第028回国会 内閣委員会 第14号
昭和三十三年三月十三日(木曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 福永 健司君
   理事 相川 勝六君 理事 高橋  等君
   理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
   理事 石橋 政嗣君 理事 受田 新吉君
      大坪 保雄君    大村 清一君
      北 れい吉君    小金 義照君
      纐纈 彌三君    薄田 美朝君
      辻  政信君    中川 俊思君
      永山 忠則君    船田  中君
      眞崎 勝次君    山本 粂吉君
     茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君
      淡谷 悠藏君    稻村 隆一君
      木原津與志君    西村 力弥君
      山崎 始男君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        国 務 大 臣 石井光次郎君
        国 務 大 臣 津島 壽一君
 出席政府委員
        内閣官房副長官 田中 龍夫君
        法制局長官   林  修三君
        法制局次長   高辻 正巳君
        調達庁長官   上村健太郎君
        行政管理政務次
        官       榊原  亨君
        総理府事務官
        (行政管理庁行
        政管理局長)  岡部 史郎君
        防衛政務次官  小山 長規君
        防衛庁参事官
        (長官官房長) 門叶 宗雄君
 委員外の出席者
        専  門  員 安倍 三郎君
    ―――――――――――――
三月十二日
 運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第一三五号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、第二十六回国会閣法第一五五号)
 防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第三二号)
 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第三三号)
 国防会議の構成等に関する法律の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第四二号)
 総理府設置法の一部を改正する法律案等各省設
 置法改正案
     ――――◇―――――
○福永委員長 これより開会いたします。
 総理府設置法の一部を改正する法律案等、各省設置法改正案に関連して質疑を許します。前田正男君。
○前田(正)委員 きょうは総理の御出席を願いまして、私は与党の立場から、この際政府の方針につきまして根本的にお伺いをいたしたいと思います。
 今回われわれの委員会に提出されました各省設置法を見ておりますと、文部省、厚生省、建設省、通産省、自治庁等約二十件にわたるものが出ておるのでありますが、その中の二、三のものは、単に審議会を作るとか、調査会を作るというようなものもございますけれども、その他の大部分のものは、局をふやし部をふやし、あるいは官房長を置くというような機構拡大のものでございます。総理もすでに御承知の通り、わが党といたしましては、従来の内閣におきましても、党の方針また内閣の方針に沿いまして、行政を整理し、これを合理化するということに努力されてきたことは御承知の通りであります。今日までその努力が積み重なって、だいぶんと実績も上ってきたと思うのでありますけれども、今回この委員会に提案されました二十数件に及ぶところの設置法の様子を見ておりますと、従来の政府の考えてこられた、あるいはまたわれわれの党として考えてきたところの方向とは反しまして、機構拡大のような方向に向いておるように感じられるのであります。この点につきまして総理は、今回多数の設置法が提案されましたことに対して、どういうふうにお考えになっておられるか、政府の方針が従来と変ってきたのかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
○岸国務大臣 行政機構の問題に関しましては、できるだけ能率的で、責任が明確にされ、民主的な運営がされるということが中心の考え方でなければならぬことは、言うを待ちません。われわれは常にそういう見地から行政機構を検討し、またその目的に沿うようにこれを改革もし、また運営もしていかなければならないことは、論を待たないのであります。ただ問題は、行政改革そのことが、単純に機構を縮小す
 ることだけが目的ということじゃなしに、やはりその責任の所在を明確にし、あるいは事務を能率的ならしめる
 という意味からいたしますと、時勢の変化で、仕事の内容からいってあるいは拡充しなければならぬ必要の生ずるものもあろうと思います。ただ機構が拡充したから、直ちにそれでもって根本の精神に反する、こう一概に断ずる
 ことはできないことじゃないかと思います。ただ要は格設置法なり、各場合に、具体的にこれをこういうふうな拡充をした理由はどこにあるか、それによって果して事務が能率的に、簡素に、また責任が明確に、民主的な運営ができるのに都合がいいかどうかということを特に考える必要がある。たとえば形式的に申しますと、課の数を減らす、これも不必要な課を減らすことについては、なるべくこれは望ましいことだと思います。ただ形だけ減して、仕事が非常にその課に重点がいって、課長の責任というものがほんとうにとれないというふうなところまでいくことは、かえって課の数は減ったが、行政がほんとうに簡素化し、能率的かどうかということは、なかなかその仕事についていなければ――結局は精神は今のところにありますけれども、また今度の設置法等につきまして、人員をふやし、あるいは機構を拡大しておるところもありますが、それは今言ったように、いろいろな世の中の変遷もありましょうし、また今度の予算等におきましてやる仕事が重大化し、それを責任を持って能率的に処断するに必要な機構としてわれわれとしては提案をいたしておるわけでございますから、そういう見地でこれを一つ御審議、御検討を願いたい、かように思っております。
○前田(正)委員 ただいま総理大臣の御説明にありました通り、もちろん行政も近代化いたしまして、いろいろとまた問題の複雑化することもあると思いますから、その合理的な行政機構というものは必要であることも考えられるのであります。しかしその根本的な問題は何かと申しますと、今総理も述
 べられた通り、その責任体制の問題があるのではないかと思うのであります。局長、課長、こういうふうな職制とその責任制という問題のところにありまして、事務がだんだんとむずかしくなって参りますと同時に、それに伴ってそういうふうな責任者の数をふやさなければならぬ。特にそこはまた給料の関係とも非常に関係がありまして、そういう責任者にならないと給料が上らないというような制度にも現在なっているわけであります。この辺はもう少し根本的に職制と責任制とか、あるいは給与の体制というものをお考えになって、必ずしも局とか課とか、そういうものをふやさなくても私はやり方があるのではないかと思うのであります。この点については、総理とされては、時代の趨勢に応じて機構を合理化しようということのお考えのようでありますが、しかし根本的には、この行政機構というものはなるべくやはり簡素化していって、そうしてできるだけ整理をしていくべきではないかと思うのであります。その点については、必要なものは作らなければなりませんけれども、根本方針としては、合理的なものに整理していこう、こういうお考えだと思うのでありますが、その点について一つお聞かせ願いたい。
○岸国務大臣 今お答え申し上げましたように、行政機構の簡素化ということを中心にやはり考えていかなければならぬ。私も長い間役人の経験も持っておりますし、それから政治家として行政機構の問題を取り上げて考えてみますと、よほど締めてかからないと、いたずらに機構か拡大される。先ほど申し上げましたように、必要やむを得ざるものは、これはぜひ認めていただかなければなりませんけれども、それについては、根本的な考え方からいうと、なるべく拡張しないという原則を強く持っておって、ちょうど実質からいうといいところにいくのじゃなかろうか、こういう意味におきまして、この拡張されることについては、できるだけ消極的な態度を堅持していきたい、かように思っております。
○前田(正)委員 総理の御方針もわかりましたけれども、なるべく拡張しないという程度でなしに、さらに従来党とか政府がとっておられるところの、できたならば合理化をして、必要なものは作るけれども、どっちかといえば、合理化ということと同時に簡素化して、整理していく。拡張しないという程度じゃなしに、もっと積極的に整理するというような考えでいただきたいと思うのであります。
 それに伴いまして、今度は定員の問題がやはり行政整理の立場から問題になるのでありますけれども、この前も非常に無理をしまして定員を減らしましたところ、職制でありますとか、あるいは事務の運用というものをあまり変えないで、一律に定員減をした関係もありましたので、その人たちはほとんど定員外職員ということになっておりまして、同じ官庁で働きながら、はなはだ待遇が違うという気の毒なことがありましたので、今度はその定員外の職員を一万九千六百人というような多数を定員の中に入れ、さらに行政機構の拡大に伴いまして三千七百人ぐらい、合計しまして二万三千三百三十六人という方が今度定員として入れられる、こういうことになって参ったのであります。現在の定員外の職員の方を定員にするということはやむを得ないと思いますけれども、やはり機構か複雑になりますと定員がふえてくるわけです。さっきお話がありましたように、合理化といいながら、実は三十三年度は三千七百人の人がふえてきているわけであります。こういうようなことは、今後官庁の定員を減していこうという従来の方針とはやはり違ってくるんじゃないかと思うのであります。この定員がふえてくるということは、今総理も非常に御心配になっておられる官庁の綱紀粛正の問題とか、そういった問題にも非常にからんでくると思う。そこでなるべくこれは少数精鋭主義の立場で官庁の事務というものが行われていくのが最もいいのではないかと思うのであります。この点については、定員を減らすと同時に――単に減らすということならば、この前と同じようにまた定員外職員というものができて参りまして、いずれの日にかまた繰り入れなければならぬということになるのでありますから、少数精鋭主義でやっていくためには、その職制と責任体制というものを明確にされて、それに給与体制もあわせてお考え願って、この定員の縮小ということに御努力していただくのが一番いいと思いますが、総理はどういうお考えを持っておられるか、お聞きしたいと思います。
○岸国務大臣 今、前田委員のお話の通り、行政機構の問題に関連して定員の問題につきましては、できるだけこれの増加を押え、また合理化し能率化する上から見まして、縮小できるものは縮小していくという方針を堅持すべきことは私も全然同感でございます。定員外の者を定員の中へ入れましたことについては、これもずいぶん各方面からの要望もございますし、また実際の勤務の状況から見てはなはだ権衡を失しておるという点から、これは当然定員に入れていくことが必要である。そして本来いえば定員そのもので、今言った最初の方針をできるだけ貫いて、定員外というようなものがそれを崩していくようなことのないような建前にするように努力をいたしたいと思います。
○前田(正)委員 その問題については先ほどもお話しました通り、これは何としても、職制と責任制にあると私は思うのであります。よく外国の官庁の方は非常に少人員でやっておるとかいう例もありますけれども、しかし私の知っている範囲では、日本の国内におきましていわゆる相当事務の能率化されたところの会社等は、総理も御承知だと思いますけれども、外国に匹敵するような少人員、少数精鋭主義でもって仕事をしているわけであります。それは官庁の場合と多少違うようでありますけれども、一定の資格を受けた人は、それ以上の人は全部責任を持って仕事ができる、そうしてその方は将来は重役にもなれる、官庁でいえば次官にもなれるというふうな職制と責任制を考えないと――ただ単にいつまでおっても一定の資格を受けておらなければ事務の手伝いをしておる。しかもそういう方が実際の行政の仕事をしておる。官庁の事務官になった人は、どんな学校を出てこられても一応事務官ということになれば次官までいける、しかしそのかわり少数の方にして、そして責任制をとってやっていく、一人が仕事を持ってやっていってそれに補助をつけていく、そういうような行き方にされないと――われわれもよく官庁の窓口の業務が非常に複雑でなかなか課長とか責任者に会えないで、係長とかその他の諸君に会って、いろいろと困っておるという話を聞くのであります。そういうふうなやり方をしていきますと、どうしてもこの定員という問題はうまくいかないのではないかと思うのであります。どうかこれについてはその職制、責任体制、それに伴う給与――この給与の問題なんかも課長にならなければ給与が上らないというような制度はおかしいのではないか。つまり責任体制とその仕事の能率に応じてやはり給与が上っていくような形にしないと、職階制というものはその点に問題があると思うのであります。定員の問題は総合的に一つよく御研究願わないと結局無理をするとまた定員外職員ができて――定員外職員というのは実際気の毒でありまして、私は今度定員外職員が定員化されることは非常にけっこうだと思いますけれども、そういうふうな普通の行政整理をやっていきますると、結局無理ができてくるのではないかと思うのであります。この点について一つ総理からそういう全般的な機構から定員、職制、給与、こういう問題を全般的に考えて政府として取り上げて研究しよう、こういうふうな考えがあるかどうか伺いたいと思います。
○岸国務大臣 この行政機構問題、さらに公務員制度の問題を考えてみますると、何といっても公務員がいわゆる国民の公僕として、その仕事に責任を持って、できるだけ国民の便益になるように、しかもそのためにはできるだけ簡素な姿をとり、責任の系統を明らかにするということが必要であることは言うを待たないのであります。そのためにはそういう制度そのものの、責任制を明確にするという機構なり組織を考えると同時に、それが職制の上においても明確にされ、それにマッチするような考えを持っていかなきゃなりませんし、さらに給与の問題もこれとにらみ合せていかなきゃならぬと思います。もちろん私は仕事なりあるいはそこに勤めておられる長年の年数というものが、給与の場合においても大いに考えられなきやなりませんが、同時に職制や責任制を明確ならしめる上から申しますと、ある一定の権限を持ち、責任を持つ人がやはりそれに応じた給与を受けるということも頭において考えなきゃならぬ。要は、この問題は、根本のさっきの方針を具体的に実現していく上から申しますと、そういうものを全部総合的に検討し、それの十分な調整というものか行われてこないと、結果的に十分な効果を上げることはできないだろう、従いましてこれらの問題につきまして、今お話しのように十分総合的な見地から検討して、行政機構の問題、公務員制度の問題を検討し、最初に申し上げましたような目的を十分達成するように総合的に検討して参りたい、こう思う次第であります。
○前田(正)委員 それではこの問題については今の御答弁で大体わかりましたけれども、重ねて御質問するようでありますが、今回こういうふうにいろいろな法案が多数出て参りましたけれども、われわれの委員会におきましてもこれについては少しく再検討を加えたいと思っております。政府におきましてもこの際全面的に行政整理を中心にいたしまして、今申し上げましたようなことを、根本的に総理から一つ率先して政府の大方針として検討していこうという御決意がある、こういうふうに解してよろしゅうございますか。
○岸国務大臣 前田委員のお考えのように私は考えて参りたいと思っております。
○前田(正)委員 それでは行政整理の問題はその程度にしまして、一つ総理にこの際設置法に関連しましたことでお聞きしたいと思うのでありますが、実は今回提案になっております設置法の中にも科学技術会議というものが出ておりまして、この会議の議員は政党の役員になることはできない。その他この設置法以外に特殊法人の法案でありますとか、あるいはいろいろな関係の法案が各委員会に提案になっておるのでありますけれども、これらを見ますと、政党の役員はそれらの地位につくことはできないというふうな規定かあるのであります。昨日も実は科学技術特別委員会でありましたけれども、特殊法人理化学研究所の役員にそういうふうな規定がありましたので、両党とも――これは近代のような二大政党の時代になりまして、しかも健全な政党政治の発達を願っておって、しかも単に中央で政治活動をするだけでなしに、国民全体にわたって、地方にまでわたって健全な政治活動というものをしてもらわなければならぬ時代になっておりますのに、それを一々政党の役員は除外する、あるいは学者にも政治活動というものはやってもらわなければならぬ、学者だから私は政治に関係はない、そういうふうな考え方では、日本の健全な政治活動はできないのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、昨日はそれをわれわれの委員会において全会一致で修正しておるのでありますけれども、今度のこの委員会に提案になっておる設置法におきましても、そういうような事項がありまして、大体の空気としてはそれを修正したいという空気になっておるのであります。その他各委員会にもたくさんこういう法案が出ております。それから大体昭和二十六年ごろから国会に提案されまして通過しました法律案の中にも、そういうふうな事項の入っておるものと入っていないものとがばらばらにあるのであります。しかし最近の両党の空気といたしましては、やはり健全な政党政治をやるためには、こういう条項は削除すべきではないかというふうに考えておりますので、政府は一つ統一してこの問題を御研究願って、全面的に修正するものは修正していただくというふうにお願いをした方がいいのではないかと思います。政党の総裁であられる総理とされて、当然われわれの考えておるような健全な政党政治の発展、しかもそれは国民の末端にまで行き渡る政党政治の発展、こういう点から、こういう条項は私は取り去るべきものであると考えるのでありますが、総理は、統一して政府としてそういうことをおやりになるかどうか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
○岸国務大臣 二十五、六年ごろからそういうふうな立法例が数多く出てきて今日に参っておるように承知いたしておりますが、最初にそういう規定が置かれた原因は、いろいろその仕事の内容からいって、あるいは中立性をはっきり堅持する必要があるというような点に主として立法の理由があったのじゃないかと想像されるのであります。しかし今前田委員のお話の通り、やはり民主政治というものの完成を考えていきますと、また二大政党になり、お互いの立場なり主張というものをあらゆる面において国民に正しく理解せしめ、国民の批判を求めていく、国会の姿がこういうふうになってきた今日におきまして、従来作られました委員会や審議会等において、政党の役員がこれに就任することはできないというふうな禁止規定につきましては、よほど事情も異なってきておるし、検討を加える必要がある、すべてのものをことごとく撤廃することが適当であるかどうかは別として、少くとも今までのように、ほとんど先例を追うような意味において何でも禁止規定を置くということは適当でないのじゃないかという考えを私は持っております。
○福永委員長 石橋政嗣君。
○石橋(政)委員 まず最初に総理大臣にお伺いいたしたいのでございますが、現在の岸内閣には民主政治のもと、議院内閣制のもとにおける行政機構というものがどうあらねばならぬかといった、基本的な考え方があるのかということでございます。今も与党の前田委員からも指摘があったわけでございますが、今回提案されております一連の各省設置法案なるものをよく読んでみますと、あまりにも無原則的に局とか部とかいうようなものをふやしておるのじゃないか、こういう感じを私ども非常に強く受けるわけであります。先回も副総理、行政管理庁長官である石井さんにこの点をいろいろお尋ねをいたしたわけでございますが、どうも納得のいくような御答弁が実は得られなかった。それであらためて本日総理に御出席を願っておるわけでございますが、どうしてもこの点を明確にお示しを願っておかなくちゃならぬのじゃないかと実は考えるわけであります。
 実は鳩山内閣当時、総理は与党の幹事長であったと思うわけでございますが、この鳩山内閣は、御承知の通り、三大公約の一つにいわゆる行政機構の改革を出しております。その結果改革が行われたかどうかということから見ました場合に、私は多分に龍頭蛇尾に終ったという批判をせざるを得ないと思うのでございますが、それにしても一応この行政機構はどうあらねばならぬかということについては一つの定見を持っておった。たとえば提案理由の説明の中で、あるいは質疑応答の中で繰り返し述べられておったことでございますが、まず最初に、議院内閣制のもとにおける行政の責任体制を明確にすることが一つだ。もう一つは行政組織を合理化する、これには能率化その他、そういうものもいろいろ含まれておるわけでございますが、合理化する。なお第三に、政党の官僚に対する優位性をいかにして確立するか。こういうふうなことであったと私理解いたしております。御承知の通り、民主政治とは国民代表が単なる立法に携わるというだけではなく、行政をはっきりと把握するということがなければならないというふうに、私どもも考えておるわけでございますが、とにかくこういうような一応の定見が鳩山内閣にはあった。そういう目標を掲げて機構改革に手をつけたけれども、結果はあんまり芳ばしくなかった。私はこの結果は一応さておいて、そういう定見を持っておることに対しては一応の敬意を表したいと思うのでありますが、不幸にして岸内閣に至りまして、そういう定見が全然ないのではないか。全く無方針に機構をいじくり回しておるのではないかという感を今回非常に強く受け、かつ与党の議員の皆さん方の御賛同も現在得ておるわけでございますけれども、そういう事情にありますので、最初にこの点を明確に御説明願っておきたいと思います。
○岸国務大臣 議院内閣制度のもと、しかも政党政治のもとにおきまして一番根本に考えなければならぬことは、政治と行政との関係であろうと思います。今石橋委員もおあげになりましたように、とにかくこれは民主政治の本体からいい、内閣制度のもとからいいますと、政治が行政との関係において、今お話のように、はっきりと行政を把握して、これに対する責任が明確にされるということがまず第一のことであろうと思います。次は、今度は行政組織を構成しておる公務員のこの問における責任の明確化、この責任がいろいろ紛淆し、不明確であるということは、一方からいうと事務の能率も阻害をいたしますし、同時にいろいろ綱紀の問題にも関係を持ってくるわけでありまして、こういうことを明確ならしめることと、さらに公務員が国民の公僕としてその行政を実現、施行していく上におきまして、民主的な運営、しかも能率的な運営ができるような合理的な組織や機構、制度を考えるということが、当然根本的に考えられなければならぬ。今おあげになりましたように、鳩山内閣のときに私どもこういう考えでもって鳩山内閣の三大公約の一つとして、当時いろいろこれに関する具体的の方策を定めまして、自来国会におきまして継続審議を願っておるものも数多あります。これは言うまでもなく鳩山内閣が特に取り上げたことでございますけれども、われわれは議院内閣、政党内閣の本旨から申しまして、私の属している自由民主党の考えの根本として、これらの問題については、その後の内閣においても引き続いて実現をしようと考えておるものでありまして、特に岸内閣におきましてそれを取り上げて、公約としてわれわれは申してはおりませんけれども、しかし続いておるわが党内閣としても、この問題に関しましては、岸内閣におきましては同様な考えをもって貫いて参っておるわけでございます。
○石橋(政)委員 行政機構についての考え方は鳩山内閣以来一貫しているのだとおっしゃるわけでございますが、そういたしますと、今度出されてきました法案と、その一貫して岸内閣でも採用しておるところの基本方針とのつながりは、一体どういうことになるのだという疑問が実は出てくるわけでございます。そういった基本的なものを持っておられて、しかもなおかつ今度の各省設置法のような無原則的な機構の膨張を認めるということの間に、明確に矛盾があるという感じが強いわけであります。この間担当大臣であるところの石井副総理にこの点お伺いいたしたわけでございますが、石井長官の答弁によりますと、各省から、たとえば官房長をおきたい、あるいは新しく局を設けたいというようないろいろな要求が出てきた。この要求を検討してみたところ、この程度ならばやむを得ぬだろう、こういうふうな感じを受けたので、これを認めて、そして提案したのだというお答えなのでございますが、私はこういうことになりますと、今岸総理かおっしゃったこととちょっと食い違う点も出てくるのじゃないかと思う。機構というものをただばらばらに、各省の要求に応じて小さな視野で、たとえば文部省に体育局を作ることがいいかどうかとか、それだけで検討されると、それはおそらく必要性のあることをいろいろ理論づけて持ってくるでありましょうし、これを拒否するということは非常に困難だと思うのでありますが、一つ高い立場に立って、いわゆる政党内閣のもとにおける行政機構はどうあらねばならぬかという、基本的な考え方の上に立って検討を加えていけば、おのずからそこに違った結論が出てくるのじゃないかと思います。その間にどうも明確を欠くのじゃないかということを再三申し上げておるのであります。参考までに、総理も十分御承知のことと思いますか、今度の各省設置法で新設されようとしている局、部あるいはポストというようなものについてちょっと申し上げますと、こういうふうに膨大なものになっておる。自治庁は官房長を新しく置く。外務省にはアジア局次長を設ける。文部省には官房長を設け、体育局を新設する。建設省には道路局に管理部と建設部を新しく置く。法務省には大臣官房に司法法制調査部を設ける。通産省には通商局に振興部、軽工業局、に化学肥料部及びアルコール事業部を新しく設ける。厚生省は公衆衛生局を予防局と環境衛生局に分割する。郵政省は官房長を新しく設け、電話局を新設する、電波監理局に部制をしく。運輸省は海運局次長を設ける。経済企画庁は経済研究局を新設する。農林省は食糧庁に経理部を新設する。まあざっと申し上げてもこんな程度です。官房長、局長等のクラスがこれで大体十三人くらいふえると思う。もし先ほど総理がおっしゃったように、鳩山内閣以来のいわゆる行政機構というものについての考え方は一貫して採用しているのだとおっしゃるならば、こういう法案が出てきて現にこのような無原則的な機構の膨張が見られるということの間には何のつながりもない、そういう印象を非常に強くするわけです。そんな方針はあってなきがごとしです。ここのところの矛盾について総理はどのようにお考えになっておるのであるか。少くとも私どもの受けておる印象では、はっきりと内閣が行政機構を把握してない姿がここに出ているのじゃないかと思う。国務大臣にいたしましても、閣議できまったことを各省に持ち帰って、これをいかにして浸透させるかということに全精力を注ぐことよりも、各省庁の要求を、言いかえれば官僚の要求をいかにして閣議の中に持ち込むかということだけを考えているのじゃないかという批判が絶えず出てくるわけでありますが、こういうことの中にもそういう疑念が現われてきているのじゃないか。そういうことであればなおさらのこと、もう少ししゃんとしてこの行政機構、換言すれば官僚をがっちりと抑えられるようにしなければならぬという逆の立場で出てこなければならぬと私は思うのでございますが、この点いかがでありますか。
○岸国務大臣 先ほどの前田委員の御質問にお答え申し上げたのでありますが、その根本の方針においては鳩山内閣以来私どもも同じ考えを貫いて参ってきております。ただいろいろ時勢の変化や、あるいはその都度われわれが特に重要施策として力を入れなければならぬというふうな考えを実現しようとする場合においては、これに適応したある程度の機構というものを考えていくことが必要である。また先ほど来申しておるように、責任を明確ならしめる上から申しましても必要であり、またその行政を浸透せしめる上からいっても必要であるということが起ってくることも、これは石橋委員にも御理解いただけると思う。ただ鳩山内閣以来とってきている何というものは、一切の機構をふやさない、どんな必要があってもこれはふやさないのだ、ただ形式的にこれを縮小することだけが行政機構の方針だというふうには私考えられないと思うのです。いろいろ設置法の何におきまして各省の要求もございますが、これを行政管理庁におきまして、今申しました根本の方針に照らし、全体の必要性を十分勘案して、設置法の改正あるいは機構の拡充ということを適切として考えて提案しておるということでありまして、ただその結果がふやしておるということから、無方針であり、あるいは鳩山内閣以来の方針とは全然矛盾しているのではないかというふうな御批判でございますけれども、私どもは根本は堅持しておるけれども、しかし今申しましたような意味において、特に必要なものはこれを考慮していくことが、行政の能率を上げ、責任を明確ならしめ、またそれを浸透せしめる上からいって必要であるという考えのもとにいたしておるわけであります。
○石橋(政)委員 この点については与党の方々の御賛同を得ておりますし、本委員会といたしまして、個々にわたってもさらに大局的な立場から検討を加えることになっておるようでございますので、私は質問を次に移したいと思うのでございますが、戦後保守党内閣は行政機構改革に非常に大きな熱意を示してきているわけです。先ほど例示いたしました鳩山内閣も、特に三大公約の一つにこれを掲げたほど熱意を示しておったのでありますが、結果はあまり芳ばしくない。しかしその中でも、一応何とかやりたいという気持の現われとして、結果的には多少の無理があったかと思うのでありますけれども、課の整理などということも実際に行われております。当時閣議で決定されました内容をちょっと振り返ってみますと、行政機関の内部機構が著しく膨張し、行政事務の効率的処理を阻害しつつある現状にかんがみ、各行政機関の課を二割整理する、こういう方針を打ち出しております。この閣議の決定に基いて実は天引き二割整理というようなことも行われておるわけでございますが、どうも総理の御意見を伺っておりますと、あんなことが実は無理だったのだというような印象も非常に受けるわけでございますが、当時鳩山内閣が分析いたしました、行政機関の内部機構が著しく膨張して行政事務の効率的処理を阻害しつつあるといったような分析は正しくなかったのだ、そういうふうな感じを今お持ちになっておられるわけですか。せっかく三十一年に整理いたしましたその課を、今度再びもとに戻すどころか、さらに昭和二十六年の改革前の姿にまで引き戻す形が現われてこようとしておるわけでございますが、この点あの当時のやり方が無理だったのだというような御批判を持っておられるわけでございますか。
○岸国務大臣 過去の日本の行政機構の改革や行政整理の歴史を検討してみますと、この趣旨及びその目的とするところは正しい、またねらいもいいところをねらっておるけれども、なかなか実効が十分に上っておらないということは、数度の行政整理や過去における機構改革においても批判されることでございます。こういうふうな、行政事務全体が膨脹し、そうして能率を阻害しており、かえって国民に迷惑をかけておるというような事態をなくするためには、できるだけ簡素な姿がいいということで鳩山内閣当時にとにかく非常に形式的ではございましたけれども、課の数を減すという方針を立てたのであります。もちろんこれにつきましては多少の無理もあったことは、私これを自認せざるを得ないところもあると思います。しかし、どうも行政整理のような場合、あるいは行政機構改革をやる場合には、あとで手直しをするにしても一応担当形式的な標準でもってやるということは、これはまあ実際問題としてそういうやり方が従来もとられておりますし、それ以外には方法がなかなかつかないというのが実情であります。しかしそれが行き過ぎであったり、あるいはそれがかえって行政事務の能率を妨げ、責任を不明確ならしめたというような場合におきましては、あとから多少の手直しが行われるということもこれはやむを得ないと思います。しかし根本の方針としては私はやはり先ほど来申し上げておるように、こういう必要やむを得ないもの以外は行政機構を拡大したり、あるいはそういう課やその他部局というようなものをふやすということは、これは抑えるべきものであり、できるだけ縮小しようとしておった鳩山内閣以来の方針というものは私は正しいと思う。またそれは守らなければいかぬ。従って今回出しておりますいろいろな部局の拡張やその他のものにつきましては、先ほど私が申し上げましたように、行政の実情また政策の実現の上から見て、必要やむを得ないと私どもが見たものを出しておるわけでありますけれども、これについてはいろいろ内容的に御批判もあろうと思いますし、御審議の過程においてその必要が果してあるかないかということは、十分に御審議を願いたいと思いますけれども、そのために方針そのもの、考えそのものが根本的に誤まりであったから、今度は違うものを考えるのだというような見地には、私ども立っておらないということを申し上げておきます。
○石橋(政)委員 総理が今おっしゃったように、この行政機構を扱うと、なかなか意気込みは最初激しいものがあっても、龍頭蛇尾に終るということが事実なのです。戦後何回となく改革に手をつけながら、実効をあげておらない。たとえば機構を縮小してもいつの間にかまた昔の姿に戻り、それ以前の姿に戻ってしまう、こういうことが繰り返されておるわけです。機構を縮小する、これはちょうどトカゲのしっぽを切ったようなもので、切ったしっぽもしばらく生きておるし、そのうちまた新しいやつがはえてくる。こういうことを何度も繰り返しておる原因は一体どこにあるのか、これは私はいわゆる官僚陣営の強力な抵抗があるからだ、こういうふうに見ておる。しかしそれをも乗り越えて歴代の政党内閣は、いわゆる政党内閣を育成強化するために、多少の無理をあえてしてでも、これを排除して強力なものにしようという努力を続けてきたと思うのです。ただでさえ機構を縮小する、統合するということになると、猛烈な官僚陣営の攻勢があってむずかしいのに、これをさらにこちらからふやしていくというような形がとられることはどうも納得がいかないわけです。弱小内閣といえども、せめて膨張をしないように、現状を維持していくという点くらいの努力は当然払われてしかるべきではないか、私どもはこのように考えるわけです。(「弱小内閣とは何だ」と呼ぶ者あり)今こちらで文句が出ておるようですが、岸内閣必ずしも行政支配能力が高いとは見ておりません。しかし岸内閣といえども減らすことはむずかしくても、ふやすことを防ぐくらいの力は持っておるだろうと思って言っておるわけです。とにかく非常に困難な機構の問題に関しては、極力膨張を防ぐという程度の最小限度のごとくらいは、やってしかるべきではないかというような感じを強く私としては持っております。総理は委員会に身をまかしたような御答弁をなさいましたから、この点については意見にとどめておきます。
 そこでもう一つお伺いしたいことは、鳩山内閣以来続けられました機構改革の努力の中で、一つ具体的な施策として政党内閣の行政支配力を機構的に強め、行政末端に施策がよく滲透するようにするためだと称して、いわゆるトップ・マネージメント機構の強化ということを盛んに唱えられ、しかも具体的な法案として国会にも出され、これか通過して現に総務長官あるいは副長官というものが新設されておりますが、大蔵、農林、通産という各省には複数制の政務次官制もとられておるわけですが、これが果して実効があがっておるかどうか、今申しましたように、政党内閣の行政支配力を機構的に強めるという意味でどの程度の実効があがっておると総理は御判断になりますか、この点お伺いいたしたいと思います。
○岸国務大臣 内閣に総務長官の制度を置いたことは、従来の官房長官一人でやっておりましたことが分けられまして、私はこれは非常に効果をあげておると思います。政治と行政との上におきまして、いわゆるトップマネージメントとしての内閣の事務的な、行政的な統括力を加えてきておることは、これはきわめて、私ども短い期間でありますけれども、十分に感じております。また各省のうち特に行政事務の多い省に複数制の政務次官の制度を採用いたしまして、私はこれまたこれらの省におけるところの行政と政治との関係におきまして、トップ、マネージメントの強化になっておる、かように考えております。
○石橋(政)委員 総理は実効があがっておるとおっしゃいますけれども、正直に見ましたところ、私はさして実効はあがっていないのではないかと言いたいわけです。来年度予算案の編成に際しまして行われましたああいった醜態から見ましても、この程度のことではなかなか実効はあがらないのではないかという感じを非常に強く持っておるわけですが、この点も時間がございませんから質問を次に移します。
 この行政機構についての明確な方針が岸内閣にないために、こういう失態を生じたのではないかというふうに、私は実例をあげて一つお伺いしてみたいと思うのですが、実は先日行政管理庁長官に内政省設置法案について矛盾点を私は申し上げたわけです。内政省設置法案の内容と今回新しく出されて参りました総理府設置法の一部改正案との間にまことにもって矛盾きわまるものを持っておったわけですが、この点はその後撤回を国会に申し入れてきておるようでございますので、本日私は問題にいたしません。しかし撤回につきましても、そうした矛盾した法案を国会に出しておきながら、撤回すればいいのだと言わんばかりの態度は私は納得がいかない。やはり一応政府としてはこの点国会、特に長い間審議を重ねてきた本委員会に一言釈明あってしかるべきであると私は考えたのです。それが第一点。
 それからもう一つは、内政省設置法案だけではないということです。結局ほかの一連の継続審査の法案につきましても、同じような矛盾を私は指摘したいわけです。その前にそれでお尋ねしておきたいのですが、行政機構改革の一連の法案として、今継続審査になっておるものが若干ございます。内政省設置法案は一応撤回されましたが、そのほかに公正取引委員会を現在の総理府から経済企画庁に移管するという経済企画庁設置法の一部を改正する法律案、それから人事院を廃止して国家人事委員会、人事局というものを作るという国家公務員法の一部を改正する法律案、それから調達庁を防衛庁に移管するという防衛庁設置法の一部を改正する法律案、それから主計局に次長を一名増員するという大蔵省設置法の一部を改正する法律案、こういうものが出されておるわけでございますが、一体これはこのまま国会の審議を願って通過成立させてもらおうというような意図を持っておられるのであるか、もし持っておられるとすれば、こんなでたらめなことはないと思います。第一、内容を申し上げましょう、一番典型的なことは経済企画庁設置法の一部を改正する法律案です。この法案は今国会にも実は出ております。そうしますと、今国会に出されております法律案と継続審査になっております法律案とを照合してみたら全くでたらめきわまる、それこそ継続審査の法案の内容はほとんど半分はもうないと言っていい実態なんです。ないものをどういうふうに改正したらいいんだと言いたいんです。もう少し具体的に申し上げましょうか。たとえば継続審査になっております分の経済企画庁設置法の一部を改正する法律案ですが、それに第四条第二十号中こうこういうものはこうこういうふうにに改めるというのがあるのですが、内政省関係法案を撤回することによって、自然に消滅してしまっておる。これは実体がない。改正しようにも改正できません。次の第五条についてもそうです。「第五条中「四部」を「四局」に、「調整部、計画部、開発部、調査部」を「調整局、総合計画局、総合開発局、調査局」に改める。」とありますが、これはもうすでに二十六国会において国家行政組織法の改正案が通って、その際にもう局になっておりますから、こういう実体も何もありません。例をあげればこういうことで、ほとんど全文が何のことかさっぱりわからぬという法案です。もし総理がこの法案も今国会においても継続して審議を願って成立を期するだなんという気持をほんとに持っておられるならば、当然国会開会の冒頭にこれを一応撤回して新しく出してくるか、そのほかの適当な措置を講ずべきであって、これをのほほんとそのまま国会に付託しておいて成立をお願いしますなんということは、これは言語道断だと私は考えるわけですが、この点もあわせて御釈明を願いたいと思います。
○岸国務大臣 第一の内政省設置の問題につきましては、これは案ができまして継続審議を今日まで願って参ったのでありますが、その後の事情の変化、経済情勢の変化もございますし、われわれとしては、この案について撤回して、さらにいろいろな方面から再検討をして成案を得たいという考えのもとにこれが撤回をいたしたわけでございます。その他の案につきましては、われわれとしては、ぜひ継続して御審議を願い、これが成立を期したいと思います。ただ相当な時日がたっておりますので、条文の関係等の具体的な問題については、私つまびらかにいたしませんけれども、今おあげになりました経済企画庁の設置法中改正するというのは、要するに公取委員会の所管を内閣からこちらへ移すということが主眼でございます。その他の関係条文等につきましても、あるいは整理を要すべきものも具体的にはあるのかとも思いますが、詳しい内容につきましては私つまびらかにいたしませんので、必要がございますれば法制局長官からお答えすることにいたしたいと思います。
○石橋(政)委員 私は技術的なことをお尋ねしているわけじゃございません。政治的責任を問うているわけです。今度新しく今国会に提案されました各省設置法の一部改正法案と継続審査になっております法案との間に矛盾がある点は、私どもの方でかんべんすると言えば、若干時日がおくれて済まないという一言の釈明あれば修正するということで済むかもしれません。しかし現に先国会においてもう改正されてしまっておる実体のないものを、今度の国会に継続審査だからといってそのままにしておいて、これをどうしようというのですか。こういう不手ぎわは私は、ほんとうに内閣に公取の移管ということを主目標にしてこの法律案を通してもらいたいという熱意があったならば、もう当初から手を加えて、きちんとしたものにして出されてこなくちゃならぬはずなんです。それを議員が気がつかなければ幸いと言わぬばかりの態度ですよ、これは。そういう政治的な態度、責任を私は追及しているんです。こういうことでいいのですかというわけです。
○岸国務大臣 これは私は、今石橋委員の言われるように、そういう場合に全部修正して政府が出し直すという方法も一つだと思います。また一つは、御審議を通じてそういう点について修正してこれを通過していただくというのも私は一つの方法であると思います。その点につきましては、決して今お話のように、気がつかなければそれでどうするというような、そんなふざけた考えは毛頭持っているわけじゃございませんで、これは従来におきましても、それはあるいは程度が違うとか、もしくは重要性が違うというふうな御批判もあろうかと思いますけれども、私はそういう二つのやり方があると思います。その意味におきまして、この経済企画庁の設置法の改正の継続審議を願っております点は、やはり一番主眼が公取委員会の所管をかえるというところにあるのでありますから、それを中心に御審議を願って、御審議の過程において不必要なものについての修正はいたしていただきたいということが、私どもは適当である、こう考えておったわけであります。
○石橋(政)委員 これは非常に多岐にわたっているわけなんです。それこそ総理がおっしゃるように修正するということになりますと、幾つの法案を修正したらいいかわからないくらいたくさんあるのです。一例をあげますと、今申し上げておりまする経済企画庁設置法の改正案、これは継続審査の分と今度出されてきた分とあるわけですが、このほかに国家公務員法の一部を改正する法律案あるいは防衛庁設置法の一部を改正する法律案、これらは定員法にも関係が参っておりますし、給与法にも関係かある。非常にあちらこちらの法律案を全部修正しなくちゃならぬというようなことになるのですが、こんなことは当然法案提出の責任を持つ内閣の方できちんとして国会に出すべきじゃありませんか。そういうことまで国会でやれと、こうおっしゃるわけですか。
○岸国務大臣 新たに提案する場合におきましては、内閣が責任を持ってそういう関係法令との調整をして出すのが私は当然であると思う。ただ、継続審査中に属するところのものについてのそういう点については、今お話のように、それを取り下げて撤回して出し直すというやり方もありましょうが、同時に、そういうものは継続審議の過程におきまして適当な修正、調整を加えるということも適当だ、こう考えて実は私どもは継続審議をさらに続けていただきたいということをお願いしておるわけです。
○石橋(政)委員 その点は、それではまたあとで与党の委員ともいろいろ話し合うことにいたしますが、最初申し上げたように、内政省設置法、これを審議をして参りました本委員会に一言もあいさつもなしに、と申しますか、一方的に撤回すればいいんじゃないかというような態度で臨まれることについては、いかがお考えですか。
○岸国務大臣 継続御審議を願っておる事柄でありますから、一方的に撤回すればいいじゃないかというふうな考えを私どもいたしておるわけじゃございませんで、先ほど申しましたような理由で、この際は今御審議を願っておる案を続いて御審議を願うことは適当でないという見地から、これの撤回をいたしたわけであります。あるいは手続上等において手落ちがございましたら、これはおわびをいたしますけれども、趣旨はそういう考えでございます。
○石橋(政)委員 時間がありませんから次に移ります。どこに重点があるのかわからないような機構いじりはこの際は一切やめて、もっと重点的な機構改革と申しますか、そういうものを考えたらどうだということで御質問いたしたいと思うのですが、それは実は厚生省を発展的に解消して、社会保障省というようなものを作る、こういう構想をどう思うかということなんです。最近岸内閣も、本気であろうとは思うのですが、国民皆保険とか、あるいは国民年金制度とかいうものの創設にだいぶ関心を払ってきておられるようです。最近の新聞あたりを見ましても、たとえば国民皆保険については、厚生省で国民健康保険法の全面的改正案を検討して、これが閣議で大体了解を得られそうだとかどうだとかいうような記事もございますし、あるいは国民年金制度の創設につきましては、大内会長らと総理が会った際に、総理としては三十四年度から発足させたい熱意を持っている。すべての年金制度は将来統合する必要があり、行政機構もできるだけ調整すべきだと思う。審議会の意見には全く同感であるというようなことを述べられたという報道も、実はなされておるわけですが、こういう御熱意がほんとうのものであるとするならば、これこそ政策の重点を、機構の中でもはっきり表わすという意味から、先ほど申し上げたような、社会保障省というようなものを作るくらいの熱意を示すべきじゃないかと思うのですが、この点いかがお考えですか。
○岸国務大臣 社会保障制度の拡充の問題につきましては、わが党におきましても、わが内閣におきましても、特に重点を置いて考えたい。それで問題になっておりまする国民皆保険の問題と、それから国民年金の問題を二つの大きな柱として、ぜひ社会保障制度の拡充をはかりたいという考えでございまして、あらゆる面から必要な準備なり方策を進めておるのであります。それについて行政機構の上においても社会保障省というようなものを一つ作って、そのことを明確にし、強力に推進することを考えたらどうだという石橋委員の御議論でありますが、その点について私は絶対にそれに反対ということではございませんが、行政機構の問題につきましては、十分に各省の関係を考えてやるべきであると思います。厚生省にも関係がありましょうし、あるいは労働省等にも関係がありましょうし、十分それらのものを検討した上で一つ結論を出したい。社会保障制度に大いに重点を置いて、強力にやるという意味において、そういう意味の行政機構を十分考えろということにつきましては、私はその趣旨には賛成でございますが、今直ちにそれがために社会保障省というものを作るという結論には、まだ十分検討を加えていかなければならぬ点かあると思います。
○石橋(政)委員 それでは次に移ります。今回提出されました法案の中に、科学技術会議設置法というものがございます。これはもうすでに御承知の通り、総理が議長になりまして、大蔵、文部、経済企画庁、科学技術庁の各大臣、長官を、議員とし、そのほかに四人の学識経験者と申しますか、そういう方々を議員として発足しよう、こういうことでございますが、実はこの学識経験者四人のうち二人は常勤ということになるわけです。この常勤の議員には制約がございます。一つの制約は先ほど前田議員から御指摘がございまして、すでに与野党が修正するということで話し合いを進めておりますが、実はもう一つの制約があるわけです。それは何かと申しますと、「報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと」ができない、こういう制約を受けております。この点どのような必要性があってこういう規定を設けられたのであるか、この点をまずお伺いしたい。どうしてもそういう規定を設ける必要があるということであるならば、同じ議員となる国務大臣、この人たちには実はこういった制約がないわけなんです。かねがね問題になっております継続審査の議案の中にも、実はあるわけですが、国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法律、こういうものも現に出されておりますけれども、やはりそういう角度から必要が出てくるということであれば、この小さな場面一つ見た場合にも、そういう必要があるとするならば、やはりもう少し大局的な立場に立って、国務大臣全部にこういう制限を加えるということを、ここでもう少し検討して具体化するという必要性も出てくるのじゃないかと思うのですか、この点について総理は、何らかの立法措置を講する必要かあるというようなお考えを現在お持ちになりませんか。その点、関連して一つお尋ねいたしてみたいと思います。
○岸国務大臣 国務大臣の兼職を禁止すべきだということにつきましては、今お話のような案も提案されております。従来この問題に関しましては、政府、歴代内閣は大体そういう方針をとっておりますが、服務紀律の上から、そういう兼職をする場合においては本属長官の許可を受けなければならぬ。国務大臣については内閣総理大臣の許可を受けなければならぬ。私は岸内閣におきましては、報酬をもらって職につくということにつきましては、各閣僚が従来そういうことに従事しておりましても、これを全部やめていただきまして、そういうことの実際の兼務ということは行われておりません。ただ名誉職であるとか、あるいは職務上の公益的な団体等の役員等の兼職を許可しておるものはございますけれども、営利事業やあるいはこの何につきましては、今申しました官吏服務紀律による本属長官の許可を受けるということにおいて、そういう目的を現実には達しておるから、従って特に法律の必要はないじゃないかというのが従来の私どもの考え方であったのであります。なおこの科学技術会議の議員の常勤の人についてそういう規定を置いたということは、私はこの科学技術会議の十分な活動をするために、常勤の人を置き、常勤の人に対しては相当な報酬、給与を与えまして、そうしてそれにもっぱら従事してもらうということが、この目的を達する上から必要であるということで、そういう規定を置いておるわけであります。
○石橋(政)委員 ずいぶん古めかしい官吏服務紀律を総理がお持ち出しになりましたが、これは明治二十年七月三十日勅令第三十九号というしろものだろうと思うのです。これで国務大臣も制約を受けるということであれば、勢いこの議員も受けるわけじゃないのですか。
○林(修)政府委員 御承知の国家公務員法ができましたときに、同時に国家公務員法が施行されるまでの暫定的な措置をきめました昭和二十二年法律第一二一号というのがございます。これは要するに国家公務員法の適用を受けない従来の官吏につきまして、なお「従前の例による」という規定でございます。そういう意味におきまして、いわゆる官吏、まあ昔でいえば官吏に当るような地位を持っておりましたそういう人々につきましては、国家公務員法の規定の適用のない、特に特別職でありますが、特別職につきましては、今総理の仰せられましたような官吏服務紀律がなお働いておる、これは当然だと思います。しかし新しくできます特別職、しかもいわゆる官吏的な地位とされない審議会の委員等につきましては、この一二一号というものは当然に適用されないわけでありまして、従いまして、そういう新しい特別職の部面につきましては、これは新しい規定が要るわけでありまして、個々の法律でそういう規定を入れておるわけでございます。特別職全体を通じて規定を整備する必要があるということは、これは申すまでもないことでありまして、私どもも従来から考えておるわけでございますが、これは国家公務員法全体の立て方を改正する際に一緒にすべきものじゃないか、かように考えておるわけでございます。
○石橋(政)委員 この点もかねて懸案になっておることでございますから、いつまでも国家機構あるいは公務員の制度というようなものを――戦前戦後を境にして大幅に改革されている現在、そういうものにこだわることなく、新しい立場に立って一つ検討を加えていただきたいと思います。
 最後に、これはちょっと本筋からはずれるかもしれませんが、御承知の通り、本内閣委員会には非常にたくさんの法案が付託されております。ところが、きょうは非常に出席がいいのでありますけれども、与党の委員は非常に出席が悪い。そうしておりながら、こういうことをおっしゃる議員がおります。近く解散もあることだから、一つ早く審議を進めて成立させてくれぬか、こういうことをおっしゃる方がおるわけです。虫のいい話でございます。私はそういう方に、何も解散のことをわれわれが頭に置く必要はない。国会の会期は、五月十七日まであるんだから、この日程というものを十分に勘案してスケジュールを組んで慎重審議をしていけば事足りるのであって、解散によって法案が成立しなかった責任は何も本委員会で負うべきものでなくて、それは岸総理が負うべきものだ、こういうふうに答えてきておるのですが、こういう考え方でやっていいか、最後に一つお答えを願います。
○岸国務大臣 もちろん会期がございまして、御審議を十分に願うべきことは当然でございます。委員会の運営につきましては、委員長、理事の諸君におきまして十分お話し合いの上、政府としては、これはどの政府におきましても解散があるなしということじゃなしに、提案しておりますところの案につきましては、一日も早く成立することを救うのが人情だと思います。委員長及び理事、委員諸君の特別な御審議によりまして、このわれわれの念願が達せられることを希望いたします。
○福永委員長 中川俊思君。
○中川委員 二番せんじと申しますが、三番せんじですから、大体総理の御所見は前二人の御質問で尽きておるようでありますから、私はくどいことは申しません。ごく簡明直截に総理の御所見を承わりたいと思うのであります。
 まず最初に承わりたいことは、先般、四、五日前でございましたか、本委員会に、石井副総理の御出席を求めまして、いろいろ御質問をいたしたのでございます。その際に、私は石井副総理に対して、各省設置法の問題はきわめて重大でございますから、十分に閣議等において御相談を願って再検討をしていただくようにお願いをしておいたのでありますが、そういう問題が閣議で取り上げられましたでしょうか、あるいは御多忙でまだそういう話はついてないのでございましょうか、まずその点を総理から承わりたいと思います。
○岸国務大臣 これはお話がありました。それで閣議でもなにいたしました。
○中川委員 それならば、あまりくどいことは申しません。ことに先ほど来総理の御答弁を承わっておりますと、行政機構の問題については十分熱意を持って不必要な部課は減らす、さらに政府はこの問題については再検討をするということまで申しておられるのでありますから、総理がそういう腹で、この今回政府が提出されました各省設置法の問題についてお考えになっておるのでありますから、一つ十分に再検討を願いたいということを冒頭に強く要望いたしておくわけでございます。多少ダブるかもしれませんが、国会の使命が予算の審議と行政の監査にあることは申し上げるまでもございません。そこで、いつの国会でございましたか、たしか十国会だったと思いますが、行政監察特別委員会というのが上程されまして、私は当時たしか自由党であったと思いますが、これを代表して行政監察特別委員会を国会内に設置すべしという賛成討論をしたことがございます。ところが、その委員会は横すべりをして反対党のスキャンダルばかりをあばき過ぎるような委員会に化してしまったのであります。肝心かなめの行政監察というものは全く行われないような事態になりまして、そうして今日では廃止の運命になっておりますが、私はこういうものこそ国会内に設けて、私どもの使命でありますところの行政監査というものに対して熱意を持たなければならないということを常々考えておるのでございますが、総理はこの点についてはどういうふうなお考えでございましょうか。先ほど来総理の御答弁にもございましたが、この行政機構の改革ということは、なかなかむずかしい問題だと思います。いたずらに小さくすればよろしいというのでもございませず、さりとてこのまま野放図にどんどんふとらせていっていいということでもございません。しかしそういう問題について、国会は、与党も野党も私は熱意を欠いておるのではないかというような気持がするのでございます。これは総理としてのお考えというよりも、総理としてお考え願うこともけっこうでございますが、むしろ一政党員である岸総理としてこれらの点についていかなるお考えを持っておられるか承わりたいと思うのであります。
○岸国務大臣 行政監察特別委員会が国会内に置かれました経緯並びに廃止されましたことにつきましては、今中川委員お話の通りであります。また国会が行政監査についてもその重大な権限、使命を持っておることはお話の通りであります。これはすべての常任委員会におきましても、あるいは予算委員会等におきましても、十分にその使命は果し、また尽されるような機会があるわけであります。特にこれを特別委員会とは別途のものを置いて、そういうことについて監査機能を発揮することがいいか悪いかという私は問題であろうと思います。あるいは特別委員会がなくなったら、議員がその方の職責を尽すことができないという問題ではなかろうと思います。十分に常任委員会等において、その職責を尽す機会はあり、またそういうふうに運営さるべきものであるということは当然であります。過去においてこれが必要であるという見地は、もちろん特別委員会を置くということにつきましても、今お話しのように、私は置くことについての必要も決して無視はできないが、実際運営してみるとその本来の設置の目的を達することに役立つかというと、あるいは少し問題の趣旨を逸脱するというような結果になったということで廃止されたわけでございますから、今日のところにおいては、私はまだそういう特別の委員会を作るよりも、むしろ各常任委員会においてそういう職責を尽していかれる方が適当ではないか、かように考えてでおります。
○中川委員 御趣旨はよくわかりました。それがゆえにこそ私どもはこの内閣委員会におきまして、今回政府が御提出になりました各省設置法については非常な関心を持っておるわけでございます。前二人の各委員からるるお述べになったのでございまするが、本年の各省設置法の要求を見ますと、総理もすでに御案内のことだと思いまするが、防衛庁を含めまして今年三十三年度だけで三万六千九百七十六名という役人が新たに生じてくるわけでございます。しかもこの経費を見ますと、驚くなかれ人件費だけでも国家公務員と地方公務員を合せまして八千六百億でございます。さらに物件費はこれをはるかに凌駕いたしまして九千二百九十六億円という莫大な物件費を伴うわけでございます。これは御案内の通りみな国民の血税でございます。そこで先ほど来お話のありました通り、必要な機構は拡大しなきゃなりませんけれどもが、ともかくこういうふうにどんどんどんどん行政機構が複雑になって参りますと、迷惑をこうむるのはみな国民でございます。一つの許認可を得るにいたしましても、三十も五十も判こを押さなければこれがなかなか認可されない、しかも半年も一年もかかって、そうして当初計画したときの情勢とは経済情勢も社会情勢も半年なり一年後には変ってきて、もう許可されたときにはせっかく許可されても何もならないというような事態が今日までしばしばある。これはわが国の行政機構がいかにも複雑多岐にわたっておるからこういう結果を招来するのだと私は思うのであります。そこで先ほど来各委員からお話のございましたように、行政機構はきわめて簡素化するということの方向に向わなきゃならぬのでありますが、先ほど総理の御発言の中に、その通りだ、不必要な部課は廃止すべきだ、こういうことがございましたが、今回の設置法の御提出を見ますと、今日までの部課で廃止されたというようなものはあまり見当らない。つまり大きくなったものばかりでございまするが、これについて総理は具体的にこういうものは廃止すべきであるとか、あるいはこういうものは将来考えなきゃならないとかいうような何か御腹案があって、ああいう御発言をなさったのでございましょうか。それともそういうことでなくただ漠然と、十分に今後検討をした上で不必要なものは廃止しようという御発言であったのでございいましょうか、この点を承わっておきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 公務員制度の問題、機構の問題につきまして、中央地方を通じて考えていかなきゃならぬ、そうして中央地方を通じて、この行政費というものの増大することを極力抑えていくということは、これは私は大きな観点から見てぜひともやらなきゃならぬことであると思います。つきましては先ほど来申し上げておりますように、私は行政機構の問題、公務員制度の問題、これは中央と地方とを通じて一つ考えていきたいと思いますが、これらにつきまして十分に一つやはり検討を加えていきたいというのが私の考えでありまして、先ほど申し上げた意味もそこにあったわけであります。今提案いたしております設置法そのものにつきましては、政府はこれは必要やむを得ない、またこうすることが最も適当であるという見地に立って提案いたしておるわけでありまして、十分な御審議を願って一日も早く通過成立するように願っておるわけであります。それでは一般的の行政機構もしくは公務員制度等について、具体的にこういう部課、こういう機構は廃止し、縮小していくことが適当であるという具体的のものを持っておるかどうかというお話でありますが、私今どの部課とどういうものはやめるということを申し上げる具体案は持っておりません。十分に一つ今申しました中央地方を通じて、ことに戦後、これはいろいろな例がありますけれども、中央からの出先機関が非常に各省ともふえておるように思います。これは一面からいうと複雑になる点もありますし、あるいは行政上あるいは地方公共団体との関係上やむを得ないものも私はあると思いますが、地方公共団体の健全な発達を考える意味からいっても、中央からそういふうにたくさん出していくということについてはずいぶん考えなければならぬ点があると思います。こういうような意味におきまして、中央地方を通じてぜひ私としては根本的な検討を加えて成案を得たいということについて強い熱意を持っておるということだけを申し上げておきたいと思います。
○中川委員 私は先般も石井副総理にも申し上げたのでございまするが、一体日本くらい官僚の多い国が世界にあるだろうかと思います。私の調査したところによりますと、国家公務員が現在百五十七万四千百三十二名、地方公務員が百四十二万五千四百四十五名、これを合計いたしますと二百九十九万九千五百七十七名、約三百万人でございます。三百万人という公務員がおるのでありまするが、これはむろん常勤、非常勤は別でございます。常勤、非常勤合せますと約六、七万おるようでございまするから、それは別でございまするが、地方公務員と国家公務員だけで約三百万人の者がおる。これを今一世帯五人の家族といたしますと、いわゆる官吏と称せられるもの、公務員の数は実に千五百万という莫大な数に達するのであります。国民八千五百万のうち千五百万人がいわゆるこの公務員の部類に属するわけでありまするが、国民は六人弱で一人の役人を養うという、実に膨大な数に達するのであります。これがだんだんだんだん年々年々ふえていっておる。あるいはこれよりまだ役人の数が多いところはあるかもしれませんが、日本の人口からして、日本の経済力、置かれておる立場等からいろいろ勘案して、いろいろな点から検討して、日本の国力にふさわしい官吏の数とは思わないのであります。鳩山内閣以来行政整理をやって、そして機構を簡素化していかなければならないというときに、今回この国会に各省設置法が提出されて、先ほど申し上げました通り、本年度防衛庁の一万人を入れまして三万六千人というものがさらにふえるという結果になるのであります。これは先ほど石橋委員もお話がございますが、要するに政府が行政機構を簡素化して、極力経費の節減をはからなければならないということは、岸総理を初めとして各大臣もそういうお考えであろうと思うのです。先ほど来の総理のお話を伺いましても、それがうががえる。ところが石橋委員も言われました通り、これは官僚陣営の抵抗でなかなかできない。ちょっと聞いて下さい。大事なところだから。これは官僚陣営の抵抗でなかなかできないと思うのです。そこで私は総理に特にお考えを願いたいことは、総理は長年官界においでになりましたので、官界の内部の実情をよく御存じだろうと思うのです。これは普遍の民間から突然総理大臣になったところで、あるいは普通の大臣になりましても、役所の機構なんというものは二年や三年大臣をしておってもなかなかわからないと思います。それだけ複雑になっておりますから。しかし幸いにして岸総理は長年官界においでになりましたから、これらの点を十分御存じだろうと思います。御存じだろうと思いまするが、しかし岸総理は何も行政機構の改革だけに頭をお使いになるわけには参りませんから、勢いこれらの点は主管大臣におまかせになり、また官僚が出して参りますものをうのみにされる場合も、はなはだ失礼ですが、あり得ると思うのです。これは悪意でなく、そういう場合かあるのは当然だと思うのです。そこで私が特にお願いをしたいのは、そういう意味で岸内閣といたしましては、いろいろやりたいこともたくさんございましょうが、しかし重点的にどの問題とどの問題を取り上げて、自分の内閣の時代にはこういうことをやったのだという、後世に非常に国家のためになるようなことを、たった一つでいいと思うのです、これを取り上げてやっていただくことが望ましいと思うのであります。それは今私どもがここでみんなが心配をいたしておりますところの、この設置法によって生ずる官僚機構を整理なさって、できるだけこれを縮小して簡素化して、日本の行政事務がスムーズに進み、ひいては国力の進展に役立つような機構を作っていただきたいと思うのです。これは岸総理でなければできません。普通の方が総理大臣になってもなかなかできない。それはなぜかといえば、ただいま申し上げます通り、長年総理は官界におられたのでありますから、官界のことは非常にお詳しい。世間では、今も石橋君は弱体内閣だといっておるがこれはとんでもない。こんな強力な内閣はないと思っておる。おせじじゃございません。それは岸さん個人を知らない者が勝手なことを言っておる。両岸なんということを言っておりますけれども、岸さんくらい腹の中にしっかりしたものをお持ちの総理大臣は今日までなかったと思う。これはおせじじゃない。私はそう信じておる。だから岸さんが総理におなりになっておる間にこの問題を処理していただかないと、これはなかなか、私が先ほど来申し上げます通り、民間から突然総理大臣になったといっても、内部の官僚機構がわからないのですから、やり得ない。いろいろ内治、外交とも重要問題はたくさんございます。むろんこれらも国家として処理しないわけには参りませんが、そういうものこそ、大局的に総理は目を通しておられて、そして主管大臣に御命令になればいいのであって、この行政機構の問題はすべて国の進展の基本をなすものでございますから、これを思い切っておやりになる御意思があるかどうか、この点を伺いたいと思います。
○岸国務大臣 中央地方を通じて公務員の数、それから扶養家族等の数字的なものにつきましては、一応専門の部局でもって資料を作っておるようでありますから、これは差し上げますが、しかし何といっても先ほど申し上げましたように、行政費が増大してきている。従ってこれを縮小してできるだけ行政費の負担を少くしていくということは、ぜひともやらなければならぬ問題である。この見地から中央地方を通じて思い切った行政改革なり行政の能率化について、その簡素化を徹底せしめるよう大いにやれという御激励の御意見に対しましては、私も全然同感であります。過去の例を見ますと、先ほどもお話がありましたように、実際龍頭蛇尾に終る、非常にむずかしい仕事でございます。一面から申しますと、私が官僚出身で、官僚の機構がわかっておるというお話がございました。だからやれという、これはごもっともな御意見でございますが、ある意味からいうと、わかっていることがかえってやりにくいという面もあるので、これは従来の例を見ますと、役人が行政整理をやった場合において徹底していない、むしろ行政組織やなんかを知らない他の人が出て、従って相当乱暴なところがあるかもしれないが、やらなければやれないという点もあるのであります。これは実情を申し上げただけでありますが、しかし私は、私が過去において官僚出身であってこれを知っているからどうだ、知らないからどうだということでなしに、総理大臣として、いやしくも政治行政の全般にわたって、全責任を持って国運の進展をはかるという立場にあります以上は、今中川委員のお話しになりましたように、私はぜひともこの中央地方を通じてのこの問題に関しましては、真剣に熱意を持って取り組んで、できるだけ簡素化し、できるだけ合理化するために進めたいということは、かねての私の素志でございますので、十分一つ努力をいたしたいと思います。
○中川委員 先ほど申し上げました通り、昭和三十三年度におきましては人件費だけでも八千億、これに物件費が九千二百億も計上されておるのでございますが、私がここに一つの疑問を持っておりますことは、これが果して完全に充足されておるかどうかということであります。たとえば八千億という人件費、三百万人という公務員が予算の上では計上されておるのでございますが、これが果して三百万人まるまる稼働しておるかどうか、こういうことでございます。私の今日まで調査したところによりますと、まず九七%から九八%くらいしか動いていない。そうしてあとの二、三%の人件費、物件費というものはやみからやみに流れておる事例が非常に多いのであります。こういうことはやはり官界に長く職を奉じておられた方でないとなかなかわからない。これは卑近な例でございますが、どの役所を見ましても期末が近づくと、一月ごろから宴会費、出張費が非常に膨大に支出されます。これはその年度にそのきめられた人件費、物件費を使っておかないと次の予算がとれませんから、年度末になりますと役人はいろいろな理由を設けて出張をする、またいろいろな宴会が行われる。ここに非常にむだな経費が乱費されている事例を私は知っておるのであります。従って三百万という公務員の数が予算面には計上され、それに要するところの費用は八千億というものが計上されておりますが、これが充足されていない。こういう点はよほど一つ考えて、国民は血の出るような汗と油の税金を奉納しておるのでありますから、一銭もむだのないようにすることが私どもの責務でありますから、これらの点は十分に一つお考えを願いたいと思うのであります。日本の官僚組織が非常に強靱でありまして、余人を近づけないところの宮廷政治であることは、岸さんは十分御存じだろうと思うのです。ただいま申し上げましたような点から、彼らの中には国費を平気で乱費するばかりでなく、法の運用さえ自分らに都合のいいように解釈することがございます。またややともすれば憲法さえ無視して国会を軽視する事例がしばしばある。これはついなま新しい問題でございまするが、先日もこの席であった。私の質問に対して、恩給局長は憲法違反だと言う。法制局長官は憲法違反じゃないと言う。政府は答弁を統一して後刻返事をするということでございましたが、いまだに返事がない。何が憲法違反だということでございますので、これはいずれ恩給の問題が審議されます際に答弁があると思いまするから、私はそのときに譲りまするが、そういうふうに憲法さえ勝手に解釈するというような事例が非常に多いのでございます。私はかって本院に行政監察特別委員会設置の際の賛成討論のときにも言ったのでございます。藩閥の時代にはそのすねをかじり、政党が盛んになればその中心に食い込み、軍閥の時代にはその爪牙となり、さらに終戦後は巧みに駐留軍首脳に食い入って売国的行為さえ行われておった事例があったと私は思うのです。これは私はかつて本会議におきましていろいろな事例をあげてついたのでございまするが、そういうことがあった。官僚機構の簡素化と一口に申しますけれども、余人を近づけない宮廷政治でございますから、なかなか容易でございません。そういう意味で私は先ほど来総理に御決断を願っておるのであります。総理は、よく知っておるからかえってやれないというようなことを言われておりまするけれども、これは知っておっても知らなくても、なかなかそう簡単に参りません。ローマは一日にして成らないのでありまするから、日本のこの官僚機構の民主化ということはなかなか早急には参りませんが、さりとて国民の信託にこたえなければならないところの国会として拱手傍観するわけには参らないのであります。どうか先ほど来要望いたしておりますような点について、今回の設置法の改正につきましては再検討をしていただく、私どもも再検討をいたしまして、そうして国民の納得のいくような方向に持っていきたいと思いまするから、総理の決意を促す次第であります。
 最後に私は二、三の問題についてお尋ねをしておきたいのであります。これは先般も石井副総理に御質問したのでございまするから、あるいは閣議の席上等でお聞き及びになったかと思いまするが、総理からじきじきに御答弁を願っておきたいことがある。それは何かと申しますと、今年は好むと好まざるとにかかわらず衆議院の選挙が行われます。この選挙に際しまして、公正に選挙が行われなければならないことは、むろん申し上げるまでもない。ところが官僚出身の議員あるいは官界から議員に立候補する人たちの今日までの行動を見ておりますと、どうも公務員の集団的な選挙運動が非常に多いのでございます。たとえば農林関係でございまするならば農林省の出先機関を総動員する、大蔵関係ならば大蔵省の出先機関を動員して、そうしてお前の税務署の管轄では何百票の札を取れ、お前の高知出張所の管轄では何票取れというふうに割り当てているのです。こういうことは総理は初耳かもしれませんが、公務員は月給が安いとか文句は言っておりますけれども、仕事を放擲して選挙運動に没頭いたします。これに協力しない者はみんな首にしております。その事例をあげろとおっしゃれば私はあげるし、人の名前も知っておる。そういうことは自分は役人の立場として、高知出張所長として、あるいは専売局の出張所長としてできませんと言って断わったところが、彼は直ちに首になっております。そういう事例がある。昨夕の朝日新聞の夕刊にも出ておりましたのを総理はごらんになったかと思いまするが、「公務員の選挙運動に新判例」というトップ記事でございます。これもやはりその一例でございます。しかし日本の書高裁判所はこれを有罪と認めて判決を下したので、私はまことに日本の最高裁判所は健在なりというので意を強うしたのでありますが、とにかくこういう問題はしばしばある。ことに先ほど来申し上げます通り、今年は選挙の年でございますから、総理は官紀振粛という意味からも、この点については十分に配慮の上格主管大臣を通じて出先に対してそういうようなことは絶対にすべきでない、もししたら国家公務員法あるいは地方公務員法、人事院規則等に照らして厳重に処分するという通達を出される意思ありやいなや、お伺いいたしておきたいと思うのでございます。
○岸国務大臣 多少私もうわさ等においてはそういうことが過去にあったことも聞いております。具体的な事実は存じませんけれども、いずれにいたしましても、今中川委員の御指摘になったようなことが行われるということは、これは国家公務員もあるいは地方公務員もそういうことの適当でないことは言うを待たないことであります。十分関係各省の各大臣に私はその御趣旨を通じまして、それの弊害のないように処置をいたしたいと思います。
○中川委員 総理の力強いお言葉を拝聴いたしまして私ども意を強うしたのであります。憲法第十五条にも「すべての公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない。」という規定がございまして、一部の奉仕者でないことはこれは申し上げるまでもないのでありますから、どうか日本の官紀振粛という点から申し上げましても、ただいま総理のお言葉のような厳重なる御処置を願いたいと思うのでございます。
 それから最後にもう一点だけ私は承わっておきたいと思う。これは設置法の改正とは関係がないというふうに解釈される向きもあるかと思いますか、必ずしもそうでありませんのでお伺いをいたすのでありますが、恩給の問題でございます。衆議院議員をしておりまして国家公務員となり、すなわち役人につきますと、自然に恩給が停止されますことは総理も御承知の通り、総理もおそらく恩給は現在停止されておると思う。ところがここに私どもが不思議にたえないことは、私どもの同僚である衆議院議員の方々で恩給をもらっておる者があるのであります。なるほど衆議院議員は国家公務員ではないと思う。これは選挙によって出たのであるから公務員でないということの議論もございます。しかし憲法の第四十九条を見ますと、「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」ということでございまして、国からいわゆる俸結をとっておることには間違いないのであります。従って公務員が議員になって公務員になった場合に、恩給が停止されるということは、国から二重の報酬を受けることのできないという意味も私はあると思う。それが大きいのじゃないかと思う。従って総理を初め役人になられた方々はすべて恩給が停止される。ところがただいま申し上げます通り、議員は一企業一会社から俸給をもらっておるわけではございません。国庫から俸給をもらっておる、しかもその上にさらに恩給をもらうということになりますと、国庫から二重の報酬を受けるということになるのじゃないかと思う。そこで私どもの職責は、申し上げるまでもなく国民生活の安定をはかるということでございまして、先般来問題になっておりますように、恩給の問題につきましても、自分のたよりとする主人を戦場で失ったり、あるいはかわいい息子を失ったりした者の、それもほとんど下の方の人だけの公務扶助料――普通恩給ではございません公務扶助料を、少しでも上げてやっていただきたいと私どもが主張いたしましたのに対して、政府も御賛成をいただき上げていただいたのでありますが、それが今日、月二千九百円を三千九百円に千円上げてもらっただけでございます。未亡人で子供を二人も三人もかかえておる者が、三千九百円ではどんな片いなかでもやっていけないと私は思う。それでも喜んでおります。岸総理大臣が最後にああいう決断を下して下さった。内容については異議がございますが、そういうことは別として、そういう気持で裁定を下して下さったということに対しましては喜んでおる。月に三千九百円しかもらえない。私どもの歳費は決して多いとは申しませんが、とにかく相当の歳費をもらっておるわけであります。この上にさらに恩給までとるということが果して法の上において許されるかどうか。あるいは法の上において許されるとしても、国民生活の安定を期さなければならない私どもの良心に聞いた場合に、これが妥当であるかどうか。この点について私は総理の御所見を承わっておきたいと思うのであります。
○岸国務大臣 恩給法上による恩給を受けておる者が他の職について、さらに給与なり報酬をもらうという場合におきまして、私は二つ問題があろうと思うのです。一つは、そのついた職責が何であろうとも、これがかりに民間の会社に打った場合においても、非常に高額な所得になるのに、さらに恩給法によるところの恩給を国庫から受けるということが妥当であるかどうかという考え方による高額所得の制限の問題がございます。それからもう一つは、今中川委員がおあげになりました理由のいかんを問わず国家から報酬を二重にもらうのはどうかというお考えがあろうと思います。今日の恩給法の建前から申しますと、恩給というものはいわゆる公務員として国家に特別の関係を持った人々に対して、それの多年の勤務に応じて恩給を支給するという建前になっております。それ以外の、たとい国家との関係でありましても、そういう公務員という恩給法が対象としておるような勤務内容に関係のない職についておる者については、恩給法の適用とは別個のものとして、これが支給されるというのが今の法律の建前でございます。その人がさらに公務員なりに恩給が支給されると同様な職務について報酬を受ける場合とは違った、議員みたいに恩給法の適用を全然受けない勤務に従事しておるところの者が給与を受けることは、たとい国からでありても、それは今の建前からいうと差しつかえない。ただ、さっき申しました高額所得についての認定なり制限というものは、すべての収入を通じて考えられるということに取り扱っております。従って法律上からいっても、私はそう区別していることもある程度の理由はあると思う。しかし今度は、そういう法律を離れて、社会観念の上から、一般の常識なり広い見地から、そういうことが果して妥当であるかどうか、あるいは公正であるかということになりますと、これはまた別の意味から十分検討してみなければならぬ。今日のところは、いずれにしても議員諸君に対する国家の待遇というものについても、社会一般のいろいろな経済関係や議員の活動等から見て、これが果して妥当であるかどうかという問題も今ずいぶんと論ぜられているような際でありますから、今の法律をすぐ変えることが適当であるかどうかということは、なお十分に研究してみないとなかなか簡単には言えない問題である。ただ全体からいって高額のものについては、議員であろうが民間であろうが、これはやはり制限すべしということが一般の社会通念からも是認されるけれども、今の議員の場合に、ただ国家から受けるからという理由だけでそれを制限することが妥当であるかどうかということについては、もう少し議員の待遇の問題ともあわせて考えて決定すべきものではないかというふうに思います。
○中川委員 大体総理の内意はわかったのでありますが、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の第六条にも、「各議院の議長、副議長及び議員は、他の議院の議員となったとき、その他如何なる場合でも、歳費を重複して受けることができない。」という規定がございます。さらに第七条では、「議員で国の公務員を兼ねる者は、議員の歳費を受けるが、公務員の給料を受けない。」こういう規定もある。今総理がお話になりましたように、長い間官吏をしていて、そうして民間の会社に行って非常に高額な所得をもらっている者もあります。しかし、そういう民間の会社とかなんとかということは別として、まずそういう点については、国民生活の安定を期さなければならないという仕事に日常携わっております議員としては、率先垂範して――この問題は法律的にこうだからこうだと今総理がおっしゃるように、法律的にはむしろ疑義があるということは私も知っております。しかし、そういう問題は抜きにして、率先垂範をしなければならないという私どもの責任上から考えましても、これは国会議員として遠慮すべきものではないかというふうに実は考えておるのであります。この点につきましては幾ら私の意見を申し述べましても、法律的には実は私も多少の疑義を持っておるのでありますから、結論はとうてい望めないと思いますが、そういうことに細心の注意を払ってこそ国民は政治に協力するようになってくるのじゃないかと思います。国会議員が、ただ法律があいまいである、あるいは法に従ってとれるものだけはとるべしというような態度を――そういう態度はないといたしましても、事実がそうでありますならば、国民はやり政治に協力しないというようなことにもなるのではないかと思いますから、これらの点につきましては、賢明なる総理は十分お考えだと思いますけれども、さらに一つ御検討を願っておきたいと思うのであります。
○福永委員長 午前の会議はこの程度といたしまして、午後一時四十分まで休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三分開議
○福永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 防衛庁設置法の一部を改正する法律案、自衛隊法の一部を改正する法律案、国防会議の構成等に関する法律の一部を改正する法律案及び第二十六回国会より継続審査になっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を続行いたします。保科善四郎君。
○保科委員 私は、一国の安全保障は国の独立を達成する上において最も重要なものであると考えております。従って各国においても、この国の安全保障に関する問題は、非常に重要な問題としてこの問題と取り組んでおるわけであります。しかるに何というかわかりませんけれども、わが国ぐらいこの問題に対して不可思議な、全く現実離れのした議論の行われている国は私は世界広しといえどもないのではないかと思うのであります。ことに政府もまた与党もこの問題に対してはすこぶる消極的であって、どうもことさらに避けようとしておるような感さえ私には感ぜられるのであります。そこで私は今から総理に対して防衛の基本的な問題に関しまして御質問を申し上げたいと思うのでありますが、どうぞあまり上手でなくてもいいから、率直に一つ御答弁並びに御所信の御開陳をお願いいたしたいと思います。
 この防衛問題におきまして最も基本的なものの一つは、一般国民、政党、政府及び直接防衛に任ずる人々の防衛意識の強弱であると私は考えております。そしてその防衛の意識は一にわれわれが何を守るのであるか、またこれに対する脅威は何であるかということを明確に認識することが一番重要な点であると私は信ずるものであります。政府は昨年五月二十日に国防の基本的方針を明らかにいたしております。「国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われた時はこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守る」、こういうことを明確にいたしております。また岸総理は、昨年の六月二十二日にワシントンにおけるアイゼンハワー大統領との共同声明におきまして、「国際共産主義は依然として大きな脅威であることについて意見が一致した。」とこう述べておられます。私はこの二つのことは、わが国の防衛の基本的な立場を反映しておるものと考えます。従ってこの点を国民にもっと明白に了解させるために、一そう積極的な努力を払うことが肝要であると思うのであります。そして真に国民の理解と心からの支持を受けることが、ほんとうに役に立つ防衛力の建設の要諦であると考えるのでありますが、この点に関して総理の率直なる御所見を承わりたいと思います。
○岸国務大臣 防衛の問題は言うまでもなく独立国にとって最も重要な問題であります。この問題に関して国民の間に十分の理解とこれに基くところの強い防衛の意識か必要であるという保科委員のお考えは、私も全然同感であります。しこうしてこの防衛の目的は、いわゆる国の安全保障にあり、他から侵略されずに平和を作り上げるということにあるわけでありますが、その平和ということは、言うまでもなく民主主義によるところのわれわれの自由と平和という、この上に立つものをわれわれは守ろうとしておるということをはっきりと認識する必要かある。今日の国際情勢の大勢を見ますると、私は、この人間にとって最も必要な自山、しこうして恒久的な平和というものが脅かされておるというところに世界の不安があり、また各国がそれぞれ不安を感じておるのでありますから、これに対する、今お話しのような防衛意識、またその防衛の目的とする真髄を十分に国民に理解してもらい、国民がこぞって防衛意識を強めるということが特に必要であると私も痛感いたしております。
○保科委員 次に、ただいま申し上げました国防方針において、「外部からの侵略に対しては、将来、国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」こういうように述べておられます。私はこれはまことに現実的であり当然であると考えております。現在世界いずれの国でも単独に防衛の目的を達成し得る国はないと考えます。しかるに米国との集団安全保障体制の強化によるわが国の防衛につきまして、わが国の一部に異議を差しはさむ者があるのは非常に遺憾に考えるわけであります。総理はこの際この点について明白に御見解を述べていただきたいと思います。
○岸国務大臣 御指摘のごとく今日の国際情勢を見ますると、一国で完全に自国の安全を保障し得るという国はないといっても過言ではありません。あるいは米、ソが非常に強大な防衛力を持っておりますので、この国は自分の力で自分を守り得るということが一応考えられるかもしれませんが、ヨーロッパの諸国あるいはその他の諸国を見ますると、どうしても一国でもって自分の国が他から侵略をされず、平和が維持されるということは望み得ない情勢というのが、今の国際情勢であります。従ってこの間において自分たちの安全を保障するために、いろいろな集団的な方法によってその安全が保障されておるというのが現実であると思います。しこうして私どもは国の外交の中心もそうでありますし、あらゆる面において国際連合を中心として世界の恒久的平和を念願いたしております。従ってこの憲章の精神に基いて将来理想的な世界の安全保障体制が、そして恒久的平和が作り上げられることが望ましいと私は考えております。しかし敗戦後における日本の安全をどうして保障するかという問題に関しましては、いわゆる日米安全保障条約というものが作られて、これによって日本の安全が保障されてきておりますし、また日本の自衛力を国情及び国力に応じて漸増して、われわれは将来一応われわれの力でもって日本の安全を保障しようという努力を続けていっておりますけれども、先ほど申しましたような国際情勢下において、日本の安全を保障するために今日日米安全保障体制というものか維持されていかなければならぬということは当然であると思います。
○保科委員 次は、わが国ではソ連の人工衛星の打ち上げ成功とか、あるいはICBMの実験成功等による非常に活発な心理戦によって、世界の戦略体制は変化したというような錯覚を起しておる者かあるように考えます。しかししさいにその実態を検討してみますと、究極兵器と称せられるICBMの完成というものは早くも二年後であると想像されます。またその命中精度の点においても問題があります。そして他方またアメリカにおいてはアンチ・ミサイル・ミサイルというようなものがそのうちにでき上るというような報道もあるのであります。従ってここ当分の間は圧倒的に優勢な米国の戦略空軍がやはりものを言うのであって、またIRBMの生産の開始や、これが自由諸国への配備によりまして、むしろ自由語国側の戦略的地位が上ったとも考えるのであって、もし一部の人の言うように、世界の戦略情勢に変化が起るというようなことがありとすれば、これはむしろソ連の心理戦にひっかかって自由世界の結束がゆるむということにあるのじゃないか、私はそう考えておるのであります。ところがわが国の一部にはソ連の心理戦のお先棒をかついでおる者も多々ある、これによる民心の動揺も一部にあると思います。従って総理はこの際進んでこの点についてはっきりした見解をお示しになりまして民心の安定に資していただきたいと思います。
○岸国務大臣 国会におきましてもしばしば応答をいたして、私の所信を明らかにしておりますように、最近における科学技術特に軍事方面における驚異的な新兵器というものは、将来の戦争の様相を変えてきておりますし、また世界の力の均衡に関しましても、将来どういう変化を及ぼすかわからぬというふうな一応の考え方も成り立つと思うのです。私どもは恒久の平和をあくまでも願い、安定した平和ということを考えていく上においては、こういうことよりもさらに進んで、話し合いによってこういう問題に関する安定した基礎が国際的にでき上るということを望んでおります。しかし現実の問題といたしまして、最近の人工衛星の打ち上げや、あるいはICBMの一つの実験的な成功ということが、直ちに世界の情勢を変えたのであり、防衛の従来の考え方を根本的に無意味ならしめたもののように論ずる一派の人がおりますけれども、私は決してそうじゃない、将来それは人間の科学の発達、軍事上におきましても、その他におきましても非常な原子力の利用というようなものを中心としての驚異的な発展というものが、人類のあらゆる面に変化を及ぼしてくるということは想像にかたくないところでありますけれども、今日そういうことにおいて非常な優越を誇示しておるソ連といえども、従来の普通兵力に対しては依然としてこの強大なものを持しており、また諸外国においてもその普通兵器によるところの防衛力に対しては、依然としてこれを維持しておる。また世界のどっかに起るところの戦争でも、常にそういうものだけを使用しての侵略であるとか、戦争か起るのが唯一の場合であるということは考えられない情勢のもとにおきまして、われわれはやはり従来からとってきております国情、国力に応じた自衛力を強化し、またそれについては、特に最近の科学兵器の発達等も考えまして、十分な科学面における研究なり開発を進めていって、質的の向上をはかっていく、そうして日本の安全を保障するということは、私は決して基本において変るものでない、こう思っております。
○保科委員 次に総理の御意見を伺いたいのでありますが、国防会議とかあるいは日米安全保障委員会、こういうような重要な国家安全保障に関する機関をもっと積極的に活用していただきまして、国家の安全保障に関する問題とかあるいは世界の情勢に関するごく真摯なる意見をここで交換をいたされまして、その討議の結果で差しつかえのないものは適時にこれを国民に公表しまして、国民全体の中におのずから国際共産主義に対する脅威を除き得るような態勢を整えることが非常に重要だと私は考えておるのでありますか、これに関する総理の御所見を伺いたいと思います。ことに日ソ関係あるいは日中関係が、ますます交通がこれから頻繁になるようになるわけでございますが、同時に私は国際共産主義国家か、その目的のために手段を選ばない策謀を行いつつある現実もこれは無視することができないと思います。従って、国家の安全保障に対する施策を十分にこの際考えてこれを積極化する必要があると思うのでありますが、こういう観点からしましても、私は防諜法のようなものをすみやかに制定しまして、諜報活動や国内に不穏な策動を起すような、こういう者に対する防止に備える必要があると考えておるのでありますが、この点に関する総理の御所見を伺いたいと思います。
○岸国務大臣 今日の一国の安全は一国だけでもできないし、また国の防衛については国民がこれに対する防衛意識というものを高めていかなければならぬということを先ほど申し上げました。従ってこれがためにやるべきことというものは、いわゆる狭い意味における防衛力の増強とかいうものに限られるものじゃなくして、いわば国政全体を通じて国民が十分に国際情勢の正確なる分析と認識、この上に立って日本の防衛を完備ならしめて、そうして直接間接の侵略に対して十分な備えをしなければならぬという強い覚悟と認識を持つことが何としても必要であり、またそういうふうに持っていくことが、政治のあらゆる面において考慮されなければならぬことでございます。しこうしてこの具体的の防衛方の、いわゆる陸上、航空、海上の自衛隊を中心として、何をどういうふうに増強するかとかいうような問題に関しましては、これはもちろん一年や二年でできるものでありませんから、やはり長期計画を立て、これに対して国民にも示せるものは十分に示して、理解をもって協力を願うというようにしなければならぬものだと思います。
 国防会議であるとか、あるいは日米安全保障体制のもとにおける日米の合同委員会というようなものは、常に今申しましたように正確に国際の情勢を分析し、判断し、その上に立って国力に応じ、国情に適した方法によって日本の安全を保障していく。しこうして国民がそれを理解して国民が安全感を持つように、国民自身がみんな備えを固めていくというところで初めて日本の安全というものが保障され、防衛ができるものだ、私はかように考えております。
 そこでわれわれは、そういう意味において、今日の国際情勢におきましては直接侵略だけではなしに、間接的な侵略に対しても備えをしなければならぬ。その問題に関して従来日本国内における共産圏等の諜報活動というものも、相当活発に行われているということも事実であります。しこうして今日までの法制でもって、日本の国家機密を十分保護する手段が欠けておるということも事実であります。しかしそれでは直ちに防諜法を制定すべしということに関しましては、これはいろいろ憲法との関係もございますし、あらゆる点から慎重に研究をしなければならぬ問題であります。しかし従来からの日本の状態を見ますと、そういう面において非常に欠陥が多い。従っていわゆる間接侵略というような問題に関しては、日本の安全保障の点におきましては、非常にまだ欠けておるということは私自身考えております。防諜法の問題につきましては、今言うような意味において十分慎重に検討をしなければならぬ問題である、かように考えております。
○保科委員 最後にもう一つお伺いをいたしたいと思いますが、二月十九日に中共と北鮮の共同声明で、中共軍の北鮮撤退意思が表明されました。この声明の中には国連軍の南鮮撤退軍を要求するようなことが強調されております。また日本政府はこれら両国に対し非友好的方針をとっているというような非難もいたしておるのであります。もし国連軍が南鮮を撤退するようなことになったらどういうことになるか、その影響は日本に対して一体どういうものになるかということは、日本の安全保障に関する重大問題であります。従って国民もこれに対して無関心であってはいかぬと思うのでありますが、こういう立場から日本政府の立場というものをはっきりさせる必要があるようにも私は考えるのでありますが、これに対する総理の御所信を伺いたいと思います。
○岸国務大臣 私は根本の考え方としては、世界の平和を進めていく上におきまして、大きな強国が他の国のいろいろな問題に干渉するというようなことはなるべく避けるべきものである。従って一国か他の国に特別の何かの意図を持って干渉するというような事態をなくすることが望ましいという考えを持っております。しこうして各地域における現実の事態を収拾し、そこの安全を保障し、そこにおける平和を維持するためにこれを撹乱するような勢力に対して、何らかの措置をとる場合においては、世界の多数国が入り、あの崇高な国連憲章の精神に基いて世界の平和を維持しようという立場をとっているこの国連の場において、そういうことが討議せられ、これによって平和を維持するために、あるいはあるところにおける擾乱を防ぐためにその軍隊を出すというようにやるべきものであって、一国が何らかの意図を持って一国に駐在するというようなことはなるべく避けていくことが望ましいことであるというのが私の従来の考えであり、私はそういうふうに考えております。
 今の北鮮と南鮮の問題につきましては、朝鮮半島における事態か日本の安全の上に非常な影響を持っているものであり、従ってその朝鮮半島における情勢に関しましては、日本国民が非常な深い関心を持っているということは、私は当然であり、また持たなければならぬものであると思う。しかしながらここにおけるいろいろな事態の推移につきましては、私は先ほど申しましたような見地から、日本政府が単独にどうするということではなしに、国際連合を通じてこれが処理されることを望んでいるわけであります。
○保科委員 以上各般にわたって防衛の基本的な問題に対して総理の所信を伺ったのでありますが、非常に明確な御答弁をいただきましてまことに感謝をいたします。
 これでもって私の質問を終ります。
○福永委員長 淡谷悠藏君。
○淡谷委員 私は岸総理大臣に米軍の撤退と自衛隊の増強の関連につきまして、若干お伺いしたいと思うのであります。さきに政府が立てました防衛六ヵ年計画、さらにこれを三ヵ年に短縮するという基本方針は、人工衛星その他の新しい科学兵器が実現した今日でもこれを変更する御意思はないのでございますかどうか、まずその点から伺っておきます。
○岸国務大臣 昨年度私どもが立てました国防のこの基本方針につきましては、今の現状においてこれを直ちに変更するという意思は持っておりません。
○淡谷委員 総理大臣は昨年米国を訪問しまして、両国の共同防衛の方針につきましてはいろいろな点から検討されたようでございます。その際米軍が日本を撤退する構想を明らかにされたように伺っておりますが、これはまず地上部隊からいいまして、いつごろ撤退を完了するおつもりか、率直に一つお答え願いたいと思います。
○岸国務大臣 地上部隊の戦闘部隊はすでに撤退を完了いたしております。補給部隊並びに空軍等につきましては、日本の自衛力の増強とにらみ合せて逐次撤退をされるという何であります。それの明確な時期はまだ明示することはむずかしいかと思います。
○淡谷委員 地上部隊の撤退は大体きまっておるようでありますが、これまた自衛隊の基本の部隊十八万という数は何か関係かございますか。今回一万増員するというのは、自衛隊自体の必要から増員するのであるか、あるいは米軍を撤退させる上において何らかの申し合せ条項があってそういうようにするのか、その辺の関係を明らかにしていただきたい。
○岸国務大臣 この一万名増員の問題につきましては、昨年の国防会議におきまして、私どもが長期の防衛力増強の目標を定めましたものの一部であります。その他空、海上等におきましてそれぞれ目標を作りました。その陸上に関するものの実現をしようというわけであります。別に地上部隊の撤退に関して、アメリカとの話し合いによってこれを増強するという性質のもではないのであります。
○淡谷委員 確認しておきたいのですが、もし国会等の決定によりましてこの一万の増員が不可能になった場合でも、米軍の地上部隊の撤退の方針は変りがないということに了解してよろしいのですか。
○岸国務大臣 先ほど申しましたように、すでに陸上部隊のうち戦闘部隊については撤退を完了いたしております。別にこの増強の問題と米軍の撤退の問題の間に私は関連性があるとは考えておりません。
○淡谷委員 続いてお尋ねいたしますが、海上の諸部隊並びに航空関係の諸部隊の撤退は、これまた自衛隊の増強と関係があるやに伺ってきたのでありますが、これは何かその点に申し合せができておるかどうか。日本の自衛隊の持っております力が、現在駐留しております米軍の兵力と同じものでなければ撤退しないというような話があったのかどうか、明確に伺っておきたい。
○岸国務大臣 昨年の私とアイゼンハワー大統領との共同声明にも表われておりますように、そのときの話し合いでは、とりあえず地上部隊の戦闘部隊を撤退する、さらに海上航空部隊については、日本の自衛力の増強とにらみ合せて、将来これを撤退するということが表示されておりまして、そういう何でありますが、一定のそれについての数字的な関係における具体的の計画が話し合われたわけではなかったのであります。
○淡谷委員 日米共同宣言に従いますと、合衆国は日本の防衛力の増強に伴い、合衆国の兵力を一そう削減することを計画している、とございますか、これはどうも米軍の撤退と自衛隊の増強の間には非常に関連性かあるように思われます。従って空軍もしくは海軍の日本撤退というものは、自衛隊の増強の性格あるいは量等に非常に関係があるようにわれわれは思量いたします。日本の自衛隊の増強が米軍の撤退できるような域に達したかどうかという判断は、日本側か独自に持つべきものなのか、それとも米国側の了解を得て成り立つものなのか、その点はどうでございましょうか。
○岸国務大臣 米軍が日本に駐在しておるのは安全保障条約に基いたものでありますから、これが撤退につきましても、今話し合いをいたしました自衛隊の防衛力の増強に伴ってこれらのものを撤退する用意があるということにつきましては、これは両国で十分話し合って私は行われるものだと考えております。
○淡谷委員 どうもその点が私非常にぼかされているように思うのであります。随時撤退していくことは明らかでございましょうが、これは日本の自衛隊の増強に関連をしておる。そうすると日本の自衛隊の増強の目標というものは、現在駐留する米軍の装備その他のものを目標にして増強するのか、あるいは日本独自の立場に立たれるのか。岸総理は先刻以来、単独な国防はあり得ない、従って国連軍に加盟するまでは日本は米軍との安全保障条約の上に立って共同防衛をするのだと再々言われておりますが、そうなりますと、自衛隊の増強自体が多分に米国側の意見をいれた増強になるやにとられると思うのでございますが、その点はどうでございましょうか。日本の独自の防衛力というものは持ち得るでしょうか。
○岸国務大臣 これは国防の基本方針でもきめておりますように、また従来わが国がとってきておりますように、われわれが日本の国情と国力に応じて逐次自衛力を増強するということを明らかにいたしておりますように、私はこの見地から日本が独自にこれを増強していくべきであると思う。しかしそれでは日本の安全保障というものが、先ほど来御議論がありましたように、日本独自の力で、日本だけの力で、日本の自衛力だけでできるかというと、それはできないから、安保条約によるところの共同防衛体制が作られておるわけです。それの運用におきまして、われわれからいえば、外国軍隊の駐在というものは、国民感情の上からいっても、いろいろな意味からいっても望ましくないことであるから、なるべく撤退を何しなければなりませんけれども、さればというて、日本の安全をお留守にしてこれを達するというわけにはいかないわけです。従ってわれわれが自主的に日本の国力に応じて増強する自衛力と、それから安保条約によるところのアメリカ側との共同防御の見地からする合同委員会等においてその実態を検討しつつ、これとにらみ合せて米軍の撤退というものが行われる、かように考えております。
○淡谷委員 日本の兵力が現在米国あるいはソ連等の持っておる兵力に相拮抗するようなものになり得ないことは明らかであります。そういたしますと、現在日本に駐留している米軍というものは、日本の安全保障のために駐留するのだという首相の考え方――日本の自衛隊が独自の兵力を増強しましても、とうてい現在の米軍の兵力とは拮抗しがたいという前提に立ちますと、米軍の完全撤退ということは何年たっても実現できないというふうにも予想されますが、総理は、最後まで日本と米国とは日本の国土において共同防衛の任に当るんだという観点に立って、国防計画を立てられておるかどうか、この点も確かめておきます。
○岸国務大臣 国全体の持っておる防衛力、ソ連、米国が持っておるようなものを日本が持つということについては、日本の国力からとうていできぬじゃないか、これもごもっともであります。また私は、日本の防衛、他からの侵略を防ぐという意味で、アメリカが持ち、ソ連が持っておるものと同じものを日本が持つ必要はないと思います。それからアメリカの軍隊が駐留しておりますけれども、これはアメリカの持っておる総軍備力から言ったら、その一部分でございまして、私は、将来の安保条約による安全保障の共同防衛ということは、さらに国際連合の集団的な防衛なりというものは、そういうものが発動するということになりますれば、いろいろな機動力の問題もありましょうし、時間的な問題もありましょうし、いかなる場合においても日本を防衛する、どういう侵略が来ても、あらゆる何に備えておくところの大きな軍隊を、たとえ米軍であろうと何であろうと、それを日本に常駐しておく必要のないことも、言うを待たないところであります。従って、日本の将来自衛隊の増強とにらみ合して、私は、決してアメリカ軍の撤退ということが永久にできないものであるというような考えは、持っておりません。
○淡谷委員 一体総理は、在日米軍の持っておる装備とか、あるいはいろいろな防衛の方針とかいうものを、的確につかまえておられるのでありますか。またこの在日米軍が日本の自衛隊と何らかの共同操作によって国の防衛をしておるといったような実例がございましたら、私お聞かせ願いたいと思う。全然自衛隊とは別個の方針で動いておるのか。現在でもすでに、米軍と自衛隊との間には、防衛上若干の共同操作が行われておるのかどうか。この点も一つはっきりしていただきたい。
○津島国務大臣 お答えいたします。駐留米軍と、日本の自衛隊側においての共同防衛に関してのいろいろな取りきめがあるかということと、また駐留米軍の装備その他はどうなっておるか、こういう点だったと思います。自衛隊なり駐留軍当局におきましては、密接なる連絡をいたしておりまして、万一の場合に処するような十分の了解は持っておるわけです。しかしながらこれが正式な共同防衛の計画であるといったものにはなっておりませんが、十分なる連絡をとっておる次第でございます。なお駐留軍の装備については、各部隊について大体どういうのがあるかということも、これらの接触面においてお互いに話し合っていく、こういう次第でございます。
○淡谷委員 これは総理に特に御理解願っておきたいと私思うのでありますが、最近自衛隊が増強の線をたどって参りましてから、事務的な手続を経ないで米軍の持っております基地に入り込んでおる事例が、出て参りました。これは石川県の小松だとか、あるいは岡山県の日本原とかいうところで、このケースが具体的に現われて、当委員会でもしばしば津島防衛庁長官に質問をして、まだ満足な答えが得られない格好にあるのでありますが、装備等においても、いつの間にか自衛隊が米軍の装備の中に入り込んでいるような事実を、お聞きになったことはございませんか。これは米軍とも自衛隊とも区別がつかないもので、渾然融合して、非常に完全な共同防衛の形をとっておるようなことを、お聞きになったことはございませんか。
○岸国務大臣 御質問でありますけれども、ちょっと抽象的でございまして、私具体的の何につきましては、そういう事例は承知いたしておりません。
○淡谷委員 それじゃ具体的に申し上げますが、岸総理は、再々、核兵器の持ち込みはしないんだ、米軍による持ち込みもこれを断わる、と言っておられる。昨晩の読売新聞を見ますと、岩国の第一海兵航空連隊に、A4Dスカイホークの完全編成一カ中隊が配置されているということが、海外電報によって報ぜられておる。この事実はお知りでございますか、具体的に私は御質問いたします。
○岸国務大臣 私は第一、その事実は具体的に承知しておりません。防衛庁長官からお答えをいたします。
○淡谷委員 防衛庁長官のお答えがある前に、私一言、岸総理のお答えを要求したいのですが、あなたがいかに力み返っても、こういうふうな事実が現われて参りますと、あなたが予知せざることが、どんどん実際の上で起ってくる可能性が多分にある。もしこのことが真実であるとしたならば、あなたは強く米軍に抗議するだけの決意をお持ちでございますか。まずそれから尋ねておきます。
○岸国務大臣 私は事実を明らかにいたしませんから、私がかねて国民の前ではっきり出しておりますように、核兵器でもって自衛隊を装備しない、それから日本のわれわれの同意なくしては、米軍が核兵器をもって装備することは認めないということを申しております。もしもその事実に反するような現実の事実であるならば、私は十分これに対して、アメリカ側の反省を求めるつもりでおります。ただ私事実が明確でございませんから、その事実に対してどうするかという御質問に対しては、お答えができないわけであります。
○津島国務大臣 お答えいたします。ただいまのは、駐留軍の航空機の問題であったと思います。駐留米軍の空軍の保有しておる飛行機は、F100、B57F100D。また今御指摘になりましたのはスカイホークだと思いますが、これはきわめて少数でありますが、来ております。これは長官として十分情報を得ております。これは、空軍の全体にどういう飛行機があるかという問題であります。しかしながら、総理から申し上げましたように、これが核兵器を持ち込んでおるかということにつきましては、そういう事実はございません。
○淡谷委員 これは津島長官に、岸総理のおられる前でお答え願いたいのですが、あなたの把握しておられますA4Dスカイホーク完全編成一ヵ中隊というのは、どういう装備を持って、どういう員数を持っておるものか、承わりたいと思います。
○津島国務大臣 これはきわめて小さい型の爆撃機でございます。これより大きいのも、すでに来ておるのがございます。そういうものでございまして、この所在は十分連絡がついております。重ねて申しますが、これが核兵器を持ち込んで行動――練習するといったようなことはないということを、私は承知いたしております。
○淡谷委員 これは、伝えられるところによりますと、小型の原爆の搭載が十分できるし、現在持っていないかもしれませんけれども、持とうと思うと、原爆を搭載した爆撃機にもなり得るものだというふうにいわれておりますが、その点どうでございますか。
○津島国務大臣 きわめて小型なものでございます。しかして、これが爆撃機としてそういったような機能を果し得るの作用もあると思います。かつて問題になりましたオネストジョン、これも、それ自体核弾頭をつけないで利用できるものであり、本邦にこれが参りましたときにも、そういった意味において、核兵器と関係なくしてこれが受け入れられているというか、向うから装備された、こういう事態と同様でございます。
○淡谷委員 岸総理にお尋ねしますが、これは十分に原爆搭載の爆撃機になる機能を持っておる。可能性があるのを持ってきまして最大能力を発揮するのが、やはり最も新しい原爆搭載によるものだと私は思うのですが、鉄砲を預けてたまを込めていないからいいのだという考えではなく、少くとも将来原爆の爆撃機になるような危険な兵器の供与は受けないという立場にお立ちになれないでしょうか、これは非常な危険性をはらんだものです。この点はどうですか。
○岸国務大臣 最近の科学技術の進歩からいろいろな兵器についてわれわれは研究もしなければならぬ、開発もしなければならぬものがたくさんございます。しかしいかなる場合においても、今まで私どもが申してきておる核兵器の問題については、はっきりした観念で私は押し通しておりますし、将来も押し通す考えでおります。ただいろいろな飛行機あるいは艦艇等の発達から見まして、それにこれが積み得るじゃないか、積もうと思えば積むこともできるものだということから、直ちにそういうふうな発達したところのいろいろな科学兵器を核兵器であると言うこともできないことはもちろんでありますし、またいざという場合には積むこともできるじゃないかというようなことから、あらかじめそういうものは一切受け付けないということは適当でないだろう、かように考えております。
○淡谷委員 津島と長官にお尋ねいたしますが、この岩国の第一海兵航空団におけるような事例は全国にどれくらいあるのですか。
○津島国務大臣 どういう御質問ですか。そういった航空機がほかにもあるかという御質問ですか。
○淡谷委員 これはむしろ私の方からお尋ねしたいところなんですが、この配属されるという形は、自衛隊がこの完全編成一中隊というものを自衛隊自体として動かすのか、あるいは米軍がこの岩国の第一海兵航空団に配属になっておるというのは、米軍のままで配属になっておるのか、その点を明らかにしておきたいのです。
○津島国務大臣 米軍の使用しておりまする航空基地の岩国、そこにそれが若干おるということで、自衛隊とは全然関係のないものであります。これは米駐留軍のもとにあるものであります。ほかにも航空本地は幾つかありますがその一つでございまして、自衛隊とは何ら関係のない問題でございます。
○淡谷委員 他の米軍の基地でこういう事例はございますか。また日本の自衛隊でこれらの航空機を持っておるような航空自衛隊はございますか。
○津島国務大臣 米駐留軍の航空部隊においてこれと同様のものを持っておるところは承知いたしておりません。なお航空自衛隊ではこういった種類の航空機は保有いたしておりません。
○淡谷委員 これは岸総理にお尋ねいたしますが、米軍の海軍あるいは航空隊が漸次日本を撤退するようにという方針で自衛隊の増強をされておることは明らかになりましたが、その場合今の演習地や基地における等のごとく、いつの間にか米軍の装備に日本の自衛隊が入り込んでしまったという事例が起る危険性を多分に感ずるのでありますが、米軍が撤退したあとの装備を自衛隊が受けると申しましょうか、あるいは演習地の踏襲と申しましょうか、そういう点についてはもっとけじめをつけて、はっきりした点に立っておやりになった方がよろしいと思いますが、総理はどう考えられますか。
○岸国務大臣 米軍が撤退した後における施設をどう利用するかということにつきましては、政府としても十分各方面の考えを聞き、よく検討いたしまして、これが適当なる利用を考えていかなければならぬと思います。あるものは自衛隊に引き継いで利用することが適当なものもありましょうが、そうでない場合もありましょう。従いまして政府としてそれのあとの利用については最も有効適切な方法を研究してこれを引き継いでいくつもりでおります。
○淡谷委員 最後に一点確かめておきたいのですが、核兵器というものは将来の戦争においては非常に新しい役割を持つものだと思います。この核兵器を使い得る兵器が、これを使わないからよろしいという総理の考え、あるいはまた長官の考えですが、使えるものを使わないでその兵器だけを持ち込むということは一体どういう必要があるのでしょう。もしも核兵器を持ち込まないならば、核兵器を持ち込み得ないような兵器でも、十分日本でもこれは自衛隊のあれもできましょうし、また米軍等も核兵器を持ち込まないならば、何も核兵器を搭載し得るようなもので日本を守る必要はないと思いますが、こういった矛盾は一体どうお考えになりますか。
○津島国務大臣 お答えいたします。核兵器を装備し得るものであるが、同時に一般兵器として使用し得るものをなぜ持ち込むかという御質問だと思います。自衛隊に関する限りは、現在の状態においてはそういった装備をいたしておりません。駐留軍についてはそういうものもあり得ると思います。しかしながら現在そういったものの受け入れをわが方は認めないという方針で一貫して参っておるのでございます。しかしそういう兵器は効率は下るが、実際においては航空機の場合は、防空、領空侵犯その他防衛の上において十分貢献し得るものだと思っております。
○淡谷委員 もう一点伺わせてもらいたいのですが、岸総理は当委員会でしばしば共産主義陣営というものの脅威を説かれます。そうして国際連合等でわれわれが共同防衛をするに至るまでは、米国と提携して共同防衛をやるのだ、そうしますと、米軍が日本に駐留する限りは共産主義陣営――どこの国をさすのかわかりませんが、共産主義陳営とは明らかに敵対的な関係に立つというお考えでございましょうか、あるいは日本独自の考えでソ連にもアメリカにも偏向せざる独自の立場をとられるという意味でございましょうか。その点を一つ明快にお答え願いたいと思います。
○岸国務大臣 御承知の通り日ソの間におきましては共同声明において正常なる国交関係が開かれております。われわれはあくまでもその意味において友好関係を進めるように努力していることは言うを待ちません。また中共との間におきましても貿易関係においてはこれを増進していくという方針をとっております。ただこれもしばしば防衛庁長官等から申し上げたと思いますが、今のわれわれのきめておりまする防衛計画というものが、どこかにいわゆる仮想敵国というものを具体的に持って、これに対してなにしておるのかという意味におきましては、われわれは今具体的の仮想敵国というものを持っておるのではないのだということを申しております。そういうふうにあらゆる面において私どもは世界の平和、あらゆる国との友好関係、経済の交流等を進めていくという方針等を堅持しておりますけれども、私がここで申し上げるまでもなく、世界の大勢、国際情勢というものは、そういう一面のなにがあると同時に、各国の間における関係というものは、さらにいろいろな防衛力を増強し、国防力を増強し、その間における冷たい戦争と称せられるもの、いろいろなことが行われておるというのが現実の状況であります。ことに国際共産党というものの活動は、これはとにかくわれわれのごとく、自由主義、民主主義を人類の幸福をもたらし、平和をもたらし、繁栄をもたらすところの基本であると考えておる者に対しましては、そういう立場から見ますると、これに対する相当な脅威があるということも、これも現実の事実であります。こういうところに基いて、われわれは日本の安全を常に保障していこう、そうして世界の平和を増進していこう、あらゆる国ともできるだけ友好親善の関係を深めていこうというのがわれわれの立場であると思います。従いまして国際共産主義の脅威というようなことが、具体的にどこを相手にどうするというふうな問題とは、私どもは切り離して考えておるわけであります。
○淡谷委員 具体的な問題として、米国との共同防衛をやっておることは、中国との貿易あるいはソ連との漁業交渉の上に何らかの障害になるようにお考えになりませんか。
○岸国務大臣 私はそういうふうに考えておりません。と同時に、たとえば中ソ同盟条約、すでに発表されております、これらを見ましても、相当露骨な条項が含まれておりますけれども、私は日本側がそれをたてに、ソ連と日本との共同声明に盛られておる友好関係を何か阻害しておるという考えは毛頭持っておりませんし、また同様にわれわれは、今の情勢のもとにおける国際条約に基いて、安保条約、共同防衛の体制があるということが、正当な漁業条約の交渉やその他貿易を増進しようというような考えを阻害しているというようなことは、私はあり得ないことだ、こう思います。
○淡谷委員 自衛隊の増強が米軍そのままの装備を持つのじゃないか、ひいてこれがまた米軍の司令下に置かれるのじゃないかということは、非常に重大な問題であります。これはあくまでもそういう点を将来明らかにされまして、できるならば平和憲法に基いた自衛隊の解消まで持っていくのが、平和国家としての理想じゃないかと思うのでありますが、特に兵力を増強する場合は特定の国をささない、国際共産主義の脅威というような言葉だけでいつも国民の対抗意識を高揚さしていこうと思ったら、これはとんでもない間違いだろうと思うのであります。むしろこの際は、さっきもいろいろ保科委員の御質問にお答えになりましたけれども、思想謀略だとかそういうふうなものに対して武力を持って対抗するなんていう、この時代おくれの考えはもうお捨てになりまして、これは堂々とこっちも思想には思想という態度でいく、外交には外交でもって向うならば、何も私はこのなけなしの予算を削って武力を持たなくても、十分日本の平和国家というものの存立はできる、こういう観点に立っております。これはあえて御答弁はいただきませんが、いろいろ自衛隊の増強につきましても、そういう関係上、現実の場面で非常に疑わしい面が出て参りますので、慎重にこの問題は御遠慮下さいますように希望いたしまして、私の質問は打ち切ります。
○福永委員長 辻政信君。
○辻委員 きょうは国防のきわめて重要な根本問題について、真剣に質問いたしますから、総理も信念を持って明確にお答えをお願いいたします。
 その第一は、第二十七国会で十一月の五日、社会党の河野密委員の質問、すなわち岸総理はどういう基本的な考え方で日本の政治を行われるかと質問いたしました際に、総理は、「私は御承知の通り東条内閣の一員でありました理由をもって、戦後三年余にわたって戦犯容疑者として拘置されたのであります。私が再び釈放せられ、政治家として復活するに当りまして、私の信条は、この私の経歴を通じて二つのことを強く私の頭に印したのであります。それは、一つは日本をして再び絶対に戦争に巻き入れしめないということ、一つは日本の今後の繁栄と日本の発展を考える上において民主政治を完成する、」「これが私が政治家として再び一そうの努力をしようと決意するに至った動機であります。自来この考えに私は徹しておるわけであります。」こういうふうにお答えになっております。日本を絶対に戦争に巻き入れないこと、もう一つは民主主義を守り抜く、これが岸総理の政治家として立つ最大の信念である、まことにみごとな御心境でありますが、この信念が総理大臣としての施政方針の根本であるか、外交も防衛も一切の国内政治は、果してこの二つの大方針の上に立っておるかどうかをまずお伺いいたします。
○岸国務大臣 これは今お読み下さいましたように、私自身の政治家として再び御奉公するに至った私の心の底からの動機であり、またそれを貫いて私が総理として政治責任を持ちます以上は、あらゆる面においてそれを中心として考えておるつもりでございます。
○辻委員 戦争が起るという危険があるから、それに巻き込まれないという決意が生まれるのであります。起らないという戦争に巻き込まれないという決意は生まれて参りません。従いまして、起り得る戦争は何かと考えれば、米ソの本格的な戦争か、もしくは米ソを背景とした局地戦争であろうと考えられますが、御見解いかがでございますか。
○岸国務大臣 国際情勢の変化がどういうふうになるか、また戦争という言葉で申しておりますけれども、具体的に私ども日本の防衛を考える上からいうと、日本が侵略される、その侵略をされないということもその中の任務の一つである、その侵略がどういう形式で行われるかということにつきましては、いろいろと専門家の間におきましても、国際情勢を分析していろいろと仮定を設けておりますけれども、今おあげになりましたことが唯一の場合である、それだけの場合だとこう結論をつけることは、私はこれからの複雑な国際情勢下におけるいろいろな変化の中において、それがすべてであると、こう論断することはまだ早いのではないかと思います。
○辻委員 理論としてはその通りでありますが、現実の世界情勢として、日本を中心としたアジアに万一戦争が起るとすれば、それは明らかに両陣営を背景に持った局地戦争だと私は考えるのであります。これはヨーロッパとかアフリカの端で起るのは必ずしもそうじゃないでしょうが、われわれは今日本の防衛を論じておるのであります。日本を中心とした現実の世界情勢を見ておりますと、そういう理念的な答弁では納得できない。アジアに起り得べき可能性のあるものは、南北朝鮮、南北ヴェトナム、こういうところをとらえてみれば、明らかに局地戦争であっても、その背後には両陣営というものがなければならぬのであります。そういうふうにはお感じになりませんでしょうか。
○岸国務大臣 南北朝鮮の問題あるいは南北ヴェトナムの問題につきましては、辻委員のお話しの通りだろうと思います。
○辻委員 それでは戦争に断じて再び巻き込まれないというあなたのかたい信念と、日米安保条約による現実の防衛方針とは矛盾するような感じを受けますが、矛盾はいたしませんか。
○岸国務大臣 どういう意味で矛盾をするとお考えになりますか、私はしかし戦争に巻き込まれないということは、第一は戦争が起らないようにするということが一つのなにだろう、そうしてわれわれの方から、これは憲法の条章から申しましても明らかなように、こちらから戦争をしかけるということは絶対にございませんが、だから侵略を受けないということについては、今の国際情勢から申しますと、日本がある程度の力でもって防衛されておるということが、この巻き込まれない一つの現実の原因をなしておると私は思う。そういう意味から申しまして、日米共同防衛ということが、日本の安全保障に役立っておると私は思いますし、そこに何か矛盾があるとは、実は考えておりません。
○辻委員 私は先ほど念を押したのは、その点があったからであります。総理は施政の大方針として、戦争を起さぬように努力するというならわかります。これはしかしながら、あなたのお述べになったのはそうじゃない、戦争に巻き込まれないようにしようというそのことは、戦争が起るという危険が前提に立たなければ、起らない戦争に巻き込まれないという信念は起ってこない。そこで問題は、米軍と共同防衛の方針で国内に米軍の基地を有しながら不幸にして米ソ戦争が起った場合、果してその渦中に入らずに済むのかどうか、済む方法があるならば教えていただきたい。私はないと思います。
○岸国務大臣 これは言うまでもなく日本の憲法のなにから申しまして、日本の自衛力というものは、他から侵略されない限りわれわれは発動する意思は持っておりませんし、またそれは許されない。他からわれわれが侵略される、もしくは何らかの形において危害をこうむるというときに、初めて自衛手段として出るわけでありますから、米ソの間の戦争が起るという場合におきまして、どういう形態で起るが、またそれは日本に対する直接の侵略が行われるかどうかという事態を見なければ――われわれはいかなるなにがあっても努力して日本が侵略されないような体制をあらゆる面から考えることは当然であります。また前提としても、米ソの戦争というものも起らないように国際政局の推移を作っていくということも必要でありましょう。それは別として、今あなたの御質問の範囲内においては、日本が侵略されるということであれば、私はそういう事態は許されないことであって、戦争に巻き込まれぬようにするということは、侵略されても手をあげて思うままにじゅうりんされるということじゃ絶対ないということ、これは申すまでもないことだと思います。
○辻委員 日本か自由主義陣営との提携を緊密にしまして、共同防衛をやろうという方針、この方針は自由主義陣営の総力を結集して共産主義陣営の侵略を未然に防ごうというところにねらいがある。万一戦争が起った場合には、犠牲を覚悟して立つだけの決意と用意がなければならぬはずであります。日米共同防衛の方針を堅持する限りにおきましては、日本の防衛はNATO諸国と同様に核兵器で武装し、誘導弾基地も認め、秘密保護法も当然お作りになって、そうして力をあげて起さないようにするのが本筋じゃございませんでしょうか。世論をおそれたり、選挙をおそれて、必要を認めながら明らかにそれをできないというようなことでは、これは疑惑を生ずるのであります。NATO諸国は現にやっております。世論の反対にかかわらずやっておるのは、力の防衛によって起さないようにしようという、そこをねらってやっておるのであります。それならばなぜ日本はちゅうちょなさるか。それでもあなたは核兵器を持たない、持つと戦争の中に入るという御懸念があるなら、いっそのことスイスやスエーデンのような他国の防衛に依存しない独特のものをお作りになる気持ならわかりますよ。アメリカと手を握ろうといいながら、アメリカの戦略上必要なりといわれておる核兵器の武装、それから誘導弾の基地、秘密保護法の制定――NATO諸国は、現にドイツもフランスもやっておる。それをなぜあなたは踏み切ってそれだけの決意をお持ちにならないか。力によって戦争を防ぐのならば徹底しなければならぬはずであります。いかでございますか。
○岸国務大臣 これは御承知の通り、日本の持っている自衛隊のような性格のものと、NATO諸国が持っておる防衛ということは私は本質において違うと思う。日本の憲法、国の建前というものが違うのであって、従って共同防衛と申しますけれども、かりにアメリカが侵略された場合に日本が行ってこれを助けなければならぬという義務は、安保条約からしましてもないのであります。日本が従来自衛力を何ら持たない状況で平和条約に入りましたから、その後における国際情勢からいって日本の安全を保障するためのアメリカとの共同防衛であって、私はその点においてはNATO諸国や何かの地位であるとか、その持っておる防衛力と日本の自衛力というものは本質か違っておると思います。
○辻委員 安保条約の精神は、日本の負担すべきものは日本だけであって、極東の安全というものには日本は寄与しないのだというふうに理解してよろしゅうございますか。
○岸国務大臣 私はこのいわゆる極東の安全云々ということは、米軍かそういうなにを持っておるだけであって、日本のなにはそういうものを持たないと思います。
○辻委員 それでは別の観点からこの問題を掘り下げていきたいと思います。それは、この共同防衛でやるか、それとも中立的なスイスのような方式をとるかということによりまして、日本の持つべき防衛力の計画というものが根本的に違って参ります。アメリカと手を握る場合においては、これは両国の国力と国情に考えまして分担すべき防衛の任務というものが出て参ります。この任務に基いて日本は主として陸上に重きを置き、アメリカは主として海上と空中に重きを置く、こういう防衛の性格が生まれて参ります。そうじゃなしに日本が独自でスイスのような防衛を持つという気持ならば、むしろ国の力の大部分をあげて、陸海を犠牲にして防空兵力に重点を置かなければなりません。今立てておる計画はこの二つのどっちに属するものと総理はお考えになっておりますか。
○岸国務大臣 しばしばお答え申し上げましたように、日本の一国の力だけをもって日本の安全を保障するということは、日本の国力、国情が許さない。そこで安保条約によるところの日米共同防衛に基いてやっていく。日本は国力、国情に応じてその防衛力を漸増していって、そうしてみずからの力で自分のなにをしていかなければならない、こういう立場をとっております。そこで問題は、われわれが立てておるところの国防計画というものか専門家やいろいろな観点から、御批評や御意見はあろうと思います。しかしやはりわれわれはこの日本の現在置かれておる国力やあるいは国情から見、安保条約の活用の面からいいまして、どういう一つの目標を定めて第一次区五カ年計画をやっていくかということについて、陸上の兵力は十八方、航空は一千三百機、海上は十二万四千トンとかいうような年次計画を立てておるというのが現状でありまして、これが究極のものではないことは言うを待ちません。今後日本の国力が増してき、日本の科学技術その他の日本を取り巻くところのいろいろな情勢というものの変化を見つつ、またこれは第二次以下考えなければならぬことでありますが、今一応の第一次に考えておるのは、そういう見地に立って考えておるわけであります。
○辻委員 アメリカとの共同防衛に徹する場合の日本の防御の形と申しますか、やり方か二通りあると思います。それは一つはアメリカの中古兵器をもらって、アメリカに似た軍隊のスケールの小さい小型のものを作るという型、これが一つであります。もう一つは、アメリカの持たないものを日本が特に持つというこの二つの型があるわけであります。前の型は、いわゆる植民地的性格の軍隊、こういわれます。これはアメリカに従属的な性格を持っておると思う。そうじゃなしに、アメリカ軍の持っておらない欠陥を補うような独創的なものを日本が持てば、これは従属性をなくした自主的防衛と言える。現在進んでおる計画はそのいずれに属するとお考えになりますか。
○岸国務大臣 これは日本の終戦後における自衛隊の今日までの発達の段階からいい、また実際の日本が持っておる国力また防衛産業の力その他から申しまして、現在の状況は前者に近いものであるということが言えるだろうと思います。
○辻委員 総理が訪米なさいましたときに、わが方から提出された整備目標すなわち陸十八万、海が十二万四千トン、空中が千三百機というこの日本の防衛計画を、アメリカは歓迎したと共同声明されております。これは日本の防衛計画がアメリカの戦略構想に一致したからこそ歓迎されたものである、かように考えられるのであります。従いましてこの整備目標を勝手に変えることは国際信義に反し、当然アメリカの了解を得なければならぬと常識的には考えますが、今まで総理のたびたびの御答弁では、アメリカに相談することなく、日本が、自主的にこの目標は変えられるというような答弁をなさっています。果してそれが国際信義に反せず、共同防衛の戦略に反せずにいけるかどうか、それをはっきり承わりたい。
○岸国務大臣 アメリカに示しましたこの防衛力の目標というものは、私が渡米する前に、国内におきまして国防会議において、従来からのいろいろな事務的検討に基いたものの結論として、政府としてこれを決定いたしたわけであります。しこうしてアメリカの方も、日本がそういう一つのしっかりした計画でもってこういう目標を立てて、この防衛力を漸増するという一つの考えをきめたということに対しては、それは十分向うとしてはアプリシェートしたというのが当時の状況であります。別に、これをアメリカとの間に約束したとかいうような問題ではありません。ありませんけれども、これは先ほど来防衛庁長官からも申し上げているように、とにかく安保条約に基く共同防衛をやっていく上におきましては、この日米両方に緊密な連絡をとり、それからこの安保条約に基いての合同委員会もできて、両方の理解と協力のもとに、両国民の国民感情やその他にも合致するようにいって、そうして防衛の目的を達しよう、こういう友好関係の上に立っておりますから、私は変更するということを、向うの承諾を得なければ変更できないというような性質のものでは絶対ないと思います。しかし、そういう日米の間の防衛力に対する関係がなっておりますから、そういう場合において、事前に話し合うというような事柄は、私は当然に日本はこうする考えだということを通告するということは、これは当然にやってしかるべきことだと思います。しかし別にそれが条約上の義務であるとか、共同声明の上におけるところの道義的の責任であるとかというふうな角ばったものではなく、これは今言った安保条約に基く共同防衛その他の連絡、両方の理解、協力という上から申しまして、変えた場合においては、これを通告するというのは、それは当然のことだろうと思います。
○辻委員 では、陸上十八万の最終目標は、その後検討した結果適当でないという結論をお持ちになった場合においては、こちらで自主的に変更して、それを合同委員会に通報するというので、できますか。
○岸国務大臣 それで差しつかえないと思います。
○辻委員 この計画におきまして、陸上を十八万にふやす必要はない。最新の世界の軍事情勢から考えて、陸を少くして防空部隊ということは、大体の党内の空気でありました。ここにおられる保科委員も、ことし一万人ふやすことは最後まで反対なさったのであります、その党内の反対を押し切って、政府はこの法案を御提出になっておるのであります。私は、近代国防の見地と日本の置かれておる戦略体制から見まして、最大の欠点はどこにあるかと言うたら、相手のミサイルに対する防空組織がほとんど皆無である、陸上が十六万おります。不十分ながら十六万で形は整っているが、この海空の防衛部隊を育てる芽を出させるという方向に一万の三十億をお使いになったら、国民も納得すると思うのでありますが、何がゆえにそれだけの反対を押し切って、一万増員を本年度の計画にお載せなさいましたか、それを承わります。
○岸国務大臣 これは私ども、法律において設置されて、この日本の国防の計画の根本なり目標なりというものを検討する国防会議におきまして、十分に審議、検討してできた問題でありますし、その後の情勢において、政府としてはこれを変更するという必要を認めないという見地に立ってやったわけであります。こういう問題でありますから、いろいろ御意見の相違があることは、これはあると思いますが、私は十分に、これを出すにつきましては、当然政府、与党との間におきましても、議論があったと思いますけれども、私の方としては与党の賛成を得て出したものでありまして、その間に不統一はないと思います。
○辻委員 それでは別の観点からこの問題をお尋ねいたします。人工衛星、大陸間弾道弾、こういうものの出現によりまして、アメリカの戦略が大きく変化しようとしておるのであります。その徴候は、昨年十月発表されたダレスの「アメリカの政策における挑戦と報復」という論文に表われております。お読みになっただろうと思いますが、総理はこのような事態に対しても、なお従来の計画に再検討の必要はないとお考えになるか。このダレス論文は、アメリカとしましては、非常な大きな変化だと私は見ております。
○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、将来に向っていろいろな変化が起ってくるということは、もちろん頭において考えなければならぬと思いますが、現実の事態として、大きな変化がすでにどんどん現実の問題として現われておるというふうに言われる人がありますけれども、どうも事態が何か違いやしないか。ダレスのそういう論文におきまして、この一論文でアメリカの方針がすっかり変って、現実の策がずっと変ってきておるというところまでは、私はまだいっていないと思う。それで日本の地上部隊については、いろいろ議論があるようでございますけれども、しかし日本の地理的立場、日本の交通の状況、日本の国内における治安の状況、考えられる間接侵略の場合に対すること等をいろいろな見地から検討をし、また日本の陸上部隊の持っておるいろいろな職責、それにふさわしいところの編隊なりあるいは隊種といいますか、というようなものをいろいろ考えてみますと、この程度のものはわれわれ、専門的の立場から検討したいろいろなデータに基いて必要であるという見地を今のところ政府として変える必要はないし、また変えることは適当でないというのが私どもの考えでございます。
○辻委員 ただいま総理は、ダレス論文はまだ実際に行われておらないというような御答弁であります。私はダレス論文の思想が実際に行われておる、こう見るのであります。どこに行われておるか。それはNATO会議に初めてその思想が出ておるのであります。従来アメリカの基本的な態度は、アメリカの陣営にある国が共産陣営から侵された場合には、間髪を入れず大量報復をするということがアメリカの陣営の防衛の基本でありましたが、この人工衛星、弾道弾の出現によって、アメリカはそれを反省しまして、大量報復を押え、局地の侵略は局地ごとの自衛力を増加して、局地ごとに解決をしていけ、これがNATO会議に起った最近の動きであります。そのためにNATO諸国は核武装をやれ、IRBM基地を設けよ、こういうことが結果となって現われておるのであります。現われておらぬのではない、現に現われておる。知らぬのは日本だけである。そういうふうに進んでおるのであります。架空の一つの理想論じゃなくて、政治の方針を示したのがダレス論文です。のみならず、ドイツやフランスやイギリスはそれを受け入れておるかにかかわらず、日本だけが共同防衛の原則に立ちながら、あくまで核武装はしない、こう言い張ることが果してできるかどうか、こういう態度を続けていきますと、口先で、共同防衛をお唱えるになっても、これはアメリカが信用しない。核を持ったら戦争に巻き込まれるから、戦争がいやだから――、戦争がいやならあくまで持たぬという信念を押し通しなさい、その信念を押し通すときには、最悪の場合はアメリカから見捨てられてもかまわない、スイスやスエーデンのような自衛中立の独創的な軍備を持つというようなところまで踏み切らなくちゃいけない。アメリカと手を握りながら、いざというときには引くぞという態勢で、共同防衛が本格的にできるか、また握ったものが入らずにおるという、この虫のいいことができるようななまやさしい世界情勢とお考えになりますか、はっきりとお答え願いたい。
○岸国務大臣 日本とアメリカの安保条約による共同防衛というものの意味を私は先ほど申し上げましたが、辻委員のお話でありますると、何か双務的に日本にも義務があるような前提に立ってのお話のようでありますが、現在の安保条約の共同防衛の立場は、先ほど来私が繰り返して申し上げておるように、日本の自衛と、日本を侵略から防ぐというために、最も有効な方法として、両国の間に、平和条約締結後に起る一つの防衛の、自衛方の空白についての問題であって、NATOやSEATO等の条約の機構とは全然その意義が違うと思うのです。従いまして、今いろいろお話がありましたけれども、日本の立場としては、従来われわれが考えておる通りでよろしいというのが私の考えでございます。
○辻委員 私はこの両陣営のきびしい対立は、もはや八方美人的な、おのれさえよければいいというような感じは成り立たないと思うのです。単に防衛ばかりじゃありません。最近の外交問題を見ましても、ソ連がオホーツク海を閉鎖しようとしております。アメリカさえサケ・マスを制限し、輸入制限をやろうとしております。李承晩からもなめられておる。これら外交上の行き詰まりが――防衛と、同じでありますが、やはり右するか左するかはっきりしろということを要求しておるのじゃないか、こう感ずるのであります。ものの見方があまりに甘過ぎる。世界情勢はきびしいでございますよ。アメリカと運命をともにされるのか、それとも両陣営につかないでいこうとされるのか、あるいはソ連圏とも仲よくしようとされるのか、もう踏み切るときにきておるのであります。あいまいな態度は許されません。貿易も防衛も、また外交も同じでございます。いつまでも八方美人的な態度を、とるのは、世界情勢が緩和しておるときにはごまかしがききますが、もうその状態じゃないということを私どもは感じますが、いかがでございますか。
○岸国務大臣 日本の根本的の国策の方針としては、私はきわめて明瞭に申し上げておるつもりでございます。われわれが外交上におきましても、いわゆる三原則の方向によって事を処していくということも明瞭に申し上げております。日米の協力関係をあらゆる面において強化していくということも、私どもしばしば申して起るし、またワシントンにおけるダレス、アイゼンハワー大統領との会見においても、そのことははっきりしております。しかしわれわれは同時にソ連とは一切交通しないということではないことは言うを待ちません。中共とも一切の交渉を持たぬということでもないことも言うを待ちません。今の世界の安定した究極の平和を考える意味から申しましても、私は八方美人とかあるいは両岸とかいろいろな批判がありますけれども、当然こういう場合において、何か立場を一方に偏した何でもって、一部の人はアメリカ一辺倒で行けという議論もあります。あるいは一部の人はソ連一辺倒で行けというふうな考えもあるようでありますけれども、日本の進むべき道は、決してそういうことじゃない。しかし根本の考え方については、すでにわれわれが自由民主主義の立場を堅持するものであり、自由主義の国々との提携を深めていく、そうして共産主義に対しては、われわれはその脅威に対してあくまでもこれを排撃していくという考えは持っております。そうかといって、共産主義の国とは一切交通しない、口をきかないということを言ってもおりませんし、またそういうことが決してものをはっきりして、日本の立場をよくするものではないと私は考えます。
○辻委員 具体的な問題に入って御質問いたします。最近発表されたイギリスの国防白書、これは世界各国の論議の中心となっておるのですが、総理はそれをお続みになって、日本の防衛計画に検討、反省する余地があるとお考えになりませんか。
○岸国務大臣 私はイギリスの国防白書につきましては、一応これを読んでおります。いろいろ将来の問題として考えなければならない、また私は日本の国防計画というものは一応定めておりますが、これは将来に向って永久にこれを変更しないとか、検討しないということを申しているわけではないのでありまして、先ほど来申しておるのは、今度の予算に出しておるものを何かここで変更する意図はないとか、あるいは予算にこういうものを出したのはどうだとかいう議論に対して、私は現在のところこれを変更する意思はない、こういうことを申しておるのでありますが、世界の大勢のおもむくところも十分国際情勢というものを検討して、誤まりのない見通しを立てなければいけませんし、また諸外国の国防に対する考え方等につきましても、十分なる検討を加え、同時に日本自身の防衛計画についても、常に検討し反省していくことは当然であろうと思います。
○辻委員 イギリスが徴兵制をやめまして、長期の志願制に切りかえて、七十七万という三軍の常備兵力を半減し、三十七万五千にしております。これは大きな変化であります。しかしながら、日本の陸上自衛隊は依然として二年在営制、頭数をそろえて、どうにか形だけをつくろうという感じがしてならないのであります。陸上自衛隊ができましてから今日までの数を見ますというと、まことにおもしろい数になっておるのであります。警察予備隊が発足以来、三十二年末までに募集した隊員の総計、これが三十一万九千八百人です。二年間訓練して、退職手当を持たして除隊さした数が十万九千五百四十六人になっております。この中から予備自衛官を志願して残ったものは八千九百八十三人、十万人は日本の防衛に何らの貢献がなくして社会に出てしまった。そうしてその歩どまりはわずかに九千人足らず、一割足らずの歩どまりであります。これに対して防衛力の、防衛充実に使った金は、分担金を合せますと八千四百六十八億九千四百万円、八千四百億円の金を使って歩どまりがわずかに九千しかない、これほど不経済な軍備が一体世界のどこにあるのか。私はこの観点から総理に率直に申し上げるのは、二年在営で頭数をそろえて粗末な教育をして送り出したものは役に立たない、予後備制度が日本にはないのですから。それよりもこれを三年、五年に延ばして長期志願になさって、教えたものはそのまま隊にいついて、進級もできる、昇給もできる、幹部になれる、こうしておきますれば使った金はそのまま百パーセントの歩どまりになって、粗末な兵をつかまずに精鋭な幹部を持っておるということになる。そこに最大の欠陥があるわけです。でありますから一万ふやすということをやめてしまって、長期志願兵に切りかえれば、十五万の幹部で十六万、十七万の粗製乱造にまさるほんとうの力を持っていける、これをなぜお考えにならぬか、数をふやすよりも制度を改めろということを強く言うのであります。現状におきましては陸上自衛隊へ入った隊員たちは入隊の日から除隊後の就職を心配しております。二年たったら出るにきまっておる。出たときにだれがやってくれるか。そのときのために自動車の運転手を志願して、運転手の免状をとろうとしておる。これが隊員の率直な気持ちでございます。それをお考えになるときに、この二年在営制が徴兵ならともかくとして志願兵であります。三年、五年延ばすことによってりっぱなものが職にありつき幹部になれるというならば、今までより以上に素質のいいものが入って参りますよ。数を必要としない。しかも歩どまりは百パーセントだ。なぜこのように現在の制度をお変えにならないか。その御着想があるかないか、お伺いをいたします。
○福永委員長 津島国務大臣。
○辻委員 津島は要りません。きのう聞いた。
○福永委員長 まあ発言を許しましたから、あとでさらに……。
○津島国務大臣 ただいまの辻委員の御説はもっともの点があるということはよくわかるのです。しかしながら私は自衛隊の組織また法政が一定の年限の契約によって募集されたものでございます。お説のように長期の募集か可能であるかどうかという問題で、実際問題とにらみ合せて、今日では海空において三年、また陸に関しては三年、また本人の希望により二年となったわけであります。この二年間のものが多数なのであります。しかしこれは制度として強制募集という制度がないのでございます。しかし一定の人数は満期になった場合に、これを補充しその措置をするために、今日の期間か二年、三年という制度になっておるのであります。満期においてこれが更新してさらにあと二年、三年というのもございます。しかしながら除隊になることは本人の自由でございます。しかしてその中から予備自衛官というものもこれまた自由意思によって、そういう制度ができておるわけでございます。しかし定員といたしましては予備自衛官は一万五千人持っております。ところが実際においてこの制度に応諾して予備自衛官になっているものか今日は約九千人程度のものでございます。来年度においてはこれをぜひ一万一千人に増したいということで、それに要する予算に計上しておるわけでございます。お説のごとく幹部を長期に訓練し、また教養を与えてりっぱな幹部をもって組織して、一般の隊員を少くするということは、いわゆる構成の上からいっても、また実に望ましいことでございまするが、現在の制度において強制する方法を持っておらぬわけでございます。その意味で今日のわが陸上自衛隊の現在の増員計画をするゆえんもそこにあるのは、御承知のように、軍事専門家であられる辻委員も御存じのように、各国においては陸上部隊は大体二、三倍以上の予後備というのがあるのです。これは法律の力でいつでも召集できるものがあるのです。ところがわが国においては、約九千しか今日では予備自衛官として持っておらないわけでございます。その関係からいって非常に制度の上においてやむを得日ない事態があるということも十分御了承願えるだろうと思うのであります。なおまた一万人の増員についての先ほど来のお話を承わっておりまして、私の今回の提案は、国防会議の決定によって十八万にしよう、これは三十五年を目標といたしまして、まずさしあたり十六万を一万人だけ増加願いたいということで、予算が計上されているわけでございます。大体陸上部隊については御承知のようにわが国の地形――総理もこの点にお触れになりましたが、その他からいって、山岳地帯が多いということから、どうしても十管区の必要を認めておりまするが、そういった多数のことは望めないから、これで六管区混成旅団という十単位の防衛を陸上においてとりたい、その一端として今回第十混成旅団を増したい。陸上自衛隊全体の一万人増勢は、混成旅団の五千数百人の上にあらゆる機械化部隊、通信部隊等をもって、この一万人を二つ編成しようという建前になっておるのでございます。御承知のように、中部地区、また関東地区は人口四千数百万人おるわけです。またそういった意味においての必要からこの一万を増勢するのであって、今のような根本的の改編の問題は重大なる法制上の地位と関連があると思いまして、御意見は御意見としてまことにごもっともと思いまするが、現状において実行し得る可能な程度において、われわれは最善を尽したい、こういう存念でございます。
○岸国務大臣 私は今辻委員の御意見を承わっておりまして、非常に考うべきものがあると思います。ただこの問題は防衛長官もお答えをいたしましたように、また辻委員がその方の専門家であられますから、わかりますように、いろいろな今日の志願兵募集のことから現実に入っております者の問題をどういうふうにするかとか、いろんな点を技術的に十分考究してみないと、結論が出ないと思います。私はしかし辻委員のお考えにつきましては、大いにわれわれもそれを頭に置いて一つの検討をしてみるべきものだとこう思います。
○辻委員 先ほど防衛長官から御答弁を承わったのは、この前聞いておるので、私はお断わりしたのです。時間も惜しいから……。しかしあなたが十単位ということをしきりに言われますが、十単位をそろえることを文句を言っているのではありません。そろえようと思えばそろえる方法があります。それは現在一万の平時定員を一割減らせば出てくる。それを作るために増す。平時定員と戦時定員の差をつけておけば、二年でも応募者が少いのに、三年、五年では来ないだろうという見解は間違いです。二年たっても何にもなれない。進級もできないし幹部にもなれないのです。でありますから、現在の隊員は仕事がないから、二年間失業救済のつもりで行け、そうして退職金をもらって自動車の運転免許でももらってくれば何とか就職もできるだろう、これが大部分の考え方なんです。それではなしに、五年、十年置く、そうしていい者は幹部への昇進の道を開く、こうなさいますと、隊員の素質がよくなる。安定しておりますから、まじめにやります。そこを私はついておるのであって、現在の制度でむずがしいなんということはおよそ見解が根本的に違うのです。議論を蒸し返されておる。もう少しまじめに検討してもらえばできる。そうすれば量より質ということになるわけです。この貧乏な国があの失業救済のような者を集めてきて、二年間一万で三十億の金を使って歩どまりがゼロ、これほど不経済なことはございませんでしょう。総理大臣ほんとうです。でありますから、ことしは仕方がないが来年のこの自衛隊法には募集制度と人員補充の根本制度を検討なさって下さいということを言っておる。無理は申し上げておりません。それが入ってくる者に自信と希望を与える。現在は持っておりません。そして頭数だけふやそうという防衛は防衛にならない。これを言っておるのであるが、どうにもお聞きにならないのであります。総理大臣どうお考えになりますか。
○岸国務大臣 今申しましたように、私は辻委員のお考え自体には非常にごもっともなところがあると思います。しかし具体的に募集方法だとかいろいろな現状のものとの間を検討してみなければ結論も出まいと思いますから、そういう意味で慎重に検討してみたいと思います。
○辻委員 そこで海上自衛隊の問題です。海上自衛隊の整備目標もこの前議論しましたが、結論を簡単に申しますと、P2Vと駆逐艦で空中と水中で潜水艦を守ろうというのです。これはいわゆるアメリカの小型の旧海軍ということになります。そうじゃなしにアメリカ海軍の最大の欠陥が水中にある。ソ連の潜水艦は四百七十五隻、アメリカの潜水艦は八十隻しかない、この水中の欠陥です。これを日本が補うという意意味におきまして、数年前の国会から翼のある小型の潜水艦を作れということを言っておるであります。これはようやく長官もお認めになって、ことしは何とか研究費も増そうというところまで参りましたが、アメリカの持たざるものを日本が持つというところに日本防衛の自主性があるのでございます。同じ型のものを小さく持ってもだめでございます。水中を制するものが海上と水中を制し得るという観点に立ちまして、独創的な整備方針をお示しになっていただきたい、こう思うのであります。総理の御所信を伺います。
○岸国務大臣 実は私前の戦争当時の国務大臣の一人として、日本の商船隊その他海上の兵力等か潜水艦攻撃等のために非常に急速になくなった、それが国力の上においても非常に戦争遂行上に支障を来たしたことについて非常に深刻な体験を持っておりました。そこでこの日本の防衛をする上において海上の体制をどうするかという点についても、実はこれをきめますときに相当に検討をいたしました。もしも日本の商船隊やその他のものが同じような事態に瀕すると、食糧の問題を初め日本は大へんなことになるということを考えるわけでであります。ところがそれの出ておる案が当時の考えておったこととあまり進歩していない。ほかの面においては私ども予想してなかったようなずいぶん画期的な変化があるにもかかわらず、やはり今お話しの通り潜水艦でコンヴォイし、また空中からこれをなにする、それはなるほど飛行機の性能は当時と違っておりますけれども、その点に関しましても私も専門家にもその意意見を言ったことがあります。しかし諸外国の実例をずっと示されて、その点はやはりこの方法でいくことか一番いいというのが結論であって、それ以外に方法がないということであの案ができたのでございます。当時何か水中において潜水艦と特別の兵器についての構想、研究が日本にもあるということも、私他の方から耳にしたことがございます。その効果なりその威力なりというようなものにつきましては、まだつまびらかにいたさないから、十分にこれは研究をすべきものである、こういうのが私もその当時持った結論でございます。防衛庁においても研究を進めるということでありますが、今まだそういう道程でありますので、直ちにそれに切りかえる、今のままでは全然無意意味だということは、まだ私即断することはできないと思います。この研究ができまして、非常に有効なものである、威力があるということが明らかにされれば、これでもって切りかえるということはもちろん考えなければならないことであろうと思います。
○辻委員 これが有効であるということは、単なる抽象的な議論じゃなくて、私はこの前は模型まで持ってきました。基本設計図まで持ってきて申し上げておる。着相の段階じゃない。民間人が十年間私費を投じて研究をやつておるのです。でありますから、総理が防衛庁長官にやれとおっしゃれば、これはできることなんです。それはどうですか。やっていただけますか。
○岸国務大臣 今申し上げましたように、私は十分一つ研究を――辻委員が非常な確信をもってその事実をお話しになっておりますが、防衛庁でも研究はある程度しておると思います。今直ちにそれでやれ、これでもって変えろということはなんですか、少くともその研究を真剣に押し進める、防衛庁長官もそういう考えだろうと思いますが、総理大臣としてもそういう意見で防衛庁長官と話をいたします。
○辻委員 総理大臣及び防衛庁長官はそれに大賛成なんです。しかしその内部におる文官たちの抵抗が強い、あるいは旧式軍人の抵抗が強いのが現状なんです。その背後には船会社がある。もうかる船を作れということになる。海上艦艇の例をとってみても、たとえば警備艦を御発注になったか、あれを競争入札にすると価格は三割安くなりますよ。何がゆえに特定の商社を選んで随契にしなければならぬか。船会社の利益と結託したような防衛庁では仕方がない。独創的なものを、上からやったことは必ず実行するだけの気迫をもっていただきたい。総理も長官もいいと言いながら、下僚どもが判こを押さぬと手も足も出ないじゃありませんか。そういう事態にあるのが現状でございます。これは、このくらいにしまして、次いで訓練に移ります。
 この前、これは詳しく言ったから重複は避けます。十分御承知でありましょう、御報告なさったと思います。あの事態を総理はお聞きになって、防衛大学校というものは士官学校であり、自衛隊の幹部を作る最も大事なところに十二月十四日に学生か二日人と校長、幹事以下四十人がこれに加わって、ステーション・ホテルでダンス・パーティを開いている。教練は下手くそのくせにダンスはうまい。これで自衛隊の幹部ができるかということを言った。それに対しで長官は行き過ぎだと旨っている。槇校長はしゃあしゃあしている。槇校長の答弁を読んでみますと、校長は、婦人との交際というものも教育のうちの大事な部分を占めておると答えて何ら反省の色がないのですよ。士官学校というのは、世界各国とも歴戦の最も勇敢な優秀なものを校長にして、軍隊以上の訓練なしているのが士官学校です。それに投じておる予算は七億二千万円、作った校舎の費用は十五億ですよ。一人の学生に三十数万円の税金を負担しながら特定目的に作っておる学校の生徒が――普通の大学の生徒はアルバイトをやって苦労しておるときに、税金をもらっておる生徒がダンス・パーティをやり、校長以下それに列席してダンスをやるのが何が悪いといって私に食ってかかっている。この現場を見てきておる。そういうもので一体訓練ができるとお考えになるのですか。それは慶応大学の教授としてはりっぱな紳士でしょうが、世界のどこに私立大学の教授を士官学校の校長にしておるところがありますか。これは日本の独創的人事というなら別問題です。人事の根本を刷新しなさい、まじめにやって下さいと私は言うのです。あの状態を見ておった一般学生はどう言ってておりますか。アルバイトで夜おそくまで働いておるのですよ。それを長官は、多少行き過ぎだと思っておるか、校長は、てん然として婦人との交際は教育の重要な部門であるといって開き直っておる。こういう士官学校が一体世界にあるとお考えになっておるかどうか。
○岸国務大臣 私よくその実質を明らかにいたしませんし、そのことを取り上げて意見を言うことは差し控えたいと思いますが、しかし防衛大学の意義、そこでやっておる訓練、これはもちろん非常に重要なものであり、また今のような状態ですから、国際的視野に立っていろいろとやるべきことも多かろうと思います。しかしなんといったって将来幹部になる連中を養成する大事な機関でありますから、その教育というものは、一般の普通におけるところの大学その他の教育とは、また違った意義を持たなければならぬことも言うを待ちません。従ってその事実等につきましては、私どもあまりつまびらかにいたしませんけれども、今お話のような事態であるとすれば、私は防衛大学の教育としては適切なものであるとは言えないと思います。従って将来については防衛大学の設置の趣旨にかなうような教育方針をとるべきことは当然だろうと思います。
○辻委員 それではその総理大臣の言明を信じてこれ以上の追及はやめますか、私が心外に思ったのは、長官がまだ詳しいことを報告しておらない、これははなはだ心外であります。この前の委員会ではっきりあなたに申し上げております。きょうの質問は総理にそのまま聞くからということを……。
 次に大きな問題に最後に移りますが、アメリカか、ミサイルの研究においてソ連におくれをとった大きな原因があります。これは陸海空の対立であります。予算の面においてなわ張り争いをした。ソ連は独裁国家ですから、重点を向けた。それがアメリカの失敗であり、ソ連の成功であります。そこで日本の負けた原因の大きなものに陸海の対立かあったということは、東条内閣の閣僚として岸総理がだれよりも深刻に痛感されておるはずであります。新軍の建設において心すべきことは、この過去の過失を繰り返してはいけない、その弊を二葉の時期に刈りとらなければならぬのであります。現に自衛隊の中におきましてはアメリカのあの三軍対立の制度をまねて、その内部においてすでに対立のきざしがあります。陸海空の物資の調達において不経済の点があります。人事の交流において不便がある。訓練において統一を欠いておる。これをすみやかに統一すべきことは緊急の課、題であると思いますが、総理の御所見はいかがでありますか。十分検討した上できめるなんてことを言わずに、もうこの弊害というものはアメリカにおいて抜き差しならぬところにきておる。陸海対立が敗戦の原因であった日本、しかも新しい軍隊に同じような失敗のコースをたどらすのかどうか、この辺を抑えるのが総理大臣の大きな使命であると思いますが、いかがでございましょう。
○岸国務大臣 お話の通り、アメリカにおきましても陸海空の対立ということが相当にあって、これに対する批判もきびしいものがあるようであります。またおあげになりましたように、私自身の体験から申しましても、その間における弊害というものがいろいろと考えられます。今度防衛庁のもとに自衛力が陸上、海上、航空の三つを中心として増強されるという際に、われわれが過去において体験をし、また各国において批判を受けておるような事態を日本が繰り返すということがあってはならぬこと言うを待ちません。しこうして私もそういうようなきざしがあるやのことも多少耳にもいたしております。従って防衛庁長官及び防衛庁の関係者に対しましては、従来といえどもそのことについて十分の注意を促し、そういうような事態が起らないように十分に注意を喚起いたしております。しかし大事なことであります。あるいはまた具体的にいろいろなことを検討し、いやしくもそういうきざしが生ずるということであれば、二葉のうちにそういうことをなくして、そうして真に日本の防衛にふさわしい、また最も効率的な、国民から信頼を受けるようななににしなければならないこと言うを待ちませんから、なおこの上とも私は十分に戒心いたしまして、そういうような批判を受けるような事態のないように、この上とも十分な戒心をいたして参りたいと考えます。
○辻委員 次は防衛科学技術の開発、これは詳しく言いましたから、重複は避けますが、今の防衛科学の最大の欠陥はどこにあるかと言いますと、放射能に対しての防護ということを国のどこでも考えておりません。民間はもちろん大学でも。これは総理大臣の責任であり、防衛庁長官の責任で、放射能からいかに生物を守るかということは、大砲を作るより以上に重要な問題なんです。しかしながら十九億一千万円の理研の予算がそれにほとんど振り向けられておりません。この大事な問題に。西ドイツにおいては赤十字を中心として、学界と医学界と科学陣をあげてこの問題を専攻しております。日本は世界に先がけてその損害を受けておりながら、最も重要な問題が閑却されておると思います。そういう点は、小さいようでありますが、総理から一つ十分長官以下に戒告を加えられて、取った予算の款項目を変更して、そうしてこの緊急の最大欠陥を直すことを、防衛技術の最大の使命だという気持で御指導下さいますかどうか、これをお伺いいたします。
○岸国務大臣 放射能の防護についての研究というものを推し進めていかなければならぬことは、御意見の通りきわめて重要なことだと思います。ある程度の研究費も本年度はこれに盛られておるということであります。しかしながらもちろんそれが十分というわけでもございますまい。十分にできるだけ研究を進めていく有効な方法につきまして、予算の使用等につきましても、十分防衛庁と話をして研究して対処したいと思います。
○辻委員 最後に一問。これは私の最後の質問でありますからそのおつもりでお答えを願いたいのですが、事実私は与党の一員でありますが、今度のこの自衛隊法案にははなはだ不満であります。しかし与党、政府がきめたものだ。そのきめたものを与党の私がこの席上で反対することは非常に心苦しい。そこで私の総理に対する最後の質問は、ことし十六万を十七万にふやした、これも反対でございますが、これを依然として十八万に向って将来もう一万ふやそうとなさるのか。これだけの反対を押し切ってことしは一万ふやしたから、アメリカに出した防衛計所の陸上十八万という目標は御破算にして、十七万で将来陸上をふやさない。その金でもって防空火力をやるということをここで言明なさるかどうか。研究してからじゃ承知できない。研究の段階は過ぎておる。それをもし総理がここで言明なさいますならば、今度の問題は涙をのんで通すが、さもなければ遺憾ながら与党の一員の私がこの法案には賛成できない。はっきり申し上げます。最後の質問といたします。
○岸国務大臣 この十八万の目標を定めましたことは、先ほどからも私お答え申し上げておる通り、国防会議においていろいろなデータに基いてわれわれは一応の案を立てておるわけであります。政府もそれを承認して既定の方針といたしております。本年度はその一部として一万を増強しておる。今の私の心境をお尋ねになりますならば、私は来年もその計画通り一万ふやすと申し上げるよりはかはないのであります。それを今日私がここで撤回するということは、遺憾ながら申し上げることはできませんが、しかしそういう御意見もありますし、また私どもは自由民主党を基礎としての内閣でございます。一ぺん国防会議できめたことは未来永劫こわさないということではありませんから、それぞれの機関なり何に諮りまして、変えるべきものがあるならば変える。しかし私は今日のところは、今言ったような政府の方針に基いておりますから、遺憾ながらあなたの御意見のように、ここで明確に変えるということは申し上げられないことを御了承願いたいと思います。
○辻委員 今の御答弁ではまことに私は納得できません。今までは少々の問題はほおかぶりで通しましたが、これは私の政治信念でありますから、残念ながら与党の一員でございますが、本案にと反対の意思を政治生命をかけて申し上げまして質問を終ります。
○福永委員長 木原津與志君
○木原委員 去る一月二十九日の施政方針の中で、総理が現在の国際情勢に対処する中で恒久的平和機構を構想することを示唆するような演説をされたのを、私は記憶しておる。その点をお忘れになったかもしれませんが、一節を読み上げますと、こういう演説の趣旨であったことが報道されております。「現在、世界の平和は、東西両陣営の間の力の均衡によって保たれておりますが、最近における軍事科学の進歩は、相互に相手を追い抜こうとする激しい競争を招いてとどまるところを知りません。このような、力による安全の保障が、一時的な平和維持の役割を果していることは事実でありますが、これによっては、決して、恒久の平和はもたらされないことも明らかであります。いかにすれば、真の平和を、もっと安定した、もっと恒久的な基礎の上に築くことができるか、これこそ、今日、全人類が当面している最大の課願であり、わが国にとっても、国家の安危にかかわる政治の眼目そのものであります。」こういった実に含蓄に富んだ施政方針演説をされている。この貫く意義は、現在の国際間の対立の中で力の政治によって真の平和を貫き通すことができないという岸総理の信念に立って、それならばどういうことによってほんとうの恒久的平和を築くかということに非常に苦悶されておる節を見受けて、私どもは非常に意を強うしておるのであります。そこでそれならばぜひとも真の恒久平和、わが国の安全を達成する構想を総理から一つ十分に納得のいくほど具体的に聞きたいと思うのであります。まず総理が抱懐されておる恒久的な平和機構というものについて具体的にお示し願いたい。
○岸国務大臣 何といっても現在の国際情勢を見ますと、東西の両陣営に分れてこの間の緊張が非常に緊迫感を与えた、世界に不安感を与えた、この緊張をいかにして緩和するかということが一つの問題であろうかと思います。今のように力と力とをきそっていくということを繰り返し、また続けておると、その緊張は緩和しないと私は思います。またそういう意味において国連を中心に軍縮の問題が取り上げられて、この緊張を緩和する具体的の事実をこれによって示そうとしておる問題もありますけれども、これも行き詰まっておるのが現在の状況であります。また人類を一つの恐怖のどん底に追い込んでおるものは一般軍縮以外に原水爆の使用、またそれが相次いで両陣営において無警告に、あるいは警告して実験が行われております事態において、原水爆の実験をやめ、もしくはこの原子力を兵器に用いることを禁止しようとすべきものであるという考えがわれわれにもありますし、またそれが世界の相当な程度において世論となりつつある。これを現実にどうしたらいいか。言うまでもなくこの緊張というのは、また力と力のなんというものは、両陣営の先端に立っておる米ソ両国が常に言っているように、あるいはソ連の方からいえば米国がやめるならばやめよう、あるいは米国の方からいえばソ連がやめればやめようというふうな、相手国がやる以上は、世界の平和を保つため、これに劣らぬものを持たなければならぬという責任を相手方になすりつけているような現状だ。こういう事態においてはどうしても私はほんとうに平和を望み、いろいろなことをいっておりますけれども、今の世界情勢下で両陣営の巨頭も心の低からは平和を望んでいるものだと思われます。そういう見地から平和を望んでおるがゆえに、今言ったような事態においては、競うて軍備競争しなければならぬということであります。従ってどうしてもこれについては協定ができなければ、取りきめができなければ、一国だけでやめるということを宣言し、やめることは絶対できないと思います。だからそれを進めるためには、やはり両陣営の巨頭の間に一つ十分な話し今言いをして、そうして世界が安心するような、緊張を緩和するような取りきめができてくるということが望ましいと思います。また本来そういう機関が国際連合だろうと思います。ところが国際連合においてそういう問題が取り上げられるときは、安保理事会における大国の拒否権という問題かあって、事実はいつも行きつかえておる、これも実態であります。だから問題はそれらを破る面からいうと、両巨頭会議というようなものが行われて、そうしてこういう問題に関する解決の道を見出すということが、私は現在の国際情勢からいうともっともと考えられる、また実行可能性のある道じゃないか、またわれわれはそれについて――われわれ自身が巨頭でもなければ、われわれ自身が当事者でもありませんけれども、そういう機運を世界的に盛り上げて、そうして両巨頭の会談というものを実現する、そうしてその目的を達する、こういうことがわれわれの進んでいかなければならぬ道だ、かように考えております。
○木原委員 おっしゃる通り現在の世界情勢は、米ソの対立の中に非常に尖鋭化しておる。そうして日本はずっと今日まで、終戦後岸内閣を含めてその対立の中で安保条約その他をアメリカとの間に結んで、そうして言うならばその一方の陣営であるアメリカとの協力関係を強めて、この中で基地その他を提供するし、あるいは軍事的な協力関係を強めていっておる。そういうようなことの中で果してあなたが言われ、あなたが祈念される恒久的な平和安全という道が達成されるかどうか。あなたはほんとうにこれによってのみ日本の安全が保たれるんだ、そこに恒久的な平和を確立することができるんだという信念をお持ちになっておられるかどうか、その点をお聞きしたい。
○岸国務大臣 私は、またわれわれの党は、しばしば申し上げている通りに、世界の真の恒久的の平和――またわれわれの念願しておる平和というものは、ただ単に一時的に戦争がないということでなくして、ほんとうに人間が自由を享受し、すべての文化を向上せしめ、人間としての生活を幸福ならしめていくような基礎の上に、平和が恒久的に設けられるということが念願の趣旨だと思います。この立場に立って考え、よく自由陣営の一員だとかなんとかいう言葉を用いられますけれども、私はこの理想を同じくする人とともに、世界の平和をその基礎の土に作り上げようというのが、実は私どもの念願の基礎であります。あるいはこれに反して共産主義の立場でもって世界の平和を作り上げる、共産主義の世の中にすべてをした方がよろしいというお考えの方があるかもしれませんけれども、私並びにわれわれの政党の考えはそうとっておらない。そこで私は、決して私どもがアメリカとの提携を深くしているとか、あるいは国際連合においてそういう理想を同じくし、考えをひとしくしているところのものが、協力して世界の平和を作り上げていこうということに対して、あらゆる努力をすることが決して間違っていることでもありませんし、私は当然その立場を堅持して、あくまでも今申し上げるような安定した平和の達成に向ってあらゆる努力をしていくというのが、私の根本の考え方でございます。
○木原委員 先ほど辻委員から、日本がこのままの態勢でいけば結局アメリカからもあいそをつかされてしまう、すなわち原爆の基地も置かせないとか、あるいはミサイルも装備しないというような態度でいったならば、日本はアメリカから捨てられてしまうというようなことを言われておりましたが、そういうようなことにでもなりますと、あなたが念願されている恒久の日本の平和、安全ということは、根本的に不可能になってしまう非常に危険な状態が招来されると思うのであります。だから今のうちに、私どもは、あなたの言われるほんとうの日本の将来に向って、百年の安全を保障する態勢というものを、この辺でしっかり考えて、そうして対処すべきではないかと思うのでございますが、その点についてはどう考えているのでございますか。
○岸国務大臣 先ほど辻委員の御質問もございまして、今それを引用されたのでございますが、私はアメリカが日本に対して何か強要して、それを日本が拒否するがゆえに、日本との国交を捨てるとか、日本との関係を絶つとかいうふうな懸念を持たれるかもしれませんが、私はそういう性質のものではないと思います。ほんとうの防衛というものは、かりに日本の国民があげてこれに反感を持ち、これを拒否しているところにもっていって、強制的にそういう武器を持ち込んで、果して外国軍隊が戦闘行為やなにかができるかと考えてみますと、これはできないと思います。これは世界のどこの歴史を見ても、国民が反対しているそれを押し切ってもなんというのは成功しません。だからほんとうに安保条約の精神を体してやるという場合におきましては、私は強く、日本は核兵器で武装しない、あるいは核兵器の持ち込みはさせないと言っている。これがもしも国民が、私が言うている、われわれが考えていることは間違っている、あのものは用いた方がよろしい、それを政府ひとりが独走してそういうことを言っているのだという国柄にかりになって、持ち込んでも国民がそれに協力するというような態勢が万一にもあるというのなら別ですけれども、私はそういうことは絶対にないという確信に立っておりますから、これをもしも、それは理屈に合わない、それは間違っているという考えでアメリカが何か言うことに対しましては、私は十分に私の言うことについての合理性と、確信と国民的世論のバックというもを信じておりますから、私はアメリカに対しても十分にそれは納得せしむるだけの覚悟を持っております。ですから、それでもかりにアメリカがどうしても日本と断つというのなら、それは日本は独立国ですから、アメリカの言うことは何でも聞かなければならないということはない。最後には強制力に屈しなければ日本が立っていかぬということはない。そういうことをすることこそ真に独立、自主の立場の日本としては正しい考えであり、国民的のほんとうの一致した意見というものに対しましては、各国をしてこれを承認せしめるように努力するのが政府の務めである、こう思っております。
○木原委員 先ほど総理は、今世界が原水爆の脅威にさらされておる。この製造、貯蔵、実験禁止、こういうことをやらなければいけないが、それには巨頭会談の開催その他話し合いによってそういう方に持っていくことを期待する。それでなければ恒久の平和は維持することができないということをおっしゃいましたが、私どもその考えには双手をあげて同意するのでございますが、そういうような考え方に立てば、アジアの平和維持ということからも、あなた方も含めて、米ソあるいは中国、こういったような人たちがお互いに胸襟を開いて、アジアの危機あるいは侵略というような問題についてよく話し合いをなさって、そして日本を中心とする米、ソ、中国、こういったようなものとの間の集団的な不侵略、安全保障の道をここから切り開いて、日本の絶対安全という立場を守るためにアメリカ軍の撤退とか、あるいはアメリカ軍の軍事基地を、その条約の締結を条件として、どいてもらう。そしてアジアに大きな平和地域をここから作り上げるというようなことが、これはどうしても恒久的な平和構想というあなたの信念からもここにいかなければならない、こう思うのでございますが、そういうような立場に立って努力をしてみられる御決意があるかどうか、お伺いしたい。
○岸国務大臣 今日の国際情勢から申しますと、米ソの対立、米ソが軍事力の競争の中心になっておって、そして力のバランスによって平和を保つということが行われておるのが現状であります。しこうしてこれに対して今の私どものような考え方が、国連というあの崇高な憲章の精神に基いて、これに参加しておる国々によって議せられておりながら、あるいは拒否権の発動により、安保理事会会のそういうふうな提案というものが安保理事会において採択されない。あるいはまた軍縮会議が催されておっても、それが決裂してやれない。これを再開する目途もまだ立たないというような情勢が、現在の国際情勢であると思うのです。今の米、ソ、中国、日本というようなものの不可侵条約を作ったらいいじゃないか。この間に絶対の平和が確保されるところの条約を作ったらいいじゃないかというお話がよくございます。私は、もしもそれができる国際情勢であるならば、今世界的の問題である軍縮問題や、あるいは安保理事会等に提案されておるところの世界平和確保に関するところの問題が、あんな状況にはならぬと思うのです。あんな状況になるような対立の激化しておるときにおいて、米ソを含めてここに東洋だけの何を作れとい、われましても、これは今の国際情勢というものを正確に把握し、分析したならば、そういうことは可能性がないということは私は当然考えられることであろうと思います。従いまして私はそういう見地に立っておって、そういう御意見もありますけれども、それはとうてい実現しないものであって、もう少し従来から問題になっているいろいろのことが解決されるならば、当然そういう問題は自然になくなる問題であります。そういう意味におきましても、従来のことを続けていく方が有効であり、今のようなお考えに対してはこれを具体的に進める考えはないということを申し上上げたわけであります。
○木原委員 現在の切迫した情勢については私どももよくわかるのでございますが、それだからといってそれをそのまま激化させておったんでは、あなたの施政方針で言われた恒久の平和ということが、永久にできないということに結論せざるを得ないのです。双方か軍備の拡張をやり、大陸間弾道弾あるいはIRBM、こういったようなもので対立しておる、その一方の中に日本か入って協力する、この態度をいつまでも持ち続けていくならば、あなたの言われる恒久平和ということは、これはから念仏に等しいと思うのです。だからこそ、これは困難があろうとも一つ一つ問題を――原水爆の問題についても巨頭会談によってこれを解決しようということをおっしゃるのでありますが、この日本の問題もそういうような話し合いの中で一つ一つ解きほぐしながら解決をしていくという方向にいかなければならぬ。そのためには少くとも現実の政治において、その対立を激化させるような方向に政治を持っていくべきではないと、われわれはかたく信ずるのでございますが、その点についていかがでございますか。
○岸国務大臣 私はそういう話し合いにしないとか、今の激化しているままに放置しておこうとか、あるいはそれを激化する方向に政策をとろうということを申し上げているのではもちろんないことは、木原委員よく御承知だと思います。私はそういう問題に関しましては、日本が国際連合の一員であり、また安保理事会の非常任理事国にも選出されたのでありますから、その責任ある地位をもって、あの機関を通じてあらゆる努力をいたして参っておりますが、今後もいたすつもりでおります。ただ、そういうお考えはありますまいけれども、たとえば安保条約によるところの共同防衛というものがあることがそういうことを激化する、従ってそれは日本が進んでやめたらいいじゃないかというお考えでもしあるとするならば、私はそれは日本の国民の安全感も害され、不安を増すことである、決して日本の安全の保障を全うし、同時に日本に対する外からの不正な侵略を未然に防止するという効果にはならぬと思うのです。われわれはあくまでも恒久の平和を望む意味において、国際連合を通じてあらゆる努力をするということは、私が国連中心の外交だということを申し上げた中にも十分その意図を持っておるわけであります。その努力は今後といえどもできるだけ続けていくのみならず、これを強化していくという考えでおります。
○木原委員 その問題はこれで打ち切りまして、次に移りますが、昨年の十月の四日にソビエトで第一回の人工衛星が打ち上げられた。その後十月の二十二日に、防空装備委員会というのが防衛庁の中にできておる。この委員会は、誘導弾の研究、開発を通じて自衛隊の誘導弾の整備を中心とする防空体制の充実をはかるということが構想だと聞いておりますが、これは防衛庁長官でもよろしゅうございますが、そういう構想のもとでこの委員会が発足しておるのかどうか、それを聞きたいと思います。
○津島国務大臣 お答えいたします。御質問の防空装備委員会というのは、単純なる部内における格部局等の連絡をするために、特に事務次官を委員長といたしまして、関係部局の者が寄って今後の装備をどうするかということについて審議していこうという機関でございます。その課題と申しますか、研究する題目は、御説のように防空の関係が最も必要であるという観点から、それに装備の関係を今後どうするか、また艦船についても同様の問題があると思います。そういった意味でこれこれということに限定しないで、今後こういった問題について防衛庁部内の研究なり、また今後の施策に資する、こういう趣旨で作った委員会でございます。
○木原委員 いま一回防衛庁長官にお尋ねいたします。そうすると、これは大陸間弾道弾の出現によって、その大陸間弾道弾を含めた国土の防御ということを念頭に入れて、この委員会会で研究その他装備をやろうとされるのですか。
○津島国務大臣 御質問の大陸間弾道弾に対して、どう対処するかということについて研究するという委員会ではないのでございます。御承知のように、国防の基本方針また防衛整備目標においては、その中に装備の刷新をとはかるというような趣旨もありまして、今後の自衛隊の根幹をなすそういった編成とともに、装備についても当然改善を施さなければならない。いわゆる量より質の問題であります。これは防衛整備目標にもそのことが強調され、また国防の基本方針に乗っておるわけであります。これはたまたまICBMといったようなものが発射されたという時期には相なっておりまするが、ICBMに対する防衛の装備をどうするかということを具体的の課題として、この委員会ができたという趣旨ではございません。
○木原委員 十月二十二日に装備委員会ができて、さらに十二月十九日の日米安保委員会で自衛隊装備の近代化を促進するということに意見が一致をした。その結果その近代化の目的のために、日本側の要請で、例の空対空誘導弾、サイドワインダーをアメリカから購入することになっておるが、自衛隊の近代化とそれに伴うサイドワインダーの購入という一連のことは、自衛隊の近代化を具体的にどうしようということでございますか。この点詳しく御説明願いたい。
○津島国務大臣 お答えいたします。先ほど申しましたように、自衛隊の装備を改善し、またこれが刷新をはかるという方針のもとに、各部隊に応じておのおの適切なる装備をはかっていこうということが目的でございます。ただいま御引用になりましたサイドワインダーは、十二月十九日に米との話し合いで、これを供給するのに容易であるという言明があったわけであります。これはICBMに対抗する装備だという考え方ではないのでありまして、相手方の航空機がわが上空に来た場合に、現在の迎撃戦闘機をもってしては、その上昇の限度、性能について欠陥があるだろう、なるべくそういった欠陥のないように防衛の目的を達成するように、この種の装備が必要であろうということでございまして、特別にICBMが飛んだから、さあサイドワインダーだという面接の関連はないのでありまして、これは一にわが航空機の装備の改善をはかる、しかして言葉としてこれを近代化という言葉を当てはめれば、一の近代化であるということを申し上げて差しつかえないと思います。
○木原委員 すでにサイドワインダーを購入する。そのほかいろいろミサイル兵器が前に日本に導入されておる。こういう一連の行為から、もはや政府は自衛隊の装備をミサイル化するということに踏み切ったものと見て差しつかえないと思う。そこで自衛隊の近代化、すなわち誘導弾を持ったり、あるいはさらにこれがミサイルによって装備されるというようなことになれば、もはや、自衛隊は完全な憲法で禁止しておる戦力の域に達しておるものと思う。その点についてどう考えられるか。これは総理にお聞きしたい。
○岸国務大臣 日本の自衛力を持つ根拠は、憲法九条の規定に根拠しておるわけで、一体何が戦力であるかというようなことにつきましても、従来国会におきましても、相当に具体的な論議があったことは承知いたしております。しかし一面自衛力を持ち得るということから申しますと、その自衛力が有効なものでなければ意味をなさないことになるわけであります。従って科学技術の発達等につきましても、十分研究開発して、量よりも質の点の向上によって、自衛の目的を全うしよう、こういうことを考えておるわけであります。私どもはそれによって、憲法違反の戦力を持つということになるとは解釈をいたしておりません。
○木原委員 何が戦力ということについては、過去の国会でいろいろ論議されてきた問題でございますが、要するに今日までの解釈としては、近代戦を遂行する能力を持つということが一つの要件になっておるようです。従って近代戦を遂行する能力を持つということになれば、それはもう戦力である。しかして憲法の解釈上はそういう戦力は自衛のためでも持つことは許されないんだ、憲法解釈上それは憲法違反だ、そういう解釈で今日まで来ておると私どもは考えておるのでございますが、自衛のためならば、戦力を持っても差しつかえないというふうに岸総理は考えておられるのかどうか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
○岸国務大臣 自衛のためなら何をやってもいいということは、憲法の規定の精神ではなかろうと思います。すなわち私どもが考えておるのは、自衛のための最小限度の実力を持つということは、これは憲法が禁止している戦力というのには当らないというのが私どもの解釈でありまして、自衛のための最少限度の実力を持つというのが自衛力漸増の基本観念になっておると思います。
○木原委員 それはおかしいです。自衛のためであろうと戦力に達する場合は、これは憲法の九条によってできないのだということで今日まで至っておると思う、自衛権は憲法上認められておる。それを今あなたが自衛権の範囲ならば戦力を持ってもいいんだということは、これは少し行き過ぎじゃないかと思うのです。
○岸国務大臣 一般に戦力という言葉が何を意味するかということと、憲法の九条に言っている戦力とは何ぞやというものとは私は違うと思います。われわれが自衛権を持っている、こう言う以上は、自衛権というものはただ空なものではなしに、その自衛権を裏づけるある力があると思うのです。その力はあるいは常識的に言って広い意味においては戦力じゃないか、こういう議論が成り立つと思います。しかし私が言うのは、この自衛権というものを憲法が認めている以上は、そうしてわれわれは自衛力を増強すると言うが、一体どこまでやるのだという議論も他の方面から出てくると思います。その場合においてわれわれが国情、国力に応じて自衛力を増すと言っているけれども、その自衛力というものは言うまでもなく日本の安全を保障するために、他から侵略を受けないための最小限度の、少くともこれだけのものは持たなければならぬという最小限度の一つの力であって、その程度のものは自衛権を認めておる憲法九条二項の精神から言うならば、禁止しておる戦力というものには入らないのだ、こういうことを私は申し上げたわけであります。しかしてその間には私は何も疑念はないと思います。
○木原委員 それならば自衛のためだったらどんな軍隊を持っても戦力として認められるということになるじゃありませんか。
○岸国務大臣 そこが私が申し上げているように、われわれが自衛権を持っておるということは、自衛権のためには何を持ってもいいということではないと私は思う。われわれは自衛権というものを憲法上当然持っておるのだから、その自衛権を裏づけるために必要な力、これは考えようによれば無限なものであるかもしれませんが、そのうちの自衛という他から不正な侵略を受けないために持たなければならぬ最小限度の力われわれが持つということが、二項で禁止しておる戦力には当らない、こういうわけであります。
○木原委員 どうも納得がいきませんが、時間の関係で、それはまた後日に憲法論議として総理の御意見をただすことにいたします。
 それから先ほど保科委員からも御指摘がありましたが、機密保護法を作らなければならぬじゃないかというようなことをおっしゃり、それに対して総理は軍事、外交についての国家機密を守るために、その点については一応考慮しておるという趣旨の御発言があったようでございます。私は率直にお聞きしたいのでございますが、機密保護の問題については観点がいろいろございましょうが、私は憲法上は、憲法八十二条の裁判公開の原則で、特に政治犯罪あるいは出版に関する犯罪については絶対公開しなければならないとなっておる。そうすると機密保護法を作られても――主としてこの事犯は出版によって行われるのが通常の場合でございましょう。そうすると裁判によって絶対にいかなる場合においても公開をしなければならぬということになれば、機密保護は裁判の公開によって全然意義がなくなってしまうことになるんじゃないかと思うのです。そうすれば総理が言われるように、機密保護法というものを作って、軍事あるいは外交の面について機密保護をされても、結局裁判で公開されて一切の機密が国民の前に明らかにされてしまうということになれば、これは実行ができないと思うのです。だからそうなると、この憲法の公開の原則からして、これを改正しなければならないということになろうかと思うのでございますが、その点についての総理の御意見はいかがでありますか。
○岸国務大臣 お答えいたします。先ほども防牒法ということで保科委員から御質問があったことに対してお答え申し上げましたが、私は独立国家が、国家存立の上からしまして、最高の機密に属するところのものを持ち、それが牒報活動等によって外国に盗まれていくとか、あるいはそのために外交上非常な不利な事態を生ずる、あるいは国家の安危にも関するというような点に対して、独立国としてこれを防衛し保護する手段を講ずるということは私は当然であると思います。ところが極端なことを申しますと、どこの国だって外交上の暗号に対しては、これが秘密を保護するという立場をとっておることは御承知の通りであります。そういうことに対しても何ら取締りがない、野放しであるというような国は、独立国としてはほとんど考えられないことではないか。そういう現状にある日本の状況を見ますと、いろいろ考えさせられることが多いのではないか。そういう意味において、防牒法であるとかあるいは機密保護法であるとかいうような考え方についても、私は十分検討してみたいということを先ほどお答え申し上げたのであります。しかし同時に日本の憲法のいろいろな条章との関係もあることであるからということをつけ加えて申し上げておきました。今おあげになりました八十二条の規定があるからといって、かりに機密保護法というものが設けられておって、裁判は公開しなければならぬということで公開されるとしましても、すでにその機密は何らかの形において漏洩され、牒報活動の対象とされておって盗まれたりしておることなんですから、その事件においてそれが裁判において公開されたからといって、将来そうしたことが処罰され、そういうことを将来に対して戒めるということがなされるということと、全然それを野放しにしておくということは、国家機密を防衛する上から、防護する上から言うと、私は効果は違うと思います。裁判の公開があるからもう日本では一切の出版によるところのものはいざという場合においても機密は一切野放しにするほかはないのだという議論は出てこないと思う。しかし私は今どういう事項に対してどういう取締りをし、どういう保護をしようという具体的な案を持っているわけではございません。ただ一般の考え方として、根本を申し上げたわけであります。そういう意味において、私どもとしては十分一つ慎重に検討してみたいということを申し上げておるわけであります。
○木原委員 野放し云々の問題ではなくて、私どもが聞きたいのは、そういうように裁判の公開の原則によって、国家機密というものがいつかは次々に機密でなくなるというような状態になることからして、この国家機密を法制化する上において障害になる憲法の公開の原則に対する何らかの改正の措置を政府が考えておられるのじゃないか、そういうことを心配いたしますがゆえに、あえて質問をするわけでございます。この憲法の裁判公開の原則について、これを制限するとか、あいはこれを改廃するというようなことについての当面のお考えはないのでございますか。
○岸国務大臣 憲法の問題につきましては、私ども全体を一つ再検討してみるという意味において、憲法調査会というものが設けられまして、今調査をいたしております。いろいろな条章について権威者が検討を加えておるところでございまして、今私として八十二条をどうしようという具体的な考えは持っておりません。今申しましたように憲法の規定が改正され、そういう場合において非公開にすることができるということになっておれば、さらに有効であるかもしれませんが、八十二条に出版その他の公開をするということの原則があるから、今言う国家機密の保護法あるいは防諜法を作るということが無意味であるという御議論には、私は賛成できないということを申し上げたわけであります。
○木原委員 時間がございませんからこの問題についてはまた後日に譲りまして、最後にお聞きしたいのですが、先般参議院であったかと記憶しますが、沖縄の米軍基地から米軍機が水爆を積んで日本上空をパトロールするという場合に、これを日米安保委員会の議題に取り上げてそれを阻止することができないのだというような趣旨の総理の御答弁があったことを、私新聞で読んで知っておるのでございますが、これについてお尋ねしたいのでございます。なるほど沖縄の基地から日本上空を水爆を積んでパトロールする場合に、これが安全保障委員会の議題に取り上げられないということは、一応形式的には条約の性格上そうであるかもしれませんが、それだからといってこれを放置するということになると、これは国民に非常に大きな不安があると思うのです。総理は、口を開かれると原爆の基地は日本に置かせない、さらに核装備は自衛隊にもやらないという趣旨のことを繰り返し信念として申されておりますが、それも別に文書によって両国が取りかわしたものはございませんでしたし、さらにまた安保委員会でもこれを阻止するということの条約上の根拠がないのだということになれば、国民は非常に不安なんです。特に真実かどうか知りませんが、私ども聞くところによれば、アジアのどこかに米軍の水爆を搭載した飛行機が墜落して、破裂して大きな事故を起したというようなことも私は聞いておるのです。もしそうだとすれば、自由に飛来して、その飛来を何ら阻止することができないということになれば、重大な問題を引き起すおそれがあるのでありますが、これに対して政府はどういうお考えを持っておられるか、この委員会において総理の所信をお伺いしたい。
○岸国務大臣 まず私は、国民のこういうことに対する不安をなくするためにはっきり申し上げておきますが、今お話のような何か水爆を積んで日本の上空を米軍の飛行機がパトロールしておるというような事実は全然ないということを私ははっきり申し上げておきます。ただ、法律の解釈、条約の解釈上どうかという問題について考えてみますと、日本の上空を外国の飛行機が飛ぶ場合においては、原則として国際条約上の許可、日本の承認なくしてはできないというのが各国一般の原則であります。ただ行政協定の上から、これに対して日本が包括的に承諾を与えておる規定がございます。ただ、今パトロールするということをお話になりましたが、かりにこれが沖縄に駐在しておりましても、あるいはグアムに駐在しておりましても、米軍の飛行機で日本をパトロールするという任務を持っておる飛行機があって、そうして日本の上空を現実にパトロールしておる、その法律関係をどう見るかということになりますと、そういう職務を持ってパトロールしておるということになれば、やはり日米安保条約上からいうと、日本に駐留しておる空軍の一部とも見てよいのじゃないかと思います。従ってそれの装備等につきましては、安保条約の合同委員会においてもちろん話し合いをして差しつかえない問題であり、安保条約に基く日米合同委員会というものは、広い抽象的な権限を持っておりますし、両国の理解と協力の信頼関係を基礎としておるのですから、話し合って差しつかえない問題であると思います。また今のような解釈をするならば、当然委員会の議題になる事項だと考えてよいと思います。問題は、何かそういうことが現実に行われておるということを前提として論議することは――国民に非常な不安を与えはしないかという御心配につきましては、私も同感でありますが、そういう事実はない。しかし常識から考えてみても、原爆を積んだものが日本の上空をパトロールするというようなことはナンセンスであり、意味がないことじゃないか、(「ほんとうにナンセンスだ」と呼ぶ者あり)それは考えられない、絶対にそういうことはないということだけははっきり申し上げておきます。
○木原委員 今総理はナンセンスだと言われるし、またその辺のヤジウマもナンセンスだということを言っておりますが、現にイギリスではアメリカ軍がパトロールしたというので大きな問題になっておる。これもないとも言えないと思うのです。また原爆を搭載したものがパトロールではなくて何かの軍事目的で日本の上空を飛ぶというようなことも、私は絶対にないとは言えぬと思います。絶対あるとも言えないかもしれないが、絶対ないとも言えない。あるいはあるという可能性もあると思います。現にイギリスあたりでそういう事例があるのでございますから、ないとも言えぬのです。だからこれを日米委員会の議題とされて、そうしてこの問題を根本的に解決をしてもらわぬと、これは非常に不安なんですね。せっかくこういった核兵器を持ち込むことを許さないという御信念でありますから、非常にけっこうだと思う。だからそれを広げて、いかなる場合においても航空内には持ち込まないという話し合い、あるいはそれを公式の声明というような形ででも委員会の議題とすることは、これは一向差しつかえないと思う。これは何と申しましても、八千万の国民の安危に関する問題ですから、これは委員会の議題にかけて問題の解決をやって、そうして事故を未然に防ぐということが、政府の私は積極的責務だろうと思う。その点について総理の御見解をお伺いしたい。
○岸国務大臣 もしもわれわれがそういう危険があり、そういう情勢があるというような考えに立つならば、委員会で十分話をいたします。しかし現状から申しますと、先ほどから申しましたように、そういう事実は全然ないのだし、そういうように一つの仮定としてあらゆる場合を考えて、こういう場合もあるじゃないかというような事柄を、現実の委員会等に持ち出すということは、むしろ現状から言うと、ナンセンスという言葉を申し上げましたけれども、ほとんど無意味であろう、こう思います。しかしそういうような危険があり、そういうような情勢があると認定したならば、これはもちろんやります。
○木原委員 くどいようですが、これは事故が発生してからではもうおそいのです。自動車が転覆したとか、あるいは船が沈没したとか、汽車が転覆したというような問題とは、これは同日に語るべき筋合いのものじゃないと思う。国と国民が直接どうなるかという大きな問題なんです。もう発生してしまってからでは、取り返しがつきませんよ。あるいは東京の上空でそういう事故が起ってごらんなさい、私どももあなた方ももうおらぬのですから、そうでしょう、だからそういう発生のおそれがあるから、ないうちに、せっかく委員会というものも作っておられるし、またこの日米委員会というのはあなたがアメリカから持って帰られた一つのおみやげとしての貴重なものだと聞いておりますから、どうぞ一つこの委員会で国民が安心するように米国との間に話し合いをして取りきめをしていただきたい、これを要望いたします。
○岸国務大臣 私が危険があるとかそういうおそれがあると考えた場合には――今お話のなには、落ちたとかあるいは事故を起したことを現実にあげておいでになりますけれども、その前提である、そういうものが飛来するところのこの事態が絶対今までないんだし、そういう気配もないのですから、今そう取り上げるということはしないということでありまして、もしもそういう飛来してくるという危険があり、飛来してくるような情勢であるならば、私は取り上げてやる、こういうことを申し上げたのですから、東京の上空で落ちるなんという事故が発生するなんということは、絶対に起らぬということを申し上げております。
○福永委員長 西村力弥君。
○西村(力)委員 総理は昨年の六月の二十一日、アイゼンハワーと共同コミュニケを出されまして、日米両国の関係が新しい時代に入った、こういう工合にその宣言文にも盛られておりまするし、また国会においてもその他においても、そのことを強く打ち出されてるわけでございます。その後約九ヵ月ですか、そういう工合に時を経ておおります。それでこの新しい時代に入ったということが、日本国民の必要と願望に沿う、どんな工合に具体的に進められてきつつあるか、この点について一つお示しが願いたい、こう思う。
○岸国務大臣 私が、新しい時代に入ったということは、日本の自主独立の立場というものをはっきり打ち出して、そうしてその上に立って両国が対等の立場で真の理解と、それから両方の親善関係の基礎に対する信頼というものを基礎として、今後日米の間に存するところの諸問題を取扱い、これが解決に向って一つ努力するという、この基礎ができたということを申し上げたわけであります。私はいろんな方面にその事態は現われておると思いまするし、また私どもの最も大きくその問題を国民に印象づけるようなために考えております沖縄、小笠原島の領土問題に関しては、いまだ不幸にしてそれが現実的な問題にまで進展いたしておりませんけれども、これらの問題につきましても、十分に一つ努力を今後も、先ほど申し上げましたような新しい観点から推し進めていきたい、こう思っております。
○西村(力)委員 私たち見まするに、日米安保委員会が開かれまして、数次にわたって会合を開いておりますけれども、その間において米軍の撤退計画の説明やら、施設の返還に伴ういろいろの措置やら、あるいは軍事情勢の先方からの説明を聞く、このような程度にとどまっておるのでありまして、ほんとうにわれわれ国民が願っておる願いに沿うような工合に、具体的に何一つ取り上げられ、またそれが前進されておるというような工合には、私たちには見えないわけなんでございます。今総理が申されましたように、沖縄の返還問題については、御努力になっていらっしゃるそうでございますが、あの共同声明書の中には、はっきりと米国が沖縄の現状はこのままにしておかなければならぬ、ただ住民の福祉や何かの増進については努力する、この程度にとどまってきておるわけでありますが、その後今総理が申されたことから見ますと、何らか御努力をなさっていらっしゃるようにおっしゃったのでございますが、それは具体的にどういうことでございますか。それに対する先方の反応はどうかということを伺いたい。
○岸国務大臣 われわれは、この施政権の返還の主張は、これが全面的に一時に返還できないとなれば、これに対して一部の返還でも、たとえば教育に関する施政権を日本に返すというようなことからでも考えられないか、考えてもらいたいというようなことも話し合いをしておりますし、あるいはまた現実の施政の内容について、従来行なってきておるところのものが、沖縄の住民の意思に沿わない点を是正するようにも要望をいたして参っております。いろいろの話し合いはその後やっておりますが、まだ具体的な結論が出ていないというのが現状でありますけれども、私は、われわれがこの努力を続け、沖縄に対する最近のいろいろな事情につきましても、アメリカ自身もある程度の反省をいたしておるような点が見えまするし、なお一そうこの点についてもわれわれは努力を続けていきまして、具体的に、少くとも一歩一歩でもそれを実現するように、なおこの上とも努力したいと思います。
○西村(力)委員 アメリカの世論が兼次那覇市長の当選を契機として大きく変ったということは、私たちも資料に基いて知っております。ですから、この際、一部返還ということを一歩進めて、全面的な施政権の返還の方向に強く出らるべきであろうと思うのでございますが、それに加えまして、沖縄の県民はもちろん、われわれ祖国におる国民も願っておる点は、沖縄の施政権返還とともに、あれが極東のキプロス的な軍事施設として強化されることに対する不安、それを拒否しなければならぬという強い考え方をだれでもが持っておるだろうと思う。そういう点も加えて、やはりこれからの折衝は進めらるべきだろうと私は思うのですが、その沖縄に施設せられる米軍の軍事施設が、全く近代化していく現在の進行状態について、総理は何ら先方にこちらの国民の願望というものを伝えられたことがありますかどうか。
 それからもう一つお聞きしたいのは、きょうの新聞で見ますと、昨日の外務委員会において、信託統治の問題について、今そういうことを聞かれれば、アメリカは信託統治をやるという工合に答弁する以外にない、こう申されておりますが、この信託統治の点に関しても、国連憲章をしさいに検討してみますと、米国が自発的に信託統治に持っていく、こういうことも可能なような点もありますけれども、また一方、国連に加盟している国の間における信託統治というものは、これはなしてはならないという条項もあります。私たちは、やはりそういう立場を日本の立場として強く向うに打ち出して参るべきが至当ではないか、こう思うわけなんです。沖縄の問題は沖縄の住民の問題であり、またわれわれ祖国の全体の問題である。それが、施政権返還とともに、軍事基地としてわれわれの安全に脅威を与える、そういう方向に行くことに対する阻止を考える、また信託統治になっていくようなことに対しては絶対反対だということ、これはだれでもがそういう工合に考えていることだと思うのです。私が今申したようなこの点について、総理は今までもアメリカに対して申されたかどうか、今後そういう立場に立って強い交渉をなされるかどうか、それを一つお聞きしたいと思います。
○岸国務大臣 今までの国民の多数の気持、また住民の多数の気持も、とにかくこの沖縄に対して日本が潜在主権を持っているのであるから、これの施政権が一切アメリカにゆだねられておるということに非常な不満かあり、この極東における平和の維持のために、現在の情勢のもとにおいて、あそこに軍事基地を持ち、ここに強力な基地が設けられて、そうして極東の平和が保たれておるという事実については、私は良識ある国民はこれを今まで是認してきておると思うのです。それは先ほども申しましたように、国際の情勢が力と力とのなには望ましくない。これがみんな話し合いによって軍備が制限され、恒久的な平和ができるということは、われわれの最も大きな願いでございますけれども、現実の問題はそうではない。従って沖縄についての一般のなには、とにかく条約に基いて沖縄を軍事基地にされることは、われわれとしても異存ないけれども、そうだからというて、施政権の一切をアメリカが持たなければならぬ、行使しなければならぬということはない。これは返して、そうして住民の願いを達してもらいたいというのが、私は今までの国民の多数の良識ある世論であった、こういうふうに考えております。
 また沖縄の返還の問題につきましては、いろいろ条約上の規定、いわゆる信託統治の問題やなんかに関連しての法律、条約上の解釈問題もいろいろ出て、議論になっております。この議論をされる方は、もちろん日本の主張を何とかしてアメリカに主張するために、こういうふうな条約の解釈をとるならば、それも一つの根拠になるじゃないか、むしろアメリカ側に対する政府の主張を強めるという、またそれを強めて、一日も早く施政権が返ってくるようにすることが国民の要望であるという見地から、そういうふうな解釈論も出てきておると私は思うのであります。しかしこれについては、解釈上の疑義が全然ないわけじゃございません、そういうなにもありますけれども、要は条約上の規定がどうだということよりも、根本は、アメリカがほんとうに日本国民の国民感情なり、また住民のほんとうの考え方なり、また日本に施政権を返しても、今の国際情勢に対応する、いわゆる防衛の手段を講ずることについて支障を来たさないというように、日本に対しての信頼関係が深まってくるならば、この問題が解決し、そうでなければ、たとい条約上の条文の議論を持ち出しても、なかなかこれは実現しない問題だろうと思います。そういう意味において、私は、解釈の問題についてはいろいろ議論もあるけれども、特にそれを取り上げて持ち出すことが、非常にわれわれの主張を強化せしめるゆえんには考えませんということを、従来申し上げておるのであります。
 ただ根本といたしまして、沖縄住民の念願であり、これが同時に国民全体の非常に強い要望であるところの、沖縄を日本に復帰せしめる、日本に施政権を返すという問題に対しましては、私は先ほど来申し上げておるような考えに立って、今後といえども強くそれを実現するように努力をいたす覚悟でおります。
○西村(力)委員 沖縄が全島軍事基地化されることに反対することは良識がないというような、良識ある国民はこれを認めておる、こういうような御発言でございまするが、しかしそういう認定の仕方は、これは国民の実際の気持を確実に把握するものとは思えない、こう思うのです。
 ところで総理は、一方において施政権の返還を要請しつつ、一方においては沖縄が全島軍事基地化されることを承認する立場をとる、こういうことでございまするが、そうしますと、施政権の返還要請をして、それがいれられた場合においては、当然アメリカ側における沖縄の軍事基地化というものはそのまま承認するんだ、こういうことに相なると思うのですが、それはいかがでございますか。
○岸国務大臣 今沖縄が全島あげて原子力基地化しておるんだというお話でございますが、私はさようには事態を見ておりません。もちろん私は将来日本に返って参ります場合において、原子力の問題に関しましては、従来とも日本の領土内においては、意見をはっきり申し上げておりますような、すなわち自衛隊におけるそういう核兵器の装備はしない、また日本の領土内にそれが持ち込まれることについてこれを拒否するということを申しております。従いまして、日本に返ってきた暁において、もしもそこが原子力でもって原子基地になっておるというような事態であったならば、それの改善言を求めるということも、私の今の考え方からいえば当然の帰結だろう、こう思っております
○西村(力)委員 そうしますと、沖縄の施政権返還の要請がいれられた場合において、その代替として新しく沖縄だけに限定されたる一つの軍事協定、行政協定的なものを結ぶという意思は全然ない、今の御答弁を聞きますとこういう工合に聞えるのです。ただしかし現実に進行している沖縄の原子基地化が現存する限り、これを撤去するべく要請をするというような希望を申されておりますけれども、しかしそれは実際上は不可能でありまして、その現状というものはそのまま承認しなければならないような協定というものを向うから要請されるに違いないではないか、われわれとしてはそういう工合に感ずるのですが、そういう事態の場合において、今申された希望を達するために、あるいはその返還のときにおいて確実に排除するためにどういう工合におやりになるか、これはいつになるかわからない。施政権が返還になるというわれわれの要請が達せられたときのことでありますが、そのときに当って現状を承認するというような工合にいかざるを得ないようになることを憂えるがために、お答えを願いたいと思います。
○岸国務大臣 まだ不幸にして私どもの施政権返還の要望が達せられるところに行っておりません。従ってこれに対して具体的に施政権を返還するについてはこうだというふうな向う側からの意向等も漏らされておらないことは言うを待たないのであります。方針としてはさっき申しましたような方針で、日本に施政権を返してもらうことを実現したいというのが今の私の気持でございます。具体的の問題につきましては、もう少しそういうような問題が出てきておるということであれば私どもは真剣にそれをなにしなければなりませんが、私の気持としては今申し上げた通りであります。
○西村(力)委員 次に、今も木原委員の質問がありましたが、日本の国に核兵器が持ち込まれるという問題、これは絶対にないというお言葉を繰り返されておりますが、しかしこの論議はずいぶん長い間いろいろな場において行われましたが、私たちはせっかく総理がそう言われることを信じたいがために、そう言われる根拠はどこにあるのか、こういうことが知りたいわけなのでございます。絶対にないということを断言する根拠というものはどこにあるのか。いろいろ協定上の問題があればこれは大へんはっきりするでしょうし、またこちらから正式にそういうことをいつどこでだれに申し入れたときにこういう確答があったということ、あるいは今開かれておる日米安保委員会における極東の米軍の装備、配備、そういうことの説明の場合において、明確にせられたそのようないろいろなところがはっきりどれでも示されることによって、私たちは安心ができるだろうと思うのです。ただそう信じろ、友好関係が存する限りそういうことはそう信ずることができるのだ、こういうような言い方では、国民の不安というものはなかなか払拭できない。われわれもどうもこれだけの言葉でもって全面的に不安を解消することはできないと感じているわけなのでございます。この点についてもう一段とはっきりした信念の基礎というものをお示し願いたい。
○岸国務大臣 米軍の原子兵器持ち込みの問題あるいは原子力部隊の駐屯の問題というものは、ずいぶん前からそういう論議もありますし、一部事実が誤まり伝えられたこともございますが、かつて重光・アリソンの会談においてもそういうことが話し合いされておるようでありますし、またアメリカの国防省、国務省あたりの発表において、かつて日本に原子力部隊が配置されるだろうというような新聞記事を取り消した事実もございますし、その後昨年の私と大統領の会談の結果設けられました日米安保条約に基いた両国の合同委員会における審議の要綱として、米軍の配備の問題が出ております。配備というものに装備が入るのかどうかという御議論もありましたが、当然軍隊の配備についてはその装備も入るのであるということを申し上げておりますし、従って日本の知らない間に日本に持ち込まれるということは、日本の同意なくして持ち込まれることはないということを申し上げたのでありまして、そうして、そういう事実も絶対に今日までありませんし、そういうような経過をとって今後日米合同委員会において、そういう場合においては十分に協議をしていくという意向になっておる、こういうことを考えますと、一部で心配されておるようにわれわれの知らない間に持ち込まれるというのは絶対にないということを私は明確に申し上げるのであります。
○西村(力)委員 そういうことでありますけれども、私たちがこの間開かれたNATOの会議の結果を見ておりますと、あのところにおいていろいろあそこの防衛機構の中に核兵器を持ち込む、そういうような相談がありましたが、結局それを入れるような工合になりましたけれども、しかし実際にその協定の内容では、その国の承認がなければ誘導弾、弾道弾というようなものを入れられない、こういう工合にしっかりとそこで押えておるという工合になっておるのでございまして、あれで初めてイギリスにおいてもああいう申し入れがあって、新しく協定を結んでおる、こういうような工合に考えられるわけなんであります。そういう明確なものがない限りにおいては、どうもわれわれは今のような話し合いをせられたにしても、十分にそのことが完全に安心せられるものであるという工合には参らないわけなんです。そして今のようなお話でありますけれども、しかし常識としましてアメリカの戦略空軍が水爆、原爆を積んで空中に飛んでおる。もちろん日本上空をパトロールしないでしょうけれども、日本の中に米軍の基地がある限りにおいて、そこにも点々と途中の中継ぎ点として日本の基地にも入ってくることがあるだろう。あるいは第六艦隊は原爆を持っておる。第七艦隊も原爆を持っておるに違いない。そういうものが横須賀に入ってきておる。そういうことになっておるのでありまして、そういう点からいうと、核兵器の部隊として日本の国に入るということはないにしても、そういうような形においてこれはわれわれの知らぬ間に当然入ってきておるのだ。そういう工合に思う。むしろイギリスの国会で問題になった場合においてロイド外相が、核兵器は確かに積んでパトロールしておる。しかし落ちても危険はないのだ。こういうことを言ったのですが、この方が率直でむしろ国民を安心させるのではないか、水爆を持っておったからといって、それが落ちても爆発するとは限らないわけなんです、そんなばかなことはだれもやらないだろう、だから最初から心配ないのだ。そういうようなものは、日本の中に基地がある限りにおいて、また戦略空軍が日本の基地を中継所として飛ぶ限りにおいて、あるいは第七艦隊が大体横須賀その他に入る限りにおいて、そういうものを持ち込むことができることがあるのだ、こういうのがもう現在の常識として当然ではないだろうか、こういう工合にわれわれは思うのです。そういう軍事的な常識をみんな国民も知り、あるいは感じておる。こういうときにおいて、今のようなお話だけでは、全面的に安心をするということには参らないのではないか、部隊としては入らないとしても、そういう工合に入ってくるということ、これをむしろはっきり認められていかれることが理由にかなうのではないか、こう私は思うわけなんですが、やはりそういうことはないのだというような工合にいうならば、なお念のために一つ御答弁が願いたい、こう思うのであります。
○岸国務大臣 事実上そういうことはないのでありまして、私はこれが一番明瞭であろう、こう思います。
○西村(力)委員 事実上ないにしても――それではお聞きしますが、二、三日前の新聞だかにも、米軍巡洋艦に麻薬が積み込まれてきておる、それをOSIとかいう機関が摘発した。この摘発したのは、日本の警察が麻薬の日本の国に流れ込むルートを追及して、その張本人をつかまえた、そのことから、米軍の手によって日本の国に香港その他から持ち込まれるのだというような工合になって、初めて向うの機関というものが動いてやった、こういうことになってる、米空軍の将校もそうだということが新聞にも出ておりますが、一体ああいうような状態に麻薬なんかが積み込まれて参りましたにしても、われわれの方としてはこれを調査する権限というのは全然ないわけなんです。ですから、今のような、総理の事実としてないというだけの御答弁をいただいても、われわれはそれでもって十分に安心するわけに参らないわけであります。しかしこのことを幾ら言うてもそれ以上に進まないとするならば、私は話をちょっと変えまして、その麻薬を持ち込んだ米軍の将校というものは、これは米軍の公務中ではありましようけれども、ああいう犯罪を日本国内で犯した場合において、その犯人なる者について、公務中とはいいながら、公務上の問題ではないという相馬ヶ原のあの問題と同じような立場を日本政府がとって、強く米軍に対してその犯罪者の引き渡しなり何なりを要求、するそういう立場には立てないものか。政府側において、あの種の事件が今後行われないようにするために、根本的にこれを阻止するために、どういう方法をとろうとなさっていらっしゃるか、これを一つ示し願いたいわけなんです。
○岸国務大臣 いろんな犯罪に関しての問題は、これは法務省において研究すべき問題であるし、当然考えていかなければならぬ問題であると思います。具体的な今の事例につきましては、私、法務省でどういうふうな見解で研究しているか、まだその報告を聞いておりませんから申し上げかねますけれども、犯罪の問題については、当然犯罪捜査なりその他の問題として考えるべきである、こう思います。
○西村(力)委員 次に先ほど辻委員の質問に答えて、放射能障害を阻止する措置を技術研究所ですか、あそこで研究させる、そういうことは確かに必要だ、こういうことを御答弁になりましたが、あの御答弁はまことにけっこうなような答弁に受け取れるのですが、実に私はそれに危険を感ずるのです。それはどういうことかといいますと、現在その実験や何かによって起きる放射能に対する害から人類を守るということは、国を問わずどこでもやっていかなければならぬ問題であるだろうと思うわけです。この研究を防衛庁の関係機関においてやるということは、結局原子戦争というものが日本の国内において行われる、こういうようなことを前提として、それに対する防護措置を講ずることを検討することになるのだろう思うのです。岸総理は、日本の国内においてそのような防護措置を行わなければならないような戦争が、事実来ることを想定せられておるかどうか、想定せられるならば――もちろん御答弁はそういうことはないように努力すると仰せられるでしょうけれども、一体そういう防護措置を研究する限りにおいては、そのことが日本の現実として、日本のわれわれの国土において行われるのだから、それから国民を守るのだ、このような考え方に立っておることは間違いないように受け取れるわけなんです。一体、その研究以前の問題に私たちは全力を集注せらるべきであって、そんな研究を自衛隊の機関においてさせることは恐しい限りではないかと思う。
○岸国務大臣 もちろん西村委員の言われるように、そういうことの起らないように、原水爆の禁止や製造禁止、その他の場合にも、われわれはあらゆる機会においてこれが努力を行うことは当然であります。しかしながらわれわれの防衛を考える場合におきましては、やはりそういう兵器が存在しております以上は、それに対するいろいろな科学的な研究をして、方法をどうするという研究をすることも、われわれの自衛力を増強していく上からいって、当然研究していかなければならぬ問題であると思います。
○西村(力)委員 自衛の上からそういうことを研究しなければならぬと申されますが、日本の狭い国土において原子戦争か行われた場合のその惨禍というものは、そのような措置によって防ぎ得べきものと国民はだれ一人として考えていないのじゃなかろうか。ほんとうに限定された核戦争ということを予想して、そういうことがあり得るのだという見解に立って行われるのでしょうけれども、今核兵器が日本の国において炸裂するということは、ソ連との戦争において初めてこれが予想されることなのでありまして、そういうようなことで、わずかの防護措置でもってこれを防ぎ得るような、核兵器を用いる戦争が、日本の国において発生するという予想を立てること自体が、日本の国全体を核戦争の渦中に巻き込むということになる、私はそういう工合に思うのです。一体そうでなく、そのような何かわずかばかりのことによって、研究結果において守り得るような、そういうような方法は戦争の形態としてはどういう形になるのですか。
 一体その戦争は日本の国土において現実に核兵器を持っている国がきまっているときにおいて、そんな戦争というものを考えることが可能かどうか、そういうことを考えることはやめて、そういう方法を全面的に阻止する方向に全力を向けることが当然ではないか、こういう工合に私は考える。岸総理の御答弁は、論理的にはまことに正しいようではあるけれども、しかしそこに大きなおそろしいものが予想されることに対して私は見解をお聞きしたい、こう思うのであります。
○岸国務大臣 お話の通り私も西村委員のお考えのように、そういうことのないようにすることに全力をあげて努力をすべきことは、これは言うを待ちません。しかしわれわれがあらゆる場合において国民の安全を保障し、そうして他から侵略を受けないためには、最近の科学兵器の発達の情勢を見まして、これに対応する防護の方法について科学的な研究をするということは、私は当然の政府としての義務であると思います。それをしたから、そういうことを前提として、それを何か歓迎し、そういうことを引き入れるようなことになるというような考え方は、私は間違っておると思う。われわれはあくまでもそれをなくするということに努力するけれども、しかし現実に、そういう努力をしても、現実のなにはまだそこまでいっておらないという、この現実に基いて考えますと、自衛の目的を達するために、あらゆる科学兵器の発達に伴うところの防護なり防衛の研究をするというのは、私は当然の義務である、かように考えます。
○西村(力)委員 私は、そういう研究よりは、これからの戦争というのは、ダレスが言っておるように、宣戦布告なんか全然ない。そうして太平洋地区の司令官の指揮下にある一切の勢力というのは、一つの方向に集中していくだろう、こう思うのです。その場合において、日本の基地にある米軍兵力であっても、これはその方向に向って突っ込んでいく、こういうような方向をとっていく、そのことを阻止するというところにいかなければ、日本国内における米軍のその配備や何かについての相談は安保委員会で心配しても、しかしそれだって可能な場合に限っておるということになっています。それがそのほかの地域における、そしてまたそれがそのほかの地域におるとはいいながら、太平洋地区司令官の指揮下にある一連の兵力が、われわれの知らぬ間に突っ込んでいくというようなことになる。そういう事態になった場合において、この核爆弾が、弾道弾が日本において炸裂する、こういうことが予想されるわけなんであります。そこのところを押えるということ、このところにわれわれは全力を向けてこれを阻止するという方向にいかなければならぬじゃないか。しかしそのためにアメリカ軍の作戦行動について、全面的にこちらがそれを押える権限がないのであるから、われわれがどうしてもそういう戦争の惨禍から避けようとする場合においては、太平洋地区司令官が、いかに全面的なコントロールをやりながら、ある一国に突っ込んでも、そのはね返りは日本に入ってこないという方式を立てなければならないと思うのです。そのために私たちは軍事基地が日本に存することが、いかにわれわれの生存というものに危険であるかということを信じてやってみるわけなんでありますが、この共同防衛の美名に隠れた、こういう日本の国内にある軍事基地というものを、一日も早く撤去するというところに、われわれの全力は、民族の努力というものは向けられなければならぬのじゃないか、こう思うのです。ですから、その点について、岸総理の決意のほどを聞きたいわけなんです。それとともに、今アメリカ軍がほとんど使用していないという基地がたくさんあるのです。それに対して、自衛隊がそれを共同使用の名において使用しようという、そういうさもしい根性でねらっておる。米軍はほとんど五、六人しかいないにかかわらず、まだ米軍の使用下に、管理下に置かれておるような形ををしておる。こういうようなところは、一日も早く返還する交渉を政府としては――自衛隊が使用するに適、不適、そういうものを論外にして、完全に返還する交渉を始めていただかなければならぬじゃないか、こう思っておるのです。その点についての一つ総理の決意ある御見解を示していただきたい、こう思う。
○岸国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、われわれは日本の国情、国力に応じて自衛力を強化し、これによってアメリカ軍の撤退をはかっていく。そうして、たといこれは日本の安全保障のためとはいえ、外国軍隊が駐在しており、基地を持っておるということは、国民の感情から申しましても、また実際のいろいろな問題から申しましても、日米の友好関係の点からいっても、私はそういうことは望ましくない事態であると思う。従ってわれわれの自衛力の増強するにつれて、これの撤退を期していき、また同時に基地等の返還についても当然これを要求し、返してもるうというようにいかなければならぬと思います。その前提は、言うまでもなく自衛力を漸増することによって、日本の安全保障について国民が安心するという事態を作り上げることを前提とすることは言うを待たないことであります。
 なお基地の利用について、アメリカ側においてほとんど利用しないものを云々というお話がございましたが、その実情等は私つまびらかにいたしませんけれども、もちろん共同使用という建前が一部行われておる事実は私承知しております。アメリカ側において利用する意図のない、またもはや利用する価値のない基地につきまして、なるべく早くこれを日本側に返還するように交渉することは当然であると思います。
○西村(力)委員 なおこの点については、担当の津島大臣に確かめておきたいと思うのです。名ばかりの米軍がおって、そうして共同使用の名でもってやっておるようなところは、一日も早く先方に完全返還を要求する。これがたくさんあることは担当の大臣として当然御承知だと思うのです。それをはっきりやられること。それは防衛庁の立場からいうと、そのままの形にして置いて、共同使用という名によって、自衛隊をそこに入り込まして使わしていく、それを既成事実としてこれを自衛隊の基地にしていく、こういう方向をとりたいでしょう。とりたいでしょうが、アメリカ軍が実際使用しないのに、二、三人の留守番を置いて、そうしてアメリカが使用するということを、この日本の国にいつまでも置くことはけしからぬと思うので、担当大臣として、今岸総理大臣から大綱の御説明があったような方向で、直ちに具体的にとられるというお考えを一つ示してもらいたい。
○津島国務大臣 米駐留軍の基地につきましては、撤退開始以来相当の返還を見ております。まだあまり使用してないような基地であって返還を見てないものがあります。これは出方からは返還を促進すべく先方に交渉しております。具体的の問題になりますと、先方といたしましては、全然これを使用しないというわけにいかぬという事態もあるわけでございます。そういった場合においては、一部の返還でもいいからというような交渉を進めておるわけでございまして、あるいは外部から見たらあまり人がいないから、全然要らぬだろうというような御想像のつくところもないとは申し上げません。しかしわれわれの交渉の階梯においては、そういったような先方の事情もありまして、今日に至っておるものがあるわけであります。しかし御説のように、全然これを使うというようなことのないような、そういう基地については返還を促進するということは当然のことだろうと思っております。
○西村(力)委員 それでは具体的な今の長官のお話のことについては、後日詳しく御説明していただきたいと思います。
 きょうはこれで終ります。
○福永委員長 次会は公報をもってお知せいたします。
  本日はこれにて散会いたします。
    午後五時四十九分散会