第026回国会 法務委員会 第25号
昭和三十二年四月十二日(金曜日)
    午前十一時二十七分開議
 出席委員
   委員長 三田村武夫君
   理事 池田 清志君 理事 椎名  隆君
   理事 長井  源君 理事 福井 盛太君
   理事 横井 太郎君 理事 菊地養之輔君
      小島 徹三君    高橋 禎一君
      林   博君    松永  東君
      山口 好一君    横川 重次君
      神近 市子君    佐竹 晴記君
      田中幾三郎君    田中織之進君
      古屋 貞雄君    細田 綱吉君
      山田 長司君    吉田 賢一君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
 出席政府委員
        警  視  長
        (警察庁刑事部
        長)      中川 董治君
        検     事
        (大臣官房調査
        課長)     位野木益雄君
        検     事
        (民事局長)  村上 朝一君
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      鈴木 才藏君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      関根 小郷君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局総
        務課長)    海部 安昌君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局家庭局
        長)      菰淵 鋭夫君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月十二日
 委員風見章君、坂本泰良君及び武藤運十郎君辞
 任にっき、その補欠として山田長司君、細田綱
 吉君及び田中織之進君が議長の指名で委員に選
 任された。
同日
 委員細田綱吉君及び山田長司君辞任につき、そ
 の補欠として坂本泰良君及び風見章君が議長の
 指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月六日
 国際海上物品運送法案(内閣提出第一三七号)
同月十一日
 恩赦法の一部を改正する法律案(高瀬荘太郎君
 外四名提出、参法第三号)(予)
の審査を本委員会に付託された。
四月八日
 在日朝鮮人対策是正に関する陳情書外四件(名
 古屋市中村区小鳥町七五孔基東外四名)(第七
 二三号)
 在日朝鮮人の保障等に関する陳情書外三件(京
 都市中京区壬生松原町六〇伊徳佑外三名)(第
 七五三号)
を本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際海上物品運送法案(内閣提出第一三七号)
 判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改
 正する法律案(内閣提出第一一〇号)
 裁判所法の一部を改・正する法律案(内閣提出
 第一一一号)
 法務行政及び人権擁護に関する件
    ―――――――――――――
○三田村委員長 これより法務委員会を開会いたします。
 この際、法務当局より発言の申し出がありますので、これを許します。井本刑事局長。
○井本政府委員 本日法務大臣から全検察官に対しましてお手元に御配付申し上げたような被疑者補償規程が訓令され、本年の四月一日以降の抑留または拘禁につきまして適用されることになりました。
 被疑者に対しまして刑事補償を行いますことは一昨年秋以来の懸案でございまして、すなわち、いわゆる中国留学生殺しや銀座雑貨商殺しなどの事件の捜査に際しまして二重犯人逮捕の不祥事件を引き起しましたのを契機といたしまして、この委員会でも逮捕または勾留された後不起訴処分となった被疑者のうちこのような無実の者に対しましては刑事補償を行うべきであるという意見が次第に高まりまして、昨年第二十四国会には武藤運十郎代議士外十名から刑事補償法の一部を改正する法律案として法律案の提出も行われたところでございます。法務省といたしましても、無実の被疑者に対しまして刑事補償を行おうとする趣旨にはもちろん異論がなぐ、種々検討を重ねたのてございましたが、この構想を練るに当りましては、検察運営に及ぼす影響や不起訴処分の特殊性などをも考慮しなければならず、いろいろな要素を慎重に勘案いたしました結果、ひとまず行政措置によりまして実施するとともに、その内容も、このたび御配付申し上げたような規程とするのが最も妥当であるという結論に到達いたしまして、幸い、また、先般国会で成立いたしました本年度予算中に被疑者に対する刑事補償金として相当金額、一応金百万円の計上が認められましたので、これを裏づけといたしまして本規程を制定するに至った次第でございます。
 この規程によりますと、被疑者として身柄の拘束を受けました者が不起訴処分になりました場合には、その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がありますときは、検察官の健全な裁量によりまして、無罪の言い渡しを受けた被告人に対するものと同様、一日四百円以下の割合による補償金を交付いたしまして、本人の受けた精神上の苦痛と財産上の損失を補い、なお、本人から申し立てがありました場合には官報あるいは新聞紙に公示いたしまして、傷つけられた本人の名誉も回復しようとするものでありまして、今までに問題となったような事案の場合は、すべて本規程による救済を受けることができるものでございます。
 刑事被告人に対する補償は本人らの裁判上の請求により行われることになっておりますが、この規程におきましては、検察官に対して本人等から申し出があった場合はもとより、たとい申し出がなくとも、適当と認めたときは、当該事件の捜査処理に当りその内容を詳しく知っている管轄地方検察庁の検察官が進んで調査を開始し、具体的事情に応じ最も適切かつ合理的に補償の要否及びその額を定めることを建前としている点が大きな特色となっております。
 ただ、事件の処理に当った検察官がみずから、あるいはその検察官と同じ庁の検祭官が補償を行うとすれは、事の行きがかりや面目にとらわれて公正な態度をとり得ないのではないかという危惧の念を抱く向きもあるかもしれませんが、運用に当りましては、各地方検察庁において次席検事などの監督的立場にある練達の検事に補償の事務をつかさどらせることにしており、また、その裁定に当りましては高等検察庁に請訓をさせまして十分監督させることにしているので、そのような不都合は避け得ると信じられますし、かようなことで、その公正な運用を期待していただいてもよいと考えておる次第でございます。
 被疑者に対する刑事補償として法務省がこのような措置をとったことにつきましては、先ほど申し上げましたように、第二十四国会における本法務委員会の御審議の次第もありますので、貴重な時間を拝借いたしまして、一応この規程の御趣旨を御説明申し上げ、御報告申し上げた次第でございます。
○三田村委員長 ただいまの井本刑事局長の発言に対し御質疑はございませんか。椎名隆君。
○椎名(隆)委員 この規程ができたごとは、人権尊重の趣旨に従って、私は非常にいいことだと思います。しかしながら、第二条の「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある」、これは不起訴処分だろうと思いますが、その不起訴処分の中には、いわゆる犯罪なしという場合、犯罪の証明が十分ならずとした場合、それらも含まれていると思う。この場合は、犯罪なしという場合だけか、あるいは犯罪を犯したおそれがあるのだが、それに対する証明がないので、そこで仕方なく釈放しなければならないという場合も包含されますか。
○井本政府委員 第二条に規定がございますように、「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある」というのは、本人が犯罪を犯したというような心証があるが、証拠が十分でなかったというような者は含まれない趣旨で、明らかにその者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときにだけ補償したいという考えでございます。
○椎名(隆)委員 そうすると、これは、被疑者に対して釈放した場合に罪を犯さなかったというので補償をするということがたび重なると、つまり検事の成績に影響するというようなことから、検事が、本来ならば本件は勾留して取り調べたいが、しかしながら、もしかりに罪がなかったというような場合に補償しなければならないから、補償をすることになってくると自分の成績に影響する、それでは困るというので、本来勾留して調べななければならぬ事案も勾留せずして取調べをするというようなことになって、検事の士気に影響するおそれはありませんか。
○井本政府委員 ただいま申し上げましたように、罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときだけ補償するわけでございまして、本人が犯罪者であって、証拠が集まらなくてついに起訴するに至らなかったという者につきましては、この規程は補償することになっておりません。従って、検事といたしまして、、全然人違いの者を勾留したような場合には補償しなければなりませんが、不幸力足らずして証拠が集まらないという者につきましては、この規程の関知するところではございませんので、検察官の士気に影響するというようなことはないと存じます。
○椎名(隆)委員 補償をしてもらいたいと被疑者の方から申し出があったときに、担当検察官が補償しないと裁定した場合、それに対する異議の申し出はどうなるのですか。
○井本政府委員 その補償の裁定は検事の不起訴処分に付随する処分と考えておりますので、一般の行政監督機構に従いまして、不起訴処分に対する不服の申し立てと同様に、地方検察庁の検事の処理に対しましては高等検察庁、その処理に対しましてはさらに最高検察庁、その上は法務大臣というような監督機構によって処置したいと考えております。
○三田村委員長 古屋貞雄君。
○古屋委員 非常にけっこうなことであると同時に、私どもはその趣旨に対しては大賛成ですが、やはりこれは刑事補償法の改正に持って参りますまでの暫定的な措置というお考えでやられているのか、その点をまずお聞きしておきたい。
○井本政府委員 他日全般的に無過失賠償責任を国家に認めさせるというようなことになりますれば、当然これは法律で規定しなければならないと存じますが、現段階におきましては、かような大臣訓令によりまして処置するのが一番適当な方法ではないかという考えで、かような提案をしたのでございます。しかし、実際の運用のいかんによりまして、さらに別の方法も結果によって考えたいと思っております。
○古屋委員 私もさように賛成いたします。非常にけっこうだと思います。やってみた上で、必要ならば本物にかえていく、こういう趣旨のようですから、まことにけっこうだと思います。
○三田村委員長 林博君。
○林(博)委員 罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由というのは、ある事実で逮捕しておいて、その事実は罪を犯さないということが明らかになり、その逮捕中にほかの事実が出て、その事実で起訴したというような場合には、前の事実については補償の対象にならないということですか。
○井本政府委員 いろいろな場合があると思うのですが、第四条第一項の二号は、重大事件で犯人を検挙いたします際に、軽微な詐欺とか窃盗で検挙いたしまして、実は重大事件を調べるということが往々にしてございます。この手続は御承知の通り合法にはなっておりますけれども、非常に被疑者にお気の毒な場合もありますので、かりに勾留いたしました件が有罪でありましても、他の目的といたしました重大な事件が嫌疑がなかったというような場合には、場合によりまして被疑者の補償を考えてもいいというので、四条第一項の二号にさような規定を設けましたが、ただいまお尋ねのような場合には、その事案によりまして、非常に本人がかわいそうであるということになりますれば、いろいろな考慮をしてやってもいいと思っております。
○三田村委員長 他に御質疑はございませんか。――なければ次に移ります。
    ―――――――――――――
○三田村委員長 国際海上物品運送法案を議題とし、政府当局より提案理由の説明を聴取いたします。中村法務大臣。
○中村法務大臣 国際海上物品運送法案について提案の理由を御説明いたします。
 この法律案は、一九二四年八月二十五日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約の批准に伴い、これを国内法として立法化しようとするものであります。この条約は、国際的海上運送における船主と荷主との利益を調整するため船荷証券に関する各国法制の統一をはかることを目的とするものでありますが、一九三〇年ベルギーの批准以来、世界主要国の大部分が批准または加入いたしまして、今日では、国際的海上物品運送契約は、おおむねこの条約に基いて締結されている実情にあります。ところが、わが商法は、条約に比べまして、重い責任を運送人に負わせ、しかもその責任を軽減する特約を禁止しておりますので、わが国の海運業者は、戦後海運業の復興に伴い、国際競争上不利な立場にあるのであります。そこで、さきに東京商工会議所等から法務大臣にあて、この条約を批准して立法化すべき旨の要望があったのでありますが、法制審議会におきましても、この要望に基き、さしあたり国際的海上物品運送につき特別法制定の必要を認め、その部分につき本年二月十二日その答申を見たのであります。
 この法律案は、右に申し述べました法制審議会の答申を基礎として立案したものであります。
 この法律案は、条約にのっとり、海上運送人の責任を軽減することと、船荷証券に関する関係人の利害を調整することを主眼としております。
 まず、海上運送人の責任を軽減するにつきましては、第一に、船舶の航海にたえる能力を保持する責任が従来無過失責任であったものを、過失責任に改め、第二に、船長その他運送人の使用する者の航行または船舶の取扱いに関する行為等による運送品の損害については、賠償の責任を負わないものとし、第三に、海上その他可航水域に特有の危険、天災その他の事故による運送品の損害について立証を容易ならしめ、第四に、運送品の損害については、原則として、一包または一単位につき十万円を限度としてのみ賠償責任を負うことといたしました、なお、これに伴い荷受人の利益を保護する規定も設けたのであります。
 船荷証券に関する関係人の利害の調整につきましては、船荷証券に運送品の種類及び数量を記載するについては、一面において、荷送人に書面による通告を正確にしなければならない責任を負わせ、他面において、運送人は、その通告が正確でないと信ずべき正当の事由がある場合またはその通告が正確であることを確認する適当な方法がない場合のほかは、その通告に従って記載しなければならないものとし、その通告が正確であることを確かめることについて注意を怠って、船荷証券に事実と異なる記載をした場合には、善意の船荷証券所持人に対抗することができないものといたしまして、船荷証券の信用を高め、その流通を容易ならしめようとするものであります。なお、荷送人の便宜を考慮して、運送品の船積み前においても受取船荷証券を交付することができるものといたしました。
 以上述べましたところは条約の定める通りでありますが、条約につきましては、別途本国会におきましてその批准について御審議をお願いしてございますので、その条約の実施のためこの法律案を用意いたした次第であります。
 以上がこの法律案の提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
○三田村委員長 以上で提案理由の説明は終りました。
 次に、本案についての補足説明を求めます。村上民事局長。
○村上(朝)政府委員 この法律案につきまして補足して御説明申し上げます。
 この法律案は、ただいま提案理由の中に述べられましたように、ブラッセルで署名されました船荷証券に関するある規則の統一のための条約の批准に伴いまして、国内法としての立法措置を講じようとするもでございます。その内容は条約とほとんど同じでございますので、まずこの条約ができました経緯につきまして簡単に御説明申し上げまして、御参考に供したいと思います。
 欧米における海上運送は、十九世紀の初めごろから急速に発展いたしまして、激しい国際競争を展開するに至ったのでありますが、それに伴い、海上運送に関する免責約款、すなわち積荷の損害について船主の責任を免れさせる約款が著しく発達し、かつ複雑と
○中村法務大臣 国際海上物品運送法案について提案の理由を御説明いたします。
 この法律案は、一九二四年八月二十五日にブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約の批准に伴い、これを国内法として立法化しようとするものであります。この条約は、国際的海上運送における船主と荷主との利益を調整するため船荷証券に関する各国法制の統一をはかることを目的とするものでありますが、一九三〇年ベルギーの批准以来、世界主要国の大部分が批准または加入いたしまして、今日では、国際的海上物品運送契約は、おおむねこの条約に基いて締結されている実情にあります。ところが、わが商法は、条約に比べまして、重い責任を運送人に負わせ、しかもその責任を軽減する特約を禁止しておりますので、わが国の海運業者は、戦後海運業の復興に伴い、国際競争上不利な立場にあるのであります。そこで、さきに東京商工会議所等から法務大臣にあて、この条約を批准して立法化すべき旨の要望があったのでありますが、法制審議会におきましても、この要望に基き、さしあたり国際的海上物品運送につき特別法制定の必要を認め、その部分につき本年二月十二日その答申を見たのであります。
 この法律案は、右に申し述べました法制審議会の答申を基礎として立案したものであります。
 この法律案は、条約にのっとり、海上運送人の責任を軽減することと、船荷証券に関する関係人の利害を調整することを主眼としております。
 まず、海上運送人の責任を軽減するにつきましては、第一に、船舶の航海にたえる能力を保持する責任が従来無過失責任であったものを、過失責任に改め、第二に、船長その他運送人の使用する者の航行または船舶の取扱いに関する行為等による運送品の損害については、賠償の責任を負わないものとし、第三に、海上その他可航水域に特有の危険、天災その他の事故による運送品の損害について立証を容易ならしめ、第四に、運送品の損害については、原則として、一包または一単位につき十万円を限度としてのみ賠償責任を負うことといたしました、なお、これに伴い荷受人の利益を保護する規定も設けたのであります。
 船荷証券に関する関係人の利害の調整につきましては、船荷証券に運送品の種類及び数量を記載するについては、一面において、荷送人に書面による通告を正確にしなければならない責任を負わせ、他面において、運送人は、その通告が正確でないと信ずべき正当の事由がある場合またはその通告が正確であることを確認する適当な方法がない場合のほかは、その通告に従って記載しなければならないものとし、その通告が正確であることを確かめることについて注意を怠って、船荷証券に事実と異なる記載をした場合には、善意の船荷証券所持人に対抗することができないものといたしまして、船荷証券の信用を高め、その流通を容易ならしめようとするものであります。なお、荷送人の便宜を考慮して、運送品の船積み前においても受取船荷証券を交付することができるものといたしました。
 以上述べましたところは条約の定める通りでありますが、条約につきましては、別途本国会におきましてその批准について御審議をお願いしてございますので、その条約の実施のためこの法律案を用意いたした次第であります。
 以上がこの法律案の提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
○三田村委員長 以上で提案理由の説明は終りました。
 次に、本案についての補足説明を求めます。村上民事局長。
○村上(朝)政府委員 この法律案につきまして補足して御説明申し上げます。
 この法律案は、ただいま提案理由の中に述べられましたように、ブラッセルで署名されました船荷証券に関するある規則の統一のための条約の批准に伴いまして、国内法としての立法措置を講じようとするもでございます。その内容は条約とほとんど同じでございますので、まずこの条約ができました経緯につきまして簡単に御説明申し上げまして、御参考に供したいと思います。
 欧米における海上運送は、十九世紀の初めごろから急速に発展いたしまして、激しい国際競争を展開するに至ったのでありますが、それに伴い、海上運送に関する免責約款、すなわち積荷の損害について船主の責任を免れさせる約款が著しく発達し、かつ複雑となって参りました。当時、荷主は、免責約款が少い、従って船主の責任が重いことよりも、運送賃の安いことを望んだので、船主は競って免責約款を拡張いたしまして、船主にとって不利益な判状がありますごとに免責約款をつけ足して参りました。最後には、不当な約款の拡張のために、船主は何らの責任をも負わないという批評を受けるような状態になったのであります。その結果、荷主側の不満もようやく増大して参り宜して、免責約款禁止の声が高まり、世界的世論となって、まず荷主国でありました北米合衆国及び当時の英国属領諸国が免責約款禁止の立法をしたのでありますが、出時最大の船主国でございましたイギリス本国は、これに対してきわめて冷淡であったのであります。しかるに、第一次世界大戦後、イギリス本国は属領諸国との政治的融和をはかる必要がございましたために、免責約款禁止立法の必要を感ずるに至りまして、その準備に着手したのであります。しかし、この粒の立法は一国のみでは自国の船主のみ不利益をこうむることになりますので、条約によって世界的統一法を実税するのが得策であるということになりまして、国際法学会が一九二一年ロンドン及びハーグにおいて会議を開きまして、統一法の立案を作成し、その採用を各国に勧告したのであります。この規則をハーグ・ルールズと呼んでおりますが、その規則を採用するかいなかは各国の任意とされておりましたので、ほとんど実効があがらなかったのであります。
 そこで、一九二二年、国際海法会議かロンドンにおいて開かれまして、ハーグ・ルールズを修正増補し、英米の賛成を得る可能性がある条約草案を作成し、その案をブラッセルにおいて開かれました外交会議に提案したのでございます。ブラッセルの外交会議は、同年及び翌年の二回にわたって審議いたしました結果、ロンドン草案に基いてこの条約案を作成し、一九二四年に各国がこれに署名する運びとなったのであります。当時の署名国は、お手元にお配りしてあります条約の冒頭に掲げてある諸国でございます。
 条約はこのような経緯によって成立いたしましたので、その主眼とするところは、荷主の利益保護のために免責約款をある程度制限して、船主の責任を強化するにあったと言うことができるのであります。
 次に、日本の商法とこの条約との関係について申し上げますと、現行商法の海商編は、明治四十三年の商法大改正の際に、一八八八年の国際商法会議の草案にならって改正されたものでありますが、この草案は免責約款禁止をめぐって船主側と荷主側との間の抗争の敵しい時代に作られたものでありまして、とうてい船主の満足を得るものでなく、日本以外の国においてはほとんど採用するところとならなかったものであります。従いまして、日本の現行商法は船主にとりましては各国法に比べましてな苛酷内容になっており、一九二四年に成立いたしました条約は、諸外国にとりましては船主に不利益であると言われたにもかかわらず、わが国においてはかえって船主に有利であるというような形になっておるわけであります。
 この条約に対してわが国のとりました態度について申し上げますと、この条約が署名されましたのは、先ほど申し上げましたように一九二四年、すなわち大正十三年でありますが、その効力が発生しましたのは一九三一年すなわち昭和六年であります。当時わが国におきましては司法省に設けられておりました法制審議会で商法の全面改正を審議中でありましたので、この条約をも検討いたしました結果、海上運送に関する規定はこの条約によるべきものであるという結論に達しました。昭和十年「商法商行為編及海編改正ノ要綱」というものを発表いたしましたが、その一項目としてその旨を掲げておるのでございますが、この要綱の立法化はちょうど戦争のため中断されまして、今日まで実現されなかったのであります。終戦後新たに法務省に設けられました法制審議会の間法部会におきまして最初に取り上げられた問題が、会社法改正の問題と、この条約を採用するかどうかの問題であったのであります。
 この条約の採否につきまして各界の意見を御紹介いたしますと、海運業者は、この条約をすみやかに批准し、立法化することを望んでおります。第一に、この条約は右に申し上げましたような事情によって海上運送人の責任を軽減するものであり、現状に比して有利であるということであります。第二に、日本の商法に理解のない外国人を相手とする取引にあっては、条約と内容の違う日本の商法に準拠して取引するよりも、条約と同じ内容の商法に準拠して取引する方が便利である、こういう理由によりまして、国際的海上運送にありましては、わが国の業者は、現在におきましても、日本商法によることなく、条約または条約を採用する外国法に準拠して契約を締結し、免責約款を設けるのが通例になっております。しかるに、条約によって許される鬼火約款が、日本の商法によりますと無効と解される場合がありまして、取引上しばしば苦境に立つことがあり、国際競争上不利益とされていたのであります。そこで、戦後国際競争に参加して海連業の復興を急ぐについて当条約の批准が目下の急務となっているのであります。
 海運業者と利害関係を異にする貿易業者の立場はどうかと申しますと、船主の責任を軽減すること自体については必ずしも歓迎はしないのでありますけれども、諸外国の海運業者の負う責任以上の責任をわが国の海運業者に要求し、この条約の批准に反対するということは考えていないようであります。のみならず、この条約は、必ずしも荷主に不利な面ばかりとは限らず、右利な面もあるのであります。たとえば、船荷証券につきましては、条約と違った内容の商法に準拠するよりも条約と同じ内容の法律に準拠する方が、外国の信用を招き、取引上便利である。従って、この条約の批准はむしろ望ましいものであるという考え方もあるわけであります。保険業者は荷主とほぼ同様の利害関係に立つわけでありますが、保険業者も船主の責任の軽減については貿易業者とほぼ同意見でありました。保険の取引に対してはさほど影響がないものとして、この条約の批准には反対はしていないのであります。
 この法律案は、法制審議会でこれを取り上げました発端は東京商工会議所の要望に基くものであったのでありますか、同商工会議所においては、一昨年末、海運業、貿易業、保険業の各界の代表者に学識経験者を加えまして、条約を詳細に検討し、各界の意見の一致をもってこの要望を法務大臣に提出したわけであります。法務省におきましても、別途各界の意見を聞いて、法制審議会の答申を得て、この法律案を提案するに至った次第であります。
○三田村委員長 以上で補足説明は終りました。
 本案についての質疑その他は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
○三田村委員長 次に、判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法一律案を一括議題とし審査を進めます。
 発言の通告がありますので、これを許します。椎名隆君。
○椎名(隆)委員 第一審の充実強化は多分に在野法曹から要求されておったのでありますが、今まで実現する運びに至らず、ようやく今回実現するようになったことは非常にけっこうなことと思います。しかしながら、特例を設けて判事補を高裁の陪席にし、高裁の重要な判事を第一審に転職せしめるということが実際上できるかどうか、ちょっと疑問に思うのでありますが、実現の可能性はございますか。
○位野木政府委員 実現の可能性の点でございますが、これは裁判所の運用にかかっておりますが、全国的にそういう態勢がとれれば実現が可能ではないかということを考えております。のみならず、たとえば、今急にでぎなくても、将来地方裁判所から高等裁判所に移すのを制限するということも十分考えられます。それから、今年の十一月でございますか、下級裁判所の裁判官の多数に対して、十年の任期がくるのであります。そういうことを考慮いたしましても、相当可能性があるというふうに思います。
○椎名(隆)委員 実際の面から言って、今まで高裁の判事をしていた人間が十年の任期がきて、今年の十一月、再任の形式をとられるかどうか知らぬが、今度あなたは一審に行って下さい、陪席の方はあとから補充しますと言うた場合、今まで高裁の判事としていばっていたというと語弊があるかもしれませんが、高裁の判事をしていた人間が一審裁に行って裁判する気になりましょうか。また、実際面から言って、その裁判官の意思に反してあなたは一審裁へ行って下さいということを言うことができますか。
○位野木政府委員 一審が非常に重要であるということを朝野をあげて今論議し、認識されておるわけであります。その重要性を認識する以上は、十分そういう可能性があるというふうに考えております。
○三田村委員長 ただいまの椎名君の質疑に対して、最高裁判所の方の御答弁はいかがですか。
○関根最高裁判所説明員 今の椎名委員のお問い、ある程度ごもっともだと思いますが、今位町木政府委員からお答えがありましたように、今年度の再任の問題がございます。これはかなり多数の人数にわたります関係で、これを機会に実現の可能性があるというふうに言い切ってもいいのではないかと考えます。
 それから、なおもう一点、たとえて申しますと、東京の高等裁判所の判事が東京の地方裁判所の判事の裁判長になるということになるならば、おそらく承諾の可能性があるのじゃないかと思います。今お話しのように、一審の裁判官の方が忙しいじゃないか、何を好んで最高裁の陪席からそういうふうな人事異動に協力するか、とそういうことは困難じゃないかというお話がございましたが、この点も、席よりも裁判長として活躍するというところに生きがいを感ずるということも考えられると思います。
 大体以上であります。
○椎名(隆)委員 一審強化ということは社会的に在野法曹からも年中要求しておったのですが、さて、社会的には一審強化ということは非常に必要だといっても、今度個人々々になってみますと、高裁の判事から、最高裁に勧められたからといって、今度下級裁判所へ行く気にはおそらくならないだろうと思う。それに対して最高裁の方では転用をせしめるについて十分な確信がございますか。
○関根最高裁判所説明員 確信があるかというお問いでございますが、これはしかりと答えざるを得ないと思うのです。そういたしませんければ、一審充実の実現はほとんど不可能になる。そうして、判事補でございましてしかもまだ判事にならない裁判官が一審の裁判長として活躍という方が、何と申しましても一審充実の線に合うわけでございますので、その線には必ず実現の可能性があると言ってもいいのではないかと思います。それから、数の点から言っても、、五年以上の判事補で単独の裁判をしている者の総数が二百名以上を越えております。そのうち約五十名そこそこ程度の人が高裁の左陪席として交代するということになると思いますので、実現の可能性はあるということを申し上げていいと思います。
○椎名(隆)委員 最高裁の方に実現の可能性があるというお話を囲い安心いたしました。また、一審強化の方法としてはそれ以外には考えられないかどうか、あるいはまたほかに方法があるのではなかろうか、たとえば司法行政事務担当の判事、判事補の転出等は考えられないか、この点についてどうですか。
○関根最高裁判所説明員 今のお問いは、司法行政事務にタッチしております裁判官のことですか。
○椎名(隆)委員 そうです。それを転出させてはどうかということです。
○関根最高裁判所説明員 確かに、お話のように、現在の裁判所の司法行政事務と申しますか、裁判所行政に関与しておりまする裁判官の数は約官名前後ございます。これは、最高裁判所の事務総局に入っております者と、それから、各秘の研修所、それから、御承知の最高裁判所の調査官、これを合せますと百名前後になりますが、この判事の交代、書架をかえて申し上げますと、たとえて申し上げれば、調査官の人事につきまして現在ほとんど大多数が判事をもって充てておりますが、これを若い判事補にかえる、それから、たとえて申し上げれば、われわれにいたしましても判事の資格を持っておりますが、一審の裁判所に出るということにいたしまして、若い判事補とかわっていた、だくということの実現は、これは可能だと思います。そういった方向で一審充実ということも考えられると思います。
 それから、なお、これは今法制審議会で議論になっておりましてまだ結論までいっておりませんが、現在の地方裁判所の裁判の大部分は一人の裁判官で裁判をしておりますが、一人でやるよりは二人でやる方がいいということで、二人制の合議制ということを採用していただいたらどうかということを最高裁判所の方で考えまして、今法務省の方へ要望しております。それが現在法制審議会で議論中でございます。これなども一つの考え方かと思います。
○椎名(隆)委員 先般最高裁判所の機構改革問題について公聴会を開いたのですが、あのときに、総評議長の原口公述人が出てきまして、判事、判事補で総評傘下の調査課並びに事務局に籍を置く者が百四十名もおるということを言っておったのですが、その点いかがですか。
○関根最高裁判所説明員 私もあの席でその話を伺いましたが、原口公述人のお話は、おそらく、一たん裁判官になった老のうち、最高裁判所の、今申し上げました司法行政、研修所の教官等になったほかに、法務省の力に検事として転換した人の数を入れておると思います。その数を入れますと大体百四十名程度になると思いますが、しかし、検事に転換いたしますのは本人の希望に基きますので、その結果法務省に転換しているということになります。でありますので、取高裁判所の範囲内において司法行政にタッチしておりますのは、先ほど申し上げた全部でございます。
○椎名(隆)委員 現職判事並びに検事の中で、いわゆる総評傘下に入っている人間がどのくらいの数おりますかわかりませんか。いわゆる司法労組の人間、総評傘下に入っている判事さんがいるわけですね。現職の判事、検事でどの程度の調査課並びに事務局に籍を置いている者があるか。
○三田村委員長 委員長から補足して申し上げますが、全司法の組織の中に現職の判事、検事が何名参加しているか、こういう意味だろうと思います。
○関根最高裁判所説明員 私の知る限りにおいては、一人もおらないと思います。
○椎名(隆)委員 本法第一条で、判事補で五年以上になる者のうち最高裁判所の指名する者は当分の間判事補としての職権の制限を受けないものとし、と規定してありますが、「当分の間」とは一体いつまでをさしておるのか、また、最高裁の指名の基準はどこにあるのかその点をお伺いします。
○位野木政府委員 これは今度の改正案でなくて現行法の第一条第一項の「当分の間」でございますが、これは、結局、判事の定員が充実いたしまして、判事補をもって判事にかえる、判事の職務を行わせるという、必要性がなくなる時期ということになると思いますが、御承知のように、まだ判事で欠員がございます。補充をしたいのだけれども補充ができないというふうな実情でございますので、その見通しが立つまでということになりますが、現在なお判事補で判事と同じ職務を行なっておるという者の数がかなり多数に上っております。この間率直な意見を申し上げましたが、お手元にお配りしました資料をごらんいただきましても、相当数、これは二百六十七名の職権特例判事補がおります。これを全部判事で埋めるというには、なお少くも数年は要するというふうに考えます。
○椎名(隆)委員 裁判所法の一部を改政する法律案についてちょっとお伺いしたいと思いますが、本案によりますると、新しく家庭裁判所調査官研修所を設けることになるのでありますが、聞くところによりますると、従来裁判所の書記官研修所において家裁調査官補の研修を実施しておる由でありますか、どんな方法で研修しているのか、その実情についてお話を伺いたいと思います。
○菰淵最高裁判所説明員 従来書記官研修所におきまして家庭裁判所の調査官の研修をして参りましたけれども、御承知の通り、調査官は、一つの事件を特殊の事情に基きましてそれぞれ解決していくという、いわゆるソーシャル・ケース・ワークということを指導しております。しかしながら、書記官研修所におきましては、ソーシャル・ケース・ワークについて十分のみ込んでおられる方が――これは日本で新しい行き方でございますので、今までなかった。従いまして、それの基礎理論になります、またその実務の上で必要になります法律、もしくは基礎理論である社会学とか心理学とかいうものをやりまして、もう少し突っ込んでケース・ワーク――つまり個別処遇あるいは個別解決というふうな方の理論の方はほとんど触れておりません。そういうような研修をいたしております。
○椎名(隆)委員 家庭調査官の研修所の新設に伴う予算措置はどうなっておりますか。
○菰淵最高裁判所説明員 今回新設せられますものにつきましては、昨年度から書記官研修所において家裁調査官の研修をやっておりまして、今年度三十一年度は多少広げておりましたけれども、まだ十分でございませんので、今度もし独立がお認め願えますれば、大体二千百六十万円くらいの予算でまかなっていく。その大部分は、人件費が約六百万円、それから大部分を占めます研修生の旅費、日当、東京に滞在しております者の日当が約八百万円、それから講師の謝礼が二百万円、その他雑費、いわゆる庁費でございますが、そういうものになっております。
○椎名(隆)委員 本案によりますると、今度裁判所の速記官の制度を設けるそうでありますが、書記官と速記官との関係が一体どうなるのか、いわゆる権限の調整問題、それから、従来の書記官の作ったいわゆる調書と速記録との関係、この点について御説明を願いたいと思います。
○関根最高裁判所説明員 今の椎名委員のお問いでございますが、これは、なぜ速記官という職が必要かということを簡単に申し上げますと、戦後法廷におきまする証人の尋問が、御承知のように、裁判官が進んで聞くことではなしに、訴訟代理人の弁護士の方が、自分の申請された証人を進んで聞き、相手方の訴訟代理人たる弁護士の方がそれに対して反対尋問する。いわゆるクロス・エグザミネーションの制度が採用されました結果、従来の書記官の要領だけを筆記いたしまする調書では十分でないというところから、やはり速記がいいということから速記官の採用か考慮されるに至りまして、現実におきまして数年前から裁判所事務官として速記専門事務官を採用いたしまして、その養成をやって参りました。しかし、裁判所の書記官の仕事と速記官となるべき者の仕事の割合でございますが、すべての事件について速記を採用いたしますると記録が膨大になりますので、事件によりましてこれを区別して、非常に証人尋問がめんどうな事件についてだけ速記を採用するということにするわけでありまして、これを非常に大まかに申しますと、大体百人の証人のうち精一ぱいのところ三十人くらいの分について速記を採用したら、どうかという見通しでございます。でありますから、書記官のうち三分の一だけは速記官と切りかえていきたいという考えでございます。
 それから、今お問いがございました、速記官が作りました速記録と書記官の作りまする調書との関係でございますが、これは、速記官の作りました速記録の利用方法がいろいろございますが、速記官が作りました速記録を書記官が自分の調書の一部として引用するというのが現在行われておるやり方でございまして、あるいは引用せずに自分の要領調書を作る参考とする場合もありますが、事件によりましては速記官の作りました速記録をそのまま引用するというやり方でやっております。おそらく、速記官の制度は認められましても、そういった方向でいくということに相なろうかと思います。
○椎名(隆)委員 そうすると、一つの公判に速記官と書記官が立ち会った場合は調書が重復することになる。書記官の調書は大体書記官の権限で作成している。その要領のみが調書に出るのですが、速記官の速記録は細大漏らさず出ることになるので、そうすると、一つの事件に書記官と速記官の立ち会うときは常に重複した調書ができるように考えられるのですが、その点はどうなんですか。
○関根最高裁判所説明員 御承知のように、速記官が作りまする速記原簿ができ上りまして、それをさらに反訳するということが非常にめんどうでございます。でありますから、事件によりまして、速記官をつけまして、速記原簿を作ったままにしておいていい場合もあり得るのではないか。言葉をかえて申しますと、その場合には、一結に立ち会っておりました裁判所の書記官の要領調書でいいんじゃないか。そのときに、要領調書だけでは書記官として十分でないところは、速記官の原簿を読んでもらって、それを補充するということが考えられる。それから、ただいま申し上げました、速記官の作りました速記原簿を反訳いたします場合には、それをそのまま書記官の調書の一部として引用する。でありますから、その限度では書記官は実際問題としては自分の調書を作らない。そのかわり、書記官の責任において、速記官の作りました速記録を調書に引用するということに相なるわけでございます。
○椎名(隆)委員 そうしますと、速記官の作った原簿はそのままに置いて、必要があったたびに反訳する。速記官の原簿を反訳した場合、調書と速記官の作った速記との間に誤まりがあった場合は、いずれを公判の主たる証拠となさるのか、その点についてお伺いいたしたい。
○関根最高裁判所説明員 裁判所におきまして証人の供述を調書に作ります場合の責任者は、あくまで書記官でございます。でありますから、速記官の作りました速記録と書記官の作りました調書ともし違うといたしましても、書記官が責任を持って自分の方がいいということになりますれば、書記官は自分の責任において調書を作ると思います。ただし、書記官として作りました調書につきましても、その上司たる裁判官が、速記官の作りました記録の方がいいとなれば、その訂正を命ずることができるわけでございます。裁判所書記官に対しましての訂正命令でざいます。
○椎名(隆)委員 裁判官の書記官に対する訂正命令は、書記官にはできても、速記録そのものに対してはできないわけですね。そうしますると、私たちは年中経験しておるのですが、証人の調書が間違っておる場合が往々あるのです。私たちは異議の申し立てや何かやりますが、そのときに、書記官の調書と速記録と、私は必ず間違いが出てくると思う。そのときには、書記官の責任において自分の調書が間違っているということはなかなか旨い得ないものです。自分か作った方が正しいのだとおそらく主張するのじゃないかというふうに考えるのですが、そのときの採用いかんは裁判官の自由心証によるのだろうと思いますが、常に重複するようなきらいが出てくる。むしろ事件を繁雑にするようなことになりはしないですか。その点についてお伺いしたい。
○関根最高裁判所説明員 先ほど私最初に申し上げましたように、速記官がつきました法廷におきましては、おそらく裁判所の書記官も速記官の作りました速記録にたよることになると思います。言葉をかえて申し上げれば、速記官の作りました速記録をそのまま引用する場合が多いんじゃないかと思います。従って、今申されました重複ということは実際上少いんじゃないかと考えるわけであります。
○椎名(隆)委員 しかし、速記官のとったものは、原簿そのものにしておいて、必要がなければ反訳はさせないのでしょう。必要があって初めて反訳させるということになりましょう。その前には、裁判所の書記官の作った調書そのものを出すということになるのではないですか。
○関根最高裁判所説明員 あるいは私の申し上げようが足りなかったかも存じませんが、大体におきまして、現在、速記官をつけるということになりますれば、重複して書記官が自分の調書を全部作らずに、速記官の作りました速記の原簿をさらに反訳させまして、それを引用する場合いが多いと思います。言葉をかえて申し上げれば、重要な事件に限って速記官をつけるということに実際上やっておりますし、また、そうなろうかと思います。
○椎名(隆)委員 重要な事件であるとか重要でないとかという認定はだれがするのです。あるいはまた、訴訟代理人ないしは弁護人の方から要求があった場合も速記官をつけるのですか。
○関根最高裁判所説明員 現在の手続法におきましては、当事名の申し立てがありますと速記者をつけることができるということになっておりまして、申立権を認めております。その申し立てに基きまして、だれがその速記者をつけるか、どうかをきめるかと申しますと、これは裁判官がきめます。その点は、書記官が勝手につけるかつけないかということにはならないわけであります。
○椎名(隆)委員 速記は、機械速記ですか、あるいは筆記の速記でございましょうか。機械速記だとすれば、どんな種類の機械を、全国で何台くらい購入する予定になっているのですか、そして、その予算はどうなっていますか。
○関根最高裁判所説明員 大体におきまして、現在まだ速記官という制度が、この法律ができ上りません関係から、速記官という名称ではございませんで、裁判所事務官で速記をやっております。この数が大体三百名ばかりで、一人につきまして二台くらい速記の機械を与えておるわけでありますが、この一台の値段が大体三万円程度認められているわけであります。
○椎名(隆)委員 速記官という名称ではないというのですが、仮称で速記官と言いましても、その任用方法並びに研修方法はどうなりましょうか。
○関根最高裁判所説明員 この任用の方法は、現在裁判所の書記官研修所におきまして養成期間を経まして、それから裁判所の事務官として現在では採用するわけでございますが、大体二年間養成いたしまして、厳重な試験を経ました上で採用するわけでございます。
○福井(盛)委員 関連して……。
 ただいまの御説明で大要わかったのですが、今までのような上やり方で速記官を使って事件を進行するとしたならば、結局書記官の人員には影響はないのじゃないでしょうか。やはり同じ人員を使うということになりませんか。先ほど三分の一減らすこともできるというふうに承わったのですが、その点はどうですか。
○関根最高裁判所説明員 今の福井委員のお尋ね、まことにごもっともなんですが、ただ、全体の裁判所の職員の増員ということがかなりめんどうでございますので、新たに速記官の人員を要求いたしますには、やはり書記官の手が省けるんじゃないかと考えられますし、それで大体一人対一人くらいのところはやむを得ないんじゃないか。これはやはり公務員の全体の増員ということに対する抑制がございます関係から、ある程度やむを得ないんじゃないかというように考えております。
○三田村委員長 高橋禎一君。
○高橋(禎)委員 ちょっと法務大臣に。判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、これによりますと、この判事補の職権の特例というものを当分の間認めるという趣旨であることが法文上明らかなのですが、当分の間といわれる以上、何か根本的な対策があって、この法律はやがて廃止される、こういうのでなければ意味がないと思うのです。従って、その根本策は一体どういうことを考えておられるかということをお伺いしたいのです。と申しますのは、確かにこれは当分の間でなければいかぬと思うのです。今国会に政府の提出しました司法関係の法案を見ますと、特に機構の問題に関係して考えてみますと、裁判官の質というものがだんだん低下していくという姿が見られると思うのです。第一審の強化というその言葉は、文字通り一審さえ強化すればいいのだといったようなものでは私は相ならぬと思う。裁判全体を通じての強化ということがあって、しかもさらに第一審か強化されるというなら意味はあるのですが、そうでなくして、上級審の方は弱体化して、一審だけは強化したなんということでは、私は間違いであると思う。特に、先般最高裁判所機構改革の問題に関して公聴会を開いて、公述人の意見を徴しました際に、その公述人の一人、戒能教授のごときは、二審を強化すべきであるということを特に中された。私もやはり同教授の意見は大いに傾聴すべきものがあると考えております。ちょうど一連の法律のあれを見ますと、今度最高裁判所小法廷という裁判所が設けられて、そしてそこの裁判官には必要に応じて高等裁判所の裁判をしてその職務を代行させることができる、こういう案になっておるのです。それから、判事補の職権の特例等に関する法律をもって、実際は判事の資格のない者に判事と同様の仕事をさせる、こういうわけなのですね。この法案も、高等裁判所の事件について裁判官と同じように判事補にその職務を行わせる。これだけ考えてみましても、これでは、裁判官をせっかくりっぱな人を相当の期間養成して、そして事務に翌熟させて、練達の士にほんとうに判事として裁判を行わせる、それから、高等裁判所または第三審の、政府今考えておられる最高裁判所小法廷等においてりっぱないわゆる最高裁判所の裁判官に相当するというような人たちに裁判をさせるべきであるにもかかわらず、代用品をどんどん使うという、間に合せをやって一時をしのごうというような傾向、これは私は、このままではとても大へんだと思います。やはり、最高裁判所すなわち第三審の裁判というものには、それこそ天下一流の人物を網羅して裁判をさすべきで、また、高等裁判所には、地方裁判所、家庭裁判所等の裁判官よりもさらに程度の高い人をもって裁判をさせるというのでないと意味をなさないのです。今日本では第一審の裁判が非常に弱体化しておるから、それを強化していく。ところが、各裁判所に代用品をもってやっていくという間に合せをこのまま放置していくということになったら、司法全体、裁判所全体としては大へんなことになると思うのです。ですから、政府当局においては、実はこういうふうな根本的な対策かあるのだけれども、それには若干の時間がかかる、それでまあ一時の間に合せ、それこそ当分の間、こういう制度をとるのだ、しかし近くこういうふうにして改めていくというお考えがなければならぬと思うのであります。それについて法務大臣のお考えをまず承わりたいと思います。
○中村国務大臣 いろいろな点についての御意見を承わりましたが、まず第一に、今度の最高裁判所小法廷の判事に高等裁判所の判事をもって充てることができるといいますのは、これは、病気をしたとか、ごく特殊な場合に、御承知の通り小法廷の構成が欠けまするような場合に、填補をする必要のあるときに、填補判平として同等裁判所の判事を充てようと、こういうことであります。今までの最高裁判所の制度から申しますと、かりに裁判官か病気その他によって欠けましても、構成が欠けました場合に填補の道がございませんから、構成が満たされるまでは裁判は進行しない、こういうようなことにもなって参りますので、そこで、今度の小法廷の場合には、そうしたような差しつかえを除去するために、填補判事として、そういう特殊の場合に高等裁判所の判事を充てることができるような措置を講じただけでございまして、常に高等裁判所の判事を充てていくというような意図は毛頭ございませんことを申し上げておきます。
 それから、先ほどの「当分の間」の問題でございますが、これは、填補の制度ができましたときに、司法習修生として習修が終りまして、判事補になってから十年間は判事補であって、まだ判事ではないわけでございます。従いまして、そういう制度が新しくしかれたときに、当分判事の数が非常に限定されておりまして、判事を採用いたしたくも他に人材がありません。こういうような関係で、当分の間、五年以上判事補としての職務をとってきた者は判事と同様に独立して裁判ができる、こういうことにいたしたと思うのでありまして、われわれといたしましてはできるだけその後判事補の採用にも努力をいたしまして、人材の養成に努力いたしまして、逐次その判事補として仕事になれました者が、十年以上経過して、正式の判事が予定の必要人員に達する時期を早く迎えなければならない、かように考えております。要するに、先ほども調査課長から椎名委員の御質問にお答えいたしましたように、当分の間というその当分の目標は、結局、そういうふうな方法によりまして、判事補が十年以上経過して、判事の定数が満たされたとき、こういう目標になっておると思います。できるだけその目標の時期にすみやかに達するようにわれわれといたしましては今後努力をして参りたい、かように考えております。
○高橋(禎)委員 今の最高裁の小法廷の事務を取り扱うための職務の代行、これは、法文によると、「さし追つた必要があるときは」、こういうように表現されておるのです。ところが、小法廷は正常の場合は五名、しかし定員三名あれば裁判ができるのです。そういうふうにたくさん病人ができるとはちょっと思えないのです。一つの小法廷で五人判事がおるけれども、何か流行病でもはやったり何かして、三人も四人も一つの部で病気になって、どうにも相当長期の療養を要するというようなときには病気ということが理由になると思うのですが、今そうおっしゃっても、実際の法文運用の場合には、やはり事務が停滞しておるようなときには、一方では宅調しておって、一方ではまた高等裁判所の裁判官を雇い入れて裁判をやらせるといったようなことかあるのではないかと、こういうふうに思えるのです。ですから、今度の判事補の職権の特例等に関する法律の一部を改喜正する法律というのは、説明は一審強化とおっしゃいましたけれども、椎名君も先ほど質問しておりましたように、実際実現できないのではないか、高等裁判所の裁判官が下へおりて地方裁判所の裁判官の仕事をするというようなことは実際はないのであって、高等裁判所の裁判官が最高裁判所小法廷に吸い上げられていく、そのあと埋めに判事補でも使って一時しのいでいく考えではないかという、そしてまた実際やっておればそういうふうになっていくのではないかということが心配される。それは司法全体から言いますと非常に陣営が弱体化するわけで、これは捨ててはおけないという感じがすることが一つであります。
 いま一つは、高等裁判所の審理、裁判の方法は、今の訴訟法から申しますと、書面審理をやっておる。御存じの通り、これ、か原則ですね。こういうところへ若い判事補をやって、そうして書面だけ見てさっさと片づけていく、ああいうことをあんまり早く習わせるということは、かえって弊害があると思う。将来長い日本の司法というものを考えますときに、そして裁判官をりっぱな人を養成していこうというときには、特にイギリスなんかの裁判官採用の方法等から見まてしも、やはり具体的な事件、特に直接審理というものにぶつかって、そうして裁判というもののよさを十分に発揮さす素質を持たせて、それからすわっておって書面審理をやるというようになると、これはできると思うのです。ところが、若い人をすく高等裁判所へ送って書面審理をやらせるというようなことになると、私はむしろ悪い癖がっくと思うのです。と同時に、高等裁判所というのは非常に軽く考えられる危険がある。戒能教授のごときも、二審を強化しない今のような上告審制度というものを考えると、これは大へんだというように考えていらっしゃる。私たちは現在の制度においてもそう思っておるわけでありまして、何だか高等裁判所はもう大したことをやらなくていいんだから人数さえそろえれはそれでいいという印象を与えたら大へんだと思う。判事補に高等裁判所の事件をやらせるということは、定員を満たすだけ、そこにすわっておればいいので、裁判はほかの本来の高等裁判所の裁判官がやるのだ、ついてこいといったような印象を与え、そしてその判事補には悪い癖がつくのだ、りっぱな裁判官になっていくその過程において、こういうことをやらせるということは、かえって、大きい面から見、高い立場から考えれ、は損失であるというふうに思えてならないわけです。高等裁判所というのはそんなに判事補でやっていけるような裁判であるというふうにお考えになるのかどうか、そこのところを伺いたい。
 以上二点をお尋ねいたします。
○中村国務大臣 お説の通り、人材か十分に整い得れ、ばお話のような理想を十分達成することに努むるのが当然だと思います。ただ、現在のところ、人材にいろいろな困難がございますので、現行の刑事訴訟法等から見ますと、一審の審理というものは非常に大事でございます。そこで、できるだけ経験の豊富な人を一審に回しまして、一審の事実審理において十分の審理を尽して参る、そうして、当事者に対する納得の道、満足の道を講じていこうという考え方に立っておる次第でございます。
 そこで、問題は、考えようでございますが、こういうような練達の士を高等裁判所にくぎづけをして、陪席両人とも裁判長のほか十年以上正式判事の資格を持った人のみを充てておくか、あるいは、このうちの一名を一審の充実にとりあえず充てまして、一審を強化するということでいくのかいいか、そこはいろいろなかね合いの点はあると思いますが、現在のところ、そういうような方法によりまして二審の審理の充実を期することがよかろう、こういうことに立っておる次第でございます。高等裁判所におきましては、御承知の通り、書面審理の仕事に若い人たちを関与させることが将来のためにいいか悪いか、この点はなるほど御指摘のような疑問もございますが、しかしながら、書面審理で高等裁判所の裁判をいたしまする場合に、最も重要なことは、法令あるいは判例の調査、学説の調査、こういうような仕事が非常に重要な基本をなすものと思いますので、それらの仕事には、すでに判事補になりまして五年以上裁判の事務に関与して経験のある者ならば、相当な基礎的な調査の素養もありますし、任務、は果し得るのではないか。他に裁判長及び右陪席の経験者がおりますから、それらが合議体に加わって、一審の強化というものとかね合って考えまする場合には、この方をさようにがまんをしても、一審の強化をする方がいいのではないかというように考えられる次第であります。また、早くからそういう書面審理の癖をつけることは人材養成の上からもよくないという御意見もございましたが、ものは考えようで、見方によりましては、そういう時代から二審で裁いた事件の控訴を取り扱いまして、人の行なった事案に対する達観した口で、大局からさらにもう一歩検討するということも、見方によっては将来のために決して悪いことでもないと思いますので、とりあえず、とにかく人材にいろいろな制限がありますので、このような方法によりまして裁判の適正強化をはかっていきたい、かように現在のところ考えておる次第であります。
○高橋(禎)委員 これはこの前最高裁判所機構改革の問題が審議されました場合にも法務大臣に特に申し上げ、法務大臣の決意もまたお伺いいたしたのでありますが、どうも、最近の趨勢としては、司法部というものかだんだん小さくなっていくような感じがしてならないのであります。たとえば、裁判の促進ということを考えましても、それは仕事をするのにしいいような物的設備ということも必要なんです。そういうことをおろそかにしておいたのでは、促進も何もできないし、また、ややもすると真実発見にもあやまちを犯すというようなことがあると思います。ですから、ほんとうに裁判をするのにしいいような設備を充実させるということ。それから、りっぱな裁判官を多数持つというふうに努力する。そのためには、やはり採用の問題もあるでしょうし、教養、訓練の問題もあるでしょう。そして、一番もとは、いつも論議されるのですが、待遇の問題ということもあると思うんです。実にき
 ない事務室で、待遇もよくないというようなところで非常に崇高な仕事をやっていくその姿には、非常に同情し、敬意を表しますけれども、それでは、現実の社会において人材を吸収していって、りっぱな仕事をさすことができないと思う。これは、私は反省して国会に大いにその責任があると痛感しておるものでありますが、そういうふうな点を大きく取り上げて、こういう間に合せの、当分の間当分の間といったような一時しのぎのようなことでなしに、根本的な解決方法を考えていただきたい、私はこういうふうに考えておるわけでありますから、十分その点に御努力を願い、国会も大いに反省してその方に努力するようにいたしたいと考えます。
 それに、いま一つお尋ねしておきたいと思いますのは、今の裁判所法全体、あるいは訴訟法全体について、私は、根本的に改めなければならぬものが多々ある、こういうふうに考えておるのです。法務大臣はそういう点についてどうお考えであるか。たとえば、最高裁判所の機構改革というような問題でも、今、国会で論議されておる程度では、これまた一部を取り上げた問題であって、根本的な解決策じゃないと私は思うのです。やはり間に合せ的なもののように思えてならないのです。第一審から最終審まで全体を通じての裁判のあり方、機構のあり方というようなことを、どう考えられるか。これはすなわち裁判所法の改正ということになると思うんです。それをどう考えていらっしゃるかということ。それから、訴訟法、特に刑事訴訟法のごときは、私は改める点が相当あると思う。これについて改正をされる意図を持って準備されておるかどうか。その点をこの機会にお伺いをいたしておきます。
○中村国務大臣 実は、法務省といたしましては、実体法である刑法の改正準備会を作りまして、すでに法制審議会におきましても部会を設けて着々その準備をいたしておるのでありますが、これが近く完成の見込みがございますので、その準備が終りましたら、引き続き現行の刑事訴訟法の再検討をいたしまして、できるだけすみやかに御期待に沿うような検討をいたしたい。現に、法制審議会の中には刑事訴訟法部会を設けまして、刑法のような準備会までは行っておりませんが、相当熱心に基礎的な検討をしていただいておるわけでございますから、そういう方向にすみやかに進んで参りたいと思います。
 なお、司法全体から見ますると、なるほど、御指摘の通り、いろいろ改善をすべき点――部分的でなく、もっと全般的に考えたらいいじゃないかという御趣意の点につきまして、私どももそういうような感を深くする者でありますので、将来熱心に法務当局及び裁判所側といたしまして検討してもらうようにいたしたい、かように考えております。
 それから、その他、冒頭にお話のございました施設、人才養成等の点につきましては、御指摘の通り、われわれとしては非常に大事な点であると思いますから、今後最善を尽したいと思います。
○三田村委員長 両法案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
○三田村委員長 次に、法務行政及び人権擁護に関し調査を進めます。
 この際警察当局より発言の申し出がありますので、これを許します。警察庁中川刑事部長。
○中川(董)政府委員 過般の当委員会におきまして御質問がございました栃木県氏家町における窃盗事件に関する問題と、埼玉県川口市における建物の明け渡し等に関連する刑事事件等につきまして、当日、私どもで調査いたしておりますところにつきましては当委員会の席上でお答えいたしたのでありますが、その後、各委員の御発言に基き、あるいはわれわれの自発的意思に基いて調査を遂げました状況につきまして、答弁の残り分をお答えいたしたいと思います。
 まず第一は、栃木県氏家町の事件でございますが、氏家町の事件は、過般と申しましたごとく、窃盗事件であるわけでございます。窃盗の被害を受けた永井さんからの被害の届の状況でございますが、
  〔委員長退席、池田(清)委員長代理着席〕
被害の日時につきましては、昭和三十一年十一月初旬ころから十六日までの間と、こういう被害者の記憶に基いての届でございます。十一月二十七日に所轄の派出所の巡査が巡回連絡のためにおもむきましたときに口頭でそういう話を聞いたわけでございますが、その翌日、十一月二十八日に、被害者の永井さんにつきまして被害届を詳細に聴取いたしております。その被害届につきましては、駐在巡査が文書をもって録取いたしまして――被害者のおっしゃる内容を文書にしたためて、事件関係書類として整理いたしまして、関係事件書類とともに所轄の検察庁に送致済みでございます。
 それで、この問題の要点につきましては、過般の委員会でも申し上げたのでございますが、永井さんの所有にかかる土地が、――ほかにもございましょうが、問題になる場所は二カ所あるわけでございます。その第一は、氏家町草川向二千百二十二番地、面積一反四畝十五歩、これは登記簿及び土地台帳について調査いたしたのでありますが、この土地において俗称桃畑と言っておるところでございますが、桃畑における被害につきましての届出を受理いたしたのでございます。それで、過般も証拠採集上粗漏があったという点を申したのでございますが、その点は、今申したところではなくして、氏家町革川向二千百二十二の一番地、このナシ畑のところに関連する問題でございますが、このナシ畑はひとしく永井さんの所有なんでございますが、これも登記簿及び土地台帳によって明らかに永井さんの所有になっておるわけでございます。その永井さんの第二に申しました土地のかきねの外側でイモを取られたという事項を証拠にしている。こういう点につきましては、過般も申しましたごとく、証拠採集上の粗漏である、間違いである、こういうふうに申し上げたのでございますが、届け出ました点につきましては、先ほども申しましたごとく、一反四畝十五歩の桃畑についての窃盗事件について届出を受て、その内容等については、十一月二十八日に被害届を録取いたしておるのでございます。従いまして、被害者から申しますれば、犯罪といたしましては、自己の所有にかかる、また自己が所有し、自己が耕作している畑において栽培いたしましたものについて被害を受けた、こういう点から出発いたしておりますので、出発点は間違っていないのでございますが、だんだん捜査いたしておりますうちに、別の土地のかきねの外の窃取、これは窃取にならぬと思いますけれども、そこで採取したものにつきましての事情が証拠に加わっておった。この部分につきましては証拠能力がない、こう理解せざるを得ないと思うのであります。
 それで、本件につきましては、過般も申しましたごとく、被害者等の供述を聞き、状況を明らかにいたしますとともに、被疑者につきまして事情を聴取いたしましたところ、この桃畑の一反四畝十五歩のところでも取った、こういう供述等もございましたので、それを取り巻く状況等もつけ加えまして検察庁に送致いたしたのでございます。それで、送致いたしたのでございますけれども、本人の自供があるということのほかに、直接的にこれを窃取したことを明らかにする証拠が明確なものがないのでございますが、過般も申しましたごとく、些少な財産に対する窃取でありました関係等もありますし、大体、こういう事件は、起訴猶予になって、本人の今後の状況について御注意願う、こういうことになること等も念頭にあったと思われるのでございますけれども、その点は何と申しても調査が粗漏であったということは認めざるを得ないのであります。
 それから、御質問の第二点は、事件が起りました後に所轄警察署長が関係住民の方に話す場合において、責任回避的な言動をした、こういうことについての調査でございますが、本件が起りまして、この警察官の取扱いその他について問題になるとともに、被疑者が死亡なさった。こういうことにもちろん同情も集まりまして、こういう事情についてできるだけ関係住民に知らせた方がいい、こういうふうにおっしゃる方もございまして、警察署長としてもそれを適当と認めまして、捜査の秘密に関係する分は一般的に言わないことを例とするのですけれども、こういつたすでに事件としては処理済みのことでもあり、大体の様子を申した方がいいということで、お話にもございましたように、土地の方々に事情を申しておるのであります。そのときの事情の申し方につきましては、被疑者の方が死亡なさる場合において、検事の方ではこれは事件にならぬと言っておったのが、警察では非常にやられた、という言動等もあったろうと思うのですけれども、事件の大要について説明しましたほかに、本件につきましては検察庁に送致し、検察庁ではお調べになった、お調べになったのだが、そのとき否認いたしましたので、さらに検察官におかれましては再調査なさる、こういうことであった、再調査する場所は、検察庁の事務室でなくして、被疑者の便益も考えまして、警察署も出向いて検察官が調べる、こういうことでありましたので、その手はずをやって参った、ところが、検察官が警察署に出向かれましたのですけれども、これは任意事件でございますので、被疑者の出頭が若干おくれた、こういう関係がありまして、検察官の用務の関係等もありましたので、検察官の依頼に基いて、その警察署の捜査主任が事情を聞いた、そのときに、検察官のところで否認した事情等についてよく聞いてくれということでありましたので、その点をよく聞いて参った、そうすると、自分が検察官の前で否認いたしましたのは、こういうことで罪になりますと村中に対して申しわけないというようなことからついに否認いたしました、ことに、検察官の前では、加藤刑事が身に覚えがないことは言わなくてもよろしいということを言ったので否認した、こう言ったのでありますが、その加藤刑事はかねがね自分の親族等の関係から見知り合いの人であったので、その名前を出したのだけれども、加藤刑事が直接そう言った事実はない、これを否認いたしましたのは、こういうことによって自分が刑務所に行くということになると大へん困るので、そういうふうに否認したのである、実際はやはり自分が桃畑でヤマイモを取ったのである、こういう供述がありましたので、供述を録取した、そういうことをやった、その後にさらに検察官の方から呼び出しがありましたので、検察官の呼び出しを警察が伝えたのであろう、こういった関係を中心にして申したのであります。そういう検察官と警察の連絡状況等を中心におもに申し述べましたので、御指摘がありましたごとく責任回避的に聞えたのだろうと思うのですけれども、そういった関係を所轄署長が申したのである、それで、検察官に責任をなすりつけるという趣旨では毛頭ないのである、こういう事情でございます。
 それから、被疑者の方が死亡なさるときの状況でございますが、確かに御指摘のように突然の死で、非業の死でございますので、警察官もかけつけまして、そのなくなりがけの言動も聞いておりますが、自分はなぜ死なねばならぬだろう、自分はこの薬で死ねなければ鉄道自殺でも何でもして死んでやる、矢板、――矢板というのは検察庁の意味でございますが、矢板ではかんべんしてくれたのに、この警察ではだめなのだ、検察庁ではかんべんしてくれたのに、この警察ではだめなのだ、こういう意味のことを言って、確かに警察を恨んで死んでいったということは事実のようでございます。
 次に、川口の事件についてお答えいたしますが、川口の事件は、この前も申しましたごとく、民事関係で土地の明け渡しに関する判決に基いて執達吏がしばしば執行に着手いたしたのでございます。執達吏といたしましては、いろいろ日をかえて逐次執行を続けておったのでございますが、この執行を円滑ならしめるために、現に居住しておる人間との話し合いを進められて、話し合いに基いて執行を円滑にしよう、こういうお考えのもとにだんだん民事訴訟法による強制執行をやる場合もございますし、現に占有していらっしゃる方々の承諾を得て事実上の明け渡しが行われる、こういう両方の方法で、いろいろ日によって方法が違うのでございますが、事を進めておった。こういう状況でございますが、御指摘がございました三月三十日の場合は、現に占有なさっていらっしゃる田中という方の承諾を得まして、その承諾に基いて、地主側から委託された五十嵐という人物が中心になってその取りこわし作業をやっておった。このことは占有者が承諾したことに基く行為である、こういう状況であったのでありますが、だんだんそういうことをやっている途中において、非常に密接している関係もあろうと思うのですけれど も、その隣の中村鉄工所の部分に工事がかかろうといたしましたので、そこの住民たちから、警察署に、これは窃盗である、暴力団の暴行であるという申し出があったのであります。従って、警察署としては、かねて本件をめぐって若干の刑事事件等もあった関係かありますので、それぞれ警察官を現場に派出しておりましたほかに、警察活動としては、予備隊と申しまして、事が大きくなりましたら予備警察力をその近所に置きますので、その予備隊をすぐ派出いたしました。現場に出かけて参りましたのは警部でございますが、警部は、まず署長の命を受けまして、電話をもって予備隊の出動を命じて、その不法行為を事前に防止する、こういう活動をいたしたのであります。そういう措置をいたしますとともに、警部自身もみずからおもむいたところ、承諾いたしました部分における作業が終ったほかに、隣の中村鉄工所の部分にいっておったことがありましたので、署長はそのとき執達吏等とも打ち合しておったのでありますが、これはまだ関係がないようである、従って、本日はこの取りこわし作業をやめて、よく話し合いをして円滑にやったりよかろうという旨の警告を現場に行っておる警部が発しまして、その警官に基いて取りこわし作業をやめている、こういう実情でございます。従って、その警告を発するまでの間において、承諾を受けた部分のところか、承諾外のところかということの認定等について若干のいざこざがありまして、これは承諾した部分である、これは承諾せぬ部分であるという認定等のために、執達吏に対する連絡の関係等もありまして、中止の勧告をするのにごくわずかの時間があったということが、いろいろ問題をかもした原因じゃないかと思うのです。
 警察としては、かねがね民事事件でいろいろ問題が起っておることでありますので、民事の権利義務の認定につきましては、もちろん確定判決を中心にして事を運ぶのでありますけれども、現実に執行する面については、執達吏の意見を十分聞いて、それを念頭に置いて事を処理するという意味で、執達吏との連絡を密にしておった。それから、こまかい点については執達吏の認定等もある場合は若干食い違いをしたというようなこともありましたので、いろいろ誤解を生んだのじゃなかろうかと想像されるのでありますが、地元警察としては、現在占有している者の承諾を越えて事が行われるという場合は犯罪である、こういう認識を持っておりまして、具体的の事実認定の場所等につきましては、執達吏の意見を尊重して事を処理しよう、こういう態度をとって事案の処理に当っておったようでございますので、そういった状況をお答えいたしたいと思います。
○池田(清)委員長代理 発言の通告がございます。これを許します。山田君。
○山田委員 ただいまの中川刑事部長のお話を聞いておりますと、どうも理解できない点があるのです。そこで、もう一度伺いたいと思うのですが、ただいまのあなた方の再調べの点から推してみましても、捜査が粗漏であったということは認めているのです。あくまで窃盗したという認定でものの言い方をしているのです。一体、加藤泰一なる者がどういう人間であったかということについて、少くとも派出所あるいは警察当局は知らなければならなかったはずなんです。土地の人はみんな知っていることなんですが、こういう事件からしても、あの人が非常に小心者であったということがわかると思います。それは、選挙のときに、彼は字が書けないものですから、切り抜き文字を持って投票に行ったそうです。そして、鉛筆で名前をなすって書いてきたところが、友だちに、そんなことをするとあとでえらいことになるぞと言われておどかされて、すっかり恐怖症にかかったそうですが、その町のはずれで警察官二名にでくわしたことがあるそうです。その二名の警察官の顔を見るやいなや、彼はいだてん走りに走り出した。それで、制服巡査二名は、おまけに、どろぼうどろぼうと言って、かなり長い時間追っかけたそうです。本人は、どろぼうではないけれども、どろぼうだと言って追っかけられてはかなわぬと思って、逃げた。きたない話をしまして申しわけないのですが、人ぶんだめの中に彼は隠れたそうです。追っかけた連中がどろぼうどろぼうと言うので、ヤジウマまで出てきて追っかけたけれども、いない。夕方になってきてもなお見つからない。応援の巡査まで出てきて、ようやくつかまえてみたら、人ぶんだめの中に入っておった。それを引き出して水をぶっかけて洗ってみたら、加藤泰一だ。なんだ、泰ちゃんじゃないかと言われた。どうしてこんな事態を引き起したのだと聞いたら、選挙のときに字が書けないで鉛筆でなすってきたら、友だちに選挙違反になるんだ、警察にとっつかまってお前えらい事件になってしまうんだぞと言われたので、自分は逃げたというので、警察は、何だ、こんな事件かというので、笑って過ごしたという事件があるのです。この一つの事件から想像しても、加藤泰一なる者は、事警察に関すると言われるような事件については、彼の正直な神経から推してみて、絶対に人のものを取る人じゃないのです。そういう証拠は、大騒ぎをした事件から推してみても警察ではわかっていなければならなかったはずです。まして、今度の捜査は粗漏であるという点まで認めていながら、永井金六さんの畑のイモを盗んだという根拠はどこにもないじゃないですか。家族が八人もおるものですから、お前取ったと言わなければほんとにぶち込んでしまうぞと言われたので、おれは取ってきたと言った、ということを村の人にも言っているのです。それて、その書類が検察庁に回って、検事は非常に穏やかに調べてくれた、検事だけは自分の言ったことをほんとに聞いてくれて、取らないことになったということを、帰ってきたときも村の人に言っているそうです。この事実から推しても、私は、この加藤泰一が取らなかったということははっきり言えると思うのです。粗漏であったということを認めているし、今の再調べの報告を聞いてもわかるように、取った根拠はどこにもないのですよ。中川部長は、取ったという根拠をどこに置いているのですか。
○中川(董)政府委員 これはすべて刑事事件に共通することですが、捜査の段階におきましては、窃盗罪だとか窃盗犯人だとかいうことをきめることは不可能でございますので、最終決定は裁判所の決定によるのであります。しかし、本件は、捜査の途中において被疑者の方が死亡なさったので、この被疑者が確かに窃盗犯人であったということをきめる公けの機関はあり得なくなるわけでございますが、警察といたしましては、その最終的ないろいろの手続を経まして、警察の捜査も行いますし、検察庁の取調べも行いますし、起訴という行為も行われますし、裁判で有罪になるかどうかということがはっきりすることでございましょうけれども、その途中の事件でございますので、この加藤さんが確かに窃盗犯人であったということを言い切ることも、裁判所の判決がない以上は不可能であろうと思います。私が申し上げておりますのは、本件の捜査の段階において、被害者の方からこうこうという申告があり、それに基いて捜査を開始し、捜査を開始した場合において、若干この被疑者の方が罪を犯したと疑うに足る事由がありましたので、捜査を続行し、それから、事件が些少な事件でございます関係等もございますので、任意に事情を聞きましたところ、自分は河川敷地じゃなしに桃畑の中でイモを取った、こういう供述もありましたし、それから、そのほかに、これは正確に証拠とは言い切れないのですけれども、耕作したイモを購入したというような人物等もおりましたので、そういう状況の書類を添えて検察庁に送致したのである、こういうことを申し上げたのでございまして、この加藤被疑者が窃盗罪であるということを確定するためには、御承知のごとく、裁判所の判決がない以上は言い切れないのであります。捜査の手続の途中において、疑いを持ちましてそういう捜査を続けて参った、続けて参ってておるうちに不幸にして被疑者の方が死亡されるに至ったことはまことにお気の毒である、こういう捜査の状況を申し上げているのでございますので、この被疑者の方がまさしく窃盗犯人であるということを明言する資格もございませんし、そういうことを明言することは僣越でございますので、そういうことじゃない、他人のものを窃取したという疑いがありましたので捜査を続行して参っておるのでございます。こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。
○山田委員 今の報告書にもありましたけれども、桃畑とナシ畑の距離は何百フィートも離れておるのでありまして、それで、この報告に従っても、派出所の巡査が行ったはずだ。その畑の周辺に行ってきて見ておるというのだけれども、イモのあった拠点というものは畑の周辺には全然ないのです。一体、全然ないところにヤマイモがあったということがおかしいのですよ。それから、もう一つ、桃畑のまわりにあったと言うけれども、前回も申し上げたけれども、種は同じであっても、自然にはえておるのはジネンジョ、人工を加えているのはヤマイモというのですが、この永井金六さんの畑のあぜにあったのは人工を加えたイモじゃないのです。私の認定では、前回私は写真を持ってきて説明したけれども、竹がきの中にあったものが一つ、もう一つは、ヒノキの木のふもとにあったのが一つ、もう一つは、監視員の留守居住宅のそばの小松のそばにあったのが二本、合計四本です。この四本は、いずれも、人工を施してあるものとは――どう認定しても、われわれが見た範囲においては、人工を施したものではないのです。一体、警察では、畑のイモを盗んだという根拠は、じゃあどこにあったのですか。畑のイモという根拠は。
○中川(董)政府委員 この前の委員会で申しましたのですが、山田委員が現地について御調査になりましたのは、確かにお説のごとく桃畑でなくしてナシ畑の方である。私が今登記簿について申しました点については前者の方に属する。後者の方に属するものにつきましては、通称ジネンジョと称するイモのものである。それで、被疑者の被害の意識は、ジネンジョでなくして、桃畑――最初登記簿に基いてお話ししましたのは、一反四畝十五歩の畑の栽培にかかるイモを窃取された、こういうことなんですが、その桃畑におきまして山田委員がお調べになった点の状況等はわれわれの調査と一致いたすのでございますが、そのジネンジョを取ったという点を証拠書類のうちに加えたということは間違いだったと申し上げておるのでございますが、被害者の言う、桃畑のイモを盗まれたというその桃畑につきましては、取られた状況はあるのでございまして、取られた状況が、本人が取ったかどうかということを明確に確定するためには、いろいろともっと捜査を続行しなければわからない点もあるのでございますが、そのものにつきましては、被疑者の供述があることが一つと、もう一つは、そのジネンジョでなくして桃畑で栽培されたと認められるイモを購入したという人等もありましたので、そういったことも――確かにそれが直接証拠とは言いがたい点があるのでありますけれども、疑いがありましたので捜査を続行しておった、こういう状況なのであります。
  〔池田(清)委員長代理退席、委員
  長着席〕
○山田委員 どうも、中川さんの話を聞いておると、現地の調査に全く間違いないというような意味のことだけで押し切ろうとしておるけれども、実際畑じゃないということがはっきり言えることなのです。それから、永井さんに私は会ってきたのですが、永井さんは、被害届を出す意思はなかったと言うのです。被害届を出す意思はなかったけれども、何べんも出せ出せと言われた。で、あの人は町の方にも仕事を持っておるので、氏家警察にすぐ出せと言われたのに出さなかったらば、あとで警察にどんなかたき討ちされるかわからないので、被害届だけ出す気になった、私は絶対出す気はなかったとはっきり言っておる。そんな、被害届を絶対出す意思のなかった者に警察が書かした、ここに問題があるのです。本人が出す意思がないものを、なぜ出せ出せというようなことを言ったのですか。非常にささやかなもので、上かもそれが取った根拠も私にはわからないので、出す意思はなかった、とにかくあなたは出しさえすればいい、なくなったということでいいということを言われたので私は書いて出した、と言っておる。それから、目撃者といわれた福田ツネさんに私は会ってみた。ところが、ヤマイモを持っておったのは見たけれども、永井さんの畑のものを取ったということは私は絶対に言ってないと言う。一体どこに根拠があるのですか。永井さんは出す意思はなかったのに、警察は出せ出せと言う権能があるのですか。この点はいかがですか。だれに取られたかわからない、出す意思はないと言っておる。
○中川(董)政府委員 繰り返して申し上げますけれども、桃畑のイモでなくしてナシ畑の点についてはお説の通りでございます。桃畑の点については、繰り返して申しておりますように、出す意思がなかったとおっしゃるのでございますが、この点については、十一月二十七日に巡回連絡におきまして警察官が永井さんにお会いしておりますが、そのときには、口頭で、ナシ畑じゃなしに桃畑のイモをどろぼうされたという話があったのであります。その翌日被害届を録取いたしております。いろいろ被疑者がはっきりいたしましてから被害届を取るというようなことになりますと、とかく、被疑者がわかったから、それに合せるために被害届を取るという疑いも出てくるわけでございますけれども、被害届を受理いたしましたときは、被疑者はまだわかってない、むしろ、その被害届を出すと同時に、またはそれ以降においてだんだんその被疑者の関係のうわさが出て参っておるという状況でございますので、無理に取ったとおっしゃいますけれども、この点も私の方で調べたのでございますが、警察ではいろいろ日常の仕事を日誌に書かしておるのでございますが、駐在所の日誌等もよく調べたのでございますが、捜査はそれ以後において行われておるのですけれでも、その最初被害届を受理いたしましたのは、状況を聞き込み、被害者が口頭で届け、その翌日に確かに被害届を受けておりますから、その関係は、駐在巡査の供述ももちろんそうですけれども、駐在巡査がいつも監督処理する日常の日記等についてみましても、そのときの状況がはっきりいたしておりますので、そう無理はなかったんじゃないか、こういうふうに理解せられたのでございます。
○山田委員 本人が取ったか取らないかわからないときに指紋をとられたわけですが、指紋をとられるときに、墨を黒々と手につけられて、指紋を押すときに、こんなごつごつの手をして、このどろぼうやろうと言って指紋をとったという。こういうことで、本人は取りもしないのに、現場を見てさえしてくれればわかると何べんも言っておったけれども、当時どうして現場を見ないで本人が取ったと言われるのか、ジネンジョを取った穴を見ないで、取ったという認定のもとにそういう書類を送られたのか、どうして穴を見なかったのですか。
○中川(董)政府委員 この前もお答え したのでございますが、本件の窃盗被疑事件の捜査のやり方等につきまして、現場の実況検分等がまことに的確を欠き、その結果、御指摘もございましたごとく、桃畑とナシ畑との関係を間違えている、従ってそれに関する証拠の関係も間違いがある、こういうことになりますが、この間違いの根拠は、御指摘のごとく、現場の実況検分が行われていなかった、こういうことである点は、この捜査に当りました警察職員が緻密さを欠いたことは確かでございますので、この点はこの前も申したのでございますが、本件捜査についてまず現場の実況検分等をもっと正確にやっていくことによって、桃畑とナシ畑の間違いなどはもっと早くわかる、こういう状況であったということはお説の通りでございます。
○山田委員 大臣に一つ伺いますが、一体、こんなに報告を二度もやっても、疎漏であったということはわかっているんです。これは、疎漏であったことがわかっているにかかわらず、書類を検察庁に送ったり、また検察庁から警察に書類が回ってきたり、また検察庁に書類が回ったりして、呼び出されて、そのあと死んだわけですけれども、一体、金額的に見ても、当時栃木県のヤマイモ相場というものは百匁二十自ですか、非常に安い値段です。そんな小さな問題でも、それが本人の書類上に出ているヤマイモは二、三百匁ですが、警察では二貫目近くのもののよりに言っています。本人が言っていることと相違があるのですが、私は、これは次から次と呼び出されたことによっ本人は死に至ったのだと思うのですが、こういう小さな事件でも、警察では検察庁まで書類を回し、検察庁で調べてふに落ちなかったら警察に回し、また検察庁に回すというような手の込んだことをしてでも人民をいじめなければならないのですか、これはいじめたんですよ。しかも根拠のないことで、これだけ県下に大きな問題になっしまっているというのは、人権じゅうりんだということを町の人が知っているから、街頭演説をやっても、町の八がたくさん集まって、これは警察のやり過ぎであるということを見抜いているから、別な形で警察に対する反感か私は出ていると思うのです。一体、そんな小さな事件でも、根拠がなくても次から次にいじめなければならないのですか、どうなんですか。
○中村国務大臣 警察は常に地元民衆の支持を受けていなければ本来の警察の使命を達成することは困難であると思いますから、このような事件が起きて地元の人たちと警察との間におもしろくない感情が起っておるというようなことがございますれば、非常に遺憾なことであり、また、当の加藤さんという人にいたしましても、かようなささいなことで一命を失われたということは、まことに遺憾なできごとでございます。十分注意をし、また、残されておる遺族の人たちに対する保護等は十分いたすべきである、かように考えておる次第でございますが、ただ、問題は、われわれの立場として、果してその間警察なり取調べをした検察庁に人権じゅうりんの事実があるかどうかということで、この点につきましても、われわれといたしましてはいろいろ調査をいたし、報告を受けたのでありますが、どうも人権じゅうりんというに値するようなことはないようであります。しかしながら、先ほど警察庁の刑事部長からも申されたように、また、せんだってこの委員会で山田委員から御発言がありました際にも私直感いたしたのでありますが、どうも警察が事件の捜査としては現地調査をいたしておりませんし、被疑者の聞き取りだけで書類を送検したということは、その間どうも疎漏があったように考えております。今日は警察庁の方からそれらの点については疎漏の点は確かにあったようだ、こういうことが申されたのであります。そこで、刑事訴訟法によりますと、警察が犯罪の嫌疑でもって取調べをいたしました調書は、これはやみに葬ってしまうことはできませんので、聞き取り書きを正式にとりました以上は、犯罪の疑いなしとなり、あるいはとる必要がないということになれば別でありますが、そういう聞き取り書きをとった以上は検察庁に書類を送らなければならないという建前になっておりますから、送ったものと思うのであります。また、捜査が現地調査もしていない、疎漏のあった点は、山田委員から言わせれば、どうも警察や検察庁が一緒になって被疑者をいじめたのだ、こういうお話でありましたが、いじめる意思ではなしに、とにかくそういう被害届もあり、いろいろしたので本人を調べてみた、本人も取った事実を是認した、こういうようなことから、おそらく、警察としては、これだけの事件であるから、調書は検察庁に送るけれども、いずれ微罪不検挙で起訴にならないであろうという見通しに立って、起訴にならない事件ならば、現地まで見て、そう念入りにやらぬでも、本人が取ったと言っておるのだから、その聞き取り書きさえとって送ればいい、おそらくそういうことではなかったかと思うのであります。検察庁に参りまして、検察官からも副検事からも、君は取らないなら取らないでいいのだ、正直なことを言ってくれということから、実は取らないのだ、こうなって、警察から送ってきた調書と副検事自身が調べた事実とは違うものですから、検事としては、どうも話が違うから、もう一ぺんはっきりしてくれということを警察の方に電話連絡をしたらしいのでありまして、そういうようないきさつから見て、これは、悪く解すれば、なるほど拷問や何かの人権じゅうりんはしていないまでも、何か検察庁としては、本人が否認をして否認調書をとっておるにかかわらず、今度また警察の方に連絡をしたことは、被疑者をいじめるために連絡した、こう悪くとればとれるかもしれませんが、事実は、おそらくそうではなしに、実態を明らかにさしたいというだけで、警察の調べと検察庁の調べが食い違ったものですから、連絡したものと思うのであります。ただ、この間もし人権じゅうりんの事実があるとするならば、これは由々しき問題でありますから、われわれとしても人権保護の建前に立って所要の措置を講じなければならぬと思いますが、どうも、今調査をいたしましたところでは、人権じゅうりんと認むべきものはないように考えられるのであります。できごととしては、とにかく一命を失われたことで、地方的にも大きなショックを与えておることでございましょうし、とうとい一命を失われたことで、まことに遺憾なできごとでございますが、先ほど山田委員から承わりますと、加藤さんという人は非常に気の小さい人であったということでございますから、あるいはそういうことからこの間違いを引き起したかもしれません。従って、こういうことは、全部の人が同様であるとは言えませんが、大ぜいの世間の人のうちには極度に気の小さい人もあるわけでありますから、警察等の調査活動の上におきましては、そういう点も考慮に入れて重々注意すべきことであるという点は、私もさように考えます。今後とも、機会あるごとに、全国的にそういう点まで配慮した慎重な取扱いをするように、われわれとしてはできるだけ配慮して参りたい、かように考えます。
○山田委員 先ほど中川さんのお話によりますと、加藤泰一さんに、取らなかったならば取らないと害いなさいと教えた刑事は加藤という刑事ですが、それは直接じゃないとあなた言われていますけれども、これもやはり調査が不完全だと思うのです。それはちゃんと雑貨店で話し合って、会合までした人たちがいるんですから、それは決して間接などじゃありません。この点もやはり、話し合って、加藤泰一なる者に――私はその人が正直なので教えてくれたものと思うのです。
 もう一つ伺いたいのですが、地元へ行って調べてみますと、この調べの衝に当った巡査部長は有名な後家回りだそうです。こういう点を当局で一体調べがついているかどうか。それで、地元では、後家回りの犠牲になったと言っている。どうしてかというと、この人が後家回りか何かで疲れてきて、何も仕事をやっていないので、一応ここで点数をあげておかないといかないのじゃないか、それがために、この加藤泰ちゃんが小心者だから、おどかされて点数にあげられちゃったのだ、こういうことを地元では言っているんです。一体、調べの衝に当った巡査部長なる者をあなた方は調べましたか。
○中川(董)政府委員 調査の衝に当りましたのは巡査部長がやっております。それから、後に当ったのは警部補でございます。巡査部長につきましては、私どもの方で調べました。これは、ただいま私の方で申しましたように、捜査のやり方としては、脅迫、拷問等はしていないと認められる節が多いのですけれども、書類の作り方その他につきましてもずさんでございます。そういうふうな教養の点等も、沿革にさかのぼって調べてみたのですが、巡査部長はずっと前の経歴等も調べて参りますと、警察が自治体警察、国家地方警察に分れておりましたときに、比較的小さい自治体警察に勤めておりましたので、捜査能力といいますか、前歴としてそういう小さい自治体におりまして、教養が徹底しなかったという点も災いいたしまして、そう優秀な巡査部長とは率直に申して申しがたい人物でございます。それで、こういった巡査部長等の教養につきましては、過去の経歴も考えて、今後十分教養を徹底いたしまして、間違いのない、しっかりした仕事をやらすように、大いに努力いたしたい、こう思っております。
○神近委員 関連して……。
 今中村法務大臣が、非常に微罪なことであったならば検察庁でこれは不起訴にするだろうとおっしゃったので、私は大臣と中川部長の両方にお願いしておきたいと思います。法務大臣の選挙区の北区でございますが、四十軒ほどの戦災後のバラックができておりまして、そこに道をつける予定のところを、最近地主が売ったか何かした。それで、火事やなんかのときに非常に危険でございますので、住民たちが空地の一部を清掃したのでございます。クマザサが非常にたくさんあった。それを地主の了解を得て取り払ったんですけれども、そのクマザサの中に二年生てらいのシュロの木が一本あって、これは腐れれかかっていたのでございますが、それを取り払ったということ。それから、そのすぐ近くに直径一寸くらいの両またのカシの木が出ておりまして、その両またの一つを切ったところが、そのすぐ近くにある一軒の家が、これはおれの所有地であったという言い立てをして、それを赤羽署が器物破棄というような名前で――これは土地明け渡しか、家費値上げかなんかがからんでおりますが、腐れかかった一尺四、五寸のシュロの木を一本切ったということ、それからカシの木の二またの一まただけを一本取ったということで地検に訴えたのでございます、一万二千円の賠償金ということでありました。私、この間、あまりあほらしいことだと思いましたから、現地に行ってみましたら、その所有権を言い立てた人は、木の方は通路の方に渡してしまって、自分の引き込んだところに鉄条網で垣根を作っているのです。そういう小さなことは何としてもばからしい、忙しい裁判賞がそういうことを扱っていられるかというような気持がしまして、それを早く示談にしてもらいたいというので、その期限の日に地検に行ったのですけれども、杉崎検事が、約束はきょうの十時であったけれども、きのうかおとといか来て、示談の意思がないということだったから、もう起訴してしまったと言うのです。それで、私は、あなたは現地をごらんになったかと言いましたら、見ていない、ただ警察の報告で起訴した、こういう私どもにはとても納得できないことだったのです。起訴されたならば仕方がない、いずれは裁判で争うよりほかはないと思って見過していますけれども、今日裁判所法の改正法案を拝見していて、これだけみんな手不足なのに、一尺そこそこのシュロの木一本と、一寸以内のカシの木の枝を払ったということに時間を使う必要があるかどうか、これは私、御調査を願いたいのです。その住民たちは、その地主を使って土地の値段をどうとかしようという警察上りの人のことを非常に悪く言っております。これは事のついででございますが、こういうことがしばしば起らないように、御調査を願っておきたいと思います。番地その他はあとでお知らせいたします。ただ、今の山のイモの被疑者のように無知でない人たちが出ておりますので、その点は救われていると考えております。あとで御通知いたしますから、お願いいたします。
○中村国務大臣 ではどうぞあとで一つ……。
○山田委員 中川さんにもう一ぺん伺いますが、自治警察時代からおられた人で、教養の点が欠けているのじゃないかというふうな意味のことをあなたは言われましたけれども、やはり、警察というものの威信のためにも――そういうことが調べられた結果わかったのでしょう。私たちが全然知らない氏家にまで行って、何軒かの店へ入って話を聞いただけで、あの人は後家回りだからというふうな声が出るくらいなんです。町民からそういう声が出ておるということは、容易ならない警察の威信に関することだと思うのですよ。それで、点数かせぎに、まじめな泰一さんかやられたんだ、ということを言っておるのです。地元の人たちが私たちにさえそのくらい口にする問題なんですから、ほかのことをもっとたくさん知っていなければならぬと思うのです。そういう調べの衝に当った人たちのことが調べられずにおって、それで、いかにも窃盗容疑のことだけがあげられてしまっているということは、全くふに落ちないことなんです。あなた方は、当時自警にいた人で教養の点に欠けていた人を、これから大いにやると言うが、いい年配の人が、これから大いに教育をするくらいのことで済むと思ったら、大へんな問題だと思うのです。今までやっていることがすでに警察の威信ににかかわっているのですよ。このことが私たちの耳に入る以上は、地元の人はもっとよく知っているはずです。あなた方は、このままにしておいていいと思っているのですか、どうなんですか。
○中川(董)政府委員 お説のように、警察官でも、りっぱな警察官もおりますけれども、極端なのは犯罪を行う警察官もごく一部ございます。そういった点につきましては、信賞必罪と申しますか、それで教養及び監督を強化いたしまして、住民の方々にも納得がいき、また信頼される警察を築き上げるということが私たちの責任でございますので、あらゆる角度から警察官の素質向上及び監督、教養につきまして努力いたしたいと思います。
○山田委員 このことについて、事が非常に重大、だから、もう一ぺん伺いたいのですが、中村法務大臣はどういう意見を持っておられますか。
○中村国務大臣 警察庁の方は私の所管ではございませんが、しかし、警察と検察庁とは、捜査の関係におきましてはきわめて緊密な、いわば一体関係にござ、ますので、このような遺憾なできごとにつきましては、十分考慮いたしまして、今後検察及び警察の捜査活動には万全を期するように配慰して参りたいと思います。
○山田委員 とにかく私はきょうの報告を聞いて、地元の人たちとももう一ぺん対策を立て直しますけれども、全く了解のできないことはかりです。自治警の人たちで教養がなかったという人たちをこのままにしておいて――これからもう一ぺんたたき直すというのでしょうけれども、もうすでに問題が起ってしまったのです。この人の責任ということについては、責任問題として当然何とかもっと明確な御報告があってしかるべきだと思うのです。一体刑事局長はこれについてどうお考えになりますか。いつも、あなたは見識ある御答弁をなさいますから、一つあなたに伺います。
○井本政府委員 とにかく、一たんささいな上な事件が問題になりまして、かうな一命にもかかるような結果を招来いたしましたことについては、私どもまことに遺憾な事件だと考えております。かようなことに至りました係官につきましては、それぞれ十分経過その他を考慮いたしまして、ただいま国務大臣、刑事部長からいろいろ御答弁がありましたのですが、私も、自分たちの方の所管のの事項につきましては、かようなことが二度と起こらないように十分注意いたしまして、人権をこの上とも尊重していきたいと考えます。
○山田委員 きょう栃木県の県警本部ではこのことについての報告を午後の四時に、やるそうです。もちろんあなた方が打ち合せをした結果、発表されることだと思うのですが、この報告くらいの範囲から一歩も出ていない報告であるとするならば、これは全く承服できないのです。そういう点で私は本日の報告に満足しないということを一呑つけ加えて、報告に対する私の質問を終ります。
○三田村委員長 細田綱吉君。
○細田委員 中川刑事部長に伺うのですが、人工を加えたヤマイモ、これの価格はどれだけになるのですか。
○中川(董)政府委員 私、正確に調べたのがあるのですけれども、ちょっとそれ見つけております。
○細田委員 それでは、井本刑事局長に伺います。警察からあなたの方に送致された書類には、いわゆる手を加えたヤマイモ、これの価格はどのくらいになっておりまあか。
○井本政府委員 私どもの報告書には、三百匁、百五十円で買い受けたという記載がございますので――これは買い受けなんですが、百匁せいぜい三十円から五十円くらいというような金額じゃないかと考えております。
○山田委員 刑事部長の中川さんに伺います。御承知のように、警察署が検察庁へ書数を送致するときは、厳重御処分とか、適当に処分相なりたしとかいう意見書がついていくわけですが、その意見書はどういうふうになっておりますか。
○中川(董)政府委員 意見書は、厳重処分相なりたしではございません。被疑者に前科もないことであるし、それから、本件犯行を犯したことについて改悛したことでもあるので、相当処分相なりたし――われわれ警察官は、意見をつける場合は、厳重処分相なりたしということが多いのですけれども、この場合は、相当処分相なりたしということでありました。
○細田委員 そこで、私は、本件について全国的な大きな一つの課題を投げておると思いますので、法務大臣に伺いたいのですが、今井本局長の言われたように、百匁三十円か五十円、大体三百匁程度とすると百円くらいのものです。警察の方では、厳重ではない、言いかえれば不起訴ということを示唆した意見書がある。しかるに、一度本人が否認したんだが、先ほど中川刑事部長の御答弁によると、さらに副検事が警察署へ行って再調べをすることになっていたという。果してそれだけの必要がある本件かどうか。そこで、副検事制度というのが問題になってくる。御承知のように、簡易裁判所の判事は相当むずかしい規則があるんだが、このごろ副検事という制度がむちゃくちゃに乱用というか拡大されておって、検事としては少したよりない、まるで警察の言うなりになって、起訴官としての識見を欠くというようなことがある。こんな事件をさらに検事が警察署へ行って再調べをしなければならぬ必要がどこにあるか、私はそう考える、この副検事にも、加藤某という正直な人間が命を絶つに至った一つの大きな道義的な責任がある。もちろん故意ということはわれわれ考えておるわけではないが、副検事の識見の不足、それから法律学の素養の欠乏が、こんなばかな――百円くらいで、厳正処分でないという意見書もついておるのに、しかも本人は否認しているのに、さらにもとの送致してきた警察署へ出張して調べなくちゃならぬという必要がどこにあるか。あなたは、一般的に見て、やはり検事の立場からはしかるべきであった、副検事の立場からその処置が相当であったとお考えになるか、この点を伺いたい。
○中村国務大臣 副検事全般の問題といたしましては、なるほど、副検事の制度ができました当時は、捜査について素養の十分でない者まで副検事に採用いたしましたので、遺憾の点が多かったと思うのでありますが、その後、法務当局といたしましては、法務研修所におきましてできるだけ副検事を中心に研修をいたしておりまして、今後も一そうこの機構の充実をはかって研修に努めて、遺憾のないようにいたしたいへかように考えております。
 なお、本件の場合でございますが、私の観察するところでは、警察としては、厳重処分相なりたしもつけないで送って参りましたので、当然微罪、不検挙の見当で書類を送検してきたものだと思うのでありますが、ただ、警察にせよ検察当局にせよ、犯罪の予防ということも一つの任務でございますから、たといささいなことでありましても、犯罪があるということになれば、その人をして改悛せしむる必要もありますから、さようなことで警察に書類を送ってきたと思うのであります。これを取り調べました副検事といたしましては、本人が取らないという供述をしたので、少しの無理もしないでそのまま帰宅を許しておりますので、その岡当該の副検事に私は無理はなかったと思うのであります。ただ、今まで申しましたように、犯罪をできるだけ予防し、また犯罪的性格の人間をなくしていくということが捜査当局の一つの任務でもございますから、警察では取ったと言い検察庁に来ては否認しておる。否認かほんとうかもしれないが、もう一ぺんこれは念を入れて確かめておく必要がある、こういうことであったと思うのであります。従いまして、その程度のことは――結果としてこういうできごとが起きてまことに遺憾にたえないのでありますが、それを担当しました副検事としては無理のない措置をとったのだ、今承知しておる範囲の事実を基本としては、こういうように考えておる次第でございます。しかしながら、御指摘のように、副検事全体について捜査に関する素養が十分でないことがあるのではないかという点につきましては、われわれも、この点は十分考慮いたしまして、副検事の検察官としての素養を高めて参りますことについては、研修所の研修を通じまして今後とも一そう努力をして御期待に沿うようにいたしたい、かように考えております。
○椎名(隆)委員 今副検事の問題が出たから、ちょっと申し上げますが、捜査に対する研修ばかりでなく、常識の点をも副検事に相当研修せしむべき必要があると思います。きわめて最近、ある弁護人が、留置している被疑者の釈放の嘆願に行った。そうすると、副検事は、釈放するに際しまして、これは弁護人が来たから釈放するのではないよと言って釈放している。弁護人には、特にあなたが来たからといって釈放したのではないということは被疑者に伝えてやったということを言っている。こういう常識のない副検事が多々あるのであります。これはきわめて最近の話です。そういう点から考えてみましても、副検事の問題は常に問題になっているのですが、私は、相当御考慮願いたいと考えております。
○細田委員 法務大臣は長い間弁護士をされて、われわれが申し上げるまでもなく大先壷でございますが、どうなんです。本人も、あなたのおっしゃるように、しらを切った、しらを切ったから、将来また再犯のおそれがあるから、徹底的にまた地元警察署に行って調べなければならぬ、こうあなたはおっしゃる。それだから、私が質問したように、副検事は何でも警察の通りに結論を出さなかったら役割が勤まらないと思っておるのです。これはあなたも今まで御経験になっておる。しかも、前の警察署に行って何を調べるのです。同じことです。検証だとかなんとかいうことなら別です。あるいはそれを含むととったとあなたは御説明になるかもしれないが、少くとも私が聞いた範囲では、それを含んでいない。警察の通りに、結論を、どんな無理をしても、どんな微罪であってもしなくちゃならぬというところに、もしそうだとすれば副検事制度なんていうものはやめた方がいい。警察官にまかせておいた力がいい。先ほども山田委員か言うように、現場を調べて見取図というか検証調書もできていないというようなきわめて和雑な調べ方です。これは見たらわかると思います。見取図も何もないような、それをなおかつ警察の通りに結論を出さなかったら副検事の役割が勤まらぬような考えに陥っておる副検事は、百害あって一利なし。あなたは、副検事を弁護するために、どうも再犯のおそれがあるから、警察で自白しておいて検察庁に来てしらを切っておるから、――これはあなた自身がその弁護のために一つの先入観に陥っておる。先入観を持ったのでは、正確かな結論は出ませんよ。警察官もちろんしかり、いわんや裁判所も、あなたは十分われわれ以上にお知りのように、先入観というものを持ってはならぬです。従って、その先入観を一歩も出ていないのが今のあなたの御説明です。これは、あなたの立場から副検事を一応弁護されるというのはわかるけれども、上に立つあなたがそんな気持たったら、副検事制度というのはきわめて危険なものである。さらにあなたの御意見をもう一度伺います。
○中村国務大臣 おそらく、副検事が自分で調べた結果、事実を否認しておる否認のお聞き取りをいたしまして、さらに警察に連絡をとったというのは、とにかく事柄がこれだけのわずかばことでありますから、徹底的に被疑石をやっつけてやれというのじゃなくし、事件の処理の結末をどうするにせよ、事態だけは明らかにしておきたい、こういう意図であったと私は思うのであります。なお、出向いてまで調べるのは、結局副検事があくまで警察の調べた通りの結論を出したいということであったが、これは本人の意思を宣誓でもさせて聞かなければわからないことでございますが、そういう意志であったか、あるいは、警察に出向いてまで調べようということであったようでありますから、警察に出向くということは、警察で調べた経過を警察官にも聞き、また当該の被疑者本人からも聞き、そして必要に応じてまた現場の検証をして、現地を見ている記録も検察庁に来ていないのでありますから、そういうことまで十分に尽そうということであったのか、その点は今のところまだ私どもにわかりませんが、いずれにいたしましても、副検事制度そのものについての御議論は別といたしまして、本件の場合におけるこの副検事としては、どうも格別無理はしていないように、私ども今までの報告では承知をいたしておるわけでございます。
○細田委員 今局長のお話のように、わずか百円くらいのものです。その程度で、やはりあなたの方の御方針というものは、もっと最後まではっきりさせなければならぬといものでしょうか、これを一つ最後に伺っておきたい。これは、御承知のように、地方の農村では、検事みずから再び来て調べたなんていうことは、確定判決以上の打撃です。本人の名誉は非常に穀損されます。もう致命傷です。こういう諸般の事情を考えて、この程度のもので、検察庁の最高指揮官としてのあなたの御意見は、これでもなおかつ、そういった名誉を顧みず、起訴不起訴は別として、最後まで黒白をはっきりしておかなくちゃならぬものか、あなたの御意見を一つ伺いたい。
○中村国務大臣 おそらく、この場合に、当該副検事としては、かりに事実かそうであったにしても、起訴に値しない事案であると思っておったと思うのであります。それは、検察当局といたしましては、大体従来のところ五百円未満の犯罪については起訴をしないという方針をとっておりますので、このことはおそらくその副検事も承知しておったと思うのあります。従いまして、かりにこれが事実であったにしても、起訴をしようという意図は持っていなかったのが事実であったと思うのであります。ただ、先ほど申し上げましたように、人のものを取ったか取らないかということは、やはり犯罪をなくしていくという上から申しますならは、できるだけ事実を明らかにして、かりにこの場合の事件であるといたしますならば、本人はうそをついていないのであったにしても、とにかく警察でそういう調べをしている、そういう聞き取り書きもできている、それが否認されて、理屈もなしに否認をされっぱなしであるということになれば、結局うそを見のがしたということにもなるわけでありますから、副検事としては、その間のいきさつを明瞭にしておきたいという考えを起すのも、私は無理のないことではないかと思うのであります。さような点を考え合せまして、どうもこの事件に関する限り副検事の処置にさしたる不都合あったとは私、ども考えられないのでありします。しかしながら、先ほど椎名委員からもお話がありましたように、副検事は検事に比較いたしまして捜査及び一般常識的な教養等についても足らない点はわれわれ認めなければなりませんので、今後、捜査の万全を期するために、その教養を高めることには最善を尽して参りたいと考えます。
○山田委員 先ほど落したので、今の問題についてちょっと申し上げておきます。検事が氏家警察に来たのはこういうことだったそうです。調べてみた範囲においてどうも取っていそうもないという認定だったと思うのですが、とにかく、そんなに警察に行くのをいやがらないで、じゃあ一緒に行ってやろうということだったそうです。時間を午後の四時ごろに約束したそうですが、検事はちょうど宇都宮に宿舎がありますから、矢板からなら帰り道であります。それで、氏家警察へ検事は先に着いたそうです。本人は、二里ある道ですから、あとからてくてく歩いてきたので、私はこの五分間がこの人の運命を決したと思うのですが、着くのが五分ほどおくれたそうです。そうしたら、検事は、乗合いのバスにおくれてしまうからというので、乗られて、宇都宮に帰られてしまったので、加藤泰一さんは惜しいことをしちゃったと書って嘆きながら帰られたというのですが、とにかく、検事はわざわざ警察まで来てくれて、本人のために警察官立ち会いの上で話を聞いたらという意思が私はあったと思うのです。ですから、そういう点は、なくなってしまったあとではあるけれども、本人にお金があったらば、おそらく乗合バスに乗ってこられて、検出と同じ時間に警察に来て話かできたと思うのですが、二里余の道をてくてく歩いてきたことに、この人の運命が発生してしまったのですが、検事が警察へ来てくれたことは、本人のために来てくれたと本人は思っておるようですから、検事の調べについては全然本人は恨んだり何かしていた点はなかったと思うのです。これは後日のためにやはり私はつけ加えてここで申し上げておいた方がいいと思うのです。
○三田村委員長 田中織之進君。
○田中(織)委員 委員長初め各委員の諸君並びに法務大臣等に、午前中から引き続いて長いこと委員会が開かれておるので、はなただ恐縮なのですが、事人権問題に関連して、ことに最高裁の判決が近ついている関係がありますので、ぜひこの委員会で法務大臣並びに刑事局長、人権擁護局長等に御答弁を煩わしたいと思います。
 その問題は、やはり人権問題の一瞬重要な問題になっておる部落問題でございます。未解放部落に対する差別問題に端を発した問題でありよすが、ただいま問題になりました栃木県のヤマイモ事件とは対照的なんですが、実は、栃木県において、ヤマイモ事件は警察並びに検察庁が非常に厳重にやったために人命を失うということまでなったわけでありますが、これは足利市で起こった問題でありますけれども、女浅間山の美人少女毒死事件ということで新聞等にも出た事件であります。矢菅妙子という部落の娘さんが、恋愛関係にあって結婚を求められておった男に数日間監禁をせられておって、そのあと実は女浅間山で毒死体になって現われたという事件なんです。この問題については足利警察並びに検察庁にこの問題を告発をいたしました。ところが、その女の子の相手方が一度も取り調べられないままに、検察庁も取り上げない。そして検察審議会の問題になった問題でもありますので、この点は足利警察並びに検察庁の関係から次回にでも報告を願いたいと思うのですけれども、この問題は、毒死体となって発見をされる直前に、毒殺したかあるいは自殺幇助であるかは問題ですけれども、相手の男の母親がその遺体のそばにおったということを目撃しておることも明白なのであります。ところが、警察及び検察庁の方では、一応関係者と目される相手の青年を一度も警察及び検察庁に喚問する等の事実がなくて、現在も行方不明になっておる。ところが、われわれの解放同盟の調査によりますると、ことしの一月には足利市に姿を現わしておるんであるけれども、警察が取り調べてもいないという関係なんです。この相手の死んだ子はたまた衣部落の出身の女の子であるからということで、そういうえこひいきな取扱いをいたしておるとは私は思わないのでありますけれども、少くとも、一人の人命に関する問題で、そういう片一方ではその数日前に結婚を求めてその女の子を自分の家に閉じ込めておったというような事実関係までが明白になっておるのに、当の相手の青年を、関係者の話によると警察の了解のもとに逃がしておるんだ、こういうようなことすら言われておるのです。この問題は足利警察並びに検察庁及び検察審議会で相当期間にわたって調べた問題でありますから、私は一応あなた方の立場から調べた経過を報告していただきたいと思います。そういうのがあるかと思うと、今山田委員等から指摘したような問題があるというような形で、これはやっぱり栃木県警察の扱い方にしても一貫性を欠くと私は思うのです。その意味から見て、これは重大な人権問題でありますから、お調べを願って、報告を願いたいと思のです。
 私が特に法務大臣等にこれから伺おうという問題は、広島県の福山市に起りました問題で、一口に言えば、部落の青年が、部落外の一般の娘さんと、部落民であるということを隠して結婚した。結婚するために見合いからすぐとんとんと話が進んだ形になっておるのでおりますが、それが結婚誘拐罪で、同時に三日間同棲しておるわけなんでありますが、それにもかかわらず、それは三日間は不法監禁であるということで、一審は、福山の裁判所で、和田利明という結婚の相手の男が懲役一年、それから、それの仲人をしました高田久夫夫婦が結婚誘拐の幇助罪でそれぞれ懲役一年、高田久夫の奥さんは執行猶予になっておるのであります。判決は、結婚誘拐だけが有罪で、不法監禁は無罪となっておりますが、広島の高裁ではこれが控訴棄却になって、現在上告審にかかっておるわけでありますが、近く判決が下るわけであります。この問題については、これはずっと前の事件でありまして、昭和二十九年の九月の二十六日に起った問題でございます。昭和三十年の十一月の二十四日の二十一回国会で、参議院の法務委員会において社会党の吉田法晴委員がこの問題を取り上げまして、当時の人権擁護局長の戸田さんと、今おいでになる刑事局長の井本さんから、それぞれ答弁があった問題でありますが、そのときにも、まだ事情かよくわかりませんので取調べを進めてみようということを、刑事局長並びに当時の人権擁護局長は答弁されておるのであります。その後の調査も遊んでおるかと思うのでありますが、それにもかかわらず、事態は実は進行いたしまして、現在上告審にかかっておる問題であります。たまたま、私、現在部落解放全国同盟の書記長をいたしておりまする関係から、この事件を同盟の立場で考えると、部落民であるということを相手に告げず、あるいは部落民が一般の部落外の人たちとの結婚が困難であるからということで、その事情を隠して結婚するということが結婚誘拐罪で罪になるのだというようなことでは、これは、全国に六千部落、三百万の未解放部落の人たちが現在生活をしておるわけなんでございますが、非常にゆゆしい問題だと思うのであります。その意味で、私は、この点について、裁判にかかっておる問題でありまするから、裁判所の決定についてはとやかく言いません。上告審においてもわれわれは争うつもりでございますけれども、問題は、この事件の捜査の過程において、私は重大な差別がひそんでおると思うのです。
 一つの問題は、起訴状にこういうようになっているのです。「被告人和田利明はかねてから芦品郡服部村大字服部本郷一〇六番地高橋早子(当二〇才)に対し私かに思を寄せて居たが被告人方が、同郷近田村字昭和にあるため俗に昭利部落と世人よりひそかに蔑称せられ一般社会との交際疎遠である所謂特殊部落内の一家であるとの観念のもとに尋常の手段方法では倒底同女との結婚は至難であると思念し之が方策に苦慮して居ったが偶々同部落高田清子か前記、早子と以前懇意であったことを知り之を寄貨に右清子及同女の夫、久夫等と計り虚言を用いて前記早子を自宅に伴い以って結婚を強要するに如くはなしと思考しここに被告人和田利明同高田久夫同高田清子の三名は共謀の上昭和二十九年九月二十六日右高田清子に於いて前記服部村に赴き」この早子を連れてきた、こういうようになっておるのであります。ところが、これに基いて、結局、第一の事実に対しては、営利誘拐、刑法二百二十五条、第二の事実に対しては、不法監禁で二百二十条の罪名のもとに起訴いたしたのでありますが、それからあとで、検事の方から、実はこの控訴事実第一中、「被告人方が」以下「観念のもとに」迄削除し、「方策」を「求婚」に改め、「同部落」を削除する、こういうように起訴状の訂正をいたしております。しかし、いかにその起訴状を訂.正いたしましても、私は、やはり、この事件につきましては、検察当局が明らかにいわゆる昔の特殊部落民というものは心常の手段では結婚できないのだからということをきめてかかっていること自体が、これはきわめて憲法第十四条の精神からいたしまして今日の民主主義のもとにおいては許されないことだと思うのであります。この点については、裁判の上では、明らかにいわゆる裁判官に予断を与えるものだとして、弁護人たちで抗告をいたしましたが、裁判所の方ではその抗告は却下いたしております。しかし、これは、起訴状にたとい訂正しようとも一たん載せた事実でありますから、私はまがうことない事実であろうと思うのであります。
 それから、この事件についてその後取り調べられておりまする関係もありましょうから、私がこの事件について問題をあらかじめ全部あげてみますから、それについて、逐次お答えなり、まだ調査ができていなければ次回にも一つ取り調べた結果を報告順いたいと思うのでありますが、この事件で重要な点は、やはり告訴の問題が出ております。ところが、後に至って、高橋早子という女の子のお父さんから、和解が成立したということで、結婚はしないという約束で話がついたということで実は告訴を二取り下げておるのであります。公判の調書の関係からは、その告訴取り下げのときの調書も出ております。ところが、不可解なことに、その告訴状の日付が警察の方で便宜的に、口頭で告訴が出たときの日付にスタンプの口付をくるくる回し、さかのぼって判を押したということを、井上という取調べの警察官が公判の法廷で述べておるのです。これいは、その告訴の日付が事件にどういう関係を持つかということも法律的には問題であろうと思いまするけれども、一つはそういう問題がございます。それから、奇怪なことに、この点は先ほどから検事等の取調べについてのことが問題になっておるのでありますけれども、この事件は裁判の過程で裁判長からも質問しているのですけれ、ども、関係者の取調べに当ったのは石井という検察事務官なんです。調書はそれぞれ内山検事以下五、六名の検事の名前が出ております。それで、一つの事件にどうしてこういうように検察官がくるくる変ったかということを一審の法廷では裁判官から石井という検察専務官に尋問されているような事情なんです。ところが、石井という検察事務官がきわめて偏見を持っておったということが、やはり関係者の供述の中から現われておるのです。たまたま、仲人した高田久夫の奥さんの清子さんというのは、部落外の人なんです。それで、高田清子に対して、君が結婚するときもおやじから無理やり強姦同様でやられたんだろうということで、こういうことを、取調べに当って石井検察事務官が言っているということです。それから、これは本人たちの供述書のいわゆる証拠力の問題になるのでありますけれども、ここに一審の第十一回の公判記録を持ってきておるのでありますが、警察の調書、検察庁の調書というものは、一貫して、やはり部落民がそういう身分を隠さなければ結婚できないのだから、無理やりに、やったという一つの前提の上にすべての調書ができておるということが一つです。しかも、本人たちに読み聞かせをして捺印をしたという形にはなっていますけれども、本人たちは、その石井という検察事務官が、取調べに当って、事実は違う、こういうことを言っても、全然それを取り上げずに、訂正もしておらないし、それから、検察事務官は検事が聞いて、おることを記録をとるのが検察事務官の職務だと私は思うのでありますけれども、この公判の進行過程に出て参りました関係におきましては、石井事務官が自分で尋問をして、あとででき上った訓告にただ検事の署名をもらっている、こういうような痕跡が裁判所の記録の関係の中から実は明白に出ておるのであります。それから、問題は、当初は不法監禁ということであったのでありますが、その後検察庁、特に石井検察事務官の見解に基いて警察の方が告訴状を出させたということを、井上という担当の警察官がやはり公判廷で述べています。これは、「どうしてそれを二十九日にスタンプを押したのか、証人は承知しているか」といって証言を求めたことでありますが、「その後何かの用事で検察庁に来たとき、石井さんに誘拐になると思うかと相談してその折にそれはなると云うことで告訴状を出させてくれというので私が告訴状を受けたのです。日は九月二十九日に口頭で告訴しているので、当吟は不法監禁と云うことで告訴を受けたので誘拐の事実の方は頭が廻らなかったが、その後そう云う事実が出たので別にどうということなしに軽い気持ちで最初口頭告訴を受けた二十九日にしたらよいだろうと思って二十九日にした様な訳です。」、告訴状の受付のスタンプの日付は、これは十月の何日かのことに入ってからのことでありますけれども、くるくる回してスタンプを変えた。その点が、「警察の受付のスタンプは誰が押したのか」、「私ではありません」、「あれを押すのは受付が押すのか」、「はい受付です」、「署の窓口の受付か」、「いや司法室の受付です」、「誰が押したのか」、「そいつを記憶していないのです」、「スタンプは日をぐるぐる廻す様になっているか特に日を戻して押したのか」、「それですが自分はスタンプを押していないがおそらく返して押したのでしょう自分は判らんです」、こういうことで、警察、検察庁の段階において、この問題はやはり、部落民が自分が部落民だということがわかったのでは一般の娘さんと結婚できない、現在そういう偏見がまだ残っていることは、これは事実です。事実ですけれども、少くとも新憲法のもとにおきましては――これは例の高松事件、これもやはり部落民であるということを告げなかったことはいけないということで、結婚詐欺罪で有罪の判決が下った事件でありますけれども、われわれ、全国水平社当時に、この問題は中央の請願闘争にまで発展しまして、ついに無罪の判決をもらった。俗に高松事件と言われておりますけれども、今日部落民であるという身分を明らかにしなければならないという義務は私は何らないと思うのであります。それにもかかわらず、これは近くのことで、通常そういうように言われて今日なお蔑視観念が一般にあることはあります。だからといって、この事態については、女の子もどういう事情であったか、その点はよくわかりませんけれども、見合いをした晩から一緒に泊って三日間にわたって夫婦関係を結んでおるのです。ことに、女の子のにいさんというのは警察官で、その翌日から、妹が前の晩にいなくなって、たまたま近田の和田のうちにおるということで、もよりの警察に勤務しておったのを、退庁時に引き揚げてきてから、自分の父その他と、妹に、結婚の話は一たん帰ってから内輪でよく相談してからきめようじゃないかということで、警察官のにいさんがお父さんたちと一緒に和田のうちへいわばかけ合いに行っているのです。ところが、その晩は、当事者同士で話もあるからということで自分は帰った、その翌日も行ったのだけれども、話がうまくいかなかった、こういうような事情を法廷では述べております。述べておりますけれども、その点については、ある意味から見れば、翌日には――女の子のうちは男のうちよりは貧乏なんです。そういう意味で、洋服だとかあるいはたんすだとか、そういう一応結婚に要る世帯の道具等も二人で倉敷まで出かけて買ったいとう事実もあるわけなんです。
 そういうような問題が、今日実は有罪の判決が下って、最高裁にかかっておるというような実情なんですけれども、問題は、これは裁判の結果によらなければなりませんし、裁判所の判断についてとやかくは申しません。申しませんけれども、少くともこの一審の裁判所に現われた記録の上から見ますると、私はやはり、検察庁がこの事件を起訴するまでの過程において明らかに一つの偏見のもとにこの事件を取り扱ってきておる。こういうことではこれはきわめてゆゆしい問題だと思いますので、この点について法務当局としてはどういうようにお考えになるか。また、この問題は、先ほど申しましたように、昭和三十年の十一月に参議院で一応取り上げた問題であります。それから、人権擁護局長は戸田さんから鈴木さんにかわっておりますけれども、私の伺ったところによると、法務局の福山の出張所と申しますか、そこから、本省からの指示に従ってこの問題について果して人権侵害の問題があるかどうかということについての報告書が本省あてに出ているということも私らの方で伺っております。できれば、そういう報告がどういう内容になっているかというようなことについても、この際お聞かせを願いたいと思います。
○中村国務大臣 田中委員のただいまのお話の点につましては、前の足利市の問題は至急一つ調査をいたしたいと思います。適当の機会にお答えをいたしたいと思います。
 それから、ただいまの福山の問題は、人権擁護局の方でいろいろ取調べをしておるようでありますから、担当の政府委員からお答えするようにいたします。
○鈴木(才)政府委員 先ほどおっしゃいました通り、この事件につきましては、だいぶ前、三十年の一月ごろにここで調査を命ぜられておるわけであります。さっそく広島の法務局に調査を命じまして、その報告を求めたのでございますが、当時の報告によりますと、警察、検察庁の捜査過程において特段に偏見を持って無理な取調べをした事情があったかどうか、はっきりしていない、また事件が裁判に係属しておるので、その結果を待っておる、こういうふうな報告のようでございます。
○井本政府委員 この広島県の事件は、先ほど田中委員から御説明がありました通り、昭和二十九年の十月三十日に、関係者三名に対しまして、営利誘拐、不法監禁という罪名のもとに公訴を提起いたしまして、この五名につきましては、昭和三十一年の六月一日にそれぞれ判決がありまして、これは有罪判決でございます。さらに、この判決につきましては、関係被告から全部控訴がありましたので、昭和三十一年の十一月十五日にまた第二審で裁判がありまして、これは一審の判決が認めらて控訴棄却になっております。このうちで、和田利明という被告と高田久夫という被告と、この二人が上告しておりますが、高田清子という被告は上訴いたしませんので確定いたしております。この間の事情のうちで、先ほども御説明がありましたが、起訴状のうちに不穏当であると認められる点がありまして、これは公判の前に削除の申請をいたしまして削除になっております。この事件の全般といたしましては、とにかく関係の警察官なり検察事務官に教養が足らなかった点があって人権問題を引き起しましたという点は、まことに私どもといたしましても恐縮しておるのでございますが、お尋ねのうちの石井事務官が何か調べの際に非常に不当な言辞を吐いたとか、あるいは事実と違うのにかかわらずそれを違った事実のもとに調書を作成したというようなことは、私どもの調べでは、さようなことは出ておりません。なお、問題の事件の告訴が、何か石井事務官の勧告によって出されたものであるというようなことも、われわれの調べでは、さような事実は出ておりません。なお、この告訴の取り下げにつきましては、当時の関係者のこちらに対する報告では、告訴の取り下げにつきまして少しく無理があったということで、警察官の方ではこの告訴の取り下げが教養不足を疑わせるような事情があるということで取調べをしておるのでございますが、これも事件となるような程度ではなかったわけであります。私どもの結論といたしましては、いずれにいたしましても、かような人権問題の事件を生じますことは、関係者の教養が十分ではないということで、かような事件が二度と起きないようにこの上とも十分注意するように、たびたび注意をしてありますし、さらに、将来とも、一ぺん出した起訴状の削除をしなければならぬというような事態が二度と起きないように十分注意をいたすつもりで来ております。またさような処置をとっておりますが、事件は、一応さようなことで公開の裁判で判決がありましたし、現にまたその一部につきましてはなお上告中でございますので、全般的な最後的な結論は、全部裁判が済んでから、さらにもう一度検討したいというふうに思っております。
○田中(織)委員 事件の推移はただいま刑事局長が述べられたように運んでおることは、私も承知いたしておるのでありますが、しかし、問題は、現にまだ裁判も上告中でありますから、確定していない段階だけに、この問題の過程で検察当局がとった態度というものは、やはりこれは検察当局の監督の立場にある最高検の方で処置しなければならぬ。現在生きている問題だと思うんです。そういう点から見て、特にこの起訴状の検事が取り消しをいたしました部分は、いわばこれを犯罪だと見る場合に、その犯罪の動機なんです。ところが、その犯罪の動機についての把握というものが間違っていたということになると、本件の公訴提起そのものが私は意味がなくなるという重大性を持っておると思うのです。その意味から、一審の法廷でその点については弁護人は法律家の立場では争っておりますけれども、私は、法律論の立場ではなくて、政治論の立場において、少くとも憲法十四条の法のもとに平等である、門地、家柄、身分等によって差別はされないという憲法の明文がある段階のもとにおいて、検事が取り消ししたとはいうものの、こういうことが動機で起った問題を、これは刑法の二百二十五条に該当する、こういう形で取り上げていくということになれば、検事一体の原則から見て、これはやはり最高検の検事諸君にも私は十分考えてもらわなければならぬ問題ですから、現在この委員会で私は取り上げているのですが、その点については検事が教養が足りなかったのだからそういう不穏当な言葉を用いたということではなくて、これは問題は犯罪の動機にかかわる問題なんです。これがなければ、そういうことがあり得ないと思うんです。世間では俗に仲人口という言葉があります。目が斜視であるということも、写真等ではよく修整もできるから、写真を見て結婚した、ところが実物は斜視であった、しかし、そういうことは、俗に仲人口だということで、当事者間の話し合いで済まされる問題じゃないですか。ところが、事部落民の結婚問題については、それが法でしかも懲役一年の実刑というような極刑に処せられるということにおいては、われわれの立場からは“そういう検事諸君の考え方というものに、これは憲法の明文から見て抗議せざるを得ないのです。その点についての刑事局長なり法務大臣の御見解を伺いたい。
○井本政府委員 本件は、俗に言う仲人口などの程度から少しくはずれておって、一応刑事事件として扱わなければならぬ段階になってきております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、かような、起訴状を訂正しなければならぬ、起訴状を書き直すという事態は、関係の検察官に教養の足らぬ点があると私どもも考えておりますので、十分そういうことは注意しなければならぬし、また、さような気持は改めなければならぬということをいろいろな機会によく申し伝えてあります。この件についても関係者にさようなことは申しております。ただ、先ほど申しましたように、本件は刑事事件といたしまして起訴になって、結局公平な裁判所において有罪判決があって、二審もそれが通ったということでありますので、これは一般の仲人口というような程度ではないというように私どもは考えております。
○田中(織)委員 その点については、一審、三審の判決が厳として下っておることは事実です。しかし、上告審というものでその点は確定しているわけではないのです。関係者のうちの高田清子は執行猶予になったから二審の判決に服した形になっているからといっても、事件はやはりその意味からいうならばまだ未確定なんです。私は、そういう意味で、この検察当局の一審以来の問題は、検事一体の原則から見て、最高裁で確定的な判決が下るまでの間に、もし非違を認められるならば、私は改めるべきだと思う。その点について大臣の御見解はいかがですか。
○中村国務大臣 私も、事の起りや次第をよく承知いたしませんが、ただ、事件が目下裁判中であるようでありますから、できるだけ公平に公正な裁判の下ることを期待する以外に、事件そのものについては方法がないと思います。ただ、それ以前のことでありましても、その捜査段階におきまして果して警察や検察当局に無理があったかどうかということにつきましては、私も最近、古いことでありますが承知いたしましたので、なお引き続いてその実態については調査をさせ、今までわかっておりますことも私ども聴取いたしまして、十分検討いたしたいと思います。
○田中(織)委員 その点は、上告、審の判決が近づいてはおりますけれども、まだ日にちもありますので、十分その点実情をさらに、特に人権擁護局及び刑事局の方でもお調べを願いたいと私は思います。
 そこで、先ほど刑事局長の述べられましたやはり――本件の場合は告訴が一つの重要な要件になると私は思うのでありますが、その場合に、当初不法監禁で告訴が出た、それに引き続いて石井検察事務官の指示に基いて結婚誘拐の面の告訴を提起させたという関係は、一審の裁判所の記録の上に明らかに出ております。宣誓をして取調べの警察官が申したことが速記で出ております。私が先ほど読み上げた通りなんです。もしそれが検察当局の方から何らの示唆を与えたものではないということであれば、井上という警察官が法廷で虚偽の証言をしているということにもなると私は思う。それから、刑事局長の言われた点ですが、その後和解ができて親御から告訴を取り下げたということについての調書がございます。その関係も、これは裁判の関係で記録として出ておるわけでありますけれども、その告訴の取り下げに何らかの強制があった、無理があったということで、検察側で一応問題にしたけれども、それは問題にはならなかったというような意味の、ただいま刑事局長の御答弁があったのでありますけれども、私が告訴取下げの調書から見ましたところによりますると、そういうような無理は全然ないのじゃないか。ただ単に当事者間だけの問題ではなくて、服部村でありますか、村の有力者、特に女の方の側の関係者が中に入って円満に取り下げができたものだ、こういうように調書の面からもうかがわれるのであります。私は、最初告訴を出させるということについて、検察庁側から示唆を与えた、そうして、今度当事者間で話がついて、それは事態を円満に解決しようという意味で告訴を取り下げようということになったことについて、検察庁側が、その間強制があるというようなことで問題にすること自体が、検察庁当局がやはりこの問題で罪人を作ろうという――これは、ある意味から言えば、法の執行者という立場を越えたところの、むしろ職権乱用だと思うのです。刑事局長が言われたように、ここに和解調書もございます。これは担当の警察官が取り扱った和解調書でありますけれども、その和解調書によれば、告訴取り下げについての調書でありますが、その告訴の取り下げが何か強制があって裁判の進行過程で問題になったような意味の御答弁があったわけなんですが、そういう事実があるのでしょうか。私は、むしろその前に、井上という取調べに当った府中警察の警察官が証言しておる中に、検察庁の石井検察事務官が告訴を出させてくれということで出させた、しかもそれは本人が書いたものの日付をスタンプのはんこをぐるくる前にさかのぼらせて書いたということまで、公判廷で宣誓をして証言をしておるというような事実のもとにおいて、この告訴という問題が、犯罪成立について訴追をしていく上において一つの条件になると思うのでありますが、それだけにこれはきわめて重大な問題で、まだ上告審にかかっているだけに、捜査当局の立場というものは、現在やはり生きた問題としてこれは糾弾せられなければならぬ性質のものだ、私はそういう見解を持っておるのですが、その点、刑事局長はいかがでしょう。
○井本政府委員 告訴の提起が、強制の結果、本人の意思にあらずして出したということになりますれば、告訴自体か果して有効に成立するかどうか、相当問題であろうと考えます。ただ本人の自発的な意思に対しまして勧告をしたというような程度であれ、ば、告訴自体が有効であることは、これは問題ないのでありまして、ただ、さような告訴を勧告する者の立場が検察官とか検察事務官とかいうようなもので、本件については適当ではないではないかということになりますると、これは妥当不妥当の問題でございまして、法律的に告訴が有効であるかどうかということには直接の関係はないというように考えます。
 なお、先ほど申し上げました告訴の取り下げの問題でありますが、少し古いことで、私も実は記憶が薄らいでおったのでありますが、昭和三十年五月二十五日の日付で私どものところに来ておる報告書を見ますると、不法監禁罪につきまして告訴の取り消しがなされておったので、検察官の方でどういう事情か被害者に確かめましたところが、依然として処罰を希望しておるという被害者の申立てであったそうでありまして、処罰を希望するものか告訴を取り消すというのはおかしいではないかというようなことで、その当時この関係者を取調べをしたということが報告書にありますので、先ほどさようなことを申し上げたわけでございます。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、本件は現在最高裁判所に係属中でありまして、私どもといたしましては、明らかに訂正しなければならぬような点がございますれば、それは私の方からも率先して訂正しなければならぬと思いますけれども、現在の事情では、すべては裁判所の判断を待って、その結果によるべきであるという考えが、私の考えを支配しておりますので、現在の状況では、一応最高裁判所の判断が全部済んだあとで、その後の機会にいま一度この事件全体を検討したいというふうに考えております。
○田中(織)委員 上告審の決定があってから幾ら検討してもらっても、それは関係者にとってはゆゆしい問題なんです。それは、関係者だけの問題ではなくて、全国に三百万散在しておる部落の人たちはやはり共通の運命のもとにある。それは簡単な問題ではないのです。特に、告訴の関係については、これは警察官に対して裁判所で証言としてとった場合のなにがあります。ことに、私はよく法律上のことはわかりませんが、結婚誘拐の幇助罪の場合は、三百二十九条ですか、親告をもってやるということになっておると思うのです。そういう関係であるのですけれども、警察官の公判廷における証言では、「誘拐の方はいつ送庁したのか」、「記憶していません」、「告訴を受けた後であることは違わんのか」、「(答なし)」、「その前に誘拐として立件して送っているのか」、「一寸その点はっきり記憶していないですが」、「その告訴状を作成させる時に高橋早子を警察へ呼んだのか出かけて行ったのか」、「本人が警察迄出て来たのです」、「一人でか」、「そうです一人で」、それから、告訴の相手方は一人であるか、仲人の高田夫婦も入っているかというような点については、和田利明一人だ、こういうような形になっておるのです。それだから、結局、幇助として一審の有罪判決が下るようになっておる実情から見れば、私はやはり、結婚誘拐幇助で有罪の判決を受けた高田久夫の方には、これはたしか親告罪という要件になっておったと思うのです。そういう関係がありますから、告訴状が出ておる、こういう格好をつけておると思うのです。少くとも、これを検察庁へ送庁した直後の段階においては、そういう点については、十分そういう当事者の意思というものではなくて、やはり警察と検察庁でその問題はそういうように処罰するものだということで格好をつけたという疑いがある。私は何も現地にも行っておりません。ただ私は裁判所の記録から写したものに基いて申し上げておるので、その点は、先ほど鈴本人権擁護局長も、広島の法務局からの報告では、警察及び検察庁の方でそういう人権じゅうりんの事実はないような報告である、こう言いますけれども、私は、この起訴状から始まって、起訴状の取り消した部分、それから警察における調書、こんなものは、本人がそういう形で申し上げると言ったものではありません。やはり、そういうことで、文章は、警察官なり検事の方で書いたということは、公判廷で、被告も、また参考人として呼ばれた者も、みなはっきり言っているのです。それだから、その点については、現地の報告だけではなくて、もしお手元にないということであれば、この一審の関係の書類を私は人権擁護局へ一時お貸ししておいてもよろしゅうございます。このいろいろ尋問をする言葉の端々の中にも、明らかに部落民は差別されるのは当然だという前提のもとにものを聞いている。そういうことが問題だと言うのです。人権擁護という問題、それは、鈴木さんが民間で苦労された方だけに、部落問題が人権擁護問題の重要な問題だということは釈迦に説法だから、私は申し上げませんが、今日、結婚もできない、就職の自由さえ奪われている。身元調査では、大企業について私どもの同盟の者が手元で調べておりますけれども、やはり未解放村落出身者ということになると、試験の成績がよくても、大学へも入れなければ、大きな商社、会社等に就職できないというような悲劇までが今日まだわれわれの手元にはどんどん報告されるような事実関係にあるのです。私は、そういう意味で、だいぶ時間も経過いたしましたし、先ほど大臣が、初めて聞いたことであるから、なお事案についてもよく調査をせられるということでありますから、それでは私ももう少し――これは上告審にかかっているだけに、もし検察当局がとった処置が間違いであれば、最高裁の段階でいわゆる検察当局の自主的な立場で、私は改めるべきものは改めてもらいたいと思う。また、それだけの重要な問題を含んでいると思うのです。今日、この事件は、高松事件以後、最近では部落の問題としては大きな問題です。しかし、現に私の郷里の和歌山県の田辺の裁判所では、十日に最終の公判があったのですが、田辺のある検事のごときは――これもやはり差別の問題で部落の青年が激高してなぐったという問題です。その問題でありますけれども、それは極端な言葉を吐いております。アメリカ人はアメリカ人と声つたって怒らぬ、ところが、朝鮮人に朝鮮人、こう言うと怒る、君らは部落民と言われたくないなら早く部落民でなくなればいいじゃないか、検察官が こういう暴言を吐いて、現に田辺の裁判所で問題になっておるのです。これも係属中の事件ではありますけれども、そういう考え方が検察当局のすべてとは私は思いませんけれども、まだ、たまたま一部にしても、そういう考え方が残っておるとすれば、これは私は厳密なる法の執行者であってもらいたいと思いますから、この問題を徹底的に掘り下げることによって、そういう考え方を改めていただきたいと思います。その意味で、なお数点、尋ねたい点がありますけれども、きょうは時間もだいぶ経過いたしておりますから、その点は次の機会まで保留いたしますが、法務大臣も人権擁護局長も刑事局長も、特にこの問題はまだ裁判所で判決が下らぬ、それはどのような判決が下ろうと、もちろんわれわれは裁判の公正を信じますけれども、それがまだ確定しない段階だけに、私は、改めるものは改めてもらいたい、こう思いますので、十分検討していただいて、次の機会に私はなお具体的な問題で伺いたいと思いますから、御準備を願いたいと思います。
○鈴木政府委員 私、この三月に任官いたしました。まだ人権擁護局の事務的なことはなれておりませんが、部落に関連します差別待遇の問題は新しい憲法上非常に重大な問題であることは、私は非常に痛感しております。まだそういう方面の研究が足りませんので、この本件に関連しつつ種々先生かり御指示を得まして、この件とともに研究してみたいと思います。
○三田村委員長 本日はこれをもって散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
  午後三時十六分散会