第028回国会 本会議 第4号
昭和三十三年一月二十九日(水曜日)
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 議事日程 第三号
  昭和三十三年一月二十九日
    午前十時開議
 一 国務大臣の演説
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●本日の会議に付した案件
 岸内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 藤山外務大臣の外交に関する演説
 一萬田大蔵大臣の財政に関する演説
 河野国務大臣の経済に関する演説
 政府の昭和三十三年度予算提出遅延に関する緊急質問(池田禎治君提出)
 国務大臣の演説に対する質疑
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員辞職の件
 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙
 裁判官訴追委員及び同予備員辞職の件
 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙
 検察官適格審査会委員の選挙
 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員の選挙
 首都圏整備審議会委員の選挙
 海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員の選挙
 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙
 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 鉄道建設審議会委員の選挙
    午前十時五分開議
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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○議長(益谷秀次君) 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、河野国務大臣から経済に関し、発言を求められております。順次これを許します。
 内閣総理大臣岸信介君。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) 本日、第二十八回国会の休会明けに際しまして、昭和三十三年度予算を国会に提出し、施政の方針を述べる機会を得ましたことを、深く喜びといたします。
 現在、世界の平和は、東西両陣営の間の力の均衡によって保たれておりますが、最近における軍事科学の進歩は、相互に相手を追い抜こうとする激しい競争を招いて、とどまるところを知りません。このような力による安全の保障が、一時的な平和維持の役割を果していることは事実でありますが、これによっては、決して恒久の平和はもたらされないことも明らかであります。いかにすれば、真の平和を、もっと安定した、もっと恒久的な基礎の上に築くことができるか。これこそ、今日、全人類が当面している最大の課題であり、わが国にとっても、国家の安危にかかわる政治の眼目そのものであります。(拍手)私が、機会あるごとに、核実験の禁止を全世界に向って強調し、また、このたび、わが代表が、国際連合安全保障理事会の席上において、大国間における拒否権発動の制限を訴えたのも、このためであります。平和への道には幾多の障害が横たわっておりますが、平和を求める全人類の要望は、今や無視することができない声となっております。こうした見地から、私は、いわゆる東西最高首脳会談も、その実現の機運を進めていく必要があると思います。(拍手)
 このような国際情勢に臨むわが国の外交は、国際連合を中心とし、自由諸国との協調をはかり、アジアの一国としての立場を堅持するという三原則を貫くことはもちろんであります。特に、国際連合安全保障理事会の一員としての地位と役割にふさわしい活動を展開し、わが国の安全を確保するとともに、進んで世界の恒久平和の達成に最善の努力を尽す覚悟であります。(拍手)
 当面する東西の緊張の中にあって、アジアは、その歴史にかつて見ない重要な地位と役割を持つに至りました。今や、アジアは、世界を動かす新しい原動力であります。これらの国々の大部分は、過ぐる大戦によって大きな痛手を受けたのであり、また、この戦争を契機として、永年にわたる隷属から解放されたのであります。
 アジアヘの関心のゆえに、私は、二回にわたり、各国を訪問し、戦争中のできごとに対し心から遺憾の意を表するとともに、親善の復活に努めて参りました。これによってアジア諸国民の間にわだかまる感情は漸次やわらぎ、わが国に対する信頼と協力の念は一段と深まったことと信じます。(拍手)
 これらアジアの各国が、民族の希望を託した新しい国旗のもとにおいてそれぞれ真剣な努力を傾けている姿を見て、私は深い感動を覚えました。しかしながら、反植民地主義の旗じるしのもとに結集する民族主義運動は、ともすれば国際共産主義宣伝の場に利用されがちであり、その原因が、主として、経済基盤の弱さと、国民の生活水準の低さにあることを見のがしてはなりません。私が、多年の懸案であったインドネシアとの賠償問題の早期解決をはかり、また、東南アジア開発のための諸計画の早急な実現を提唱しておりますのは、このような見地に立つからであります。(拍手)
 韓国との間の恒久的な友好関係を熱意をもって築こうとしているのも、アジア連帯の自覚によるのであります。新しきアジアが、その復興と繁栄を通じて、相互の連携を強めることこそ、世界の平和を達成する道であります。(拍手)
 アジア外交は特に力を注いでいこうとするところでありますが、自由諸国、特に米国とは、昨年夏、私とアイゼンハワー大統領との会談に基く日米共同宣言の趣旨に沿って、一貫して協調を保っていく方針であり、両国間における諸懸案についても、さらに、相互の立場の理解を深め、率直な話し合いを続けることにより、逐次合理的な解決をはかるよう努力を続けたいと思います。(拍手)
 なお、繰り返し強調して参りました外交の三原則の今後における展開につきましては、その詳細を外交演説に譲ります。
 戦後におけるわが国経済の復興、発展は、世界の驚異の的となっているところであります。このような経済の急速な成長は、国民の勤勉な活動によることはもちろんでありますが、同時に、今日まで政権を担当してきた保守政党の自由経済主議を基本とする政治の方向が誤まっていないことを立証するものであります。(拍手)しかしながら、わが国経済の基盤は、いまだ必ずしも強固とはいいがたいのであって、国際経済変動の影響を受け、ややもすれば動揺することを免れないのであります。このような経済の弱さを根本的に改めるためへ政府は、昨年末、新たに昭和三十七年度に至る長期計画を定め、経済の安定した発展を確保するよう、あらゆる努力を傾けることといたしたのであります。この計画は、生産と消費の水準を着実に引き上げ、雇用の大幅な拡大を実現しようとするものであります。この計画の初年度である明年度においては、最近のわが国経済の行き過ぎを考慮して、国内消費と投資の伸びを控え目なものとし、また、積極的に輸出を増進することによって、経済発展の基礎をかたくすることに全力を注ぎたいと思います。
 このような経済運営の基本方針に基ぎ、明年度予算も、財政が景気をいたずらに刺激しないよう、堅実な基調を保つこととしました。かかる立場から、過年度剰余金については、新たな構想によって、経済基盤強化のための資金と、東南アジア開発協力基金など五つの基金とに充て適切な活用をはかるとともに、これらを除く一般歳出の実質的増加は一千億円にこれをとどめました。
 また、国民の税負担と経済の現状にかんがみ、産業の振興、資本の蓄積及び大衆の租税負担の軽減を目的とする減税を行うこととしました。なお、地方財政を確保するため、地方交付税率を一・五%引き上げることとし、また、防衛については、変化する世界情勢とわが国力に応じ、漸進的にこれが整備を進めることとしました。
 予算に組み入れました施策の詳細については関係閣僚の演説に譲り、私は、特に重点として取り上げた若干の問題について述べたいと思います。
 道路交通の立ちおくれは、産業発展の降路となっております。政府は、道路の急速な整備を経済基盤確立の面から特に重要視し、新たに五カ年計画を定め、特別会計を設けて、幹線と地方重要道路の双方にわたり、逐次整備を進めていく考えであります。なお、港湾の近代化にも特に意を用いております。
 中小企業は、わが国の産業構造の上から見ても、また、輸出振興に果す役割から見ても、きわめて重要な地位を占めております。このため、組合組織の強化と企業経営の安定を促すとともに、信用力を補うための基金を新設するなど、健全な中小企業の育成に努めたいと思います。
 わが国人口の半ばを占める農民諸君は、絶えず創意工夫を怠らず、その業に励んでおられることは、私の常々敬意を表するところであり、農民諸君のこの努力の結晶が年来の豊作をもたらしたことについては、同慶にたえません。(拍手)政府は、農林水産業の経営の安定化と所得の増大をはかることを農政の基本とし、食糧の総合的自給度の向上に努めていきたいと思います。
 青少年の意気盛んなるところ、必ず国家の繁栄と文化の向上を見ることは、東西歴史の示すところであります。私は、機会あるごとに、次の世代をになう青少年諸君への期待を強調してきました。青少年諸君が、りっぱな国家、明るい社会を作り上げる人となるために、心身の修練を積み、人間としての徳性をつちかっていくことを、切に望みます。(拍手)また、すぐれた才能を持っている青少年が、経済的な理由によって進学の道をはばまれることがあるならば、これは国家としても大きな損失であります。このため、明年度から新たな構想による進学保障の制度を創設し、青少年に明るい希望を与え、積極的に有為な人材を育成することといたしました。(拍手)
 学校教育と並び、青少年に対する社会教育も特に重視するところであります。今回、全国各地に「青年の家」を設けることとしたのも、このためであります。私は、青少年諸君が、健全な環境の中にあって、集団生活を通じ、社会生活に必要な規律を体得することを強く期待しているのであります。(拍手)
 戦後、婦人の地位は着々向上してきたのでありますが、その福祉増進のためには、なお、社会、経済等の各分野にわたって施策を進めていきたいと考えているのであります。
 最近、科学技術は日を追って飛躍的に進歩を遂げつつあり、現代はまさに技術革命の時代ともいうべきであります。この科学技術の急速な進歩は、産業、経済、文化その他あらゆる分野において革命的な変化をもたらしつつあります。特に、国土は狭く、国内資源に恵まれないわが国が、世界の進運に伍していくためには、科学技術の画期的な振興をはからねばなりません。政府は、長期的観点に立って基本方針を確立し、試験研究とその実用化を推進するとともに、科学技術教育の充実をはかっていきたいと思います。ただ、科学の振興に関し私が痛感しますことは、科学を支配すべきものは人間であって、人間が科学に支配されてはならないということであります。(拍手)科学の飛躍的進歩に道義が取り残されるところに、実は、今日の世界平和の根本問題があるのであります。
 わが国の労働運動は、戦後、賃金問題を中心として激しい労使の対立を繰り返してきたのでありますが、労働運動に対する公正な世論と、最近の政府の諸施策をきっかけとする労使の自覚とによって健全な労使関係を確立し、もって産業平和を実現しようとする動きが見られるに至ったことは、まことに喜ばしいことであります。(拍手)政府は、この際、わが国産業の特質と企業の実態に即した最低賃金制を実施することとしたのであります。これによってただに労働者の労働条件が向上するばかりでなく、中小企業の公正な競争も確保されて、ひいては輸出産業の対外信用が高まるものと確信いたします。
 社会保障制度の確立については、本年度から国民健康保険全国普及四カ年計画に着手しその効果を上げつつありますが、明年度においては、さらにその基礎的諸条件、特に医療保障の改善、地方財政との調整等に意を用い、引き続き国民皆保険の実現に努めることとしております。(拍手)また、全国民を対象とする国民年金制度を創設するために本年度よりその調査に着手しましたが、これが実現には、慎重にして周到な準備を必要といたしますので、明年度もさらに調査を続け、本制度の早急なる実現を期することとしております。
 政官界からいわゆる汚職を追放して、清純明朗な民主政治を確立することは、私のかねてからの念願であります。政府は、行政の監察をさらに強化して、汚職の根絶を期するよう、綱紀の粛正に一段の努力を払いたいと思います。(拍手)こうした見地から、いわゆるあっせん収賄罪に関する立法の準備を進めておるのであります。また、暴力については、その温床である社会環境の改善と取締りの徹底に努めていきたいと考えております。
 今や、きびしい試練期ともいうべき国際政治の新局面に臨み、私は、人類社会に恒久的な繁栄をもたらすものは道義に貫かれた民主政治であることを、あらためて強調いたしたいのであります。(拍手)このような激動期に際し、国際共産主義の脅威を排して民主主義の真髄を堅持し、国際情勢の分析把握と国内問題の処理に誤まりなきを期していきたいと考えております。しかるに、国内の一部に、民主政治を軽視し、暴力的直接行動を懸念させるような言動の行われていることは、きわめて遺憾とするところであります。私は、わが国における二大政党が、民主政治の秩序を破壊せんとするこれら内外の脅威に対し、明確なる態度を示して民主主義擁護の大道を歩むことを期待いたします。そして、国会が常に政策論議の場として正常に運営されるよう特に希望してやみません。
 ここに所信の一端を述べ、国民諸君の協力を切に望みます。
○議長(益谷秀次君) 外務大臣藤山愛一郎君。
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) ここに政府の外交方針を明らかにいたしますことは、私の最も喜びとするところでございます。
 国際政治がいまだ力による政治によって動かされておりまする現状において、軍事面での脆弱性が侵略を招く危険があることは否定し得ないところであります。しかしながら、軍事科学及び大量殺戮兵器が今のように発達を遂げた段階におきましては、軍事力のみをもって自己の安全を保とうとし、また、世界の安定をはかろうといたしましても、それは達成し得るものではありません。米ソ両国の生産力及び科学の発展の過程を見ましても、一方の側が一時的に軍事的優位を獲得いたしましても、やがて他方がこれに追いつき、さらにこれを追い越すでありましょう。かかる悪循環を繰り返すことは、いたずらに相互の不信と恐怖感を強めるばかりでありましていつまでたっても、平和のうちにともに生きるための建設的な方途を見出すことはできないと思うのであります。
 ソ連の大陸間弾道弾及び人工衛星打ち上げ成功を契機といたしまして、東西間の軍事科学面での競争が激化したため、国際緊張が増大しつつあるのでありまして、世界の平和と安全はまさにその岐路に立っておると申しても過言ではないのであります。このときに当り、岸総理大臣がすでに述べられましたごとく、東西双方とも人類自体を破滅させるような戦争を回避するため、すみやかに東西間の最高首脳会談への道を開くよう、あらゆる可能性を探求すべきであります。
 わが国の国政の基本的原理が、人間の尊厳と自由の尊重を中心とする民主主義にあることは申すまでもありません。外交の基本原理も、国際社会における民主主義の発展をはかることにあるのであります。この基本的立場から、わが国の外交方針は、まず、国際連合の目的と原則を守りつつ、自由諸国との協調を強化することにあります。と同時に、アジアの一員としてアジアの友好諸国と協力し、アジアの諸問題の解決のため建設的な寄与をすることにあります。これらの原則と並び、経済面におきまして互恵共存の原則に基き、世界経済の発展と繁栄のため、諸国民の生活水準の向上に寄与し、かつ、機会均等、無差別待遇の原則に基き、通商貿易の自由化を促進することが緊要であるのであります。政府は、右の方針に基き、昨年度におきまして活発な外交活動を展開して参ったのであります。それは将来わが国外交の発展のためのいわば地固めでありまして、その基盤に立って今後さらに具体的な諸施策を積極的に推進して参りたいと考えておるのであります。(拍手)
 まず、国連外交につきましては、昨年の第十二回総会において、軍縮問題その他の重要諸問題の討議に際し、わが代表団は国際協調の促進のため公正かつ建設的立場を堅持し、もって国際連合においてわが外交を展開していくための基礎を作ったものと信ずるのであります。幸いにして、わが国は安全保障理事会の非常任理事国に選出され、同時に軍縮委員会の一員ともなったのでありますから、政府といたしましては、その責務のますます大なることを痛感しておる次第であります。
 現在、世界には、分裂国家の統一問題のほか、世界平和に関連ある多くの困難な問題があります。わが国といたしましては、今後、国際連合を通じましてこれらの問題の解決のため積極的に貢献いたしたいと存じます。
 第二次世界大戦以来、国際政治は米ソ二大強国の対立により支配される傾向がありますが、一方、国際民主主義の発展に伴いまして両国以外の国々の発言も無視できなくなっており、米ソ両国もこれらの国々の意見を十分尊重すべきであると思います。
 特に、わが国は、核実験禁止問題を含む軍縮問題の討議再開につき、すみやかに東西双方が合意に到達することを切望するものであります。原水爆の発達に加えて、その運搬手段の画期的発達という新たな事態のもとにおいて、これらの問題の解決のため、すみやかに具体的行動を起す時期であると信じます。政府は、その解決につき、今後とも、関係諸国と緊密な協調を保ちつつ、建設的な役割を果して参る所存でございます。(拍手)
 わが国は、原子力が人類の福祉のため平和的に利用されるように、国際協力がますます促進されることを切望するものであります。わが国は、昨秋発足した国際原子力機関に加盟し、その理事国に選ばれておりますので、原子力の平和的利用のため、でき得る限り寄与したいと存じます。また、政府といたしまして、原子力科学の進展におくれをとらざるよう、米英両国と個別的に原子力協定を締結する方針を決定いたし、目下それぞれ交渉を進めておる次第であります。
 私は、自由世界自体が安定し、かつ強化されることこそ、世界平和のために肝要であると信じておるものであります。私がここに強調いたしたいのは、まず、自由諸国において民主主義の健全な発展を可能ならしめる社会的、経済的基盤を強化するため、積極的な国際協力が行われること、及び自由諸国の相互間に真の政治的、経済的協調を達成するため一段の努力が払われる必要があるということであります。自由諸国の間にもなお検討を要すべき多くの問題があることは事実であります。しかしながら、私は、自由諸国間の問題は、真の友人の間においてのみ可能な自由かつ率直な意見の交換によって解決の道が開けることを確信しておるものであります。(拍手)
 昨年夏、岸総理大臣の渡米によりまして日米両国間の信頼と相互理解が深められましたことは、まことに喜ばしいことであります。
 日米両国政府は、岸総理大臣とアイゼンハワー大統領との共同声明の精神に沿い、安全保障問題を初め種々の問題につきまして絶えず率直かつ有益な意見の交換を行い、見解の調整に努めておる次第であります。
 日米安全保障条約は、わが国の安全確保のため重要な寄与をいたしておるのであります。他面、改善を要する点もありますので、さきに設置せられました安全保障に関する日米委員会を通じまして、現存条約の運営改善をはかりつつ、さらに将来日米間の安全保障関係をわが国民の願望に適合するよう調整をはかるため、慎重に検討を加えて参りたいと存じております。(拍手)
 沖縄等米国管理下にある地域の問題につきましては、政府は、従来より、米国政府に対し、これら地域の施政権返還等につきわが国民の要望を伝え、これを尊重するよう強く要請して参ったのでありますが、いまだその成果をおさめるに至っておりません。しかしながら、米国もこれら地域を永久に保持しようとの意向でないことは、米国政府屡次の声明により明らかなところであります。政府といたしましては、わが同胞の熱烈な願望にこたえるため、今後とも本問題の解決のため最善の努力を払う所存であります。(拍手)
 アジア、アフリカ諸国が、民族主義に基く新たな理想と活力をもって、その政治的地位の向上と経済建設に努力しておることに対してわが国が深い理解と同情とを持っておりますことは、今さら言うまでもないところであります。わが国といたしましては、これら諸国の民族主義運動が穏健かつ着実な方法によりその目的を達成することを希望し、国際連合の内外において、今後とも積極的な協力を惜しまないものであります。(拍手)特に、アジア、アフリカ諸国の政治的独立の裏づけとなりまするその経済的安定と向上の問題につきましては、わが国は、でき得る限りの寄与を行う用意があるのであります。政府といたしましては、すでに昨年来東南アジア開発基金構想を提案し、その実現のため、現在所要の措置をとりつつあります。政府は、この提案が、友好諸国の賛同を得て、すみやかに実現されることを希望するものであります。
 昨年岸総理大臣の東南アジア諸国歴訪を機といたしまして、インドネシアと長らく懸案となっておりました賠償問題に関する合意が成立いたし、過日、平和条約その他の関係協定が調印されたのであります。かくして、ここに日イ両国間に正常な外交関係が設定される運びと相なり、さらには、政治、経済、文化等あらゆる分野における両国間の協力関係の道が開かれましたことは、喜びにたえないところであります。(拍手)ヴェトナムとの賠償問題につきましても、昨年来、政府はその解決のため最善の努力を尽して参ったところであります。
 インドとの関係につきましては、昨秋、岸総理大臣とネール首相との間に、日印両国間の共通の利害関係のある諸問題につき基本的了解が遂げられ、その結果の一つとして、通商に関する条約及びインドに対する円借款等の問題につきまして、目下友好裏に話し合いが進められておりますことは、まことに喜ばしいことであります。(拍手)
 韓国との関係におきましては、昨年末、日韓両国の抑留者の相互釈放につき合意に達し、かつ、両国国交の正常化、その他の諸懸案の解決のための全面会談再開について意見の一致を見たのであります。政府は、長らく抑留されておりました日本人漁夫の送還がすみやかに実施され、また、来たるべき全面会談に際しましては、公正なる基礎の上に諸懸案の妥結に努め、もって、日韓両国間の友好関係を樹立いたしたいと念願しておる次第であります。(拍手)
 共産諸国との関係につきましては、すでに、わが国は、一昨年末ソビエト連邦との国交を再開し、次いで、昨年はポーランド及びチェコスロバキアとの国交を回復いたしたのであります。
 現在、ソ連邦との間には、北西太平洋の公海における漁業問題につき交渉が行われております。政府は、この交渉に重大な関心を持っておるところでありまして、科学的基礎の上に合理的解決を希望しておる次第であります。さらに、昨年夏以来、わが国は、千島及び樺太の近海漁業問題につき、ソ連邦に対し交渉開始方を申し入れて参りましたが、政府は、ソ連邦が誠意を持ってすみやかに交渉を始め、もって友好的解決に努めることを希望するものであります。
 御承知の通り、ソ連邦との間にはいまだ平和条約が締結されておらないのであります。その根本的障害は、領土問題に関するわが国の正当な要求をソ連邦が拒絶しておることにあるのであります。この問題が解決されない限り、日ソ関係はいつまでも完全に正常化されるに至らないのでありますから、ソ連邦がわが方の主張を受け入れることを、この機会に強く要望するものであります。(拍手)
 中共問題につきましては、政府は、現在中共政府を承認することを考えておらないのでありますが、わが国の貿易振興のため、対中共貿易の増大に努めることも必要でありますので、政府は、自由諸国との協調の線に沿いつつ、対中共禁輸緩和のため必要な措置をとって参りましたし、今後もまた必要かつ妥当な措置をとる所存であります。
 なお、わが国とソ連邦及び中共との間には残留邦人の引き揚げ問題があるのであります。政府は、邦人の引き揚げ及びその状況不明者の調査につき、今後とも最善の努力をいたす所存でありまして、残留邦人の方々が一日も早く祖国に帰還されるよう念願しておる次第であります。(拍手)
 世界経済は昨年半ばころよりようやく停滞ぎみとなり、国際収支の悪化、特にドルの不足から、自由な通商貿易を阻害する動きが漸次世界各国に強まりつつあることは、憂慮にたえないところであります。この点、米国が率先して貿易障害を除去し、通商の自由化を促進するため効果ある措置をとることを期待するものであります。なお、政府といたしましては、互恵通商法延長問題をめぐり、米国において日本商品の輸入阻止運動が高まりつつある事態に対し、重大な関心を抱いておるのであります。米国の市場が日本の貿易にとり至大の重要性を有することにかんがみ、米国が日米貿易を阻害するがごとき制限を課さざるよう切望するものであります。
 わが通商貿易の振興のためには、政府、民間一体となり、秩序ある輸出体制を確立し、もって安定した海外市場を確保することが肝要であると存ずるものであります。(拍手)政府といたしましても、民間業界の努力と呼応いたしまして、積極的な貿易振興諸施策をとるとともに、通商貿易上の機会均等と無差別待遇を確保するよう努力をいたす所存であります。昨年度においては、通商条約、貿易協定及び支払い協定等三十一にわたる交渉を行い、日豪通商協定並びに日ソ通商条約及び貿易協定等を締結したのであります。本年度におきましても、これらの交渉を積極的かつ計画的に実施するとともに、わが国に対しガット第三十五条を援用している国々がこれを撤回するよう、重ねて努力を払う所存であります。(拍手)
 また、海外移住問題につきましては、それがわが国民に与える希望の大なるにかんがみまして、政府は移住振興策に最善の努力をして参りたいと存ずるのであります。海外移住は、単なる移住者送出ではなく、受入国の経済発展に寄与すべきものでありましてこの意味におきまして政府は、移住問題を、わが対外経済協力と歩調を合わせて、着実に実施いたしたいと考えております。(拍手)これに関連いたしまして、わが海外移住の最大の受入国たるラテン・アメリカ諸国との友好協力関係がますます増進されつつあることは、まことに喜ばしいことであります。
 今日の外交は国民外交であります。政府がいかに政治、経済外交の推進に努めましても、わが国民と諸外国民との間に強固な心のつながりが確立されぬ限り、真の友好親善関係は生まれないのであります。政府といたしましては、科学、文学及び芸術等あらゆる分野における国際文化交流の重要性を深く認識し、今後、文化外交を、国民各位の協力によりまして、積極的に推進して参りたいと考えております。(拍手)
 サンフランシスコ平和条約締結以後十年を出ずして、わが国の国際的地位がその基礎を固めつつありますことは、御同慶の至りでありますが、同時に、わが国のになうべき責務も、いよいよその重きを加えつつあるのであります。このときに当り、世界の友好諸国の信頼と友情とをかち得るため、政府及び国民が一体となり、世界の平和と繁栄のため貢献する新たな決意と努力とが必要なのであります。今後わが外交を推進するに当りまして幾多の困難があるのであります。外交の成果は一日にして上るものではありません。わが国の当面する諸問題を、一つ一つ、じみちに、かつ忍耐強く解決する努力を重ねることにより、初めてわが外交の究極の目標が達成されるのであります。(拍手)
 終りに臨みまして私は、国民各位のわが外交に対する深甚なる理解と一そうの御支援とを切望するものであります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 大蔵大臣一萬田尚登君。
    〔国務大臣一萬田尚登君登壇]
○国務大臣(一萬田尚登君) ここに、昭和三十三年度予算を提出するに当りまして、わが国が当面いたします内外の経済情勢と、これに対処すべき財政金融政策の大要を申し述べますとともに、予算の概要を説明いたしたいと存じます。
 昨年五月以来、国際収支の急激な悪化に伴ういわゆる外貨危機に対処いたしましてとられました緊急対策が、おおむねその所期の効果をおさめて参っておりますことは、ひとえに国民各位の御理解と御努力によるものでありまして、深く感謝の意を表するものであります。(拍手)
 最近の経済情勢について見まするに、引き締め政策の浸透に伴い、国内需要は漸次鎮静し、物価、生産、輸入等、各分野における経済の調整は次第に進んで参りました。このようにしてわが国経済の行き過ぎが是正されるに従い、国際収支も相当の改善を示しております。しかし、私はこの国際収支の改善を一そう確実かつ持続的なものとすることが必要であると考えております。言葉をかえて申せば、貿易の規模を拡大し、一たん失もれた外貨を再び増加させるような態勢のもとに、わが国の経済を着実に発展させることが大切であります。(拍手)
 他面、国際的な経済環境を見ますと、ここ数年来空前の活況を呈して参りました世界経済も、昨年半ばごろより漸次景況の頭打ちを呈するに至りました。
 まず、西欧諸国におきましては貿易の逆調、金・ドル資金の偏在が顕著となり、自国通貨の擁護と外貨準備の獲得のための政策を持続しつつあります。また、世界景気の支柱でありましたアメリカ経済も、昨年秋以来、景気停滞の傾向が問題となっております。もとより、アメリカ等における景気調整政策も予想されるのでありますが、本年におきまする世界経済の動向は、決して楽観を許さないと考えます。しかも、この間にありまして、東南アジアその他後進地域の購買力の不足、欧州共同市場等経済ブロックの強化、各国の輸出競争の激化及び輸入抑制措置等、わが国の輸出環境は一段ときびしくなることを予期しなければなりません。
 このような情勢に思いをいたしますと、来年度におきましては、政府も国民も一体となりまして輸出の伸張にあらゆる努力を集中することの必要を痛感する次第であります。政府は、さきに来年度の輸出目標を三十一億五千万ドルと決定したのでありますが、この目標の実現のため、わが国経済の運営は、消費、投資及び財政を通じましてあくまで健全なる基調を堅持し、いやしくも国内需要のために輸出の伸張が阻害せられることのないよう努めなければならないと思います。
 以上申し述べました経済情勢を前提といたしますとき、昭和三十三年度における財政政策の基本は、あくまで国民経済を刺激しないよう堅実な基調を堅持し、その態勢のもとに、将来における国民経済の安定的成長の基盤をつちかうために、必要な諸施策を重点的に遂行することに置くべきであると考えております。
 かような観点から、まず、異例の多額に上りました昭和三十一年度の剰余金のうち、法定の使途に充てるものを除く四百三十六億円は、これを一般の歳出に充てることなく、将来における経済基盤の育成強化に必要な資金に充てるほか、中小企業信用保険公庫保険準備基金、農林漁業金融公庫非補助小団地等土地改良事業助成基金、日本輸出入銀行東南アジア開発協力基金、日本貿易振興会の基金及び日本労働協会の基金の五つの基金として保留することにいたしました。
 次に、昭和三十三年度の一般会計歳出は、この保留分四百三十六億円及び国債費の増加三百十億円を除きまして、昭和三十二年度に比し一千億円の増加にとどめ、その範囲において経済の発展、民生の安定等の重要施策を中心といたしまして、経費を配分いたしております。
 なお、以上の二点と合せ、中央、地方を通じまして大よそ三百億円の減税を行い、国民負担の軽減をはかるとともに、資本の蓄積、科学技術の振興等、経済発展の条件の整備をはかることといたしております。
 また、財政投融資につきましては、民間資金との関連にも考慮を払い、国内経済の投資活動を適正な限度に維持しつつ、重点部門に資金の供給をはかり、国民経済全体として均衡ある発展を確保するよう配慮いたしております。しかして、その運用に当りましては、今後の経済情勢の推移を注視いたしまして、金融政策とともに弾力的かつ適切なる実行をはかるべきものと考えております。
 このような財政政策に対応する金融政策の大要について申し述べます。
 金融政策が、通貨価値の安定を中核としつつ、経済の均衡ある発展に資するよう運用されるべきことは言を待たないところであります。これがためには、まず、資本の蓄積、貯蓄の増強に努め、国民経済全体としての資金の需給を適正に維持することが必要であると考えます。私は、わが国経済の当面する最も重要なる課題は、輸出の振興とともに貯蓄の増強にあると信じます。政府といたしましても、国民貯蓄の増強のため必要な諸施策を推進する所存でありますが、国民各位も消費を節約し、貯蓄の増強に一段と努力せられるとともに、企業におきましても、堅実なる投資態度を保持し、自己資本の充実に努め、借り入れ依存態勢の是正をはかるべきであると考えます。
 次に、経済の均衡ある発展を確保するためには、金融機関の経営を健全化し、その運営を適正化することが肝要であります。この点につきましては、まず、金融機関の資産内容を充実し、日本銀行依存の態勢を改善し、金融の正常化をはかることが必要であると存じます。特に昭和三十三年度は、国際収支の改善等に伴い、財政の対民間収支が散布超過に転ずることが予想されますので、この面からも日本銀行貸し出しの減少が期待されるのであります。また、限られたる資金量を最も効率的に活用するため、不要不急の投融資は厳にこれを抑制し、経済発展のために真に緊要な資金を重点的に確保することが大切であります。金融機関においても、すでにこのような意味における資金調整の重要性を認識して、資金調整委員会を設ける等、この面に努力しつつあるのでありますが、なお一そうその運営を活発なものとし、今後大いにその成果を上げることが期待されるのであります。
 次に、為替政策の重点について申し述べます。冒頭に申しました通り、わが国の国際収支は、昨年秋以来改善の方向に向いつつあるのでありますが、いまだ失った外貨を回復するに至らず、わが国が国際的信用を維持し、国際経済の波動にも耐え得るためには、保有外貨の増大に引き続き力をいたさなければなりません。今後、特需の減少が予想せられるときでもあり、賠償や経済協力による負担をもあわせ考えますと、輸出の伸張による貿易規模の拡大こそは、わが国経済の拡大均衡を可能ならしめる起動力でありまして、当面の為替政策の重点も、またここに置かれるべきであります。なお、政府といたしましては、輸出の振興に資するため、為替貿易関係法令についても再検討する所存であります。
 以上、当面の財政金融政策の大要につき申し述べました。
 以下、昭和三十三年度予算の概要を説明いたします。
 一般会計予算の総額は、歳入歳出とも一兆三千百二十一億円でありまして前年度予算額に対し、一千七百四十六億円の増加となっておりますが、そのうち新たに経済基盤強化資金等として保留される四百三十六億円と、国債費の増加額三百十億円、合計七百四十六億円を除く歳出予算額は、前年度に比しまして一千億円の増加となっております。また、財政投融資は、民間資金及び外資との関連をも考慮いたしましてその総額を三千九百九十五億円といたしております。
 次に、政府が特に重点を置きました重要施策について申し述べます。
 まず、貿易の振興につきましては、日本貿易振興会べの出資二十億円を計上して海外市場の調査開拓の機構を整備し、また、特別宣伝の強化、国際見本市への参加、中南米諸国に対する巡回見本船の派遣等、最も効果的な経費を重点的に増額することといたしました。
 次に、経済発展のための基礎部門の整備拡充につきましては、道路の近代化を中軸とする輸送力の増強とエネルギー供給の確保に重点を置いておします。
 特に道路につきましては、新たに昭和三十三年度を初年度とする道路事業五カ年計画を樹立することといたしまして、これが実施を強力に推進するため、道路整備特別会計を設置するとともに、予算額におきましても、前年度に対し二割程度を増加することといたしております。さらに、日本道路公団の事業につきましても、名古屋―神戸間高速道路の建設を本格化するほか、主要な有料道路事業の推進をはかることといたしております。
 また、港湾につきましても、重要な外国貿易港、工業港等を中心に、その整備を促進することといたしております。
 次に、エネルギー資源の開発につきましては、外資の導入を含めまして、電源開発会社の資金の増額を見込みますとともに、日本開発銀行の電力及び石炭向け資金の充実をはかり、さらに石油資源開発会社の資金を増額することといたしております。
 なお、経済基盤強化資金の設置につきましては、さきに申し述べたところでありますが、これは、道路整備、港湾整備、科学技術振興、異常災害の復旧または産業投資特別会計への繰り入れに必要な経費の財源を保留し、将来においてこれらの経費に使用し得ることといたす趣旨のものであります。
 国民生活の安定のための経費といたしましては、まず、社会保障関係費を前年度に比べ百二億円増額し、一千二百五十七億円を計上いたしております。すなわち、医療保障の拡充をはかるため、診療報酬の合理化と国民健康保険及び日雇い健康保険に関する国庫負担制度を充実し、その基礎条件を整えることといたしました。
 また、雇用対策につきましては、特に遺憾なきを期することといたしまして、失業対策事業の吸収人員を二十五万人に増加しているのであります。
 住宅対策といたしましては、引き続き既定計画を推進し、民間の自力建設を合せまして、おおよそ五十二万戸の建設を見込み、これに要する財政資金として、公営住宅、住宅金融公庫及び日本住宅公団を合せて六百九十二億円を予定しておるのであります。
 なお、旧軍人遺族等に対する恩給等につきましては、不均衡是正の措置を講ずることとし、その初年度分として三十七億五千万円を計上することといたしております。
 次に、科学技術の振興につきましては、特に重点的に配慮いたしております。
 原子力平和利用関係につきましては、原子力研究所出資等の大幅増額を中心といたしまして前年度に引き続き相当の拡充をはかったのでありますが、特に昭和三十三年度は、原子力以外の一般の科学技術研究の強化に意を用いたのであります。すなわち、各種の科学技術研究機関の重点的拡充、大学等の試験研究関係の経費の大幅な増額をはかりますとともに、科学研究所につきましては、従来の組織を改めまして、総合研究の強化、新技術開発等のため、三億三千万円を出資することといたしました。
 文教の振興につきましては、義務教育水準の向上を期するため、教員数の増加、教材費の単価の引き上げを行い、特に英才教育の充実をはかるため、新たに進学保障制度を創設するとともに、大学における理工系学生の増募、教育設備の充実等によりまして科学技術者の養成を強化することといたしましたほか、青少年に対する社会教育の充実を期した次第であります。
 中小企業対策につきましては、まず、中小企業信用保険公庫を新設することを予定いたしております。これは、従来の中小企業信用保険特別会計を改組いたしまして、中小企業に対する金融の円滑化に資するため設けられるものでありまして、新たに国が二十億円を出資してこれを全国の信用保証協会に貸し付けることとするほか、保険準備基金といたしまして六十五億円を出資し、制度の整備充実に資することといたしております。そのほか、中小企業に対する設備近代化補助金を前年度に比べまして五割増加し、また、技術指導を強化するため公設試験研究機関における施設の充実をはかることといたしました。
 なお、国民金融公庫及び中小企業金融公庫につきましては、すでに前年度において大幅な資金量の増加をはかったのでありまするが、昭和三十三年度においては、さらに貸付金の増加を予定いたしております。
 農林漁業対策といたしましては、まず、生産基盤の整備拡充のため、土地改良、開拓等の事業の強化におおよそ二十五億円を増額し、また、融資による土地改良事業の推進に資するため、新たに農林漁業金融公庫に非補助小団地等土地改良事業助成基金を設けまして、さらに漁港の整備促進と水産業の振興につきましても、格段の配慮をいたしました。他方、農家経営の多角化を促進するため、畜産振興対策の充実に努め、家畜導入の諸施策を講ずるのほか、新たに酪農振興基金を設置し、また、学童の牛乳飲用の助成に意を用いております。
 自衛体制の整備につきましては、昨年六月国防会議において決定を見た長期防衛力整備計画に基きまして、自衛隊の充実をはかることといたしまして、所要の防衛庁経費を計上いたしましたが、他方、防衛分担金につきましては、駐留米軍の大幅撤退という特殊事情にかんがみまして、従来の一般方式による減額のほかに、三十億円の追加的削減を行うことの合意が成立いたしました。これによりまして、防衛関係費としては、前年度に比べ、おおよそ五十億円の増額にとどめたのであります。
 次に、地方財政は、ここ数年来の健全化の努力によりまして、その再建もほぼ軌道に乗って参りました。今回さらに地方財政の基礎を確立するため、地方交付税の税率を一・五%引き上げることといたしましたが、これにより、地方税の相当の増収と相待ちまして、歳入構成の適正化が促進されますとともに、行政水準の向上と住民福祉の増進がはかられることと存じます。この際、地方団体におきましても、経費使用の合理化をはかり、財政の一そうの健全化に努められるよう切望いたす次第であります。(拍手)
 最後に、歳入に関連し、税制の改正について申し述べます。
 まず、相続税の体系を根本的に合理化するとともに、課税最低限の引き上げ及び税率の緩和を行い、もって中小財産階層の負担の軽減をはかることといたしております。
 次に、法人税率を二%引き下げるとともに、軽減税率の適用限度を拡張し、法人負担の軽減と自己資本の充実に資することといたしており、また、国民負担の現状に顧みまして、下級酒類の酒税をおおむね一割軽減するとともに、自転車、荷車等に対する地方税を廃止する予定であります。
 さらに、国民貯蓄増強策の一環といたしまして、国民の着実な貯蓄意欲の向上に資するため、特定の長期貯蓄を行なった個人の昭和三十三年分および昭和三十四年分の所得税につきまして、特別の控除制度を設けるとともに、科学技術の振興のため、試験研究用機械施設の特別償却制度を拡充いたします等、法人税その他において所要の措置を講ずることといたしております。
 以上申し述べました税制の改正によりまして、国税の減税額は、初年度二百六十一億円、平年度三百七十三億円となる見込みであります。
 以上、当面の経済情勢と、これに対処すべき財政金融政策について申し述べ、予算の概要について説明をいたしました。
 政府は、ここに提案いたしました予算を中軸といたしまして、財政経済諸施策を着実に進めて参ることによりまして、国際収支を改善し、わが国経済の均衡ある発展を招来いたしたいと存じます。
 国民各位の御協力をお願いしてやみません。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 国務大臣河野一郎君。
    〔国務大臣河野一郎君登壇]
○国務大臣(河野一郎君) ここに、昭和三十三年度を迎えるに当り、最近における内外経済情勢とこれに対処すべき経済政策の基調を明らかにいたしまして、国民各位の十分なる御理解と御協力を得たいと存じます。
 ます、わが国の経済がここ一年間いかに推移したかを顧みたいと存じます。
 御承知のように、昭和三十年以来、昨年当初に至るまで、わが国の経済は実に目ざましい発展を遂げましたが、反面、経済拡大の速度が早過ぎたため、輸入は急増し、国際収支は著しい逆調を示すに至りましたので、昨年五月来、金融引き締め措置を初めとして、いわゆる緊急総合対策を実施して参りました。その後、本施策の影響が各方面に浸透するに伴いまして、まず、卸売物価が低落をいたしますとともに、逐次生産調整が進展し、国際収支は当初の予想以上に改善せられるなど、全般的には、順調に所期の成果をおさめてきたものと考えられます。
 すなわち、民間投資は、一時の行き過ぎ状態から脱却して、最近はようやく落ちつきを見せております。また、鉱工業生産も、年度当初の急激な生産上昇が鈍化し、年度間を通じ、ほほ前年度に対し一〇%程度の増加となる見込みであります。この間、消費者物価はほぼ横ばいで推移いたしましたが、卸売物価は、最近におきましては、昨年四月の最高時に比較して、食料を除き、一割程度の下落を示すに至っております。しかして国際収支につきましては、輸出は約二十八億三千万ドルと、前年度に比し約十三%の増加となり、反面、輸入は漸次減少いたしまして、実質一億三千万ドル程度の赤字にとどまるものと見られるに至りました。
 かように、緊急総合対策による調整効果は具現せられつつありますが、最近の海外経済情勢は複雑微妙な段階に立ち至っておりますので、政府といたしましては、今後の経済動向には一そう周到な注意を払い、雇用や企業経営に及ぼす影響をも考慮しつつ、政策に弾力性と機動性を持たせて、調整過程にある経済の円滑な運営をはかっていきたいと所存いたしております。(拍手)
 しかし、このような短期的調整措置もさることながら、わが国経済が長期にわたって安定した発展を遂げますためには、長期的観点からわが国経済の特質に基く問題点とその解決の方向を把握して、所要の施策を着実に実施して参らなければなりません。特に昨年来の経験にもかんがみまして、過度の景気動揺を避けつつ、適正な規模と速度の経済成長を確保いたしますためには、政府の政策や民間の企業活動のよるべき基準が必要であります。
 かような見地から、政府は、新たなる構想のもとに、昨年十二月「新長期経済計画」を策定し、今後五カ年間の長期経済政策の基本方向を樹立したのであります。
 すなわち、本計画におきましては、完全雇用への接近と国民生活水準の向上を念願といたしまして昭和三十三年度から三十七年度に至る五カ年間において、年平均六・五%の割合で経済を成長させ、最終年度において、昭和三十一年度に比し、国民所得で四〇%、一人当り消費水準で三八%の上昇をはかることといたしております。
 もとより、かような経済成長率は、極力引き上げることが望ましいのでありますが、国際収支や資本蓄積等の制約がありますので、安定的な経済発展のためには、この程度の成長割合が限度と考えられるのであります。しかも、本計画の成長率を維持して参りますためには、なみなみならぬ努力が要請されるのでありまして、今後政府も国民も計画の諸目標実現にあらゆる努力を傾けなければならないのであります。
 翻って、わが国の輸出の伸張に密接な関係にある海外経済情勢を見まするのに、まず、米国経済は、好況下に推移した一昨年のあとを受け、昨年半ばころから、消費者支出は、非耐久財及びサービス部門を中心に若干の上昇はありましたが、政府支出は停滞し、設備投資は減少いたしましたため、これらの事情を反映して、工業生産はかなりの減少を示し始めました。今後の米国経済の見通しにつきましては、景気調整政策も講ぜられることと思われますので、本年中には景気の好転も期待されておりますが、なお今後の情勢の推移に待たなければならないと存じます。
 他方、西欧諸国におきましても、大多数の国々は、既往の過大成長のあとを受け、ドル不足に直面して、経済調整対策を持続いたしておりますので、全般的には経済の拡大は停滞しておりますし、東南アジア諸国を初め、大部分の後進諸国におきましては、国際商品相場の低落等による外貨収入の減少のため、購買力の不足は避けられない模様であります。
 かように、世界経済の前途には、相当警戒を要する要因が表面化しつつありますので、今後世界各国の輸出競争は一層熾烈になることと覚悟しなければなりません。
 かような海外情勢を考慮いたしますと、わが国経済発展のかぎである輸出の増大は必ずしも安易な楽観を許しませんが、さきに政府が決定した輸出目標三十一億五千万ドルは、あらゆる努力を結集してこれを達成いたしたいと考えます。しかし、この輸出目標を達成いたしましても、過年度来の急激な成長の後に引き続きまして、経済の安定と均衡を保持して参りますためには、昭和三十三年度の経済の成長は自然控え目とならざるを得ないのであります。
 かような見地から、昭和三十三年度の経済政策は、輸入の増加または輸出の阻害を来たすような国内需要はこれを抑制することを主眼とし、財政金融政策もこれに沿って健全な基調を保持しなければなりません。しかも、そのうちにおきまして、新長期経済計画の要請する重点施策、すなわち、貿易の振興、輸送力及びエネルギー供給源の拡充、科学技術の振興、中小企業及び農業対策について、格別の配慮を加えることが必要と存ぜられるのであります。昭和三十三年度予算がこのような観点に基き編成されておりますることは、先ほど来、関係大臣より演説があった通りであります。
 財政投融資につきましては、特に民間の投資活動の動向等をも考え合せて、適正な投資水準を維持しつつ、重点部門に対する資金の供給を確保するよう配慮いたした次第でありますが、その実行に当りましては、経済情勢の推移とにらみ合せて、慎重、かつ弾力的に運用して参らなければならないと存じます。
 また、雇用面におきましては、経済成長に伴いまして、新規労働力の吸収が期待されるのでありますが、他面、過渡的に発生を予想される離職者等に対しましては、適切な処置を講じていく所存であります。
 以上、私は、昭和三十三年度経済運営の基本的態度について申し述べたのでありますが、この際特に付言いたしたいことは、従来ややもすればわが国経済の発展に取り残される懸念のあった中小企業と農山漁村の経済水準の向上についてであります。今後、経済の発展に伴い、国力は充実し、一般の生活水準は向上することと存じますが、それは必ず中小企業や農山漁村の向上をも伴うものでなければならないのでありまして、私は、今後この点について十分配慮を加えていきたいと存ずる次第であります。(拍手)
 以上のような経済運営を前提といたしまして、昭和三十三年度の主要経済目標は次のごときものとなることと考えます。
 すなわち、貿易及び国際収支については、輸入は三十二億四千万ドル程度を見込まれ、他方、輸出は三十一億五千万ドルを確保いたしまして国際収支は、貿易外収支を考慮いたしますと、実質で一億五千万ドル程度の黒字を期待することに相なります。また、民間投資は多少の減少を来たしますが、政府支出は若干増加し、消費も健全ながら所得増加に伴って幾分増大し、輸出の伸張と相待って、鉱工業生産水準は昭和三十二年度に比べ四・五%程度の上昇になるものと考えます。卸売物価はなお調整の過程にあるにいたしましても、年度間を通じて、おおむね現在程度の水準で推移するものと考えております。この結果、昭和三十三年度の国民総生産は約十兆二千億円となり、昭和三十二年度に比し、実質三%程度の経済成長を見ることとなりますが、この国民総生産の規模は、新長期経済計画が想定しております昭和三十三年度の水準にほぼ合致するものであります。
 以上、私は、内外の経済情勢と経済政策の基調について概略申し上げたのでありますが、わが国経済の発展は、何と申しましても輸出の伸張が中核であることを痛感いたしますので、政府といたしましては、もとより、輸出振興のため諸般の施策を強力に実施して参りますが、国民各位におかれても、それぞれの立場において、政府の施策に格段の御協力あらんことを重ねてお願い申し上げる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、池田禎治君提出、政府の昭和三十三年度予算提出遅延に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 政府の昭和三十三年度予算提出遅延に関する緊急質問を許可いたします。池田禎治君。
    〔池田禎治君登壇]
○池田禎治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本日提案されました昭和三十三年度予算案の国会提出遅延に伴う国会審議権の侵害に対し、岸内閣の政治的責任を追及するとともに、岸総理大臣の所信をたださんとするものでございます。(拍手)
 言うまでもなく、明年度の予算案は、わが国今後の政治経済の方向を具体的に示すものでありまして、保守、革新の二大政党下における岸内閣が初めて編成した予算案であるだけに、この意義はきわめて重大であり、国民もまた、この予算案に対して重大なる関心を寄せておるのであります。
 われわれは、昨年末以来、政府に対し、予算案の提出時期について、しばしば折衝を重ねて参ったのであります。政府は、与党との打ち合せその他のことを考慮し、できれば一月の二十二、三日ごろにまとめて、一月の二十五日までには必ず国会に提出する旨の確約があったのであります。それが、この正月に参りまして、愛知官房長官より、まことに申しわけないが、一月の二十七日でないとどうしても国会への提出ができません、まげて御了承を願いたい、というところの申し出があったのであります。私どもも、やむなく、これを了承したのであります。ところが、その後、またまた、政府は、与党の予算ぶんどり戦争のために、どうしても二十七日には間に合わない、二十九日でないと一切の手続が終らないというので、三たび遅延されて、本日ここにようやく上程されたのでございます。
 こうも念には念を入れた予算でありまするから、いかにりっぱな予算案ができたのであろうかと思って、私どもは慎重にこれをながめたのであります。ところが、私どものところに配付される前に、全国の新聞及び全国の経済評論家が一斉に筆をそろえて、無能にして無定見なる予算編成方針であると、かように批評をしているのであります。(拍手)これは私が申すのでなく、評論家であり、新聞紙でございますが、その新聞紙等が、項目的に見て、要約して、どう言っておるかというと、最初には、これは切られ与三郎予算――ずたずたに切られたという意味でしょう。その次には、これはよろめき予算、さらにひいては、選挙ノイローゼ予算である。(拍手)さらにまた腰抜け予算であり、最後にはどういうかというと、これは両岸予算であると、かように述べられていることは、国民のあまねく知るところであります。
 予算案の内容につきましては、後ほどわが党の代表質問によって鋭く批判されると思いますので、私はこれには触れませんが、問題は、政府並びに与党の無統制な予算ぶんどり競争のために多くの日数が費され、予算案の国会提出が遅延され、国会の審議期間を大幅に制限したのみならず、予算に関連する重要法案のごときは、本日ただいま、一件といえども国会に提出せられておらないのであります。(拍手)こういうように、国会が再開され、予算に伴うところの重要法案が一件も提出されておらないということは、かつて鳩山内閣のとき以外、岸内閣と、二つしかその例を見ないのでございます。(拍手)これは、予算案の審議権を不当に侵害するものとして、立法府に席を置く者のひとしく痛憤を感ぜざるを得ないところであります。
 政府は、ないし与党の人は、予算のおくれたことは、一月三十日もある、あるいは二月一日、二月二日になったこともある、こういうことを述べる方もありまするが、本来ならば、予算というものは昨年の十二月中に出さなければならぬものでございます。これは、財政法第二十七条に基きまして、予算書というものはその前年の十二月中に提出をしなければならぬということを明記しておるのでございます。それを平気の平左で破っておる。これは明らかに政府の法律違反でありまして、歴代の内閣は、いつも、年末年始の休会を利用いたしまして、一月の二十日ごろに出せばよろしい、こういう悪い習慣を勝手に作っておるのでありまして、これは正しいあり方ではありません。あなた方みずからが法規に違反をしておるのであります。政府は労働者や労働組合が法規に違反すると、立ちどころに、これは法律違反なりといって処断をする。自分たちがみずから財政法違反の行為をしても、平気の平左、ほおかぶりをして、平気でやっている。あなた方は、そういう態度でもって、口を開けば国民に順法精神を説き、法令違反をしてはいけない、こういうことを言うということは、私はまことに不可解千万なものであるといわなければならぬ。あたかも、弱い者が法に違反すると、法は峻厳苛烈にこれを処断する、けれども、強い者が、権力を持った者が法に違反しても、平気の平左で、ほおかぶりをして通しておるということは、これは断じて見のがすわけには参らぬのであります。(拍手)
 政府は、昨年の九月十日、予算編成の基本構想を策定し、続いて十二月二十日、ゆるぎなき予算編成方針を閣議決定したと発表し、さらに、自由民主党の党議もこれを承認したというのであります。しかるに、一たび予算編成に取りかかるや、政府与党の予算ぶんどりは全く言語に絶するものであり、けんか口論はもとより、つかみ合い、どうかつ、脅迫のたぐいから、果ては派閥抗争の集団的デモンストレーションが各地において行われたのであります。(拍手)およそ、このぶんどり合戦の醜態というものは、一民主政党のもとにおいては考えられない、醜態限りなきものを露呈したのであります。これは全国の新聞が例外なく述べておりまして、今さら、党のお方も、政府のお方も、そういうことはないなどと言っても、これは国民がすでにあまりにも知り尽しているのであります。今ひな壇に労働大臣としておられます石田博英君は、かつて、自由民主党の党内派閥について、三個師団八個連隊と称しておったのであります。私どもが、新聞記者の諸君が、今度見た党内派閥というものは、まさに七個師団十六個連隊というふうにふくれ上ってしまって、親分子分の派閥関係がいよいよ複雑化し、夜に日を次ぐところのぶんどり競争は、まさに百鬼夜行さながら、政府案の決定したときには、一萬田大蔵大臣はしわくちゃになって、一言もものを言えないほど疲れ果ててしまったというではありませんか。
 特に、われわれ日本社会党が、この予算編成の過程を振り返って、国民とともに最も遺憾に思いますることは、内閣の責任において編成さるべき予算案が、難航に難航を重ね、国民に大きな不安と動揺を与えているとき、岸総理大臣のとった政治的態度であります。私は岸首相を知ること二十年に及んでおります。個人としての岸首相に敬愛の念を抱いていることに変りはありませんが、一国の総理という公器の政治的無責任を許すわけには参らぬのであります。岸首相は、予算案がわが国の政治、経済の方向を具体的に示し、国政を実質的に決定する重要案件であると考えるならば、何ゆえに、この予算編成に当って内閣の責任者としての全努力を払わなかったかであります。われわれのうかがい知るところでは、政府与党の予算編成の基本方針は、第一には、歳出の増加は一千億以内にとどめる、第二に、四百三十六億の余剰財政はたな上げをする、第三に、財政投融資の規模は三十二年度の実行額程度に押えるということにあったと思うのであります。それが、党内派閥のぶんどり競争や、右往左往する集団的威力の前に、大蔵大臣が夕べに一城をとられ、あしたに一砦を奪われて、もみくちゃにされても、何ら閣僚間の調整や基本方針の貫徹に努力を見せなかったことは、例によって、あなたのくせらしい、悪役は引き受けない、よいところは出ていくという、ひより見主義の思想が現われているのではないでしょうか。(拍手)これは、内閣統括の責任者としては、まことに無責任きわまる態度といわなければならぬのであります。首相は、あるいは、予算編成については難航はしなかった、最後には自分が裁定をした、こういうふうにお答えになるかもしれませんが、川島幹事長を初め自民党の幹部諸公が、異口同音に、不手ぎわな予算であったということをひとしく申し述べておるのを見ても、これは明瞭でございます。
 愛知官房長官が一月の二十七日には間違いなく国会に選出しますと言って、さらに二十九日に至ったことは、一部大蔵官僚間に、こんなずたずたに切られた予算案ではとてもまじめな作業はできないという一種のサボタージュというものが行われたために、さらに二日間も国会提出がおくれた、こういう巷間に伝えられておるうわさは、私はゆえなきではないと思うのであります。
 民主主義議会政治は、独裁主義と権力主義を排して行われるものであります。従って、これは、運用のいかんでは、一歩誤まると大へんなことになるのであります。民主主義を守るとりでは国会であります。国会の審議を通じてであります。そうして、正しい民意をくみ取るところにあるのであります。国会の審議権を侵害し、わが国政治経済の方向を決定する三十三年度予算案の国会提出遅延はきわめて重大であります。
 この際、内閣総理大臣の責任ある答弁を求めまして、私の質問を終ります。(拍手)
    [国務大臣岸信介君登壇]
○国務大臣(岸信介君) 地田君の今引用されました財政法二十七条の規定は、はっきり、明確に書いてありますように、十二月中にこれを提出することを常例とするということになっておりまして、これが十二月中に出さなければならない、違法であるという解釈は、これは全然間違っております。(拍手)そうして最近の事例が一月の終りに出しておりますことは、これも御承知の通りでありまして、これが法律違反であるということの御見解は間違っておると思います。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
    午前十一時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時九分開議
○議長(益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。
 鈴木茂三郎君。
    [鈴木茂三郎君登壇]
○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表して、岸総理の施政方針に対して、第一には国際外交上、第二には財政経済上、第三には国会解散の問題について質疑を行わんとするものであります。(拍手)
 第一の国際外交上の問題についてお尋ねいたします。
 アメリカのアイゼンハワー大統領は、その年頭教書で示しているように、ソ連に対する軍事上の優位性を取り戻そうとして、大陸間弾道弾、中距離弾道弾等のミサイルの生産に乗り出し、また、北大西洋同盟加盟の諸国、江東アジア方面またはアジアの極東に対しても中距離弾道弾を配置しようとしているのであります。こうして起った米ソのミサイル軍備競争から生じた国際緊張は、今や、世界の平和を愛するあらゆる国々、あらゆる民族を言い知れない不安に陥れておるのであります。北大西洋同盟の加盟国においてさえ、デンマークやノルウエーのごときは、アメリカのミサイル基地となることを拒否し、イギリス、ドイツその他ヨーロッパの多くの国は、何らかの形で東西両国の首脳会談を開いて国際間の緊張の緩和を行うべきだと主張し、イギリスは、東西の不可侵条約締結や、核兵器をもって武装しない核非武装地帯についても考慮を払うべきだとの態度を明らかにしておる。ポーランドによって提案された欧州の核兵器非武装地帯設定の問題は欧州諸国に大きな反響を呼んでおるのであります。中立諸国も、かかる事態に無関心たり得ないことは当然でありましてインドのネール首相や、ユーゴのチトー大統領なども、それぞれ東西首脳会談を促進することに努力しているのであります。しかるに、岸総理は、世界のかかる重大なる情勢に対して、本日施政方針を伺いましたが、果してこの情勢を正しく認識しているのかどうか。(拍手)また、これに対して、日本は、いかなる具体的な方針を持って世界の平和に貢献せんとするのであるか。総理はこれを明らかにされておりません。(拍手)核兵器、ミサイルの時代に、相対立する一方の陣営に所属し、ただ軍備を強化して日本の安全をはかろうとする政府のこれまでの方針の誤まりは、今日明々白々たるものがあるのであります。(拍手)
 私は、ここで、岸総理の注意を呼び起したいことがあります。それは、国民が心配しておりますことは、サイドワインダーのごときミサイル兵器が、国民の知らない間に、日米安保委員会によって、こっそりと日本に持ち込まれようとしておる事態、あるいは、岸総理の言う新しい日米協力関係を強化するために、世界情勢に反して、むだな自衛軍の拡張が行われつつあるように、核兵器の基地としてアメリカにねらわれている日本とその周辺に、核兵器がいつの間にか持ち込まれ、または核兵器の基地が設定されて核兵器による武装が行われるのではないか、国民は大きな不安をここに持っておるのであります。(拍手)
 私がまずこれらの点についてお尋ねをしたい。第一点は、岸総理は、現在のかかる世界情勢をいかに認識されておるか、もっと詳細に国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)総理は今日の世界情勢を正しく把握していないのではないか。第二点は、米ソのミサイル軍備拡張競争の時代に、その相対立する一方の国、すなわちアメリカと新しい日米協力関係を強めて、日本の従属関係をさらに強化しようという方針は、私の聞くところによれば、保守派の中においても強い批判がすでに起っているということであります。(拍手)これは当然でありまして、政府の外交方針は今や転換期にあると思うが、総理の所信はどうか。(拍手)第三点は、日本はこうした世界情勢に対応する国際間の緊張の緩和と日本の安全保障体制のために積極的な意思表示を行い、かつ、志を同じくする諸国とともに真剣に努力すべきであると思うが、岸総理の所信はどうか。(拍手)
 私は、今日、かような世界情勢に対して、日本の安全保障並びに国際緊張緩和のための具体的な方策として日本は次のごとき措置をとるべきであると信ずるものであります。総理のこれに対する所信を承りたい。
 まず、国際緊張の緩和について、米ソ両国は、今日の世界の不安が米ソの二大国の対立から起っておる責任をみずからの努力で解決するために、東西首脳会談を要望する世界の世論を私は率直に聞き入るべきであると思う。その準備手続として外相会議を開くことがあっても、首脳会談の道をこれがために閉ざすようなことがあってはならないのであります。総理も、首脳会談の開催に関しまして本日施政方針において述べられたのでありますが、問題は、どういう方法で総理は努力されるのか、それに対する熱意があるのかないのか、この点であります。(拍手)私は、この首脳会談の議題としては、核兵器実験の禁止――条件をつけて、核兵器の実験の禁止のできないような条件付でなくて、無条件の核兵器実験の禁止であります。(拍手)武器供給停止、非武装地帯の設定、不侵略条約の締結、軍縮問題の打開、これらの問題が首脳会談において取り上げられることが望ましいのであります。
 次には、日本の安全保障について核兵器実験の無条件の禁止であるとか、米ソを含めた、ひものつかない、後進国援助のためのアジア経済会議であるとか、こういった問題のほか、私は、この際、特に核兵器をもって武装しない核非武装地帯の設定並びに不侵略条約の平和体制に関して、一、日本は核兵器をもって武装せず、また、核兵器の製造と貯蔵を行わないことを自主的に宣言する。二、米軍の核兵器、誘導弾の持ち込み、ミサイル基地の設定を阻止する。三、北西太平洋地域をもって核兵器によって武装しないことを関係諸国と交渉、協定する。四、アジア各国がアジアの核兵器非武装地帯の設定のために積極的に努力することを要望する。五、中ソ米等関係諸国と個別的、集団的に不侵略条約を締結することに努め、終局的にはアジア平和保障体制の確立を期する。
 私は、以上の二つの問題、日本の安全保障と国際緊張の緩和に関する私の具体的な見解に対して、総理の明快な所信をただしたいのであります。(拍手)私は、ここで総理に申し上げておきます。必要なことは、自主的に具体的の方針を決定し、かつ、これを行動に移すことが必要でございます。(拍手)
 国際外交上なお緊急な問題の一、二について、この際お尋ねいたします。
 その第一点は、沖縄の問題についてであります。沖縄の日本への復帰は、沖縄の同胞の熱烈な要望のみならず、本土のわれわれ同胞もまたひとしく熱望してやまないところであります。総理がアメリカをたずねられた際、総理とアイゼンハワー大統領との共同声明によりますと、大統領は、住民の福祉を増進し、かつ、その経済的及び文化的向上を促進する政策を継続する、こういう趣旨が共同声明において大統領によって述べられておるのであります。しかるに、事実は、アメリカ大統領の言う住民の福祉とは全く相反する軍政による植民地的支配が行われておるのであります。(拍手)那覇市長問題について、沖縄の同胞が強くアメリカの軍政に反撃の意思表示を投票によって示したことは、私は、沖縄の同胞のアメリカの軍政による植民地的支配に対する抵抗の強い表現であり、同時に、日本復帰への要望をさらに強く表明したことにほかならないと、かたく信ずるのでございます。(拍手)アメリカにおきましても、沖縄の事態に対しましては、ニューヨーク・タイムスその他多くの新聞、雑誌及び有識者は、この際アメリカの沖縄に対する政策を転換すべきであるとの見解を表明いたしておるのでございます。岸総理は、昨年六月訪米した際、沖縄問題について、沖縄の同胞並びに日本側の要求を強く主張することをあえてされなかったのみならず、瀬長市長の追放問題そり他についてきわめて冷やかな態度をとったことは、沖縄同胞をして失望落胆せしめておるのでありまして、総理は、私はとくと同胞のためにお考え直しをいただかなければならないと思います。(拍手)われわれは、沖縄同胞が高く掲げておる四原則の貫徹と、核兵器基地化の反対、日本復帰と、まず施政権の返還等を主張して沖縄の同胞に協力して参ったのでありますが、私は、今日こそ政府はこれらの問題の解決のためにアメリカ政府と強力に交渉すべき時期であると思うが、総理の所信をただします。(拍手)
 第二点は、中国問題であります。総理の本日の施政方針の中に、隣の大きな国の中国について何らの発言のなかったことは、はなはだ不可解でございます。(拍手)われわれは、日本が、アジア諸国の一員として、特にアジアの諸国と友好親善関係を打ち立てていくことが、日本の平和に貢献するゆえんであることを確信するものであります。インドネシアとの間に平和条約の調印を見たことは、その意味において喜びにたえないところであります。しかし、アジアにはなお幾多の大きな問題が残されておるのでありまして、中国を実際に支配しておる中華人民共和国政府との国交の正常化が今日なお未解決のままに放置されておることは、私は大きな問題の一つであると思います。(拍手)隣の国との間に友好親善の関係を持つことは、ひとり日本のためばかりではありません、アジアのためでもあるわけでありまして、このことは日本国民のひとしく要望しておるとろであるのであります。歴代の保守党内閣、とりわけ岸内閣は、総理の訪米後はアメリカの制約がさらに強まったからでございましょう、日中両国の実情に目をおおい、中国との国交正常化を回避する態度をとっておられるのであります。こうした態度は、とりわけ、最近のミサイル軍拡時代の国際情勢や、日本の経済事情の不況などと考え合せてみましても、私はすみやかに是正されなければならない問題であると思います。(拍手)どうして中国問題について、そうアメリカにばかり遠慮されるのか。政府は第四次貿易協定の締結を促進し、次いで、通商代表部を相互に設置することに一段の熱意を示し、すでに民間の折衝は限界点にあります。政府は、日中間の諸般の懸案を解決するために、政府の機関または政府代表者による接触をはかって、お互いの話し合いを開始すべき段階にあると思うが、総理はどう考えておるか。(拍手)
 なお、中国の国連への参加の問題についても、いずれ国連の安全保障理事会あるいは総会において取り上げられる問題でありましょう。私は、中国を国連に参加せしめることは、アメリカ側に一方的に片寄ったと非難されている国連を、一方的に片寄ったものでない、公正な国連として権威づけるためにも、中国の国連加盟は当然であると信ずるのであります。(拍手)岸総理の所信をただしたい。
 第二の質問は、財政経済上の問題であります。
 第一次岸内閣から第二次岸内閣に至る昭和三十二年度の財政経済政策を見ますと、当初は、いわゆる神武景気というようなばかばかしい幻想のもとに、政府は自由放任主義を基調とする手放しの財政経済政策をとられた。ところが、その結果、外貨の危機を引き起し、神武景気の頂点から急激に景気後退の経済情勢に直面するや、政府は、あわてて正常な産業と国民生活ののど笛を締め上げるような不景気政策一本の対策をとり、しかも、本年度の予算案の編成の跡を顧みますと、財政方針が一体あるのかないのか、それさえわからないのであります。(拍手)まことに驚くべき無方針、驚くべき無計画であって、私は政府の財政経済政策に対する正常な能力を疑わざるを得ないのであります。(拍手)総理にお尋ねいたしたいのは、かような事態は、岸内閣の財政経済に対する見通しの誤謬、誤まった見通しの上に立てられた自由放任主義による手放しの政策の失敗と断ずるほかはないと思うが、どうか。(拍手)
 次は、こうして、しゃにむに不景気政策がとられた結果、そのしわ寄せは中小企業に対する強度の圧迫となって現われております。それと同時に、生産者たる労働階級や、働く農民、消費着たる国民大衆の生活に対しても、同じようにしわ寄せされてきておるのであります。(拍手)政府の財政経済に対する見通しの誤まりと対策の誤謬の責任を政府が負わないで、中小企業や国民の生活の上に責任が転嫁されておる。(拍手)この事態に対して、総理はこれをいかに認識されるか。
 次に、来年度予算案について、政府は、ここに、戦後最悪の予算案を作って国会に提出されております。この予算案と関連いたしまして、ここに一点総理の所信を確めておきたい問題がございます。それは、厚生省の白書によりますれば、国民の貧困は増加しつつあるということであります。警視庁の白書によりますれば、暴力による犯罪は増加しつつあるということであります。政界、官界、財界等における汚職は次から次へと相次いで起っておる。予算案について見ましても、この予算案に対する世評は、いまだかつて類例を見ない酷評を受けております。(拍手)貧乏追放はから念仏ではないか、予算案はそれ自体がこれは汚職予算ではないか、こういう酷評さえあるのであります。総理は、しばしば、国民に、三悪追放、貧乏と暴力と汚職の三悪の追放を公約されております。申すまでもなく、三悪の追放は、宣伝や、かけ声や、または法律や権力によって無慈悲に取り締ることだけで追放できるものではありません。(拍手)国民の生活を保障する物質的な基礎を与えることが何よりも肝要であるのであります。(拍手)政府がなすところは、三悪の追放ではなくて三悪の助長、三悪奨励になるのではないか。総理の所信をただしたいのであります。(拍手)
 第三は、国会解散の問題であります。私は、国会解散の問題を、民主主義の原則から見て、これを大きく分けて、民主政治の根本原則からと、当面の政局の現実からと、二つの点から考えてみたいのであります。言うまでもなく、現行憲法は主権在民の原則の上に立つものでありまして、内閣は常に国民の代表たる国会に対して責任を負うものであり、国会はまた常に選挙を通じて国民に対して責任を負うものであります。かつ、わが憲法は随時解散を予定しているのでありまして、このことは、すなわち、政局担当者の更迭または重大なる情勢の変化と、それに対応する新しい政策の提起または変更に際しては、常に主権者たる国民の意思を問うべきことを命じておる証左であります。これを怠ることは民主主義を蔑視するものといわなければならないのであります。(拍手)
 現在の衆議院は、第一次鳩山内閣の鳩山一郎君が政局を担当するに際して、信を国民に問うて成立したものでありますから、それよりここに満三年、第二次、第三次鳩山内閣から石橋内閣、第一次、第二次の岸内閣、これらは、いずれも、第一次鳩山内閣の鳩山一郎君が選挙によって国民から与えられた信任を、これをあえて盗用して成立した内閣だと断ぜざるを得ないのであります。衆議院の総選挙は、一面、政党に対する支持を明らかにするものでありますと同時に、他面、だれが首班として政局を担当するかということも、不可分の関係を持って行われるものであります。選挙を行わないで、国民の信任もなく、勝手に政党が離合集散して、その選ぶところの首領が政権を担当することが許されるならば、それは、明治、大正の閥族政治、官僚政治と何の選ぶところもないのであります。(拍手)
 さらに、民主主義の原則から当面の政局の現実について見ますと、政党の離合集散と首班の更迭とだけが国会解散と総選挙の理由となるのではありません。重要な情勢の変化、それによる新しい政策の提起または変更等は、これを主権者たる国民の意思に問うべきであるのでありまして、鳩山内閣以来、自民党の重要政策が幾変転したことは周知の事実であって、ここに一々申し上げるまでもないところであります。ただ一つここで申し上げたいことは、世界情勢について、ミサイル軍拡競争のために重大な世界情勢の変化が起って参りましたため、米ソの谷間にあって、一方のアメリカの陣営に従属せしめられておる日本国民の不安は、今日の情勢の中でアメリカの言うがままになっておって、一体日本はどうなるかという不安であるのであります。(拍手)国民の多くが国会の即時解散を望んでいるのは、こうした内外の情勢に対して、それぞれの意思を投票によって政治に表明したいと強く望んでいるからであると思うのであります。(拍手)従って、大資本家や財界の一部だけが望んでいる予算通過を理由として国会の解散を回避することは断じて許されないのであります。(拍手)党内派閥の解散回避要求による党利党略のために、民主主義の原則と国民の自由な意思を表明する機会がじゅうりんされることは、断じて許されないのであります。
 総理は、本日の施政方針において、民主主義と国会についてお述べになりましたが、民主主義に対しまして、議会政治に対しまして、私は、まず岸総理、与党みずから範を国民にたれることを要求して、私の質問を終了いたします。(拍手)
○議長(益谷秀次君) ただいまの鈴木君の発言中、もし不穏当の言辞がありましたならば、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 鈴木君の御質問は、外交問題、経済問題及び解散問題等、広範の問題に触れておりますが、私は、これらのものに対して、なるべく詳細にお答えをしたいと思います。
 まず、国際情勢の把握の問題でありますが、これは、私の施政方針にも明らかにいたしておりますごとく、軍事科学の発達に伴って、東西両陣営がこの軍事力の増強の競争を熾烈にいたしておるということが世界に不安を与えておる。われわれのごとく、恒久の平和、安定した平和を望む上からいって、これはまことに遺憾な状態であるということもはっきり申し上げます。(拍手)ただ、それを打開するために、東西両陣営の首脳部において話し合いをするということの機運を醸成すべきである、これを進めていくべきであるということを申しております。ただ、鈴木君も御承知の通り、かつて、同じような状態において、先年ジュネーヴ会議において巨頭が集まって、いわゆるジュネーヴのいい空気をかもし出したのが、その次に行われた外相会議においてくつがえされた実例から見ましても、私は、この会談を実現するためには、十分の準備をして、これを成功に導かなければならぬと思います。(拍手)また、今日の状態において、大国の間にこの会談をすべきだという議論が一方非常に盛り上ってきておるにかかわらず、それがまだ実現に至らないということは、両国間における不信の念がその根底であります。私は、単にこの両国が宣伝によって相手を押えつけようとする考えではなくして、これを行為でもってその言葉を裏づけるようなことをしない限りは、なかなかこの大国間の不信は取り除かれないのであります。こういう事態を十分に考えて、この間における日本は、国際連合の内外において積極的にその機運を進めることに努めていきたいと思います。(拍手)
 また、日本の安全保障の問題に関連して、いわゆる核兵器でもって武装するという問題、核兵器の問題、また、いわゆるICBMやIRBM等のいわゆるミサイル基地の問題等に関してのお話でありましたが、私は、従来、日本が核兵器をもって武装しない、また、核兵器の国内への持ち込みはこれを認めない、拒否するということは、きわめて明確に申し上げておるところであります。(拍手)
 また、日米の協力関係は、日本の、また、わが党がとっておる外交政策の大きな柱でありまして、この日米の協力を――お互いがお互いの立場を十分に理解し、日本としては自主的な立場からこの日米協力を進めていくということは、われわれの外交政策の基本でありまして、(拍手)それが日本を危険に導くがごとき言動は、私は間違っておると思います。(拍手)
 なお、極東における核兵器の非武装地帯の設置の問題や、あるいは米、ソ、中国、日本等の四カ国の間における不可侵条約等についての御意見がございましたが、私は、これらの問題は、現在のこの国際情勢の現実から見ると、これが実現ということはとうてい考えられない。もしも四カ国の間において不可侵条約ができるような状態であれば、私は今日において軍縮問題等がああいう行き違いをするということは絶対にないと存じます。問題は、もう少し根本的な現実を把握して、これに対処した現実的な政策でもって進んで参りたい、かように考えております。(拍手)
 次に、沖縄問題でありますが、沖縄問題につきましては、鈴木君の御質問にありましたように、われわれもこの沖縄問題というものを非常に重要視するものであり、また、沖縄住民の要望は即日本国民全体の要望であってこれが実現のために今後ともあらゆる努力をしなければならないことは言うを待ちません。(拍手)私が昨年の夏アメリカに参りました際に、アイゼンハワー大統領との話し合いにおいて、私がこれを熱意を持って努力しなかったというお説でありますが、これは全然事実に反しております。私は熱意を持ってこれを実現しようと努力をいたしたのでありますが、この共同宣言に現われているように、不幸にして、まだ日米両国の間においてこの問題についての意見が一致しておらないことを残念と思います。(拍手)
 中国問題については、われわれは、現在の段階においては、これを正式に承認する段階ではないと思います。また、国際連合に加盟を認めるかどうかというお話でありましたが、国連における現在の情勢から見まして、われわれは決してアメリカに追随するがゆえにこれを認めないというのではありません。この問題を解決するためには、前提条件として、国際情勢を、十分にわれわれがその状況を認めて、そうして、これを緩和するところの前提をとらない限りにおいては、これを主張したって実現はできないというのが現在の状況であります。
 経済上の問題に関しましては、すでに大蔵大臣や、あるいは経済企画庁の長官、河野国務大臣からここで申し述べましたように、日本のこの従来の経済の発展があまりにも急激に過ぎたために、昨年の、夏にこれが是正のための緊急対策をとらざるを得なかった。しかも、その結果は、漸次われわれが所期したところの効果を上げつつあるという、こういう状況であります。しかし、経済情勢の変化というものは、ことに、日本のような海外の経済事情に依存することの非常に大きい国、貿易によらなければ立っていけないような国におきましては、国外の経済情勢と同時に、国際的経済情勢の正確なる見通し、把握ということが必要でございます。しかも、この今日の国際情勢が、先ほど来鈴木君も御指摘のあったように、きわめて複雑微妙に動いておる際において、この国際経済事情等を正確に把握するにつきましては、われわれは、さらにその機能を強化するような措置を講ずる必要があり、また、同時に、日本の経済の基盤を固めて、そういう国際情勢の少しの変化によっても、これを鋭敏に感ずることのないううな基盤を作っていく必要がある。(拍手)そういう意味において、われわれは、長期経済計画を立てて、安定した基盤の上に将来そういうことのないようにしていくというのが、われわれの考えであります。(拍手)
 また、この総合緊急対策の結果、中小企業者にしわ寄せがきておるじゃないか、あるいは労働者や農民や一般の国民消費者に非常な迷惑、しわ寄せを来たしておるではないかというお話でありますが、この中小企業者の問題は、これは、私の施政演説において明らかにいたしておりますごとく、きわめて重要な問題でありますので、その組織を強化する、あるいは経営を安定化する、あるいは資金を潤沢にするために信用力を強化するとかいうような恒久策を立てるとともに、昨年の緊急対策におきましては、中小企業金融については特別の措置を講じて、私は、実際は相当にその金融の効果を発揮して、しわ寄せがここにいったというような事態はないと思います。(拍手)また、労働者やあるいは消費者一般に対しましては、物価を値上げしないように政策をとっておるわけでありまして、この初編の引き上げによって生活を脅かすということはない。現に、それは、先ほど河野国務大臣も物価の指数について申し述べておるように、われわれがこの緊急対策をとって、物価は漸次下落をいたしております。
 予算案について、いわゆる、私が従来公約し、私の念願として唱えておる三悪の追放がどうなっておるかという御質問でございます。私は、貧乏追放ということは、これはいわば内政の眼目である。従って、これを実現するためには、根本的にいえば、経済を拡大して経済を繁栄させなければならぬ。しかも、一面においては、社会保障制度を拡充して、生活上困っておる状況にある人々に私は社会保障の手を伸べていく。この二本の柱で進むべきものと思います。一方において経済の長期計画を立て、経済の安定した基礎における拡大を考えると同時に、社会保障に関しましても、本年度の予算において相当の増額をいたしております。(拍手)私はこれをもってもちろん十分とは考えておりません。しかしながら、この方向において今後も力をいたすつもりでおります。また、汚職の追放や暴力の追放につきましては、これは、予算案というよりも、むしろ、いろいろな法規の励行や、あるいは足らないところの法規を整備して、一般の人々がこの点に関して強く反省し、また、そういう事態を生ずる温床となるような事態をなくするように努力しなければならぬと思っております。
 最後に、国会解散の問題でありますが、解散問題につきましては、従来、しばしば、前国会以来論議されたことであります。鈴木君の質問されました、いわゆる民主主義の公式論につきましては、私は従来明確にお答えをしてきております。ただ、政治情勢として、今日するのが適当であるかどうかという問題に関しましては、私は、先ほど来鈴木君も御質問になりましたように、私どもは相当な注意をして、経済的にしわ寄せのこないような措置をとっておりますけれども、一部においてはそれでもなお弱いところへしわ寄せがきやしないかということを御心配になっておる向きもありますので、そういうときには、一日も早く予算を成立せしめてこれを実施することが、これらの国民の要望に応ずるゆえんであると考えておりまして今日解散する意思は持っておりません。(拍手)
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。裁判官弾劾裁判所裁判員福永健司君から裁判員を辞職いたしたいとの申し出があります。また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員椎名隆君から予備員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) つきましては、この際裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙を行います。
○山中貞則君 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙は、その手続を省略して議長において指名せられ、予備員の職務を行う順序については、議長において定められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は裁判官弾劾裁判所裁判員に園田直君を指名いたします。
 また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備委員に村松久義君を指名いたします。なお、その職務を行う順序は第四順位といたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、裁判官訴追委員西村直己君及び坂本泰良君から訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。また、裁判官訴追委員の予備委員森山鉄司君から予備軍を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) つきましては、この際裁判官訴追委員及び同予備員の選挙を行います。
○山中貞則君 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、予備員の職務を行う順序については、議長において定められんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。議長は裁判官訴追委員に高橋禎一君及び細田綱吉君を指名いたします。
 また、裁判官訴追委員の予備員に山口好一君を指名いたします。なお、その職務を行う順序は第一順位といたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、検察官適格審査会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 検察官適格審査会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は検察官適格審査会委員に牧野良三君を指名いたします。
 なお、椎名隆君の予備委員である小林郁君は牧野良三君の予備委員となられました。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、国土開発縦貫自動車道建設審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は国土開発縦貫自動車道建設審議会委員に佐藤栄作君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、首都圏整備審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 首都圏整備審議会委員の選挙は、その手続を省略して議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は首都圏整備審議会委員に荒舩清十郎君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は海岸砂地地帯農業振興対策審議会委員に櫻内義雄君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙は、その手続を省略して議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に竹尾弌君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、畑地農業改良促進対策審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙は、その手続を省略して議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は畑地農業改良促進対策審議会委員に篠田弘作君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○議長(益谷秀次君) 次に、鉄道建設審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行います。
○山中貞則君 鉄道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
 議長は鉄道建設審議会委員に佐藤栄作君を指名いたします。
     ――――◇―――――
○山中貞則君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時五十八分散会
     ――――◇―――――