第026回国会 本会議 第9号
昭和三十二年二月十六日(土曜日)
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 昭和三十二年二月十六日
  午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 宇治市に予定される研究用原子炉
 設置に関する緊急質問(山下榮
 二君提出)
 午後一時六分開議
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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 宇治市に予定される研究用原子炉
 設置に関する緊急質問(山下榮
 二君提出)
○荒舩清十郎君 緊急質問に関する動議を提出いたします。すなわち、この際、山下榮二君提出、宇治市に予定される研究用原子炉設置に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 荒舩君の動議に御異議ありませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 宇治市に予定される研究用原子炉設置に関する緊急質問を許可いたします。山下榮二君。
 〔山下榮二君登壇〕
○山下榮二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、原子炉の設置問題に関し緊急質問を行わんとするものであります。(拍手)
 まず第一に、原子力の平和利用に対し政府の所信を伺いたいと思うのであります。今日、国際社会において、原子力平和利用は、単なる理論ではなく、現実化の段階に至っているのであります。世論はこれを第二の産業革命とも称しておりますが、特に、わが国のごとくエネルギー資源の乏しい国におきましては、その重要性はそう大であるといわなければなりません。従って、政府がこれらの研究と努力を怠らないことはもちろんでございますが、同時に、原子力により生ずる放射能またはその他の危険性に対する安全保障の対策、研究もきわめて重要なる課題であると申さなければなりません。わが日本国民は、広島、長崎における原爆、ビキニの水爆実験による放射能被害等、今日なお忘るることのできない悲惨な体験を経てきましたことは、すでに皆さん方も御承知の通りでございます。従って、近く予定されるイギリスのクリスマス島における実験に対しましてはもちろんのこと、米国の原爆誘導弾の日本配置等に対しましても強い反対を表明するのもゆえなきにあらずと申さなければなりません。(拍手)政府は、かかる国民の不安にかんがみ、原子力平和利用より生ずる被害、特に放射能に対する安全保障に万全を期せられなければならぬことはもちろんでございまするが、放射能の危険性については、国際基準量も設定されているとは申しながら、放射能に対する取締り法規等の制定の必要があると考えるのであります。これらの点に対する政府の所信を明らかにされんことを望むものであります。(拍手)
 次に、目下問題となっている関西を予定地とする研究用原子炉設置に関して伺いたいと思うのであります。すなわち、伝えられるところによりますと、京都の宇治市が予定地にあげられているのでありますが、原子炉設置を決定するに際して、その絶対条件とは一体いかなるものをさすのかを伺いたいのであります。たとえば、イギリスの原子力公社の発表によりますと、次の条件を掲げておるのであります。すなわち、一、冷却用の水が得やすいということ、二、廃棄物を流すために海に近いということ、三に、その土地が耕作上価値がないということ、四番目に、人口が少い土地であるということ、五番目に、近くの都市から交通が便利であるということ、六番目に、水道の取り入れ口でないということ、七番目に、鉄道の便利があるということ、八番目に、一般の行楽地等でないということ、等があげられておるのであります。これは、研究上の便宜の観点と同時に、民生、すなわち保健衛生に対する安全の問題が大きく留意されておることは、見のがすことのできない重要な問題であると申さなければなりません。わが国におきましては、この点についていかなる条件を基礎にされ、また、今回宇治を決定しようとするに際していかなる根拠に基くものであったか、関係大臣より明確な御答弁を伺いたいと思うのであります。(拍手)すでに、地元宇治では、酒造業とか、あるいは茶園業等、水に関係を持つ組合等が反対を表明しておることも、当局は御承知であろうと思うのであります。
 第三に、先に述べました予定地の宇治市は淀川の上流であります。大阪府営の水道、大阪市営の水道、阪神上水道組合は、その水源地を、その下流たる淀川に求めておるのであります。その給水人口は実に八百万を数えるといわれております。すなわち、大阪、尼崎、西宮、芦屋、神戸等、わが国の主要都市がその給水区域であるのであります。従って、日本における最も大きな水源地であると申さなければならぬと思っておるのであります。このため放射能をおそれる地元民はきわめて不安の状態に置かれておりますが、放射能汚染の防止について、原子炉設置準備委員会では、すでに二つの条件を絶対に必要なものとして発表しておるのであります。その第一は、平常運転または天災、事故の場合でも廃液処理を十分に行い、宇治川の汚染を完全に防がなければならない。二番目に、放射能汚染の監視機構を完備すること、その二つの条件になっておるのであります。しかも、安全施設に万全を期する場合には膨大な予算を必要とすることが指摘されているのであります。関係学者の間で、予算上果してそれだけの膨大な予算が確保できるやいなやが非常に憂慮されておりますが、関係大臣のこれらに対する確信のほどを伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 前に述べました二つの条件が満たされ、予算が確保されましても、技術操作の面でいかなる不慮の事態が起るや、はかり知れないのであります。たとえば、昨年のアメリカのアイダホ州というところのアーコにある原子炉開発試験場の廃棄物処理用タンクから汚水がしみ出て、近くのスネークという川をよごして、下流でそれを飲料にしていた人々が被害を受けるという事件が生じたと報ぜられておるのであります。従って、危険性の防止に対しましては万全の上にも万全を期し、水源地のごとき場所はこれを避けて、国民の不安を一掃しなければならぬと考えるのでありますが、関係大臣のこれらに対する所信のほどを伺いたいと思うのであります。(拍手)
 特にこの機会に厚生大臣に伺っておきたいと思うのでありますが、放射線障害ばかりではございません。最近、各河川が、染色工場とかパルプ工場等の化学工場のために非常に汚濁されて、飲料に供しがたくなって、各地で、または学者の間で、相当やかましくいわれて参ってきておるのであります。こういうことに対しまして、河川汚濁に対する法的防止措置等の必要があると考えるのでありますが、これらに対する厚生大臣の方針を伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 最後に、かかる国民の不安は、関係学者、研究者の間における安全性に関する意見の不一致が存するところにあると思うのであります。聞くところによりますと、京都大学と大阪大学との間には対立的意見があるやに伺っております。しかしながら、最も大きな問題は政府部内における不統一であると申さなければならぬのであります。すなわち、文部省は宇治設置に非常に積極的であるといわれておるのであります。これに対しまして、厚生省側は保健衛生の立場から反対であると聞いておるのであります。また、先般、原子力担当大臣たる宇田長官は、必ずしも宇治を固執するものではないと言明をされております。かくのごとく、閣内の不統一が国民をますます不安と動揺の中に追いやることとなっていると思うのであります。きわめて遺憾なことであると申さなければなりません。すでに、大阪府議会、大阪市議会、その他関係地方議会が、一致して、この問題に反対決議を行なっているにもかかわらず、今日まで何ら明確な方針を示さず放置しておられることは、石橋内閣のその政治的責任がきわめて重大であると申さなければなりません。政府は、すみやかに閣内の意見を統一して、研究用原子炉設置並びに原子力平和利用を推進するに当って、その安全を確保する具体的な施策を確立して国民に協力を求めるために、国民にその安全保障の方針をこの際明らかにされんことを切望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
 〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) 原子力の平和的利用を促進することは、わが国におきましてはきわめて重要な事項であると思います。従いまして、今度の予算におきましても相当な措置をいたしたわけでありまして、ぜひこれは今後も努力をいたしたいと思います。と同時に、この平和的利用の研究を促進するについて、放射能等の危険に対してこれを防止する措置も講じなければならぬことは言うを待ちません。御承知の通り、きわめて新しい科学でございまして、従いまして、いろいろ科学的に研究すべき幾多の問題がございます。従って、これらの科学的な研究と相待って、この危険防止の措置も万全を期して参りたいと存じます。
 宇治に設置いたします研究用原子炉の問題につきましては、それぞれ関係の大臣から答弁することにいたします。(拍手)
 〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今回計画いたしております関西における研究用原子炉のことにつきまして、私よりお答えを申し上げたいと存じます。
 文部省におきましては、関係大学の要望によりまして、大学の利用に供するために、関西地区に研究用の原子炉を設置する計画を進めまして、科学技術庁に連絡協議いたしましたところ、昨年十月、原子力委員会におきまして、大学における基礎研究及び教育のために関西方面に研究用原子炉一基を設置し、大学の共同利用として運営すること、並びに、その具体的措置について文部省において検討するように決定せられたのであります。よって、文部省におきましては、関係大学及び日本学術会議、原子力委員会、科学技術庁原子力局、日本原子力研究所等、関係機関と協議いたしました上、研究用原子炉設置準備委員会というものを設けまして、委員長は湯川秀樹博士でありますが、原子炉設置に関する計画、原子炉の型、設置場所、管理運営の方法等について審議をいたして参ったのであります。準備委員会におきましては、慎重に審議をいたしました結果、まず、研究用原子炉は、最も安全性が高く、かつ、大学における基礎研究及び教育用として適当である水泳プール型のものとすること、また、設置場所といたしましては、気象条件、地質の状態が良好であること、給水の便が大きいこと、廃水の処理が適切に行われること、管理の行き届くこと、研究設備としての利用率の高いこと、転用し得る施設が多数あること、というような諸条件を勘案いたしまして、三十五カ所の候補地中より宇治を第一候補といたしたのであります。これに基きまして、文部省といたしましては明年度予算に所要の経費を要求いたしておりますような次第でありますが、準備委員会の調査の結果によりますれば、今回関西地方に設置を予定しておりますところの研究用原子炉は、最も安全性の高いもの、これを宇治に設けることは、平常運転の場合には、技術的には全く安全で、問題はないとされておるのであります。しかし、宇治川が、お話にもございましたように、阪神地方の水源地の上流にあることを特に考慮いたしまして、天災、事故の場合におきましても廃液の処理を十分に行い、宇治川の放射能汚染を完全に防ぐことが必要であるという見地から、準備委員会におきましては、さらに検討を重ねました結果、科学的にその完全な履行が可能であるという結論に達したのであります。従いまして、事故対策に要する経費につきましても、特に初年度には六千五百万円を計上いたしておるのであります。
 しかしながら、この問題は、御質問にもありまするごとく、きわめて重要な問題であります。地方民生の上におきまして重大な影響を与える問題であると考えますので、念には念を入れなければならぬと考えております。この宇治に作るという計画は、これは申すまでもなく予定地でございます。この宇治を予定地とすることにつきましては、政府といたしましては、なお念には念を入れまして、今後ともに準備委員会において慎重に検討してもらいたいと思っております。さらにまた、その成案を原子力委員会にも報告いたしまして、原子力委員会において、さらに十分審議検討の上に決定してもらいたいと思っておるのであります。政府は、その結論を尊重いたしまして、最終的に設置場所を決定したい方針でございます。今日、政府の内部におきまして、さような意味合いにおきまして何ら意見の不一致はございません。
 以上、お答え申し上げる次第でございます。(拍手)
 〔国務大臣神田博君登壇〕
○国務大臣(神田博君) 山下議員にお答えいたします。
 宇治に原子炉の予定地がきまったということは、ただいま御質問の通りでございます。また、これをどうするかということは、今総理代理、文部大臣から答弁された通りでございます。厚生省といたしましては、地元の不安も十分承知いたしておりますので、これらの点につきましては、ただいま文部大臣も述べておられまするように、十分連絡いたしまして検討を加えたい、かように考えております。
 それから、第二の問題でございますが、原子力時代到来に伴いまして、放射能の問題とか、あるいは河川の汚染の問題等につきまして、いわゆる鉱害防止の問題につきましては、目下、資料を集めまして十分検討いたしまして、そして立法措置を講じたい、こういうような意図をもちまして準備を進めております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
 〔国務大臣宇田耕一君登壇〕
○国務大臣(宇田耕一君) 山下議員の御質問にお答えいたします。
 宇治に予定される研究用原子炉につきましては、ただいま文部大臣の答弁の通りであります。すなわち、湯川博士を準備委員会の委員長といたしまして検討されておりますが、まだ原子力委員会には協議がありませんから、その節には慎重に検討をいたしたいと考えております。
 次に、放射線の障害防止、あるいは原子炉の管理等につきまして、安全をはかるために法的措置をとらなければならないということは、ただいま厚生大臣からも申された通りでありまして、それぞれの法律の案をただいま作成中でありまして、この国会に提出いたしたいと考えております。また、障害の防止につきましては、放射線総合医学研究所に関する予算を計上して、ただいま三十二年度の予算要求の中に繰り入れてありますが、その額は五億九千万円となっております。
 また、ただいま放射能についての調査の対策について御質問がありましたが、これも三億二千万円を要求いたしまして、国土、大気及びその周辺における自然放射能の測定等に関して万全を期したいと思っておる次第でございます。
 以上、お答え申し上げます。
 〔「再質問」と呼び、その他発言する者あり〕
○議長(益谷秀次君) 国務大臣宇田耕一君。
 〔国務大臣宇田耕一君登壇〕
○国務大臣(宇田耕一君) お答えいたします。
 設置の場所、また条件といたしまして、ただいま御質問がありました中で、文部大臣の答えられたのと私の考えておることとは全然同一であります。従って、本件につきましては、準備委員会の検討を十二分にしてもらって、その結果の報告を待って、原子力委員会において新たに慎重に研究をいたしたい、こういうのが基本方針でありまして、実は準備委員会からまだ正式の結果を私としては聞いておりませんので、宇治に設置することにつきましては、具体的な対策をただいま政府は持っておりません。従って、ただいま設置する場合に、いろいろの障害防止その他の天災事故等の場合においても、廃液処理を十分に行わなければならないということ、あるいは宇治川の放射線汚染を完全に防ぐこと、空気の汚染の防止についても、また同程度の対策を講ずること、監視機構等を完備すること、等のいろいろの御要望がございます。この点につきましては、十分に準備委員会においても対策を考えているはずでありまして、われわれは、原子力委員会におきましては、もっと深く、学問的に、また対社会的に安全度の高い方法をもって、これに再検討を加えるべきときには加えたいと考えておるのでありますから、どうか御了解願います。
○議長(益谷秀次君) 山下君から再質問の申し出があります。これを許します。山下榮二君。
 なお、山下君に申し上げます。すでに申し合せの時間も経過しておりますので、きわめて簡単にお願いいたします。
 〔山下榮二君登壇〕
○山下榮二君 まことにしつこいようでございますけれども、簡単に重要な部分だけをお尋ねいたしたいと思うのであります。
 先ほど私がイギリスの原子力公社の設置条件等を申し上げたのは、日本で原子炉を設置しようとする場合に、一体いかなる基礎条件を中心にしておるかということを聞きたかったのであります。たとえば宇治市である場合は、土地が国有地であるとか、あるいは水が得やすいとか、いろいろな条件があろうと思うのであります。ことに、日本のような、こういう土地の狭いところでは、放射能の危険性はきわめて重大であると申さなければならぬのであります。従って、日本に設置する場合は、それらの点が十分勘案されなければならぬはずであると思うのであります。ただ、国有地であるから、土地が得やすいから、ここにしようじゃないかという簡単な問題ではない、こう思うのであります。たとえばイギリスの場合は、あるいは、ものを処理するために海岸べりに作って、海の底に廃棄物を処理する方法を考えておる。アメリカの場合は、川に処理する方法も考えておるようでございますけれども、アメリカの川と日本の川とは、川が比較にならぬのであります。こういう点が深く勘案されるのでなければならない。一体、原子力委員会は、研究用の原子炉の設置に関して、その設置しようとする基礎条件というものをどこへ求めておられるかということを、この際、文部大臣でも、関係大臣たる宇田長官でもけっこうでございますから、明白に本議会を通して国民に安心するようにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
○国務大臣(灘尾弘吉君) 今回の研究用原子炉の設置につきまして基礎的な条件として考えられましたものにつきましては、先ほどお答え申し上げたようなつもりでございましたが、重ねての御質問でございますので、さらにお答え申し上げます。
 この問題につきましては、まず気象の条件あるいは地質の状態が良好であること、給水の便利が大きいこと、廃水の処理が適切に行われ得ること、管理が行き届くこと、研究設備の利用率の高いこと、転用し得る施設がたくさんあること、これらの諸条件を勘案いたしまして、各地の候補地につきましていろいろ検討をいたしました結果、宇治を第一の予定地といたしましたような次第であります。(拍手)
 なお、それにつきましては、もちろん、お話のございましたような心配もございますし、関係者におきましても、その点は十分に考究いたしたのでありまして、平常運転または天災、事故の場合におきましても、廃液の処理を十分に行なって、宇治川の放射線の汚染を完全に防ぐこと、空気の汚染の防止につきましても同じような対策を講ずること、また監視機構を整備する、これらは、宇治においてかりに実施するといたしますれば、これまた必要な条件であります。これらのものを十分満たし得るという確信がつきました場合に初めてこの計画は実施に移されるものと御了承願いたいのであります。(拍手)
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○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
  午後一時四十一分休憩
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 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣臨時代理
        国 務 大 臣 岸  信介君
        文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
        厚 生 大 臣 神田  博君
        国 務 大 臣 宇田 耕一君
 出席政府委員
        経済企画庁計画
        部長      大來佐武郎君
        文部省大学学術
        局長      緒方 信一君
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