第028回国会 予算委員会 第3号
昭和三十三年二月八日(土曜日)
    午前十時十八分開議
 出席委員
   委員長 江崎 真澄君
   理事 今井  耕君 理事 川崎 秀二君
   理事 重政 誠之君 理事 田中 久雄君
   理事 橋本 龍伍君 理事 川俣 清音君
   理事 柳田 秀一君
      安藤  覺君    植木庚子郎君
      内田 常雄君    小川 半次君
      大橋 武夫君    太田 正孝君
      上林山榮吉君    北澤 直吉君
      草野一郎平君    河本 敏夫君
      周東 英雄君    須磨彌吉郎君
      中曽根康弘君    永山 忠則君
      福永 一臣君    船田  中君
      古井 喜實君    松浦周太郎君
      南  好雄君    宮澤 胤勇君
      八木 一郎君    山崎  巖君
      山本 勝市君    山本 猛夫君
      井手 以誠君    井堀 繁雄君
      今澄  勇君    岡田 春夫君
      小平  忠君    小松  幹君
      河野  密君    島上善五郎君
      田原 春次君    滝井 義高君
      辻原 弘市君    成田 知巳君
      西村 榮一君    古屋 貞雄君
      森 三樹二君    門司  亮君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 唐澤 俊樹君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 一萬田尚登君
        文 部 大 臣 松永  東君
        厚 生 大 臣 堀木 鎌三君
        農 林 大 臣 赤城 宗徳君
        通商産業大臣  前尾繁三郎君
        運 輸 大 臣 中村三之丞君
        郵 政 大 臣 田中 角榮君
        労 働 大 臣 石田 博英君
        国 務 大 臣 石井光次郎君
        国 務 大 臣 河野 一郎君
        国 務 大 臣 郡  祐一君
        国 務 大 臣 正力松太郎君
        国 務 大 臣 津島 壽一君
 出席政府委員
        内閣官房長官  愛知 揆一君
        法制局長官   林  修三君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
        大蔵事務官
        (理財局長)  正示啓次郎君
 委員外の出席者
        日本国有鉄道総
        裁       十河 信二君
        日本国有鉄道副
        総裁      小倉 俊夫君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
二月八日
 委員北村徳太郎君、小坂善太郎君、山手滿男君
 及び勝間田清一君辞任につき、その補欠として
 草野一郎平君、北澤直吉君、安藤覺君及び滝井
 義高君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十三年度一般会計予算
 昭和三十三年度特別会計予算
 昭和三十三年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○江崎委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十三年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を議題といたします。
 この際藤山外務大臣より発言を求められております。これを許します。藤山外務大臣。
○藤山国務大臣 成田委員の御質問に対してお答えをいたしたいと思います。ヴェトナムとの賠償につきましては、平和条約第十四条の損害並びに苦痛ということに該当しておると思うのであります。ヴェトナムはサンフランシスコ条約に調印をいたしておる国でありますので、われわれはそれを基本として考えております。
 なお戦争状態があったかどうかという御質問であります。平和的に進駐したという初期の段階はヴィシー政府の時代でありまして、当時御承知のようにドゴール亡命政権がありまして、ドゴール政権としては十二月八日以後戦争状態があったということになっておりますが、ヴィシー政府に対しては、平和的な約束のもとに進駐をいたしておるわけであります。しかるに御承知のように、一九四四年ドゴール政府がフランスの実際の政治的政府となりまして、ヴィシー政府が解体いたしたわけであります。その後はドゴール政権としましての当初主張しておりました十二月八日以後の状態を固執しておるわけであります。そういたしまして翌四十五年の三月に日本といたしましては、そういうようなドゴール政権の態度からいたしまして、松本大使を通じまして軍事政府の設立と軍事占領を仏印政府に申渡したわけであります。従いまして、終戦までの間軍事的状態があったということがいわれる。またその間におきます軍事占領による損害、軍事的行動による損害というものがありまして、戦闘行為も大規模の戦闘行為はなかったかと思いますけれども、小規模の戦闘行為は至るところにありまして、また経済的には物資の調達その他によりまして相当な苦痛を与えておる。また人心の上にも苦痛を与えておる。そういうことを土台として、南ヴェトナムが賠償を要求しつつあるわけであります。そこでそれの見方につきましては、ただいま申し上げたように、日本とヴェトナムとフランスの間に全部の期間を通じての戦争状態というものには同意しがたい点もあるのでありますが、しかしながらそういう事情から申しまして、賠償を適当な金額払うということは適当であろう、こう考えております。
 なおインドシナ銀行と正金銀行との間におきます特別円の問題につきましては、これは賠償とは全然別個の貸借関係でありまして、御承知のように十五億円を払いまして、そのほかに四十八万ドルを払いまして、決済が昨年三月についております。以上お答え申し上げます。
○江崎委員長 質疑を続行いたします。成田知巳君。
○成田委員 質疑に入ります前に、総理に一言、総理として、また自民党総裁としての御見解を承わりたいと思います。実は昨日ヴェトナム問題で本議場が紛糾しましたときに、そのあと自民党の幹事長の川島さんが、こういう談話を発表しております。「社会党の政府批判は自由であるが、外交交渉の機微を無視して、わが国の利益を犠牲にするようなことを行うのは同意できない。」こういう談話を発表しておる。かてて加えて官房長官は、NHKのラジオ放送で、この社会党の行為は利敵行為だと言っておる。昨日の私の質問を通しても、総理自身もおわかりと思いますが、たとえば南朝鮮の焦げつき債権の問題もそうです。機微の問題については、私は最後まで追及しなかった。もし必要とあれば秘密会でもいいと申し上げた。またヴェトナムの賠償問題でも、私が聞いておるのは法律的な根拠なんです。賠償の基礎を、どこに置くかということで、決して賠償金額が高いとか低いというようなことは言っていないのです。これは国民の知らんとするところなんです。いかなる根拠で、いかなるものを対象として、政府は賠償交渉をやっておるか。これはもし結果が賠償という形で現われましたら、これは国民の税金なんですから、当然国会が国民の代表として聞くべきことなんです。にもかかわらず利敵行為だ、あるいはこういうやり方はけしからぬという談話を発表するということは、一体何事ですが。大体あの小澤発言を見ましても、またこの談話に見ましても、最近の政府並びに自民党のやり方というものは、議会の言論を封殺しようとする非常にファッショ的な動きがある。総理としてあるいは総裁として、この発言を一体何とお考えになるか、まずその点を明らかにしていだきたい。
○岸国務大臣 私が施政方針にも申しておる通り、国会はあくまでも政策論議の場として運営されていくべきである、この議場における言論の自由を尊重すべきことは、これは言うまでもありません。私はそういう考えのもとにおいて、本会議においてもあるいは委員会におきましても、十分御議論に対してはこれを慎重に尊重いたしまして、これに対する所信は、はなはだなんでありますが、従来の議場に行われた論議よりも私の考えをできるだけ詳細に、かつ御質問の本旨に従ってお答えをする。これは見解の違うことはやむを得ないが、その点をはっきりさすことが国会運営の上に必要であるというのが、私の信念でありまして、そういう意味で私は終始行動いたしておりますし、また今後もするつもりでございます。ただお互いに非常に慎重に考えなければならぬことは、議論の熱するところ、また一種の議場心理というようなことから、時にわれわれがあとから冷静に考えてみると、行き過ぎだという言動も従来あるわけであります。社会党の鈴木委員長とお目にかかったときにも、今後お互いに両党とも国会の品位を高め、お互いが誤解を受けないように、できるだけ言動においても注意しようということを申し合せましたのも、そういう趣旨であります。従いまして私自身はあくまでも今申したような考えで行動いたしたい。ただ昨日のような場におきますと、お互いにやや興奮した結果として、あとから冷静に考えてみますと、誤解を招き、もしくは行き過ぎたような言動にとられる節もあろう、十分にそういうことは注意して参りたいと思います。
○成田委員 今の総裁あるいは総理の御答弁を聞きますと、私の発言に行き過ぎがあるいはあったかもわからないような発言なんです。これは納得できない。私は韓国の問題についても、もし必要とあれば秘密会でもいいと言っている。そして私は最後まで追及するのをやめている。ヴェトナムの問題については、先ほど申しましたように、金額の多寡とか折衝の内容を私は聞いていない。根拠をどこに求めてやっているか、これが国民の知りたいところである。私の言論に行き過ぎた点があったとすれば、どこであるかということをはっきり言っていただきたい。
○岸国務大臣 私がただいま申し上げましたことは、成田委員の言論に行き過ぎがあったとかないとかということを申し上げたつもりはございません。全体の、先ほどおあげになりました幹事長やその他の発言についての御批判に対しまして、私は申しているわけであります。われわれはあらゆる場合においてできるだけ、先ほど申しましたような心がまえで論議を尽していきたい。そうしてそれが外交の機密に触れるとか、あるいはいろいろな関係上申し上げることができないという場合においては、そのことを御了承願うということにしたいと思います。昨日の件で私の申し上げたいことはああいうふうに議場が混乱し、審議を続けることができなくなったということは、はなはだ遺憾であるということを申し上げておるのであります。
○成田委員 私の発言に行き過ぎがあったというのじゃなしに、官房長官なり幹事長の発言に行き過ぎがあった、こういうようにお考えになっておる、こう理解してよろしゅうございますか。――よろしいですね。――委員長、今よろしいと総理は言われましたから、委員長もお認めになりますね。お認めになるということを言って下さいよ。――言って下さい。これは重大な問題ですよ。議員の言動の自由に対する重大な侵害ですよ。特に官房長官は利敵行為と言っている。どこに利敵行為がありますが。官房長官、どうお考えになりますか。私に対する侮辱ではありませんか。今総理はそういうことはないと言っておられる。あなたは利敵行為と言っている。私に対する名誉侵害ですよ。あまり軽率な言辞をお使いになるものではない。官房長官、一体どうお考えになりますか。
○愛知政府委員 お答えいたします。私は公けの発言として利敵行為というようなことを用いた覚えはございません。万一公けの発言以外でもさようなことをかりに申したといたしますならば、不穏当であったと思いますから、この点は遺憾の意を表します。
○成田委員 では時間がだいぶ制限されておりますので、要点だけを承わりまして、あと専門家が個々の問題については具体的な質問をいたすことにいたします。
 そこで、昨日発表されましたヴェトナム賠償に対する政府の統一解釈でございます。これについてまずお尋ねしたいのですが、ヴェトナムが平和条約に署名しているから、当然戦争の賠償責任がある、こういうことを言っていらっしゃる。平和条約に署名したからといって、戦争による賠償責任は必ずしも出ないと思う。今度の平和条約でも五十一カ国が署名している。しかし日本と直接戦闘行為のなかったところは賠償は要求していない。また賠償を支払う義務がない。こういうように形式的に平和条約にヴェトナムが調印したからといって、必然的に賠償責任があると思わない。そこに戦闘行為によるところの被害がなければ、十四条の賠償はないと思うのですが、藤山外務大臣の御意見を承わりたい。
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、戦闘行為があった、またいろいろな経済上、人心の上に影響があったと思います。
○成田委員 戦闘行為がありまして、撃沈あるいは爆撃で相当な損害が発生したと認める、こういう統一解釈なんですが、その損害は北ヴェトナムと南ヴェトナムとどちらが多いとお考えになっておりますか。
○藤山国務大臣 北ヴェトナムとか南ヴェトナムとか考えませんで、われわれはヴェトナム政府を相手にして現在交渉しているのであります。(発言する者多し)
○成田委員 そういう御答弁では満足できませんが、さらに重大なことは、一昨年のジュネーヴ会議で、いわゆる巨頭会談で協定が行われまして、北ヴェトナムと南ヴェトナムは一年後に統一する、こういう話し合いができているのです。そういう統一の話し合いがあるにもかかわらず、それを待たないで、なぜ南ヴェトナムだけを相手にして、しかもヴェトナム全体の賠償――あなたが全体として考えているというのは、実際は戦闘行為によるところの損害というものは北ばかりなんです。それを、北におもな被害があったにもかかわらず、被害の少かった南を対象にして全体の賠償を考えるというのは、これは何といっても手落ちだと思う。なぜそんなにお急ぎなんですか。
○藤山国務大臣 私どもはサンフランシスコ条約に調印しておりますヴェトナム政府を対象にいたしまして、全ヴェトナム領域を考えてやっております。
○成田委員 そういたしますと、今の御発言は、政府の統一見解としてあります、北ヴェトナムが賠償を要求する場合、わが国としては南ヴェトナム政府をもってヴェトナムの正統の政府と認めている。この政府との賠償取りきめは、北ヴェトナム地域をカバーするものとの解釈をとっている。その意味通りでよろしゅうございますか。
○藤山国務大臣 その通りであります。
○成田委員 そういたしますと、南ヴェトナムがヴェトナム全体の正統政府と認める。サンフランシスコ講和条約にも調印しているし、ヴェトナム全体の正統政府と認める、こういう御解釈でございますか。
○藤山国務大臣 サンフランシスコ条約でもって賠償関係で対象となりますものは、現在のヴェトナム政府だと考えております。
○成田委員 私がお尋ねしているのは、賠償関係に限ってよろしゅうございますが、賠償関係に限っては、ヴェトナムの正統政府というものは、南ヴェトナムである、こういう統一解釈なんですね。従って賠償に関する限りは、南ヴェトナムがヴェトナム全体の政府である、こういうふうに御解釈になっているのですね。
○藤山国務大臣 現在におきまして、賠償関係で交渉しておりますのは、南ヴェトナム政府でありまして、これはサンフランシスコ条約にも調印しておりますので、当然われわれは賠償問題についてはこの政府を対象として交渉中であります。
○成田委員 その内容なんです。南ヴェトナムを相手にして交渉しておられることはかるのですが、その内容なんです。南ヴェトナムを事賠償に関してはヴェトナム全体の正統政府としてお考になっているのか、こう聞いておるのです。
○藤山国務大臣 サンフランシスコ条約を調印いたしましたときは、調印したのは南ヴェトナム政府なんであります。その後いろいろヴェトナム国内の事情が変っております。しかしジュネーヴの巨頭会談におきましても、将来これが統一されることになっておりすまので、日本が外交関係を持っております政府と折衝することは、将来統政府ができましたときにも引き継がれるものと私どもは考えております。
○成田委員 そういうことを私は聞いているんじゃないんです。この統一解釈といたしまして、わが国としては賠償に関する場合、南ヴェトナム政府をもってヴェトナムの正統の政府と認めている。すなわち南ヴェトナムをヴェトナムの正統政府と考えているということは、賠償問題についてはあなた自身すでに南北全体として考えているというのだから、事賠償に関する限り、南ヴェトナムをヴェトナム全体の正統政府としてお認めになって交渉しているのか、こう聞いているのです。イエスかノーか、はっきり言っていただきたい。
○藤山国務大臣 今までお答えしているところでおわかりいただいていると思います。(発言する者多し)
○成田委員 それがわからないから明確にしていただきたい。イエスかノーか、はっきりしていただきたい。
○藤山国務大臣 賠償問題に関してはそう考えております。賠償問題の交渉相手として南ヴェトナム政府を考えております。それが全地域にわたるものと考えております。
○成田委員 今のお話で、事賠償に関する限り、南ヴェトナムを全地域にわたる正統政府としてお考えになっている、こういうことなんですが、そこで問題になるのは、十一月の八日に外務委員会でわが党の穗積委員が――当時藤山さんは病気で、岸総理が出席されまして、この問題について質疑応答が行われておる。穗積委員はこう聞いております。ヴェトナム賠償問題を取り上げまして、「今申しましたように南ヴェトナムの領土、南ヴェトナムの人民を代表する、限定されている政権としてお話しになることはけっこうですけれども、その点は明らかにしておいていただきたい」すなわち賠償につきましても、南ヴェトナムは南ヴェトナムの人民を代表し、南ヴェトナムの領土に限定されている政権として交渉すべきだ、こういう穗積委員の質問に対して、岸総理大臣はどう御答弁になっているか。「穂積君の御意見、十分私は心得ております。」と言っている。ということは、南ヴェトナムは、賠償交渉をやる場合にも、南ヴェトナムの人民を代表し、南ヴェトナムの領土に限って、その代表として認めるのだ、全ヴェトナムを対象にした賠償としては認めない。こういうことをはっきり言っているのです。総理の言うことと外務大臣の答弁と全く食い違っているじゃないですが。どちらがほんとうですか。
○岸国務大臣 ただいま外務大臣が答弁をしたように、御了解いただきたいと思います。過般の私のそこの答弁はやや今の統一解釈と矛盾したように聞えるような今の文句になっておりますけれども、趣旨は、私は、ただいま外務大臣がお答えしたように御了解いただきたいと思います。
○成田委員 今の総理の御答弁では、十一月八日の委員会のやつはややただいまの藤山外務大臣の答弁と食い違っているようだと言うが、ややじゃないのです。全く食い違っておるのです。全く正反対なんです。しかも岸さんの言われたことは正しいのです。それがいつのまにかくずれてきておるのです。ここで岸さんあなたは政治家としての信念を持って、自分の答えることは正しいんだとこういう御答弁でありますと、それこそ棺をおおってさすがに名宰相であったといわれる。この点は今総理が自分の発言が間違いであったと言われるから、これ以上追及しませんが、やはり正しいことはあくまで正しいとして最後まで主張されるのが私は総理としてとるべき態度だと思います。
 それからもう一点お尋ねしますが、これも政府の統一解釈によりますと、一応昨年三月の特別円のフランスとの決済問題ですね。特別円関係は全部済んだとこういう見解らしいのですが、約十六億円払いましたですね。特別円関係の損害――ピアストル貨を発行しまして、そうして役務とが物資を調達した。その損害は全体で大体幾らとしてお考えになりましたか。そして十六億円をお払いになりましたが。
○藤山国務大臣 当時この特別円の関係は十二月八日までに九千万円あったと思います。この九千万円も金約款の条項がいろいろ問題になりますので、金約款の条項を適用するというようなことになると、九十億円くらいな金額になるわけです。それを政治的解決をもちまして、十六億円で解決をいたしました。
○成田委員 九十億円のやつを政治的解決で十六億円としたと、いかにも非常に功績があったように言われるのですが、これは藤山外務大臣も御承知と思うのでございますが、正金銀行でピアストル貨発行に対する見合いとしてドル勘定を設定した、これが終戦当時四十八万ドル残っておった。その前に正金銀行、同じくインドシナ銀行に対する勘定として積み立ててあった三十三トンの金塊は当時占領中のアメリカの手によってフランスに渡されております。この三十三トンの金塊は一体幾らと評価されましたか。
○藤山国務大臣 三十三トンの金塊は当時からイヤマークされておりますので、当然引き渡すものとして引き渡しました。四十八万ドルの金はそのまま引き渡しております。
○成田委員 従って三十三トンの金塊というものは幾らとして評価されましたか。
○高橋政府委員 お答え申し上げます。従来までの仏印との関係の協定によりまして決済をいたしてきたわけでございます。そこでその決済の一つとしてその金塊を向うに引き渡した。従来とも金塊で部分的に決済を継続してやってきたわけでございます。そこで終戦後にはその三十三トンの金塊が残っていた。それを決済として返還した。それ以外に、やはり日本の債務として帳じりの残っていた金額もあるわけでございます。そこでその金塊と、それから帳じりで残っておるのとは別々でございまして、金塊は金塊として決済として返還し、またその他帳じりに残っておる金額もこれを決済したのであります。
○成田委員 そこで評価を聞いておる。金塊三十三トンを幾らとして評価したか。どれだけの債務があって、その債務の見合いとして三十三トンお払いになったか。どれだけの債務があってどれだけの評価で三十三トンというものを渡したか。
○高橋政府委員 当時の評価で一億五千九百万円でございます。
○成田委員 その見合いとしてのピアストル貨の発行高は幾らでありましたか。
○高橋政府委員 お答え申し上げます。その他の金でいろいろ決済した残りとしましてなお当時十三億円ばかり帳じりが残っておったのであります。
○成田委員 それはわかっている。帳じりとして残ったのは四十八万ドルと、特別円として十三億円、今言われたその金額が残っておることはわかつておる。しかし三十三トンの金塊とその残った金額との関係がわからない。この三十三トンは大体幾らと評価して、しかもその評価の時期はいつか、ここですよ。
○藤山国務大臣 三十三トンの金は、金そのものがイヤマークされておりますので、それを渡したわけであります。
○成田委員 だからその三十三トンの見合いのピアストル貨は幾らだったですか、それを聞いておるのですよ。
○正示政府委員 数字のことでございますから、私からお答え申し上げます。金のイヤマーク分により決済いたしました分は一億五千九百万円でございます。ただしこの金三十三トンは当時の時価にいたしますと百三十四億くらいに相当いたします。
○成田委員 一億五千九百万円の見合いに当時時価として百三十四億の金塊を払っておる。これは払い過ぎでなく何ですか。しかもあと四十八万ドルと十三億円ということで十六億円払っておる。全くの二重払いじゃないですか。約一億六千万円くらいのピアストル貨、その見合いに対して当時の時価で百三十四億払っておる。何たることですか。総理どう考えられますか。
○高橋政府委員 お答え申し上げます。今のは二重払いという点ではございませんので、私どもとしましては協定によって随時帳じりを決済しているわけでございます。その決済といたしまして、幾らかの金額が、ある一定の金額が残るわけでございます。そのうちの支払い方法としまして、今のイヤマークした金をその支払いの一部に充てた、こういうことになっているわけでございます。
○江崎委員長 関連して正示理財局長より補足説明いたさせます。
○正示政府委員 私から事務的に事実だけを申し上げます。
 まず戦時中の特別円協定の経過を簡単に申し上げます。これは大体御承知と思いますが、昭和十六年の五月六日に日本国とフランス政府の間に、いわゆる政府間の協定ができました。それから同年の七月四日に旧正金銀行とインドシナ銀行との間に金融協定ができました。これによりまして、御承知のような特別の支払い関係が生じたわけであります。この旧正金銀行の帳簿の上に、終戦時現在におきまして、インドシナ銀行に対しまする特別円勘定が十三億千五百万円と、米ドル勘定で約四十八万ドルの債務が計上されておったのでございます。この点につきまして、いろいろ議論があったわけでございますが、昭和三十二年三月二十七日にこのバランスの処理に関しまして、日本国とフランス国との間で、インドシナ銀行名義で、横浜正金銀行に開設された諸勘定に関する問題の解決に関する議定書が調印せられまして、日本国政府はフランス政府に対しまして十五億円に相当するポンド、及び約四十八万ドルの支払いを行うことにいたしまして、三月二十九日にこの支払いを完了いたしたのであります。これが要するに特別円勘定の決済の概略でございまして、この関係はある意味におきましては、日本国政府のエイジェントとしての旧正金銀行がその閉鎖されました当時におきまする帳簿上の債務、これを日本国が自分の利益のために、正金銀行が持っておった債務でございますから、これをフランス政府に支払う、そのかわりに正金銀行の残余財産からは、日本政府に対しまして、この相当額を弁済いたす、こういうことにいたしたのが特別円勘定であります。先ほど申し上げましたように、イヤマーク金は、御承知のように、これは当時におきましてスキャップの指令によりまして、インドシナ銀行に引渡された分でございまして、この関係は別であります。
○成田委員 これは今の御説明を聞くまでもなく、私は先ほどから申し上げておった終戦当時の正金銀行に残っている勘定というものは四十八万ドル、十三億円、それを昨年の三月に十六億円お払いになって、フランスとの関係はついた。しかしながらその前に三十三トンの金塊がアメリカの手によってフランスに渡されている。その三十三トンの金塊の価格というものは百三十四億円だ。しかもそれは何の見合いかというと、ピアストル貨、いわゆる特別円ですね、この見合いとして払われ出たのでありますが、そのピアストル貨は今のお話では当時の価格にして一億六千万円だ。一億六千万円の債務に対して百三十四億円という金塊を渡して、これで二重払いになりませんか、払い過ぎになっておるとお思いになりませんか、総理の見解を承わりたい。これは算術です、小学生の算術ですよ。
○江崎委員長 条約局長に補足説明いたさせます。
    〔「総理に聞いているんだ」と呼ぶ者あり〕
○江崎委員長 一応関連して説明をいたさせますから、お聞き取り下さい。
    〔「総理に聞いているんだ、総理が答弁しろ」と呼ぶ者あり〕
○江崎委員長 総理大臣の答弁があります。御静粛にお聞き取り願います。
○岸国務大臣 今御質問の数字の点及び戦時中及びそれを支払うに至った経過につきまして、やや明確を欠いておりますので、もう少し事務的に説明いたさせまして、その上で結論を申し上げます。
○江崎委員長 政府委員に補足説明をいたさせます。
    〔「政府委員じゃだめだ」「休憩休憩」と呼ぶ者あり〕
○江崎委員長 このままの姿でしばらくお待ち下さい。
    〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
○江崎委員長 この際十五分間休憩をいたします。
 直ちにこの部屋において理事会を開会いたしますから、理事の方はお残りを願います。
   午前十一時一分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時五十三分開議
○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際官房長官より発言を求められております。これを許します。愛知官房長官。
○愛知政府委員 先ほど来いろいろお尋ねのありました点につきまして、私から総括的に御説明、かつ御答弁申し上げたいと思います。
 まず特別円という問題につきましては、戦時中当時の旧仏領インドシナを占領中の日本軍が、その軍の軍費を調達するため、並びに戦略物資の買付代金を調達いたしまするために、日仏政府間で協定をいたしました。また旧正金銀行とインドシナ銀行との間に、これに基いて金融協定というものを締結いたしました。その日仏政府間の協定は、昭和十六年五月六日に締結せられたものであります。また金融協定は、同年の七月四日に協定せられたものでございます。この両協定によりまして、当時必要でありました軍費、すなわち旧仏領地域における。ピアストル貨の調達並びに物資調達に必要な買付代金としてのピアストル貨を調達して参ったわけでございます。この金の決済につきましては、それぞれこの協定によりまして金で支払うもの、あるいはドルで支払うもの、あるいは特別円で支払うものというふうなこまかい規定があったわけでございますが、その経過の詳細は省略いたします。その結果、終戦の当時にわが方の債務として残りましたものは、米ドル勘定で四十七万九千六百五十一ドル十九セントでございます。また特別円勘定といたしまして残りましたものが、十三億千五百二十七万五千八百十八円三銭、かくのごとく相なっております。
 それから先ほど申し上げましたように、金をもって決済する分につきましては、先ほどお尋ねのございましたように、三十三トンの金で決済をいたしまして、すでにその処理は、一応帳簿上は完了いたしておったわけでございます。この金につきましては、当時輸送が不可能でございましたために、これは輸送が可能になりましたならば、日本からフランス側に輸送する、こういう取りきめになっておりました。従って、その後一九五〇年の一月の九日に、当時御承知のように、日本は占領下でございましたから、かくのごとき金の、本質的には占有の移転だけの問題ではございましたけれども、占領下であった関係もございまして、占領軍の了解のもとにこれを現実に現送をいたした次第でございます。
 それから先ほど申しました米ドル勘定の債務の決済残り、特別円の債務の決済残り、これらはいろいろと勘考いたしまして、あらためてフランス側との間の話し合いによりまして、三十二年の三月二十七日に円貨十五億円とドル貨四十八万ドルをもってこれの決済をいたしたわけでございますから、これによりまして、戦時中、戦争以前からのいわゆる仏印の特別円問題というものは全部片がついた、こういうことに相なるわけでございます。
 それから三十三トンの金の価格がどうであるか、これの見合いのものは何の決済であったかというお尋ねがございましたが、本件につきましては、詳細は、表がもし御必要であれば御配付申し上げたいと思いますが、これは、先ほど申しましたように、戦争前からの協定によりまして、こういう軍のピアストル貨の調達については、金で支払うという条項に基きまして、一九四一年の十一月六日以来、まず第一に軍費に対する金決済の分、これが約十回にわたりまして軍費の調達が行われております。
 それから当時の仏印地域からのゴムの輸入代金についても、金で決済しなければならない分がございましたが、これにつきましても、十回にわたりまして金を――先ほど言いましたように、現実には輸送できなかったので、イヤマークをいたしまして、仏印銀行分としてイヤマークすることによって支払いましたゴムの輸入代金が相当ございます。そのほかに、昭和十七年末に、一般勘定と称するものがございまして、その残高も金で決済しなければならなかったわけであります。これらを合計いたしますると、金の数量にいたしましてちょうど三十三トンに相なるわけでございます。くどいようでございますが、これは戦争前からの協定に基いて、この金をイヤマークしなければこの決済はできなかった。すでに債務は発生しておるし、その債務の弁済も、イヤマークによって処理ができたわけでございますから、これを後に輸送可能になりましてから現送したのである、こういう事情にございますから、自然賠償問題その他とは、これは無関係である、こういうふうな事情になっておりますことを御了承願いたいと思います。
○江崎委員長 質疑を続行いたします。成田知巳君。
○成田委員 先ほどの資料ですね、これはあとでいただきたいと思います。
 それから最後に、賠償と無関係だ、こういう御発言があったのですが、私は、今問題になっておる賠償と関係があるとは言っていない。いわゆる特別円処理との関係を聞いているのです。賠償と無関係ということは、初めから言われなくてもわかっております。そこで、特別円決済との関係でございますが、イヤマークされておったものだ、これはわかります。しかしながら、先ほど理財局長の御答弁にもありましたように、日本軍が役務、あるいは物資を調達したそのピアストル貨というものは、一億六千万円だ、その見合いとして三十三トンの金塊、百三十四億円を支払った、ここにあまりに差がある。しかし金約款と申しますか、そういう約束があったから払う、問題はありますが、やむを得ないといわれれば、一応私はそれは認めていいと思います。しかしながら、それだけの一億六千万円のものに対して百三十四億円を支払ったという事実がある、評価をすれば……。にもかかわらず、終戦当時ありましたドル勘定四十八万ドル、特別円勘定十三億円、そのためになぜ十六億六千万円、すなわち十五億円の円と四十八万ドルのドルを払うか、もうすでに一億六千万円のものに対して、百三十四億円評価して払ったのです。ほんとうは貸し越しなんです。にもかかわらず、さらに正金の帳簿上に残っておりました四十八万ドル、十三億円に対して十六億円という債務を払うが、これが私は二重払いになる、こういうことを申し上げているのです。
○愛知政府委員 お答えいたします。ただいまの御質疑については、私が前に申し上げましたことでカバーされておると思うのでありますが、くどくなるかもしれませんが、もう一度念のためにお答えいたしたいと思います。これは、後ほど資料で差し上げますけれども、この金でイヤマークする、金で決済するという分については、実はネット・ウェート、金の純分度まで詳細な数字が出ておるような当時の約束でございましたから、これは、そのつど金を、その分量だけイヤマークして決済してしまってあったわけです。ただ現実に、その金の占有移転が当時の輸送の状況でできませんでしたために、この現送が終戦後になった、こういうわけでございますから、これは、先ほど理財局長がいろいろ申し上げましたことは言葉が足りなかったのでありまして、この純金の対価になっておる物資なり役務なりというものは、明瞭になっておるわけでございますから、この点をまず御了承願いたいと思います。
 それから先ほど申し上げましたように、この特別円の協定というのは、非常に複雑なものでございまして、米ドル勘定もあれば特別円勘定もある、そうしてそのほかに、金のイヤマーク勘定もあるわけでございますから、これは成田君の御指摘のように、金の分についてはこれで片づいた、なるほどその通りであります。しかし、ドルの分と特別円の分については債務が残っておりますから、実は率直に申しますと、これにも金約款その他むずかしい問題があったようでございますが、これは先ほど申し上げましたように、まあ突っ込みにしてと申しますか、常識的にできるだけこちらの負担を軽くするようにということをいろいろやりました結果、昨年の三月二十七日に、このドルの決済も意外に少く済んだ、こういう状態になっておりますので、御了承願いたいと思います。
○成田委員 これは国民感情として許されないと思うのです。これは、政府ははっきり言ったように、一億六千万円に見合うものとして百三十四億円払った。何といったってこういうことは事実です。しかもそういう払い越しをやっておきながら、さらに十六億円というものを払っておる。こういう点で完全に二重払いだということは、私たちは国民感情として認めるわけにいかない。この問題につきましては、また後ほど御質問申し上げます。
 そこで政府に一つ申し上げたいことは、今度のヴェトナム賠償を、私どもいろいろ進行過程を見ておりますと、どうも賠償というものが最もいい商売だという考え方が日本の業界の一部にあるのではないか。そうして資本輸出という形で投資する、しかもそれは、政府が完全に保証してくれておる、こういう意味で、国民の税金にのっかって、一部の業者は、賠償というものは最もいい商売だ、こういうような動きがあるということは、私たちまことに遺憾にたえない、こういう点につきまして、総理として今後どういう御方針で臨まれるか、最後にこの問題について伺っておきます。
○岸国務大臣 これは、ただ単にヴェトナムだけの問題ではなしに、全賠償の問題を通じての問題だと思います。この賠償協定におきましては、大体資本財と役務とでもってこれを支払うというのを原則にいたしておることは御承知の通りであります。しこうして、これがなるべく賠償を受ける国の経済の基盤が確保され、そこの住民の一般の福祉が増進される、そこの経済また民生にわれわれが寄与できるというような形式のものを選ぶように従来努力をいたしております。従いまして、これが一部の業者や、あるいはいわゆる利権屋と称するようなものの利用するようなことにならないように、従来とも努力を私どもはいたしておって、十分最初に申し上げたような目的に沿い、これに協力できるような日本における役務及び資本財の生産ということを念頭に置いてやっております。従いまして、今御指摘になりましたようなことの起らないようには十分注意はいたしておりますけれども、この上とも十分注意するつもりでございます。
○成田委員 これから新しい問題について質問したいと思うのですが、もう十二時です。生理的な関係もございますし、でき得れば昼飯を食べてからやらしていただきたいと思います。理事の間にお諮り願いたいと思います。
○江崎委員長 さっき理事会で申し合せもいたしましたから、どうぞ一つ理事会の申し合せに御協力願いまして、御発言を続行願いたいと思います。
○成田委員 河野さんにお尋ねしたいと思います。政府は長期経済計画をお立てになりまして、先月の三十一日にその第一次年次計画としての経済計画を発表されたわけでありますが、この経済計画と予算案との関係についてお尋ねしてみたいと思うのですが、これは筋合いから申しまして、当然経済計画というものが先行して、それを予算的に裏づけるのが予算案だ、こう考えております。これは当然だと思います。しかるに今回は、御承知のようにまず予算案を決定され、そしてその予算案の基礎になるべき経済計画というものは、予算案の閣議決定後十日もしまして、三十一日に決定されておる。これじゃ全く順序は逆なんです。この関係を一体河野さんはどうお考えになるか。今までの政府の経済計画というものは、全く絵にかいたもちである。国民はだれも信用なんかしていない。しかしながら、私たちはぜひともこの経済計画というものが予算案の基礎になってもらいたい、こういう考え方を持っておりました。なぜ今までの経済計画が絵にかいたもちであったかということは、企画庁が非常に弱かったということもありましょう。また企画庁長官があまり政治的な手腕がなかった関係もあるでしょう。ところが今度は、陰の総理といわれ、実力総理といわれている河野さんが企画庁長官におなりになったのだから、必ずこの経済計画が中心になって、それを肉づけるものが予算案となって現われてくる、こう大いに期待しておったのですが、今回もまた逆になりまして、予算案が決定し、そのあとから経済計画が決定される、こういう結果になっておるのですが、その間の関係を一つお尋ねしたいと思います。
○河野国務大臣 お答えいたします。政府におきましては、官民一体になりまして、長期経済計画を作成いたしましたことは、御承知の通りであります。この線に沿いまして、昨年来しばしば予算の編成方針等について十分相談をいたしたわけであります。一、二回の閣議決定をいたしまして、予算編成の方針をきめ、その線に沿って予算は編成されましたことは、御承知の通りであります。従いまして、今お話にございますが、政府におきましては、長期経済計画の線に沿い予算を編成し、その初年度としての昭和三十二年度の経済計画を作っておるということでございまして、今お話しのように、予算ができて年次経済計画の大綱を作ったということではありませんで、今申し上げました通り、長期経済計画の一環としてできておる、これは数字等について御承知の通りであります。
○成田委員 長期経済計画に基いて今度の予算案が編成されたかどうか、これについては、後ほどお尋ねしたいと思いますが、少くとも長期経済計画の初年度である昭和三十三年度の経済計画というものが、予算の決定のあとに出たということですね、これは全く順序が逆だと思う。少くとも同時に閣議決定されなければならない。それがされないで、十日もおくれて初年度の経済計画が出たということは、例の予算ぶんどり、最後のどさくさで予算案が基本的に相当性格を変えた、そのつじつまを合せるために約十日の日を要したということです。従って今度の経済計画は、何も経済計画ではなくして、三十三年度予算案に対する一つの説明資料にすぎない。これでは、私は経済計画とは言えないと思うのです。
 そこで今度の予算案が、今長官の言われましたように、長期経済計画の線に沿っているかどうかという問題ですが、この問題について、お尋ねしてみたいと思います。政府は、さきに予算編成の基本方針をきめられました。そのとき「昭和三十三年度の経済目標と経済運営の基本的態度」こういうものを決定されまして、投資及び消費を通じて厳に内需を押えて輸出の振興を期すること、これに主眼を置く、そしていやしくも財政が景気に対して刺激的要因となることを避けつつ、重点施策の推進をはかる、こうありますね。いやしくも財政が景気に対して刺激的要因となっちゃいけない、こういう基本的な態度をおきめになった。ところが今回の予算案は、この点で基本方針と私は矛盾していると思う。それを裏書きするがごとく、先ほど申し上げました三十一日に決定されました経済計画によりますと、三十三年度の財政は、民間経済に過度の刺激をもたらさないような堅実な基調を堅持する云々とある。
 最初の基本方針では、いやしくも刺激的な要因となっちゃいけない、ところが今度決定されました経済計画では、過度の刺激的な要因になっちゃいけない。いやしくもということは、財政が少しでも刺激的な要因になっちゃいけない。ところが過度の刺激を与えちゃいけないということは、ある程度の刺激はいいということなんですね。このことは、今回の予算が経済に刺激的であるということをみずから立証していることだと思う。現に政府の説明を見ましても、三十二年度の揚超は二千四百十億であった、ところが三十三年度は千二百億の散布超になりますと言っている。プラス、マイナスしますと約三千六百億、それだけの差ができる。これは、今度の予算案が経済に対して刺激的になるということをお認めになっていることだと思いますが、その間の見解を承わりたいと思います。
○河野国務大臣 先般本会議でもお話し申し上げました通りに、経済の動きは国民全体と政府と一体になりまして持っていかなければなりません。同時にわれわれといたしまして、なるべく安定のもとに成長して参るということを期待いたしているわけであります。ことさらに萎縮退嬰を希望するのではないのでありまして、これは、実態の動きを見つつ持って参るということでありまして、昨日来どうも政府は信念がない、始終変るじゃないかとおっしゃいますけれども、何分生きものでございますから、われわれの予想が悪く変ることにつきましては厳に戒めて参らなければなりませんけれども、国民各位の御協力によりまして、貿易じり等も予想以上によくなって参っておりすまことは、御承知の通りであります。そういうことからいたしまして、この間の事情を十分勘案しつつ、また民間における資金の動き等につきましても、各方面を十分注意いたしまして、これらの点を十分総合いたしまして、大蔵大臣からお答えもありました通り、大蔵大臣におかれましては、今回予算を編成なされた。われわれといたしましては、その裏におりまして、その動きを十分またさらに注意検討いたしまして、いやしくもそれが長期済計経画を悪く刺激し、さらに不必要にこれに影響を与えることがありますれば、これは厳重に私といたしましても注意いたさなければなりません。けれども民間の実際の動きが、御承知の通り昨年十一月、十二月から今日にかけて、一般に危機説を唱えられましたものの、ややこれが好転しているというような事情等もございますので、多少その間に、今申しましたように、用語等につきましても、われわれはなるべく経済が漸進的によくなっていくことを期待いたしますものでございますから、多少の用語の違い等はございますけれども、本旨とするところは、どこまでも最初にわれわれが考えました通りに、安定、成長ということを念願いたしているわけでございます。
○成田委員 その弾力的な運営をお考えになることは、当然だろうと思いますが、国民の知りたいことは、基本的な構想というものが変ったのじゃないか。基本的な構想では、いやしくも経済に刺激的な要因になってはいけない、こういっておきながら、今度の経済計画では、過度の刺激を与えちゃいけない、これは単なる用語の相違じゃないのです、そこに政府の政策が変ったものではないか。いい悪いは別ですよ、変ったんじゃないか、こういうことを国民が知りたいと思う。その点について私は承わっているのです。
○河野国務大臣 基本方針は絶対に変えておりません。どこまでも明年度の三十一億五千万ドルの輸出をいたしますことにつきましては、物価を安定せしめて、そしてここに到達するようにいたさなければなりませんから、今申しました通りに、幾らかゆるめるとかいうようなことはまだ考える段階ではない、どこまでも基本方針通りに参らなければいかぬとかたく考えておるわけであります。
○成田委員 基本方針については全く変っていないというお話なんですね。そして、今の貿易の三十一億五千ドルの輸出の問題についてお触れになったのですが、基本方針も、この輸出目標については、初年度の経済計画でも、やはりこの三十一億五千万ドルの達成は相当困難だ、しかしながら日本経済の発展のためにはどうしてもやらなければいけない――非常に困難だ。一つの目標として置いていらっしゃる。そういう点は変っていないと思うのですが、いかがでありますか。
○河野国務大臣 これは単に目標ではございませんので、絶対に実現をしていかなければいけない数字である。この点は民間各方面の御理解を強く期待いたしておるのでございまして、政府もこの線に沿いましてあらゆる施策を集中して、ぜひやらなければいかぬと考えておるわけであります。
○成田委員 現に経済計画では、こういうことが書いてありますね。三十三年度の輸出が三十億ドルをこえる水準に達することは相当困難である。――三十億ドルをこえることも相当困難である。従って三十一億五千万ドルというものは、相当困難なわけです。しかしながら、長官の言われるように、ぜひ達成したい、こういう努力はされるということはわかります。しかし相当困難であるということは、もう経済計画で明確に出してあるのです。この三十一億五千万ドルが達成できるかできないかが、三十三年度の日本の財政経済に非常な影響がある。この判断の上に立って三十三年度の予算案も組まれていると思うのです。ところが、この間において、政府部内で三十一億五千万ドルに対する見通しというものについて必ずしも意見は一致していない。河野さんも非常に困難だということをお認めになっておる。しかしぜひ達成したいということなんですね。ところが前尾通産大臣の本会議におけるわが党の水谷議員の質問に対する答弁、きのうの御答弁でも、三十一億五千万ドルは十分達成できる、こう言っておりますね。この三十一億五千万ドルを達成することは非常に困難である、そのために三十三年度の予算がどうあるべきか、これは重大な問題なんですね。ところが経済計画は、非常に困難だがぜひ国民の協力で達成したい、こういっておるのですが、通産大臣は、これはまあ通産省というお立場もあるでしょうが、三十一億五千万ドルは十分達成できるという非常な楽観論を唱えていらっしゃる。この見込みいかんによって財政経済のあり方というものは変ってくると思う。この間三十一億五千万ドルに対する判断というものは非常に相違している。一体どちらがほんとうか、これに対して前尾さんの御答弁なり河野さんの御答弁をお願いしたいと思います。
○河野国務大臣 御承知の通り、この輸出目標につきましては、民間各方面にもいろいろ御意見がございます。たとえば極端な楽観論者としましては、小汀利得氏のように、三十一億五千万ドルの目標を私が説明しましたところが、そういう消極ではいかぬ、もっと数字を大きくしてやらなければいかぬというような御意見もあります。またこれは非常にむずかしいという御意見もあります。しかし要は、これらの情勢を十分判断いたしまして、そしてまた一方先日も申し述べました通り、日本の経済の成長率をある程度見て参らなければならない。就業率もあります。でございますから、今申し上げました通りに、一応可能な数字であって、しかも困難ではあろうが、達成しなければいかぬ数字であるというようなことから、三十一億五千万ドルを目標として、しかもこれはただ架空ではない、単なる理想ではない、どうしてもやらなければいかぬ数字であるということでございまして、その間にはもちろん楽観、悲観はありますが、企画庁は政府部内の意見を統一いたしまして、まとめて実現するべく諸般の施策をここに集中することにいたしておる次第であります。
○成田委員 民間の学者がどうこういっておるということは問題ではないと思います。政府部内での三十一億五千万ドルの達成についての見通し、その自信、これが非常に大切だと思います。ところが閣内で、十分達成できるという楽観論があるし、非常に困難だという慎重論がある。ここに国民は疑惑を持っておるのです。今の河野さんの御答弁では、困難ではあるが達成するのだ、達成したいのだ、こういうことで、前尾さんの御答弁とだいぶ食い違っておるです。前尾さん、一つその点どうお考えになりますか。
○前尾国務大臣 私も決して楽観論ではないのであります。非常に困難ではありますが、ぜひ達成しなければならぬし、また昨年の四月から十二月までの輸出を見ましても、一六%増加であります。われわれの三十一億五千万ドルは一一%の増加でありますので努力すれば十分可能な数字であります。そういう意味で、われわれは十分達成できるというので、河野さんの今のお考えと別に何ら変っておりません。
○成田委員 それはやはり非常なニュアンスの相違があると思うです。困難であるが達成したいということと、努力すれば十分できるというのは非常なニュアンスの相違がある。この三十一億五千万ドルというのが、来年度の日本の財政経済に非常に影響があるんだから、この点はもう少し明確な意思統一をしていただきたい。
 それから次に、貿易の問題についてお尋ねしたいと思いますが、政府自身もお認めのように、アメリカ経済、西欧経済、これが低迷しておる。従って輸出振興については相当な努力をしなければいけない。ところが私たちの考えるところでは、政府の外交の三原則の一つといわれておる自由主義国家群ですね、資本主義国家群、これらの国との提携だけでは日本の輸出貿易の振興という画期的な方策は私はとれないと思う。現にアメリカとの関係を考えましても、毎年五億ドルの入超になっているんですね。前尾通産大臣はやり本会議の答弁でこういうことを言っていらっしゃるのです。中国貿易に関し、極力輸入を切りかえて中国貿易の拡大に努力したいと考えておる、輸入を切りかえると、こう言っていらっしゃるんですね。じゃ具体的にはいかなる品物をどのように切りかえるか、それを具体的に一つ御答弁願いたいと思います。
○前尾国務大臣 御承知のように、中共におきましては、輸入する品物につきまして、ただいまのところは非常に困難な事情があるものが多いのでありますが、われわれの考えておりますのは、第一は大豆であります。ただ大豆は価格の問題がありまして、必ずしも容易じゃないのですが、できるだけ価格がアメリカと匹敵して、またそれ以下に、品質のいいものが安く買えるということでありましたら極力切りかえていきたい、かように考えております。
○成田委員 大豆だけですか、鉄とか石炭はお考えになっていませんか。
○前尾国務大臣 鉄鉱石等につきましても、入手できますならば極力これも入れたい。あらゆるものにつきまして、中共から買い得るものがありましたら、全部の品物について極力入れたい……。
○成田委員 石炭は……。
○前尾国務大臣 石炭についても同様です。(「塩はどうだ」と呼ぶ者あり)塩につきましても同様でありますが、これは全部の品物について検討して、十分努力していきたい、かように考えております。
○成田委員 中国貿易の振興をはかるために根本的には中国との国交回復という問題を解決しなきゃいけないと考えるが、今の政府に急に国交回復を求めても無理だと思います。そこで積み重ね方式、こういうものをぜひおとりになるべきじゃないか。昨日西村委員がこの問題について質問されたのですが、総理としては具体的な御答弁はなかったのです。そこで具体的にお尋ねするのですが、中国との郵便協定ですね。これを政府間で締結される御意思があるかどうか。これは最高方針に関することですから、総理からお聞きしたいと思うのですが、中国との郵便協定、これを政府間協定として御締結になる意思があるかどうか。
○岸国務大臣 中国との間におきましても、この技術的な問題等につきまして直接国交の正常化とか、あるいは承認問題ということと切り離し得るような問題につきましては、できるだけ私はこれを進めていきたい、かように考えております。
○成田委員 中国の承認の問題はまた後ほどお尋ねするといたしまして、今具体的に申し上げました郵便協定というものは、これを締結することが中国の承認にからむから、こういうお考えで、やらないとお考になっておるのか。これは一応関係がない、従って郵便協定は締結していいとお考えになっておるか。それは判断の問題ですから、どうお考えになっているか承わりたい。
○岸国務大臣 郵便協定の問題につきましては、実は政府部内におきましても検討いたしております。私はこういうものについては進んで一つ両国の間に話し合うということが望ましいのではないかと思っております。まだ結論は出しておりません。
○成田委員 郵便協定については積極的に話し合いを進めることはいい、こういう方針なのですが、では次にまたお尋ねします。漁業協定ですが、御承知のように、漁業協定が民間協定の形で締結されまして、いわゆる拿捕問題がなくなって非常に安全操業ができておる。従って、この漁業協定も一歩前進させまして郵便協定と同じように政府間協定に切りかえる時期ではないかと思いますが、これについてはいががですか。
○岸国務大臣 貿易協定やあるいは漁業協定と、民間のレベルでやっておりますことについて相当な効果をあげてうまくいっているものは、なおこの形式で進んでいくことがいいのじゃないかと思います。しかし、通商協定の問題につきましても貿易協定の問題につきましても、いわゆる通商代表部の問題にからんでの問題があります。政府において考えなければならない、処置しなければならない問題があります。こういう問題についても、私はできるだけ民間のレベルの協定が成り立つために必要な政府的な措置はとり得るように研究を進めております。
○成田委員 もう一つですが、ちょうど日航の柳田社長がアメリカへ行かれましたときに、羽田から日航機を北京の飛行場へ乗り入れる、これと中国の飛行機を羽田に乗り入れる、こういう計画を立てておるんだということを発表されたのですが、こういう航空協定を御締結になる意思があるかどうか。
○岸国務大臣 航空協定の問題につきましては、実は私はまだ具体的に考えておりません。柳田君がどういうことを言われたか知りませんが、まだ考えておりません。
○成田委員 そこで、中国承認問題についてお尋ねしたいと思うのですが、中国の国連加盟の問題について党の鈴木委員長が質問いたしましたのに対して、総理は、前提条件として国際情勢をつかんでこれを緩和させることが必要だ、こう言っていらっしゃる。ということは、総理は、中国の国連加盟が国際平和に害がある、こういうように考えていらっしゃるのかどうか。むしろ、実力のない国府が国連の安保委員会の常任理事である、根本的には国連の一員であるというところに、世界平和の問題があるのじゃないかと思うのですが、これに対する総理の御見解を承わりたい。
○岸国務大臣 中国人民政府の国連加入問題につきましては、私がこの前本会議において鈴木委員長の御質問にお答え申し上げましたように、今日なおいわゆるこの中共政府なるものがほんとうに平和愛好の政府として国際的に認められておるがどうかという点が非常な支障になっておる点だと思います。御承知の通り、朝鮮問題に関連しての国連の決議というものがそのままになっておりまして、まだ国際的に言っていわゆる平和愛好国としての、これを政権としてのなにを国際的に認めておらないというのが現状だと思うのです。こういう状態のもとにおいて直ちに加盟問題を取り上げても、なかなかできないだろう。そういうことを一つ解消し、緩和し、そういう基礎固めをする必要があるというのが私の考え方であります。
○成田委員 中国がほんとうの平和愛好国家であるかどうかということについて疑問を持っていらっしゃる。現に国連で非難決議をしておるではないか、こういうお話ですが、これは、ちょうど去年、中国を国連に加盟さすべきであるかどうかということが議題になったときに、日本代表はそういうものを議題に取り上げるべきではないというのでアメリカ側に追従した投票をやっていらっしゃるのですが、そのときにアメリカのロッジ代表が言っておる。ちょうど岸さんと同じことを言っていらっしゃる。偶然の一致か何か知りませんが、ロッジ氏はこう言っております。朝鮮戦争の際、国連は中共に朝鮮侵略国の刻印を押した、まだこれを取り消していない、米国が中共の加盟に反対するのは中国の社会組織を認めないからではない、もしこのまますなわち非難決議を取り消さないこのままで加盟を認めれば、国連の名誉は傷つけられる、こう演説しておる。中国が果して侵略国であったかどうか、これは非常な議論があると思いますが、一応そういう考え方に立っても、侵略国との決議を取り消していないから加盟を認めるわけにはいかないという全くの形式論である。岸さんの御意見もそうなんです。全くの形式論なんです。そこで、岸さんにお尋ねしたいのですが、この侵略国との刻印を取り消すために国連で日本が努力する意志があるかどうか。そういう御努力をなさるのが当然ではないか。これについてはどういうようにお考えになりますか。
○岸国務大臣 私は別にその努力を拒否するものではございません。しかし、問題はやはり中共政府の国際的信用といいますか、国際的の――われわれが幾らそういう努力をしましても、要は中共政府そのものの本質なりなにに対する各国の認識の問題であって、その認識を変えるに必要なような中国政府の態度なりあるいは行動が必要であろう、こう思います。しかし、私は、日本自身が努力を拒否するという意味ではございません。
○成田委員 非難決議を取り消すことに努力するにやぶさかでないと言われたのですね。そうしますと、昨年の九月二十四日の国連総会で、中共加盟問題は本会期中には一切たな上げする、こういう運営委員会の決定があった。そのとき日本政府はそれに賛成しておる。従って、もしそれだけの御趣旨があるならば、中共の加盟問題を取り上げるかどうかという運営委員会の決議については、次の運営委員会においては当然賛成して、そこで問題を取り上げるということが当然だと思う。従って、今度は反対なさらない、こういうように解釈してよろしゅうございますね。
○岸国務大臣 今申し上げましたように、私、その努力を拒否するという意思はないということを申し上げたつもりであります。特に今積極的に努力することをここでお約束する意思はございません。
○成田委員 そういたしますと、岸さんは今でも中国は侵略国であるとお考えになっておるのですか。侵略の危険があるとお考えになっていらっしゃるのですか。
○岸国務大臣 私自身は、御承知の通り、世界の恒久的平和を考え、また特に隣邦、歴史的にも深い中国との関係がこういうようになっておることは望ましくないとかねて思っております。従って、私自身がここで中共政府の性格がどうだということを言うことは、私は適当でないと思います。というのは、私は御承知の通り国連中心主義ということを申しております。そうして、国連において、国連の憲章の精神を尊重して、各国との協調のもとに世界の平和をなにする、こういう立場に立っておりますから、遺憾ながら国連の空気が今申しますような決議をしっぱなしになっておるという現状においてこれを見ますと、この点についてはお答えすることは適当でない、こう思います。
○成田委員 私は国連の決議がどうこうと言っておるのではない。その問題については一応話を別に発展させておるのですから、私がお聞きしておるのは、中華人民共和国を今でも侵略の危険がある国だとお考えになっているのかどうか。今の御答弁では、中国との長い間の関係がある、従って今中国の性格を言いたくないということは、侵略国と考えているからそれを言っては中国に申しわけないというので言われないのか、今中国は侵略の危険はない、しかし危険はないと言うとアメリカに対して申しわけないから言わない、いわゆる両岸政策なんですか、どちらなのですか。
○岸国務大臣 私はさっき申し上げたような趣旨において御了解願いたいと思いますが、私はすべての国と将来究極においては仲よくしていきたいということの念願を持っております。しかも、そういう意味において、隣邦のことに対してのそういう本質的の問題に触れることは、私ここで言うことは適当でないと思います。
○成田委員 どうも、隣邦の問題の本質に触れることを言えないということは、隣邦に対して言うと申しわけない、こういうことになると思うのです。そうしますと、端的にお聞きしたいのですが、侵略国の性格があるとお考えになっているのかどうか、これだけ答弁されたい。中国を侵略の危険がありと見ているのかどうか、そこをはっきり言っていただきたい。これはあとの問題に関連しますから。
○岸国務大臣 先ほども申し上げた通りに、その問題について私が申し上げることは適当でないと思います。
○成田委員 適当でないんじゃないのです。岸さんがアメリカに気がねしてよう言わない。それは、岸さんも相当な政治家なのだから、今中国が侵略国だとか侵略の危険があるとお考えになっていないと思う。しかしながらアメリカとの関係でそれをよう言わないだけなのです。やはり、日本の総理大臣なら、もう少し、それこそアジアの一員として中国というものをいかに評価するか、明確に天下に表明すべきなのです。これが言えないところに岸さんの非常な弱点があると思うのです。どうしても言わないというのだから、馬を水のふちまで持っていけますけれども、飲まないというのを無理に飲ますわけにいきませんから、それ以上は問いません。
 次に、ソビエト・ロシヤはどうですか。日本に対して侵略の危険がありと見ておりますか。
○岸国務大臣 すべてわれわれが国際的の一員として考えているときに、どこの国に対しましても、私は責任がある政府の首脳部として、どこどこの危険があるというようなことを申し述べるということは適当でないと思います。
○成田委員 私たちには何を言っているかわからないのですが、そういう岸さんのお考え方のもとで、今どんどん再軍備が進んでいるわけなのです。今度の予算を見ましても、防衛関係の費用と軍人恩給が独走しているのです。これが今度の予算で国民から非常に評判の悪いところがあるのですが、この問題について一つ総理にお尋ねしたいのですが、まず最初は、在日米軍の核兵器持ち込みの問題についてお尋ねしたい。(発言する者あり)ちょっと静かにして下さい。総理は、繰り返し、在日米軍の核兵器持ち込みと自衛隊の核装備は絶対に行わない、こう言っていらっしゃる。しかしながら、軍人恩給で一部の圧力団体に屈服し、党内の一部の幹部の圧力に屈服して、みずから設定された恩給調査会の結論さえ無視したような決定をなさる総理ですから、どうも圧力に弱いということを国民は感じておる。そこで、もしアメリカという強い圧力がかかってきた場合、いくら総理が、アメリカの核兵器の持ち込みは絶対反対するのだ、こう言っても、国民は非常に不安なのです。そこで総理にお尋ねしたいのですが、例の日米共同声明で、両者の合意すなわち日本の同意なくして核兵器の持ち込みはできぬ、このことは事実上安保条約の上にあるものとして安保条約が改訂されたと同じことだ、こう総理は何回も言われた。この考え方は今でもお変りになりませんか。
○岸国務大臣 ちょっと今の御質問の御趣旨がよくわかりませんが、私の考えでは――御質問の趣旨と違っておりましたらまたあらためて御質問願います。日米共同宣言によって、安保条約から生ずるところのあらゆる問題を協議するために、いわゆる委員会を作った。ここでもって重要な問題はみな論議する、核兵器の持ち込みというような問題もここで必ず話されるということになるから、実質上、これを持ち込むということを一方的にすることはないということを私は申し上げたつもりであります。もちろん共同宣言で条約というものを実質的に変更するとか何とかいうことはできないことは言うまでもない。実際の運用において、一方的に持ち込むということはないという確信を申し上げたわけであります。
○成田委員 そうしますと、日米共同声明で事実上安保条約は改訂された、こういうようにお考えになっておるわけですね。
○岸国務大臣 その点、今でも、実質的に改訂されたとか――改訂といいますと、これは今私が申し上げたように、一方は協定、条約であり、一方は共同宣言である。共同宣言をもって協定や条約を変更することはできないのですから、そういうことは改訂されたということを私申し上げることはちょっと差し控えたい。ただし、実際の運用として、一方的に持ち込むという事態はなくなっておるということは、確信を持って申し上げることができると思います。
○成田委員 次に自衛隊の核武装についてお尋ねしたいのですが、首相は臨時国会でICBM、人工衛星が実現した際、新装備は今のところは全然考えてない――これは河野委員の質問だったと思いますが、ICBM、人工衛星が実現した今日でも新装備は考えてない、こうおっしゃったのです。ところがその直後サイド・ワインダーが持ち込まれた。このサイド・ワインダーというものは新装備とお考えになっていないのですか。
○岸国務大臣 私は常に自衛隊の装備を進歩した質的改善によって装備するということを申しております。新兵器で実際やらぬとか、新装備しないとかいうことを言ったつもりはありませんが、私の考えでは、いわゆる核兵器でもって武装するということは絶対にしないということは、はっきり申し上げておりますし、今もそのつもりでおります。しかし、全然科学的の兵器なり進歩したものは用いないということを申しておるのではございません。
○成田委員 ということは、サイド・ワインダーは、核弾頭をつけないから、従ってそういう意味で核兵器を持ち込むんじゃない、こういう意味だろうと思う。しかしながら、ことわざに、ぬれぬ先こそ露をもいとえということわざがあるのです。一度ぬれてしまったら、今度は雨も平気になってしまうのです。それで、易経に、霜を踏んで堅氷至る、こういう言葉があるのですが、どうも国民は、政府は誘導弾を買って核兵器に至るという心配をしておるのです。
 現に総理はこういうことを言っていらっしゃる。施政方針演説に対するわが党の代表質問に答えてこういうことを言っていらっしゃる。しばしば言明したごとく自衛隊の核武装は絶対にいたさない、しかし通常兵器による武装は国を守るため必要である、こう言って、時代おくれの自衛隊の増強の予算に対する弁解をしていらっしゃる。ところが、ここでお尋ねしたいのですが、通常兵器による武装は必要だ、こう認めていらっしゃるのですね。御承知のごとく、兵器というものは日進月歩なんです。軍事科学というものはものすごい勢いで進歩しておる。従って、今日の核兵器も近い将来においてこれは通常兵器になるということは当然予想されるのです。そこで総理にお尋ねしたいのですが、軍事科学の進歩で核兵器が通常兵器だ――現にもう小型核兵器は通常兵器とさえ言っておるのです。科学の進歩で核兵器が通常兵器になったときでも、総理は絶対にそういう核兵器をお持ち込みにならない、自衛隊が武装されない、通常兵器になったときでも核兵器は使わない、こういうように考えていいかどうか。
○岸国務大臣 いろいろな仮定の問題は別といたしまして、私自身は実は、原子力というものが兵器に用いられるということは、人間の福祉からいい、交明からいい、これは何とかして禁止しなければいかないということで、原水爆の問題に対しても強く述べておるのであります。こういう意味におきまして、私はいわゆる核兵器というものが将来どういうように発達し、どういうふうになるかということはわかりませんけれども、少くとも今言われているような核兵器というものについては、私は先般来申し上げておる通り反対をいたしておる、というのは、今申した根本において、この原子力というものが、そういう破壊兵器に用いらるべきものではなくして、これは人類の福祉と人類の幸福のために用いられなければならぬということで、原水爆の実験禁止に対してもああいうふうに強く提案をしている。これはただ実験だけ禁止すればいいということではなくして、これが兵器に用いられるのを禁止したいという、これは私たちだけではなくて、おそらく国民もそういう考えを持っていると思いますが、そういう考えを申し上げておるわけであります。
○成田委員 総理はそつのない答弁をされるということで有名なんですが、そつがないということは、質問の重点をはずしてお答えをされる。私がお尋ねしているのは、通常装備はやると言っていらっしゃる。それで、現在の軍事科学の進歩から言えば、総理は仮定と言われたが、仮定ではない。核兵器が近い将来において通常兵器になることはあり得るのです。この核兵器が通常兵器になったときにおいても――現在を言っておるのではない。総理の考えとしては、核兵器が通常兵器になっても日本は絶対に核兵器による武装はしないのかどうか、それを聞いているのです。それを明確に御答弁を願いたい。
○岸国務大臣 先ほど私がお答えを申し上げた気持は、決してあなたの質問の要点をはずしているつもりじゃありません。私自身は、もう一段底にある、一体原子力という、核爆発という新しくわれわれが発見したところのエネルギーというものを何に使うべきかという見地から出発していることでありまして、従って私は従来申し上げている通りであります。
○成田委員 総理は、たとえば中共の承認問題になりますと現実ばかりを問題にされる。理想のことは言われない。この核兵器の問題になりますと、原子力というものは人類の幸福のために使わるべきだという理想ばかり言っていらっしゃる。そこにあなたの答弁の魔術があるのです。そこで、私が聞いているのは、そんな理想を聞いているのではない。やはり現実の問題を聞いている。核兵器が通常兵器に近い将来になるかもわからない。なったときに、通常兵器であるからといってこれを御使用になるのかどうか、やはり核兵器だから絶対に使わないのだ、その総理の見解を聞いているのですから、明確にお答えを願いたい。
○岸国務大臣 お話の通り、兵器の発達というものは日進月歩であり、いろいろな新しいなにが発見されますから、どういう状況になるかわかりませんが、私は一々今からそういう仮定の問題をどうしてどうするということは申し上げません。一方において理想を強く掲げると同時に、現実の問題としては核兵器で装備しないということを申し上げていることできわめて明瞭である。
○成田委員 明瞭じゃない。絶対明瞭じゃない。核兵器が通常兵器になっても使うか使わないかということを聞いている。核兵器が通常兵器になった段階でも使うか使わないか、それを国民は心配している。だんだんなしくずしで軍備をやられている、そういうふうに国民は政府の言っておることに対して信用を置いてない。そこで、今あなたは、核兵器を使わないと言われますが、通常兵器を使うと言っている。核兵器が通常兵器になったときでも使わないのかどうか。それは明快なことだから言ったらいいと思う。イエスかどうか。
○江崎委員長 これは成田さんどうでしょう。多少見解を異にするような基本的な問題もあるようですから、一つ質問を御調整願えませんか。
○成田委員 いいか悪いかの価値判断の問題、そんなことを聞いてない。そういう事実があったとき、核兵器が通常兵器になったとき、使うのかどうか、その事実を聞いている。見解の相違ではない。
○江崎委員長 そういう仮定の場面には具体的にお答えができないという答弁ですから、これは一つ御了承願えませんか。
    〔発言する者多し〕
○江崎委員長 総理が発言を求めております。
○岸国務大臣 私きわめて明瞭にお答えしておりますように、核兵器はこれで装備する意思はないということを申し上げているのですから、さように御了承いただけば、きわめて明瞭だと思います。
○成田委員 あと半分がいけないのです。核兵器が通常兵器になったときでも使わない、それを明瞭にお答え願いたい。
○江崎委員長 成田さん、今お話しになりましたそのあと半分は、仮定の場面だからお答えができない、こう言っておられるのですから、一つ御調整願いたいと思いますが……。
○成田委員 いや、仮定ではない。
    〔「越権だ、委員長、そんなことを註釈するのは」「核兵器が通常兵器とはどんなものか、それを言え、その方が先だ」と呼び、その他発言する者あり〕
○江崎委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。
○成田委員 核兵器が通常兵器というのは、たとえば防衛のために世界各国が核兵器を持つのが普通だ、こういう段階になったときは、これが一つの通常兵器だと思うのです。そういう場合には日本はお持ちになるかどうか、それを聞いているんです。
○江崎委員長 この問題は総理から答弁がないそうですから……。
○成田委員 これは私はしつこく聞きますよ。核兵器が通常兵器になったという、そういう前提に立って将来核兵器を持ち込むおそれがある。核兵器が通常兵器でございます、そういう仮定のもとに、核兵器が通常兵器になりましたから核武装をやってもいいのだ、こういうところに持ち込まれることを国民は心配しているのです。だから聞いているのです。
○江崎委員長 そこで、そういう仮定のことには答えられないということのやりとりになっているようですから、これを一つ御調整願いたいと思いますが、一つお話し合い願えませんか。
○岸国務大臣 しばしばお答え申し上げますように、私は現実の問題としては核兵器で武装はしないということを申し上げておる。いろいろな将来の問題を仮定してのお答えをすることは、この際差し控えさしていただきたいと思います。
○成田委員 それで大体岸さんが核兵器で武装しないという趣旨はどこにあるかということがはっきりしている。国民はこれを非常に不安に考えているのです。
 そこで、次に津島防衛庁長官にお尋ねしたいと思うのですが、昨年の六月だったと思いますが、国防会議で防衛計画をおきめになりましたですね。この防衛計画では、大体防衛計画をお立てになるときは、当然仮想敵国なり、どういう侵略があるか、こういうことを前提にして防衛計画をお立てになっておると思うのですが、一体この防衛計画の基本的な目標はどこに置いていらっしゃるか。どういう国が侵略してきて、どういう規模の侵略があった場合に、どれだけ持ちこたえられるのだ。多分日米共同防衛の建前からいって、何月持ちこたえるとか、こういうような前提があると思う。その防衛計画の大要、いかなる侵略がいかなる方面からあって、いかにして持ちこたえるか、こういう防衛計画の大綱について、一つお示し願いたい。
○津島国務大臣 お答えいたします。昨年六月の防衛整備目標では、これは国防の基本方針に基いて、今後三十五年ないし三十七年度にわたる防衛の整備目標を大体きめたのでございます。これはもう御承知のように、その目標においては陸上は何万人、また海上は何万人、あるいは飛行機数においては千三百機とか、こういうようにきめたのでございます。しかしながら、この策定の基礎になったのは、いわゆる先ほどのお話にもありましたが、侵略国はどこであるか、仮想敵国はどこであるかということの想定ではございません。大体わが国が国力、国情に応じて、最少限度必要とする防衛の体制の根幹をここに作っていこう、こういう考えでございまして、今仰せになったような、どういう場合にどうするかというようなことは、もちろんその事態に応じて最善を尽し得るために、必要限度の整備目標を立てよう、こういうのできまっておるわけでございます。
○成田委員 仮想敵国だとか、攻撃の規模なんかを考えないでおきめになった。しかし最少限度必要だ。最少限度というのは、それでは何を前提にした最小限度なんです。最小限度と言われるからには、これだけの攻撃がある、こういうことがあり得るかもわからない、これに対して最小限度というのです。目標のない最小限度なんてあり得ない。
○津島国務大臣 全体の国防の基本方針が、わが国においては必要限度の防衛の整備をやろう、と同時に国連の安全保障体制、また日米安保条約に基く安全保障によってこれを守っていこう、こういう考え方になっているわけでございます。それを全体を考慮して、わが国において整備すべき目標はこの程度で適当だろう、こういうことに相なっているわけでございます。
○成田委員 何のために国民の血税を使っておやりになっているのかわかりはしない。やはり国の安全を守るということになれば、安全を害するものがあるはずです。いかなる侵略があるか、これを想定して軍備をやるということは、これは常識です。その想定が全然ないということになりましたら、国民の税金をむだ使いしているということになるのですよ。
 そこで、これは毎年問題になることですが、津島さんにお尋ねしたいのです。防衛庁費の繰越費です。毎年二百億、三百億繰り越されているのですが、三十二年度から三十三年度に繰り越される大体の予定は幾らでございますか。
○津島国務大臣 毎年度の繰越額は相当多額に上って、この消化については非常に注意をいたしまして、三十二年度はまだ決算――年度末がまだ来ておりませんので、明確なことは申し上げられません。しかしながら今日までの予算消化の実況から申しますると、ほんとうの未済繰り越しとして三十三年度に持ち越すのは、おそらく三十億程度じゃないかと思っております。御承知のように三十二年度への繰越金は二百三十六億でございました。これは決算でわかっております。今年度はこれらの点を考慮いたしまして予算の消化、適切なる運用をはかって、おそらくほんとうの未済繰り越しというものは三十億程度じゃなかろうか、もうすでに契約済みのもので支払いをするものはそれ以外にあると思います。
○成田委員 なかなか気前よくお使いになったものですな。
 そこで、もう時間がありませんので、たとえば中小企業の問題、農業、社会保障、労働、失業対策、こういう問題についてお尋ねする予定でございましたが、時間の関係でこれは同僚議員に譲りまして、最後に、総理に解散問題について一言お尋ねしたいと思います。
 岸内閣は石橋内閣を承継したときに当然解散すべきであった。これはもう常識なんです。ところが第一歩を誤まった者は最後まで道を踏みはずす、こういわれておりますが、これがまさに岸さんに的中をしていると思う。一月解散の世論が高まってきたにもかかわらず、一月解散をやるのかやらないのか、まことに両岸の柳にゆれるようなあいまいな態度をとられて、結局は財界の圧力なり党内の事情によって一月解散も延ばされてしまった。今になって自民党ではこう言っていらっしゃる。解散の時期は九月解散が常識だと言っていらっしゃる。しかしながらそれは自民党の常識であって、私は国民の常識ではないと思う。国民は一日も早い解散を要求している。岸さんは解散権は政府にある、総理にあると言っていらっしゃる。確かに解散権は総理にあるでしょう。しかしながらその解散権が総理にあるということは、決して解散権が岸総理の私物だということではない。解散権というのは公器なんですね。従って、その解散権を行使する時期をいつにするかということは、合理的な根拠、世論を考えなければいかぬと思います。そこで昨日の岸さんの御答弁ではこういうことを言っておられる。解散の時期を明らかにすることは適当ではない、こう言っていらっしゃる。その適当ではないというのは、岸さん自身は解散の時期はいつが適当かということはわかっている、しかし発表すると、与党の諸君が浮き足立って予算審議ができないから発表しないというのか、それとも岸さん自身まだおわかりにならないのか、私は総理大臣である以上、しかももう年内解散は必至なんです。この近い将来を判断して普通常識のある人ならば、現時点においてどの時期が一番適当であるかということは大よそ見当がついていると思うが、そのいずれであるか承わりたいと思う。
○岸国務大臣 解散の問題につきましては、私もしばしば私の所信を明らかにいたしましたように、何といってもそれは今お話の通り、民主政治の本義からいきまして、世論の動向を十分に重視しなければならぬということは言うを待ちません。しこうして来年の二月にわれわれの任期が満了するのでありますから、諸般の事情を考慮してみると、本年中に行なって、そうして次の通常国会は新しい議員によって新しい内閣、政権を作り、新しい予算を審議することが、常識的に最も妥当であると考えられるだろうと思います。そういう意味において考えてみると、ことしの秋ということが一応考えられるのが常識じゃないかというのが一般にいわれておる考えであろう。そうして、果して世論が、国民がほんとうに強く早期の解散を願っておるかどうか、望んでおるかどうかという点につきましては、この問題は非常に重大な問題でありますから、十分に私としては各般のことを考慮し、各方面の意向というようなものを十分に注視して、そうしてこれは一月に解散すべきものではなくて、少くとも予算や重要法案を提案してそれを成立せしめることを、少くとも私は良識ある大多数の人が考えているという結論に達しましたがゆえに、一月に解散しないということを申しましたわけであります。しかして今日のわれわれに課せられているところの使命は、ここに法律、予算、条約等重要な国政、国運に関することを御審議願っておりますが、これが成立を期すということで、私の全身全力をあげてこれに当っているわけであります。今その時期というものを考えておらないというのが私の心境であります。
○成田委員 もし総理が一部財界の圧力に屈したり、党内事情のために解散の合理的な時期というものの判断を誤まったら、もう岸内閣はジリ貧、野たれ死にになる。そこでぜひとも電光石火といわれておりますが、合理的時期には思い切った解散をやっていただきたい。これを特に申しまして、私の質問を終えます。(拍手)
○江崎委員長 岡田春夫君より関連質疑の申し出があります。この際これを許します。ただし理事会の申し合せもあり、五分程度にお願いいたしたいと思います。岡田春夫君。
○岡田委員 関連質問ですから簡単に伺いますが、先ほどの岸総理並びに愛知官房長官のヴェトナム賠償問題に対する御答弁は、われわれ社会党並びに国民は、あのような御答弁では納得できないのであります。その点で、あとでまたいろいろ御質問いたしますけれども、特に重要な点だけ関連して一点だけ伺っておきたいと思います。
 まず第一は、総理大臣に特に念を押しておきたいのでありますが、インドシナ――昔の仏領インドシナですね、それの特別円の処理問題については、先ほどの愛知官房長官の答弁によると、これは賠償に関係がない、こういう御答弁になっておりますが、この点は間違いございませんか。
○岸国務大臣 その通りでございます。間違いございません。
○岡田委員 賠償に関係がないとするならば、この際総理大臣に伺いたいんですが、今回の国会にすでに配付になりました昭和三十一年度決算報告書の賠償関係費の中で、仏印特別円の処理をいたしているのはどういう理由でありますか。
○江崎委員長 政府委員、林法制局長官。
○岡田委員 だめだめ、大蔵大臣。
○江崎委員長 ちょっと岡田さん、事務的に……。
    〔「だめだめ」「大蔵大臣」だと呼び、その他発言する者多し〕
○岡田委員 これは特に委員長に注意を喚起いたしますが、所管大臣の事務手続の問題などについて、法制局長官などが法解釈でごまかそうという点は、これはやめていただきたい。これははっきりしておいてもらわなければならない。みだりに牽強付会のことをもって弁解するようなことは困ります。大蔵大臣から御答弁願います。
○江崎委員長 岡田さん、政府側の法的解釈は法制局長官から御答弁申し上げることが適当だと思います。どうぞ御了承願います。
○岡田委員 いや、大蔵大臣に願います。
    〔「大蔵大臣大蔵大臣」「大蔵大臣が出ているじゃないか」と呼び、その他の発言する者多し〕
○江崎委員長 ちょっとお待ち下さい。政府側の法的解釈を申し上げのですから御了承願います。林法制局長官。
○林(修)政府委員 委員長の御指名によりまして……。
○岡田委員 だめですよ委員長。法解釈の問題はあとにして下さい。なぜ入っているかという事実を聞いているんです。
○江崎委員長 ちょっと岡田君、お聞き下さい。法的解釈を法制局長官に答弁させて、あと政治的な解釈は大蔵大臣からいたさせます。
○林(修)政府委員 これは現在は賠償等特殊債務処理特別会計がやっておるわけでございます。この特別会計ができる前には賠償及び特殊債務処理費として計上されておりました。今の仏印関係のものは特殊債務処理、つまり戦前、戦時中等の債務の処理、こういう賠償とは別な特殊債務の処理も、この経費でやっているわけであります。現在その特別会計もできております。賠償のみの処理ではございません。
○岡田委員 私は関連質問ですから長いことは言いませんけれども、それじゃその前提に立って伺って参りましょう。この三十一年度の決算が今日出ておりますけれども、三十一年度の予算書を提出したときには、インドシナの特別円の問題については何ら触れられておらないのであります。それはなぜかというと、その当時はまだフランスとの間に交渉が始まっておらなかったからです。従って当然この予算案の中にはインドシナの特別円の処理の費目はないのであります。ないとするならば、突如決算報告の中にインドシナの特別円の処理が出てきたということがいかにも問題になる。それは、なぜかというと、財政法の十五条によると、新たなる国の債務が起った場合においては、当然予算においてその補正を行うことが必要であることになっている。これは政府の義務である。しかもそれのみではない。賠償等特殊債務処理特別会計法の第七条によると「内閣は、毎会計年度、この会計の予算を作成し、一般会計の予算とともに、国会に提出しなければならない。」と書いてある。とするならば、一般会計の提出されたときに、このインドシナの特別円の処理について、予算編成の中に何らその処理の規定がないにもかかわらず、そのあとにおいてその支出をしなければならないという義務を生じたならば、当然この財政法並びにただいま申し上げた特別会計法の規定に基いて、この点の国会の承認が必要である。この承認を経ないで、突如として決算にこれを出したということは、明らかに財政法並びに会計法の違反であると思うがどうですか。
○林(修)政府委員 詳しい事実の内容は大蔵省の政府委員からお答えいたしますけれども、賠償等特殊債務処理特別会計の所管事項の範囲内の問題でございます。しかもこの対フランスの、インドシナの特別円の問題は、既定の債務の償還でございます。新しく債務を負担したわけではございません。従いまして、既存の債務を約束ができたことによっていつ払うかという問題であります。これはこの特別会計の払い得る経費の範囲内に入っておるわけであります。その技術的な点は大蔵省からお答えすると思いますが、この科目設置をして払ったもの、かように考えております。
○岡田委員 範囲外の問題と先ほど御答弁になったが、範囲外の問題であるとするならば、この特別会計の費目の中に入っているのがおかしいじゃないか。
○林(修)政府委員 私は範囲内と申し上げました。
    〔「あわてるな」と呼び、その他発言する者多し〕
○江崎委員長 ちょっとお待ち下さい。
○岡田委員 だから私はあなたのような法律解釈を八百代言式にやる人の話を聞きたいのじゃないのだ。(「八百代言か」と呼び、その他発言する者多し)三百以上だから八百だと言っているのだよ。だから大蔵省の事務当局としてこの点はどうなっておるのか、はっきり言ってもらいたい。
○石原政府委員 お答え申し上げます。法律的な点につきましては法制局長官からお答えがございましたので、私の方は事務的にどういうような処理をいたしておるかということを申し上げます。賠償等特殊債務の処理の特別会計がございまして、これは項が賠償等特殊債務処理費。法制局長官から先ほどお答えいただきましたように、これは賠償以外の特殊債務が入っておるものでありますから、名前はそういう名前であります。この項のうちにおきまして仏印特別円処理費という目を第八目に立てまして、その金が十六億七千二百六十七万五千円ということに相なっております。従いましてこの項の中に目を立てました仏印特別円処理費でこの金を払っております。賠償の債務につきましては実行上いろいろな問題が出て参るのでありますから、従って三十一年度におきましてはこういう幾つかの目を立てて、そのおのおのの目においておのおのの対象に対する処理をいたしておるわけであります。従いまして十六億七千二百万円は支出済み決算額として決算をせられたわけであります。
○岡田委員 問題はこの問題だけだと思っているからそういうことを言っている。このあとの問題を一つ聞いていただきたいのですが、この特別円の処理の問題、これは特に外務大臣、それから岸さんはその当時外務大臣であったはずですからはっきりしていただきたいのだが、今の財政問題については私はまだ意見がありますが、これはあとで別な機会にやります。しかしこのヴェトナムの特別円の処理は国会の承認をとってないじゃありませんか。タイ国の特別円の処理は国会の承認をとっておりますよ。ヴェトナムに関しては国会の承認をとっておらない。しかもどうです、去年の三月二十七日に調印をして、急いで三月三十一日に払っている。こういう国の債務に関係するわれわれの予算を使うようなものを、国会の承認をとらないというのは明らかに憲法違反じゃありませんか。(「そうだ、そうだ」と呼び、その他発言する者あり)憲法違反であります。
○江崎委員長 林法制局長官。
○岡田委員 いや、これは法制局長官の答弁など求めてない。(「だめだ、だめだ」と呼び、その他発言する者多し)あなたなぜあわてているんだね。まだ私が質問しているのだ。
    〔「そうだ」「あわてるな」と呼び、その他発言する者多し〕
○江崎委員長 岡田君のお時間がないから、政府側もあわてておるので、どうぞ一つ御了承願います。
○岡田委員 私が質問している間に答弁なんかしなくていい、あわてなさんな。私は今度は佐藤氏には聞かないのです。なぜ私はこれを聞くかというと、特に岸総理大臣、当時の外務大臣にこれを伺いたいのです。これはどうしてかというと、重光外務大臣が生きておったときには、このフランスの特別円は、これは筋が通らないからといって拒否し続けてきたものなんです。あなたになってから急にこれを、しかも調印して、国会にはからないで、わずか三日以内に金を払っているのです。ここに不明朗な点があるのです。二重払いであると言われている根拠もこういうところにあるのですよ。この国会の承認をとらなかった理由を一つはっきりお話し下さい。おそらくうしろの三百代言のいわくでは、タイ国の特別円と性質が違うと言って逃げるでしょう。そんなことじゃないのです。その点をはっきり答弁して下さい。
○岸国務大臣 法律解釈の問題に関しましては、法制局長官をして答弁をいたさせます。(発言する者多し)法律的な解釈の問題につきましては、法制局長官をして答弁いたさせます。
○林(修)政府委員 結局今の御質問は、何ゆえに仏印関係の特別円の処理議定書は国会に提出しないで、タイ関係のものを国会に提出したかということの御質問でございます。これは憲法の七十三条の解釈問題でございますから、私からお答えいたします。
 これは先ほど御説明いたしましたように、いずれも実は既存の債務の処理関係でございます。既存の債務の処理関係でございますので、債務の実行でございますから、それ自身として、新しい債務を負担したものではございません。しかして仏印関係におきましては、その年度一回で払ったものでございまして、その年度の予算として実行し得べき費目の中から払ったわけでございますから、この点はその議定書自身は行政府のやり得る範囲のことを行政府同士できめたものでございまして、これは国会の承認を経べき条約ではないという考えのもとに、行政的に処理したものであります。タイ関係のものは御承知のように四年に分割して払うわけでございます。将来の債務負担を、ここで予算との関係で計上しておるわけであります。その関係でこれは国会の御議決を願い、将来の債務負担をお願いしたわけでございます。
○江崎委員長 岡田君、時間を経過しておりますから、もう一つだけ……。
○岡田委員 関連ですからこれ以上やりませんが、これはあとで佐藤さん研究しておいて下さい。しかしあなたの言っているのはそれこそ三百代言的な意見なんです。これは国の債務である限りにおいて、国の債務を伴う責任国家間の債権債務の関係は当然国会の承認を経なければなりません。その点について、なぜヴェトナムの特別円だけ国会の承認をとらなかったか、この点については依然としてこれは理由になりませんので、これはあらためての機会においてやることにいたします。
○江崎委員長 午後二時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。
    午後一時二十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十四分開議
○江崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。上林山榮吉君。
○上林山委員 私は自由民主党を代表いたしまして、総理以下各閣僚に質問を試みたいと思います。
 本年度予算案は、岸内閣としての初めての予算でありますが、政党内閣として、わが党の打ち出した重点政策を大体盛り込んでおるのでありまして、見ようもいろいろあるかもわかりませんが、大体において萎縮もせず、かつまた放漫にも流れず、大体よく見ると均衡のとれた予算であると考えるのであります。しかし反面、現在わが国の経済情勢が輸出を伸ばして国際収支を改善せねばならぬという至上命令的立場にあるので、財源の一部をたな上げして超均衡予算になっておるのは、昭和二十四年度のドッジ・ライン以来のことで、日本の財政としては全く異例のことでありますから、ここにいろいろと議論の行われるのもやむを得ないかと思うのでありますが、しかし予算編成の基本方針を立てた三つの大きな柱、すなわち予算規模の問題、あるいは剰余金のたな上げの問題、あるいは財政投融資の問題は、それを最初の方針通り大体これを貫くことができたのでありますが、政党内閣である以上、多少の変動があったにいたしましても私はこれで大体適当である、こういうように考えるのであります。ただ過程の問題をとらえましていろいろ論議が行われておりますけれども、最終的に決定をした案が責任のある政府の案であることは言うまでもありません。ただ、しいて論議をいたしますれば、財政投融資の問題について多少の議論があると思います。しかしこれとても、増額された大口のものは大体道路あるいは鉄道、電力、石炭あるいは中小企業、農林漁業、住宅、こういうような方面に使われておるのでありまして、決して均衡のとれない意味での予算ではない、こういうように考えるのであります。ことにたな上げの五つの基金は財源を食いつぶすのではないかという議論も一時行われたわけでありましたけれども、これも言うまでもなく単なるたな上げで、元本は、東南アジアの開発基金を除いてはほとんど塩づけにせられておるのでありまして、これを経済基盤強化の資金とともに資金運用部に入れて活用されておるのでありますから、そういう懸念は全然ないということが解明されたわけであります。この条件のもとで、項目だけあげてみましても、道路の画期的な整備に一千百億円以上を投入して、世界一悪い日本の道路を思い切って整備しようと努めておること、あるいは教育の充実、科学技術の拡充、土地改良を含む農林予算は一千億円を突破しておるというような点、社会保障あるいは中小企業の振興、輸出振興、地方交付税率を三百七十二億三千七百万円増額をして二千二百四十億一千万円に計上したことなど、さらに加えて、国税、地方税を通じて、大衆課税たる自転車税、荷馬車税の全廃を初め、下級酒の減税、相続税、法人税の減税等、中産以下を対象として初年度三百十億円、平年度四百二十億円以上の減税を、三十二年度一千億円の減税に引き続いて実施したという、こういう項目をあげてみても、相当の予算であると私は考えるのでありますが、ここで私がまず総理にお尋ねをいたしたいことは、今度の予算は、従来からもそうでありますが、岸内閣として初めて組まれた予算であり、しかも政党内閣であるということを考えまして、岸総理に予算編成の過程あるいはその後に起ったいろいろな問題等を考えてみますと、政治は事務に優先をしなければならぬ、政治は言うまでもなく事務に優先する強力なる体制を整えなければならぬ、こういうことを私は考えるのでありまするが、総理はこれに対して何か具体的な考えを持っておられるか。たとえば総理直属の予算庁を創立して、そうして政策を織り込んだ予算の大ワクをきめて、それから以後の事務の作業を起していくというような、もう少し強力なる統制をとる必要はないか。言うまでもなく新しい憲法においては、総理の地位は非常に上ったのであります。政治家としてももちろんのことでありますが、官僚の総元締めであるわけでありまして、そういう点から、いわゆる事務が予算編成その他の上において優先しておるような誤解を国民にいまだ与えておるのでありますが、この問題について私は率直に総理の御意見が承わりたいのであります。
○岸国務大臣 予算編成の本質から申しまして、言うまでもなく、内閣が全責任を持ってこれを編成するわけであります。政党内閣として当然政党と十分な協調をとっていかなければならぬことは言うを待ちません。同時に予算そのものが数字を内容としております関係上、やはりこれに専念する事務官僚の活動を必要とすることは言うを待たないわけであります。しかし、今御指摘のありましたように、この問題に関して、事務が政治に優先するというふうな印象を与えるとかいうよなことがあってはならぬことは言うを待たないのであります。従ってこれが従来の経験にもかんがみて、日本における予算編成の過程におけるいろいろな経緯に顧みて、予算編成の機構を行政機構の改正としてすべきであるという議論もいろいろな方面から行われております。またこれについて各国の制度等も研究をされており、いろいろな議論はございますが、要するに問題は、閣議でもって予算編成の根本をきめ、またそれをきめるにつきましては、政党内閣の本質上、政党とも十分に話をしていく、そして根本をきめる。その根本をきめる場合において、従来のきめ方はやや抽象的に過ぎてはいないか、もう少し具体的にきめる必要があるというような点も今後考究していかなければならないし、またいろいろな予算折衝の過程におけるいわゆる査定案、また各省の要求、これに対する大蔵省事務当局の査定案というふうなものにつきましても、その取扱いについて私は十分に考えなければならぬ。また政党自体の予算編成に関する問題も、国民に公約しておる政策が盛られることはもちろん必要でありますけれども、予算というものは、御承知の通り内容的に数字を伴うものでありますから、なかなかそこの分界というものを、どの程度に事務と政治との関係を調整するかということにつきましては、相当に政党も政府もまた事務当局も今後考える必要があると私は考えております。これがために機構を変更するかどうかというような問題につきましては、先ほども申すように、いろいろな議論がありますが、今これらの議論も十分検討いたして、将来の問題を考えたいと存じますが、今日直ちに御提案になりましたような予算庁とかあるいは予算局というものを設置することについては、なお検討を要する点が多々ある、かように考えます。
○上林山委員 政治が常に事務に優先しなければならぬという体制は、自分も全面的に賛成だ、ただ具体的に予算庁のごとき行政府を作ることは研究中であるという総理の御見解はわかったのでありますが、予算編成の過程において、第一次の予算査定においては、政策的なものが盛られていなかった。こういうことは政党内閣として、私はだれが内閣を組織するにいたしましても、この問題は忘れてはならない重大な前提だと考えます。そういう意味において、今後いかなる組織を作るかは研究を要すると思いますから、これ以上申し上げませんが、予算編成に限らず、たとえば政策の問題でもそうでございます。ただいま岸総理などが苦心をされまして、青年の体位の向上をはかろうという意味で、体育局を作ろうとしております。けっこうなことです。ところが行政管理庁と文部省が対立をしてまだきまらない。あるいは公務員の退職金制度についても、総理府と大蔵省の意見が一致していない。東南アジアの開発基金の問題にしても、外務、大蔵、通産などがいろいろと意見の対立があって、ようやく暫定的にきまったように承知をいたしておりますが、私はこれは決して大臣同士の争いではないと思っております。これはおそらく事務官僚同士の一つの意見の違いであろうと思いますが、これが外に出る場合は、あたかも内閣が不統一であるかのごとき観念を国民に与えるのであります。そういう意味合いにおいて、内輪で調整のつかないものは、言うまでもなく大臣同士で調整をとられて、外に出るときには、これが内閣全体のものとして外に出るようにしないと――言いかえますと、言いにくいのでありますが、事務官僚をもう少し私はそれぞれの立場において使いこなしてもらいたい。言葉は悪いかもしれませんが、未熟なものを世間にそれぞれ発表されることは国民が疑いを持つ。予算の問題に限らず、私は政策の問題についても、こういう点は一つ総理以下各閣僚がしっかりお考えになっていい点ではなかろうかと思いますが、これに対する総理の見解を伺いたいのであります。
○岸国務大臣 御指摘のように政策あるいは行政上の措置の問題等につきまして、それぞれ関係庁の間に意見が初めから必ずしも一致しないというような問題もそれはあります。そうして十分に審議を尽すという意味においてこれらの議論が戦わされ、そうして適当な妥結点を見るようにすべきことは言をまたないのであります。そういう議論があり、意見が、ある場合においては違っておるということは、私はむしろ事務官僚がその仕事に熱意を持てば、そういうことは当然起ってくると思います。ただしかし、それが意見が違うというためにいつまでも決定しない、そうしてまちまちの意見がそれぞれ世間に出されるというようなことは、今御指摘のようにはなはだ不統一であり、また国民に帰趨を迷わしめるものであり、政治力に対して疑惑を持たしめるということでありますから、そういうものは適当な時期におきましては、もちろん内閣において、あるものは閣議において、あるものは関係閣僚の間において十分意見を調整して早く決定する、こういうようにして、世間に対しては今御指摘のような疑惑を生じないように十分努めていかなければならない、かように考えております。
○上林山委員 総理の明快な御答弁でわかったのでありますが、(笑声)どうぞその点については笑いごとではなしに、政党内閣としては、きわめて大事であります。野党の諸君が何年先かわからぬが、内閣をかりに組織した場合でも、これは御参考になる意見だと思っております。
 次にお尋ねいたしたいのは、先ほど私が申し上げました通りに、この予算は、大体においてよくできておる予算だ、こういうふうに申し上げたのでありますが、長期経済計画との調和を考えてみますと、三十三年度だけの公共事業費あるいは財政投融資を見てみますと、五カ年計画の平均をやや下回るものが見られるのでありますが、これは三十四年度以降の財政の都合あるいはその他の国民経済の伸張率を見て、取り戻せるものとの考えからこういうふうに組まれておるものと承知するのでありますが、果して三十四年度以降あるいは三十五年度に、この下回っておるものを取り戻し得るだけの御計画を考えておられるのであるかどうか。この点を伺っておきたいのであります。企画庁長官がおられないようでありますから、大蔵大臣でけっこうであります。
○一萬田国務大臣 御承知のように、この長期計画は、年度の平均になったものが出ております。従いまして、これを具体的に年度に当てはめる場合は、そのときの経済情勢、諸般の情勢を考えてやるのでありますが、しかし計画全体としては、その年度にそれを完遂していく、かように考えておりますので、ある年度で足らぬものは将来これを補っていく、かようになると思います。
○上林山委員 計画は決して机上の計画ではないわけでありますから、懸念される部分は三十四年度において必ず取り返すという努力をすることを要望いたしまして次に移りたいと思いますが、せっかくこういうふうにできた予算の審議の途中において、これは政府全体の意見ではないにしても、あるいは閣僚の意見ではないにしても、先ほど申し上げたように、世間にいろいろ発表されるというと、あたかもそれが政府の意見のように伝えられておるので、この予算を執行する上において障害になるような点についてお尋ねいたしておきたいと思います。
 その第一点は、昨年度から日本は生産過剰になっていて、本年もまた生産力が拡大されるから生産過剰になるのだ。
 だから輸出振興の必要上から、経済の安定の上から内需を抑制するということはかえって逆である、こういうような議論が大蔵官僚あたりからまかれておりますが、これに対して大蔵大臣はどういう考えを持っておられますか。これはあなたの部下から世間に放送され、しかも印刷になっておるのです。こういうことについてはどういう考えを持っておられるか。もちろんそういう考えではないと思いますけれども、こういう行動を何とお考えになりますか。見解を承わっておきたいのであります。
○一萬田国務大臣 お答えします。この点二つから考えたらいいと思います。一つは、日本の経済が非常に行き過ぎまして、これを是正する施策を今とっておる最中であります。その結果経済もやや均衡を回復しつつあるのでありますが、なお従来の政策を今ここでゆるめるという段階でもありません。同時にしかし三十三年度において、三十一億五千万ドルの輸出をするということは、日本の経済全体から見て、ほとんど絶対といっていいほど、もしもこれができぬとすれば、経済が縮小均衡になる。そうした場合に、雇用はどうするかという重大な問題も起るのであります。そして今の形からいえば、いろいろお話がありましたように、この達成は私は困難ではあるが確信を持っていいだろう、かように考える。それにはしかし生産を調整していく。生産力は持っておりますが、今この生産をフルに使うというわけにもいかないのでありまして、生産を調整して、そして経済の均衡の上にさらに再出発する、こういうふうな施策をとりますから、国内の需要が多いということでは、また輸入をふやさざるを得ないという事態を生じますから、国内の需要はやはり押えて、従ってまた財政の需要もなるべくこれを小さくする、こういう政策をとっていくことが必要であると考えます。
○上林山委員 大蔵大臣の答弁で大体わかったのでありますが、あなたの部下が世間に発表しておるのはこういう見解を発表しておるのです。最近のデフレ傾向は、弱気が弱気を呼ぶ段階で、生産も物価も一応順調に、または下落したし、国際収支もやや好調であるから、昨年五月以降の日銀の金融引き締め政策の締めくくりの時期が近くなったとして、日銀の公定歩合を数カ月後に旧水準に戻したいとの議論をしておるわけであります。
 もう一つは先に申し上げた通り、内需を抑制することはかえって逆な時代がもう来たんだ、しかも予算編成途上において、この二つの問題を大蔵官僚の中から世間にばらまかれるということは、私はどういう事情にかかわらず慎重を欠く態度ではないか、こういうように考えるのでありますが、後段の公定歩合の引き下げについても、大蔵大臣御承知の通りに、四月から六月はこれは財政が金融に、どの程度刺激を与えるかということをよく見通しをしなければならぬ時期である、そういう時期にこういうことができるかできないかは、これは常識でだれもわかる議論でありますが、今言ったような議論が流れておるということは、私は遺憾であると思いますので、大蔵大臣のこれに対する見解と、そういうことが世間に流れることは、あなたはどういうふうにお考えになっておるか、自分の部下の、しかも職名をはっきりと書いてそういうものが報ぜられるということは、どういうふうにお考えになりますか。
○一萬田国務大臣 今お読みになりました文章、これは私まだ読んでおりませんので遺憾でありますが、そのお読みになった文章によりますと、方向としてさような方向に日本の経済が向きつつあることは、これは私否定いたしません。事実であると思います。ただそういうことを今言うことが、どうも私は時期尚早である。これはおそらく若い者が書いたものと思いますが、(笑声)若い者でそういう点に思慮がやはり足らなかったので、そういう点については十分注意をいたしたいと思います。
○上林山委員 そう若い者でもありませんが、これ以上追及はいたしませんけれども、そういう不統一を大蔵省という名前のもとに世間に出されると、国民はやはり警戒をしたり、政府に不信を抱いたり、今後の予算を必要以上に誤解したりすることになってくるのです。こういう意味において私は申し上げたので、決してあなたと論争して自分が快哉を叫ぼうというさもしい考えを持っているのじゃないのであってそういう意味合いにおいて、大蔵大臣がもう少し省内の統制をとってもらわなければならない。この前も、単なる事務的なインドネシアの例の問題のために、大蔵大臣がわざわざ本会議で野党諸君にあやまらなければならぬということは、私はこれは大蔵大臣にも御同情申し上げる。申し上げますが、いずれにしても、私は今言ったように、事務官僚の事務的な失敗というものが起ることは、今予算案をせっかく編成して、これがいい予算であると言いながら、やがてはという問題を今であるというふうに置きかえて、こういう議論をするにおいては、私は足元から、予算の編成に当った者どもから、いろいろとこういう疑惑を世間に与えるということになるので、私は今後の御注意を喚起いたしておきたいと思います。
 次に、私は外交の問題について申し上げてみたいのであります。岸内閣は、外交において、一部の人から、大したことをやっていないじゃないか、こういうふうに言われておりますが、私どもが冷静に事実を考えますと、堅実に、しかも着々といろいろな大きな外交の功績を上げておる。国連の理事国になったり、あるいは困難なインドネシア賠償を解決したり、日本とインドとの通商協定や円借款を成立させたことなど、まだまだ多くの問題を解決しておるのであります。私はこの意味において、この短時日の間に、とやかく世間から言われながらも、よくもここまで大きな外交の功績を上げたものだと思います。私は単に与党なるがゆえに思うのじゃない。冷静な国民なら、私はそういうように考えるだろうと信ずるのであります。
 そこで、まず総理に伺いたいことは総理は、経済外交について非常に熱心に主張せられております。けっこうなことです。日本が貿易によって立っていかなければならない国である以上、経済外交を推進されることは、当然のことであります。しかし、霞ケ関育ちの従来の外交官には、それこそ本来の外交にできるだけ従事させて、経済外交のごときものは、私は経済や貿易に明るい人を活用していかなければならない。これは人にもよりますが、そういう考え方をまず持っていくべきであると思う。
 第二には、外務省や通産省や経済企画庁に、経済貿易の関係の仕事がいろいろに分担せられておるようでありますが、これを強力に統制して、日本の経済外交というものをもっと質的に向上させていくというような考え方はないかどうか。私は決して従来の外交官がだめであるという意味じゃない。これは本来の外交というものにもっと専念すべきである。それが、ふなれな者が、日本の貿易が大事であるからというので、間に合わせにそういう仕事をやっておっても、人によってはりっぱにやってのけておりますけれども、私はこれはほんとうの経済外交をしていくことはできないのではないかという懸念を、わずかの国々を回っただけでありますけれども、そういう考えを持っておるものの一人であります。これは総理としてはなかなか言いにくい点もありましょうが、この際、どういうお考えを持っておられますか、この点についてお尋ねをいたしておきたいのであります。
○岸国務大臣 私が経済外交ということを非常に強調いたしておりますのは、私は、日本の外交の基調は言うまでもなく平和外交であり、各国との間の友好親善を深め、お互いの進歩と繁栄を通じて世界の平和を作りあげるということが、外交の本体だと思っております。そういう意味において、経済外交というものは、平和外交を推進していく上におきまして、文化外交とともに、非常に重要な要素であると思います。従って、今上林山委員のお話では、いわゆるキャリァの外交官には本来の外交をやらしておいて、経済外交については、その方面において特に知識や経験を持っておる人を充てたらどらかというお話でありますが、私は日本の本来の外交というものの中に、経済外交というものが非常に大きくクローズ・アップされなければいかぬと考えておるのでありまして、もちろん適当の人がありますれば、キャリァ以外からも外交官を、在外使臣等、適当なところへ配置することも必要でありましょう。しかし、それよりもなお大事なことは、従来のキャリァの外交官自体が、経済について十分な知識を持ち、また日本の外交を進める上においてこれが非常に大事なことだという認識に立って、あらゆる面において活動されるようにしなければならないというのが、私が本来考えておることであります。また経済外交を推進するにつきましては、言うまでもなく、単に国外においての活動、外国との折衝というだけではなしに、国内におけるいろいろな経済政策、特に輸出の問題や、あるいは移民の問題にいたしましても、経済外交の内容をなしておる経済協力の問題にいたしましても、内地における行政と密接不可分の関係にあります。その意味において、従来内地における行政が各省に分属し、その間にまちまちにやられておるというような弊害も、これを無視できない。従って、この間に十分な連絡をとり、そうして強力な国内態勢を作り、先ほど申したように日本の外交全体が経済外交に非常に重点を置いて、内外力を合わすようにしていって、初めてその目的を達することだと思います。そういう意味で力を用いたい、かように考えます。
○上林山委員 経済外交というものを私は形式論的に申し上げているのではなくて、従来の外交官の中にも、日本の貿易、日本の経済等について非常に知識経験を持った人も多いけれども、経済外交ということを特に現内閣が、総理が主張される点から考えてみましても、どうも従来の外交と大差はない。だから、もう少しくそういう方面の経験のある人を起用するなり、今総理が言われたように、従来の外交官に日本の貿易、あるいは日本の経済、こういうような点について、もう少しく研究するように督励をしていかなければ、いわゆる貿易に依存しなければならぬ日本としてはまことにたよりない、こういうような気持が一部するのであります。私は総理がそういうお考えであることを答弁されたから、これ以上申し上げませんが、願わくば、経済外交を口にする以上、それにふさわしい態勢をもう少し整えなければ、日本の経済外交の結実を見ることはできないのではないか、こういうように考えるのであります。
 さらにお尋ねいたしたいことは、東南アジアの問題、あるいはアメリカの問題、あるいはヨーロッパの問題、こういうような方面には、総理は非常に活発に動いておられます。けっこうなことです。けれども日本の人口問題の解決の一助として考えなければならぬことは、中南米であろうと私は考える。この日本の人口問題の根本的な解決は、国内的にもいろいろやらなければならぬことがあるわけでありますが、それはさておいて、私はこの日本の過剰の人口を気持よく受け入れてくれておる国々は中南米であると思います。この中南米に対する移民の問題あるいは市場開拓の問題――近いうちにこの予算が通ると、巡回見本市船なども中南米に行くと聞いております。こういうときに私は市場の開拓あるいは移民に対する総理みずからの考え方を向うの大統領、ブラジルの大統領などは親日家と聞いておりますが、こういう意味において私は胸襟を開いて――もちろん世界全体の外交をよくやっていかなければならぬことはわかりますが、もう目の前の切実なる問題として、しかも日本の移民を歓迎して気持よく受け入れてくれておるブラジルを初めとする国々と総理みずからがもっと密接な関係を結ぶ必要はないか。あるいは大統領と直接に会見をされまして、従来のあいさつと今後の具体的な友好というものについて、もう一皮むいて胸襟を開いてお話しになる必要はないかどうか、これを考えるのでありまするが、お答えをいただきたいと思います。
○岸国務大臣 いわゆるラテン・アメリカと称せられる中南米の諸国が日本に対して非常に好意的であり、日本の移民の受け入れに対しても非常な熱意を持っており、従来も相当な成績を上げつつあることは、私は国民とともにまことに喜びにたえないことであります。一そうこれらの国々との友好関係を深めていき、またさらにわれわれが販路の点から申しましても、あるいは移民の点から申しましても、また経済協力の点から見ましても、一そうこれを積極化していくという必要は、御意見の通り私も全然同感であります。そのためにあるいは首脳部が直接会って、さらにそういう問題について隔意のない話し合いをするということも私は有効な手段であろうと思います。この意味においてあるいは招待外交であるとか、あるいはこちらから適当な時期に出かけるというようなことも考えなければならぬと思いますが、いずれにいたしましても御趣旨の点は私全然同感でございます。
○上林山委員 趣旨に対しては同感であるし、努力をすると答弁されたのでありまするが、どうですか、ブラジルの大統領などとそれこそ思い切って、トップ・クラスの会見をされて、これは非常に大きな市場でもあるし、人口問題の解決としては、いろいろトラブルの多い国よりもこういう方面に一つ思い切って日本は平和的に進路を開くことが、非常にいい時期だと思うし、最近においてブラジルなどは日本に相当多くの移民をしてもいいような協約も結んでおるのでありますが、これは通り一ぺんのお考えではなしに一つ熱心にこういう考えを持って向うの大統領とでもできるだけ早い機会にお会いになる考えはないかどうか、これを私は心からお勧めしたいと思いますが、どうですか。
○岸国務大臣 まだ確定はいたしておりませんが、六月にはブラジルの大統領をこちらに招待するというふうな考えのもとに、向うに申し入れをしていろいろ打ち合せをいたしております。これが実現すれば、今御指摘のあった点について非常に有効なことと、かように考えております。
○上林山委員 ぜひそういうふうに御努力を願いたいと思います。
 次に私は減税問題について少しお尋ねをいたしておきたいと思います。減税の問題は国税、地方税を通じて、劈頭に申し上げた通り、昨年の一千億円の減税に続いて、初年度で三百十億円、平年度で四百二十億円の、しかもいわゆる大衆課税を減税するということに重点を置いて減税をされたわけで、私どもはこれを支持するものでありますが、自転車税、荷馬車税を廃したことなども全国民から非常に喜ばれておるのです。ところが一部の議論でありましょうが、固定資産税をかわりにとるという誤解が流れておるようであります。私はこれは一つの基準を設けていろいろやっておるのだとは思いますけれども、根本的にこういうようなことはない、こういうふうに考えておるのでありますが、国民の誤解を解く意味において御意見を承わりたいし、この問題についてはあるいは自治庁と大蔵省との見解の相違もあるやに聞いておりますが、もしこれに対する見解の相違があるならばこの際両大臣から承わりたい。私どもは大衆課税を全廃するというこの究極の目的が達せられなければならぬ、また達するものと信じておりますけれども、一部の問題の未解決のために多くの誤解を国民に与えるということはこれはいけないことだと思うので、この議場でただしておく方がいいのではないか、こういうように思うのであります。明快にお答えを願いたいと思います。
 それから第二点は、地方税を減税したために、かわり財源としてたばこ消費税の率を引き上げて、約五十億円の穴埋めをするわけでありますが、これによって富裕県とあるいは貧乏県との割合の調整をとらなければならない、こういうように考えられるのであります。これについても、自治庁なりその他でお考えがあるならば、一つあわせて伺っておきたいと思います。
○郡国務大臣 お答えいたします。前段の点は、従来固定資産税と他の税とが二重課税になりませんように、自転車税、荷車税を課せらるる自転車、荷車というのを除外いたしております。ところが自転車荷車税が全廃いたされますから、従いまして、その規定が除かれるために、そういう御質疑が出て参るわけと存じますが、非事業用のものに課せられませんことはもちろん、また一般の商店等の事業用と家事用と両方に共用しておるものに課しませんことはもちろんであります。
 免税点も高いのでありますし、また耐用年数のきわめて短かいものであります。ざっと申しまして、自転車のみを持っておりますれば二十数台、荷積車でおよそ二十台、それらのものはすべて免税いたされますので、きわめて大規模なもの以外は、課税されるというようなことがございません。従いまして、自転車税、荷車税の廃税に伴いまするその趣旨というものは一貫して参ります。この点について、大蔵省との間にも何ら意見の相違はございません。
 次の点は、たばこ消費税でかえておりまして、貧弱な町村等でたばこ消費税が少いのじゃないかというお尋ねだと思います。苦干自転車荷車税の方が多いというところが貧弱な町村では起って参ります。私どもの方で自転車税、荷積車税で徴税費をサンプル調査いたしますと、約二割の徴税費がかかっております。従いまして、徴税費の全くかかりませんたばこ消費税にかわりますがために、大部分のそういうところはカバーできまするし、またそのようなところはほとんど全部が交付団体であります。そのような、税の減額等がありますれば、交付税によってもこれは補うことができます。その点十分注意いたしますので、さような点はよろしくやっていけると思います。
○一萬田国務大臣 ただいまの自治庁長官の御答弁に尽きておると思いますが、ただ私が若干補完しておきますことは、今度のこのたばこ消費税の税率の引き上げで、今話されましたように、不交付団体の様子が、特に減税の多いということがはっきりしております。従いまして、団体によって税収入の偏在ということが、これによってやはりふえてくる。これは、しかし全体として今度たばこ消費税の引き上げということに限らず、団体別における税の偏在ということについては検討していきたい、さように考えております。
○上林山委員 固定資産税の免税点は、どれくらいになっておりますか。大体十万円であったかと思うのですが、どういうふうになっておりますか。
○郡国務大臣 免税点は、十万円になっております。お尋ねの点は、償却資産の点でありまして、これは直接の御質問じゃありませんが、農地というようなお話をちょっと聞きましたが、農地の関係は全然ないわけでございます。十万円でありまして、かつ、申しましたように、耐用年数等によりましてきわめて低く、すなわち耐用年数が短かいために、評価が十分下げられて参りますので、私先ほど申しましたような台数までは、大体すべて対象になることはないと申し上げた次第であります。
○上林山委員 ただいま自治庁長官からお答えがありましたが、非営業用のものにはかけない、きわめて大きな営業用のものだけにかける、こういうお話でありますが、きわめて大きい営業用というものは、どの程度の基準をさしておるのであるか。私は、自治庁としては、財源の関係からいろいろ御心配になるのは無理からぬことだと思います。しかしどう考えても、荷車税と自転車税を全廃したのでありますから、この大衆課税を全廃したのでありますから、究極においては、みんなが安心するような解決でなければならぬ。大蔵省方面のこれに対する御見解を伺いたいのでありますが、私は、そういうふうに一部のことで多くの誤解を与えるようなやり方を、自治庁が財源の御心配のあまりこまかくお考えになるのはどうか、こういうように考えるのでありますが、これについては、もう少しはっきりお答えを願っておきたいと思います。私どもは今言うように、ほんの一部の、たとえば運送会社のごとき、そういうところのものには、あるいは営業用のものとして税金がかかるけれども、それ以外のものはかからない、こういうようなふうに了解したいのでありますが、できれば、これは全部かからぬ方がなおいいんですよ。なおいいんですが、財源の都合があるならば、大きな運送会社のようなところは、これはもうやむを得ない、こういうふうに考えるのでありますが、私は、ほかの農村の固定資産税の問題は、別の機会にお答え願いたいのであって、この問題についてだけ一つお答え願えれば幸いであります。
○郡国務大臣 お話しの通り、現に他に償却資産等の大きい設備を持っておりまするような種類のもの、すなわち大運送会社、大百貨店等の場合以外には課税されることがございませんし、またさよういたしませんように、今後の廃税に伴いまする指導方針を立てる予定であります。
○上林山委員 私は、自転車税、荷車税に対する国民の誤解を解くように、そうして最終的な目的を達するように、自治庁や大蔵省が、たばこ消費税との関係などもありますから、よく協議されまして、まちまちの御意見をお出しにならないようにぜひ善処せられたい、こういうふうに希望するものであります。
 なお、今度の税制改正で、これは財源の点で困ったことは、われわれもよく承知をしておりますが、中小企業者のいわゆる減税というものについて、もう少しく考えていただきたかった。本会議では松野頼三君からも政府に要望があったのでありますが、それは事業税の減税ということであります。事業税の減税だけは本年できなかったとするならば、三十四年度にはこれはできるはずであります。三十四年度には、ある程度の減税をやろうと思えばできる。私は、ここで言明をせよとは言いませんが、その趣旨に沿ってどういうふうにお考えになっておるか。私は中小企業者の立場から考えますると、この事業税の免税はまだむずかしいけれども、減税はどうしても財源等の関係を考えてやらなければならぬ、こういうように考えるのでありまするが、これは深くお尋ねをいたしませんけれども、お答えを願いたい。
 さらにもう一つ申し上げたいことは、物品税のでこぼこです。物品物のでこぼこを修正するお考えはないか。減税を建前として、物品税は相当でこぼこができております。この物品税のでこぼこを、減税を建前として来たるべき年度に考える含みはないかどうか。この二つだけは、私は一つお尋ねしておきたいのであります。
○郡国務大臣 事業税につきましては、お話しのように、府県税の半ば以上を占めておる税であり、一%下げますると、百億以上の違いを生じまするので、本年の地方財政状況では、これを取り上げ得なかったのでありまするが、事業税を含めました地方税全般につきまして、税財政の状況、地方財政の運営、財源の状況と考え合せまして、さっそくこれの調査並びにその目標をどのように置いたらよろしいかということについて、地方税全般について考えていきたいと思っております。
○上林山委員 この問題については、もう少しくお尋ねしたいのでありますけれども、地方財源の見通しというものを立てた上での考えを研究しなければならぬ点もありますので、これ以上申し上げませんが、財源の関係を考えて、中小企業者は相当困っておるのでありますから、減税を建前としての研究、減税を建前としての調査、こういうような考えでおやりになることを私は希望をいたしておきたいと思います。
 次にお伺いをいたしたいことは、科学教育に関連してであります。科学技術の振興及び科学教育の充実に力を入れてきたのは、ちょうどかつての黒船の来航に驚いたような感も半ばするのでありますが、人工衛星の打ち上げというこの事実によって、二つの大きな仕事が今度の予算に大きく浮び上ってきたことは、これはまことに幸いであった、かように考えます。松永文相は、大学の理工科の拡充をPRしておられます、あるいは正力国務大臣は、これまた科学技術の振興を大いにPRしておられましたが、両方ともこれが相当増額されて、この方面の事業が発展することは、まことにけっこうでありますけれども、ただここで私がお尋ねいたしたいことは、科学教育は、これは永続的なものでなければならぬ。単なる量を考えただけでもいけない。言うまでもなく、質を考えていかなければならぬ。言いかえますと、ピラミッド式の科学技術教育を打ち立てていかなければならない。ところが今度のやり方は、急いだために、頭だけができて、手と足ができておらぬ、こういうような考えがするのであります。具体的にいいますと、大学の理工科の教育については相当力を入れたわけでありますけれども、小学校、あるいは中学校、高等学校、こういう方面にはわずかに一割程度の理科教育費をふやしておるだけでありまして、これは、私はピラミッド型のほんとうの意味の科学教育をやろうとする態勢としては、まだ日遠き感がするのであります。
 そこで、私が文部大臣にお聞きしたいことは、来年度は、これもまだやり方としては変則です。変則であるということは、私は承知しておる。しかしながら、大学に行く前の高等学校の方面の科学教育だけは、相当思い切った態勢をお整えになりませんと、私は、それこそ日本の科学教育を推進していくことはできない、こういうように考えるのでありまするが、これに対するところの見解をまず伺っておきたいのであります。
○松永国務大臣 御指摘になりました科学技術教育の振興につきましては、三十三年度の予算等も相当額要求をいたしました。この予算案の中にも相当盛り込まれておりまして、御審議をわずらわすようになっております。しかし御指摘になりましたように、決して上だけでない、ピラミッド型で、やはり下の方からも盛り上げていくという計画のもとにやっております。たとえば小学校、中学校あたりでも数学並びに理科、そういう方面のいわゆる科学技術の基礎学の浸透をいたしますために、教職員方面の教育等にも力を尽すようになっております。さらに今御指摘になりました高等学校の方面も、それぞれ中学を卒業します、すなわち中学の三年に参りまして、家庭、実業の方面に回ります人々に対しても、相当教育を仕込むようになっております。さらに高等学校におきましては、すなわち高等学校の勉強をする連中に対して、やはり特別な学科を教えるということになっております。すなわち高等学校の別科といたしまして、産業科を二十三科新設しさらに電気機械科等を三十科新設いたしまして、そうして相当高等学校程度の課程において充実した教育を施していく。大体初年度といたしましては、五千人くらい量において増員をするということに考えて実施したいと考えております。
○上林山委員 一通りの文部大臣の御説明はわかりましたし、ある程度その方面に力を入れておられることもよく承知をしておりますけれども、私どもがもう少しやっていただきたいというのは、ほんとうの意味のピラミッド型の科学教育にまだなっていないのです。これは、多くを申し上げませんが、なっておりません。だからせめて高等学校だけは、来年度においては、これもまだほんとうのやり方じゃないが、これに重点を置いて、科学教育の基礎をここでつちかわないと、大学で幾ら教育をしてもだめである、こういうような意味から私は申し上げておるのであります。そういう意味合いにおいて、私どもは、文部省がいろいろ苦心をしておることはわかりますけれども、せっかく声を大にして科学教育の振興が叫ばれ、しかもある程度成果をおさめられたこの機会に、文部大臣は事務官僚のお話も参考に聞かれなければならぬが、一つこの際科学教育のために、自分は心中をするのだというくらいの決意で、日本の科学教育に力を入れてもらわなければならぬ。そこで、私が具体的なことをお尋ねするのでありますが、これは、大蔵大臣もよく聞いておいていただきたい、あるいは郵政大臣も聞いてもらいたいのでありますが、私は、教育は今言ったように、科学教育をそういうふうにしてしっかりやらなければならぬが、同時に今後の日本の教育に忘れてならぬことが一つある、それは何といっても、これまでテレビというものが発展をしてきますと、テレビ教育というものにことしはもう踏み切っていなければならぬ。あと五年たってごらんなさい、どうなります。私は、あと五年たつと、教育の革命が来るのではないかとすら思う。そういうような意味において、テレビ教育というものを簡単にお考えになっては私はだめだと思うのです。これに対しては、時間の関係がありますので、多くを申し上げませんが、文部省は、ある程度考えておられるようです。おられるようでありますが、大蔵省方面や郵政省方面の努力が足らなかったのかどうかよく承知しませんが、これがやろうとしたのに、途中で立ち消えになったのは一体どういうわけか。これは、科学教育と並行して、日本の教育のそれこそ思い切った前進のためにやらなければならぬ仕事なんです。これがどうも途中で立ち消えになった。私の見解をもってすれば、これは、おそらくここ二、三年の間は困難であるから、これについては、公民館とか学校、いわゆる学校放送を主体にして国がある程度の設備の補助を出してでも、この仕事はやってのけなければならぬ大事な仕事である、こういうふうに考えるのですが、これに対して文部大臣からの御答弁を願いたい。
○松永国務大臣 御指摘のテレビの問題でありますが、これは、今仰せになりました通り、どうしても文部省といたしましては、これを実現しようと思いまして努力をいたして参ったのであります。ところが、このテレビの方でもなかなかそう早くは実現しません。いろいろ研究をいたしますと、やはりことしの暮れか来年の春あたり、いわゆる教育テレビが実施に移されるようでございます。従って、私の方でもずいぶん急いで参りましたけれども、三十三年度予算としては、皆さんにお願いすることの必要はまずなかろう、またとれもしませんで、それで実施に移すことができなかった。ただしかし、五百万円であったと存じますが、希望のある学校には受信機を備えつけることができるように、それは教材費のうちから回すことができるようになっております。しかし、ただいま申し上げる通り、教育テレビがまだ実施いたしておりませんので、それまでのうちに何とか実施になるようでありますれば、方法がとれるつもりでおります。おそらく三十四年度に実施になるというふうに、私どもは見当をつけております。
○田中国務大臣 お答えいたします。テレビ、ラジオを通じての教育のあり方というものは、非常に重要な問題として、もうすでに考えなければならない段階に至っております。現在の状況を申し上げますと、日本における現在のラジオの聴取者数は千四百五十万台でございますなおテレビは七十万台ということでありますが、実際問題から申し上げますと、百万台を突破いたしておるのが実情でございます。十月の二十二日に民放三十六局に対して、予備免許を与えておりますので、昭和三十五年末になりますと、テレビの聴取者の実際の数は、大体四百万台をこす予定でございます。そうしますと、これから七、八年後の日本のラジオがどの程度になるかというと、大体千五百五十万台程度と考えれば間違いないと思います。テレビは、日本の経済事情を考えますと、最高で大体九百万台、こういう考えでございますので、これから七、八年たつと、五百万台ないし六百万台になるということでありますので、教育問題とは非常に関連があるのでありまして、三十三年度予算編成の過程においていろいろな問題を考え、関係省との間にも意見の調整を行なったわけでありますが、御承知の通りでございます。なおテレビ、ラジオの持つ威力というもの、また教育に対する問題に対しては、この国会に放送法の改正案も提出いたしますので、この改正の中に、あらためて放送が教育に対してどうしなければならないか、いわゆる教育放送に対する規定を明確に盛るつもりでおります。
 以上簡単に申し上げます。
○上林山委員 テレビ教育の問題について、文部大臣も相当お考えになっておるようでありますが、もう少しくこれに情熱を入れていただきたい。これはもう夢じゃないのです。近いうちにどうしてもやらなきゃならぬし、三十三年度で準備をしないと、これが十分の教育ができないのです。テレビ教育が十分に発展をいたしますと、学校の教育方針は相当変革しなきゃならぬ。教員なども、うろうろしておると、それこそ学力低下のそしりを教員みずからが受けなければならぬ、こういうような状態に五、六年後はなってくるんです。そういうようになるのでありますから、今ごろからこれを準備しないとだめであって、まあ手間仕事にやろうじゃないか、それもいいことだなあという程度では、この問題はだめであるわけでありますから、その点についてもう少し研究をしていただきたい。
 次に、郵政大臣についでであるからお尋ねいたしますが、郵政大臣はラジオ、テレビ、特にこのテレビに対して非常に熱心に努力をされて、予備免許も相当おろされた。ところが、せっかく予備免許をおろされて、相当の予算その他の要求をしたけれども、マイクロウエーブの建設等については、最初の計画が相当変更されておる。これでは、所期の目的を達して予備免許を与えたものに十分に間に合うように、今の予算の範囲内、資金の範囲内でやっていける自信があるか。これは郵政大臣一人の問題ではない。政府が予備免許を与えたのでありますから、免許を与えた以上は、これが実施できる段階までそれぞれ援助をしなければならぬと思う。ところが資金調整委員会などから、テレビの設備に対する資金の投資等は節約しなければならぬ、あるいは押えなければならぬ、こういうような申し出があるとかないとか聞いておりまするが、それは事実であるかどうか。こういうような文化事業に対して、政府はもう少しお考え願わなければならぬ。これは一営利会社の仕事じゃない。民放といえども、これは営利会社だと思う、確かに営利会社だ、あるいはNHKと違うかもしらぬ、NHKは公共放送であります。われわれが料金を納めて聞いておるわけでありまするが、いずれにしても、これは一営利会社や一放送協会の問題じゃないのです。これは国民全体が、あるいは政府全体が、もう少しこれに対して熱心にお考えになる必要があると私は思う。文化に恵まれない日本は、特にこの必要があると私は考えるので、これを申し上げたわけでありますが、大蔵大臣も兼ねて一つお答えを願いたいのであります。
○田中国務大臣 お答えいたします。テレビの予備免許をいたしまして、三月三十一日までに効力を発効せしむるようになっておりますが、予備免許と確認との間の状況は、おおむね順調であります。民放三十六局に対して予備免許を与えましたが、マイクロウエーブの関係はどうなるかということでありますが、このマイクロウエーブの問題に対して端的に申し上げますと、予定通り放送が開始できる見通しであります。電電公社の三十三年度予算の要求総額は八百三十三億円でありまして、この中に、マイクロウエーブ関係は、当初計画の二十六億、プラス、新規三十四年度及び三十五年度の分を三十三年度に繰り上げをいたす計画で四十億、合計六十六億のマイクロウエーブ施設費を計上しておりましたが、御承知の通り決定予算額は、七百五十億でございます。しかし三十二年度における繰り延べ額の引き受けの問題は、予算総則で明記してございますように、当該年度の剰余金を建設勘定に回せるというような弾力条項の発動によりまして、当初計画通り、全国的なマイクロウエーブの計画は完成する予定でありますので、民放各社が計画をいたしております通りに、放送局の完成と同時に、波が出し得る状態でありまして、一向懸念するところはないのであります。
 なお資金の問題に対しては、あとから大蔵大臣も申されると思いますが、御承知の通り、民放各社は競願が非常に多いのであります。この競願者の書類を見ますと、ほとんどが自己資金でまかなえるようになっておったのであります。この自己資金でまかなえるもの二社、三社を統合、経営参加というような形式をとり、円満に予備免許を交付できる段階になっておるのでありますが、実際問題としては、建設費その他に対して幾らか市中金融に仰がなければならないという状況であることは、いなめないのであります。大体テレビに対する三十三年、四年、五年の三カ年ないし四カ年の総事業費は、百億ちょっとでありまして、自己資金を半分と押えても大体五十億、こう押えればいいと思います。そうしますと、年間に対して十五億程度の資金でございますから、現在の状態では、これを押えるとか押えないとかは言わなくても、現実問題としては円満に解決できるという見通しでございます。市銀協で一応テレビ資金に対して不急事業の資金として通達を出したり、また協定をしたような報道もありますが、実際問題としては、個々のケース別に比較的順調に片づいておるということでありまして、政府関係から金融機関に対して不急事業というような認定のもとに、これらの問題に対する抑制措置をとったような例はございません。明確にお答え申し上げます。
○一萬田国務大臣 一般的に投資を抑制する政策をとっておるのでありますが、それでも基幹産業に対する資金は不足がちであります。そういうふうな事態でありますが、テレビ施設については、特に御意見のようなこともありますので特に押えるということはやっておりません。実際に解決していく、こういうことであります。
○江崎委員長 上林山君に申し上げますが、お約束の時間がだんだん経過しておりますから、なるべく結論に入られんことをお願いします。
○上林山委員 理工科の教育の拡充と相待って、岸総理が青少年時代非常に恵まれた家庭にありながら、進学保障制度、あるいは青年の家、あるいは体育局、こういうように青年に夢を持たして、あるいは明るさを持たして、いろいろやられるという態度は、これは私は率直に敬意を表したいと思うのです。この問題については、今後も一そう努力をしていただきたいのでありまするが、しかし、ここで私はせっかくのこういう思い切ったことをやりながら、画竜点睛を欠く思いのするのは、勤労青少年に対する教育上の設備、教育制度あるいは予算、そういう方面にあまり思いをいたしておらぬ。これは私は文部省の役人にしても大蔵省の役人にしても、経済に恵まれた家庭に育った人が多い関係からして、定時制の学校あるいは通信教育、こうしたような方面に情熱が足らぬ、思いやりが足らぬ、私はこういうように予算や制度を通じて考えるのでありますが、これに対する答弁は、文部大臣に限らず、総理大臣の御答弁も願いたいのであります。私は、今日一人の役に立たない博士を作るよりも、こういうように働いて学問をしていく全国の数十万の勤労青少年、これらの人々をもっと国家があたたかい手を差し伸べて、教育の上なり制度の上なりに拡充をしていただきたいと思うのです。
 最後に、これにつけ加えて申し上げますならば、あるいは通信教育や定時制の高校を出たような者を、それぞれの規定、試験制度などもありますけれども、政府みずからが進んでこれらのうちの優秀な者を国家で採用する、これくらい思い切った処置をおとりになる考えはないか。私は、これは先ほど少し皮肉を申し上げましたが、一人の青白いインテリを作るよりも、こういうような働いてまじめに勉強しておる多くの青少年に、それこそ進学保障制度同様に、もう少し政府で、お考えを願ったらどうか、これをお尋ねしておきたい。これは総理大臣からも一言お答えを願っておきたい問題だと思います。
○松永国務大臣 御指摘になりました点は、われわれもまことに同感であります。ああして昼間は野ら仕事にいそしんで、あるいは工場で一生懸命汗やあぶらを流して働いているところの青年が、夜間のひまを利用して、そうして腕をみがき、頭を練ろうとして一生懸命勉強しておる。あの人々に対してやはり国家が手を伸ばして何とか救済しなければならぬ、何とか朗らかな、そうして気持よい思いで勉強にいそしませなければならぬというような考え方から、去る昭和二十九年以来通信教育振興法に基きまして八千五百万円を設備費として補助いたしております。さらに通信教育費を九百万円、これは通信教育のためでありますが、補助して参りました。三十二年度は設備費を五千万円増しました。給食の施設設備費は千三百万円増加いたしております。そうして、それと同時に交付金の中から大体三割見当増額いたしておることは上林山君の御承知の通りであろうと思います。三十三年度は理科振興設備費といたしまして三百五十万円をさらに増額いたしております。ことに分校設備といたしまして新設分校を作るために二千万円計上いたしております。しかし、これで十分と考えているわけではございません。まだ足りませんけれども、何とかして一つ来年度はこのくらいでまず充実することが大体できはしないかと思うのですが、さらに年を追うて、右申し上げるような考え方から、仰せの通りそうした予算を政府の方から充実していくように方途をとってみたいと存ずる次第であります。
○岸国務大臣 上林山委員の、勤労青少年に対する教育施設及びこれらの人人がさらに将来に希望を持って努力のできるような考え方をしなければならぬというお考えにつきましては、私全然同感でございます。ただいま文部大臣からそれに関する文教関係の予算等についてもいろいろ政府が考慮しておることを申し上げておりますが、もちろん私は、あれだけでもって十分その目的を達するものとも考えておりません。また、青少年に関して先ほどおあげになりました各種の私どもの構想の実現、あるいはまた勤労青年建設隊に対する予算の増額等々と相待って、そういう機運を大いに高めるように政府としても今後十分留意していかなければならぬ、かように考えております。
○上林山委員 私は、岸総理が、日の当らない恵まれないこれらの青少年に大きな希望を与えて、将来制度の上において、あるいは予算の上において、あるいは、政府職員に採用するような場合、優秀な者は、率先して民間に範を示す意味で、これらの人々に大いに一つ活路を与えていくという考えでお進み願うことを要望いたしておきたいと思います。
 次にお尋ねをいたしたいのは国鉄の関係の問題についてであります。
 まず第一にお尋ねをいたしたいのは国鉄の財産管理の問題についてであります。国鉄はガード下の賃貸やあるいは鉄道会館の問題などで財産管理について非常に遺憾な点があるといって世間から非難されてき、あるいは行政管理庁としてもこれに対して警告を与えてきておるはずでありますが、最近伝えられるところによりますと、昭和三十年度に行なった資産再評価そのものに二百十億円という誤まりがあるということでありますが、これは事実であるかどうか。さらに、その内容は、過大評価が八十億、過小評価が百三十億である、こういうように聞いておりますが、これは事実であるかどうか、もしそれが事実であるとするならば、どういう処置をとりつつあるのか、また何が原因でそういうあやまちが出たのであるか、これをお答え願いたいのであります。
○中村国務大臣 国鉄の資産再評価につきましてあやまちのあったことは事実でございます。これが金額において新聞紙等に伝えられておるようなことはまだはっきりわかりません。ことに過大評価であるか過小評価であるか、これは今的確に調査をいたしております。もしこの数字が的確にわかりますならば、三十二年以後できるだけ早く後年度において修正をいたして参りたいと考えております。
○上林山委員 国鉄総裁が見えておられるならば、運輸大臣の答弁を補足して、何が原因でそういうふうになったのか、あるいは将来それが発見されたならばどういうふうに処理するつもりであるか、私は何も追及しようと考えているのではないが、ありのままを一つお答え願って、この善後処理を的確にしていただかなければ、国鉄に対する信用というものはさらに失墜する、こういう見地から建設的な意味でただしているのでありますから、どうぞその意味でありのままをさらけ出していただくことを希望したいのであります。
○十河説明員 国鉄の財産管理につきまして、疎漏のありましたことは、まことに申しわけないと存じております。何さま一兆円をこえる莫大な固定財産でありまして、それを三十年度の初めから年度一ぱいに調査をして、きちっと整理をし、再評価をしようということでやりました。いろいろ記帳漏れもありますし、計算漏れもありますし、出たり引っ込んだりいたしております。それでさっき運輸大臣から御答弁がありましたように、三十二年度のうちにできるだけ早く再調査を終了いたしまして、できるならば、三十二年度の決算で整理をして修正をいたしたい、こう考えまして、せっかく今努力をいたしております。そのために特に一課を設けまして、今まで片手間と言っては語弊がありますが、ほかの仕事と一緒にやっておったものを、分離いたしまして、機構を充実して努力いたしておりますので、多分三十二年度には整理ができることと期待いたしております。
○上林山委員 運輸大臣並びに国鉄の総裁が率直に何ら隠すことなくお答えになっておるので、私はこの問題についてはあまり追及したくありません。ただ一言警告申し上げておきたいことは、国鉄はいつでも問題が起る。ガード下の賃貸問題もさっき言った通り、鉄道会館その通り、今また総裁は二兆円の財産であるから資産再評価に二百億円くらいの間違いがあるのはやむを得ないかもしれぬというようなお答えに聞えますが、そういう考え方ではだめであります。少くともこれは国民のそれこそ財産であります。それが過大評価されたり過小評価されたり基準を示しながら基準の通りやらなかったりそろばんが間違ったり、台帳から漏れたりしておるということは、管理者の方も国鉄の経営に対する情熱が足りない、運輸省も監督が足りない、あるいは従業員も仕事に対して情熱なりあるいは熱心さが足らないからこういうような間違いが出てくるのじゃないか。これは決して運輸大臣や国鉄総裁だけを責めているのではない。これを現実にやっている者は第一線の管理者であり、第一線の従業員であろうと思う。これらの人々がもう少し、国鉄は国民に奉仕をしておるんだ、国の大事な財産を預かっておるんだ、これに上から下まで徹底しなければ、国鉄に対する非難はもっと多くなるだろうと私は考えるのであります。
 私が聞くところによりますと、東鉄あるいは長野管理局、その他二十七の管理局がほとんど間違いを犯しておるということである。私は、これはボタンを一つ押したならば末端まで指令が通って、下の報告も正確でなければならぬはずだと思う。私は、もっと時間があるならば、具体的にこの問題をお話し申し上げ、さらに見解もお聞きしたいのですが、時間がありませんのでこの意味において警告を申し上げておく程度で、本日はこの問題をやめたいと思いますが、単なるここで答弁をしたらいいというような考えでは、十河総裁だめですよ。そういうお考えではだめですよ。だからこの問題については、もっと熱心にお考えになって、三十二年度には――おそらくこの問題は決算委員会であなた方はまた追及されますよ。私は与党だからいいようなものの、こういうような問題は決算委員会でおそらく問題になるだろうと私は思う。だからそういうようなことを三十二年度には合理的に、合法的にきちっと責任を明らかにして、まただれが一番よけい間違っておったたか、その責任者ぐらいは出すくらいの経理のやり方をしていかないと、それこそ国民の信用を失墜するだろうと思う。私はこの問題についてはまだ具体的な材料をたくさん持っております。持っておりますけれども、この程度にしておきますが、こういう考え方を持っておるから、この前の静岡の国鉄の労組の大会に、もとの一等寝台、今の二等寝台のAでありますが、これが五日四晩も、いわゆるにせの配車指令書によって、東京から静岡まで運搬されておる。それが長い間わからなかったというのは、管理者の不注意も見のがすわけにはいきません。まさか世間に言われておる通り、アベック闘争ではなかろうけれども、そういうようなところに、私は管理者の注意が足りないと考える。この問題について今私が言うように、にせの配車指令書が出されたかどうか、国鉄の総裁にまずこれをお尋ねいたします。
○十河説明員 今の寝台の問題でありますが、寝台は課長に申し出があって、課長は明瞭にこれを断わっております。それが今お話のありましたように、課長の判のない手配書というものをつづり込みにはさまれたために、ああいう間違いが起りました。これはひとえに、さっき御質問の中にもありましたように、私の指導力が微弱であった、私の不徳のいたすところと、深く恐縮をいたしております。今後そういうことをしでかさないように、今厳重に取調べをして、処分する場合も起ってくるかもしれません。今厳重に取調べをしております。
○上林山委員 総裁は、世間で温情主義者だ、こういうように言われております。そういう意味においてすべての責任は自分にあるのだ、こう言われることは、私は一応あなたの人柄からしてわかります。わかりますが、そういうような単なるあいさつだけでは、経理をしっかりやるとか、あるいは国鉄の品物と自分の品物の区別をはっきりするとか、こういうような趣旨は末端までは徹底しませんよ。よほど具体的に対策をお立てにならないと末端までは徹底をしない、こういうように私は考えるのであります。今にせの配車の手続書が発行されて、そうして東京から静岡に回送をされたのだということがわかったのでありますが、五日四晩も使用されて、わかったのは一体いつであったわけですか。使用したのは五日四晩ですよ。国鉄の車はそんなに余っておりますか。寝台車や客車が四日も五日もそういうところへ使っておってもいいほど余っておるのですか、その点はどうですか。
○十河説明員 国鉄の車両はそう余っておりませんが、若干の予備は絶えず方々に持っております。それで今お話のあった点は、たしか三日わからないでいたのでありますが、これは駅に、駅長の管理する区域と客車区長の管理する区域と分れておりまして、そういうちょうどわからないようなところに置かれたために、(笑声)駅長の方でもつい見落したことと想像いたします。私は私の趣旨を――国鉄の職員は国民に奉仕する、絶えず国民のために迷惑にならないように、国民の貴重な財産を預かっておるのだということを末端まで徹底させるために私は全国を行脚いたしまして、そうして各職員にその趣旨を徹底するように努力いたしております。決して私はその点をおろそかにはいたさない覚悟でおります。漸次御趣旨にかなうようにやって参りたいと存じます。
○上林山委員 私は国鉄総裁を、立場上いろいろ申し上げることは気の毒な気がしますが、もう少し、そういう単なる儀礼的な答弁でなしに、いわゆる道徳論、お説教化する御答弁でなしに、こういう具体策をもってこういうふうにするのだというお話が聞きたかったのです。私はこの問題を抜き打ちにやってはお気の毒だと思いまして、皆さんによく連絡をした上でお尋ねをしておるのでありますけれどもこういう状態、そういう答弁では私どもは満足しない。
 もう一つお伺いいたしますが、国鉄の家族パス、あるいは国鉄の従業員は四十五万と言われております。この従業員が通勤するには無料だと聞いておりますが、これを換算すると一年間に大体どれくらいの費用になりますか。私の推算では一年間に大体四十億程度の費用になる、こういうように平均して換算をしておりますが、国鉄の家族パス、しかも通勤は国鉄の人はだだですよ、そういうようにしてただ乗りをしておる、しかも金額にして約数十億円になる。その上今度の大会では、にせの切符が五、六千枚出されたと聞いておる。いわゆる切符にかわるところのものを組合が発行して、そうして組合員の家族がこれに乗って労組の大会に出席した、こういうことを聞いておるのですが、そういう事実があるのですか、こういう事実があるとすれば、まことに行き過ぎた行為だといわなければならない。また国鉄の労組自体も、国民からもっと非難をされるであろうと私は考えるのでありますが、こういう事実があったのかどうか、これも伺いたいのであります。
○十河説明員 たびたびあやまってまことに恥かしい次第でありますが、今お話のように、出すべからざるパスを若干せんだっての労組の大会に出しておったということも事実であります。それから労組の委員長でありますか、分会長でありますか、何か地方の労組の役員が依頼書というような種類のものを出して、それをパスのかわりに使っておったということも事実であります。これは直ちに発見いたしまして、とめてしまいました。その方はそうたくさんはありません。
 通勤パスの金額が成規の料金でとるとどれだけになるかということは、ただいまちょっとお答えいたしかねます。(上林山委員「四十億円くらいになりますよ」。と呼ぶ)それくらいになるかもしれませんが、それはあとで取調べの上、お答えすることにいたしたいと存じます。
○上林山委員 今そういうお話を承わりましたが、さらに私お聞きしたいことは、先ほどは寝台車の問題でありましたが、今度は貨車の問題についてお聞きしてみたいことがあります。これは中小商工業者その他の方面から非常に非難があるのですが、私はこれは具体的な材料をここに持っていないから、あなたの方で勝手にお答えになってもけっこうです。あとでわかることですから……。私が聞いたところによりますと、鉄道弘済会、いわゆるこれは鉄道従業員の弘済会でありますが、この鉄道弘済会は貨車の運賃の割引があるとか、あるいはただで貨車を使っているとか、こういうようなことが言われておりますが、こういう事実がありますかどうか。
 さらに私が申し上げたいことは、厳重な処分をする、こういうことをおっしゃっておる。どういう厳重な処分をされるのですか。もうわかっておるでしょう。厳重な処分というのは、どういう処分をするのです。私は、厳重な処分の前にやってもらいたいことがあります。それは、昔の一等寝台車の料金は、今にしてもたしか二千何百円だったと思います。これを三十何名の者がただで使ったのであるし、しかも東京から静岡まで持っていったのでありますから、これは換算して相当大きな金額になると思う。あるいはこれは経済の問題。その次には業務上のいわゆる横領になるか、あるいはその他の刑法上の問題になってくると私は思う。単なる内輪の戒告とかあるいは減俸とか、そういうような程度のものじゃ私は済まされない問題だと思う。そういうような性質のものですよ。ただ始末書をとってあるいは戒告をして、減俸をして、それでこれは済むような程度のものじゃないのです。考えようによっては刑法上の問題ですよ。そういうような、いわゆる厳重なる処分というのは、一体どの程度の処分を考えておるのか。ただ何の何がしをどうするということはまだわかっていないでしょう。わかっていないが、この程度のケースのものはこれに当るというだけのものは、これはわからなければならぬ。国民は納得しておりませんよ、厳重なる処分をする、こういうことだけを発表しておられるもんですから。あとになるというといいかげんな減俸というようなものになる、こういうものでは私はいけないと考えるんだが、決意のほどを承わってみたいのであります。
○小倉説明員 お答えいたします。まず弘済会の貨物を貨車で、ただで送っておるのではないかという御質問でございましたが、そういうようなことは絶対にございません。
 それから次に処分でございますが、御指摘の通りに公物を私用に供したということにつきましてはまことに遺憾でございまして、これにつきましては処分に値すると存じております。ただただいまのところ全部の調査が完了しておりませんで、若干の疑問の点もございますので、これを至急に調査を結了いたしまして、来週早々に査問の委員会を開きまして、そこで決定する次第でありますから、それが判明いたしますまでは、どの程度の処分であるかということを決定的には申し上げられませんことをお許し願います。また料金につきましては、これは追徴をいたすつもりでおります。
○上林山委員 私はこの問題に対しては、従来のいわゆる軽い考えでの処置、こういうような態度でなくて、それこそ国民が納得するような厳正にして公平な解決をしていただかなければならぬ、これは普通の解決ではだめだということを繰り返して警告をいたしておきます。
 そこで、この国鉄の労組の大会でもう一つ問題が起った。それは、言うまでもなく、藤林あっせん案によりますと、臨時大会ないし定期大会において解職された役員は全部これを改選する、こういう線であったはずであります。それが、解雇されない者は、副委員長がわずか一人役員に選挙されておる。こういうようなあいまいな団体を、あいまいなやり方を相手にして、あなた方はこれでも一歩前進したやり方だ、あるいは便宜的なやり方でやむを得ないんだ、こういうような意味でこの問題をお茶を濁すおつもりであるのかどうか。私どもは、藤林あっせん案の原則は、言うまでもなく、解雇された役員を臨時あるいは定期の大会で改選をする、これが原則であったと思う。それを暫定的に、この前までは解雇されない者を臨時に交渉の相手として、国鉄としてはやっておったわけでありますけれども、定期大会あるいは臨時大会を開いたわけです。開いたにもかかわらず、こういうようなあいまいな解決に陥ったということは、国鉄内部が三派や四派に分れていろいろやっておるようでありますが、そういう内輪の事情にとらわれることなく、国鉄ないしは労働大臣としては、あるいは運輸大臣としては、これに対しては明確な考え方を持たなければ、日本のいい意味の労働慣行――これは労働大臣がいつも言っておりますが、いい意味の労働慣行というものはできない。混乱するよりもあれでもまあよかったんだ、一応仕方がないからこれでもやっていこう、こういうやり方では日本のいい意味の労働慣行というものはできない、私はこういうように考えるのでありますが、労働大臣並びに運輸大臣あるいは国鉄総裁それぞれこれに対する見解を明らかにしておいていただきたいのであります。これは大事な問題ですよ。この辺でけじめをつけておかぬと……。
○石田国務大臣 藤林あっせん案は、一つには、今まで国鉄の労働組合が公労法四条三項を無視した行為をした。公労法は悪法であるとか、あるいは憲法違反であるとかいう建前でそれを乗り越える、あるいはこれを無視していくのだという態度をとっておったのに対しまして、公労法四条三項の建前を守るべきだということが第一点の要旨であります。その具体的な方法といたしまして、すみやかに臨時大会を開いて正常化の道を講ずる、さらに要すれば定期大会において処置すること、こういうことになっておるわけであります。いま一点は、いわゆるこの昇給について、一〇〇%昇給という要求を掲げておりましたのに対して、職場長、現場長の査定権を認めているということが第二のあっせん案の精神でございます。
 その第一のあっせん案の精神は、先ほど繰り返して申し上げましたように、すみやかに臨時大会を開いて正常化の道を講ずるということであり、さらに要するに、そのときに完全にできなければ、定期大会において処置することということになっておるわけであります。このたび開かれました臨時大会におきまして、幹部が、いわゆる三役が総辞職をいたした機会に完全に正常化の道を講ぜられて、そうして労使の間を円満にしていくことを私どもも期待し、あるいはそれが最善の道と考えておったのでございますけれども、しかし、不幸にして、今御指摘の通り、三役のうちの一名だけ正規の職員をもって当てるというのにとどまりました。これは不満足でありますが、藤林あっせん案の精神を完全にじゅうりんしたものというのは、私は少し行き過ぎじゃないかと思う。特に藤林あっせん案を承認するという議決をいたしましたことは、冒頭に申し上げました藤林あっせん案の精神を国鉄労働組合が認めたことでございまして、これはやはり一歩前進と考える。定期大会に完全な正常化の処置が講ぜられることを期待をいたしまして、お互いに善意の努力を重ねていくことが妥当である、私はこう考えている次第でございます。
○中村国務大臣 ただいま労働大臣がお答えいたした通りでございます。藤林あっせん案は、臨時大会において認められております。解雇されない役員は一人しか認められなかった、これは非常に遺憾でございます。最小限のことでありますけれども、要すれば、定期大会にというあっせん案がありますから、私たちはそれまで静観をして、暫定的な団体交渉を続けていく、今こういうふうな態度をとっておる次第でございます。
○上林山委員 労働大臣の答弁も、万やむを得ないというような意味で、暫定的だという意味の御答弁であった、将来は必ずもっと前進して正常化に持っていける自信がある、こういう御答弁だと了解して、これ以上申し上げませんが、私は運輸大臣に一言申し上げておきたいことは、先ほどから私がだんだん国鉄総裁等に対して質問申し上げておりますが、この内容をお聞きになってどう思われましたか。運輸大臣として国鉄を十分に監督しておられる、こういう考えがおありでございますか。まだ監督は不十分だ、恩威並び行われるような、それこそ秩序のある国鉄というものを作るには、今のままではいけないのだ、恩威並び行わる、こういう意味において、単なる温情主義者ではかえって混乱に導く、温情が温情にならない、だから合理的に、それこそ合理的に、問題を解決していくという考え方を持っていかなければ、私は膨大なこの国鉄の秩序というものを、あるいは営業の秩序というものを守っていくことはできぬと思う。単なる通牒や訓話では、これは徹底しないのであります。私はこの点について、運輸大臣の御答弁を伺っておきたい。
○中村国務大臣 お説の通りの考えで、私は国鉄を監督いたしております。先にお話しになりました寝台車を使用した、これは無断使用であります。また国民の信託する財産を私有物視したと私は思うております。またそのやっております内容を監督者の立場から判断いたしますならば、越権行為であるとも断定して私は誤まりなしと思うのです。従って国鉄に対しましては、すみやかに懲戒委員を設けて――私は厳罰なんて考えない。現在の国鉄内部にあるところの懲戒規程あるいは鉄道営業法等によって、罰すべきものは処置してよろしいというのでありまして、また全体といたしまして、十河総裁に対して、きのう、どうも国鉄は管理体制がゆるんでおるのじゃないか、この意味におきまして、私は鉄道の監督をしておる関係で、国鉄法によりまして、文書をもって警告を発しております。決して上林山さんのおっしゃるようなことにはそむく必要はないのでありまして、正しい監督、これは当然の話であります。
○上林山委員 私は、運輸大臣が熱意を持って国鉄の秩序を守るための監督を十分にする、現在ある法規にならって監督を厳重にやる、こういう御意見であるが、今までは監督不十分であったわけでありますから、どうか今言われた通り監督を十分にせられるように私から運輸大臣にお願いをいたしておきます。
 最後に私が申し上げたいことは、昨年十二月十九日高知地検に、教組役員の教員たちが詐欺、背任、文書偽造の罪名で告発されて、そうして高知地検はこれを受理して世間の注目を引いておる事件がございますが、そういう事件があったのかどうか。その内容を申し上げますと、それは教組の役員を兼ねておる教員、これが十一名、そこの小学校、中学校の校長が十一名、それから教育事務所長が六名、合計二十八名が告発を受けております。告発の内容は、これらの人々が共謀して教育上の必要であると偽わり、現職員の配置方を教育委員会と県に要求し、実際にはこれらの教員は教育に専念せず、県費による給与を受けながら県教組の運動だけに専念してきた。そのことは刑法に定める詐欺罪であるというのであります。もう一つは校長と教育事務所長たち、これらの人たちが県教組の組織活動を助長するため、職務上の義務に違反しているということは背任だというのであります。もう一つは県教組の仕事に従事していることを知りながら、教育上の必要だとして虚偽の文書を作成したり、出勤簿に出勤したごとく見せかけて捺印をしたことは交書偽造である、こういうのでありますが、こういう事実があったのかどうか、あるとすれば、ゆゆしい問題だと考えます。これに対する文部大臣の御答弁と、法務大臣の御答弁を私は求めたいのであります。
○松永国務大臣 御指摘のような事実があったといたしますれば、まことに仰せの通り、ゆゆしい問題だと存じます。さらにその内容も仰せの通りであるといたしますれば、刑法上仰せの通りのような犯罪がやはり成立すると考えます。しかしこれはまだ私のところには詳細に参っておりません。しかしうわさに聞いておりましたために、こうした教職員に支払うところの金は、もちろん主導性を持っておるのは都道府県の教育委員会でありますけれども、国費がその中に包含されておりますので、われわれとしては、これはやはりわれわれの手で調査をしまして、これに対する相当な処置をせんければならぬと考えまして、今せっかく調査中でございます。しかしまだ明確な報告は参っておりません。しかし調査の結果、そうした仰せのような事実があるとすれば、こちらも相当の善処をするつもりでおります。
○唐澤国務大臣 法務省にはまだ何らの報告も届いておりません。さっそく取調べをいたします。
○上林山委員 警察担当大臣のところには報告はありませんか。
○正力国務大臣 お答えいたします。まだ報告が参っておりませんが、至急にそれは調査いたします。
○上林山委員 ただ文部大臣だけがうわさに聞いた、こういうことでございますが、問題が起ったのは、昨年の十二月十九日に高知の地検が受理しているのです。これはなるほど文部省は直接の関係ではないとはいうものの、文部行政の上にとっては重大な事件です。だからこの問題が十二月十九日に
起ったが、うわさに聞いたというような程度、あるいはまた正力国務大臣のところに所管から報告がないというのも、これはまことに遺憾であります。あるいは法務大臣のところにまだ所管から何らの報告がない。こういうことだから教員が白昼公然と日教組の仕事をしながら、それこそ国費、県費の乱費をしながら――乱費という言葉が悪いといえば訂正してもいいが、いずれにしてもこういうように学校に出ないでおって、教育に従事しないでおって、出動簿に出勤したがごとく判こを押して給料をもらっておる。これは国費を乱費して組合運動をやっておる。こういう行き方が私はいけないと思うし、それこそ教育に対するところの一つの冒涜じゃないかとすら私は思う。こういう問題について、これは単なる一地方の問題であるなどと考えておったら労働大臣、大へんなことですよ。今度の春季闘争は、労働大臣は非常に楽観をしておるように見える。まさかそうじゃないと思う。今までは官公労が第一線に立って国民の反撃を食って、世論の前に大きな手傷を負ったために第二線に下った。第一線には御承知の通り炭労を中心にして、しかも民間労組が各ブロックごとに責任者をきめてやっておるが、その責任者の一人に、日教組の今村副委員長が北海道の責任者になっていますよ。決して低姿勢じゃない。私はデフレ下における極端なる賃上げ闘争というものが、終局においてこれはつぶれると思う。また行き過ぎに対しては、国民のより以上の反撃を受けるであろうということを考えておるが、これは成功しない。成功しないけれども、炭労などは独走するかもしれぬ。決して低姿勢ではない。春闘に手傷を負ったからといって、世間はある程度緩和する意味で低姿勢という言葉だけを使っているが、実際の内容はそうじゃないのです。春闘に対するところの労働大臣の分析並びにこれに対するところの見通し、第二線に控えたところのいわゆる官公労なども、やがてはこれに合流するのではないかという考え方、それを考えると、今のような一つ一つの問題、具体的な問題を抽象論じゃなしに、早く、しかも公平に、厳格に解決していくということが、私は労働問題の解決の一つの方法だと思う。ただこれだけでなく、最低賃金法あるいはその他の労働立法、いろいろなことをやらなければならぬ、あるいは経済の発展をはかっていかなければならぬ。国鉄にしても、日教組にしても、こういう個々の具体的なケースをもう少し具体的に解決しなければ、私はだめだと思う。これに対するところの見解を伺って私の質問を終りたいと思います。
○松永国務大臣 先ほど私が申し上げた中で、うわさを聞いたというふうにお聞き取りになったが、これは間違いです、私の言い間違いです。うわさではありません。それは概括的の報告は受けておる。従って抽象的や概括的ではいかぬから、もっと詳細にこれを調べて、御説の通り重大な問題と存じまして、これに対してわれわれは、われわれとしての考え方から善処する、こういうつもりで進んでおります。御了承願います。
○石田国務大臣 私はいわゆる総評の計画をいたしておりまする春季闘争に対して、楽観も悲観もいたしておりません。ただこういう問題は、あまり周囲からあおり立てて不必要な対立感を激化させる態度は慎しむべきものだと思います。それから民間労働組合と民間企業との間に生じました労働問題は、これは原則的に自主的な解決に持っていくのが建前でございます。また労使双方ともその能力を持っているものと考えております。しかしながら私どもは、労働法規を管理いたしておりまする以上は、法規を労使双方とも守ることを強く要求するのでありまして、その法規から逸脱した場合におきましては、これは妥協を許さないという強い態度で一貫するつもりでございます。
 それから労働問題、特にこの春季闘争の賃金要求と経済情勢との関連についてのお話がございました。私はまた同時に、労働組合運動というものは、いろいろの不満はございましょうが、全体として順次健全な道をたどりつつある。特に世論の動向、それから組合員内部における良識の喚起、そういうものに期待をかけつつ、やはりよき労使慣行の確立と労働組合の健全化に善意の努力を払って参りたいと思います。よく世間はそういう甘い態度ではだめだ、相手方は決してその本質を変えていないんだというような御議論がございます。しかしおよそ善意の努力を続け、相手方の善意に期待をいたしまする以上は、そういう考え方は、あるいはそういうことは口にすべきじゃない、少くとも私は口にする意思はございません。それから官公労に対しましては先ほどからしばしばこの場所でも申しました通り、政府は仲裁裁定の完全実施、人事院勧告の尊重ということを基礎といたしまして、公労法の規定の厳守を要求いたします。この基本線はあくまで貫いて参るつもりでございます。
○上林山委員 ただいま報告のきていない法務省ないし警察関係の両大臣の報告は、後日伺ってもけっこうでありますから、この問題はおろそかにしないで御調査を願いたい。
 それから、労働大臣の春季闘争ないしは労働問題に対する御見解がございましたが、私も原則としては労働大臣の考え方と同じでありますが、われわれは国民の声のアンパイアであるとみずから言っておる労働大臣に、ありのままを認識してもらう、こういうような意味で先ほどから国鉄や日教組の問題なども持ち出したわけでございますが、ごらんの通りの実情です。春季闘争の内容も、これは楽観も悲観もせぬと労働大臣は言っておられますが、もちろん世論の反撃ということが出て参りますからあえて心配するほどのことはないとしても、これを十分に警戒して、日本の産業をこのデフレ下に麻痺させるというようなことのないように、その前に打つべき手があり、話し合うべき方法があるならば、日本の産業を麻痺させない前に考えなければならぬ。あるいはある程度総評が態度を変えたとおっしゃるかもわからぬ。総評からたとえば日教組が二つに割れて二万人くらいの一つの組合ができた、あるいは国鉄も新組合ができた、あるいは前からある全特定も全逓から分れてさらにふえつつある、こういうような現象を考えると、いわゆる総評のやり方にあきたらないからだんだんそういう新しい組合が大きくなりつつあるのですが、同時にもう一つ申し上げたいことは、これは労働大臣もよく御承知の通り、単なる経済闘争じゃないというところに問題の複雑性があるわけで、いわゆる思想闘争であり、政治闘争であり、あるいは官公労にすると権力闘争にもなるわけでありまして、こういうものと経済とをからみ合せて、争議権のないものまでが争議に巻き込まれていくということ、これはもちろん労働大臣が言われるように、一方において仲裁裁定を前提として守る、しかしながら公労法の適用というものはそれこそ厳粛にやる、国民の期待にこたえるようにやる、こういう態度だと私は思うから了承いたしますけれども、今度のやり方は、単なる炭労を中心とする民間だけの闘争じゃない。第二線に下ったと言われておる日教組あるいはその他の官公労もやがては一緒になるのです。もうすでに配置がきまっておる。日教組の組合長が先ほど言った通りに北海道の担当者になっておる一例を見ても、今度の春季闘争は今までにない複雑性を持っているので、それはいろいろとお困りの点もあると思いますが、私は労資双方の中に立ってあなたが円満な解決をされることに期待をいたしますけれども、今申し上げたことを御参考に善処せられるように要望いたしまして、私の質問を終ります。
○石田国務大臣 私が申し上げたいことは、こういう事案に対する態度は冷静に扱っていきたい、問題を非常に不必要に感情的に走らせるようなことのないようにしていきたいと私は考える。それから労働組合の内部におきまして、一部の間違った指導者あるいは行き過ぎた指導者と組合員大衆とを一緒くたにして考えるような考え方は、これは労働組合運動というものの健全化に資するものではないと考えております。従って私どもは多くの労働組合員諸君の良識に期待するために、政府みずから労働組合の健全な発達に協力をいたしますとともに、率先してその待遇改善に努力する心がまえでなければならぬと思っております。
 特にこの際、私の所管でございませんが、これは誤解を生ずるといけませんからあわせて申し上げたいと思いますことは、先ほどの上林山委員の、国鉄の職員が無料で通勤パスを使っておるというお話でございます。これは事実でございます。しかし国鉄以外の公社それから民間企業はいわゆる通勤手当というものがございます。それから公務員も今度通勤手当というものが実施されることになります。そこでもし国鉄の場合にパスを発行されなければ、それにかわる通勤手当を出さなければならぬわけでございますから、その事実をとらえて、多くの人々を全部ひっくるめて、何か一部の間違いのために全部が悪いものだというような扱いをされないことが、そういう心がまえで臨むことが、よき労使慣行確立の基本であると考えております。
○江崎委員長 明後日は午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時四十八分散会