うのであります。しかしながら、この法案の中に盛り込んでございますように、続行の申請がございました場合にそれを合理化して無理のないように措置をとっていこうというのには、裁判官が裁判所の設けた一定の規則に従って合理的な裁きをするということが必要でございますし、その他競合をした場合に競合を裁いていくいろいろの諸規定が入用なわけであります。従いまして、これらを民事訴訟法あるいは国税徴収法の中へ盛り込むということになりますと、非常に大量の改正になりまして、しかも、今までそういうことがどこにもなかったものを織り込んでいくということになりますと、既存の法律をかえって混乱せしめるおそれもございますから、むしろこうした不便が長年続いて参って非難の対象にもなっておったのでありますから、この際こういう特殊の立法をいたしまして、こういう競合するものについては特殊の立法によって合理的な裁きと調整をはかっていく方がよかろう、こういう見解に立ちまして提案をいたしておるような次第でありますから、せっかくでございますが、古島議員のお説に従うことができないような見地に立っておる次第でございます。どうぞ一つそういう意味において御検討をわずらわしたいと思います。
○古島委員 今日本ではあまり法律が多過ぎる。わずかに改正をすれば従来の法律で間に合うものを新たに単行法を設けるものであるから、法律が非常に多くなってしまって、お互いが使っておる六法全書にしても、憲法や商法あるいは民事訴訟法、刑事訴訟法、民法、刑法、こういうふうなものが骨子になって六法と言われておるんですが、そんなものは今のこの法典から言うとほんとうの一部になってしまっている。それがために中華民国の人たちなどは日本を法匪、法律の匪賊だと言う。あまりに法律が多過ぎる。あとからあとから法律が出て参って、一部分の修正で間に合うべきものでもこれを単行法で出すというようなことになっておるから、実際困っておる。これらに向っては、法務大臣は、少くとも法典の整理統合というようなことで一大委員会を設けて、あらためてこれを整理統合するというような気分はありませんか。
○中村国務大臣 お話の点につきましては、民事訴訟法の改正等を行うような基本法典の改正を行う場合には、この特殊立法が行われておりましても、その中に織り込むことがあるいはよろしいのではないか、私も同じような感じを持つのであります。そこで、現在法務省といたしましては、刑法、商法等とあわせまして、民事訴訟法につきましても、重要な基本法典として、これの改善については最高顧問室の若松顧問に主として御研究をいただいております。しかしながら、こういう基本法典の改善をするということは一朝一夕にはなかなかできませんから、専門の人に相当掘り下げた検討をしていただいて、できたものはやはり法制審議会等にかけて十分に論議を尽さなければならない問題であると思います。従いまして、短日月の間にこれをどうするということは私どもの立場で申しかねますが、とにかく、そういう基本法典の一つである民事訴訟法についても目下岩松顧問に主として研究をしていただいておるという段階になっておるわけでございまして、将来そういうものが実現する場合におきましては、この種の単行法を民事訴訟法の中に織り込むということも可能であろうと思いますし、あるいは建前としては御指摘の通りそれが正しいのではないかと思っております。しかし、今の段階におきましては、先ほど申し上げましたように、もし訴訟法を改正してこの種の要素を織り込むということになりますと、同様の極暑のことを同じ序列の条文に置きます場合には、第何条の二から十幾つまであるいは起さなければ織り込めないということにもなりますので、そういう基本法典の体裁の上から言いましても、そういうことを行いますよりは、この場合においてはまずとりあえずこの種の調整をはかります特殊の立法として単行法で間に合せる以外にはないんじゃないか、かような見地に立っておる次第でございます。
○古島委員 民事法におきましても、刑事法においても、ほんとうに同じような法律、どこへでも持っていけるような法律が盛んに出て参るんです。そこで、歴代の法相に向って私はそのことを注文をいたし、ことに、この前の牧野法務大臣に対しては刑事訴訟法の改正等で進言をいたしました。ところが、歴代の大臣が御説ごもっともだからそのようにやると言うて、もう二十何年間同様なことで今日まできております。中村法務大臣とは私生死をともにしたような間柄でありますから、あんたには今後どうしても一大功績をあげていただきたい。どうもただ法務大臣になっただけじゃおもしろくない。中村氏が法務大臣になったがためにこれだけの功績を残したということが末代までも伝えられるようなことにやっていただきたいと思う。それがためには、民法におきましても賃貸借の章があるにかかわらず、また借地法、借家法等がある。これらはどこへでも持っていける。ことに、刑事法などは、私はちょっと見たんですからあまりつぶさにこれを調べたわけじゃございませんが、それでも驚いたことには、刑事法については刑法が一番主でありますが、刑法があり、軽犯罪法がある、法人ノ役員処罰ニ関スル法律がある、外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律がある、通貨及証券模造取締法がある、紙幣類似証券取締法がある、印紙犯罪処罰法があるかと思うと、また印紙等模造取締法というものがある、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律、決闘罪ニ関スル件というのがあると思うと、暴力行為等処罰ニ関スル法律がある、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律、爆発物取締罰則、婦女に売春をさせた者等の処罰に関する勅令というのがあるが、これは、売春防止法に統合されておるはずです。しかし、その他にも盛んにこういうふうな類似のどこへでも持っていけるような法律があるのだが、これこそは整理をして、ほんとうにまじめにやっていかなければ、われわれ実務家の方では繁雑で非常に参ってしまう。これをやるということは、ほかのつまらないことに手を染めるよりは、こうもこしらえてほんとうにまじめにやれば一年か二年でできることだと思うのですから、どうか法務大臣はぜひこれをやっていただきたいのであります。御説ごもっともで、やろうというだけのただ一片のここでの御答弁でなく、真剣にそのことを考えておいででありますかどうかを承わっておきたいのであります。
○中村国務大臣 私どもといたしましては、その場限りのものの考え方でなく、ほんとうに真剣にやって参りたいと思います。ただ、御指摘になりました特別法がたくさんございますが、これらは、私どもの見方から言いましても、確かに実務をとる者にとっては処罰法規が刑法以外にたくさんにわたっておるということは非常な不便が二画にありますことは事実でございます。ただ、しかし、考えようによりましては、刑法というものは刑事法規の刑罰実体法としての基本法典でございますから、特殊の場面、特殊の世相に対する処置としてやる場合に、今御指摘になりましたような各方面にわたる諸法律を実体法としての基本法典である刑法に直ちに盛り込んでいいかどうかということについては、私どもも若干の疑問を実は持っておるのでございます。刑法の改正ということは、すでに戦前から着手されまして、御承知の通り一ぺん改正仮案もできたんですが、戦争が激化いたしまして仮案もそのまま放棄されてしまったような状態であり、その後戦後は社会情勢も変り、国民感情も変って参っておりますし、国の基本法である刑法も変ってきておりますので、やはり時代に即応する刑法の改正ということは実際真剣に取っ組んでやらなければならない重要な問題であると思います。幸い前任者でございました牧野法務大臣が法務省にこうした基本法典を研究するための特別顧問制度を設けて下さいましたので、私どもとしては、この特別顧問の人たちに一そう御尽力を願いまして、できるだけすみやかにこれらの基本法典の時代に即応する改善案を作り上げたい、かように存じております。御承知の通り、刑罰法規の実体法である刑法の研究につきましては、小野先生が特別顧問として今専心熱心におやり下さっておりまして、これはできるだけ近いうちに一つの成案を得、今お話のございましたような大規模な審議会等にかけまして、そして具体化を進めて参りたい、かように存じております。
 ただ、私ども、ほかの行政と違いまして、法務省を担当いたしておる者といたしましては、決して功を急いではならないのでありまして、ほかの行政府と違いまして、法務省の担当しております仕事はなかなか――一朝一夕で片づくものもあるにはありますが、なかなかそうではない、腰を据えて、決して功をあせらずにまとめていくべき案件も非常に多いわけでございますから、そういう気持で、決して功をあせらないと同時に、さりとてなまけるのではなく真剣にこれと取っ組んで、その成案を得、時代に即応する改正を実現するように努めて参りたい、かように考えております。
○古島委員 法典の製作に向ってはなかなか骨の折れることだと存ずるのであります。しかし、今までのやり方を見ますと、法文の書きようからいたしましても、専門家でもなお解釈のしにくいような法律がまま出て参るのであります。本日議案になっておりますこの滞納処分と強制執行等というような法律にいたしましても、今の強制執行の続行だ、あるいは滞納処分の続行だというような文字で、どうしても疑義の晴れないような難解なものを使っております。今後はあなた方の作る法律は新制中学の卒業生らでも読んで意味がわかるようなものを作っていただきたい。専門家でもなおこれがわからないような法律を作った時分には、かえってあとで疑義が出るだけであります。論争の種になるだけであります。民事訴訟のこの六百四十四条のこういうものでも、そっとわかりやすく書いておけば、今日二重差し押えが許されるとか許されないとかいうような議論は出て参らない。そこで、今後はあくまでも新制中学の卒業生らにも理解のできるような法律にやっていただきたい。
 たとえば、これは既存の法律でありますからいたし方がないが、国税徴収法の三十一条は一から幾つまでか、だいぶあります。これは、あなたの仰せになったようにあらためてほかの法律をここへ巻き込んだがために一、二、三、四ができたのではない。こしらえるときからこういうふうになってしまったと思う。これにおいても、滞納処分を受けた場合において再調査を願われる、再調査を一カ月以内に願い出せ、そうして今度は審査は別の官庁に向ってまた一カ月以内にやれという。こういうふうなことをやって、返事が六カ月来なくんば訴訟が起せる。また審査を願っても三カ月黙っておった場合には訴えが起せる。そうして、しまいの方へ持っていくと、全部つっくるんで、再調査を願い出したときから九ヵ月過ぎると、もう訴えは絶対にできない、つまり言えば、これは不変期間だということを次の項で書いております。こういうことにすれば、一カ月待っておって、来ないというので交渉を開始します。そのうちにまた審査を請求しようと思っても、もう一カ月過ぎちゃったからできない。あるいはまた、六カ月たってその交渉をしておりますと、今度は今の九カ月が到達する。わずか一週間か十日前になると、そうやかましく言うのなら裁判所に訴えたらよかろう、ここで交渉してもだめだから裁判所に訴えろと、こうすてばちに税務署が出る。それではというので弁護士のところにかけつけて訴えを起そうとすると、もうすでに再調査の申し出をしてから九カ月を過ぎたからだめだと断わられる。これでは、法律に債務者を救済する方法を設けておきましても、何にもならないことになる。これらは大蔵省の方とよく相談をいたして、もそっとわかりやすく簡便な法律を作っていただきたいと私は思うのであります。今後あなたがやる間においてどうかよく交渉をしていただきたいと思いますが、その御意見ありますかどうか、ちょっと伺いたい。
○中村国務大臣 ただいま御指摘のありました国税徴収法関係の点につきましては、私も実は非常な疑義を持っておりまして、かつて党におりましたころ、衆議院の法制局と何とか改正をする道はないかと実は相談をいたし、事務を直接担当しております大蔵当局とも協議をした経験もございますので、将来適当な機会がございましたら、国税徴収法は非常は難解な条文になっておりますから、これは私どもの方の主管というよりはむしろ大蔵省の主税局が中心になって立案をする法案ということになりますが、私どもとしては実は同じような疑問を持っている一人でありますので、できるだけ一般の人にもわかりやすくし、納税者が難解のために手続を怠ったりあるいは権利を失ったりすることのないような措置を講ずることについては、私どもの立場としてできる限りの努力をいたしたい、かように考えております。
○坂本委員 せっかく大臣が見えましたから、一つだけお聞きしておきます。資料に出ております「国税徴収法規準用法令調」いうのがあります。内容についてはあとで聞きますけれども、これは七十七ばかりあるのですが、水道条例というのは明治二十三年の法律第九号、伝染病予防法は明治三十年法律第三十六号で、古島委員は別ですが、大臣もわれわれも生まれる前の法律です。さらに、行旅病人及行旅死亡人取扱というのが明治三十二年法律第九十三号。こういうように、この法律が施行になりますと、やはりこの七十七の法律が全部生きてきまして、あとで事務当局にお聞きしますが、租税・公費として優先すべき性質のものではないような、普通の債権と同じような性質のものもたくさんあるわけなんですが、この法律によってこういうたくさんの準用法令が出て参りますと、この法律についても、法律自身は簡単ですけれども、こういうのを加えますと相当込み入って、弁護士でもわからぬような法律なのです。ただいま古島委員が法律の整理の点について言われたのですが、この際こういう国税徴収法について、七十七もあるようなのをもっと整理してやったがいいじゃないかと思うのですが、大臣はこういう点についてどういうようにお考えですか。もっと整理しないと、この法律案ができても、明治三十年代からの法律を準用し適用される、こういうようなことになるわけですから、その点についての御意見を承わりたいと思います。
○中村国務大臣 なるほど非常にたくさんのものが国税徴収法の準用を受けておるわけでございますが、これはおそらく国税及び地方税関係、地方税に類する地方自治体の徴収金等収入に関係のあるものを税と同じ適用をさせよう、こういうことから起っておると思いますので、これの整理は、法務省一存でわれわれどうしようという考えも実はつきませんが、私どもとしては今後研究をしてみたいと思います。
○坂本委員 それではさっきの質問を続行いたします。
 債権その他の一般財産権――株式は動産ですからいいのですが、特許権なんかの問題、それから自動車は、動産の差し押えとして、一般債権として相当差し押えが行われておると思うのですが、航空機、建設機械というのは特別の抵当権がありますか。自動車は抵当権がありましてもやはり設定しないものは一般の動産として一般の競売が行われる。だから、これはやはり入れてもいいじゃないか、こう思うわけです。それから、債権についても、家賃なんかの点は国税徴収法の関係で一般債権の差し押えの取り立て命令類似の方法でやる場合があるわけです。脱法としては――脱法というか、運用というか、家屋の差し押えをしまして、そうして家屋の競売はせずに差し押えたままにして、その家賃を毎月とって滞納に充当する、こういう実質上は家賃の取り立て命令と同じような方法を行なっておるようなんですが、そういう点を考えて、債権その他の一般財産権もやはり対象にすべきじゃなかったか、こういうふうに考えられるのですが、その点の御意見を承わりたいと思います。
○村上(朝)政府委員 自動車は、自動車抵当法によって抵当権の設定されたものについての抵当権実行の手続はむろんでありますが、抵当権が設定されておりませんでも、登録した自動車につきましては、道路運送車両法によりまして強制執行はすべて最高裁判所規則の手続によるということになっておりまして、執行手続が一般の動産と違うことになっております。
 それから、ただいま債権について家賃の取り立て命令等の場合は調整措置が必要でないかという御質問でございましたが、債権の中にも調整措置が必要であり、また現行法上必ずしも困難でないものもございますが、債権は種類が非常にたくさんありまして、これらについて十分検討いたしませんと、簡単な規定では債権についての差し押えと滞納処分の調整措置というものは講じがたいような状況でございますので、次の機会に検討したいということで、この法律案は特に速急な提案を要望されておりました関係上、債権については除外されておるわけでございます。
○坂本委員 これは私もはっきりしていないのですが、自動車抵当法の管理と申しますか、不動産の抵当の場合の登記所みたいなもの、これは運輸省の方で取り扱っておるのですかどうですか、その点ちょっとお聞きしたい。
○山内政府委員 これは各地にあります自動車事務所で取り扱っております。
○坂本委員 そうすると、もう一つ、さっき民事局長の御答弁にありました自動車抵当法によらない自動車の競売、これは最高裁判所の規則によってやはり動産として扱うけれども、自動車事務所の方でこの動産の競売は取り扱っておるのか、その点をちょっと。
○村上(朝)政府委員 自動車の登録は自動車事務所でおやりになるわけでして、不動産について申しますとちょうど登記所に当る仕事を自動車事務所がやっております。執行手続そのものは最高裁判所規則の規定によりまして執行更及び執行裁判所がこれに当る、こういうことになっております。
○坂本委員 現在自動車の数が非常に多いのですが、自動車抵当法を相当利用しておるかどうか。自動車抵当権の設定は大体どのくらいの台数であるか、その点を承わっておきたい。
○山内政府委員 お答えいたします。階でございまして、抵当権設定の車両数は、二十八年度――二十七年度からこれが実施に入ったわけでございますが、本格的に入りましたのは二十八年度からでございます。二十八年度の抵当権設定の車両数は五万七千台でございましたが、三十年度におきましては六万二千台と相当ふえております。それから、滞納処分の嘱託というのは、先ほどからいろいろ御議論のありました国税徴収法の関係で参るわけでございますが、これにつきましては、二十八年度は一万八千台でございましたが、三十年度は三万台にふえておるわけでございます。もう一つ民事訴訟法関係の強制競売の申し立ての嘱託という私の方の登録事務があるわけでございます。これは数少うございまして、二十八年度は一千四十二台、三十年度におきましては一千三百十三台というのが私の方の持っております統計でございます。
○坂本委員 今の御説明によりますと、自動車抵当法の利用は六万台以上でありますし、普通の強制競売の方も千台以上ですが、そうすると、これに対しては滞納処分で競売になったという点もあるのではないかと思うのですが、その点はわかりませんでしょうか。
○山内政府委員 的確な数字はなかなかつかみにくいのでございますが、大体統計等から推定をいたしましてお答えをいたしますと、そう高い数字を示しておりません。ただいま言いました数字に合せて御説明申し上げますと、二十八年度抵当権設定の車両数五万七千台と言いましたが、その一・八%程度が競売をしたと推定をいたしております。三十年度におきましては、六万二千台抵当権の設定がありましたが、うち一・九%というふうに推定をいたしております。滞納処分の嘱託登記が二十八年度は二万八千台と申し上げましたが、うち強制執行いたしましたのが三%で、三十年度は三万台に対しまして三・四%というふうに推定をいたしております。民事訴訟関係の申し立ての嘱託に対しまして、われわれの方は移転登録という面で現われてくるわけであります。所有者が変る場合に移転登録という登録の事務としてわれわれの方に現われて参るわけでありますが、その数字をとりますと、先ほど二十八年度には一千四十二件と申し上げましたが、これに対して九十七件、三十年度におきましては一千三百十三台、うち百四十四台で、パーセンテージにいたしますと、約一%程度が移転登録に上ってきておる実数であると大体推定いたしております。
○坂本委員 民事局にお願いしたいのですが、自動車の一般の差し押え並びに自動車抵当法の競売の件数などから見まして、これはやはり入れたらいいのではないかと思われるのですが、この点いかがでございますか。
○村上(朝)政府委員 先ほど申し上げましたように、自動車につきましては調整の必要度は相当高いと思うのでございます。ただ、自動車のような動産に対する抵当制度いうものは、今までほとんど前例のない制度でありますために、これらに対する国税徴収なり強制執行あるいは抵当権執行の手続に関する法規をさらに実情に即したように検討する必要があると考えられますので、その手続の検討をいたしますまで調整の手続を差し控えたのでございますが、将来さらにこの法律案の改正をお願いいたしまして自動車等を調整の対象に加えるという必要が出てくるかと存じております。
○坂本委員 今あげられたような件数から見ましても一、私は当然入れるべきものだというふうに考えるのですが、それはそれにしまして、次に行きたいと思います。
 この国税滞納が、大蔵省の資料によりますと、昭和三十年度は要整理純滞納が一千五百六十四億三千八百万円です。差し押えを解除したものが四百七十億五千六百万円、それから、最後の方に来て、落札価額中税金に充当額は九億四千三百万円で、大体、千五百六十四億円もありまして、この滞納処分によって落札して税金に充当したのは九億四千三百万の僅少の額であるかどうか、その点いかがでございますか。
○飯田説明員 お手元の表でございますが、要整理純滞納千五百六十四億と申しますのは、三十年の年度当初から年度末までの間に新しくどんどん発生してきている滞納がございます。それと、それから二十九年度末で前年からの滞納の残高がありますが、それを合せまして、要するに三十年度にこなさなければいかぬという滞納の総額がここに出ているわけでございます。それから、財産差し押えと申しますのは八百十九億となっておりますが、結局、それ以外のものは、差し押え前に、足を運んだり文書で督促もいたしますが、そのほか慫慂もいたしまして、完納と申しますか税金が納まって参った。従いまして、その分については差し押え問題は起らないのであります。その残りが差し押えという段階に入ってきているわけであります。ところで、そのうち全部が公売あるいは落札というふうに移行するかというと、もちろんそうではないのでございまして、差し押えました後において、まあ強力な税金の納付の慫慂がそこにあったということになるわけであります。そこで、任意というわけではございませんが、そういう意味でやはり税金の納付が促進されて参るわけであります。そういうものは、一たん差し押えましたものを解除していくという段階になります。そういうものを解除するほかに、税金の納付が完全に済んでおらないけれども、納税の誠意が十分認められるし、計画的に税を納めるということが税務当局において十分確認ができるものにつきましては、別に徴収猶予とか、それから納付誓約とか、いろいろ緩和方策がありますが、そちらの面に移行して、一定の期間いわば請求を緩和する措置がとられております。かようなものにつきましては、別の分類になるものですから、ここからはずれてくるわけであります。この(C)の欄の差し押えを解除したものというのはそういう意味で、やや説明として不充分であります。完納になったもの以外に、別の分類に移行したものというようなものを含むのでありますから、そういうものはこの欄から落ちてくるのであります。従って、四百七十億というものを除きましたものが、結局財産引き揚げあるいは公売公告、公売執行という段階に入って参るわけでありますが、それでも直ちに全部が公売執行ということにはならないわけでありまして、公売公告の段階で、あるいは財産を引き揚げるというふうな段階で税金の収納があるという部分がさらにまた出て参ります。従いまして、そういうものは次の段階へ移行する必要はないことになりますので、自然に対象から落ちて参るというふうなわけでありまして、ここに公売公告二百四億とございますが、それが全部最後の段階までいくわけではございません。現に、その次の段階で、公売を執行したものというのはさらに減りまして、百六十五億というふうに減って参っております。結局執行までに至らないで目的を達しているというものがだんだん出てくるわけであります。その次に落札決定、これは公売しまして落札を決定したもの、その対象となった税金は七十七億ということになっております。
 ところで、御質問の要点は、おそらく、この七十七億のうち落札価額十一億九千八百万円とあるわけでありまして、落札決定したものに対して落札価額で十一億にしかすぎないじゃないか、この差についての御疑問ではないかというふうに思うわけでございます。それにはいろいろと理由がございますが、一番大きい理由は、結局常識的に考えまして二通りあると思います。まず、税務当局の差し押えが過小差し押え、つまり債務額に比較して非常に少額の部分しか押えていないのではないかという御疑問が出得るかと思います。この点に関しましては、まれにそういう例はありましても、十分な差し押えをやるように申してやっておりますので、まずないと思うのであります。つまり、他に財産があるにかかわらず一定の過小の部分しか押えておらないというふうなことはまずない。ここで大きな原因として想像できまするのは、結局差し押うべき財産が他にないというようなことで、七十七億円の滞納税金を対象とするもののうち公売による処分で落札に至るものは十一億、この差額というものは主として今申し上げた理由が大部分というふうに存じております。
○坂本委員 そこで、お聞きしたいのです。滞納処分の続行ということでいろいろ問題が起きておったようですが、本法律案ができますと、滞納処分の続行、そういう問題はどの段階で起るのですか。その点を伺っておきたいと思います。今おっしゃったように、公売公告したもの、公売執行したもの、落札決定したもの、こうありますが、このどの階段にこの法律の適用が出てきますか。
○村上(朝)政府委員 差し押えをいたしましてから落札に至るまでの間の段階でございますが、主として差し押えから公売開始までの段階のものじゃないかと考えております。
○坂本委員 そうしますと、結局八百十九億二千四百万円、この段階から本件の法律の適用を受けるようになると思うのですが、これは財産差し押えの債権額なんですね。これによって滞納処分の差し押えをやるわけでしょう。先ほど、落札価額が十一億であまりに少いというのは差し押うべき財産がほかにない、過小差し押えの点があるということを申されましたが、大体一千五百六十四億も滞納者がある中に、わずか十一億程度の財産しかない、こういうふうにも考えられるのです。滞納する者の財産はわずか十一億しかないじゃないか、こういうふうにも考えられますが、その点はどうですか。
○飯田説明員 そういう御疑問があってはいけないと思いまして、私、むしろくどく申し上げたつもりでございましたが、なお説明が不十分だったかと思います。結局要整理純滞納千五百六十四億という、つまり最後の段階に至るまでに、任意ではありませんが、次の強行手段に移る前に税が入ってくるという部分が多い。いわば最後までいかなくて目的を達しておるというウエートが非常に多いために、それで(A)から(B)の段階、あるいは(C)、(D)の段階というふうに減って参るわけであります。結局、この落札価額十一億というものが千五百六十四億の滞納者に見合っているわけではございません。そのうちのごく一部分が最後まで来る。大部分のもの、すなわち、パーセンテージで申しますとどうなりますか、比喩的に申せば九十九パーセントというものは、最後の段階に至らないで、いろいろな手を尽してやっている間に、期限はおくれましたけれども税は納付が済んできておる、こう申し上げたつもりであります。
○坂本委員 そこで、その問題はわかりましたが、この法律ができますと、八百十九億台から一般債権者の差し押えとここに調整が出てくるわけです。それだから、今までのように滞納処分の差し押えをして、ほったらかしてどんどん徴収するということがなくなるわけですね。そうなりますと、もちろん二カ年の猶予を置くとか、そういう点はございますが、税務署としては差し押えをして、差し押え期間中にどんどん滞納を徴収して、最後の決着までいってわずかに競売してとる、こうなっておりますが、この法律によると、今度一般の債権者が入って参りまして、そこに差し押えの競合ができて、どんどん進行するということになるわけですね。そうすると、国税庁の方では滞納処分による取り立てはかえって成績が悪くなりはせぬか、こういうふうにも考えられますが、そういう点について御検討されましたかどうか、検討されましたら、その見通しはどういうふうに考えておられるか、それを承わりたい。
○飯田説明員 まず最初にちょっとお断わり申し上げておきますが、この(B)欄の財産差し押えに上っております数字というものは、もちろん全部が全部私債権の強制執行と競合すべきものではないわけでありまして、このうちのごく小部分がそれに当って参るわけであります。しかしながら、その競合する範囲内におきまして国税徴収上悪影響がないかという御趣旨と思うわけでございますが、私どもといたしましては、法案全体の趣旨を通じまして、私債権に優先されるために若干の不利益はありましても、むしろ逆に、今度公正なと申しますか第三者的な裁判所の判定を待って国税側の処分が円滑に進められるという利益もあるわけでございます。また、国税が若干不利益になるという心配のある部分につきましても、元来が私債権に対して若干無理な犠牲をしいておった部分が合理的に解決されるというふうに見えることもできるかと思います。今回のこの法案の施行によりまして、私どもとしましては全体として総合的に非常に円滑にすべてが動くという見通しを持っております。
○坂本委員 その点は少し見通しが軽過ぎるのではないかと思うのです。大体これを見ましても、要整理準滞納が千五百六十四億円、そのうち財産差し押えの対象になるのが約半分の八百十九億円、この法律ができれば、この段階で一般の債権者の差し押えがきて、そして、さっきおっしゃったように、財産をそうたくさん持たないのをどんどん競売して進行すれば、もちろん滞納処分だけで一般の債権に回らない場合の調整の問題はこの法律案に出ておるようですが、そういうふうに考えると、あまりこの法律の効果はないように考えられますし、また、逆に考えますと、この法律ができない現在においては、一たん差し押えをしておいて、競売が目的じゃない、税金さえ納めてもらえばけっこうですというんで、差し押えを左の手に掲げ、右の手でどんどん納めさせて、とどのつまりその競売したものは十一億くらいのわずかなものとなってしまうわけですね。ですから、あってもなくても同じようなふうにも考えられるし、また効果もあるようにも考えられます。現在のような情勢でやっても今ここに表に出ているような結果が出ておりますが、それを今度の法律によって法律の適用を受けてやることにすれば、中小企業その他事業家の、また個人の財産も圧迫せずに徴税上の効果が上るかどうか。そういう点について検討されておるかどうか、検討されたならばその結論を承わりたい。
○吉国説明員 ただいま途中で入って参りまして、前からの経緯をよく承わりませんので、的確なお答えになるかどうか自信がございませんが、ただいまお尋ねの趣旨は、現在こういう状況で滞納があるために財産差し押えがある、しかもその結果を見ると落札決定による収入額が非常に少いのではないか、そこで、新しい法律を施行してそれが改善されると思っておるのか、同時に、それが改善されるということは中小企業に対する圧迫にならないという自信があるのか、こういう御質問だったと存じますが、その点について若干御説明申し上、げます。
 実は、ここに出ております数字でごらんいただきますと、確かに公売を決行して落札して税金をとったという額は非常に少いわけでございます。なぜ少いかと申しますと、ここに上っておりますのは財産差し押えでなく、差し押えをした件数が出ておりますので、そこで、差し押えを出して競売に至らずに税がとれたものが相当数あるわけでございます。最後まで公売を決行するというものはかなり制限されて参るということから、この数字がこれほど開いてくるという点が一つございます。同時に、御承知のように、最近の国税徴収は、二十六年以来改正いたしたのでありますが、その改正の傾向は、どちらかと申しますと、国税徴収法においては、戦後の滞納の実感に即しまして、できるだけ納税者の実情を勘案いたしまして、滞納処分によって一途に税金を取り立てるそのために納税者に再起不能というふうな結果を与えないように、税金を徴収しながら同時に納税者の立場をも考えるという、いわば社会政策的な立法をしてきたように思います。ところが、それのために公売まで至らず差し押えをしながらも税金が相当入ってくるということが言えると思うのであります。同時に、そのことは、国とか地方公共団体というような財政力の大きいところにおいては、何年間かを通算して考えますと、そういう余裕のある、納税者の立場を考えた徴収ができるわけでありますが、それは国から見た場合だけのことで、第三者である債権者から見ると、国が差し押えをして、放置して、第三者の介入を排除している、それで税金の全きを得るということは非常に迷惑だということになるかと思います。同時に、考えようによりましては、そうやっておいてくれれば債権者もあとでとれるじゃないかということもありますが、債権者は国ほど余裕のある財政力を持っておりませんから、今すぐ金が要るというにもかかわらず、国の方がそういういわばゆうちょうな態度をとっておっては困るというようなことから、今度の法律もそこに一つ大きな意味があると思うのでございます。私どもも、その点で、おっしゃいましたような検討というのは、一つは、こういうことをやったがために、税法が企図しておる、しかも納税者を再建させながら長く取り立てていくということが阻害されるかどうかということが一つの問題であったのでございます。しかし、同時に、考えますと、滞納税金が国だけの関係であって、ほかに債権者がないという場合ならばそれはまだしもでございましょうが、ほかに債権者があって、その債権者と滞納者である債務者の財政力というものを考えてみたならば、逆に沸納音の方が豊かであるという場合があり得るのであります。そういう場合に、ただ国の国税徴収法の立場だけでものを考えておったんではかえって問題がある。債権者も中小企業者、債務者も中小企業者であるという場合が大部分である。いろいろ滞納状況を調べますと、滞納者に中小企業者が多いということは当然でございますが、同時に債権者も相当苦しい者が多いということもございますので、その場合直ちに債務者に対して債権者の立場を考えて徴収猶予を短かくしたりするということはこれまた行き過ぎでございますので、何かそこに調整するものが入用である、たまたまこの法律によってその両者の立場をよく見ながら裁判所でそこを調整できるということになれば、債務者である中小企業者に無理がかかるということもある程度防げるであろう、債権者である中小企業者の場合も十分調整されるであろうという判断を実は持ったわけでございます。
 税が取れなくなる、それよりももっと悪くなるかどうかという問題でございますが、これまた、今申し上げたことと重複するかもしれませんけれども、少くとも、調整法が働きますと、債権者の立場から言って続行した方がいいという判断が出た場合にはそれによって公売が促進されますので、その促進の結果税が減るということは考えられない。もしかりに優先する抵当権があるにかかわらず税の差し押えを先にしてとめておった場合があっても、それはしょせん最後にいってもとれないものでありますから、促進されたとしても同じことでございます。その意味では、これによって税収が少くなるということはあり得ない。中小企業者の場合も、裁判官の良識によって、国税の範囲に入ってこない第三者の債権者である中小企業者の立場まで取り入れて判断ができる。そういう意味においては、徴収法の各種の規定がかえって生きてくるんじゃなかろうか。こういう判断をいたしたわけでございます。
○坂本委員 もう一点だけ国税庁に聞きたいのですが、提案理由の第三に、「滞納処分を強制執行とが競合した場合に、換価手続の促進をはかる措置を講じたことである」、こうなっております。そこで、現在は、滞納処分で差し押えを受けた者でもやはり更正させて、税金をどんどん取って、最後にわずかな競売をすることになる。こういうふうに考えると、換価手続の促進をしたならば、立ち上らない前に財産を競売してしまって、税金も十分取れないし、債権者の債権も満足できないというような逆な結果になりはしないかという心配が起るわけですが、この点いかがですか。
○吉国説明員 ただいま仰せの点は、先ほど私が申し上げた通り、確かに一つの問題であったわけでございますが、そこで、今度の調整法においても、裁判官相当と認めるときという、これは私限りの判断でありますが、特に裁量の余地を残した言葉を入れて、裁判官にその点を十分御判断いただくという体制をとっておるのでございます。そこで、裁判官におかれまして、滞納音の立場と債権者の立場――私は滞納者の立場を考えて滞納者がつぶれないために若干猶予するということも必要だと思いますが、猶予したために債権者が倒れるということになると、それは行き過ぎである。そこの判断は第三者である裁判官でなければできないのではなかろうか。国税庁で執行者がそれを判断して自分で差し押えを解除して債権者に譲るということは実際不可能でございまして、こういう法律によって初めてできるというふうに考えておる次第でございます。
○坂本委員 少し問題は変りますが、裁判官の良識ということを盛んに言われておりますが、結局、滞納処分は行政権の発動であり、強制執行は司法権の発動で、両方競合した場合にその手続の促進をはかるというのが調整法のねらいであろうと思うわけです。そこで、裁判官が相当と認めるときというのは、九条、十七条で強制執行の続行、二十六条、三十三条で滞納処分の続行承認の決定、こうあるのですが、この相当というのが裁判官の良識、こう抽象的に言っても、これはいかぬと思うのです。やはり具体的基準がなければならぬと思うわけです。そこで、この相当の判断の基準について具体的にどういうふうのことを考えておられるか。これは法務省と国税庁と両方承わりたい。ただ裁判官の良識というので白紙委任状を裁判官に預けるのでは、決して中小企業その他のいわゆる滞納者または債務者の育成にも何にもならぬと思う。ですから、この九条、十七条、二十六条、三十三条の相当という判断の具体的基準についてどういうことを考えておられるか、それを承わっておきたい。
○村上(朝)政府委員 相当と認めるのはどういう場合かということでございますが、一昨日来続行を相当としない事例をあげて御説明申し上げたのでありますが、裏を返して、どういう場合に相当かと申しますと、まず、続行することによって実益のある場合でなければならぬということは言えると思うのであります。続行いたしましても強制執行手続によって換価した売得金を費用及び租税公課のために持っていかれてしまって債権者が弁済を受ける見込みがない場合は、強制執行を進行しても実益がないのでございます。また、滞納処分による手続が特に遅延しておるわけではない、順調に手続が進行しておるような場合でも、これを強制執行手続に移したからといって特に債権者が多く満足を受けるということも通常ないことでございますので、実益がないと言えると思いますが、これは続行について実益がある場合でなければならぬ。たとえば、国税徴収法の中に、「滞納処分ノ執行ニ因リ滞納者ノ事業ノ継続ヲ著シク阻害スル虞アリ且其ノ執行ノ猶予ガ直ニ其ノ執行ヲ為ス場合ニ比シ其ノ滞納ニ係ル国税及滞納処分費ノ徴収上有利ナリト認ムルトキハ政府ハ二箇年以内ノ期間ヲ限リ当該国税及滞納処分費ノ全部又ハ一部ノ滞納処分ノ執行ヲ猶予スルコトヲ得」と、かような規定がございますが、この規定に厳格に該当するような場合を例に考えてみますと、今直ちに取るよりは猶予する方が税金が多くとれるという場合でありますので、おそらく、強制執行手続に移して換価いたしましても、ほとんど全部または大部分を租税の方へ優先的に持っていかれてしまう場合であろうと思うのであります。また、滞納処分の停止する場合といたしまして、租税徴収の結果生活が困難に陥るような場合というような例もあったかと思いますが、そのような場合にも、強制執行を続行いたしましても税金を差し引いた余剰が出て債権者が弁済を受けるというようなことができない場合が通常ではないかと思うのであります。かように、強制執行を続行するについて実益があるということがまず必要であろうと思うのでありますが、そのほかに、ただいま主税局の方からお話がありましたように、国税徴収法でいろいろと徴税技術上あるいは社会政策的な執行猶予等の規定が設けられております半面、私債権の相互の間においては、数人の債権者の執行が競合したような場合に、一人の債権者だけが弁済を猶予するということで強制執行を停止いたましても、ほかの債権者のために執行をとめることはできないことになっておりまして、強制執行手続における債務者保護の規定による場合のほかは債権の執行をとめることができない建前になっておりますけれども、この法律案の場合におきましては、債権者の強制執行を続行することによって受ける利益と、それによって受ける債務者の不利益というようものを比較考量して、裁判所が公正な判断によって続行すべきかどうかを決定するということになるかと思うのであります。
○坂本委員 抽象的なことではわれわれはまだ納得できないのですが、九条を見てみましても、「裁判所は、前条の申請があった場合において、相当と認めるときは、強制執行を続行する旨の決定をしなければならない。」、そこで、積極的に相当と認める具体的な事情があるかどうかは裁判所が判断するわけですが、裁判所が判断する場合に当っては決定でやるわけですが、この場合、裁判官はこの決定をなすに当って、あるいは破産のような場合のように当事者を審訊して、停止したら生活困難になるかどうかということを調査するとか、あるいは実益があるかどうかという点は、これは具体的にどういう方法で裁判官は決定するか、その点がここに明らかになっていないわけなんです。まだ一方の言うことを聞いてそれはそうだというので――名裁判官でりっぱな結論が出ればけっこうですが、裁判官でもやはり人間ですから、逆な結論が出ないとも限らないわけなのです。ですから、九条の今申されたような相当の点の判断について決定するに当って、裁判所がどういう方法をもってやるか、そこがまた積極的具体的の問題として疑問になってくるわけです。その点はいかがでしょうか。
○村上(朝)政府委員 この九条の場合について申し上げますと、まず、第九条の三項にありますように、裁判所は続行の申請がありましたならばあらかじめ収税官官吏等の意見を聞くことになっております。そのほか、決定でございますから民事訴訟法の総則の規定が当然適用になって参りまして、民事訴訟法の百二十五条、口頭弁論を開くこともできますし、また債権者、債務者を審訊することもできまして、これらの手段によって、状況を明らかにした上で強制執行を続行することが相当かどうか判断するわけであります。
○坂本委員 裁判所はそういうようにいたしまして任意的口頭弁論を開くこともできますけれども、われわれは、収税官吏の意見というものにあまり重きを置いちゃいかぬと思うのです。と申しますのは、あとで自治庁にも聞きたいと思うのですが、収税吏員そのものが、あまり堪能でもないし、また相当俸給も安いと思うのです。ですから、収税官吏等の意見だけではできない。そうすると、やはり破産の場合のように、破産宣告をすべきか支払い不能かどうかというような点の判断は裁判所が双方を審訊してきめなければならぬと思うのです。そうしたらやはり裁判所の機構の問題にも関係するのですが、この法律案が出まして、裁判所が手続をやる上において、現在の機構でどこでこういうことをやらせるのですか。その点を承わりたい。
○村上(朝)政府委員 管轄地方裁判所の裁判官がやることになると思います。
○坂本委員 この法律ができても、管轄地方裁判所の現在の機構――裁判官も現在の人員、書記官も現在の人員、それでよろしいという見通しでこの法律は考えておられますか。
○關根最高裁判所説明員 今のお問いに対しまして、実はこの法律の施行に伴いまする予算の要求をしたのでありますが、実際にやってみた上でということで認められなかったので、ございます。それで、結局のところは、今お問いの裁判官というのは結局地方裁判所の裁判官ということになりまして、おそらく滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律で続行決定なり、あるいは続行承認の決定の申請がどの程度出てくるか、ちょっと予想がつかない。それで、やってみました上でできる限り努力したい。たとえて申し上けますると、現在の東京地方裁判所で申し上げれば執行部の裁判官が専門にやっております。でありますから、徴税上それから執行手続上かなり重大な問題でございますので、できる限りそれまでに裁判官の会合なり、また執行吏の打合会等をいたしまして、できるだけの努力をしたい、こういう考えでございます。
○坂本委員 これは特に国税庁に開きたいと思うのですが、先ほどの国税庁の御答弁では、この法律を執行して非常に調整がうまくいって効果が上るという御答弁でありました。そういうような法律を施行するに当って、予算を大蔵省はどうして削除したのですか。実際やってみた上で予算を組もうなんというのは、この法律に対して大した価値を認めていないからそういうことになるのでしょう。これは大蔵省自身の問題ですよ。ことに滞納は千五百億以上あるのです。その調整の問題を、また中小企業を育成しょうというなら、この法律を通過させるに当っては大蔵省はどうして予算を削ったのですか。また裁判所は予算を削られてそのままでこの法律案をどうして早く通そうというお考えですか。少くとも千五百億以上の滞納がある。中小企業の債権の差し押えは、あとでまたどれだけあるか統計を聞きたいのですが、資料は大して差し押えの件数については出ていないのですが、これは相当なものだと思っているのです。それを、予算措置もせずに、実際やってみた上でやろうなんというのは、これは大蔵省の意見だろうと思う。大蔵省はこの法律案を責任を持って通過させ、この法律によって滞納をよりょく徴収するという確たる見通しがあるかどうか、その点を承わりたい。
○三田村委員長 大蔵省事務当局に申し上げますが、問題は政治的になかなか重要だと思います。大臣なり次官なり責任のある人が他日本委員会に出席の上御答弁願いたいと思うのです。今吉国税制第二保長の御意見があるなら伺いたい。
○吉国説明員 予算を削ったのはけしからぬということでありますが、私ども主税局におりましてなぜ協力しなかったかというおしかりかと存ずるわけでございますが、実は、私どもの方も、片方で所得税等は減税いたしまして、印紙税その他は増徴しておりますけれども、これも主計局にそういうような要求は通らないようなわけでございまして、現在の状況でそういうことになったのは、これは全く御答弁になっておりませんので恐縮でございますが、その点……。
 もう一つは、この法律が十月から実施されるという、準備期間を置いて十月になっておる点もあってそのような御判断があったのかとも存じます。その点、私どもはその程度の御答弁しかできないので、大へん恐縮でございます。
○坂本委員 これは法案を提出するにおいて非常に無責任なあれだと思うのです。それで、法務省にお聞きしたいのですが、この調整法ができて、そういう裁判所で決定すべきような案件がどれくらいあるだろうかというふうな見通しは持っておられるかどうか。
○村上(朝)政府委員 数字的の見通しは、はっきりしたものはございません。
○坂本委員 それでは、この問題は留保しまして、先に進んでから聞いた方がいいと思います。
 財産差し押えが一カ年間にどれくらい――件数の点はここに資料が出ているようですが、公売に付された金額、それから債権に充当した金額、この点について統計上の資料を持っておられるかどうか、持っておられたらそれによって御説明願います。三十年度でけっこうです。
○關根最高裁判所説明員 今の坂本委員のお尋ねは競売の問題でございますか、それとも裁判所の方の……。
○坂本委員 裁判所の方の問題で、強制執行、競売事件に関する統計というのがここにありますが、件数はこれでわかりますが、まず財産差し押えの金額、それから公売に付された金額、それから公売にして債権に充当した金額、これがわからぬから、その点承わりたい。
○關根最高裁判所説明員 ただいまその金額の点はちょっと手元にございませんので、いずれ書面によりまして差し上げたいと思います。
○坂本委員 この点は、さっき滞納の方は千五百億ということが出ましたけれども、こっちがどれくらい出るか、この点ぜひ資料をお願いいたしまして、それによってまた質問をしたいと思います
 そこで、時間がありませんから、聞きたいことをもう一点。大蔵省と自治庁にお伺いしたいのですが、国税、地方税その他のいろいろの公課が七、八十――準用されるとたくさんあるわけなんですね。この滞納処分、この間についての優先的順位は全部平等であるかどうか、その点についての調整ができておりますかどうかをお伺いしておきます。
○吉国説明員 ただいまの御質問でございますが、国税徴収法とそれから地方税法におきまして、国税並びに地方税間におきましては原則として順位が同一となっておりますが、具体的には差し押え優先、先着主義がとられておりまして、差し押えをした租税が最優先ということになっております。それから、差し押えをしなかった租税相互間、つまり他の強制執行処分に交付要求をいたしました場合、その交付要求をいたしました租税相互間におきましては、その交付要求をいたしました租税の納期がそれらの参加をいたしました強制処分の開始の日以前である場合と以後である場合とに分けまして、前である場合におきましては、その前であるものが一括して群団優先いたします。その群団優先する租税の相互間においては平等ということになります。それから、劣後した群団におきましてもそれぞれ平等であります。それから、公課は常に国税、地方税におくれることになります。公課相互間におきましては、原則的には国の公課、府県の公課、市町村の公深という順位がございますが、それぞれ単独の立法におきまして特別の優先順位を定めておるものがございますので、必ずしもその通りにはならないものと思いますが、各法律によって定まっております順位は一応はっきりいたしております。
○坂本委員 そうすると、今の御説明の点でちょっとまた聞きたいのでありますが、差し押えをしたものは最優先する、そうすると、国税と地方税と競合したような場合は平等になる、こういうふうに考えていいのですか。
○吉国説明員 国税相互間、それから国税、地方税間、地方税相互間におきましても二重差し押えは現在できないという建前になっておりますから、先に差し押えした租税がまず優先する。あとの租税はそれに全部交付要求いたしますから、そこで、さっき申しましたように、差し押え先着主義でまず差し押えたものを取りまして、残りを交付要求したもので群団優先で配当になる。こういうことになります。
○坂本委員 次にお聞きしたいのは、一般の強制執行で、裁判所の書記官を長くしているとか、相当の経験もあり法律的知識もある人が執行吏になっておるわけです。ところが、地方自治体あたりの徴税吏員はまちまちじゃないかと思うのですが、この地方自治体の徴税吏員に対しては現在どういう資格を与え、どういう組織のもとで、またどんな訓練をやって、そうして差し押えとか公売とかの実務に当らせておられるのか、自治庁にこの点はお聞きしたい。
○細郷説明員 ただいま地方の税務職員は約六万おるわけであります。概数で申しますれば府県と市町村でおおむね半々ぐらいでありますが、地方の税務職員の中に、端的に言って優秀でない者があるのではないかというお尋ねだろうと思うのであります。地方の税務職員の中にも、もちろん多数のことでございますので、いろいろな事例はあると思います。ことに戦後地方税が従来の付加税主義から変りまして独立税主義になって参りました関係上、地方団体自体も徴税の面においてその機構並びに人員の非常な拡充をいたしたわけでございます。ことに二十五年のシャウプ改正後におきましてはその点が非常に著しくございまして、ただいま申し上げたような税務職員の数になったわけでございます。そこで、そういうふうに急激に膨張いたしますれば、従来税務行政に携わらなかった新しい人がふえて参ることも当りまえのことでございますが、ただ、戦後におきまして多数の外地からの引き揚げの方々もございますし、また国税をおやめになった方もあったりいたしまして、そういう方々がかなり戦後のいろいろな社会的な動きによって地方団体の方へ入ってきております。また、一方、地方団体の中にも、従来からずっと、国税の付加税時代現に窓口を市町村がやっておった時代もあるわけでございまして、そういう面からの熟達者もおるわけでございます。そういう者を中心にいたしまして、ふえた員数の研修教育をいたしてきたわけでございます。特に、自治庁といたしましても、二十五年のシャウプ税制の改正以後は、自治庁みずからが全国の税務職員のうちから推薦された者を訓練する講習会をしばしばいたしますとか、あるいは各県におきましてもそれぞれそういった種類の会合を持つようにいたしておりまして、現在そういった方法をとって徐々に訓育に当ってきたわけであります。そういったような面もございまして、一般の社会情勢の安定とも伴って、最近は地方の税務職員もかなりつぶがそろってきたということが言えるんじゃないかと思っております。そういった面は、現実の徴収率その他の面においても、二十五年以降の徴収率から見まして漸次上ってきております。もとより全部が全部税務職員がいいというわけではございませんが、社会情勢の安定あるいは税制の合理化、それに税務職員の努力による徴収率の向上ということも見のがせないんじゃないだろうか、こういうふうに考えております。
○坂本委員 もう一点、これは最高裁判所にお聞きしたいのですが、三十七条、「この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。ただし、強制執行、仮差押の執行及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。」、こうなっておりますが、この法律ができましたならば、最高裁判所は、どういうルールの内容でおやりになるか、この点を承わっておきたいと思います。
○關根最高裁判所説明員 今お問いの法律に基きます規則でありますが、これは大部分が法律できまっておりますので、細則的なことを規則に書くつもりでございます。草案的なものはございますが、いずれ規則を制定いたしますときに諮問委員会の議を経まして、それから裁判官会議できまるわけでございます。大体の構想は、結局、滞納処分と強制執行の手続を相互に開始した場合、また一方が終りましたときの手続につきまして関係人に通知する、それからまた、相互に手続が始まりまして、解除をされましたりあるいは続行されました場合、たとえて申し上げれば、動産の引き渡しの場合の手続またはそのときの通知等のこと、さらにまた、滞納処分が終りましたときの売却代金の残余がありましたときの引き渡しの手続の問題、そういった細目的のことしか書かないわけのございます。もしお求めがあれば、大体の要綱程度は差し上げてけっこうだと思います。
○坂本委員 今度は大蔵省に聞きたいのですが、「国税徴収法規準用法令調」を見ますと、水道条例は代執行の費用なんです。伝染病予防法は消毒方法の施行に関する費用で、都道府県が代執行した場合のこれも費用なんです。それから補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の、補助金の返還金及びこれに係る加算金、延滞金、こうありますね。それから、その次の国立公園法では、国立公園施設の占有料、使用料、受益者負担金、その次のアルコール専売法では、価額との差額等の納付金とあります。ずっと見ますと、納付金とか、割増金、鑑定料、保険料、水害予防組合法については組合費その他の収入、いわゆる組合費とか費用、それから使用料、受益者負担金、こういういろいろなのがあるわけですが、ほとんど一般債権と同じようなもので、優先して取る優先権があるというまで本質上のものではないように考えられる。そこで、こういう税や公課等の――本質上は税や公課に入らないものもたくさんありますが、この際実態優先を是正する御意向はないかどうか。また、この点について調査研究をなされておるならば、その点の御説明をお願いしたいと思います。
○吉国説明員 ただいま御指摘のございましたように、公課に国税徴収法を準用している例がかなり多いのでございまして、その中に、受益者負担金等のごとくほとんど目的税に近いとも言えるようなものもございますし、代執行の費用のように公けの権力の発動としてやった費用もございますが、また阿片にかなり債権に近いと言えるようなものもなきにしもあらずということは確かに事実でございまして、この国税徴収法のことに優先の規定まで準用されるという点からは、公課に対する準用をより制限すべきではないかということは、一つの重要な問題であると存じております。この点につきましては、御承知と存じますが、一昨年の十二月に、これは大蔵省限りの機関でございますが、租税徴収制度調査会というものが置かれまして、国税徴収制度の改正を調査研究しているわけでございます。その委員会はなお本年も引き続いて行われまして、委員長は我妻栄先生がやっておられますが、そのほか民事局その他関係各庁、それから学識経験者が集まって検討しております。この委員会におきましては、国税徴収法全般にわたりまして、優先権につきましても、これを存続すべきであるか、さらにまた、存続すべきであるとしてもこの優先権が実質的に国税徴収に資しているかどうか、なお不足の点がありはしないか、あるいは別にこの優先権というような規定を改正して削除すべきではないか、またその場合には国税徴収を担保するために別の規定が必要であるかどうかというような広範な調査を今続行中であります。公課につきましても、ただいま御指摘のような公課に国税徴収の規定を準用する場合にどの程度の基準をもってなすべきか、また公課相互間における優先順位についても現状でいいかどうかということについても基本的に研究をいたしております。この委員会で、おそらく結論は本年末までかかると思いますけれども、そういう意味におきましても、従来にとらわれず根本的な検討をいたしておりますので、その結果を待ってそれらの問題についての結論を出したいというふうに考えております。
○坂本委員 ただいまの租税公課につきましては、形式的優先と実質的優先と二つに分れると思います。形式的優先の点はこの調整法でやや緩和される。しかしながら、実質的優先の問題ですね。この是正の問題は重要な問題だと思うのです。この問題と先ほどの予算の問題につきましては大蔵大臣に質問することにいたしまして、なおまだ少しありますが、時間が参りましたから、本日はこれで終ります。
○三田村委員長 本日はこの程度にとどめ、散会いたします。
 次会は公報をもってお知らせいたします。
   午後四時五十一分散会