第026回国会 予算委員会 第3号
昭和三十二年二月八日(金曜日)
    午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 山崎  巖君
   理事 江崎 真澄君 理事 川崎 秀二君
   理事 河野 金昇君 理事 小坂善太郎君
   理事 重政 誠之君 理事 川俣 清音君
   理事 柳田 秀一君
      今井  耕君    植木庚子郎君
      宇都宮徳馬君    太田 正孝君
      大橋 武夫君    小川 半次君
      上林山榮吉君    北村徳太郎君
      河本 敏夫君    坂田 道太君
      周東 英雄君    須磨彌吉郎君
      中曽根康弘君    楢橋  渡君
      野田 卯一君    橋本 龍伍君
      福田 赳夫君    船田  中君
      古井 喜實君    松本 瀧藏君
      三浦 一夫君    山本 勝一君
      山本 猛夫君    井手 以誠君
      井堀 繁雄君    今澄  勇君
      勝間田清一君    河野  密君
      小平  忠君    小松  幹君
      島上善五郎君    田原 春次君
      辻原 弘市君    成田 知巳君
      西村 榮一君    古屋 貞雄君
      森 三樹二君    矢尾喜三郎君
      和田 博雄君    川上 貫一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣臨
        時代理     岸  信介君
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
        大 蔵 大 臣 池田 勇人君
        文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
        厚 生 大 臣 神田  博君
        農 林 大 臣 井出一太郎君
        通商産業大臣  水田三喜男君
        運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君
        郵 政 大 臣 平井 太郎君
        労 働 大 臣 松浦周太郎君
        建 設 大 臣 南條 徳男君
        国 務 大 臣 宇田 耕一君
       国 務 大 臣 大久保留次郎君
        国 務 大 臣 川村 松助君
        国 務 大 臣 田中伊三次君
        国 務 大 臣 小滝  彬君
 出席政府委員
        内閣官房長官  石田 博英君
        法制局長官   林  修三君
        大蔵事務官
        (主計局長)  森永貞一郎君
 委員外の出席者
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
二月八日
 委員勝間田清一君辞任につき、その補欠として
 和田博雄君が議長の指名で委員に選任された。
同 日
 委員和田博雄君辞任につき、その補欠として勝
 間田清一君が議長の指名で委員に選任された、
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十二年度一般会計予算
 昭和三十二年度特別会計予算
 昭和三十二年度政府関係機関予算
    ―――――――――――――
○山崎委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十二年度二会計予算外二案を一括して議題といたします。
○川俣委員 この際委員長に一言いたしたいと思います。
 先般の理事会におきまして国会正常化の問題を取り上げ、時間厳守を委員長が公約せられたわけでございます。しかも国会の正常化ということは、人を責めるに厳であってはならないので、みずから自粛しなければならないことを申し合せた際であります、従って、天下の公器でありまするニュースあるいはテレビ等に対しては、非常に厳格にこれを励行しようといたしておりながら、委員会の開会の時間をいたずらに延ばされるがごときは、みずから恥じなければならないと思うのであります。今日の状態は、十時から始める予定で全員、ことに野党は出席しておるにかかわらず、与党の理事諸君並びに内閣は時間を四十分以上も遷延いたしておるような状態であります。われわれ野党は石橋総理の病気を了といたしました、国民の間に、この長期の欠席については疑惑を持ち、国会もまたこれについて非常な関心を持っておるにかかわらず、私どもは冷静にその病気の回復を祈って、議事の進行に努めて参ったつもりであります。しかるに今日のような状態で参りまするならば、せっかく国会の正常化をねらって予算委員会が進行しておるにかかわらず、かかる状態ではまことに危惧されるものがあると存じます。従いまして今後運営に大きな支障を来たしますことをおそれますがゆえに、委員長において善処せられんことを望みます。
○山崎委員長 本日の開会が予定より善しく遅延いたしましたことは、委員長としてもまことに遺憾に存じております。ただいま川俣君の御発言の御趣旨に従いまして、委員長といたしましては今後善処いたしたいと存じますので、御了承いただきたいと思います。
 これより質疑を継続いたします。和田博雄君。
○和田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、議題になっておりまする三十二年度の予算案を中心にしまして、一般の施政方針あるいは財政方針、また外交方針等について総括的な質問をいたしたいと思うのであります。本日は総理の病状についてお伺いしたいと思いましたが、都合によりましてそれはあと回しにいたしまして、まず外交の点から、岸首相代理あるいは外相両方の立場でお伺いをいたしたいと思います。
 先般の本会議における鈴木委員長や、あるいはわが党の河野君、または参議院におけるわが党の代表の、原子部隊を日本に駐留さすという問題につきましては、岸首相代理は、その話はまだ聞いていない、まだ正式な話はない、ことに国務省や国防省はこれを否定しておるということを言っているのであります。ところが昨日の夕刊あるいはけさの新聞を見ますれば、INSの通信においても、むしろ向う側から日本に対して研究用として原子兵器を貸すとかいうことを、はっきりと出しているわけであります。また原子部隊の駐留問題につきましては、これはアメリカのアイゼンハワー大統領の一般教書の中にも、方針として大きく打ち出しているところでありまして、アメリカの外交方針がどの方向に向っているかということは、これは外務大臣としても十分御承知のことだろうと思うのであります。
 そこで私はまずお聞きしたいと思うのでありますが、実際この日本の安全保障の点から考えまして、今私どもは日本に原子兵器を持ち込んだり、あるいは原子部隊の駐留を許したり、そういったようなことは、われわれとしては極力避けなければならないし、むしろ絶対に避けていかなければならぬ点だと思うのであります。ただこういう問題について政府が聞いていないとか、正式の申し込みがまだないというだけのことで、私どもはこの問題を済ますわけには参らないように考えるのであります。また新聞等によりますれば、事実原子兵器の研究用の貸与については、むしろこちらから、防衛庁から頼んだのだ、これを暗に一般の防衛庁当局も認めておるという記事すらあるわけであります、この点について真実は一体どうなのか、いま一度お伺いしてみたいと思います。
○岸国務大臣 お答えをいたします。新聞に出ております研究用として最新の兵器を、アメリカから貸与を受けるという問題につきましての詳細は、防衛長官から答弁さすことにいたしますが、それは伝えられているような原子兵器と称せられるものではないのであります。防御的な誘導弾に関してでありまして、その詳細は防衛長官から具体的に説明をさせます。
 なお和田君の御質問のごとく、日本の国民の感情からいい、また防衛の態勢からいって、日本に原子爆弾を持ち込むというような事柄はいかなる意味においてもこれは適当でないというお考えに対しましては、私は全然同感でありまして、また先日来質問がありましたアメリカの原子部隊と称せられるものの日本への進駐の問題については、私はしばしば答弁をいたしましたように、事実は新聞で伝えられているような事実でない、責任ある国防省及び国務省もこれを否定しているし、従ってこの際日本がすぐ抗議を申し込むとかなんとかいう時代ではない、相談がいずれあるから、相談された場合においてわれわれは自主的な立場でこれを考えたいと申しておりますが、しかしお話のごとく、私はこの原子部隊を日本に進駐せしめるというような申し出がありました場合においても、政府としてこれに承諾を与える意思はもっておりませんから、そのことは明瞭に申し上げます。
○和田委員 原子部隊の日本駐留問題につきましては、まだそういうことは十分でないと言われておりますが、しかし一月十三日には米国のある当局はこういうようなことを言っております。今春のワシントンで行われる日米最高首脳会談で、米国の原子機動部隊を日本に駐留させるかどうかということが主たる議題の一つとして討議されるだろうというようなことすら実は言っておるのであります。事実今の世界の情勢を見てみますると、アメリカの政策といえども昔のような政策ではなくなってきておるように私は思うのであります。やはり原子兵器を中心にした機動部隊を、たとい数は少くてもほんとうに精鋭なものに作っていく、原子兵器の発達がアメリカとソ連との間のいわば競争関係に立っておって、どちらも負けないとしておるだけに原子兵器を中心にした部隊というものを考えておるというように私どもは思います。二、三年前までは、原爆の基地というものを自分の国からできるだけ遠いところへ置いて、そうしてたとい第三次戦争が起った場合でも、自分の本国が爆撃を受けないような政策を、私は米ソともにとったと思うのであります。しかし今はその関係がかなり変っておるのじゃないかと思うのです。兵器の進歩によって非常に速力の早い原子兵器を積んだ電爆撃機もできまするし、あるいは無人誘導弾も非常に発達をしまするし、今後における戦争は全くおそるべき様相を果するように私は思うのであります。従いまして、原子兵器を持ってアメリカの軍隊が日本に駐留するという問題、これはただ単に新聞の報道として日本の国民は看過するわけにはいかないのでありまして、それゆえにこそただ感情的にでなしに、われわれ自身が平和に日本の国土を発展させていく上からいっても、国民の生活自身を考えてみても、これがまた国民の心奥に触れるものがあるだろうと思います。そういうときに、きょうは岸君が、たといその話があっても断固としてこれは拒否する考えであるということを、これはおそらく外務大臣としてだけではなしに、総理大臣としても言われた言葉だろうと思うのでありまして、その点については今まで答弁を避けられておられたわけですが、きょうははっきりとそれを言われたわけであります。そういう点については、あなたが今度の施政方針演説で、あるいは外務大臣としての演説で、外交なり国内の大きな問題については、二大政党の間でよく話し合って事を処理していくということを言われたこと、ことに内政と外交との間においては一体である、この間にいやしくも間隙があってはならないということを強く主張されたわけです。私はその言葉は非常にりっぱだと思います、またそういうように内政と外交とをやってもらうことを、われわれとしても非常に希望するのであります。ただそれが口頭禅に終れば肝心のことも何も生きてきません、従ってまず第一の問題として、こういったような事柄が現に起りつつあるときに、あるいは向うからの申し込みが現にあるとするならば、むしろ進んで野党との間にはっきりと話し合いをつけて、原子部隊というものは日本に持ち込まない、あるいは原子兵器を日本に持ち込むことについては、はっきりと拒否するというように、二大政党になった国会の運営といいますか、政党政治の運営をやっていかれる覚悟があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
○岸国務大臣 原子爆弾や原子兵器の問題については、私は日本民族としては一番関心の深い問題の一つであろうと思います。従ってこういう問題に対しての日本の進んでいく方向もしくは対外的な態度等について、二大政党の賜においてできるだけそういう問題について根本的に話し合うということは、私は非常に適当なことであり、できるだけそういうようにやっていくことがいいと思います。
○和田委員 駐留部隊の点については、あなたははっきりとこれを拒否するという態度を持ち、また党と話し合うということも言われたのでありますが、最初に聞きました原子兵器、たとえばオネストジョンとかコーポラルとかナイキというもの、これは私やはり原子兵器だと思うのです。兵器がだんだん進んできますから――オネストジョンを、かつて昭和三十年に沖縄に貯蔵するという問題が起ったときに、実はこれは普通兵器だということを、時の政府当局は言われたわけです。しかしこれは、いつでも弾頭には原子の兵器をつけることができるわけでありまして、やはり原子兵器だろうと思うのです。私どもは、研究用という言葉で、アメリカがこれを日本に貸すというだけのことに、簡単に考えるわけにはなかなかいかないのです。その意味におきまして、こういったような問題も、自生外交を主張され、そうして国内の世論の支持を受けて外交をも同時にやろうとしておられる岸さんとしては、こういったような危険のあるものは、むしろはっきりと――これは防衛庁当局は、こちらからむしろ進んで頼んだのだというようなことを言っておりますが、はっきりとそれを抑えて、やはり国民のそういう疑いが起らないように政府の最高責任者としてはやるのが筋だと思いますが、その点はいかがですか。
○岸国務大臣 日本からアメリカに対して貸与を申し入れておる新兵器があることは事実であります。しかしそのいずれもが、いわゆる原子力兵器と称せられるものではなくて、防御用の誘導弾に関するものでございます。その詳細については、防衛庁長官から具体的に一つ答えてもらうことにします。
○和田委員 防衛庁長官に聞く部分は、あとで時間があったら聞きますが、私の問題にしたいのは、今度かりに戦争が起った場合には、その様相が今までの戦争とは全く一変しておって、われわれとしてはあらかじめよほど考えておかなければならないというから、あなたにこの問題を聞いておるのです。ある軍事報道家の意見によれば、おそらく今度世界大戦争が起ったならば、日本という国はほんとうにわずか数分くらいを――あなたは防御用と言いますが、数分ぐらいをただ防御することができるだけであって、あとはもう日本というものは全く壊滅してしまうということすらいわれておるのです。それは原子兵器の発達で、ソ連側とアメリカ側の現状から見れば、あながちそういうことを否定するわけには、われわれにも参らぬと思うのです。そういうふうになって、いわば原水爆の実験の谷間になっておる。おまけに、戦争が起った場合には、いかに防御用といえども、日本がかりに防御するとしても数分ぐらいしか防御できないといったようなことであるとすれば、われわれが日本の安全保障を考える場合に、研究用という意味での原子兵器を持ち込むことは、研究が完成したら、やがてはそれを自分で作って、そして持とうという欲望が起ってくるのは、これは当然だと思うのです。そのときにはいろいろな財政上の問題も起るだろうし、いろんな問題も起りますが、むしろそういうようなことは今のうちに芽をつんでおいて、日本としては、今の段階においても、原子兵器は持たないということをはっきりと政府の方針としておきめになった方が、外交方針その他にしても、よほど保守党としてもやりよいし、日本としても行くべき道がはっきりするように私たちは思うのです。その点はいかがでしょうか。
○岸国務大臣 先ほど来お答えしている通り、原子兵器を持つというつもりはわれわれ全然持っておりませんし、またそういう日本の状態じゃないと思います。しかしわれわれが防衛力を増強する上において、量よりも質と言っていることは、できるだけ進歩した防御的なものについては研究して、そして日本の防衛を樹立するということはどうしても必要だ。従って今度の貸与を求めているものは誘導弾であって、決して原子兵器ではないということを、私は明瞭に申し上げます。
○和田委員 誘導弾が原子兵器でないかどうか、いろいろ問題があるのですが、そういう技術的なことは一応別にしましても、今度の予算において池田君は、防衛関係においては量より質に転換したのだといって、わずか四億の防衛庁関係の費用がふえたにとどまっているのだと言われておるのですが、その裏には、私はやはり日本を原子部隊の基地として、アメリカ側が利用しようという考え方が、どうもひそんでおるように思うのです、あたかも予算委の開会中と時を同じくして、こういったような報道が向う側から出て、しかもアメリカ当局は、むしろこれは日本側から発表すべきことだというようなことを言っておられると、これは国民としては、今岸さんの言われたことを、そのまま信用しにくくなってくると思うのです。ことに防衛の費用を量から質に転換するということは、言いかえれば将来の防衛費というものは、防衛分担金は減りましても、だんだんふえていくということを、またもう一ぺん確認したようになると思うのです。これからの防衛関係が人間よりもむしろ、今あなたのおっしゃったように、質的な兵器の問題になるとすれば、これは非常に金のかかることです。簡単にはいかないものです。そうなってくれば、分担金の削減方式といって、鳩山内閣のときに作った方式をかりにそのまま当てはめていけば、ことしは四億であったかもしれないが、来年はもっとふえるでしょう。だんだん深みに陥っていくだけであって、われわれがほんとうに、防衛関係のみならず、外交の面で自主性を持つその立場というものはなくなってきて、あなたは外交の面で自主外交ということを盛んに言われておるのですが、それが実は足元からくずれてくるという危険を非常にはらんでおると私どもは思いますので、しつこいようでありますが、もう一ぺんその点についての答弁を願いたいと思います。
○岸国務大臣 防衛の問題はすでにしばしば言明されておる通り、日本の国力に応じて漸増するという方式をとっております、今日も、われわれもその方式をとっておるわけであります。しかして、防衛の内容としてはやはり量より質という方向に重点を置いて、私どもは現在考えております。しかしそれはあくまでもわれわれみずからが祖国を防衛するという立場において、われわれの国力が許す範囲においてこれを樹立していこうという考えでありますから、それは将来におきまして防衛費がふえることもありましょうし、いろいろな進歩した技術を取り入れて、できるだけわれわれの手で日本を防衛していくというこの方針を私は貫いていくことであって、決してわれわれがそれによって自主的な立場を失うものではない、むしろ自主的な立場でそういうことを考えておる、こういうのが私の考えであります。
○和田委員 それでは、私は見方を変えまして、その次の問題に移っていきたいと思います。
 こういったようないろいろな問題が起ってくるのは、私はやはりその元があると思うのです。その元は何かといえば、やはり安全保障条約と行政協定という問題だと思うのです、安全保障条約と行政協定とは、これは柳承知のように平和条約を結ぶとき――しかもその平和条約を結ぶときには朝鮮戦争が起っておるすぐあとであります。世界の緊張が緩和どころではない、最高潮に達しておった時期だと私は思うのであります。従って、安全条約、行政協定については、われわれは実に国会において反対をいたしましたが、そのときですらその内容については十分な論議はされなかったように記憶しておるのであります。ところが、この安保条約なり行政協定という、現に条約としてある、あるいは協定として残っておるこのものが元になって、実は日本の国内においてはいろいろなことが起っておるわけであります。そして同時に、日本がほんとうに独立していくためには、去年日ソの国交回復をやったと同様に、アメリカからもこういう不平等な条約というものがない状態にしていくということは、私はやはり当然考えていいだろうと思うのであります。また考えなければならないと思うのであります。日中の間の国交の調整もございます。しかし、何といっても、今一番力のあるのはソ連、中国、アメリカですから、その三つとの間にはっきりとした、こういう依存の関係のないような、相互に平等で、自主的な立場に立てるような立場に日本が立つことが、私は何より大切だろうと思うのであります。従って、安保条約あるいは行政協定というものは、私どもはもはや改正の段階にある、あるいは改廃の段階にある、あるいはもっと言葉を強めて言えば、改廃を目標にして、何らか積極的な手を打つ段階がきておると私は思うのです。政府の今までの安保条約や行政協定に対する態度といういものは、私は消極的であったと思うのです その改正に対しての態度は消極的であったと、私どもには思えてならないのであります。たとえば砂川の事件がある、あるいはこの間のような米軍の演習場における薬莢を拾っておる農婦の射殺事件が起った。ただ、当地における軍当局の間の交渉も、あるいは抗議も、保守党の諸君は今までは非常に熱心にやったとは見受けられない。そしてそれは、国内においてお互いに国民同士が血を流すような、そういう不幸な状態すら今まで出てきたわけです、国民の世論、考え方というものは、やはり国民同士がそんなに角を突き合せて、あるいは官憲と血を流したりするようなことはできるだけ避けたいというのが、国民一般の、庶民の気持だろうと私は思うのです。しかし最後の突き当るところは安保条約と行政協定であります。今まで政府としてこの改正については非常に消極的であったと私どもは思うのでありますが、何かもっと積極的にこれを改正しあるいは改廃に向って手を打っておるのであるかどうか、その点を岸さんに伺いたい。
○岸国務大臣 安保条約や行政協定の問題につきましては、もちろんそれが締結された当時の事情と今日の事情は、いろいろ国際的にも、また国内的の事情も変りつつあります。しかしこれを改廃する、改訂するというためには、私はやはり必要な環境といいますか、準備が要ると思うのです。一つは国内におけるところの自衛力の増強の問題もありましょう。またいろいろ国際情勢の変化に聴いて、両国においてその下話しといいますか、これの検討も必要でありましょう。こういう、あらゆる環境を作った上で具体的の改訂に入るべきものであって、私どもは現在決してこの安保条約や行政協定のままで満足しておるわけではございませんから、これに対するそういう意味における環境を作る段階に現在ある、こういうふうに思っております。
○和田委員 その環境というのは、どういう環境でしょうか。
○岸国務大臣 今申し上げた通り、一面においては日本の防衛力の増強をできるだけやっていくとともに、一面から申しますと、アメリカ側との間におけるこの状況の検討が必要である、こう思っております。
○和田委員 安全保障条約によりますと、日本がどれだけこれで十分だという自衛力を持ちましても、その点に対するアメリカ側の合意のない限り、安全保障条約というものは条約の上でやめることはできないようになっているのです。そうしますと、日本が今まで通りどんどん自衛力をふやしていっても、これで十分だといってアメリカ側が認めなければ、どうにもならない状態なんです。アメリカの要求に合致したときに、日本側もこれでいい、アメリカ側もこれでいいというときに、初めて安保条約というものはやめることができるわけです。もう一つはどれにかわる国連の措置があったときであります。その二つ以外にはやめられないようになっておるわけです。今の岸さんの御答弁だと、これはいつまでたってもやめられないと思うのです。なぜなら、今までわれわれは国会において、日本の防衛計画をぜひこの国会へ見せろ、提出しろ、そして一般国民の討議に付して、この問題を真剣に考えようじゃないかということを言っても、防衛計画はありませんということが、吉田内閣以来のきまった答弁であります。ないんだと言うのです。ないのかと思うと、ないんじゃないのです、アメリカヘはちゃんと持っていって、それをもとにして日本の防衛計画を立てておるのが現実だと私は思うのであります。そうなってくると、そこの点において、岸さんが環境を作ると言いながら、アメリカの言うように従って、まあ言葉を強く言えば、アメリカ側の案をのむ以外には、これをやめる、解消することはできないということを、そのまま認められているというように考えられるのですが、その点はどうも今の答弁には納得しがたいものがあるのであります。
○岸国務大臣 日本の防衛計画については、言うまでもなく国防会議でこれを審議してきめるという建前になっておりますが、まだ日本の長期にわたる防衛計画というものが国防会議において正式に決定されるまでの段階になっておらない、しかしこれはできるだけ早い機会において立てる必要がある。言うまでもなく防衛はわれわれは自主的にわれわれの見地から立てるべきものである。もちろん今日の国防力というものを考えてみると、和田さん御承知の通り、一国だけで一国を完全に防衛するということは、とうていできないことでありまして、あるいは国連の力、あるいは現在の日本で言えば、日米安全保障条約の規定によって、共同的な立場でこれを守るという段階であろうと思うのです、今直ちに廃止するかどうかは別として……。しかし廃止の方向にわれわれは進んでいかなければならぬことは言うを待たないのであります。それには今言ったような計画も作らなければなりません。また日本自身がその計画に基いての――しかしこれは和田君のお話ですが、もちろん条約をやめるとか改めるというときには、両当事者の合意がなければならぬわけですけれども、自主的に日本が日本の立場からだけで防衛計画ができるならば、日本としてはアメリカの駐留なり何なりは必要ないとして、そのことを要求することは当然でありまして、もちろんそういうことについてのあらゆる面からの日米の交渉なり理解なり、また日本自体の防衛計画も立て、これに基いての防衛力の増強というようなことを進んでやっていくということが、私のいう環境を作るという意味なんでありまして、そういう考えでおります。
○和田委員 あまり時間がありませんから、そのあともう一点、その点についてお尋ねしておきます。
 私が日米安全保障条約を見まして非常に不審に思うのは、日米安全保障条約にはこれを終了する期限というものがないのです。期限にかわって、今言ったような両者の合意とか、あるいは国連の措置とか、そういったような言葉であって、事実は永久に続いていくような格好になるわけですね。日本がほんとうに自主的なものをやろうとする場合には、保守党の外交方針としてもやはり日本の独立ということは考えられておるし、岸さんも外交方針において、アメリカ一辺倒じゃない、ただ協力という関係で言われているわけですから、そうなってくると、今度の石橋内閣としても、せめて安全保障条約の終末の期限、たとえば三年たてば、もうこの安全保障条約というものは一応期限が切れちゃうんだ、あと続けるか続けないかということは、やはり日本の国民の自主的な決定に待つんだ。言いかえると、国民を代表している国会の決議によるなり、あるいは一般投票という制度が、今日本にはありませんが、やはりそういった意味の日本国民の自主的な判断によって、そのときに変えるか、変えぬかといったようなことをやる、そういったような気持はございませんか。
○岸国務大臣 もちろん今申しましたように、これの現在の状況を永久に続けていくということはわれわれ望んでいるわけじゃありませんから、今言ったようなあらゆる事前工作といいますか、いろいろな環境を作ることができ上れば、これを改廃するという考えであります。もちろん条約でありますから、国会の意思によってきめなければならぬということは当然でありますけれども、別にこれで国民投票をするというような考えもありませんが、しかし国民一般の世論の動向なり、国民世論が強くわれわれの考えを支持するような問題でなければならぬことは言をまたぬ、こう思っております。
○和田委員 どうも答弁がちょっとしまいの方があいまいになったのですが、そういったような期限をつけて、これを国民の代表する国会の意思によって一応終らせるというような政策を、具体的にとられる意思があるかどうかということを聞いておるわけです。
○岸国務大臣 今すぐこの安保条約に期限を付してどうするという考えは持っておりません。
○和田委員 しかし環境を作るという意味において、そういう方向への動きはそれはするだろう、こういう意味ですか。
○岸国務大臣 安保条約や行政協定のごときものをなくするような方向には進んでいきたいと思っております。
○和田委員 次の問題に移ります。これは外務大臣としての岸さんに質問したいのですが、先般日本が国連に加入して初めて出したカナダとの間の原水爆実験の届出の決議案でありますが、私どもは日本が国連という、ああいう世界の舞台において一番強く主張し得ることは、原水爆の実験あるいは使用その他の禁止だと思うのであります。あの案によりますと、実験を行うときに、ただ届出をしろというふうになっておって、それからあと科学委員会に移っていろいろな調査なり研究をやるということになっておるのですが、見方によるとどうもわれわれの受ける感じは、原水爆の実験を大国がやるのはやむを御ない、そうして、ただその跡始末だけを考えるというようにわれわれには見られるのであります。ところが国会においては、衆参両院ともに原水爆の実験については、これを禁止するという決議があるわけです。従いまして私はどうも内容がちょっとずれているように思うのです。そういう点においてわれわれとしては、ああいう決議を出されるに至った事情なり、その背後の関係について、簡単でよろしゅうございますから、責任ある当局から一つ御説明願いたいと思います。
○岸国務大臣 この点につきまして、沢田代表の国連における演説をごらん下されば、われわれの趣旨ははっきりしておると思います。お話の通り国会の決議にもありますし、こういう一切のものの使用禁止、いわゆる原子兵器の使用禁止、また実験をやめる、禁止するということは日本国民の強い希望であり悲願であるということは、きわめて明瞭でありますから、そのことを明らかに言っておるのでありますが、遺憾ながら今日の世界の情勢を見ますると、数個の大国が持っておって、その中には何らの届出もせず、何らの事前の警告も与えずしてやっておる国が現実にあるのです。そうして国連でただ禁止だけを主張してみても、今の国連内におけるところの大勢がそれを支持して、すぐそれが実現できるという状態になかなか行っておらぬ。従ってわれわれはこの実験禁止への第一歩として、せめてこういう届出をして、それから生ずるところの害悪をできるだけ最小限にとどめるという処置でもやらなければ、野放図にこれをまかしておくということは、その惨害の及ぶところはかり知るべからざるものがあるという見地からやっておるのでありまして、これは沢田代表が日本の意思またこれの提案をしたところの理由が届出さえすればそれでいいんだという、現状を承認したものでないことははっきりしておると思います。
○和田委員 私は趣旨はそういう趣旨であったと思うのですが、届出の制度というものも、もちろん今のような趣旨ならば成り立つかもわかりませんが、われわれはむしろ今世界的に巻き起ってきておる原水爆の実験禁止なり、あるいは原水爆の禁止問題については、ソ連といわず、イギリスといわず、あるいはアメリカといわず、そういう大国に対して、世界の世論を背景にして、日本が先頭に立って、いつでも抗議を申し込むということは捨ててはならないと思います。どうも今度の場合は、届出をまずして、そうしてあとを科学委員会にまかしてしまうということになって、しかも総会ではなくて、何か軍縮の小委員会に移されてしまって、国連の総会の問題にすらならなかったということは、結果を見ると、結局非常に軽く扱われたように思うのです。そういうことは形の上だけではいかにも民主的なように見えても、実はこの問題をもっと進展さす点において、迫力が非常に欠けていたと思うのです。だから日本としては原水爆の実験禁止なり何なりを、やはり持っておる国に対しては強く主張をして、むしろそれ一本くらいで行って、今の段階においては十分に効力を持つものではないかと思うものでありまして、やはりこういう問題をもっと深く考えてみると、何か原水爆の実験をやって届出ない方面に対する一種の大国側の要求に加担して出した形跡があるような感じを、ややもすると受けるのです。そこで日本としては、やはりそういう点については、はっきりと中立の独自の立場をとって、結果的に見て、どちらの陣営営にも加担したような格好をとらずに、堂々と両方の側に――もちろんソ連に対しても言うべきでしょう。アメリカに対しても言うべきであるし、今度あなたはイギリスに対して言われましたが、そういう点で今十億の署名がある世界の世論を背景としていくべきではないかと私は思います。今度の結果、実は国連内部においても、せっかく日本が持っておる大きな力を削減されたのではないかというような印象を持っておる人もあるやに聞いておるので、一言お伺いしたわけです。やはり国際政治は小手先ではなかなかいかないのです。日本の地位というものは非常にむずかしい地位にあるだけに、どうか日本の持っておる一番大きな国連における発言権を弱めることのないように、今後やっていただきたいと思います。外交の問題は、まだあとから私の落しました大事な点は、ほかの人が聞かれるでしょうから、私は次に財政の問題に移っていきたいと思います。
 財政の問題に移るに当って、まず池田大蔵大臣に聞いておきたいのは、今度のあの第一次補正予算ですが、これはわれわれが今まで普通にとってきた考え方によれば、財政法の第六条でしたかによって、その年の剰余金の半分は国債やその他の償還に充てて、翌々年度に使うことにならっおる。ところが今度の場合を見ると、三十一年度の自然増収があったので、まず第一次補正予算として四百億の補正予算を出されておる。ところが補正予算で出されておる金というものは、実は三十一年度には使えないものが多いのです。百五十億が三十二年度、百五十億が三十三年度、百億が三十一年度というふうになっておるのです。どうも私は第一次の三十一年度の補正予算というものの出し方がだいぶふに落ちないと思うのです。どういう法律的な根拠に立って三十一年度の予算をお出しになったのか、その法的な根拠を御説明願いたいと思います。
○池田国務大臣 お答え申し上げます。当年度の自然増収を当該年度で使う例は今までもあったのです。今回三十一年度におきましては非常な自然増収が見込まれるのでございます。租税において九百億円余、税外収入において八、九十億円が見込まれておる。もしそれをそのままにしておきまして三十三年度に持っていくということは、三十二年度の財政投融資が相当要ります関係上、あまりに多過ぎます。しこうして、当該年度の分を早く使って財政基盤の確保と経済の弾力性を持たしていくということが必要であると考えておるのであります。不用額を除きましても千億円ございます。従って、半分程度使って、五百億余りを三十三年度に使うのが私は適当であるというので、今まで例はございませんが、財政の弾力性という意味からそういうふうにいたしたのであります。
○和田委員 どうも私はそれは説明にならぬと思うのです。三十一年度の自然増収があるから、それを当該年度に使った例はある。しかしその例はおそらく三十一年度に使える程度のわずかなものであったと思うのです。千億の三十一年度の増収は――まだ三十一年度というのは終っておりませんが、しかし結局三十一年度に全部使えないわけでしょう。そうしてみれば、三十一年度に使えないものは、決算してみれば剰余金になってしまうわけです。余った金になるのです。そうしてみれば、財政法が厳として存在する以上は、やはり財政法に従ってその資金を処理するのが当然であるし、もしもそれがそうでないならば、補正予算として出す前に、法律をちゃんと出して、そういう使い方ができるようにしておかなければ、私は非常に不合理だと思うのです。どうもこの点は、池田君の千億減税、千億積極財政という看板上非常に無理をやった、非常に強引にこれをやったという感じしか受けないのであって、そういうことから法の体系というものが乱れてくると私は思うのです。この点は、大蔵当局としては、ことにもう政治家である池田君は、こんな無理をせずに、常々と予算を組み、やられたらいいと思う。それでなければ、この財政規模についてあと触れますが、財政規模というものは、決して去年からそれが千億ばかりふくれたのではなくて、非常にふくれておるのです。看板と実際とにいつも偽わりがある。これは、うそを言わないということを信条にしておるところの池田君としては、私は非常にとらざるところだと思うのです。その点をもう一度はっきりと説明をしてもらいたいと思います。
○池田国務大臣 財政法に何ら抵触する措置ではございませんし、しかも今年度一千億円になんなんとする剰余金をこのまま三十三年度に持っていくということは、私は適当でないと考えましてやったわけであります。
○和田委員 抵触しないというのは財政法の何条ですか。法的根拠はどこにあるのです。
○池田国務大臣 こういうことをやりましても抵触しないと考えております。これを禁止した規定はございません。
  〔「あるよ、ちゃんと十二条にはっきりしている」と呼ぶ者あり〕
○和田委員 私は池田君の今の答弁は非常に強引にすぎて不親切だと思うのです。十二条に「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」とあり、そうして六条には「各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた年度の翌々年度までに公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。前項の剰余金の計算については、政令でこれを定める。」という規定があるわけです。これでいくと、やっぱり一会計年度の一予算といいますか、今までとられてきた原則をあなたとしては破っているわけです。非常に異例なわけなんです。こういうようなことをだんだんだんだん積み重ねていくことが、私はいつでも秩序を乱していくファッショの道といいますか、通ずるものだと思うのです。こういう点はやはり財政当局としては、はっきりとした法的に根拠を示して、われわれに予算を提示し、そうして一般の議員の審議の審議にまかすのが適当だと思うのです。どうもこの点については、禁じた規定がないからやってもいいといっても、財政法の精神は明らかにこれを禁止していると思うのです。
○池田国務大臣 専務当局より法的根拠を御説明いたさせます。
○森永政府委員 法律問題でございますので、私からお答え申し上げます。
 財政法の第六条には、ただいまお示しがございましたように毎会計年度の剰余金につきましては、その二分の一を下らない額を国債の償還に充てなければならぬという規定がございます。これは法界上の剰余金でございまして、今はまだ三十一年度の進行中でございます。その場合に自然増収がございました場合に、これを補正予算の財源に充てますことは、これは何らこの規定に抵触しないわけでございます。ただ問題は、その使い道ということで御指摘があったかと存じますが、今回の補正予算は、この自然増収を産業投資特別会計に繰り入れまして、産業投資特別会計に繰り入れることをもって歳出といたしておるわけでございますが、産業投資特別会計におきましては、これを財政法第四十四条の規定に基く資金として保有するわけでございます。財政法第四十四条には「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」という規定がございます。この資金としてこの補正で歳出として立てました三百億を保有するわけでございまして、この資金は、今後計画的に弾力的に経済界の実勢に応じて運用をする、そういう建前の資金でございます。その資金を設けまする法律は、今国会に別途提出をいたす準備をいたしておる次第でございます。
 さような次第でございまして財政法におきましても資金の保有を認めておりまする関係上、今回提出いたしました補正予算が何ら財政法に対する違反の問題にはならないと考える次第でございます。法律的な問題につきまして補足的に申し上げた次第でございます。
○和田委員 今の主計局長の答弁で見ても非常に苦しい答弁だと思うのです。三十二年度に実は片一方の産業特別会計においてそれを使わぬのかと思うとそうでなく結局使うのですよ。三十一年度の自然増収であるから決算上の余剰金じゃないとおっしゃいますが、三十一年度のこれだけの剰余金というものは――自然増収は決算してみれば剰余金になるにきまっている。しかも、三十一年度にはその金は使い切れない。だからそれをどう処置するかというときに、池田君は一方では積極財政ということを言っている。積極財政を進めていけば、今度の予算を進めていけば、これは金融の上に相当なひずみが来るにきまっている。それで三百億というものを次の三十二年度に財政投融資の一つとして使おうということから、そういう操作をやったというわけですね。だから、そんな操作をやるのには、もっとこの予算の根本に立ち返って、ちゃんとした建前に立っても今度の予算は組めるのだ。そういうものを、無理に、何も禁止の規定がないからとか、あるいはあとから法律を出すからとかいってやられていく行き方というものが、一体果して正当な行き方であるかどうかということについては、どうも僕は納得がいきません。その点については池田君としてももう一ぺん答弁してもらいたい。
○池田国務大臣 私は、今の日本経済の状況から申しまして、千億円になんなんとするものをこのまま三十三年度に持っていって、そうして半分の五百億を国債の償還に充てる、そうして三十三年度の予算に異常な五百億円を歳出に充てるということはよくない、こういう考えで、各年を通じまして適当に引き揚げ超過のものを使っていくことが、経済、財政の建前からいい、こういう考えでやったのであります。
○和田委員 日本は法治国でありまして、ことに二大政党になって政党の運営を正常化するということが石橋総理の五つの約束の第一に出ておるわけであります。その点については岸首相臨時代理も御異論ないと思うし、閣僚の諸公も異論はないと思う。そういうようなときに、必要であれば、国会が開かれておるわけですから、やはり法律の改正をして堂々とおやりになったらいいと思うのです。そういうときに、何も法律のいわば盲点を突くなり何なりしてそういったようにわからないことでこういう重要なものを処理していくということは、私はとらざるところであります。この点については池田君の答弁には私は満足しませんし、いずれあとで法律の専門駅がこの点を追及するでしょう。私はこの問題はこの程度でやめておきます。問題だけを提出しておきます。
 ところで、財政の規模でありますが、国民所得が今度は八兆一千八百億円であります。三十一年度は七兆六千百億、こういうようになっておるわけです。そして、予算の建前から言って、一般歳出が、三十一年度は一兆三百四十九億、今度は一兆一千三百七十四億、わずか千二十五億の増加だと言われておるわけです。この程度の財政規模の増大は今の一般の好景気のもとにおいては当然だということが政府の主張であります。千億減税をやり、また一般的な積極政策をとっても、この程度の予算規模は国民の所得に比べてわずか一三%幾らであるからそう大したことではないというのが、これが池田君の今まで説明してこられたことであります。しかしながら、私どもはここで考えなければならないのは、三十二年度に三十一年度の補正予算として出ておる中の金で、三十二年度に今産業特別会計の中で出ておるところの金があります。それが百五十億ですか、それから財政投融資がことしは三千二百四十五億、去年は二千五百九十七億、公募借入金が八百九十九億、多少数字は違うかもしれませんが、ことしは八百四十五億、この点は減っております。そうして自己資金が三千百六十九億、去年の二千百七億に比べて三千百六十九億にふえておるわけです。それから重複調整の計算や何かいろいろやってみると、三十二年度が百六億、去年は二十億であったのが八十億ふえているわけです。それを合計しますと、三十一年度は一兆六千三百二億、三十二年度は一兆八千六百九十七億であります。この限りにおいては一七%実はふえておる。それから防衛庁の債務負担行為その他を見てみますと、去年は百六十五億でありますが、三十二年度は二百三十億であります。こういうものを歳計してみますと、三十一年度は一兆六千百九十七億、三十二年度は一兆八千九百二十七億ということに実はなって、その間に二千七百三十億というようにふえているわけです。言いかえると、予算の規模がただ千億ふえたというだけではなしに、結局財政投融資なり何なりとして出される金が、いろいろなものを見てみると二千七百三十億の金がふえて出ることになっておるわけであります。こういうことになってくると、予算の規模の国民所得に対する関係も自然に変ってきます。政府の言うようなわけにもならぬのであります。実質的な予算、こういうものは、今政府としては計画的な経済をやっているわけではないのですから、国民経済予算は組んでおりませんが、ただ、今私の申し上げた、拾ったものだけを見ても、かなり予算的な規模というものはふえていると見なければならぬのです。経済が非常に景気がいいから、国民所得が伸びたから、それにつれて去年と割合だけで言って実はむしろ減っているかとんとんくらいであるのだから心配ないのだ、こう言われますが、実質的に見るとやはりそれ以上にふえているということになってくるの予算規模がこんなにふえていく、膨大になっていくということは、私どもとしてはそうは考えません。予算の規模が大きいということは結局国民から取り上げるいろいろな税金が多いということにならざるを得ないのです。千億の減税についてはあとで触れますが、結局そういうことです。政府のやるところのいろいろの仕事を補う金を外国から持ってくるわけにもいかないのです。それは外国借款をやったり公使を発行したりすることもありますけれども、健全なる財政をやるということになれば、租税が第一番になるわけです。そういうようになってくると、予算規模の大きさというものはやはり国民生活の上に非常な影響を持つわけでありまして、この点について私どもは、今度の予算規模を政府の言うように――政府はその点非常に楽観的に考えておりますが、予算規模というものを一兆円のワクを守っておった。ところが去年は急に三百七十億ばかりふえた。今度はその上に一千億ふえた。これは経済が成長したからだと言って、成長経済の理論の立場に立ってあなたは予算の規模をふやしておるわけですけれども、予算の規模をふやしておるその基礎になるところにやはりいろいろな問題が多数ひそんでおると私は思うのです。そういう点で、予算規模は、私の今言ったように、実際上は一兆一千億円ばかりではなしにもっとふえておるわけですが、これは政府の出した資料からざっと計算したわけでありますが、この点については池田君はどう考えるか、その点お伺いしておきます。
○池田国務大臣 私は、予算の規模につきましては一般会計で論ずるのが本筋と思います。財政投融資につきましては、あれには郵便貯金その他金融機関の今までの貸した分の回収その他がございますので、これを一般会計と一緒に財政規模を論ずることは誤まりと思います。
○和田委員 それは形式論なんだ。経済というものは特別会計と一般会計と別にしては動いていないのです。経済はやはり一般会計と特別会計というものが一体になって動いている。あなたは経済は生きものだと言っているが、今の言葉で言うと、経済は生きものではなく、経済は死にものだということになります。これは経済論としてはどうも成り立たないし、そういうときにだけ形式論を使われることは、私どうかと思います。むしろ、形式論なんかをやるときには、私が今聞きましたように補正予算について形式論をやるのが正しいのであって、経済の今の議論をやる場合には、そういう一般会計と財政投融資とを別にしたり、特別会計とを別にしたりしてやられることは、私はどうかと思います。
 そこで、次に私はお聞きしたいのですが、減税の点であります。この方を先に聞いた方が、あとの質問に入るのに都合がよろしいから、税の点について聞きたいと思うのです。
 池田君は、財政演説でも、とにかく結局七百二十億一千八百万円の減税だということを繰り返して言っているわけです。ところが、私どもの見るところでは、これは全くうそだと思うのです。なぜならば、所得税の減税は九百五十億七千八百万円です。ところが、法人税が七十億五千五百万円ふえております。揮発油税が百二十八億二千九百万円ふえております。そしてトン税が一億七千六百万円ふえております。印紙収入が三十億ふえておるわけであります。そうしますと、それで結局七百二十億一千八百万円ということを言われております。ところが、そのほかに地方道路税の増加があるわけです。これが四十五億四千三百万円、特別トン税が五億八千六百万円。そうしますと、それを引くと、六百六十八億八千九百万円というものが一応の減税ということになるじゃありませんか。ところが、鉄道料金の値上げが当然出てきているわけですね。それは三百六十五億あるわけです。食糧の値上げは、これは今度はやめましたが、食管会計の赤字としては百四十二億がそのまま残されておる。そうなってくると、やはりそれは国民の何ですから、結局増加するものはやはり五百七億ばかりが増加します。そうすると、それを引くと、百六十一億八千九百万円。七百二十億の減税と言いながら、実質は、表面に現われたものだけでも百六十一億八千九百万円の減税にしかならないということになるわけであります。しかるに、そこへ持ってきて、私が今最初に触れましたように、去年の予算の実質的な規模とことしの規模とを比べると、二千七百三十億、一七%のいわば散超になっておるということにならざるを得ないと思うのです。これをすれば、どうしてもインフレは起ります。私はどうしてもインフレが起る大きな要素がここにあると思うのです。
 こういうことがもしも私の言うようになれば、あなたの言っておるインフレには決してならないということは言えないと思うのです。そうなって、もしもかりに物価が上ってくれば、今私が計算しました純減税の残りである百六十一億八千九百万円というものは、私は物価の値上りでふっ飛んでしまうと思うのです。そうすると、残るところはどういうところが残るかといえば、結局今度の減税で一番利益を得た五十万円以上の所得者のわずかな減税というものが残るだけであって、少くとも三十万円以下、ことに二十万円以下ぐらいのものになれば、これは赤字になってしまうと思います。それはいろいろ数字がありますけれども、こまかい数字は略します。
 こういう情勢であって、今度の減税というものが、一方で非常に高くといいますか、強く主張されておりますが、これは本会議において河野君が主張したごとく、減税と積極財政というものとは矛盾する要素です。ここで私たちが非常に心配するのは、インフレが起ってきた、物価は上る、さあ収入が上ったから税金を払えといって、どんどん税金を苛斂誅求するようになるような感じがするのであります。
 また、この問の事務当局の説明で、財政資金の対民間収支の見込というものがございます。それによると、三十一年度は千三百億の揚超でありました。ところが、今度は三百五十億の払い超過です。財政上三百五十億の支払い超過は、もう政府当局も認められておる。しかもこれは、金融と、今私の言いましたこの税の関係から見て、または予算規模から見てのものとつけて考えてみるならば、これはどうしてもインフレ必至ということになるじゃありませんか。去年は千三百億の揚超であったものが、ことしは三百五十億ですから、大きな波としては千六百五十億というものがむしろ積極的に働いてくるということになるでしょう。それでインフレが起らぬということはどこから出てくるのか。その傾向はないということすら言ったんでは、どうも私どもは納得がいかないのです。現にあなたたちを支持しておると見ていいところの経団連さえ、インフレの危機をひしひしと感ずるがゆえに、インフレ対策に対しては十分な用意をしろということを言っておるわけです。
 そういう点についての池田君の見解と、もしも具体的な対策があるならばそれを示してもらいたい。
○池田国務大臣 先ほどお答えしたように、和田君が一般会計と財政投融資を一緒にしておやりになることは、私は賛成しない。たとえば資金運用部その他各政府関係機関の金融業務の分で、どんどん貯蓄が余ったものをそのままほうっておいたら大へんになる。だからあれは予算の参考でやっておりまするが、財政投融資の分は、片一方の分は予算にはなっておりません。従って、たとえば民間におきまして、金融機関は大体年に六、七千億預金がふえております。そうすると、今の預金貸し出しは大体四兆円でありますが、六、七千億ふえる預金を、これで二割も貸し出しが多くなるじゃないか、これはインフレになるじゃないか、これではインフレ論にはならないのです。だから、私は、財政投融資の分は民間のことと一緒にお考え願いたいと思う。もう一度繰り返しますが、今から二、三年前の銀行の預金貸し出しは二兆円でございました。今で、は二、三年の間に四兆円になりました。しかもまた今年は六、七千億の預金の増加をわれわれは予定しておる。そうすると、二割以上の預金がふえた、貸し出しをしたらインフレじゃないか、こういうのは議論にならない。だから、私は、インフレについての問題は一般会計のワクの問題で、しかもその内容で考えなければいかぬと思う。それから、今お話しになりました昭和三十二年度の三百五十億円の払い超という問題につきましては、その内容に前年度剰余金の繰り入れの分が入っておる。これはその年にとった分じゃない。前々年度分だから、これが払い超になる、これを主として言ったものなんです、それで、事務当局の説明でも、これは相当動きます。たとえば今年度におきまして予算の審議を願うときにはやはり二、三百億くらいの払い超を出しておったかとも思いますが、いずれにしてもこれは相当効くものである。米の豊作、その値あるいは為替会計の問題で動くものでしょう。非常に動きます。本年なんかは揚超千数百億、前年は散超二千七百億、こういうふうに動くものでございまして、こういう数字を見てインフレ論をやるということは、私はいかがなものかと思います。
○和田委員 私は、どうもピントがはずれているように思うのです。というのは、財政の投融資というものも、それから一般民間の資金というのも、これはやはり国の貨幣の流通量をなすものだと思うのです。国の経済として免れば一緒だと思うのです、国民経済として見れば、ただそれが、国家が財政投資という形で貸すか、特別会計の形で貸すか、民間の各銀行が貸すかという違いはあります。しかしながら、今の国民経済で財政が占めておる役割というものは、あなたは今度積極政策をやったのは財政が非常に大きな役割を占めておると思うからこそ積極政策をやったのでしょう。財政というものがもう何も役割をしないものだというなら引っ込んでいればいいのです。民間だけに全部まかしてしまえばいい。ところが、今度はそうではなくて、千億円の減税もやるが積極政策もやるのだ、千億円やるのだということを言ってやったところに、あなた自身経済そのものについは一体としてやはり見ておるのです。ただ、それが形式的には特別会計あるいは一般会計というようになることは、これは当りまえのことです。財政論のABCです。そんなことを僕は聞いているのではない。やはり国の全体の動きとして財政面から見ても、それから金融面から見ても、今言ったように一般のインフレ的な要素というものは大きくあると見なければならぬのじゃないか。そして、ことにあなたの言う減税というものは、一たび物価が上昇するならば、実は潤すところは低所得階級の者には何らない。ただ非常に高額の者にあるだけであるし、また事実、ほんとうに中産階級を育成すると言いながら、その中産階級においてすら、その下の者は非常な影響を受けて困る。結局勤労大衆は困ってくるということを言っておるのです。そういう点で、預金部資金に貯金が幾らある、その預金部資金はやはり郵便貯金は結局預金部の資金となってやはり財政の面として出されていくわけなんですからね。そういうからくりがあることはもちろんです。しかし、ことしのものについて言ってみれば、私どもは今言ったように結論を下さざるを得ない。ことに、今三百五十億の揚超がどう動くかわからないということは、結局輸出や輸入や国際貿易に関する見通しというものについて、ある意味から言えばあなたが自信がないということを言わざるを得ない。だから、そういう議論をやったから、だんだん私はボロが出てくると思う。
 ですから、今度は論点を変えて、経済企画庁長官に聞きたいと思うのですが、経済企画庁で出され旅した三十二年度の経済計画の大綱というものがございます。今度の大蔵省の予算を組むときに、この大綱の中に現われておる数字というものは、それが基礎になって、その基礎の上に今度の大蔵省の予算は組まれたものでしょうか、それとも、予算とは別に、企画庁が三十二年度の経済計画の大綱というものを出されて、これは切り離されたものであるか、その点はどうであるかをお聞きしたいと思います。
○宇田国務大臣 予算を組む前に、経済計画の大綱については、大蔵省ないしその他の関係省と数回にわたって十分論議を重ねての結果であります。
○和田委員 池田君、その点どうです。
○池田国務大臣 もちろん各省と連絡を十分いたしました。それによりまして予算を組んでいるのであります。
○和田委員 そうすると、三十二年度の国民所得が七・五%ふえる、鉱工業生産が一二・五%ふえる、民間投資が八・三%、例人住宅が一五・〇%、設備投資の増加が一五・〇%、在庫品の増加については何ともまだ言っていないです。それから消費が七・五%ふえる、輸出が一二・九%輸入が一〇・〇%、就業者が二・一%、卸売価格二・六%消費者物価が〇・九%、こういう数字は、各省ともに、また内閣としても是認された数字と、こう見ていいわけですね。
○宇田国務大臣 そうでございます。各省と打ち合せてございます。
○和田委員 私は、やはりここで一番問題があるのは、輸出入の関係と、やはり物価だろうと思います。経済計画の大綱を立てるにしても、これの一番立てにくいのは貿易関係であるということは私もよくわかります。しかし、ここで、今年の輸出が一二・九%ふえるというその根拠はどこにあるのでしょうか。
○宇田国務大臣 お答えいたします。二十四億八千万ドルが大体三十一年度の輸出の数字であります。それで、三十二年度におきましては二十八億ドルということを予定いたしております。どういうところにそれの根拠があるかというと、鉱工業生産、特に第二次部門等については輸出の数字は、それぞれ伸びがありまして、それはその大綱に数字を掲げてあります。
○和田委員 今のではどうも私は答弁にならぬと思います。これだけの、三十二年度の計画としての見通しだと私は一応解釈してみましても、一体どの辺に輸出が伸びて、どの辺では輸出が減ってこういう数字が出たかということがはっきりしていなければ、政府がなんぼ輸出はこうなる、輸入はこうなると言っても、それは見通しだからいいとはいうものの、一番狂いやすい要素を含んでおるだけに、大体の想定をした場合においては、具体的なものが私はあったと思うのです。これがどう動くかによって、国内のいわゆる資金関係というものはまるで変ってきます。輸出がうんとふえれば、財政というものはどうしても散超になります。輸出がうんと減ってくれば、そして輸入がうんとふえてくれば、これは揚超になるわけです。ですから、そういう国内資金の動き、いわば経済の動きに一番関係のあの事柄ですから、もっと具体的におわかりになれば、説明していただきたいと思うのであります。
○宇田国務大臣 お答えいたします。昨日も川崎委員からの御質問がありましたように、国別にまたは商品別に計画はそれぞれ立ててあります。その数字につきましては別途そちらにお届けすることになっております。そういうわけで、大体の数字は、先ほど申し上げましたように、輸出においては一割二分ばかり増す、輸入においては一割一分ばかりの増加を見込んでおって、年間のバランスは昨日も数字で申し上げた通りであります。詳細の商品別とか仕向け地別の数字は別途に差し上げることになっております。
○和田委員 その数字は材料として早く出していただくことはもちろんですが、あれを見ましても、収支とんとんということになっておりよすね。三十二年度は輸入と輸出とが実にうまく数字は合っているのですが、収支とんとんということは、僕は今まであり得なかったことだと思うんです。三十二年度に限ってなぜ一体輸出と輸入の収支がとんとんになっているのしょうか。僕はここに非常な偽わりがあると思うんです。赤字が出るなら、国際収支の面ではこれだけの赤字が出るということをはっきり打ち出して、そして予算の編成をやり、予算の上の政策も当然考えていくべきではないかと私は思うのです。その点について、各省打ち合せをしたと言っておりますが、収支とんとんというのは一体どういう根拠で収支とんとんなんでしょうか。どうも私にはわからないのです。国の政治は、やはり一つの企画庁がある以上は、見通しなり何なりを立てることは大賛成です。また計画もやはり立ててもらわなきゃならぬと思うんです。私どもは社会主義ですから計画経済を言っております。従って、われわれも勉強しております。しかし、何といっても一番大きな材料を持っておるのは政府です。その政府が、もっと忠実な立場から、少くとも経済の見通しなんかは立てていくべきであって、収支とんとんなんということはだれも本当にしませんよ。その点について、一体どういう根拠からそういうようになっているのか、簡単でいいですから、もっとわかりやすく明快に答えてもらいたいと思います。
○宇田国務大臣 お答えいたします。収支のバランスがどういう点がどうなっておるかという点については、貿易、輸出入に関する限りは、各国別、商品別に資料を差し上げますから、そのあとで検討をしていただいて差しつかえないと思います。それから、収支のバランスがとれるということにつきましては、先般来申し上げた通りであります。
○和田委員 先般申し上げたというのはどういうことですか。収支のバランスがとれるというのはどういう意味ですか。
○宇田国務大臣 昨日も申し上げましたけれども、収支のバランスについては、ただいま二十八億ドルの輸出、それに対して特需関係が約六億ドル、そのほかの貿易外のものが約一億三千万ドルそこそこということになっております。そういうふうに、内訳は、二十八億ドルの輸出、六億ドルの特需関係、そしてその他となっております。
○和田委員 どうもいろんな数字が不明確ですが、まあそういうことは別としまして、輸出の点についてお聞きしたいのですが、中共に対する輸出はどの程度になっておりますか。
○宇田国務大臣 中国との貿易関係では、向うとの関係が、実は商品のクラシフィケーションがAクラス、Bクラス、Cクラスということになっておって、従って最近は向うからの輸出が少し減っております。従って、こっちからの輸出は約八千万ドル程度を予定いたしております。輸入はバーターでそれに見合うものが入ってくる、こう見ております。
○和田委員 そうすると、これは外務大臣に聞きたいのですが、中共貿易についてはココムの制限、少くともチンコムの制限、そういうものは非常な緩和をしていく、そして中共との間の貿易についてはもっと積極的に政府が乗り出していくということが前提になって、今の数字が出ておると思うんですが、その点はどうなんでしょうか。
○岸国務大臣 中共との貿易は、御承知の通り、近年うんと伸びて、今年は特に伸びておりますが、私どもは従来あるココムの制限の緩和、またその範囲においても特認制度等をできるだけ活用して、これを拡大するという方針でやってきております。今後もその方針でこれを進めていくという基礎の上に立って今の数字が生まれておるわけであります。
○和田委員 そうすると、緩和なり何なりというものは、三十二年度には行われる。特認制度も民間業者が言っているように十分に利用されるということは、はっきりと外務大臣の責任をもって言えることでございますか。
○岸国務大臣 ココムの緩和につきましては、どの程度がどういうふうになるかということを今責任を持って申し上げることはできませんけれども、少くとも本年までわれわれがやってきたことを続けていくことはできますし、またさらにこれを拡大するように今後も努めていきたい、こういうのが私の方針であります。
○和田委員 どうも希望だけを述べられたんでは予算委員会の答弁にはならぬと思うのです。やはり政府は責任のある当局者なんですから、その答弁は、希望だけでなくして、やはりやり得るということ、やり得ないことはこの程度はやり得ないということを、はっきり言ってもらった方が、僕は審議の上にもいいし、国民も納得するだろうと思うのです。どうも八千万ドルを何しているといいますが、その数字には今私が聞きましたような前提があるのですね。前提なくして、当然八千万ドルということが出てこないようにわれわれは思うのです。そこであなたにお聞きしたわけですが、その点どうも根拠が非常にあやふやになっているように思います。
 その点は一応おきまして、岸君は経済外交ということをやかましく言っておられるのですから、大いにやってもらいたいと思うのですが、どうも、中国に対する貿易の態度にしましても、私どもの受ける印象は、石橋総理大臣の中国貿易に対する熱意と非常に隔たりがあるように感ずるのです。あなたは非常に中国問題については慎重であり、消極的です。言葉の上では貿易なりあるいは文化交流なりはやるんだと言っておりますけれども、しかし、根本の態度がそういう態度であっては、実は積極的にはなかなか物事はやれぬものです。積極的に貿易をやろうという石橋さんなら、ある程度は私も信用していいと思うのですが、今までの岸さんの態度は、どっちかというと中共に対しては消極的な態度をとっておられる。果して中共貿易について今までのようなココムの制限の緩和、むしろこれを撤廃する、撤廃するまではできないものもあるかもしれませんが、無用なものは全部撤廃するという程度にほんとうにやるのかどうか、その点をもう一ぺんはっきり言明してもらいたいと私は思います。
○岸国務大臣 中共問題に関して私が慎重であるということは、まさにその通りだと思いますが、慎重であるということと消極であるということは必ずしも一致しているわけでないのであります。私としては、貿易に関する限りは、石橋総理と同じように、積極的に増進して参りたいと思います。従って、ココムの制限緩和あるいは特認制度の活用ということについては、従来よりもさらにできるだけの積極的な努力をする考えでおります。
○和田委員 そこで、また大蔵大臣に対してですが、大蔵大臣は、今後の世界経済の見通しをどういうように考えておるか。財政方針演説で述べられたように、非常にバラ色に考えられているようだが、あのままに受け取っていいか、それとも、もっとあれにつけ加えるべきことがあるかどうか、その点簡単にお答え願います。
○池田国務大臣 財政演説で申し上げましたごとく世界景気の原動力であるアメリカは、度は違うかもわかりませんが、依然として好景気を続けていくと思います。それから、ヨーロッパ各国におきましても、経済の安定、復興ということに非常に努力しておりますので、私は、アメリカが原動力になり、今の高原景気を続けていくと見ております。
○和田委員 どうもその点が私どもの納得のいかない点ですが、スエズ問題が起って以後、イギリスはインフレになってどんどん金の値打がなくなっていく、またいろいろな規制までも再びやり出して、経済自身が非常に動揺しておるということは、やっぱりあなたも御承知だろうと思うのです。フランスもまた、アルジェリアの問題やその他で、必ずしも経済が安定しておるとは私は言えないと思うのです。そういうようなことを考えてみますると、世界経済の中で、なるほどアメリカは多くの軍事予算を今度も組みましたから、そういう意味での景気は、アメリカとしては維持できるだろうと思うのです。しかし、ヨーロッパの経済というものについては、ことに後進国の経済については、それほど私どもは安心ができないのです。そうなってくると、日本の輸出といえども、来年の三十二年度の後半期においては、これは世界的な経済として一つの調整期が起るであろうし、また起るように私どもは見受けられるわけであります。今いろいろと岸外務大臣や宇田経済企画庁の長官にお聞きしたのでありますが、輸出についても一二%幾らの伸びを感じておられるわけですが、その一二%幾らの伸びのおもな相手国というものは一体どこなんでしょう。アメリカなんですか、それともヨーロッパなんですか、東南アジアなんですか、それとも中共なんですか。もちろん全部含めてでしょうが、その中で一体どこに中心があるのか、その点だけを伺っておきたいのです。これは宇田経済企画庁長官に……。
○宇田国務大臣 お答えいたします。伸びの一番見込まれるのは、やっぱりアメリカと考えております。
○和田委員 ところが、アメリカは今日本との間に各種の商品について相当いざこざを起しておるようなわけであります。戦後アメリカだけに貿易が片寄っておって、そうして日本の貿易というものが非常にいびつであったということが、われわれの一つの悩みであって、日本が自立経済を達成するのには、アメリカだけに貿易が片寄らないように、――しかもアメリカとの場合は多く片貿易であったわけですね。日本が実際アメリカに買ってもらうより、アメリカから、日本の方がよほどたくさん買っている、そういうように考えてくると、どうも貿易計画自身がだんだん僕には怪しくなってくると思うのですが、そういう点はほんとうにどういうように検討されたのでしょうか。
○宇田国務大臣 商品別に、仕向け地別に数字をそちらにまだ差し上げてありませんが、こまかい各国別のパーセンテージは出ておりませんけれども、たとえば中国にいたしましても、七千万ドルが八千万ドル、あるいはそれ以上に可能性がある、こう見ておりまして、それだけでも一〇パーセント以上の伸びがある、こういうふうに思える点もあります。なおそのほか東南アジアの諸国においても、概括して申し上げて、的確なお答えにはならないと思いますが、国別に考えますと、伸びが非常によくきくところがあります。それは最近におけるところの商品別の輸出の中に新しい質的変化が起っておる、向うの建国状況によって、あるいは向うの民族的な要求によって、新しい質的変化が起っておりますから、商品別にわれわれは御説明する方がいいかと考えております。
○和田委員 どうも雲をつかむようですが、実は、僕がいろいろな数字をもって言うよりも、やはり政府の方がはっきりした数字を出されて、それを話した方が予算の審議の上にいいと思う。僕は数字を持っておるけれども、その点はもう少しはっきりした答弁を願いたいと思う。
 そこで、今度はもう一つ論点を変えまして、これは池田君に聞きたいのですが、オーソドックスの財政理論からいけば、国民経済が景気のいいときは、財政というものはあとに引っ込んで、そうしてむしろ民間に大いに働いてもらうということが、景気政策の上でとられておる各国の事例だと私は思う。ところが、三十一年度はことに非常に景気がよかった。あなたの見通しによれば、三十二年度もまた世界の景気も日本の景気も同じようにいくだろう、こう言っておるわけですね。しかもインフレにならないと言われる。これは私はインフレになると思うわけでありますが、インフレにならない、こう言って、三つのつじつまを合わしておるわけです。そこで、そういう好景気のときになお積極的な財政が出ていく、こういうことになったわけですが、私どもから言わせれば、オーソドックスの考え方から言わせれば、景気のいいときには財政はあとに引っ込んで、民間に大いにやらしていく、これが自由主義の旗のもとに集まっておる皆さんたちの基本的な立場だろうと思うのです。財政はむしろ第二次的な役割を果すのが筋だと思う。もしも計画がちゃんと背後にあれば――今宇田君に聞いておると、なかなか計画というものはないようだし、今経済計画は企画庁で改訂中でありますが、計画があるならば、好景気のときにも、もっと積極的なこともやって、そうして国全体の成長のテンポを早めることも、私はインフレの危険なくしてできると思う。しかし、それがない。そういうときに財政の積極政策をやっていくということは、むしろ私どもから言わせればやり方が逆じゃないかと思う。今こそ財政がむしろ引っ込んで、もう一年ゆっくりと腰を据えて、いわゆる日本の経済の基盤を拡大するというか、経済を安定させるというか、そういう点に重点を置いていくべきじゃないかと思うのです。ところが今度の場合は、減税だ、それから積極政策だ、こう言っておるわけですね。しかもその積極政策を見てみると、ほんと大するという計画なしのものなんですから、ほんとうの計画になっていないと思う。ことしは幸いにあなたは千九百二十二億――これも過大な見積りだと思いますが、一応それを前提として右左に分けて、ちょっぴり中小企業やその他にも潤う、それから第一次産業の電気なり鉄なり、あるいは道路を改修するなり、そういうところに積極的な投資をしていく、こういうことをやっておる。これはどうも私どもには相矛盾した政策、しかも国民経済の中における国の役割、言いかえれば財政の役割、資本主義の立場に立つ人たちの財政の役割から少し離れておるし、逆のように思う。私は池田君が社会党の社会主義を是認されたということも聞かないんだが、どうも私どもには納得がいかない。そういうふうにいく方が日本の経済としていいのじゃないかと思う。なぜなら三十年度の末から貿易が伸びたということの一つの大きな原因は、あなたも言うように、二十九年から三十年の初めにかけて一つのデフレの波でそこにあったからです。経済の地盤が養われなければならないということを大きな眼目として日本の経済が非常に基礎ができてきた。そこへ幸い外国の好景気があったから、それが出てきたわけでしょう。ところが、今度の場合は、そういうような要素は、今までも言ったように、だんだんなくなってきておるのです。あと残っておるのは、外国の景気がまだ続くかどうか。これもあやしい。国内における投資景気というもの、これ一つが一つの何になっておるのですが、その投資景気すら、下手をすると、こんなに積極的に財政が出た以上は、これはあおられて非常に危険なインフレの状態になることは、少し経済のわかる人ならこれは否定できないと思う。そこへもってきて個別的な物価は上ってくるのです。運賃も上れば、米は今上りませんでしたけれども、ガソリンも上ってくる。あなたたちは個別的な物価の上る原因を作っているわけです。そこへもってきて、かりにことし――これはあとで農政の問題として聞きますが、ことし少し災害でもあったり不作でもあったらどうなりますか。それに対するあなた方の答えは、在庫が十分あるからいいと言っている。四億ばかりの在庫があるから大丈夫だと言っている。必要があったならば、今外貨が十四億ドルぐらいあるから、それを使って物資を輸入してやるからかまわない、こう言っているわけです。しかしもし輸出が伸びず――そして在庫だといっても、その中で原材料ばかりではありません。きょう実は材料をもらったので、私は詳しく調べておるわけではありませんが、需給関係が必ずしも今後の財政の動きと一致してないということは、これは僕が言うだけではなくて、やはりそういうことを感じている人はたくさんあると思う。そうなってくれば、実際日本の経済というものは、あなたが夢に描いているようなバラ色のものではなくして一つ間違ってインフレになっても困る、一つ間違って金融との関係がう書くいかなくて非常にデフレになれば、ただでさえ税の上で恩恵をこうむらない低所得者というものはますます困ってくる、中小企業者はますます困ってくるという論理にならざるを得ないと思う。まだその在庫の点をどう見るかといった点については意見は一致しませんが、私は、どんなに外貨があっても、その外貨をただ無計画に一時の石橋内閣のインフレを防ぐために使うというだけのことでは、これは追っつかないものだと思う。こういう点について、どうも政府の間には検討が足らないように思うし、今度の予算は、私が最初に聞きましたように、これを前提として組み立てられた――企画庁のいろいろな成長率なり、あるいは国民所得なり、輸出入の関係を基礎にして立てられたとあなたは言われるが、それが一つくずれてしまえば、またそのくずれる要因がたくさん学界の中にあるわけです。そういうときには一体どうなるんでしょう。石橋内閣自身がこれは当然責任を負わなければならぬだろうが、それだけで済まされないように私たちは心配をするわけです。あんまりどうも強引過ぎて、理論を無視して、そして経済はあるときは生きものだと言い、あるときは形式的な論理を使ってやっていくこの池田君のやり方は、やはりここらでもう少し批判をされ、もっと正しい道へ返さなければならぬ筋だと私どもは思うのです。
 今私どもの言ったことについて池田君としてどういうふうにお考えになっておるか、率直なお話を願いたいと思います。
○池田国務大臣 所管外かもわかりませんが、私が予算編成をいたしました気持を申し上げてみたいと思います。
 まず第一に、世界の景気につきましては、先ほど申し上げた通りでございます。最近におきまする世界の貿易は年々ふえていっております。ことに日本は、二十九年、三十年は前年に比べて大体三〇%の増、三十一年は一八%、こういうことから考えてみまして、私は一二%程度の三十二年度の輸出増はいいのじゃないか。それから、各国の状況を見ましても、昨年の春ごろは、投資活動の非常な旺盛なために、アメリカあるいはイギリス、ドイツ、相当金利を上げましてチェックするような立場をとっております。しかし、昨年の暮れドイツも金利を下げる、またきのうはイギリスも金利を下げるというふうにして積極的にいっておる。これはなぜこういうことをするかと申しますと、やはり民主主義の政治というものは大衆の生活水準を上げるということを第一段として考えている。また、世界的に申しましても、未開発国の国民生活を上げてどんどん貿易をふやしていこうといたしておるのであります。われわれはこういう世界の情勢に向ってさおさしていかなければならぬ。もちろん、貿易の問題につきまして、アメリカ側におきまして個個の綿製品の問題その他いろいろな問題もございましょう。あるいはまた国内の利用増加によって鉄鋼、機械類の関係輸出もある程度落ちるかもわかりません。しかし造船の問題あるいは東南アジアの開発という点については、決して私ら安易に考えておるのじゃないのだけれども、九千万人目が伸びていくためには積極的にどんどん仕事をしていかなければならぬことは当然です。私は昭和二十四年以来一時非常にディス・インフレ政策をとりました。しかもまた昭和二十九年には一兆円予算で押えました。そして、世界の情勢は、どんどん生産拡充、投資活動の旺盛で合理化をやる、こういうときに、オーソドックスかどうか存じませんが、世界の情勢に見合った、政策をとっていって、そうして国民生活の水準、雇用の増大をはからなければならぬ。決してインフレであるとか何とかいう問題じゃない。だから、全体を通じて財政も経済も均衡にしてもらいたい、預金の増加以上に信用の供出があったならばインフレになるぞという警告は与えております。私は、今こそ産業基盤の拡充をやり合理化をやって、いい品物を安くたくさん作って外国に乗り出すべき好機だと考えておるのであります。
○和田委員 私はもう一点予算について聞きたいのですが、今日本は電力、輸送力、鉄鋼等基本的なものに隘路があるわけです。これは産業投融資という格好でこの方面に重点的に出しておるが、これが実際のものになって動くのには時間がかかると思うのです。時の問題があると思うのですね。どうしても、金が出れば、やはりその点においては、金融という面で、極端に言えば金融が逼迫する場合もあると思うのです。そういう関係で財政と金融との関係というものが今度は一つの重点だと思うのです。去年は幸いに民間の何が相当動員されて、財政というものがそう積極的でなくても、うまくいったのです。ことしは財政も相当出ているわけです。そして金融の面もまたあなたは非常な期待をしているわけです。そこへ投資景気が出てくるということはある程度言えると思うのですが、その景気が出てきたときに、一体、金融との間の調整というものが、今あなたが言ったようなただ民間との間の話し合いとかなんとかいうことでできるものかどうか。金融と財政との調整は、吉田内閣以来、あるいは鳩山内閣が何べんも言ってきたんです。しかし、それはできてはいないんです。大てい財政のしわ寄せを金融にやるか、あるいは金融を財政の方でひっかぶるか、どっちかであって、今度の場合に限ってうまくいくという保証はどこにもない。山際日銀総裁と池田君とは同期で、仲がいいかもしれない。しかし、それは個人的のことであって、制度の上としては何もないのです。政策としても何もないわけです。現に山際君は金融の方面に非常な警告を発しておるのが現実なんです。こういう点ではいつも今まで、あなたたちの方の具体的な政策はないわけです。去年の鳩山内閣のときにはその点ではまだよかった点が一つある。それは資金委員会を作って、資金の大きな動きについてはそこで計画的にやっていこうという案を立てて――これはものにならなかったのですが、僕はその構想の方がはるかに進歩しておると思う。今度の場合は何もなくて、ただ偶人的な見通しとか、つながりとかいったようなことで国政が促がされておるということは、私どもの納得のいかない一番大きな点なのであります。なぜ金融の面についての何とか――資金委員会というものは、もちろん金融人が反対しました。しかしやはりそういうものがあってこそ、そのほかに経済企画庁の計画というものの裏打ちがあってこそ、インフレも場合によっては防げることもあり得るのです。ところがそういうものが何もなくて、ただ景気はよくなるだろうからとか、あるいは国民の生活水準を上げるのが目標だとかいって、予算編成方針だけを述べられたのでは、私の聞いているところの答弁にはならない。なぜ一体この資金委員会といった構想を排除し、金融との間の調整ということについて具体的な案というものを何も出していないのか。何か案を出してあるならそれを伺いたい。ただあなたの出した案で一つあるのは準備制度です。これはやはり一歩前進だと思うのです。こういうような具体的な案を出してこの予算の審議をしなければ、財政と金融との調整については、僕らの経済論からいけば、ほんとうに金融というものは逼迫されます。場合によっては金融が財政にあおられてうんと膨張する。インフレということになってくる。そういう点について具体的な案というものはどこにもない。どう考えられておるか。一つ農政のほうもやりたいと思いますから簡単にお願いいたします。
○池田国務大臣 私の最も考えておる問題はそこでございますから、金融政策については財政演説で申し上げておきました支払い準備金制度を創設するとか、あるいは金融機関に対しまする監督権を強化するとか、あるいは預金制度を設けるとか、いろんな手を金融制度調査会で検討しまして、今国会に提出する考えであります。
 それからお話の資金審議会、これは盛んに開いております。今度の予算につきましても、財政投融資につきましても、全部説明しまして、そして皆さんと相談してやっておる。私はこの資金委員会ばかりではまだ足りないのであります。やはり日銀が中心となって各銀行の幹部の人、シンジケート団というところまでは行きませんけれども、やはりある程度政府の施策に沿って重点的に、いわゆる電気とかあるいは鉄鋼とか、そういうものを優先的に出していき、その次に第二次の分に出していく。今一番の問題は石油化学にしても、いろんな問題にしても、各社が競争でどんどんやっておるということで、こういう点を銀行同士で相談し合って、順序を考え、タイミングを考えていく必要があるのではないか、こういう点につきましては、大蔵大臣としても勧奨してみたい、指導してみたい。また日銀もそういう方面に行くように私は話してみたいと思うのであります。財政ももちろん重要でございまするが、今後の貯蓄の増加、そして資金の運用ということが絶対に必要であるということは、常日ごろから考えて財政演説で言っておる通りでございます。
○和田委員 貯蓄増加の点につきましても、三十一年度と三十二年度とは事情が相当変ってくるだろうと思うのです。しかし何といっても貯蓄の一番大きなものは大衆の貯蓄だろうと思うのです。ここに日本は大衆の間、あるいは農民の間にも昔から相当の貯蓄力があることは僕も認めるわけです。しかし今度のようなことをやってくると、貯蓄という点については、一方では非常に低所得階層というものを痛めつけておいて、減税の恩恵も下げられておって、物価が一つ値上りすればその減税もふっ飛んでしまうということにしておいて、それで貯蓄しろ貯蓄しろと言っても、これはなかなかできない相談だと思うのです。現に三十一年度は予定せられるほどの貯蓄もできなかった事情にあるわけであります。そういう点で実質貯蓄というものも、今のところはやはり先をそう楽観するわけにはいかないように考えるのです。そういうように考えますと、やはり三十一年度はおもに金融がどういうようになるかということに論点がまた移されてくると思うのです。その点で今あなたの言われたような、ただ貯蓄奨励をやるというようなことだけでは、実は足らないのであって、財政との間の関係については、何かそこにもっと突っ込んだ制度を設ける必要が私はあるんじゃないかと思いますが、そういう点は考えておられるのですか、それともやはり貯蓄奨励でやろうとか、日銀との間の話し合いでいく、こういうような考え方ですか。
○池田国務大臣 貯蓄奨励の必要がありますので、税制におきましても、臨時税制調査会としても預金に対して一割課税するというのは、長期預金のために免税を続けていこう。いろいろな手を打っておりますが、何と申しましても物価の安定ということが基本でございます。われわれはそういう方向に努力を進めていきたい。幸いにして最近の消費性向は非常に健全でございます。貯蓄もだんだんふえて参っております。私はこの国民の消費性向から考え、また政府が安定した政策をとれば、貯蓄は伸びるものと考えております。
○和田委員 どうも答弁の中にいろいろな問題をすぐ含ましてくるので、たとえば物価の安定、こういったような問題でも、これを一つ掘り下げても非常に大きな問題で、聞きたいことがたくさんあると思うのですが、まだあとに総合の質問の人が残っておりますので、それらの人たちにもっと突っ込んでやってもらいたいと思います。ことに国民生活の水準を上げるということについては、雇用の問題のみならず、社会保障の問題、いろいろな問題が残っておりますが、そういう問題は時間があまり残っておりませんのであとに譲ります。ことに税制の改革の問題については、もっとこまかいものを用意してきておりますが、これも一応預けまして、財政の点についての質問はこれで終ります。
 次は米価の問題、食管特別会計の問題と言ってもいいのですが、井出さんにお聞きしたいのです。米価の値上げをあなたは初めから今度の予算編成の場合に容認されておったのか、それともだれかほかの圧力で米価の値上げについてはおやめになったのか、あなたの信念は一体どうなのかということを、一つお聞きしたいと思うのです。
○井出国務大臣 お答えいたします。食管特別会計が非常に膨大なものである、複雑なものである、国民からもいろいろ批判を受けておることは御承知の通りでございます。私もこの問題と取り組みまして、もう少しこの内容を洗ってすらっとしたものにいたしたいと考えたわけであります。従いましてその場合、あるいは一般会計が持つべき部分もございましょうし、コストの中へ織り込んで考えるべきものもあろうか、値上げということはなるべくいたしたくはございませんけれども、しかしこれを総合的に判断いたしますと、若干は消費者の側へかかってくるということもやむを得ない場合はあろうか、このように大体考えた次第であります。
○和田委員 そのときに米の統制ということを前提にして、若干上げてもやむを得ないだろう、こういう前提ですか。
○井出国務大臣 さようでございます。
○和田委員 統制撤廃をしてもいい……。
○井出国務大臣 いやいや……。
○和田委員 ただ食管会計の赤字を埋めるだけの見地から、食管会計の内部を検討するということは、果して正しい態度かどうか。私はそれは非常に間違った態度だと思うのですが、その点についてあなたの御意見はどうでしょうか。
○井出国務大臣 冒頭にも申し上げましたように、単に食管会計の赤字を埋めるということだけではなくて、食管会計自体が批判をされておる折柄でございますから、内外の諸情勢ともにらみ合せまして――食管は、ある時期には外国食糧が非常に高かった、それがために価格差補給金というふうな形のものを大きく打ち込んだ時期もございます。最近はむしろ逆な現象に相なっておる。そういった推移からもかんがみまして、内部の合理化、健全化、こういうものと関連して考えていった次第でございます。
○和田委員 食管会計は、ことしは百四十一億の赤字を出しておるわけですね。それがそのままに予算に提出されておるわけです。それで池田大蔵大臣は、健全財政、均衡財政と言っているのですが、私はやはり特別会計、一般会計を通じて赤字のない財政が、ほんとうの健全財政であり、均衡財政だと思うのですが、あなたはその点については、やはり均衡財政、健全財政と考えられるのでしょうか。
○井出国務大臣 その点は、昨日、川崎委員の質問にもお答えを申し上げましたが、赤字のままの形というものは好ましくございませんでしょうが、財政全体として考えまする場合には、十分弾力性ないし余力を持っておる、かように理解をしておりまするし、また大蔵大臣も、特別調査会の結論を待ちまして、この赤字解消は補正予算をもっていたす、こういうふうに言っておられますので、さよう御了承を願います。
○和田委員 その財政上の余力をもってするという、余力というのは何ですか。
○井出国務大臣 これはあるいは大蔵大臣からお答えがあると思いますが、昭和三十二年度予算において、おそらく自然増収も予想をせられましょうし、(笑声)財政全体を勘案いたしますれば、この程度の負担に十分こたえられる、かように考えております。
○和田委員 どうも井出君は正直なものですから、ほんとうのところを言われて、池田君がある意味でごまかしたという点が出てきたと思うのです。ということは、結局、ことしの自然増収千九百二十二億が過大であるということ、と同時にこの数字というものの信憑性がないということ。場合によってはこの自然増収をもっと、二千四百億ぐらいに上げて、将来その余りでもって補正予算を出してこれを埋めていく、こういうふうにしか考えられぬわけですよ。千九百二十二億というものの基礎が、われわれとしては非常に疑わしいものだと思っておったわけですが、いつでもそんなに動くようなものであっては、これはどうにもならぬと思うのです。もう自然増収を予定して、あとになって補正予算を出すために、暫定的に百四十一億というものは食糧証券を出して一応赤字を補てんしておく。そして自然増収が出た場合には、それをやるということになってくれば、今審議している千九百二十二億のこの自然増収の数字というものが、どんなにふくらむのか、われわれとしては実際信憑性が置けないものになってくる。その点はやはり池田君から明瞭に答えておいてもらわぬと、われわれとしては実際架空なものをやっているような感じがどうもしてしようがない、その点はどういうふうに……。
○池田国務大臣 農林大臣のおっしゃった自然増収というのは、昭和三十一年度の自然増収とお心得を願いたいと思います。昭和三十一年度におきましては相当自然増収がありますので、もし特別調査会におきまして結論を見まして、必要あらば三十一年度で起り得べきものを埋めていこう、こういう考えであるのであります。三十一年度の自然増収につきましては、少くとも千億円近くあることは確実と思われます。三十二年度の千九百二十二億というのは、これは間違いがない、これは動かすべきものではありません。
○和田委員 そうすると、三十一年度の自然増収の千億というものの使い方は、大体きまっているのですか。あなたの今の予定としては、補正予算でそれを使ってみたり、あるいは今の食管会計の赤字を埋めたり、頭の中ではほぼきまった形になっているのでしょうか。
○池田国務大臣 財政当局といたしましては、いろいろな見通しを持って、頭の中にはっきり入れております。従いまして、今食管会計の赤字の問題も、御了承の通り昭和三十年度におきましても、赤字が起るというのでインベントリー・ファイナンスの百億円を見合いにしてやっておったのでございます。今回は、米の問題が片づけば、三十年度あるいは三十一年度につきましても、私はある程度措置をしようかと思ったのございますが、まだ米の問題が片づきませんので、その処置に対します分の見合いのものは持っておるわけでございます。
○和田委員 私は三十二年度の赤字のことを言ってるんですよ。今言っているのは、三十二年度の赤字を三十一年度の自然増収であなたは、埋めるというのですか。
○池田国務大臣 三十二年度どれだけ起りますかわかりませんが、その赤字につきましては、特別調査会でおきめになりまして、これは一般会計で幾ら、あるいは万が一米価を上げるということになれば、その計算の出て参りましたときに処置いたします。御承知の通り私は一般会計、各特別会計を通じまして、資金のあれとしては全体としてマッチするように取りはからっておるのでございます。しかして千億の自然増収が出ますれば、とにかく相当の財源がありますので、御心配は要りません。
○和田委員 どうも心配は要らないなんて、ずいぶん楽観論者であって、そうしたやり方については私どもはどうも納得しません。しかし、その問題はどうせあとで追及をする人もありましょうから、私は問題を提出した程度にとどめますが、かりに今度一升八円五十銭の値上げをやっても、食管会計の赤字は埋まらないのじゃないでしょうか。というのは、今まで食管会計では、外国の麦を買い、外国の米を買って、そうして高い値段で売って利益を得ておったわけですね。そうして内地米を買ったりなんかする点では、これは非常に赤字になっておったのです。ところが今度の特別会計を見ますと、米の買う量も、麦の買う量も非常に減っているわけですね。そうなってくれば、そこからくるところのさやの利益というものは、これは減ってくるのが当然だと思うのです。金利、倉敷はやはりかさんできますから、そういったような点で食管会計自身は、その赤字を埋めるという立場から見ても、値段を上げても赤字は埋まらないので、むしろ五十億なり六十億なりのマイナスが出るということが予定されるのではないか、その点いかがでしょう。
○井出国務大臣 御指摘の点でございますが、昭和三十二年度に関する限りは、需給計画その他を見合いにいたしまして、大体赤字は埋まる、こういう計数を出しておるわけであります。
○和田委員 その点はしかしよく調べてみると、数量やいろんなものを計算すると、どうも私どもやはり少し赤字になるのではないかという感じもするのです。しかし結局問題点の一番重要な点は、今の食糧事情から見て、今のままの食管会計を中心にしては、日本の食糧問題をもはや扱うことができなくなったということが、食骨会計としては一番大きな問題じゃないでしょうか、その点はどうでしょう。
○井出国務大臣 食管自体がいろんな困難な事情のもとに置かれておりますことは御指摘の通りだろうと思いますが、さりとてそれではこれにかわるべき他の制度がすぐにあるかという点になりますと、いろいろ批判は受けておりますけれども、国の責任において、ともかく消費者に安定感を与えておるということも事実でありますし、それからまた集荷の面におきましても、今予約制度というものを採用しておりますが、これが生産者の各位にも安定感を与えておる、こういうことは否定できない事実だろうと思うのであります。従いまして、現在その欠陥をいかに是正するかということに努力をしておるさ中でございまして、今回できます特別調査会でもぜひ衆知を集めて、御意見の展開をしていただきたい、こう考えております。
○和田委員 私どもから考えると、食管会計の中に、もっと一般会計で当然つぐないをつけなければならぬものがあると思うのです。いわば食管会計は非常に雑炊みたいなもので、いろんな要素が入っていると思うのです。たとえば農業保護のための性格のものや、あるいは今あなたのおっしゃったような、消費者米価の中に多少社会保障的な色彩を持ったものや、それから農業の振興策の一つのようなものや、いろんなものがあると思うのです。そのことはどこから来るかというと、政府としての食糧政策というものが、生産から配給、消費を通じてちゃんとした方針が確立きれてない、その場その場の事情に応じて食糧政策をやってきた、あるいは食管会計を動かしてきた、農業政策をやってきたということにあるように思うのです。ですから食管会計をどういらうかということも、ただ赤字を埋めるというだけではなかなか片づかない問題も多分にあるわけであります。そういう点で今度の予算を見ますと、私どもはその点に非常に欠けたところがあるように思うのです。たとえば食管会計の中には畑作の保護のための問題もあれば、農産物価格安定法の問題もあれば、あるいは飼料の問題もあれば、ともかくいろいろなものがまじっているわけです。ところがそれに対するそれぞれの政策はみんな関連を持っているわけだ。日本の農業をよくしていくには、農民をよくするためには関係を持っている。ただそれが会計としてみれば企業会計であるやら、そうでない別途の意味を持った会計であるやら、わけがわからぬのですね。そして食管だけが赤字という格好で、問題が常にそこに内蔵されて、国民が知りたくてもどうなっているのかわからないような状態だと思うのです。そういう点で農林大臣としては、もっと根本的にこの問題を取り上げて再検討されて、統制という立場に立ってやられるとするならば、その立場においてはむしろそういう問題と関連してやらない限りは、これは問題は解決しないように思うのですが、その点についてあなたはどういうような具体的な構想を持っているか。もしそういうものがあれば、この際御返答願いたい。
○井出国務大臣 前段のお問いでございますが、食管の中で企業会計的なものと一般会計で負担すべきものと、仕訳をつける余地があるだろう、こういうふうなお話でございますが、これは私も検討してみまして、たとえば御指摘の農産物価格安定法によるもの、あるいはテンサイ糖のごときもの、あるいはえさ、これらはやはり別建てにして、あるいは農産物価格安定の特別会計といいましょうか、そういうものにでもこれは切りかえてしかるべきではないかという感じがいたします。
 それからこの二年続きの豊作ということが相当に在庫を多くしておりますから、平常時における金利倉敷よりも非常に増している。こういうふうなあたりは一体その年だけの会計でもって、つじつまを合わせることは無理ではないか。その他麦の問題についても私はあり得ると思うのです。麦などは全く今逆ざやになっておりまして、一種の価格支持をやっているような形でもあるわけですが、それらは十分メスを入れて検討したいと考えております。
 それから農業政策全体と関連して考えなければいかぬというのは同感でございまして、たとえば麦が例に出ましたけれども麦作の問題など、特に小麦でありますが、これを国際価格などと関連して考えますと、何か別途な構想を持たなければならぬので、それは畑作に対する振興対策というものと結びついてくる、こういうふうな感じはいたしておるわけでございます。
○和田委員 私の言いたかったのもそれでありまして、たとえば畑作振興ということを盛んに言われておるわけでありますが、食管会計の面でやはり麦の価格も当然問題になってきましょうし、あるいは農産物価格安定の価格面からやる措置もちゃんと講じなければならぬわけです。そういったような畑作振興という大きな問題があるときに、食管会計は食管会計だけの赤字の問題で、特別調査会を設けるといったようなことが、果して妥当であるかどうかさえわれわれは疑うわけであります。ことに議員も入れずにただ政府の部内だけでやるという形は、私たちはどうかと思うのです。やっぱり衆知を集めて、あらゆる角度からこれを検討していくという態度をとった方がいいと思う。
 まだそのほかに酪農やいろいろな点で聞きたかったのでありますが、時間がありませんからもうやめます。
 最後に、これは石田君に聞きたいのですが、石橋総理が長い間御病気でいまだに出ていらっしゃらないのですが、しかし新聞等の報じますところによりますと、だいぶん回復の方に向われておられるようであります。一体いつお出になるのか、その点を明確に御答弁願いたいと思うのです。やはり予算をやっておる間中に、できるだけ早く出てこられて、総理みずから答弁に立たれないと、臨時総理大臣の権限問題なんかもやかましいときですから、これはどうしたって国会の運営を円滑にやっていく上においては、一番大きな要素だろうと思います。従って今どういう病状であるか、そうしていつになったら確実に出てこられるのか、その点を最後にお聞きします。
○石田(博)政府委員 総理の病気につきまして多大の御迷惑をかけておりますにかかわらず、いろいろ御同情をいただいておりますことを恐縮に存じておる次第でございます。総理の病状はその後経過が良好でございまして、日々新聞紙上で発表いたしておる通りでございますが、昨日朝主治医であります佐々、村山両医師の言によりますると、経過は良好でございますから順調に経緯いたしますると、当初の予定通り二十日ごろは登院できる模模であるという話でございます。それから本日朝の診断によりますると、昨日は少し午前中に面会人があったために、ちょっと熱があって疲労感があったのでありますが、本日は、熱は三十六度台に下りまして、ほかは昨日とほとんど変りはございません。ラッセル音もほとんどわからないようになっているそうでございます。
○和田委員 そうすると、二十日には確実に出てこられますね。
○石田(博)政府委員 先ほど申しました通り、医師の言によりますると、二十日ごろには予定通り登院できるという話でございました。
○和田委員 これで私の質問を終ります。
○山崎委員長 午後二時より再開いたします。午後二時定刻より開会いたしたいと存じますので、政府側並びに委員各位におかれましては、御協力のほどを切にお願いいたします。
 暫時休憩いたします。
   午後一時十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時十九分開議
○山崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 質疑を継続いたします。西村榮一君。
○西村(榮)委員 私は率直に申しまして、現内閣は戦後十年の保守党内閣の中において、初めて国際的な水準の感覚を持たれる保守党内閣だと思っております。私がそう推定する根拠は、現内閣はその重大な政策の、五大政綱の中に完全雇用の問題を取り上げられたことであります。社会党内閣、保守党内閣を問わず、この完全雇用の問題がきわめて重要であるのでありまして、その意味において戦後初めて感覚だけは保守党らしき保守党が誕生したということにつきましては敬意を表するのでありまして、この内閣と国策を論ずることはいささか私の欣快とするところであります。
 そこで私は今朝わが党の和田さんが大半質疑になりまして、それに残っておる部分におきまして私が質問申し上げたいと思いまする要点は以下五点であります。一つは私は本年の財政政策はもっと控え目にすべきではないか、第二は国際的に申しましても、日本自身にとりましても、現下重要な問題はインフレーションの問題、これをいかに抑制するかということと、国際収支の均衡をいかにしてとるかということであります。第三は、わが国の経済は新しき上昇の方向に対して刺激を与えるよりも、財政政策はむしろそのでこぼこを調整いたしまして安定の方向にとるべきではないか。第四には、万一国際情勢が悪化した場合に、それに対する政治はいかなる対応策を持たねばならぬのであるか。第五に、国際情勢並びに国際経済の動向は本年は大いに変化がありと私は想像いたしております。この歴史転換の上に立ってわが国の外交方針はいかにとらねばならぬかという五点につきまして、外務大臣並びに大蔵大臣に私は質問申し上げたいのであります。そこでこれは和田さんから触れられた問題でありまするから、私は重複を避けまして私の所見だけを申し上げまして大蔵大臣の見解を承わりたいと思います。
 私が本年の財政は控え目にした方がいい、こう思いまするゆえんのものは、これは数字に明るい池田さんがよく御存じの通り、昭和三十年度の予算は、二十九年度に比較いたしまして国民所得は、予算において八%伸びております。実際は九・六%、これに対して予算規模は二・三%減少いたしておる。三十一年度の国民所得の伸びは、予算で四・三%でございましたが、実際は国際景気の影響を受けまして喜ぶべきことでありますが、一二%にふえました。けれども予算規模に対しまして予算の国民所得の予定に対しまして財政の伸びは二・一しか伸びておりません。三十二年度は、国民所得の伸びを政府は七・五%と見積られておるのでありますが、それに対して六・八%予算規模は伸びておるのであります。そこでこれは私は何もあなたとけんか腰で議論をする必要はないのでありますが、こういうふうなときに、なぜ予算規模を縮小しなければならぬかと申しますと、何と申しましても三十一年度、三十年度後半から来る好景気というものは、昭和三十年度の財政規模を縮小した。三十一年度の財政規模も相変らず縮小して健全な方向をとってきた。これが今日の国際的景気に遭遇いたしまして、日本の経済が飛躍的発展を遂げた底がためをこの健全財政の上においてなしたのではないか。かような見地に立ちますると、私は本年度の予算というものはこれは少し膨脹し過ぎておるのじゃないか。決して私はあなたとけんか腰できょうはやりとりするつもりじゃないので、従ってあなたも言葉巧みに言葉でものを言いのがれしようとするのじゃなくて、真実を告げて一つ国民を理解さしていただきたい。
○池田国務大臣 お答え申し上げます。私は西村さん御存じの通りに、あまり予算の規模を拡大することは好まぬ方でございます。しかし今の世界の状況並びに日本の国内事情を見まして、これだけ伸びてきたのでございまするから、一兆一千三百七十四億の一般会計の分は決して多過ぎやしない、まだふやしてもいいくらいに思っておったのでございます。しかし国民所得のあれも出ますし、内容もこの程度でいいのじゃないかと決心したのであります。これは物事の考え方でございますから、議論はございましょうが、国民所得に対しましてのもし議論をするとすれば、三十一年度の予算編成のときと今とは大体所得に対する規模は似ておる、こう言い得ると思います。
○西村(榮)委員 私はけさ和田さんが触れられた中で、あなたはやはり予算規模はこれでふえてないのだと御答弁になりましたけれども、国民所得に対する予算は三十一年度はあれだけ伸びておるのにかかわらず一七・五%であります。私は本年度の予算を見まして一般会計と財政投融資、防衛庁費を加えますと、一八・一%になる。それであなたは財政投融資は一般会計とは違うとけさ和田さんにお述べになりました。私どもの常識から申しますと、財政はやはり一般会計、それから政府が計画的に使う投融資、それから地方財政、三本建が私は財政を検討する規模であろうと思うのであります。そうしますると、今日地方財政はまだ予定表も出ておらぬ。一般会計と財政投融資表だけを出して、それで審議しろとは無理なことだと思いますけれども、しかしこれは議論済みでありますから別といたしまして、地方財政も大体本年度は、私は時間の省略上あえて自治庁長官には質問いたしませんけれども、七%ないし九%ぐらいは地方財政は膨脹するものだと見ねばなりません。そうすると、この三点の膨脹からいきまして、一般会計と財政投融資と地方財政の膨脹という、三本のふくれ上った国の財政は、一体国民経済にどういうふうな影響を及ぼすか。三本一体になったものと国民経済とのバランスを考えてみますると、本年度の財政というものはきわめて私は膨張している、こう思うのです。そこで今からでもおそくはないのでありまして、何とかもう少し切り詰めるべく工夫をなすったらどうかと私は思う。同じ財政が膨張いたしましても、たとえば私はざっくばらんにこう申します。理屈からいえば、予備費を増額するというふうなことは、これは議会の審議権を無視するというような議論も起きまして、なかなかむずかしい問題でありますが、本年のように好県気で金が少しよけいに入ったというようなときには、予備金を少しふやしてやる、あるいは国債償還賢というものを少しふやしてやるとか、あるいは外国債を償還するために、外国債を少し買い入れて償還に備えるとか、何か、営利会社で申しますと含み資産というようなものをたくさん持って、その上において財政が膨張するならば、私はあえておそれるものじゃない。やはり国際経済が変って参りましたならば、それを出動させて変化に備える。しかしあなたが先ほど申されたように、今は高原景気だ、こう申します。高原景気で高原の横ばいだという表現をあなたは用いられた。私は半生山登りで過ごしたのですが、高原で横ばいというのはない。平地で横ばいがあるので、高原には高いか低いかしかない。従って本年度の好景気も、私は高原の横ばいという表現は適切でない。必ずや変化がある。これだけの高まった好景気には変化がある。その変化に備えるための――私は単に財政の規模が膨張しているからというのであなたに反省を促しておるのではないのです。その財政の規模が膨張した内容について、弾力性が欠けておる、こういうふうなことであなたの反省を促しているのです。御見解はいかがでしょう。
○池田国務大臣 弾力性の問題を累年的に考えるならば、私は相当弾力性があると思います。しかし一年度につきまして弾力性ということは予算においては考えられない。ただ施行につきまして、どういうふうな支払い予算をつけるかという問題はあると思います。
○西村(榮)委員 私はそれも和田さんがお触れになったことですから深くはいたしませんが、そこで次にお尋ねしたいのは、国際収支の問題です。御存じの通り、三十二年度は二十八億ドルに伸ばすという計画で予算を盛られている。私はけさ和田さんの質問を承わっておりましたけれども、どう考えても昨年度より本年が三億二千万ドルふえるという自信を私は持たない。今日の日本の――三十一年度と違う生産コストの問題、市場の問題、それから国際政治が招来する国際経済の変革、この三点を考えてみますると、昨年度より三億二千万ドルふえるという自信が私にはどうしても持てない。これを一つ宇田さんはけっこうですから、大蔵大臣から御答弁願いたい。
○池田国務大臣 お答え申し上げます。午前中に申し上げましたごとく、私は世界の好景気は一応続くと思います。しかもまた未開発国の開発も進んでいる。そうして開発、未開発国におきまする一般的の生活水準が生産増強と同時に上ってくる、こう考えますると、二十八億ドルの輸出は、これは安易には考えませんけれども、われわれできると確信を持っております。
○西村(榮)委員 私は非常に困難だと思うのですが、安易にはできないが努力すればできる、そういう御説明でした。そこで私はあなたに具体的に承わりたいのは、昨年度より三億二千万ドル輸出が伸びるという具体的な方策を一つ承わりたい。と申しますることは、あなたの今の説明と経済企画庁の説明とは食い違っている。経済企画庁は、わが国経済の一時的好転をもたらしたものは、一つはスエズ問題である、本年はスエズ問題である、そこで輸出は一時的には伸びたけれども、将来これは楽観を許さない、こう企画庁の報告の中には述べている。私はこれは正直な見解であろうと思う。そこで、私が二十八億ドル困難である、これはかなり疑問の数字ではないかと推定いたしまする根拠は、三十年度は、御存じの通り限界輸出と申しますか、先進国の盲点をついてわが国の輸出は伸びました。三十一年度はかなり警戒ぎみでありましたけれども、スエズの問題その他の国際政局の突発事故で伸びた。三十二年度は一体何で伸びるか、もし伸びるとするならば、私はやはり神風的な天佑神助を当てにする以外は伸びる可能性はないと思う。私のこのことが単なる一片の杞憂にすぎないとあなたがおっしゃるならば、伸ばすべき努力の方向を具体的にお示しを願いたい。
○池田国務大臣 産業の合理化、その他によりましていい品物を安く、こういうことが輸出の第一の要件であります。そうしてまたこれはいい品物を安く売るということだけでもいけませんので、経済外交を推進しますと同時に、海外投資その他を考えまして二十八億ドルを目標に置いておるのであります。
○西村(榮)委員 設備の改善、合理化、それによる低コストというものは、経済企画庁の調査においてはすでに織り込みの上に立って、かつ国際経済を展望して、これはなかなか困難だといわれておる。私が困難だと予想するのは、もう一つあります。スエズの問題は、四月か五月ころに再開をいたしますと、これは変ってきます。もう一つは、御存じの通り五月に批准を完了いたしまする欧州共同市場の問題であります。これは一億六千万のヨーロッパの各国が結合いたしまして、関税、通貨、製品、労働力をプールして、共同の力がアメリカ資本圏、ソビエト資本圏に当ろうという構想で、大体協定いたしまして、五月には批准が成立いたします。これに対して、イギリス並びに東、北ヨーロッパの四カ国も参加いたしますと、二億六千万の経済ブロックが成立する。従ってここに関税、労力、そうして十億ドルを積み立てて、共通の資金を持つ一大ヨーロッパ経済圏が成立いたしますならば、目前においてコストは大体四%から七%下ると予想されます。生産力は、今後五カ年後においては一七〇%を目標にいたしておりますが、それの半分といたしましも、八〇%、九〇%の上昇が見込まれる。この世界最高の水準に達しておりまする工業国にして、同時にこれら小さい分れておった国が、一大結合をいたしまして、関税から資金から労働力、技術をプールいたしまして、東南アジアに殺到いたして参りますならば、私は、従来限界輸出として先進国の盲点をねらって伸びていった輸出というものは、一大脅威に直面するのではないか、こういう見地に立って、あなたがお述べになった経済合理化、近代化という抽象論では、この激動していく国際経済の変化に対応できない、こう思うのであります。一応もう一ぺん承りたい。
○池田国務大臣 欧州の経済ブロックの問題も財政演説で申し上げた通りで、われわれも存じておるのであります、こういうことがありますから、予算におきましても積極的にやって、これらに負けないように施策を進めていこう、こういうことでございます。
○西村(榮)委員 私はそれでは観点を変えまして国際収支の問題についてお尋ねしたい。これも和田さんがお聞きしたことでありますから、私はそうくどくはお尋ねいたしませんが、どうも政府の国際収支とんとんという――宇田さん、とんとん大臣といわれたのですが、とんとんという計算はどうも私にはぴんと来ない。宇田さんはこれはとんと言われたけれども……(「とんとんにしているのだ」と呼ぶ者あり)とんとんにしているのだな。そうはっきり言えば、私は対策が別にあると思うのだ。今河野君がこちらからとんとんにしているのだとおっしゃったが、これは私はどう考えてもおかしい。ということは、経済企画庁の報告の中に、本年輸出が伸びるということについてはかなり警戒ぎみ、けれども輸入はかなりふえる、こう書いてある。輸出はどうも自信がないようなことを書きながら、輸入だけはふえると書いてある。現に輸入はふえています。一月末の統計で見ますと、やはり去年の倍から揚超になっていますが、それは輸入外貨の支払いがふえたことなんだ。従ってこの国際収支のバランスを五千万ドルでとんとんと合わせられたのですが、当初私どもの聞くところによると、通産大臣はどうしてもことしは三億ドルの赤字が出るだろう、日本銀行、大蔵省は五千万ドル前後の赤字であろう、その中をとって経済企画庁はまあ一億五千万ドルぐらいだろうという作業をしたのであるが、しかしそれでは国会答弁が乗り切れない、これは突っ込まれるというので、今河野君が言われたように五千万ドルでとんとん、こう合わされたと私は聞いている。事実この計数を見てみると、数字は合っておるのでありますけれども、経済企画庁の説明が違っておる。経済企画庁は、輸出には警戒ぎみであるが輸入は非常にふえる、こう言われておるのでありまして、その説明とつじつまが違う。従って国際収支のバランスを合せるためには、本年は手放しで輸入をふやさないで、やはり輸入する物品は、すでに四億ドルの在庫があるそうですから、輸入についてはある程度まで抑制処置をとって、そうして国際収支のバランスをこじんまり合せる方が適切ではないか。非常に高原景気、高いところで合せるとなると、数字は合っておるけれども、合ったつじつまのおしりの中からしっぽが出てくるというような調子で矛盾してきますから、輸入はある程度まで抑制して、それでつじつまを合せる方が、私は国際収支のつじつまが合うのではないかと思いますが、どうでしょうか。
○池田国務大臣 そういうことも考えないことはございません。しかし今の輸入原材料の滞貨は、昨年十一月で申しますと、一昨年の十一月に比べましてかなりふえております。こういうことを見合いながら、また国際収支の状況を考えながら弾力的に措置すべき問題だと思います。
○西村(榮)委員 そうすると、あなたには、たしか国会が開かれる一週間ほど前の新聞の談話で、消費物資以外に生産財並びに原材料の輸入は、少々国際じりに赤字が出てもどんどん輸入して差しつかえないのだという談話は、今お取り消しになりますか。
○池田国務大臣 少々赤字が出てもどんどん輸入して差しつかえないという気持ではございません。これは先ほど申し上げましたように、輸入原材料の品目別在庫を見まして、そうして国際収支の毎月の赤黒を勘案しながらやっていっている。望ましいことは黒字に起したことはございません。黒字を保たんがために必要なもののしかも将来を見越して今入れた方がいいという品物を押えるということは経済的ではない、あなたのおっしゃる弾力的でないと私は思います。
○西村(榮)委員 まああなたと議論していても仕方がありませんけれども、私は今でもやはり一段低い階段で国際収支のバランスを合せるように、輸入に対しては適当な手心を加える方がいいのじゃないかと思うのです。と申しますることは、私もやはりあなたと同じ考えを持つ面があるのです。ということは、少々国際じりに赤が出ても、必要なる原材料並びに将来の日本の産業が飛躍的発展をするために必要な設備その他の生産財は、思い切って輸入していいといった場合もあると思うのです。その場合は、下半期から来年、少くとも今後一カ年間に対して国際経済に明るい見通しを持ったときに初めてその冒険を冒すべきであって、国際経済がどうころぶかわからない、下半期はどうもあまり楽観を許さぬという諸条件のときには、私はそれは控え目につじつまを合した方がいいのではないか、こう思うのです。そこで私はあなたにお尋ねしたいと思いますことは、先ほど、輸出を伸ばすためにはコストを上げないようにするのだ、そのコストを上げないようにするためには、企業努力と申しますか、近代設備その他の企業努力でコストを下げて輸出をふやすのだ、こうおつしゃつたのですが、今世間が聞きたいと思っていることは、企業努力というものの具体的な方策です。政府がいかにして企業努力を奨励し、実を実らせるかという企業努力に対する具体的な方策というものを世人は聞きたがっている。従ってあなたの言われる企業努力というものの具体的な構想があれば承わりたい。
○池田国務大臣 これは各業種、各方面でいろいろ考えられておると思うのでございますが、終戦後しばらく経営者におきましても自信も十分でないし、右顧左眄するような状態があったのでございますが、一昨年中ごろから昨年にかけまして、各企業とも非常に地についた経営をいたしており、各方面に能率を上げております。これは企業努力のたまものだ、私はこう考えております。
○西村(榮)委員 そうすると、輸出を伸ばすことは生産コストを下げていくのだ、その生産コストを下げる企業努力は民間の努力に待つのだ、こういうことですか。
○池田国務大臣 もちろん民間が主体でございます。しかし生産コストを下げる上におきまして、動力とかあるいは輸送面につきましては民間ではなかなかやりにくうございますから、財政の持つべき役割を果していく、そして民間の企業努力が実現するように努めたのが今度の予算でございます。
○西村(榮)委員 私の承わりたいのは、生産コスト引き下げの目的を持つ企業努力というものを民間に転嫁するのではなしに、政府自身がどういう具体策をお持ちになっているかということを承わりたい。と申しますことは、あなたは今輸送その他のものは云々とおっしゃったが、今度は運賃が上るのです。続いてガスも上りましょう、あるいは電力も上るかもしれません。それからその他重油、基礎物資、これは上ってくるでしょう、こういうふうに政府の所管に属するもの、あるいは政府の監督権の及ぶ品目が上って、そして一般の民間の低物価というものがどうして求めることができるが、私はその点の矛盾を国民が説明してもらいたいと希望しておると思うのです。
○池田国務大臣 廃業の合理化のためにはやはり輸送の問題が非常に必要でございます。今の国鉄の現状をもってしますれば相当滞貨がございます。私は一日あるいは一日半の滞貨が通常であったのが、三日も四日も滞貨になるというふうではこれは生産の合理化はできない。そこでそういう輸送を迅速にかつ円滑にするためには、やはり国鉄の事業を整備いたしまして、そういう輸送面から産業界に及ぼす影響を少くしようとしておるのであります。またガソリン税の引き上げるにつきましても道路を改修舗装することによりましての効果は、民間では相当高く言われておるのであります。私はこういう意味からも、国鉄運賃あるいはガソリン税の値上げによって、経済界がより効果的なることを確信しておるのであります。
○西村(榮)委員 私が問おうとしておるのは、輸送計画を聞いておるのではない、運賃が値上り、ガソリンが値上り、あるいは続いて鉄鋼その他の基礎的物資が上る中に、どうして民間の低物価政策、低コストというものが堅持できるか、物価の問題を聞いているのです。輸送の問題を聞いているのじゃない。
○池田国務大臣 国鉄運賃の値上げによりまして物価に影響するところは、私は大したことはないと思います。それよりも輸送が不十分であるのは物価に大きい影響を及ぼすと考えましたからでございます。
○西村(榮)委員 あなたの答弁が私のお尋ねしていることと全然違うのです。議論の対象にならない。あなたの言われておることもわかります。設備を近代化して、そして輸送を円滑にして、できた品物が直ちに流れるようにして、金利の負担その他を軽くすればコストが低くなる、これは輸送の一面だけをお述べになったのです。私は設備の改善あるいは金利の問題その他を、関連する一般的な政府の施策の及ぶ範囲内において物価を下げるためにどういう政策をあなたがお持ちになっているかということを聞いておる、輸送の問題だけに限定しないで、総合的に物価を引き下げるという施策について具体的に承わりたい。
○池田国務大臣 国鉄が話題に出ましたので、それで答えたのでございますが、これは万事に通ずる問題でございます。それは、やはり物価の問題は生産設備の問題、金利の問題もございましょう。私は今物価を下げるということよりも上げないことを主にいたしております。そうして設備の合理化、あるいは生産の増強をやっていくならば、上らずに、あるいは下る傾向に行くかもしれません。
○西村(榮)委員 まあ下ることを主眼としておるので、これは議論ですが、あなたのやっておられることは、万般の政策が上げるために努力しておられる。
 そこで私は、先ほどに戻りまして、やはり国際収支のバランスがどうもつじつまが合わぬ。なぜそのことを言うかといいますと、水田君も宇田君もこれはやはり御了解をいただけると思いますけれども、二十九年の経済恐慌は、国際収支のアンバランスから生じてきた。すでにその赤信号が本年の一月に、もう四、五日前の統計で出ておる。私はこの際に政府にお尋ねしたいのは、政府の所管に属する物価は上げないということ、いわゆる金利も低金利政策をとるということ、運賃も上げないということ。幸いにして米の値段は上らなくなりましたから御同慶にたえませんけれども、その他の物価も上げない。民間に強要する前に政府みずからが上げないという態度をとらなければ、低物価政策というものは堅持できないのじゃないか、こう思うのです。
 そこで私はそれは議論になりますから、まあ長たらしい話はやめまして、大蔵大臣に端的にお尋ねをいたします。この際国際的に物価が変動していく、インフレーションを抑圧しようということは、日本だけの悩みじゃない。やはり国際的な悩みです。だから、私は別に大蔵大臣だけにその責めを満せようというのじゃない、これは国全体があげて努力しなければ大へんなことになるのですから。そこでインフレーションを抑制するために価格政策というものを確立されてはどうか。たとえて申しますと、まあ私は昔、戦時中に行われたような統制経済は困りますけれども、今鉄にしてもガソリンにしても、これはやみ取引がみんなある。あなたは下情はおわかりにならぬかもしれませんけれども、やはりみんな小さい子会社を作って、そこに製品が流れて、そこがやみをやっておる。それが一般基礎物資を利用する産業に非常なコスト高となって現われてきておる。従って私はこの際重要物資に対しては一定の価格政策をもって政府は臨み、同時に価格違反を犯した者は、これは厳罰に処するというような態度をもって臨むというようなことも一面必要ではないか、こう思うのです。ということは、こういう基幹産業に対しては、ことごとく国民の税金で今日の繁栄を来たした資金がまかなわれておるのですから、私はこれは当然行なってもいいのじゃないかと思う。そこで私が具体的に提案したいのは、一つはやはり価格政策を明らかにする。もう一つはけさ和田さんがお述べになったように、資金調達の方法についてあなたが側々に懇談をされるよりも、むしろ一つの制度を作って、そうして資金計画というものを国民に明示して、それによって国民の貯蓄をもらう、それを再投資するというようにして、金の使い道を明らかにする。同時に重複投資を避ける、少数の資金を有効に使う、こういうような意味で価格政策、それから資金委員会両建をもってインフレーション抑圧の態勢に臨まれたらどうかと思うのですが、あなたの御見解はどうですか。
○池田国務大臣 遺憾ながら西村さんのお説には私は反対でございます。昭和二十二、三年ごろそういうことをやったことがございます。しかしその当時とは経済事情が違いますが、今お説のようなことをやるよりも、やはり民間の創意工夫にまかす。そしていかないところを指導で行くということが私は経済の原理だと思うのです。
○西村(榮)委員 失礼な申し分でありますけれども、あなたは日本の自由主義経済を御存じで、国際的な流れを御存じない。自由主義のチャンピオンと称せられておるアメリカにおいても、大体この方向をとっておる。イギリスでも同じです。各国やはり経済の波動の調弁者は政治です。著しき好景気が招来し、あるいは恐慌が来て、この波の大きな激浪の中に国民経済が埋没するということを防ぐのが政治の任務で、政治は一国の経済の調弁者としての役割を与えられておる。従って、昔はそうかもしれませんけれども、時代が違うのです。私はあなたと議論していてもしようがないし、大体経済の問題は和田さんがお述べになりましたから省略しますが、あなたに希望したいのは、これは議論ではなしに、もう少し財政に弾力性を持つ方法を考えてみて下さい。国際収支のバランスをどうしてとるかということ、これはまだまだ考える余地があります。まだそんなにおそくはない。これからも考えられる。それから物価対策、この三点が、経済企画庁が立てられた二十八億ドルの輸出を伸ばす国内的な解決の条件ではないか。これを一つ考えていただきたい。
 そこで、私は大蔵大臣に対する質問はこの程度で打ち切りまして、臨時総理大臣として岸外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、あなたは、今後の国際情勢は緊張緩和の方向に向う、こうお述べになりました。しかし雪解けのときにはえてしてなだれが生ずるものである、これはなかなか名言でした。私は敬服いたしますが、しからば緊張緩和の方向に向う国際政局に際会して、わが国の外交方針は一体どうとるかということについての具体的な方針をお示しをいただきたい。
○岸国務大臣 国際情勢の先行きにつきましては、われわれ常に慎重に、かつあらゆる情勢を非常に注意深く検討していかなければならぬと思います。しかし私は今後におきましても、いろいろなスエズ問題や、昨年起ったハンガリー問題等のような事態も、もちろん起ることを頭に置かなければなりませんけれども、大勢としては、過般説明申し上げましたように、緊張緩和の方向にずっと進んでいっておると私は見ております。そうして日本の進むべき方針や、この国際情勢の緊張緩和にわれわれがあらゆる面において努力する。緊張緩和の方向にあると申しましても、国連内を見ましても、東西の対立、緊張というものはまだまだ強いものがあり、また同時に西欧諸国とAAグループとの対立の問題もございますし、これらの間に立って、日本の立場は、やはり自由主義国の立場というものを堅持しながら、あらゆる面において緊張緩和に努力するということがわれわれのとるべき方針である、かように考えております。
○西村(榮)委員 私は国際情勢は緊張緩和の方向に向うという御見解に対しては、同意見です、ただ、緊張緩和に向うとする見解の条件が違う。私は今と申しましても、国際関係は極度に緊迫の状態にあると思います。だから緊張緩和にもむくとも言える。私の見は、少くとも米ソ両国の軍事的な能力というものは、戦略戦術、兵器におきましても最高潮に達しておる。米ソ両国の軍事力が最高潮に達して、ここに寸分のすきも許さぬ緊迫感がある。この緊迫感がある。この緊迫感から、国際関係には真空状態が一つ生まれる。従って、穏やかな春の日の緊張緩和ではなしに、緊迫せる状態において、米ソ両横綱の緊迫感のもとに生ずる真空関係というものがあるといたしますならば、そこに何が第二次的に発生するかということ、一つは中立主義の台頭です。いま一つは、国際的経済競争の激化、この緊迫から生まれる真空状態、この真空状態から生れる緊張緩和の副次的作用として、中立主義の台頭と国際経済競争の激化という二つのものが生まれてくると思う。私がこれを想像いたします一つのポイントといたしましては、率直に申しますと、今アメリカにおいては、アイゼンハワーとダレスとの間における世界政策に食い違いがきていると思う。ダレス氏は相変らずソビエトの状態を警戒ぎみでありまして、そこには力をもって対決しなければならぬ、従って軍事力を背景といたしまして集団保障条約、そういう立場において巻き返し戦術というものを堅持していこうとするのがダレス氏外交の方針でありますけれども、アイゼンハワーの立場というものは、少くとも中立主義に対しては好意的です。中立主義というものは、ダレス氏が言うように卑怯なものではない、ひより見主義的なものではない。その国家、民族の自衛の本能的処置として中立主義は尊重すべきである、これはアイゼンハワーの新しい世界政策の一つの片りんではないかと思う。かるがゆえに彼はインドのネールと会見いたしました。続いてサウジアラビアの国王と会見いたしました。さらに機会があれば、 エジプトのナセル招聘となって現われるでしょう。アイゼンハワーのこの中立主義尊重の世界政策というものは、ダレス氏との間に一つの食い違いが生ずるのでありますが、しからば一体アメリカの世論はどこへいくか、こう推測いたしてみまするならば、それは最近アメリカの上層部、知識階級あるいは上下両院の外交委員会に現われるところのダレス氏に対する非難の声というものは相当熾烈なものであり、私は近くアメリカはその世界政策に対して一つの方向転換をするのじゃなかろうかと思う。ただし無条件ではありません。これも極度の警戒のもとに方向転換をしていく、ということは、いかに中立国を尊重するとはいいながら、アイゼンハワー大統領は、ソビエトの中東に対する義勇軍出兵の声明に対しまして、本年一月の中東教書となって現われて、断固たる決意を示している。断固たる決意を示しているが、中立国を尊重し、同時に、情勢緩和の方向に努力しようとするのがアイゼンハワーの新世界政策だと思います。一面またソビエトの方向を見まするならば、これはマルクス・レーニン主義の描いた構造とは違いまして、ソビエトには新中産階級が生まれております。これはソビエトが工業化に進めば進むほど、新しい知識階級、中産階級が生まれるのは当然であるのでありまして、この新中産階級というものは、新しいソビエトの方向を歴史的に示しております。従ってソビエトの外交を考えてみると、フルシチョフとマレンコフの対立であるとか、あるいはダレスが言うように、一部の軍人の外交であるとかいうふうなことを考えないで、この新中産階級がどの方向に向うかということを考えてみますならば、新しいソビエトの行き方というものは大体見当がつく。かるがゆえに、ソビエトが今力点を置いているのは何かと申しますと経済政策です。新しい短期五カ年計画委員会を作りまして、この短期五カ年計画委員会の六人のメンバーにはすべて閣僚の地位を与え、副首相が主宰いたしております。これがソビエトの中心勢力になろうとしておる。従って私があなたに問おうとすることは、今私が申し上げたようなことは、外務当局であらせられるあなたはよく御存じでしょう。そこで私は以上の世界の流れ、アメリカの新しい外交、ソビエトの新しい行き方、これに対処して起きてくるものは、先ほど申しましたように、中立主義の台頭と国際経済競争の激化という二つの問題にしぼられてくる。この二点に対して日本の外交の路線を一体どういう方向にとられようとするか、私が具体的に承わろうとするのはこの点なんです。
○岸国務大臣 私はしばしば申し上げました通り、日本の立場は民主自由主義の立場を堅持して、これらの国々との協調に重きを置いておりますが、しかし世界の中立的な立場をとっておる国々の中立主義というものに対して、われわれはこれを看過するものではもちろんないのでありまして、特にAAグループの中にそういう立場をとる国が少くないのでありまして、私はやはり日本がAAグループの一員であるという立場も十分考えていかなければならぬと思っております。ただ激化する経済競争の間に立って、日本がどういうふうな方針をとるかという問題に関しましては、私が経済外交を強調いたしております点も、今後の国際情勢から見ますると、一面において経済競争が激化されることが予想され、また日本自身の内部的の関係から申しまして、この点に関しては特に強力な推進をいたしたい、こう考えておるのであります。
○西村(榮)委員 そうすると問題を明らかにするために、私は承わっておきたいと思いますことは、日本は自由主義陣営に属する、しかしながら新しい情勢に即して、どの国にもとらわれずに中立的な態度を堅持する。それに対してお答えが困難でありましたならば、私はかようにお尋ねしましょう。中立主義というものに対して、あなたはお答えが困難でありますならば、純然たる自主独立の外交方針、自由主義陣営には属するけれども、日本の方針はあくまで自主的に日本の国の立場においてこれから判断し、行動していくんだというふうに、ただいまの御答弁は解釈してよろしいでしょうか。
○岸国務大臣 もちろん日本は日本の自主独立の立場から、外交の方針を決定するものでありますが、私は日本の国の目標は、あくまでも民主主義国として発展すべきものであるという信念に立っておりますから、この意味において今日の中立的な立場、中立主義の立場はとらない。しかしとらないということは、これに反対するという意味ではないことは言うを持たないのでありまして、私の申すのは、あくまでも日本の自主独立の立場からものを考えていく。しかし日本の国の理想は民主主義国で、これを完成するにある。従ってこれと同じ理想を持っておる国国との協調に私は重きを置くということです。
○西村(榮)委員 民主主義か、共産主義か、資本主義かという問題についての、私は学問的な論争をしようとは思わないのでありますが、政治的に考えて自由は――日本は議会主義を中心といたしまして、二大政党があるのでありますから、これは民主主義国家です、そして社会党も民主主義を守り、議会を守るという信念においては、決してあなたと見解を異にするものではなくて、自由党の人後に落ちない忠誠を議会に誓っておると私は思う。しかしながら問題はその民主主義と中立――私はだからあなたに困るような質問をしてないのです。中立主義というものを言い切ることが困難であれば自主独立の外交方針をとるということは、あなたの先ほどの答弁は私は解釈していいかということをお尋ねしておるのです。民主主義とは決してこれは違わないのです。
○岸国務大臣 自主独立の立場を堅持していることは、御説の通りであります。
○西村(榮)委員 それで大体私は外交方針の輪郭がややつかめました、終戦以来、日本も従来のいきさつもございまして、一挙に理想通りの境地に達することはなかなか困難でありましょうが、今の言明の通り、自主独立の外交方針をとるという信念は、具体的に、徐々に達成していただきたい、私はこう思うのです。
 そこで、その前提において私がお尋ねいたしたいと思いますことは、現内閣はアジア諸国との親善関係あるいは互恵繁栄の原則を打ち立てるべきだ、施政演説でも強調されました。私はきわめて同感であります。けれども、アジアの問題を論ずるに当りまして、中華人民共和国の存在を無視するわけにはいきません。これは共産主義、民主主義、資本主義とはイデオロギーを別にいたしまして、わが日本の隣に六億の人民を有し、膨大なる軍事力と経済力を持って、しんしんと発展してくる中国の問題を無視することはできないし、またアジアとの関連においてきわめて重要な関連性を持つのであります、アジア政策のうらはらをなすのであります。私はその意味において、中国の問題は、従来のようにがんこな保守的な考え方ではなしに、先ほど私があなたに敬意を表した進歩的保守党としての立場から、これを再検討してもらいたいということなのです。
 そこで、具体的にお尋ねしたいことは、経企長官もこれはしばしば力こぶを入れられて、みずから中国を御視察にもなり、中国貿易促進委員会の重要なるメンバーでもあられるのでありますから、こういう閣僚を持っておる現石橋内閣は、中共問題を片づけるためには私は絶好なメンバーが整っておるのではないかと思う。そこで、私はまず第一に、むずかしいことは別問題といたしまして、手っとり早く貿易の拡大、それからそれに伴う機関の設置とかいうふうなもの、商務官とか外交機関を置くということは、いろいろやかましくなりますならばそれは別といたしまして、何か便宜な方法をもちまして、両国の貿易関係だけはスムースにいくようなお考えを願ったらどうか。こう思うのですがいかがでしょう。
○岸国務大臣 私のこの問題に関する意見につきまして、一部におきましてはいろいろ私の真意を伝えないような議論もございますので、この際明確にいたしておきたいと思います。
 私は中共との間の貿易関係はできるだけ増進したい、ただ今日の情勢におきましては、まだ中共との間に外交関係を開始する段階には達しておらない。従いましてこの通商に関する機関等につきましても、これを公的なものとして取り扱うことはまだできない段階でございますけれども、すでに両国の間に民間的のレベルにおきましていろいろ話し合いがありまして、貿易関係を積極的に増進するためには、これに関する適当な機関を設けることが望ましいという話も、漸次具体化しておるように聞いております。それの取扱い問題につきましても、今申しました原則を変えるわけには参りませんけれども、その範囲内においてできるだけ便宜な方法も考えていきたい、かように思っておるのであります。
○西村(榮)委員 大へんけっこうであります。私はそのお言葉に信頼いたしまして、こまかいことはお尋ねいたしませんが、チンコムによる戦略物資の輸出に対する制限、これをアメリカが最近強化するとかなんとかいうのでありますけれども、アメリカの立場は立場、日本の立場は立場であります。同時に本来これはダレス構想の一つでありますけれども、かつて大陸を封鎖して成功した歴史はございません。ナポレオンにおいてしかり。そこでこのチンコムによる戦略物資の輸出禁止という問題でありますが、日本とアメリカとの今の関係から申しまするならば、やはりそうむげにアメリカの意向を無視して輸出するということも困難でありますから、やはり戦略物資に属するものは遠慮した方がいいと思うのですが、戦略物資の認定が困難です。たとえばブリキ一枚でも戦略物資だという人もあるし、トラックも戦略物資だという人もあります、私どもは戦略物資の範囲を広範囲に解釈いたしまして、オネストジョンだとか原子砲だとか、タンクだとか、大砲だとか、火薬は戦略物資であるが、まあその他のものは大した戦略物資でない、こう考えています。しかし場合によっては、原子爆弾の今日においては、もうタンクもこれは輸送に使うのであって、戦略物資でないという意見もあります。しかしそれは別といたしまして、常識的にいきまするならば、戦略物資というものに対する認定は、私はココム並びにチンコムの協定事項から申しまするならば、その国の自主的判断にまかされるものである、従って日本が自主外交をとる上からは、これは自由諸国の戦略をマイナスにするものであるか、共産圏の戦略にプラスするものであるかという認定は、少くとも日本国自身が自主的に判断するのであって、私はその意味において貿易というものは取り扱われるものだ、自主的な判断において取り扱われるものだ、こう考えるのですが、岸外務大臣いかがでしょうか。
○岸国務大臣 これは御承知の通りアメリカだけではなくして、自由主義国の相当数のものが参加しておりまして、この輸出禁止の品目の扱いにつきましては、この間におきましておのずから定まっておるところがあるわけであります、もちろんわれわれは中共との貿易を拡大していきますためには、現在ある制限があまり厳格過ぎるから、これを緩和したいという考えのもとに、従来もこれらの国々に対してその緩和方について努力して参っておるのであります、またこれの特例を認めていく上におきまして、われわれは相当広範囲に今戦略物資というものをなるべく厳格に解釈して、輸出し得るものをなるべく広くするような考えのもとに特例を設けて、本年は御承知のように輸出拡大をはかっておるという状況であります。
○西村(榮)委員 私は大体あなたの立場としては中共問題では、可能な範囲内にお答えになったと思うのです。なお私は具体的なことで申し上げたいことがありますが、お立場を尊重して、省略して、次にお尋ねしたいことは、東南アジアに対する親善並びに貿易の方策です、これはあなたは御存じの通り、私は先ほど池田さんとあまり言葉のやりとりで不愉快なことを言い合うと血圧が高くなるから、省略したのでありますが、しかしよくないのであります、それで私は政治家の議論というものは、もっとすなおにしたらいいと思うのです。池田君の議論はすなおでないのです、私は事のついでに申し上げておきますが、あなたには敬意を表している。しかし政治家として好漢惜しむらくは謙遜を知らぬ。そこで私はその点を先ほど突っこんで聞きたいと思ったのでありますけれども、あまり不愉快であったので、省略いたしました。しかし問題に残るのは、岸外務大臣にお尋ねしたいと思いますことは、東南アジア諸国は最近において国際収支のバランスがだんだん悪くなりまして、日本から品物を買おうとしても、買う金はない。貸してあげるより仕方がないという工合で、この方面にどれだけ伸びるか、私は疑問だと思っておる、その意味において国際収支の問題で疑問を持つのであります。それは別といたしまして、あなたにお尋ねしたいと思いますことは、東南アジア諸国は最近において国際収支のバランスが悪くなった。同時にあの国が軽工業国家として成長するためには、非常に資金と技術の外国の援助が要るわけです。国内において調達し得るものは一割五分、多い国で四割ぐらいしかありません。あとは外国の援助であります。ところがその援助でありますけれども、何百年の間非常に植民地主義のもとにしいたげられて参りましたこれらの諸民族は、その援助のひもつきの金を借りて、また植民地化されるのではないかと、非常に神経質に警戒しておる、だからスカルノ大統領がソビエトと提携いたしました経済援助も、やはりインドネシア国内で反対が起きた、ビルマでもそうです、そこで私はそういうふうな中で、資金と技術が要るが、諸外国の援助は直接には受けたくないというこの国民感情に対して、経済的、あるいは精神的、あるいは政治的な提携方針というものは、どうしてとったらいいのであるか、御構想があれば承わりたい。
○岸国務大臣 一口に東南アジアと申しますけれども、西村君もよく御承知の通り、たくさんの国がございまして、それはそれぞれ迷った事情にあると私は思います、従いまして、いわゆる経済協力の問題にいたしましても、日本の貿易増進の問題にいたしましても、共通のものももちろんありますけれども、国々の事情によっていろいろ私は考えなければならぬ点があると思います。過般太平洋アジア公館長会議を催しまして、それぞれの国々における緊切な問題等を検討してみますと、まずわれわれが賠償問題を解決しておらないインドネシア及びヴェトナムにつきましては、賠償問題を早く解決することがあらゆる問題の前提になっております。さらに賠償問題の決定しておりますフィリピン及びビルマにいたしましても、それの実施について見ると、協定はうまくできておっても、なかなか実際の実施がこれに伴っておらない。これはどこに欠陥があるか、どこに支障があるかということを一々検討してみますと、フィリピンにはフィリピン独特の事情がありますし、またビルマにはビルマの独特の事情があるというふうに、各国々の事情を一つ一つ具体的に検討して、これに対する対応策を考えておく必要があると私は思います、ただ共通する問題としては、やはりこれらの国々の経済の発展、経済の交流に、日本自身が資本の上において、あるいは技術の上において、あらゆる面において協力をして、日本自身がこれらの土地における購買力を高めることに努力し、協力しているという事実が、将来におけるこれらの国々との経済関係を増していく共通の問題である、こういうふうに考えております。
○西村(榮)委員 私はあなたの御説の通りだと思います。東南アジアの問題を取り扱うのに、個々の国がありますけれども、一つは私は日本人それ自身の従来の貿易哲学というものを変更しなければいかぬのじゃないか、それはやはりそれらのおくれた国々の経済の発展と成長の中に日本が生きる、品物を売って金をもらうということの従来の貿易の考え方よりも、お互いに生き合う、助け合うという立場において、従来の貿易哲学というものはある程度まで日本が変更しなければならぬのじゃないかと思います。そこでただいまあなたがこれらの国々の開発にとおっしゃったのでありますが、それも一つの方法です。私はあげ足をとるわけではありませんが、東南アジアの国国は、あなたの出光の外交官がどう報告されたか知りませんが、アメリカのひもつきの援助もあまり歓迎しないのです。ソビエトのひもつきの援助も歓迎しない、日本のひもつきの援助も歓迎しない。そこで彼等が熱望しておるものは国連の後進地開発の委員会、国連を通じての援助と協力を要求しておるわけなのです。そこで日本としては個々の向うから要請がありますならば助け合うということも一つの方法でありますが、東南アジアに対する貿易の問題と親善関係の中心が、経済に関する限りは国連の経済部を中心にして提携していく方がどうかと思うのですが、あなたのお考えはいかがでしょうか。
○岸国務大臣 国連にも今西村君が言われるようないろいろな構想もあります。私どもはそれは大へんけっこうなことだと思っております。同時にやはり日本が先ほども申しましたような個個の国々との間に、個々の問題を解決していくという二つを両建に考えていく必要があるのではないか、こう思っております。
○西村(榮)委員 あなたは議会を終ったら、これらの諸国を歴訪されたいという希望を申し述べられた、それに対してこれらの諸国を歴訪して、経済的政治的に何かの対案があってお出かけになるのですか。あればその構想を承わりたい。
○岸国務大臣 最近東南アジア諸国からは相当指導的立場にいる人、あるいは首相、外相等が日本を来訪している国も少くないのであります。日本は実にこれらに対して答礼をしたことがないのであります、東南アジアとの親善関係を言い、東陶アジアとのいろいろな協力を言っておる日本が、そういうことであっては私はならぬと思う。第一の目的は、私はやはり親善関係を深めていく、日本のこれらの国々に対する国民の考えを率直に代表して、ここに述べるということが第一でありますが、同時にこれらの国々にはそれぞれ懸案もありますし、また解決しなければならぬ問題がありますので、できるだけそれらの解決を促進するという意味において私は歴訪したい、こう思っております。
○西村(榮)委員 私は政治問題は別といたしまして、これら後進地諸国の工業化に対する援助指導というものは、国連を通じて受けたいということがアジア・アラブ二十数カ国の要請です。これに対して国連を通じて援助するということが、一番誤解のないそうして彼らが今要求しておることなんですから、手っとり早いことだと思う。この要請に、国連を通じて援助するということにあなたは御協力なさいますか。
○岸国務大臣 国連の一員としてぜひ協力したいと思います。
○西村(榮)委員 あなたは先ほど来すなおにお答えになっておりますから、私は別にあげ足をとらない。あげ足をとらないが、あなたの意思と出先とは食い違っておる。それは重大なことで、あなたが訪問される前に解決しておかなければならぬことがある。それはアジア・アラブ諸国が二十数カ国連名で、国連に対しまして後進地開発に対する特別委員会を設置してもらいたい、この要請に対しまして国連がそれを取り上げまして、特別機構を設置し、そうして後進地の工業化の問題について資金と技術と資材の援助を与えるという提案をいたしましたときに、これに対して日本国代表は反対している、反対の理由はどこにあるか、これはあなたの先ほど来の言明に反することなのでありますが、この後進地諸国の工業化に対しては、アメリカとイギリスは軍縮が達成したときには、その軍縮から生ずるところの余力をもって、これらの開発に当る、従って今その問題を取り上げることは時期尚早なりという内意が各方面に伝わっているので、これが一大暗礁に乗り上げた。しかるに国連に後進地諸国が要求いたしますのは、米ソ両国の軍縮と、われわれの工業化、われわれの未開発発展、アジアの繁栄というものとは切り離してもらわなければ困る、それと別にして、国連の中に後進地開発の工業化の特別委員会を作ってもらいたいということをアジア・アラブ二十数カ国が提案したに対しまして、日本国の代表はこれに反対をいたしております。時期尚早なりという理由であります。これはあなたの先ほど来の自主外交並びにアジアの親善関係という問題とはかなり矛盾しておるのでありまして、あなたがお気づきでなかったならば、これは一つ出先の大使あるいは将来の出先の外交機関に、かような誤まりなからしむるために、東南アジアの開発については米英のしり馬に乗らずに、日本独自のアジアの政治家として、アジアの日本としての立場から判断するように、訓令を与えていただきたいと思うのですが、いかがです。
○岸国務大臣 私その事実を正確に承知しておりませんけれども、もちろん今も私が申しました方針で進んでいかなければならぬと思います、ただいろいろな時期とか、国連内における情勢等も出先においていろいろな判断をする場合もございましょうから、方針としては今申すようにアジア・アフリカ諸国がその経済問題なり、あるいは工業化について国連を通じて自分たちが援助を受けようという考え方には私は賛成であります。
○西村(榮)委員 資料を差し上げておきます、反対した理由が書いてあります、普通なら一本とるところだけれども……。
 次に私はあなたにお尋ねしたいのは、今国会初めから今朝にかけまして問題になりました原子力部隊の設置あるいはロケット砲弾、それは政府が否認されましたから私はそのまま了承いたします、そこでそれと関連して問題になるのは、去る十一月行われましたアメリカ、日本、韓国の三国防空演習であります。これは私はまず第一番に憲法上の疑義があります。同時に自衛隊法に違反いたします、第三に内閣官制に違反いたします。行政組織法に違反いたします。しかし私は今それらの各条項について違反事項を列記しようと思わない。これを政治的に取り上げてみますと、伝え聞くところによりますと、自衛隊の省議にもはからず、内閣総理大臣の指揮も仰がずに、航空自衛隊が単独で行なったということです。これは将来にきわめて禍根を残すものだ、従って統帥上の見地に立って、その点は将来明らかにして、叫びかようなことがないようにしていただきたい。同時にこのことは少くとも日本の自主的立場を侵害していると私は思うのであります。臨時総理大臣としてお答えを願いたい。
○小滝国務大臣 事実を申し上げます。(西村(榮)委員「君じゃないよ」と呼ぶ)昨年の十一月の五日から八日まで日本の本土において航空隊の訓練のために米軍と一緒に演習をいたしたことがあるのでございますけれども、わが方の航空隊はあくまで源田空将の指揮のもとに訓練を行なったわけでございまして、アメリカの指揮下に入ったわけではございませんので、この点だけ事実を申し上げておきます。
○西村(榮)委員 そういう答えをするからあなたはいかぬと私は言ったのですよ。あなたはこれから伸びる政治家なんだから、そういう子供だましみたいなことは答弁してはいけません。私がこのことを聞くのは、臨時総理大臣に対してお伺いするのです。ほかでもありません、この演習が行われた歴史的皆無というものは、中東に対する米ソのつばぜり合いが軍事的に行われたということです。アメリカはすでに第六地中海艦隊、第七艦隊に対して戦時体制を整備することを命じた直後であります。中東に発生した不幸なできごとが、ついに第七艦隊の戦時武装にまで発展するという危険な状態が生じております、これを背景といたしまして三軍の防空演習が行われた。あなたは十一月何々と申しましたけれども、演習の行われた直前において、AP電報は十一月九日に、世界の基地にあるアメリカ空軍はすでに非常態勢に入ったと通報せり、これはAP通信の通報です。そこで私がこれを単に憲法、自衛隊法あるいは内閣官制の法律的な問題から取り上げずに、政治的な問題から取り上げて善処を促したのはどこにあるかと申しまするならば、これは岸さんあなたならおわかりになる。かつて独ソ戦争の最中に日本の関来車はシベリア出兵を計画いたしました。あわよくばソ連牽制の大兵を動かすことを計画いたしました。けれども対ソ戦争に対しましては国論が一致しないで、その焦燥にかられた関東軍は、当時六十万の大動員を行いまして、これを演習なりとして大軍を集結した、そのときに満州国軍はこれに参加を強要されました、従ってあのときに万一日本の国論が一致するか、あるいは軍部の押しを食いとめる政治力がなかったならば、六十万の精兵はソ満国境を越境しております。これが関東軍の特別演習と称するものである。しかりといたしまするならば、その歴史的背景は、独ソ戦争を背景として六十万の精鋭をすぐる関東軍の特別大演習である、私はこの苦い経験を持っておる。従ってアメリカ第七艦隊が戦時体制に入るその前後において、私は三国の空軍が大演習を行なった、かつて経験せざる演習を行なったということは、ここに将来において私は危険なるものを感ずる。私は法律論ではありません。日本が自衛隊を持つか持たないかという議論は賛否半ばでありましょう。けれども日本の兵隊が海外に出兵をしては困る。他国の戦争の紛争に巻き込まれては困る。もちろん憲法九条第二項には、国際紛争の解決の手段として武力を用いないとは書いてありますけれども、この憲法の条章とは別にあらゆる感情あらゆる念願というものは、外国の紛争のために日本の青年を海外に派兵をしてはならぬ、外国の紛争のために日本が巻き込まれてはならぬ、何とかしてこれだけは食いとめてもらいたいということは九千万国民の一大悲願であります。これは中東問題がおさまりがつきましたから私はあれで事なきを得たと思う。そうでなく、あの演習から関東軍の特別演習と同様にずるずると憲法を無視し政治的な情勢に流されて、海外出兵を空軍だけがまず先がけてするというような危険が生ずるならば私はゆゆしき問題だと思う、そこで政治的にあなたにお尋ねしたいのは、今後かようなことはないように厳に戒めて、自主的な外交方針というものをとるべきではないか、私はこれを政治的にあなたにお尋ねしたい。
○岸国務大臣 私は当時行われた演習の事実は、今西村君が御心配になるような重大なる意味を持っておったものだとは思いません。ただ訓練であると思います。もちろん憲法の条章や日本の自衛隊の本質というものは私も十分承知いたしております、あの演習そのものをあまりにも西村君は重大視しておられるように思いますが、これは単なる訓練と私どもは見ておるのであります。
○西村(榮)委員 訓練にいたしましても時期が悪いと私は思う、これはあなたのあげ足をとるわけじゃない。私は訓練なら訓練のように自衛隊自身が日本の天候を考え、空軍の整備の状況を考え、充実したときを考え、そして国際間において誤解を生じないときを選んで、日本の空をどう守るかというときの独自の判断によってなすのであって、ときたまたま歴史的背景があり、指揮するものは事実上アメリカ空軍であり、韓国が参加する。これは単なる演習と考えられますか。私はそこで将来においてこういう演習をなされる場合においては、自衛隊があることがいいか悪いかの議論は別といたしまして、こういう演習をなされるときには、国の内外に対して誤解を与え、国民に重大なる不安を与えるような演習はしてもらいたくない、これを思うのですが、いかがですか。
○岸国務大臣 もちろん訓練にいたしましても、いろいろなことを考える必要はあろうと思います、しかしくれぐれも今の訓練自体がそういう重大な意義を持っておらなかったということをはっきりと申し上げて、これに対する誤解とかあるいは疑心暗鬼を生ずることをなからしめていくことが、国民に安心を与えるゆえんだと思いますから、その意味のことを申し上げたのであります。
○西村(榮)委員 これは単に訓練だとお答えなさるより仕方がないと私は思うのです。私はそれより仕方がないと思うのですが、先ほど申し上げましたように、時期はよく選んでいただきたいと思います。
 私はそこで日本の――将来あなたが自主外交、あるいは中立政策ではないが、自主的な方向をとろうということについては、極力そういう方向をとっていただきたいと思うのでありますが、私はこのときに、あなた初め今の閣僚諸君が思い起していただきたいのは、日ソ交渉が成立したときの声明です。この日ソ交渉が成立いたしましたときに、内閣の意思によって重光さんが声明したのは、東西のかけ橋になるということです。私は、なかなか困難であるけれども、今でも日本の政治家はその心がけを捨ててはならぬと思うのです。私は冒頭に、今の保持党内閣は、完全雇用の問題を取り上げたから、気持だけはやや国際的水準に近づいたと賛辞を呈したのでありますが、今のアメリカの動向は、私は、日本はその方向をとることにおいて、かなり将来変ってくると思う。ということは、アメリカの資本主義は、従来巨大独占資本あるいは帝国資本といわれておったのでありますが、最近においてアメリカが、世界政策の変更とともに、経済性格を変更発展せしめようとする方向というものは、人民資本主義です。同時に東ヨーロッパ共産圏が今念願しており、かつ実現されるであろうと想像いたしまするものは何かと申しますと、イギリス連邦のごとき自治権の要求です。従って、同じ共産主義でありましても、東ヨーロッパ共産主義国家は、民主的共産主義に発展しようと努力している、ソビエトの方向も、私は先ほど申しますように、かなり変ってきた、民主化の方向を歩もうとしている。このときに私は、日本がアジアの一角に位して、何時に先進国と後進国の中間の経済と技術の水準の段階にある、東西のまん中にある、こういうふうなときに、私は先ほど来あなたにくどく申し上げたように、今日の内閣のとるべき方向は、ソビエトの陣営に片寄ることなく、アメリカの陣営に片寄ることなく、自主的にアジアの立場に立って、日本の立場に立って、この新しく変っていこうとする人民資本主義国家アメリカ、あるいは民主共産主義化されようとする共産主義の方向、この両方に立って、世界の平和と繁栄のために橋渡しをする役目が実は日本ではあるまいか、私はこう思うのでありますが、少くとも基本的に岸外交の方向はこの方向にとっていただきたいということを希望するのでありますが、あなたの御見解はいかがですか。
○岸国務大臣 お答えします。私はしばしば申し上げているように、国連の一員として、国連憲章の精神にのっとってそうして世界の平和と繁栄に資したい。この見地から申しますと、国連内におけるいろいろな対立というものを緩和せしめるには、あくまでも国際正義というものを日本が積極的に主張して、大国といえどもこれを守り、これを実現するように主張していく、そういう国際的世論を日本が作り上げて、それで国連内における対立の緩和に資していくというのが、私は日本の使命であると考えております。
○西村(榮)委員 これで終ります。(拍手)
○山崎委員長 今澄勇君。――明日は午前十時定刻より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十一分散会