第028回国会 法務委員会 第30号
昭和三十三年四月二十五日(金曜日)
    午前十時四十二分開議
 出席委員
   委員長 町村 金五君
   理事 高橋 禎一君 理事 林   博君
   理事 福井 盛太君 理事 三田村武夫君
   理事 横井 太郎君 理事 青野 武一君
   理事 菊地養之輔君
      犬養  健君    小島 徹三君
      世耕 弘一君    徳安 實藏君
      横川 重次君    佐竹 晴記君
      志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
 出席政府委員
        法務政務次官  横川 信夫君
        検     事
        (民事局長心
        得)      平賀 健太君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        公安調査庁長官 藤井五一郎君
        公安調査庁次長 関   之君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      開根 小郷君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局総
        務課長)    海部 安昌君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局経理局
        長)      岸上 康夫君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月二十三日
 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(中村高一君紹介)(第三三一二号)
同月二十四日
 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(中村梅吉君紹介)(第三四二六号)
の審査を本委員会に付託された。
四月二十四日
 暴力事犯に対する処罰強化に関する陳情書(福岡市天神町一社団法人福岡県防犯協会連合会長土屋香鹿)(第一〇一三〇号)
 都城拘置支所の新設促進に関する陳情書(宮崎県議会議長坂口仲一)(第一〇三一号)
を本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
 法務行政に関する件
  請 願
 一 盛岡地方法務局二戸支局新築に関する請願(山本猛夫君紹介)(第一六二号)
 二 中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決に関する請願(吉川久衛君紹介)(第一六三号)
 三 盛岡地方検察庁二戸支部等の庁舎新築に関する請願(山本猛夫君紹介)(第一六四号)
 四 中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決に関する請願(杉浦武雄君外六名紹介)(第三七四号)
 五 更生保護事業拡充強化に関する請願(山下榮二君紹介)(第四七七号)
 六 更生保護事業拡充強化に関する請願(池田清志君紹介)(第六五五号)
 七 糸魚川区検察庁舎改築に関する請願(猪俣浩三君紹介)(第六五六号)
 八 富山地方法務局礪中出張所設置に関する請願(松村謙三君外二名紹介)(第六五七号)
 九 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(中村高一君紹介)(第一六一六号)
 十 中津川簡易裁判所新築に関する請願外一件(牧野良三君紹介)(第二三六七号)
十一 名古屋刑務所移転に関する請願(早稻田柳右工門君紹介)(第二五四一号)
十二 占領軍将兵施設に対する賃貸人の損害補償に関する請願(吉田賢一君紹介)(第二七七三号)
十三 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(鈴木茂三郎君紹介)(第二九一二号)
十四 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願外一件(戸叶里子君紹介)(第三二四一号)
十五 同(松浦周太郎君紹介)第三二四二号)
十六 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(中村高一君紹介)(第三三一二号)
十七 悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願(中村梅吉君紹介)(第三四二六号)
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○町村委員長 これより会議を開きます。
 まず、請願の審査を行います。
 請願の審査は、紹介議員が御出席になっておりますものにつきましては、その紹介説明を聴取し、紹介議員が御出席になっていないものにつきましては、その内容は文書によってすでに御承知のことと思いますので、朗読は省略し、直ちに関係当局の意見を求むることにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○町村委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。まず、請願第一六二号及び一六四号は、いずれも盛岡地方法務局二戸支局新築に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 盛岡地方検察庁の二戸支部並びに二戸区検察庁庁舎は、盛岡地方裁判所二戸支部及び二戸簡易裁判所、盛岡地方法務局二戸支局がございまして、狭隘をきわめておりまするので、至急に二戸支部等の庁舎を新築していただきたいという請願でございまして、法務省におきましても鋭意その実現に努力をいたしたのでありまするが、不幸にして昭和三十三年度の予算には計上りすることができ得ないのでございます。かねて御承知のように、法務省関係の庁舎は非常に古いものが多うございまして、長期計画を立てましてその改善に努めておるのでございますが、三十三年度には予算に計上することができ得ませんでした。将来におきまして、できるだけ願意に沿うように努力をいたしたいと考えております。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第一六三号及び第三七四号は、いずれも中国商品展覧会準備工作員の指紋問題解決に関する請願でありまして、本請願の趣旨は去る二月十八日当委員会で可決せられました外国人登録法の一部を改正する法律によって達せられておりますので、議決不要と決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○町村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
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○町村委員長 次に、請願第四七七号及び第六五五号は、いずれも更生保護事業拡充強化に関する請願でありますので、一括議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 更生保護事業の強化に関する請願は、昨年来引き続き各方面から多数提出されております。
 その内容といたしまして、保護司の実費弁償金の増額についてでありますが、保護観察対象者一人につきまして一昨年は一カ月百二十円でございました。それを昨年度は百三十円に引き上げられたのでありますが、三十三年度におきまして、さらに三十円引き上げまして、一カ月百六十円でございまして、総額約三千万円の増額を見たのでございます。
 それから、更生保護委託費は、従来対象者の食事つき宿泊及び宿泊についてのみ支出されておったのでありますが、本年度におきましては、新たに委託に伴う事務費として委託事務費というものを創設いたしまして、対象者一人一日につき五十六円を給付することにいたしました。なお、委託に伴い要する事務費に対しましては従来の事務費補助金支出をとりやめまして、更生保護会補助金は、国からの委託によらないで更生保護会が任意に保護することによって要する事務費の補助金のみを支出することにいたしまして、その合理化をはかったのであります。委託事務費の予算額は三千百九十九万七千円でございまして、任意保護に対する事務費補助金は六百三十八万四千円でございます。結局、前年度に比較いたしまして、更生保護会の事務費に対する予算額は二千六十三万円の増額を見たのであります。
 それから、保護観察所支部の設置についての御要望も内容としてございますが、諸般の事情によりまして、昭和三十四年度以降に持ち越すことになったのでございます。
 なお、更生保護事業の啓発宣伝の経費を増設していただきたいという要望がございますが、新たに二百三十七万三千円を計上いたしたのであります。
 以上の措置によりまして、本年度は昨年度に比較いたしまして五千三百万円の増加でございまして、必ずしも請願の御要望の額には達しませんが、御要望の方向に向って実現しつつあるということが申せるかと思うのでございます。
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○町村委員長 次に、請願第六五六号、糸魚川区検察庁舎改築に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 現在、新潟県の糸魚川にございます検察庁は、糸魚川簡易裁判所の一部に設置されておるのでございます。それも明治十四年の建築でございまして、老朽の度がはなはだしいために、かねて改築を要望されておつたのでありますが、昨年度は簡易裁判所が新設されることになりまして、あわせてその近所に適当な敷地を見つけまして検察庁の支部を建設する計画を立てておったのでございますが、三十三年度には不幸にして予算化することができなかったのであります。しかしながら、その必要性は非常に濃いものでございますので、引き続きさ努力をいたしまして、できるだけ近い機会に改築をいたしたいという計画でおります。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第六五七号、冨山地方法務局礪中出張所設置に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 最近、町村合併に上りまして、付近の町村を合せまして礪中町が新設されたのでありまして、そのために出張所を増設していただきたいという請願でございますが、全国法務局の出張所の平均登記件数は一万四千件でございますが、予想されまする礪中出張所の見込み登記数はわずかに三千件に満たないのでございまして、今直ちにこれを増設するということはむずかしいかと思うのでありますが、極力願意に沿うように検討して参りたい、さように考えております。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第一六一六号、第二九一二号、第三二四一号、第三二四二号、第三三一二号及び第三四二六号は、いずれも悪質泥酔者の犯罪に対する監護矯正法制定に関する請願でございますので、一括議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 わが国では飲酒の上の犯罪は処罰されないだろうということがよく言われておるのでありますが、実を申しますと、酒を飲んでいたというだけで無罪になるわけではないのでありまして、むしろこれを理由に重く処罰されるというようなことさえあるのでございます。ただ、飲酒の結果全く自己の行動を弁識することができないような場合には、心神喪失中の行為として無非になるのでありますが、裁判所ではなかなかそういう認定をしないのが普通であります。そして、犯行のときには心神喪失の状態にあったとしても、酒癖の悪いことを知っておる者がみずから進んでそういう状態を招いたという場合には、少くとも過失犯としての責任を負わなければならないのが普通であります。もちろん、現在の法制上無罪とするほかないような場合にも、なお刑罰や保安処分など何らかの処置を取り得るようにし、また、酒を飲んであばれたりしまして、人に迷惑をかけたりした程度の場合にも、これを犯罪として取り締るようにすると、いうことは社会や家庭の平和にとって必要なことと考えられますので、現在法務省において作業を進めております刑法の改正におきましては、多数国民の御期待にこたえ得るような結論を出したいと思っておるのでございます。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第二三六七号、中津川簡易裁判所新築に関する請願を議題とし、最高裁判所当局の説明を求めます。岸上経理局長。
○岸上最高裁判所説明員 中津川の簡易裁判所は、現在、町からの建物を借り受けておりまして、相当老朽の建物であります。ただいまのところまだ新築予算は予算化しておりませんが、いずれこれは新築しなければならないと考えております。できるだけ早い機会に予算化して、新築の運びにしたいと考えております。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第二五四一号、名古屋刑務所移転に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 本件につきましては、前国会におきましても同様の請願がございまして、できるだけ法務省といたしましてもすみやかにその実現をはかり、願意に沿いたいと考えております。本年度はきわめてわずかではございますが、刑務所等の移転につきまして具体的な調査をいたします旅費も計上されておりますので、関係市当局とも十分連絡をとりながら、できるだけ願意に沿いたいと考えております。
    ―――――――――――――
○町村委員長 次に、請願第二七七三号、占領軍将兵施設に対する賃貸人の損害補償に関する請願を議題とし、政府当局の説明を求めます。横川政務次官。
○横川政府委員 本件請願の要旨は、請願人の先代が第三者に建物を賃貸したところ、賃料が低きに失するので、その値上げを要求し、拒絶されましたために多大の損害をこうむったのであるが、この賃貸借は県警察部保安課長及び警察署長のあっせんによって成り立ったものであるから、その損害は国が賠償すべきものであるというのでありますが、本請願にかかる建物の賃貸借が成立いたしましたのは、国家賠償法の施行前のことに属しますので、かりに本件賃貸借の成立について請願の趣旨のような事実があったといたしましても、国の損害賠償はその責任があると認めることはきわめて困難なのでありまして、むしろ本件は賃貸借の当事者相互間の問題として処理すべきものでありまして、現に借家法は一定の条件のもとにおいて貸主に家賃の値上げを請求する権利を認めておるのでありますから、請願人はむしろこの借家法の規定によって保護を求めるのが適当であると考えられるのであります。
○町村委員長 以上で請願の審査は終りました。
 本日審査いたしました請願中、第一六三号及び第三七四号を除く十四件は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
  「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○町村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
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○町村委員長 次に、法務行政に関する件について調査を続行いたします。
 発言の通告がありますので、順次これを許します。青野武一君。
○青野委員 私は、二十三日の法務委員会で、法務大臣並びに竹内刑事局長に、長崎の機労の事件について、これが年末手当その他四項目を要求して、そして順法闘争を行うに当って、門司支部の副委員長の馬場義治君、安永静夫君、山中繁良君、森永達夫君、武石勝守君、以上五名の検挙、起訴に至るまでの問題について、起訴理由に非常に相違のある点四項目をあげて御質問申し上げておりましたが、たまたま本会議の関係で一応休憩いたしまして、都合によってその休憩がそのままになって、私としては結論的な御質問が一、二点できずにそのまま今日に持ち越されたようなわけでありまして、法務当局に最後の御質問を申し上げて私の質問を終りたいと存じます。
 それは、最高検がどのような考え方を持っておるのかということを調べてみますと、ピケの合法性の限界について、最高検の意見としては、ピケを張って威力を示す、何でもかんでも合法的だというようなことは、法律の番人として見送ることはできない、ピケというものは、労働組合側はあくまでも合法的であるという考え方をしておるが、最高検はそうばかりとは思わないということを言っておられます。その重点的なことは、ピケは威力を非常に示しておる、問題を起すおそれがある、こういう見解を持っておられるようであります。しかし、私どもに言わせますと、私も二十年ばかり労働組合運動、政治運動をやってきた経験がありますが、公労法によって争議権を奪われておる労働組合はもとより、民間の組合もそうでありますが、自分の生活権を防衛するためにはどうしても争議を通じてやらなければ解決がつかない。まして、いわんや、公労協あたりは、争議権を奪われておりますために、威力のないピケなんというものは張ってみたって何にもならないのです。それは刑法上の問題を引き起すことは別でありますが、やはり力と力の対決ができない場合はピケは一つの勝利への道に通ずる方法である。それを、ピケを張るということを犯罪視するような考え方は、やはり再考すべき問題ではないかと思う。法務大臣はこの最高検の言い分に対して御同意であるか、あるいは異なった御意見を持っておられるかということが、私の質問の中ではしまい方になって非常に大切な点でありますので、この御意見を承わっておきたいと思います。
 それから、項目別に申し上げますとまた非常に長くなりますので、一つにまとめて申し上上げますが、今度のこの機関車労働組合の賃上げ闘争、年末闘争というものは、あくまでも順法闘争を通じて行われたということであって、法務大臣に申し上げたように、起訴理由の一、二、三、四というものが事実と全然違うのです。このようなことで、官憲の取調べというものが、何か事件が起るとすぐに労働組合なら労働組合を犯罪視して、ことさらに取ってつけたようなことをなさるという傾向が非常に多い。そうしてみますと、機関車労働組合だけではありませんが、やはり将来第二、第三の長崎事件のようなものが起るということを予期せざるを得ない。こういう点については、お人柄の点から言ってみても、私は法務大臣が指揮、命令をしたとは絶対に考えておりませんが、下部の検察庁なり警察官の諸君に行き過ぎがあった場合は、法務大臣が指令をもってその行き過ぎを是正しなければ、ほかに方法はございません。だから、不法、不当な監禁が二十日も続いておる。勾留するのにも、判事の逮捕令状をもらって十日間の勾留をしたが、あとは捜査当局がもう一週間もあればいいというので一週間の延長をした。そうこうしておるうちに、労働組合の抵抗が非常に激しいというので、また三日間費した。項目別に申しますと、いろいろ複雑な内容がこの中に入っておる。一問一答の質問をすると、おそらく一時間以上かかりますから、私は一括して申し上げておきさますが、このようなことが再び起らないように一つ御留意を願いたいということを申し上げて、まず最高検の言い分に対して法務大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
○唐澤国務大臣 最高検の考え方について法務大臣はどういうふうに考えておるかというお尋ねでございますが、私は直接まだ最高検の意見というものを承わっておりませんけれども、およそ、労働組合の運動、労働争議、こういうものを当初から違法なものである、取締りの対象であるという先入観をもってこれに臨むということはもとよりよろしくないことだと思うのであります。正当なる労働争議は常々と認められておるのでありますから、これに対して初めから介入するような意図をもって臨むというようなことのよろしくないことは申すまでもないことでございます。今のお話のピケのことにつきましても、正当なる目的をもって正当なる方法で行われますならば、それがピケであるからというて、これを取締りの対象にするというような考え方はよろしくないと考えております。ただ、この争議の過程におきまして、あるいはピケ等を張っております過程におきまして、それが誤まって法の範囲を逸脱いたしますれば、やはり捜査当局、検察当局といたしましては法律手続をとらざるを得ないわけでありまして、その点は御了承願いたいと思うのであります。
 この長崎機関区における争議、これに伴いまして検察当局が検察の手をそれに伸ばしたという事件につきまして、自後におきまして地方から報告が届いております。この報告によりますと、ただいま青野委員の仰せになりましたことと事実の見方が少し違っておるのでございます。これはどちらが正しいか、だんだんと証拠をあげてのお言葉でございますから、法務省といたしましても十分取調べをいたしたいと考えております。ただいま報告を受けたところによりますと、やはり機関車の出入庫につきまして威力をもって業務を妨害した、こういう違法の事実があるということに認定をいたしまして、そうして法律手続をとったわけでございます。これは、事実の認定につきまして、あるいはただいまのお言葉でありますと食い違いがあるかもしれないと思います。
 なお、犯罪の捜査、検察等につきましては、ただ捜査、検察の便宜で身柄を勾留するというようなことがあってはならないのでございまして、やはり、人の自由を拘束する際には、検察陣として、証拠隠滅その他捜査の絶対的の要請に基きまして、そうして最小限度の自由の拘束ということでいかなければならないと考えております。そういう点につきましては、従来からも十分戒心を加えておりますが、将来にわたりましてもやはり十分に慎しんでいかなければならぬ、かように考えております。
○青野委員 私は最後に法務大臣に御希望を申し上げておきますが、この問題について御質問申し上げようとすると、まだ非常に重要な核心に入っていくわけでありますが、聞いてみますと、この五人の諸君が逮捕され勾留されておりますときには、弁護士その他いろいろな家族関係者、あるいは組合関係者にも、どういう理由かはっきり理由も示さずに勾留中の接見を禁止しておる。その禁止の延長手続に憲法違反のおそれのある点がだいぶあるのでありますが、単に長崎地検だけではなく、全国の警察にしてみても、捜査当局にしてみても、また地方々々の検察庁にしてみても、このような行き過ぎが国会の法務委員会で委員を通じて問題になってくるということは、法治国家としての日本の決して名誉なことではありません。いろいろな事実に基いて一問一答していきますると時間的には際限がありませんが、将来このような事件が全国のあちこちで起らないように、細心の注意を捜査当局も払い、また検察庁においても慎重な態度をもって臨まれるように、法務大臣から指示と同時に激励をしてもらって、こういうことが将来再び三たび国会で問題にならないように一つ善処していただきたいことを、質問を終るに当って最後に私から御希望申し上げておきたいと存じます。
○町村委員長 佐竹晴記君。
○佐竹(晴)委員 法務大臣にお尋ねをいたすのでありますが、高知地方公安調査局の局員の柴岡という方が、高知県教職員組合所属の公務員である小島義行に対して金銭を供与してスパイさせたという事件があるようでありますが、当局のお調べはどういう工合になっておられましょうか、これを承わりたいと思います。
○藤井(五)政府委員 高知地方公安調査局におきましては、かねてから日本共産党の調査の一環といたしまして、高知県教組内の日共党員、組織及びその活動状況を調査中であったのであります。昭和三十一年四月に高知聾学校中村市分校から高知市の本校に転任してこられた小島義行教諭が高知局の柴岡調査官のいとこであり、かつ同教諭は高知県特殊教組内の活動分子として日共党員とも相当な交わりがあることが判明いたしましたので、柴岡調査官が同教諭の協力を得ることにしたのであります。それで、三十一年の九月ごろ、柴岡調査官は小島教諭に正式に意向を打ち明けて協力を懇請いたしましたところ、同教諭は十一月ごろになって協力を約束して下すったのであります。この協力を約束するについては両者とも十分なる了解ができておったのであって、よく言われるように強要するとかそういうような事実は全然なかったのであります。なお、当時小島教諭は日本共産党から入党を勧誘されておったので、この点についても柴岡調査官に打ち明けられたそうであります。しかし、柴岡調査官としては、これはその後の調査に非常に好都合ではあるけれども、一面いとこであるので、正式の党籍を得てもらうようなことについてはためらっておったそうです。結局、同教諭の自由意思にまかすことになって、その結果小島教諭は三十一年の十二月に入党申し込みをして、翌三十二年一月に入党が認められたということであります。それ以後昭和三十二年八月ごろまで小島教諭はきわめて積極的に高知地方局に協力して下さったのであります。従って、同教諭から提供されたものは、日本共産党高知県委員会並びに同高知地区委員会関係の情報資料及び県教組その他大衆団体内の日共党員、党組織並びに党活動関係の情報資料のみであったのであります。そういう事情でございます。
○佐竹(晴)委員 大体わかりましたが、ただいま私が御質問申し上げたのは、最も重要な点は、柴岡調査官が小島義行に金銭を提供して情報を得たという点であります。いつごろからどれだけの金を供与しておったでありましょうか、これを承わりたいと思います。
○藤井(五)政府委員 小傷教諭に協力方の了解を得まして、高知地方局におきましては、同教諭に、昭和三十一年十一月に二十円、それから翌三十二年二月から八月まで月二千円の金を差し上げた。それはどういうわけかと申しますと、同教諭の連絡のための電車賃その他の車馬賃、夜分おそくなる場合が多いのでありまして、夜食代に充てていただくこともあったのであります。大体月に二千円程度は見込まれたので、それをそのつど差し上げるのもわずらわしいので、大体その見当で一括して差し上げたのであります。
○佐竹(晴)委員 定時に三十二年二月から八月まで毎月二千円供与いたしておりますことがただいまの御説明で明らかにされました。これ以外に、四月に二千円、五月に三千円、六月に四千円、七月に三千円といったものが別口で別の名目で供与されておるようでありますが、その御調査はどうなっておりましょうか。
○藤井(五)政府委員 今お尋ねのような金銭を差し上げた事実はございません。
○佐竹(晴)委員 小島本人の自供するところによりますと、そのことが明らかにされております。よく御調査を願いたいものと思います。
 そこで、私がお尋ねをいたしたいのは、公安調査局ともあろうものが、他の公務員に金銭を供与して情報をとるということは、正しいこととお考えでございましょうか。これは基本的な問題でありますから、大臣からひとまず承わりまして、その上さらに公安調査庁の長官からも承わりたいと思いますが、公務員が他の公務員に金品を供与することによってスパイをさせるということが、これは認めらるべき行為であるかどうか。ただいまの長官の御説明によると、さも、了解を得たという一事によって、すべて合理的、合法的に行われたごとき印象を受ける御説明でありました。私どもは、一体そういうことができるものであろうか、こういうことを疑問に思わざるを得ないのであります。大臣の御所見はいかがでございましょうか。
○唐澤国務大臣 公安調査庁は、本庁におきましても、また地方の公安調査局におきましても、破防法運用の必要上容疑団体の組織、活動について情報を収集して調査をいたしております。その過程におきまして、みずから調査をいたすこともありまするし、また広く他の人の援助を求めることがございます。他の方から情報を提供してもらいます際には、どうしてもその人が情報を収集するためにいろいろと雑費がかかります。その意味におきまして、実費弁償のような意味合いをもちまして金を差し上げるということもあり得るのでございます。
 公務員に金を提供したことがどうかというお尋ねでございますが、一般的に考えまして、情報の収集ということは、広くどなたからもお願いして、そうして情報の正確を期せなければならぬと考えておりますけれども、しかし、公務員はまた公務に差しつかえるというようなこともございますから、公務員に対して情報を依頼するということは、絶対的に禁止しておるわけではございませんけれども、しかし、もし他の方法で情報を得られるというような場合がありますれば、やはり他の方法で情報を収集してこれにかえる方が適当である、かように考えております。
○佐竹(晴)委員 ただいま大臣のお答えによると、結局公安調査庁というものは他の公務員に対しても情報を提供してもらうことを依頼する場合がある、これに対しては実費等も要する、従って、その費用を出すのが、これは自然の行きがかりになる、こういうふうに聴取し得られる御説明でありました。そうすると、結局これは国家が認めて国費をもって支弁されたものと思われますが、やはり、そういったような実費支弁は、法務大臣御承認の上、公安調査庁長官御承認の上に国費をもって支弁されたものでありましょうか、これを明らかに願いたいと思うのであります。
○唐澤国務大臣 この情報を集めてくれたことに対する謝礼として、その人がいろいろと諸雑費がかかるだろうということで、精神的には実費弁償のようなつもりで金を渡す、こういうことがあり得るのでございます。これは一々のことにつきましては、もちろん私が認めるとかあるいは公安調査庁の長官が認めるというようなそんな手続はございません。地方の公安調査局にまかせて活動させておるわけでございます。そういう際に、情報の正確を期するためには、やはり情報を提供してくれた者に対して金を支払う、こういうことがあるのでございます。
○佐竹(晴)委員 情報提供者に金品を提供する予算はどういう名目で組まれていて、そうしてどれだけの経費が予算に計上されておりましょうか。
○関政府委員 予算の費目は、公安調査官調査活動費という名目に相なっておるのであります。その額は、本年度におきまして四億円でございます。
○佐竹(晴)委員 私の了承するところによれば、公安調査官の調査活動の経費四億というものは、こういう工合に他の公務員を、これは言葉が悪いのでありますが、買収して、金品を提供することによって情報を獲得する、こういう経費のために予算に賛同したものとは私どもは考えていないのであります。この四億の経費というものも、今度計上されてくる経費も、そういう方面に使われるということになれば、これは相当次の予算審議においても問題になると思われます。
 私は、さらに進んで承わっておきたいのは、雑費等に相当の金額を要する、こうおっしゃいましたが、一体小島はどういう費用を要したのでありましょうか。私の調べておる範囲内においては、そういう実費その他の費用を要しておりません。どういう経費をどれだけ要しておるか。もし実費を要していないのに、金品を与えるということによって情報を得るということならば、これはまさに買収です。選挙等におきましては、明確にある目的を達するために金品を供与したならば、ひどい処罰がされることになっておりますことは御承知の通りであります。この間のあっせん収賄罪をこの席で論ずるに当りましても、ある公務員が他の公務員に対して金品を授受することによってあっせんをするということは、それ自体が不正である、よくないという結論が出ております。ただ、それを今度のあっせん収賄罪でその点まで罰するかどうかということについては考慮を要するという法務大臣の説明でありました。今回のあっせん収賄罪において、金品を授受することによってあっせんされるということ、それ自体を直ちに罰するということはしないが、しかし精神としてはよくないという結論が、前からも当委員会における審議においても出ておるのであります。私は、かくのごとき、金品を供与することによって情報を獲得するということは不正であると思うのでありますが、いかがでございましょうか。
○関政府委員 お尋ねの問題でありまするが、破壊的容疑団体の動向、その組織、その伸び方を調べる、それにつきましては、一般の文書であるとか、あるいは他人から話を承わるということに相ならざるを得ないのであります。そこで、もちろん協力者の中には全く何らの要求もされない方もおるわけでありますが、実際の協力を受けまして、そこに夜おそくに来る、あるいは電車に乗る、自動車に乗る、食事が夜おそくなる、諸般のこういう問題が出て参りまして、それらを含めてその方に若干のお礼をいたすということは、どうも人情の自然として、調査の方法としてやむを得ない一つの手段と存ずるのであります。もちろん、理想としては、佐竹委員さんのおっしゃるような、そういうなにをやらない、お互いに国家のためにこのことは知らせてあげよう、こういうようなお考えをいただければけっこうでありますが、現実はなかなかそうはいかない時代でありまして、その間に若干のお礼は上げる、こういうことに相なるわけであります。
○佐竹(晴)委員 雑費だとおっしゃるが、私の今お尋ねしました、どういうふうに実費を要しておるかという点についてのお答えがありません。これをまず承わります。
○関政府委員 原局からの報告によりますと、先ほど長官からお答え申し上げた通りに、情報の提供を受けるために一カ月のうちに数回ある場所に行くわけであります。そのときには向うから出てきていただいて、あるいは電車に乗る、自動車に乗る、あるいは夜おそくなって食事をとるというようないろいろな問題がそこにあるわけであります。それはその情報提供のためにわざわざ来るわけでありまして、それを中心としての費用もそこにかかるわけであります。そういうようなものを調査官が小島さんに伺いまして、大体その程度の費用であろう、こう判断をいたして、そういう費用を提供した、こういう報告に相なっておるわけであります。
○佐竹(晴)委員 私の調査によりますと、先ほど藤井長官もお認めのように、三十二年の二月から八月まで定期に毎月二千円出しており、それ以外に、四月に二千円、五月に三千円、六月に四千円、七月に三千円出しておる。これは、共産党の文書、チラシ、印刷物、「アカハタ」等を注文されて手渡しをいたします関係においてこういった費用を要するということで、これがおそらく実費に当るものではないかと私は思うのです。従って、二月から八月までに授受された毎月大体二千円に相当する金額は、定期の給与と見なければなりません。ところが、私が申し上げるまでもなく、国家公務員は一定の法規に基いて給与を受けておる。夜勤をすれば夜勤に従いましてそれぞれの給与がなされます。そうして、教育基本法によれば、教員は一定の給与を受ける以外に、他の事務を兼務し、そのために他から給与を受けることができないと明記されております。といたしますならば、教員が一定の給与を受けておるのにかかわらず、さらに公安調査局の依頼に基いて情報を提供するためにまた別途定期の給与を受けたということは、これは違法でなければならぬと私は思うのです。いかがでございましょう。
○関政府委員 お尋ねの調査官と小島君との間に授受された金額に、佐竹委員のおっしゃることと当方の原局の報告とやや食い違いがあるわけであります。私の方の報告によりますと、三十一年一月に二千円、そうして三十二年二月から八月まで一カ月に二千円ずっというお金が提供されたということに相なっておるわけであります。その金額の差異はまだよく問い合せることにいたしますが、いずれにいたしましても、調査官の方では、それらの全般の金額は本人に対する実費の弁償ということを中心として考えて差し上げたものである、どうもそれをもってサラリー的なものとはとうてい考えてはいないわけであります。やはり、情報の提供を受けたからして、その諸掛りの費用を差し上げたんだ、こういう考え方であるのであります。
○佐竹(晴)委員 最近この法務委員会でよく問題になります例のおとり事件にいたしましても、さらに福岡高裁に係属いたしております菅生事件におきましても、権利を持っておるものがいろいろと細工をする。また、本件においては金品を供与することによって他の公務員の良心を麻痺せしめておる。本来、共産党員であるならば、共産党員なりに、他へ秘密を漏らすようなことはできっこありません。できる道理がありません。それを、金品を与えることによって良心を麻痺せしめて、それをこちらの味方につけて情報を獲得するというごときは、これはお互い民間同士の者においては卑怯千万な行動であります。国家行動においても、そういう行動をとることなしに、堂々と、秘密なら秘密を捜査し獲得するところの方法を講ずべきではないかと思う。国家みずからが卑怯なる態度をとっていて、国民に対して公正をしいましても、国民がこれに従いません。最近のあの管生事件における状況等は何でありましょう。実に良心ある者をしてひんしゅくせしめております。本件においても、金品を供与することによって共産党員を買収して、これから情報を得ようなどというがごときはこれは全く前の特高警察にまさるところの暗黒政治にだんだん持っていくのではないかという印象を受けるのであります。共産党を破防法によって取り締ろうとするならば、これは職務として当然やるべきことであり、堂々とおやりになってよろしい。また堂々とやるために皆さんが給与をほんでその職についているのであります。これは民間における国民同士の間においてこういう行動をしたならば人から唾棄せられる。こういう卑怯なる行動をとることによって情報を獲得するというようなことが国家行為として認められるということになりますと、これはまことに忌まわしきものであります。国民も自然にそういう卑劣な行為を見習っていくようになりはしないかと思うのであります。私は昔の特高警察を顧みて暗然たるものがございます。ただいままでの説明によりますれば、これは実費だ、かまわない、相当だという御説明であって、その間何の御反省もないようでありますが、もし堂々と捜査をする必要があり、情報を得る必要があるといたしまするならば、堂々とおやりになる方針に改めらるべきではないかと思うのでありますが、法務大臣の御所見はいかがでございましょう。
○唐澤国務大臣 ただいまもお言葉にありました通り、国家といたしましては破壊活動防止の制度を法律できめております。その制度に基いて公安調査庁以下の機関ができておるわけでございまして、この機関において公務を預かっております者といたしましては、破壊活動防止法の精神にのっとって、十分的確なる資料によって法の命ずる調査をいたしていかなければならないという公務を帯びておるわけでございます。その公務を遂行するということがやはり国家の要請でございまして、この要請は十分に達成していかなければならないわけでございます。そこで、国家は相当の費用を費して破壊活動防止のための調査活動、情報の収集ということをさせておるわけでございます。この情報を収集しまするためには、情報でございますから、堂々とやって果してどれだけの情報が集まりますか、堂々という言葉にもよりますけれども、たとえばこれを新聞紙等に広告して、そうして集めてみるというようなことをいたすのも一つの方法かもしれませんけれども、それで果して完全に的確な情報が集まるかどうかということにも疑いが存するのでございますから、十分なる資料また的確なる資料を得るためには、やはりこの調査活動に当る調査官が各方面に手を伸べて、そうして皆様から協力をしてもらう、この国家の要請に応ずるということで、国民の皆さんの協力に訴えるということが当然のことと思うのでございます。この国民の協力に訴える際、これに応じて協力をして下さる方にやはり金銭上の迷惑をかけてもいけないから、いわゆる実費弁償の意味合いにおきまして、相当の実費のかかった際にはこれを償ってやるということも、これはやはり破防法の命ずるところの使命を十分に果すためには許さるべきことである、かように考えておる次第でございます。
○佐竹(晴)委員 この委員会で数日前に問題となりました例の官庁スパイ事件について考えてみますのに、官庁における公務員が機密をほかに漏らしたというので、これを直ちに検挙をいたしました。ところが、今度は公安調査庁においては金品を供与して向うさんの秘密をスパイした。これは許されるということになりますと、大へん矛盾ではないかと思う。官庁の機密をほかへ漏らしたならばこれは罰する。ところが、今度官庁は、ほかからどのような方法をとろうとも手段を選ふことなしにスパイさせることによって秘密を獲得する。公務員が秘密を漏らしたならば直ちに検挙する、国家はどのような手段をもってしてもその秘密をスパイさせることができるというのでは、これは私は理論が合わないと思います。これはこの間論じておりますが、国家公務員が漏らした機密でないものまでも機密だと称して片っぱしからあげようといたしますが、今度は公安調査庁においてはい、金品を提供することによって良心を麻痺させて、手段を選ばず機密を入手せしめる、そしてこれを国家予算において認められた経費をもって支弁している。堂々とおやりになるということでは、これは私は公正を疑わざるを得ません。私は機密を獲得するのもけっこうだと思いますけれども、それにはおのずから限度があって、手段方法を選ぶことなしに何でもやれるものとは考えられません。いま一度これに対する御所見を承わりたいと思います。
○唐澤国務大臣 官庁スパイ事件との関連においてのお尋ねでございますが、これは、御承知のように、官庁の秘密は国家公務員法百条によって守られておるのでございまして、これはやはり、法律の命ずるところに従って、国家公務員法第百条に違反する者がございますれば、やはり捜査当局といたしましてはこれを追及せざるを得ないのでございます。この法律によって秘密が守られておりますのは、単に国家の秘密ばかりではございません。私が申し上げるまでもなく佐竹委員十分御承知のように、刑法には他の個人の秘密もそれぞれ守られる規定があるのでございまして、この規定に抵触するものがありまして、個人の秘密がそれによってあばかれた場合におきましては、やはり法律的の手続をとられる次第であるのでございます。でありますから、今日守られるべき秘密につきましては、これを守る法制がございまして、それに反した者は処罰されるということになっております。ただいまの問題になっておりますのは、さような問題とは別に、破防法の命ずるところに従って必要なる情報を集める、その過程においてこういうことがあったというだけでございまして、官庁の秘密保護の問題とは関係がない、かように私どもは考えておる次第でございます。
○佐竹(晴)委員 私も破防法の審議に当りました一人でありますが、かくのごとき、手段を選ぶことなしに情報を獲得するための方法が当時認められたものとは考えられません。いろいろと論議いたしましたが、当時、かくのごとき、金銭を供与することによって相手の良心を麻痺せしめて、そうしてスパイするなどということを公然国家も許す、こういったような前提のもとに情報を獲得する活動をすることができることを認める、そういったような法律として成立したものとは認められません。ちょうどそのときに、政府側を代表して、ただいま御列席の関さんもお立ち会いで、るる御説明になっておられましたが、当時かくのごとき金品を供与することによって良心を麻擁せしめてスパイするなどということを明らかに認めて、そういう手段によるところの情報獲得をやはり合法的であり適当なものであると認めてこの破防法を制定するといったような御趣旨は、その御説明の中から一言もこれを私どもは聞くことができなかった。私は最近つくづく考えますことは、私どもがいわゆる社会運動を始めた当時においては、私どもも警察のブラック・リストに載せられました。そうして警察から尾行されたのであります。そうして、私どもが演説をやりますと、警官がついていて、注意、中止を食いました。私どもは弁護士をやっておりました関係で、私どもに対する取締りは警戒的であったことはもちろんであります。あまりにも法を逸脱したむちゃなことはやってこなかったのでありますが、しかし、それでも、注意、中止、検束などということは、私ども、また私どもの同志が常に受けておったところであります。そこで、その後に至って、その治安維持法というものが廃止せられるようになったならば一体どうなることであろうということを非常に不安に考えて、また、演説や何かをやりっぱなしにして、警察が立ち会いなしに、注意、中止もやらないようになったならば一体どうなることであろう、こういう御心配が政府当局といたしましてはずいぶんあったであろうと思います。ところが、いかがでございましょう。治安維持法というものがとってのけられましたけれども、その後共産党によって日本がひっくり返されるようなことはございません。あの戦争後において国民のすべての人々がずいぶん不安な状態にあった時代におきましても、治安が保たれて参りました。そして、今日私ども至るところで届出をせずに集会をやり、演説をやりますが、一向注意、中止を食いません。これは自由にやれる。ところが一向にそのことによって国家がひっくり返るなどとは思われません。ところが、戦前においては、治安維持法というようなものがありませんとたちまち国家がひっくり返るように考えたし、あるいは警察官が立ち会いして注意、中止をやらなければ世の中はたちまちひっくり返るように、その当時はお考えになったでありましょう。けれども、これは考え過ぎであった。こういう状態がとれた今日、自由に演説をやりっぱなしにしてどのようなこともできつようになった今日、何も不安を感じない今日において、これを過去にさかのぼって考えてみますときに、ずいぶん昔は神経を使い過ぎたものだと思います。私がただいまここにお尋ねいたしております事件等についても、少し神経過敏ではないかと思う。そんなにせぬでもいいものではなかろうか。私が先ほどから、情報を得るのもいいが正々堂々とおやりになってはいかがでございますと言うのはそこにあるのです。当局自身が非常に神経過敏である。何か秘密裏にそっと人を買収してでも情報を得たり何かいろいろなことをやっておらぬとたちまち国家がひっくり返ってしまうような、そんなふうにでもお考えでありましょうか、破防法々々々とおっしゃっておるのです。そして、何かこの不安を除くためにはそういう秘密裏にスパイをさせることがいかにも正当であり、それが国家のためだというふうにお考えになっておるかもわかりませんが、そのことのために、そういう神経過敏な、これは語は悪いのでありますが、むしろ神経衰弱的なそういう行動をおとりになることによって、かえって逆に国家のために不利益を及ぼす点が多々ありはしないか、私はこれを憂えるのであります。おとり事件においても、菅生事件においても、ずいぶん手の込んだいろいろなことをいたしております。今度のこのスパイ事件にいたしましても、こういったようなことをやります。これがだんだん行って特高警察の時代に戻って暗黒政治になって参りますときには、そういう行動それ自体が革命を導くところの導因になりはしないか。われわれが自由主義国家として誇っておりますゆえんのものは、お互いに堂々とものを処理していく、秘密裏に神経過敏的なことをしないで堂々と取っ組んでいくところに、私は重大なる意義があるではないかと思うのです。はなはだしつこいようでありますが、今度のこういう行動は少し神経過敏的な行動ではなかろうか、もう少し一つ正常な姿に返してはいかがであろうか、こういう気持がされるのでありますが、私のこの考え方が逆に間違っておるのでありましょうか。一つ大臣からお答えを願いたい。
○唐澤国務大臣 今度の情報収集に関連しての公安調査官の活動が少しく神経過敏に過ぎやしないかというようなお尋ねでございます。これはまだ現実についてよく調べておりませんし、どういうような必要があり、どういうようなねらいでこの情報収集に当ったのかというようなこともつまびらかにいたしませんから、はっきりは申し上げかねるのでございまするけれども、大体の方針といたしましては、この破防法の命ずる調査、情報収集というものを十分に行う、この必要は認められるのでございますが、しかし、情報の収集はどこまでもその限度にとどめなければいけない。ただいまお言葉にありましたような神経過敏あるいは神経衰弱的な情報の収集の仕方をしてはいけないということは、これは厳に戒めなければならぬことと思うのでございます。この破防法の保護している法益というものは、これはもう非常に国家の運命に関することでございまして、そうして、この破防法関係で間違いが起りますれば、これは国としては取り返しのつかぬ問題でございますので、今晴天であるからというて常に安心しておるというわけにも参りませんから、あるいは第三者からごらんになりますれば少し神経過敏に過ぎはしないかというような感じをお持ちになる場合もあるかもしれませんけれども、しかし、この破防法の運用に当っておりまする者といたしましては、やはりそれぞれの観点から相当の理由をもってこの情報収集に当っておるわけでございます。しかしながら、だんだんお言葉にもありました通り、その必要限度を越えてあまりに神経過敏なやり方はいけないということは、もうお言葉の通りと思うのでございます。
○佐竹(晴)委員 私は本日はこの程度にいたします。
○町村委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 三田村さんはもう了解されておると思いますけれども、どうもいつも、私がしんがりの質問をするときに気がそわそわされておりますが、私はしばしば簡潔にやって長広舌をふるったことはないのであります。どうぞあまり神経衰弱気味にならないように一つ……。
 ただいま同僚の佐竹委員から公安調査庁の活動について質問がありました。いわゆる法理論あるいは法の解釈に基いてのやりとりをいたしますと、うまく逃げられます。私は一つはっきりした証拠をもってお尋ねしたいと思うのであります。
 法務大臣も御存じの通り、最近警視庁の方で名をつけてわざわざ新聞に刷りものまで渡してくれた人民艦隊事件というのがあります。その被告の一人の愛知県西尾市の可児登志夫という人の家族、妻テルさんところへ、可児君を釈放するために協力してやる、自分は公安調査庁の大内という人を知っている――これは、調べたところによりますと、公安調査庁第二部第三課第二係長大内逸郎という人であります。それで、結局テルさんから三月二十六日と三十日の二回にわたって五万円をだまし取った事件があります。その後も金を催促するので、テルさんが不審に思って、東京の合同法律事務所に連絡してみましたところ、結局わかったことはこういうことです。第一に、今の大内逸郎係長にテルさんのいる場から電話をかけて――三月二十三日、逮捕された翌日です。翌日やってきたその川崎好古という男ですが、それがテルさんのいる場で大内氏に電話をかけて、急行「安芸」で広急へ行く大内氏を、テルさんの兄さんとともに浜松で待ち合せた、可児さんの写真と経歴書を渡して釈放方を依頼しているのです。そのときに、こういうことが明らかになった。釈放はむずかしいが、差し入れや、起訴、不起訴のとき、家族の状況を伝え、情状を酌量してもらうよう努力すると約束した。そうして川崎は大内氏にこの五万円の金を渡したと言っているのです。関係があることは、共産党中央委員会の、共産党の本部員である木村三郎君が行って公安調査庁に抗議を申し入れましたところ、そういうことまでがはっきりしているのですね。これは一体どういうことですか。藤井さん、まずあなたからお聞きしますが、公安調査庁は、人を買収するために金を出すばかりか、逮捕された人の家へ翌日行って詐欺をやるのに片棒かついでいるのですよ。そういうことをする役所ですか、公安調査庁は。
○藤井(五)政府委員 その事実は全然ございません。詐欺するとか、そういうことは全然ございません。何かもしあれば、的確なる事実を示していただけばなお調査いたします。
○志賀(義)委員 話を飛ばしてごまかしてはいけません。私は今大内君が詐欺をしたと言いましたか。詐欺をしたのは川崎という男だ、その詐欺の片棒をかついでいると言ったのですよ。ごまかしてはいけません。公安調査庁は、そういう詐欺をやる片棒をかつぐ官庁かと聞いているのです。私の言うのは、現に、共産党本部員の木村三郎が抗議に行ったとき、大内逸郎という人が川崎と関係のあることを認めたじゃありませんか。しかも、浜松で会って、釈放方の協力をすると言っているじゃありませんか。このことを聞いている。詐欺のことを聞いているのではないのですよ。そのもう一つ前のことを聞いているのですよ。調べたかどうかをまず聞いているのです。
○関政府委員 お答えいたします。私も実は「アカハタ」によって初めてその事実を承知いたしました。それで直ちにその筋を通しまして調査いたさせました。その結果によりますと、川崎なる人と大内君とが以前あることで知り合いになった、ずっと前に知り合いになったそうでありますが、その後連絡がなかった、ところが、たまたまこの事件で、何かあるところから電話がかかってきて、そうして、大内君がその前からの予定によって関西の方に出張する、その出張する途中、今の浜松あたりで待ち合せて、汽車の中に乗り込んでこられて、これだけの話があった、こういうことはどうも事実のようであります。しかし、川崎君と大内君との関係において、おっしゃったような詐欺の片棒とか、そういうことは全然ない。ただ、まあかねての若干の知り合いから、その問題の釈放とか、いろいろな問題が話が出たようでありますが、それは大内君としてもやはり公務員の立場としての限度を守っての話でありまして、問題点をよく承知してそれに対処した、こういうふうに申しておるわけであります。そういう事実があります。
○志賀(義)委員 その光があるのですよ。大内係長は、共産党の木村三郎君が聞いたとき、昔知っておったことがある、それで、広島へ行くときに浜松で会ったということだけでなく、私が読み上げたようなことを大内係長が言っているのです。釈放はむずかしいが、差し入れや、起訴、不起訴のときは、家族の状況を伝え、情状酌量をしてもらうよう努力すると約束した、そういうことを言っているのです。現にテルさんの兄さんも浜松のときに一緒に行っているのですよ。その点はどうですか。
○関政府委員 その点は、大内君は、そんなことは言ったことはない、こう申しております。私は、「アカハタ」に書いてありましたから、なお念のために問いただしましたところが、そういうことはない、私も公務員の立場をよく承知しておる、また調査官としての立場もよく承知して応接いたしました、こういう返事でありまして、私どもはそのようなことはないものと思っております。
○志賀(義)委員 自分の役所の人間のやることは、ないと言って済ましておりますが、これは重大なことですよ。現に浜松駅で可児テルさんの兄さんがいるところでそういうことをやっているのです。こちらは共産党本部から三人の人間が行って聞いておるのですよ。それほどの重大なことなら、本人の申し立てだけでなく、もう少し事実をはっきりした方がいいでしょう。しかも、川崎という詐欺師を、そういうことがあれば公安調査庁に重大な関係のあることで、なぜ警察なり検審庁にやってはっきり調べませんでした。これは指名手配されておった詐欺師でしょう。何も調べずに詐欺の問題ですぐに大分に送ってしまったでしょう。公安調査庁が何をする役所か、これは重大な嫌疑のかかることです。なぜその点をもう少し警察、検察庁と連絡してはっきり調べた上でやらないのか。そういう処置をとりましたか。
○関政府委員 それらの処置をとりません。
○志賀(義)委員 なぜとらない。
○関政府委員 それは、要するに、大内君が浜松に押しかけられたのでありまして、押しかけられて、そのときの若干の問答だけでありまして、なおそれをもって直ちに詐欺であるとかなんとかいう告発の段階には、おそらく大内君も考えが及ばなかったでしょう。また、その後の報告を受けましても、そのような容疑の問題という点は、大内君自身も感づかなかったことと思うのであります。
○志賀(義)委員 話をごまかしてはだめですよ。詐欺の容疑とかなんとか、さっきから一つも言っていないじゃないですか。それだから、これは重大なことであるから調べたかどうかと言っているのだ。こちらの党員が三人行っているのですよ。浜松では可児テルさんの兄さんも行っているのです。そういうことを調べた上で潔白を証明すればいいじゃないですか。現に、ここにおられる唐澤法務大臣はどうです。森脇君から無根のことを言われて、自分の体面のために告訴までしているじゃありませんか。
 法務大臣にお伺いしますが、こういう奇怪な事件があるのですよ。それで、詐欺師だけは向うにやるということで、公安調査庁という、実は法務省の一部の役所で、こういう奇怪なことがあるのですね。森脇君を告訴なさった唐澤法務大臣として、こういう場合にはどうなさるおつもりですか。この点を一つお尋ねいたしたい。
○唐澤国務大臣 私は今初めて聞いた事実でございますし、それから、志賀さんも非常に御憤慨になってお述べになりますので、事実をはっきりお話だけでは私はつかめないのでございますけれども、大体、志賀さんの仰せになることと、それから公安調査庁で、大内という方ですか、公安調査庁の側の公務員に聞いたこととの間に食い違いがある、こういうふうに私は聞き取れるのでございます。御承知のように、公安調査庁は警察でもございませんし、検察当局でもございません。ただ破防法の運用に当っておる機関でございまして、その方が、浜松ですかどこですか、汽車の中で昔の古い知り合いと行き会っていろいろなことがあったということでありまして、これですぐ訴追の手続をとるとか、官庁として調査するとか、こういうようなことには今聞いただけではならないように思うのでございます。私の場合におきましては、ああいうようなことが新聞に伝わりますと、もし検察当局の指揮のポストにおりまする私について多数の検察官がみじんなりとも疑いを持つということになりますと、これは非常に憂うべきことと思いまして、私はあの手続をとったのでございますが、今御提示になっておる問題につきましてはそれほど公安調査庁の公務員がいきり立って、いろいろな手続をとるとか、すぐ検察庁に言う、警察庁に言う、それで取り調べなければならなかったかというようなかかり合いにはなっておらないように感じますけれども、私は事実を存じませんですから……。
○志賀(義)委員 大内係長が、党本部の木村君が行ったときにこう言っているのですよ。川崎は特審局時代の同僚から紹介されて知り、その後に二、三度会っている、なお、釈放はむずかしいが、差し入れや起訴、不起訴のときは、家族の状況を伝え、情状酌量してもらうよう努力してやると役束した、――ここが問題なんですよ。そう言って浜松で川崎と会ったこと、川崎との電話連絡、勝目五郎というのがその金を受け取ったときの保証人なんですが、勝目との会談などを見ても、川崎に協力していた事実を承認したと大内自身の口から言っている。ところが、今藤井長官の話を聞くと、その大内に聞いたら、何にも関係がない、こういうことです。一体公安調査庁の役人がこういうことをしてもいいものかどうか。相手は指名手配中の詐欺師ですよ。もし何にも知らないでうっかりそういうことにかかり合ったなら、それは不明の問題でしょう。しかし、それにしても、当局として、不明であるということを一言言ってしかるべきでしょう。長官にしたって、次長にしたって、そんな態度はちっとも認められない。とにかく、ただいま私が申したようなことがありますが、法務大臣は何も御存じないようであります。国会はきょうで解散になるようで、私がここで質問するのはき、ようが最後ですが、あなた方の役所はありますから、それで、あなた方の役所はこういうことをはっきり――ことにこれは法務省の管轄下の官庁の問題ですよ。あなた御自身の面目にかかわることで告訴されるなら、役所の面目にかけてこの点はっきりするのは当然のことでしょう。それをして下さいと申しておるのですが、法務大臣、いかがでしょう。
○唐澤国務大臣 私はその「アカハタ」の記事を読んでおりませんし、その事実については初めてここで承わったわけでございます。それで、だんだんと志賀先生のお話と、それから公安調査庁の側の話とを承わっての感じでは、その「アカはタ」の記事に気がついて関次長その他係のところでさっそく取り調べた、これは当然のことでございます。ところが、本人の言い分が、そういうことはないというのでございますから、まず官庁の扱いといたしましては、その公務員の言うことを信じて、そうして、「アカハタ」の記事に対しては悪いのですけれども、これは新聞紙にはときどき誤りもあるのでございますから、やはり公務員の言うことを信じて、その程度でよろしい、不心得がありてはならないから取り調べをしてみたけれども、別段不心得はなかったという程度で、私はしかるべきものと考えますけれども、しかしだんだんとお尋ねでございますから、またも私この事実を初めて知った次第でございますから、さらに取り調べて、もう少し真相に徹しろというお言葉でございますれば、それは御趣旨に沿うようにいたします。
○志賀(義)委員 そのように希望いたしますが、今川崎という詐欺師は指名手配中の者で大分に護送されているのです。あなたは検察官に対しての指揮権を持っておられますから、あなたのところの官庁の面目にかけても、この詐欺師がどういうことをしたか、五万円の金はどう使ったか、そういう点も一つお調べ願いたいと思います。あまり新聞の悪口を言われるよりも、菅生事件のようなこともありますから、あまり大きいことは言われない力がよろしかろうと思います。
    〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕
 次に、さっきの佐竹委員に対する公安調査庁のお話を伺いますと、共産党は破壊活動の被疑団体として、共産党に対して公安調査庁がやることは当然のことのように言われておりますが、やはり公安調査庁が金沢で共産党員に対してやったことで、共産党員が起訴された事件があります。その第一審の判決がありますが、その点について第一審の判決文はこう言っております。「そこで本件についてこれをみるに……同公安調査官の右の調査方法をみるに、前認定の通り、日本共産党に在籍しこれに忠誠義務を有する被告人室橋龍次に接近して、同被告人より同党の情報を入手しようと考え、秘かに同被告人の家庭訪問を繰り返し、かつ又多少の金品を用いて同被告人及びその家族の歓心を賢い求め、情報の提供を受け又は受けようとしたものであつて、たとえ、その行為の目的は破防法上の職務の遂行にあり、又その手段方法において調査の相手方に対する何等の暴行、脅迫その他の強制的要素を伴わないものであっても、なおかつ国民の健全な法意識と基本的入権の保証に暗影を投ずるものとの譏りを免れない。……。この点において新田公安調査官の本件調査の方法並びに被告人等より詰問を受けた際におけるこれに対する信念喪失の応接態度は真に遺憾としなければならない。」、判決にこうなっております。事実この判決の全部を私は承服するものではありませんけれども、現在の日本国民の健全な法意識と基本的人権の保障という問題、この点から、一審裁判所も、公安調査庁の先ほど藤井正長官並びに関次長が平然として述べられたようなことは間違っているということ、――裁判所と同じように日本の国民もそう思っております。だからこそ、国会でも、前国会以来引き続き、公安調査庁の金の使途の問題、やり方についての質問があるわけです。先ほど法務大臣の御答弁によりますと、共産党に対しての調査、これもあたかも当然のことのように言われます。大体破壊活動というものを考えてごらんなさい。日本の国民の家を共産党が焼きましたか。大量的殺人をやりましたか。唐澤さんは、戦争中だれがこれをやったかは御存じの通りであります。どうしてそういうことになったかといえば、官庁が戦前は特権意識を持っておって、国民をかり立ててそういうところに持っていったのです。それこそ真に警戒すべきものです。裁判所の判決でも示される通り、法を乱用し、そして職権を振り回してやること、これがまたそういう日本を破壊するような重大な行動のもとになるのです。法の運用がまるきりあべこべになっております。私はきょうはいわゆる官庁スパイ事件について質問いたしますが、そういう点は決して藤井長官や関次長が考えておられるようなことには世間は参っておらない、そういうことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 そこで、二月十三日の当法務委員会において法務大臣は、これは国家機密の問題でございますけれども、「各官庁には事務上の関係で官庁の秘密というものがございますけれども、これらの秘密全部を防諜関係で守るべき秘密というふうに考えるわけにはいきません。いわゆる防諜法で保護すべき秘密は国家機密でございまして、まあ戦争中でございましたならば、いろいろ広い範囲の経済上の秘密、資源に関する秘密というようなことが非常に広く法律で守られておったのでございますけれども、今日になりますと、法制をもってこれを守る――守る立場からいいますれば行動の自由を制限するということにもなりますから、この間におきまして、法律を作ってまで守らなければならない国家機密というものはどういうものであるかという、この対象から研究いたさなければならない」云々、こう申されておりますが、今日におきましても、先日来の法務委員会の猪俣委員、青野委員たちの質疑がございましたこの点については、法務大臣の御意見は変りはございませんですか。
○唐澤国務大臣 国家機密を保護するために新しい防諜法的の立法均する必要ありやいなやという問題について私がお答えをした部分の点をお読み上げになったと思うのでございますが、その基本的な考えについては少しも変っておりません。要するに、今日、国家機密として守られるべき機密については、戦前に比べますれば不完全ではありますけれども、それぞれの規定がございます。私が一々あげる必要もないことでございまして、秘密保護法もあれば、官庁スパイ事件で問題になっております国家公務員法とか、あるいは地方公務員法とか、それぞれ特別な規定がございまして、それぞれ国の秘密が守られております。それ以上にさらに進んで、新しく総合的に国家機密を保護する防諜法的の規定の必要があるかどうかということについては、根本的に考えていかなければいけない、今日のところではまだ結論を持っていない、こういうふうに答えたつもりでございます。その点は少しも変っておりません。
○志賀(義)委員 そこで、それを前提としまして、竹内刑事局長に伺いたいのですが、検察庁、法制局がいわゆる秘密について意見を統一されたのはいつでしょうか。これは法制局長に伺うべきことですが、あなたの方に相談がありましたのはいつでしょうか。
○竹内政府委員 お答え申し上げます。先般この委員会で統一的な見解を出せということでございまして、法制局と私の方といろいろ打ち合せをいたしました結果、意見の一致を見まして、その一致しました意見に基いて、この委員会で法制局の野木第二部長から見解を御披露申し上げたのでございます。それは速記録に明らかになっておるはずでございます。
○志賀(義)委員 実は、竹内さんの昨日の参議院法務委員会における亀田委員への答弁で、気にかかることがあるので伺ったのでありますが、その統一的解釈というものは最終的見解でしょうか。先ほどの法務大臣の発言と照らし合せて、その点をちょっと伺いたいと思います。
○竹内政府委員 国家公務員法百条の解釈といたしまして統一見解を出したのでございますが、これはただいまのところ変更する考えはございません。なお、この統一見解の背後には、もとより恣意的な解釈ではなくて、一審の判決ではございますが、判決の示しております解釈をも参酌いたしましてきめたものでございます。
○志賀(義)委員 あなたは恣意的でないと言われますけれども、国家公務員法の第百条に関連して、あなたに昨日参議院で亀田委員からこういう質問があったのです。マル秘、部外秘、こういう秘という判が押してあれば、何でもかんでもこれが秘密だと言われたことについて、亀田委員から異議が唱えられました。ところで、現に、今度のいわゆる官庁スパイ事件なんかというものは、それをもとにしてやっているわけです。官庁によりますと、社会党の五カ年計画批判を企画庁で起案したもの、しかもそれが日経連タイムスにも出ているのに、それを部外秘を理由にして逮捕しておる事件があります。そこで、農林省の安田局長、また名前は忘れましたが企画庁のある局長も、昨日法務委員会で、今度逮捕された人に対してどう言っているか。警察がこれを逮捕したことについて不満である、また起訴せぬようにというふうに言っておる。あなたはきのう、部課長がやったこと、そういうものもマル秘で、これは秘密になるけれども、それが正しくないときには職権を乱用したことになると言われた。ところが、現に、そこの責任者の上長宮が、これはそんな秘密とは思わない、起訴せぬようにと言っているのに対して、検察庁の方では警察と一緒になってあべこべの解釈をしておる。きのうの両局長の答弁に対して、局長はどうお考えでしょうか。そういうふうになさるおつもかりどうか。警察の行き過ぎを抑制なさるおつもりがあるかどうか。その希望をいれられるかどうか。
○竹内政府委員 ただいまのお答えに直截に答える前に、きのう私が参議院の法務委員会でお答え申し上げた趣旨を取りまとめて簡単に申し上げますと、私は、百条の解釈として、つまり理論の問題としてまず私の意見を申し上げたのであります。これは法制局もそういう意味において解釈を出したわけであります。その解釈といたしまして、秘密の中に二種類あるように思うのでありますが、問題は、当該所掌の官庁が認定をいたしました秘密、こういうものにつきまして、その認定権者が国家機関としての権限を持ったものであり、内部の委任規定によって委任を受けた局部課長、そういう人が、これは秘密であるという認定をいたしました場合には、これは私どもとしてその立場を尊重していかなければならない、その結果、国家公務員法百条の関係におきましては、そういうものが秘密であるという解釈をいたしておりますということを申し上げたのでございまして、もちろん、その認定につきましては、今も御指摘のように、この認定をするにはそれ相応の合理的な根拠、理由が必要でございます。そういう合理的な根拠がない、理由のない、まあいわば乱用というふうに見られますものにつきましては、もとよりこれは私どもの立場においてもその認定を批判することはできると思います。もちろん裁判所も批判ができるわけでございますが、いやしくも職務権限がある者において合理的な理由に基いて認定をいたしたものでありますならば、それが極秘という判が押してあるか、あるいは秘という判が押してあるか、そこは問わず、要するにここにいわゆる秘密に当るという解釈をいたしたのでございます。それに対して、いろいろと本件のいわゆる官庁スパイ事件と称せられております関係者の各官庁からの御意見が、今おっしゃったようにございました。実は私もその席に連なっておりまして意外に感じたのでございます。意外と申しますのは、保護してもらいたいのはそれぞれの官庁であるはずでございます。そういう官庁の方々がこの点につきまして必ずしも明快な回答をされておったとは思いません。まあ私どもとしてはちょっと意外に感じましたが、それらの事実は、私に批判をせよという亀田委員からの御要望がございましたけれども、ただいま捜査中でございまして、まだ起訴、不起訴もきまっておらない段階でございます。そしてまた、事実は検察当局におきましてもかなりの日時を費して検討しておることでありますし、その詳細は私どもまだ伺っておりませんので、固まった事実の上についての意見を述べるのならば、これは私も述べるのにやぶさかではございませんが、まだ、亀田委員のおっしゃった摘示した事実が、検察庁が処罰をしようとしておる事実と合致しておるものやらどうやら、そういう点も、今私の立場としてこの段階では申し上げかねる事項でございます。そこで、亀田委員からいろいろと言われたこと、並びに委員会で関係官庁の責任ある方々が述べられましたことは、速記録に載るわけでございます。これらは検察当局に渡しまして、十分運用に遺憾なきを期してもらう、こういう腹づもりで私は伺っておったような次第でございます。ここにおきましてあの文書はどうだというふうにお尋ねを受けましても、これは、今申し上げましたような理由で、批判はしばらく控えさしていただくのが適当ではないかというふうに考えております。
○志賀(義)委員 国家公務員法第百条についての見解をあなたはお述べになって、それから、上の部課長までが責任をとってこれは秘密だという場合にはそれも有効だということを言われた。ところが、当の上長官が来て、あれは秘密でもござません、あるいはまた、起訴しないようにわれわれもやります、申し入れをしますというようなことを言えば、それは、あなたが言われたように、ほんとうに意外ですよ。何とか事件にでっち上げようと思っているのに、どうも当の官庁の役人があべこべにそういうことを言われては、確かにあなたも、さっきから意外々々と繰り返すように、意外でしょう。そこで、今度の国会の法務行政にも関連してくるのでありますが、今度の国会では職務上の秘密ということが非常に言われているのです。たとえば、今度の五月号の中央公論にも、もと行政監察庁の高田副監察官が、「不正者の天国」というものを書いて、その中で汚職に触れておる。これが免官の理由でありますね。秘密を漏洩したということになりますと、汚職ということは一体何でしょうか。法務省にお伺いしたいのですが、どうでしょう。汚職というのは漏らしてはならない秘密なんでしょうか。その法律上の根拠はございますか。一つ御答弁願いたい。
○竹内政府委員 汚職とはどういうものかという御質問でございますが……。
○志賀(義)委員 汚職とはどういうものだというのじゃないのですよ。汚職を本に――「不正者の天国」に書けば、秘密を漏洩した、秘密漏洩という理由でやられているのですよ。汚職について事実を明らかにすることは国家の秘密を漏洩することになるか、汚職は秘密か、その点について何か法律上の根拠があるなら伺いたいというのですよ。汚職の定義を伺っているのじゃないのです。
○竹内政府委員 汚職を明らかにすることが秘密かどうかというお尋ねでございますが、これは、明らかにする立場の人によりまして、私ども、検察の仕事をしております――私は現にしておりませんが、しております場合におきましても、これを公表しますことは、人権の尊重その他いろいろな関係から値しまなければならぬ。それをあえてやりますことは、もう公務員として許されないところでございまして、汚職であるがゆえに公表自由であるという趣旨のものではない。その取り扱います人の立場で、ある時期は言えないことがあり得るというふうに考えておるのでございます。
○志賀(義)委員 国家公務員法の法文の趣旨はそういうものじゃないでしょう。汚職なんということはないものということを前提として、そういうことはやってはならないものとして、ちゃんと社会及び国民に奉仕しなければならないということになっておる。その必要上、職務上知り得た秘密は言ってはならないというのです。ところが、汚職ということは、第百条の趣旨に従うと、漏らしてはならない秘密には入らないのですがね。あなたのように言われると、検察庁や警察やあるいはその他のところ、行政監察庁の上長官とか会計検査院とか、こういうところがやらない間はやってはいけないということになりますね。そうすると、どんな不正があっても役人というものは黙っておるべきだという、実に珍妙な規定をきょうあなたから伺ったことになるのです。そういうふうに伺っておいてよろしゅうございますか。これはあなたにとっても重大なことですから、もう一度御答弁願います。
○竹内政府委員 非常に重大なことを御質問にあずかりましたが、私は、官吏はその立場におきまして、特に監察するとか検察するとか捜査するとかという職務権限を持ってその衝に当っております官吏は、たといその内容が非難すべき行為にかかるものでございましても、これをみだりに公表することは許されないというふうに考えております。従いまして、この委員会でも、公益の目的であるから言えという御質問がしばしばありますけれども、事が捜査に関する場合にありましては、ある時期、また公表すべきことが確実であるということの見通しがつきますまで、その他公判審理に支障の生じないというような具体的な事情が出てくるまでは、私どもとしてみだりに申し上げることは許されないというふうに考えておるのでございます。非常にむずかしい御質問でございますので、お答えが十分ではございませんが、意のあるところをおくみ取り願いたいと思います。
○志賀(義)委員 きょうは時間の関係がありますから……。きょうこれをやりますと、もうきわめて重大な問題であります。あなたはちょっとごまかしておられる。検察庁なりが摘発したときに、捜査中になったときには言えないと言われるのですが、「不正者の天国」というものは、まだだれもあなた方の方でも摘発されない前のことにも触れて、その中で汚職を言っておるわけです。むしろ、検察当局としては、国家公務員法の規定で、やってはならないことを言う者があった場合には、喜んでそれを受け入れて調べるべきでしょう。公安調査庁なんかどうです。国民の健全な法意識にも反するような、買収をやる、誘惑をやる、そういうようなことまでやらなくたって、こういうふうに、日本の忠実な役人は、何も言わなくても、一文ももらわなくても、あなた方に、こういう不正がありますということを知らしてくれる。むしろ感謝すべきものを、逮捕して免官したでしょう。事はそういう重大な問題なんですよ。しかし、あなたとここでやりとりしておったら時間がたちますから……。これは、あなた自身も重大な質問と言われたが、今後の重大な問題です。これでこの問題についてのあなたに対する質問はやめますけれども、この国政審査の権限のある国会においてさえ、公安調査庁は、買収費をどこでどういうふうに使ったとか何んとかというようなことは職務上の機密で漏洩できないというようなことも言っておるのです。
 そこで、法務大臣に伺います。一言でよろしゅうございますが、汚職は秘密なんでしょうか。その法律的根拠を一つ伺いたいのですがね。最後に一言でよろしい。
○唐澤国務大臣 これは非常に奇妙なお尋ねでございまして、汚職は秘密なりやということで、お答えいたしかねるのでありますけれども、汚職という言葉にもいろいろな意味がございまするし、秘密という言葉にもまたいろいろの意味がございまするので、この二つを結び合せてお答えするということは、いろいろと誤解を生ずると思いまするから、控えたいと思います。
○志賀(義)委員 少しあなたには無理な質問かもしれません。これは今後の大問題になるところでありますから保留しておきますが、大阪におきまして、税務署で効率表を漏らしたものがあるというのですよ。ところが、これは一部発表せられておることであります。それを理由に逮捕した。おまけに、ここでも、共産党がそれを手に入れてガリ版で刷って一部千円で売ったなどと言う。新聞はうそを言うとあなたは言われるけれども、こういうように官庁がうそを言うんだから困る。うその張本人が官庁である証拠は、一番いい例は菅生事件ですね。日本の一番の大うそつきは官庁ですよ。ところで、この前大蔵省でビールの造石の問題について偽わりの発表をいたしましたね。そうすると、偽わりの発表をしたあとで訂正をした。そういうこともありました。これは明らかに脱税を目的としている。大阪でも、効率表を都市の中小業者に発表しないで農民に発表しているのは、農民は純朴だからほんとうを言う、都市の中小業者というものはうそを言うから、効率表は見せないという説明なんですよ。ところが、この場合なんか、国家が、大蔵省が、国税庁長官が、まるでビールの造石のことについて、これも大きいビール会社に全部脱税をやらしているんですよ。そういうこともあります。しかも、おまけに、大阪の商工会の捜査に対しては、遺憾なことながら、そこに居合せた一人の婦人のハンドバッグから、捜査官がやっている間に金がなくなったのですよ。こういうことまである世の中です。そこで、こういう点について、汚職の問題については重大な発言と竹内局長も言われましたから問題にするのでありますが、今後大きく問題にしたいのでありますが、今度の岸内閣になりましてから、法務行政に関連して顕著なことは、八海事件、二俣事件を初め、死刑、無期あるいは長期刑を受けた人が、最高裁で無罪または原審差し戻しということがひんぴんと起っております。これはもう重大な事件であります。この点について、こういう事件の教訓にかんがみて、法務大臣は、検察に関する指揮及び監督権があると同時に、人権擁護委員法に基いても、こういう問題にかんがみて、今後御注意なされなければいけないのじゃないかと思いますが、まあ検察と人権擁護と両方のなにを受け持つ、これは非常に矛盾で、あなたもずいぶんおかしな立場におありのことは重々わかりますけれども、今それは別としても、公安警察、検察のあり方について、今後どういうふうにおやりになるつもりでありますか、ここで一言伺っておきたいと思います。あなたはこの次に法務大臣になられるかどうかは別としてですよ。
○唐澤国務大臣 お答えをいたす前に、ちょっと志賀委員に御了解を得たいと思うのでございますが、先ほど私が、「アカハタ」の記事につきまして、新聞紙にも事実に違ったことが出ることがあると、これは御了承下さることと思います。これは「アカハタ」だからという意味ではございません。われわれ全知全能の神でない限りは、われわれの言動や心持、また作るものについて、時にあやまちがあることは当りまえなんですから、そういう意味で、私は、新聞に出ておる記事にも誤まりがあるから、こちらの方でもまた十分調査をしたということを申したのであります。それを、志賀委員は、唐澤は新聞社はうそをつくと言うたじゃないか、これは二度までおっしゃられたものですから、そのまま過ごしましても、たった十五分、二十分の間においてもそういうふうに行き違いがあるものですから、事実というものはよく調べていかなければならない、そういう意味で、いろいろ今まで御提示になりました事実につきましても、公平にそして冷静に事実を見きわめていきたいと考えております。
 それから、今御質疑になりましたことは、これはきわめて重大なことでございまして、御質疑があります以前から、非常に心を痛めておるところでございます。これが軽微な犯罪でありまするならば、それでいいというわけではございませんけれども、まあそれほどでありませんけれども、死刑にも値いするというような、そんな大きな事件について、いろいろ検察当局と裁判官との考えが全然違うというようなことになりますると、まず国民の検察当局に対する信頼または裁判に対する疑惑というようなものが起きて参っては、これは重大な問題だと思うて、私は御承知のようにしろうとでございまするけれども、この方面のエキスパートにも、どういうことであるだろうかということを承わっておるわけでございます。検察当局が、有罪なり、その容疑十分なりと認定して、そうして訴訟手続を始めますその当時と、それからまた、だんだんと裁判が進行するにつれて新しい事実なんかが出てくることがございまするから、多少、時間の関係において、新しい事実等によって裁判官が判定したその当時の資料の方が十分であるというような時の関係はあろうと思いますが、しかし、同じ事実を基礎にして、一方は疑いありといい、一方は無罪であるというような、意見が食い違うということでありますと、ほんとうに司法権の動き方についてあるいは国民に疑惑を持たせるというようなことも生じ得るのでございます。でありますから、理想といたしましては、検察当局が疑いありと認めたものが、裁判に行ってやはり裁判官も同様な意見で、そうして両方の意見が一致していくということになれば、これは理想的でございますけれども、これは立場が違いますから、検察当局としては疑い十分なりと認定したこともいかにももっともではあるし、しかし、さればというて、これを無罪にするかというと、これは無罪にできないというような場合もあるのでございまして、それで、検察当局が起訴したものが最終判決において無罪になれば、常にそれは検察当局の失敗である、こういうふうにも言えないのでございます。最近の重大な犯罪につきましても、裁判そのものが、この事件は最終においては無罪の判決はするけれども、しかし、これだけの容疑があれば検察当局としてはやはり訴追手続をとって法廷において争うという態度に出たのはこれは当りまえである、こういうようなことを裁判官の方の判決にすら書かれておるわけでございます。私は実はしろうとで存じませんけれども、日本においては起訴ということが非常に社会的に大きなことに扱われておる。であるから、起訴されればそれは悪いことをしたとすぐにみんな思いやすい。それが最後に無罪になれば、非常にぬれぎぬを着せたのではないかというようなことになるのですから、これが重大問題です。私の承わるところによりますと、泰西諸国におきましては、起訴ということは、とにかくこれは裁判官のところで研究して、有罪無罪を決定すべき問題だということで手続が出てくる、それで、社会の人は、それが有罪になるか無罪になるかという最後の判決を待って、そうして事件に対する心持をきめる、こういうような考え方であるということで、その点などが自本とは違うようでございまして、ただいま御指摘になりましたいろいろな事件につきましては、御質問があるまでもなく非常に私も心配いたしておるところでございます。
○志賀(義)委員 最後に簡単に……。ただいま、日本では起訴が重大に考えれておるということですが、それは私も法務大臣と同意見でございます。国民が自分の権利について主張するという立場からすれば、そういう場合には堂々とやるべきであります。ただ、困ったことには、近く選挙がありますから申しますけれども、唐澤さんも町村さんも選挙にお立ちになるわけであります。その選挙を前にして、日本人は起訴されたとか容疑を受けたとかいうことを重大なことに考える国民層がまだ多い、そういう盲点を利用して、選挙前に、共産党にいろいろと、去年の下半期から、トラック部隊事件、それから最近の官庁スパイ事件、人民艦隊事件――今度なんかのは内乱予備罪ですよ。中核自衛隊という陸軍をくれたり、人民艦隊という海軍をくれたり、いよいよ選挙になったら空軍さえ共産党にくれかねないのです。そういうことがありますから、検察当局を指揮なさる法務大臣としては、警察が選挙を前にこういうことをやらないようにしていただきたい。実は、これが警察だけの問題でなくて、自由民主党の反共政策との関係もあるのじゃなかろうかと思われますから、特にこの際これを要望しておきます。選挙前にこういうばかげた検挙をやって共産党にけちをつける。考えてもごらんなさい。自由民主党が二百九十名衆議院では議席があるのです。共産党は私と川上君だけ。それがそんなにこわいのですか。よっぽどこわいらしい。(笑声)だから、そういう行き過ぎのないように御注意願いまして、きょうの私の質問を終ります。
○唐澤国務大臣 志賀さん、ちょっとお答えいたします。いろいろとお述べになりました事件につきましては、まだ私の手元まで報告も届いておりませんから、具体的には存じませんが、私として信じておりますことは、警察または検察は、法の一線を越えたものがありますれば、やはり捜査をし、検察権を発動するのでございまして、単に総選挙を控えて云々というような意図はなかろうと思うのでございます。お言葉の通り、総選挙を前に控えまして、まだ犯罪があるかないかわからないというのに、いかにもあるように見せかけて選挙戦術に利するというようなことは、卑怯なことでございまして、これは私自身が最近において身をもって体験したことでございます。そういうことは卑怯未練なことでございますから、私は、検察はさようなことはやっておらないとかたく信じておるところであります。
○町村委員長 この際発言を求められておりますから、これを許します。三田村武夫君。
○三田村委員 この機会に一言申し上げて、政府当局の御所見を伺っておきたいと思います。
 問題は、昨年の二十六国会以来、当委員会に継続審査となっている最高裁判所機構改革に関する案件でございます。御承知のように、本件は相当長い間の懸案でありまして、在朝在野法曹の非常な関心の的にもなっておりますし、また同時に一般国民の基本的人権にも至大の関係を持っておる法案でありますから、御承知のように当委員会といたしましても二十六国会以来慎重審議をやってきたのでございますが、遺憾ながら、二十六国会では、政府原案に対する批判も相当ありまして、原案そのものは当委員会においてこれを承認するに至らなかったのでございます。同時に、案件の重要性にかんがみて、諸外国の立法例、運用の実際も十分検討を加える必要ありという見地から、昨年は当委員会から諸外国の立法例、運用の実際の調査にも参ったのであります。その結果、貴重な報告も出されておるのであります。かたがた、本国会におきましては、それらの貴重な資料を参考にいたしまして、さらに二十六国会以来の当委員会の審議の内容にも再検討を加えて結論を出し、これを成案として国会の意思を決定したいという考えで来たのでございますが、常識的にきょうをもって国会もどうやら終りのようでございます。そこで、この案件は、もし国会が解散になりますと、御承知のように廃案になってしまいまして、案そのものは消えてなくなるのでございます。国会といたしましては、同時に当委員会といたしましては、長い間継続しでせっかく検討を加えてきた問題でございますから、委員会の構成メンバーがどうあろうとも、来たるべき国会において
 これを実質上継続して、この問題を審議し、できるだけ早い機会に、りっぱな、より合理的で、より効果的な制度、機構に改めて、国民の期待にこたえる責任があると考えるものでございます。そのように国会としては進められることと私は信じておるのでございますが、この機会に本問題に関する政府の御所見を伺っておきたいのでございます。
 御承知のように、原案に対する当委員会の見解と申しますか、その意見は、必ずしも原案そのものを賛成しがたい情勢であることは、これは御了察だろうと思います。また、同時に、在野法曹の間においても、また学者の間においても、必ずしも意見が一致していないのでございます。そういう見地から、やがて来たるべき国会にどのような態度でお臨みになりますか。この法案に対して現在どういうお考えをお持ちでございますか。冒頭に申しましたように、国会が解散と同時にこの法案の運命は消えてなくなるのでございますから、再び原案そのものをお持ち出しになりますか、さらに十分検討を加えて、委員会審議の経過にもかんがみて、十分検討の上、さらに別途考慮をなさるお考えでありますか、この機会に御所見を伺っておきたいと思います。
○唐澤国務大臣 最高裁の機構改革に関する法律案でございますが、これは、政府におきましては、長い年月をかけて、そうして朝野の学者、専門家の意見を徴して、慎重審議の上作られたものでございますが、当院においてだんだん御審議をいただきまして、その審議の経過等を速記録などで拝見いたしますと、政府の考え方に対して必ずしも委員の皆様方の御同意を得ることができないようなふうに感ぜられるのでございます。この法律案はお言葉のように、国会が今日限りで終りになりますれば、自然審議は打ち切りになるわけでございます。しかしながら、この最高裁に関する機構改革の問題は、どうしても将来において解決しなければならぬ問題だと考えておりますから、政府におきましては、従来の審議の経過、ことに国会におけるいろいろな御意見等を参酌し、またその後欧米諸国の制度、実情等も調査いたしましたから、これらについての報告書等も参酌をいたしまして、慎重検討いたしまして、なるべく早い機会に提案して御審議を願うことにいたしたいと考えております。
○町村委員長 この際一言ごあいさつ申し上りげます。
 衆議院はいよいよ本日をもって解散することに相なるかと存じます。本日まで幸いに名誉ある法務委員長の重責を果し得て参りましたことは、ひとえに委員各位の御援助と御協力によるものでありまして、委員長としてこの際厚く御礼を申し上げる次第であります。
 委員各位の御健闘を心からお祈り申し上げまして、ごあいさつといたします。
 これにて散会いたします。
    午後一時散会